抗ADDL抗体およびこの使用
【課題】ADDLとしても知られている、Aβ由来拡散性リガンドの多次元立体構造を区別して認識する抗体を提供する。
【解決手段】ADDLを3週間おきに、合計で6回の接種で接種したマウス脾臓のSP2細胞との融合から作成されたハイブリドーマから陽性のクローンを同定した。得られた抗体は、アルツハイマー病の、および対照のヒト脳抽出物を区別することができ、これは、ADDLを検出し、アルツハイマー病を診断する方法において有用である。また、ADDLのニューロンへの結合、ADDLの構築およびタウリン酸化を遮断し、従ってアミロイドβ1−42の可溶性オリゴマーと関連する疾患を防止し、処置するための方法において有用である。
【解決手段】ADDLを3週間おきに、合計で6回の接種で接種したマウス脾臓のSP2細胞との融合から作成されたハイブリドーマから陽性のクローンを同定した。得られた抗体は、アルツハイマー病の、および対照のヒト脳抽出物を区別することができ、これは、ADDLを検出し、アルツハイマー病を診断する方法において有用である。また、ADDLのニューロンへの結合、ADDLの構築およびタウリン酸化を遮断し、従ってアミロイドβ1−42の可溶性オリゴマーと関連する疾患を防止し、処置するための方法において有用である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
導入
本出願は、2004年10月25日出願の米国暫定特許出願通番第60/621,776号、2005年2月14日出願の同第60/652,538号、2005年6月30日出願の同第60/695,526号および2005年6月30日出願の同第60/695,528号からの優先権の利益を請求し、これらの内容は、これらの全体において参照により本出願中に導入される。
【0002】
本発明は、部分的に国立衛生研究所により出資された研究の過程でなされた(認可番号NIH RO1-AG18877およびNIH RO1-AG22547)。米国政府は、本発明においてある権利を有し得る。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
アルツハイマー病は、進行性の、および変性の認知症である(Terryら(1991)、Ann. Neurol. 30:572-580; Coyle (1987)、Encyclopedia of Neuroscience, Adelman(編)、Birkhaeuser, Boston-Basel-Stuttgart, 29〜31頁中)。この初期段階において、アルツハイマー病は、報告されたところではアミロイドベータ(Aβ)から由来する神経毒のために、主に新たな記憶を形成する深刻な無能として現れる(Selkoe (2002)、Science 298:789-791)。Aβは、存在量が突然変異およびアルツハイマー病に関連する危険因子により増大する両親媒性ペプチドである。Aβから形成する原繊維は、アミロイドプラークの核を構成し、これは、アルツハイマー病の脳の特徴である。インビトロで発生した類似する原繊維は、培養した脳ニューロンに対して致命的である。これらの発見により、記憶喪失が、原繊維状Aβにより生じたニューロン死の結果であることが、示される。
【0004】
原繊維状Aβおよび記憶喪失についての強力な実験的支持にもかかわらず、認知症とアミロイドプラーク負担との間には、関連性は乏しい(Katzman (1988)、Ann. Neurol. 23:138-144)。さらに、年齢依存性アミロイドプラークおよび最も重要なことには年齢依存性記憶障害を発生するトランスジェニックhAPPマウス(Dodartら(2002)、Nat. Neurosci. 5:452-457; Kotilinekら(2002)、J. Neurosci. 22:6331-6335)は、Aβに対するモノクローナル抗体をワクチン接種してから24時間以内に、記憶喪失がプラークレベルの変化を伴わずに逆行し得ることを示す。このような発見は、アミロイド原繊維により生じたニューロン死に依存する記憶喪失についての機構と整合しない。
【0005】
Aβ自己構築により生成した追加の神経学的に活性な分子が、示唆された。これらの分子は、Aβ由来拡散性リガンドまたはADDLとも呼ばれる可溶性Aβオリゴマーを含む。オリゴマーは、準安定であり、低い濃度のAβ1−42において生成する(Lambertら(1998)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95:6448-6453)。Aβオリゴマーは、長期間増強(LTP)、即ち記憶およびシナプスの柔軟性についての古典的な実験的パラダイムを迅速に阻害する。このように、記憶喪失は、ニューロン死および原繊維ではなくAβオリゴマーによるシナプス不全以前に、シナプス不全から起因する(HardyおよびSelkoe (2002)、Science 297:353-356)。可溶性オリゴマーは、脳組織において見出され、アルツハイマー病において(Kayedら(2003)、Science 300:486-489; Gongら(2003)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 100:10417-10422)、およびhAPPトランスジェニックマウスアルツハイマー病モデルにおいて(Kotilinekら(2002)、J. Neurosci. 22:6331-6335; Changら(2003)、J. Mol. Neurosci. 20:305-313)顕著に上昇している。
【0006】
種々のアルツハイマー病処置の選択肢が、示唆されている。ワクチン臨床的試験により、ワクチンに対する活発な免疫応答を備えているヒトが認知の利益を示すことが、明らかになった(Hockら(2003)、Neuron 38:547-554);しかし、CNS炎症の頻発により、試験の一部の早期の終了が生じた(BirminghamおよびFrantz (2002)、Nat. Med. 8: 199-200)。ワクチンに対する代替として、結合単量体または原繊維を伴わずにADDLを標的する治療的抗体が、示唆された(Klein (2002)、Neurochem. Int. 41:345-352)。ADDLは、高度に抗原性であり、〜50μg/mLの濃度でウサギにおいてオリゴマー選択性ポリクローナル抗体を発生する(Lambertら(2001)、J. Neurochem. 79:595-605)。トランスジェニックマウスモデルからの結果はまた、抗体が、記憶の低下に成功に逆行し得ることを示唆する(Dodartら(2002)、Nat. Neurosci. 5:452-457)。従って、当該分野において、アルツハイマー病の予防および処置のためのADDL選択性治療的抗体に対する必要性がある。本発明は、この必要性を満たす。
【発明の概要】
【0007】
発明の概要
本発明は、1種または2種以上のAβ由来拡散性リガンドの多次元立体構造を区別して認識することができる、単離された抗体またはこの断片である。特定の態様において、本発明の抗体は、薬学的に許容し得る担体との混合物においてである。他の態様において、本発明の抗体は、キットにおいてである。
【0008】
1種または2種以上のAβ由来拡散性リガンドの多次元立体構造に結合する抗体または抗体断片を用いる、Aβ由来拡散性リガンドのニューロンへの結合を防止する方法、Aβ由来拡散性リガンドの構築を阻害する方法およびタウタンパク質のリン酸化をSer202/Thr205において遮断する方法もまた、提供する。
【0009】
本発明はさらに、本発明の抗体を用いた、Aβ由来拡散性リガンドと関連する疾患を予防的に、または治療的に処置する方法を包含する。本発明の抗体の投与により、Aβ由来拡散性リガンドのニューロンへの結合が防止され得、これによりAβ由来拡散性リガンドと関連する疾患が防止または処置される。
【0010】
本発明はまた、Aβ由来拡散性リガンドのニューロンへの結合を防止する治療剤を同定する方法である。本発明のこの方法は、ニューロンをAβ由来拡散性リガンドと、剤の存在下で、また本発明の抗体を用いて接触させて、当該剤の存在下でのAβ由来拡散性リガンドのニューロンへの結合を決定することを含む。
【0011】
本発明はまた、試料中のAβ由来拡散性リガンドを検出する方法およびAβ由来拡散性リガンドと関連する疾患を診断する方法を包含する。このような方法は、試料を本発明の抗体と接触させて、Aβ由来拡散性リガンドを検出することができ、またAβ由来拡散性リガンドと関連する疾患を診断することができるようにすることを含む。
【0012】
発明の詳細な説明
Aβ由来拡散性リガンド(即ちADDL)の多次元立体構造を区別して認識するモノクローナル抗体が、ここで創出された。有利なことに、このモノクローナル抗体は、アルツハイマー病と対照のヒト脳抽出物とを区別することができ、アルツハイマー病脳スライスにおける、および培養した海馬細胞における内因性オリゴマーを同定する。さらに、この抗体は、溶液中の内因性および合成ADDLを中和する。いわゆる「合成」ADDLは、精製したアミロイドβ1−42を、ADDLを発生する条件の下で混合することにより、インビトロで生成する。米国特許第6,218,506号を参照。本明細書中に開示した特定の抗体は、単量体Aβペプチドの最小の検出を伴って、3〜24量体に対する高度な選択性を示す。さらに、本発明の選択された抗体によるADDLの認識は、Aβ1−42またはAβ1−40の直線状配列を包含する短いペプチドによっては遮断されない。しかし、結合は、Aβ1−28により遮断され、これは、立体構造的に独特の構造に基づくエピトープがまたAβ1−28において見出されることを示す。
【0013】
この抗体のエピトープの描写は、これらの抗体が、ELISAにより測定して同様の親和性および特異性の特徴を有する同様の核直線状配列を認識することを示した。さらに、この抗体は、ADDL含有製剤がラット海馬ニューロンおよび不死化神経芽細胞腫細胞系の一次培養物に結合する能力を区別して遮断し、またADDL構築を遮断する。この発見により、これらの抗体が、同様の直線状配列認識および親和性にもかかわらず、ADDLの多次元立体構造を認識する区別された能力を有することが、例証される。ADDLは、ニューロンのサブセットと関連し、正常なニューロン機能を破壊することが知られているため、本発明の1つの使用は、ADDLのニューロンへの結合を防止する抗体の開発および/または同定である。このような抗体は、アルツハイマー病を含むADDL関連疾患の処置において有用である。この使用の改良は、これらの抗体のヒト化および/または親和性成熟(affinity-matured)様式を、ADDLがニューロンおよびADDLの構築物に結合するのを防止するために特定的に用いることである。
【0014】
従って、本発明は、ADDLの1種または2種以上の多次元立体構造を区別して認識する、単離された抗体である。本発明の抗体は、これが、同一のタイプの他の生物学的巨大分子の実質的な不存在において存在する場合に、単離されたと言われる。従って、「単離された抗体」は、他の抗体を実質的に含まない抗体を意味する;しかし、分子は、抗体の基本的な特徴(例えば結合特異性、中和活性など)に有害に影響しない数種の追加の剤または部分を含んでもよい。
【0015】
ADDLの1種または2種以上の多次元立体構造に特異的に結合することができる抗体は、Aβ1−42のオリゴマー化から由来する特定のADDLに結合するが、本明細書中に開示したようにウエスタンブロット分析により決定されたように、他のAβペプチド、即ちAβ1−12、Aβ1−28、Aβ1−40およびAβ12−28と交差反応せず;優先的に溶液中でADDLに結合する(例えば例21を参照)。2つの実体間の特異的な結合は、一般的に、少なくとも106、107、108、109または1010M−1の親和性を表す。108M−1より大きい親和性が、特定の結合を達成するために望ましい。
【0016】
特定の態様において、1種または2種以上のADDLの多次元立体構造に特異的に結合することができる抗体をまた、ADDLの多次元立体構造に対して産生させる(即ち、動物をこれで免疫する)。他の態様において、1種または2種以上のADDLの多次元立体構造に特異的に結合することができる抗体を、低いn量体生成ペプチド、例えばAβ1−42[Nle35−Dpro37]に対して産生させる。
【0017】
用語「エピトープ」は、Bおよび/またはT細胞が応答する抗原上の部位または抗体が産生される、および/または抗体が結合する分子上の部位を意味する。例えば、エピトープを、該エピトープを定義する抗体により認識することができる。
【0018】
直線状エピトープは、アミノ酸一次配列が認識されたエピトープを含むエピトープである。直線状エピトープは、典型的には、少なくとも3つ、および最も普通には少なくとも5つ、例えば約8〜約10個のアミノ酸を独特の配列において含む。
【0019】
立体構造エピトープは、直線状エピトープとは対照的に、エピトープを含むアミノ酸の一次配列が、認識されたエピトープの単一の規定成分ではないエピトープ(例えば、アミノ酸の一次配列が、必ずしもエピトープを規定する抗体により認識されないエピトープ)である。典型的に、立体構造エピトープは、直線状エピトープに対して増大した数のアミノ酸を包含する。立体構造エピトープの認識に関して、抗体は、ペプチドまたはタンパク質の三次元構造を認識する。例えば、タンパク質分子が折り畳まれて三次元構造を形成する場合には、立体構造エピトープを形成するあるアミノ酸および/またはポリペプチド主鎖は、並列となり、抗体がエピトープを認識するのを可能にする。エピトープの立体構造を決定する方法には、例えばX線結晶学、二次元核磁気共鳴分光学並びに部位特異的なスピン標識および電磁常磁性共鳴分光学が含まれるが、これらには限定されない。例えば、Epitope Mapping Protocols in Methods in Molecular Biology (1996)、第66巻、Morris(編)を参照。
【0020】
Aβ由来拡散性リガンド、即ちADDLは、望ましくは8つまたは9つより少ないアミロイドβ1−42ペプチドの凝集体から構成されており、アルツハイマー病と関連すると見出されているアミロイドβ1−42の可溶性オリゴマーを意味する。これは、高分子量凝集中間体とは対照的であり、これは原繊維形成をもたらすミセルの針を形成する。
【0021】
本明細書中に例示するように、この抗体は、ADDLの少なくとも1つの多次元立体構造に結合するかまたはこれを認識する(例えば図3を参照)。特定の態様において、この抗体は、ADDLの少なくとも2つ、少なくとも3つまたは少なくとも4つの多次元立体構造に結合する。ADDLの多次元立体構造は、SDS−PAGEによる分析により定義したように、二量体、三量体、四量体、五量体、六量体、七量体、八量体、九量体、十量体などを包含することを意図する。三量体、四量体などの指定が、用いるアッセイ方法に伴って変化し得るため(例えばBitanら(2005)、Amyloid 12:88-95を参照)、本明細書中で用いる三量体、四量体などの定義は、SDS−PAGE分析による。
【0022】
この抗体の区別して結合する能力を例示するために、ある抗体が、1つの多次元立体構造、例えばADDLの四量体(即ち抗体2D6または4E2)を認識し、一方他の抗体が、いくつかの多次元立体構造、例えばADDLの三量体および四量体(例えば抗体2A10、2B4、5F10または20C2)を認識することが、見出された。このように、本発明の抗体は、オリゴマー特異性特性を有する。特定の態様において、ADDLの多次元立体構造は、本発明の抗体により認識される立体構造エピトープを生じる特定のポリペプチド構造と関連する。他の態様において、本発明の抗体は、>50kDaを超える分子量を有する、ほぼ三量体または四量体の大きさの範囲を有する多次元立体構造ADDLに特異的に結合する。
【0023】
ある態様において、多次元立体構造への結合に加えて、この抗体は、アミロイドβ1−42の選択された直線状エピトープに結合する。ADDLの直線状エピトープは、アミロイドβ1−42のN末端10、11、12、15または20のアミノ酸残基に位置する4つ、5つ、6つまたは7つ以上のアミノ酸残基ペプチドとして意図される。特定の態様において、本発明の抗体は、アミロイドβ1−42の残基1〜10、1〜8、3〜10または3〜8内の直線状エピトープに特異的に結合する。アミロイドβ1−42の例示的な直線状エピトープには、アミノ酸残基EFRHDS(配列番号177);DAEFRHDS(配列番号178)、およびEFRHDSGY(配列番号179)が含まれるが、これらには限定されない。
【0024】
本発明の抗体が、同様の直線状エピトープを有し得る一方、このような直線状エピトープは、この抗体の結合特性(即ち、ニューロンに結合するADDLを遮断し、タウリン酸化を防止し、ADDL構築を阻害する能力)を完全には示さない。その理由は、当業者に十分知られているように、直線状エピトープが、抗原のエピトープの一部に相当し得るに過ぎないからである(例えば、BreitlingおよびDuebel (1999)、Recombinant Antibodies, John Wiley & Sons, Inc., NY, pg. 115中を参照)。例えば、20C2は、20C2についての直線状エピトープ(即ちアミノ酸残基3〜8)を欠いており、Aβの残基7〜16に相当する全く異なった配列を含む、電荷が反転した切断されたAβ7−42ペプチドの構築物に結合することが、見出された。
【0025】
従って、20C2は、Aβの残基17〜42内からの要素に依存する立体構造エピトープに結合するが、これは多次元立体構造における場合のみである。本発明の抗体を、当該分野のものと、多次元ADDLを区別して認識し、従ってニューロンに結合するADDLを区別して遮断し、タウリン酸化を区別して防止し、ADDL構築を区別して阻害することができるものとして区別することができる。
【0026】
本発明において用いられる抗体には、ポリクローナルまたはモノクローナル抗体、およびキメラ、ヒト(例えばB細胞から単離された)、ヒト化、中和、二重特異性またはこの一本鎖抗体が含まれるが、これらには限定されない。1つの態様において、本発明の抗体は、モノクローナルである。抗体を産生するために、ヤギ、ウサギ、ニワトリ、ラット、マウス、ヒトおよび他のものを含む種々の宿主を、合成または天然ADDLでの注射により免疫することができる。抗体を産生する方法は、当該分野において十分知られている。例えば、KohlerおよびMilstein ((1975) Nature 256:495-497)並びにHarlowおよびLane (Antibodies: A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor Laboratory, New York (1988))を参照。
【0027】
宿主種に依存して、種々のアジュバントを用いて、免疫学的応答を増大させることができる。本発明において用いられるアジュバントは、望ましくは、応答の定性的形態に影響する免疫原の立体構造的変化を生じずに、ADDLに対する固有の応答を増大する。特に好適なアジュバントには、随意に免疫刺激物質、例えばモノホスホリルリピドA(Stouteら(1997)、N. Engl. J. Med. 336:86-91を参照)、ムラミルペプチド(例えばN−アセチルムラミル−L−トレオニル−D−イソグルタミン(thr−MDP)、N−アセチル−ノルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミン(nor−MDP)、N−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミニル−L−アラニン−2−(1’−2’ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ヒドロキシホスホリルオキシ)−エチルアミン(E−PE)、N−アセチルグルコサミニル−N−アセチルムラミル−L−Al−D−イソグル−L−Ala−ジパルミトキシプロピルアミド(DTP−DPP))と組み合わせての、3脱Oアシル化モノホスホリルリピドA(MPL(登録商標); RIBI ImmunoChem Research Inc., Hamilton, MT;GB 2220211を参照)および水中油エマルジョン、例えばスクアレンもしくはピーナッツ油、または他の細菌細胞壁成分が含まれる。
【0028】
水中油エマルジョンの特定の例には、5%スクアレン、0.5%TWEEN(登録商標)80および0.5%SPAN 85を含み(随意に種々の量のMTP−PEを含む)、微小流動化装置(microfluidizer)、例えばモデル110Y微小流動化装置(Microfluidics, Newton, MA)を用いてサブミクロン粒子に処方されたMF59(WO 90/14837);10%スクアレン、0.4%TWEEN(登録商標)80、5%PLURONIC(登録商標)遮断ポリマーL121およびthr−MDPを含み、サブミクロンエマルジョン中に微小流動化されたか、またはボルテックスされて、一層大きい粒子の大きさのエマルジョンを発生するSAF;並びに2%スクアレン、0.2%TWEEN(登録商標)80および1種または2種以上の細菌細胞壁成分、例えばモノホスホリルリピドA、トレハロースジミコレート(trehalose dimycolate)(TDM)および細胞壁骨格(CWS)を含むRIBI(登録商標)アジュバント系(RAS)(Ribi ImmunoChem, Hamilton, MT)が含まれる。
【0029】
他の群のアジュバントは、サポニンアジュバント、例えばSTIMULON(登録商標)(QS-21, Aquila, Framingham, MA)またはこれから発生した粒子、例えばISCOM(免疫刺激複合体)およびISCOMATRIX(登録商標)(CSL Ltd., Parkville, Australia)である。他の好適なアジュバントには、フロイント完全アジュバント(CFA)、フロイント不完全アジュバント(IFA)、鉱物ゲル、例えば水酸化アルミニウム、および界面活性物質、例えばリソレシチン、PLURONIC(登録商標)ポリオール類、ポリアニオン類、ペプチド類、CpG(WO 98/40100)、キーホールリンペットヘモシアニン、ジニトロフェノールおよびサイトカイン類、例えばインターロイキン類(IL−1、IL−2およびIL−12)、マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)、並びに腫瘍壊死因子(TNF)が含まれる。ヒトにおいて用いられるアジュバントの中で、BCG(カルメット・ゲラン桿菌)およびCorynebacterium parvumが、特に好適である。
【0030】
多次元立体構造ADDLに対する抗体は、動物をADDLで免疫することにより発生する。一般的に、ADDLを、合成的に、または組換え断片発現および精製により発生させることができる。合成ADDLを、本明細書中に開示したように、または米国特許第6,218,506号に、もしくは同時係属出願USSN 60/621,776、60/652,538、60/695,526および60/695,528に開示されている方法に従って、調製することができる。さらに、ADDLを、他のタンパク質、例えばキーホールリンペットヘモシアニンと融合させて、キメラ分子に対する抗体を発生させることができる。ADDLを、立体構造的に拘束して、本明細書中に記載したように有用なエピトープを形成することができ、さらに表面と会合させ、例えば表面に物理的に付着させるか、または化学的に結合させて、本発明の抗体により認識される立体構造の形成を可能にするようにすることができる。
【0031】
ADDLの多次元立体構造に対するモノクローナル抗体を、培養物中の連続的な細胞系により抗体分子の生成をもたらすすべての手法を用いて、調製することができる。これらには、ハイブリドーマ手法、ヒトB細胞ハイブリドーマ手法およびEBV−ハイブリドーマ手法(Kohlerら(1975)、Nature 256:495-497; Kozborら(1985)、J. Immunol. Methods 81:31-42; Coteら(1983)、Proc. Natl. Acad. Sci. 80:2026-2030; Coleら(1984)、Mol. Cell Biol. 62:109-120)が含まれるが、これらには限定されない。例示的なモノクローナル抗体には、2A10、4C2、2D6、4E2、20C2、2B4、5F10、2H4、2E12、1F6、1F4、3B3、5G12、6B7、6B11、11B4、11B5、14A11、15G6、17G4、20C2、3B7、1E3、1A9、1G3、1A7および1E5と指定されるマウス抗体が含まれる。
【0032】
さらに、ヒト化およびキメラ抗体を、マウス抗体遺伝子をヒト抗体遺伝子に対してスプライスして、適切な抗原特異性および生物学的活性を有する分子を得ることにより、産生することができる(Morrisonら(1984)、Proc. Natl. Acad. Sci. 81, 6851-6855; Neubergerら(1984)、Nature 312:604-608; Takedaら(1985)、Nature 314:452-454; Queenら(1989)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:10029-10033; WO 90/07861を参照)。例えば、マウス抗体は、ファージ選択ベクター中でFvまたはFab断片として発現される。軽鎖についての遺伝子(および平行した実験において、重鎖についての遺伝子)を、ヒト抗体遺伝子のライブラリーについて交換する。次に、尚抗原に結合するファージ抗体を、同定する。一般的に鎖混合として知られているこの方法により、これが由来するマウス抗体と同一のエピトープに結合するべきである、ヒト化された抗体が得られた(Jespersら(1994)、Biotechnology NY 12:899-903)。代替として、鎖混合を、タンパク質レベルで行うことができる(Figiniら(1994)、J. Mol. Biol. 239:68-78を参照)。
【0033】
ヒト抗体をまた、ファージディスプレイ方法を用いて得ることができる。例えば、WO 91/17271およびWO 92/01047を参照。これらの方法において、要素がこれらの外面上で異なる抗体を表示するファージのライブラリーを、作成する。抗体は、通常FvまたはFab断片として表示される。所望の特異性を有する抗体を表示するファージを、ADDLに対するアフィニティー濃縮により、選択する。ADDLに対するヒト抗体をまた、少なくともヒト免疫グロブリン座および不活性化された内因性免疫グロブリン座のセグメントをコードするトランスジーンを有する非ヒトトランスジェニック哺乳類から産生することができる。例えば、WO 93/12227およびWO 91/10741を参照。各々を、参照により本明細書中に導入する。ヒト抗体を、競合的結合実験または他の方法により、特定のマウス抗体と同一のエピトープ特異性を有するように、選択することができる。このような抗体は、特にマウス抗体の有用な機能的特性を共有する傾向がある。ヒトポリクローナル抗体をまた、免疫原性剤で免疫したヒトからの血清の形態で、提供することができる。随意に、このようなポリクローナル抗体を、アフィニティー試薬としてADDLを用いて、アフィニティー精製により濃縮することができる。
【0034】
ヒト化抗体をまた、マウス抗体を化粧張り(veneering)するかまたは新たな表面を形成することにより、産生することができる。化粧張りは、マウス重および軽可変部における表面固定された領域のアミノ酸のみを、相同的なヒト抗体配列のもので置換することを含む。マウス表面アミノ酸を相同的なヒト配列からの同一の位置におけるヒト残基で置換することは、マウス抗体の免疫原性を低減する一方、このリガンド結合を保存すると示された。外部残基の置換は、一般的に、内部ドメインに対して、またはドメイン間接触に対して、影響をほとんどまたは全く有しない。(例えば米国特許第6,797,492号を参照)。
【0035】
ヒトまたはヒト化された抗体を、IgG、IgD、IgA、IgMまたはIgE定常部並びにIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4を含むすべてのアイソタイプを有するように、設計することができる。特定の態様において、本発明の抗体は、IgGもしくはIgMまたはこれらの組み合わせである。特定の組み合わせは、ヒトIgG4配列を標準的なヒトIgG2定常部中に選択的に導入することにより形成した定常部を包含する。例示的な変異体IgG2Fcは、本明細書中に配列番号254として述べるIgG2m4である。抗体を、別個の重鎖および軽鎖として、または重鎖および軽鎖可変ドメインがスペーサーにより結合している一本鎖抗体として、2つの軽鎖および2つの重鎖を含む四量体として、表すことができる。一本鎖抗体を産生するための手法は、当該分野において十分知られている。
【0036】
CDR移植および化粧張りにより産生された例示的なヒト化抗体を、本明細書中に、4E2、26D6、20C2、3B3、2H4および1F6と指定された抗体について開示する。IgG1およびIgG2M4重鎖可変部並びに、CDR移植および化粧張りにより産生されたヒト化4E2、26D6、20C2、3B3、2H4および1F6についてのカッパ軽鎖可変部についてのアミノ酸配列を、図11A〜11Yに示し、本明細書中に配列番号152〜176として述べる。
【0037】
二重特異性抗体もまた、意図する。二重特異性抗体は、結合する抗体の結合ドメイン(重鎖と軽鎖との両方)を単離し、同一のポリペプチド鎖上の重鎖および軽鎖に接合するかまたは作動可能に(operably)結合する結合部分を供給し、これにより結合機能を保存することにより調製された、操作された抗体構造物を意味する(Holligerら(1993)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6444; Poljak (1994)、Structure 2:1121-1123を参照)。これは、本質的に、抗原に結合するのに必要な可変ドメインのみを有する根本的に短縮された抗体を形成する。同一の鎖上で2つのドメイン間の対形成を可能にするには短すぎるリンカーを用いることにより、ドメインを、他の鎖の相補的なドメインと強制的に対形成させ、2つの抗原結合部位を作成させる。これらの二量体抗体断片または二重特異性抗体は、2価であり、二重特異性である。当業者は、二重特異性抗体を作成するすべての方法を用いることができることを認識する。好適な方法は、Holligerら(1993)、上記、Poljak (1994)、上記、Zhuら(1996)、Biotechnology 14:192-196および米国特許第6,492,123号により記載されており、これらを参照により本明細書中に導入する。
【0038】
本発明の単離された抗体の断片はまた、本発明により明確に包含される。断片は、Fab断片、F(ab’)2断片、F(ab’)断片、二重特異性scFv断片、Fd断片およびFab発現ライブラリーにより産生された断片、並びにペプチドアプタマーを含むことを意図する。例えば、F(ab’)2断片は、本発明の抗体分子のペプシン消化により産生され、一方Fab断片は、F(ab’)2断片のジスルフィド架橋を還元することにより産生される。あるいはまた、Fab発現ライブラリーを、所望の特異性を伴ってモノクローナルFab断片の迅速かつ容易な同定を可能にするように構成することができる(Huseら(1989)、Science 254:1275-1281を参照)。特定の態様において、本発明の抗体断片は、可変部結合部位を維持する中和抗体の断片である。例示的なものは、F(ab’)2断片、F(ab’)断片およびFab断片である。一般的に、Immunology: Basic Processes (1985)、第2版、J. Bellanti(編)、95〜97頁を参照。
【0039】
ADDLの多次元立体構造を区別して認識するペプチドアプタマーを、アプタマーのライブラリー(例えばAptanomics SA, Lyon, Franceにより提供される)について合理的に設計するかまたは選別することができる。一般的に、ペプチドアプタマーは、設計が抗体の構造に基づいている合成認識分子である。ペプチドアプタマーは、両方の末端においてタンパク質骨格に結合した可変ペプチドループからなる。この二重の構造的束縛により、ペプチドアプタマーの結合親和性が抗体の結合親和性(ナノモル範囲)に匹敵するレベルに大幅に増大する。
【0040】
本発明の抗体および抗体断片を産生するにあたり用いるための重鎖および軽鎖可変部をコードする例示的な核酸配列を、本明細書中で、図6および10(即ち配列番号1〜24および配列番号132〜151)に開示する。当業者に理解されるように、本明細書中に開示した重鎖可変部を、本明細書中に開示した軽鎖可変部のいずれか1つと組み合わせて用いて、改良された親和性、解離定数、エピトープなどを有する抗体を産生することができる。例えば、2H4(配列番号12によりコードされる)の軽鎖可変部を2A10(配列番号13によりコードされる)の重鎖可変部と組み合わせることにより、一層大きい直線状エピトープの認識をもたらすことができる。
【0041】
本発明の抗体または抗体断片を産生するにあたり用いるための例示的な重鎖および軽鎖CDRを、図7A〜7Fに開示し、これは、配列番号25、26および28(重鎖CDR1);配列番号29、30、31、33、34、35および36(重鎖CDR2);配列番号38、39、40、41、43、44、45、46、47および48(重鎖CDR3);配列番号49、50、51および53(軽鎖CDR1);配列番号54、55、56および58(軽鎖CDR2);並びに配列番号59、60、61、62、63、64および66(軽鎖CDR3)において述べたアミノ酸配列を有する。本発明の抗体または抗体断片の重鎖および軽鎖の特定の態様は、以下の通りである。
【0042】
Ser−Phe−Gly−Met−His(配列番号28)またはThr−Ser−Gly−Met−Gly−Val−Xaa(配列番号27)のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、ここでXaaは、側鎖を有しないかまたは小さい側鎖を有するアミノ酸(例えばSer、GlyまたはAla)である。His−Ile−Xaa1−Trp−Asp−Asp−Asp−Lys−Xaa2−Tyr−Asn−Pro−Ser−Leu−Lys−Ser(配列番号32)のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2、ここでXaa1は、芳香族側鎖基を有するアミノ酸(例えばPhe、TyrもしくはTrp)であり、Xaa2は、Ser、ArgもしくはTyrである;またはTyr−Ile−Xaa1−Xaa2−Xaa3−Ser−Xaa4−Thr−Ile−Tyr−Tyr−Ala−Asp−Thr−Val−Lys−Arg(配列番号37)のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2、ここでXaa1およびXaa2は、極性側鎖基を有するアミノ酸(例えばArg、Ser、Gly、Thr、Cys、Tyr、Asn、Gln、LysもしくはHis)であり;Xaa3は、GlyもしくはValであり;Xaa4は、極性であり、帯電していない側基を有するアミノ酸(例えばGly、Ser、Thr、Cys、Tyr、AsnもしくはGln)である。Arg−Ser−Ile−Xaa1−Xaa2−Xaa3−Xaa4−Pro−Glu−Asp−Tyr−Phe−Xaa5−Tyr(配列番号42)のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3、ここでXaa1は、極性であり、帯電していない側基を有するアミノ酸(例えばGly、Ser、Thr、Cys、Tyr、AsnまたはGln)であり;Xaa2は、ヒドロキシル側鎖基を有するアミノ酸(例えばSerまたはThr)であり;Xaa3およびXaa4は、脂肪族側鎖基を有するアミノ酸(例えばAla、Val、Leu、IleまたはPro)であり;Xaa5は、AspまたはAlaである。
【0043】
Arg−Ser−Ser−Gln−Ser−Xaa1−Xaa2−His−Ser−Asn−Gly−Asn−Thr−Tyr−Leu−Xaa3(配列番号52)のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、ここでXaa1およびXaa2は、脂肪族側鎖基を有するアミノ酸(例えばAla、Val、Leu、IleまたはPro)であり、Xaa3は、帯電した側鎖基を有するアミノ酸(例えばAsp、Glu、Arg、HisまたはLys)である。Lys−Xaa1−Ser−Asn−Arg−Phe−Xaa2(配列番号57)のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2、ここでXaa1は、脂肪族側鎖基を有するアミノ酸(例えばAla、Val、Leu、IleまたはPro)であり、Xaa2は、SerまたはPheである。Xaa1−Gln−Xaa2−Xaa3−Xaa4−Val−Pro−Xaa5−Thr(配列番号65)のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3、ここでXaa1は、SerまたはPheであり;Xaa2は、側鎖を有しないアミノ酸(例えばgly)またはヒドロキシル側鎖基を有するアミノ酸(例えばSerもしくはThr)であり;Xaa3は、ヒドロキシル側鎖基を有するアミノ酸(例えばSerまたはThr)であり;Xaa4は、His、TyrまたはLeuであり;Xaa5は、脂肪族側鎖基を有するアミノ酸(例えばAla、Val、Leu、IleまたはPro)である。
【0044】
当業者により理解されるように、抗体の重鎖および軽鎖可変部内のCDRの1つまたは2つ以上を、他の抗体からの1つまたは2つ以上のCDRで置換して、完全に新規な抗体または抗体断片を産生することができる。例えば、5F10の重鎖のCDR3を4E2からの重鎖のCDR3(配列番号41)で置換することにより、ADDLのニューロン細胞への結合を遮断する5F10の当該能力を増強することができる。
【0045】
特定の特性を有する抗体を、意図する。1つの態様において、Aβ1−42の3〜8個のアミノ酸エピトープに結合する抗体は、Xaaが側鎖を有しないかもしくは小さい側鎖を有するアミノ酸(例えばSer、GlyもしくはAla)である、Thr−Ser−Gly−Met−Gly−Val−Xaa(配列番号27)の重鎖CDR1アミノ酸配列;またはXaa1が芳香族側鎖基を有するアミノ酸(例えばPhe、TyrもしくはTrp)であり、Xaa2がSer、ArgもしくはTyrである、His−Ile−Xaa1−Trp−Asp−Asp−Asp−Lys−Xaa2−Tyr−Asn−Pro−Ser−Leu−Lys−Ser(配列番号32)の重鎖CDR2アミノ酸配列を有する。
【0046】
他の態様において、小さい(<30kDa)凝集体にまさる大きい(>50kDa)ADDL凝集体への適度な親和性を有する抗体(即ちそれぞれSECピーク1およびピーク2)は、Xaa1が極性であり、帯電していない側基を有するアミノ酸(例えばGly、Ser、Thr、Cys、Tyr、AsnまたはGln)であり;Xaa2がヒドロキシル側鎖基を有するアミノ酸(例えばSerまたはThr)であり、Xaa3およびXaa4が脂肪族側鎖基を有するアミノ酸(例えばAla、Val、Leu、IleまたはPro)であり;Xaa5がAspまたはAlaである、Arg−Ser−Ile−Xaa1−Xaa2−Xaa3−Xaa4−Pro−Glu−Asp−Tyr−Phe−Xaa5−Tyr(配列番号42)の重鎖CDR3アミノ酸配列を有する。
【0047】
本発明の抗体または抗体断片は、これに結合した追加の部分を有することができる。例えば、米国特許第4,493,825号に記載されているように、細粒または微小粒子を、抗体または抗体断片に結合させることができ、この開示を、参照により本明細書中に導入する。
【0048】
さらに、本発明の抗体または抗体断片を突然変異させ、増大した抗原親和性、中和活性(即ち、ADDLのニューロン細胞への結合を遮断する能力もしくはADDL構築を遮断する能力)、または改良された解離定数について、選択することができる。大腸菌のミューテーター菌株(Lowら(1996)、J. Mol. Biol. 260:359-368)、鎖混合(Figiniら(1994)、上記)およびPCR変異原性は、抗体をコードする核酸分子を突然変異させるための確立された方法である。例示により、増大した親和性を、多数のファージ抗体を少量のビオチン化された抗原と接触させ、従って抗体が結合について競合するようにすることにより、選択することができる。
【0049】
この場合において、抗原分子の数は、ファージ抗体の数を超えているはずであるが、抗原の濃度は、解離定数よりもいくらか低いはずである。従って、増大した親和性を有する優性に突然変異したファージ抗体は、ビオチン化された抗原に結合し、一方比較的弱い親和性のファージ抗体の比較的大きい部分は、未結合のままである。次に、ストレプトアビジンは、一層高い親和性の突然変異したファージ抗体の混合物からの濃縮を補助し得る(Schierら(1996)、J. Mol. Biol. 255:28-43)。例示的な親和性成熟軽鎖CDR3アミノ酸配列を、本明細書中に開示し(表11および12を参照)、特定の態様は、Xaa1−Gln−Xaa2−Thr−Arg−Val−Pro−Leu−Thr(配列番号316)の軽鎖CDR3アミノ酸配列を包含し、ここでXaa1は、PheまたはLeuであり、Xaa2は、AlaまたはThrである。
【0050】
いくつかの治療的用途のために、抗体の抗原からの解離を低減することが、望ましい場合がある。これを達成するために、ファージ抗体を、ビオチン化された抗原に結合させ、過剰のビオチン化されていない抗原を加える。ある期間の後に、主に一層低い解離定数を有するファージ抗体を、ストレプトアビジンと共に収穫することができる(Hawkinsら(1992)、J. Mol. Biol. 226:889-96)。
【0051】
本明細書中に開示されたものを含む種々のイムノアッセイを、ADDLの多次元立体構造に対する所望の特異性を有する抗体またはこの断片を同定するための選別のために、用いることができる。競合的結合(例えばELISA)、ラテックス凝集アッセイ、免疫放射線測定法、ポリクローナル抗体もしくはモノクローナル抗体またはこの断片のいずれかを用いる動力学(例えばBIACORE(登録商標)分析)についての多数のプロトコルは、当該分野において十分知られている。このようなイムノアッセイは、典型的に、特定の抗体とこの同族の抗原との間の複合体結合の測定を含む。2つの非干渉性エピトープに対して反応性のモノクローナル抗体を用いる、2つの部位のモノクローナルに基づくイムノアッセイが好適であるが、競合的結合アッセイもまた、用いることができる。このようなアッセイをまた、試料中のADDLの多次元立体構造の検出において用いることができる。
【0052】
抗体または抗体断片にまた、他の生物学的活性アッセイ、例えばニューロンもしくは培養した海馬細胞に結合するADDLの置換またはADDL構築の遮断を施して、中和または薬理学的活性および予防または治療剤としての可能性のある効能を評価することができる。このようなアッセイは、本明細書中に記載されており、当該分野において十分知られている。
【0053】
抗体および抗体の断片を、ハイブリドーマとして産生および維持するか、または、あるいはまた、大腸菌、酵母(例えばSaccharomyces種およびPichia種)、バキュロウイルス、哺乳類細胞(例えば骨髄腫、CHO、COS)、植物またはトランスジェニック動物を含むがこれらには限定されない、すべての十分確立された発現系において組換え的に産生することができる(BreitlingおよびDuebel (1999)、Recombinant Antibodies, John Wiley & Sons, Inc., NY,119〜132頁中)。CDR移植および化粧張りにより産生された、IgG1およびIgG2m4重鎖可変部並びにヒト化4E2、26D6、20C2、3B3、2H4および1F6についてのカッパ軽鎖可変部の例示的な核酸配列を、図10A〜10Sに示し、本明細書中に配列番号132〜151として述べる。抗体および抗体の断片について、アフィニティークロマトグラフィー、免疫グロブリン結合分子(例えばプロテインA、L、GまたはH)、抗体または抗体断片に作動可能に結合したタグ(例えばHisタグ、FLAG(登録商標)タグ、Strepタグ、c−mycタグ)などが含まれるがこれらには限定されない、すべての適切な方法を用いて、単離することができる。BreitlingおよびDuebel (1999)、上記を参照。
【0054】
本発明の抗体および抗体断片は、ADDLの蓄積と関連する疾患の診断、ADDLのニューロン細胞への結合の遮断または阻害、ADDL構築の遮断、ADDLと関連する疾患を予防的に、または治療的に処置すること、ADDLのニューロンへの結合を防止する治療剤の同定、およびSer202/Thr205におけるタウタンパク質のリン酸化の防止を含む種々の使用を有する。
【0055】
本発明の抗体および抗体断片はまた、ADDLのニューロン細胞への結合を遮断または阻害する方法において、有用である。本発明のこの方法を、ニューロンを本発明の抗体または抗体断片とインビトロまたはインビボで接触させて、ADDLのニューロンへの結合を遮断するようにすることにより、行う。特定の態様において、本発明の抗体または抗体断片は、抗体または抗体断片の不存在におけるADDLの結合と比較して、ADDLの結合の少なくとも15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または97%の減少を達成する。抗体がADDLのニューロンへの結合を遮断することができる程度を、本明細書中に開示した方法、即ち免疫細胞化学または細胞に基づくアルカリホスファターゼアッセイまたはすべての他の好適なアッセイに従って、決定することができる。ADDLのニューロン細胞への結合を減少させるのに特に有用な抗体には、例示的な20C2、3B3、1F4、1F6、4E2、2B4、2D6および2H4モノクローナル抗体が含まれる。
【0056】
本発明の抗体および抗体断片は、さらに、ADDLの構築を遮断または阻害する方法において有用である。この方法は、アミロイドβ1−42ペプチドを含む試料を本発明の抗体または抗体断片と接触させて、ADDLの構築を阻害することを含む。抗体がADDLの構築を遮断することができる程度を、本明細書中に開示した方法、即ちFRETまたは蛍光偏光またはすべての他の好適なアッセイに従って、決定することができる。ADDLの構築を遮断するのに特に有用な抗体には、例示的な1F4、20C2、4C2、1F6、2B4、5F10、2A10および2D6抗体が含まれる。
【0057】
本明細書中に開示した抗体はまた、タウタンパク質のリン酸化をSer202/Thr205において防止する方法において有用である。この方法は、タウタンパク質を含む試料を本発明の抗体または抗体断片と接触させて、ADDLのニューロンへの結合を遮断し、これによりタウタンパク質のリン酸化を防止することを含む。抗体がタウタンパク質のリン酸化をSer202/Thr205において防止することができる程度を、本明細書中に開示した方法またはすべての他の好適なアッセイに従って、決定することができる。
