説明

抗鬱・抗ストレス剤

【課題】 目まぐるしく変化する現代社会において、ストレスなく生活することは困難である。このため、ストレス等が原因であると言われる鬱病は、現代病のひとつとして大きな社会問題にもなっている。本発明は、優れた抗鬱作用および抗ストレス作用を有する、抗鬱・抗ストレス剤および飲食品を提供すること課題とする。
【解決手段】 オルニチンまたはその塩を有効成分として含有することを特徴とする、抗鬱・抗ストレス剤。該抗鬱・抗ストレス剤を含有することを特徴とする飲食品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗鬱・抗ストレス剤およびこれを含む飲食品に関する。
【背景技術】
【0002】
目まぐるしく変化する現代社会において、ストレスなく生活することは困難である。このため、ストレス等が原因であると言われる鬱病は、現代病のひとつとして大きな社会問題にもなっている。神経症や鬱病、統合失調症等の治療には、精神安定剤や抗鬱剤、抗不安薬等の医薬品が用いられ、その改善に効果が認められている。
【0003】
一方、オルニチンはコラーゲン合成促進作用(特許文献1)、冷え症改善作用(特許文献2)、寝つきまたは寝起き改善作用(特許文献3)などの種々の活性を有することが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−214232号公報
【特許文献2】特開2007−119348号公報
【特許文献3】特開2006−342148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、安全性が高く、かつ、優れた抗鬱・抗ストレス効果を有する抗鬱・抗ストレス剤およびこれを用いた飲食品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、オルニチンまたはその塩を有効成分として含有することを特徴とする、抗鬱・抗ストレス剤である。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の抗鬱・抗ストレス剤を含有することを特徴とする飲食品である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、安全性が高く、かつ、優れた抗鬱・抗ストレス効果を有する抗鬱・抗ストレス剤およびこれを用いた飲食品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明をさらに詳しく説明する。
本発明で用いられるオルニチンとしては、L-、D- オルニチンのいずれでもよいが、L-オルニチンが好ましい。
オルニチンは、公知の化学的合成方法、発酵方法により製造することができる。また、市販品を利用してもよい。オルニチンの製造方法については、上記の特許文献1に開示されている。
【0009】
オルニチンの塩としては、酸付加塩、金属塩、アンモニウム塩、有機アミン付加塩、アミノ酸付加塩等が挙げられる。
【0010】
酸付加塩としては、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩等の無機酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩、リンゴ酸塩、乳酸塩、α−ケトグルタル酸塩、グルコン酸塩、カプリル酸塩等の有機酸塩があげられる。
金属塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、亜鉛塩等があげられる。
【0011】
アンモニウム塩としては、アンモニウム、テトラメチルアンモニウム等の塩があげられる。有機アミン付加塩としては、モルホリン、ピペリジン等の塩があげられる。
アミノ酸付加塩としては、グリシン、フェニルアラニン、リジン、アスパラギン酸、グルタミン酸等の塩があげられる。
【0012】
上記のオルニチンの塩のうち、塩酸塩、クエン酸塩、リンゴ酸塩、α−ケトグルタル酸塩、アスパラギン酸塩が好ましく用いられるが、他の塩、または2以上の塩を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0013】
本発明の抗鬱・抗ストレス剤は、錠剤、ピル、カプセル、顆粒、粉末、散剤、液剤等の固形または溶液の形態(以下、製剤ともいう)に公知の方法により適宜調製することができる。即ち、本発明に有用な固形製剤または液状製剤は、オルニチンまたはその塩と所望により添加剤とを混合し、従来充分に確立された公知の製剤製法を用いることにより製造される。添加剤としては、例えば賦形剤、pH調整剤、清涼化剤、懸濁化剤、希釈剤、消泡剤、粘稠剤、溶解補助剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、抗酸化剤、コーティング剤、着色剤、矯味矯臭剤、界面活性剤、可塑剤または香料などが挙げられる。
【0014】
