説明

抗食物アレルギー剤

【課題】 人(動物)のアレルギー症状を改善(治癒)することを課題とする。
【解決手段】 腸管免疫または1型ヘルパーT細胞を賦活させる乳酸菌と、抗酸化組成物とを含んでなる、抗食物アレルギー剤により達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗食物アレルギー剤に関する。
【背景技術】
【0002】
乳酸菌、麹菌は、発酵産業でよく利用されている菌体である。例えば、我が国の伝統的大豆発酵製品として味噌があるが、味噌と乳酸菌(麹菌)とは非常に密接な関係があるとされている。具体的には、麦味噌または豆味噌において、麹の添加または各仕込みの段階に、乳酸球菌であるエンテロコッカスまたはペディオコッカス(Pediococcus)は自然発酵促進剤またはスターターとして添加され、味噌の風味等に重要な役割を果たすことが報告されている。また、乳酸菌、ビフィズス菌は、人(動物)の腸内細菌として存在し、整腸作用および過剰摂取されたコレステロールの体外排出等、体内調整物質としてよく知られている。
【0003】
近年、人(動物)は生活環境の変化等によるストレスが原因で腸管粘膜免疫が低下し、アレルギー性疾患等が非常に増加しているとの報告がなされている(非特許文献1)。アレルギー性疾患患者はヘルパーT細胞の1型ヘルパーT細胞(以下、「Th1」という)と2型ヘルパーT細胞(以下、「Th2」という)の存在バランスが崩れTh2が優位な状態となっているのではないかとと云われている。
【0004】
このようなアレルギー性疾患に対処するために種々の乳酸菌製剤が開発されており、例えば、特許文献1(特開2004−26729号)によれば、抗アレルギー剤として、ラクトバチルス・アシドフィスCP1613株および同L92株、またはラクトバチル・ファーメンタムCP34株に属する乳酸菌を有効成分として含んでなる、抗アレルギー剤が提案されている。
【0005】
一方、食物アレルギーのメカニズムとしては、IgE抗体が関与するといわれており、具体的には、食物が摂取されると、それを抗原として認識した免疫機構がIgE抗体を生産され、動物(人)の肥満細胞のレセプターに結合する。そして、再度、抗原(食物)が体内に取り込まれた際に、肥満細胞のレセプターに結合したIgE抗体が抗原(食物)と架橋し、肥満細胞が刺激されて、様々な化学伝達物質が体内に放出される。この化学伝達物質が認識した抗原(食物)を体外に排出するために、強い生理活性をおこさせて、体内の局所において食物アレルギーを生じさせると云われている。
【0006】
しかしながら、本発明者らが確認したところ、乳酸菌が肥満細胞の賦活を有効に抑制したとする報告はなされていない。一方、非特許文献1(Chen et.al.Immunology,100,471-480 (2000))では、ルティンまたはクロロゲン酸が、賦活した肥満細胞からヒスタミン(化学伝達物質)が放出されるのを有効に防止することができるとの報告がなされている。
【特許文献1】特開2004−26729号
【非特許文献1】Chen et.al.Immunology,100,471-480 (2000)
【発明の開示】
【0007】
本発明者等は、本発明時において、腸管免疫または1型ヘルパーT細胞を賦活させる乳酸菌と、抗酸化組成物とを組合せることにより、食物アレルギー症状を思いの外改善するとの知見を得た。よって、本発明はかかる知見によるものである。従って、本発明は、腸管免疫または1型ヘルパーT細胞を賦活させる乳酸菌と、抗酸化組成物とを含んでなる抗食物アレルギーを提供し、人(動物)の食物アレルギー症状の治癒を高い次元で達成することを目的としてなされたものである。
【0008】
従って、本発明によれば、腸管免疫または1型ヘルパーT細胞を賦活させる乳酸菌と、抗酸化組成物とを含んでなる、抗食物アレルギー剤が提案される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
1.乳酸菌
本発明にあっては、腸管免疫または1型ヘルパーT細胞を賦活させる乳酸菌、ビフィズス菌または麹菌を利用する。
