説明

抗酸化性機能水

【課題】ナノサイズの気泡を高濃度に含有する水の新規機能を提供する。
【解決手段】空気、水素、酸素及び窒素からなる群より選択される気体の一種以上を曝気することにより生じた微細な気泡を含み、過酸化水素除去能を有する機能水を提供する。このような機能水は、簡便には、空気、水素、酸素及び窒素からなる群より選択される気体の一種以上を、精密濾過膜、限外濾過膜、又はガス分離膜を介して曝気することにより製造することができる。本発明の機能水は、メタボリックシンドローム、アディポネクチンに関連した疾患若しくは状態、又は高血圧の処置等のために有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は空気、水素又は窒素ガスをマイクロバブル又はナノバブル状態で含む、機能水に関する。本発明の機能水は抗酸化作用を有する。本発明の機能水はまた、抗メタボリックシンドロームホルモンとされているアディポネクチンの産生を促進し、血圧を下げる効果がある。本発明の機能水は、食品、化粧品及び医薬品の分野で有用である。
【背景技術】
【0002】
近年、種々の機能や効能を唱えた機能水が提唱され始め、研究も若干行われ始めている。機能水とは、ある特定の物理的、化学的処理をした水、ある特定の物質を添加した水、ある特定の物質を除去した水、と定義が提案されている(非特許文献1)。
【0003】
現在、種々の生理学的機能を持つとされている機能水は主に電気化学的に分解した、いわゆる酸性水やアルカリ水である。前者については殺菌作用を有するとの報告があり(非特許文献2)、後者については消化器系愁訴の改善作用(非特許文献3)や活性酸素種の消去作用を有するとの報告がある一方で(非特許文献4)、活性酸素種の消去能はないとの報告もある(非特許文献5)。
【0004】
最近では、マイクロバブル(MB)、マイクロナノバブル(MNB)、ナノバブル(NB)といった微細な気泡を含む水に関する研究が進みつつある。マイクロメーター以下の気泡を含む水は、水質の浄化、殺菌、水系生物の酸欠状態の改善等、従来の水にはない機能を有することが分かってきており、主として水産・養殖業において注目されている。例えば、海水マイクロバブルをホタテに供給した場合に、急激な血流促進が実現されたとの報告がある(非特許文献6)。また、水槽内に酸素ナノバブルを入れると、海水魚と淡水魚とを同時に半年以上の期間に渡って生存させることができたとの報告がある(特許文献1)。また、微細な気泡を発生させる手段としては、船舶等の走行中の水との摩擦を低減するために船体の表面に気泡又は空気層を介在させる目的で、空気ポンプで発生させた加圧空気を複数の穴や多孔板から水中に噴出させる方法(例えば、特許文献2及び3)、及び回転する気液2相流体の中心空洞部に気体を通過させ、出口付近で一挙に圧力解放させることでその空洞の回転切断部分でマイクロバブルを発生させる方法(前掲非特許文献6)等が提案されている。
【特許文献1】特開2005-246294号
【特許文献2】特開昭61-71290号
【特許文献3】特開平8-230762号
【非特許文献1】ウォーターサイエンス研究会編、機能水実用ハンドブック、人間と歴史社、pp13〜14、2006
【非特許文献2】T. Kitahora et al: Active oxygen species in gastric mucosal lesion with Helicobacter pylori. Current Topics in Mucosal Immunology, 289-293, 1993
【非特許文献3】田代博一、他:Helicobacter pylori と胃粘膜組織発生活性酸素、消化器と免疫、71-73、1996
【非特許文献4】S. Shirahata et al: Electrolyzed-reduced water scavenges active oxygen species and protects DNA from oxidative damage. Biochem. Biophys. Res. Commun., 234, 269-274, 1997
