説明

抗酸化組成物

【課題】 活性酸素を消去させる為には、抗酸化物質を摂取すればよく、また、体内のSODが不足したらSODを補えばいいが、SODは経口摂取しても速やかに吸収する事は困難であり、また、胃酸に分解されて活性を失う。そこでSODと同様の活性を示す抗酸化物質をとることが有効な手段となる。本発明の目的は、幅広い飲食品や医薬品に使用可能な抗酸化効果のある組成物及びそれを含有する飲食品、医薬部外品及び医薬品を提供することにある。
【解決手段】 オナモミの果実、種子又はその抽出物を含有することにより上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オナモミの果実、種子又はその抽出物を含有することを特徴とする抗酸化組成物及びそれを含有する飲食品、医薬部外品及び医薬品に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトは常時呼吸をし、体に酸素を取り入れている。呼吸によって摂取した酸素のうち約2%〜4%が不安定な不対電子をもつ活性酸素(分子内にひとつ以上の不対電子をもつものをフリーラジカルといい、酸素のフリーラジカルを活性酸素という)となり、これらの活性酸素は早く安定しようと、安定を求めて細胞膜を攻撃する。その後、細胞膜中の不飽和脂肪酸を酸化し、酸化された不飽和脂肪酸は脂質ペルオキシルラジカルに変化する。そして、脂質ペルオキシルラジカルは、再び不飽和脂肪酸を酸化し、酸化を繰り返しながら、過酸化脂質を生成する。活性酸素には、体内に侵入してきた細菌などから身を守る役割もあるが、問題なのは大量に活性酸素が発生した場合である。活性酸素が有害なのは、不飽和脂肪酸が体内で活性酸素によって酸化され、「過酸化脂質」になるからである。人間の身体はおよそ60兆個の細胞から構成されていて、その細胞の一番外側にある細胞膜は「不飽和脂肪酸」でできている。その不飽和脂肪酸が酸化して、過酸化脂質となり、細胞膜がボロボロになると、さらに細胞膜内にあるタンパク質までもが巻き込まれて酸化し、もっと有害な二次酸化物ができる。これによって、老化、脳卒中、自己免疫疾患、ガン、白内障、脂肪肝、心筋梗塞、虚血性心疾患、アルツハイマー症候群、糖尿病、糖尿病性腎症、動脈硬化、アレルギー、花粉症のような様々な疾病や皮膚のしわ形成や皮膚の弾力性低下等の老化、炎症、肌の色素沈着が引き起こされている。しかし幸いな事に人体には抗酸化物質が備わっており、体内のSOD(スーパーオキシドディスムターゼ)をはじめ、カタラーゼ、グルタチオン・パーオキシターゼなどの抗酸化物質が備わっており、この活性酸素を消しさってくれる。しかしこのSODも歳を取ると共に減少する。また、最近の農薬、殺虫剤、食品添加物、窒素化合物、紫外線、放射線、ストレス、タバコなど多くの環境汚染物質によって、環境汚染は我々の体内にある貴重なSODをさらに消費しているだけでなく、活性酸素が作られる環境になっている。
【0003】
活性酸素を消去させる為には、抗酸化物質を摂取すればよく、また、体内のSODが不足したらSODを補えばいいが、SODは経口摂取しても速やかに吸収する事は困難であり、また、胃酸に分解されて活性を失う。そこでSODと同様の活性を示す抗酸化物質をとることが有効な手段となる。
【0004】
抗酸化剤としては、例えばL−アスコルビン酸(ビタミンC),還元型のグルタチオン、尿酸、ポリフェノール類などの水溶性抗酸化化合物や、α−トコフェロール(ビタミンE)、ユビキノン(コエンザイムQ)、カロチノイド類などの脂溶性抗酸化化合物およびBHT(ブチルヒドロキシトルエン)、BHA(ブチルヒドロキシアニソール)などの合成化合物などが知られている。しかし、合成抗酸化剤のBHT、BHAには、発癌性の疑いが持たれている等の問題がある。日常的な抗酸化物質の摂取を考える上で、その経済性や安全性から主に抗酸化物質の製造における原料としては食品が用いられ、例えば茶葉からカテキン類や赤ワインからはプロシアニジン類等のポリフェノール類が製造されている。その他の天然成分での抗酸化剤としては、スモモ、セイヨウナツユキソウ、ベンガルカラタチ、ミラクルベリー、ヤーバサンタ、レモングラスから選ばれる抽出物(例えば、特許文献1参照。)