説明

抗高コレステロール血症化合物

本発明は、式(I)のコレステロール吸収阻害剤及び医薬適合性のそれらの塩及びエステルを提供する。本化合物は、血漿コレステロールレベル、特にLDL−コレステロール、を低下させるために、及びアテローム性動脈硬化症及びアテローム性動脈硬化症疾病事象を治療及び予防するために有用である。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、置換2−アゼチジノン及び医薬適合性のそれらの塩及びエステルに関し、及び高コレステロール血症を治療するための、及びアテローム性動脈硬化症及び関連症状ならびに疾病事象の進行を予防、停止又は遅らせるための単独での又は他の活性薬剤と組み合わせてのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
数十年前から、血中コレステロールの上昇が冠状動脈性心臓病の主要なリスク因子であることが明らかとなっており、多数の研究から、脂質低下療法により、CHD事象のリスクを減少できることが示されてきた。1987年以前、脂質を低下させる方法は、基本的に、飽和脂肪及びコレステロールの少ない食事、胆汁酸封鎖剤(コレスチラミン及びコレスチポール)、ニコチン酸(ナイアシン)、フィブラート類及びプロブコールに限定されていた。残念ながら、これらの処置は全て、効果もしくは許容性のいずれか、又はその両方に限界があった。ニコチン酸の添加の有無に関わらず、脂質を低下させる食事と胆汁酸封鎖剤とを組み合わせることにより、HDL(高密度リポタンパク質)コレステロールを増加させながらLDL(低密度リポタンパク質)コレステロールを大幅に減少させることができた。しかし、この治療法は、投与又は許容することが簡単ではなく、従って、脂質疾患治療の専門医を除き、多くの場合成功しなかった。フィブラート類は、HDLコレステロールを増加させながらLDL−コレステロールを穏やかに減少させ、中性脂肪を大幅に減少させ、また、これらは十分に許容されるので、これらの薬剤はより広く用いられてきた。プロブコールは、LDL−コレステロールをわずかに減少させるだけであり、また、HDLコレステロールも減少させるが、HDLコレステロールレベルとCHDリスクとの間に強い逆相関の関係があるため、これは一般的に望ましくないこととみなされる。ロバスタチン(1987年に処方薬として利用できるようになった、HMG−CoAレダクターゼの最初の阻害剤)の導入により、副作用がほとんどなく、医師が初めて血漿コレステロールを大きく減少させることができた。
【0003】
最近の研究から、ロバスタチン、シンバスタチン及びプラバスタチン(全て、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤クラスのメンバーである。)が、冠動脈及び頸動脈におけるアテローム性病変の進行を遅延させることが明白に実証された。シンバスタチン及びプラバスタチンはまた、冠状動脈性心臓疾病事象のリスクを減少させることが示され、シンバスタチンの場合、心臓発作による死亡のリスクと総死亡率が顕著に減少することが、Scandinavian Simvastatin Survival Studyにより示された。この研究から、脳血管事象を減少させることに関する証拠もいくつか得られた。シンバスタチンにより心臓発作の罹患率及び死亡率のリスクが大幅に減少するにもかかわらず、治療を施された患者におけるリスクはなお大きい。例えば、Scandinavian Simvastatin Survival Studyでは、心臓発作による死亡のリスクが42%減少するが、この5年間の研究の間に、それでもなお治療を施された患者の5%がこれらの疾患により死亡する状態であった。リスクをさらに減少させることが明らかに必要とされている。
【0004】
登場してきた最新の抗高コレステロール血症薬のクラスには、コレステロール吸収の阻害剤が含まれる。このクラスで規制認可を受けた最初の化合物であるエゼチミブは、現在、ZETIA(R)の商標名で米国で市販されている。エゼチミブは、次の化学構造:
【0005】
【化4】

を有し、米国特許第Re.37721号及び同第5,846,966号に記載されており:次の一般構造:
【0006】
【化5】

のグルクロン酸化された類似体を含む糖置換2−アゼチジノン及びそれらの製造方法が、米国特許第5,756,470号で開示されている(式中、Ar及びArは、置換されていないか又は置換されたアリール基である。)。
【0007】
さらなるコレステロール吸収阻害剤は、WO2002/066464 A1(Kotobuki Pharmaceutical Co.により出願)及びUS2002/0137689 A1(Glombikら)で記載されている。WO2002/066464 A1は、一般式:
【0008】
【化6】

の脂質低下化合物を開示する(式中、他にも定義はあるが、A、A及びAは、
【0009】
【化7】

であり得、式中、Rは、−CHOH、−CHOC(O)−R又は−COであり;Rは、−OH又は−OC(O)Rであり;Rは、−(CH(CH2)−(k及びiは、0又は1もしくは複数の整数であり、k+iは、10以下の整数である。)であり;Rは、単結合、−CH=CH−、−OCH−、カルボニル又は−CH(OH)である。)。
【0010】
US2002/0137689 A1は、一般式
【0011】
【化8】

の脂質低下化合物を開示する(式中、他にも定義はあるが、R、R、R、R、R、Rは、互いに独立に、(C−C30)−アルキレン−(LAG)であり得、ここで、アルキレン基の1又は複数の炭素原子は、−O−、−(C=O)−、−CH=CH−、−C≡C−、−N((C−C)−アルキル)−、−N((C−C)−アルキルフェニル)又は−NH−により置換され得;(LAG)は、糖残基、二糖残基、三糖残基、四糖残基;糖酸又はアミノ糖である。)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
高コレステロール血症及びアテローム性動脈硬化症性過程に対する新規治療を見つけるための継続的な努力において、本発明は、下記で述べる新規コレステロール吸収阻害剤を提供する。
【0013】
本発明のある目的は、式I:
【0014】
【化9】

の新規コレステロール吸収阻害剤及び医薬適合性のそれらの塩及びエステルを提供する。
【0015】
本発明の第二の目的は、コレステロール吸収を阻害する治療が必要な患者に式Iの化合物の治療的有効量を投与することを含む、コレステロール吸収を阻害するための方法を提供することである。別の目的は、高コレステロール血症を治療することが必要な患者に式Iの化合物の治療的有効量を投与することを含む、血漿コレステロールレベル、特にLDL−コレステロールを低下させ、高コレステロール血症を治療するための方法を提供することである。
【0016】
さらなる目的として、アテローム性動脈硬化症発現を予防又はリスク低下させる、ならびに一旦臨床的に顕在化した場合は、アテローム性動脈硬化症性疾患の進行を停止させるか遅らせるための方法を提供し、この方法は、アテローム性動脈硬化症発現のリスクがある患者又は既にアテローム性動脈硬化症性疾患に罹患している患者に、式I化合物の、必要に応じて予防的又は治療的有効量を投与することが含まれる。本発明の別の目的は、これらの症状の発現の治療、予防又はリスク低下において有用な医薬品を製造するための本発明の化合物の使用である。本発明のその他の目的は、式Iの化合物を生成させるための、及びこれらの化合物を含有する新規医薬組成物を提供するための工程を提供することである。
【0017】
さらに、本発明の化合物、特に式Iの化合物の放射性同位体は、エゼチミブと同じ作用メカニズムを有する新しいコレステロール吸収阻害剤を同定するために設計されているスクリーニングアッセイに使用することができる。さらなる目的は、次の詳細な説明から明らかとなろう。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の新規コレステロール吸収阻害剤は、式Iの化合物
【0019】
【化10】

及び医薬適合性のその塩及びエステル((式中、
Arは、アリール及びR−置換アリールからなる群から選択され;
X、Y及びZは、−CH−、−CH(C1−6アルキル)−及び−C(C1−6アルキル)−からなる群から独立に選択され;
Rは、−OR、−O(CO)R、−O(CO)OR、−O(CO)NR、糖残基、二糖残基、三糖残基及び四糖残基からなる群から選択され;
は、−H、−C1−6アルキル及びアリールからなる群から選択されるか、又はR及びRは一緒にオキソであり;
は、−OR、−O(CO)R、−O(CO)OR及び−O(CO)NRからなる群から選択され;
は、−H、−C1−6アルキル及びアリールからなる群から選択されるか、又はRとRは一緒にオキソであり;
q、r及びtは、それぞれ独立に0及び1から選択され;
m、n及びpは、それぞれ独立に0、1、2、3及び4から選択され;
は、−OR、−O(CO)R、−O(CO)OR、−O−C1−5アルキル−OR、−O(CO)NR、−NR、−NR(CO)R、−NR(CO)OR、−NR(CO)NR、−NRSO、−COOR、−CONR、−COR、−SONR、−S(O)、−O−C1−10アルキル−COOR、−O−C1−10アルキル−CONR及びフルオロからなる群から各出現ごとに独立に選択される1個から5個の置換基であり;
、R及びRは、−H、C1−6アルキル、アリール及びアリール置換C1−6アルキルからなる群から各出現ごとに独立に選択され;
は、C1−6アルキル、アリール及びアリール置換C1−6アルキルからなる群から独立に選択され;
は、−C(≡)C−CH−NR1011、−C≡C−C(O)R13及び−(CH−NR1014からなる群から選択され;
10は、−H及び−C1−3アルキルから各出現ごとに独立に選択され;
11は、−H、−C1−3アルキル、−C(O)−C1−3アルキル、−C(O)−NR1010、−SO−C1−3アルキル及び−SO−フェニルからなる群から選択され;
12は、−H、
【0020】
【化11】

