抗転移療法におけるAXLシグナル伝達の阻害
治療用量の医薬組成物を投与することにより哺乳動物における癌を緩和するための組成物及び方法が提供され、この医薬組成物は、例えばAXLとそのリガンドGAS6の間の結合相互作用の競合的又は非競合的阻害により、AXLタンパク質活性の活性を阻害するものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2010年1月22日に出願された米国特許仮出願第61/336,478号の優先権を主張するものであり、この仮出願の内容は参照により明確に組み込まれる。
本発明は、腫瘍浸潤及び転移、例えば、AXL及び/又はGAS6に関連した経路による腫瘍浸潤又は転移の処置又は診断、に関する。
発明の分野
【背景技術】
【0002】
浸潤及び転移は、癌における最も潜行性で生命を脅かす態様である。浸潤が最小の又は浸潤が無い腫瘍はうまく除去されることもあるが、その新生物が浸潤性になると、それはリンパ管及び/又は脈管によって多数の部位に広まることが出来、完全除去は非常に困難になる。浸潤及び転移は、局所浸潤と遠隔器官コロニー形成及び損傷という2つのプロセスによって宿主を殺す。局所浸潤は、関与する組織の機能を正常な器官機能の局所圧迫、局所破壊又は妨害によって損なわせるだろう。しかし、癌における最も有意な転換点は、遠隔転移の確立である。この時点ではもはや局所療法だけで患者が治癒されることはあり得ない。
【0003】
転移のプロセスは、多数の宿主−腫瘍相互作用を伴うリンクした逐次的段階のカスケードである。この複雑なプロセスは、細胞を血管又はリンパ循環に侵入させ、遠隔血管又はリンパ床で停止させ、器官間質及び実質に活発に管外遊出させ、第二のコロニーとして増殖させる。転移の可能性は、局所微小環境に、血管新生に、ストローマ−腫瘍相互作用に、局所組織によるサイトカインの生成に、並びに腫瘍及び宿主細胞の分子表現型に影響される。
【0004】
遠位播種が顕性でない場合がある又はまだ始まっていない場合があるにもかかわらず、局所微小浸潤が早々に起こることがある。腫瘍細胞は、原位置から浸潤性癌腫への移行中に上皮基底膜を透過して下にある間質ストローマに侵入する。下にあるストローマに浸潤すると、腫瘍細胞は、マトリックス断片及び成長因子を放出しながら、遠位播種のためにリンパ管及び血管に再び進入する。良性癌腫から浸潤性癌腫への移行中に上皮基底膜の構成、分布及び量の全般的な且つ広範にわたる変化が起こる。
【0005】
癌予防及び処置の治療努力は、シグナル伝達経路又は選択変調タンパク質のレベルに集中されている。プロテインキナーゼ活性、カルシウム恒常性、及びオンコプロテイン活性化は駆動シグナルであり、従って、治療的介入のための基本的な調節部位であり得る。浸潤及び血管新生を調節するシグナル伝達経路におけるキナーゼは、転移の重要な調節因子であり得る。生化学的分子ターゲットの最大クラスの1つは、受容体チロシンキナーゼ(RTKs)のファミリーである。現在までのところ最も一般的な受容体チロシンキナーゼ分子ターゲットは、EGF及び血管内皮成長因子(VEGF)受容体である。より新しいキナーゼ分子ターゲットとしては、c−kitのIII型RTKファミリー、及びablが挙げられる。これらの分子の阻害剤は、古典的化学療法と併用で投与されている。
【0006】
転移は、最終的には癌からの苦痛及び死亡率の多くについての原因である。転移性癌細胞を識別する分子及び機能性マーカーを同定する及びターゲットにする必要があり、並びにそれらの特異的阻害のための試薬を作り出す必要がある。
【0007】
この分野に関する出版物としては、とりわけ、Li et al.Oncogene.(2009)28(39):3442−55;Ullrich et al.による米国特許出願第20050186571号;Bearss et al.による米国特許出願第20080293733号;Sun et al.Oncology.2004;66(6):450−7;Gustafsson et al.Clin Cancer Res.(2009)15(14):4742−9;Wimmel et al.Eur J Cancer.2001 37(17):2264−74;Koorstra et al.Cancer Biol Ther.2009 8(7):618−26;Tai et al.Oncogene.(2008)27(29):4044−55が挙げられる。
【0008】
受容体チロシンキナーゼAXL(Ufo及びTyro7としても公知)は、Tyro3(Sky)及びMer(Tyro12)を包含するチロシン受容体のファミリーに属する。AXLファミリーの共通のリガンドは、GAS6(成長停止特異的タンパク質6)である。ヒトAXLは、894アミノ酸ポリペプチドの合成を命令することが出来る2,682bpオープン・リーディング・フレームである。2つの変異体mRNAが特性付けされており、転写産物変異体1は、Genbank、NM_021913.3で入手され得、及び転写産物変異体2は、NM_001699.4で入手され得る。その天然タンパク質のポリペプチド配列は、配列番号:1として提供され、及びアミノ酸修飾に関してその配列を特に参照することが出来る。GAS6/AXLの重要な細胞機能としては、細胞接着、遊走、食作用、及びアポトーシス阻害が挙げられる。GAS6及びAXLファミリー受容体は、組織及び疾患特異的様式で高度に調節される。
【0009】
AXLは、細胞内領域が受容体チロシンキナーゼの典型的構造を有し、及び細胞外ドメインがカドヘリン型接着分子に類似したフィブロネクチンIII及びIgモチーフを含有する点で、ユニークな分子構造を特徴とする。発達中に、AXLは、脳をはじめとする様々な器官で発現され、このことは、このRTKが間葉及び神経発達に関与することを示唆している。成体でのAXL発現は低いが、様々な腫瘍において高い発現レベルに転ずる。これまでのところ、GAS6はAXLについてのたった1つの活性化リガンドである。
【0010】
受容体チロシンキナーゼ(RTK)は、受容体二量体化を促進する及びその結果としてサイトゾルドメイン内のチロシン残基の自己リン酸化を促進するリガンドによって、一般に活性化される。その後、これらのリン酸化されたチロシン残基へのシグナル伝達タンパク質の結合が下流のシグナル伝達をもたらす。AXLファミリーRTKは、典型的な成長因子ではなく血液凝固因子に似ているビタミンK依存性タンパク質ファミリーのメンバーであるGAS6によって活性化される点でユニークである。
【発明の概要】
【0011】
本発明は、1つには、AXL及び/又はGAS6関連経路が腫瘍浸潤及び/又は転移に関連づけられるという発見に基づく。従って、本発明は、例えばALX及び/又はGAS6関連経路の阻害による、腫瘍浸潤及び/又は転移の処置に有用な、組成物及び/又は方法を提供する。加えて、本発明は、例えばALX及び/又はGAS6の活性のレベルを検出することによる、腫瘍の浸潤性及び/若しくは転移性になりやすさ又は浸潤性及び/若しくは転移性になる尤度の判定に有用な、試薬及び方法を提供する。
【0012】
1つの実施形態において、本発明は、可溶性AXL変異体ポリペプチドを提供し、前記ポリペプチドは、AXL膜貫通ドメイン及び場合により細胞内ドメインを欠き、並びに野生型AXL配列と比べて少なくとも1つのアミノ酸修飾を含み、並びに前記変更は、GAS6へのAXLポリペプチド結合の親和性を増加させる。一部の実施形態において、前記可溶性AXL変異体ポリペプチドは、野生型AXL配列(配列番号:1)の1)15−50間、2)60−120間、及び3)125−135間から成る群より選択される領域内に少なくとも1つのアミノ酸修飾を含む。一部の他の実施形態において、前記可溶性AXL変異体ポリペプチドは、野生型AXL配列(配列番号:1)の位置19、23、26、27、32、33、38、44、61、65、72、74、78、79、86、87、88、90、92、97、98、105、109、112、113、116、118、127若しくは129又はそれらの組み合わせにおける少なくとも1つのアミノ酸修飾を含む。一部の他の実施形態において、前記可溶性AXL変異体ポリペプチドは、1)A19T、2)T23M、3)E26G、4)E27G又はE27K、5)G32S、6)N33S、7)T38I、8)T44A、9)H61Y、10)D65N、11)A72V、12)S74N、13)Q78E、14)V79M、15)Q86R、16)D87G、17)D88N、18)I90M又はI90V、19)V92A、V92G又はV92D、20)I97R、21)T98A又はT98P、22)T105M、23)Q109R、24)V112A、25)F113L、26)H116R、27)T118A、28)G127R又はG127E及び29)E129K並びにそれらの組み合わせ及び保存的等価物から成る群より選択される少なくとも1つのアミノ酸修飾を含む。
【0013】
さらに一部の他の実施形態において、前記可溶性AXL変異体ポリペプチドは、野生型AXL配列(配列番号:1)と比べて次の位置におけるアミノ酸変更を含む:(a)グリシン32;(b)アスパラギン酸87;(c)バリン92;及び(d)グリシン127。さらに一部の他の実施形態において、前記可溶性AXL変異体ポリペプチドは、セリン残基で置換されているグリシン32残基、グリシン残基で置換されているアスパラギン酸残基87、アラニン残基で置換されているバリン92残基、若しくはアルギニン残基で置換されているグリシン127残基、又はそれらの組み合わせ若しくは保存的等価物を含有する。なお一部の他の実施形態において、前記可溶性AXL変異体ポリペプチドは、野生型AXL配列(配列番号:1)と比べて次の位置におけるアミノ酸変更を含む:(a)グルタミン酸26;(b)バリン79;(c)バリン92;及び(d)グリシン127。なお一部の他の実施形態において、前記可溶性AXL変異体ポリペプチドは、グリシン残基で置換されているグルタミン酸26残基、メチオニン残基で置換されているバリン79残基、アラニン残基で置換されているバリン92残基、若しくはグルタミン酸残基で置換されているグリシン127残基、又はそれらの組み合わせ若しくは保存的等価物を含有する。
【0014】
なおさらに一部の他の実施形態において、前記可溶性AXL変異体ポリペプチドは、野生型AXLポリペプチド(配列番号:1)の少なくともアミノ酸残基1−437、19−437、130−437、19−132、1−132を含む。なおさらに一部の他の実施形態において、前記可溶性AXL変異体ポリペプチドは、Fcドメインを含む融合タンパク質である。
【0015】
1つの実施形態において、前記可溶性AXL変異体ポリペプチドは、GAS6に対して少なくとも約1×10−5Mの親和性を有する。もう1つの実施形態において、前記可溶性AXL変異体ポリペプチドは、GAS6に対して、少なくとも約1×10−6Mの親和性を有する。さらにもう1つの実施形態において、前記可溶性AXL変異体ポリペプチドは、GAS6に対して少なくとも約1×10−7Mの親和性を有する。さらにもう1つの実施形態において、前記可溶性AXL変異体ポリペプチドは、GAS6に対して少なくとも約1×10−8Mの親和性を有する。さらにもう1つの実施形態において、前記可溶性AXL変異体ポリペプチドは、GAS6に対して少なくとも約1×10−9M、1×10−10M、1×10−11M、又は1×10−12Mの親和性を有する。本明細書に記載する様々な実施形態において、前記可溶性AXL変異体ポリペプチドは、野生型AXLポリペプチドの親和性より少なくとも約2倍強い、GAS6への親和性を呈示する。一部の実施形態において、前記可溶性AXL変異体ポリペプチドは、野生型AXLポリペプチドの親和性より少なくとも約3倍、4倍、5倍、10倍、15倍、20倍、25倍、又は30倍強い、GAS6への親和性を呈示する。
【0016】
もう1つの実施形態において、本発明は、GAS6タンパク質(配列番号:2)に特異的に結合する、単離された抗体又はそれらの断片を提供する。一部の実施形態において、前記単離された抗体及びその断片は、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体(ScFv)、又はそれらの組み合わせである。一部の他の実施形態において、前記単離された抗体又はその断片は、R299−T317、V364−P372、R389−N396、D398−A406、E413−H429及びW450−M468から成る群より選択されるGAS6の1つ以上のアミノ酸領域に含まれるエピトープに結合する。さらに一部の他の実施形態において、前記単離された抗体又はその断片は、RMFSGTPVIRLRFKRLQPT(配列番号:3)、VGRVTSSGP(配列番号:4)、RNLVIKVN(配列番号:5)、DAVMKIAVA(配列番号:6)、ERGLYHLNLTVGGIPFH(配列番号:7)及びWLNGEDTTIQETVKVNTRM(配列番号:8)から成る群より選択されるアミノ酸領域に含まれるエピトープに結合する。
【0017】
さらにもう1つの実施形態において、本発明は、哺乳動物患者における腫瘍の転移又は浸潤を処置する、低減する又は予防する方法を提供する。1つの実施形態において、前記方法は、前記患者に有効用量の可溶性AXL変異体ポリペプチド又は単離された抗GAS6抗体若しくはその断片を投与することを含む。
【0018】
さらにもう1つの実施形態において、本発明は、哺乳動物患者における腫瘍の転移又は浸潤を処置する、低減する又は予防する方法を提供する。1つの実施形態において、前記方法は、(a)AXL活性の阻害剤(b)GAS6活性の阻害剤;及び(c)AXL−GAS6相互作用の阻害剤から成る群より選択される1つ以上の阻害剤を投与することを含む。本明細書に記載する様々な実施形態において、前記阻害剤は、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、小分子、抗体、抗体断片、又は抗体薬物コンジュゲートである。
【0019】
なおさらにもう1つの実施形態において、本発明は、被験体において転移又は浸潤を被る腫瘍の能力を判定する方法を提供する。1つの実施形態において、前記方法は、腫瘍を有する被験体からの生体試料におけるAXL活性及び/又はGAS6活性のレベルを検出すること;及び前記生体試料におけるAXL及び/又はGAS6活性のレベルを所定レベルと比較することを含み、前記所定レベルに比しての増加は、腫瘍の浸潤又は転移素質を示す。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】AXL発現は、ヒト乳及び卵巣癌における腫瘍進行及び転移と相関する。A.正常乳房組織(正常)、原発性浸潤性乳管癌腫(悪性度1、2及び3)及びリンパ節転移(リンパ節)におけるAXL免疫組織化学的染色の代表画像。高レベルの膜AXL染色が悪性度2(矢印)、悪性度3、及びリンパ節転移に存在することに注目すること。正常又は腫瘍ストローマ(*)においてAXL染色は観察されなかった。B.正常卵巣上皮(矢印)、漿液性腺癌を有する患者に由来する病期II、病期III及び網転移におけるAXL免疫組織化学的染色の代表画像。正常及び腫瘍ストローマがAXL染色について陰性であったこと(*)に注目すること。
【図2】AXLの遺伝子不活性化は、乳房及び卵巣転移の阻止に十分である。A.shスクランブル(shSCRM)及びshAXL(shAXL)MDA−231細胞を尾静脈注射されたマウスの肺におけるH&E及びAXL免疫組織化学的染色。写真は、1群あたり5匹のマウスの代表である。グラフは、shSCRM又はshAXL MDA−231細胞を注射されたマウス(n=5)からの全肺におけるヒトGASPDH及びAXL発現の実時間PCR分析を図示するものである。B.shスクランブル(shSCRM)及びshAXL(shAXL)SKOV3ip.1細胞注射の28日後に撮影されたマウスの写真。shSCRMを注射されたマウスが腹腔全体に非常に多くの転移(丸で囲まれている)を発生させたことに注目すること。shAXL群については、最大腫瘍量を有するマウスが示される。右側のグラフは、5mmより大きいサイズの腹膜転移のマウス1匹あたりの平均数、及び最大腫瘍の平均重量を図示するものである。写真は、1群あたり5匹のマウスの代表である。C.shSCRM及びshAXL OVCAR−8細胞注射の34日後に撮影されたマウスの写真。shSCRM注射マウスが、腹腔全体に非常に多くの転移(丸で囲まれている)を発生させたことに注目すること。右側のグラフは、腹膜転移のマウス1匹あたりの平均数、及び平均総腫瘍重量を図示するものである。写真は、1群あたり8匹のマウスの代表である。
【図3】AXLの遺伝子不活性化は、インビトロでの乳房若しくは卵巣腫瘍細胞増殖及びインビボでの成長に影響を及ぼさない。A.スクランブル対照(shSCRM)又はAXL(shAXL)に対するshRNAターゲティング配列を安定的に発現するMDA−231、SKOV3ip.1、及びOVCAR−8細胞についての細胞成長曲線。測定は、三重反復で行われた。エラーバーは、S.E.M.を表す。B.48日の時間経過にわたって成長させた同所性MDA−231(1群あたりマウスn=8)及び皮下SKOV3ip.1腫瘍(1群あたりn=4マウス)の平均腫瘍容積。エラーバーは、S.E.M.を表す。
【図4】AXLは、インビトロで卵巣及び乳房腫瘍細胞浸潤を調節する。A.対照(shSCRM)及びAXL欠損(shAXL)MDA−231、SKOV3ip.1及びOVCAR−8細胞のコラーゲン浸潤アッセイ。写真は、1群あたり3試料の代表であり、コラーゲンへの細胞のプレーティングの7日後に撮影された。AXL欠損細胞(丸い)と比較してAXL野生型細胞において観察された浸潤性表現型(枝分かれ)に注目すること。グラフは、コラーゲン浸潤アッセイの定量化を示す。B.shAXL及びshSCRM SKOV3ip.1細胞におけるMMP−2発現の実時間PCR分析。発現値は、18Sに正規化された;n=3。エラーバーは、S.E.M.を表す。アスタリスクは、スチューデントt検定によって判定してshSCRMと比較した発現の有意な増加又は減少を示す(**、P<0.001)。C.shSCRM又はshAXL SKOV3ip.1細胞(n=6)のMMP−2レポーターアッセイ。D.血清飢餓SKOV3ip.1細胞から回収されたならし培地におけるプロ−及び活性−MMP2活性についてのゼラチン・ザイモグラフィー・アッセイ。E.スクランブル対照(shSCRM)又はAXL(shAXL)をターゲットにするshRNA配列を発現するSKOV3ip.1細胞及びGAS6で又はPI3KK阻害剤Ly294002とGAS6で処置された飢餓SKOV3ip細胞(strve)における、Ser473でのホスホ−AKT(P−AKT)、全AKT(AKT)及びAXL発現のウエスタンブロット分析。F.GAS6で又はGAS6とPI3K阻害剤Ly294002(Ly+GAS6)で処置された飢餓SKOV3ip細胞(strve)におけるMMP−2レポーターアッセイ。
【図5】可溶性AXLエクトドメイン療法は、インビトロでAXLシグナル伝達及び浸潤を阻害する。A.可溶性AXL療法についてのメカニズムの略図。可溶性AXL(sAXL)は、内因性AXLシグナル伝達を阻害するためのおとり受容体として機能する。B.スクランブル対照(shSCRM)又はAXL(shAXL)をターゲットにするshRNA配列を発現するMDA231、SKOV3ip.1及びOVCAR−8細胞、並びにGAS6で又はPI3K阻害剤Ly294002(Ly)とGAS6で処置された飢餓SKOV3ip.1細胞(strve)における、Ser473でのホスホ−AKT(P−AKT)、全AKT(AKT)及びAXL発現のウエスタンブロット分析。C.可溶性AXL受容体(sAXL)を含有するならし培地又は対照培地(−)で処置された細胞におけるホスホ−AKT Ser473発現のウエスタンブロット分析。すべての細胞は、48時間、飢餓させられ、GAS6(+)又はビヒクル(−)で処置された。D.対照ベクター又はsAXLを含有するならし培地で処置されたMDA−231細胞におけるコラーゲン浸潤アッセイ。
【図6】可溶性AXL受容体での処置は、転移が確立されたマウスにおいて転移性腫瘍量を抑制する。A.可溶性AXL受容体処置研究の略図。ヌードマウスは、1×106のSKOV3ip.1細胞をi.p.注射された。内植の5日後、肉眼的病変の存在がマウスにおいて検証された(示されているのは、注射後第5日における腹膜転移を有するマウスの代表写真であり、転移病変が丸で囲まれている)。第7日において、マウスは、IgG2a−Fc対照(Ad−Fc)又は可溶性AXL受容体(Ad−sAXL)を発現するアデノウイルスを注射された。アデノウイルス注射後3−4日ごとにウエスタンブロット分析によって血清sAXL発現レベルが評定された。腫瘍細胞内植後第28日、すべてのマウスにおいて腫瘍量が評定された。B.腫瘍細胞注射後第28日におけるAd−sAXL又はAd−Fcを発現するアデノウイルスで処置されたマウスの代表写真。転移病変が丸で囲まれている。グラフは、1群あたり7匹のマウスについての平均総腫瘍数及び重量を示す。エラーバーは、S.E.M.を表す。Ad−Fc処置マウスとAd−sAXL処置マウスの間に腫瘍数及び重量の統計的相違(p=0.01、スチューデントt検定)が観察された(*)。C.Ad−Fc又はAd−AXLで処置されたマウスの腫瘍におけるMMP−2発現の実時間PCR分析。
【図7】可溶性AXLエクトドメイン療法は、正常組織毒性を誘導しない。A.対照(Fc)又は可溶性AXL療法(sAXL)で処置されたマウスの完全CBC及び血清化学分析。B.Fc又はsAXLで処置されたマウスから採取された肝臓及び腎臓組織のH&E染色。
【図8】転移の可溶性AXL受容体阻害に付随する分子メカニズムを図解する概略図。可溶性AXL受容体(sAXL)療法は、AXLリガンドGAS6に結合するおとり受容体として機能する。sAXLは、細胞浸潤及び転移を刺激する内因性GAS6−AXLシグナル伝達事象を阻害する。
【図9】AXL欠損乳及び卵巣癌細胞系の産生。A.ヒト乳及び卵巣癌細胞系のパネルにおけるAXL発現のウエスタンブロット分析。熱ショックタンパク質70(Hsp70)がタンパク質負荷対照として使用された。B.スクランブル対照(shSCRM)又はAXL(shAXL)に対するshRNAターゲティング配列で安定的にトランスフェクトされた転移性乳(MDA−231)卵巣(SKOV3ip.1及びOVCAR−8)癌細胞系におけるAXL発現のウエスタンブロット分析。shAXL細胞系がAXL発現の有意な低減を有することに注目すること。
【図10】AXLは、乳及び卵巣腫瘍細胞接着又は生存に影響を及ぼさない。A−B.化学誘引物質としての血清へのボイデンチャンバー遊走アッセイにおけるMDA−231(A)及びSKOV3ip.1(B)細胞の細胞遊走パーセント。C−D.細胞外マトリックスタンパク質へのMDA−231(A)SKOV3ip.1(B)細胞接着の分析。略記:ウシ血清アルブミン(BSA)、フィブロネクチン(FN)、I型コラーゲン(Col I)、IV型コラーゲン(Col IV)、ラミニン(LN)、フィブロネクチン(FBN)。エラーバーは、平均値の標準誤差を表す。E−F.XTTアッセイによって判定した、血清除去後のAXL野生型及びAXL欠損MDA−231(E)及びSKOV3ip.1(F)腫瘍細胞の生存分析。
【図11】可溶性AXL受容体での処置は、OVCAR−8転移が確立したマウスにおいて転移性腫瘍を阻害する。A.可溶性AXL受容体処置研究の略図。ヌードマウスは、5×106 OVCAR−8細胞をi.p.注射された。内植の14日後、肉眼的病変の存在がマウスにおいて検証された(示されているのは、注射後第14日における腹膜転移を有するマウスの代表写真であり、転移病変が丸で囲まれている)。第14日において、マウスは、IgG2α−Fc対照(Ad−Fc)及び可溶性AXL受容体(Ad−sAXL)を発現するアデノウイルスを注射された。血清sAXL発現レベルは、ウエスタンブロット分析によって評定された。腫瘍細胞内植後第34日、すべてのマウスにおいて腫瘍量が評定された。B.腫瘍細胞注射後第28日におけるAd−sAXL又はAd−Fcを発現するアデノウイルスで処置されたマウスの代表写真。転移病変が丸で囲まれている。C.グラフは、1群あたり8匹のマウスについての平均総腫瘍数及び重量を示す。エラーバーは、S.E.M.を表す。Ad−Fc処置マウスとAd−sAXL処置マウスの間に腫瘍数及び重量の統計的相違(p<0.01、スチューデントt検定)が観察された(*)。
【図12】GAS6へのAXLライブラリーソート5産物の結合。野生型AXL(A)又は定向進化ワークからのプールされたAXLソート5産物(B)のいずれかを発現する酵母細胞のフロー・サイトメトリー・ドット・プロット。データは、実施例2において説明するとおりのオフ速度試験後の結合を示す。2nM Gas6への結合のレベルが左列に示されており、4時間解結合段階後のGas6への結合のレベルが中央列に示されており、及び6時間解結合段階後のGas6への結合のレベルが右列に示されている。その細胞表面上での特定のタンパク質の発現について陽性である細胞(各フロー・サイトメトリー・ドット・プロットの右上象限)についてのGas6への結合レベル(y軸)は、下の棒グラフで定量される。プールされたソート5産物は、野生型AXLと比較して有意に向上されたGas6結合を示す。
【図13】強化されたAXL変異体のGAS6への結合。左のパネルは、野生型AXL(緑丸)と比較してAXL突然変異体S6−1(赤四角)及びS6−2(青菱形)によるGas6への平衡結合を示す。突然変異体S6−1及びS6−2は、より低い濃度のGas6への有意に高い結合レベルを呈示し、このことが、野生型AXLと比較してこれらの突然変異体に対するより強い親和性を実証する。右パネルは、野生型又は遺伝子操作Gas6−AXL相互作用の解離動態を示す。野生型Gas6−AXL相互作用(「野生型」)は、時間の関数として迅速に解離するが、Gas6とS6−1の間の遺伝子操作された相互作用(「S6−1」)又はGas6とS6−2の間の遺伝子操作された相互作用(「S6−2」)は、結合の有意に増加された保持を示す。
【図14】精製AXL S6−1−Fcの腹膜内送達は、野生型AXL−Fc及びAXL E59R/T77R−Fcに比して強化された治療効果を示す。3つの処置群、AXL E59R/T77R−Fc、野生型AXL−Fc及びAXL S6−1−Fc、からのマウスの剖検からの2つの代表画像が示されている。黒い円は、画像で見える転移病変を示すが、必ずしもすべての転移部位を示しているとは限らない。野生型AXL−Fcは、陰性対照、AXL E59R/T77R、と比べて転移の中等度阻害を示すが、AXL S6−1は、転移のほぼ完全阻害を示す。
【図15】SKOV3ip.1異種移植モデルにおける転移の阻害。上の2つのグラフには、各処置群において計数された平均転移病変数を示すために2つの異なるやり方で同じデータセットが示されている。類似して、下の2つのグラフは、各処置群におけるマウスから切除されたすべての転移の総重量の概要を示す同じデータセット示す。病変の数(上パネル)と全重量(下パネル)の両方の減少によって示されるように、野生型AXL−Fcは、陰性対照E59R/T77R−Fcと比較して転移の進展を阻害する。病変の数(上パネル)と全重量(下パネル)によって評定すると、AXL S6−1−Fcは、野生型AXL−FcとAXL E59R/T77R−Fc両方と比較して腫瘍量の有意な低減を示す。これらのデータは、AXL S6−1の強化された親和性が野生型に比して向上された治療効力をもたらすこと、及びAXL S6−1−Fcが転移の管理のための実行可能な処置であることを実証する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
定義
後続の説明の中では、細胞培養分野において従来用いられている多数の用語が広範に用いられる。本明細書及び請求項の明瞭で一致した理解、並びにそのような用語に与えられている範囲を提供するために、以下の定義が提供される。
【0022】
転移性細胞上のAXL又はそのリガンドGAS6の「阻害剤」、「活性化剤」及び「変調剤」は、受容体又はリガンド結合又はシグナル伝達についてのインビトロ及びインビボアッセイを用いて同定される、阻害、活性化又は変調分子、例えばリガンド、受容体、アゴニスト、アンタゴニスト並びにそれらのホモログ及びミメティック、をそれぞれ指すために用いられる。
【0023】
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」及び「タンパク質」は、アミノ酸残基のポリマーを指すために本明細書では交換可能に用いられる。これらの用語は、1つ以上のアミノ酸残基が、対応する天然に存在するアミノ酸の人工的化学的ミメティックであるアミノ酸に、並びに天然に存在するアミノ酸ポリマー及び天然に存在しないアミノ酸ポリマーに適用される。
【0024】
用語「アミノ酸」は、天然に存在するアミノ酸及び合成アミノ酸、並びに天然に存在するアミノ酸と同様に機能するアミノ酸アナログ及びアミノ酸ミメティックを指す。天然に存在するアミノ酸は、遺伝子コードによってコードされたもの、並びに後に修飾されるアミノ酸、例えばヒドロキシプロリン、ガンマ−カルボキシグルタメート、及びO−ホスホセリン、である。アミノ酸アナログは、天然に存在するアミノ酸と同じ基本化学構造、すなわち水素、カルボキシル基、アミノ基及びR基に結合しているアルファ炭素、を有する化合物、例えばホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウム、を指す。そのようなアナログは、修飾されたR基(例えば、ノルロイシン)又は修飾されたペプチド主鎖を有するが、天然に存在するアミノ酸と同じ基本化学構造を保持する。アミノ酸ミメティックは、アミノ酸の一般化学構造とは異なる構造を有するが、天然に存在するアミノ酸と同様に機能する化合物を指す。アミノ酸を表すために本発明において用いられるすべての単一文字は、例えばAはアラニンを意味する、Cはシステインを意味するなど、当分野において常例的に用いられる認知されたアミノ酸記号に従って用いられる。アミノ酸は、該当位置の前及び後の単一文字によって、元のアミノ酸(その位置の前)から変更アミノ酸(位置の後)への変更を反映するように表される。例えば、A19Tは、位置19のアミノ酸アラニンがトレオニンに変更されることを意味する。
【0025】
用語「被験体」、「個体」及び「患者」は、処置のために評定される及び/又は処置される哺乳動物を指すために本明細書では交換可能に用いられる。ある実施形態において、前記哺乳動物はヒトである。従って、用語「被験体」、「個体」及び「患者」は、癌性組織を除去するために切除術(外科手術)を受けた者又はその候補である者を含めて、限定ではないが卵巣若しくは前立腺の腺癌、乳癌、膠芽腫などをはじめとする癌を有する個体を包含する。被験体は、ヒトである場合があるが、他の哺乳動物、特に、ヒト疾患の実験室モデルとして有用な哺乳動物、例えばマウス、ラットなど、も包含する。
【0026】
用語「腫瘍」は、本明細書において用いられる場合、悪性であろうと良性であろうとすべての新生物性細胞成長及び増殖、並びにすべての前癌性及び癌性細胞及び組織を指す。
【0027】
用語「癌」、「新生物」及び「腫瘍」は、細胞増殖に対する制御の有意な喪失を特徴とする異常成長表現型を呈示するような、自律的、無秩序成長を呈示する細胞を指すために、本明細書では交換可能に用いられる。一般に、本出願における検出、分析、分類又は処置のために興味のある細胞としては、前癌性(例えば良性)、悪性、前転移性、転移性及び非転移性細胞が挙げられる。癌の例としては、卵巣癌、膠芽腫、乳癌、結腸癌、肺癌、前立腺癌、肝細胞癌、胃癌、膵臓癌、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、尿路癌、甲状腺癌、腎癌、癌腫、黒色腫、頭頸部癌、及び脳癌が挙げられるが、これらに限定されない。
【0028】
癌の「病理」は、患者の健康で幸福な状態(well−being)を損なわせるすべての現象を包含する。これには、限定ではないが、異常な又は制御不能な細胞成長;転移;隣接細胞の正常な機能化への干渉;サイトカイン又は他の分泌産物の異常レベルでの放出;炎症反応又は免疫応答の抑制又は悪化;新形成;前悪性病変;悪性病変;周囲又は遠隔組織又は器官、例えばリンパ節、の浸潤などが挙げられる。
【0029】
本明細書において用いられる場合、用語「癌再発」及び「腫瘍再発」、並びにそれらの文法上の異形は、癌の診断後の新生物性又は癌性細胞のさらなる成長を指す。詳細には、さらなる癌性細胞成長が癌性組織において起こると、再発が起こるだろう。類似して、腫瘍の細胞が局所又は遠隔組織及び器官へと広まると「腫瘍進展」が起こる;従って、腫瘍進展は、腫瘍転移を包含する。腫瘍成長が、関与する組織の機能を正常器官機能の圧迫、破壊又は妨害によって損なわせるように局部的に広がると、「腫瘍浸潤」が起こる。
【0030】
本明細書において用いられる場合、用語「転移」は、原癌性腫瘍の器官に直接接続されていない器官又は身体部分での癌性腫瘍の成長を指す。転移は、原癌性腫瘍の器官に直接接続されていない器官又は身体部分での検出不能量の癌性細胞の存在である微小転移を包含すると解釈されるだろう。転移は、原腫瘍部位からの癌細胞の離脱、並びに身体の他の部分への癌細胞の遊走及び/又は浸潤などのプロセスの幾つかの段階と定義されることもある。従って、本発明は、原癌性腫瘍の器官に直接接続されていない器官若しくは身体部分での1つ以上の癌性腫瘍のさらなる成長及び/又はその成長に至るまでのプロセスにおける任意の段階についてのリスクを判定する方法を考えている。
【0031】
癌の性質に依存して、適切な患者試料が得られる。本明細書において用いられる場合、句「癌性組織試料」は、癌性腫瘍から得られる任意の細胞を指す。転移していない充実性腫瘍の場合、概して、外科的に除去された腫瘍から組織試料が得られ、従来の技術により試験用に調製されることとなる。
【0032】
この定義は、生物由来の血液及び他の液体試料、固体組織試料、例えば生検検体若しくは組織培養物、又はそれらから得られる細胞及びその後代を包含する。この定義は、それらの獲得後に任意のやり方で、例えば試薬での処置;洗浄;又は癌細胞などの一定の細胞集団の富化によって、操作された試料も包含する。この定義は、特定のタイプの分子、例えば核酸、ポリペプチドなど、について富化された試料も包含する。用語「生体試料」は、臨床試料を包含し、並びに外科的切除によって得られる組織、生検によって得られる組織、培養での細胞、細胞上清、細胞溶解産物、組織試料、器官、骨髄、血液、血漿、血清及びこれらに類するものも包含する。「生体試料」は、患者の癌細胞から得られる試料、例えば、患者の癌細胞から得られるポリヌクレオチド及び/又はポリペプチドを含む試料(例えば、ポリヌクレオチド及び/又はポリペプチドを含む細胞溶解産物又は他の細胞抽出物);並びに患者からの癌細胞を含む試料を包含する。患者からの癌細胞を含む生体試料は、非癌性細胞も含む場合がある。
【0033】
用語「診断」は、乳癌、前立腺癌又は他のタイプの癌の分子サブタイプの同定などの、分子若しくは病的状態、疾患又は容態の同定を指すために本明細書では用いられる。
【0034】
用語「予後」は、卵巣癌などの新生物性疾患の再発、転移性進展及び薬物耐性をはじめとする、癌寄与死亡又は進行の尤度の予測を指すために本明細書では用いられる。用語「予測」は、観察、実験又は科学的推理に基づいて、予告する又は推定する行為を指すために本明細書では用いられる。一例では、医師は、患者が原発性腫瘍の外科的除去及び/又は化学療法後に癌再発なしに一定の期間生存する尤度を予測することが出来る。
【0035】
本明細書において用いられる場合、用語「処置」、「処置すること」及びこれらに類するものは、効果を得ることを目的として、薬剤を投与すること又は手順(例えば、放射線、外科的手順など)を行うことを指す。前記効果は、疾患若しくはその症状を完全の若しくは部分的に予防する点から予防的である場合があり、並びに/又は疾患及び/若しくはその疾患の症状についての部分的な若しくは完全な治癒を果たす点から治療的である場合がある。「処置」は、本明細書において用いられる場合、哺乳動物における、特にヒトにおける、任意の転移性腫瘍の任意の処置に及び、並びに(a)疾患の素因を有することがあるが(例えば、一次疾患に随伴又は起因し得る疾患を含めて)疾患を有するとまだ診断されていない被験体において、疾患又は疾患の症状が起こらないようにすること;(b)疾患を阻害すること、すなわち、その発生を阻止すること;及び(c)疾患を軽減すること、すなわち、疾患の退縮を生じさせることを包含する。腫瘍(例えば、癌)処置において、治療薬は、腫瘍細胞の転移を直接減少させることが出来る。
【0036】
処置することは、寛解;軽快;症状の減少又は病態を患者にとってより許容可能にすること;変性又は衰退速度の減速;又は変性の最終点をより少ない衰弱にすることなどの任意の客観的又は主観的パラメータをはじめとする、癌の処置又は改善又は予防の成功の任意の徴候を指す場合がある。前記症状の処置又は改善は、医師による検査の結果をはじめとする客観的パラメータに基づく場合もあり又は主観的パラメータに基づく場合もある。従って、用語「処置すること」は、新形成、例えば腫瘍又は癌、に随伴する症状又は容態の発生を予防する若しくは遅らせるための、又は緩和するための、阻止するための又は阻害するための本発明の化合物又は薬剤の投与を包含する。用語「治療効果」は、被験体における疾患、疾患の症状又は疾患の副作用の低減、消失又は予防を指す。
【0037】
一定の実施形態において、「と併用で」、「併用療法」及び「併用産物」は、本明細書において用いられる場合、第一の療法と前記化合物の患者への並行投与を指す。併用で投与されるとき、各成分は、同時に投与されることもあり、又は異なる時点で任意の順序で逐次的に投与されることもある。従って、各成分は、別々にだが所望の治療効果をもたらすために時間の点で十分に接近して投与され得る。
【0038】
本発明によると、前記第一の療法は、任意の適する治療薬、例えば細胞傷害剤、であってもよい。細胞傷害剤の1つの例示的クラスは化学療法薬であり、例えば、それらは、AXL又はGAS6シグナル伝達を阻害するための処置と併用されることがある。例示的化学療法薬としては、アルデスロイキン、アルトレタミン、アミホスチン、アスパラギナーゼ、ブレオマイシン、カペシタビン、カルボプラチン、カルムスチン、クラドリビン、シサプリド、シスプラチン、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン(DTIC)、ダクチノマイシン、ドセタキセル、ドキソルビシン、ドロナビノール、デュオカルマイシン、エポエチンアルファ、エトポシド、フィルグラスチム、フルダラビン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、グラニセトロン、ヒドロキシ尿素、イダルビシン、イホスファミド、インターフェロンアルファ、イリノテカン、ランソプラゾール、レバミソール、ロイコボリン、メゲストロール、メスナ、メトトレキサート、メトクロプラミド、マイトマイシン、ミトタン、ミトキサントロン、オメプラゾール、オンダンセトロン、パクリタキセル(Taxol(商標))、ピロカルピン、プロクロロペラジン、リツキシマブ、サプロイン(saproin)、タモキシフェン、タキソール、塩酸トポテカン、トラスツズマブ、ビンブラスチン、ビンクリスチン及び酒石酸ビノレルビンが挙げられるが、これらに限定されない。卵巣癌処置のために、AXL又はGAS6シグナル伝達阻害剤と併用されることがある好ましい化学療法剤は、パクリタキセル(Taxol(商標))である。
【0039】
他の併用療法は、放射線、外科手術、及びホルモン枯渇(Kwon et al.、Proc.Natl.Acad.Sci U.S.A.、96:15074−9、1999)である。血管新生阻害剤も本発明の方法と併用されることがある。
【0040】
本発明の医薬組成物と公知癌療法薬の「併用投与」は、前記公知薬物と本発明の組成物の両方が治療効果を及ぼすような時点での前記薬物とAXL阻害剤の投与を意味する。そのような付随的投与は、本発明の化合物の投与に対するその薬物の並行(すなわち同時での)、事前又は後投与を含み得る。当業者は、本発明の特定の薬物及び組成物についての投与の適切なタイミング、順番及び投薬量を難なく決定するだろう。
