説明

抗酸化剤

【課題】化粧料や医薬品、食品等に利用できる優れた抗酸化剤を提供することを課題とする。
【解決手段】
アスコルビン酸の2位及び/又は3位の水酸基に、グリシドール、アルキルグリシジルエーテル、アルケニルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、エポキシアルカン、エポキシアルケン等を反応させてエーテル化したアスコルビン酸誘導体又はその塩を抗酸化剤として提供する。アスコルビン酸誘導体としては、特に、グリシドールをアスコルビン酸の2位及び/又は3位の水酸基に反応させたものが好ましい

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧料や医薬品、食品等に利用できる、抗酸化剤に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧料や医薬品、食品等は空気中の酸素によって酸化を受けることが多い。特に酸化を受けやすいもの、またそれを含む組成物には、抗酸化剤を配合することによって品質の低下を防いでいる。
【0003】
現在製造されている多くの化粧料には、油性原料が配合されており、それによって皮膚や毛髪に対するなめらかさ、油性感、光沢感、柔軟性が付与される。また、乾燥の防止による保湿効果等が得られる。油性原料としては、天然油脂、炭化水素、合成トリグリセライド、エステル油、シリコーン油等が挙げられる。
【0004】
しかし、これらの有用な油性原料の中でも、炭素−炭素間に二重結合を持つ不飽和脂肪酸等は極めて不安定であり、容易に酸化されやすい。その結果、過酸化物や酸化重合物といった物質が生じ、化粧料への着臭、着色、使用感の劣化、剤系の変化等に影響を及ぼす。そのため、酸化されやすい原料を含む化粧料には、化粧料の抗酸化を目的とした原料を含めることが多い。
【0005】
また、化粧料の製造に際し、乳化や可溶化を目的として、多種多様のポリオキシエチレン型の界面活性剤、多価アルコールエステル型の界面活性剤が広く使用されている。しかし、これらはエーテル結合部位を持つことや、親油基に不飽和脂肪酸由来の二重結合部位を持つ場合もあることから、酸化による変質を起こしやすく、抗酸化剤と共に用いるのが一般的である。
【0006】
さらに、食品においても、食品の褐変防止、風味の保持、鮮度保持等を目的に抗酸化剤が使用されている。
【0007】
このように、化粧料や食品、医薬品等において抗酸化剤は求められており、安全性の高さ、抗酸化力の高さ等の理由で、アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体等が繁用されている。
【0008】
しかし、抗酸化効果を目的として配合されているアスコルビン酸及びその塩は、経時的に分解し、着色、臭いの発生、効果の低下等の問題がある。そこで、これらの問題点を改善したものとして、アスコルビン酸リン酸マグネシウム、アスコルビン酸グルコシド等のアスコルビン酸誘導体が提案されている。(特許文献1、特許文献2)
【0009】
しかしながら、抗酸化効果を目的として配合されたアスコルビン酸リン酸マグネシウム、アスコルビン酸グルコシド等のアスコルビン酸誘導体も、アスコルビン酸より程度は小さいが、経時的に分解し、着色、臭いの発生、効果の低下等の問題がある。また、アスコルビン酸リン酸マグネシウムは水への溶解性が低く、化粧料等に配合できる量が限られており、化粧料に配合することが困難である。さらに、これらのアスコルビン酸誘導体の抗酸化効果は低いものとなっている。これらの理由から、アスコルビン酸リン酸マグネシウム、アスコルビン酸グルコシド等のアスコルビン酸誘導体も未だ満足できるものではなかった。
【0010】
また、特許文献3にはグリセリル基を有するアスコルビン酸誘導体が開示されているが、その抗酸化効果については記載されておらず、これらの誘導体から優れた抗酸化効果を期待できるとは考え難い。また、安定性についても他の酸化を受けやすい原料との配合に関するものについては記載されておらず、化粧料に配合した際の安定性が良好なものであるとは限らない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2005−60239号公報
【特許文献2】特開2005−120023号公報
【特許文献3】WO2009/025328公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、前記従来技術の問題を解決するものであり、化粧料や医薬品、食品等に利用できる優れた抗酸化剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記実情に鑑みて鋭意検討した結果、特定構造のアスコルビン酸誘導体及びその塩は優れた抗酸化力、安定性を有することを見出し本発明を完成した。本発明は、これらの知見に基づき完成されたものである。
【0014】
本発明は、下記一般式(I)で表されるアスコルビン酸誘導体又はその塩からなる抗酸化剤である(請求項1)。
【0015】
【化1】

