説明

抗菌超極細繊維布帛

【課題】小さな粒子や微生物を表面から除去でき、同時に微生物が布帛全体にわたって増殖するのを抑える。
【解決手段】互いに係合する1.0デニール以下の細い繊維を含む少なくとも1本の糸と抗菌繊維を含む少なくとも1本の糸とを備え、抗菌繊維が素材全体に抗菌性を付与する抗菌素材。好ましい実施の形態では、細い繊維の糸と抗菌繊維の糸は織られているか又は編まれている。さらに好ましくは、細い繊維は0.3デニール未満であり、直径が約3ミクロンで、鋭い縁の略三角形の断面を有し、したがって、細い繊維はバクテリア、カビ、その他の微生物を表面から実質的に除去することができる。抗菌繊維は、また、抗菌繊維の強度を高めるためにポリエステルと一緒に紡がれたアセテート繊維を含むことが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的に清掃用布帛に関する。詳しくは、本発明は、抗菌繊維と超極細繊維、極細繊維、又はマイクロフィラメントとを組み合わせた織物又は編物の清掃用布帛に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、清掃の目的に各種の織物又は編物の布帛が用いることが知られている。通常、これらの布帛は木綿や羊毛などの天然繊維、又はそれらの天然繊維とナイロン、レーヨン、ポリエステル、等とのブレンドから作られる。しかし、これらの布帛には、清掃の目的で用いた場合にいくつかの欠点がある。
第一に、これらの布帛に含まれている繊維は比較的大きいので、布帛を構成する繊維よりも小さい粒子や微生物を除去することができない。よって、これらの布帛は比較的大きい粒子は除去できるが、相当な量の小さな粒子や微生物は、清浄にしたいと思う表面から除去されずに単にその周囲に拡げられるだけである。その結果、清掃作業は不完全になってしまう。
【0003】
現在の織物又は編物の清掃用布帛に関する別の問題は、これらの布帛が抗菌性を有していないということである。本明細書で用いる“抗菌性”という用語は、抗カビ性と抗細菌性の両方を含めることを意図している。抗菌性を欠く従来の清掃用布帛はバクテリアやカビが布帛内で増殖することを許し、布帛内部が非衛生的な状態になり、布帛の使用寿命が短縮される。さらに、同じ布帛の再使用によってそれらのバクテリアやカビが他の表面にまで拡がる可能性がある。
【0004】
繊維テクノロジーにおける最近の進歩の一つは、極細繊維、マイクロフィラメント、及びいわゆる“超極細繊維”、例えばスウエーデンのOlsson Cleaning Technology of Kristeinhamnから販売されているもの、の出現である。これらの繊維やフィラメントは一般にポリアミド及びポリエステルを含み、小さなサイズと構造のために多くの点で従来の繊維より優れている。特に、超極細繊維は一般に断面が三角形で、鋭い縁を有し、直径が約3ミクロンである。バクテリアは典型的には、直径が2乃至5ミクロンなので、超極細繊維の極めて小さなサイズと構造は、この繊維がそれより小さいバクテリアやその他の微生物及び粒子の下に入り込んでそれらを実質的に表面から除去することを可能にする。さらに、性能を向上させるために、超極細繊維には通常ポリエステル繊維が、織物素材の場合は50/50 、編物素材の場合は70/30というポリエステル対超極細繊維の比で混合される。
【0005】
超極細繊維の清掃性能は、超極細繊維はポリアミドが存在するために陽(正)電荷を有することで強化される。たいていのゴミやほこり粒子、バクテリア、花粉、金属の酸化物、等は陰(負)電荷を帯びる。したがって、超極細繊維は負に帯電した粒子、バクテリア、等を自然に引きつける。
【0006】
超極細繊維は小さな粒子をピックアップできる以外に、優れた吸収性質を有する。これは、超極細繊維の直径が小さいために、その表面積が従来の繊維で見られるよりもずっと大きくなるからである。繊維の直径が小さいことは、また、毛細管作用が特に大きくなるということであって、この作用によって液体を吸い込むだけでなく、液体中に含まれる粒状物や微生物も吸い込む。このように、表面積の増加と毛細管作用の増大によって、超極細繊維布帛は自身の重量の何倍にも達する大量の液体を吸収することができる。
【0007】
清掃用の布帛素材を作るためには、超極細繊維を織ることも編むこともできる。超極細繊維は当業者に公知の方法で、最初に分割されない形で織られる又は編まれる。織られた又は編まれた後、化学的又は機械的な工程によって超極細繊維は成分フィラメントに分割される。これは、やはり当業者に公知のように、熱とアルカリを用いて行われる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