【0041】
本明細書において用いられる場合、「無病生存」は、患者の寿命に対する癌の影響に関して、そのような腫瘍再発及び/又は進展が無いこと並びに診断後の患者の運命を指す。句「全生存」は、患者の死因が癌の影響に直接起因しない可能性にかかわらず、診断後の患者の運命を指す。句「無病生存の尤度」、「再発のリスク」及びそれらの異形は、癌の診断後の患者における腫瘍再発又は進展の確率を指し、この確率は、本発明のプロセスに従って決定される。
【0042】
本明細書において用いられる場合、用語「相関する」又は「と相関する」、及びこれらに類する用語は、2つの事例間の統計的関連性を指し、この場合の事象は、数、データセット及びこれらに類するものを包含する。例えば、前記事象が数を伴うとき、正の相関(本明細書では「順相関」とも呼ばれる)は、一方が増加するにつれて他方も増加することを意味する。負の相関(本明細書では「逆相関」とも呼ばれる)は、一方が増加するにつれて他方が減少することを意味する。
【0043】
「投薬単位」は、治療される特定の個体のための単位投薬量として適している物理的に別個の単位を指す。各単位は、必要な製薬用担体と共同で所望の治療効果(単数又は複数)を生じさせるように計算された所定量の活性化合物(単数又は複数)を含有することが出来る。投薬単位形態についての仕様は、(a)活性化合物(単数又は複数)のユニークな特性及び達成される特定の治療効果(単数又は複数)、並びに(b)そのような活性化合物(単数又は複数)の配合技術分野に固有の制限による指図を受けることがある。
【0044】
「医薬的に許容され得る賦形剤」は、一般に安全であり非毒性であり望ましい医薬組成物の調製に有用である賦形剤を意味し、人間用製薬用途ばかりでなく獣医学的用途に許容され得る賦形剤も包含する。そのような賦形剤は、固体、液体、半固体、又は、エーロゾル組成物の場合には、気体であってもよい。
【0045】
「医薬的に許容され得る塩及びエステル」は、医薬的に許容され得る、及び望ましい薬理特性を有する、塩及びエステルを意味する。そのような塩は、化合物中に存在する酸性プロトンが無機又は有機塩基と反応出来る場合に形成され得る塩を包含する。適する無機塩としては、アルカリ金属、例えばナトリウム及びカリウム、マグネシウム、カルシウム並びにアルミニウムとで形成されるものが挙げられる。適する有機塩としては、アミン塩基、例えばエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トロメタミン、N−メチルグルカミン、及びこれらに類するものが挙げられる。そのような塩としては、無機酸(例えば、塩酸及び臭化水素酸)及び有機酸(例えば、酢酸、クエン酸、マレイン酸、並びにアルカン−及びアレーン−スルホン酸、例えばメタンスルホン酸及びベンゼンスルホン酸)とで形成される酸付加塩も挙げられる。医薬的に許容され得るエステルとしては、化合物中に存在するカルボキシ、スルホニルオキシ及びホスホンオキシ基から形成されるエステル、例えばC1−6アルキルエステル、が挙げられる。2つの酸性基が存在するとき、医薬的に許容され得る塩又はエステルは、モノ酸モノ塩若しくはエステル又はジ塩若しくはエステルであることがあり;及び類似して、2つより多くの酸性基が存在する場合、そのような基の一部又はすべてが塩形成又はエステル化されていることがある。本発明において名を挙げる化合物は、非塩形成形態若しくは非エステル化形態で存在することがあり、又は塩形成形態及び/若しくはエステル化形態で存在することがあり、並びにそのような化合物の命名は、原(非塩形成及び非エステル化)化合物とその医薬的に許容され得る塩及びエステルの両方を包含することを意図されている。また、本発明において名を挙げる一定の化合物は、1つより多くの立体異性体形態で存在することがあり、そのような化合物の命名は、すべての単一立体異性体、及びそのような立体異性体の(ラセミ体であろうと、そうでなかろうと)すべての混合物を包含することを意図されている。
【0046】
組成物、担体、希釈剤及び試薬を指す場合、用語「医薬的に許容され得る」、「生理的に許容可能な」、及びそれらの文法上の異形は、交換可能に用いられ、及びそれらの材料が、その組成物の投与を妨げる程に望ましくない生理作用を生じさせることなく、ヒトに又はヒトに対して投与出来ることを表す。
【0047】
「治療有効量」は、疾患を治療するために被験体に投与されたとき、その疾患の処置を果たすのに十分である量を意味する。
詳細な説明
【0048】
本発明に従って、可溶性AXL変異体、例えば、野生型AXLポリペプチドの結合活性に実質的に等しい又は前記結合活性より良好であるGAS6への結合活性を有する可溶性AXL変異体ポリペプチドを提供する。本発明の一部の実施形態において、前記可溶性AXL変異体ポリペプチドは、治療薬として利用される。
【0049】
配列番号:1の天然配列を参照して、AXLタンパク質は、残基27−128の免疫グロブリン(Ig)様ドメインと、残基139−222の第二のIg様ドメインと、残基225−332及び333−427のフィブロネクチン3型ドメインと、チロシンキナーゼドメインを含む残基473−894の細胞内ドメインとを含む。779、821及び866におけるチロシン残基は、受容体二量体化に基づいて自己リン酸化されることとなり、及び細胞内シグナル伝達分子のためのドッキング部位として役立つ。可溶性形態のポリペプチドを放出する天然切断部位は、残基437−451に存する。
【0050】
本発明のために、可溶性形態のAXLは、認識可能な親和性、例えば高親和性、でGAS6を結合するのに十分であるポリペプチドの部分であり、これは、通常はシグナル配列と膜貫通ドメインの間、すなわち一般には配列番号:1の残基19−437あたり、に存するが、残基19、25、30、35、40、45、50あたりから、残基132、450、440、430、420、410、400、375、350から321あたり、例えば残基19−132、の短縮バージョンを含む又は前記短縮バージョンから成ることもある。一部の実施形態において、可溶性形態のAXLは、膜貫通ドメイン及び場合により細胞内ドメインを欠く。
【0051】
本発明の可溶性AXL変異体ポリペプチド(sAXL変異体)は、可溶性形態の野生型AXLの中に1つ以上のアミノ酸修飾、例えば、GAS6に対するその親和性を増加させる1つ以上のアミノ酸修飾、を備えている。本発明によると、アミノ酸修飾は、当分野において公知の又は後に発見される任意の自然に発生する又は人工のアミノ酸修飾を包含する。一部の実施形態において、アミノ酸修飾は、自然に発生する突然変異、例えば置換、欠失、付加、挿入など、を包含する。一部の他の実施形態において、アミノ酸修飾は、既存のアミノ酸の別のアミノ酸、例えばその保存的等価物、での置換を包含する。さらに一部の他の実施形態において、アミノ酸修飾は、1つ以上の既存のアミノ酸の非天然アミノ酸での置換、又は1つ以上の非天然アミノ酸の挿入を包含する。なお一部の他の実施形態において、アミノ酸修飾は、少なくとも1、2、3、4、5又は6又は10のアミノ酸突然変異又は変更を包含する。
【0052】
一部の例示的実施形態において、1つ以上のアミノ酸修飾は、可溶性形態のAXLの特性を改変する、例えば安定性、結合活性及び/又は特異性などに影響を及ぼす、ために用いられることがある。クローン化遺伝子のインビトロ突然変異誘発のための技術は公知である。突然変異を走査するためのプロトコルの例は、Gustin et al.、Biotechniques 14:22(1993);Barany、Gene 37:111−23(1985);Colicelli et al.、Mol Gen Genet 199:537−9(1985);及びPrentki et al.、Gene 29:303−13(1984)において見つけられるだろう。部位特異的突然変異誘発のための方法は、Sambrook et al.、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、CSH Press 1989、pp.15.3−15.108;Weiner et al.、Gene 126:35−41(1993);Sayers et al.、Biotechniques 13:592−6(1992);Jones及びWinistorfer、Biotechniques 12:528−30 (1992); Barton et al.、Nucleic Acids Res 18:7349−55(1990);Marotti及びTomich、Gene Anal Tech 6:67−70(1989);並びにZhu Anal Biochem 177:120−4(1989)において見つけられるだろう。
【0053】
一部の実施形態において、本発明のsAXL変異体は、野生型AXL(配列番号:1)の残基18から130、残基10から135、残基15から45、残基60から65、残基70から80、残基85から90、残基91から99、残基104から110、残基111から120、残基125から130、残基19から437、残基130から437、残基19から132、残基21から132、残基21から121、残基26から132又は残基26から121のうちの1つ以上の領域内に1つ以上のアミノ酸修飾を備えている。一部の他の実施形態において、本発明のsAXL変異体は、野生型AXL(配列番号:1)の残基20から130、残基37から124又は残基141から212のうちの1つ以上の領域内に1つ以上のアミノ酸修飾を備えている。さらに一部の他の実施形態において、本発明のsAXL変異体は、野生型AXL(配列番号:1)の位置19、23、26、27、32、33、38、44、61、65、72、74、78、79、86、87、88、90、92、97、98、105、109、112、113、116、118、127又は129のうちの1つ以上の位置に1つ以上のアミノ酸修飾を備えている。
【0054】
さらに一部の他の実施形態において、本発明のsAXL変異体は、一切の限定なく1)A19T、2)T23M、3)E26G、4)E27G又はE27K、5)G32S、6)N33S、7)T38I、8)T44A、9)H61Y、10)D65N、11)A72V、12)S74N、13)Q78E、14)V79M、15)Q86R、16)D87G、17)D88N、18)I90M又はI90V、19)V92A、V92G又はV92D、20)I97R、21)T98A又はT98P、22)T105M、23)Q109R、24)V112A、25)F113L、26)H116R、27)T118A、28)G127R又はG127E及び29)E129K並びにそれらの組み合わせを含む、1つ以上のアミノ酸修飾を備えている。
【0055】
さらに一部の他の実施形態において、本発明のsAXL変異体は、野生型AXL(配列番号:1)の位置32、87、92若しくは127又はそれらの組み合わせにおける1つ以上のアミノ酸修飾、例えばG32S;D87G;V92A及び/又はG127R、を備えている。さらに一部の他の実施形態において、本発明のsAXL変異体は、野生型AXL(配列番号:1)の位置26、79、92、127又はそれらの組み合わせにおける1つ以上のアミノ酸修飾、例えばE26G、V79M;V92A及び/又はG127E、を備えている。
【0056】
本発明によると、本発明のsAXL変異体は、さらに修飾される、例えば様々な目的で多種多様な他のオリゴペプチド又はタンパク質に連結される、ことがある。例えば、本発明のsAXL変異体に対して様々な翻訳後又は発現後修飾が行われることがある。例えば、適切なコーディング配列を利用することにより、ファルネシル化又はプレニル化を生じさせることが出来る。一部の実施形態において、本発明のsAXL変異体はPEG化されることがあり、この場合、そのポリエチレンオキシ基が血流中での寿命増進に備える。本発明のsAXL変異体は、補体結合していることがある、IgGアイソタイプのFcなどの、他のタンパク質と、リシン、アブリン、ジフテリア毒素若しくはこれらに類するものなどの毒素と、又はターゲット細胞上の特定の部分へのターゲティングを可能にする特定の結合剤と、化合されることもある。
【0057】
一部の実施形態において、本発明のsAXL変異体は融合タンパク質である、例えば、第二のポリペプチドとインフレームで融合されている。一部の実施形態において、前記第二のポリペプチドは、例えば融合タンパク質が循環から急速に一掃されることとならないように、融合タンパク質のサイズを増加させることが出来る。一部の他の実施形態において、前記第二のポリペプチドは、Fc領域の一部又は全部である。一部の他の実施形態において、前記第二のポリペプチドは、Fcと実質的に同様である、例えばサイズ増加及び/又はIg分子とのさらなる結合若しくは相互作用をもたらす、任意の適するポリペプチドである。さらに一部の他の実施形態において、前記第二のポリペプチドは、アルブミンタンパク質、例えばヒト血清アルブミンタンパク質、の一部又は全部である。
【0058】
一部の他の実施形態において、前記第二のポリペプチドは、sAXL変異体の取り扱い、例えばsAXL変異体の精製、に、又はインビトロ若しくはインビボでのその安定性の増加に有用である。例えば、本発明のsAXL変異体は、キメラ又は融合ポリペプチドを生じさせる結果となるように、免疫グロブリン(IgG)の定常ドメインの一部と化合されることがある。これらの融合タンパク質は精製を助長し、及びインビボで増加された半減期を示す。1つの報告例は、ヒトCD4−ポリペプチドの最初の2つのドメインと哺乳動物免疫グロブリンの重又は軽鎖の定常領域の様々なドメインとから成るキメラタンパク質を説明している。欧州特許出願公開第394,827号;Traunecker et al.、Nature、331:84−86、1988。(IgGのために)ジスルフィド結合二量体構造を有する融合タンパク質は、他の分子を結合する及び中和する点で、単量体分泌タンパク質又はタンパク質断片のみより効率的である場合もある。Fountoulakis et al.、J.Biochem.270:3958−3964、1995。
【0059】
さらに一部の他の実施形態において、前記第二のポリペプチドは、融合ポリペプチドの精製を助長するペプチドなどのマーカー配列である。例えば、前記マーカーアミノ酸配列は、数ある中でもpQEベクター(QIAGEN,Inc.、9259 Eton Avenue、Chatsworth、Calif.、91311)に備えられているタグなどのヘキサ−ヒスチジンペプチドであってもよく、これらの多くが市販されている。例えばGentz et al.、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:821−824、1989に記載されているように、ヘキサ−ヒスチジンは、融合タンパク質の適便な精製に備える。精製に有用なもう1つのペプチドタグ、「HA」タグは、インフルエンザ赤血球凝集素タンパク質に由来するエピトープに対応する。Wilson et al.、Cell 37:767、1984。
【0060】
なお一部の他の実施形態において、前記第二のポリペプチドは、本発明のsAXL変異体の特性の向上に有用なエンティティーである。例えば、宿主細胞からの精製又はその後の取り扱い及び保管中の安定性及び耐久性を向上させるために、追加のアミノ酸、特に荷電アミノ酸、の領域が前記ポリペプチドのN末端に付加されることがある。また、精製を助長するために本発明のsAXL変異体にペプチド部分が付加され、その後、そのポリペプチドの最終調製前に除去されることがある。ポリペプチドの取り扱いを助長するためのペプチド部分の付加は、当技術分野においてよく知られている常例的技術である。
【0061】
なおさらに一部の実施形態において、本発明のsAXL変異体は、野生型AXLに少なくとも等しい又は野生型AXLより良好である、GAS6への結合活性を有する。一部の他の実施形態において、本発明のsAXL変異体は、野生型AXLのものより少なくとも1倍、2倍、3倍、4倍、5倍又は6倍大きい、GAS6への結合活性又は親和性を有する。一部の他の実施形態において、本発明のsAXL変異体は、少なくとも約1×10−6、1×10−7、1×10−8又は1×10−9Mの、GAS6への結合活性又は親和性を有する。さらに一部の他の実施形態において、本発明のsAXL変異体は、インビボ、インビトロ又は両方でGAS6への野生型AXL結合を阻害することが出来る、前記結合を阻害する、又は前記結合と競合する。さらに一部の他の実施形態において、本発明のsAXL変異体は、本出願の実施例2に提供するようなAXL S6−1、AXL S6−2及び/又はAXL S6−5の結合を阻害する、又は前記結合に競合する。さらに一部の他の実施形態において、本発明のsAXL変異体は、本出願の実施例2に提供する任意のsAXL変異体の結合を阻害する、又は前記結合に競合する。
【0062】
GAS6に結合する分子の能力は、例えばアッセイプレートにコーティングされたGAS6に結合する推定リガンドの能力によって、判定され得る。1つの実施形態において、GAS6への本発明のsAXL変異体の結合活性は、リガンド、例えばGAS6又はsAXL変異体、を固定することによって、アッセイされ得る。例えば、前記アッセイは、Ni活性化NTA樹脂ビーズ上へのHisタグに融合されたGAS6の固定化を含むことがある。薬剤は、ある期間、所与の温度でインキュベートされた適切なバッファー及びビーズに添加され得る。未結合材料を除去するための洗浄後、結合タンパク質は、例えばSDS、高pHのバッファー、及びこれらに類するもので遊離され、分析され得る。
【0063】
なおさらに他の実施形態において、本発明のsAXL変異体は、野生型AXLの末端安定性より良好な末端安定性を有する。一部の実施形態において、本発明のsAXL変異体の融解温度は、野生型AXLの融解温度より少なくとも5℃、10℃、15℃又は20℃高い。
【0064】
本発明によると、本発明のsAXL変異体は、本発明のsAXL変異体の一次配列を改変しない1つ以上の修飾を備えている場合もある。例えば、そのような修飾としては、ポリペプチドの化学的誘導体化、例えばアセチル化、アミド化、カルボキシル化など、を挙げることが出来る。そのような修飾としては、グリコシル化の修飾、例えば、ポリペプチドのグリコシル化パターンをその合成及びプロセッシング中に又はさらなるプロセッシング段階において修飾することにより、例えば、哺乳動物グリコシル化又は脱グリコシル化酵素などのグリコシル化に影響を及ぼす酵素にそのポリペプチドを暴露することにより、行われるものも挙げることが出来る。一部の実施形態において、本発明のsAXL変異体は、リン酸化アミノ酸残基、例えばホスホチロシン、ホスホセリン又はホスホトレオニン、を有するsAXL変異体を包含する。
【0065】
一部の他の実施形態において、本発明のsAXL変異体は、タンパク質分解に対するそれらの耐性を向上させるように、又は可溶性を最適化するように、又はそれらを治療薬としてより適するものにするように、さらに修飾された変異体を包含する。例えば、本発明のsAXL変異体は、天然に存在するL−アミノ酸以外の残基、例えばD−アミノ酸又は天然に存在しない合成アミノ酸、を含有するsAXL変異体のアナログをさらに包含する。D−アミノ酸は、そのアミノ酸残基の一部が置換されていてもよく、又はすべてが置換されていてもよい。
【0066】
さらに一部の他の実施形態において、本発明のsAXL変異体は、共有結合で又は非共有結合で連結された少なくとも2つの同じ又は異なるsAXL変異体を包含する。例えば、一部の実施形態において、本発明のsAXL変異体は、例えば適切なサイズを有するが望ましくない凝集を回避するように、共有結合で連結された2、3、4、5又は6つの同じ又は異なるsAXL変異体を包含する。
【0067】
本発明によると、本発明のsAXL変異体は、当分野において公知の又は後に発見される任意の適する手段によって生産され得る、例えば、真核又は原核細胞から生産、インビトロで合成、などされ得る。前記タンパク質が原核細胞によって生産される場合、それは、アンフォールディング、例えば熱変性、DTT還元など、によりさらにプロセッシングされることがあり、及び当技術分野において公知の方法を用いてさらにリフォールディングされることがある。
【0068】
前記ポリペプチドは、当技術分野において公知であるような従来の方法を用いて、インビトロ合成によって調製されることがある。様々な商用合成機器、例えば、カリフォルニア州フォスターシティーのApplied Biosystems、Backmanなどによる自動合成装置が利用可能である。合成装置を使用することにより、天然に存在するアミノ酸が非天然アミノ酸で置換されることがある。個々の配列及び調製の仕方は、利便性、経済性、必要な純度、及びこれらに類するものによって決められるであろう。
【0069】
前記ポリペプチドは、従来の組換え合成法に従って単離及び精製されることもある。発現宿主から溶解産物が調製され、HPLC、排除クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、アフィニティークロマトグラフィー、又は他の精製技術を用いてその溶解産物が精製されることがある。通例、使用される組成物は、その産物の調製方法及びその精製方法に関連した不純物に関連して、少なくとも20重量%、より通常は少なくとも約75重量%、好ましくは少なくとも約95重量%、及び治療目的では、通常、少なくとも約99.5重量%の所望の産物を含む。通常、前記百分率は、全タンパク質に基づくであろう。
【0070】
コーディング配列及び適切な転写/翻訳制御シグナルを含有する発現ベクターを構築するために、当業者に周知である方法が使用され得る。これらの方法としては、例えば、インビトロ組み換えDNA技術、合成技術及びインビボ組み換え/遺伝子組み換えが挙げられる。或いは、興味のあるポリペプチドをコードすることが出来るRNAが化学合成され得る。当業者は、本発明のポリペプチドのいずれについても、適するコーディング配列を生じさせるために周知のコドン使用頻度表及び合成方法を容易に利用することが出来る。直接化学合成法としては、例えば、Narang et al.(1979)Meth.Enzymol.68:90−99のホスホトリエステル法;Brown et al.(1979)Meth.Enzymol.68:109−151のホスホジエステル法;Beaucage et al.(1981)Tetra.Lett.、22:1859−1862のジエチルホスホルアミダイト法;及び米国特許第4,458,066号の固体支持体法が挙げられる。化学合成は、一本鎖オリゴヌクレオチドを生成する。これは、相補配列でのハイブリダイゼーションにより、又はテンプレートとしてその一本鎖を使用するDNAポリメラーゼでの重合により、二本鎖DNAに転化され得る。DNAの化学合成は、多くの場合、約100塩基の配列に制限されるが、より短い配列のライゲーションによって、より長い配列が得られ得る。或いは、部分配列がクローン化され、適切な制限酵素を使用して適切な部分配列が切断されることもある。
【0071】
核酸は、単離され、相当な純度で得られ得る。通常、他の天然に存在する核酸配列が実質的に無い、一般に、少なくとも約50%、通常は少なくとも約90%の純度である核酸、例えばDNA又はRNAのいずれか、が得られることとなり、これらは、概して「組換体」である、例えば、自然に存在する染色体上では通常は会合していない1つ以上のヌクレオチドが隣接している。本発明の核酸は、線状分子として提供されることがあり、又は環状分子内に備えられていることがあり、及び自律複製分子(ベクター)内に又は複製配列の無い分子内に備えられていることがある。前記核酸分子の発現は、それら自体の配列によって調節されることがあり、又は当技術分野において公知の他の調節配列によって調節されることがある。本発明の核酸は、トランスフェリンポリカチオン媒介DNA移入、裸の又は封入された核酸でのトランスフェクション、リポソーム媒介DNA移入、DNA被覆ラテックスビーズの細胞内輸送、プロトプラスト融合、ウイルス感染、エレクトロポレーション、遺伝子ガン、リン酸カルシウム媒介トランスフェクション、及びこれらに類するものなどの、当技術分野において利用可能な様々な技術を用いて、適する宿主細胞に導入されることがある。
【0072】
一部の実施形態において、本発明は、構成的に又は1つ以上の調節要素のもとで本発明の1つ以上のsAXL変異体をインビトロ又はインビボで発現させるための発現ベクターを提供する。一部の実施形態において、本発明は、構成的に又は1つ以上の調節要素のもとで本発明のsAXL変異体を発現するための1つ以上の発現ベクターを含む細胞集団を提供する。
【0073】
本発明のもう1つの態様に従って、GAS6タンパク質に特異的に結合する単離された抗体又はそれらの断片を提供する。GAS6(成長停止特異的タンパク質6)は、構造的には血漿ビタミンK依存性タンパク質のファミリーに属する。GAS6は、天然抗凝血性タンパク質Sとの高い構造的相同性を有し、同じモジュール組成を共有し、40%配列同一性を有する。GAS6は、TAMファミリーの受容体チロシンキナーゼ、Tyro3、AXL及びMerTK、とのその相互作用により成長因子様特性を有する。ヒトGAS6は、リン脂質膜への結合を媒介するガンマ−カルボキシグルタメート(Gla)リッチドメインと、4つの上皮成長因子様ドメインと2つのラミニンG様(LG)ドメインとから成る678アミノ酸タンパク質である。ヒトGAS6の転写産物変異体の配列は、GenbankにおいてそれぞれNM_001143946.1;NM_001143945.1;及びNM_000820.2で入手され得る。
【0074】
GAS6は、そのビタミンK依存性GLA(ガンマ−カルボキシグルタミン酸)モジュールによりホスファチジルセリン含有膜と及びそのカルボキシ末端LamGドメインによりTAM膜受容体と相互作用する、ユニークな作用メカニズムを用いる。
【0075】
本発明によると、本発明の単離された抗体は、GAS6に対する認識可能な結合特異性を有する任意の単離された抗体を包含する。一部の実施形態において、単離された抗体は、部分的又は完全ヒト化抗体である。一部の他の実施形態において、単離された抗体は、モノクローナル又はポリクローナル抗体である。さらに一部の他の実施形態において、単離された抗体は、例えば異なる源からの一貫領域、可変領域及び/若しくはCDR3又はそれらの組み合わせを有する、キメラ抗体である。さらに一部の他の実施形態において、単離された抗体は、本明細書に記載する様々な特徴の組み合わせである。
【0076】
本発明によると、本発明の単離された抗体の断片は、GAS6へのポリペプチドの認識可能な特異的結合に十分又は必要である抗体の領域を含有するポリペプチドを(抗体足場に関連して又は非抗体足場関連して)包含する。一部の実施形態において、本発明の単離された抗体の断片としては、可変軽鎖、可変重鎖、重鎖若しくは軽鎖の1つ以上のCDR又はそれらの組み合わせ、例えばFab、Fvなど、が挙げられる。一部の実施形態において、本発明の単離された抗体の断片としては、一本鎖抗体、例えばScFv、を含有するポリペプチドが挙げられる。さらに一部の実施形態において、本発明の単離された抗体の断片としては、単独での可変領域、又はFc領域の一部、例えばCH1領域、との組み合わせでの可変領域が挙げられる。なお一部の実施形態において、本発明の単離された抗体の断片としては、ミニボディー、例えばVL−VH−CH3、又ダイアボディーが挙げられる。
【0077】
一部の実施形態において、本発明の単離された抗体は、AXLと相互作用する1つ以上のアミノ酸領域に含まれる又は前記アミノ酸領域によって提供されるエピトープに結合する。一部の他の実施形態において、本発明の単離された抗体は、GAS6の1つ以上のアミノ酸領域、例えばGAS6のL295−T317、E356−P372、R389−N396、D398−A406、E413−H429及びW450−M468、に含まれる又は前記アミノ酸領域によって提供されるエピトープに結合する。
【0078】
さらに一部の他の実施形態において、本発明の単離された抗体は、1つ以上のアミノ酸領域、例えばLRMFSGTPVIRLRFKRLQPT(配列番号:3)、ElVGRVTSSGP(配列番号:4)、RNLVIKVN(配列番号:5)、DAVMKIAVA(配列番号:6)、ERGLYHLNLTVGIPFH(配列番号:7)及びWLNGEDTTIQETVVNRM(配列番号:8)、に含まれる又は前記アミノ酸領域によって提供されるエピトープに結合する。
【0079】
さらに一部の他の実施形態において、本発明の単離された抗体は、GAS6のL295−T317、E356−P372、R389−N396、D398−A406、E413−H429及びW450−M468の領域内に含まれる又は前記領域内の少なくとも1、2、3、4、5又は6つのアミノ酸によって提供されるエピトープに結合する。さらに一部の他の実施形態において、本発明の単離された抗体は、LRMFSGTPVIRLRFKRLQPT(配列番号:3)、ElVGRVTSSGP(配列番号:4)、RNLVIKVN(配列番号:5)、DAVMKIAVA(配列番号:6)、ERGLYHLNLTVGIPFH(配列番号:7)及びWLNGEDTTIQETVVNRM(配列番号:8)の領域内に含まれる又は前記領域内の少なくとも1、2、3、4、5又は6つのアミノ酸によって提供されるエピトープに結合する。
【0080】
なお一部の他の実施形態において、本発明の単離された抗体は、野生型AXL又は本発明のsAXL変異体とGAS6の間の結合を阻害出来る、前記結合を阻害する、又は前記結合と競合する。
【0081】
本発明によると、本発明のsAXL変異体と単離された抗体の両方は、治療応用に、例えば人間の処置に、適する医薬組成物で提供され得る。一部の実施形態において、本発明の医薬組成物は、本発明の1つ以上の治療エンティティー、例えばGASに対するsAXL変異体及び/若しくは単離された抗体又はそれらの医薬的に許容され得る塩、エステル若しくは溶媒和物或いはそれらの任意のプロドラッグ、を備えている。一部の実施形態において、本発明の医薬組成物は、別の細胞傷害剤、例えば別の抗腫瘍剤、との組み合わせで本発明の1つ以上の治療エンティティーを備えている。さらに一部の他の実施形態において、本発明の医薬組成物は、別の医薬的に許容され得る賦形剤との組み合わせで本発明の1つ以上の治療エンティティーを備えている。
【0082】
なお一部の他の実施形態において、本発明の治療エンティティーは、活性治療薬、すなわち、と様々な他の医薬的に許容され得る成分とを含む医薬組成物として、多くの場合、投与される。(Remington’s Pharmaceutical Science、第15版、Mack Publishing Company、Easton、Pa.、1980参照)。好ましい形態は、所期の投与方式及び治療応用に依存する。前記組成物は、所望される調合物に依存して、医薬的に許容され得る非毒性担体又は希釈剤も備えていることがあり、前記担体又は希釈剤は、動物又はヒトへの投与用の医薬組成物を調合するために一般に使用されるビヒクルと定義される。前記希釈剤は、併用物の生物活性に影響を及ぼさないように選択される。そのような希釈剤の例は、蒸留水、リン酸緩衝生理食塩水、リンガー溶液、デキストロース溶液及びハンクス溶液である。加えて、前記医薬組成物又は調合物は、他の担体、アジュバント又は非毒性、非治療用、非免疫原性安定剤及びこれらに類するものを備えていることもある。
【0083】
なお一部の他の実施形態において、本発明の医薬組成物は、タンパク質、多糖類、例えばキトサン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸及びコポリマー(例えば、ラテックス官能化Sepharose(商標)、アガロース、セルロース、及びこれらに類するもの)、ポリマーのアミノ酸、アミノ酸コポリマー並びに脂質凝集体(例えば、油滴又はリポソーム)などの、大きい、ゆっくりと代謝される高分子を備えていることもある。加えて、これらの担体は、免疫刺激剤(すなわち、アジュバント)として機能することが出来る。
【0084】
本発明のさらにもう1つの態様に従って、AXLシグナル伝達経路及び/又はGAS6シグナル伝達経路を阻害することによって腫瘍転移又は腫瘍浸潤を処置する、低減する又は予防するための方法を提供する。一部の実施形態において、本発明の方法は、AXLの活性、GAS6の活性、又はAXLとGAS6の相互作用を阻害することを包含する。例えば、AXL又はGAS6の活性は、遺伝子発現レベル、mRNAプロセッシングレベル、翻訳レベル、翻訳後レベル、タンパク質活性化レベルなどで阻害され得る。一部の他の例おいて、AXL又はGAS6の活性は、小分子、生体分子、例えばポリペプチド、ポリヌクレオチド、抗体、抗体薬物コンジュゲートなど、によって阻害され得る。一部の他の例において、AXL又はGAS6の活性は、本発明の1つ以上のsAXL変異体又は単離された抗体によって阻害され得る。
【0085】
さらに他の実施形態において、本発明の方法は、治療有効量又は有効用量の本発明の治療エンティティー、例えば、AXL活性若しくはGAS6活性の阻害剤、又はAXLとGAS6の間の相互作用の阻害剤、を治療の必要がある被験者に投与することを包含する。一部の実施形態において、本明細書に記載する、例えば転移性癌の処置のための、本発明の治療エンティティーの有効用量は、投与の手段、ターゲット部位、患者の生理状態、患者がヒトであるのか動物であるのか、施される他の薬物療法、及び処置が予防的であるのか治療的であるのかをはじめとする多くの異なる要因に依存して変わる。通常、患者はヒトであるが、トランスジェニック哺乳動物をはじめとする非ヒト哺乳動物も処置されることがある。処置投薬量は、安全性及び効力を最適にするためにタイトレーションを必要とする。
【0086】
一部の実施形態において、前記投薬量は、約0.0001から100mg/kg宿主体重、及びより通常は0.01から5mg/kg宿主体重の範囲であり得る。例えば、投薬量は、1mg/kg体重、若しくは10m/kg体重、又は1−10mg/kgの範囲内であってもよい。例示的処置レジメは、2週間ごとに1回、又は1ヶ月に1回、又は3から6ヶ月ごとに1回の投与を伴う。本発明の治療エンティティーは、通常は幾度も投与される。単回投薬間の間隔は、週1回、月1回又は年1回であってもよい。間隔は、患者における治療エンティティーの血中レベルを測定することによって示されることに応じて不規則であってもよい。或いは、本発明の治療エンティティーは、徐放調合物として投与されることがあり、この場合、より少ない頻度での投与が求められる。投薬量及び頻度は、患者におけるそのポリペプチドの半減期に依存して変わる。
【0087】
予防応用の場合、比較的低い投薬量が長期間にわたって比較的低い頻度間隔で投与される。一部の患者は、残りの寿命にわたって処置を受け続ける。治療応用の場合、疾患の進行が低減又は終結されるまで、好ましくは、患者が疾患の症状の部分的な又は完全な改善を示すまで、比較的短い間隔で比較的高い用量が時として必要とされる。その後、患者は、予防レジメを施されることがある。
【0088】
なお他の実施形態において、本発明の方法は、卵巣癌、乳癌、肺癌、肝臓癌、結腸癌、胆嚢癌、膵臓癌、前立腺癌及び/又は膠芽腫の腫瘍転移又は腫瘍浸潤の処置、低減又は予防を包含する。
【0089】
なおさらに一部の他の実施形態では、予防応用のために、疾患又は容態に罹患しやすい又は別様に疾患又は容態のリスクを有する患者に、その疾患のリスクの消失若しくは低減、その疾患の重症度の低下、又はその疾患の発症の遅延に十分な量で、医薬組成物又は薬物が投与され、前記疾患は、その疾患の生化学的、組織学的及び/又は行動的症状、その合併症、並びにその疾患の発生中に提示される中間的病的表現型を包含する。
【0090】
なおさらに一部の他の実施形態では、治療応用のために、そのような疾患に罹患しやすい又はすでに罹患している患者に、その疾患の(生化学的、組織学的及び/又は行動的)症状の治癒又は少なくとも部分的阻止に十分な量で、本発明の治療エンティティーが投与され、前記疾患は、その合併用及びその疾患の発生中の中間的病的表現型を包含する。治療的又は予防的処置を遂行するために妥当な量は、治療又は予防有効量と定義される。予防及び治療レジメ両方において、薬剤は、通常、十分な応答が達成されるまで幾度かの投薬で投与される。典型的には、その応答がモニターされ、癌の再発があると反復投薬が施される。
【0091】
本発明によると、転移性癌の処置のための組成物は、非経口、局所、静脈内、腫瘍内、経口、皮下、動脈内、頭蓋内、腹膜内、鼻腔内又は筋肉内手段によって投与されることがある。最も典型的な投与経路は静脈内又は腫瘍内経路であるが、他の経路も同じく有効である。
【0092】
腹膜内投与のための本発明の組成物は、水、油、食塩水、グリセロール又はエタノールなどの滅菌液であってもよい製薬用担体を伴う生理的に許容され得る希釈剤中の物質の溶液又は懸濁液の注射用投薬量として投与されることがある。加えて、湿潤又は乳化剤、界面活性剤、pH緩衝物質及びこれらに類するものなどの補助物質が組成物中に存在することがある。医薬組成物の他の成分は、石油、動物、植物又は合成起源のもの、例えば落花生油、大豆油及び鉱物油、である。一般に、プロピレングリコール又はポリエチレングリコールなどのグリコールは、特に注射用溶液のための、液体担体として好ましい。抗体は、活性成分の徐放を可能にするような様式で調合され得るデポー注射又はインプラント製剤の形態で投与されることがある。例示的組成物は、HClでpH6.0に調整された、50mM L−ヒスチジンと150mM NaClとから成る水性バッファー中で調合された5mg/mLのモノクローナル抗体を含む。
【0093】
典型的に、組成物は、注射剤として、水溶液又は水性懸濁液いずれかとして、調製される;注射前の液体ビヒクルへの溶解又は懸濁に適する固体形態も調製され得る。前記製剤は、上で論じたように、アジュバント効果強化のために乳化される又はリポソーム若しくは微粒子、例えばポリラクチド、ポリグリコリド若しくはコポリマー、に封入されることもある。Langer、Science 249:1527、1990及びHanes、Advanced Drug Delivery Reviews 28:97−119、1997。本発明の薬剤は、活性成分の徐放又は拍動放出を可能にするような様式で調合され得るデポー注射又はインプラント製剤の形態で投与されることがある。
【0094】
他の投与方式に適する追加の調合物としては、経口、鼻腔内及び肺用調合物、坐剤及び経皮塗布薬が挙げられる。
【0095】
坐剤のための結合剤及び担体としては、例えば、ポリアルキレングリコール又はトリグリセリドが挙げられる;そのような坐剤は、0.5%から10%、好ましくは1%−2%の範囲で活性成分を含有する混合物から形成されることがある。経口調合物は、製薬グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース及び炭酸マグネシウムなどの賦形剤を備えている。これらの組成物は、溶液、懸濁液、錠剤、ピル、カプセル、徐放性調合物又は粉末の形態をとり、及び10%−95%、好ましくは25%−70%の活性成分を含有する。
【0096】
局所適用は、結果として経皮又は皮内送達を生じさせることが出来る。局所投与は、前記薬剤とコレラ毒素又はその解毒誘導体若しくはサブユニット又は他の類似の細菌毒素との共同投与によって助長されることがある。Glenn et al.、Nature 391:851、1998。共同投与は、それらの成分を混合物として使用することによって、又は化学的架橋若しくは融合タンパク質としての発現により得られる連結分子として使用することによって、達成され得る。
或いは、経皮送達は、皮膚パッチを使用して又はトランスフェロソームを使用して達成され得る。Paul et al.、Eur.J.Immunol.25:3521−24、1995;Cevc et al.、Biochem.Biophys.Acta 1368:201−15、1998.
