説明

抗酸化組成物

【課題】トコフェロールと同等若しくはそれ以上の抗酸化力を備えながら、抗酸化剤由来の嫌味嫌臭等が低減された抗酸化剤を提供する。
【解決手段】(a)シソ精油含有量1重量%以下であるシソ抽出物をベンジルアルコールによって抽出したシソ抽出物油溶画分と、(b)トコフェロール、アスコルビン酸エステル、β−カロチン、及びリコピンからなる群から選ばれる1種以上とを含有する抗酸化組成物および該抗酸化剤組成物を含む動植物油。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗酸化組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
古くから油脂などの有機物が酸化や熱により変質され、本来有する性質が劣化したり、あるいは失われてしまうことが知られていた。その点を解決するため、数多くの抗酸化剤が開発され、報告されている。例えば、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、アスコルビン酸、トコフェロールなどが優れた抗酸化能を有するものとして広く使用されている。しかしながら、BHT、BHAといった合成抗酸化剤は効果の点では有効であるが、これら化合物は、動物試験の結果から発ガン性が懸念されており、食品に使用する場合は、添加量、添加する食品の種類等が厳しく制限されている。このため、安全性、嗜好性の面から、優れた効果を有する天然抗酸化剤が要望されてきた。
【0003】
しかしながら、従来の天然抗酸化剤には、それ由来の異味異臭があることが問題とされてきた。例えば、トコフェロールは、安全で且つオイルの酸化劣化に対して優れた抗酸化効果を示すことから、食品をはじめとして様々な分野で幅広く利用されている。しかしながら、トコフェロールには特有の嫌臭と嫌味があり、有効量を含有させると、オイルの酸化劣化は抑制されるものの、その嫌臭嫌味が目立ち、食品等の価値を大きく損ねるという重大な問題があった。
【0004】
アスコルビン酸は脂溶性物質に極めて溶けにくいので、脂溶性物質の酸化防止剤として使用するには困難である。アスコルビン酸を脂溶性物質に溶解させるために、例えば、ステアリン酸、パルミチン酸アスコルビルのようなアスコルビルエステル誘導体を用いることが提案された。しかしながら、トコフェロールと比べて抗酸化効果が劣っているし、高濃度で使用すると逆に動植物油の劣化を促進する場合があることが知られている。
そこで、トコフェロールと同等若しくはそれ以上の抗酸化力を維持しながら、トコフェロール等の従来公知の天然抗酸化剤の添加量を抑えることができる安全な抗酸化組成物の提供が求められてきた。
【0005】
トコフェロールとの組み合わせとしては、ローズマリー抽出物が報告されている(特開平4−226588号公報)。しかし、その効果は満足のいくものではない。
トコフェロールと他の成分を組み合わせた抗酸化剤の例として、アスコルビン酸、リン脂質、L−リジン、L−ヒスチジン、L−トリプトファン、L−メチオニンなどのアミノ酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸などの有機酸との組み合わせが報告されている(特許第2588668号公報)。しかしながら、これらの組合せでは、効果の点で満足のいくものでないばかりか、食品の風味に影響を与えることからその使用が大きく限定されている。
さらに、トコフェロールと、シソ由来の成分である精製シソ油(シソ精油)とを組み合わせた油脂組成物が報告されている(特開平8−116878号公報)。しかしながら、本公報では、シソ精油は、薬理効果、生理機能のある食品として含まれているのであって、抗酸化剤としての機能は期待されていない。むしろ、酸化されやすいシソ精油の酸化を防止するために、トコフェロール等の酸化防止剤を必須の成分として組み合わせているにすぎない。
【0006】
また、シソ由来のその他の成分として、水溶性のクマリン類縁体が知られている。しかしながら、当該成分の抗酸化能について報告された文献はなく、むしろ、従来公知の抗酸化剤であるBHT、アスコルビン酸或いはトコフェロールが達成し得なかった、食品香料の劣化を防止する性質を有することが報告されるにとどまるものであった(特開2001−136931号公報)。
【0007】
同様に、ジャガイモ由来の抽出液についても、抗酸化剤としての機能が報告された例はなく、逆に、従来公知の抗酸化剤では達成し得なかった食品香料の劣化防止機能があることが報告されるにとどまるものであった(特開2002−275497号公報)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平4−226588号公報
【特許文献2】特許第2588668号公報
【特許文献3】特開平8−116878号公報
【特許文献4】特開2001−136931号公報
【特許文献5】特開2002−275497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、トコフェロールと同等若しくはそれ以上の抗酸化力を備えながら、抗酸化剤由来の嫌味嫌臭等が低減された安全な抗酸化剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、抗酸化能により優れた成分であって、しかも天然に存在するものを得るべく、研究を重ねた結果、ジャガイモ由来の成分であるジャガイモ抽出物を油溶性溶媒によって抽出したジャガイモ抽出物油溶画分、サツマイモ抽出物を前記油溶性溶媒によって抽出したサツマイモ抽出物油溶画分、コーヒー抽出物を前記油溶性溶媒によって抽出したコーヒー抽出物油溶画分、シソ精油を実質的に含まないシソ抽出物を油溶性溶媒によって抽出したシソ抽出物油溶画分、リンゴ抽出物を前記油溶性溶媒によって抽出したリンゴ抽出物油溶画分、バナナ抽出物を前記油溶性溶媒によって抽出したバナナ抽出物油溶画分、ブドウ果皮抽出物を前記油溶性溶媒によって抽出したブドウ果皮抽出物油溶画分、ブドウ種子抽出物を前記油溶性溶媒によって抽出したブドウ種子抽出物油溶画分、ゴボウ抽出物を前記油溶性溶媒によって抽出したゴボウ抽出物油溶画分、マジョラム抽出物を前記油溶性溶媒によって抽出したマジョラム抽出物油溶画分、或いはヒマワリ種子抽出物を前記油溶性溶媒によって抽出したヒマワリ種子抽出物油溶画分と、トコフェロール、アスコルビン酸エステル、β−カロチン、及びリコピンからなる群から選ばれる1種以上とを組み合わせたものの抗酸化能が、上記各種抽出物油溶画分単体、又はトコフェロール等の従来公知の抗酸化剤単体の場合よりも高いという知見を得た。本発明者らは、この知見に基づきさらに検討し、例えば、各種抽出物油溶画分と組み合わせる成分としてトコフェロールを用いた場合には、トコフェロールの添加量を抑えることでトコフェロール特有の嫌味嫌臭を低減した抗酸化組成物を見いだし、さらに、上記抽出物油溶画分を用いることで、トコフェロール単体の場合よりも有効量を低減できることを見いだし、もってトコフェロールの添加量をより低減できることを見いだし、本発明を完成させた。
