説明

抗関節炎活性を有するプレクトランサス・アンボイニクス画分

【課題】抗関節炎活性を増強したプレクトランサス・アンボイニクスの抽出物、この抽出物の調製方法、及びこの抽出物を含む関節炎の治療に用いる医薬組成物の提供。
【解決手段】本発明の抗関節炎活性を増強したプレクトランサス・アンボイニクス(Plectranthus amboinicus)(Lour.)Sprengの抽出物は、50%〜95%のアルコール溶媒またはヘキサン及び(または)酢酸エチルなどの溶媒を使用してプレクトランサス・アンボイニクス(Plectranthus amboinicus)(Lour.)Sprengの粗抽出物を溶出することで取得され、本発明はこの抽出物を含む関節炎の治療に用いる医薬組成物も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は植物抽出物に関し、特に、抗関節炎活性を増強したプレクトランサス・アンボイニクス(Plectranthus amboinicus)(Lour.)Sprengの画分に関する。
【背景技術】
【0002】
関節炎は最も一般的な自己免疫疾患である。この疾患の顕著な特徴は、関節のマルアライメントと障害につながる骨の進行性侵食を伴う滑膜組織の炎症である。関節炎の持続性は、それが主に炎症誘発性反応とCD4+T細胞、B細胞、炎症性サイトカインなど炎症細胞と炎症性物質の過度の産生から成る、局部だけでなく全身性の免疫不全であることを示している。それらのすべてが長期的な関節組織の破壊を引き起こす。一般に不明な外因性の病原体による宿主感染がT細胞を活性化させ、単球、マクロファージの活性化などの複数の反応を誘発し、滑液細胞と内皮細胞の増殖及び炎症性サイトカイン、プロテアーゼ、抗体の産生を直接刺激することを通して一連の関節炎を引き起こすと考えられている。さらに、炎症性サイトカインは関節炎疾患の進行において示唆されている。例えば、TNF−αはプロスタグランジンE、コラゲナーゼ、及びインターロイキン−1(IL−1)やインターロイキン−6(IL−6)などその他サイトカインの産生を刺激することによる炎症誘発性サイトカインカスケードにおいて重要な働きをする。また、TNF−α及びIL−1βはマトリックス・メタロプロテアーゼの分泌を刺激し、軟骨細胞、マクロファージ、滑液線維芽細胞、破骨細胞を含む関節内の複数の組織に直接影響を与え、局所的な関節破壊を引き起こす。一方、IL−6は関節組織内の炎症細胞をさらに増加させ、破骨細胞の増殖を刺激し、IL−1βの役割を強化することができる。概して炎症誘発性サイトカインIL−1β、TNF−α、IL−6、IL−17間の実質的なクロストークが関節炎における関節破壊、軟骨細胞抑制、変性組織の修復阻害の誘発に不可欠である。したがって、従来の免疫抑制剤及び非ステロイド性抗炎症薬に加え、現在の臨床治験の多くは関節損傷を減少または防止して、機能を維持できるようにするため、上述の炎症性因子または細胞を特に標的としたTNF−αやIL−6拮抗薬などの生物拮抗薬を開発している。しかしながら、そのような治療は侵襲性であり、有効性が後に低下することがある。さらに、関節炎患者の少なくとも半分は従来の関節炎薬及び生物剤の組み合わせに応答しない。したがって、新しい便利で安全かつ効果的な治療法の開発が重要である。
【0003】
プレクトランサス・アンボイニクス(Plectranthus amboinicus)(Lour.)Sprengは、マレーシア、ブラジル、中国、インドを主に起源とする多年生草本で、シソ属に属し、カワミドリ(Agastache rugosa)、ニオイモロコシソウ(Lysimachia capillipes Hemsl)、スペアミント(Spearmint)、パチョリ(Patchouly)、インドペパーミント)(Indian peppermint)、またはかっ香(Pogostemon Cablin)の別名を持つ。プレクトランサス・アンボイニクスの葉は厚みがあり対生した広卵形で、縁に若干の歯状突起があり、先端が丸いまたは尖っている。この草は高さが約15〜30cmであり、微毛に覆われ、強い刺激性の匂いがある。歴史的な記録によると、プレクトランサス・アンボイニクスは、感冒の防止、身体の免疫強化、及び耳の腫れや炎症、熱などの症状の緩和に有効な漢方薬の一種である。伝統的な漢方薬として、これは抗炎症薬、駆風薬であり、解毒及び発熱や扁桃炎、喉の痛み、肺炎、寒気とほてり、頭痛、胸部と腹部の悪心、 嘔吐、下痢、弱い胃、脾臓の寒気などの症状緩和が可能である。プレクトランサス・アンボイニクスの新鮮な葉汁はすり傷や切り傷、火傷、虫刺され、未知の腫れ、できものと傷、耳の炎症、喉の痛み、腫れを生じる毒、打ち身などにも有効である。また、脂漏性皮膚炎、湿疹、にきび、アレルギー、乾燥肌、頭皮毛嚢炎などの細菌によって引き起こされる皮膚の不調、及び肌のホワイトニング、疲労排除、さまざまな皮膚白癬の除去に有意な効果がある。
【0004】
中華民国特許出願第092135016号は、プレクトランサス・アンボイニクス(Plectranthus amboinicus)(Lour.)Sprengの粗抽出物を調製する方法を開示しており、(a)植物の葉を押圧して葉汁を得る工程と、(b)工程(a)で取得した葉汁にアルコールを添加して最終的なアルコール濃度を70〜80%に到達させた後、低温環境に置く工程と、(c)工程(b)のアルコールを含む葉汁のpH値をpH5.0〜7.0に調整した後、低温環境に置く工程と、(d)工程(c)のアルコールを含む葉汁中の不純物をフィルタリングして除去する工程と、(e)工程(d)で得た純葉汁を蒸留・濃縮して蒸留物を収集し、この蒸留物のpH値をpH5.0〜7.0に調整する工程と、(f)工程(e)の蒸留物を真空濾過し、プレクトランサス・アンボイニクスのダークブラウンと透明の抽出物を取得する工程を含む。
【0005】
中華民国特許出願第093134346号は癌及び(または)腫瘍の治療に有効性を有する、50kDを超える分子量を持つプレクトランサス・アンボイニクスの葉の水抽出物を開示している。
【0006】
中華民国特許出願第086118191号もまたインフルエンザ菌による感染の防止と治療が可能なかっ香(Pogostemon Cablin)またはカワミドリ(Agastache rugosa)の水抽出物の一種を開示している。この抽出物の調製は、90.5%エタノール、4.5%メタノール、5.0%イソプロパノールから成る試薬による溶出を含む。