【非特許文献5】内藤 祐二、他:非ステロイド系抗炎症薬による胃粘膜障害に対するアルカリイオン水の有効性の検討、第5回機能水シンポジウム抄録集、67-68、1998
【非特許文献6】大成 博文他、マイクロ・ナノバブルの発生機構と生理活性、日本混相流学会年会後援会講演論文集、221-222、2003
【非特許文献7】Ishida, N. et al., Langmuir, 16, 5681-5687, 2000
【発明の開示】
【0005】
発明者らは長年メタボリックシンドロームの予防や治療方法の研究に従事してきた。そして、空気、水素等の非常に安全性の高い気体をナノサイズの気泡状態で高濃度に包含させた水が種々の機能を有することを見出した。また、このようなナノバブル水の品質が長期に渡り安定であることを確認し、本発明を完成した。
【0006】
本発明はすなわち:
1)空気、水素、酸素及び窒素からなる群より選択される気体の一種以上を曝気することにより生じた微細な気泡を含み、過酸化水素除去能を有する機能水;
2)空気、水素、酸素及び窒素からなる群より選択される気体の一種以上を、精密濾過膜、限外濾過膜、又はガス分離膜を介して曝気することにより生じた微細な気泡を含む機能水;
3)過酸化水素除去能を有する、上記2)の機能水;
4)メタボリックシンドローム、アディポネクチン、レプチン、TNF−α又は酸化障害に関連した疾患若しくは状態、又は高血圧の処置のための、上記1)〜3)のいずれかに記載の機能水;
5)空気、水素、酸素及び窒素からなる群から選択される気体の一種以上を曝気することにより生じた微細な気泡を含み、過酸化水素除去能を有する、抗酸化性機能水;
6)上記5)に記載の機能水を含む、食品組成物、化粧用組成物又は医薬組成物;
7)上記5)に記載の機能水を含む、メタボリックシンドローム、アディポネクチン、レプチン、TNF−α又は酸化障害に関連した疾患若しくは状態、又は高血圧の処置のための医薬組成物;
8)空気が理論溶存値の50倍含まれる、上記1)〜3)のいずれか1項に記載の機能水;
9)水素が理論溶存値の10倍以上含まれる、上記1)〜3)のいずれか1項に記載の機能水;
を提供する。
【0007】
一定以下の大きさの微細な気泡を含む水はマイナスの電位を有し、水面上に上昇することなく、圧壊現象により水中で消滅する。その際、瞬間的に超高温・超高圧状態になることから、水を構成している水素分子が物理的に解離し、原子状水素になると考えらる。原子状水素には還元作用があり、活性酸素の除去能がある。一方、水素分子は非常に安定であるため、室温下では化学的に不活性であり、高濃度に水素を水に溶解しても活性酸素の消去能は認められない(ウォーターサイエンス研究会 編、機能水実用ハンドブック、pp213〜225、2006年、人間と歴史社)。本発明は、微細な気泡を含む水の、上述のような還元作用を利用するものである。したがって、本発明に用いられる気体は、このような現象を生じうるものであり、かつ生体に対して安全性の高いものでありさえすれば、特に制限はない。本発明には、例えば空気、水素、酸素及び窒素からなる群より選択される一種以上の気体を用いることができる。好ましくは、空気、水素又は窒素を用い、より好ましくは空気又は水素を用いる。
【0008】
本発明に用いることのできる水は、食品、化粧品又は医薬の製造に適していれば特に制限はない。本発明には、例えば硬水、軟水、中硬水、イオン交換水、脱塩水、水道水、滅菌水等を用いることができる。
【0009】
本発明の機能水は、上述したような気体の一種以上を曝気することにより生じた微細な気泡を含む。このような機能水の製造方法としては従来技術を利用してもよい。
【0010】