(本明細書中で「グルクロニド」と呼ぶ。)
及び
【0021】
【化12】

(本明細書中で「メチルエステルグルクロニド」と呼ぶ。)
から選択され、
13は、−OH及び−NR1011からなる群から選択され、
14は、−C(O)−C1−3アルキル、−C(O)−NR1010、−SO−C1−3アルキル及び−SO−フェニルからなる群から選択される。)である。
【0022】
本発明のある実施形態は、q、r及びtが、それぞれ独立に0及び1から選択され;m、n及びpが、それぞれ独立に0、1、2、3及び4から選択され;ただし、q及びrの少なくとも1つが1であり、m、n、p、q及びrの合計が、1、2、3、4、5又は6であり;ただし、pが0でありrが1である場合、m、q及びnの合計が、1、2、3、4又は5である、式Iの化合物である。
【0023】
本発明の第二の実施形態におけるものは、式Ia:
【0024】
【化13】

を有する式Iの化合物である。
【0025】
これらの実施形態の各クラスにおけるものは、Rが−C≡C−CH−NR1011である化合物である。
【0026】
本明細書中で使用される場合、「アルキル」は、指定された数の炭素原子を有する分枝鎖及び直鎖両方の脂肪族1価飽和炭化水素基を含むものとする。アルキル基の例には、これらに限定されないが、メチル(Me)、エチル(Et)、n−プロピル(Pr)、n−ブチル(Bu)、n−ペンチル、n−へキシル及びそれらの異性体、例えば、イソプロピル(i−Pr)、イソブチル(i−Bu)、secブチル(s−Bu)、tertブチル(t−Bu)、イソペンチル、イソへキシルなどが含まれる。指定されたアルキル基に対して、特別な接頭辞がない場合(「ノーマル」に対して「n」、secに対して「s」、tertに対して「t」、イソに対して「i」など)、指定されたアルキル基は、n−アルキル基(つまり、「プロピル」は、「n−プロピル」)である。
【0027】
本明細書中で使用される場合、「アリール」は、フェニル(Ph)、ナフチル、インデニル、テトラヒドロナフチル又はインダニルを含むものとする。フェニルが好ましい。
【0028】
12がグルクロニド又はメチルエステルグルクロニドである場合のR12のヒドロキシル基に対する適切な保護基(本明細書中で「PG」と呼ぶ。)には、これらに限定されないが、炭水化物保護基として有用であることが知られているもの、例えばベンジル、アセチル、ベンゾイル、tert−ブチルジフェニルシリル、トリメチルシリル、パラ−メトキシベンジル、ベンジリジン及びメトキシメチルなどが含まれる。このような保護基を選択的に付加し、除去するために必要な条件は、標準的な教科書、例えばGreene,T及びWuts,P.G.M.,Protective Groups in Organic Syntehsis,John Wiley & Sons,Inc.,New York,NY,1999で見出される。
【0029】
式Iの化合物は、1又は複数の不斉中心を有することができ、したがって、これらの化合物は、ラセミ化合物、ラセミ混合物、単独のエナンチオマー、エマンチオマー混合物、ジアステレオマー混合物及び個々のジアステレオマーとして生じ得る。本発明は、式Iの化合物のこのような全ての異性体を含むものである。このような式Iの化合物の異性体は全て、本発明の範囲内に含まれる。さらに、本発明の化合物の結晶形態のものの中には、多形体として存在し得るものがあり、そのようなものは本発明に含まれるものとする。さらに、本発明の化合物の中には、水又は有機溶媒との溶媒和物を形成し得るものがある。これらの水和物及び溶媒和物もまた、本発明の範囲内に包含される。
【0030】
コレステロール吸収阻害剤としてのこれらの活性により、新しいコレステロール吸収阻害剤を同定するために設計されたスクリーニングアッセイに本発明の化合物を使用することができる。式Iの化合物の放射性同位体は、特にこのようなアッセイにおいて有用である(例えば、イオウが「放射性」−35S−で置換されている、及び特に、放射性イオウ同位体がR9部分に組み込まれる式Iの化合物)。式Iの化合物のこのような放射性同位体は全て、本発明の範囲内に含まれる。
【0031】
本明細書中で、「医薬適合性の塩」という用語は、本発明で使用される化合物の非毒性塩、一般に、適切な有機又は無機塩基との遊離酸の反応により調製される、特にナトリウム、カリウム、アルミニウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、亜鉛及びテトラメチルアンモニウムなどの陽イオンから形成されるもの、ならびにアンモニア、エチレンジアミン、N−メチルグルカミン、リジン、アルギニン、オルニチン、コリン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、ジエタノールアミン、プロカイン、N−ベンジルフェンエチルアミン、1−p−クロロベンジル−2−ピロリジン−1’−イル−メチルベンズイミダゾール、ジエチルアミン、ピペラジン、モルホリン、2,4,4−トリメチル−2−ペントアミン及びtris(ヒドロキシメチル)アミノメタンなどのアミンから形成される塩などを意味するものとする。
【0032】
本発明の化合物が塩基性である場合、塩は、無機酸及び有機酸を含む、医薬適合性の非毒性酸から調製し得る。このような酸には、酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンファスルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコン酸、グルタミン酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、粘液酸、硝酸、パモ酸、パントテン酸、リン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、p−トルエンスルホン酸などが含まれる。クエン酸、臭化水素酸、塩酸、マレイン酸、リン酸、硫酸及び酒石酸が特に好ましい。
【0033】
医薬適合性のエステルの例には、これらに限定されないが、−C1−4アルキル及び、フェニル、ジメチルアミノ及びアセチルアミノで置換された−C1−4アルキルが含まれる。本明細書中で「C1−4アルキル」には、1個から4個の炭素原子を含有する線状又は分枝脂肪族鎖、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、イソプロピル、sec−ブチル及びtertブチルなどが含まれる。
【0034】
「患者」という用語は、哺乳動物、特に、病状の予防又は治療のための本活性薬剤を使用するヒトを含む。その患者に薬物を投与するということは、自己投与及び別人によるその患者への投与の両方を含む。この患者は、現在の疾病又は病状に対する治療を必要とし得るか、又はコレステロール吸収の阻害により影響を受ける疾病又は病状に対する予防又はリスクを低下させるための予防的治療を望み得る。
【0035】
「治療的有効量」という用語は、研究者、獣医、医師又は他の医療関係者が求めている組織、系、動物又はヒトの生物学的又は医学的反応を誘発する薬物又は医薬的薬剤の量を意味するものとする。「予防的有効量」という用語は、組織、系、動物又はヒトにおいて研究者、獣医、医師又は他の医療関係者が予防しようとする生物学的又は医療事象の発症を予防する、又はリスクを低下させる医薬的薬剤の量を意味するものとする。特に、患者が受ける投与量は、LDL−コレステロール量を所望するよう低下させるように選択することができ;患者が受ける投与量はまた、目標とするLDLレベルに到達するように時間をかけて漸増され得る。本発明の化合物を利用する用法、用量は、患者のタイプ、種、年齢、体重、性別及び病状;治療する症状の重症度;投与するよう選択した化合物の効力;投与経路;及び患者の腎機能及び肝機能を含む様々な要因に従い選択される。これらの要因の考慮は、本症状の進行を予防し、対抗し、又は阻止するのに必要な治療的有効投与量又は予防的有効投与量を決定する目的の場合、通常の技術を有する臨床家の範囲内である。
【0036】
本発明の化合物はコレステロール吸収阻害剤であり、単独で使用される場合、又は例えば抗アテローム性動脈硬化薬及びとりわけ例えばHMG−CoAレダクターゼ阻害剤などのコレステロール生合成阻害剤といった別の活性薬物と組み合わせで使用される場合のいずれかで、血漿コレステロールレベルを低下させる、特に血漿LDL−コレステロールレベルを低下させるのに有用である。このように、本発明は、コレステロール吸収の阻害及び高コレステロール血症を含む脂質障害の治療を必要とする人に式Iの化合物の治療的有効量を投与することを含む、コレステロール吸収を阻害するための、及び高コレステロール血症を含む脂質障害を治療するための方法を提供する。さらに、アテローム性動脈硬化症発現のリスクがある哺乳動物又は既にアテローム性動脈硬化性疾患に罹患している患者に、式Iの化合物の、必要に応じて予防的又は治療的有効量を投与することを含む、アテローム性動脈硬化症発現を予防するか又はリスクを低下させる、ならびに一旦臨床的に顕在化した場合は、アテローム性動脈硬化性疾患の進行を停止させるか遅らせるための方法を提供する。
【0037】
