抗菌銀組成物
【課題】大量生産に拡張可能であり、比較的危険性のない化学物質を利用する銀ナノ粒子を含む抗菌組成物の提供。
【解決手段】少なくとも1つの安定化剤と、1つまたは複数の銀化合物と、少なくとも1つの還元剤と、溶媒とを含む、銀ナノ粒子を調製するための組成物であり、一態様において、安定化剤は、界面活性剤またはポリマーを含む。ポリマーは、ポリアクリルアミド、ポリウレタンおよびポリアミドなどのポリマーを含んでいてもよい。一態様において、銀化合物は、銀陽イオンおよび陰イオンを含む塩を含む。陰イオンは、サッカリン酸塩誘導体、長鎖脂肪酸およびカルボン酸アルキルを含んでいてもよい。この銀ナノ粒子組成物は織物創傷材料、カテーテル、患者治療用デバイスおよびコラーゲンマトリックスのようなデバイスに対して処理することができる。
【解決手段】少なくとも1つの安定化剤と、1つまたは複数の銀化合物と、少なくとも1つの還元剤と、溶媒とを含む、銀ナノ粒子を調製するための組成物であり、一態様において、安定化剤は、界面活性剤またはポリマーを含む。ポリマーは、ポリアクリルアミド、ポリウレタンおよびポリアミドなどのポリマーを含んでいてもよい。一態様において、銀化合物は、銀陽イオンおよび陰イオンを含む塩を含む。陰イオンは、サッカリン酸塩誘導体、長鎖脂肪酸およびカルボン酸アルキルを含んでいてもよい。この銀ナノ粒子組成物は織物創傷材料、カテーテル、患者治療用デバイスおよびコラーゲンマトリックスのようなデバイスに対して処理することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本発明は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている、2004年7月30日に出願された米国仮特許出願第60/592,687号の優先権を主張するものである。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、銀ナノ粒子を含む抗菌組成物、それらの製剤、該組成物の表面に対する塗布、およびデバイスの作製方法に関する。
【背景技術】
【0003】
銀は、細菌、ウイルス、酵母菌、真菌および原虫の細胞において通常利用できる様々な求核基に不可逆的に結合する銀イオンの能力からその広範な抗菌活性を導く。細胞成分に対する結合は、通常の再生および成長サイクルを阻害し、細胞の死をもたらす。銀およびその化合物は、その強力な活性を利用して、過去数十年にわたり、包帯、ヒドロゲル、親水コロイド、クリーム、ゲル、ローション、カテーテル、縫合糸および絆創膏などの様々な創傷ケア製品に採用されてきた。
【0004】
抗菌製品における銀の好ましい形態は、該元素の金属形態自体は医療に効果的な微量作用が欠如しているため、その化合物または塩であった。該化合物または塩は、水性媒体と接触すると、解離して、抗菌作用に利用可能な銀イオンを生成する。銀化合物の大多数は、感光性または感熱性でもあるため、安定した商品におけるそれらの利用が困難になっている。あるいは、銀金属は、真空スパッタ法または電気メッキ法によって抗菌カテーテルおよび創傷包帯上に薄膜として蒸着されて、抗菌表面を形成した。銀金属含有製品の機構は、その表面に形成する銀酸化物を含むものと考えられる。弱水溶性である銀酸化物は、流体に接触した後に治療有効量の銀イオンを放出する。蒸着された銀は、表面積が小さく比較的少ないイオンを放出するため、限定された抗菌活性しかもたらすことができず、効果的で長期間持続的な放出は極めて困難でありうる。持続的な放出活性は、カテーテル処置および疼痛管理などの処置を受ける患者の長期的なケアに必要とされる。製品への銀装填量を増加させることによってこの困難さをある程度克服することができるが、この手法は、哺乳類細胞に対する細胞毒性のリスクを高め、製品に接触する部分の着色をしばしば引き起こす。また、当該デバイスの製造は、特殊な設備を必要とする処理である真空スパッタリングを必要とするため、高コストでもある。
【0005】
装填量を増加させずに銀金属担持表面からの銀イオン放出を向上させる1つの解決法は、単位質量ベース当たりで利用可能な銀の表面積を大きくすることである。当該手法は、粒径がナノメートル範囲に近づくにつれて表面積を非常に大きくすることを可能にする。最近では、何人かの発明者が、粒径がナノメートルのオーダに近づいている乾燥ナノ粒子の形態の銀の製造を主張している。銀ナノ粒子は、単位体積(または質量)当たりの表面積がその直径に逆比例するため、単位質量当たりの面積が非常に大きくなる。大きい表面積は、水に接触すると銀イオン放出を向上させる表面酸化層をもたらす。残念なことに、乾燥状態の粉末として非常に細かい純金属イオンは、空気に触れると、潜在的な火災危険性を有することが知られている。空気との接触は、発熱性が高い非常に高速の酸化反応により、粒子を発火させる。
【0006】
銀粒子に対する他の方法は、真空下における純金属の熱的蒸発に基づくものであった。それらの方法は、多量のエネルギーを消費し、高価な設備を必要とし、高度な整備を必要とし、製造された粒子は、火災および爆発のリスクを低減するために何らかの形態の表面の不動態化を必要とする。不動態化などの追加的な工程は、コストを増大させ、抗菌活性に悪影響を及ぼし、恐らくは最小限の阻害レベルを達成するためにより多くの銀装填量が必要となる。異なった複数の環境における銀ナノ粒子の影響についてはほとんど知られていないため、乾燥法は、製造要員に対する曝露危険性がある。さらに、乾燥形態で製造された銀ナノ粒子は、凝集塊として存在するため、多量のエネルギーを消費する再懸濁を必要とするが、それは十分に効果を発揮することがほとんどない。
【0007】
要約すると、既知の方法に用いられる乾燥法もウェット法も、様々な表面に対して抗菌性を容易に与えるために使用される銀ナノ粒子組成物を提供する、簡単で、低コストで、危険性のない方法を提供するものではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、大量生産に拡張可能であり、比較的危険性のない化学物質を利用する方法によって製造できる銀ナノ粒子を含む抗菌組成物が必要とされている。また、抗菌ナノ粒子の実用性は、それらが、組成物に組み込むことができる、あるいはデバイスの形状および輪郭に関係なく表面に直接塗布できる形態であれば高められる。当該形態は、容易に分配され、またはデバイスのための浸漬浴として使用される流体になる。さらに、当該抗菌組成物は、医療デバイスの表面などの表面に到達するのが困難になることを含めて、処理された表面に抗菌作用を与え、銀を浪費しない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、流体環境で形成された安定な銀ナノ粒子を含む抗菌組成物を含み、これらの組成物の製造および使用方法を含む。本発明の銀ナノ粒子の組成物は、一般には0.1から100nmの範囲にあり、約50nmがナノ粒子の分布の最大の部分を占める。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明による水性抗菌銀ナノ粒子組成物の紫外可視分光分析によって得られた代表的なスペクトル写真を示す図である。
【図2】溶媒がクロロホルムを含む、本発明による非水性抗菌銀ナノ粒子組成物の紫外可視分光分析によって得られた代表的なスペクトル写真を示す図である。
【図3】本発明による水性抗菌銀ナノ粒子組成物の代表的な透過型電子顕微鏡写真を示す図である。
【図4】本発明による水性抗菌銀ナノ粒子組成物の粒径分布を示す図である。
【図5】溶媒がクロロホルムを含む、本発明による非水性抗菌銀ナノ粒子組成物の代表的な透過型電子顕微鏡写真を示す図である。
【図6】溶媒がクロロホルムを含む、本発明による非水性抗菌銀ナノ粒子組成物の粒径分布を示す図である。
【図7】図に示されるように、水性抗菌銀ナノ粒子組成物が、新たに調製された(4時間)、または約11カ月間にわたって約25℃で保存された後で分析された、本発明による水性抗菌銀ナノ粒子組成物の紫外可視分光分析によって得られた代表的なスペクトル写真を示す図である。
【図8】様々なナトリウム塩から調製された本発明による様々な水性抗菌銀ナノ粒子組成物の紫外可視分光分析によって得られた代表的なスペクトル写真を示す図である。
【図9】様々なナトリウム塩から調製された、表示された陰イオンを含む本発明による様々な水性抗菌銀ナノ粒子組成物の紫外可視分光分析によって得られた代表的なスペクトル写真を示す図である。
【図10】表示された濃度(g/L)のTween20(CAS No.9005−64−5;C58H114O26;あるいはモノラウリン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタンとして知られている)を含む、様々なナトリウム塩から調製された本発明による様々な水性抗菌銀ナノ粒子組成物の紫外可視分光分析によって得られた代表的なスペクトル写真を示す図である。
【図11】0.1Mの一定濃度の硝酸銀と、表示された濃度のサッカリン酸ナトリウムとを含む溶液から調製された本発明による様々な水性抗菌銀ナノ粒子組成物の紫外可視分光分析によって得られた代表的なスペクトル写真を示す図である。
【図12】表示された濃度の硝酸銀を含む溶液から調製された本発明による様々な水性抗菌銀ナノ粒子組成物の紫外可視分光分析によって得られた代表的なスペクトル写真を示す図である。
【図13】表示された体積で添加されたTEMED(CAS No.110−18−9;C6H16O2;あるいはN,N,N’,N’テトラメチルエチレンジアミン)を含む溶液から調製された本発明による様々な水性抗菌銀ナノ粒子組成物の紫外可視分光分析によって得られた代表的なスペクトル写真を示す図である。
【図14】表示された体積で硝酸銀を添加することを含む、溶液の逆添加によって調製された本発明による様々な水性抗菌銀ナノ粒子組成物の紫外可視分光分析によって得られた代表的なスペクトル写真を示す図である。
【図15】溶媒がクロロホルムを含み、図に示されるように、非水性抗菌銀ナノ粒子組成物が、新たに調製された(4時間)、または3カ月間にわたって25℃で保存された後に分析された、本発明による非水性抗菌銀ナノ粒子組成物の紫外可視分光分析によって得られた代表的なスペクトル写真を示す図である。
【図16】本発明による抗菌銀ナノ粒子組成物を含むナイロン表面からの非放射活性(「通常」)および放射活性銀の放出量を測定する代表的な実験を示す図である。
【図17】本発明による抗菌銀ナノ粒子組成物を含むナイロン管試料における相対的生物膜形成の試験について得られた代表的な結果を示す図である。
【図18】様々な水性抗菌銀ナノ粒子組成物が、表示されたそれぞれの界面活性剤を含む溶液から調製された、本発明による水性抗菌銀ナノ粒子組成物の紫外可視分光分析によって得られた代表的なスペクトル写真を示す図である。
【0011】
水性または非水性溶媒を用いて本発明の組成物を製造することも可能である。本発明の非水性組成物は、良好な保存寿命を有し、水分に敏感な物体に抗菌性を与えるのに使用することができる。非水性組成物は、沸点が室温から熱伝導流体用の300℃を上回る温度範囲の溶媒に基づくものであってもよい。特に高濃度では非水性媒体で銀ナノ粒子を製造するのが困難であることが広く知られている。非水性銀ナノ粒子組成物は、ナノ粒子を水性組成物から非水相に抽出することによって製造することができる。本明細書に用いられているように、非水性とは、当業者が一般に理解するように、広い組成物範囲にわたって水と一般に混和しない有機媒体を意味する。非水性組成物における銀の含有量は、水性組成物の調製に際して所望量の銀を選択した後に、水性組成物の抽出を行うことによって調整できる。
【0012】
デバイスへの抗菌性適応の効果は、デバイスに付随する銀の量および形態に依存すると考えられる。例えば、複数の処理を連続的に行うこと、または所望の装填量が達成されるまで処理済みの物体を単一の組成物に継続的に浸漬することによって、デバイスの表面に対する様々な量の銀の装填を達成することができる。一般に、組成物は非粘性であるため、容易に予め形成された多くの物体に均一に塗布することができ、それらに抗菌性を与えることができる。しばしば、熱蒸着またはプラズマ蒸着法などの技術は、固有の濃度勾配により、アスペクト(長さ対直径)比が大きい薄肉管内の均一な蒸着を達成することに適さない。ナノ粒子組成物は、粘度が低く表面張力が小さく、浸透して銀を堆積させることができるため、本発明の組成物は、そのような困難に直面しない。
【0013】
本明細書における方法および組成物を用いて抗菌性にできる医療デバイスとしては、カテーテル(静脈、尿、フォーリーもしくは疼痛管理、またはそれらの変形)、ステント、腹部プラグ、栄養管、木綿ガーゼ、繊維創傷包帯(アルギン酸塩、CMCまたはその混合物、架橋または非架橋セルロースで作製されたシートおよびロープ)、発泡材、コラーゲンまたはタンパク質マトリックス、止血材、粘着フィルム、コンタクトレンズ、レンズケース、絆創膏、縫合糸、ヘルニア網、網状創傷被覆物、瘻造または他の創傷製品、ヒドロゲル、クリーム、ローション、ゲル(水性または油性)、エマルジョン、リポソーム、微小球、軟膏、粘着剤、チタニアおよび米国第4,906,466号に記載されている物質などの多孔質無機サポート、キトサンまたはキチン粉末、金属系整形移植体、金属ネジおよび板、合成織物、ナイロン織物、あるいは他の織物製造材料(絹、レーヨン、ウール、ポリエステル、アクリル、アセテート)との混合物が挙げられるが、それらに限定されず、銀ナノ粒子が含浸された繊維も本発明の対象となる。シリコーン、ポリウレタン、ポリアミド、アクリレート、セラミックおよび他の熱可塑性材料で製造された、歯科および獣医製品、ならびに非医療デバイスを含む他のデバイスを本発明のナノ粒子組成物で処理することができる。
【0014】
液体組成物から調製され得る、異なるポリマー表面または金属表面に対する様々なコーティング組成物も本発明の対象となる。当該コーティング組成物を溶媒損失によって硬化させるか、または熱もしくは放射線曝露によって硬化させることが可能である。本発明の他の態様は、本明細書に教示されている組成物と、米国第5,049,139号および米国第6,248,342号に開示され、全体が参照により組み込まれているものと同様のガラスおよびゼオライトなどの他の活性剤および抗菌剤とを含む組成物を含む。
【0015】
本発明の組成物でデバイスを処理するための異なる方法が教示される。方法は、組成物を製造し、組成物とデバイス表面を十分な時間にわたって接触させ、過剰の組成物を有するデバイスを洗浄し、デバイスを乾燥することを含む。本発明の範囲を逸脱することなく、開示された方法に対するいくつかの変更が可能である。
【0016】
デバイスを非水性銀組成物で処理することもできる。しばしば、アルギン酸塩、または繊維もしくは発泡繊維としてのCMCを含むデバイスは、水と接触すると使用不可能になるため、水性組成物を使用する処理に適さない。その代わり、浸漬法、または組成物を基体に吹き付けることによって、当該デバイスを非水性銀組成物で好都合に処理することが可能である。通常の条件下での蒸発、または減圧によって溶媒を除去すると、デバイスの表面は、銀ナノ粒子の蒸着物を担持し抗菌性を有するようになる。非水性溶媒が、ポリマーに対して非溶媒であるか、またはデバイス内に拡散して、意図する用途に適さなくするゲル化、膨張または損傷を引き起こさない限りは、非水性組成物を使用して、他のポリマーで製造された医療デバイスを処理することもできる。
【0017】
抗菌銀組成物に配合することによって、クリーム、ローション、軟膏、ゲル、シャンプー、コンディショナ、加湿剤、制汗剤の形態の医療または化粧用アモルファス製剤を容易に調製することが可能である。クリーム、ローション、ゲル、シャンプー、コンディショナ、エマルジョンおよび制汗剤などの調製物は、当業者に知られている。
【0018】
銀ナノ粒子を、医療デバイスの表面などの表面にインシチュ(in situ)で形成することができる。例えば、方法は、デバイスを浸漬させるための銀化合物の微懸濁粒子を含む懸濁液を提供し、特定時間にわたって、または銀ナノ粒子がしっかりとデバイスの表面に付着できるように、主に単分散による銀ナノ粒子へ銀化合物の全体が還元されるまで、組成物を還元剤で処理することを含む。本明細書における方法によって抗菌性が与えられたデバイスの態様は、蒸気滅菌、ETO、電子ビームおよびガンマ線照射などの一般的な方法による滅菌の最中に、抗菌活性に悪影響が及ぼされないことである。
【0019】
抗菌環境が望まれる場合、または微生物繁殖の低減、または臭いの低減が有用である場合に、本発明のナノ粒子組成物を他の組成物に使用することが可能である。例えば、銀ナノ粒子組成物を塗料、化粧品、傷からの滲出物の臭いを抑制するための創傷包帯、歯科組成物、腸もしくは血管手術用製品、口腔衛生製品、浴室製品、繊維製品、被覆剤、天然もしくは合成ポリマー粘着剤、塗料製品、ポリマーフィルム、紙、皮、ゴムおよびプラスチック品に添加することができる。糸または布のボルトなどの未完成および完成品にも抗菌性を与えることができる。
【0020】
本発明の組成物を含む銀ナノ粒子の考えられる他の用途は、オレフィンの酸化触媒、過酸化水素の触媒還元、研磨スラリー、表面からの静電気の消散、液体の伝熱性の向上、導電性の向上、高周波または同様の放射線遮蔽物の調製、および表面励起ラマン分光のための分析化学にある。
【0021】
本発明の組成物は、比較的単純な方法で製造され、水または溶媒をベースとしており、長い保存寿命(ほぼ1年間)を有し、大量に製造できるため、製造は拡張可能である。組成物の成分は、比較的危険がなく、処理表面から洗い落として、抗菌銀ナノ粒子を残すことが可能である。組成物は光学的に透明で非粘性であり、室温で長時間保存することができ、特殊な保存条件を必要とせず、露光された場合の抗退色性を有し、熱的に安定であり、酸および塩基に対してかなり安定であり、熱サイクルおよび従来の遠心分離に耐える。
【0022】
水性または非水性製剤の形の本発明の組成物は、本明細書において銀装填量と呼ばれる様々な量の銀を含むことができる。組成物の形成時に使用する銀化合物の量を決定することによって、組成物における異なる銀含有量を達成することが可能である。組成物の銀含有量を様々な方法によって調整することが可能である。銀化合物の所望の量を最初に選択するか、または既知の量の銀ナノ粒子を有する組成物を希釈することが可能である。添加する希釈液は、水を含んでもいてもよく、表面活性剤または他の混和性溶媒などの他の成分を含んでいても、いなくてもよい。当業者に既知の手段により溶媒を除去することによって組成物を濃縮することによって銀含有量を高めることができる。実際、組成物から溶媒の大半を除去し、銀ナノ粒子を凝集させることなく再希釈して、組成物を本来の体積に戻すことが可能である。
【0023】
本発明の組成物は、銀ナノ粒子、および他の銀化合物を含んでいてもよい。本発明の銀ナノ粒子を製造する元となる銀化合物は、無機または有機陰イオンを含む任意の種類の陰イオンを含んでいてもよい。当該陰イオンは、有機陰イオンであってもよく、イミド酸有機陰イオン、サッカライドおよびサッカリン酸塩などの、「Antimicrobial Devices and Compositions」という名称の、本願と同時に出願された同時係属出願に教示されているもの(ただし、それらに限定されない)を含む。
【0024】
本発明のナノ粒子は、水、または既知の、水と混和性有機溶媒との混合物であってもよい溶媒と、一般的には35%v/v未満のアルコールと、ポリマーであってもよい安定化剤、および/または界面活性剤と、銀化合物と、還元剤とを組み合わせることによって製造される。陰イオン性、非イオン性または両性界面活性剤などの、粒子の凝集を防止することが可能な界面活性剤を使用することができるが、ポリソルベート属の界面活性剤が好ましい。既知の水和性有機溶媒としては、低級直鎖(C1〜C6)または分枝のアルコール、アセトン、テトラヒドロフラン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、アセトアミドおよび他の同様の溶媒が挙げられる。溶液中でナノ粒子形成を誘発すると考えられる還元剤は、トリエタノールアミンおよびN,N,N’,N’テトラメチルエチレンジアミン(TEMED)(ただし、それらに限定されない)を含む、置換または無置換の窒素原子を有する1つまたは複数の電子供与基を含むモノマーまたはポリマー有機化学化合物を含む。
【0025】
水性銀ナノ粒子化合物をポリマーで安定化させることができる。ポリマーは、ホモポリマーまたはコポリマーであってもよく、合成物または天然物であってもよく、通常は水溶性である。安定化作用は、粒子凝集および成長を抑制するように、ポリマー鎖の存在により、立体阻害によって達成される。ポリマー安定化組成物では、一般に、界面活性剤を使用してもよいし、使用しなくてもよい。何らかの極性および水溶性を有するポリマーは、一般には、本発明の組成物での使用に好適である。ポリマーの非限定的な例は、アミドまたは置換アミド、一級、二級または三級窒素、および主鎖または側鎖におけるウレタン部である。
【0026】
一般に、本発明の組成物を製造する方法の一例は、界面活性剤または安定化ポリマーの一方を、溶液中で銀陽イオンと陰イオンに解離する塩などの化合物である銀化合物、テトラメチルエチレンジアミン(TEMED)および水と混合することを含む。この混合物を加熱して、黄色で、および紫外可視スペクトルにおいて特徴的な吸収ピークの測定値を示す銀ナノ粒子形成を開始させる。銀ナノ粒子は、零下から室温、そして非常に高温までの任意の温度で形成できる。温度と時間のバランスを用いて、銀ナノ粒子形成プロセスを制御できることが認識されるであろう。一般には、混合物の加熱により、ナノ粒子形成速度を加速することが可能である。
【0027】
処理された表面は、蒸着する銀ナノ粒子が多くなるにつれて濃くなるコハク色を呈する。本発明の態様は、銀ナノ粒子で処理された表面に過酸化水素溶液を塗布し、溶液を洗い落とし、表面を乾燥することによって、処理された表面の表面外観を白色化するための方法を含む。
【0028】
抗菌銀組成物は、抗菌特性を医療デバイスに付与する上での実用性を有するばかりでなく、パンティストッキング、ソックスおよび下着等のメリヤス製品、水着製品、ハンターおよび山歩き用の装身具、スキーウェア製品、様々なスポーツのための運動着製品(ただし、それらに限定されない)を含む品目における臭いを発する細菌を抑えることも可能であり、殺菌用途では、浴室または台所製品、加湿器用フィルター、シャワーカーテン、まな板、流し台用スポンジ、浴槽用スポンジおよび軽石等の家庭用品または消耗品に使用することが可能である。非飲料水に添加できる発泡または多孔性マトリックスを処理して水を消毒するために本発明の組成物を使用してもよい。建設業界では、家のカビおよび白カビを抑制するために、建設中の木造構造物に本発明の抗菌銀組成物を吹き付けることができる。
【0029】
本発明は、抗菌放射活性銀(例えば110mAg+)組成物、それらの調製方法、およびトレ−サとして使用できる物品におけるそれらの使用も対象とする。本発明の抗菌銀組成物は、材料化学および冶金分野に好適な乾燥銀ナノ銀粉末を製造するための出発材料にもなりうる。
【0030】
(発明の詳細な説明)
本発明は、銀ナノ粒子を含む組成物、および当該組成物を製造・使用するための方法を含む。銀ナノ粒子を含む組成物は、水溶液および非水溶液を含むことができる。組成物のナノ粒子は、通常粒径が均一であり、通常球状であり、予め作製されるかインシチュで製造することができる。組成物を使用するための方法は、抗菌特性を表面、組成物および材料に与えること、組成物および材料の臭いを抑制すること、および製造および他の用途での使用(ただし、それに限定されない)を含む。本発明の態様は、長時間にわたって抗菌性を有する医療デバイスを提供すること、および医療デバイスに塗布または処理を施して、抗菌性を与えるための方法を提供するとともに、表面に一定範囲の量の銀を与えるものである。
【0031】
本発明の組成物は、比較的危険のない化学物質から製造される。それらの操作および安全リスクは十分に確認されている。TEMEDの使用は、電気泳動におけるポリアクリルアミドゲルの調製に十分に受け入れられている。十分に注意すれば、訓練された専門家による操作および使用は安全であると見なされる。本発明の銀ナノ粒子を含む組成物は、水をベースとし、ウェット法で調製される。熱的蒸発、および乾燥銀ナノ粉末を製造する他の真空ベースの方法とは異なり、ウェット法は、銀ナノ粒子を製造するが、ナノ粒子は溶液に維持される。使用済みの組成物(医療および非医療デバイスの抗菌処理に使用された後の組成物)においても、銀ナノ粒子は、乾燥粉末のような危険な粉塵ではない。乾燥粉末は潜在的な健康リスクであり、現在でもそれらの曝露リスクはあまり十分に理解されていない。
【0032】
本発明の組成物は、通常球状で、比較的狭い粒径分布を有する、平均粒径が50nm以下の銀ナノ粒子を含む。大部分の粒子は球状であるが、他の種類の形状も形成し、本発明の組成物に存在しうる。
【0033】
ナノ粒子形成すると、銀ナノ粒子は、存在するナノ粒子の濃度に応じて、特徴的な黄色ないしは黄コハク色を与える。紫外可視分光分析で調べると、組成物は、420〜425nm付近に最大波長を有する特徴的なスペクトル(図1)を生成する。ナノ粒子の物理現象によれば、色は、5から10nmの粒径を有する球状銀ナノ粒子に伴うプラスモン共鳴帯による。銀の出発濃度を増加させた後でも、420〜425nmのピーク値は変化しない。このことは、組成物において得られた平均粒径が、銀ナノ粒子の出発濃度と比較的無関係であることを示唆している。ナノ粒子粒径が大きくなると、吸収ピークは、より大きい波長にレッドシフトする傾向がある。使用される安定化剤の種類も最大波長、ならびに平均粒径および分布に影響しうる。ポリアクリルアミドによって安定化された組成物の場合、445nmにおける最大波長は、平均ナノ粒子粒径が、ポリソルベート20によって安定化された組成物より幾分大きいことを示唆している。本発明の組成物は、紫外可視分光分析による単一ピークのみを示す。
【0034】
以下の式を用いて、単一質量に対して、本発明の銀ナノ粒子の利用可能表面積を計算することが可能である。
【0035】
表面積=6/[密度×粒径]
直径15nmの粒子に対する単一グラム当たりの利用可能な表面積は、3.81e5cm2/gmである。本発明の他のナノ粒子に対する表面積を容易に求めることが可能である。
【0036】
非水性組成物は本発明の対象となる。非水性とは、組成物の溶媒成分が、有機溶媒、すなわち塩素化アルカン、カルボン酸のエステル(酢酸エチル、酢酸ブチル)、エチレングリコールのエステル、プロピレングリコール、トルエン、キシレン、低級アルケンなどの水と混和しない溶媒のように非水性であることを意味しており、このリストは網羅的ではなく、一般的には少量の水が存在しうるが、本質的には非極性である。溶媒が水と混和しない場合であっても、水に対して限定された溶解度を有し、同様に、水も有機溶媒に対して限定された溶解度を有することになる。一般に、有機溶媒における溶解水は、5%v/v未満である。非水性溶媒は、純粋であってもよいし、二成分または多成分混合物であってもよい。例えば、溶媒は純粋なクロロホルムであってもよいし、クロロホルムと酢酸エチルの混合物(二成分混合物)であってもよいし、あるいはクロロホルムと酢酸エチルとトルエンの混合物(三成分または多成分混合物)であってもよい。さらに、溶媒は極性(非プロトン性もしくはプロトン性)または非極性であってもよい。それらは、水性銀組成物を使用できない用途に有用である。非水性組成物は、室温から、熱伝導流体用の300℃を超える温度までの範囲の沸点を有する溶媒をベースとすることができる。
【0037】
非水性組成物の例は、溶媒としてクロロホルムを含む。図2は、最大ピークが約430〜435nmにある当該組成物の紫外可視スペクトルを示す図であり、水性組成物と比較した場合のスペクトルにおけるわずかなレッドシフトが生じる。他のすべての点において、スペクトルは、水性組成物のスペクトルと同一である。吸収ピークの小さいレッドシフト(<5nm)は、出版された文献に既に報告されている(Wangら、Langmuir、Vol.14、602頁(1998年))。しかし、それは、銀ナノ粒子の平均粒径の増加によるのではなく、プラスモン共鳴帯を右側にシフトさせることができる溶媒の極性の変化の結果による可能性が高い。さらに、粒径の自発的変化も、単に、水相から非水相へ銀ナノ粒子を導入する抽出処理の結果として起こりえない。
【0038】
銀ナノ粒子のTEM顕微鏡写真を図3に示す。本発明の組成物における大多数の銀ナノ粒子は、通常球形に近いが、場合によっては平坦な面も存在しうる。示されている銀ナノ粒子は、ポリソルベート20、サッカリン酸銀およびTEMEDを利用して水性媒体で調製された。TEM画像における少なくとも100の粒子の直径を測定することによって、銀ナノ粒子の粒径分布の推定値を得た。水性媒体における銀ナノ粒子の対応する粒径分布が図4に示されており、約15nmの平均粒径を示している。図5は、非水性組成物からの銀ナノ粒子のTEM画像を示す図である。ナノ粒子を水性媒体で最初に調製し、次いで非水性溶媒、すなわちクロロホルムへ抽出した。銀ナノ粒子を含む数滴のクロロホルムを標準的な銅格子で乾燥させた。本発明の組成物における大多数の銀ナノ粒子は、通常球形に近い。図6は、平均粒径が約11〜12nmで、すべての粒子が25nm未満である非水性媒体における銀ナノ粒子の粒径分布を示す図である。非水性組成物における銀ナノ粒子の平均粒径は、水性媒体における平均粒径に極めて近い。この事実は、非水性媒体における銀ナノ粒子を、水溶液から抽出したことに留意すると驚くべきものではない。
【0039】
商業的に実用的であるために、本発明の抗菌組成物は、妥当な保存寿命を示さなければならない。図7は、新たに製造された水性組成物の紫外可視スペクトルと、組成物を室温(25℃)で約1年間熟成させた後の紫外可視スペクトルとを比較した図である。それら2つのスペクトルにはほとんど差がなく、粒径または粒径分布に変化がないことを示唆している。それらのデータは、本発明の水性組成物が優れた保存寿命を有することを明確に証明している。
【0040】
長期の保存寿命は、本発明の水性組成物のみに限定されず、非水性組成物にも広げられる。非水性組成物を紫外可視分光分析により3カ月以上にわたってクロロホルムで試験したところ、スペクトル形状またはピーク波長に変化が見られなかった。
【0041】
医療および非医療品に抗菌性を与える際の使用に加えて、水性および非水性銀ナノ粒子組成物の両方を使用して、流体ベースの組成物に抗菌特性を付与することが可能である。流体組成物の非限定的な例としては、接着剤、家庭用スプレー、米国第4,915,955号に開示され、その全体が参照により本明細書に組み込まれているような消毒溶液または組成物、屋内および屋外木製品用コーティング組成物、ならびに身体用潤滑油が挙げられる。
【0042】
本発明の組成物は、広範な量の銀を含むことができる。単に製造中に所望の量の銀化合物を使用することによって、組成物における異なる量の銀を達成することが可能である。例えば、未処理の物品が、より多数の銀ナノ粒子を含む組成物で処理されるときはより多量の銀ナノ粒子蒸着物を期待することが論理的であり、その逆も成り立つ。あるいは、より少量の銀を有する銀組成物を使用する二次処理によって、銀処理面への銀装填量の漸進的増加を達成することが可能である。特定量の銀を有する組成物を使用して、吹き付けまたは浸漬を複数回行って、物品に対する銀装填量の増加を実現することが可能である。それぞれの連続的な浸漬または吹き付けは、所望のレベルが達成されるまで銀装填量を漸増させることになる。本発明の抗菌銀組成物は、通常非粘性、または低粘性であり、表面、特にミクロンサイズの特徴を有する表面の均一なコーティングまたは接触を可能にし、それらに抗菌性を与える。
【0043】
本発明の銀ナノ粒子は、無機および有機の両方の様々な陰イオンで形成された弱水溶性銀化合物から形成される。しかし、本発明を実行する上で、高水溶性化合物でさえも使用できる。イミド酸有機陰イオンを有する銀化合物が有用であり、サッカリン酸銀を用いた多くの例が示されているが、本発明は、本明細書に開示されている方法でナノ粒子を形成する任意の銀化合物を含む。イミド酸有機陰イオンを有する銀化合物は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている、2005年8月1日に出願された「Antimicrobial Devices and Compositions」という名称の他の同時係属特許、PCT/US2005、_____の主題であり、そこに教示されているすべての化合物が本発明に含まれる。サッカリンの誘導体を有する銀化合物を好適に採用することが可能である。可溶性銀塩と、活性メチレン基を有する化合物、例えばアセチルアセトネートおよび誘導体との反応によって製造された他の銀化合物を使用することもできる。
【0044】
本発明の一実施形態において、抗菌化合物は、以下の式で表される銀化合物を含む。
【0045】
M+X(n)(式中、Mは銀であり、nは1以上の整数であり、Xは、A、BまたはCから選択され、R1およびR2は、−Pまたは−WPであり、
Wは、1から27の炭素原子を含む分枝のアルキル鎖、1〜27の炭素原子を含む直鎖アルキル鎖、2〜20の炭素原子を含むモノエーテル、および2〜20の炭素原子を含むポリエーテルのリンカーであり、
Pは、水素、ハロゲン原子、ハロアルキル、アミド、スルフェート、ホスフェート、四級アンモニウム、ヒドロキシル、ヒドロキシメチル、ホスホネート、アミノ、カルボキシル、カルボキシメチル、カルボニル、アセチル、スクシンイミジルエステル、イソチオシアネート、イソシアネート、ヨードアセトアミド、マレイミド、ハロゲン化スルホニル、ホスホラミダイト、アルキルイミデート、アリールイミデート、ハロゲン化アシド、置換ヒドラジン、置換ヒドロキシルアミン、カルボジイミド、シアノ、ニトロ、フルオロメチル、ニトロフェニル、スルホンアミド、アルケニルまたはアルキニルであり、
R3およびR4は、水素、アリールまたは置換アリール基で場合によって終端する1〜8の炭素原子を含む直鎖アルキル、1〜8の炭素原子を含む分枝のアルキル、フェニル、置換フェニル、ベンジル、置換ベンジルおよびフルオロメチルであり、
Aは、
【化1】
【0046】
の1つであり、
および
Bは、
【化2】
【0047】
の1つであり、
ここで、R1およびR2は、上述の−Pおよび−WPであり、
Wは、上述のリンカーであり、R3およびR4は、上述の通りであり、
Cは、ベヘネートまたはビス(2−エチルヘキシル)スルホスクシネートである)。
【0048】
本発明の他の実施形態は、以下の式の銀の錯体を含む。
【0049】
M+[Y−]n
(式中、Mは銀であり、nは1以上の整数であり、Yは、
【化3】
【0050】
であり、
ここで、R1およびR2は、上述の−Pおよび−WPからなる群から選択され、Wは、上述のリンカーであり、R3およびR4は、上述の通りであり、Zは、C6またはC8アルキルである)。
【0051】
本発明の他の実施形態は、以下の式の錯体を含む。
【0052】
M+[Y’−]n
(式中、Mは銀であり、Nは1以上の整数であり、Y’−は、
【化4】
【0053】
であり、
ここで、R1およびR2は、上述の−Pおよび−WPからなる群から選択され、Wは、上述のリンカーであり、R3およびR4は、上述の通りであり、Zは、アミノ、アルキルアミノ、クロロまたはHNXであり、HNXにおけるXは、アリール、ヒドロキシル、アミノ、NHC6H5またはNHCONH2である)。
【0054】
本発明の銀化合物を形成する他のリガンドは、表1に示される以下の化合物を含む。
【表1】
【0055】
ナノ粒子は、単一の銀化合物、または銀化合物の混合物から製造されうる。例えば、混合物は、高および低水溶性を有する銀化合物を含んでいてもよい。さらに、二成分混合物は、0から100%の範囲の弱水溶性銀化合物を含んでいてもよい。例えば、銀ナノ粒子を調製する際に、硝酸銀と反応するために必要とされる量に対して80%のサッカリン酸ナトリウムを添加し、次いでTEMED等を添加することができる。したがって、混合物には、硝酸銀(可溶塩)とサッカリン酸銀(弱可溶塩)が一緒に存在する。同様に、硝酸銀およびプロピオン酸銀の粉末形態を任意の所望の割合(硝酸銀が0から100%)で測り分けることが可能である。
【0056】
本発明の組成物は、溶媒を含み、溶媒は、水、または水と既知の混和性有機溶媒、安定化剤のポリマーおよび/または界面活性剤、銀化合物および還元剤との混合物であってもよい。溶媒は、水または混合物である。溶媒が、水分含有量が55%v/vから95%v/vの範囲であってもよい混合物である場合は、混合物は、低級直鎖(C1〜C6)または分枝のアルコール、アセトン、テトラヒドロフラン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、アセトアミドおよび他の同様の溶媒を含む任意の水和性有機溶媒であってもよい。使用される安定化剤が界面活性剤である場合は、ポリソルベートまたはTween(ただし、それらに限定されない)を含む界面活性剤が有用である。任意の好適な界面活性剤を使用することができる。溶液において銀ナノ粒子の形成を誘発すると考えられる薬剤である還元剤としては、三級、二級および一級アミン、三級、二級および一級ジアミン、ならびに一級アミン、二級アミンおよび三級アミン成分を有するホモポリマーまたはコポリマーが挙げられるが、それらに限定されない。アミン化合物は、脂肪族または芳香族であってもよい。同様に、脂肪族および芳香族の一級および置換アミド、およびポリマーアミド類似体を使用することも可能である。DEETとして知られるジエチルトルアミドなどの芳香族アミドを使用することも可能である。他の還元剤は、トリエタノールアミンおよびN,N,N’,N’テトラメチルエチレンジアミン(TEMED)である。ペンダント鎖または主鎖にTEMED成分または他のアミンを有するポリマー化合物を還元剤として使用することもできる。