乳酸菌またはビフィズス菌これらの菌はグラム陽性菌である。グラム陽性菌が宿主の体内に入ると1型ヘルパーT細胞の産生を強く誘導することが知られている。さらに詳しくはグラム陽性菌はグラム陰性菌に比べて細胞膜にペプチドグルカン層と呼ばれる層が厚く、ペプチドグルカンまたはリポタイコ酸などを宿主の抗原提示細胞が認識し、インターロイキン12などのサイトカインを産生することで、このインターロイキン12がT細胞を1型ヘルパーT細胞に誘導するとも考えられている。また、麹菌のような真菌類もまた、1型ヘルパーT細胞の産生を誘導することが分かっている。
本発明において利用される乳酸菌の具体例としては、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバチルス・ラムノーサス(Lactobacillus rhamnosus)、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス・ジョンソニー(Lactobacillus johnsonii)、ラクトバチルス・プランターラム(Lactobacillus plantarum)、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(Bifidobacterium breve)、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)等が挙げられる。これらは生菌ばかりでなく、スプレードライなどで得られた死菌であってもその機能を発揮することができる。
【0010】
本発明において好ましい乳酸菌としては、エンテロコッカス・フェシウムIS−1が挙げられる。
微生物
エンテロコッカス・フェシウムIS−1は、に属する乳酸菌である。
【0011】
微生物の寄託
エンテロコッカス・フェシウムIS−1は、国際寄託機関ATCC(American Type Culture Collection (ATCC):Manassas,VA 20110−2209 USA)に寄託されている。この寄託の寄託者は本出願人と同じ株式会社ニチモウである。また、この寄託の原寄託は平成16年6月28日付け行われ、受託番号はPTA-6112である。
【0012】
菌学的性質および同定
菌学的性質
本発明によるエンテロコッカス・フェシウムIS−1は発酵大豆(商品名「イムソイ」)より分離された微生物である。また、特定の糖類(ラフィノース、グリセロール、ソルビトール)に対する質化性が典型的なエンテロコッカス・フェシウム(“Bergey’s Manual of Systematic Bacteriology” Vol..2 (1986) Williams & Wilkins..参照)と相違し、さらにそれらのうちラフィノースとソルビトールがエンテロコッカス・フェシウムJCM 5804基準株と相違する。本発明によるエンテロコッカス・フェシウムIS−1は下記表1の糖類に対して次のような資化性(+は陽性、−は陰性)を示す。
【0013】
表1
ラフィノース +
グリセロール −
ソルビトール +
【0014】
エンテロコッカス・フェシウムIS−1と前記エンテロコッカス・フェシウムJCM 5804基準株および典型的なエンテロコッカス・フェシウムとの菌学的性質とを比較すると表2の通りになる。
【表1】

1)表2中、IS−1株およびJCM 5804標準菌株について標記された「(+)」は陽性を、「(−)」は陰性を示す。
2)表2中、典型的なエンテロコッカス・フェシウムについて標記された「+」は90%以上が陽性を、「(+)」は80-89%が陽性を、「d」は21-79%が陽性を、「(−)」は11-20%が陽性を、「−」は90%以上陰性を示す。
3)表2中は、Bergey’s Manual of Determinative Bacteriology (1994), Williams & Wilkinsおよび一部は食品衛生検査指針を参考にした。
【0015】
菌学的同定
