説明

抗酸化剤及び活性酸素消去剤

【課題】優れた抗酸化作用と活性酸素消去作用を併せもつ天然由来の抗酸化剤及び活性酸素消去剤の提供。人体に対して安全性が高く、化粧品、医薬品、医薬部外品、食品及び各種飼料に配合可能な抗酸化剤及び活性酸素消去剤の提供。
【解決手段】学名:Piper betle L.(インドネシア名:Daun Sirih)の植物の抽出物を有効成分とする抗酸化剤、活性酸素消去剤、これを含む経口組成物。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、食品、化粧品、医薬、医薬部外品及び飼料等の分野に於いて利用可能な天然物由来の抗酸化剤および活性酸素消去剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】一般に酸素は、生命体にとって必須のものであるが、時には生体に害を及ぼしたり、食品や化粧品等の品質に影響を及ぼすことがある。
【0003】特に代謝により生成されるスーパーオキサイドと呼ばれる活性酸素は、鉄や銅などの金属触媒により還元されて過酸化水素となり、さらに最も反応性が高いヒドロキシラジカルとなって、DNAを切断したり、また脂質を酸化し、老化促進因子とされる過酸化脂質を生成することが知られている。
【0004】これらの活性酸素は、通常は生体内でSOD(スーパーオキシドディスムターゼ)と呼ばれる酵素により消去されるが、ストレスや高齢化などの諸要因によって生体のバランスが崩れるとSODが減少し、活性酸素によって過酸化脂質が増加して、心筋梗塞、動脈硬化、糖尿病、癌、脳卒中、白内障、肩こり、冷え性、高血圧及び老人性痴呆症等の疾患を招いたり、シミ、ソバカス、しわ等が生じる等といった問題が指摘されている。
【0005】また食品、医薬品や化粧品などの物品においては、酸素の影響によって、脂質の過酸化や重合化、蛋白質の変性、酵素の活性低下、色素分解による褪色化等が生じ、これらの成分を含む食品等の品質低下の原因となっている。
【0006】このような酸素に起因する不都合を解消するものとして、BHA(ブチルヒドロキシアニソ−ル)、BHT(ブチルヒドロキシトルエン)、α−トコフェロール、アスコルビン酸、システイン、グルタチオン、SOD等の抗酸化剤並びに活性酸素消去剤が知られている。
【0007】しかしながら、上記BHAやBHT等は化学的合成品であるため人に対する安全性が懸念されており、またα−トコフェロールやアスコルビン酸等は、比較的優れた活性酸素消去作用を有するものの、安定性に乏しく特に熱に不安定で失活し易く、さらにSODにおいては不安定性に加えて、その調製の困難性から安価に入手できないという問題を有している。
【0008】かかる状況のもと、従来から人体に適用しても安全で、且つ優れた抗酸化作用又は活性酸素消去作用を有し、しかも容易に製造可能で、安定性に優れた抗酸化剤並びに活性酸素消去剤の開発が望まれていた。
【0009】
【本発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、優れた抗酸化作用と活性酸素消去作用を併せもつ天然由来の抗酸化剤及び活性酸素消去剤を提供することである。また、本発明の目的は、人体に対して安全性が高く、化粧品、医薬品、医薬部外品、食品及び各種飼料に配合可能な抗酸化剤及び活性酸素消去剤を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究を重ねていたところ、すでに多年にわたって食用(薬用)に供され、人体に対する安全性が確認されているインドネシア産の特定の植物の抽出物に高い抗酸化活性があり、化粧品、医薬品、医薬部外品、食品及び各種飼料の品質劣化を防止する抗酸化剤として有用であることを見出した。本発明者らはかかる知見に基づいて更に研究を進めていたところ、当該抽出物はその優れた抗酸化活性に基づいて、さらに生体に対しても顕著な抗酸化作用(生体内抗酸化作用)、すなわち活性酸素消去作用を有することを見出し、生体内に存在する活性酸素に起因して生じる各種障害(心筋梗塞、動脈硬化、糖尿病、癌、脳卒中、白内障、肩こり、冷え性、高血圧、老人性痴呆症、シミ、ソバカス、しわ)を改善しまた予防する活性酸素消去剤として有用であることを確信した。本発明は、かかる新たな知見に基づいて完成されたものである。