【0011】
すなわち、本発明では、
(a)ジャガイモ抽出物を、低級アルコール、ポリオール系有機溶媒、ベンジルアルコール、酢酸エチル、石油エーテル、グリセロール、モノグリセリド、ジグリセリド及び動植物油からなる群より選ばれる1種以上の油溶性溶媒によって抽出したジャガイモ抽出物油溶画分;
サツマイモ抽出物を、低級アルコール、ポリオール系有機溶媒、ベンジルアルコール、酢酸エチル、石油エーテル、グリセロール、モノグリセリド、ジグリセリド及び動植物油からなる群より選ばれる1種以上の油溶性溶媒によって抽出したサツマイモ抽出物油溶画分;
コーヒー抽出物を、低級アルコール、ポリオール系有機溶媒、ベンジルアルコール、酢酸エチル、石油エーテル、グリセロール、モノグリセリド、ジグリセリド及び動植物油からなる群より選ばれる1種以上の油溶性溶媒によって抽出したコーヒー抽出物油溶画分;
シソ精油の含有量が1重量%以下であるシソ抽出物を、低級アルコール、ポリオール系有機溶媒、ベンジルアルコール、酢酸エチル、石油エーテル、グリセロール、モノグリセリド、ジグリセリド及び動植物油からなる群より選ばれる1種以上の油溶性溶媒によって抽出したシソ抽出物油溶画分;
リンゴ抽出物を、低級アルコール、ポリオール系有機溶媒、ベンジルアルコール、酢酸エチル、石油エーテル、グリセロール、モノグリセリド、ジグリセリド及び動植物油からなる群より選ばれる1種以上の油溶性溶媒によって抽出したリンゴ抽出物油溶画分;
バナナ抽出物を、低級アルコール、ポリオール系有機溶媒、ベンジルアルコール、酢酸エチル、石油エーテル、グリセロール、モノグリセリド、ジグリセリド及び動植物油からなる群より選ばれる1種以上の油溶性溶媒によって抽出したバナナ抽出物油溶画分;
ブドウ果皮抽出物を、低級アルコール、ポリオール系有機溶媒、ベンジルアルコール、酢酸エチル、石油エーテル、グリセロール、モノグリセリド、ジグリセリド及び動植物油からなる群より選ばれる1種以上の油溶性溶媒によって抽出したブドウ果皮抽出物油溶画分;
ブドウ種子抽出物を、低級アルコール、ポリオール系有機溶媒、ベンジルアルコール、酢酸エチル、石油エーテル、グリセロール、モノグリセリド、ジグリセリド及び動植物油からなる群より選ばれる1種以上の油溶性溶媒によって抽出したブドウ種子抽出物油溶画分;
ゴボウ抽出物を、低級アルコール、ポリオール系有機溶媒、ベンジルアルコール、酢酸エチル、石油エーテル、グリセロール、モノグリセリド、ジグリセリド及び動植物油からなる群より選ばれる1種以上の油溶性溶媒によって抽出したゴボウ抽出物油溶画分;
マジョラム抽出物を、低級アルコール、ポリオール系有機溶媒、ベンジルアルコール、酢酸エチル、石油エーテル、グリセロール、モノグリセリド、ジグリセリド及び動植物油からなる群より選ばれる1種以上の油溶性溶媒によって抽出したマジョラム抽出物油溶画分;並びに
ヒマワリ種子抽出物を、低級アルコール、ポリオール系有機溶媒、ベンジルアルコール、酢酸エチル、石油エーテル、グリセロール、モノグリセリド、ジグリセリド及び動植物油からなる群より選ばれる1種以上の油溶性溶媒によって抽出したヒマワリ種子抽出物油溶画分;
からなる群より選ばれる1種以上の抽出物油溶画分と、
(b)トコフェロール、アスコルビン酸エステル、β−カロチン、及びリコピンからなる群から選ばれる1種以上と
を含有する抗酸化組成物が提供される。
【0012】
本発明の一態様では、上記抗酸化組成物は、
(a)ジャガイモ抽出物を、低級アルコール、ポリオール系有機溶媒、ベンジルアルコール、酢酸エチル、石油エーテル、グリセロール、モノグリセリド、ジグリセリド及び動植物油からなる群より選ばれる1種以上の油溶性溶媒によって抽出したジャガイモ抽出物油溶画分;
サツマイモ抽出物を、低級アルコール、ポリオール系有機溶媒、ベンジルアルコール、酢酸エチル、石油エーテル、グリセロール、モノグリセリド、ジグリセリド及び動植物油からなる群より選ばれる1種以上の油溶性溶媒によって抽出したサツマイモ抽出物油溶画分;
シソ精油の含有量が1重量%以下であるシソ抽出物を、低級アルコール、ポリオール系有機溶媒、ベンジルアルコール、酢酸エチル、石油エーテル、グリセロール、モノグリセリド、ジグリセリド及び動植物油からなる群より選ばれる1種以上の油溶性溶媒によって抽出したシソ抽出物油溶画分;
リンゴ抽出物を、低級アルコール、ポリオール系有機溶媒、ベンジルアルコール、酢酸エチル、石油エーテル、グリセロール、モノグリセリド、ジグリセリド及び動植物油からなる群より選ばれる1種以上の油溶性溶媒によって抽出したリンゴ抽出物油溶画分;
バナナ抽出物を、低級アルコール、ポリオール系有機溶媒、ベンジルアルコール、酢酸エチル、石油エーテル、グリセロール、モノグリセリド、ジグリセリド及び動植物油からなる群より選ばれる1種以上の油溶性溶媒によって抽出したバナナ抽出物油溶画分;
ブドウ果皮抽出物を、低級アルコール、ポリオール系有機溶媒、ベンジルアルコール、酢酸エチル、石油エーテル、グリセロール、モノグリセリド、ジグリセリド及び動植物油からなる群より選ばれる1種以上の油溶性溶媒によって抽出したブドウ果皮抽出物油溶画分;
ブドウ種子抽出物を、低級アルコール、ポリオール系有機溶媒、ベンジルアルコール、酢酸エチル、石油エーテル、グリセロール、モノグリセリド、ジグリセリド及び動植物油からなる群より選ばれる1種以上の油溶性溶媒によって抽出したブドウ種子抽出物油溶画分;