上記した菌学的性質および16s rRNA遺伝子の5’末端の塩基から1462番目の塩基までについてシーケンスした結果エンテロコッカス・フェシウム標準菌株と99.66%の相同性があり、この菌株はエンテロコッカス・フェシウムと同定された。
エンテロコッカス・フェシウムIS−1菌株は、下記の16s rRNA遺伝子の5’末端の塩基から1462番目の塩基までにおける塩基配列:
TTAAAGTTTGATCCTGGCTCAGGATGAACGCTGGCGGCGTGCCTAATACATGCAAGTCGTACGCTTCTTTTTCCACCGG
AGCTTGCTCCACCGGAAAAAGAGGAGTGGCGAACGGGTGAGTAACACGTGGGTAACCTGCCCATCAGAAGGGGATAAC
ACTTGGAAACAGGTGCTAATACCGTATAACAATCGAAACCGCATGGTTTTGATTTGAAAGGCGCTTTCGGGTGTCGCTG
ATGGATGGACCCGCGGTGCATTAGCTAGTTGGTGAGGTAACGGCTCACCAAGGCCACGATGCATAGCCGACCTGAGAG
GGTGATCGGCCACATTGGGACTGAGACACGGCCCAAACTCCTACGGGAGGCAGCAGTAGGGAATCTTCGGCAATGGAC
GAAAGTCTGACCGAGCAACGCCGCGTGAGTGAAGAAGGTTTTCGGATCGTAAAACTCTGTTGTTAGAGAAGAACAAGG
ATGAGAGTAACTGTTCATCCCTTGACGGTATCTAACCAGAAAGCCACGGCTAACTACGTGCCAGCAGCCGCGGTAATA
CGTAGGTGGCAAGCGTTGTCCGGATTTATTGGGCGTAAAGCGAGCGCAGGCGGTTTCTTAAGTCTGATGTGAAAGCCCC
CGGCTCAACCGGGGAGGGTCATTGGAAACTGGGAGACTTGAGTGCAGAAGAGGAGAGTGGAATTCCATGTGTAGCGGT
GAAATGCGTAGATATATGGAGGAACACCAGTGGCGAAGGCGGCTCTCTGGTCTGTAACTGACGCTGAGGCTCGAAAGC
GTGGGGAGCAAACAGGATTAGATACCCTGGTAGTCCACGCCGTAAACGATGAGTGCTAAGTGTTGGAGGGTTTCCGCC
CTTCAGTGCTGCAGCTAACGCATTAAGCACTCCGCCTGGGGAGTACGACCGCAAGGTTGAAACTCAAAGGAATTGACG
GGGGCCCGCACAAGCGGTGGAGCATGTGGTTTAATTCGAAGCAACGCGAAGAACCTTACCAGGTCTTGACATCCTTTG
ACCACTCTAGAGATAGAGCTTCCCCTTCGGGGGCAAAGTGACAGGTGGTGCATGGTTGTCGTCAGCTCGTGTCGTGAGA
TGTTGGGTTAAGTCCCGCAACG AGCGCAACCCTTATTGTTAGTTGCCATCATTCAGTTGGGCACTCTAGCAAGACTGCC
GGTGACAAACCGGAGGAAGGTGGGGATGACGTCAAATCATCATGCCCCTTATGACCTGGGCTACACACGTGCTACAAT
GGGAAGTACAACGAGTTGCGAAGTCGCGAGGCTAAGCTAATCTCTTAAAGCTTCTCTCAGTTCGGATTGCAGGCTGCAA
CTCGCCTGCATGAAGCCGGAATCGCTAGTAATCGCGGATCAGCACGCCGCGGTGAATACGTTCCCGGGCCTTGTACAC
ACCGCCCGTCACACCACGAGAGTTTGTAACACCCGAAGTCGGTGAGGTAACC(1462塩基)を有する。
【0016】
培養/単離
採取
本発明によるエンテロコッカス・フェシウムIS−1菌株は、好ましくは植物性食品から採取されるものが好ましい。植物性食品としては、大豆・小豆・及びその他の穀類などの豆科植物が好ましい。原料としては、豆科植物自体のみならず、加工された豆科植物であってもよく、これらの混合物であってもよい。
