抗CD160モノクローナル抗体及びその使用
本発明は、CD160に結合できる抗体又はその断片であって、該抗体が、a)以下のアミノ酸配列:(i)軽鎖CDR1:QSISNH(配列番号1)、(ii)軽鎖CDR2:YAS、(iii)軽鎖CDR3:QQSNSWPLT(配列番号2)を有する3つの軽鎖相補性領域(CDR)、及び免疫グロブリン軽鎖由来の軽鎖フレームワーク配列を含む軽鎖;及びb)以下のアミノ酸配列:(i)重鎖CDR1:GYTFTDYW(配列番号3)、(ii)重鎖CDR2:IYPGDDDA(配列番号4);(iii)重鎖CDR3:ARRGIAAVVGGFDY(配列番号5)を有する3つの重鎖相補性領域(CDR);及び免疫グロブリン重鎖由来の重鎖フレームワーク配列を含む重鎖を含む抗体又はその断片;該抗体を含む医薬及び血管形成過程に関与する内皮細胞の増殖に関連する病状を治療及び/又は予防するための医薬の調製のための該抗体の使用、に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、新規の抗CD160モノクローナル抗体、特にマウス-ヒトキメラの抗CD160抗体を提供する。抗CD160抗体及びそれを含有する医薬組成物は、血管形成阻害に有用である。
【背景技術】
【0002】
背景技術
NK細胞の主要なエフェクター機能は、感受性標的細胞に対する細胞溶解活性並びにサイトカイン及びケモカインの産生により特徴付けられる。NK細胞は、種々の活性化受容体の特異的な関与を通して、健康な細胞と、異常な腫瘍細胞又はウイルスが感染した細胞とを区別する。たいていのNK細胞活性化受容体は、そのシグナル伝達が媒介する関連分子により3つのグループに分けることができる。しかし、独特で特徴のあるNK細胞活性化受容体、CD160が同定されており、これはMHCクラスI依存性の免疫グロブリン(Ig)様分子である。
【0003】
CD160は、NK CD56dim+CD16+、たいていのTCRγδT細胞、及び細胞傷害性エフェクターTCRαβCD8T細胞のような、ヒト及びマウスの循環している細胞傷害性リンパ球で発現しており、またほぼ全ての腸上皮内リンパ球(iIEL)でも発現している(MAIZA et al., J. Exp. Med., vol. 178, p: 1124-6, 1993; ANUMANTHAN et al., J. Immunol., vol.161, p:2780-90, 1998)。
【0004】
最後に、CD160は、これまでに記載された他の活性化受容体と比較すると、以下の独特な特徴:1)CD160はNK遺伝子複合体の外側の第1染色体上の遺伝子にコードされている、2)マルチマーのグリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカー分子である、3)細胞表面でのその発現は、活性化後に下方制御される、を示す。
【0005】
血管形成は、それによって既存の血管から新たな毛細血管が形成される、基本的な過程である。この過程は、生殖、分化、瘢痕形成、及び器官再生等の多くの正常な生理学的現象において不可欠である。
【0006】
これらの正常な生物学的現象において、血管形成は厳密な制御下にある。即ち、それは数日といった短期の間誘発され、次いで完全に阻害される。しかしながら、多くの病状が、侵入性で非制御的な血管形成と関係する。例えば、関節炎は、侵入性の新生血管により軟骨に引き起こされる損傷により引き起こされる病状である。糖尿病性網膜症においては、新生血管による網膜の侵入で患者が盲目となってしまう;目の器官の新血管形成は盲目の主要な原因であり、この新血管形成は、少なくとも20の眼疾患を支配する。最後に、多くの腫瘍の増殖及び転移は、血管形成に直接的に依存する。腫瘍は、自ら使用するために新生血管の成長を刺激する。更に、これらの新生血管は、腫瘍が血液循環系に到達できる逃避経路を提供し、肝臓、肺又は骨等の遠隔部位で転移を引き起こす。
【0007】
最近、CD160は血管形成に対して阻害的なシグナル伝達受容体として同定された(FONS et al., Blood, vol.108(8), p: 2608-15, 2006)。
【0008】
ABTECH及びINSERMの名におけるWO 03/018048は、血管形成を阻害するための、CD160に結合する2つの可溶性HLAクラスI分子、即ちsHLA-G1及びsHLA-B7の使用に関する。
【0009】
INSERMの名におけるWO 2006/015886は、内皮細胞上のVEGF又はFGF2等の血管形成促進因子により誘導される血管形成及び血管成長を阻害するための、抗CD160モノクローナル抗体の使用に関する。
【発明の概要】
【0010】
発明の要旨
本発明は、CD160に結合できる抗体又はその断片であって、
a)以下のアミノ酸配列:
i)軽鎖CDR1:QSISNH(配列番号1);
ii)軽鎖CDR2:YAS;
iii)軽鎖CDR3:QQSNSWPLT(配列番号2)
を有する3つの軽鎖相補性領域(CDR);及び
免疫グロブリン軽鎖由来の軽鎖フレームワーク配列を含む軽鎖;及び
b)以下のアミノ酸配列:
i)重鎖CDR1:GYTFTDYW(配列番号3);
ii)重鎖CDR2:IYPGDDDA(配列番号4);
iii)重鎖CDR3:ARRGIAAVVGGFDY(配列番号5)
を有する3つの重鎖相補性領域(CDR);及び
免疫グロブリン重鎖由来の重鎖フレームワーク配列を含む重鎖
を含む抗体のポリペプチド配列と少なくとも90%の相同性を含むポリペプチド配列を有する、抗体又はその断片に関する。
【0011】
本発明はまた、少なくとも1種のそのような抗CD160抗体又はその断片、及び医薬的に許容可能な担体を含む、医薬組成物に関する。
【0012】
更に、本発明は、必要とする患者にそのような医薬組成物を提供することを含む、血管形成の阻害方法に関する。
【0013】
最後に、本発明は、血管形成過程に関与する内皮細胞の増殖に関連する病状を治療及び/又は予防するための医薬の調製のための、少なくとも1種のそのような抗CD160抗体又はその断片の使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】マウスCD160抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列(配列番号6)及びヌクレオチド配列(配列番号7)。
【図2】マウスCD160抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列(配列番号8)及びヌクレオチド配列(配列番号9)。
【図3】ヒト免疫グロブリンガンマ1重鎖の定常領域から、追加的システイン及び終止コドンの挿入によって得られたアミノ酸配列(配列番号10)及びヌクレオチド配列(配列番号11)。
【図4】ヒト免疫グロブリンガンマ1重鎖の定常領域のアミノ酸配列(配列番号12)及びヌクレオチド配列(配列番号13)。クローニングサイト(Nhe I)を作製するため、最初のAGCコドンはGCTに変更された。
【図5】ヒト免疫グロブリンガンマ4重鎖の定常領域のアミノ酸配列(配列番号14)及びヌクレオチド配列(配列番号15)。クローニングサイト(Nhe I)を作製するため、最初のAGCコドンはGCTに変更された。
【図6】ヒト免疫グロブリンカッパ軽鎖の定常領域のアミノ酸配列(配列番号16)及びヌクレオチド配列(配列番号17)。
【図7a】a)ヒトVLシグナルペプチド(影つき(shared))を含むマウスCD160抗体の組換え軽鎖可変領域のアミノ酸配列(配列番号18)及びヌクレオチド配列(配列番号19)。b)ヒトVLシグナルペプチド(影つき)を含むマウスCD160抗体の組換え軽鎖可変領域のアミノ酸配列(配列番号28)及びヌクレオチド配列(配列番号29)。
【図7b】a)ヒトVLシグナルペプチド(影つき(shared))を含むマウスCD160抗体の組換え軽鎖可変領域のアミノ酸配列(配列番号18)及びヌクレオチド配列(配列番号19)。b)ヒトVLシグナルペプチド(影つき)を含むマウスCD160抗体の組換え軽鎖可変領域のアミノ酸配列(配列番号28)及びヌクレオチド配列(配列番号29)。
【図8】ヒトVHシグナルペプチド(影つき)を含むマウスCD160抗体の組換え重鎖可変領域のアミノ酸配列(配列番号20)及びヌクレオチド配列(配列番号21)。
【図9】マウス可変軽鎖のアミノ酸配列(配列番号8)と、最大相同性を有するヒト免疫グロブリンのアミノ酸配列(配列番号22;アクセッション番号AAZ09098)とのアラインメント。CDR領域が同定されている(影つき)。
【図10】マウス可変重鎖のアミノ酸配列(配列番号6)と、最大相同性を有するヒト免疫グロブリンの1つのアミノ酸配列(配列番号23;アクセッション番号3FCTB)とのアラインメント。CDR領域が同定されている(影つき)。
【図11】マウス可変重鎖のアミノ酸配列(配列番号6)と、最大相同性を有するヒト免疫グロブリンの1つのアミノ酸配列(配列番号24;アクセッション番号AAG00910)とのアラインメント。CDR領域が同定されている(影つき)。
【発明を実施するための形態】
【0015】
詳細な説明
第1の態様においては、本発明は、CD160に結合できる抗体又はその断片であって、該抗体が、
a)以下のアミノ酸配列:
i)軽鎖CDR1:QSISNH(配列番号1);
ii)軽鎖CDR2:YAS;
iii)軽鎖CDR3:QQSNSWPLT(配列番号2)
を有する3つの軽鎖相補性領域(CDR);及び
免疫グロブリン軽鎖由来の軽鎖フレームワーク配列を含む軽鎖;及び
b)以下のアミノ酸配列:
i)重鎖CDR1:GYTFTDYW(配列番号3);
ii)重鎖CDR2:IYPGDDDA(配列番号4);
iii)重鎖CDR3:ARRGIAAVVGGFDY(配列番号5)
を有する3つの重鎖相補性領域(CDR);及び
免疫グロブリン重鎖由来の重鎖フレームワーク配列を含む重鎖
を含む抗体のポリペプチド配列と少なくとも90%、好ましくは95%、そしてより好ましくは98%の相同性を含むポリペプチド配列を有する、抗体又はその断片に関する。
【0016】