簡便には、精密濾過膜、限外濾過膜、ナノ濾過膜又はガス分離膜のようなマイクロメーター以下の微細な孔を有する有機系素材又は無機系素材の多孔質体を介して、加圧した気体を水中に送り込むことにより製造することができる。用いる膜の素材には、特に制限はなく、飲料の製造に適しており、かつ用いる加圧気体及び水に対して安定であればよい。曝気時間は、当業者であれば機能水が有すべき過酸化水素除去能等を指標に、曝気量、多孔質体表面積、水量に応じ、適宜設定することができる。例えば、有機系膜モジュールを用いた実施例に記載した条件では、約18時間、無機系フィルターモジュールを用いた実施例に記載した条件では、約2時間曝気を行うことが推奨される。曝気を行う際の温度は、好ましくは室温(25℃)であり、より好ましくは4℃〜10℃である。曝気を行う際のpHは、用いる多孔質体が安定である範囲内であればよい。例えば、実施例に記載したモジュールに関しては、pH1〜14の範囲内で実施することができる。
【0011】
得られた機能水は、過酸化水素除去能、重量、気泡粒径等を測定することにより、評価することができ、またその機能の確認をすることができる。
【0012】
本発明の機能水は、過酸化水素除去能を有する。本明細書で機能水について「過酸化水素除去能を有する」というときは、特別な場合を除き、対象となる機能水に過酸化水素濃度が10ppmになるように過酸化水素水を添加し、密閉し、室温下に3時間静置した後、残存過酸化水素量を測定したときに、過酸化水素が少なくとも30%除去される(過酸化水素濃度が7ppm以下となる)ことをいう。本発明の機能水は、このような測定により評価される過酸化水素除去能において、40%以上であることが好ましく、50%以上であることがさらに好ましく、60%以上であることが一層好ましい。本発明の機能水の過酸化除去能の上限値は、製造上、安全上、保存安定上等の観点から定めることができ、例えば、99%、95%、90%又は85%とすることができる。
【0013】
なお、本明細書の実施例に記載した、空気を曝記することにより製造した機能水の場合、精密電子上皿天秤にて処理前後の重量を測定したところ、1mlの重量は、曝気前は0.9854g、曝気後は0.9633gであり、0.0022g軽くなっていた。また、同様に、水素を曝気することにより製造した機能水の場合は、曝気前は0.9854g、曝気語は0.9917gであり、0.0078g軽くなっていた。このような結果は、空気及び水素が水中に閉じ込められたために生じたものと考えられる。
【0014】
空気を曝気することにより製造された本発明の機能水に含まれる空気の量は、空気の水への理論溶存値の10倍以上であることが好ましく、50〜3,000倍であることがより好ましく、100〜1,000倍であることがさらに好ましい。水素を曝気することにより製造された本発明の機能水に含まれる水素の量は、水素の水への理論溶存値の3倍以上であることが好ましく、10〜200倍であることがより好ましく、20〜50倍であることがさらに好ましい。
【0015】
本発明の機能水は、抗酸化作用を有する、抗酸化性機能水である。
【0016】
本発明の機能水は、食品組成物、化粧用組成物又は医薬組成物として、またはこれらのいずれかに添加して用いることができる。食品組成物には、飲料、ドリンク剤が含まれる。
【0017】
本発明の機能水は、過酸化水素除去能又は抗酸化作用が有効な効果をもたらす、種々の用途に用いることができる。本発明の機能水は、特にメタボリックシンドローム、アディポネクチンに関連した疾患若しくは状態(例えば、肥満、内臓脂肪過多、生活習慣病、動脈硬化)、レプチンに関連した疾患若しくは状態(例えば、肥満、食欲過多、糖脂質代謝低下)、TNF−α(例えば、インスリン抵抗性、腫瘍)又は酸化障害(例えば、過酸化脂質の増加、動脈硬化、心筋梗塞、糖尿病、癌、老化)に関連した疾患若しくは状態、又は高血圧の処置のために有用である。
【0018】
本明細書において疾患又は状態について「処置」というときは、特別な場合を除き、その疾患又は状態について、治療すること、予防すること、進行を遅延又は停止すること、良好な状態を維持することが含まれ、治療には、症状を抑える対処的治療と、根本的な治療とが含まれる。