アテローム性動脈硬化症は、血管疾患及び医薬の関連分野で実務を行っている医師により認識され理解される症状を包含する。血行再建術後の再狭窄を含むアテローム性動脈硬化性心血管疾患、冠状動脈性心臓病(冠動脈疾患又は虚血性心疾患としても知られている。)、多発梗塞性認知症を含む脳血管疾患及び勃起障害を含む末梢血管障害は、全てアテローム性動脈硬化症の臨床症状であり、したがって、「アテローム性動脈硬化症」及び「アテローム性動脈硬化性疾患」の用語により包含される。
【0038】
冠状動脈性心臓病事象、脳血管事象及び/又は間欠性跛行の可能性が存在する場合、発症又は再発を予防する、又はリスクを低下させるために、式Iの化合物を投与し得る。冠状動脈性心臓病事象は、CHD死、心筋梗塞(つまり心臓麻痺)及び冠状動脈血行再建術を含むものとする。脳血管事象は、虚血又は脳出血(脳血管発作としても知られている。)及び一時的虚血性発作を含むものとする。間欠性跛行は、末梢血管障害の臨床症状である。「アテローム性動脈硬化性疾病事象」という用語は、本明細書中で使用される場合、冠状動脈性心臓病事象、脳血管事象及び間欠性跛行を包含するものとする。1又は複数の非致死性アテローム性動脈硬化性疾患を以前経験したことがある人は、そのような事象の再発の可能性が存在する人であるものとする。
【0039】
したがって、本発明はまた、アテローム性動脈硬化性疾病事象に対するリスクがある患者への式Iの化合物の予防的有効量の投与を含む、アテローム性動脈硬化性疾病事象の最初の発生又はその後の発生のリスクを予防又は低下させるための方法も提供する。その患者は、投与時にアテローム性動脈硬化性疾患であるかもしくはないものであり得、又は、それが発現するリスクがあり得る。
【0040】
本治療で治療される人には、アテローム性動脈硬化性疾患発現のリスクがある人及びアテローム性動脈硬化性疾病事象を有する人が含まれる。標準的なアテローム性動脈硬化性疾患リスク因子は、医薬の関連分野で実務を行う平均的な医師にとって公知である。このような既知のリスク因子には、これらに限定されないが、高血圧、喫煙、糖尿病、高密度リポタンパク質(HDL)コレステロールレベルが低いこと及びアテローム性動脈硬化性心血管疾患の家族歴が含まれる。アテローム性動脈硬化性疾患発現のリスクのある人を決定するための公表されているガイドラインは、Executive Summary of the Third Report of the National Cholesterol Education Program(NCEP)Expert Panel on Detection,Evaluation, and Treatment of High Blood Cholesterol in Adults(Adult Treatment Panel III),JAMA,2001;285pp.2486−2497で見出すことができる。上記のリスク因子の1又は複数を有するとして同定される人は、アテローム性動脈硬化性疾患発現のリスクがあるとみなされる人の群に含まれるものとする。上記のリスク因子の1又は複数を有するとして同定される人ならびに既にアテローム性動脈硬化症に罹患している人は、アテローム性動脈硬化症疾患事象のリスクがあるとみなされる人の群に含まれるものとする。
【0041】
式Iの化合物の経口投与量は、約0.1から約30mg/kg体重/日であり、好ましくは、約0.1から約15mg/kg体重/日である。したがって、70kgの平均体重の場合、その投与レベルは、薬物 約5mgから約1000mg/日である。しかし、投与量は、特定の化合物の効力を含む、上記の要因に依存して変化し得る。例えば1日2回から4回の分割量で本発明の活性薬物を投与し得るが、1日1回の投与が好ましい。例として、1日投与量は、これらに限定されないが、5mg、10mg、15mg、20mg、25mg、40mg、50mg、75mg、80mg、100mg及び200mgから選択され得る。
【0042】
本治療で使用される活性薬物は、錠剤、カプセル、ピル、粉剤、顆粒、エリキシル、チンキ剤、懸濁液、シロップ及びエマルジョンのような経口形態で投与することができる。経口製剤が好ましい。
【0043】
式Iの化合物に対して、本活性薬物の投与は、あらゆる医薬適合性の経路を介して、及びあらゆる医薬適合性の剤形で行い得る。これには、経口の従来の急速放出、時間制御放出及び遅延放出(腸溶性被覆など)医薬剤形の使用が含まれる。本発明を用いた使用のためのさらなる適切な医薬組成物は、製薬技術分野で当業者にとって公知であり、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.,Easton,PAを参照のこと。
【0044】
本発明の方法において、活性薬物は、通常、意図する投与形態(経口錠剤、カプセル、エリキシル、シロップなど)に関して適切に選択され、従来の医薬の実施に調和する適切な医薬希釈剤、賦形剤又は担体(本明細書中でこれらをまとめて「担体」材料と呼ぶ。)と混合して投与される。
【0045】
例えば、錠剤又はカプセルの形態での経口投与の場合、本活性薬物成分を、ラクトース、デンプン、スクロース、グルコース、修飾糖、修飾デンプン、メチルセルロース及びその誘導体、リン酸二カルシウム、硫酸カルシウム、マンニトール、ソルビトール及びその他の還元及び非還元糖、ステアリン酸マグネシウム、ステリック酸(steric acid)、フマル酸ステアリルナトリウム、ベヘン酸グリセリル、ステアリン酸カルシウムなどの、非毒性で医薬適合性の不活性担体と組み合わせることができる。液体形態での経口投与の場合、本薬物成分は、エタノール、グリセロール、水などの非毒性の医薬適合性不活性担体と組み合わせることができる。さらに、所望するか又は必要ならば、適切な結合剤、滑剤、崩壊剤及び着色剤ならびに香味剤もその混合物に組み込むことができる。その剤形を安定化するために、酸化防止剤などの安定化剤、例えばブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)、没食子酸プロピル、アスコルビン酸ナトリウム、クエン酸、メタ重亜硫酸カルシウム、ヒドロキノン及び7−ヒドロキシクマリン、特にBHA、没食子酸プロピル及びそれらの組合せも添加することができる。式Iの化合物をシンバスタチンなどのHMG−CoAレダクターゼ阻害剤と一緒に処方する場合、本組成物における少なくとも1つの安定化剤の使用が好ましい。その他の適切な成分には、ゼラチン、甘味料、天然及び合成ガム(アカシア、トラガカント又はアルギン酸塩など)、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ワックスなどが含まれる。
【0046】
この活性薬物はまた、小型単層ベシクル、大型単層ベシクル及び多層ベシクルなどのリポソーム送達系の形態で投与することもできる。リポソームは、コレステロール、ステアリルアミン又はホスファチジルコリンなどの様々なリン脂質から形成することができる。
【0047】
本化合物分子をカップリングした個別の担体としてモノクローナル抗体を使用することにより活性薬物を送達することもできる。活性薬物はまた、目標設定可能な薬物担体として可溶性ポリマーとカップリングさせることもできる。このようなポリマーには、ポリビニルピロリドン、ピランコポリマー、ポリヒドロキシ−プロピル−メタクリルアミド−フェノール、ポリヒドロキシ−エチル−アスパルトアミド−フェノール又はパルミトイル残基で置換された、ポリエチレンオキシド−ポリリジンが含まれ得る。さらに、活性薬剤を、薬物の制御放出を達成するのに有用な生体分解可能なポリマーの類、例えば、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸及びポリグリコール酸のコポリマー、ポリイプシロンカプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリアセタール、ポリジヒドロピラン、ポリシアノアクリレート及びヒドロゲルの架橋又は両親媒性ブロックコポリマーにカップリングさせ得る。
【0048】
本発明はまた、式Iの化合物と医薬適合性の担体との組合せを含有する医薬組成物を調製するための工程を包含する。式Iの化合物を医薬適合性の担体と組み合わせることにより調製される医薬組成物もまた包含される。
【0049】