【0097】
一般に、前記医薬組成物は、無菌の、実質的に等張性のものとして、及び米国食品医薬品局(U.S.Food and Drug Administration)のすべての適正製造規範(Good Manufacturing Practice:GMP)に完全に従って調合される。
【0098】
好ましくは、本明細書に記載する治療有効用量の抗体組成物は、実質的毒性を生じさせることなく治療的恩恵をもたらすであろう。
【0099】
本明細書に記載するタンパク質の毒性は、細胞培養又は実験動物での標準的製薬学的手順により、例えばLD50(集団の50%に致死的な用量)又はLD100(集団の100%に致死的な用量)を決定することにより、判定され得る。毒性効果と治療効果の間の用量比が治療指数である。これらの細胞培養アッセイ及び動物研究から得られるデータは、人間での使用のために毒性でない投薬量範囲を公式化する際に使用され得る。本明細書に記載するタンパク質の投薬量は、毒性が殆ど又は全く無い有効用量を含む循環濃度範囲内に好ましくは存する。前記投薬量は、利用される剤形及び利用される投与経路に依存してこの範囲内で変動し得る。正確な調合、投与経路及び投薬量は、患者の容態を考慮して個々の医師により選択され得る(例えば、Fingl et al.、1975、In:The Pharmacological Basis of Therapeutics、Ch.1を参照のこと)。
【0100】
本発明の組成物(例えば、可溶性AXL変異体及びそれらの調合物)と使用のための説示とを含むキットも本発明の範囲内である。前記キットは、少なくとも1つの追加の試薬をさらに含有することがある。典型的に、キットは、そのキットの内容物の所期の用途を示すラベルを備えている。用語ラベルは、キット上に若しくはキットと共に供給される、又はキットに別様に付随する任意の記載又は記録材料を包含する。
【0101】
本発明のさらにもう1つの態様に従って、興味のある被験体からの生体試料におけるAXL活性又はGAS6活性のレベルを検出及び/又は判定することにより腫瘍浸潤及び/又は転移を被る腫瘍の能力を判定するための方法を提供する。一部の実施形態において、AXL活性又はGAS6活性のレベルは、mRNA発現のレベル、タンパク質発現のレベル、タンパク質活性化のレベル、又はAXL若しくはGAS6の活性に直接若しくは間接的に対応する任意の適する指標によって測定される。一部の実施形態において、生体試料中のAXL活性又はGAS6活性のレベルは、所定のレベル、例えば、腫瘍浸潤若しくは腫瘍転移を発生していない腫瘍からの又は正常組織からの試料の集団に基づいてAXL活性又はGAS6活性の正常レベル又は範囲を確立することにより得られた標準レベルと、さらに比較される。例えば、所定のレベル又は標準レベルに比してのAXL活性又はGAS6活性の増加は、腫瘍浸潤又は腫瘍転移を被る腫瘍の素質を示す。
【0102】
本明細書に引用するすべての出版物及び特許は、それぞれの個々の出版物又は特許が参照により組み込まれていると具体的にかつ個々に示されているかのごとく、参照により本明細書に組み込まれており、並びにそれらの出版物が引用されている関係でそれらの方法及び/又は材料を開示及び記載するために参照により組み込まれている。いずれの出版物についての引用も、本出願日前のその開示についてのものであり、並びに先行発明のために本発明がそのような出版物に先行する資格が無いことの承認と解釈されるべきものではない。さらに、提供する出版物の日付は、実際の出版日と異なることがあり、実際の出版日は独自に確認されることが必要である場合がある。
【0103】
本開示を読むことで当業者にはわかるであろうが、本明細書において説明及び例証する個々の実施形態のそれぞれは、本発明の範囲又は精神から逸脱することなく他の幾つかの実施形態のいずれかについての特徴から容易に分離され得る又は前記特徴と容易に組み合わせられ得る、別個の成分及び特徴を有する。列挙されている任意の方法は、列挙されている事象の順序で行われることがあり、又は理論的に可能である任意の他の順番で行われることがある。以下では、本発明の部分を例証するために実施例が説明される。
実験
【実施例1】
【0104】
AXLシグナル伝達の治療的遮断は転移性腫瘍進行を阻害する
転移性疾患のための治療ターゲットとしてのAXLの実証はほぼ手つかずであり、より重要なこととして、AXLターゲティングのインビボ相関現象は実証されていない。本発明者らは、AXLがヒト乳及び卵巣癌患者における転移のマーカーであること、並びにこれらの患者における疾患の重症度が原発性腫瘍におけるAXLタンパク質の量と相関することを証明する。最も重要なこととして、本発明者らは、転移が既に存在するマウスにおいて可溶性AXLエクトドメインの投与により腫瘍転移がうまく処置され得ることを証明する。メカニズム的には、転移性疾患を有する動物におけるAXLシグナル伝達の阻害は、減少した浸潤及びMMP活性を生じさせる結果となる。本発明者らの発見は、可溶性AXLエクトドメインの投与による腫瘍細胞におけるAXLシグナル伝達カスケードの阻害が転移性腫瘍進行の阻害に十分であることを実証する。
【0105】
この研究において、本発明者らは、AXLがヒト癌における転移の肝要な要因であるかどうか、及びAXLシグナル伝達の治療的遮断が転移性疾患にとって有効な処置であり得るかどうかを試験した。本発明者らは、転移性乳及び卵巣癌の開始及び進行におけるAXLの役割を直接評定するために遺伝学的アプローチと治療的アプローチの両方を利用する。
【0106】
AXLは、ヒト癌における腫瘍進行及び転移のマーカーである。本発明者らは、先ず、乳又は卵巣癌を有する患者からの正常組織、原発性腫瘍及び転移におけるAXL発現を比較した。乳癌に隣接する正常な検体の100%において、乳房上皮細胞は、AXLの拡散した細胞質及び核染色を示し、これは、AXLが膜結合受容体であることにかんがみてバックグラウンド染色であると考えられた(n=27、図1A)。しかし、原発性乳房腫瘍では、腫瘍上皮における膜AXL染色が、悪性度1検体の25%(1/4)、悪性度2検体の76%(10/13)及び悪性度3検体の100%(18/18)に存在した(図1A及び表1)。加えて、AXLは、リンパ節転移の88%(8/9)において発現された。
【0107】
漿液性卵巣癌検体に関しては、先ず正常卵巣表層上皮(OSE)におけるAXL発現を検査した。卵巣腫瘍の大部分はこれらの細胞から生ずると考えられるからである。正常OSEを保持した卵巣癌患者試料では、AXLが検体の0%(0/5)において発現された(図1B)。対照的に、原発性腫瘍上皮における膜AXL染色は、病期II患者試料の66%(6/9)及び病期III患者試料の83%(53/64)に存在した(図1B及び表I)。加えて、網及び腹膜などの共通転移部位からの腫瘍試料は、それぞれ検体の75%(24/32)及び90%(23/30)において高いAXL発現を示した(図1B及び表I)。これらの発見は、原発腫瘍内でのAXL発現が、進行した疾患及び転移性腫瘍において示されるので、転移と相関することの証拠となる。さらに、これらのデータは、ヒト乳及び卵巣癌に由来する転移が高レベルのAXLを発現することの証拠となる。
【0108】
AXLは、腫瘍転移の肝要な要因である。転移におけるAXLの機能的役割を検査するために、本発明者らは、乳及び卵巣転移のマウスモデルにおいてAXLを阻害する遺伝学的アプローチを利用した。このために、本発明者らは、高レベルのAXL発現を有する転移性細胞系を同定するためにヒト乳及び卵巣癌細胞系のパネルをAXLタンパク質発現についてスクリーニングした。本発明者らの臨床的発見に類似して、AXLは、転移性乳(NCI−ADR−RES、MDA−231、HS 578T、BT−549)及び卵巣(SKOV3、OVCAR−8、ES−2、MESOV、HEYA8)細胞系の大部分において高度に発現され、これに対して転移の可能性が低い細胞系ではAXLが検出不能な又は低いレベルで発現された(MCF7、MDA−MB435、T47D、IGROV1、OVCAR−3;図9)。AXL欠損転移性乳房(MDA−231)及び卵巣(SKOV3ip.1及びOVCAR−8)細胞系は、以前に記載されたAXL shRNAターゲティング配列を使用して産生された。ウエスタンブロット分析は、shAXLターゲティング配列を発現する細胞が、スクランブル対照shRNAターゲティング配列を発現する細胞と比較して5%未満のAXLタンパク質を発現することを裏付けた(shSCRM、図9B)。
【0109】
乳房腫瘍転移の後期におけるAXLの役割を直接評定するために、本発明者らは、ヌードマウスの尾静脈にAXL−野生型(shSCRM)及びAXL欠損(shAXL)MDA−231細胞を注射し、第28日に肺における腫瘍量を評価した。肺の顕微鏡評価は、shRNAスクランブル(shSCRM)MDA−231細胞を注射した5/5マウスが、AXLについて陽性の着色した転移性病巣を発生させることを明らかにした(図2A)。対照的に、shRNA AXL(shAXL)を注射した0/5マウスは、組織学的評価に基づき、肺転移を発生させた(図2A)。これらのマウスの肺における腫瘍量を定量するために、本発明者らは、ヒトGAPDHについての実時間PCR分析を行った。図2Aは、shSCRM MDA−231細胞を注射されたマウスの肺が高レベルのヒトGAPDHを発現したことを明示しており、これは、MDA−231に由来する転移性病変の存在を示す。加えて、shSCRM注射マウスは肺においてヒトAXLを発現した。これは、AXL陽性腫瘍細胞の存在を示唆する(図2A)。対照的に、shAXL腫瘍細胞を注射したマウスは、肺においてヒトGAPDH又はAXLを発現しなかった。これらの発見は、AXLの遺伝的不活性化が、このモデルにおける肺転移形成の完全抑制に十分であることを実証する。
【0110】
AXLの遺伝的不活性化がインビボで転移する卵巣癌細胞の能力に影響を及ぼすかどうかを判定するために、本発明者らは、卵巣癌の腹膜異種移植片モデルを使用して転移を形成するshSCRM及びshAXL SKOV3ip.1細胞の能力を比較した。このモデルは、ヒト卵巣転移の腹膜播種を反復し、マウスは、SKOV3ip.1細胞の腹膜注射後に腹水と腸間膜、横隔膜、肝臓及び他の腹膜表面に付着した100より多くの小さな転移性病変とから成る進行性疾患を急速に発生させる(図3B)。SKOV3ip.1腹膜転移におけるAXL発現の免疫組織化学的分析は、ヒト卵巣転移に類似してAXLがSKOV3ip.1転移病変において高度に発現されることを明らかにした。このことは、これが卵巣転移におけるAXLの役割を調査するための妥当なモデル系であることを示している(データを示さない)。shSCRM及びshAXL細胞の腹膜注射の28日後、shSCRMマウスは、マウスを犠牲にすること及びshSCRM注射マウスとshAXL注射マウスの間の腫瘍量の変化を調査することを本発明者らに余儀なくさせる、重篤な腹水及び病的状態の徴候を提示した。shSCRM細胞を注射したマウスは、腹水及び>100の腹膜転移を発生させたが、shAXL細胞を注射したマウスは、殆ど転移を発生させなかった(図2B)。5mmより大きいサイズの腹膜転移の平均数は、shSCRM注射マウスにおける13.4+/−4.3からshAXL注射マウスにおける0.8+/−0.5へと有意に低減された(図2B)。類似して、これらの腫瘍の平均重量は、shSCRM注射マウスにおける236+/−74mgからshAXL注射マウスにおける39.2+/−18mgへと有意に低減された(図2B)。これらの発見を支持して、OVCAR−8細胞におけるAXL発現のノックダウンは、総卵巣腹膜腫瘍質量及び腫瘍数を有意に阻害した(図2C)。まとめると、これらの発見は、AXLが乳及び卵巣腫瘍転移についての肝要な要因であることを実証する。
【0111】
インビボでの転移形成におけるAXLの重要な役割にかんがみて、次に、本発明者らは、AXLが転移を特異的に調節するかどうか、又はAXLが腫瘍細胞増殖及び成長の調節に一般的役割を果たすかどうかを判定しようと努めた。これらの問題に取り組むために、本発明者らは、ALX野生型(shSCRM)細胞とAXL欠損(shAXL)細胞の間の総細胞数が10−14日の期間にわたって計数されるインビトロ増殖アッセイを行った。本発明者らは、shSCRM細胞とshAXL MDA−231、SKOV3ip.1又はOVCAR−8細胞の間に細胞成長の有意な差を見出さなかった(図3)。類似して、shSCRM細胞とshAXL細胞の間に同所性MDA−231又は皮下SKOV3ip.1腫瘍成長の有意な差は観察されなかった(図3)。これらの発見は、AXLが腫瘍細胞増殖又はインビボでの皮下成長に求められないことを示している。全体的にみて、本発明者らの発見は、AXLが乳房及び卵巣腫瘍における腫瘍転移を特異的に調節することを示している。
【0112】
AXLは、腫瘍細胞浸潤を調節する。AXL媒介転移についての可能性のあるメカニズムを決定するために、本発明者らは、不偏アプローチを採用し、増殖、浸潤、遊走、接着及び生存をはじめとする転移カスケードに関連した肝要な細胞機能におけるAXLの役割を直接比較した。本発明者らは、shAXL MDA−231、SKOV3ip.1及びOVCAR−8細胞が、I型コラーゲンを通って浸潤する能力が有意に損なわれることを発見した(図4A)。本発明者らは、shAXL細胞における細胞遊走のささやかな減少も観察したが、ECMタンパク質への接着又は血清除去後の生存の差を見出すことは出来なかった。これは、この転移カスケードにおいて主としてAXLが浸潤に影響を及ぼすことを示す。
【0113】
分子レベルで、MMP−9は、最近、乳癌細胞におけるAXL媒介浸潤のエフェクターとして同定された。従って、本発明者らは、MMP−9発現又は活性がAXL欠損卵巣腫瘍細胞においても改変されるかどうかを調査した。SKOV3ip.1細胞はMMP−9を発現しないが、本発明者らは、MMP−2がこれらの細胞において高度に発現されること及びMMP−2 mRNAがshAXL細胞において有意に減少されることを発見した(図4B)。MMP−2ルシフェラーゼ・レポーター・アッセイは、MMP−2プロモーター活性がshSCRM細胞と比較してshAXL細胞において有意に減少されることを明らかにした。このことは、AXLが転写レベルでMMP−2を調節することを示している(図4C)。ゼラチン・ザイモグラフィー・アッセイは、MMP−2分泌タンパク質レベルもshSCRM SKOV3ip.1細胞と比較してshAXL細胞において有意に低減されることを示した(図4D)。まとめると、これらの発見は、ヒト卵巣癌細胞におけるMMP−2発現及び活性の上流調節剤としてのAXLについての役割を示唆している。
【0114】
次に、本発明者らは、AXL媒介MMP−2発現に関与するシグナル伝達経路を解明しようと努めた。GAS6によるAXLの活性化は、PI3K、RAS、MAPK、SRC及びPLCをはじめとする多数の細胞内シグナル伝達経路を直接誘導することが報告されている。これらの経路の中で、PI3Kシグナル伝達経路が卵巣癌細胞におけるMMP−2発現及び浸潤を調節することは証明されている。PI3Kシグナル伝達がSKOV3ip.1細胞においてAXLの喪失による影響を受けるかどうかを判定するために、本発明者らは、AXL野生型及びAXL欠損SKOV3ip.1細胞におけるSer473でのホスホ−AKT(P−AKT)についてのウエスタンブロット分析を行った。本発明者らは、shSCRM SKOV3ip.1細胞と比較してshAXL細胞においてP−AKT発現の非常に大きな阻害を見出した(図4E)。加えて、PI3K阻害剤Ly294002での処置がGAS6誘導P−AKT発現を完全に排除するので、飢餓SKOV3ip.1細胞のGAS6刺激はP−AKTのPI3K依存性誘導を生じさせた(図4E)。PI3K経路がAXL媒介MMP−2発現に関与するかどうかを判定するために、本発明者らは、GAS6及びLy294002の存在下でMMP−2ルシフェラーゼ・レポーター・アッセイを行った。GAS6刺激の結果として起こるMMP−2プロモーター活性の誘導は、LY294002処置によって完全に遮断された。このことは、GAS6/AXLシグナル伝達がPI3Kシグナル伝達事象によってMMP−2発現を調節することを示唆している(図4F)。
【0115】
AXLの治療的阻害は、マウスにおける転移性腫瘍進行を有意に抑制する。本発明者らの発見は、AXLが転移にとって肝要な要因であることをこれまでに実証しており、治療的遮断が転移性疾患のための有効な処置であり得るという仮説を支持する。この仮説を考査するために、本発明者らは、AXLシグナル伝達を阻害するための治療戦略として可溶性AXLエクトドメインを利用した。可溶性AXLエクトドメインは、おとり受容体として機能的に作用し、並びにインビトロ及びインビボでGAS6をナノモルの親和性で結合することが以前に証明されている(図5A)。本発明者らは、先ず、可溶性AXLエクトドメインでの処置が転移性腫瘍細胞におけるAXLシグナル伝達及び浸潤の阻害に十分であるかどうかを検査した。PI3K/AKTシグナル伝達は、様々な細胞タイプにおいてAXLによって調節される。本発明者らは、SKOV3ip.1細胞においてPI3K/AKTシグナル伝達がGAS6/AXLシグナル伝達によって調節されること、及びGAS6処置SKOV3ip.1細胞において可溶性AXLエクトドメイン(sAXL)での処置がPI3K/AKT活性化を低減出来たことを発見した(図5B及びC)。類似して、コラーゲン中のMDA−231細胞のsAXLでの処置は、細胞浸潤の劇的な低減に十分であった。このことは、sAXL処置がインビトロでAXLシグナル伝達及び浸潤に影響を及ぼすことを示唆している(図5D)。
【0116】
本発明者らは、次に、卵巣癌の高転移性モデルにおいてsAXL処置が転移性腫瘍進行に影響を及ぼすかどうかを検査した。本発明者らは、先ず、ヌードマウスにおいてSKOV3ip.1転移性病変を確立し(第1日)、肉眼的病変の検証後、第7日にsAXLでの処置を開始した。肝臓が注射後28日までの間sAXLタンパク質の全身生産量をマウスの血清に放出するsAXL療法が、アデノウイルス系を使用して果たされた(図6A)。第28日における腫瘍量の肉眼分析は、sAXL療法を受けたマウスがFc対照療法で処置されたマウスと比較して腫瘍量の有意な(p<0.01)低減を有したことを明らかにした。SKOV3ip.1腫瘍モデルにおいて、総腫瘍重量及び腫瘍数は、Fc処置マウスと比較してsAXLで処置したマウスにおいて63%減少された(図6B)。類似して、OVCAR−8モデルにおいて、総腫瘍重量及び腫瘍数は、有意にそれぞれ47%及び42%減少した(図11)。本発明者らは、実時間PCR分析によってSKOV3ip.1におけるMMP2発現レベルを検査し、Fc対照処置マウスと比較してsAXL処置マウスの腫瘍においてMMPレベルが有意に減少されることを発見した(図6C)。これらの結果は、単剤AXL療法が、確立された疾患を有するマウスにおける転移性腫瘍量の有意な低減に十分であることの証拠となる。加えて、本発明者らの発見は、転移性腫瘍成長に対するAXLの治療効果が、少なくとも一部はMMP活性の調節による浸潤の阻害を伴うだろうことを示唆している。
【0117】
MMPをターゲットにする以前の抗転移阻害剤は、正常組織毒性に対して有意な影響を及ぼすことが証明されていることにかんがみて、本発明者らは、21日間sAXL療法で処置したマウスにおける正常組織毒性の総合分析を行った。本発明者らは、sAXL又はFc療法で処置したヌードマウスにおいて行動異常、肉眼的異常及び顕微鏡的異常を観察しなかった(図7)。
【0118】
浸潤及び遊走は、腫瘍転移の病理発生に寄与する重要な細胞内因特性である。これらのプロセスをターゲットにする治療薬は、転移を阻害するための有用な戦略であり得、及び転移性疾患を有する患者に臨床的恩恵をもたらすことが出来ると仮定した。この報告において、本発明者らは、受容体チロシンキナーゼAXLが腫瘍細胞浸潤及び転移を支配する肝要な要因であることを実証する。最も重要なこととして、本発明者らは、転移性疾患が既に存在するマウスにおいて可溶性AXL受容体を使用するAXLシグナル伝達の治療的遮断が転移性腫瘍進行の有意な阻害に十分であることを証明する。メカニズム的には、本発明者らの研究は、可溶性AXL療法が、少なくとも一部はMMP活性及び浸潤の阻害により腫瘍転移を阻害することを示す。最後に、本発明者らは、本発明者らの発見の臨床的重要性を強調するために、ヒト卵巣及び乳癌患者からの転移及び進行期原発性腫瘍においてAXLが高度に発現されることを証明する。
【0119】
AXLがヒト癌における転移についての肝要な要因であること、及びAXLシグナル伝達の治療的遮断が転移性疾患のための有効な処置であることを、本明細書において実証する。ここで、本発明者らは、乳及び卵巣癌患者からの転移及び進行期原発性腫瘍試料においてAXLが高度に発現されることを実証する。本発明者らは、ヌードマウスモデルを使用する疾患を用いて、AXLが転移性乳及び卵巣癌の開始に肝要であることを遺伝学的に実証する。最も重要なこととして、本発明者らは、高特異的で非毒性の可溶性AXL受容体を抗AXL療法として開発済みであり、転移性疾患が既に存在するマウスにおいて可溶性AXL受容体療法が転移性腫瘍進行の有意な阻害に十分であることを実証する。本発明者らの発見は、腫瘍細胞におけるAXLシグナル伝達カスケードの阻害が転移性疾患の開始と進行の両方を遮断出来ることを実証する。本発明者らのデータは、進行した及び転移性の乳及び卵巣癌のための新規治療ターゲットとしてAXLを関係づけ、及び抗AXL療法が転移性疾患の開始と進行の両方を制御出来ることを示唆する。
【0120】
MMPは、腫瘍細胞浸潤及び転移の調節に重要な役割を果たす。しかし、腫瘍細胞がMMP活性を誘導するメカニズムは、依然として不明である。MMP発現は、ヒト癌において増加され、腫瘍進行及び不良な患者生存と相関する。MMPにおける遺伝子増幅及び活性化突然変異はヒト癌では滅多に見いだされず、このことは、他の要因が癌におけるMMP発現増進の原因であることを示唆している。本発明者らのデータは、MMP−2発現がヒト卵巣癌細胞において転写レベルでAXLによって調節されることの証拠を提供する。AXLがMMP−2発現を調節する正確なメカニズムは依然として確定されていないが、本発明者らは、PI3K経路の薬理学的阻害がGAS6刺激細胞においてMMP−2プロモーター活性を低減することを実証する。これは、PI3K経路についての役割を示している(図8)。重要なこととして、本発明者らの結果は、AXLの治療的遮断が腫瘍におけるMMP活性を阻害するための有効で非毒性の戦略であり得るこを示している。広域スペクトルMMP阻害剤は、高い正常組織毒性レベルのため、癌試験では不首尾に終わった。本発明者らの発見は、抗AXL療法の予測副作用が最小であることを示している。本発明者らは、マウスにおける可溶性AXLエクトドメイン療法のアデノウイルス媒介送達に随伴する正常組織毒性を一切観察しなかった。さらに、生殖細胞系AXL及びGAS6ノックアウトマウスは生育可能であり、成体として表現型的に正常である。このことは、AXL又はGAS6が発育及び正常組織機能に求められないことを示唆している。
【0121】
本発明者らは、転移性卵巣癌の高転移性モデルにおいて単剤AXL療法が転移性腫瘍進行の阻害に十分であることを証明する。これらの発見には、卵巣癌の処置についての重要な臨床的含意がある。米国では毎年おおよそ14,600人が卵巣癌で死亡する。アバスチン(mAbターゲティングVEGF)及びタルセバ(小分子EGFRキナーゼ阻害剤)は進行及び再発卵巣癌の処置のために臨床試験中であるが、最近、卵巣癌の処置のためにFDAに認可された生物製剤は無い。卵巣癌のための標準的療法は、疾患を最適に減量する外科手術、続いての細胞傷害性白金−タキサン併用療法を含む。これらの努力にもかかわらず、卵巣癌と診断された患者の80パーセントは再発疾患を発生し、これらの患者のうちの30%しか診断の5年後に生存しない。
【0122】
本発明者らのデータは、AXL療法が進行及び再発卵巣癌の処置に有効なアジュバント療法であることを証明する。本発明者らの研究において用いた転移性卵巣腫瘍進行のモデルは、外科的減量術後のヒト患者における再発疾患の発生に似ている。本発明者らは、疾患が確立されたマウスにおいてAXL療法が転移性腫瘍量を63%低減出来ることを発見した。疾患進行中の新たな転移性病変の確立は、有意に低減された。この観察は、AXLが細胞増殖又は成長ではなく主として腫瘍細胞浸潤に影響を及ぼすことを実証する本発明者らの発見と一致する。考え合わせると、本発明者らの結果は、AXL療法が主に抗転移剤として機能すること及び現行の細胞傷害剤との併用療法として最も有効であり得ることを示している。
【0123】
まとめると、AXLは転移の肝要な要因であり、AXLシグナル伝達の遮断は転移において治療的恩恵を有する。これらの研究は、転移性疾患のための抗AXL療法にとって重要な前臨床データを提供する。
方法
【0124】
細胞系。卵巣SKOV3、SKOV3ip.1及びHEYA8細胞は、Gordon Mills博士(MD Anderson Cancer Center)から寄贈品として得られた。卵巣ES−2及びMESOV細胞は、Branimir Sikic博士(Stanford University)から寄贈品として得られた。MDA−231、OVCAR−3及びMCF−7細胞は、ATCCから購入された。IGROV−1及びOVCAR−8は、NCI−Frederic DCTD tumor cell line repositoryから購入された。細胞は、5%CO2インキュベーターにおいて10%熱不活性化ウシ胎仔血清と1%ペニシリンとストレプトマイシンとを補足した適切な培地中37℃で培養された。乳及び卵巣癌細胞系のNCI60パネルからの細胞ペレットは、Giovani Melillo博士(NCI−Frederick)によって提供された。
【0125】
患者及び組織マイクロアレイ。ヒト乳房組織マイクロアレイは、US Biomax(BR1002)から購入された。卵巣ヒト組織マイクロアレイは、Stanford University Pathology Departmentから得られた。合計73のパラフィン包埋腫瘍試料は、1995から2001年のStanford Hospitalの事前に処置を受けていない卵巣癌患者から得られた。これらの原発性卵巣腫瘍試料は、患者1人につき2試料から成る組織マイクロアレイに組み立てられた。腹膜からの追加の30の腫瘍試料もこのマイクロアレイにおいて評価された。すべての患者は、漿液性卵巣癌を有し、病期分類情報は、世界産婦人科連合会(International Federation of Gynecology and Obsterics)基準に従って得られた。すべての検体及びそれらの対応する臨床情報は、Stanford Universityの施設内治験審査委員会によって承認されたプロトコルのもとで収集された。網からの32の転移病変を検査するために、追加の市販腫瘍マイクロアレイが使用された(US Biomax)。
【0126】
AXL免疫組織化学。パラフィン包埋組織スライドは、標準的な免疫組織化学的方法に従ってキシレンで脱パラフィンされ、再水和され、アンマスキングされた。AXL一次抗体(RandD Systems)は、1:500希釈で使用された。すべての試料についての陰性対照は、二次抗体のみを使用して投薬された。抗原−抗体複合体は、VECTASTAIN ABCシステム(Vector Laboratories)及びDAB Substrate Kit for Peroxidase(Vector Laboratories)を製造業者のプロトコルに従って使用して視覚化された。スライドはヘマトキシリンで対比染色された。腫瘍細胞の膜に関するAXL染色は、AXL発現について陽性の細胞の百分率によって顕微鏡で評点づけされた(不在は0、質が劣る試料は1、59−60%は2、及び61−100%は3)。
【0127】
レポーターアッセイ。1659bpのMMP−2プロモーターによって誘導されたMMP−2レポータープラスミドは、寄贈品であった。ルシフェラーゼ活性は、shSCRM及びshAXL SKOV3ip.1細胞においてDual−Glo Luciferase Assay試薬(Promega)によって判定され、Monolight 2010 Luminometer(Analytical Luminescence Laboratory)で測定された。ホタルルシフェラーゼ活性は、Renilla活性に正規化された。アッセイは、三重反復で行われ、2回繰り返された。
【0128】
一過的及びレトロウイルトランスフェクション。一過的DNAトランスフェクションは、Lipofectamine 2000(Invitrogen)を製造業者の説示に従って用いて行った。0.1μgのMMP−2 cDNA(OpenBiosystems)は、6ウエルディッシュにトランスフェクトされた。
【0129】
siRNA:AXL又をターゲットにするsiRNA配列又は対照は、Dharmaconから購入された。すべてのsiRNAトランスフェクションは、Dharmacon Smart PoolsとDharmafect 1トランスフェクション試薬(コロラド州ラファイエットのDharmacon)を製造業者のプロトコルに従って使用して行った。
【0130】
shRNA:AXL RNAの特異的分解のためのオリゴは、以前に記載された5’−GATTTGGAGAACACACTGA−3’として合成した。スクランブル配列は、非ターゲティングshRNA 5’−AATTGTACTACACAAAAGTAC−3’として使用された。これらのオリゴは、RNAi−Ready pSiren RetroQ(BD Bioscience)ベクターにクローン化され、これらのベクターを用いてSKOV3ip.1、MDA−231及びOVCAR−8細胞がレトロウイルスにより形質導入された。感染細胞は、ピューロマイシン(Sigma)で選択され、ポリクローナル集団は、ウエスタンブロット分析によってデクラーゼAXL発現レベルについて試験された。
【0131】
プラスミド。アミノ酸1−451に対応するAXLエクトドメインは、ヒトAXL cDNA(Open Biosystems)から増幅され、CMV駆動pADD2アデノウイルスシャトルベクターにクローン化された。Lipofectamin 2000(Invitrogen)を製造業者に従って用いて、対照ベクター又はAXL 1−451でのHCT116細胞への一過的DNAトランスフェクションが行われた。トランスフェクションの48−72時間後にならし培地が回収された。
【0132】
接着アッセイ。SKOV3ip.1 shSCRM及びshAXL細胞は、5um CMFDA(Molecular Probes)で蛍光標識された。細胞は洗浄され、非酵素的細胞解離バッファー(Gibco)を使用して剥離された。細胞(5×10e5)は96ウエルプレートにプレーティングされ、50ug/uLのI型コラーゲン(BD Bioscience)でプレコートされた。37℃での60分インキュベーション後、細胞は、注意深く5回洗浄された。蛍光分光光度計を使用して蛍光活性(励起、494nm;発光517nm)が測定された。
【0133】
I型コラーゲンへのSKOV3ip.1接着。SKOV3ip.1 shSCRM及びshAXL細胞は、5um CMFDA(Molecular Probes)で蛍光標識された。細胞は洗浄され、非酵素的細胞解離バッファー(Gibco)を使用して剥離された。細胞(5×10e5)は96ウエルプレートに三重反復でプレーティングされ、50ug/uLのI型コラーゲン(BD Bioscience)でプレコートされた。37℃での60分インキュベーション後、細胞は、注意深く5回洗浄された。蛍光分光光度計を使用して蛍光活性(励起、494nm;発光517nm)が測定された。
【0134】
ECMタンパク質へのMDA−231接着。MDA−231 shSCRM及びshAXL(0.5×10^6)細胞は、ラミニンとコラーゲンI及びIVとフィブロネクチンとフィブリノゲンとを含むECMタンパク質のアレイが入っているウエルに三重反復でプレーティングされた。細胞は37℃で1時間インキュベートされ、PBSで洗浄された。接着細胞は染色され、製造業者のプロトコル(CellBiolabs)に従ってOD560で定量された。
【0135】
遊走アッセイ。細胞遊走は、以前に記載されているようにインビトロで検査された。簡単に言うと、細胞は24時間、血清枯渇され、未コーティングインサート(BD Biosciences)上に三重反復で接種され(2.5×104細胞)、化学誘引物質としてFBSが入っているチャンバに移され、24時間インキュベートされた。非浸潤細胞を除去した後、膜の下側の細胞が固定され、染色され、計数された。それぞれの膜について5視野が計数された。遊走%は、次のように決定された:(shAXL細胞中の遊走する細胞の平均#/shSCRM細胞中の遊走する細胞の平均#)×100。実験は三重反復で行われ、3回繰り返された。
【0136】
コラーゲン浸潤アッセイ。コラーゲン浸潤アッセイは、以前に記載されているように行われた。簡単に言うと、533細胞は、48ウエルプレート上のI型コラーゲンにプレーティングされた。標準培地で又はならし対照培地若しくはsAXL−ならし培地を加えた培地で5−7日間、細胞が培養され、写真が撮られた。コラーゲンを通しての浸潤は、20X視野あたりの枝分かれ表現型を提示する腫瘍細胞の百分率を計算することによって定量された。1試料あたり3視野が計数された。実験は三重反復で行われ、3回繰り返された。
【0137】
ゼラチン基質ザイモグラフィー。SKOV3ip.1 shSCRM及びshAXL細胞は48時間、血清飢餓させられ、25,000細胞が96ウエルプレートにプレーティングされ、24時間後にならし培地が回収された。等体積のならし培地が、還元条件下で10%ザイモグラムゲル(Invitrogen)上を泳動された。電気泳動後、ゲルは、SDSを除去するために2.5%(v/v)Triton X−100中で洗浄され、50mM Tris−HCl、5mM CaCl2及び0.1% Triton X−100(pH7.8)中で洗浄され、一晩、37℃でインキュベートされた。40%メタノール及び10%氷酢酸に溶解された0.25%(w/v)Coomassie Brilliant Blue R250で30分間、ザイモグラムが染色された。ゲルは40%メタノール及び10%氷酢酸で変色させた。実験は三重反復で行われ、3回繰り返された。
【0138】
