抗C4.4a抗体およびその使用
本発明は、いくつかの腫瘍、例えば肺がん、結腸直腸がん、膵がん、前立腺がん、腎がんおよび乳がんにおいて過剰発現する膜固定型29kDa C4.4aポリペプチドに特異的な、組換え抗原結合領域ならびにそのような抗原結合領域を含有する抗体および機能的フラグメントを提供する。したがって、これらの抗体は、これらの障害および他の障害を処置するために使用することができる。また、本発明の抗体は、診断薬分野において使用することができ、がんに関連する障害の進行におけるC4.4aの役割をさらに調査するためにも使用することができる。本発明は、前記の抗体をコードする核酸配列、それを含有するベクター、医薬組成物、および使用説明書を含むキットも提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腫瘍において過剰発現するC4.4aと呼ばれる膜固定型29kDaポリペプチドに特異的な、組換え抗原結合領域ならびにそのような抗原結合領域を含有する抗体および機能的フラグメントを提供する。
【0002】
さらにまた、C4.4aは、これらのがんタイプの転移にも多量に存在する。したがって、本抗体は、これらの障害および他の障害を処置するために使用することができる。また、本発明の抗体は、診断薬分野において使用することができ、がんに関連する障害の進行におけるC4.4aの役割をさらに調査するためにも使用することができる。本発明は、前記の抗体をコードする核酸配列、それを含有するベクター、医薬組成物、および使用説明書を含むキットも提供する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
抗体ベースの治療法は、固形腫瘍を含むさまざまながんの処置に極めて有効であることが判明しつつある。例えば、ハーセプチン(HERCEPTIN)(登録商標)は乳がんの処置に使用されて成功を収めており、リツキサン(RITUXAN)(登録商標)はB細胞関連がんタイプに有効である。奏効する抗体ベースの治療法の開発において中核を成すのは、腫瘍細胞上に優先的に発現することがわかった細胞表面タンパク質に対する抗体の単離である。C4.4a(遺伝子名:LYPD3)ポリペプチドは、グリコホスファチジルイノシトール(glycophosphatidylinositol)(GPI)固定型高グリコシル化細胞表面タンパク質である。ラットC4.4aは、最初は、転移性ラット膵腫瘍細胞における転移関連細胞表面タンパク質として記載された(Roesel M.ら, Oncogene 1998,17(15):1989-2002)。ヒトC4.4aは胎盤cDNAライブラリーからクローニングされた(Wuerfel, J.ら Gene 2001,262:35-41)。C4.4aはuPAR受容体に対して構造ホモロジーを示し、2つのLY6ドメインを含有して、典型的なスリーフィンガー(three finger)タンパク質フォールディングを呈する(Jacobsen B.およびPloug M., Current Medicinal Chemistry 2008,15:2559-2573)。このタンパク質は高度にグリコシル化されており、6個の予想Nグリコシル化部位と数個のOグリコシル化部位とを含有している。さらにまた、C4.4aは、2つのLy6ドメイン中に位置する合計9個のジスルフィド橋を含有している(Hansen L.ら, Biochem J. 2004, 380:845-857)。C4.4aは、肺がん、直腸結腸がん、乳がん、子宮頸がん、膵がん、腎がん、頭頚部がんおよびメラノーマのような腫瘍細胞において、強い発現を示す。ノーザンブロット分析により、原発性肺腫瘍の約50%および肺腫瘍転移の約75%におけるC4.4a発現が実証されたが、非罹患肺組織における発現は検出できなかった(Wuerfel J.ら, Gene 2001, 262:35-41)。非小細胞肺がんでは、C4.4aを予後マーカーとして使用することができる。ここでは、高いC4.4a発現が予後不良と相関することを、臨床データが明確に示している(Hansen L.ら, Lung Cancer 2007, 58:260-266)。メラノーマでは、詳細な発現分析により、C4.4aはメラノサイトおよび母斑では発現しないが、原発性悪性メラノーマの約60%ならびにリンパ節および皮膚転移の100%で発現することが明らかになった(Seiter S.ら, J Invest Dermatol. 2001, 116(2):344-347)。さらにまた、C4.4a遺伝子発現のアップレギュレーションが、対応する隣接正常乳房組織と比較した乳がん組織(Fletcher G.C., Br. J. Cancer 2003, 88(4):579-585)、さまざまな乳がん細胞株、および正常尿路上皮と比較した尿路上皮がん(Smith B. A.ら, Cancer Res 2001, 61(4):1678-1685)に見いだされた。直腸結腸がん、膵がん、乳がんおよび前立腺がんのさまざまな腫瘍細胞株において、ポリクローナル抗体を使ったFACSにより、C4.4a発現が実証された。直腸結腸がん、膵がんおよび乳がん試料のIHC研究では、ヒト腫瘍細胞株上でのC4.4aの可変的なグリコシル化が、これらの抗体の結合を妨害する。それゆえに、これらのポリクローナル抗体の結合を可能にするには、C4.4aを少なくとも部分的に脱グリコシル化する必要がある。直腸結腸がん患者ではC4.4a発現が著しく優勢であり、C4.4aは細胞表面から脱落することで、予後血清腫瘍マーカーになる。浸潤先端部(invasive front)におけるC4.4aの発現は、直腸結腸がんの疾患再発に関する新規予後マーカーである(K. Konishiら, Cancer Science 2010)。可溶性血清C4.4aに対する診断用抗体は記述されていない(Paret C.ら, British Journal of Cancer 2007, 97:1146-1156)。正常組織では、C4.4a発現が皮膚ケラチノサイト、食道内皮細胞および胎盤細胞に限定されていることが(Wuerfel J.ら, Gene 2001, 262:35-41)、これを、腫瘍治療法の理想的なターゲットにしている。WO01/23553は、C4.4a発現またはC4.4a活性を減少させまたは阻害するC4.4a阻害剤(例えば抗C4.4a抗体)を、がんの処置に使用することを提案している。
【0004】
C4.aの正確な機能は分かっていないが、創傷治癒において遊走ケラチノサイトではアップレギュレートされる(Hansen L.ら, Biochem J. 2004, 380:845-857)。転移との関連およびuPARとの構造ホモロジーを考慮して、この分子は腫瘍細胞浸潤に、おそらくは細胞外マトリックスとの相互作用を介して、関与すると提案されている(Roesel M.ら, Oncogene 1998, 17(15):1989-2002;Paret C.ら, British Journal of Cancer 2007, 97:1146-1156)。潜在的リガンドは、ラミニン1および5、ガレクチン3(Paret C., Int. J. Cancer 2005, 115:724-733)、ならびにagr2およびagr3(Fletcher GC., Brit. J. Cancer 2003, 88:579-585)である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
免疫毒素がん療法の臨床成果に関する異種移植片マウスがんモデルの適中度は、治療用抗体が、それらのマウスオルソログとの交差反応性を欠くこと(これは正常組織への非特異的結合の減少をもたらす)によって制限されることが多い。一方、マウス抗体またはキメラ抗体で処置されている患者において形成される中和抗マウスFv抗体は、用量制限毒性をもたらすか、治療効力(therapeutic potency)の減損をもたらしうる。したがって、がん治療において特異的C4.4a発現の潜在能力を十分に活用するには、完全ヒト抗体またはヒト化抗体フォーマットでの高アフィニティーC4.4a結合という利点とマウス交差反応性とを併せ持つ、ターゲティング抗体が必要である。
【0006】
新規抗体に必要なさらにもう一つの特徴は、その表面上にC4.4aを発現する異なるがん細胞株への高アフィニティ結合である。C4.4aは腫瘍細胞上でさまざまにグリコシル化されている(Paret C.ら, British Journal of Cancer 2007 97:1146-1156)。したがって有効な抗C4.4a抗体は、例えば限定するわけではないがグリコシル化パターンの差異などといった、異なる形態のC4.4aの発現につながる個体差とは無関係に、異なる患者からの腫瘍細胞が提示するエピトープに結合しなければならない。
【0007】
C4.4aに高いアフィニティで結合して効率よく内部移行(internalize)し、好ましくは別の種からのC4.4aに対して交差反応性である、抗体、その抗原結合性抗体フラグメント、またはその変異体を、ここに提供する。抗体ベースのがん治療法、特にC4.4a発現腫瘍、例えば乳房、気道、脳、生殖器、消化管、尿路、眼、肝臓、皮膚、頭頸部、甲状腺、副甲状腺のがん、およびそれらの遠隔転移、さらにはリンパ腫、肉腫および白血病などの治療法も提供する。これらの治療法は、がん細胞への治療活性剤の送達を容易にする抗体、その抗原結合性抗体フラグメント、またはその変異体を使用することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の概要
本発明の目的は、GPIで細胞表面に固定されているC4.4aポリペプチドに対して、またはGPI部分の除去により患者の血清中で可溶性であるC4.4aポリペプチドに対して、高度に選択的な抗体もしくはその抗原結合性抗体フラグメントまたはその変異体であって、肺、結腸、乳房、子宮頸部、膵臓、腎臓、頭頸部のがんまたはメラノーマなどの疾患状態と関連するC4.4a発現を検出するための方法に使用するか、そのような疾患状態の処置に使用することができるものを提供することである。これらの目的を達成するために、C4.4a発現がん細胞株によって提示され、かつ/またはこれらの抗体によって高いアフィニティで結合される、異なる形態の、278アミノ酸の成熟ヒトC4.4aポリペプチド(配列番号1)中に存在するC4.4aエピトープに特異的に結合する、単離されたヒト抗体、ヒト化抗体もしくはキメラ抗体、またはその抗原結合性抗体フラグメントを提供することが、本発明の目的である。本明細書にいう異なる「形態」のC4.4aには、異なるグリコフォーム、異なるアイソフォーム、または異なる翻訳時修飾および翻訳後修飾を受けたC4.4aポリペプチドが含まれるが、これらに限るわけではない。本発明のもう一つの目的は、ヒトへの投与に関して安全である、抗体もしくはその抗原結合性抗体フラグメントまたはその変異体を提供することである。
【0009】
本発明のもう一つの目的は、ヒトC4.4aに結合し、かつ別の種のC4.4aに対して交差反応性である、抗体もしくはその抗原結合性抗体フラグメントまたはその変異体を提供することである。好ましくは、前記他の種は、齧歯類動物、例えばマウスまたはラットなどである。もっとも好ましくは、抗体もしくはその抗原結合性抗体フラグメントまたはその変異体は、ヒトC4.4aに結合し、かつマウスC4.4aに対して交差反応性である。
【0010】
本発明のもう一つの目的は、広範囲にわたる異なるC4.4a発現細胞株に結合する抗体もしくはその抗原結合性抗体フラグメントまたはその変異体を提供することである。本発明のもう一つの目的は、異なるC4.4a発現がん細胞または腫瘍細胞に結合する抗体またはその変異体を提供すること、および1つ以上の本発明の抗体またはその変異体を使ってC4.4a発現がん細胞に対する免疫エフェクター活性(例えばADCCまたはCDC)を引き出すことである。
【0011】
本発明のもう一つの目的は、C4.4a発現細胞への結合後に効率よく内部移行する抗体もしくはその抗原結合性抗体フラグメントまたはその変異体を提供することである。本発明の抗体は、既知の医薬と共投与してもよく、場合によっては、抗体そのものを修飾してもよい。例えば、効力を潜在的にさらに増加させるために、抗体を細胞毒性剤、免疫毒素、担毒体(toxophore)または放射性同位体にコンジュゲートすることができるだろう。
【0012】
本発明のもう一つの目的は、正常組織と比較してC4.4a発現量が上昇しているか、C4.4aが細胞表面から脱落して血清中で検出可能になっている、悪性状態または形成異常状態を診断するためのツールを構成する抗体を提供することである。検出可能なマーカーにコンジュゲートされた抗C4.4a抗体を提供する。好ましいマーカーは、放射性ラベル、酵素、発色団または発蛍光体である。
【0013】
本発明は、本発明の抗体またはその抗原結合性フラグメントをコードするポリヌクレオチド、本発明の抗体またはその抗原結合性フラグメントを発現する細胞、本発明の抗体またはその抗原結合性フラグメントを生産するための方法、本発明の抗体またはその抗原結合性フラグメントを使って形成異常細胞の成長を阻害する方法、および本発明の抗体またはその抗原結合性フラグメントを使ってがんを処置し検出する方法にも関係する。
【0014】
本発明は、それらが、a)ネイティブな、細胞表面に発現した、完全にグリコシル化されたC4.4aに、好ましくは、ネイティブな、細胞表面に発現した、完全にグリコシル化されたC4.4aのドメインS1に結合する点、b)マウスC4.4aに対して交差反応性である点、およびc)C4.4a発現細胞中に効率よく内部移行する点で、既存のC4.4a抗体(Paret C.ら, British Journal of Cancer 2007 97:1146-1156)と区別される抗体を提供する。本明細書では、本発明のこれらの目的および他の目的をさらに詳しく説明する。
【0015】
ある態様において、本発明は、ネイティブな、細胞表面に発現した、完全にグリコシル化されたC4.4aに特異的に結合する抗原結合領域、好ましくはネイティブな、細胞表面に発現した、完全にグリコシル化されたC4.4aポリペプチドのドメインS1(C4.4aのアミノ酸1〜85;配列番号1)に特異的に結合する抗原結合領域を含有する、単離された抗体またはその抗原結合性フラグメントを提供する。もう一つの実施形態において、抗体または抗体結合性フラグメントは、抗体または抗原結合性フラグメントが上述の細胞に結合すると、C4.4a発現細胞中に内部移行する。さらにもう一つの好ましい実施形態では、抗体または抗原結合性フラグメントが、C4.4aへの結合に関して、抗体M31-B01またはM20-D02 S-Aと競合する。さらにもう一つの好ましい実施形態では、抗体または抗原結合性フラグメントが、ヒトC4.4aへの結合に関して、抗体M31-B01またはM20-D02 S-Aと競合する。さらにもう一つの好ましい実施形態では、抗体または抗原結合性フラグメントが、ヒトおよび齧歯類C4.4aへの結合に関して、抗体M31-B01またはM20-D02 S-Aと競合し、さらにもう一つの好ましい実施形態では、齧歯類C4.4aがマウスC4.4aである。
【0016】
より好ましい一実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合性フラグメントが、配列番号5(H-CDR1)、配列番号9(H-CDR2)および配列番号13(H-CDR3)を含む重鎖抗原結合領域を含み、かつ配列番号17(L-CDR1)、配列番号21(L-CDR2)および配列番号25(L-CDR3)を含む軽鎖抗原結合領域を含む。
【0017】
より好ましい一実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合性フラグメントは、配列番号6(H-CDR1)、配列番号10(H-CDR2)および配列番号14(H-CDR3)を含む重鎖抗原結合領域を含み、かつ配列番号18(L-CDR1)、配列番号22(L-CDR2)および配列番号26(L-CDR3)を含む軽鎖抗原結合領域を含む。
【0018】
より好ましい一実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合性フラグメントは、配列番号7(H-CDR1)、配列番号11(H-CDR2)および配列番号15(H-CDR3)を含む重鎖抗原結合領域を含み、かつ配列番号19(L-CDR1)、配列番号23(L-CDR2)および配列番号27(L-CDR3)軽鎖抗原結合領域を含む。
【0019】
より好ましい一実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合性フラグメントは、配列番号8(H-CDR1)、配列番号12(H-CDR2)および配列番号16(H-CDR3)を含む重鎖抗原結合領域を含み、かつ配列番号20(L-CDR1)、配列番号24(L-CDR2)および配列番号28(L-CDR3)を含む軽鎖抗原結合領域を含む。
【0020】
より好ましい一実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合性フラグメントは、配列番号45(H-CDR1)、配列番号46(H-CDR2)および配列番号47(H-CDR3)を含む重鎖抗原結合領域を含み、かつ配列番号48(L-CDR1)、配列番号49(L-CDR2)および配列番号50(L-CDR3)を含む軽鎖抗原結合領域を含む。
【0021】
より好ましい一実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合性フラグメントは、配列番号55(H-CDR1)、配列番号56(H-CDR2)および配列番号57(H-CDR3)を含む重鎖抗原結合領域を含み、かつ配列番号58(L-CDR1)、配列番号59(L-CDR2)および配列番号60(L-CDR3)を含む軽鎖抗原結合領域を含む。
【0022】
より好ましい一実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合性フラグメントは、配列番号65(H-CDR1)、配列番号66(H-CDR2)および配列番号67(H-CDR3)を含む重鎖抗原結合領域を含み、かつ配列番号68(L-CDR1)、配列番号69(L-CDR2)および配列番号70(L-CDR3)を含む軽鎖抗原結合領域を含む。
【0023】
さらにもう一つのより好ましい実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合性フラグメントは、配列番号75(H-CDR1)、配列番号76(H-CDR2)および配列番号77(H-CDR3)を含む重鎖抗原結合領域を含み、かつ配列番号78(L-CDR1)、配列番号79(L-CDR2)および配列番号80(L-CDR3)を含む軽鎖抗原結合領域を含む。
【0024】
より好ましい一実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合性フラグメントは、配列番号85(H-CDR1)、配列番号86(H-CDR2)および配列番号87(H-CDR3)を含む重鎖抗原結合領域を含み、かつ配列番号88(L-CDR1)、配列番号89(L-CDR2)および配列番号90(L-CDR3)を含む軽鎖抗原結合領域を含む。
【0025】
より好ましい一実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合性フラグメントは、配列番号95(H-CDR1)、配列番号96(H-CDR2)および配列番号97(H-CDR3)を含む重鎖抗原結合領域を含み、かつ配列番号98(L-CDR1)、配列番号99(L-CDR2)および配列番号100(L-CDR3)を含む軽鎖抗原結合領域を含む。
【0026】
より好ましい一実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合性フラグメントは、配列番号105(H-CDR1)、配列番号106(H-CDR2)および配列番号107(H-CDR3)を含む重鎖抗原結合領域を含み、かつ配列番号108(L-CDR1)、配列番号109(L-CDR2)および配列番号110(L-CDR3)を含む軽鎖抗原結合領域を含む。
【0027】
より好ましい一実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合性フラグメントは、配列番号115(H-CDR1)、配列番号116(H-CDR2)および配列番号117(H-CDR3)を含む重鎖抗原結合領域を含み、かつ配列番号118(L-CDR1)、配列番号119(L-CDR2)および配列番号120(L-CDR3)を含む軽鎖抗原結合領域を含む。
【0028】
より好ましい一実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合性フラグメントは、配列番号125(H-CDR1)、配列番号126(H-CDR2)および配列番号127(H-CDR3)を含む重鎖抗原結合領域を含み、かつ配列番号128(L-CDR1)、配列番号129(L-CDR2)および配列番号130(L-CDR3)を含む軽鎖抗原結合領域を含む。
【0029】
より好ましい一実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合性フラグメントは、配列番号135(H-CDR1)、配列番号136(H-CDR2)および配列番号137(H-CDR3)を含む重鎖抗原結合領域を含み、かつ配列番号138(L-CDR1)、配列番号139(L-CDR2)および配列番号140(L-CDR3)を含む軽鎖抗原結合領域を含む。
【0030】
本発明の抗体はIgG(例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4)であることができ、一方、抗体フラグメントは、例えばFab、Fab'、F(ab')2またはscFvであることができる。したがって、本発明の抗体フラグメントは、本明細書において述べるように1つ以上の方法で挙動する抗原結合領域であってもよいし、そのような抗原結合領域を含有してもよい。
【0031】
本発明は、単離された核酸配列にも関係し、そのそれぞれは、C4.4aのエピトープに特異的な前述の抗体またはその抗原結合性フラグメントをコードすることができる。本発明の核酸は、抗体の、または抗原結合性抗体フラグメントの、組換え生産に適している。したがって本発明は、本発明の核酸配列を含有するベクターおよび宿主細胞にも関係する。
【0032】
本発明の組成物は治療的または予防的応用に使用することができる。本発明は、それゆえに、本発明の抗体(またはその抗原結合性フラグメント)と、そのための医薬上許容される担体または賦形剤とを含む医薬組成物を包含する。関連する一態様において、本発明は、C4.4a発現細胞の望ましくない存在と関連する障害または状態を処置するための方法を提供する。好ましい一実施形態では、前述の障害ががんである。そのような方法は、そのような処置を必要とする対象に、本明細書に記載されまたは本明細書において考慮される本発明の抗体を含有する医薬組成物の有効量を投与するステップを含む。
【0033】
本発明は、抗体ライブラリーを使って、C4.4aに特異的に結合するそのようなライブラリーの1つ以上のメンバーを単離するための説明書(instructions)も提供する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】サンドイッチ表面プラズモン共鳴分析を使って行われたエピトープ分類実験の結果を表す図。Yはレゾナンスユニットであり、Xは時間(単位:秒)である。本発明の抗体の一つをチップにコーティングした。AはC4.4aを添加した時間を示す。Bは本発明の他の抗体を添加した時間を示す。両抗体がC4.4aに同時に結合することはできず、少なくともオーバーラップしたエピトープが示された。
【図2】ヒトIgG1フォーマットでの組換えヒト(a)およびマウス(b)C4.4aに対する本発明の抗C4.4a抗体の結合に関するデータを提供する図。EC50値は、実施例4で述べるように、ELISAによって決定した。M31-B01(A)は、ヒトおよびマウスC4.4aにそれぞれ0.24および0.29nMのEC50で結合している。M20 B02 S-A(B)は、ヒトおよびマウスC4.4aにそれぞれ0.3および0.38nMのEC50で結合している。Xはlog nMであり、Yは360nmにおける吸光度である。
【図3】A549:hC4.4a(a)のようにhC4.4aでトランスフェクトされているか、NCI H322(b)、NCI H292(c)、H1975/BCRP(d)またはBxPC3(e)などの生来的にC4.4aを発現する腫瘍細胞株である、異なる腫瘍細胞株への本発明の抗体の特異的結合に関するデータを提供する図。M31-B01(白丸)およびM20-D02 S-A(黒丸)の結合に関するEC50値を(f)に要約する。IgG1アイソタイプ対照(黒三角)は細胞への結合を何も示さなかった。データは全てFACSタイトレーションによって生成した。Xは濃度(log nM)であり、Yは幾何平均(geomean)蛍光(×103)である。
【図4】(a)A549:hC4.4a細胞中へのフルオロフォア標識抗C4.4a抗体の特異的内部移行(internalization)に関するデータを提供する図。(b)陰性対照としての非トランスフェクトA549細胞に関するデータを提供する図。AはM31-B01(黒四角)、BはM20-D02 S-A(□)、CはhIgG1のアイソタイプ対照(星印)、Xは時間(単位:分)、Yは顆粒数/細胞[×103]である。どちらのC4.4a抗体も、C4.4aを保持する腫瘍細胞中に、特異的、効率的かつ迅速に内部移行する。 (c)および(d)は、A549:hC4.4a細胞中へのM31-B01の内部移行に関するデータを提供する図である。5分後(c)には細胞表面の弱い染色しか観察することができなかった。90分後(d)には、内部移行したM31-B01抗体を含有する強く着色したエンドソーム(これはpH依存性蛍光色素を保有している)が明確に見え、効果的な内部移行を示す。
【図5】ウェスタンブロッティングによって決定した、M31-B01およびM20-D02 S-Aが結合しているエピトープに関するデータを提供する図。A)は異なるC4.4a種のクーマシー(Coomassie)250染色SDS-PAGEを表す(レーン2+7 hC4.4a、レーン3+8 mC4.4a、レーン4+9 hC4.4aドメインS1-Fc-his6、レーン5+10 hC4.4aドメインS2-Fc-his6;レーン1、6および11は分子量マーカーを含む;レーン2〜5は非還元試料を含む;レーン6〜10は還元試料を含む)。B)およびC)は、A)の場合と同じ試料ロードによる各ウェスタンブロットを表す。B)は、検出抗体としてのM31-B01と共にインキュベートし、C)は、M20-D02 S-Aと共にインキュベートした。どちらの抗体も、コンフォメーショナルエピトープ(conformational epitope)を示す特異的な還元依存的染色を示す。ただし、どちらも、ヒトおよびマウス完全長C4.4aならびにヒトC4.4aドメインS1に結合するが、ヒトC4.4aドメインS2には結合しない。
【図6】xCELLigenceアナライザーによる測定で決定した、本発明の抗体(B01-3)によるインビトロでの腫瘍細胞増殖の阻害に関するデータを提供する図。A549:hC4.4a細胞を、E-プレートの単一ウェルにおいて、表示した時間、実施例15に記載する条件下で、100nMの非結合性IgG1アイソタイプ対照抗体(A)または100nMのB01-3(B)と共に、インキュベートした。Xは時間(単位:時間)であり、Yは細胞増殖の相対速度である。B01-3と共にインキュベートしたA549:hC4.4a細胞は、対照IgG1と比較して細胞増殖の減少を示す。
【図7】本発明の配列を表す図。
【発明を実施するための形態】
【0035】
発明の詳細な説明
本発明は、C4.4aに対して特異的であるかまたは高いアフィニティを有し、対照に治療的利益(therapeutic benefit)を送達することができる、新規抗体の発見に基づく。本発明の抗体は、ヒト抗体、ヒト化抗体またはキメラ抗体であることができ、本明細書にさらに詳しく説明する多くの状況において使用することができる。
【0036】
定義
「ヒト」抗体またはその抗原結合性フラグメントとは、ここでは、キメラ抗体ではなく(例えば「ヒト化」抗体ではなく)、非ヒト種に(全部または一部が)由来する抗体でもないものと定義される。ヒト抗体またはその抗原結合性フラグメントは、ヒトから得ることができるか、または合成ヒト抗体であることができる。「合成ヒト抗体」とは、ここでは、既知のヒト抗体配列の解析に基づく合成配列からインシリコ(in silico)で全部または一部が導き出された配列を有する抗体と定義される。ヒト抗体配列またはそのフラグメントのインシリコ設計は、例えばヒト抗体配列または抗体フラグメント配列のデータベースを解析し、そこから得られたデータを利用してポリペプチド配列を考案することなどによって、達成することができる。ヒト抗体またはその抗原結合性フラグメントの一例は、ヒト起源の抗体配列のライブラリーから単離された核酸によってコードされるものである(すなわち前述のライブラリーはヒト天然供給源から採取された抗体に基づく)。ヒト抗体の例には、Soederlinら, Nature Biotech. 2000, 18:852-856に記載されている抗体が含まれる。
【0037】
「ヒト化抗体」またはそのヒト化抗原結合性フラグメントは、本明細書においては、(i)非ヒト供給源(例えば異種免疫系を保持するトランスジェニックマウス)に由来し、ヒト生殖細胞系配列に基づく抗体、(ii)非ヒト抗体のフレームワーク領域のアミノ酸が遺伝子工学によってヒトアミノ酸配列に部分的に交換されているもの、または(iii)CDR移植されたものであって、可変ドメインのCDRが非ヒト起源のものであり、一方、可変ドメインの1つ以上のフレームワークはヒト起源のものであり、定常ドメイン(存在する場合)はヒト起源のものであるものと定義される。
【0038】
「キメラ抗体」またはその抗原結合性フラグメントは、本明細書においては、可変ドメインが非ヒト起源に由来し、定常ドメインの一部または全部がヒト起源に由来するものと定義される。
【0039】
本明細書において使用する用語「モノクローナル抗体」は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を指す。すなわち、その集団を構成する個々の抗体は、微量に存在するかもしれない変異、例えば天然の変異が考えられることを除けば、同一である。したがって「モノクローナル」という用語は、別個の抗体の混合物ではないという抗体の特徴を示している。典型的には異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物の各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に向けられる。モノクローナル抗体調製物は、その特異性だけでなく、それらが典型的には他の免疫グロブリンによって汚染されていないという点でも有利である。「モノクローナル」という用語は、何らかの特定の方法による抗体の生産を要求していると解釈すべきではない。モノクローナル抗体という用語は、特にキメラ抗体、ヒト化抗体およびヒト抗体を包含する。
【0040】
本明細書において、目的の抗原、例えば腫瘍関連ポリペプチド抗原ターゲット(ここではC4.4a)「に特異的に結合する」抗体、目的の抗原「に対して/に関して特異的な」抗体、または目的の抗原「を特異的に認識する」抗体とは、抗体が、その抗原を発現する細胞または組織をターゲティングする上で治療剤として有用であり、他のタンパク質と有意に交差反応しないか、前述の抗原ターゲットのオルソログおよび変異体(例えば変種型、スプライス変異体、またはタンパク質分解的切断型)以外のタンパク質と有意に交差反応しないような形で、その抗原に十分なアフィニティで結合するものである。特定のポリペプチドまたは特定のポリペプチドターゲット上のエピトープ「を特異的に認識する」または「に特異的に結合する」または「に対して/関して特異的な」という用語は、本明細書においては、例えば、その抗原に関して、約10-4M未満、あるいは約10-5M未満、あるいは約10-6M未満、あるいは約10-7M未満、あるいは約10-8M未満、あるいは約10-9M未満、あるいは約10-10M未満、あるいは約10-11M未満、あるいは約10-12M未満、またはそれ以下の一価(monovalent)KDを有する抗体またはその抗原結合性フラグメントによって示すことができる。抗体は、その抗体がある抗原と1つ以上の参照抗原とを識別できるのであれば、その抗原「に特異的に結合」し、その抗原「に対して/関して特異的」であり、またはその抗原「を特異的に認識」する。その最も一般的な形態において、「特異的結合」、「に特異的に結合する」、「に対して/関して特異的である」または「を特異的に認識する」とは、例えば次に挙げる方法の一つに従って決定される、目的の抗原と無関係な抗原とを識別する抗体の能力を指している。そのような方法には、ウェスタンブロット、ELISA試験、RIA試験、ECL試験、IRMA試験およびペプチドスキャンが含まれるが、これらに限るわけではない。例えば標準的なELISAアッセイを行うことができる。スコア化は標準的な発色法(例えば西洋ワサビペルオキシダーゼを持つ二次抗体およびテトラメチルベンジジンと過酸化水素)で行うことができる。一定のウェルにおける反応を、例えば450nmにおける光学密度によってスコア化する。典型的なバックグラウンド(=陰性反応)は0.1ODであり、また典型的な陽性反応は1ODであることができる。これは陽性/陰性差が、5倍以上、10倍以上、50倍以上、そして好ましくは100倍以上であることを意味する。典型的には、結合特異性の決定は、単一の参照抗原ではなく、例えば粉乳(milk powder)、BSA、トランスフェリンなど、約3〜5個の無関係な抗原のセットを使って行われる。
【0041】
「結合アフィニティ」は、ある分子の単一結合部位とその結合パートナーの間の非共有結合的相互作用の総和の強さを指す。別段の表示がない限り、本明細書にいう「結合アフィニティ」は、結合ペアのメンバー(例えば抗体と抗原)の間の1:1相互作用を反映する固有の結合アフィニティを指す。解離定数「KD」は、ある分子(例えば抗体)とその結合パートナー(例えば抗原)の間のアフィニティを記述するために、すなわち、リガンドが特定タンパク質にどのくらい強固に結合するかを記述するために、よく使用される。リガンド-タンパク質アフィニティは、それら2つの分子間の非共有結合的分子間相互作用による影響を受ける。アフィニティは、本明細書に記載する方法を含め、当技術分野において知られる一般的な方法によって測定することができる。ある実施形態では、本発明による「KD」または「KD値」が、実施例3に従って、Biacore T100計器(GE Healthcare Biacore, Inc.)を用いる表面プラズモン共鳴アッセイによって測定される。簡単に述べると、抗体をCM5センサーチップ上に、間接的捕捉試薬・抗ヒトIgG Fcを介して固定化した。「Human Antibody Capture Kit」(BR-1008-39、GE Healthcare Biacore, Inc.)の試薬を、製造者の説明どおりに使用した。1セルあたり約5000レゾナンスユニット(RU)のモノクローナルマウス抗ヒトIgG(Fc)抗体を固定化した。抗C4.4抗体を注入して約200〜600RUの捕捉レベルに到達させた。さまざまな濃度のヒトまたはマウスC4.4aを固定化抗C4.4a抗体上に注入した。インライン参照セル補正と、それに続くバッファー試料サブトラクション後に、センサーグラム(sensogram)を作成した。Biacore Evaluation Softwareを使ってセンサーグラムを一次1:1結合モデルに当てはめることによって得られた会合速度定数(kon)と解離速度定数(koff)の比に基づいて、解離平衡定数(KD)を算出した。他の適切な装置は、BIACORE(登録商標)2000、BIACORE(登録商標)3000(BIAcore, Inc.、ニュージャージー州ピスカタウェイ)またはProteOn XPR36計器(Bio-Rad Laboratories, Inc.)である。
【0042】
本明細書において使用する用語「抗体」は、免疫グロブリン分子、好ましくは4本のポリペプチド鎖、すなわち典型的にはジスルフィド結合によって相互に連結されている2本の重(H)鎖および2本の軽(L)鎖で構成されるものを指すものとする。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではVHと略記する)および重鎖定常領域で構成される。重鎖定常領域は、例えば3つのドメインCH1、CH2およびCH3を含むことができる。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではVLと略記する)および軽鎖定常領域で構成される。軽鎖定常領域は1つのドメイン(CL)で構成される。VH領域およびVL領域は、さらに、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより良く保存された領域がところどころに挿入された、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変領域に細分することができる。各VHおよびVLは、典型的には、アミノ末端からカルボキシル末端へと例えば次の順序で配置された3つのCDRおよび4つまでのFRで構成される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。
【0043】
本明細書において使用する用語「相補性決定領域」(CDR:例えばCDR1、CDR2、およびCDR3)は、抗原結合にとってその存在が必要な、抗体可変ドメインのアミノ酸残基を指す。各可変ドメインは、典型的には、CDR1、CDR2およびCDR3と同定される3つのCDR領域を有する。各相補性決定領域は、Kabatが定義した「相補性決定領域」からのアミノ酸残基(例えば軽鎖可変ドメインにおける24〜34(L1)、50〜56(L2)および89〜97(L3)ならびに重鎖可変ドメインにおける31〜35(H1)、50〜65(H2)および95〜102(H3)付近の残基;Kabatら「Sequences of Proteins of Immulological Interest」第5版、米国公衆衛生局、国立衛生研究所、メリーランド州ベセスダ(1991))および/または「超可変ループ」からの残基(例えば軽鎖可変ドメインにおける26〜32(L1)、50〜52(L2)および91〜96(L3)、ならびに重鎖可変ドメインにおける26〜32(H1)、53〜55(H2)および96〜101(H3)付近の残基;ChothiaおよびLesk, J Mol Biol 196:901-917 (1987))を含みうる。いくつかの例では、相補性決定領域は、Kabatに従って定義されるCDR領域と超可変ループの両方からのアミノ酸を含むことができる。
【0044】
無傷抗体は、その重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、異なる「クラス」に割り当てることができる。無傷抗体には5つの主要クラス、すなわちIgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMがあり、これらのうちのいくつかは、「サブクラス」(アイソタイプ)、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、およびIgA2へと、さらに分割することができる。抗体の異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれα、δ、ε、γ、およびμと呼ばれる。免疫グロブリンの異なるクラスのサブユニット構造および三次元立体配置はよく知られている。本明細書にいう抗体は、従来から知られている抗体およびその機能的フラグメントである。
【0045】
抗体/免疫グロブリンの「機能的フラグメント」または「抗原結合性抗体フラグメント」は、ここでは、抗原結合領域を保っている抗体/免疫グロブリンのフラグメント(例えばIgGの可変領域)と定義される。抗体の「抗原結合領域」は、典型的には、抗体の1つ以上の超可変領域、例えばCDR1、CDR2、および/またはCDR3領域に見いだされるが、可変「フレームワーク」領域も、CDRに足場を提供することなどにより、抗原結合に重要な役割を果たすことができる。好ましくは、「抗原結合領域」は、少なくとも可変軽(VL)鎖のアミノ酸残基4〜103と、可変重(VH)鎖のアミノ酸残基5〜109とを含み、より好ましくはVLのアミノ酸残基3〜107とVHのアミノ酸残基4〜111とを含み、特に好ましいのは、完全なVL鎖およびVH鎖(VLのアミノ酸位置1〜109とVHのアミノ酸位置1〜113;WO 97/08320による番号付与)である。本発明における使用にとって好ましい免疫グロブリンクラスはIgGである。
【0046】
本発明の「機能的フラグメント」または「抗原結合性抗体フラグメント」には、Fab、Fab'、F(ab')2、およびFvフラグメント;ダイアボディ(diabody);単一ドメイン抗体(DAb)、線状抗体;単鎖抗体分子(scFv);および抗体フラグメントから形成される多重特異性(例えば二重特異性および三重特異性)抗体(C. A. K Borrebaeck編 (1995) Antibody Engineering (Breakthroughs in Molecular Biology), Oxford University Press;R. KontermannおよびS. Duebel編 (2001) Antibody Engineering (Springer Laboratory Manual), Springer Verlag)。「多重特異性」または「多官能性」抗体以外の抗体は、その結合部位のそれぞれが同一であると理解される。F(ab')2またはFabは、CH1ドメインとCLドメイン間に生じる分子間ジスルフィド相互作用が最小限になるか完全に除去されるように、操作することができる。
【0047】
本発明の抗体は、多数の健常ボランティアの抗体から単離されたアミノ酸配列に基づく組換え抗体ライブラリーに由来してもよい。n-CoDeR(登録商標)技術を使って、完全ヒトCDRを新しい抗体分子に組み換える。このユニークな組換えプロセスにより、ライブラリーは、ヒト免疫系によって天然に作り出されたであろう抗体よりも多様な抗体を含有することが可能になる。
【0048】
本明細書にいう、異なる「形態」の抗原、例えばC4.4aとは、ここでは、異なる翻訳時修飾および翻訳後修飾、例えば限定するわけではないが、一次C4.4a転写産物のスプライシングの相違、グリコシル化の相違、および翻訳後タンパク質分解的切断(proteolytic cleavage)の相違に起因する異なるタンパク質分子と定義される。
【0049】
本明細書において使用する用語「エピトープ」は、免疫グロブリンまたはT細胞受容体に特異的に結合する能力を有する任意のタンパク質決定基を包含する。エピトープ決定基は通常、アミノ酸または糖側鎖などの分子またはそれらの組み合わせの化学的に活性な表面配置(surface grouping)からなり、通常は特異的な三次元構造特徴と、特異的な電荷特徴とを有している。2つの抗体は、当業者に周知の方法のいずれかによって、一方の抗体が競合結合アッセイにおいてもう一つの抗体と競合することが示されるのであれば、「同じエピトープに結合する」といわれる。
【0050】
「単離された」抗体は、同定され、それを発現する細胞の構成要素から分離された抗体である。細胞の夾雑構成要素は、抗体の診断的または治療的使用を妨害するであろう物質であり、酵素、ホルモン、および他のタンパク質性または非タンパク質性溶質を含みうる。好ましい実施形態では、抗体が、(1)例えばローリー(Lowry)法、UV-Vis分光法、SDS-キャピラリーゲル電気泳動(例えばCaliper LabChip GXII、GX 90またはBiorad Bioanalyzer装置によるもの)などによる決定で、抗体の95重量%を上回るまで、さらに好ましい実施形態では99重量%を上回るまで精製されるか、(2)少なくとも15残基のN末端アミノ酸配列または内部アミノ酸配列を得るのに十分な程度にまで精製されるか、または(3)還元条件下または非還元条件下に、クーマシーブルーを使用するか、好ましくは銀染色を使用して、SDS-PAGEで単一バンドになるまで精製される。単離された天然抗体には、組換え細胞内で原位置(in situ)にある抗体が包含される。というのも、その抗体の天然環境の構成要素のうち、少なくとも1つは存在しないだろうからである。しかし通常は、単離された抗体は、少なくとも1つの精製ステップによって調製されるであろう。
【0051】
「抗体依存性細胞性細胞傷害」または「ADCC」とは、一定の細胞傷害性細胞(例えばNK細胞、好中球、およびマクロファージ)上に存在するFcガンマ受容体(FcγR)に結合した分泌Igによって、これらの細胞傷害性エフェクター細胞が、抗原を保持するターゲット細胞に特異的に結合し、次いでそのターゲット細胞を例えば細胞毒によって殺すことが可能になる、細胞傷害性の一形態を指す。目的の抗体のADCC活性を評価するには、インビトロADCCアッセイ、例えば米国特許第5,500,362号または第5,821,337号または米国特許第6,737,056号(Presta)に記載されているものを行うことができる。そのようなアッセイに役立つエフェクター細胞にはPBMCおよびNK細胞が含まれる。
【0052】
「補体依存性細胞傷害」または「CDC」とは、補体の存在下でのターゲット細胞の溶解を指す。古典的補体経路の活性化は、それぞれのコグネイト抗原に結合している抗体(適当なサブクラスのもの)に補体系の第1構成要素(C1q)が結合することによって開始される。補体活性化を評価するには、例えばGazzano-Santoroら, J. Immunol. Methods 202:163 (1996)に記載されているようなCDCアッセイを行うことができる。改変されたFc領域アミノ酸配列を有し、C1q結合の増加または減少を伴うポリペプチド変異体(変異型Fc領域を持つポリペプチド)が、例えば米国特許第6,194,551号B1およびWO 1999/51642に記載されている。
【0053】
イムノコンジュゲート(immunoconjugate)という用語(互換的に「抗体-薬物コンジュゲート」または「ADC」ともいう)は、化学療法剤、薬物、成長阻害剤、毒素(例えば細菌、真菌、植物、動物起源のタンパク質毒素、酵素的に活性な毒素、またはそのフラグメント)、または放射性同位元素(すなわちラジオコンジュゲート(radioconjugate))などといった1つ以上の細胞毒性剤にコンジュゲートされた抗体を指す。イムノコンジュゲートは、がんの処置において、細胞毒性剤、すなわち細胞を殺すか、その成長または増殖を阻害する薬物を、局所的に送達するために使用されてきた(例えばLiuら, Proc Natl. Acad. Sci. (1996), 93, 8618-8623)。イムノコンジュゲートは、非コンジュゲート薬物の全身性投与が正常細胞および/または正常組織に許容できないレベルの毒性をもたらしうる場合に、腫瘍への薬物部分の標的送達(targeted delivery)と、そこでの細胞内蓄積を可能にする。抗体-毒素コンジュゲートに使用される毒素には、ジフテリア毒素などの細菌毒素、リシン(ricin)などの植物毒素、ゲルダナマイシンなどの小分子毒素が含まれる。毒素は、その細胞傷害効果を、チューブリン結合、DNA結合、またはトポイソメラーゼ阻害を含む機序によって発揮しうる。
【0054】