上記賦形剤としては、例えば、D−ソルビトール、D−マンニトール或いはキシリトールなどの糖アルコール、ブドウ糖、白糖、乳糖或いは果糖などの糖類、結晶セルロース、カルメロースナトリウム、リン酸水素カルシウム、コムギデンプン、コメデンプン、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、デキストリン、シクロデキストリン、軽質無水ケイ酸、酸化チタン、またはメタケイ酸アルミン酸マグネシウムなどが挙げられる。
【0015】
上記pH調整剤としては、例えばクエン酸、リンゴ酸、リン酸水素ナトリウムまたはリン酸二カリウムなどが挙げられる。
上記清涼化剤としては、例えばl−メントールまたはハッカ水などが挙げられる。
上記懸濁化剤としては、例えば、カオリン、カルメロースナトリウム、キサンタンガム、メチルセルロースまたはトラガントなどが挙げられる。
上記希釈剤としては、例えば精製水、エタノール、植物油または乳化剤等が挙げられる。
上記消泡剤としては、例えばジメチルポリシロキサンまたはシリコン消泡剤などが挙げられる。
【0016】
上記粘稠剤としては、例えばキサンタンガム、トラガント、メチルセルロースまたはデキストリンなどが挙げられる。
上記溶解補助剤としては、例えばエタノール、ショ糖脂肪酸エステルまたはマクロゴールなどが挙げられる。
上記崩壊剤としては、例えば低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、ヒドロキシプロピルスターチまたは部分アルファー化デンプンなどが挙げられる。
【0017】
上記結合剤としては、例えばメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニールピロリドン、ゼラチン、アラビアゴム、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、プルラン、アルファー化デンプン、カンテン、トラガント、アルギン酸ナトリウムまたはアルギン酸プロピレングリコールエステルなどが挙げられる。
【0018】
上記滑沢剤としては、例えばステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸ポリオキシル、セタノール、タルク、硬化油、ショ糖脂肪酸エステル、ジメチルポリシロキサン、ミツロウまたはサラシミツロウなどが挙げられる。
上記抗酸化剤としては、例えばアスコルビン酸、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、没食子酸プロピル、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、トコフェロール、アスコルビン酸またはクエン酸などが挙げられる。
【0019】
上記コーティング剤としては、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、カルボキシメチルエチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、アミノアルキルメタアクリレートコポリマー、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、メタアクリル酸コポリマー、ポリビニルアセタートジエチルアミノアセテートまたはセラックなどが挙げられる。
上記着色剤としては、例えばウコン抽出液、リボフラビン、酸化チタンまたはカロチン液などが挙げられる。
【0020】
上記矯味矯臭剤としては、例えばクエン酸、アジピン酸、アスコルビン酸、果糖、D−ソルビトール、ブドウ糖、サッカリンナトリウム、単シロップ、白糖、ハチミツ、アマチャ、カンゾウ、クエン酸、アジピン酸、アスコルビン酸、オレンジ油、トウヒチンキ、ウイキョウ油、ハッカまたはメントールなどが挙げられる。
上記界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、モノステアリン酸グリセリン、モノステアリン酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン、ポリソルベート類、ラウリル硫酸ナトリウム、マクロゴール類またはショ糖脂肪酸エステルなどが挙げられる。
上記可塑剤としては、例えばクエン酸トリエチル、ポリエチレングリコール、トリアセチンまたはセタノールなどが挙げられる。
上記香料としては、例えば、動物性香料或いは植物性香料等の天然香料、または単離香料或いは純合成香料等の合成香料などが挙げられる。
【0021】
上記各種製剤の形態において、オルニチンまたはその塩の量は、製剤全体に対して、通常約1〜80重量%、好ましくは約2〜50重量%である。
本発明の製剤の投与方法は、経口でも非経口であってもよい。また、本発明の有効成分であるオルニチンまたはその塩の投与量は、その種類、その剤型、また患者の年令、体重、適応症状などによって異なるが、例えば内服剤の場合は、成人に対し一日あたりオルニチンまたはその塩として、通常は50mg〜30g、好ましくは100mg〜10g、特に好ましくは200mg〜3gである。
