説明

抗酸化剤

【課題】 活性酸素や生体内ラジカルの発生を阻害することにより、過酸化脂質の生成を抑制し、皮膚の弾力性低下等の皮膚の老化、皮膚の炎症、肌の色素沈着等を予防・治療可能なものを提供すること。
【解決手段】 ハナショウブ(Iris ensata var. ensata)、アヤメ(Iris sanguinea Hornem.)、カキツバタ(Iris laevigata Fisch.)より選ばれた1種又は2種以上の植物の抽出物を有効成分として含有することを特徴とする抗酸化剤によって達成される。この抗酸化剤は、活性酸素消去作用及び/又はラジカル消去作用を有しており、ラジカル消去剤、活性酸素消去剤としても使用できる。また、この抗酸化剤を含有する化粧料を提供できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然の植物から得られる抗酸化剤、活性酸素消去剤、及びラジカル消去剤、並びに植物からの抽出物を配合した化粧料に関する。更に詳しくは、ハナショウブ(Iris ensata var. ensata)、アヤメ(Iris sanguinea Hornem.)、カキツバタ(Iris laevigata Fisch.)より選ばれた1種又は2種以上の植物の抽出物を有効成分とする皮膚の抗酸化機能を更新させ、活性酸素及び/又はラジカルを消去させ、皮膚の老化を防止し、若々しい肌状態を維持することができる化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
アヤメ属植物の化粧品への利用については、イリス属(アヤメ属)の植物抽出物を配合した美白用皮膚外用剤(特許文献1)、アヤメ属の抽出物を配合した皮膚・皮下組織を弛緩・和らげるための、特に普通の皺及び小皺を処理するための化粧料(特許文献2)、アヤメ科植物の抽出物を含む免疫防御の刺激を意図した薬剤(特許文献3)、アヤメ属の抽出物を配合する女性ホルモン産生促進剤(特許文献4)が開示されている。しかし、アヤメ属、特にハナショウブ、アヤメ、カキツバタの抽出物が顕著な抗酸化作用、活性酸素消去及びラジカル消去作用を奏することは知られていない。
【0003】
近年、特に生体成分を酸化させる要因として、活性酸素が注目されており、その生体への悪影響が問題となっている。活性酸素は、コラーゲン等の生体組織を分解、変性あるいは架橋したり、油脂類を酸化して細胞に障害を与える過酸化脂質を生成したりすると考えられており、活性酸素によって引き起こされるこれらの障害が、皮膚のしわ形成や皮膚の弾力性低下等の老化、あるいは炎症、肌の色素沈着等の原因になるものと考えられている(非特許文献1参照)。
したがって、活性酸素や生体内ラジカルの発生の阻害・抑制により、過酸化脂質の生成の抑制等を通じて皮膚の弾力性低下等の皮膚の老化や、皮膚の炎症、肌の色素沈着等を予防・治療できるものと考えられる。
【特許文献1】特開平9−30954号公報
【特許文献2】特開平10−7545号公報
【特許文献3】特開2002−80383号公報
【特許文献4】特開2005−171098号公報
【非特許文献1】プレグランスジャーナル臨時増刊No.14156−161頁,1995年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、活性酸素や生体内ラジカルの発生を阻害することにより、過酸化脂質の生成を抑制し、皮膚の弾力性低下等の皮膚の老化、皮膚の炎症、肌の色素沈着等を予防・治療可能なものを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、第1の発明に係る抗酸化剤は、ハナショウブ(Iris ensata var. ensata)、アヤメ(Iris sanguinea Hornem.)、カキツバタ(Iris laevigata Fisch.)より選ばれた1種又は2種以上の植物の抽出物を有効成分として含有することを特徴とする。
本発明において、上記抽出物が、活性酸素消去作用及び/又はラジカル消去作用を有することが好ましい。
また、上記抗酸化剤を有効成分として含有するラジカル消去剤であることが好ましい。
また、上記抗酸化剤を有効成分として含有する活性酸素消去剤であることが好ましい。