参照ポリヌクレオチド配列または参照ポリペプチド配列に関して、それぞれ「パーセント(%)配列同一性」とは、最大のパーセント配列同一性が得られるように配列をアラインメントし、必要であればギャップを導入した後に、それぞれ参照ポリヌクレオチド配列または参照ポリペプチド配列中のそれぞれ核酸残基またはアミノ酸残基と同一である候補配列中のそれぞれ核酸残基またはアミノ酸残基のパーセンテージと定義される。保存的置換は配列同一性の一部とはみなされない。好ましいのはギャップなし(un-gapped)のアラインメントである。パーセントアミノ酸配列同一性を決定するためのアラインメントは、当技術分野における技法の範囲に含まれるさまざまな方法で、例えばBLAST、BLAST-2、ALIGNまたはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなどの公的に利用可能なコンピュータソフトウェアを使って、達成することができる。当業者は、比較される配列の全長にわたって最大のアラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含めて、配列をアラインメントするための適当なパラメータを決定することができる。
【0055】
本発明の抗体
本発明は、抗C4.4a抗体を提供することによってC4.4a陽性がん細胞の成長および新生物疾患の進行を阻害するための方法に関する。29kDaのヒトC4.4aポリペプチド(配列番号1またはそのフラグメント)に特異的に結合する抗体、その抗原結合性抗体フラグメント、ならびに抗体およびフラグメントの変異体が提供される。好ましい一実施形態では、抗体、その抗原結合性フラグメント、または変異体が、C4.4aポリペプチドの細胞外ドメインS1に特異的に結合する。C4.4aポリペプチドを、本明細書においては、「C4.4a」という。
【0056】
もう一つの実施形態において、抗体またはその抗原結合性フラグメントがC4.4a発現細胞に結合すると、抗体またはその抗原結合性フラグメントは、前述の細胞中に内部移行する。さらにもう一つの好ましい実施形態において、抗体またはその抗原結合性フラグメントは、C4.4aへの結合に関して、抗体M31-B01またはM20-D02 S-Aと競合する。さらにもう一つの好ましい実施形態において、抗体またはその抗原結合性フラグメントは、ヒトC4.4aへの結合に関して、抗体M31-B01またはM20-D02 S-Aと競合する。さらにもう一つの好ましい実施形態において、抗体またはその抗原結合性フラグメントは、ヒトおよび齧歯類C4.4aへの結合に関して、抗体M31-B01またはM20-D02 S-Aと競合し、さらにもう一つの好ましい実施形態では、齧歯類C4.4aがマウスC4.4aである。
【0057】
さらにもう一つの好ましい実施形態において、抗体またはその抗原結合性フラグメントは、表7に示す少なくとも1つの(好ましくは対応する)CDR配列と少なくとも50%、55%、60% 70%、80%、90%、または95%同一である重鎖または軽鎖CDR配列を含むか、または表7に示すVHまたはVL配列とそれぞれ少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、92%または95%同一である可変重鎖または軽鎖配列を含む。
【0058】
さらにもう一つの好ましい実施形態では、抗体またはその抗原結合性フラグメントが、それぞれ抗体M31-B01またはM20-D02 S-Aの少なくとも1つの(好ましくは対応する)CDR配列と少なくとも50%、55%、60% 70%、80%、90%、または95%同一である重鎖および/または軽鎖CDR配列を含む。
【0059】
さらにもう一つの好ましい実施形態では、抗体またはその抗原結合性フラグメントが、それぞれ抗体M31-B01またはM20-D02 S-Aの(好ましくは対応する)重鎖および/または軽鎖CDR配列と少なくとも50%、55%、60% 70%、80%、90%、または95%同一である重鎖および/または軽鎖CDR配列を含む。
【0060】
さらにもう一つの好ましい実施形態では、抗体またはその抗原結合性フラグメントが、抗体M31-B01の重鎖CDR2およびCDR3配列と少なくとも50%、55%、60% 70%、80%、90%、または95%同一である重鎖CDR2およびCDR3配列、ならびに抗体M31-B01の軽鎖CDR1およびCDR3配列と少なくとも50%、55%、60% 70%、80%、90%、または95%同一である軽鎖CDR1およびCDR3配列を含む。さらにもう一つの好ましい実施形態では、抗体またはその抗原結合性フラグメントが、抗体M20-D02 S-Aの重鎖CDR2およびCDR3配列と少なくとも50%、55%、60% 70%、80%、90%、または95%同一である重鎖CDR2およびCDR3配列、ならびに抗体M20-D02 S-Aの軽鎖CDR1およびCDR3配列と少なくとも50%、55%、60% 70%、80%、90%、または95%同一である軽鎖CDR1およびCDR3配列を含む。
【0061】
さらにもう一つの好ましい実施形態では、抗体またはその抗原結合性フラグメントが、表7または表4に開示する好ましくは抗体M31-B01またはM20-D02 S-AのVH配列と少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、92%または95%同一である可変重鎖配列を含む。さらにもう一つの好ましい実施形態では、抗体またはその抗原結合性フラグメントが、表7または表3に開示する好ましくは抗体M31-B01またはM20-D02 S-AのVL配列と少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、92%または95%同一である可変軽鎖配列を含む。
【0062】
さらにもう一つの好ましい実施形態では、抗体またはその抗原結合性フラグメントが、それぞれ抗体M31-B01またはM20-D02 S-AのVHおよびVL配列と少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、92%または95%同一である可変重鎖および軽鎖配列を含む。
【0063】
さらにもう一つの好ましい実施形態では、抗体またはその抗原結合性フラグメントが、表15に示すM31-B01またはM20-D02 S-Aから導き出された(好ましくは対応する)CDRコンセンサス配列に準拠する重鎖および軽鎖CDR配列を含む。さらにもう一つの好ましい実施形態は、コンセンサス配列である配列番号297(CDR H1)、配列番号298(CDR H2)および配列番号299(CDR H3)によって表される対応する重鎖CDR配列に準拠する重鎖CDR配列と、コンセンサス配列である配列番号300(CDR L1)、配列番号22(CDR L2)および配列番号301(CDR L3)によって表される対応する軽鎖CDR配列に準拠する軽鎖CDR配列とを含むか、コンセンサス配列である配列番号302(CDR H1)、配列番号303(CDR H2)および配列番号304(CDR H3)によって表される対応する重鎖CDR配列に準拠する重鎖CDR配列と、コンセンサス配列である配列番号305(CDR L1)、配列番号306(CDR L2)および配列番号307(CDR L3)によって表される対応する軽鎖CDR配列に準拠する軽鎖CDR配列とを含む、抗体またはその抗原結合性フラグメントである。
【0064】
さらにもう一つの好ましい実施形態では、抗体または抗原結合性抗体フラグメントが、表7または表3および表4に開示する、または好ましくは表7または表3および表4に示す抗体の、少なくとも1つの(好ましくは対応する)重鎖および/または軽鎖CDR配列を含む。さらにもう一つの好ましい実施形態では、抗体または抗原結合性抗体フラグメントが、表7または表3および表4に開示する、あるいは好ましくは表7または表3および表4に示す抗体の、少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたは6つの(好ましくは対応する)重鎖および軽鎖CDR配列を含む。さらにもう一つの好ましい実施形態では、抗体または抗原結合性抗体フラグメントが、表7または表3および表4に示す抗体の重鎖または軽鎖CDR1、CDR2またはCDR3配列、表7または表3および表4に示す抗体の重鎖または軽鎖CDR1およびCDR2配列、表7または表3および表4に示す抗体の重鎖または軽鎖CDR1およびCDR3配列、表 または表3および表4に示す抗体の重鎖または軽鎖CDR2およびCDR3配列、表 または表3および表4に示す抗体の重鎖または軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列を含む。さらにもう一つの好ましい実施形態では、抗体または抗原結合性抗体フラグメントが、表7または表3および表4に示す抗体の重鎖CDR配列CDR1およびCDR2ならびに軽鎖CDR配列CDR1、CDR2、CDR3を含む。さらにもう一つの好ましい実施形態では、抗体または抗原結合性抗体フラグメントが、表7または表3および表4に示す抗体の重鎖および軽鎖CDR1、CDR2またはCDR3配列、表 または表3および表4に示す抗体の重鎖および軽鎖CDR1およびCDR2配列、表7または表3および表4に示す抗体の重鎖および軽鎖CDR1およびCDR3配列、表7または表3および表4に示す抗体の重鎖および軽鎖CDR2およびCDR3配列、表7または表3および表4に示す抗体の重鎖および軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列を含む。さらにもう一つの好ましい実施形態では、抗体または抗原結合性抗体フラグメントが、表7または表3および表4に示す抗体の重鎖および軽鎖CDR配列を含む。
【0065】
さらにもう一つの実施形態では、抗体または抗原結合性抗体フラグメントが、表7または表3および表4に開示するVHおよび/またはVL配列を含む。さらにもう一つの好ましい実施形態では、抗体または抗原結合性抗体フラグメントが、表7または表3および表4に示す抗体のVHおよびVL配列を含む。
【0066】
好ましい一実施形態では、本発明の抗体または抗原結合性抗体フラグメントがモノクローナル抗体である。さらにもう一つの好ましい実施形態では、本発明の抗体または抗原結合性抗体フラグメントが、ヒト、ヒト化またはキメラ抗体である。
【0067】
本発明において考慮される抗体または抗原結合性抗体フラグメントの変異体は、C4.4aに対する抗体または抗原結合性抗体フラグメントの結合活性が維持されている分子である。好ましい一実施形態では、変異体は、C4.4aへの結合に関して、表7に示す抗体と、好ましくは抗体M31-B01またはM20-D02 S-Aと、競合する。
【0068】
この文書では、全体を通して、次に挙げる本発明の好ましい抗体に言及する:「M31-B01」、「M20-D02 S-A」、「M60-G03」および「M36-H02」、「B01-3」、「B01-5」、「B01-7」、「B01-10」、「B01-12」、「D02-4」、「D02-6」、「D02-7」、「D02-11」および「D02-13」。
【0069】
M31-B01は、配列番号41(DNA)/配列番号33(タンパク質)に対応する可変重鎖領域および配列番号37(DNA)/配列番号29(タンパク質)に対応する可変軽鎖領域を含む抗体を表す。
【0070】
M20-D02 S-Aは、配列番号42(DNA)/配列番号34(タンパク質)に対応する可変重鎖領域および配列番号38(DNA)/配列番号30(タンパク質)に対応する可変軽鎖領域を含む抗体を表す。
【0071】
M60-DG03は、配列番号43(DNA)/配列番号35(タンパク質)に対応する可変重鎖領域および配列番号39(DNA)/配列番号31(タンパク質)に対応する可変軽鎖領域を含む抗体を表す。
【0072】
M36-H02は、配列番号44(DNA)/配列番号36(タンパク質)に対応する可変重鎖領域および配列番号40(DNA)/配列番号32(タンパク質)に対応する可変軽鎖領域を含む抗体を表す。
【0073】
B01-3は、配列番号53(DNA)/配列番号51(タンパク質)に対応する可変重鎖領域および配列番号54(DNA)/配列番号52(タンパク質)に対応する可変軽鎖領域を含む抗体を表す。
【0074】
B01-5は、配列番号63(DNA)/配列番号61(タンパク質)に対応する可変重鎖領域および配列番号64(DNA)/配列番号62(タンパク質)に対応する可変軽鎖領域を含む抗体を表す。
【0075】
B01-7は、配列番号73(DNA)/配列番号71(タンパク質)に対応する可変重鎖領域および配列番号74(DNA)/配列番号72(タンパク質)に対応する可変軽鎖領域を含む抗体を表す。
【0076】
B01-10は、配列番号83(DNA)/配列番号81(タンパク質)に対応する可変重鎖領域および配列番号84(DNA)/配列番号82(タンパク質)に対応する可変軽鎖領域を含む抗体を表す。
【0077】
B01-12は、配列番号93(DNA)/配列番号91(タンパク質)に対応する可変重鎖領域および配列番号94(DNA)/配列番号92(タンパク質)に対応する可変軽鎖領域を含む抗体を表す。
【0078】
D02-4は、配列番号103(DNA)/配列番号101(タンパク質)に対応する可変重鎖領域および配列番号104(DNA)/配列番号102(タンパク質)に対応する可変軽鎖領域を含む抗体を表す。
【0079】
D02-6は、配列番号113(DNA)/配列番号111(タンパク質)に対応する可変重鎖領域および配列番号114(DNA)/配列番号112(タンパク質)に対応する可変軽鎖領域を含む抗体を表す。
【0080】
D02-7は、配列番号123(DNA)/配列番号121(タンパク質)に対応する可変重鎖領域および配列番号124(DNA)/配列番号122(タンパク質)に対応する可変軽鎖領域を含む抗体を表す。
【0081】
D02-11は、配列番号133(DNA)/配列番号131(タンパク質)に対応する可変重鎖領域および配列番号134(DNA)/配列番号132(タンパク質)に対応する可変軽鎖領域を含む抗体を表す。
【0082】
D02-13は、配列番号143(DNA)/配列番号141(タンパク質)に対応する可変重鎖領域および配列番号144(DNA)/配列番号142(タンパク質)に対応する可変軽鎖領域を含む抗体を表す。
【0083】
もう一つの態様において、本発明は、配列番号1に示すアミノ酸配列を有するC4.4aの1つ以上の領域に対して、特異的に結合しかつ/または高いアフィニティを有する抗原結合領域を持つ抗体または抗原結合性フラグメントを提供する。抗体または抗原結合性フラグメントは、アフィニティ測定値が250nM未満(抗体または抗原結合性フラグメントの一価アフィニティ)である場合に、ある抗原に対して「高いアフィニティ」を有するという。本発明の抗体または抗原結合領域は、ヒトC4.4aに対する一価アフィニティとして決定される250nM未満のアフィニティ、好ましくは100nM未満、より好ましくは25nM未満、さらに好ましくは11nM未満のアフィニティで、ヒトC4.4aに結合することができる。例えば、C4.4aに対する本発明の抗体のアフィニティは、約220.0nMまたは1nM(抗体または抗原結合性フラグメントの一価アフィニティ)であることができる。
【0084】
表1に、直接固定化したヒトまたはマウスC4.4aにおける表面プラズモン共鳴(Biacore)によって決定された本発明の代表的な抗体の解離定数を要約する。
【0085】
[表1]表面プラズモン共鳴により抗C4.4a IgG1に関して決定された一価解離定数
【表1】
【0086】
スキャッチャード解析と組み合わせた蛍光活性化細胞選別法(FACS)による細胞ベースのアフィニティ決定には、IgG1フォーマットを使用した。図3f)は、トランスフェクトされたC4.4aを発現するA549腫瘍細胞および内在的にC4.4aを発現する腫瘍細胞での、代表的なIgG抗体の結合力を表す。表8に、トランスフェクトされたマウスCHO-S:mC4.4a細胞および内在的にC4.4aを発現するNCI H292腫瘍細胞での代表的なIgG抗体の結合力(EC50)を要約する。
【0087】
[表8]FACSによって抗C4.4a IgG1について決定されたEC50値
【表2−1】
【0088】
IgG1は、FACSによって測定されるアフィニティ測定値が100nM未満(IgGの見かけ上のアフィニティ)である場合に、ある抗原に対して「高いアフィニティ」を有するという。本発明の二価抗体または抗原結合性フラグメントは、好ましくは、100nM未満のアフィニティで、より好ましくは50nM未満、さらに好ましくは10nM未満のアフィニティで、ヒトC4.4aに結合することができる。さらに好ましいのは、ヒトC4.4aに対するIgGの見かけ上のアフィニティとして決定して、5nM未満のアフィニティで、より好ましくは1nM未満のアフィニティで、C4.4aに結合する二価抗体である。例えば、C4.4aに対する本発明の抗体の見かけ上のアフィニティは、図3fに示すようにFACS分析で決定すると、異なる腫瘍細胞株において、約4.3nMまたは0.03nMでありうる。
【0089】
本発明の抗体または抗原結合性フラグメントは、C4.4a発現腫瘍細胞内へのその最大半量内部移行時間(time of half maximal internalization)(t1/2)が180分により短いか、より好ましくは120分より短く、さらに好ましくは90分より短い場合に、「効率よく」内部移行する。さらに好ましいのは、実施例6に記載するプロトコールで決定される60分以下の最大半量内部移行時間(t1/2)を有する抗体または抗原結合性フラグメントであり、さらに好ましいのは、50分未満、または35分未満である。表9に、実施例6に記載するプロトコールによって決定された、本発明の代表的抗体の内部移行時間を要約する。本発明の内部移行可能な抗体または抗原結合性フラグメントは、抗体-薬物コンジュゲート(ADC)のターゲティング部分として好適である。抗体または抗原結合性フラグメントは、C4.4a発現細胞中に化合物、好ましくは細胞毒性剤を送達するためのインビトロ法またはインビボ法において好適である。
【0090】
[表9]
【表2−2】
【0091】
一部の実施形態では、抗体、その抗原結合性フラグメント、もしくはその誘導体、またはそれをコードする核酸が、単離される。単離された生物学的構成要素(例えば核酸分子または抗体などのタンパク質)は、その構成要素が天然に存在する生物の細胞中の他の生物学的構成要素、例えば他の染色体および染色体外DNAおよびRNA、タンパク質および細胞小器官などから、実質的に分離されているか精製されているものである。「単離された」核酸およびタンパク質には、Sambrookら, 1989(Sambrook, J., Fritsch, E. F.およびManiatis, T. (1989)「Molecular Cloning: A laboratory manual」Cold Spring Harbor Laboratory Press, 米国コールドスプリングハーバー)および Robert K. Scopesら 1994「Protein Purification-Principles and Practice」(Springer Science and Business Media LLC)に記載の標準的な精製法によって精製された核酸およびタンパク質が含まれる。この用語は、宿主細胞における組換え発現によって製造される核酸およびタンパク質、ならびに化学合成された核酸も包含する。
【0092】
抗体生成
完全ヒトN-CoDeR抗体ファージディスプレイライブラリーを使って、全細胞パンニングとタンパク質パンニングの組み合わせにより、そしてまた特別なツールを開発することによって、高アフィニティC4.4a特異的ヒトモノクローナル抗体を単離した。これらのツールおよび方法には、ヒトC4.4a発現組換え細胞株、マウスC4.4a発現細胞株、組換えヒトおよびマウスC4.4a、ならびに細胞表面にディスプレイされたC4.4aに優先的に結合しマウスC4.4aに対して交差反応性である抗体を同定することができるパンニング手法およびスクリーニングアッセイの開発が含まれる。
【0093】
ファージディスプレイ技術(PDT)において、3つの非従来型アプローチを組み合わせることにより、がん細胞表面マーカーC4.4aに対する抗体を開発した。第1に、完全長GPI固定型のヒトまたはマウスタンパク質、それぞれ(配列番号3)および(配列番号4)をコードするプラスミドを、CHO-S細胞およびA549腫瘍細胞に安定トランスフェクションして、それぞれヒトCHO-S:hC4.4a、マウスCHO-S:mC4.4aおよびヒトA549:hC4.4a細胞株を得ることによって、膜結合型のヒトおよびマウスC4.4aを発現する組換え細胞株を構築した。第2に、これらの組換え細胞株と乳がん細胞株MCF-7とを使って細胞表面選択を行った。親細胞のエピトープに結合するFabフラグメントの選択を避けるために、CHO-S細胞または非トランスフェクトA549細胞による事前吸着(pre-adsorption)を含めた。組換え可溶性精製ヒトC4.4a、組換え可溶性精製マウスC4.4aを使って追加の選択を行った。第3に、A549:hC4.4a全細胞ならびにCHO-SC4.4a細胞でのパンニングにおいて得られたファージアウトプットの逐次スクリーニングを可能にするスクリーニング方法を開発した。これら特別な方法の組み合わせにより、ユニークな抗体「M31-B01」、「M20-D02 S-A」、「M60-G03」、および「M36-H02」の単離が可能になった。
【0094】
これらのユニークな抗体を、ELISAにおけるその結合アフィニティ、可溶性C4.4aへのBIAcore結合、可溶性C4.4a上の異なるエピトープを認識するその能力、およびBIAcoreおよびFACSによって評価したマウスC4.4aとの交差反応能力、ならびに細胞ベースのアッセイにおける内部移行能力によって、さらに特徴づけた。内部移行アッセイにより、蛍光標識した抗C4.4a抗体の内部移行を、時間分解的に定量測定した。
【0095】
ペプチド変異体
本発明の抗体または抗原結合性フラグメントは、ここに提供する具体的ペプチド配列に限定されない。むしろ本発明は、これらのポリペプチドの変異体も包含する。本開示ならびに従来から利用できる技術および参考文献を参照して、当業者は、本明細書に開示する抗体の機能的変異体を製造し、試験し、利用することができると共に、C4.4aに結合する能力を有する変異体が本発明の範囲に包含されることを理解するであろう。
【0096】
変異体には、例えば、本明細書に開示するペプチド配列と比較して改変された相補性決定領域(CDR)(超可変)および/またはフレームワーク(FR)(可変)ドメイン/位置を少なくとも1つは有している抗体を含めることができる。この概念をより良く説明するために、抗体構造を以下に簡単に説明する。
【0097】
抗体は2本のペプチド鎖で構成され、それぞれが1つ(軽鎖)または3つ(重鎖)の定常ドメインと可変領域(VL、VH)とを含有し、このうち後者は、いずれも、4つのFR領域と、その間に配置された3つのCDRから構成されている。抗原結合部位は1つ以上のCDRによって形成されるが、FR領域はCDRに構造的フレームワークを提供しており、それゆえに、抗原結合において重要な役割を果たしている。CDRまたはFR領域中のアミノ酸残基を1つ以上改変することによって、当業者は、変異したまたは多様化した抗体配列をルーチンに生成させることができ、それらを、例えば新しい性質または改良された性質を求めて、抗原に対してスクリーニングすることができる。
【0098】
表3(VH)および表4(VL)では、本発明の一定の抗体についてCDR領域およびFR領域を詳述し、所与の位置におけるアミノ酸を互いに比較すると共に、対応するコンセンサス配列と比較している。
[表3]VL配列
【表3】
[表4]VH配列
【表4】
【0099】
本発明のさらにもう一つの好ましい実施形態は、CDR配列が表7に示すように選択されている抗体またはその抗原結合性フラグメントである。
【0100】
本発明のさらにもう一つの好ましい実施形態は、VHおよびVL配列が表7に示すように選択されている抗体または抗原結合性フラグメントである。当業者は、表3、4および7中のデータを使って、本発明の範囲に包含されるペプチド変異体を設計することができる。変異体は1つ以上のCDR領域内のアミノ酸を変化させることによって構築することが好ましく、変異体が1つ以上の改変されたフレームワーク領域を持っていてもよい。フレームワーク領域内に改変を加えることもできる。例えばペプチドFRドメインが改変されていてもよく、そこでは、生殖細胞系配列と比較して残基に変動がある。
【0101】
新規抗体と、表3および4に掲載する対応コンセンサス配列との比較に関していえば、変化させることができる候補残基には、例えば、Gene DP47のVHIIIと比較してM20-D02 S-Aの可変重鎖の残基42が含まれる。あるいは、当業者は、例えばKnappik A.ら, JMB 2000, 296:57-86に記載の手法などを使って本明細書に開示するアミノ酸配列を、その抗体と同じクラスの既知配列と比較することにより、同じ分析を行うこともできるだろう。
【0102】
さらにまた、変異体は、ある抗体を、抗体中の1つ以上のアミノ酸残基(好ましくは1つ以上のCDR中のアミノ酸残基)を多様化することによる最適化の出発点として使用し、その結果生じた一群の抗体変異体を、改良された性質を伴う変異体を求めてスクリーニングすることによって取得することもできる。特に好ましいのは、VLおよび/またはVHのCDR3中の1つ以上のアミノ酸残基の多様化である。多様化は、トリヌクレオチド変異誘発(trinucleotide mutagenesis)(TRIM)技術(Virnekaes B.ら, Nucl. Acids Res. 1994, 22: 5600)を使って一群のDNA分子を合成することによって行うことができる。抗体またはその抗原結合性フラグメントには、例えば限定するわけではないが半減期の改変につながる修飾(例えばFc部分の修飾またはPEGなどのさらなる分子の取り付け)またはADCCもしくはCDC活性の改変につながる修飾などといった修飾/変異を伴う分子が含まれる。
【0103】
保存的アミノ酸変異体
本明細書に記載する抗体ペプチド配列の全体的分子構造を保存しているポリペプチド変異体を作製することができる。個々のアミノ酸の性質を考えれば、当業者には、いくつかの合理的な置換がわかるであろう。アミノ酸置換、すなわち「保存的置換」は、例えば、関与する残基の極性、電荷、溶解度、疎水性、親水性、および/または両親媒性の類似性に基づいて行うことができる。
【0104】
例えば、(a)非極性(疎水性)アミノ酸には、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、およびメチオニンが含まれ;(b)極性中性アミノ酸には、グリシン、セリン、スレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、およびグルタミンが含まれ;(c)陽性荷電(塩基性)アミノ酸には、アルギニン、リジン、およびヒスチジンが含まれ;(d)陰性荷電(酸性)アミノ酸には、アスパラギン酸およびグルタミン酸が含まれる。置換は、典型的には、(a)〜(d)のグループ内で行うことができる。また、グリシンおよびプロリンは、αヘリックスを破壊するその能力に基づいて、互いに置換することができる。また、アラニン、システイン、ロイシン、メチオニン、グルタミン酸、グルタミン、ヒスチジンおよびリジンなどといった一定のアミノ酸は、αヘリックス中に見いだされることの方が多く、一方、バリン、イソロイシン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファンおよびスレオニンは、βプリーツシート中に見いだされることの方が多い。グリシン、セリン、アスパラギン酸、アスパラギン、およびプロリンはターン中によく見いだされる。いくつかの好ましい置換は、次に挙げるグループ内で行うことができる:(i)SおよびT;(ii)PおよびG;ならびに(iii)A、V、LおよびI。既知の遺伝暗号、組換え技法および合成DNA技法を考慮すれば、当業者は、保存的アミノ酸変異体をコードするDNAを容易に構築することができる。ある特定の例では、配列番号33〜36中のアミノ酸位置3を、QからEに変化させることができる。
【0105】
本明細書において、2つのポリペプチド配列間の「配列同一性」は、それらの配列の間で同一であるアミノ酸のパーセンテージを示す。「配列相同性」は、同一であるか保存的アミノ酸置換を示すアミノ酸のパーセンテージを示す。
【0106】
本発明のDNA分子
本発明は、本発明の抗体またはその抗原結合性フラグメントをコードするDNA分子にも関係する。これらの配列には、配列番号37〜44、53、54、63、64、73、74、83、84、93、94、103、104、113、114、123、124、133、134、143、144および308〜345に示すDNA分子が含まれるが、これらに限るわけではない。
【0107】
本発明のDNA分子は本明細書に開示する配列に限定されるわけではなく、その変異体も包含する。本発明に包含されるDNA変異体は、ハイブリダイゼーションにおけるその物理的性質に言及することによって記述することができる。DNAを使ってその相補体(complement)を同定することができ、DNAは二本鎖であることから、核酸ハイブリダイゼーション技法を使って、その等価物またはホモログを同定することができることは、当業者にはわかるであろう。ハイブリダイゼーションが100%未満の相補性で起こりうることもわかるであろう。しかし、条件を適当に選択すれば、ハイブリダイゼーション技法を使って、DNA配列を特定のプローブに対するその構造的関連性に基づいて弁別することができる。そのような条件に関する指針については、Sambrookら, 1989(前掲書)およびAusubelら, 1995(Ausubel, F. M., Brent, R., Kingston, R. E., Moore, D. D., Sedman, J. G., Smith, J. A.およびStruhl, K.編 (1995)「Current Protocols in Molecular Biology」ニューヨーク:John Wiley and Sons)を参照されたい。
【0108】
2つのポリヌクレオチド配列間の構造類似性は、それら2つの配列が互いにハイブリダイズするであろう条件の「ストリンジェンシー」の関数として表現することができる。本明細書において使用する用語「ストリンジェンシー」は、その条件がハイブリダイゼーションを嫌う度合を指す。ストリンジェントな条件はハイブリダイゼーションを強く嫌い、そのような条件下では、構造的に最も近縁の分子だけが互いにハイブリダイズするであろう。逆に、非ストリンジェント条件は、より低度の構造的関連性を示す分子のハイブリダイゼーションにとって有利になる。それゆえに、ハイブリダイゼーションストリンジェンシーは、2つの核酸配列の構造的関係と直接的に相関する。次の関係は、ハイブリダイゼーションと関連性とを相関させるのに役立つ(式中、Tmは核酸二重鎖の融解温度である):
a.Tm=69.3+0.41(G+C)%
b.二重鎖DNAのTmは、ミスマッチ塩基対の数が1%増加するごとに1℃低下する。
c.(Tm)μ2 −(Tm)μ1=18.5log10μ2/μ1
式中、μ1およびμ2は2つの溶液のイオン強度である。
【0109】
ハイブリダイゼーションストリンジェンシーは、総DNA濃度、イオン強度、温度、プローブサイズおよび水素結合を破壊する薬剤の存在などといった数多くの因子の関数である。ハイブリダイゼーションを促進する因子には、高いDNA濃度、高いイオン強度、低い温度、長いプローブサイズ、および水素結合を破壊する薬剤の不在が含まれる。ハイブリダイゼーションは、典型的には、「結合」段階と「洗浄」段階の二段階で行われる。
【0110】
まず最初に、結合段階では、ハイブリダイゼーションに有利な条件下で、プローブをターゲットに結合させる。この段階では、通常、温度を変えることによって、ストリンジェンシーが制御される。高ストリンジェンシーの場合、短い(<20nt)オリゴヌクレオチドプローブを使用するのでない限り、温度は通常、65℃〜70℃である。代表的なハイブリダイゼーション溶液は、6×SSC、0.5%SDS、5×デンハルト溶液および100μgの非特異的キャリアDNAを含む。Ausubelら, section 2.9, supplement 27 (1994)参照。もちろん、異なっているが機能的には等価なバッファー条件も、数多く知られている。関連性の程度が低い場合は、低い温度を選ぶことができる。低ストリンジェンシー結合温度は約25℃〜40℃である。中ストリンジェンシーは少なくとも約40℃〜約65℃未満である。高ストリンジェンシーは少なくとも約65℃である。
【0111】
次に、過剰のプローブを洗浄によって除去する。よりストリンジェントな条件が通常、適用されるのは、この段階である。したがって、ハイブリダイゼーションによって関連性を決定する際に最も重要なのは、この「洗浄」段階である。洗浄溶液は、典型的には、より低い塩濃度を含有する。模範的な中ストリンジェンシー溶液の一つは2×SSCおよび0.1%SDSを含有する。高ストリンジェンシー洗浄溶液は、(イオン強度で)約0.2×SSC未満の当量(equivalent)を含有し、好ましいストリンジェント溶液は約0.1×SSCを含有する。さまざまなストリンジェンシーに関連する温度は「結合」に関して上に述べたものと同じである。また、洗浄溶液は、典型的には、洗浄中に何度も交換される。例えば、典型的な高ストリンジェンシー洗浄条件は、55℃で30分間、2回洗浄すること、および60℃で15分間、3回洗浄することを含む。
【0112】
本発明の一実施形態は、(i)本発明の抗体または抗原結合性フラグメント、表7に示すCDR配列をコードする、または(ii)表7に示す可変軽鎖および重鎖配列をコードする、単離された核酸配列であるか、または(iii)本発明の抗体または抗原結合性フラグメント、表7に示すCDR配列、または表7に示す可変軽鎖および重鎖配列をコードする核酸配列を含む、単離された核酸配列である。
【0113】
本発明の変異体の一特定例では、配列番号37〜40における核酸位置7、または配列番号41〜44における位置16をCからGに置換し、それによってコドンをCACからGAGへと変化させることができる。
【0114】
機能的に等価な変異体
本発明の範囲に包含されるさらにもう一種類のDNA変異体は、それらがコードする産物を参照して記述することができる。これらの機能的に等価なポリヌクレオチドは、遺伝暗号の縮重ゆえに、配列番号5〜36、45〜50、55〜60、65〜70、75〜80、85〜90、95〜100、105〜110、115〜120、125〜130、135〜140に見いだされるものと同じペプチド配列をコードするという事実を特徴とする。
【0115】
ここで提供されるDNA分子の変異体をいくつかの異なる方法で構築できることはわかる。例えば、それらは、完全な合成DNAとして構築することができる。20〜約150ヌクレオチドの範囲のオリゴヌクレオチドを効率よく合成する方法は、種々、利用することができる。Ausubelら, section 2.11, Supplement 21 (1993)参照。Khoranaら, J. Mol. Biol. 72:209−217 (1971)によって初めて報告された方法で、オーバーラップしたオリゴヌクレオチドを合成し、アセンブルすることができる。Ausubelら, 前掲書, Section 8.2も参照されたい。好ましくは、適当なベクターへのクローニングが容易になるように、遺伝子の5'端および3'端にて操作(engineer)された好都合な制限部位を持つ合成DNAが設計される。
【0116】
ここに示すとおり、変異体を生成させる方法は、本明細書に開示するDNAの一つから出発し、次に部位特異的変異誘発を行うことである。Ausubelら, 前掲書, chapter 8, Supplement 37 (1997)参照。典型的な一方法では、ターゲットDNAを一本鎖DNAバクテリオファージ媒体中にクローニングする。一本鎖DNAを単離し、所望のヌクレオチド改変を含有するオリゴヌクレオチドとハイブリダイズさせる。相補鎖を合成し、二本鎖ファージを宿主中に導入する。その結果生じる子孫の一部は所望の変種(mutant)を含有し、そのことは、DNA配列決定を使って確認することができるであろう。また、子孫ファージが所望の変種になる確率を増加させるさまざまな方法を利用することができる。これらの方法は当業者にはよく知られており、そのような変種を生成させるためのキットが市販されている。
【0117】
組換えDNAコンストラクトおよび発現
本発明はさらに、本発明のヌクレオチド配列の1つ以上を含む組換えDNAコンストラクトを提供する。本発明の組換えコンストラクトは、プラスミド、ファージミド、ファージまたはウイルスベクターなどのベクターと共に使用され、そこに本発明の抗体またはその抗原結合性フラグメントをコードするDNA分子が挿入される。
【0118】
ここで提供される抗体、その抗原結合部分または誘導体は、宿主細胞における軽鎖および重鎖またはその一部をコードする核酸配列の組換え発現によって製造することができる。抗体、その抗原結合部分または誘導体を組換え発現させるために、軽鎖および/もしくは重鎖またはその一部をコードするDNAフラグメントを保有する1つ以上の組換え発現ベクターで、軽鎖および重鎖が宿主細胞中で発現するように、宿主細胞をトランスフェクトすることができる。標準的な組換えDNA法、例えばSambrook, FritschおよびManiatis編「Molecular Cloning; A Laboratory Manual」第2版、ニューヨーク州コールドスプリングハーバー (1989)、Ausubel, F.M.ら編「Current Protocols in Molecular Biology」Greene Publishing Associates (1989)およびBossらによる米国特許第4,816,397号に記載されている方法などを使って、重鎖および軽鎖をコードする核酸を製造しかつ/または取得し、これらの核酸を組換え発現ベクター中に組込み、そのベクターを宿主細胞中に導入する。
【0119】
また、重鎖および/または軽鎖の可変領域をコードする核酸配列は、例えば、完全長抗体鎖もしくはFabフラグメントをコードする核酸、またはscFvに変換することができる。VLまたはVHをコードするDNAフラグメントは、もう一つのDNAフラグメント(例えば抗体定常領域またはフレキシブルなリンカーをコードするもの)に(2つのDNAフラグメントによってコードされるアミノ酸配列がインフレームになるように)作動的に連結することができる。ヒト重鎖および軽鎖定常領域の配列は当技術分野では知られており(例えばKabat, E. A.ら (1991)「Sequences of Proteins of Immunological Interest」第5版、米国保険社会福祉省、NIH Publication No. 91-3242参照)、これらの領域を包含するDNAフラグメントは、標準的なPCR増幅によって得ることができる。
【0120】
scFvをコードするポリヌクレオチド配列を作製するために、VL領域とVH領域とがフレキシブルなリンカーで接合されている連続した単鎖タンパク質としてVHおよびVL配列が発現しうるように、VHコード核酸およびVLコード核酸を、フレキシブルなリンカーをコードするもう一つのフラグメントと作動的に連結することができる(例えばBirdら (1988) Science 242:423-426;Hustonら (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883;McCaffertyら, Nature (1990) 348:552-554参照)。
【0121】
抗体、その抗原結合部分または誘導体を発現させるには、標準的な組換えDNA発現法を使用することができる(例えばGoeddel;Gene Expression Technology. Methods in Enzymology 185, Academic Press, カリフォルニア州サンディエゴ (1990)参照)。例えば、所望のポリペプチドをコードするDNAを発現ベクター中に挿入し、次にそれを適切な宿主細胞中にトランスフェクトすることができる。適切な宿主細胞は原核細胞および真核細胞である。原核宿主細胞の例は、例えば細菌であり、真核宿主細胞の例は、酵母、昆虫または哺乳動物細胞である。いくつかの実施形態では、重鎖をコードするDNAと軽鎖をコードするDNAが、別々のベクターに挿入される。別の実施形態では、重鎖および軽鎖をコードするDNAが、同じベクターに挿入される。調節配列の選択を含む発現ベクターの設計が、宿主細胞の選択、所望するタンパク質の発現レベル、および発現が構成的であるか誘導性であるかなどといった因子によって左右されることは理解される。
【0122】
細菌発現
細菌での使用に役立つ発現ベクターは、所望のタンパク質をコードする構造DNA配列を、適切な翻訳開始シグナルおよび翻訳終結シグナルと共に、機能的プロモーターに対して作動可能な読み枠(reading phase)で挿入することによって構築される。ベクターは、ベクターの維持が保証されるように、また所望であれば、宿主内での増幅がもたらされるように、1つ以上の表現型選択可能マーカーと複製起点とを含むであろう。形質転換に適した原核宿主には、大腸菌(E. coli)、枯草菌(Bacillus subtilis)、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)、およびシュードモナス(Pseudomonas)属、ストレプトミセス(Streptomyces)属、およびスタフィロコッカス(Staphylococcus)属のさまざまな種が含まれる。
【0123】
細菌ベクターは、例えばバクテリオファージベース、プラスミドベース、またはファージミドベースのベクターであることができる。これらのベクターは、典型的には周知のクローニングベクターpB322(ATCC37017)の要素を含有する市販のプラスミドに由来する選択可能マーカーおよび細菌複製起点を含有することができる。適切な宿主株を形質転換し、その宿主株を適当な細胞密度まで成長させた後、選択したプロモーターを、適当な手段(例えば温度シフトまたは化学的誘導)によって抑制解除/誘導し、細胞をさらにある期間培養する。細胞を典型的には遠心分離によって収穫し、物理的または化学的手段によって破壊し、その結果得られた粗抽出物を、さらなる精製のためにとっておく。
【0124】
細菌系では、発現させるタンパク質の使用目的に応じて、いくつかの発現ベクターを、有利に選択することができる。例えば、抗体を生成させるために、またはペプチドライブラリーをスクリーニングするために、前述のタンパク質を大量に生産しようとする場合は、例えば、精製が容易な融合タンパク質産物の高レベルな発現を指示するベクターが望ましいであろう。本発明の抗体またはその抗原結合性フラグメントには、天然精製産物、化学合成手法の生成物、ならびに例えば大腸菌、枯草菌、ネズミチフス菌などを含む原核宿主や、シュードモナス属、ストレプトミセス属およびスタフィロコッカス属のさまざまな種から(好ましくは大腸菌細胞から)組換え技法によって生産された産物が含まれる。
【0125】
哺乳類発現および精製
哺乳動物宿主細胞発現のための好ましい調節配列には、哺乳動物細胞における高レベルのタンパク質発現を指示するウイルス要素、例えば、サイトメガロウイルス(CMV)(CMVプロモーター/エンハンサーなど)、シミアンウイルス40(SV40)(SV40プロモーター/エンハンサーなど)、アデノウイルス(例えばアデノウイルス主要後期プロモーター(AdMLP))およびポリオーマに由来するプロモーターおよび/またはエンハンサーなどが含まれる。ウイルス調節要素のさらなる説明およびその配列については、例えばStinskiによるU.S.5,168,062、BellらによるU.S.4,510,245、およびSchaffnerらによるU.S.4,968,615を参照されたい。組換え発現ベクターは複製起点および選択可能マーカーも含むことができる(例えばAxelらによるU.S.4,399,216、4,634,665およびU.S.5,179,017を参照されたい)。適切な選択可能マーカーには、そのベクターが導入されている宿主細胞にG418、ハイグロマイシンまたはメトトレキサートなどの薬物に対する耐性を付与する遺伝子が含まれる。例えばジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)遺伝子は、メトトレキサートに対する耐性を付与し、neo遺伝子はG418に対する耐性を付与する。
【0126】
宿主細胞への発現ベクターのトランスフェクションは、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿、およびDEAE-デキストラン、リポフェクションまたはポリカチオンによるトランスフェクションなどといった標準的技法を使って行うことができる。
【0127】
ここで提供される抗体、その抗原結合部分または誘導体を発現させるのに適した哺乳動物宿主細胞には、チャイニーズハムスター卵巣(CHO細胞)(例えばR.J.KaufmanおよびP.A.Sharp (1982) Mol.Biol.159:601-621に記載されているようにDHFR選択可能マーカーと共に使用されるUrlaubおよびChasin (1980) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4216-4220に記載のdhfr- CHO細胞を含む)、NSO骨髄腫細胞、COS細胞およびSP2細胞が含まれる。一部の実施形態では、発現したタンパク質が宿主細胞を成長させる培養培地中に分泌されるように、発現ベクターが設計される。抗体の一過性トランスフェクション/発現は、例えばDurocherら (2002) Nucl. Acids Res. Vol 30 e9によるプロトコールに従って達成することができる。抗体の安定トランスフェクション/発現は、例えばUCOE系のプロトコール(T. Bentonら (2002) Cytotechnology 38:43-46)に従って達成することができる。
【0128】
抗体、その抗原結合部分または誘導体は、標準的なタンパク質精製法を使って、培養培地から回収することができる。
【0129】
本発明の抗体またはその抗原結合性フラグメントは、例えば限定するわけではないが、硫酸アンモニウム沈殿またはエタノール沈殿、酸抽出、プロテインAクロマトグラフィー、プロテインGクロマトグラフィー、アニオンまたはカチオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィーおよびレクチンクロマトグラフィーなどといった周知の方法によって、組換え細胞培養物から回収し精製することができる。高速液体クロマトグラフィー(「HPLC」)も精製に使用することができる。例えばColligan「Current Protocols in Immunology」または「Current Protocols in Protein Science」(John Wiley & Sons, ニューヨーク州ニューヨーク)(1997-2001)の例えばChapter 1、4、6、8、9、10を参照されたい(これらは、それぞれ引用により、全て本明細書に組み込まれる)。
【0130】
本発明の抗体またはその抗原結合性フラグメントには、天然精製産物、化学合成手法の生成物、ならびに例えば酵母、高等植物、昆虫および哺乳動物細胞を含む真核宿主(好ましくは哺乳動物細胞)から組換え技法によって生産された産物が含まれる。組換え生産手法に使用する宿主に依存して、本発明の抗体はグリコシル化体であることも、非グリコシル化体であることもでき、グリコシル化体は好ましい。そのような方法は、多くの標準的な実験マニュアル、例えばSambrook, 前掲書, Section 17.37〜17.42;Ausubel, 前掲書, Chapter 10、12、13、16、18および20などに記載されている。
【0131】
治療法