、アガリクス、メシマコブ、及びプロポリス(例えば、特許文献2参照。)、椿花抽出物(例えば、特許文献3参照。)、サンショウ水性溶媒抽出物(例えば、特許文献4参照。)、カカオの葉、樹皮又は根抽出物(例えば、特許文献5参照。)、フスマ、胚芽又は穀粉の有機溶媒による抽出物(例えば、特許文献6参照。)、栄養的に優れているといわれる野菜類の、かぼちゃ、ホーレン草、モロヘイヤ、トマト、スイートコーン、人参、紫コーンなどの15種類以上の天然食品素材からなるもの(例えば、特許文献7参照。)が知られている。一方で、単一な物質の大量摂取より、多種・多様な抗酸化物質を少量ずつ摂取することのほうが、種々の疾病の予防については有効であることがわかってきた。そのためには多彩な抗酸化物質を提供することが必要である。
【0005】
【特許文献1】特開2003−183120号公報(第1−2頁)
【特許文献2】特開2002−235084号公報(第1−2頁)
【特許文献3】特開2002−371092号公報(第1−2頁)
【特許文献4】特開2002−104985号公報(第2−3頁)
【特許文献5】特開2000−60485号公報(第1−2頁)
【特許文献6】特開平10−147779号公報(第1−2頁)
【特許文献7】特開平10−75740号公報(第2−5頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、幅広い飲食品や医薬品に使用可能な抗酸化効果のある組成物及びそれを含有する飲食品、医薬部外品及び医薬品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、様々な天然植物を利用して抗酸化成分を捜す目的で、多角的に研究検討した結果、オナモミの果実、種子又はその抽出物に優れた抗酸化作用及びSOD様活性を有することを見出し、本発明を完成させた。
【発明の効果】
【0008】
本発明で得られたオナモミの果実、種子又はその抽出物を含有する抗酸化組成物は、電子スピン共鳴(ESR)装置を用いた、DPPH(ジフェニルピクリルヒドラジル)フリーラジカル消去能の測定結果及び同じく、適当な方法で発生させた活性酸素種をDMPOなどのスピントラップ剤で捕捉し、各活性酸素種に特異的なESRシグナルを定量する方法によるSOD様活性測定結果及びストレプトゾトシン(STZ)を投与して誘発させた糖尿病性腎症ラットへの抗酸化組成物投与試験及び魚肉への添加試験により、酸化によって生体内で増加する過酸化脂質をチオバルビツール酸(TBA)と反応する物質(チオバルビツール酸反応性物質;TBARS)の量で測定した結果から、抗酸化効果が高いことがわかった。
【0009】
本発明はオナモミの果実、又はその抽出物を含有する抗酸化組成物を各種飲食品及び医薬品等に利用して、老化、脳卒中、自己免疫疾患、ガン、白内障、脂肪肝、心筋梗塞、虚血性心疾患、アルツハイマー症候群、糖尿病、糖尿病性腎症、動脈硬化、アレルギー、花粉症のような様々な疾病やシミ・ソバカス等の異常な色素沈着の進行を抑制並びに食品の劣化を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本願発明に用いるオナモミとは、学名:キサンティウム ストルマリウム(Xanthium Strumarium L.)といい、キク科オナモミ属に属する一年草で高さは約1メートル、全体に短い剛毛がある。種子は茎に互生し、形はほぼ心臓形をしており、先は尖り、種子縁は不揃えに切れ込み、質は厚めでやや堅く短毛がある。夏には分かれた枝先に、黄緑色の頭状花を円錐状につける。雄性花は上方について緑色の堅い刺毛があり雌性花は下方につく。果実は総苞につつまれたままで周囲に刺があり、衣服や動物の毛に付着して散布される。オナモミは、世界に約20種あるが、原産地はアジア大陸で、世界に広く分布しているが、特にアメリカ大陸に多く分布している。古代人が髪を黄色に染める染料として用いたことから属名は、ギリシャ語の黄に由来するクサントス(Xanthos)、日本では種子を揉んでつけると虫さされに効くところから「ナモミ(生揉み)」の名が付いたとも言われている。英名でクックレーバ(Cooklebur)とも称されている。オナモミの成熟した果実を天日で乾燥させたものを生薬で、蒼耳子(そうじし)といい、解熱、発汗、頭痛薬として用いられている。ヨーロッパや北アフリカでは家畜の飼料として使用されており、またリンパ腺の腫れをとる薬として用いていた。