また、上記抗酸化剤を含有する化粧料であることが好ましい。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、活性酸素や生体内ラジカルの発生を阻害することにより、過酸化脂質の生成を抑制し、皮膚の弾力性低下等の皮膚の老化、皮膚の炎症、肌の色素沈着等を予防・治療可能なものを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
次に、本発明の実施形態について、図表を参照しつつ説明するが、本発明の技術的範囲は、これらの実施形態によって限定されるものではなく、発明の要旨を変更することなく様々な形態で実施することができる。また、本発明の技術的範囲は、均等の範囲にまで及ぶものである。
【0008】
本発明に係る抗酸化剤、活性酸素消去剤及びラジカル消去剤は、いずれも、ハナショウブ、アヤメ、カキツバタからの抽出物を有効成分として含有する。
ここで、ハナショウブ、アヤメ、カキツバタからの「抽出物」には、抽出処理によって各植物から得られる抽出液、当該抽出液の希釈液若しくは濃縮液、当該抽出液を乾燥して得られる乾燥物、又はこれらの粗精製物若しくは精製物のいずれもが含まれる。
ハナショウブ、アヤメ、カキツバタはいずれもアヤメ科アヤメ属の植物であって、我が国で自生及び栽培されており、容易に入手可能である。
抽出原料として用いるハナショウブ、アヤメ、カキツバタの構成部位としては、葉部、茎部、根部が挙げられるが、本発明においては、そのいずれの部位も使用できる。
【0009】
ハナショウブ、アヤメ、カキツバタからの抽出物に含有される抗酸化剤、活性酸素消去作用及び/又はラジカル消去作用を有する物質の詳細は不明であるが、植物の抽出に一般に用いられている抽出方法によって、ハナショウブ、アヤメ、カキツバタから活性酸素消去作用及び/又はラジカル消去作用を有する抽出物を得ることができる。例えば、抽出原料をそのまま、細切り若しくは粉砕し、抽出溶媒による抽出に供することにより得ることができる。必要に応じて天日若しくは乾燥機などにより乾燥した後に抽出しても良い。また、ハナショウブ、アヤメ、カキツバタは、ヘキサン、ベンゼン等の非極性溶媒によって脱脂、葉緑素などの着色成分除去等の前処理を施してから抽出原料として使用してもよい。脱脂等の前処理を行うことにより、ハナショウブ、アヤメ、カキツバタの極性溶媒による抽出処理を効率よく行うことができる。
【0010】
抽出溶媒としては、極性溶媒を用いることが好ましく、水若しくは親水性有機溶媒又はこれらの混合液を室温、低温又は溶媒の沸点以下の温度で用いることが特に好ましい。
抽出溶媒として使用し得る水としては、純水、水道水、井戸水、鉱泉水、鉱水、温泉水、湧水、淡水等の他、これらに各種処理を施したものが含まれる。水に施す処理としては、例えば、精製、加熱、殺菌、ろ過、イオン交換、浸透圧の調整、緩衝化等が含まれる。従って、本発明において、抽出溶媒として使用し得る水には、精製水、熱水、イオン交換水、生理食塩水、リン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水等も含まれる。
【0011】
抽出溶媒として使用し得る親水性有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の炭素数1〜5の低級アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等の低級脂肪族ケトン;1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の炭素数2〜5の多価アルコールなどが挙げられる。
2種以上の極性溶媒の混合液を抽出溶媒として使用する場合、その混合比は適宜調整することができる。例えば、水と低級アルコールとの混合液を使用する場合には、水10質量部に対して低級アルコール1〜90質量部、水と低級脂肪族ケトンとの混合液を使用する場合には、水10質量部に対して低級ケトン1〜40質量部、水と多価アルコールとの混合液を使用する場合には、水10質量部に対して多価アルコール1〜90質量部を混合するのが好ましい。
【0012】
抽出処理は、ハナショウブ、アヤメ、カキツバタに含有される可溶性成分を抽出溶媒に溶出させ得る限り特に限定されるものではなく、常法に従って行うことができる。抽出処理の際には特殊な抽出方法を採用する必要はなく、室温、低温又は還流加熱下において任意の装置を用いることができる。