【0022】
本発明の飲食品は、飲食品製造時にオルニチンまたはその塩または上記オルニチンまたはその塩含有製剤を飲食品材料に配合することにより製造される。例えば、パン、チューインガム、クッキー、チョコレート、シリアル等の固形食品、ジャム、アイスクリーム、ヨーグルト、ゼリー等のジャム状、クリーム状またはゲル状食品、ジュース、コーヒー、ココア、緑茶、ウーロン茶、紅茶等の飲料等のあらゆる食品形態にすることが可能である。また、調味料、食品添加物等に配合することもできる。オルニチンまたはその塩または上記オルニチンまたはその塩含有製剤の飲食品材料への配合量は、特に限定されないが、通常約0.0001〜80重量%、好ましくは約0.005〜50重量%である。また、特に飲料の場合は、1mg/L〜20g/L、好ましくは2mg/L〜10g/Lである。
【0023】
また、本発明が飲食品である場合のオルニチンまたはその塩の摂取量は、副作用の心配がないことから上記内服剤の投与量と同等の量であってよい。
【実施例】
【0024】
以下、実施例により本発明を詳しく説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0025】
実施例1
オルニチン塩酸塩の粉末(以下、粉末1という)の抗鬱・抗ストレス効果を調べた。
マウス強制水泳試験による精神安定作用の評価
本発明の抗鬱・抗ストレス剤の評価は、1977年にPorsoltにより開発されたマウス強制水泳試験を採用した。本試験は鬱病の動物モデル実験として最も多用される方法のひとつである。本試験では、マウスをある限られたスペースの中で強制的に泳がせて「無動状態」を惹起させる。この無動状態は、ストレスを負荷された動物が水からの逃避を放棄した一種の「絶望状態」を反映するものと考えられ、ヒトにおける鬱状態、ストレス状態と関連づけられている。事実、抗鬱薬は特異的にこの状況下における無動状態の持続時間を短縮させることがわかっており、この短縮作用は臨床力価との間に有意な相関を有することが認められている。
【0026】
本試験方法は次のとおりである。
25℃の水を深さ15cmまで入れたプラスチック円筒中でマウスを強制水泳させる。5分間の強制水泳後、30℃の乾燥機中で15分間乾燥し、ホームケージに戻す。翌日マウスに試験試料を腹腔内投与して、その1時間後に再び5分間の強制水泳を課し、現れた無動状態の持続時間をストップウォッチを用いて測定する。マウスが水に浮かんで静止している状態を無動状態と判定する。無動状態持続時間については有意差検定を行い、統計学的に有意差を検定する。実験には雄のddYマウスを使用し、1群6匹とする。なお、試験は全て午後1時から午後6時の間に行う。また、ポジティブコントロールとして抗鬱薬であるイミプラミンを用いた試験も行う。
【0027】
その結果、粉末1を30mg/kg投与したマウスの無動状態持続時間は、177.7±5.1秒であった。コントロール(生理食塩水のみ)は220.0±2.2秒であった。ポジティブコントロール(30mg/kg投与)のマウスの無動状態持続時間は、176.5±4.0秒であった。本実施例およびポジティブコントロールの無動状態持続時間は、危険率1%で有意差を有する。なお、オルニチン塩酸塩の替わりに他の金属塩、アンモニウム塩、有機アミン付加塩、アミノ酸付加塩を使用しても、同様の結果を得た。
【0028】
実施例2
85℃の熱水で抽出した烏龍茶、紅茶、緑茶、ほうじ茶、ジャスミン茶の抽出液に対して、茶葉使用率が0.8重量%になるように脱イオン水を追加した。その際、アスコルビン酸を0.025重量%になるように添加し、ついで重曹を用いて飲みやすいpHに調整した。さらに当該調合液100gに対して、前記粉末1が5mgとなるように添加した後、常法通りUHT殺菌をおこない、350ml容PETボトルに充填し、各種飲料を得た。
【0029】
実施例3
以下の処方にてジュースを調製した。
冷凍濃縮オレンジ果汁 5.0質量部
果糖ブドウ糖液糖 1.0質量部
クエン酸 0.10質量部
L−アスコルビン酸 0.09質量部
前記粉末1 0.05質量部
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の抗鬱・抗ストレス剤は、医薬、食品、飼料の形態として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オルニチンまたはその塩を有効成分として含有することを特徴とする、抗鬱・抗ストレス剤。
【請求項2】
請求項1に記載の抗鬱・抗ストレス剤を含有することを特徴とする飲食品。

【公開番号】特開2009−161534(P2009−161534A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【公開請求】
【出願番号】特願2009−1912(P2009−1912)
【出願日】平成21年1月7日(2009.1.7)
【出願人】(707000691)辻堂化学株式会社 (104)
【Fターム(参考)】