式Iの化合物と組み合わせて1又は複数のさらなる活性薬剤を投与することができ、したがって本発明の実施形態は、複合薬を包含する。この複合薬は、式Iの化合物とさらなる活性薬剤(1又は複数)からなる単回投与剤形、ならびに、式Iの化合物とさらなる活性薬剤(1又は複数)とを別の投与でそれぞれ投与する(活性薬剤の同時又は逐次投与が可能)ことを包含する。さらなる活性薬剤(1又は複数)は、脂質修飾剤、特にコレステロール生合成阻害剤、もしくはその他の医薬活性を有する薬剤、もしくは脂質修飾効果とその他の医薬活性両方を有する薬剤であり得る。使用され得るさらなる活性薬剤の例には、これらに限定されないが、そのラクトン化又はジヒドロキシオープンアシッド(open acid)体であるスタチン及び医薬適合性のそれらの塩及びエステルを含むHMG−CoAレダクターゼ阻害剤(これらに限定されないが、ロバスタチン(米国特許第4,342,767号を参照。)、シンバスタチン(米国特許第4,444,784号を参照。)、ジヒドロキシオープンアシッドシンバスタチン、特にそのアンモニウム又はカルシウム塩、プラバスタチン、特にそのナトリウム塩(米国特許第4,346,227号を参照。)、フルバスタチン、特にそのナトリウム塩(米国特許第5,354,772号を参照。)、アトルバスタチン、特にそのカルシウム塩(米国特許第5,273,995号を参照。)、NK−104とも呼ばれるピタバスタチン(PCT国際公開WO97/23200を参照)及びロスバスタチン(CRESTOR(R);米国特許第5,260,440号及びDrugs of the Future,1999,24(5),pp.511−513を参照。);HMG−CoAシンターゼ阻害剤;スクアレンエポキシダーゼ阻害剤;スクアレンシンテターゼ阻害剤(スクアレンシンターゼ阻害剤としても知られている。)、アシルコエンザイムA:ACAT−1又はACAT−2の選択的阻害剤ならびにACAT−1及びACAT−2二重阻害剤を含むコレステロールアシルトランスフェラーゼ(ACAT)阻害剤;ミクロソームトリグリセリドトランスファータンパク質(MTP)阻害剤;プロブコール;ナイアシン;米国特許第5,767,115号及び同第5,846,966号に記載の、SCH−58235などのコレステロール吸収阻害剤;胆汁酸封鎖剤;LDL(低密度リポタンパク質)受容体誘導因子;血小板凝集阻害剤、例えば、糖タンパク質IIb/IIIaフィブリノゲン受容体アンタゴニスト及びアスピリン;グリタゾンと一般に呼ばれる化合物(例えばトログリタゾン、ピオグリタゾン及びロシグリタゾン)を含む、及びチアゾリジンジオンとして知られる構造クラス内に含まれる化合物、ならびにチアゾリジンジオン構造クラス以外のPPARγアゴニストを含む、ヒトペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)アゴニスト;微粒化フェノフィブレート及びゲンフィブロジルを含む、クロフィブレート、フェノフィブレートなどのPPARαアゴニスト;PPAR二重α/γアゴニスト;ビタミンB(ピリドキシンとしても知られる。)及びHCl塩などそれらの医薬適合性の塩;ビタミンB12(シアノコバラミンとしても知られる。);葉酸又はナトリウム塩及びメチルグルカミンなどの医薬適合性のその塩もしくはエステル;ビタミンC及びE及びβカロチンなどの抗酸化ビタミン;βブロッカー;ロサルタンなどのアンジオテンシンIIアンタゴニスト;エナラプリル及びカプトプリルなどのアンジオテンシン変換酵素阻害剤;ニフェジピン及びジルチアザムなどのカルシウムチャネルブロッカー;エンドセリアン(endothelian)アンタゴニスト;ABC1遺伝子発現を促進する薬剤;阻害剤及びアゴニスト両方を含むFXRリガンド;及びこの受容体の全サブタイプの阻害剤及びアゴニスト両方を含むLXRリガンド、例えばLXRα及びLXRβ;アレンドロン酸ナトリウムなどのビスホスホネート化合物及びロフェコキシブ及びセレコキシブなどのシクロオキシゲナーゼ−2阻害剤が含まれる。さらに、本発明の式Iの化合物、例えば化合物Iは、AIDS感染患者における抗レトロウイルス療法に付随する脂質異常を治療するためにAIDS感染患者における抗レトロウイルス療法と組み合わせて使用され得る(これらに限定されないが、例えばインジナビル、ネルフィナビル、リトナビル及びサキナビルなどのHIVプロテアーゼ阻害剤と組み合わせたそれらの使用)。
【0050】
コレステロール吸収を阻害するために有用な、ならびに、脂質障害を治療する、アテローム性動脈硬化性疾患発現の予防又はリスクを低下させる、臨床的に明確になっている場合はアテローム性動脈硬化性疾患の進行を停止させるか又は遅らせる、及びアテローム性動脈硬化症疾病事象の最初の発生又はその後の発生の予防又はリスクを低下させるなど、コレステロール吸収の阻害により影響を受ける疾病及び症状を治療及び/又はリスク低下させるために有用な医薬品を調製するために、必要に応じて、式Iの化合物の治療的又は予防的有効量を使用することができる。例えば、本薬品は、式Iの化合物 約5mgから約1000mgから構成され得る。式Iの化合物からなる医薬品はまた、上述のもののような1又は複数のさらなる活性薬剤とともに調製し得る。
【0051】
本発明の化合物は、次のものに例示されるようにコレステロール吸収を阻害する。マウスにおけるコレステロール吸収の阻害について化合物7b(実施例7で示す。)を試験し、その活性をエゼチミブと比較した。試験化合物、エゼチミブ又は7b(0.12から10mg/kg)を含む、又は不含の0.25%メチルセルロース溶液 0.1mLを、7週齢から8週齢のC57BL/6オスマウス(n=6/群)に経口投与した。30分後、全てのマウスに、マウス一匹あたり1%コレステロール及び2μCi[H]−コレステロールを含有する0.25% メチルセルロース溶液 0.2mLを経口投与した。3時間後、動物を安楽死させ、肝臓及び血液を回収した。肝臓及び血漿におけるコレステロールカウントを調べ、コレステロール吸収の%阻害率を計算した。エゼチミブ及び7b両方が試験した最低用量で>90%コレステロール吸収を阻害した。
【0052】
さらに、ラットにおけるコレステロール吸収阻害について7bを試験し、その活性をエゼチミブ−グルクロニドの阻害と比較した。100mg/kg イナクチン i.p.でラットを麻酔した。18G Venocatheterを通して、胃底を介して十二指腸に約1cmから2cm入るように腸にカニューレーションした。そのカニューレを幽門弁の位置で結紮した。ラットに、ラット胆汁 1mL又はラット胆汁 1ml中の試験化合物、7b又はエゼチミブ−グルクロニド(0.3から30μg/kg)のいずれかを与えた。送達後にカニューレに残留しているビヒクル又は薬物を1ml生理食塩水で腸にすすぎ落とした。化合物又はビヒクル送達から30分以内に、脂肪乳剤中に1μCi14C−コレステロールを含有する溶液 3mLをカニューレを介して腸に送達させた。5時間後、麻酔下でそのラットを安楽死させ、血液及び肝臓を回収した。肝臓及び血漿におけるコレステロールカウントを調べ、コレステロール吸収の%阻害率を計算した。この2つの試験化合物は、このモデルでのコレステロール吸収阻害について同様の効力を示した。
【0053】
本発明の構造式Iの化合物は、適切な材料を使用して、次のスキーム及び実施例の手段に従い、調製することができ、続く特定の実施例によりさらに例示する。さらに、本明細書中に記載の手段を利用することにより、本明細書中で主張するさらなる本発明の化合物を当業者は容易に調製できる。しかし、この実施例で説明する化合物は、本発明としてみなされる唯一の種類を形成するものとして解釈されるものではない。この実施例はさらに、本発明の化合物を調製するための詳細を説明する。次の調製手段の条件及び工程の既知の変更をこれらの化合物を調製するために使用することができることを当業者は容易に理解するであろう。
【0054】
本化合物の調製において様々なクロマトグラフィー技術を使用し得る。これらの技術には、以下に限定されないが、High Performance Liquid Chromatography(高速液体クロマトグラフィー)(順相、逆相及びキラル相を含む。);Super Critical Fluid Chromatography(超臨界流体クロマトグラフィー);分取薄層クロマトグラフィー;シリカゲル又は逆相シリカゲルを用いたフラッシュクロマトグラフィー;イオン交換クロマトグラフィー;及びラジアルクロマトグラフィーが含まれる。特に断りがない限り、温度は全て摂氏である。
【0055】
Ac アシル(CHC(O)−)
Bn ベンジル
calc.:計算値
Celite CeliteTM 珪藻土
Dess−Martin Periodinane 1,1,1−トリス(アセチルオキシ)−1,1−ジヒドロ−1,2−ベンズヨードキソール−3−(1H)−オン
DMF N,N−ジメチルホルムアミド
equiv. 当量
ES−MS 電子スプレーイオン−質量分析
EtOAc 酢酸エチル
h 時間
HPLC High Performance liquid chromatography(高速液体クロマトグラフィー)
min 分
m.p. 融点
MS マススペクトル
r.t.(又はrt) 室温
TFA トリフルオロ酢酸
THF テトラヒドロフラン
Tlc 薄層クロマトグラフィー。
【0056】
下記の全般的スキームは、構造式I−4の本発明の化合物を合成するための方法を説明する。置換基は全て、別段の断りがない限り、上で定義したとおりである。この方法において、I−1は、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)もしくは[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)などの適切なパラジウム触媒及びヨウ化銅(I)存在下でタイプI−2の末端アルキンを用いて処理する。この反応は通常、室温から100℃の間の温度にて、6時間から48時間にわたり、DMFなどの不活性有機溶媒中で行われ、生成物は、構造式I−3の内部アルキンである。アルキンI−2は、I−1との反応において対応する放射性標識付加化合物を提供するような35Sなどの放射性原子を含有し得る。I−3からI−4への変換は、有機合成分野で当業者にとって公知の様々な加水分解方法を用いて達成し得る。例えば、特に穏やかな加水分解プロトコールには、メタノール及び水を含有する混合溶媒系中での、トリエチルアミン又はジイソプロピルエチルアミンなど第三級アミン塩基によるI−3の処理が含まれる。本反応の生成物は、構造式I−4の化合物である。
【0057】
【化14】