具体的には、抽出溶媒を満たした処理容器に抽出原料を投入し、必要に応じて時々撹絆しながら、通常30分〜96時間静置して可溶性成分を溶出した後、ろ過又は遠心分離にて固形物を除去し、抽出液を得る。抽出溶媒量は、抽出原料の通常2〜20倍量(質量比)である。抽出条件は、抽出溶媒として水を用いた場合には、通常0〜95℃で1〜96時間程度であり、抽出溶媒として水とエタノールとの混合溶媒を用いた場合には、通常0〜80℃で30分〜48時間程度である。また、同様の操作を繰り返すことにより抽出効率を上げることができる。
【0013】
得られた抽出液から溶媒を留去するとぺースト状の濃縮物が得られ、この濃縮物を更に乾燥すれば、固形の抽出物が得られる。ただし、ハナショウブ、アヤメ、カキツバタからの抽出物は、固形の抽出物である必要はなく、上記抽出液又はその濃縮物の状態であっても構わない。これらハナショウブ、アヤメ、カキツバタからの抽出物は、その生理活性の低下を招かない範囲で、種々のろ過、活性炭処理、吸着樹脂処理、イオン交換4樹脂、液−液向流分配等の方法により精製してから用いてもよい。
ハナショウブ、アヤメ、カキツバタからの抽出物は、特異な臭いもなく、また少量で効果を示すことから、化粧料の色調に影響を与えず、抗酸化剤、活性酸素消去剤又はラジカル消去剤として用いることができるが、必要ならば活性の向上や脱色・脱臭を目的とする処理を施したり、任意の助剤と混合して製剤化して使用することもできる。
【0014】
以上のようにして得られるハナショウブ、アヤメ、カキツバタからの抽出物は、活性酸素消去及び/又はラジカル消去作用を有しており、これらの作用を利用して抗酸化剤、活性酸素消去剤又はラジカル消去剤の有効成分として皮膚化粧料、毛髪化粧料、医薬部外品等に使用することができる。
ここで、ハナショウブ、アヤメ、カキツバタからの抽出物の抗酸化作用は、活性酸素消去作用及び/又はラジカル消去作用に基づいて発揮される。「活性酸素」には、スーパーオキサイド、過酸化水素、ヒドロキシラジカル、一重項酸素等が含まれる。また、「ラジカル」とは、不対電子をひとつ又はそれ以上有する分子又は原子を意味し、スーパーオキサイド、ヒドロキシラジカル、DPPH等が含まれる。
【0015】
ハナショウブ、アヤメ、カキツバタからの抽出物、並びに当該抽出物を有効成分として含有する抗酸化剤、活性酸素消去剤及びラジカル消去剤は、皮膚の老化、皮膚の炎症及び肌の色素沈着を防止及び/又は改善することができるとともに、皮膚に適用した場合の使用感と安全性に優れているため、皮膚、毛髪化粧料に配合するのに好適である。
ハナショウブ、アヤメ、カキツバタからの抽出物を配合し得る皮膚化粧料の種類は特に限定されず、その具体例としては、軟膏、クリーム、乳液、ロ―ション、パック、リップクリーム、入浴剤、ヘアートニック、ヘアーローション、石鹸、ボディシャンプー等が挙げられる。
【0016】
本発明の皮膚化粧料におけるハナショウブ、アヤメ、カキツバタからの抽出物の配合量は、皮膚化粧料の種類や抽出物の生理活性等によって適宜調整することができるが、好適な配合率は、標準的な抽出物の場合、乾燥物に換算して約0.001〜10質量%である。
本発明の皮膚化粧料には、ハナショウブ、アヤメ、カキツバタからの抽出物が有する抗酸化剤、活性酸素消去作用及び/又はラジカル消去作用の妨げにならない限り、皮膚化粧料の製造に通常使用される各種主剤及び助剤、その他任意の助剤を使用することができる。本発明の皮膚化粧料は、皮膚の老化防止・改善に関し、ハナショウブ、アヤメ、カキツバタからの抽出物のみが主剤となるものに限られるわけではない。
【0017】
本発明の皮膚化粧料において、ハナショウブ、アヤメ、カキツバタからの抽出物と共に皮膚化粧料構成成分として利用可能なものとしては、例えば、収斂剤、殺菌・抗菌剤、美白剤、紫外線吸収剤、保湿剤、細胞賦活剤、消炎・抗アレルギー剤、抗酸化・活性酸素消去剤等が挙げられ、ハナショウブ、アヤメ、カキツバタからの抽出物とともに上記構成成分を併用した場合、ハナショウブ、アヤメ、カキツバタからの抽出物と併用された構成成分との間の相乗作用が、通常期待される以上の優れた使用効果をもたらすことがある。
