説明

抗酸化剤、ハリ・タルミ改善剤、ラジカル消去剤、エラスターゼ活性阻害剤、並びに抗老化剤

【課題】抗酸化剤、ハリ・タルミ改善剤、ラジカル消去剤、エラスターゼ活性阻害剤、抗老化剤を提供すること。
【解決手段】シソ科タツナミソウ属スカルキャップ(Scutellaria lateriflora L.)の抽出物を含有する抗酸化剤、ハリ・タルミ改善剤、ラジカル消去剤、エラスターゼ活性阻害剤、並びに、抗老化剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シソ科タツナミソウ属スカルキャップ(Scutellaria lateriflora L.)の抽出物を含有する抗酸化効果、ハリ・タルミ改善効果、ラジカル消去効果、エラスターゼ活性阻害効果に優れる剤、並びに、それを含有することを特徴とする抗老化用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
加齢に伴う皮膚表面の小ジワや、皮膚の弾力性低下およびシワといった老化症状の原因として、皮膚表面の乾燥や、酸化障害による細胞機能低下、真皮細胞外マトリクス成分であるエラスチンの分解、減少や、コラーゲンの架橋による変性等があげられる。これらの現象には、紫外線等の外的ストレスにより発生する活性酸素やフリーラジカルが深く関与していることが良く知られている。このような症状を防止改善するために、従来より、アミノ酸や、多糖、植物抽出液など様々な成分の皮膚外用剤への配合が検討されてきた。細胞外マトリクス成分の減少を抑制する成分としては、例えば、エラスターゼ活性阻害効果を有するブルセラ・ランシフォリア抽出物が開示されており(特許文献1参照)、また抗酸化剤としては、学名:Piper betle L.の抽出物等が開示されている(特許文献2参照)。
一方、シソ科タツナミソウ属スカルキャップ(Scutellaria lateriflora L.)の応用としては、脱色剤または色素沈着防止剤(特許文献3参照)、抗アレルギー化粧料(特許文献4参照)が知られるが、剤(スカルキャップ(Scutellaria lateriflora L.)の抽出物の抗酸化効果、ハリ・タルミ改善効果、ラジカル消去効果、エラスターゼ活性阻害効果に関する効果は開示されていなかった。

【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−255734号公報
【特許文献2】特開2001−98267号公報
【特許文献3】特開2004−35548号公報
【特許文献4】特開2008−37785号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
天然由来成分には様々な生理活性や美容効果を有するものが存在し、これまでにも多くの植物抽出物が皮膚外用剤又は化粧料や食品、飲料などの分野で利用されてきた。しかしながら、いまだその効果が知られていない天然由来成分も数多く存在し、優れた抗老化効果を有する有効成分の開発が期待されていた。本発明は、植物由来で安全性が良好な、優れた抗酸化効果、ハリ・タルミ改善効果、ラジカル消去効果、エラスターゼ活性阻害効果に優れる剤並びに抗老化剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、シソ科タツナミソウ属スカルキャップ(Scutellaria lateriflora L.)の抽出物に優れた抗酸化効果、ハリ・タルミ改善効果、ラジカル消去効果、エラスターゼ活性阻害効果を見出し、この知見に基づいて本発明を完成させるに至った。
【0006】