細胞増殖アッセイ。単層成長曲線のために、細胞(50,000)が60mmディッシュに三重反復でプレーティングされた。3日ごとに、細胞はトリプシン処理され、細胞計数器(Coulter counter)を使用して計数され、50,000細胞が再びプレーティングされ、計数された。
【0139】
XTT生存アッセイ。細胞生存度は、以前に記載されているようにXTTアッセイによって測定された。簡単に言うと、0.3mg/mL XTT及び2.65μg/mL N−メチルジベンゾピラジンメチルスルファートを伴うフェノールレッド不含培地と共に血清供給又は飢餓細胞(0、3、6及び7日)がインキュベートされた。それらの96ウエルプレートは、1から2時間、37℃インキュベーターに戻された。450nmでの吸収を測定することによってXTTの代謝が定量された。
【0140】
タンパク質単離及びウエスタンブロット分析。タンパク質溶解産物は、9M尿素、0.075M Trisバッファー(pH7.6)の中に採収された。タンパク質溶解産物は、ブラッドフォードアッセイを用いて定量され、標準法を用いる還元SDS−PAGEに付された。ウエスタンブロットは、AXLに対する抗体(RnadD Systems)、アルファチューブリンに対する抗体(Fitzgerald Antibodies)、AKTに対する抗体(Cell Signaling)、ホスホ−AKTに対する抗体(Cell Signaling)でプローブされた。
【0141】
GAS6刺激のために、細胞は24時間、血清飢餓させられた。その後、細胞は、400ng/mLのGAS6での15分間の処置の前に4時間、25umのPI3K阻害剤(Ly294002、Bio Mol Research Laboratory)で又はAXLエクトドメインを含有する100Lのならし培地で処置された。
【0142】
マウスの血清中でのsAXL発現の分析のために、各試料からの1.5Lの血清がゲル電気泳動によって分析された。
【0143】
アデノウイルスの産生及び生産。アミノ酸1−451に対応するAXLエクトドメインは、AXL cDNA(Open Biosystems)から増幅され、以前に記載されているような相同組み換え、続いての293細胞におけるアデノウイルス生産及びCsCl勾配精製によってE1−E3−Ad染色5のE1領域にクローン化された。sAXLアデノウイルスの生産及び精製は、以前に記載されているように行われた。マウスIgG2−Fc免疫グロブリン断片を発現する陰性対照ウイルスの産生及び生産は、以前に記載されている。
【0144】
腹膜異種移植片としてのSKOV3ip.1及びOVCAR−8細胞の成長。動物を伴うすべての手順及びそれらのケアは、施設内及びNIHガイドラインに従ってStanford Universityの施設内動物実験委員会(Institutional Amimal Care and Usage Committee)によって承認された。
【0145】
対照及びAXL SKOV3ip.1及びOVCAR−8細胞は、0.5mLのPBS中それぞれ1×106及び5×106細胞で雌ヌードマウスにi.p.注射された。犠牲にした後、腹水が定量され、転移病変が計数され、及び腫瘍重量を計量するためにすべての可視病変が切開され、除去された。
【0146】
SKOV3ip.1及びOVCAR−8親細胞は、0.5mLのPBS中それぞれ1×106及び5×106細胞で雌ヌードマウスにi.p.注射された。腫瘍細胞注射の7(SKOV3ip.1)又は14(OVCAR−8)日後、マウスは、尾静脈に、0.1mL PBS中のsAXL又は対照1.9×108アデノウイルスpfuを注射された。犠牲にした後、腹水が定量され、転移病変が計数され、及び総腫瘍重量を計量するためにすべての可視病変が切開され、除去された。
【0147】
組織毒性研究。SKOV3ip.1親細胞は、0.5mLのPBS中それぞれ1×106及び5×106細胞で雌ヌードマウスにi.p.注射された。腫瘍細胞注射の7日後、マウスは、尾静脈に、0.1mL PBS中のsAXL又は対照1.9×108アデノウイルスpfuを注射された。第28日にマウスは犠牲にされた。血液が採取され、Stanford Universityの比較医学科により、総合的代謝パネル及びCBC分析が行われた。肝臓、腎臓、脳及び脾臓をはじめとするすべての主要器官から組織試料が採取され、10%ホルマリンで固定され、パラフィンに包埋され、切片にされ、ヘマトキシリン及びエオシンで染色された。
【0148】
インビボ尾静脈転移アッセイ。対照及びAXL shRNA MDA−231細胞は、0.1mLのPBS中5×105細胞でヌードマウスの尾静脈に静脈内注射された。注射の4週間後、マウスは犠牲にされた。ヘマトキシリン及びエオシンで染色されたホルマリン固定、パラフィン包埋肺のそれぞれの断面を用いて、肺病巣の顕微鏡評価が行われた。大きな核を有する及びAXL発現について陽性である最低4つのヒト細胞での肺病巣の正確な同定が認定病理専門医によって確認された。全肺から単離されたRNAにおけるヒトGAPDH及びAXL発現の実時間PCR分析により、マウスの肺における腫瘍量が定量された。
【0149】
同所性腫瘍としてのMDA−231の成長。MDA−231細胞は、0.1mLのPBS中の107細胞の乳房脂肪体への皮内注射後の週齢6週雌ヌード(nu/nu)マウスにおいて、皮下同所性腫瘍として成長された。腫瘍は、38日の時間経過にわたってキャリパで測定された。容積は、次の式を用いて計算された:幅2×長さ×0.5。
【0150】
皮下腫瘍としてのSKOV3ip.1細胞の成長。0.1mLのPBS中の500万個の細胞が週齢6週雌ヌード(nu/nu)マウスの側腹部に皮下内植された。腫瘍は、45日の時間経過にわたってキャリパで測定された。容積は、次の式を用いて計算された:幅2×長さ×0.5。
【0151】
RNA及び実時間PCR分析。RNAは、トリゾールを製造業者のプロトコル(Invitrogen)に従って使用して、細胞及び組織から単離された。cDNAは、逆転写PCR用のSuperScriptファーストストランド合成システム(Invitrogen)を使用して、2μgのDNアーゼ(Invitrogen)処理RNAから合成された。SYBR GREEN PCR Master Mix(Applied Biosystems)を使用するPCR増幅に1マイクロリットルのcDNAが付された。特異的ターゲット遺伝子を増幅するために、次のプライマーセットが使用された:18S FWD:5−GCCCGAAGCGTTTACTTTGA−3 REV:5−TCCATTATTCCTAGCTGCGGTATC−3;AXL FWD:5−GTGGGCAACCCAGGGAATATC−3 REV:5−GTACTGTCCCGTGTCGGAAAG;GAPDH 5−ATGGGGAAGGTGAAGGTCG−3 REV:5−GGGGTCATTGATGGCAACAATA−3;MMP−2 FWD:5−GCCCCAGACAGGTGATCTTG−3 REV 5−GCTTGCGAGGGAAGAAGTTGT−3。PCR増幅は、Prism 7900 Sequence Detection System(Applied Biosystems)で行われた。用いた熱サイクリングプロフィールは、50℃で2分間及び95℃で10分間の変性、続いて95℃で15秒間及び60℃で1分間の変性サイクルであった。mRNAを正規化するために18Sが使用された。相対mRNA発現レベルは、相対標準曲線法を製造業者の説示(Applied Biosystems)に従って用いて決定された。
【0152】
統計解析。AXL発現と腫瘍形成及び転移との関連性についての検定は、フィッシャーの正確確率検定を用いて行われた。すべての他の統計検定は、スチューデントt検定を用いて行われた。<0.05のp値を有する値は、統計的に有意と見なされた。
【0153】
略記:GAS6、成長阻止特異的遺伝子6;MMP−2、マトリックスメタロプロテイナーゼ;EOC、上皮性卵巣癌;ECM、細胞外マトリックス;AKT、v−aktマウス胸腺腫ウイルス癌遺伝子ホモログ。
【0154】
表1.腫瘍パラメータに対するAXL染色の統計解析
【表1】
【実施例2】
【0155】
本発明者らは、アデノウイルス発現系を使用するマウスにおける野生型可溶性AXLの過発現による細胞AXLへのGAS6リガンド結合の阻害が、腫瘍数及びサイズによって測定して、未処置対照と比較して腫瘍量を減少させる結果となることを証明した。これは、前臨床マウスモデルにおいて転移の進行を阻害するための肝要なターゲット及び有効な戦略としてのGAS6及びAXLの重要性をさらに強調する。
【0156】
リガンドGAS6に対して高い親和性を有し、それによりそのリガンドを封鎖して内因性AXLシグナル伝達を減少させることが出来る、AXL細胞外ドメインの遺伝子操作可溶性変異体がここでは提供される。遺伝子操作変異体は、Gas6に対して、野生型AXLと比較して実質的に向上された親和性を有する。
【0157】
AXLの細胞外ドメインは、2つのIgG様ドメイン及び2つのフィブロネクチン様ドメインを含む。主要GAS6結合部位はIg1ドメイン内にあり、副次的GAS6結合部位はIg2ドメイン内にある。
【0158】
主要結合部位の親和性をさらに強化するために、本発明者らは、AXL SwissPortエントリーP30530に対応する19−132の切断点を有するIg1ドメインを遺伝子工学で作製した。標準的な分子生物学技術を用いてAXL受容体のIg1ドメインのエラープローンPCRを行うことにより、突然変異体ライブラリーが作られた。酵母表層提示を用いてそのライブラリーが発現され、可溶性GAS6への強化された結合親和性を呈示する突然変異体を単離するために蛍光活性化細胞ソーティング(FACS)によってスクリーニングされた。本発明者らのライブラリー・スクリーニング・アプローチにおいて、突然変異体タンパク質ライブラリーは、それぞれの逐次的ラウンドがそのライブラリーのサイズを低減すると同時に、この場合はGAS6への高い親和性である、所望の突然変異体タンパク質特性を富化する、多数のソーティングラウンドに付された。
【0159】
GAS6に対して有意に強い親和性を有するAXL突然変異体を得るために、後のソーティングラウンドにおいて、本発明者らは、「オフ速度」ソートを用いた。オフ速度ソートのために、タンパク質突然変異体のライブラリーは、先ず、可溶性GAS6と共にインキュベートされ、その後、その溶液から未結合GAS6を除去するためにバッファーで洗浄される。次に、その突然変異体ライブラリーは、室温で2、4、6、12又は24時間、過剰な可溶性競合物質の存在下でインキュベートされる。この過剰な競合物質は、解結合段階を不可逆的にさせる、酵母提示AXLから解離するGAS6の封鎖に役立つ。GAS6への結合を保持する突然変異体AXLタンパク質は、FACSを使用して回収される。0、4及び6時間のオフ速度段階後のプールされたソート5産物によるGAS6への結合の分析は、これらの産物がGAS6への持続的結合の点で、野生型AXLに比べて有意な向上を呈示することを示す(図12参照)。棒グラフは、ドットプロットからのデータを定量するものであり、ライブラリーメンバーの有意な向上を明示している。これらの産物のシークエンシングは、プールされたソート5産物について観察されるGas6に対する向上した親和性を付与するAxl Ig1ドメイン内の幾つかの突然変異を同定した(図12及び表2)。第6ソーティングラウンドは、ソート5産物からの3つの特異的クローンをさらに富化した。表2は、ソートラウンド5及びラウンド6産物に含有されるAXL配列内のユニークなアミノ酸突然変異を示す。この表において、一番上の行の残基番号は、野生型AXL中のアミノ酸残基を示す。二番目の行は、野生型AXLの所与の位置で見出される残基を示す。後続の行には、所与の突然変異体に存在するアミノ酸突然変異が指定されている。突然変異体内の特定残基についてのアミノ酸の不在(例えば、表2中の空白スペース又は空白セル)は、このアミノ酸残基が野生型残基から突然変異されないことを意味する。当業者によく理解されているようにアミノ酸残基についての標準的な一文字記号が用いられている。
【0160】
明らかにされるのは、ソート5及び6産物からのユニークな配列、並びに野生型AXLと比較してプールされたソート5産物についてのGAS6結合の相当な向上を明示するプールされたクローンの特性である。
【0161】
この定方向進化アプローチを用いて単離される突然変異体は、表3に示すアミノ酸置換を備えている。
【0162】
表3.定方向進化を用いて単離された突然変異体
【表2】
【0163】
Sasaki et al.(EMBO J 2006)によって報告されたGAS6−AXL複合体の結晶構造によると、E26G、G32S、N33S及びG127R/Eを除いて、上に示したすべての突然変異は、AXLとGAS6の間の結合界面に存する。
【0164】
第6ソーティングラウンドからの個々の突然変異体、AXL S6−1及びAXL S6−2、は、さらなる調査のために選択された。野生型又は突然変異体AXLタンパク質のGAS6との相互作用の親和性を比較するために、野生型AXL、AXL S6−1及びAXL S6−2の平衡結合滴定が行われた。データは4点S字状曲線に当てはめられ、中点が平衡結合定数、KD、として使われた。突然変異体AXL S6−1及びAXL S6−2は、野生型AXLと比較して、GAS6結合親和性の実質的な向上を提示する(図13及び表4)。野生型AXLは、Gas6に対して2.4±1.2×10−9Mの結合親和性(KD)を有し;AXL S6−2は、Gas6に対して1.89±0.37×10−10Mの結合親和性(KD)を有し;及びAXL S6−1は、Gas6に対して1.12±0.23×10−10Mの結合親和性(KD)を有する。AXL S6−1及びAXL S6−2について、これは、野生型AXLと比較して、それぞれ22倍及び12.8倍強いGAS6結合親和性である(表4)。
【0165】
表4.Gas6への野生型及び突然変異体AXLタンパク質の結合親和性(KD)
【表3】
【0166】
本発明者らは、可変温度円偏光二色性スキャンを用いて野生型及び突然変異体AXLタンパク質の温度安定性も調査した。この技術は、フォールディングされたタンパク質の二次構造要素のアンフォールディングを温度の関数としてモニターする。各タンパク質の楕円率が温度の関数としてモニターされ、そのデータが標準的な二状態アンフォールディング曲線に当てはめられた。融解温度(Tm)がこのアンフォールディング曲線の中点である。野生型AXLは、41.3±0.6℃の融解温度を呈示し;AXL S6−1は、54.0±0.9℃の融解温度(野生型AXLよりおおよそ13℃高い熱安定性)を呈示し;Axl S6−2は、41.55±0.02℃の融解温度(野生型AXLとほぼ同様の熱安定性)を呈示した(表5)。
【0167】
表5.可変温度円偏光二色性スキャンによって判定された野生型及び突然変異体AXLタンパク質の熱安定性。
【表4】
【0168】
【表5】
【実施例3】
【0169】
可溶性Axl変異体は転移性腫瘍進行をインビボで阻害する
GAS6−AXLシグナル伝達は、乳癌、肺癌及び結腸癌並びに最近では、ここに提示するワークにより、卵巣癌を含む、多くの侵攻性形態の充実性腫瘍の進行に結びつけられている。AXL発現と疾病状態及び患者予後との間に明確な相関関係が観察されているが、転移の処置のための治療ターゲットとしてのAXLの確証は、ほぼ手つかずのままである。実施例1において、本発明者らは、原発性腫瘍でのAXL発現レベルが疾患の重症度と相関することで、AXLが現実にヒト乳及び卵巣癌患者における転移のマーカーであることを証明する。これらの結果は、GAS6−AXLシグナル伝達経路の拮抗が転移性疾患の処置のための治療の窓口を提供出来ることを示唆している。実施例1に概要を示したように、治療ターゲットしてのAXLの可能性を確証するために、ヒト卵巣癌の侵攻性マウスモデルにおけるアデノウイルス送達を用いてAXLの野生型細胞外ドメインの可溶性形態が投与された。本発明者らは、腫瘍転移が、対照と比較して可溶性AXL処置を受けたマウスにおいて有意に低減されることを証明した。これらのデータは、可溶性AXLを使用する腫瘍細胞におけるGAS6−AXLシグナル伝達の拮抗が疾患の転移性進行を阻害出来ることを実証した。これらの結果を基に事を進めて、本発明者らは、GAS6へのより高い親和性を有する、遺伝子操作AXL突然変異体が、抗転移剤としてより大きな効力を惹起すること、及び可溶性AXLの送達の治療的により妥当な様式が有意な結果をなおもたらすことを証明した。
【0170】
この研究において、本発明者らは、実験1において概要を示した同じヒト卵巣癌モデルを使用し、転移性疾患が既に存在するマウスに精製可溶性AXL(sAXL)変異体を腹膜内投与した。本発明者らは、野生型AXLとAXL S6−1、遺伝子操作高親和性突然変異体、の両方を試験し、両方を、GAS6結合が完全に破壊される形態のAXL、E59R/T77R、と比較した。すべての転移性病変の数及び総重量の両方によって評定して腫瘍量の低減が野生型AXLとAXL E59R/T77Rの陰性対照の両方に比べて有意に低減されたので、本発明者らの結果は、AXL S6−1の強化された親和性が、より大きな治療効力を生じさせる結果となることを著しく示している。これらの発見は、転移の阻害のための治療ターゲットとしてAXL及びGAS6をさらに確証し、並びに遺伝子操作高親和性AXL突然変異体S6−1をGAS6−AXLシグナル伝達系の強力なアンタゴニストとして支持する。
【0171】
実施例1は、sAXLのアデノウイルス送達が治療効力をもたらしたことを実証しているが、この送達方法は臨床的に妥当でないため、本発明者らは、精製されたsAXLの送達が同様の結果をもたらすことを確認した。薬物動態を向上させるために野生型AXL、AXL S6−1及びAXL E59R/T77RがマウスIgG2aの結晶性断片領域(Fc)に融合された。これら3つのAXL融合(AXL−Fc)変異体の唯一の差は、表6Aに概要が示されている、AXL Ig1ドメインにおいて見いだされる突然変異である。AXL−Fcタンパク質をコードするDNAは、EcoRI及びSall制限部位を使用してCMV駆動pADD2アデノウイルスシャトルベクターにクローン化された。Life TechnologiesからのFreestyle Expressionキットを製造業者により説明されたとおりに使用して、これら3つのAXL突然変異体をコードするpADD2プラスミドがHEK293細胞に独立してトランスフェクトされた。プロテインAアフィニティークロマトグラフィー、続いてサイズ排除クロマトグラフィーを用いて、培養上清からタンパク質が精製された。
【0172】
【表6】
【0173】
インビボで転移を阻害するAXL−Fc突然変異体の能力を評定するために、本発明者らは、実施例1に概要を示したのと同じヒト卵巣癌の腹膜異種移植片モデルを使用した。マウスがSKOV3ip.1細胞の投与後4週間に腹水及び多く(>100)の小さな転移性病変から成る高浸潤性疾患を急速に発生させるので、このモデルはヒト卵巣癌転移の腹膜播種を再現する。殆どの患者が診断時に有意な転移性疾患を提示するので、このモデルはヒト卵巣癌の非常に正確な代表である。マウスはSKOV3ip.1細胞を注射され、播種のために7日間、腫瘍が放置された。第7日に本発明者らはマウスを3つの研究群に分け、野生型AXL−Fc、S6−1−Fc又はE59R/T77R−Fcのいずれかの処置の投与を始めた。リン酸緩衝食塩水に溶解された精製タンパク質が10mg/kgの用量で3週間にわたって週に2回、合計6回、マウスに投与された。可視転移性病変数並びにすべての病変の総重量によって測定して全腫瘍量を評定するために、第28日にすべてのマウスが犠牲にされ、剖検が行われた。処置群間に顕著な差があった。代表画像が図14に示されている。E59R/T77R−Fcの陰性対照処置を受けたマウスは、平均86.3±21.9の腹膜転移を有した。野生型AXL−Fcを受けたマウスについては、その数は48.1±6.9に低減されたが、遺伝子操作AXL群、S6−1−Fc、のマウスについては、平均で8.3±1.6の転移性病変しか観察されなかった(図15(上のパネル))。すべての可視病変が切除され、全転移性腫瘍量を評定するためにマウスごとにまとめて計量された。E59R/T77R−Fc、野生型Fc及びS6−1−Fc処置群は、それぞれ567±92、430±36及び188±55mgの腫瘍量を呈示したので、遺伝子操作AXL処置群(S6−1−Fc)は、また、最も顕著な応答を示した、図15(下のパネル)。
【0174】
まとめると、これらの発見は、転移の処置のための治療ターゲットとしてAXLをさらに確証し、AXLのリガンド、GAS6、の中和が有効な抗転移処置戦略であることを実証する。重要なこととして、Gas6への検出可能な結合を提示しないAXL−Fc融合体(AXL E59R/T77R−Fc)を含むタンパク質は、腫瘍転移を予防せず;Gas6に中等度の親和性で結合するAXL−Fc融合体(野生型AXL−Fc)を含むタンパク質は、腫瘍転移のわずかな阻害を示し;Gas6への非常に強い親和性を有するAXL−Fc融合体(AXL S6−1−Fc)を含むタンパク質は、腫瘍転移の有意な阻害を示す。まとめると、これは、Gas6とAXLについての相互作用のエピトープが腫瘍転移に肝要であり、AXL S6−1−Fcタンパク質によるGas6上のこのエピトープの強力な阻害が腫瘍転移を有意に阻害することを示す。従って、AXL S6−1−Fcタンパク質、又はGas6−Axl相互作用を強力に遮断する任意のタンパク質が、転移性疾患のための有望な治療候補である。加えて、本発明者らは、精製可溶性AXLタンパク質の直接投与が実行可能な処置法であることも実証し、このアプローチを臨床的に確証する。
実施例3についての方法
【0175】
細胞系。卵巣SKOV3ip.1は、10%ウシ胎仔血清と1%ペニシリンとストレプトマイシンとを補足した適切な培地中37℃で5%CO2インキュベーターにおいて培養された。
【0176】
AXL−Fc融合体。完全長AXL突然変異体、アミノ酸19−440、は、マウスIgG2a Fc領域への直接融合体としてCMV駆動pADD2アデノウイルスシャトルベクターにクローン化された。ヒト胎児腎(HEK)293細胞の一過的DNAトランスフェクションは、Life TechnologiesからのFreestyle Expressionキットを製造業者によって説明されたとおりに使用して遂行された。プロテインAアフィニティークロマトグラフィー、続いてサイズ排除クロマトグラフィーを用いて、5日後に培養上清からFc−融合タンパク質が精製された。精製タンパク質は、追加の添加剤又は担体を伴わないリン酸緩衝食塩溶液に入れられた。
【0177】
SKOV3ip.1腹膜異種移植。動物を伴うすべての手順及びそれらのケアは、施設内及びNIHガイドラインに従ってStanford Universityの施設内動物実験委員会によって承認された。週齢6週雌ヌードマウスは、1×106 SKOV3ip.1細胞を腹膜内注射された。細胞投与の7日後、マウスは、S6−1−Fc、野生型AXL−Fc又はE59R/T77R−Fcでの処置のために3群にランダムに分割された。精製可溶性AXL−Fcタンパク質が10mg/kgの投薬量で週2回、腹膜内注射によって投与された。投薬は3週間継続され、その後、マウスは犠牲にされた。剖検が行われ、転移性病変が計数され、その後、まとめて計量されるように切除された。マウスごとに全病変数とすべての疾患組織の総重量の両方によって腫瘍量が決定された。
【0178】
統計解析:スチューデントt検定が用いられ、報告される誤差は平均値の標準誤差(SEM)である。<0.01のp値を有する値は有意と見なされた。
【0179】
上述の発明は、理解の明瞭さを目的として例証及び例によって多少詳細に説明されているが、添付の請求項の精神又は範囲から逸脱することなく一定の変更及び修飾が本発明に行われ得ることは、本発明の教示に照らして当業者には容易に分かるであろう。
【技術分野】
【0001】
本発明は、2010年1月22日に出願された米国特許仮出願第61/336,478号の優先権を主張するものであり、この仮出願の内容は参照により明確に組み込まれる。
本発明は、腫瘍浸潤及び転移、例えば、AXL及び/又はGAS6に関連した経路による腫瘍浸潤又は転移の処置又は診断、に関する。
発明の分野
【背景技術】
【0002】
浸潤及び転移は、癌における最も潜行性で生命を脅かす態様である。浸潤が最小の又は浸潤が無い腫瘍はうまく除去されることもあるが、その新生物が浸潤性になると、それはリンパ管及び/又は脈管によって多数の部位に広まることが出来、完全除去は非常に困難になる。浸潤及び転移は、局所浸潤と遠隔器官コロニー形成及び損傷という2つのプロセスによって宿主を殺す。局所浸潤は、関与する組織の機能を正常な器官機能の局所圧迫、局所破壊又は妨害によって損なわせるだろう。しかし、癌における最も有意な転換点は、遠隔転移の確立である。この時点ではもはや局所療法だけで患者が治癒されることはあり得ない。
【0003】
転移のプロセスは、多数の宿主−腫瘍相互作用を伴うリンクした逐次的段階のカスケードである。この複雑なプロセスは、細胞を血管又はリンパ循環に侵入させ、遠隔血管又はリンパ床で停止させ、器官間質及び実質に活発に管外遊出させ、第二のコロニーとして増殖させる。転移の可能性は、局所微小環境に、血管新生に、ストローマ−腫瘍相互作用に、局所組織によるサイトカインの生成に、並びに腫瘍及び宿主細胞の分子表現型に影響される。
【0004】
遠位播種が顕性でない場合がある又はまだ始まっていない場合があるにもかかわらず、局所微小浸潤が早々に起こることがある。腫瘍細胞は、原位置から浸潤性癌腫への移行中に上皮基底膜を透過して下にある間質ストローマに侵入する。下にあるストローマに浸潤すると、腫瘍細胞は、マトリックス断片及び成長因子を放出しながら、遠位播種のためにリンパ管及び血管に再び進入する。良性癌腫から浸潤性癌腫への移行中に上皮基底膜の構成、分布及び量の全般的な且つ広範にわたる変化が起こる。
【0005】
癌予防及び処置の治療努力は、シグナル伝達経路又は選択変調タンパク質のレベルに集中されている。プロテインキナーゼ活性、カルシウム恒常性、及びオンコプロテイン活性化は駆動シグナルであり、従って、治療的介入のための基本的な調節部位であり得る。浸潤及び血管新生を調節するシグナル伝達経路におけるキナーゼは、転移の重要な調節因子であり得る。生化学的分子ターゲットの最大クラスの1つは、受容体チロシンキナーゼ(RTKs)のファミリーである。現在までのところ最も一般的な受容体チロシンキナーゼ分子ターゲットは、EGF及び血管内皮成長因子(VEGF)受容体である。より新しいキナーゼ分子ターゲットとしては、c−kitのIII型RTKファミリー、及びablが挙げられる。これらの分子の阻害剤は、古典的化学療法と併用で投与されている。
【0006】
転移は、最終的には癌からの苦痛及び死亡率の多くについての原因である。転移性癌細胞を識別する分子及び機能性マーカーを同定する及びターゲットにする必要があり、並びにそれらの特異的阻害のための試薬を作り出す必要がある。
【0007】
この分野に関する出版物としては、とりわけ、Li et al.Oncogene.(2009)28(39):3442−55;Ullrich et al.による米国特許出願第20050186571号;Bearss et al.による米国特許出願第20080293733号;Sun et al.Oncology.2004;66(6):450−7;Gustafsson et al.Clin Cancer Res.(2009)15(14):4742−9;Wimmel et al.Eur J Cancer.2001 37(17):2264−74;Koorstra et al.Cancer Biol Ther.2009 8(7):618−26;Tai et al.Oncogene.(2008)27(29):4044−55が挙げられる。
【0008】
受容体チロシンキナーゼAXL(Ufo及びTyro7としても公知)は、Tyro3(Sky)及びMer(Tyro12)を包含するチロシン受容体のファミリーに属する。AXLファミリーの共通のリガンドは、GAS6(成長停止特異的タンパク質6)である。ヒトAXLは、894アミノ酸ポリペプチドの合成を命令することが出来る2,682bpオープン・リーディング・フレームである。2つの変異体mRNAが特性付けされており、転写産物変異体1は、Genbank、NM_021913.3で入手され得、及び転写産物変異体2は、NM_001699.4で入手され得る。その天然タンパク質のポリペプチド配列は、配列番号:1として提供され、及びアミノ酸修飾に関してその配列を特に参照することが出来る。GAS6/AXLの重要な細胞機能としては、細胞接着、遊走、食作用、及びアポトーシス阻害が挙げられる。GAS6及びAXLファミリー受容体は、組織及び疾患特異的様式で高度に調節される。
【0009】
AXLは、細胞内領域が受容体チロシンキナーゼの典型的構造を有し、及び細胞外ドメインがカドヘリン型接着分子に類似したフィブロネクチンIII及びIgモチーフを含有する点で、ユニークな分子構造を特徴とする。発達中に、AXLは、脳をはじめとする様々な器官で発現され、このことは、このRTKが間葉及び神経発達に関与することを示唆している。成体でのAXL発現は低いが、様々な腫瘍において高い発現レベルに転ずる。これまでのところ、GAS6はAXLについてのたった1つの活性化リガンドである。
【0010】
受容体チロシンキナーゼ(RTK)は、受容体二量体化を促進する及びその結果としてサイトゾルドメイン内のチロシン残基の自己リン酸化を促進するリガンドによって、一般に活性化される。その後、これらのリン酸化されたチロシン残基へのシグナル伝達タンパク質の結合が下流のシグナル伝達をもたらす。AXLファミリーRTKは、典型的な成長因子ではなく血液凝固因子に似ているビタミンK依存性タンパク質ファミリーのメンバーであるGAS6によって活性化される点でユニークである。
【発明の概要】
【0011】
本発明は、1つには、AXL及び/又はGAS6関連経路が腫瘍浸潤及び/又は転移に関連づけられるという発見に基づく。従って、本発明は、例えばALX及び/又はGAS6関連経路の阻害による、腫瘍浸潤及び/又は転移の処置に有用な、組成物及び/又は方法を提供する。加えて、本発明は、例えばALX及び/又はGAS6の活性のレベルを検出することによる、腫瘍の浸潤性及び/若しくは転移性になりやすさ又は浸潤性及び/若しくは転移性になる尤度の判定に有用な、試薬及び方法を提供する。
【0012】
1つの実施形態において、本発明は、可溶性AXL変異体ポリペプチドを提供し、前記ポリペプチドは、AXL膜貫通ドメイン及び場合により細胞内ドメインを欠き、並びに野生型AXL配列と比べて少なくとも1つのアミノ酸修飾を含み、並びに前記変更は、GAS6へのAXLポリペプチド結合の親和性を増加させる。一部の実施形態において、前記可溶性AXL変異体ポリペプチドは、野生型AXL配列(配列番号:1)の1)15−50間、2)60−120間、及び3)125−135間から成る群より選択される領域内に少なくとも1つのアミノ酸修飾を含む。一部の他の実施形態において、前記可溶性AXL変異体ポリペプチドは、野生型AXL配列(配列番号:1)の位置19、23、26、27、32、33、38、44、61、65、72、74、78、79、86、87、88、90、92、97、98、105、109、112、113、116、118、127若しくは129又はそれらの組み合わせにおける少なくとも1つのアミノ酸修飾を含む。一部の他の実施形態において、前記可溶性AXL変異体ポリペプチドは、1)A19T、2)T23M、3)E26G、4)E27G又はE27K、5)G32S、6)N33S、7)T38I、8)T44A、9)H61Y、10)D65N、11)A72V、12)S74N、13)Q78E、14)V79M、15)Q86R、16)D87G、17)D88N、18)I90M又はI90V、19)V92A、V92G又はV92D、20)I97R、21)T98A又はT98P、22)T105M、23)Q109R、24)V112A、25)F113L、26)H116R、27)T118A、28)G127R又はG127E及び29)E129K並びにそれらの組み合わせ及び保存的等価物から成る群より選択される少なくとも1つのアミノ酸修飾を含む。
【0013】
さらに一部の他の実施形態において、前記可溶性AXL変異体ポリペプチドは、野生型AXL配列(配列番号:1)と比べて次の位置におけるアミノ酸変更を含む:(a)グリシン32;(b)アスパラギン酸87;(c)バリン92;及び(d)グリシン127。さらに一部の他の実施形態において、前記可溶性AXL変異体ポリペプチドは、セリン残基で置換されているグリシン32残基、グリシン残基で置換されているアスパラギン酸残基87、アラニン残基で置換されているバリン92残基、若しくはアルギニン残基で置換されているグリシン127残基、又はそれらの組み合わせ若しくは保存的等価物を含有する。なお一部の他の実施形態において、前記可溶性AXL変異体ポリペプチドは、野生型AXL配列(配列番号:1)と比べて次の位置におけるアミノ酸変更を含む:(a)グルタミン酸26;(b)バリン79;(c)バリン92;及び(d)グリシン127。なお一部の他の実施形態において、前記可溶性AXL変異体ポリペプチドは、グリシン残基で置換されているグルタミン酸26残基、メチオニン残基で置換されているバリン79残基、アラニン残基で置換されているバリン92残基、若しくはグルタミン酸残基で置換されているグリシン127残基、又はそれらの組み合わせ若しくは保存的等価物を含有する。
【0014】
なおさらに一部の他の実施形態において、前記可溶性AXL変異体ポリペプチドは、野生型AXLポリペプチド(配列番号:1)の少なくともアミノ酸残基1−437、19−437、130−437、19−132、1−132を含む。なおさらに一部の他の実施形態において、前記可溶性AXL変異体ポリペプチドは、Fcドメインを含む融合タンパク質である。
【0015】
1つの実施形態において、前記可溶性AXL変異体ポリペプチドは、GAS6に対して少なくとも約1×10−5Mの親和性を有する。もう1つの実施形態において、前記可溶性AXL変異体ポリペプチドは、GAS6に対して、少なくとも約1×10−6Mの親和性を有する。さらにもう1つの実施形態において、前記可溶性AXL変異体ポリペプチドは、GAS6に対して少なくとも約1×10−7Mの親和性を有する。さらにもう1つの実施形態において、前記可溶性AXL変異体ポリペプチドは、GAS6に対して少なくとも約1×10−8Mの親和性を有する。さらにもう1つの実施形態において、前記可溶性AXL変異体ポリペプチドは、GAS6に対して少なくとも約1×10−9M、1×10−10M、1×10−11M、又は1×10−12Mの親和性を有する。本明細書に記載する様々な実施形態において、前記可溶性AXL変異体ポリペプチドは、野生型AXLポリペプチドの親和性より少なくとも約2倍強い、GAS6への親和性を呈示する。一部の実施形態において、前記可溶性AXL変異体ポリペプチドは、野生型AXLポリペプチドの親和性より少なくとも約3倍、4倍、5倍、10倍、15倍、20倍、25倍、又は30倍強い、GAS6への親和性を呈示する。