【0016】
〔式中、RおよびRはそれぞれ、水素原子または炭素数1〜22のアルキル基、炭素数2〜22のアルケニル基、ベンジル基、R−O−CH−CH(OH)−CH−、R−O−CH−CH(CHOH)−、R−CH(CHOH)−、R−CH(OH)−CH−およびヒドロキシシクロヘキシル基からなる群から選ばれる基であり、ここで、RおよびRは、水素原子、炭素数1〜22のアルキル基、炭素数2〜22のアルケニル基またはフェニル基であり、RおよびRは、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基またはフェニル基である。但し、Rが水素原子、炭素数1〜22のアルキル基、炭素数2〜22のアルケニル基またはベンジル基のとき、Rは水素原子、炭素数1〜22のアルキル基、炭素数2〜22のアルケニル基およびベンジル基のいずれでもない〕
【0017】
なお、この一般式(I)において、炭素原子、及び該炭素原子に結合する水素原子は省略されている。例えば、この式における1〜4の位置は炭素であり、5の位置はCH基であり、6の位置はCH基である。以下の式においても同様である。
【0018】
本発明の抗酸化剤でる一般式(I)で表されるアスコルビン酸誘導体は、アスコルビン酸の2位又は/及び3位の水酸基に、グリシドール、特定構造のアルキルグリシジルエーテル、アルケニルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、エチレンオキサイド、エポキシアルカン、エポキシアルケン、スチレンオキサイド及び脂環式エポキシから選ばれるエポキシ環を有する化合物(エポキシ化合物)を反応させたものである。2位及び3位の水酸基の水素の少なくとも一方をグリセリル基、アルキルグリセリル基、ヒドロキシアルキル基で置換することにより、アスコルビン酸の経時安定性や経時的な臭気の発生等の問題が改善され、長期間の保存でも安定で、変色、変臭、活性低下等が少ないアスコルビン酸誘導体が得られる。
【0019】
又、R又はRの一方がHである場合は、塩にすることができる。
【0020】
一般式(I)で表されるアスコルビン酸誘導体の具体例を以下に示す。なお、以下の例示において、
グリセリル基とは、HOCH−CH(OH)−CH−又はHOCH−CH(CHOH)−を示し、
アルキルグリセリル基とは、R−O−CH−CH(OH)CH−又はR−O−CH−CH(CHOH)−(Rはアルキル基を示す。)を示し、
アルキル基とは、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基、ベヘニル基等を示し、
アルケニル基とは、ビニル基、アリル基、ブテニル基、イソブテニル基、クロチル基、オクテニル基、デセニル基、ドデセニル基等を示し、
ヒドロキシアルキル基とは、R−CH−CH(OH)−又はR−CH(OH)−CH−(Rはアルキル基を示す。)を示し、例えば、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基、ヒドロキシペンチル基、ヒドロキシヘキシル基、ヒドロキシヘプチル基、ヒドロキシオクチル基、ヒドロキシノニル基、ヒドロキシデシル基、ヒドロキシウンデシル基、ヒドロキシドデシル基、ヒドロキシトリデシル基、ヒドロキシテトラデシル基、ヒドロキシペンタデシル基、ヒドロキシヘキサデシル基、ヒドロキシヘプタデシル基、ヒドロキシオクタデシル基、ヒドロキシノナデシル基、ヒドロキシエイコシル基、ヒドロキシベヘニル基を挙げることができる。
【0021】
(1)3−O−グリセリルアスコルビン酸、
3−O−アルキルグリセリルアスコルビン酸、例えば3−O−メチルグリセリルアスコルビン酸、3−O−エイコシルグリセリルアスコルビン酸、
3−O−アルケニルグリセリルアスコルビン酸、例えば、3−O−アリルグリセリルアスコルビン酸、3−O−クロチルグリセリルアスコルビン酸、3−O−ビニルグリセリルアスコルビン酸、3−O−イソブテニルグリセリルアスコルビン酸、3−O−オクテニルグリセリルアスコルビン酸、3−O−デセニルグリセリルアスコルビン酸、3−O−ドデセニルグリセリルアスコルビン酸、及び、3−O−フェニルグリセリルアスコルビン酸
【0022】
(2)2−O−グリセリルアスコルビン酸、
2−O−アルキルグリセリルアスコルビン酸、例えば、2−O−メチルグリセリルアスコルビン酸、2−O−エイコシルグリセリルアスコルビン酸、
2−O−アルケニルグリセリルアスコルビン酸、例えば、2−O−アリルグリセリルアスコルビン酸、2−O−ドデセニルグリセリルアスコルビン酸、及び、2−O−フェニルグリセリルアスコルビン酸、
(3)2,3−ジ−O−グリセリルアスコルビン酸、
2,3−ジ−O−アルキルグリセリルアスコルビン酸、2,3−ジ−O−アルケニルグリセリルアスコルビン酸、2,3−ジ−O−フェニルグリセリルアスコルビン酸
(4)3−O−ヒドロキシアルキルアスコルビン酸、3−O−ヒドロキシフェニルエチルアスコルビン酸
(5)2−O−ヒドロキシアルキルアスコルビン酸、2−O−ヒドロキシフェニルエチルアスコルビン酸
(6)2,3−ジ−O−ヒドロキシアルキルアスコルビン酸、2,3−ジ−O−ヒドロキシフェニルエチルアスコルビン酸
【0023】
(7)3−O−グリセリル−2−O−アルキルグリセリルアスコルビン酸、3−O−グリセリル−2−O−アルケニルグリセリルアスコルビン酸、3−O−グリセリル−2−O−フェニルグリセリルアスコルビン酸
(8)3−O−グリセリル−2−O−ヒドロキシアルキルアスコルビン酸、3−O−グリセリル−2−O−ヒドロキシフェニルエチルアスコルビン酸
(9)3−O−グリセリル−2−O−アルキルアスコルビン酸、3−O−グリセリル−2−O−アルケニルアスコルビン酸、
(10)3−O−アルキルグリセリル−2−O−アルキルグリセリルアスコルビン酸(但し、3−アルキルと2−アルキルは異なっている。)、3−O−アルキルグリセリル−2−O−アルケニルグリセリルアスコルビン酸、3−O−アルキルグリセリル−2−O−フェニルグリセリルアスコルビン酸、
【0024】
(11)3−O−アルキルグリセリル−2−O−ヒドロキシアルキルグリセリルアスコルビン酸、3−O−アルケニルグリセリル−2−O−ヒドロキシアルキルグリセリルアスコルビン酸、3−O−アルキルグリセリル−2−O−ヒドロキシアルケニルグリセリルアスコルビン酸、3−O−アルケニルグリセリル−2−O−ヒドロキシアルケニルグリセリルアスコルビン酸、3−O−アルキルグリセリル−2−O−フェニルグリセリルアスコルビン酸
(12)3−O−アルキルグリセリル−2−O−アルキルアスコルビン酸、3−O−アルキルグリセリル−2−O−アルケニルアスコルビン酸
(13)3−O−ヒドロキシアルキル−2−O−アルキルアスコルビン酸、3−O−ヒドロキシアルキル−2−O−アルケニルアスコルビン酸
(14)3−O−ヒドロキシアルキル−2−O−アルキルグリセリルアスコルビン酸、3−O−ヒドロキシアルキル−2−O−アルケニルグリセリルアスコルビン酸
(15)3−O−ヒドロキシアルキル−2−O−ヒドロキシアルキルアスコルビン酸、3−O−ヒドロキシアルキル−2−O−ヒドロキシフェニルエチルアスコルビン酸
(16)3−O−ヒドロキシシクロヘキシルアスコルビン酸、2−O−ヒドロキシシクロヘキシルアスコルビン酸、3−O−グリセリル−2−O−ベンジルアスコルビン酸、2−O−グリセリル−3−O−ベンジルアスコルビン酸。
【0025】
一般式(I)で表されるアスコルビン酸誘導体の塩としては、無機塩及び有機塩を挙げることができ、無機塩としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩等が挙げられ、有機塩としては、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、アミノ酸塩等を挙げることができる。塩の形成は、公知の方法により行うことができる。
【0026】
前記エポキシ化合物としては、下記式(II)で表される化合物、下記式(III)で表される化合物、及び1,2−エポキシシクロヘキサンから選ばれるものを挙げることができる。
【0027】
【化2】

