説明

抗鬱・抗ストレス剤

【課題】 目まぐるしく変化する現代社会において、ストレスなく生活することは困難である。このため、ストレス等が原因であると言われる鬱病は、現代病のひとつとして大きな社会問題にもなっている。本発明は、、優れた抗鬱作用および抗ストレス作用を有する、抗鬱・抗ストレス剤を提供すること課題とする。
【解決手段】 セサミン類と、ビタミンEとを含有することを特徴とする抗鬱・抗ストレス剤。 セサミン類と、コエンザイムQ10とを含有することを特徴とする抗鬱・抗ストレス剤。 セサミン類と、ビタミンEおよび/またはコエンザイムQ10とを含有することを特徴とする抗鬱・抗ストレス剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗鬱・抗ストレス剤に関する。
【背景技術】
【0002】
目まぐるしく変化する現代社会において、ストレスなく生活することは困難である。このため、ストレス等が原因であると言われる鬱病は、現代病のひとつとして大きな社会問題にもなっている。神経症や鬱病、統合失調症等の治療には、精神安定剤や抗鬱剤、抗不安薬等の医薬品が用いられ、その改善に効果が認められている。
【0003】
一方、セサミンはゴマに含まれる主要なリグナン化合物の一種であり、ゴマ中には0.5−1%程度含まれている。セサミンには多くの生理活性があることが知られ、例えば、抗酸化作用、抗高血圧作用、抗炎症作用等が公知である。
また、セサミンには向精神作用があることも知られている(特許文献1)。
【特許文献1】米国特許第4427694号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、セサミンを含有するとともに、優れた抗鬱作用および抗ストレス作用を有する、抗鬱・抗ストレス剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、セサミン類に、ビタミンEおよび/またはコエンザイムQ10を加えた組成物が、優れた抗鬱作用および抗ストレス作用を提供することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
請求項1に記載の発明は、セサミン類と、ビタミンEとを含有することを特徴とする抗鬱・抗ストレス剤である。
請求項2に記載の発明は、セサミン類と、コエンザイムQ10とを含有することを特徴とする抗鬱・抗ストレス剤である。
請求項3に記載の発明は、セサミン類と、ビタミンEと、コエンザイムQ10とを含有することを特徴とする抗鬱・抗ストレス剤である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、セサミン類に、ビタミンEおよび/またはコエンザイムQ10を配合したので、セサミン類がそもそも有する抗鬱・抗ストレス作用を飛躍的に高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
(セサミン類)
本発明に用いることができるセサミン類としては、セサミン及びその類縁体を含むものであり、セサミン類縁体としては、エピセサミンの他、例えば特開平4−9331号公報に記載されたジオキサビシクロ〔3.3.0〕オクタン誘導体がある。セサミン類の具体例としては、セサミン、セサミノール、エピセサミノール、セサモリン等を例示できる。なかでも、セサミン及びエピセサミンが好ましい。
【0009】
なお、セサミン類の代謝体も、本発明の効果を示す限り、本発明のセサミン類に含まれるセサミン類縁体であり、本発明に使用することができる。
本発明に用いるセサミン類は、その形態や製造方法等によって、何ら制限されるものではない。例えば、セサミン類としてセサミンを選択した場合には、通常、ごま油から公知の方法(例えば、特開平4−9331号公報に記載された方法)によって抽出したセサミン(セサミン抽出物または精製物という)を用いることができる。
【0010】
(コエンザイムQ10)
コエンザイムQ10は、別名、補酵素Q10、ビタミンQ、ユビキノン及びユビデカレノンとして知られ、商業的に入手可能な化合物である。なお、コエンザイムQ10は、還元型のものが抗鬱作用および抗ストレス作用に優れるために好ましい。還元型のコエンザイムQ10を得る方法としては特に限定されず、例えば、合成、発酵、天然物からの抽出等の従来公知の方法によりコエンザイムQ10を得た後、クロマトグラフィーにより流出液中の還元型コエンザイムQ10区分を濃縮する方法などを採用することが出来る。この場合には、必要に応じて上記コエンザイムQ10に対し、水素化ほう素ナトリウム、亜ジチオン酸ナトリウム(ハイドロサルファイトナトリウム)等の一般的な還元剤を添加し、常法により上記コエンザイムQ10中に含まれる酸化型コエンザイムQ10を還元して還元型コエンザイムQ10とした後にクロマトグラフィーによる濃縮を行っても良い。また、既存の高純度コエンザイムQ10に上記還元剤を作用させる方法によっても得ることが出来る。