【0007】
さらに、中華民国特許出願第096145943号(中華民国特許番号第I−335225号)も皮膚疾患を治療し、傷の治癒、特に糖尿病患者における治癒を促進するプレクトランサス・アンボイニクス(Plectranthus amboinicus)(Lour.)Sprengの抽出物を提供している。この発明はその特許の開示によると、固液分離(撹拌分離)と、プレクトランサス・アンボイニクスの抽出物中で吸着樹脂(例:ダイヤイオン)を撹拌すること、及びこの抽出物のさまざまな画分を各分離工程で異なる溶媒を使用することにより単離することを含む、特定の処理の組み合わせの使用で特徴付けられる。
【0008】
また、中華民国特許出願第095134243号(特許番号第I320714号)は、関節リウマチの治療に有効性を有するプレクトランサス・アンボイニクス Benthの水抽出物を開示している。この抽出物は適量の高極性溶媒における浸漬、濾過、回転濃縮器による減圧下での濃縮、溶媒中での希釈、カラムによる単離が行われる。選択的に、高極性から低極性までの異なる溶媒の4セグメント(高極性溶媒、やや高極性溶媒、中程度極性溶媒、低極性溶媒として言及される)を使用して継続的に溶出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】中華民国特許出願第092135016号明細書
【特許文献2】中華民国特許出願第093134346号明細書
【特許文献3】中華民国特許出願第086118191号明細書
【特許文献4】中華民国特許出願第096145943号明細書
【特許文献5】中華民国特許出願第095134243号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本考案の目的は、50%〜95%のアルコール溶媒またはヘキサン及び(または)酢酸エチルなどの溶媒を使用してプレクトランサス・アンボイニクスの粗抽出物(Plectranthus amboinicus)(Lour.)Sprengを溶出することにより取得される抗関節炎活性を増強したプレクトランサス・アンボイニクス(Plectranthus amboinicus)(Lour.)Sprengの抽出物と、この抽出物を調製する方法、及びこの抽出物を含む関節炎の治療に用いる医薬組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、予期せず、高い抗関節炎活性を持つことが分かったプレクトランサス・アンボイニクス抽出物の調製工程のさらなる発展と改善に基づいている。特に、前記抽出物は、プレクトランサス・アンボイニクス(Plectranthus amboinicus)(Lour.)Sprengの粗抽出物を50%〜95%のアルコール溶媒、または順相クロマトグラフィーにより溶出することで調製される。
【0012】
したがって、本発明の一態様で、本発明は約320nmの波長で検出されたHPLCパターンにおいて保持時間約45分にCirsmaritinの吸収ピークを有することにより特徴付けられる抗関節炎活性を増強したプレクトランサス・アンボイニクスの抽出物を提供する。
【0013】
本発明の一実施形態において、前記抗関節炎活性を増強したプレクトランサス・アンボイニクスの抽出物は、前記抽出物が、プレクトランサス・アンボイニクスの粗抽出物を、50%〜95%のアルコール溶媒で、好ましくは70%〜95%のアルコール溶媒で、より好ましくは約95%のアルコール溶媒で溶出することにより取得されることで特徴付けられる。本発明の実施例において、前記アルコール溶媒はエタノールである。
【0014】
本発明の別の実施形態において、前記抗関節炎活性を増強したプレクトランサス・アンボイニクスの抽出物は、ヘキサンを第1溶媒として使用し、ヘキサン/酢酸エチルを第2溶媒として使用した順相クロマトグラフィーで前記プレクトランサス・アンボイニクスの粗抽出物を溶出させることで取得される。
【0015】
本発明の別の一態様で、本発明はプレクトランサス・アンボイニクスの植物または乾燥粉末を溶媒中で抽出して粗抽出物を取得し、50%〜95%のアルコール溶媒を使用したクロマトグラフィーで得られた粗抽出物を溶出させ、抗関節炎活性を増強した抽出物を単離する工程を含む、抗関節炎活性を増強したプレクトランサス・アンボイニクスの抽出物の調製方法を提供する。
【0016】
本発明の一実施形態に従い、得られた粗抽出物は、70%〜95%のアルコール溶媒で、より好ましくは約95%のアルコール溶媒で溶出させ、抗関節炎活性を増強した抽出物を単離することが好ましい。
【0017】
本発明のさらに別の一態様で、本発明は、プレクトランサス・アンボイニクスの植物または乾燥粉末を溶媒中で抽出して粗抽出物を取得する工程と、順相クロマトグラフィーでヘキサンを第1溶媒として使用し、ヘキサン/酢酸エチルを第2溶媒として使用して、得られた粗抽出物を溶出し、抗関節炎活性を増強した抽出物を単離する工程を含む、抗関節炎活性を増強したプレクトランサス・アンボイニクスの抽出物を調製する方法を提供する。
【0018】
本発明の一部の実施形態において、得られた抗関節炎活性を増強した抽出物は、酢酸エチル、酢酸エチル/メタノール、及び(または)メタノールなどの溶媒によりさらに溶出してもよい。
【0019】
本発明のさらに別の一態様で、本発明は必要とする被験者に本明細書に記載された抗関節炎活性を増強したプレクトランサス・アンボイニクスの抽出物の有効量を投与する工程を含む、関節炎を防止または治療する方法を提供する。
【0020】
本発明のさらに別の一態様で、本発明は本明細書に記載された抗関節炎活性を増強したプレクトランサス・アンボイニクスの抽出物の治療的有効量と、製薬上許容できる担体を含む、関節炎を防止または治療するための医薬組成物を提供する。
【0021】
本発明の1つ以上の実施形態の詳細を以下の説明で示す。本発明のその他の特徴と利点は、以下の複数の実施形態の詳細な説明と、添付の特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【0022】