【0057】
安定化剤は、ポリマーであってもよく、ポリマーに加えて、界面活性剤を使用してもしなくてもよい。ポリマーは、ホモポリマーまたはコポリマーであってもよく、合成、または天然由来のものでありうる。組成物における安定化剤としての使用に好適なポリマーまたはコポリマーの非限定的な例としては、アクリルアミドおよびその誘導体ならびにメタクリルアミドおよびその誘導体から形成されたポリマー、ポリアミド、ポリウレタン、特定の主鎖を有さないが、側鎖にウレタン部または三級アミン基を有するポリマー、本質的には主として極性である他のポリマー、または極性コモノマーから誘導される部分を有するコポリマーが挙げられる。例としては、アクリルアミド、メタクリルアミド、置換アクリルアミド(すなわち、−CONH2がCON(R1)2で置換されている)、置換メタクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸、メタクリル酸ヒドロキシエチル、アクリロニトリル、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸およびその(ナトリウム、カリウム、アンモニウム)塩、2−ビニルピロリドン、2−ビニルオキサゾリン、酢酸ビニルおよび無水マレイン酸等が挙げられるが、それらに限定されない。特定の考えに縛られることは望ましくないが、安定性は、粒子凝集および成長が抑制されるようなポリマー鎖の存在による立体障害によって達成されると思われる。
【0058】
本発明のナノ粒子組成物は、低pHならびに高pHでかなり安定している。抗菌銀組成物に添加できる酸は、ポリアクリル酸、酢酸、クエン酸および同様の酸などのポリマー類似体を含む有機酸であるが、10%を上回る量の硝酸を添加すると、銀ナノ粒子を溶解させ組成物を破壊することになる。10%未満の濃度の硝酸も経時的に組成物を破壊することになる。10%v/vのアンモニア溶液を添加しても、銀ナノ粒子組成物に影響はない(すなわち、色の変化は見られない)。
【0059】
ナノ粒子の製造に際して銀化合物の出発量を最初に選択するか、またはナノ粒子の製造後に組成物を希釈することによって、組成物のナノ粒子としての銀の含有量を調整することが可能である。低濃度の銀塩を使用して得られた銀ナノ粒子組成物の光学密度は、2.0にも達することができない。しかし、高濃度の銀塩溶液を用いて製造された組成物の光学密度は、極めて高く、2未満の吸光度測定に対しては非常に高い希釈率(100倍を上回る)が必要となることもある。ちょうど硝酸が溶解により銀ナノ粒子組成物を破壊しうるように、特定の水混和性溶媒を添加すると、ナノ粒子が凝集し、沈殿してしまう。当業者に既知の手段により溶媒を除去することによって、組成物を濃縮して銀含有量を高めることが可能である。実際、組成物から溶媒の大半を除去し、再希釈することで、著しい銀ナノ粒子の凝集を引き起こすことなく、組成物を最初の状態に復元することが可能である。
【0060】
本発明の組成物は、銀ナノ粒子を含むとともに、弱可溶性銀化合物を含むこともできる。ナノ粒子の調製の過程で、反応期間中に銀ナノ粒子に変換できない銀塩をインシチュで形成することができる。銀が塩の未反応痕跡として存在していても存在していなくてもよい銀組成物もやはり本発明に包括される。
【0061】
本発明の抗菌銀組成物の他の実施形態は、非水性抗菌銀組成物である。非水性媒体で安定な銀ナノ粒子を製造することが困難であることは当業者が認識している(ZeiriおよびEfrima、J.Phys.Chem.、Vol.96、5908〜5917頁(1992年))。ナノ粒子を水性組成物から非水相へ抽出することによって、本発明の非水性銀ナノ粒子組成物を調製することができる。銀を含有する非水溶液が製造されているが、研究により、それらの抗菌効果は証明されていない。非水性とは、水と非混和性溶媒との大きな比率に対して、一般に水と混和しない有機媒体を意味する。本発明の組成物の調製に使用される好ましい非水性溶媒は、塩化メチレン、クロロホルムおよび他の脂肪族および芳香族塩素化溶媒、シクロヘキサン、ジエチルエーテル、酢酸エチル、およびそれらの混合物である。水性組成物の調製における銀の適切な量を選択した後に、水性組成物を抽出し、必要に応じてさらなる適切な希釈を行うことによって、非水性組成物における銀含有量を調整することが可能である。
【0062】
本発明の1つの広い実施形態は、界面活性剤と、好ましくは(溶液中で銀陽イオンと陰イオンに解離することができる)塩である銀化合物と、TEMEDと、水との混合物を含む組成物である。これらの組成物は、本発明の抗菌銀組成物に対する前駆体組成物である。次いで、前駆体組成物には、本発明の抗菌組成物に変換するための特定の処理が施される。例えば、前駆体組成物を加熱して、黄色で示される銀ナノ粒子形成を開始させることが可能である。加熱は、電気加熱素子との直接または間接的な接触によって、IRランプによって、マイクロ波エネルギーによって、音響エネルギーによって、または他の電磁放射線の使用によって達成されうる。前駆体組成物を、強い光エネルギー(紫外線ランプ、ストロボ、水銀蒸気ランプ、ハロゲンランプ、レーザ光線等)に曝露することによって抗菌銀ナノ粒子組成物に変換することもできる。ナノ粒子が異なる形状および形態をとることができる銀ナノ粒子組成物を形成するために、前駆体組成物を採用することができる。ガラスビーズ上の銀被覆反射膜の作製における無電解メッキ用途、夜間の標識の光反射性を向上させるためのプラスチック面、および他の用途にも前駆体組成物を使用できる。本質的に水性である前駆体組成物を製造し、室温未満の温度で保存した後に、性能を低下させることなく使用できる。
【0063】
抗菌銀組成物の調製方法
異なる方法を採用して、本発明の抗菌銀組成物を調製することが可能である。方法は、
(i)界面活性剤(および/またはポリマー)、サッカリン酸ナトリウム(または好適な陰イオン)および可溶性銀塩溶液の水溶液を調製する工程と、
(ii)ナトリウム塩溶液を撹拌下で界面活性剤溶液に添加する工程と、
(iii)可溶性銀塩溶液をさらに添加して、弱可溶性銀塩を沈殿させる工程と、
(iv)三級ジアミン(TEMED)を添加する工程と、
(v)得られた溶液の温度を上昇させ、特定の時間にわたって該温度上昇を維持する工程とを含む。
【0064】
他の実施形態において、工程(v)における特定時間にわたる温度上昇後に、溶液温度を室温に戻す。所望により、溶液温度を室温以外の温度まで下げてもよい。温度を室温より高くすることも低くすることも可能である。上記実施形態において、弱可溶性銀塩は、すぐに透明な沈殿を形成できないが、これは、本発明の実施を限定するものと考えられるべきではない。上記方法の変形は、ナトリウム塩溶液と可溶性銀塩溶液の添加の順番を逆にすることを含む。さらなる変形は、工程(i)において界面活性剤の代わりに水溶性ポリマー溶液を使用し、他の工程は同じとすることを含む。
【0065】
本発明の1つの組成物においてポリアクリルアミドを安定化剤として使用する1実施形態において、調製は、
(a)所望の濃度のポリマー溶液を調製する工程と、
(b)適切な量のサッカリン酸塩などの適切な陰イオンのアルカリ金属溶液と、可溶性銀塩と、還元剤とを混合しながら連続的に添加する工程と、
(c)温度を上昇させ、特定の時間にわたって温度上昇を維持する工程とを含む。
【0066】
場合によって、溶液を加熱せず室温にて、周辺光下で24時間から7日間の期間にわたって放置して、銀ナノ粒子の形成を完了させることができる。当業者に既知の方法によって温度上昇させることが可能である。あるいは、光エネルギー源を採用して、銀ナノ粒子を形成することができる。
【0067】
本発明の非水性銀組成物の調製において、方法は、
(a)所望の銀含有量の水性銀ナノ粒子組成物を調製する工程と、
(b)その体積を減少させて、水性組成物を濃縮する工程と、
(c)前記濃縮物を非水性溶媒または溶媒混合物で抽出する工程と、
(d)抽出された銀ナノ粒子を含む非水性溶媒または溶媒混合物を回収する工程とを含む。
【0068】
上記工程(b)は、特に水性組成物の銀含有量が有意に高い場合は随意である。同様に、工程(c)は、新しい非水性媒体を使用する毎に、場合によって複数回実施されうる。この本発明の方法を実施する際の温度は室温であってもよい。
【0069】
本発明の非水性銀組成物の調製において、その分子構造に少なくとも1つの二重結合を有する液体または固体であってもよい化合物を非水性溶媒に場合によって添加することが可能である。例えば、抽出補助剤のような化合物を非水性溶媒の25%以下の量で添加して、抽出効率を向上させることができる。
【0070】
非水性銀組成物を製造するための実施形態において、二重結合含有化合物は、水性銀組成物の調製において安定化剤として機能することもできる。界面活性剤の代わりにオレイン酸塩を添加してもよい。第2の場合において、(界面活性剤の存在下で)ソルビン酸銀を形成し、次いでTEMEDを使用して、その塩をナノ粒子に変換することができる。ソルビン酸陰イオンは、2つの二重結合を有し、その根拠は、この有機陰イオンが非水相に容易に移行できることである。当該化合物は、例えば、オレイン酸塩、ソルビン酸塩、フマル酸塩または桂皮酸塩であってもよい。列記した化合物は、限定的なものと決して見なされるべきではない。得られる水性銀組成物は、銀ナノ粒子を非水性媒体に極めて効率的に移行させる非水性溶媒でより容易に抽出し、非水性環境における安定性を維持することに役立つ。
【0071】
非水性銀組成物の調製方法の改造型は、銀ナノ粒子を水性銀組成物から非水性溶媒に抽出し、次いで二重結合化合物を添加して、組成物の安定性を高める。25重量%を超えない量のこの化合物の非水性溶媒を添加することができる。二重結合化合物の非限定的な例は、オレイン酸、ソルビン酸、桂皮酸およびそれらの誘導体である。非水性媒体を抽出する際にある程度の可溶性を有するポリアセチレン、ポリビニレンおよびそれらの誘導体などのポリマー化合物を使用することも可能である。
【0072】
他の化合物を組成物に添加することができる。例えば、非水性化合物のいくつかの用途において、長アルキル鎖を有するチオールを添加して、シリコンおよび同様の半導表面の金属ナノ粒子層の形成を支援することができる。
【0073】
プロセス条件の影響
様々なパラメータが、異なる陰イオンを有する銀化合物などの組成物の特性および性能、ならびに銀塩、安定化剤および還元剤の濃度効果に影響しうる。様々な基体上へのナノ粒子の蒸着に、銀ナノ粒子を製造するための有効な方法を用いることが可能である。
【0074】
異なる陰イオンを有する銀塩
本発明の抗菌銀組成物は、調製が極めて好都合である。それらは、対応するナトリウム塩からインシチュで形成された様々な銀塩から出発して好都合に調製される。しかし、本発明の範囲を逸脱することなく利用可能であれば、銀塩を乾燥形態でそのまま使用することが可能である。使用する塩は、有機または無機陰イオンを含んでいてもよい。次いで、得られた混合物を短時間マイクロ波で加熱することによって、界面活性剤、ポリソルベート20およびTEMEDの存在下で、塩を銀ナノ粒子に還元した。ポリソルベート20(約76gm/L)、硝酸銀(0.1M)およびナトリウム塩(0.125M)の原液を調製し、Tween(登録商標)20、ナトリウム塩溶液、硝酸銀溶液およびTEMEDに対して1.2/4.0/3.0/1.2の割合で使用した。1cm経路長のキュベットにおいて組成物を水(25μlに対して水3mL)で希釈することにより、銀ナノ粒子組成物の紫外可視スペクトルをBeckmann DU−20分光光度計で測定した。脱イオン水を標準として使用した。
【0075】
表1には、対応する銀塩をインシチュで調製するために使用されたナトリウム塩が列記されている。試験した15の塩のうち、透明で安定した黄褐色の銀ナノ粒子溶液を形成できなかったのは約半分だけであった(図8)。(塩化ナトリウムからの)塩化銀は、管底にそのまま沈降した赤色または肌色の沈殿物を与えた。加えて、ホウ酸、酒石酸、炭酸、クエン酸、リン酸およびラウリル硫酸の陰イオンを有する銀塩は、安定したナノ粒子溶液を生成しなかったが、それらのスペクトルは、420nm以下にピークを示し、約10nmの粒径の銀ナノ粒子の形成を示唆していた(図9)。安定性が劣る銀塩生成溶液のうち、半分は有機陰イオンで、他の半分は無機陰イオンであり、安定したナノ粒子溶液能力を形成できないことは、有機的または無機的性質に関連しないことを示唆していた。ホウ酸、酒石酸、炭酸、クエン酸、リン酸およびラウリル硫酸の各陰イオンの銀塩を使用することは最善ではないが、抗菌組成物の調製にそれらを使用することは本発明に包括される。
【表2】
【0076】
他の重要な所見は、銀ナノ粒子を容易に形成したインシチュで形成された塩は、沈殿または堆積物形成を示さなかったことである。沈殿または堆積物を生成させなかった実施形態は、
(i)界面活性剤、サッカリン酸ナトリウム(または好適な陰イオン)および銀塩溶液の水溶液を調製する工程と、
(ii)ナトリウム塩溶液および三級ジアミン(TEMED)を撹拌下で界面活性剤溶液に添加する工程と、
(iii)可溶性銀塩溶液をさらに添加する工程と、
(iv)得られた溶液の温度を短時間で上昇させ、次いで温度を室温に戻す工程と、を含む方法を含む。
【0077】
したがって、溶液中の最後の成分としての硝酸銀を、先の成分に添加する方法は、本発明の1つの好ましい実施形態である。それぞれTween(登録商標)20、ナトリウム塩溶液、硝酸銀溶液およびTEMEDに対する1.2/4.0/3.0/1.2の出発試薬の好ましい体積比率は、ナノ粒子組成物を製造するための1つの好ましい実施形態の重要な要素である。
【0078】
視覚的には、オレイン酸ナトリウムを使用して調製されたナノ粒子溶液が最良であった。管壁に堆積物または金属銀の付着がなかった。公開された文献には、銀ナノ粒子に対するオレイン酸塩の有益な影響について報告されているため(Wangら、Langmuir、Vol.14、602頁(1998))、このことはある程度予測された。オレイン酸塩で安定化されたナノ粒子溶液は、非常に安定する傾向がある。オレイン酸塩の安定化効果は、オレイン酸塩二重結合のπ電子に対する銀の相互作用によるものであるとされてきた。
【0079】
図8および9は、様々な有機および無機陰イオンの吸光度(OD=1に正規化)と波長のプロットを示す図である。無機陰イオンのλmaxは、415nmであり(図8および表2)、それらの全幅半値(FWHM)は同様の大きさを有するが、硫酸陰イオンは、より緻密なスペクトルを示す。興味深いことには、ホウ酸および炭酸陰イオンは、硫酸塩と類似したスペクトルを示すが、ナノ粒子溶液はさほど安定していない。このことは、それらの条件下で、10nm以下の小さい粒径および狭い分布を有するナノ粒子が、これらの2つの陰イオンにより形成されるが、それらの溶液におけるイオン環境は、それらの凝集を防止できないことを示している。
【0080】
それに対して、様々な有機陰イオンから調製された銀ナノ粒子溶液は、多かれ少なかれより高い安定性を示し、特徴的な黄褐色は、健全なナノ粒子の存在を示す。それらの間には、最大スペクトルに小さな差が認められるだけであるが、スペクトルの変動は大きい(図9)。例えば、EDTA陰イオンを含む溶液は、390nmにおけるピークODおよび比較的鋭いスペクトルを示す。一方、酒石酸塩系溶液は、415nmにピークを有するが、実質的に平坦なスペクトルを表す。当該スペクトルは、銀粒子分布が非常に広いことを示している。
【0081】
表2では、ピークODが認められた波長、および図に示されている溶液のスペクトルデータから導かれたFWHM値を列記した。無機陰イオンと同様に、有機陰イオンでも415〜425nm付近にλmaxが見られる。これだけ多くの異なる陰イオンについて同じλmaxが認められたという事実は、銀ナノ粒子形成の機構が、存在する陰イオンの種類にほとんど関係ないことを示唆している。しかし、凝集挙動は、形成される銀ナノ粒子の安定性が陰イオンの種類に極めて大きく依存することを暗示している。何らかの理論に縛られることなく、本発明は、陰イオンの銀ナノ粒子との相互作用は、熱力学的に好ましい場合に安定した溶液を生成するという仮説を有する。
【0082】
同表には、スペクトル毎にFWHMが列記されている。数字は、スペクトルの幅の測定値である。FWHM数値が小さいほど、スペクトルが鋭くなる。EDTA陰イオンに対する53nmのFWHM値は、調査した公開文献を含めて、これまで見られたなかで最も小さい。
【表3】
【0083】
91nmのオレイン酸塩FWHM値は、硝酸銀から調製されたオレイン酸塩含有銀ナノ粒子溶液を広範に調査した公開文献に報告されている88nmの値にかなり近い。しかし本研究を特徴づける1つの事項は、本発明者らのFWHM値は、既に試験した溶液の10から100倍の高い濃度で銀塩から製造された溶液に対するものであるということである。類似したFWHMが認められたという事実は、そのような高い銀濃度を用いても、本発明者らの溶液ではナノ粒子の凝集が実質的に生じないことを意味する。それは、ある程度、採用された界面活性剤と還元剤の組合せの独自性を指摘するものである。
【0084】
プロセスパラメータ
安定化剤の量、反応物質の割合、還元剤の濃度および試薬添加順序を変えることによるナノ粒子溶液の品質に対する影響を調べた。
【0085】
サッカリン酸ナトリウム、硝酸銀およびTween(登録商標)20またはポリソルベート20の適切な原液を脱イオン水で調製した。一般に容認された還元剤を使用した。銀ナノ粒子を調製するために2つの方法を採用した。方法Aでは、硝酸銀とサッカリン酸ナトリウムを反応させることによって、界面活性剤の存在下でサッカリン酸銀懸濁物を最初に形成した。その懸濁物に、TEMEDを添加し、得られた混濁状混合物を電子レンジで短時間加熱して、ナノ粒子形成を完了させた。方法Bは、界面活性剤Tween20とサッカリン酸ナトリウムとTEMEDを密栓バイアル瓶中で混合して、透明溶液を形成することからなる。最後に硝酸銀溶液を添加し、バイアル瓶の内容物を電子レンジで加熱して、ナノ粒子を製造した。いずれの実験においても、マイクロ波加熱時間は、中程度の設定で10秒間とした(Oven Make:Quasar Instant Matic Cooking、1500W)。
【0086】
ナノ粒子溶液は、Beckman DU−20分光光度計にて典型的には400から500nm範囲で紫外可視スペクトルを記録することによってナノ粒子溶液の特徴を調べた。スペクトル走査については、ナノ粒子溶液を水(25μlに対して水3mL)で希釈し、1cm経路長のプラスチックキュベットに移した。脱イオン水を標準として使用した。紫外可視スペクトルの記録は、銀ナノ粒子の形成を立証するための迅速で、好都合で、容易な方法である。それは、可視領域(390から500nm)における銀ナノ粒子(粒径50nm未満)による強い吸収を利用している。強い吸収は、ナノメートルの粒径の銀粒子のプラスモン共鳴帯によるものである。しかし、当該スペクトルの証拠は、銀ナノ粒子の間接的な証拠にすぎない。
【0087】
本発明者らの試験の第1の部分では、方法Aを採用して、Tween20の濃度、サッカリン酸ナトリウムに対する硝酸銀のモル比、硝酸銀の濃度、およびTEMEDの濃度のナノ粒子形成に対する影響を調べた。表3から6には、実験の詳細が示されている。界面活性剤、サッカリン酸ナトリウム、硝酸銀溶液およびTEMEDの体積は、特に指定のない限り、10:10:10:1の割合であった。
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【0088】
Tween20濃度の影響
Tween20濃度を約5.5gm/Lから16.5gm/Lまで変化させても、色はほとんど変化せず、ナノ粒子溶液も一定していることを確認した。いずれも特徴的な黄褐色を示した。溶液中に認められた白色沈殿は、未溶解のサッカリン酸銀であった。通常は黒色であるナノ粒子凝集物による堆積物が見られなかった。
【0089】
図10は、Tween20の量が異なるナノ粒子溶液の正規化された紫外可視スペクトルを示す図である。Tween20を含まない溶液のスペクトルは測定されなかった。いずれのスペクトルもほぼ同一であり、すべての3つのナノ粒子溶液が実質的に同一であることを示唆している。スペクトル最大波長は、415nm付近にある。(対称を維持する350〜400nmの曲線を外挿することによって)値約90の全幅半値(FWHM)を推定することができ、公開文献と一致する。公開された報告書で用いられた濃度の10から100倍高い濃度である銀塩濃度を採用しても、ナノ粒子の凝集が認められなかったことは注目に値する。これは、注目に値することであり、これまでの研究者は、界面活性剤を採用した後でも、0.01Mを上回る銀濃度に対して安定したナノ粒子溶液を得ることができないことを報告していたため、予想外でもあった。
【0090】
0.1Mの銀濃度の安定したナノ粒子溶液は、たとえ約0.2%w/vの低いTween20濃度を用いても達成されることは明白である。それらのデータは、その調製方法の有効性を強調している。しかし、溶液中にTwenn20が存在しなければ、ナノ粒子が凝集して、灰緑色の沈殿を形成する。これは、出発銀濃度に関係なく当てはまるものであった。Tween20を含まないどの溶液も特徴的な黄褐色を示さなかった。
【0091】
また、Tween20濃度を増加させるように、すなわち33gm/L、49.5gm/Lおよび66gm/Lと変化させ、それに合わせてTEMED濃度も増加させた。溶液色によるナノ粒子形成の確認、および反応混合物から沈殿する堆積物の観察を続けている間に、Tween20が多くなっても溶液のスペクトル特性は実質的に同様であり(データは示されず)、ここでもプロセスの有効性を確認した。これらのデータは、界面活性剤含有量を16.5gm/Lの予定の値より大きくしても、プロセスの点で利点はないことを示唆していた。しかし、本発明の範囲を逸脱することなく、より高濃度の界面活性剤Tween20または他の安定化剤を使用することが可能である。
【0092】
サッカリン酸ナトリウム濃度の影響
硝酸銀濃度を0.1Mに保持し、硝酸塩に対するサッカリン酸塩の比率を0.025Mと1.25の間に維持するようにサッカリン酸濃度を変化させて、サッカリン酸濃度を変えることによる影響を試験した(表4)。しかし、本発明の範囲を逸脱することなく、好ましい濃度の好ましくは5倍までのサッカリン酸塩または他の陰イオン塩のより高い非限定的な比率を用いることができる。ここに指定されている比率以外の比率を用いてもよい。すべての場合において、比率が1より大きくても1未満であっても、主に未溶解のサッカリン酸銀からなる堆積物を有する黄褐色の銀ナノ粒子溶液が得られた。スペクトルは実質的に同じで(図11参照)、ナノ粒子粒径および分布の平均粒径が5〜10nmであることを示していた。
【0093】
硝酸銀濃度の影響
硝酸塩に対するサッカリン酸塩のモル比を含む他のすべての条件を同じにし、硝酸銀濃度を変えても、銀ナノ粒子スペクトルに影響はなかった(図12)。ここでも、それらのデータは、ナノ粒子粒径および粒径分布が実質的に同じであることを示していた。溶液の外観も同じ、すなわち堆積物をほとんどまたはまったく含まない黄褐色の溶液であった(表5)。これらの結果は、硝酸銀濃度を用いて、製品仕様に応じて液体組成物における最終的な銀ナノ粒子の数を変えるための基礎を与えるものであった。
【0094】
TEMED濃度の影響
上記の実験において、硝酸銀溶液に対するTEMEDの体積比は、1:10であった。ここでは、その比を2:10と4:10の間で変化させ、形成されるナノ粒子溶液の何らかの変化を観察した(表6)。視覚的には、溶液は同様であったが、TEMED濃度を高くすると、バイアル瓶の壁が紫色になるのが認められた。
【0095】
スペクトルが同一であれば、銀ナノ粒子の特徴(粒径および分布)も変化しなかった(図13)。
【0096】
試薬添加順序の影響
プロセスの点で、試薬添加順序が最終結果に重要であるかどうかを知ることが大切である。例えば、製造環境では、最後の工程で最も高価な成分を添加することが好ましい。何らかの理由で、プロセスにおける前の工程が、設備故障またはオペレータの誤りによって破棄された場合に、最後の工程を停止することができる。そのような場合に、高価な試薬を破棄しないことによって資金を節約することができる。
【0097】
上記のいずれの実験においても、サッカリン酸銀を最初に形成させる方法Aを用いた。方法Bでは、最後に、かつ量を変えながら硝酸銀を添加した。得られたすべてのナノ粒子溶液は、ほとんど、またはまったく堆積物を示さず、凝集がないことを示していた。未溶解のサッカリン酸塩沈殿は見られなかった。試験管壁にも金属銀の付着はなく、形成されたナノ粒子が溶液にとどまっていることを示していた。実施された4つの試験のうち、硝酸塩およびサッカリン酸塩溶液を3:4(図14では0.75ml)の割合で使用した試験が質的に最も良好な溶液を与えた。
【0098】
図14は、逆の添加によって調製された4つの溶液のスペクトルを示す図である。それぞれの場合において、最大波長は415nmであり、400から500nmの範囲のスペクトルの形は一致していた。1つの溶液について、400nm未満から350nmまでのODを測定して、最大値付近にスペクトル対称が存在するかどうかを観察した。グラフは、スペクトルが対称的であることを示しており、この所見は、公開された報告書と一致している。
【0099】
従来技術の銀ナノ粒子含有組成物と比較して、本発明の組成物は、紫外可視分光光度計で測定されたOD値に対してほぼ4から15倍、場合によってはより高い濃度で銀ナノ粒子を含む。このより高い銀濃度は、組成物を接触する表面により高い銀装填量を付与する能力という点において、本発明の組成物に追加的な利点を与え、本発明を従来の技術と明確に区別させる。
【0100】
プロセスパラメータ試験中に、実施された試験の多くでは、反応器、およびときには処理されたデバイス上に沈殿または堆積物が存在していた。しかし、これは、本発明を制限するものと見なされるべきではない。組成物に存在する沈殿は、形成される可溶性の低い銀塩に全面的に起因する。可溶性銀塩の出発濃度を調整することによって、または適切な希釈によって、沈殿として残留しうる弱可溶性塩の量を減少または排除することができる。
【0101】
銀ナノ粒子溶液の安定性
プロセスの観点で他の重要なパラメータは、時間の関数としての銀ナノ粒子溶液の安定性である。少なくとも数週間の安定性を証明することが極めて重要である。安定性の1つの間接的な測定は、経時的に容易に監視できる紫外可視スペクトルに変化がないことである。図7には、新たに製造されたサッカリン酸塩ベースの水性銀ナノ粒子組成物および11カ月後の同一組成物の1つの紫外可視スペクトルが示されている。この期間中、試料バイアル瓶を室温(22℃〜25℃)で保存した。新たに調製した溶液と、約1年後の保存溶液との間にさえスペクトルの変化は認められなかった。このデータは、銀ナノ粒子溶液は、優れた室温安定性を有するという知見を裏づけている。同様に、スペクトルに小さな見かけの変化が存在するが、4℃で3カ月にわたるクロロホルムベースの非水性銀ナノ粒子組成物のかなり良好な安定性を確認することができる(図15)。曲線の全体形状は、大きく変化しておらず、粒径および分布が変化していないことを示している。
【0102】
成分および組成範囲
銀ナノ粒子を含む抗菌銀組成物は、硝酸銀などの可溶性銀塩と、所望の陰イオンを有するナトリウム塩を混合する場合は、水溶液中における陰イオン交換によりインシチュで形成される銀化合物から誘導されうる。例えば、バルビツール酸銀を形成するためには、硝酸銀とバルビツール酸ナトリウムの間で交換が行われることになる。銀化合物をインシチュで形成してもよいし、最終銀化合物として提供してもよい。本発明のナノ粒子組成物の調製に際して、インシチュで形成された銀化合物の代わりに、粉末または結晶として市販されている銀化合物を使用することが可能である。本発明を実施する上で、単一化合物または混合物としての銀化合物としては、これに限定されないが、アセサルファム、炭酸アルキル、アセチルアセトネート、酢酸塩、アスコルビン酸塩、バルビツール酸塩、安息香酸塩、酒石酸水素塩、ビス(2エチルヘキシル)スルホサクシネートホウ酸塩、臭化物、炭酸塩、塩化物、クエン酸塩、葉酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、ハロゲン化物、ヒダントイン塩、置換ヒダントイン塩、ヨウ素酸塩、ヨウ化物、乳酸塩、ラウリル酸塩、シュウ酸塩、酸化物、パルミチン酸塩、過ホウ酸塩、フェノスルホン酸塩、リン酸塩、プロピオン酸塩、サッカリンおよび誘導体、サリチル酸塩、ソルビン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、スルファジアジン、硫酸塩、硫化物、スルホン酸塩および酒石酸塩が挙げられる。本発明の組成物の調製方法の他の特徴は、可溶性銀塩が、インシチュでより溶解度の低い銀塩に変換されることである。本発明の調製方法におけるより溶解度の低いサッカリン銀酸塩の形成では、過剰のアルカリ金属アルカリ土類金属サッカリン酸塩が維持される。サッカリン酸塩のモル過剰範囲は1から5の間の比率であり、好ましい比率は1.05から2.0の間であり、最も好ましい比率は1.1から1.5の間である。陰イオン交換金属塩は、銀より電気陰性度が高い陽イオンを有していなければならない。利用可能な金属陽イオンの非限定的な例は、ナトリウム、カリウム、カルシウム、リチウムであり、ナトリウムおよびカリウムが最も好ましい。可溶性銀塩の非限定的な例は、硝酸銀、クエン酸銀、酢酸銀であり、硝酸銀が最も好ましい。特に医療製品を製造する上で、生体適合性または毒性上の問題を生じなければ、任意の可溶性銀塩を採用することができる。
【0103】
本発明の抗菌銀組成物の重要な特徴は、成分濃度が広範囲に及ぶ組成物を、適合性または調合上の問題に遭遇することなく製造できることである。ナノ粒子組成物の銀含有量は、0.0001%から10%、0.1%から2%、および0.1から5%の範囲のいずれかで変化しうる。5%を上回るような高い銀含有量を有するナノ粒子組成物を調製する場合は、十分な量の界面活性剤または安定剤が維持されなければ、銀がフレークとして(凝集状態で)沈殿しうる。そのような存在は、抗菌特性に影響を与えることはなく、濾過によって除去することが可能であり、濃コハク色の銀ナノ粒子組成物が生成される。
【0104】
安定化剤は、本発明のナノ粒子組成物を維持する上で有用であり、界面活性剤またはポリマーでありうる。界面活性剤は任意の種類の陰イオン、陽イオン、非イオンまたは両性の界面活性剤でありうる。非常に広範な界面活性剤が市販されている。抗菌銀組成物に使用される安定化剤の非限定的な例は、陰イオン、非イオンおよび両性界面活性剤である。異なる種類の化合物が、各種類の界面活性剤として市販されている。ポリマーの中では、ポリアクリルアミドおよび誘導体(アクリルアミド成分、窒素原子に1つまたは2つの置換基を有するアクリルアミドを有するホモおよびコポリマー)、メタクリルアミドポリマーおよび誘導体(メタクリルアミド成分、窒素原子に1つまたは2つの置換基を有するメタクリルアミドを有するホモおよびコポリマー)、ポリアミドおよび誘導体、ポリウレタンおよび誘導体、ポリアミンおよび誘導体を使用することが可能である。安定化剤として使用される好ましい界面活性剤は、ポリソルベート、またはNNが、20、40、60および80に等しい整数であるTween NNとして知られる非イオン性界面活性剤である。
【0105】
銀含有量に対する組成物における界面活性剤または安定化剤濃度は、0.1から500の間の重量比であってもよいが、全安定化濃度は、組成物の重量の40%を超えないものとする。ポリソルベート型の界面活性剤濃度の値の割合は、一般的に組成物において5%w/v未満である。しかし、ポリマー安定化剤を使用する場合は、好ましい値は、5%w/vより大きくてもよい。より多量の安定化剤は、銀装填量がより大きい銀組成物を容易に安定化する。
【0106】
銀ナノ粒子を含む組成物の調製に関する多くの公開された試験において、還元剤の必要性が認識されている。無機還元剤が採用されているが、それらは還元力が強いために、銀ナノ粒子の形成が制御的に進行しないため、粒径の大きい粒子が生成され、粒径分布がしばしば広くなる。すべての有機塩基が、還元剤として使用された場合に、小さく均一な粒径の銀ナノ粒子を生成するとは限らない。本発明の抗菌銀組成物の調製に使用される還元剤の非限定的な例は、三級、二級および一級アミン、三級、二級および一級ジアミン、一級アミン、二級アミンおよび三級アミン成分を有するホモポリマーまたはコポリマーである。アミン化合物は、脂肪族または芳香族であってもよい。DEETとして広く知られているジエチルトルアミドなどの芳香族アミドも使用することも可能である。好ましい還元剤は、三級アミンまたはジアミンである。好ましい還元剤は、トリエタノールアミンおよびN,N,N’,N’テトラメチルエチレンジアミン(TEMED)であり、TEMEDが最も好ましい。ペンダント鎖または主鎖にTEMED成分を有するポリマー化合物を還元剤として採用することも可能である。銀に対する組成物における還元剤の量は、0.1から500の間の重量比であり、好ましい比率は2から50の間であり、最も好ましい比率は4から20の間でありうる。還元剤をそのまま、または希釈して添加することが可能である。これらの範囲は、ともに本発明に包括される。
【0107】
抗菌銀組成物のための溶媒基剤(solvent base)の非限定的な例は、水、または水が少なくとも主な成分である水系溶液である。低級アルコール(C6以下)、低級ジオール(C6以下)、THF、DMSOおよびDMF等の他の混和性溶媒を単体または水との多成分混合物として使用することも可能である。非水性溶媒またはそれらの混合物の非限定的な例は、クロロホルム、塩化メチレン、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、酢酸エチル、ジエチルエーテル、低級アルコール(C4以下)、低級ジオール(C4以下)、THF、DMSOおよびDMFである。1990年の大気清浄法に従って規定されているHAPSを含まない様々な溶媒を、本発明の非水性銀組成物の調製に利用することが可能である。
【0108】
抗菌性医療および非医療デバイス
本発明の一実施形態は、デバイスの表面をナノ粒子組成物に接触させることを含む方法を用いて抗菌性が与えられた医療デバイスを含む。医療デバイスとしては、限定することなく、カテーテル(静脈、尿、フォーリーもしくは疼痛管理、またはそれらの変形)、ステント、腹部プラグ、木綿ガーゼ、繊維創傷包帯(アルギン酸塩、CMCまたはその混合物、架橋または非架橋セルロースで作製されたシートおよびロープ)、コラーゲンまたはタンパク質マトリックス、止血材、粘着フィルム、コンタクトレンズ、レンズケース、絆創膏、縫合糸、ヘルニア網、網状被覆物、瘻造または他の創傷製品、胸部移植体、ヒドロゲル、クリーム、ローション、ゲル(水性または油性)、エマルジョン、リポソーム、軟膏、粘着剤、チタニア、およびその全体が参照により本明細書に組み込まれている特許である米国第4,906,466号に記載されている物質などの多孔質無機サポート、キトサンまたはキチン粉末、金属系整形移植体、金属ネジおよび板等が挙げられる。合成織物、すなわち銀ナノ粒子が含浸されたナイロンまたは他の織物製造材料(絹、レーヨン、ウール、竹、ポリエステル、アクリル、アセテート)との混合物をベースとした織物は、本発明の対象となる。シリコーン、ポリウレタン、ポリアミド、アクリレート、セラミック等、および医療デバイス業界で使用される他の熱塑性の材料で製造され、本発明の液体組成物を使用して銀ナノ粒子が含浸された、歯科および獣医製品を含む医療デバイスおよび非医療デバイスも本発明に包括される。液体組成物から調製されうる、異なるポリマーまたは金属表面に対する様々なコーティング組成物も本発明に包括される。当該コーティング組成物を溶媒損失によって硬化させるか、または熱もしくは放射線曝露によって硬化させることが可能である。本発明の他の態様は、本発明の抗菌液体組成物と、米国第6,248,342号および米国第5,049,139号に開示され、その全体が参照により本明細書に組み込まれているのと同様のガラスおよびゼオライトなどの他の抗菌剤との配合物である。
【0109】
異なる方法により、本発明の抗菌銀組成物でデバイスを処理することによって、本発明の医療および非医療デバイスを製造することが可能である。本発明の1つの開示された方法は、前記組成物を液体の形態で製造する工程と、ナノ粒子を蓄積させるのに十分な時間にわたって前記組成物とデバイス表面を接触させ、次いで余剰の前記組成物を洗い落とす工程と、デバイスを乾燥させる工程とを含む。開示された方法の改造型は、最初に材料の表面を乾燥させ、次いで表面を洗浄して、余剰物を除去することを含むことができる。接触の方法は、デバイスを前記組成物に浸漬させるか、または組成物をデバイス上に吹き付けるか、またはポリマー溶液と前記組成物の配合物を塗布するものであってもよい。開示された方法の変形を採用して、異なる装填量の銀を管の表面に付着させることが可能である。例えば、最初に、1レベルの銀装填量を管の全長に対して塗布することが可能である。次いで、必要に応じて、管の2/3の長さに対して第2の塗布を行い、管の1/3の部分のみを処理し、3つのレベルの銀装填量を有する管とすることができる。この手法を用いて、銀装填量の任意の特定の付着パターンを達成することが可能である。平坦な材料に対して同様の手法を実施し、全領域に対して異なる銀装填量パターンを形成することが可能である。3つのレベルの銀装填量を有する本発明の一実施形態は、シャワーカーテンなどの浴室製品でありうる。当該製品では、下部に最も高いレベルが装填され、中間部に中間レベルが装填され、上部に銀の最も小さいレベルが装填されうる。当該銀をベースとしたカーテンは、カーテン上のカビおよび白カビの形成を防止することになる。
【0110】