【0011】すなわち、本発明は、学名:Piper betle L.(インドネシア名:Daun Sirih)の植物の抽出物を有効成分とする抗酸化剤である。また本発明は、上記植物抽出物を抗酸化作用有効量含有する組成物である。
【0012】さらに本発明は、学名:Piper betle L.(インドネシア名:Daun Sirih)の植物の抽出物を有効成分とする活性酸素消去剤である。また本発明は、上記植物抽出物を活性酸素消去作用有効量含む経口組成物、特に食品である。
【0013】また本発明は、学名:Piper betle L.(インドネシア名:Daun Sirih)の植物の抽出物を有効成分として含む活性酸素フリーラジカル起因疾患予防用経口組成物、特に食品である。
【0014】
【発明の実施の形態】本発明で抽出物の原料植物として用いられる学名:Piper betle L.(インドネシア名:Daun Sirih)は、インドネシア地方で栽培されるコショウ科(Piperaceae)のつる性植物であり、古来から健胃薬、去痰薬並びに嗜好品として用いられている。
【0015】本発明においては、抗酸化作用並びに活性酸素消去作用を発揮する有効成分として、上記植物の全草またはその一部(例えば根、茎、葉、果実(種子)、花蕾、樹皮、虫えい、木部、心材等)の溶媒抽出物が用いられる。抽出に用いられる植物部位は前記全草またはその一部であれば特に制限されないが、特に葉部が好適である。当該植物の全草又はその一部はそのまま若しくは破砕物として抽出操作に付してもよいし、また乾燥後、必要に応じて粉砕粉体状として抽出操作に付してもよい。
【0016】抽出に用いられる溶媒としては、特に制限されず、低級アルコール、多価アルコール、非極性溶媒および極性溶媒を広く用いることができる。より具体的には低級アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール及びイソプロピルアルコール、ブタノール等の炭素数1〜4のアルコール;多価アルコールとしては、グリセリン、ポリエチレングリコール等;非極性溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン等の飽和炭化水素あるいはヘキセン、ヘプテン等の不飽和炭化水素等;極性溶媒としては、水、アセトン、酢酸エチル、酢酸メチル等が使用される。これら溶媒は、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて使用することもできる。例えば脂肪分の多い原料などの場合は、非極性溶媒で脱脂抽出処理した後、各種任意の溶媒で抽出処理してもよいし、また含水有機溶媒を用いて抽出処理することもできる。
【0017】抽出方法としては、一般に用いられる方法を採用することができる。制限はされないが、例えば溶媒中に全草若しくは部分(そのまま若しくは粗末、細切物)、又はそれらの乾燥破砕物(粉末など)を冷浸、温浸等によって浸漬する方法、加温し攪拌しながら抽出を行い、濾過して抽出液を得る方法、またはパーコレーション法等を挙げることができる。
【0018】得られた抽出液は、必要に応じてろ過または遠心分離によって固形物を除去した後、使用の態様に応じて、そのまま用いるか、または溶媒を留去して一部濃縮若しくは乾燥して用いてもよい。また濃縮乃至は乾燥後、該濃縮乃至は乾燥物を非溶解性溶媒で洗浄して精製して用いても、またこれを更に適当な溶剤に溶解もしくは懸濁して用いることもできる。また、抽出液を、慣用されている精製法、例えば向流分配法や液体クロマトグラフィー等を用いて、抗酸化活性及び活性酸素消去活性を有する画分を取得、精製して使用することも可能である。更に、本発明においては、例えば、上記のようにして得られた溶媒抽出液を、減圧乾燥、凍結乾燥等の通常の手段により植物エキス乾燥物として使用することもできる。
