抗CD20抗体およびその融合タンパク質ならびに使用法
本発明は、B細胞悪性腫瘍および自己免疫疾患などのB細胞疾患の治療および診断に有用な、CD20と呼ばれるヒトB細胞マーカーに結合する、ヒト化、キメラおよびヒト抗CD20抗体、およびCD20抗体融合タンパク質、ならびに治療方法および診断方法に関する。
【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
1.発明の分野
本発明は、ヒト化、キメラおよびヒト抗CD20抗体、特にヒト化、キメラおよびヒト抗CD20抗体のモノクローナル抗体(mAb)の治療用および診断用複合体、ならびにヒト化、キメラおよびヒト抗CD20抗体を用いてB細胞リンパ腫、白血病および種々の自己免疫疾患を治療する方法に関する。本発明は、少なくとも二つの抗CD20 mAbもしくはそのフラグメント、または少なくとも一つの抗CD20 MAbもしくはそのフラグメント、および抗CD20 MAbもしくはそのフラグメント以外に少なくとも一つの第二のMAbもしくはそのフラグメントを含んでなる、抗体融合タンパク質またはそのフラグメントに関する。このヒト化、キメラおよびヒト抗CD20 mAb、そのフラグメント、その抗体融合タンパク質またはそのフラグメントは、治療用複合体として単独で投与してもよく、または治療用免疫複合体、他の裸の抗体、もしくは治療薬と組み合わせて投与してもよく、または診断用複合体として投与してもよい。本発明は、ヒト化、キメラおよびヒト抗CD20 抗体をコードするDNA配列、抗体融合タンパク質、前記DNA配列を含んでなるベクターおよび宿主細胞、ならびにヒト化、キメラおよびヒト抗CD20抗体を製造する方法に関する。
【0002】
2.背景技術
脊椎動物の免疫機構は、異種抗原を正確に認識し、特異的に結合し、そしてかかる異種抗原を排除/破壊するために進化した多数の器官および細胞型からなる。とりわけリンパ球は免疫機構にとって重要である。リンパ球は二つの大きなサブ集団、T細胞およびB細胞に分類される。相互依存的であるにもかかわらず、T細胞は細胞性免疫、B細胞は抗体産生(体液性免疫)に大きな役割を果たしている。
【0003】
ヒトにおいては、各々のB細胞が膨大な数の抗体分子を産生できる。このような抗体産生は、異種抗原が中和された時点で通常は停止する(または実質的に減少する)。しかし時折、特定のB細胞の増殖が衰えずに継続され、B細胞リンパ腫として知られる癌を引き起こす。非ホジキンリンパ腫のB細胞サブタイプのようなB細胞リンパ腫は、癌死亡率に大いに寄与している。種々の形態の治療法に対するB細胞悪性腫瘍の反応は複雑である。例えば、非ホジキンリンパ腫の適当な臨床病期分類が可能な場合、領域放射線治療により満足のいく治療を行うことができる。それにもかかわらず、約半数の患者がこの疾患により死亡する(Devesa et al., J. Nat'l Cancer Inst. 79:701(1987))。
【0004】
慢性リンパ性白血病の大多数は、B細胞系統である(Freedman,Hematol. Oncol. Clin. North Am. 4:405(1990))。この種類のB細胞悪性腫瘍は西欧社会において最も一般的な白血病である(Goodman et al., Leukemia and Lymphoma 22:1(1996))。慢性リンパ性白血病の自然な生長はいくつかの曲面に分類される。発症早期においては、慢性リンパ性白血病は無痛性の疾患であり、寿命の長い、小さな成熟した機能不全の悪性B細胞の蓄積を特徴とする。最終的に、悪性B細胞の倍増時間が短くなり、次第に患者に症状が出現する。治療により症状が軽減されるものの、患者の全体的な生存率にはあまり影響しない。慢性リンパ性白血病の後期では、顕著な貧血および/または血小板減少症が特徴的である。この時点での平均生存期間は2年未満である(Foon et al., Annals Int. Medicine 113:525(1990))。慢性リンパ性白血病は細胞増殖率が低いために、細胞傷害剤治療に対し耐性を示す。
【0005】
化学療法および放射線療法をはじめとするB細胞悪性腫瘍を治療する従来の手法は、有害な副作用のためにその有用性に制限があった。放射性核種、毒素、または他の治療薬を導くためにモノクローナル抗体を使用することにより、かかる薬物が選択的に腫瘍部位に送達され、正常組織に対する毒性を制限できる可能性が与えられる。また、これらのB細胞悪性腫瘍上のB細胞抗原が、B細胞上のCD19、CD20、CD21、CD23およびCD22のようなマーカーに対する非結合型B細胞抗体を用いる治療法において最適な標的となる。HLA−DRおよび他の抗原も、他の細胞型上にも発現されるが、正常および悪性B細胞の標的として働き得る。さらに、ある種のMUC1、MUC2、MUC3およびMUC4抗原、好ましくはMUC1もまた、CD20および他のB細胞マーカーを発現するB細胞腫瘍をはじめとする種々の造血器悪性腫瘍において発現される。テネイシン、血管内皮増殖因子(VEGF)、および胎盤増殖因子(PlGF)をはじめとする腫瘍の血管上皮に関連する他の抗原標的、ならびに腫瘍産物のようなB細胞悪性腫瘍に関連する他の種類の抗原も、本発明において使用される相補性抗体のための好適な標的である。
【0006】
B細胞は、分化および同定のためのマーカーとして利用できる細胞表面タンパク質を含んでなる。このようなヒトB細胞マーカーの一つとしては、CD20と呼ばれるヒトBリンパ球−制限分化抗原Bp35がある。CD20は前駆B細胞発達初期に発現され、形質細胞分化時まで残存する。CD20は正常B細胞およびその異常な増殖がB細胞リンパ腫を引き起こし得る悪性B細胞の双方で発現される。CD20抗原に対する抗体はB細胞リンパ腫の治療のために研究されてきた。例えば、「IDEC−C2B8」と呼ばれるキメラ抗CD20抗体は、非結合抗体として500mg/注射を超える用量で反復注射された場合、B細胞リンパ腫に対して活性を有する(Maloney et al., Blood 84:2457(1994); Longo, Curr. Opin.Oncol.8:353(1996))。この投与計画で治療された、低悪性度の無痛型非ホジキン病患者の約50%が反応を示す。治療に対する反応はまた、131I標識B1抗CD20マウスモノクローナル抗体を600mg/注射を超える用量にて反復投与しても得られる。Kaminski et al., N. Engl. J Med 329:459(1993); Press et al., N. Engl. J:Med. 329:1219(1993); Press et al., Lancet 346:336(1995)。しかし、これらの抗体は非結合型として投与されても、放射性標識型として投与されても、より一般的で致死率の高い中悪性度または高悪性度のB細胞リンパ腫患者では、他覚的かつ持続的な反応を示す割合は高くない。従って、長期間持続する治療反応を達成する、B細胞悪性腫瘍の免疫療法を開発する必要がある。
【0007】
さらに、CD20表面抗原を標的とする試験が行われ、この試験では抗CD20マウスモノクローナル抗体である、IF5を用い、これをB細胞リンパ腫患者に持続的に静脈へ注入した。報告によれば、循環している腫瘍細胞を枯渇させるためには非常に高濃度の(2gを超える)IF5が必要であり、その結果は「一時的なもの」であったと記載された(Press et al.,"Monoclonal Antibody IF5(Anti-CD20) Serotherapy of HumanB-Cell Lymphomas." Blood 69/2:584-591 (1987))。しかし、このアプローチの問題点は、非ヒトモノクローナル抗体(例えばマウスモノクローナル抗体)は通常、ヒトエフェクター機能を欠いている、すなわちそれらは補体依存性溶解を媒介できず、また抗体依存性細胞傷害もしくはFcレセプター媒介食作用を介してヒト標的細胞を溶解できないことである。さらに、非ヒトモノクローナル抗体はヒト宿主により異種タンパク質として認識され、このためかかる異種抗体の反復注射は免疫応答を誘導し、有害な過敏症反応を引き起こす。これはしばしば、マウスに基づくモノクローナル抗体に関しては、ヒト抗マウス抗体(HAMA)反応と呼ばれる。
【0008】
キメラ抗体はマウス抗体のような強いHAMA反応を惹起しないので、キメラ抗体を使用するのがより好ましい。キメラ抗体は、2以上の異なる種由来の部分を含んでなる抗体である。例えば、Liu, A. Y. et al, "Production of a Mouse-Human Chimeric Monoclonal Antibody to CD20 with Potent Fc-Dependent Biologic Activity" J Immun. 139/10:3521-3526(1987)は、CD20抗原に対するマウス/ヒトキメラ抗体について記載している。また、PCT第WO88/04936号公開公報も参照されたい。しかし、B細胞の異常の治療にかかるキメラ抗体を使用する際のその活性、有用性または実用性に関する情報は、その参考文献には示されていない。in vitro機能アッセイ(例えば、補体依存性溶解(CDC);抗体依存性細胞傷害(ADCC)など)よっては本来、in vivoにおいてのキメラ抗体が特定の抗原を発現する標的細胞を破壊または枯渇させる能力を予測し得るものではない。例えば、Robinson, R. D. et al.,"Chimeric mouse-human anti-carcinoma antibody that mediate different anti-tumor cell biological activities," Hum. Antibod. Hybridomas 2:84-93(1991)(検出できないADCC活性を有するキメラマウス−ヒト抗体)を参照されたい。従って、キメラ抗体の治療有効性はin vivo実験、好ましくは関心の対象である種における特定の治療法に関する実験によってのみ、正確に評価し得る。
【0009】