【0058】
ADDLのニューロンへの結合を遮断するかまたは低減すること、ADDLの構築を阻害することおよびSer202/Thr205におけるタウタンパク質のリン酸化を防止することはすべて、ADDLの蓄積と関連する疾患を予防的に、または治療的に処置する方法において、用途が見出されている。従って、本発明はまた、本発明の抗体または抗体断片を用いて、ADDLの蓄積に関連する疾患(例えばアルツハイマー病または同様の記憶関連障害)を防止または処置することを包含する。処置の影響を受けやすい患者には、疾患の危険にあるが症状を示さない個体、および現在症状を示している患者が含まれる。アルツハイマー病の場合において、十分長く生存している場合には、事実上誰もが、アルツハイマー病を罹患する危険にある。
【0059】
従って、本発明の抗体または抗体断片を、被検患者の危険の評価を何ら必要とせずに、一般的集団に予防的に投与することができる。この方法は、アルツハイマー病の既知の遺伝的な危険を有する個体に特に有用である。このような個体には、疾患を有すると診断された親類を有する個体、および危険が遺伝的または生化学的マーカーの分析により決定される個体が含まれる。アルツハイマー病についての危険の遺伝的マーカーには、APP遺伝子における突然変異、特にそれぞれHardy突然変異およびSwedish突然変異と呼ばれる、位置717並びに位置670および671における突然変異が含まれる。
【0060】
危険の他のマーカーは、プレセニリン遺伝子PS1およびPS2、並びにApoE4における突然変異、アルツハイマー病の家族歴、高コレステロール血症またはアテローム硬化症である。現在アルツハイマー病を罹患している個体を、特徴的な認知症および上記の危険因子の存在から認識することができる。さらに、多くの診断試験が、アルツハイマー病を有する個体を同定するために有用である。これらには、CSFタウおよびAβ1−42レベルの測定が含まれる。アルツハイマー病を罹患している個体をまた、ADRDA基準または本明細書中に開示した方法により、診断することができる。
【0061】
無症候性の患者において、処置を、すべての年齢(例えば10歳、20歳、30歳の年齢)において開始することができる。しかし、通常、患者が40歳、50歳、60歳または70歳の年齢に達するまで処置を開始する必要はない。処置は、典型的に、ある期間にわたる複数の調剤を必要とする。処置を、ADDLの存在について長期間にわたりアッセイすることにより、モニタリングすることができる。
【0062】
治療的用途において、本発明の抗体または抗体断片を含む医薬組成物または医薬を、ADDLの蓄積に関連するこのような疾患が疑われる、またはすでに当該疾患に罹患している患者に、この合併症および当該疾患の発生における中間的な病理学的表現型を含む当該疾患の症状(生化学的、組織学的および/または行動性)を治癒させるかまたは少なくとも部分的に停止させるのに十分な量で、投与する。予防的用途において、本発明の抗体または抗体断片を含む医薬組成物または医薬を、ADDLの蓄積に関連する疾患が疑われるか、または他の方法でこの危険にある患者に、当該患者における受動的な免疫性を達成するのに十分な量で投与し、これにより当該危険を解消するかもしくは減少させ、重篤度を低下させ、または当該疾患の生化学的、組織学的および/または行動性症状、この合併症および当該疾患の発生の間提示される中間的な病理学的表現型を含む疾患の発生を遅延させる。
【0063】
いくつかの方法において、剤の投与により、特徴的なアルツハイマー病の病理を未だ発生していない患者における筋認知性(myocognitive)機能障害が低下するかまたは解消する。特定の態様において、本発明の抗体または抗体断片の有効量は、処置の不存在におけるADDLの結合と比較して、ADDLの患者におけるニューロンへの結合の少なくとも15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または97%の減少を達成する量である。このように、長期間の増強/記憶形成の機能障害が、低減される。
【0064】
上記の状態の処置のための本発明の組成物の有効な用量は、投与の手段、患者の生理学的状態、患者がヒトであるか動物であるか、投与される他の薬物、および処置が予防的であるか治療的であるかを含む、多くの種々の要因に依存して変化する。通常、患者はヒトであるが、非ヒト哺乳類、例えばイヌまたはトランスジェニック哺乳類もまた、処置することができる。
【0065】
処置投与量は、一般的に、安全性および効能を最適化するように用量設定される。抗体または抗体断片での受動的免疫化のために、宿主体重の約0.0001〜100mg/kg、および一層通常には0.01〜5mg/kgの投与量範囲が、好適である。例えば、投与量を、1mg/体重1kgもしくは10mg/体重1kgまたは1〜10mg/kgの範囲内とすることができる。例示的な処置型は、2週間おきに1回または1ヶ月に1回または3〜6ヶ月おきに1回の投与を必要とする。いくつかの方法において、種々の結合特性を有する本発明の2種または3種以上の抗体を、同時に投与し、この場合において、投与される各々の抗体の投与量は、示した範囲内にある。抗体を、通常複数の機会において投与し、ここで単一の調剤間の間隔は、毎週、毎月または毎年とすることができる。間隔をまた、患者中のADDLに対する抗体の血中レベルを測定することにより示されるように、不規則とすることができる。いくつかの方法において、投与量を、1〜1000μg/mLおよびいくつかの方法においては25〜300μg/mLの血漿抗体濃度を達成するように、調整する。
【0066】
あるいはまた、抗体または抗体断片を、持続放出処方物として投与することができ、この場合において、比較的低い頻度の投与が必要である。投与量および頻度は、患者中の抗体の半減期に依存して変化する。一般的に、ヒトおよびヒト化された抗体は、キメラ抗体および非ヒト抗体よりも長い半減期を有する。前に示したように、投与量および投与の頻度を、処置が予防的であるか治療的であるかに依存して、変化させることができる。予防的適用において、比較的低い投与量を、比較的低い頻度の間隔で、長期間にわたり投与する。数人の患者は、当該患者の生命の残りの間、処置を受け続ける。治療的適用において、比較的短い間隔における比較的高い投与量が、時々疾患の進行が低減されるかまたは終了するまで、好ましくは患者が疾患の症状の部分的な、または完全な回復を示すまで、必要である。その後、患者に、予防的型を投与することができる。
【0067】
本発明の抗体および抗体断片を、医薬組成物または医薬の成分として投与することができる。医薬組成物または医薬は、一般的に、活性治療剤および種々の他の薬学的に許容し得る成分を含む。Remington: The Science and Practice of Pharmacy, Alfonso R. Gennaro編、第20版、Lippincott Williams & Wilkins: Philadelphia, PA, 2000を参照。好ましい形態は、投与の意図された方式および治療的適用に依存する。医薬組成物は、所望の処方に依存して、一般的に動物またはヒトへの投与のための医薬組成物を処方するために用いられるビヒクルとして定義される、薬学的に許容し得る無毒性担体または希釈剤を含むことができる。希釈剤を、組み合わせの生物学的活性に影響しないように、選択する。このような希釈剤の例は、蒸留水、生理学的リン酸緩衝食塩水、リンゲル液、デキストロース溶液およびハンクス液である。
【0068】
医薬組成物はまた、大きいゆっくりと代謝される巨大分子、例えばタンパク質、多糖類、例えばキトサン、ポリ乳酸類、ポリグリコール酸類およびコポリマー類(例えばラテックス官能化SEPHAROSE(登録商標)、アガロース、セルロースなど)、重合体アミノ酸、アミノ酸コポリマー、および脂質凝集体(例えば油小滴またはリポソーム)を含むことができる。
【0069】
本発明の医薬組成物または医薬の投与を、種々の経路により行うことができ、これには、経口、局所的、肺、直腸、皮下、皮内、鼻腔内、頭蓋内、筋肉内、眼内または関節内注射などが含まれるが、これらには限定されない。投与の最も典型的な経路は、静脈内、続いて皮下であるが、他の経路が、同等に有効であり得る。筋肉内注射をまた、腕または脚筋肉において行うことができる。いくつかの方法において、剤を、沈着物が蓄積している特定の組織中に直接注射し、これは例えば頭蓋内注射である。いくつかの態様において、抗体または抗体断片を、頭蓋中に直接注射する。他の態様において、抗体または抗体断片を、持続放出組成物またはデバイス、例えばMEDIPAD(登録商標)デバイスとして投与する。
【0070】
非経口投与について、本発明の抗体または抗体断片を、無菌の液体、例えば水、油、生理食塩水、グリセロールまたはエタノールであってもよい薬学的担体での生理学的に許容し得る希釈剤中の当該物質の溶液または懸濁液の注射可能な調剤として、投与することができる。さらに、補助物質、例えば湿潤剤または乳化剤、界面活性剤、pH緩衝物質などを、組成物中に存在させることができる。医薬組成物の他の成分は、石油、動物、植物または合成起源のもの、例えばピーナッツ油、大豆油および鉱油である。一般的に、グリコール類、例えばプロピレングリコールまたはポリエチレングリコールが、特に注射可能な溶液に適する液体担体である。抗体を、活性成分の持続された放出を可能にするように処方することができるデポー注射または移植製剤の形態で、投与することができる。例示的な組成物は、50mMのL−ヒスチジン、150mMのNaClから構成された水性緩衝液中に処方され、HClでpH6.0に調整された、5mg/mLにおける抗体を含む。
【0071】
典型的には、組成物を、液体溶液または懸濁液のいずれかとして、注射剤として調製する;液体ビヒクル中の溶液または懸濁液に適する固体形態をまた、注射前に調製することができる。製剤をまた、増強された送達のために、乳化させるか、またはリポソームもしくは微小粒子、例えばポリラクチド、ポリグリコリドもしくはコポリマー中にカプセル封入することができる。
【0072】
坐剤について、結合剤および担体には、例えば、ポリアルキレングリコール類またはトリグリセリド類が含まれる;このような坐剤を、活性成分を0.5%〜10%、または一層望ましくは1%〜2%の範囲内で含む混合物から、形成することができる。
【0073】
経口処方物は、賦形剤、例えば医薬階級のマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、ナトリウムサッカリン、セルロースおよび炭酸マグネシウムを含む。これらの組成物は、溶液、懸濁液、錠剤、ピル、カプセル、持続放出処方物または散剤の形態を採り、10%〜95%、または一層好適には25%〜70%の活性成分を含む。
【0074】
局所的な適用により、経皮的または皮内送達をもたらすことができる。局所的な投与を、当該剤をコレラ毒素または解毒した誘導体もしくはこのサブユニット、または他の同様の細菌性毒素と同時投与することにより、促進することができる(Glennら(1998)、Nature 391:851を参照)。同時投与を、当該成分を混合物として、または融合タンパク質として化学的架橋もしくは発現により得られた結合分子として用いることにより、達成することができる。
【0075】
あるいはまた、経皮的送達を、皮膚経路を用いて、またはトランスフェロソーム(transferosome)を用いて、達成することができる(Paulら(1995)、Eur. J. Immunol. 25:3521-24; Cevcら(1998)、Biochem. Biophys. Acta 1368:201-15)。
【0076】
本発明の抗体または抗体断片を、随意に、アミロイド形成的疾患の処置において少なくとも部分的に有効である他の剤と組み合わせて、投与することができる。
【0077】
本発明の抗体および抗体断片はまた、ADDLのニューロン(例えば海馬細胞)への結合を防止し、これによりADDLに帰する下流の事象を防止する治療剤の同定において、用途が見出されている。このようなアッセイを、当該剤の存在下でニューロンをADDLと接触させ、本発明の抗体または抗体断片を用いて、当該剤の存在下でのニューロンへのADDLの結合を決定することにより、行う。当業者により理解されるように、ADDLのニューロンへの結合を遮断する剤は、ニューロンに結合するADDLの量;本発明の抗体または抗体断片を用いるイムノアッセイにおいて検出可能な量を、当該剤と接触していないニューロンと比較して減少させる。ニューロン結合ADDLを検出するのに適するイムノアッセイを、本明細書中に開示する。
【0078】
本明細書中に示した方法を用いて選別することができる剤には、種々の化学的階級が包含されるが、典型的には、これらは有機分子、好ましくは100ダルトンより大きく、約2,500ダルトンより小さい分子量を有する小さい有機化合物である。剤は、タンパク質との構造的相互作用、特に水素結合に必要な官能基を含み、典型的に、少なくともアミン、カルボニル、ヒドロキシルまたはカルボキシル基、好ましくは官能化学基の少なくとも2つを含む。当該剤はしばしば、上記の官能基の1個または2個以上で置換された環式炭素または複素環式構造および/または芳香族または多環芳香族構造を含む。剤をまた、ペプチド類、抗体、サッカリド類、脂肪酸類、ステロイド類、プリン類、ピリミジン類、誘導体、構造的相同体またはこれらの組み合わせを含む生体分子の中に見出すことができる。剤を、天然または合成化合物のライブラリーを含む広範囲の供給源から得る。
【0079】
種々の他の試薬、例えば塩および中性タンパク質を、選別アッセイ中に包含させることができる。また、他の方法でアッセイの効率を改善する試薬、例えばプロテアーゼ阻害剤、ヌクレアーゼ阻害剤、抗菌剤などを、用いることができる。成分の混合物を、所要の結合をもたらすすべての順序で、加えることができる。
【0080】
本発明の選別アッセイにより同定される剤は、アミロイド形成的疾患および/またはタウオパチーの処置のために有益である。さらに、これらの概念を例示するために用いられる実験系は、タウリン酸化のアミロイドベータ誘発に関連する新規な薬剤標的を評価、同定および選別するための研究手段を表すことを、意図する。
【0081】
本発明はまた、本発明の抗体または抗体断片を用いて、ADDLを検出し、ADDLの蓄積と関連する疾患を診断する方法を提供する。ADDLの蓄積と関連する疾患は、ADDLの蓄積の結果、長期間の増強/記憶形成の生理学的機能障害がもたらされるすべての疾患を含むことを意図する。このタイプの疾患には、アルツハイマー病および同様の記憶関連障害が含まれるが、これらには限定されない。
【0082】
これらの方法に従って、患者からの試料を、本発明の抗体または抗体断片と接触させ、抗体または抗体断片の試料への結合は、試料中のADDLの存在を示す。本発明の文脈において用いる試料は、イムノアッセイを用いた分析の影響を受けやすいすべての体液または組織を意味することを意図する。本発明の方法により分析することができる好適な試料には、患者(例えば哺乳類、例えばヒト)からの脳の組織診試料および流体試料が含まれるが、これらには限定されない。インビトロ目的(例えばオリゴマー生成をモニタリングするアッセイ)のために、試料を、ニューロン細胞系または組織試料とすることができる。診断的目的のために、試料を、ADDLの蓄積と関連する疾患を有することが疑われる個体から、またはADDLの蓄積と関連する疾患を有する危険にある個体、例えば個体をADDLの蓄積と関連する疾患に罹患させる家族歴を有する個体からとすることができることを、意図する。
【0083】
試料における抗体または抗体断片のADDLへの結合の検出を、すべての標準的なイムノアッセイ(例えば本明細書中に開示した)を用いて行うことができ、または、あるいはまた、抗体断片が例えばペプチドアプタマーである場合には、結合を、例えばアプタマーに融合した検出可能なマーカータンパク質(例えばβ−カラクトシダーゼ、GFPもしくはルシフェラーゼ)により、直接検出することができる。その後、ADDL−抗体複合体の存在または不存在を、それぞれ試料中のADDLの存在または不存在および従ってそれぞれADDLの蓄積と関連する疾患の存在または不存在と相関させる。本発明の1種または2種以上の抗体または抗体断片を、現行の非侵襲性の免疫に基づくイメージング手法と組み合わせて用いて、ADDLの蓄積と関連する疾患の検出および早期の診断を大幅に増強することができることを、意図する。
【0084】
診断を促進するために、本発明はまた、本発明の抗体または抗体断片を含むためのキットに関する。キットは、ADDLの多次元立体構造を認識する1種または2種以上の抗体または抗体断片を保持する容器並びに、ADDLに結合して抗体−抗原複合体を生成する目的のために抗体を用い、抗体−抗原複合体の生成を検出し、抗体−抗原複合体の存在または不存在を試料中のADDLの存在または不存在と相関させるようにするための説明書を含む。容器の例には、複数の試料中のADDLの同時の検出を可能にするマルチウェル(multiwell)プレートが含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】アルカリホスファターゼアッセイからの結果を示す図であり、ここで、抗ADDL抗体は、ニューロンを区別して遮断する。
【図2】B103細胞を抗ADDL抗体と共にプレインキュベートした際の、bADDL結合の概要を示す図である。
【図3】ADDLの多次元立体構造を区別して認識することができる抗体の結合特性の概要を示す図である。
【図4】本明細書中に開示した抗体のADDL構築阻害の概要を示す図である。
【図5】N2A結合:κADDL相関プロットを示す図である。
【0086】
【図6A】マウス抗ADDL抗体20C2についての重鎖可変部についての核酸配列を示す図である。小文字は、抗体リーダー配列を示し、大文字は、抗体可変部配列を示す。相補性決定領域(CDR)をコードするヌクレオチドに、下線を付す。
【図6B】マウス抗ADDL抗体20C2についての軽鎖可変部についての核酸配列を示す図である。小文字は、抗体リーダー配列を示し、大文字は、抗体可変部配列を示す。相補性決定領域(CDR)をコードするヌクレオチドに、下線を付す。
【図6C】マウス抗ADDL抗体5F10についての重鎖可変部についての核酸配列を示す図である。小文字は、抗体リーダー配列を示し、大文字は、抗体可変部配列を示す。相補性決定領域(CDR)をコードするヌクレオチドに、下線を付す。
【0087】
【図6D】マウス抗ADDL抗体5F10についての軽鎖可変部についての核酸配列を示す図である。小文字は、抗体リーダー配列を示し、大文字は、抗体可変部配列を示す。相補性決定領域(CDR)をコードするヌクレオチドに、下線を付す。
【図6E】マウス抗ADDL抗体2D6についての重鎖可変部についての核酸配列を示す図である。小文字は、抗体リーダー配列を示し、大文字は、抗体可変部配列を示す。相補性決定領域(CDR)をコードするヌクレオチドに、下線を付す。
【図6F】マウス抗ADDL抗体2D6についての軽鎖可変部についての核酸配列を示す図である。小文字は、抗体リーダー配列を示し、大文字は、抗体可変部配列を示す。相補性決定領域(CDR)をコードするヌクレオチドに、下線を付す。
【0088】
【図6G】マウス抗ADDL抗体2B4についての重鎖可変部についての核酸配列を示す図である。小文字は、抗体リーダー配列を示し、大文字は、抗体可変部配列を示す。相補性決定領域(CDR)をコードするヌクレオチドに、下線を付す。
【図6H】マウス抗ADDL抗体2B4についての軽鎖可変部についての核酸配列を示す図である。小文字は、抗体リーダー配列を示し、大文字は、抗体可変部配列を示す。相補性決定領域(CDR)をコードするヌクレオチドに、下線を付す。
【図6I】マウス抗ADDL抗体4E2についての重鎖可変部についての核酸配列を示す図である。小文字は、抗体リーダー配列を示し、大文字は、抗体可変部配列を示す。相補性決定領域(CDR)をコードするヌクレオチドに、下線を付す。
【0089】
【図6J】マウス抗ADDL抗体4E2についての軽鎖可変部についての核酸配列を示す図である。小文字は、抗体リーダー配列を示し、大文字は、抗体可変部配列を示す。相補性決定領域(CDR)をコードするヌクレオチドに、下線を付す。
【図6K】マウス抗ADDL抗体2H4についての重鎖可変部についての核酸配列を示す図である。小文字は、抗体リーダー配列を示し、大文字は、抗体可変部配列を示す。相補性決定領域(CDR)をコードするヌクレオチドに、下線を付す。
【図6L】マウス抗ADDL抗体2H4についての軽鎖可変部についての核酸配列を示す図である。小文字は、抗体リーダー配列を示し、大文字は、抗体可変部配列を示す。相補性決定領域(CDR)をコードするヌクレオチドに、下線を付す。
【0090】
【図6M】マウス抗ADDL抗体2A10についての重鎖可変部についての核酸配列を示す図である。小文字は、抗体リーダー配列を示し、大文字は、抗体可変部配列を示す。相補性決定領域(CDR)をコードするヌクレオチドに、下線を付す。
【図6N】マウス抗ADDL抗体2A10についての軽鎖可変部についての核酸配列を示す図である。小文字は、抗体リーダー配列を示し、大文字は、抗体可変部配列を示す。相補性決定領域(CDR)をコードするヌクレオチドに、下線を付す。
【図6O】マウス抗ADDL抗体3B3についての重鎖可変部についての核酸配列を示す図である。小文字は、抗体リーダー配列を示し、大文字は、抗体可変部配列を示す。相補性決定領域(CDR)をコードするヌクレオチドに、下線を付す。
【0091】
【図6P】マウス抗ADDL抗体3B3についての軽鎖可変部についての核酸配列を示す図である。小文字は、抗体リーダー配列を示し、大文字は、抗体可変部配列を示す。相補性決定領域(CDR)をコードするヌクレオチドに、下線を付す。
【図6Q】マウス抗ADDL抗体1F6についての重鎖可変部についての核酸配列を示す図である。小文字は、抗体リーダー配列を示し、大文字は、抗体可変部配列を示す。相補性決定領域(CDR)をコードするヌクレオチドに、下線を付す。
【図6R】マウス抗ADDL抗体1F6についての軽鎖可変部についての核酸配列を示す図である。小文字は、抗体リーダー配列を示し、大文字は、抗体可変部配列を示す。相補性決定領域(CDR)をコードするヌクレオチドに、下線を付す。
【0092】
【図6S】マウス抗ADDL抗体1F4についての重鎖可変部についての核酸配列を示す図である。小文字は、抗体リーダー配列を示し、大文字は、抗体可変部配列を示す。相補性決定領域(CDR)をコードするヌクレオチドに、下線を付す。
【図6T】マウス抗ADDL抗体1F4についての軽鎖可変部についての核酸配列を示す図である。小文字は、抗体リーダー配列を示し、大文字は、抗体可変部配列を示す。相補性決定領域(CDR)をコードするヌクレオチドに、下線を付す。
【図6U】マウス抗ADDL抗体2E12についての重鎖可変部についての核酸配列を示す図である。小文字は、抗体リーダー配列を示し、大文字は、抗体可変部配列を示す。相補性決定領域(CDR)をコードするヌクレオチドに、下線を付す。
【0093】
【図6V】マウス抗ADDL抗体2E12についての軽鎖可変部についての核酸配列を示す図である。小文字は、抗体リーダー配列を示し、大文字は、抗体可変部配列を示す。相補性決定領域(CDR)をコードするヌクレオチドに、下線を付す。
【図6W】マウス抗ADDL抗体4C2についての重鎖可変部についての核酸配列を示す図である。小文字は、抗体リーダー配列を示し、大文字は、抗体可変部配列を示す。相補性決定領域(CDR)をコードするヌクレオチドに、下線を付す。
【図6X】マウス抗ADDL抗体4C2についての軽鎖可変部についての核酸配列を示す図である。小文字は、抗体リーダー配列を示し、大文字は、抗体可変部配列を示す。相補性決定領域(CDR)をコードするヌクレオチドに、下線を付す。
【0094】
【図7A】マウス抗ADDL抗体についての重鎖可変部についてのCDR1配列の比較を示す図である。
【図7B】マウス抗ADDL抗体についての重鎖可変部についてのCDR2配列の比較を示す図である。
【図7C】マウス抗ADDL抗体についての重鎖可変部についてのCDR3配列の比較を示す図である。
【図7D】マウス抗ADDL抗体についての軽鎖可変部についてのCDR1配列の比較を示す図である。
【図7E】マウス抗ADDL抗体についての軽鎖可変部についてのCDR2配列の比較を示す図である。
【図7F】マウス抗ADDL抗体についての軽鎖可変部についてのCDR3配列の比較を示す図である。
【0095】
【図8A】CDR移植により作成された、ヒト化抗ADDL抗体20C2についての重鎖可変部についてのアミノ酸配列を示す図である。配列を、マウス配列、NCBIタンパク質データベースから得られた最も相同的なヒト配列、最も相同的なヒトゲノム配列およびヒト化された配列の間の比較として示す。ヒト化された配列とは異なるマウス、ヒトおよびヒトゲノム配列におけるアミノ酸を、太字とする。CDRに下線を付す。CDRループ立体構造の維持に重要な残基を、*で示す。VL/VH界面において見出される保存された残基を、#で示す。可能性のあるグリコシル化部位を、イタリックにより示す。20C2重鎖について、位置24において1つのアミノ酸により異なる2種のヒト化された配列が発生した(HCVRAおよびHCVRB)。20C2HCVRAにおいて、ヒトアミノ酸を用い、20C2HCVRBにおいて、マウスアミノ酸を用いた。
【0096】
【図8B】CDR移植により作成された、ヒト化抗ADDL抗体20C2についての軽鎖可変部についてのアミノ酸配列を示す図である。配列を、マウス配列、NCBIタンパク質データベースから得られた最も相同的なヒト配列、最も相同的なヒトゲノム配列およびヒト化された配列の間の比較として示す。ヒト化された配列とは異なるマウス、ヒトおよびヒトゲノム配列におけるアミノ酸を、太字とする。CDRに下線を付す。CDRループ立体構造の維持に重要な残基を、*で示す。VL/VH界面において見出される保存された残基を、#で示す。可能性のあるグリコシル化部位を、イタリックにより示す。
【0097】
【図8C】CDR移植により作成された、ヒト化抗ADDL抗体26D6についての重鎖可変部についてのアミノ酸配列を示す図である。配列を、マウス配列、NCBIタンパク質データベースから得られた最も相同的なヒト配列、最も相同的なヒトゲノム配列およびヒト化された配列の間の比較として示す。ヒト化された配列とは異なるマウス、ヒトおよびヒトゲノム配列におけるアミノ酸を、太字とする。CDRに下線を付す。CDRループ立体構造の維持に重要な残基を、*で示す。VL/VH界面において見出される保存された残基を、#で示す。可能性のあるグリコシル化部位を、イタリックにより示す。
【0098】
【図8D】CDR移植により作成された、ヒト化抗ADDL抗体26D6についての軽鎖可変部についてのアミノ酸配列を示す図である。配列を、マウス配列、NCBIタンパク質データベースから得られた最も相同的なヒト配列、最も相同的なヒトゲノム配列およびヒト化された配列の間の比較として示す。ヒト化された配列とは異なるマウス、ヒトおよびヒトゲノム配列におけるアミノ酸を、太字とする。CDRに下線を付す。CDRループ立体構造の維持に重要な残基を、*で示す。VL/VH界面において見出される保存された残基を、#で示す。可能性のあるグリコシル化部位を、イタリックにより示す。
【0099】
【図8E】CDR移植により作成された、ヒト化抗ADDL抗体4E2についての重鎖可変部についてのアミノ酸配列を示す図である。配列を、マウス配列、NCBIタンパク質データベースから得られた最も相同的なヒト配列、最も相同的なヒトゲノム配列およびヒト化された配列の間の比較として示す。ヒト化された配列とは異なるマウス、ヒトおよびヒトゲノム配列におけるアミノ酸を、太字とする。CDRに下線を付す。CDRループ立体構造の維持に重要な残基を、*で示す。VL/VH界面において見出される保存された残基を、#で示す。可能性のあるグリコシル化部位を、イタリックにより示す。
【0100】
【図8F】CDR移植により作成された、ヒト化抗ADDL抗体4E2についての軽鎖可変部についてのアミノ酸配列を示す図である。配列を、マウス配列、NCBIタンパク質データベースから得られた最も相同的なヒト配列、最も相同的なヒトゲノム配列およびヒト化された配列の間の比較として示す。ヒト化された配列とは異なるマウス、ヒトおよびヒトゲノム配列におけるアミノ酸を、太字とする。CDRに下線を付す。CDRループ立体構造の維持に重要な残基を、*で示す。VL/VH界面において見出される保存された残基を、#で示す。可能性のあるグリコシル化部位を、イタリックにより示す。
【0101】
【図8G】CDR移植により作成された、ヒト化抗ADDL抗体3B3についての重鎖可変部についてのアミノ酸配列を示す図である。配列を、マウス配列、NCBIタンパク質データベースから得られた最も相同的なヒト配列、最も相同的なヒトゲノム配列およびヒト化された配列の間の比較として示す。ヒト化された配列とは異なるマウス、ヒトおよびヒトゲノム配列におけるアミノ酸を、太字とする。CDRに下線を付す。CDRループ立体構造の維持に重要な残基を、*で示す。VL/VH界面において見出される保存された残基を、#で示す。可能性のあるグリコシル化部位を、イタリックにより示す。
【0102】
【図8H】CDR移植により作成された、ヒト化抗ADDL抗体3B3についての軽鎖可変部についてのアミノ酸配列を示す図である。配列を、マウス配列、NCBIタンパク質データベースから得られた最も相同的なヒト配列、最も相同的なヒトゲノム配列およびヒト化された配列の間の比較として示す。ヒト化された配列とは異なるマウス、ヒトおよびヒトゲノム配列におけるアミノ酸を、太字とする。CDRに下線を付す。CDRループ立体構造の維持に重要な残基を、*で示す。VL/VH界面において見出される保存された残基を、#で示す。可能性のあるグリコシル化部位を、イタリックにより示す。
【0103】
【図8I】CDR移植により作成された、ヒト化抗ADDL抗体2H4についての重鎖可変部についてのアミノ酸配列を示す図である。配列を、マウス配列、NCBIタンパク質データベースから得られた最も相同的なヒト配列、最も相同的なヒトゲノム配列およびヒト化された配列の間の比較として示す。ヒト化された配列とは異なるマウス、ヒトおよびヒトゲノム配列におけるアミノ酸を、太字とする。CDRに下線を付す。CDRループ立体構造の維持に重要な残基を、*で示す。VL/VH界面において見出される保存された残基を、#で示す。可能性のあるグリコシル化部位を、イタリックにより示す。
【0104】
【図8J】CDR移植により作成された、ヒト化抗ADDL抗体2H4についての軽鎖可変部についてのアミノ酸配列を示す図である。配列を、マウス配列、NCBIタンパク質データベースから得られた最も相同的なヒト配列、最も相同的なヒトゲノム配列およびヒト化された配列の間の比較として示す。ヒト化された配列とは異なるマウス、ヒトおよびヒトゲノム配列におけるアミノ酸を、太字とする。CDRに下線を付す。CDRループ立体構造の維持に重要な残基を、*で示す。VL/VH界面において見出される保存された残基を、#で示す。可能性のあるグリコシル化部位を、イタリックにより示す。
【0105】
【図8K】CDR移植により作成された、ヒト化抗ADDL抗体1F6についての重鎖可変部についてのアミノ酸配列を示す図である。配列を、マウス配列、NCBIタンパク質データベースから得られた最も相同的なヒト配列、最も相同的なヒトゲノム配列およびヒト化された配列の間の比較として示す。ヒト化された配列とは異なるマウス、ヒトおよびヒトゲノム配列におけるアミノ酸を、太字とする。CDRに下線を付す。CDRループ立体構造の維持に重要な残基を、*で示す。VL/VH界面において見出される保存された残基を、#で示す。可能性のあるグリコシル化部位を、イタリックにより示す。1F6について、軽鎖を設計しなかった。その理由は、これは、4E2についての軽鎖の配列と同一の配列を有するからである。
【0106】
【図9A】化粧張りにより作成された、ヒト化抗ADDL抗体20C2についての重鎖可変部についてのアミノ酸配列を示す図である。配列を、マウス配列、NCBIタンパク質データベースから得られた最も相同的なヒト配列、最も相同的なヒトゲノム配列およびヒト化された配列の間の比較として示す。ヒト化された配列とは異なるマウス、ヒトおよびヒトゲノム配列におけるアミノ酸を、太字とする。CDRに下線を付す。CDRループ立体構造の維持に重要な残基を、アスタリスクで示す。VL/VH界面において見出される保存された残基を、ポンド記号で示す。可能性のあるグリコシル化部位を、イタリックにより示す。20C2重鎖について、位置81において1つのアミノ酸により異なる2種のヒト化された配列が発生した(HCVRVenAおよびHCVRVenB)。20C2HCVRVenAにおいて、マウスアミノ酸を用い、20C2HCVRVenBにおいて、ヒトアミノ酸を用いた。
【0107】
【図9B】化粧張りにより作成された、ヒト化抗ADDL抗体20C2についての軽鎖可変部についてのアミノ酸配列を示す図である。配列を、マウス配列、NCBIタンパク質データベースから得られた最も相同的なヒト配列、最も相同的なヒトゲノム配列およびヒト化された配列の間の比較として示す。ヒト化された配列とは異なるマウス、ヒトおよびヒトゲノム配列におけるアミノ酸を、太字とする。CDRに下線を付す。CDRループ立体構造の維持に重要な残基を、アスタリスクで示す。VL/VH界面において見出される保存された残基を、ポンド記号で示す。可能性のあるグリコシル化部位を、イタリックにより示す。
【0108】
【図9C】化粧張りにより作成された、ヒト化抗ADDL抗体26D6についての重鎖可変部についてのアミノ酸配列を示す図である。配列を、マウス配列、NCBIタンパク質データベースから得られた最も相同的なヒト配列、最も相同的なヒトゲノム配列およびヒト化された配列の間の比較として示す。ヒト化された配列とは異なるマウス、ヒトおよびヒトゲノム配列におけるアミノ酸を、太字とする。CDRに下線を付す。CDRループ立体構造の維持に重要な残基を、アスタリスクで示す。VL/VH界面において見出される保存された残基を、ポンド記号で示す。可能性のあるグリコシル化部位を、イタリックにより示す。26D6重鎖について、アミノ酸11、23、15、81、89および118において異なる3種のヒト化された配列を、化粧張りに基づいて設計した(HCVR Ven1、Ven2およびVen3)。HCVR Ven1において、マウスアミノ酸を、すべての位置において用いた。Ven2において、マウスアミノ酸を、残基81および118について用い、ヒトアミノ酸を、残基11、13、15および89について用いた。Ven3において、ヒトアミノ酸を、すべての位置において用いた。
【0109】
【図9D】化粧張りにより作成された、ヒト化抗ADDL抗体26D6についての軽鎖可変部についてのアミノ酸配列を示す図である。配列を、マウス配列、NCBIタンパク質データベースから得られた最も相同的なヒト配列、最も相同的なヒトゲノム配列およびヒト化された配列の間の比較として示す。ヒト化された配列とは異なるマウス、ヒトおよびヒトゲノム配列におけるアミノ酸を、太字とする。CDRに下線を付す。CDRループ立体構造の維持に重要な残基を、アスタリスクで示す。VL/VH界面において見出される保存された残基を、ポンド記号で示す。可能性のあるグリコシル化部位を、イタリックにより示す。26D6軽鎖について、アミノ酸88および105において異なる2種の化粧張りしたヒト化された配列を、設計した(LCVR Ven1およびVen2)。LCVR Ven1において、マウスアミノ酸を、両方の位置において用い、Ven2において、ヒトアミノ酸を用いた。
【0110】
【図10A】ヒト化された抗ADDL抗体についての重鎖可変部(HCVR)についての核酸配列を示す図である。20C2についてのCDR移植HCVRを示す。大文字は、抗体可変部配列を示す。CDRに下線を付す。可変部配列を、完全な重鎖および軽鎖抗体発現ベクター中にクローン化した。
【図10B】ヒト化された抗ADDL抗体についての重鎖可変部(HCVR)についての核酸配列を示す図である。20C2についてのCDR移植HCVRを示す。大文字は、抗体可変部配列を示す。CDRに下線を付す。可変部配列を、完全な重鎖および軽鎖抗体発現ベクター中にクローン化した。
【図10C】ヒト化された抗ADDL抗体についての軽鎖可変部(LCVR)についての核酸配列を示す図である。20C2についてのCDR移植LCVRを示す。大文字は、抗体可変部配列を示す。CDRに下線を付す。可変部配列を、完全な重鎖および軽鎖抗体発現ベクター中にクローン化した。
【0111】
【図10C−2】ヒト化された抗ADDL抗体についての重鎖可変部(HCVR)についての核酸配列を示す図である。26D6についてのCDR移植HCVRを示す。大文字は、抗体可変部配列を示す。CDRに下線を付す。可変部配列を、完全な重鎖および軽鎖抗体発現ベクター中にクローン化した。
【図10D】ヒト化された抗ADDL抗体についての軽鎖可変部(LCVR)についての核酸配列を示す図である。26D6についてのCDR移植LCVRを示す。大文字は、抗体可変部配列を示す。CDRに下線を付す。可変部配列を、完全な重鎖および軽鎖抗体発現ベクター中にクローン化した。
【図10E】ヒト化された抗ADDL抗体についての重鎖可変部(HCVR)についての核酸配列を示す図である。4E2についてのCDR移植HCVRを示す。大文字は、抗体可変部配列を示す。CDRに下線を付す。可変部配列を、完全な重鎖および軽鎖抗体発現ベクター中にクローン化した。
【0112】
【図10F】ヒト化された抗ADDL抗体についての軽鎖可変部(LCVR)についての核酸配列を示す図である。4E2についてのCDR移植LCVRを示す。大文字は、抗体可変部配列を示す。CDRに下線を付す。可変部配列を、完全な重鎖および軽鎖抗体発現ベクター中にクローン化した。
【図10G】ヒト化された抗ADDL抗体についての重鎖可変部(HCVR)についての核酸配列を示す図である。3B3についてのCDR移植HCVRを示す。大文字は、抗体可変部配列を示す。CDRに下線を付す。可変部配列を、完全な重鎖および軽鎖抗体発現ベクター中にクローン化した。
【図10H】ヒト化された抗ADDL抗体についての軽鎖可変部(LCVR)についての核酸配列を示す図である。3B3についてのCDR移植LCVRを示す。大文字は、抗体可変部配列を示す。CDRに下線を付す。可変部配列を、完全な重鎖および軽鎖抗体発現ベクター中にクローン化した。
【0113】
【図10I】ヒト化された抗ADDL抗体についての重鎖可変部(HCVR)についての核酸配列を示す図である。2H4についてのCDR移植HCVRを示す。大文字は、抗体可変部配列を示す。CDRに下線を付す。可変部配列を、完全な重鎖および軽鎖抗体発現ベクター中にクローン化した。
【図10J】ヒト化された抗ADDL抗体についての軽鎖可変部(LCVR)についての核酸配列を示す図である。2H4についてのCDR移植LCVRを示す。大文字は、抗体可変部配列を示す。CDRに下線を付す。可変部配列を、完全な重鎖および軽鎖抗体発現ベクター中にクローン化した。
【図10K】ヒト化された抗ADDL抗体についての重鎖可変部(HCVR)についての核酸配列を示す図である。1F6についてのCDR移植HCVRを示す。大文字は、抗体可変部配列を示す。CDRに下線を付す。可変部配列を、完全な重鎖および軽鎖抗体発現ベクター中にクローン化した。
【0114】
【図10L】ヒト化された抗ADDL抗体についての重鎖可変部(HCVR)についての核酸配列を示す図である。20C2についての化粧張りしたHCVR(VenA)を示す。大文字は、抗体可変部配列を示す。CDRに下線を付す。可変部配列を、完全な重鎖および軽鎖抗体発現ベクター中にクローン化した。
【図10M】ヒト化された抗ADDL抗体についての重鎖可変部(HCVR)についての核酸配列を示す図である。20C2についての化粧張りしたHCVR(VenB)を示す。大文字は、抗体可変部配列を示す。CDRに下線を付す。可変部配列を、完全な重鎖および軽鎖抗体発現ベクター中にクローン化した。
【図10N】ヒト化された抗ADDL抗体についての軽鎖可変部(LCVR)についての核酸配列を示す図である。20C2についての化粧張りしたLCVRを示す。大文字は、抗体可変部配列を示す。CDRに下線を付す。可変部配列を、完全な重鎖および軽鎖抗体発現ベクター中にクローン化した。
【0115】
【図10O】ヒト化された抗ADDL抗体についての重鎖可変部(HCVR)についての核酸配列を示す図である。26D6についての化粧張りしたHCVR(Ven1)を示す。大文字は、抗体可変部配列を示す。CDRに下線を付す。可変部配列を、完全な重鎖および軽鎖抗体発現ベクター中にクローン化した。
【図10P】ヒト化された抗ADDL抗体についての重鎖可変部(HCVR)についての核酸配列を示す図である。26D6についての化粧張りしたHCVR(Ven2)を示す。大文字は、抗体可変部配列を示す。CDRに下線を付す。可変部配列を、完全な重鎖および軽鎖抗体発現ベクター中にクローン化した。
【図10Q】ヒト化された抗ADDL抗体についての重鎖可変部(HCVR)についての核酸配列を示す図である。26D6についての化粧張りしたHCVR(Ven3)を示す。大文字は、抗体可変部配列を示す。CDRに下線を付す。可変部配列を、完全な重鎖および軽鎖抗体発現ベクター中にクローン化した。
【0116】
【図10R】ヒト化された抗ADDL抗体についての軽鎖可変部(LCVR)についての核酸配列を示す図である。26D6についての化粧張りしたLCVR(Ven1)を示す。大文字は、抗体可変部配列を示す。CDRに下線を付す。可変部配列を、完全な重鎖および軽鎖抗体発現ベクター中にクローン化した。
【図10S】ヒト化された抗ADDL抗体についての軽鎖可変部(LCVR)についての核酸配列を示す図である。26D6についての化粧張りしたLCVR(Ven2)を示す。大文字は、抗体可変部配列を示す。CDRに下線を付す。可変部配列を、完全な重鎖および軽鎖抗体発現ベクター中にクローン化した。
【0117】
【図11A】抗ADDL抗体CDR移植20C2HCVRAIgG1についての完全なIgG1ヒト化重鎖についてのアミノ酸配列を示す図である。下線は、可変部配列を示し、CDRに相当するアミノ酸に、二重下線を付す。残りのアミノ酸配列は、定常部配列である。
【図11B】抗ADDL抗体CDR移植20C2 HCVRB IgG1についての完全なIgG1ヒト化重鎖についてのアミノ酸配列を示す図である。下線は、可変部配列を示し、CDRに相当するアミノ酸に、二重下線を付す。残りのアミノ酸配列は、定常部配列である。
【図11C】抗ADDL抗体CDR移植20C2 HCVRA IgG2m4についての完全なIgG2m4ヒト化重鎖についてのアミノ酸配列を示す図である。下線は、可変部配列を示し、CDRに相当するアミノ酸に、二重下線を付す。残りのアミノ酸配列は、定常部配列である。
【図11D】抗ADDL抗体CDR移植20C2 HCVRB IgG2m4についての完全なIgG2m4ヒト化重鎖についてのアミノ酸配列を示す図である。下線は、可変部配列を示し、CDRに相当するアミノ酸に、二重下線を付す。残りのアミノ酸配列は、定常部配列である。
【0118】
【図11E】抗ADDL抗体CDR移植20C2 LCVR カッパについての完全なヒト化カッパ軽鎖についてのアミノ酸配列を示す図である。下線は、可変部配列を示し、CDRに相当するアミノ酸に、二重下線を付す。残りのアミノ酸配列は、定常部配列である。
【図11F】抗ADDL抗体CDR移植26D6 HCVR IgG1についての完全なIgG1ヒト化重鎖についてのアミノ酸配列を示す図である。下線は、可変部配列を示し、CDRに相当するアミノ酸に、二重下線を付す。残りのアミノ酸配列は、定常部配列である。
【図11G】抗ADDL抗体CDR移植26D6 HCVR IgG2m4についての完全なIgG2m4ヒト化重鎖についてのアミノ酸配列を示す図である。下線は、可変部配列を示し、CDRに相当するアミノ酸に、二重下線を付す。残りのアミノ酸配列は、定常部配列である。
【0119】
【図11H】抗ADDL抗体CDR移植26D6 LCVR カッパについての完全なヒト化カッパ軽鎖についてのアミノ酸配列を示す図である。下線は、可変部配列を示し、CDRに相当するアミノ酸に、二重下線を付す。残りのアミノ酸配列は、定常部配列である。
【図11I】抗ADDL抗体CDR移植4E2 HCVR IgG1についての完全なIgG1ヒト化重鎖についてのアミノ酸配列を示す図である。下線は、可変部配列を示し、CDRに相当するアミノ酸に、二重下線を付す。残りのアミノ酸配列は、定常部配列である。
【図11J】抗ADDL抗体CDR移植4E2 LCVR カッパについての完全なヒト化カッパ軽鎖についてのアミノ酸配列を示す図である。下線は、可変部配列を示し、CDRに相当するアミノ酸に、二重下線を付す。残りのアミノ酸配列は、定常部配列である。
【0120】
【図11K】抗ADDL抗体CDR移植3B3 HCVR IgG1についての完全なIgG1ヒト化重鎖についてのアミノ酸配列を示す図である。下線は、可変部配列を示し、CDRに相当するアミノ酸に、二重下線を付す。残りのアミノ酸配列は、定常部配列である。
【図11L】抗ADDL抗体CDR移植3B3 LCVR カッパについての完全なヒト化カッパ軽鎖についてのアミノ酸配列を示す図である。下線は、可変部配列を示し、CDRに相当するアミノ酸に、二重下線を付す。残りのアミノ酸配列は、定常部配列である。
【図11M】抗ADDL抗体CDR移植2H4 HCVR IgG1についての完全なIgG1ヒト化重鎖についてのアミノ酸配列を示す図である。下線は、可変部配列を示し、CDRに相当するアミノ酸に、二重下線を付す。残りのアミノ酸配列は、定常部配列である。
【0121】
【図11N】抗ADDL抗体CDR移植2H4 LCVR カッパについての完全なヒト化カッパ軽鎖についてのアミノ酸配列を示す図である。下線は、可変部配列を示し、CDRに相当するアミノ酸に、二重下線を付す。残りのアミノ酸配列は、定常部配列である。
【図11O】抗ADDL抗体CDR移植1F6 HCVR IgG1についての完全なIgG1ヒト化重鎖についてのアミノ酸配列を示す図である。下線は、可変部配列を示し、CDRに相当するアミノ酸に、二重下線を付す。残りのアミノ酸配列は、定常部配列である。
【図11P】抗ADDL抗体化粧張り20C2 HCVR VenA IgG1についての完全なIgG1ヒト化重鎖についてのアミノ酸配列を示す図である。下線は、可変部配列を示し、CDRに相当するアミノ酸に、二重下線を付す。残りのアミノ酸配列は、定常部配列である。
【0122】
【図11Q】抗ADDL抗体化粧張り20C2 HCVR VenB IgG1についての完全なIgG1ヒト化重鎖についてのアミノ酸配列を示す図である。下線は、可変部配列を示し、CDRに相当するアミノ酸に、二重下線を付す。残りのアミノ酸配列は、定常部配列である。
【図11R】抗ADDL抗体化粧張り20C2 HCVR VenA IgG2m4についての完全なIgG2m4ヒト化重鎖についてのアミノ酸配列を示す図である。下線は、可変部配列を示し、CDRに相当するアミノ酸に、二重下線を付す。残りのアミノ酸配列は、定常部配列である。
【図11S】抗ADDL抗体化粧張り20C2 HCVR VenB IgG2m4についての完全なIgG2m4ヒト化重鎖についてのアミノ酸配列を示す図である。下線は、可変部配列を示し、CDRに相当するアミノ酸に、二重下線を付す。残りのアミノ酸配列は、定常部配列である。
【0123】