【0019】(1)抗酸化剤本発明の抗酸化剤は、上記の植物抽出物を有効成分として含有するものである。
【0020】抗酸化剤に含まれる植物抽出物の配合量はその用途や適用対象に応じて適宜変更することができ、特に制限されるものではない。また、植物抽出物そのものをそのまま抗酸化剤として使用することもできる。
【0021】本発明の抗酸化剤は、食品、医薬部外品、医薬品、化粧品及び飼料に、それら対象物の酸化による味や品質並びに食感の低下、褪色、油焼け等を防止する目的で、抗酸化作用有効量、添加配合して用いることができる。
【0022】ここで抗酸化作用有効量としては、抗酸化作用を発揮する量を広く意味するものであり、好ましくは食品、医薬部外品、医薬品、化粧品並びに飼料等に含まれる成分が、酸素、熱、光、pH、イオン等によって受け得る酸化を防止できる量を意味する。抗酸化作用有効量は対象物の種類やその中に含まれる成分の種類によって異なり、上記の効果を発揮する限りにおいて特に制限されるものではないが、具体的には、対象物における植物抽出物(乾燥物換算)の含有割合として、通常0.01〜30%(重量%、以下同じ)、好ましくは0.025〜10%の範囲を例示することができる。
【0023】本発明の抗酸化剤を配合する食品、医薬部外品、医薬品、化粧品並びに飼料等の各種組成物は、酸化によって悪影響を受け得るものであれば特に制限されない。
【0024】例えば食品としては、油脂類、油脂類を含有する食品、並びに色素(特に天然色素)を含有する食品などを好適に挙げることができる。
【0025】ここで、油脂類としては、コーン油、ナタネ油、綿実油、大豆油、サフラワー油、ヒマワリ油、ゴマ油、小麦胚芽油、オリーブ油、月見草油、椿油、茶実油、アボガド油、ひまし油、コーヒー油、カシューナッツ油、カカオビーンズ油、落花生油、魚油、パーム油、パーム核油、豚脂、牛脂、鶏脂などの動植物油脂やこれらの動植物油脂の部分水素添加油脂;オレイン酸、リノール酸、α−リノール酸、γ−リノール酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸などの不飽和脂肪酸およびそのエステルまたはその不飽和アルコール;バター、マーガリン、ショートニング、ドレッシングなどの油脂加工食品を挙げることができる。
【0026】また、油脂類を含有する食品としては、ドーナッツ、油揚げ、油揚げ菓子、チョコレート、即席ラーメンなどの比較的油脂を多く含む食品を好適に挙げることができる。
【0027】その他、対象となる食品としては、おかき、センベイ、おこし、まんじゅう、飴などの和菓子;クッキー、ビスケット、クラッカー、パイ、スポンジケーキ、カステラ、ドーナツ、ワッフル、プリン、バタークリーム、カスタードクリーム、シュークリーム、チョコレート、チョコレート菓子、キャラメル、キャンデー、チューインガム、ゼリー、ホットケーキ、パンなどの各種洋菓子;ポテトチップスなどのスナック菓子;アイスクリーム、アイスキャンデー、シャーベットなどの氷菓;乳酸飲料、乳酸菌飲料、濃厚乳性飲料、果汁飲料、無果汁飲料、果肉飲料、機能性飲料、透明炭酸飲料、果汁入り炭酸飲料、果実着色炭酸飲料などの清涼飲料水;緑茶、紅茶、インスタントコーヒー、ココア、缶入りコーヒードリンク、業務用コーヒーなどの嗜好飲料;発酵乳、加工乳、チーズなどの乳製品;豆乳などの大豆加工食品;マーマレード、ジャム、果実のシロップ漬;フラワーペースト、ピーナツペースト、フルーツペーストなどのペースト類;漬物類;ハム、ソーセージ、ベーコン、ドライソーセージ、ビーフジャーキーなどの畜肉製品類;魚肉ハム、魚肉ソーセージ、蒲鉾、チクワ、ハンペン、てんぷらなどの魚貝類製品及びその干物;魚の干物、鰹、鯖、鰺などの各種節;煮干、ウニ、イカの塩辛;スルメ、魚のみりん干、貝の干物、鱈の干物、鮭などの燻製品などの各種珍味類;のり、小魚、貝類、するめ、山菜、茸、昆布などで作られる佃煮類;即席カレー、レトルトカレー、缶詰カレーなどのカレー類;みそ、粉末みそ、醤油、粉末醤油、もろみ、魚醤、ソース、ケチャップ、マヨネーズ、固形ブイヨン、蠣油、焼肉のタレ、カレールー、シチューの素、スープの素、ダシの素などの各種調味料類;油脂を含有する各種レンジ食品及び冷凍食品などの各種飲食物を挙げることができる。なお、上記個々の食品は本発明の抗酸化剤が対象とする食品の例示であり、なんらこれらの食品に限定されるものではない。