上記開示された方法のさらに他の改造型は、表面に対する銀ナノ粒子の接着を向上させる薬剤でデバイス表面を予備処理するか、または表面を下塗り(prime)して、表面に吸着する銀塩アミン錯体を還元させることにより、銀ナノ粒子形成を促進させる工程を含む。例えば、g−アミノプロピルトリエトキシシランまたは同様の種類の接着性向上剤、好ましくは極性化合物を使用することが可能である。他の状況において、塩化スズの水溶液で処理することによって表面を下塗りし、水で洗浄し、乾燥させた後に水性銀ナノ粒子組成物で処理し、洗浄し、乾燥させて、表面に対する銀付着を完了することが可能である。塩化スズの代わりに、金、白金、パラジウム、銅化合物などの他の薬剤を使用することが可能である。
【0111】
以上に開示した本発明の方法の重要な特徴は、非常に小さいレベルの銀装填物を表面に均一に付着させることである。表面は、平坦な領域を含んでいてもよいし、球、円筒(中実または中空)に属していてもよく、ナノメートルサイズの特徴またはミクロンサイズの特徴を有することができる。本発明の対象となる表面銀装填レベルは、0.1μg/cm2から100ug/cm2であり、0.5ug/cm2から50ug/cm2が好ましい範囲であり、5ug/cm2から30ug/cm2が最も好ましい範囲である。
【0112】
親水性発泡体、シート包帯、織物、ガーゼなどの抗菌性医療デバイスを調製する方法は、包帯を抗菌水性組成物に浸漬する工程と、余剰の液体を排出するか、または吸い取る工程と、次いでエタノール、イソプロパノールまたはTHFなどの第2の非水性液体に、銀ナノ粒子を不安定化させるのに十分に効果的な時間にわたって再度浸漬することによって、銀ナノ粒子を永久的に基体に付着させる工程と、余剰の液体を吸い取る工程と、最後に基体デバイスを乾燥させる工程とを含む。該方法の改造型は、抗菌銀ナノ粒子組成物を成分の出発混合物に添加して、デバイス(例えばポリウレタン系発泡体)を調製することを含むことができる。
【0113】
方法は、予め混合された組成物(まだ温度上昇されていない組成物)の液体層または膜を所望の表面に形成し、次いで既知の方法を用いて液体膜または層の温度を迅速に上昇させて、抗菌性表面を形成するためのナノ粒子が不可逆的に接着する表面付近に銀ナノ粒子の形成を開始させることを含むことができる。温度を迅速に上昇させる手段は、音響放射、マイクロ波放射およびIR放射、または他の電磁放射を含むことができる。オーブンのような環境によって熱エネルギーを供給することも可能である。
【0114】
医療デバイス、特に(寸法保全性を失うことなく)より高い温度に耐えうる医療デバイスに抗菌性を与えるための開示されたさらに他の方法は、予備混合組成物を調製する工程と、医療デバイスを均一の温度まで加熱する工程と、予備混合組成物をデバイスに吹き付け、またはそれにデバイスを浸漬して、液体膜における銀化合物の迅速な還元を開始させる工程と、不可逆的に接着する銀ナノ粒子にデバイスを接着させる工程とを含む。デバイスを浸漬する場合は、次いでデバイスを浴槽から取り出して、液体膜を乾燥させ、デバイス表面を水または他の溶媒で洗浄する。加温されたデバイスに吹き付ける場合は、次いで液体がその表面から蒸発除去されることになる。表面を水または同様の溶媒で洗浄することが可能である。洗浄液は、純粋の水であってもよいし、界面活性剤、補助剤または錯化剤などの添加剤を含んでいてもよい。
【0115】
特定の親水性ポリマーに抗菌性を与えるための本発明の方法の改造型が必要とされることもある。例えば、シリコーンポリマー表面は、水性銀組成物に浸漬することによって容易に抗菌性になりえない。1つの開示された実施形態は、シリコーンポリマーを(水和性も有する)膨張性溶媒に浸漬して、孔に膨張性溶媒を効果的に満たす工程と、膨張したシリコーンポリマー基体を素早く移動させる工程と、それを本発明の水性銀組成物に特定時間浸漬して、穴の内部で溶媒の交換を生じさせる工程とを含む方法を含む。結果として、水性組成物からの銀ナノ粒子を孔に導入することで、シリコーンポリマー表面に抗菌性を与える。
【0116】
本発明の医療デバイスまたは非医療デバイスを非水性銀組成物で処理することも可能である。アルギン酸塩またはCMCを繊維または発泡体繊維として含むデバイスは、水を多く含む組成物に接触させた後は使用できなくなるため、水性組成物を使用する処理にしばしば適さない。その代わりに、浸漬法、または組成物を基体に吹き付けることによって当該デバイスを非水性銀組成物で好都合に処理することが可能である。通常の条件下で、または真空による蒸発によって溶媒を除去した後に、デバイスの表面に銀ナノ粒子を含浸させ、抗菌性にする。非水性溶液が該当するポリマーにとって非溶媒であり、デバイスに拡散し、膨張を引き起こさなければ、他のポリマーから製造された医療デバイスを処理するために非水性組成物を使用することも可能である。膨張が有害にならない状況においても非水性銀ナノ粒子組成物を使用することができる。例えば、PTFEフィルムを銀ナノ粒子のクロロホルム溶液に短時間浸漬することによって、それらに抗菌性を与えることが可能である。当該溶液を吹き付けて、淡黄色のPTFEを作製することも可能である。
【0117】
本発明のさらに他の際だった特徴は、医療デバイスの表面に銀ナノ粒子をインシチュで形成する方法である。例えば、1つの開示された実施形態は、銀化合物の微分散粒子を含む表面被膜を設ける工程と、特定時間にわたって、または銀化合物の全体が、粒径が均一に分散された銀ナノ粒子に還元されるまで、被覆表面を還元剤で処理する工程とを含む抗菌性表面の形成方法を含む。当該方法に使用できる銀化合物の、好ましく非限定的な例は、サッカリン酸銀である。特に室温で還元を行うための好ましい還元剤は、TEMEDである。限定するものではないが、この方法には室温が好ましいが、本発明から逸脱することなくより高い温度を採用することが可能である。特にTEMEDまたは同様に列記されたアミン化合物で還元することによって、銀ナノ粒子組成物をポリマー被膜において、またはセラミック、粘度、ゼオライト、アルミナ、シリカ、微粉砕銀化合物を有するケイ酸塩、およびサッカリン酸塩などの多孔性マトリックスにおいてインシチュで形成することが可能である。
【0118】
デバイス表面に抗菌性を与える本発明の調製方法を用いると、処理条件に応じて異なる銀装填量を与えることが可能である。しかし、商業的プロセスは、銀装填量が仕様に合致していることを求める。銀装填量が上限仕様値を上回っている場合には、その製品バッチは拒絶され、著しいコスト増をもたらしうる。そのような場合には、その製品バッチを再処理して、銀装填量を仕様内におさめることが望ましい。過剰の銀ナノ粒子が含浸されたデバイス表面を再処理するための本発明の1つの開示された方法は、
(a)0.5%から15%の硝酸の溶液を調製する工程と、
(b)表面を溶液に浸漬することによって、特定時間にわたって前記硝酸溶液でデバイス表面を処理する工程と、
(c)デバイス表面を脱イオン水で十分に洗浄し、乾燥させる工程とを含む。
【0119】
この方法は、含浸された銀を小さい部分に分けて選択的に除去することが可能であり、銀をデバイス表面から完全に落とす、または製造装置を洗浄するために利用することも可能である。この方法を用いて、処理表面から銀を落として、銀ナノ粒子を担持するパターン化された表面を形成することも可能である。
【0120】
本発明の他の実施形態は、銀が付着した抗菌性医療および非医療デバイスのコハク色または黄褐色を改変して、それらの美観を向上させるための方法を開示する。本発明の方法のさらに他の特徴は、銀の減少を生じることなく、銀ナノ粒子担持表面のコハク色の均一な退色をもたらすことができることである。過酸化物溶液は、容易に浸透し、表面の大部分を濡らすことができるため、ミクロンサイズの物体が形成されたものに特有の、非常に到達しにくい表面であっても容易に処理することが可能である。本発明の方法は、
(i)適切な濃度の過酸化水素水溶液を調製する工程と、
(ii)特定時間にわたって、銀ナノ粒子を含むコハク色の表面を処理する工程と、
(iii)処理溶液を脱イオン水で完全に洗い落とし、表面を乾燥させる工程とを含む。
【0121】
処理溶液における過酸化水素濃度は、3重量%程度から30重量%の範囲とすることができる。表面を処理用液に接触させる時間は、溶液における過酸化水素濃度によって決まることになる。例えば、コハク色の退色速度は、過酸化水素濃度が低いと遅くなり、高いと速くなる。接触持続時間も製品仕様に応じて決まる。製品が、銀含有製品として銀を含有しない製品と区別可能であることが必要な場合は、表面に薄い黄色を残すように過酸化物処理を終了させることが望まれることもある。過酸化物溶液のための溶媒としての水に加えて、少量の水和性溶媒(ただし過酸化物と反応しない溶媒)を添加することができる。
【0122】
本発明の範囲を逸脱することなく、窒素などの不活性担体を含む、または含まない蒸気として過酸化水素を供給して、処理すべき表面と接触させることができる。銀ナノ粒子を含む表面の過酸化物処理に室温より高い温度および低い温度を用いることも本発明に包括される。過酸化物処理による退色を増進するための超音波エネルギーを使用するといった他の方法を採用することも可能である。適切なマスキングにより過酸化水素蒸気または水溶液によって、銀ナノ粒子を担持する表面をパターン化することは、本発明に包括される。
【0123】
それを用いて、消毒するために非飲料水に添加するだけでよい発泡体または多孔性マトリックスを作製することができる。微量の銀を含む水は味がないため、当該製品は、現在のヨウ素系製品よりもキャンパーにとって魅力的でありうる。建設業界では、家のカビの抑制のために、建設中の木造構造物に本発明の抗菌銀組成物を吹き付けることができる。
【0124】
本発明は、抗菌放射性銀(110mAg)組成物およびその調製方法をも対象とする。これらの組成物の使用に際して、抗菌特性は付随的な特性でありうる。これらの組成物を使用して、110mAgナノ粒子を含む放射性トレーサーを調製することが可能である。これらの組成物の1つの用途は、110mAgナノ粒子が接着したラベルを調製することである。インクジェット印刷法により溶液の少量の液滴をラベル表面に吹きかけることによって当該ラベルを容易に調製することが可能である。そして、製品が、110mAgの半減期と等しい保存寿命を有する場合に当該ラベルを使用することが可能である。放射性110mAgの量は非常に少ないため、消費者または製品に害を与えるリスクは実質的にない。それらをセキュリティ用途、例えば認証におけるトレーサとして使用することもできる。
【0125】
一実施形態は、
(i)安定化剤溶液を調製する工程と、
(ii)該溶液にナトリウムまたは好適な金属サッカリン酸塩溶液、110mAg硝酸塩溶液、還元剤溶液を順次添加する工程と、
(iii)温度を上昇させて、銀ナノ粒子を形成するためのインシチュで形成された弱可溶性サッカリン酸銀の還元を開始させる工程とを含む抗菌放射性110mAgナノ粒子組成物の調製方法を含む。
【0126】
場合によって、温度上昇は、短時間であってもよいし、特定時間維持されてもよい。
【0127】
固体表面からの銀放出の機構
ナノ粒子組成物の態様は、銀を表面に対して非常に強く接着する非常に小さいナノ粒子の形で固体表面に付着させる能力である。銀ナノ粒子の付着が行われるばかりでなく、単純な操作でも表面から粒子が分離しない。それらは、超音波によって簡単に除去できないため、銀の表面に対する実質的に不可逆的な結合を示唆している。しかし、粒子は、化学的に処理されると溶解する。
【0128】
表面上の銀元素の存在は、一般には、その表面に少なくとも静菌性を与えるが、必ずしも殺菌性を与えない。殺菌性を与えたとしても、そのような作用を維持することは極めて困難である。銀装填量を増加させると、持続的な放出を向上させることができるが、最終用途における細胞毒性のリスクも高くなる。本発明の抗菌銀組成物は、表面を抗菌性にする能力を備え、哺乳類細胞に対して細胞毒性を与えることなく長時間にわたって活性を維持することが可能である。この能力は、従来技術に比べて大きな進歩である。図16は、前記抗菌銀組成物で処理されたナイロン表面から毎日(イオンとして)放出される銀の量を示す図である。組成物で処理した後に表面に生じる唯一の変化は、銀ナノ粒子による含浸であるため、持続的な長期間の抗菌活性が存在する。活性は銀イオンによるものであるため、唯一の銀イオン源は銀ナノ粒子であることは明らかである。それらの結果は、有効量の銀イオンが、長時間にわたって継続的に放出されることを示している。それらの結果は、放射性銀ナノ粒子が含浸されたナイロン管を使用して実施された試験によっても確認された。類似の銀装填量における放射性銀の放出特性(図16)は、先に得られたものと同等である。
【0129】
抗菌作用をもたらすのは銀イオン(Ag+)であって、Ag0でないことは十分に実証されているため、抗菌銀イオン源は、表面に存在する銀ナノ粒子であると考えられる。公開された文献では、イオン化された銀を溶液中に放出させるナノ粒子表面の触媒酸化が指摘されている(Kapoor、Langmuir、第14版、1021〜1025頁、1998年)。他の文献では、還元工程中に正電荷が形成する銀ナノ粒子が指摘されている(ErshovおよびHengelein、J.Phys.Chem.B、第102版、10663〜10666頁、1998年)。厳密な機構に関係なく、本結果は、疑いもなく、イオン化された銀の持続的な放出を示している。理論的推定値は、表面からの銀の観測出現速度において、銀を完全に消費するために150日以上かかり、それは並外れていることを示している。
【0130】
他の用途
本発明の抗菌銀組成物は、材料科学および冶金用途に好適な乾燥銀ナノ粉末を製造するための出発材料にもなりうる。水性または非水性の当該組成物を高温環境で霧状にして、乾燥銀ナノ粉末を製造することが可能である。本発明の組成物を大規模に製造することが可能であり、比較的安価な化学物質から調製されるため、商業的プロセスは、極めて実用性があり、銀ナノ粉末に対する他の乾燥プロセスと競合しうる。乾燥銀ナノ粉末を製造する上での本発明の組成物の他の利点は、10nmのナノ粒子平均粒径は小さいこと、および粒径分布が比較的緻密であることであり、それらは、乾燥プロセスによって製造された広い粒径分布の銀ナノ粉末に比べて競合的優位をもたらしうる2つの要因である。
【0131】
本発明の組成物を含む銀ナノ粒子の他の用途は、オレフィンの酸化の触媒、研磨スラリーなどのオレフィン化合物の分離、表面からの静電気の消散、液体の伝熱性の向上、導電性の向上、高周波または同様の放射線シールドの調製、表面励起ラマン分光法の分析化学にある。
【0132】
微生物試験
抗菌銀組成物を用いて製造されたデバイス試作品の抗菌活性を、黄色ブドウ球菌ATCC6538を使用する標準的な阻害帯微生物アッセイによって検証した。約5〜7mmサイズの円板を試料から切り出し、細菌が接種され、37℃で一晩培養されたミュラーヒントン寒天(MHA)に配置した。銀イオンが放出された円板は、イオン付近に透明帯を示した。未処理の試料およびシルバソルブ(Silvasorb)は、それぞれ負および正の対照として機能した。阻害帯アッセイの結果を表7および8に示す。デバイス試作品は、銀ナノ粒子を含み、銀塩を含まないため、ZOIアッセイは、抗菌活性に対する最も好適な選別アッセイではない。したがって、しばしば細菌攻撃試験を採用して、殺菌活性および持続放出特性を評価した。8時間の細菌攻撃アッセイにおいて、カテーテル試料片を試験管内の培地に浸漬し、細菌を接種した。試験管を37℃で8時間培養した後、一定分量の培地を希釈し、MHAプレートに広げ、24時間後の成長細菌コロニの数をカウントして、殺菌率を求めた。
【0133】
組成がわずかに異なる液体組成物(実施例参照)を極めて簡単に調製し、それらを使用して、木綿ガーゼ、ナイロン繊維、コンタクトレンズおよびヒドロゲルシートを含む様々な基体に銀ナノ粒子を含浸させた。非晶質タルク粉末を含むすべての試作品が、黄色ブドウ球菌に対する阻害帯および持続的活性放出を示した(表7参照)。
【表8】
【0134】
銀ナノ粒子含有品では、表8の結果から明らかなように、抗菌活性も4日間持続された。繊維、カテーテルおよびレンズなどのいくつかの基体の場合は、細菌攻撃試験によって抗菌活性を試験した。当該試験では、基体を媒体に24時間浸漬しながら既知の細菌数で攻撃する。次いで、媒体を適切に希釈し、MHAプレートに配置して、生存する細菌数を推定した。攻撃は、基体から有効量の銀がなくなるまで継続された。細菌攻撃試験結果(表9)は、11攻撃、すなわち11日間にわたって、基体表面に埋め込まれたナノ粒子から銀イオンが放出したことを示している。対照的に、類似商品(Bardex & Lubrisil I.C.カテーテル)は、わずか3日間しか持続しなかった。
【表9】
【0135】
医療デバイスの組織との生体適合性は重要である。デバイスに存在する細胞毒性の固有レベルを定量するために寒天被覆アッセイが用いられる。寒天被覆試験の結果により、銀ナノ粒子を含有する基体は無細胞毒性であるとともに、刺激性がないことが確認された。銀ナノ粒子と基体表面の間の強い会合。銀処理ナイロン繊維の超音波処理は、抗菌活性に影響せず、ガーゼを繰り返し洗浄しても活性の低下をもたらさなかった。ここに要約される結果は、銀ナノ粒子を含有する液体組成物は、安定しており、非常に容易かつ安価に製造でき、数々のデバイス表面に抗菌性を与えるために使用できることを明確に証明している。一般に、本発明は、ナノ粒子を含む組成物を含む。ナノ粒子組成物は、溶媒、銀ナノ粒子および安定化剤を含む。ナノ粒子の形成後に、余剰の、または未反応の還元剤が組成物に残留しうる。多数のナノ粒子が組成物に形成されることが理解される。溶液は、水性または非水性であってもよい。水性溶媒は水を含み、非水性溶媒は、塩化メチレン、クロロホルム、他の脂肪族および芳香族塩素化溶媒、シクロヘキサン、ジエチルエーテル、酢酸エチルおよびそれらの混合物を含み、安定化剤、安定剤または他の同様な名称のものは、ポリマー、界面活性剤またはその両方を含み交換して使用される。ポリマーは、ホモポリマーまたはコポリマー、アクリルアミドおよびその誘導体の合成または天然由来のポリマー、メタクリルアミドおよびその誘導体、ポリアミド、ポリウレタン、特定の主鎖を有さないが、ウレタン部もしくは三級アミン基を側鎖に有するポリマー、本質的には主に極性の他のポリマー、または極性コモノマー、例えば、メタアクリルアミド、置換アクリルアミド、置換メタアクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸、メタクリル酸ヒドロキシエチル、アクリロニトリル、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸およびその塩(ナトリウム、カリウム、アンモニウム)、2−ビニルピロリドン、2−ビニルオキサゾリン、酢酸ビニル、もしくは無水マレイン酸から誘導された部分を有するコポリマーを含む。界面活性剤は、陰イオン性、非イオン性または両性界面活性剤であってもよい。
【0136】
銀ナノ粒子の製造方法は、a)安定化剤溶液の水溶液、陰イオン供与溶液および可溶性銀塩溶液を任意の順序で添加する工程と、b)三級ジアミン溶液を添加する工程と、さらにc)最終的な溶液を加熱して反応を増進する工程とを含む。該方法は、物品の表面にナノ粒子をインシチュで形成する工程をさらに含む。物品は、織繊維品または不織繊維品であってもよい。物品は、医療デバイス、ポリマー、繊維、金属、ガラス、セラミック、織物、またはそれらの組合せであってもよい。
【0137】
ナノ粒子を非水溶液に抽出することができる。本発明は、a)有効量のナノ粒子が表面に結合するために十分な時間にわたって、銀ナノ粒子を含む溶液に表面を接触させる工程と、
b)溶液を表面から洗い落とす工程とを含む、表面を銀ナノ粒子で処理する方法をも含む。接触および洗浄工程を複数回繰り返して、表面に接着するナノ粒子の数を増加させることができる。接触される表面は、医療デバイス、あるいは本明細書に教示されている他の物品または表面のいずれかであってもよい。該方法は、ナノ粒子が接着した表面を十分な時間にわたって過酸化水素水溶液に接触させ、過酸化水素溶液を表面から洗い落とす工程であって、接触される表面は、医療デバイス、ポリマー、繊維、金属、ガラス、セラミック、織物、またはそれらの組合せであってもよい工程をさらに含む。
【0138】
本明細書および添付の請求項の範囲に用いられているように、単数形の冠詞(「a」、「an」および「the」)は、特に明確な指定がない限り、複数対象物を含むことに留意すべきである。
【0139】
本明細書に含まれるすべての特許、特許出願および参考文献は、その全体が参照により具体的に組み込まれている。
【0140】
勿論、先述の内容は、本発明の例示的な実施形態のみに関し、本開示に記載されている本発明の主旨および範囲を逸脱することなく、そこでは多くの修正または変更を加えることができることを理解すべきである。
【0141】
本発明の例示的な実施形態が本明細書に示されているが、本発明は、これらの実施形態に限定されない。当業者が想到しうる多くの修正または変更が存在する。
【0142】
理解しやすいように提供される、本明細書に含まれる例により本発明をさらに例示する。例示的な実施形態は、いかなる場合も、その範囲に制限を加えるものと見なされるべきではない。対照的に、本明細書の説明を読んだ後に、本発明の主旨および/または添付の請求の範囲を逸脱することなく、当業者が想到しうる他の実施形態、修正およびその同等物を採用できることが明確に理解される。
【0143】
(実施例)
抗菌性デバイスの実施例A1〜A37
実施例A1:木綿ガーゼ
ジメチルホルムアルデヒド(5ml)を撹拌下にてビーカー中で約60℃に加熱した。撹拌棒を取り除いた後に、2”×2”の木綿ガーゼ(Curityブランド(The Kendall Company(マサチューセッツ州Manisfield所在))をDMFに配置して、すべての溶媒を吸収させた。硝酸銀溶液(0.3ml、0.1M)をピペットでガーゼ上に滴下した。1分間以内に、ガーゼが黄色に変わった。5分後に、ビーカーをホットプレートから取り出し、室温に冷却した。薄黄色のガーゼを脱イオン水で十分に洗浄し、脱液し、40℃のオーブンで乾燥させた。
【表10】
【0144】
生物膜阻害試験
尿または静脈カテーテルなどの留置医療デバイスでは、抗菌表面特性を有することは、感染を最小限にするために非常に有益である。しかし、さらに重要なことは、生物膜形成を防止する当該デバイスの能力である。細菌が生物膜を形成すると、それをシールドとして使用し、細菌の除去が困難になる。抗菌剤または他の薬剤は効果がない。本発明の抗菌デバイスの1つの重要な特徴は、生物膜を阻害するそれらの能力である。抗菌ナイロン管の生物膜阻害特性を調べるために、以下の原理に基づく方法を採用した。
【0145】
攻撃生体が接種された試験培地に試験品を浸漬することによって生物膜を評価することが可能である。適切に培養した後に、デバイスの表面に結合された炭水化物特異染料の量を測定することによって、生物膜形成を評価する。生物膜形成規模と表面上の残余炭水化物との間に量的関係がある。これは、好適な溶媒で染料を最初に抽出し、次いで分光光度計でODを測定することによって定量することが可能である。
【0146】
図17は、(管重量に対して)約600ppmの(ナノ粒子の形態の)銀装填量のナイロン管試料に対する生物膜試験の結果の概要を示す図である。銀処理試料は、大腸菌、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌、緑膿菌およびカンジダアルビカンスに対する生物膜の形成を強固に阻害する。それに対して、未処理のデバイス試料は阻害を示さない(OD値が高い)。それらの結果は、生物膜形成に対する本発明のデバイスの抵抗性を明確に示している。
【0147】
実施例A2:木綿ガーゼ
硝酸銀溶液の濃度を1.0Mとしたこと以外は、実施例A1とまったく同様にしてガーゼを処理した。
【0148】
実施例A3:コンタクトレンズ
コンタクトレンズ(SEE3、CibaVision Corporation(ジョージア州Duluth所在))を洗浄して防腐剤溶液を落とし、実施例A1のように高温DMF溶液に浸漬した。静かに撹拌しながら、硝酸銀(0.3ml、1.0M)を高温DMFに滴下した。5〜7分後に、ビーカー内容物を冷却し、レンズを取り出し、脱イオン水で十分に洗浄し、ティッシュペーパで脱液し、40℃のオーブンで乾燥させた。レンズは薄い黄色を呈した。
【0149】
実施例A4:カテーテルセグメント
DMF溶液(10ml)を撹拌下にてビーカー中で約100℃まで加熱した。硝酸銀溶液(0.25ml、0.02M)を高温溶媒に添加して、(プラスモン共鳴帯により)黄色で示される銀ナノ粒子を生成した。予め洗浄した約1”の長さのシリコーンカテーテル(14Fr、Degania Silicone Ltd(イスラエル))セグメントを黄色溶液に15分間浸漬した。カテーテルセグメントを取り出し、脱イオン水で洗浄し、乾燥させた。カテーテルセグメントのわずかな脱色が見られた。
【0150】
実施例A5:ヒドロゲルシート−方法1
カップ中の脱イオン水(13.3ml)にアクリルアミド(1.482g)、ビスアクリルアミド(0.018g)およびグリセロール(1.5g)を撹拌下で添加した。それとは別に、高温(約60℃)の脱イオン水(10ml)にイソプロパノールおよびグアーガム(0.165g)を溶解させ、溶液を室温まで冷却させた。グアーガムとアクリルアミドモノマー溶液を混合した。混合物に硝酸銀(1ml、0.1M)およびサッカリン酸ナトリウム(1ml、0.125M)を添加した。スパチュラを利用して、粘性塊体を混合した。サッカリン酸銀が沈殿すると、粘性塊体が乳白色になった。
【0151】
銀塩含有塊体に過硫酸アンモニウム(水1mlに0.05g溶解させたもの)を添加した後に、TEMED(水1mlに0.063ml溶解させたもの)を添加した。TEMED添加後に、塊体は、すぐに重合することなく徐々に褐色に変化し始めた。8日後、粘性塊体は、褐色のヒドロゲルシートになった。
【0152】
実施例A6:コンタクトレンズ
コンタクトレンズ(SEE3ブランド(CibaVision Corporation(ジョージア州Duluth所在))を脱イオン水で洗浄して、防腐剤溶液を洗い落とし、次いで硝酸銀溶液(0.15ml、0.1M)に10分間浸した。余剰の溶液を除去し、サッカリン酸ナトリウム(0.15ml、0.125M)を添加して、レンズを再度浸漬した。レンズは、サッカリン酸銀のインシチュでの形成により不透明になった。余剰の液体およびあらゆる遊離固体をピペットで吸い取り、レンズを再び脱イオン水で洗浄した。水(0.2ml)と混合したTEMED(0.1ml)を添加して、レンズを浸し、還元を開始した。5分後に、液体が薄い黄色になった。その時点で、すべての液体を廃棄し、レンズを水で数回洗浄し、周囲条件で一晩乾燥させた。
【0153】
実施例A7:ナイロン繊維
ナイロン(ポリアミド)製の数本の繊維(直径約1mm)を、実施例B6作製した銀ナノ粒子組成物(総液体量10ml)に室温にて72時間にわたって浸漬した。浸漬した繊維を70%の水性IPAおよび水で十分に洗浄した。繊維を、また、IPAに浸したティッシュで静かに拭き、45℃で15分間乾燥させた。繊維の浸した部分は、淡黄色乃至褐色になった。
【0154】
実施例A8:シリコーンカテーテルセグメント
4”長の14Frシリコーンカテーテルセグメント(Degania Ltd(イスラエル))をIPAで洗浄し、乾燥させた。そのセグメントを5mlのサッカリン(0.5gm)THF溶液に1時間浸浸した。シャフトを取り出し、アセトンで一回迅速に洗浄し、硝酸銀溶液(硝酸銀0.5g、90%アセトン/水5ml)に0.5時間浸漬した。シャフトセグメントを取り出し、水で十分に洗浄し、最後に30%TEMEDのIPA溶液に浸漬した。溶液を加温して、還元を誘発させ、一晩放置した。セグメントは黄色に変化し、還元反応が進行していたことを示していた。シャフトを水で洗浄し、125℃のオーブンで乾燥させて、TEMEDの痕跡をすべて除去した。
【0155】
実施例A9:親水性ポリマー被膜を有するカテーテル
親水性ポリマー被膜(2.7%GRAFT−COAT、STS Biopolymers(ニューヨーク州Henrietta所在))を有する約3”の長さの小さいカテーテルセグメントを、実施例B4のようにして調製した銀ナノ粒子溶液に2時間浸漬した。そのセグメントを取り出し、水で洗浄し、45℃で乾燥させた。最初はほとんど色が見られなかったが、数日後に被膜が均一に茶褐色になった。
【0156】
実施例A10:コンタクトレンズ
単一のレンズ(SEE3(CibaVision Corporation))を、実施例B7で調製した7mlの原液に室温にて12から16時間浸した。レンズを水で洗浄し、室温で乾燥させた。レンズを均一の光沢のある透明の銀被膜で被覆した。
【0157】
実施例A11:木綿ガーゼ
サイズが約3”×3”の木綿ガーゼ(Curityブランド、The Kendall Company(マサチューセッツ州Manisfield所在))を硝酸銀(0.1M)およびサッカリン酸ナトリウム(0.125M)に順次浸し、浸した後にそれぞれ脱液し、110℃で10分間乾燥させた。銀塩を含む乾燥ガーゼを30%TEMEDのIPA溶液に72時間再度浸し、水で十分に洗浄し、水に24時間浸して、溶媒痕跡を除去し、乾燥させた。TEMEDに約3時間浸した後に、ガーゼは黄色になった。色は、洗浄および水浸工程中に溶脱することはなかった。
【0158】
実施例A12:木綿ガーゼ
実施例15の木綿ガーゼと同一の木綿ガーゼを、実施例B3の方法で調製したPAA−銀ナノ粒子溶液(5ml)に72時間浸した。ガーゼを水で洗浄し、24時間水に浸し、乾燥させた。ガーゼは、橙黄色の色相を呈し、洗浄および水浸工程中に色を溶脱させることはなかった。
【0159】
実施例A13:コンタクトレンズ
銀粒子が埋め込まれた透明コンタクトレンズを以下のようにして調製した。Tween20を水(1ml)に溶解させ、サッカリン酸ナトリウム(1ml、0.125M)、硝酸銀(1ml、0.1M)およびTEMED(0.1ml)を添加して銀ナノ粒子含有組成物を調製した。1週間熟成させた後の溶液(0.5ml)を水で2mlまで希釈し、前洗浄したコンタクトレンズをその溶液に一晩浸漬した。レンズを水で洗浄し、静かに脱液し、75℃のオーブンで0.5時間乾燥させた。
【0160】
実施例A14:シリコーンカテーテル
16Frシリコーンカテーテルセグメント(長さ約6”)をイソプロピルアルコール(IPA)で洗浄し、乾燥させた。それをTHFに1時間浸して、その壁を膨張させ、次いで以下のようにして調製した1週間後の銀ナノ粒子溶液に一晩浸漬した。Tween20(0.025g)をサッカリン酸ナトリウム溶液(5ml、0.125M)に溶解し、硝酸銀(5ml、0.1M)および0.5mlのTEMEDをそれに添加した。得られた液体を電子レンジで短時間(10秒間)加熱して、黄褐色とした。一晩浸した後に、カテーテルを水、IPAおよび再度水で洗浄し、オーブンで乾燥させた。
【0161】
実施例A15:ナイロンカテーテル−方法1
直径約1mmで長さ15”のナイロンカテーテル片(IFLOW Corporation(カリフォルニア州Lake Forest所在))をIPAで洗浄し、拭いて乾燥させた。カテーテルを、実施例B7の手順に従って調製した銀ナノ粒子原液(90ml)に一晩浸し、水およびIPAで洗浄し、拭いて乾燥させ、45℃のオーブンでさらに乾燥させた。処理後、カテーテルは黄色の色相を呈した。
【0162】
実施例A16:ナイロンカテーテル−方法2
長さ約4”で、それ以外は実施例A15と同様のナイロンカテーテルを□−アミノプロピルトリエトキシシラン(シラン0.1ml/THF5ml)に短時間(1分間)浸し、取り出し、空気中で数分間乾燥させた。シラン塗布試料を新たに調製したナノ粒子原液(実施例B7)に一晩浸した。カテーテルセグメントを水およびIPAで洗浄し、拭いて乾燥させた。その試料は、実施例A15の試料より均一で濃い黄色を呈した。
【0163】
実施例A17:シリコーンカテーテル−Bard
長さ約3”のカテーテルセグメント(Lubrisilブランド、BARD Inc.(ジョージア州Covington所在))をIPAで拭き、実施例A14の方法で調製された銀ナノ粒子原液に一晩浸した。そのセグメントを水およびIPAで洗浄し、45℃のオーブンで乾燥させた。それは、薄い黄褐色を呈した。
【0164】
実施例A18:シリコーン胸部移植膜
シリコーン製の3つ(約1”×1”)の胸部移植膜(厚さ約0.5から1mm)に、それを実施例A14の工程に従って最初に膨張させ、実施例B7の方法で作製した銀ナノ粒子溶液に一晩浸すことによって銀ナノ粒子を含浸させた。それらの移植膜を水およびIPAで洗浄し75℃のオーブンで数時間乾燥させた。処理後の各移植膜は、薄い黄色の色相を呈した。
【0165】
実施例A19:ナイロン繊維糸の細胞毒性
0.2mgのTween20を4mlの水に混入し、4mlのサッカリン酸ナトリウム(0.125M)を、次いで4mlの硝酸銀(0.1M)を、次いで0.4mlのTEMEDを添加し、電子レンジ(出力1500W)で10秒間加熱し、次いで室温まで冷却することによって、銀ナノ粒子溶液を最初に調製した。4本のナイロン繊維糸(直径約1mm、長さ9”)を溶液に一晩浸漬した。それらの糸を水で数回洗浄し、空気中で乾燥させた。銀ナノ粒子含浸後に、繊維表面は黄褐色を呈した。
【0166】
寒天被膜を使用したところ、L929線維芽細胞に対する細胞毒性は認められなかった。繊維の銀含有量は、約800ppmであった。
【0167】
実施例A20:実施例A14のシリコーンカテーテルの細胞毒性
寒天被膜を使用したところ、銀処理カテーテルによるL929線維芽細胞に対する細胞毒性は認められなかった。カテーテルの銀含有量は、800ppmより大きいと見積もられた。
【0168】
実施例A21:銀ナノ粒子を有する基体に対する滅菌法の影響
Portland地域の地方施設において、実施例A14のシリコーンカテーテルおよび実施例A19のナイロン繊維糸にエチレンオキシド(ETO)滅菌を施した。試料は、医療管およびキットなどの大容量製品に典型的なETO用量を受けた。
【0169】
滅菌後に、小さい目視検出可能な変化が生じていた。いずれの試料も本来の色相よりわずかに濃くなっていた。
【0170】
実施例A22:銀ナノ粒子を含む銀ガーゼの黄色を「漂白する」試み
数枚(3”×3”)のCurity(Kendall)木綿ガーゼを、以下の方法に従って調製した、銀ナノ粒子を含む溶液の2mlずつに浸漬した。Tween20(濃度:50gm/L)とサッカリン酸ナトリウム(0.125M)と硝酸銀(0.1M)の原液を10mlずつボルテックスミキサで混合し、TEMED(1mL)を添加した。得られた溶液を電子レンジで30秒間加熱して、黄褐色溶液を生成させ、それを室温まで冷却した。
【0171】
ガーゼを脱液し、45℃のオーブンで一晩乾燥させた。ガーゼを乾燥させると、色が淡褐色に変化した。ガーゼを10%過酸化水素溶液(25mL)に浸した。最初の数分間では色の変化は認められなかったが、1時間を過ぎると、褐色がはるかに薄くなった。24時間浸した後、ガーゼが白色になった。それらを脱液し、45℃のオーブンで1時間乾燥させ、実験橙下に放置して、36時間連続的に露光させた。数箇所にわずかな脱色があった以外は、ガーゼに変化はなく、銀抗菌ガーゼ材料を調製するもう1つの方法が確保された。
【0172】
実施例A23:非水性銀ナノ粒子組成物による処理によるシリコーンカテーテルの含浸
実施例B13の水性組成物と同様の水性組成物を作製し、密栓バイアル瓶で1週間静置した。組成物を25mLの脱イオン水で希釈し、約15mLのクロロホルムで抽出した。銀ナノ粒子の一部をクロロホルム層に抽出した。シリコーン製の清浄なカテーテルステム(14Fr(Degania Silicone Ltd(イスラエル))をクロロホルム層に0.5時間浸漬した。カテーテルの浸漬部は、溶液を吸収したことにより膨張した。次いで、カテーテルを取り出し、洗浄せずに、45℃のオーブンで15〜20分間乾燥させた。処理後に、カテーテルは、薄い黄色を呈し、24時間後に橙赤色になった。その色の変化は、カテーテル壁に銀ナノ粒子が存在していることを示していた。24時間の細胞攻撃試験において、抗菌性を有することがわかった。
【0173】
実施例A24:銀処理PTFE
Tween20(濃度:16.7gm/L)とサッカリン酸ナトリウム(0.125M)と硝酸銀(0.1M)の原液を10mlずつボルテックスミキサで混合し、TEMED(1mL)を添加した。得られた溶液を電子レンジで60秒間加熱して、黄褐色溶液を生成させた。長さ4”のPTFE糸シールテープを試験管に巻きつけ、この試験管を大きい試験管の内側に配置し、銀ナノ粒子溶液を両試験管に注ぎ入れて、テープを24時間浸し、55℃に保った。テープを水で数回十分に洗浄し、55℃で0.5時間乾燥させた。
【0174】
銀ナノ粒子のナノ粒子含浸後に、テープは薄い黄色を示した。24時間の細菌攻撃試験において、抗菌性を有することがわかった。
【0175】
実施例A25:銀処理PP
Tween20(濃度:16.7gm/L)とサッカリン酸ナトリウム(0.125M)と硝酸銀(0.1M)の原液を10mlずつボルテックスミキサで混合し、TEMED(1mL)を添加した。得られた溶液を電子レンジで60秒間加熱して、黄褐色溶液を生成させた。
【0176】
以下のようにPP片を表面処理して、水濡れ性を向上させた。4つのポリプロピレン片(3”×1/4”)を80mLの9M硫酸に撹拌下で40時間浸した。その後、それらの片を水で数回洗浄し、紙に押しつけて乾燥させ、次いで空気乾燥させた。次に、シラン(0.2mL)、0.1mLの水および0.1mLの三フッ化ホウ素エーテラートを10mLのTHFに添加することによって作製されたg−アミノプロピルトリエトキシシランのTHF溶液にそれらの片を入れた。5分間浸した後に、それらの片を取り出し、短時間空気乾燥させ、次いで55℃で0.5時間乾燥させた。
【0177】