治療法は、本発明によって考慮される抗体またはその抗原結合性フラグメントの治療有効量を、処置を必要とする対象に投与することを伴う。「治療有効」量とは、ここでは、単回投与として、または複数回投与レジメンに従って、単独で、または他の薬剤との組み合わせで、対象の処置区域におけるC4.4a陽性細胞を枯渇させるのに十分な量であって、有害な状態の軽減につながるが、毒物学的には認容できるような、抗体または抗原結合性フラグメントの量と定義される。対象は、ヒトまたは非ヒト動物(例えばウサギ、ラット、マウス、イヌ、サルまたは他の下等霊長類)であることができる。
【0132】
本発明の抗体またはその抗原結合性フラグメントは、既知の医薬(medicament)と同時投与することができ、場合によっては、抗体そのものを修飾してもよい。例えば抗体は、効力を潜在的にさらに高めるために、免疫毒素または放射性同位体にコンジュゲートすることができるだろう。
【0133】
本発明の抗体は、唯一の医薬剤として投与するか、1つ以上の追加治療剤と組み合わせて(この場合、その組合せは許容できない有害作用を引き起こさない)投与することができる。この併用療法には、本発明の抗体と1つ以上の追加治療剤とを含有する単一の医薬剤形(pharmaceutical dosage formulation)の投与が含まれると共に、本発明の抗体と各追加治療剤とをそれぞれ別々の医薬剤形で投与することも含まれる。例えば、本発明の抗体および治療剤を錠剤またはカプセル剤などの単一の経口投与組成物に入れて一緒に患者に投与するか、各薬剤を別々の剤形で投与することができる。
【0134】
別々の剤形を使用する場合は、本発明の抗体および1つ以上の追加治療剤を、本質的に同時に(例えば並行して(concurrently))投与するか、別々に時間をずらして(例えば逐次的に)投与することができる。
【0135】
特に、本発明の抗体は、他の抗腫瘍剤、例えばアルキル化剤、代謝拮抗物質、植物由来の抗腫瘍剤、ホルモン療法剤、トポイソメラーゼ阻害剤、カンプトテシン誘導体、キナーゼ阻害剤、標的薬(targeted drug)、抗体、インターフェロンおよび/または生物学的応答調整物質、抗血管形成化合物、および他の抗腫瘍薬との固定された組み合わせまたは個別の組み合わせで、使用することができる。これに関して、本発明の抗体と組み合わせて使用することができる二次剤(secondary agent)の例を以下に列挙するが、これらに限るわけではない。
【0136】
アルキル化剤には、ナイトロジェンマスタードN-オキシド、シクロホスファミド、イホスファミド、チオテパ、ラニムスチン、ニムスチン、テモゾロミド、アルトレタミン、アパジコン、ブロスタリシン、ベンダムスチン、カルムスチン、エストラムスチン、ホテムスチン、グルフォスファミド、マフォスファミド、ベンダムスチン、およびミトラクトールなどがあるが、これらに限るわけではない。また、白金配位アルキル化化合物には、シスプラチン、カルボプラチン、エプタプラチン、ロバプラチン、ネダプラチン、オキサリプラチン、およびサトラプラチンなどがあるが、これらに限るわけではない。
【0137】
代謝拮抗物質には、メトトレキサート、6-メルカプトプリンリボシド、メルカプトプリン、5-フルオロウラシル(単独、またはロイコボリンとの組み合わせ)、テガフール、ドキシフルリジン、カルモフール、シタラビン、シタラビンオクホスファート、エノシタビン、ゲムシタビン、フルダラビン、5-アザシチジン、カペシタビン、クラドリビン、クロファラビン、デシタビン、エフロルニチン、エチニルシチジン、シトシンアラビノシド、ヒドロキシ尿素、メルファラン、ネララビン、ノラトレキシド、オクホスファイト(ocfosfite)、プレメトレキセド二ナトリウム(disodium premetrexed)、ペントスタチン、ペリトレキソール、ラルチトレキセド、トリアピン、トリメトレキセート、ビダラビン、ビンクリスチン、およびビノレルビンなどがあるが、これらに限るわけではない。
【0138】
ホルモン療法剤には、エクセメスタン、ルプロン、アナストロゾール、ドキセルカルシフェロール、ファドロゾール、フォルメスタン、11-βヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ1阻害剤、17-αヒドロキシラーゼ/17,20リアーゼ阻害剤、例えば酢酸アビラテロン、5-αレダクターゼ阻害剤、例えばフィナステリドおよびエプリステリド、抗エストロゲン薬、例えばクエン酸タモキシフェンおよびフルベストラント、トレルスター(Trelstar)、トレミフェン、ラロキシフェン、ラソフォキシフェン、レトロゾール、抗アンドロゲン薬、例えばビカルタミド、フルタミド、ミフェプリストン、ニルタミド、カソデックス、および抗プロゲステロンならびにそれらの組み合わせなどがあるが、これらに限るわけではない。
【0139】
植物由来の抗腫瘍物質には、例えば有糸分裂阻害剤、例えばサゴピロン、イクサベピロンおよびエポチロンBなどのエポチロン類、ビンブラスチン、ビンフルニン、ドセタキセル、およびパクリタキセルから選択されるものなどがある。
【0140】
細胞毒性トポイソメラーゼ阻害剤には、アクラルビシン、ドキソルビシン、アモナフィド、ベロテカン、カンプトテシン、10-ヒドロキシカンプトテシン、9-アミノカンプトテシン、ジフロモテカン、イリノテカン、トポテカン、エドテカリン、エピムビシン(epimbicin)、エトポシド、エキサテカン、ジマテカン(gimatecan)、ラルトテカン(lurtotecan)、ミトキサントロン、ピラムビシン(pirambicin)、ピクサントロン、ルビテカン、ソブゾキサン、タフルポシド、およびそれらの組み合わせなどがあるが、これらに限るわけではない。
【0141】
免疫薬(immunologicals)には、インターフェロン、例えばインターフェロンα、インターフェロンα-2a、インターフェロンα-2b、インターフェロンβ、インターフェロンγ-1aおよびインターフェロンγ-n1、ならびに他の免疫増進剤、例えばL19-IL2および他のIL2誘導体、フィルグラスチム、レンチナン、シゾフィラン、セラシス(TheraCys)、ウベニメクス、アルデスロイキン、アレムツズマブ、BAM-002、ダカルバジン、ダクリズマブ、デニロイキン、ゲムツズマブ、オゾガマイシン、イブリツモマブ、イミキモド、レノグラスチム、レンチナン、メラノーマワクチン(Corixa)、モルグラモスチム、サルグラモスチム、タソネルミン、テクロイキン(tecleukin)、チマラシン(thymalasin)、トシツモマブ、ビムリジン(Vimlizin)、エプラツズマブ、ミツモマブ(mitumomab)、オレゴボマブ、ペムツモマブ(pemtumomab)、およびプロベンジなどがある。
【0142】
生物学的応答調整物質は、生体の防御機構、または組織細胞の生存、成長もしくは分化などといった生物学的応答を調整して、それらが抗腫瘍活性を持つように指示する薬剤である。そのような薬剤には、例えばクレスチン、レンチナン、シゾフィラン、ピシバニール、プロミューン(ProMune)、およびウベニメクスなどがある。
【0143】
抗血管形成化合物には、アシトレチン、アフリベルセプト、アンジオスタチン、アプリジン(aplidine)、アセンタール(asentar)、アキシチニブ、ベバシズマブ、ブリバニブアラニネート、シレングタイド(cilengtide)、コンブレタスタチン、エンドスタチン、フェンレチニド、ハロフジノン、パゾパニブ、ラニビズマブ、レビマスタット(rebimastat)、レセンチン(recentin)、レゴラフェニブ(regorafenib)、レモバブ(removab)、レブリミド、ソラフェニブ、スクアラミン、スニチニブ、テラチニブ(telatinib)、サリドマイド、ウクライン、バタラニブ、およびビタキシンなどがあるが、これらに限るわけではない。
【0144】
抗体には、トラスツズマブ、セツキシマブ、ベバシズマブ、リツキシマブ、チシリムマブ、イピリムマブ、ルミリキシマブ、カツマキソマブ、アタシセプト(atacicept)、オレゴボマブ、およびアレムツズマブがあるが、これらに限るわけではない。
【0145】
VEGF阻害剤、例えばソラフェニブ、レゴラフェニブ、ベバシズマブ、スニチニブ、レセンチン、アキシチニブ、アフリベルセプト、テラチニブ、ブリバニブアラニネート、バタラニブ、パゾパニブ、およびラニビズマブ。
【0146】
EGFR(HER1)阻害剤、例えばセツキシマブ、パニツムマブ、ベクチビックス、ゲフィチニブ、エルロチニブ、およびザクチマ(Zactima)。
【0147】
HER2阻害剤、例えばラパチニブ、トラツズマブ(tratuzumab)、およびペルツズマブなど。
【0148】
mTOR阻害剤、例えばテムシロリムス、シロリムス/ラパマイシン、およびエベロリムスなど。
【0149】
c-Met阻害剤。
【0150】
PI3KおよびAKT阻害剤。
【0151】
CDK阻害剤、例えばロスコビチンおよびフラボピリドール。
【0152】
紡錘体集合チェックポイント阻害剤および標的抗有糸分裂剤、例えばPLK阻害剤、オーロラ(Aurora)阻害剤(例えばヘスペラジン(Hesperadin)、チェックポイントキナーゼ阻害剤、およびKSP阻害剤。
【0153】
HDAC阻害剤、例えばパノビノスタット、ボリノスタット、MS275、ベリノスタット、およびLBH589など。
【0154】
HSP90およびHSP70阻害剤。
【0155】
プロテアソーム阻害剤、例えばボルテゾミブおよびカーフィルゾミブ。
【0156】
MEK阻害剤およびRaf阻害剤を含むセリン/スレオニンキナーゼ阻害剤、例えばソラフェニブ。
【0157】
ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤、例えばティピファルニブなど。
【0158】
チロシンキナーゼ阻害剤、例えばダサチニブ、ニロチビブ(nilotibib)、レゴラフェニブ、ボスチニブ、ソラフェニブ、ベバシズマブ、スニチニブ、セジラニブ、アキシチニブ、アフリベルセプト、テラチニブ、イマチニブメシラート、ブリバニブアラニネート、パゾパニブ、ラニビズマブ、バタラニブ、セツキシマブ、パニツムマブ、ベクチビックス、ゲフィチニブ、エルロチニブ、ラパチニブ、トラツズマブ(tratuzumab)、ペルツズマブ、およびc-Kit阻害剤など。
【0159】
ビタミンD受容体アゴニスト。
【0160】
Bcl-2タンパク質阻害剤、例えばオバトクラックス、オブリメルセンナトリウム、およびゴシポールなど。
【0161】
CD(cluster of differentiation)20受容体アンタゴニスト、例えばリツキシマブなど。
【0162】
リボヌクレオチドレダクターゼ阻害剤、例えばゲムシタビンなど。
【0163】
腫瘍壊死アポトーシス誘導リガンド受容体1アゴニスト、例えばマパツムマブ(mapatumumab)など。
【0164】
5-ヒドロキシトリプタミン受容体アンタゴニスト、例えばrEV598、キサリプローデ(xaliprode)、パロノセトロン塩酸塩、グラニセトロン、ジンドール(Zindol)、およびAB-1001など。
【0165】
α5β1インテグリン阻害剤を含むインテグリン阻害剤、例えばE7820、JSM6425、ボロシキシマブ、およびエンドスタチン。
【0166】
アンドロゲン受容体アンタゴニスト、例えばデカン酸ナンドロロン、フルオキシメステロン、アンドロイド(Android)、プロストエイド(Prost-aid)、アンドロムスチン(andromustine)、ビカルタミド、フルタミド、アポ-シプロテロン、アポ-フルタミド、酢酸クロルマジノン、アンドロキュア(Androcur)、Tabi、酢酸シプロテロン、およびニルタミド。
【0167】
アロマターゼ阻害剤、例えばアナストロゾール、レトロゾール、テストラクトン、エクセメスタン、アミノグルテチミド、およびフォルメスタンなど。
【0168】
マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤。
【0169】
他の抗がん剤、例えばアリトレチノイン、アンプリジェン(ampligen)、アトラセンタンベキサロテン、ボルテゾミブ、ボセンタン、カルシトリオール、エクシスリンド、ホテムスチン、イバンドロン酸、ミルテホシン、ミトキサントロン、I-アスパラギナーゼ、プロカルバジン、ダカルバジン、ヒドロキシカルバミド、ペガスパルガーゼ、ペントスタチン、タザロテン、ベルケイド、硝酸ガリウム、カンホスファミド、ダリナパルシン(darinaparsin)、およびトレチノインなど。
【0170】
好ましい一実施形態では、本発明の抗体を、化学療法(例えば細胞毒性剤)、抗ホルモンおよび/または標的療法、例えば他のキナーゼ阻害剤(例えばEGFR阻害剤)、mTOR阻害剤および血管新生阻害剤と組み合わせて使用することができる。
【0171】
本発明の化合物を、放射線療法および/または外科的介入と共に、がん処置に使用してもよい。
【0172】
本発明の抗体またはその抗原結合性フラグメントは、場合によっては、それ自体が修飾されていてもよい。例えば抗体は、潜在的に効力をさらに高めるために、上述の化合物いずれか(ただしそれらに限るわけではない)または任意の放射性同位体にコンジュゲートすることができるだろう。さらにまた、本発明の抗体は、当技術分野においてよく知られている研究および診断に、または分析用参照標準などとして、そのまま利用するか、組成物として利用することができる。
【0173】
本発明の抗体またはその抗原結合性フラグメントは、C4.4aが望ましくない形で発現しているまたは見いだされるさまざまな状況において、例えばがんなどの細胞増殖性障害において、治療ツールまたは診断ツールとして使用することができる。本発明の抗体による処置にとりわけ適した障害および状態は、固形腫瘍、例えば、乳房、気道、脳、生殖器、消化管、尿路、眼、肝臓、皮膚、頭頸部、甲状腺、副甲状腺のがん、およびそれらの遠隔転移などである。これらの障害には、リンパ腫、肉腫および白血病も含まれる。
【0174】
乳がんの例には、浸潤性乳管癌、浸潤性小葉癌、導管上皮内癌、および上皮内小葉癌などがあるが、これらに限るわけではない。
【0175】
気道のがんの例には、小細胞および非小細胞肺癌、ならびに気管支腺腫および胸膜肺芽腫などがあるが、これらに限るわけではない。
【0176】
脳がんの例には、脳幹神経膠腫、視床下部(hypophtalmic)神経膠腫、小脳星状細胞腫、大脳星状細胞腫、膠芽腫、髄芽腫、脳室上衣腫、ならびに神経外胚葉腫瘍および松果体腫瘍などがあるが、これらに限るわけではない。
【0177】
雄性生殖器の腫瘍には、前立腺がんおよび精巣がんが含まれるが、これらに限るわけではない。雌性生殖器の腫瘍には、子宮内膜がん、子宮頸がん、卵巣がん、膣がんおよび外陰がん、ならびに子宮の肉腫が含まれるが、これらに限るわけではない。
【0178】
消化管の腫瘍には、肛門、結腸、直腸結腸、食道、胆嚢、胃、膵臓、直腸、小腸、および唾液腺がんなどがあるが、これらの限るわけではない。
【0179】
尿路の腫瘍には、膀胱、陰茎、腎臓、腎盂、尿管、尿道、ならびに遺伝性および散発性乳頭状腎細胞がんなどがあるが、これらに限るわけではない。
【0180】
眼がんには、眼内メラノーマおよび網膜芽細胞腫などがあるが、これらに限るわけではない。
【0181】
肝がんの例には、肝細胞癌(線維層板状変異型(fibrolamellar variant)を伴うまたは伴わない肝臓細胞癌)、胆管癌(肝内胆管癌)、および混合型肝細胞胆管癌(mixed hepatocellular cholangiocarcinoma)などがあるが、これらに限るわけではない。
【0182】
皮膚がんには、扁平上皮細胞癌、カポジ肉腫、悪性メラノーマ、メルケル細胞皮膚がん、および非メラノーマ皮膚がんなどがあるが、これらに限るわけではない。
【0183】
頭頸部がんには、喉頭がん、下咽頭がん、鼻咽頭がん、中咽頭がん、口唇がんおよび口腔がん、ならびに扁平上皮細胞がんなどがあるが、これらに限るわけではない。
【0184】
リンパ腫には、AIDS関連リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、皮膚T細胞性リンパ腫、バーキットリンパ腫、ホジキン病、および中枢神経系のリンパ腫などがあるが、これらに限るわけではない。
【0185】
肉腫には、軟組織の肉腫、骨肉腫、悪性線維性組織球腫、リンパ肉腫、および横紋筋肉腫などがあるが、これらに限るわけではない。
【0186】
白血病には、急性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、およびヘアリー細胞白血病などがあるが、これらに限るわけではない。
【0187】
上述の障害はヒトにおいて詳しく特徴づけられているが、哺乳動物を含む他の動物にも、類似する病因と共に存在し、本発明の医薬組成物を投与することによって処置することができる。
【0188】
上述の障害のいずれかを処置するには、本発明に従って使用するための医薬組成物を、1つ以上の生理学的に許容できる担体または賦形剤を使って従来の方法で製剤化することができる。本発明の抗体またはその抗原結合性フラグメントは、処置される傷害のタイプに応じてさまざまでありうる任意の適切な手段によって、投与することができる。考えうる投与経路には、非経口(例えば筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内、または皮下)、肺内および鼻腔内が含まれ、局所免疫抑制処置にとって望ましい場合には、病変内投与も含まれる。また、本発明の抗体は、例えば抗体の用量を減らしていく、パルス注入(pulse injection)によって投与することもできる。好ましくは、投薬は、投与が短期間であるか、長期間であるかに部分的に依存して、注射によって、最も好ましくは静脈内注射または皮下注射によって行われる。投与すべき量は、臨床症状、個体の体重、他の薬物を投与するかどうかなどといったさまざまな因子に依存するだろう。投与の経路が処置すべき障害または状態に依存してさまざまであることは、当業者にはわかるだろう。
【0189】
本発明の新規ポリペプチドの治療有効量の決定は、主として、特定の患者特徴、投与経路、および処置される障害の性質に依存するだろう。一般的指針は、例えば医薬品規制ハーモナイゼーション国際会議(International Conference on Harmonisation)の刊行物およびRemingtons's Pharmaceutical Sciences, chapter 27および28, 484〜528ページ(第18版、Alfonso R. Gennaro編、ペンシルバニア州イーストン:Mack Pub. Co., 1990)に見いだすことができる。より具体的には、治療有効量の決定は、医薬の毒性および効力などの因子に依存するであろう。毒性は、上述の参考文献に見いだされる当技術分野において周知の方法を使って決定することができる。効力は、同じ指針を、下記の実施例で述べる方法と合わせて利用することによって、決定することができる。
【0190】
診断方法
C4.4a抗体またはその抗原結合性フラグメントは、C4.4a発現腫瘍の存在を検出するために使用することができる。血清および組織生検標本を含むさまざまな生物学的試料におけるC4.4a含有細胞または脱落C4.4aの存在は、C4.4a抗体を使って検出することができる。また、C4.4a抗体は、99Tc(または他の同位体)コンジュゲート抗体を使った免疫シンチグラフィなど、さまざまなイメージング方法に使用することができる。例えば、111Inコンジュゲート抗PSMA抗体を使って最近記述されたものに似たイメージングプロトコールを使って、膵臓癌または卵巣がんを検出することができる(Sodeeら, Clin. Nuc. Med. 21: 759-766, 1997)。使用することができるもう一つの検出方法は、本発明の抗体を適切な同位体にコンジュゲートすることによる陽電子放出断層撮影である(Herzogら, J. Nucl. Med. 34:2222-2226, 1993参照)。
【0191】
医薬組成物および投与
本発明の一実施形態は、C4.4a抗体またはその抗原結合性フラグメントを単独で含むか、安定化化合物などといった少なくとも1つの他の薬剤と組み合わせて含む医薬組成物であって、食塩水、緩衝食塩水、デキストロース、および水などといった(ただしこれらに限るわけではない)任意の滅菌生体適合性医薬担体に入れて投与することができる医薬組成物である。さらなる一実施形態は、C4.4a結合抗体またはその抗原結合性フラグメントと、がんなどのC4.4a関連疾患を処置するのに適したさらにもう一つの医薬活性化合物とを含む医薬組成物である。これらの分子はいずれも、患者に単独で、または他の薬剤、薬物もしくはホルモンと組み合わせて、医薬組成物として投与することができ、医薬組成物では、賦形剤または医薬上許容される担体と混合される。本発明の一実施形態では、医薬上許容される担体は医薬的に不活性である。
【0192】
本発明は医薬組成物の投与にも関係する。そのような投与は、経口的または非経口的に行われる。非経口送達の方法には、局所(topical)、動脈内(腫瘍に直接)、筋肉内、皮下、髄内(intramedullary)、髄腔内(intrathecal)、脳室内(intraventricular)、静脈内、腹腔内、または鼻腔内投与が含まれる。これらの医薬組成物は、活性成分の他にも、活性化合物を医薬的に使用することができる調製物に加工することを容易にする賦形剤および助剤を含む適切な医薬上許容される担体を含有しうる。製剤および投与のための技術に関するさらなる詳細は、Remington's Pharmaceutical Sciences(編 Maack Publishing Co、ペンシルバニア州イーストン)の最新版に見いだすことができる。
【0193】
経口投与用の医薬組成物は、当技術分野において周知の医薬上許容される担体を使って、経口投与に適した投薬量で、製剤化することができる。そのような担体は、医薬組成物を、患者による摂取のための錠剤、丸剤、糖衣丸、カプセル剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー剤、懸濁剤などとして、製剤化することを可能にする。
【0194】
経口使用のための医薬調製物は、活性化合物を固形賦形剤と混和し、場合によっては、得られた混合物を粉砕し、所望であれば適切な助剤を添加した後に、錠剤または糖衣丸の核が得られるように顆粒の混合物を加工することによって、得ることができる。適切な賦形剤は、糖質またはタンパク質充填剤、例えば、ラクトース、スクロース、マンニトール、またはソルビトールを含む糖類;トウモロコシ、コムギ、コメ、ジャガイモ、または他の植物由来のデンプン;メチルセルロース(methyl, cellulose)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはカルボキシメチルセルロースナトリウムなどのセルロース;アラビアゴムおよびトラガカントゴムを含むゴム;ならびにゼラチンおよびコラーゲンなどのタンパク質などである。所望であれば、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸、またはその塩、例えばアルギン酸ナトリウムなどの崩壊剤または可溶化剤を加えてもよい。
【0195】
糖衣丸の核には、濃厚糖溶液などの適切なコーティングが施され、このコーティング溶液も、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カーボポールゲル、ポリエチレングリコールおよび/または二酸化チタン、ラッカー溶液、および適切な有機溶媒または溶媒混合物を含むことができる。製品識別のために、または活性化合物の量、すなわち投薬量を特徴づけるために、錠剤または糖衣丸のコーティングには、染料または顔料を加えてもよい。
【0196】
経口的に使用することができる医薬調製物には、ゼラチン製の押込み式(push-fit)カプセル剤、ならびにゼラチンおよびグリセロールまたはソルビトールなどのコーティングで作られた密封軟カプセル剤が含まれる。押込み式カプセル剤は、ラクトースまたはデンプンなどの充填剤または結合剤、タルクまたはステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤、そして場合によっては安定化剤と混合された活性成分を含有することができる。軟カプセル剤では、活性化合物を適切な液体、例えば安定化剤を含む、または安定化剤を含まない、脂肪油、液体パラフィン、または液体ポリエチレングリコールなどに溶解または懸濁することができる。
【0197】
非経口投与用の医薬製剤には活性化合物の水溶液が含まれる。注射のために、本発明の医薬組成物を、水溶液中に、好ましくは生理学的に適合するバッファー、例えばハンクス液、リンゲル液、または生理学的緩衝食塩水中に製剤化することができる。水性注射懸濁液は、懸濁液の粘度を増加させる物質、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、またはデキストランを含有しうる。また、活性化合物の懸濁液は、適当な油性注射用懸濁剤として製造することもできる。適切な親油性の溶剤または媒体には、ゴマ油などの脂肪油、または合成脂肪酸エステル、例えばオレイン酸エチルもしくはトリグリセリド、またはリポソームが含まれる。所望により、懸濁液は、高濃度溶液の調製が可能になるように、適切な安定化剤、または化合物の溶解度を増加させる薬剤も含有してよい。
【0198】
局所または鼻投与のためには、浸透すべき特定の障壁に適した浸透剤を、製剤中に使用する。そのような浸透剤は当技術分野では広く知られている。
【0199】
キット
本発明はさらに、上述した本発明組成物の成分の1つ以上が充填された1つ以上の容器を含む医薬パックおよびキットに関する。そのような容器には、医薬または生物学的製剤の製造、使用または販売を規制する政府当局によって指示された形式で、当局によるヒト投与用製品の製造、使用または販売の認可を反映した告知書(notice)を、添付することができる。
【0200】
もう一つの実施形態において、キットは、本発明の抗体をコードするDNA配列を含有してもよい。これらの抗体をコードするDNA配列は、好ましくは、宿主細胞へのトランスフェクションと宿主細胞による発現に適したプラスミドに入れて提供される。プラスミドは、宿主細胞におけるDNAの発現を調節するために、プロモーター(多くの場合、誘導性プロモーター)を含有しうる。プラスミドは、プラスミド中に他のDNA配列を挿入してさまざまな抗体を生産することが容易になるように、適当な制限部位も含有しうる。プラスミドは、コードされているタンパク質のクローニングおよび発現を容易にするために、数多くの他の要素も含有しうる。そのような要素は、当業者にはよく知られており、例えば選択可能マーカー、開始コドン、停止コドンなどが含まれる。
【0201】
製造および貯蔵
本発明の医薬組成物は、当技術分野においてよく知られている方法で、例えば従来の混合、溶解、造粒、糖衣形成(dragee-making)、研和(levigating)、乳化、カプセル化、捕捉(entrapping)または凍結乾燥プロセスなどによって、製造することができる。
【0202】
医薬組成物は塩として提供することができ、塩酸、硫酸、酢酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸などの酸(ただしこれらに限るわけではない)を使って形成させることができる。塩は、水性溶媒または他のプロトン性溶媒に、対応する遊離塩基型よりも溶解しやすい傾向を持つ。別の例では、好ましい調製物が、使用前にバッファーと混合される、pH範囲が4.5〜5.5の1mM〜50mMヒスチジン、0.1%〜2%スクロース、2%〜7%マンニトール中の凍結乾燥粉末であってもよい。
【0203】
許容される担体中に製剤化された本発明の化合物を含む医薬組成物を製造したら、それらを適当な容器に入れ、適応症(indicated condition)の処置に関して医薬品の表示をすることができる。C4.4a抗体またはその抗原結合性フラグメントの投与に関して、そのような医薬品の表示(labeling)には、投与の量、頻度および方法が含まれるだろう。
【0204】
治療有効量
本発明における使用に適した医薬組成物には、その活性成分が、意図する目的、すなわちC4.4a発現を特徴とする特定の疾患状態の処置を達成するのに有効な量で含有されている組成物が含まれる。有効量の決定は、当業者の能力の範囲で十分に可能である。
【0205】
どの化合物についても、まず最初は細胞培養アッセイにおいて、例えば新生物細胞において、または動物モデル、通常はマウス、ウサギ、イヌ、ブタまたはサルにおいて、治療有効量を推定することができる。動物モデルを使って、望ましい濃度範囲および投与経路も実現される。次に、そのような情報を、ヒトにおける投与にとって有用な用量および経路を決定するために使用することができる。
【0206】
治療有効量は、症状または状態を改善する、抗体またはその抗原結合性フラグメントの量を指す。そのような化合物の治療効力および毒性は、細胞培養または実験動物において、例えばED50(集団の50%において治療的に有効な用量)およびLD50(集団の50%にとって致死的な用量)などといった、標準的な医薬的手法によって決定することができる。治療効果と毒性効果の間の用量比が治療係数であり、これは比ED50/LD50として表すことができる。大きな治療係数を呈する医薬組成物は好ましい。細胞培養アッセイおよび動物試験から得られたデータは、ヒトでの使用のための投薬量範囲を処方する際に使用される。そのような化合物の投薬量は、好ましくは、ほとんどまたは全く毒性を伴わないED50を含む循環濃度の範囲内にある。投薬量は、使用する剤形、患者の感度、および投与経路に応じてこの範囲内で変動する。
【0207】
厳密な投薬量は、処置すべき患者を考慮して個々の医師が選択する。投薬量および投与は、十分なレベルの活性部分が提供されるように、または所望の効果が維持されるように、調節される。考慮することができる他の因子には、疾患状態の重症度、例えば腫瘍のサイズおよび場所;患者の年齢、体重および性別;食餌、投与の時間および頻度、併用薬、反応感度、および治療に対する認容性/応答が含まれる。長時間作用性医薬組成物を、その特定製剤の半減期およびクリアランス率に応じて、3〜4日ごと、1週間ごと、または2週間に1回投与してもよい。
【0208】
通常の投薬量は、投与経路に応じて、0.1〜100,000マイクログラム、合計用量約1gまでの範囲で変動しうる。特定の投薬量および送達方法に関する指針は文献に記載されている。米国特許第4,657,760号;同第5,206,344号;または同第5,225,212号を参照されたい。当業者は、ポリヌクレオチド用には、タンパク質用またはそれらの阻害剤用とは異なる製剤を使用するであろう。同様に、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの送達は、特定の細胞、状態、場所などに特異的であるだろう。放射標識抗体の場合、好ましい比放射能は0.1〜10mCi/mgタンパク質の範囲にありうる(Rivaら, Clin. Cancer Res. 5:3275-3280, 1999;Ulanerら, 2008 Radiology 246(3):895-902)。
【0209】
以下に実施例を挙げて、本発明を、さらに詳しく説明する。これらの実施例は、具体的な実施形態を参照して本発明を例証するために提供されるにすぎない。これらの実証は、本発明の一定の具体的態様を例示しているが、限定を表すものではなく、ここに開示する発明の範囲を制限するものでもない。
【0210】
全ての実施例は、別段の説明が詳細になされている部分を除き、当業者にとっては周知でありルーチンである標準的技法使って行われた。下記実施例のルーチンな分子生物学技法は、Sambrookら「Molecular Cloning: A Laboratory Manual」第2版;Cold Spring Harbor Laboratory Press, コールドスプリングハーバー, ニューヨーク, 1989などの標準的実験マニュアルに記載されているとおりに行うことができる。
【0211】
本発明の好ましい実施形態を以下に挙げる。
【0212】
A.C4.4aに、好ましくはC4.4aのドメインS1に、特異的に結合する単離された抗体またはその抗原結合性フラグメント。
【0213】
B.抗体またはその抗原結合性フラグメントが、齧歯類C4.4a、好ましくはマウスC4.4aに対して交差反応性である、実施形態Aによる抗体またはその抗原結合性フラグメント。
【0214】
C.抗体またはその抗原結合性フラグメントが、C4.4a発現細胞への結合後に内部移行する、実施形態AまたはBによる抗体またはその抗原結合性フラグメント。
【0215】
D.抗体またはその抗原結合性フラグメントが、C4.4aへの結合に関して抗体M31-B01またはM20-D02 S-Aと競合する、実施形態A〜Cのいずれか一つによる抗体または抗原結合性フラグメント。
【0216】
E.抗体または抗原結合性フラグメントのアミノ酸配列が、表7に示す少なくとも1つのCDR配列と少なくとも50%、55%、60% 70%、80%、90、または95%同一であるか、表7に示す少なくとも1つのVH配列またはVL配列と少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、92%または95%同一である、実施形態Dによる抗体または抗原結合性フラグメント。
【0217】
F.抗体または抗原結合性フラグメントのアミノ酸配列が、M31-B01またはM20-D02 S-Aの少なくとも1つのCDR配列と少なくとも50%、55%、60% 70%、80%、90、または95%同一であるか、M31-B01またはM20-D02 S-AのVH配列またはVL配列と少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、92%または95%同一である、実施形態D〜Eのいずれか一つによる抗体または抗原結合性フラグメント。
【0218】
G.抗体またはその抗原結合性フラグメントが、コンセンサス配列である配列番号297もしくは配列番号302(CDR H1)、配列番号298もしくは配列番号303(CDR H2)、または配列番号299もしくは配列番号304(CDR H3)に準拠する重鎖CDR配列の少なくとも1つ、および/または配列番号300もしくは配列番号305(CDR L1)、配列番号22もしくは配列番号306(CDR L2)、または配列番号301もしくは配列番号307(CDR L3)のコンセンサス配列に準拠する軽鎖CDR配列の少なくとも1つを含む、実施形態D〜Fのいずれか一つによる抗体または抗原結合性フラグメント。
【0219】
H.a)抗体またはその抗原結合性フラグメントが、配列番号297(CDR H1)、配列番号298(CDR H2)および配列番号299(CDR H3)に準拠する重鎖CDR配列と、配列番号300(CDR L1)、配列番号22(CDR L2)および配列番号301(CDR L3)に準拠する軽鎖CDR配列とを含むか、または
b)抗体またはその抗原結合性フラグメントが、配列番号302(CDR H1)、配列番号303(CDR H2)および配列番号304(CDR H3)に準拠する重鎖CDR配列と、配列番号305(CDR L1)、配列番号306(CDR L2)および配列番号307(CDR L3)に準拠する軽鎖CDR配列とを含む、
実施形態D〜Gのいずれか一つによる抗体または抗原結合性フラグメント。
【0220】
I.抗体M31-B01の可変重鎖および可変軽鎖CDR配列、またはそこから修飾された可変重鎖および可変軽鎖CDR配列を含み、
i.修飾されたCDR-H1では、位置3のアミノ酸が、NおよびSからなる群より選択され、位置4のアミノ酸が、AおよびYからなる群より選択され;
ii.修飾されたCDR-H2では、位置10のアミノ酸が、TおよびSからなる群より選択され、位置11のアミノ酸が、IおよびTからなる群より選択され;
iii.修飾されたCDR-H3では、位置10のアミノ酸が、Y、K、G、WおよびNからなる群より選択され;
iv.修飾されたCDR-L1では、位置1のアミノ酸が、TおよびSからなる群より選択され;
v.修飾されたCDR-L2では、位置4のアミノ酸が、QおよびKからなる群より選択され;
vi.修飾されたCDR-L3では、位置4のアミノ酸が、W、E、FおよびYからなる群より選択され、位置7のアミノ酸が、R、SおよびMからなる群より選択され、位置9のアミノ酸が、N、KおよびSからなる群より選択され、位置10のアミノ酸が、GおよびRからなる群より選択され、位置11のアミノ酸が、PおよびAからなる群より選択される、
実施形態D〜Hのいずれか一つによる抗体または抗原結合性フラグメント。
【0221】
J.抗体M31-B01の可変重鎖および可変軽鎖CDR配列のフレームワーク配列、またはそこから修飾された可変重鎖および可変軽鎖CDR配列のフレームワーク配列を含み、修飾された可変軽鎖では、位置10のアミノ酸が、AおよびVからなる群より選択され、位置13のアミノ酸が、AおよびTからなる群より選択される、実施形態G〜Hによる抗体または抗原結合性フラグメント。
【0222】
K.抗体M20-D02 S-Aの可変重鎖および可変軽鎖CDR配列またはそこから修飾された可変重鎖および可変軽鎖CDR配列を含み、
i.修飾されたCDR-H1では、位置3のアミノ酸が、DおよびSからなる群より選択され;
ii.修飾されたCDR-H2では、位置4のアミノ酸が、VおよびIからなる群より選択され、位置9のアミノ酸が、AおよびGからなる群より選択され、位置10のアミノ酸が、RおよびSからなる群より選択され;
iii.修飾されたCDR-H3では、位置9のアミノ酸が、S、KおよびRからなる群より選択され、位置10のアミノ酸が、A、SおよびRからなる群より選択され、位置14のアミノ酸が、D、K、EおよびRからなる群より選択され、位置15のアミノ酸が、SおよびYからなる群より選択され;
iv.修飾されたCDR-L1では、位置7のアミノ酸が、VおよびIからなる群より選択され;
v.修飾されたCDR-L3では、位置3のアミノ酸が、A、QおよびRからなる群より選択され、位置5のアミノ酸が、DおよびGからなる群より選択され、位置7のアミノ酸が、RおよびSからなる群より選択され、位置9のアミノ酸が、N、WおよびSからなる群より選択され、位置12のアミノ酸が、V、AおよびGからなる群より選択される、
実施形態D〜Hのいずれか一つによる抗体または抗原結合性フラグメント。
【0223】
L.抗体または抗原結合性フラグメントが、表7に示す少なくとも1つのCDR配列または少なくとも1つの可変重鎖または軽鎖配列を含む、実施形態D〜Kによる抗体または抗原結合性フラグメント。
【0224】
M.抗体または抗原結合性フラグメントが、表7の抗体の重鎖および軽鎖CDR配列または可変重鎖および軽鎖配列を含む、前記実施形態のいずれか一つによる抗体または抗原結合性フラグメント。
【0225】
N.配列番号75〜77によって表される可変重鎖CDR配列および配列番号78〜80によって表される可変軽鎖CDR配列、または
配列番号5、9および13によって表される可変重鎖CDR配列および配列番号17、21および25によって表される可変軽鎖CDR配列、または
配列番号6、10および14によって表される可変重鎖CDR配列および配列番号18、22および26によって表される可変軽鎖CDR配列、または
配列番号7、11および15によって表される可変重鎖CDR配列および配列番号19、23および27によって表される可変軽鎖CDR配列、または
配列番号8、12および16によって表される可変重鎖CDR配列および配列番号20、24および28によって表される可変軽鎖CDR配列、または
配列番号45〜47によって表される可変重鎖CDR配列および配列番号48〜50によって表される可変軽鎖CDR配列、または
配列番号55〜57によって表される可変重鎖CDR配列および配列番号58〜60によって表される可変軽鎖CDR配列、または
配列番号65〜67によって表される可変重鎖CDR配列および配列番号68〜70によって表される可変軽鎖CDR配列、または
配列番号85〜87によって表される可変重鎖CDR配列および配列番号88〜90によって表される可変軽鎖CDR配列、または
配列番号95〜97によって表される可変重鎖CDR配列および配列番号98〜100によって表される可変軽鎖CDR配列、または
配列番号105〜107によって表される可変重鎖CDR配列および配列番号108〜110によって表される可変軽鎖CDR配列、または
配列番号115〜117によって表される可変重鎖CDR配列および配列番号118〜120によって表される可変軽鎖CDR配列、または
配列番号125〜127によって表される可変重鎖CDR配列および配列番号128〜130によって表される可変軽鎖CDR配列、または
配列番号135〜137によって表される可変重鎖CDR配列および配列番号138〜140によって表される可変軽鎖CDR配列、
を含む、前記実施形態のいずれか一つによる抗体または抗原結合性フラグメント。
【0226】
O.配列番号81によって表される可変重鎖配列および配列番号82によって表される可変軽鎖配列、または
配列番号33によって表される可変重鎖配列および配列番号29によって表される可変軽鎖配列、または
配列番号34によって表される可変重鎖配列および配列番号30によって表される可変軽鎖配列、または
配列番号35によって表される可変重鎖配列および配列番号31によって表される可変軽鎖配列、または
配列番号36によって表される可変重鎖配列および配列番号32によって表される可変軽鎖配列、または
配列番号51によって表される可変重鎖配列および配列番号52によって表される可変軽鎖配列、または
配列番号61によって表される可変重鎖配列および配列番号62によって表される可変軽鎖配列、または
配列番号71によって表される可変重鎖配列および配列番号72によって表される可変軽鎖配列、または
配列番号91によって表される可変重鎖配列および配列番号92によって表される可変軽鎖配列、または
配列番号101によって表される可変重鎖配列および配列番号102によって表される可変軽鎖配列、または
配列番号111によって表される可変重鎖配列および配列番号112によって表される可変軽鎖配列、または
配列番号121によって表される可変重鎖配列および配列番号122によって表される可変軽鎖配列、または
配列番号131によって表される可変重鎖配列および配列番号132によって表される可変軽鎖配列、または
配列番号141によって表される可変重鎖配列および配列番号142によって表される可変軽鎖配列、
を含む、前記実施形態のいずれか一つによる抗体または抗原結合性フラグメント。
【0227】
P.IgG抗体である、前記実施形態のいずれか一つによる抗体。
【0228】
Q.scFv、Fab、Fab'フラグメントまたはF(ab')2フラグメントである、前記実施形態のいずれか一つによる抗原結合性フラグメント。
【0229】
R.モノクローナル抗体または抗原結合性フラグメントである、前記実施形態のいずれか一つによる抗体または抗原結合性フラグメント。
【0230】
S.ヒト、ヒト化もしくはキメラ抗体または抗原結合性フラグメントである、前記実施形態のいずれか一つによる抗体または抗原結合性フラグメント。
【0231】
T.実施形態A〜Sによる抗体またはその抗原結合性フラグメントを含む、抗体-薬物コンジュゲート。さらにもう一つの実施形態において、ADCは、細胞毒性剤、または放射性同位体を含み、さらにもう一つの好ましい実施形態において、細胞毒性剤または放射性同位体は、抗体または抗原結合性フラグメントに共有結合で連結される。
【0232】
U.実施形態A〜Sによる抗体または抗原結合性フラグメントをコードする単離された核酸配列。さらにもう一つの実施形態は、表7に示す核酸である。
【0233】
V.実施形態Uによる核酸配列を含むベクター。
【0234】
W.実施形態A〜Sのいずれか一つによる抗体または抗原結合性フラグメントを発現し、かつ/または実施形態Uによる核酸もしくは実施形態Vによるベクターを含む、細胞。
【0235】
X.原核細胞または真核細胞である、実施形態Wによる細胞。
【0236】
Y.実施形態Xによる細胞の培養および抗体または抗原結合性フラグメントの精製を含む、実施形態A〜Sのいずれか一つによる抗体または抗原結合性フラグメントを生産する方法。
【0237】
Z.医薬としての、実施形態A〜Sによる抗体もしくは抗原結合性フラグメントまたは実施形態Tによる抗体-薬物コンジュゲート。
【0238】
AA.診断剤としての、実施形態A〜Sによる抗体または抗原抗原結合性フラグメント。
【0239】
BB.がんを処置するための医薬としての、実施形態A〜Sによる抗体もしくは抗原結合性フラグメントまたは実施形態Tによる抗体-薬物コンジュゲート。
【0240】
CC.実施形態A〜Sによる抗体もしくは抗原結合性フラグメントまたは実施形態Tによる抗体-薬物コンジュゲートを含む、医薬組成物。
【0241】
DD.実施形態A〜Sによる抗体もしくは抗原結合性フラグメントまたは実施形態CCによる医薬組成物と、1つ以上の治療活性化合物との組み合わせ。
【0242】
EE.望ましくないC4.4aの存在と関連する障害または状態を処置するための方法であって、そのような処置を必要とする対象に、実施形態CCによる医薬組成物または実施形態DDによる組み合わせの有効量を投与することを含む方法。さらにもう一つの好ましい実施形態では、疾患ががんである。
【実施例】
【0243】
[実施例1]n-CoDeRライブラリーからの抗体生成
C4.4aに対するヒト抗体の単離は、BioInvent International AB(スウェーデン・ルンド)のナイーブ抗体ライブラリーn-CoDeRを使用するファージディスプレイ技術(Soederlingら, Nature Biotech. 2000, 18:853-856に記載されている)により、細胞選択アプローチで行った。n-CoDeRは、6つのCDR全てが多様化されているFabライブラリーである。CDR配列は、まず最初に、健常ヒトドナーから得られた。
【0244】
簡単に述べると、Fab抗体ライブラリーの一部を、107個の非C4.4a発現親CHO-S細胞と共に、PBS/3%FCS/0.01%NaN3(バッファーA)中、4℃において、エンド・オーバー・エンド(end-over-end)回転で、15分間にわたってプレインキュベートすることにより、望ましくない表面結合物質について枯渇させた。その後、細胞を遠心分離によって除去し、上清を使って、さらに2ラウンドのプレインキュベーションをCHO-S細胞で行った。次に、ターゲット細胞(107 CHO-S:hC4.4a細胞)でのパンニングを、ファージ調製物と共にバッファーA中、4℃において、45分間のインキュベーション後に、バッファーA(4℃)で10回洗浄することによって行った。結合したファージを、5分間のエンド・オーバー・エンド回転中に細胞を76mMクエン酸(4℃)で処理することによって溶離させた。溶離したファージを含有する調製物を1M Tris/HCl、pH7.5の添加によって中和し、さらに2ラウンドの細胞パンニングを行った。各ラウンドにおいて、溶離したファージを増殖させ、ファージ力価を既述のように決定した(Cicortas Gunnarssonら, PEDS 2004, 17(3) 213-221)。簡単に述べると、溶離液の一部をタイトレーション実験のために取り置き、残りを使って指数増殖期の大腸菌HB101'を形質転換することにより、新しいファージストックを調製した。各選択ラウンドについて、インプットファージとアウトプットファージの両方を指数増殖期の大腸菌HB101'でタイトレートし、ファージELISAで分析するために第2および第3ラウンドからクローンを拾った。
【0245】
酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA):
ファージELISA:
異なる選択ラウンドから選択されたファージを、ファージELISAを使って、特異性について分析した。簡単に述べると、ファージ発現は、10μlの終夜培養物(100μg/mlアンピシリンおよび15μg/mlテトラサイクリンを補足したLB培地中)を、100μlの新鮮培地(100μg/mlアンピシリン、15μg/mlテトラサイクリンおよび0.1%グルコースを補足したLB培地)に加え、96ウェルMTP中、250rpm、37℃で、OD600が0.5に達するまで振とうすることによって行った。次に、ヘルパーファージM13KO7(Invitrogen)を加え、試料を振とうせずに37℃でさらに15分間インキュベートした。IPTG(最終濃度0.25mM)を加えた後、細胞を、200rpmで振とうしながら、30℃で16時間インキュベートした。
【0246】
96ウェルMTP(Nunc-maxisorb)を、50μlの組換えC4.4a(5μg/mlヒトまたはマウスタンパク質)で、4℃において16時間コーティングした。翌日、プレートをPBS/0.05% Tween 20(バッファーB)で3回洗浄し、ブロッキング試薬(バッファーB中の3%粉乳)で処理し、再びバッファーBで3回洗浄した。その後、ファージ発現液から各ウェルにつき50μlずつ移し、20℃で1時間インキュベートした。バッファーBで3回洗浄した後、HRPにカップリングした抗M13抗体(GE Healthcare、27-9421-01;バッファーBに1:2500希釈)を加え、20℃で1時間インキュベートした。50μlのTMB(Invitrogen)の添加によって呈色反応を進行させ、20℃で5〜15分後に、50μlの停止液(Invitrogen)を加えることによって停止させた。比色反応をTecanリーダーにおいて450nMで記録した。
【0247】
ELISAによるsFabのスクリーニング:
可溶性Fab(sFab)を生成させるために、第2および第3選択ラウンドからのファージミドDNAを単離し、gene III産物を取り出すために、制限酵素EagIおよびEcoRIにより、供給者の説明書に従って消化した。得られたフラグメントを再ライゲーションし、コンストラクトを、ケミカリーコンピテント大腸菌Top10に、標準的方法を使って形質転換した。全部で約1500個のクローンを拾って、LB培地(100μg/ml、0.1%グルコース)が入っている96ウェルプレートに移し、250rpm、37℃で、OD600が0.5に達するまで振とうした。その後、IPTG(最終濃度0.5mM)の添加によって、sFab産生を誘導し、200rpmで振とうしながらインキュベーションを30℃で16時間続けた。翌朝、BELバッファーを各ウェルに加え(24.7g/lホウ酸;18.7g/l NaCl;1.49g/l EDTA pH8.0;2.5mg/mlリゾチーム(Roche))、50μlの処理済み培養物を、ELISAにおいてターゲットに結合するsFabについて、検出をHRPにカップリングした抗hIgG(Fab特異的)(Sigma;製品番号A0293)で行った点以外は基本的にはファージについて述べたようにして、分析した。
【0248】
FACS:
ターゲット細胞へのsFabの細胞結合をBDのFACSarrayで分析した。簡単に述べると、50μlの細胞懸濁液(2×106細胞/ml)を、50μlの大腸菌上清と4℃、300rpmで1時間混合した。次に、100μlのバッファーAを加え、細胞を遠心分離し、バッファーAでさらに2回洗浄した。結合したFabを検出するために、R-フィコエリトリンコンジュゲートAffiniPure F(ab')2フラグメントヤギ抗ヒト F(ab')2フラグメント特異的;Jackson Immuno Research;製品番号109-116-097(バッファーA中に1:100希釈)を、細胞に加え、4℃で1時間インキュベートした。バッファーAで3回洗浄した後、最後のペレットを150μlのバッファーAに再懸濁し、1試料につき5000のFACSイベントを記録した。データ解析は、BD FACSArrayシステムソフトウェアを使って行った。
【0249】
[実施例2]エピトープ分類
エピトープ分類実験は、Biacore T100計器(GE Healthcare Biacore, Inc.)での表面プラズモン共鳴分析を使用し、C4.4aへの抗C4.4a抗体のペアの同時結合をモニタリングすることによって行った。以下のステップを全て20℃で行った。約2000RU(1RU(レゾナンスユニット)は1平方mmあたり1pgのタンパク質の結合を表す)の第1抗体を、1級アミンカップリングにより、CM5センサーチップ上に共有結合で固定化した。流速10μl/分の比率1:1の0.4M N-エチル-N-(3-ジエチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)および0.1M n-ヒドロキシスクシンアミド(NHC)で、5〜15分間、チップを活性化した。次に、表面上の占有されていない結合部位を、過剰の1MエタノールアミンpH8.5でブロッキングした。可溶性C4.4a(HEPES-EPバッファー(GE Healthcare Biacore, Inc.)中、濃度400nM、流速10μl/分で3分間)を、固定化抗体によって表面に捕捉した。それゆえに、結合された全てのC4.4a分子に関して、捕捉抗体のエピトープはブロックされている。次に、第2の抗体(HEPES-EPバッファー中、濃度200nM、流速10μl/分で、3分間)を、直ちに表面上に流して、捕捉されたC4.4aに結合させる。同じエピトープまたはオーバーラップするエピトープを認識する2つの抗体はC4.4aに結合することができないが、異なるエピトープを持つ抗体は結合することができる。この抗体表面を、結合したタンパク質を全て除去するために3M MgCl2(流速10μl/分で30秒間)で再生し、次に他の抗体を使って、このプロセスを繰り返した。
【0250】
IgG1フォーマットの抗体M31-B01およびM20-D02 S-Aを試験した。両抗体は、C4.4aに同時に結合することができず、それゆえに、結合に関して競合する(図1参照)。
【0251】
[実施例3]マウスC4.4aとの交差反応性
表1に示すのは、マウスC4.4aに対する本発明の抗体の交差反応性および解離定数(KD)を示すBiacore研究の結果である。
【0252】
抗C4.4抗体の結合アフィニティは、Biacore T100計器(GE Healthcare Biacore, Inc.)での表面プラズモン共鳴分析によって決定した。抗体を、CM5センサーチップ上に、間接的捕捉試薬、抗ヒトIgG Fcを介して固定化した。「Human Antibody Capture Kit」(BR-1008-39、GE Healthcare Biacore, Inc.)の試薬を、製造者の説明どおりに使用した。1セルあたり約5000RUのモノクローナルマウス抗ヒトIgG(Fc)抗体を固定化した。濃度5μg/mlの抗C4.4抗体を10μl/分で10秒間注入して、約200〜600RUの捕捉レベルに到達させた。HEPES-EPバッファー(GE Healthcare Biacore, Inc.)中、さまざまな濃度(400nM、200nM、100nM、50nM、25nM、12.5nM、6.25nM、および3.12nM)のヒトまたはマウスC4.4aを、固定化抗C4.4a抗体上に60μl/分の流速で3分間注入し、10分間解離させた。インライン参照セル補正と、それに続くバッファー試料サブトラクション後に、センサーグラムを作成した。Biavaluation Software(バージョン4.0)を使ってセンサーグラムを一次1:1結合モデルに当てはめることによって得られた会合速度定数(kon)および解離速度定数(koff)に基づいて、解離平衡定数(KD)を計算した。
【0253】
[実施例4]組換えヒトおよびマウスC4.4aへの結合
図2に、それぞれ組換えヒトC4.4a(A)およびマウスC4.4a(B)に対する抗C4.4抗体M31-B01およびM20 D02 S-A結合曲線を図示する。簡単に述べると、96ウェルMTPを、4℃において16時間、組換えヒトまたはマウスC4.4a(100ng/ウェル)でコーティングした。プレートをPBS/0.05% Tween 20(=バッファーB)で3回洗浄し、ブロッキング試薬(PBS+2%BSA)で処理し、バッファーBで再び3回洗浄した。その後、本発明の抗C4.4a抗体を0.39ng〜400ng/ウェルの濃度で加え、20℃で1時間インキュベートした。バッファーBで3回洗浄した後、20ngのプロテインAを100μlのバッファーBに入れて各ウェルに加えた。50μlの3,3',5,5'-テトラメチルベンジジン(TMB)(Sigma)を添加することによって、呈色反応を進行させた。18分後に、Tecanインフィニットプレートリーダーで360nmにおける吸光度を測定することによって、EC50決定用のデータを記録した。M31-B01のEC50値は、ヒトおよびマウスC4.4aに対して、それぞれ0.24nMおよび0.29nMであった。また、M20-D02 S-Aの場合は、EC50値が、ヒトおよびマウスC4.4aに対して、それぞれ0.3nMおよび0.38nMであった。これは、ヒトおよびマウス可溶性組換えC4.4aの両方に対する本発明の抗C4.4a抗体の高アフィニティ結合を示している。
【0254】
[実施例5]さまざまな腫瘍細胞への結合
図3に、さまざまな腫瘍細胞に対する抗体M31-B01およびM20-D02 S-Aの結合曲線およびEC50値を図示する。分析は、トランスフェクトされた細胞株A549:hC4.4aおよび生来的にC4.4aを発現する腫瘍細胞株NCI H292、NCI H332、H1975/BCRPおよびBxPC3を使用し、FACSによって行った。図3f)は、本発明の両抗体が、この広範囲にわたる腫瘍細胞に、特異的にかつ高いアフィニティで結合したことを示している。mC4.4a:CHO細胞およびNCI H292細胞に対する本発明のさらなる抗体のEC50値を表8に示す。
【0255】
FACSタイトレーションは、96ウェルマイクロタイタープレート中で行った。体積50μlのFACSバッファー(PBS中、3%FCS)中の一次抗体の段階希釈液を、非酵素的細胞解離液(1×)(Cell Dissociation Solution(1×)Non-enzymatic)(Sigma)で剥離してFACSバッファーに再懸濁した2×105細胞/mlからなる50μlの細胞懸濁液と混合した。4℃で1時間、撹拌しながら、インキュベーションを行った。細胞をペレット化し、FACSバッファーで洗浄し、FACSバッファー中の100μl/ウェルのフィコエリトリン標識ヤギ抗ヒトIgG(Dianova)溶液に再懸濁した。インキュベーションおよび洗浄を前と同様に行った。FACS Arrayデバイスを使って、細胞結合抗体の分析を、それぞれの検出波長で行った。EC50値は、Swift 8.0ソフトウェアを使って、二重試料(duplicates)の蛍光中央値から決定した。
【0256】
[実施例6]内部移行
トランスフェクトされたC4.4a:A549細胞での抗C4.4a抗体の相対的内部移行を図4および表9に示す。内部移行アッセイは、蛍光標識C4.4a抗体を使って行った。
【0257】
pH感受性蛍光色素CypHer 5E(GE Healthcare、PA15401)を蛍光マーカーとして選択した。なぜなら、エンドソーム中に存在する酸性pHでのみ蛍光シグナルを検出することができ、中性または塩基性のpH値では蛍光が測定されないからである。カップリングのために、抗C4.4a抗体を、PBS/炭酸Na pH8.3(9:1)中で、2モル過剰の色素と共に、20℃で1時間インキュベートした。平均で1.6のLys結合色素負荷(dye load)が達成された。カップリングがアフィニティに及ぼす効果はをFACSアッセイで試験したところ、EC50値の変化は無視できると考えられた。1×104個のA549:hC4.4a細胞を使って、抗体結合時の特異的C4.4a内部移行を調べた。細胞を、37℃/5%CO2において、さまざまな濃度(34nM〜6.6nM)の標識抗体で処理した。内部移行は、IN Cell Analyzer 1000を使って、24時間まで速度論的に測定した。内部移行の解析は、倍率40倍の顕微鏡で、顆粒度(granularity)の決定(顆粒数/細胞;CypHer5Eの場合は励起620nm、蛍光700nm)によって行った。核を細胞透過性染色剤Hoechst 33342(0.5μg/ml、インキュベーション30分、353〜365nmで発光(emission)、480nmで検出)を使ったDNA染色で可視化した。
【0258】
対応する非C4.4a発現ベクター細胞を、A549野生型(A549wt)細胞と共に、対照として使用した。ヒトIgG1をアイソタイプ対照として選択し、並行して標識した。3つの独立した実験を行ったので、データポイントは三つ一組の決定を表す。M31-B01およびM20-D02 S-Aは効率よく内部移行した。最大半量内部移行時間は、それぞれ、M31-B01の場合は31分、M20-D02 S-Aの場合は49分であった。
【0259】
[実施例7]FabからIgGフォーマットへの変換
FabのVH領域およびVL領域をIgGフォーマットに移し、かつ/または発現系を大腸菌から哺乳動物細胞系へと変えるために、PCRプライマーを使ってVHおよびVLを増幅した。隣接する制限酵素切断部位を、それぞれVHおよびVLの5'端と3'端の両方に導入した。これらの制限部位を使って、発現ベクター(すなわちIgGバックボーンを含有するもの)中にVHおよびVLをクローニングした。
【0260】
大腸菌細胞を試験管中の水100μlに加え、95℃で10分間インキュベートした後、5分間、氷上に保った。ボルテックスした後、遠心分離によって細菌片をペレット化した。上清をDNA増幅に使用した。VLについてはBamHIおよびHpaI制限部位を、またVHについてはBlp1およびMfe1部位を持つ特異的プライマーをそれぞれ使って、VHおよびVL用のPCR反応を、別々に調製した。PCR反応はAccuPrime Pfxポリメラーゼ(Invitrogen #12344-024)を使って、製造者の説明書に従って行った。PCR産物を1%アガロースゲル上で品質チェックした。適合する末端を生成させるために、各制限エンドヌクレアーゼにより、供給者の説明書に従って、発現ベクターおよびPCR産物を、37℃で2時間消化した。70℃で15分間インキュベートすることにより、消化反応を停止させた。その結果得られたフラグメントを発現ベクターにライゲートし、コンストラクトを標準的な方法を使って大腸菌または哺乳動物細胞に形質転換した。
【0261】
[実施例8]皮下異種移植片がんモデル
抗C4.4a抗体の抗腫瘍効果は、免疫不全マウスにおける皮下異種移植モデルを使って評価されるだろう。10%FBSを補足したDMEM中、接着培養として、A431細胞を維持する。6〜7週齢のSCIDマウスの右脇腹の皮下に、培地0.1ml中の1×10e7細胞を接種する。モノクローナル抗体を5〜60mg/kgの用量で3日ごとに3回i.p.投与する。対照マウスはPBSまたは無関係なモノクローナル抗体で処置する。2日ごとに滑動計で腫瘍サイズを測定する。抗C4.4a抗体処置と対照処置の腫瘍サイズを比較することによって抗腫瘍効力を評価する。
【0262】
[実施例9]皮下異種移植片がんモデルと抗体薬物コンジュゲート
抗C4.4a抗体は、当業者に知られているプロトコールを使って細胞毒性小分子にコンジュゲートすることができる(例えばLiuら, Proc Natl. Acad. Sci. (1996), 93, 8618-8623)。10%FBSを補足したDMEM中、接着培養として、A431細胞を維持する。6〜7週齢のSCIDマウスの右脇腹の皮下に、培地0.1ml中の1×10e7細胞を接種する。腫瘍サイズが50mm3に達したら、抗体薬物コンジュゲートを1〜60mg/kgの用量で3日ごとに3回i.p.投与する。対照マウスはPBS、無関係なモノクローナル抗体、または遊離の非コンジュゲート薬物で処置する。2日ごとに滑動計で腫瘍サイズを測定する。抗C4.4a抗体薬物コンジュゲート処置と対照処置の腫瘍サイズを比較することによって抗腫瘍効力を評価する。
【0263】
[実施例10]親和性成熟のためのクローニング、発現およびFab抗体フラグメント発現レベルの定量
重鎖のC末端に3×HAタグおよびヘキサヒスチジンタグを保有する野生型Fab、M31-B01およびM20-D02 S-Aの重鎖および軽鎖を、pET28a細菌発現ベクター(Novagen/Merck Chemicals Ltd.、英国ノッティンガム)にサブクローニングし、Top10F'細胞(Invitrogen GmbH、ドイツ・カールスルーエ)に形質転換した。あるいは、他の細菌発現ベクター(例えばpQEベクター系、Qiagen GmbH、ドイツ・ヒルデン)および株(例えばDH5α、Invitrogen GmbH、ドイツ・カールスルーエ)を使用することもできる。変異体を、標準的なオリゴベースの部位特異的変異誘発によって生成させ、DNA配列決定によって確認した。特に、相補性決定領域内またはその周囲にあるアミノ酸残基を、重鎖および/または軽鎖内で修飾した。
【0264】
発現のために、変異体をBL21starDE3大腸菌株(Invitrogen、C6010-03)に形質転換し、カナマイシン(30μg/ml)を含むLB培地中の終夜培養物に接種し、37℃で18時間インキュベートした。カナマイシン(30μg/ml)を含む新鮮LB培地に1:20の比で培養物を接種することにより、発現培養物を作成した。37℃で6時間後に、1mM IPTGを加えて抗体発現を誘導し、培養物を30℃でさらに18時間インキュベートした。
【0265】
発現レベルを定量するために、ELISAアプローチを使用した。簡単に述べると、MTPプレート(Nunc maxisorp black、460518)を、コーティングバッファー(Candor Bioscience GmbH、121125)に希釈したHAエピトープタグ特異的mAb(Covance、MMS-101P)と共に、4℃で16時間インキュベートし、PBST(137mM NaCl、2.7mM KCl、10mM Na2HPO4、2mM KH2PO4、pH7.4、0.05% Tween 20を含有するリン酸緩衝食塩水)で洗浄し、20℃において1時間、100%Smart Block(Candor Bioscience GmbH、113500)でブロッキングし、再び洗浄した。培養物をPBST中の10% Smart Blockに希釈し、MTPプレートに20℃で1時間結合させた。PBSTで洗浄した後、捕捉された抗体をHRP結合抗ラムダ抗体(Sigma、A5175)と共にインキュべートし、プレートを10μMアンプレックスレッド(amplex red)基質(Invitrogen、A12222)と共に20℃で30分間、暗所でインキュベートしてから蛍光測定を行うことによって検出した。決定された定量シグナルが、濃縮した親Fab(M31-B01またはM20-D02-S-A)発現培養物上清を使って構築されたキャリブレーション系列のダイナミックレンジ内にあって各個別Fab発現試料の相対的定量が可能であることをチェックした。
【0266】
[実施例11]生成したFab抗体フラグメント変異体の活性および種間交差反応性の決定
組換え可溶性ヒトまたはマウスC4.4aでの変種型Fab変異体の活性を決定するために、直接ELISAアッセイフォーマットを使用した。簡単に述べると、MTPプレート(Nunc maxisorp black、460518)を、コーティングバッファー(Candor Bioscience GmbH、121125)に希釈した2μg/mlのヒトまたはマウスC4.4aでコーティングし、4℃で15時間インキュベートした。PBSTで3回洗浄した後、プレートを、20℃において1時間、100%Smart Block(Candor Bioscience GmbH、113500)でブロッキングし、洗浄ステップを繰り返した。Fab抗体フラグメントを結合させるために、20μlの培養上清を20℃で1時間、プレートに加えてから洗浄した。いくつかの例では、PBST中の10%Smart Blockと共に90分間の追加インキュベーションステップ後に、PBSTで3回洗浄することにより、洗浄ストリンジェンシーを増加させた(表10bにおける「プロセスB」)。次に、結合した親Fabおよび変異体を、HAエピトープタグ特異的抗体_HRPコンジュゲート(Bethyl、A190-108P)によって検出した。10μMアンプレックスレッド基質(Invitrogen、A12222)をプレートに加え、一般的な蛍光リーダー、例えばTecan Ultraを使って、蛍光シグナルを検出した。量標準化アフィニティ(quantity normalized affinty)シグナルを、各ELISAにおいて、バックグラウンド補正したアフィニティシグナルと定量シグナルとの比:(アフィニティシグナル−アフィニティバックグラウンド)/(量シグナル−量バックグランド)[(Signalaffinity−Backgroundaffinity)/(Signalquantity−Backgroundquantity)]として算出した。その結果得られた値は、主として、アフィニティと正に相関するが、標準化されていない値は、試料における結合性Fabの濃度とも相関する。それゆえに、量標準化アフィニティシグナルは、アフィニティが改良された変異体の決定にとって、極めて良い指針として役立つ。
【0267】
[実施例12]単一および多重アミノ酸置換
表10aおよび10bに記載するのは、M20-D02 S-Aの重鎖および軽鎖中に生成させた単一アミノ酸置換のいくつかの例である。HC D101K、LC A90Q、LC V97AおよびLC V97Gは、ヒトC4.4aでの標準化アフィニティシグナルに関して最も強い改善を示し、マウスC4.4aでの対応するシグナルは、ヒトC4.4aでのシグナルと比較して少なくとも1/8であった(図10a)。CDR3以外では、2つの置換HC D31SとHC V51Iが、ヒトC4.4aでの標準化アフィニティシグナルに関して最も強い改善を示し、HC V51Iの場合、マウスC4.4aでの対応するシグナルは30%であった(表10b)。
【0268】
[表10a]M20-D02 S-Aの重鎖および軽鎖のCDR3内の単一アミノ酸置換の分析。ヒトおよびマウスC4.4aでの標準化アフィニティシグナル。少なくとも四つ一組で行った2回の測定の平均およびそれぞれの標準偏差を列挙する。
表10a:
【表5−1】
【0269】
[表10b]M20-D02 S-Aの重鎖および軽鎖のCDR3以外における単一アミノ酸置換の分析。ヒトおよびマウスC4.4aでの標準化アフィニティシグナルをそれぞれ列挙する。記載する数字は四つ一組での測定の中央値である。プロセスBとプロセスAの違いは、プロセスBにおける90分間のバッファー中での追加インキュベーションステップである。
表10b:
【表5−2】
【0270】
表11aおよび11bに記載するのは、B01の重鎖および軽鎖中に生成させた単一アミノ酸置換のいくつかの例である。LC W91E、LC W91F、LC W91YおよびLC G95bRは、ヒトC4.4aでの標準化アフィニティシグナルに関して最も強い改善を示し、マウスC4.4aでの対応するシグナルは、ヒトC4.4aでのシグナルと比較して少なくとも1/8、後者3つは40%以上であった(表11a)。CDR3以外では、置換HC A32Yが、ヒトC4.4aでの標準化アフィニティシグナルに関して最も強い改善を示した(表11b)。
【0271】
[表11a]M31-B01の重鎖および軽鎖のCDR3内の単一アミノ酸置換の分析。ヒトおよびマウスC4.4aでの標準化アフィニティシグナルを列挙する;少なくとも四つ一組で行った2回の測定の平均およびそれぞれの標準偏差。
表11a:
【表6−1】
【0272】
[表11b]B01の重鎖および軽鎖のCDR3以外における単一アミノ酸置換の分析。ヒトおよびマウスC4.4aでの標準化アフィニティシグナルを列挙する。記載する数字は少なくとも四つ一組での測定の中央値である。
表11b:
【表6−2】
【0273】
表12aおよび12bに記載するのは、M20-D02 S-A 抗C4.4a抗体内での複合アミノ酸置換のいくつかの例である。いくつかの置換は単一アミノ酸置換として分析し(表10aおよび10b)、さらに、この複合置換の一部としてのみ分析した。全ての組み合わせを表12aおよび12bに記載しているわけではないが、抗C4.4a抗体は、表10aおよび10bに記載した修飾の任意の組合せを含みうると考えられる。
【0274】
[表12aおよび12b]M20-D02 S-A内での多重アミノ酸置換の例
【表7−1】
【表7−2】
【0275】
表13aおよび13bに記載するのは、M31-B01抗C4.4a抗体内での複合アミノ酸置換のいくつかの例である。いくつかの置換は単一アミノ酸置換として分析し(表11aおよび11b)、さらに、この複合置換の一部としてのみ分析した。全ての組み合わせを表13aおよび13bに記載しているわけではないが、抗C4.4a抗体は、表11aおよび11bに記載した修飾の任意の組合せを含みうると考えられる。
【0276】
[表13aおよび13b]M31-B01内での多重アミノ酸置換の例
【表8−1】
【表8−2】
【0277】
表14aおよび14bに記載するのは、M20-D02 S-AおよびM31-B01中の、潜在的脱アミド化部位、具体的にはAsn-Gly(「NG」)およびAsn-Ala(「NA」)を持つCDR配列ストレッチ、ならびに多重アミノ酸置換を持ついくつかの対応する変異体の各々の配列である。
【0278】
M20 D02-S-Aには、CDR中に2つの潜在的脱アミド化部位(CDR-L3中に1つおよびCDR-H2中に1つ)がある。D02-11、-10、-06、-07および-13では、CDR-L3中の部位がN→S置換によって除去されている。
【0279】
[表14a]
【表9−1】
【0280】
M31-B01には、CDR中に2つの潜在的脱アミド化部位(CDR-L3中に1つおよびCDR-H1中に1つ)がある。B01-nn3、-05、-10、-nn4および-12ではN→S置換によって、またB01-06ではG→R置換によって、CDR-L3中の部位が除去されている。B01-02、-09、-10、-06、-nn4、-12、-nn5および-11では、N→S置換によって、CDR-H1中の部位が除去されている。B01-10、-06、-nn4および-12は、これら両方の潜在的脱アミド化部位をどちらも示さない。
【0281】
[表14b]
【表9−2】
【0282】
実施例10〜12に記載した方法を使って、単一変異およびその単一変異の組み合わせにより、アフィニティ成熟抗体を生成させた。これらの方法は、親抗体から誘導される競合抗体の生成によく適している。上述の実施例の抗体を表7に示す。これらの実施例は、M31 B01のCDR H1と少なくとも77%同一であるCDR H1配列、M31 B01のCDR H2と少なくとも90%同一であるCDR H2配列、M31 B01のCDR H3と少なくとも90%同一であるCDR H3配列、M31 B01のCDR L1と少なくとも92%同一であるCDR L1配列、M31 B01のCDR L2と少なくとも85%同一であるCDR L2配列、およびM31 B01のCDR L3と少なくとも58%同一であるCDR L3配列を含む、さらなるC4.4a結合抗体または抗原フラグメント結合性フラグメント(これらの抗体変異体は結合に関してM31 B01と競合する)、ならびにM20 D02 S-AのCDR H1と少なくとも88%同一であるCDR H1配列、M20 D02 S-AのCDR H2と少なくとも85%同一であるCDR H2配列、M20 D02 S-AのCDR H3と少なくとも73%同一であるCDR H3配列、M20 D02 S-AのCDR L1と少なくとも92%同一であるCDR L1配列、M20 D02 S-AのCDR L2と少なくとも100%同一であるCDR L2配列、およびCDR L3 M20 D02 S-Aと少なくとも58%同一であるCDR L3配列を含む、抗体または抗原フラグメント結合タンパク質(これらの抗体変異体は結合に関してM20 D02 S-Aと競合する)を提供する。
【0283】
[表15a]この表には方法12で説明したM20 D02 S-Aに関する重鎖および軽鎖のCDR1〜3のアミノ酸変異を要約する。
以下は、上記の結果を、M20 D02 S-Aから誘導される各CDR配列のコンセンサス配列の形で表している。コンセンサスを、それぞれ、CDR H1については表15a(i)に示し(配列番号297)、CDR H2については表15a(ii)に示し(配列番号298)、CDR H3については表15a(iii)に示し(配列番号299)、CDR L1については表15a(iv)に示し(配列番号300)、CDR L2については配列番号22と同一であり(表15a(v))、CDR L3については15a(v)に示す(配列番号301)。
【0284】
[表15a]この表には実施例12で説明したM20 D02 S-Aに関する重鎖および軽鎖のCDR1〜3のアミノ酸変異を要約する。
【表10−1】
【0285】
以下は、上記の結果を、M31 B01から誘導される各CDR配列のコンセンサス配列の形で表している。コンセンサスを、それぞれ、CDR H1については表15b(i)に示し(配列番号302)、CDR H2については表15b(ii)に示し(配列番号303)、CDR H3については表15b(iii)に示し(配列番号304)、CDR L1については表15b(iv)に示し(配列番号305)、CDR L2については表15b(v)に示し(配列番号306)、CDR L3については15b(v)に示す(配列番号307)。
【0286】
[表15b]この表には実施例12で説明したM31 B01に関する重鎖および軽鎖のCDR1〜3のアミノ酸変異を要約する。
【表10−2】
【0287】
[実施例13]ウェスタンブロットによるC4.4a単一ドメインへの抗体結合の決定
M31-B01およびM20-D02 S-Aの抗体結合ドメインを特徴づけるために、標準的方法により、それぞれヒトC4.4a(配列番号1)のC4.4aドメインS1アミノ酸1〜85およびC4.4ドメインS2 108〜193からなるコンストラクトを、C末端ヒトIgG1 Fc-6×Hisタグ融合物として作製し、CMV5プロモーターを含有する哺乳動物細胞発現ベクターにクローニングし、HEK293 6E細胞中で一過性に発現させた。次に、発現したS1およびS2タンパク質を、細胞上清から、5ml NiNTAスーパーフローカラム(Qiagen)を用いる金属キレートクロマトグラフィーにより、20℃で精製した。試料のpHを1M NaOHでpH8.0に調節してから、1ml/分の50mM NaH2PO4+300mM NaCl pH8.0で前もって平衡化しておいたカラムに適用した。カラムを15CVの平衡化バッファーで洗浄し、結合したHisタグ付きタンパク質を50mM NaH2PO4+300mM NaCl+250mMイミダゾール(pH8.0)で溶出させた。溶出したタンパク質を、サイズ排除クロマトグラフィーにより、Tricorn Superdex 75 10/300 GL(GE Healthcare)で、さらに精製した。
【0288】
さらなる分析のために、完全長(C4.4a(配列番号1))、精製S1-Fc-6×Hisタグ融合物およびS2 Fc-6×Hisタグを、プレキャストNuPage Bis-Tris 4-12%勾配ゲル(Invitrogen、番号NP0322Box)の異なるレーンに適用し、NuPage MES SDSランニングバッファー(Running Puffer)(Invitrogen NP0002)を使用し、製造者の説明書に従って、電気泳動によって分離した。
【0289】
次に、SDSゲルを、iblotゲルトランスファーメンブレン(Invitrogen IB3010-02)に、iBlot装置(Invitrogen)を使ってブロッティングした。メンブレンをDPBS pH7.4+4%粉乳+0.1% Tween 20中、4℃で16時間ブロッキングした後、DPBS pH7.4+0.1% Tween 20中、20℃で5分間の洗浄ステップを3回行った。M31-B01(5.76mg/ml)またはM20-D02 S-A(3.49mg/ml)をそれぞれ1/5000および1/2000の希釈度で適用し、20℃で1.5時間インキュベートした後、DPBS pH7.4+0.1% Tween 20中で2回洗浄した。第2の抗体(アルカリホスファターゼコンジュゲートヤギ抗ヒトIgG、Fab特異的;109-055-097 Jackson ImmunoResearch)を、1/1000の希釈度で、20℃において1.5時間インキュベートした。次に、DPBS pH7.4+0.1% Tween 20中、20℃で5分間の洗浄ステップを3回行った。染色は、Sigma Fast BCIP/NBTを水10mlに1タブレット使って、20℃で、バンドが目に見えるようになるまで行った。水で洗浄することによって染色反応を停止した。
【0290】
抗体M31-B01およびM20-D02 S-Aはどちらも完全長ヒトおよびマウスC4.4aに結合した。加えて、図6に示すように、これらは、C4.4aのドメインS1にも結合したが、C4.4aのドメインS2には結合しなかった。結合はもっぱら非DTT還元試料中で検出することができ、これは、1つ以上のジスルフィド橋によって安定化されたコンフォメーション依存的エピトープの存在を強く示している。
【0291】
[実施例14]抗体依存性細胞性細胞傷害アッセイ(ADCCアッセイ)
抗C4.4a IgGの抗腫瘍活性は、ADCCによって媒介されうる。C4.4a発現A549:hC4.4a細胞および非C4.4a発現親細胞を、250ng/ml、1000ng/mlまたは2000ng/mlのヒト抗C4.4aまたは対照IgG1抗体(例えば抗ジゴキシン抗体)と共にインキュベートする。ヒトPBMCを、これらの細胞に、比50:1、25:1および5:1のエフェクター-ターゲット比で加える。ターゲット溶解のレベルを決定するためにクロム51放出アッセイを行う。抗C4.4a抗体およびPBMCの存在下での溶解率が、モック抗体または抗体なしおよびPBMCの存在下での(自発的)溶解率よりも高い場合、それはADCCが有効であることを示す。
【0292】
[実施例15]増殖の抗体依存性阻害−xCELLigenceシステムによって測定される細胞増殖
xCELLigenceシステム(RTCAアナライザー、カタログ番号05228972001、Roche)は、ラベルを取り込ませることなく、細胞イベントをリアルタイムにモニターする。このシステムでは、組織培養E-プレートの底に組み込まれた櫛型微小電極間の電気的インピーダンスを測定する。インピーダンス測定は、細胞数、生存率および形態を含む細胞の生物学的状態に関して、定量的情報を与える。A549:hC4.4aの細胞増殖率を決定するために、細胞を、非結合性hIgG1アイソタイプ対照抗体または100nMのB01-3(hIgG1として)と共にインキュベートした。まず最初に、50μlの細胞培養培地(RPMI(Biochrom FG1640)+10%FCS(Biochrom #S0145)+1μg/mlピューロマイシン(Sigma 8833))を、E-プレート96の各ウェルに加えた。E-プレート96をRTCA MPステーション(カタログ番号05331625001、Roche)に挿入し、各ウェルのバックグラウンドインピーダンスを決定した。溶液をE-プレート96から再び除去し、50μlの細胞懸濁液(細胞培養培地中の5000細胞/ウェルのA549:hC4.4a)をウェルに加えた。プレートを再び挿入し、37℃+5%CO2で4時間測定した。E-プレート96を再び取り出し、細胞培養培地中の抗体(100nMのB01-3または非結合性対照hIG1)100μlを加えた。全ての試料を三つ一組にして操作した。E-プレートの再挿入後に、測定を、37℃+5%CO2で92時間行った。結果は組込みソフトウェアパッケージで解析した。結果を図6に図示する。抗体B01-3は非結合性対照抗体と比較して細胞増殖を明確に減少させる。これは、本発明の抗体がC4.4a発現細胞の細胞増殖を効果的に阻害することを示している。
【0293】
[表7]抗体の配列
【表11】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腫瘍において過剰発現するC4.4aと呼ばれる膜固定型29kDaポリペプチドに特異的な、組換え抗原結合領域ならびにそのような抗原結合領域を含有する抗体および機能的フラグメントを提供する。
【0002】
さらにまた、C4.4aは、これらのがんタイプの転移にも多量に存在する。したがって、本抗体は、これらの障害および他の障害を処置するために使用することができる。また、本発明の抗体は、診断薬分野において使用することができ、がんに関連する障害の進行におけるC4.4aの役割をさらに調査するためにも使用することができる。本発明は、前記の抗体をコードする核酸配列、それを含有するベクター、医薬組成物、および使用説明書を含むキットも提供する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
抗体ベースの治療法は、固形腫瘍を含むさまざまながんの処置に極めて有効であることが判明しつつある。例えば、ハーセプチン(HERCEPTIN)(登録商標)は乳がんの処置に使用されて成功を収めており、リツキサン(RITUXAN)(登録商標)はB細胞関連がんタイプに有効である。奏効する抗体ベースの治療法の開発において中核を成すのは、腫瘍細胞上に優先的に発現することがわかった細胞表面タンパク質に対する抗体の単離である。C4.4a(遺伝子名:LYPD3)ポリペプチドは、グリコホスファチジルイノシトール(glycophosphatidylinositol)(GPI)固定型高グリコシル化細胞表面タンパク質である。ラットC4.4aは、最初は、転移性ラット膵腫瘍細胞における転移関連細胞表面タンパク質として記載された(Roesel M.ら, Oncogene 1998,17(15):1989-2002)。ヒトC4.4aは胎盤cDNAライブラリーからクローニングされた(Wuerfel, J.ら Gene 2001,262:35-41)。C4.4aはuPAR受容体に対して構造ホモロジーを示し、2つのLY6ドメインを含有して、典型的なスリーフィンガー(three finger)タンパク質フォールディングを呈する(Jacobsen B.およびPloug M., Current Medicinal Chemistry 2008,15:2559-2573)。このタンパク質は高度にグリコシル化されており、6個の予想Nグリコシル化部位と数個のOグリコシル化部位とを含有している。さらにまた、C4.4aは、2つのLy6ドメイン中に位置する合計9個のジスルフィド橋を含有している(Hansen L.ら, Biochem J. 2004, 380:845-857)。C4.4aは、肺がん、直腸結腸がん、乳がん、子宮頸がん、膵がん、腎がん、頭頚部がんおよびメラノーマのような腫瘍細胞において、強い発現を示す。ノーザンブロット分析により、原発性肺腫瘍の約50%および肺腫瘍転移の約75%におけるC4.4a発現が実証されたが、非罹患肺組織における発現は検出できなかった(Wuerfel J.ら, Gene 2001, 262:35-41)。非小細胞肺がんでは、C4.4aを予後マーカーとして使用することができる。ここでは、高いC4.4a発現が予後不良と相関することを、臨床データが明確に示している(Hansen L.ら, Lung Cancer 2007, 58:260-266)。メラノーマでは、詳細な発現分析により、C4.4aはメラノサイトおよび母斑では発現しないが、原発性悪性メラノーマの約60%ならびにリンパ節および皮膚転移の100%で発現することが明らかになった(Seiter S.ら, J Invest Dermatol. 2001, 116(2):344-347)。さらにまた、C4.4a遺伝子発現のアップレギュレーションが、対応する隣接正常乳房組織と比較した乳がん組織(Fletcher G.C., Br. J. Cancer 2003, 88(4):579-585)、さまざまな乳がん細胞株、および正常尿路上皮と比較した尿路上皮がん(Smith B. A.ら, Cancer Res 2001, 61(4):1678-1685)に見いだされた。直腸結腸がん、膵がん、乳がんおよび前立腺がんのさまざまな腫瘍細胞株において、ポリクローナル抗体を使ったFACSにより、C4.4a発現が実証された。直腸結腸がん、膵がんおよび乳がん試料のIHC研究では、ヒト腫瘍細胞株上でのC4.4aの可変的なグリコシル化が、これらの抗体の結合を妨害する。それゆえに、これらのポリクローナル抗体の結合を可能にするには、C4.4aを少なくとも部分的に脱グリコシル化する必要がある。直腸結腸がん患者ではC4.4a発現が著しく優勢であり、C4.4aは細胞表面から脱落することで、予後血清腫瘍マーカーになる。浸潤先端部(invasive front)におけるC4.4aの発現は、直腸結腸がんの疾患再発に関する新規予後マーカーである(K. Konishiら, Cancer Science 2010)。可溶性血清C4.4aに対する診断用抗体は記述されていない(Paret C.ら, British Journal of Cancer 2007, 97:1146-1156)。正常組織では、C4.4a発現が皮膚ケラチノサイト、食道内皮細胞および胎盤細胞に限定されていることが(Wuerfel J.ら, Gene 2001, 262:35-41)、これを、腫瘍治療法の理想的なターゲットにしている。WO01/23553は、C4.4a発現またはC4.4a活性を減少させまたは阻害するC4.4a阻害剤(例えば抗C4.4a抗体)を、がんの処置に使用することを提案している。
【0004】
C4.aの正確な機能は分かっていないが、創傷治癒において遊走ケラチノサイトではアップレギュレートされる(Hansen L.ら, Biochem J. 2004, 380:845-857)。転移との関連およびuPARとの構造ホモロジーを考慮して、この分子は腫瘍細胞浸潤に、おそらくは細胞外マトリックスとの相互作用を介して、関与すると提案されている(Roesel M.ら, Oncogene 1998, 17(15):1989-2002;Paret C.ら, British Journal of Cancer 2007, 97:1146-1156)。潜在的リガンドは、ラミニン1および5、ガレクチン3(Paret C., Int. J. Cancer 2005, 115:724-733)、ならびにagr2およびagr3(Fletcher GC., Brit. J. Cancer 2003, 88:579-585)である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
免疫毒素がん療法の臨床成果に関する異種移植片マウスがんモデルの適中度は、治療用抗体が、それらのマウスオルソログとの交差反応性を欠くこと(これは正常組織への非特異的結合の減少をもたらす)によって制限されることが多い。一方、マウス抗体またはキメラ抗体で処置されている患者において形成される中和抗マウスFv抗体は、用量制限毒性をもたらすか、治療効力(therapeutic potency)の減損をもたらしうる。したがって、がん治療において特異的C4.4a発現の潜在能力を十分に活用するには、完全ヒト抗体またはヒト化抗体フォーマットでの高アフィニティーC4.4a結合という利点とマウス交差反応性とを併せ持つ、ターゲティング抗体が必要である。
【0006】
新規抗体に必要なさらにもう一つの特徴は、その表面上にC4.4aを発現する異なるがん細胞株への高アフィニティ結合である。C4.4aは腫瘍細胞上でさまざまにグリコシル化されている(Paret C.ら, British Journal of Cancer 2007 97:1146-1156)。したがって有効な抗C4.4a抗体は、例えば限定するわけではないがグリコシル化パターンの差異などといった、異なる形態のC4.4aの発現につながる個体差とは無関係に、異なる患者からの腫瘍細胞が提示するエピトープに結合しなければならない。
【0007】
C4.4aに高いアフィニティで結合して効率よく内部移行(internalize)し、好ましくは別の種からのC4.4aに対して交差反応性である、抗体、その抗原結合性抗体フラグメント、またはその変異体を、ここに提供する。抗体ベースのがん治療法、特にC4.4a発現腫瘍、例えば乳房、気道、脳、生殖器、消化管、尿路、眼、肝臓、皮膚、頭頸部、甲状腺、副甲状腺のがん、およびそれらの遠隔転移、さらにはリンパ腫、肉腫および白血病などの治療法も提供する。これらの治療法は、がん細胞への治療活性剤の送達を容易にする抗体、その抗原結合性抗体フラグメント、またはその変異体を使用することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の概要
本発明の目的は、GPIで細胞表面に固定されているC4.4aポリペプチドに対して、またはGPI部分の除去により患者の血清中で可溶性であるC4.4aポリペプチドに対して、高度に選択的な抗体もしくはその抗原結合性抗体フラグメントまたはその変異体であって、肺、結腸、乳房、子宮頸部、膵臓、腎臓、頭頸部のがんまたはメラノーマなどの疾患状態と関連するC4.4a発現を検出するための方法に使用するか、そのような疾患状態の処置に使用することができるものを提供することである。これらの目的を達成するために、C4.4a発現がん細胞株によって提示され、かつ/またはこれらの抗体によって高いアフィニティで結合される、異なる形態の、278アミノ酸の成熟ヒトC4.4aポリペプチド(配列番号1)中に存在するC4.4aエピトープに特異的に結合する、単離されたヒト抗体、ヒト化抗体もしくはキメラ抗体、またはその抗原結合性抗体フラグメントを提供することが、本発明の目的である。本明細書にいう異なる「形態」のC4.4aには、異なるグリコフォーム、異なるアイソフォーム、または異なる翻訳時修飾および翻訳後修飾を受けたC4.4aポリペプチドが含まれるが、これらに限るわけではない。本発明のもう一つの目的は、ヒトへの投与に関して安全である、抗体もしくはその抗原結合性抗体フラグメントまたはその変異体を提供することである。
【0009】
本発明のもう一つの目的は、ヒトC4.4aに結合し、かつ別の種のC4.4aに対して交差反応性である、抗体もしくはその抗原結合性抗体フラグメントまたはその変異体を提供することである。好ましくは、前記他の種は、齧歯類動物、例えばマウスまたはラットなどである。もっとも好ましくは、抗体もしくはその抗原結合性抗体フラグメントまたはその変異体は、ヒトC4.4aに結合し、かつマウスC4.4aに対して交差反応性である。
【0010】
本発明のもう一つの目的は、広範囲にわたる異なるC4.4a発現細胞株に結合する抗体もしくはその抗原結合性抗体フラグメントまたはその変異体を提供することである。本発明のもう一つの目的は、異なるC4.4a発現がん細胞または腫瘍細胞に結合する抗体またはその変異体を提供すること、および1つ以上の本発明の抗体またはその変異体を使ってC4.4a発現がん細胞に対する免疫エフェクター活性(例えばADCCまたはCDC)を引き出すことである。
【0011】
本発明のもう一つの目的は、C4.4a発現細胞への結合後に効率よく内部移行する抗体もしくはその抗原結合性抗体フラグメントまたはその変異体を提供することである。本発明の抗体は、既知の医薬と共投与してもよく、場合によっては、抗体そのものを修飾してもよい。例えば、効力を潜在的にさらに増加させるために、抗体を細胞毒性剤、免疫毒素、担毒体(toxophore)または放射性同位体にコンジュゲートすることができるだろう。
【0012】
本発明のもう一つの目的は、正常組織と比較してC4.4a発現量が上昇しているか、C4.4aが細胞表面から脱落して血清中で検出可能になっている、悪性状態または形成異常状態を診断するためのツールを構成する抗体を提供することである。検出可能なマーカーにコンジュゲートされた抗C4.4a抗体を提供する。好ましいマーカーは、放射性ラベル、酵素、発色団または発蛍光体である。
【0013】
本発明は、本発明の抗体またはその抗原結合性フラグメントをコードするポリヌクレオチド、本発明の抗体またはその抗原結合性フラグメントを発現する細胞、本発明の抗体またはその抗原結合性フラグメントを生産するための方法、本発明の抗体またはその抗原結合性フラグメントを使って形成異常細胞の成長を阻害する方法、および本発明の抗体またはその抗原結合性フラグメントを使ってがんを処置し検出する方法にも関係する。
