説明

抗血小板剤をモニターする方法及び装置

【課題】抗血小板剤の効力を、初期血餅形成から溶解まで連続的に且つ全凝固過程にわたって測定する方法を提供する。
【解決手段】血液凝固分析器を用意し、該血液凝固分析器は、血餅強度を測定することができ;
該血液凝固分析器を用いて、抗血小板療法の非存在下で得た第一の血液試料の第一の血液凝固パラメーターを測定し;
該血液凝固分析器を用いて、抗血小板療法の存在下で得た第二の血液試料の第二の血液凝固パラメーターを測定し;
ここに、第一の血液凝固パラメーター及び第二の血液凝固パラメーターの少なくとも一つが、それぞれの血液試料の試料として採ったままの部分の特性並びにトロンビン活性化を阻止し且つフィブリノーゲン及び血小板の活性化を保護するためにイン・ビトロで処理したそれぞれの血液試料の一部分の特性に基づくことを特徴とし;そして
第一及び第二の血液凝固パラメーターに基づいて、抗血小板剤の効力を測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗血小板剤の効力をモニターするための方法及び装置に関係する。
【背景技術】
【0002】
血液は、酸素及び栄養物質を組織へ運び、二酸化炭素及び種々の代謝産物を排泄するために除去する生物の循環する組織である。全血液は、淡黄色又は灰黄色の液体である血漿よりなり、その中には、赤血球細胞、白血球細胞及び血小板が懸濁している。
【0003】
患者の血液の時宜を得た効果的な様式で凝固する能力の正確な測定は、ある種の外科的及び医学的手順にとって決定的に重要である。異常な凝固の加速された(迅速な)且つ正確な検出も又、凝固異常を患っていて抗凝固剤、抗繊維素溶解剤、血栓溶解剤、抗血小板剤又は血液成分を、凝固異常に寄与しうる患者の血液の異常成分又は「因子」を考慮に入れた後に明確に測定しなければならない量で投与することを必要としうる患者に与えられる適当な治療に関して特に重要である。
【0004】
止血は、多くの相互作用する因子を含む動的で、極めて複雑な過程であり、該因子には、凝固及び繊維素溶解性のタンパク質、アクチベーター、インヒビター及び細胞性エレメント例えば血小板細胞骨格、血小板細胞質顆粒及び血小板細胞表面が含まれる。その結果、活性化中には、如何なる因子も静的でいることはなく、孤立して働くこともない。従って、完全であるためには、孤立的でなく、静的でもない様式にある全血液成分の正味の結果としての患者の止血の全相を連続的に測定することが必要である。止血の分離された部分の測定の結果の例を与えるために、患者は、プラスミノーゲンのプラスミン(血餅を崩壊させる酵素)への活性化によって引き起こされる繊維素溶解を発生したと仮定する。このシナリオにおいて、この過程の副生物はフィブリノーゲン分解産物(FDP)(抗凝固剤として振る舞う)。もし患者を抗凝固性についてのみ試験して、然るべく治療するならば、この患者は、抗繊維素溶解剤で治療されないことによる危険にあり続けうる。
【0005】
止血過程の結果は、重合したフィブリン(フィブリノーゲン)繊維の3次元的ネットワークであり、これは、血小板糖タンパク質IIb/IIIa(GPIIb/IIIa)レセプター結合と共に最終的な血餅を形成する(図1)。このネットワーク構造の独自の特性は、それが、循環血液の変形剪断応力に抵抗しうる硬い弾性固体として振る舞うというものである。最終的な血餅の変形剪断応力に抵抗する強さは、フィブリン繊維ネットワークの構造及び密度並びに関係する血小板により発揮される力によって決定される。
【0006】
血小板は、少なくとも2つの仕方で、フィブリンの機械的強度をもたらすことが示されている。第一に、分岐点として作用することにより、それらは、有意に、フィブリン構造の硬さを増強する。第二に、血小板アクトミオシン(細胞骨格媒介の収縮装置の一部分である筋タンパク質)の収縮性により、繊維に「牽引」力を働かせることによる。この収縮性の力は、更に、フィブリン構造の強度を増強する。血小板レセプターGPIIb/IIIaは、重合中の繊維を活性化血小板における下にある細胞骨格収縮装置に繋ぎ留め、それにより、機械的な力のトランスファーを媒介する際において決定的に重要であるらしい。
【0007】