【図11T】抗ADDL抗体化粧張り20C2 LCVR カッパについての完全なヒト化カッパ軽鎖についてのアミノ酸配列を示す図である。下線は、可変部配列を示し、CDRに相当するアミノ酸に、二重下線を付す。残りのアミノ酸配列は、定常部配列である。
【図11U】抗ADDL抗体化粧張り26D6 HCVR Ven1 IgG1についての完全なIgG1ヒト化重鎖についてのアミノ酸配列を示す図である。下線は、可変部配列を示し、CDRに相当するアミノ酸に、二重下線を付す。残りのアミノ酸配列は、定常部配列である。
【図11V】抗ADDL抗体化粧張り26D6 HCVR Ven2 IgG1についての完全なIgG1ヒト化重鎖についてのアミノ酸配列を示す図である。下線は、可変部配列を示し、CDRに相当するアミノ酸に、二重下線を付す。残りのアミノ酸配列は、定常部配列である。
【0124】
【図11W】抗ADDL抗体化粧張り26D6 HCVR Ven3についての完全なIgG1ヒト化重鎖についてのアミノ酸配列を示す図である。下線は、可変部配列を示し、CDRに相当するアミノ酸に、二重下線を付す。残りのアミノ酸配列は、定常部配列である。
【図11X】抗ADDL抗体化粧張り26D6 LCVR Ven1 カッパについての完全なヒト化カッパ軽鎖についてのアミノ酸配列を示す図である。下線は、可変部配列を示し、CDRに相当するアミノ酸に、二重下線を付す。残りのアミノ酸配列は、定常部配列である。
【図11Y】抗ADDL抗体化粧張り26D6 LCVR Ven2 カッパについての完全なヒト化カッパ軽鎖についてのアミノ酸配列を示す図である。下線は、可変部配列を示し、CDRに相当するアミノ酸に、二重下線を付す。残りのアミノ酸配列は、定常部配列である。
【0125】
【図12】ヒト抗体定常部のアミノ酸配列とIgG2m4の配列との比較を示す図である。アスタリスクは、Asn297におけるグリコシル化部位を示す。FcRn結合の領域を示す。IgG2m4がIgG2と異なる配列に、下線を付す。
【0126】
【図13A】FabファージディスプレイベクターpFab3dにおける20C2ヒト化抗体の重鎖についての注釈付きのアミノ酸配列を示す図である。
【図13B】FabファージディスプレイベクターpFab3dにおける20C2ヒト化抗体の軽鎖についての注釈付きのアミノ酸配列を示す図である。
【0127】
【図14】親和性成熟20C2軽鎖CDR3を発生させるための、2種のLC−CDR3ライブラリー、即ちLC3−1およびLC3−2を作成するにあたり用いられる設計およびプライマーを示す図である。クローニングのために用いられる制限エンドヌクレアーゼ認識部位を、イタリックで示す。大文字は、抗体可変部配列をコードする核酸を示す。CDRをコードする核酸に、下線を付す。
【0128】
本発明を、以下の非限定的例により、一層詳細に記載する。
【0129】
例1:一般的な材料および方法
ADDL調製。F12培地(Biosource, Camarillo, CA)中のADDLを、確立された方法(Lambertら(2001)、上記)により、Aβ1−42から調製した。要するに、Aβ1−42ペプチド(American Peptide Co., Sunnyvale, CAまたはCalifornia Peptide Research, Inc., Napa, CA)を、秤量し、HFIP(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール)の十分な量を保持することができるガラスバイアル中に配置して、10mg/mLのペプチド濃度を達成した。HFIPを、乾燥ペプチドに加え、バイアルを覆い、温和に回転させて混合し、ペプチド/HFIP溶液を、室温で少なくとも1時間貯蔵した。ペプチド溶液のアリコート(それぞれ50または100μL、0.5または1.0mg)を、一連の1.5mLの円錐形遠心管中に分配した。この管を、スピードバック(speedvac)中に一晩配置して、HFIPを除去した。乾燥ペプチドフィルムを含む管を覆い、乾燥剤を有する密閉した容器中で−70℃で貯蔵した。
【0130】
使用前に、Aβ1−42ペプチドフィルムを、−70℃貯蔵から取り出し、室温まで放置して加温した。新鮮なDMSO(44μL/mgのペプチドフィルム;5mM)を加え、ペプチド/DMSO混合物を、ボルテックスミキサー上で可能な最低の速度で10分間インキュベートした。F12培地(2mL/mgペプチド)を、DMSO/ペプチドの各々の管中に分配し、この管を覆い、反転により混合した。100μMの調製物を、2〜8℃において18〜24時間貯蔵した。試料を、14,000×gにおいて10分間2〜8℃で遠心分離した。上清を、新鮮な管に移送し、用いるまで2〜8℃で貯蔵した。
【0131】
ビオチン化したADDL調製物(bADDL)を、ADDL調製について前に記載したのと同一の方法で、100%N末端ビオチン化アミロイドベータペプチド(American Peptide Company, Sunnyvale, CA)を用いて調製した。
【0132】
ADDL原繊維の調製。室温のADDLペプチドフィルムに、ペプチド1mgあたり2mLの10mMの塩酸を加えた。溶液を、ボルテックスミキサー上で可能な最低の速度で5〜10分間混合し、得られた調製物を、使用前に37℃で18〜24時間貯蔵した。
【0133】
単量体の調製。アミロイドベータ(1−40)ペプチド(Aβ1−40)のHFIP乾燥調製物を、Aβ(1−42)ペプチドについて概説したように調製した。ペプチドフィルムを、ペプチド1mgあたり2mLの25mMのホウ酸塩緩衝液(pH8.5)に溶解し、アリコートに分割し、用いるまで−70℃で凍結した。
【0134】
ヒト原繊維の調製。凍結したヒト皮質から得た試料を、プロテアーゼ阻害剤を含む20×低温F12培地(COMPLETE(登録商標)、Roche Diagnostics Corporation, Indianapolis, IN)中で1分間ホモジナイズした。次に試料を、10,000×gで1時間4℃で遠心分離した。F12で2回洗浄した後に、ペレットを、2%SDS/F12中に再懸濁させ、氷上で30分間インキュベートした。その後、試料を、220,000×gで1時間4℃で遠心分離した。ペレットを、低温のF12中に再懸濁させ、15秒の突発波中で1分間超音波処理した。タンパク質を、COOMASSIE PLUS(登録商標)キット(Pierce Biotechnology, Rockford, IL)を用いて決定した。
【0135】
免疫化。本明細書中で「合成」ADDLと呼ぶ、得られた可溶性Aβオリゴマーを、フロイント完全アジュバント(第1の、および第2のワクチン接種)またはフロイント不完全アジュバント(その後のすべてのワクチン接種)と1:1で混合し、3匹のマウス中に皮下に(最初の2回のワクチン接種)または腹腔内に、〜1mL/マウスの合計の容量で注射した。各々の注射は、194±25μgの合計タンパク質と同等の精製ADDLからなっていた。マウスに、ほぼ3週間おきに注射した。6回の注射の後に、1匹のマウスが死亡し、この脾臓を凍結した。次に、最も高い滴定量の血清を有するマウスからの脾臓を、ポリエチレングリコールの存在下でSP2/0骨髄腫細胞と融合させ、6つの96ウェルプレート中に蒔いた。
【0136】
細胞を、37℃で5%のCO2と共に10日間、200μLのHAT選択培地中で培養し、これは、10%の胎児ウシ血清(FBS)、1μg/mLのHYBRIMAX(登録商標)(アザセリン−ヒポキサンチン;Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)を補足したISCOV培地およびSP2/0細胞培養物から採集した30%の条件培地から構成されている。この培養物に、10%のFBSを補足したISCOV培地を10日目に1回供給し、培養物上清を、14日目に除去して、ELISAにおいて陽性のウェルを選別した。陽性の培養物を、さらに希釈をウェルあたり0.3の細胞の確率で限定することにより、クローン化した。陽性のクローンを、ELISAにおいて確認し、さらに発展させた。
【0137】
上清の選別は、5種のアッセイを含んでいた:ドットブロットおよびウエスタンイムノブロット(Lambertら(2001)、上記)、合成ADDLを用いたネイティブなイムノブロット、並びにヒト組織から得られた内因性原繊維を用いたドットブロットおよびウエスタンブロット。これらのアッセイにより、抗体のADDLへの結合を試験し(ドットブロット)、最大の親和性を有するオリゴマー(1種または2種以上)を同定した(ウエスタン)。すべての抗体を、5pmolのADDL(第1の融合において576種の上清および第2の融合において1920種の上清)を用いたドットブロットにおいて試験した。次に、陽性を試験したこれらの上清を、さらに10〜20pmolのADDLにおいてウエスタンブロットを用いて選別した。選別を繰り返して、低い陽性または偽陽性を同定した。10個のウェルの上清を、第1のマウスについて発展させ、45個のウェルを、第2のマウスについて発展させた。次に、発展させた細胞を、凍結させたかまたはサブクローニングした。
【0138】
モノクローナル抗体を含む腹水を、雌のbalb/cマウスにおいて、標準的なプロトコル(Current Protocol of Molecular Biology)を用いて産生した。要するに、マウスを、0.5mLのプリスタンの腹腔内注射により刺激した。刺激の1週間後、マウスに、1mLのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中の約5×106個のハイブリドーマ細胞を腹腔内注射した。腹水を、10〜14日後に採集した。IgG精製を、BIO-RAD(登録商標)AFFI-GEL(登録商標)Protein A MAPS(登録商標)IIキットを製造者のプロトコルに従って用いることにより行った。各々の試行について、3mLの腹水を、脱塩カラムに通じ、4mLの結合緩衝液中で溶出させることにより脱塩した。次に、試料を、プロテインAカラムに適用した。40mLの結合緩衝液で洗浄した後に、カラムを、溶出緩衝液で溶出させ、5mLの画分を採集した。試料を、60μLの10NのNaOHを加えることにより中和した。緩衝液をPBSと交換するために、試料を、第2の脱塩カラムに適用し、PBSで溶出させた。
【0139】
対照抗体。ポリクローナル抗体M71/2およびM90/1を、Bethyl Laboratories, Inc. (Montgomery, TX)から得た。抗Aβモノクローナル抗体6E10(残基1〜17に対して産生した)および4G8(残基17〜24に対して産生した)を、Signet Labs (Dedham, MA)から得た。モノクローナル抗体WO−2は、ウエスタンブロット分析により1−40と1−42との両方を認識するこの能力について、当該分野において知られている(Idaら(1996)、J. Biol. Chem. 271: 22908-22914)。モノクローナル抗体BAM−10(Aβ1−40に対して産生した)を、ABCAM(登録商標)(Cambridge, MA)から得た。モノクローナル抗体26D6は、Aβ配列のアミノ酸1〜12を認識するこの能力について、当該分野において十分知られている(Luら(2000)、Nat. Med. 6:397-404)。
【0140】
イムノブロット分析。ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)を、10〜20%Tris-Tricineゲル(BIO-RAD(登録商標)、Hercules, CA)を用い、分離を120Vにおいて行った以外は、確立された方法(Lambertら(2001)、上記)を用いて行った。ゲルを、標準的な方法に従って移送し、二次抗体を、1:40,000の希釈において常習的に用いた。
【0141】
最初の選別のために、〜16〜20pmol/レーンと同等の2.7μgのADDLを、2次元(2D)4〜20%ゲル上で分離させた。電気泳動および移送を、上記のようにした。追跡用色素を案内として用いて、ニトロセルロースを、Surf-blot装置(Idea Scientific, Minneapolis, MN)中に配置し、TWEEN(登録商標)20を含むトリス緩衝生理食塩水(TBS−T;Lambertら(2001)、上記)中の5%脱脂乾燥乳から構成された遮断緩衝液と混合した200μLのハイブリドーマ上清を、20〜21個のウェルの各々に加えた。室温で1.5時間振動させながらインキュベートした後、上清を除去し、ウェルを、200μLの遮断緩衝液で洗浄した。次に、膜を、Surf-blot装置から取り外し、3×15分間TBS−T中で洗浄した。次に、二次抗体(抗マウス、IgG結合HRP、1:40,000;Molecular Probes, Eugene, OR)を、膜と共に1時間室温でインキュベートした。洗浄(3×15分間)後、オリゴマーを、半強度(half-strength)SUPERSIGNAL(登録商標)(Pierce, Rockland, IL)で視覚化した。ヒト原繊維を用いたウエスタンイムノブロットを、各々の2D SDS−PAGEイムノブロットにおいて約64μgのヒト原繊維組織を用いて、同様にして行った。
【0142】
ネイティブなポリアクリルアミドゲル電気泳動を、分離を120Vにおいて行った以外は、確立された方法(Chromyら(2003)、Biochemistry 42:12749-12760)により行った。
【0143】
ウエスタンブロット。分離したタンパク質を、ニトロセルロースに移送した。ブロットを、TBS−T(0.1%のTWEEN(登録商標)20を含むTBS)中の5%の脱脂乾燥乳または1%のウシ血清アルブミン(BSA)で一晩遮断し、一次抗体(1種または2種以上)と共に1.5時間インキュベートし、洗浄し、セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)結合二次抗体(Amersham Biosciences Corp., Piscataway, NJ)と共に1時間インキュベートした。最終的な洗浄の後に、タンパク質を、West Femto化学発光キット(Pierce Biotechnology, Rockford, IL)およびKODAK(登録商標)Image Station 440 CFで、またはフィルム(HYPERFILM(登録商標)、Amersham Biosciences Corp., Piscataway, NJ)で視覚化した。
【0144】
海馬培養物。培養物を、E18胚から、標準的な方法(Brewer (1997) J. Neurosci. Methods 71:143-155; Stevensら(1996)、J. Neurosci. Res. 46:445-455)に従って調製した。生存細胞を計数し、ポリリシン(200μg/mL)で被覆したカバーガラス上に、1.5×104〜106個の細胞/cm2の密度で蒔いた。培地を、培地の半分を除去し、これを補足したNEUROBASAL(登録商標)培地で置換することにより、交換した。
【0145】
一次ニューロン。一次海馬培養物を、凍結した分離した新生児ラット海馬細胞(Cambrex, Corp., East Rutherford, NJ)から調製し、これを融解させ、ウェルあたり20,000個の細胞の濃度で96ウェルCOSTAR(登録商標)プレート中に蒔いた。細胞を、L−グルタミン(GIBCO-BRL(登録商標)、Gaithersburg, MD)を含まない、およびB27(GIBCO-BRL(登録商標)、Gaithersburg, MD)を補足したNEUROBASAL(登録商標)培地中に、2週間維持し、次に結合研究のために用いた。
【0146】
B103細胞。B103神経芽細胞腫細胞系(SchubertおよびBehl (1993)、Brain Res. 629:275-82)を、フェノールレッドを含まないDMEM(GIBCO-BRL(登録商標)、Gaithersburg, MD)中で、10%FBS(Hyclone, Logan, UT)および1%Pen-Strep (GIBCO-BRL(登録商標)、Gaithersburg, MD)の存在下で増殖させた。指数関数的に増殖するB103細胞を、分離し、96ウェルCORNING(登録商標)プレート中に5,000個の細胞/ウェルの濃度で蒔いた。蒔いた24時間後に、細胞を用いて、ADDLおよびbADDL結合を評価し、市販の、および新規な抗ADDLモノクローナル抗体を特徴づけした。
【0147】
ドットブロット分析。ドットブロットを、Lambertら((2001)、上記)に従って、ADDL(5pmol/ドット)または原繊維のいずれかをニトロセルロースに適用して行った。後者のドットブロットについて、ADDLを、乾燥ニトロセルロースに2つ1組で、種々のピコモル濃度で0.5μLで、Surf−blot装置から由来する鋳型を用いて適用した。次に、試料を、15分間乾燥し、遮断緩衝液で1時間遮断し、ペプチドを加えたか、または除去した抗体と共に1.5時間インキュベートし、これは、室温で少なくとも1時間プレインキュベートしたものであった。溶液を、Surf−blot装置から除去し、ウェルを、遮断緩衝液で洗浄し、膜を、装置から除去した。ニトロセルロースを洗浄し、二次抗体で処理し、前に示したように視覚化した。
【0148】
免疫細胞化学。免疫細胞化学を、二次抗体をALEXAFLUOR(登録商標)588 (Molecular Probes, Eugene, OR)に結合させた以外は、確立された方法(Lambertら(2001)、上記)に従って行った。抗体およびADDLを、1時間室温で、1:4の抗体:ADDLのモル比でプレインキュベートし、その後21日間の海馬細胞培養に適用した。内因性ADDLについて、ヒト脳タンパク質(Lambertら(2001)、上記におけるように調製した)を、細胞と共に1時間インキュベートし、その後上記のように細胞を洗浄し、固定し、視覚化した。
【0149】
アルツハイマー病の、および対照の海馬からのわずかに固定した凍結切片(4%パラホルムアルデヒドで4℃で30時間、また40μmのスクロース中で凍結保護した)を、抗体(リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で1:1000)と共に、一晩4℃でインキュベートした。抗体を除去した後、切片を、PBSで3回洗浄し、室温で二次抗体と共にインキュベートした。次に、結合を、DAB(SIGMA(登録商標)、St. Louis, MO)で視覚化した。次に、切片を、ヘマトキシリンで対比染色し、封入し、NIKON(登録商標)ECLIPSE(登録商標)E600光学顕微鏡上でSPOT(登録商標)INSIGHT(登録商標)デジタルビデオカメラ(バージョン3.2)を用いてイメージングした。
【0150】
定量的免疫細胞化学。培養した海馬細胞を、500nMのADDLと共に、1時間37℃でインキュベートした。ADDLを、洗浄により除去し、細胞を、3.7%ホルムアルデヒドで固定した。細胞を、PBS−NGS(10%正常ヤギ血清を含むPBS)中の0.1%TRITON(登録商標)X−100と共に、30分間インキュベートし、1回洗浄し、所望の一次抗体(1種または2種以上)(PBS−NGSで希釈した)と共に、一晩4℃でインキュベートした。試料を洗浄し、適切な二次抗体(1種または2種以上)、例えばALEXAFLUOR(登録商標)488または594抗マウスおよび抗ウサギIgG(Molecular Probes, Inc., Eugene, OR)と共に、2時間37℃でインキュベートした。カバーガラスを洗浄し、PROLONG(登録商標)フェード防止(anti-fade)封入剤(Molecular Probes, Inc., Eugene, OR)中に封入し、LEICA(登録商標)TCS SP2共焦点Scanner DMRXE7顕微鏡を用いてイメージングした。
【0151】
ELISA。ポリクローナル抗ADDLIgG(M90/1;Bethyl Laboratories, Inc., Montgomery, TX)を、0.25mg/ウェルにおいて、IMMULON(登録商標)3 REMOVAWELL(登録商標)ストリップ(Dynatech Labs, Chantilly, VA)上に、2時間室温で蒔き、ウェルを、TBS中の2%BSAで遮断した。F12中の1%BSAで希釈した試料を、ウェルに加え、2時間4℃で放置して結合させ、室温でBSA/TBSで3回洗浄した。BSA/TBSで希釈したモノクローナル抗体を、90分間室温でインキュベートし、マウスIgGに対してVECTASTAIN(登録商標)ABCキットで検出した。HRP標識を、BIO-RAD(登録商標)ペルオキシダーゼ基質で視覚化し、405nmにおいてDynex MRX-TCマイクロプレートリーダー上で読み取った。
【0152】
例2:抗ADDL抗体の発生および特徴づけ
3匹のマウスに、ADDL(194±25μgのタンパク質/注射)を3週間おきに、合計で6回の接種で接種した。これらのマウス脾臓のSP2細胞との融合から作成されたハイブリドーマを、96ウェルプレート中で増殖させた。これらのウェルからの上清を、合成ADDLでのドットブロットにおいて選別して、陽性のクローンを同定し、これを、内因性原繊維のドットブロットと比較して、差異を確認した。合成ADDLのみに結合し、内因性原繊維に結合しないハイブリドーマを、求めた。ハイブリドーマの生成物が何に結合したか、およびいかなる条件の下で結合が発生したかをさらに絞り込むために、各々の陽性のクローンの3種のウエスタンブロットを、行った:ADDLのSDS−PAGE、ADDLのネイティブなゲル、および内因性原繊維を用いたSDS−PAGE。約40種のクローンを、さらなる試験のために選択した。各々のクローンを、可溶性アルツハイマー病脳抽出物の認識について、培養した海馬細胞に結合したADDLの同定について、および種々の条件の下でのADDL結合を遮断する能力について、試験した。選択された抗体を、培養培地から採集し、プロテインG SEPHAROSE(登録商標)を用いてさらに精製した。
【0153】
毎回、ハイブリドーマの組を、ドットブロットにより選別し、約〜30%が、陽性の上清を生成した。これらの中で、1種または2種のハイブリドーマのみが、合成ADDLに結合し、内因性原繊維には結合しなかった。最初の数のクローンの約2%が低いADDL濃度において、合成ADDLに結合し、単量体に結合せず、これは、ウエスタンブロット分析により決定された通りである。ウエスタンブロットにおいて合成ADDLに結合し、原繊維には結合しないクローン3B7を、さらなる分析のために保持した。
【0154】
一層高分子量の物質(12〜24量体)に三量体/四量体オリゴマーよりも良好に結合した1〜2種のクローンを、同定した。ネイティブな条件の下でネイティブなADDLに結合することができるが、SDSの存在下でADDLに結合しない2〜3種のクローンを、同定した。
【0155】
この分析の結果は、ADDLが、マウスにおける良好な抗原であり、単量体よりもはるかに高い親和性で合成ADDLに結合するモノクローナル抗体を発生させることができることを、示した。
【0156】
例3:培養した海馬細胞に結合した内因性および合成ADDLの免疫組織化学的分析
培養した海馬細胞をまた、分析して、アルツハイマー病の、および対照の脳抽出物を区別するモノクローナル抗体が、培養した細胞に結合したADDL(内因性または合成のいずれか)を同定することができるか否かを決定した。海馬培養物を、確立されたプロトコルに従って調製し、3〜4週間放置して増殖させた。合成ADDLを、標準的なプロトコル(例えば米国特許第6,218,506号)に従って調製した。内因性ADDLを、Gongら((2003)、上記)に従ってアルツハイマー病の脳から抽出した。ADDL(F12中100nMまたはF12中2mgの合計タンパク質)を、細胞と共に1時間インキュベートし、次に標準的な方法に従って洗浄し、固定した。洗浄に続いて、細胞を、20C2、3B7、M94、2A10、4E2、2D6、4C2、2B4、5F10または5G12モノクローナル抗体と共に、その後ALEXAFLUOR(登録商標)488に結合した抗マウス二次抗体と共にインキュベートした。イメージを、NIKON(登録商標)DIAPHOT(登録商標)落射蛍光顕微鏡上でCOOLSNAP(登録商標)HQカメラで撮影し、METAMORPH(登録商標)ソフトウエア(Universal Imaging, Downingtown, PA)を用いて分析した。
【0157】
内因性の、および合成のADDLの両方が、20C2により視覚化した際に、培養した細胞における標準的なホットスポットパターンを示した。従って、モノクローナル抗体20C2により、培養した海馬細胞に結合した合成の、および内因性のADDLの両方が同定される。3B7が原繊維、一層高分子量のオリゴマーおよび単量体に結合しなかったため、3B7によるADDLのホットスポット結合は、オリゴマーADDLに帰していた。他の抗体は、プロセス(M94、2A10)上のホットスポットから細胞体特異性付着(4E2)および(2D6、4C2、2B4、5F10、5G12)の間における他の状態までの範囲内の、細胞に結合したADDL上の種々のエピトープを認識すると見られた。
【0158】
例4:マウス抗ADDL抗体を用いたニューロンへのADDL結合の阻害
アルツハイマー病の、および対照の脳抽出物を区別するモノクローナル抗体がまた、ADDLの培養した細胞への結合を遮断することができるか否かを決定するために、培養した海馬細胞を、20C2抗体と共にプレインキュベートし、ADDL結合を、免疫細胞化学により決定した。海馬培養物を、確立された方法に従って調製し、3〜4週間放置して増殖させた。合成のADDLを、標準的なプロトコルに従って調製した(例えば、米国特許第6,218,506号などを参照)。内因性ADDLを、Gongら((2003)、上記)に従ってアルツハイマー病の脳から抽出した。ADDL(F12中100nMまたはF12中2mgの合計タンパク質)を、20C2抗体と共に1時間プレインキュベートし、その後1時間37℃で細胞に加えた。細胞を洗浄し、固定し、ALEXAFLUOR(登録商標)488に結合した抗マウス二次抗体と共にインキュベートした。
【0159】
培養した細胞に結合する内因性の、および合成のADDLの両方を、20C2とのプレインキュベーションにより遮断した。ビヒクルおよび二次でない抗体対照イメージは、黒色であった。
【0160】
例5:ビオチン化されたADDLを用いた、ニューロンに結合するADDLの検出
ADDLまたはbADDL(ビオチン化されたADDL)のニューロンへの結合を、標準的な免疫蛍光手順を用いて検出した。一次海馬ニューロン(14日間培養した)またはB103細胞(24時間蒔いた)を、5〜25μmのADDLまたはbADDLと共に、1時間37℃でインキュベートし、その後細胞を、温かい培養培地で3〜4回洗浄して、結合していないADDLまたはbADDLを除去した。次に、細胞を、10分間室温で、16%パラホルムアルデヒド(Electron Microscopy Sciences, Fort Washington, PA)からPBSで希釈して調製した4%パラホルムアルデヒドで固定した。その後、溶液を除去し、新鮮な固定液を、室温でさらに10分間加えた。細胞を、10分間透過性にし(0.1%TRITON(登録商標)X100;SIGMA, St. Louis, MOを含む4%パラホルムアルデヒド溶液)、PBSで6回洗浄し、1時間37℃で遮断緩衝液(10%BSA;Sigma, St. Louis, MOを含むPBS)と共にインキュベートした。
【0161】
この時点において、結合したADDLおよびbADDLの検出のためのプロトコルは、分化する。ADDL結合を検出するために、細胞を、一晩37℃で、4G8(1%BSA;Signet Labs, Dedham, MAを含むPBS中1:1,000に希釈した)、6E10(1:1,000;Signet Labs, Dedham, MA)または本明細書中に開示した抗ADDLモノクローナル抗体の1種(1:1,000に希釈した)と共にインキュベートした。さらに、タウ(1:1,000;Sigma, St. Louis, MO)に対して産生したポリクローナル抗血清を用いて、細胞過程を視覚化した。翌日、細胞を、PBSで3回洗浄し、1時間室温で、ALEXA(登録商標)594で標識した抗マウス二次抗体(1%BSA;Molecular Probes, Eugene, ORを含むPBSで1:500に希釈した)およびALEXA(登録商標)488で標識した抗ウサギ二次抗体(1:1,000に希釈;Molecular Probes, Eugene, OR)と共にインキュベートし、PBSで3回洗浄し、結合を、蛍光能力を有する顕微鏡を用いて観察した。
【0162】
bADDL結合の検出のために、細胞を、タウ抗体と共に一晩インキュベートした。その後、細胞を、PBSで3回洗浄し、1時間室温でALEXA(登録商標)488で標識した抗ウサギ二次抗体(上記の通り)およびALEXA(登録商標)594で標識したストレプトアビジン、1:500の希釈(Molecular Probes, Eugene, OR)と共にインキュベートし、PBSで5〜6回洗浄し、結合を、蛍光顕微鏡で視覚化した。細胞核の染色が望ましい場合には、核を、標準的なプロトコルに従って、DAPI(1:1000)で標識した。
【0163】
ADDL特異性モノクローナル抗体を用いたADDLの免疫細胞化学的分析のために、細胞を、ADDLと共にインキュベートした後に洗浄し、固定し、透過性にし、遮断した。結合したbADDLをモノクローナル抗体で検出するために、細胞を、4G8、6E10または本発明における抗ADDLモノクローナル抗体の1種と共に一晩インキュベートし、その後免疫反応性を、ALEXA(登録商標)488で標識した抗マウス二次抗体で検出した。結合したbADDLを、ALEXA(登録商標)594で標識したストレプトアビジンで視覚化し、核を、DAPIで染色した。染色の後、bADDL結合とADDL免疫反応性との共存を、蛍光顕微鏡で検出した。
【0164】
ADDLと共にインキュベートした一次海馬細胞との特異的な免疫反応性は、評価したモノクローナル抗体(即ち20C2、2H4、2B4および2A10)の各々について見られた。結合したADDLは、ニューロン的過程および細胞体に沿って点状の染色として出現した。このパターンは、ニューロンのサブセット上に見られたに過ぎず、これは、市販の、および市販でない抗体の両方を用いて一次抗体に結合するADDLを記載する以前の報告と整合するパターンである。染色のパターンおよび多くの対照研究の結果により、これらの抗体の特異性が例証された。
【0165】
bADDLを用いることにより、結合したADDLを検出し、モノクローナル抗体とのADDL結合の遮断を評価するための単純化された方法が提供された。bADDLを、一次海馬細胞に加え、結合を、蛍光標識したストレプトアビジンで評価した場合には、特異的な結合が、培養物中の細胞のサブセットのニューロン的過程に沿って見られた。次に、細胞を固定し、免疫細胞化学のために加工し、結合を視覚化するために抗ADDL抗体を用いた場合には、染色の同様のパターンが観察された。さらに、これらの染色パターンを重ね合わすことにより、抗体染色および結合したbADDLの完全な重複が明らかになり、従ってbADDLおよびADDLが機能的に同等であることおよびbADDLの結合アッセイへの使用が例証された。
【0166】
例6:ニューロンに結合するbADDLのマウス抗ADDLモノクローナル抗体区別置換の検出および測定
抗体がADDLまたはbADDLのニューロン培養物(一次ニューロンまたはB103細胞)への結合を遮断する能力を、少数の改変を加えて本明細書中に記載した免疫細胞化学方法を用いて特徴づけした。モノクローナル抗体を、1〜10μmのbADDLと、1:1、1:5または1:10(抗体:bADDL)のモル比で混合し、シリコン処理した微小遠心管中で1時間37℃で低速ローテータ(Miltenyi Biotec, Auburn, CA)上でインキュベートした。その後、抗体/bADDL混合物を、細胞に加え、さらに放置して1時間37℃でインキュベートした。インキュベーションの後、細胞を洗浄し、固定し、透過性にし、遮断し、タウに対して産生したポリクローナル抗血清と共に一晩インキュベートして、細胞過程を視覚化した。翌日、細胞を洗浄し、ALEXA(登録商標)488で標識した抗ウサギ二次抗体およびALEXA(登録商標)594で標識したストレプトアビジンと共にインキュベートし、細胞を、DAPIで染色して、核の検出を可能にした。染色した後に、結合の程度を、蛍光顕微鏡で視覚的に評価した。
【0167】
bADDL結合の程度および抗ADDL抗体がこの相互作用を弱める能力を定量的に評価するために、細胞に基づくアルカリホスファターゼアッセイを開発した。モノクローナル抗体またはPBSを、1:1(B103細胞)または1:5(一次ニューロン)のモル比において、2.5〜10μm(最終濃度)のbADDLと混合し、1時間37℃で低速ローテータ上でインキュベートした。プレインキュベーションの後、抗体/bADDL調製物を、B103または一次ニューロン培養物に加え、さらに1時間37℃でインキュベートした。インキュベーション期間の終了時に、bADDL/抗体混合物を除去し、プレートを、6回培地で洗浄した。
【0168】
細胞を、4%パラホルムアルデヒド中で10分間室温で固定し、溶液を除去し、新鮮な固定液を加え、細胞を、さらに10分間固定した。細胞を、0.1%TRITON(登録商標)X−100を含む4%パラホルムアルデヒドで透過性にし(2回、各々室温で10分間)、PBSで6回洗浄し、PBS中の10%BSAで1時間37℃で処理した。アルカリホスファターゼ結合ストレプトアビジン(1%BSA中1:1,500;Molecular Probes, Eugene, OR)を、細胞に1時間室温において加えた。細胞を、PBSで6回洗浄し、アルカリホスファターゼ基質(SAPPHIRE-II(登録商標)を含むCDP-STAR(登録商標);Applied Biosystems, Foster City, CA)を、細胞に加え、30分間インキュベートし、その後LJL照度計(Analyst AD; LJL BioSystems, Sunnyvale, CA)上でルミネセンスを決定した。
【0169】
bADDLのニューロンへの結合を評価した際には、染色の抗体依存性パターンが観察された。調査した抗体の数種は、bADDLの結合が顕著に低減し、一方他のものは、比較的有効でなかった。予測されなかったことに、第3の群の抗体は、bADDLのニューロンへの結合を増強したと見られる。これらの研究の結果が、本質的に定性的であり、定量的ではなかった一方、これらは、抗体がニューロンへのbADDL結合を区別して遮断することを示した。定量的評価により、同様の傾向が例証された(図1)。即ち、数種の抗体は、bADDLのニューロンへの結合を弱め、数種は、弱い効果を有していたか、または効果をほとんど有しておらず、数種(即ち5F10および4C2)は、結合を増強した。さらに、マウスFabは、bADDLの結合を遮断することができず、これはさらに、このアッセイにおけるモノクローナル抗体の特異性を例証している。
【0170】
神経芽細胞腫細胞系B103におけるモノクローナル抗体でのbADDL結合および遮断の分析により、B103細胞への、しかし卵巣細胞系(CHO)へのではない特異的なbADDL結合が例証された。さらに、結合は、B103細胞に加える前にbADDLを抗ADDLモノクローナル抗体と共にプレインキュベートした場合には、劇的に減衰した。B103細胞へのbADDL結合の遮断のモノクローナル抗体での定量的評価は、モノクローナル抗体が細胞へのbADDL結合を遮断するこれらの能力において、同等ではないことを示した(図2)。一次海馬細胞について明らかであるように、数種の抗体は、結合を極めて良好に遮断し、一方他のものは、比較的有効ではなかった。さらに、抗体4C2はまた、bADDLが培養物中のB103細胞に結合する能力を増強した。
【0171】
bADDLもまた学習および記憶に関与する海馬の領域に結合することを示すために、一連の結合研究を、ラット海馬スライス培養物を用いて行った。結合研究により、海馬のCA1−3および歯状回領域におけるニューロンが、bADDLに結合することができる一方、他の領域におけるニューロンは結合しないことが、示された。bADDLを抗ADDLモノクローナル抗体と共にプレインキュベートした場合には、bADDL結合の程度は、用量依存性方式で減衰した。これらの結果は、モノクローナル抗体がまた、bADDLの海馬ニューロン、即ち学習および記憶のために臨界的に重要なニューロンのサブセットへの結合を弱め得ることを示した。
【0172】
例7:アルツハイマー病の、および対照の脳からの内因性ADDLへの抗ADDL抗体の結合
本明細書中に開示したモノクローナル抗体をさらに特徴づけするために、モノクローナル抗体が、ヒトのアルツハイマー病の脳の可溶性抽出物からのADDL(内因性ADDL)を同定し、対照の脳の抽出物からのものを区別することができるか否かを決定した。F12中に調製した合成ADDLおよびヒト脳抽出物を、F12で希釈し、乾燥HYBOND(登録商標)ECL(登録商標)ニトロセルロース上に2つ1組で斑点を形成した(1pmolのADDL;0.5μgの脳抽出物)。対応するCERAD階級(Consortium to Establish a Registry for Alzheimer's Disease)およびBraak段階を有する脳組織を、NU Brain Bank Coreから得た。ブロットを、20分間放置して乾燥し、次にTBS(20mMのTris−HCl、pH7.5、0.8%のNaCl)中の3%H2O2中で20分間室温でインキュベートした。ブロットを、ストリップに切断し、TBS−T(TBS中の0.1%TWEEN(登録商標)−20)中の5%ミルクで1時間室温で遮断した。
【0173】
ウサギポリクローナル抗体M71/2(1:2500、0.4μg;Bethyl Laboratories, Inc., Montgomery, TX);モノクローナル抗体6E10(1:500、3μg;Signet Labs, Dedham, MA);並びに本明細書中に開示したモノクローナル抗体20C2(1.52mg/mL、5μg)、11B5(2.54mg/ml、5μg)、2B4(1.71mg/mL、5μg)、および2A10(1.93mg/mL、7.5μg)(図3)を、1.5mLのミルク/TBS−Tで希釈し、1時間室温でインキュベートした。ブロットを、3×10分間TBS−Tで洗浄した。ブロットを、セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)結合二次抗体(ミルク/TBS−T中1:40,000;Amersham Life Science, Inc., Arlington Heights, IL)と共に1時間室温でインキュベートした。ブロットを、3×10分間TBS−Tで洗浄し、dH2Oで3回洗浄し、SUPERSIGNAL(登録商標)基質(ddH2Oでの1:1希釈;Pierce, Rockland, IL)で展開し、HYPERFILM(登録商標)ECL(登録商標)(Amersham Life Science, Inc., Arlington Heights, IL)に曝露した。
【0174】
比較的高いタンパク質濃度において試験したにもかかわらず比較的弱い結合を有していた2A10を除いて、試験したすべての抗体は、強固な結合を伴う合成ADDLを同定した。ポリクローナル抗体M71/2並びにモノクローナル抗体20C2および11B5は、両方のアルツハイマー病試料に強力に結合したが、対照の脳においては、背景と同様の極めて弱い(faint)結合を示したに過ぎない。対照的に、モノクローナル抗体6E10、2B4および2A10は、アルツハイマー病の脳への弱い結合を示した。
【0175】
本分析の結果は、試験したモノクローナル抗体の2種は、アルツハイマー病の脳と対照の脳との間で区別され得、ここで内因性オリゴマーへの結合は、高い程度の特異性を伴うことを示した。さらに、これらのデータは、検出を、アルツハイマー病の早期の段階で達成することができることを示す。
【0176】
例8:アルツハイマー病の、および対照の脳スライスの免疫組織化学的分析
本明細書中に開示したモノクローナル抗体を用いた免疫組織化学的分析を行って、ADDLが、脳スライスにおいて、アルツハイマー病の脳抽出物と対照の脳抽出物とを区別するモノクローナル抗体を用いて視覚化することができるか否かを決定し、ADDL標識の性質(例えば広汎性の、ニューロン周囲の、プラーク様など)およびヒト組織中でのこの分布を例証した。固定したアルツハイマー病の脳および対照の脳の切片(40μm)を、標準的な方法に従って調製した。スライスを、数種のモノクローナル抗体および1種のポリクローナル抗体で標識し、その後ヘマトキシリンで対比染色して、細胞核を確認した。イメージを、NIKON(登録商標)ECLIPSE(登録商標)E600光学顕微鏡を用いて、SPOT(登録商標)INSIGHT(登録商標)デジタルビデオカメラ(バージョン3.2)で得た。
【0177】
免疫組織化学的分析により、ADDL染色が、海馬、嗅内皮質および中前頭回におけるアルツハイマー病の脳において明白であることが示された。重篤なアルツハイマー病の症例において、主にプラークタイプの分布の外見を呈するものにおいて豊富な軽いADDL染色があった。ある程度の軽いADDL染色が、1つのアルツハイマー病の症例において、ニューロン周囲であると観察された。対照的に、対照試料のすべての領域におけるいずれの抗体を用いても、染色はなく、ドット状免疫染色により包囲されるまれなニューロンでさえない。
【0178】
これらのデータは、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体を用いて、固定されたヒト組織におけるADDLを同定することができることを示し、ここで標識は変化し、プラーク様領域、血管領域および個別の細胞およびいくつかのクラスターのニューロン周囲標識からなる。さらに、アルツハイマー病の脳における、しかし対照の脳においてではないADDLの標識は、少なくとも3つの脳領域において観察された:海馬、嗅内皮質および中前頭回。
【0179】
例9:Aβ1−40単量体様対照の免疫染色
Aβ1−40は、ADDLと比較して、DMSO/F12においてゆっくりとオリゴマー化する。従って、Aβ1−40が単量体様対照として作用し得るか否かを決定した。ADDLを、SUPERDEX(登録商標)75カラム(ADDL063)上でのサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)に供し、これは2つのピークに分割された。Aβ1−40を、DMSO/F12(45.5mM)中で調製し、凍結し、融解した。試料を、F12で希釈し、Tricine試料緩衝液(BIO-RAD(登録商標)、Waltham, MA)で〜2:1で混合した。SDS−PAGEを、10〜20%のTris-Tricineゲル(BIO-RAD(登録商標)、Waltham, MA)上で、Tris/Tricine/SDS緩衝液(BIO-RAD(登録商標)、Waltham, MA)を用いて、120Vにおいて室温で80分間行った。ゲルを、SILVERXPRESS(登録商標)(INVITROGEN(登録商標)、Carlsbad, CA)で銀染色した(60pmolのAβ1−40またはADDL;40pmolのピーク1または2)。あるいはまた、ゲル(20pmolのAβ1−40またはADDL;30pmolのピーク1または2)を、HYBOND(登録商標)ECL(登録商標)ニトロセルロース上に、25mMのTris−192mMのグリシン、20%v/vメタノール、pH8.3、0.02%SDSを用いて、100Vで1時間8℃でエレクトロブロットした(electroblotted)。
【0180】
ブロットを、TBS−T(20mMのTris−HCl、pH7.5中の0.1%TWEEN(登録商標)−20、0.8%NaCl)中の5%ミルクで、一晩8℃で遮断した。モノクローナル抗体6E10(1:2000;Signet Labs, Dedham, MA)、モノクローナル抗体20C2(1.52mg/mL、1:2000;図3)またはポリクローナル抗体M71/2(1:4000、Bethyl Laboratories, Inc., Montgomery, TX)を、ミルク/TBS−Tで希釈し、ブロットと共に90分間室温でインキュベートした。ブロットを、TBS−Tで3×10分間洗浄し、その後HRP結合二次抗体(TBS−T中1:40,000;Amersham Life Science, Inc., Arlington Heights, IL)と共に1時間室温でインキュベートした。TBS−Tで3回、1回の洗浄あたり10分間洗浄した後、ブロットを、dH2Oで3回洗浄し、SUPERSIGNAL(登録商標)West Femto Maximum Sensitivity基質(ddH2Oでの1:1希釈;Pierce, Rockland, IL)で展開し、HYPERFILM(登録商標)ECL(登録商標)(Amersham Life Science, Inc., Arlington Heights, IL)に曝露した。
【0181】
銀染色分析により、Aβ1−40が、重単量体バンドとして示された。対照的に、ADDLおよびピーク1は、単量体、三量体および四量体を示したが、四量体は比較的少量であった。ピーク2の銀染色分析により、重単量体が、比較的軽い三量体および極めて軽い四量体バンドと共に示された。
【0182】
Aβ1−40の6E10での免疫染色により、軽単量体バンドのみが示された。ADDLおよびピーク1の6E10での免疫染色により、単量体、三量体、四量体および12〜24量体が示された。ピーク2は、6E10での重単量体染色並びにある軽三量体および四量体を示し、12〜24量体を示さなかった。20C2またはM71/2でのAβ1−40の単量体染色はなかった。20C2およびM71/2の両方が、ADDLおよびピーク1の最小の単量体染色を示したかまたはこれを示さなかった一方、これらの試料は、20C2およびM71/2での三量体、四量体および12〜24量体染色を有していた。20C2およびM71/2でのピーク2免疫染色により、軽単量体、三量体および四量体が示され、12〜24量体は観察されなかった。Aβ1−40は、一層重い銀染色にもかかわらず、ADDL単量体よりも軽く6E10で免疫染色された。
【0183】
これらの結果は、単量体の良好な認識を示す6E10抗体とは対照的に、移動緩衝液中の0.02%SDSで移動させたゲルがオリゴマー特異性抗体での最小の単量体検出を示すことを示した。SEC画分の免疫染色により、ほとんど単量体で構成され、少量の三量体および四量体を含み、12〜24量体を含まないピーク2が示され、一方ピーク1は、単量体、三量体、四量体および12〜24量体を有する。
【0184】
モノクローナル抗体をピーク1およびピーク2への結合に関してさらに特徴づけするために、捕獲抗体としてADDLに対するポリクローナル抗体M90を用いたサンドイッチELISAを、開発した。本明細書中で言及するSECピーク1およびピーク2画分は、SEPHADEX(登録商標)75カラム上で分別されて、潜在的に生物活性であるオリゴマーと不活性であるオリゴマーとを区別したADDLの2つの主要なピークである。非変性ゲル電気泳動により、37℃で安定である大きい(>50kDa)および小さい(<30kDa)凝集体への分離が確認された。これらのピークを、クローン上清のための検出物質として、別個に用いた。結合を、VECTASTAIN(登録商標)キットで視覚化した。2つのピークの認識間の差異を、すべての抗体について観察した。例えば、抗体2B4および20C2についてのピーク1対ピーク2の比率を比較のこと(図3)。1つのみの抗体が、ピーク2についての対照抗体(6E10)優先度を反映する。