【0028】医薬品、医薬部外品、化粧品としてはトローチ、肝油ドロップ、うがい薬、歯磨き、口中清涼剤、口臭防止剤、日焼け止め剤、スキンローション、各種スキンクリーム、口紅等を挙げることができ、また飼料としては、各種キャットフード、ドッグフード、観賞魚の餌、養殖魚の餌などを挙げることができる。
【0029】なお、本発明の抗酸化剤は、他の抗酸化剤、例えばトコフェロール、L−アスコルビン酸、エリソルビン酸ナトリウム、BHAなどと併用して使用することもできる。
【0030】(2)活性酸素消去剤本発明の活性酸素消去剤は、前述する植物の抽出物を有効成分として含有するものである。活性酸素消去剤に含まれる植物抽出物の配合量は、抗酸化剤と同様、その用途や適用対象に応じて適宜変更調整することができ、特に制限されるものではない。また、植物抽出物そのものをそのまま活性酸素消去剤として使用することもできる。
【0031】本発明の活性酸素消去剤は、生体内の活性酸素によって惹起され得る各種の障害を改善し、または予防する目的で、食品や医薬品等の経口組成物並びに化粧品や外用薬などの皮膚外用剤に活性酸素消去作用有効量、添加配合して用いることができる。
【0032】なお、生体内の活性酸素によって惹起され得る各種の障害としては、各種炎症(歯肉炎、歯周遠などの歯周病、肺炎等が含まれる)、心筋梗塞や動脈硬化等の循環器疾患、糖尿病や白内障などの糖尿病合併症、各種癌(例えばイニシエーター、プロモーターに起因する肺癌や胃癌等が含まれる)、脳卒中、肩こり、冷え性、高血圧、老人性痴呆症、β−アミロイドタンパクの毒性によるアルツハイマー型痴呆症、老化などの疾患(活性酸素フリーラジカル起因疾患)や、シミ、ソバカス、しわ等の皮膚障害が知られているが、本発明は活性酸素との因果関係が従来から知られているこれらの疾患や皮膚障害のみならず、将来活性酸素との因果関係が判明する疾患等をも対象とするものである。
【0033】また活性酸素消去作用有効量とは、生体内において抗酸化作用を発揮する量もしくは活性酸素を低減ないしは消去できる量を意味する。活性酸素消去作用有効量は適用対象や適用部位等によって異なり、上記の効果を発揮する限りにおいて特に制限されるものではないが、具体的には、食品、医薬品並びに化粧品等の各種組成物における植物抽出物(乾燥物換算)の含有割合として、通常0.025〜30%(重量%、以下同じ)、好ましくは0.05〜10%の範囲を例示することができる。
【0034】なお本発明の活性酸素消去剤は、本発明の効果を損なわないことを限度に、配合する対象物に応じて、自体公知の各種任意成分(増量剤、賦形剤、滑沢剤、結合剤、油剤、保湿剤、増粘剤、防腐剤、乳化剤、キレート剤、顔料、pH調整剤、薬効成分、紫外線吸収剤、香料)と併用することができ、これにより、各種食品(例えば健康食品)、経口投与製剤、外用剤(クリーム、ミルクローション、ローション、ゲル剤、軟膏、パウダー等)、化粧品(ファンデーション、パック、エッセンス、リップクリーム、口紅、サンケア)等の任意形態に調製することができる。
【0035】また、本発明の活性酸素消去剤は、他の活性酸素消去剤などと併用して使用することもできる。
【0036】本発明は、上記活性酸素消去剤を含有する経口組成物を特に対象とするものである。なお、本発明で経口組成物とは、例えば飲食物、経口投与薬またはそれらに添加される食品添加物、医薬品添加物のように経口的に摂取されるものを広く含むものである。当該経口組成物によれば、経口的に摂取されることによって生体内において抗酸化作用を発揮して生体内の活性酸素を低減ないしは消去することができ、ゆえに上記に掲げるいわゆる活性酸素フリーラジカル起因疾患の改善ないしは予防に有用である。