従って、活性化された止血の結果として発達し、損傷を受けた血管系に付着して、循環血液の変形剪断応力に抵抗する血餅は、本質において、「一時的ストッパー」を与えるために形成される機械装置であって、血管回復中、循環血液の剪断力に抵抗する。血餅の動力学、強度及び安定性即ち循環血液の変形剪断力に抵抗するその物理的特性は、不適当な血栓症を生ずることなく出血を止める止血の仕事をするその能力を決定する。これは、まさに、下記のThrombelastograph(登録商標)(TEG(登録商標))システムが遂行するために設計されたことであり、それは、最初のフィブリン形成に要する時間、血餅が最大強度に達するのに要する時間、実際の最大強度及び血餅安定性を測定することである。
【0008】
血液凝固分析装置は、1940年代にドイツでHelmut Hartert教授がかかる装置を開発して以来公知である。血液凝固分析器の一つの型は、本出願人に譲渡された米国特許第5,223,227号(その開示を、参考として本明細書中に援用する)に記載されている。この器械(TEG(登録商標)Coagulation Analyzer)は、種々のゆるい血流に類似した低剪断環境下で凝固するように誘導された際に血液の弾性をモニターする。発達中の血餅の剪断弾性の変化のパターンは、血餅形成の動力学並びに形成された血餅の強度及び安定性(要するに、発達中の血餅の機械的特性)の測定を可能にする。上記のように、血餅の動力学、強度及び安定性は、その血餅の「機械的仕事」を遂行する(即ち、循環血液の変形剪断応力に抵抗する)能力についての情報を与える(本質において、血餅は、止血の基本的機械であり、TEG分析器は、血餅の、構造発達中における機械的仕事を遂行する能力を測定する)。このTEGシステムは、患者の止血のすべての相を、分離されてない全血液成分の正味の生成物として又は試験開始時点から最初のフィブリン形成までの静的様式の全血液成分の正味の生成物として連続的に測定する(凝固速度強化及び、血小板GPIIb/IIIaレセプター及び凝血溶解によるフィブリン血小板結合により最終的に凝固する強さによって)。
【0009】
血小板は、経皮経管冠動脈形成術(PTCA)後の虚血性合併症の媒介において決定的に重大な役割を演じる。GPIIb/IIIaレセプターの阻害は、死の危険及び心筋梗塞の劇的な減少を生じうる極めて強力な形態の抗血小板治療である。マウス/ヒトキメラ抗体断片c7E3Fab(アブシキシマブ, ReoPro(登録商標))の導入は、広く行きわたった利用可能性及びこの治療の臨床的利用の増大を生じた。Aggrastat(登録商標)(チロフィバン)及びIntegrilin(登録商標)(エプチフィバチド)などの幾つかの合成型のGPIIb/IIIaアンタゴニストが、最近、認可された(経口剤として利用可能なので、この形態の治療の尚一層大きい利用が期待されている)。
【0010】
現在、治療のための血小板阻害をモニターするための、迅速で、信頼できる、定量的な、注意点試験はない。小規模な臨床的研究及び投与量−結果研究においては血小板GPIIb/IIIaレセプター阻害の程度を測定するために比濁凝集試験が用いられてきたが、患者におけるGPIIb/IIIaレセプターアンタゴニストの投与のためにそれを日常的に臨床的に用いることはできなかった。凝集は、時間浪費的であり(1時間より長い)、高価であり、実施に専門の人員を必要とし、24時間続けて行うことは容易でなく、それ故、それは、日常的な患者のモニター及び投与量の個別化に用いることはできない。臨床的に有用であるためには、血小板阻害のアッセイは、臨床でのレセプター阻害に関して迅速且つ信頼できる情報を提供し、それにより、投与量変更を可能にして望ましい抗血小板効果を達成しなければならない。
【0011】
比濁凝集試験は、試料の光学密度の変化をモニターする測光原理に基づいている。初期には、機能的血小板が比濁試験により活性化されるので、最少量の光が試料を通過し;図1に示したように、血小板GPIIb/IIIaレセプターとフィブリン(ノーゲン)の結合によって血小板凝集が起き、そうして、光の透過が増大する。血小板が、GPIIb/IIIaレセプター阻害によって阻害された場合に、光の透過が比例して増大する。
【0012】
他の市販のシステムは、フィブリノーゲン−血小板結合を、一定量の外部供給源の「正常」フィブリノーゲンで被覆したビーズを用いて測定する。それ故、このシステムの利用は、患者起源でない「正常」フィブリノーゲンを利用し、一層高い患者のフィブリノーゲンレベルのために前血栓症状態(過剰凝固性)の患者を検出できず、又は患者の低いフィブリノーゲンレベルのために出血状態(低凝固性)を検出できない。加えて、このシステムは、結合のみを示して、その結合の分解を検出しない。それ故、血栓溶解の存在下では、このシステムによる血小板GPIIb/IIIaレセプター阻害の評価は、正確でない。