【0017】
豆科植物の中でも好ましいのは大豆である。大豆は、その種類を問わず、また加工された大豆、大豆を原料とした食品、およびその他の物品製造過程で生じた主産物、副産物のいずれのものであってもよい。具体的には、大豆(種類、粒色を問わない)、脱皮大豆、抽出大豆、分離大豆、脱脂大豆、大豆タンパク質、醤油油、醤油粕、たまり粕、味噌、豆味噌、納豆、発酵大豆(麹菌などの、微生物を用いて発酵された大豆も含んでなる)、大豆絞り粕、大豆蒸煮液、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0018】
培地
本発明によるエンテロコッカス・フェシウムIS−1菌株は、天然培地、合成培地、半合成培地などの培地に培養することができる。培地としては、窒素源および炭素源を含有するものが用いられる。窒素源の具体例としては、肉エキス、ペプトン、大豆粉、大豆加水分解物、グルテン、カゼイン、酵母エキス、アミノ酸等が挙げられ、炭素源の具体例としては、グルコース、フラクトース、ラクトース、ソルビトール、イノシトール、水飴、麹汁、澱粉、バカス、フスマ、糖蜜、等が挙げられる。このほか、無機質として、例えば硫酸アンモニウム、リン酸カリウム、塩化マグネシウム、食塩、炭酸カルシウム、鉄、マンガン、モリブデン更に各種ビタミン類その他を添加することができる。
培養温度は10〜50℃、更に好ましくは25〜45℃であり、培養時間は6〜36時間程度であり、通気振盪、通気撹拌してもよい、培地のpHは3〜10好ましくは5〜7である。
【0019】
単離精製
培養終了後、菌胆を採取し蒸留水もしくは生理食塩水を加え、遠心分離などの手段により上清を除き、必要によりこの操作を繰り返し、遠心分離または濾過等により菌体を採取する。さらには高濃度にエンテロコッカス・フェシウムIS−1菌を培養させた培養液をフリーズドライ(真空凍結乾燥)やスプレードライすることで得ることもできる。スプレードライの場合は加熱死菌となるが、1型ヘルパーT細胞の産生を誘導機能を有しているので差し支えない。
【0020】
2.抗酸化組成物
本発明にあっては、抗酸化組成物を用いるが、好ましくはIgE抗体が結合した脂肪細胞の賦活を抑制するものが利用される。このような抗酸化組成物の具体例としては、α‐トコフェロール、茶ポリフェノールやクロロゲン酸などの植物性ポリフェノール類、植物性フラボノイド類などの天然抗酸化成分が挙げられる。
【0021】
本発明の好ましい抗酸化組成物としては、発酵させた豆科植物より得られた組成物が挙げられる。より好ましくは、下記の製造方法により得られた抗酸化組成物が好ましい。
その抗酸化組成物は、発酵させた豆科植物を極性溶媒で抽出し、
得られた抽出物から極性溶媒を除去し濃縮乾固し、
濃縮乾固抽出物を極性溶媒で溶解し、さらに加水希釈した後に分離して不溶性物質を得えたものである。より好ましくは、この不溶性物質を乳化することにより得られる抗酸化組成物が好ましくは挙げられる。
【0022】
原料
発酵された豆科植物が原料として使用され、その具体例としては、大豆、小豆等を発酵させたもの、好ましくは発酵させた大豆胚芽が挙げられる。大豆は種類、形態、加工の有無を問わず利用することができ、例えば、脱皮大豆、抽出大豆、分離大豆、脱脂大豆、大豆タンパク質を発酵させたものが挙げられ、または、醤油粕、たまり粕、味噌、豆味噌、納豆、発酵大豆、大豆絞り粕、またはこれらの混合物等が挙げられる。発酵は、麹菌などの微生物を用いて行われることが好ましい。本発明の好ましい態様によれば、原料は、抽出溶媒による影響を受けないように十分に乾燥し、水分を除去したものを使用することが好ましい。
【0023】
脱脂
本発明において、下記する極性溶媒抽出を行う前に、発酵させた豆科植物を脱脂することが好ましい。脱脂は溶媒抽出法を用いて行う。溶媒抽出法によれば、製造工程において不要な油脂等を十分に除去できるので好ましい。抽出溶媒は、非極性溶媒が好ましく、その具体例としては、低級炭化水素(好ましくは炭素数10以下)、石油系エーテル類、およびその他の有機溶媒が挙げられるが、食品、医薬品等としての安全性配慮から、好ましくは、n−ヘキサンが好ましい。