【0018】
ハナショウブ、アヤメ、カキツバタからの抽出物を配合した皮膚化粧料を製造する場合、他の製造原料の選択が制限されることはほとんどなく、油脂類、ロウ類、炭化水素類、脂肪酸類、アルコール類、エステル類、界面活性剤、香料等の一般的な基材や助剤はいずれも使用可能である。
以上説明した本発明の抗酸化剤、活性酸素消去剤、ラジカル消去剤、及びこれらを含有した化粧料は、ヒトに対して好適に適用されるものであるが、それぞれの作用効果が奏される限り、ヒト以外の動物に対して適用することもできる。
【実施例】
【0019】
次に、製造例、試験例及び配合例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は、下記の各例に何ら限定されるものではない。
<製造例1>
ハナショウブの根部、茎・葉部の細切りしたもの各100gに、抽出溶媒1000mLを加え、5℃にて48時間、抽出し、濾過して抽出液を得た。残渣についてさらに同様の抽出処理を行い、得られた抽出液と上記抽出液とを合わせた。茎・葉部の抽出液は等量のへキサンを用いて3回抽出してへキサン可溶分を除去した。各抽出溶媒を減圧下に濃縮し、さらに乾燥して抽出物を得た。抽出溶媒として、水、50%エタノール(水とエタノールとの質量比1:1)、及びエタノールを用いたときの各抽出率を表1に示した。
【0020】
<製造例2>
アヤメの根部、茎・葉部の細切りしたもの各100gに、抽出溶媒1000mLを加え、5℃にて48時間、抽出し、濾過して抽出液を得た。残渣についてさらに同様の抽出処理を行い、得られた抽出液と上記抽出液とを合わせた。茎・葉部の抽出液は等量のへキサンを用いて3回抽出してへキサン可溶分を除去した。各抽出溶媒を減圧下に濃縮し、さらに乾燥して抽出物を得た。抽出溶媒として水、50%エタノール(水とエタノールとの質量比1:1)、及びエタノールを用いたときの各抽出率を表1に示した。
【0021】
<製造例3>
カキツバタの根部、茎・葉部の細切りしたもの各100gに、抽出溶媒1000mLを加え、5℃にて48時間、抽出し、濾過して抽出液を得た。残渣についてさらに同様の抽出処理を行い、得られた抽出液と上記抽出液とを合わせた。茎・葉部の抽出液は等量のへキサンを用いて3回抽出してへキサン可溶分を除去した。各抽出溶媒を減圧下に濃縮し、さらに乾燥して抽出物を得た。抽出溶媒として、水、50%エタノール(水とエタノールとの質量比1:1)、及びエタノールを用いたときの各抽出物の抽出量(g)を表1に示した。
【0022】
【表1】

【0023】
<試験例1)スーパーオキサイド消去試験(NBT法)
製造例1、2、3で得られたハナショウブ、アヤメ、カキツバタからの抽出物(以下、「試料」という)について、下記の試験法によりスーパーオキサイド消去作用を試験した。
3mMのキサンチン、0.05Mの炭酸ナトリウム(NaCO)緩衝液(pH10.2、3mMのEDTA、1.5mg/mLのBSA溶液、及び0.75mMのニトロブルーテトラゾリウム(NBT)を、各々0.1mLづつ試験管にとり、これに試料溶液0.1mLを添加し、25℃で10分間静置した。次いでキサンチンオキシダーゼ溶液0.1mLを加えて素早く撹絆し、25℃で20分間静置した。その後、6mMの塩化銅0.1mLを加えて反応を停止させ、波長560nmにおける吸光度を測定した。以下、この吸光度を「試料溶液添加、酵素溶液添加時の吸光度」という。
【0024】
また、同様の操作と吸光度の測定を酵素溶液を添加せずに行った。このとき測定した吸光度を「試料溶液添加、酵素溶液無添加時の吸光度」という。
一方、試料溶液を添加せずに蒸留水を添加した場合についても同様の測定を行った。このとき測定した吸光度を「試料溶液無添加、酵素溶液添加時の吸光度」という。
また、酵素溶液を添加せず、さらに試料溶液を添加せずに蒸留水を添加した場合についても同様の測定を行った。このとき測定した吸光度を「試料溶液無添加、酵素溶液無添加時の吸光度」という。
【0025】
上記測定にて得られた吸光度を用い、次式によりスーパーオキサイド消去率を求めた。
消去率(%)=(1−(A−B)/(C−D))×100
上記式中、「A」は「試料溶液添加、酵素溶液添加時の吸光度」、「B」は「試料溶液添加、酵素溶液無添加時の吸光度」、「C」は「試料溶液無添加、酵素溶液添加時の吸光度」、「D」は「試料溶液無添加、酵素溶液無添加時の吸光度」を表す。