【0013】
フィブリノーゲン−血小板GPIIb/IIIa結合は、血小板凝集の初期相即ち第一次止血血小板血栓であり、これに続いて、最終的なフィブリン−血小板結合が形成される。従って、フィブリノーゲン−血小板結合の初期段階だけの測定では、GPIIb/IIIaレセプターを介した最終的なフィブリン−血小板結合を正確に反映することができず、不十分である。比濁及び他の測光システムは、フィブリノーゲン−血小板GPIIb/IIIaレセプター結合による血小板凝集の開始を検出するが、それは、GPIIb/IIIaレセプターを介した最終的なフィブリン−血小板結合を正確に反映することはできない。
【0014】
「正常な」フィブリノーゲンで被覆したビーズを利用するシステムの限界のうちで重要なものは、この「正常な」フィブリノーゲンは、特殊な患者自身のフィブリノーゲンの量又は機能性を反映することができないであろうということである。それ故、かかるシステムにより測定したフィブリノーゲン−血小板GPIIb/IIIaレセプター阻害は、血小板凝集の初期相の患者個人のフィブリノーゲン−血小板GPIIb/IIIa阻害の粗い評価にすぎない。
【0015】
これは、血小板阻害剤での処理を必要とし、一層高レベル又は低レベルのフィブリノーゲンを有し、それ故、血小板GPIIb/IIIaレセプター阻害の過小評価による出血性合併症又は血小板GPIIb/IIIaレセプター阻害の過大評価による虚血事象を減らすために血小板GPIIb/IIIaレセプター阻害の正確な評価を必要とするある種の高リスク患者亜群においては重大な限界である。加えて、フィブリノーゲンレベル及び機能性は、介入手順の外傷において変化しうる。この時、その手順の間又はその後に、血小板GPIIb/IIIaレセプター阻害のリアルタイムの正確な評価は、不可避である。
【0016】
従って、抗血小板剤の効力を、初期血餅形成から溶解まで連続的に且つ全凝固過程にわたって測定する方法及び装置に対する要求がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
好適な具体例の詳細な説明
【0018】
この発明の好適具体例により、この発明のプロトコールによる血液凝固分析器の利用は、GPIIb/IIIaレセプター阻害の治療レベルの達成の確認;適当なGPIIb/IIIaレセプター阻害の達成を評価する個別化投与評価;適当なGPIIb/IIIaレセプター阻害に達するのに必要とされる個別化投与評価;血小板阻害剤で処理した後の血小板阻害又は阻害回復の減少速度の説明;血栓溶解剤と血小板阻害剤との組み合わせの患者の止血への効果の評価を可能にする。
【0019】
本発明は、血液凝固分析器10例えば上記のThrombelastograph(登録商標)(TEG(登録商標))血液凝固分析器を利用して、血餅の物理的特性を測定する。典型的な血液凝固分析器10は、前述の米国特許出願第09/255,099号に詳細に記載されており、ここでは完全な議論を繰り返さない。しかしながら、この発明の理解を助けるために、図2を参照して、血液凝固分析器10の簡単な記載を与える。この血液凝固分析器は、血液試料13を保持する特別の静止円筒形カップ12を使用する。カップ12を駆動用機械に結合し、それは、カップを角α(好ましくは、約4°45’)で振動させる。各回転周期は、10秒間続く。ピン14を、血液試料13中に捩り針金15によって懸垂させ、そのピン14をその動きについてモニターする。回転するカップ12のトルクは、フィブリン−血小板結合がカップ12とピン14を一緒に結合した後にのみ、浸されたピン14に伝えられる。これらのフィブリン−血小板結合の強度は、ピンの動きの大きさに影響し、強い血餅は、ピン14を直接カップの動きと同期して動かす。従って、その出力の大きさは、形成された血餅の強さと直接関係している。血餅が収縮又は溶解するにつれて、これらの結合は破壊され、カップの動きの伝達は減少する。
【0020】
ピン14の回転運動は、機械的−電気的変換器16により、電気信号に変換され、それを、プロセッサーと制御プログラムを有するコンピューター(図2には示してない)によってモニターすることができる。
【0021】
このコンピューターは、電気信号によって、測定された凝固過程に対応する止血プロフィルを生成するように操作可能である。加えて、このコンピューターは、視覚的ディスプレーを有することができ、又はプリンターに接続して止血プロフィルの視覚的描写を与えることができる。このコンピューターのかかる構成は、十分に当業者の技能の範囲内のことである。