【0024】
溶媒抽出は、溶媒の沸点(n−ヘキサンの場合約69℃の沸点)付近で行うことが好ましく、脱脂時間は原料の量にもよるが典型的には約2〜5時間で行う。本発明においては、脱脂効率を高めるために還流抽出を行うことが好ましい。
【0025】
脱脂後は、脱脂生成物を乾燥することが好ましく、その方法としては、天日乾燥、(熱)風乾燥、真空乾燥、通気乾燥、流動乾燥、噴霧乾燥、凍結乾燥、減圧乾燥、赤外線乾燥、高周波乾燥、およびその他の乾燥法、またはこれらの混合方法が用いられるが、好ましくは、(熱)風乾燥である。
【0026】
抽出
発酵された豆科植物を極性溶媒により抽出する。極性溶媒による抽出は、タンパク質、糖質、繊維、等の不要な成分を除去するのに好ましい。極性溶媒の具体例としては、低級炭化水素(好ましくは炭素数10以下)、低級エステル、水、低級アルコール、低級アセトン、低級脂肪酸が挙げられ、好ましくは、酢酸エチル、酢酸メチル、水、メタノール、エタノール、アセトン、酢酸、およびその他の溶媒が挙げられ、より好ましくは、食品、医薬品としての安全性から酢酸エチルが好ましい。
【0027】
溶媒抽出は、溶媒の沸点(酢酸エチルの場合約約77.1℃の沸点)付近で行うことが好ましく、抽出時間は原料の量にもよるが典型的には約2〜5時間で行う。本発明においては、溶媒抽出後、先の脱脂工程をさらに行うことができる。
【0028】
溶媒除去
溶媒の除去は、脱脂の乾燥の項で説明したのと同様であって良い。
【0029】
乳化
本発明の好ましい態様によれば、不溶性物質を乳化するが、この乳化は乳化剤を用いて行われるものである。乳化剤としては、陰イオン性、非イオン性等の界面活性剤、蛋白質等の高分子化合物、脂肪酸エステル、リン脂質等の乳化剤が挙げられるが、この中でも界面活性剤(より好ましくは非イオン性界面活性剤)、リン脂質(好ましくは大豆レシチン)が好ましくは挙げられる。非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンソルビタンモノエートが挙げられ、例えば、商品名Tween20、40、60、80(Atras powder社製)として入手可能である。乳化剤の添加量は、不溶性物質を乳化させるのに適した量を適宜定めることができる。本発明による抗酸化組成物は、不溶性物質に水、乳化剤、その他の剤を添加して、高速度ミキサー(ホモジナイザー)で撹拌することにより乳化して得ることができる。
【0030】
3.抗食物アレルギー剤の調製
本発明による抗アレルギー抑制剤は、乳酸菌、ビフィズス菌または麹菌と抗酸化組成物を基本的には含んでなるものである。
本発明による抗食物アレルギー剤として利用される乳酸菌、ビフィズス菌または麹菌は、その生菌をそのまま使用し、または乳製品、果実類、穀物またはこれらの加工物(食品)にこの生菌を付与し乳酸発酵させた状態の発酵物(処理物)として利用することができる。
【0031】
また、乳酸菌、ビフィズス菌または麹菌は、単離した菌体を、加熱、紫外線照射、ホルマリン処理等により不活性化して投与に適した剤形(乳酸菌製剤)にすることもできる。分離された生菌体、死菌体はさらに摩砕、破砕処理し、得られた処理物を必要により加熱滅菌、無菌濾過した後に、その濾液を凍結乾燥して製剤とすることもできる。菌体の処理物は、例えば、上記摩砕物、破砕物、それらからの抽出液、凍結乾燥品等の形態が挙げられる。
【0032】
本発明による抗食物アレルギー剤は、他の乳酸菌製剤、ビフィズス菌製剤、真菌製剤等の微生物製剤と混合して使用することもできる。乳酸菌製剤の具体例としては、ラクトバチルス属、ストレプトコッカス(Streptococcus)属、ラクトコッカス(Lactococcus)属、ロイコノストック(Leuconostoc)属、ペディオコッカス(Pediococcus)属等が挙げられる。ビフィズス菌製剤の具体例としてはビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属のビフィズス菌製剤があげられる。真菌製剤の具体例としては糸状菌であるアスペルギルス(Aspergillus)属、ペニシリウム(Penicilium)属、リゾプス(Rhizopus)属、酵母、および担子菌の真菌製剤が挙げられる。