次いで、シラン処理片を上記のように作製した銀ナノ粒子溶液に4時間浸漬し、洗浄し、紙で脱液し、空気乾燥させた。各片は、銀ナノ粒子の含浸を示す薄い黄色を呈した。
【0178】
実施例A26:ナイロン繊維へのAgの付着に対する1未満のSac/Ag比の影響
Tween20溶液(3mL、16.7g/L)、サッカリン酸ナトリウム(3mL、0.025M)および硝酸銀(3mL、0.1M)を掻き混ぜた。TEMED(0.1mL)を添加し、再び掻き混ぜた。TEMEDを添加すると、混合物が薄い黄色になった。溶液をマイクロ波で約55℃まで短時間加熱し、4本の清浄なナイロン繊維糸を高温溶液に4時間浸漬した。繊維の浸漬部は、暗藍色になった。繊維を十分に洗浄し、乾燥させた。それらの繊維は、ZOIアッセイにおいて、抗菌性を有することがわかった。
【0179】
実施例A27:銀処理ポリスルホン
Tween20溶液(2mL、16.7g/L)、サッカリン酸ナトリウム(2mL、0.125M)および硝酸銀(2mL、0.1M)を掻き混ぜた。TEMED(0.2mL)を添加し、再び掻き混ぜた。溶液をマイクロ波で約70〜75℃まで短時間加熱し、55℃まで冷却し、次いで7つの長さ6”の中空ポリスルホン管(直径0.5mm未満)を高温溶液に4時間浸漬した。それらの管を水で洗浄し、管を水に浸漬した状態で遠心させて、内側から洗浄した。白色のポリスルホン管が黄色になり、ZOIアッセイにおいて、抗菌性を有することがわかった。
【0180】
実施例A28(予測的):実施例B33のフマル酸塩をベースとした組成物および酢酸で処理することによって繊維に銀を付着させる方法
数枚の木綿ガーゼ(BulkeeIIガーゼロールから2”×2”に切り出した片)を実施例B33で作製した銀ナノ粒子組成物に数分間浸すことによって該組成物で処理した後に、脱液し、次いで希酢酸(水100mLに対して氷酢酸5ml)に数分間にわたって再度浸して、フマル酸塩で安定化された銀ナノ粒子を析出させる。紙で脱液し、55℃のオーブンで0.5時間乾燥させた後に、淡黄色材料として銀を含むガーゼを得る。ガーゼは、抗菌性を有するものと想定される。
【0181】
実施例A29:PEBEX(登録商標)ナイロン管から作製されたカテーテルに対するアンモニアの影響
銀ナノ粒子含浸カテーテル管(PEBEX(登録商標)グレードのポリアミドポリマーの管から作製された長さ2”、外径1mmおよび内径0.6mmの2つの管)を試験管内の希アンモニア溶液(水8mLに対して2mLの28%アンモニア)に浸して、銀ナノ粒子が分解しうるかどうかを調べた。16時間後も色の変化が認められず、表面に含浸された銀ナノ粒子に対する約7%のアンモニアの影響がないことを示唆していた。
【0182】
実施例A30:銀処理PVC排水管
Tween20溶液(160mL、16.7g/L)、サッカリン酸ナトリウム(160mL、0.125M)および硝酸銀(160mL、0.1M)を順次混合し、一緒に15分間撹拌して調製した銀ナノ粒子に、1/4”の外径を有する長さ数フィートのポリ塩化ビニル(PVC)を浸した。TEMED(16mL)を添加し、撹拌した。溶液をマイクロ波で約70〜75℃に加熱し、55℃まで冷却した。管を取り出し、脱イオン水で急冷し、水を流して洗浄し、空気乾燥させた。処理前は無色だった管が黄色になり、色は均一であった。細菌攻撃試験において、抗菌性を有することがわかった。
【0183】
実施例A31:銀処理PEBEX(登録商標)グレードのナイロン管カテーテル−条件とppm
本実施例は、PEBEX(登録商標)タイプのナイロングレード製の小径ナイロン管に付着する銀の量に対する時間、硝酸銀の開始濃度、および温度の影響を調べるために行われた試験について記載する。管は、カテーテルに使用されたタイプの材料をシミュレートする。管は、外径が約1mm、内径が0.6mmで、長さが27”であった。
【0184】
Tween20溶液(160mL、16.7g/L)と、サッカリン酸ナトリウム(160mL、0.125M)と、硝酸銀(160mL、0.1M)を順次混合し、15分間にわたって一緒に撹拌した。TEMED(16mL)を添加し、撹拌した。溶液をマイクロ波で約70〜75℃に加熱し、40〜45℃まで冷却した。1ダース程度のカテーテルをパイレックス(登録商標)皿に配置し、(浮くのを防ぐために)重りをつけた。冷却された銀ナノ粒子溶液を皿内のカテーテルに注ぎ、1つのカテーテルを所定の時点で取り出し、十分に洗浄し、空気乾燥させた。ナイロン管は、経時的に濃くなる黄色を呈した。AASにより管試料を分析して、銀含有量を調べた。
【0185】
溶液をカテーテルに注ぐ前に、溶液を55〜60℃まで冷却することによって、その温度で試験を繰り返した。2つの温度における処理時間の関数としてのカテーテルの銀含有量(3つの部分、すなわち上部、中部および底部の平均)が表10にまとめられている。
【表11】
【0186】
実施例A32:ナイロン管材料への装填量に対する銀濃度の影響
濃度の影響を調べるために、処理溶液を調製する上での硝酸銀の出発濃度を変化させた。この実験では、AASアッセイ技術の代わりに、放射活性銀を採用し、カウントを利用して、銀濃度を求めた。
【0187】
手短に述べると、Tween20溶液(13.3mL、16.7g/L)と、サッカリン酸ナトリウム(1.3mL、0.125M)および1.3mL110mAg硝酸銀(濃度が異なる)と、水(24mL)を順次混合し、15分間一緒に撹拌した。TEMED(0.13mL)を添加し、撹拌した。溶液をマイクロ波で約70〜75℃に加熱し、52℃まで冷却した。その溶液に、長さ2cmの管材料を33個添加し、短時間遠心させて、気泡を除去し、52℃で16時間培養した。カテーテルを十分に洗浄し、空気乾燥させた。
【0188】
実測カウントおよび特異的活性から、管に付着した銀の量を測定した。その結果を表11に示す。
【表12】
【0189】
実施例A33:銀処理ナイロン管−硝酸の影響
銀装填量が約920ppmのPEBEX製のカテーテルナイロン管(外径1mm)を実施例A31の手順に従って調製した。長さ1”のコハク色カテーテルを(0.5mLの工業用硝酸および4.5mLの水から調製された)5mlの希硝酸に一晩浸漬した。カテーテルを脱イオン水で二回洗浄し、次いでイソプロパノールで洗浄し、窒素ガスを吹き付けることによって乾燥させた。酸処理後に、カテーテルを漂白して薄い黄色とした。AASによる銀分析は、装填量が350ppmであることを示し、本来の装填量からの減少が約62%であることを示していた。
【0190】
本実施例は、実際の装填量が提案された目標を超える場合に、硝酸で処理することによって、銀ナノ粒子含浸品の銀装填量を変化させる方法を提供する。
【0191】
試験中に、硝酸蒸気との接触による基体の脱色(銀の減少)も認められた。この結果は、硝酸蒸気、または同様の特性を有する他の酸の蒸気に銀ナノ粒子を接触させることによって、銀ナノ粒子担持表面をパターン化する方法を提供するものである。
【0192】
実施例A34:銀処理ナイロン管−H2O2の影響
実施例A32の生成実験後に110mAgを付着させたナイロン管試料は、管表面からコハク色を除去するH2O2の効果を調べるためのものであった。試料管をH2O2に浸す直前に、放射活性を測定することによって銀装填量(ppm)を求めた。次いで、個別の管の試料を2mLの30%H2O2溶液に室温で24時間浸した。酸素による気泡生成が管表面に認められ、しばしば管を浮かせていた。翌日には、すべての試料の色がコハク色から無色に変化した。試料の放射活性を再び測定し、特異的活性から、銀装填量を計算した。以下に示される結果(表12)は、過酸化物処理による銀の減少量が、24時間食塩水に浸している間の減少量と同等であることを示している。そのように、実質的に、コハク色の銀ナノ粒子を含む表面は、銀(または抗菌活性)を減少させることなく無色になる。
【表13】
【0193】
実施例A35:抗菌性金属移植体
Tween20界面活性剤溶液(16.7g/L)、サッカリン酸ナトリウム(0.125M)および硝酸銀をそれぞれ10mLと、20mLの脱イオン水をビーカー中にて撹拌下で混合して、白色粒子を含む懸濁物を生成した。その懸濁物にTEMED(1.5mL)を添加し、短時間混合した。内容物を電子レンジで1分間加熱し、ガラスペトリ皿に配置された3つの金属移植体部品に高温溶液を注いだ。皿を覆い、70℃に4時間加熱した。金属部品を溶液から取り出し、脱イオン水で数回洗浄し、水とともにビーカーに配置し、15分間超音波処理して、遊離粒子を除去した。
【0194】
次いで、金属部品を空気中で乾燥させた。表面が銀ナノ粒子で含浸された移植体は、シュードモナス菌に対する抗菌活性を3日間持続させていることを示した。対照的に、未処理の対照金属部品は、菌の成長が抑制されていないことを示した。
【0195】
実施例A36:抗菌性ポリウレタン発泡体
Tween20溶液(5.2g/L)、サッカリン酸ナトリウム(0.0125M)および硝酸銀(0.01M)をそれぞれ25.5mLずつ混合した後にTEMED(0.255mL)を添加し、48℃で16時間加熱することによって抗菌銀ナノ粒子組成物を調製した。発泡体の調製に冷却した溶液を使用した。Lindell Manufacturing(ミシガン州)から入手した1平方インチのSupersoft S00−T発泡体、およびRynel Corporation(メイン州)から入手したMedicalグレード(型式562−6)を銀ナノ粒子組成物に浸し、軽く脱液し、45℃のオーブンで0.5時間乾燥させた。それらの発泡体は、ZOIアッセイにおいて、黄色ブドウ球菌および緑膿菌に対する抗菌性を有することがわかった。
【0196】
実施例A37:抗菌性シリコーンカテーテルステム−異なる滅菌プロセスの影響
イソプロピルアルコールで洗浄された数本のシリコーンカテーテルステム(14Fr(Degania Silicone Ltd.(イスラエル))をTHFに15〜30分間浸した。それとは別に、同量のTween20(50g/L)とサッカリン酸ナトリウム(0.125M)と硝酸銀(0.1M)を混合し、次いでTEMED(個々の原液量の10分の1)を添加することによって抗菌ナノ粒子組成物を調製した。得られた混合物を、溶液が黄色になるまで、電子レンジで30から45秒間の短時間加熱した。溶液を室温まで冷却し、次いでTHFで膨張したカテーテルを銀ナノ粒子溶液に一晩漬けて、粒子をシリコーンカテーテル表面に付着させた。ステムを水で十分に洗浄し、空気中で乾燥させた。銀含浸後に、色が黄褐色から灰褐色に変化した。その後、銀ナノ粒子が付着した数本のステムをそれぞれ122℃で15分間の蒸気滅菌、電子ビーム法(約30kGy)および商業的標準ETO法により滅菌した。銀を有する滅菌済カテーテルステムは、接種用量が約5e3 cfu/mL以下の緑膿菌株の7細菌攻撃(24時間)に対して100%の殺菌率で等しく抗菌性を有することがわかった。試験されたいずれの滅菌法もカテーテルの抗菌特性に対する悪影響はなかった。
【0197】
抗菌銀組成物の実施例B1〜B34
実施例B1:親水性架橋ポリマー
カップ中の脱イオン水(13.3ml)に撹拌下でアクリルアミド(1.482g)、ビスアクリルアミド(0.018g)およびグリセロール(1.5g)を添加した。その混合物に硝酸銀(1ml、0.1M)およびサッカリン酸ナトリウム(1ml、0.125M)を添加した。サッカリン酸銀が沈殿すると、得られた液体が乳白色になった。
【0198】
銀塩含有塊体に過硫酸アンモニウム(1mlの水に0.05溶解)を添加し、次いでTEMED(1mlの水に対して0.113ml)を添加した。TEMED添加後に、塊体は徐々に褐色に変化し始め、それを一晩放置して、赤褐色の脆性固体ポリマーを生成させた。
【0199】
実施例B2:銅改質親水性架橋ポリマー
実施例B1の固体ポリマーの一部(約0.1g)および塩化第二銅溶液(1ml、0.1M)を密栓バイアル瓶に入れ、数日間放置した。塩化第二銅溶液による水和、およびナノ粒子の塩化銀への変換により、ポリマーの褐色が青色に変化した。
【0200】
実施例B3:ヒドロゲルシート−方法2
銀ナノ粒子含有ポリマー溶液を以下のようにして調製した。アクリルアミド(0.5mg)を脱イオン水(5ml)に溶解させた。その溶液に、混合下で、過硫酸アンモニウム(16mg)およびTEMED(0.02ml)を添加して、ポリアクリルアミド(PAA)ポリマー溶液を形成した。最初に5mlの水で希釈したPAA溶液において、サッカリン酸ナトリウム(1ml、0.125M)および硝酸銀(1ml、0.1M)を順次添加することによってサッカリン酸銀を沈殿させた。TEMED(0.05ml)をPAA溶液に添加することによって還元による銀ナノ粒子形成を開始させた(溶液が赤褐色になることによって示される)。必要に応じて、溶液を加温して、還元反応を開始させた。溶液を少なくとも1日間放置して、還元を完了させた。
【0201】
PAAに、上述のように調製した銀ナノ粒子溶液、アクリルアミド(1.482g)、ビスアクリルアミド(0.018g)およびグリセロール(1.5g)を撹拌下で添加した。それとは別に、高温(約60℃)の脱イオン水(10ml)、イソプロパノールおよびグアーガム(0.165g)を添加して、溶液を形成し、それを室温まで冷却させた。グアーガムとPAA銀ナノ粒子モノマー溶液を混合した。その混合物に過酸化水素溶液(2ml、10%)を添加して、溶液を本来の赤褐色から淡色に変化させた。開始剤である過硫酸アンモニウム(0.05g)を添加してすぐに、銀ナノ粒子を含むモノマー溶液が赤褐色のゲルを形成した。ゲルをペトリ皿に移し、一晩放置して乾燥させた。
【0202】
実施例B4:タルク粉末
銀ナノ粒子含有組成物を以下のようにして調製した。界面活性剤Tween20(0.05g)を水(2.5ml)に溶解させた、その界面活性剤溶液にサッカリン酸ナトリウム(0.25ml、0.125M)、硝酸銀(0.25ml、0.1M)およびTEMED(0.1ml)を順次添加した。その混合物を電子レンジで短時間加熱して、銀塩の還元を開始させ、次いで室温まで冷却した。
【0203】
それとは別に、タルク粉末(0.5g)とIPA(1ml)と水(4ml)をカップ中で混合して、均一の懸濁物を得た。懸濁物に、上記のように調製した銀ナノ粒子組成物を0.5ml添加し、ボルテックスミキサで混合した。クリーム色の固体を遠心分離によって回収し、45℃のオーブンで数時間乾燥させた。
【0204】
実施例B5:水性銀ナノ粒子含有組成物
サッカリン酸ナトリウム(0.25ml、0.125M)および硝酸銀(0.25ml、0.1M)を試験管内の水(1ml)に添加した。Tween20界面活性剤(0.05g)を得られた懸濁物に添加し、次いでTEMED(0.05ml)を添加し、還元反応を開始させた。数分間以内に黄色を呈し、それが一晩で濃くなった。水による希釈溶液(1:5に希釈)の吸光度は、400nm〜550nm範囲で測定された。最大ODは約415nmに観察された。
【0205】
実施例B6:水性銀ナノ粒子含有組成物
サッカリン酸ナトリウム、硝酸銀およびTEMEDの量を2倍にしたことを除いては、実施例8とまったく同様にして銀ナノ粒子を含む組成物を調製した。得られた溶液は、約415nmでOD最大値を示した。
【0206】
実施例B7:水性銀ナノ粒子含有原液
カップ中で、Tween20(0.5g)を水(10ml)に溶解させた。このサッカリン酸ナトリウム(10ml、0.125m)に硝酸銀(10ml、0.1M)およびTEMED(1ml)を順次添加した。液体混合物をMEDIUM設定の電子レンジ(Quasarのインスタマチッククッキングブランド)で短時間(30秒間)加熱した。混合物は、銀ナノ粒子の形成により、加熱後に黄色になった。
【0207】
実施例B8:ポリマー安定化銀ナノ粒子組成物
アクリルアミド(2.96g)を25mlの水に溶解させた。その溶液に過硫酸アンモニウム(0.1g)およびTEMED(0.125ml)を添加し、混合して、重合を開始させた。10分後に、サッカリン酸ナトリウム(1.25ml、1M)および硝酸銀(1ml、1M)を粘性ポリマー溶液に添加した。数分間以内に溶液色が橙赤色に変化した。溶液を必要に応じて電子レンジで30秒間加温して、還元反応を加速させた。OD値は、440nmの波長でピークを示した。
【0208】
実施例B9:潤滑ゼリー
銀ナノ粒子を含む潤滑ゼリー(BARD Inc.(ジョージア州Covington所在))を以下のようにして調製した。最初に、ナノ粒子溶液を調製し、次いでゼリーと混合した。CMCナトリウム塩(0.05g、高粘度グレード、Sigma)を水(10mL)に溶解させた。そのCMC溶液(1ml)にサッカリン酸ナトリウム(1ml、0.125m)、硝酸銀(1ml、0.1M)およびTEMED(0.1ml)を順次添加した。溶液は黄色になり、弱い緑色の蛍光を呈した。
【0209】
カップ中の潤滑ゼリー(8g)に、上記のように作製したCMC−AgNP溶液(0.2ml)を添加し、ガラス棒で均一になるまで混合した。銀ナノ粒子を含むゼリーは薄い橙色を呈した。
【0210】
実施例B10アルギン酸ビーズ
PAA銀ナノ粒子溶液を実施例B3の方法に従って調製した。その溶液をアルギン酸ナトリウム溶液(1g/水50ml)に添加した。得られた溶液を、撹拌した2%塩化カルシウム溶液(400ml)に滴下して、銀ナノ粒子が埋め込まれたアルギン酸ビーズを形成した。ビーズを濾取し、脱イオン水で一回洗浄し、濡れた状態で保存した。ビーズは、わずかな緑色蛍光を有する黄色を呈した。
【0211】
実施例B11:爪研磨組成物
爪研磨用途に使用されるポリマーであるAvalure 120(1ml)を、実施例A19に類似した調製物の銀ナノ粒子溶液(1ml)残留物と混合し、清浄なガラススライドに展開し、45℃で乾燥させた。ガラス上の乾燥膜は、2カ月を超えても最初の黄色から色が変化せず、拡散メカニズムによる乾燥フィルムに銀ナノ粒子の凝集体が存在しないことを示していた。
【0212】
実施例B12:アセスルファムカリウムによる銀ナノ粒子組成物
Tween20(0.3ml、65g/L)と、アセスルファムカリウム溶液(1ml、0.125M)と、TEMED(0.3mL)を混合し、最後に硝酸銀溶液(0.75mL、0.1M)を添加し、各成分を添加した後に掻き混ぜることによって、銀ナノ粒子を含む組成物をドラムバイアル瓶に調製した。得られた混合物を電子レンジで10秒間加熱し、冷却し、400から500nmでODを測定した。波長最大値は415nmであった。
【0213】
実施例B13:バルビツール酸による銀ナノ粒子を含む組成物の調製
バルビツール酸(0.368g)を秤量し、10mLの脱イオン水に添加した。炭酸ナトリウム(0.105g)を水に添加して、溶液が透明になるように酸をそのナトリウム塩に変換させた。
【0214】
硝酸銀(1mL、1M)溶液を添加して、バルビツール酸塩を微細懸濁物として析出させた。1mLの銀塩懸濁物に0.3mLのTween20(65g/L)および0.3mLのTEMEDを添加し、その混合物を電子レンジで10秒間加熱した。銀ナノ粒子の形成を示す赤橙色が観察された。波長最大値を415nmで測定した。
【0215】
実施例B14:サッカリン酸ナトリウムによる銀ナノ粒子組成物
Tween20(1g)を20mLの脱イオン水に混入し、次いでサッカリン酸ナトリウム溶液(20ml、0.125mL)、硝酸銀溶液(20mL、0.1M)、最後にTEMED(2.0mL)を添加することによって、銀ナノ粒子を含む組成物を調製した。得られた混合物をホットプレートにて撹拌下60〜70℃で15分間加熱した。45℃付近で、色が黄色に変化し、継続的に濃くなっていった。ビーカーの底に白色沈殿がいくらか見られた。400から500nmに対して測定されたOD対lの曲線は、同様に作製され、マイクロ波処理された溶液と類似していた。波長最大値は、415nmであった。加熱方式によってOD曲線が変わることはなかった。
【0216】
実施例B15:オレイン酸ナトリウムによる非水性銀ナノ粒子組成物
Tween20(0.3mL、65g/L)とオレイン酸ナトリウム(1mL、0.125M)とTEMED(0.3mL)を混合し、最後に硝酸銀溶液(0.75mL、0.1M)を添加し、溶液が黄色になるまで電子レンジで短時間加熱することによって、銀ナノ粒子を含む水性組成物を試験管の中で調製した。OD最大値は415nmに観察された。その水性組成物にトルエン(2から3mL)を添加し、掻き混ぜて、内容物を均質にし、それを2〜3週間静置したところ、すべてのトルエンが蒸発した。
【0217】
試験管の中の水性組成物にクロロホルム(3mL)を添加し、振り混ぜて、銀ナノ粒子を非水性クロロホルム層に抽出した。クロロホルム層は、多量の銀ナノ粒子を得るとコハク褐色になった。希釈後のクロロホルムのODを300から550nmに対して測定した。最大値は420nmに見られ、曲線の形状は、水性組成物の曲線と同じであった(図1参照)。まだ銀ナノ粒子が豊富な水性液体をクロロホルム(3mL)の第2の部分で再抽出して、より多くの銀ナノ粒子を回収した。サテン様仕上げを有するポリプロピレンの1”×1”の織物を第2のクロロホルム層に浸漬し、迅速に取り出し、空気中に数分間放置して乾燥させた。織物の色は、白色から薄い黄/橙色に変化した。黄色ブドウ球菌に対するZOIアッセイにおいて、抗菌性を有することがわかった。
【0218】
実施例B16:ヒダントインによるB16銀ナノ粒子組成物
銀ナノ粒子を含む組成物を以下のようにしてヒダントインから調製した。米国特許出願第2003/0186955号の実施例2に開示されている方法に従ってヒダントイン酸銀を最初に調製した。次に、ヒダントイン酸銀(0.05g)と脱イオン水(6.7mL)とTween20溶液(3mL、16.7g/L)を試験管にて混合し、TEMED(0.3mL)を添加し、内容物を掻き混ぜ、電子レンジで30秒間加熱して、黄褐色混合物を生成させた。420nmに混合物のOD最大値が存在することにより、銀ナノ粒子の存在が確認された。
【0219】
実施例B17:非水性銀ナノ粒子組成物
銀ナノ粒子を含む非水性組成物を以下のようにして調製した。Tween20に代えて、オレイン酸ナトリウム(3.3mL、4g/L)を安定剤として使用した。それを試験管中でサッカリン酸ナトリウム(0.3mL、0.125M)と混合した。この混合物に、硝酸銀(0.3mL、0.1M)を添加し、次いで水(6mL)を添加した。最後に、TEMED(0.17mL)を添加した。得られた混合物を20秒間マイクロ波処理して、それを加温し、ナノ粒子形成を開始させた。ごく薄い色が観察された。ビーカーに仕込まれた内容物をホットプレートで加熱して、水をすべて蒸発させた。ほとんどの水を蒸発させた後に、ビーカーを冷却し、25mLのクロロホルムを添加して、銀ナノ粒子を抽出した。クロロホルムは黄色を呈し、銀ナノ粒子の存在を示していた。OD最大値は、約430nmの波長に観察された。
【0220】
実施例B18:非水性銀ナノ粒子組成物
銀ナノ粒子を含む非水性組成物を以下のようにして調製した。最初に、銀ナノ粒子を含む水性組成物を実施例B7と同様の割合で作製し、蒸発させて、粘性褐色塊体とした。この塊体にクロロホルム(2〜3mL)を添加して、銀ナノ粒子を抽出した。すぐにクロロホルム層が黄褐色になった。OD最大値は415nmで、形状においては、OD対波長曲線は、実施例B15と類似していた。得られたクロロホルム層の数滴をガラススライドに展開した。乾燥すると、膜は光沢を与え、ターコイズ色を呈した。
【0221】
実施例B19:CMCを安定化剤とする水性銀ナノ粒子組成物
0.05gのポリマーを水(10mL)に溶解させることによって、CMCナトリウム塩を調製した。試験管内で、上記CMC溶液(1mL)とサッカリン酸ナトリウム(1mL、0.125M)と硝酸銀(1mL、0.1M)を混合した。最後に、TEMED(0.1ml)を添加し、混合物を掻き混ぜた。ナノ粒子の形成を示す溶液の黄色変化が数分間以内に観察された。溶液の色が経時的に濃くなっていった。溶液は、また、緑色蛍光を呈していた。OD最大値は、438nmに観察された。
【0222】
実施例B20:CMCを安定化剤とする水性銀ナノ粒子組成物
上記の実施例B19において、サッカリン酸ナトリウムの代わりにアセスルファムカリウム塩溶液を使用し、調製を繰り返した。ここでも、溶液中の銀ナノ粒子による黄褐色が観察された。ODは記録しなかった。サッカリン酸ナトリウムの代わりにアセスルファムカリウムを使用して調製を繰り返した。得られた溶液は、この場合も、ナノ粒子の存在を示す黄褐色を呈した。
【0223】
実施例B21:アルギン酸プロピレングリコールを安定化剤とする水性銀ナノ粒子組成物
上記の実施例B19において、CMCナトリウム塩の代わりにアルギン酸プロピレングリコールを使用し、調製を繰り返した。OD最大値は440nmであった。溶液は、また、緑色蛍光を呈したが、実施例B19より強度が低かった。
【0224】
実施例B22:様々な界面活性剤を安定化剤として用いた水性銀ナノ粒子組成物
Tween20、Tween80およびステアリン酸ポリオキシエチレンを使用して、約65g/Lの濃度で界面活性剤原液を作製した。
【0225】
銀ナノ粒子を含む溶液を調製するために、所定の界面活性剤溶液(0.3mL)と、アセスルファムカリウム塩溶液(1mL、0.125M)と、硝酸銀溶液(0.75mL、0.1M)を混合し、TEMED(0.3mL)を添加した。溶液を、黄色になるまで電子レンジで短時間加熱した。OD対波長データを界面活性剤毎に記録した(図18)。最大値に小さな差が見られたが、すべて415〜425nm範囲におさまっており、ナノ粒子径が一定していることを示していた。
【0226】
実施例B23:トリエタノールアミンを使用して調製された銀ナノ粒子組成物
硝酸銀溶液とサッカリン酸ナトリウム溶液の等モル混合物からサッカリン酸銀粉末を調製した。サッカリン酸銀粉末(30〜35mg)をTween20溶液(1ml、16.7g/L)に添加し、次いで水(4mL)を添加した。この混合物にトリエタノールアミン(0.225g)を添加し、内容物が黄色に変わるまでマイクロ波で短時間加熱した。
【0227】
上記組成物を使用して、抗菌特性を有する様々な物品を調製した。55℃で2時間浸漬し、洗浄することによってナイロン繊維を作製した。上記組成物に1分間浸漬し、次いで脱液し、エタノール(10mL)に5分間浸し、再度脱液し、55℃で15分間乾燥させることによって、木綿ガーゼおよびサテン布(2”×2”)を調製した。
【0228】
実施例B24:ポリビニルアルコール(PVA)を使用して調製された銀ナノ粒子組成物
PVA溶液を脱イオン水で調製した(0.02〜00.03g/10mL)。PVA溶液(1mL)、サッカリン酸ナトリウム(1mL、0.125M)および硝酸銀(1ml、0.1M)を一緒に掻き混ぜた。TEMED(0.1ml)を添加し、再び掻き混ぜた。内容物を電子レンジで短時間加熱した。溶液は灰褐色になったが、溶液のOD最大値は455nmであった。
【0229】
実施例B25:ポリアクリルアミド(PAA)を安定剤として用いた銀ナノ粒子組成物
実施例B24と同じ試験を行ったが、PVAの代わりに、ポリアクリルアミドを使用した。PAAを濃縮物として作製し、0.005gの濃縮物を1mLの水に添加した。組成物のOD最大値は450nmであり、その色は褐色であった。
【0230】
実施例B26:ポリビニルピロリドン(PVP)を安定剤として用いた銀ナノ粒子組成物
実施例B24において、PVPの代わりにPVP溶液(0.25g/水10mL)を使用して、試験を繰り返した。得られた組成物は、加熱後に黄色ではなく緑色になった。OD最大値は、435nmに見られ、スペクトルはTween20を使用した場合ほどシャープではなく、粒子分布が広いことを示していた。
【0231】
実施例B27:ソルビン酸カリウムを安定剤として用いた銀ナノ粒子組成物
ソルビン酸カリウムの溶液(0.1M)を調製した。このソルビン酸塩溶液(1mL)にTween20(1mL、16.7g/L)を混合し、硝酸銀(1mL、0.1M)を一緒に掻き混ぜた、TEMED(0.005mL)をさらに添加し、再び掻き混ぜた。試験管の内容物を短時間加熱すると、溶液の色が橙黄色に変化した。組成物のOD最大値は、410nmで、サッカリン酸塩をベースとした組成物の値より幾分小さかった。本実施例は、二重結合含有分子(ソルビン酸銀)を銀源として使用できることを示している。
【0232】
実施例B28:オレイン酸ナトリウムw/o Tween20を用いた銀ナノ粒子組成物
オレイン酸ナトリウム(4〜5mg)を試験管中で1mlの水に溶解させた。それにサッカリン酸ナトリウム(1mL、0.105m)および硝酸銀(1mL、0.1M)を添加して、塊状の白色沈殿を与えた。試験管にTEMED(0.2mL)を添加し、短時間マイクロ波処理して、内容物を加熱した。加熱すると、色が黄色に変化して、ナノ粒子が形成されていることを示していた。最大値のODは記録しなかった。
【0233】
実施例B29:銀−TEMED錯体を含む銀組成物
Tween20溶液(1mL、16.7g/L)と硝酸銀(1mL、0.01M)を試験管にて混合した。次いで、TEMED(0.1mL)を添加して、マイクロ波で短時間加熱して、銀を管壁に金属膜として付着させた。紫色の金属膜で被覆されたガラス表面の領域は、湾曲した界面ではなく平坦な水/空気界面によって示されるように、水濡れ性が低下した。
【0234】
実施例B30:ソルビン酸塩を含む銀組成物:安定性に対するエタノールの影響
水、および水66%−エタノール33%の混合物(希釈率1:100)で希釈することによって実施例B27の銀ナノ粒子組成物の溶液を調製した。新鮮な溶液、および5日後の水−エタノール系溶液の紫外可視スキャンを記録した。スペクトルの変化は観察されず、銀ナノ粒子のエタノールに対する耐性を示していた。
【0235】
実施例B31:銀ナノ粒子組成物の調製における還元剤としての異なるアミンの使用
Tween20溶液(1mL、16.7g/L)と、サッカリン酸ナトリウム(1mL、0.125M)と、硝酸銀(1mL、0.1M)を一緒に掻き混ぜた。異なるアミン(0.1mL)を添加し、再び掻き混ぜた。必要に応じて、内容物を電子レンジで短時間加熱した。溶液のOD最大値を記録した。
【0236】
以下のアミン、N,N,N’N’テトラメチルブチレンジアミン、エタノールアミン、シクロヘキシルアミン、ジプロピルアミン、トリエタノールアミンを試験した。
【0237】
これらのうち、ジプロピルアミンおよびトリエタノールアミンは、順調に黄色の溶液を与え、415nmに同じ溶液ODを有し、曲線のスペクトル形状が実質的に同じである銀ナノ粒子の存在を示していた。
【0238】
実施例B32:粉末形態のサッカリン酸銀を用いた銀組成物
サッカリン酸銀粉末(15〜20mg)をTween20溶液(1mL、16.7g/L)に添加し、次いで水(2mL)を添加した。この混合物にトリエタノールアミン(0.1g)を添加し、内容物が黄色になるまでマイクロ波で短時間加熱した。溶液のOD最大値は420nmであり、紫外可視スペクトルは、サッカリン酸銀のインシチュでの形成によって作製された組成物と同じであった。
【0239】
上記の銀ナノ粒子組成物に55℃で2時間浸漬し、洗浄することによってナイロン繊維を作製した。上記組成物に1分間浸漬し、次いで脱液し、エタノール(10mL)に5分間浸し、再度脱液し、55℃で15分間乾燥させることによって、木綿ガーゼおよびサテン布(2”×2”)を調製した。それらの繊維は、抗菌活性を示した。
【0240】
実施例B33:フマル酸塩を含む銀組成物
フマル酸ナトリウムを以下のようにして作製した。0.116gのフマル酸を試験管内の10mlの水に添加した。さらに、2モル当量の炭酸ナトリウムを添加して、フマル酸ナトリウムを形成した。フマル酸ナトリウムを単離せずに、1mlの上記フマル酸ナトリウム溶液と、Tween20溶液(1mL、16.7g/L)と、硝酸銀(1mL、0.1M)を順次混合し、次いでTEMED(0.1mL)を添加した。試験管内容物をマイクロ波で短時間加熱して、OD最大値が420nmの黄色溶液を生成させた。Tween20を使用しなければ、溶液は紫色であり、異なる粒径の銀ナノ粒子が形成しうることを示している。
【0241】
実施例B34:ゲルを含む銀ナノ粒子
カップ中で、グリセロール(5.0g)を秤量し、カルボキシメチルセルロース(0.5g)を添加し、手で混合して、セルロース粒子にグリセロールを均一に塗布した。温脱イオン水(40mL)をカップに添加し、得られた塊体を混合して、滑らかなゲルを生成させた。実施例B23のトリエタノールアミン(0.1g)から作製された銀ナノ粒子組成物を添加し、均一になるまで混合して、黄色ゲルを生成させた。
【0242】
ゲル(10g)の一部に、クエン酸と水を1gずつ添加して、爪真菌症の治療に使用することが可能である抗菌性ゲルを与えた。
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本発明は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている、2004年7月30日に出願された米国仮特許出願第60/592,687号の優先権を主張するものである。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、銀ナノ粒子を含む抗菌組成物、それらの製剤、該組成物の表面に対する塗布、およびデバイスの作製方法に関する。
【背景技術】
【0003】
銀は、細菌、ウイルス、酵母菌、真菌および原虫の細胞において通常利用できる様々な求核基に不可逆的に結合する銀イオンの能力からその広範な抗菌活性を導く。細胞成分に対する結合は、通常の再生および成長サイクルを阻害し、細胞の死をもたらす。銀およびその化合物は、その強力な活性を利用して、過去数十年にわたり、包帯、ヒドロゲル、親水コロイド、クリーム、ゲル、ローション、カテーテル、縫合糸および絆創膏などの様々な創傷ケア製品に採用されてきた。
【0004】
抗菌製品における銀の好ましい形態は、該元素の金属形態自体は医療に効果的な微量作用が欠如しているため、その化合物または塩であった。該化合物または塩は、水性媒体と接触すると、解離して、抗菌作用に利用可能な銀イオンを生成する。銀化合物の大多数は、感光性または感熱性でもあるため、安定した商品におけるそれらの利用が困難になっている。あるいは、銀金属は、真空スパッタ法または電気メッキ法によって抗菌カテーテルおよび創傷包帯上に薄膜として蒸着されて、抗菌表面を形成した。銀金属含有製品の機構は、その表面に形成する銀酸化物を含むものと考えられる。弱水溶性である銀酸化物は、流体に接触した後に治療有効量の銀イオンを放出する。蒸着された銀は、表面積が小さく比較的少ないイオンを放出するため、限定された抗菌活性しかもたらすことができず、効果的で長期間持続的な放出は極めて困難でありうる。持続的な放出活性は、カテーテル処置および疼痛管理などの処置を受ける患者の長期的なケアに必要とされる。製品への銀装填量を増加させることによってこの困難さをある程度克服することができるが、この手法は、哺乳類細胞に対する細胞毒性のリスクを高め、製品に接触する部分の着色をしばしば引き起こす。また、当該デバイスの製造は、特殊な設備を必要とする処理である真空スパッタリングを必要とするため、高コストでもある。
【0005】
装填量を増加させずに銀金属担持表面からの銀イオン放出を向上させる1つの解決法は、単位質量ベース当たりで利用可能な銀の表面積を大きくすることである。当該手法は、粒径がナノメートル範囲に近づくにつれて表面積を非常に大きくすることを可能にする。最近では、何人かの発明者が、粒径がナノメートルのオーダに近づいている乾燥ナノ粒子の形態の銀の製造を主張している。銀ナノ粒子は、単位体積(または質量)当たりの表面積がその直径に逆比例するため、単位質量当たりの面積が非常に大きくなる。大きい表面積は、水に接触すると銀イオン放出を向上させる表面酸化層をもたらす。残念なことに、乾燥状態の粉末として非常に細かい純金属イオンは、空気に触れると、潜在的な火災危険性を有することが知られている。空気との接触は、発熱性が高い非常に高速の酸化反応により、粒子を発火させる。
【0006】
銀粒子に対する他の方法は、真空下における純金属の熱的蒸発に基づくものであった。それらの方法は、多量のエネルギーを消費し、高価な設備を必要とし、高度な整備を必要とし、製造された粒子は、火災および爆発のリスクを低減するために何らかの形態の表面の不動態化を必要とする。不動態化などの追加的な工程は、コストを増大させ、抗菌活性に悪影響を及ぼし、恐らくは最小限の阻害レベルを達成するためにより多くの銀装填量が必要となる。異なった複数の環境における銀ナノ粒子の影響についてはほとんど知られていないため、乾燥法は、製造要員に対する曝露危険性がある。さらに、乾燥形態で製造された銀ナノ粒子は、凝集塊として存在するため、多量のエネルギーを消費する再懸濁を必要とするが、それは十分に効果を発揮することがほとんどない。
【0007】
要約すると、既知の方法に用いられる乾燥法もウェット法も、様々な表面に対して抗菌性を容易に与えるために使用される銀ナノ粒子組成物を提供する、簡単で、低コストで、危険性のない方法を提供するものではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、大量生産に拡張可能であり、比較的危険性のない化学物質を利用する方法によって製造できる銀ナノ粒子を含む抗菌組成物が必要とされている。また、抗菌ナノ粒子の実用性は、それらが、組成物に組み込むことができる、あるいはデバイスの形状および輪郭に関係なく表面に直接塗布できる形態であれば高められる。当該形態は、容易に分配され、またはデバイスのための浸漬浴として使用される流体になる。さらに、当該抗菌組成物は、医療デバイスの表面などの表面に到達するのが困難になることを含めて、処理された表面に抗菌作用を与え、銀を浪費しない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、流体環境で形成された安定な銀ナノ粒子を含む抗菌組成物を含み、これらの組成物の製造および使用方法を含む。本発明の銀ナノ粒子の組成物は、一般には0.1から100nmの範囲にあり、約50nmがナノ粒子の分布の最大の部分を占める。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明による水性抗菌銀ナノ粒子組成物の紫外可視分光分析によって得られた代表的なスペクトル写真を示す図である。