ゴボウ抽出物を、低級アルコール、ポリオール系有機溶媒、ベンジルアルコール、酢酸エチル、石油エーテル、グリセロール、モノグリセリド、ジグリセリド及び動植物油からなる群より選ばれる1種以上の油溶性溶媒によって抽出したゴボウ抽出物油溶画分;
マジョラム抽出物を、低級アルコール、ポリオール系有機溶媒、ベンジルアルコール、酢酸エチル、石油エーテル、グリセロール、モノグリセリド、ジグリセリド及び動植物油からなる群より選ばれる1種以上の油溶性溶媒によって抽出したマジョラム抽出物油溶画分;並びに
ヒマワリ種子抽出物を、低級アルコール、ポリオール系有機溶媒、ベンジルアルコール、酢酸エチル、石油エーテル、グリセロール、モノグリセリド、ジグリセリド及び動植物油からなる群より選ばれる1種以上の油溶性溶媒によって抽出したヒマワリ種子抽出物油溶画分;
からなる群より選ばれる1種以上の抽出物油溶画分と、
(b)トコフェロール、アスコルビン酸エステル、β−カロチン、及びリコピンからなる群から選ばれる1種以上と
を含有するものであることが好ましい。
【0013】
また、本発明の他の一態様では、上記抗酸化組成物は、
(a)ジャガイモ抽出物を、低級アルコール、ポリオール系有機溶媒、ベンジルアルコール、酢酸エチル、石油エーテル、グリセロール、モノグリセリド、ジグリセリド及び動植物油からなる群より選ばれる1種以上の油溶性溶媒によって抽出したジャガイモ抽出物油溶画分;
サツマイモ抽出物を、低級アルコール、ポリオール系有機溶媒、ベンジルアルコール、酢酸エチル、石油エーテル、グリセロール、モノグリセリド、ジグリセリド及び動植物油からなる群より選ばれる1種以上の油溶性溶媒によって抽出したサツマイモ抽出物油溶画分;
シソ精油の含有量が1重量%以下であるシソ抽出物を、低級アルコール、ポリオール系有機溶媒、ベンジルアルコール、酢酸エチル、石油エーテル、グリセロール、モノグリセリド、ジグリセリド及び動植物油からなる群より選ばれる1種以上の油溶性溶媒によって抽出したシソ抽出物油溶画分;
リンゴ抽出物を、低級アルコール、ポリオール系有機溶媒、ベンジルアルコール、酢酸エチル、石油エーテル、グリセロール、モノグリセリド、ジグリセリド及び動植物油からなる群より選ばれる1種以上の油溶性溶媒によって抽出したリンゴ抽出物油溶画分;
バナナ抽出物を、低級アルコール、ポリオール系有機溶媒、ベンジルアルコール、酢酸エチル、石油エーテル、グリセロール、モノグリセリド、ジグリセリド及び動植物油からなる群より選ばれる1種以上の油溶性溶媒によって抽出したバナナ抽出物油溶画分;
ブドウ果皮抽出物を、低級アルコール、ポリオール系有機溶媒、ベンジルアルコール、酢酸エチル、石油エーテル、グリセロール、モノグリセリド、ジグリセリド及び動植物油からなる群より選ばれる1種以上の油溶性溶媒によって抽出したブドウ果皮抽出物油溶画分;
ブドウ種子抽出物を、低級アルコール、ポリオール系有機溶媒、ベンジルアルコール、酢酸エチル、石油エーテル、グリセロール、モノグリセリド、ジグリセリド及び動植物油からなる群より選ばれる1種以上の油溶性溶媒によって抽出したブドウ種子抽出物油溶画分;
ゴボウ抽出物を、低級アルコール、ポリオール系有機溶媒、ベンジルアルコール、酢酸エチル、石油エーテル、グリセロール、モノグリセリド、ジグリセリド及び動植物油からなる群より選ばれる1種以上の油溶性溶媒によって抽出したゴボウ抽出物油溶画分;
マジョラム抽出物を、低級アルコール、ポリオール系有機溶媒、ベンジルアルコール、酢酸エチル、石油エーテル、グリセロール、モノグリセリド、ジグリセリド及び動植物油からなる群より選ばれる1種以上の油溶性溶媒によって抽出したマジョラム抽出物油溶画分;並びに
ヒマワリ種子抽出物を、低級アルコール、ポリオール系有機溶媒、ベンジルアルコール、酢酸エチル、石油エーテル、グリセロール、モノグリセリド、ジグリセリド及び動植物油からなる群より選ばれる1種以上の油溶性溶媒によって抽出したヒマワリ種子抽出物油溶画分;
からなる群より選ばれる1種以上の抽出物油溶画分と、
(b)トコフェロール及びアスコルビン酸エステルからなる群から選ばれる1種以上と
を含有するものであることが好ましい。本態様においては、上記(b)成分の中でも、トコフェロール又はアスコルビン酸エステルを単独で、またはトコフェロール及びアスコルビン酸エステルを併用することが好ましい。
該抗酸化組成物中の(a)成分と(b)成分の比率は、重量比で1:9〜9:1であることが好ましい。
【0014】
また、本発明では、上記抗酸化組成物を含むことを特徴とする動植物油が提供され、上記抗酸化組成物の含有量が、動植物油全量に対して0.01重量%〜10重量%であることが好ましく、該動植物油は、特に限定されないが、ラッカセイ油、アーモンド油、カカオ油、ヘーゼルナッツ油、マカデミアナッツ油、菜種油又は魚油であることが好ましい。
また、本発明では、上記動植物油を含むことを特徴とする飲食品、医薬品、香粧品、及び家庭用品が提供される。
【0015】
また、本発明では、上記抗酸化組成物を動植物油に添加することにより、その動植物油に抗酸化能を付与する方法が提供される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、トコフェロール、アスコルビン酸エステル、β−カロチン、及びリコピンから選ばれる1種以上を、各種抽出物油溶画分と併用することによって、実用に適した使用量の範囲において、トコフェロール等の従来公知の抗酸化剤単体の抗酸化能と、天然物抽出油溶画分の抗酸化能とが相乗的に増強される。このため、食品の賞味期間、化粧品等の製品の陳列期間をより長くすることが可能となる。また、トコフェロールと同等若しくはそれ以上の抗酸化力を得るために、従来の抗酸化剤、例えばトコフェロールの添加量を低減させることができるため、トコフェロール特有の嫌味嫌臭を低減させることが可能となる。また、トコフェロール単体を使用する場合に比べて、抗酸化組成物の有効量そのものをより低くすることができるため、トコフェロールの添加量をより低減させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の(a)成分として使用される各種抽出物油溶画分の製造工程例を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明を詳しく説明する。