前述の発明の概要、及び本発明の以下の詳細な説明は、添付図面と合わせて参照すればより理解されるであろう。本発明を説明するために現在好適ないくつかの実施形態が図示されている。しかし、本発明が図示されたとおりの好適な実施態様に限定されるものではないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】200nmの波長で検出されたON−024のHPLCパターンであり、保持時間13、20、21、27、37、39分に6つの吸収ピークを有することを示す。
【図2】320nmの波長で検出されたON−024のHPLCパターンであり、保持時間13分にコーヒー酸の吸収ピークを有し、ロズマリン酸の吸収ピークが27分であり、吸収ピークを35分に有することを示す。
【図3】200nmの波長で検出されたON−025のHPLCパターンであり、保持時間45分に吸収ピークを有し、カルバクロール(Carvacrol)の吸収ピークを55分に有することを示す。
【図4】320nmの波長で検出されたON−025のHPLCパターンであり、保持時間39〜43分に8つの吸収ピークを有し、Cirsmaritinの吸収ピークを45分に有することを示す。
【図5】200nmの波長で検出されたON−066のHPLCパターンであり、Cirsmaritinの吸収ピークを保持時間45分に有し、カルバクロールの吸収ピークを55分に有することを示す。
【図6】320nmの波長で検出されたON−066のHPLCパターンであり、Cirsmaritinの吸収ピークを保持時間45分に有し、サルビゲニン(Salvigenin)の吸収ピークを62分に有することを示す。
【図7】200nmの波長で検出されたON−080のHPLCパターンであり、カルバクロールの吸収ピークを保持時間55分に有することを示す。
【図8】320nmの波長で検出されたON−080のHPLCパターンであり、保持時間18〜21分に3つの吸収ピークを有し、37〜41分に3つの吸収ピークを有し、43〜45分に2つの吸収ピークを有し、Cirsmaritinの吸収ピークを45分に有し、4つの吸収ピークを50〜54分に有し、サルビゲニンの吸収ピークを62分に有することを示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
別途説明がある場合を除き、本明細書で使用されるすべての技術および科学用語は、本発明が関係している技術分野の当業者に通常理解される意味と同じ意味を有する。矛盾する場合、定義を含め本明細書が優先する。
【0025】
本明細書における単数表現は、文中において特に明記されない限りは、複数も含むものとする。従って、例えば、「試料」への言及には複数の試料及び当業者に既知のその同等物を含む。
【0026】
本明細書で使用される用語「防止」または「防止する」は、一般に作用または進行のさまざまな程度の停止を指す。防止とは、効果的に何かの程度を下げる、または何かを停止させる、あるいはその両方を行うことである。本明細書で使用される用語「治療」または「治療する」とは、症状の改善を指す。
【0027】
本明細書で使用される用語「治療有効量」とは、組成物の構成成分または本発明の医薬組成物単独または治療において治療上の利点を提供できる他の薬剤との組み合わせの量を指す。
【0028】
本発明は、約320nmの波長で検出されたHPLCパターンで保持時間約45分にCirsmaritinの吸収ピークを有することで特徴付けられる、抗関節炎活性を増強したプレクトランサス・アンボイニクスの抽出物を提供する。これは、50%〜95%のアルコール溶媒の使用または順相クロマトグラフィーによって、粗抽出物を溶出することにより取得することができる。得られた溶出液は抗関節炎活性が増強されており、従って関節炎を治療または防止できることがプレクトランサス・アンボイニクスの既知の抽出物と異なる。
【0029】
本発明によれば、50%〜95%のアルコール溶媒を使用して本明細書の説明どおりに粗抽出物を溶出することで抗関節炎活性を増強したプレクトランサス・アンボイニクスの抽出物が単離されると、図3に示すように、約200nmの波長で検出されたHPLCパターンで保持時間約45分に吸収ピークを有し、約55分にカルバクロールの吸収ピークを有する。また図4に示すように、約320nmの波長で検出されたHPLCパターンで、保持時間39〜43分に8つの吸収ピークを有し、約45分にCirsmaritinの吸収ピークを有する。
【0030】
本発明によれば、70%〜95%のアルコール溶媒を使用して本明細書の記載のとおりに粗抽出物を溶出することで抗関節炎活性を増強したプレクトランサス・アンボイニクスの抽出物が単離されると、図5に示すように、約200nmの波長で検出されたHPLCパターンで保持時間約45分にCirsmaritinの吸収ピークを有し、約55分にカルバクロールの吸収ピークを有する。また図6に示すように、約320nmの波長で検出されたHPLCパターンで、保持時間約45分にCirsmaritinの1つの吸収ピークを有し、約62分にサルビゲニンの1つの吸収ピークを有する。
【0031】
本発明によれば、順相クロマトグラフィーを使用して抗関節炎活性を増強したプレクトランサス・アンボイニクスの抽出物が単離されると、図7に示すように、約200nmの波長で検出されたHPLCパターンで、保持時間約55分にカルバクロールの1つの吸収ピークを有する。また図8に示すように、約320nmの波長で検出されたHPLCパターンで、保持時間18〜21分に3つの吸収ピークを有し、保持時間37〜41分に3つの吸収ピーク、43〜45分に2つの吸収ピーク、約45分に1つのCirsmaritinの吸収ピーク、50〜54分に4つの吸収ピーク、約62分にサルビゲニンの1つの吸収ピークをそれぞれ有する。
【0032】
本発明において、抗関節炎活性を増強したプレクトランサス・アンボイニクスの抽出物はクロマトグラフィーにより単離することができ、これには、プレクトランサス・アンボイニクスの植物または乾燥粉末を溶媒中で抽出して粗抽出物を得る工程と、50%〜95%のアルコール溶媒を使用し、クロマトグラフィーで得られた粗抽出物を溶出して、抗関節炎活性を増強した抽出物を単離する工程を含む。
【0033】
本発明の一実施形態において、前記粗抽出物は、本明細書に記載されるように、70%〜95%のアルコール溶媒により、またはより好ましくは約95%のアルコール溶媒により、溶出することが好ましい。本発明によれば、溶出のための前記アルコール溶媒は、メタノールまたはエタノールとすることができる。本発明の好ましい一実施形態においては、エタノールが使用される。
【0034】