【0037】すなわち、かかる観点から本発明は活性酸素フリーラジカル起因疾患の予防に好適に用いられる経口組成物を提供するものである。なお、当該経口組成物は食品(飲用物を含む)であってもよいし医薬品であってもよいが、好ましくは食品である。当該経口組成物は、その種類に応じて食品衛生上許容しえる各種食品用担体や添加物、ないしは薬学上許容しえる医薬用担体や添加物を含有することができる。
【0038】
【実施例】以下、製造例、実施例、試験例を挙げて本発明を更に詳しく具体的に説明する。
製造例キンマ(Piper betle L.)の葉(インドネシア名 Daun Sirih)の乾燥物粉砕物100gに対して、3倍量のヘキサンを加え、室温で24時間抽出し、ろ過。ろ過残渣に更に1倍量のヘキサン加え攪拌、ろ過を行ない試料の脱脂を行なった。脱脂された試料は乾燥後、5倍量のメタノールにて、室温48時間抽出を行なった。これをろ過し得られた抽出液をエバポレーターにて濃縮、凍結乾燥を行ない植物抽出物(以下、Daun Sirih抽出物という)を3.34g得た。
【0039】参考製造例1学名:Uncaria gambir (Hunter) Roxb.(インドネシア名:Gambir)の茎・葉の破砕物100gに対して、100 v/v%エタノール1Lを加え、室温暗所にて7日間撹拌抽出を行った。これを遠心分離・加圧ろ過し、抽出物(以下、Gambir抽出物という)を得た。
【0040】参考製造例2学名:Eugenia aromatica O.K.(インドネシア名:Cengkeh)の果実乾燥物の破砕物100gに対して、精製水1Lを加え、湯浴上で1時間撹拌抽出を行った。これを遠心分離・加圧ろ過し、抽出物(以下、Cengkeh抽出物という)を得た。
【0041】参考製造例3学名:Terminalia belerica Roxb.(インドネシア名:Jaha)の果皮乾燥物の破砕物100gに対して、精製水1Lを加え、湯浴上で1時間撹拌抽出を行った。これを遠心分離・加圧ろ過し、抽出物(以下、Jaha抽出物という)を得た。
【0042】参考製造例4学名:Parameria laevigata (Juss.) Moldenke(インドネシア名:Kayu-rapat)の樹皮乾燥物の破砕物100gに対して、精製水1Lを加え、湯浴上で1時間撹拌抽出を行った。これを遠心分離・加圧ろ過し、抽出物(以下、Kayu-rapat抽出物という)を得た。
【0043】試験例1 抗酸化作用試験上記製造例で調製したDaun Sirih抽出物の抗酸化力を、ラット肝ホモジネートの脂質過酸化抑制能を指標に測定した。
<方法>■ラット肝摘出ラットは一晩絶食させた後、脱血死させ、冷却した0.9%NaCl溶液で肝臓を灌流し、切除した。得られた肝臓を、組織1gに対して19mlの20mMリン酸緩衝液を用いて氷冷下でホモジナイズした。
【0044】■ラット肝ホモジネートの脂質過酸化反応遠沈管に上記で得られたホモジネート液1mlと、50mMアスコルビン酸10μl、10mM FeSO4 10μl、5mg/ml濃度に調製した被験物質(Daun Sirih抽出物)(メタノール溶液)10μlを入れて、37℃で1時間インキュベートした。このときコントロールとして10μlのメタノールを用いて同様に実験した。また比較のため公知の抗酸化剤であるα−トコフェロールのメタノール溶液(5mg/ml)(比較品1)、並びに参考製造例1〜4で調製した抗酸化作用が知られている各種植物抽出物(水溶液又はメタノール溶液:5mg/ml)(比較品2〜5)についても同様に実験した。
【0045】■過酸化脂質の測定1時間後、2mlのTBA試薬(トリクロロ酢酸、チオバルビツール酸、1N塩酸、BHT、エタノール)を遠沈管に加え、さらに30μlの50mMのBHTエタノール溶液を加えて、100℃で15分間インキュベートした。終了後、直ちに冷却して、3000rpmで10分間遠心し、上清をガラス試験管に移しかえて、分光光度計で535nmの吸光度を測定した。得られた吸光度から下記の式に従って脂質過酸化抑制率(%)を算出した。
【0046】
【数1】