【0033】
本発明による抗食物アレルギー剤は、経口および非経口(例えば、直腸投与、経皮投与)のいずれかの投与経路で、人を含む動物に投与することができる。
本発明による抗食物アレルギー剤は、投与経路に応じた適切な剤形として提供されることが好ましい。例えば、カプセル剤、錠剤、顆粒剤、散剤、丸剤、細粒剤、トローチ錠等の経口剤、直腸投与剤等の種々に調製することが好ましい。
【0034】
抗食物アレルギー剤としての効果をより確実なものとするために、例えば、賦形剤、増量剤、結合剤、湿潤化剤、崩壊剤、表面活性剤、滑沢剤、分散剤、緩衝剤、保存剤、溶解補助剤、矯味矯臭剤、無痛化剤、安定化剤等、の薬学上許容される担体または添加剤を適宜選択し、組み合わせることによって製造することが望ましい。使用可能な無毒性の上記添加剤は、例えば乳糖、果糖、ブドウ糖、でん粉、ゼラチン、炭酸マグネシウム、合成ケイ酸マグネシウム、タルク、ステアリン酸マグネシウム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースまたはその塩、アラビアゴム、ポリエチレングリコール、シロップワセリン、グリセリン、エタノール、プロピレングリコール、クエン酸、塩化ナトリウム、亜硫酸ソーダ、リン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0035】
本発明による抗食物アレルギー剤の投与量は、症状や年齢、性別等を考慮し、個々の場合に応じて適宜決定することが好ましい。
【0036】
食物アレルギー性疾患の治療
本発明による抗食物アレルギー剤は、人を含む動物の食物アレルギー性疾患を予防し、改善(治癒)する効果を示す。よって、本発明の好ましい態様によれば、本発明による抗食物アレルギー剤は、インターフェロンガンマの生成を増進し1型ヘルパーT細胞を増加させることによりアレルギー症状を緩和または治癒するのに用いられる。また、好ましくはインターフェロンガンマの生成を増進し1型ヘルパーT細胞を増加させて2型ヘルパーT細胞の生成を抑制し、その際に、IgE抗体が結合した脂肪細胞の賦活を抑制することが可能となる。このため、食物アレルギー症状を緩和または治癒することが効果的に行われる。そして、本発明による抗食物アレルギー剤は、1型ヘルパーT細胞を賦活させる乳酸菌、ビフィズス菌または麹菌と、抗酸化組成物とが単独で用いられるよりも両者が混合されて相俟って相乗的に人を含む動物の食物アレルギー性疾患に対して非常に効果的な効果を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
腸管免疫または1型ヘルパーT細胞を賦活させる乳酸菌、ビフィズス菌または麹菌と、抗酸化組成物とを含んでなる、抗食物アレルギー剤。
【請求項2】
前記乳酸菌が、エンテロコッカス・フェシウムIS−1菌株である、請求項1に記載の抗食物アレルギー剤。
【請求項3】
16s rRNA遺伝子の5’末端の塩基から1462番目の塩基までの塩基配列が下記:
TTAAAGTTTGATCCTGGCTCAGGATGAACGCTGGCGGCGTGCCTAATACATGCAAGTCGTACGCTTCTTTTTCCACCGG
AGCTTGCTCCACCGGAAAAAGAGGAGTGGCGAACGGGTGAGTAACACGTGGGTAACCTGCCCATCAGAAGGGGATAAC
ACTTGGAAACAGGTGCTAATACCGTATAACAATCGAAACCGCATGGTTTTGATTTGAAAGGCGCTTTCGGGTGTCGCTG
ATGGATGGACCCGCGGTGCATTAGCTAGTTGGTGAGGTAACGGCTCACCAAGGCCACGATGCATAGCCGACCTGAGAG