【0022】
やはり説明するように、止血プロフィルの評価に基づいて、コンピューターをその制御プログラムによって、推奨投与量を与えるように適合させることができる。図3に示したように、その結果の止血プロフィル20は、最初のフィブリン鎖が形成されるのに要する時間、血餅形成の動力学、血餅の強度(剪断弾性単位ダイン/cm2)及び血餅の溶解の測定値である。下記の表Iは、これらの測定されたパラメーターの幾つかの定義を与える。
【表1】

【0023】
臨床的に、これらの測定値は、抗凝固治療(例えば、ヘパリン又はワルファリン)、血栓溶解療法(例えば、tPA、ストレプトキナーゼ、ウロキナーゼ)、抗繊維素溶解剤(例えば、e−アミノカプロン酸(Amicar(登録商標))、トラシロール(アプロチニン)、トラネキサム酸(TX))の効果、抗血小板剤(例えば、アブシキシマブ(ReoPro(登録商標))、エプチフィバチド(Integrilin(登録商標))、チロフィバン(Aggrastat(登録商標))の効果、血液成分輸血療法、癌及び感染症における血栓の危険の評価、危険の大きい外科手術及び他の過度の凝固(凝固過剰状態)又は過度の出血(低凝固状態)へと導きうる状態をモニターするための手段を与える。この発明によれば、血液凝固分析器10は、繊維素溶解を停止させるための薬物療法の臨床的効力を試験する際、又は血栓溶解剤の効力を試験して血栓溶解をモニターする際、抗血小板剤の効力を試験して血小板阻害及び虚血性合併症をモニターする際に有用である。
【0024】
血液凝固分析器10及び結合されたコンピューターは、定量的に、時間に対して血餅の強度をプロットし、該プロットにおいては、血餅形成の開始、反応時間(R)を記する(図3)。このプロットは又、血液試料の最大血餅強度(即ち、硬さ)MAをも示す。MAは、血小板−フィブリンGPIIb/IIIa結合の全体的評価であり、それは、例えば、術後血液血小板又はフィブリノーゲン置換療法を導くために利用される。血小板とフィブリンだけの間で、異常に低いMAは、血液血小板の異常(即ち、量的又は機能的欠損)及び/又は血液中のフィブリノーゲン含量の異常があることを意味する。しかしながら、フィブリノーゲンレベル及び血小板の数を一定に維持することにより、MAの如何なる変化も、血小板機能の変化を反映するであろう。それ故、同じ血液試料を2つの方法(1つは、抗血小板剤を用い、1つは、用いない)で試験することにより、2つのMAの間の差は、抗血小板剤の血小板機能に対する効果を反映する。
【0025】
血小板は、卒中及び心筋梗塞を生じる虚血性合併症の媒介において決定的に重要な役割を演じている。アスピリン、抗体断片c7E3Fab、アブシキシマブ(ReoPro(登録商標))、又はクロピドグレル(Plavix(登録商標))などの抗血小板剤(血小板ブロッカー剤)による血小板機能の阻害は、死亡、心筋梗塞又は経皮経管冠動脈形成術(PTCA)若しくは動脈内血栓溶解療法(IATT)後の再閉塞の危険の劇的な減少を生じうる。過剰量の抗血小板剤の投与は、生命をおびやかす出血へと導きうるであろう。それ故に、所定の患者における血小板機能阻害の正確な見積もりは、この薬物療法をモニターするのに非常に重要である(何故なら、このクラスの薬物は、危険/治療比が狭いから)。
【0026】
上記のストラテジー(フィブリノーゲンレベル及び血小板数を一定に保つ)を用いて、抗血小板剤を適当に投与してモニターし若しくはそれらの投薬量を調節し、又はフィブリンのMAへの寄与(MAFIB)を測定することが可能であり、減算(MAP=MA−MAFIB)により、血小板のMAへの純粋な寄与(MAP)を測定することが可能である。
【0027】
それ故に、この発明の好適具体例により、抗血小板剤をモニターするために、下記の手順に従う:
1.血液凝固分析器10(一般に使用されているもの)は、最も強力な血小板アクチベーターのトロンビンにより刺激された血小板機能(MA又はMAP)を測定する。血小板機能の小さい阻害に対してMA又はMAPを敏感にするためには、血小板機能は、トロンビンより強力でない血小板アクチベーター例えばADPによって活性化されるべきである。それ故、この例で血液試料を血液凝固分析器10中を流す場合には、トロンビンの形成を、例えば、クエン酸ナトリウムにより阻止し、代わりにADPを用いて血小板機能を活性化する。
【0028】