【0058】
次の実施例は、本発明を説明するために提供するものであり、本発明の範囲を何ら制限するものとして解釈されるものではない。次の記号表示は、ある一定の繰り返し使用される中間体に対して実施例において使用される。
【0059】
【化15】


【0060】
化合物(3R,4S)−3−[(3S)−3−(4−フルオロフェニル)−3−ヒドロキシプロピル]−4−(4−ヒドロキシフェニル)−1−(4−ヨードフェニル)アゼチジン−2−オン(i−6)及び4−[(2S,3R)−3−[(3S)−3−(4−フルオロフェニル)−3−ヒドロキシプロピル]−1−(4−ヨードフェニル)−4−オキソアゼチジン−2−イル]フェニルメチルβ−D−グルコピラノシドウロネート(i−7)を、Burnett,D.S.;Caplen,M.A.;Domalski,M.S.;Browne,M.E.;Davis,H.R.Jr.;Clader,J.W.Bioorg.Med.Chem.Lett.(2002)、12、311に従い、調製した。化合物i−8は、保護基がアシルであるi−7のヒドロキシ保護類似体である。
【0061】
次の定義もまた、本実施例において使用する。
【0062】
【化16】

【実施例】
【0063】
(実施例1)
N−プロプ−2−イン−1−イルアセトアミド(i−1)の調製。
【0064】
塩化アセチル(0.52mL、7.3mmol)を、0℃にてピリジン(2.5mL)中のプロパルギルアミン(0.5mL、7.3mmol)及びジメチルアミノピリジン(18mg、0.14mmol)の撹拌溶液に添加し、得られた混合物を周囲温度に温めた。約15時間後、その反応混合物を酢酸エチルで希釈し、1N HCl及び食塩水で連続的に洗浄した。有機相を乾燥(NaSO)させ、濾過し、真空中で濃縮し、表題化合物(i−1)を得て、さらに精製せずにそれを使用した。
【0065】
(実施例2)
N−プロプ−2−イン−1−イルベンゼンスルホンアミド(i−2)の調製。
【0066】
ベンゼンスルホニルクロリド(1.16mL、9.1mmol)を、室温にてピリジン(5mL)中のプロパルギルアミン(0.62mL、9.1mmol)及びジメチルアミノピリジン(22mg、0.18mmol)の撹拌溶液に添加した。得られた溶液を周囲温度にて約15時間熟成させた。その反応混合物を酢酸エチルで希釈し、1N HCl及び食塩水で連続的に洗浄した。有機相を乾燥(NaSO)させ、濾過し、真空中で濃縮し、表題化合物(i−2)を与え、さらに精製せずにそれを使用した。
【0067】
(実施例3)
N,N−ジメチル−N’−プロプ−2−イン−1−イル尿素(i−3)の調製。
【0068】
ジメチルカルバミルクロリド(0.84mL、9.1mmol)を、室温にてピリジン(5mL)中のプロパルギルアミン(0.62mL、9.1mmol)及びジメチルアミノピリジン(22mg、0.18mmol)の撹拌溶液に添加した。得られた懸濁液を周囲温度にて約15時間撹拌した。その反応混合物を酢酸エチルで希釈し、1N HCl及び食塩水で連続的に洗浄した。有機相を乾燥(NaSO)させ、濾過し、真空中で濃縮し、表題化合物(i−3)を得て、さらに精製せずにそれを使用した。
【0069】
(実施例4)
N−メチル−N−プロプ−2−イン−1−イルメタンスルホンアミド(i−4)の調製。
【0070】
メタンスルホニルクロリド(1.12mL、14.5mmol)を、室温にてピリジン(10mL)中のN−メチルプロパルギルアミン(1.22mL、14.5mmol)及びジメチルアミノピリジン(35mg、0.30mmol)の撹拌溶液に添加した。約15時間熟成させた後、その反応混合物を酢酸エチルに注ぎ、1N HCl及び食塩水で連続的に洗浄した。有機相を乾燥(NaSO)させ、濾過し、真空中で濃縮し、表題化合物(i−4)を得て、さらに精製せずにそれを使用した。
【0071】
(実施例5)
N−プロプ−2−イン−1−イルメタンスルホンアミド(i−5)の調製。
【0072】
メタンスルホニルクロリド(1.40mL、18.1mmol)を、0℃にてピリジン(10mL)中のプロパルギルアミン(1.00g、18.1mmol)及びジメチルアミノピリジン(44.0mg、0.36mmol)の撹拌溶液に滴下添加した。約15時間熟成させた後、その反応混合物を1N HClに注ぎ、酢酸エチルで2回抽出した。合わせた有機抽出物を重炭酸ナトリウム飽和水溶液、食塩水で洗浄し、乾燥(MgSO)させ、濾過し、真空中で濃縮し、表題化合物i−5を得た。未精製i−5を静置して結晶化し、さらに精製せずに使用した。
【0073】
(実施例6)
N−(3−{4−[(2S,3R)−3−[(3S)−3−(4−フルオロフェニル)−3−ヒドロキシプロピル]−2−(4−ヒドロキシフェニル)−4−オキソアゼチジン−1−イル]フェニル}プロプ−2−イン−1−イル)メタンスルホンアミド(化合物6a)の調製
【0074】
【化17】

【0075】
DMF(最終産物に対して0.1M濃度)中の(3R,4S)−3−[(3S)−3−(4−フルオロフェニル)−3−ヒドロキシプロピル]−4−(4−ヒドロキシフェニル)−1−(4−ヨードフェニル)アゼチジン−2−オン(i−6)(1.00当量)、N−プロプ−2−イン−1−イルメタンスルホンアミド(i−5)(1.50当量)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)(0.15当量)及びヨウ化銅(I)(0.30当量)の溶液に、トリエチルアミン(7当量)を窒素雰囲気下で添加し、得られた溶液を室温にて熟成させる。反応終了後、揮発物を真空中で蒸発させ、未精製残渣をシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィーにより精製し、表題化合物を得ることができる。
【0076】
(実施例7)
段階A:4−[(2S,3R)−3−[(3S)−3−(4−フルオロフェニル)−3−ヒドロキシプロピル]−1−(4−{3−[(メチルスルホニル)アミノ]プロプ−1−イン−1−イル}フェニル)−4−オキソアゼチジン−2−イル]フェニルメチルβ−D−グルコピラノシドウロネート(化合物7a)の調製。
【0077】
【化18】