【0011】
(ビタミンE)
本発明でいうビタミンEとは、誘導体類も含むものであり、その例としては、α−トコフェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロール、δ−トコフェロール、α−トコトリエノール、β−トコトリエノール、γ−トコトリエノール、δ−トコトリエノール、酢酸トコフェロール、ニコチン酸トコフェロール等が挙げられる。
【0012】
本発明の抗鬱・抗ストレス剤において、セサミン類を1としたとき(質量基準)、ビタミンEを0.1〜10、コエンザイムQ10を0.1〜10の割合で配合するのが好ましい。
【0013】
なお、セサミン類の1日あたりの摂取量は、通常1〜60mg、好ましくは5〜60mg、コエンザイムQ10の1日あたりの摂取量は、通常1〜300mgの範囲、好ましくは10〜100mg、ビタミンEの1日あたりの摂取量は、通常10mg〜800mgであるので、本発明の抗鬱・抗ストレス剤のヒト摂取量は、この範囲内におさまるようにするのが望ましい。
【0014】
また本発明の抗鬱・抗ストレス剤には、その効果を損なわない限り、任意の所望成分を配合することができる。例えば、ビタミンC等のビタミン類やソフトカプセルを調製する時に通常配合される乳化剤、緊張化剤(等張化剤)、緩衝剤、溶解補助剤、防腐剤、安定化剤、抗酸化剤等を適宜配合することができる。
【0015】
本発明の抗鬱・抗ストレス剤は、その形態を特に制限するものではないが、公知の方法によりマイクロカプセル、ソフトカプセル又はハードカプセルに封入してカプセル化することが好ましい。
【実施例】
【0016】
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明は下記例に限定されるものではない。なお、実施例1〜3で使用したコエンザイムQ10は、日清ファルマ株式会社製のコエンザイムQ10であり、ビタミンEは、α−トコフェロールである。
【0017】
実施例1
セサミン類としては、セサミン(竹本油脂製、セサミン:エピセサミン=56:44)を用いた。
セサミンおよびビタミンEをオリーブ油に溶解させ、本実施例の試験試料とした。
【0018】
マウス強制水泳試験による精神安定作用の評価
本発明の抗鬱・抗ストレス剤の評価は、1977年にPorsoltにより開発されたマウス強制水泳試験を採用した。本試験は鬱病の動物モデル実験として最も多用される方法のひとつである。本試験では、マウスをある限られたスペースの中で強制的に泳がせて「無動状態」を惹起させる。この無動状態は、ストレスを負荷された動物が水からの逃避を放棄した一種の「絶望状態」を反映するものと考えられ、ヒトにおける鬱状態、ストレス状態と関連づけられている。事実、抗鬱薬は特異的にこの状況下における無動状態の持続時間を短縮させることがわかっており、この短縮作用は臨床力価との間に有意な相関を有することが認められている。
【0019】
本試験方法は次のとおりである。
25℃の水を深さ15cmまで入れたプラスチック円筒中でマウスを強制水泳させる。5分間の強制水泳後、30℃の乾燥機中で15分間乾燥し、ホームケージに戻す。翌日マウスに試験試料を腹腔内投与して、その1時間後に再び5分間の強制水泳を課し、現れた無動状態の持続時間をストップウォッチを用いて測定する。マウスが水に浮かんで静止している状態を無動状態と判定する。無動状態持続時間については有意差検定を行い、統計学的に有意差を検定する。実験には雄のddYマウスを使用し、1群6匹とする。なお、試験は全て午後1時から午後6時の間に行う。また、ポジティブコントロールとして抗鬱薬であるイミプラミンを用いた試験も行う。
【0020】
その結果、セサミンおよびビタミンEをそれぞれ30mg/kg投与したマウスの無動状態持続時間は、178.1±8.0秒であった。コントロール(オリーブ油のみ)は220.0±2.2秒であった。ポジティブコントロール(30mg/kg投与)のマウスの無動状態持続時間は、176.5±4.0秒であった。本実施例およびポジティブコントロールの無動状態持続時間は、危険率1%で有意差を有する。なお、セサミンおよび/またはビタミンEを2〜3倍量使用しても、同様の結果を得た。またセサミン類をセサミン単独に変更した場合も、同様の結果を得た。