【図2】溶媒がクロロホルムを含む、本発明による非水性抗菌銀ナノ粒子組成物の紫外可視分光分析によって得られた代表的なスペクトル写真を示す図である。
【図3】本発明による水性抗菌銀ナノ粒子組成物の代表的な透過型電子顕微鏡写真を示す図である。
【図4】本発明による水性抗菌銀ナノ粒子組成物の粒径分布を示す図である。
【図5】溶媒がクロロホルムを含む、本発明による非水性抗菌銀ナノ粒子組成物の代表的な透過型電子顕微鏡写真を示す図である。
【図6】溶媒がクロロホルムを含む、本発明による非水性抗菌銀ナノ粒子組成物の粒径分布を示す図である。
【図7】図に示されるように、水性抗菌銀ナノ粒子組成物が、新たに調製された(4時間)、または約11カ月間にわたって約25℃で保存された後で分析された、本発明による水性抗菌銀ナノ粒子組成物の紫外可視分光分析によって得られた代表的なスペクトル写真を示す図である。
【図8】様々なナトリウム塩から調製された本発明による様々な水性抗菌銀ナノ粒子組成物の紫外可視分光分析によって得られた代表的なスペクトル写真を示す図である。
【図9】様々なナトリウム塩から調製された、表示された陰イオンを含む本発明による様々な水性抗菌銀ナノ粒子組成物の紫外可視分光分析によって得られた代表的なスペクトル写真を示す図である。
【図10】表示された濃度(g/L)のTween20(CAS No.9005−64−5;C58H114O26;あるいはモノラウリン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタンとして知られている)を含む、様々なナトリウム塩から調製された本発明による様々な水性抗菌銀ナノ粒子組成物の紫外可視分光分析によって得られた代表的なスペクトル写真を示す図である。
【図11】0.1Mの一定濃度の硝酸銀と、表示された濃度のサッカリン酸ナトリウムとを含む溶液から調製された本発明による様々な水性抗菌銀ナノ粒子組成物の紫外可視分光分析によって得られた代表的なスペクトル写真を示す図である。
【図12】表示された濃度の硝酸銀を含む溶液から調製された本発明による様々な水性抗菌銀ナノ粒子組成物の紫外可視分光分析によって得られた代表的なスペクトル写真を示す図である。
【図13】表示された体積で添加されたTEMED(CAS No.110−18−9;C6H16O2;あるいはN,N,N’,N’テトラメチルエチレンジアミン)を含む溶液から調製された本発明による様々な水性抗菌銀ナノ粒子組成物の紫外可視分光分析によって得られた代表的なスペクトル写真を示す図である。
【図14】表示された体積で硝酸銀を添加することを含む、溶液の逆添加によって調製された本発明による様々な水性抗菌銀ナノ粒子組成物の紫外可視分光分析によって得られた代表的なスペクトル写真を示す図である。
【図15】溶媒がクロロホルムを含み、図に示されるように、非水性抗菌銀ナノ粒子組成物が、新たに調製された(4時間)、または3カ月間にわたって25℃で保存された後に分析された、本発明による非水性抗菌銀ナノ粒子組成物の紫外可視分光分析によって得られた代表的なスペクトル写真を示す図である。
【図16】本発明による抗菌銀ナノ粒子組成物を含むナイロン表面からの非放射活性(「通常」)および放射活性銀の放出量を測定する代表的な実験を示す図である。
【図17】本発明による抗菌銀ナノ粒子組成物を含むナイロン管試料における相対的生物膜形成の試験について得られた代表的な結果を示す図である。
【図18】様々な水性抗菌銀ナノ粒子組成物が、表示されたそれぞれの界面活性剤を含む溶液から調製された、本発明による水性抗菌銀ナノ粒子組成物の紫外可視分光分析によって得られた代表的なスペクトル写真を示す図である。
【0011】
水性または非水性溶媒を用いて本発明の組成物を製造することも可能である。本発明の非水性組成物は、良好な保存寿命を有し、水分に敏感な物体に抗菌性を与えるのに使用することができる。非水性組成物は、沸点が室温から熱伝導流体用の300℃を上回る温度範囲の溶媒に基づくものであってもよい。特に高濃度では非水性媒体で銀ナノ粒子を製造するのが困難であることが広く知られている。非水性銀ナノ粒子組成物は、ナノ粒子を水性組成物から非水相に抽出することによって製造することができる。本明細書に用いられているように、非水性とは、当業者が一般に理解するように、広い組成物範囲にわたって水と一般に混和しない有機媒体を意味する。非水性組成物における銀の含有量は、水性組成物の調製に際して所望量の銀を選択した後に、水性組成物の抽出を行うことによって調整できる。
【0012】
デバイスへの抗菌性適応の効果は、デバイスに付随する銀の量および形態に依存すると考えられる。例えば、複数の処理を連続的に行うこと、または所望の装填量が達成されるまで処理済みの物体を単一の組成物に継続的に浸漬することによって、デバイスの表面に対する様々な量の銀の装填を達成することができる。一般に、組成物は非粘性であるため、容易に予め形成された多くの物体に均一に塗布することができ、それらに抗菌性を与えることができる。しばしば、熱蒸着またはプラズマ蒸着法などの技術は、固有の濃度勾配により、アスペクト(長さ対直径)比が大きい薄肉管内の均一な蒸着を達成することに適さない。ナノ粒子組成物は、粘度が低く表面張力が小さく、浸透して銀を堆積させることができるため、本発明の組成物は、そのような困難に直面しない。
【0013】
本明細書における方法および組成物を用いて抗菌性にできる医療デバイスとしては、カテーテル(静脈、尿、フォーリーもしくは疼痛管理、またはそれらの変形)、ステント、腹部プラグ、栄養管、木綿ガーゼ、繊維創傷包帯(アルギン酸塩、CMCまたはその混合物、架橋または非架橋セルロースで作製されたシートおよびロープ)、発泡材、コラーゲンまたはタンパク質マトリックス、止血材、粘着フィルム、コンタクトレンズ、レンズケース、絆創膏、縫合糸、ヘルニア網、網状創傷被覆物、瘻造または他の創傷製品、ヒドロゲル、クリーム、ローション、ゲル(水性または油性)、エマルジョン、リポソーム、微小球、軟膏、粘着剤、チタニアおよび米国第4,906,466号に記載されている物質などの多孔質無機サポート、キトサンまたはキチン粉末、金属系整形移植体、金属ネジおよび板、合成織物、ナイロン織物、あるいは他の織物製造材料(絹、レーヨン、ウール、ポリエステル、アクリル、アセテート)との混合物が挙げられるが、それらに限定されず、銀ナノ粒子が含浸された繊維も本発明の対象となる。シリコーン、ポリウレタン、ポリアミド、アクリレート、セラミックおよび他の熱可塑性材料で製造された、歯科および獣医製品、ならびに非医療デバイスを含む他のデバイスを本発明のナノ粒子組成物で処理することができる。
【0014】
液体組成物から調製され得る、異なるポリマー表面または金属表面に対する様々なコーティング組成物も本発明の対象となる。当該コーティング組成物を溶媒損失によって硬化させるか、または熱もしくは放射線曝露によって硬化させることが可能である。本発明の他の態様は、本明細書に教示されている組成物と、米国第5,049,139号および米国第6,248,342号に開示され、全体が参照により組み込まれているものと同様のガラスおよびゼオライトなどの他の活性剤および抗菌剤とを含む組成物を含む。
【0015】
本発明の組成物でデバイスを処理するための異なる方法が教示される。方法は、組成物を製造し、組成物とデバイス表面を十分な時間にわたって接触させ、過剰の組成物を有するデバイスを洗浄し、デバイスを乾燥することを含む。本発明の範囲を逸脱することなく、開示された方法に対するいくつかの変更が可能である。
【0016】
デバイスを非水性銀組成物で処理することもできる。しばしば、アルギン酸塩、または繊維もしくは発泡繊維としてのCMCを含むデバイスは、水と接触すると使用不可能になるため、水性組成物を使用する処理に適さない。その代わり、浸漬法、または組成物を基体に吹き付けることによって、当該デバイスを非水性銀組成物で好都合に処理することが可能である。通常の条件下での蒸発、または減圧によって溶媒を除去すると、デバイスの表面は、銀ナノ粒子の蒸着物を担持し抗菌性を有するようになる。非水性溶媒が、ポリマーに対して非溶媒であるか、またはデバイス内に拡散して、意図する用途に適さなくするゲル化、膨張または損傷を引き起こさない限りは、非水性組成物を使用して、他のポリマーで製造された医療デバイスを処理することもできる。
【0017】
抗菌銀組成物に配合することによって、クリーム、ローション、軟膏、ゲル、シャンプー、コンディショナ、加湿剤、制汗剤の形態の医療または化粧用アモルファス製剤を容易に調製することが可能である。クリーム、ローション、ゲル、シャンプー、コンディショナ、エマルジョンおよび制汗剤などの調製物は、当業者に知られている。
【0018】
銀ナノ粒子を、医療デバイスの表面などの表面にインシチュ(in situ)で形成することができる。例えば、方法は、デバイスを浸漬させるための銀化合物の微懸濁粒子を含む懸濁液を提供し、特定時間にわたって、または銀ナノ粒子がしっかりとデバイスの表面に付着できるように、主に単分散による銀ナノ粒子へ銀化合物の全体が還元されるまで、組成物を還元剤で処理することを含む。本明細書における方法によって抗菌性が与えられたデバイスの態様は、蒸気滅菌、ETO、電子ビームおよびガンマ線照射などの一般的な方法による滅菌の最中に、抗菌活性に悪影響が及ぼされないことである。
【0019】
抗菌環境が望まれる場合、または微生物繁殖の低減、または臭いの低減が有用である場合に、本発明のナノ粒子組成物を他の組成物に使用することが可能である。例えば、銀ナノ粒子組成物を塗料、化粧品、傷からの滲出物の臭いを抑制するための創傷包帯、歯科組成物、腸もしくは血管手術用製品、口腔衛生製品、浴室製品、繊維製品、被覆剤、天然もしくは合成ポリマー粘着剤、塗料製品、ポリマーフィルム、紙、皮、ゴムおよびプラスチック品に添加することができる。糸または布のボルトなどの未完成および完成品にも抗菌性を与えることができる。
【0020】
本発明の組成物を含む銀ナノ粒子の考えられる他の用途は、オレフィンの酸化触媒、過酸化水素の触媒還元、研磨スラリー、表面からの静電気の消散、液体の伝熱性の向上、導電性の向上、高周波または同様の放射線遮蔽物の調製、および表面励起ラマン分光のための分析化学にある。
【0021】
本発明の組成物は、比較的単純な方法で製造され、水または溶媒をベースとしており、長い保存寿命(ほぼ1年間)を有し、大量に製造できるため、製造は拡張可能である。組成物の成分は、比較的危険がなく、処理表面から洗い落として、抗菌銀ナノ粒子を残すことが可能である。組成物は光学的に透明で非粘性であり、室温で長時間保存することができ、特殊な保存条件を必要とせず、露光された場合の抗退色性を有し、熱的に安定であり、酸および塩基に対してかなり安定であり、熱サイクルおよび従来の遠心分離に耐える。
【0022】
水性または非水性製剤の形の本発明の組成物は、本明細書において銀装填量と呼ばれる様々な量の銀を含むことができる。組成物の形成時に使用する銀化合物の量を決定することによって、組成物における異なる銀含有量を達成することが可能である。組成物の銀含有量を様々な方法によって調整することが可能である。銀化合物の所望の量を最初に選択するか、または既知の量の銀ナノ粒子を有する組成物を希釈することが可能である。添加する希釈液は、水を含んでもいてもよく、表面活性剤または他の混和性溶媒などの他の成分を含んでいても、いなくてもよい。当業者に既知の手段により溶媒を除去することによって組成物を濃縮することによって銀含有量を高めることができる。実際、組成物から溶媒の大半を除去し、銀ナノ粒子を凝集させることなく再希釈して、組成物を本来の体積に戻すことが可能である。
【0023】
本発明の組成物は、銀ナノ粒子、および他の銀化合物を含んでいてもよい。本発明の銀ナノ粒子を製造する元となる銀化合物は、無機または有機陰イオンを含む任意の種類の陰イオンを含んでいてもよい。当該陰イオンは、有機陰イオンであってもよく、イミド酸有機陰イオン、サッカライドおよびサッカリン酸塩などの、「Antimicrobial Devices and Compositions」という名称の、本願と同時に出願された同時係属出願に教示されているもの(ただし、それらに限定されない)を含む。
【0024】
本発明のナノ粒子は、水、または既知の、水と混和性有機溶媒との混合物であってもよい溶媒と、一般的には35%v/v未満のアルコールと、ポリマーであってもよい安定化剤、および/または界面活性剤と、銀化合物と、還元剤とを組み合わせることによって製造される。陰イオン性、非イオン性または両性界面活性剤などの、粒子の凝集を防止することが可能な界面活性剤を使用することができるが、ポリソルベート属の界面活性剤が好ましい。既知の水和性有機溶媒としては、低級直鎖(C1〜C6)または分枝のアルコール、アセトン、テトラヒドロフラン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、アセトアミドおよび他の同様の溶媒が挙げられる。溶液中でナノ粒子形成を誘発すると考えられる還元剤は、トリエタノールアミンおよびN,N,N’,N’テトラメチルエチレンジアミン(TEMED)(ただし、それらに限定されない)を含む、置換または無置換の窒素原子を有する1つまたは複数の電子供与基を含むモノマーまたはポリマー有機化学化合物を含む。
【0025】
水性銀ナノ粒子化合物をポリマーで安定化させることができる。ポリマーは、ホモポリマーまたはコポリマーであってもよく、合成物または天然物であってもよく、通常は水溶性である。安定化作用は、粒子凝集および成長を抑制するように、ポリマー鎖の存在により、立体阻害によって達成される。ポリマー安定化組成物では、一般に、界面活性剤を使用してもよいし、使用しなくてもよい。何らかの極性および水溶性を有するポリマーは、一般には、本発明の組成物での使用に好適である。ポリマーの非限定的な例は、アミドまたは置換アミド、一級、二級または三級窒素、および主鎖または側鎖におけるウレタン部である。
【0026】
一般に、本発明の組成物を製造する方法の一例は、界面活性剤または安定化ポリマーの一方を、溶液中で銀陽イオンと陰イオンに解離する塩などの化合物である銀化合物、テトラメチルエチレンジアミン(TEMED)および水と混合することを含む。この混合物を加熱して、黄色で、および紫外可視スペクトルにおいて特徴的な吸収ピークの測定値を示す銀ナノ粒子形成を開始させる。銀ナノ粒子は、零下から室温、そして非常に高温までの任意の温度で形成できる。温度と時間のバランスを用いて、銀ナノ粒子形成プロセスを制御できることが認識されるであろう。一般には、混合物の加熱により、ナノ粒子形成速度を加速することが可能である。
【0027】
処理された表面は、蒸着する銀ナノ粒子が多くなるにつれて濃くなるコハク色を呈する。本発明の態様は、銀ナノ粒子で処理された表面に過酸化水素溶液を塗布し、溶液を洗い落とし、表面を乾燥することによって、処理された表面の表面外観を白色化するための方法を含む。
【0028】
抗菌銀組成物は、抗菌特性を医療デバイスに付与する上での実用性を有するばかりでなく、パンティストッキング、ソックスおよび下着等のメリヤス製品、水着製品、ハンターおよび山歩き用の装身具、スキーウェア製品、様々なスポーツのための運動着製品(ただし、それらに限定されない)を含む品目における臭いを発する細菌を抑えることも可能であり、殺菌用途では、浴室または台所製品、加湿器用フィルター、シャワーカーテン、まな板、流し台用スポンジ、浴槽用スポンジおよび軽石等の家庭用品または消耗品に使用することが可能である。非飲料水に添加できる発泡または多孔性マトリックスを処理して水を消毒するために本発明の組成物を使用してもよい。建設業界では、家のカビおよび白カビを抑制するために、建設中の木造構造物に本発明の抗菌銀組成物を吹き付けることができる。
【0029】
本発明は、抗菌放射活性銀(例えば110mAg+)組成物、それらの調製方法、およびトレ−サとして使用できる物品におけるそれらの使用も対象とする。本発明の抗菌銀組成物は、材料化学および冶金分野に好適な乾燥銀ナノ銀粉末を製造するための出発材料にもなりうる。
【0030】
(発明の詳細な説明)
本発明は、銀ナノ粒子を含む組成物、および当該組成物を製造・使用するための方法を含む。銀ナノ粒子を含む組成物は、水溶液および非水溶液を含むことができる。組成物のナノ粒子は、通常粒径が均一であり、通常球状であり、予め作製されるかインシチュで製造することができる。組成物を使用するための方法は、抗菌特性を表面、組成物および材料に与えること、組成物および材料の臭いを抑制すること、および製造および他の用途での使用(ただし、それに限定されない)を含む。本発明の態様は、長時間にわたって抗菌性を有する医療デバイスを提供すること、および医療デバイスに塗布または処理を施して、抗菌性を与えるための方法を提供するとともに、表面に一定範囲の量の銀を与えるものである。
【0031】
本発明の組成物は、比較的危険のない化学物質から製造される。それらの操作および安全リスクは十分に確認されている。TEMEDの使用は、電気泳動におけるポリアクリルアミドゲルの調製に十分に受け入れられている。十分に注意すれば、訓練された専門家による操作および使用は安全であると見なされる。本発明の銀ナノ粒子を含む組成物は、水をベースとし、ウェット法で調製される。熱的蒸発、および乾燥銀ナノ粉末を製造する他の真空ベースの方法とは異なり、ウェット法は、銀ナノ粒子を製造するが、ナノ粒子は溶液に維持される。使用済みの組成物(医療および非医療デバイスの抗菌処理に使用された後の組成物)においても、銀ナノ粒子は、乾燥粉末のような危険な粉塵ではない。乾燥粉末は潜在的な健康リスクであり、現在でもそれらの曝露リスクはあまり十分に理解されていない。
【0032】
本発明の組成物は、通常球状で、比較的狭い粒径分布を有する、平均粒径が50nm以下の銀ナノ粒子を含む。大部分の粒子は球状であるが、他の種類の形状も形成し、本発明の組成物に存在しうる。
【0033】
ナノ粒子形成すると、銀ナノ粒子は、存在するナノ粒子の濃度に応じて、特徴的な黄色ないしは黄コハク色を与える。紫外可視分光分析で調べると、組成物は、420〜425nm付近に最大波長を有する特徴的なスペクトル(図1)を生成する。ナノ粒子の物理現象によれば、色は、5から10nmの粒径を有する球状銀ナノ粒子に伴うプラスモン共鳴帯による。銀の出発濃度を増加させた後でも、420〜425nmのピーク値は変化しない。このことは、組成物において得られた平均粒径が、銀ナノ粒子の出発濃度と比較的無関係であることを示唆している。ナノ粒子粒径が大きくなると、吸収ピークは、より大きい波長にレッドシフトする傾向がある。使用される安定化剤の種類も最大波長、ならびに平均粒径および分布に影響しうる。ポリアクリルアミドによって安定化された組成物の場合、445nmにおける最大波長は、平均ナノ粒子粒径が、ポリソルベート20によって安定化された組成物より幾分大きいことを示唆している。本発明の組成物は、紫外可視分光分析による単一ピークのみを示す。
【0034】
以下の式を用いて、単一質量に対して、本発明の銀ナノ粒子の利用可能表面積を計算することが可能である。
【0035】
表面積=6/[密度×粒径]
直径15nmの粒子に対する単一グラム当たりの利用可能な表面積は、3.81e5cm2/gmである。本発明の他のナノ粒子に対する表面積を容易に求めることが可能である。
【0036】
非水性組成物は本発明の対象となる。非水性とは、組成物の溶媒成分が、有機溶媒、すなわち塩素化アルカン、カルボン酸のエステル(酢酸エチル、酢酸ブチル)、エチレングリコールのエステル、プロピレングリコール、トルエン、キシレン、低級アルケンなどの水と混和しない溶媒のように非水性であることを意味しており、このリストは網羅的ではなく、一般的には少量の水が存在しうるが、本質的には非極性である。溶媒が水と混和しない場合であっても、水に対して限定された溶解度を有し、同様に、水も有機溶媒に対して限定された溶解度を有することになる。一般に、有機溶媒における溶解水は、5%v/v未満である。非水性溶媒は、純粋であってもよいし、二成分または多成分混合物であってもよい。例えば、溶媒は純粋なクロロホルムであってもよいし、クロロホルムと酢酸エチルの混合物(二成分混合物)であってもよいし、あるいはクロロホルムと酢酸エチルとトルエンの混合物(三成分または多成分混合物)であってもよい。さらに、溶媒は極性(非プロトン性もしくはプロトン性)または非極性であってもよい。それらは、水性銀組成物を使用できない用途に有用である。非水性組成物は、室温から、熱伝導流体用の300℃を超える温度までの範囲の沸点を有する溶媒をベースとすることができる。
【0037】
非水性組成物の例は、溶媒としてクロロホルムを含む。図2は、最大ピークが約430〜435nmにある当該組成物の紫外可視スペクトルを示す図であり、水性組成物と比較した場合のスペクトルにおけるわずかなレッドシフトが生じる。他のすべての点において、スペクトルは、水性組成物のスペクトルと同一である。吸収ピークの小さいレッドシフト(<5nm)は、出版された文献に既に報告されている(Wangら、Langmuir、Vol.14、602頁(1998年))。しかし、それは、銀ナノ粒子の平均粒径の増加によるのではなく、プラスモン共鳴帯を右側にシフトさせることができる溶媒の極性の変化の結果による可能性が高い。さらに、粒径の自発的変化も、単に、水相から非水相へ銀ナノ粒子を導入する抽出処理の結果として起こりえない。
【0038】
銀ナノ粒子のTEM顕微鏡写真を図3に示す。本発明の組成物における大多数の銀ナノ粒子は、通常球形に近いが、場合によっては平坦な面も存在しうる。示されている銀ナノ粒子は、ポリソルベート20、サッカリン酸銀およびTEMEDを利用して水性媒体で調製された。TEM画像における少なくとも100の粒子の直径を測定することによって、銀ナノ粒子の粒径分布の推定値を得た。水性媒体における銀ナノ粒子の対応する粒径分布が図4に示されており、約15nmの平均粒径を示している。図5は、非水性組成物からの銀ナノ粒子のTEM画像を示す図である。ナノ粒子を水性媒体で最初に調製し、次いで非水性溶媒、すなわちクロロホルムへ抽出した。銀ナノ粒子を含む数滴のクロロホルムを標準的な銅格子で乾燥させた。本発明の組成物における大多数の銀ナノ粒子は、通常球形に近い。図6は、平均粒径が約11〜12nmで、すべての粒子が25nm未満である非水性媒体における銀ナノ粒子の粒径分布を示す図である。非水性組成物における銀ナノ粒子の平均粒径は、水性媒体における平均粒径に極めて近い。この事実は、非水性媒体における銀ナノ粒子を、水溶液から抽出したことに留意すると驚くべきものではない。
【0039】
商業的に実用的であるために、本発明の抗菌組成物は、妥当な保存寿命を示さなければならない。図7は、新たに製造された水性組成物の紫外可視スペクトルと、組成物を室温(25℃)で約1年間熟成させた後の紫外可視スペクトルとを比較した図である。それら2つのスペクトルにはほとんど差がなく、粒径または粒径分布に変化がないことを示唆している。それらのデータは、本発明の水性組成物が優れた保存寿命を有することを明確に証明している。
【0040】
長期の保存寿命は、本発明の水性組成物のみに限定されず、非水性組成物にも広げられる。非水性組成物を紫外可視分光分析により3カ月以上にわたってクロロホルムで試験したところ、スペクトル形状またはピーク波長に変化が見られなかった。
【0041】
医療および非医療品に抗菌性を与える際の使用に加えて、水性および非水性銀ナノ粒子組成物の両方を使用して、流体ベースの組成物に抗菌特性を付与することが可能である。流体組成物の非限定的な例としては、接着剤、家庭用スプレー、米国第4,915,955号に開示され、その全体が参照により本明細書に組み込まれているような消毒溶液または組成物、屋内および屋外木製品用コーティング組成物、ならびに身体用潤滑油が挙げられる。
【0042】
本発明の組成物は、広範な量の銀を含むことができる。単に製造中に所望の量の銀化合物を使用することによって、組成物における異なる量の銀を達成することが可能である。例えば、未処理の物品が、より多数の銀ナノ粒子を含む組成物で処理されるときはより多量の銀ナノ粒子蒸着物を期待することが論理的であり、その逆も成り立つ。あるいは、より少量の銀を有する銀組成物を使用する二次処理によって、銀処理面への銀装填量の漸進的増加を達成することが可能である。特定量の銀を有する組成物を使用して、吹き付けまたは浸漬を複数回行って、物品に対する銀装填量の増加を実現することが可能である。それぞれの連続的な浸漬または吹き付けは、所望のレベルが達成されるまで銀装填量を漸増させることになる。本発明の抗菌銀組成物は、通常非粘性、または低粘性であり、表面、特にミクロンサイズの特徴を有する表面の均一なコーティングまたは接触を可能にし、それらに抗菌性を与える。
【0043】
本発明の銀ナノ粒子は、無機および有機の両方の様々な陰イオンで形成された弱水溶性銀化合物から形成される。しかし、本発明を実行する上で、高水溶性化合物でさえも使用できる。イミド酸有機陰イオンを有する銀化合物が有用であり、サッカリン酸銀を用いた多くの例が示されているが、本発明は、本明細書に開示されている方法でナノ粒子を形成する任意の銀化合物を含む。イミド酸有機陰イオンを有する銀化合物は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている、2005年8月1日に出願された「Antimicrobial Devices and Compositions」という名称の他の同時係属特許、PCT/US2005、_____の主題であり、そこに教示されているすべての化合物が本発明に含まれる。サッカリンの誘導体を有する銀化合物を好適に採用することが可能である。可溶性銀塩と、活性メチレン基を有する化合物、例えばアセチルアセトネートおよび誘導体との反応によって製造された他の銀化合物を使用することもできる。
【0044】
本発明の一実施形態において、抗菌化合物は、以下の式で表される銀化合物を含む。
【0045】
M+X(n)(式中、Mは銀であり、nは1以上の整数であり、Xは、A、BまたはCから選択され、R1およびR2は、−Pまたは−WPであり、
Wは、1から27の炭素原子を含む分枝のアルキル鎖、1〜27の炭素原子を含む直鎖アルキル鎖、2〜20の炭素原子を含むモノエーテル、および2〜20の炭素原子を含むポリエーテルのリンカーであり、
Pは、水素、ハロゲン原子、ハロアルキル、アミド、スルフェート、ホスフェート、四級アンモニウム、ヒドロキシル、ヒドロキシメチル、ホスホネート、アミノ、カルボキシル、カルボキシメチル、カルボニル、アセチル、スクシンイミジルエステル、イソチオシアネート、イソシアネート、ヨードアセトアミド、マレイミド、ハロゲン化スルホニル、ホスホラミダイト、アルキルイミデート、アリールイミデート、ハロゲン化アシド、置換ヒドラジン、置換ヒドロキシルアミン、カルボジイミド、シアノ、ニトロ、フルオロメチル、ニトロフェニル、スルホンアミド、アルケニルまたはアルキニルであり、
R3およびR4は、水素、アリールまたは置換アリール基で場合によって終端する1〜8の炭素原子を含む直鎖アルキル、1〜8の炭素原子を含む分枝のアルキル、フェニル、置換フェニル、ベンジル、置換ベンジルおよびフルオロメチルであり、
Aは、
【化1】
【0046】
の1つであり、
および
Bは、
【化2】
【0047】
の1つであり、
ここで、R1およびR2は、上述の−Pおよび−WPであり、
Wは、上述のリンカーであり、R3およびR4は、上述の通りであり、
Cは、ベヘネートまたはビス(2−エチルヘキシル)スルホスクシネートである)。
【0048】
本発明の他の実施形態は、以下の式の銀の錯体を含む。
【0049】
M+[Y−]n
(式中、Mは銀であり、nは1以上の整数であり、Yは、
【化3】
【0050】
であり、
ここで、R1およびR2は、上述の−Pおよび−WPからなる群から選択され、Wは、上述のリンカーであり、R3およびR4は、上述の通りであり、Zは、C6またはC8アルキルである)。
【0051】
本発明の他の実施形態は、以下の式の錯体を含む。
【0052】
M+[Y’−]n
(式中、Mは銀であり、Nは1以上の整数であり、Y’−は、
【化4】
【0053】
であり、
ここで、R1およびR2は、上述の−Pおよび−WPからなる群から選択され、Wは、上述のリンカーであり、R3およびR4は、上述の通りであり、Zは、アミノ、アルキルアミノ、クロロまたはHNXであり、HNXにおけるXは、アリール、ヒドロキシル、アミノ、NHC6H5またはNHCONH2である)。
【0054】
本発明の銀化合物を形成する他のリガンドは、表1に示される以下の化合物を含む。
【表1】
【0055】
ナノ粒子は、単一の銀化合物、または銀化合物の混合物から製造されうる。例えば、混合物は、高および低水溶性を有する銀化合物を含んでいてもよい。さらに、二成分混合物は、0から100%の範囲の弱水溶性銀化合物を含んでいてもよい。例えば、銀ナノ粒子を調製する際に、硝酸銀と反応するために必要とされる量に対して80%のサッカリン酸ナトリウムを添加し、次いでTEMED等を添加することができる。したがって、混合物には、硝酸銀(可溶塩)とサッカリン酸銀(弱可溶塩)が一緒に存在する。同様に、硝酸銀およびプロピオン酸銀の粉末形態を任意の所望の割合(硝酸銀が0から100%)で測り分けることが可能である。
【0056】
本発明の組成物は、溶媒を含み、溶媒は、水、または水と既知の混和性有機溶媒、安定化剤のポリマーおよび/または界面活性剤、銀化合物および還元剤との混合物であってもよい。溶媒は、水または混合物である。溶媒が、水分含有量が55%v/vから95%v/vの範囲であってもよい混合物である場合は、混合物は、低級直鎖(C1〜C6)または分枝のアルコール、アセトン、テトラヒドロフラン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、アセトアミドおよび他の同様の溶媒を含む任意の水和性有機溶媒であってもよい。使用される安定化剤が界面活性剤である場合は、ポリソルベートまたはTween(ただし、それらに限定されない)を含む界面活性剤が有用である。任意の好適な界面活性剤を使用することができる。溶液において銀ナノ粒子の形成を誘発すると考えられる薬剤である還元剤としては、三級、二級および一級アミン、三級、二級および一級ジアミン、ならびに一級アミン、二級アミンおよび三級アミン成分を有するホモポリマーまたはコポリマーが挙げられるが、それらに限定されない。アミン化合物は、脂肪族または芳香族であってもよい。同様に、脂肪族および芳香族の一級および置換アミド、およびポリマーアミド類似体を使用することも可能である。DEETとして知られるジエチルトルアミドなどの芳香族アミドを使用することも可能である。他の還元剤は、トリエタノールアミンおよびN,N,N’,N’テトラメチルエチレンジアミン(TEMED)である。ペンダント鎖または主鎖にTEMED成分または他のアミンを有するポリマー化合物を還元剤として使用することもできる。
【0057】
安定化剤は、ポリマーであってもよく、ポリマーに加えて、界面活性剤を使用してもしなくてもよい。ポリマーは、ホモポリマーまたはコポリマーであってもよく、合成、または天然由来のものでありうる。組成物における安定化剤としての使用に好適なポリマーまたはコポリマーの非限定的な例としては、アクリルアミドおよびその誘導体ならびにメタクリルアミドおよびその誘導体から形成されたポリマー、ポリアミド、ポリウレタン、特定の主鎖を有さないが、側鎖にウレタン部または三級アミン基を有するポリマー、本質的には主として極性である他のポリマー、または極性コモノマーから誘導される部分を有するコポリマーが挙げられる。例としては、アクリルアミド、メタクリルアミド、置換アクリルアミド(すなわち、−CONH2がCON(R1)2で置換されている)、置換メタクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸、メタクリル酸ヒドロキシエチル、アクリロニトリル、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸およびその(ナトリウム、カリウム、アンモニウム)塩、2−ビニルピロリドン、2−ビニルオキサゾリン、酢酸ビニルおよび無水マレイン酸等が挙げられるが、それらに限定されない。特定の考えに縛られることは望ましくないが、安定性は、粒子凝集および成長が抑制されるようなポリマー鎖の存在による立体障害によって達成されると思われる。
【0058】
本発明のナノ粒子組成物は、低pHならびに高pHでかなり安定している。抗菌銀組成物に添加できる酸は、ポリアクリル酸、酢酸、クエン酸および同様の酸などのポリマー類似体を含む有機酸であるが、10%を上回る量の硝酸を添加すると、銀ナノ粒子を溶解させ組成物を破壊することになる。10%未満の濃度の硝酸も経時的に組成物を破壊することになる。10%v/vのアンモニア溶液を添加しても、銀ナノ粒子組成物に影響はない(すなわち、色の変化は見られない)。
【0059】
ナノ粒子の製造に際して銀化合物の出発量を最初に選択するか、またはナノ粒子の製造後に組成物を希釈することによって、組成物のナノ粒子としての銀の含有量を調整することが可能である。低濃度の銀塩を使用して得られた銀ナノ粒子組成物の光学密度は、2.0にも達することができない。しかし、高濃度の銀塩溶液を用いて製造された組成物の光学密度は、極めて高く、2未満の吸光度測定に対しては非常に高い希釈率(100倍を上回る)が必要となることもある。ちょうど硝酸が溶解により銀ナノ粒子組成物を破壊しうるように、特定の水混和性溶媒を添加すると、ナノ粒子が凝集し、沈殿してしまう。当業者に既知の手段により溶媒を除去することによって、組成物を濃縮して銀含有量を高めることが可能である。実際、組成物から溶媒の大半を除去し、再希釈することで、著しい銀ナノ粒子の凝集を引き起こすことなく、組成物を最初の状態に復元することが可能である。
【0060】
本発明の組成物は、銀ナノ粒子を含むとともに、弱可溶性銀化合物を含むこともできる。ナノ粒子の調製の過程で、反応期間中に銀ナノ粒子に変換できない銀塩をインシチュで形成することができる。銀が塩の未反応痕跡として存在していても存在していなくてもよい銀組成物もやはり本発明に包括される。
【0061】
本発明の抗菌銀組成物の他の実施形態は、非水性抗菌銀組成物である。非水性媒体で安定な銀ナノ粒子を製造することが困難であることは当業者が認識している(ZeiriおよびEfrima、J.Phys.Chem.、Vol.96、5908〜5917頁(1992年))。ナノ粒子を水性組成物から非水相へ抽出することによって、本発明の非水性銀ナノ粒子組成物を調製することができる。銀を含有する非水溶液が製造されているが、研究により、それらの抗菌効果は証明されていない。非水性とは、水と非混和性溶媒との大きな比率に対して、一般に水と混和しない有機媒体を意味する。本発明の組成物の調製に使用される好ましい非水性溶媒は、塩化メチレン、クロロホルムおよび他の脂肪族および芳香族塩素化溶媒、シクロヘキサン、ジエチルエーテル、酢酸エチル、およびそれらの混合物である。水性組成物の調製における銀の適切な量を選択した後に、水性組成物を抽出し、必要に応じてさらなる適切な希釈を行うことによって、非水性組成物における銀含有量を調整することが可能である。
【0062】
本発明の1つの広い実施形態は、界面活性剤と、好ましくは(溶液中で銀陽イオンと陰イオンに解離することができる)塩である銀化合物と、TEMEDと、水との混合物を含む組成物である。これらの組成物は、本発明の抗菌銀組成物に対する前駆体組成物である。次いで、前駆体組成物には、本発明の抗菌組成物に変換するための特定の処理が施される。例えば、前駆体組成物を加熱して、黄色で示される銀ナノ粒子形成を開始させることが可能である。加熱は、電気加熱素子との直接または間接的な接触によって、IRランプによって、マイクロ波エネルギーによって、音響エネルギーによって、または他の電磁放射線の使用によって達成されうる。前駆体組成物を、強い光エネルギー(紫外線ランプ、ストロボ、水銀蒸気ランプ、ハロゲンランプ、レーザ光線等)に曝露することによって抗菌銀ナノ粒子組成物に変換することもできる。ナノ粒子が異なる形状および形態をとることができる銀ナノ粒子組成物を形成するために、前駆体組成物を採用することができる。ガラスビーズ上の銀被覆反射膜の作製における無電解メッキ用途、夜間の標識の光反射性を向上させるためのプラスチック面、および他の用途にも前駆体組成物を使用できる。本質的に水性である前駆体組成物を製造し、室温未満の温度で保存した後に、性能を低下させることなく使用できる。
【0063】
抗菌銀組成物の調製方法
異なる方法を採用して、本発明の抗菌銀組成物を調製することが可能である。方法は、
(i)界面活性剤(および/またはポリマー)、サッカリン酸ナトリウム(または好適な陰イオン)および可溶性銀塩溶液の水溶液を調製する工程と、
(ii)ナトリウム塩溶液を撹拌下で界面活性剤溶液に添加する工程と、
(iii)可溶性銀塩溶液をさらに添加して、弱可溶性銀塩を沈殿させる工程と、
(iv)三級ジアミン(TEMED)を添加する工程と、
(v)得られた溶液の温度を上昇させ、特定の時間にわたって該温度上昇を維持する工程とを含む。
【0064】
他の実施形態において、工程(v)における特定時間にわたる温度上昇後に、溶液温度を室温に戻す。所望により、溶液温度を室温以外の温度まで下げてもよい。温度を室温より高くすることも低くすることも可能である。上記実施形態において、弱可溶性銀塩は、すぐに透明な沈殿を形成できないが、これは、本発明の実施を限定するものと考えられるべきではない。上記方法の変形は、ナトリウム塩溶液と可溶性銀塩溶液の添加の順番を逆にすることを含む。さらなる変形は、工程(i)において界面活性剤の代わりに水溶性ポリマー溶液を使用し、他の工程は同じとすることを含む。