さらに提供される抗関節炎活性を増強したプレクトランサス・アンボイニクスの抽出物の調製方法は、プレクトランサス・アンボイニクスの植物または乾燥粉末を溶媒中で抽出して粗抽出物を取得する工程と、ヘキサンを第1溶媒として、ヘキサン/酢酸エチルを第2溶媒として使用し、順相クロマトグラフィーで得られた粗抽出物を溶出し、関節炎活性を増強した抽出物を単離する工程を含む。本発明の一実施形態に従い、溶媒中のヘキサンの酢酸エチルに対する体積比は、「ヘキサン/酢酸エチル」が1:1である。
【0035】
本発明によれば、抽出されるプレクトランサス・アンボイニクスは希望に応じて新鮮な植物または乾燥植物等を含む任意の形態とすることができる。植物を粉末の形態で抽出することが好ましい。植物の粗抽出物は、例えばアルコール溶媒等を含む溶媒での抽出等、任意の既知の処理により取得することができる。 本発明の一実施形態においては、約95%のエタノール溶液が使用される。
【0036】
本発明の一実施形態において、粗抽出物の取得に約95%のエタノール溶液を使用することができ、さらに70%〜95%のエタノール溶液をクロマトグラフィーで使用して、抗関節炎活性を増強した抽出物を溶出し、単離することができる。
【0037】
本発明の別の実施形態において、粗抽出物の取得に約95%のエタノール溶液を使用することができ、さらにヘキサンを順相クロマトグラフィーで使用して、抗関節炎活性を増強した抽出物を溶出し、単離することができる。
【0038】
本明細書に記載された抽出処理は、例えば乾燥濃縮、減圧濃縮、フリーズドライ等のその他適切な濃縮または精製手順で実施してもよい。
【0039】
本発明によれば、関節炎を患うラットのテストで、本発明の抽出物は抗関節炎活性が増強されていることが示されている。従って、本発明はさらに必要とする被験者に本明細書に記載された抽出物の有効量を投与することを含む、関節炎を防止または治療する方法を提供する。
【0040】
また本発明は、本明細書に記載された抗関節炎活性を増強した抽出物の治療的有効量と、製薬上許容できる担体を含む、関節炎を防止または治療するための医薬組成物を提供する。
【0041】
本発明の関節炎治療のための医薬組成物における抗関節炎活性を増強した抽出物の有効量は、1日当たり0.5〜10gである。
【0042】
治療のために最も好適な投与経路及び用量は当業者が容易に決定できる。用量は治療対象の症状の性質及び状態、治療を受ける患者の年齢、全般的身体条件、投与経路、以前に受けた治療に依存する。
【0043】
本明細書で使用される用語「担体」または「製薬上許容できる担体」とは、希釈剤、賦形剤、または当業者に既知であり、かつ医薬組成物の調製において使用可能な類似の受容可能な類似物を指す。
【0044】
本発明の組成物は、経口的または筋肉注射、静脈注射、皮下注射、腹腔内注射、経皮投与、直腸内投与、吸入、経腟、経眼、経鼻等の非経口的な医学的に許容可能な任意の経路を通して送達することができる。非経口的に送達される医薬組成物は、希望に応じて溶液、懸濁液、乳剤、及び使用後すぐに溶媒に溶解または懸濁可能な固形注射可能組成物等を含む任意の形態とすることができる。注射可能な溶液は、希釈剤中で1つ以上の活性薬剤を溶解、懸濁、または乳化させることにより調製することができる。前記希釈剤のいくつかの例としては、注射用蒸留水、生理食塩水、鉱物油、アルコール、及びそれらの組み合わせがある。また注射可能な溶液は、安定剤、溶媒、懸濁剤、乳化剤、平滑剤、緩衝剤、防腐剤等を含むこともできる。注射可能な溶液は、最終調製工程における滅菌または滅菌手順により調製される。また、本発明の医薬組成物は、例えばフリーズドライにより、滅菌固形剤として調製してもよく、また使用直前に滅菌するか、あるいは滅菌注射用水またはその他滅菌希釈剤に溶解させてもよい。
【0045】
本発明の医薬組成物は、経口で送達させてもよく、その形態は固形または液体とすることができる。固形組成物は、錠剤、丸薬、カプセル、粉末、顆粒等を含む。また経口組成物は口内洗浄剤及びトローチ剤も含む。カプセルは硬カプセル剤と軟カプセル剤を含む。このような経口固形組成物において、1つ以上の活性化合物を単独で、または希釈剤、キレート剤、崩壊剤、潤滑剤、安定剤、共溶媒と組み合わせて使用し、その後既知の方法で製剤を形成することができる。必要時、これら製剤は1種類または2種類以上のコーティング剤でコーティングしてもよい。本発明の別の一態様で、経口液体組成物は、製薬上許容できる液体の溶液、懸濁液、乳剤、シロップ剤、薬用葡萄酒、及び類似物を含む。そのような組成物において、1つ以上の活性化合物を汎用希釈剤(例: 精製水、エタノール、またはそれらの組み合わせ)中で溶解、懸濁、または乳化することができる。そのような希釈剤のほか、上述の組成物は湿潤剤、懸濁剤、乳化剤、甘味料、香味剤、香辛料、防腐剤、緩衝剤及び類似物を含んでもよい。
【0046】
以下の具体的な実施形態は、あくまで例示的なものとして解釈すべきであり、以下の開示内容をいかなる意味においても限定するものとして解釈すべきではない。さらなる詳述なしに、当業者は、本明細書の説明に基づき、本発明を最大限に利用できると考えられる。本明細書に引用されている刊行物はすべて、それらの全体が参照により組み込まれる。
【実施例1】
【0047】
調製の実施例
(50%〜95%のエタノール溶液により単離された抽出物)
予備抽出:乾燥プレクトランサス・アンボイニクスの適量を95%のエタノール溶液で抽出し、第1濾過液を得た。その後前記第1濾過液をさらに濾過して残留物を取得し、それを再度95%のエタノール溶液で抽出して第2濾過液を得た。その後第1濾過液と第2濾過液を合わせ、減圧下で元の量の1/20まで濃縮し、濃縮溶液を得た。
【0048】
カラムクロマトグラフィー:得られた前記濃縮溶液をHP−20カラムで分離した。簡単に説明すると、RO水とよく混合した前記濃縮溶液をカラムの中に入れ、続いてカラム容量の4倍のRO水をカラムに通し、第1溶出液を収集した。その後、さらに1:1(v/v)の比率のカラム容量の4倍のRO水と95%エタノールから成る溶液をカラムに通し、第2溶出液を収集した。前記第2溶出液を減圧下で濃縮し、フリーズドライを実施してプレクトランサス・アンボイニクスの抽出物を生成した。これをON−024で表し、これは即ち0%〜50%のエタノール溶液で抽出された標準試料である。
【0049】