【0011】
本発明において、オナモミの部位としては、果実又は種子が用いられる。その形態は、特に限定するものではなく、未熟果実、完熟果実、乾燥果実、種子粉末等のいずれでも良い。
【0012】
生果実、又は乾燥果実等、水不溶性成分を含む物を使用する場合は、抽出により、水不溶性成分が除去されていることが効果を上げる点で好ましい。
【0013】
抽出の際、生果実を使用する場合は、水を添加又は無添加で、抽出効率を高めるためにミキサー等により破砕、均質化したものを用いることが好ましい。
【0014】
乾燥果実を使用する場合は、抽出効率を高めるために40メッシュ以下の粒度になるように粉砕されていることが好ましい。
【0015】
抽出方法は、抽出溶媒、抽出温度等、特に限定されるものではなく、抽出溶媒としては、水、塩基、酸、親水性溶媒、アセトンを使うことができる。親水性溶媒はメチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコールの低級アルコール群より選ばれる1種類以上が操作性、抽出効率の点から好ましい。特に好ましくは、水、塩基、酸のいずれかである。
【0016】
酸又は塩基を抽出溶媒に使用する場合、抽出物を中和させることが好ましい。中和反応によって生成された塩は、透析法やゲル濾過等、公知の方法により、取り除くことができる。水を抽出溶媒として用いた場合には、上記のような中和反応は必要なく、生成された塩を取り除く必要もないため、水を用いることが更に好ましい。
【0017】
この時使用する酸としては、特に限定するものではなく、大部分の酸を使うことができるが、好ましくは、入手しやすい及び操作性点により塩酸、硫酸より選ばれる1種又は両者の併用である。
【0018】
また、塩基としては、特に限定するものではなく、大部分の塩基を使うことができるが、好ましくは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムより選ばれる1種又は両者の併用である。
【0019】
抽出に使用される酸又は塩基の濃度は、抽出物を酵素処理する前であっても後であっても特に限定するものではなく、酸又は塩基の強さによって変化するが、操作性及び抽出効率の点より、0.01〜0.5モルの濃度を使用することが好ましい。
【0020】
上記の抽出において、ペクチナーゼ、プロテアーゼ、タンナーゼまたはセルラーゼ等の酵素を1種類又は2種類以上組み合わせて併用することも可能である。
更に、上記の抽出において、抽出残渣に対して再度抽出工程を1回またそれ以上繰り返すことで、抽出効率が向上し、収率が向上するので、好ましい。この場合の抽出に用いる溶媒は、同じでも良いし、別の溶媒を用いても良い。
【0021】
上記の果実又は種子の抽出物は、そのままでも使用できるが、濾過、遠心分離及び分留により、不溶性物質及び溶媒を取り除くことにより、抗酸化効果が高くなり、応用範囲も広がるので好ましい。
【0022】
不溶性物質及び溶媒を取り除いた後、抽出液をそのまま又は濃縮した後に有機溶媒用いて分配を行い、それぞれの溶媒可溶画分を得る。これら溶媒可溶画分は、更に抗酸化効果(SOD様活性)が高くなるので好ましい。有機溶媒としてはメチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコールの低級アルコール、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジエチルエーテル、メチルエーテル、メチルイソブチルケトン、ヘキサン、アセトン又はクロロホルムが使用できる。中でもエチルアルコールが好ましい。また可溶画分の純度を上げる為には、他の疎水性溶媒による分配を組み合わせることもできる。これら溶媒の濃度としては、特に限定するものではないが、収率及び効果の点より、終濃度として10〜100%が好ましい。