抗体は、ジスルフィド結合により相互に結合された2つの同一の重(H)鎖(全長の場合約50〜70kDa)及び2つの同一の軽(L)鎖(全長の場合約25kDa)の4つのポリペプチド鎖を含むテトラマーに対応する、免疫グロブリン分子である。軽鎖はカッパ及びラムダに分類される。重鎖はガンマ、ミュー、アルファ、デルタ、又はイプシロンに分類され、抗体のアイソタイプをそれぞれ、IgG、IgM、IgA、IgD、及びIgEと規定する。各重鎖は、N末端の重鎖可変領域(本明細書中、HCVRと略記される)及び重鎖定常領域から構成される。重鎖定常領域は、IgG、IgD、及びIgAについては3つのドメイン(CH1、CH2、及びCH3)から;IgM及びIgEについては4つのドメイン(CH1、CH2、CH3、及びCH4)から構成される。各軽鎖は、N末端の軽鎖可変領域(本明細書中、LCVRと略記される)及び軽鎖定常領域から構成される。軽鎖定常領域は1つのドメイン、CLから構成される。HCVR領域及びLCVR領域は、相補性決定領域(CDR)と称する超可変性の領域に更に細分され得るが、それらは、フレームワーク領域(FR)と称するより保存的な領域内に散在する。各HCVR及びLCVRは、3つのCDR及び4つのFRから構成され、これらは、アミノ末端からカルボキシ末端に向けて以下の順序:FRl、CDRl、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4で配置されている。各ドメインへのアミノ酸の割り当ては、周知の慣例に従う(KABAT, "Sequences of Proteins of Immunological Interest", National Institutes of Health, Bethesda, Md., 1987及びl991; CHOTHIA et al., J. Mol. Biol., vol.196, p: 901-17, 1987; CHOTHIA et al., Nature, vol.342, p: 878-83, 1989)。抗体の、特定の抗原に結合する機能的能力は、各軽鎖/重鎖ペアの可変領域に依存し、主としてCDRにより決定される。
【0017】
用語「抗体」は、本明細書で用いる場合、モノクローナル抗体自体をいう。モノクローナル抗体は、ヒト抗体、キメラ抗体及び/又はヒト化抗体であり得る。
【0018】
本明細書で用いる場合、「ポリペプチド配列Aが、Bのポリペプチド配列と少なくともX%の相同性を含む」場合、ポリペプチドAのアミノ酸配列が、Bのアミノ酸配列と少なくともX%のパーセンテージの同一性を有することを意味する。本明細書で用いる場合、2つのアミノ酸配列間の「同一性のパーセンテージ」は、最良のアラインメント(最適アラインメント)後に得られる、比較されるべき2配列間で同一のアミノ酸残基のパーセンテージを意味する。このパーセンテージは純粋に統計学的であり、2つの配列間の相違は、それらの全長にわたってランダムに分布する。2アミノ酸配列間の配列比較は、例えば、ウェブサイトhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/gorf/bl2.htmlで入手可能なBLASTプログラムにより行われ得る。用いるパラメータはデフォルトで与えられるものである(パラメータについては特に、「オープンギャップペナルティー」:5及び「エクステンションギャップペナルティー」:2、選択されるマトリクスは、例えば、プログラムにより提案される「BLOSUM 62」マトリクスであり、比較されるべき2配列間の同一性のパーセンテージは、プログラムにより直接算出される)。
【0019】
用語「断片」は、本明細書で用いる場合、CD160に結合する抗体断片をいう。例えば、CD160に結合できる抗体断片としては、Fab断片(例えば、パパイン消化による)、Fab’断片(例えば、ペプシン消化及び部分還元による)、F(ab’)2断片(例えば、ペプシン消化による)、facb断片(例えば、プラスミン消化による)、pFc’ 断片(例えば、ペプシン消化又はプラスミン消化による)、Fd断片(例えば、ペプシン消化、部分還元及び再集合による)、Fv断片又はscFv断片(例えば、分子生物学的技術による)が挙げられ、本発明により包含される。
【0020】
そのような断片は、当該技術分野で公知のとおり、及び/又は本明細書に記載のとおりの、酵素的切断の技術、合成技術又は組換え技術により製造され得る。抗体はまた、天然の終止部位の上流に1以上の終止コドンが導入された抗体遺伝子を用いて、種々の切断型で製造され得る。例えば、F(ab’)2の重鎖部分をコードする組合せ遺伝子は、重鎖のCH1ドメイン及び/又はヒンジ領域をコードするDNA配列含むよう設計され得る。抗体の種々の部分が、従来技術により化学的に結合され得るか、又は遺伝子工学的技術を用いて、連続的なタンパク質として調製され得る。
【0021】
表現「CD160に結合できる」は、CD160に対して、10-7M未満、好ましくは10-8M未満から、より好ましくは10-9M未満のKDをいう。
【0022】
適切な特異性を有する、典型的なマウス又は他の非ヒト抗体を操作することが、それらをヒト化形態へと変換するために必要なので、本発明において有用な抗体は、好ましくは組換えにより製造されるが、それが必須というわけではない。
【0023】
抗体はグリコシル化されていてもされていなくてもよいが、グリコシル化された抗体が好ましい。周知のとおり、抗体はジスルフィド結合を介して適切に架橋される。
【0024】
当該技術分野において十分理解されているとおり、適切な特異性を有するモノクローナル抗体は、それを形成、産生する哺乳動物の標準的な免疫技術により、容易に作製され得る。次いで、これらのヌクレオチド配列は、それらをヒト化形態で提供するために操作され得る。
【0025】
「キメラ抗体」により、マウス免疫グロブリン由来の可変領域及びヒト免疫グロブリンの定常領域で構成される抗体が意味される。この改変は、ヒト抗体の定常領域をマウスの定常領域と単純に置換することからなり、従って医薬的使用に許容可能となるのに、十分に低い免疫原性を有し得るヒト/マウスキメラを生じる。
【0026】
今まで、そのようなキメラ抗体の製造方法が多く報告されており、従って当業者の一般知識の一部を形成する(例えば、米国特許第5,225,539号を参照)。
【0027】
好ましい実施形態においては、前記抗体はキメラ抗体であり、軽鎖フレームワーク配列及び重鎖フレームワーク配列は、それぞれマウス免疫グロブリン軽鎖及び重鎖由来である。
【0028】
好ましくは、本発明の抗体は:
a)以下のアミノ酸配列i)〜iii):
i)軽鎖CDR1:QSISNH(配列番号1);
ii)軽鎖CDR2:YAS;
iii)軽鎖CDR3:QQSNSWPLT(配列番号2)
と少なくとも90%、好ましくは95%、そしてより好ましくは98%の相同性を有するアミノ酸配列を有する3つの軽鎖相補性領域(CDR);及び
免疫グロブリン軽鎖由来の軽鎖フレームワーク配列を含む軽鎖;及び
b)以下のアミノ酸配列i)〜iii):
i)重鎖CDR1:GYTFTDYW(配列番号3);
ii)重鎖CDR2:IYPGDDDA(配列番号4);
iii)重鎖CDR3:ARRGIAAVVGGFDY(配列番号5)
と少なくとも90%、好ましくは95%、そしてより好ましくは98%の相同性を有するアミノ酸配列を有する3つの重鎖相補性領域(CDR);及び
免疫グロブリン重鎖由来の重鎖フレームワーク配列を含む重鎖
を含む。
【0029】
この好ましい実施形態の特定の実施形態においては、前記抗体は、図2に示される配列番号8のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(LCVR)を含む。好ましくは、前記抗体は、図2に示される配列番号9の核酸配列によりコードされる軽鎖可変領域(LCVR)を含む。
【0030】
好都合には、前記抗体は、図7aに示される配列番号18のアミノ酸配列又は図7bに示される配列番号28のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(LCVR)を含む。好ましくは、前記抗体は、図7aに示される配列番号19の核酸配列又は図7bに示される配列番号29の核酸配列によりコードされる軽鎖可変領域(LCVR)を含む。
【0031】
この好ましい実施形態の別の特定の実施形態においては、前記抗体は、図1に示される配列番号6のアミノ酸配列を伴う重鎖可変領域(HCVR)を含む。好ましくは、前記抗体は、図1に示される配列番号7の核酸配列によりコードされる重鎖可変領域(HCVR)を含む。
【0032】
好都合には、前記抗体は、図8に示される配列番号20のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域(HCVR)を含む。好ましくは、前記抗体は、図8に示される配列番号21の核酸配列によりコードされる重鎖可変領域(HCVR)を含む。
【0033】
この好ましい実施形態のなお別の特定の実施形態においては、前記抗体は、ヒト軽鎖及びヒト重鎖由来の定常領域を更に含む。
【0034】
好都合には、前記抗体は:
a)
・追加的システイン及び終止コドンの挿入を含む、図3に示されるヒト免疫グロブリンガンマ1重鎖の組換え定常領域(配列番号10);
・図4に示されるヒト免疫グロブリンガンマ1重鎖の組換え定常領域(配列番号12);及び
・図5に示されるヒト免疫グロブリンガンマ4重鎖の組換え定常領域(配列番号14);
を含む群において選択されるヒト重鎖由来の定常領域を含む。
【0035】
また好都合には、前記抗体は、図6に示されるヒト免疫グロブリンカッパのヒト軽鎖由来の定常領域(配列番号16)を含む。
【0036】
そうであっても、マウス抗体、また時にはキメラ抗体は、ヒト宿主により異物と認識され、いわゆる「ヒト抗マウス抗体」反応すなわち「HAMA」反応を引き起こす。
【0037】
用語「ヒト化抗体」は、ヒト被験体へのマウス可変配列の投与の後に、その免疫原性を低減するために、該マウス可変配列の1以上のアミノ酸が、ヒト可変配列ホモログの対応する1以上のアミノ酸で置換された抗体に関する。抗体の可変領域のこのヒト化、そして結果的にはCDRのこのヒト化は、今や当該技術分野において周知である技術によりなされる。
【0038】
今まで、そのようなヒト化抗体の製造方法が多く報告されており、従って当業者の一般知識の一部を形成する。
【0039】
1例として、英国特許出願公開第GB2188638A号及び米国特許第5,585,089号には、置換される抗体のほんの1部が相補性決定領域、即ち「CDR」である、組換え抗体が製造される過程が開示されている。CDRグラフティング技術は、マウスCDR、及びヒト可変領域フレームワーク領域及びヒト定常領域からなる抗体の作製に用いられている(例えば、RIECHMANN et al., Nature , vol.332, p: 323-327, 1988を参照)。これらの抗体は、Fc依存性エフェクター機能に必要であるが、HAMA反応を引き起こすとはまず考えられないヒト定常領域を保持する。
【0040】