本発明の抗酸化組成物は、
(a) ジャガイモ抽出物を前記所定の油溶性溶媒によって抽出したジャガイモ抽出物油溶画分、サツマイモ抽出物を前記所定の油溶性溶媒によって抽出したサツマイモ抽出物油溶画分、コーヒー抽出物を前記所定の油溶性溶媒によって抽出したコーヒー抽出物油溶画分、シソ精油の含有量が1重量%以下であるシソ抽出物を、所定の油溶性溶媒によって抽出したシソ抽出物油溶画分、リンゴ抽出物を前記所定の油溶性溶媒によって抽出したリンゴ抽出物油溶画分、バナナ抽出物を前記所定の油溶性溶媒によって抽出したバナナ抽出物油溶画分、ブドウ果皮抽出物を前記所定の油溶性溶媒によって抽出したブドウ果皮抽出物油溶画分、ブドウ種子抽出物を前記所定の油溶性溶媒によって抽出したブドウ種子抽出物油溶画分、ゴボウ抽出物を前記所定の油溶性溶媒によって抽出したゴボウ抽出物油溶画分、マジョラム抽出物を前記所定の油溶性溶媒によって抽出したマジョラム抽出物油溶画分、及びヒマワリ種子抽出物を前記所定の油溶性溶媒によって抽出したヒマワリ種子抽出物油溶画分からなる群より選ばれる1種以上の抽出物油溶画分と、
(b) トコフェロール、アスコルビン酸エステル、β−カロチン、及びリコピンからなる群から選ばれる1種以上とを含有する。
【0019】
本明細書において、「抗酸化剤」とは、自動酸化性物質に対して酸素の作用を防止する性質をもつ物質のことである。自動酸化(酸素の作用)を防止する機能(抗酸化能)はいろいろに分類できる。
【0020】
例えば、(1)自動酸化の連鎖反応を抑制するラジカル阻害剤、(2)鉄、銅などの金属の酸化促進作用を不活性にする金属不活化剤、(3)過酸化物を非ラジカル分解して不活性化する過酸化物分解剤、(4)自ら酸化防止作用はもたないが、ラジカル阻害剤と共同してその作用を増強させる相乗剤と四つに分けることもできる。
【0021】
本発明における「抗酸化組成物」とは、上記に記載したような、いろいろな機能により、自動酸化する物質に対して、自動酸化を防止する組成物のことをいう。
本発明の(a)成分として使用される各種抽出物油溶画分は、各種植物原料から得た抽出物を、油溶性溶媒によって更に抽出することによって得ることができる。ここで、各種抽出物は、たとえば、植物原料を乾燥させて適宜の大きさに裁断したものを溶媒に一定条件で浸し、当該溶媒から植物原料を濾過、除去後、濃縮し、さらに精製処理を行うことにより得ることができる。
【0022】
以下、図1のフローチャートに基づいて、より具体的に説明する。
図1は、本発明の(a)成分として使用される各種抽出物油溶画分の製造工程例を示したものである。図中、点線で示す工程は任意に経ることができる工程を意味する。
【0023】
まず、本発明において、植物原料(1)としては、ジャガイモ、サツマイモ、コーヒー豆、シソ、リンゴ、バナナ、ブドウ果皮、ブドウ種子、ゴボウ、マジョラム、ヒマワリ種子を用いることができる。
【0024】
原料がジャガイモ、サツマイモの場合は、塊茎、根茎、茎、葉を用いることができる。
原料がコーヒー豆の場合は、生あるいはローストコーヒー豆を特に制限なく用いることができる。またいずれの品種の豆も使用できるが、ロブスタ種の生豆が特に好ましい。
【0025】
原料がシソの場合は、シソの葉や茎を用いることができる。本発明において、シソとしてはシソ属(Perilla)の植物を特に制限なく用いることができ、たとえば、アカシソ(Perilla frutescens Britton var.acuta Kudo)、カタメジソ(Perilla forma discolor Makino)、アオジソ(Perilla forma viridis Makino)、チリメンジソ(Perilla frutescens Britton var.crispa Decne)、カタチリメンジソ(Perilla forma atro−purpurea Kudo)、アオチリメンジソ(Perilla forma viridicrispa Makino)、エゴマ(Perilla frutescens Britton var.Japonica Hara)を挙げることができる。
【0026】
原料がリンゴやバナナの場合は、果皮を含めた果実を用いる。また、果皮のみを使用することも出来る。
原料がブドウ果皮の場合は、いずれの品種のブドウ果皮も使用することが出来るが、特に、赤ブドウの各品種が好ましい。
原料がブドウ種子の場合は、いずれの品種のブドウ種子も使用することが出来る。
原料がゴボウの場合は、根茎を用いる。
原料がマジョラムの場合は、茎、葉を用いる。
原料がヒマワリ種子の場合は、キク科、ヒマワリ属に属するヒマワリの種子を用いる。
これら植物原料を単独で或いは2種以上を使用し、乾燥させ、適宜の大きさに裁断し、原料破砕物(2)とする。
【0027】
続いて、原料破砕物(2)を用いて各種抽出物(3)を得る。各種抽出物(3)を抽出する際には、水、低級アルコール、含水低級アルコール等を用いて溶媒抽出(A)により行う。
【0028】
本明細書において、「低級アルコール」とは、炭素数が1ないし4のアルコール、すなわち、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールをいい、特にメタノール、エタノール等が好ましい。また、「含水低級アルコール」とは、水と低級アルコールとの混合物を意味する。抽出操作は特に限定されるものではなく、上記植物や用いる溶媒により異なるが、通常、上記溶媒に原料破砕物を4℃〜100℃の温度で浸漬または穏やかに撹拌して抽出する事により行う。さらに本出願前周知のソックスレー抽出器などの装置を用いると効率よく抽出操作を行うことができる。抽出に要する時間は、通常30分〜12時間程度である。なお、本出願前から知られている多段抽出法を採用してもよい。
【0029】