続いて、カラム容量の4倍の95%のエタノール溶液をカラムに通して第3溶出液を収集し、その後それを減圧下で濃縮し、フリーズドライを実施してプレクトランサス・アンボイニクスの抽出物を生成した。これをON−025で表し、これは即ち50%〜95%のエタノール溶液により単離された抽出物である。
【0050】
さらに、その後酢酸エチルをカラムに通して第4溶出液を収集し、続いてそれを減圧下で濃縮してフリーズドライを実施し、酢酸エチルにより単離されたプレクトランサス・アンボイニクスの抽出物を取得した。
【実施例2】
【0051】
(50%〜95%のエタノール溶液により単離された抽出物)
カラムクロマトグラフィー:実施例1の予備抽出で調製された濃縮溶液をHP−20カラムで分離した。簡単に説明すると、RO水とよく混合した前記濃縮溶液をカラムの中に入れ、続いてカラム容量の2倍のRO水をカラムに通し、第1溶出液を収集した。その後、さらに1:1(v/v)の比率のカラム容量の2倍のRO水と95%エタノールから成る溶液をカラムに通し、第2溶出液を収集した。前記第2溶出液を減圧下で濃縮し、フリーズドライを実施してプレクトランサス・アンボイニクスの抽出物を生成した。これをON−022で表す。
【0052】
続いて、カラム容量の2倍の95%のエタノール溶液をカラムに通して第3溶出液を収集し、その後それを減圧下で濃縮し、乾燥させてプレクトランサス・アンボイニクスの抽出物を生成した。これをON−023で表し、これは即ち50%〜95%のエタノール溶液により単離された抽出物である。
【0053】
さらに、その後カラム容量の2倍の酢酸エチルをカラムに通して第4溶出液を収集し、続いてそれを減圧下で濃縮して乾燥させ、酢酸エチルにより単離されたプレクトランサス・アンボイニクスの抽出物を取得した。
【実施例3】
【0054】
(70%〜95%のエタノール溶液により単離された抽出物)
実施例1の予備抽出で調製された濃縮溶液をHP−20カラムで分離した。簡単に説明すると、RO水とよく混合した前記濃縮溶液をカラムの中に入れ、続いてカラム容量の4倍のRO水をカラムに通し、第1溶出液を収集した。その後、さらに3:7(v/v)の比率のカラム容量の4倍のRO水と95%エタノールから成る溶液をカラムに通し、第2溶出液を収集した。前記第2溶出液を減圧下で濃縮し、フリーズドライを実施してプレクトランサス・アンボイニクスの抽出物を生成した。これをON−065で表す。
【0055】
続いて、カラム容量の4倍の95%のエタノール溶液をカラムに通して第3溶出液を収集し、その後それを減圧下で濃縮し、乾燥させてプレクトランサス・アンボイニクスの抽出物を生成した。これをON−066で表し、これは即ち70%〜95%のエタノール溶液により単離された抽出物である。
【0056】
さらに、その後カラム容量の4倍の酢酸エチルをカラムに通して第4溶出液を収集し、続いてそれを減圧下で濃縮して乾燥させ、酢酸エチルにより単離されたプレクトランサス・アンボイニクスの抽出物を取得した。
【実施例4】
【0057】
(順相クロマトグラフィーにより単離された抽出物)
予備抽出:乾燥プレクトランサス・アンボイニクスの適量を95%のエタノール溶液で抽出し、第1濾過液を得た。その後前記第1濾過液をさらに濾過して残留物を取得し、それを再度95%のエタノール溶液で抽出して第2濾過液を得た。その後第1濾過液と第2濾過液を合わせ、減圧下で濃縮して濃縮溶液を得た。この濃縮溶液をシリカゲルと混合し、続いて減圧下で濃縮して乾燥させ、ゲルに付着した粗抽出物(「CE−ゲル」)を生成した。
【0058】
カラムクロマトグラフィー:ヘキサンの使用により乾燥プレクトランサス・アンボイニクスと等しい重量のシリカゲルをカラムに充填した後、充填されたカラムをさらに上述のとおり調製されたCE−ゲルで覆う。カラム容量の6倍のヘキサンを使用してカラムの溶出を行い、第1溶出液を取得し、それを減圧下で濃縮して乾燥させ、ヘキサンにより単離されたプレクトランサス・アンボイニクスの抽出物を生成した。これをON−078で表す。
【0059】
その後1:1(v/v)の比率のカラム容量の6倍のヘキサン/酢酸エチル溶液をカラムに通して第2溶出液を収集した。得られた第2溶出液を減圧下で濃縮して乾燥させ、ヘキサン/酢酸エチルにより単離されたプレクトランサス・アンボイニクスの抽出物を生成した。これをON−079で表す。
【0060】
さらにその後カラム容量の6倍の酢酸エチルをカラムに通して第3溶出液を収集した。得られた第3溶出液を減圧下で濃縮して乾燥させ、酢酸エチルにより単離されたプレクトランサス・アンボイニクスの抽出物を生成した。これをON−083で表す。
【0061】
さらに1:1(v/v)の比率のカラム容量の6倍の酢酸エチル/メタノール溶液をカラムに通して第4溶出液を収集した。得られた第4溶出液を減圧下で濃縮して乾燥させ、酢酸エチル/メタノールにより単離されたプレクトランサス・アンボイニクスの抽出物を生成した。これをON−084で表す。
【0062】
続いてカラム容量の4倍のメタノールをカラムに通して最終溶出液を収集した。得られた最終溶出液を減圧下で濃縮して乾燥させ、メタノールにより単離されたプレクトランサス・アンボイニクスの抽出物を生成した。これをON−085で表す。
【実施例5】
【0063】
(順相クロマトグラフィーにより単離された抽出物)
実施例4で説明したカラムクロマトグラフィーを実行してON−078を取得した。
【0064】
続いて、1:1(v/v)の比率のカラム容量の2倍のヘキサン/酢酸エチル溶液をカラムに通して第2溶出液を収集した。得られた第2溶出液を減圧下で濃縮して乾燥させ、ヘキサン/酢酸エチルにより単離されたプレクトランサス・アンボイニクスの抽出物を生成した。これをON−080で表す。
【0065】
さらに、1:1(v/v)の比率のカラム容量の4倍のヘキサン/酢酸エチル溶液をカラムに通して第3溶出液を収集した。得られた第3溶出液を減圧下で濃縮して乾燥させ、ヘキサン/酢酸エチルにより単離されたプレクトランサス・アンボイニクスの抽出物を生成した。これをON−092で表す。
【0066】
さらに、カラム容量の6倍の酢酸エチルをカラムに通して最終溶出液を収集した。得られた最終溶出液を減圧下で濃縮して乾燥させ、酢酸エチルにより単離されたプレクトランサス・アンボイニクスの抽出物を生成した。これをON−083で表す。
【実施例6】
【0067】
(順相クロマトグラフィーにより単離された抽出物)