[式中、R11は、H、炭素数1〜22のアルキル基、炭素数2〜22のアルケニル基、又はフェニル基である。]
【0028】
【化3】

[式中、R12は、H、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、又はフェニル基である。]
【0029】
式(II)で表される化合物としては、
グリシドール、メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、プロピルグリシジルエーテル、イソプロピルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、ペンチルグリシジルエーテル、ヘキシルグリシジルエーテル、ヘプチルグリシジルエーテル、オクチルグリシジルエーテル、ノニルグリシジルエーテル、デシルグリシジルエーテル、ウンデシルグリシジルエーテル、ドデシルグリシジルエーテル、トリデシルグリシジルエーテル、テトラデシルグリシジルエーテル、ペンタデシルグリシジルエーテル、ヘキサデシルグリシジルエーテル、ヘプタデシルグリシジルエーテル、オクタデシルグリシジルエーテル、ノナデシルグリシジルエーテル、ビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、ブテニルグリシジルエーテル、イソブテニルグリシジルエーテル、クロチルグリシジルエーテル、オクテニルグリシジルエーテル、デセニルグリシジルエーテル、ドデセニルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテルが例示される。
【0030】
式(III)で表される化合物としては、
エチレンオキサイド、メチルオキシラン、エチルオキシラン、プロピルオキシラン、イソプロピルオキシラン、ブチルオキシラン、ペンチルオキシラン、ヘキシルオキシラン、ヘプチルオキシラン、オクチルオキシラン、ノニルオキシラン、デシルオキシラン、ウンデシルオキシラン、ドデシルオキシラン、トリデシルオキシラン、テトラデシルオキシラン、ペンタデシルオキシラン、ヘキサデシルオキシラン、ヘプタデシルオキシラン、オクタデシルオキシラン、ノナデシルオキシラン、イソプロピレンオキシラン、ブテンオキシラン、ペンテンオキシラン、ヘキセンオキシラン、ヘプテンオキシラン、オクテンオキシラン、ノネンオキシラン、デセンオキシラン、ウンデセンオキシラン、ドデセンオキシラン、トリデセンオキシラン、テトラデセンオキシラン、ペンタデセンオキシラン、ヘキサデセンオキシラン、ヘプタデセンオキシラン、オクタデセンオキシラン、ノナデセンオキシランが例示される。
【0031】
グリシジルエーテルは、市販品を用いても良いが、アルコール類にエピハロ(クロロ)ヒドリンを反応することによっても得ることができる。
【0032】
本発明の抗酸化剤であるアスコルビン酸誘導体の製造に用いられるアスコルビン酸は、4位、5位の炭素の立体がS配置、R配置のいずれでもよい。また、本発明の抗酸化剤であるアスコルビン酸誘導体を製造するための原料であるグリシドール、アルキルグリシジルエーテル、アルケニルグリシジルエーテル、または、エポキシアルケン、エポキシアルカン等のエポキシ化合物も同様にS体、R体またはその混合物でもよい。
【0033】
なお、前記式(I)で表されるアスコルビン酸誘導体又はその塩は、3−クロロ−1,2−プロパンジオール等の3−ハロ−1,2−プロパンジオール等を、グリシドールの代わりに用いて、アスコルビン酸と反応させ、アスコルビン酸の2位及び/又は3位のみをエーテル化する方法によっても製造することができる。ただし、この場合は、脱ハロゲンのために更に塩基性物質を反応系に添加する必要がある。
【0034】
2位又は3位の両方にエポキシ化合物を付加させた化合物は、例えば、一方のみにエポキシ化合物を付加した付加体を得た後、後述の方法等により精製を行って一方のみに付加した付加体のみを取り出し、その後、その付加体に、エポキシ化合物を0.5〜1.5モル程度反応させる方法により得ることができる。精製前と精製後の反応で使用するエポキシ化合物を変えることにより、2位又は3位の両方に異なるエポキシ化合物が付加された化合物を得ることができる。
【0035】
前記一般式(I)のアスコルビン酸誘導体又はその塩であって、R又はRが、炭素数1〜22のアルキル基、炭素数2〜22のアルケニル基、又はベンジル基であるものは、前記の反応を、アスコルビン酸に対するエポキシ化合物の使用量を、0.5〜1.5モル程度の範囲で行って、R又はRの一方のみをエーテル化したアスコルビン酸誘導体を得た後、2位又は3位の水酸基の中で残存している水酸基を、アルキル化、アルケニル化又はベンジル化することにより得ることができる。アルキル化、アルケニル化、又はベンジル化は、公知の方法、例えばハロゲン化アルキル、ハロゲン化アルケニル、ハロゲン化ベンジル等との反応により行うことができる。
【0036】
前記のようにして製造されるアスコルビン酸誘導体又はその塩はシリカゲルを用いたカラムクロマトグラフィー、イオン交換樹脂等の樹脂を用いたカラムクロマトグラフィー、活性炭処理、抽出、蒸留、結晶化等の手段により精製することができる。
【0037】
本発明の一般式(I)で表されるアスコルビン酸誘導体又はその塩は、酸化を受けやすい原料を含む化粧料、医薬品、食品等に配合することによって優れた抗酸化効果を発揮する。その結果、製品の質感・形状等の劣化が抑制される。さらに従来のアスコルビン酸誘導体に比べて、それ自体の分解・着色といった劣化が少なく、製品の感触・形状に悪影響を及ぼしにくい。
【0038】
一般式(I)で表されるアスコルビン酸誘導体又はその塩は水に溶解することができ、水系の組成物に配合する際はそのまま溶解することが可能である。または、それを含んだ水相と、不飽和脂肪酸を含む油相を、好ましくは乳化剤の存在下に乳化せしめて得られる水中油型もしくは油中水型乳化組成物として使用する。
【0039】
このような乳化物において、乳化剤は公知のもの、例としては、POE脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、POE高級アルコールエーテル、POE.POPブロックポリマー等の非イオン性界面活性剤や、脂肪酸カリウム、脂肪酸ナトリウム、高級アルキル硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩、アシルサルコシン酸塩、スルホコハク酸塩等のアニオン性界面活性剤、また、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、塩化ベンザルコニウム等のカチオン性界面活性剤があり、イミダゾリン系や、ベタイン系の両性界面活性剤を配合することも可能である。
【0040】
前記一般式(I)の化合物の中でも、Rが、水素、HOCH−CH(OH)−CH−、又はHOCH−CH(CHOH)−であり、Rは、H、HOCH−CH(OH)−CH−、又はHOCH−CH(CHOH)−である(但し、R及びRの少なくとも一方はHではない)ものは、水系への溶解性も特に優れており、化粧水等の水系基材においても好適に用いられる(請求項2)。
【0041】
乳化に際しては、水相/油相=5/95〜95/5(質量比、以下同じ)が好ましく、なお水中油型乳化組成物の場合には特に好ましくは水相/油相=5/95〜95/5とし、また油中水型乳化組成物の場合は水相/油相=5/95〜95/5とし、順相または転相乳化法により乳化せしめる。
【0042】
抗酸化を目的とする組成物に配合するアスコルビン酸誘導体又はその塩の量は用途により変動するが、組成物全体のうち0.01〜10.0重量%含まれることが好ましく、配合量に対して十分な抗酸化効果を発揮するために、0.1〜5.0重量%含まれることがさらに好ましい。
【0043】
本発明の抗酸化剤は、ポリグリセリン、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリンアルキルエーテル等のグリセリンやグリセリン誘導体、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル等のオキシアルキレン鎖を有する物質や不飽和結合を有する油に対して、あるいはこれらが水系または油系を問わず配合されている各種の化粧料、医薬品、食品等に対して効果を発揮する。とくに極性物質や水系の製品に対して効果を発揮する。
【0044】
本発明の抗酸化剤を配合する化粧料には、この必須成分の他に、通常用いられる成分、例えば油性原料、界面活性剤、高分子化合物、紫外線吸収剤、保湿剤、金属イオン封鎖剤、美白剤、薬剤、タンパク加水分解物、アミノ酸又はそれらの誘導体、pH調整剤、防腐剤、増粘剤、色素、香料等を適宜配合することができる。また、他の抗酸化剤を適宜配合することができる。
【0045】