【0185】
例10:Aβ1−42からのADDL産生の検出
ポリクローナル抗体を、ドットブロットにおいて用いて、Aβ1−42からの時間依存性ADDL産生を示した。従って、オリゴマーに優先的に結合するモノクローナル20C2抗体がまた、ADDLがAβ1−42から生成するに伴って時間と共に増大した信号を示し得ることが、例証された。〜750pmolのHFIPフィルムのAβ1−42を、1.5mLのDMSO(0.5mM)に溶解し、2μLのアリコートを、F12(10nM)で100μLの最終容積に希釈し、氷上でインキュベートした。2μL(20fmol)の反応混合物を、乾燥HYBOND(登録商標)ECL(登録商標)ニトロセルロース(Amersham Life Science, Inc., Arlington Heights, IL)上に、特定の時点において斑点形成した。ニトロセルロースを、TBS−T(20mMのTris−HCl、pH7.5、0.8%のNaCl、0.1%のTWEEN(登録商標)−20)中の5%脱脂乾燥乳で、1時間室温で遮断した。
【0186】
ポリクローナル抗体M90/1(Bethyl Laboratories, Inc., Montgomery, TX)またはモノクローナル抗体20C2(1.52mg/mL)を、ミルク/TBS−Tで1:2000に希釈し、ブロットと共に90分間室温でインキュベートし、続いてTBS−Tで3×10分間洗浄した。HRP結合二次抗体(Amersham Life Science, Inc., Arlington Heights, IL)を、ミルク/TBS−Tで1:40,000に希釈し、ブロットを、60分間室温でインキュベートし、続いて上記のように洗浄した。dH2Oで短時間洗浄した後、ブロットを、SUPERSIGNAL(登録商標)West Femto Maximum Sensitivity基質(ddH2Oで1:1に希釈した;Pierce, Rockland, IL)と共に60秒間インキュベートし、HYPERFILM(登録商標)ECL(登録商標)(Amersham Life Science, Inc., Arlington Heights, IL)に曝露した。ドットブロットを走査し、スポットの強度を、ADOBE(登録商標)PHOTOSHOP(登録商標)で決定した。
【0187】
両方の抗体は、Aβ1−42からの時間依存性ADDL産生を検出し、ここで、20C2についての結果は、一層良好な信号および整合性を示した。いずれの抗体も、Aβ1−40を、ADDLと同等の濃度において検出することはできなかった。単量体が常に存在し、オリゴマーが時間に伴って生成するため、これらのデータはさらに、この抗体のオリゴマー特異性を例証する。さらに、M90/1と20C2は共に、ADDLよりも100倍高い濃度においても、Aβ1−40単量体の最小の認識を示した。
【0188】
例11:競合ドットブロットアッセイ
本明細書中に開示したモノクローナル抗体が単量体に結合することができるか否かを決定するために、競合ドットブロットアッセイを、合成ADDL、20C2およびAβ1−40と共に行った。ADDLを、10pmol/0.5μLにおいて乾燥ニトロセルロースに適用した。ニトロセルロースを5%NDM/TBS−T中で1時間遮断した一方、種々の濃度でのADDLおよび新鮮なAβ1−40を、5%NDM/TBS−T中で1時間、各々200μLの20C2(1.5μg/mLの最終濃度)と共にインキュベートした。次に、これらの溶液を、SURF−BLOT装置を用いてニトロセルロースに適用し、室温で1.5時間振動しながらインキュベートした。その後、ブロットを、抗マウスIgG−HRPおよび化学発光で視覚化した。定量を、KODAK(登録商標)IMAGESTATION(登録商標)440およびEXCEL(登録商標)を用いて行った。
【0189】
この分析の結果は、溶液中の合成ADDLが、ニトロセルロース上に固定されたADDLに結合する20C2を、ADDLについて<50nMにおいて観察される半最大阻害で有効かつ特異的に遮断することができることを示した。対照的に、溶液中のAβ1−40は、20C2の固定されたADDLへの結合を遮断しなかった。
【0190】
いずれの部分がAβ1−42分子の結合エピトープを構成するかを決定するために、競合ドットブロットアッセイを、ADDL、20C2およびペプチドを用いて行った。ADDLを、ニトロセルロース上に、各々0.5μL中の4種の濃度(1、0.5、0.25および0.125pmol)において斑形成した。ニトロセルロースを5%NDM/TBS−T中で2時間遮断した一方、50、100および200pmolにおけるペプチドを、200μLの20C2(1.52μg/mLの最終濃度=1.9pmol、5%NDM/TBS−T中)に加え、室温で振動させた。その後、溶液を、ニトロセルロースと共に、SURF−BLOT装置を用いて1.5時間室温でインキュベートした。結合を、化学発光を用いて抗マウスIgG−HRPで視覚化した。
【0191】
この分析の結果は、ADDLへの結合が、ADDL自体により、およびAβ1−28により遮断されるが、ペプチドの他の組み合わせでは遮断されないことを示した。従って、結合エピトープは、Aβ1−28が達成することができるが、Aβ1−12およびAβ12−28またはこれらの組み合わせにおいては有効ではないある立体構造を必要とした。あるいはまた、Aβ1−28は、立体障害によりADDLの結合を遮断する二量体を形成する。
【0192】
Aβ1−28が凝集するか(Aβ1−42と同様に)、これが20C2についての結合エピトープを遮断するように折りたたまれるかを決定するために、SDS−PAGEゲルを銀染色し、ウエスタンブロット分析を行った。ADDLおよびAβ1−28(各々60pmolの2つのレーンを、銀染色のために用い、20pmolを、他のものに用いた)を、10〜20%のTris-TricineSDS−PAGEを用いて分離した。60pmolのレーンを切り取り、SILVERXPRESS(登録商標)(INVITROGEN(登録商標)、Carlsbad, CA)で染色した;あるいはまた、ゲル(20pmolのADDLおよびAβ1−28)を、HYBOND(登録商標)ECL(登録商標)ニトロセルロース上に、25mMのTris−192mMのグリシン、20%v/vのメタノール、pH8.3、0.02%のSDSを用いて、100Vで1時間8℃においてエレクトロブロットした。ブロットを、TBS−T中の5%ミルク(20mMのTris−HCl中の0.1%TWEEN(登録商標)−20、pH7.5、0.8%NaCl)で遮断した。試料を、20C2(1:1000、1.52mg/mL)または20C2+Aβ1−28(2nmol、2時間プレインキュベートした)と共に1.5時間室温で、上記の遮断緩衝液中でインキュベートした。結合を、抗マウスIgG−HRP(TBS−T中1:40,000)および化学発光で視覚化した。
【0193】
銀染色は、ADDLレーンにおいて単量体、三量体および四量体を示し、一方Aβ1−28レーンは、ほぼ二量体において走行した1つの種を有していた。ADDLは、20C2により視覚化されたが、Aβ1−28は視覚化されず、20C2によるすべてのADDL種への結合は、Aβ1−28により遮断された。さらに、20C2結合エピトープがAβ1−28により遮断される一方、20C2は、ウエスタンブロットにおいてAβ1−28ペプチドを認識しない。
【0194】
例12:抗ADDL抗体のアイソタイプ分析
本明細書中に開示したモノクローナル抗体をさらに特徴づけするために、アイソタイプ分析を、SIGMA IMMUNOTYPE(登録商標)キットをマウスモノクローナル抗体アイソタイピング試薬(Mouse Monoclonal Antibody Isotyping Reagents)と共に用いて、製造者(Sigma-Aldrich Co., St. Louis, MO)の指示に従って行った。この分析の結果を、図3に示す。
【0195】
例13:抗ADDL抗体の核直線状エピトープマッピング
抗ADDLモノクローナル抗体のアミロイドベータペプチドとの特異的な相互作用を、標準的なELISAアッセイにおいて検出した。要するに、合成ペプチドまたはいくつかの場合においてはADDLもしくは原繊維を、抗原として用いて、NUNC(登録商標)MAXISORB(登録商標)プレート上に4μg/mL(約800〜1200nM)の濃度において塗布した。特定しない限り、ペプチドを、5mMの重炭酸ナトリウム緩衝液、pH9.6中で、一晩4℃で塗布した。プレートを、0.05%のTWEEN(登録商標)20および3%(w/v)の脱脂乾燥乳を含むPBSで1時間遮断した後に、モノクローナル抗体を、遮断緩衝液中で所定の濃度において滴定し、プレートを、1時間周囲温度において温和に振動させながらインキュベートした。洗浄した後、遮断緩衝液で希釈したHRP結合ヤギ抗マウスIgG(H+L)を、プレートに加えた。比色基質であるTMBを、大規模に洗浄した後にプレートに加えて、結合していないHRP結合体を除去した。吸光度を、450nmの波長において、プレートリーダー上で測定した。
【0196】
抗ADDLモノクローナル抗体についての核直線状エピトープをマッピングするために、1つの群の重複する10個のアミノ酸ペプチドを合成して、Aβ1−42を包含した(表1)。Aβ1−42の逆転されたアミノ酸配列を有する14個のアミノ酸の3つのペプチドをまた、非特異性対照ペプチドとして合成した。
【0197】
【表1】
【0198】
すべてのペプチドを、DMSOに、約400〜500μM(1mg/mL)において溶解し、−20℃で複数のアリコートにおいて貯蔵した。ペプチドを、抗ADDLモノクローナル抗体の核エピトープの決定のために、ELISAアッセイにおいて用いた。各々のモノクローナル抗体を、N末端ペプチド群(残基1〜25から)またはC末端ペプチド群(残基17〜42から)のいずれかに対して、対照ペプチドと共に、4通りの濃度(3、1、0.3および0.1μg/mL)において試験した。モノクローナル抗体のパネルについての核直線状エピトープを、表2に列挙する。数種の市販のモノクローナル抗体(6E10、BAM−10、4G8およびWO−2)を、実験中に包含させて、アッセイ様式を認証し、結果により、刊行された文献において報告されたように、これらの核直線状エピトープが確認された。
【0199】
【表2】
【0200】
評価した12種のADDL特異性モノクローナル抗体のうち9種を、Aβ1−42のN末端領域に対してマッピングし、これらのうち7種を、アミノ酸残基3〜8に対してマッピングした。2種のモノクローナル抗体2H4および2E12は、わずかに比較的大きいエピトープを優先する。3種のモノクローナル抗体1F4、1F6および3B3は、3μg/mLの高い濃度においてさえも重複するペプチド群に結合しなかったが、これらのエピトープは、これらがAβ1−20ペプチドに結合することができたため、Aβ1−42のN末端に位置すると推定され、これを、当該実験において陽性対照として用いた。
【0201】
例14:マウス抗ADDL抗体の親和性および特異性
溶液に基づいた結合アッセイを開発して、種々のアミロイドベータペプチド調製物(ADDL、原繊維、Aβ1−40、Aβ1−20)に対する抗ADDL抗体の特異性および親和性を決定した。NUNC(登録商標)プレート上に塗布したADDLに対するモノクローナル抗体の用量応答の直線的な範囲を記録することができる、定量的ELISAを確立した。この情報に基づいて、ELISAにおいて、アッセイノイズ(0.2〜0.5の周囲のOD450nmの読み取り)よりもわずかに高い一貫したOD信号を提供することができる固定された濃度のモノクローナル抗体を、選択した。
【0202】
次に、IgGを、この固定された濃度において、種々のアミロイドベータペプチド基質(ADDL、原繊維、Aβ1−40、Aβ1−20)と共に、溶液中での20の時点での滴定において室温で一晩インキュベートして、平衡に到達させた。混合物内の遊離のIgGの量を、翌日、定型的なELISAプレート上での1時間のインキュベーションを伴う定量的ELISAにおいて決定した。結合したIgGの割合を、計算し、結合したIgGの遊離のリガンド(基質)の滴定に対する相関を用いて、KDを誘導し、これにはGraFitプログラム(Erithacus Software、Surrey、UK)を用いた。従って、種々のアミロイドベータペプチド調製物に対する各々の抗体についての基質の優先度を、固有の親和性値(KD)として表した。
【0203】
このアッセイ様式を用いるいくつかの利点があった。第1に、抗体および基質の相互作用は、溶液相においてであり、従って、定型的なELISAアッセイまたはBIACORE(登録商標)実験におけるようなすべての固体表面からの束縛はなく、ここでELISAプレートまたはセンサーチップからの固体表面の、モノクローナル抗体に対する可能性のある影響および基質相互作用を、データの解釈のために考慮しなければならない。第2に、相互作用は、放置して平衡に到達した。従って、IgGおよび基質の相互作用は、両方の成分の限定的な濃度において発生し、高い実験的濃度によるIgGの沈殿または追加的なアミロイドベータペプチドのオリゴマー化についての懸念を伴わなかった。
【0204】
第3に、アッセイの読み取りは、溶液中の抗原とは独立であった;従って、異なるペプチド調製物(例えばADDLまたは原繊維)におけるアミロイドベータのいかなる異種構造も、データの解釈および数学モデル化に干渉しない。アッセイの感受性は、ELISAアッセイ検出限界に限定され、これにより、このアッセイが、ナノモル範囲におけるKD値を有するモノクローナル抗体を評価することが可能になった。代替の基質、例えば蛍光試薬は、感受性範囲を改善することが意図される。免疫性複合体は、1時間のインキュベーションの間に最小限に分裂して、遊離のIgGを定量的なELISAにおいて記録したと、考えられる。
【0205】
遊離のIgGの量を、標準曲線により決定し、種々の基質の滴定に対してプロットした。種々の基質との結合IgGの量をプロットし、情報を、適切な数学モデルと適合する曲線について、GraFitにおいて用いた。本明細書中に開示されたモノクローナル抗体のパネルについての、nM範囲で表されたKDの概要を、表3に示す。
【0206】
【表3】
【0207】
例15:タウリン酸化の検出および測定
過剰リン酸化されたタウ(pTau)は、アルツハイマー病の特徴であるが、この過剰リン酸化を生じる事象については、ほとんど知られていない。あらゆる理論により束縛されることを望まず、ADDLは、このリン酸化事象において作用を奏し得ると、考えられる。これを調査するために、ニューロン培養物(一次ニューロンおよびB103細胞)を、上記のように増殖させ、1μmのbADDLまたはビヒクルを、培地に加え、培養物を、さらに1時間、6時間または24時間維持した。各々のインキュベーションの終了時に、細胞を洗浄し、固定し、透過性にし、遮断し、pTauに対して産生したモノクローナル抗血清(AT8、1:500;Pierce, Rockland, IL)と共に一晩インキュベートした。翌日、細胞を洗浄し、ALEXA(登録商標)488で標識した抗マウス二次抗体およびALEXA(登録商標)594で標識したストレプトアビジンと共にインキュベートし、細胞を、DAPIで染色して、核の検出を可能にした。次に、細胞を、蛍光顕微鏡を用いて評価し、pTau染色の程度およびbADDL結合との相関関係を、各々の時点において記録した。
【0208】
この分析の結果は、B103細胞へのbADDL結合が、ビヒクルで処理した細胞と比較した場合に、細胞過程におけるpTauのレベルを増大させることを示した。同様の変化がまた、一次海馬細胞において記録された。細胞をbADDLに6時間曝露した場合には、pTau染色における増大が、細胞、即ちまたbADDLに結合する細胞の亜集団において観察された。B103細胞での時間経過研究により、さらにbADDLによるpTauの調節を検査した。bADDLを加えた結果、1時間においてpTauのわずかな増大がもたらされた。しかし、pTau染色は、bADDLを加えてから6時間後に劇的に増大し、24時間後まで上昇されて維持された。従って、これらのデータは、ニューロンへのADDL結合が、タウの過剰リン酸化、神経原線維変化の蓄積および最終的な細胞死をもたらす細胞内事象のカスケードを開始し得ることを示す。このために、当業者は、ADDLのニューロンへの結合を遮断することにより、次にこのような下流の事象が防止され、アミロイド形成的疾患および/またはタウオパシーの処置に有益であることを認識することができる。さらに、ADDL結合により誘発される信号伝達事象およびpTau産生における結果の一層良好な理解により、また、新規な治療の開発のための好適な標的である追加的な経路が明らかになり得る。
【0209】
例16:Aβペプチド/ADDL−抗体相互作用および構築阻害
本明細書中に開示した選択されたモノクローナル抗体の存在下での、ADDL構築動力学およびオリゴマーの大きさの変化を、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)および蛍光分極(FP)により、フルオレセイン標識Aβ1−42単量体対ネイティブなペプチド単量体の1:4の混合物を用いて、観察した。ADDL中への単量体導入によるフルオレセイン発光の自己消光の結果、FRETによる短時間の時間規模にわたる蛍光強度の3倍〜5倍の減少がもたらされる。さらに、単量体をオリゴマーADDL種中に構築した際の大きさの増大の結果、2倍のFP増大がもたらされる。種々の新規な、および市販の抗ADDLおよび抗Aβペプチド抗体の存在下での、ADDL構築物のFRETおよびFP動力学進行曲線は、抗体が、ADDL構築を阻害し、かつ/またはペプチドオリゴマーに結合する能力における差異を示した(図4)。
【0210】
アッセイを、384ウェルのCORNING(登録商標)Non-Binding Surface黒色不透明マイクロタイタープレートにおいて行った。アッセイ緩衝液は、100mMのMgCl2を含む50mMのMOPS-Tris(pH8.0)から構成されていた。アッセイ容積は、0.2μMのFITC−Aβ1−42および0.8μMのAβ1−42を含んで50μLであり、アッセイ温度は37℃であった。ADDL構築を、485nmの波長において励起し、515nmの波長において発光を検出して、Tecan GENios Proプレートリーダーでモニタリングした。動力学的記録を、蛍光強度および分極読み取りを5分おきに6時間の時間経過にわたり記録することにより、採集した。この時間の間にADDL中に感知可能な程度に構築されなかった陰性対照の反応は、MgCl2を欠いていたが、すべての他の緩衝液およびペプチド成分を含んでいた。陽性対照の反応は、加えられたモノクローナル抗体試薬の不存在下で、すべての緩衝液成分を含んでいた。ADDL結合および構築阻害について試験するために、抗体を、500nMから5nMに減少させた8通りの濃度において、ペプチド混合物と共にインキュベートした。
【0211】
このアッセイは、ADDL結合挙動およびADDL構築阻害の種々のプロフィールを分類するために、有用であった。ADDL特異性および/または立体構造的エピトープとの相互作用による、比較的大きいADDL種の結合および中和は、実行可能な治療的方策として作用する。さらに、遷移性であり、中間的なADDL構築種(非単量体)中に存在するADDL特異性および/または立体構造的エピトープに結合することによる、大きいADDL中へのオリゴマー化の阻害により、抗ADDL療法のための代替的な方策が得られる。抗体間の顕著な差異を例証するFP進行曲線は、このような中間的な、または安定な種の結合を示す。モノクローナル抗体のFP/FRET挙動を他の機能的な、細胞的な、およびインビボの効果と相関させることにより、作用の所望の免疫療法方式の選択が可能になる。
【0212】
本明細書中に開示した分析の結果は、1F6、2A10、5F10、2D6および2B4が、有効な構築阻害を示す一方、20C2、1F4および4C2は、中間の構築阻害を示し、2H4、3B3および4E2は、弱い構築阻害を示すことを示している(図4)。表4に要約し、図5に例示するように、20C2、4E2、3B3および5F10は、種々の生化学的挙動を示す。
【0213】
【表4】
【0214】
さらに、低n量体生成ペプチドAβ1−42[Nle35−Dpro37]に対して発生した、5種の精製した抗体(即ち1A9、1E3、1G3、1A7および1E5)の1種である抗体1A9は、この構築阻害およびFP挙動の観点において、5F10と共に分離する。
【0215】
さらに、20C2は、SEC/ICCにより決定されて、電荷が反転した、切断されたAβ7−42ペプチド構築物の構築物に結合すると見出され、これは、Aβの残基7〜16に相当する全く異なった配列、即ちAβ(7−42)[Orn7Orn11D13D14E16Nle35]を有する、Aβ7−42電荷反転ペプチドに結合する慣用の直線状エピトープの欠如を示している。従って、20C2は、Aβの残基17〜42内からの要素に依存する立体構造的エピトープに結合するが、構築された場合のみである。
【0216】
例17:マウス抗体可変部配列の単離
マウス抗体の可変ドメインをコードするcDNAを、クローン化し、ポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)に従って、マウス定常部の5’末端に、およびV部の上流のマウスリーダー配列にハイブリダイズする特別に設計されたプライマーを用いて配列決定した。これにより、得られたマウス可変部配列が、完全であり、正確であることが確実になった。要するに、mRNAを、マウスハイブリドーマ細胞系から、QIAGEN(登録商標)OLIGOTEX(登録商標)Direct mRNA Mini Kitを用いて抽出し、その後一本鎖(first-strand)cDNA合成キットを用いてcDNAに変換した。次に、cDNAを、PCR反応における鋳型として用いて、抗体可変部配列を得た。
【0217】
軽鎖可変部配列を得るために、11の独立したPCR反応を、11種の軽鎖5’PCRプライマー(MKV−1〜MKV−11)および3’PCRプライマーMKC−1の各々を用いて、企画した(表5)。
【0218】
【表5】
【0219】
重鎖可変部配列を得るために、12の独立したPCR反応を、12種の重鎖5’PCRプライマー(MHV−1〜MHV−12)および適切なアイソタイプ特異性3’プライマー(MHCG−1、MHCG−2A、MHCG−2B、MHCG−3)の各々を用いて、企画した(表6)。
【0220】
【表6】
【0221】
軽鎖PCR反応の各々は、46μLのINVITROGEN(登録商標)PLATINUM(登録商標)PCR Super Mix、1.0μLの100μMの5’プライマー(MKV−1〜MKV−11)の1種、1.0μLの100μMの3’プライマー(MKC−1)および2.0μLのハイブリドーマcDNAを含んでいた。同様のPCR反応を用いて、マウス重鎖可変部配列をクローン化した。反応を、DNA熱サイクラー中に配置し、97℃での2.0分間の初期変性段階の後に:95℃で30秒間、55℃で45秒間、および72℃で90秒間のサイクルを30回施した。最後のサイクルの後に、72℃で10分間の最終的な拡張段階を用いた。
【0222】
いずれのPCR反応により生成物が得られたかを決定するために、各々の反応からの5μLのアリコートを、0.5μg/mLの臭化エチジウムを含む1.5%(w/v)アガロース/1X TAE緩衝液ゲル上で分離した。次に、予測された大きさ(420〜500bp)の断片を生成した反応からのPCR生成物を、ゲル精製し、XbaIおよびSacIで消化し、プラスミドpNEB193(New England Biolabs, Beverly, MA)の多重クローニング領域中のXbaIおよびSacI部位中に連結した。あるいはまた、PCR生成物を、プラスミドpCR(登録商標)2.1中に、INVITROGEN(登録商標)TA CLONING(登録商標)キットを用いて直接連結した。次に、連結生成物を、XL−1細胞に形質転換し、形質転換した大腸菌のアリコートを、50μg/mLのアンピシリンを含むLB寒天プレート上に蒔き、40μLのX−Galストック(50mg/mL)および40μLのIPTG(100mM)溶液で、青色/白色選択のために被覆した。
【0223】
プレートを、37℃で一晩インキュベートし、可能性のあるクローンを、白色コロニーとして同定した。各々のPCR生成物についての少なくとも24種の独立したクローンからのDNAを、両方のらせんについて、pNEB193およびpCR(登録商標)2.1についての普遍的な順方向および逆方向プライマーを用いて配列決定した。次に、得られた配列を、コンティグ中に構築して、各々の抗体軽鎖および重鎖可変部についてコンセンサス配列を発生させた。この方法を用いて、配列を、ハイブリドーマ20C2、5F10、2D6、2B4、4E2、2H4、2A10、3B3、1F6、1F4、2E12および4C2の軽および重抗体可変部について決定した(図6A〜6X)。
【0224】
図6A〜6Xにおいて、抗原に相補的な構造を形成する6つの相補性決定領域(CDR)に、下線を付した。CDRおよび対応する抗原エピトープ(表2)の分析により、配列の類似性が観察された。Aβ1−42の3−8アミノ酸エピトープを共有する抗体(即ち2A10、4C2、2D6、4E2、20C2、2B4および5F10)は、重鎖の高度に相同性のCDR1(図7A)およびCDR2(図7B)配列を共有していた。Aβ1−42の1−8アミノ酸エピトープを認識すると見出された抗体2H4は、重鎖の独特なCDR3(図7C)配列並びに軽鎖の独特なCDR1(図7D)、CDR2(図7E)およびCDR3(図7F)配列を有すると見られた。
【0225】
同様に、Aβ1−42の3−10アミノ酸エピトープを認識すると見出された抗体2E12は、重鎖の独特なCDR3配列(図7C)を有していた。さらに、SECピーク1およびピーク2ADDLに対する同様の親和性を有する抗体2A10、2B4、4C2および4E2(図3を参照)は、重鎖の高度に相同性のCDR3配列を共有していた(図7C)。さらに、抗体4E2の重鎖のCDR3におけるアミノ酸置換は、4E2が抗体2D6よりも、ニューロンへのADDL結合を遮断するにあたり有効であるため、ADDLのニューロン細胞への結合の遮断を増強すると見られ、4E2および2D6の重鎖および軽鎖の配列は、重鎖のCDR3の3個のアミノ酸残基を除いて同一であった;それぞれ2D6および4E2についてSer対Asn、Thr対SerおよびIle対Val(図7C)。
【0226】
例18:マウス抗ADDL抗体可変部配列のヒト化
マウスハイブリドーマ細胞系20C2、26D6、4E2、3B3、2H4および1F6から得られたマウス抗体重および軽可変ドメイン核酸を、CDR移植方法並びに20C2および26D6の場合においては化粧張り方策を用いてヒト化した。当業者は、マウス抗体配列のヒト化は、この血清半減期およびFcエフェクター機能を改善し、これにより抗グロブリン応答を低減することにより、抗体の治療的効力を最大化することができることを、理解する。
【0227】
CDR移植によるヒト化を、マウス可変ドメインに対する最高の相同性を有するNCBIタンパク質データベースからヒト軽鎖および重鎖可変部を選択することにより、行った。マウス可変部配列を、データベース中のすべてのヒト可変部配列と、タンパク質−タンパク質Basic Local Alignment Search Tool(BLAST)を用いて比較した。その後、マウスCDRを、ヒトフレームワーク領域に接合し、先行するアミノ酸配列を分析した。フレームワーク領域におけるマウス配列とヒト配列との間のすべての差異を、特にこれらがループ構造についての基準の配列の一部であったかまたはVL/VH界面に位置する残基であった場合に、評価した(O'BrienおよびJones (2001)、Antibody Engineering、Kontermann and Dubel(編)、Springer Laboratory Manuals中)。
【0228】
フレームワーク領域をまた、ヒト亜群についての、および可能性のあるグリコシル化部位についてのコンセンサス配列に対する比較において、普通ではない、またはまれなアミノ酸について走査した。アミノ酸配列の差異が、基準の配列に関与するとは見出されていないマウスおよびヒトフレームワーク領域配列の間に存在したか、またはVL/VH界面に位置した場合において、ヒト残基を、当該位置において選択した。重要な残基の差異が存在した場合において、可変部配列の2つの方式を、評価のために発生させた。CDR移植方策により、ヒトフレームワーク領域に最小数の変化がなされ、従って良好な抗原結合が達成された一方、天然のヒト抗体からの配列と密接に整合するヒトフレームワーク領域が維持された。CDR移植を用いた、ヒト化されたアミノ酸配列の設計を、図8に示す。
【0229】
20C2および26D6についてのヒト化された配列をまた、化粧張り方策を用いて設計した(例えば米国特許第6,797,492号を参照)。ヒト化を、マウス可変ドメインおよび最も近いヒト抗体生殖系列族(1または2以上)に対する最高の相同性を有するNCBIタンパク質データベースからヒト軽鎖および重鎖可変部を選択することにより、行った(Kabatら(1991)、Sequences of proteins of immunological interest、第5版、U.S. Dept. Health and Human Services、NIH、Washington DCを参照)。マウス可変部配列を、データベース中のすべてのヒト可変部配列に対して、タンパク質−タンパク質BLASTを用いて比較した。
【0230】
マウス可変配列およびこれらの最も近いヒト相同体を、当該分野において行われているコンピューターモデル化により決定したように、最も近い結晶化されたヒト抗体に対してモデル化した。マウスVHおよびVL配列のモデルから、表面領域マップを構成し、これは、マウス重および軽可変部におけるアミノ酸の溶媒接触性に影響した。モデル化を確認するために、これらの露出した残基を、既知の表面接触性残基と、位置どうしで比較した(例えば、Padlan (1994) Mol. Immunol. 31(3):169-217を参照)。記録を、確立された方法に従って、これを指定する配列における各々の残基について、露出している、ほとんど露出している、部分的に包埋されている、ほとんど包埋されている、および包埋されていると割り当てた(米国特許第6,797,492号を参照)。露出している、またはほとんど露出していると記録され、相同的なヒト配列と異なるマウスフレームワーク残基を、当該位置において、ヒト残基と交換した。
【0231】
設計された化粧張りされた配列は、マウスCDR、CDRに隣接する残基、基準の配列に関与すると知られている残基、VL/VH界面に位置する残基、並びにマウス重鎖および軽鎖のN末端配列における残基を維持した。N末端配列は、CDR表面と近接すると知られており、リガンド結合に有効に関与している。同様に、Pro、Glyまたは帯電した残基における変化を限定するように、注意した。化粧張りした配列を仕上げた後に、これらを、再びモデル化して、すべての可能性のある明らかな構造的問題点を探索した。いくつかの例において、1つより多い化粧張りした配列を、分析のために発生させた。ヒト化されたアミノ酸配列の、化粧張り方法を用いた設計を、図9に示す。
【0232】
ヒト化されたアミノ酸配列を選択した後に、配列を、逆翻訳して、対応するDNA配列を得た。DNA配列を、当該分野で確立されている方法(Lathe (1985)、J. Mol. Biol. 183(1):1-12)を用いて、コドン最適化し、ヒト抗体発現ベクター中にクローン化するために、フランキング制限酵素部位を用いて設計した。合成したDNA配列を、図10A〜10Sに示す。CDR移植および化粧張りにより設計された20C2ヒト化抗体について、ヒトIgG1/カッパおよびIgG2m4/カッパ様式の両方を構成し、ここでIgG2m4は、ヒトIgG4配列の標準的なヒトIgG2定常部中への選択的導入を表す。IgG1/カッパおよびIgG2m4/カッパ様式をまた、26D6CDR移植した抗体について作成した。すべての他の抗体について、IgG1/カッパ様式のみを作成した。得られた抗体の完全なアミノ酸配列を、図11A〜11Yに示す。
【0233】
抗体を、別個の軽鎖および重鎖発現プラスミドを293EBNA細胞中に同時一過性導入(co-transient transfection)することにより、発現させた。1つより多いヒト化された重鎖または軽鎖配列を所定の抗体について設計した場合には、重鎖および軽鎖のすべての組み合わせを混ぜ合わせて、対応する抗体を発生させた。抗体を、培養上清から、形質導入の7〜10日後にプロテインAカラムを用いて精製し、その後の分析において用いた。
【0234】
例19:IgG2m4抗体の発生
IgG2m4抗体誘導体を調製して、Fcレセプター会合、C1q結合、不所望な細胞毒性または免疫複合体生成を低減し、同時に典型的なヒト抗体の長い半減期および薬物動態学的特性を共に維持した。IgG2m4の基本的な抗体様式は、IgG2のものであり、これは、実験的モデルにおいて優れた半減期を有すると示されている(Zuckierら(1994)、Cancer Suppl. 73:794-799)。IgG4配列の選択的な導入により、IgG2の構造を改変して、C1q結合を解消し、一方典型的な低レベルのFcγR結合を維持した(CanfieldおよびMorrison (1991)、J. Exp. Med. 173:1483-1491)。これは、IgG2およびIgG4の配列が同一である交差点を用いることにより、達成され、これにより、すべての人工的な突然変異配列よりもむしろ、天然のFc配列を含む抗体が得られた。
【0235】
ヒト抗体定常部のIgG2m4形態を、図12に示すように、ヒトIgG4配列を標準的なヒトIgG2定常部中に選択的に導入することにより、形成した。概念的に、IgG2m4は、図12に示すように、CH2ドメイン内の1対の鎖交換から得られた。4つの単一の突然変異を、IgG4からの配列に対応して生じさせた。IgG2において突然変異したFc残基は、His268Gln、Val309Leu、Ala330SerおよびPro331Serを含んでおり、これにより、ネオエピトープ(neoepitope)についての効能が最小になった。IgG2定常部中に配置された特定のIgG4アミノ酸残基を、基本的構造からの他の代替と共に、表7に示す。
【0236】
【表7】
【0237】
例20:ヒト化された抗ADDL抗体の結合親和性
ヒト化された抗体のADDL結合親和性を評価するために、滴定ELISAを、本明細書中に開示したように行った。ストレプトアビジンを塗布した96ウェルマイクロタイタープレート(Sigma, St. Louis, MO)に、10%ビオチン化ADDL抗原(1μM)を塗布した。500ng/mLで開始した、精製した抗体の一連の2倍希釈を、ADDL捕獲プレートに加え、プレートを、2時間25℃でインキュベートした。プレート洗浄機(Bio-Tek, Winooski, VA)を用いてPBS溶液で5回洗浄した後に、ポリクローナルヤギ抗ヒトカッパ軽鎖抗体(Biomeda, Foster City, CA)を、3%脱脂乳ブロッカーでの1/2000の希釈において加え、室温で1時間インキュベートした。次に、ウサギ抗ヤギIgG(H+L)HRP結合(Bethyl Laboratories, Inc., Montgomery, TX)検出抗体を、遮断溶液での1/2000の希釈において加え、室温で1時間インキュベートした。PBSで洗浄した後、HRP基質、3,3’,5’,5−テトラメチルベンジジン(使用可能な状態のTMB;Sigma, St. Louis, MO)を加え、反応を、10分後に0.5NのH2SO4で停止した。450nmの波長における吸光度を、プレートリーダー(モデルVICTOR V; Perkin Elmer, Boston, MA)において読み取り、データを、EXCEL(登録商標)ワークシートを用いて加工した。プレート間のアッセイ変動は、20%以内であると推定された。
【0238】
ヒト化された抗体の種々の群を、種々の実験において比較した。CDR移植によりヒト化されたIgG1抗体20C2A、20C2B、3B3、4E2、1F6および2H4の比較により、すべての抗体がADDLに結合することができ、ここで1F6との結合は、大多数よりも弱く、20C2が最強であったことが、示された。20C2 IgG1抗体の4種の異なるヒト化様式(2種のCDR移植様式および2種の化粧張り様式)をまた比較し、極めて類似したADDL結合曲線を示し、すべての結合は、キメラ20C2抗体よりもわずかに良好であったことが、見出された。26D6 IgG1の7種の異なるヒト化様式(1種のCDR移植様式および6種の化粧張り様式)をまた比較した。すべて、26D6のキメラ形態に類似したADDL結合曲線を有すると、見出された。CDR移植によりヒト化された2種の20C2様式についてのIgG1およびIgG2m4抗体をまた、分析し、CDR移植によりヒト化された26D6のIgG1およびIgG2m4アイソタイプと同様に、同程度の結合曲線を有すると見出された。
【0239】
例21:ヒト化抗ADDL抗体を用いたニューロンへのADDL結合の阻害
ヒト化抗ADDL抗体をさらに、一次海馬ニューロンへのADDL結合を遮断するこれらの能力について、本明細書中に開示した方法を用いて評価した。関連する抗体または対照としてのPBSを、1:1(B103神経芽細胞腫細胞)または1:5(一次海馬ニューロン)のモル比で、2.5〜10μm(最終濃度)のbADDLと混合し、低速ローテータ上で1時間37℃でインキュベートした。プレインキュベーションの後、抗体/bADDL調製物を、B103または一次ニューロン培養物に加え、さらに1時間37℃でインキュベートした。インキュベーション期間の終了時に、bADDL/抗体混合物を除去し、プレートを、培地で6回洗浄した。次に、細胞を、4%パラホルムアルデヒド中で10分間室温で固定し、溶液を除去し、新鮮な固定液を加え、細胞を、さらに10分間固定した。
【0240】
細胞を、0.1%TRITON(登録商標)X−100を含む4%パラホルムアルデヒドで透過性にし(2回、各々室温で10分間)、PBSで6回洗浄し、次にPBS中の10%BSAで1時間37℃で処理した。次に、アルカリホスファターゼ結合ストレプトアビジン(1%BSA中1:1,500;Molecular Probes, Eugene, OR)を、細胞に1時間室温で加えた。細胞を、PBSで6回洗浄し、アルカリホスファターゼ基質(SAPPHIRE-II(登録商標)を含むCDP-STAR(登録商標);Applied Biosystems, Foster City, CA)を、細胞に加え、30分間インキュベートし、その後LJL照度計(Analyst AD; LJL Biosystems, Sunnyvale, CA)上でルミネセンスを決定した。マウス抗体について、26D6、20C2、4E2、3B3、2H4および1F6のヒト化様式は、ADDL調製物のB103神経芽細胞腫細胞への、および一次ニューロンへの結合を阻害することができた。
【0241】
例22:ヒト化抗ADDL抗体の親和性成熟
ヒト化20C2様式A可変重鎖のみ、軽鎖のみ、または重鎖および軽鎖を一緒にコードする核酸分子を、FabファージディスプレイベクターpFab3d中でクローン化した。核酸配列分析により、pFab3dにおける配列および配向が確認された。pFab3d中の注釈付きの20C2 Fab配列を、図13に示し、本明細書中で重鎖について配列番号255として、および軽鎖について配列番号256として述べる。3種の構造体を、当該分野において確立されたファージディスプレイFabライブラリー法を用いて、20C2成熟プログラムにおいて用いた。
【0242】
要するに、2種のライブラリーを設計して、20C2の軽(カッパ)鎖のCDR3の9種の野生型アミノ酸(即ち、Phe−Gln−Gly−Ser−Leu−Val−Pro−Leu−Thr;配列番号60)を突然変異させた。これらのライブラリーを、LC3−1およびLC3−2と指定し、これらはそれぞれ、Xaa−Xaa−Xaa−Xaa−Xaa−Val−Pro−Leu−Thr(配列番号257)およびPhe−Gln−Gly−Ser−Xaa−Xaa−Xaa−Xaa−Xaa(配列番号258)の軽鎖CDR3配列を表す。ビオチン化逆方向プライマーである20C2LC3−1(配列番号259)および20C2LC3−2(配列番号260)を、順方向プライマーである20C2LC3F(配列番号261)と組み合わせて用いて、LC3−1およびLC3−2ライブラリーを発生させた(図14を参照)。プライマーを、ポリアクリルアミドゲル電気泳動により精製し、一方ベクターDNAを、ゲル電気泳動および電子溶出(electroelution)により精製した。2種の軽鎖ライブラリーを設計して、無秩序に突然変異させた。3種の10G5H6 LC3ライブラリーの最終的な相違は、それぞれ4.76×108および7.45×108であった(表8)。ライブラリーからの約100種のクローンの配列分析により、設計されたアミノ酸位置における突然変異クローンの100%の相違が示された。
【0243】
【表8】
【0244】
高分子量bADDLに対する2種の20C2軽鎖ライブラリーの可溶性パニングを、完了した。要するに、4巡のパニングを、ビオチン化高分子量ADDL(bADDL)を用いて行った。最初の3巡を、約1.5μMの抗原濃度(投与量=1×1010〜1×1011)を用いて行った。第3巡の完了の際に、2種のライブラリーの産出を組み合わせ、10nM、100nMおよび約1.5μMの抗原での分析のために3つの群に分けて、パニングの厳密性を増大させた。このように、合計58個の産出プレート、即ち第1巡においてライブラリーあたり2つのプレート(合計で4つのプレート)、第2巡においてライブラリーあたり6つのプレート(合計で12個のプレート)、第3巡においてLC3−1ライブラリーについて8つのプレートおよびLC3−2ライブラリーについて10個のプレート(合計で18個のプレート)並びに第4巡において各々の抗原濃度について8つのプレート(合計で24個のプレート)を、ファージELISAアッセイにおいて試験した。
【0245】
パニングの結果1000個のヒットが得られ、このうち436個を配列決定した(表9)。
【0246】
【表9】
【0247】
高度に富化されたクローンの配列および頻度を、表10に示す。
【0248】
【表10】
【表11】
【0249】
富化頻度に基づく10個の最上部のクローンからのFab断片を調製し、合計15個のクローンを、IgG1ヒト化A様式に変換し、2個のクローン、即ち20C2−6および20C2−8を、IgG1ヒト化B様式に変換した。これらのクローンについてのKD値を、BIACORE(登録商標)により、ビオチン−Aβ1−20(表11)およびbADDL(表12)を抗原として用いて測定した。親和性における劇的な改善が、親のヒト化20C2Aおよび20C2B並びにマウス20C2抗体と比較して観察された。特に、低ナノモルないしピコモル未満のKDが、配列Xaa1−Gln−Xaa2−Thr−Arg−Val−Pro−Leu−Thr(配列番号318)の軽鎖CDR3で達成され、ここで、Xaa1は、PheまたはLeuであり、Xaa2は、AlaまたはThrである。さらに、ビオチン−Aβ1−20およびbADDLを用いてBIACORE(登録商標)で得られたKD値間の比較により、抗ADDL抗体、例えば20C2が、ADDLの多次元立体構造に、単量体Aβペプチドよりも優先的に結合することが、さらに例証される。
【0250】
【表12】
【0251】
【表13】
【技術分野】
【0001】
導入
本出願は、2004年10月25日出願の米国暫定特許出願通番第60/621,776号、2005年2月14日出願の同第60/652,538号、2005年6月30日出願の同第60/695,526号および2005年6月30日出願の同第60/695,528号からの優先権の利益を請求し、これらの内容は、これらの全体において参照により本出願中に導入される。
【0002】
本発明は、部分的に国立衛生研究所により出資された研究の過程でなされた(認可番号NIH RO1-AG18877およびNIH RO1-AG22547)。米国政府は、本発明においてある権利を有し得る。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
アルツハイマー病は、進行性の、および変性の認知症である(Terryら(1991)、Ann. Neurol. 30:572-580; Coyle (1987)、Encyclopedia of Neuroscience, Adelman(編)、Birkhaeuser, Boston-Basel-Stuttgart, 29〜31頁中)。この初期段階において、アルツハイマー病は、報告されたところではアミロイドベータ(Aβ)から由来する神経毒のために、主に新たな記憶を形成する深刻な無能として現れる(Selkoe (2002)、Science 298:789-791)。Aβは、存在量が突然変異およびアルツハイマー病に関連する危険因子により増大する両親媒性ペプチドである。Aβから形成する原繊維は、アミロイドプラークの核を構成し、これは、アルツハイマー病の脳の特徴である。インビトロで発生した類似する原繊維は、培養した脳ニューロンに対して致命的である。これらの発見により、記憶喪失が、原繊維状Aβにより生じたニューロン死の結果であることが、示される。
【0004】
原繊維状Aβおよび記憶喪失についての強力な実験的支持にもかかわらず、認知症とアミロイドプラーク負担との間には、関連性は乏しい(Katzman (1988)、Ann. Neurol. 23:138-144)。さらに、年齢依存性アミロイドプラークおよび最も重要なことには年齢依存性記憶障害を発生するトランスジェニックhAPPマウス(Dodartら(2002)、Nat. Neurosci. 5:452-457; Kotilinekら(2002)、J. Neurosci. 22:6331-6335)は、Aβに対するモノクローナル抗体をワクチン接種してから24時間以内に、記憶喪失がプラークレベルの変化を伴わずに逆行し得ることを示す。このような発見は、アミロイド原繊維により生じたニューロン死に依存する記憶喪失についての機構と整合しない。
【0005】
Aβ自己構築により生成した追加の神経学的に活性な分子が、示唆された。これらの分子は、Aβ由来拡散性リガンドまたはADDLとも呼ばれる可溶性Aβオリゴマーを含む。オリゴマーは、準安定であり、低い濃度のAβ1−42において生成する(Lambertら(1998)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95:6448-6453)。Aβオリゴマーは、長期間増強(LTP)、即ち記憶およびシナプスの柔軟性についての古典的な実験的パラダイムを迅速に阻害する。このように、記憶喪失は、ニューロン死および原繊維ではなくAβオリゴマーによるシナプス不全以前に、シナプス不全から起因する(HardyおよびSelkoe (2002)、Science 297:353-356)。可溶性オリゴマーは、脳組織において見出され、アルツハイマー病において(Kayedら(2003)、Science 300:486-489; Gongら(2003)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 100:10417-10422)、およびhAPPトランスジェニックマウスアルツハイマー病モデルにおいて(Kotilinekら(2002)、J. Neurosci. 22:6331-6335; Changら(2003)、J. Mol. Neurosci. 20:305-313)顕著に上昇している。