実施例4で説明したカラムクロマトグラフィーを実行してON−078を取得した。
【0068】
続いて、1:1(v/v)の比率のカラム容量の2倍のヘキサン/酢酸エチル溶液をカラムに通して第2溶出液を収集した。得られた第2溶出液を減圧下で濃縮して乾燥させ、ヘキサン/酢酸エチルにより単離されたプレクトランサス・アンボイニクスの抽出物を生成した。これをON−080で表す。
【0069】
さらに、1:1(v/v)の比率のカラム容量の2倍のヘキサン/酢酸エチル溶液をカラムに通して第3溶出液を収集した。得られた第3溶出液を減圧下で濃縮して乾燥させ、ヘキサン/酢酸エチルにより単離されたプレクトランサス・アンボイニクスの抽出物を生成した。これをON−081で表す。
【0070】
続いて、1:1(v/v)の比率のカラム容量の2倍のヘキサン/酢酸エチル溶液をカラムに通して第4溶出液を収集した。得られた第4溶出液を減圧下で濃縮して乾燥させ、ヘキサン/酢酸エチルにより単離されたプレクトランサス・アンボイニクスの抽出物を生成した。これをON−082で表す。
【0071】
続いて、カラム容量の6倍のヘキサンをカラムに通して第5溶出液を収集した。得られた第5溶出液を減圧下で濃縮して乾燥させ、ヘキサンにより単離されたプレクトランサス・アンボイニクスの抽出物を生成した。これをON−083で表す。
【0072】
続いて、1:1(v/v)の比率のカラム容量の6倍のヘキサン/メタノール溶液をカラムに通して第6溶出液を収集した。得られた第6溶出液を減圧下で濃縮して乾燥させ、ヘキサン/メタノールにより単離されたプレクトランサス・アンボイニクスの抽出物を生成した。これをON−084で表す。
【0073】
さらに、カラム容量の4倍のメタノールをカラムに通して最終溶出液を収集した。得られた最終溶出液を減圧下で濃縮して乾燥させ、メタノールにより単離されたプレクトランサス・アンボイニクスの抽出物を生成した。これをON−085で表す。
【実施例7】
【0074】
(順相クロマトグラフィーにより単離された抽出物)
実施例4で説明したカラムクロマトグラフィーを実行してON−078を取得した。
【0075】
続いて、9:1(v/v)の比率のカラム容量の6倍のヘキサン/酢酸エチル溶液をカラムに通して第2溶出液を収集した。1:1(v/v)の比率のカラム容量の6倍のヘキサン/酢酸エチル溶液をカラムに通して第3溶出液を収集した。得られた第3溶出液を減圧下で濃縮して乾燥させ、ヘキサン/酢酸エチルにより単離されたプレクトランサス・アンボイニクスの抽出物を生成した。これをON−086で表す。
【実施例8】
【0076】
(順相クロマトグラフィーにより単離された抽出物)
実施例4で説明したカラムクロマトグラフィーを実行してON−078を取得した。
【0077】
続いて、8:2(v/v)の比率のカラム容量の6倍のヘキサン/酢酸エチル溶液をカラムに通して第2溶出液を収集した。得られた第2溶出液を減圧下で濃縮して乾燥させ、ヘキサン/酢酸エチルにより単離されたプレクトランサス・アンボイニクスの抽出物を生成した。これをON−087で表す。
【0078】
1:1(v/v)の比率のカラム容量の6倍のヘキサン/酢酸エチル溶液をカラムに通して最終溶出液を収集した。得られた最終溶出液を減圧下で濃縮して乾燥させ、プレクトランサス・アンボイニクスの抽出物を生成した。これをON−088で表す。
【実施例9】
【0079】
(順相クロマトグラフィーにより単離された抽出物)
実施例4で説明したカラムクロマトグラフィーを実行してON−078を取得した。
【0080】
続いて、7:3(v/v)の比率のカラム容量の6倍のヘキサン/酢酸エチル溶液をカラムに通して第2溶出液を収集した。得られた第2溶出液を減圧下で濃縮して乾燥させ、ヘキサン/酢酸エチルにより単離されたプレクトランサス・アンボイニクスの抽出物を生成した。これをON−089で表す。
【0081】
1:1(v/v)の比率のカラム容量の6倍のヘキサン/酢酸エチル溶液をカラムに通して最終溶出液を収集した。得られた最終溶出液を減圧下で濃縮して乾燥させ、プレクトランサス・アンボイニクスの抽出物を生成した。これをON−090で表す。
【実施例10】
【0082】
(順相クロマトグラフィーにより単離された抽出物)
実施例4で説明したカラムクロマトグラフィーを実行してON−078を取得した。
【0083】
続いて、6:4(v/v)の比率のカラム容量の6倍のヘキサン/酢酸エチル溶液をカラムに通して第2溶出液を収集した。得られた第2溶出液を減圧下で濃縮して乾燥させ、ヘキサン/酢酸エチルにより単離されたプレクトランサス・アンボイニクスの抽出物を生成した。これをON−091で表す。
【0084】
抽出物ON−024(0%〜50%のエタノール溶液により単離された抽出物)、ON−025(50%〜95%のエタノール溶液により単離された抽出物)、ON−066(70%〜95%のエタノール溶液により単離された抽出物)、ON−080(順相クロマトグラフィーにより単離された抽出物)を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により波長200nmと320nmで検出を行い、さらに分析した。その結果、ON−024のHPLCパターンは、ON−025(50%〜95%のエタノール溶液により単離された抽出物)、ON−066(70%〜95%のエタノール溶液により単離された抽出物)、ON−080(順相クロマトグラフィーにより単離された抽出物)のそれと異なることが分かった。
【0085】
(1)波長200nmで検出したON−024のHPLCパターンは、保持時間13、20、21、27、37、39分に6つの吸収ピークを示した(図1)。波長320nmで検出したものは保持時間13分にコーヒー酸の吸収ピークを示し、ロズマリン酸の吸収ピークを27分に示し、吸収ピークを35分に示した(図2)。
(2)波長200nmで検出したON−025のHPLCパターンは、保持時間45分に吸収ピークを示し、55分にカルバクロールの吸収ピークを示した(図3)。波長320nmで検出したものは保持時間39〜43分に8つの吸収ピークを示し、45分にCirsmaritinの吸収ピークを示した(図4)。
(3)波長200nmで検出したON−066のHPLCパターンは、保持時間45分にCirsmaritinの吸収ピークを示し、55分にカルバクロールの吸収ピークを示した(図5)。波長320nmで検出したものは、保持時間45分にCirsmaritinの吸収ピークを示し、62分にサルビゲニンの吸収ピークを示した(図6)。