【0023】
さらに純度を高める為に、フェノール系、スチレン系、アクリル酸系、エポキシアミン系、ピリジン系、メタクリル系など母体とした疎水性樹脂を用いることも可能である。その場合、樹脂吸着後の溶離液としては、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコールなどの低級アルコール及びアセトンを単独又は水溶液として使用できる。
【0024】
抽出物及び画分はそのままでの使用も可能だが、必要であれば噴霧乾燥や凍結乾燥等の手段により乾燥粉末化させて使用することも可能である。
【0025】
抗酸化作用効果は、フリーラジカル消去能や血液中の過酸化脂質を測定することによって確認できる。フリーラジカル消去能の測定は、ESRを用いた方法やチトクロームC還元法、亜硝酸法、ニトロブルーテトラゾリウム塩還元法(NBT還元法)などの化学的方法により、DPPHラジカル(ジフェニルピクリルヒドラジルラジカル)阻害率、スーパーオキシドラジカル消去能、SOD様活性値、ヒドロキシラジカル値を測定によって確認することができる。
【0026】
本願発明の抗酸化組成物は、飲食品、医薬品、飼料等に応用でき、好ましくは、人が手軽に摂食できる飲食品、医薬部外品及び医薬品が好ましい。
【0027】
本願発明における飲食品とは溶液、懸濁物、粉末、固体成形物等経口摂取可能な形態であれば良く特に限定するものではない。より具体的には、即席麺、レトルト食品、缶詰、電子レンジ食品、即席スープ・みそ汁類、フリーズドライ食品等の即席食品類、清涼飲料、果汁飲料、野菜飲料、豆乳飲料、コーヒー飲料、茶飲料、粉末飲料、濃縮飲料、栄養飲料、アルコール飲料等の飲料類、パン、パスタ、麺、ケーキミックス、から揚げ粉、パン粉等の小麦粉製品、飴、キャラメル、チューイングガム、チョコレート、クッキー、ビスケット、ケーキ、パイ、スナック、クラッカー、和菓子、デザート菓子等の菓子類、ソース、トマト加工調味料、風味調味料、調理ミックス、たれ類、ドレッシング類、つゆ類、カレー・シチューの素類等の調味料、加工油脂、バター、マーガリン、マヨネーズ等の油脂類、乳飲料、ヨーグルト類、乳酸菌飲料、アイスクリーム類、クリーム類等の乳製品、冷凍食品、魚肉ハム・ソーセージ、水産練り製品等の水産加工品、畜肉ハム・ソーセージ等の畜産加工品、農産缶詰、ジャム・マーマレード類、漬け物、煮豆、シリアル等の農産加工品、栄養食品、錠剤、カプセル等が例示される。
【0028】
本願発明の抗酸化組成物の飲食品としての摂取量は、本発明の病気の状態、病人の体重、年齢、体質、体調等によって調整されるべきであるが、一般に1日あたり、抗酸化組成物として0.05g〜20g、好ましくは0.1g〜5gの範囲で適宜選択することができる。これを病気の状態や食品等の形態によって1日1ないし数回にわけて摂取することができる。
【0029】
本願発明において、抗酸化組成物又は、飲食品等に加工する際に、各種栄養成分を強化することができる。
【0030】
強化できる栄養成分としては、ビタミンA、ビタミンB、ビタミンB、ビタミンB、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ナイアシン(ニコチン酸)、パントテン酸、葉酸等のビタミン類、リジン、スレオニン、トリプトファン等の必須アミノ酸類や、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅等のミネラル類及び、例えば、α−リノレン酸、EPA、DHA、月見草油、オクタコサノール、カゼインホスホペプチド(CPP)、カゼインカルシウムペプチド(CCP)、水溶性食物繊維、不溶性食物繊維、オリゴ糖等の人の健康に寄与する物質類、その他の食品や食品添加物として認可されている有用物質の1種又は2種以上が使用できる。
【0031】
本願発明における医薬部外品及び医薬品とは、経口または非経口投与に適した賦形剤、その他の添加剤を用いて、常法に従って、経口製剤または注射剤として調製することができる。好ましいのは、経口製剤であり、最も好ましいのは、容易に服用でき且つ保存、持ち運びに便利な経口固形製剤である。
【0032】