試料濃度を段階的に減少させて上記消去率の測定を行い、スーパーオキサイドの消去率が50%になる試料濃度(ppm:μg/mL)を内挿法により求めた。その結果を表2に示した。
【0026】
【表2】

表2に示す結果から、ハナショウブ、アヤメ、カキツバタの根部、茎・葉部からの抽出物がスーパーオキサイド消去作用を有することが確認された。
【0027】
<試験例2> DPPHに対するラジカル消去試験
製造例1、2、3で得られたハナショウブ、アヤメ、カキツバタの根部、茎・葉部からの抽出物(以下、「試料」という)について、下記の試験法により非常に安定なラジカルであるDPPHを使用してラジカル消去作用を試験した。
1.5×10−4MのDPPHエタノール溶液3mLに試料溶液3mLを加え、直ちに容器を密栓して振り混ぜ、30分間静置した。その後、波長526nmの吸光を測定した。コントロールとして、試料溶液の代わりに試料溶液を溶解した溶媒を用いて同様に操作し、波長526nmの吸光度を測定した。また、ブランクとして、エタノールに試料溶液3mLを加えた後、直ちに波長526nmの吸光度を測定した。
【0028】
測定された各吸光度より、次式によりラジカル消去率(%)を算出した。
消去率(%)=(1−(B−C)/A)×100
上記式中、「A」は「コントロールの吸光度」、「B」は「試料溶液を添加した場合の吸光度」、「C」は「ブランクの吸光度」を表す。
試料濃度を段階的に減少させて上記消去率の測定を行い、DPPHラジカルの消去率が50%になる試料濃度(ppm;μg/mL)を内挿法により求めた。その結果を表3に示した。
【0029】
【表3】

表3に示す結果から、ハナショウブ、アヤメ、カキツバタの根部、茎・葉部からの抽出物がラジカル消去作用を有することが確認された。
【0030】
<配合例1>
下記組成の乳液を常法により製造した。
ハナショウブ根部抽出物 1.0g
ホホバオイル 4.0g
プラセンタエキス 0.1g
アスコルビン酸リン酸マグネシウム 0.1g
プルーン抽出物 1.0g
トウニン抽出物 1.0g
キョウニン抽出物 1.0g
タイオウ抽出物 0.5g
クジン抽出物 0.5g
オリーブオイル 2.0g
スクワラン 2.0g
セタノール 2.0g
モノステアリン酸グリセリル 2.0g
ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O.) 2.5g
オレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.) 2.0g
1,3−ブチレングリコール 3.0g
ヒノキチオール 0.15g
香料 0.15g
精製水残部(全量を100gとした)
上記組成の「ハナショウブ根部抽出物」に代えて、「ハナショウブ茎・葉部抽出物」、「アヤメ根部抽出物」、「アヤメ茎・葉部抽出物」、「カキツバタ根部抽出物」、及び「カキツバタ茎・葉部抽出物」として、他の組成は同じとしたものを同様に製造した。
【0031】
<配合例2>
下記組成のクリームを常法により製造した。
ハナショウブ根部50%エタノール抽出物 5.0g
流動パラフィン 5.0g
サラシミツロウ 4.0g
セタノール 3.0g
スクワラン 10.0g
ラノリン 2.0g
アルブチン 0.1g
ルシノール 0.1g
黄杞エキス 0.1g
イチョウ葉エキス 0.1g
コンキオリン 0.1g
オウバクエキス 0.1g
ステアリン酸 1.0g
オレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.) 1.5g
モノステアリン酸グリセリル 3.0g
1,3−ブチレングリコール 6.0g
パラオキシ安息香酸メチル 0.05g
香料 0.1g
精製水残部(全量を100gとした)
上記組成の「ハナショウブ根部50%エタノール抽出物」に代えて、「ハナショウブ茎・葉部50%エタノール抽出物」、「アヤメ根部50%エタノール抽出物」、「アヤメ茎・葉部50%エタノール抽出物」、「カキツバタ根部50%エタノール抽出物」、及び「カキツバタ茎・葉部50%エタノール抽出物」として、他の組成は同じとしたものを同様に製造した。
【0032】
<配合例3>