すなわち本発明は、スカルキャップ(Scutellaria lateriflora L.)の抽出物を有効成分とする、抗酸化剤、ハリ・タルミ改善剤、ラジカル消去剤、エラスターゼ活性阻害剤並びにそれらいずれかの剤を含有する抗老化剤に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、スカルキャップ(Scutellaria lateriflora L.)の抽出物を有効成分として用いることにより、優れた効果を有する抗酸化剤、ハリ・タルミ改善剤、ラジカル消去剤、エラスターゼ活性阻害剤、抗老化剤を提供することができる。また、これらは皮膚外用剤や化粧料に配合することにより、皮膚の乾燥や弾力の低下、シワ、たるみといった様々な症状の防止改善に優れた効果を発揮する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明について詳細に記載する。
本発明に用いるスカルキャップは、シソ科タツナミソウ属スカルキャップ(Scutellaria lateriflora L.)である。同じ科や同じ属であっても種の異なるものは含まれない。
本発明に用いるスカルキャップは学名:Scutellaria lateriflora L.であれば、その産地や採取時期等は特に限定されない。また、使用部位も特に限定されず、その全体、葉、仁、外果皮(青皮、未熟果皮を含む)、成熟果実、未熟果実、果皮、花、材、樹皮、根などの部位を使用することが出来る。
【0009】
本発明におけるスカルキャップ(Scutellaria lateriflora L.)の抽出物は、一般的な方法で調製することができる。抽出溶媒としては特に限定されないが、水(熱水)、メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール類、エーテル、ヘキサン、クロロホルム、酢酸エチル、アセトン、グリセリン、プロピレングリコールなどの有機溶剤およびこれらの混合物からなる群から選択されたものを用いることが出来る。また、生理食塩水や、リン酸、乳酸、酢酸及びそれらの塩等を用い、適切なpHに調整しても良い。
抽出方法についても、その設定温度や時間等特に制限はないが、例えば、スカルキャップを5℃程度から抽出溶媒の沸点以下の温度の溶媒に1〜48時間程度浸漬することが好ましく、抽出中は系内を攪拌するのが好ましい。また、抽出操作の前にスカルキャップに対して乾燥、粉砕、細切、圧搾または発酵等の前処理を行うこともできる。
好ましい調製方法の例としては、スカルキャップの葉部をそのままあるいは乾燥して、細切、粉砕したもの等を水、低級一価アルコール、液状多価アルコール等の親水性極性溶媒中またはこれらの2種類以上の混合溶媒中に浸漬して、室温または加温して抽出し、得ることができる。
さらに、これらの抽出溶媒の中でも、本発明の効果や抽出物の化粧料中での使用性の観点から、水およびエタノールを任意の割合で混合して抽出溶媒として用いるのがより好ましい。ただし、抽出法はこれに限定されるものではない。
【0010】
スカルキャップの上記溶媒による抽出物は液状、ペースト状、ゲル状、固形状、粉末状等のいずれの形態であってもよい。抽出物は調製後そのまま使用することができるが、濃縮または乾固またはスプレードライしたものを水や極性溶媒に再度溶解して用いても良い。さらに、必要であれば本発明の効果に影響のない範囲でろ過またはイオン交換樹脂等により脱色、脱臭、脱塩などの処理を施して用いることもできる。また、限外ろ過やイオン交換クロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィーなどの方法により分画して用いることもできる。
【0011】
このようにして得られたスカルキャップの抽出物を有効成分とするラジカル消去剤は、優れたフリーラジカル消去効果を有し皮膚の光老化を防止、抑制する。
【0012】
スカルキャップの抽出物を有効成分とする抗酸化剤は、優れた抗酸化効果を発揮し、酸化ストレスによる細胞障害や乾燥、シワ、皮膚のたるみ、弾力の低下といった症状を防止改善する。
【0013】
スカルキャップの抽出物を有効成分とするエラスターゼ活性阻害剤は、真皮細胞外マトリクス成分であり皮膚の弾力性発現に重要であるエラスチンの分解を抑制し、シワや皮膚のたるみ、弾力の低下といった症状を防止改善する。
【0014】