【0016】
もう1つの実施形態において、本発明は、GAS6タンパク質(配列番号:2)に特異的に結合する、単離された抗体又はそれらの断片を提供する。一部の実施形態において、前記単離された抗体及びその断片は、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体(ScFv)、又はそれらの組み合わせである。一部の他の実施形態において、前記単離された抗体又はその断片は、R299−T317、V364−P372、R389−N396、D398−A406、E413−H429及びW450−M468から成る群より選択されるGAS6の1つ以上のアミノ酸領域に含まれるエピトープに結合する。さらに一部の他の実施形態において、前記単離された抗体又はその断片は、RMFSGTPVIRLRFKRLQPT(配列番号:3)、VGRVTSSGP(配列番号:4)、RNLVIKVN(配列番号:5)、DAVMKIAVA(配列番号:6)、ERGLYHLNLTVGGIPFH(配列番号:7)及びWLNGEDTTIQETVKVNTRM(配列番号:8)から成る群より選択されるアミノ酸領域に含まれるエピトープに結合する。
【0017】
さらにもう1つの実施形態において、本発明は、哺乳動物患者における腫瘍の転移又は浸潤を処置する、低減する又は予防する方法を提供する。1つの実施形態において、前記方法は、前記患者に有効用量の可溶性AXL変異体ポリペプチド又は単離された抗GAS6抗体若しくはその断片を投与することを含む。
【0018】
さらにもう1つの実施形態において、本発明は、哺乳動物患者における腫瘍の転移又は浸潤を処置する、低減する又は予防する方法を提供する。1つの実施形態において、前記方法は、(a)AXL活性の阻害剤(b)GAS6活性の阻害剤;及び(c)AXL−GAS6相互作用の阻害剤から成る群より選択される1つ以上の阻害剤を投与することを含む。本明細書に記載する様々な実施形態において、前記阻害剤は、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、小分子、抗体、抗体断片、又は抗体薬物コンジュゲートである。
【0019】
なおさらにもう1つの実施形態において、本発明は、被験体において転移又は浸潤を被る腫瘍の能力を判定する方法を提供する。1つの実施形態において、前記方法は、腫瘍を有する被験体からの生体試料におけるAXL活性及び/又はGAS6活性のレベルを検出すること;及び前記生体試料におけるAXL及び/又はGAS6活性のレベルを所定レベルと比較することを含み、前記所定レベルに比しての増加は、腫瘍の浸潤又は転移素質を示す。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】AXL発現は、ヒト乳及び卵巣癌における腫瘍進行及び転移と相関する。A.正常乳房組織(正常)、原発性浸潤性乳管癌腫(悪性度1、2及び3)及びリンパ節転移(リンパ節)におけるAXL免疫組織化学的染色の代表画像。高レベルの膜AXL染色が悪性度2(矢印)、悪性度3、及びリンパ節転移に存在することに注目すること。正常又は腫瘍ストローマ(*)においてAXL染色は観察されなかった。B.正常卵巣上皮(矢印)、漿液性腺癌を有する患者に由来する病期II、病期III及び網転移におけるAXL免疫組織化学的染色の代表画像。正常及び腫瘍ストローマがAXL染色について陰性であったこと(*)に注目すること。
【図2】AXLの遺伝子不活性化は、乳房及び卵巣転移の阻止に十分である。A.shスクランブル(shSCRM)及びshAXL(shAXL)MDA−231細胞を尾静脈注射されたマウスの肺におけるH&E及びAXL免疫組織化学的染色。写真は、1群あたり5匹のマウスの代表である。グラフは、shSCRM又はshAXL MDA−231細胞を注射されたマウス(n=5)からの全肺におけるヒトGASPDH及びAXL発現の実時間PCR分析を図示するものである。B.shスクランブル(shSCRM)及びshAXL(shAXL)SKOV3ip.1細胞注射の28日後に撮影されたマウスの写真。shSCRMを注射されたマウスが腹腔全体に非常に多くの転移(丸で囲まれている)を発生させたことに注目すること。shAXL群については、最大腫瘍量を有するマウスが示される。右側のグラフは、5mmより大きいサイズの腹膜転移のマウス1匹あたりの平均数、及び最大腫瘍の平均重量を図示するものである。写真は、1群あたり5匹のマウスの代表である。C.shSCRM及びshAXL OVCAR−8細胞注射の34日後に撮影されたマウスの写真。shSCRM注射マウスが、腹腔全体に非常に多くの転移(丸で囲まれている)を発生させたことに注目すること。右側のグラフは、腹膜転移のマウス1匹あたりの平均数、及び平均総腫瘍重量を図示するものである。写真は、1群あたり8匹のマウスの代表である。
【図3】AXLの遺伝子不活性化は、インビトロでの乳房若しくは卵巣腫瘍細胞増殖及びインビボでの成長に影響を及ぼさない。A.スクランブル対照(shSCRM)又はAXL(shAXL)に対するshRNAターゲティング配列を安定的に発現するMDA−231、SKOV3ip.1、及びOVCAR−8細胞についての細胞成長曲線。測定は、三重反復で行われた。エラーバーは、S.E.M.を表す。B.48日の時間経過にわたって成長させた同所性MDA−231(1群あたりマウスn=8)及び皮下SKOV3ip.1腫瘍(1群あたりn=4マウス)の平均腫瘍容積。エラーバーは、S.E.M.を表す。
【図4】AXLは、インビトロで卵巣及び乳房腫瘍細胞浸潤を調節する。A.対照(shSCRM)及びAXL欠損(shAXL)MDA−231、SKOV3ip.1及びOVCAR−8細胞のコラーゲン浸潤アッセイ。写真は、1群あたり3試料の代表であり、コラーゲンへの細胞のプレーティングの7日後に撮影された。AXL欠損細胞(丸い)と比較してAXL野生型細胞において観察された浸潤性表現型(枝分かれ)に注目すること。グラフは、コラーゲン浸潤アッセイの定量化を示す。B.shAXL及びshSCRM SKOV3ip.1細胞におけるMMP−2発現の実時間PCR分析。発現値は、18Sに正規化された;n=3。エラーバーは、S.E.M.を表す。アスタリスクは、スチューデントt検定によって判定してshSCRMと比較した発現の有意な増加又は減少を示す(**、P<0.001)。C.shSCRM又はshAXL SKOV3ip.1細胞(n=6)のMMP−2レポーターアッセイ。D.血清飢餓SKOV3ip.1細胞から回収されたならし培地におけるプロ−及び活性−MMP2活性についてのゼラチン・ザイモグラフィー・アッセイ。E.スクランブル対照(shSCRM)又はAXL(shAXL)をターゲットにするshRNA配列を発現するSKOV3ip.1細胞及びGAS6で又はPI3KK阻害剤Ly294002とGAS6で処置された飢餓SKOV3ip細胞(strve)における、Ser473でのホスホ−AKT(P−AKT)、全AKT(AKT)及びAXL発現のウエスタンブロット分析。F.GAS6で又はGAS6とPI3K阻害剤Ly294002(Ly+GAS6)で処置された飢餓SKOV3ip細胞(strve)におけるMMP−2レポーターアッセイ。
【図5】可溶性AXLエクトドメイン療法は、インビトロでAXLシグナル伝達及び浸潤を阻害する。A.可溶性AXL療法についてのメカニズムの略図。可溶性AXL(sAXL)は、内因性AXLシグナル伝達を阻害するためのおとり受容体として機能する。B.スクランブル対照(shSCRM)又はAXL(shAXL)をターゲットにするshRNA配列を発現するMDA231、SKOV3ip.1及びOVCAR−8細胞、並びにGAS6で又はPI3K阻害剤Ly294002(Ly)とGAS6で処置された飢餓SKOV3ip.1細胞(strve)における、Ser473でのホスホ−AKT(P−AKT)、全AKT(AKT)及びAXL発現のウエスタンブロット分析。C.可溶性AXL受容体(sAXL)を含有するならし培地又は対照培地(−)で処置された細胞におけるホスホ−AKT Ser473発現のウエスタンブロット分析。すべての細胞は、48時間、飢餓させられ、GAS6(+)又はビヒクル(−)で処置された。D.対照ベクター又はsAXLを含有するならし培地で処置されたMDA−231細胞におけるコラーゲン浸潤アッセイ。
【図6】可溶性AXL受容体での処置は、転移が確立されたマウスにおいて転移性腫瘍量を抑制する。A.可溶性AXL受容体処置研究の略図。ヌードマウスは、1×106のSKOV3ip.1細胞をi.p.注射された。内植の5日後、肉眼的病変の存在がマウスにおいて検証された(示されているのは、注射後第5日における腹膜転移を有するマウスの代表写真であり、転移病変が丸で囲まれている)。第7日において、マウスは、IgG2a−Fc対照(Ad−Fc)又は可溶性AXL受容体(Ad−sAXL)を発現するアデノウイルスを注射された。アデノウイルス注射後3−4日ごとにウエスタンブロット分析によって血清sAXL発現レベルが評定された。腫瘍細胞内植後第28日、すべてのマウスにおいて腫瘍量が評定された。B.腫瘍細胞注射後第28日におけるAd−sAXL又はAd−Fcを発現するアデノウイルスで処置されたマウスの代表写真。転移病変が丸で囲まれている。グラフは、1群あたり7匹のマウスについての平均総腫瘍数及び重量を示す。エラーバーは、S.E.M.を表す。Ad−Fc処置マウスとAd−sAXL処置マウスの間に腫瘍数及び重量の統計的相違(p=0.01、スチューデントt検定)が観察された(*)。C.Ad−Fc又はAd−AXLで処置されたマウスの腫瘍におけるMMP−2発現の実時間PCR分析。
【図7】可溶性AXLエクトドメイン療法は、正常組織毒性を誘導しない。A.対照(Fc)又は可溶性AXL療法(sAXL)で処置されたマウスの完全CBC及び血清化学分析。B.Fc又はsAXLで処置されたマウスから採取された肝臓及び腎臓組織のH&E染色。
【図8】転移の可溶性AXL受容体阻害に付随する分子メカニズムを図解する概略図。可溶性AXL受容体(sAXL)療法は、AXLリガンドGAS6に結合するおとり受容体として機能する。sAXLは、細胞浸潤及び転移を刺激する内因性GAS6−AXLシグナル伝達事象を阻害する。
【図9】AXL欠損乳及び卵巣癌細胞系の産生。A.ヒト乳及び卵巣癌細胞系のパネルにおけるAXL発現のウエスタンブロット分析。熱ショックタンパク質70(Hsp70)がタンパク質負荷対照として使用された。B.スクランブル対照(shSCRM)又はAXL(shAXL)に対するshRNAターゲティング配列で安定的にトランスフェクトされた転移性乳(MDA−231)卵巣(SKOV3ip.1及びOVCAR−8)癌細胞系におけるAXL発現のウエスタンブロット分析。shAXL細胞系がAXL発現の有意な低減を有することに注目すること。
【図10】AXLは、乳及び卵巣腫瘍細胞接着又は生存に影響を及ぼさない。A−B.化学誘引物質としての血清へのボイデンチャンバー遊走アッセイにおけるMDA−231(A)及びSKOV3ip.1(B)細胞の細胞遊走パーセント。C−D.細胞外マトリックスタンパク質へのMDA−231(A)SKOV3ip.1(B)細胞接着の分析。略記:ウシ血清アルブミン(BSA)、フィブロネクチン(FN)、I型コラーゲン(Col I)、IV型コラーゲン(Col IV)、ラミニン(LN)、フィブロネクチン(FBN)。エラーバーは、平均値の標準誤差を表す。E−F.XTTアッセイによって判定した、血清除去後のAXL野生型及びAXL欠損MDA−231(E)及びSKOV3ip.1(F)腫瘍細胞の生存分析。
【図11】可溶性AXL受容体での処置は、OVCAR−8転移が確立したマウスにおいて転移性腫瘍を阻害する。A.可溶性AXL受容体処置研究の略図。ヌードマウスは、5×106 OVCAR−8細胞をi.p.注射された。内植の14日後、肉眼的病変の存在がマウスにおいて検証された(示されているのは、注射後第14日における腹膜転移を有するマウスの代表写真であり、転移病変が丸で囲まれている)。第14日において、マウスは、IgG2α−Fc対照(Ad−Fc)及び可溶性AXL受容体(Ad−sAXL)を発現するアデノウイルスを注射された。血清sAXL発現レベルは、ウエスタンブロット分析によって評定された。腫瘍細胞内植後第34日、すべてのマウスにおいて腫瘍量が評定された。B.腫瘍細胞注射後第28日におけるAd−sAXL又はAd−Fcを発現するアデノウイルスで処置されたマウスの代表写真。転移病変が丸で囲まれている。C.グラフは、1群あたり8匹のマウスについての平均総腫瘍数及び重量を示す。エラーバーは、S.E.M.を表す。Ad−Fc処置マウスとAd−sAXL処置マウスの間に腫瘍数及び重量の統計的相違(p<0.01、スチューデントt検定)が観察された(*)。
【図12】GAS6へのAXLライブラリーソート5産物の結合。野生型AXL(A)又は定向進化ワークからのプールされたAXLソート5産物(B)のいずれかを発現する酵母細胞のフロー・サイトメトリー・ドット・プロット。データは、実施例2において説明するとおりのオフ速度試験後の結合を示す。2nM Gas6への結合のレベルが左列に示されており、4時間解結合段階後のGas6への結合のレベルが中央列に示されており、及び6時間解結合段階後のGas6への結合のレベルが右列に示されている。その細胞表面上での特定のタンパク質の発現について陽性である細胞(各フロー・サイトメトリー・ドット・プロットの右上象限)についてのGas6への結合レベル(y軸)は、下の棒グラフで定量される。プールされたソート5産物は、野生型AXLと比較して有意に向上されたGas6結合を示す。
【図13】強化されたAXL変異体のGAS6への結合。左のパネルは、野生型AXL(緑丸)と比較してAXL突然変異体S6−1(赤四角)及びS6−2(青菱形)によるGas6への平衡結合を示す。突然変異体S6−1及びS6−2は、より低い濃度のGas6への有意に高い結合レベルを呈示し、このことが、野生型AXLと比較してこれらの突然変異体に対するより強い親和性を実証する。右パネルは、野生型又は遺伝子操作Gas6−AXL相互作用の解離動態を示す。野生型Gas6−AXL相互作用(「野生型」)は、時間の関数として迅速に解離するが、Gas6とS6−1の間の遺伝子操作された相互作用(「S6−1」)又はGas6とS6−2の間の遺伝子操作された相互作用(「S6−2」)は、結合の有意に増加された保持を示す。
【図14】精製AXL S6−1−Fcの腹膜内送達は、野生型AXL−Fc及びAXL E59R/T77R−Fcに比して強化された治療効果を示す。3つの処置群、AXL E59R/T77R−Fc、野生型AXL−Fc及びAXL S6−1−Fc、からのマウスの剖検からの2つの代表画像が示されている。黒い円は、画像で見える転移病変を示すが、必ずしもすべての転移部位を示しているとは限らない。野生型AXL−Fcは、陰性対照、AXL E59R/T77R、と比べて転移の中等度阻害を示すが、AXL S6−1は、転移のほぼ完全阻害を示す。
【図15】SKOV3ip.1異種移植モデルにおける転移の阻害。上の2つのグラフには、各処置群において計数された平均転移病変数を示すために2つの異なるやり方で同じデータセットが示されている。類似して、下の2つのグラフは、各処置群におけるマウスから切除されたすべての転移の総重量の概要を示す同じデータセット示す。病変の数(上パネル)と全重量(下パネル)の両方の減少によって示されるように、野生型AXL−Fcは、陰性対照E59R/T77R−Fcと比較して転移の進展を阻害する。病変の数(上パネル)と全重量(下パネル)によって評定すると、AXL S6−1−Fcは、野生型AXL−FcとAXL E59R/T77R−Fc両方と比較して腫瘍量の有意な低減を示す。これらのデータは、AXL S6−1の強化された親和性が野生型に比して向上された治療効力をもたらすこと、及びAXL S6−1−Fcが転移の管理のための実行可能な処置であることを実証する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
定義
後続の説明の中では、細胞培養分野において従来用いられている多数の用語が広範に用いられる。本明細書及び請求項の明瞭で一致した理解、並びにそのような用語に与えられている範囲を提供するために、以下の定義が提供される。
【0022】
転移性細胞上のAXL又はそのリガンドGAS6の「阻害剤」、「活性化剤」及び「変調剤」は、受容体又はリガンド結合又はシグナル伝達についてのインビトロ及びインビボアッセイを用いて同定される、阻害、活性化又は変調分子、例えばリガンド、受容体、アゴニスト、アンタゴニスト並びにそれらのホモログ及びミメティック、をそれぞれ指すために用いられる。
【0023】
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」及び「タンパク質」は、アミノ酸残基のポリマーを指すために本明細書では交換可能に用いられる。これらの用語は、1つ以上のアミノ酸残基が、対応する天然に存在するアミノ酸の人工的化学的ミメティックであるアミノ酸に、並びに天然に存在するアミノ酸ポリマー及び天然に存在しないアミノ酸ポリマーに適用される。
【0024】
用語「アミノ酸」は、天然に存在するアミノ酸及び合成アミノ酸、並びに天然に存在するアミノ酸と同様に機能するアミノ酸アナログ及びアミノ酸ミメティックを指す。天然に存在するアミノ酸は、遺伝子コードによってコードされたもの、並びに後に修飾されるアミノ酸、例えばヒドロキシプロリン、ガンマ−カルボキシグルタメート、及びO−ホスホセリン、である。アミノ酸アナログは、天然に存在するアミノ酸と同じ基本化学構造、すなわち水素、カルボキシル基、アミノ基及びR基に結合しているアルファ炭素、を有する化合物、例えばホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウム、を指す。そのようなアナログは、修飾されたR基(例えば、ノルロイシン)又は修飾されたペプチド主鎖を有するが、天然に存在するアミノ酸と同じ基本化学構造を保持する。アミノ酸ミメティックは、アミノ酸の一般化学構造とは異なる構造を有するが、天然に存在するアミノ酸と同様に機能する化合物を指す。アミノ酸を表すために本発明において用いられるすべての単一文字は、例えばAはアラニンを意味する、Cはシステインを意味するなど、当分野において常例的に用いられる認知されたアミノ酸記号に従って用いられる。アミノ酸は、該当位置の前及び後の単一文字によって、元のアミノ酸(その位置の前)から変更アミノ酸(位置の後)への変更を反映するように表される。例えば、A19Tは、位置19のアミノ酸アラニンがトレオニンに変更されることを意味する。
【0025】
用語「被験体」、「個体」及び「患者」は、処置のために評定される及び/又は処置される哺乳動物を指すために本明細書では交換可能に用いられる。ある実施形態において、前記哺乳動物はヒトである。従って、用語「被験体」、「個体」及び「患者」は、癌性組織を除去するために切除術(外科手術)を受けた者又はその候補である者を含めて、限定ではないが卵巣若しくは前立腺の腺癌、乳癌、膠芽腫などをはじめとする癌を有する個体を包含する。被験体は、ヒトである場合があるが、他の哺乳動物、特に、ヒト疾患の実験室モデルとして有用な哺乳動物、例えばマウス、ラットなど、も包含する。
【0026】
用語「腫瘍」は、本明細書において用いられる場合、悪性であろうと良性であろうとすべての新生物性細胞成長及び増殖、並びにすべての前癌性及び癌性細胞及び組織を指す。
【0027】
用語「癌」、「新生物」及び「腫瘍」は、細胞増殖に対する制御の有意な喪失を特徴とする異常成長表現型を呈示するような、自律的、無秩序成長を呈示する細胞を指すために、本明細書では交換可能に用いられる。一般に、本出願における検出、分析、分類又は処置のために興味のある細胞としては、前癌性(例えば良性)、悪性、前転移性、転移性及び非転移性細胞が挙げられる。癌の例としては、卵巣癌、膠芽腫、乳癌、結腸癌、肺癌、前立腺癌、肝細胞癌、胃癌、膵臓癌、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、尿路癌、甲状腺癌、腎癌、癌腫、黒色腫、頭頸部癌、及び脳癌が挙げられるが、これらに限定されない。
【0028】
癌の「病理」は、患者の健康で幸福な状態(well−being)を損なわせるすべての現象を包含する。これには、限定ではないが、異常な又は制御不能な細胞成長;転移;隣接細胞の正常な機能化への干渉;サイトカイン又は他の分泌産物の異常レベルでの放出;炎症反応又は免疫応答の抑制又は悪化;新形成;前悪性病変;悪性病変;周囲又は遠隔組織又は器官、例えばリンパ節、の浸潤などが挙げられる。
【0029】
本明細書において用いられる場合、用語「癌再発」及び「腫瘍再発」、並びにそれらの文法上の異形は、癌の診断後の新生物性又は癌性細胞のさらなる成長を指す。詳細には、さらなる癌性細胞成長が癌性組織において起こると、再発が起こるだろう。類似して、腫瘍の細胞が局所又は遠隔組織及び器官へと広まると「腫瘍進展」が起こる;従って、腫瘍進展は、腫瘍転移を包含する。腫瘍成長が、関与する組織の機能を正常器官機能の圧迫、破壊又は妨害によって損なわせるように局部的に広がると、「腫瘍浸潤」が起こる。
【0030】
本明細書において用いられる場合、用語「転移」は、原癌性腫瘍の器官に直接接続されていない器官又は身体部分での癌性腫瘍の成長を指す。転移は、原癌性腫瘍の器官に直接接続されていない器官又は身体部分での検出不能量の癌性細胞の存在である微小転移を包含すると解釈されるだろう。転移は、原腫瘍部位からの癌細胞の離脱、並びに身体の他の部分への癌細胞の遊走及び/又は浸潤などのプロセスの幾つかの段階と定義されることもある。従って、本発明は、原癌性腫瘍の器官に直接接続されていない器官若しくは身体部分での1つ以上の癌性腫瘍のさらなる成長及び/又はその成長に至るまでのプロセスにおける任意の段階についてのリスクを判定する方法を考えている。
【0031】
癌の性質に依存して、適切な患者試料が得られる。本明細書において用いられる場合、句「癌性組織試料」は、癌性腫瘍から得られる任意の細胞を指す。転移していない充実性腫瘍の場合、概して、外科的に除去された腫瘍から組織試料が得られ、従来の技術により試験用に調製されることとなる。
【0032】
この定義は、生物由来の血液及び他の液体試料、固体組織試料、例えば生検検体若しくは組織培養物、又はそれらから得られる細胞及びその後代を包含する。この定義は、それらの獲得後に任意のやり方で、例えば試薬での処置;洗浄;又は癌細胞などの一定の細胞集団の富化によって、操作された試料も包含する。この定義は、特定のタイプの分子、例えば核酸、ポリペプチドなど、について富化された試料も包含する。用語「生体試料」は、臨床試料を包含し、並びに外科的切除によって得られる組織、生検によって得られる組織、培養での細胞、細胞上清、細胞溶解産物、組織試料、器官、骨髄、血液、血漿、血清及びこれらに類するものも包含する。「生体試料」は、患者の癌細胞から得られる試料、例えば、患者の癌細胞から得られるポリヌクレオチド及び/又はポリペプチドを含む試料(例えば、ポリヌクレオチド及び/又はポリペプチドを含む細胞溶解産物又は他の細胞抽出物);並びに患者からの癌細胞を含む試料を包含する。患者からの癌細胞を含む生体試料は、非癌性細胞も含む場合がある。
【0033】
用語「診断」は、乳癌、前立腺癌又は他のタイプの癌の分子サブタイプの同定などの、分子若しくは病的状態、疾患又は容態の同定を指すために本明細書では用いられる。
【0034】
用語「予後」は、卵巣癌などの新生物性疾患の再発、転移性進展及び薬物耐性をはじめとする、癌寄与死亡又は進行の尤度の予測を指すために本明細書では用いられる。用語「予測」は、観察、実験又は科学的推理に基づいて、予告する又は推定する行為を指すために本明細書では用いられる。一例では、医師は、患者が原発性腫瘍の外科的除去及び/又は化学療法後に癌再発なしに一定の期間生存する尤度を予測することが出来る。
【0035】
本明細書において用いられる場合、用語「処置」、「処置すること」及びこれらに類するものは、効果を得ることを目的として、薬剤を投与すること又は手順(例えば、放射線、外科的手順など)を行うことを指す。前記効果は、疾患若しくはその症状を完全の若しくは部分的に予防する点から予防的である場合があり、並びに/又は疾患及び/若しくはその疾患の症状についての部分的な若しくは完全な治癒を果たす点から治療的である場合がある。「処置」は、本明細書において用いられる場合、哺乳動物における、特にヒトにおける、任意の転移性腫瘍の任意の処置に及び、並びに(a)疾患の素因を有することがあるが(例えば、一次疾患に随伴又は起因し得る疾患を含めて)疾患を有するとまだ診断されていない被験体において、疾患又は疾患の症状が起こらないようにすること;(b)疾患を阻害すること、すなわち、その発生を阻止すること;及び(c)疾患を軽減すること、すなわち、疾患の退縮を生じさせることを包含する。腫瘍(例えば、癌)処置において、治療薬は、腫瘍細胞の転移を直接減少させることが出来る。
【0036】
処置することは、寛解;軽快;症状の減少又は病態を患者にとってより許容可能にすること;変性又は衰退速度の減速;又は変性の最終点をより少ない衰弱にすることなどの任意の客観的又は主観的パラメータをはじめとする、癌の処置又は改善又は予防の成功の任意の徴候を指す場合がある。前記症状の処置又は改善は、医師による検査の結果をはじめとする客観的パラメータに基づく場合もあり又は主観的パラメータに基づく場合もある。従って、用語「処置すること」は、新形成、例えば腫瘍又は癌、に随伴する症状又は容態の発生を予防する若しくは遅らせるための、又は緩和するための、阻止するための又は阻害するための本発明の化合物又は薬剤の投与を包含する。用語「治療効果」は、被験体における疾患、疾患の症状又は疾患の副作用の低減、消失又は予防を指す。
【0037】
一定の実施形態において、「と併用で」、「併用療法」及び「併用産物」は、本明細書において用いられる場合、第一の療法と前記化合物の患者への並行投与を指す。併用で投与されるとき、各成分は、同時に投与されることもあり、又は異なる時点で任意の順序で逐次的に投与されることもある。従って、各成分は、別々にだが所望の治療効果をもたらすために時間の点で十分に接近して投与され得る。
【0038】
本発明によると、前記第一の療法は、任意の適する治療薬、例えば細胞傷害剤、であってもよい。細胞傷害剤の1つの例示的クラスは化学療法薬であり、例えば、それらは、AXL又はGAS6シグナル伝達を阻害するための処置と併用されることがある。例示的化学療法薬としては、アルデスロイキン、アルトレタミン、アミホスチン、アスパラギナーゼ、ブレオマイシン、カペシタビン、カルボプラチン、カルムスチン、クラドリビン、シサプリド、シスプラチン、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン(DTIC)、ダクチノマイシン、ドセタキセル、ドキソルビシン、ドロナビノール、デュオカルマイシン、エポエチンアルファ、エトポシド、フィルグラスチム、フルダラビン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、グラニセトロン、ヒドロキシ尿素、イダルビシン、イホスファミド、インターフェロンアルファ、イリノテカン、ランソプラゾール、レバミソール、ロイコボリン、メゲストロール、メスナ、メトトレキサート、メトクロプラミド、マイトマイシン、ミトタン、ミトキサントロン、オメプラゾール、オンダンセトロン、パクリタキセル(Taxol(商標))、ピロカルピン、プロクロロペラジン、リツキシマブ、サプロイン(saproin)、タモキシフェン、タキソール、塩酸トポテカン、トラスツズマブ、ビンブラスチン、ビンクリスチン及び酒石酸ビノレルビンが挙げられるが、これらに限定されない。卵巣癌処置のために、AXL又はGAS6シグナル伝達阻害剤と併用されることがある好ましい化学療法剤は、パクリタキセル(Taxol(商標))である。
【0039】
他の併用療法は、放射線、外科手術、及びホルモン枯渇(Kwon et al.、Proc.Natl.Acad.Sci U.S.A.、96:15074−9、1999)である。血管新生阻害剤も本発明の方法と併用されることがある。
【0040】
本発明の医薬組成物と公知癌療法薬の「併用投与」は、前記公知薬物と本発明の組成物の両方が治療効果を及ぼすような時点での前記薬物とAXL阻害剤の投与を意味する。そのような付随的投与は、本発明の化合物の投与に対するその薬物の並行(すなわち同時での)、事前又は後投与を含み得る。当業者は、本発明の特定の薬物及び組成物についての投与の適切なタイミング、順番及び投薬量を難なく決定するだろう。
【0041】
本明細書において用いられる場合、「無病生存」は、患者の寿命に対する癌の影響に関して、そのような腫瘍再発及び/又は進展が無いこと並びに診断後の患者の運命を指す。句「全生存」は、患者の死因が癌の影響に直接起因しない可能性にかかわらず、診断後の患者の運命を指す。句「無病生存の尤度」、「再発のリスク」及びそれらの異形は、癌の診断後の患者における腫瘍再発又は進展の確率を指し、この確率は、本発明のプロセスに従って決定される。
【0042】
本明細書において用いられる場合、用語「相関する」又は「と相関する」、及びこれらに類する用語は、2つの事例間の統計的関連性を指し、この場合の事象は、数、データセット及びこれらに類するものを包含する。例えば、前記事象が数を伴うとき、正の相関(本明細書では「順相関」とも呼ばれる)は、一方が増加するにつれて他方も増加することを意味する。負の相関(本明細書では「逆相関」とも呼ばれる)は、一方が増加するにつれて他方が減少することを意味する。
【0043】
「投薬単位」は、治療される特定の個体のための単位投薬量として適している物理的に別個の単位を指す。各単位は、必要な製薬用担体と共同で所望の治療効果(単数又は複数)を生じさせるように計算された所定量の活性化合物(単数又は複数)を含有することが出来る。投薬単位形態についての仕様は、(a)活性化合物(単数又は複数)のユニークな特性及び達成される特定の治療効果(単数又は複数)、並びに(b)そのような活性化合物(単数又は複数)の配合技術分野に固有の制限による指図を受けることがある。
【0044】
「医薬的に許容され得る賦形剤」は、一般に安全であり非毒性であり望ましい医薬組成物の調製に有用である賦形剤を意味し、人間用製薬用途ばかりでなく獣医学的用途に許容され得る賦形剤も包含する。そのような賦形剤は、固体、液体、半固体、又は、エーロゾル組成物の場合には、気体であってもよい。
【0045】
「医薬的に許容され得る塩及びエステル」は、医薬的に許容され得る、及び望ましい薬理特性を有する、塩及びエステルを意味する。そのような塩は、化合物中に存在する酸性プロトンが無機又は有機塩基と反応出来る場合に形成され得る塩を包含する。適する無機塩としては、アルカリ金属、例えばナトリウム及びカリウム、マグネシウム、カルシウム並びにアルミニウムとで形成されるものが挙げられる。適する有機塩としては、アミン塩基、例えばエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トロメタミン、N−メチルグルカミン、及びこれらに類するものが挙げられる。そのような塩としては、無機酸(例えば、塩酸及び臭化水素酸)及び有機酸(例えば、酢酸、クエン酸、マレイン酸、並びにアルカン−及びアレーン−スルホン酸、例えばメタンスルホン酸及びベンゼンスルホン酸)とで形成される酸付加塩も挙げられる。医薬的に許容され得るエステルとしては、化合物中に存在するカルボキシ、スルホニルオキシ及びホスホンオキシ基から形成されるエステル、例えばC1−6アルキルエステル、が挙げられる。2つの酸性基が存在するとき、医薬的に許容され得る塩又はエステルは、モノ酸モノ塩若しくはエステル又はジ塩若しくはエステルであることがあり;及び類似して、2つより多くの酸性基が存在する場合、そのような基の一部又はすべてが塩形成又はエステル化されていることがある。本発明において名を挙げる化合物は、非塩形成形態若しくは非エステル化形態で存在することがあり、又は塩形成形態及び/若しくはエステル化形態で存在することがあり、並びにそのような化合物の命名は、原(非塩形成及び非エステル化)化合物とその医薬的に許容され得る塩及びエステルの両方を包含することを意図されている。また、本発明において名を挙げる一定の化合物は、1つより多くの立体異性体形態で存在することがあり、そのような化合物の命名は、すべての単一立体異性体、及びそのような立体異性体の(ラセミ体であろうと、そうでなかろうと)すべての混合物を包含することを意図されている。
【0046】
組成物、担体、希釈剤及び試薬を指す場合、用語「医薬的に許容され得る」、「生理的に許容可能な」、及びそれらの文法上の異形は、交換可能に用いられ、及びそれらの材料が、その組成物の投与を妨げる程に望ましくない生理作用を生じさせることなく、ヒトに又はヒトに対して投与出来ることを表す。
【0047】
「治療有効量」は、疾患を治療するために被験体に投与されたとき、その疾患の処置を果たすのに十分である量を意味する。
詳細な説明
【0048】
本発明に従って、可溶性AXL変異体、例えば、野生型AXLポリペプチドの結合活性に実質的に等しい又は前記結合活性より良好であるGAS6への結合活性を有する可溶性AXL変異体ポリペプチドを提供する。本発明の一部の実施形態において、前記可溶性AXL変異体ポリペプチドは、治療薬として利用される。
【0049】
配列番号:1の天然配列を参照して、AXLタンパク質は、残基27−128の免疫グロブリン(Ig)様ドメインと、残基139−222の第二のIg様ドメインと、残基225−332及び333−427のフィブロネクチン3型ドメインと、チロシンキナーゼドメインを含む残基473−894の細胞内ドメインとを含む。779、821及び866におけるチロシン残基は、受容体二量体化に基づいて自己リン酸化されることとなり、及び細胞内シグナル伝達分子のためのドッキング部位として役立つ。可溶性形態のポリペプチドを放出する天然切断部位は、残基437−451に存する。