2.不幸にも、トロンビンは又、フィブリノーゲンからフィブリンへの変換の活性化にも関与している。ステップ1でクエン酸ナトリウムを用いてトロンビン形成を阻止した場合には、他の酵素を用いてフィブリノーゲンを活性化することが必要である。レプチラーゼは、その唯一の機能はフィブリノーゲンからフィブリンへの変換を活性化することであり、適当な酵素である。血餅は、今や、レプチラーゼ(フィブリノーゲン活性化)とADP(血小板活性化)により刺激される。上記のように、血餅の強度は、MAにより測定され、血小板機能の血餅強度への寄与は、MAPにより測定される。
【0029】
3.レプチラーゼのようなフィブリノーゲンアクチベーターとADPのような血小板アクチベーターにより形成された血餅は、典型的には、トロンビンにより生成されたものより弱い。それ故、上記の捩り針金15を、一層弱い血餅に対して良好な感度を有し且つReoPro(登録商標)などの抗血小板剤の小さな効果によるMAとMAPの変化を測定することができるように選択する。
【0030】
上記に基づいて、以下のプロトコールを実行することができる:
1.血液凝固分析器10の捩り針金の変形:剪断力に対する様々な感度のための種々の強度の捩り針金を、適当に測定するために、作成することにより、様々な潜在能力の抗血小板剤の効果を測定することができる。捩り針金の感度は、一般に、その太さに関係する。約150〜1000dyn/cm2の範囲の血餅検知感度の太さを有する捩り針金が、上記の米国特許出願第09/255,066号に記載された血液凝固分析器に適合させるのに適当である。
【0031】
2.レプチラーゼにより始動され、アゴニストにより活性化される血液試料:フィブリノーゲンをフィブリンに活性化するために、Batroxabin(レプチラーゼ、Pentapharm)を使用し(15μlの再構成したレプチラーゼ試薬)、カップ12に予備添加する。Batroxabinに加えて、ADP(終濃度20μM)を、カップ12に予備添加する。345μlのクエン酸処理した全血液をBatroxabin及びADPを含む予め暖めたカップ12に添加し、最大血餅強度を評価する。加えて、対照用試料{血餅強度に対する血小板の寄与の完全な阻止(MAFIB)を生じる}についても、Batroxabinと抗血小板剤をカップ12に加えて行い、これは、血小板の血餅強度への促進効果の非存在下での、フィブリンの寄与の測定を与える。
【0032】
MAPBは、患者を抗血小板剤で治療するまえに測定し、MAPAは、治療の後で測定する。薬物の効果による血小板の阻害は、以下のように計算される:
【数1】

【0033】
上記のように、血餅強度の測定は、トロンビン阻害の条件下で形成された典型的に一層弱い血餅に対して良好な感度の捩り針金を必要とするということは、当業者により認められよう。しかしながら、種々の試験プロトコールは、典型的なトロンビン支持された血餅と同じか又は一層大きい範囲に強度を有する血餅を監視することができる。かかる事例においては、捩り針金15は、かかる一層強い血餅に対して良好な感度のものが選択される。それ故、約100〜5000dyn/cm2の感度の範囲を与える幾つかの太さの捩り針金が用いられる。
【0034】
更に、この発明は血餅形成の他のパラメーターの測定に対する適用を有するということが認められるべきである。例えば、血液凝固分析器10は、血液凝固過程を、試験開始時間から初期フィブリン形成まで、血餅率強化及び血餅溶解を通して測定する。それ故、この発明によれば、Rパラメーター(これは、上記のように、初期フィブリン形成における阻害を示す)を評価することにより、ヘパリンの存在の影響を測定することが可能である。血栓溶解活性に対する薬物療法の効力を測定することも、パラメーターLY30(これは、血餅溶解率を示す)を観察することにより可能である。
【0035】
血小板当たりのGPIIb/IIIaレセプターの数及びそのリガンド結合機能に個人差があることは、十分に、文献記載されている。その上、GPIIb/IIIa機能の可変性の阻害は、部分的には、血小板カウントの差異により、固定され重量調節された投与量の血小板ブロッカーの投与後に生じうる。一層高い危険にある患者(例えば、PTCAを受けている糖尿病患者)のサブグループは、重量調節した血小板ブロッカー療法(現在、適当なGPIIb/IIIaレセプター阻害の達成を確実にするために患者ごとに個別化されてない)の後に現在達成されているものより一層多い投与量の血小板阻害を必要としうる。出血又は虚血事象の可能性は、リアルタイムでの、個別化された評価の必要性及びレセプター阻害の治療レベルの達成を確実にするのに必要な投与量の予測の必要性を示唆する。この発明の好適具体例による装置及び方法は、この能力を提供する。