経口固形製剤としては、錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、カプセル剤、丸剤、徐放剤等が用いられる。このような固形製剤においては、適宜の薬理学的に許容され得る坦体、賦形剤(例えばデンプン、乳糖、白糖、炭酸カルシウム、リン酸カルシウムなど)、結合剤(例えばデンプン、アラビアゴム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、結晶セルロース、アルギン酸、ゼラチン、ポリビニルピリドンなど)、滑沢剤(例えばステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムなど)、崩壊剤(例えばカルボキシメチルセルロース、タルクなど)、などと混合し、常法により錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、カプセル剤、丸剤、徐放剤等を調整することが出来る。経口液状製剤は、製薬学的に許容される乳濁剤、溶液剤、懸濁剤、シロップ剤、エリキシル剤等を含み、一般的に用いられる不活性な希釈剤、例えば精製水、エタノールを含む。この組成物は不活性な希釈剤以外に湿潤剤、懸濁剤のような補助剤、甘味剤、風味剤、芳香剤、防腐剤を含有していてもよい。
【0033】
非経口投与しての注射剤としては、無菌の水性又は非水性の溶液剤、懸濁剤、乳濁剤を包含する。水性の溶液剤、懸濁剤の希釈剤としては、例えば注射用蒸留水及び生理食塩水が含まれる。非水溶性の溶液剤、懸濁剤の希釈剤としては、例えばプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油のような植物油、エタノールのようなアルコール類、ポリソルベート80等がある。このような組成物は、さらに防腐剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、安定化剤(例えばラクトース)、溶解補助剤(例えば、グルタミン酸、アスパラギン酸)のような補助剤を含んでもよい。これらは例えばバクテリア保管フィルターを通す濾過、殺菌剤の配合又は照射によって無菌化される。これらはまた無菌の固体組成物を製造し、使用前に無菌水又は無菌の注射用溶媒に溶解して使用することもできる。
【0034】
本発明の抗酸化組成物の医薬品としての投与量は、投与ルート、疾患の症状、投与対象の年齢、性別などを考慮して個々の場合に応じて適宜決定されるが、通常、成人1人当たり有効成分約40mg〜3g/日、好ましくは100〜500mg/日である。
【0035】
以下本発明を、実施例にて詳細に説明するが、次の実施例は、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0036】
(実施例1)抗酸化組成物の調製1
オナモミの乾燥した果実を40メッシュ以下に粉砕し、その粉末150gに、蒸留水3Lを加え、100℃で3時間抽出した。その後、遠心分離(8500rpm、10分間)し、その上清を濾過し、抽出物と残渣を分離した。その残渣を減圧濃縮し、その後、凍結乾燥し、本発明の抗酸化組成物A29.8gを得た。
【0037】
(実施例2)抗酸化組成物の調製2
オナモミの乾燥した種子を40メッシュ以下に粉砕し、その粉末100gに、蒸留水2Lを加え、100℃で3時間抽出した。その後、遠心分離(8500rpm、10分間)し、その上清を濾過し、抽出物と残渣を分離した。その残渣を減圧濃縮し、その後、凍結乾燥し、本発明の抗酸化組成物B13.4gを得た。
【0038】
(抗酸化能測定法―DPPH)
フリーラジカル消去活性の測定には、比較的安定なラジカルを持つ1,1−Diphenyl−2−picrylhydrazyl(DPPH)を用いた方法にて行った。本法はラジカル状態で517nmの極大吸収を持つDPPHが抗酸化物質によって還元されることにより517nmにおける吸光度の減少を捕らえて抗酸化能を評価する方法である。
【0039】
(試験例1)DPPH測定
分光光度計を用いてDPPHを測定した。