(4)波長200nmで検出したON−080のHPLCパターンは、保持時間55分にカルバクロールの吸収ピークを示した(図7)。波長320nmで検出したものは保持時間18〜21分に3つの吸収ピーク、37〜41分に3つの吸収ピーク、43〜45分に2つの吸収ピーク、45分にCirsmaritinの吸収ピーク、50〜54分に4つの吸収ピーク、62分にサルビゲニンの吸収ピークを示した(図8)。
【0086】
有効性の実施例
[実施例1]
【0087】
(完全フロインドアジュバント誘発関節炎の動物モデル)
【0088】
体重170±10gのメスLewisラット6匹の群を複数使用した。完全フロインドアジュバント(CFA)、ウシ型結核死菌(軽質鉱物油0.1ml中0.3mg)の微細均質化した懸濁液1用量を右後肢足底に注射した(第1日目とする)。CFA注射の1時間前に、ビヒクル(1%カルボキシメチルセルロース、10mL/kg)または試験化合物500mg/kgを強制経口投与(PO)により動物に投与した。投与は5日連続して1日2回実施した。左後足の容積を足容積測定装置により第0日目(CFA投与前)、第14日目、第18日目、第21日目に測定した。その後各処置群の正味腫脹をビヒクル対照群と比較し、抑制割合として示した。足部容積においてビヒクル対照群に対し30%以上の抑制を有意な抗関節炎活性とする。各群に投与された抽出物と対応する結果を下の表1に示す。
【0089】
対照群に対する抑制活性
【表1】

【0090】
表1に示すように、本発明の抽出物は、特に、抽出物ON−023、ON−025、ON−066、ON−080で抗関節炎活性が増強されている。
【0091】
[実施例2]
(抗炎症活性)
実験
(a)細胞培養
健康な成人ドナーの血液から得た末梢血単核細胞(PBMC)を希釈し、Ficoll−Paque(FP)勾配遠心(Amersham Biosciences)により室温において30分間600gで分離した。分離されたPBMCをリン酸緩衝生理食塩水で洗浄し、10%熱非働化ウシ胎児血清(FBS)で再懸濁した後、96ウェルの培養皿に1ウェル当たり2.0×10の細胞密度で播種し、本明細書に記載された抽出物の抗関節炎活性を評価した。
【0092】
(b)PHA誘発PBMC増殖の抑制
PHA誘発PBMC増殖を技術的プラットフォームとして本発明の多様な抽出物の抗炎症活性の有効性評価に使用した。ヒトPBMCがPHAと終濃度5μg/mLで、及びプレクトランサス・アンボイニクスの多様な抽出物と終濃度0〜90μg/mLで3日間共培養された。PHA(5μg/mL)による刺激の前にデキサメタゾン(DEX)処理されたPBMCも陽性対照試料として実験に含めた。5%COを含む37℃の高湿空気で細胞を3日間インキュベートした後、MTT(メチルチアゾリルテトラゾリウム、MTT)アッセイを実施してPBMCの増殖率を評価した。PHA処理をしていないPBMCを陰性対照試料として使用した。各ウェルの吸光度を光電比色計により波長540nmで検出した。色強度は細胞増殖の程度に正比例するため、各抽出物の抑制活性の計算に使用することができる。3つの独立試験を実施し、MTTアッセイによって判定されたデータはさらにIC50として表現した。
【0093】
表2及び表3に示すように、本発明の提供するプレクトランサス・アンボイニクスの抽出物は、用量に依存してPHAにより誘発されるリンパ球の増殖を抑制できることが分かった。抽出物の細胞(PHA処理なし)に対する細胞毒性もMTTアッセイによって判定した。その結果、ON−023(40μg/mL)は、PHA誘発リンパ球増殖に対し細胞毒性のない完全な抑制作用を示した。一方、ON−022(40μg/mL)はPHA誘発リンパ球増殖に対し部分的な抑制作用(〜50%)のみを示した。
【0094】
PHA誘発PMBC増殖に対する多様な抽出物の抑制(MTTアッセイにより判定されたデータ)
【表2】

【0095】
PHA誘発PMBC増殖に対する多様な抽出物の抑制(MTTアッセイにより判定されたデータ、IC50で表現)
【表3】

【0096】
(c)PHA誘発サイトカインの産生及び測定
第3日目に、細胞上清を収集、分割し、−20℃で分析まで保管した。Quantikine ELISAキット(R&D Systems、ミネソタ州ミネアポリス)を使用し、メーカーの指示に従って、上清中のTNF-α、インターロイキンIL−6、IFN−γ、IL−5の量を測定した。
【0097】
自然に放出された、またはPHAにより誘発されて放出された培養基中のサイトカインのレベルを表4に示す。PBMCからのPHA誘発サイトカイン産生に対する各抽出物の効果を表5から表8に示す。結果には、本発明の抽出物の抗炎症効果が示された。
【0098】
PBMCからのPHA誘発TNF−α、IL−6、IFN−γ、IL−5(pg/mL)放出
【表4】

【0099】
PBMCからのPHA誘発TNF−α放出に対する多様な抽出物の抑制
【表5】

【0100】
PBMCからのPHA誘発IL−6放出に対する多様な抽出物の抑制
【表6】

【0101】
PBMCからのPHA誘発IFN−γ放出に対する多様な抽出物の抑制
【表7】

【0102】
PBMCからのPHA誘発IL−5放出に対する多様な抽出物の抑制
【表8】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
約320nmの波長で検出したHPLCパターンにおいて保持時間約45分にCirsmaritinの吸収ピークを有することを特徴とする、抗関節炎活性を増強したプレクトランサス・アンボイニクス(Plectranthus amboinicus)(Lour.)Sprengの抽出物。
【請求項2】
前記抽出物が、50%〜95%のアルコール溶媒を使用して前記プレクトランサス・アンボイニクス(Plectranthus amboinicus)(Lour.)Sprengの粗抽出物を溶出して得られることを特徴とする、請求項1に記載の抽出物。
【請求項3】
前記抽出物が、約200nmの波長で検出されたHPLCパターンにおいて、保持時間約45分に吸収ピークを有し、かつ約55分にカルバクロールの吸収ピークを有することを特徴とする、または約320nmの波長で検出されたHPLCパターンにおいて、保持時間39〜43分に8つの吸収ピークを有し、かつ約45分にCirsmaritinの吸収ピークを有することを特徴とする、請求項2に記載の抽出物。