GGTGATCGGCCACATTGGGACTGAGACACGGCCCAAACTCCTACGGGAGGCAGCAGTAGGGAATCTTCGGCAATGGAC
GAAAGTCTGACCGAGCAACGCCGCGTGAGTGAAGAAGGTTTTCGGATCGTAAAACTCTGTTGTTAGAGAAGAACAAGG
ATGAGAGTAACTGTTCATCCCTTGACGGTATCTAACCAGAAAGCCACGGCTAACTACGTGCCAGCAGCCGCGGTAATA
CGTAGGTGGCAAGCGTTGTCCGGATTTATTGGGCGTAAAGCGAGCGCAGGCGGTTTCTTAAGTCTGATGTGAAAGCCCC
CGGCTCAACCGGGGAGGGTCATTGGAAACTGGGAGACTTGAGTGCAGAAGAGGAGAGTGGAATTCCATGTGTAGCGGT
GAAATGCGTAGATATATGGAGGAACACCAGTGGCGAAGGCGGCTCTCTGGTCTGTAACTGACGCTGAGGCTCGAAAGC
GTGGGGAGCAAACAGGATTAGATACCCTGGTAGTCCACGCCGTAAACGATGAGTGCTAAGTGTTGGAGGGTTTCCGCC
CTTCAGTGCTGCAGCTAACGCATTAAGCACTCCGCCTGGGGAGTACGACCGCAAGGTTGAAACTCAAAGGAATTGACG
GGGGCCCGCACAAGCGGTGGAGCATGTGGTTTAATTCGAAGCAACGCGAAGAACCTTACCAGGTCTTGACATCCTTTG
ACCACTCTAGAGATAGAGCTTCCCCTTCGGGGGCAAAGTGACAGGTGGTGCATGGTTGTCGTCAGCTCGTGTCGTGAGA
TGTTGGGTTAAGTCCCGCAACGAGCGCAACCCTTATTGTTAGTTGCCATCATTCAGTTGGGCACTCTAGCAAGACTGCC
GGTGACAAACCGGAGGAAGGTGGGGATGACGTCAAATCATCATGCCCCTTATGACCTGGGCTACACACGTGCTACAAT
GGGAAGTACAACGAGTTGCGAAGTCGCGAGGCTAAGCTAATCTCTTAAAGCTTCTCTCAGTTCGGATTGCAGGCTGCAA
CTCGCCTGCATGAAGCCGGAATCGCTAGTAATCGCGGATCAGCACGCCGCGGTGAATACGTTCCCGGGCCTTGTACAC
ACCGCCCGTCACACCACGAGAGTTTGTAACACCCGAAGTCGGTGAGGTAACC (1462塩基)
で表されるものである、請求項2に記載の乳酸菌。
【請求項4】
1型ヘルパーT細胞を増加させて2型ヘルパーT細胞の発現を抑制するものである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の抗食物アレルギー剤。
【請求項5】
前記抗酸化組成物が、発酵させた豆科植物より得られるものである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の抗食物アレルギー剤
【請求項6】
前記抗酸化組成物が、
発酵させた豆科植物を極性溶媒で抽出し、
得られた抽出物から前記極性溶媒を除去し濃縮乾固し、
前記濃縮乾固抽出物を極性溶媒で溶解し、さらに加水希釈した後に分離して不溶性物質を得え、
前記不溶性物質を乳化することにより得られるものである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の抗食物アレルギー剤。

【公開番号】特開2006−104107(P2006−104107A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−291620(P2004−291620)
【出願日】平成16年10月4日(2004.10.4)
【出願人】(000110882)ニチモウ株式会社 (52)
【Fターム(参考)】