B細胞異常の治療におけるマウスモノクローナル抗体の有効性を改善した一つのアプローチとしては、標識または薬物が腫瘍部位に局在化されるように抗体に放射性標識または化学療法薬を結合させることがある。例えば、前記のIF5抗体および他のB細胞抗体を131Iにて標識し、2人の患者における生物学的分布を評価した報告がある。Eary, J. F. et al.,"Imaging and Treatment of B-Cell Lymphoma"J. Nuc. Med. 31/8:1257-1268(1990)を参照されたい。また、Press,O. W.et al., "Treatment of Refractory Non-Hodgkin's Lymphoma with Radiolabeled MB-1(Anti-CD37)Antibody" J. Clin. Onc. 7/8:1027-1038(1989)(131I標識IF5にて治療した1人の患者が部分的反応を示した);Goldenberg, D.M.et al.,"Targeting, Dosimetry and Radioimmunotherapy of B-Cell Lymphomas with 131I-Labeled LL2 Monoclonal Antibody"J. Clin. Oncol. 9/4:548-564 (1991)(複数回注射を受けた8人中3人の患者がこのCD22マウス抗体に対するHAMA反応を示したと報告されている);Appelbaum, F.R. "Radiolabeled Monoclonal Antibodies in the Treatment of Non-Hodgkin's Lymphoma" Hem./Oncol. Clinics of N.A. 5/5:1013-1025 (1991)(総説);Press, O. W. et al.,"Radiolabeled-Antibody Therapy of B-Cell Lymphoma with Autologous Bone Marrow Support."New England Journal of Medicine 329/17: 1219-12223 (1993)(131I標識抗CD20抗体1F5およびB1);およびKaminski, M. G. et al"Radioimmunotherapy of B-Cell Lymphoma with [131I]Anti-B1(Anti-CD20) Antibody".NEJM 329/7:459(1993)(131I標識抗CD20抗体B1;以後「Kaminski」という);PCT出願第WO92/07466号公開公報(ドキソルビシンまたはマイトマイシンのような化学療法薬に結合させた抗体)も参照されたい。しかし、多くのリンパ腫の患者は前もって積極的な細胞毒性化学療法を受けていたため免疫が抑制されており、これにより積極的に前治療されていない患者よりもHAMA反応率が低かったという事実にもかかわらず、これらのアプローチはマウス抗体使用に関連する障害を排除したわけではない。
【0010】
自己免疫疾患はB細胞の異常に関連する種類の疾患である。その例としては、急性特発性血小板減少性紫斑病および慢性特発性血小板減少性紫斑病などの免疫媒介性血小板減少症をはじめとして、重症筋無力症、狼瘡腎炎、紅斑性狼瘡、ならびに関節リウマチなどがある。最も一般的な治療法はコルチコステロイドおよび細胞傷害剤によるものであり、これは非常に強い毒性を発揮する可能性がある。これらの薬物はまた、免疫システム全体を抑制し、重篤な感染症を引き起こし、骨髄、肝臓および腎臓に対し副作用がある。III型自己免疫疾患の治療に用いられる他の治療法は、これまでT細胞およびマクロファージに向けられてきた。自己免疫疾患、特にIII型自己免疫疾患のより効果的な治療法が必要とされている。
【0011】
B細胞の異常およびその治療法に関する多くの問題を解決するために、本発明は、本発明によるCD20抗原に結合する同じ相補性決定領域(CDR)を有するヒト化、キメラおよびヒト抗CD20モノクローナル抗体を提供するものであり、この抗体は、ヒトおよび他の哺乳類におけるB細胞リンパ腫、白血病および自己免疫疾患の治療のために、マウス抗体使用に関連する副作用を生ずることなく、単独で、治療薬との結合して、または他の治療様式と組み合わせて使用される。
【発明の概要】
【0012】
従って、本発明は、CD20と呼ばれるヒトB細胞マーカーに結合する、ヒト化、キメラおよびヒト抗CD20抗体であって、B細胞悪性腫瘍および自己免疫疾患などのB細胞異常の治療または診断に有用なものを提供する。
さらに本発明は、ヒトまたは家畜などの哺乳類被検体を治療する方法であって、1以上のヒト化、キメラおよびヒトCD20抗体を、単独で、抗体融合タンパク質として、治療用複合体として単独で、または抗体融合タンパク質の一部として、または他の抗体、他の治療薬もしくは免疫調節剤と組み合わせてまたはこれらと共に複合療法として、または少なくとも一つの治療薬、治療用放射性核種もしくは免疫調節剤と結合させた免疫複合体として用いる方法を提供する。これらのヒト化、キメラおよびヒトCD20抗体はまた、診断用造影剤として単独で、他の診断用造影剤と組み合わせて、および/または治療用途とあわせて使用し得る。
【0013】
さらに本発明は、抗CD 20mAbまたはそのフラグメントであって、CD20に特異的な1以上のマウスまたはキメラ抗CD20 MAb由来の、特異的マウスCDRまたはマウスCDRの組み合わせを含んでなるものに関する。これらのmAbはヒト化、キメラまたはヒト抗CD20mAbであることができる。
【0014】
本発明はまた、抗体融合タンパク質であって、少なくとも二つの抗CD20 mAbもしくはそのフラグメントを含んでなるもの、または抗CD20mAbもしくはそのフラグメントを含んでなる第一のMAbおよび第二のMAbを含んでなるものを提供する。
【0015】
さらに本発明は、抗CD20 mAbもしくはそのフラグメントを有する治療用または診断用複合体、または少なくとも一つの治療薬もしくは少なくとも一つの診断薬に結合している抗CD20 mAbもしくは他のmAbもしくはそのフラグメントを有する抗体融合タンパク質に関する。本発明には、同じまたは異なるタイプの多様な治療薬を有する抗体融合タンパク質が包含される。
【0016】
さらに本発明は、抗CD20 mAbもしくはそのフラグメント、またはその抗体融合タンパク質もしくはそのフラグメントを治療に用いる方法であって、これらを、1以上の治療薬を有する治療用免疫複合体の抗体成分として単独かまたは互いに組み合わせて用いるか、またはそれぞれ1以上の治療薬と組み合わせてもしくは1以上の治療薬を有する免疫複合体と組み合わせて用いる方法を提供する。
【0017】
さらに本発明は、抗CD20 mAbもしくはそのフラグメント、またはその抗体融合タンパク質もしくはそのフラグメントを、1以上の診断薬と結合している診断薬として用いる方法を提供する。
【0018】
さらに本発明は、本発明による抗体融合タンパク質またはそのフラグメントを用いて、B細胞リンパ腫、白血病または自己免疫疾患の患者の細胞をプレターゲッティングする方法を提供する。
【発明の具体的説明】
【0019】
1.概説
前記のように、結合していないかまたは治療用放射性核種で標識された抗CD20抗体は、中悪性度または高悪性度型のB細胞リンパ腫患者に他覚的で持続的な反応を高い割合で引き起こすことができなかった。本発明は、ヒトおよび家畜といった哺乳類被検体の治療に有用なヒト化、キメラおよびヒト抗CD20抗体ならびにその抗体融合タンパク質であって、単独で、複合体として、または他の裸の抗体および抗体治療用複合体を含む他の治療薬と組み合わせて投与されるものを提供する。
【0020】
本発明による抗CD20 mAbは、特定のマウスCDRまたは1匹以上のマウス由来のマウスCDRの組み合わせ、またはCD20抗原に特異的なキメラ抗CD20 MAbを含む。本発明による抗CD20 mAbは、ヒト化、キメラまたはヒトmAbであり、それらはマウス抗CD20 MAbのCDRのアミノ酸を包含し、マウス抗CD20 MAbのB細胞、B細胞リンパ腫および白血病細胞標的特性を実質的に保持している。この抗CD20 MAbのL鎖可変領域のCDRは、アミノ酸RASSSVSYIH、RASSSLSFMHまたはRASSSVSYMHを含むCDR1;アミノ酸ATSNLASを含むCDR2;およびアミノ酸QQWTSNPPT、HQWSSNPLTまたはQQSFSNPPTを含むCDR3を含んでなり;かつ抗CD20 MAbのH鎖可変領域のCDRは、アミノ酸SYNMHを含むCDR1;アミノ酸AIYPGNGDTSYNQKFKGを含むCDR2、およびアミノ酸STYYGGDWYFDV、STYYGGDWYFNV、SHYGSNYVDYFDVまたはVVYYSNSYWYFDVを含むCDR3を含んでなる。
【0021】
一つの態様によれば、このヒト化およびキメラMAbまたはそのフラグメントは、STYYGGDWYFNVを含むH鎖可変領域のCDR3を含まない。より好ましくは、L鎖可変領域のCDR3がHQWSSNPLTを含みかつH鎖可変領域のCDR3がSHYGSNYVDYFDVを含む時、L鎖可変領域のCDR1がRASSSLSFMHを含まない。他の態様によれば、L鎖可変領域のCDR1がRASSSLSFMHを含みかつH鎖可変領域のCDR3がSHYGSNYVDYFDVを含む時、L鎖可変領域のCDR3がHQWSSNPLTを含まない。さらに他の態様によれば、L鎖可変領域のCDR1がRASSSLSFMHを含みかつL鎖可変領域のCDR3がHQWSSNPLTを含む時、H鎖可変領域のCDR3がSHYGSNYVDYFDVを含まない。他の態様によれば、L鎖可変領域のCDR3がQQSFSNPPTを含みかつH鎖可変領域のCDR3がVVYYSNSYWYFDVを含む時、L鎖可変領域のCDR1がRASSSVSYMHを含まない。
【0022】
さらに他の態様によれば、L鎖可変領域のCDR1がRASSSVSYMHを含みかつH鎖可変領域のCDR3がVVYYSNSYWYFDVを含む時、抗CD20モノクローナル抗体(MAb)またはそのフラグメントはアミノ酸QQSFSNPPTを有するL鎖可変領域のCDR3を含まない。さらに、L鎖可変領域のCDR1がRASSSVSYMHを含みかつL鎖可変領域のCDR3がQQSFSNPPTを含む時、抗CD20 MAbはアミノ酸VVYYSNSYWYFDVを有するH鎖可変領域のCDR3を含まない。
【0023】
好ましい態様によれば、ヒト化抗CD20(hCD20)モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントは、少なくとも一つのマウス抗CD20 MAb可変領域の相補性決定領域(CDR)および少なくとも一つのヒトMAb可変領域のフレームワーク領域(FR)を含んでなり、ここでヒト化抗CD20MAbまたはそのフラグメントが上記マウス抗CD20 MAbのB細胞、B細胞リンパ腫細胞および白血病細胞に対する標的特性を実質的に保持する。このヒト化抗体の可変領域はL鎖可変領域、H鎖可変領域またはL鎖およびH鎖可変領域の両方を含んでいてもよい。ヒト化抗体またはそのフラグメントはさらに、少なくとも一つのヒト抗体のL鎖およびH鎖定常領域を含んでいてもよい。