他の例としては、可変領域のフレームワーク領域は、非ヒトCDRを実質的に無傷なまま残すか、又はCDRをヒトゲノム由来の配列と置換さえして、対応するヒトフレームワーク領域と置換される(例えば、米国特許出願公開番号第2006/258852号を参照)。免疫系がヒト免疫系に対応するよう改変された、遺伝的に改変されたマウスにおいて、完全なヒト抗体が産生される。上述のとおり、単鎖形態を示す断片を含む、免疫学的に特異的な抗体断片を採用することが、本発明の方法における使用には十分である。
【0041】
また、ヒト化抗体とは、ヒトフレームワーク、非ヒト抗体由来の少なくとも1種のCDRを含み、且つ存在する任意の定常領域がヒト免疫グロブリン定常領域と実質的に同一、即ち少なくとも約85又は90%、好ましくは少なくとも95%同一である抗体をいう。従って、おそらくCDRを除く、ヒト化抗体の全ての部分が、1以上のヒトのネイティブ免疫グロブリン配列の対応部分と実質的に同一である。例えば、ヒト化免疫グロブリンは、典型的には、マウス可変領域/ヒト定常領域のキメラ抗体を包含しない。
【0042】
ヒトの治療における使用について、ヒト化抗体は、非ヒト抗体及びキメラ抗体に対して、少なくとも3つの潜在的な利点を有する:
【0043】
1)エフェクター部分がヒトのものなので、ヒト免疫系の他の部分とよりよく相互作用し得る(例えば、補体依存性細胞傷害(CDC)及び抗体依存性細胞傷害(ADCC)により、標的細胞をより効率的に破壊する)。
【0044】
2)ヒト免疫系はヒト化抗体のフレームワーク領域又はC領域を異物と認識しないはずであり、従ってそのような注入抗体に対する抗体反応は、完全に異物の非ヒト抗体又は一部異物のキメラ抗体に対するものよりも小さいはずである。
【0045】
3)ヒト循環における、注入された非ヒト抗体の半減期は、ヒト抗体の半減期よりもずっと短いと報告されている。注入されたヒト化抗体の半減期は、天然に存在するヒト抗体の半減期と本質的に同一であり、より少量且つより低頻度の投与用量を可能にするであろう。
【0046】
1例として、ヒト化免疫グロブリンの設計は以下のように行われ得る:アミノ酸が以下のカテゴリーに分類される場合、用いられるヒト免疫グロブリン(アクセプター免疫グロブリン)のフレームワークのアミノ酸は、CDRを提供する非ヒト免疫グロブリン(ドナー免疫グロブリン)由来フレームワークのアミノ酸と置換される:(a)アクセプター免疫グロブリンのヒトフレームワーク領域におけるアミノ酸は、その位置ではヒト免疫グロブリンにとって普通でないが、ドナー免疫グロブリンにおける対応するアミノ酸は、その位置ではヒト免疫グロブリンにとって典型的なものである;(b)該アミノ酸の位置は、CDRのうちの1つに直接隣接する;又は(c)3次元免疫グロブリンモデルにおいて、フレームワークのアミノ酸の任意の側鎖原子は、CDRのアミノ酸の任意の原子の、約5〜6オングストローム内(中心から中心)にある(QUEEN et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, vol.88, p:2869, 1991)。アクセプター免疫グロブリンのヒトフレームワーク領域における各アミノ酸及びドナー免疫グロブリンにおける対応するアミノ酸が、その位置ではヒト免疫グロブリンにとって普通でない場合、そのようなアミノ酸は、その位置でヒト免疫グロブリンにとって典型的なアミノ酸により置換される。
【0047】
別の好ましい実施形態においては、前記抗体はヒト化抗体であり、軽鎖フレームワーク配列及び重鎖フレームワーク配列はそれぞれ、ヒト化免疫グロブリン軽鎖及びヒト化免疫グロブリン重鎖由来である。
【0048】
本発明のヒト化抗体の好ましい軽鎖可変領域(LCVR)は、配列番号8と、少なくとも1アミノ酸が相違するアミノ酸配列を有する。より好ましくは、本発明のヒト化抗体の軽鎖可変領域(LCVR)は、配列番号25のアミノ酸配列を有し、該配列番号25のアミノ酸配列は、配列番号8と、少なくとも1アミノ酸が相違する。
【0049】
このヒト化配列は、潜在的な免疫原性を低減するために、ヒト免疫グロブリンカッパ可変軽鎖(配列番号22;アクセッション番号AAZ09098)との比較後に1以上のアミノ酸置換がフレームワーク中に導入された抗CD160マウス可変軽鎖に相当する。
【0050】
本発明のヒト化抗体の好ましい重鎖可変領域(HCVR)は、配列番号6と、少なくとも1アミノ酸が相違するアミノ酸配列を有する。より好ましくは、本発明のヒト化抗体の重鎖可変領域(HCVR)は、配列番号26のアミノ酸配列を有し、該配列番号26のアミノ酸配列は、配列番号6と、少なくとも1アミノ酸が相違する。
【0051】
このヒト化配列は、潜在的な免疫原性を低減するために、ヒト免疫グロブリン可変重鎖の配列番号23(アクセッション番号3FCTB)及び配列番号24(アクセッション番号AAG00910)との比較後に1以上のアミノ酸置換がフレームワーク中に導入された抗CD160マウス可変重鎖に相当する。
【0052】
好ましくは、前記ヒト化抗体は、ヒト軽鎖及びヒト重鎖由来の定常領域を更に含む。1例として、前記ヒト化抗体は、以前に記載のとおりの、ヒト軽鎖及びヒト重鎖由来の定常領域を更に含む。
【0053】
他の配列が、本発明のヒト化抗体用の軽鎖及び重鎖の代わりになり得る。免疫グロブリンは2組の軽鎖/重鎖複合体を有し得、少なくとも1の鎖が、ヒトのフレームワーク領域部分に機能的に結合した1以上のマウスの相補性決定領域を含む。
【0054】
第二の態様によれば、本発明は、診断及び/又は予後及び/又は治療における使用のための、以前に記載のとおりの少なくとも1種の抗CD160抗体又はその断片及び医薬的に許容可能な担体を含む医薬組成物に関する。
【0055】
前記組成物は血管形成の阻害、血管系の病状の治療、及び好ましくは腫瘍進行の阻害に特に有用である。
【0056】
前記組成物は、溶液、懸濁液、凍結乾燥粉末、カプセル及び錠剤が挙げられるがこれらに限定されない、患者への投与に好適な任意の医薬形態であり得る。
【0057】
本発明の医薬組成物は、医薬的に許容可能な任意の希釈剤、賦形剤又は補助剤を更に含んでもよい。
【0058】
本発明の医薬組成物は、注射(例、局所注射)用、経粘膜投与用、吸入用、経口投与用並びにより一般的には、当業者が、望まれる予後及び/又は診断及び/又は治療を達成するのに適切だと見出した任意の製剤に製剤化され得る。
【0059】
本発明の抗CD160抗体は、該医薬組成物中に、意図する目的を達成するのに有効な量で含有され、且つ選択された投与経路に好適な用量で含有される。
【0060】
より具体的には、治療有効用量は、治療されている被験体の疾患又は状態の兆候を予防、緩和又は改善するか、或いは該疾患又は状態を阻止するのに有効な化合物量を意味する。
【0061】
本発明の抗CD160抗体は、対象とする用途に応じて、追加の構成成分を更に含んでもよい。
【0062】
例えば、本発明の抗CD160抗体が予後又は診断を目的とする場合、該抗体は、蛍光色素、或いは酵素活性又は放射活性を有する実体、及びより一般的には該化合物の検出を可能にする任意の実体等の検出可能な標識を更に含んでもよい。或いは、本発明の抗CD160抗体は、当然ながら、抗血管形成部位の検出に用いられてもよい。
【0063】
従って、本発明は、抗血管形成部位の検出を意図した、本発明の少なくとも1種の抗CD160抗体を含む医薬組成物又はキットにも関する。
【0064】
本発明の抗CD160抗体が、それを必要とする生物への治療的投与を意図する場合、該組成物は、免疫毒素及び/又は放射性元素を更に含んでもよい。
【0065】
本発明の第3の態様は、血管形成の阻害方法であって、以前に記載のとおりの少なくとも1種の抗CD160抗体又はその断片を含む、本明細書中に記載のとおりの医薬組成物を、それを必要とする患者に提供することを含む方法に関する。
【0066】
本明細書で用いる場合、用語「患者」は哺乳動物、好ましくはヒトをいう。
【0067】
好ましくは、それを必要とする患者は、血管形成過程に関与する内皮細胞の増殖に関連する病状に罹患している患者に相当する。
【0068】
そのような病状の例としては、癌(例、腫瘍の血管新生)、網膜症(例、糖尿病性網膜症)、関節リウマチ、角膜又は腎臓等の慢性移植片拒絶、異種移植において観察される急性移植片拒絶、血管腫、カポジ肉腫又はキャッスルマン(Castelman)症候群等の血管肉腫、アテローム性動脈硬化症、新血管形成に関連する子宮内膜症、或いは瘢痕形成に起因する組織過剰生成が挙げられる。
【0069】
本発明の第4の態様は、血管形成過程に関与する内皮細胞の増殖に関連する病状を治療及び/又は予防するための医薬の調製のための、以前に記載のとおりの少なくとも1種の抗CD160抗体又はその断片の使用に関する。
【0070】
そのような病状は、癌(例、腫瘍の血管新生)、網膜症(例、糖尿病性網膜症)、関節リウマチ、角膜又は腎臓等の慢性移植片拒絶、異種移植において観察される急性移植片拒絶、血管腫、カポジ肉腫又はキャッスルマン(Castelman)症候群等の血管肉腫、アテローム性動脈硬化症、新血管形成に関連する子宮内膜症、或いは瘢痕形成に起因する組織過剰生成を含む群において選択される。
【0071】
本発明の他の実施形態及び利点を、以下の非限定的実施例において説明する。
【実施例】
【0072】
実施例
1)mAbの製造及び精製:
mAbは、GSTとCD-160(配列番号27;アクセッション番号CAG46665)との融合タンパク質でBALB/Cマウスを免疫することにより取得する。細胞融合はGOUTTEFANGEAS et al.(Eur. J. Immunol., vol.22, p:2681-5, 1992)に記載のとおり、NS1と行う。
【0073】
スクリーニングは2段階で行う。間接免疫蛍光染色及びフローサイトメトリー解析の後、CD160-GST融合タンパク質と反応するハイブリドーマ上清をすべて保持する。選択したmAbを含有する培養物を、限界希釈により2回クローニングする。
【0074】
2)血管形成阻害活性についてのスクリーニング:
Growth reduced Matrigel (BD BIOSCIENCES)をコラーゲン(1/6 v/v)中で希釈し、氷上に保つ。この溶液160μlを、ラット尾部のI型コラーゲンでプレコーティングした8ウェル培養スライドの各ウェルに加え、37℃で1時間放置する。ゲル形成の後、コントロール、FGF-2、sHLA-G1又はハイブリドーマ上清と混合するか、又は混合しないで、HUVEC懸濁液を加湿5%CO2インキュベータ中、Matrigel/コラーゲンゲル上に37℃で24時間、播種する。
【0075】
血管形成は、RUGGERI et al.(Cancer Res., vol.63(18), p:5978-91, 2003)に記載のとおりに定量する。
【0076】