【0021】
実施例2
セサミン類としては、セサミン(竹本油脂製、セサミン:エピセサミン=56:44)を用いた。
セサミンおよびコエンザイムQ10をオリーブ油に溶解させ、本実施例の試験試料とした。
【0022】
続いて、実施例1と同様に、マウス強制水泳試験による精神安定作用の評価を行った。
その結果、セサミンおよびコエンザイムQ10をそれぞれ30mg/kg投与したマウスの無動状態持続時間は、188.1±7.0秒であった。本実施例の無動状態持続時間は、危険率1%で有意差を有する。なお、セサミンおよび/またはコエンザイムQ10を2〜3倍量使用しても、同様の結果を得た。
【0023】
実施例3
セサミン類としては、セサミン(竹本油脂製、セサミン:エピセサミン=56:44)を用いた。
セサミン、ビタミンEおよびコエンザイムQ10をオリーブ油に溶解させ、本実施例の試験試料とした。
【0024】
続いて、実施例1と同様に、マウス強制水泳試験による精神安定作用の評価を行った。
その結果、セサミン、ビタミンEおよびコエンザイムQ10をそれぞれ30mg/kg投与したマウスの無動状態持続時間は、166.6±5.4秒であった。本実施例の無動状態持続時間は、危険率1%で有意差を有する。
【0025】
比較例1
セサミン類としては、セサミン(竹本油脂製、セサミン:エピセサミン=56:44)を用いた。
セサミンをオリーブ油に溶解させ、本比較例の試験試料とした。
【0026】
続いて、実施例1と同様に、マウス強制水泳試験による精神安定作用の評価を行った。
その結果、セサミンを30mg/kg投与したマウスの無動状態持続時間は、208.5±6.3秒であった。
【0027】
比較例2
コエンザイムQ10をオリーブ油に溶解させ、本比較例の試験試料とした。
【0028】
続いて、実施例1と同様に、マウス強制水泳試験による精神安定作用の評価を行った。
その結果、コエンザイムQ10を30mg/kg投与したマウスの無動状態持続時間は、218.5±6.9秒であった。
【0029】
比較例3
ビタミンEをオリーブ油に溶解させ、本比較例の試験試料とした。
【0030】
続いて、実施例1と同様に、マウス強制水泳試験による精神安定作用の評価を行った。
その結果、ビタミンEを30mg/kg投与したマウスの無動状態持続時間は、209.9±5.7秒であった。
【0031】
実施例4
セサミン 0.25g
酢酸トコフェロール 0.25g
コエンザイムQ10 0.1g
無水ケイ酸 20.5g
トウモロコシデンプン 79g
を均一に混合した。この化合物に10%ハイドロキシプロピルセルロース・エタノール溶液100mlを加え、常法通りねつ和し、押し出し、乾燥して顆粒剤を得た。
【0032】
実施例5
セサミン 3.5g
酢酸トコフェロール 0.5g
コエンザイムQ10 0.5g
無水ケイ酸 20g
微結晶セルロース 10g
ステアリン酸マグネシウム 3g
乳糖 60g
を混合し、単発式打錠機にて打錠して経7mm、重量100mgの錠剤を製造した。
【0033】
実施例6
ゼラチン 70.0%
グリセリン 22.9%
パラオキシ安息香酸メチル 0.15%
パラオキシ安息香酸プロピル 0.51%
水 適量
計 100%
上記成分からなるソフトカプセル剤皮の中に、以下に示す組成物を常法により充填し、1粒200mgのソフトカプセルを得た。
セサミン/エピセサミン(1:1)混合物 10.8%
α−トコフェロール 20%
コエンザイムQ10 5%
小麦ビーズワックス 30%
パーム油 10%
小麦胚芽油 適宜
計 100%

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セサミン類と、ビタミンEとを含有することを特徴とする抗鬱・抗ストレス剤。
【請求項2】
セサミン類と、コエンザイムQ10とを含有することを特徴とする抗鬱・抗ストレス剤。
【請求項3】
セサミン類と、ビタミンEと、コエンザイムQ10とを含有することを特徴とする抗鬱・抗ストレス剤。

【公開番号】特開2009−91297(P2009−91297A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−263842(P2007−263842)
【出願日】平成19年10月9日(2007.10.9)
【出願人】(707000691)辻堂化学株式会社 (104)
【Fターム(参考)】