【0024】
本発明によるヒト化抗CD20 MAb またはそのフラグメントは、マウス抗CD20 MAbのCDRならびにヒト抗体のL鎖およびH鎖の可変領域のフレームワーク領域(FR)を含んでなり、親マウス抗CD20 MAbのB細胞、B細胞リンパ腫細胞および白血病細胞に対する標的特性を実質的に保持し、かつマウス抗CD20 MAbのL鎖可変領域のCDRが、アミノ酸RASSSVSYIHを含むCDR1、アミノ酸ATSNLASを含むCDR2、およびアミノ酸QQWTSNPPTを含むCDR3を含んでなり、ならびにマウス抗CD20 MAbのH鎖可変領域のCDRが、アミノ酸SYNMHを含むCDR1、アミノ酸AIYPGNGDTSYNQKFKGを含むCDR2、およびアミノ酸STYYGGDWYFDVを含むCDR3を含んでなる。しかし、このヒト化抗CD20 MAbまたはそのフラグメントは、抗体のL鎖およびH鎖可変領域のFR中にマウスMAbの相当するFR由来の少なくとも一つのアミノ酸をさらに含んでいてもよい。このヒト化MAbは、さらにヒト抗体のL鎖およびH鎖定常領域を含んでいてもよい。具体的には、このヒト化抗CD20MAbまたはそのフラグメントは、hA20VH1またはhA20VH2と表される図4AのマウスH鎖可変領域の少なくとも一つのアミノ酸残基1、5、27、30、38、48、67、68、70、95、115および116を含み、またhA20Vkと表される図4BのマウスL鎖可変領域の少なくとも一つのアミノ酸残基4、21、35、38、45、46、59、99、104および106を含む。CD20抗原への適当な結合を維持するため、または結合を強化するために必要ならば、1以上のマウスアミノ酸配列をヒトLおよびH可変鎖のFR領域中に維持できる。より好ましくは、本発明によるヒト化抗CD20 MAbまたはそのフラグメントは、図4BのhA20Vkおよび図4AのhA2VH1を含んでなる。最も好ましくは、本発明によるヒト化抗CD20 MAbまたはそのフラグメントは、図4BのhA20Vkおよび図4AのhA2VH2を含んでなる。この後者の配列はVH2鎖のFR中にVH1鎖よりも多くのヒトアミノ酸配列を含んでいるため、よりヒト化されている。
【0025】
本発明の好ましいキメラ抗CD20(cCD20)MAbまたはそのフラグメントは、マウス抗CD20 MAbのCDRおよびマウス抗CD20 MAbのL鎖およびH鎖可変領域のFR領域(すなわち、親マウスMAbのFv)およびヒト抗体のL鎖およびH鎖定常領域を含んでなり、ここでこのキメラ抗CD20 MAbまたはそのフラグメントがマウス抗CD20 MAbのB細胞、B細胞リンパ腫および白血病細胞に対する標的特性を実質的に保持し、キメラ抗CD20 MAbのL鎖可変領域のCDRが、アミノ酸RASSSVSYIH、RASSSLSFMHまたはRASSSVSYMHを含むCDR1;アミノ酸ATSNLASを含むCDR2;およびアミノ酸QQWTSNPPT、HQWSSNPLTまたはQQSFSNPPTを含むCDR3を含んでなり;かつキメラ抗CD20 MAbのH鎖可変領域のCDRが、アミノ酸SYNMHを含むCDR1;アミノ酸AIYPGNGDTSYNQKFKGを含むCDR2、およびアミノ酸STYYGGDWYFDV、STYYGGDWYFNV、SHYGSNYVDYFDVまたはVVYYSNSYWYFDVを含むCDR3を含んでなり、ただし、
(a)L鎖可変領域のCDR1がアミノ酸RASSSVSYIHを含み、L鎖可変領域のCDR2がアミノ酸ATSNLASを含み、L鎖可変領域のCDR3がアミノ酸QQWTSNPPTを含み、H鎖可変領域のCDR1がアミノ酸SYNMHを含み、かつL鎖可変領域のCDR2がアミノ酸AIYPGNGDTSYNQKFKGを含む時、H鎖可変領域のCDR3がSTYYGGDWYFNVを含まず;
(b)L鎖可変領域のCDR1がアミノ酸RASSSLSFMHを含み、L鎖可変領域のCDR2がアミノ酸ATSNLASを含み、L鎖可変領域のCDR3がアミノ酸HQWSSNPLTを含み、H鎖可変領域のCDR1がアミノ酸SYNMHを含み、かつL鎖可変領域のCDR2がアミノ酸AIYPGNGDTSYNQKFKGを含む時、H鎖可変領域のCDR3がSHYGSNYVDYFDVを含まず; かつ、
(c)L鎖可変領域のCDR1が、アミノ酸RASSSVSYMHを含み、L鎖可変領域CDR2がアミノ酸ATSNLASを含み、L鎖可変領域のCDR3 がアミノ酸QQSFSNPPTを含み、H鎖可変領域のCDR1がアミノ酸SYNMHを含み、かつL鎖可変領域のCDR2がアミノ酸AIYPGNGDTSYNQKFKGを含む時、H鎖可変領域のCDR3がVVYYSNSYWYFDVを含まない。
【0026】
より好ましくは、キメラ抗CD20 MAbまたはそのフラグメントは、マウス抗CD20 MAbの相補性決定領域(CDR)と、マウス抗CD20 MAbのL鎖およびH鎖可変領域のフレームワーク領域(FR)と、ヒト抗体のL鎖およびH鎖定常領域とを含んでなり、ここで、このキメラ抗CD20 MAbまたはそのフラグメントがマウス抗CD20 MAbのB細胞、B細胞リンパ腫および白血病細胞に対する標的特性を実質的に保持し、キメラ抗CD20 MAbのL鎖可変領域のCDRが図4Bおよび4AにそれぞれcA20VkおよびcA20VHと表されたCDRを含んでなる。最も好ましくは、キメラ抗CD20 MAb またはそのフラグメントは、図4Bおよび4AにそれぞれcA20VkおよびcA20VHと表されたマウス抗CD20 MAbのL鎖およびH鎖可変領域を含んでなる。
【0027】
本発明はまた、ヒト抗体のL鎖およびH鎖可変および定常領域を含むヒト抗CD20 MAbまたはそのフラグメントを包含し、ここで、このヒトCD20 MAbはB細胞、B細胞リンパ腫、および白血病細胞に対するマウス抗CD20 MAbの標的特性ならびに細胞結合特性を実質的に保持し、ヒト抗CD20 MAbのL鎖可変領域のCDRが上記キメラおよびヒト化抗CD20 mAbならびに図4Aおよび図4Bに示されたものと同じCDRを含んでなる。
【0028】
本発明はまた、上記のように、少なくとも二つの抗CD20 mAbまたはそのフラグメントを含んでなる抗体融合タンパク質またはそのフラグメントも包含することが意図されている。本発明による抗体融合タンパク質またはそのフラグメントはまた、上記の少なくとも一つの第一の抗CD20 MAbまたはそのフラグメント、および上記の抗CD20 MAbまたはフラグメント以外の少なくとも一つの第二のMAbまたはそのフラグメントを包含することが意図される。より好ましくは、この第二のMAbはCD4、CD5、CD8、CD14、CD15、CD19、CD21、CD22、CD23、CD25、CD33、CD37、CD38、CD40、CD40L、CD46、CD52、CD54、CD74、CD80、CD126、B7、MUC1、MUC2、MUC3、MUC4、Ia、HM1. 24、HLA−DR、テネイシン、VEGF、PlGF、癌遺伝子、癌遺伝子産物、またはそれらの組み合わせとの反応性を有し、そして本明細書に記載の抗CD20 MAbとは異なる抗CD20 MAbとさえも反応性があるMAbである。本発明による抗体融合タンパク質は、種々の抗原に対する特異性を提供するために1つのCD20 MAbおよび1以上の第二のmAbから構成されてよく、以下により詳細を記載する。
【0029】
B細胞リンパ腫、白血病および自己免疫疾患をはじめとするB細胞異常の治療のための優れた治療薬を得るためにCDRの突然変異および可変領域のCDRおよび他の配列の操作を行った結果、ヒト化、キメラおよびヒト抗CD20抗体は、エピトープとの結合親和性が高く、抗腫瘍および抗B細胞活性を有している。抗体の結合特異性、親和性または結合活性の修飾については公知であり、WO98/44001号公報にて親和力成熟として記載されており、さらにこの出願は修飾法について要約してあり、これは引用することによりその全開示内容を本明細書の一部とする。
【0030】
また、エフェクター機能を改良する目的で、例えば、アンタゴニストの抗原依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)および/または補体依存性細胞傷害(CDC)を促進する目的で本発明による抗体を修飾することも望ましい。1以上のアミノ酸置換またはFc領域へのシステインの導入を行ってよく、それにより内在化能力が高まり、補体媒介性殺細胞作用およびADCCが増大する。Caron et al., J. Ex.Med. 176:1191-1195(1991)and Shopes,B. J ImmunoL 148:2918-2022(1992)を参照されたい。この文献引用することによりその全開示内容を本明細書の一部とする。補体溶解性およびADCC能力双方が促進された、二重Fc領域を有する抗体融合タンパク質を作製してもよい。
【0031】
本発明はまた、DNA配列であって、
(a)本明細書に記載の抗CD20 MAbまたはそのフラグメント;
(b)少なくとも二つの抗CD20 mAbまたはそのフラグメントを含んでなる抗体融合タンパク質またはそのフラグメント;
(c)本明細書に記載の抗CD20 MAbまたはそのフラグメントを含む少なくとも一つの第一のMAbまたはそのフラグメント、および抗CD20 MAbまたはそのフラグメント以外の少なくとも一つの第二のMAbまたはそのフラグメントを含んでなる、抗体融合タンパク質またはそのフラグメント; および
(d)抗CD20 MAbまたはそのフラグメントを含む少なくとも一つの第一のMAbまたはそのフラグメント、および少なくとも一つの第二のMAbまたはそのフラグメントを含んでなり、この第二のMAbが、CD4、CD5、CD8、CD14、CD15、CD19、CD21、CD22、CD23、CD25、CD33、CD37、CD38、CD40、CD40L、CD46、CD52、CD54、CD74、CD80、CD126、B7、MUC1、MUC2、MUC3、MUC4、Ia、HM1. 24、HLA−DR、テネイシン、VEGF、PlGF、癌遺伝子、癌遺伝子産物、またはそれらの組み合わせと反応性のあるMAbである、抗体融合タンパク質またはそのフラグメント;