簡単に言うと、培養培地を除去し、細胞をPBSで2回リンスし、4%PFA溶液中、室温で30分間固定する。次いで、細胞をPBSで2回洗浄し、マッソン3色染色法で染色する。自動コンピュータ支援画像解析システム(Imagenia, Biocom, Les Ulis, France)を用いて微小毛細血管ネットワークの広がりを測定し、各ウェルにおける毛細血管の全長を決定する。各実験条件について、平均微小毛細血管ネットワーク長(μm)を算出する。実験は3連で行い、3回繰り返す。
【0077】
驚くべきことに、全てのハイブリドーマ上清中、1の上清が、FGF-2媒介性の小血管成長の阻害をもたらす。このことは、この特定の上清の抗体が、血管形成を阻害できることを証明する。
【0078】
3)抗血管形成特性を有する抗CD160抗体の可変領域のクローニング:
血管形成を阻害する抗体を産生する、特定のハイブリドーマを単離する。RNeasy キット(QIAGEN)により、製造業者の指示書に従って、前記ハイブリドーマ細胞から全RNAを抽出した。
【0079】
カッパ軽鎖由来及びガンマ可変鎖由来の定常領域それぞれの特異的なプライマーを用い、CARDES et al.(FEBS letters, vol.452, p:386-94, 1999)に記載のとおり、50μgの全RNA。次いで、目的の免疫グロブリン可変領域のスクリーニング及び単離のためにCHARDES et al. (1999,上述)に記載されたプロトコールを用いた。
【0080】
このスクリーニングは、目的の免疫グロブリンの軽鎖可変領域及び重鎖可変領域の同定を可能にした(図1及び図2)。
【0081】
フレームワーク領域(FR)及びCDRの位置を同定するために、これらの配列を、IMGT/V-QUESTサイト(http://imgt.cines.fr/IMGT_vquest/share/textes/index.html)上で他の免疫グロブリンとのアラインメントにより解析した。
【0082】
可変重鎖及び可変軽鎖について同定されたとおりのCDR位置を図1及び図2にそれぞれ示す。
【0083】
4)抗血管形成特性を有する抗CD160抗体の可変領域のヒト化:
免疫のために、同定した可変領域を、該可変領域と最大の相同性を有するヒト免疫グロブリンと整列させる。
【0084】
マウスの可変軽鎖、配列番号8と最大の相同性を有するヒト免疫グロブリン(配列番号22;アクセッション番号AAZ09098)を図9に示す。
【0085】
マウスの可変軽鎖をヒト化するために、このアラインメントを考慮して、複数の置換を試験する。試験する置換は以下:
*位置17 (配列番号8の): N -> E;
*位置18: S -> R
*位置19: V - >A
*位置41: H -> G
*位置53: Q -> N
*位置80: T -> P
*位置84: G -> A
*位置100: A -> G
である。
【0086】
マウス可変重鎖、配列番号1と最大の相同性を有するヒト免疫グロブリン(配列番号23及び配列番号24;アクセッション番号はそれぞれ3FCTB及びAAG00910)をそれぞれ図10及び図11に示す。
【0087】
マウスの可変重鎖をヒト化するために、このアラインメントを考慮して、複数の置換を試験する。試験する置換は以下:
*位置3 (配列番号6の): H -> Q;
*位置35: Q -> H
*位置87: A - >T
である。
【0088】
5)キメラ抗体の構築:
ヒト化された又はされていない、可変重鎖及び可変軽鎖の配列を、シグナルペプチド並びにLEUNG et al.,(Hybridoma, vol.13(6), p:469-76, 1994)に記載されたような、それらのそれぞれのヒトカッパ定常領域及びヒトIgG1又はIgG4の定常領域と結合させる。
【0089】
これらの抗体の抗血管形成活性は、以前に記載のとおりに試験する(2を参照)。
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、新規の抗CD160モノクローナル抗体、特にマウス-ヒトキメラの抗CD160抗体を提供する。抗CD160抗体及びそれを含有する医薬組成物は、血管形成阻害に有用である。
【背景技術】
【0002】
背景技術
NK細胞の主要なエフェクター機能は、感受性標的細胞に対する細胞溶解活性並びにサイトカイン及びケモカインの産生により特徴付けられる。NK細胞は、種々の活性化受容体の特異的な関与を通して、健康な細胞と、異常な腫瘍細胞又はウイルスが感染した細胞とを区別する。たいていのNK細胞活性化受容体は、そのシグナル伝達が媒介する関連分子により3つのグループに分けることができる。しかし、独特で特徴のあるNK細胞活性化受容体、CD160が同定されており、これはMHCクラスI依存性の免疫グロブリン(Ig)様分子である。
【0003】
CD160は、NK CD56dim+CD16+、たいていのTCRγδT細胞、及び細胞傷害性エフェクターTCRαβCD8T細胞のような、ヒト及びマウスの循環している細胞傷害性リンパ球で発現しており、またほぼ全ての腸上皮内リンパ球(iIEL)でも発現している(MAIZA et al., J. Exp. Med., vol. 178, p: 1124-6, 1993; ANUMANTHAN et al., J. Immunol., vol.161, p:2780-90, 1998)。
【0004】
最後に、CD160は、これまでに記載された他の活性化受容体と比較すると、以下の独特な特徴:1)CD160はNK遺伝子複合体の外側の第1染色体上の遺伝子にコードされている、2)マルチマーのグリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカー分子である、3)細胞表面でのその発現は、活性化後に下方制御される、を示す。
【0005】
血管形成は、それによって既存の血管から新たな毛細血管が形成される、基本的な過程である。この過程は、生殖、分化、瘢痕形成、及び器官再生等の多くの正常な生理学的現象において不可欠である。
【0006】
これらの正常な生物学的現象において、血管形成は厳密な制御下にある。即ち、それは数日といった短期の間誘発され、次いで完全に阻害される。しかしながら、多くの病状が、侵入性で非制御的な血管形成と関係する。例えば、関節炎は、侵入性の新生血管により軟骨に引き起こされる損傷により引き起こされる病状である。糖尿病性網膜症においては、新生血管による網膜の侵入で患者が盲目となってしまう;目の器官の新血管形成は盲目の主要な原因であり、この新血管形成は、少なくとも20の眼疾患を支配する。最後に、多くの腫瘍の増殖及び転移は、血管形成に直接的に依存する。腫瘍は、自ら使用するために新生血管の成長を刺激する。更に、これらの新生血管は、腫瘍が血液循環系に到達できる逃避経路を提供し、肝臓、肺又は骨等の遠隔部位で転移を引き起こす。
【0007】
最近、CD160は血管形成に対して阻害的なシグナル伝達受容体として同定された(FONS et al., Blood, vol.108(8), p: 2608-15, 2006)。
【0008】
ABTECH及びINSERMの名におけるWO 03/018048は、血管形成を阻害するための、CD160に結合する2つの可溶性HLAクラスI分子、即ちsHLA-G1及びsHLA-B7の使用に関する。
【0009】
INSERMの名におけるWO 2006/015886は、内皮細胞上のVEGF又はFGF2等の血管形成促進因子により誘導される血管形成及び血管成長を阻害するための、抗CD160モノクローナル抗体の使用に関する。
【発明の概要】
【0010】
発明の要旨
本発明は、CD160に結合できる抗体又はその断片であって、
a)以下のアミノ酸配列:
i)軽鎖CDR1:QSISNH(配列番号1);
ii)軽鎖CDR2:YAS;
iii)軽鎖CDR3:QQSNSWPLT(配列番号2)
を有する3つの軽鎖相補性領域(CDR);及び
免疫グロブリン軽鎖由来の軽鎖フレームワーク配列を含む軽鎖;及び
b)以下のアミノ酸配列:
i)重鎖CDR1:GYTFTDYW(配列番号3);
ii)重鎖CDR2:IYPGDDDA(配列番号4);
iii)重鎖CDR3:ARRGIAAVVGGFDY(配列番号5)
を有する3つの重鎖相補性領域(CDR);及び
免疫グロブリン重鎖由来の重鎖フレームワーク配列を含む重鎖
を含む抗体のポリペプチド配列と少なくとも90%の相同性を含むポリペプチド配列を有する、抗体又はその断片に関する。
【0011】
本発明はまた、少なくとも1種のそのような抗CD160抗体又はその断片、及び医薬的に許容可能な担体を含む、医薬組成物に関する。
【0012】
更に、本発明は、必要とする患者にそのような医薬組成物を提供することを含む、血管形成の阻害方法に関する。
【0013】
最後に、本発明は、血管形成過程に関与する内皮細胞の増殖に関連する病状を治療及び/又は予防するための医薬の調製のための、少なくとも1種のそのような抗CD160抗体又はその断片の使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】マウスCD160抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列(配列番号6)及びヌクレオチド配列(配列番号7)。
【図2】マウスCD160抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列(配列番号8)及びヌクレオチド配列(配列番号9)。
【図3】ヒト免疫グロブリンガンマ1重鎖の定常領域から、追加的システイン及び終止コドンの挿入によって得られたアミノ酸配列(配列番号10)及びヌクレオチド配列(配列番号11)。
【図4】ヒト免疫グロブリンガンマ1重鎖の定常領域のアミノ酸配列(配列番号12)及びヌクレオチド配列(配列番号13)。クローニングサイト(Nhe I)を作製するため、最初のAGCコドンはGCTに変更された。
【図5】ヒト免疫グロブリンガンマ4重鎖の定常領域のアミノ酸配列(配列番号14)及びヌクレオチド配列(配列番号15)。クローニングサイト(Nhe I)を作製するため、最初のAGCコドンはGCTに変更された。
【図6】ヒト免疫グロブリンカッパ軽鎖の定常領域のアミノ酸配列(配列番号16)及びヌクレオチド配列(配列番号17)。
【図7a】a)ヒトVLシグナルペプチド(影つき(shared))を含むマウスCD160抗体の組換え軽鎖可変領域のアミノ酸配列(配列番号18)及びヌクレオチド配列(配列番号19)。b)ヒトVLシグナルペプチド(影つき)を含むマウスCD160抗体の組換え軽鎖可変領域のアミノ酸配列(配列番号28)及びヌクレオチド配列(配列番号29)。