スカルキャップの抽出物を含有する抗老化剤は、抗酸化効果、ハリ・タルミ改善効果、ラジカル消去効果、エラスターゼ活性阻害効果を有するので、特に皮膚に適用することにより、皮膚弾力性の低下、シワ、たるみなど様々な症状の防止改善に優れた効果を示す。
【0015】
本発明の抗酸化剤、ハリ・タルミ改善剤、ラジカル消去剤、エラスターゼ活性阻害剤、抗老化剤におけるスカルキャップの抽出物の含有量は、好ましくは乾燥固形分として0.00001〜2質量%(以下、単に「%」と表す。)、さらに好ましくは0.0001〜1%である。スカルキャップの抽出物をこの範囲で配合することにより、配合安定性や皮膚外用剤又は化粧料としての品質を損なうことなく、抗酸化効果、ハリ・タルミ改善効果、ラジカル消去効果、エラスターゼ活性阻害効果、抗老化効果といった効果を十分に発揮する。
【0016】
本発明の抗酸化剤、ハリ・タルミ改善剤、ラジカル消去剤、エラスターゼ活性阻害剤、抗老化剤は、スカルキャップの抽出物を常法に従い種々の形態の基剤に配合して製剤化することにより皮膚外用剤または化粧料として調製することができる。
さらに、本発明の効果を妨げない質的、量的範囲で、スカルキャップの抽出物以外に、一般的に皮膚外用剤又は化粧料や外用医薬品の製剤に用いられる、水(精製水、温泉水、深層水等)、アルコール類、油剤、界面活性剤、金属セッケン、ゲル化剤、粉体、水溶性高分子、皮膜形成剤、樹脂、紫外線防御剤、包接化合物、抗菌剤、香料、消臭剤、塩類、pH調整剤、清涼剤、動物・微生物由来抽出物、植物抽出物、血行促進剤、収斂剤、抗脂漏剤、美白剤、抗炎症剤、細胞賦活剤、保湿剤、キレート剤、角質溶解剤、酵素、ホルモン類、ビタミン類等を配合する事ができる。
【0017】
前記皮膚用外用剤または化粧料の性状は液状、ゲル状、クリーム状、半固形状、固形状、スティック状、パウダー状等のいずれであってもよく、乳液、クリーム、化粧水、美容液、パック、洗顔料、メーキャップ化粧料等の皮膚用化粧料に属する形態;シャンプー、ヘアートリートメント、ヘアースタイリング剤、養毛剤、育毛剤等の頭髪化粧料に関する形態;及び分散液、軟膏、エアゾール、貼付剤、パップ剤、リニメント剤等の外用医薬品の形態;等とすることができる。
【実施例】
【0018】
以下に、スカルキャップの抽出物の製造例、各作用を評価するための試験例、皮膚外用剤又は化粧料の処方例等の実施例を挙げて本発明をさらに詳細に記述するが、本発明はこれらになんら限定されるものではない。
【0019】
[製造例1] スカルキャップ抽出物1の製造
乾燥させた10gのスカルキャップの葉を粉砕し、10%(v/v)エタノール水溶液100gを加えて攪拌しながら室温で12時間抽出した。得られた抽出液は濾過して不溶物を取り除いた後に、活性炭を加えて30分攪拌してから再度濾過した。これを減圧濃縮し凍結乾燥を行い、抽出物1を得た。収量は0.01gであった。
[製造例2] スカルキャップ抽出物2の製造
乾燥させた10gのスカルキャップの葉を粉砕し、40%(v/v)エタノール水溶液100gを加えて攪拌しながら室温で12時間抽出した。得られた抽出液は濾過して不溶物を取り除いた後に、活性炭を加えて30分攪拌してから再度濾過した。これを減圧濃縮し凍結乾燥を行い、抽出物2を得た。収量は0.35gであった。
[製造例3] スカルキャップ抽出物3の製造
乾燥させた10gのスカルキャップの葉を粉砕し、80%(v/v)エタノール水溶液100gを加えて攪拌しながら室温で12時間抽出した。得られた抽出液は濾過して不溶物を取り除いた後に、活性炭を加えて30分攪拌してから再度濾過した。これを減圧濃縮し凍結乾燥を行い、抽出物3を得た。収量は0.24gであった。
【0020】
製造例1〜3で得られたスカルキャップ抽出物1〜3について、その抗酸化効果、抗老化効果、ラジカル消去効果、エラスターゼ活性阻害効果の評価として、(イ)1、1―Diphenyl−2−picrylhydrazyl(以下、「DPPH」と略す)ラジカル消去効果、(ロ)エラスターゼ活性阻害効果をそれぞれ下記の方法で測定し評価した。なお、(イ)の試験に効果が認められる場合、抗酸化効果を有すると判断し、(イ)、(ロ)のいずれの試験においても効果が認められた場合には抗老化効果を有すると判断した。