残念ながら、それ以前の織られた又は編まれた布帛と同様、このような超極細繊維素材を用いても清掃作業で除去された微生物の増殖を許すことになる。前述のように、このような微生物の増殖は、布帛内に非衛生的な状態を生じ、布帛の使用寿命を短くする。さらに、同じ布帛の再使用によってそれらの微生物が他の表面に拡がる可能性がある。すなわち、小さな粒子や微生物を表面から除去でき、同時に微生物が布帛全体にわたって増殖するのを抑えることができる布帛が現在必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
他の必要性は、以下の詳しい記述を図面を参照して考察すれば明らかになるであろう。
本発明の一つの形態では、前述の必要は、1.0 デニール又はそれ以下の細い繊維を含む少なくとも1本の糸と抗菌繊維を含む少なくとも1本の糸とが互いに係合され、抗菌繊維が布帛全体に抗菌性質を付与する抗菌布帛によって満たされる。ある好ましい実施の形態では、細い繊維の糸と抗菌繊維の糸が織られるか又は編まれる。さらに、細い繊維は、0.3デニール未満であり、直径が約3ミクロンであり、略三角形の断面を有して縁が鋭く、したがって、細い繊維がバクテリア、カビ、その他の微生物を表面から実質的に除去することを可能にすることが好ましい。また、抗菌繊維はポリエステルと共に紡がれて抗菌繊維の強度を高めるアセテート繊維を含むことが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】織られた抗菌素材の平面図である。
【図2】編まれた抗菌素材の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明はいろいろな形で実施することができるが、図面に示され以下で記述されるものは現在好ましいとされる実施の形態であって、開示されるものは本発明の例示と見なすべきであり、本発明が例示される個々の実施の形態に限定されないことは言うまでもない。
【0012】
上述のように、本発明は抗菌性を有する超極細繊維素材に関する。“超極細繊維”という用語がここに用いられているが、極細繊維やマイクロフィラメントなど他のどんな細い繊維も使用できるということが本発明の範囲内にあることは言うまでもない。普通、マイクロフィラメントは1.0デニールと0.5 デニールの間であり、極細繊維は0.5デニールと0.3 デニールの間であり、超極細繊維は0.3デニール以下である。
【0013】
本発明の素材は、上述のような超極細繊維の糸を抗菌繊維の糸と組み合わせて作られる。好ましくは、抗菌繊維はアセテート基材、例えばサウスカロライナのHoescht Celanese により登録商標名Microsafeで販売されている抗菌繊維である。アセテート繊維は、木材パルプと酢酸から作られる製造されたセルロース繊維である。繊維はセルロースなので、通気性と吸水性があるという点で天然繊維の特性を有する。しかし、セルロース繊維の一つの欠点は、いろいろなタイプの清掃作業に適当な強度特性を欠いていることである。
【0014】
したがって、アセテート抗菌繊維の強度を高めるために、この好ましい実施の形態ではこの繊維がレーヨン、ナイロン、又は好ましくはポリエステル、などの合成繊維と共に紡がれる。通常、アセテート抗菌繊維は約55デニール乃至約150デニールという重量で提供され、ポリエステルと抗菌繊維の組み合わせは約250デニール乃至約450デニールという範囲であることが好ましい。
【0015】
アセテート繊維に抗菌性を付与するために、サウスカロライナのHoescht Celaneseから提供される繊維にはトリクロサン(triclosan)などの抗菌剤がアセテート繊維の間隙内に埋め込まれて含まれている。この抗菌剤は、バクテリア、糸状菌、ミルジュー、及びカビの広範な増殖を阻害することが科学的に立証されている。この抗菌剤は水溶性でないので、繊維から洗い流されることはない。さらに、抗菌防護は耐久性があり永続的であるように設計されているので、この繊維は製品の寿命の続く限り連続的に抗菌防護能力がある。
【0016】
繊維の抗菌作用は、抗菌剤がバクテリアや糸状菌、ミルジュー、カビその他の薄い細胞構造の壁を貫通する結果として得られる。この貫通が起こると、薄い細胞構造が機能し、発達し、再生することが妨げられる。抗菌剤は、バクテリアなど壁が薄い生物を破壊することができるが、動物細胞は壁が厚いので人間がそれに接触しても安全である。実際、抗菌剤はカフェインやアスピリンなどの日常的な製品よりも毒性がかなり低いことが示されている。