油性原料としては、例えば、オリーブ油、椿油、マカデミアナッツ油、茶実油、ヒマシ油、トリ(カプリン/カプリル)グリセリル等の油脂類、ホホバ油、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、ラノリン、ミツロウ等のロウ類、流動パラフィン、パラフィン、ワセリン、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、スクワラン等の炭化水素類、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、イソステアリン酸等の脂肪酸類、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、キミルアルコール等の高級アルコール類、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸−2−オクチルドデシル、2−エチルへキサン酸セチル、リンゴ酸ジイソステアリル、トリ−2−エチルヘキサノイン、等のエステル類、メチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等のシリコーン類等が挙げられる。
【0046】
界面活性剤としては、例えば、高級脂肪酸石鹸、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アシル−N−メチルタウリン塩、N−アシルアミノ酸塩、アルキルリン酸エステル塩等のアニオン性界面活性剤、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム等のカチオン性界面活性剤、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルアミドアミノ酢酸ベタイン、2−アルキル−N−カルボキシ−N−ヒドロキシイミダゾリニウムベタイン等の両性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、多価アルコール脂肪酸エステル、ポリエーテル変性シリコーン等の非イオン性界面活性剤等が挙げられる。
【0047】
高分子化合物としては、例えば、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム、キサンタンガム、ポリビニルアルコール、高分子のジメチルポリシロキサン等が挙げられる。
【0048】
紫外線吸収剤としては、例えば、パラメトキシ桂皮酸エチル、パラメトキシ桂皮酸イソプロピル、パラメトキシ桂皮酸オクチル、パラメトキシ桂皮酸2−エトキシエチル、パラメトキシ桂皮酸2−エチルヘキシル、パラメトキシ桂皮酸カリウム、パラメトキシ桂皮酸モノ−2−エチルヘキサン酸グリセリル、ジパラメトキシ桂皮酸グリセリルオクチル、トリメトキシ桂皮酸メチルビス(トリメチルシロキシ)シリルイソペンチル、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸、ジヒドロキシジメトキシベンゾフェノン、ジヒドロキシジメトキシベンゾフェノン−スルホン酸ナトリウム、パラアミノ安息香酸、パラアミノ安息香酸エチル、パラアミノ安息香酸グリセリル、サリチル酸オクチル、サリチル酸フェニル、サリチル酸エチレングリコール、サリチル酸ミリスチル、サリチル酸メチル、ウロカニン酸、ウロカニン酸エチル、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、アントラニル酸メチル等が挙げられる。
【0049】
保湿剤としては、例えば、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、乳酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、ピロリドンカルボン酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0050】
金属イオン封鎖剤としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸、アラニン、エデト酸ナトリウム、リン酸、クエン酸、アスコルビン酸、コハク酸、グルコン酸等が挙げられる。
【0051】
美白剤としては、例えば、アルブチン、ビタミンC誘導体、エラグ酸、カミツレエキス、甘草エキス、ルシノール、ローズマリーエキス等が挙げられる。
【0052】
他の薬剤としては、肌荒れ防止剤または抗炎症剤を挙げることができる。肌荒れ防止剤または抗炎症剤としては、例えば、グリチルリチン酸ジカリウム、グリチルレチン酸ステアリル、サリチル酸メチル、ピリドキシン塩酸塩、アラントイン、海塩、ソウハクヒエキス、アロエエキス、クチナシエキス、カミツレエキス、カンゾウエキス、ムクロジエキス、キョウニンエキス、オウゴンエキス、甜茶エキス、ビワエキス、イチョウエキス、オトギリソウエキス、セイヨウノコギリソウエキス、ベニバナエキス、トウヒエキス、サルビアエキス、シラカバエキス、チンピエキス、トウニンエキス、ガイヨウエキス、アルテアエキス、アルニカエキス、ニンジンエキス、シャクヤクエキス、センキュウエキス、ゲンチアナエキス、冬虫夏草エキス、オウバクエキス、インチンコウエキス、ゲンノショウコエキス、モモ葉エキス、クマザサエキス、ヨクイニンエキス、マロニエエキス、サンザシエキス、オウレンエキス、レイシエキス、トウキンセンカエキス、ペパーミントエキス、コンフリーエキス、ブッチャーブルームエキス、ウスベニアオイエキス、ヤグルマルソウエキス、トゲナシエキス等が挙げられる。その他、育毛用薬剤、ニキビ用薬剤、ふけ・かゆみ用薬剤、腋臭防止用薬剤等も他の薬剤として挙げることができる。
【0053】
タンパク加水分解物としては、例えば、乳タンパク、絹タンパク、小麦タンパク、米タンパク、エンドウタンパク、コラーゲン、ケラチン、大豆、ゴマ、コンキオリン、海洋コラーゲン等のタンパク加水分解物ならびにその誘導体が挙げられる。
【0054】
アミノ酸又はそれらの誘導体として、例えば、グリシン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、フェニルアラニン、アルギニン、リジン、アスパラギン、アスパラギン酸、グルタミン、グルタミン酸、シスチン、システイン、メチオニン、トリプトファン、プロリン、ヒスチジン等のアミノ酸とその誘導体が挙げられる。
【0055】
pH調整剤として、例えば、乳酸、クエン酸、グリコール酸、コハク酸、酒石酸、リンゴ酸、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム等が挙げられる。
【0056】
防腐剤として、例えば、パラオキシ安息香酸アルキルエステル、安息香酸、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、フェノキシエタノールが挙げられる。
【0057】
増粘剤として、例えば、アラビアガム、トラガカントガム、キャブロガム、グアーガム、ペクチン、寒天、クインスシード、デンプン、アルゲコロイド、キサンタンガム、デキストラン、サクシノグルカン、コラーゲン、ゼラチン、カゼイン、アルブミン、カルボキシメチルデンプン、メチルセルロース、エチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ニトロセルロース、セルロース硫酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アルギニン酸ナトリウム、ポリビニルメチルエーテル、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチレンアクリレート、ポリアクリルアミド、カチオンポリマー等が挙げられる。
【0058】
色素としては、タール色素、天然色素、無機顔料、高分子粉体等が挙げられる。香料としては、天然香料、合成香料、調合香料等が挙げられる。
【0059】
他の抗酸化剤としては、例えば、アスコルビン酸やその塩、アスコルビン酸誘導体、トコフェロール、BHT(tert−ブチルヒドロキシトルエン)、植物抽出物等を挙げることができる。
【発明の効果】
【0060】
本発明の抗酸化剤である前記一般式(I)で示されるアスコルビン酸誘導体は優れた抗酸化能を有し、配合した製品の変臭、変色、使用感の劣化が抑えられ、化粧料や医薬品、食品等に利用できる。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0061】
次に、本発明を実施するための具体的な形態を実施例によって説明するが、、本発明の範囲は以下の実施例によって限定されるものではない。なお、実施例に先立って、実施例で使用するアスコルビン酸誘導体の製造例を示す。
【0062】
製造例1 3−O−グリセリルアスコルビン酸の合成
アルゴン雰囲気下、水に、L−アスコルビン酸(300g)、炭酸水素ナトリウム(42.9g)を加え、室温で30分攪拌した後、グリシドール(126g)を加えた。その後、加温して50℃とし5時間攪拌を行った。メタノールを加えろ過し、ろ液を減圧下に濃縮し、得られた残渣457gを、シリカゲルカラムクロマトグラフィーに付した。クロロホルム/メタノール/水=65/35/5で溶出し、減圧下にて濃縮を行い、化4で示される3−O−グリセリルアスコルビン酸(296g)を得た。
【0063】
得られた生成物について、1H−NMR、13C−NMR測定を行い、この測定結果より、この生成物は、下記構造式で表される3−O−グリセリルアスコルビン酸であることが確認された。
【0064】
なお、以下に示す製造例でも、得られた生成物について、1H−NMR、及び/又は13C−NMR測定を行い、その測定結果を示す。
【0065】
【化4】