【0050】
本発明のために、可溶性形態のAXLは、認識可能な親和性、例えば高親和性、でGAS6を結合するのに十分であるポリペプチドの部分であり、これは、通常はシグナル配列と膜貫通ドメインの間、すなわち一般には配列番号:1の残基19−437あたり、に存するが、残基19、25、30、35、40、45、50あたりから、残基132、450、440、430、420、410、400、375、350から321あたり、例えば残基19−132、の短縮バージョンを含む又は前記短縮バージョンから成ることもある。一部の実施形態において、可溶性形態のAXLは、膜貫通ドメイン及び場合により細胞内ドメインを欠く。
【0051】
本発明の可溶性AXL変異体ポリペプチド(sAXL変異体)は、可溶性形態の野生型AXLの中に1つ以上のアミノ酸修飾、例えば、GAS6に対するその親和性を増加させる1つ以上のアミノ酸修飾、を備えている。本発明によると、アミノ酸修飾は、当分野において公知の又は後に発見される任意の自然に発生する又は人工のアミノ酸修飾を包含する。一部の実施形態において、アミノ酸修飾は、自然に発生する突然変異、例えば置換、欠失、付加、挿入など、を包含する。一部の他の実施形態において、アミノ酸修飾は、既存のアミノ酸の別のアミノ酸、例えばその保存的等価物、での置換を包含する。さらに一部の他の実施形態において、アミノ酸修飾は、1つ以上の既存のアミノ酸の非天然アミノ酸での置換、又は1つ以上の非天然アミノ酸の挿入を包含する。なお一部の他の実施形態において、アミノ酸修飾は、少なくとも1、2、3、4、5又は6又は10のアミノ酸突然変異又は変更を包含する。
【0052】
一部の例示的実施形態において、1つ以上のアミノ酸修飾は、可溶性形態のAXLの特性を改変する、例えば安定性、結合活性及び/又は特異性などに影響を及ぼす、ために用いられることがある。クローン化遺伝子のインビトロ突然変異誘発のための技術は公知である。突然変異を走査するためのプロトコルの例は、Gustin et al.、Biotechniques 14:22(1993);Barany、Gene 37:111−23(1985);Colicelli et al.、Mol Gen Genet 199:537−9(1985);及びPrentki et al.、Gene 29:303−13(1984)において見つけられるだろう。部位特異的突然変異誘発のための方法は、Sambrook et al.、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、CSH Press 1989、pp.15.3−15.108;Weiner et al.、Gene 126:35−41(1993);Sayers et al.、Biotechniques 13:592−6(1992);Jones及びWinistorfer、Biotechniques 12:528−30 (1992); Barton et al.、Nucleic Acids Res 18:7349−55(1990);Marotti及びTomich、Gene Anal Tech 6:67−70(1989);並びにZhu Anal Biochem 177:120−4(1989)において見つけられるだろう。
【0053】
一部の実施形態において、本発明のsAXL変異体は、野生型AXL(配列番号:1)の残基18から130、残基10から135、残基15から45、残基60から65、残基70から80、残基85から90、残基91から99、残基104から110、残基111から120、残基125から130、残基19から437、残基130から437、残基19から132、残基21から132、残基21から121、残基26から132又は残基26から121のうちの1つ以上の領域内に1つ以上のアミノ酸修飾を備えている。一部の他の実施形態において、本発明のsAXL変異体は、野生型AXL(配列番号:1)の残基20から130、残基37から124又は残基141から212のうちの1つ以上の領域内に1つ以上のアミノ酸修飾を備えている。さらに一部の他の実施形態において、本発明のsAXL変異体は、野生型AXL(配列番号:1)の位置19、23、26、27、32、33、38、44、61、65、72、74、78、79、86、87、88、90、92、97、98、105、109、112、113、116、118、127又は129のうちの1つ以上の位置に1つ以上のアミノ酸修飾を備えている。
【0054】
さらに一部の他の実施形態において、本発明のsAXL変異体は、一切の限定なく1)A19T、2)T23M、3)E26G、4)E27G又はE27K、5)G32S、6)N33S、7)T38I、8)T44A、9)H61Y、10)D65N、11)A72V、12)S74N、13)Q78E、14)V79M、15)Q86R、16)D87G、17)D88N、18)I90M又はI90V、19)V92A、V92G又はV92D、20)I97R、21)T98A又はT98P、22)T105M、23)Q109R、24)V112A、25)F113L、26)H116R、27)T118A、28)G127R又はG127E及び29)E129K並びにそれらの組み合わせを含む、1つ以上のアミノ酸修飾を備えている。
【0055】
さらに一部の他の実施形態において、本発明のsAXL変異体は、野生型AXL(配列番号:1)の位置32、87、92若しくは127又はそれらの組み合わせにおける1つ以上のアミノ酸修飾、例えばG32S;D87G;V92A及び/又はG127R、を備えている。さらに一部の他の実施形態において、本発明のsAXL変異体は、野生型AXL(配列番号:1)の位置26、79、92、127又はそれらの組み合わせにおける1つ以上のアミノ酸修飾、例えばE26G、V79M;V92A及び/又はG127E、を備えている。
【0056】
本発明によると、本発明のsAXL変異体は、さらに修飾される、例えば様々な目的で多種多様な他のオリゴペプチド又はタンパク質に連結される、ことがある。例えば、本発明のsAXL変異体に対して様々な翻訳後又は発現後修飾が行われることがある。例えば、適切なコーディング配列を利用することにより、ファルネシル化又はプレニル化を生じさせることが出来る。一部の実施形態において、本発明のsAXL変異体はPEG化されることがあり、この場合、そのポリエチレンオキシ基が血流中での寿命増進に備える。本発明のsAXL変異体は、補体結合していることがある、IgGアイソタイプのFcなどの、他のタンパク質と、リシン、アブリン、ジフテリア毒素若しくはこれらに類するものなどの毒素と、又はターゲット細胞上の特定の部分へのターゲティングを可能にする特定の結合剤と、化合されることもある。
【0057】
一部の実施形態において、本発明のsAXL変異体は融合タンパク質である、例えば、第二のポリペプチドとインフレームで融合されている。一部の実施形態において、前記第二のポリペプチドは、例えば融合タンパク質が循環から急速に一掃されることとならないように、融合タンパク質のサイズを増加させることが出来る。一部の他の実施形態において、前記第二のポリペプチドは、Fc領域の一部又は全部である。一部の他の実施形態において、前記第二のポリペプチドは、Fcと実質的に同様である、例えばサイズ増加及び/又はIg分子とのさらなる結合若しくは相互作用をもたらす、任意の適するポリペプチドである。さらに一部の他の実施形態において、前記第二のポリペプチドは、アルブミンタンパク質、例えばヒト血清アルブミンタンパク質、の一部又は全部である。
【0058】
一部の他の実施形態において、前記第二のポリペプチドは、sAXL変異体の取り扱い、例えばsAXL変異体の精製、に、又はインビトロ若しくはインビボでのその安定性の増加に有用である。例えば、本発明のsAXL変異体は、キメラ又は融合ポリペプチドを生じさせる結果となるように、免疫グロブリン(IgG)の定常ドメインの一部と化合されることがある。これらの融合タンパク質は精製を助長し、及びインビボで増加された半減期を示す。1つの報告例は、ヒトCD4−ポリペプチドの最初の2つのドメインと哺乳動物免疫グロブリンの重又は軽鎖の定常領域の様々なドメインとから成るキメラタンパク質を説明している。欧州特許出願公開第394,827号;Traunecker et al.、Nature、331:84−86、1988。(IgGのために)ジスルフィド結合二量体構造を有する融合タンパク質は、他の分子を結合する及び中和する点で、単量体分泌タンパク質又はタンパク質断片のみより効率的である場合もある。Fountoulakis et al.、J.Biochem.270:3958−3964、1995。
【0059】
さらに一部の他の実施形態において、前記第二のポリペプチドは、融合ポリペプチドの精製を助長するペプチドなどのマーカー配列である。例えば、前記マーカーアミノ酸配列は、数ある中でもpQEベクター(QIAGEN,Inc.、9259 Eton Avenue、Chatsworth、Calif.、91311)に備えられているタグなどのヘキサ−ヒスチジンペプチドであってもよく、これらの多くが市販されている。例えばGentz et al.、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:821−824、1989に記載されているように、ヘキサ−ヒスチジンは、融合タンパク質の適便な精製に備える。精製に有用なもう1つのペプチドタグ、「HA」タグは、インフルエンザ赤血球凝集素タンパク質に由来するエピトープに対応する。Wilson et al.、Cell 37:767、1984。
【0060】
なお一部の他の実施形態において、前記第二のポリペプチドは、本発明のsAXL変異体の特性の向上に有用なエンティティーである。例えば、宿主細胞からの精製又はその後の取り扱い及び保管中の安定性及び耐久性を向上させるために、追加のアミノ酸、特に荷電アミノ酸、の領域が前記ポリペプチドのN末端に付加されることがある。また、精製を助長するために本発明のsAXL変異体にペプチド部分が付加され、その後、そのポリペプチドの最終調製前に除去されることがある。ポリペプチドの取り扱いを助長するためのペプチド部分の付加は、当技術分野においてよく知られている常例的技術である。
【0061】
なおさらに一部の実施形態において、本発明のsAXL変異体は、野生型AXLに少なくとも等しい又は野生型AXLより良好である、GAS6への結合活性を有する。一部の他の実施形態において、本発明のsAXL変異体は、野生型AXLのものより少なくとも1倍、2倍、3倍、4倍、5倍又は6倍大きい、GAS6への結合活性又は親和性を有する。一部の他の実施形態において、本発明のsAXL変異体は、少なくとも約1×10−6、1×10−7、1×10−8又は1×10−9Mの、GAS6への結合活性又は親和性を有する。さらに一部の他の実施形態において、本発明のsAXL変異体は、インビボ、インビトロ又は両方でGAS6への野生型AXL結合を阻害することが出来る、前記結合を阻害する、又は前記結合と競合する。さらに一部の他の実施形態において、本発明のsAXL変異体は、本出願の実施例2に提供するようなAXL S6−1、AXL S6−2及び/又はAXL S6−5の結合を阻害する、又は前記結合に競合する。さらに一部の他の実施形態において、本発明のsAXL変異体は、本出願の実施例2に提供する任意のsAXL変異体の結合を阻害する、又は前記結合に競合する。
【0062】
GAS6に結合する分子の能力は、例えばアッセイプレートにコーティングされたGAS6に結合する推定リガンドの能力によって、判定され得る。1つの実施形態において、GAS6への本発明のsAXL変異体の結合活性は、リガンド、例えばGAS6又はsAXL変異体、を固定することによって、アッセイされ得る。例えば、前記アッセイは、Ni活性化NTA樹脂ビーズ上へのHisタグに融合されたGAS6の固定化を含むことがある。薬剤は、ある期間、所与の温度でインキュベートされた適切なバッファー及びビーズに添加され得る。未結合材料を除去するための洗浄後、結合タンパク質は、例えばSDS、高pHのバッファー、及びこれらに類するもので遊離され、分析され得る。
【0063】
なおさらに他の実施形態において、本発明のsAXL変異体は、野生型AXLの末端安定性より良好な末端安定性を有する。一部の実施形態において、本発明のsAXL変異体の融解温度は、野生型AXLの融解温度より少なくとも5℃、10℃、15℃又は20℃高い。
【0064】
本発明によると、本発明のsAXL変異体は、本発明のsAXL変異体の一次配列を改変しない1つ以上の修飾を備えている場合もある。例えば、そのような修飾としては、ポリペプチドの化学的誘導体化、例えばアセチル化、アミド化、カルボキシル化など、を挙げることが出来る。そのような修飾としては、グリコシル化の修飾、例えば、ポリペプチドのグリコシル化パターンをその合成及びプロセッシング中に又はさらなるプロセッシング段階において修飾することにより、例えば、哺乳動物グリコシル化又は脱グリコシル化酵素などのグリコシル化に影響を及ぼす酵素にそのポリペプチドを暴露することにより、行われるものも挙げることが出来る。一部の実施形態において、本発明のsAXL変異体は、リン酸化アミノ酸残基、例えばホスホチロシン、ホスホセリン又はホスホトレオニン、を有するsAXL変異体を包含する。
【0065】
一部の他の実施形態において、本発明のsAXL変異体は、タンパク質分解に対するそれらの耐性を向上させるように、又は可溶性を最適化するように、又はそれらを治療薬としてより適するものにするように、さらに修飾された変異体を包含する。例えば、本発明のsAXL変異体は、天然に存在するL−アミノ酸以外の残基、例えばD−アミノ酸又は天然に存在しない合成アミノ酸、を含有するsAXL変異体のアナログをさらに包含する。D−アミノ酸は、そのアミノ酸残基の一部が置換されていてもよく、又はすべてが置換されていてもよい。
【0066】
さらに一部の他の実施形態において、本発明のsAXL変異体は、共有結合で又は非共有結合で連結された少なくとも2つの同じ又は異なるsAXL変異体を包含する。例えば、一部の実施形態において、本発明のsAXL変異体は、例えば適切なサイズを有するが望ましくない凝集を回避するように、共有結合で連結された2、3、4、5又は6つの同じ又は異なるsAXL変異体を包含する。
【0067】
本発明によると、本発明のsAXL変異体は、当分野において公知の又は後に発見される任意の適する手段によって生産され得る、例えば、真核又は原核細胞から生産、インビトロで合成、などされ得る。前記タンパク質が原核細胞によって生産される場合、それは、アンフォールディング、例えば熱変性、DTT還元など、によりさらにプロセッシングされることがあり、及び当技術分野において公知の方法を用いてさらにリフォールディングされることがある。
【0068】
前記ポリペプチドは、当技術分野において公知であるような従来の方法を用いて、インビトロ合成によって調製されることがある。様々な商用合成機器、例えば、カリフォルニア州フォスターシティーのApplied Biosystems、Backmanなどによる自動合成装置が利用可能である。合成装置を使用することにより、天然に存在するアミノ酸が非天然アミノ酸で置換されることがある。個々の配列及び調製の仕方は、利便性、経済性、必要な純度、及びこれらに類するものによって決められるであろう。
【0069】
前記ポリペプチドは、従来の組換え合成法に従って単離及び精製されることもある。発現宿主から溶解産物が調製され、HPLC、排除クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、アフィニティークロマトグラフィー、又は他の精製技術を用いてその溶解産物が精製されることがある。通例、使用される組成物は、その産物の調製方法及びその精製方法に関連した不純物に関連して、少なくとも20重量%、より通常は少なくとも約75重量%、好ましくは少なくとも約95重量%、及び治療目的では、通常、少なくとも約99.5重量%の所望の産物を含む。通常、前記百分率は、全タンパク質に基づくであろう。
【0070】
コーディング配列及び適切な転写/翻訳制御シグナルを含有する発現ベクターを構築するために、当業者に周知である方法が使用され得る。これらの方法としては、例えば、インビトロ組み換えDNA技術、合成技術及びインビボ組み換え/遺伝子組み換えが挙げられる。或いは、興味のあるポリペプチドをコードすることが出来るRNAが化学合成され得る。当業者は、本発明のポリペプチドのいずれについても、適するコーディング配列を生じさせるために周知のコドン使用頻度表及び合成方法を容易に利用することが出来る。直接化学合成法としては、例えば、Narang et al.(1979)Meth.Enzymol.68:90−99のホスホトリエステル法;Brown et al.(1979)Meth.Enzymol.68:109−151のホスホジエステル法;Beaucage et al.(1981)Tetra.Lett.、22:1859−1862のジエチルホスホルアミダイト法;及び米国特許第4,458,066号の固体支持体法が挙げられる。化学合成は、一本鎖オリゴヌクレオチドを生成する。これは、相補配列でのハイブリダイゼーションにより、又はテンプレートとしてその一本鎖を使用するDNAポリメラーゼでの重合により、二本鎖DNAに転化され得る。DNAの化学合成は、多くの場合、約100塩基の配列に制限されるが、より短い配列のライゲーションによって、より長い配列が得られ得る。或いは、部分配列がクローン化され、適切な制限酵素を使用して適切な部分配列が切断されることもある。
【0071】
核酸は、単離され、相当な純度で得られ得る。通常、他の天然に存在する核酸配列が実質的に無い、一般に、少なくとも約50%、通常は少なくとも約90%の純度である核酸、例えばDNA又はRNAのいずれか、が得られることとなり、これらは、概して「組換体」である、例えば、自然に存在する染色体上では通常は会合していない1つ以上のヌクレオチドが隣接している。本発明の核酸は、線状分子として提供されることがあり、又は環状分子内に備えられていることがあり、及び自律複製分子(ベクター)内に又は複製配列の無い分子内に備えられていることがある。前記核酸分子の発現は、それら自体の配列によって調節されることがあり、又は当技術分野において公知の他の調節配列によって調節されることがある。本発明の核酸は、トランスフェリンポリカチオン媒介DNA移入、裸の又は封入された核酸でのトランスフェクション、リポソーム媒介DNA移入、DNA被覆ラテックスビーズの細胞内輸送、プロトプラスト融合、ウイルス感染、エレクトロポレーション、遺伝子ガン、リン酸カルシウム媒介トランスフェクション、及びこれらに類するものなどの、当技術分野において利用可能な様々な技術を用いて、適する宿主細胞に導入されることがある。
【0072】
一部の実施形態において、本発明は、構成的に又は1つ以上の調節要素のもとで本発明の1つ以上のsAXL変異体をインビトロ又はインビボで発現させるための発現ベクターを提供する。一部の実施形態において、本発明は、構成的に又は1つ以上の調節要素のもとで本発明のsAXL変異体を発現するための1つ以上の発現ベクターを含む細胞集団を提供する。
【0073】
本発明のもう1つの態様に従って、GAS6タンパク質に特異的に結合する単離された抗体又はそれらの断片を提供する。GAS6(成長停止特異的タンパク質6)は、構造的には血漿ビタミンK依存性タンパク質のファミリーに属する。GAS6は、天然抗凝血性タンパク質Sとの高い構造的相同性を有し、同じモジュール組成を共有し、40%配列同一性を有する。GAS6は、TAMファミリーの受容体チロシンキナーゼ、Tyro3、AXL及びMerTK、とのその相互作用により成長因子様特性を有する。ヒトGAS6は、リン脂質膜への結合を媒介するガンマ−カルボキシグルタメート(Gla)リッチドメインと、4つの上皮成長因子様ドメインと2つのラミニンG様(LG)ドメインとから成る678アミノ酸タンパク質である。ヒトGAS6の転写産物変異体の配列は、GenbankにおいてそれぞれNM_001143946.1;NM_001143945.1;及びNM_000820.2で入手され得る。
【0074】
GAS6は、そのビタミンK依存性GLA(ガンマ−カルボキシグルタミン酸)モジュールによりホスファチジルセリン含有膜と及びそのカルボキシ末端LamGドメインによりTAM膜受容体と相互作用する、ユニークな作用メカニズムを用いる。
【0075】
本発明によると、本発明の単離された抗体は、GAS6に対する認識可能な結合特異性を有する任意の単離された抗体を包含する。一部の実施形態において、単離された抗体は、部分的又は完全ヒト化抗体である。一部の他の実施形態において、単離された抗体は、モノクローナル又はポリクローナル抗体である。さらに一部の他の実施形態において、単離された抗体は、例えば異なる源からの一貫領域、可変領域及び/若しくはCDR3又はそれらの組み合わせを有する、キメラ抗体である。さらに一部の他の実施形態において、単離された抗体は、本明細書に記載する様々な特徴の組み合わせである。
【0076】
本発明によると、本発明の単離された抗体の断片は、GAS6へのポリペプチドの認識可能な特異的結合に十分又は必要である抗体の領域を含有するポリペプチドを(抗体足場に関連して又は非抗体足場関連して)包含する。一部の実施形態において、本発明の単離された抗体の断片としては、可変軽鎖、可変重鎖、重鎖若しくは軽鎖の1つ以上のCDR又はそれらの組み合わせ、例えばFab、Fvなど、が挙げられる。一部の実施形態において、本発明の単離された抗体の断片としては、一本鎖抗体、例えばScFv、を含有するポリペプチドが挙げられる。さらに一部の実施形態において、本発明の単離された抗体の断片としては、単独での可変領域、又はFc領域の一部、例えばCH1領域、との組み合わせでの可変領域が挙げられる。なお一部の実施形態において、本発明の単離された抗体の断片としては、ミニボディー、例えばVL−VH−CH3、又ダイアボディーが挙げられる。
【0077】
一部の実施形態において、本発明の単離された抗体は、AXLと相互作用する1つ以上のアミノ酸領域に含まれる又は前記アミノ酸領域によって提供されるエピトープに結合する。一部の他の実施形態において、本発明の単離された抗体は、GAS6の1つ以上のアミノ酸領域、例えばGAS6のL295−T317、E356−P372、R389−N396、D398−A406、E413−H429及びW450−M468、に含まれる又は前記アミノ酸領域によって提供されるエピトープに結合する。
【0078】
さらに一部の他の実施形態において、本発明の単離された抗体は、1つ以上のアミノ酸領域、例えばLRMFSGTPVIRLRFKRLQPT(配列番号:3)、ElVGRVTSSGP(配列番号:4)、RNLVIKVN(配列番号:5)、DAVMKIAVA(配列番号:6)、ERGLYHLNLTVGIPFH(配列番号:7)及びWLNGEDTTIQETVVNRM(配列番号:8)、に含まれる又は前記アミノ酸領域によって提供されるエピトープに結合する。
【0079】
さらに一部の他の実施形態において、本発明の単離された抗体は、GAS6のL295−T317、E356−P372、R389−N396、D398−A406、E413−H429及びW450−M468の領域内に含まれる又は前記領域内の少なくとも1、2、3、4、5又は6つのアミノ酸によって提供されるエピトープに結合する。さらに一部の他の実施形態において、本発明の単離された抗体は、LRMFSGTPVIRLRFKRLQPT(配列番号:3)、ElVGRVTSSGP(配列番号:4)、RNLVIKVN(配列番号:5)、DAVMKIAVA(配列番号:6)、ERGLYHLNLTVGIPFH(配列番号:7)及びWLNGEDTTIQETVVNRM(配列番号:8)の領域内に含まれる又は前記領域内の少なくとも1、2、3、4、5又は6つのアミノ酸によって提供されるエピトープに結合する。
【0080】
なお一部の他の実施形態において、本発明の単離された抗体は、野生型AXL又は本発明のsAXL変異体とGAS6の間の結合を阻害出来る、前記結合を阻害する、又は前記結合と競合する。
【0081】
本発明によると、本発明のsAXL変異体と単離された抗体の両方は、治療応用に、例えば人間の処置に、適する医薬組成物で提供され得る。一部の実施形態において、本発明の医薬組成物は、本発明の1つ以上の治療エンティティー、例えばGASに対するsAXL変異体及び/若しくは単離された抗体又はそれらの医薬的に許容され得る塩、エステル若しくは溶媒和物或いはそれらの任意のプロドラッグ、を備えている。一部の実施形態において、本発明の医薬組成物は、別の細胞傷害剤、例えば別の抗腫瘍剤、との組み合わせで本発明の1つ以上の治療エンティティーを備えている。さらに一部の他の実施形態において、本発明の医薬組成物は、別の医薬的に許容され得る賦形剤との組み合わせで本発明の1つ以上の治療エンティティーを備えている。
【0082】
なお一部の他の実施形態において、本発明の治療エンティティーは、活性治療薬、すなわち、と様々な他の医薬的に許容され得る成分とを含む医薬組成物として、多くの場合、投与される。(Remington’s Pharmaceutical Science、第15版、Mack Publishing Company、Easton、Pa.、1980参照)。好ましい形態は、所期の投与方式及び治療応用に依存する。前記組成物は、所望される調合物に依存して、医薬的に許容され得る非毒性担体又は希釈剤も備えていることがあり、前記担体又は希釈剤は、動物又はヒトへの投与用の医薬組成物を調合するために一般に使用されるビヒクルと定義される。前記希釈剤は、併用物の生物活性に影響を及ぼさないように選択される。そのような希釈剤の例は、蒸留水、リン酸緩衝生理食塩水、リンガー溶液、デキストロース溶液及びハンクス溶液である。加えて、前記医薬組成物又は調合物は、他の担体、アジュバント又は非毒性、非治療用、非免疫原性安定剤及びこれらに類するものを備えていることもある。
【0083】
なお一部の他の実施形態において、本発明の医薬組成物は、タンパク質、多糖類、例えばキトサン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸及びコポリマー(例えば、ラテックス官能化Sepharose(商標)、アガロース、セルロース、及びこれらに類するもの)、ポリマーのアミノ酸、アミノ酸コポリマー並びに脂質凝集体(例えば、油滴又はリポソーム)などの、大きい、ゆっくりと代謝される高分子を備えていることもある。加えて、これらの担体は、免疫刺激剤(すなわち、アジュバント)として機能することが出来る。
【0084】
本発明のさらにもう1つの態様に従って、AXLシグナル伝達経路及び/又はGAS6シグナル伝達経路を阻害することによって腫瘍転移又は腫瘍浸潤を処置する、低減する又は予防するための方法を提供する。一部の実施形態において、本発明の方法は、AXLの活性、GAS6の活性、又はAXLとGAS6の相互作用を阻害することを包含する。例えば、AXL又はGAS6の活性は、遺伝子発現レベル、mRNAプロセッシングレベル、翻訳レベル、翻訳後レベル、タンパク質活性化レベルなどで阻害され得る。一部の他の例おいて、AXL又はGAS6の活性は、小分子、生体分子、例えばポリペプチド、ポリヌクレオチド、抗体、抗体薬物コンジュゲートなど、によって阻害され得る。一部の他の例において、AXL又はGAS6の活性は、本発明の1つ以上のsAXL変異体又は単離された抗体によって阻害され得る。
【0085】
さらに他の実施形態において、本発明の方法は、治療有効量又は有効用量の本発明の治療エンティティー、例えば、AXL活性若しくはGAS6活性の阻害剤、又はAXLとGAS6の間の相互作用の阻害剤、を治療の必要がある被験者に投与することを包含する。一部の実施形態において、本明細書に記載する、例えば転移性癌の処置のための、本発明の治療エンティティーの有効用量は、投与の手段、ターゲット部位、患者の生理状態、患者がヒトであるのか動物であるのか、施される他の薬物療法、及び処置が予防的であるのか治療的であるのかをはじめとする多くの異なる要因に依存して変わる。通常、患者はヒトであるが、トランスジェニック哺乳動物をはじめとする非ヒト哺乳動物も処置されることがある。処置投薬量は、安全性及び効力を最適にするためにタイトレーションを必要とする。
【0086】
一部の実施形態において、前記投薬量は、約0.0001から100mg/kg宿主体重、及びより通常は0.01から5mg/kg宿主体重の範囲であり得る。例えば、投薬量は、1mg/kg体重、若しくは10m/kg体重、又は1−10mg/kgの範囲内であってもよい。例示的処置レジメは、2週間ごとに1回、又は1ヶ月に1回、又は3から6ヶ月ごとに1回の投与を伴う。本発明の治療エンティティーは、通常は幾度も投与される。単回投薬間の間隔は、週1回、月1回又は年1回であってもよい。間隔は、患者における治療エンティティーの血中レベルを測定することによって示されることに応じて不規則であってもよい。或いは、本発明の治療エンティティーは、徐放調合物として投与されることがあり、この場合、より少ない頻度での投与が求められる。投薬量及び頻度は、患者におけるそのポリペプチドの半減期に依存して変わる。
【0087】
予防応用の場合、比較的低い投薬量が長期間にわたって比較的低い頻度間隔で投与される。一部の患者は、残りの寿命にわたって処置を受け続ける。治療応用の場合、疾患の進行が低減又は終結されるまで、好ましくは、患者が疾患の症状の部分的な又は完全な改善を示すまで、比較的短い間隔で比較的高い用量が時として必要とされる。その後、患者は、予防レジメを施されることがある。
【0088】
なお他の実施形態において、本発明の方法は、卵巣癌、乳癌、肺癌、肝臓癌、結腸癌、胆嚢癌、膵臓癌、前立腺癌及び/又は膠芽腫の腫瘍転移又は腫瘍浸潤の処置、低減又は予防を包含する。
【0089】
なおさらに一部の他の実施形態では、予防応用のために、疾患又は容態に罹患しやすい又は別様に疾患又は容態のリスクを有する患者に、その疾患のリスクの消失若しくは低減、その疾患の重症度の低下、又はその疾患の発症の遅延に十分な量で、医薬組成物又は薬物が投与され、前記疾患は、その疾患の生化学的、組織学的及び/又は行動的症状、その合併症、並びにその疾患の発生中に提示される中間的病的表現型を包含する。
【0090】
なおさらに一部の他の実施形態では、治療応用のために、そのような疾患に罹患しやすい又はすでに罹患している患者に、その疾患の(生化学的、組織学的及び/又は行動的)症状の治癒又は少なくとも部分的阻止に十分な量で、本発明の治療エンティティーが投与され、前記疾患は、その合併用及びその疾患の発生中の中間的病的表現型を包含する。治療的又は予防的処置を遂行するために妥当な量は、治療又は予防有効量と定義される。予防及び治療レジメ両方において、薬剤は、通常、十分な応答が達成されるまで幾度かの投薬で投与される。典型的には、その応答がモニターされ、癌の再発があると反復投薬が施される。
【0091】
本発明によると、転移性癌の処置のための組成物は、非経口、局所、静脈内、腫瘍内、経口、皮下、動脈内、頭蓋内、腹膜内、鼻腔内又は筋肉内手段によって投与されることがある。最も典型的な投与経路は静脈内又は腫瘍内経路であるが、他の経路も同じく有効である。
【0092】
腹膜内投与のための本発明の組成物は、水、油、食塩水、グリセロール又はエタノールなどの滅菌液であってもよい製薬用担体を伴う生理的に許容され得る希釈剤中の物質の溶液又は懸濁液の注射用投薬量として投与されることがある。加えて、湿潤又は乳化剤、界面活性剤、pH緩衝物質及びこれらに類するものなどの補助物質が組成物中に存在することがある。医薬組成物の他の成分は、石油、動物、植物又は合成起源のもの、例えば落花生油、大豆油及び鉱物油、である。一般に、プロピレングリコール又はポリエチレングリコールなどのグリコールは、特に注射用溶液のための、液体担体として好ましい。抗体は、活性成分の徐放を可能にするような様式で調合され得るデポー注射又はインプラント製剤の形態で投与されることがある。例示的組成物は、HClでpH6.0に調整された、50mM L−ヒスチジンと150mM NaClとから成る水性バッファー中で調合された5mg/mLのモノクローナル抗体を含む。
【0093】
典型的に、組成物は、注射剤として、水溶液又は水性懸濁液いずれかとして、調製される;注射前の液体ビヒクルへの溶解又は懸濁に適する固体形態も調製され得る。前記製剤は、上で論じたように、アジュバント効果強化のために乳化される又はリポソーム若しくは微粒子、例えばポリラクチド、ポリグリコリド若しくはコポリマー、に封入されることもある。Langer、Science 249:1527、1990及びHanes、Advanced Drug Delivery Reviews 28:97−119、1997。本発明の薬剤は、活性成分の徐放又は拍動放出を可能にするような様式で調合され得るデポー注射又はインプラント製剤の形態で投与されることがある。
【0094】
他の投与方式に適する追加の調合物としては、経口、鼻腔内及び肺用調合物、坐剤及び経皮塗布薬が挙げられる。
【0095】
坐剤のための結合剤及び担体としては、例えば、ポリアルキレングリコール又はトリグリセリドが挙げられる;そのような坐剤は、0.5%から10%、好ましくは1%−2%の範囲で活性成分を含有する混合物から形成されることがある。経口調合物は、製薬グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース及び炭酸マグネシウムなどの賦形剤を備えている。これらの組成物は、溶液、懸濁液、錠剤、ピル、カプセル、徐放性調合物又は粉末の形態をとり、及び10%−95%、好ましくは25%−70%の活性成分を含有する。
【0096】
局所適用は、結果として経皮又は皮内送達を生じさせることが出来る。局所投与は、前記薬剤とコレラ毒素又はその解毒誘導体若しくはサブユニット又は他の類似の細菌毒素との共同投与によって助長されることがある。Glenn et al.、Nature 391:851、1998。共同投与は、それらの成分を混合物として使用することによって、又は化学的架橋若しくは融合タンパク質としての発現により得られる連結分子として使用することによって、達成され得る。
或いは、経皮送達は、皮膚パッチを使用して又はトランスフェロソームを使用して達成され得る。Paul et al.、Eur.J.Immunol.25:3521−24、1995;Cevc et al.、Biochem.Biophys.Acta 1368:201−15、1998.