【0019】
アディポネクチンとは、脂肪細胞から血液中に分泌されるホルモンであり、メタボリックシンドローム解消のために効果があるといわれている。
【0020】
本明細書で「メタボリックシンドローム」というときは、通常の意味で用いており、一般的な診断基準にしたがって、ウエスト周囲径が男性で85cm、女性で90cm以上(内臓脂肪面積100cm2以上のマーカー)を「要注意」とし、その中で(1)血清脂質異常(トリグリセリド値150mg/dL以上、又はHDLコレステロール値40mg/dL未満)、(2)血圧高値(最高血圧130mmHg以上、又は最低血圧85mmHg以上)、(3)高血糖(空腹時血糖値110mg/dL)の3項目のうち2つ以上を有する場合を指す。
【0021】
本発明の機能水は、肥満症、高血圧症、糖尿病及び高脂血症等の処置、並びに運動能の向上及び運動維持にも有用である。
【0022】
本発明の機能水は、メタボリックシンドローム、アディポネクチン、レプチン、TNF−α又は酸化障害に関連した疾患若しくは状態、又は高血圧の治療の目的では、成人一日当たり100ml以上、好ましくは200ml以上経口的に摂取するとよい。予防の目的では、より少ない量で効果がある場合もある。摂取量には特に制限はないが、水素を曝気することにより製造された本発明の機能水を正常血圧者が多飲すると血圧の急激な低下が見られることがあるので、経口摂取の場合の1回量は、500ml未満であることが好ましいであろう。
【0023】
本発明の機能水は、微細な気泡の気体及び水以外に、食品として、化粧品として又は医薬として許容できる種々の添加剤及び成分を含んでもよい。本発明の機能水は、例えば、安定剤、緩衝剤、矯味剤(甘味料、酸味料を含む。)、保存剤、芳香剤、着色剤、粘稠剤、ビタミン類、塩類、果汁、目的とする疾患又は状態の処置のために有効な他の成分を含んでもよい。本発明の機能水を食品、化粧品又は医薬品とする場合、溶液状、乳液状、懸濁状等、種々の液状の形態とすることができ、またそれを固形化若しくは半固形化した、又は封入した、ゲル状、カプセル状とすることができる。
【0024】
本発明の機能水を充填する容器としては、ペットボトル及びガラスが適している。
【実施例】
【0025】
以下に本発明の内容を詳細に説明する。本発明に用いられる装置類等は本発明を説明するだけのものであり、本発明はこれに限定されるものではない。
【0026】
[機能水の製造例1]
セラミック製のタンクに加熱殺菌した20Lの脱イオン水を入れ、ノンオイルのコンプレッサーに接続したナノメーターサイズの孔径を有する有機系のフィルター(旭化成ケミカルズ株式会社製ポリスルフォン限外濾過膜型モジュール、製品名マイクローザペンシル型モジュールSEP-0013、公称分画分子量3,000)を浸漬した。室温下で5〜20時間、2kg/cm2に加圧した空気をモジュールに送り込んだ。このとき、モジュールの排出部を空気が漏出しないように完全に密閉しておいた。
【0027】
[機能水の製造例2]
セラミック製のタンクに加熱殺菌した20Lの脱イオン水を入れ、ノンオイルのコンプレッサーに接続したナノメーターサイズの孔径を有する無機系のフィルター(株式会社ノリタケカンパニーリミテド製セラミックフィルターモジュール、製品名MEMBRALOX、孔径20nm)を浸漬した。室温下で10〜60分間、10kg/cm2に加圧した空気をモジュールに送り込んだ。このとき、モジュールの排出部を空気が漏出しないように完全に密閉しておいた。
【0028】
[機能水の評価及び保存安定性]
マイクロメーター以下の気泡を含む水はマイナスの電位を有し、水面上に上昇することなく、圧壊現象により水中で消滅する。その際、瞬間的に超高温・超高圧状態になることから、水を構成している水素分子が物理的に解離し、原子状水素になっていると考えらる。原子状水素は還元性を示すことから、最も簡単に測定できる方法は過酸化水素との反応である。原子状水素は、過酸化水素を1:1の等モル反応で消去できる。この消去された過酸化水素量を過酸化水素センサー等の簡易な方法で測定し、機能水の評価方法とした。