【0066】
なお、この式においては、炭素原子、及び該炭素原子に結合する水素原子は省略されている。例えば、この式における1〜4の位置は炭素であり、6、7、9の位置はCH基(メチレン)であり、5、8の位置はCH基である。以下の式においても同様である。
【0067】
NMR(核磁気共鳴分光法)による分析結果は以下のとおりであった。
1H−NMR(600MHz,CDOD):
δ ppm 3.59(2H,m),3.66(2H,m),3.89(1H,m),3.92(1H,m),4.45/4.49(1H,dd),4.59/4.62(1H,dd),4.82(1H,d)
13C−NMR (150MHz, CDOD):
δ ppm 63.4,63.7,70.56,70.61,71.79,71.89,73.4,73.6,76.9,121.17,121.24,151.84,151.88,173.04,173.07
【0068】
製造例2 2−O−グリセリルアスコルビン酸の合成
アルゴン雰囲気下、水に、L−アスコルビン酸(10.0g)、炭酸水素ナトリウム(9.54g)を加え、室温で30分攪拌し、グリシドール(8.41g)を加えた。加温して60℃として5時間攪拌を行った。メタノールを加えろ過し、ろ液を減圧下に濃縮し、得られた残渣19.0gを、シリカゲルカラムクロマトグラフィーに付した。クロロホルム/メタノール/水=6/4/1で溶出し、減圧下にて濃縮を行い、化5で示される2−O−グリセリルアスコルビン酸(1.21g)を得た。1H−NMRと13C−NMRにより同定を行った。
【0069】
【化5】

【0070】
NMR(核磁気共鳴分光法)による分析結果は以下のとおりであった。
1H−NMR (400MHz, CDOD): δ ppm 3.61(2H,m),3.67(2H,m),3.90(1H,m),3.92(1H,dt−like),3.92(1H,m),4.07/4.09(1H,dd),4.86(1H,d)
13C−NMR (100MHz, CDOD): δ ppm 63.3,63.7,70.4,72.0,74.6,76.8,122.2,161.6,172.9
【0071】
製造例3 2,3−ジ−O−グリセリルアスコルビン酸の合成
アルゴン雰囲気下、水に、L−アスコルビン酸(100g)、炭酸水素ナトリウム(14.4g)を加え、室温で30分攪拌し、グリシドール(42.0g)を加えた。加温して50℃とし5時間攪拌を行った。その後、グリシドール(57.5g)を加え80℃に加温し4時間攪拌を行った後、減圧下に濃縮した。得られた残渣232gをアルミナカラムクロマトグラフィーに付し、クロロホルム/メタノール/水=6/4/1混液にて溶出し、減圧下にて濃縮を行い、化6で示される2,3−ジグリセリルアスコルビン酸(23.0g)を得た。1H−NMRと13C−NMRにより同定を行った。
【0072】
【化6】