実施例1で得られた抗酸化組成物Aを計量してエッペンドルフチューブに入れ、抗酸化組成物Aの濃度が10mg/mLとなるように蒸留水を添加した。その試料溶液を段階希釈し、18.75、37.5、150、300μg/mLの試料溶液を作成した。この溶液からそれぞれ50μLずつ別の試験管に移し、これらに50mMのTris−HClを450μLずつ、50mMのDPPHを1mL加えた。これらの試料溶液を分光光度計(517nm)にて測定し、DPPHラジカルスカベンジャー活性を測定した。比較対照には緑茶を実施例1と同様な方法で抽出した抽出物を用いた。
結果を表1に示す。
【0040】
【表1】

【0041】
以上の結果より、本願発明の抗酸化組成物Aは緑茶抽出物と同等のDPPH阻害活性を有し、IC50も大差ないことが明らかとなった。
【0042】
(活性酸素消去活性測定法−SOD測定)
スーパーオキシドディスムターゼ(Superoxide dismutase,SOD)はスーパーオキシドアニオン(・O, 活性酸素)から電子を取り除いて酸素と水素分子にする酵素で、細胞核に多く局在している。酸化ストレスを減少させる役割を持つ。
活性酸素消去活性はキサンチンオキシダーゼ/ヒポキサンチン系により発生させたスーパーオキシドに対する消去能により測定した。本測定法においては、スーパーオキシドに特異性が高い化学発光試薬で、ルシフェリン誘導体である2−メチル−p−メトキシフェニルエチニルイミダゾピラジノン(MPEC)を用い、キサンチンオキシダーゼ/ヒポキサンチン系に添加した時の化学発光をルミノメーターで測定した。
【0043】
(試験例2)SOD様活性測定
実施例2で得られた抗酸化組成物Bを18.75、37.5、75、150、300μg/mLに調製し、それぞれ10μLに、300μMのMPEC発光試薬を10μL、キサンチンオキシダーゼを60μL、KHPO/NaOHバッファーを170μLおよびヒポキサンチンを50μL添加した溶液を作成した。この溶液をベリタスマイクロプレートルミノメーターにて測定し、スーパーオキシドを検出した。活性は以下の式より求めた。
SOD様活性%=1−(反応したサンプル/コントロール)×100
結果を表2に示す。
【0044】
【表2】

【0045】
以上の結果より抗酸化組成物Bは高いSOD様活性を有することが明らかとなった。
【0046】
(実施例3)抗酸化組成物の調製3
オナモミの乾燥した果実を40メッシュ以下に粉砕し、その粉末150gに、蒸留水3Lを加え、100℃で3時間抽出した。その後、遠心分離(8500rpm、10分間)し、その上清を濾過し、抽出物と残渣を分離した。その残渣を減圧濃縮し、400mLとした。この濃縮液にエタノールを加え、500mLとなるように調製(最終エタノール濃度20%)した後、室温で24時間静置して、不溶性成分を沈殿させた。遠心分離(8500rpm、10分間)で沈殿物を分離し、上清を減圧濃縮後、蒸留水1Lを加え再溶解した。そして濾過して不溶性成分除去し、濾液を減圧濃縮後、凍結濃乾燥して本発明の抗酸化組成物C11.4g(収率は7.6%)を得た。また、同様にして得た濃縮液にエタノールを加え、最終エタノール濃度を80%とした時の不溶性成分を沈殿させ、同様の操作をして本発明の抗酸化組成物D9.8gを得た。
【0047】
(試験例3)DPPH測定
実施例3で得られた抗酸化組成物Dを計量してエッペンドルフチューブに入れ、抗酸化組成物Dの濃度が10mg/mLとなるように蒸留水を添加した。その試料溶液を希釈し、1000μg/mLの試料溶液を作成した。試験例1と同様な方法で、DPPHラジカルスカベンジャー活性を測定した。比較対照には緑茶を実施例3と同様な方法で抽出した抽出物を用いた。
結果を表3に示す。
【0048】
【表3】

【0049】
以上の結果より、抗酸化組成物Dには高いDPPH阻害活性が認められた。
【0050】
(試験例4)SOD様活性測定
実施例3で得られた抗酸化組成物Dを31、62.5、125、250、500、1000μg/mLに調製し、試験例2と同様な方法でSOD様活性を求めた。
結果を表4に示す。
【0051】
【表4】

【0052】
以上の結果より、抗酸化組成物Dには、エタノール未処理(抗酸化組成物A)よりも高いSOD様活性が認められた。