【0065】
本発明の1つの組成物においてポリアクリルアミドを安定化剤として使用する1実施形態において、調製は、
(a)所望の濃度のポリマー溶液を調製する工程と、
(b)適切な量のサッカリン酸塩などの適切な陰イオンのアルカリ金属溶液と、可溶性銀塩と、還元剤とを混合しながら連続的に添加する工程と、
(c)温度を上昇させ、特定の時間にわたって温度上昇を維持する工程とを含む。
【0066】
場合によって、溶液を加熱せず室温にて、周辺光下で24時間から7日間の期間にわたって放置して、銀ナノ粒子の形成を完了させることができる。当業者に既知の方法によって温度上昇させることが可能である。あるいは、光エネルギー源を採用して、銀ナノ粒子を形成することができる。
【0067】
本発明の非水性銀組成物の調製において、方法は、
(a)所望の銀含有量の水性銀ナノ粒子組成物を調製する工程と、
(b)その体積を減少させて、水性組成物を濃縮する工程と、
(c)前記濃縮物を非水性溶媒または溶媒混合物で抽出する工程と、
(d)抽出された銀ナノ粒子を含む非水性溶媒または溶媒混合物を回収する工程とを含む。
【0068】
上記工程(b)は、特に水性組成物の銀含有量が有意に高い場合は随意である。同様に、工程(c)は、新しい非水性媒体を使用する毎に、場合によって複数回実施されうる。この本発明の方法を実施する際の温度は室温であってもよい。
【0069】
本発明の非水性銀組成物の調製において、その分子構造に少なくとも1つの二重結合を有する液体または固体であってもよい化合物を非水性溶媒に場合によって添加することが可能である。例えば、抽出補助剤のような化合物を非水性溶媒の25%以下の量で添加して、抽出効率を向上させることができる。
【0070】
非水性銀組成物を製造するための実施形態において、二重結合含有化合物は、水性銀組成物の調製において安定化剤として機能することもできる。界面活性剤の代わりにオレイン酸塩を添加してもよい。第2の場合において、(界面活性剤の存在下で)ソルビン酸銀を形成し、次いでTEMEDを使用して、その塩をナノ粒子に変換することができる。ソルビン酸陰イオンは、2つの二重結合を有し、その根拠は、この有機陰イオンが非水相に容易に移行できることである。当該化合物は、例えば、オレイン酸塩、ソルビン酸塩、フマル酸塩または桂皮酸塩であってもよい。列記した化合物は、限定的なものと決して見なされるべきではない。得られる水性銀組成物は、銀ナノ粒子を非水性媒体に極めて効率的に移行させる非水性溶媒でより容易に抽出し、非水性環境における安定性を維持することに役立つ。
【0071】
非水性銀組成物の調製方法の改造型は、銀ナノ粒子を水性銀組成物から非水性溶媒に抽出し、次いで二重結合化合物を添加して、組成物の安定性を高める。25重量%を超えない量のこの化合物の非水性溶媒を添加することができる。二重結合化合物の非限定的な例は、オレイン酸、ソルビン酸、桂皮酸およびそれらの誘導体である。非水性媒体を抽出する際にある程度の可溶性を有するポリアセチレン、ポリビニレンおよびそれらの誘導体などのポリマー化合物を使用することも可能である。
【0072】
他の化合物を組成物に添加することができる。例えば、非水性化合物のいくつかの用途において、長アルキル鎖を有するチオールを添加して、シリコンおよび同様の半導表面の金属ナノ粒子層の形成を支援することができる。
【0073】
プロセス条件の影響
様々なパラメータが、異なる陰イオンを有する銀化合物などの組成物の特性および性能、ならびに銀塩、安定化剤および還元剤の濃度効果に影響しうる。様々な基体上へのナノ粒子の蒸着に、銀ナノ粒子を製造するための有効な方法を用いることが可能である。
【0074】
異なる陰イオンを有する銀塩
本発明の抗菌銀組成物は、調製が極めて好都合である。それらは、対応するナトリウム塩からインシチュで形成された様々な銀塩から出発して好都合に調製される。しかし、本発明の範囲を逸脱することなく利用可能であれば、銀塩を乾燥形態でそのまま使用することが可能である。使用する塩は、有機または無機陰イオンを含んでいてもよい。次いで、得られた混合物を短時間マイクロ波で加熱することによって、界面活性剤、ポリソルベート20およびTEMEDの存在下で、塩を銀ナノ粒子に還元した。ポリソルベート20(約76gm/L)、硝酸銀(0.1M)およびナトリウム塩(0.125M)の原液を調製し、Tween(登録商標)20、ナトリウム塩溶液、硝酸銀溶液およびTEMEDに対して1.2/4.0/3.0/1.2の割合で使用した。1cm経路長のキュベットにおいて組成物を水(25μlに対して水3mL)で希釈することにより、銀ナノ粒子組成物の紫外可視スペクトルをBeckmann DU−20分光光度計で測定した。脱イオン水を標準として使用した。
【0075】
表1には、対応する銀塩をインシチュで調製するために使用されたナトリウム塩が列記されている。試験した15の塩のうち、透明で安定した黄褐色の銀ナノ粒子溶液を形成できなかったのは約半分だけであった(図8)。(塩化ナトリウムからの)塩化銀は、管底にそのまま沈降した赤色または肌色の沈殿物を与えた。加えて、ホウ酸、酒石酸、炭酸、クエン酸、リン酸およびラウリル硫酸の陰イオンを有する銀塩は、安定したナノ粒子溶液を生成しなかったが、それらのスペクトルは、420nm以下にピークを示し、約10nmの粒径の銀ナノ粒子の形成を示唆していた(図9)。安定性が劣る銀塩生成溶液のうち、半分は有機陰イオンで、他の半分は無機陰イオンであり、安定したナノ粒子溶液能力を形成できないことは、有機的または無機的性質に関連しないことを示唆していた。ホウ酸、酒石酸、炭酸、クエン酸、リン酸およびラウリル硫酸の各陰イオンの銀塩を使用することは最善ではないが、抗菌組成物の調製にそれらを使用することは本発明に包括される。
【表2】
【0076】
他の重要な所見は、銀ナノ粒子を容易に形成したインシチュで形成された塩は、沈殿または堆積物形成を示さなかったことである。沈殿または堆積物を生成させなかった実施形態は、
(i)界面活性剤、サッカリン酸ナトリウム(または好適な陰イオン)および銀塩溶液の水溶液を調製する工程と、
(ii)ナトリウム塩溶液および三級ジアミン(TEMED)を撹拌下で界面活性剤溶液に添加する工程と、
(iii)可溶性銀塩溶液をさらに添加する工程と、
(iv)得られた溶液の温度を短時間で上昇させ、次いで温度を室温に戻す工程と、を含む方法を含む。
【0077】
したがって、溶液中の最後の成分としての硝酸銀を、先の成分に添加する方法は、本発明の1つの好ましい実施形態である。それぞれTween(登録商標)20、ナトリウム塩溶液、硝酸銀溶液およびTEMEDに対する1.2/4.0/3.0/1.2の出発試薬の好ましい体積比率は、ナノ粒子組成物を製造するための1つの好ましい実施形態の重要な要素である。
【0078】
視覚的には、オレイン酸ナトリウムを使用して調製されたナノ粒子溶液が最良であった。管壁に堆積物または金属銀の付着がなかった。公開された文献には、銀ナノ粒子に対するオレイン酸塩の有益な影響について報告されているため(Wangら、Langmuir、Vol.14、602頁(1998))、このことはある程度予測された。オレイン酸塩で安定化されたナノ粒子溶液は、非常に安定する傾向がある。オレイン酸塩の安定化効果は、オレイン酸塩二重結合のπ電子に対する銀の相互作用によるものであるとされてきた。
【0079】
図8および9は、様々な有機および無機陰イオンの吸光度(OD=1に正規化)と波長のプロットを示す図である。無機陰イオンのλmaxは、415nmであり(図8および表2)、それらの全幅半値(FWHM)は同様の大きさを有するが、硫酸陰イオンは、より緻密なスペクトルを示す。興味深いことには、ホウ酸および炭酸陰イオンは、硫酸塩と類似したスペクトルを示すが、ナノ粒子溶液はさほど安定していない。このことは、それらの条件下で、10nm以下の小さい粒径および狭い分布を有するナノ粒子が、これらの2つの陰イオンにより形成されるが、それらの溶液におけるイオン環境は、それらの凝集を防止できないことを示している。
【0080】
それに対して、様々な有機陰イオンから調製された銀ナノ粒子溶液は、多かれ少なかれより高い安定性を示し、特徴的な黄褐色は、健全なナノ粒子の存在を示す。それらの間には、最大スペクトルに小さな差が認められるだけであるが、スペクトルの変動は大きい(図9)。例えば、EDTA陰イオンを含む溶液は、390nmにおけるピークODおよび比較的鋭いスペクトルを示す。一方、酒石酸塩系溶液は、415nmにピークを有するが、実質的に平坦なスペクトルを表す。当該スペクトルは、銀粒子分布が非常に広いことを示している。
【0081】
表2では、ピークODが認められた波長、および図に示されている溶液のスペクトルデータから導かれたFWHM値を列記した。無機陰イオンと同様に、有機陰イオンでも415〜425nm付近にλmaxが見られる。これだけ多くの異なる陰イオンについて同じλmaxが認められたという事実は、銀ナノ粒子形成の機構が、存在する陰イオンの種類にほとんど関係ないことを示唆している。しかし、凝集挙動は、形成される銀ナノ粒子の安定性が陰イオンの種類に極めて大きく依存することを暗示している。何らかの理論に縛られることなく、本発明は、陰イオンの銀ナノ粒子との相互作用は、熱力学的に好ましい場合に安定した溶液を生成するという仮説を有する。
【0082】
同表には、スペクトル毎にFWHMが列記されている。数字は、スペクトルの幅の測定値である。FWHM数値が小さいほど、スペクトルが鋭くなる。EDTA陰イオンに対する53nmのFWHM値は、調査した公開文献を含めて、これまで見られたなかで最も小さい。
【表3】
【0083】
91nmのオレイン酸塩FWHM値は、硝酸銀から調製されたオレイン酸塩含有銀ナノ粒子溶液を広範に調査した公開文献に報告されている88nmの値にかなり近い。しかし本研究を特徴づける1つの事項は、本発明者らのFWHM値は、既に試験した溶液の10から100倍の高い濃度で銀塩から製造された溶液に対するものであるということである。類似したFWHMが認められたという事実は、そのような高い銀濃度を用いても、本発明者らの溶液ではナノ粒子の凝集が実質的に生じないことを意味する。それは、ある程度、採用された界面活性剤と還元剤の組合せの独自性を指摘するものである。
【0084】
プロセスパラメータ
安定化剤の量、反応物質の割合、還元剤の濃度および試薬添加順序を変えることによるナノ粒子溶液の品質に対する影響を調べた。
【0085】
サッカリン酸ナトリウム、硝酸銀およびTween(登録商標)20またはポリソルベート20の適切な原液を脱イオン水で調製した。一般に容認された還元剤を使用した。銀ナノ粒子を調製するために2つの方法を採用した。方法Aでは、硝酸銀とサッカリン酸ナトリウムを反応させることによって、界面活性剤の存在下でサッカリン酸銀懸濁物を最初に形成した。その懸濁物に、TEMEDを添加し、得られた混濁状混合物を電子レンジで短時間加熱して、ナノ粒子形成を完了させた。方法Bは、界面活性剤Tween20とサッカリン酸ナトリウムとTEMEDを密栓バイアル瓶中で混合して、透明溶液を形成することからなる。最後に硝酸銀溶液を添加し、バイアル瓶の内容物を電子レンジで加熱して、ナノ粒子を製造した。いずれの実験においても、マイクロ波加熱時間は、中程度の設定で10秒間とした(Oven Make:Quasar Instant Matic Cooking、1500W)。
【0086】
ナノ粒子溶液は、Beckman DU−20分光光度計にて典型的には400から500nm範囲で紫外可視スペクトルを記録することによってナノ粒子溶液の特徴を調べた。スペクトル走査については、ナノ粒子溶液を水(25μlに対して水3mL)で希釈し、1cm経路長のプラスチックキュベットに移した。脱イオン水を標準として使用した。紫外可視スペクトルの記録は、銀ナノ粒子の形成を立証するための迅速で、好都合で、容易な方法である。それは、可視領域(390から500nm)における銀ナノ粒子(粒径50nm未満)による強い吸収を利用している。強い吸収は、ナノメートルの粒径の銀粒子のプラスモン共鳴帯によるものである。しかし、当該スペクトルの証拠は、銀ナノ粒子の間接的な証拠にすぎない。
【0087】
本発明者らの試験の第1の部分では、方法Aを採用して、Tween20の濃度、サッカリン酸ナトリウムに対する硝酸銀のモル比、硝酸銀の濃度、およびTEMEDの濃度のナノ粒子形成に対する影響を調べた。表3から6には、実験の詳細が示されている。界面活性剤、サッカリン酸ナトリウム、硝酸銀溶液およびTEMEDの体積は、特に指定のない限り、10:10:10:1の割合であった。
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【0088】
Tween20濃度の影響
Tween20濃度を約5.5gm/Lから16.5gm/Lまで変化させても、色はほとんど変化せず、ナノ粒子溶液も一定していることを確認した。いずれも特徴的な黄褐色を示した。溶液中に認められた白色沈殿は、未溶解のサッカリン酸銀であった。通常は黒色であるナノ粒子凝集物による堆積物が見られなかった。
【0089】
図10は、Tween20の量が異なるナノ粒子溶液の正規化された紫外可視スペクトルを示す図である。Tween20を含まない溶液のスペクトルは測定されなかった。いずれのスペクトルもほぼ同一であり、すべての3つのナノ粒子溶液が実質的に同一であることを示唆している。スペクトル最大波長は、415nm付近にある。(対称を維持する350〜400nmの曲線を外挿することによって)値約90の全幅半値(FWHM)を推定することができ、公開文献と一致する。公開された報告書で用いられた濃度の10から100倍高い濃度である銀塩濃度を採用しても、ナノ粒子の凝集が認められなかったことは注目に値する。これは、注目に値することであり、これまでの研究者は、界面活性剤を採用した後でも、0.01Mを上回る銀濃度に対して安定したナノ粒子溶液を得ることができないことを報告していたため、予想外でもあった。
【0090】
0.1Mの銀濃度の安定したナノ粒子溶液は、たとえ約0.2%w/vの低いTween20濃度を用いても達成されることは明白である。それらのデータは、その調製方法の有効性を強調している。しかし、溶液中にTwenn20が存在しなければ、ナノ粒子が凝集して、灰緑色の沈殿を形成する。これは、出発銀濃度に関係なく当てはまるものであった。Tween20を含まないどの溶液も特徴的な黄褐色を示さなかった。
【0091】
また、Tween20濃度を増加させるように、すなわち33gm/L、49.5gm/Lおよび66gm/Lと変化させ、それに合わせてTEMED濃度も増加させた。溶液色によるナノ粒子形成の確認、および反応混合物から沈殿する堆積物の観察を続けている間に、Tween20が多くなっても溶液のスペクトル特性は実質的に同様であり(データは示されず)、ここでもプロセスの有効性を確認した。これらのデータは、界面活性剤含有量を16.5gm/Lの予定の値より大きくしても、プロセスの点で利点はないことを示唆していた。しかし、本発明の範囲を逸脱することなく、より高濃度の界面活性剤Tween20または他の安定化剤を使用することが可能である。
【0092】
サッカリン酸ナトリウム濃度の影響
硝酸銀濃度を0.1Mに保持し、硝酸塩に対するサッカリン酸塩の比率を0.025Mと1.25の間に維持するようにサッカリン酸濃度を変化させて、サッカリン酸濃度を変えることによる影響を試験した(表4)。しかし、本発明の範囲を逸脱することなく、好ましい濃度の好ましくは5倍までのサッカリン酸塩または他の陰イオン塩のより高い非限定的な比率を用いることができる。ここに指定されている比率以外の比率を用いてもよい。すべての場合において、比率が1より大きくても1未満であっても、主に未溶解のサッカリン酸銀からなる堆積物を有する黄褐色の銀ナノ粒子溶液が得られた。スペクトルは実質的に同じで(図11参照)、ナノ粒子粒径および分布の平均粒径が5〜10nmであることを示していた。
【0093】
硝酸銀濃度の影響
硝酸塩に対するサッカリン酸塩のモル比を含む他のすべての条件を同じにし、硝酸銀濃度を変えても、銀ナノ粒子スペクトルに影響はなかった(図12)。ここでも、それらのデータは、ナノ粒子粒径および粒径分布が実質的に同じであることを示していた。溶液の外観も同じ、すなわち堆積物をほとんどまたはまったく含まない黄褐色の溶液であった(表5)。これらの結果は、硝酸銀濃度を用いて、製品仕様に応じて液体組成物における最終的な銀ナノ粒子の数を変えるための基礎を与えるものであった。
【0094】
TEMED濃度の影響
上記の実験において、硝酸銀溶液に対するTEMEDの体積比は、1:10であった。ここでは、その比を2:10と4:10の間で変化させ、形成されるナノ粒子溶液の何らかの変化を観察した(表6)。視覚的には、溶液は同様であったが、TEMED濃度を高くすると、バイアル瓶の壁が紫色になるのが認められた。
【0095】
スペクトルが同一であれば、銀ナノ粒子の特徴(粒径および分布)も変化しなかった(図13)。
【0096】
試薬添加順序の影響
プロセスの点で、試薬添加順序が最終結果に重要であるかどうかを知ることが大切である。例えば、製造環境では、最後の工程で最も高価な成分を添加することが好ましい。何らかの理由で、プロセスにおける前の工程が、設備故障またはオペレータの誤りによって破棄された場合に、最後の工程を停止することができる。そのような場合に、高価な試薬を破棄しないことによって資金を節約することができる。
【0097】
上記のいずれの実験においても、サッカリン酸銀を最初に形成させる方法Aを用いた。方法Bでは、最後に、かつ量を変えながら硝酸銀を添加した。得られたすべてのナノ粒子溶液は、ほとんど、またはまったく堆積物を示さず、凝集がないことを示していた。未溶解のサッカリン酸塩沈殿は見られなかった。試験管壁にも金属銀の付着はなく、形成されたナノ粒子が溶液にとどまっていることを示していた。実施された4つの試験のうち、硝酸塩およびサッカリン酸塩溶液を3:4(図14では0.75ml)の割合で使用した試験が質的に最も良好な溶液を与えた。
【0098】
図14は、逆の添加によって調製された4つの溶液のスペクトルを示す図である。それぞれの場合において、最大波長は415nmであり、400から500nmの範囲のスペクトルの形は一致していた。1つの溶液について、400nm未満から350nmまでのODを測定して、最大値付近にスペクトル対称が存在するかどうかを観察した。グラフは、スペクトルが対称的であることを示しており、この所見は、公開された報告書と一致している。
【0099】
従来技術の銀ナノ粒子含有組成物と比較して、本発明の組成物は、紫外可視分光光度計で測定されたOD値に対してほぼ4から15倍、場合によってはより高い濃度で銀ナノ粒子を含む。このより高い銀濃度は、組成物を接触する表面により高い銀装填量を付与する能力という点において、本発明の組成物に追加的な利点を与え、本発明を従来の技術と明確に区別させる。
【0100】
プロセスパラメータ試験中に、実施された試験の多くでは、反応器、およびときには処理されたデバイス上に沈殿または堆積物が存在していた。しかし、これは、本発明を制限するものと見なされるべきではない。組成物に存在する沈殿は、形成される可溶性の低い銀塩に全面的に起因する。可溶性銀塩の出発濃度を調整することによって、または適切な希釈によって、沈殿として残留しうる弱可溶性塩の量を減少または排除することができる。
【0101】
銀ナノ粒子溶液の安定性
プロセスの観点で他の重要なパラメータは、時間の関数としての銀ナノ粒子溶液の安定性である。少なくとも数週間の安定性を証明することが極めて重要である。安定性の1つの間接的な測定は、経時的に容易に監視できる紫外可視スペクトルに変化がないことである。図7には、新たに製造されたサッカリン酸塩ベースの水性銀ナノ粒子組成物および11カ月後の同一組成物の1つの紫外可視スペクトルが示されている。この期間中、試料バイアル瓶を室温(22℃〜25℃)で保存した。新たに調製した溶液と、約1年後の保存溶液との間にさえスペクトルの変化は認められなかった。このデータは、銀ナノ粒子溶液は、優れた室温安定性を有するという知見を裏づけている。同様に、スペクトルに小さな見かけの変化が存在するが、4℃で3カ月にわたるクロロホルムベースの非水性銀ナノ粒子組成物のかなり良好な安定性を確認することができる(図15)。曲線の全体形状は、大きく変化しておらず、粒径および分布が変化していないことを示している。
【0102】
成分および組成範囲
銀ナノ粒子を含む抗菌銀組成物は、硝酸銀などの可溶性銀塩と、所望の陰イオンを有するナトリウム塩を混合する場合は、水溶液中における陰イオン交換によりインシチュで形成される銀化合物から誘導されうる。例えば、バルビツール酸銀を形成するためには、硝酸銀とバルビツール酸ナトリウムの間で交換が行われることになる。銀化合物をインシチュで形成してもよいし、最終銀化合物として提供してもよい。本発明のナノ粒子組成物の調製に際して、インシチュで形成された銀化合物の代わりに、粉末または結晶として市販されている銀化合物を使用することが可能である。本発明を実施する上で、単一化合物または混合物としての銀化合物としては、これに限定されないが、アセサルファム、炭酸アルキル、アセチルアセトネート、酢酸塩、アスコルビン酸塩、バルビツール酸塩、安息香酸塩、酒石酸水素塩、ビス(2エチルヘキシル)スルホサクシネートホウ酸塩、臭化物、炭酸塩、塩化物、クエン酸塩、葉酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、ハロゲン化物、ヒダントイン塩、置換ヒダントイン塩、ヨウ素酸塩、ヨウ化物、乳酸塩、ラウリル酸塩、シュウ酸塩、酸化物、パルミチン酸塩、過ホウ酸塩、フェノスルホン酸塩、リン酸塩、プロピオン酸塩、サッカリンおよび誘導体、サリチル酸塩、ソルビン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、スルファジアジン、硫酸塩、硫化物、スルホン酸塩および酒石酸塩が挙げられる。本発明の組成物の調製方法の他の特徴は、可溶性銀塩が、インシチュでより溶解度の低い銀塩に変換されることである。本発明の調製方法におけるより溶解度の低いサッカリン銀酸塩の形成では、過剰のアルカリ金属アルカリ土類金属サッカリン酸塩が維持される。サッカリン酸塩のモル過剰範囲は1から5の間の比率であり、好ましい比率は1.05から2.0の間であり、最も好ましい比率は1.1から1.5の間である。陰イオン交換金属塩は、銀より電気陰性度が高い陽イオンを有していなければならない。利用可能な金属陽イオンの非限定的な例は、ナトリウム、カリウム、カルシウム、リチウムであり、ナトリウムおよびカリウムが最も好ましい。可溶性銀塩の非限定的な例は、硝酸銀、クエン酸銀、酢酸銀であり、硝酸銀が最も好ましい。特に医療製品を製造する上で、生体適合性または毒性上の問題を生じなければ、任意の可溶性銀塩を採用することができる。
【0103】
本発明の抗菌銀組成物の重要な特徴は、成分濃度が広範囲に及ぶ組成物を、適合性または調合上の問題に遭遇することなく製造できることである。ナノ粒子組成物の銀含有量は、0.0001%から10%、0.1%から2%、および0.1から5%の範囲のいずれかで変化しうる。5%を上回るような高い銀含有量を有するナノ粒子組成物を調製する場合は、十分な量の界面活性剤または安定剤が維持されなければ、銀がフレークとして(凝集状態で)沈殿しうる。そのような存在は、抗菌特性に影響を与えることはなく、濾過によって除去することが可能であり、濃コハク色の銀ナノ粒子組成物が生成される。
【0104】
安定化剤は、本発明のナノ粒子組成物を維持する上で有用であり、界面活性剤またはポリマーでありうる。界面活性剤は任意の種類の陰イオン、陽イオン、非イオンまたは両性の界面活性剤でありうる。非常に広範な界面活性剤が市販されている。抗菌銀組成物に使用される安定化剤の非限定的な例は、陰イオン、非イオンおよび両性界面活性剤である。異なる種類の化合物が、各種類の界面活性剤として市販されている。ポリマーの中では、ポリアクリルアミドおよび誘導体(アクリルアミド成分、窒素原子に1つまたは2つの置換基を有するアクリルアミドを有するホモおよびコポリマー)、メタクリルアミドポリマーおよび誘導体(メタクリルアミド成分、窒素原子に1つまたは2つの置換基を有するメタクリルアミドを有するホモおよびコポリマー)、ポリアミドおよび誘導体、ポリウレタンおよび誘導体、ポリアミンおよび誘導体を使用することが可能である。安定化剤として使用される好ましい界面活性剤は、ポリソルベート、またはNNが、20、40、60および80に等しい整数であるTween NNとして知られる非イオン性界面活性剤である。
【0105】
銀含有量に対する組成物における界面活性剤または安定化剤濃度は、0.1から500の間の重量比であってもよいが、全安定化濃度は、組成物の重量の40%を超えないものとする。ポリソルベート型の界面活性剤濃度の値の割合は、一般的に組成物において5%w/v未満である。しかし、ポリマー安定化剤を使用する場合は、好ましい値は、5%w/vより大きくてもよい。より多量の安定化剤は、銀装填量がより大きい銀組成物を容易に安定化する。
【0106】
銀ナノ粒子を含む組成物の調製に関する多くの公開された試験において、還元剤の必要性が認識されている。無機還元剤が採用されているが、それらは還元力が強いために、銀ナノ粒子の形成が制御的に進行しないため、粒径の大きい粒子が生成され、粒径分布がしばしば広くなる。すべての有機塩基が、還元剤として使用された場合に、小さく均一な粒径の銀ナノ粒子を生成するとは限らない。本発明の抗菌銀組成物の調製に使用される還元剤の非限定的な例は、三級、二級および一級アミン、三級、二級および一級ジアミン、一級アミン、二級アミンおよび三級アミン成分を有するホモポリマーまたはコポリマーである。アミン化合物は、脂肪族または芳香族であってもよい。DEETとして広く知られているジエチルトルアミドなどの芳香族アミドも使用することも可能である。好ましい還元剤は、三級アミンまたはジアミンである。好ましい還元剤は、トリエタノールアミンおよびN,N,N’,N’テトラメチルエチレンジアミン(TEMED)であり、TEMEDが最も好ましい。ペンダント鎖または主鎖にTEMED成分を有するポリマー化合物を還元剤として採用することも可能である。銀に対する組成物における還元剤の量は、0.1から500の間の重量比であり、好ましい比率は2から50の間であり、最も好ましい比率は4から20の間でありうる。還元剤をそのまま、または希釈して添加することが可能である。これらの範囲は、ともに本発明に包括される。
【0107】
抗菌銀組成物のための溶媒基剤(solvent base)の非限定的な例は、水、または水が少なくとも主な成分である水系溶液である。低級アルコール(C6以下)、低級ジオール(C6以下)、THF、DMSOおよびDMF等の他の混和性溶媒を単体または水との多成分混合物として使用することも可能である。非水性溶媒またはそれらの混合物の非限定的な例は、クロロホルム、塩化メチレン、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、酢酸エチル、ジエチルエーテル、低級アルコール(C4以下)、低級ジオール(C4以下)、THF、DMSOおよびDMFである。1990年の大気清浄法に従って規定されているHAPSを含まない様々な溶媒を、本発明の非水性銀組成物の調製に利用することが可能である。
【0108】
抗菌性医療および非医療デバイス
本発明の一実施形態は、デバイスの表面をナノ粒子組成物に接触させることを含む方法を用いて抗菌性が与えられた医療デバイスを含む。医療デバイスとしては、限定することなく、カテーテル(静脈、尿、フォーリーもしくは疼痛管理、またはそれらの変形)、ステント、腹部プラグ、木綿ガーゼ、繊維創傷包帯(アルギン酸塩、CMCまたはその混合物、架橋または非架橋セルロースで作製されたシートおよびロープ)、コラーゲンまたはタンパク質マトリックス、止血材、粘着フィルム、コンタクトレンズ、レンズケース、絆創膏、縫合糸、ヘルニア網、網状被覆物、瘻造または他の創傷製品、胸部移植体、ヒドロゲル、クリーム、ローション、ゲル(水性または油性)、エマルジョン、リポソーム、軟膏、粘着剤、チタニア、およびその全体が参照により本明細書に組み込まれている特許である米国第4,906,466号に記載されている物質などの多孔質無機サポート、キトサンまたはキチン粉末、金属系整形移植体、金属ネジおよび板等が挙げられる。合成織物、すなわち銀ナノ粒子が含浸されたナイロンまたは他の織物製造材料(絹、レーヨン、ウール、竹、ポリエステル、アクリル、アセテート)との混合物をベースとした織物は、本発明の対象となる。シリコーン、ポリウレタン、ポリアミド、アクリレート、セラミック等、および医療デバイス業界で使用される他の熱塑性の材料で製造され、本発明の液体組成物を使用して銀ナノ粒子が含浸された、歯科および獣医製品を含む医療デバイスおよび非医療デバイスも本発明に包括される。液体組成物から調製されうる、異なるポリマーまたは金属表面に対する様々なコーティング組成物も本発明に包括される。当該コーティング組成物を溶媒損失によって硬化させるか、または熱もしくは放射線曝露によって硬化させることが可能である。本発明の他の態様は、本発明の抗菌液体組成物と、米国第6,248,342号および米国第5,049,139号に開示され、その全体が参照により本明細書に組み込まれているのと同様のガラスおよびゼオライトなどの他の抗菌剤との配合物である。
【0109】
異なる方法により、本発明の抗菌銀組成物でデバイスを処理することによって、本発明の医療および非医療デバイスを製造することが可能である。本発明の1つの開示された方法は、前記組成物を液体の形態で製造する工程と、ナノ粒子を蓄積させるのに十分な時間にわたって前記組成物とデバイス表面を接触させ、次いで余剰の前記組成物を洗い落とす工程と、デバイスを乾燥させる工程とを含む。開示された方法の改造型は、最初に材料の表面を乾燥させ、次いで表面を洗浄して、余剰物を除去することを含むことができる。接触の方法は、デバイスを前記組成物に浸漬させるか、または組成物をデバイス上に吹き付けるか、またはポリマー溶液と前記組成物の配合物を塗布するものであってもよい。開示された方法の変形を採用して、異なる装填量の銀を管の表面に付着させることが可能である。例えば、最初に、1レベルの銀装填量を管の全長に対して塗布することが可能である。次いで、必要に応じて、管の2/3の長さに対して第2の塗布を行い、管の1/3の部分のみを処理し、3つのレベルの銀装填量を有する管とすることができる。この手法を用いて、銀装填量の任意の特定の付着パターンを達成することが可能である。平坦な材料に対して同様の手法を実施し、全領域に対して異なる銀装填量パターンを形成することが可能である。3つのレベルの銀装填量を有する本発明の一実施形態は、シャワーカーテンなどの浴室製品でありうる。当該製品では、下部に最も高いレベルが装填され、中間部に中間レベルが装填され、上部に銀の最も小さいレベルが装填されうる。当該銀をベースとしたカーテンは、カーテン上のカビおよび白カビの形成を防止することになる。
【0110】
上記開示された方法のさらに他の改造型は、表面に対する銀ナノ粒子の接着を向上させる薬剤でデバイス表面を予備処理するか、または表面を下塗り(prime)して、表面に吸着する銀塩アミン錯体を還元させることにより、銀ナノ粒子形成を促進させる工程を含む。例えば、g−アミノプロピルトリエトキシシランまたは同様の種類の接着性向上剤、好ましくは極性化合物を使用することが可能である。他の状況において、塩化スズの水溶液で処理することによって表面を下塗りし、水で洗浄し、乾燥させた後に水性銀ナノ粒子組成物で処理し、洗浄し、乾燥させて、表面に対する銀付着を完了することが可能である。塩化スズの代わりに、金、白金、パラジウム、銅化合物などの他の薬剤を使用することが可能である。
【0111】
以上に開示した本発明の方法の重要な特徴は、非常に小さいレベルの銀装填物を表面に均一に付着させることである。表面は、平坦な領域を含んでいてもよいし、球、円筒(中実または中空)に属していてもよく、ナノメートルサイズの特徴またはミクロンサイズの特徴を有することができる。本発明の対象となる表面銀装填レベルは、0.1μg/cm2から100ug/cm2であり、0.5ug/cm2から50ug/cm2が好ましい範囲であり、5ug/cm2から30ug/cm2が最も好ましい範囲である。
【0112】
親水性発泡体、シート包帯、織物、ガーゼなどの抗菌性医療デバイスを調製する方法は、包帯を抗菌水性組成物に浸漬する工程と、余剰の液体を排出するか、または吸い取る工程と、次いでエタノール、イソプロパノールまたはTHFなどの第2の非水性液体に、銀ナノ粒子を不安定化させるのに十分に効果的な時間にわたって再度浸漬することによって、銀ナノ粒子を永久的に基体に付着させる工程と、余剰の液体を吸い取る工程と、最後に基体デバイスを乾燥させる工程とを含む。該方法の改造型は、抗菌銀ナノ粒子組成物を成分の出発混合物に添加して、デバイス(例えばポリウレタン系発泡体)を調製することを含むことができる。
【0113】
方法は、予め混合された組成物(まだ温度上昇されていない組成物)の液体層または膜を所望の表面に形成し、次いで既知の方法を用いて液体膜または層の温度を迅速に上昇させて、抗菌性表面を形成するためのナノ粒子が不可逆的に接着する表面付近に銀ナノ粒子の形成を開始させることを含むことができる。温度を迅速に上昇させる手段は、音響放射、マイクロ波放射およびIR放射、または他の電磁放射を含むことができる。オーブンのような環境によって熱エネルギーを供給することも可能である。
【0114】
医療デバイス、特に(寸法保全性を失うことなく)より高い温度に耐えうる医療デバイスに抗菌性を与えるための開示されたさらに他の方法は、予備混合組成物を調製する工程と、医療デバイスを均一の温度まで加熱する工程と、予備混合組成物をデバイスに吹き付け、またはそれにデバイスを浸漬して、液体膜における銀化合物の迅速な還元を開始させる工程と、不可逆的に接着する銀ナノ粒子にデバイスを接着させる工程とを含む。デバイスを浸漬する場合は、次いでデバイスを浴槽から取り出して、液体膜を乾燥させ、デバイス表面を水または他の溶媒で洗浄する。加温されたデバイスに吹き付ける場合は、次いで液体がその表面から蒸発除去されることになる。表面を水または同様の溶媒で洗浄することが可能である。洗浄液は、純粋の水であってもよいし、界面活性剤、補助剤または錯化剤などの添加剤を含んでいてもよい。
【0115】
特定の親水性ポリマーに抗菌性を与えるための本発明の方法の改造型が必要とされることもある。例えば、シリコーンポリマー表面は、水性銀組成物に浸漬することによって容易に抗菌性になりえない。1つの開示された実施形態は、シリコーンポリマーを(水和性も有する)膨張性溶媒に浸漬して、孔に膨張性溶媒を効果的に満たす工程と、膨張したシリコーンポリマー基体を素早く移動させる工程と、それを本発明の水性銀組成物に特定時間浸漬して、穴の内部で溶媒の交換を生じさせる工程とを含む方法を含む。結果として、水性組成物からの銀ナノ粒子を孔に導入することで、シリコーンポリマー表面に抗菌性を与える。
【0116】
本発明の医療デバイスまたは非医療デバイスを非水性銀組成物で処理することも可能である。アルギン酸塩またはCMCを繊維または発泡体繊維として含むデバイスは、水を多く含む組成物に接触させた後は使用できなくなるため、水性組成物を使用する処理にしばしば適さない。その代わりに、浸漬法、または組成物を基体に吹き付けることによって当該デバイスを非水性銀組成物で好都合に処理することが可能である。通常の条件下で、または真空による蒸発によって溶媒を除去した後に、デバイスの表面に銀ナノ粒子を含浸させ、抗菌性にする。非水性溶液が該当するポリマーにとって非溶媒であり、デバイスに拡散し、膨張を引き起こさなければ、他のポリマーから製造された医療デバイスを処理するために非水性組成物を使用することも可能である。膨張が有害にならない状況においても非水性銀ナノ粒子組成物を使用することができる。例えば、PTFEフィルムを銀ナノ粒子のクロロホルム溶液に短時間浸漬することによって、それらに抗菌性を与えることが可能である。当該溶液を吹き付けて、淡黄色のPTFEを作製することも可能である。
【0117】
本発明のさらに他の際だった特徴は、医療デバイスの表面に銀ナノ粒子をインシチュで形成する方法である。例えば、1つの開示された実施形態は、銀化合物の微分散粒子を含む表面被膜を設ける工程と、特定時間にわたって、または銀化合物の全体が、粒径が均一に分散された銀ナノ粒子に還元されるまで、被覆表面を還元剤で処理する工程とを含む抗菌性表面の形成方法を含む。当該方法に使用できる銀化合物の、好ましく非限定的な例は、サッカリン酸銀である。特に室温で還元を行うための好ましい還元剤は、TEMEDである。限定するものではないが、この方法には室温が好ましいが、本発明から逸脱することなくより高い温度を採用することが可能である。特にTEMEDまたは同様に列記されたアミン化合物で還元することによって、銀ナノ粒子組成物をポリマー被膜において、またはセラミック、粘度、ゼオライト、アルミナ、シリカ、微粉砕銀化合物を有するケイ酸塩、およびサッカリン酸塩などの多孔性マトリックスにおいてインシチュで形成することが可能である。
【0118】
デバイス表面に抗菌性を与える本発明の調製方法を用いると、処理条件に応じて異なる銀装填量を与えることが可能である。しかし、商業的プロセスは、銀装填量が仕様に合致していることを求める。銀装填量が上限仕様値を上回っている場合には、その製品バッチは拒絶され、著しいコスト増をもたらしうる。そのような場合には、その製品バッチを再処理して、銀装填量を仕様内におさめることが望ましい。過剰の銀ナノ粒子が含浸されたデバイス表面を再処理するための本発明の1つの開示された方法は、
(a)0.5%から15%の硝酸の溶液を調製する工程と、
(b)表面を溶液に浸漬することによって、特定時間にわたって前記硝酸溶液でデバイス表面を処理する工程と、
(c)デバイス表面を脱イオン水で十分に洗浄し、乾燥させる工程とを含む。