本発明において、上記で得られた抽出物(3)を、更に、クロマログラフィー処理(D)することにより有効成分を濃縮して得た濃縮物(6)を抽出物として用いても良い(図1中、点線で示す)。例えば、上記抽出物を、予め作成、調製したクロマトグラフィー用カラムに注ぎ込み、ついで、溶媒から構成される溶出液を注ぎ込んでカラム内に一時的に保持されたものを溶媒とともに流し去り、流出する溶媒を公知の手段でいくつかに分ける方法を採用すればよい。カラムに使用する担持体は特に限定されないが、シリカゲル、ダイヤイオンHP20(三菱化成)やアンバーライトXAD−2(Rohm&Haas社)、日立ゲル#3010(日立化成)等の合成吸着剤を挙げることが出来る。溶出温度は通常室温で行うが、低温下で行っても良い。上記方法により流出する溶媒を公知の手段で分取して画分を得る。各画分あるいは複数の画分を合一したものを、さらに減圧下にて溶媒を留去したものを抽出物として用いても良い。
【0030】
また、本発明において、上記方法により得られる抽出物以外に、該抽出物に何らかの処理を施して得られた抽出物、例えば抽出物からさらに溶媒を除去した濃縮物、所謂エキストラクトや抽出物からさらに特定の化合物を除去したものなどを抽出物として用いてもよい。
【0031】
また、本発明において、原料破砕物(2)の代わりに、上記植物原料(1)を破砕した後、水蒸気蒸留(C)し、得られた蒸留残渣を破砕した水蒸気蒸留残渣破砕物(5)を用いて抽出物を得ても良い(図1中、点線で示す)。この場合、水蒸気蒸留残渣破砕物から各種抽出物を抽出する際に用いられる溶媒は、水、低級アルコール、含水低級アルコール、ポリオール系有機溶媒、ベンジルアルコール、酢酸エチル、石油エーテル、グリセロール、モノグリセリド、ジグリセリド及び動植物油の中から選ばれる1種あるいは2種以上の溶媒であることが好ましい。
【0032】
本明細書において、「モノグリセリド」とは、グリセロールの脂肪酸エステルのうち、1分子の脂肪酸によりエステル化されたものであり、脂肪酸としては、カプロン酸、パルミチン酸、ステアリン酸などが挙げられる。また、「ジグリセリド」とは、グリセロールの脂肪酸エステルのうち、2分子の脂肪酸によりエステル化されたものであり、脂肪酸としては、カプロン酸、パルミチン酸、ステアリン酸などが挙げられる。また、本明細書において、「動植物油」とは、トリグリセリドを主成分とする油のことを指し、常温で液状であれば特に制限なく使用することができる。
【0033】
本発明において用いられる抽出物のうち、シソから得られたシソ抽出物は、シソ精油の含有量1%以下のものであり、シソ精油を実質的に含まないものである。つまり、本発明において、シソ抽出物中、シソ精油の含有量は1重量%以下であり、好ましくは、0.1重量%以下であり、より好ましくは0.01重量%以下である。本明細書において、シソ精油の含有量の測定はガスクロマトグラフィーによるものである。本明細書で「シソ精油」とは、シソに含まれる揮発性香気成分の複合体のことをいう。精油はペリルアルデヒドを主成分とし、他に1−リモネン、カリオフィレン、α−ファルネセン、シソオール、リナロール、ペリルアルコール等を含んでいる。エゴマ由来の精油はペリルアルデヒドを全く含まず1−ピペリトン、ナギナタケトン等を主成分として含有している。いずれの抽出物も市販品を用いても良い。
【0034】
本発明において、(a)成分として用いられる各種抽出物油溶画分は、上記のようにして得られた抽出物を低級アルコール、ポリオール系有機溶媒、ベンジルアルコール、酢酸エチル、石油エーテル、グリセロール、モノグリセリド、ジグリセリド及び動植物油からなる群より選ばれる1種以上の油溶性溶媒によって溶媒抽出・濾過(B)を行うことによって得られる。
【0035】
抽出操作は特に限定されるものではなく、抽出物を得る際に用いられた植物材料、溶媒により異なるが、通常、低級アルコール(たとえば、メタノール、エタノール、ブタノール、プロパノール)、ポリオール系有機溶媒(たとえば、エチレングリコール、プロピレングリコール)、ベンジルアルコール、酢酸エチル、石油エーテル、グリセロール、モノグリセリド、ジグリセリド、及び動植物油(たとえば、大豆油、コーン油、菜種油、ラード)からなる群より選ばれる1種以上の油溶性溶媒、好ましくは、ベンジルアルコールに、抽出物を20℃〜80℃、好ましくは40℃〜80℃の温度で浸漬または穏やかに撹拌して抽出する事により行う。抽出に要する時間は、通常10分〜12時間程度、好ましくは30分〜3時間である。なお、本出願前から知られている多段抽出法を採用してもよい。
【0036】
抽出後、濾過操作を施した後、濾過液(4)を抽出物油溶画分として用いる。
【0037】
なお、原料に、本来精油をほとんど含まないもの、あるいは、水蒸気蒸留等により精油を除去したものを使用した場合、直接、原料を低級アルコール、ポリオール系有機溶媒、ベンジルアルコール、酢酸エチル、石油エーテル、グリセロール、モノグリセリド、ジグリセリド、及び動植物油からなる群より選ばれる1種以上の油溶性溶媒によって抽出することにより油溶画分を調整してもよいが、有効成分の抽出効率からみて今一つである。
【0038】
本発明の抗酸化組成物は、上記方法によって得られた各種抽出物油溶画分、すなわち、ジャガイモ抽出物油溶画分、サツマイモ抽出物油溶画分、コーヒー抽出物油溶画分、シソ抽出物油溶画分、リンゴ抽出物油溶画分、バナナ抽出物油溶画分、ブドウ果皮抽出物油溶画分、ブドウ種子抽出物油溶画分、ゴボウ抽出物油溶画分、マジョラム抽出物油溶画分、及びヒマワリ種子抽出物油溶画分からなる群より選ばれる1種以上の抽出物油溶画分を(a)成分として含み、かつ、(b)成分としてトコフェロール、アスコルビン酸エステル、β−カロチン、及びリコピンからなる群から選ばれる1種以上とを含む。本発明の抗酸化組成物は、(a)成分と(b)成分を併用することにより、トコフェロールと同等若しくはそれ以上の抗酸化能を維持しながら、抗酸化剤由来の異味異臭を低減するという優れた効果を奏するものである。
【0039】
上記(a)成分である抽出物油溶画分の中では、ジャガイモ抽出物油溶画分、サツマイモ抽出物油溶画分、シソ抽出物油溶画分、リンゴ抽出物油溶画分、バナナ抽出物油溶画分、ブドウ果皮抽出物油溶画分、ブドウ種子抽出物油溶画分、ゴボウ抽出物油溶画分、マジョラム抽出物油溶画分、及びヒマワリ種子抽出物油溶画分からなる群より選ばれる1種以上の抽出物油溶画分であることが好ましい。これらの抽出物油溶画分は抗酸化効果に特に優れ、かつ素材臭や着色などの問題も殆どなく扱いが容易であるからである。これに対し、コーヒー抽出物油溶画分は素材臭があり、色も黒いことから扱いづらい場合がある。