【0014】
本発明は、それらが、a)ネイティブな、細胞表面に発現した、完全にグリコシル化されたC4.4aに、好ましくは、ネイティブな、細胞表面に発現した、完全にグリコシル化されたC4.4aのドメインS1に結合する点、b)マウスC4.4aに対して交差反応性である点、およびc)C4.4a発現細胞中に効率よく内部移行する点で、既存のC4.4a抗体(Paret C.ら, British Journal of Cancer 2007 97:1146-1156)と区別される抗体を提供する。本明細書では、本発明のこれらの目的および他の目的をさらに詳しく説明する。
【0015】
ある態様において、本発明は、ネイティブな、細胞表面に発現した、完全にグリコシル化されたC4.4aに特異的に結合する抗原結合領域、好ましくはネイティブな、細胞表面に発現した、完全にグリコシル化されたC4.4aポリペプチドのドメインS1(C4.4aのアミノ酸1〜85;配列番号1)に特異的に結合する抗原結合領域を含有する、単離された抗体またはその抗原結合性フラグメントを提供する。もう一つの実施形態において、抗体または抗体結合性フラグメントは、抗体または抗原結合性フラグメントが上述の細胞に結合すると、C4.4a発現細胞中に内部移行する。さらにもう一つの好ましい実施形態では、抗体または抗原結合性フラグメントが、C4.4aへの結合に関して、抗体M31-B01またはM20-D02 S-Aと競合する。さらにもう一つの好ましい実施形態では、抗体または抗原結合性フラグメントが、ヒトC4.4aへの結合に関して、抗体M31-B01またはM20-D02 S-Aと競合する。さらにもう一つの好ましい実施形態では、抗体または抗原結合性フラグメントが、ヒトおよび齧歯類C4.4aへの結合に関して、抗体M31-B01またはM20-D02 S-Aと競合し、さらにもう一つの好ましい実施形態では、齧歯類C4.4aがマウスC4.4aである。
【0016】
より好ましい一実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合性フラグメントが、配列番号5(H-CDR1)、配列番号9(H-CDR2)および配列番号13(H-CDR3)を含む重鎖抗原結合領域を含み、かつ配列番号17(L-CDR1)、配列番号21(L-CDR2)および配列番号25(L-CDR3)を含む軽鎖抗原結合領域を含む。
【0017】
より好ましい一実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合性フラグメントは、配列番号6(H-CDR1)、配列番号10(H-CDR2)および配列番号14(H-CDR3)を含む重鎖抗原結合領域を含み、かつ配列番号18(L-CDR1)、配列番号22(L-CDR2)および配列番号26(L-CDR3)を含む軽鎖抗原結合領域を含む。
【0018】
より好ましい一実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合性フラグメントは、配列番号7(H-CDR1)、配列番号11(H-CDR2)および配列番号15(H-CDR3)を含む重鎖抗原結合領域を含み、かつ配列番号19(L-CDR1)、配列番号23(L-CDR2)および配列番号27(L-CDR3)軽鎖抗原結合領域を含む。
【0019】
より好ましい一実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合性フラグメントは、配列番号8(H-CDR1)、配列番号12(H-CDR2)および配列番号16(H-CDR3)を含む重鎖抗原結合領域を含み、かつ配列番号20(L-CDR1)、配列番号24(L-CDR2)および配列番号28(L-CDR3)を含む軽鎖抗原結合領域を含む。
【0020】
より好ましい一実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合性フラグメントは、配列番号45(H-CDR1)、配列番号46(H-CDR2)および配列番号47(H-CDR3)を含む重鎖抗原結合領域を含み、かつ配列番号48(L-CDR1)、配列番号49(L-CDR2)および配列番号50(L-CDR3)を含む軽鎖抗原結合領域を含む。
【0021】
より好ましい一実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合性フラグメントは、配列番号55(H-CDR1)、配列番号56(H-CDR2)および配列番号57(H-CDR3)を含む重鎖抗原結合領域を含み、かつ配列番号58(L-CDR1)、配列番号59(L-CDR2)および配列番号60(L-CDR3)を含む軽鎖抗原結合領域を含む。
【0022】
より好ましい一実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合性フラグメントは、配列番号65(H-CDR1)、配列番号66(H-CDR2)および配列番号67(H-CDR3)を含む重鎖抗原結合領域を含み、かつ配列番号68(L-CDR1)、配列番号69(L-CDR2)および配列番号70(L-CDR3)を含む軽鎖抗原結合領域を含む。
【0023】
さらにもう一つのより好ましい実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合性フラグメントは、配列番号75(H-CDR1)、配列番号76(H-CDR2)および配列番号77(H-CDR3)を含む重鎖抗原結合領域を含み、かつ配列番号78(L-CDR1)、配列番号79(L-CDR2)および配列番号80(L-CDR3)を含む軽鎖抗原結合領域を含む。
【0024】
より好ましい一実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合性フラグメントは、配列番号85(H-CDR1)、配列番号86(H-CDR2)および配列番号87(H-CDR3)を含む重鎖抗原結合領域を含み、かつ配列番号88(L-CDR1)、配列番号89(L-CDR2)および配列番号90(L-CDR3)を含む軽鎖抗原結合領域を含む。
【0025】
より好ましい一実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合性フラグメントは、配列番号95(H-CDR1)、配列番号96(H-CDR2)および配列番号97(H-CDR3)を含む重鎖抗原結合領域を含み、かつ配列番号98(L-CDR1)、配列番号99(L-CDR2)および配列番号100(L-CDR3)を含む軽鎖抗原結合領域を含む。
【0026】
より好ましい一実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合性フラグメントは、配列番号105(H-CDR1)、配列番号106(H-CDR2)および配列番号107(H-CDR3)を含む重鎖抗原結合領域を含み、かつ配列番号108(L-CDR1)、配列番号109(L-CDR2)および配列番号110(L-CDR3)を含む軽鎖抗原結合領域を含む。
【0027】
より好ましい一実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合性フラグメントは、配列番号115(H-CDR1)、配列番号116(H-CDR2)および配列番号117(H-CDR3)を含む重鎖抗原結合領域を含み、かつ配列番号118(L-CDR1)、配列番号119(L-CDR2)および配列番号120(L-CDR3)を含む軽鎖抗原結合領域を含む。
【0028】
より好ましい一実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合性フラグメントは、配列番号125(H-CDR1)、配列番号126(H-CDR2)および配列番号127(H-CDR3)を含む重鎖抗原結合領域を含み、かつ配列番号128(L-CDR1)、配列番号129(L-CDR2)および配列番号130(L-CDR3)を含む軽鎖抗原結合領域を含む。
【0029】
より好ましい一実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合性フラグメントは、配列番号135(H-CDR1)、配列番号136(H-CDR2)および配列番号137(H-CDR3)を含む重鎖抗原結合領域を含み、かつ配列番号138(L-CDR1)、配列番号139(L-CDR2)および配列番号140(L-CDR3)を含む軽鎖抗原結合領域を含む。
【0030】
本発明の抗体はIgG(例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4)であることができ、一方、抗体フラグメントは、例えばFab、Fab'、F(ab')2またはscFvであることができる。したがって、本発明の抗体フラグメントは、本明細書において述べるように1つ以上の方法で挙動する抗原結合領域であってもよいし、そのような抗原結合領域を含有してもよい。
【0031】
本発明は、単離された核酸配列にも関係し、そのそれぞれは、C4.4aのエピトープに特異的な前述の抗体またはその抗原結合性フラグメントをコードすることができる。本発明の核酸は、抗体の、または抗原結合性抗体フラグメントの、組換え生産に適している。したがって本発明は、本発明の核酸配列を含有するベクターおよび宿主細胞にも関係する。
【0032】
本発明の組成物は治療的または予防的応用に使用することができる。本発明は、それゆえに、本発明の抗体(またはその抗原結合性フラグメント)と、そのための医薬上許容される担体または賦形剤とを含む医薬組成物を包含する。関連する一態様において、本発明は、C4.4a発現細胞の望ましくない存在と関連する障害または状態を処置するための方法を提供する。好ましい一実施形態では、前述の障害ががんである。そのような方法は、そのような処置を必要とする対象に、本明細書に記載されまたは本明細書において考慮される本発明の抗体を含有する医薬組成物の有効量を投与するステップを含む。
【0033】
本発明は、抗体ライブラリーを使って、C4.4aに特異的に結合するそのようなライブラリーの1つ以上のメンバーを単離するための説明書(instructions)も提供する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】サンドイッチ表面プラズモン共鳴分析を使って行われたエピトープ分類実験の結果を表す図。Yはレゾナンスユニットであり、Xは時間(単位:秒)である。本発明の抗体の一つをチップにコーティングした。AはC4.4aを添加した時間を示す。Bは本発明の他の抗体を添加した時間を示す。両抗体がC4.4aに同時に結合することはできず、少なくともオーバーラップしたエピトープが示された。
【図2】ヒトIgG1フォーマットでの組換えヒト(a)およびマウス(b)C4.4aに対する本発明の抗C4.4a抗体の結合に関するデータを提供する図。EC50値は、実施例4で述べるように、ELISAによって決定した。M31-B01(A)は、ヒトおよびマウスC4.4aにそれぞれ0.24および0.29nMのEC50で結合している。M20 B02 S-A(B)は、ヒトおよびマウスC4.4aにそれぞれ0.3および0.38nMのEC50で結合している。Xはlog nMであり、Yは360nmにおける吸光度である。
【図3】A549:hC4.4a(a)のようにhC4.4aでトランスフェクトされているか、NCI H322(b)、NCI H292(c)、H1975/BCRP(d)またはBxPC3(e)などの生来的にC4.4aを発現する腫瘍細胞株である、異なる腫瘍細胞株への本発明の抗体の特異的結合に関するデータを提供する図。M31-B01(白丸)およびM20-D02 S-A(黒丸)の結合に関するEC50値を(f)に要約する。IgG1アイソタイプ対照(黒三角)は細胞への結合を何も示さなかった。データは全てFACSタイトレーションによって生成した。Xは濃度(log nM)であり、Yは幾何平均(geomean)蛍光(×103)である。
【図4】(a)A549:hC4.4a細胞中へのフルオロフォア標識抗C4.4a抗体の特異的内部移行(internalization)に関するデータを提供する図。(b)陰性対照としての非トランスフェクトA549細胞に関するデータを提供する図。AはM31-B01(黒四角)、BはM20-D02 S-A(□)、CはhIgG1のアイソタイプ対照(星印)、Xは時間(単位:分)、Yは顆粒数/細胞[×103]である。どちらのC4.4a抗体も、C4.4aを保持する腫瘍細胞中に、特異的、効率的かつ迅速に内部移行する。 (c)および(d)は、A549:hC4.4a細胞中へのM31-B01の内部移行に関するデータを提供する図である。5分後(c)には細胞表面の弱い染色しか観察することができなかった。90分後(d)には、内部移行したM31-B01抗体を含有する強く着色したエンドソーム(これはpH依存性蛍光色素を保有している)が明確に見え、効果的な内部移行を示す。
【図5】ウェスタンブロッティングによって決定した、M31-B01およびM20-D02 S-Aが結合しているエピトープに関するデータを提供する図。A)は異なるC4.4a種のクーマシー(Coomassie)250染色SDS-PAGEを表す(レーン2+7 hC4.4a、レーン3+8 mC4.4a、レーン4+9 hC4.4aドメインS1-Fc-his6、レーン5+10 hC4.4aドメインS2-Fc-his6;レーン1、6および11は分子量マーカーを含む;レーン2〜5は非還元試料を含む;レーン6〜10は還元試料を含む)。B)およびC)は、A)の場合と同じ試料ロードによる各ウェスタンブロットを表す。B)は、検出抗体としてのM31-B01と共にインキュベートし、C)は、M20-D02 S-Aと共にインキュベートした。どちらの抗体も、コンフォメーショナルエピトープ(conformational epitope)を示す特異的な還元依存的染色を示す。ただし、どちらも、ヒトおよびマウス完全長C4.4aならびにヒトC4.4aドメインS1に結合するが、ヒトC4.4aドメインS2には結合しない。
【図6】xCELLigenceアナライザーによる測定で決定した、本発明の抗体(B01-3)によるインビトロでの腫瘍細胞増殖の阻害に関するデータを提供する図。A549:hC4.4a細胞を、E-プレートの単一ウェルにおいて、表示した時間、実施例15に記載する条件下で、100nMの非結合性IgG1アイソタイプ対照抗体(A)または100nMのB01-3(B)と共に、インキュベートした。Xは時間(単位:時間)であり、Yは細胞増殖の相対速度である。B01-3と共にインキュベートしたA549:hC4.4a細胞は、対照IgG1と比較して細胞増殖の減少を示す。
【図7】本発明の配列を表す図。
【発明を実施するための形態】
【0035】
発明の詳細な説明
本発明は、C4.4aに対して特異的であるかまたは高いアフィニティを有し、対照に治療的利益(therapeutic benefit)を送達することができる、新規抗体の発見に基づく。本発明の抗体は、ヒト抗体、ヒト化抗体またはキメラ抗体であることができ、本明細書にさらに詳しく説明する多くの状況において使用することができる。
【0036】
定義
「ヒト」抗体またはその抗原結合性フラグメントとは、ここでは、キメラ抗体ではなく(例えば「ヒト化」抗体ではなく)、非ヒト種に(全部または一部が)由来する抗体でもないものと定義される。ヒト抗体またはその抗原結合性フラグメントは、ヒトから得ることができるか、または合成ヒト抗体であることができる。「合成ヒト抗体」とは、ここでは、既知のヒト抗体配列の解析に基づく合成配列からインシリコ(in silico)で全部または一部が導き出された配列を有する抗体と定義される。ヒト抗体配列またはそのフラグメントのインシリコ設計は、例えばヒト抗体配列または抗体フラグメント配列のデータベースを解析し、そこから得られたデータを利用してポリペプチド配列を考案することなどによって、達成することができる。ヒト抗体またはその抗原結合性フラグメントの一例は、ヒト起源の抗体配列のライブラリーから単離された核酸によってコードされるものである(すなわち前述のライブラリーはヒト天然供給源から採取された抗体に基づく)。ヒト抗体の例には、Soederlinら, Nature Biotech. 2000, 18:852-856に記載されている抗体が含まれる。
【0037】
「ヒト化抗体」またはそのヒト化抗原結合性フラグメントは、本明細書においては、(i)非ヒト供給源(例えば異種免疫系を保持するトランスジェニックマウス)に由来し、ヒト生殖細胞系配列に基づく抗体、(ii)非ヒト抗体のフレームワーク領域のアミノ酸が遺伝子工学によってヒトアミノ酸配列に部分的に交換されているもの、または(iii)CDR移植されたものであって、可変ドメインのCDRが非ヒト起源のものであり、一方、可変ドメインの1つ以上のフレームワークはヒト起源のものであり、定常ドメイン(存在する場合)はヒト起源のものであるものと定義される。
【0038】
「キメラ抗体」またはその抗原結合性フラグメントは、本明細書においては、可変ドメインが非ヒト起源に由来し、定常ドメインの一部または全部がヒト起源に由来するものと定義される。
【0039】
本明細書において使用する用語「モノクローナル抗体」は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を指す。すなわち、その集団を構成する個々の抗体は、微量に存在するかもしれない変異、例えば天然の変異が考えられることを除けば、同一である。したがって「モノクローナル」という用語は、別個の抗体の混合物ではないという抗体の特徴を示している。典型的には異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物の各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に向けられる。モノクローナル抗体調製物は、その特異性だけでなく、それらが典型的には他の免疫グロブリンによって汚染されていないという点でも有利である。「モノクローナル」という用語は、何らかの特定の方法による抗体の生産を要求していると解釈すべきではない。モノクローナル抗体という用語は、特にキメラ抗体、ヒト化抗体およびヒト抗体を包含する。
【0040】
本明細書において、目的の抗原、例えば腫瘍関連ポリペプチド抗原ターゲット(ここではC4.4a)「に特異的に結合する」抗体、目的の抗原「に対して/に関して特異的な」抗体、または目的の抗原「を特異的に認識する」抗体とは、抗体が、その抗原を発現する細胞または組織をターゲティングする上で治療剤として有用であり、他のタンパク質と有意に交差反応しないか、前述の抗原ターゲットのオルソログおよび変異体(例えば変種型、スプライス変異体、またはタンパク質分解的切断型)以外のタンパク質と有意に交差反応しないような形で、その抗原に十分なアフィニティで結合するものである。特定のポリペプチドまたは特定のポリペプチドターゲット上のエピトープ「を特異的に認識する」または「に特異的に結合する」または「に対して/関して特異的な」という用語は、本明細書においては、例えば、その抗原に関して、約10-4M未満、あるいは約10-5M未満、あるいは約10-6M未満、あるいは約10-7M未満、あるいは約10-8M未満、あるいは約10-9M未満、あるいは約10-10M未満、あるいは約10-11M未満、あるいは約10-12M未満、またはそれ以下の一価(monovalent)KDを有する抗体またはその抗原結合性フラグメントによって示すことができる。抗体は、その抗体がある抗原と1つ以上の参照抗原とを識別できるのであれば、その抗原「に特異的に結合」し、その抗原「に対して/関して特異的」であり、またはその抗原「を特異的に認識」する。その最も一般的な形態において、「特異的結合」、「に特異的に結合する」、「に対して/関して特異的である」または「を特異的に認識する」とは、例えば次に挙げる方法の一つに従って決定される、目的の抗原と無関係な抗原とを識別する抗体の能力を指している。そのような方法には、ウェスタンブロット、ELISA試験、RIA試験、ECL試験、IRMA試験およびペプチドスキャンが含まれるが、これらに限るわけではない。例えば標準的なELISAアッセイを行うことができる。スコア化は標準的な発色法(例えば西洋ワサビペルオキシダーゼを持つ二次抗体およびテトラメチルベンジジンと過酸化水素)で行うことができる。一定のウェルにおける反応を、例えば450nmにおける光学密度によってスコア化する。典型的なバックグラウンド(=陰性反応)は0.1ODであり、また典型的な陽性反応は1ODであることができる。これは陽性/陰性差が、5倍以上、10倍以上、50倍以上、そして好ましくは100倍以上であることを意味する。典型的には、結合特異性の決定は、単一の参照抗原ではなく、例えば粉乳(milk powder)、BSA、トランスフェリンなど、約3〜5個の無関係な抗原のセットを使って行われる。
【0041】
「結合アフィニティ」は、ある分子の単一結合部位とその結合パートナーの間の非共有結合的相互作用の総和の強さを指す。別段の表示がない限り、本明細書にいう「結合アフィニティ」は、結合ペアのメンバー(例えば抗体と抗原)の間の1:1相互作用を反映する固有の結合アフィニティを指す。解離定数「KD」は、ある分子(例えば抗体)とその結合パートナー(例えば抗原)の間のアフィニティを記述するために、すなわち、リガンドが特定タンパク質にどのくらい強固に結合するかを記述するために、よく使用される。リガンド-タンパク質アフィニティは、それら2つの分子間の非共有結合的分子間相互作用による影響を受ける。アフィニティは、本明細書に記載する方法を含め、当技術分野において知られる一般的な方法によって測定することができる。ある実施形態では、本発明による「KD」または「KD値」が、実施例3に従って、Biacore T100計器(GE Healthcare Biacore, Inc.)を用いる表面プラズモン共鳴アッセイによって測定される。簡単に述べると、抗体をCM5センサーチップ上に、間接的捕捉試薬・抗ヒトIgG Fcを介して固定化した。「Human Antibody Capture Kit」(BR-1008-39、GE Healthcare Biacore, Inc.)の試薬を、製造者の説明どおりに使用した。1セルあたり約5000レゾナンスユニット(RU)のモノクローナルマウス抗ヒトIgG(Fc)抗体を固定化した。抗C4.4抗体を注入して約200〜600RUの捕捉レベルに到達させた。さまざまな濃度のヒトまたはマウスC4.4aを固定化抗C4.4a抗体上に注入した。インライン参照セル補正と、それに続くバッファー試料サブトラクション後に、センサーグラム(sensogram)を作成した。Biacore Evaluation Softwareを使ってセンサーグラムを一次1:1結合モデルに当てはめることによって得られた会合速度定数(kon)と解離速度定数(koff)の比に基づいて、解離平衡定数(KD)を算出した。他の適切な装置は、BIACORE(登録商標)2000、BIACORE(登録商標)3000(BIAcore, Inc.、ニュージャージー州ピスカタウェイ)またはProteOn XPR36計器(Bio-Rad Laboratories, Inc.)である。
【0042】
本明細書において使用する用語「抗体」は、免疫グロブリン分子、好ましくは4本のポリペプチド鎖、すなわち典型的にはジスルフィド結合によって相互に連結されている2本の重(H)鎖および2本の軽(L)鎖で構成されるものを指すものとする。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではVHと略記する)および重鎖定常領域で構成される。重鎖定常領域は、例えば3つのドメインCH1、CH2およびCH3を含むことができる。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではVLと略記する)および軽鎖定常領域で構成される。軽鎖定常領域は1つのドメイン(CL)で構成される。VH領域およびVL領域は、さらに、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより良く保存された領域がところどころに挿入された、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変領域に細分することができる。各VHおよびVLは、典型的には、アミノ末端からカルボキシル末端へと例えば次の順序で配置された3つのCDRおよび4つまでのFRで構成される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。
【0043】
本明細書において使用する用語「相補性決定領域」(CDR:例えばCDR1、CDR2、およびCDR3)は、抗原結合にとってその存在が必要な、抗体可変ドメインのアミノ酸残基を指す。各可変ドメインは、典型的には、CDR1、CDR2およびCDR3と同定される3つのCDR領域を有する。各相補性決定領域は、Kabatが定義した「相補性決定領域」からのアミノ酸残基(例えば軽鎖可変ドメインにおける24〜34(L1)、50〜56(L2)および89〜97(L3)ならびに重鎖可変ドメインにおける31〜35(H1)、50〜65(H2)および95〜102(H3)付近の残基;Kabatら「Sequences of Proteins of Immulological Interest」第5版、米国公衆衛生局、国立衛生研究所、メリーランド州ベセスダ(1991))および/または「超可変ループ」からの残基(例えば軽鎖可変ドメインにおける26〜32(L1)、50〜52(L2)および91〜96(L3)、ならびに重鎖可変ドメインにおける26〜32(H1)、53〜55(H2)および96〜101(H3)付近の残基;ChothiaおよびLesk, J Mol Biol 196:901-917 (1987))を含みうる。いくつかの例では、相補性決定領域は、Kabatに従って定義されるCDR領域と超可変ループの両方からのアミノ酸を含むことができる。
【0044】
無傷抗体は、その重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、異なる「クラス」に割り当てることができる。無傷抗体には5つの主要クラス、すなわちIgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMがあり、これらのうちのいくつかは、「サブクラス」(アイソタイプ)、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、およびIgA2へと、さらに分割することができる。抗体の異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれα、δ、ε、γ、およびμと呼ばれる。免疫グロブリンの異なるクラスのサブユニット構造および三次元立体配置はよく知られている。本明細書にいう抗体は、従来から知られている抗体およびその機能的フラグメントである。
【0045】
抗体/免疫グロブリンの「機能的フラグメント」または「抗原結合性抗体フラグメント」は、ここでは、抗原結合領域を保っている抗体/免疫グロブリンのフラグメント(例えばIgGの可変領域)と定義される。抗体の「抗原結合領域」は、典型的には、抗体の1つ以上の超可変領域、例えばCDR1、CDR2、および/またはCDR3領域に見いだされるが、可変「フレームワーク」領域も、CDRに足場を提供することなどにより、抗原結合に重要な役割を果たすことができる。好ましくは、「抗原結合領域」は、少なくとも可変軽(VL)鎖のアミノ酸残基4〜103と、可変重(VH)鎖のアミノ酸残基5〜109とを含み、より好ましくはVLのアミノ酸残基3〜107とVHのアミノ酸残基4〜111とを含み、特に好ましいのは、完全なVL鎖およびVH鎖(VLのアミノ酸位置1〜109とVHのアミノ酸位置1〜113;WO 97/08320による番号付与)である。本発明における使用にとって好ましい免疫グロブリンクラスはIgGである。
【0046】
本発明の「機能的フラグメント」または「抗原結合性抗体フラグメント」には、Fab、Fab'、F(ab')2、およびFvフラグメント;ダイアボディ(diabody);単一ドメイン抗体(DAb)、線状抗体;単鎖抗体分子(scFv);および抗体フラグメントから形成される多重特異性(例えば二重特異性および三重特異性)抗体(C. A. K Borrebaeck編 (1995) Antibody Engineering (Breakthroughs in Molecular Biology), Oxford University Press;R. KontermannおよびS. Duebel編 (2001) Antibody Engineering (Springer Laboratory Manual), Springer Verlag)。「多重特異性」または「多官能性」抗体以外の抗体は、その結合部位のそれぞれが同一であると理解される。F(ab')2またはFabは、CH1ドメインとCLドメイン間に生じる分子間ジスルフィド相互作用が最小限になるか完全に除去されるように、操作することができる。
【0047】
本発明の抗体は、多数の健常ボランティアの抗体から単離されたアミノ酸配列に基づく組換え抗体ライブラリーに由来してもよい。n-CoDeR(登録商標)技術を使って、完全ヒトCDRを新しい抗体分子に組み換える。このユニークな組換えプロセスにより、ライブラリーは、ヒト免疫系によって天然に作り出されたであろう抗体よりも多様な抗体を含有することが可能になる。
【0048】
本明細書にいう、異なる「形態」の抗原、例えばC4.4aとは、ここでは、異なる翻訳時修飾および翻訳後修飾、例えば限定するわけではないが、一次C4.4a転写産物のスプライシングの相違、グリコシル化の相違、および翻訳後タンパク質分解的切断(proteolytic cleavage)の相違に起因する異なるタンパク質分子と定義される。
【0049】
本明細書において使用する用語「エピトープ」は、免疫グロブリンまたはT細胞受容体に特異的に結合する能力を有する任意のタンパク質決定基を包含する。エピトープ決定基は通常、アミノ酸または糖側鎖などの分子またはそれらの組み合わせの化学的に活性な表面配置(surface grouping)からなり、通常は特異的な三次元構造特徴と、特異的な電荷特徴とを有している。2つの抗体は、当業者に周知の方法のいずれかによって、一方の抗体が競合結合アッセイにおいてもう一つの抗体と競合することが示されるのであれば、「同じエピトープに結合する」といわれる。
【0050】
「単離された」抗体は、同定され、それを発現する細胞の構成要素から分離された抗体である。細胞の夾雑構成要素は、抗体の診断的または治療的使用を妨害するであろう物質であり、酵素、ホルモン、および他のタンパク質性または非タンパク質性溶質を含みうる。好ましい実施形態では、抗体が、(1)例えばローリー(Lowry)法、UV-Vis分光法、SDS-キャピラリーゲル電気泳動(例えばCaliper LabChip GXII、GX 90またはBiorad Bioanalyzer装置によるもの)などによる決定で、抗体の95重量%を上回るまで、さらに好ましい実施形態では99重量%を上回るまで精製されるか、(2)少なくとも15残基のN末端アミノ酸配列または内部アミノ酸配列を得るのに十分な程度にまで精製されるか、または(3)還元条件下または非還元条件下に、クーマシーブルーを使用するか、好ましくは銀染色を使用して、SDS-PAGEで単一バンドになるまで精製される。単離された天然抗体には、組換え細胞内で原位置(in situ)にある抗体が包含される。というのも、その抗体の天然環境の構成要素のうち、少なくとも1つは存在しないだろうからである。しかし通常は、単離された抗体は、少なくとも1つの精製ステップによって調製されるであろう。
【0051】
「抗体依存性細胞性細胞傷害」または「ADCC」とは、一定の細胞傷害性細胞(例えばNK細胞、好中球、およびマクロファージ)上に存在するFcガンマ受容体(FcγR)に結合した分泌Igによって、これらの細胞傷害性エフェクター細胞が、抗原を保持するターゲット細胞に特異的に結合し、次いでそのターゲット細胞を例えば細胞毒によって殺すことが可能になる、細胞傷害性の一形態を指す。目的の抗体のADCC活性を評価するには、インビトロADCCアッセイ、例えば米国特許第5,500,362号または第5,821,337号または米国特許第6,737,056号(Presta)に記載されているものを行うことができる。そのようなアッセイに役立つエフェクター細胞にはPBMCおよびNK細胞が含まれる。
【0052】
「補体依存性細胞傷害」または「CDC」とは、補体の存在下でのターゲット細胞の溶解を指す。古典的補体経路の活性化は、それぞれのコグネイト抗原に結合している抗体(適当なサブクラスのもの)に補体系の第1構成要素(C1q)が結合することによって開始される。補体活性化を評価するには、例えばGazzano-Santoroら, J. Immunol. Methods 202:163 (1996)に記載されているようなCDCアッセイを行うことができる。改変されたFc領域アミノ酸配列を有し、C1q結合の増加または減少を伴うポリペプチド変異体(変異型Fc領域を持つポリペプチド)が、例えば米国特許第6,194,551号B1およびWO 1999/51642に記載されている。
【0053】
イムノコンジュゲート(immunoconjugate)という用語(互換的に「抗体-薬物コンジュゲート」または「ADC」ともいう)は、化学療法剤、薬物、成長阻害剤、毒素(例えば細菌、真菌、植物、動物起源のタンパク質毒素、酵素的に活性な毒素、またはそのフラグメント)、または放射性同位元素(すなわちラジオコンジュゲート(radioconjugate))などといった1つ以上の細胞毒性剤にコンジュゲートされた抗体を指す。イムノコンジュゲートは、がんの処置において、細胞毒性剤、すなわち細胞を殺すか、その成長または増殖を阻害する薬物を、局所的に送達するために使用されてきた(例えばLiuら, Proc Natl. Acad. Sci. (1996), 93, 8618-8623)。イムノコンジュゲートは、非コンジュゲート薬物の全身性投与が正常細胞および/または正常組織に許容できないレベルの毒性をもたらしうる場合に、腫瘍への薬物部分の標的送達(targeted delivery)と、そこでの細胞内蓄積を可能にする。抗体-毒素コンジュゲートに使用される毒素には、ジフテリア毒素などの細菌毒素、リシン(ricin)などの植物毒素、ゲルダナマイシンなどの小分子毒素が含まれる。毒素は、その細胞傷害効果を、チューブリン結合、DNA結合、またはトポイソメラーゼ阻害を含む機序によって発揮しうる。
【0054】
参照ポリヌクレオチド配列または参照ポリペプチド配列に関して、それぞれ「パーセント(%)配列同一性」とは、最大のパーセント配列同一性が得られるように配列をアラインメントし、必要であればギャップを導入した後に、それぞれ参照ポリヌクレオチド配列または参照ポリペプチド配列中のそれぞれ核酸残基またはアミノ酸残基と同一である候補配列中のそれぞれ核酸残基またはアミノ酸残基のパーセンテージと定義される。保存的置換は配列同一性の一部とはみなされない。好ましいのはギャップなし(un-gapped)のアラインメントである。パーセントアミノ酸配列同一性を決定するためのアラインメントは、当技術分野における技法の範囲に含まれるさまざまな方法で、例えばBLAST、BLAST-2、ALIGNまたはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなどの公的に利用可能なコンピュータソフトウェアを使って、達成することができる。当業者は、比較される配列の全長にわたって最大のアラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含めて、配列をアラインメントするための適当なパラメータを決定することができる。
【0055】
本発明の抗体
本発明は、抗C4.4a抗体を提供することによってC4.4a陽性がん細胞の成長および新生物疾患の進行を阻害するための方法に関する。29kDaのヒトC4.4aポリペプチド(配列番号1またはそのフラグメント)に特異的に結合する抗体、その抗原結合性抗体フラグメント、ならびに抗体およびフラグメントの変異体が提供される。好ましい一実施形態では、抗体、その抗原結合性フラグメント、または変異体が、C4.4aポリペプチドの細胞外ドメインS1に特異的に結合する。C4.4aポリペプチドを、本明細書においては、「C4.4a」という。
【0056】
もう一つの実施形態において、抗体またはその抗原結合性フラグメントがC4.4a発現細胞に結合すると、抗体またはその抗原結合性フラグメントは、前述の細胞中に内部移行する。さらにもう一つの好ましい実施形態において、抗体またはその抗原結合性フラグメントは、C4.4aへの結合に関して、抗体M31-B01またはM20-D02 S-Aと競合する。さらにもう一つの好ましい実施形態において、抗体またはその抗原結合性フラグメントは、ヒトC4.4aへの結合に関して、抗体M31-B01またはM20-D02 S-Aと競合する。さらにもう一つの好ましい実施形態において、抗体またはその抗原結合性フラグメントは、ヒトおよび齧歯類C4.4aへの結合に関して、抗体M31-B01またはM20-D02 S-Aと競合し、さらにもう一つの好ましい実施形態では、齧歯類C4.4aがマウスC4.4aである。
【0057】
さらにもう一つの好ましい実施形態において、抗体またはその抗原結合性フラグメントは、表7に示す少なくとも1つの(好ましくは対応する)CDR配列と少なくとも50%、55%、60% 70%、80%、90%、または95%同一である重鎖または軽鎖CDR配列を含むか、または表7に示すVHまたはVL配列とそれぞれ少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、92%または95%同一である可変重鎖または軽鎖配列を含む。
【0058】
さらにもう一つの好ましい実施形態では、抗体またはその抗原結合性フラグメントが、それぞれ抗体M31-B01またはM20-D02 S-Aの少なくとも1つの(好ましくは対応する)CDR配列と少なくとも50%、55%、60% 70%、80%、90%、または95%同一である重鎖および/または軽鎖CDR配列を含む。
【0059】
さらにもう一つの好ましい実施形態では、抗体またはその抗原結合性フラグメントが、それぞれ抗体M31-B01またはM20-D02 S-Aの(好ましくは対応する)重鎖および/または軽鎖CDR配列と少なくとも50%、55%、60% 70%、80%、90%、または95%同一である重鎖および/または軽鎖CDR配列を含む。
【0060】
さらにもう一つの好ましい実施形態では、抗体またはその抗原結合性フラグメントが、抗体M31-B01の重鎖CDR2およびCDR3配列と少なくとも50%、55%、60% 70%、80%、90%、または95%同一である重鎖CDR2およびCDR3配列、ならびに抗体M31-B01の軽鎖CDR1およびCDR3配列と少なくとも50%、55%、60% 70%、80%、90%、または95%同一である軽鎖CDR1およびCDR3配列を含む。さらにもう一つの好ましい実施形態では、抗体またはその抗原結合性フラグメントが、抗体M20-D02 S-Aの重鎖CDR2およびCDR3配列と少なくとも50%、55%、60% 70%、80%、90%、または95%同一である重鎖CDR2およびCDR3配列、ならびに抗体M20-D02 S-Aの軽鎖CDR1およびCDR3配列と少なくとも50%、55%、60% 70%、80%、90%、または95%同一である軽鎖CDR1およびCDR3配列を含む。
【0061】
さらにもう一つの好ましい実施形態では、抗体またはその抗原結合性フラグメントが、表7または表4に開示する好ましくは抗体M31-B01またはM20-D02 S-AのVH配列と少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、92%または95%同一である可変重鎖配列を含む。さらにもう一つの好ましい実施形態では、抗体またはその抗原結合性フラグメントが、表7または表3に開示する好ましくは抗体M31-B01またはM20-D02 S-AのVL配列と少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、92%または95%同一である可変軽鎖配列を含む。
【0062】
さらにもう一つの好ましい実施形態では、抗体またはその抗原結合性フラグメントが、それぞれ抗体M31-B01またはM20-D02 S-AのVHおよびVL配列と少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、92%または95%同一である可変重鎖および軽鎖配列を含む。
【0063】
さらにもう一つの好ましい実施形態では、抗体またはその抗原結合性フラグメントが、表15に示すM31-B01またはM20-D02 S-Aから導き出された(好ましくは対応する)CDRコンセンサス配列に準拠する重鎖および軽鎖CDR配列を含む。さらにもう一つの好ましい実施形態は、コンセンサス配列である配列番号297(CDR H1)、配列番号298(CDR H2)および配列番号299(CDR H3)によって表される対応する重鎖CDR配列に準拠する重鎖CDR配列と、コンセンサス配列である配列番号300(CDR L1)、配列番号22(CDR L2)および配列番号301(CDR L3)によって表される対応する軽鎖CDR配列に準拠する軽鎖CDR配列とを含むか、コンセンサス配列である配列番号302(CDR H1)、配列番号303(CDR H2)および配列番号304(CDR H3)によって表される対応する重鎖CDR配列に準拠する重鎖CDR配列と、コンセンサス配列である配列番号305(CDR L1)、配列番号306(CDR L2)および配列番号307(CDR L3)によって表される対応する軽鎖CDR配列に準拠する軽鎖CDR配列とを含む、抗体またはその抗原結合性フラグメントである。
【0064】
さらにもう一つの好ましい実施形態では、抗体または抗原結合性抗体フラグメントが、表7または表3および表4に開示する、または好ましくは表7または表3および表4に示す抗体の、少なくとも1つの(好ましくは対応する)重鎖および/または軽鎖CDR配列を含む。さらにもう一つの好ましい実施形態では、抗体または抗原結合性抗体フラグメントが、表7または表3および表4に開示する、あるいは好ましくは表7または表3および表4に示す抗体の、少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたは6つの(好ましくは対応する)重鎖および軽鎖CDR配列を含む。さらにもう一つの好ましい実施形態では、抗体または抗原結合性抗体フラグメントが、表7または表3および表4に示す抗体の重鎖または軽鎖CDR1、CDR2またはCDR3配列、表7または表3および表4に示す抗体の重鎖または軽鎖CDR1およびCDR2配列、表7または表3および表4に示す抗体の重鎖または軽鎖CDR1およびCDR3配列、表 または表3および表4に示す抗体の重鎖または軽鎖CDR2およびCDR3配列、表 または表3および表4に示す抗体の重鎖または軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列を含む。さらにもう一つの好ましい実施形態では、抗体または抗原結合性抗体フラグメントが、表7または表3および表4に示す抗体の重鎖CDR配列CDR1およびCDR2ならびに軽鎖CDR配列CDR1、CDR2、CDR3を含む。さらにもう一つの好ましい実施形態では、抗体または抗原結合性抗体フラグメントが、表7または表3および表4に示す抗体の重鎖および軽鎖CDR1、CDR2またはCDR3配列、表 または表3および表4に示す抗体の重鎖および軽鎖CDR1およびCDR2配列、表7または表3および表4に示す抗体の重鎖および軽鎖CDR1およびCDR3配列、表7または表3および表4に示す抗体の重鎖および軽鎖CDR2およびCDR3配列、表7または表3および表4に示す抗体の重鎖および軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列を含む。さらにもう一つの好ましい実施形態では、抗体または抗原結合性抗体フラグメントが、表7または表3および表4に示す抗体の重鎖および軽鎖CDR配列を含む。
【0065】
さらにもう一つの実施形態では、抗体または抗原結合性抗体フラグメントが、表7または表3および表4に開示するVHおよび/またはVL配列を含む。さらにもう一つの好ましい実施形態では、抗体または抗原結合性抗体フラグメントが、表7または表3および表4に示す抗体のVHおよびVL配列を含む。
【0066】
好ましい一実施形態では、本発明の抗体または抗原結合性抗体フラグメントがモノクローナル抗体である。さらにもう一つの好ましい実施形態では、本発明の抗体または抗原結合性抗体フラグメントが、ヒト、ヒト化またはキメラ抗体である。
【0067】
本発明において考慮される抗体または抗原結合性抗体フラグメントの変異体は、C4.4aに対する抗体または抗原結合性抗体フラグメントの結合活性が維持されている分子である。好ましい一実施形態では、変異体は、C4.4aへの結合に関して、表7に示す抗体と、好ましくは抗体M31-B01またはM20-D02 S-Aと、競合する。
【0068】
この文書では、全体を通して、次に挙げる本発明の好ましい抗体に言及する:「M31-B01」、「M20-D02 S-A」、「M60-G03」および「M36-H02」、「B01-3」、「B01-5」、「B01-7」、「B01-10」、「B01-12」、「D02-4」、「D02-6」、「D02-7」、「D02-11」および「D02-13」。
【0069】
M31-B01は、配列番号41(DNA)/配列番号33(タンパク質)に対応する可変重鎖領域および配列番号37(DNA)/配列番号29(タンパク質)に対応する可変軽鎖領域を含む抗体を表す。
【0070】
M20-D02 S-Aは、配列番号42(DNA)/配列番号34(タンパク質)に対応する可変重鎖領域および配列番号38(DNA)/配列番号30(タンパク質)に対応する可変軽鎖領域を含む抗体を表す。
【0071】
M60-DG03は、配列番号43(DNA)/配列番号35(タンパク質)に対応する可変重鎖領域および配列番号39(DNA)/配列番号31(タンパク質)に対応する可変軽鎖領域を含む抗体を表す。
【0072】
M36-H02は、配列番号44(DNA)/配列番号36(タンパク質)に対応する可変重鎖領域および配列番号40(DNA)/配列番号32(タンパク質)に対応する可変軽鎖領域を含む抗体を表す。
【0073】
B01-3は、配列番号53(DNA)/配列番号51(タンパク質)に対応する可変重鎖領域および配列番号54(DNA)/配列番号52(タンパク質)に対応する可変軽鎖領域を含む抗体を表す。
【0074】
B01-5は、配列番号63(DNA)/配列番号61(タンパク質)に対応する可変重鎖領域および配列番号64(DNA)/配列番号62(タンパク質)に対応する可変軽鎖領域を含む抗体を表す。
【0075】
B01-7は、配列番号73(DNA)/配列番号71(タンパク質)に対応する可変重鎖領域および配列番号74(DNA)/配列番号72(タンパク質)に対応する可変軽鎖領域を含む抗体を表す。
【0076】
B01-10は、配列番号83(DNA)/配列番号81(タンパク質)に対応する可変重鎖領域および配列番号84(DNA)/配列番号82(タンパク質)に対応する可変軽鎖領域を含む抗体を表す。
【0077】
B01-12は、配列番号93(DNA)/配列番号91(タンパク質)に対応する可変重鎖領域および配列番号94(DNA)/配列番号92(タンパク質)に対応する可変軽鎖領域を含む抗体を表す。
【0078】
D02-4は、配列番号103(DNA)/配列番号101(タンパク質)に対応する可変重鎖領域および配列番号104(DNA)/配列番号102(タンパク質)に対応する可変軽鎖領域を含む抗体を表す。