からなる群から選択されるMAbまたはそのフラグメントをコードするものも提供する。
【0032】
本発明はまた、上記DNA配列を含んでなる発現ベクターも包含する。ベクターがヒト化、キメラおよびヒト抗CD20 mAbまたはその抗体融合タンパク質もしくはそのフラグメントを調製することに使用される場合、これらのベクターはヒト免疫グロブリンのL鎖およびH鎖定常領域およびヒンジ領域を含む。これらのベクターはさらに、必要ならば、選択された宿主細胞中でmAbを発現するプロモーター、免疫グロブリンエンハンサーおよびシグナルまたはリーダー配列を含む。本発明による特に有用なベクターは、pdHL2またはGSであり、特にgigsのようなキメラ、ヒト化またはヒト抗体を発現するため用いられる場合は、このベクターはIgG1のH鎖およびL鎖定常領域およびヒンジ領域をコードする。より好ましくは、L鎖およびH鎖定常領域ならびにヒンジ領域は、ヒトEUミエローマ免疫グロブリン由来であり、所望によりアロタイプ位置の少なくとも一つのアミノ酸が、異なるIgG1アロタイプに見出されるアミノ酸に変えられており、所望によりEU番号システムに基づくEUのH鎖のアミノ酸253はアラニンで置換されていてもよい。Edelman et al., Proc. Natl. Acad. Sci USA63:78-85(1969)を参照されたい。この文献は引用することによりその全開示内容を本明細書の一部とする。
【0033】
宿主細胞であって本発明による抗CD20 mAbもしくはそのフラグメント、または抗体融合タンパク質もしくはそのフラグメントをコードするDNA配列を含んでなるもの、または宿主細胞であってこれらのDNA配列を含むベクターを含んでなるものが本発明に包含される。特に有用な宿主細胞は、哺乳類細胞であり、より具体的には、骨髄腫細胞のようなリンパ球細胞であり、以下により詳細を記載する。
【0034】
本発明にはまた、抗CD20 MAbもしくはそのフラグメントまたは抗体融合タンパク質もしくはそのフラグメントを発現させる方法であって、(a)抗CD20 mAbもしくはそのフラグメント、または抗体融合タンパク質もしくはそのフラグメントをコードするDNA配列を用いて哺乳類細胞をトランスフェクトし、かつ(b)このDNA配列を用いてトランスフェクトされた、抗CD20もしくはそのフラグメントまたは抗体融合タンパク質もしくはそのフラグメント分泌する細胞を培養することを含んでなる方法、も包含される。mAbを発現する宿主細胞およびマーカーを容易に選別できる選択マーカー付きのベクターを含む公知の技術を用いてもよい。
【0035】
本発明は特に、Bリンパ腫細胞および白血病細胞を標的とする診断用または治療用複合体であって、Bリンパ腫または白血病細胞に結合する本発明による抗CD20 MAbもしくはそのフラグメントまたは抗体融合タンパク質もしくはそのフラグメントを含み、少なくとも一つの診断薬または少なくとも一つの治療薬と結合している抗体成分を含んでなるものを包含する。
【0036】
この診断用複合体は、抗CD20 MAbもしくはそのフラグメントまたは抗体融合タンパク質もしくはそのフラグメントを含む抗体成分を含んでなり、この診断薬は少なくとも一つの光活性診断薬を含んでなり、より好ましくはその標識が60〜4,000keVの範囲のエネルギーを有する放射性標識または非放射性標識であるものである。この放射性標識は、好ましくはガンマ、ベータおよび陽電子放射性同位元素であり、125I、131I、123I、124I、86Y、186Re、188Re、62Cu、64Cu、111In、67Ga、68Ga、99mTc、94mTc、18F、11C、13N、15Oおよび76Brおよびその組み合わせからなる群から選択される。
【0037】
また、本発明による診断用複合体には、例えばマンガン、鉄またはガドリニウムなどの造影剤のような診断薬を用いる。
【0038】
本発明による治療用複合体は抗体融合タンパク質またはそのフラグメントを含む抗体成分を含んでなり、それぞれの上記mAbまたはそのフラグメントは、少なくとも一つの治療薬と結合している。好ましい治療用複合体は、放射性標識、免疫調節剤、ホルモン、光活性治療薬、薬物または毒素であってよい細胞傷害剤、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。本発明において有用な薬物は、抗有糸分裂剤、抗キナーゼ剤、アルキル化剤、代謝拮抗剤、抗生物質、アルカロイド剤、抗脈管形成剤、アポトーシス剤、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される薬学的特性を有するものである。より具体的には、これらの薬物は、ナイトロジェンマスタード、エチレンイミン誘導体、スルホン酸アルキル、ニトロソウレア、トリアゼン、葉酸類似体、COX−2阻害剤、ピリミジン類似体、プリン類似体、抗生物質、酵素、エピポドフィロトキシン、プラチナ錯体、ビンカアルカロイド、置換尿素、メチルヒドラジン誘導体、副腎皮質抑制剤、アンタゴニスト、エンドスタチン、タキソール、カンプトセシン、アントラサイクリン、タキサンおよびそれらの類似体、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。本発明に包含される毒素は、リシン、アブリン、アルファトキシン、サポリン、リボヌクレアーゼ(RNアーゼ)(例えばオンコナーゼ)、DNアーゼ I、ブドウ球菌内毒素A、アメリカヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質、ゲロニン、ジフテリア毒、シュードモナス(Pseudomonas)外毒素、およびシュードモナス内毒素からなる群から選択される。
【0039】
本発明による有用な治療用複合体は、サイトカイン、幹細胞増殖因子、リンホトキシン、造血因子、コロニー刺激因子(CSF)、インターフェロン(IFN)、エリスロポエチン、トロンボポエチン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される免疫調節剤である。特に有用であるのは、腫瘍壊死因子(TNF)のようなリンホトキシン、インターロイキン(IL)のような造血因子、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)または顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)のようなコロニー刺激因子、インターフェロン−α、−βまたは−γのようなインターフェロン、「S1因子」と呼ばれる幹細胞増殖因子である。より具体的には、本発明において、IL−1、IL−2、IL−3、IL−6、IL−10、IL−12、IL−18、IL−21、インターフェロン−γ、TNF−αまたはそれらの組み合わせのような免疫調節剤が有用である。
【0040】
特に有用な治療用複合体は、60〜700keVの範囲のエネルギーを有する1以上の放射性標識を含んでなる。かかる放射性標識は、225Ac、67Ga、90Y、111In、131I、125I、186Re、188Re、177Lu、32P、64Cu、67Cu、212Bi、213Bi、211Atおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される。他の有用な治療用複合体は、色素原または色素のような光活性治療薬である。
【0041】
他の有用な治療用複合体には、好ましくはB細胞悪性腫瘍の癌遺伝子、bcl−2のような癌遺伝子産物に向けられる、オリゴヌクレオチド、特にアンチセンスオリゴヌクレオチドが含まれる。
【0042】
本発明は特に、ヒト、家畜またはイヌ、ネコのようなコンパニオンペットといった哺乳類のような被検体におけるB細胞リンパ腫または白血病細胞疾患または自己免疫疾患を治療する方法であって、医薬上許容されるビヒクル中に処方された治療上有効な量の本発明による抗CD20 MAbまたはそのフラグメントを被検体に投与することを含んでなる方法を包含する。この治療法は治療薬が結合していない「裸の抗体」を利用する。「裸の抗CD20抗体」の被検体への追加投与として、治療上有効な量のもう一つの「裸の抗体」であって、標的細胞の表面上の他の抗原に結合するか反応し、またはMAbのFc部分においてエフェクター機能のような他の機能を有し、治療用でありかつ本明細書に記載のものを同時または逐次に投与することができる。好ましい追加のmAbは、医薬上許容されるビヒクル中に処方された少なくとも一つのヒト化、キメラ、ヒトまたはマウス(ヒトではない動物の場合)MAbであって、CD4、CD5、CD8、CD14、CD15、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD25、CD33、CD37、CD38、CD40、CD40L、CD46、CD52、CD54、CD74、CD80、CD126、B7、MUC1、Ia、HM1. 24およびHLA−DR、テネイシン、 VEGF、PlGF、癌遺伝子、癌遺伝子産物、またはそれらの組み合わせと反応性のあるMAbからなる群から選択されるものである。
【0043】
上記の裸の抗CD20抗体単独療法または他の裸のmAbと組み合わせる治療法の両方とも、医薬上許容されるビヒクル中に処方された治療上有効な量の少なくとも一つの治療薬を同時または逐次にさらに追加投与できる。本明細書に記載のように、この治療薬は医薬上許容されるビヒクル中に処方された細胞傷害剤、放射性標識、免疫調節剤、ホルモン、酵素、オリゴヌクレオチド、光活性治療薬またはそれらの組み合わせを含むことができる。
【0044】
他の治療法によれば、上記の裸の抗CD20抗体単独療法または他の裸のmAbと組み合わせる治療法の両方とも、医薬上許容されるビヒクル中に処方された治療上有効な量の少なくとも一つの本明細書に記載の治療用複合体を、同時または逐次にさらに追加投与することができる。この治療用複合体の抗体成分は、少なくとも一つのヒト化、キメラ、ヒトまたはマウス(ヒトではない被検体のための)MAbを含んでなり、このMAbはCD4、CD5、CD8、CD14、CD15、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD25、CD33、CD37、CD38、CD40、CD40L、CD46、CD52、CD54、CD74、CD80、CD126、B7、MUC1、MUC2、MUC3、MUC4、Ia、HM1. 24およびHLA−DR、テネイシン、VEGF、PlGF、癌遺伝子、癌遺伝子産物、またはそれらの組み合わせと反応性のあるMAbからなる群から選択されるものであり、医薬上許容されるビヒクル中に処方されるものである。本明細書に記載のように、この治療薬は医薬上許容されるビヒクル中に処方された細胞傷害剤、放射性標識、免疫調節剤、ホルモン、光活性治療薬またはそれらの組み合わせを含んむことができる。