【0017】
上述のように、本発明はここで述べた抗菌繊維と超極細繊維を組み合わせて作られる。図1及び2を参照して説明すると、抗菌繊維と超極細繊維は、好ましくは、まず別々の糸として作られ(それぞれ、10及び12)、次に織られる布帛(全体を参照数字16で表す)又は編まれる布帛(全体を図2で参照数字18で表す)の基材14に組み込まれる。ここで基材は好ましくはポリエステルである。さらに、抗菌繊維と超極細繊維の両方を含む単一糸(図示せず)を織られた素材又は編まれた素材の基材と組み合わせることもできるし、基材なしにこの糸を織ったり又は編んだりすることもできる。あるいはまた、抗菌繊維と超極細繊維は、2本以上の糸端をより合わせることにより、コアスピンニングにより、空気ジェットテキスチャーリングにより、など(図示せず)によって互いに混ぜ合わすこともできる。超極細繊維を本発明の他の繊維と組み合わせた後、前記の熱及びアルカリ処理を行って、超極細繊維を構成するフィラメントに分ける。
【0018】
本発明の完成した素材で所望の抗菌効果を得るために高濃度の抗菌繊維を用いる必要はない。実際、抗菌繊維は効果的な抗菌防護ゾーンを生じて、周りにある他の繊維が内在的に抗菌性を有していなくても周りの繊維に抗菌性を付与する。
【0019】
したがって、織られた又は編まれた布帛で必要な抗菌性を生み出すためには、全素材の約18パーセントがアセテート抗菌繊維であり、素材の残りは超極細繊維又は超極細繊維と他の天然繊維又は合成繊維、例えばポリエステル、であることが好ましい。約18パーセントのアセテート抗菌繊維を含む、織られた又は編まれた素材は、グラム陽性菌とグラム陰性菌の両方の増殖を効果的に阻害すると言うことが現在知られている。
【0020】
しかし、特定の状況では、もっと高い又はもっと低い濃度の抗菌繊維も受容できる。本発明の素材に染料を加えると抗菌繊維の抗菌性に有害な影響があることが知られていることを注意しておかなければならない。したがって、ある好ましい実施の形態では、この素材の生産に染料は用いられない。
【0021】
さらに、基材の抗菌繊維とポリエステル繊維に対する超極細繊維の濃度は、布帛の個々の用途によって異なることがある。例えば、織物又は編物布帛がモップに用いられる場合は、高濃度の超極細繊維は繊維と清掃される表面とモップの間の摩擦係数を大きくしてモップの移動を困難にする。この大きな摩擦係数は超極細繊維のデニールと直径が小さいためである。したがって、抗菌超極細繊維布帛をモップ用途に用いる場合、超極細繊維の濃度を小さくして布帛と清掃しようとする表面との摩擦を小さくすることが好ましい。
【0022】
上述したことから明らかなように、本発明の作用は、湿潤又は乾燥状態にある抗菌超極細繊維布帛で表面を拭くことによって容易に遂行される。表面を布帛で拭くと、超極細繊維であるために、非常に小さい粒子及びバクテリア、糸状菌、カビ等の微生物を含めて、それらの粒子や微生物の下に潜り込んで、実質的にその表面上の全ての粒子を除去することが可能になる。さらに、超極細繊維の陽電荷が粒子と微生物の除去を助ける。清掃プロセスと合わせて水が使用される場合、超極細繊維の毛管作用も布帛内に粒子を引き込むのを助ける。したがって、本発明の布帛で表面を拭いた後には粒子や微生物はほとんど何も残らない。
【0023】
粒子と微生物が表面から除去された後、抗菌繊維は微生物が生殖したり成長したりするのを防ぐ。前述のように、抗菌繊維は繊維のまわりに効果的な抗菌ゾーンを生じ、まわりの非抗菌繊維にも抗菌性を付与し、約18パーセントのアセテート抗菌繊維を含む布帛は布帛全体に効果的なレベルの抗菌防護を付与する。
【0024】
モップ、皿拭き布巾、タオル、洗浄及び清拭布巾、おむつ、衛生ナプキン、その他の女性衛生用品、ベッドシーツ、枕カバー、など多くの目的に使用される素材を提供することは本発明の範囲内にあることを注意しておかなければならない。
【0025】
本発明の好ましい実施の形態についての上の記述は例示と説明のためであって、全てを尽くすことを意図したものではなく、本発明を開示された詳細な形態に限定しようとするものではない。記述は、本発明の原理と実際の応用を最もよく説明して、当業者が考える個々の用途に適したいろいろな実施の形態と変型で本発明を最もよく利用することができるように選ばれた。本発明の範囲は、その記述に限定されるものではなく、以下に示される特許請求の範囲によって定められる。
【符号の説明】
【0026】
10、12 糸
14 基材
16 織られる布帛
18 編まれる布帛