【0006】
種々のアルツハイマー病処置の選択肢が、示唆されている。ワクチン臨床的試験により、ワクチンに対する活発な免疫応答を備えているヒトが認知の利益を示すことが、明らかになった(Hockら(2003)、Neuron 38:547-554);しかし、CNS炎症の頻発により、試験の一部の早期の終了が生じた(BirminghamおよびFrantz (2002)、Nat. Med. 8: 199-200)。ワクチンに対する代替として、結合単量体または原繊維を伴わずにADDLを標的する治療的抗体が、示唆された(Klein (2002)、Neurochem. Int. 41:345-352)。ADDLは、高度に抗原性であり、〜50μg/mLの濃度でウサギにおいてオリゴマー選択性ポリクローナル抗体を発生する(Lambertら(2001)、J. Neurochem. 79:595-605)。トランスジェニックマウスモデルからの結果はまた、抗体が、記憶の低下に成功に逆行し得ることを示唆する(Dodartら(2002)、Nat. Neurosci. 5:452-457)。従って、当該分野において、アルツハイマー病の予防および処置のためのADDL選択性治療的抗体に対する必要性がある。本発明は、この必要性を満たす。
【発明の概要】
【0007】
発明の概要
本発明は、1種または2種以上のAβ由来拡散性リガンドの多次元立体構造を区別して認識することができる、単離された抗体またはこの断片である。特定の態様において、本発明の抗体は、薬学的に許容し得る担体との混合物においてである。他の態様において、本発明の抗体は、キットにおいてである。
【0008】
1種または2種以上のAβ由来拡散性リガンドの多次元立体構造に結合する抗体または抗体断片を用いる、Aβ由来拡散性リガンドのニューロンへの結合を防止する方法、Aβ由来拡散性リガンドの構築を阻害する方法およびタウタンパク質のリン酸化をSer202/Thr205において遮断する方法もまた、提供する。
【0009】
本発明はさらに、本発明の抗体を用いた、Aβ由来拡散性リガンドと関連する疾患を予防的に、または治療的に処置する方法を包含する。本発明の抗体の投与により、Aβ由来拡散性リガンドのニューロンへの結合が防止され得、これによりAβ由来拡散性リガンドと関連する疾患が防止または処置される。
【0010】
本発明はまた、Aβ由来拡散性リガンドのニューロンへの結合を防止する治療剤を同定する方法である。本発明のこの方法は、ニューロンをAβ由来拡散性リガンドと、剤の存在下で、また本発明の抗体を用いて接触させて、当該剤の存在下でのAβ由来拡散性リガンドのニューロンへの結合を決定することを含む。
【0011】
本発明はまた、試料中のAβ由来拡散性リガンドを検出する方法およびAβ由来拡散性リガンドと関連する疾患を診断する方法を包含する。このような方法は、試料を本発明の抗体と接触させて、Aβ由来拡散性リガンドを検出することができ、またAβ由来拡散性リガンドと関連する疾患を診断することができるようにすることを含む。
【0012】
発明の詳細な説明
Aβ由来拡散性リガンド(即ちADDL)の多次元立体構造を区別して認識するモノクローナル抗体が、ここで創出された。有利なことに、このモノクローナル抗体は、アルツハイマー病と対照のヒト脳抽出物とを区別することができ、アルツハイマー病脳スライスにおける、および培養した海馬細胞における内因性オリゴマーを同定する。さらに、この抗体は、溶液中の内因性および合成ADDLを中和する。いわゆる「合成」ADDLは、精製したアミロイドβ1−42を、ADDLを発生する条件の下で混合することにより、インビトロで生成する。米国特許第6,218,506号を参照。本明細書中に開示した特定の抗体は、単量体Aβペプチドの最小の検出を伴って、3〜24量体に対する高度な選択性を示す。さらに、本発明の選択された抗体によるADDLの認識は、Aβ1−42またはAβ1−40の直線状配列を包含する短いペプチドによっては遮断されない。しかし、結合は、Aβ1−28により遮断され、これは、立体構造的に独特の構造に基づくエピトープがまたAβ1−28において見出されることを示す。
【0013】
この抗体のエピトープの描写は、これらの抗体が、ELISAにより測定して同様の親和性および特異性の特徴を有する同様の核直線状配列を認識することを示した。さらに、この抗体は、ADDL含有製剤がラット海馬ニューロンおよび不死化神経芽細胞腫細胞系の一次培養物に結合する能力を区別して遮断し、またADDL構築を遮断する。この発見により、これらの抗体が、同様の直線状配列認識および親和性にもかかわらず、ADDLの多次元立体構造を認識する区別された能力を有することが、例証される。ADDLは、ニューロンのサブセットと関連し、正常なニューロン機能を破壊することが知られているため、本発明の1つの使用は、ADDLのニューロンへの結合を防止する抗体の開発および/または同定である。このような抗体は、アルツハイマー病を含むADDL関連疾患の処置において有用である。この使用の改良は、これらの抗体のヒト化および/または親和性成熟(affinity-matured)様式を、ADDLがニューロンおよびADDLの構築物に結合するのを防止するために特定的に用いることである。
【0014】
従って、本発明は、ADDLの1種または2種以上の多次元立体構造を区別して認識する、単離された抗体である。本発明の抗体は、これが、同一のタイプの他の生物学的巨大分子の実質的な不存在において存在する場合に、単離されたと言われる。従って、「単離された抗体」は、他の抗体を実質的に含まない抗体を意味する;しかし、分子は、抗体の基本的な特徴(例えば結合特異性、中和活性など)に有害に影響しない数種の追加の剤または部分を含んでもよい。
【0015】
ADDLの1種または2種以上の多次元立体構造に特異的に結合することができる抗体は、Aβ1−42のオリゴマー化から由来する特定のADDLに結合するが、本明細書中に開示したようにウエスタンブロット分析により決定されたように、他のAβペプチド、即ちAβ1−12、Aβ1−28、Aβ1−40およびAβ12−28と交差反応せず;優先的に溶液中でADDLに結合する(例えば例21を参照)。2つの実体間の特異的な結合は、一般的に、少なくとも106、107、108、109または1010M−1の親和性を表す。108M−1より大きい親和性が、特定の結合を達成するために望ましい。
【0016】
特定の態様において、1種または2種以上のADDLの多次元立体構造に特異的に結合することができる抗体をまた、ADDLの多次元立体構造に対して産生させる(即ち、動物をこれで免疫する)。他の態様において、1種または2種以上のADDLの多次元立体構造に特異的に結合することができる抗体を、低いn量体生成ペプチド、例えばAβ1−42[Nle35−Dpro37]に対して産生させる。
【0017】
用語「エピトープ」は、Bおよび/またはT細胞が応答する抗原上の部位または抗体が産生される、および/または抗体が結合する分子上の部位を意味する。例えば、エピトープを、該エピトープを定義する抗体により認識することができる。
【0018】
直線状エピトープは、アミノ酸一次配列が認識されたエピトープを含むエピトープである。直線状エピトープは、典型的には、少なくとも3つ、および最も普通には少なくとも5つ、例えば約8〜約10個のアミノ酸を独特の配列において含む。
【0019】
立体構造エピトープは、直線状エピトープとは対照的に、エピトープを含むアミノ酸の一次配列が、認識されたエピトープの単一の規定成分ではないエピトープ(例えば、アミノ酸の一次配列が、必ずしもエピトープを規定する抗体により認識されないエピトープ)である。典型的に、立体構造エピトープは、直線状エピトープに対して増大した数のアミノ酸を包含する。立体構造エピトープの認識に関して、抗体は、ペプチドまたはタンパク質の三次元構造を認識する。例えば、タンパク質分子が折り畳まれて三次元構造を形成する場合には、立体構造エピトープを形成するあるアミノ酸および/またはポリペプチド主鎖は、並列となり、抗体がエピトープを認識するのを可能にする。エピトープの立体構造を決定する方法には、例えばX線結晶学、二次元核磁気共鳴分光学並びに部位特異的なスピン標識および電磁常磁性共鳴分光学が含まれるが、これらには限定されない。例えば、Epitope Mapping Protocols in Methods in Molecular Biology (1996)、第66巻、Morris(編)を参照。
【0020】
Aβ由来拡散性リガンド、即ちADDLは、望ましくは8つまたは9つより少ないアミロイドβ1−42ペプチドの凝集体から構成されており、アルツハイマー病と関連すると見出されているアミロイドβ1−42の可溶性オリゴマーを意味する。これは、高分子量凝集中間体とは対照的であり、これは原繊維形成をもたらすミセルの針を形成する。
【0021】
本明細書中に例示するように、この抗体は、ADDLの少なくとも1つの多次元立体構造に結合するかまたはこれを認識する(例えば図3を参照)。特定の態様において、この抗体は、ADDLの少なくとも2つ、少なくとも3つまたは少なくとも4つの多次元立体構造に結合する。ADDLの多次元立体構造は、SDS−PAGEによる分析により定義したように、二量体、三量体、四量体、五量体、六量体、七量体、八量体、九量体、十量体などを包含することを意図する。三量体、四量体などの指定が、用いるアッセイ方法に伴って変化し得るため(例えばBitanら(2005)、Amyloid 12:88-95を参照)、本明細書中で用いる三量体、四量体などの定義は、SDS−PAGE分析による。
【0022】
この抗体の区別して結合する能力を例示するために、ある抗体が、1つの多次元立体構造、例えばADDLの四量体(即ち抗体2D6または4E2)を認識し、一方他の抗体が、いくつかの多次元立体構造、例えばADDLの三量体および四量体(例えば抗体2A10、2B4、5F10または20C2)を認識することが、見出された。このように、本発明の抗体は、オリゴマー特異性特性を有する。特定の態様において、ADDLの多次元立体構造は、本発明の抗体により認識される立体構造エピトープを生じる特定のポリペプチド構造と関連する。他の態様において、本発明の抗体は、>50kDaを超える分子量を有する、ほぼ三量体または四量体の大きさの範囲を有する多次元立体構造ADDLに特異的に結合する。
【0023】
ある態様において、多次元立体構造への結合に加えて、この抗体は、アミロイドβ1−42の選択された直線状エピトープに結合する。ADDLの直線状エピトープは、アミロイドβ1−42のN末端10、11、12、15または20のアミノ酸残基に位置する4つ、5つ、6つまたは7つ以上のアミノ酸残基ペプチドとして意図される。特定の態様において、本発明の抗体は、アミロイドβ1−42の残基1〜10、1〜8、3〜10または3〜8内の直線状エピトープに特異的に結合する。アミロイドβ1−42の例示的な直線状エピトープには、アミノ酸残基EFRHDS(配列番号177);DAEFRHDS(配列番号178)、およびEFRHDSGY(配列番号179)が含まれるが、これらには限定されない。
【0024】
本発明の抗体が、同様の直線状エピトープを有し得る一方、このような直線状エピトープは、この抗体の結合特性(即ち、ニューロンに結合するADDLを遮断し、タウリン酸化を防止し、ADDL構築を阻害する能力)を完全には示さない。その理由は、当業者に十分知られているように、直線状エピトープが、抗原のエピトープの一部に相当し得るに過ぎないからである(例えば、BreitlingおよびDuebel (1999)、Recombinant Antibodies, John Wiley & Sons, Inc., NY, pg. 115中を参照)。例えば、20C2は、20C2についての直線状エピトープ(即ちアミノ酸残基3〜8)を欠いており、Aβの残基7〜16に相当する全く異なった配列を含む、電荷が反転した切断されたAβ7−42ペプチドの構築物に結合することが、見出された。
【0025】
従って、20C2は、Aβの残基17〜42内からの要素に依存する立体構造エピトープに結合するが、これは多次元立体構造における場合のみである。本発明の抗体を、当該分野のものと、多次元ADDLを区別して認識し、従ってニューロンに結合するADDLを区別して遮断し、タウリン酸化を区別して防止し、ADDL構築を区別して阻害することができるものとして区別することができる。
【0026】
本発明において用いられる抗体には、ポリクローナルまたはモノクローナル抗体、およびキメラ、ヒト(例えばB細胞から単離された)、ヒト化、中和、二重特異性またはこの一本鎖抗体が含まれるが、これらには限定されない。1つの態様において、本発明の抗体は、モノクローナルである。抗体を産生するために、ヤギ、ウサギ、ニワトリ、ラット、マウス、ヒトおよび他のものを含む種々の宿主を、合成または天然ADDLでの注射により免疫することができる。抗体を産生する方法は、当該分野において十分知られている。例えば、KohlerおよびMilstein ((1975) Nature 256:495-497)並びにHarlowおよびLane (Antibodies: A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor Laboratory, New York (1988))を参照。
【0027】
宿主種に依存して、種々のアジュバントを用いて、免疫学的応答を増大させることができる。本発明において用いられるアジュバントは、望ましくは、応答の定性的形態に影響する免疫原の立体構造的変化を生じずに、ADDLに対する固有の応答を増大する。特に好適なアジュバントには、随意に免疫刺激物質、例えばモノホスホリルリピドA(Stouteら(1997)、N. Engl. J. Med. 336:86-91を参照)、ムラミルペプチド(例えばN−アセチルムラミル−L−トレオニル−D−イソグルタミン(thr−MDP)、N−アセチル−ノルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミン(nor−MDP)、N−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミニル−L−アラニン−2−(1’−2’ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ヒドロキシホスホリルオキシ)−エチルアミン(E−PE)、N−アセチルグルコサミニル−N−アセチルムラミル−L−Al−D−イソグル−L−Ala−ジパルミトキシプロピルアミド(DTP−DPP))と組み合わせての、3脱Oアシル化モノホスホリルリピドA(MPL(登録商標); RIBI ImmunoChem Research Inc., Hamilton, MT;GB 2220211を参照)および水中油エマルジョン、例えばスクアレンもしくはピーナッツ油、または他の細菌細胞壁成分が含まれる。
【0028】
水中油エマルジョンの特定の例には、5%スクアレン、0.5%TWEEN(登録商標)80および0.5%SPAN 85を含み(随意に種々の量のMTP−PEを含む)、微小流動化装置(microfluidizer)、例えばモデル110Y微小流動化装置(Microfluidics, Newton, MA)を用いてサブミクロン粒子に処方されたMF59(WO 90/14837);10%スクアレン、0.4%TWEEN(登録商標)80、5%PLURONIC(登録商標)遮断ポリマーL121およびthr−MDPを含み、サブミクロンエマルジョン中に微小流動化されたか、またはボルテックスされて、一層大きい粒子の大きさのエマルジョンを発生するSAF;並びに2%スクアレン、0.2%TWEEN(登録商標)80および1種または2種以上の細菌細胞壁成分、例えばモノホスホリルリピドA、トレハロースジミコレート(trehalose dimycolate)(TDM)および細胞壁骨格(CWS)を含むRIBI(登録商標)アジュバント系(RAS)(Ribi ImmunoChem, Hamilton, MT)が含まれる。
【0029】
他の群のアジュバントは、サポニンアジュバント、例えばSTIMULON(登録商標)(QS-21, Aquila, Framingham, MA)またはこれから発生した粒子、例えばISCOM(免疫刺激複合体)およびISCOMATRIX(登録商標)(CSL Ltd., Parkville, Australia)である。他の好適なアジュバントには、フロイント完全アジュバント(CFA)、フロイント不完全アジュバント(IFA)、鉱物ゲル、例えば水酸化アルミニウム、および界面活性物質、例えばリソレシチン、PLURONIC(登録商標)ポリオール類、ポリアニオン類、ペプチド類、CpG(WO 98/40100)、キーホールリンペットヘモシアニン、ジニトロフェノールおよびサイトカイン類、例えばインターロイキン類(IL−1、IL−2およびIL−12)、マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)、並びに腫瘍壊死因子(TNF)が含まれる。ヒトにおいて用いられるアジュバントの中で、BCG(カルメット・ゲラン桿菌)およびCorynebacterium parvumが、特に好適である。
【0030】
多次元立体構造ADDLに対する抗体は、動物をADDLで免疫することにより発生する。一般的に、ADDLを、合成的に、または組換え断片発現および精製により発生させることができる。合成ADDLを、本明細書中に開示したように、または米国特許第6,218,506号に、もしくは同時係属出願USSN 60/621,776、60/652,538、60/695,526および60/695,528に開示されている方法に従って、調製することができる。さらに、ADDLを、他のタンパク質、例えばキーホールリンペットヘモシアニンと融合させて、キメラ分子に対する抗体を発生させることができる。ADDLを、立体構造的に拘束して、本明細書中に記載したように有用なエピトープを形成することができ、さらに表面と会合させ、例えば表面に物理的に付着させるか、または化学的に結合させて、本発明の抗体により認識される立体構造の形成を可能にするようにすることができる。
【0031】
ADDLの多次元立体構造に対するモノクローナル抗体を、培養物中の連続的な細胞系により抗体分子の生成をもたらすすべての手法を用いて、調製することができる。これらには、ハイブリドーマ手法、ヒトB細胞ハイブリドーマ手法およびEBV−ハイブリドーマ手法(Kohlerら(1975)、Nature 256:495-497; Kozborら(1985)、J. Immunol. Methods 81:31-42; Coteら(1983)、Proc. Natl. Acad. Sci. 80:2026-2030; Coleら(1984)、Mol. Cell Biol. 62:109-120)が含まれるが、これらには限定されない。例示的なモノクローナル抗体には、2A10、4C2、2D6、4E2、20C2、2B4、5F10、2H4、2E12、1F6、1F4、3B3、5G12、6B7、6B11、11B4、11B5、14A11、15G6、17G4、20C2、3B7、1E3、1A9、1G3、1A7および1E5と指定されるマウス抗体が含まれる。
【0032】
さらに、ヒト化およびキメラ抗体を、マウス抗体遺伝子をヒト抗体遺伝子に対してスプライスして、適切な抗原特異性および生物学的活性を有する分子を得ることにより、産生することができる(Morrisonら(1984)、Proc. Natl. Acad. Sci. 81, 6851-6855; Neubergerら(1984)、Nature 312:604-608; Takedaら(1985)、Nature 314:452-454; Queenら(1989)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:10029-10033; WO 90/07861を参照)。例えば、マウス抗体は、ファージ選択ベクター中でFvまたはFab断片として発現される。軽鎖についての遺伝子(および平行した実験において、重鎖についての遺伝子)を、ヒト抗体遺伝子のライブラリーについて交換する。次に、尚抗原に結合するファージ抗体を、同定する。一般的に鎖混合として知られているこの方法により、これが由来するマウス抗体と同一のエピトープに結合するべきである、ヒト化された抗体が得られた(Jespersら(1994)、Biotechnology NY 12:899-903)。代替として、鎖混合を、タンパク質レベルで行うことができる(Figiniら(1994)、J. Mol. Biol. 239:68-78を参照)。
【0033】
ヒト抗体をまた、ファージディスプレイ方法を用いて得ることができる。例えば、WO 91/17271およびWO 92/01047を参照。これらの方法において、要素がこれらの外面上で異なる抗体を表示するファージのライブラリーを、作成する。抗体は、通常FvまたはFab断片として表示される。所望の特異性を有する抗体を表示するファージを、ADDLに対するアフィニティー濃縮により、選択する。ADDLに対するヒト抗体をまた、少なくともヒト免疫グロブリン座および不活性化された内因性免疫グロブリン座のセグメントをコードするトランスジーンを有する非ヒトトランスジェニック哺乳類から産生することができる。例えば、WO 93/12227およびWO 91/10741を参照。各々を、参照により本明細書中に導入する。ヒト抗体を、競合的結合実験または他の方法により、特定のマウス抗体と同一のエピトープ特異性を有するように、選択することができる。このような抗体は、特にマウス抗体の有用な機能的特性を共有する傾向がある。ヒトポリクローナル抗体をまた、免疫原性剤で免疫したヒトからの血清の形態で、提供することができる。随意に、このようなポリクローナル抗体を、アフィニティー試薬としてADDLを用いて、アフィニティー精製により濃縮することができる。
【0034】
ヒト化抗体をまた、マウス抗体を化粧張り(veneering)するかまたは新たな表面を形成することにより、産生することができる。化粧張りは、マウス重および軽可変部における表面固定された領域のアミノ酸のみを、相同的なヒト抗体配列のもので置換することを含む。マウス表面アミノ酸を相同的なヒト配列からの同一の位置におけるヒト残基で置換することは、マウス抗体の免疫原性を低減する一方、このリガンド結合を保存すると示された。外部残基の置換は、一般的に、内部ドメインに対して、またはドメイン間接触に対して、影響をほとんどまたは全く有しない。(例えば米国特許第6,797,492号を参照)。
【0035】
ヒトまたはヒト化された抗体を、IgG、IgD、IgA、IgMまたはIgE定常部並びにIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4を含むすべてのアイソタイプを有するように、設計することができる。特定の態様において、本発明の抗体は、IgGもしくはIgMまたはこれらの組み合わせである。特定の組み合わせは、ヒトIgG4配列を標準的なヒトIgG2定常部中に選択的に導入することにより形成した定常部を包含する。例示的な変異体IgG2Fcは、本明細書中に配列番号254として述べるIgG2m4である。抗体を、別個の重鎖および軽鎖として、または重鎖および軽鎖可変ドメインがスペーサーにより結合している一本鎖抗体として、2つの軽鎖および2つの重鎖を含む四量体として、表すことができる。一本鎖抗体を産生するための手法は、当該分野において十分知られている。
【0036】
CDR移植および化粧張りにより産生された例示的なヒト化抗体を、本明細書中に、4E2、26D6、20C2、3B3、2H4および1F6と指定された抗体について開示する。IgG1およびIgG2M4重鎖可変部並びに、CDR移植および化粧張りにより産生されたヒト化4E2、26D6、20C2、3B3、2H4および1F6についてのカッパ軽鎖可変部についてのアミノ酸配列を、図11A〜11Yに示し、本明細書中に配列番号152〜176として述べる。
【0037】
二重特異性抗体もまた、意図する。二重特異性抗体は、結合する抗体の結合ドメイン(重鎖と軽鎖との両方)を単離し、同一のポリペプチド鎖上の重鎖および軽鎖に接合するかまたは作動可能に(operably)結合する結合部分を供給し、これにより結合機能を保存することにより調製された、操作された抗体構造物を意味する(Holligerら(1993)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6444; Poljak (1994)、Structure 2:1121-1123を参照)。これは、本質的に、抗原に結合するのに必要な可変ドメインのみを有する根本的に短縮された抗体を形成する。同一の鎖上で2つのドメイン間の対形成を可能にするには短すぎるリンカーを用いることにより、ドメインを、他の鎖の相補的なドメインと強制的に対形成させ、2つの抗原結合部位を作成させる。これらの二量体抗体断片または二重特異性抗体は、2価であり、二重特異性である。当業者は、二重特異性抗体を作成するすべての方法を用いることができることを認識する。好適な方法は、Holligerら(1993)、上記、Poljak (1994)、上記、Zhuら(1996)、Biotechnology 14:192-196および米国特許第6,492,123号により記載されており、これらを参照により本明細書中に導入する。
【0038】
本発明の単離された抗体の断片はまた、本発明により明確に包含される。断片は、Fab断片、F(ab’)2断片、F(ab’)断片、二重特異性scFv断片、Fd断片およびFab発現ライブラリーにより産生された断片、並びにペプチドアプタマーを含むことを意図する。例えば、F(ab’)2断片は、本発明の抗体分子のペプシン消化により産生され、一方Fab断片は、F(ab’)2断片のジスルフィド架橋を還元することにより産生される。あるいはまた、Fab発現ライブラリーを、所望の特異性を伴ってモノクローナルFab断片の迅速かつ容易な同定を可能にするように構成することができる(Huseら(1989)、Science 254:1275-1281を参照)。特定の態様において、本発明の抗体断片は、可変部結合部位を維持する中和抗体の断片である。例示的なものは、F(ab’)2断片、F(ab’)断片およびFab断片である。一般的に、Immunology: Basic Processes (1985)、第2版、J. Bellanti(編)、95〜97頁を参照。
【0039】
ADDLの多次元立体構造を区別して認識するペプチドアプタマーを、アプタマーのライブラリー(例えばAptanomics SA, Lyon, Franceにより提供される)について合理的に設計するかまたは選別することができる。一般的に、ペプチドアプタマーは、設計が抗体の構造に基づいている合成認識分子である。ペプチドアプタマーは、両方の末端においてタンパク質骨格に結合した可変ペプチドループからなる。この二重の構造的束縛により、ペプチドアプタマーの結合親和性が抗体の結合親和性(ナノモル範囲)に匹敵するレベルに大幅に増大する。
【0040】
本発明の抗体および抗体断片を産生するにあたり用いるための重鎖および軽鎖可変部をコードする例示的な核酸配列を、本明細書中で、図6および10(即ち配列番号1〜24および配列番号132〜151)に開示する。当業者に理解されるように、本明細書中に開示した重鎖可変部を、本明細書中に開示した軽鎖可変部のいずれか1つと組み合わせて用いて、改良された親和性、解離定数、エピトープなどを有する抗体を産生することができる。例えば、2H4(配列番号12によりコードされる)の軽鎖可変部を2A10(配列番号13によりコードされる)の重鎖可変部と組み合わせることにより、一層大きい直線状エピトープの認識をもたらすことができる。
【0041】
本発明の抗体または抗体断片を産生するにあたり用いるための例示的な重鎖および軽鎖CDRを、図7A〜7Fに開示し、これは、配列番号25、26および28(重鎖CDR1);配列番号29、30、31、33、34、35および36(重鎖CDR2);配列番号38、39、40、41、43、44、45、46、47および48(重鎖CDR3);配列番号49、50、51および53(軽鎖CDR1);配列番号54、55、56および58(軽鎖CDR2);並びに配列番号59、60、61、62、63、64および66(軽鎖CDR3)において述べたアミノ酸配列を有する。本発明の抗体または抗体断片の重鎖および軽鎖の特定の態様は、以下の通りである。
【0042】
Ser−Phe−Gly−Met−His(配列番号28)またはThr−Ser−Gly−Met−Gly−Val−Xaa(配列番号27)のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、ここでXaaは、側鎖を有しないかまたは小さい側鎖を有するアミノ酸(例えばSer、GlyまたはAla)である。His−Ile−Xaa1−Trp−Asp−Asp−Asp−Lys−Xaa2−Tyr−Asn−Pro−Ser−Leu−Lys−Ser(配列番号32)のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2、ここでXaa1は、芳香族側鎖基を有するアミノ酸(例えばPhe、TyrもしくはTrp)であり、Xaa2は、Ser、ArgもしくはTyrである;またはTyr−Ile−Xaa1−Xaa2−Xaa3−Ser−Xaa4−Thr−Ile−Tyr−Tyr−Ala−Asp−Thr−Val−Lys−Arg(配列番号37)のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2、ここでXaa1およびXaa2は、極性側鎖基を有するアミノ酸(例えばArg、Ser、Gly、Thr、Cys、Tyr、Asn、Gln、LysもしくはHis)であり;Xaa3は、GlyもしくはValであり;Xaa4は、極性であり、帯電していない側基を有するアミノ酸(例えばGly、Ser、Thr、Cys、Tyr、AsnもしくはGln)である。Arg−Ser−Ile−Xaa1−Xaa2−Xaa3−Xaa4−Pro−Glu−Asp−Tyr−Phe−Xaa5−Tyr(配列番号42)のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3、ここでXaa1は、極性であり、帯電していない側基を有するアミノ酸(例えばGly、Ser、Thr、Cys、Tyr、AsnまたはGln)であり;Xaa2は、ヒドロキシル側鎖基を有するアミノ酸(例えばSerまたはThr)であり;Xaa3およびXaa4は、脂肪族側鎖基を有するアミノ酸(例えばAla、Val、Leu、IleまたはPro)であり;Xaa5は、AspまたはAlaである。
【0043】
Arg−Ser−Ser−Gln−Ser−Xaa1−Xaa2−His−Ser−Asn−Gly−Asn−Thr−Tyr−Leu−Xaa3(配列番号52)のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、ここでXaa1およびXaa2は、脂肪族側鎖基を有するアミノ酸(例えばAla、Val、Leu、IleまたはPro)であり、Xaa3は、帯電した側鎖基を有するアミノ酸(例えばAsp、Glu、Arg、HisまたはLys)である。Lys−Xaa1−Ser−Asn−Arg−Phe−Xaa2(配列番号57)のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2、ここでXaa1は、脂肪族側鎖基を有するアミノ酸(例えばAla、Val、Leu、IleまたはPro)であり、Xaa2は、SerまたはPheである。Xaa1−Gln−Xaa2−Xaa3−Xaa4−Val−Pro−Xaa5−Thr(配列番号65)のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3、ここでXaa1は、SerまたはPheであり;Xaa2は、側鎖を有しないアミノ酸(例えばgly)またはヒドロキシル側鎖基を有するアミノ酸(例えばSerもしくはThr)であり;Xaa3は、ヒドロキシル側鎖基を有するアミノ酸(例えばSerまたはThr)であり;Xaa4は、His、TyrまたはLeuであり;Xaa5は、脂肪族側鎖基を有するアミノ酸(例えばAla、Val、Leu、IleまたはPro)である。
【0044】
当業者により理解されるように、抗体の重鎖および軽鎖可変部内のCDRの1つまたは2つ以上を、他の抗体からの1つまたは2つ以上のCDRで置換して、完全に新規な抗体または抗体断片を産生することができる。例えば、5F10の重鎖のCDR3を4E2からの重鎖のCDR3(配列番号41)で置換することにより、ADDLのニューロン細胞への結合を遮断する5F10の当該能力を増強することができる。
【0045】
特定の特性を有する抗体を、意図する。1つの態様において、Aβ1−42の3〜8個のアミノ酸エピトープに結合する抗体は、Xaaが側鎖を有しないかもしくは小さい側鎖を有するアミノ酸(例えばSer、GlyもしくはAla)である、Thr−Ser−Gly−Met−Gly−Val−Xaa(配列番号27)の重鎖CDR1アミノ酸配列;またはXaa1が芳香族側鎖基を有するアミノ酸(例えばPhe、TyrもしくはTrp)であり、Xaa2がSer、ArgもしくはTyrである、His−Ile−Xaa1−Trp−Asp−Asp−Asp−Lys−Xaa2−Tyr−Asn−Pro−Ser−Leu−Lys−Ser(配列番号32)の重鎖CDR2アミノ酸配列を有する。
【0046】
他の態様において、小さい(<30kDa)凝集体にまさる大きい(>50kDa)ADDL凝集体への適度な親和性を有する抗体(即ちそれぞれSECピーク1およびピーク2)は、Xaa1が極性であり、帯電していない側基を有するアミノ酸(例えばGly、Ser、Thr、Cys、Tyr、AsnまたはGln)であり;Xaa2がヒドロキシル側鎖基を有するアミノ酸(例えばSerまたはThr)であり、Xaa3およびXaa4が脂肪族側鎖基を有するアミノ酸(例えばAla、Val、Leu、IleまたはPro)であり;Xaa5がAspまたはAlaである、Arg−Ser−Ile−Xaa1−Xaa2−Xaa3−Xaa4−Pro−Glu−Asp−Tyr−Phe−Xaa5−Tyr(配列番号42)の重鎖CDR3アミノ酸配列を有する。
【0047】
本発明の抗体または抗体断片は、これに結合した追加の部分を有することができる。例えば、米国特許第4,493,825号に記載されているように、細粒または微小粒子を、抗体または抗体断片に結合させることができ、この開示を、参照により本明細書中に導入する。
【0048】
さらに、本発明の抗体または抗体断片を突然変異させ、増大した抗原親和性、中和活性(即ち、ADDLのニューロン細胞への結合を遮断する能力もしくはADDL構築を遮断する能力)、または改良された解離定数について、選択することができる。大腸菌のミューテーター菌株(Lowら(1996)、J. Mol. Biol. 260:359-368)、鎖混合(Figiniら(1994)、上記)およびPCR変異原性は、抗体をコードする核酸分子を突然変異させるための確立された方法である。例示により、増大した親和性を、多数のファージ抗体を少量のビオチン化された抗原と接触させ、従って抗体が結合について競合するようにすることにより、選択することができる。
【0049】
この場合において、抗原分子の数は、ファージ抗体の数を超えているはずであるが、抗原の濃度は、解離定数よりもいくらか低いはずである。従って、増大した親和性を有する優性に突然変異したファージ抗体は、ビオチン化された抗原に結合し、一方比較的弱い親和性のファージ抗体の比較的大きい部分は、未結合のままである。次に、ストレプトアビジンは、一層高い親和性の突然変異したファージ抗体の混合物からの濃縮を補助し得る(Schierら(1996)、J. Mol. Biol. 255:28-43)。例示的な親和性成熟軽鎖CDR3アミノ酸配列を、本明細書中に開示し(表11および12を参照)、特定の態様は、Xaa1−Gln−Xaa2−Thr−Arg−Val−Pro−Leu−Thr(配列番号316)の軽鎖CDR3アミノ酸配列を包含し、ここでXaa1は、PheまたはLeuであり、Xaa2は、AlaまたはThrである。
【0050】
いくつかの治療的用途のために、抗体の抗原からの解離を低減することが、望ましい場合がある。これを達成するために、ファージ抗体を、ビオチン化された抗原に結合させ、過剰のビオチン化されていない抗原を加える。ある期間の後に、主に一層低い解離定数を有するファージ抗体を、ストレプトアビジンと共に収穫することができる(Hawkinsら(1992)、J. Mol. Biol. 226:889-96)。
【0051】
本明細書中に開示されたものを含む種々のイムノアッセイを、ADDLの多次元立体構造に対する所望の特異性を有する抗体またはこの断片を同定するための選別のために、用いることができる。競合的結合(例えばELISA)、ラテックス凝集アッセイ、免疫放射線測定法、ポリクローナル抗体もしくはモノクローナル抗体またはこの断片のいずれかを用いる動力学(例えばBIACORE(登録商標)分析)についての多数のプロトコルは、当該分野において十分知られている。このようなイムノアッセイは、典型的に、特定の抗体とこの同族の抗原との間の複合体結合の測定を含む。2つの非干渉性エピトープに対して反応性のモノクローナル抗体を用いる、2つの部位のモノクローナルに基づくイムノアッセイが好適であるが、競合的結合アッセイもまた、用いることができる。このようなアッセイをまた、試料中のADDLの多次元立体構造の検出において用いることができる。
【0052】
抗体または抗体断片にまた、他の生物学的活性アッセイ、例えばニューロンもしくは培養した海馬細胞に結合するADDLの置換またはADDL構築の遮断を施して、中和または薬理学的活性および予防または治療剤としての可能性のある効能を評価することができる。このようなアッセイは、本明細書中に記載されており、当該分野において十分知られている。
【0053】
抗体および抗体の断片を、ハイブリドーマとして産生および維持するか、または、あるいはまた、大腸菌、酵母(例えばSaccharomyces種およびPichia種)、バキュロウイルス、哺乳類細胞(例えば骨髄腫、CHO、COS)、植物またはトランスジェニック動物を含むがこれらには限定されない、すべての十分確立された発現系において組換え的に産生することができる(BreitlingおよびDuebel (1999)、Recombinant Antibodies, John Wiley & Sons, Inc., NY,119〜132頁中)。CDR移植および化粧張りにより産生された、IgG1およびIgG2m4重鎖可変部並びにヒト化4E2、26D6、20C2、3B3、2H4および1F6についてのカッパ軽鎖可変部の例示的な核酸配列を、図10A〜10Sに示し、本明細書中に配列番号132〜151として述べる。抗体および抗体の断片について、アフィニティークロマトグラフィー、免疫グロブリン結合分子(例えばプロテインA、L、GまたはH)、抗体または抗体断片に作動可能に結合したタグ(例えばHisタグ、FLAG(登録商標)タグ、Strepタグ、c−mycタグ)などが含まれるがこれらには限定されない、すべての適切な方法を用いて、単離することができる。BreitlingおよびDuebel (1999)、上記を参照。
【0054】
本発明の抗体および抗体断片は、ADDLの蓄積と関連する疾患の診断、ADDLのニューロン細胞への結合の遮断または阻害、ADDL構築の遮断、ADDLと関連する疾患を予防的に、または治療的に処置すること、ADDLのニューロンへの結合を防止する治療剤の同定、およびSer202/Thr205におけるタウタンパク質のリン酸化の防止を含む種々の使用を有する。
【0055】
本発明の抗体および抗体断片はまた、ADDLのニューロン細胞への結合を遮断または阻害する方法において、有用である。本発明のこの方法を、ニューロンを本発明の抗体または抗体断片とインビトロまたはインビボで接触させて、ADDLのニューロンへの結合を遮断するようにすることにより、行う。特定の態様において、本発明の抗体または抗体断片は、抗体または抗体断片の不存在におけるADDLの結合と比較して、ADDLの結合の少なくとも15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または97%の減少を達成する。抗体がADDLのニューロンへの結合を遮断することができる程度を、本明細書中に開示した方法、即ち免疫細胞化学または細胞に基づくアルカリホスファターゼアッセイまたはすべての他の好適なアッセイに従って、決定することができる。ADDLのニューロン細胞への結合を減少させるのに特に有用な抗体には、例示的な20C2、3B3、1F4、1F6、4E2、2B4、2D6および2H4モノクローナル抗体が含まれる。
【0056】
本発明の抗体および抗体断片は、さらに、ADDLの構築を遮断または阻害する方法において有用である。この方法は、アミロイドβ1−42ペプチドを含む試料を本発明の抗体または抗体断片と接触させて、ADDLの構築を阻害することを含む。抗体がADDLの構築を遮断することができる程度を、本明細書中に開示した方法、即ちFRETまたは蛍光偏光またはすべての他の好適なアッセイに従って、決定することができる。ADDLの構築を遮断するのに特に有用な抗体には、例示的な1F4、20C2、4C2、1F6、2B4、5F10、2A10および2D6抗体が含まれる。
【0057】
本明細書中に開示した抗体はまた、タウタンパク質のリン酸化をSer202/Thr205において防止する方法において有用である。この方法は、タウタンパク質を含む試料を本発明の抗体または抗体断片と接触させて、ADDLのニューロンへの結合を遮断し、これによりタウタンパク質のリン酸化を防止することを含む。抗体がタウタンパク質のリン酸化をSer202/Thr205において防止することができる程度を、本明細書中に開示した方法またはすべての他の好適なアッセイに従って、決定することができる。
【0058】
ADDLのニューロンへの結合を遮断するかまたは低減すること、ADDLの構築を阻害することおよびSer202/Thr205におけるタウタンパク質のリン酸化を防止することはすべて、ADDLの蓄積と関連する疾患を予防的に、または治療的に処置する方法において、用途が見出されている。従って、本発明はまた、本発明の抗体または抗体断片を用いて、ADDLの蓄積に関連する疾患(例えばアルツハイマー病または同様の記憶関連障害)を防止または処置することを包含する。処置の影響を受けやすい患者には、疾患の危険にあるが症状を示さない個体、および現在症状を示している患者が含まれる。アルツハイマー病の場合において、十分長く生存している場合には、事実上誰もが、アルツハイマー病を罹患する危険にある。
【0059】
従って、本発明の抗体または抗体断片を、被検患者の危険の評価を何ら必要とせずに、一般的集団に予防的に投与することができる。この方法は、アルツハイマー病の既知の遺伝的な危険を有する個体に特に有用である。このような個体には、疾患を有すると診断された親類を有する個体、および危険が遺伝的または生化学的マーカーの分析により決定される個体が含まれる。アルツハイマー病についての危険の遺伝的マーカーには、APP遺伝子における突然変異、特にそれぞれHardy突然変異およびSwedish突然変異と呼ばれる、位置717並びに位置670および671における突然変異が含まれる。
【0060】
危険の他のマーカーは、プレセニリン遺伝子PS1およびPS2、並びにApoE4における突然変異、アルツハイマー病の家族歴、高コレステロール血症またはアテローム硬化症である。現在アルツハイマー病を罹患している個体を、特徴的な認知症および上記の危険因子の存在から認識することができる。さらに、多くの診断試験が、アルツハイマー病を有する個体を同定するために有用である。これらには、CSFタウおよびAβ1−42レベルの測定が含まれる。アルツハイマー病を罹患している個体をまた、ADRDA基準または本明細書中に開示した方法により、診断することができる。
【0061】
無症候性の患者において、処置を、すべての年齢(例えば10歳、20歳、30歳の年齢)において開始することができる。しかし、通常、患者が40歳、50歳、60歳または70歳の年齢に達するまで処置を開始する必要はない。処置は、典型的に、ある期間にわたる複数の調剤を必要とする。処置を、ADDLの存在について長期間にわたりアッセイすることにより、モニタリングすることができる。
【0062】
治療的用途において、本発明の抗体または抗体断片を含む医薬組成物または医薬を、ADDLの蓄積に関連するこのような疾患が疑われる、またはすでに当該疾患に罹患している患者に、この合併症および当該疾患の発生における中間的な病理学的表現型を含む当該疾患の症状(生化学的、組織学的および/または行動性)を治癒させるかまたは少なくとも部分的に停止させるのに十分な量で、投与する。予防的用途において、本発明の抗体または抗体断片を含む医薬組成物または医薬を、ADDLの蓄積に関連する疾患が疑われるか、または他の方法でこの危険にある患者に、当該患者における受動的な免疫性を達成するのに十分な量で投与し、これにより当該危険を解消するかもしくは減少させ、重篤度を低下させ、または当該疾患の生化学的、組織学的および/または行動性症状、この合併症および当該疾患の発生の間提示される中間的な病理学的表現型を含む疾患の発生を遅延させる。
【0063】
いくつかの方法において、剤の投与により、特徴的なアルツハイマー病の病理を未だ発生していない患者における筋認知性(myocognitive)機能障害が低下するかまたは解消する。特定の態様において、本発明の抗体または抗体断片の有効量は、処置の不存在におけるADDLの結合と比較して、ADDLの患者におけるニューロンへの結合の少なくとも15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または97%の減少を達成する量である。このように、長期間の増強/記憶形成の機能障害が、低減される。
【0064】
上記の状態の処置のための本発明の組成物の有効な用量は、投与の手段、患者の生理学的状態、患者がヒトであるか動物であるか、投与される他の薬物、および処置が予防的であるか治療的であるかを含む、多くの種々の要因に依存して変化する。通常、患者はヒトであるが、非ヒト哺乳類、例えばイヌまたはトランスジェニック哺乳類もまた、処置することができる。
【0065】
処置投与量は、一般的に、安全性および効能を最適化するように用量設定される。抗体または抗体断片での受動的免疫化のために、宿主体重の約0.0001〜100mg/kg、および一層通常には0.01〜5mg/kgの投与量範囲が、好適である。例えば、投与量を、1mg/体重1kgもしくは10mg/体重1kgまたは1〜10mg/kgの範囲内とすることができる。例示的な処置型は、2週間おきに1回または1ヶ月に1回または3〜6ヶ月おきに1回の投与を必要とする。いくつかの方法において、種々の結合特性を有する本発明の2種または3種以上の抗体を、同時に投与し、この場合において、投与される各々の抗体の投与量は、示した範囲内にある。抗体を、通常複数の機会において投与し、ここで単一の調剤間の間隔は、毎週、毎月または毎年とすることができる。間隔をまた、患者中のADDLに対する抗体の血中レベルを測定することにより示されるように、不規則とすることができる。いくつかの方法において、投与量を、1〜1000μg/mLおよびいくつかの方法においては25〜300μg/mLの血漿抗体濃度を達成するように、調整する。