【0045】
本明細書に記載のように、本発明は特に、被検体のB細胞リンパ腫、白血病または自己免疫疾患を治療する方法であって、被検体に医薬上許容されるビヒクル中に処方された治療上有効な量の抗体融合タンパク質またはそのフラグメントを投与することを含んでなり、ここで、この抗体融合タンパク質またはそのフラグメントが、本発明による少なくとも二種の抗CD20 mAbもしくはそのフラグメントを含んでなるか、または本発明による少なくとも一種の抗CD20 MAbもしくはそのフラグメントおよび少なくとも一種のさらなるMAb(このMAbは好ましくはCD4、CD5、CD8、CD14、CD15、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD25、CD33、CD37、CD38、CD40、CD40L、CD46、CD52、CD54、CD74、CD80、CD126、B7、MUC1、MUC2、MUC3、MUC4、Ia、HM1. 24およびHLA−DR、テネイシン、VEGF、PlGF、癌遺伝子、癌遺伝子産物、またはそれらの組み合わせと反応性のあるmAbからなる群から選択される)を含んでなる、方法を包含する。
【0046】
この治療法はさらに、医薬上許容されるビヒクル中に処方された治療上有効な量の少なくとも一種の治療薬を、被検体に同時または逐次に追加投与することが可能であり、この治療薬は好ましくは医薬上許容されるビヒクル中に処方された細胞傷害剤、放射性標識、免疫調節剤、ホルモン、光活性治療薬またはそれらの組み合わせである。
【0047】
さらに、この抗体融合タンパク質は、医薬上許容されるビヒクル中に処方された治療上有効な量の少なくとも一種の治療薬に結合している少なくとも一種のMAbを含んでなる治療用複合体として、被検体に対して同時または逐次に投与することが可能であり、この複合体のMAb成分は好ましくは、CD4、CD5、CD8、CD14、CD15、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD25、CD33、CD37、CD38、CD40、CD40L、CD46、CD52、CD54、CD74、CD80、CD126、B7、MUC1、MUC2、MUC3、MUC4、Ia、HM1. 24およびHLA−DR、テネイシン、VEGF、PlGF、癌遺伝子、癌遺伝子産物、またはそれらの組み合わせと反応性のあるMAbからなる群から選択される少なくとも一種のヒト化、キメラ、ヒトまたはマウス(ヒトではない被検体のための)MAbを含んでなる。この抗体融合タンパク質それ自体が治療薬と結合することが可能であり、従って1以上の治療薬を抗体成分に結合させるためのビヒクルを提供し、これらの治療薬は種々の列挙された異なる薬物の組み合わせ、または二つの異なる治療用放射性標識のような同じ薬物の組み合わせも可能である。また、本発明は、被検体のB細胞リンパ腫または白血病を診断する方法であって、ヒトおよび家畜およびイヌ、ネコ、ウサギ、モルモットなどのコンパニオンペットを含む哺乳類のような被検体に、抗CD20 MAbもしくはそのフラグメント、またはリンパ腫もしくは白血病細胞に結合する本発明による抗体融合タンパク質もしくはそのフラグメントを含んでなる診断用複合体を投与することを含んでなり、抗CD20 MAbもしくはそのフラグメント、または抗体融合タンパク質もしくはそのフラグメントは、医薬上許容されるビヒクル中に処方された少なくとも一種の診断薬と結合している方法を包含している。有用な診断薬は本明細書に記載されている。
【0048】
2.定義
以下の説明において、多数の専門用語が使用されており、以下、本発明を理解を容易にするために定義を示す。
【0049】
本明細書において「抗体」とは、完全な長さの(すなわち、天然または正常免疫グロブリン遺伝子フラグメント組換えプロセスにより形成される)免疫グロブリン分子(例えばIgG抗体)、または抗体フラグメントのような、免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分(すなわち、特異的結合)である。
【0050】
「抗体フラグメント」とは、F(ab')2、F(ab)2、Fab’、 Fab、Fv、scFvなどのような抗体の部分をいう。構造に関係なく、抗体フラグメントは完全な抗体により認識される同じ抗原と結合する。例えば、抗CD20モノクローナル抗体フラグメントは、CD20のエピトープと結合する。「抗体フラグメント」という語もまた、特定の抗原に結合して複合体を形成することにより抗体のようにふるまういずれの合成または遺伝子組換えタンパク質も含む。例えば、抗体フラグメントには、H鎖およびL鎖の可変領域からなる「Fv」フラグメントのような可変領域からなる単離フラグメント、L鎖およびH鎖可変領域がペプチドリンカー(「scFvタンパク質」)により接続されている組換え単鎖ポリペプチド分子、および超過変領域に類似(mimic)したアミノ酸残基からなる最小認識ユニットが含まれる。
【0051】
「裸の抗体」は一般的に治療薬と結合していない完全な抗体である。これは抗体分子のFc部分が補体結合およびADCC(抗体依存性細胞傷害)のような免疫機構を始動させ、細胞溶解を引き起こすエフェクター機能を示すためである。しかし、治療機能のためにはアポトーシスのような他のメカニズムを始動させるFc部分は必要ないであろう。裸の抗体には、ポリクローナルおよびモノクローナル抗体の双方ならびにキメラ、ヒト化またはヒト抗体のようなある種の組換え抗体が含まれる。
【0052】
「キメラ抗体」は、一つの種、好ましくは齧歯類の抗体由来の抗体の相補性決定領域(CDR)を含む可変ドメインと、ヒト抗体の定常領域由来の抗体分子の定常ドメインを含む組換えタンパク質である。獣医学領域への適用のためには、このキメラ抗体の定常ドメインは、ネコまたはイヌのような他の種由来のものであってよい。
【0053】
「ヒト化抗体」は、一つの種、例えば齧歯類抗体由来の抗体のCDRが齧歯類抗体のHおよびL可変鎖からヒトHおよびL可変ドメインに移された組換えタンパク質である。抗体分子の定常ドメインは、ヒト抗体の定常ドメイン由来である。
【0054】
「ヒト抗体」は、抗原惹起に応答して特定のヒト抗体を産生するために「操作された」トランスジェニックマウスから得られる抗体である。この技術では、ヒトH鎖およびL鎖遺伝子座のエレメントが、内在性H鎖およびL鎖遺伝子座が標的化破壊されている胚幹細胞株由来のマウス系統に導入される。このトランスジェニックマウスはヒト抗原に特異的なヒト抗体を合成することができ、このマウスをヒト抗体分泌ハイブリドーマを作製するために使用し得る。トランスジェニックマウスからヒト抗体を得るための方法は、Green et al., Nature Genet. 7:13(1994), Lonberg et al., Nature 368:856(1994), and Taylor et al.,Int. Immun. 6:579(1994)に記載されている。完全ヒト抗体はまた、遺伝子または染色体トランスフェクション法ならびにファージディスプレイ技術により構築でき、これらはすべて当技術分野において公知である。例えば、非免疫ドナー由来の免疫グロブリン可変ドメイン遺伝子レパートリーからのin vitroにおけるヒト抗体およびそのフラグメントの産生に関してはMcCafferty et al., Nature 348:552-553(1990)を参照されたい。この技術では、抗体可変ドメイン遺伝子がフレーム内で糸状バクテリオファージの主要または微量コートタンパク質遺伝子へクローニングされ、機能的抗体フラグメントとしてファージ粒子表面上に提示される。この糸状粒子はファージゲノムの単鎖DNAコピーを含み、抗体の機能特性に基づく選択も結果としてそれらの特性を示す抗体をコードする遺伝子の選択となる。このように、ファージはB細胞のいくつかの特性を模倣する。ファージディスプレイはさまざまな形式で行うことが可能であり、総説に関しては例えばJohnson and Chiswell, Current Opinion in Structural Biology 3:5564-571(1993)を参照されたい。
【0055】
ヒト抗体はまた、in vitro活性化B細胞においても産生することができる。米国特許第5,567,610号公報および同第5,229,275号公報を参照されたい。これらの文献は引用することによりその全開示内容を本明細書の一部とする。
【0056】
「治療薬」は、個別に、同時にまたは逐次に、抗体部分とともにまたは抗体部分(すなわち抗体、または抗体フラグメント、またはサブフラグメント)と結合させて投与され、疾病の治療に有用な分子または原子である。治療薬の例としては、抗体をはじめとして、抗体フラグメント、薬物、毒素、ヌクレアーゼ、ホルモン、免疫調節剤、キレート剤、ホウ素化合物、光活性薬または色素および放射性同位元素などがある。
【0057】