【0078】
トリエチルアミン(0.07mL、0.502mmol)を、窒素雰囲気下でDMF(0.5mL)中の4−[(2S,3R)−3−[(3S)−3−(4−フルオロフェニル)−3−ヒドロキシプロピル]−1−(4−ヨードフェニル)−4−オキソアゼチジン−2−イル]フェニルメチルβ−D−グルコピラノシドウロネート(i−7)(0.050g、0.071mmol)、N−プロプ−2−イン−1−イルメタンスルホンアミド(i−5)(0.014g、0.105mmol)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)(0.012g、0.010mmol)及びヨウ化銅(0.005g、0.026mmol)の撹拌溶液に添加し、得られた溶液を室温にて18時間熟成させた。揮発物を真空中で蒸発させ、未精製残渣をシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィーにより精製し(勾配溶出;溶出液として0−25% メタノール/塩化メチレン)表題化合物を得た;m/z(ES)713(MH),505。
【0079】
段階B:4−[(2S,3R)−3−[(3S)−3−(4−フルオロフェニル)−3−ヒドロキシプロピル]−1−(4−{3−[(メチルスルホニル)アミノ]プロプ−1−イン−1−イル}フェニル)−4−オキソアゼチジン−2−イル]フェニルβ−D−グルコピラノシドウロン酸(化合物7b)の調製。
【0080】
【化19】

【0081】
メタノール/水/トリエチルアミン(1:7:2;1mL)中の化合物7aの溶液を室温にて約1.5時間撹拌した。揮発物を真空中で蒸発させ、未精製残渣をYMC Pack Pro C18相での分取逆相高速液体クロマトグラフィーにより精製し(勾配溶出;溶出液として10−65% アセトニトリル/水、0.1% TFA調整剤)、表題化合物(7b)を得た;m/z(ES)699(MH),505;HRMS(ES)m/z C3436FN11S(MH)に対する計算値699.2024、実測値699.2016。
【0082】
(実施例6bから6g及び7cから7n)
実施例6(表1で示す。)もしくは実施例7(表2で示す。)に記載する一般的合成手段を使用して、式Iaの次の化合物を調製したか(MSデータを与えることにより示す。)、又は調製することができる。
【0083】
【化20】

【0084】
【表2】

【0085】
【表3】


【0086】
(実施例8)
段階A:4−((2S,3R)−3−[(3S)−3−(4−フルオロフェニル)−3−ヒドロキシプロピル]−4−オキソ−1−{4−[(トリメチルシリル)エチニル]フェニル}アゼチジン−2−イル)フェニルメチルβ−D−グルコピラノシドウロネート(8a)の調製。
【0087】
【化21】

【0088】
トリエチルアミン(69.0μL、0.495mmol)を、窒素雰囲気下でDMF(5mL)中のi−7(50.0mg、0.071mmol)、トリメチルシリアセチレン(trimethylsilyacetylene)(12.0μL、0.085mmol)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)(13.0mg、0.011mmol)及びヨウ化銅(5.10mg、0.028mmol)の撹拌溶液に添加し、得られた溶液を室温にて18時間熟成させた。揮発物を真空中で蒸発させ、未精製残渣をシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィーにより精製(勾配溶出;溶出液として0−25% メタノール/塩化メチレン)して、表題化合物(8a)を得た;m/z(ES)660(M−OH),470。
【0089】
段階B:4−{(2S,3R)−1−(4−エチニルフェニル)−3−[(3S)−3−(4−フルオロフェニル)−3−ヒドロキシプロピル]−4−オキソアゼチジン−2−イル}フェニルβ−D−グルコピラノシドウロン酸(8b)の調製。
【0090】
【化22】

【0091】
メタノール/水/トリエチルアミン(0.25mL:1.10mL:0.40mL)中の8aの溶液を室温にて約6時間撹拌した。揮発物を真空中で蒸発させ、未精製残渣をYMC Pack Pro C18相での分取逆相高速液体クロマトグラフィーにより精製し(勾配溶出;溶出液として10−65% アセトニトリル/水、0.1% TFA調整剤)、表題化合物(8b)を得た;m/z(ES)574(M−OH),398;HRMS(ES)m/z C3231FNO(MH)に対する計算値、592.1983、実測値 592.1985。
【0092】
(実施例9)
段階A:4−[(2S,3R)−3−[(3S)−3−(4−フルオロフェニル)−3−ヒドロキシプロピル]−1−(4−{3−[(メチルスルホニル)アミノ]プロピル}フェニル)−4−オキソアゼチジン−2−イル]フェニルメチルβ−D−グルコピラノシドウロネート(9a)の調製。
【0093】
【化23】

【0094】
メタノール(2mL)中の7a(40.0mg、0.056mmol)及びパラジウム(活性炭担持10重量% 〜8mg(乾燥ベース))の混合物に、大気圧にて約1時間水素添加した。その反応混合物をCeliteの短いプラグを介して濾過し、メタノールで大量に溶出し、濾過液を真空中で蒸発させ、表題化合物(9a)を得た;m/z(ES)509(M−糖−OH)
【0095】
段階B:4−[(2S,3R)−3−[(3S)−3−(4−フルオロフェニル)−3−ヒドロキシプロピル]−1−(4−{3−[(メチルスルホニル)アミノ]プロピル}フェニル)−4−オキソアゼチジン−2−イル]フェニルβ−D−グルコピラノシドウロン酸(9b)の調製。
【0096】
【化24】

【0097】
メタノール/水/トリエチルアミン(1:7:2;1mL)中の9bの溶液を室温にて約1時間撹拌した。揮発物を真空中で蒸発させ、未精製残渣をYMC Pack Pro C18相での分取逆相高速液体クロマトグラフィーにより精製し(勾配溶出;溶出液として10−65% アセトニトリル/水、0.1% TFA調整剤)、表題化合物(9b)を得た;m/z(ES)735(M+Na),685(M−OH),509(M−糖−OH);HRMS(ES)m/z C3439FN11S(MH)に対する計算値703.2337、実測値 703.2337。
【0098】
(実施例10)
段階A:4−{(2S,3R)−3−[(3S)−3−アセトキシ)−3−(4−フルオロフェニル)プロピル]−1−[4−(3−{[tert−ブチル(ジメチルシリル]オキシ}プロプ−1−イン−1−イル)フェニル]−4−オキソアゼチジン−2−イル}フェニルメチル2,3,4−トリ−O−アセチル−β−D−グルコピラノシドウロネート(10a)の調製。
【0099】
【化25】

【0100】
トリエチルアミン(170μL、1.25mmol)を、窒素雰囲気下DMF(1.3mL)中のi−8(156mg、0.178mmol)、tert−ブチルジメチル(2−プロピニルオキシ)シラン(43.0μL、0.214mmol)、ジクロロビストリフェニルホスフィンパラジウム(II)(12.0mg、0.018mmol)及びヨウ化銅(7.00mg、0.036mmol)の溶液に添加し、得られた溶液を室温にて約20時間熟成させた。その反応混合物を重炭酸ナトリウム飽和水溶液に注ぎ、ジエチルエーテルで2回抽出した。合わせた有機抽出物を水、食塩水で洗浄し、乾燥(MgSO)させ、濾過し、濾過液を真空中で濃縮した。未精製残渣をシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィーにより精製し(勾配溶出;溶出液として15−40% 酢酸エチル/ヘキサン)、表題化合物10aを得た。
【0101】
段階B:4−{(2S,3R)−3−[(3S)−3−(アセチルオキシ)−3−(4−フルオロフェニル)プロピル]−1−[4−(3−ヒドロキシプロプ−1−イン−1−イル)フェニル]−4−オキソアゼチジン−2−イル}フェニルメチル2,3,4−トリ−O−アセチル−β−D−グルコピラノシドウロネート(10b)の調製。
【0102】
【化26】

【0103】
フッ化テトラブチルアンモニウム水和物(39.0mg、0.148mmol)をテトラヒドロフラン(1.5mL)中の10a(136mg、0.148mmol)に添加し、得られた溶液を室温にて1時間熟成させた。その反応混合物を塩化アンモニウム飽和水溶液に注ぎ、エーテルで2回抽出した。合わせた有機抽出物を重炭酸ナトリウム飽和溶液、食塩水で洗浄し、乾燥(MgSO)させ、濾過し、真空中で濃縮した。未精製残渣をシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィーにより精製し(50% 酢酸エチル/ヘキサン)、表題化合物(10b)を得た。
【0104】
段階C:4−{(2S,3R)−3−[(3S)−3−(アセチルオキシ)−3−(4−フルオロフェニル)プロピル]−4−オキソ−1−[4−(3−オキソプロプ−1−イン−1−イル)フェニル]アゼチジン−2−イル}フェニルメチル2,3,4−トリ−O−アセチル−β−D−グルコピラノシドウロネート(10c)の調製。
【0105】
【化27】