【0021】
実施例1
<(イ)DPPHラジカル消去効果の試験>
紫外線等の外的ストレスにより皮膚で発生するスーパーオキサイドやヒドロキシラジカル、過酸化水素等の活性酸素種や、それらから誘導されるフリーラジカルは、細胞機能を低下させ、脂質の過酸化やDNA損傷、タンパク変性などの細胞障害を引き起こす。例えば、ヒドロキシラジカルは真皮細胞外マトリクスの構成成分であるコラーゲンの合成を低下させ、コラーゲン分解酵素の産生を亢進することが知られており、スーパーオキサイドは脂質を過酸化し継続的な皮膚微弱炎症の一因となり、炎症の継続と慢性的な皮膚乾燥症状との関連も知られている。これら活性酸素やフリーラジカルなどの酸化障害によって細胞機能が低下し、真皮細胞外マトリクスの構成タンパクが損傷、変性することがシワやたるみ、ハリの消失といった皮膚老化症状の発生につながると考えられている。したがってフリーラジカルを消去することは、皮膚における脂質過酸化やコラーゲンの分解を抑制し、弾力やハリの低下、シワといった皮膚老化症状を改善防止するための抗老化剤や皮膚化粧料の開発において重要である。
【0022】
DPPHラジカル消去効果の試験は、安定なラジカルをもつ1、1―Diphenyl−2−picrylhydrazyl;DPPHの517nmにおける極大吸収が試料添加時に減少する割合により、試料のラジカル消去効果を評価するものである。以下に詳細な試験方法を記載する。
【0023】
製造例1〜3によって調製したスカルキャップ抽出物1〜3を、濃度が2.5mg/ml、0.25mg/mlとなるように調製し、試料溶液とした。なお、試料の溶解性を考慮して、試料溶液作製の溶媒として抽出物1または抽出物2の場合には0.1mol/L酢酸緩衝液を、抽出物3の場合にはエタノールを用いた。試料溶液400μlと0.5mmol/LのDPPHエタノール溶液200μlを混合し、全体量が1ml(エタノール:水=3:2)になるようにエタノールまたは水で試験溶液を調製して室温で60分間反応させた。このとき、抽出物1、2または3の最終濃度は、それぞれ、1.0mg/ml、0.1mg/mlとなった。試験溶液の517nmの吸光度を測定し、DPPHラジカル消去率〔D〕を下記の式から求めた。また、対照溶液として試料溶液のかわりに同量の溶媒を加えたものを測定した。
【0024】
DPPHラジカル消去率〔D〕(%)=(C―S)/C×100
S:試験溶液の517nmにおける吸光度
C:対照溶液の517nmにおける吸光度
また、本発明の効果を検証するための比較対照として、汎用の抗酸化剤であるアスコルビン酸グルコシドを用いた。
結果を表1に示す。
【0025】
【表1】

【0026】
表1より明らかなように、製造例1〜3で得たスカルキャップ抽出物1〜3を添加した場合には優れたDPPHラジカル消去効果が認められ、アスコルビン酸グルコシドと比較して非常に高い効果を示した。
したがって、本発明のスカルキャップ抽出物はラジカル消去剤として利用することができる。また、皮膚外用剤や化粧料に配合することでフリーラジカルを効果的に消去し、フリーラジカルや活性酸素が引き起こす細胞の酸化障害や脂質過酸化、真皮細胞外マトリクスの分解を抑制することで、弾力やハリの低下、シワといった皮膚老化症状を改善防止する皮膚外用剤又は化粧料を作成することができる。
【0027】
実施例2
<(ロ)エラスターゼ活性阻害試験>
エラスチン線維は、ほぼ全身の臓器、組織に分布する細胞外マトリクス成分の一種で、伸縮可能なαへリックス構造が架橋することによって形成され、組織の柔軟性維持に重要な役割を担っていることが知られている。エラスチン線維は皮膚においては真皮層に存在しコラーゲンと並んで皮膚組織の弾力や柔軟性維持に重要な役割を果たしている。加齢により皮膚の弾力性、ハリの低下やシワ、たるみの表出といった様々な皮膚老化症状がみられるが、これは、線維芽細胞の増殖能の低下によるエラスチン線維等の産生能の低下だけではなく、皮膚の紫外線への暴露、空気の著しい乾燥、過度の皮膚洗浄等の外部刺激などにより、エラスチン線維の分解が促進されることが原因とされている。