【図7b】a)ヒトVLシグナルペプチド(影つき(shared))を含むマウスCD160抗体の組換え軽鎖可変領域のアミノ酸配列(配列番号18)及びヌクレオチド配列(配列番号19)。b)ヒトVLシグナルペプチド(影つき)を含むマウスCD160抗体の組換え軽鎖可変領域のアミノ酸配列(配列番号28)及びヌクレオチド配列(配列番号29)。
【図8】ヒトVHシグナルペプチド(影つき)を含むマウスCD160抗体の組換え重鎖可変領域のアミノ酸配列(配列番号20)及びヌクレオチド配列(配列番号21)。
【図9】マウス可変軽鎖のアミノ酸配列(配列番号8)と、最大相同性を有するヒト免疫グロブリンのアミノ酸配列(配列番号22;アクセッション番号AAZ09098)とのアラインメント。CDR領域が同定されている(影つき)。
【図10】マウス可変重鎖のアミノ酸配列(配列番号6)と、最大相同性を有するヒト免疫グロブリンの1つのアミノ酸配列(配列番号23;アクセッション番号3FCTB)とのアラインメント。CDR領域が同定されている(影つき)。
【図11】マウス可変重鎖のアミノ酸配列(配列番号6)と、最大相同性を有するヒト免疫グロブリンの1つのアミノ酸配列(配列番号24;アクセッション番号AAG00910)とのアラインメント。CDR領域が同定されている(影つき)。
【発明を実施するための形態】
【0015】
詳細な説明
第1の態様においては、本発明は、CD160に結合できる抗体又はその断片であって、該抗体が、
a)以下のアミノ酸配列:
i)軽鎖CDR1:QSISNH(配列番号1);
ii)軽鎖CDR2:YAS;
iii)軽鎖CDR3:QQSNSWPLT(配列番号2)
を有する3つの軽鎖相補性領域(CDR);及び
免疫グロブリン軽鎖由来の軽鎖フレームワーク配列を含む軽鎖;及び
b)以下のアミノ酸配列:
i)重鎖CDR1:GYTFTDYW(配列番号3);
ii)重鎖CDR2:IYPGDDDA(配列番号4);
iii)重鎖CDR3:ARRGIAAVVGGFDY(配列番号5)
を有する3つの重鎖相補性領域(CDR);及び
免疫グロブリン重鎖由来の重鎖フレームワーク配列を含む重鎖
を含む抗体のポリペプチド配列と少なくとも90%、好ましくは95%、そしてより好ましくは98%の相同性を含むポリペプチド配列を有する、抗体又はその断片に関する。
【0016】
抗体は、ジスルフィド結合により相互に結合された2つの同一の重(H)鎖(全長の場合約50〜70kDa)及び2つの同一の軽(L)鎖(全長の場合約25kDa)の4つのポリペプチド鎖を含むテトラマーに対応する、免疫グロブリン分子である。軽鎖はカッパ及びラムダに分類される。重鎖はガンマ、ミュー、アルファ、デルタ、又はイプシロンに分類され、抗体のアイソタイプをそれぞれ、IgG、IgM、IgA、IgD、及びIgEと規定する。各重鎖は、N末端の重鎖可変領域(本明細書中、HCVRと略記される)及び重鎖定常領域から構成される。重鎖定常領域は、IgG、IgD、及びIgAについては3つのドメイン(CH1、CH2、及びCH3)から;IgM及びIgEについては4つのドメイン(CH1、CH2、CH3、及びCH4)から構成される。各軽鎖は、N末端の軽鎖可変領域(本明細書中、LCVRと略記される)及び軽鎖定常領域から構成される。軽鎖定常領域は1つのドメイン、CLから構成される。HCVR領域及びLCVR領域は、相補性決定領域(CDR)と称する超可変性の領域に更に細分され得るが、それらは、フレームワーク領域(FR)と称するより保存的な領域内に散在する。各HCVR及びLCVRは、3つのCDR及び4つのFRから構成され、これらは、アミノ末端からカルボキシ末端に向けて以下の順序:FRl、CDRl、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4で配置されている。各ドメインへのアミノ酸の割り当ては、周知の慣例に従う(KABAT, "Sequences of Proteins of Immunological Interest", National Institutes of Health, Bethesda, Md., 1987及びl991; CHOTHIA et al., J. Mol. Biol., vol.196, p: 901-17, 1987; CHOTHIA et al., Nature, vol.342, p: 878-83, 1989)。抗体の、特定の抗原に結合する機能的能力は、各軽鎖/重鎖ペアの可変領域に依存し、主としてCDRにより決定される。
【0017】
用語「抗体」は、本明細書で用いる場合、モノクローナル抗体自体をいう。モノクローナル抗体は、ヒト抗体、キメラ抗体及び/又はヒト化抗体であり得る。
【0018】
本明細書で用いる場合、「ポリペプチド配列Aが、Bのポリペプチド配列と少なくともX%の相同性を含む」場合、ポリペプチドAのアミノ酸配列が、Bのアミノ酸配列と少なくともX%のパーセンテージの同一性を有することを意味する。本明細書で用いる場合、2つのアミノ酸配列間の「同一性のパーセンテージ」は、最良のアラインメント(最適アラインメント)後に得られる、比較されるべき2配列間で同一のアミノ酸残基のパーセンテージを意味する。このパーセンテージは純粋に統計学的であり、2つの配列間の相違は、それらの全長にわたってランダムに分布する。2アミノ酸配列間の配列比較は、例えば、ウェブサイトhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/gorf/bl2.htmlで入手可能なBLASTプログラムにより行われ得る。用いるパラメータはデフォルトで与えられるものである(パラメータについては特に、「オープンギャップペナルティー」:5及び「エクステンションギャップペナルティー」:2、選択されるマトリクスは、例えば、プログラムにより提案される「BLOSUM 62」マトリクスであり、比較されるべき2配列間の同一性のパーセンテージは、プログラムにより直接算出される)。
【0019】
用語「断片」は、本明細書で用いる場合、CD160に結合する抗体断片をいう。例えば、CD160に結合できる抗体断片としては、Fab断片(例えば、パパイン消化による)、Fab’断片(例えば、ペプシン消化及び部分還元による)、F(ab’)2断片(例えば、ペプシン消化による)、facb断片(例えば、プラスミン消化による)、pFc’ 断片(例えば、ペプシン消化又はプラスミン消化による)、Fd断片(例えば、ペプシン消化、部分還元及び再集合による)、Fv断片又はscFv断片(例えば、分子生物学的技術による)が挙げられ、本発明により包含される。
【0020】
そのような断片は、当該技術分野で公知のとおり、及び/又は本明細書に記載のとおりの、酵素的切断の技術、合成技術又は組換え技術により製造され得る。抗体はまた、天然の終止部位の上流に1以上の終止コドンが導入された抗体遺伝子を用いて、種々の切断型で製造され得る。例えば、F(ab’)2の重鎖部分をコードする組合せ遺伝子は、重鎖のCH1ドメイン及び/又はヒンジ領域をコードするDNA配列含むよう設計され得る。抗体の種々の部分が、従来技術により化学的に結合され得るか、又は遺伝子工学的技術を用いて、連続的なタンパク質として調製され得る。
【0021】
表現「CD160に結合できる」は、CD160に対して、10-7M未満、好ましくは10-8M未満から、より好ましくは10-9M未満のKDをいう。
【0022】
適切な特異性を有する、典型的なマウス又は他の非ヒト抗体を操作することが、それらをヒト化形態へと変換するために必要なので、本発明において有用な抗体は、好ましくは組換えにより製造されるが、それが必須というわけではない。
【0023】
抗体はグリコシル化されていてもされていなくてもよいが、グリコシル化された抗体が好ましい。周知のとおり、抗体はジスルフィド結合を介して適切に架橋される。
【0024】
当該技術分野において十分理解されているとおり、適切な特異性を有するモノクローナル抗体は、それを形成、産生する哺乳動物の標準的な免疫技術により、容易に作製され得る。次いで、これらのヌクレオチド配列は、それらをヒト化形態で提供するために操作され得る。
【0025】
「キメラ抗体」により、マウス免疫グロブリン由来の可変領域及びヒト免疫グロブリンの定常領域で構成される抗体が意味される。この改変は、ヒト抗体の定常領域をマウスの定常領域と単純に置換することからなり、従って医薬的使用に許容可能となるのに、十分に低い免疫原性を有し得るヒト/マウスキメラを生じる。
【0026】
今まで、そのようなキメラ抗体の製造方法が多く報告されており、従って当業者の一般知識の一部を形成する(例えば、米国特許第5,225,539号を参照)。
【0027】
好ましい実施形態においては、前記抗体はキメラ抗体であり、軽鎖フレームワーク配列及び重鎖フレームワーク配列は、それぞれマウス免疫グロブリン軽鎖及び重鎖由来である。
【0028】
好ましくは、本発明の抗体は:
a)以下のアミノ酸配列i)〜iii):
i)軽鎖CDR1:QSISNH(配列番号1);
ii)軽鎖CDR2:YAS;
iii)軽鎖CDR3:QQSNSWPLT(配列番号2)
と少なくとも90%、好ましくは95%、そしてより好ましくは98%の相同性を有するアミノ酸配列を有する3つの軽鎖相補性領域(CDR);及び
免疫グロブリン軽鎖由来の軽鎖フレームワーク配列を含む軽鎖;及び
b)以下のアミノ酸配列i)〜iii):
i)重鎖CDR1:GYTFTDYW(配列番号3);
ii)重鎖CDR2:IYPGDDDA(配列番号4);
iii)重鎖CDR3:ARRGIAAVVGGFDY(配列番号5)
と少なくとも90%、好ましくは95%、そしてより好ましくは98%の相同性を有するアミノ酸配列を有する3つの重鎖相補性領域(CDR);及び
免疫グロブリン重鎖由来の重鎖フレームワーク配列を含む重鎖
を含む。
【0029】
この好ましい実施形態の特定の実施形態においては、前記抗体は、図2に示される配列番号8のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(LCVR)を含む。好ましくは、前記抗体は、図2に示される配列番号9の核酸配列によりコードされる軽鎖可変領域(LCVR)を含む。
【0030】
好都合には、前記抗体は、図7aに示される配列番号18のアミノ酸配列又は図7bに示される配列番号28のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(LCVR)を含む。好ましくは、前記抗体は、図7aに示される配列番号19の核酸配列又は図7bに示される配列番号29の核酸配列によりコードされる軽鎖可変領域(LCVR)を含む。
【0031】
この好ましい実施形態の別の特定の実施形態においては、前記抗体は、図1に示される配列番号6のアミノ酸配列を伴う重鎖可変領域(HCVR)を含む。好ましくは、前記抗体は、図1に示される配列番号7の核酸配列によりコードされる重鎖可変領域(HCVR)を含む。