「診断薬」は、抗体部分(すなわち抗体、または抗体フラグメント、またはサブフラグメント)と結合させて投与され、その抗原を含む細胞を局在化することにより疾病の診断に有用である分子または原子である。有用な診断薬としては、限定されるものではないが、放射性同位元素、色素(ビオチン−ストレプトアビジン複合体)、造影剤、蛍光化合物または核磁気共鳴映像法(MRI)のための促進剤(例えば、常磁性イオン)などがある。米国特許第6,331,175号公報はMRI技術およびMRI促進剤に結合させた抗体の調製について記載しており、これらは引用することによりその全開示内容を本明細書の一部とする。好ましくは、この診断薬は放射性同位元素、核磁気共鳴影像法にて使用する促進剤、および蛍光化合物からなる群から選択される。抗体成分に放射性金属または常磁性イオンを装填するためには、イオンを結合させるための多様なキレート基を付着させた長い尾部を有する試薬と反応させる必要があろう。かかる尾部は、ポリリシン、多糖、またはキレート基に結合できるペンダント基を有する他の誘導体化または誘導体化可能な鎖であることが可能であり、例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、ポルフィリン、ポリアミン、クラウンエーテル、ビス−チオセミカルバゾン、ポリミキシン、およびこの目的のために有用なことが公知の基などが挙げられる。キレート剤は標準的な化学手法を用いてペプチド抗原に結合させる。キレート剤は通常、免疫反応性の損失が最小で、凝集および/または内部架橋結合が最小となる分子との結合を形成し得る基により抗体に連結される。キレート剤を抗体に結合させるその他のより一般的でない方法および試薬は、Hawthorneの米国特許第4,824,659号公報に記載されており、これは「抗体複合体」という表題で1989年4月25日に発行され、引用することによりその開示内容を本明細書の一部とする。特に有用な金属−キレートの組み合わせには125I、131I、123I、124I、62Cu、64Cu、18F、111In、67Ga、68Ga、99mTc、94mTc、11C、13N、15Oおよび76Brのような一般エネルギー範囲60〜400keVの診断用同位元素と共に用いられる2−ベンジルDTPAならびにそのモノメチルおよびシクロヘキシル類似体が含まれ、ラジオイメージングに用いられる。同じキレート剤がマンガン、鉄およびガドリニウムのような非放射性金属と錯体を形成した場合は、本発明による抗体と共に使用するとMRIにおいて有用である。NOTA、DOTA、およびTETAのような大環状のキレート剤は種々の金属および放射性金属と利用することができ、最も具体的にはそれぞれガリウム、イットリウム、および銅などの放射性核種が用いられる。かかる金属−キレート錯体は、環のサイズを目的の金属にあわせて調整することにより非常に安定となり得る。大環状ポリエーテルのような他のリング型キレート剤は、RAITのための223Raのような、安定に結合する核種を対照とするものであり、本発明に包含される。
【0058】
「免疫複合体」は、抗体成分と治療薬または診断薬との複合体である。この診断薬は、放射性または非放射性標識、造影剤(核磁気共鳴映像法、コンピューター断層撮影法または超音波診断法のためのもの)を含んでなり、この放射性標識はガンマ−、ベータ−、アルファ−、オージェ電子、または陽電子放射性同位元素であることができる。
【0059】
「発現ベクター」は、宿主細胞中に発現された遺伝子を含んでなるDNA分子である。通常、遺伝子発現は構成または誘導プロモーターをはじめとして、組織特異的制御エレメントおよびエンハンサーなどの、ある種の制御エレメントの調節下にある。かかる遺伝子は制御エレメントに「作動可能なように連結されている」といわれる。
【0060】
「組換え宿主」は、クローニングベクターまたは発現ベクターのどちらかを含む任意の原核または真核細胞であることができる。この語はまた、それらの原核または真核細胞、ならびに宿主細胞または宿主細胞の細胞の染色体またはゲノム中にクローン化された遺伝子を含むように遺伝子組換えされたトランスジェニック動物の細胞も含む。好適な哺乳類宿主細胞には、SP2/0細胞およびNS0細胞のような骨髄腫細胞、ならびにチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ハイブリドーマ細胞株および抗体発現に有用な他の哺乳類宿主細胞を含む。
また、mAbおよび他の融合タンパク質の発現に特に有用なものはWO 0063403 A2号公報に開示されたヒト細胞株PER.C6であり、従来の哺乳類細胞株CHO、COS、 Vero、 HeLa、 BHKおよびSP2に比べて2〜200倍の組換えタンパク質を産生する。修飾された免疫機構を有する特別なトランスジェニック動物は完全なヒト抗体を作製するために特に有用である。
【0061】
本明細書に記載のように、「抗体融合タンパク質」という語は、同じまたは異なる特異性の2以上の同じまたは異なる単鎖抗体もしくは抗体フラグメントのセグメントが連結されている、組換えにより作製された抗原結合分子を意味する。融合タンパク質の原子価は、この融合タンパク質が単一抗原またはエピトープに対する結合アーム(arm)または結合部位をいくつ有しているか(すなわち、一価、二価、三価または多価であること)を示す。抗体融合タンパク質が多価であるということは、抗原への結合において多様な相互作用を利用できることを意味し、従って抗原に結合する結合力が高まる。特異性は、抗体融合タンパク質がいくつの抗原またはエピトープに結合できるかどうか;すなわち、一重特異性、二重特異性、三重特異性、多重特異性を示す。これらの定義により、例えばIgGのような天然の抗体は、結合アームを2本持つために二価であるといえるが、この抗体は一つのエピトープに結合するために一重特異性である。一重特異性、多価融合タンパク質は、エピトープに対する1以上の結合部位を有するが、ただ一つのエピトープとしか結合せず、例えば二つの結合部位を持つダイアボディーは同じ抗原と反応性がある。融合タンパク質は単一抗体成分、異なる抗体成分の多価もしくは多重特異性の組み合わせ、または同じ抗体成分の複数のコピーを含むことができる。この融合タンパク質はさらに抗体または抗体フラグメントおよび治療薬を含むことができる。かかる融合タンパク質に好適な治療薬の例は、免疫調節剤(「抗体-免疫調節剤融合タンパク質」)および毒素(「抗体-毒素融合タンパク質」)である。好ましい一つの毒素は、リボヌクレアーゼ(RNアーゼ)であり、好ましくは組換えRNアーゼである。
【0062】
「多重特異性抗体」は、同時に少なくとも二つの異なる構造の標的、例えば二つの異なる抗原、同じ抗原上の二つの異なるエピトープ、またはハプテンおよび/または抗原、もしくはエピトープに結合できる抗体である。一つの特異性は、B細胞、T細胞、骨髄性細胞、形質細胞および肥満細胞抗原またはエピトープに対してであろう。もう一つの特異性は、B細胞上のCD20、CD19、CD21、CD23、CD46、CD80、HLA−DR、CD74、MUC1およびCD22のような、同じ細胞型上の異なる抗原であることが可能である。多重特異性、多価抗体は1以上の結合部位を有する構築体であり、その結合部位は異なる特異性を有する。例えばダイアボディー(diabody)では、一つの結合部位は一つの抗原と反応し、もう一方は他の抗原と反応する。
【0063】
「二重特異性抗体」は、同時に二つの異なる構造の標的に結合できる抗体である。二重特異性抗体(bsAb)および二重特異性抗体フラグメント(bsFab)は、例えば、B細胞、T細胞、骨髄性細胞、形質細胞および肥満細胞抗原またはエピトープに特異的に結合する少なくとも一つのアーム、および治療薬または診断薬を担持する標的化可能な複合体に特異的に結合する少なくとも一つの他のアームを有する。分子工学技術を用いて種々の二重特異性融合タンパク質を作製することができる。一つの形態においては、二重特異性融合タンパク質は一価であり、例えば一つの抗原に対する一つの結合部位を有するscFvおよび第二の抗原に対する一つの結合部位を有するFabフラグメントからなる。もう一つの形態においては、この二重特異性融合タンパク質は二価であり、例えば一つの抗原に対する一つの結合部位を有するIgGおよび第二の抗原に対する二つの結合部位を有する二つのscFvからなる。
【0064】
「イヌ化またはネコ化抗体」は、モノクローナル抗体の齧歯類(または他の種)の相補性決定領域が、齧歯類(または他の種)免疫グロブリンのH鎖およびL鎖可変領域から、それぞれイヌまたはネコの免疫グロブリン可変ドメイン中に移されている組換えタンパク質である。
【0065】
「家畜」は、ウマ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ラマ、アルパカおよびブタのような大動物、ならびにコンパニオン動物を含む。好ましい実施形態においては、家畜はウマである。
【0066】
「コンパニオン動物」は、ペットとして飼われる動物を含む。これらは原則としてイヌおよびネコであるが、モルモット、ハムスター、ラットおよびフェレットのような小齧歯類、またサルのような類人霊長類も含まれる。好ましい実施形態において、コンパニオン動物とはイヌまたはネコである。
【0067】
3.キメラ、ヒト化およびヒト抗体をはじめとするモノクローナル抗体の調製
モノクローナル抗体(MAb)は特定の抗原に対する抗体の均質な集団であり、その抗体はただ一種の抗原結合部位を含んでなり、抗原決定基上のただ一つのエピトープに結合する。特定の抗原に対する齧歯類モノクローナル抗体は、当業者に公知の方法により得ることができる。例えば、Kohler and Milstein, Nature256:495(1975), and Coligan et al.(eds.), CURRENT PROTOCOLS IN IMMUNOLOGY, VOL. 1, pages 2.5. 1- 2.6. 7(John Wiley & Sons 1991)[以下「Coligan」]を参照されたい。簡単にいえば、マウスに抗原を含む組成物を注射し、血清サンプルを採取して抗体産生を確認し、脾臓を切除してBリンパ球を採取し、そのBリンパ球と骨髄腫細胞を融合させてハイブリドーマを作製してクローニングし、抗原に対する抗体を産生する陽性クローンを選択し、抗原に対する抗体を産生するクローンを培養して、その抗体をハイブリドーマ培養液から単離することによりモノクローナル抗体を得ることができる。
【0068】
MAbは、ハイブリドーマ培養液から種々の十分確立された技術により単離、精製できる。かかる単離技術には、Aタンパク質セファロースを用いるアフィニティークロマトグラフィーをはじめとして、サイズ排除クロマトグラフィーおよびイオン交換クロマトグラフィーなどがある。例えば、Coligan at pages 2.7. 1-2.7. 12 and pages 2.9. 1-2.9. 3.を参照されたい。また、Baines et al.,"Purification of Immunogloburin G (IgG),"in METHODS IN MOLECULAR BIOLOGY, VOL. 10, pages 79-104(The Humana Press, Inc. 1992)も参照されたい。
【0069】
免疫原に対する最初の抗体価上昇後に、その抗体の配列を決定し、次いで組換え技術により作製することができる。マウス抗体および抗体フラグメントのヒト化およびキメラ化は当業者に十分公知である。例えば、ヒト化モノクローナル抗体は、マウス免疫グロブリンのHおよびL可変鎖由来のマウス相補性決定領域をヒト可変ドメインに移し、次いでフレームワーク領域中のヒト残基をマウスの対応部分と置換することにより作製する。ヒト化モノクローナル抗体由来の抗体成分を使用することによってマウス定常領域の免疫原性に伴う問題を防ぐ。