【0040】
(b)成分であるトコフェロール、アスコルビン酸エステル、β−カロチン、及びリコピンのなかでは、トコフェロール又はアスコルビン酸エステルをそれぞれ単独で、或いはトコフェロール及びアスコルビン酸エステルを併用することが好ましい。前述したようにトコフェロールは安全で且つ優れた抗酸化効果を示すものであり、アスコルビン酸エステルは油溶性であることから、脂質などの油溶性成分に使いやすい。また、トコフェロール及びアスコルビン酸を併用すると、これらの成分を単独で用いた場合よりもさらに高い抗酸化効果を奏することができる。また、トコフェロール及びアスコルビン酸を併用することによりトコフェロールの添加量をさらに低く抑えることもできる。なお、トコフェロールとしては、α−トコフェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロール、δ−トコフェロール等の1種または2種以上を制限無く使用することができる。
【0041】
本発明の抗酸化組成物中、(a)成分と(b)成分の比率は、重量比で1:9〜9:1であることが好ましく、2:8〜7:3であることがより好ましく、3:7〜5:5であることがさらに好ましい。
【0042】
本発明において、(a)成分の比率が少なすぎると、たとえばトコフェロールとの組合せの場合には、トコフェロール特有の異味異臭が目立ってくる、また、(b)成分の比率が少なすぎると、抗酸化効果が充分でない場合があり、好ましくない。
本発明の抗酸化組成物は、(a)成分および(b)成分の他に、必要に応じて他の抗酸化剤を配合することもできる。このようなものとして、例えばローズマリーやセージ、バジル、緑茶のの各抽出物等を挙げることができる。
【0043】
本発明の抗酸化組成物は、酸化されやすい動植物油に添加・配合し、動植物油の酸化を防止することができる。上記動植物油としては、大豆油、コーン油、紅花油、綿実油、ラッカセイ油(ピーナッツ油)、アーモンド油、カカオ油、ヘーゼルナッツ油、マカデミアナッツ油、菜種油(キャノーラ油)、ラード、ヘッド、バター、いわし油などの魚油、肝油などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。好ましくは、ラッカセイ油、アーモンド油、カカオ油、ヘーゼルナッツ油、マカデミアナッツ油、魚油を挙げることができる。
【0044】
本発明の動植物油に含有される抗酸化組成物の量は、目的に応じて変わり、特に限定されるものではないが、通常、動植物油全量に対して、0.01重量%〜10重量%であれば目的は達成される。好ましくは、0.05重量%〜3重量%である。
本発明の動植物油は、抗酸化組成物の他に、無水珪酸塩、無水硫酸塩、各種無機塩化物、糖類、多糖類等の増量増粘剤、界面活性剤、安定化剤、安息香酸、安息香酸ナトリウム等の抗菌剤、色素、香料あるいはBHT、BHA、ビタミンC等の公知の抗酸化剤などをあらかじめ共存させておいてもよい。
【0045】
本発明の抗酸化組成物を含有する動植物油は、各種飲食品;フレグランス製品、基礎化粧品、頭髪化粧品、浴用剤等の香粧品;トイレタリー製品、洗剤・仕上げ剤、芳香消臭剤等の家庭用品;医薬品など、動植物油を使用するものに対してはいずれにおいても使用することが出来る。
【0046】
上記飲食品としては、例えば、チョコレート、ガム、キャンディ、ポテトチップス、クッキー、ビスケットなどの製菓類;乳酸菌飲料、粉末飲料などの飲料類;アイスクリーム、シャーベッド、氷菓、ムース、フローズンヨーグルトなどの冷菓類;プリン、ゼリー、ババロア、ヨーグルト、クリームなどのデザート類;スープ、カレー、シチューなどの調理食品類;めんつゆ、ドレッシング、マヨネーズ等の調味料類;パン、ドーナツ等のベーカリー製品類;バタークリーム、マーガリンなどデイリー製品類;水産練り製品などを挙げることができる。
【0047】
上記フレグランス製品としては、香水、オードトワレ、オーデコロン、シャワーコロンなどを挙げることができる。
【0048】
上記基礎化粧品としては、スキンクリーム、クレンジングクリーム、ナイトクリーム、ハンドクリーム、乳液、化粧水、アフターシェイブローション、ボディーローション、ファンデーション、口紅、リップクリーム、タルカムパウダー、シワ防止化粧品、老化防止化粧品、サンケア製品、マッサージオイルなどを挙げることができる。
上記頭髪化粧品としては、シャンプー、リンス、コンディショナー、リンスインシャンプー、トリートメントなどの洗髪剤;ポマード、ヘアトニック、ヘアリキッド、ヘアジェル、ヘアクリーム、ヘアムースなどの整髪剤;育毛剤;染毛剤;コールドウエーブ剤などを挙げることができる。
【0049】
上記浴用剤としては、粉末入浴剤、固形入浴剤、固形発泡入浴剤、バスオイル、バブルバスなどを挙げることができる。
上記トイレタリー製品としては、化粧石鹸、浴用石鹸、透明石鹸などを挙げることができる。
【0050】
上記洗剤としては、衣類用粉末洗剤、衣類用液体洗剤、柔軟仕上げ剤、台所用洗剤、トイレ用洗浄剤、浴室用洗浄剤、ガラスクリーナー、カビ取り剤などを挙げることができる。
上記芳香消臭剤としては、ゲル状芳香消臭剤、液体芳香消臭剤、含浸型エアゾール芳香消臭剤、ミストタイプ芳香消臭剤などを挙げることができる。
上記医薬品としては、膏薬、軟膏、座薬、錠剤、液状の薬、カプセルタイプの薬、顆粒状の薬などを挙げることができる。
【実施例】
【0051】
以下に実施例および比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0052】
<サンプルの調製>
サンプル1(シソ抽出物油溶画分)
シソ葉・茎の乾燥物100gをミルで破片し、ソックスレー抽出器にセットし、50%含水エタノール1000mLを加え、室温で8時間抽出した。抽出液の濃縮液を、水−ヘキサン混合溶媒(水−ヘキサン=1:1容積比)2000mLで室温下分配させた。上記混合溶媒を5℃で一晩放置し、水画分を得た。水画分を濃縮乾固し、シソ抽出物を得た。ガスクロマトグラフィー法にて分析した残存シソ精油分は、検出限界外であった。
得られたシソ抽出物1gに、ベンジルアルコールを加えて100gとした後、50℃、30分間攪拌して溶解させた。濾過により不溶物を除去してシソ抽出物油溶性画分を得た。