【0032】
好都合には、前記抗体は、図8に示される配列番号20のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域(HCVR)を含む。好ましくは、前記抗体は、図8に示される配列番号21の核酸配列によりコードされる重鎖可変領域(HCVR)を含む。
【0033】
この好ましい実施形態のなお別の特定の実施形態においては、前記抗体は、ヒト軽鎖及びヒト重鎖由来の定常領域を更に含む。
【0034】
好都合には、前記抗体は:
a)
・追加的システイン及び終止コドンの挿入を含む、図3に示されるヒト免疫グロブリンガンマ1重鎖の組換え定常領域(配列番号10);
・図4に示されるヒト免疫グロブリンガンマ1重鎖の組換え定常領域(配列番号12);及び
・図5に示されるヒト免疫グロブリンガンマ4重鎖の組換え定常領域(配列番号14);
を含む群において選択されるヒト重鎖由来の定常領域を含む。
【0035】
また好都合には、前記抗体は、図6に示されるヒト免疫グロブリンカッパのヒト軽鎖由来の定常領域(配列番号16)を含む。
【0036】
そうであっても、マウス抗体、また時にはキメラ抗体は、ヒト宿主により異物と認識され、いわゆる「ヒト抗マウス抗体」反応すなわち「HAMA」反応を引き起こす。
【0037】
用語「ヒト化抗体」は、ヒト被験体へのマウス可変配列の投与の後に、その免疫原性を低減するために、該マウス可変配列の1以上のアミノ酸が、ヒト可変配列ホモログの対応する1以上のアミノ酸で置換された抗体に関する。抗体の可変領域のこのヒト化、そして結果的にはCDRのこのヒト化は、今や当該技術分野において周知である技術によりなされる。
【0038】
今まで、そのようなヒト化抗体の製造方法が多く報告されており、従って当業者の一般知識の一部を形成する。
【0039】
1例として、英国特許出願公開第GB2188638A号及び米国特許第5,585,089号には、置換される抗体のほんの1部が相補性決定領域、即ち「CDR」である、組換え抗体が製造される過程が開示されている。CDRグラフティング技術は、マウスCDR、及びヒト可変領域フレームワーク領域及びヒト定常領域からなる抗体の作製に用いられている(例えば、RIECHMANN et al., Nature , vol.332, p: 323-327, 1988を参照)。これらの抗体は、Fc依存性エフェクター機能に必要であるが、HAMA反応を引き起こすとはまず考えられないヒト定常領域を保持する。
【0040】
他の例としては、可変領域のフレームワーク領域は、非ヒトCDRを実質的に無傷なまま残すか、又はCDRをヒトゲノム由来の配列と置換さえして、対応するヒトフレームワーク領域と置換される(例えば、米国特許出願公開番号第2006/258852号を参照)。免疫系がヒト免疫系に対応するよう改変された、遺伝的に改変されたマウスにおいて、完全なヒト抗体が産生される。上述のとおり、単鎖形態を示す断片を含む、免疫学的に特異的な抗体断片を採用することが、本発明の方法における使用には十分である。
【0041】
また、ヒト化抗体とは、ヒトフレームワーク、非ヒト抗体由来の少なくとも1種のCDRを含み、且つ存在する任意の定常領域がヒト免疫グロブリン定常領域と実質的に同一、即ち少なくとも約85又は90%、好ましくは少なくとも95%同一である抗体をいう。従って、おそらくCDRを除く、ヒト化抗体の全ての部分が、1以上のヒトのネイティブ免疫グロブリン配列の対応部分と実質的に同一である。例えば、ヒト化免疫グロブリンは、典型的には、マウス可変領域/ヒト定常領域のキメラ抗体を包含しない。
【0042】
ヒトの治療における使用について、ヒト化抗体は、非ヒト抗体及びキメラ抗体に対して、少なくとも3つの潜在的な利点を有する:
【0043】
1)エフェクター部分がヒトのものなので、ヒト免疫系の他の部分とよりよく相互作用し得る(例えば、補体依存性細胞傷害(CDC)及び抗体依存性細胞傷害(ADCC)により、標的細胞をより効率的に破壊する)。
【0044】
2)ヒト免疫系はヒト化抗体のフレームワーク領域又はC領域を異物と認識しないはずであり、従ってそのような注入抗体に対する抗体反応は、完全に異物の非ヒト抗体又は一部異物のキメラ抗体に対するものよりも小さいはずである。
【0045】
3)ヒト循環における、注入された非ヒト抗体の半減期は、ヒト抗体の半減期よりもずっと短いと報告されている。注入されたヒト化抗体の半減期は、天然に存在するヒト抗体の半減期と本質的に同一であり、より少量且つより低頻度の投与用量を可能にするであろう。
【0046】
1例として、ヒト化免疫グロブリンの設計は以下のように行われ得る:アミノ酸が以下のカテゴリーに分類される場合、用いられるヒト免疫グロブリン(アクセプター免疫グロブリン)のフレームワークのアミノ酸は、CDRを提供する非ヒト免疫グロブリン(ドナー免疫グロブリン)由来フレームワークのアミノ酸と置換される:(a)アクセプター免疫グロブリンのヒトフレームワーク領域におけるアミノ酸は、その位置ではヒト免疫グロブリンにとって普通でないが、ドナー免疫グロブリンにおける対応するアミノ酸は、その位置ではヒト免疫グロブリンにとって典型的なものである;(b)該アミノ酸の位置は、CDRのうちの1つに直接隣接する;又は(c)3次元免疫グロブリンモデルにおいて、フレームワークのアミノ酸の任意の側鎖原子は、CDRのアミノ酸の任意の原子の、約5〜6オングストローム内(中心から中心)にある(QUEEN et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, vol.88, p:2869, 1991)。アクセプター免疫グロブリンのヒトフレームワーク領域における各アミノ酸及びドナー免疫グロブリンにおける対応するアミノ酸が、その位置ではヒト免疫グロブリンにとって普通でない場合、そのようなアミノ酸は、その位置でヒト免疫グロブリンにとって典型的なアミノ酸により置換される。
【0047】
別の好ましい実施形態においては、前記抗体はヒト化抗体であり、軽鎖フレームワーク配列及び重鎖フレームワーク配列はそれぞれ、ヒト化免疫グロブリン軽鎖及びヒト化免疫グロブリン重鎖由来である。
【0048】
本発明のヒト化抗体の好ましい軽鎖可変領域(LCVR)は、配列番号8と、少なくとも1アミノ酸が相違するアミノ酸配列を有する。より好ましくは、本発明のヒト化抗体の軽鎖可変領域(LCVR)は、配列番号25のアミノ酸配列を有し、該配列番号25のアミノ酸配列は、配列番号8と、少なくとも1アミノ酸が相違する。
【0049】
このヒト化配列は、潜在的な免疫原性を低減するために、ヒト免疫グロブリンカッパ可変軽鎖(配列番号22;アクセッション番号AAZ09098)との比較後に1以上のアミノ酸置換がフレームワーク中に導入された抗CD160マウス可変軽鎖に相当する。
【0050】
本発明のヒト化抗体の好ましい重鎖可変領域(HCVR)は、配列番号6と、少なくとも1アミノ酸が相違するアミノ酸配列を有する。より好ましくは、本発明のヒト化抗体の重鎖可変領域(HCVR)は、配列番号26のアミノ酸配列を有し、該配列番号26のアミノ酸配列は、配列番号6と、少なくとも1アミノ酸が相違する。
【0051】
このヒト化配列は、潜在的な免疫原性を低減するために、ヒト免疫グロブリン可変重鎖の配列番号23(アクセッション番号3FCTB)及び配列番号24(アクセッション番号AAG00910)との比較後に1以上のアミノ酸置換がフレームワーク中に導入された抗CD160マウス可変重鎖に相当する。
【0052】
好ましくは、前記ヒト化抗体は、ヒト軽鎖及びヒト重鎖由来の定常領域を更に含む。1例として、前記ヒト化抗体は、以前に記載のとおりの、ヒト軽鎖及びヒト重鎖由来の定常領域を更に含む。
【0053】
他の配列が、本発明のヒト化抗体用の軽鎖及び重鎖の代わりになり得る。免疫グロブリンは2組の軽鎖/重鎖複合体を有し得、少なくとも1の鎖が、ヒトのフレームワーク領域部分に機能的に結合した1以上のマウスの相補性決定領域を含む。
【0054】
第二の態様によれば、本発明は、診断及び/又は予後及び/又は治療における使用のための、以前に記載のとおりの少なくとも1種の抗CD160抗体又はその断片及び医薬的に許容可能な担体を含む医薬組成物に関する。
【0055】
前記組成物は血管形成の阻害、血管系の病状の治療、及び好ましくは腫瘍進行の阻害に特に有用である。
【0056】
前記組成物は、溶液、懸濁液、凍結乾燥粉末、カプセル及び錠剤が挙げられるがこれらに限定されない、患者への投与に好適な任意の医薬形態であり得る。
【0057】
本発明の医薬組成物は、医薬的に許容可能な任意の希釈剤、賦形剤又は補助剤を更に含んでもよい。
【0058】
本発明の医薬組成物は、注射(例、局所注射)用、経粘膜投与用、吸入用、経口投与用並びにより一般的には、当業者が、望まれる予後及び/又は診断及び/又は治療を達成するのに適切だと見出した任意の製剤に製剤化され得る。
【0059】
本発明の抗CD160抗体は、該医薬組成物中に、意図する目的を達成するのに有効な量で含有され、且つ選択された投与経路に好適な用量で含有される。
【0060】
より具体的には、治療有効用量は、治療されている被験体の疾患又は状態の兆候を予防、緩和又は改善するか、或いは該疾患又は状態を阻止するのに有効な化合物量を意味する。
【0061】
本発明の抗CD160抗体は、対象とする用途に応じて、追加の構成成分を更に含んでもよい。
【0062】
例えば、本発明の抗CD160抗体が予後又は診断を目的とする場合、該抗体は、蛍光色素、或いは酵素活性又は放射活性を有する実体、及びより一般的には該化合物の検出を可能にする任意の実体等の検出可能な標識を更に含んでもよい。或いは、本発明の抗CD160抗体は、当然ながら、抗血管形成部位の検出に用いられてもよい。
【0063】
従って、本発明は、抗血管形成部位の検出を意図した、本発明の少なくとも1種の抗CD160抗体を含む医薬組成物又はキットにも関する。
【0064】
本発明の抗CD160抗体が、それを必要とする生物への治療的投与を意図する場合、該組成物は、免疫毒素及び/又は放射性元素を更に含んでもよい。
【0065】
本発明の第3の態様は、血管形成の阻害方法であって、以前に記載のとおりの少なくとも1種の抗CD160抗体又はその断片を含む、本明細書中に記載のとおりの医薬組成物を、それを必要とする患者に提供することを含む方法に関する。
【0066】
本明細書で用いる場合、用語「患者」は哺乳動物、好ましくはヒトをいう。
【0067】
好ましくは、それを必要とする患者は、血管形成過程に関与する内皮細胞の増殖に関連する病状に罹患している患者に相当する。
【0068】