【0070】
マウス免疫グロブリン可変ドメインのクローニングのための一般的な技術は、例えばOrlandi et al., Proc.Nat7 Acad. Sci. USA 86:3833(1989)に記載されており、これは引用することによりその全開示内容を本明細書の一部とする。キメラ抗体構築のための技術は当業者に十分公知である。例えば、Leung et al., Hybridoma 13:469 (1994)は、LL2モノクローナル抗体、抗CD22抗体のVKおよびVHドメインをコードするDNA配列をそれぞれのヒトκおよびIgG1定常領域ドメインと組み合わせてLL2キメラを作製した方法が記載されている。この文献はまた、LL2のL鎖およびH鎖可変領域のヌクレオチド配列、VKおよびVHをそれぞれ提供する。ヒト化MAbを産生する技術は、例えばJones et al., Nature321:522(1986),Riechmann et al., Nature 332:323(1988), Verhoeyen et al., Science 239:1534(1988), Carter et al., Proc.Nat'l Acad. Sci. USA 89:4285 (1992), Sandhu, Crit. Rev. Biotech. 12:437(1992), and Singer et al.,J Immun. 150:2844(1993)に記載されており、これらはそれぞれ引用することによりその全開示内容を本明細書の一部とする。
【0071】
キメラ抗体は、齧歯類抗体のような一種の動物由来のCDRを含む可変ドメインを含む組換えタンパク質であり、抗体分子の残りの部分、すなわち定常領域はヒト抗体由来である。従って、キメラモノクローナル抗体はまた、キメラMAbの可変ドメイン中のマウスFR配列を、1以上の異なるヒトFRと置換することによりヒト化し得る。具体的には、マウスCDRをマウス免疫グロブリンのHおよびL可変鎖からヒト抗体の相当する可変ドメインに移動させる。マウスCDRをヒトFRに単に移動させるだけでは、しばしば抗体親和性の低下または損失さえ起こるために、マウス抗体の元の親和性を回復させるためにはさらなる修飾が必要であろう。これは、そのエピトープに対する良好な結合親和性を有する抗体を得るために、FR領域の1以上のいくつかのヒト残基をマウスの相当部分と置換することにより達成し得る。例えば、Tempest et al., Biotechnology 9:266(1991)and Verhoeyen et al., Science 239:1534(1988)を参照されたい。さらに、ヒト化、キメラおよびヒトMAbの特定のエピトープに対する親和性は、CDRの突然変異誘発により高めることができ、その結果、より低用量の抗体が突然変異前の高用量の低親和性MAbと同等の有効性を示し得る。例えば、W00029584A1号公報を参照されたい。
【0072】
本発明の抗体を作製するもう一つの方法は、トランスジェニック家畜のミルク中での産生である。例えば、Colman, A., Biochem. Soc. Symp., 63:141-147,1998 ; 米国特許第5,827,690号公報を参照されたい。双方とも引用することによりその全開示内容を本明細書の一部とする。対をなす免疫グロブリンH鎖およびL鎖をコードするDNAセグメントをそれぞれ含む二つのDNA構築体を調製した。このDNAセグメントを、哺乳類上皮細胞中で優先的に発現されるプロモーター配列を含む発現ベクターへクローニングする。実施例は、限定されるものではないが、ウサギ、ウシおよびヒツジのカゼイン遺伝子、ウシα−ラクトグロブリン遺伝子、ヒツジβ−ラクトグロブリン遺伝子、およびマウスホエー酸タンパク質遺伝子由来のプロモーターを含む。好ましくは、挿入されたフラグメントの3’部位に哺乳類特異的遺伝子由来の同族のゲノム配列が隣接する。これによりポリアデニル化部位および転写安定化配列が備わる。この発現カセットを受精した哺乳類の卵子の前核に同時注入し、次いでレシピエント雌の子宮に着床させて妊娠させた。出産後、トランス遺伝子の存在についてサザン分析でその子孫をスクリーニングした。抗体が存在するためには、H鎖およびL鎖遺伝子双方が同時に同じ細胞中で発現されなければならない。トランスジェニック雌動物から得たミルクを当技術分野で公知の標準的免疫学的方法により、該抗体または抗体フラグメントの存在と機能性を分析した。この抗体は当技術分野で公知の標準的方法により、ミルクから精製できる。
【0073】
ヒト化、キメラまたはヒト抗CD20抗体とともに組み合わせる療法のための、本発明の完全なヒト抗体、すなわちヒト抗CD20 MAb、または抗CD22、抗CD19、抗CD23、または抗CD21MAbのような他のヒト抗体は、トランスジェニック非ヒト動物から得ることができる。例えば、Mendez et al., Nature Genetics, 15:146-156(1997); 米国特許第5,633,425号公報を参照されたい。これらは引用することによりその全開示内容を本明細書の一部とする。例えばヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン遺伝子座を有するトランスジェニックマウスから回収できる。このマウス体液性免疫機構は、内在性免疫グロブリン遺伝子を不活性化して、ヒト免疫グロブリン遺伝子座を導入することによりヒト化されている。このヒト免疫グロブリン遺伝子座は非常に複雑で、合わせてヒトゲノムのほぼ0.2%を占める多数の不連続セグメントを含んでなる。トランスジェニックマウスの適切な抗体レパートリー産生を確実にするために、ヒトH鎖およびL鎖遺伝子座の大部分をマウスゲノム中に導入しなくてはならない。これは、生殖細胞系構成における、ヒトH鎖またはL鎖免疫グロブリン遺伝子座を含む酵母人工染色体(YAC)の形成から始まる段階的なプロセスで達成される。それぞれの挿入体はほぼ1Mbのサイズなので、YAC構築体は免疫グロブリン遺伝子座の重複フラグメントの相同的組換えを必要とする。YAC含有酵母スフェロプラストとマウス胚幹細胞を融合させて、一つはH鎖遺伝子座、もう一つはL鎖遺伝子座を含む二つのYACを、別々にマウスに導入する。次いで、胚幹細胞クローンをマウス胚盤胞に微量注入する。その結果得られたキメラ雄動物における生殖細胞系統を介するYAC伝達能力に関してスクリーニングし、マウス抗体産生を欠損しているマウスを繁殖させた。二種のトランスジェニック系統のマウスを繁殖させ、一種はヒトH鎖の遺伝子座を含み、もう一種はヒトL鎖遺伝子座を含み、免疫に反応してヒト抗体を産生する子孫をつくる。
【0074】
二重特異性mAbを産生するさらなる最新の方法は、付加的なシスチン残基を有し、より一般的な免疫グロブリンアイソタイプよりもより強く架橋結合している人工的組換えMAbを含む。例えば、FitzGerald et al., Protein Eng. 10(10):1221-1225,1997を参照されたい。もう一つのアプローチは、2以上の異なる単鎖抗体または必要とされる二重特異性を有する抗体フラグメントセグメントを連結する組換え融合タンパク質の設計である。例えば、Coloma et al., Nature Biotech. 15:159-163,1997を参照されたい。分子工学技術を用いて様々な二重特異性融合タンパク質を作製できる。一つの形態においては、二重特異性融合タンパク質は一価であり、例えば一つの抗原に対する一つの結合部位を有するscFvと第二の抗原に対する一つの結合部位を有するFabフラグメントからなる。もう一つの形態においては、二重特異性融合タンパク質は二価であり、例えば、一つの抗原に対し二つの結合部位を有するIgGと、第二の抗原に対する二つの結合部位を有するscFvからなる。
【0075】
2以上の異なる単鎖抗体または抗体フラグメントを連結している二重特異性融合タンパク質も、同様の方法で作製する。組換え法は種々の融合タンパク質を作製するために用いることができる。例えば、ヒト化モノクローナル抗CD20抗体由来のFabフラグメントおよびマウス抗diDTPA由来のscFvを含んでなる融合タンパク質を作製することができる。
【0076】
GGGSのような柔軟なリンカーは、scFvを抗CD20抗体のH鎖定常領域に結合させる。あるいは、scFvはもう一つのヒト化抗体のL鎖定常領域に結合し得る。H鎖FdのscFvとのフレーム内結合のために必要な適当なリンカー配列は、PCR反応を介してVLおよびVKドメインに導入される。次いでscFvをコードするDNAフラグメントをCH1ドメインをコードするDNA配列を含むステージングベクターに連結する。これにより得られたscFv−CH1構築体を切り取って、抗CD20抗体のVH領域をコードするDNA配列を含むベクター中に連結する。得られたベクターは、二重特異性融合タンパク質発現のための哺乳類細胞のような適当な宿主細胞をトランスフェクトするために使用し得る。
【0077】
4.抗体フラグメントの産生
特定のエピトープを認識する抗体フラグメントは、公知の技術により作製し得る。抗体フラグメントは、F(ab')2、Fab'、Fab、Fv、sFvなどの抗体の抗原結合部位である。他の抗体フラグメントには、限定されるものではないが、抗体分子のペプシン消化により作製できるF(Ab)'2フラグメント、およびF(ab')2フラグメントのジスルフィド結合を還元することにより作製できるFab'フラグメントが含まれる。あるいは、所望の特異性を有するモノクローナルFab’フラグメントの迅速で容易な同定を可能にするFab’発現ライブラリーを構築できる(Huse et al., 1989, Science, 246:1274-1281)。本発明は抗体および抗体フラグメントを包含する。
【0078】