エラスチン線維が分解する一因として、エラスターゼによる分解があると考えられている。エラスターゼは、セリンプロテアーゼファミリーに属する酵素であり、皮膚においては、例えば、紫外線A波が照射された場合にエラスターゼ活性が増加することが確認されている。
従って、真皮におけるエラスターゼの活性を阻害し、エラスチン線維の分解を防止することが、シワやたるみ等の肌の老化防止に有効であると考えられる。以下に詳細な試験方法を記す。
【0028】
試験溶液として、製造例3で得たスカルキャップ抽出物3を4.0mg/mlの濃度になるように試料溶液を調製した。試料溶液の調整溶媒は、体積比率でエタノール:水=1:1の混合溶液を使用した。エラスターゼ活性阻害試験は、豚由来のエラスターゼ酵素液、及びN-Succinyl-Ala-Ala-Ala-p-nitroanilideを基質として用いて行った。具体的には以下に記す試験方法に従って試験を行った。酵素液は、0.05units/mL濃度に調整した。基質液は、基質をジメチルスルフォキサイド(DMSO)に溶解し、0.1mol/L濃度の溶液とした後、0.05mol/L Tris-HCl(pH8.8)緩衝液で希釈し、1mmol/L濃度の溶液として調製した。基質液100μLと、試料溶液50μLとを混合した後、酵素液50μLを添加し、37℃、30分間反応させた。試料の最終濃度は1.0mg/mlとなった。その後分光光度計により波長405nmの吸光度を測定し、エラスターゼ酵素によって基質が分解されて生成したnitroaniline量を求め、エラスターゼ活性阻害率を算出した。エラスターゼ活性阻害率は以下の式により算出した。
【0029】
エラスターゼ活性阻害率(%)={1−(A−B)/(C−D)}×100
A:基質液と試料溶液とを混合した後、酵素液を添加した時の混合液の
波長405nmの吸光度
B:基質液と試料溶液とを混合した時の混合液の波長405nmの吸光度
C:試料溶液の代わりに、該溶液の溶媒を基質液と上記割合で混合した後、
酵素液を添加した時の混合液の波長405nmの吸光度
D:試料溶液も酵素液も添加していない、基質液の405nmの吸光度
【0030】
また、本発明の効果を検証するための比較対照としてRoche社製造のコンプリートプロテアーゼインヒビターカクテルを用い、最終濃度が1mg/mlになるように試験した。プロテアーゼインヒビターカクテルは常に一定のプロテアーゼ阻害効果を示し、多種のプロテアーゼ活性を阻害する試薬であり、エラスターゼ活性を阻害することが確認されているものである。
結果を表2示す。
【0031】
【表2】

【0032】
表2から明らかなように、本発明のエラスターゼ活性阻害剤は、エラスターゼ活性阻害効果を有しており、その効果は比較対照として用いた高いエラスターゼ活性阻害効果を持つプロテアーゼインヒビターカクテルと同等であった。したがって、本発明のスカルキャップ抽出物はエラスターゼ活性阻害剤として利用することができる。また、化粧料基剤に配合することでエラスチン線維の分解を抑制し、皮膚のシワやたるみ、弾力低下といった皮膚老化症状を改善防止する皮膚外用剤又は化粧料を作成することができる。
【0033】
実施例3:化粧水
(成分) (質量%)
1.グリセリン 5
2.1,3−ブチレングリコール 5
3.乳酸 0.05
4.乳酸ナトリウム 0.1
5.製造例1のスカルキャップ抽出物1 0.0001
6.モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20E.O.)ソルビタン 1.2
7.エタノール 8
8.パラオキシ安息香酸メチル 0.1
9.香料 0.05
10.精製水 残量
【0034】
(製造方法)
A:成分6〜9を混合溶解する。