【0079】
D02-6は、配列番号113(DNA)/配列番号111(タンパク質)に対応する可変重鎖領域および配列番号114(DNA)/配列番号112(タンパク質)に対応する可変軽鎖領域を含む抗体を表す。
【0080】
D02-7は、配列番号123(DNA)/配列番号121(タンパク質)に対応する可変重鎖領域および配列番号124(DNA)/配列番号122(タンパク質)に対応する可変軽鎖領域を含む抗体を表す。
【0081】
D02-11は、配列番号133(DNA)/配列番号131(タンパク質)に対応する可変重鎖領域および配列番号134(DNA)/配列番号132(タンパク質)に対応する可変軽鎖領域を含む抗体を表す。
【0082】
D02-13は、配列番号143(DNA)/配列番号141(タンパク質)に対応する可変重鎖領域および配列番号144(DNA)/配列番号142(タンパク質)に対応する可変軽鎖領域を含む抗体を表す。
【0083】
もう一つの態様において、本発明は、配列番号1に示すアミノ酸配列を有するC4.4aの1つ以上の領域に対して、特異的に結合しかつ/または高いアフィニティを有する抗原結合領域を持つ抗体または抗原結合性フラグメントを提供する。抗体または抗原結合性フラグメントは、アフィニティ測定値が250nM未満(抗体または抗原結合性フラグメントの一価アフィニティ)である場合に、ある抗原に対して「高いアフィニティ」を有するという。本発明の抗体または抗原結合領域は、ヒトC4.4aに対する一価アフィニティとして決定される250nM未満のアフィニティ、好ましくは100nM未満、より好ましくは25nM未満、さらに好ましくは11nM未満のアフィニティで、ヒトC4.4aに結合することができる。例えば、C4.4aに対する本発明の抗体のアフィニティは、約220.0nMまたは1nM(抗体または抗原結合性フラグメントの一価アフィニティ)であることができる。
【0084】
表1に、直接固定化したヒトまたはマウスC4.4aにおける表面プラズモン共鳴(Biacore)によって決定された本発明の代表的な抗体の解離定数を要約する。
【0085】
[表1]表面プラズモン共鳴により抗C4.4a IgG1に関して決定された一価解離定数
【表1】
【0086】
スキャッチャード解析と組み合わせた蛍光活性化細胞選別法(FACS)による細胞ベースのアフィニティ決定には、IgG1フォーマットを使用した。図3f)は、トランスフェクトされたC4.4aを発現するA549腫瘍細胞および内在的にC4.4aを発現する腫瘍細胞での、代表的なIgG抗体の結合力を表す。表8に、トランスフェクトされたマウスCHO-S:mC4.4a細胞および内在的にC4.4aを発現するNCI H292腫瘍細胞での代表的なIgG抗体の結合力(EC50)を要約する。
【0087】
[表8]FACSによって抗C4.4a IgG1について決定されたEC50値
【表2−1】
【0088】
IgG1は、FACSによって測定されるアフィニティ測定値が100nM未満(IgGの見かけ上のアフィニティ)である場合に、ある抗原に対して「高いアフィニティ」を有するという。本発明の二価抗体または抗原結合性フラグメントは、好ましくは、100nM未満のアフィニティで、より好ましくは50nM未満、さらに好ましくは10nM未満のアフィニティで、ヒトC4.4aに結合することができる。さらに好ましいのは、ヒトC4.4aに対するIgGの見かけ上のアフィニティとして決定して、5nM未満のアフィニティで、より好ましくは1nM未満のアフィニティで、C4.4aに結合する二価抗体である。例えば、C4.4aに対する本発明の抗体の見かけ上のアフィニティは、図3fに示すようにFACS分析で決定すると、異なる腫瘍細胞株において、約4.3nMまたは0.03nMでありうる。
【0089】
本発明の抗体または抗原結合性フラグメントは、C4.4a発現腫瘍細胞内へのその最大半量内部移行時間(time of half maximal internalization)(t1/2)が180分により短いか、より好ましくは120分より短く、さらに好ましくは90分より短い場合に、「効率よく」内部移行する。さらに好ましいのは、実施例6に記載するプロトコールで決定される60分以下の最大半量内部移行時間(t1/2)を有する抗体または抗原結合性フラグメントであり、さらに好ましいのは、50分未満、または35分未満である。表9に、実施例6に記載するプロトコールによって決定された、本発明の代表的抗体の内部移行時間を要約する。本発明の内部移行可能な抗体または抗原結合性フラグメントは、抗体-薬物コンジュゲート(ADC)のターゲティング部分として好適である。抗体または抗原結合性フラグメントは、C4.4a発現細胞中に化合物、好ましくは細胞毒性剤を送達するためのインビトロ法またはインビボ法において好適である。
【0090】
[表9]
【表2−2】
【0091】
一部の実施形態では、抗体、その抗原結合性フラグメント、もしくはその誘導体、またはそれをコードする核酸が、単離される。単離された生物学的構成要素(例えば核酸分子または抗体などのタンパク質)は、その構成要素が天然に存在する生物の細胞中の他の生物学的構成要素、例えば他の染色体および染色体外DNAおよびRNA、タンパク質および細胞小器官などから、実質的に分離されているか精製されているものである。「単離された」核酸およびタンパク質には、Sambrookら, 1989(Sambrook, J., Fritsch, E. F.およびManiatis, T. (1989)「Molecular Cloning: A laboratory manual」Cold Spring Harbor Laboratory Press, 米国コールドスプリングハーバー)および Robert K. Scopesら 1994「Protein Purification-Principles and Practice」(Springer Science and Business Media LLC)に記載の標準的な精製法によって精製された核酸およびタンパク質が含まれる。この用語は、宿主細胞における組換え発現によって製造される核酸およびタンパク質、ならびに化学合成された核酸も包含する。
【0092】
抗体生成
完全ヒトN-CoDeR抗体ファージディスプレイライブラリーを使って、全細胞パンニングとタンパク質パンニングの組み合わせにより、そしてまた特別なツールを開発することによって、高アフィニティC4.4a特異的ヒトモノクローナル抗体を単離した。これらのツールおよび方法には、ヒトC4.4a発現組換え細胞株、マウスC4.4a発現細胞株、組換えヒトおよびマウスC4.4a、ならびに細胞表面にディスプレイされたC4.4aに優先的に結合しマウスC4.4aに対して交差反応性である抗体を同定することができるパンニング手法およびスクリーニングアッセイの開発が含まれる。
【0093】
ファージディスプレイ技術(PDT)において、3つの非従来型アプローチを組み合わせることにより、がん細胞表面マーカーC4.4aに対する抗体を開発した。第1に、完全長GPI固定型のヒトまたはマウスタンパク質、それぞれ(配列番号3)および(配列番号4)をコードするプラスミドを、CHO-S細胞およびA549腫瘍細胞に安定トランスフェクションして、それぞれヒトCHO-S:hC4.4a、マウスCHO-S:mC4.4aおよびヒトA549:hC4.4a細胞株を得ることによって、膜結合型のヒトおよびマウスC4.4aを発現する組換え細胞株を構築した。第2に、これらの組換え細胞株と乳がん細胞株MCF-7とを使って細胞表面選択を行った。親細胞のエピトープに結合するFabフラグメントの選択を避けるために、CHO-S細胞または非トランスフェクトA549細胞による事前吸着(pre-adsorption)を含めた。組換え可溶性精製ヒトC4.4a、組換え可溶性精製マウスC4.4aを使って追加の選択を行った。第3に、A549:hC4.4a全細胞ならびにCHO-SC4.4a細胞でのパンニングにおいて得られたファージアウトプットの逐次スクリーニングを可能にするスクリーニング方法を開発した。これら特別な方法の組み合わせにより、ユニークな抗体「M31-B01」、「M20-D02 S-A」、「M60-G03」、および「M36-H02」の単離が可能になった。
【0094】
これらのユニークな抗体を、ELISAにおけるその結合アフィニティ、可溶性C4.4aへのBIAcore結合、可溶性C4.4a上の異なるエピトープを認識するその能力、およびBIAcoreおよびFACSによって評価したマウスC4.4aとの交差反応能力、ならびに細胞ベースのアッセイにおける内部移行能力によって、さらに特徴づけた。内部移行アッセイにより、蛍光標識した抗C4.4a抗体の内部移行を、時間分解的に定量測定した。
【0095】
ペプチド変異体
本発明の抗体または抗原結合性フラグメントは、ここに提供する具体的ペプチド配列に限定されない。むしろ本発明は、これらのポリペプチドの変異体も包含する。本開示ならびに従来から利用できる技術および参考文献を参照して、当業者は、本明細書に開示する抗体の機能的変異体を製造し、試験し、利用することができると共に、C4.4aに結合する能力を有する変異体が本発明の範囲に包含されることを理解するであろう。
【0096】
変異体には、例えば、本明細書に開示するペプチド配列と比較して改変された相補性決定領域(CDR)(超可変)および/またはフレームワーク(FR)(可変)ドメイン/位置を少なくとも1つは有している抗体を含めることができる。この概念をより良く説明するために、抗体構造を以下に簡単に説明する。
【0097】
抗体は2本のペプチド鎖で構成され、それぞれが1つ(軽鎖)または3つ(重鎖)の定常ドメインと可変領域(VL、VH)とを含有し、このうち後者は、いずれも、4つのFR領域と、その間に配置された3つのCDRから構成されている。抗原結合部位は1つ以上のCDRによって形成されるが、FR領域はCDRに構造的フレームワークを提供しており、それゆえに、抗原結合において重要な役割を果たしている。CDRまたはFR領域中のアミノ酸残基を1つ以上改変することによって、当業者は、変異したまたは多様化した抗体配列をルーチンに生成させることができ、それらを、例えば新しい性質または改良された性質を求めて、抗原に対してスクリーニングすることができる。
【0098】
表3(VH)および表4(VL)では、本発明の一定の抗体についてCDR領域およびFR領域を詳述し、所与の位置におけるアミノ酸を互いに比較すると共に、対応するコンセンサス配列と比較している。
[表3]VL配列
【表3】
[表4]VH配列
【表4】
【0099】
本発明のさらにもう一つの好ましい実施形態は、CDR配列が表7に示すように選択されている抗体またはその抗原結合性フラグメントである。
【0100】
本発明のさらにもう一つの好ましい実施形態は、VHおよびVL配列が表7に示すように選択されている抗体または抗原結合性フラグメントである。当業者は、表3、4および7中のデータを使って、本発明の範囲に包含されるペプチド変異体を設計することができる。変異体は1つ以上のCDR領域内のアミノ酸を変化させることによって構築することが好ましく、変異体が1つ以上の改変されたフレームワーク領域を持っていてもよい。フレームワーク領域内に改変を加えることもできる。例えばペプチドFRドメインが改変されていてもよく、そこでは、生殖細胞系配列と比較して残基に変動がある。
【0101】
新規抗体と、表3および4に掲載する対応コンセンサス配列との比較に関していえば、変化させることができる候補残基には、例えば、Gene DP47のVHIIIと比較してM20-D02 S-Aの可変重鎖の残基42が含まれる。あるいは、当業者は、例えばKnappik A.ら, JMB 2000, 296:57-86に記載の手法などを使って本明細書に開示するアミノ酸配列を、その抗体と同じクラスの既知配列と比較することにより、同じ分析を行うこともできるだろう。
【0102】
さらにまた、変異体は、ある抗体を、抗体中の1つ以上のアミノ酸残基(好ましくは1つ以上のCDR中のアミノ酸残基)を多様化することによる最適化の出発点として使用し、その結果生じた一群の抗体変異体を、改良された性質を伴う変異体を求めてスクリーニングすることによって取得することもできる。特に好ましいのは、VLおよび/またはVHのCDR3中の1つ以上のアミノ酸残基の多様化である。多様化は、トリヌクレオチド変異誘発(trinucleotide mutagenesis)(TRIM)技術(Virnekaes B.ら, Nucl. Acids Res. 1994, 22: 5600)を使って一群のDNA分子を合成することによって行うことができる。抗体またはその抗原結合性フラグメントには、例えば限定するわけではないが半減期の改変につながる修飾(例えばFc部分の修飾またはPEGなどのさらなる分子の取り付け)またはADCCもしくはCDC活性の改変につながる修飾などといった修飾/変異を伴う分子が含まれる。
【0103】
保存的アミノ酸変異体
本明細書に記載する抗体ペプチド配列の全体的分子構造を保存しているポリペプチド変異体を作製することができる。個々のアミノ酸の性質を考えれば、当業者には、いくつかの合理的な置換がわかるであろう。アミノ酸置換、すなわち「保存的置換」は、例えば、関与する残基の極性、電荷、溶解度、疎水性、親水性、および/または両親媒性の類似性に基づいて行うことができる。
【0104】
例えば、(a)非極性(疎水性)アミノ酸には、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、およびメチオニンが含まれ;(b)極性中性アミノ酸には、グリシン、セリン、スレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、およびグルタミンが含まれ;(c)陽性荷電(塩基性)アミノ酸には、アルギニン、リジン、およびヒスチジンが含まれ;(d)陰性荷電(酸性)アミノ酸には、アスパラギン酸およびグルタミン酸が含まれる。置換は、典型的には、(a)〜(d)のグループ内で行うことができる。また、グリシンおよびプロリンは、αヘリックスを破壊するその能力に基づいて、互いに置換することができる。また、アラニン、システイン、ロイシン、メチオニン、グルタミン酸、グルタミン、ヒスチジンおよびリジンなどといった一定のアミノ酸は、αヘリックス中に見いだされることの方が多く、一方、バリン、イソロイシン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファンおよびスレオニンは、βプリーツシート中に見いだされることの方が多い。グリシン、セリン、アスパラギン酸、アスパラギン、およびプロリンはターン中によく見いだされる。いくつかの好ましい置換は、次に挙げるグループ内で行うことができる:(i)SおよびT;(ii)PおよびG;ならびに(iii)A、V、LおよびI。既知の遺伝暗号、組換え技法および合成DNA技法を考慮すれば、当業者は、保存的アミノ酸変異体をコードするDNAを容易に構築することができる。ある特定の例では、配列番号33〜36中のアミノ酸位置3を、QからEに変化させることができる。
【0105】
本明細書において、2つのポリペプチド配列間の「配列同一性」は、それらの配列の間で同一であるアミノ酸のパーセンテージを示す。「配列相同性」は、同一であるか保存的アミノ酸置換を示すアミノ酸のパーセンテージを示す。
【0106】
本発明のDNA分子
本発明は、本発明の抗体またはその抗原結合性フラグメントをコードするDNA分子にも関係する。これらの配列には、配列番号37〜44、53、54、63、64、73、74、83、84、93、94、103、104、113、114、123、124、133、134、143、144および308〜345に示すDNA分子が含まれるが、これらに限るわけではない。
【0107】
本発明のDNA分子は本明細書に開示する配列に限定されるわけではなく、その変異体も包含する。本発明に包含されるDNA変異体は、ハイブリダイゼーションにおけるその物理的性質に言及することによって記述することができる。DNAを使ってその相補体(complement)を同定することができ、DNAは二本鎖であることから、核酸ハイブリダイゼーション技法を使って、その等価物またはホモログを同定することができることは、当業者にはわかるであろう。ハイブリダイゼーションが100%未満の相補性で起こりうることもわかるであろう。しかし、条件を適当に選択すれば、ハイブリダイゼーション技法を使って、DNA配列を特定のプローブに対するその構造的関連性に基づいて弁別することができる。そのような条件に関する指針については、Sambrookら, 1989(前掲書)およびAusubelら, 1995(Ausubel, F. M., Brent, R., Kingston, R. E., Moore, D. D., Sedman, J. G., Smith, J. A.およびStruhl, K.編 (1995)「Current Protocols in Molecular Biology」ニューヨーク:John Wiley and Sons)を参照されたい。
【0108】
2つのポリヌクレオチド配列間の構造類似性は、それら2つの配列が互いにハイブリダイズするであろう条件の「ストリンジェンシー」の関数として表現することができる。本明細書において使用する用語「ストリンジェンシー」は、その条件がハイブリダイゼーションを嫌う度合を指す。ストリンジェントな条件はハイブリダイゼーションを強く嫌い、そのような条件下では、構造的に最も近縁の分子だけが互いにハイブリダイズするであろう。逆に、非ストリンジェント条件は、より低度の構造的関連性を示す分子のハイブリダイゼーションにとって有利になる。それゆえに、ハイブリダイゼーションストリンジェンシーは、2つの核酸配列の構造的関係と直接的に相関する。次の関係は、ハイブリダイゼーションと関連性とを相関させるのに役立つ(式中、Tmは核酸二重鎖の融解温度である):
a.Tm=69.3+0.41(G+C)%
b.二重鎖DNAのTmは、ミスマッチ塩基対の数が1%増加するごとに1℃低下する。
c.(Tm)μ2 −(Tm)μ1=18.5log10μ2/μ1
式中、μ1およびμ2は2つの溶液のイオン強度である。
【0109】
ハイブリダイゼーションストリンジェンシーは、総DNA濃度、イオン強度、温度、プローブサイズおよび水素結合を破壊する薬剤の存在などといった数多くの因子の関数である。ハイブリダイゼーションを促進する因子には、高いDNA濃度、高いイオン強度、低い温度、長いプローブサイズ、および水素結合を破壊する薬剤の不在が含まれる。ハイブリダイゼーションは、典型的には、「結合」段階と「洗浄」段階の二段階で行われる。
【0110】
まず最初に、結合段階では、ハイブリダイゼーションに有利な条件下で、プローブをターゲットに結合させる。この段階では、通常、温度を変えることによって、ストリンジェンシーが制御される。高ストリンジェンシーの場合、短い(<20nt)オリゴヌクレオチドプローブを使用するのでない限り、温度は通常、65℃〜70℃である。代表的なハイブリダイゼーション溶液は、6×SSC、0.5%SDS、5×デンハルト溶液および100μgの非特異的キャリアDNAを含む。Ausubelら, section 2.9, supplement 27 (1994)参照。もちろん、異なっているが機能的には等価なバッファー条件も、数多く知られている。関連性の程度が低い場合は、低い温度を選ぶことができる。低ストリンジェンシー結合温度は約25℃〜40℃である。中ストリンジェンシーは少なくとも約40℃〜約65℃未満である。高ストリンジェンシーは少なくとも約65℃である。
【0111】
次に、過剰のプローブを洗浄によって除去する。よりストリンジェントな条件が通常、適用されるのは、この段階である。したがって、ハイブリダイゼーションによって関連性を決定する際に最も重要なのは、この「洗浄」段階である。洗浄溶液は、典型的には、より低い塩濃度を含有する。模範的な中ストリンジェンシー溶液の一つは2×SSCおよび0.1%SDSを含有する。高ストリンジェンシー洗浄溶液は、(イオン強度で)約0.2×SSC未満の当量(equivalent)を含有し、好ましいストリンジェント溶液は約0.1×SSCを含有する。さまざまなストリンジェンシーに関連する温度は「結合」に関して上に述べたものと同じである。また、洗浄溶液は、典型的には、洗浄中に何度も交換される。例えば、典型的な高ストリンジェンシー洗浄条件は、55℃で30分間、2回洗浄すること、および60℃で15分間、3回洗浄することを含む。
【0112】
本発明の一実施形態は、(i)本発明の抗体または抗原結合性フラグメント、表7に示すCDR配列をコードする、または(ii)表7に示す可変軽鎖および重鎖配列をコードする、単離された核酸配列であるか、または(iii)本発明の抗体または抗原結合性フラグメント、表7に示すCDR配列、または表7に示す可変軽鎖および重鎖配列をコードする核酸配列を含む、単離された核酸配列である。
【0113】
本発明の変異体の一特定例では、配列番号37〜40における核酸位置7、または配列番号41〜44における位置16をCからGに置換し、それによってコドンをCACからGAGへと変化させることができる。
【0114】
機能的に等価な変異体
本発明の範囲に包含されるさらにもう一種類のDNA変異体は、それらがコードする産物を参照して記述することができる。これらの機能的に等価なポリヌクレオチドは、遺伝暗号の縮重ゆえに、配列番号5〜36、45〜50、55〜60、65〜70、75〜80、85〜90、95〜100、105〜110、115〜120、125〜130、135〜140に見いだされるものと同じペプチド配列をコードするという事実を特徴とする。
【0115】
ここで提供されるDNA分子の変異体をいくつかの異なる方法で構築できることはわかる。例えば、それらは、完全な合成DNAとして構築することができる。20〜約150ヌクレオチドの範囲のオリゴヌクレオチドを効率よく合成する方法は、種々、利用することができる。Ausubelら, section 2.11, Supplement 21 (1993)参照。Khoranaら, J. Mol. Biol. 72:209−217 (1971)によって初めて報告された方法で、オーバーラップしたオリゴヌクレオチドを合成し、アセンブルすることができる。Ausubelら, 前掲書, Section 8.2も参照されたい。好ましくは、適当なベクターへのクローニングが容易になるように、遺伝子の5'端および3'端にて操作(engineer)された好都合な制限部位を持つ合成DNAが設計される。
【0116】
ここに示すとおり、変異体を生成させる方法は、本明細書に開示するDNAの一つから出発し、次に部位特異的変異誘発を行うことである。Ausubelら, 前掲書, chapter 8, Supplement 37 (1997)参照。典型的な一方法では、ターゲットDNAを一本鎖DNAバクテリオファージ媒体中にクローニングする。一本鎖DNAを単離し、所望のヌクレオチド改変を含有するオリゴヌクレオチドとハイブリダイズさせる。相補鎖を合成し、二本鎖ファージを宿主中に導入する。その結果生じる子孫の一部は所望の変種(mutant)を含有し、そのことは、DNA配列決定を使って確認することができるであろう。また、子孫ファージが所望の変種になる確率を増加させるさまざまな方法を利用することができる。これらの方法は当業者にはよく知られており、そのような変種を生成させるためのキットが市販されている。
【0117】
組換えDNAコンストラクトおよび発現
本発明はさらに、本発明のヌクレオチド配列の1つ以上を含む組換えDNAコンストラクトを提供する。本発明の組換えコンストラクトは、プラスミド、ファージミド、ファージまたはウイルスベクターなどのベクターと共に使用され、そこに本発明の抗体またはその抗原結合性フラグメントをコードするDNA分子が挿入される。
【0118】
ここで提供される抗体、その抗原結合部分または誘導体は、宿主細胞における軽鎖および重鎖またはその一部をコードする核酸配列の組換え発現によって製造することができる。抗体、その抗原結合部分または誘導体を組換え発現させるために、軽鎖および/もしくは重鎖またはその一部をコードするDNAフラグメントを保有する1つ以上の組換え発現ベクターで、軽鎖および重鎖が宿主細胞中で発現するように、宿主細胞をトランスフェクトすることができる。標準的な組換えDNA法、例えばSambrook, FritschおよびManiatis編「Molecular Cloning; A Laboratory Manual」第2版、ニューヨーク州コールドスプリングハーバー (1989)、Ausubel, F.M.ら編「Current Protocols in Molecular Biology」Greene Publishing Associates (1989)およびBossらによる米国特許第4,816,397号に記載されている方法などを使って、重鎖および軽鎖をコードする核酸を製造しかつ/または取得し、これらの核酸を組換え発現ベクター中に組込み、そのベクターを宿主細胞中に導入する。
【0119】
また、重鎖および/または軽鎖の可変領域をコードする核酸配列は、例えば、完全長抗体鎖もしくはFabフラグメントをコードする核酸、またはscFvに変換することができる。VLまたはVHをコードするDNAフラグメントは、もう一つのDNAフラグメント(例えば抗体定常領域またはフレキシブルなリンカーをコードするもの)に(2つのDNAフラグメントによってコードされるアミノ酸配列がインフレームになるように)作動的に連結することができる。ヒト重鎖および軽鎖定常領域の配列は当技術分野では知られており(例えばKabat, E. A.ら (1991)「Sequences of Proteins of Immunological Interest」第5版、米国保険社会福祉省、NIH Publication No. 91-3242参照)、これらの領域を包含するDNAフラグメントは、標準的なPCR増幅によって得ることができる。
【0120】
scFvをコードするポリヌクレオチド配列を作製するために、VL領域とVH領域とがフレキシブルなリンカーで接合されている連続した単鎖タンパク質としてVHおよびVL配列が発現しうるように、VHコード核酸およびVLコード核酸を、フレキシブルなリンカーをコードするもう一つのフラグメントと作動的に連結することができる(例えばBirdら (1988) Science 242:423-426;Hustonら (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883;McCaffertyら, Nature (1990) 348:552-554参照)。
【0121】
抗体、その抗原結合部分または誘導体を発現させるには、標準的な組換えDNA発現法を使用することができる(例えばGoeddel;Gene Expression Technology. Methods in Enzymology 185, Academic Press, カリフォルニア州サンディエゴ (1990)参照)。例えば、所望のポリペプチドをコードするDNAを発現ベクター中に挿入し、次にそれを適切な宿主細胞中にトランスフェクトすることができる。適切な宿主細胞は原核細胞および真核細胞である。原核宿主細胞の例は、例えば細菌であり、真核宿主細胞の例は、酵母、昆虫または哺乳動物細胞である。いくつかの実施形態では、重鎖をコードするDNAと軽鎖をコードするDNAが、別々のベクターに挿入される。別の実施形態では、重鎖および軽鎖をコードするDNAが、同じベクターに挿入される。調節配列の選択を含む発現ベクターの設計が、宿主細胞の選択、所望するタンパク質の発現レベル、および発現が構成的であるか誘導性であるかなどといった因子によって左右されることは理解される。
【0122】
細菌発現
細菌での使用に役立つ発現ベクターは、所望のタンパク質をコードする構造DNA配列を、適切な翻訳開始シグナルおよび翻訳終結シグナルと共に、機能的プロモーターに対して作動可能な読み枠(reading phase)で挿入することによって構築される。ベクターは、ベクターの維持が保証されるように、また所望であれば、宿主内での増幅がもたらされるように、1つ以上の表現型選択可能マーカーと複製起点とを含むであろう。形質転換に適した原核宿主には、大腸菌(E. coli)、枯草菌(Bacillus subtilis)、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)、およびシュードモナス(Pseudomonas)属、ストレプトミセス(Streptomyces)属、およびスタフィロコッカス(Staphylococcus)属のさまざまな種が含まれる。
【0123】
細菌ベクターは、例えばバクテリオファージベース、プラスミドベース、またはファージミドベースのベクターであることができる。これらのベクターは、典型的には周知のクローニングベクターpB322(ATCC37017)の要素を含有する市販のプラスミドに由来する選択可能マーカーおよび細菌複製起点を含有することができる。適切な宿主株を形質転換し、その宿主株を適当な細胞密度まで成長させた後、選択したプロモーターを、適当な手段(例えば温度シフトまたは化学的誘導)によって抑制解除/誘導し、細胞をさらにある期間培養する。細胞を典型的には遠心分離によって収穫し、物理的または化学的手段によって破壊し、その結果得られた粗抽出物を、さらなる精製のためにとっておく。
【0124】
細菌系では、発現させるタンパク質の使用目的に応じて、いくつかの発現ベクターを、有利に選択することができる。例えば、抗体を生成させるために、またはペプチドライブラリーをスクリーニングするために、前述のタンパク質を大量に生産しようとする場合は、例えば、精製が容易な融合タンパク質産物の高レベルな発現を指示するベクターが望ましいであろう。本発明の抗体またはその抗原結合性フラグメントには、天然精製産物、化学合成手法の生成物、ならびに例えば大腸菌、枯草菌、ネズミチフス菌などを含む原核宿主や、シュードモナス属、ストレプトミセス属およびスタフィロコッカス属のさまざまな種から(好ましくは大腸菌細胞から)組換え技法によって生産された産物が含まれる。
【0125】
哺乳類発現および精製
哺乳動物宿主細胞発現のための好ましい調節配列には、哺乳動物細胞における高レベルのタンパク質発現を指示するウイルス要素、例えば、サイトメガロウイルス(CMV)(CMVプロモーター/エンハンサーなど)、シミアンウイルス40(SV40)(SV40プロモーター/エンハンサーなど)、アデノウイルス(例えばアデノウイルス主要後期プロモーター(AdMLP))およびポリオーマに由来するプロモーターおよび/またはエンハンサーなどが含まれる。ウイルス調節要素のさらなる説明およびその配列については、例えばStinskiによるU.S.5,168,062、BellらによるU.S.4,510,245、およびSchaffnerらによるU.S.4,968,615を参照されたい。組換え発現ベクターは複製起点および選択可能マーカーも含むことができる(例えばAxelらによるU.S.4,399,216、4,634,665およびU.S.5,179,017を参照されたい)。適切な選択可能マーカーには、そのベクターが導入されている宿主細胞にG418、ハイグロマイシンまたはメトトレキサートなどの薬物に対する耐性を付与する遺伝子が含まれる。例えばジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)遺伝子は、メトトレキサートに対する耐性を付与し、neo遺伝子はG418に対する耐性を付与する。
【0126】
宿主細胞への発現ベクターのトランスフェクションは、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿、およびDEAE-デキストラン、リポフェクションまたはポリカチオンによるトランスフェクションなどといった標準的技法を使って行うことができる。
【0127】
ここで提供される抗体、その抗原結合部分または誘導体を発現させるのに適した哺乳動物宿主細胞には、チャイニーズハムスター卵巣(CHO細胞)(例えばR.J.KaufmanおよびP.A.Sharp (1982) Mol.Biol.159:601-621に記載されているようにDHFR選択可能マーカーと共に使用されるUrlaubおよびChasin (1980) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4216-4220に記載のdhfr- CHO細胞を含む)、NSO骨髄腫細胞、COS細胞およびSP2細胞が含まれる。一部の実施形態では、発現したタンパク質が宿主細胞を成長させる培養培地中に分泌されるように、発現ベクターが設計される。抗体の一過性トランスフェクション/発現は、例えばDurocherら (2002) Nucl. Acids Res. Vol 30 e9によるプロトコールに従って達成することができる。抗体の安定トランスフェクション/発現は、例えばUCOE系のプロトコール(T. Bentonら (2002) Cytotechnology 38:43-46)に従って達成することができる。
【0128】
抗体、その抗原結合部分または誘導体は、標準的なタンパク質精製法を使って、培養培地から回収することができる。
【0129】
本発明の抗体またはその抗原結合性フラグメントは、例えば限定するわけではないが、硫酸アンモニウム沈殿またはエタノール沈殿、酸抽出、プロテインAクロマトグラフィー、プロテインGクロマトグラフィー、アニオンまたはカチオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィーおよびレクチンクロマトグラフィーなどといった周知の方法によって、組換え細胞培養物から回収し精製することができる。高速液体クロマトグラフィー(「HPLC」)も精製に使用することができる。例えばColligan「Current Protocols in Immunology」または「Current Protocols in Protein Science」(John Wiley & Sons, ニューヨーク州ニューヨーク)(1997-2001)の例えばChapter 1、4、6、8、9、10を参照されたい(これらは、それぞれ引用により、全て本明細書に組み込まれる)。
【0130】
本発明の抗体またはその抗原結合性フラグメントには、天然精製産物、化学合成手法の生成物、ならびに例えば酵母、高等植物、昆虫および哺乳動物細胞を含む真核宿主(好ましくは哺乳動物細胞)から組換え技法によって生産された産物が含まれる。組換え生産手法に使用する宿主に依存して、本発明の抗体はグリコシル化体であることも、非グリコシル化体であることもでき、グリコシル化体は好ましい。そのような方法は、多くの標準的な実験マニュアル、例えばSambrook, 前掲書, Section 17.37〜17.42;Ausubel, 前掲書, Chapter 10、12、13、16、18および20などに記載されている。
【0131】
治療法
治療法は、本発明によって考慮される抗体またはその抗原結合性フラグメントの治療有効量を、処置を必要とする対象に投与することを伴う。「治療有効」量とは、ここでは、単回投与として、または複数回投与レジメンに従って、単独で、または他の薬剤との組み合わせで、対象の処置区域におけるC4.4a陽性細胞を枯渇させるのに十分な量であって、有害な状態の軽減につながるが、毒物学的には認容できるような、抗体または抗原結合性フラグメントの量と定義される。対象は、ヒトまたは非ヒト動物(例えばウサギ、ラット、マウス、イヌ、サルまたは他の下等霊長類)であることができる。
【0132】
本発明の抗体またはその抗原結合性フラグメントは、既知の医薬(medicament)と同時投与することができ、場合によっては、抗体そのものを修飾してもよい。例えば抗体は、効力を潜在的にさらに高めるために、免疫毒素または放射性同位体にコンジュゲートすることができるだろう。
【0133】
本発明の抗体は、唯一の医薬剤として投与するか、1つ以上の追加治療剤と組み合わせて(この場合、その組合せは許容できない有害作用を引き起こさない)投与することができる。この併用療法には、本発明の抗体と1つ以上の追加治療剤とを含有する単一の医薬剤形(pharmaceutical dosage formulation)の投与が含まれると共に、本発明の抗体と各追加治療剤とをそれぞれ別々の医薬剤形で投与することも含まれる。例えば、本発明の抗体および治療剤を錠剤またはカプセル剤などの単一の経口投与組成物に入れて一緒に患者に投与するか、各薬剤を別々の剤形で投与することができる。
【0134】
別々の剤形を使用する場合は、本発明の抗体および1つ以上の追加治療剤を、本質的に同時に(例えば並行して(concurrently))投与するか、別々に時間をずらして(例えば逐次的に)投与することができる。
【0135】
特に、本発明の抗体は、他の抗腫瘍剤、例えばアルキル化剤、代謝拮抗物質、植物由来の抗腫瘍剤、ホルモン療法剤、トポイソメラーゼ阻害剤、カンプトテシン誘導体、キナーゼ阻害剤、標的薬(targeted drug)、抗体、インターフェロンおよび/または生物学的応答調整物質、抗血管形成化合物、および他の抗腫瘍薬との固定された組み合わせまたは個別の組み合わせで、使用することができる。これに関して、本発明の抗体と組み合わせて使用することができる二次剤(secondary agent)の例を以下に列挙するが、これらに限るわけではない。
【0136】
アルキル化剤には、ナイトロジェンマスタードN-オキシド、シクロホスファミド、イホスファミド、チオテパ、ラニムスチン、ニムスチン、テモゾロミド、アルトレタミン、アパジコン、ブロスタリシン、ベンダムスチン、カルムスチン、エストラムスチン、ホテムスチン、グルフォスファミド、マフォスファミド、ベンダムスチン、およびミトラクトールなどがあるが、これらに限るわけではない。また、白金配位アルキル化化合物には、シスプラチン、カルボプラチン、エプタプラチン、ロバプラチン、ネダプラチン、オキサリプラチン、およびサトラプラチンなどがあるが、これらに限るわけではない。
【0137】
代謝拮抗物質には、メトトレキサート、6-メルカプトプリンリボシド、メルカプトプリン、5-フルオロウラシル(単独、またはロイコボリンとの組み合わせ)、テガフール、ドキシフルリジン、カルモフール、シタラビン、シタラビンオクホスファート、エノシタビン、ゲムシタビン、フルダラビン、5-アザシチジン、カペシタビン、クラドリビン、クロファラビン、デシタビン、エフロルニチン、エチニルシチジン、シトシンアラビノシド、ヒドロキシ尿素、メルファラン、ネララビン、ノラトレキシド、オクホスファイト(ocfosfite)、プレメトレキセド二ナトリウム(disodium premetrexed)、ペントスタチン、ペリトレキソール、ラルチトレキセド、トリアピン、トリメトレキセート、ビダラビン、ビンクリスチン、およびビノレルビンなどがあるが、これらに限るわけではない。
【0138】
ホルモン療法剤には、エクセメスタン、ルプロン、アナストロゾール、ドキセルカルシフェロール、ファドロゾール、フォルメスタン、11-βヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ1阻害剤、17-αヒドロキシラーゼ/17,20リアーゼ阻害剤、例えば酢酸アビラテロン、5-αレダクターゼ阻害剤、例えばフィナステリドおよびエプリステリド、抗エストロゲン薬、例えばクエン酸タモキシフェンおよびフルベストラント、トレルスター(Trelstar)、トレミフェン、ラロキシフェン、ラソフォキシフェン、レトロゾール、抗アンドロゲン薬、例えばビカルタミド、フルタミド、ミフェプリストン、ニルタミド、カソデックス、および抗プロゲステロンならびにそれらの組み合わせなどがあるが、これらに限るわけではない。
【0139】
植物由来の抗腫瘍物質には、例えば有糸分裂阻害剤、例えばサゴピロン、イクサベピロンおよびエポチロンBなどのエポチロン類、ビンブラスチン、ビンフルニン、ドセタキセル、およびパクリタキセルから選択されるものなどがある。
【0140】
細胞毒性トポイソメラーゼ阻害剤には、アクラルビシン、ドキソルビシン、アモナフィド、ベロテカン、カンプトテシン、10-ヒドロキシカンプトテシン、9-アミノカンプトテシン、ジフロモテカン、イリノテカン、トポテカン、エドテカリン、エピムビシン(epimbicin)、エトポシド、エキサテカン、ジマテカン(gimatecan)、ラルトテカン(lurtotecan)、ミトキサントロン、ピラムビシン(pirambicin)、ピクサントロン、ルビテカン、ソブゾキサン、タフルポシド、およびそれらの組み合わせなどがあるが、これらに限るわけではない。
【0141】
免疫薬(immunologicals)には、インターフェロン、例えばインターフェロンα、インターフェロンα-2a、インターフェロンα-2b、インターフェロンβ、インターフェロンγ-1aおよびインターフェロンγ-n1、ならびに他の免疫増進剤、例えばL19-IL2および他のIL2誘導体、フィルグラスチム、レンチナン、シゾフィラン、セラシス(TheraCys)、ウベニメクス、アルデスロイキン、アレムツズマブ、BAM-002、ダカルバジン、ダクリズマブ、デニロイキン、ゲムツズマブ、オゾガマイシン、イブリツモマブ、イミキモド、レノグラスチム、レンチナン、メラノーマワクチン(Corixa)、モルグラモスチム、サルグラモスチム、タソネルミン、テクロイキン(tecleukin)、チマラシン(thymalasin)、トシツモマブ、ビムリジン(Vimlizin)、エプラツズマブ、ミツモマブ(mitumomab)、オレゴボマブ、ペムツモマブ(pemtumomab)、およびプロベンジなどがある。
【0142】
生物学的応答調整物質は、生体の防御機構、または組織細胞の生存、成長もしくは分化などといった生物学的応答を調整して、それらが抗腫瘍活性を持つように指示する薬剤である。そのような薬剤には、例えばクレスチン、レンチナン、シゾフィラン、ピシバニール、プロミューン(ProMune)、およびウベニメクスなどがある。
【0143】
抗血管形成化合物には、アシトレチン、アフリベルセプト、アンジオスタチン、アプリジン(aplidine)、アセンタール(asentar)、アキシチニブ、ベバシズマブ、ブリバニブアラニネート、シレングタイド(cilengtide)、コンブレタスタチン、エンドスタチン、フェンレチニド、ハロフジノン、パゾパニブ、ラニビズマブ、レビマスタット(rebimastat)、レセンチン(recentin)、レゴラフェニブ(regorafenib)、レモバブ(removab)、レブリミド、ソラフェニブ、スクアラミン、スニチニブ、テラチニブ(telatinib)、サリドマイド、ウクライン、バタラニブ、およびビタキシンなどがあるが、これらに限るわけではない。
【0144】
抗体には、トラスツズマブ、セツキシマブ、ベバシズマブ、リツキシマブ、チシリムマブ、イピリムマブ、ルミリキシマブ、カツマキソマブ、アタシセプト(atacicept)、オレゴボマブ、およびアレムツズマブがあるが、これらに限るわけではない。
【0145】
VEGF阻害剤、例えばソラフェニブ、レゴラフェニブ、ベバシズマブ、スニチニブ、レセンチン、アキシチニブ、アフリベルセプト、テラチニブ、ブリバニブアラニネート、バタラニブ、パゾパニブ、およびラニビズマブ。
【0146】
EGFR(HER1)阻害剤、例えばセツキシマブ、パニツムマブ、ベクチビックス、ゲフィチニブ、エルロチニブ、およびザクチマ(Zactima)。
【0147】
HER2阻害剤、例えばラパチニブ、トラツズマブ(tratuzumab)、およびペルツズマブなど。
【0148】
mTOR阻害剤、例えばテムシロリムス、シロリムス/ラパマイシン、およびエベロリムスなど。
【0149】
c-Met阻害剤。
【0150】
PI3KおよびAKT阻害剤。
【0151】
CDK阻害剤、例えばロスコビチンおよびフラボピリドール。
【0152】
紡錘体集合チェックポイント阻害剤および標的抗有糸分裂剤、例えばPLK阻害剤、オーロラ(Aurora)阻害剤(例えばヘスペラジン(Hesperadin)、チェックポイントキナーゼ阻害剤、およびKSP阻害剤。
【0153】
HDAC阻害剤、例えばパノビノスタット、ボリノスタット、MS275、ベリノスタット、およびLBH589など。
【0154】
HSP90およびHSP70阻害剤。
【0155】
プロテアソーム阻害剤、例えばボルテゾミブおよびカーフィルゾミブ。
【0156】
MEK阻害剤およびRaf阻害剤を含むセリン/スレオニンキナーゼ阻害剤、例えばソラフェニブ。
【0157】
ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤、例えばティピファルニブなど。
【0158】
チロシンキナーゼ阻害剤、例えばダサチニブ、ニロチビブ(nilotibib)、レゴラフェニブ、ボスチニブ、ソラフェニブ、ベバシズマブ、スニチニブ、セジラニブ、アキシチニブ、アフリベルセプト、テラチニブ、イマチニブメシラート、ブリバニブアラニネート、パゾパニブ、ラニビズマブ、バタラニブ、セツキシマブ、パニツムマブ、ベクチビックス、ゲフィチニブ、エルロチニブ、ラパチニブ、トラツズマブ(tratuzumab)、ペルツズマブ、およびc-Kit阻害剤など。
【0159】
ビタミンD受容体アゴニスト。
【0160】
Bcl-2タンパク質阻害剤、例えばオバトクラックス、オブリメルセンナトリウム、およびゴシポールなど。
【0161】
CD(cluster of differentiation)20受容体アンタゴニスト、例えばリツキシマブなど。
【0162】
リボヌクレオチドレダクターゼ阻害剤、例えばゲムシタビンなど。
【0163】
腫瘍壊死アポトーシス誘導リガンド受容体1アゴニスト、例えばマパツムマブ(mapatumumab)など。
【0164】
5-ヒドロキシトリプタミン受容体アンタゴニスト、例えばrEV598、キサリプローデ(xaliprode)、パロノセトロン塩酸塩、グラニセトロン、ジンドール(Zindol)、およびAB-1001など。
【0165】
α5β1インテグリン阻害剤を含むインテグリン阻害剤、例えばE7820、JSM6425、ボロシキシマブ、およびエンドスタチン。
【0166】
アンドロゲン受容体アンタゴニスト、例えばデカン酸ナンドロロン、フルオキシメステロン、アンドロイド(Android)、プロストエイド(Prost-aid)、アンドロムスチン(andromustine)、ビカルタミド、フルタミド、アポ-シプロテロン、アポ-フルタミド、酢酸クロルマジノン、アンドロキュア(Androcur)、Tabi、酢酸シプロテロン、およびニルタミド。
【0167】
アロマターゼ阻害剤、例えばアナストロゾール、レトロゾール、テストラクトン、エクセメスタン、アミノグルテチミド、およびフォルメスタンなど。
【0168】
マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤。
【0169】
他の抗がん剤、例えばアリトレチノイン、アンプリジェン(ampligen)、アトラセンタンベキサロテン、ボルテゾミブ、ボセンタン、カルシトリオール、エクシスリンド、ホテムスチン、イバンドロン酸、ミルテホシン、ミトキサントロン、I-アスパラギナーゼ、プロカルバジン、ダカルバジン、ヒドロキシカルバミド、ペガスパルガーゼ、ペントスタチン、タザロテン、ベルケイド、硝酸ガリウム、カンホスファミド、ダリナパルシン(darinaparsin)、およびトレチノインなど。
【0170】
好ましい一実施形態では、本発明の抗体を、化学療法(例えば細胞毒性剤)、抗ホルモンおよび/または標的療法、例えば他のキナーゼ阻害剤(例えばEGFR阻害剤)、mTOR阻害剤および血管新生阻害剤と組み合わせて使用することができる。
【0171】
本発明の化合物を、放射線療法および/または外科的介入と共に、がん処置に使用してもよい。
【0172】
本発明の抗体またはその抗原結合性フラグメントは、場合によっては、それ自体が修飾されていてもよい。例えば抗体は、潜在的に効力をさらに高めるために、上述の化合物いずれか(ただしそれらに限るわけではない)または任意の放射性同位体にコンジュゲートすることができるだろう。さらにまた、本発明の抗体は、当技術分野においてよく知られている研究および診断に、または分析用参照標準などとして、そのまま利用するか、組成物として利用することができる。