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1.0 デニール以下の細い繊維を含む少なくとも1本の糸と、 前記細い繊維を含む糸と係合する抗菌繊維を含む少なくとも1本の糸とを含む抗菌素材。
【請求項2】
前記抗菌素材が織られていることを特徴とする請求項1に記載の抗菌素材。
【請求項3】
前記抗菌素材が編まれていることを特徴とする請求項1に記載の抗菌素材。
【請求項4】
前記細い繊維が微生物を表面から除去できることを特徴とする請求項1に記載の抗菌素材。
【請求項5】
前記抗菌繊維が合成繊維と一緒に紡がれたアセテート繊維を含み、前記抗菌繊維が抗菌素材全体に抗菌性を付与することを特徴とする請求項1に記載の抗菌素材。
【請求項6】
前記合成繊維がポリエステルであることを特徴とする請求項5に記載の素材。
【請求項7】
前記細い繊維が直径4ミクロン未満であることを特徴とする請求項1に記載の素材。
【請求項8】
前記細い繊維がポリアミドを含み、前記抗菌素材に全体的な陽イオン電荷を付与することを特徴とする請求項1に記載の抗菌素材。
【請求項9】
前記細い繊維が0.5デニール以下であることを特徴とする請求項1に記載の抗菌素材。
【請求項10】
前記細い繊維が0.3デニール以下であることを特徴とする請求項1に記載の抗菌素材。
【請求項11】
1.0 デニール以下の細い繊維を含む少なくとも1本の糸と、 前記細い繊維の糸と係合する抗菌繊維を含む少なくとも1本の糸とを備え、前記抗菌繊維は合成繊維と一緒に紡がれたアセテート繊維を含み、前記抗菌繊維が布帛全体に抗菌性を付与し、前記細い繊維は微生物を表面から除去できることを特徴とする清掃用布帛。
【請求項12】
前記清掃用布帛が織られたものであることを特徴とする請求項11に記載の清掃用布帛。
【請求項13】
前記清掃用布帛が編まれたものであることを特徴とする請求項12 に記載の清掃用布帛。
【請求項14】
前記合成繊維がポリエステルであることを特徴とする請求項11に記載の清掃用布帛。
【請求項15】
前記細い繊維が0.5デニール以下であることを特徴とする請求項11に記載の清掃用布帛。
【請求項16】
前記細い繊維が0.3デニール以下であることを特徴とする請求項11に記載の清掃用布帛。
【請求項17】
前記細い繊維が直径4ミクロン未満であることを特徴とする請求項11に記載の清掃用布帛。
【請求項18】
前記細い繊維がポリアミドを含み、前記清掃用布帛に陽イオン電荷を付与することを特徴とする請求項11に記載の清掃用布帛。
【請求項19】
0.3 デニール以下の細い繊維を含む少なくとも1本の糸と、 前記細い繊維を含む糸と係合する抗菌繊維を含む少なくとも1本の糸を備え、前記細い繊維は微生物を表面から除去することができ、前記抗菌繊維は布帛全体に抗菌性を付与することを特徴とする清掃用布帛。
【請求項20】
前記清掃用布帛が織られたものであることを特徴とする請求項19に記載の清掃用布帛。
【請求項21】
前記清掃用布帛が編まれたものであることを特徴とする請求項19に記載の清掃用布帛。
【請求項22】
前記抗菌繊維が合成繊維と一緒に紡がれたアセテート繊維を含むことを特徴とする請求項19に記載の清掃用布帛。
【請求項23】
前記細い繊維が直径4ミクロン未満であることを特徴とする請求項19に記載の清掃用布帛。
【請求項24】
前記細い繊維がポリアミドを含み、布帛全体に陽イオン電荷を付与することを特徴とする請求項19に記載の清掃用布帛。
【請求項25】
前記抗菌繊維がさらに抗菌剤トリクロサンを含むことを特徴とする請求項19に記載の清掃用布帛。
【請求項26】
抗菌繊維と1.0 デニール未満の細い繊維を含む少なくとも1本の糸を含む抗菌素材。
【請求項27】
前記素材が織られたものであることを特徴とする請求項26に記載の抗菌素材。
【請求項28】
前記素材が編まれたものであることを特徴とする請求項26に記載の抗菌素材。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−69043(P2011−69043A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−274591(P2010−274591)
【出願日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【分割の表示】特願2000−607824(P2000−607824)の分割
【原出願日】平成12年3月29日(2000.3.29)
【出願人】(501384827)スウェポーツ リミティド (1)
【Fターム(参考)】