【0097】
一般に、前記医薬組成物は、無菌の、実質的に等張性のものとして、及び米国食品医薬品局(U.S.Food and Drug Administration)のすべての適正製造規範(Good Manufacturing Practice:GMP)に完全に従って調合される。
【0098】
好ましくは、本明細書に記載する治療有効用量の抗体組成物は、実質的毒性を生じさせることなく治療的恩恵をもたらすであろう。
【0099】
本明細書に記載するタンパク質の毒性は、細胞培養又は実験動物での標準的製薬学的手順により、例えばLD50(集団の50%に致死的な用量)又はLD100(集団の100%に致死的な用量)を決定することにより、判定され得る。毒性効果と治療効果の間の用量比が治療指数である。これらの細胞培養アッセイ及び動物研究から得られるデータは、人間での使用のために毒性でない投薬量範囲を公式化する際に使用され得る。本明細書に記載するタンパク質の投薬量は、毒性が殆ど又は全く無い有効用量を含む循環濃度範囲内に好ましくは存する。前記投薬量は、利用される剤形及び利用される投与経路に依存してこの範囲内で変動し得る。正確な調合、投与経路及び投薬量は、患者の容態を考慮して個々の医師により選択され得る(例えば、Fingl et al.、1975、In:The Pharmacological Basis of Therapeutics、Ch.1を参照のこと)。
【0100】
本発明の組成物(例えば、可溶性AXL変異体及びそれらの調合物)と使用のための説示とを含むキットも本発明の範囲内である。前記キットは、少なくとも1つの追加の試薬をさらに含有することがある。典型的に、キットは、そのキットの内容物の所期の用途を示すラベルを備えている。用語ラベルは、キット上に若しくはキットと共に供給される、又はキットに別様に付随する任意の記載又は記録材料を包含する。
【0101】
本発明のさらにもう1つの態様に従って、興味のある被験体からの生体試料におけるAXL活性又はGAS6活性のレベルを検出及び/又は判定することにより腫瘍浸潤及び/又は転移を被る腫瘍の能力を判定するための方法を提供する。一部の実施形態において、AXL活性又はGAS6活性のレベルは、mRNA発現のレベル、タンパク質発現のレベル、タンパク質活性化のレベル、又はAXL若しくはGAS6の活性に直接若しくは間接的に対応する任意の適する指標によって測定される。一部の実施形態において、生体試料中のAXL活性又はGAS6活性のレベルは、所定のレベル、例えば、腫瘍浸潤若しくは腫瘍転移を発生していない腫瘍からの又は正常組織からの試料の集団に基づいてAXL活性又はGAS6活性の正常レベル又は範囲を確立することにより得られた標準レベルと、さらに比較される。例えば、所定のレベル又は標準レベルに比してのAXL活性又はGAS6活性の増加は、腫瘍浸潤又は腫瘍転移を被る腫瘍の素質を示す。
【0102】
本明細書に引用するすべての出版物及び特許は、それぞれの個々の出版物又は特許が参照により組み込まれていると具体的にかつ個々に示されているかのごとく、参照により本明細書に組み込まれており、並びにそれらの出版物が引用されている関係でそれらの方法及び/又は材料を開示及び記載するために参照により組み込まれている。いずれの出版物についての引用も、本出願日前のその開示についてのものであり、並びに先行発明のために本発明がそのような出版物に先行する資格が無いことの承認と解釈されるべきものではない。さらに、提供する出版物の日付は、実際の出版日と異なることがあり、実際の出版日は独自に確認されることが必要である場合がある。
【0103】
本開示を読むことで当業者にはわかるであろうが、本明細書において説明及び例証する個々の実施形態のそれぞれは、本発明の範囲又は精神から逸脱することなく他の幾つかの実施形態のいずれかについての特徴から容易に分離され得る又は前記特徴と容易に組み合わせられ得る、別個の成分及び特徴を有する。列挙されている任意の方法は、列挙されている事象の順序で行われることがあり、又は理論的に可能である任意の他の順番で行われることがある。以下では、本発明の部分を例証するために実施例が説明される。
実験
【実施例1】
【0104】
AXLシグナル伝達の治療的遮断は転移性腫瘍進行を阻害する
転移性疾患のための治療ターゲットとしてのAXLの実証はほぼ手つかずであり、より重要なこととして、AXLターゲティングのインビボ相関現象は実証されていない。本発明者らは、AXLがヒト乳及び卵巣癌患者における転移のマーカーであること、並びにこれらの患者における疾患の重症度が原発性腫瘍におけるAXLタンパク質の量と相関することを証明する。最も重要なこととして、本発明者らは、転移が既に存在するマウスにおいて可溶性AXLエクトドメインの投与により腫瘍転移がうまく処置され得ることを証明する。メカニズム的には、転移性疾患を有する動物におけるAXLシグナル伝達の阻害は、減少した浸潤及びMMP活性を生じさせる結果となる。本発明者らの発見は、可溶性AXLエクトドメインの投与による腫瘍細胞におけるAXLシグナル伝達カスケードの阻害が転移性腫瘍進行の阻害に十分であることを実証する。
【0105】
この研究において、本発明者らは、AXLがヒト癌における転移の肝要な要因であるかどうか、及びAXLシグナル伝達の治療的遮断が転移性疾患にとって有効な処置であり得るかどうかを試験した。本発明者らは、転移性乳及び卵巣癌の開始及び進行におけるAXLの役割を直接評定するために遺伝学的アプローチと治療的アプローチの両方を利用する。
【0106】
AXLは、ヒト癌における腫瘍進行及び転移のマーカーである。本発明者らは、先ず、乳又は卵巣癌を有する患者からの正常組織、原発性腫瘍及び転移におけるAXL発現を比較した。乳癌に隣接する正常な検体の100%において、乳房上皮細胞は、AXLの拡散した細胞質及び核染色を示し、これは、AXLが膜結合受容体であることにかんがみてバックグラウンド染色であると考えられた(n=27、図1A)。しかし、原発性乳房腫瘍では、腫瘍上皮における膜AXL染色が、悪性度1検体の25%(1/4)、悪性度2検体の76%(10/13)及び悪性度3検体の100%(18/18)に存在した(図1A及び表1)。加えて、AXLは、リンパ節転移の88%(8/9)において発現された。
【0107】
漿液性卵巣癌検体に関しては、先ず正常卵巣表層上皮(OSE)におけるAXL発現を検査した。卵巣腫瘍の大部分はこれらの細胞から生ずると考えられるからである。正常OSEを保持した卵巣癌患者試料では、AXLが検体の0%(0/5)において発現された(図1B)。対照的に、原発性腫瘍上皮における膜AXL染色は、病期II患者試料の66%(6/9)及び病期III患者試料の83%(53/64)に存在した(図1B及び表I)。加えて、網及び腹膜などの共通転移部位からの腫瘍試料は、それぞれ検体の75%(24/32)及び90%(23/30)において高いAXL発現を示した(図1B及び表I)。これらの発見は、原発腫瘍内でのAXL発現が、進行した疾患及び転移性腫瘍において示されるので、転移と相関することの証拠となる。さらに、これらのデータは、ヒト乳及び卵巣癌に由来する転移が高レベルのAXLを発現することの証拠となる。
【0108】
AXLは、腫瘍転移の肝要な要因である。転移におけるAXLの機能的役割を検査するために、本発明者らは、乳及び卵巣転移のマウスモデルにおいてAXLを阻害する遺伝学的アプローチを利用した。このために、本発明者らは、高レベルのAXL発現を有する転移性細胞系を同定するためにヒト乳及び卵巣癌細胞系のパネルをAXLタンパク質発現についてスクリーニングした。本発明者らの臨床的発見に類似して、AXLは、転移性乳(NCI−ADR−RES、MDA−231、HS 578T、BT−549)及び卵巣(SKOV3、OVCAR−8、ES−2、MESOV、HEYA8)細胞系の大部分において高度に発現され、これに対して転移の可能性が低い細胞系ではAXLが検出不能な又は低いレベルで発現された(MCF7、MDA−MB435、T47D、IGROV1、OVCAR−3;図9)。AXL欠損転移性乳房(MDA−231)及び卵巣(SKOV3ip.1及びOVCAR−8)細胞系は、以前に記載されたAXL shRNAターゲティング配列を使用して産生された。ウエスタンブロット分析は、shAXLターゲティング配列を発現する細胞が、スクランブル対照shRNAターゲティング配列を発現する細胞と比較して5%未満のAXLタンパク質を発現することを裏付けた(shSCRM、図9B)。
【0109】
乳房腫瘍転移の後期におけるAXLの役割を直接評定するために、本発明者らは、ヌードマウスの尾静脈にAXL−野生型(shSCRM)及びAXL欠損(shAXL)MDA−231細胞を注射し、第28日に肺における腫瘍量を評価した。肺の顕微鏡評価は、shRNAスクランブル(shSCRM)MDA−231細胞を注射した5/5マウスが、AXLについて陽性の着色した転移性病巣を発生させることを明らかにした(図2A)。対照的に、shRNA AXL(shAXL)を注射した0/5マウスは、組織学的評価に基づき、肺転移を発生させた(図2A)。これらのマウスの肺における腫瘍量を定量するために、本発明者らは、ヒトGAPDHについての実時間PCR分析を行った。図2Aは、shSCRM MDA−231細胞を注射されたマウスの肺が高レベルのヒトGAPDHを発現したことを明示しており、これは、MDA−231に由来する転移性病変の存在を示す。加えて、shSCRM注射マウスは肺においてヒトAXLを発現した。これは、AXL陽性腫瘍細胞の存在を示唆する(図2A)。対照的に、shAXL腫瘍細胞を注射したマウスは、肺においてヒトGAPDH又はAXLを発現しなかった。これらの発見は、AXLの遺伝的不活性化が、このモデルにおける肺転移形成の完全抑制に十分であることを実証する。
【0110】
AXLの遺伝的不活性化がインビボで転移する卵巣癌細胞の能力に影響を及ぼすかどうかを判定するために、本発明者らは、卵巣癌の腹膜異種移植片モデルを使用して転移を形成するshSCRM及びshAXL SKOV3ip.1細胞の能力を比較した。このモデルは、ヒト卵巣転移の腹膜播種を反復し、マウスは、SKOV3ip.1細胞の腹膜注射後に腹水と腸間膜、横隔膜、肝臓及び他の腹膜表面に付着した100より多くの小さな転移性病変とから成る進行性疾患を急速に発生させる(図3B)。SKOV3ip.1腹膜転移におけるAXL発現の免疫組織化学的分析は、ヒト卵巣転移に類似してAXLがSKOV3ip.1転移病変において高度に発現されることを明らかにした。このことは、これが卵巣転移におけるAXLの役割を調査するための妥当なモデル系であることを示している(データを示さない)。shSCRM及びshAXL細胞の腹膜注射の28日後、shSCRMマウスは、マウスを犠牲にすること及びshSCRM注射マウスとshAXL注射マウスの間の腫瘍量の変化を調査することを本発明者らに余儀なくさせる、重篤な腹水及び病的状態の徴候を提示した。shSCRM細胞を注射したマウスは、腹水及び>100の腹膜転移を発生させたが、shAXL細胞を注射したマウスは、殆ど転移を発生させなかった(図2B)。5mmより大きいサイズの腹膜転移の平均数は、shSCRM注射マウスにおける13.4+/−4.3からshAXL注射マウスにおける0.8+/−0.5へと有意に低減された(図2B)。類似して、これらの腫瘍の平均重量は、shSCRM注射マウスにおける236+/−74mgからshAXL注射マウスにおける39.2+/−18mgへと有意に低減された(図2B)。これらの発見を支持して、OVCAR−8細胞におけるAXL発現のノックダウンは、総卵巣腹膜腫瘍質量及び腫瘍数を有意に阻害した(図2C)。まとめると、これらの発見は、AXLが乳及び卵巣腫瘍転移についての肝要な要因であることを実証する。
【0111】
インビボでの転移形成におけるAXLの重要な役割にかんがみて、次に、本発明者らは、AXLが転移を特異的に調節するかどうか、又はAXLが腫瘍細胞増殖及び成長の調節に一般的役割を果たすかどうかを判定しようと努めた。これらの問題に取り組むために、本発明者らは、ALX野生型(shSCRM)細胞とAXL欠損(shAXL)細胞の間の総細胞数が10−14日の期間にわたって計数されるインビトロ増殖アッセイを行った。本発明者らは、shSCRM細胞とshAXL MDA−231、SKOV3ip.1又はOVCAR−8細胞の間に細胞成長の有意な差を見出さなかった(図3)。類似して、shSCRM細胞とshAXL細胞の間に同所性MDA−231又は皮下SKOV3ip.1腫瘍成長の有意な差は観察されなかった(図3)。これらの発見は、AXLが腫瘍細胞増殖又はインビボでの皮下成長に求められないことを示している。全体的にみて、本発明者らの発見は、AXLが乳房及び卵巣腫瘍における腫瘍転移を特異的に調節することを示している。
【0112】
AXLは、腫瘍細胞浸潤を調節する。AXL媒介転移についての可能性のあるメカニズムを決定するために、本発明者らは、不偏アプローチを採用し、増殖、浸潤、遊走、接着及び生存をはじめとする転移カスケードに関連した肝要な細胞機能におけるAXLの役割を直接比較した。本発明者らは、shAXL MDA−231、SKOV3ip.1及びOVCAR−8細胞が、I型コラーゲンを通って浸潤する能力が有意に損なわれることを発見した(図4A)。本発明者らは、shAXL細胞における細胞遊走のささやかな減少も観察したが、ECMタンパク質への接着又は血清除去後の生存の差を見出すことは出来なかった。これは、この転移カスケードにおいて主としてAXLが浸潤に影響を及ぼすことを示す。
【0113】
分子レベルで、MMP−9は、最近、乳癌細胞におけるAXL媒介浸潤のエフェクターとして同定された。従って、本発明者らは、MMP−9発現又は活性がAXL欠損卵巣腫瘍細胞においても改変されるかどうかを調査した。SKOV3ip.1細胞はMMP−9を発現しないが、本発明者らは、MMP−2がこれらの細胞において高度に発現されること及びMMP−2 mRNAがshAXL細胞において有意に減少されることを発見した(図4B)。MMP−2ルシフェラーゼ・レポーター・アッセイは、MMP−2プロモーター活性がshSCRM細胞と比較してshAXL細胞において有意に減少されることを明らかにした。このことは、AXLが転写レベルでMMP−2を調節することを示している(図4C)。ゼラチン・ザイモグラフィー・アッセイは、MMP−2分泌タンパク質レベルもshSCRM SKOV3ip.1細胞と比較してshAXL細胞において有意に低減されることを示した(図4D)。まとめると、これらの発見は、ヒト卵巣癌細胞におけるMMP−2発現及び活性の上流調節剤としてのAXLについての役割を示唆している。
【0114】
次に、本発明者らは、AXL媒介MMP−2発現に関与するシグナル伝達経路を解明しようと努めた。GAS6によるAXLの活性化は、PI3K、RAS、MAPK、SRC及びPLCをはじめとする多数の細胞内シグナル伝達経路を直接誘導することが報告されている。これらの経路の中で、PI3Kシグナル伝達経路が卵巣癌細胞におけるMMP−2発現及び浸潤を調節することは証明されている。PI3Kシグナル伝達がSKOV3ip.1細胞においてAXLの喪失による影響を受けるかどうかを判定するために、本発明者らは、AXL野生型及びAXL欠損SKOV3ip.1細胞におけるSer473でのホスホ−AKT(P−AKT)についてのウエスタンブロット分析を行った。本発明者らは、shSCRM SKOV3ip.1細胞と比較してshAXL細胞においてP−AKT発現の非常に大きな阻害を見出した(図4E)。加えて、PI3K阻害剤Ly294002での処置がGAS6誘導P−AKT発現を完全に排除するので、飢餓SKOV3ip.1細胞のGAS6刺激はP−AKTのPI3K依存性誘導を生じさせた(図4E)。PI3K経路がAXL媒介MMP−2発現に関与するかどうかを判定するために、本発明者らは、GAS6及びLy294002の存在下でMMP−2ルシフェラーゼ・レポーター・アッセイを行った。GAS6刺激の結果として起こるMMP−2プロモーター活性の誘導は、LY294002処置によって完全に遮断された。このことは、GAS6/AXLシグナル伝達がPI3Kシグナル伝達事象によってMMP−2発現を調節することを示唆している(図4F)。
【0115】
AXLの治療的阻害は、マウスにおける転移性腫瘍進行を有意に抑制する。本発明者らの発見は、AXLが転移にとって肝要な要因であることをこれまでに実証しており、治療的遮断が転移性疾患のための有効な処置であり得るという仮説を支持する。この仮説を考査するために、本発明者らは、AXLシグナル伝達を阻害するための治療戦略として可溶性AXLエクトドメインを利用した。可溶性AXLエクトドメインは、おとり受容体として機能的に作用し、並びにインビトロ及びインビボでGAS6をナノモルの親和性で結合することが以前に証明されている(図5A)。本発明者らは、先ず、可溶性AXLエクトドメインでの処置が転移性腫瘍細胞におけるAXLシグナル伝達及び浸潤の阻害に十分であるかどうかを検査した。PI3K/AKTシグナル伝達は、様々な細胞タイプにおいてAXLによって調節される。本発明者らは、SKOV3ip.1細胞においてPI3K/AKTシグナル伝達がGAS6/AXLシグナル伝達によって調節されること、及びGAS6処置SKOV3ip.1細胞において可溶性AXLエクトドメイン(sAXL)での処置がPI3K/AKT活性化を低減出来たことを発見した(図5B及びC)。類似して、コラーゲン中のMDA−231細胞のsAXLでの処置は、細胞浸潤の劇的な低減に十分であった。このことは、sAXL処置がインビトロでAXLシグナル伝達及び浸潤に影響を及ぼすことを示唆している(図5D)。
【0116】
本発明者らは、次に、卵巣癌の高転移性モデルにおいてsAXL処置が転移性腫瘍進行に影響を及ぼすかどうかを検査した。本発明者らは、先ず、ヌードマウスにおいてSKOV3ip.1転移性病変を確立し(第1日)、肉眼的病変の検証後、第7日にsAXLでの処置を開始した。肝臓が注射後28日までの間sAXLタンパク質の全身生産量をマウスの血清に放出するsAXL療法が、アデノウイルス系を使用して果たされた(図6A)。第28日における腫瘍量の肉眼分析は、sAXL療法を受けたマウスがFc対照療法で処置されたマウスと比較して腫瘍量の有意な(p<0.01)低減を有したことを明らかにした。SKOV3ip.1腫瘍モデルにおいて、総腫瘍重量及び腫瘍数は、Fc処置マウスと比較してsAXLで処置したマウスにおいて63%減少された(図6B)。類似して、OVCAR−8モデルにおいて、総腫瘍重量及び腫瘍数は、有意にそれぞれ47%及び42%減少した(図11)。本発明者らは、実時間PCR分析によってSKOV3ip.1におけるMMP2発現レベルを検査し、Fc対照処置マウスと比較してsAXL処置マウスの腫瘍においてMMPレベルが有意に減少されることを発見した(図6C)。これらの結果は、単剤AXL療法が、確立された疾患を有するマウスにおける転移性腫瘍量の有意な低減に十分であることの証拠となる。加えて、本発明者らの発見は、転移性腫瘍成長に対するAXLの治療効果が、少なくとも一部はMMP活性の調節による浸潤の阻害を伴うだろうことを示唆している。
【0117】
MMPをターゲットにする以前の抗転移阻害剤は、正常組織毒性に対して有意な影響を及ぼすことが証明されていることにかんがみて、本発明者らは、21日間sAXL療法で処置したマウスにおける正常組織毒性の総合分析を行った。本発明者らは、sAXL又はFc療法で処置したヌードマウスにおいて行動異常、肉眼的異常及び顕微鏡的異常を観察しなかった(図7)。
【0118】
浸潤及び遊走は、腫瘍転移の病理発生に寄与する重要な細胞内因特性である。これらのプロセスをターゲットにする治療薬は、転移を阻害するための有用な戦略であり得、及び転移性疾患を有する患者に臨床的恩恵をもたらすことが出来ると仮定した。この報告において、本発明者らは、受容体チロシンキナーゼAXLが腫瘍細胞浸潤及び転移を支配する肝要な要因であることを実証する。最も重要なこととして、本発明者らは、転移性疾患が既に存在するマウスにおいて可溶性AXL受容体を使用するAXLシグナル伝達の治療的遮断が転移性腫瘍進行の有意な阻害に十分であることを証明する。メカニズム的には、本発明者らの研究は、可溶性AXL療法が、少なくとも一部はMMP活性及び浸潤の阻害により腫瘍転移を阻害することを示す。最後に、本発明者らは、本発明者らの発見の臨床的重要性を強調するために、ヒト卵巣及び乳癌患者からの転移及び進行期原発性腫瘍においてAXLが高度に発現されることを証明する。
【0119】
AXLがヒト癌における転移についての肝要な要因であること、及びAXLシグナル伝達の治療的遮断が転移性疾患のための有効な処置であることを、本明細書において実証する。ここで、本発明者らは、乳及び卵巣癌患者からの転移及び進行期原発性腫瘍試料においてAXLが高度に発現されることを実証する。本発明者らは、ヌードマウスモデルを使用する疾患を用いて、AXLが転移性乳及び卵巣癌の開始に肝要であることを遺伝学的に実証する。最も重要なこととして、本発明者らは、高特異的で非毒性の可溶性AXL受容体を抗AXL療法として開発済みであり、転移性疾患が既に存在するマウスにおいて可溶性AXL受容体療法が転移性腫瘍進行の有意な阻害に十分であることを実証する。本発明者らの発見は、腫瘍細胞におけるAXLシグナル伝達カスケードの阻害が転移性疾患の開始と進行の両方を遮断出来ることを実証する。本発明者らのデータは、進行した及び転移性の乳及び卵巣癌のための新規治療ターゲットとしてAXLを関係づけ、及び抗AXL療法が転移性疾患の開始と進行の両方を制御出来ることを示唆する。
【0120】
MMPは、腫瘍細胞浸潤及び転移の調節に重要な役割を果たす。しかし、腫瘍細胞がMMP活性を誘導するメカニズムは、依然として不明である。MMP発現は、ヒト癌において増加され、腫瘍進行及び不良な患者生存と相関する。MMPにおける遺伝子増幅及び活性化突然変異はヒト癌では滅多に見いだされず、このことは、他の要因が癌におけるMMP発現増進の原因であることを示唆している。本発明者らのデータは、MMP−2発現がヒト卵巣癌細胞において転写レベルでAXLによって調節されることの証拠を提供する。AXLがMMP−2発現を調節する正確なメカニズムは依然として確定されていないが、本発明者らは、PI3K経路の薬理学的阻害がGAS6刺激細胞においてMMP−2プロモーター活性を低減することを実証する。これは、PI3K経路についての役割を示している(図8)。重要なこととして、本発明者らの結果は、AXLの治療的遮断が腫瘍におけるMMP活性を阻害するための有効で非毒性の戦略であり得るこを示している。広域スペクトルMMP阻害剤は、高い正常組織毒性レベルのため、癌試験では不首尾に終わった。本発明者らの発見は、抗AXL療法の予測副作用が最小であることを示している。本発明者らは、マウスにおける可溶性AXLエクトドメイン療法のアデノウイルス媒介送達に随伴する正常組織毒性を一切観察しなかった。さらに、生殖細胞系AXL及びGAS6ノックアウトマウスは生育可能であり、成体として表現型的に正常である。このことは、AXL又はGAS6が発育及び正常組織機能に求められないことを示唆している。
【0121】
本発明者らは、転移性卵巣癌の高転移性モデルにおいて単剤AXL療法が転移性腫瘍進行の阻害に十分であることを証明する。これらの発見には、卵巣癌の処置についての重要な臨床的含意がある。米国では毎年おおよそ14,600人が卵巣癌で死亡する。アバスチン(mAbターゲティングVEGF)及びタルセバ(小分子EGFRキナーゼ阻害剤)は進行及び再発卵巣癌の処置のために臨床試験中であるが、最近、卵巣癌の処置のためにFDAに認可された生物製剤は無い。卵巣癌のための標準的療法は、疾患を最適に減量する外科手術、続いての細胞傷害性白金−タキサン併用療法を含む。これらの努力にもかかわらず、卵巣癌と診断された患者の80パーセントは再発疾患を発生し、これらの患者のうちの30%しか診断の5年後に生存しない。
【0122】
本発明者らのデータは、AXL療法が進行及び再発卵巣癌の処置に有効なアジュバント療法であることを証明する。本発明者らの研究において用いた転移性卵巣腫瘍進行のモデルは、外科的減量術後のヒト患者における再発疾患の発生に似ている。本発明者らは、疾患が確立されたマウスにおいてAXL療法が転移性腫瘍量を63%低減出来ることを発見した。疾患進行中の新たな転移性病変の確立は、有意に低減された。この観察は、AXLが細胞増殖又は成長ではなく主として腫瘍細胞浸潤に影響を及ぼすことを実証する本発明者らの発見と一致する。考え合わせると、本発明者らの結果は、AXL療法が主に抗転移剤として機能すること及び現行の細胞傷害剤との併用療法として最も有効であり得ることを示している。
【0123】
まとめると、AXLは転移の肝要な要因であり、AXLシグナル伝達の遮断は転移において治療的恩恵を有する。これらの研究は、転移性疾患のための抗AXL療法にとって重要な前臨床データを提供する。
方法
【0124】
細胞系。卵巣SKOV3、SKOV3ip.1及びHEYA8細胞は、Gordon Mills博士(MD Anderson Cancer Center)から寄贈品として得られた。卵巣ES−2及びMESOV細胞は、Branimir Sikic博士(Stanford University)から寄贈品として得られた。MDA−231、OVCAR−3及びMCF−7細胞は、ATCCから購入された。IGROV−1及びOVCAR−8は、NCI−Frederic DCTD tumor cell line repositoryから購入された。細胞は、5%CO2インキュベーターにおいて10%熱不活性化ウシ胎仔血清と1%ペニシリンとストレプトマイシンとを補足した適切な培地中37℃で培養された。乳及び卵巣癌細胞系のNCI60パネルからの細胞ペレットは、Giovani Melillo博士(NCI−Frederick)によって提供された。
【0125】
患者及び組織マイクロアレイ。ヒト乳房組織マイクロアレイは、US Biomax(BR1002)から購入された。卵巣ヒト組織マイクロアレイは、Stanford University Pathology Departmentから得られた。合計73のパラフィン包埋腫瘍試料は、1995から2001年のStanford Hospitalの事前に処置を受けていない卵巣癌患者から得られた。これらの原発性卵巣腫瘍試料は、患者1人につき2試料から成る組織マイクロアレイに組み立てられた。腹膜からの追加の30の腫瘍試料もこのマイクロアレイにおいて評価された。すべての患者は、漿液性卵巣癌を有し、病期分類情報は、世界産婦人科連合会(International Federation of Gynecology and Obsterics)基準に従って得られた。すべての検体及びそれらの対応する臨床情報は、Stanford Universityの施設内治験審査委員会によって承認されたプロトコルのもとで収集された。網からの32の転移病変を検査するために、追加の市販腫瘍マイクロアレイが使用された(US Biomax)。
【0126】
AXL免疫組織化学。パラフィン包埋組織スライドは、標準的な免疫組織化学的方法に従ってキシレンで脱パラフィンされ、再水和され、アンマスキングされた。AXL一次抗体(RandD Systems)は、1:500希釈で使用された。すべての試料についての陰性対照は、二次抗体のみを使用して投薬された。抗原−抗体複合体は、VECTASTAIN ABCシステム(Vector Laboratories)及びDAB Substrate Kit for Peroxidase(Vector Laboratories)を製造業者のプロトコルに従って使用して視覚化された。スライドはヘマトキシリンで対比染色された。腫瘍細胞の膜に関するAXL染色は、AXL発現について陽性の細胞の百分率によって顕微鏡で評点づけされた(不在は0、質が劣る試料は1、59−60%は2、及び61−100%は3)。
【0127】
レポーターアッセイ。1659bpのMMP−2プロモーターによって誘導されたMMP−2レポータープラスミドは、寄贈品であった。ルシフェラーゼ活性は、shSCRM及びshAXL SKOV3ip.1細胞においてDual−Glo Luciferase Assay試薬(Promega)によって判定され、Monolight 2010 Luminometer(Analytical Luminescence Laboratory)で測定された。ホタルルシフェラーゼ活性は、Renilla活性に正規化された。アッセイは、三重反復で行われ、2回繰り返された。
【0128】
一過的及びレトロウイルトランスフェクション。一過的DNAトランスフェクションは、Lipofectamine 2000(Invitrogen)を製造業者の説示に従って用いて行った。0.1μgのMMP−2 cDNA(OpenBiosystems)は、6ウエルディッシュにトランスフェクトされた。
【0129】
siRNA:AXL又をターゲットにするsiRNA配列又は対照は、Dharmaconから購入された。すべてのsiRNAトランスフェクションは、Dharmacon Smart PoolsとDharmafect 1トランスフェクション試薬(コロラド州ラファイエットのDharmacon)を製造業者のプロトコルに従って使用して行った。
【0130】
shRNA:AXL RNAの特異的分解のためのオリゴは、以前に記載された5’−GATTTGGAGAACACACTGA−3’として合成した。スクランブル配列は、非ターゲティングshRNA 5’−AATTGTACTACACAAAAGTAC−3’として使用された。これらのオリゴは、RNAi−Ready pSiren RetroQ(BD Bioscience)ベクターにクローン化され、これらのベクターを用いてSKOV3ip.1、MDA−231及びOVCAR−8細胞がレトロウイルスにより形質導入された。感染細胞は、ピューロマイシン(Sigma)で選択され、ポリクローナル集団は、ウエスタンブロット分析によってデクラーゼAXL発現レベルについて試験された。
【0131】
プラスミド。アミノ酸1−451に対応するAXLエクトドメインは、ヒトAXL cDNA(Open Biosystems)から増幅され、CMV駆動pADD2アデノウイルスシャトルベクターにクローン化された。Lipofectamin 2000(Invitrogen)を製造業者に従って用いて、対照ベクター又はAXL 1−451でのHCT116細胞への一過的DNAトランスフェクションが行われた。トランスフェクションの48−72時間後にならし培地が回収された。
【0132】
接着アッセイ。SKOV3ip.1 shSCRM及びshAXL細胞は、5um CMFDA(Molecular Probes)で蛍光標識された。細胞は洗浄され、非酵素的細胞解離バッファー(Gibco)を使用して剥離された。細胞(5×10e5)は96ウエルプレートにプレーティングされ、50ug/uLのI型コラーゲン(BD Bioscience)でプレコートされた。37℃での60分インキュベーション後、細胞は、注意深く5回洗浄された。蛍光分光光度計を使用して蛍光活性(励起、494nm;発光517nm)が測定された。
【0133】
I型コラーゲンへのSKOV3ip.1接着。SKOV3ip.1 shSCRM及びshAXL細胞は、5um CMFDA(Molecular Probes)で蛍光標識された。細胞は洗浄され、非酵素的細胞解離バッファー(Gibco)を使用して剥離された。細胞(5×10e5)は96ウエルプレートに三重反復でプレーティングされ、50ug/uLのI型コラーゲン(BD Bioscience)でプレコートされた。37℃での60分インキュベーション後、細胞は、注意深く5回洗浄された。蛍光分光光度計を使用して蛍光活性(励起、494nm;発光517nm)が測定された。
【0134】
ECMタンパク質へのMDA−231接着。MDA−231 shSCRM及びshAXL(0.5×10^6)細胞は、ラミニンとコラーゲンI及びIVとフィブロネクチンとフィブリノゲンとを含むECMタンパク質のアレイが入っているウエルに三重反復でプレーティングされた。細胞は37℃で1時間インキュベートされ、PBSで洗浄された。接着細胞は染色され、製造業者のプロトコル(CellBiolabs)に従ってOD560で定量された。
【0135】
遊走アッセイ。細胞遊走は、以前に記載されているようにインビトロで検査された。簡単に言うと、細胞は24時間、血清枯渇され、未コーティングインサート(BD Biosciences)上に三重反復で接種され(2.5×104細胞)、化学誘引物質としてFBSが入っているチャンバに移され、24時間インキュベートされた。非浸潤細胞を除去した後、膜の下側の細胞が固定され、染色され、計数された。それぞれの膜について5視野が計数された。遊走%は、次のように決定された:(shAXL細胞中の遊走する細胞の平均#/shSCRM細胞中の遊走する細胞の平均#)×100。実験は三重反復で行われ、3回繰り返された。
【0136】
コラーゲン浸潤アッセイ。コラーゲン浸潤アッセイは、以前に記載されているように行われた。簡単に言うと、533細胞は、48ウエルプレート上のI型コラーゲンにプレーティングされた。標準培地で又はならし対照培地若しくはsAXL−ならし培地を加えた培地で5−7日間、細胞が培養され、写真が撮られた。コラーゲンを通しての浸潤は、20X視野あたりの枝分かれ表現型を提示する腫瘍細胞の百分率を計算することによって定量された。1試料あたり3視野が計数された。実験は三重反復で行われ、3回繰り返された。
【0137】
ゼラチン基質ザイモグラフィー。SKOV3ip.1 shSCRM及びshAXL細胞は48時間、血清飢餓させられ、25,000細胞が96ウエルプレートにプレーティングされ、24時間後にならし培地が回収された。等体積のならし培地が、還元条件下で10%ザイモグラムゲル(Invitrogen)上を泳動された。電気泳動後、ゲルは、SDSを除去するために2.5%(v/v)Triton X−100中で洗浄され、50mM Tris−HCl、5mM CaCl2及び0.1% Triton X−100(pH7.8)中で洗浄され、一晩、37℃でインキュベートされた。40%メタノール及び10%氷酢酸に溶解された0.25%(w/v)Coomassie Brilliant Blue R250で30分間、ザイモグラムが染色された。ゲルは40%メタノール及び10%氷酢酸で変色させた。実験は三重反復で行われ、3回繰り返された。
【0138】
細胞増殖アッセイ。単層成長曲線のために、細胞(50,000)が60mmディッシュに三重反復でプレーティングされた。3日ごとに、細胞はトリプシン処理され、細胞計数器(Coulter counter)を使用して計数され、50,000細胞が再びプレーティングされ、計数された。
【0139】
XTT生存アッセイ。細胞生存度は、以前に記載されているようにXTTアッセイによって測定された。簡単に言うと、0.3mg/mL XTT及び2.65μg/mL N−メチルジベンゾピラジンメチルスルファートを伴うフェノールレッド不含培地と共に血清供給又は飢餓細胞(0、3、6及び7日)がインキュベートされた。それらの96ウエルプレートは、1から2時間、37℃インキュベーターに戻された。450nmでの吸収を測定することによってXTTの代謝が定量された。
【0140】
タンパク質単離及びウエスタンブロット分析。タンパク質溶解産物は、9M尿素、0.075M Trisバッファー(pH7.6)の中に採収された。タンパク質溶解産物は、ブラッドフォードアッセイを用いて定量され、標準法を用いる還元SDS−PAGEに付された。ウエスタンブロットは、AXLに対する抗体(RnadD Systems)、アルファチューブリンに対する抗体(Fitzgerald Antibodies)、AKTに対する抗体(Cell Signaling)、ホスホ−AKTに対する抗体(Cell Signaling)でプローブされた。
【0141】
GAS6刺激のために、細胞は24時間、血清飢餓させられた。その後、細胞は、400ng/mLのGAS6での15分間の処置の前に4時間、25umのPI3K阻害剤(Ly294002、Bio Mol Research Laboratory)で又はAXLエクトドメインを含有する100Lのならし培地で処置された。
【0142】
マウスの血清中でのsAXL発現の分析のために、各試料からの1.5Lの血清がゲル電気泳動によって分析された。
【0143】
アデノウイルスの産生及び生産。アミノ酸1−451に対応するAXLエクトドメインは、AXL cDNA(Open Biosystems)から増幅され、以前に記載されているような相同組み換え、続いての293細胞におけるアデノウイルス生産及びCsCl勾配精製によってE1−E3−Ad染色5のE1領域にクローン化された。sAXLアデノウイルスの生産及び精製は、以前に記載されているように行われた。マウスIgG2−Fc免疫グロブリン断片を発現する陰性対照ウイルスの産生及び生産は、以前に記載されている。
【0144】
腹膜異種移植片としてのSKOV3ip.1及びOVCAR−8細胞の成長。動物を伴うすべての手順及びそれらのケアは、施設内及びNIHガイドラインに従ってStanford Universityの施設内動物実験委員会(Institutional Amimal Care and Usage Committee)によって承認された。
【0145】
対照及びAXL SKOV3ip.1及びOVCAR−8細胞は、0.5mLのPBS中それぞれ1×106及び5×106細胞で雌ヌードマウスにi.p.注射された。犠牲にした後、腹水が定量され、転移病変が計数され、及び腫瘍重量を計量するためにすべての可視病変が切開され、除去された。
【0146】
SKOV3ip.1及びOVCAR−8親細胞は、0.5mLのPBS中それぞれ1×106及び5×106細胞で雌ヌードマウスにi.p.注射された。腫瘍細胞注射の7(SKOV3ip.1)又は14(OVCAR−8)日後、マウスは、尾静脈に、0.1mL PBS中のsAXL又は対照1.9×108アデノウイルスpfuを注射された。犠牲にした後、腹水が定量され、転移病変が計数され、及び総腫瘍重量を計量するためにすべての可視病変が切開され、除去された。
【0147】
組織毒性研究。SKOV3ip.1親細胞は、0.5mLのPBS中それぞれ1×106及び5×106細胞で雌ヌードマウスにi.p.注射された。腫瘍細胞注射の7日後、マウスは、尾静脈に、0.1mL PBS中のsAXL又は対照1.9×108アデノウイルスpfuを注射された。第28日にマウスは犠牲にされた。血液が採取され、Stanford Universityの比較医学科により、総合的代謝パネル及びCBC分析が行われた。肝臓、腎臓、脳及び脾臓をはじめとするすべての主要器官から組織試料が採取され、10%ホルマリンで固定され、パラフィンに包埋され、切片にされ、ヘマトキシリン及びエオシンで染色された。
【0148】
インビボ尾静脈転移アッセイ。対照及びAXL shRNA MDA−231細胞は、0.1mLのPBS中5×105細胞でヌードマウスの尾静脈に静脈内注射された。注射の4週間後、マウスは犠牲にされた。ヘマトキシリン及びエオシンで染色されたホルマリン固定、パラフィン包埋肺のそれぞれの断面を用いて、肺病巣の顕微鏡評価が行われた。大きな核を有する及びAXL発現について陽性である最低4つのヒト細胞での肺病巣の正確な同定が認定病理専門医によって確認された。全肺から単離されたRNAにおけるヒトGAPDH及びAXL発現の実時間PCR分析により、マウスの肺における腫瘍量が定量された。
【0149】