下記組成のパックを常法により製造した。
ハナショウブ根部エタノール抽出物 0.5g
ポリビニルアルコール 15.0g
ポリエチレングリコール 3.0g
プロピレングリコール 7.0g
エタノール 10.0g
カミツレ抽出物 0.1g
エラグ酸 0.1g
油溶性甘草エキス 0.1g
海藻エキス 0.1g
酵母抽出液 0.1g
シソ抽出液 0.1g
ワレモコウ抽出液 0.1g
シナノキ抽出液 0.1g
パラオキシ安息香酸エチル 0.05g
香料 0.05g
精製水残部(全量を100gとした)
上記組成の「ハナショウブ根部エタノール抽出物」に代えて、「ハナショウブ茎・葉部エタノール抽出物」、「アヤメ根部エタノール抽出物」、「アヤメ茎・葉部エタノール抽出物」、「カキツバタ根部エタノール抽出物」、及び「カキツバタ茎・葉部エタノール抽出物」として、他の組成は同じとしたものを同様に製造した。
【0033】
「ハナショウブ根部エタノール抽出物」を配合した<配合例1>、<配合例1>の「ハナショウブ根部エタノール抽出物」に代えて「ハナショウブ茎・葉部エタノール抽出物」を配合した<配合例1―(2)>、「アヤメ根部エタノール抽出物」を配合した<配合例1―(3)>、「アヤメ茎・葉部エタノール抽出物」を配合した<配合例1―(4)>、「カキツバタ根部エタノール抽出物」を配合した<配合例1―(5)>、「カキツバタ茎・葉部エタノール抽出物」を配合した<配合例1―(6)>、<配合例1>から「ハナショウブ根部エタノール抽出物」を除いた<比較例1>の各試料について、肌のたるみ、肌のハリ、肌荒れ、肌のしみの症状が顕著に認められる40−60才代の男女パネラー20名を一群とし、ブラインドにて一ヶ月間使用させ、使用前後の皮膚状態の変化を目視にて評価した。皮膚症状の指標として、肌のたるみ、肌のハリ、肌荒れ、肌のしみについて、「改善」、「やや改善」、「変化なし」の三段階で評価した。
表4には、上記指標について、各評価を得たパネラー数をまとめたものを示した。また、表5には、「改善」を2点、「やや改善」を1点、「変化なし」を0点として計算したときの平均値±標準偏差を示した。
【0034】
【表4】

【0035】
【表5】

表4及び表5に示すように、配合例1〜配合例1−(6)と比較例1との間に有意な差違が認められた。
【0036】
このように本実施形態によれば、ハナショウブ、アヤメ、カキツバタからの抽出物により、活性酸素や生体内ラジカルの発生を阻害することにより、過酸化脂質の生成を抑制し、皮膚の弾力性低下等の皮膚の老化、皮膚の炎症、肌の色素沈着等を予防・治療可能なものを提供できた。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の抗酸化剤、活性酸素消去剤、ラジカル消去剤は、活性酸素消去作用や生体内ラジカル消去作用による生体成分の酸化の防止を通じて、皮膚の老化、皮膚の炎症及び肌の色素沈着を防止及び/又は改善するのに有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハナショウブ(Iris ensata var. ensata)、アヤメ(Iris sanguinea Hornem.)、カキツバタ(Iris laevigata Fisch.)より選ばれた1種又は2種以上の植物の抽出物を有効成分として含有することを特徴とする抗酸化剤。
【請求項2】
前記抽出物が、活性酸素消去作用及び/又はラジカル消去作用を有することを特徴とする請求項1に記載の抗酸化剤。
【請求項3】
請求項2に記載の抗酸化剤を有効成分として含有することを特徴とするラジカル消去剤。
【請求項4】
請求項2に記載の抗酸化剤を有効成分として含有することを特徴とする活性酸素消去剤。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか一つに記載の抗酸化剤を含有することを特徴とする化粧料。

【公開番号】特開2010−111602(P2010−111602A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−283799(P2008−283799)
【出願日】平成20年11月5日(2008.11.5)
【出願人】(308020113)ATM株式会社 (1)
【Fターム(参考)】