【0047】結果を、比較実験の結果と併せて表1に示す。
【0048】
【表1】


【0049】これらの結果から、本発明のDaun Sirih抽出物は、公知の抗酸化剤よりも有意に優れた抗酸化作用を有していることがわかる。
【0050】実施例2 フリーラジカル消去作用試験上記製造例で調製したDaun Sirih抽出物について、DPPH(1,1-DIPHENYL-2-PICRYLHYDRAZYL)ラジカル消去作用を下記の方法にて測定した。
【0051】まず、0.1Mの酢酸緩衝溶液(PH5.5)2mlに、Daun Sirih抽出物のエタノール溶液(2ml)及び2×10-4MのDPPHエタノール溶液(1ml)を加えて全量5mlとし、30分後に517nmにおける吸光度を測定した。Daun Sirih抽出物のエタノール溶液(2ml)の代わりにエタノールを2ml加えた系をコントロールとし、下記の式より吸光度の減少率を求めた。また比較のため公知の抗酸化剤であるα−トコフェロール(ナカライテスク社製試薬;純度96%)(比較品1)についても同様に実験した。
【0052】
【数2】


【0053】結果を表2に示す。なお、結果は被験物無添加のコントロールの吸光度を1/2に減少させるのに必要な被験物量(mg)で示した。
【0054】
【表2】


【0055】これらの結果から、本発明のDaun Sirih抽出物は、公知の活性酸素消去剤よりも有意に優れた活性酸素消去作用を有していることがわかる。
【0056】実施例3 スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)様活性の測定上記製造例で調製したDaun Sirih抽出物についてSOD様活性を測定した。なお、SOD様活性は、和光純薬のSODテストワコー(ニトロテトラゾリウム法)のテストキットを使用し測定した。
【0057】具体的には、発色試液(0.1M リン酸緩衝液(pH8)、0.4mmol/l キサンチン、0.24mmol/l ニトロブルーテトラゾリウム)1.0ml、0.1%(W/V) DaunSirih抽出物溶液0.1mlを試験管にいれ、37℃で恒温にし、酵素液(キサンチンオキシダーゼ 0.049単位/ml)1.0mlを加えて攪拌した後、37℃で20分間放置した。20分後に反応停止液(ドデシル硫酸ナトリウム 69mmol/l)を2.0ml添加し、560nmでの吸光度を測定した(本検:検体、ES)。また、試料としてDaun Sirih溶液の代わりに希釈溶剤(0.1M リン酸緩衝液(pH8))を添加した系(本検:盲検、EBL)、酵素液の代わりにブランク液(0.1Mリン酸緩衝液(pH8))を添加した系(盲検:検体盲検、ES-BL)、試料としての代わりに希釈溶剤を、酵素液の代わりにブランク液を添加した系(盲検:試薬盲検、EBL-BL)を測定して、以下の式に従いSOD活性値(阻害率%)を求めた。また比較のため活性酸素消去作用が知られている参考製造例1〜4の各種植物抽出物(0.1%(W/V) 溶液0.1ml)(比較品2〜5)についても同様に実験した。
【0058】
【数3】