【0119】
この方法は、含浸された銀を小さい部分に分けて選択的に除去することが可能であり、銀をデバイス表面から完全に落とす、または製造装置を洗浄するために利用することも可能である。この方法を用いて、処理表面から銀を落として、銀ナノ粒子を担持するパターン化された表面を形成することも可能である。
【0120】
本発明の他の実施形態は、銀が付着した抗菌性医療および非医療デバイスのコハク色または黄褐色を改変して、それらの美観を向上させるための方法を開示する。本発明の方法のさらに他の特徴は、銀の減少を生じることなく、銀ナノ粒子担持表面のコハク色の均一な退色をもたらすことができることである。過酸化物溶液は、容易に浸透し、表面の大部分を濡らすことができるため、ミクロンサイズの物体が形成されたものに特有の、非常に到達しにくい表面であっても容易に処理することが可能である。本発明の方法は、
(i)適切な濃度の過酸化水素水溶液を調製する工程と、
(ii)特定時間にわたって、銀ナノ粒子を含むコハク色の表面を処理する工程と、
(iii)処理溶液を脱イオン水で完全に洗い落とし、表面を乾燥させる工程とを含む。
【0121】
処理溶液における過酸化水素濃度は、3重量%程度から30重量%の範囲とすることができる。表面を処理用液に接触させる時間は、溶液における過酸化水素濃度によって決まることになる。例えば、コハク色の退色速度は、過酸化水素濃度が低いと遅くなり、高いと速くなる。接触持続時間も製品仕様に応じて決まる。製品が、銀含有製品として銀を含有しない製品と区別可能であることが必要な場合は、表面に薄い黄色を残すように過酸化物処理を終了させることが望まれることもある。過酸化物溶液のための溶媒としての水に加えて、少量の水和性溶媒(ただし過酸化物と反応しない溶媒)を添加することができる。
【0122】
本発明の範囲を逸脱することなく、窒素などの不活性担体を含む、または含まない蒸気として過酸化水素を供給して、処理すべき表面と接触させることができる。銀ナノ粒子を含む表面の過酸化物処理に室温より高い温度および低い温度を用いることも本発明に包括される。過酸化物処理による退色を増進するための超音波エネルギーを使用するといった他の方法を採用することも可能である。適切なマスキングにより過酸化水素蒸気または水溶液によって、銀ナノ粒子を担持する表面をパターン化することは、本発明に包括される。
【0123】
それを用いて、消毒するために非飲料水に添加するだけでよい発泡体または多孔性マトリックスを作製することができる。微量の銀を含む水は味がないため、当該製品は、現在のヨウ素系製品よりもキャンパーにとって魅力的でありうる。建設業界では、家のカビの抑制のために、建設中の木造構造物に本発明の抗菌銀組成物を吹き付けることができる。
【0124】
本発明は、抗菌放射性銀(110mAg)組成物およびその調製方法をも対象とする。これらの組成物の使用に際して、抗菌特性は付随的な特性でありうる。これらの組成物を使用して、110mAgナノ粒子を含む放射性トレーサーを調製することが可能である。これらの組成物の1つの用途は、110mAgナノ粒子が接着したラベルを調製することである。インクジェット印刷法により溶液の少量の液滴をラベル表面に吹きかけることによって当該ラベルを容易に調製することが可能である。そして、製品が、110mAgの半減期と等しい保存寿命を有する場合に当該ラベルを使用することが可能である。放射性110mAgの量は非常に少ないため、消費者または製品に害を与えるリスクは実質的にない。それらをセキュリティ用途、例えば認証におけるトレーサとして使用することもできる。
【0125】
一実施形態は、
(i)安定化剤溶液を調製する工程と、
(ii)該溶液にナトリウムまたは好適な金属サッカリン酸塩溶液、110mAg硝酸塩溶液、還元剤溶液を順次添加する工程と、
(iii)温度を上昇させて、銀ナノ粒子を形成するためのインシチュで形成された弱可溶性サッカリン酸銀の還元を開始させる工程とを含む抗菌放射性110mAgナノ粒子組成物の調製方法を含む。
【0126】
場合によって、温度上昇は、短時間であってもよいし、特定時間維持されてもよい。
【0127】
固体表面からの銀放出の機構
ナノ粒子組成物の態様は、銀を表面に対して非常に強く接着する非常に小さいナノ粒子の形で固体表面に付着させる能力である。銀ナノ粒子の付着が行われるばかりでなく、単純な操作でも表面から粒子が分離しない。それらは、超音波によって簡単に除去できないため、銀の表面に対する実質的に不可逆的な結合を示唆している。しかし、粒子は、化学的に処理されると溶解する。
【0128】
表面上の銀元素の存在は、一般には、その表面に少なくとも静菌性を与えるが、必ずしも殺菌性を与えない。殺菌性を与えたとしても、そのような作用を維持することは極めて困難である。銀装填量を増加させると、持続的な放出を向上させることができるが、最終用途における細胞毒性のリスクも高くなる。本発明の抗菌銀組成物は、表面を抗菌性にする能力を備え、哺乳類細胞に対して細胞毒性を与えることなく長時間にわたって活性を維持することが可能である。この能力は、従来技術に比べて大きな進歩である。図16は、前記抗菌銀組成物で処理されたナイロン表面から毎日(イオンとして)放出される銀の量を示す図である。組成物で処理した後に表面に生じる唯一の変化は、銀ナノ粒子による含浸であるため、持続的な長期間の抗菌活性が存在する。活性は銀イオンによるものであるため、唯一の銀イオン源は銀ナノ粒子であることは明らかである。それらの結果は、有効量の銀イオンが、長時間にわたって継続的に放出されることを示している。それらの結果は、放射性銀ナノ粒子が含浸されたナイロン管を使用して実施された試験によっても確認された。類似の銀装填量における放射性銀の放出特性(図16)は、先に得られたものと同等である。
【0129】
抗菌作用をもたらすのは銀イオン(Ag+)であって、Ag0でないことは十分に実証されているため、抗菌銀イオン源は、表面に存在する銀ナノ粒子であると考えられる。公開された文献では、イオン化された銀を溶液中に放出させるナノ粒子表面の触媒酸化が指摘されている(Kapoor、Langmuir、第14版、1021〜1025頁、1998年)。他の文献では、還元工程中に正電荷が形成する銀ナノ粒子が指摘されている(ErshovおよびHengelein、J.Phys.Chem.B、第102版、10663〜10666頁、1998年)。厳密な機構に関係なく、本結果は、疑いもなく、イオン化された銀の持続的な放出を示している。理論的推定値は、表面からの銀の観測出現速度において、銀を完全に消費するために150日以上かかり、それは並外れていることを示している。
【0130】
他の用途
本発明の抗菌銀組成物は、材料科学および冶金用途に好適な乾燥銀ナノ粉末を製造するための出発材料にもなりうる。水性または非水性の当該組成物を高温環境で霧状にして、乾燥銀ナノ粉末を製造することが可能である。本発明の組成物を大規模に製造することが可能であり、比較的安価な化学物質から調製されるため、商業的プロセスは、極めて実用性があり、銀ナノ粉末に対する他の乾燥プロセスと競合しうる。乾燥銀ナノ粉末を製造する上での本発明の組成物の他の利点は、10nmのナノ粒子平均粒径は小さいこと、および粒径分布が比較的緻密であることであり、それらは、乾燥プロセスによって製造された広い粒径分布の銀ナノ粉末に比べて競合的優位をもたらしうる2つの要因である。
【0131】
本発明の組成物を含む銀ナノ粒子の他の用途は、オレフィンの酸化の触媒、研磨スラリーなどのオレフィン化合物の分離、表面からの静電気の消散、液体の伝熱性の向上、導電性の向上、高周波または同様の放射線シールドの調製、表面励起ラマン分光法の分析化学にある。
【0132】
微生物試験
抗菌銀組成物を用いて製造されたデバイス試作品の抗菌活性を、黄色ブドウ球菌ATCC6538を使用する標準的な阻害帯微生物アッセイによって検証した。約5〜7mmサイズの円板を試料から切り出し、細菌が接種され、37℃で一晩培養されたミュラーヒントン寒天(MHA)に配置した。銀イオンが放出された円板は、イオン付近に透明帯を示した。未処理の試料およびシルバソルブ(Silvasorb)は、それぞれ負および正の対照として機能した。阻害帯アッセイの結果を表7および8に示す。デバイス試作品は、銀ナノ粒子を含み、銀塩を含まないため、ZOIアッセイは、抗菌活性に対する最も好適な選別アッセイではない。したがって、しばしば細菌攻撃試験を採用して、殺菌活性および持続放出特性を評価した。8時間の細菌攻撃アッセイにおいて、カテーテル試料片を試験管内の培地に浸漬し、細菌を接種した。試験管を37℃で8時間培養した後、一定分量の培地を希釈し、MHAプレートに広げ、24時間後の成長細菌コロニの数をカウントして、殺菌率を求めた。
【0133】
組成がわずかに異なる液体組成物(実施例参照)を極めて簡単に調製し、それらを使用して、木綿ガーゼ、ナイロン繊維、コンタクトレンズおよびヒドロゲルシートを含む様々な基体に銀ナノ粒子を含浸させた。非晶質タルク粉末を含むすべての試作品が、黄色ブドウ球菌に対する阻害帯および持続的活性放出を示した(表7参照)。
【表8】
【0134】
銀ナノ粒子含有品では、表8の結果から明らかなように、抗菌活性も4日間持続された。繊維、カテーテルおよびレンズなどのいくつかの基体の場合は、細菌攻撃試験によって抗菌活性を試験した。当該試験では、基体を媒体に24時間浸漬しながら既知の細菌数で攻撃する。次いで、媒体を適切に希釈し、MHAプレートに配置して、生存する細菌数を推定した。攻撃は、基体から有効量の銀がなくなるまで継続された。細菌攻撃試験結果(表9)は、11攻撃、すなわち11日間にわたって、基体表面に埋め込まれたナノ粒子から銀イオンが放出したことを示している。対照的に、類似商品(Bardex & Lubrisil I.C.カテーテル)は、わずか3日間しか持続しなかった。
【表9】
【0135】
医療デバイスの組織との生体適合性は重要である。デバイスに存在する細胞毒性の固有レベルを定量するために寒天被覆アッセイが用いられる。寒天被覆試験の結果により、銀ナノ粒子を含有する基体は無細胞毒性であるとともに、刺激性がないことが確認された。銀ナノ粒子と基体表面の間の強い会合。銀処理ナイロン繊維の超音波処理は、抗菌活性に影響せず、ガーゼを繰り返し洗浄しても活性の低下をもたらさなかった。ここに要約される結果は、銀ナノ粒子を含有する液体組成物は、安定しており、非常に容易かつ安価に製造でき、数々のデバイス表面に抗菌性を与えるために使用できることを明確に証明している。一般に、本発明は、ナノ粒子を含む組成物を含む。ナノ粒子組成物は、溶媒、銀ナノ粒子および安定化剤を含む。ナノ粒子の形成後に、余剰の、または未反応の還元剤が組成物に残留しうる。多数のナノ粒子が組成物に形成されることが理解される。溶液は、水性または非水性であってもよい。水性溶媒は水を含み、非水性溶媒は、塩化メチレン、クロロホルム、他の脂肪族および芳香族塩素化溶媒、シクロヘキサン、ジエチルエーテル、酢酸エチルおよびそれらの混合物を含み、安定化剤、安定剤または他の同様な名称のものは、ポリマー、界面活性剤またはその両方を含み交換して使用される。ポリマーは、ホモポリマーまたはコポリマー、アクリルアミドおよびその誘導体の合成または天然由来のポリマー、メタクリルアミドおよびその誘導体、ポリアミド、ポリウレタン、特定の主鎖を有さないが、ウレタン部もしくは三級アミン基を側鎖に有するポリマー、本質的には主に極性の他のポリマー、または極性コモノマー、例えば、メタアクリルアミド、置換アクリルアミド、置換メタアクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸、メタクリル酸ヒドロキシエチル、アクリロニトリル、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸およびその塩(ナトリウム、カリウム、アンモニウム)、2−ビニルピロリドン、2−ビニルオキサゾリン、酢酸ビニル、もしくは無水マレイン酸から誘導された部分を有するコポリマーを含む。界面活性剤は、陰イオン性、非イオン性または両性界面活性剤であってもよい。
【0136】
銀ナノ粒子の製造方法は、a)安定化剤溶液の水溶液、陰イオン供与溶液および可溶性銀塩溶液を任意の順序で添加する工程と、b)三級ジアミン溶液を添加する工程と、さらにc)最終的な溶液を加熱して反応を増進する工程とを含む。該方法は、物品の表面にナノ粒子をインシチュで形成する工程をさらに含む。物品は、織繊維品または不織繊維品であってもよい。物品は、医療デバイス、ポリマー、繊維、金属、ガラス、セラミック、織物、またはそれらの組合せであってもよい。
【0137】
ナノ粒子を非水溶液に抽出することができる。本発明は、a)有効量のナノ粒子が表面に結合するために十分な時間にわたって、銀ナノ粒子を含む溶液に表面を接触させる工程と、
b)溶液を表面から洗い落とす工程とを含む、表面を銀ナノ粒子で処理する方法をも含む。接触および洗浄工程を複数回繰り返して、表面に接着するナノ粒子の数を増加させることができる。接触される表面は、医療デバイス、あるいは本明細書に教示されている他の物品または表面のいずれかであってもよい。該方法は、ナノ粒子が接着した表面を十分な時間にわたって過酸化水素水溶液に接触させ、過酸化水素溶液を表面から洗い落とす工程であって、接触される表面は、医療デバイス、ポリマー、繊維、金属、ガラス、セラミック、織物、またはそれらの組合せであってもよい工程をさらに含む。
【0138】
本明細書および添付の請求項の範囲に用いられているように、単数形の冠詞(「a」、「an」および「the」)は、特に明確な指定がない限り、複数対象物を含むことに留意すべきである。
【0139】
本明細書に含まれるすべての特許、特許出願および参考文献は、その全体が参照により具体的に組み込まれている。
【0140】
勿論、先述の内容は、本発明の例示的な実施形態のみに関し、本開示に記載されている本発明の主旨および範囲を逸脱することなく、そこでは多くの修正または変更を加えることができることを理解すべきである。
【0141】
本発明の例示的な実施形態が本明細書に示されているが、本発明は、これらの実施形態に限定されない。当業者が想到しうる多くの修正または変更が存在する。
【0142】
理解しやすいように提供される、本明細書に含まれる例により本発明をさらに例示する。例示的な実施形態は、いかなる場合も、その範囲に制限を加えるものと見なされるべきではない。対照的に、本明細書の説明を読んだ後に、本発明の主旨および/または添付の請求の範囲を逸脱することなく、当業者が想到しうる他の実施形態、修正およびその同等物を採用できることが明確に理解される。
【0143】
(実施例)
抗菌性デバイスの実施例A1〜A37
実施例A1:木綿ガーゼ
ジメチルホルムアルデヒド(5ml)を撹拌下にてビーカー中で約60℃に加熱した。撹拌棒を取り除いた後に、2”×2”の木綿ガーゼ(Curityブランド(The Kendall Company(マサチューセッツ州Manisfield所在))をDMFに配置して、すべての溶媒を吸収させた。硝酸銀溶液(0.3ml、0.1M)をピペットでガーゼ上に滴下した。1分間以内に、ガーゼが黄色に変わった。5分後に、ビーカーをホットプレートから取り出し、室温に冷却した。薄黄色のガーゼを脱イオン水で十分に洗浄し、脱液し、40℃のオーブンで乾燥させた。
【表10】
【0144】
生物膜阻害試験
尿または静脈カテーテルなどの留置医療デバイスでは、抗菌表面特性を有することは、感染を最小限にするために非常に有益である。しかし、さらに重要なことは、生物膜形成を防止する当該デバイスの能力である。細菌が生物膜を形成すると、それをシールドとして使用し、細菌の除去が困難になる。抗菌剤または他の薬剤は効果がない。本発明の抗菌デバイスの1つの重要な特徴は、生物膜を阻害するそれらの能力である。抗菌ナイロン管の生物膜阻害特性を調べるために、以下の原理に基づく方法を採用した。
【0145】
攻撃生体が接種された試験培地に試験品を浸漬することによって生物膜を評価することが可能である。適切に培養した後に、デバイスの表面に結合された炭水化物特異染料の量を測定することによって、生物膜形成を評価する。生物膜形成規模と表面上の残余炭水化物との間に量的関係がある。これは、好適な溶媒で染料を最初に抽出し、次いで分光光度計でODを測定することによって定量することが可能である。
【0146】
図17は、(管重量に対して)約600ppmの(ナノ粒子の形態の)銀装填量のナイロン管試料に対する生物膜試験の結果の概要を示す図である。銀処理試料は、大腸菌、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌、緑膿菌およびカンジダアルビカンスに対する生物膜の形成を強固に阻害する。それに対して、未処理のデバイス試料は阻害を示さない(OD値が高い)。それらの結果は、生物膜形成に対する本発明のデバイスの抵抗性を明確に示している。
【0147】
実施例A2:木綿ガーゼ
硝酸銀溶液の濃度を1.0Mとしたこと以外は、実施例A1とまったく同様にしてガーゼを処理した。
【0148】
実施例A3:コンタクトレンズ
コンタクトレンズ(SEE3、CibaVision Corporation(ジョージア州Duluth所在))を洗浄して防腐剤溶液を落とし、実施例A1のように高温DMF溶液に浸漬した。静かに撹拌しながら、硝酸銀(0.3ml、1.0M)を高温DMFに滴下した。5〜7分後に、ビーカー内容物を冷却し、レンズを取り出し、脱イオン水で十分に洗浄し、ティッシュペーパで脱液し、40℃のオーブンで乾燥させた。レンズは薄い黄色を呈した。
【0149】
実施例A4:カテーテルセグメント
DMF溶液(10ml)を撹拌下にてビーカー中で約100℃まで加熱した。硝酸銀溶液(0.25ml、0.02M)を高温溶媒に添加して、(プラスモン共鳴帯により)黄色で示される銀ナノ粒子を生成した。予め洗浄した約1”の長さのシリコーンカテーテル(14Fr、Degania Silicone Ltd(イスラエル))セグメントを黄色溶液に15分間浸漬した。カテーテルセグメントを取り出し、脱イオン水で洗浄し、乾燥させた。カテーテルセグメントのわずかな脱色が見られた。
【0150】
実施例A5:ヒドロゲルシート−方法1
カップ中の脱イオン水(13.3ml)にアクリルアミド(1.482g)、ビスアクリルアミド(0.018g)およびグリセロール(1.5g)を撹拌下で添加した。それとは別に、高温(約60℃)の脱イオン水(10ml)にイソプロパノールおよびグアーガム(0.165g)を溶解させ、溶液を室温まで冷却させた。グアーガムとアクリルアミドモノマー溶液を混合した。混合物に硝酸銀(1ml、0.1M)およびサッカリン酸ナトリウム(1ml、0.125M)を添加した。スパチュラを利用して、粘性塊体を混合した。サッカリン酸銀が沈殿すると、粘性塊体が乳白色になった。
【0151】
銀塩含有塊体に過硫酸アンモニウム(水1mlに0.05g溶解させたもの)を添加した後に、TEMED(水1mlに0.063ml溶解させたもの)を添加した。TEMED添加後に、塊体は、すぐに重合することなく徐々に褐色に変化し始めた。8日後、粘性塊体は、褐色のヒドロゲルシートになった。
【0152】
実施例A6:コンタクトレンズ
コンタクトレンズ(SEE3ブランド(CibaVision Corporation(ジョージア州Duluth所在))を脱イオン水で洗浄して、防腐剤溶液を洗い落とし、次いで硝酸銀溶液(0.15ml、0.1M)に10分間浸した。余剰の溶液を除去し、サッカリン酸ナトリウム(0.15ml、0.125M)を添加して、レンズを再度浸漬した。レンズは、サッカリン酸銀のインシチュでの形成により不透明になった。余剰の液体およびあらゆる遊離固体をピペットで吸い取り、レンズを再び脱イオン水で洗浄した。水(0.2ml)と混合したTEMED(0.1ml)を添加して、レンズを浸し、還元を開始した。5分後に、液体が薄い黄色になった。その時点で、すべての液体を廃棄し、レンズを水で数回洗浄し、周囲条件で一晩乾燥させた。
【0153】
実施例A7:ナイロン繊維
ナイロン(ポリアミド)製の数本の繊維(直径約1mm)を、実施例B6作製した銀ナノ粒子組成物(総液体量10ml)に室温にて72時間にわたって浸漬した。浸漬した繊維を70%の水性IPAおよび水で十分に洗浄した。繊維を、また、IPAに浸したティッシュで静かに拭き、45℃で15分間乾燥させた。繊維の浸した部分は、淡黄色乃至褐色になった。
【0154】
実施例A8:シリコーンカテーテルセグメント
4”長の14Frシリコーンカテーテルセグメント(Degania Ltd(イスラエル))をIPAで洗浄し、乾燥させた。そのセグメントを5mlのサッカリン(0.5gm)THF溶液に1時間浸浸した。シャフトを取り出し、アセトンで一回迅速に洗浄し、硝酸銀溶液(硝酸銀0.5g、90%アセトン/水5ml)に0.5時間浸漬した。シャフトセグメントを取り出し、水で十分に洗浄し、最後に30%TEMEDのIPA溶液に浸漬した。溶液を加温して、還元を誘発させ、一晩放置した。セグメントは黄色に変化し、還元反応が進行していたことを示していた。シャフトを水で洗浄し、125℃のオーブンで乾燥させて、TEMEDの痕跡をすべて除去した。
【0155】
実施例A9:親水性ポリマー被膜を有するカテーテル
親水性ポリマー被膜(2.7%GRAFT−COAT、STS Biopolymers(ニューヨーク州Henrietta所在))を有する約3”の長さの小さいカテーテルセグメントを、実施例B4のようにして調製した銀ナノ粒子溶液に2時間浸漬した。そのセグメントを取り出し、水で洗浄し、45℃で乾燥させた。最初はほとんど色が見られなかったが、数日後に被膜が均一に茶褐色になった。
【0156】
実施例A10:コンタクトレンズ
単一のレンズ(SEE3(CibaVision Corporation))を、実施例B7で調製した7mlの原液に室温にて12から16時間浸した。レンズを水で洗浄し、室温で乾燥させた。レンズを均一の光沢のある透明の銀被膜で被覆した。
【0157】
実施例A11:木綿ガーゼ
サイズが約3”×3”の木綿ガーゼ(Curityブランド、The Kendall Company(マサチューセッツ州Manisfield所在))を硝酸銀(0.1M)およびサッカリン酸ナトリウム(0.125M)に順次浸し、浸した後にそれぞれ脱液し、110℃で10分間乾燥させた。銀塩を含む乾燥ガーゼを30%TEMEDのIPA溶液に72時間再度浸し、水で十分に洗浄し、水に24時間浸して、溶媒痕跡を除去し、乾燥させた。TEMEDに約3時間浸した後に、ガーゼは黄色になった。色は、洗浄および水浸工程中に溶脱することはなかった。
【0158】
実施例A12:木綿ガーゼ
実施例15の木綿ガーゼと同一の木綿ガーゼを、実施例B3の方法で調製したPAA−銀ナノ粒子溶液(5ml)に72時間浸した。ガーゼを水で洗浄し、24時間水に浸し、乾燥させた。ガーゼは、橙黄色の色相を呈し、洗浄および水浸工程中に色を溶脱させることはなかった。
【0159】
実施例A13:コンタクトレンズ
銀粒子が埋め込まれた透明コンタクトレンズを以下のようにして調製した。Tween20を水(1ml)に溶解させ、サッカリン酸ナトリウム(1ml、0.125M)、硝酸銀(1ml、0.1M)およびTEMED(0.1ml)を添加して銀ナノ粒子含有組成物を調製した。1週間熟成させた後の溶液(0.5ml)を水で2mlまで希釈し、前洗浄したコンタクトレンズをその溶液に一晩浸漬した。レンズを水で洗浄し、静かに脱液し、75℃のオーブンで0.5時間乾燥させた。
【0160】
実施例A14:シリコーンカテーテル
16Frシリコーンカテーテルセグメント(長さ約6”)をイソプロピルアルコール(IPA)で洗浄し、乾燥させた。それをTHFに1時間浸して、その壁を膨張させ、次いで以下のようにして調製した1週間後の銀ナノ粒子溶液に一晩浸漬した。Tween20(0.025g)をサッカリン酸ナトリウム溶液(5ml、0.125M)に溶解し、硝酸銀(5ml、0.1M)および0.5mlのTEMEDをそれに添加した。得られた液体を電子レンジで短時間(10秒間)加熱して、黄褐色とした。一晩浸した後に、カテーテルを水、IPAおよび再度水で洗浄し、オーブンで乾燥させた。
【0161】
実施例A15:ナイロンカテーテル−方法1
直径約1mmで長さ15”のナイロンカテーテル片(IFLOW Corporation(カリフォルニア州Lake Forest所在))をIPAで洗浄し、拭いて乾燥させた。カテーテルを、実施例B7の手順に従って調製した銀ナノ粒子原液(90ml)に一晩浸し、水およびIPAで洗浄し、拭いて乾燥させ、45℃のオーブンでさらに乾燥させた。処理後、カテーテルは黄色の色相を呈した。
【0162】
実施例A16:ナイロンカテーテル−方法2
長さ約4”で、それ以外は実施例A15と同様のナイロンカテーテルを□−アミノプロピルトリエトキシシラン(シラン0.1ml/THF5ml)に短時間(1分間)浸し、取り出し、空気中で数分間乾燥させた。シラン塗布試料を新たに調製したナノ粒子原液(実施例B7)に一晩浸した。カテーテルセグメントを水およびIPAで洗浄し、拭いて乾燥させた。その試料は、実施例A15の試料より均一で濃い黄色を呈した。
【0163】
実施例A17:シリコーンカテーテル−Bard
長さ約3”のカテーテルセグメント(Lubrisilブランド、BARD Inc.(ジョージア州Covington所在))をIPAで拭き、実施例A14の方法で調製された銀ナノ粒子原液に一晩浸した。そのセグメントを水およびIPAで洗浄し、45℃のオーブンで乾燥させた。それは、薄い黄褐色を呈した。
【0164】
実施例A18:シリコーン胸部移植膜
シリコーン製の3つ(約1”×1”)の胸部移植膜(厚さ約0.5から1mm)に、それを実施例A14の工程に従って最初に膨張させ、実施例B7の方法で作製した銀ナノ粒子溶液に一晩浸すことによって銀ナノ粒子を含浸させた。それらの移植膜を水およびIPAで洗浄し75℃のオーブンで数時間乾燥させた。処理後の各移植膜は、薄い黄色の色相を呈した。
【0165】
実施例A19:ナイロン繊維糸の細胞毒性
0.2mgのTween20を4mlの水に混入し、4mlのサッカリン酸ナトリウム(0.125M)を、次いで4mlの硝酸銀(0.1M)を、次いで0.4mlのTEMEDを添加し、電子レンジ(出力1500W)で10秒間加熱し、次いで室温まで冷却することによって、銀ナノ粒子溶液を最初に調製した。4本のナイロン繊維糸(直径約1mm、長さ9”)を溶液に一晩浸漬した。それらの糸を水で数回洗浄し、空気中で乾燥させた。銀ナノ粒子含浸後に、繊維表面は黄褐色を呈した。
【0166】
寒天被膜を使用したところ、L929線維芽細胞に対する細胞毒性は認められなかった。繊維の銀含有量は、約800ppmであった。
【0167】
実施例A20:実施例A14のシリコーンカテーテルの細胞毒性
寒天被膜を使用したところ、銀処理カテーテルによるL929線維芽細胞に対する細胞毒性は認められなかった。カテーテルの銀含有量は、800ppmより大きいと見積もられた。
【0168】
実施例A21:銀ナノ粒子を有する基体に対する滅菌法の影響
Portland地域の地方施設において、実施例A14のシリコーンカテーテルおよび実施例A19のナイロン繊維糸にエチレンオキシド(ETO)滅菌を施した。試料は、医療管およびキットなどの大容量製品に典型的なETO用量を受けた。
【0169】
滅菌後に、小さい目視検出可能な変化が生じていた。いずれの試料も本来の色相よりわずかに濃くなっていた。
【0170】
実施例A22:銀ナノ粒子を含む銀ガーゼの黄色を「漂白する」試み
数枚(3”×3”)のCurity(Kendall)木綿ガーゼを、以下の方法に従って調製した、銀ナノ粒子を含む溶液の2mlずつに浸漬した。Tween20(濃度:50gm/L)とサッカリン酸ナトリウム(0.125M)と硝酸銀(0.1M)の原液を10mlずつボルテックスミキサで混合し、TEMED(1mL)を添加した。得られた溶液を電子レンジで30秒間加熱して、黄褐色溶液を生成させ、それを室温まで冷却した。
【0171】
ガーゼを脱液し、45℃のオーブンで一晩乾燥させた。ガーゼを乾燥させると、色が淡褐色に変化した。ガーゼを10%過酸化水素溶液(25mL)に浸した。最初の数分間では色の変化は認められなかったが、1時間を過ぎると、褐色がはるかに薄くなった。24時間浸した後、ガーゼが白色になった。それらを脱液し、45℃のオーブンで1時間乾燥させ、実験橙下に放置して、36時間連続的に露光させた。数箇所にわずかな脱色があった以外は、ガーゼに変化はなく、銀抗菌ガーゼ材料を調製するもう1つの方法が確保された。
【0172】
実施例A23:非水性銀ナノ粒子組成物による処理によるシリコーンカテーテルの含浸
実施例B13の水性組成物と同様の水性組成物を作製し、密栓バイアル瓶で1週間静置した。組成物を25mLの脱イオン水で希釈し、約15mLのクロロホルムで抽出した。銀ナノ粒子の一部をクロロホルム層に抽出した。シリコーン製の清浄なカテーテルステム(14Fr(Degania Silicone Ltd(イスラエル))をクロロホルム層に0.5時間浸漬した。カテーテルの浸漬部は、溶液を吸収したことにより膨張した。次いで、カテーテルを取り出し、洗浄せずに、45℃のオーブンで15〜20分間乾燥させた。処理後に、カテーテルは、薄い黄色を呈し、24時間後に橙赤色になった。その色の変化は、カテーテル壁に銀ナノ粒子が存在していることを示していた。24時間の細胞攻撃試験において、抗菌性を有することがわかった。
【0173】
実施例A24:銀処理PTFE
Tween20(濃度:16.7gm/L)とサッカリン酸ナトリウム(0.125M)と硝酸銀(0.1M)の原液を10mlずつボルテックスミキサで混合し、TEMED(1mL)を添加した。得られた溶液を電子レンジで60秒間加熱して、黄褐色溶液を生成させた。長さ4”のPTFE糸シールテープを試験管に巻きつけ、この試験管を大きい試験管の内側に配置し、銀ナノ粒子溶液を両試験管に注ぎ入れて、テープを24時間浸し、55℃に保った。テープを水で数回十分に洗浄し、55℃で0.5時間乾燥させた。
【0174】
銀ナノ粒子のナノ粒子含浸後に、テープは薄い黄色を示した。24時間の細菌攻撃試験において、抗菌性を有することがわかった。
【0175】
実施例A25:銀処理PP
Tween20(濃度:16.7gm/L)とサッカリン酸ナトリウム(0.125M)と硝酸銀(0.1M)の原液を10mlずつボルテックスミキサで混合し、TEMED(1mL)を添加した。得られた溶液を電子レンジで60秒間加熱して、黄褐色溶液を生成させた。
【0176】
以下のようにPP片を表面処理して、水濡れ性を向上させた。4つのポリプロピレン片(3”×1/4”)を80mLの9M硫酸に撹拌下で40時間浸した。その後、それらの片を水で数回洗浄し、紙に押しつけて乾燥させ、次いで空気乾燥させた。次に、シラン(0.2mL)、0.1mLの水および0.1mLの三フッ化ホウ素エーテラートを10mLのTHFに添加することによって作製されたg−アミノプロピルトリエトキシシランのTHF溶液にそれらの片を入れた。5分間浸した後に、それらの片を取り出し、短時間空気乾燥させ、次いで55℃で0.5時間乾燥させた。
【0177】
次いで、シラン処理片を上記のように作製した銀ナノ粒子溶液に4時間浸漬し、洗浄し、紙で脱液し、空気乾燥させた。各片は、銀ナノ粒子の含浸を示す薄い黄色を呈した。
【0178】
実施例A26:ナイロン繊維へのAgの付着に対する1未満のSac/Ag比の影響
Tween20溶液(3mL、16.7g/L)、サッカリン酸ナトリウム(3mL、0.025M)および硝酸銀(3mL、0.1M)を掻き混ぜた。TEMED(0.1mL)を添加し、再び掻き混ぜた。TEMEDを添加すると、混合物が薄い黄色になった。溶液をマイクロ波で約55℃まで短時間加熱し、4本の清浄なナイロン繊維糸を高温溶液に4時間浸漬した。繊維の浸漬部は、暗藍色になった。繊維を十分に洗浄し、乾燥させた。それらの繊維は、ZOIアッセイにおいて、抗菌性を有することがわかった。
【0179】
実施例A27:銀処理ポリスルホン
Tween20溶液(2mL、16.7g/L)、サッカリン酸ナトリウム(2mL、0.125M)および硝酸銀(2mL、0.1M)を掻き混ぜた。TEMED(0.2mL)を添加し、再び掻き混ぜた。溶液をマイクロ波で約70〜75℃まで短時間加熱し、55℃まで冷却し、次いで7つの長さ6”の中空ポリスルホン管(直径0.5mm未満)を高温溶液に4時間浸漬した。それらの管を水で洗浄し、管を水に浸漬した状態で遠心させて、内側から洗浄した。白色のポリスルホン管が黄色になり、ZOIアッセイにおいて、抗菌性を有することがわかった。
【0180】
実施例A28(予測的):実施例B33のフマル酸塩をベースとした組成物および酢酸で処理することによって繊維に銀を付着させる方法
数枚の木綿ガーゼ(BulkeeIIガーゼロールから2”×2”に切り出した片)を実施例B33で作製した銀ナノ粒子組成物に数分間浸すことによって該組成物で処理した後に、脱液し、次いで希酢酸(水100mLに対して氷酢酸5ml)に数分間にわたって再度浸して、フマル酸塩で安定化された銀ナノ粒子を析出させる。紙で脱液し、55℃のオーブンで0.5時間乾燥させた後に、淡黄色材料として銀を含むガーゼを得る。ガーゼは、抗菌性を有するものと想定される。
【0181】
実施例A29:PEBEX(登録商標)ナイロン管から作製されたカテーテルに対するアンモニアの影響
銀ナノ粒子含浸カテーテル管(PEBEX(登録商標)グレードのポリアミドポリマーの管から作製された長さ2”、外径1mmおよび内径0.6mmの2つの管)を試験管内の希アンモニア溶液(水8mLに対して2mLの28%アンモニア)に浸して、銀ナノ粒子が分解しうるかどうかを調べた。16時間後も色の変化が認められず、表面に含浸された銀ナノ粒子に対する約7%のアンモニアの影響がないことを示唆していた。
【0182】
実施例A30:銀処理PVC排水管
Tween20溶液(160mL、16.7g/L)、サッカリン酸ナトリウム(160mL、0.125M)および硝酸銀(160mL、0.1M)を順次混合し、一緒に15分間撹拌して調製した銀ナノ粒子に、1/4”の外径を有する長さ数フィートのポリ塩化ビニル(PVC)を浸した。TEMED(16mL)を添加し、撹拌した。溶液をマイクロ波で約70〜75℃に加熱し、55℃まで冷却した。管を取り出し、脱イオン水で急冷し、水を流して洗浄し、空気乾燥させた。処理前は無色だった管が黄色になり、色は均一であった。細菌攻撃試験において、抗菌性を有することがわかった。
【0183】
実施例A31:銀処理PEBEX(登録商標)グレードのナイロン管カテーテル−条件とppm
本実施例は、PEBEX(登録商標)タイプのナイロングレード製の小径ナイロン管に付着する銀の量に対する時間、硝酸銀の開始濃度、および温度の影響を調べるために行われた試験について記載する。管は、カテーテルに使用されたタイプの材料をシミュレートする。管は、外径が約1mm、内径が0.6mmで、長さが27”であった。
【0184】
Tween20溶液(160mL、16.7g/L)と、サッカリン酸ナトリウム(160mL、0.125M)と、硝酸銀(160mL、0.1M)を順次混合し、15分間にわたって一緒に撹拌した。TEMED(16mL)を添加し、撹拌した。溶液をマイクロ波で約70〜75℃に加熱し、40〜45℃まで冷却した。1ダース程度のカテーテルをパイレックス(登録商標)皿に配置し、(浮くのを防ぐために)重りをつけた。冷却された銀ナノ粒子溶液を皿内のカテーテルに注ぎ、1つのカテーテルを所定の時点で取り出し、十分に洗浄し、空気乾燥させた。ナイロン管は、経時的に濃くなる黄色を呈した。AASにより管試料を分析して、銀含有量を調べた。
【0185】
溶液をカテーテルに注ぐ前に、溶液を55〜60℃まで冷却することによって、その温度で試験を繰り返した。2つの温度における処理時間の関数としてのカテーテルの銀含有量(3つの部分、すなわち上部、中部および底部の平均)が表10にまとめられている。
【表11】
【0186】
実施例A32:ナイロン管材料への装填量に対する銀濃度の影響
濃度の影響を調べるために、処理溶液を調製する上での硝酸銀の出発濃度を変化させた。この実験では、AASアッセイ技術の代わりに、放射活性銀を採用し、カウントを利用して、銀濃度を求めた。
【0187】
手短に述べると、Tween20溶液(13.3mL、16.7g/L)と、サッカリン酸ナトリウム(1.3mL、0.125M)および1.3mL110mAg硝酸銀(濃度が異なる)と、水(24mL)を順次混合し、15分間一緒に撹拌した。TEMED(0.13mL)を添加し、撹拌した。溶液をマイクロ波で約70〜75℃に加熱し、52℃まで冷却した。その溶液に、長さ2cmの管材料を33個添加し、短時間遠心させて、気泡を除去し、52℃で16時間培養した。カテーテルを十分に洗浄し、空気乾燥させた。
【0188】
実測カウントおよび特異的活性から、管に付着した銀の量を測定した。その結果を表11に示す。
【表12】
【0189】
実施例A33:銀処理ナイロン管−硝酸の影響
銀装填量が約920ppmのPEBEX製のカテーテルナイロン管(外径1mm)を実施例A31の手順に従って調製した。長さ1”のコハク色カテーテルを(0.5mLの工業用硝酸および4.5mLの水から調製された)5mlの希硝酸に一晩浸漬した。カテーテルを脱イオン水で二回洗浄し、次いでイソプロパノールで洗浄し、窒素ガスを吹き付けることによって乾燥させた。酸処理後に、カテーテルを漂白して薄い黄色とした。AASによる銀分析は、装填量が350ppmであることを示し、本来の装填量からの減少が約62%であることを示していた。
【0190】
本実施例は、実際の装填量が提案された目標を超える場合に、硝酸で処理することによって、銀ナノ粒子含浸品の銀装填量を変化させる方法を提供する。
【0191】
試験中に、硝酸蒸気との接触による基体の脱色(銀の減少)も認められた。この結果は、硝酸蒸気、または同様の特性を有する他の酸の蒸気に銀ナノ粒子を接触させることによって、銀ナノ粒子担持表面をパターン化する方法を提供するものである。
【0192】