【0053】
(実施例4)抗酸化組成物含有食品(錠菓)の調製
実施例1で得られた抗酸化組成物A5g、乳糖30g、DHA含有粉末油脂(サンコートDY−5;太陽化学社製)12g、ショ糖脂肪酸エステル4g、ヨーグルト香料4gを混合し、この混合物をロータリー式打錠機を用いて加圧成形して1錠が300mgの本願発明の抗酸化組成物含有飲食品(錠菓)を得た。
【0054】
(実施例5)抗酸化組成物含有飲料の調製
実施例2で得られた抗酸化組成物B5g及び、1/5濃縮グレープフルーツ透明果汁2.1g、エリスリトール30g、クエン酸結晶2.5g、クエン酸三ナトリウム0.5g、L−アスコルビン酸0.5g、乳酸カルシウム1.93g、CCP0.15g、グレープフルーツ香料1.0を水に混合溶解して、全量を1000mlとし、それを100mlの瓶に充填し、キャップで密栓した後、90℃、30分間加熱殺菌をして、本願発明の抗酸化組成物含有飲食品を得た。
【0055】
(実施例6)抗酸化組成物含有飲料(野菜果汁混合飲料)の調製
実施例2で得られた抗酸化組成物B0.2g及び、グアーガム分解物(サンファイバーR;太陽化学社製)3gを市販の野菜果汁混合飲料100mlに添加混合溶解して、本願発明の抗酸化組成物含有飲食品(野菜果汁混合飲料)を得た。
【0056】
(実施例7)抗酸化組成物含有クッキーの調製
実施例2で得られた抗酸化組成物B4g及び、市販のケーキミックス粉200gを容器に入れた後、バター35gを入れ、木杓子で混ぜ合わせた。それに溶き卵25gを加えて、なめらかな生地になるまで良く練った。小麦粉を振った台の上に生地を取り出し、さらに小麦粉を振って麺棒で5mmの厚さに伸ばし、丸型で抜き、それを170℃のオーブンで10分間焼いて、1個約5gの本願発明の抗酸化組成物含有クッキーを得た。
【0057】
(実施例8)抗酸化組成物含有ヨーグルトの調製
実施例1で抗酸化組成物A1g、市販の脱脂乳(明治乳業社製。蛋白質含量34%)95g、及び市販の無塩バター(雪印乳業社製)35gを温水0.8Lに溶解し、均質化し、全量を1Lに調整した。次いで、90℃で15分間加熱殺菌し、冷却し、市販の乳酸菌スターター(ハンゼン社製)3g(ストレプトコッカス・サーモフィラス2g及びラクトバシラス・ブルガリクス1g)を接種し、均一に混合し、100mlの容器に分注,充填し、密封し、37℃で20時間発酵させた後、冷却し、本願発明の抗酸化組成物含有ヨーグルトを得た。
【0058】
(実施例9)抗酸化組成物含有経口流動食の調製
カゼインナトリウム(DMV社製)50g、卵白酵素分解物(太陽化学社製)42.5g、デキストリン(松谷化学社製)100g水1Lに溶解し、水相をタンク内に調製した。これとは別に、MCT(花王社製)45g、パーム油(不二製油社製)17.5g、サフラワー油(太陽油脂社製)35g、レシチン(太陽化学社製)0.7g、消泡剤(太陽化学社製)1gを混合溶解し、油相を調製した。タンク内の水相に油相を添加し、攪拌して混合した後、70℃に加温し、更に、ホモゲナイザーにより14.7MPaの圧力で均質化した。次いで、90℃で10分間殺菌した後、濃縮し、噴霧乾燥して、中間製品粉末約260gを調製した。この中間製品粉末200gに実施例1で得られた抗酸化組成物A4g、デキストリン(松谷化学社製)156g、グアーガム分解物(サンファイバーR;太陽化学社製)18g、少量のビタミンとミネラルおよび粉末香料を添加し、均一に混合して、抗酸化組成物を含有する経口流動食約380gを得た。
【0059】
(実施例10)抗酸化組成物含有錠剤の調製
実施例1で得られた抗酸化組成物A10g、結晶セルロース5g、トウモロコシデンプン13.8g、乳糖32.5g、ヒドロキシプロピルセルロース3.3gを混合し、顆粒化した。この顆粒化物にステアリン酸マグネシウム1.0gを加え、均一に混合し、この混合物をロータリー式打錠機を用いて加圧成形して一錠が130mgの本願発明の抗酸化組成物含有錠剤を得た。
【0060】
本発明の実施態様ならびに目的生成物を挙げれば以下の通りである。
(1) オナモミの果実、種子又はそれらの抽出物を含有することを特徴とする抗酸化組成物。