同所性腫瘍としてのMDA−231の成長。MDA−231細胞は、0.1mLのPBS中の107細胞の乳房脂肪体への皮内注射後の週齢6週雌ヌード(nu/nu)マウスにおいて、皮下同所性腫瘍として成長された。腫瘍は、38日の時間経過にわたってキャリパで測定された。容積は、次の式を用いて計算された:幅2×長さ×0.5。
【0150】
皮下腫瘍としてのSKOV3ip.1細胞の成長。0.1mLのPBS中の500万個の細胞が週齢6週雌ヌード(nu/nu)マウスの側腹部に皮下内植された。腫瘍は、45日の時間経過にわたってキャリパで測定された。容積は、次の式を用いて計算された:幅2×長さ×0.5。
【0151】
RNA及び実時間PCR分析。RNAは、トリゾールを製造業者のプロトコル(Invitrogen)に従って使用して、細胞及び組織から単離された。cDNAは、逆転写PCR用のSuperScriptファーストストランド合成システム(Invitrogen)を使用して、2μgのDNアーゼ(Invitrogen)処理RNAから合成された。SYBR GREEN PCR Master Mix(Applied Biosystems)を使用するPCR増幅に1マイクロリットルのcDNAが付された。特異的ターゲット遺伝子を増幅するために、次のプライマーセットが使用された:18S FWD:5−GCCCGAAGCGTTTACTTTGA−3 REV:5−TCCATTATTCCTAGCTGCGGTATC−3;AXL FWD:5−GTGGGCAACCCAGGGAATATC−3 REV:5−GTACTGTCCCGTGTCGGAAAG;GAPDH 5−ATGGGGAAGGTGAAGGTCG−3 REV:5−GGGGTCATTGATGGCAACAATA−3;MMP−2 FWD:5−GCCCCAGACAGGTGATCTTG−3 REV 5−GCTTGCGAGGGAAGAAGTTGT−3。PCR増幅は、Prism 7900 Sequence Detection System(Applied Biosystems)で行われた。用いた熱サイクリングプロフィールは、50℃で2分間及び95℃で10分間の変性、続いて95℃で15秒間及び60℃で1分間の変性サイクルであった。mRNAを正規化するために18Sが使用された。相対mRNA発現レベルは、相対標準曲線法を製造業者の説示(Applied Biosystems)に従って用いて決定された。
【0152】
統計解析。AXL発現と腫瘍形成及び転移との関連性についての検定は、フィッシャーの正確確率検定を用いて行われた。すべての他の統計検定は、スチューデントt検定を用いて行われた。<0.05のp値を有する値は、統計的に有意と見なされた。
【0153】
略記:GAS6、成長阻止特異的遺伝子6;MMP−2、マトリックスメタロプロテイナーゼ;EOC、上皮性卵巣癌;ECM、細胞外マトリックス;AKT、v−aktマウス胸腺腫ウイルス癌遺伝子ホモログ。
【0154】
表1.腫瘍パラメータに対するAXL染色の統計解析
【表1】
【実施例2】
【0155】
本発明者らは、アデノウイルス発現系を使用するマウスにおける野生型可溶性AXLの過発現による細胞AXLへのGAS6リガンド結合の阻害が、腫瘍数及びサイズによって測定して、未処置対照と比較して腫瘍量を減少させる結果となることを証明した。これは、前臨床マウスモデルにおいて転移の進行を阻害するための肝要なターゲット及び有効な戦略としてのGAS6及びAXLの重要性をさらに強調する。
【0156】
リガンドGAS6に対して高い親和性を有し、それによりそのリガンドを封鎖して内因性AXLシグナル伝達を減少させることが出来る、AXL細胞外ドメインの遺伝子操作可溶性変異体がここでは提供される。遺伝子操作変異体は、Gas6に対して、野生型AXLと比較して実質的に向上された親和性を有する。
【0157】
AXLの細胞外ドメインは、2つのIgG様ドメイン及び2つのフィブロネクチン様ドメインを含む。主要GAS6結合部位はIg1ドメイン内にあり、副次的GAS6結合部位はIg2ドメイン内にある。
【0158】
主要結合部位の親和性をさらに強化するために、本発明者らは、AXL SwissPortエントリーP30530に対応する19−132の切断点を有するIg1ドメインを遺伝子工学で作製した。標準的な分子生物学技術を用いてAXL受容体のIg1ドメインのエラープローンPCRを行うことにより、突然変異体ライブラリーが作られた。酵母表層提示を用いてそのライブラリーが発現され、可溶性GAS6への強化された結合親和性を呈示する突然変異体を単離するために蛍光活性化細胞ソーティング(FACS)によってスクリーニングされた。本発明者らのライブラリー・スクリーニング・アプローチにおいて、突然変異体タンパク質ライブラリーは、それぞれの逐次的ラウンドがそのライブラリーのサイズを低減すると同時に、この場合はGAS6への高い親和性である、所望の突然変異体タンパク質特性を富化する、多数のソーティングラウンドに付された。
【0159】
GAS6に対して有意に強い親和性を有するAXL突然変異体を得るために、後のソーティングラウンドにおいて、本発明者らは、「オフ速度」ソートを用いた。オフ速度ソートのために、タンパク質突然変異体のライブラリーは、先ず、可溶性GAS6と共にインキュベートされ、その後、その溶液から未結合GAS6を除去するためにバッファーで洗浄される。次に、その突然変異体ライブラリーは、室温で2、4、6、12又は24時間、過剰な可溶性競合物質の存在下でインキュベートされる。この過剰な競合物質は、解結合段階を不可逆的にさせる、酵母提示AXLから解離するGAS6の封鎖に役立つ。GAS6への結合を保持する突然変異体AXLタンパク質は、FACSを使用して回収される。0、4及び6時間のオフ速度段階後のプールされたソート5産物によるGAS6への結合の分析は、これらの産物がGAS6への持続的結合の点で、野生型AXLに比べて有意な向上を呈示することを示す(図12参照)。棒グラフは、ドットプロットからのデータを定量するものであり、ライブラリーメンバーの有意な向上を明示している。これらの産物のシークエンシングは、プールされたソート5産物について観察されるGas6に対する向上した親和性を付与するAxl Ig1ドメイン内の幾つかの突然変異を同定した(図12及び表2)。第6ソーティングラウンドは、ソート5産物からの3つの特異的クローンをさらに富化した。表2は、ソートラウンド5及びラウンド6産物に含有されるAXL配列内のユニークなアミノ酸突然変異を示す。この表において、一番上の行の残基番号は、野生型AXL中のアミノ酸残基を示す。二番目の行は、野生型AXLの所与の位置で見出される残基を示す。後続の行には、所与の突然変異体に存在するアミノ酸突然変異が指定されている。突然変異体内の特定残基についてのアミノ酸の不在(例えば、表2中の空白スペース又は空白セル)は、このアミノ酸残基が野生型残基から突然変異されないことを意味する。当業者によく理解されているようにアミノ酸残基についての標準的な一文字記号が用いられている。
【0160】
明らかにされるのは、ソート5及び6産物からのユニークな配列、並びに野生型AXLと比較してプールされたソート5産物についてのGAS6結合の相当な向上を明示するプールされたクローンの特性である。
【0161】
この定方向進化アプローチを用いて単離される突然変異体は、表3に示すアミノ酸置換を備えている。
【0162】
表3.定方向進化を用いて単離された突然変異体
【表2】
【0163】
Sasaki et al.(EMBO J 2006)によって報告されたGAS6−AXL複合体の結晶構造によると、E26G、G32S、N33S及びG127R/Eを除いて、上に示したすべての突然変異は、AXLとGAS6の間の結合界面に存する。
【0164】
第6ソーティングラウンドからの個々の突然変異体、AXL S6−1及びAXL S6−2、は、さらなる調査のために選択された。野生型又は突然変異体AXLタンパク質のGAS6との相互作用の親和性を比較するために、野生型AXL、AXL S6−1及びAXL S6−2の平衡結合滴定が行われた。データは4点S字状曲線に当てはめられ、中点が平衡結合定数、KD、として使われた。突然変異体AXL S6−1及びAXL S6−2は、野生型AXLと比較して、GAS6結合親和性の実質的な向上を提示する(図13及び表4)。野生型AXLは、Gas6に対して2.4±1.2×10−9Mの結合親和性(KD)を有し;AXL S6−2は、Gas6に対して1.89±0.37×10−10Mの結合親和性(KD)を有し;及びAXL S6−1は、Gas6に対して1.12±0.23×10−10Mの結合親和性(KD)を有する。AXL S6−1及びAXL S6−2について、これは、野生型AXLと比較して、それぞれ22倍及び12.8倍強いGAS6結合親和性である(表4)。
【0165】
表4.Gas6への野生型及び突然変異体AXLタンパク質の結合親和性(KD)
【表3】
【0166】
本発明者らは、可変温度円偏光二色性スキャンを用いて野生型及び突然変異体AXLタンパク質の温度安定性も調査した。この技術は、フォールディングされたタンパク質の二次構造要素のアンフォールディングを温度の関数としてモニターする。各タンパク質の楕円率が温度の関数としてモニターされ、そのデータが標準的な二状態アンフォールディング曲線に当てはめられた。融解温度(Tm)がこのアンフォールディング曲線の中点である。野生型AXLは、41.3±0.6℃の融解温度を呈示し;AXL S6−1は、54.0±0.9℃の融解温度(野生型AXLよりおおよそ13℃高い熱安定性)を呈示し;Axl S6−2は、41.55±0.02℃の融解温度(野生型AXLとほぼ同様の熱安定性)を呈示した(表5)。
【0167】
表5.可変温度円偏光二色性スキャンによって判定された野生型及び突然変異体AXLタンパク質の熱安定性。
【表4】
【0168】
【表5】
【実施例3】
【0169】
可溶性Axl変異体は転移性腫瘍進行をインビボで阻害する
GAS6−AXLシグナル伝達は、乳癌、肺癌及び結腸癌並びに最近では、ここに提示するワークにより、卵巣癌を含む、多くの侵攻性形態の充実性腫瘍の進行に結びつけられている。AXL発現と疾病状態及び患者予後との間に明確な相関関係が観察されているが、転移の処置のための治療ターゲットとしてのAXLの確証は、ほぼ手つかずのままである。実施例1において、本発明者らは、原発性腫瘍でのAXL発現レベルが疾患の重症度と相関することで、AXLが現実にヒト乳及び卵巣癌患者における転移のマーカーであることを証明する。これらの結果は、GAS6−AXLシグナル伝達経路の拮抗が転移性疾患の処置のための治療の窓口を提供出来ることを示唆している。実施例1に概要を示したように、治療ターゲットしてのAXLの可能性を確証するために、ヒト卵巣癌の侵攻性マウスモデルにおけるアデノウイルス送達を用いてAXLの野生型細胞外ドメインの可溶性形態が投与された。本発明者らは、腫瘍転移が、対照と比較して可溶性AXL処置を受けたマウスにおいて有意に低減されることを証明した。これらのデータは、可溶性AXLを使用する腫瘍細胞におけるGAS6−AXLシグナル伝達の拮抗が疾患の転移性進行を阻害出来ることを実証した。これらの結果を基に事を進めて、本発明者らは、GAS6へのより高い親和性を有する、遺伝子操作AXL突然変異体が、抗転移剤としてより大きな効力を惹起すること、及び可溶性AXLの送達の治療的により妥当な様式が有意な結果をなおもたらすことを証明した。
【0170】
この研究において、本発明者らは、実験1において概要を示した同じヒト卵巣癌モデルを使用し、転移性疾患が既に存在するマウスに精製可溶性AXL(sAXL)変異体を腹膜内投与した。本発明者らは、野生型AXLとAXL S6−1、遺伝子操作高親和性突然変異体、の両方を試験し、両方を、GAS6結合が完全に破壊される形態のAXL、E59R/T77R、と比較した。すべての転移性病変の数及び総重量の両方によって評定して腫瘍量の低減が野生型AXLとAXL E59R/T77Rの陰性対照の両方に比べて有意に低減されたので、本発明者らの結果は、AXL S6−1の強化された親和性が、より大きな治療効力を生じさせる結果となることを著しく示している。これらの発見は、転移の阻害のための治療ターゲットとしてAXL及びGAS6をさらに確証し、並びに遺伝子操作高親和性AXL突然変異体S6−1をGAS6−AXLシグナル伝達系の強力なアンタゴニストとして支持する。
【0171】
実施例1は、sAXLのアデノウイルス送達が治療効力をもたらしたことを実証しているが、この送達方法は臨床的に妥当でないため、本発明者らは、精製されたsAXLの送達が同様の結果をもたらすことを確認した。薬物動態を向上させるために野生型AXL、AXL S6−1及びAXL E59R/T77RがマウスIgG2aの結晶性断片領域(Fc)に融合された。これら3つのAXL融合(AXL−Fc)変異体の唯一の差は、表6Aに概要が示されている、AXL Ig1ドメインにおいて見いだされる突然変異である。AXL−Fcタンパク質をコードするDNAは、EcoRI及びSall制限部位を使用してCMV駆動pADD2アデノウイルスシャトルベクターにクローン化された。Life TechnologiesからのFreestyle Expressionキットを製造業者により説明されたとおりに使用して、これら3つのAXL突然変異体をコードするpADD2プラスミドがHEK293細胞に独立してトランスフェクトされた。プロテインAアフィニティークロマトグラフィー、続いてサイズ排除クロマトグラフィーを用いて、培養上清からタンパク質が精製された。
【0172】
【表6】
【0173】
インビボで転移を阻害するAXL−Fc突然変異体の能力を評定するために、本発明者らは、実施例1に概要を示したのと同じヒト卵巣癌の腹膜異種移植片モデルを使用した。マウスがSKOV3ip.1細胞の投与後4週間に腹水及び多く(>100)の小さな転移性病変から成る高浸潤性疾患を急速に発生させるので、このモデルはヒト卵巣癌転移の腹膜播種を再現する。殆どの患者が診断時に有意な転移性疾患を提示するので、このモデルはヒト卵巣癌の非常に正確な代表である。マウスはSKOV3ip.1細胞を注射され、播種のために7日間、腫瘍が放置された。第7日に本発明者らはマウスを3つの研究群に分け、野生型AXL−Fc、S6−1−Fc又はE59R/T77R−Fcのいずれかの処置の投与を始めた。リン酸緩衝食塩水に溶解された精製タンパク質が10mg/kgの用量で3週間にわたって週に2回、合計6回、マウスに投与された。可視転移性病変数並びにすべての病変の総重量によって測定して全腫瘍量を評定するために、第28日にすべてのマウスが犠牲にされ、剖検が行われた。処置群間に顕著な差があった。代表画像が図14に示されている。E59R/T77R−Fcの陰性対照処置を受けたマウスは、平均86.3±21.9の腹膜転移を有した。野生型AXL−Fcを受けたマウスについては、その数は48.1±6.9に低減されたが、遺伝子操作AXL群、S6−1−Fc、のマウスについては、平均で8.3±1.6の転移性病変しか観察されなかった(図15(上のパネル))。すべての可視病変が切除され、全転移性腫瘍量を評定するためにマウスごとにまとめて計量された。E59R/T77R−Fc、野生型Fc及びS6−1−Fc処置群は、それぞれ567±92、430±36及び188±55mgの腫瘍量を呈示したので、遺伝子操作AXL処置群(S6−1−Fc)は、また、最も顕著な応答を示した、図15(下のパネル)。
【0174】
まとめると、これらの発見は、転移の処置のための治療ターゲットとしてAXLをさらに確証し、AXLのリガンド、GAS6、の中和が有効な抗転移処置戦略であることを実証する。重要なこととして、Gas6への検出可能な結合を提示しないAXL−Fc融合体(AXL E59R/T77R−Fc)を含むタンパク質は、腫瘍転移を予防せず;Gas6に中等度の親和性で結合するAXL−Fc融合体(野生型AXL−Fc)を含むタンパク質は、腫瘍転移のわずかな阻害を示し;Gas6への非常に強い親和性を有するAXL−Fc融合体(AXL S6−1−Fc)を含むタンパク質は、腫瘍転移の有意な阻害を示す。まとめると、これは、Gas6とAXLについての相互作用のエピトープが腫瘍転移に肝要であり、AXL S6−1−Fcタンパク質によるGas6上のこのエピトープの強力な阻害が腫瘍転移を有意に阻害することを示す。従って、AXL S6−1−Fcタンパク質、又はGas6−Axl相互作用を強力に遮断する任意のタンパク質が、転移性疾患のための有望な治療候補である。加えて、本発明者らは、精製可溶性AXLタンパク質の直接投与が実行可能な処置法であることも実証し、このアプローチを臨床的に確証する。
実施例3についての方法
【0175】
細胞系。卵巣SKOV3ip.1は、10%ウシ胎仔血清と1%ペニシリンとストレプトマイシンとを補足した適切な培地中37℃で5%CO2インキュベーターにおいて培養された。
【0176】
AXL−Fc融合体。完全長AXL突然変異体、アミノ酸19−440、は、マウスIgG2a Fc領域への直接融合体としてCMV駆動pADD2アデノウイルスシャトルベクターにクローン化された。ヒト胎児腎(HEK)293細胞の一過的DNAトランスフェクションは、Life TechnologiesからのFreestyle Expressionキットを製造業者によって説明されたとおりに使用して遂行された。プロテインAアフィニティークロマトグラフィー、続いてサイズ排除クロマトグラフィーを用いて、5日後に培養上清からFc−融合タンパク質が精製された。精製タンパク質は、追加の添加剤又は担体を伴わないリン酸緩衝食塩溶液に入れられた。
【0177】
SKOV3ip.1腹膜異種移植。動物を伴うすべての手順及びそれらのケアは、施設内及びNIHガイドラインに従ってStanford Universityの施設内動物実験委員会によって承認された。週齢6週雌ヌードマウスは、1×106 SKOV3ip.1細胞を腹膜内注射された。細胞投与の7日後、マウスは、S6−1−Fc、野生型AXL−Fc又はE59R/T77R−Fcでの処置のために3群にランダムに分割された。精製可溶性AXL−Fcタンパク質が10mg/kgの投薬量で週2回、腹膜内注射によって投与された。投薬は3週間継続され、その後、マウスは犠牲にされた。剖検が行われ、転移性病変が計数され、その後、まとめて計量されるように切除された。マウスごとに全病変数とすべての疾患組織の総重量の両方によって腫瘍量が決定された。
【0178】
統計解析:スチューデントt検定が用いられ、報告される誤差は平均値の標準誤差(SEM)である。<0.01のp値を有する値は有意と見なされた。
【0179】
上述の発明は、理解の明瞭さを目的として例証及び例によって多少詳細に説明されているが、添付の請求項の精神又は範囲から逸脱することなく一定の変更及び修飾が本発明に行われ得ることは、本発明の教示に照らして当業者には容易に分かるであろう。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可溶性AXL変異体ポリペプチドであって、AXL膜貫通ドメインを欠き、及び野生型AXL配列と比べて少なくとも1つのアミノ酸修飾を含み、前記変更がGAS6への前記AXLポリペプチドの結合の親和性を増加させるものである、可溶性AXL変異体ポリペプチド。
【請求項2】
前記野生型AXL配列(配列番号:1)の1)15−50間、2)60−120間、及び3)125−135間から成る群より選択される領域内に少なくとも1つのアミノ酸修飾を含む、請求項1に記載の可溶性AXL変異体ポリペプチド。
【請求項3】
前記野生型AXL配列(配列番号:1)の位置19、23、26、27、32、33、38、44、61、65、72、74、78、79、86、87、88、90、92、97、98、105、109、112、113、116、118若しくは127又はそれらの組み合わせにおける少なくとも1つのアミノ酸修飾を含む、請求項1に記載の可溶性AXL変異体ポリペプチド。
【請求項4】
1)A19T、2)T23M、3)E26G、4)E27G又はE27K、5)G32S、6)N33S、7)T38I、8)T44A、9)H61Y、10)D65N、11)A72V、12)S74N、13)Q78E、14)V79M、15)Q86R、16)D87G、17)D88N、18)I90M又はI90V、19)V92A、V92G又はV92D、20)I97R、21)T98A又はT98P、22)T105M、23)Q109R、24)V112A、25)F113L、26)H116R、27)T118A、28)G127R又はG127E及び29)G129E並びにそれらの組み合わせから成る群より選択される少なくとも1つのアミノ酸修飾を含む、請求項1に記載の可溶性AXL変異体ポリペプチド。
【請求項5】
前記AXL変異体は、前記野生型AXL配列(配列番号:1)と比べて次の位置:(a)グリシン32;(b)アスパラギン酸87;(c)バリン92;及び(d)グリシン127におけるアミノ酸変更を含むものである、請求項1に記載の可溶性AXL変異体ポリペプチド。
【請求項6】
グリシン32残基はセリン残基で置換されている、アスパラギン酸87残基はグリシン残基で置換されている、バリン92残基はアラニン残基で置換されている、若しくはグリシン127残基はアルギニン残基で置換されている、又はそれらの組み合わせである、請求項1に記載の可溶性AXL変異体ポリペプチド。
【請求項7】
前記AXL変異体は、前記野生型AXL配列(配列番号:1)と比べて次の位置:(a)グルタミン酸26;(b)バリン79;(c)バリン92;及び(d)グリシン127におけるアミノ酸変更を含むものである、請求項1に記載の可溶性AXL変異体ポリペプチド。
【請求項8】
グルタミン酸26残基はグリシン残基で置換されている、バリン79残基はメチオニン残基で置換されている、バリン92残基はアラニン残基で置換されている、若しくはグリシン127残基はアルギニン残基で置換されている、又はそれらの組み合わせである、請求項1に記載の可溶性AXL変異体ポリペプチド。
【請求項9】
前記ポリペプチドは、前記野生型AXLポリペプチド(配列番号:1)のアミノ酸領域19−437、130−437、19−132、21−121、26−132、26−121及び1−437から成る群より選択される少なくとも1つのアミノ酸領域を含み、並びに1つ以上のアミノ酸修飾は、前記アミノ酸領域において生ずるものである、請求項1に記載の可溶性AXL変異体ポリペプチド。
【請求項10】
前記ポリペプチドは、Fcドメインを含む融合タンパク質である、請求項1に記載の可溶性AXL変異体ポリペプチド。
【請求項11】
GAS6に対して少なくとも約1×10−8M又は1×10−9Mの親和性を有する、請求項1に記載の可溶性AXL変異体ポリペプチド。
【請求項12】
前記野生型AXLポリペプチドの親和性より少なくとも約10倍強い又は少なくとも約20倍強い、GAS6への親和性を呈示する、請求項1に記載の可溶性AXL変異体ポリペプチド。
【請求項13】
野生型AXLポリペプチドとGAS6タンパク質との結合をインビボ又はインビトロで阻害する、請求項1に記載の可溶性AXL変異体ポリペプチド。
【請求項14】
GAS6タンパク質と請求項6又は請求項8に記載のポリペプチドとの結合をインビボ又はインビトロで阻害する、請求項1に記載の可溶性AXL変異体ポリペプチド。
【請求項15】
治療有効量の請求項1に記載の1つ以上の可溶性AXL変異体ポリペプチド又はそれらの医薬的に許容され得る塩を含む、医薬組成物。
【請求項16】
少なくとも1つの細胞傷害剤若しくは医薬的に許容され得る賦形剤又はそれらの組み合わせをさらに含む、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
GAS6タンパク質に特異的に結合する、単離された抗体又はその断片。
【請求項18】
前記抗体は、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、又はキメラ抗体若しくは一本鎖抗体(ScFv)、或いはそれらの組み合わせである、請求項17に記載の単離された抗体又はその断片。
【請求項19】
前記抗体は、R299−T317、V364−P372、R389−N396、D398−A406、E413−H429及びW450−M468から成る群より選択されるGAS6の1つ以上のアミノ酸領域に含まれるエピトープに結合するものである、請求項17に記載の単離された抗体又はその断片。
【請求項20】
前記抗体は、RMFSGTPVIRLRFKRLQPT(配列番号:3)、VGRVTSSGP(配列番号:4)、RNLVIKVN(配列番号:5)、DAVMKIAVA(配列番号:6)、ERGLYHLNLTVGGIPFH(配列番号:7)及びWLNGEDTTIQETVKVNTRM(配列番号:8)から成る群より選択されるアミノ酸領域に含まれるエピトープに結合するものである、請求項17に記載の単離された抗体又はその断片。
【請求項21】
前記抗体は、AXLポリペプチドとGAS6の間の結合を阻害するものである、請求項17に記載の単離された抗体又はその断片。
【請求項22】
請求項20に記載の抗体のCDR1、CDR2若しくはCDR3又はそれらの組み合わせを含む、単離された抗体。
【請求項23】
請求項17又は22に記載の抗体又はその断片を生産する、単離された細胞。
【請求項24】
請求項17又は22に記載の抗体又はその断片を生産するハイブリドーマ。
【請求項25】
治療有効量の請求項17若しくは22に記載の単離された抗体若しくはその断片又は医薬的に許容され得るそれらの塩を含む、医薬組成物。
【請求項26】
少なくとも1つの細胞傷害剤若しくは医薬的に許容され得る賦形剤又はそれらの組み合わせをさらに含む、請求項25に記載の医薬組成物。
【請求項27】
哺乳動物患者における腫瘍の転移又は浸潤を処置する、低減する又は予防する方法であって、有効用量の請求項1に記載の可溶性AXL変異体ポリペプチド又は請求項17若しくは22に記載の単離された抗体若しくはその断片を前記患者に投与することを含むものである方法。
【請求項28】
前記腫瘍は、卵巣腫瘍、乳房腫瘍、肺腫瘍、肝臓腫瘍、結腸腫瘍、胆嚢腫瘍、膵臓腫瘍、前立腺腫瘍及び膠芽腫から成る群より選択される腫瘍である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
哺乳動物患者における腫瘍の転移又は浸潤を処置する、低減する又は予防する方法であって、(a)AXL活性の阻害剤(b)GAS6活性の阻害剤;及び(c)AXL−GAS6相互作用の阻害剤から成る群より選択される1つ以上の阻害剤を投与することを含むものである方法。
【請求項30】
前記阻害剤は、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、小分子、抗体、抗体断片、又は抗体薬物コンジュゲートである、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
被験体において転移又は浸潤を被る腫瘍の能力を判定する方法であって、
腫瘍を有する被験体からの生体試料におけるAXL活性のレベルを検出すること、及び
前記生体試料におけるAXL活性のレベルを所定レベルと比較すること
を含み;
前記所定レベルに比しての増加が腫瘍の浸潤又は転移素質を示す
ものである方法。
【請求項32】
前記AXL活性レベルは、AXL mRNA発現のレベル又はAXLタンパク質発現のレベルによって測定される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
被験体において転移又は浸潤を被る腫瘍の能力を判定する方法であって、
腫瘍を有する被験体からの生体試料におけるGAS6活性のレベルを検出すること、及び
前記生体試料におけるGAS6活性のレベルを所定レベルと比較すること
を含み;
前記所定レベルに比しての増加が腫瘍の浸潤又は転移素質を示す
ものである方法。
【請求項34】
前記GAS6活性レベルは、GAS6 mRNA発現のレベル又はGAS6タンパク質発現のレベルによって測定される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記腫瘍は、卵巣腫瘍、乳房腫瘍、肺腫瘍、肝臓腫瘍、結腸腫瘍、胆嚢腫瘍、膵臓腫瘍、前立腺腫瘍及び膠芽腫から成る群より選択される腫瘍である、請求項31又は33に記載の方法。
【請求項36】
前記生体試料は、組織試料、腫瘍組織試料、血液試料、血清試料、脳脊髄液(CSF)試料、腹水試料、及び細胞培養試料から成る群より選択される、請求項31又は33に記載の方法。
【請求項1】
可溶性AXL変異体ポリペプチドであって、AXL膜貫通ドメインを欠き、及び野生型AXL配列と比べて少なくとも1つのアミノ酸修飾を含み、前記変更がGAS6への前記AXLポリペプチドの結合の親和性を増加させるものである、可溶性AXL変異体ポリペプチド。
【請求項2】
前記野生型AXL配列(配列番号:1)の1)15−50間、2)60−120間、及び3)125−135間から成る群より選択される領域内に少なくとも1つのアミノ酸修飾を含む、請求項1に記載の可溶性AXL変異体ポリペプチド。
【請求項3】
前記野生型AXL配列(配列番号:1)の位置19、23、26、27、32、33、38、44、61、65、72、74、78、79、86、87、88、90、92、97、98、105、109、112、113、116、118若しくは127又はそれらの組み合わせにおける少なくとも1つのアミノ酸修飾を含む、請求項1に記載の可溶性AXL変異体ポリペプチド。
【請求項4】
1)A19T、2)T23M、3)E26G、4)E27G又はE27K、5)G32S、6)N33S、7)T38I、8)T44A、9)H61Y、10)D65N、11)A72V、12)S74N、13)Q78E、14)V79M、15)Q86R、16)D87G、17)D88N、18)I90M又はI90V、19)V92A、V92G又はV92D、20)I97R、21)T98A又はT98P、22)T105M、23)Q109R、24)V112A、25)F113L、26)H116R、27)T118A、28)G127R又はG127E及び29)G129E並びにそれらの組み合わせから成る群より選択される少なくとも1つのアミノ酸修飾を含む、請求項1に記載の可溶性AXL変異体ポリペプチド。
【請求項5】
前記AXL変異体は、前記野生型AXL配列(配列番号:1)と比べて次の位置:(a)グリシン32;(b)アスパラギン酸87;(c)バリン92;及び(d)グリシン127におけるアミノ酸変更を含むものである、請求項1に記載の可溶性AXL変異体ポリペプチド。
【請求項6】
グリシン32残基はセリン残基で置換されている、アスパラギン酸87残基はグリシン残基で置換されている、バリン92残基はアラニン残基で置換されている、若しくはグリシン127残基はアルギニン残基で置換されている、又はそれらの組み合わせである、請求項1に記載の可溶性AXL変異体ポリペプチド。
【請求項7】
前記AXL変異体は、前記野生型AXL配列(配列番号:1)と比べて次の位置:(a)グルタミン酸26;(b)バリン79;(c)バリン92;及び(d)グリシン127におけるアミノ酸変更を含むものである、請求項1に記載の可溶性AXL変異体ポリペプチド。
【請求項8】
グルタミン酸26残基はグリシン残基で置換されている、バリン79残基はメチオニン残基で置換されている、バリン92残基はアラニン残基で置換されている、若しくはグリシン127残基はアルギニン残基で置換されている、又はそれらの組み合わせである、請求項1に記載の可溶性AXL変異体ポリペプチド。
【請求項9】
前記ポリペプチドは、前記野生型AXLポリペプチド(配列番号:1)のアミノ酸領域19−437、130−437、19−132、21−121、26−132、26−121及び1−437から成る群より選択される少なくとも1つのアミノ酸領域を含み、並びに1つ以上のアミノ酸修飾は、前記アミノ酸領域において生ずるものである、請求項1に記載の可溶性AXL変異体ポリペプチド。
【請求項10】
前記ポリペプチドは、Fcドメインを含む融合タンパク質である、請求項1に記載の可溶性AXL変異体ポリペプチド。
【請求項11】
GAS6に対して少なくとも約1×10−8M又は1×10−9Mの親和性を有する、請求項1に記載の可溶性AXL変異体ポリペプチド。
【請求項12】
前記野生型AXLポリペプチドの親和性より少なくとも約10倍強い又は少なくとも約20倍強い、GAS6への親和性を呈示する、請求項1に記載の可溶性AXL変異体ポリペプチド。
【請求項13】
野生型AXLポリペプチドとGAS6タンパク質との結合をインビボ又はインビトロで阻害する、請求項1に記載の可溶性AXL変異体ポリペプチド。
【請求項14】
GAS6タンパク質と請求項6又は請求項8に記載のポリペプチドとの結合をインビボ又はインビトロで阻害する、請求項1に記載の可溶性AXL変異体ポリペプチド。
【請求項15】
治療有効量の請求項1に記載の1つ以上の可溶性AXL変異体ポリペプチド又はそれらの医薬的に許容され得る塩を含む、医薬組成物。
【請求項16】
少なくとも1つの細胞傷害剤若しくは医薬的に許容され得る賦形剤又はそれらの組み合わせをさらに含む、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
GAS6タンパク質に特異的に結合する、単離された抗体又はその断片。
【請求項18】
前記抗体は、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、又はキメラ抗体若しくは一本鎖抗体(ScFv)、或いはそれらの組み合わせである、請求項17に記載の単離された抗体又はその断片。
【請求項19】
前記抗体は、R299−T317、V364−P372、R389−N396、D398−A406、E413−H429及びW450−M468から成る群より選択されるGAS6の1つ以上のアミノ酸領域に含まれるエピトープに結合するものである、請求項17に記載の単離された抗体又はその断片。
【請求項20】
前記抗体は、RMFSGTPVIRLRFKRLQPT(配列番号:3)、VGRVTSSGP(配列番号:4)、RNLVIKVN(配列番号:5)、DAVMKIAVA(配列番号:6)、ERGLYHLNLTVGGIPFH(配列番号:7)及びWLNGEDTTIQETVKVNTRM(配列番号:8)から成る群より選択されるアミノ酸領域に含まれるエピトープに結合するものである、請求項17に記載の単離された抗体又はその断片。
【請求項21】
前記抗体は、AXLポリペプチドとGAS6の間の結合を阻害するものである、請求項17に記載の単離された抗体又はその断片。
【請求項22】
請求項20に記載の抗体のCDR1、CDR2若しくはCDR3又はそれらの組み合わせを含む、単離された抗体。
【請求項23】
請求項17又は22に記載の抗体又はその断片を生産する、単離された細胞。
【請求項24】
請求項17又は22に記載の抗体又はその断片を生産するハイブリドーマ。
【請求項25】
治療有効量の請求項17若しくは22に記載の単離された抗体若しくはその断片又は医薬的に許容され得るそれらの塩を含む、医薬組成物。
【請求項26】
少なくとも1つの細胞傷害剤若しくは医薬的に許容され得る賦形剤又はそれらの組み合わせをさらに含む、請求項25に記載の医薬組成物。
【請求項27】
哺乳動物患者における腫瘍の転移又は浸潤を処置する、低減する又は予防する方法であって、有効用量の請求項1に記載の可溶性AXL変異体ポリペプチド又は請求項17若しくは22に記載の単離された抗体若しくはその断片を前記患者に投与することを含むものである方法。
【請求項28】
前記腫瘍は、卵巣腫瘍、乳房腫瘍、肺腫瘍、肝臓腫瘍、結腸腫瘍、胆嚢腫瘍、膵臓腫瘍、前立腺腫瘍及び膠芽腫から成る群より選択される腫瘍である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
哺乳動物患者における腫瘍の転移又は浸潤を処置する、低減する又は予防する方法であって、(a)AXL活性の阻害剤(b)GAS6活性の阻害剤;及び(c)AXL−GAS6相互作用の阻害剤から成る群より選択される1つ以上の阻害剤を投与することを含むものである方法。
【請求項30】
前記阻害剤は、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、小分子、抗体、抗体断片、又は抗体薬物コンジュゲートである、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
被験体において転移又は浸潤を被る腫瘍の能力を判定する方法であって、
腫瘍を有する被験体からの生体試料におけるAXL活性のレベルを検出すること、及び
前記生体試料におけるAXL活性のレベルを所定レベルと比較すること
を含み;
前記所定レベルに比しての増加が腫瘍の浸潤又は転移素質を示す
ものである方法。
【請求項32】
前記AXL活性レベルは、AXL mRNA発現のレベル又はAXLタンパク質発現のレベルによって測定される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
被験体において転移又は浸潤を被る腫瘍の能力を判定する方法であって、
腫瘍を有する被験体からの生体試料におけるGAS6活性のレベルを検出すること、及び
前記生体試料におけるGAS6活性のレベルを所定レベルと比較すること
を含み;
前記所定レベルに比しての増加が腫瘍の浸潤又は転移素質を示す
ものである方法。
【請求項34】
前記GAS6活性レベルは、GAS6 mRNA発現のレベル又はGAS6タンパク質発現のレベルによって測定される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記腫瘍は、卵巣腫瘍、乳房腫瘍、肺腫瘍、肝臓腫瘍、結腸腫瘍、胆嚢腫瘍、膵臓腫瘍、前立腺腫瘍及び膠芽腫から成る群より選択される腫瘍である、請求項31又は33に記載の方法。
【請求項36】
前記生体試料は、組織試料、腫瘍組織試料、血液試料、血清試料、脳脊髄液(CSF)試料、腹水試料、及び細胞培養試料から成る群より選択される、請求項31又は33に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図13】
【図14】
【図15】
【公表番号】特表2013−518055(P2013−518055A)
【公表日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−550170(P2012−550170)
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【国際出願番号】PCT/US2011/022125
【国際公開番号】WO2011/091305
【国際公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(503115205)ボード オブ トラスティーズ オブ ザ レランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティ (69)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【国際出願番号】PCT/US2011/022125
【国際公開番号】WO2011/091305
【国際公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(503115205)ボード オブ トラスティーズ オブ ザ レランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティ (69)
【Fターム(参考)】
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