【0073】
NMR(核磁気共鳴分光法)による分析結果は以下のとおりであった。
1H−NMR (400MHz,CDOD):
δ ppm 3.58(2H,m),3.61(2H,m),3.65(2H,m),3.88(1H,m),3.91(1H,m),3.93(1H,m),3.99(1H,m),4.16(1H,m),4.53(1H,m),4.65(1H,dd),4.88(1H,m)
13C−NMR (100MHz, CDOD):
δ ppm 63.22,63.60,63.63,63.95,63.98,64.44,70.57,70.60,71.68,71.94,71.98,73.87,74.27,74.33,75.06,76.83,123.02,159.48,172.29
【0074】
製造例4 3−O−(1,3−ジヒドロキシ−2−プロピル)アスコルビン酸の合成
アルゴン雰囲気下、水に、アスコルビン酸(1.00g)、炭酸水素ナトリウム(0.14g)を加え、室温で30分攪拌した後、グリシドール(0.42g)を加えた。その後、加温して50℃とし5時間攪拌を行った。反応後水を加え、シリカゲルカラムクロマトグラフィーに付した。クロロホルム/メタノール/水=65/35/5混液にて溶出し、減圧下にて濃縮を行い、粗生成物0.99gを得た。得られた粗生成物を、HPLCにより、COSMOSIL 5C18−MS−II Waters(20mm×250mm)のカラムを用いて、100%水、流速9.9ml/minで分取し、化7示される3−O−(1’,3’−ジヒドロキシ−2’−プロピル)アスコルビン酸のピーク(8分、52mg)を分離精製した。1H−NMRと13C−NMRにより同定を行った。
【0075】
【化7】

【0076】
NMR(核磁気共鳴分光法)による分析結果は以下のとおりであった。
1H−NMR(500MHz,CDOD):
δ ppm 3.67(2H,m),3.75(2H,dd),3.78(1H,dd),3.81(1H,dd),3.84(1H,dd),4.84(1H,d),4.99(1H,m)
13C−NMR(125MHz,CDOD):
δ ppm 62.3,62.4,63.3,70.6,77.1,83.3,120.9,151.2,172.9
【0077】
製造例5 3−O−ブチルグリセリルアスコルビン酸の合成
アルゴン雰囲気下、水に、L−アスコルビン酸(100g)、炭酸水素ナトリウム(14.3g)、を加え、室温で30分攪拌し、ブチルグリシジルエーテル(73.8g)を加えた。80℃に加温し12時間攪拌を行った。その後、n−ブタノールで抽出した。抽出液を、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下に濃縮した。得られた残渣96.8gをシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付した。クロロホルム/メタノール/水=20/3/0.3混液にて溶出し、減圧下にて濃縮を行い、化8で示される3−O−ブチルグリセリルアスコルビン酸(74.2g)を得た。1H−NMRと13C−NMRにより同定を行った。
【0078】
【化8】

【0079】
NMR(核磁気共鳴分光法)による分析結果は以下のとおりであった。
1H−NMR(500MHz,CDOD):
δ ppm 0.93(3H,m), 1.38(2H,m),1.56(2H,m),3.49(2H,m),3.50(2H,m),3.66(2H,m),3.88(1H,m),4.03(1H,m),4.44(1H,dd),4.46(1H,dd),4.59(1H,dd),4.62(1H,dd),4.81(1H,d)
13C−NMR(125MHz,CDOD):
δ ppm 14.2,20.3,32.8,63.36,63.39,70.2,70.4,70.56,70.61,72.4,72.5,72.6,73.8,73.9,76.8,121.1,121.2,151.7,151.8,172.9,173.0
【0080】
製造例6 3−O−(2−ヒドロキシヘキシル)アスコルビン酸の合成
アルゴン雰囲気下、L-アスコルビン酸(5.00g)にDMF30mlを加え、さらに1,2−エポキシへキサン(3.45g)を加えた。80℃に加温し24時間攪拌した後、酢酸エチルで抽出した。抽出液を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下に濃縮した。得られた残渣7.56gをシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、クロロホルム/メタノール/水=20/3/0.3混液にて溶出し、減圧下にて濃縮を行い、化9で示される3−O−(2−ヒドロキシヘキシル)アスコルビン酸(1.93g)を得た。1H−NMRと13C−NMRにより同定を行った。
【0081】
【化9】

【0082】
NMR(核磁気共鳴分光法)による分析結果は以下のとおりであった。
1H−NMR(600MHz,CDOD):
δ ppm 0.93(3H,m), 1.36(2H,m),1.48(4H,m),3.65(2H,m),3.88(1H,m),4.27(1H,dd),4.31(1H,dd),4.51(1H,dd),4.53(1H,dd),4.81(1H,d)
13C−NMR (150MHz,CDOD):
δ ppm 14.3,23.68,23.70,26.68,28.75,33.70,33.74,63.36,63.40,70.6,70.7,70.9,71.1,76.3,76.4,76.8,120.9,121.0,151.8,151.9,172.96,173.02
【0083】
製造例7 2−O−ブチルグリセリルアスコルビン酸の合成
アルゴン雰囲気下、水に、L−アスコルビン酸(5.00g)、炭酸ナトリウム(6.02g)を加え室温で30分攪拌を行い、その後ブチルグリシジルエーテル(14.8g)を加え80℃に加温し12時間攪拌した。その後、メタノールを加えろ過し、ろ液を減圧下に濃縮して得られた残渣20.1gをシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付した。クロロホルム/メタノール/水=75/35/5混液にて溶出し、減圧下にて濃縮を行い、化10で示される2−O−ブチルグリセリルアスコルビン酸(1.74g)を得た。1H−NMRと13C−NMRにより同定を行った。
【0084】
【化10】

【0085】
NMR(核磁気共鳴分光法)による分析結果は以下のとおりであった。
1H−NMR(400MHz,CDOD):
δ ppm 0.92(3H,t),1.37(2H,m),1.55(2H,m),3.49(4H,m),3.67(2H,brd),3.92(2H,m),3.99(1H,m),4.06/4.07(1H,dd),4.81(1H,brs)
13C−NMR (100MHz,CDOD):
δ ppm 14.24,20.25,32.77,63.29,70.55,70.61,72.34,72.64,72.66,75.01,75.09,77.10,121.78,121.82,163.76,163.84,173.32,173.34
【0086】
製造例8 3−O−グリセリル−2−O−オクチルアスコルビン酸の合成
アルゴン雰囲気下、製造例1で得られた3−O−グリセリルアスコルビン酸(54.1g)をDMSO(200mL)中で攪拌し、さらに炭酸水素ナトリウム(18.5g)を加え室温で30分攪拌を行った。その後臭化オクチル(63.7g)を加え100℃に加温し3時間攪拌した後、酢酸エチルで抽出した。抽出液を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下に濃縮をした。得られた残渣131gをシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付した。クロロホルム/メタノール/水=10/3/0.4混液にて溶出し、減圧下にて濃縮を行い、化11で示される3−O−グリセリル−2−O−オクチルアスコルビン酸(48.0g)を得た。1H−NMRと13C−NMRにより同定を行った。
【0087】
【化11】