【0053】
サンプル2(ジャガイモ抽出物油溶画分)
ジャガイモ塊茎の乾燥物100gをミルで粉砕し、エタノール1000mLを加えて、3時間リフラックス抽出した。得られた抽出物を濾過した後、濾液部を濃縮乾固し、ジャガイモ抽出物を得た。
得られたジャガイモ抽出物1gに、ベンジルアルコールを加えて100gとした後、50℃、30分間攪拌して溶解させた。濾過により不溶物を除去してジャガイモ抽出物油溶性画分を得た。
【0054】
サンプル3(コーヒー抽出物油溶画分)
生コーヒー豆を粉砕機で粉砕後(メッシュ5mm)、水を加えて85〜95℃で2時間抽出した。抽出液を濾過した後、濾液部を濃縮乾固し、コーヒー抽出物を得た。
得られたコーヒー抽出物1gに、ベンジルアルコールを加えて100gとした後、50℃、30分間攪拌して溶解させた。濾過により不溶物を除去してコーヒー抽出物油溶性画分を得た。
【0055】
サンプル4(サツマイモ抽出物油溶画分)
サツマイモ類の葉茎及び根茎の乾燥物100gをミルで粉砕し、エタノール2000mLを加えて、70〜75℃、4時間攪拌抽出した。得られた抽出液を濾過した後、冷蔵下で一昼夜静置し、再濾過してオリを除去した。濾液部を濃縮乾固し、サツマイモ抽出物を得た。
得られたサツマイモ抽出物1gに、ベンジルアルコールを加えて100gとした後、50℃、30分間攪拌して溶解させた。濾過により不溶物を除去してサツマイモ抽出物油溶性画分を得た。
【0056】
サンプル5(リンゴ果皮抽出物油溶画分)
リンゴ(品種ふじ)果皮乾燥物をミルで粉砕し、粉末化し、リンゴパウダー100gを得た。そのパウダー80gに、水800mLを加えて、3時間、リフラックス抽出した。抽出液を濾過した後濾過液を濃縮乾固し、リンゴ果皮抽出物を得た。
得られたリンゴ果皮抽出物1gに、ベンジルアルコールを加えて100gとした後、50℃、30分間攪拌して溶解させた。濾過により不純物を除去してリンゴ果皮抽出物油溶性画分を得た。
【0057】
サンプル6(バナナ抽出物油溶画分)
バナナ全果にエタノールを加えた後、70℃、2時間攪拌抽出した。抽出液を濾過した後、濾過液を減圧下、乾固濃縮してバナナ抽出物を得た。
得られたバナナ抽出物1gに、ベンジルアルコールを加えて100gとした後、50℃、30分間攪拌して溶解させた。濾過により不純物を除去してバナナ抽出物油溶性画分を得た。
【0058】
サンプル7(ブドウ果実抽出物油溶画分)
ブドウ果皮(品種:キャンベル種)にエタノールを加えた後、70℃、2時間攪拌抽出した。抽出液を濾過した後、濾過液を減圧下、乾固濃縮してブドウ果皮抽出物を得た。
得られたブドウ果皮抽出物1gに、ベンジルアルコールを加えて100gとした後、50℃、30分間攪拌して溶解させた。濾過により不純物を除去してブドウ果皮抽出物油溶性画分を得た。
【0059】
サンプル8(ブドウ種子抽出物油溶画分)
ブドウ種子抽出物(キッコーマン(株)製)1gに、ベンジルアルコールを加えて100gとした後、50℃、30分間攪拌して溶解させた。濾過により不純物を除去してブドウ種子抽出物油溶性画分を得た。
【0060】
サンプル9(ゴボウ抽出物油溶画分)
ゴボウをミルで粉砕し、エタノールを加えて2時間リフラックス抽出した。抽出液を濾過した後濾過液を濃縮乾固し、ゴボウ抽出物を得た。
得られたゴボウ抽出物1gに、ベンジルアルコールを加えて100gとした後、50℃、30分間攪拌して溶解させた。濾過により不純物を除去してゴボウ抽出物油溶性画分を得た。
【0061】
サンプル10(マジョラム抽出物油溶画分)
マジョラム乾燥物1kgに、水20Lを加えて、45℃、2時間攪拌抽出した。抽出液を濾過した後濾過液を濃縮乾固し、マジョラム抽出物を得た。
得られたマジョラム抽出物1gに、ベンジルアルコールを加えて100gとした後、50℃、30分間攪拌して溶解させた。濾過により不純物を除去してマジョラム抽出物油溶性画分を得た。
【0062】
サンプル11(ヒマワリ種子抽出物油溶画分)
市販のヒマワリ種子抽出物(大日本インキ(株)製)1gに、ベンジルアルコールを加えて100gとした後、50℃、30分間攪拌して溶解させた。濾過により不純物を除去してヒマワリ種子抽出物油溶性画分を得た。
【0063】
サンプル12(ローズマリー抽出物油溶画分)
市販のローズマリー抽出物(東京田辺製薬(株)製)1gに、ベンジルアルコールを加えて100gとした後、50℃、30分間攪拌して溶解させた。濾過により不純物を除去してローズマリー抽出物油溶性画分を得た。
【0064】
サンプル13(ペパーミント抽出物油溶性画分)
水蒸気蒸留によりオイルを回収した後のペパーミント乾燥葉250gをミルで粉砕し、蒸留水3000mLを加えて、2時間リフラックス抽出した。得られた抽出物を濾過した後、濾液部を濃縮乾固し、ペパーミント抽出物を得た。得られたペパーミント抽出物1gに、ベンジルアルコールを加えて100gとした後、50℃、30分間攪拌して溶解させた。濾過により不溶物を除去してペパーミント抽出物油溶性画分を得た。
【0065】
トコフェロール溶液の調製
トコフェロール(ナカライテスク社製)1gに、ベンジルアルコールを加えて100gとして溶解させ、トコフェロール溶液とした。
【0066】
アスコルビン酸エステル溶液の調製
アスコルビン酸エステル1gに、ベンジルアルコールを加えて100gとして溶解させ、アスコルビン酸エステル溶液とした。
【0067】
<試験例1>
得られた各種サンプルと、トコフェロール溶液、アスコルビン酸エステル溶液を表1記載の配合比(w/w)に従って配合した抗酸化組成物(実施例1〜35,比較例1〜20)を作製した。得られた各抗酸化組成物について、下記の条件で自動酸化による安定化試験を行い、その結果をトコフェロール単体の場合との比較で、表1に示した。
【0068】
自動酸化による安定化試験
試験方法:「油化学第42巻第6号(1993)、2.4.28.2−93」に準じた方法(ランシマット法)で、酸化により生成された揮発性の分解生成物を水中に捕集させ、その導電率が急激に変化する折曲点までの時間を測定することによって安定性を確認した。
測定条件 温度:120℃、空気流量:20L/hr