そのような病状の例としては、癌(例、腫瘍の血管新生)、網膜症(例、糖尿病性網膜症)、関節リウマチ、角膜又は腎臓等の慢性移植片拒絶、異種移植において観察される急性移植片拒絶、血管腫、カポジ肉腫又はキャッスルマン(Castelman)症候群等の血管肉腫、アテローム性動脈硬化症、新血管形成に関連する子宮内膜症、或いは瘢痕形成に起因する組織過剰生成が挙げられる。
【0069】
本発明の第4の態様は、血管形成過程に関与する内皮細胞の増殖に関連する病状を治療及び/又は予防するための医薬の調製のための、以前に記載のとおりの少なくとも1種の抗CD160抗体又はその断片の使用に関する。
【0070】
そのような病状は、癌(例、腫瘍の血管新生)、網膜症(例、糖尿病性網膜症)、関節リウマチ、角膜又は腎臓等の慢性移植片拒絶、異種移植において観察される急性移植片拒絶、血管腫、カポジ肉腫又はキャッスルマン(Castelman)症候群等の血管肉腫、アテローム性動脈硬化症、新血管形成に関連する子宮内膜症、或いは瘢痕形成に起因する組織過剰生成を含む群において選択される。
【0071】
本発明の他の実施形態及び利点を、以下の非限定的実施例において説明する。
【実施例】
【0072】
実施例
1)mAbの製造及び精製:
mAbは、GSTとCD-160(配列番号27;アクセッション番号CAG46665)との融合タンパク質でBALB/Cマウスを免疫することにより取得する。細胞融合はGOUTTEFANGEAS et al.(Eur. J. Immunol., vol.22, p:2681-5, 1992)に記載のとおり、NS1と行う。
【0073】
スクリーニングは2段階で行う。間接免疫蛍光染色及びフローサイトメトリー解析の後、CD160-GST融合タンパク質と反応するハイブリドーマ上清をすべて保持する。選択したmAbを含有する培養物を、限界希釈により2回クローニングする。
【0074】
2)血管形成阻害活性についてのスクリーニング:
Growth reduced Matrigel (BD BIOSCIENCES)をコラーゲン(1/6 v/v)中で希釈し、氷上に保つ。この溶液160μlを、ラット尾部のI型コラーゲンでプレコーティングした8ウェル培養スライドの各ウェルに加え、37℃で1時間放置する。ゲル形成の後、コントロール、FGF-2、sHLA-G1又はハイブリドーマ上清と混合するか、又は混合しないで、HUVEC懸濁液を加湿5%CO2インキュベータ中、Matrigel/コラーゲンゲル上に37℃で24時間、播種する。
【0075】
血管形成は、RUGGERI et al.(Cancer Res., vol.63(18), p:5978-91, 2003)に記載のとおりに定量する。
【0076】
簡単に言うと、培養培地を除去し、細胞をPBSで2回リンスし、4%PFA溶液中、室温で30分間固定する。次いで、細胞をPBSで2回洗浄し、マッソン3色染色法で染色する。自動コンピュータ支援画像解析システム(Imagenia, Biocom, Les Ulis, France)を用いて微小毛細血管ネットワークの広がりを測定し、各ウェルにおける毛細血管の全長を決定する。各実験条件について、平均微小毛細血管ネットワーク長(μm)を算出する。実験は3連で行い、3回繰り返す。
【0077】
驚くべきことに、全てのハイブリドーマ上清中、1の上清が、FGF-2媒介性の小血管成長の阻害をもたらす。このことは、この特定の上清の抗体が、血管形成を阻害できることを証明する。
【0078】
3)抗血管形成特性を有する抗CD160抗体の可変領域のクローニング:
血管形成を阻害する抗体を産生する、特定のハイブリドーマを単離する。RNeasy キット(QIAGEN)により、製造業者の指示書に従って、前記ハイブリドーマ細胞から全RNAを抽出した。
【0079】
カッパ軽鎖由来及びガンマ可変鎖由来の定常領域それぞれの特異的なプライマーを用い、CARDES et al.(FEBS letters, vol.452, p:386-94, 1999)に記載のとおり、50μgの全RNA。次いで、目的の免疫グロブリン可変領域のスクリーニング及び単離のためにCHARDES et al. (1999,上述)に記載されたプロトコールを用いた。
【0080】
このスクリーニングは、目的の免疫グロブリンの軽鎖可変領域及び重鎖可変領域の同定を可能にした(図1及び図2)。
【0081】
フレームワーク領域(FR)及びCDRの位置を同定するために、これらの配列を、IMGT/V-QUESTサイト(http://imgt.cines.fr/IMGT_vquest/share/textes/index.html)上で他の免疫グロブリンとのアラインメントにより解析した。
【0082】
可変重鎖及び可変軽鎖について同定されたとおりのCDR位置を図1及び図2にそれぞれ示す。
【0083】
4)抗血管形成特性を有する抗CD160抗体の可変領域のヒト化:
免疫のために、同定した可変領域を、該可変領域と最大の相同性を有するヒト免疫グロブリンと整列させる。
【0084】
マウスの可変軽鎖、配列番号8と最大の相同性を有するヒト免疫グロブリン(配列番号22;アクセッション番号AAZ09098)を図9に示す。
【0085】
マウスの可変軽鎖をヒト化するために、このアラインメントを考慮して、複数の置換を試験する。試験する置換は以下:
*位置17 (配列番号8の): N -> E;
*位置18: S -> R
*位置19: V - >A
*位置41: H -> G
*位置53: Q -> N
*位置80: T -> P
*位置84: G -> A
*位置100: A -> G
である。
【0086】
マウス可変重鎖、配列番号1と最大の相同性を有するヒト免疫グロブリン(配列番号23及び配列番号24;アクセッション番号はそれぞれ3FCTB及びAAG00910)をそれぞれ図10及び図11に示す。
【0087】
マウスの可変重鎖をヒト化するために、このアラインメントを考慮して、複数の置換を試験する。試験する置換は以下:
*位置3 (配列番号6の): H -> Q;
*位置35: Q -> H
*位置87: A - >T
である。
【0088】
5)キメラ抗体の構築:
ヒト化された又はされていない、可変重鎖及び可変軽鎖の配列を、シグナルペプチド並びにLEUNG et al.,(Hybridoma, vol.13(6), p:469-76, 1994)に記載されたような、それらのそれぞれのヒトカッパ定常領域及びヒトIgG1又はIgG4の定常領域と結合させる。
【0089】
これらの抗体の抗血管形成活性は、以前に記載のとおりに試験する(2を参照)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CD160に結合できる抗体又はその断片であって、該抗体が、
a)以下のアミノ酸配列:
i)軽鎖CDR1:QSISNH(配列番号1);
ii)軽鎖CDR2:YAS;
iii)軽鎖CDR3:QQSNSWPLT(配列番号2)
を有する3つの軽鎖相補性領域(CDR);及び
免疫グロブリン軽鎖由来の軽鎖フレームワーク配列を含む軽鎖;及び
b)以下のアミノ酸配列:
i)重鎖CDR1:GYTFTDYW(配列番号3);
ii)重鎖CDR2:IYPGDDDA(配列番号4);
iii)重鎖CDR3:ARRGIAAVVGGFDY(配列番号5)
を有する3つの重鎖相補性領域(CDR);及び
免疫グロブリン重鎖由来の重鎖フレームワーク配列を含む重鎖
を含む抗体のポリペプチド配列と少なくとも90%の相同性を含むポリペプチド配列を有する、抗体又はその断片。
【請求項2】
a)以下のアミノ酸配列i)〜iii):
i)軽鎖CDR1:QSISNH(配列番号1);
ii)軽鎖CDR2:YAS;
iii)軽鎖CDR3:QQSNSWPLT(配列番号2)
と少なくとも90%の相同性を有するアミノ酸配列を有する3つの軽鎖相補性領域(CDR);及び
免疫グロブリン軽鎖由来の軽鎖フレームワーク配列を含む軽鎖;及び
b)以下のアミノ酸配列i)〜iii):
i)重鎖CDR1:GYTFTDYW(配列番号3);
ii)重鎖CDR2:IYPGDDDA(配列番号4);
iii)重鎖CDR3:ARRGIAAVVGGFDY(配列番号5)
と少なくとも90%の相同性を有するアミノ酸配列を有する3つの重鎖相補性領域(CDR);及び
免疫グロブリン重鎖由来の重鎖フレームワーク配列を含む重鎖
を含む、請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
a)以下のアミノ酸配列:
i)軽鎖CDR1:QSISNH(配列番号1);
ii)軽鎖CDR2:YAS;
iii)軽鎖CDR3:QQSNSWPLT(配列番号2)
を有する3つの軽鎖相補性領域(CDR);及び
免疫グロブリン軽鎖由来の軽鎖フレームワーク配列を含む軽鎖;及び
b)以下のアミノ酸配列:
i)重鎖CDR1:GYTFTDYW(配列番号3);
ii)重鎖CDR2:IYPGDDDA(配列番号4);
iii)重鎖CDR3:ARRGIAAVVGGFDY(配列番号5)
を有する3つの重鎖相補性領域(CDR);及び
免疫グロブリン重鎖由来の重鎖フレームワーク配列を含む重鎖
を含む、請求項1又は2に記載の抗体。
【請求項4】
前記抗体又はその断片が、10-7M未満のKDで、好ましくは10-8M未満からのKDでCD160に結合できる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項5】
前記抗体が配列番号8、好ましくは配列番号18又は配列番号28のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(LCVR)を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項6】
前記抗体が配列番号6、好ましくは配列番号20のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域(HCVR)を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項7】
前記抗体が、配列番号8と少なくとも1アミノ酸が相違するアミノ酸配列の軽鎖可変領域(LCVR)を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項8】
前記抗体が配列番号25のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(LCVR)を含む、請求項7に記載の抗体。
【請求項9】
前記抗体が、配列番号6と少なくとも1アミノ酸が相違するアミノ酸配列の重鎖可変領域(HVCR)を含む、請求項1〜4又は8のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項10】