【0088】
NMR(核磁気共鳴分光法)による分析結果は以下のとおりであった。
1H−NMR(600MHz,CDOD):
δ ppm 0.90(3H,t),1.32(8H,m),1.42(2H,m),1.70(2H,m),3.60(2H,brd),3.65(2H,m),3.89(1H,m),3.91(1H,m),4.02(1H,m),4.47(1H,dd),4.48(1H,dd),4.57(1H,dd),4.59(1H,dd),4.86(1H,d)
13C−NMR(150MHz,CDOD):
δ ppm 14.4,23.7,26.9,30.37,30.44,30.8,33.0,63.2,63.56,63.59,70.5,70.6,71.5,71.6,74.01,74.04,74.1,76.7,123.27,123.30,159.2,159.3,172.2
【0089】
製造例9 3−O−グリセリル−2−O−ベンジルアスコルビン酸の合成
アルゴン雰囲気下、製造例1で得られた3−O−グリセリルアスコルビン酸(2.93g)に、水と炭酸水素ナトリウム(1.42g)を加え室温で30分間攪拌した後、臭化ベンジル(2.61g)を加え50℃に加温し2時間攪拌した。その後、減圧下に濃縮しメタノールに溶解した。得られた溶液を、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下に濃縮し、得られた残渣6.13gをシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付した。クロロホルム/メタノール/水=10/3/0.4混液にて溶出し、減圧下にて濃縮を行い、化12で示される3−O−グリセリル−2−O−ベンジルアスコルビン酸(2.47g)を得た。1H−NMRと13C−NMRにより同定を行った。
【0090】
【化12】

【0091】
NMR(核磁気共鳴分光法)による分析結果は以下のとおりであった。
1H−NMR(500MHz,CDOD):
δ ppm 3.49(2H,m),3.65(2H,m),3.81(1H,m),3.88(1H,m),4.47(1H,dd),4.28(1H,dd),4.36(1H,dd),4.37(1H,dd),4.85(1H,brs),5.05(2H,m),7.35(3H,m),7.43(2H,m)
13C−NMR(175MHz,CDOD):
δ ppm 63.21,63.51,63.54,70.54,70.57,71.42,71.49,74.12,74.20,75.25,75.28,76.80,76.82,122.27,122.31,129.60,129.95,130.11,137.61,159.90,159.94,172.17
【0092】
製造例10 3−O−ブチルグリセリル−2−O−アリルアスコルビン酸の合成
アルゴン雰囲気下、製造例5で得られた3−O−ブチルグリセリルアスコルビン酸(3.56g)に、水、炭酸水素ナトリウム(0.98g)を加え室温で30分間攪拌した。その後、臭化アリル(1.68g)を加え、60℃に加温し5時間攪拌した後、酢酸エチルで抽出した。抽出液を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下に濃縮をし得られた残渣3.53gをシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付した。クロロホルム/メタノール/水=30/3/0.3混液にて溶出し、減圧下にて濃縮を行い、化13で示される3−O−ブチルグリセリル−2−O−アリルアスコルビン酸(3.00g)を得た。1H−NMRと13C−NMRにより同定を行った。
【0093】
【化13】

【0094】
NMR(核磁気共鳴分光法)による分析結果は以下のとおりであった。
1H−NMR(500MHz,CDOD):
δ ppm 0.93(3H,t),1.39(2H,m),1.55(2H,m),3.48(4H,m),3.65(2H,m),3.89(1H,m),4.01(1H,m),4.457/4.464(1H,dd),4.54(2H,m),4.586/4.594(1H,dd),4.87(1H,1d),5.25(1H,m),5.35(1H,m),6.04(1H,m)
13C−NMR(175MHz,CDOD):
δ ppm 14.24, 20.33, 32.83, 63.19, 70.00, 70.10, 70.50, 70.54, 72.42, 72.45, 72.50, 74.14, 74.63, 74.63, 76.77, 76.79, 119.25, 122.50, 122.54, 134.52, 159.67, 159.72, 172.08
【0095】
製造例11 3−O−オクチルグリセリル−2−O−ヘキサデシルアスコルビン酸の合成
アルゴン雰囲気下、L−アスコルビン酸(100g)に、炭酸水素ナトリウム(14.3g)及びDMSO200mlを加え、さらにオクチルグリシジルエーテル(127g)を加えた。80℃に加温し24時間攪拌した後、酢酸エチルで抽出した。抽出液を、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下に濃縮して得られた残渣150gをシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付した。その後、クロロホルム/メタノール/水=30/3/0.3混液にて溶出し、減圧下にて濃縮を行い、3−O−オクチルグリセリルアスコルビン酸(36g)を得た。得られた3−O−オクチルグリセリルアスコルビン酸(5.17g)をアルゴン雰囲気下、DMSO(10mL)中で攪拌し、炭酸水素ナトリウム(1.20g)、臭化ヘキサデシル(5.22g)を加え、100℃に加温し3時間攪拌した。その後、酢酸エチルで抽出した。抽出液を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下に濃縮して得られた残渣9.06gをシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、クロロホルム/メタノール/水=50/3/0.3混液にて溶出し、減圧下にて濃縮を行い、化14で示される3−O−オクチルグリセリル−2−O−ヘキサデシルアスコルビン酸(3.41g)を得た。1H−NMRと13C−NMRにより同定を行った。
【0096】
【化14】

【0097】
NMR(核磁気共鳴分光法)による分析結果は以下のとおりであった。
1H−NMR(600MHz,d−DMSO):
δ ppm 0.90(6H,m),1.24(34H,brs),1.34(2H,m),1.48(2H,m),1.60(2H,m),3.38(4H,m),3.46(2H,m),3.72(1H,m),3.87(1H,m),3.94(2H,m),4.25(1H,dd),4.31(1H,dd),4.42(1H,dd),4.45(1H,dd),4.82(1H,d)
13C−NMR(150MHz,d−DMSO,40℃):
δ ppm 13.95,22.13,25.40,25.42,25.63,25.71,28.74,28.78,28.87,28.97,29.09,29.20,29.28,29.30,31.34,61.72,68.04,68.09,68.81,70.88,71.48,71.52,72.14,73.24,73.43,74.55,121.29,157.71,157.85,169.42
【0098】
実施例1 オキシアルキレン鎖についての抗酸化性試験
トリエチレングリコールの30%水溶液5g中に、試料として表1に示す製造例で製造した化合物をそれぞれ2mg添加し溶解した。このものを50℃の恒温槽中で3日または6日間保存後、比色法によりホルマリン量を測定した。比較品として、抗酸化剤無添加(トリエチレングリコールのみ)、アスコルビン酸、アスコルビン酸グルコシドを用いて同様の試験を行なった。ホルマリンの生成量を下記のように表記し、その結果を表1に示す。
○:30mg以下
△:30mg以上60mg以下
×:60mg以上
【0099】
【表1】