【0173】
本発明の抗体またはその抗原結合性フラグメントは、C4.4aが望ましくない形で発現しているまたは見いだされるさまざまな状況において、例えばがんなどの細胞増殖性障害において、治療ツールまたは診断ツールとして使用することができる。本発明の抗体による処置にとりわけ適した障害および状態は、固形腫瘍、例えば、乳房、気道、脳、生殖器、消化管、尿路、眼、肝臓、皮膚、頭頸部、甲状腺、副甲状腺のがん、およびそれらの遠隔転移などである。これらの障害には、リンパ腫、肉腫および白血病も含まれる。
【0174】
乳がんの例には、浸潤性乳管癌、浸潤性小葉癌、導管上皮内癌、および上皮内小葉癌などがあるが、これらに限るわけではない。
【0175】
気道のがんの例には、小細胞および非小細胞肺癌、ならびに気管支腺腫および胸膜肺芽腫などがあるが、これらに限るわけではない。
【0176】
脳がんの例には、脳幹神経膠腫、視床下部(hypophtalmic)神経膠腫、小脳星状細胞腫、大脳星状細胞腫、膠芽腫、髄芽腫、脳室上衣腫、ならびに神経外胚葉腫瘍および松果体腫瘍などがあるが、これらに限るわけではない。
【0177】
雄性生殖器の腫瘍には、前立腺がんおよび精巣がんが含まれるが、これらに限るわけではない。雌性生殖器の腫瘍には、子宮内膜がん、子宮頸がん、卵巣がん、膣がんおよび外陰がん、ならびに子宮の肉腫が含まれるが、これらに限るわけではない。
【0178】
消化管の腫瘍には、肛門、結腸、直腸結腸、食道、胆嚢、胃、膵臓、直腸、小腸、および唾液腺がんなどがあるが、これらの限るわけではない。
【0179】
尿路の腫瘍には、膀胱、陰茎、腎臓、腎盂、尿管、尿道、ならびに遺伝性および散発性乳頭状腎細胞がんなどがあるが、これらに限るわけではない。
【0180】
眼がんには、眼内メラノーマおよび網膜芽細胞腫などがあるが、これらに限るわけではない。
【0181】
肝がんの例には、肝細胞癌(線維層板状変異型(fibrolamellar variant)を伴うまたは伴わない肝臓細胞癌)、胆管癌(肝内胆管癌)、および混合型肝細胞胆管癌(mixed hepatocellular cholangiocarcinoma)などがあるが、これらに限るわけではない。
【0182】
皮膚がんには、扁平上皮細胞癌、カポジ肉腫、悪性メラノーマ、メルケル細胞皮膚がん、および非メラノーマ皮膚がんなどがあるが、これらに限るわけではない。
【0183】
頭頸部がんには、喉頭がん、下咽頭がん、鼻咽頭がん、中咽頭がん、口唇がんおよび口腔がん、ならびに扁平上皮細胞がんなどがあるが、これらに限るわけではない。
【0184】
リンパ腫には、AIDS関連リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、皮膚T細胞性リンパ腫、バーキットリンパ腫、ホジキン病、および中枢神経系のリンパ腫などがあるが、これらに限るわけではない。
【0185】
肉腫には、軟組織の肉腫、骨肉腫、悪性線維性組織球腫、リンパ肉腫、および横紋筋肉腫などがあるが、これらに限るわけではない。
【0186】
白血病には、急性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、およびヘアリー細胞白血病などがあるが、これらに限るわけではない。
【0187】
上述の障害はヒトにおいて詳しく特徴づけられているが、哺乳動物を含む他の動物にも、類似する病因と共に存在し、本発明の医薬組成物を投与することによって処置することができる。
【0188】
上述の障害のいずれかを処置するには、本発明に従って使用するための医薬組成物を、1つ以上の生理学的に許容できる担体または賦形剤を使って従来の方法で製剤化することができる。本発明の抗体またはその抗原結合性フラグメントは、処置される傷害のタイプに応じてさまざまでありうる任意の適切な手段によって、投与することができる。考えうる投与経路には、非経口(例えば筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内、または皮下)、肺内および鼻腔内が含まれ、局所免疫抑制処置にとって望ましい場合には、病変内投与も含まれる。また、本発明の抗体は、例えば抗体の用量を減らしていく、パルス注入(pulse injection)によって投与することもできる。好ましくは、投薬は、投与が短期間であるか、長期間であるかに部分的に依存して、注射によって、最も好ましくは静脈内注射または皮下注射によって行われる。投与すべき量は、臨床症状、個体の体重、他の薬物を投与するかどうかなどといったさまざまな因子に依存するだろう。投与の経路が処置すべき障害または状態に依存してさまざまであることは、当業者にはわかるだろう。
【0189】
本発明の新規ポリペプチドの治療有効量の決定は、主として、特定の患者特徴、投与経路、および処置される障害の性質に依存するだろう。一般的指針は、例えば医薬品規制ハーモナイゼーション国際会議(International Conference on Harmonisation)の刊行物およびRemingtons's Pharmaceutical Sciences, chapter 27および28, 484〜528ページ(第18版、Alfonso R. Gennaro編、ペンシルバニア州イーストン:Mack Pub. Co., 1990)に見いだすことができる。より具体的には、治療有効量の決定は、医薬の毒性および効力などの因子に依存するであろう。毒性は、上述の参考文献に見いだされる当技術分野において周知の方法を使って決定することができる。効力は、同じ指針を、下記の実施例で述べる方法と合わせて利用することによって、決定することができる。
【0190】
診断方法
C4.4a抗体またはその抗原結合性フラグメントは、C4.4a発現腫瘍の存在を検出するために使用することができる。血清および組織生検標本を含むさまざまな生物学的試料におけるC4.4a含有細胞または脱落C4.4aの存在は、C4.4a抗体を使って検出することができる。また、C4.4a抗体は、99Tc(または他の同位体)コンジュゲート抗体を使った免疫シンチグラフィなど、さまざまなイメージング方法に使用することができる。例えば、111Inコンジュゲート抗PSMA抗体を使って最近記述されたものに似たイメージングプロトコールを使って、膵臓癌または卵巣がんを検出することができる(Sodeeら, Clin. Nuc. Med. 21: 759-766, 1997)。使用することができるもう一つの検出方法は、本発明の抗体を適切な同位体にコンジュゲートすることによる陽電子放出断層撮影である(Herzogら, J. Nucl. Med. 34:2222-2226, 1993参照)。
【0191】
医薬組成物および投与
本発明の一実施形態は、C4.4a抗体またはその抗原結合性フラグメントを単独で含むか、安定化化合物などといった少なくとも1つの他の薬剤と組み合わせて含む医薬組成物であって、食塩水、緩衝食塩水、デキストロース、および水などといった(ただしこれらに限るわけではない)任意の滅菌生体適合性医薬担体に入れて投与することができる医薬組成物である。さらなる一実施形態は、C4.4a結合抗体またはその抗原結合性フラグメントと、がんなどのC4.4a関連疾患を処置するのに適したさらにもう一つの医薬活性化合物とを含む医薬組成物である。これらの分子はいずれも、患者に単独で、または他の薬剤、薬物もしくはホルモンと組み合わせて、医薬組成物として投与することができ、医薬組成物では、賦形剤または医薬上許容される担体と混合される。本発明の一実施形態では、医薬上許容される担体は医薬的に不活性である。
【0192】
本発明は医薬組成物の投与にも関係する。そのような投与は、経口的または非経口的に行われる。非経口送達の方法には、局所(topical)、動脈内(腫瘍に直接)、筋肉内、皮下、髄内(intramedullary)、髄腔内(intrathecal)、脳室内(intraventricular)、静脈内、腹腔内、または鼻腔内投与が含まれる。これらの医薬組成物は、活性成分の他にも、活性化合物を医薬的に使用することができる調製物に加工することを容易にする賦形剤および助剤を含む適切な医薬上許容される担体を含有しうる。製剤および投与のための技術に関するさらなる詳細は、Remington's Pharmaceutical Sciences(編 Maack Publishing Co、ペンシルバニア州イーストン)の最新版に見いだすことができる。
【0193】
経口投与用の医薬組成物は、当技術分野において周知の医薬上許容される担体を使って、経口投与に適した投薬量で、製剤化することができる。そのような担体は、医薬組成物を、患者による摂取のための錠剤、丸剤、糖衣丸、カプセル剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー剤、懸濁剤などとして、製剤化することを可能にする。
【0194】
経口使用のための医薬調製物は、活性化合物を固形賦形剤と混和し、場合によっては、得られた混合物を粉砕し、所望であれば適切な助剤を添加した後に、錠剤または糖衣丸の核が得られるように顆粒の混合物を加工することによって、得ることができる。適切な賦形剤は、糖質またはタンパク質充填剤、例えば、ラクトース、スクロース、マンニトール、またはソルビトールを含む糖類;トウモロコシ、コムギ、コメ、ジャガイモ、または他の植物由来のデンプン;メチルセルロース(methyl, cellulose)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはカルボキシメチルセルロースナトリウムなどのセルロース;アラビアゴムおよびトラガカントゴムを含むゴム;ならびにゼラチンおよびコラーゲンなどのタンパク質などである。所望であれば、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸、またはその塩、例えばアルギン酸ナトリウムなどの崩壊剤または可溶化剤を加えてもよい。
【0195】
糖衣丸の核には、濃厚糖溶液などの適切なコーティングが施され、このコーティング溶液も、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カーボポールゲル、ポリエチレングリコールおよび/または二酸化チタン、ラッカー溶液、および適切な有機溶媒または溶媒混合物を含むことができる。製品識別のために、または活性化合物の量、すなわち投薬量を特徴づけるために、錠剤または糖衣丸のコーティングには、染料または顔料を加えてもよい。
【0196】
経口的に使用することができる医薬調製物には、ゼラチン製の押込み式(push-fit)カプセル剤、ならびにゼラチンおよびグリセロールまたはソルビトールなどのコーティングで作られた密封軟カプセル剤が含まれる。押込み式カプセル剤は、ラクトースまたはデンプンなどの充填剤または結合剤、タルクまたはステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤、そして場合によっては安定化剤と混合された活性成分を含有することができる。軟カプセル剤では、活性化合物を適切な液体、例えば安定化剤を含む、または安定化剤を含まない、脂肪油、液体パラフィン、または液体ポリエチレングリコールなどに溶解または懸濁することができる。
【0197】
非経口投与用の医薬製剤には活性化合物の水溶液が含まれる。注射のために、本発明の医薬組成物を、水溶液中に、好ましくは生理学的に適合するバッファー、例えばハンクス液、リンゲル液、または生理学的緩衝食塩水中に製剤化することができる。水性注射懸濁液は、懸濁液の粘度を増加させる物質、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、またはデキストランを含有しうる。また、活性化合物の懸濁液は、適当な油性注射用懸濁剤として製造することもできる。適切な親油性の溶剤または媒体には、ゴマ油などの脂肪油、または合成脂肪酸エステル、例えばオレイン酸エチルもしくはトリグリセリド、またはリポソームが含まれる。所望により、懸濁液は、高濃度溶液の調製が可能になるように、適切な安定化剤、または化合物の溶解度を増加させる薬剤も含有してよい。
【0198】
局所または鼻投与のためには、浸透すべき特定の障壁に適した浸透剤を、製剤中に使用する。そのような浸透剤は当技術分野では広く知られている。
【0199】
キット
本発明はさらに、上述した本発明組成物の成分の1つ以上が充填された1つ以上の容器を含む医薬パックおよびキットに関する。そのような容器には、医薬または生物学的製剤の製造、使用または販売を規制する政府当局によって指示された形式で、当局によるヒト投与用製品の製造、使用または販売の認可を反映した告知書(notice)を、添付することができる。
【0200】
もう一つの実施形態において、キットは、本発明の抗体をコードするDNA配列を含有してもよい。これらの抗体をコードするDNA配列は、好ましくは、宿主細胞へのトランスフェクションと宿主細胞による発現に適したプラスミドに入れて提供される。プラスミドは、宿主細胞におけるDNAの発現を調節するために、プロモーター(多くの場合、誘導性プロモーター)を含有しうる。プラスミドは、プラスミド中に他のDNA配列を挿入してさまざまな抗体を生産することが容易になるように、適当な制限部位も含有しうる。プラスミドは、コードされているタンパク質のクローニングおよび発現を容易にするために、数多くの他の要素も含有しうる。そのような要素は、当業者にはよく知られており、例えば選択可能マーカー、開始コドン、停止コドンなどが含まれる。
【0201】
製造および貯蔵
本発明の医薬組成物は、当技術分野においてよく知られている方法で、例えば従来の混合、溶解、造粒、糖衣形成(dragee-making)、研和(levigating)、乳化、カプセル化、捕捉(entrapping)または凍結乾燥プロセスなどによって、製造することができる。
【0202】
医薬組成物は塩として提供することができ、塩酸、硫酸、酢酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸などの酸(ただしこれらに限るわけではない)を使って形成させることができる。塩は、水性溶媒または他のプロトン性溶媒に、対応する遊離塩基型よりも溶解しやすい傾向を持つ。別の例では、好ましい調製物が、使用前にバッファーと混合される、pH範囲が4.5〜5.5の1mM〜50mMヒスチジン、0.1%〜2%スクロース、2%〜7%マンニトール中の凍結乾燥粉末であってもよい。
【0203】
許容される担体中に製剤化された本発明の化合物を含む医薬組成物を製造したら、それらを適当な容器に入れ、適応症(indicated condition)の処置に関して医薬品の表示をすることができる。C4.4a抗体またはその抗原結合性フラグメントの投与に関して、そのような医薬品の表示(labeling)には、投与の量、頻度および方法が含まれるだろう。
【0204】
治療有効量
本発明における使用に適した医薬組成物には、その活性成分が、意図する目的、すなわちC4.4a発現を特徴とする特定の疾患状態の処置を達成するのに有効な量で含有されている組成物が含まれる。有効量の決定は、当業者の能力の範囲で十分に可能である。
【0205】
どの化合物についても、まず最初は細胞培養アッセイにおいて、例えば新生物細胞において、または動物モデル、通常はマウス、ウサギ、イヌ、ブタまたはサルにおいて、治療有効量を推定することができる。動物モデルを使って、望ましい濃度範囲および投与経路も実現される。次に、そのような情報を、ヒトにおける投与にとって有用な用量および経路を決定するために使用することができる。
【0206】
治療有効量は、症状または状態を改善する、抗体またはその抗原結合性フラグメントの量を指す。そのような化合物の治療効力および毒性は、細胞培養または実験動物において、例えばED50(集団の50%において治療的に有効な用量)およびLD50(集団の50%にとって致死的な用量)などといった、標準的な医薬的手法によって決定することができる。治療効果と毒性効果の間の用量比が治療係数であり、これは比ED50/LD50として表すことができる。大きな治療係数を呈する医薬組成物は好ましい。細胞培養アッセイおよび動物試験から得られたデータは、ヒトでの使用のための投薬量範囲を処方する際に使用される。そのような化合物の投薬量は、好ましくは、ほとんどまたは全く毒性を伴わないED50を含む循環濃度の範囲内にある。投薬量は、使用する剤形、患者の感度、および投与経路に応じてこの範囲内で変動する。
【0207】
厳密な投薬量は、処置すべき患者を考慮して個々の医師が選択する。投薬量および投与は、十分なレベルの活性部分が提供されるように、または所望の効果が維持されるように、調節される。考慮することができる他の因子には、疾患状態の重症度、例えば腫瘍のサイズおよび場所;患者の年齢、体重および性別;食餌、投与の時間および頻度、併用薬、反応感度、および治療に対する認容性/応答が含まれる。長時間作用性医薬組成物を、その特定製剤の半減期およびクリアランス率に応じて、3〜4日ごと、1週間ごと、または2週間に1回投与してもよい。
【0208】
通常の投薬量は、投与経路に応じて、0.1〜100,000マイクログラム、合計用量約1gまでの範囲で変動しうる。特定の投薬量および送達方法に関する指針は文献に記載されている。米国特許第4,657,760号;同第5,206,344号;または同第5,225,212号を参照されたい。当業者は、ポリヌクレオチド用には、タンパク質用またはそれらの阻害剤用とは異なる製剤を使用するであろう。同様に、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの送達は、特定の細胞、状態、場所などに特異的であるだろう。放射標識抗体の場合、好ましい比放射能は0.1〜10mCi/mgタンパク質の範囲にありうる(Rivaら, Clin. Cancer Res. 5:3275-3280, 1999;Ulanerら, 2008 Radiology 246(3):895-902)。
【0209】
以下に実施例を挙げて、本発明を、さらに詳しく説明する。これらの実施例は、具体的な実施形態を参照して本発明を例証するために提供されるにすぎない。これらの実証は、本発明の一定の具体的態様を例示しているが、限定を表すものではなく、ここに開示する発明の範囲を制限するものでもない。
【0210】
全ての実施例は、別段の説明が詳細になされている部分を除き、当業者にとっては周知でありルーチンである標準的技法使って行われた。下記実施例のルーチンな分子生物学技法は、Sambrookら「Molecular Cloning: A Laboratory Manual」第2版;Cold Spring Harbor Laboratory Press, コールドスプリングハーバー, ニューヨーク, 1989などの標準的実験マニュアルに記載されているとおりに行うことができる。
【0211】
本発明の好ましい実施形態を以下に挙げる。
【0212】
A.C4.4aに、好ましくはC4.4aのドメインS1に、特異的に結合する単離された抗体またはその抗原結合性フラグメント。
【0213】
B.抗体またはその抗原結合性フラグメントが、齧歯類C4.4a、好ましくはマウスC4.4aに対して交差反応性である、実施形態Aによる抗体またはその抗原結合性フラグメント。
【0214】
C.抗体またはその抗原結合性フラグメントが、C4.4a発現細胞への結合後に内部移行する、実施形態AまたはBによる抗体またはその抗原結合性フラグメント。
【0215】
D.抗体またはその抗原結合性フラグメントが、C4.4aへの結合に関して抗体M31-B01またはM20-D02 S-Aと競合する、実施形態A〜Cのいずれか一つによる抗体または抗原結合性フラグメント。
【0216】
E.抗体または抗原結合性フラグメントのアミノ酸配列が、表7に示す少なくとも1つのCDR配列と少なくとも50%、55%、60% 70%、80%、90、または95%同一であるか、表7に示す少なくとも1つのVH配列またはVL配列と少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、92%または95%同一である、実施形態Dによる抗体または抗原結合性フラグメント。
【0217】
F.抗体または抗原結合性フラグメントのアミノ酸配列が、M31-B01またはM20-D02 S-Aの少なくとも1つのCDR配列と少なくとも50%、55%、60% 70%、80%、90、または95%同一であるか、M31-B01またはM20-D02 S-AのVH配列またはVL配列と少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、92%または95%同一である、実施形態D〜Eのいずれか一つによる抗体または抗原結合性フラグメント。
【0218】
G.抗体またはその抗原結合性フラグメントが、コンセンサス配列である配列番号297もしくは配列番号302(CDR H1)、配列番号298もしくは配列番号303(CDR H2)、または配列番号299もしくは配列番号304(CDR H3)に準拠する重鎖CDR配列の少なくとも1つ、および/または配列番号300もしくは配列番号305(CDR L1)、配列番号22もしくは配列番号306(CDR L2)、または配列番号301もしくは配列番号307(CDR L3)のコンセンサス配列に準拠する軽鎖CDR配列の少なくとも1つを含む、実施形態D〜Fのいずれか一つによる抗体または抗原結合性フラグメント。
【0219】
H.a)抗体またはその抗原結合性フラグメントが、配列番号297(CDR H1)、配列番号298(CDR H2)および配列番号299(CDR H3)に準拠する重鎖CDR配列と、配列番号300(CDR L1)、配列番号22(CDR L2)および配列番号301(CDR L3)に準拠する軽鎖CDR配列とを含むか、または
b)抗体またはその抗原結合性フラグメントが、配列番号302(CDR H1)、配列番号303(CDR H2)および配列番号304(CDR H3)に準拠する重鎖CDR配列と、配列番号305(CDR L1)、配列番号306(CDR L2)および配列番号307(CDR L3)に準拠する軽鎖CDR配列とを含む、
実施形態D〜Gのいずれか一つによる抗体または抗原結合性フラグメント。
【0220】
I.抗体M31-B01の可変重鎖および可変軽鎖CDR配列、またはそこから修飾された可変重鎖および可変軽鎖CDR配列を含み、
i.修飾されたCDR-H1では、位置3のアミノ酸が、NおよびSからなる群より選択され、位置4のアミノ酸が、AおよびYからなる群より選択され;
ii.修飾されたCDR-H2では、位置10のアミノ酸が、TおよびSからなる群より選択され、位置11のアミノ酸が、IおよびTからなる群より選択され;
iii.修飾されたCDR-H3では、位置10のアミノ酸が、Y、K、G、WおよびNからなる群より選択され;
iv.修飾されたCDR-L1では、位置1のアミノ酸が、TおよびSからなる群より選択され;
v.修飾されたCDR-L2では、位置4のアミノ酸が、QおよびKからなる群より選択され;
vi.修飾されたCDR-L3では、位置4のアミノ酸が、W、E、FおよびYからなる群より選択され、位置7のアミノ酸が、R、SおよびMからなる群より選択され、位置9のアミノ酸が、N、KおよびSからなる群より選択され、位置10のアミノ酸が、GおよびRからなる群より選択され、位置11のアミノ酸が、PおよびAからなる群より選択される、
実施形態D〜Hのいずれか一つによる抗体または抗原結合性フラグメント。
【0221】
J.抗体M31-B01の可変重鎖および可変軽鎖CDR配列のフレームワーク配列、またはそこから修飾された可変重鎖および可変軽鎖CDR配列のフレームワーク配列を含み、修飾された可変軽鎖では、位置10のアミノ酸が、AおよびVからなる群より選択され、位置13のアミノ酸が、AおよびTからなる群より選択される、実施形態G〜Hによる抗体または抗原結合性フラグメント。
【0222】
K.抗体M20-D02 S-Aの可変重鎖および可変軽鎖CDR配列またはそこから修飾された可変重鎖および可変軽鎖CDR配列を含み、
i.修飾されたCDR-H1では、位置3のアミノ酸が、DおよびSからなる群より選択され;
ii.修飾されたCDR-H2では、位置4のアミノ酸が、VおよびIからなる群より選択され、位置9のアミノ酸が、AおよびGからなる群より選択され、位置10のアミノ酸が、RおよびSからなる群より選択され;
iii.修飾されたCDR-H3では、位置9のアミノ酸が、S、KおよびRからなる群より選択され、位置10のアミノ酸が、A、SおよびRからなる群より選択され、位置14のアミノ酸が、D、K、EおよびRからなる群より選択され、位置15のアミノ酸が、SおよびYからなる群より選択され;
iv.修飾されたCDR-L1では、位置7のアミノ酸が、VおよびIからなる群より選択され;
v.修飾されたCDR-L3では、位置3のアミノ酸が、A、QおよびRからなる群より選択され、位置5のアミノ酸が、DおよびGからなる群より選択され、位置7のアミノ酸が、RおよびSからなる群より選択され、位置9のアミノ酸が、N、WおよびSからなる群より選択され、位置12のアミノ酸が、V、AおよびGからなる群より選択される、
実施形態D〜Hのいずれか一つによる抗体または抗原結合性フラグメント。
【0223】
L.抗体または抗原結合性フラグメントが、表7に示す少なくとも1つのCDR配列または少なくとも1つの可変重鎖または軽鎖配列を含む、実施形態D〜Kによる抗体または抗原結合性フラグメント。
【0224】
M.抗体または抗原結合性フラグメントが、表7の抗体の重鎖および軽鎖CDR配列または可変重鎖および軽鎖配列を含む、前記実施形態のいずれか一つによる抗体または抗原結合性フラグメント。
【0225】
N.配列番号75〜77によって表される可変重鎖CDR配列および配列番号78〜80によって表される可変軽鎖CDR配列、または
配列番号5、9および13によって表される可変重鎖CDR配列および配列番号17、21および25によって表される可変軽鎖CDR配列、または
配列番号6、10および14によって表される可変重鎖CDR配列および配列番号18、22および26によって表される可変軽鎖CDR配列、または
配列番号7、11および15によって表される可変重鎖CDR配列および配列番号19、23および27によって表される可変軽鎖CDR配列、または
配列番号8、12および16によって表される可変重鎖CDR配列および配列番号20、24および28によって表される可変軽鎖CDR配列、または
配列番号45〜47によって表される可変重鎖CDR配列および配列番号48〜50によって表される可変軽鎖CDR配列、または
配列番号55〜57によって表される可変重鎖CDR配列および配列番号58〜60によって表される可変軽鎖CDR配列、または
配列番号65〜67によって表される可変重鎖CDR配列および配列番号68〜70によって表される可変軽鎖CDR配列、または
配列番号85〜87によって表される可変重鎖CDR配列および配列番号88〜90によって表される可変軽鎖CDR配列、または
配列番号95〜97によって表される可変重鎖CDR配列および配列番号98〜100によって表される可変軽鎖CDR配列、または
配列番号105〜107によって表される可変重鎖CDR配列および配列番号108〜110によって表される可変軽鎖CDR配列、または
配列番号115〜117によって表される可変重鎖CDR配列および配列番号118〜120によって表される可変軽鎖CDR配列、または
配列番号125〜127によって表される可変重鎖CDR配列および配列番号128〜130によって表される可変軽鎖CDR配列、または
配列番号135〜137によって表される可変重鎖CDR配列および配列番号138〜140によって表される可変軽鎖CDR配列、
を含む、前記実施形態のいずれか一つによる抗体または抗原結合性フラグメント。
【0226】
O.配列番号81によって表される可変重鎖配列および配列番号82によって表される可変軽鎖配列、または
配列番号33によって表される可変重鎖配列および配列番号29によって表される可変軽鎖配列、または
配列番号34によって表される可変重鎖配列および配列番号30によって表される可変軽鎖配列、または
配列番号35によって表される可変重鎖配列および配列番号31によって表される可変軽鎖配列、または
配列番号36によって表される可変重鎖配列および配列番号32によって表される可変軽鎖配列、または
配列番号51によって表される可変重鎖配列および配列番号52によって表される可変軽鎖配列、または
配列番号61によって表される可変重鎖配列および配列番号62によって表される可変軽鎖配列、または
配列番号71によって表される可変重鎖配列および配列番号72によって表される可変軽鎖配列、または
配列番号91によって表される可変重鎖配列および配列番号92によって表される可変軽鎖配列、または
配列番号101によって表される可変重鎖配列および配列番号102によって表される可変軽鎖配列、または
配列番号111によって表される可変重鎖配列および配列番号112によって表される可変軽鎖配列、または
配列番号121によって表される可変重鎖配列および配列番号122によって表される可変軽鎖配列、または
配列番号131によって表される可変重鎖配列および配列番号132によって表される可変軽鎖配列、または
配列番号141によって表される可変重鎖配列および配列番号142によって表される可変軽鎖配列、
を含む、前記実施形態のいずれか一つによる抗体または抗原結合性フラグメント。
【0227】
P.IgG抗体である、前記実施形態のいずれか一つによる抗体。
【0228】
Q.scFv、Fab、Fab'フラグメントまたはF(ab')2フラグメントである、前記実施形態のいずれか一つによる抗原結合性フラグメント。
【0229】
R.モノクローナル抗体または抗原結合性フラグメントである、前記実施形態のいずれか一つによる抗体または抗原結合性フラグメント。
【0230】
S.ヒト、ヒト化もしくはキメラ抗体または抗原結合性フラグメントである、前記実施形態のいずれか一つによる抗体または抗原結合性フラグメント。
【0231】
T.実施形態A〜Sによる抗体またはその抗原結合性フラグメントを含む、抗体-薬物コンジュゲート。さらにもう一つの実施形態において、ADCは、細胞毒性剤、または放射性同位体を含み、さらにもう一つの好ましい実施形態において、細胞毒性剤または放射性同位体は、抗体または抗原結合性フラグメントに共有結合で連結される。
【0232】
U.実施形態A〜Sによる抗体または抗原結合性フラグメントをコードする単離された核酸配列。さらにもう一つの実施形態は、表7に示す核酸である。
【0233】
V.実施形態Uによる核酸配列を含むベクター。
【0234】
W.実施形態A〜Sのいずれか一つによる抗体または抗原結合性フラグメントを発現し、かつ/または実施形態Uによる核酸もしくは実施形態Vによるベクターを含む、細胞。
【0235】
X.原核細胞または真核細胞である、実施形態Wによる細胞。
【0236】
Y.実施形態Xによる細胞の培養および抗体または抗原結合性フラグメントの精製を含む、実施形態A〜Sのいずれか一つによる抗体または抗原結合性フラグメントを生産する方法。
【0237】
Z.医薬としての、実施形態A〜Sによる抗体もしくは抗原結合性フラグメントまたは実施形態Tによる抗体-薬物コンジュゲート。
【0238】
AA.診断剤としての、実施形態A〜Sによる抗体または抗原抗原結合性フラグメント。
【0239】
BB.がんを処置するための医薬としての、実施形態A〜Sによる抗体もしくは抗原結合性フラグメントまたは実施形態Tによる抗体-薬物コンジュゲート。
【0240】
CC.実施形態A〜Sによる抗体もしくは抗原結合性フラグメントまたは実施形態Tによる抗体-薬物コンジュゲートを含む、医薬組成物。
【0241】
DD.実施形態A〜Sによる抗体もしくは抗原結合性フラグメントまたは実施形態CCによる医薬組成物と、1つ以上の治療活性化合物との組み合わせ。
【0242】
EE.望ましくないC4.4aの存在と関連する障害または状態を処置するための方法であって、そのような処置を必要とする対象に、実施形態CCによる医薬組成物または実施形態DDによる組み合わせの有効量を投与することを含む方法。さらにもう一つの好ましい実施形態では、疾患ががんである。
【実施例】
【0243】
[実施例1]n-CoDeRライブラリーからの抗体生成
C4.4aに対するヒト抗体の単離は、BioInvent International AB(スウェーデン・ルンド)のナイーブ抗体ライブラリーn-CoDeRを使用するファージディスプレイ技術(Soederlingら, Nature Biotech. 2000, 18:853-856に記載されている)により、細胞選択アプローチで行った。n-CoDeRは、6つのCDR全てが多様化されているFabライブラリーである。CDR配列は、まず最初に、健常ヒトドナーから得られた。
【0244】
簡単に述べると、Fab抗体ライブラリーの一部を、107個の非C4.4a発現親CHO-S細胞と共に、PBS/3%FCS/0.01%NaN3(バッファーA)中、4℃において、エンド・オーバー・エンド(end-over-end)回転で、15分間にわたってプレインキュベートすることにより、望ましくない表面結合物質について枯渇させた。その後、細胞を遠心分離によって除去し、上清を使って、さらに2ラウンドのプレインキュベーションをCHO-S細胞で行った。次に、ターゲット細胞(107 CHO-S:hC4.4a細胞)でのパンニングを、ファージ調製物と共にバッファーA中、4℃において、45分間のインキュベーション後に、バッファーA(4℃)で10回洗浄することによって行った。結合したファージを、5分間のエンド・オーバー・エンド回転中に細胞を76mMクエン酸(4℃)で処理することによって溶離させた。溶離したファージを含有する調製物を1M Tris/HCl、pH7.5の添加によって中和し、さらに2ラウンドの細胞パンニングを行った。各ラウンドにおいて、溶離したファージを増殖させ、ファージ力価を既述のように決定した(Cicortas Gunnarssonら, PEDS 2004, 17(3) 213-221)。簡単に述べると、溶離液の一部をタイトレーション実験のために取り置き、残りを使って指数増殖期の大腸菌HB101'を形質転換することにより、新しいファージストックを調製した。各選択ラウンドについて、インプットファージとアウトプットファージの両方を指数増殖期の大腸菌HB101'でタイトレートし、ファージELISAで分析するために第2および第3ラウンドからクローンを拾った。
【0245】
酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA):
ファージELISA:
異なる選択ラウンドから選択されたファージを、ファージELISAを使って、特異性について分析した。簡単に述べると、ファージ発現は、10μlの終夜培養物(100μg/mlアンピシリンおよび15μg/mlテトラサイクリンを補足したLB培地中)を、100μlの新鮮培地(100μg/mlアンピシリン、15μg/mlテトラサイクリンおよび0.1%グルコースを補足したLB培地)に加え、96ウェルMTP中、250rpm、37℃で、OD600が0.5に達するまで振とうすることによって行った。次に、ヘルパーファージM13KO7(Invitrogen)を加え、試料を振とうせずに37℃でさらに15分間インキュベートした。IPTG(最終濃度0.25mM)を加えた後、細胞を、200rpmで振とうしながら、30℃で16時間インキュベートした。
【0246】
96ウェルMTP(Nunc-maxisorb)を、50μlの組換えC4.4a(5μg/mlヒトまたはマウスタンパク質)で、4℃において16時間コーティングした。翌日、プレートをPBS/0.05% Tween 20(バッファーB)で3回洗浄し、ブロッキング試薬(バッファーB中の3%粉乳)で処理し、再びバッファーBで3回洗浄した。その後、ファージ発現液から各ウェルにつき50μlずつ移し、20℃で1時間インキュベートした。バッファーBで3回洗浄した後、HRPにカップリングした抗M13抗体(GE Healthcare、27-9421-01;バッファーBに1:2500希釈)を加え、20℃で1時間インキュベートした。50μlのTMB(Invitrogen)の添加によって呈色反応を進行させ、20℃で5〜15分後に、50μlの停止液(Invitrogen)を加えることによって停止させた。比色反応をTecanリーダーにおいて450nMで記録した。
【0247】
ELISAによるsFabのスクリーニング:
可溶性Fab(sFab)を生成させるために、第2および第3選択ラウンドからのファージミドDNAを単離し、gene III産物を取り出すために、制限酵素EagIおよびEcoRIにより、供給者の説明書に従って消化した。得られたフラグメントを再ライゲーションし、コンストラクトを、ケミカリーコンピテント大腸菌Top10に、標準的方法を使って形質転換した。全部で約1500個のクローンを拾って、LB培地(100μg/ml、0.1%グルコース)が入っている96ウェルプレートに移し、250rpm、37℃で、OD600が0.5に達するまで振とうした。その後、IPTG(最終濃度0.5mM)の添加によって、sFab産生を誘導し、200rpmで振とうしながらインキュベーションを30℃で16時間続けた。翌朝、BELバッファーを各ウェルに加え(24.7g/lホウ酸;18.7g/l NaCl;1.49g/l EDTA pH8.0;2.5mg/mlリゾチーム(Roche))、50μlの処理済み培養物を、ELISAにおいてターゲットに結合するsFabについて、検出をHRPにカップリングした抗hIgG(Fab特異的)(Sigma;製品番号A0293)で行った点以外は基本的にはファージについて述べたようにして、分析した。
【0248】
FACS:
ターゲット細胞へのsFabの細胞結合をBDのFACSarrayで分析した。簡単に述べると、50μlの細胞懸濁液(2×106細胞/ml)を、50μlの大腸菌上清と4℃、300rpmで1時間混合した。次に、100μlのバッファーAを加え、細胞を遠心分離し、バッファーAでさらに2回洗浄した。結合したFabを検出するために、R-フィコエリトリンコンジュゲートAffiniPure F(ab')2フラグメントヤギ抗ヒト F(ab')2フラグメント特異的;Jackson Immuno Research;製品番号109-116-097(バッファーA中に1:100希釈)を、細胞に加え、4℃で1時間インキュベートした。バッファーAで3回洗浄した後、最後のペレットを150μlのバッファーAに再懸濁し、1試料につき5000のFACSイベントを記録した。データ解析は、BD FACSArrayシステムソフトウェアを使って行った。
【0249】
[実施例2]エピトープ分類
エピトープ分類実験は、Biacore T100計器(GE Healthcare Biacore, Inc.)での表面プラズモン共鳴分析を使用し、C4.4aへの抗C4.4a抗体のペアの同時結合をモニタリングすることによって行った。以下のステップを全て20℃で行った。約2000RU(1RU(レゾナンスユニット)は1平方mmあたり1pgのタンパク質の結合を表す)の第1抗体を、1級アミンカップリングにより、CM5センサーチップ上に共有結合で固定化した。流速10μl/分の比率1:1の0.4M N-エチル-N-(3-ジエチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)および0.1M n-ヒドロキシスクシンアミド(NHC)で、5〜15分間、チップを活性化した。次に、表面上の占有されていない結合部位を、過剰の1MエタノールアミンpH8.5でブロッキングした。可溶性C4.4a(HEPES-EPバッファー(GE Healthcare Biacore, Inc.)中、濃度400nM、流速10μl/分で3分間)を、固定化抗体によって表面に捕捉した。それゆえに、結合された全てのC4.4a分子に関して、捕捉抗体のエピトープはブロックされている。次に、第2の抗体(HEPES-EPバッファー中、濃度200nM、流速10μl/分で、3分間)を、直ちに表面上に流して、捕捉されたC4.4aに結合させる。同じエピトープまたはオーバーラップするエピトープを認識する2つの抗体はC4.4aに結合することができないが、異なるエピトープを持つ抗体は結合することができる。この抗体表面を、結合したタンパク質を全て除去するために3M MgCl2(流速10μl/分で30秒間)で再生し、次に他の抗体を使って、このプロセスを繰り返した。
【0250】
IgG1フォーマットの抗体M31-B01およびM20-D02 S-Aを試験した。両抗体は、C4.4aに同時に結合することができず、それゆえに、結合に関して競合する(図1参照)。
【0251】
[実施例3]マウスC4.4aとの交差反応性
表1に示すのは、マウスC4.4aに対する本発明の抗体の交差反応性および解離定数(KD)を示すBiacore研究の結果である。
【0252】
抗C4.4抗体の結合アフィニティは、Biacore T100計器(GE Healthcare Biacore, Inc.)での表面プラズモン共鳴分析によって決定した。抗体を、CM5センサーチップ上に、間接的捕捉試薬、抗ヒトIgG Fcを介して固定化した。「Human Antibody Capture Kit」(BR-1008-39、GE Healthcare Biacore, Inc.)の試薬を、製造者の説明どおりに使用した。1セルあたり約5000RUのモノクローナルマウス抗ヒトIgG(Fc)抗体を固定化した。濃度5μg/mlの抗C4.4抗体を10μl/分で10秒間注入して、約200〜600RUの捕捉レベルに到達させた。HEPES-EPバッファー(GE Healthcare Biacore, Inc.)中、さまざまな濃度(400nM、200nM、100nM、50nM、25nM、12.5nM、6.25nM、および3.12nM)のヒトまたはマウスC4.4aを、固定化抗C4.4a抗体上に60μl/分の流速で3分間注入し、10分間解離させた。インライン参照セル補正と、それに続くバッファー試料サブトラクション後に、センサーグラムを作成した。Biavaluation Software(バージョン4.0)を使ってセンサーグラムを一次1:1結合モデルに当てはめることによって得られた会合速度定数(kon)および解離速度定数(koff)に基づいて、解離平衡定数(KD)を計算した。
【0253】
[実施例4]組換えヒトおよびマウスC4.4aへの結合
図2に、それぞれ組換えヒトC4.4a(A)およびマウスC4.4a(B)に対する抗C4.4抗体M31-B01およびM20 D02 S-A結合曲線を図示する。簡単に述べると、96ウェルMTPを、4℃において16時間、組換えヒトまたはマウスC4.4a(100ng/ウェル)でコーティングした。プレートをPBS/0.05% Tween 20(=バッファーB)で3回洗浄し、ブロッキング試薬(PBS+2%BSA)で処理し、バッファーBで再び3回洗浄した。その後、本発明の抗C4.4a抗体を0.39ng〜400ng/ウェルの濃度で加え、20℃で1時間インキュベートした。バッファーBで3回洗浄した後、20ngのプロテインAを100μlのバッファーBに入れて各ウェルに加えた。50μlの3,3',5,5'-テトラメチルベンジジン(TMB)(Sigma)を添加することによって、呈色反応を進行させた。18分後に、Tecanインフィニットプレートリーダーで360nmにおける吸光度を測定することによって、EC50決定用のデータを記録した。M31-B01のEC50値は、ヒトおよびマウスC4.4aに対して、それぞれ0.24nMおよび0.29nMであった。また、M20-D02 S-Aの場合は、EC50値が、ヒトおよびマウスC4.4aに対して、それぞれ0.3nMおよび0.38nMであった。これは、ヒトおよびマウス可溶性組換えC4.4aの両方に対する本発明の抗C4.4a抗体の高アフィニティ結合を示している。
【0254】
[実施例5]さまざまな腫瘍細胞への結合
図3に、さまざまな腫瘍細胞に対する抗体M31-B01およびM20-D02 S-Aの結合曲線およびEC50値を図示する。分析は、トランスフェクトされた細胞株A549:hC4.4aおよび生来的にC4.4aを発現する腫瘍細胞株NCI H292、NCI H332、H1975/BCRPおよびBxPC3を使用し、FACSによって行った。図3f)は、本発明の両抗体が、この広範囲にわたる腫瘍細胞に、特異的にかつ高いアフィニティで結合したことを示している。mC4.4a:CHO細胞およびNCI H292細胞に対する本発明のさらなる抗体のEC50値を表8に示す。
【0255】
FACSタイトレーションは、96ウェルマイクロタイタープレート中で行った。体積50μlのFACSバッファー(PBS中、3%FCS)中の一次抗体の段階希釈液を、非酵素的細胞解離液(1×)(Cell Dissociation Solution(1×)Non-enzymatic)(Sigma)で剥離してFACSバッファーに再懸濁した2×105細胞/mlからなる50μlの細胞懸濁液と混合した。4℃で1時間、撹拌しながら、インキュベーションを行った。細胞をペレット化し、FACSバッファーで洗浄し、FACSバッファー中の100μl/ウェルのフィコエリトリン標識ヤギ抗ヒトIgG(Dianova)溶液に再懸濁した。インキュベーションおよび洗浄を前と同様に行った。FACS Arrayデバイスを使って、細胞結合抗体の分析を、それぞれの検出波長で行った。EC50値は、Swift 8.0ソフトウェアを使って、二重試料(duplicates)の蛍光中央値から決定した。
【0256】
[実施例6]内部移行
トランスフェクトされたC4.4a:A549細胞での抗C4.4a抗体の相対的内部移行を図4および表9に示す。内部移行アッセイは、蛍光標識C4.4a抗体を使って行った。
【0257】
pH感受性蛍光色素CypHer 5E(GE Healthcare、PA15401)を蛍光マーカーとして選択した。なぜなら、エンドソーム中に存在する酸性pHでのみ蛍光シグナルを検出することができ、中性または塩基性のpH値では蛍光が測定されないからである。カップリングのために、抗C4.4a抗体を、PBS/炭酸Na pH8.3(9:1)中で、2モル過剰の色素と共に、20℃で1時間インキュベートした。平均で1.6のLys結合色素負荷(dye load)が達成された。カップリングがアフィニティに及ぼす効果はをFACSアッセイで試験したところ、EC50値の変化は無視できると考えられた。1×104個のA549:hC4.4a細胞を使って、抗体結合時の特異的C4.4a内部移行を調べた。細胞を、37℃/5%CO2において、さまざまな濃度(34nM〜6.6nM)の標識抗体で処理した。内部移行は、IN Cell Analyzer 1000を使って、24時間まで速度論的に測定した。内部移行の解析は、倍率40倍の顕微鏡で、顆粒度(granularity)の決定(顆粒数/細胞;CypHer5Eの場合は励起620nm、蛍光700nm)によって行った。核を細胞透過性染色剤Hoechst 33342(0.5μg/ml、インキュベーション30分、353〜365nmで発光(emission)、480nmで検出)を使ったDNA染色で可視化した。
【0258】
対応する非C4.4a発現ベクター細胞を、A549野生型(A549wt)細胞と共に、対照として使用した。ヒトIgG1をアイソタイプ対照として選択し、並行して標識した。3つの独立した実験を行ったので、データポイントは三つ一組の決定を表す。M31-B01およびM20-D02 S-Aは効率よく内部移行した。最大半量内部移行時間は、それぞれ、M31-B01の場合は31分、M20-D02 S-Aの場合は49分であった。
【0259】
[実施例7]FabからIgGフォーマットへの変換