【0066】
あるいはまた、抗体または抗体断片を、持続放出処方物として投与することができ、この場合において、比較的低い頻度の投与が必要である。投与量および頻度は、患者中の抗体の半減期に依存して変化する。一般的に、ヒトおよびヒト化された抗体は、キメラ抗体および非ヒト抗体よりも長い半減期を有する。前に示したように、投与量および投与の頻度を、処置が予防的であるか治療的であるかに依存して、変化させることができる。予防的適用において、比較的低い投与量を、比較的低い頻度の間隔で、長期間にわたり投与する。数人の患者は、当該患者の生命の残りの間、処置を受け続ける。治療的適用において、比較的短い間隔における比較的高い投与量が、時々疾患の進行が低減されるかまたは終了するまで、好ましくは患者が疾患の症状の部分的な、または完全な回復を示すまで、必要である。その後、患者に、予防的型を投与することができる。
【0067】
本発明の抗体および抗体断片を、医薬組成物または医薬の成分として投与することができる。医薬組成物または医薬は、一般的に、活性治療剤および種々の他の薬学的に許容し得る成分を含む。Remington: The Science and Practice of Pharmacy, Alfonso R. Gennaro編、第20版、Lippincott Williams & Wilkins: Philadelphia, PA, 2000を参照。好ましい形態は、投与の意図された方式および治療的適用に依存する。医薬組成物は、所望の処方に依存して、一般的に動物またはヒトへの投与のための医薬組成物を処方するために用いられるビヒクルとして定義される、薬学的に許容し得る無毒性担体または希釈剤を含むことができる。希釈剤を、組み合わせの生物学的活性に影響しないように、選択する。このような希釈剤の例は、蒸留水、生理学的リン酸緩衝食塩水、リンゲル液、デキストロース溶液およびハンクス液である。
【0068】
医薬組成物はまた、大きいゆっくりと代謝される巨大分子、例えばタンパク質、多糖類、例えばキトサン、ポリ乳酸類、ポリグリコール酸類およびコポリマー類(例えばラテックス官能化SEPHAROSE(登録商標)、アガロース、セルロースなど)、重合体アミノ酸、アミノ酸コポリマー、および脂質凝集体(例えば油小滴またはリポソーム)を含むことができる。
【0069】
本発明の医薬組成物または医薬の投与を、種々の経路により行うことができ、これには、経口、局所的、肺、直腸、皮下、皮内、鼻腔内、頭蓋内、筋肉内、眼内または関節内注射などが含まれるが、これらには限定されない。投与の最も典型的な経路は、静脈内、続いて皮下であるが、他の経路が、同等に有効であり得る。筋肉内注射をまた、腕または脚筋肉において行うことができる。いくつかの方法において、剤を、沈着物が蓄積している特定の組織中に直接注射し、これは例えば頭蓋内注射である。いくつかの態様において、抗体または抗体断片を、頭蓋中に直接注射する。他の態様において、抗体または抗体断片を、持続放出組成物またはデバイス、例えばMEDIPAD(登録商標)デバイスとして投与する。
【0070】
非経口投与について、本発明の抗体または抗体断片を、無菌の液体、例えば水、油、生理食塩水、グリセロールまたはエタノールであってもよい薬学的担体での生理学的に許容し得る希釈剤中の当該物質の溶液または懸濁液の注射可能な調剤として、投与することができる。さらに、補助物質、例えば湿潤剤または乳化剤、界面活性剤、pH緩衝物質などを、組成物中に存在させることができる。医薬組成物の他の成分は、石油、動物、植物または合成起源のもの、例えばピーナッツ油、大豆油および鉱油である。一般的に、グリコール類、例えばプロピレングリコールまたはポリエチレングリコールが、特に注射可能な溶液に適する液体担体である。抗体を、活性成分の持続された放出を可能にするように処方することができるデポー注射または移植製剤の形態で、投与することができる。例示的な組成物は、50mMのL−ヒスチジン、150mMのNaClから構成された水性緩衝液中に処方され、HClでpH6.0に調整された、5mg/mLにおける抗体を含む。
【0071】
典型的には、組成物を、液体溶液または懸濁液のいずれかとして、注射剤として調製する;液体ビヒクル中の溶液または懸濁液に適する固体形態をまた、注射前に調製することができる。製剤をまた、増強された送達のために、乳化させるか、またはリポソームもしくは微小粒子、例えばポリラクチド、ポリグリコリドもしくはコポリマー中にカプセル封入することができる。
【0072】
坐剤について、結合剤および担体には、例えば、ポリアルキレングリコール類またはトリグリセリド類が含まれる;このような坐剤を、活性成分を0.5%〜10%、または一層望ましくは1%〜2%の範囲内で含む混合物から、形成することができる。
【0073】
経口処方物は、賦形剤、例えば医薬階級のマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、ナトリウムサッカリン、セルロースおよび炭酸マグネシウムを含む。これらの組成物は、溶液、懸濁液、錠剤、ピル、カプセル、持続放出処方物または散剤の形態を採り、10%〜95%、または一層好適には25%〜70%の活性成分を含む。
【0074】
局所的な適用により、経皮的または皮内送達をもたらすことができる。局所的な投与を、当該剤をコレラ毒素または解毒した誘導体もしくはこのサブユニット、または他の同様の細菌性毒素と同時投与することにより、促進することができる(Glennら(1998)、Nature 391:851を参照)。同時投与を、当該成分を混合物として、または融合タンパク質として化学的架橋もしくは発現により得られた結合分子として用いることにより、達成することができる。
【0075】
あるいはまた、経皮的送達を、皮膚経路を用いて、またはトランスフェロソーム(transferosome)を用いて、達成することができる(Paulら(1995)、Eur. J. Immunol. 25:3521-24; Cevcら(1998)、Biochem. Biophys. Acta 1368:201-15)。
【0076】
本発明の抗体または抗体断片を、随意に、アミロイド形成的疾患の処置において少なくとも部分的に有効である他の剤と組み合わせて、投与することができる。
【0077】
本発明の抗体および抗体断片はまた、ADDLのニューロン(例えば海馬細胞)への結合を防止し、これによりADDLに帰する下流の事象を防止する治療剤の同定において、用途が見出されている。このようなアッセイを、当該剤の存在下でニューロンをADDLと接触させ、本発明の抗体または抗体断片を用いて、当該剤の存在下でのニューロンへのADDLの結合を決定することにより、行う。当業者により理解されるように、ADDLのニューロンへの結合を遮断する剤は、ニューロンに結合するADDLの量;本発明の抗体または抗体断片を用いるイムノアッセイにおいて検出可能な量を、当該剤と接触していないニューロンと比較して減少させる。ニューロン結合ADDLを検出するのに適するイムノアッセイを、本明細書中に開示する。
【0078】
本明細書中に示した方法を用いて選別することができる剤には、種々の化学的階級が包含されるが、典型的には、これらは有機分子、好ましくは100ダルトンより大きく、約2,500ダルトンより小さい分子量を有する小さい有機化合物である。剤は、タンパク質との構造的相互作用、特に水素結合に必要な官能基を含み、典型的に、少なくともアミン、カルボニル、ヒドロキシルまたはカルボキシル基、好ましくは官能化学基の少なくとも2つを含む。当該剤はしばしば、上記の官能基の1個または2個以上で置換された環式炭素または複素環式構造および/または芳香族または多環芳香族構造を含む。剤をまた、ペプチド類、抗体、サッカリド類、脂肪酸類、ステロイド類、プリン類、ピリミジン類、誘導体、構造的相同体またはこれらの組み合わせを含む生体分子の中に見出すことができる。剤を、天然または合成化合物のライブラリーを含む広範囲の供給源から得る。
【0079】
種々の他の試薬、例えば塩および中性タンパク質を、選別アッセイ中に包含させることができる。また、他の方法でアッセイの効率を改善する試薬、例えばプロテアーゼ阻害剤、ヌクレアーゼ阻害剤、抗菌剤などを、用いることができる。成分の混合物を、所要の結合をもたらすすべての順序で、加えることができる。
【0080】
本発明の選別アッセイにより同定される剤は、アミロイド形成的疾患および/またはタウオパチーの処置のために有益である。さらに、これらの概念を例示するために用いられる実験系は、タウリン酸化のアミロイドベータ誘発に関連する新規な薬剤標的を評価、同定および選別するための研究手段を表すことを、意図する。
【0081】
本発明はまた、本発明の抗体または抗体断片を用いて、ADDLを検出し、ADDLの蓄積と関連する疾患を診断する方法を提供する。ADDLの蓄積と関連する疾患は、ADDLの蓄積の結果、長期間の増強/記憶形成の生理学的機能障害がもたらされるすべての疾患を含むことを意図する。このタイプの疾患には、アルツハイマー病および同様の記憶関連障害が含まれるが、これらには限定されない。
【0082】
これらの方法に従って、患者からの試料を、本発明の抗体または抗体断片と接触させ、抗体または抗体断片の試料への結合は、試料中のADDLの存在を示す。本発明の文脈において用いる試料は、イムノアッセイを用いた分析の影響を受けやすいすべての体液または組織を意味することを意図する。本発明の方法により分析することができる好適な試料には、患者(例えば哺乳類、例えばヒト)からの脳の組織診試料および流体試料が含まれるが、これらには限定されない。インビトロ目的(例えばオリゴマー生成をモニタリングするアッセイ)のために、試料を、ニューロン細胞系または組織試料とすることができる。診断的目的のために、試料を、ADDLの蓄積と関連する疾患を有することが疑われる個体から、またはADDLの蓄積と関連する疾患を有する危険にある個体、例えば個体をADDLの蓄積と関連する疾患に罹患させる家族歴を有する個体からとすることができることを、意図する。
【0083】
試料における抗体または抗体断片のADDLへの結合の検出を、すべての標準的なイムノアッセイ(例えば本明細書中に開示した)を用いて行うことができ、または、あるいはまた、抗体断片が例えばペプチドアプタマーである場合には、結合を、例えばアプタマーに融合した検出可能なマーカータンパク質(例えばβ−カラクトシダーゼ、GFPもしくはルシフェラーゼ)により、直接検出することができる。その後、ADDL−抗体複合体の存在または不存在を、それぞれ試料中のADDLの存在または不存在および従ってそれぞれADDLの蓄積と関連する疾患の存在または不存在と相関させる。本発明の1種または2種以上の抗体または抗体断片を、現行の非侵襲性の免疫に基づくイメージング手法と組み合わせて用いて、ADDLの蓄積と関連する疾患の検出および早期の診断を大幅に増強することができることを、意図する。
【0084】
診断を促進するために、本発明はまた、本発明の抗体または抗体断片を含むためのキットに関する。キットは、ADDLの多次元立体構造を認識する1種または2種以上の抗体または抗体断片を保持する容器並びに、ADDLに結合して抗体−抗原複合体を生成する目的のために抗体を用い、抗体−抗原複合体の生成を検出し、抗体−抗原複合体の存在または不存在を試料中のADDLの存在または不存在と相関させるようにするための説明書を含む。容器の例には、複数の試料中のADDLの同時の検出を可能にするマルチウェル(multiwell)プレートが含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】アルカリホスファターゼアッセイからの結果を示す図であり、ここで、抗ADDL抗体は、ニューロンを区別して遮断する。
【図2】B103細胞を抗ADDL抗体と共にプレインキュベートした際の、bADDL結合の概要を示す図である。
【図3】ADDLの多次元立体構造を区別して認識することができる抗体の結合特性の概要を示す図である。
【図4】本明細書中に開示した抗体のADDL構築阻害の概要を示す図である。
【図5】N2A結合:κADDL相関プロットを示す図である。
【0086】
【図6A】マウス抗ADDL抗体20C2についての重鎖可変部についての核酸配列を示す図である。小文字は、抗体リーダー配列を示し、大文字は、抗体可変部配列を示す。相補性決定領域(CDR)をコードするヌクレオチドに、下線を付す。
【図6B】マウス抗ADDL抗体20C2についての軽鎖可変部についての核酸配列を示す図である。小文字は、抗体リーダー配列を示し、大文字は、抗体可変部配列を示す。相補性決定領域(CDR)をコードするヌクレオチドに、下線を付す。
【図6C】マウス抗ADDL抗体5F10についての重鎖可変部についての核酸配列を示す図である。小文字は、抗体リーダー配列を示し、大文字は、抗体可変部配列を示す。相補性決定領域(CDR)をコードするヌクレオチドに、下線を付す。
【0087】
【図6D】マウス抗ADDL抗体5F10についての軽鎖可変部についての核酸配列を示す図である。小文字は、抗体リーダー配列を示し、大文字は、抗体可変部配列を示す。相補性決定領域(CDR)をコードするヌクレオチドに、下線を付す。
【図6E】マウス抗ADDL抗体2D6についての重鎖可変部についての核酸配列を示す図である。小文字は、抗体リーダー配列を示し、大文字は、抗体可変部配列を示す。相補性決定領域(CDR)をコードするヌクレオチドに、下線を付す。
【図6F】マウス抗ADDL抗体2D6についての軽鎖可変部についての核酸配列を示す図である。小文字は、抗体リーダー配列を示し、大文字は、抗体可変部配列を示す。相補性決定領域(CDR)をコードするヌクレオチドに、下線を付す。
【0088】
【図6G】マウス抗ADDL抗体2B4についての重鎖可変部についての核酸配列を示す図である。小文字は、抗体リーダー配列を示し、大文字は、抗体可変部配列を示す。相補性決定領域(CDR)をコードするヌクレオチドに、下線を付す。
【図6H】マウス抗ADDL抗体2B4についての軽鎖可変部についての核酸配列を示す図である。小文字は、抗体リーダー配列を示し、大文字は、抗体可変部配列を示す。相補性決定領域(CDR)をコードするヌクレオチドに、下線を付す。
【図6I】マウス抗ADDL抗体4E2についての重鎖可変部についての核酸配列を示す図である。小文字は、抗体リーダー配列を示し、大文字は、抗体可変部配列を示す。相補性決定領域(CDR)をコードするヌクレオチドに、下線を付す。
【0089】
【図6J】マウス抗ADDL抗体4E2についての軽鎖可変部についての核酸配列を示す図である。小文字は、抗体リーダー配列を示し、大文字は、抗体可変部配列を示す。相補性決定領域(CDR)をコードするヌクレオチドに、下線を付す。
【図6K】マウス抗ADDL抗体2H4についての重鎖可変部についての核酸配列を示す図である。小文字は、抗体リーダー配列を示し、大文字は、抗体可変部配列を示す。相補性決定領域(CDR)をコードするヌクレオチドに、下線を付す。
【図6L】マウス抗ADDL抗体2H4についての軽鎖可変部についての核酸配列を示す図である。小文字は、抗体リーダー配列を示し、大文字は、抗体可変部配列を示す。相補性決定領域(CDR)をコードするヌクレオチドに、下線を付す。
【0090】
【図6M】マウス抗ADDL抗体2A10についての重鎖可変部についての核酸配列を示す図である。小文字は、抗体リーダー配列を示し、大文字は、抗体可変部配列を示す。相補性決定領域(CDR)をコードするヌクレオチドに、下線を付す。
【図6N】マウス抗ADDL抗体2A10についての軽鎖可変部についての核酸配列を示す図である。小文字は、抗体リーダー配列を示し、大文字は、抗体可変部配列を示す。相補性決定領域(CDR)をコードするヌクレオチドに、下線を付す。
【図6O】マウス抗ADDL抗体3B3についての重鎖可変部についての核酸配列を示す図である。小文字は、抗体リーダー配列を示し、大文字は、抗体可変部配列を示す。相補性決定領域(CDR)をコードするヌクレオチドに、下線を付す。
【0091】
【図6P】マウス抗ADDL抗体3B3についての軽鎖可変部についての核酸配列を示す図である。小文字は、抗体リーダー配列を示し、大文字は、抗体可変部配列を示す。相補性決定領域(CDR)をコードするヌクレオチドに、下線を付す。
【図6Q】マウス抗ADDL抗体1F6についての重鎖可変部についての核酸配列を示す図である。小文字は、抗体リーダー配列を示し、大文字は、抗体可変部配列を示す。相補性決定領域(CDR)をコードするヌクレオチドに、下線を付す。
【図6R】マウス抗ADDL抗体1F6についての軽鎖可変部についての核酸配列を示す図である。小文字は、抗体リーダー配列を示し、大文字は、抗体可変部配列を示す。相補性決定領域(CDR)をコードするヌクレオチドに、下線を付す。
【0092】
【図6S】マウス抗ADDL抗体1F4についての重鎖可変部についての核酸配列を示す図である。小文字は、抗体リーダー配列を示し、大文字は、抗体可変部配列を示す。相補性決定領域(CDR)をコードするヌクレオチドに、下線を付す。
【図6T】マウス抗ADDL抗体1F4についての軽鎖可変部についての核酸配列を示す図である。小文字は、抗体リーダー配列を示し、大文字は、抗体可変部配列を示す。相補性決定領域(CDR)をコードするヌクレオチドに、下線を付す。
【図6U】マウス抗ADDL抗体2E12についての重鎖可変部についての核酸配列を示す図である。小文字は、抗体リーダー配列を示し、大文字は、抗体可変部配列を示す。相補性決定領域(CDR)をコードするヌクレオチドに、下線を付す。
【0093】
【図6V】マウス抗ADDL抗体2E12についての軽鎖可変部についての核酸配列を示す図である。小文字は、抗体リーダー配列を示し、大文字は、抗体可変部配列を示す。相補性決定領域(CDR)をコードするヌクレオチドに、下線を付す。
【図6W】マウス抗ADDL抗体4C2についての重鎖可変部についての核酸配列を示す図である。小文字は、抗体リーダー配列を示し、大文字は、抗体可変部配列を示す。相補性決定領域(CDR)をコードするヌクレオチドに、下線を付す。
【図6X】マウス抗ADDL抗体4C2についての軽鎖可変部についての核酸配列を示す図である。小文字は、抗体リーダー配列を示し、大文字は、抗体可変部配列を示す。相補性決定領域(CDR)をコードするヌクレオチドに、下線を付す。
【0094】
【図7A】マウス抗ADDL抗体についての重鎖可変部についてのCDR1配列の比較を示す図である。
【図7B】マウス抗ADDL抗体についての重鎖可変部についてのCDR2配列の比較を示す図である。
【図7C】マウス抗ADDL抗体についての重鎖可変部についてのCDR3配列の比較を示す図である。
【図7D】マウス抗ADDL抗体についての軽鎖可変部についてのCDR1配列の比較を示す図である。
【図7E】マウス抗ADDL抗体についての軽鎖可変部についてのCDR2配列の比較を示す図である。
【図7F】マウス抗ADDL抗体についての軽鎖可変部についてのCDR3配列の比較を示す図である。
【0095】
【図8A】CDR移植により作成された、ヒト化抗ADDL抗体20C2についての重鎖可変部についてのアミノ酸配列を示す図である。配列を、マウス配列、NCBIタンパク質データベースから得られた最も相同的なヒト配列、最も相同的なヒトゲノム配列およびヒト化された配列の間の比較として示す。ヒト化された配列とは異なるマウス、ヒトおよびヒトゲノム配列におけるアミノ酸を、太字とする。CDRに下線を付す。CDRループ立体構造の維持に重要な残基を、*で示す。VL/VH界面において見出される保存された残基を、#で示す。可能性のあるグリコシル化部位を、イタリックにより示す。20C2重鎖について、位置24において1つのアミノ酸により異なる2種のヒト化された配列が発生した(HCVRAおよびHCVRB)。20C2HCVRAにおいて、ヒトアミノ酸を用い、20C2HCVRBにおいて、マウスアミノ酸を用いた。
【0096】
【図8B】CDR移植により作成された、ヒト化抗ADDL抗体20C2についての軽鎖可変部についてのアミノ酸配列を示す図である。配列を、マウス配列、NCBIタンパク質データベースから得られた最も相同的なヒト配列、最も相同的なヒトゲノム配列およびヒト化された配列の間の比較として示す。ヒト化された配列とは異なるマウス、ヒトおよびヒトゲノム配列におけるアミノ酸を、太字とする。CDRに下線を付す。CDRループ立体構造の維持に重要な残基を、*で示す。VL/VH界面において見出される保存された残基を、#で示す。可能性のあるグリコシル化部位を、イタリックにより示す。
【0097】
【図8C】CDR移植により作成された、ヒト化抗ADDL抗体26D6についての重鎖可変部についてのアミノ酸配列を示す図である。配列を、マウス配列、NCBIタンパク質データベースから得られた最も相同的なヒト配列、最も相同的なヒトゲノム配列およびヒト化された配列の間の比較として示す。ヒト化された配列とは異なるマウス、ヒトおよびヒトゲノム配列におけるアミノ酸を、太字とする。CDRに下線を付す。CDRループ立体構造の維持に重要な残基を、*で示す。VL/VH界面において見出される保存された残基を、#で示す。可能性のあるグリコシル化部位を、イタリックにより示す。
【0098】
【図8D】CDR移植により作成された、ヒト化抗ADDL抗体26D6についての軽鎖可変部についてのアミノ酸配列を示す図である。配列を、マウス配列、NCBIタンパク質データベースから得られた最も相同的なヒト配列、最も相同的なヒトゲノム配列およびヒト化された配列の間の比較として示す。ヒト化された配列とは異なるマウス、ヒトおよびヒトゲノム配列におけるアミノ酸を、太字とする。CDRに下線を付す。CDRループ立体構造の維持に重要な残基を、*で示す。VL/VH界面において見出される保存された残基を、#で示す。可能性のあるグリコシル化部位を、イタリックにより示す。
【0099】
【図8E】CDR移植により作成された、ヒト化抗ADDL抗体4E2についての重鎖可変部についてのアミノ酸配列を示す図である。配列を、マウス配列、NCBIタンパク質データベースから得られた最も相同的なヒト配列、最も相同的なヒトゲノム配列およびヒト化された配列の間の比較として示す。ヒト化された配列とは異なるマウス、ヒトおよびヒトゲノム配列におけるアミノ酸を、太字とする。CDRに下線を付す。CDRループ立体構造の維持に重要な残基を、*で示す。VL/VH界面において見出される保存された残基を、#で示す。可能性のあるグリコシル化部位を、イタリックにより示す。
【0100】
【図8F】CDR移植により作成された、ヒト化抗ADDL抗体4E2についての軽鎖可変部についてのアミノ酸配列を示す図である。配列を、マウス配列、NCBIタンパク質データベースから得られた最も相同的なヒト配列、最も相同的なヒトゲノム配列およびヒト化された配列の間の比較として示す。ヒト化された配列とは異なるマウス、ヒトおよびヒトゲノム配列におけるアミノ酸を、太字とする。CDRに下線を付す。CDRループ立体構造の維持に重要な残基を、*で示す。VL/VH界面において見出される保存された残基を、#で示す。可能性のあるグリコシル化部位を、イタリックにより示す。
【0101】
【図8G】CDR移植により作成された、ヒト化抗ADDL抗体3B3についての重鎖可変部についてのアミノ酸配列を示す図である。配列を、マウス配列、NCBIタンパク質データベースから得られた最も相同的なヒト配列、最も相同的なヒトゲノム配列およびヒト化された配列の間の比較として示す。ヒト化された配列とは異なるマウス、ヒトおよびヒトゲノム配列におけるアミノ酸を、太字とする。CDRに下線を付す。CDRループ立体構造の維持に重要な残基を、*で示す。VL/VH界面において見出される保存された残基を、#で示す。可能性のあるグリコシル化部位を、イタリックにより示す。
【0102】
【図8H】CDR移植により作成された、ヒト化抗ADDL抗体3B3についての軽鎖可変部についてのアミノ酸配列を示す図である。配列を、マウス配列、NCBIタンパク質データベースから得られた最も相同的なヒト配列、最も相同的なヒトゲノム配列およびヒト化された配列の間の比較として示す。ヒト化された配列とは異なるマウス、ヒトおよびヒトゲノム配列におけるアミノ酸を、太字とする。CDRに下線を付す。CDRループ立体構造の維持に重要な残基を、*で示す。VL/VH界面において見出される保存された残基を、#で示す。可能性のあるグリコシル化部位を、イタリックにより示す。
【0103】
【図8I】CDR移植により作成された、ヒト化抗ADDL抗体2H4についての重鎖可変部についてのアミノ酸配列を示す図である。配列を、マウス配列、NCBIタンパク質データベースから得られた最も相同的なヒト配列、最も相同的なヒトゲノム配列およびヒト化された配列の間の比較として示す。ヒト化された配列とは異なるマウス、ヒトおよびヒトゲノム配列におけるアミノ酸を、太字とする。CDRに下線を付す。CDRループ立体構造の維持に重要な残基を、*で示す。VL/VH界面において見出される保存された残基を、#で示す。可能性のあるグリコシル化部位を、イタリックにより示す。
【0104】
【図8J】CDR移植により作成された、ヒト化抗ADDL抗体2H4についての軽鎖可変部についてのアミノ酸配列を示す図である。配列を、マウス配列、NCBIタンパク質データベースから得られた最も相同的なヒト配列、最も相同的なヒトゲノム配列およびヒト化された配列の間の比較として示す。ヒト化された配列とは異なるマウス、ヒトおよびヒトゲノム配列におけるアミノ酸を、太字とする。CDRに下線を付す。CDRループ立体構造の維持に重要な残基を、*で示す。VL/VH界面において見出される保存された残基を、#で示す。可能性のあるグリコシル化部位を、イタリックにより示す。
【0105】
【図8K】CDR移植により作成された、ヒト化抗ADDL抗体1F6についての重鎖可変部についてのアミノ酸配列を示す図である。配列を、マウス配列、NCBIタンパク質データベースから得られた最も相同的なヒト配列、最も相同的なヒトゲノム配列およびヒト化された配列の間の比較として示す。ヒト化された配列とは異なるマウス、ヒトおよびヒトゲノム配列におけるアミノ酸を、太字とする。CDRに下線を付す。CDRループ立体構造の維持に重要な残基を、*で示す。VL/VH界面において見出される保存された残基を、#で示す。可能性のあるグリコシル化部位を、イタリックにより示す。1F6について、軽鎖を設計しなかった。その理由は、これは、4E2についての軽鎖の配列と同一の配列を有するからである。
【0106】
【図9A】化粧張りにより作成された、ヒト化抗ADDL抗体20C2についての重鎖可変部についてのアミノ酸配列を示す図である。配列を、マウス配列、NCBIタンパク質データベースから得られた最も相同的なヒト配列、最も相同的なヒトゲノム配列およびヒト化された配列の間の比較として示す。ヒト化された配列とは異なるマウス、ヒトおよびヒトゲノム配列におけるアミノ酸を、太字とする。CDRに下線を付す。CDRループ立体構造の維持に重要な残基を、アスタリスクで示す。VL/VH界面において見出される保存された残基を、ポンド記号で示す。可能性のあるグリコシル化部位を、イタリックにより示す。20C2重鎖について、位置81において1つのアミノ酸により異なる2種のヒト化された配列が発生した(HCVRVenAおよびHCVRVenB)。20C2HCVRVenAにおいて、マウスアミノ酸を用い、20C2HCVRVenBにおいて、ヒトアミノ酸を用いた。
【0107】
【図9B】化粧張りにより作成された、ヒト化抗ADDL抗体20C2についての軽鎖可変部についてのアミノ酸配列を示す図である。配列を、マウス配列、NCBIタンパク質データベースから得られた最も相同的なヒト配列、最も相同的なヒトゲノム配列およびヒト化された配列の間の比較として示す。ヒト化された配列とは異なるマウス、ヒトおよびヒトゲノム配列におけるアミノ酸を、太字とする。CDRに下線を付す。CDRループ立体構造の維持に重要な残基を、アスタリスクで示す。VL/VH界面において見出される保存された残基を、ポンド記号で示す。可能性のあるグリコシル化部位を、イタリックにより示す。
【0108】
【図9C】化粧張りにより作成された、ヒト化抗ADDL抗体26D6についての重鎖可変部についてのアミノ酸配列を示す図である。配列を、マウス配列、NCBIタンパク質データベースから得られた最も相同的なヒト配列、最も相同的なヒトゲノム配列およびヒト化された配列の間の比較として示す。ヒト化された配列とは異なるマウス、ヒトおよびヒトゲノム配列におけるアミノ酸を、太字とする。CDRに下線を付す。CDRループ立体構造の維持に重要な残基を、アスタリスクで示す。VL/VH界面において見出される保存された残基を、ポンド記号で示す。可能性のあるグリコシル化部位を、イタリックにより示す。26D6重鎖について、アミノ酸11、23、15、81、89および118において異なる3種のヒト化された配列を、化粧張りに基づいて設計した(HCVR Ven1、Ven2およびVen3)。HCVR Ven1において、マウスアミノ酸を、すべての位置において用いた。Ven2において、マウスアミノ酸を、残基81および118について用い、ヒトアミノ酸を、残基11、13、15および89について用いた。Ven3において、ヒトアミノ酸を、すべての位置において用いた。
【0109】
【図9D】化粧張りにより作成された、ヒト化抗ADDL抗体26D6についての軽鎖可変部についてのアミノ酸配列を示す図である。配列を、マウス配列、NCBIタンパク質データベースから得られた最も相同的なヒト配列、最も相同的なヒトゲノム配列およびヒト化された配列の間の比較として示す。ヒト化された配列とは異なるマウス、ヒトおよびヒトゲノム配列におけるアミノ酸を、太字とする。CDRに下線を付す。CDRループ立体構造の維持に重要な残基を、アスタリスクで示す。VL/VH界面において見出される保存された残基を、ポンド記号で示す。可能性のあるグリコシル化部位を、イタリックにより示す。26D6軽鎖について、アミノ酸88および105において異なる2種の化粧張りしたヒト化された配列を、設計した(LCVR Ven1およびVen2)。LCVR Ven1において、マウスアミノ酸を、両方の位置において用い、Ven2において、ヒトアミノ酸を用いた。
【0110】
【図10A】ヒト化された抗ADDL抗体についての重鎖可変部(HCVR)についての核酸配列を示す図である。20C2についてのCDR移植HCVRを示す。大文字は、抗体可変部配列を示す。CDRに下線を付す。可変部配列を、完全な重鎖および軽鎖抗体発現ベクター中にクローン化した。
【図10B】ヒト化された抗ADDL抗体についての重鎖可変部(HCVR)についての核酸配列を示す図である。20C2についてのCDR移植HCVRを示す。大文字は、抗体可変部配列を示す。CDRに下線を付す。可変部配列を、完全な重鎖および軽鎖抗体発現ベクター中にクローン化した。
【図10C】ヒト化された抗ADDL抗体についての軽鎖可変部(LCVR)についての核酸配列を示す図である。20C2についてのCDR移植LCVRを示す。大文字は、抗体可変部配列を示す。CDRに下線を付す。可変部配列を、完全な重鎖および軽鎖抗体発現ベクター中にクローン化した。
【0111】
【図10C−2】ヒト化された抗ADDL抗体についての重鎖可変部(HCVR)についての核酸配列を示す図である。26D6についてのCDR移植HCVRを示す。大文字は、抗体可変部配列を示す。CDRに下線を付す。可変部配列を、完全な重鎖および軽鎖抗体発現ベクター中にクローン化した。
【図10D】ヒト化された抗ADDL抗体についての軽鎖可変部(LCVR)についての核酸配列を示す図である。26D6についてのCDR移植LCVRを示す。大文字は、抗体可変部配列を示す。CDRに下線を付す。可変部配列を、完全な重鎖および軽鎖抗体発現ベクター中にクローン化した。
【図10E】ヒト化された抗ADDL抗体についての重鎖可変部(HCVR)についての核酸配列を示す図である。4E2についてのCDR移植HCVRを示す。大文字は、抗体可変部配列を示す。CDRに下線を付す。可変部配列を、完全な重鎖および軽鎖抗体発現ベクター中にクローン化した。
【0112】
【図10F】ヒト化された抗ADDL抗体についての軽鎖可変部(LCVR)についての核酸配列を示す図である。4E2についてのCDR移植LCVRを示す。大文字は、抗体可変部配列を示す。CDRに下線を付す。可変部配列を、完全な重鎖および軽鎖抗体発現ベクター中にクローン化した。
【図10G】ヒト化された抗ADDL抗体についての重鎖可変部(HCVR)についての核酸配列を示す図である。3B3についてのCDR移植HCVRを示す。大文字は、抗体可変部配列を示す。CDRに下線を付す。可変部配列を、完全な重鎖および軽鎖抗体発現ベクター中にクローン化した。
【図10H】ヒト化された抗ADDL抗体についての軽鎖可変部(LCVR)についての核酸配列を示す図である。3B3についてのCDR移植LCVRを示す。大文字は、抗体可変部配列を示す。CDRに下線を付す。可変部配列を、完全な重鎖および軽鎖抗体発現ベクター中にクローン化した。
【0113】
【図10I】ヒト化された抗ADDL抗体についての重鎖可変部(HCVR)についての核酸配列を示す図である。2H4についてのCDR移植HCVRを示す。大文字は、抗体可変部配列を示す。CDRに下線を付す。可変部配列を、完全な重鎖および軽鎖抗体発現ベクター中にクローン化した。
【図10J】ヒト化された抗ADDL抗体についての軽鎖可変部(LCVR)についての核酸配列を示す図である。2H4についてのCDR移植LCVRを示す。大文字は、抗体可変部配列を示す。CDRに下線を付す。可変部配列を、完全な重鎖および軽鎖抗体発現ベクター中にクローン化した。
【図10K】ヒト化された抗ADDL抗体についての重鎖可変部(HCVR)についての核酸配列を示す図である。1F6についてのCDR移植HCVRを示す。大文字は、抗体可変部配列を示す。CDRに下線を付す。可変部配列を、完全な重鎖および軽鎖抗体発現ベクター中にクローン化した。
【0114】
【図10L】ヒト化された抗ADDL抗体についての重鎖可変部(HCVR)についての核酸配列を示す図である。20C2についての化粧張りしたHCVR(VenA)を示す。大文字は、抗体可変部配列を示す。CDRに下線を付す。可変部配列を、完全な重鎖および軽鎖抗体発現ベクター中にクローン化した。
【図10M】ヒト化された抗ADDL抗体についての重鎖可変部(HCVR)についての核酸配列を示す図である。20C2についての化粧張りしたHCVR(VenB)を示す。大文字は、抗体可変部配列を示す。CDRに下線を付す。可変部配列を、完全な重鎖および軽鎖抗体発現ベクター中にクローン化した。
【図10N】ヒト化された抗ADDL抗体についての軽鎖可変部(LCVR)についての核酸配列を示す図である。20C2についての化粧張りしたLCVRを示す。大文字は、抗体可変部配列を示す。CDRに下線を付す。可変部配列を、完全な重鎖および軽鎖抗体発現ベクター中にクローン化した。
【0115】
【図10O】ヒト化された抗ADDL抗体についての重鎖可変部(HCVR)についての核酸配列を示す図である。26D6についての化粧張りしたHCVR(Ven1)を示す。大文字は、抗体可変部配列を示す。CDRに下線を付す。可変部配列を、完全な重鎖および軽鎖抗体発現ベクター中にクローン化した。
【図10P】ヒト化された抗ADDL抗体についての重鎖可変部(HCVR)についての核酸配列を示す図である。26D6についての化粧張りしたHCVR(Ven2)を示す。大文字は、抗体可変部配列を示す。CDRに下線を付す。可変部配列を、完全な重鎖および軽鎖抗体発現ベクター中にクローン化した。
【図10Q】ヒト化された抗ADDL抗体についての重鎖可変部(HCVR)についての核酸配列を示す図である。26D6についての化粧張りしたHCVR(Ven3)を示す。大文字は、抗体可変部配列を示す。CDRに下線を付す。可変部配列を、完全な重鎖および軽鎖抗体発現ベクター中にクローン化した。
【0116】
【図10R】ヒト化された抗ADDL抗体についての軽鎖可変部(LCVR)についての核酸配列を示す図である。26D6についての化粧張りしたLCVR(Ven1)を示す。大文字は、抗体可変部配列を示す。CDRに下線を付す。可変部配列を、完全な重鎖および軽鎖抗体発現ベクター中にクローン化した。
【図10S】ヒト化された抗ADDL抗体についての軽鎖可変部(LCVR)についての核酸配列を示す図である。26D6についての化粧張りしたLCVR(Ven2)を示す。大文字は、抗体可変部配列を示す。CDRに下線を付す。可変部配列を、完全な重鎖および軽鎖抗体発現ベクター中にクローン化した。
【0117】
【図11A】抗ADDL抗体CDR移植20C2HCVRAIgG1についての完全なIgG1ヒト化重鎖についてのアミノ酸配列を示す図である。下線は、可変部配列を示し、CDRに相当するアミノ酸に、二重下線を付す。残りのアミノ酸配列は、定常部配列である。
【図11B】抗ADDL抗体CDR移植20C2 HCVRB IgG1についての完全なIgG1ヒト化重鎖についてのアミノ酸配列を示す図である。下線は、可変部配列を示し、CDRに相当するアミノ酸に、二重下線を付す。残りのアミノ酸配列は、定常部配列である。
【図11C】抗ADDL抗体CDR移植20C2 HCVRA IgG2m4についての完全なIgG2m4ヒト化重鎖についてのアミノ酸配列を示す図である。下線は、可変部配列を示し、CDRに相当するアミノ酸に、二重下線を付す。残りのアミノ酸配列は、定常部配列である。
【図11D】抗ADDL抗体CDR移植20C2 HCVRB IgG2m4についての完全なIgG2m4ヒト化重鎖についてのアミノ酸配列を示す図である。下線は、可変部配列を示し、CDRに相当するアミノ酸に、二重下線を付す。残りのアミノ酸配列は、定常部配列である。
【0118】
【図11E】抗ADDL抗体CDR移植20C2 LCVR カッパについての完全なヒト化カッパ軽鎖についてのアミノ酸配列を示す図である。下線は、可変部配列を示し、CDRに相当するアミノ酸に、二重下線を付す。残りのアミノ酸配列は、定常部配列である。
【図11F】抗ADDL抗体CDR移植26D6 HCVR IgG1についての完全なIgG1ヒト化重鎖についてのアミノ酸配列を示す図である。下線は、可変部配列を示し、CDRに相当するアミノ酸に、二重下線を付す。残りのアミノ酸配列は、定常部配列である。
【図11G】抗ADDL抗体CDR移植26D6 HCVR IgG2m4についての完全なIgG2m4ヒト化重鎖についてのアミノ酸配列を示す図である。下線は、可変部配列を示し、CDRに相当するアミノ酸に、二重下線を付す。残りのアミノ酸配列は、定常部配列である。
【0119】
【図11H】抗ADDL抗体CDR移植26D6 LCVR カッパについての完全なヒト化カッパ軽鎖についてのアミノ酸配列を示す図である。下線は、可変部配列を示し、CDRに相当するアミノ酸に、二重下線を付す。残りのアミノ酸配列は、定常部配列である。
【図11I】抗ADDL抗体CDR移植4E2 HCVR IgG1についての完全なIgG1ヒト化重鎖についてのアミノ酸配列を示す図である。下線は、可変部配列を示し、CDRに相当するアミノ酸に、二重下線を付す。残りのアミノ酸配列は、定常部配列である。
【図11J】抗ADDL抗体CDR移植4E2 LCVR カッパについての完全なヒト化カッパ軽鎖についてのアミノ酸配列を示す図である。下線は、可変部配列を示し、CDRに相当するアミノ酸に、二重下線を付す。残りのアミノ酸配列は、定常部配列である。
【0120】
【図11K】抗ADDL抗体CDR移植3B3 HCVR IgG1についての完全なIgG1ヒト化重鎖についてのアミノ酸配列を示す図である。下線は、可変部配列を示し、CDRに相当するアミノ酸に、二重下線を付す。残りのアミノ酸配列は、定常部配列である。
【図11L】抗ADDL抗体CDR移植3B3 LCVR カッパについての完全なヒト化カッパ軽鎖についてのアミノ酸配列を示す図である。下線は、可変部配列を示し、CDRに相当するアミノ酸に、二重下線を付す。残りのアミノ酸配列は、定常部配列である。
【図11M】抗ADDL抗体CDR移植2H4 HCVR IgG1についての完全なIgG1ヒト化重鎖についてのアミノ酸配列を示す図である。下線は、可変部配列を示し、CDRに相当するアミノ酸に、二重下線を付す。残りのアミノ酸配列は、定常部配列である。
【0121】
【図11N】抗ADDL抗体CDR移植2H4 LCVR カッパについての完全なヒト化カッパ軽鎖についてのアミノ酸配列を示す図である。下線は、可変部配列を示し、CDRに相当するアミノ酸に、二重下線を付す。残りのアミノ酸配列は、定常部配列である。
【図11O】抗ADDL抗体CDR移植1F6 HCVR IgG1についての完全なIgG1ヒト化重鎖についてのアミノ酸配列を示す図である。下線は、可変部配列を示し、CDRに相当するアミノ酸に、二重下線を付す。残りのアミノ酸配列は、定常部配列である。
【図11P】抗ADDL抗体化粧張り20C2 HCVR VenA IgG1についての完全なIgG1ヒト化重鎖についてのアミノ酸配列を示す図である。下線は、可変部配列を示し、CDRに相当するアミノ酸に、二重下線を付す。残りのアミノ酸配列は、定常部配列である。
【0122】
【図11Q】抗ADDL抗体化粧張り20C2 HCVR VenB IgG1についての完全なIgG1ヒト化重鎖についてのアミノ酸配列を示す図である。下線は、可変部配列を示し、CDRに相当するアミノ酸に、二重下線を付す。残りのアミノ酸配列は、定常部配列である。
【図11R】抗ADDL抗体化粧張り20C2 HCVR VenA IgG2m4についての完全なIgG2m4ヒト化重鎖についてのアミノ酸配列を示す図である。下線は、可変部配列を示し、CDRに相当するアミノ酸に、二重下線を付す。残りのアミノ酸配列は、定常部配列である。
【図11S】抗ADDL抗体化粧張り20C2 HCVR VenB IgG2m4についての完全なIgG2m4ヒト化重鎖についてのアミノ酸配列を示す図である。下線は、可変部配列を示し、CDRに相当するアミノ酸に、二重下線を付す。残りのアミノ酸配列は、定常部配列である。
【0123】
【図11T】抗ADDL抗体化粧張り20C2 LCVR カッパについての完全なヒト化カッパ軽鎖についてのアミノ酸配列を示す図である。下線は、可変部配列を示し、CDRに相当するアミノ酸に、二重下線を付す。残りのアミノ酸配列は、定常部配列である。
【図11U】抗ADDL抗体化粧張り26D6 HCVR Ven1 IgG1についての完全なIgG1ヒト化重鎖についてのアミノ酸配列を示す図である。下線は、可変部配列を示し、CDRに相当するアミノ酸に、二重下線を付す。残りのアミノ酸配列は、定常部配列である。
【図11V】抗ADDL抗体化粧張り26D6 HCVR Ven2 IgG1についての完全なIgG1ヒト化重鎖についてのアミノ酸配列を示す図である。下線は、可変部配列を示し、CDRに相当するアミノ酸に、二重下線を付す。残りのアミノ酸配列は、定常部配列である。
【0124】
【図11W】抗ADDL抗体化粧張り26D6 HCVR Ven3についての完全なIgG1ヒト化重鎖についてのアミノ酸配列を示す図である。下線は、可変部配列を示し、CDRに相当するアミノ酸に、二重下線を付す。残りのアミノ酸配列は、定常部配列である。
【図11X】抗ADDL抗体化粧張り26D6 LCVR Ven1 カッパについての完全なヒト化カッパ軽鎖についてのアミノ酸配列を示す図である。下線は、可変部配列を示し、CDRに相当するアミノ酸に、二重下線を付す。残りのアミノ酸配列は、定常部配列である。
【図11Y】抗ADDL抗体化粧張り26D6 LCVR Ven2 カッパについての完全なヒト化カッパ軽鎖についてのアミノ酸配列を示す図である。下線は、可変部配列を示し、CDRに相当するアミノ酸に、二重下線を付す。残りのアミノ酸配列は、定常部配列である。
【0125】
【図12】ヒト抗体定常部のアミノ酸配列とIgG2m4の配列との比較を示す図である。アスタリスクは、Asn297におけるグリコシル化部位を示す。FcRn結合の領域を示す。IgG2m4がIgG2と異なる配列に、下線を付す。
【0126】
【図13A】FabファージディスプレイベクターpFab3dにおける20C2ヒト化抗体の重鎖についての注釈付きのアミノ酸配列を示す図である。
【図13B】FabファージディスプレイベクターpFab3dにおける20C2ヒト化抗体の軽鎖についての注釈付きのアミノ酸配列を示す図である。
【0127】
【図14】親和性成熟20C2軽鎖CDR3を発生させるための、2種のLC−CDR3ライブラリー、即ちLC3−1およびLC3−2を作成するにあたり用いられる設計およびプライマーを示す図である。クローニングのために用いられる制限エンドヌクレアーゼ認識部位を、イタリックで示す。大文字は、抗体可変部配列をコードする核酸を示す。CDRをコードする核酸に、下線を付す。
【0128】
本発明を、以下の非限定的例により、一層詳細に記載する。
【0129】
例1:一般的な材料および方法
ADDL調製。F12培地(Biosource, Camarillo, CA)中のADDLを、確立された方法(Lambertら(2001)、上記)により、Aβ1−42から調製した。要するに、Aβ1−42ペプチド(American Peptide Co., Sunnyvale, CAまたはCalifornia Peptide Research, Inc., Napa, CA)を、秤量し、HFIP(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール)の十分な量を保持することができるガラスバイアル中に配置して、10mg/mLのペプチド濃度を達成した。HFIPを、乾燥ペプチドに加え、バイアルを覆い、温和に回転させて混合し、ペプチド/HFIP溶液を、室温で少なくとも1時間貯蔵した。ペプチド溶液のアリコート(それぞれ50または100μL、0.5または1.0mg)を、一連の1.5mLの円錐形遠心管中に分配した。この管を、スピードバック(speedvac)中に一晩配置して、HFIPを除去した。乾燥ペプチドフィルムを含む管を覆い、乾燥剤を有する密閉した容器中で−70℃で貯蔵した。
【0130】
使用前に、Aβ1−42ペプチドフィルムを、−70℃貯蔵から取り出し、室温まで放置して加温した。新鮮なDMSO(44μL/mgのペプチドフィルム;5mM)を加え、ペプチド/DMSO混合物を、ボルテックスミキサー上で可能な最低の速度で10分間インキュベートした。F12培地(2mL/mgペプチド)を、DMSO/ペプチドの各々の管中に分配し、この管を覆い、反転により混合した。100μMの調製物を、2〜8℃において18〜24時間貯蔵した。試料を、14,000×gにおいて10分間2〜8℃で遠心分離した。上清を、新鮮な管に移送し、用いるまで2〜8℃で貯蔵した。
【0131】
ビオチン化したADDL調製物(bADDL)を、ADDL調製について前に記載したのと同一の方法で、100%N末端ビオチン化アミロイドベータペプチド(American Peptide Company, Sunnyvale, CA)を用いて調製した。
【0132】
ADDL原繊維の調製。室温のADDLペプチドフィルムに、ペプチド1mgあたり2mLの10mMの塩酸を加えた。溶液を、ボルテックスミキサー上で可能な最低の速度で5〜10分間混合し、得られた調製物を、使用前に37℃で18〜24時間貯蔵した。
【0133】