【請求項4】
前記抽出物が、70%〜95%のアルコール溶媒を使用して前記プレクトランサス・アンボイニクス(Plectranthus amboinicus)(Lour.)Sprengの粗抽出物を溶出して得られることを特徴とする、請求項2に記載の抽出物。
【請求項5】
前記抽出物が、約200nmの波長で検出されたHPLCパターンにおいて、保持時間約45分にCirsmaritinの吸収ピークを有し、かつ約55分にカルバクロールの吸収ピークを有することを特徴とする、または約320nmの波長で検出されたHPLCパターンにおいて、保持時間約45分にCirsmaritinの吸収ピークを有し、かつ約62分にサルビゲニンの吸収ピークを有することを特徴とする、請求項4に記載の抽出物。
【請求項6】
前記アルコール溶媒がエタノールであることを特徴とする、請求項2に記載の抽出物。
【請求項7】
前記アルコール溶媒がエタノールであることを特徴とする、請求項4に記載の抽出物。
【請求項8】
前記抽出物が、ヘキサンを溶媒として使用した順相クロマトグラフィーにより得られることを特徴とする、請求項1に記載の抽出物。
【請求項9】
前記抽出物がさらにヘキサン/酢酸エチルを溶媒として使用した順相クロマトグラフィーにより単離されることを特徴とする、請求項8に記載の抽出物。
【請求項10】
前記抽出物がヘキサンを第1溶媒として使用し、ヘキサン/酢酸エチルを第2溶媒として使用した順相クロマトグラフィーにより得られることを特徴とする、請求項1に記載の抽出物。
【請求項11】
約200nmの波長で検出されたHPLCパターンにおいて、保持時間約55分にカルバクロールの吸収ピークを有することを特徴とする、または約320nmの波長で検出されたHPLCパターンにおいて、保持時間約18〜21分に3つの吸収ピークを有し、37〜41分に3つの吸収ピークを有し、43〜45分に2つの吸収ピークを有し、約45分に1つのCirsmaritinの吸収ピークを有し、50〜54分に4つの吸収ピークを有し、約62分に1つのサルビゲニンの吸収ピークを有することを特徴とする、請求項10に記載の抽出物。
【請求項12】
プレクトランサス・アンボイニクス(Plectranthus amboinicus)(Lour.)Sprengの植物または乾燥粉末を溶媒中で抽出して粗抽出物を取得する工程と、得られた前記粗抽出物を50%〜95%のアルコール溶媒により溶出し、抗関節炎活性を増強した抽出物を単離する工程を含むことを特徴とする、抗関節炎活性を増強したプレクトランサス・アンボイニクス(Plectranthus amboinicus)(Lour.)Sprengの抽出物を調製する方法。
【請求項13】
得られた前記粗抽出物を70%〜95%のアルコール溶媒で溶出することを特徴とする、請求項12に記載の抗関節炎活性を増強したプレクトランサス・アンボイニクスの抽出物を調製する方法。
【請求項14】
得られた前記粗抽出物を95%のアルコール溶媒で溶出することを特徴とする、請求項13に記載の抗関節炎活性を増強したプレクトランサス・アンボイニクスの抽出物を調製する方法。
【請求項15】
前記アルコール溶媒がエタノールであることを特徴とする、請求項12に記載の抗関節炎活性を増強したプレクトランサス・アンボイニクスの抽出物を調製する方法。
【請求項16】
前記アルコール溶媒がエタノールであることを特徴とする、請求項13に記載の抗関節炎活性を増強したプレクトランサス・アンボイニクスの抽出物を調製する方法。
【請求項17】
前記アルコール溶媒がエタノールであることを特徴とする、請求項14に記載の抗関節炎活性を増強したプレクトランサス・アンボイニクスの抽出物を調製する方法。
【請求項18】
プレクトランサス・アンボイニクス(Plectranthus amboinicus)(Lour.)Sprengの植物または乾燥草本を溶媒中で抽出して粗抽出物を取得する工程と、ヘキサンを溶媒として使用した順相クロマトグラフィーにより得られた前記粗抽出物を溶出し、抗関節炎活性を増強した抽出物を単離する工程を含むことを特徴とする、抗関節炎活性を増強したプレクトランサス・アンボイニクス(Plectranthus amboinicus)(Lour.)Sprengの抽出物を調製する方法。
【請求項19】
抗関節炎活性を増強した抽出物がさらにヘキサン/酢酸エチルを溶媒として使用した順相クロマトグラフィーにより単離されることを特徴とする、請求項18に記載の抗関節炎活性を増強したプレクトランサス・アンボイニクスの抽出物を調製する方法。
【請求項20】
プレクトランサス・アンボイニクス(Plectranthus amboinicus)(Lour.)Sprengの植物または乾燥草本を溶媒中で抽出して粗抽出物を取得する工程と、ヘキサンを第1溶媒として、及びヘキサン/酢酸エチルを第2溶媒として使用した順相クロマトグラフィーにより得られた前記粗抽出物を溶出し、抗関節炎活性を増強した抽出物を単離する工程を含むことを特徴とする、抗関節炎活性を増強したプレクトランサス・アンボイニクス(Plectranthus amboinicus)(Lour.)Sprengの抽出物を調製する方法。
【請求項21】
請求項1に記載の抽出物の治療的有効量と、製薬上許容できる担体を含むことを特徴とする、関節炎の防止または治療に用いる医薬組成物。
【請求項22】
請求項11に記載の抽出物の治療的有効量と、製薬上許容できる担体を含むことを特徴とする、関節炎の防止または治療に用いる医薬組成物。
【請求項23】
請求項12に記載の方法によって調製された抽出物の治療的有効量と、製薬上許容できる担体を含むことを特徴とする、関節炎の防止または治療に用いる医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−107888(P2013−107888A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−255528(P2012−255528)
【出願日】平成24年11月21日(2012.11.21)
【出願人】(512302005)ワンネス・バイオテック・カンパニー (1)
【氏名又は名称原語表記】ONENESS BIOTECH CO.
【Fターム(参考)】