サンプル添加方法:各1%ベンジルアルコールを表1記載の配合比に従って配合し、計1gになるようにしたものを、予め消泡シリコンを0.025%懸濁したラッカセイ油4gに添加した。
【0069】
【表1】



【0070】
表1から、トコフェロールとの相乗効果がみられたのは、サンプル1とトコフェロールを組み合わせた実施例1〜3、サンプル2とトコフェロールを組み合わせた実施例4〜6、サンプル3とトコフェロールを組み合わせた実施例7〜9、サンプル4とトコフェロールを組み合わせた実施例10〜12、サンプル5とトコフェロールを組み合わせた実施例13〜15、サンプル6とトコフェロールを組み合わせた実施例16〜18、サンプル7とトコフェロールを組み合わせた実施例19〜21、サンプル8とトコフェロールを組み合わせた実施例22〜24、サンプル9とトコフェロールを組み合わせた実施例25〜27、サンプル10とトコフェロールを組み合わせた実施例28〜30、サンプル11とトコフェロールを組み合わせた実施例31〜33で、トコフェロール単体の場合よりもラッカセイ油の酸化劣化が顕著に抑制されることが明らかになった。また、サンプル12とトコフェロールを組み合わせた比較例12〜15では、多少の相乗効果は認められるものの、サンプル1〜11とトコフェロールの各組み合わせに比べ充分な効果ではなかった。サンプル13とトコフェロールを組み合わせた比較例16〜19では、トコフェロール単独の場合のほうが優れた酸化抑制効果を示した。また、サンプル1と、トコフェロール及びアスコルビン酸エステルとを組み合わせた実施例34及び35で、トコフェロール単体の場合に比べてラッカセイ油の酸化劣化がさらに顕著に抑制されることが明らかになった。
【0071】
<試験例2>
つぎに、サンプル1とトコフェロール溶液を表2記載の配合比(w/w)に従って配合した抗酸化組成物を調製し、これを表2記載の添加量でラッカセイ油4gに添加したものの酸化安定性を調べた。試験方法、測定条件は試験例1のとおりである。結果を表2に示す。
【0072】
【表2】

【0073】
表2から、本発明にかかる抗酸化組成物において、その添加量をトコフェロール単独の場合より低減させても充分な抗酸化能を奏することが明らかになり、トコフェロール単体の場合のわずか10分の1程度の量で、トコフェロール単体の場合と同等レベルの効果を得られることがわかった。
【0074】
<試験例3>
サンプル1とトコフェロール溶液を表3記載の配合比(w/w)に従って配合した抗酸化組成物を調製し、各抗酸化組成物1gを各動植物油4gに添加したものの酸化安定性を調べた。劣化の度合いは評点指標に従って専門パネラー5名による官能検査により評価した。結果を表3に示す。
評点指標)
1:油脂の劣化臭を著しく強く感じる
2:油脂の劣化臭を強く感じる
3:油脂の劣化臭を感じる
4:油脂の劣化臭をわずかに感じる
5:油脂の劣化臭を感じない
【0075】
【表3】

【0076】
表3から、サンプル1とトコフェロールを組み合わせた抗酸化組成物を添加することにより、トコフェロール単体の場合よりも各動植物油の酸化劣化が抑制され、トコフェロール特有の嫌臭を効果的に抑えることができることが明らかになった。
【0077】
<処方例1>
下記のような処方で本発明の抗酸化組成物を含むバターフレーバーを調製した。
【表4】

【0078】
<処方例2>
常法通り、下記に示す原料を混合、攪拌し、その生地に処方例1のバターフレーバーを0.2重量%添加し、適度な大きさに分割後、成形し、オーブンで185℃、12分焼成してソフトビスケットを調製した。
【表5】

【0079】
<処方例3>
下記のような処方で本発明の抗酸化組成物を含むバニラフレーバーを調製した。
【表6】

【0080】
<処方例4>
処方例3に示すバニラフレーバーをチョコレート生地に0.05〜0.2重量%練りこみ、チョコレートを調製した。
【0081】
<処方例5>
下記に示す配合量にしたがって、フードプロセッサーを用いて乾燥落花生を粉砕した後、バターを加えてよく混ぜた。そこへ、メープルシロップ、サツマイモ抽出物油溶画分、トコフェロールを加えてよく混ぜ、本発明の抗酸化組成物を含むピーナッツバターを調製した。
【表7】

【0082】
<処方例6>
下記のような処方で、本発明の抗酸化組成物を含むサンドクリームを調製した。
【表8】

【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明の抗酸化組成物は、例えば、動植物油;各種飲食品;フレグランス製品、基礎化粧品、頭髪化粧品、浴用剤等の香粧品;トイレタリー製品、洗剤・仕上げ剤、芳香消臭剤等の家庭用品;医薬品等に有用な抗酸化剤として利用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)シソ精油の含有量が1重量%以下であるシソ抽出物をベンジルアルコールによって抽出したシソ抽出物油溶画分と、
(b)トコフェロール、アスコルビン酸エステル、β−カロチン、及びリコピンからなる群から選ばれる1種以上と
を含有する抗酸化組成物。
【請求項2】
請求項1記載の抗酸化組成物を含むことを特徴とする動植物油。
【請求項3】
請求項2記載の動植物油を含むことを特徴とする飲食品。
【請求項4】
請求項2記載の動植物油を含むことを特徴とする医薬品。
【請求項5】
請求項2記載の動植物油を含むことを特徴とする香粧品。
【請求項6】
請求項2記載の動植物油を含むことを特徴とするトイレタリー製品、洗剤・仕上げ剤及び芳香消臭剤から選ばれる家庭用品。
【請求項7】
請求項1記載の抗酸化組成物を動植物油に添加することにより、その動植物油に抗酸化能を付与する方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−17002(P2011−17002A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−167028(P2010−167028)
【出願日】平成22年7月26日(2010.7.26)
【分割の表示】特願2005−512609(P2005−512609)の分割
【原出願日】平成16年8月3日(2004.8.3)
【出願人】(000169466)高砂香料工業株式会社 (194)
【Fターム(参考)】