【0100】
表1から明らかなごとく、製造例1〜11で製造した本発明のアスコルビン酸誘導体は、アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体と比較して顕著な抗酸化効果を有している。
【0101】
実施例2 クリームの安定性試験
表2に示す組成の油相部の原料、および製造例で製造した化合物を含む水相部の原料をそれぞれ全量が100gとなるように70℃に加温し溶解させ、油相および水相をそれぞれ調製した。その後、水相に油相を加え予備乳化を行い、ホモミキサーで均一に乳化した後、よく攪拌しながら室温まで冷却することにより、クリームを調製した。なお、配合量は質量部を表し、残余とは配合量を計100質量部とするために必要な量を意味する。
【0102】
【表2】

【0103】
上記のように調製した各クリームを50℃にて1週間保管し、下記の基準で10人のパネラーに評価させた。その結果を表3に示す。
【0104】
1.外観(状態):
3: 水層と油層の二層の分離が観察されず、沈殿もない。
2: 水層がやや浮き出している、または沈殿がわずかに確認される。
1: 水層と油層の二層への分離が観察されず、沈殿も確認されない。
2.外観(色):
3: 暗褐色に変化した
2: 褐色に変化した
1: 白色又はわずかに褐色に変化した
3.着臭:
3: 酷い酸敗臭がする
2: 酸敗臭が確認できる
1: ほとんど酸敗臭がしない
4.使用感:
3: 異物感があり、塗り広げ難い
2: 異物感等はほとんどなく、塗り広げ難い
1: 異物感等もほとんどなく、塗り広げ易い
【0105】
外観、着臭、使用感のそれぞれの評価結果を下記のように分類した。
○:10人の総合点が15以下
△:10人の総合点が16〜24
×:10人の総合点が25以上
【0106】
【表3】

【0107】
表3の結果から明らかなように、酸化を受けて色や匂い等を変化させる不飽和結合を有する成分を配合したクリームにおいて、本発明のアスコルビン酸誘導体を配合したクリームは、化粧料にとって重要である色や匂い等において劣化することなく、優れた抗酸化効果を示した。
【0108】
実施例3 食用油脂に対する抗酸化効果
200mLのビーカーに綿実油100gを加え、製造例1〜11で製造したアスコルビン酸誘導体をそれぞれ1g加え、80℃に加温し、酸素ガスをおよそ50mL/分でバブリングしながら24時間攪拌を行った。攪拌開始から8時間目及び24時間目でサンプリングを行い、日本油化学協会法に従い過酸化物価(POV)を測定した。比較品として、抗酸化剤無添加(綿実油のみ)、アスコルビン酸およびアスコルビン酸グルコシドについても同様の試験を行い、過酸化物価を測定した。過酸化物価を下記のように分類し、その結果を表4に示す。
【0109】
○:0〜20 meq/kg以下
△:20〜40 meq/kg
×:40 meq/kg以上
【表4】

【0110】
表4に示す結果より、アスコルビン酸と比較すると、本発明のアスコルビン酸誘導体は、8時間後の結果では同程度の効果を示し、24時間後の結果においてはアスコルビン酸よりも優れた抗酸化能を有しており、持続的な抗酸化効果を示した。
【0111】
実施例4 お茶における色彩と芳香の保持効果試験
茶葉150gに1500mLの水を加え、5分間還流した後にろ紙にて茶葉をろ過により取り除いた。この得られたお茶100mLに0.5質量%となるように合成例1〜11で製造したアスコルビン酸誘導体をそれぞれ加え、200mLの密封できる容器に入れて室温(25℃)にて保存した。比較品として、抗酸化剤無添加(茶液のみ)、アスコルビン酸およびアスコルビン酸グルコシドについても同様の試験を行った。30日および90日保存後の溶液のの色彩と芳香の変化を観察し、その色彩と芳香の変化を30日後、90日後と観察し、下記の基準で10人のパネラーに評価させた。その結果を表4に示す。
【0112】
1.色彩
3: ほとんど変化していない
2: 褐色変化した
1: 暗褐色に変化した
2.芳香
10人のパネラーにより、次の基準で評価した。
3: ほとんど変化していない
2: かすかに芳香がする
1: ほとんど匂わない
【0113】
色彩、芳香のそれぞれの評価結果を下記のように分類した。
○:10人の総合点が25以上
△:10人の総合点が16〜24
×:10人の総合点が15以下
【表5】

【0114】
表5の結果より、本発明のアスコルビン酸誘導体は、アスコルビン酸及び他のアスコルビン酸誘導体と比較すると、30日後、90日後ともに色彩、芳香共に良好な結果を示しており、お茶に含まれるカテキンなどのフラボノイド等の酸化を防ぎ、本発明のアスコルビン酸誘導体は優れた抗酸化効果を有することが明らかであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表されるアスコルビン酸誘導体又はその塩からなる抗酸化剤。
【化1】

〔式中、RおよびRはそれぞれ、水素原子または炭素数1〜22のアルキル基、炭素数2〜22のアルケニル基、ベンジル基、R−O−CH−CH(OH)−CH−、R−O−CH−CH(CHOH)−、R−CH(CHOH)−、R−CH(OH)−CH−およびヒドロキシシクロヘキシル基からなる群から選ばれる基であり、ここで、RおよびRは、水素原子、炭素数1〜22のアルキル基、炭素数2〜22のアルケニル基またはフェニル基であり、RおよびRは、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基またはフェニル基である。但し、Rが水素原子、炭素数1〜22のアルキル基、炭素数2〜22のアルケニル基またはベンジル基のとき、Rは水素原子、炭素数1〜22のアルキル基、炭素数2〜22のアルケニル基およびベンジル基のいずれでもない〕
【請求項2】
上記一般式(I)において、Rが、水素原子、−CH−CH(OH)−CHOHまたは−CH(CHOH)−CHOHであり、Rが−CH−CH(OH)−CHOHまたは−CH(CHOH)−CHOH(但し、RとRが同時に水素原子になることはない)であることを特徴とする請求項1に記載のアスコルビン酸誘導体からなる抗酸化剤。

【公開番号】特開2011−99020(P2011−99020A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−253646(P2009−253646)
【出願日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【出願人】(000147213)株式会社成和化成 (45)
【Fターム(参考)】