単量体の調製。アミロイドベータ(1−40)ペプチド(Aβ1−40)のHFIP乾燥調製物を、Aβ(1−42)ペプチドについて概説したように調製した。ペプチドフィルムを、ペプチド1mgあたり2mLの25mMのホウ酸塩緩衝液(pH8.5)に溶解し、アリコートに分割し、用いるまで−70℃で凍結した。
【0134】
ヒト原繊維の調製。凍結したヒト皮質から得た試料を、プロテアーゼ阻害剤を含む20×低温F12培地(COMPLETE(登録商標)、Roche Diagnostics Corporation, Indianapolis, IN)中で1分間ホモジナイズした。次に試料を、10,000×gで1時間4℃で遠心分離した。F12で2回洗浄した後に、ペレットを、2%SDS/F12中に再懸濁させ、氷上で30分間インキュベートした。その後、試料を、220,000×gで1時間4℃で遠心分離した。ペレットを、低温のF12中に再懸濁させ、15秒の突発波中で1分間超音波処理した。タンパク質を、COOMASSIE PLUS(登録商標)キット(Pierce Biotechnology, Rockford, IL)を用いて決定した。
【0135】
免疫化。本明細書中で「合成」ADDLと呼ぶ、得られた可溶性Aβオリゴマーを、フロイント完全アジュバント(第1の、および第2のワクチン接種)またはフロイント不完全アジュバント(その後のすべてのワクチン接種)と1:1で混合し、3匹のマウス中に皮下に(最初の2回のワクチン接種)または腹腔内に、〜1mL/マウスの合計の容量で注射した。各々の注射は、194±25μgの合計タンパク質と同等の精製ADDLからなっていた。マウスに、ほぼ3週間おきに注射した。6回の注射の後に、1匹のマウスが死亡し、この脾臓を凍結した。次に、最も高い滴定量の血清を有するマウスからの脾臓を、ポリエチレングリコールの存在下でSP2/0骨髄腫細胞と融合させ、6つの96ウェルプレート中に蒔いた。
【0136】
細胞を、37℃で5%のCO2と共に10日間、200μLのHAT選択培地中で培養し、これは、10%の胎児ウシ血清(FBS)、1μg/mLのHYBRIMAX(登録商標)(アザセリン−ヒポキサンチン;Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)を補足したISCOV培地およびSP2/0細胞培養物から採集した30%の条件培地から構成されている。この培養物に、10%のFBSを補足したISCOV培地を10日目に1回供給し、培養物上清を、14日目に除去して、ELISAにおいて陽性のウェルを選別した。陽性の培養物を、さらに希釈をウェルあたり0.3の細胞の確率で限定することにより、クローン化した。陽性のクローンを、ELISAにおいて確認し、さらに発展させた。
【0137】
上清の選別は、5種のアッセイを含んでいた:ドットブロットおよびウエスタンイムノブロット(Lambertら(2001)、上記)、合成ADDLを用いたネイティブなイムノブロット、並びにヒト組織から得られた内因性原繊維を用いたドットブロットおよびウエスタンブロット。これらのアッセイにより、抗体のADDLへの結合を試験し(ドットブロット)、最大の親和性を有するオリゴマー(1種または2種以上)を同定した(ウエスタン)。すべての抗体を、5pmolのADDL(第1の融合において576種の上清および第2の融合において1920種の上清)を用いたドットブロットにおいて試験した。次に、陽性を試験したこれらの上清を、さらに10〜20pmolのADDLにおいてウエスタンブロットを用いて選別した。選別を繰り返して、低い陽性または偽陽性を同定した。10個のウェルの上清を、第1のマウスについて発展させ、45個のウェルを、第2のマウスについて発展させた。次に、発展させた細胞を、凍結させたかまたはサブクローニングした。
【0138】
モノクローナル抗体を含む腹水を、雌のbalb/cマウスにおいて、標準的なプロトコル(Current Protocol of Molecular Biology)を用いて産生した。要するに、マウスを、0.5mLのプリスタンの腹腔内注射により刺激した。刺激の1週間後、マウスに、1mLのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中の約5×106個のハイブリドーマ細胞を腹腔内注射した。腹水を、10〜14日後に採集した。IgG精製を、BIO-RAD(登録商標)AFFI-GEL(登録商標)Protein A MAPS(登録商標)IIキットを製造者のプロトコルに従って用いることにより行った。各々の試行について、3mLの腹水を、脱塩カラムに通じ、4mLの結合緩衝液中で溶出させることにより脱塩した。次に、試料を、プロテインAカラムに適用した。40mLの結合緩衝液で洗浄した後に、カラムを、溶出緩衝液で溶出させ、5mLの画分を採集した。試料を、60μLの10NのNaOHを加えることにより中和した。緩衝液をPBSと交換するために、試料を、第2の脱塩カラムに適用し、PBSで溶出させた。
【0139】
対照抗体。ポリクローナル抗体M71/2およびM90/1を、Bethyl Laboratories, Inc. (Montgomery, TX)から得た。抗Aβモノクローナル抗体6E10(残基1〜17に対して産生した)および4G8(残基17〜24に対して産生した)を、Signet Labs (Dedham, MA)から得た。モノクローナル抗体WO−2は、ウエスタンブロット分析により1−40と1−42との両方を認識するこの能力について、当該分野において知られている(Idaら(1996)、J. Biol. Chem. 271: 22908-22914)。モノクローナル抗体BAM−10(Aβ1−40に対して産生した)を、ABCAM(登録商標)(Cambridge, MA)から得た。モノクローナル抗体26D6は、Aβ配列のアミノ酸1〜12を認識するこの能力について、当該分野において十分知られている(Luら(2000)、Nat. Med. 6:397-404)。
【0140】
イムノブロット分析。ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)を、10〜20%Tris-Tricineゲル(BIO-RAD(登録商標)、Hercules, CA)を用い、分離を120Vにおいて行った以外は、確立された方法(Lambertら(2001)、上記)を用いて行った。ゲルを、標準的な方法に従って移送し、二次抗体を、1:40,000の希釈において常習的に用いた。
【0141】
最初の選別のために、〜16〜20pmol/レーンと同等の2.7μgのADDLを、2次元(2D)4〜20%ゲル上で分離させた。電気泳動および移送を、上記のようにした。追跡用色素を案内として用いて、ニトロセルロースを、Surf-blot装置(Idea Scientific, Minneapolis, MN)中に配置し、TWEEN(登録商標)20を含むトリス緩衝生理食塩水(TBS−T;Lambertら(2001)、上記)中の5%脱脂乾燥乳から構成された遮断緩衝液と混合した200μLのハイブリドーマ上清を、20〜21個のウェルの各々に加えた。室温で1.5時間振動させながらインキュベートした後、上清を除去し、ウェルを、200μLの遮断緩衝液で洗浄した。次に、膜を、Surf-blot装置から取り外し、3×15分間TBS−T中で洗浄した。次に、二次抗体(抗マウス、IgG結合HRP、1:40,000;Molecular Probes, Eugene, OR)を、膜と共に1時間室温でインキュベートした。洗浄(3×15分間)後、オリゴマーを、半強度(half-strength)SUPERSIGNAL(登録商標)(Pierce, Rockland, IL)で視覚化した。ヒト原繊維を用いたウエスタンイムノブロットを、各々の2D SDS−PAGEイムノブロットにおいて約64μgのヒト原繊維組織を用いて、同様にして行った。
【0142】
ネイティブなポリアクリルアミドゲル電気泳動を、分離を120Vにおいて行った以外は、確立された方法(Chromyら(2003)、Biochemistry 42:12749-12760)により行った。
【0143】
ウエスタンブロット。分離したタンパク質を、ニトロセルロースに移送した。ブロットを、TBS−T(0.1%のTWEEN(登録商標)20を含むTBS)中の5%の脱脂乾燥乳または1%のウシ血清アルブミン(BSA)で一晩遮断し、一次抗体(1種または2種以上)と共に1.5時間インキュベートし、洗浄し、セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)結合二次抗体(Amersham Biosciences Corp., Piscataway, NJ)と共に1時間インキュベートした。最終的な洗浄の後に、タンパク質を、West Femto化学発光キット(Pierce Biotechnology, Rockford, IL)およびKODAK(登録商標)Image Station 440 CFで、またはフィルム(HYPERFILM(登録商標)、Amersham Biosciences Corp., Piscataway, NJ)で視覚化した。
【0144】
海馬培養物。培養物を、E18胚から、標準的な方法(Brewer (1997) J. Neurosci. Methods 71:143-155; Stevensら(1996)、J. Neurosci. Res. 46:445-455)に従って調製した。生存細胞を計数し、ポリリシン(200μg/mL)で被覆したカバーガラス上に、1.5×104〜106個の細胞/cm2の密度で蒔いた。培地を、培地の半分を除去し、これを補足したNEUROBASAL(登録商標)培地で置換することにより、交換した。
【0145】
一次ニューロン。一次海馬培養物を、凍結した分離した新生児ラット海馬細胞(Cambrex, Corp., East Rutherford, NJ)から調製し、これを融解させ、ウェルあたり20,000個の細胞の濃度で96ウェルCOSTAR(登録商標)プレート中に蒔いた。細胞を、L−グルタミン(GIBCO-BRL(登録商標)、Gaithersburg, MD)を含まない、およびB27(GIBCO-BRL(登録商標)、Gaithersburg, MD)を補足したNEUROBASAL(登録商標)培地中に、2週間維持し、次に結合研究のために用いた。
【0146】
B103細胞。B103神経芽細胞腫細胞系(SchubertおよびBehl (1993)、Brain Res. 629:275-82)を、フェノールレッドを含まないDMEM(GIBCO-BRL(登録商標)、Gaithersburg, MD)中で、10%FBS(Hyclone, Logan, UT)および1%Pen-Strep (GIBCO-BRL(登録商標)、Gaithersburg, MD)の存在下で増殖させた。指数関数的に増殖するB103細胞を、分離し、96ウェルCORNING(登録商標)プレート中に5,000個の細胞/ウェルの濃度で蒔いた。蒔いた24時間後に、細胞を用いて、ADDLおよびbADDL結合を評価し、市販の、および新規な抗ADDLモノクローナル抗体を特徴づけした。
【0147】
ドットブロット分析。ドットブロットを、Lambertら((2001)、上記)に従って、ADDL(5pmol/ドット)または原繊維のいずれかをニトロセルロースに適用して行った。後者のドットブロットについて、ADDLを、乾燥ニトロセルロースに2つ1組で、種々のピコモル濃度で0.5μLで、Surf−blot装置から由来する鋳型を用いて適用した。次に、試料を、15分間乾燥し、遮断緩衝液で1時間遮断し、ペプチドを加えたか、または除去した抗体と共に1.5時間インキュベートし、これは、室温で少なくとも1時間プレインキュベートしたものであった。溶液を、Surf−blot装置から除去し、ウェルを、遮断緩衝液で洗浄し、膜を、装置から除去した。ニトロセルロースを洗浄し、二次抗体で処理し、前に示したように視覚化した。
【0148】
免疫細胞化学。免疫細胞化学を、二次抗体をALEXAFLUOR(登録商標)588 (Molecular Probes, Eugene, OR)に結合させた以外は、確立された方法(Lambertら(2001)、上記)に従って行った。抗体およびADDLを、1時間室温で、1:4の抗体:ADDLのモル比でプレインキュベートし、その後21日間の海馬細胞培養に適用した。内因性ADDLについて、ヒト脳タンパク質(Lambertら(2001)、上記におけるように調製した)を、細胞と共に1時間インキュベートし、その後上記のように細胞を洗浄し、固定し、視覚化した。
【0149】
アルツハイマー病の、および対照の海馬からのわずかに固定した凍結切片(4%パラホルムアルデヒドで4℃で30時間、また40μmのスクロース中で凍結保護した)を、抗体(リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で1:1000)と共に、一晩4℃でインキュベートした。抗体を除去した後、切片を、PBSで3回洗浄し、室温で二次抗体と共にインキュベートした。次に、結合を、DAB(SIGMA(登録商標)、St. Louis, MO)で視覚化した。次に、切片を、ヘマトキシリンで対比染色し、封入し、NIKON(登録商標)ECLIPSE(登録商標)E600光学顕微鏡上でSPOT(登録商標)INSIGHT(登録商標)デジタルビデオカメラ(バージョン3.2)を用いてイメージングした。
【0150】
定量的免疫細胞化学。培養した海馬細胞を、500nMのADDLと共に、1時間37℃でインキュベートした。ADDLを、洗浄により除去し、細胞を、3.7%ホルムアルデヒドで固定した。細胞を、PBS−NGS(10%正常ヤギ血清を含むPBS)中の0.1%TRITON(登録商標)X−100と共に、30分間インキュベートし、1回洗浄し、所望の一次抗体(1種または2種以上)(PBS−NGSで希釈した)と共に、一晩4℃でインキュベートした。試料を洗浄し、適切な二次抗体(1種または2種以上)、例えばALEXAFLUOR(登録商標)488または594抗マウスおよび抗ウサギIgG(Molecular Probes, Inc., Eugene, OR)と共に、2時間37℃でインキュベートした。カバーガラスを洗浄し、PROLONG(登録商標)フェード防止(anti-fade)封入剤(Molecular Probes, Inc., Eugene, OR)中に封入し、LEICA(登録商標)TCS SP2共焦点Scanner DMRXE7顕微鏡を用いてイメージングした。
【0151】
ELISA。ポリクローナル抗ADDLIgG(M90/1;Bethyl Laboratories, Inc., Montgomery, TX)を、0.25mg/ウェルにおいて、IMMULON(登録商標)3 REMOVAWELL(登録商標)ストリップ(Dynatech Labs, Chantilly, VA)上に、2時間室温で蒔き、ウェルを、TBS中の2%BSAで遮断した。F12中の1%BSAで希釈した試料を、ウェルに加え、2時間4℃で放置して結合させ、室温でBSA/TBSで3回洗浄した。BSA/TBSで希釈したモノクローナル抗体を、90分間室温でインキュベートし、マウスIgGに対してVECTASTAIN(登録商標)ABCキットで検出した。HRP標識を、BIO-RAD(登録商標)ペルオキシダーゼ基質で視覚化し、405nmにおいてDynex MRX-TCマイクロプレートリーダー上で読み取った。
【0152】
例2:抗ADDL抗体の発生および特徴づけ
3匹のマウスに、ADDL(194±25μgのタンパク質/注射)を3週間おきに、合計で6回の接種で接種した。これらのマウス脾臓のSP2細胞との融合から作成されたハイブリドーマを、96ウェルプレート中で増殖させた。これらのウェルからの上清を、合成ADDLでのドットブロットにおいて選別して、陽性のクローンを同定し、これを、内因性原繊維のドットブロットと比較して、差異を確認した。合成ADDLのみに結合し、内因性原繊維に結合しないハイブリドーマを、求めた。ハイブリドーマの生成物が何に結合したか、およびいかなる条件の下で結合が発生したかをさらに絞り込むために、各々の陽性のクローンの3種のウエスタンブロットを、行った:ADDLのSDS−PAGE、ADDLのネイティブなゲル、および内因性原繊維を用いたSDS−PAGE。約40種のクローンを、さらなる試験のために選択した。各々のクローンを、可溶性アルツハイマー病脳抽出物の認識について、培養した海馬細胞に結合したADDLの同定について、および種々の条件の下でのADDL結合を遮断する能力について、試験した。選択された抗体を、培養培地から採集し、プロテインG SEPHAROSE(登録商標)を用いてさらに精製した。
【0153】
毎回、ハイブリドーマの組を、ドットブロットにより選別し、約〜30%が、陽性の上清を生成した。これらの中で、1種または2種のハイブリドーマのみが、合成ADDLに結合し、内因性原繊維には結合しなかった。最初の数のクローンの約2%が低いADDL濃度において、合成ADDLに結合し、単量体に結合せず、これは、ウエスタンブロット分析により決定された通りである。ウエスタンブロットにおいて合成ADDLに結合し、原繊維には結合しないクローン3B7を、さらなる分析のために保持した。
【0154】
一層高分子量の物質(12〜24量体)に三量体/四量体オリゴマーよりも良好に結合した1〜2種のクローンを、同定した。ネイティブな条件の下でネイティブなADDLに結合することができるが、SDSの存在下でADDLに結合しない2〜3種のクローンを、同定した。
【0155】
この分析の結果は、ADDLが、マウスにおける良好な抗原であり、単量体よりもはるかに高い親和性で合成ADDLに結合するモノクローナル抗体を発生させることができることを、示した。
【0156】
例3:培養した海馬細胞に結合した内因性および合成ADDLの免疫組織化学的分析
培養した海馬細胞をまた、分析して、アルツハイマー病の、および対照の脳抽出物を区別するモノクローナル抗体が、培養した細胞に結合したADDL(内因性または合成のいずれか)を同定することができるか否かを決定した。海馬培養物を、確立されたプロトコルに従って調製し、3〜4週間放置して増殖させた。合成ADDLを、標準的なプロトコル(例えば米国特許第6,218,506号)に従って調製した。内因性ADDLを、Gongら((2003)、上記)に従ってアルツハイマー病の脳から抽出した。ADDL(F12中100nMまたはF12中2mgの合計タンパク質)を、細胞と共に1時間インキュベートし、次に標準的な方法に従って洗浄し、固定した。洗浄に続いて、細胞を、20C2、3B7、M94、2A10、4E2、2D6、4C2、2B4、5F10または5G12モノクローナル抗体と共に、その後ALEXAFLUOR(登録商標)488に結合した抗マウス二次抗体と共にインキュベートした。イメージを、NIKON(登録商標)DIAPHOT(登録商標)落射蛍光顕微鏡上でCOOLSNAP(登録商標)HQカメラで撮影し、METAMORPH(登録商標)ソフトウエア(Universal Imaging, Downingtown, PA)を用いて分析した。
【0157】
内因性の、および合成のADDLの両方が、20C2により視覚化した際に、培養した細胞における標準的なホットスポットパターンを示した。従って、モノクローナル抗体20C2により、培養した海馬細胞に結合した合成の、および内因性のADDLの両方が同定される。3B7が原繊維、一層高分子量のオリゴマーおよび単量体に結合しなかったため、3B7によるADDLのホットスポット結合は、オリゴマーADDLに帰していた。他の抗体は、プロセス(M94、2A10)上のホットスポットから細胞体特異性付着(4E2)および(2D6、4C2、2B4、5F10、5G12)の間における他の状態までの範囲内の、細胞に結合したADDL上の種々のエピトープを認識すると見られた。
【0158】
例4:マウス抗ADDL抗体を用いたニューロンへのADDL結合の阻害
アルツハイマー病の、および対照の脳抽出物を区別するモノクローナル抗体がまた、ADDLの培養した細胞への結合を遮断することができるか否かを決定するために、培養した海馬細胞を、20C2抗体と共にプレインキュベートし、ADDL結合を、免疫細胞化学により決定した。海馬培養物を、確立された方法に従って調製し、3〜4週間放置して増殖させた。合成のADDLを、標準的なプロトコルに従って調製した(例えば、米国特許第6,218,506号などを参照)。内因性ADDLを、Gongら((2003)、上記)に従ってアルツハイマー病の脳から抽出した。ADDL(F12中100nMまたはF12中2mgの合計タンパク質)を、20C2抗体と共に1時間プレインキュベートし、その後1時間37℃で細胞に加えた。細胞を洗浄し、固定し、ALEXAFLUOR(登録商標)488に結合した抗マウス二次抗体と共にインキュベートした。
【0159】
培養した細胞に結合する内因性の、および合成のADDLの両方を、20C2とのプレインキュベーションにより遮断した。ビヒクルおよび二次でない抗体対照イメージは、黒色であった。
【0160】
例5:ビオチン化されたADDLを用いた、ニューロンに結合するADDLの検出
ADDLまたはbADDL(ビオチン化されたADDL)のニューロンへの結合を、標準的な免疫蛍光手順を用いて検出した。一次海馬ニューロン(14日間培養した)またはB103細胞(24時間蒔いた)を、5〜25μmのADDLまたはbADDLと共に、1時間37℃でインキュベートし、その後細胞を、温かい培養培地で3〜4回洗浄して、結合していないADDLまたはbADDLを除去した。次に、細胞を、10分間室温で、16%パラホルムアルデヒド(Electron Microscopy Sciences, Fort Washington, PA)からPBSで希釈して調製した4%パラホルムアルデヒドで固定した。その後、溶液を除去し、新鮮な固定液を、室温でさらに10分間加えた。細胞を、10分間透過性にし(0.1%TRITON(登録商標)X100;SIGMA, St. Louis, MOを含む4%パラホルムアルデヒド溶液)、PBSで6回洗浄し、1時間37℃で遮断緩衝液(10%BSA;Sigma, St. Louis, MOを含むPBS)と共にインキュベートした。
【0161】
この時点において、結合したADDLおよびbADDLの検出のためのプロトコルは、分化する。ADDL結合を検出するために、細胞を、一晩37℃で、4G8(1%BSA;Signet Labs, Dedham, MAを含むPBS中1:1,000に希釈した)、6E10(1:1,000;Signet Labs, Dedham, MA)または本明細書中に開示した抗ADDLモノクローナル抗体の1種(1:1,000に希釈した)と共にインキュベートした。さらに、タウ(1:1,000;Sigma, St. Louis, MO)に対して産生したポリクローナル抗血清を用いて、細胞過程を視覚化した。翌日、細胞を、PBSで3回洗浄し、1時間室温で、ALEXA(登録商標)594で標識した抗マウス二次抗体(1%BSA;Molecular Probes, Eugene, ORを含むPBSで1:500に希釈した)およびALEXA(登録商標)488で標識した抗ウサギ二次抗体(1:1,000に希釈;Molecular Probes, Eugene, OR)と共にインキュベートし、PBSで3回洗浄し、結合を、蛍光能力を有する顕微鏡を用いて観察した。
【0162】
bADDL結合の検出のために、細胞を、タウ抗体と共に一晩インキュベートした。その後、細胞を、PBSで3回洗浄し、1時間室温でALEXA(登録商標)488で標識した抗ウサギ二次抗体(上記の通り)およびALEXA(登録商標)594で標識したストレプトアビジン、1:500の希釈(Molecular Probes, Eugene, OR)と共にインキュベートし、PBSで5〜6回洗浄し、結合を、蛍光顕微鏡で視覚化した。細胞核の染色が望ましい場合には、核を、標準的なプロトコルに従って、DAPI(1:1000)で標識した。
【0163】
ADDL特異性モノクローナル抗体を用いたADDLの免疫細胞化学的分析のために、細胞を、ADDLと共にインキュベートした後に洗浄し、固定し、透過性にし、遮断した。結合したbADDLをモノクローナル抗体で検出するために、細胞を、4G8、6E10または本発明における抗ADDLモノクローナル抗体の1種と共に一晩インキュベートし、その後免疫反応性を、ALEXA(登録商標)488で標識した抗マウス二次抗体で検出した。結合したbADDLを、ALEXA(登録商標)594で標識したストレプトアビジンで視覚化し、核を、DAPIで染色した。染色の後、bADDL結合とADDL免疫反応性との共存を、蛍光顕微鏡で検出した。
【0164】
ADDLと共にインキュベートした一次海馬細胞との特異的な免疫反応性は、評価したモノクローナル抗体(即ち20C2、2H4、2B4および2A10)の各々について見られた。結合したADDLは、ニューロン的過程および細胞体に沿って点状の染色として出現した。このパターンは、ニューロンのサブセット上に見られたに過ぎず、これは、市販の、および市販でない抗体の両方を用いて一次抗体に結合するADDLを記載する以前の報告と整合するパターンである。染色のパターンおよび多くの対照研究の結果により、これらの抗体の特異性が例証された。
【0165】
bADDLを用いることにより、結合したADDLを検出し、モノクローナル抗体とのADDL結合の遮断を評価するための単純化された方法が提供された。bADDLを、一次海馬細胞に加え、結合を、蛍光標識したストレプトアビジンで評価した場合には、特異的な結合が、培養物中の細胞のサブセットのニューロン的過程に沿って見られた。次に、細胞を固定し、免疫細胞化学のために加工し、結合を視覚化するために抗ADDL抗体を用いた場合には、染色の同様のパターンが観察された。さらに、これらの染色パターンを重ね合わすことにより、抗体染色および結合したbADDLの完全な重複が明らかになり、従ってbADDLおよびADDLが機能的に同等であることおよびbADDLの結合アッセイへの使用が例証された。
【0166】
例6:ニューロンに結合するbADDLのマウス抗ADDLモノクローナル抗体区別置換の検出および測定
抗体がADDLまたはbADDLのニューロン培養物(一次ニューロンまたはB103細胞)への結合を遮断する能力を、少数の改変を加えて本明細書中に記載した免疫細胞化学方法を用いて特徴づけした。モノクローナル抗体を、1〜10μmのbADDLと、1:1、1:5または1:10(抗体:bADDL)のモル比で混合し、シリコン処理した微小遠心管中で1時間37℃で低速ローテータ(Miltenyi Biotec, Auburn, CA)上でインキュベートした。その後、抗体/bADDL混合物を、細胞に加え、さらに放置して1時間37℃でインキュベートした。インキュベーションの後、細胞を洗浄し、固定し、透過性にし、遮断し、タウに対して産生したポリクローナル抗血清と共に一晩インキュベートして、細胞過程を視覚化した。翌日、細胞を洗浄し、ALEXA(登録商標)488で標識した抗ウサギ二次抗体およびALEXA(登録商標)594で標識したストレプトアビジンと共にインキュベートし、細胞を、DAPIで染色して、核の検出を可能にした。染色した後に、結合の程度を、蛍光顕微鏡で視覚的に評価した。
【0167】
bADDL結合の程度および抗ADDL抗体がこの相互作用を弱める能力を定量的に評価するために、細胞に基づくアルカリホスファターゼアッセイを開発した。モノクローナル抗体またはPBSを、1:1(B103細胞)または1:5(一次ニューロン)のモル比において、2.5〜10μm(最終濃度)のbADDLと混合し、1時間37℃で低速ローテータ上でインキュベートした。プレインキュベーションの後、抗体/bADDL調製物を、B103または一次ニューロン培養物に加え、さらに1時間37℃でインキュベートした。インキュベーション期間の終了時に、bADDL/抗体混合物を除去し、プレートを、6回培地で洗浄した。
【0168】
細胞を、4%パラホルムアルデヒド中で10分間室温で固定し、溶液を除去し、新鮮な固定液を加え、細胞を、さらに10分間固定した。細胞を、0.1%TRITON(登録商標)X−100を含む4%パラホルムアルデヒドで透過性にし(2回、各々室温で10分間)、PBSで6回洗浄し、PBS中の10%BSAで1時間37℃で処理した。アルカリホスファターゼ結合ストレプトアビジン(1%BSA中1:1,500;Molecular Probes, Eugene, OR)を、細胞に1時間室温において加えた。細胞を、PBSで6回洗浄し、アルカリホスファターゼ基質(SAPPHIRE-II(登録商標)を含むCDP-STAR(登録商標);Applied Biosystems, Foster City, CA)を、細胞に加え、30分間インキュベートし、その後LJL照度計(Analyst AD; LJL BioSystems, Sunnyvale, CA)上でルミネセンスを決定した。
【0169】
bADDLのニューロンへの結合を評価した際には、染色の抗体依存性パターンが観察された。調査した抗体の数種は、bADDLの結合が顕著に低減し、一方他のものは、比較的有効でなかった。予測されなかったことに、第3の群の抗体は、bADDLのニューロンへの結合を増強したと見られる。これらの研究の結果が、本質的に定性的であり、定量的ではなかった一方、これらは、抗体がニューロンへのbADDL結合を区別して遮断することを示した。定量的評価により、同様の傾向が例証された(図1)。即ち、数種の抗体は、bADDLのニューロンへの結合を弱め、数種は、弱い効果を有していたか、または効果をほとんど有しておらず、数種(即ち5F10および4C2)は、結合を増強した。さらに、マウスFabは、bADDLの結合を遮断することができず、これはさらに、このアッセイにおけるモノクローナル抗体の特異性を例証している。
【0170】
神経芽細胞腫細胞系B103におけるモノクローナル抗体でのbADDL結合および遮断の分析により、B103細胞への、しかし卵巣細胞系(CHO)へのではない特異的なbADDL結合が例証された。さらに、結合は、B103細胞に加える前にbADDLを抗ADDLモノクローナル抗体と共にプレインキュベートした場合には、劇的に減衰した。B103細胞へのbADDL結合の遮断のモノクローナル抗体での定量的評価は、モノクローナル抗体が細胞へのbADDL結合を遮断するこれらの能力において、同等ではないことを示した(図2)。一次海馬細胞について明らかであるように、数種の抗体は、結合を極めて良好に遮断し、一方他のものは、比較的有効ではなかった。さらに、抗体4C2はまた、bADDLが培養物中のB103細胞に結合する能力を増強した。
【0171】
bADDLもまた学習および記憶に関与する海馬の領域に結合することを示すために、一連の結合研究を、ラット海馬スライス培養物を用いて行った。結合研究により、海馬のCA1−3および歯状回領域におけるニューロンが、bADDLに結合することができる一方、他の領域におけるニューロンは結合しないことが、示された。bADDLを抗ADDLモノクローナル抗体と共にプレインキュベートした場合には、bADDL結合の程度は、用量依存性方式で減衰した。これらの結果は、モノクローナル抗体がまた、bADDLの海馬ニューロン、即ち学習および記憶のために臨界的に重要なニューロンのサブセットへの結合を弱め得ることを示した。
【0172】
例7:アルツハイマー病の、および対照の脳からの内因性ADDLへの抗ADDL抗体の結合
本明細書中に開示したモノクローナル抗体をさらに特徴づけするために、モノクローナル抗体が、ヒトのアルツハイマー病の脳の可溶性抽出物からのADDL(内因性ADDL)を同定し、対照の脳の抽出物からのものを区別することができるか否かを決定した。F12中に調製した合成ADDLおよびヒト脳抽出物を、F12で希釈し、乾燥HYBOND(登録商標)ECL(登録商標)ニトロセルロース上に2つ1組で斑点を形成した(1pmolのADDL;0.5μgの脳抽出物)。対応するCERAD階級(Consortium to Establish a Registry for Alzheimer's Disease)およびBraak段階を有する脳組織を、NU Brain Bank Coreから得た。ブロットを、20分間放置して乾燥し、次にTBS(20mMのTris−HCl、pH7.5、0.8%のNaCl)中の3%H2O2中で20分間室温でインキュベートした。ブロットを、ストリップに切断し、TBS−T(TBS中の0.1%TWEEN(登録商標)−20)中の5%ミルクで1時間室温で遮断した。
【0173】
ウサギポリクローナル抗体M71/2(1:2500、0.4μg;Bethyl Laboratories, Inc., Montgomery, TX);モノクローナル抗体6E10(1:500、3μg;Signet Labs, Dedham, MA);並びに本明細書中に開示したモノクローナル抗体20C2(1.52mg/mL、5μg)、11B5(2.54mg/ml、5μg)、2B4(1.71mg/mL、5μg)、および2A10(1.93mg/mL、7.5μg)(図3)を、1.5mLのミルク/TBS−Tで希釈し、1時間室温でインキュベートした。ブロットを、3×10分間TBS−Tで洗浄した。ブロットを、セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)結合二次抗体(ミルク/TBS−T中1:40,000;Amersham Life Science, Inc., Arlington Heights, IL)と共に1時間室温でインキュベートした。ブロットを、3×10分間TBS−Tで洗浄し、dH2Oで3回洗浄し、SUPERSIGNAL(登録商標)基質(ddH2Oでの1:1希釈;Pierce, Rockland, IL)で展開し、HYPERFILM(登録商標)ECL(登録商標)(Amersham Life Science, Inc., Arlington Heights, IL)に曝露した。
【0174】
比較的高いタンパク質濃度において試験したにもかかわらず比較的弱い結合を有していた2A10を除いて、試験したすべての抗体は、強固な結合を伴う合成ADDLを同定した。ポリクローナル抗体M71/2並びにモノクローナル抗体20C2および11B5は、両方のアルツハイマー病試料に強力に結合したが、対照の脳においては、背景と同様の極めて弱い(faint)結合を示したに過ぎない。対照的に、モノクローナル抗体6E10、2B4および2A10は、アルツハイマー病の脳への弱い結合を示した。
【0175】
本分析の結果は、試験したモノクローナル抗体の2種は、アルツハイマー病の脳と対照の脳との間で区別され得、ここで内因性オリゴマーへの結合は、高い程度の特異性を伴うことを示した。さらに、これらのデータは、検出を、アルツハイマー病の早期の段階で達成することができることを示す。
【0176】
例8:アルツハイマー病の、および対照の脳スライスの免疫組織化学的分析
本明細書中に開示したモノクローナル抗体を用いた免疫組織化学的分析を行って、ADDLが、脳スライスにおいて、アルツハイマー病の脳抽出物と対照の脳抽出物とを区別するモノクローナル抗体を用いて視覚化することができるか否かを決定し、ADDL標識の性質(例えば広汎性の、ニューロン周囲の、プラーク様など)およびヒト組織中でのこの分布を例証した。固定したアルツハイマー病の脳および対照の脳の切片(40μm)を、標準的な方法に従って調製した。スライスを、数種のモノクローナル抗体および1種のポリクローナル抗体で標識し、その後ヘマトキシリンで対比染色して、細胞核を確認した。イメージを、NIKON(登録商標)ECLIPSE(登録商標)E600光学顕微鏡を用いて、SPOT(登録商標)INSIGHT(登録商標)デジタルビデオカメラ(バージョン3.2)で得た。
【0177】
免疫組織化学的分析により、ADDL染色が、海馬、嗅内皮質および中前頭回におけるアルツハイマー病の脳において明白であることが示された。重篤なアルツハイマー病の症例において、主にプラークタイプの分布の外見を呈するものにおいて豊富な軽いADDL染色があった。ある程度の軽いADDL染色が、1つのアルツハイマー病の症例において、ニューロン周囲であると観察された。対照的に、対照試料のすべての領域におけるいずれの抗体を用いても、染色はなく、ドット状免疫染色により包囲されるまれなニューロンでさえない。
【0178】
これらのデータは、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体を用いて、固定されたヒト組織におけるADDLを同定することができることを示し、ここで標識は変化し、プラーク様領域、血管領域および個別の細胞およびいくつかのクラスターのニューロン周囲標識からなる。さらに、アルツハイマー病の脳における、しかし対照の脳においてではないADDLの標識は、少なくとも3つの脳領域において観察された:海馬、嗅内皮質および中前頭回。
【0179】
例9:Aβ1−40単量体様対照の免疫染色
Aβ1−40は、ADDLと比較して、DMSO/F12においてゆっくりとオリゴマー化する。従って、Aβ1−40が単量体様対照として作用し得るか否かを決定した。ADDLを、SUPERDEX(登録商標)75カラム(ADDL063)上でのサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)に供し、これは2つのピークに分割された。Aβ1−40を、DMSO/F12(45.5mM)中で調製し、凍結し、融解した。試料を、F12で希釈し、Tricine試料緩衝液(BIO-RAD(登録商標)、Waltham, MA)で〜2:1で混合した。SDS−PAGEを、10〜20%のTris-Tricineゲル(BIO-RAD(登録商標)、Waltham, MA)上で、Tris/Tricine/SDS緩衝液(BIO-RAD(登録商標)、Waltham, MA)を用いて、120Vにおいて室温で80分間行った。ゲルを、SILVERXPRESS(登録商標)(INVITROGEN(登録商標)、Carlsbad, CA)で銀染色した(60pmolのAβ1−40またはADDL;40pmolのピーク1または2)。あるいはまた、ゲル(20pmolのAβ1−40またはADDL;30pmolのピーク1または2)を、HYBOND(登録商標)ECL(登録商標)ニトロセルロース上に、25mMのTris−192mMのグリシン、20%v/vメタノール、pH8.3、0.02%SDSを用いて、100Vで1時間8℃でエレクトロブロットした(electroblotted)。
【0180】
ブロットを、TBS−T(20mMのTris−HCl、pH7.5中の0.1%TWEEN(登録商標)−20、0.8%NaCl)中の5%ミルクで、一晩8℃で遮断した。モノクローナル抗体6E10(1:2000;Signet Labs, Dedham, MA)、モノクローナル抗体20C2(1.52mg/mL、1:2000;図3)またはポリクローナル抗体M71/2(1:4000、Bethyl Laboratories, Inc., Montgomery, TX)を、ミルク/TBS−Tで希釈し、ブロットと共に90分間室温でインキュベートした。ブロットを、TBS−Tで3×10分間洗浄し、その後HRP結合二次抗体(TBS−T中1:40,000;Amersham Life Science, Inc., Arlington Heights, IL)と共に1時間室温でインキュベートした。TBS−Tで3回、1回の洗浄あたり10分間洗浄した後、ブロットを、dH2Oで3回洗浄し、SUPERSIGNAL(登録商標)West Femto Maximum Sensitivity基質(ddH2Oでの1:1希釈;Pierce, Rockland, IL)で展開し、HYPERFILM(登録商標)ECL(登録商標)(Amersham Life Science, Inc., Arlington Heights, IL)に曝露した。
【0181】
銀染色分析により、Aβ1−40が、重単量体バンドとして示された。対照的に、ADDLおよびピーク1は、単量体、三量体および四量体を示したが、四量体は比較的少量であった。ピーク2の銀染色分析により、重単量体が、比較的軽い三量体および極めて軽い四量体バンドと共に示された。
【0182】
Aβ1−40の6E10での免疫染色により、軽単量体バンドのみが示された。ADDLおよびピーク1の6E10での免疫染色により、単量体、三量体、四量体および12〜24量体が示された。ピーク2は、6E10での重単量体染色並びにある軽三量体および四量体を示し、12〜24量体を示さなかった。20C2またはM71/2でのAβ1−40の単量体染色はなかった。20C2およびM71/2の両方が、ADDLおよびピーク1の最小の単量体染色を示したかまたはこれを示さなかった一方、これらの試料は、20C2およびM71/2での三量体、四量体および12〜24量体染色を有していた。20C2およびM71/2でのピーク2免疫染色により、軽単量体、三量体および四量体が示され、12〜24量体は観察されなかった。Aβ1−40は、一層重い銀染色にもかかわらず、ADDL単量体よりも軽く6E10で免疫染色された。
【0183】
これらの結果は、単量体の良好な認識を示す6E10抗体とは対照的に、移動緩衝液中の0.02%SDSで移動させたゲルがオリゴマー特異性抗体での最小の単量体検出を示すことを示した。SEC画分の免疫染色により、ほとんど単量体で構成され、少量の三量体および四量体を含み、12〜24量体を含まないピーク2が示され、一方ピーク1は、単量体、三量体、四量体および12〜24量体を有する。
【0184】
モノクローナル抗体をピーク1およびピーク2への結合に関してさらに特徴づけするために、捕獲抗体としてADDLに対するポリクローナル抗体M90を用いたサンドイッチELISAを、開発した。本明細書中で言及するSECピーク1およびピーク2画分は、SEPHADEX(登録商標)75カラム上で分別されて、潜在的に生物活性であるオリゴマーと不活性であるオリゴマーとを区別したADDLの2つの主要なピークである。非変性ゲル電気泳動により、37℃で安定である大きい(>50kDa)および小さい(<30kDa)凝集体への分離が確認された。これらのピークを、クローン上清のための検出物質として、別個に用いた。結合を、VECTASTAIN(登録商標)キットで視覚化した。2つのピークの認識間の差異を、すべての抗体について観察した。例えば、抗体2B4および20C2についてのピーク1対ピーク2の比率を比較のこと(図3)。1つのみの抗体が、ピーク2についての対照抗体(6E10)優先度を反映する。
【0185】
例10:Aβ1−42からのADDL産生の検出
ポリクローナル抗体を、ドットブロットにおいて用いて、Aβ1−42からの時間依存性ADDL産生を示した。従って、オリゴマーに優先的に結合するモノクローナル20C2抗体がまた、ADDLがAβ1−42から生成するに伴って時間と共に増大した信号を示し得ることが、例証された。〜750pmolのHFIPフィルムのAβ1−42を、1.5mLのDMSO(0.5mM)に溶解し、2μLのアリコートを、F12(10nM)で100μLの最終容積に希釈し、氷上でインキュベートした。2μL(20fmol)の反応混合物を、乾燥HYBOND(登録商標)ECL(登録商標)ニトロセルロース(Amersham Life Science, Inc., Arlington Heights, IL)上に、特定の時点において斑点形成した。ニトロセルロースを、TBS−T(20mMのTris−HCl、pH7.5、0.8%のNaCl、0.1%のTWEEN(登録商標)−20)中の5%脱脂乾燥乳で、1時間室温で遮断した。
【0186】
ポリクローナル抗体M90/1(Bethyl Laboratories, Inc., Montgomery, TX)またはモノクローナル抗体20C2(1.52mg/mL)を、ミルク/TBS−Tで1:2000に希釈し、ブロットと共に90分間室温でインキュベートし、続いてTBS−Tで3×10分間洗浄した。HRP結合二次抗体(Amersham Life Science, Inc., Arlington Heights, IL)を、ミルク/TBS−Tで1:40,000に希釈し、ブロットを、60分間室温でインキュベートし、続いて上記のように洗浄した。dH2Oで短時間洗浄した後、ブロットを、SUPERSIGNAL(登録商標)West Femto Maximum Sensitivity基質(ddH2Oで1:1に希釈した;Pierce, Rockland, IL)と共に60秒間インキュベートし、HYPERFILM(登録商標)ECL(登録商標)(Amersham Life Science, Inc., Arlington Heights, IL)に曝露した。ドットブロットを走査し、スポットの強度を、ADOBE(登録商標)PHOTOSHOP(登録商標)で決定した。
【0187】
両方の抗体は、Aβ1−42からの時間依存性ADDL産生を検出し、ここで、20C2についての結果は、一層良好な信号および整合性を示した。いずれの抗体も、Aβ1−40を、ADDLと同等の濃度において検出することはできなかった。単量体が常に存在し、オリゴマーが時間に伴って生成するため、これらのデータはさらに、この抗体のオリゴマー特異性を例証する。さらに、M90/1と20C2は共に、ADDLよりも100倍高い濃度においても、Aβ1−40単量体の最小の認識を示した。
【0188】
例11:競合ドットブロットアッセイ
本明細書中に開示したモノクローナル抗体が単量体に結合することができるか否かを決定するために、競合ドットブロットアッセイを、合成ADDL、20C2およびAβ1−40と共に行った。ADDLを、10pmol/0.5μLにおいて乾燥ニトロセルロースに適用した。ニトロセルロースを5%NDM/TBS−T中で1時間遮断した一方、種々の濃度でのADDLおよび新鮮なAβ1−40を、5%NDM/TBS−T中で1時間、各々200μLの20C2(1.5μg/mLの最終濃度)と共にインキュベートした。次に、これらの溶液を、SURF−BLOT装置を用いてニトロセルロースに適用し、室温で1.5時間振動しながらインキュベートした。その後、ブロットを、抗マウスIgG−HRPおよび化学発光で視覚化した。定量を、KODAK(登録商標)IMAGESTATION(登録商標)440およびEXCEL(登録商標)を用いて行った。
【0189】
この分析の結果は、溶液中の合成ADDLが、ニトロセルロース上に固定されたADDLに結合する20C2を、ADDLについて<50nMにおいて観察される半最大阻害で有効かつ特異的に遮断することができることを示した。対照的に、溶液中のAβ1−40は、20C2の固定されたADDLへの結合を遮断しなかった。
【0190】
いずれの部分がAβ1−42分子の結合エピトープを構成するかを決定するために、競合ドットブロットアッセイを、ADDL、20C2およびペプチドを用いて行った。ADDLを、ニトロセルロース上に、各々0.5μL中の4種の濃度(1、0.5、0.25および0.125pmol)において斑形成した。ニトロセルロースを5%NDM/TBS−T中で2時間遮断した一方、50、100および200pmolにおけるペプチドを、200μLの20C2(1.52μg/mLの最終濃度=1.9pmol、5%NDM/TBS−T中)に加え、室温で振動させた。その後、溶液を、ニトロセルロースと共に、SURF−BLOT装置を用いて1.5時間室温でインキュベートした。結合を、化学発光を用いて抗マウスIgG−HRPで視覚化した。
【0191】
この分析の結果は、ADDLへの結合が、ADDL自体により、およびAβ1−28により遮断されるが、ペプチドの他の組み合わせでは遮断されないことを示した。従って、結合エピトープは、Aβ1−28が達成することができるが、Aβ1−12およびAβ12−28またはこれらの組み合わせにおいては有効ではないある立体構造を必要とした。あるいはまた、Aβ1−28は、立体障害によりADDLの結合を遮断する二量体を形成する。