【0029】
製造例1に記した方法で、空気又は水素を曝気することにより機能水を製造した。機能水は冷暗所に0〜3ヶ月保存した。
【0030】
各機能水10mlには、過酸化水素水を過酸化水素濃度が10ppmになるように添加し、密閉し、室温下に3時間静置した後、残存過酸化水素量を過酸化水素センサーで測定した。対照として、機能水の製造に使用した脱イオン水について、同様に残存過酸化水素量を測定した。
【0031】
過酸化水素消去能(%)は次式で算出した。
過酸化水素消去能(%)=((AH−RH)/AH)×100
AHは添加過酸化水素濃度、RHは残存過酸化水素濃度である。
【0032】
結果を下表に示す。
【0033】
【表1−1】

【0034】
対照は過酸化水素消去能をいずれの月において示さなかった為、3ヶ月目のみ記載した。
【0035】
また、過酸化水素消去能について、6サンプルの平均値及び標準偏差値を下表に示す。
【0036】
【表1−2】

【0037】
各機能水の過酸化水素消去能は、製造後時間と共に徐々に低下するが、空気を高濃度に包含させた水では2ヶ月間、水素を高濃度に包含させた水では3ヶ月間保存した場合でも約50%の過酸化水素消去能を保持していた。これは製造例で示した方法で、空気や水素を高濃度に水に包含させると、これらの気体が比較的安定な状態で存在していることを示していると考えられる。約2〜3ヶ月間の品質保証が可能で有れば商業的規模で流通させるのも不可能ではない。
【0038】
[インビボ試験]
次に、本発明の機能水が生体内で目的の作用を発揮するか否かを確認するために、マウス及びラットでのメタボリックシンドロームに関する実験を実施した。指標として、末梢血のアディポネクチン、レプチン、腫瘍壊滅因子(TNF−α)、過酸化脂質及び血圧を測定した。
【0039】
1. 末梢血のアディポネクチン、レプチン、TNF−αへの影響:
糖尿病マウス(KKAy、♂、7週令、日本クレア社)を温度25±3℃、相対湿度50±10%、明暗サイクル12時間(明期8:00〜20:00)の環境下で飼育し、餌は高脂肪食(日本クレア社)を自由摂取させた。また、上述の、空気を包含させた機能水又は水素を包含させた機能水を飲料水として自由摂取させた。対照として、機能水製造に使用した水道水を用いた。
【0040】
1ヶ月間飼育後、エーテル麻酔下にて眼底静脈から採血し、常法に基づいて血清を得た。血清中のアディポネクチン、レプチン、TNF−αの測定は各々の抗体をBIAcoreセンサーチップに固定化し、BIAcore社の操作マニュアルに基づいて表面プラズモン共鳴法で測定した。各々の結果を下表に示す。
【0041】
【表2】

【0042】
各因子は対照比での割合を示した。+は増加を、−は減少を示す。
【0043】
2. 酸化障害への影響:
ラット(Wistar/ST、♂、5週令、三協ラボサービス社)を温度25±3℃、相対湿度50±10%、明暗サイクル12時間(明期8:00〜20:00)の環境下で飼育し、餌は普通食(日本クレア社)を自由摂取させた。上述の空気を包含させた機能水を飲料水として自由摂取させた。対照として、機能水製造に使用した水道水を滅菌して用いた。
【0044】
4週間飼育した後、クメンヒドロパーオキサイド50μl(125μg/kg体重)を腹腔に投与した。3時間後にエーテル麻酔下にて眼底静脈から採血し、常法に基づいて血清を得、血清過酸化物価を測定キット(ワコー純薬社)で測定した。結果を下表に示す。
【0045】
【表3】

【0046】
クメンヒドロパーオキサイドを投与した後の血清過酸化脂質濃度は、滅菌水道水で飼育した対照群では約40%上昇していたのに対し、機能水を摂取させることにより、上昇率は9%程度に抑制された。
【0047】
3. 血圧に及ぼす影響:
高血圧自然発症ラット(SHR/izm、♂、8週令、三協ラボサービス社)を温度25±3℃、相対湿度50±10%、明暗サイクル12時間(明期8:00〜20:00)の環境下で飼育し、餌はCE-2固形飼料(日本クレア社)を自由摂取させた。また、上述の空気を包含させた機能水又は水素を包含させた機能水をそれぞれ飲料水として自由摂取させた。対照として、機能水製造に使用した水道水を滅菌して使用した。この条件下で4ヶ月間飼育した。血圧をマウス・ラット用非観血式血圧計(MODEL MK-2000、室町機械社)で測定した。
【0048】
高血圧自然発症ラットの結果を表4-1及び表4-2に示す。
【0049】
【表4−1】

【0050】
【表4−2】

【0051】
各動物個体の血圧は6回の測定の平均値を、( )内の数字は標準偏差値を表す。
【0052】
拡張期血圧は収縮期と平均血圧の測定値からマウス・ラット用非観血式血圧計(MODEL MK-2000、室町機械社)に内蔵されているソフトウエアーで算出された値である。
【0053】
表4-1及び表4-2に示したように、本発明の機能水は、いずれも血圧を低下させる作用を有していた。その作用は空気の場合よりも、水素を包含させた方が高かった。
【0054】
5. ヒトボランティアの血圧に及ぼす影響:
高血圧症の境界領域4名と正常血圧1名のヒト男性ボランティアに朝、昼、晩の任意の時間に空気を包含させた機能水各200ml飲用させ、30分間後の収縮期と拡張期の血圧を測定した。血圧は家庭用血圧計(オムロン社)を用い、操作マニュアルに基づき同一施設内にて同一条件下で測定した。この間、高血圧の治療薬(血圧降下剤)を使用していないことを確認している。結果を下表に示す。
【0055】
【表5】

【0056】
5*は正常血圧のボランティアである。
【0057】
ヒトでも動物実験の場合と同様に、本発明の機能水は拡張期、収縮期血圧を10〜18%も低下させた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気、水素、酸素及び窒素からなる群より選択される気体の一種以上を曝気することにより生じた微細な気泡を含み、過酸化水素除去能を有する機能水。
【請求項2】
空気、水素、酸素及び窒素からなる群より選択される気体の一種以上を、精密濾過膜、限外濾過膜、又はガス分離膜を介して曝気することにより生じた微細な気泡を含む機能水。
【請求項3】
過酸化水素除去能を有する、請求項2に記載の機能水。
【請求項4】
メタボリックシンドローム、アディポネクチン、レプチン、TNF−α又は酸化障害に関連した疾患若しくは状態、又は高血圧の処置のための、請求項1〜3のいずれか1項に記載の機能水。
【請求項5】
空気、水素、酸素及び窒素からなる群から選択される気体の一種以上を曝気することにより生じた微細な気泡を含む、抗酸化性機能水。
【請求項6】
請求項5に記載の機能水を含む、食品組成物、化粧用組成物又は医薬組成物。
【請求項7】
請求項5に記載の機能水を含む、メタボリックシンドローム、アディポネクチン、レプチン、TNF−α又は酸化障害に関連した疾患若しくは状態、又は高血圧の処置のための医薬組成物。
【請求項8】
空気が理論溶存値の少なくとも50倍含まれる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の機能水。
【請求項9】
水素が理論溶存値の少なくとも10倍含まれる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の機能水。

【公開番号】特開2008−156320(P2008−156320A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−350037(P2006−350037)
【出願日】平成18年12月26日(2006.12.26)
【出願人】(506177796)ハイドロックス株式会社 (4)
【出願人】(596102528)株式会社オンガエンジニアリング (2)
【出願人】(500568941)株式会社エフ・シーシー堀内 (2)
【Fターム(参考)】