【0106】
Dess−Martinペルヨージナン(33.0mg、0.077mmol)を、室温にてジクロロメタン(1mL)中の10b(62.0mg、0.077mmol)及びピリジン(31.0μL、0.386mmol)の溶液に添加した。30分後、その反応混合物を重炭酸ナトリウム飽和水溶液に注ぎ、酢酸エチルで2回抽出した。合わせた有機抽出物を水、食塩水で洗浄し、乾燥(MgSO)させ、濾過し、真空中で濃縮した。未精製残渣をシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィーにより精製し(勾配溶出;20−40% 酢酸エチル/ヘキサン)、表題化合物(10c)を得た。
【0107】
段階D:4−{(2S,3R)−3−[(3S)−3−(アセチルオキシ)−3−(4−フルオロフェニル)プロピル]−1−[4−(カルボキシエチニル)フェニル]−4−オキソアゼチジン−2−イル}フェニルメチル2,3,4−トリ−O−アセチル−β−D−グルコピラノシドウロネート(10d)の調製。
【0108】
【化28】

【0109】
リン酸二水素ナトリウム(9.00mg、0.065mmol)及び亜塩素酸ナトリウム(5.00mg、0.055mmol)の水溶液(0.1mL)を室温にてtertブチルアルコール(0.4mL)、ジオキサン(0.2mL)及びイソブチレン(〜0.1mL)中の10c(37.0mg、0.046mmol)の溶液に添加した。1.5時間後、その反応混合物を真空中で濃縮し、未精製残渣を酢酸エチルで繰り返し摩砕した。有機洗浄物を乾燥(NaSO)させ、濾過し、真空中で濃縮し、表題化合物10dを得た。
【0110】
段階E:4−{(2S,3R)−1−[4−(カルボキシエチニル)フェニル]−3−[(3S)−3−(4−フルオロフェニル)−3−ヒドロキシプロピル]−4−オキソアゼチジン−2−イル}フェニルβ−D−グルコピラノシドウロン酸(10e)の調製。
【0111】
【化29】

【0112】
メタノール(3mL)中の4−{(2S,3R)−3−[(3S)−3−(アセチルオキシ)−3−(4−フルオロフェニル)プロピル]−1−[4−(カルボキシエチニル)フェニル]−4−オキソアゼチジン−2−イル}フェニルメチル2,3,4−トリ−O−アセチル−β−D−グルコピラノシドウロネート(10d)及びシアン化ナトリウム(〜1mg、0.020mmol)の溶液を45℃に加熱した。22時間後、その反応混合物を減圧下で濃縮し、メタノール/水/トリエチルアミン(1:7:2、1mL)に溶解した。室温にて約1時間撹拌した後、揮発物を真空中で蒸発させ、未精製残渣をYMC Pack Pro C18相での分取逆相高速液体クロマトグラフィーにより精製し(勾配溶出;溶出液として10−60% アセトニトリル/水、0.1% TFA調整剤)、表題化合物(10e)を得た;m/z(ES)442.0(M−糖−OH)、618.0(M−OH);HRMS(ES)m/z C3331FNO11(MH)に対する計算値 636.1881、実測値 636.1889。
【0113】
(実施例11)
段階A:4−((2S,3R)−3−[(3S)−3−(アセチルオキシ)−3−(4−フルオロフェニル)プロピル]−1−{4−(3−(エチルアミノ)−3−オキソプロプ−1−イン−1−イル]フェニル}−4−オキソアゼチジン−2−イル)フェニルメチル2,3,4−トリ−O−アセチル−β−D−グルコピラノシドウロネート(11a)の調製。
【0114】
【化30】

【0115】
DMF(40.0μL、0.40mmol)中のエチルアミン塩酸塩及びジイソプロピルエチルアミンの1M溶液を、DMF(0.25mL)中の4−{(2S,3R)−3−[(3S)−3−(アセチルオキシ)−3−(4−フルオロフェニル)プロピル]−1−[4−(カルボキシエチニル)フェニル]−4−オキソアゼチジン−2−イル}フェニルメチル2,3,4−トリ−O−アセチル−β−D−グルコピラノシドウロネート(10d)(27.0mg、0.033mmol)、1−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(19.0mg、0.099mmol)及び1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(8.00mg、0.059mmol)に添加した。4.5時間後、その反応混合物を酢酸エチルに注ぎ、水及び食塩水で連続的に洗浄した。有機層を乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。未精製残渣をシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィーにより精製し(勾配溶出;50−60% 酢酸エチル/ヘキサン)、表題化合物11aを得た。
【0116】
段階B:4−{(2S,3R)−1−{4−[3−(エチルアミノ)−3−オキソプロプ−1−イン−1−イル]フェニル}−3−[(3S)−3−(4−フルオロフェニル)−3−ヒドロキシプロピル]−4−オキソアゼチジン−2−イル}フェニルβ−D−グルコピラノシドウロン酸(11b)の調製。
【0117】
【化31】

【0118】
メタノール(3mL)中の4−((2S,3R)−3−[(3S)−3−(アセチルオキシ)−3−(4−フルオロフェニル)プロピル]−1−{4−(3−(エチルアミノ)−3−オキソプロプ−1−イン−1−イル]フェニル}−4−オキソアゼチジン−2−イル)フェニルメチル2,3,4−トリ−O−アセチル−β−D−グルコピラノシドウロネート(11a)(22.0mg、0.026mmol)及びシアン化ナトリウム(〜1mg、0.020mmol)の溶液を45℃に加熱した。18時間後、その反応混合物を減圧下で濃縮し、メタノール/水/トリエチルアミン(1:3:1、2.5mL)に溶解した。室温にて約1時間撹拌した後、揮発物を真空中で蒸発させ、未精製残渣をYMC Pack Pro C18相での分取逆相高速液体クロマトグラフィーにより精製し(勾配溶出;溶出液として10−60% アセトニトリル/水、0.1% TFA調整剤)、表題化合物(11b)を得た;m/z(ES)663.0(M+H);HRMS(ES)m/z C3536FN10(MH)の計算値 663.2354、実測値 663.2341。
【0119】
(実施例12)
段階A:[35S]N−プロプ−2−イン−1−イルメタンスルホンアミドの調製。
【0120】
合計3.5mCiとなる[35S]メタンスルホニルクロリド(Dean,D.C.ら、J.Med.Chem.1996,39,1767参照)の適切な体積を塩化メチレン中の保存溶液から取り出し5mL三角フラスコに入れた。次に、それを体積が約50μLになるまで大気圧で蒸留した。この溶液に、すぐにプロパルギルアミン 約50μLを添加した。15分後、その反応混合物を酢酸エチル 10mLで希釈し、重炭酸ナトリウム飽和溶液(3x2mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。濾過後、得られた溶液は、3.3mCiのカウントを有し、HPLC(Zorbax XDB C8カラム、4.6x150mm、5% アセトニトリル:HO(0.1% TFA)から100%アセトニトリル、15分間、直線的勾配、1mL/分、t=4.4分)により99.9%の放射化学的純度であった。
【0121】
段階B:[35S]4−[(2S,3R)−3−[(3S)−3−(4−フルオロフェニル)−3−ヒドロキシプロピル]−1−(4−{3−[(メチルスルホニル)アミノ]プロプ−1−イン−1−イル}フェニル)−4−オキソアゼチジン−2−イル]フェニルメチルβ−D−グルコピラノシドウロネート([35S]7a)の調製(は、35Sを示す。)。
【0122】
【化32】

【0123】
プラスチック遠沈管の中で、ジメチルホルムアミド 100μL中に[35S]N−プロプ−2−イン−1−イルメタンスルホンアミド 3.0mCi、化合物i−7 1mg及びトリエチルアミン1μLを溶解した。この溶液にジメチルホルムアミド 1mL中にテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0) 8.1mg及びヨウ化銅 1.4mgを含有する保存溶液 10μLを添加した。室温にて60時間(この時点でHPLCにより55%の変換を示す。)撹拌した。HPLC(Zorbax XDB C8カラム、4.6x150mm、5% アセトニトリル:HO(0.1% TFA)から100%アセトニトリル、15分間、直線的勾配、1mL/分、t=9.3分))により44.4%の放射化学的純度を有するこの反応混合物を直接次の段階に持っていった。
【0124】
段階C:[35S]4−[(2S,3R)−3−[(3S)−3−(4−フルオロフェニル)−3−ヒドロキシプロピル]−1−(4−{3−[(メチルスルホニル)アミノ]プロプ−1−イン−1−イル}フェニル)−4−オキソアゼチジン−2−イル]フェニルβ−D−グルコピラノシドウロン酸([35S]7b)の調製。
【0125】
【化33】