前記抗体が配列番号26のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域(HCVR)を含む、請求項9に記載の抗体。
【請求項11】
前記抗体が、ヒト軽鎖及び重鎖由来の定常領域を更に含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項12】
前記抗体が:
a)
・追加的システイン及び終止コドンの挿入を含む配列番号10の配列を有するヒト免疫グロブリンガンマ1重鎖の組換え定常領域;
・配列番号12の配列を有するヒト免疫グロブリンガンマ1重鎖の組換え定常領域;及び
・配列番号14の配列を有するヒト免疫グロブリンガンマ4重鎖の組換え定常領域;
を含む群において選択されるヒト重鎖由来の定常領域、及び
b) 配列番号16の配列を有するヒト免疫グロブリンカッパのヒト軽鎖由来の定常領域
を含む、請求項11に記載の抗体。
【請求項13】
前記抗体が、配列番号10の配列を有するヒト免疫グロブリンガンマ1の重鎖の組換え定常領域及び配列番号16の配列を有するヒト免疫グロブリンカッパのヒト軽鎖由来の定常領域を含む、請求項12に記載の抗体。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の少なくとも1種の抗体及び医薬的に許容可能な担体を含む医薬組成物。
【請求項15】
血管形成過程に関与する内皮細胞の増殖に関連する病状を治療及び/又は予防するための医薬の調製のための、請求項1〜13のいずれかにおいて規定された少なくとも1種の抗体の使用。
【請求項16】
前記病状が、癌、網膜症、関節リウマチ、慢性移植片拒絶、異種移植において観察される急性移植片拒絶、血管腫、血管肉腫、アテローム性動脈硬化症、新血管形成に関連する子宮内膜症、及び瘢痕形成に起因する組織過剰生成を含む群において選択される、請求項15に記載の使用。
【請求項17】
前記病状が網膜症において選択される、請求項16に記載の使用。
【請求項18】
抗体が請求項13において規定されたものである、請求項17に記載の使用。
【請求項1】
CD160に結合できる抗体又はその断片であって、該抗体が、
a)以下のアミノ酸配列:
i)軽鎖CDR1:QSISNH(配列番号1);
ii)軽鎖CDR2:YAS;
iii)軽鎖CDR3:QQSNSWPLT(配列番号2)
を有する3つの軽鎖相補性領域(CDR);及び
免疫グロブリン軽鎖由来の軽鎖フレームワーク配列を含む軽鎖;及び
b)以下のアミノ酸配列:
i)重鎖CDR1:GYTFTDYW(配列番号3);
ii)重鎖CDR2:IYPGDDDA(配列番号4);
iii)重鎖CDR3:ARRGIAAVVGGFDY(配列番号5)
を有する3つの重鎖相補性領域(CDR);及び
免疫グロブリン重鎖由来の重鎖フレームワーク配列を含む重鎖
を含む抗体のポリペプチド配列と少なくとも90%の相同性を含むポリペプチド配列を有する、抗体又はその断片。
【請求項2】
a)以下のアミノ酸配列i)〜iii):
i)軽鎖CDR1:QSISNH(配列番号1);
ii)軽鎖CDR2:YAS;
iii)軽鎖CDR3:QQSNSWPLT(配列番号2)
と少なくとも90%の相同性を有するアミノ酸配列を有する3つの軽鎖相補性領域(CDR);及び
免疫グロブリン軽鎖由来の軽鎖フレームワーク配列を含む軽鎖;及び
b)以下のアミノ酸配列i)〜iii):
i)重鎖CDR1:GYTFTDYW(配列番号3);
ii)重鎖CDR2:IYPGDDDA(配列番号4);
iii)重鎖CDR3:ARRGIAAVVGGFDY(配列番号5)
と少なくとも90%の相同性を有するアミノ酸配列を有する3つの重鎖相補性領域(CDR);及び
免疫グロブリン重鎖由来の重鎖フレームワーク配列を含む重鎖
を含む、請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
a)以下のアミノ酸配列:
i)軽鎖CDR1:QSISNH(配列番号1);
ii)軽鎖CDR2:YAS;
iii)軽鎖CDR3:QQSNSWPLT(配列番号2)
を有する3つの軽鎖相補性領域(CDR);及び
免疫グロブリン軽鎖由来の軽鎖フレームワーク配列を含む軽鎖;及び
b)以下のアミノ酸配列:
i)重鎖CDR1:GYTFTDYW(配列番号3);
ii)重鎖CDR2:IYPGDDDA(配列番号4);
iii)重鎖CDR3:ARRGIAAVVGGFDY(配列番号5)
を有する3つの重鎖相補性領域(CDR);及び
免疫グロブリン重鎖由来の重鎖フレームワーク配列を含む重鎖
を含む、請求項1又は2に記載の抗体。
【請求項4】
前記抗体又はその断片が、10-7M未満のKDで、好ましくは10-8M未満からのKDでCD160に結合できる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項5】
前記抗体が配列番号8、好ましくは配列番号18又は配列番号28のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(LCVR)を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項6】
前記抗体が配列番号6、好ましくは配列番号20のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域(HCVR)を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項7】
前記抗体が、配列番号8と少なくとも1アミノ酸が相違するアミノ酸配列の軽鎖可変領域(LCVR)を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項8】
前記抗体が配列番号25のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(LCVR)を含む、請求項7に記載の抗体。
【請求項9】
前記抗体が、配列番号6と少なくとも1アミノ酸が相違するアミノ酸配列の重鎖可変領域(HVCR)を含む、請求項1〜4又は8のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項10】
前記抗体が配列番号26のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域(HCVR)を含む、請求項9に記載の抗体。
【請求項11】
前記抗体が、ヒト軽鎖及び重鎖由来の定常領域を更に含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項12】
前記抗体が:
a)
・追加的システイン及び終止コドンの挿入を含む配列番号10の配列を有するヒト免疫グロブリンガンマ1重鎖の組換え定常領域;
・配列番号12の配列を有するヒト免疫グロブリンガンマ1重鎖の組換え定常領域;及び
・配列番号14の配列を有するヒト免疫グロブリンガンマ4重鎖の組換え定常領域;
を含む群において選択されるヒト重鎖由来の定常領域、及び
b) 配列番号16の配列を有するヒト免疫グロブリンカッパのヒト軽鎖由来の定常領域
を含む、請求項11に記載の抗体。
【請求項13】
前記抗体が、配列番号10の配列を有するヒト免疫グロブリンガンマ1の重鎖の組換え定常領域及び配列番号16の配列を有するヒト免疫グロブリンカッパのヒト軽鎖由来の定常領域を含む、請求項12に記載の抗体。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の少なくとも1種の抗体及び医薬的に許容可能な担体を含む医薬組成物。
【請求項15】
血管形成過程に関与する内皮細胞の増殖に関連する病状を治療及び/又は予防するための医薬の調製のための、請求項1〜13のいずれかにおいて規定された少なくとも1種の抗体の使用。
【請求項16】
前記病状が、癌、網膜症、関節リウマチ、慢性移植片拒絶、異種移植において観察される急性移植片拒絶、血管腫、血管肉腫、アテローム性動脈硬化症、新血管形成に関連する子宮内膜症、及び瘢痕形成に起因する組織過剰生成を含む群において選択される、請求項15に記載の使用。
【請求項17】
前記病状が網膜症において選択される、請求項16に記載の使用。
【請求項18】
抗体が請求項13において規定されたものである、請求項17に記載の使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7a】
【図7b】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7a】
【図7b】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2012−515746(P2012−515746A)
【公表日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−546790(P2011−546790)
【出願日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際出願番号】PCT/EP2010/050694
【国際公開番号】WO2010/084158
【国際公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(511178359)
【出願人】(592236234)アンスティテュー・ナシオナル・ドゥ・ラ・サンテ・エ・ドゥ・ラ・ルシェルシュ・メディカル・(イ・エヌ・エス・ウ・エール・エム) (12)
【氏名又は名称原語表記】INSTITUT NATIONAL DE LA SANTE ET DE LA RECHERCHE MEDICALE (I.N.S.E.R.M.)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際出願番号】PCT/EP2010/050694
【国際公開番号】WO2010/084158
【国際公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(511178359)
【出願人】(592236234)アンスティテュー・ナシオナル・ドゥ・ラ・サンテ・エ・ドゥ・ラ・ルシェルシュ・メディカル・(イ・エヌ・エス・ウ・エール・エム) (12)
【氏名又は名称原語表記】INSTITUT NATIONAL DE LA SANTE ET DE LA RECHERCHE MEDICALE (I.N.S.E.R.M.)
【Fターム(参考)】
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