【0059】測定操作を下記の表3に示す。
【0060】
【表3】


【0061】結果を表4に示す。
【0062】
【表4】


【0063】これらの結果から、本発明のDaun Sirih抽出物は、公知の活性酸素消去剤よりも有意に優れた活性酸素消去作用を有していることがわかる。
【0064】


【0065】処方例2 糖衣タブレット錠剤部分200重量部を、糖衣部130重量部で糖衣した口中清涼剤を作成した

【0066】


【0067】


精製水に植物抽出物を混合・溶解する。その後、ゴマ油を添加し、撹拌混合し、ドレッシングを製造した。
【0068】


ポリビニールピロリドンの50%エタノール溶液を調製し、これを乳糖、結晶セルロース、コーンスターチに添加して、均一に混合し、顆粒装置を用い、造粒する。乾燥後整粒し、顆粒剤を製造した。
【0069】


上記原料を均一に混合し、50%エタノール溶液を適量添加し、顆粒装置を用い、造粒する。乾燥後、これを打錠し、錠菓を製造した。
【0070】


【0071】
【発明の効果】本発明に係わる植物の抽出物は、優れた抗酸化作用を有しており安全性も高いため、化粧料、食品、医薬品、医薬部外品及び飼料等に配合することにより、該各種製品組成物の酸化による品質の劣下(褪色、味の低下、変質、変形、食感の低下)を有意に防止することができる。また、本発明に係わる植物の抽出物は優れた活性酸素消去作用を有しており安全性も高いため、食品、医薬品、医薬部外品及び飼料等の組成物、特に経口的に摂取される組成物に配合することにより、生体内における酸化を抑え、また活性酸素(フリーラジカル)に起因する疾患(例えば歯肉炎、歯周炎、肺炎などの各種炎症;老化;胃癌や肺癌などイニシエーターやプロモーターに起因する癌;動脈硬化並びに動脈硬化に起因する心筋梗塞などの循環器疾患;並びにβ−アミロイドタンパクの毒性によるアルツハイマー型痴呆症、糖尿病合併症(白内障など))の改善乃至は予防に有用である。また、化粧品や皮膚外用剤に配合することにより、皮膚脂質成分の酸化を防止し、皮膚の酸化傷害や皮膚老化を予防し、シミ、ソバカス、しわ等の皮膚障害を改善・予防することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】学名:Piper betle L.(インドネシア名:Daun Sirih)の植物の抽出物を有効成分とする抗酸化剤。
【請求項2】学名:Piper betle L.(インドネシア名:Daun Sirih)の植物の抽出物を抗酸化作用有効量含む組成物。
【請求項3】学名:Piper betle L.(インドネシア名:Daun Sirih)の植物の抽出物を有効成分とする活性酸素消去剤。
【請求項4】学名:Piper betle L.(インドネシア名:Daun Sirih)の植物の抽出物を活性酸素消去作用有効量含む経口組成物。
【請求項5】学名:Piper betle L.(インドネシア名:Daun Sirih)の植物の抽出物を活性酸素フリーラジカル起因疾患予防用経口組成物。
【請求項6】食品である請求項4または5記載の経口組成物。

【公開番号】特開2001−98267(P2001−98267A)
【公開日】平成13年4月10日(2001.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−280730
【出願日】平成11年9月30日(1999.9.30)
【出願人】(000186588)小林製薬株式会社 (518)
【出願人】(591011410)小川香料株式会社 (173)
【Fターム(参考)】