【0126】
化合物[35S]7bを含有する未精製反応混合物をメタノール 25μL、水 90μL及びトリエチルアミン 30μLで処理し、室温にて1時間撹拌し、その時点でゆっくりと窒素を流してほぼ乾燥するまで濃縮した。残渣を1:1 アセトニトリル:HOに溶解し、セミ分取クロマトグラフィー(Zorbax XDB C8 250x9.4mmカラム,70:30 アセトニトリル:HO(0.1% TFA)4mL/分、1x0.2mL 注入)を行った。生成物 540μCiを得たが、それは、HPLC(Zorbax XDB C8カラム、4.6x150mm,70:30 アセトニトリル:HO(0.1% TFA)、1mL/分、t=10.4分)により99.9%の放射化学的純度を有し、それを化合物7bの基準試料とともに共溶出された。LC/MS m/z=508(生成物−グルクロニド−HO),SA=769Ci/mmol。
【0127】
35S]7bの代替調製
段階A:[35S]7aの調製
合計1.3mCiとなる[35S]メタンスルホニルクロリド(Dean,D.C.ら、J.Med.Chem.1996,39,1767参照)の適切な体積を塩化メチレン中の保存溶液から取り出し、5mL三角フラスコに入れた。次に、それを体積が約50μLになるまで大気圧で蒸留した。この溶液に、すぐにピリジン 5μL中の13a 1mgの溶液(水素化カルシウムで新たに蒸留)を添加した。
【0128】
【化34】

【0129】
その溶液を室温にて5分間撹拌し、その時点でゆっくりと窒素を流してほぼ乾燥するまで濃縮した。HPLC(Zorbax XDB C8カラム、4.6x150mm,5% アセトニトリル:HO(0.1% TFA)から100% アセトニトリル、15分間直線的勾配、1mL/分、t=9.3分)により80.1%の放射化学的純度を有するこの反応混合液を直接次の段階に持っていった。
【0130】
段階B:[35S]7bの調製
35S]7aを含有する未精製反応混合物をメタノール 25μL、水 90μL及びトリエチルアミン 30μLで処理し、室温にて1時間撹拌し、その時点でゆっくりと窒素を流してほぼ乾燥するまで濃縮した。残渣を1:1 アセトニトリル:HOに溶解し、セミ分取クロマトグラフィー(Zorbax XDB C8 250x9.4mmカラム,70:30 アセトニトリル:HO(0.1% TFA)4mL/分、1x0.2mL 注入)を行った。生成物の350μCiを得たが、それは、HPLC(Zorbax XDB C8カラム、4.6x150mm,70:30 アセトニトリル:HO(0.1% TFA)、1mL/分、t=10.4分)により98.4%の放射化学的純度を有しており、化合物7bの基準試料とともに共溶出された。LC/MS m/z=508(生成物−グルクロニド−HO),SA=911Ci/mmol。
【0131】
本発明をその具体的な実施形態を参照して記述し説明したが、当業者は、様々な変更、改変及び置換が、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく本明細書においてなされ得ることを理解されたい。例えば、上記で示されるように本発明において使用される活性薬剤に対する何らかの適応に対して治療を受ける哺乳動物の応答性がばらつく結果、上記好ましい投与量以外の有効投与量を適用できることもある。同様に、観察される特異的な薬理学的応答は、選択する具体的な活性化合物又は、医薬担体の有無、ならびに使用する製剤のタイプによって、また、それらに依存して変化することがあり、そのような予想される結果の変動又は相違が、本発明の目的及び実施により企図される。したがって、本発明は以下の特許請求の範囲によってのみ限定され、そのような特許請求の範囲は妥当な限り広く解釈されるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物
【化1】

及び医薬適合性のその塩及びエステル(式中、
Arは、アリール及びR−置換アリールからなる群から選択され;
X、Y及びZは、−CH−、−CH(C1−6アルキル)−及び−C(C1−6アルキル)−からなる群から独立に選択され;
Rは、−OR、−O(CO)R、−O(CO)OR、−O(CO)NR、糖残基、二糖残基、三糖残基及び四糖残基からなる群から選択され;
は、−H、−C1−6アルキル及びアリールからなる群から選択されるか、又はR及びRは一緒にオキソであり;
は、−OR、−O(CO)R、−O(CO)OR及び−O(CO)NRからなる群から選択され;
は、−H、−C1−6アルキル及びアリールからなる群から選択されるか、又はRとRは一緒にオキソであり;
q、r及びtは、それぞれ独立に0及び1から選択され;
m、n及びpは、それぞれ独立に0、1、2、3及び4から選択され;
は、−OR、−O(CO)R、−O(CO)OR、−O−C1−5アルキル−OR、−O(CO)NR、−NR、−NR(CO)R、−NR(CO)OR、−NR(CO)NR、−NRSO、−COOR、−CONR、−COR、−SONR、−S(O)、−O−C1−10アルキル−COOR、−O−C1−10アルキル−CONR及びフルオロからなる群から各出現ごとに独立に選択される1個から5個の置換基であり;
、R及びRは、−H、C1−6アルキル、アリール及びアリール置換C1−6アルキルからなる群から各出現ごとに独立に選択され;
は、C1−6アルキル、アリール及びアリール置換C1−6アルキルからなる群から独立に選択され;
は、−C≡C−CH−NR1011、−C≡C−C(O)R13及び−(CH−NR1014からなる群から選択され;
10は、−H及び−C1−3アルキルから各出現ごとに独立に選択され;
11は、−H、−C1−3アルキル、−C(O)−C1−3アルキル、−C(O)−NR1010、−SO−C1−3アルキル及び−SO−フェニルからなる群から選択され;
12は、−H、
【化2】

から選択され、
13は、−OH及び−NR1011からなる群から選択され、
14は、−C(O)−C1−3アルキル、−C(O)−NR1010、−SO−C1−3アルキル及び−SO−フェニルからなる群から選択される。)。
【請求項2】
q、r及びtが、それぞれ独立に0及び1から選択され;m、n及びpが、それぞれ独立に0、1、2、3及び4から選択され;ただし、q及びrの少なくとも1つが1であり、m、n、p、q及びrの合計が、1、2、3、4、5又は6であり;ただし、pが0でありrが1である場合、m、q及びnの合計が、1、2、3、4又は5である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
が、−C≡C−CH−NR1011である、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
が、−C≡C−CH−NR1011である、請求項2に記載の化合物。
【請求項5】
式Iaの請求項1に記載の化合物:
【化3】

及び医薬適合性のその塩及びエステル。
【請求項6】
が、−C≡C−CH−NR1011である、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
【表1】



からなる群から選択される、請求項5に記載の化合物及び医薬適合性のその塩及びエステル。
【請求項8】
血漿コレステロールレベルを低下させる治療を必要とする患者に請求項1に記載の化合物の治療的有効量を投与することを含む、血漿コレステロールレベルを低下させる方法。
【請求項9】
前記のような治療を必要とする患者にコレステロール生合成阻害剤の治療的有効量と組み合わせて、請求項1に記載の化合物の治療的有効量を投与することを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記コレステロール生合成阻害剤が、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
高コレステロール血症の治療を必要とする患者に請求項1に記載の化合物の治療的有効量を投与することを含む、高コレステロール血症を治療する方法。
【請求項12】
アテローム性動脈硬化症治療を必要とする患者に請求項1に記載の化合物の治療的有効量を投与することを含む、アテローム性動脈硬化症を治療する方法。
【請求項13】
アテローム性動脈硬化症のリスクを低下させる治療を必要とする患者に請求項1に記載の化合物の予防的有効量を投与することを含む、アテローム性動脈硬化症に対するリスクを低下させる方法。
【請求項14】
アテローム性動脈硬化症の疾病事象を有するリスクがある患者に請求項1に記載の化合物の予防的有効量を投与することを含む、アテローム性動脈硬化症疾病事象を有するリスクを低下させる方法。
【請求項15】
請求項1に記載の化合物と医薬適合性の担体とを含む、医薬組成物。
【請求項16】
コレステロール生合成阻害剤をさらに含む、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記コレステロール生合成阻害剤が、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤である、請求項16に記載の医薬組成物。

【公表番号】特表2007−516287(P2007−516287A)
【公表日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−547201(P2006−547201)
【出願日】平成16年12月17日(2004.12.17)
【国際出願番号】PCT/US2004/042698
【国際公開番号】WO2005/062824
【国際公開日】平成17年7月14日(2005.7.14)
【出願人】(390023526)メルク エンド カムパニー インコーポレーテッド (924)
【氏名又は名称原語表記】MERCK & COMPANY INCOPORATED
【Fターム(参考)】