【0036】
この発明は、幾つかの好適具体例によって記載してきた。当業者は、この発明が、正しい範囲から離れることなく別の具合に具体化されうることを認めるであろうが、それは、付属する請求の範囲に示されている。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】血小板凝集の機構を表した図である。
【図2】この発明の好適具体例による血液凝固分析器の図式表示である。
【図3】図2に示した血液凝固分析器により生成した止血プロフィルを示すプロットである。
【図4】抗血小板療法の投与量依存性の効果を示すプロットである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗血小板療法の効果を測定する方法であって、下記のステップを含む当該方法:
血液凝固分析器を用意し、該血液凝固分析器は、血餅強度を測定することができ;
該血液凝固分析器を用いて、抗血小板療法の非存在下で得た第一の血液試料の第一の血液凝固パラメーターを測定し;
該血液凝固分析器を用いて、抗血小板療法の存在下で得た第二の血液試料の第二の血液凝固パラメーターを測定し;
ここに、第一の血液凝固パラメーター及び第二の血液凝固パラメーターの少なくとも一つが、それぞれの血液試料の試料として採ったままの部分の特性並びにトロンビン活性化を阻止し且つフィブリノーゲン及び血小板の活性化を保護するためにイン・ビトロで処理したそれぞれの血液試料の一部分の特性に基づくことを特徴とし;そして
第一及び第二の血液凝固パラメーターに基づいて、抗血小板療法の効力を測定する。
【請求項2】
血液凝固分析器が、約100〜1000dyn/cm2の範囲の血餅強度を測定するために操作可能な、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
血液凝固分析器が、第一及び第二の血液試料の実質的に同時の試験を提供する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
次の血液凝固療法の少なくとも一つの施与と共に行なわれる、請求項1に記載の方法:ヘパリン又はワルファリンの投与を利用する抗凝固療法;tPA、ストレプトキナーゼ又はウロキナーゼの投与を利用する血栓溶解療法;ε−アミノカプロン酸、トラシロール又はトラネキサム酸を利用する抗繊維素溶解療法;抗血小板療法及び血液成分輸血療法。
【請求項5】
血栓症の危険の評価と共に行なう、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
過剰凝固性状態及び低凝固性状態の評価の一つと共に行なう、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
抗血小板剤の投与量を決定するステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
血液凝固分析器が、処理能力を含み、効力の測定のステップが該血液凝固分析器により行なわれる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
第一及び第二の血液凝固パラメーターが、次の一つに基づく、請求項1に記載の方法:血餅形成までの潜伏期、血餅形成速度、最大血餅強度及び血餅溶解速度。
【請求項10】
第一及び第二の血液凝固パラメーターが、フィブリン−血小板相互作用の評価に対応する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
第一の血液凝固パラメーターが、第一の最大幅測定値によって表され、第二の凝固パラメーターが、第二の最大幅測定値によって表され、効力の測定のステップが、第一の最大幅を第二の最大幅と比較することを含む、請求項1に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−145548(P2006−145548A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−360509(P2005−360509)
【出願日】平成17年12月14日(2005.12.14)
【分割の表示】特願2002−510957(P2002−510957)の分割
【原出願日】平成13年6月5日(2001.6.5)
【出願人】(502444250)ヘモスコープ コーポレイション (1)
【Fターム(参考)】