B:成分1〜5及び10を混合溶解する。
C:BにAを添加混合し、化粧水を得た。
【0035】
実施例3の化粧水は、抗酸化効果、ハリ・タルミ改善効果、ラジカル消去効果、エラスターゼ活性阻害効果、抗老化効果に優れるものであった。
【0036】
実施例4:乳液(水中油型)
(成分) (質量%)
1.モノステアリン酸ポリオキシエチレン(20E.O.)ソルビタン 1
2.トリオレイン酸ポリオキシエチレン(20E.O.)ソルビタン 0.5
3.グリセリルモノステアレート 1
4.ステアリン酸 0.5
5.ベヘニルアルコール 0.5
6.スクワラン 8
7.カルボキシビニルポリマー 0.1
8.パラオキシ安息香酸メチル 0.1
9.水酸化ナトリウム 0.05
10.製造例2のスカルキャップ抽出物2 0.1
11.エタノール 5
12.精製水 残量
13.香料 0.05
【0037】
(製造方法)
A:成分12に成分7〜10を加えて70℃で均一に混合する
B:成分1〜6を70℃で均一に混合する。
C:AにBを加えて乳化し、室温まで冷却する。
D:成分11、13を加えて均一に混合し、乳液を得た。
【0038】
実施例4の乳液は、抗酸化効果、ハリ・タルミ改善効果、ラジカル消去効果、エラスターゼ活性阻害効果、抗老化効果に優れるものであった。
【0039】
実施例5:リキッドファンデーション(水中油型クリーム状)
(成分) (質量%)
1.アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体(注1) 0.5
2.トリエタノールアミン 1.5
3.精製水 残量
4.グリセリン 5
5.パラオキシ安息香酸エチル 0.1
6.1,3―ブチレングリコール 5
7.水素添加大豆リン脂質 0.5
8.酸化チタン 5
9.ベンガラ 0.1
10.黄酸化鉄 1
11.黒酸化鉄 0.05
12.ステアリン酸 0.9
13.モノステアリン酸グリセリン 0.3
14.セトステアリルアルコール 0.4
15.モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20E.O.)ソルビタン 0.2
16.トリオレイン酸ポリオキシエチレン(20E.O.)ソルビタン 0.2
17.パラメトキシケイ皮酸2―エチルヘキシル 5
18.製造例3のスカルキャップ抽出物3 0.05
19.香料 0.02
(注1)ペミュレンTR−2(NOVEON社製)
【0040】
(製造方法)
A:成分6〜11を分散する。
B:Aに成分12〜17を加え70℃で均一に混合する。
C:成分1〜5を70℃で均一に混合する。
D:CにBを加え乳化し、室温まで冷却する。
E:Dに成分18、19を添加し均一に混合して水中油型クリーム状リキッドファンデーションを得た。
【0041】
実施例5の水中油型クリーム状リキッドファンデーションは、抗酸化効果、ハリ・タルミ改善効果、ラジカル消去効果、エラスターゼ活性阻害効果、抗老化効果に優れるものであった。
【0042】
実施例6:日焼け止め化粧料(油中水型クリーム状)
(成分) (質量%)
1.モノラウリン酸ポリオキシエチレン(20E.O.)ソルビタン 0.2
2.ポリオキシエチレン(60E.O.)硬化ヒマシ油 0.1
3.精製水 残量
4.ジプロピレングリコール 10
5.硫酸マグネシウム 0.5
6.アスコルビルリン酸マグネシウム 3
7.シリコーン化合物(注2) 3
8.デカメチルシクロペンタシロキサン 20
9.イソノナン酸イソトリデシル 5
10.パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル 8
11.製造例3のスカルキャップ抽出物3 0.01
12.ジメチルステアリルアンモニウムヘクトライト 1.2
(注2)KF−6028(信越化学工業社製)
【0043】
(製造方法)
A:成分1〜6を均一に分散する。
B:成分7〜12を均一に分散する。
C:Bを攪拌しながら徐々にAを加えて乳化し、油中水型クリーム状日焼け止め化粧料を得た。