【0192】
Aβ1−28が凝集するか(Aβ1−42と同様に)、これが20C2についての結合エピトープを遮断するように折りたたまれるかを決定するために、SDS−PAGEゲルを銀染色し、ウエスタンブロット分析を行った。ADDLおよびAβ1−28(各々60pmolの2つのレーンを、銀染色のために用い、20pmolを、他のものに用いた)を、10〜20%のTris-TricineSDS−PAGEを用いて分離した。60pmolのレーンを切り取り、SILVERXPRESS(登録商標)(INVITROGEN(登録商標)、Carlsbad, CA)で染色した;あるいはまた、ゲル(20pmolのADDLおよびAβ1−28)を、HYBOND(登録商標)ECL(登録商標)ニトロセルロース上に、25mMのTris−192mMのグリシン、20%v/vのメタノール、pH8.3、0.02%のSDSを用いて、100Vで1時間8℃においてエレクトロブロットした。ブロットを、TBS−T中の5%ミルク(20mMのTris−HCl中の0.1%TWEEN(登録商標)−20、pH7.5、0.8%NaCl)で遮断した。試料を、20C2(1:1000、1.52mg/mL)または20C2+Aβ1−28(2nmol、2時間プレインキュベートした)と共に1.5時間室温で、上記の遮断緩衝液中でインキュベートした。結合を、抗マウスIgG−HRP(TBS−T中1:40,000)および化学発光で視覚化した。
【0193】
銀染色は、ADDLレーンにおいて単量体、三量体および四量体を示し、一方Aβ1−28レーンは、ほぼ二量体において走行した1つの種を有していた。ADDLは、20C2により視覚化されたが、Aβ1−28は視覚化されず、20C2によるすべてのADDL種への結合は、Aβ1−28により遮断された。さらに、20C2結合エピトープがAβ1−28により遮断される一方、20C2は、ウエスタンブロットにおいてAβ1−28ペプチドを認識しない。
【0194】
例12:抗ADDL抗体のアイソタイプ分析
本明細書中に開示したモノクローナル抗体をさらに特徴づけするために、アイソタイプ分析を、SIGMA IMMUNOTYPE(登録商標)キットをマウスモノクローナル抗体アイソタイピング試薬(Mouse Monoclonal Antibody Isotyping Reagents)と共に用いて、製造者(Sigma-Aldrich Co., St. Louis, MO)の指示に従って行った。この分析の結果を、図3に示す。
【0195】
例13:抗ADDL抗体の核直線状エピトープマッピング
抗ADDLモノクローナル抗体のアミロイドベータペプチドとの特異的な相互作用を、標準的なELISAアッセイにおいて検出した。要するに、合成ペプチドまたはいくつかの場合においてはADDLもしくは原繊維を、抗原として用いて、NUNC(登録商標)MAXISORB(登録商標)プレート上に4μg/mL(約800〜1200nM)の濃度において塗布した。特定しない限り、ペプチドを、5mMの重炭酸ナトリウム緩衝液、pH9.6中で、一晩4℃で塗布した。プレートを、0.05%のTWEEN(登録商標)20および3%(w/v)の脱脂乾燥乳を含むPBSで1時間遮断した後に、モノクローナル抗体を、遮断緩衝液中で所定の濃度において滴定し、プレートを、1時間周囲温度において温和に振動させながらインキュベートした。洗浄した後、遮断緩衝液で希釈したHRP結合ヤギ抗マウスIgG(H+L)を、プレートに加えた。比色基質であるTMBを、大規模に洗浄した後にプレートに加えて、結合していないHRP結合体を除去した。吸光度を、450nmの波長において、プレートリーダー上で測定した。
【0196】
抗ADDLモノクローナル抗体についての核直線状エピトープをマッピングするために、1つの群の重複する10個のアミノ酸ペプチドを合成して、Aβ1−42を包含した(表1)。Aβ1−42の逆転されたアミノ酸配列を有する14個のアミノ酸の3つのペプチドをまた、非特異性対照ペプチドとして合成した。
【0197】
【表1】
【0198】
すべてのペプチドを、DMSOに、約400〜500μM(1mg/mL)において溶解し、−20℃で複数のアリコートにおいて貯蔵した。ペプチドを、抗ADDLモノクローナル抗体の核エピトープの決定のために、ELISAアッセイにおいて用いた。各々のモノクローナル抗体を、N末端ペプチド群(残基1〜25から)またはC末端ペプチド群(残基17〜42から)のいずれかに対して、対照ペプチドと共に、4通りの濃度(3、1、0.3および0.1μg/mL)において試験した。モノクローナル抗体のパネルについての核直線状エピトープを、表2に列挙する。数種の市販のモノクローナル抗体(6E10、BAM−10、4G8およびWO−2)を、実験中に包含させて、アッセイ様式を認証し、結果により、刊行された文献において報告されたように、これらの核直線状エピトープが確認された。
【0199】
【表2】
【0200】
評価した12種のADDL特異性モノクローナル抗体のうち9種を、Aβ1−42のN末端領域に対してマッピングし、これらのうち7種を、アミノ酸残基3〜8に対してマッピングした。2種のモノクローナル抗体2H4および2E12は、わずかに比較的大きいエピトープを優先する。3種のモノクローナル抗体1F4、1F6および3B3は、3μg/mLの高い濃度においてさえも重複するペプチド群に結合しなかったが、これらのエピトープは、これらがAβ1−20ペプチドに結合することができたため、Aβ1−42のN末端に位置すると推定され、これを、当該実験において陽性対照として用いた。
【0201】
例14:マウス抗ADDL抗体の親和性および特異性
溶液に基づいた結合アッセイを開発して、種々のアミロイドベータペプチド調製物(ADDL、原繊維、Aβ1−40、Aβ1−20)に対する抗ADDL抗体の特異性および親和性を決定した。NUNC(登録商標)プレート上に塗布したADDLに対するモノクローナル抗体の用量応答の直線的な範囲を記録することができる、定量的ELISAを確立した。この情報に基づいて、ELISAにおいて、アッセイノイズ(0.2〜0.5の周囲のOD450nmの読み取り)よりもわずかに高い一貫したOD信号を提供することができる固定された濃度のモノクローナル抗体を、選択した。
【0202】
次に、IgGを、この固定された濃度において、種々のアミロイドベータペプチド基質(ADDL、原繊維、Aβ1−40、Aβ1−20)と共に、溶液中での20の時点での滴定において室温で一晩インキュベートして、平衡に到達させた。混合物内の遊離のIgGの量を、翌日、定型的なELISAプレート上での1時間のインキュベーションを伴う定量的ELISAにおいて決定した。結合したIgGの割合を、計算し、結合したIgGの遊離のリガンド(基質)の滴定に対する相関を用いて、KDを誘導し、これにはGraFitプログラム(Erithacus Software、Surrey、UK)を用いた。従って、種々のアミロイドベータペプチド調製物に対する各々の抗体についての基質の優先度を、固有の親和性値(KD)として表した。
【0203】
このアッセイ様式を用いるいくつかの利点があった。第1に、抗体および基質の相互作用は、溶液相においてであり、従って、定型的なELISAアッセイまたはBIACORE(登録商標)実験におけるようなすべての固体表面からの束縛はなく、ここでELISAプレートまたはセンサーチップからの固体表面の、モノクローナル抗体に対する可能性のある影響および基質相互作用を、データの解釈のために考慮しなければならない。第2に、相互作用は、放置して平衡に到達した。従って、IgGおよび基質の相互作用は、両方の成分の限定的な濃度において発生し、高い実験的濃度によるIgGの沈殿または追加的なアミロイドベータペプチドのオリゴマー化についての懸念を伴わなかった。
【0204】
第3に、アッセイの読み取りは、溶液中の抗原とは独立であった;従って、異なるペプチド調製物(例えばADDLまたは原繊維)におけるアミロイドベータのいかなる異種構造も、データの解釈および数学モデル化に干渉しない。アッセイの感受性は、ELISAアッセイ検出限界に限定され、これにより、このアッセイが、ナノモル範囲におけるKD値を有するモノクローナル抗体を評価することが可能になった。代替の基質、例えば蛍光試薬は、感受性範囲を改善することが意図される。免疫性複合体は、1時間のインキュベーションの間に最小限に分裂して、遊離のIgGを定量的なELISAにおいて記録したと、考えられる。
【0205】
遊離のIgGの量を、標準曲線により決定し、種々の基質の滴定に対してプロットした。種々の基質との結合IgGの量をプロットし、情報を、適切な数学モデルと適合する曲線について、GraFitにおいて用いた。本明細書中に開示されたモノクローナル抗体のパネルについての、nM範囲で表されたKDの概要を、表3に示す。
【0206】
【表3】
【0207】
例15:タウリン酸化の検出および測定
過剰リン酸化されたタウ(pTau)は、アルツハイマー病の特徴であるが、この過剰リン酸化を生じる事象については、ほとんど知られていない。あらゆる理論により束縛されることを望まず、ADDLは、このリン酸化事象において作用を奏し得ると、考えられる。これを調査するために、ニューロン培養物(一次ニューロンおよびB103細胞)を、上記のように増殖させ、1μmのbADDLまたはビヒクルを、培地に加え、培養物を、さらに1時間、6時間または24時間維持した。各々のインキュベーションの終了時に、細胞を洗浄し、固定し、透過性にし、遮断し、pTauに対して産生したモノクローナル抗血清(AT8、1:500;Pierce, Rockland, IL)と共に一晩インキュベートした。翌日、細胞を洗浄し、ALEXA(登録商標)488で標識した抗マウス二次抗体およびALEXA(登録商標)594で標識したストレプトアビジンと共にインキュベートし、細胞を、DAPIで染色して、核の検出を可能にした。次に、細胞を、蛍光顕微鏡を用いて評価し、pTau染色の程度およびbADDL結合との相関関係を、各々の時点において記録した。
【0208】
この分析の結果は、B103細胞へのbADDL結合が、ビヒクルで処理した細胞と比較した場合に、細胞過程におけるpTauのレベルを増大させることを示した。同様の変化がまた、一次海馬細胞において記録された。細胞をbADDLに6時間曝露した場合には、pTau染色における増大が、細胞、即ちまたbADDLに結合する細胞の亜集団において観察された。B103細胞での時間経過研究により、さらにbADDLによるpTauの調節を検査した。bADDLを加えた結果、1時間においてpTauのわずかな増大がもたらされた。しかし、pTau染色は、bADDLを加えてから6時間後に劇的に増大し、24時間後まで上昇されて維持された。従って、これらのデータは、ニューロンへのADDL結合が、タウの過剰リン酸化、神経原線維変化の蓄積および最終的な細胞死をもたらす細胞内事象のカスケードを開始し得ることを示す。このために、当業者は、ADDLのニューロンへの結合を遮断することにより、次にこのような下流の事象が防止され、アミロイド形成的疾患および/またはタウオパシーの処置に有益であることを認識することができる。さらに、ADDL結合により誘発される信号伝達事象およびpTau産生における結果の一層良好な理解により、また、新規な治療の開発のための好適な標的である追加的な経路が明らかになり得る。
【0209】
例16:Aβペプチド/ADDL−抗体相互作用および構築阻害
本明細書中に開示した選択されたモノクローナル抗体の存在下での、ADDL構築動力学およびオリゴマーの大きさの変化を、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)および蛍光分極(FP)により、フルオレセイン標識Aβ1−42単量体対ネイティブなペプチド単量体の1:4の混合物を用いて、観察した。ADDL中への単量体導入によるフルオレセイン発光の自己消光の結果、FRETによる短時間の時間規模にわたる蛍光強度の3倍〜5倍の減少がもたらされる。さらに、単量体をオリゴマーADDL種中に構築した際の大きさの増大の結果、2倍のFP増大がもたらされる。種々の新規な、および市販の抗ADDLおよび抗Aβペプチド抗体の存在下での、ADDL構築物のFRETおよびFP動力学進行曲線は、抗体が、ADDL構築を阻害し、かつ/またはペプチドオリゴマーに結合する能力における差異を示した(図4)。
【0210】
アッセイを、384ウェルのCORNING(登録商標)Non-Binding Surface黒色不透明マイクロタイタープレートにおいて行った。アッセイ緩衝液は、100mMのMgCl2を含む50mMのMOPS-Tris(pH8.0)から構成されていた。アッセイ容積は、0.2μMのFITC−Aβ1−42および0.8μMのAβ1−42を含んで50μLであり、アッセイ温度は37℃であった。ADDL構築を、485nmの波長において励起し、515nmの波長において発光を検出して、Tecan GENios Proプレートリーダーでモニタリングした。動力学的記録を、蛍光強度および分極読み取りを5分おきに6時間の時間経過にわたり記録することにより、採集した。この時間の間にADDL中に感知可能な程度に構築されなかった陰性対照の反応は、MgCl2を欠いていたが、すべての他の緩衝液およびペプチド成分を含んでいた。陽性対照の反応は、加えられたモノクローナル抗体試薬の不存在下で、すべての緩衝液成分を含んでいた。ADDL結合および構築阻害について試験するために、抗体を、500nMから5nMに減少させた8通りの濃度において、ペプチド混合物と共にインキュベートした。
【0211】
このアッセイは、ADDL結合挙動およびADDL構築阻害の種々のプロフィールを分類するために、有用であった。ADDL特異性および/または立体構造的エピトープとの相互作用による、比較的大きいADDL種の結合および中和は、実行可能な治療的方策として作用する。さらに、遷移性であり、中間的なADDL構築種(非単量体)中に存在するADDL特異性および/または立体構造的エピトープに結合することによる、大きいADDL中へのオリゴマー化の阻害により、抗ADDL療法のための代替的な方策が得られる。抗体間の顕著な差異を例証するFP進行曲線は、このような中間的な、または安定な種の結合を示す。モノクローナル抗体のFP/FRET挙動を他の機能的な、細胞的な、およびインビボの効果と相関させることにより、作用の所望の免疫療法方式の選択が可能になる。
【0212】
本明細書中に開示した分析の結果は、1F6、2A10、5F10、2D6および2B4が、有効な構築阻害を示す一方、20C2、1F4および4C2は、中間の構築阻害を示し、2H4、3B3および4E2は、弱い構築阻害を示すことを示している(図4)。表4に要約し、図5に例示するように、20C2、4E2、3B3および5F10は、種々の生化学的挙動を示す。
【0213】
【表4】
【0214】
さらに、低n量体生成ペプチドAβ1−42[Nle35−Dpro37]に対して発生した、5種の精製した抗体(即ち1A9、1E3、1G3、1A7および1E5)の1種である抗体1A9は、この構築阻害およびFP挙動の観点において、5F10と共に分離する。
【0215】
さらに、20C2は、SEC/ICCにより決定されて、電荷が反転した、切断されたAβ7−42ペプチド構築物の構築物に結合すると見出され、これは、Aβの残基7〜16に相当する全く異なった配列、即ちAβ(7−42)[Orn7Orn11D13D14E16Nle35]を有する、Aβ7−42電荷反転ペプチドに結合する慣用の直線状エピトープの欠如を示している。従って、20C2は、Aβの残基17〜42内からの要素に依存する立体構造的エピトープに結合するが、構築された場合のみである。
【0216】
例17:マウス抗体可変部配列の単離
マウス抗体の可変ドメインをコードするcDNAを、クローン化し、ポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)に従って、マウス定常部の5’末端に、およびV部の上流のマウスリーダー配列にハイブリダイズする特別に設計されたプライマーを用いて配列決定した。これにより、得られたマウス可変部配列が、完全であり、正確であることが確実になった。要するに、mRNAを、マウスハイブリドーマ細胞系から、QIAGEN(登録商標)OLIGOTEX(登録商標)Direct mRNA Mini Kitを用いて抽出し、その後一本鎖(first-strand)cDNA合成キットを用いてcDNAに変換した。次に、cDNAを、PCR反応における鋳型として用いて、抗体可変部配列を得た。
【0217】
軽鎖可変部配列を得るために、11の独立したPCR反応を、11種の軽鎖5’PCRプライマー(MKV−1〜MKV−11)および3’PCRプライマーMKC−1の各々を用いて、企画した(表5)。
【0218】
【表5】
【0219】
重鎖可変部配列を得るために、12の独立したPCR反応を、12種の重鎖5’PCRプライマー(MHV−1〜MHV−12)および適切なアイソタイプ特異性3’プライマー(MHCG−1、MHCG−2A、MHCG−2B、MHCG−3)の各々を用いて、企画した(表6)。
【0220】
【表6】
【0221】
軽鎖PCR反応の各々は、46μLのINVITROGEN(登録商標)PLATINUM(登録商標)PCR Super Mix、1.0μLの100μMの5’プライマー(MKV−1〜MKV−11)の1種、1.0μLの100μMの3’プライマー(MKC−1)および2.0μLのハイブリドーマcDNAを含んでいた。同様のPCR反応を用いて、マウス重鎖可変部配列をクローン化した。反応を、DNA熱サイクラー中に配置し、97℃での2.0分間の初期変性段階の後に:95℃で30秒間、55℃で45秒間、および72℃で90秒間のサイクルを30回施した。最後のサイクルの後に、72℃で10分間の最終的な拡張段階を用いた。
【0222】
いずれのPCR反応により生成物が得られたかを決定するために、各々の反応からの5μLのアリコートを、0.5μg/mLの臭化エチジウムを含む1.5%(w/v)アガロース/1X TAE緩衝液ゲル上で分離した。次に、予測された大きさ(420〜500bp)の断片を生成した反応からのPCR生成物を、ゲル精製し、XbaIおよびSacIで消化し、プラスミドpNEB193(New England Biolabs, Beverly, MA)の多重クローニング領域中のXbaIおよびSacI部位中に連結した。あるいはまた、PCR生成物を、プラスミドpCR(登録商標)2.1中に、INVITROGEN(登録商標)TA CLONING(登録商標)キットを用いて直接連結した。次に、連結生成物を、XL−1細胞に形質転換し、形質転換した大腸菌のアリコートを、50μg/mLのアンピシリンを含むLB寒天プレート上に蒔き、40μLのX−Galストック(50mg/mL)および40μLのIPTG(100mM)溶液で、青色/白色選択のために被覆した。
【0223】
プレートを、37℃で一晩インキュベートし、可能性のあるクローンを、白色コロニーとして同定した。各々のPCR生成物についての少なくとも24種の独立したクローンからのDNAを、両方のらせんについて、pNEB193およびpCR(登録商標)2.1についての普遍的な順方向および逆方向プライマーを用いて配列決定した。次に、得られた配列を、コンティグ中に構築して、各々の抗体軽鎖および重鎖可変部についてコンセンサス配列を発生させた。この方法を用いて、配列を、ハイブリドーマ20C2、5F10、2D6、2B4、4E2、2H4、2A10、3B3、1F6、1F4、2E12および4C2の軽および重抗体可変部について決定した(図6A〜6X)。
【0224】
図6A〜6Xにおいて、抗原に相補的な構造を形成する6つの相補性決定領域(CDR)に、下線を付した。CDRおよび対応する抗原エピトープ(表2)の分析により、配列の類似性が観察された。Aβ1−42の3−8アミノ酸エピトープを共有する抗体(即ち2A10、4C2、2D6、4E2、20C2、2B4および5F10)は、重鎖の高度に相同性のCDR1(図7A)およびCDR2(図7B)配列を共有していた。Aβ1−42の1−8アミノ酸エピトープを認識すると見出された抗体2H4は、重鎖の独特なCDR3(図7C)配列並びに軽鎖の独特なCDR1(図7D)、CDR2(図7E)およびCDR3(図7F)配列を有すると見られた。
【0225】
同様に、Aβ1−42の3−10アミノ酸エピトープを認識すると見出された抗体2E12は、重鎖の独特なCDR3配列(図7C)を有していた。さらに、SECピーク1およびピーク2ADDLに対する同様の親和性を有する抗体2A10、2B4、4C2および4E2(図3を参照)は、重鎖の高度に相同性のCDR3配列を共有していた(図7C)。さらに、抗体4E2の重鎖のCDR3におけるアミノ酸置換は、4E2が抗体2D6よりも、ニューロンへのADDL結合を遮断するにあたり有効であるため、ADDLのニューロン細胞への結合の遮断を増強すると見られ、4E2および2D6の重鎖および軽鎖の配列は、重鎖のCDR3の3個のアミノ酸残基を除いて同一であった;それぞれ2D6および4E2についてSer対Asn、Thr対SerおよびIle対Val(図7C)。
【0226】
例18:マウス抗ADDL抗体可変部配列のヒト化
マウスハイブリドーマ細胞系20C2、26D6、4E2、3B3、2H4および1F6から得られたマウス抗体重および軽可変ドメイン核酸を、CDR移植方法並びに20C2および26D6の場合においては化粧張り方策を用いてヒト化した。当業者は、マウス抗体配列のヒト化は、この血清半減期およびFcエフェクター機能を改善し、これにより抗グロブリン応答を低減することにより、抗体の治療的効力を最大化することができることを、理解する。
【0227】
CDR移植によるヒト化を、マウス可変ドメインに対する最高の相同性を有するNCBIタンパク質データベースからヒト軽鎖および重鎖可変部を選択することにより、行った。マウス可変部配列を、データベース中のすべてのヒト可変部配列と、タンパク質−タンパク質Basic Local Alignment Search Tool(BLAST)を用いて比較した。その後、マウスCDRを、ヒトフレームワーク領域に接合し、先行するアミノ酸配列を分析した。フレームワーク領域におけるマウス配列とヒト配列との間のすべての差異を、特にこれらがループ構造についての基準の配列の一部であったかまたはVL/VH界面に位置する残基であった場合に、評価した(O'BrienおよびJones (2001)、Antibody Engineering、Kontermann and Dubel(編)、Springer Laboratory Manuals中)。
【0228】
フレームワーク領域をまた、ヒト亜群についての、および可能性のあるグリコシル化部位についてのコンセンサス配列に対する比較において、普通ではない、またはまれなアミノ酸について走査した。アミノ酸配列の差異が、基準の配列に関与するとは見出されていないマウスおよびヒトフレームワーク領域配列の間に存在したか、またはVL/VH界面に位置した場合において、ヒト残基を、当該位置において選択した。重要な残基の差異が存在した場合において、可変部配列の2つの方式を、評価のために発生させた。CDR移植方策により、ヒトフレームワーク領域に最小数の変化がなされ、従って良好な抗原結合が達成された一方、天然のヒト抗体からの配列と密接に整合するヒトフレームワーク領域が維持された。CDR移植を用いた、ヒト化されたアミノ酸配列の設計を、図8に示す。
【0229】
20C2および26D6についてのヒト化された配列をまた、化粧張り方策を用いて設計した(例えば米国特許第6,797,492号を参照)。ヒト化を、マウス可変ドメインおよび最も近いヒト抗体生殖系列族(1または2以上)に対する最高の相同性を有するNCBIタンパク質データベースからヒト軽鎖および重鎖可変部を選択することにより、行った(Kabatら(1991)、Sequences of proteins of immunological interest、第5版、U.S. Dept. Health and Human Services、NIH、Washington DCを参照)。マウス可変部配列を、データベース中のすべてのヒト可変部配列に対して、タンパク質−タンパク質BLASTを用いて比較した。
【0230】
マウス可変配列およびこれらの最も近いヒト相同体を、当該分野において行われているコンピューターモデル化により決定したように、最も近い結晶化されたヒト抗体に対してモデル化した。マウスVHおよびVL配列のモデルから、表面領域マップを構成し、これは、マウス重および軽可変部におけるアミノ酸の溶媒接触性に影響した。モデル化を確認するために、これらの露出した残基を、既知の表面接触性残基と、位置どうしで比較した(例えば、Padlan (1994) Mol. Immunol. 31(3):169-217を参照)。記録を、確立された方法に従って、これを指定する配列における各々の残基について、露出している、ほとんど露出している、部分的に包埋されている、ほとんど包埋されている、および包埋されていると割り当てた(米国特許第6,797,492号を参照)。露出している、またはほとんど露出していると記録され、相同的なヒト配列と異なるマウスフレームワーク残基を、当該位置において、ヒト残基と交換した。
【0231】
設計された化粧張りされた配列は、マウスCDR、CDRに隣接する残基、基準の配列に関与すると知られている残基、VL/VH界面に位置する残基、並びにマウス重鎖および軽鎖のN末端配列における残基を維持した。N末端配列は、CDR表面と近接すると知られており、リガンド結合に有効に関与している。同様に、Pro、Glyまたは帯電した残基における変化を限定するように、注意した。化粧張りした配列を仕上げた後に、これらを、再びモデル化して、すべての可能性のある明らかな構造的問題点を探索した。いくつかの例において、1つより多い化粧張りした配列を、分析のために発生させた。ヒト化されたアミノ酸配列の、化粧張り方法を用いた設計を、図9に示す。
【0232】
ヒト化されたアミノ酸配列を選択した後に、配列を、逆翻訳して、対応するDNA配列を得た。DNA配列を、当該分野で確立されている方法(Lathe (1985)、J. Mol. Biol. 183(1):1-12)を用いて、コドン最適化し、ヒト抗体発現ベクター中にクローン化するために、フランキング制限酵素部位を用いて設計した。合成したDNA配列を、図10A〜10Sに示す。CDR移植および化粧張りにより設計された20C2ヒト化抗体について、ヒトIgG1/カッパおよびIgG2m4/カッパ様式の両方を構成し、ここでIgG2m4は、ヒトIgG4配列の標準的なヒトIgG2定常部中への選択的導入を表す。IgG1/カッパおよびIgG2m4/カッパ様式をまた、26D6CDR移植した抗体について作成した。すべての他の抗体について、IgG1/カッパ様式のみを作成した。得られた抗体の完全なアミノ酸配列を、図11A〜11Yに示す。
【0233】
抗体を、別個の軽鎖および重鎖発現プラスミドを293EBNA細胞中に同時一過性導入(co-transient transfection)することにより、発現させた。1つより多いヒト化された重鎖または軽鎖配列を所定の抗体について設計した場合には、重鎖および軽鎖のすべての組み合わせを混ぜ合わせて、対応する抗体を発生させた。抗体を、培養上清から、形質導入の7〜10日後にプロテインAカラムを用いて精製し、その後の分析において用いた。
【0234】
例19:IgG2m4抗体の発生
IgG2m4抗体誘導体を調製して、Fcレセプター会合、C1q結合、不所望な細胞毒性または免疫複合体生成を低減し、同時に典型的なヒト抗体の長い半減期および薬物動態学的特性を共に維持した。IgG2m4の基本的な抗体様式は、IgG2のものであり、これは、実験的モデルにおいて優れた半減期を有すると示されている(Zuckierら(1994)、Cancer Suppl. 73:794-799)。IgG4配列の選択的な導入により、IgG2の構造を改変して、C1q結合を解消し、一方典型的な低レベルのFcγR結合を維持した(CanfieldおよびMorrison (1991)、J. Exp. Med. 173:1483-1491)。これは、IgG2およびIgG4の配列が同一である交差点を用いることにより、達成され、これにより、すべての人工的な突然変異配列よりもむしろ、天然のFc配列を含む抗体が得られた。
【0235】
ヒト抗体定常部のIgG2m4形態を、図12に示すように、ヒトIgG4配列を標準的なヒトIgG2定常部中に選択的に導入することにより、形成した。概念的に、IgG2m4は、図12に示すように、CH2ドメイン内の1対の鎖交換から得られた。4つの単一の突然変異を、IgG4からの配列に対応して生じさせた。IgG2において突然変異したFc残基は、His268Gln、Val309Leu、Ala330SerおよびPro331Serを含んでおり、これにより、ネオエピトープ(neoepitope)についての効能が最小になった。IgG2定常部中に配置された特定のIgG4アミノ酸残基を、基本的構造からの他の代替と共に、表7に示す。
【0236】
【表7】
【0237】
例20:ヒト化された抗ADDL抗体の結合親和性
ヒト化された抗体のADDL結合親和性を評価するために、滴定ELISAを、本明細書中に開示したように行った。ストレプトアビジンを塗布した96ウェルマイクロタイタープレート(Sigma, St. Louis, MO)に、10%ビオチン化ADDL抗原(1μM)を塗布した。500ng/mLで開始した、精製した抗体の一連の2倍希釈を、ADDL捕獲プレートに加え、プレートを、2時間25℃でインキュベートした。プレート洗浄機(Bio-Tek, Winooski, VA)を用いてPBS溶液で5回洗浄した後に、ポリクローナルヤギ抗ヒトカッパ軽鎖抗体(Biomeda, Foster City, CA)を、3%脱脂乳ブロッカーでの1/2000の希釈において加え、室温で1時間インキュベートした。次に、ウサギ抗ヤギIgG(H+L)HRP結合(Bethyl Laboratories, Inc., Montgomery, TX)検出抗体を、遮断溶液での1/2000の希釈において加え、室温で1時間インキュベートした。PBSで洗浄した後、HRP基質、3,3’,5’,5−テトラメチルベンジジン(使用可能な状態のTMB;Sigma, St. Louis, MO)を加え、反応を、10分後に0.5NのH2SO4で停止した。450nmの波長における吸光度を、プレートリーダー(モデルVICTOR V; Perkin Elmer, Boston, MA)において読み取り、データを、EXCEL(登録商標)ワークシートを用いて加工した。プレート間のアッセイ変動は、20%以内であると推定された。
【0238】
ヒト化された抗体の種々の群を、種々の実験において比較した。CDR移植によりヒト化されたIgG1抗体20C2A、20C2B、3B3、4E2、1F6および2H4の比較により、すべての抗体がADDLに結合することができ、ここで1F6との結合は、大多数よりも弱く、20C2が最強であったことが、示された。20C2 IgG1抗体の4種の異なるヒト化様式(2種のCDR移植様式および2種の化粧張り様式)をまた比較し、極めて類似したADDL結合曲線を示し、すべての結合は、キメラ20C2抗体よりもわずかに良好であったことが、見出された。26D6 IgG1の7種の異なるヒト化様式(1種のCDR移植様式および6種の化粧張り様式)をまた比較した。すべて、26D6のキメラ形態に類似したADDL結合曲線を有すると、見出された。CDR移植によりヒト化された2種の20C2様式についてのIgG1およびIgG2m4抗体をまた、分析し、CDR移植によりヒト化された26D6のIgG1およびIgG2m4アイソタイプと同様に、同程度の結合曲線を有すると見出された。
【0239】
例21:ヒト化抗ADDL抗体を用いたニューロンへのADDL結合の阻害
ヒト化抗ADDL抗体をさらに、一次海馬ニューロンへのADDL結合を遮断するこれらの能力について、本明細書中に開示した方法を用いて評価した。関連する抗体または対照としてのPBSを、1:1(B103神経芽細胞腫細胞)または1:5(一次海馬ニューロン)のモル比で、2.5〜10μm(最終濃度)のbADDLと混合し、低速ローテータ上で1時間37℃でインキュベートした。プレインキュベーションの後、抗体/bADDL調製物を、B103または一次ニューロン培養物に加え、さらに1時間37℃でインキュベートした。インキュベーション期間の終了時に、bADDL/抗体混合物を除去し、プレートを、培地で6回洗浄した。次に、細胞を、4%パラホルムアルデヒド中で10分間室温で固定し、溶液を除去し、新鮮な固定液を加え、細胞を、さらに10分間固定した。
【0240】
細胞を、0.1%TRITON(登録商標)X−100を含む4%パラホルムアルデヒドで透過性にし(2回、各々室温で10分間)、PBSで6回洗浄し、次にPBS中の10%BSAで1時間37℃で処理した。次に、アルカリホスファターゼ結合ストレプトアビジン(1%BSA中1:1,500;Molecular Probes, Eugene, OR)を、細胞に1時間室温で加えた。細胞を、PBSで6回洗浄し、アルカリホスファターゼ基質(SAPPHIRE-II(登録商標)を含むCDP-STAR(登録商標);Applied Biosystems, Foster City, CA)を、細胞に加え、30分間インキュベートし、その後LJL照度計(Analyst AD; LJL Biosystems, Sunnyvale, CA)上でルミネセンスを決定した。マウス抗体について、26D6、20C2、4E2、3B3、2H4および1F6のヒト化様式は、ADDL調製物のB103神経芽細胞腫細胞への、および一次ニューロンへの結合を阻害することができた。
【0241】
例22:ヒト化抗ADDL抗体の親和性成熟
ヒト化20C2様式A可変重鎖のみ、軽鎖のみ、または重鎖および軽鎖を一緒にコードする核酸分子を、FabファージディスプレイベクターpFab3d中でクローン化した。核酸配列分析により、pFab3dにおける配列および配向が確認された。pFab3d中の注釈付きの20C2 Fab配列を、図13に示し、本明細書中で重鎖について配列番号255として、および軽鎖について配列番号256として述べる。3種の構造体を、当該分野において確立されたファージディスプレイFabライブラリー法を用いて、20C2成熟プログラムにおいて用いた。
【0242】
要するに、2種のライブラリーを設計して、20C2の軽(カッパ)鎖のCDR3の9種の野生型アミノ酸(即ち、Phe−Gln−Gly−Ser−Leu−Val−Pro−Leu−Thr;配列番号60)を突然変異させた。これらのライブラリーを、LC3−1およびLC3−2と指定し、これらはそれぞれ、Xaa−Xaa−Xaa−Xaa−Xaa−Val−Pro−Leu−Thr(配列番号257)およびPhe−Gln−Gly−Ser−Xaa−Xaa−Xaa−Xaa−Xaa(配列番号258)の軽鎖CDR3配列を表す。ビオチン化逆方向プライマーである20C2LC3−1(配列番号259)および20C2LC3−2(配列番号260)を、順方向プライマーである20C2LC3F(配列番号261)と組み合わせて用いて、LC3−1およびLC3−2ライブラリーを発生させた(図14を参照)。プライマーを、ポリアクリルアミドゲル電気泳動により精製し、一方ベクターDNAを、ゲル電気泳動および電子溶出(electroelution)により精製した。2種の軽鎖ライブラリーを設計して、無秩序に突然変異させた。3種の10G5H6 LC3ライブラリーの最終的な相違は、それぞれ4.76×108および7.45×108であった(表8)。ライブラリーからの約100種のクローンの配列分析により、設計されたアミノ酸位置における突然変異クローンの100%の相違が示された。
【0243】
【表8】
【0244】
高分子量bADDLに対する2種の20C2軽鎖ライブラリーの可溶性パニングを、完了した。要するに、4巡のパニングを、ビオチン化高分子量ADDL(bADDL)を用いて行った。最初の3巡を、約1.5μMの抗原濃度(投与量=1×1010〜1×1011)を用いて行った。第3巡の完了の際に、2種のライブラリーの産出を組み合わせ、10nM、100nMおよび約1.5μMの抗原での分析のために3つの群に分けて、パニングの厳密性を増大させた。このように、合計58個の産出プレート、即ち第1巡においてライブラリーあたり2つのプレート(合計で4つのプレート)、第2巡においてライブラリーあたり6つのプレート(合計で12個のプレート)、第3巡においてLC3−1ライブラリーについて8つのプレートおよびLC3−2ライブラリーについて10個のプレート(合計で18個のプレート)並びに第4巡において各々の抗原濃度について8つのプレート(合計で24個のプレート)を、ファージELISAアッセイにおいて試験した。
【0245】
パニングの結果1000個のヒットが得られ、このうち436個を配列決定した(表9)。
【0246】
【表9】
【0247】
高度に富化されたクローンの配列および頻度を、表10に示す。
【0248】
【表10】
【表11】
【0249】
富化頻度に基づく10個の最上部のクローンからのFab断片を調製し、合計15個のクローンを、IgG1ヒト化A様式に変換し、2個のクローン、即ち20C2−6および20C2−8を、IgG1ヒト化B様式に変換した。これらのクローンについてのKD値を、BIACORE(登録商標)により、ビオチン−Aβ1−20(表11)およびbADDL(表12)を抗原として用いて測定した。親和性における劇的な改善が、親のヒト化20C2Aおよび20C2B並びにマウス20C2抗体と比較して観察された。特に、低ナノモルないしピコモル未満のKDが、配列Xaa1−Gln−Xaa2−Thr−Arg−Val−Pro−Leu−Thr(配列番号318)の軽鎖CDR3で達成され、ここで、Xaa1は、PheまたはLeuであり、Xaa2は、AlaまたはThrである。さらに、ビオチン−Aβ1−20およびbADDLを用いてBIACORE(登録商標)で得られたKD値間の比較により、抗ADDL抗体、例えば20C2が、ADDLの多次元立体構造に、単量体Aβペプチドよりも優先的に結合することが、さらに例証される。
【0250】
【表12】
【0251】
【表13】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種または2種以上のAβ由来拡散性リガンドの多次元立体構造を区別して認識することができる、単離された抗体またはこの断片。
【請求項2】
1種または2種以上のAβ由来拡散性リガンドの多次元立体構造を区別して認識することができる、単離された抗体またはこの断片を、薬学的に許容し得る担体との混合物において含む、医薬組成物。
【請求項3】
Aβ由来拡散性リガンドのニューロンへの結合を防止する方法であって、ニューロンを請求項1に記載の抗体と接触させて、Aβ由来拡散性リガンドのニューロンへの結合を防止するようにすることを含む、前記方法。
【請求項4】
Aβ由来拡散性リガンドの構築を阻害する方法であって、アミロイドβ1−42ペプチドを含む試料を請求項1に記載の抗体と接触させて、これによりAβ由来拡散性リガンドの構築を阻害することを含む、前記方法。
【請求項5】
タウタンパク質のリン酸化をSer202/Thr205において遮断する方法であって、タウタンパク質を含む試料を請求項1に記載の抗体と接触させて、これによりタウタンパク質のリン酸化をSer202/Thr205において遮断することを含む、前記方法。
【請求項6】
Aβ由来拡散性リガンドと関連する疾患を予防的に、または治療的に処置する方法であって、請求項2に記載の医薬組成物の有効量を投与することを含む、前記方法。
【請求項7】
Aβ由来拡散性リガンドのニューロンへの結合を防止する治療剤を同定する方法であって、ニューロンをAβ由来拡散性リガンドと、剤の存在下で、また請求項1に記載の抗体を用いて接触させて、当該剤の存在下でのAβ由来拡散性リガンドのニューロンへの結合を決定することを含む、前記方法。
【請求項8】
試料中のAβ由来拡散性リガンドを検出する方法であって、試料を請求項1に記載の抗体と接触させて、Aβ由来拡散性リガンドを検出するようにすることを含む、前記方法。
【請求項9】
Aβ由来拡散性リガンドと関連する疾患を診断する方法であって、試料を請求項1に記載の抗体と接触させて、Aβ由来拡散性リガンドと関連する疾患を診断するようにすることを含む、前記方法。
【請求項10】
Aβ由来拡散性リガンドを検出するためのキットであって、請求項1に記載の単離された抗体またはこの断片を含む、前記キット。
【請求項1】
1種または2種以上のAβ由来拡散性リガンドの多次元立体構造を区別して認識することができる、単離された抗体またはこの断片。
【請求項2】
1種または2種以上のAβ由来拡散性リガンドの多次元立体構造を区別して認識することができる、単離された抗体またはこの断片を、薬学的に許容し得る担体との混合物において含む、医薬組成物。
【請求項3】
Aβ由来拡散性リガンドのニューロンへの結合を防止する方法であって、ニューロンを請求項1に記載の抗体と接触させて、Aβ由来拡散性リガンドのニューロンへの結合を防止するようにすることを含む、前記方法。
【請求項4】
Aβ由来拡散性リガンドの構築を阻害する方法であって、アミロイドβ1−42ペプチドを含む試料を請求項1に記載の抗体と接触させて、これによりAβ由来拡散性リガンドの構築を阻害することを含む、前記方法。
【請求項5】
タウタンパク質のリン酸化をSer202/Thr205において遮断する方法であって、タウタンパク質を含む試料を請求項1に記載の抗体と接触させて、これによりタウタンパク質のリン酸化をSer202/Thr205において遮断することを含む、前記方法。
【請求項6】
Aβ由来拡散性リガンドと関連する疾患を予防的に、または治療的に処置する方法であって、請求項2に記載の医薬組成物の有効量を投与することを含む、前記方法。
【請求項7】
Aβ由来拡散性リガンドのニューロンへの結合を防止する治療剤を同定する方法であって、ニューロンをAβ由来拡散性リガンドと、剤の存在下で、また請求項1に記載の抗体を用いて接触させて、当該剤の存在下でのAβ由来拡散性リガンドのニューロンへの結合を決定することを含む、前記方法。
【請求項8】
試料中のAβ由来拡散性リガンドを検出する方法であって、試料を請求項1に記載の抗体と接触させて、Aβ由来拡散性リガンドを検出するようにすることを含む、前記方法。
【請求項9】
Aβ由来拡散性リガンドと関連する疾患を診断する方法であって、試料を請求項1に記載の抗体と接触させて、Aβ由来拡散性リガンドと関連する疾患を診断するようにすることを含む、前記方法。
【請求項10】
Aβ由来拡散性リガンドを検出するためのキットであって、請求項1に記載の単離された抗体またはこの断片を含む、前記キット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図6E】
【図6F】
【図6G】
【図6H】
【図6I】
【図6J】
【図6K】
【図6L】
【図6M】
【図6N】
【図6O】
【図6P】
【図6Q】
【図6R】
【図6S】
【図6T】
【図6U】
【図6V】
【図6W】
【図6X】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図7E】
【図7F】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図8E】
【図8F】
【図8G】
【図8H】
【図8I】
【図8J】
【図8K】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図10C−2】
【図10D】
【図10E】
【図10F】
【図10G】
【図10H】
【図10I】
【図10J】
【図10K】
【図10L】
【図10M】
【図10N】
【図10O】
【図10P】
【図10Q】
【図10R】
【図10S】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図11D】
【図11E】
【図11F】
【図11G】
【図11H】
【図11I】
【図11J】
【図11K】
【図11L】
【図11M】
【図11N】
【図11O】
【図11P】
【図11Q】
【図11R】
【図11S】
【図11T】
【図11U】
【図11V】
【図11W】
【図11X】
【図11Y】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図6E】
【図6F】
【図6G】
【図6H】
【図6I】
【図6J】
【図6K】
【図6L】
【図6M】
【図6N】
【図6O】
【図6P】
【図6Q】
【図6R】
【図6S】
【図6T】
【図6U】
【図6V】
【図6W】
【図6X】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図7E】
【図7F】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図8E】
【図8F】
【図8G】
【図8H】
【図8I】
【図8J】
【図8K】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図10C−2】
【図10D】
【図10E】
【図10F】
【図10G】
【図10H】
【図10I】
【図10J】
【図10K】
【図10L】
【図10M】
【図10N】
【図10O】
【図10P】
【図10Q】
【図10R】
【図10S】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図11D】
【図11E】
【図11F】
【図11G】
【図11H】
【図11I】
【図11J】
【図11K】
【図11L】
【図11M】
【図11N】
【図11O】
【図11P】
【図11Q】
【図11R】
【図11S】
【図11T】
【図11U】
【図11V】
【図11W】
【図11X】
【図11Y】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図14】
【公開番号】特開2013−35843(P2013−35843A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−189197(P2012−189197)
【出願日】平成24年8月29日(2012.8.29)
【分割の表示】特願2007−538122(P2007−538122)の分割
【原出願日】平成17年10月21日(2005.10.21)
【出願人】(390023526)メルク・シャープ・エンド・ドーム・コーポレイション (924)
【出願人】(596057893)ノースウエスタン ユニバーシティ (35)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−189197(P2012−189197)
【出願日】平成24年8月29日(2012.8.29)
【分割の表示】特願2007−538122(P2007−538122)の分割
【原出願日】平成17年10月21日(2005.10.21)
【出願人】(390023526)メルク・シャープ・エンド・ドーム・コーポレイション (924)
【出願人】(596057893)ノースウエスタン ユニバーシティ (35)
【Fターム(参考)】
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