FabのVH領域およびVL領域をIgGフォーマットに移し、かつ/または発現系を大腸菌から哺乳動物細胞系へと変えるために、PCRプライマーを使ってVHおよびVLを増幅した。隣接する制限酵素切断部位を、それぞれVHおよびVLの5'端と3'端の両方に導入した。これらの制限部位を使って、発現ベクター(すなわちIgGバックボーンを含有するもの)中にVHおよびVLをクローニングした。
【0260】
大腸菌細胞を試験管中の水100μlに加え、95℃で10分間インキュベートした後、5分間、氷上に保った。ボルテックスした後、遠心分離によって細菌片をペレット化した。上清をDNA増幅に使用した。VLについてはBamHIおよびHpaI制限部位を、またVHについてはBlp1およびMfe1部位を持つ特異的プライマーをそれぞれ使って、VHおよびVL用のPCR反応を、別々に調製した。PCR反応はAccuPrime Pfxポリメラーゼ(Invitrogen #12344-024)を使って、製造者の説明書に従って行った。PCR産物を1%アガロースゲル上で品質チェックした。適合する末端を生成させるために、各制限エンドヌクレアーゼにより、供給者の説明書に従って、発現ベクターおよびPCR産物を、37℃で2時間消化した。70℃で15分間インキュベートすることにより、消化反応を停止させた。その結果得られたフラグメントを発現ベクターにライゲートし、コンストラクトを標準的な方法を使って大腸菌または哺乳動物細胞に形質転換した。
【0261】
[実施例8]皮下異種移植片がんモデル
抗C4.4a抗体の抗腫瘍効果は、免疫不全マウスにおける皮下異種移植モデルを使って評価されるだろう。10%FBSを補足したDMEM中、接着培養として、A431細胞を維持する。6〜7週齢のSCIDマウスの右脇腹の皮下に、培地0.1ml中の1×10e7細胞を接種する。モノクローナル抗体を5〜60mg/kgの用量で3日ごとに3回i.p.投与する。対照マウスはPBSまたは無関係なモノクローナル抗体で処置する。2日ごとに滑動計で腫瘍サイズを測定する。抗C4.4a抗体処置と対照処置の腫瘍サイズを比較することによって抗腫瘍効力を評価する。
【0262】
[実施例9]皮下異種移植片がんモデルと抗体薬物コンジュゲート
抗C4.4a抗体は、当業者に知られているプロトコールを使って細胞毒性小分子にコンジュゲートすることができる(例えばLiuら, Proc Natl. Acad. Sci. (1996), 93, 8618-8623)。10%FBSを補足したDMEM中、接着培養として、A431細胞を維持する。6〜7週齢のSCIDマウスの右脇腹の皮下に、培地0.1ml中の1×10e7細胞を接種する。腫瘍サイズが50mm3に達したら、抗体薬物コンジュゲートを1〜60mg/kgの用量で3日ごとに3回i.p.投与する。対照マウスはPBS、無関係なモノクローナル抗体、または遊離の非コンジュゲート薬物で処置する。2日ごとに滑動計で腫瘍サイズを測定する。抗C4.4a抗体薬物コンジュゲート処置と対照処置の腫瘍サイズを比較することによって抗腫瘍効力を評価する。
【0263】
[実施例10]親和性成熟のためのクローニング、発現およびFab抗体フラグメント発現レベルの定量
重鎖のC末端に3×HAタグおよびヘキサヒスチジンタグを保有する野生型Fab、M31-B01およびM20-D02 S-Aの重鎖および軽鎖を、pET28a細菌発現ベクター(Novagen/Merck Chemicals Ltd.、英国ノッティンガム)にサブクローニングし、Top10F'細胞(Invitrogen GmbH、ドイツ・カールスルーエ)に形質転換した。あるいは、他の細菌発現ベクター(例えばpQEベクター系、Qiagen GmbH、ドイツ・ヒルデン)および株(例えばDH5α、Invitrogen GmbH、ドイツ・カールスルーエ)を使用することもできる。変異体を、標準的なオリゴベースの部位特異的変異誘発によって生成させ、DNA配列決定によって確認した。特に、相補性決定領域内またはその周囲にあるアミノ酸残基を、重鎖および/または軽鎖内で修飾した。
【0264】
発現のために、変異体をBL21starDE3大腸菌株(Invitrogen、C6010-03)に形質転換し、カナマイシン(30μg/ml)を含むLB培地中の終夜培養物に接種し、37℃で18時間インキュベートした。カナマイシン(30μg/ml)を含む新鮮LB培地に1:20の比で培養物を接種することにより、発現培養物を作成した。37℃で6時間後に、1mM IPTGを加えて抗体発現を誘導し、培養物を30℃でさらに18時間インキュベートした。
【0265】
発現レベルを定量するために、ELISAアプローチを使用した。簡単に述べると、MTPプレート(Nunc maxisorp black、460518)を、コーティングバッファー(Candor Bioscience GmbH、121125)に希釈したHAエピトープタグ特異的mAb(Covance、MMS-101P)と共に、4℃で16時間インキュベートし、PBST(137mM NaCl、2.7mM KCl、10mM Na2HPO4、2mM KH2PO4、pH7.4、0.05% Tween 20を含有するリン酸緩衝食塩水)で洗浄し、20℃において1時間、100%Smart Block(Candor Bioscience GmbH、113500)でブロッキングし、再び洗浄した。培養物をPBST中の10% Smart Blockに希釈し、MTPプレートに20℃で1時間結合させた。PBSTで洗浄した後、捕捉された抗体をHRP結合抗ラムダ抗体(Sigma、A5175)と共にインキュべートし、プレートを10μMアンプレックスレッド(amplex red)基質(Invitrogen、A12222)と共に20℃で30分間、暗所でインキュベートしてから蛍光測定を行うことによって検出した。決定された定量シグナルが、濃縮した親Fab(M31-B01またはM20-D02-S-A)発現培養物上清を使って構築されたキャリブレーション系列のダイナミックレンジ内にあって各個別Fab発現試料の相対的定量が可能であることをチェックした。
【0266】
[実施例11]生成したFab抗体フラグメント変異体の活性および種間交差反応性の決定
組換え可溶性ヒトまたはマウスC4.4aでの変種型Fab変異体の活性を決定するために、直接ELISAアッセイフォーマットを使用した。簡単に述べると、MTPプレート(Nunc maxisorp black、460518)を、コーティングバッファー(Candor Bioscience GmbH、121125)に希釈した2μg/mlのヒトまたはマウスC4.4aでコーティングし、4℃で15時間インキュベートした。PBSTで3回洗浄した後、プレートを、20℃において1時間、100%Smart Block(Candor Bioscience GmbH、113500)でブロッキングし、洗浄ステップを繰り返した。Fab抗体フラグメントを結合させるために、20μlの培養上清を20℃で1時間、プレートに加えてから洗浄した。いくつかの例では、PBST中の10%Smart Blockと共に90分間の追加インキュベーションステップ後に、PBSTで3回洗浄することにより、洗浄ストリンジェンシーを増加させた(表10bにおける「プロセスB」)。次に、結合した親Fabおよび変異体を、HAエピトープタグ特異的抗体_HRPコンジュゲート(Bethyl、A190-108P)によって検出した。10μMアンプレックスレッド基質(Invitrogen、A12222)をプレートに加え、一般的な蛍光リーダー、例えばTecan Ultraを使って、蛍光シグナルを検出した。量標準化アフィニティ(quantity normalized affinty)シグナルを、各ELISAにおいて、バックグラウンド補正したアフィニティシグナルと定量シグナルとの比:(アフィニティシグナル−アフィニティバックグラウンド)/(量シグナル−量バックグランド)[(Signalaffinity−Backgroundaffinity)/(Signalquantity−Backgroundquantity)]として算出した。その結果得られた値は、主として、アフィニティと正に相関するが、標準化されていない値は、試料における結合性Fabの濃度とも相関する。それゆえに、量標準化アフィニティシグナルは、アフィニティが改良された変異体の決定にとって、極めて良い指針として役立つ。
【0267】
[実施例12]単一および多重アミノ酸置換
表10aおよび10bに記載するのは、M20-D02 S-Aの重鎖および軽鎖中に生成させた単一アミノ酸置換のいくつかの例である。HC D101K、LC A90Q、LC V97AおよびLC V97Gは、ヒトC4.4aでの標準化アフィニティシグナルに関して最も強い改善を示し、マウスC4.4aでの対応するシグナルは、ヒトC4.4aでのシグナルと比較して少なくとも1/8であった(図10a)。CDR3以外では、2つの置換HC D31SとHC V51Iが、ヒトC4.4aでの標準化アフィニティシグナルに関して最も強い改善を示し、HC V51Iの場合、マウスC4.4aでの対応するシグナルは30%であった(表10b)。
【0268】
[表10a]M20-D02 S-Aの重鎖および軽鎖のCDR3内の単一アミノ酸置換の分析。ヒトおよびマウスC4.4aでの標準化アフィニティシグナル。少なくとも四つ一組で行った2回の測定の平均およびそれぞれの標準偏差を列挙する。
表10a:
【表5−1】
【0269】
[表10b]M20-D02 S-Aの重鎖および軽鎖のCDR3以外における単一アミノ酸置換の分析。ヒトおよびマウスC4.4aでの標準化アフィニティシグナルをそれぞれ列挙する。記載する数字は四つ一組での測定の中央値である。プロセスBとプロセスAの違いは、プロセスBにおける90分間のバッファー中での追加インキュベーションステップである。
表10b:
【表5−2】
【0270】
表11aおよび11bに記載するのは、B01の重鎖および軽鎖中に生成させた単一アミノ酸置換のいくつかの例である。LC W91E、LC W91F、LC W91YおよびLC G95bRは、ヒトC4.4aでの標準化アフィニティシグナルに関して最も強い改善を示し、マウスC4.4aでの対応するシグナルは、ヒトC4.4aでのシグナルと比較して少なくとも1/8、後者3つは40%以上であった(表11a)。CDR3以外では、置換HC A32Yが、ヒトC4.4aでの標準化アフィニティシグナルに関して最も強い改善を示した(表11b)。
【0271】
[表11a]M31-B01の重鎖および軽鎖のCDR3内の単一アミノ酸置換の分析。ヒトおよびマウスC4.4aでの標準化アフィニティシグナルを列挙する;少なくとも四つ一組で行った2回の測定の平均およびそれぞれの標準偏差。
表11a:
【表6−1】
【0272】
[表11b]B01の重鎖および軽鎖のCDR3以外における単一アミノ酸置換の分析。ヒトおよびマウスC4.4aでの標準化アフィニティシグナルを列挙する。記載する数字は少なくとも四つ一組での測定の中央値である。
表11b:
【表6−2】
【0273】
表12aおよび12bに記載するのは、M20-D02 S-A 抗C4.4a抗体内での複合アミノ酸置換のいくつかの例である。いくつかの置換は単一アミノ酸置換として分析し(表10aおよび10b)、さらに、この複合置換の一部としてのみ分析した。全ての組み合わせを表12aおよび12bに記載しているわけではないが、抗C4.4a抗体は、表10aおよび10bに記載した修飾の任意の組合せを含みうると考えられる。
【0274】
[表12aおよび12b]M20-D02 S-A内での多重アミノ酸置換の例
【表7−1】
【表7−2】
【0275】
表13aおよび13bに記載するのは、M31-B01抗C4.4a抗体内での複合アミノ酸置換のいくつかの例である。いくつかの置換は単一アミノ酸置換として分析し(表11aおよび11b)、さらに、この複合置換の一部としてのみ分析した。全ての組み合わせを表13aおよび13bに記載しているわけではないが、抗C4.4a抗体は、表11aおよび11bに記載した修飾の任意の組合せを含みうると考えられる。
【0276】
[表13aおよび13b]M31-B01内での多重アミノ酸置換の例
【表8−1】
【表8−2】
【0277】
表14aおよび14bに記載するのは、M20-D02 S-AおよびM31-B01中の、潜在的脱アミド化部位、具体的にはAsn-Gly(「NG」)およびAsn-Ala(「NA」)を持つCDR配列ストレッチ、ならびに多重アミノ酸置換を持ついくつかの対応する変異体の各々の配列である。
【0278】
M20 D02-S-Aには、CDR中に2つの潜在的脱アミド化部位(CDR-L3中に1つおよびCDR-H2中に1つ)がある。D02-11、-10、-06、-07および-13では、CDR-L3中の部位がN→S置換によって除去されている。
【0279】
[表14a]
【表9−1】
【0280】
M31-B01には、CDR中に2つの潜在的脱アミド化部位(CDR-L3中に1つおよびCDR-H1中に1つ)がある。B01-nn3、-05、-10、-nn4および-12ではN→S置換によって、またB01-06ではG→R置換によって、CDR-L3中の部位が除去されている。B01-02、-09、-10、-06、-nn4、-12、-nn5および-11では、N→S置換によって、CDR-H1中の部位が除去されている。B01-10、-06、-nn4および-12は、これら両方の潜在的脱アミド化部位をどちらも示さない。
【0281】
[表14b]
【表9−2】
【0282】
実施例10〜12に記載した方法を使って、単一変異およびその単一変異の組み合わせにより、アフィニティ成熟抗体を生成させた。これらの方法は、親抗体から誘導される競合抗体の生成によく適している。上述の実施例の抗体を表7に示す。これらの実施例は、M31 B01のCDR H1と少なくとも77%同一であるCDR H1配列、M31 B01のCDR H2と少なくとも90%同一であるCDR H2配列、M31 B01のCDR H3と少なくとも90%同一であるCDR H3配列、M31 B01のCDR L1と少なくとも92%同一であるCDR L1配列、M31 B01のCDR L2と少なくとも85%同一であるCDR L2配列、およびM31 B01のCDR L3と少なくとも58%同一であるCDR L3配列を含む、さらなるC4.4a結合抗体または抗原フラグメント結合性フラグメント(これらの抗体変異体は結合に関してM31 B01と競合する)、ならびにM20 D02 S-AのCDR H1と少なくとも88%同一であるCDR H1配列、M20 D02 S-AのCDR H2と少なくとも85%同一であるCDR H2配列、M20 D02 S-AのCDR H3と少なくとも73%同一であるCDR H3配列、M20 D02 S-AのCDR L1と少なくとも92%同一であるCDR L1配列、M20 D02 S-AのCDR L2と少なくとも100%同一であるCDR L2配列、およびCDR L3 M20 D02 S-Aと少なくとも58%同一であるCDR L3配列を含む、抗体または抗原フラグメント結合タンパク質(これらの抗体変異体は結合に関してM20 D02 S-Aと競合する)を提供する。
【0283】
[表15a]この表には方法12で説明したM20 D02 S-Aに関する重鎖および軽鎖のCDR1〜3のアミノ酸変異を要約する。
以下は、上記の結果を、M20 D02 S-Aから誘導される各CDR配列のコンセンサス配列の形で表している。コンセンサスを、それぞれ、CDR H1については表15a(i)に示し(配列番号297)、CDR H2については表15a(ii)に示し(配列番号298)、CDR H3については表15a(iii)に示し(配列番号299)、CDR L1については表15a(iv)に示し(配列番号300)、CDR L2については配列番号22と同一であり(表15a(v))、CDR L3については15a(v)に示す(配列番号301)。
【0284】
[表15a]この表には実施例12で説明したM20 D02 S-Aに関する重鎖および軽鎖のCDR1〜3のアミノ酸変異を要約する。
【表10−1】
【0285】
以下は、上記の結果を、M31 B01から誘導される各CDR配列のコンセンサス配列の形で表している。コンセンサスを、それぞれ、CDR H1については表15b(i)に示し(配列番号302)、CDR H2については表15b(ii)に示し(配列番号303)、CDR H3については表15b(iii)に示し(配列番号304)、CDR L1については表15b(iv)に示し(配列番号305)、CDR L2については表15b(v)に示し(配列番号306)、CDR L3については15b(v)に示す(配列番号307)。
【0286】
[表15b]この表には実施例12で説明したM31 B01に関する重鎖および軽鎖のCDR1〜3のアミノ酸変異を要約する。
【表10−2】
【0287】
[実施例13]ウェスタンブロットによるC4.4a単一ドメインへの抗体結合の決定
M31-B01およびM20-D02 S-Aの抗体結合ドメインを特徴づけるために、標準的方法により、それぞれヒトC4.4a(配列番号1)のC4.4aドメインS1アミノ酸1〜85およびC4.4ドメインS2 108〜193からなるコンストラクトを、C末端ヒトIgG1 Fc-6×Hisタグ融合物として作製し、CMV5プロモーターを含有する哺乳動物細胞発現ベクターにクローニングし、HEK293 6E細胞中で一過性に発現させた。次に、発現したS1およびS2タンパク質を、細胞上清から、5ml NiNTAスーパーフローカラム(Qiagen)を用いる金属キレートクロマトグラフィーにより、20℃で精製した。試料のpHを1M NaOHでpH8.0に調節してから、1ml/分の50mM NaH2PO4+300mM NaCl pH8.0で前もって平衡化しておいたカラムに適用した。カラムを15CVの平衡化バッファーで洗浄し、結合したHisタグ付きタンパク質を50mM NaH2PO4+300mM NaCl+250mMイミダゾール(pH8.0)で溶出させた。溶出したタンパク質を、サイズ排除クロマトグラフィーにより、Tricorn Superdex 75 10/300 GL(GE Healthcare)で、さらに精製した。
【0288】
さらなる分析のために、完全長(C4.4a(配列番号1))、精製S1-Fc-6×Hisタグ融合物およびS2 Fc-6×Hisタグを、プレキャストNuPage Bis-Tris 4-12%勾配ゲル(Invitrogen、番号NP0322Box)の異なるレーンに適用し、NuPage MES SDSランニングバッファー(Running Puffer)(Invitrogen NP0002)を使用し、製造者の説明書に従って、電気泳動によって分離した。
【0289】
次に、SDSゲルを、iblotゲルトランスファーメンブレン(Invitrogen IB3010-02)に、iBlot装置(Invitrogen)を使ってブロッティングした。メンブレンをDPBS pH7.4+4%粉乳+0.1% Tween 20中、4℃で16時間ブロッキングした後、DPBS pH7.4+0.1% Tween 20中、20℃で5分間の洗浄ステップを3回行った。M31-B01(5.76mg/ml)またはM20-D02 S-A(3.49mg/ml)をそれぞれ1/5000および1/2000の希釈度で適用し、20℃で1.5時間インキュベートした後、DPBS pH7.4+0.1% Tween 20中で2回洗浄した。第2の抗体(アルカリホスファターゼコンジュゲートヤギ抗ヒトIgG、Fab特異的;109-055-097 Jackson ImmunoResearch)を、1/1000の希釈度で、20℃において1.5時間インキュベートした。次に、DPBS pH7.4+0.1% Tween 20中、20℃で5分間の洗浄ステップを3回行った。染色は、Sigma Fast BCIP/NBTを水10mlに1タブレット使って、20℃で、バンドが目に見えるようになるまで行った。水で洗浄することによって染色反応を停止した。
【0290】
抗体M31-B01およびM20-D02 S-Aはどちらも完全長ヒトおよびマウスC4.4aに結合した。加えて、図6に示すように、これらは、C4.4aのドメインS1にも結合したが、C4.4aのドメインS2には結合しなかった。結合はもっぱら非DTT還元試料中で検出することができ、これは、1つ以上のジスルフィド橋によって安定化されたコンフォメーション依存的エピトープの存在を強く示している。
【0291】
[実施例14]抗体依存性細胞性細胞傷害アッセイ(ADCCアッセイ)
抗C4.4a IgGの抗腫瘍活性は、ADCCによって媒介されうる。C4.4a発現A549:hC4.4a細胞および非C4.4a発現親細胞を、250ng/ml、1000ng/mlまたは2000ng/mlのヒト抗C4.4aまたは対照IgG1抗体(例えば抗ジゴキシン抗体)と共にインキュベートする。ヒトPBMCを、これらの細胞に、比50:1、25:1および5:1のエフェクター-ターゲット比で加える。ターゲット溶解のレベルを決定するためにクロム51放出アッセイを行う。抗C4.4a抗体およびPBMCの存在下での溶解率が、モック抗体または抗体なしおよびPBMCの存在下での(自発的)溶解率よりも高い場合、それはADCCが有効であることを示す。
【0292】
[実施例15]増殖の抗体依存性阻害−xCELLigenceシステムによって測定される細胞増殖
xCELLigenceシステム(RTCAアナライザー、カタログ番号05228972001、Roche)は、ラベルを取り込ませることなく、細胞イベントをリアルタイムにモニターする。このシステムでは、組織培養E-プレートの底に組み込まれた櫛型微小電極間の電気的インピーダンスを測定する。インピーダンス測定は、細胞数、生存率および形態を含む細胞の生物学的状態に関して、定量的情報を与える。A549:hC4.4aの細胞増殖率を決定するために、細胞を、非結合性hIgG1アイソタイプ対照抗体または100nMのB01-3(hIgG1として)と共にインキュベートした。まず最初に、50μlの細胞培養培地(RPMI(Biochrom FG1640)+10%FCS(Biochrom #S0145)+1μg/mlピューロマイシン(Sigma 8833))を、E-プレート96の各ウェルに加えた。E-プレート96をRTCA MPステーション(カタログ番号05331625001、Roche)に挿入し、各ウェルのバックグラウンドインピーダンスを決定した。溶液をE-プレート96から再び除去し、50μlの細胞懸濁液(細胞培養培地中の5000細胞/ウェルのA549:hC4.4a)をウェルに加えた。プレートを再び挿入し、37℃+5%CO2で4時間測定した。E-プレート96を再び取り出し、細胞培養培地中の抗体(100nMのB01-3または非結合性対照hIG1)100μlを加えた。全ての試料を三つ一組にして操作した。E-プレートの再挿入後に、測定を、37℃+5%CO2で92時間行った。結果は組込みソフトウェアパッケージで解析した。結果を図6に図示する。抗体B01-3は非結合性対照抗体と比較して細胞増殖を明確に減少させる。これは、本発明の抗体がC4.4a発現細胞の細胞増殖を効果的に阻害することを示している。
【0293】
[表7]抗体の配列
【表11】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
C4.4aのドメインS1に特異的に結合する単離された抗体またはその抗原結合性フラグメント。
【請求項2】
抗体またはその抗原結合性フラグメントが齧歯類C4.4aに対して交差反応性である、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合性フラグメント。
【請求項3】
抗体またはその抗原結合性フラグメントが、C4.4a発現細胞への結合後に内部移行する、請求項1または2に記載の抗体またはその抗原結合性フラグメント。
【請求項4】
抗体またはその抗原結合性フラグメントが、C4.4aへの結合に関して抗体M31-B01またはM20-D02 S-Aと競合する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合性フラグメント。
【請求項5】
抗体または抗原結合性フラグメントのアミノ酸配列が、表7に示す少なくとも1つのCDR配列と少なくとも50%、55%、60% 70%、80%、90、または95%同一であるか、または表7に示す少なくとも1つのVH配列またはVL配列と少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、92%または95%同一である、請求項4に記載の抗体または抗原結合性フラグメント。
【請求項6】
抗体または抗原結合性フラグメントのアミノ酸配列が、M31-B01またはM20-D02 S-Aの少なくとも1つのCDR配列と少なくとも50%、55%、60% 70%、80%、90、または95%同一であるか、またはM31-B01またはM20-D02 S-AのVH配列またはVL配列と少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、92%または95%同一である、請求項4〜5のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合性フラグメント。
【請求項7】
抗体またはその抗原結合性フラグメントが、コンセンサス配列である配列番号297もしくは配列番号302(CDR H1)、配列番号298もしくは配列番号303(CDR H2)、または配列番号299もしくは配列番号304(CDR H3)に準拠する重鎖CDR配列の少なくとも1つ、および/または配列番号300もしくは配列番号305(CDR L1)、配列番号22もしくは配列番号306(CDR L2)、または配列番号301もしくは配列番号307(CDR L3)のコンセンサス配列に準拠する軽鎖CDR配列の少なくとも1つを含む、請求項4〜6のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合性フラグメント。
【請求項8】
a)抗体またはその抗原結合性フラグメントが、配列番号297(CDR H1)、配列番号298(CDR H2)および配列番号299(CDR H3)に準拠する重鎖CDR配列と、配列番号300(CDR L1)、配列番号22(CDR L2)および配列番号301(CDR L3)に準拠する軽鎖CDR配列とを含むか、または
b)抗体またはその抗原結合性フラグメントが、配列番号302(CDR H1)、配列番号303(CDR H2)および配列番号304(CDR H3)に準拠する重鎖CDR配列と、配列番号305(CDR L1)、配列番号306(CDR L2)および配列番号307(CDR L3)に準拠する軽鎖CDR配列とを含む、
請求項4〜7のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合性フラグメント。
【請求項9】
抗体または抗原結合性フラグメントが、表7に示す少なくとも1つのCDR配列または少なくとも1つの可変重鎖または軽鎖配列を含む、請求項4〜8のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合性フラグメント。
【請求項10】
抗体または抗原結合性フラグメントが、表7の抗体の重鎖および軽鎖CDR配列または可変重鎖および軽鎖配列を含む、前記請求項のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合性フラグメント。
【請求項11】
配列番号75〜77によって表される可変重鎖CDR配列および配列番号78〜80によって表される可変軽鎖CDR配列、または
配列番号5、9および13によって表される可変重鎖CDR配列および配列番号17、21および25によって表される可変軽鎖CDR配列、または
配列番号6、10および14によって表される可変重鎖CDR配列および配列番号18、22および26によって表される可変軽鎖CDR配列、または
配列番号7、11および15によって表される可変重鎖CDR配列および配列番号19、23および27によって表される可変軽鎖CDR配列、または
配列番号8、12および16によって表される可変重鎖CDR配列および配列番号20、24および28によって表される可変軽鎖CDR配列、または
配列番号45〜47によって表される可変重鎖CDR配列および配列番号48〜50によって表される可変軽鎖CDR配列、または
配列番号55〜57によって表される可変重鎖CDR配列および配列番号58〜60によって表される可変軽鎖CDR配列、または
配列番号65〜67によって表される可変重鎖CDR配列および配列番号68〜70によって表される可変軽鎖CDR配列、または
配列番号85〜87によって表される可変重鎖CDR配列および配列番号88〜90によって表される可変軽鎖CDR配列、または
配列番号95〜97によって表される可変重鎖CDR配列および配列番号98〜100によって表される可変軽鎖CDR配列、または
配列番号105〜107によって表される可変重鎖CDR配列および配列番号108〜110によって表される可変軽鎖CDR配列、または
配列番号115〜117によって表される可変重鎖CDR配列および配列番号118〜120によって表される可変軽鎖CDR配列、または
配列番号125〜127によって表される可変重鎖CDR配列および配列番号128〜130によって表される可変軽鎖CDR配列、または
配列番号135〜137によって表される可変重鎖CDR配列および配列番号138〜140によって表される可変軽鎖CDR配列、
を含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合性フラグメント。
【請求項12】
配列番号81によって表される可変重鎖配列および配列番号82によって表される可変軽鎖配列、または
配列番号33によって表される可変重鎖配列および配列番号29によって表される可変軽鎖配列、または
配列番号34によって表される可変重鎖配列および配列番号30によって表される可変軽鎖配列、または
配列番号35によって表される可変重鎖配列および配列番号31によって表される可変軽鎖配列、または
配列番号36によって表される可変重鎖配列および配列番号32によって表される可変軽鎖配列、または
配列番号51によって表される可変重鎖配列および配列番号52によって表される可変軽鎖配列、または
配列番号61によって表される可変重鎖配列および配列番号62によって表される可変軽鎖配列、または
配列番号71によって表される可変重鎖配列および配列番号72によって表される可変軽鎖配列、または
配列番号91によって表される可変重鎖配列および配列番号92によって表される可変軽鎖配列、または
配列番号101によって表される可変重鎖配列および配列番号102によって表される可変軽鎖配列、または
配列番号111によって表される可変重鎖配列および配列番号112によって表される可変軽鎖配列、または
配列番号121によって表される可変重鎖配列および配列番号122によって表される可変軽鎖配列、または
配列番号131によって表される可変重鎖配列および配列番号132によって表される可変軽鎖配列、または
配列番号141によって表される可変重鎖配列および配列番号142によって表される可変軽鎖配列、
を含む、請求項1〜11のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合性フラグメント。
【請求項13】
IgG抗体である、請求項1〜12のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項14】
scFv、Fab、Fab'フラグメントまたはF(ab')2フラグメントである、請求項1〜13のいずれか一項に記載の抗原結合性フラグメント。
【請求項15】
モノクローナル抗体またはモノクローナル抗原結合性フラグメントである、請求項1〜14のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合性フラグメント。
【請求項16】
ヒト、ヒト化もしくはキメラ抗体またはヒト、ヒト化もしくはキメラ抗原結合性フラグメントである、請求項1〜15のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合性フラグメント。
【請求項17】
実施形態1〜16のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合性フラグメントを含む、抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項18】
請求項1〜16のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合性フラグメントをコードする単離された核酸配列。
【請求項19】
請求項18に記載の核酸配列を含むベクター。
【請求項20】
請求項1〜16のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合性フラグメントを発現し、かつ/または請求項18に記載の核酸もしくは請求項19に記載のベクターを含む、単離された細胞。
【請求項21】
原核細胞または真核細胞である、請求項20に記載の単離された細胞。
【請求項22】
請求項21に記載の細胞の培養および抗体または抗原結合性フラグメントの精製を含む、請求項1〜16のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合性フラグメントを生産する方法。
【請求項23】
医薬としての、請求項1〜16のいずれか一項に記載の抗体もしくは抗原結合性フラグメントまたは請求項17に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項24】
診断剤としての、請求項1〜16のいずれか一項に記載の抗体または抗原抗原結合性フラグメント。
【請求項25】
がんを処置するための医薬としての、請求項1〜16のいずれか一項に記載の抗体もしくは抗原結合性フラグメントまたは請求項17に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項26】
請求項1〜16のいずれか一項に記載の抗体もしくは抗原結合性フラグメントまたは請求項17に記載の抗体-薬物コンジュゲートを含む、医薬組成物。
【請求項27】
請求項26に記載の医薬組成物と1つ以上の治療活性化合物との組み合わせ。
【請求項28】
望ましくないC4.4aの存在と関連する障害または状態を処置するための方法であって、そのような処置を必要とする対象に、請求項26に記載の医薬組成物または請求項27に記載の組み合わせの有効量を投与することを含む方法。
【請求項1】
C4.4aのドメインS1に特異的に結合する単離された抗体またはその抗原結合性フラグメント。
【請求項2】
抗体またはその抗原結合性フラグメントが齧歯類C4.4aに対して交差反応性である、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合性フラグメント。
【請求項3】
抗体またはその抗原結合性フラグメントが、C4.4a発現細胞への結合後に内部移行する、請求項1または2に記載の抗体またはその抗原結合性フラグメント。
【請求項4】
抗体またはその抗原結合性フラグメントが、C4.4aへの結合に関して抗体M31-B01またはM20-D02 S-Aと競合する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合性フラグメント。
【請求項5】
抗体または抗原結合性フラグメントのアミノ酸配列が、表7に示す少なくとも1つのCDR配列と少なくとも50%、55%、60% 70%、80%、90、または95%同一であるか、または表7に示す少なくとも1つのVH配列またはVL配列と少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、92%または95%同一である、請求項4に記載の抗体または抗原結合性フラグメント。
【請求項6】
抗体または抗原結合性フラグメントのアミノ酸配列が、M31-B01またはM20-D02 S-Aの少なくとも1つのCDR配列と少なくとも50%、55%、60% 70%、80%、90、または95%同一であるか、またはM31-B01またはM20-D02 S-AのVH配列またはVL配列と少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、92%または95%同一である、請求項4〜5のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合性フラグメント。
【請求項7】
抗体またはその抗原結合性フラグメントが、コンセンサス配列である配列番号297もしくは配列番号302(CDR H1)、配列番号298もしくは配列番号303(CDR H2)、または配列番号299もしくは配列番号304(CDR H3)に準拠する重鎖CDR配列の少なくとも1つ、および/または配列番号300もしくは配列番号305(CDR L1)、配列番号22もしくは配列番号306(CDR L2)、または配列番号301もしくは配列番号307(CDR L3)のコンセンサス配列に準拠する軽鎖CDR配列の少なくとも1つを含む、請求項4〜6のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合性フラグメント。
【請求項8】
a)抗体またはその抗原結合性フラグメントが、配列番号297(CDR H1)、配列番号298(CDR H2)および配列番号299(CDR H3)に準拠する重鎖CDR配列と、配列番号300(CDR L1)、配列番号22(CDR L2)および配列番号301(CDR L3)に準拠する軽鎖CDR配列とを含むか、または
b)抗体またはその抗原結合性フラグメントが、配列番号302(CDR H1)、配列番号303(CDR H2)および配列番号304(CDR H3)に準拠する重鎖CDR配列と、配列番号305(CDR L1)、配列番号306(CDR L2)および配列番号307(CDR L3)に準拠する軽鎖CDR配列とを含む、
請求項4〜7のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合性フラグメント。
【請求項9】
抗体または抗原結合性フラグメントが、表7に示す少なくとも1つのCDR配列または少なくとも1つの可変重鎖または軽鎖配列を含む、請求項4〜8のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合性フラグメント。
【請求項10】
抗体または抗原結合性フラグメントが、表7の抗体の重鎖および軽鎖CDR配列または可変重鎖および軽鎖配列を含む、前記請求項のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合性フラグメント。
【請求項11】
配列番号75〜77によって表される可変重鎖CDR配列および配列番号78〜80によって表される可変軽鎖CDR配列、または
配列番号5、9および13によって表される可変重鎖CDR配列および配列番号17、21および25によって表される可変軽鎖CDR配列、または
配列番号6、10および14によって表される可変重鎖CDR配列および配列番号18、22および26によって表される可変軽鎖CDR配列、または
配列番号7、11および15によって表される可変重鎖CDR配列および配列番号19、23および27によって表される可変軽鎖CDR配列、または
配列番号8、12および16によって表される可変重鎖CDR配列および配列番号20、24および28によって表される可変軽鎖CDR配列、または
配列番号45〜47によって表される可変重鎖CDR配列および配列番号48〜50によって表される可変軽鎖CDR配列、または
配列番号55〜57によって表される可変重鎖CDR配列および配列番号58〜60によって表される可変軽鎖CDR配列、または
配列番号65〜67によって表される可変重鎖CDR配列および配列番号68〜70によって表される可変軽鎖CDR配列、または
配列番号85〜87によって表される可変重鎖CDR配列および配列番号88〜90によって表される可変軽鎖CDR配列、または
配列番号95〜97によって表される可変重鎖CDR配列および配列番号98〜100によって表される可変軽鎖CDR配列、または
配列番号105〜107によって表される可変重鎖CDR配列および配列番号108〜110によって表される可変軽鎖CDR配列、または
配列番号115〜117によって表される可変重鎖CDR配列および配列番号118〜120によって表される可変軽鎖CDR配列、または
配列番号125〜127によって表される可変重鎖CDR配列および配列番号128〜130によって表される可変軽鎖CDR配列、または
配列番号135〜137によって表される可変重鎖CDR配列および配列番号138〜140によって表される可変軽鎖CDR配列、
を含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合性フラグメント。
【請求項12】
配列番号81によって表される可変重鎖配列および配列番号82によって表される可変軽鎖配列、または
配列番号33によって表される可変重鎖配列および配列番号29によって表される可変軽鎖配列、または
配列番号34によって表される可変重鎖配列および配列番号30によって表される可変軽鎖配列、または
配列番号35によって表される可変重鎖配列および配列番号31によって表される可変軽鎖配列、または
配列番号36によって表される可変重鎖配列および配列番号32によって表される可変軽鎖配列、または
配列番号51によって表される可変重鎖配列および配列番号52によって表される可変軽鎖配列、または
配列番号61によって表される可変重鎖配列および配列番号62によって表される可変軽鎖配列、または
配列番号71によって表される可変重鎖配列および配列番号72によって表される可変軽鎖配列、または
配列番号91によって表される可変重鎖配列および配列番号92によって表される可変軽鎖配列、または
配列番号101によって表される可変重鎖配列および配列番号102によって表される可変軽鎖配列、または
配列番号111によって表される可変重鎖配列および配列番号112によって表される可変軽鎖配列、または
配列番号121によって表される可変重鎖配列および配列番号122によって表される可変軽鎖配列、または
配列番号131によって表される可変重鎖配列および配列番号132によって表される可変軽鎖配列、または
配列番号141によって表される可変重鎖配列および配列番号142によって表される可変軽鎖配列、
を含む、請求項1〜11のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合性フラグメント。
【請求項13】
IgG抗体である、請求項1〜12のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項14】
scFv、Fab、Fab'フラグメントまたはF(ab')2フラグメントである、請求項1〜13のいずれか一項に記載の抗原結合性フラグメント。
【請求項15】
モノクローナル抗体またはモノクローナル抗原結合性フラグメントである、請求項1〜14のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合性フラグメント。
【請求項16】
ヒト、ヒト化もしくはキメラ抗体またはヒト、ヒト化もしくはキメラ抗原結合性フラグメントである、請求項1〜15のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合性フラグメント。
【請求項17】
実施形態1〜16のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合性フラグメントを含む、抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項18】
請求項1〜16のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合性フラグメントをコードする単離された核酸配列。
【請求項19】
請求項18に記載の核酸配列を含むベクター。
【請求項20】
請求項1〜16のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合性フラグメントを発現し、かつ/または請求項18に記載の核酸もしくは請求項19に記載のベクターを含む、単離された細胞。
【請求項21】
原核細胞または真核細胞である、請求項20に記載の単離された細胞。
【請求項22】
請求項21に記載の細胞の培養および抗体または抗原結合性フラグメントの精製を含む、請求項1〜16のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合性フラグメントを生産する方法。
【請求項23】
医薬としての、請求項1〜16のいずれか一項に記載の抗体もしくは抗原結合性フラグメントまたは請求項17に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項24】
診断剤としての、請求項1〜16のいずれか一項に記載の抗体または抗原抗原結合性フラグメント。
【請求項25】
がんを処置するための医薬としての、請求項1〜16のいずれか一項に記載の抗体もしくは抗原結合性フラグメントまたは請求項17に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項26】
請求項1〜16のいずれか一項に記載の抗体もしくは抗原結合性フラグメントまたは請求項17に記載の抗体-薬物コンジュゲートを含む、医薬組成物。
【請求項27】
請求項26に記載の医薬組成物と1つ以上の治療活性化合物との組み合わせ。
【請求項28】
望ましくないC4.4aの存在と関連する障害または状態を処置するための方法であって、そのような処置を必要とする対象に、請求項26に記載の医薬組成物または請求項27に記載の組み合わせの有効量を投与することを含む方法。
【図1】
【図2a)】
【図2b)】
【図3】
【図4a)】
【図4b)】
【図4c)】
【図4d)】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6】
【図7−1】
【図7−2】
【図7−3】
【図7−4】
【図7−5】
【図7−6】
【図7−7】
【図7−8】
【図7−9】
【図7−10】
【図7−11】
【図2a)】
【図2b)】
【図3】
【図4a)】
【図4b)】
【図4c)】
【図4d)】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6】
【図7−1】
【図7−2】
【図7−3】
【図7−4】
【図7−5】
【図7−6】
【図7−7】
【図7−8】
【図7−9】
【図7−10】
【図7−11】
【公表番号】特表2013−513369(P2013−513369A)
【公表日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−542543(P2012−542543)
【出願日】平成22年12月8日(2010.12.8)
【国際出願番号】PCT/EP2010/069216
【国際公開番号】WO2011/070088
【国際公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(507113188)バイエル・ファルマ・アクチェンゲゼルシャフト (141)
【氏名又は名称原語表記】Bayer Pharma Aktiengesellschaft
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月8日(2010.12.8)
【国際出願番号】PCT/EP2010/069216
【国際公開番号】WO2011/070088
【国際公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(507113188)バイエル・ファルマ・アクチェンゲゼルシャフト (141)
【氏名又は名称原語表記】Bayer Pharma Aktiengesellschaft
【Fターム(参考)】
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