【0044】
実施例6の油中水型クリーム状日焼け止め化粧料は、抗酸化効果、ハリ・タルミ改善効果、ラジカル消去効果、エラスターゼ活性阻害効果、抗老化効果に優れるものであった。
【0045】
実施例7:軟膏剤
(成分) (質量%)
1.ステアリン酸 18
2.セタノール 4
3.トリエタノールアミン 2
4.グリセリン 5
5.グリチルリチン酸ジカリウム(注3) 0.5
6.製造例2のスカルキャップ抽出物2 0.5
7.酢酸dl−α―トコフェロール(注4) 0.2
8.パラオキシ安息香酸メチル 0.1
9.精製水 残量
(注3)和光純薬工業社製
(注4)エーザイ社製
【0046】
(製造方法)
A.成分3、4および9の一部を加熱混合し、75℃に保つ。
B.成分1、2、7、8を加熱混合し、75℃に保つ。
C.AにBを徐々に加え、これを冷却しながら成分9の残部で溶解した成分5、6を加えて攪拌し、軟膏剤を得た。
【0047】
実施例7の軟膏剤は、抗酸化効果、ハリ・タルミ改善効果、ラジカル消去効果、エラスターゼ活性阻害効果、抗老化効果に優れるものであった。
【0048】
実施例8:ローション剤
(成分) (質量%)
1.グリセリン 5
2.1,3−ブチレングリコール 6.5
3.モノラウリン酸ポリオキシエチレン(20E.O.)ソルビタン 1.2
4.エタノール 8
5.パラオキシ安息香酸メチル 0.2
6.製造例1のスカルキャップ抽出物1 0.0001
7.精製水 残量
【0049】
(製造方法)
A.成分3〜5を混合溶解する。
B.成分1、2、6、7を混合溶解する。
C.AとBを混合して均一にし、ローション剤を得た。
【0050】
実施例8のローション剤は、抗酸化効果、ハリ・タルミ改善効果、ラジカル消去効果、エラスターゼ活性阻害効果、抗老化効果に優れるものであった。
【0051】
実施例9:パック
(処方) (質量%)
1.ポリビニルアルコール 20
2.エタノール 20
3.グリセリン 5
4.カオリン 6
5.製造例1のスカルキャップ抽出物1 0.1
6.防腐剤 0.2
7.香料 0.1
8.精製水 残量
【0052】
A.成分1、3、4、5、8を混合し、70℃に加熱し、撹拌する。
B.成分2、6を混合する。
C.BをAに加え、混合した後、冷却して成分7を加えて均一に分散してパックを得た。
【0053】
実施例9のパックは、抗酸化効果、ハリ・タルミ改善効果、ラジカル消去効果、エラスターゼ活性阻害効果、抗老化効果に優れるものであった。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明によれば、植物由来の安全性の良好な抗酸化剤、ハリ・タルミ改善剤、ラジカル消去剤、エラスターゼ活性阻害剤、抗老化剤を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シソ科タツナミソウ属スカルキャップ(Scutellaria lateriflora L.)の抽出物を含有することを特徴とする抗酸化剤。
【請求項2】
シソ科タツナミソウ属スカルキャップ(Scutellaria lateriflora L.)の抽出物を含有することを特徴とするハリ、タルミ改善剤。
【請求項3】
ラジカル消去剤である請求項1に記載の抗酸化剤。
【請求項4】
エラスターゼ活性阻害剤である請求項2に記載のハリ、タルミ改善剤。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の抗酸化剤又はハリ、タルミ改善剤を有効成分として含有する抗老化剤。

【公開番号】特開2012−176923(P2012−176923A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−41919(P2011−41919)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000145862)株式会社コーセー (734)
【Fターム(参考)】