実施例A34:銀処理ナイロン管−H2O2の影響
実施例A32の生成実験後に110mAgを付着させたナイロン管試料は、管表面からコハク色を除去するH2O2の効果を調べるためのものであった。試料管をH2O2に浸す直前に、放射活性を測定することによって銀装填量(ppm)を求めた。次いで、個別の管の試料を2mLの30%H2O2溶液に室温で24時間浸した。酸素による気泡生成が管表面に認められ、しばしば管を浮かせていた。翌日には、すべての試料の色がコハク色から無色に変化した。試料の放射活性を再び測定し、特異的活性から、銀装填量を計算した。以下に示される結果(表12)は、過酸化物処理による銀の減少量が、24時間食塩水に浸している間の減少量と同等であることを示している。そのように、実質的に、コハク色の銀ナノ粒子を含む表面は、銀(または抗菌活性)を減少させることなく無色になる。
【表13】
【0193】
実施例A35:抗菌性金属移植体
Tween20界面活性剤溶液(16.7g/L)、サッカリン酸ナトリウム(0.125M)および硝酸銀をそれぞれ10mLと、20mLの脱イオン水をビーカー中にて撹拌下で混合して、白色粒子を含む懸濁物を生成した。その懸濁物にTEMED(1.5mL)を添加し、短時間混合した。内容物を電子レンジで1分間加熱し、ガラスペトリ皿に配置された3つの金属移植体部品に高温溶液を注いだ。皿を覆い、70℃に4時間加熱した。金属部品を溶液から取り出し、脱イオン水で数回洗浄し、水とともにビーカーに配置し、15分間超音波処理して、遊離粒子を除去した。
【0194】
次いで、金属部品を空気中で乾燥させた。表面が銀ナノ粒子で含浸された移植体は、シュードモナス菌に対する抗菌活性を3日間持続させていることを示した。対照的に、未処理の対照金属部品は、菌の成長が抑制されていないことを示した。
【0195】
実施例A36:抗菌性ポリウレタン発泡体
Tween20溶液(5.2g/L)、サッカリン酸ナトリウム(0.0125M)および硝酸銀(0.01M)をそれぞれ25.5mLずつ混合した後にTEMED(0.255mL)を添加し、48℃で16時間加熱することによって抗菌銀ナノ粒子組成物を調製した。発泡体の調製に冷却した溶液を使用した。Lindell Manufacturing(ミシガン州)から入手した1平方インチのSupersoft S00−T発泡体、およびRynel Corporation(メイン州)から入手したMedicalグレード(型式562−6)を銀ナノ粒子組成物に浸し、軽く脱液し、45℃のオーブンで0.5時間乾燥させた。それらの発泡体は、ZOIアッセイにおいて、黄色ブドウ球菌および緑膿菌に対する抗菌性を有することがわかった。
【0196】
実施例A37:抗菌性シリコーンカテーテルステム−異なる滅菌プロセスの影響
イソプロピルアルコールで洗浄された数本のシリコーンカテーテルステム(14Fr(Degania Silicone Ltd.(イスラエル))をTHFに15〜30分間浸した。それとは別に、同量のTween20(50g/L)とサッカリン酸ナトリウム(0.125M)と硝酸銀(0.1M)を混合し、次いでTEMED(個々の原液量の10分の1)を添加することによって抗菌ナノ粒子組成物を調製した。得られた混合物を、溶液が黄色になるまで、電子レンジで30から45秒間の短時間加熱した。溶液を室温まで冷却し、次いでTHFで膨張したカテーテルを銀ナノ粒子溶液に一晩漬けて、粒子をシリコーンカテーテル表面に付着させた。ステムを水で十分に洗浄し、空気中で乾燥させた。銀含浸後に、色が黄褐色から灰褐色に変化した。その後、銀ナノ粒子が付着した数本のステムをそれぞれ122℃で15分間の蒸気滅菌、電子ビーム法(約30kGy)および商業的標準ETO法により滅菌した。銀を有する滅菌済カテーテルステムは、接種用量が約5e3 cfu/mL以下の緑膿菌株の7細菌攻撃(24時間)に対して100%の殺菌率で等しく抗菌性を有することがわかった。試験されたいずれの滅菌法もカテーテルの抗菌特性に対する悪影響はなかった。
【0197】
抗菌銀組成物の実施例B1〜B34
実施例B1:親水性架橋ポリマー
カップ中の脱イオン水(13.3ml)に撹拌下でアクリルアミド(1.482g)、ビスアクリルアミド(0.018g)およびグリセロール(1.5g)を添加した。その混合物に硝酸銀(1ml、0.1M)およびサッカリン酸ナトリウム(1ml、0.125M)を添加した。サッカリン酸銀が沈殿すると、得られた液体が乳白色になった。
【0198】
銀塩含有塊体に過硫酸アンモニウム(1mlの水に0.05溶解)を添加し、次いでTEMED(1mlの水に対して0.113ml)を添加した。TEMED添加後に、塊体は徐々に褐色に変化し始め、それを一晩放置して、赤褐色の脆性固体ポリマーを生成させた。
【0199】
実施例B2:銅改質親水性架橋ポリマー
実施例B1の固体ポリマーの一部(約0.1g)および塩化第二銅溶液(1ml、0.1M)を密栓バイアル瓶に入れ、数日間放置した。塩化第二銅溶液による水和、およびナノ粒子の塩化銀への変換により、ポリマーの褐色が青色に変化した。
【0200】
実施例B3:ヒドロゲルシート−方法2
銀ナノ粒子含有ポリマー溶液を以下のようにして調製した。アクリルアミド(0.5mg)を脱イオン水(5ml)に溶解させた。その溶液に、混合下で、過硫酸アンモニウム(16mg)およびTEMED(0.02ml)を添加して、ポリアクリルアミド(PAA)ポリマー溶液を形成した。最初に5mlの水で希釈したPAA溶液において、サッカリン酸ナトリウム(1ml、0.125M)および硝酸銀(1ml、0.1M)を順次添加することによってサッカリン酸銀を沈殿させた。TEMED(0.05ml)をPAA溶液に添加することによって還元による銀ナノ粒子形成を開始させた(溶液が赤褐色になることによって示される)。必要に応じて、溶液を加温して、還元反応を開始させた。溶液を少なくとも1日間放置して、還元を完了させた。
【0201】
PAAに、上述のように調製した銀ナノ粒子溶液、アクリルアミド(1.482g)、ビスアクリルアミド(0.018g)およびグリセロール(1.5g)を撹拌下で添加した。それとは別に、高温(約60℃)の脱イオン水(10ml)、イソプロパノールおよびグアーガム(0.165g)を添加して、溶液を形成し、それを室温まで冷却させた。グアーガムとPAA銀ナノ粒子モノマー溶液を混合した。その混合物に過酸化水素溶液(2ml、10%)を添加して、溶液を本来の赤褐色から淡色に変化させた。開始剤である過硫酸アンモニウム(0.05g)を添加してすぐに、銀ナノ粒子を含むモノマー溶液が赤褐色のゲルを形成した。ゲルをペトリ皿に移し、一晩放置して乾燥させた。
【0202】
実施例B4:タルク粉末
銀ナノ粒子含有組成物を以下のようにして調製した。界面活性剤Tween20(0.05g)を水(2.5ml)に溶解させた、その界面活性剤溶液にサッカリン酸ナトリウム(0.25ml、0.125M)、硝酸銀(0.25ml、0.1M)およびTEMED(0.1ml)を順次添加した。その混合物を電子レンジで短時間加熱して、銀塩の還元を開始させ、次いで室温まで冷却した。
【0203】
それとは別に、タルク粉末(0.5g)とIPA(1ml)と水(4ml)をカップ中で混合して、均一の懸濁物を得た。懸濁物に、上記のように調製した銀ナノ粒子組成物を0.5ml添加し、ボルテックスミキサで混合した。クリーム色の固体を遠心分離によって回収し、45℃のオーブンで数時間乾燥させた。
【0204】
実施例B5:水性銀ナノ粒子含有組成物
サッカリン酸ナトリウム(0.25ml、0.125M)および硝酸銀(0.25ml、0.1M)を試験管内の水(1ml)に添加した。Tween20界面活性剤(0.05g)を得られた懸濁物に添加し、次いでTEMED(0.05ml)を添加し、還元反応を開始させた。数分間以内に黄色を呈し、それが一晩で濃くなった。水による希釈溶液(1:5に希釈)の吸光度は、400nm〜550nm範囲で測定された。最大ODは約415nmに観察された。
【0205】
実施例B6:水性銀ナノ粒子含有組成物
サッカリン酸ナトリウム、硝酸銀およびTEMEDの量を2倍にしたことを除いては、実施例8とまったく同様にして銀ナノ粒子を含む組成物を調製した。得られた溶液は、約415nmでOD最大値を示した。
【0206】
実施例B7:水性銀ナノ粒子含有原液
カップ中で、Tween20(0.5g)を水(10ml)に溶解させた。このサッカリン酸ナトリウム(10ml、0.125m)に硝酸銀(10ml、0.1M)およびTEMED(1ml)を順次添加した。液体混合物をMEDIUM設定の電子レンジ(Quasarのインスタマチッククッキングブランド)で短時間(30秒間)加熱した。混合物は、銀ナノ粒子の形成により、加熱後に黄色になった。
【0207】
実施例B8:ポリマー安定化銀ナノ粒子組成物
アクリルアミド(2.96g)を25mlの水に溶解させた。その溶液に過硫酸アンモニウム(0.1g)およびTEMED(0.125ml)を添加し、混合して、重合を開始させた。10分後に、サッカリン酸ナトリウム(1.25ml、1M)および硝酸銀(1ml、1M)を粘性ポリマー溶液に添加した。数分間以内に溶液色が橙赤色に変化した。溶液を必要に応じて電子レンジで30秒間加温して、還元反応を加速させた。OD値は、440nmの波長でピークを示した。
【0208】
実施例B9:潤滑ゼリー
銀ナノ粒子を含む潤滑ゼリー(BARD Inc.(ジョージア州Covington所在))を以下のようにして調製した。最初に、ナノ粒子溶液を調製し、次いでゼリーと混合した。CMCナトリウム塩(0.05g、高粘度グレード、Sigma)を水(10mL)に溶解させた。そのCMC溶液(1ml)にサッカリン酸ナトリウム(1ml、0.125m)、硝酸銀(1ml、0.1M)およびTEMED(0.1ml)を順次添加した。溶液は黄色になり、弱い緑色の蛍光を呈した。
【0209】
カップ中の潤滑ゼリー(8g)に、上記のように作製したCMC−AgNP溶液(0.2ml)を添加し、ガラス棒で均一になるまで混合した。銀ナノ粒子を含むゼリーは薄い橙色を呈した。
【0210】
実施例B10アルギン酸ビーズ
PAA銀ナノ粒子溶液を実施例B3の方法に従って調製した。その溶液をアルギン酸ナトリウム溶液(1g/水50ml)に添加した。得られた溶液を、撹拌した2%塩化カルシウム溶液(400ml)に滴下して、銀ナノ粒子が埋め込まれたアルギン酸ビーズを形成した。ビーズを濾取し、脱イオン水で一回洗浄し、濡れた状態で保存した。ビーズは、わずかな緑色蛍光を有する黄色を呈した。
【0211】
実施例B11:爪研磨組成物
爪研磨用途に使用されるポリマーであるAvalure 120(1ml)を、実施例A19に類似した調製物の銀ナノ粒子溶液(1ml)残留物と混合し、清浄なガラススライドに展開し、45℃で乾燥させた。ガラス上の乾燥膜は、2カ月を超えても最初の黄色から色が変化せず、拡散メカニズムによる乾燥フィルムに銀ナノ粒子の凝集体が存在しないことを示していた。
【0212】
実施例B12:アセスルファムカリウムによる銀ナノ粒子組成物
Tween20(0.3ml、65g/L)と、アセスルファムカリウム溶液(1ml、0.125M)と、TEMED(0.3mL)を混合し、最後に硝酸銀溶液(0.75mL、0.1M)を添加し、各成分を添加した後に掻き混ぜることによって、銀ナノ粒子を含む組成物をドラムバイアル瓶に調製した。得られた混合物を電子レンジで10秒間加熱し、冷却し、400から500nmでODを測定した。波長最大値は415nmであった。
【0213】
実施例B13:バルビツール酸による銀ナノ粒子を含む組成物の調製
バルビツール酸(0.368g)を秤量し、10mLの脱イオン水に添加した。炭酸ナトリウム(0.105g)を水に添加して、溶液が透明になるように酸をそのナトリウム塩に変換させた。
【0214】
硝酸銀(1mL、1M)溶液を添加して、バルビツール酸塩を微細懸濁物として析出させた。1mLの銀塩懸濁物に0.3mLのTween20(65g/L)および0.3mLのTEMEDを添加し、その混合物を電子レンジで10秒間加熱した。銀ナノ粒子の形成を示す赤橙色が観察された。波長最大値を415nmで測定した。
【0215】
実施例B14:サッカリン酸ナトリウムによる銀ナノ粒子組成物
Tween20(1g)を20mLの脱イオン水に混入し、次いでサッカリン酸ナトリウム溶液(20ml、0.125mL)、硝酸銀溶液(20mL、0.1M)、最後にTEMED(2.0mL)を添加することによって、銀ナノ粒子を含む組成物を調製した。得られた混合物をホットプレートにて撹拌下60〜70℃で15分間加熱した。45℃付近で、色が黄色に変化し、継続的に濃くなっていった。ビーカーの底に白色沈殿がいくらか見られた。400から500nmに対して測定されたOD対lの曲線は、同様に作製され、マイクロ波処理された溶液と類似していた。波長最大値は、415nmであった。加熱方式によってOD曲線が変わることはなかった。
【0216】
実施例B15:オレイン酸ナトリウムによる非水性銀ナノ粒子組成物
Tween20(0.3mL、65g/L)とオレイン酸ナトリウム(1mL、0.125M)とTEMED(0.3mL)を混合し、最後に硝酸銀溶液(0.75mL、0.1M)を添加し、溶液が黄色になるまで電子レンジで短時間加熱することによって、銀ナノ粒子を含む水性組成物を試験管の中で調製した。OD最大値は415nmに観察された。その水性組成物にトルエン(2から3mL)を添加し、掻き混ぜて、内容物を均質にし、それを2〜3週間静置したところ、すべてのトルエンが蒸発した。
【0217】
試験管の中の水性組成物にクロロホルム(3mL)を添加し、振り混ぜて、銀ナノ粒子を非水性クロロホルム層に抽出した。クロロホルム層は、多量の銀ナノ粒子を得るとコハク褐色になった。希釈後のクロロホルムのODを300から550nmに対して測定した。最大値は420nmに見られ、曲線の形状は、水性組成物の曲線と同じであった(図1参照)。まだ銀ナノ粒子が豊富な水性液体をクロロホルム(3mL)の第2の部分で再抽出して、より多くの銀ナノ粒子を回収した。サテン様仕上げを有するポリプロピレンの1”×1”の織物を第2のクロロホルム層に浸漬し、迅速に取り出し、空気中に数分間放置して乾燥させた。織物の色は、白色から薄い黄/橙色に変化した。黄色ブドウ球菌に対するZOIアッセイにおいて、抗菌性を有することがわかった。
【0218】
実施例B16:ヒダントインによるB16銀ナノ粒子組成物
銀ナノ粒子を含む組成物を以下のようにしてヒダントインから調製した。米国特許出願第2003/0186955号の実施例2に開示されている方法に従ってヒダントイン酸銀を最初に調製した。次に、ヒダントイン酸銀(0.05g)と脱イオン水(6.7mL)とTween20溶液(3mL、16.7g/L)を試験管にて混合し、TEMED(0.3mL)を添加し、内容物を掻き混ぜ、電子レンジで30秒間加熱して、黄褐色混合物を生成させた。420nmに混合物のOD最大値が存在することにより、銀ナノ粒子の存在が確認された。
【0219】
実施例B17:非水性銀ナノ粒子組成物
銀ナノ粒子を含む非水性組成物を以下のようにして調製した。Tween20に代えて、オレイン酸ナトリウム(3.3mL、4g/L)を安定剤として使用した。それを試験管中でサッカリン酸ナトリウム(0.3mL、0.125M)と混合した。この混合物に、硝酸銀(0.3mL、0.1M)を添加し、次いで水(6mL)を添加した。最後に、TEMED(0.17mL)を添加した。得られた混合物を20秒間マイクロ波処理して、それを加温し、ナノ粒子形成を開始させた。ごく薄い色が観察された。ビーカーに仕込まれた内容物をホットプレートで加熱して、水をすべて蒸発させた。ほとんどの水を蒸発させた後に、ビーカーを冷却し、25mLのクロロホルムを添加して、銀ナノ粒子を抽出した。クロロホルムは黄色を呈し、銀ナノ粒子の存在を示していた。OD最大値は、約430nmの波長に観察された。
【0220】
実施例B18:非水性銀ナノ粒子組成物
銀ナノ粒子を含む非水性組成物を以下のようにして調製した。最初に、銀ナノ粒子を含む水性組成物を実施例B7と同様の割合で作製し、蒸発させて、粘性褐色塊体とした。この塊体にクロロホルム(2〜3mL)を添加して、銀ナノ粒子を抽出した。すぐにクロロホルム層が黄褐色になった。OD最大値は415nmで、形状においては、OD対波長曲線は、実施例B15と類似していた。得られたクロロホルム層の数滴をガラススライドに展開した。乾燥すると、膜は光沢を与え、ターコイズ色を呈した。
【0221】
実施例B19:CMCを安定化剤とする水性銀ナノ粒子組成物
0.05gのポリマーを水(10mL)に溶解させることによって、CMCナトリウム塩を調製した。試験管内で、上記CMC溶液(1mL)とサッカリン酸ナトリウム(1mL、0.125M)と硝酸銀(1mL、0.1M)を混合した。最後に、TEMED(0.1ml)を添加し、混合物を掻き混ぜた。ナノ粒子の形成を示す溶液の黄色変化が数分間以内に観察された。溶液の色が経時的に濃くなっていった。溶液は、また、緑色蛍光を呈していた。OD最大値は、438nmに観察された。
【0222】
実施例B20:CMCを安定化剤とする水性銀ナノ粒子組成物
上記の実施例B19において、サッカリン酸ナトリウムの代わりにアセスルファムカリウム塩溶液を使用し、調製を繰り返した。ここでも、溶液中の銀ナノ粒子による黄褐色が観察された。ODは記録しなかった。サッカリン酸ナトリウムの代わりにアセスルファムカリウムを使用して調製を繰り返した。得られた溶液は、この場合も、ナノ粒子の存在を示す黄褐色を呈した。
【0223】
実施例B21:アルギン酸プロピレングリコールを安定化剤とする水性銀ナノ粒子組成物
上記の実施例B19において、CMCナトリウム塩の代わりにアルギン酸プロピレングリコールを使用し、調製を繰り返した。OD最大値は440nmであった。溶液は、また、緑色蛍光を呈したが、実施例B19より強度が低かった。
【0224】
実施例B22:様々な界面活性剤を安定化剤として用いた水性銀ナノ粒子組成物
Tween20、Tween80およびステアリン酸ポリオキシエチレンを使用して、約65g/Lの濃度で界面活性剤原液を作製した。
【0225】
銀ナノ粒子を含む溶液を調製するために、所定の界面活性剤溶液(0.3mL)と、アセスルファムカリウム塩溶液(1mL、0.125M)と、硝酸銀溶液(0.75mL、0.1M)を混合し、TEMED(0.3mL)を添加した。溶液を、黄色になるまで電子レンジで短時間加熱した。OD対波長データを界面活性剤毎に記録した(図18)。最大値に小さな差が見られたが、すべて415〜425nm範囲におさまっており、ナノ粒子径が一定していることを示していた。
【0226】
実施例B23:トリエタノールアミンを使用して調製された銀ナノ粒子組成物
硝酸銀溶液とサッカリン酸ナトリウム溶液の等モル混合物からサッカリン酸銀粉末を調製した。サッカリン酸銀粉末(30〜35mg)をTween20溶液(1ml、16.7g/L)に添加し、次いで水(4mL)を添加した。この混合物にトリエタノールアミン(0.225g)を添加し、内容物が黄色に変わるまでマイクロ波で短時間加熱した。
【0227】
上記組成物を使用して、抗菌特性を有する様々な物品を調製した。55℃で2時間浸漬し、洗浄することによってナイロン繊維を作製した。上記組成物に1分間浸漬し、次いで脱液し、エタノール(10mL)に5分間浸し、再度脱液し、55℃で15分間乾燥させることによって、木綿ガーゼおよびサテン布(2”×2”)を調製した。
【0228】
実施例B24:ポリビニルアルコール(PVA)を使用して調製された銀ナノ粒子組成物
PVA溶液を脱イオン水で調製した(0.02〜00.03g/10mL)。PVA溶液(1mL)、サッカリン酸ナトリウム(1mL、0.125M)および硝酸銀(1ml、0.1M)を一緒に掻き混ぜた。TEMED(0.1ml)を添加し、再び掻き混ぜた。内容物を電子レンジで短時間加熱した。溶液は灰褐色になったが、溶液のOD最大値は455nmであった。
【0229】
実施例B25:ポリアクリルアミド(PAA)を安定剤として用いた銀ナノ粒子組成物
実施例B24と同じ試験を行ったが、PVAの代わりに、ポリアクリルアミドを使用した。PAAを濃縮物として作製し、0.005gの濃縮物を1mLの水に添加した。組成物のOD最大値は450nmであり、その色は褐色であった。
【0230】
実施例B26:ポリビニルピロリドン(PVP)を安定剤として用いた銀ナノ粒子組成物
実施例B24において、PVPの代わりにPVP溶液(0.25g/水10mL)を使用して、試験を繰り返した。得られた組成物は、加熱後に黄色ではなく緑色になった。OD最大値は、435nmに見られ、スペクトルはTween20を使用した場合ほどシャープではなく、粒子分布が広いことを示していた。
【0231】
実施例B27:ソルビン酸カリウムを安定剤として用いた銀ナノ粒子組成物
ソルビン酸カリウムの溶液(0.1M)を調製した。このソルビン酸塩溶液(1mL)にTween20(1mL、16.7g/L)を混合し、硝酸銀(1mL、0.1M)を一緒に掻き混ぜた、TEMED(0.005mL)をさらに添加し、再び掻き混ぜた。試験管の内容物を短時間加熱すると、溶液の色が橙黄色に変化した。組成物のOD最大値は、410nmで、サッカリン酸塩をベースとした組成物の値より幾分小さかった。本実施例は、二重結合含有分子(ソルビン酸銀)を銀源として使用できることを示している。
【0232】
実施例B28:オレイン酸ナトリウムw/o Tween20を用いた銀ナノ粒子組成物
オレイン酸ナトリウム(4〜5mg)を試験管中で1mlの水に溶解させた。それにサッカリン酸ナトリウム(1mL、0.105m)および硝酸銀(1mL、0.1M)を添加して、塊状の白色沈殿を与えた。試験管にTEMED(0.2mL)を添加し、短時間マイクロ波処理して、内容物を加熱した。加熱すると、色が黄色に変化して、ナノ粒子が形成されていることを示していた。最大値のODは記録しなかった。
【0233】
実施例B29:銀−TEMED錯体を含む銀組成物
Tween20溶液(1mL、16.7g/L)と硝酸銀(1mL、0.01M)を試験管にて混合した。次いで、TEMED(0.1mL)を添加して、マイクロ波で短時間加熱して、銀を管壁に金属膜として付着させた。紫色の金属膜で被覆されたガラス表面の領域は、湾曲した界面ではなく平坦な水/空気界面によって示されるように、水濡れ性が低下した。
【0234】
実施例B30:ソルビン酸塩を含む銀組成物:安定性に対するエタノールの影響
水、および水66%−エタノール33%の混合物(希釈率1:100)で希釈することによって実施例B27の銀ナノ粒子組成物の溶液を調製した。新鮮な溶液、および5日後の水−エタノール系溶液の紫外可視スキャンを記録した。スペクトルの変化は観察されず、銀ナノ粒子のエタノールに対する耐性を示していた。
【0235】
実施例B31:銀ナノ粒子組成物の調製における還元剤としての異なるアミンの使用
Tween20溶液(1mL、16.7g/L)と、サッカリン酸ナトリウム(1mL、0.125M)と、硝酸銀(1mL、0.1M)を一緒に掻き混ぜた。異なるアミン(0.1mL)を添加し、再び掻き混ぜた。必要に応じて、内容物を電子レンジで短時間加熱した。溶液のOD最大値を記録した。
【0236】
以下のアミン、N,N,N’N’テトラメチルブチレンジアミン、エタノールアミン、シクロヘキシルアミン、ジプロピルアミン、トリエタノールアミンを試験した。
【0237】
これらのうち、ジプロピルアミンおよびトリエタノールアミンは、順調に黄色の溶液を与え、415nmに同じ溶液ODを有し、曲線のスペクトル形状が実質的に同じである銀ナノ粒子の存在を示していた。
【0238】
実施例B32:粉末形態のサッカリン酸銀を用いた銀組成物
サッカリン酸銀粉末(15〜20mg)をTween20溶液(1mL、16.7g/L)に添加し、次いで水(2mL)を添加した。この混合物にトリエタノールアミン(0.1g)を添加し、内容物が黄色になるまでマイクロ波で短時間加熱した。溶液のOD最大値は420nmであり、紫外可視スペクトルは、サッカリン酸銀のインシチュでの形成によって作製された組成物と同じであった。
【0239】
上記の銀ナノ粒子組成物に55℃で2時間浸漬し、洗浄することによってナイロン繊維を作製した。上記組成物に1分間浸漬し、次いで脱液し、エタノール(10mL)に5分間浸し、再度脱液し、55℃で15分間乾燥させることによって、木綿ガーゼおよびサテン布(2”×2”)を調製した。それらの繊維は、抗菌活性を示した。
【0240】
実施例B33:フマル酸塩を含む銀組成物
フマル酸ナトリウムを以下のようにして作製した。0.116gのフマル酸を試験管内の10mlの水に添加した。さらに、2モル当量の炭酸ナトリウムを添加して、フマル酸ナトリウムを形成した。フマル酸ナトリウムを単離せずに、1mlの上記フマル酸ナトリウム溶液と、Tween20溶液(1mL、16.7g/L)と、硝酸銀(1mL、0.1M)を順次混合し、次いでTEMED(0.1mL)を添加した。試験管内容物をマイクロ波で短時間加熱して、OD最大値が420nmの黄色溶液を生成させた。Tween20を使用しなければ、溶液は紫色であり、異なる粒径の銀ナノ粒子が形成しうることを示している。
【0241】
実施例B34:ゲルを含む銀ナノ粒子
カップ中で、グリセロール(5.0g)を秤量し、カルボキシメチルセルロース(0.5g)を添加し、手で混合して、セルロース粒子にグリセロールを均一に塗布した。温脱イオン水(40mL)をカップに添加し、得られた塊体を混合して、滑らかなゲルを生成させた。実施例B23のトリエタノールアミン(0.1g)から作製された銀ナノ粒子組成物を添加し、均一になるまで混合して、黄色ゲルを生成させた。
【0242】
ゲル(10g)の一部に、クエン酸と水を1gずつ添加して、爪真菌症の治療に使用することが可能である抗菌性ゲルを与えた。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶媒と、銀ナノ粒子と、安定化剤とを含む組成物。
【請求項2】
溶媒が水性または非水性である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
水性溶媒が水である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
溶媒が、塩化メチレン、クロロホルム、他の脂肪族および芳香族塩素化溶媒、シクロヘキサン、ジエチルエーテル、酢酸エチル、およびそれらの混合物である、請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
安定化剤が、ポリマー、界面活性剤、またはその両方である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
ポリマーが、合成または天然由来のホモポリマーまたはコポリマー、アクリルアミドおよびその誘導体、メタクリルアミドおよびその誘導体のポリマー、ポリアミド、ポリウレタン、特定の主鎖を有さないが、ウレタン部もしくは三級アミン基を側鎖に有するポリマー、本質的には主に極性の他のポリマー、またはメタアクリルアミド、置換アクリルアミド、置換メタアクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸、メタクリル酸ヒドロキシエチル、アクリロニトリル、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸およびその(ナトリウム、カリウム、アンモニウム)塩、2−ビニルピロリドン、2−ビニルオキサゾリン、酢酸ビニル、もしくは無水マレイン酸から誘導された部分を有するコポリマーである、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
界面活性剤は、陰イオン性、非イオン性または両性界面活性剤である、請求項5に記載の組成物。
【請求項8】
a)安定化剤溶液の水溶液、陰イオン供与溶液および可溶性銀塩溶液を任意の順序で添加する工程と、
b)三級ジアミン溶液を添加する工程と
を含む銀ナノ粒子の製造方法。
【請求項9】
c)最終的な溶液を加熱して反応を増進する工程をさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
安定化剤溶液が、界面活性剤、ポリマーまたはその両方を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
ポリマーが、合成または天然由来のホモポリマーまたはコポリマー、アクリルアミドおよびその誘導体、メタクリルアミドおよびその誘導体のポリマー、ポリアミド、ポリウレタン、特定の主鎖を有さないが、ウレタン部もしくは三級アミン基を側鎖に有するポリマー、本質的には主に極性の他のポリマー、または、メタアクリルアミド、置換アクリルアミド、置換メタアクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸、メタクリル酸ヒドロキシエチル、アクリロニトリル、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸およびその(ナトリウム、カリウム、アンモニウム)塩、2−ビニルピロリドン、2−ビニルオキサゾリン、酢酸ビニル、もしくは無水マレイン酸から誘導された部分を有するコポリマーである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
物品の表面にインシチュ(in situ)でナノ粒子を形成する工程をさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
物品が織繊維品または不織繊維品である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
物品が、医療デバイス、ポリマー、繊維、金属、ガラス、セラミック、織物、またはそれらの組合せである、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
ナノ粒子を非水溶液に抽出する工程をさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項16】
a)有効量のナノ粒子が表面に結合するために十分な時間にわたって、銀ナノ粒子を含む溶液に表面を接触させる工程と、
b)溶液を表面から洗い落とす工程と
を含む、表面を銀ナノ粒子で処理する方法。
【請求項17】
接触および洗浄工程を複数回繰り返して、表面に付着するナノ粒子の数を増加させる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
接触される表面は、医療デバイス、ポリマー、繊維、金属、ガラス、セラミック、織物、またはそれらの組合せである、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
c)ナノ粒子が付着した表面を、十分な時間にわたって過酸化水素水溶液に接触させる工程と、
d)過酸化水素溶液を表面から洗い落とす工程と
をさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
接触される表面は、医療デバイス、ポリマー、繊維、金属、ガラス、セラミック、織物、またはそれらの組合せである、請求項19に記載の方法。
【請求項1】
溶媒と、銀ナノ粒子と、安定化剤とを含む組成物。
【請求項2】
溶媒が水性または非水性である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
水性溶媒が水である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
溶媒が、塩化メチレン、クロロホルム、他の脂肪族および芳香族塩素化溶媒、シクロヘキサン、ジエチルエーテル、酢酸エチル、およびそれらの混合物である、請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
安定化剤が、ポリマー、界面活性剤、またはその両方である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
ポリマーが、合成または天然由来のホモポリマーまたはコポリマー、アクリルアミドおよびその誘導体、メタクリルアミドおよびその誘導体のポリマー、ポリアミド、ポリウレタン、特定の主鎖を有さないが、ウレタン部もしくは三級アミン基を側鎖に有するポリマー、本質的には主に極性の他のポリマー、またはメタアクリルアミド、置換アクリルアミド、置換メタアクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸、メタクリル酸ヒドロキシエチル、アクリロニトリル、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸およびその(ナトリウム、カリウム、アンモニウム)塩、2−ビニルピロリドン、2−ビニルオキサゾリン、酢酸ビニル、もしくは無水マレイン酸から誘導された部分を有するコポリマーである、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
界面活性剤は、陰イオン性、非イオン性または両性界面活性剤である、請求項5に記載の組成物。
【請求項8】
a)安定化剤溶液の水溶液、陰イオン供与溶液および可溶性銀塩溶液を任意の順序で添加する工程と、
b)三級ジアミン溶液を添加する工程と
を含む銀ナノ粒子の製造方法。
【請求項9】
c)最終的な溶液を加熱して反応を増進する工程をさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
安定化剤溶液が、界面活性剤、ポリマーまたはその両方を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
ポリマーが、合成または天然由来のホモポリマーまたはコポリマー、アクリルアミドおよびその誘導体、メタクリルアミドおよびその誘導体のポリマー、ポリアミド、ポリウレタン、特定の主鎖を有さないが、ウレタン部もしくは三級アミン基を側鎖に有するポリマー、本質的には主に極性の他のポリマー、または、メタアクリルアミド、置換アクリルアミド、置換メタアクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸、メタクリル酸ヒドロキシエチル、アクリロニトリル、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸およびその(ナトリウム、カリウム、アンモニウム)塩、2−ビニルピロリドン、2−ビニルオキサゾリン、酢酸ビニル、もしくは無水マレイン酸から誘導された部分を有するコポリマーである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
物品の表面にインシチュ(in situ)でナノ粒子を形成する工程をさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
物品が織繊維品または不織繊維品である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
物品が、医療デバイス、ポリマー、繊維、金属、ガラス、セラミック、織物、またはそれらの組合せである、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
ナノ粒子を非水溶液に抽出する工程をさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項16】
a)有効量のナノ粒子が表面に結合するために十分な時間にわたって、銀ナノ粒子を含む溶液に表面を接触させる工程と、
b)溶液を表面から洗い落とす工程と
を含む、表面を銀ナノ粒子で処理する方法。
【請求項17】
接触および洗浄工程を複数回繰り返して、表面に付着するナノ粒子の数を増加させる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
接触される表面は、医療デバイス、ポリマー、繊維、金属、ガラス、セラミック、織物、またはそれらの組合せである、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
c)ナノ粒子が付着した表面を、十分な時間にわたって過酸化水素水溶液に接触させる工程と、
d)過酸化水素溶液を表面から洗い落とす工程と
をさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
接触される表面は、医療デバイス、ポリマー、繊維、金属、ガラス、セラミック、織物、またはそれらの組合せである、請求項19に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2012−36188(P2012−36188A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−186967(P2011−186967)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【分割の表示】特願2007−523881(P2007−523881)の分割
【原出願日】平成17年8月1日(2005.8.1)
【出願人】(507030287)アクリメッド インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−186967(P2011−186967)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【分割の表示】特願2007−523881(P2007−523881)の分割
【原出願日】平成17年8月1日(2005.8.1)
【出願人】(507030287)アクリメッド インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】
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