(2) オナモミの果実、種子の抽出物が、オナモミの果実、果汁又は種子から水、塩基、酸、親水性溶媒のいずれかにより抽出されていることを特徴とする前記(1)記載の抗酸化組成物。
(3) オナモミの果実、種子の抽出物が、オナモミの果実、果汁又は種子から水により抽出されていることを特徴とする前記(1)又は(2)記載の抗酸化組成物。
(4) 親水性溶媒がメチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコールの群より選ばれる1種類以上の低級アルコールであることを特徴とする前記(2)記載の抗酸化組成物。
(5) 前記(1)〜(4)いずれか記載のオナモミの果実、種子の抽出物から有機溶媒のいずれか1種類または2種類以上により分画されていることを特徴とする抗酸化組成物。
(6) 有機溶媒がエチルアルコールであることを特徴とする前記(5)記載の抗酸化組成物抗酸化組成物。
(7) オナモミの果実、種子の抽出物がエチルアルコールにより可溶画分として分画されていることを徴とする前記(6)記載の抗酸化組成物。
(8) オナモミの果実、種子又はその抽出物をエタノールにより分画する際のエタノール濃度が、20〜80%であり、そのエタノール可溶画分であることを特徴とする前記(7)記載の抗酸化組成物。
(9) オナモミの果実、種子の抽出物が、疎水性樹脂を用いたクロマトグラフィーやカラムにより効果を高めることを特徴とする前記(1)〜(8)いずれか記載の抗酸化組成物。
(10) 疎水性樹脂が、フェノール系、スチレン系、アクリル系、エポキシアミン系、ピリジン系、メタクリル系などを母体とする特徴とする前記(11)記載の抗酸化組成物。
(11) 前記(1)〜(10)いずれか記載の抗酸化組成物を含有することを特徴とする飲食品。
(12) 前記(1)〜(10)いずれか記載の抗酸化組成物を含有することを特徴とする医薬部外品。
(13) 前記(1)〜(10)いずれか記載の抗酸化組成物を含有することを特徴とする医薬品。
(14) 前記(1)〜(10)いずれか記載の抗酸化組成物を含有することを特徴とする飼料。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明で得られたオナモミの果実、種子又はその抽出物を含有する抗酸化組成物は、DPPHフリーラジカル消去能およびSOD様活性値が高いことから、抗酸化効果があることが確認でき、各種飲食品、医薬部外品及び医薬品等に利用して、老化、脳卒中、自己免疫疾患、ガン、白内障、脂肪肝、心筋梗塞、虚血性心疾患、アルツハイマー症候群、糖尿病、糖尿病性腎症、動脈硬化、アレルギー、花粉症のような様々な疾病やシミ・ソバカス等の異常な色素沈着の進行を抑制並びに食品の劣化を抑制することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オナモミの果実、種子又はその抽出物を含有することを特徴とする抗酸化組成物。
【請求項2】
オナモミの果実又は種子の抽出物が、水、塩基、酸、親水性溶媒、アセトンからなる群より選ばれる少なくとも1種により抽出されていることを特徴とする請求項1記載の抗酸化組成物。
【請求項3】
請求項1又は2記載のオナモミの果実又は種子の抽出物が有機溶媒により分画されていることを特徴とする抗酸化組成物。
【請求項4】
有機溶媒がエチルアルコール、又はアセトンからなる群より選ばれる少なくとも1種類であることを特徴とする請求項3記載の抗酸化組成物。
【請求項5】
請求項1〜4いずれか記載の抗酸化組成物を含有することを特徴とする飲食品。
【請求項6】
請求項1〜4いずれか記載の抗酸化組成物を含有することを特徴とする医薬部外品。
【請求項7】
請求項1〜2いずれか記載の抗酸化組成物を含有することを特徴とする医薬品。

【公開番号】特開2007−51103(P2007−51103A)
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−238285(P2005−238285)
【出願日】平成17年8月19日(2005.8.19)
【出願人】(000204181)太陽化学株式会社 (244)
【Fターム(参考)】