単鎖Fv分子(scFv)は、VLドメインおよびVHドメインを含んでなる。このVLおよびVHドメインは組み合わさって標的結合部位を形成している。これらの二つのドメインはペプチドリンカー(L)によりさらに共有結合している。scFv分子は、VLドメインがscFv分子のN末端部である場合、VL−L−VH、またはVHドメインがscFv分子のN末端部である場合、VH−L−VLと表される。scFv分子の作製法、および好適なペプチドリンカーの設計法は、米国特許第4,704,692号公報、同第4,946,778号公報, R. Raag and M. Whitlow,"Single Chain Fvs."FASEB Vol 9:73-80(1995)and R. E. Bird and B. W. Walker,"Single Chain Antibody Variable Regions,"TIBTECH, Vol 9:132-137(1991)を参照されたい。これらは引用することによりその全開示内を本明細書の一部とする。
【0079】
抗体フラグメントは、完全な長さの抗体のタンパク質加水分解、または大腸菌(E.coli)における発現、もしくはフラグメントをコードするDNAの他の宿主中での発現により調製してよい。抗体フラグメントは、常法により完全な長さの抗体をペプシンまたはパパインを用いて消化することにより得られる。例えば、抗体フラグメントは抗体をペプシンで酵素的切断して、F(ab’)2と表される5Sフラグメントを与えることにより作製し得る。このフラグメントはチオール還元剤、所望によりジスルフィド結合の切断により生じるスルフヒドリル基の保護基を用いてさらに切断可能で、3.5SFab’一価フラグメントが得られる。あるいは、パパインを用いる酵素的切断により二つの一価Fabフラグメントと一つのFcフラグメントが直接的に生じる。これらの方法は、例えば、Goldenbergの米国特許第4,036,945号公報および同第4,331,647号公報に記載されており、そこに含まれる参考文献、その特許は引用することによりその全開示内を本明細書の一部とする。また、Nisonoff et al., Arch Biochem. Biophys. 89:230(1960); Porter, Biochem. J 73:119(1959), Edelman et al., in METHODS IN ENZYMOLOGY VOL. 1, page 422(Academic Press 1967), and Coligan at pages 2.8. 1-2.8. 10 and 2.10.-2. 10.4.も参照されたい。
【0080】
抗体フラグメントのもう一つの形態は、単一相補性決定領域(CDR)をコードするペプチドである。CDRは抗体の可変領域のセグメントであり、抗体が結合するエピトープに対し相補的な構造であり、残りの可変領域よりもさらに変化に富んでいる。従って、CDRはしばしば超過変領域と呼ばれる。可変領域は三つのCDRを含んでなる。CDRペプチドは、問題の抗体のCDRをコードする遺伝子を構築することにより得られる。かかる遺伝子は、例えば抗体産生細胞のRNAから可変領域を合成するためのポリメラーゼ連鎖反応を用いて調製される。例えば、Larrick et al., Methods:A Companion to Methods in Enzymology 2:106(1991);Courtenay-Luck,"Genetic Manipulation of Monoclonal Antibodies, "in MONOCLONAL ANTIBODIES:PRODUCTION, ENGINEERING AND CLINICAL APPLICATION, Ritter et al.(eds.), pages 166-179 (Cambridge University Press 1995); and Ward et al.,"Genetic Manipulation and Expression of Antibodies, "in MONOCLONAL ANTIBODIES:PRINCIPLES AND APPLICATIONS, Birch et al., (eds.), pages 137-185 (Wiley-Liss, Inc. 1995)を参照されたい。
【0081】
H鎖を分離して一価L−H鎖フラグメントを形成し、さらにフラグメントを切断するような抗体を切断する他の方法、フラグメントが無傷の抗体により認識される抗原に結合する限りは、他の酵素学的、化学的または遺伝子技術も用いてよい。
【0082】
5.多重特異的および多価抗体
組み合わせ療法で使用するための本明細書に記載の抗CD20抗体、ならびに異なる特異性を有する他の抗体はまた、多重特異的抗体(CD20エピトープまたは抗原に対する少なくとも一つの結合部位、およびもう一つのCD20上のエピトープまたはもう一つの抗原に対する少なくとも一つの結合部位を含んでなる)、ならびに多価抗体(同じエピトープまたは抗原に対する複数の結合部位を含んでなる)としても作製し得る。多価の標的結合タンパク質は、米国出願番号第09/911,610号公報(Leung et al.)に記載されており、これは引用することによりその全開示内を本明細書の一部とする。
【0083】
本発明は、標的細胞マーカーに特異的に結合する少なくとも一つの結合領域、および標的化可能な複合体に特異的に結合する少なくとも一つの他の結合領域を有する、二重特異的抗体または抗体フラグメントを提供する。標的化可能な複合体は、二重特異性抗体または抗体フラグメントの少なくとも一つの結合領域により認識される少なくとも一つのエピトープを含んでなるか担持する、担体部分を含んでなる。
【0084】
前記のような二重特異性抗体および抗体フラグメントを作製するために、様々な組換え法を使用できる。
【0085】
本発明では、抗CD20多価抗体もまた意図されている。この多価標的結合タンパク質は、第一および第二のポリペプチドの結合により構築される。第一のポリペプチドは、好ましくは免疫グロブリンL鎖可変領域ドメインである第一の免疫グロブリン様ドメインに共有結合した第一の単鎖Fv分子を含んでなる。第二のポリペプチドは、好ましくは免疫グロブリンH鎖可変領域ドメインである第二の免疫グロブリン様ドメインに共有結合した第二の単鎖Fv分子を含んでなる。それぞれ第一および第二の単鎖Fv分子は標的結合部位を形成し、第一および第二の免疫グロブリン様ドメインは結合して第三の標的結合部位を形成する。
【0086】
VL−L−VH立体配置の単鎖Fv分子(ただしLはリンカー)は、もう一つのVH−L−VL立体配置の単鎖Fv分子と結合し、二価の二量体を形成し得る。この場合、第一のscFvのVLドメインおよび第二のscFv分子のVHドメインは結合して一つの標的結合部位を形成し、一方、第一のscFvのVHドメインおよび第二のscFvのVLドメインは結合してもう一方の標的結合部位を形成する。
【0087】
本発明の他の態様によれば、非共有結合して三つの結合部位を形成し、その内の二つが一つの標的に対し親和性を持ち、第三の結合部位は作製可能で診断薬および/または治療薬のための担体に結合しているハプテンに親和性を持つ、二つの異種ポリペプチド鎖を含んでなるCD20二重特異性、三価の標的化タンパク質である。好ましくは、その結合タンパク質は二つのCD20結合部位および一つのCD22結合部位を有する。この二重特異性、三価の標的化薬は二つの異なるscFvを有し、第一のscFvは短いリンカーにより他の抗体のVLドメインに連結された一つの抗体由来の二つのVHドメインを含み、第二のscFvは短いリンカーにより他の抗体のVHドメインに連結された第一の抗体由来の二つのVLドメインを含む。VHおよびVLドメインから多価、多重特異的薬剤を作製するこれらの方法によれば、多価および多重特異的ないずれの薬物でも1つのVH鎖および1つのVL鎖の非共有結合により作製し得るという方法により、宿主微生物中にてDNAプラスミドから合成された個々の鎖が完全なVHドメイン(VH鎖)または完全なVLドメイン(VL鎖)から構成されることになる。例えば、三価の三重特異性薬物の形成では、VH鎖は三つのVHドメインのアミノ酸配列からなり、それぞれのドメインは異なる特異性の抗体由来であり、種々の長さのペプチドリンカーにより連結され、またVL鎖は相補性VLドメインからなり、VH鎖に使用されたものと類似のペプチドリンカーにより連結される。抗体のVHおよびVLドメインは逆平行に結合しているため、本発明の好ましい方法では、VL鎖のVLドメインはVH鎖のVHドメインとは逆の順序で配置されている。
【0088】
6.ダイアボディー、トリアボディー(triabody)およびテトラボディー(tetrabody)
本発明による抗CD20抗体はまた、ダイアボディー(diabody)とも呼ばれる、機能性二重特異性単鎖抗体(bscAb)の調製に使用することができ、組換え法により哺乳類細胞中にて作製できる。例えば、引用することにより本明細書の一部とされる、Mack et al., Proc. Natl. Acad. Sci., 92:7021-7025,1995を参照されたい。例えば、bscAbは組換え法によりグリシン−セリンリンカーを介して二つの単鎖Fvフラグメントを結合させて作製する。問題の二つの抗体のVL鎖(VL)およびVH鎖(VH)ドメインは、標準的PCR法により単離される。次にそれぞれのハイブリドーマから得られたcDNAのVLおよびVHは、二つの工程の融合PCRにおいて結合されて単鎖フラグメントを形成する。第一のPCR工程では(Gly4−Ser1)3リンカーを導入し、第二の工程ではVLおよびVL単位複製配列を結合させる。次いでそれぞれの単鎖分子を細菌発現ベクターへクローニングする。増幅後に単鎖分子の一つを切り出して問題の第二の単鎖分子を含む他のベクターへサブクローニングする。その結果得られたbscAbフラグメントを真核細胞発現ベクターへサブクローニングする。機能性タンパク質の発現は、そのベクターをチャイニーズハムスター卵巣細胞へトランスフェクトすることにより行われる。二重特異性融合タンパク質は同様の方法にて調製される。二重特異性単鎖抗体および二重特異性融合タンパク質は本発明の範囲内に含まれる。
【0089】
例えば、ヒト化、キメラ、またはヒト抗CD20モノクローナル抗体を、抗原特異的ダイアボディー、トリアボディー、およびテトラボディーを作製するために使用し得る。この単一特異的ダイアボディー、トリアボディー、およびテトラボディーは選択的に標的抗原に結合し、分子上の結合部位数が増加すると標的細胞に対する親和性が高まり、所望の位置における滞留時間が長くなることが観察される。ダイアボディーに関しては、5つのアミノ酸残基リンカーによりヒト化CD20 MAbのVKポリペプチドに連結されたヒト化CD20 MAbのVHポリペプチドを含んでなる二つの鎖が利用される。各々の鎖はヒト化CD20ダイアボディーの1/2を形成する。トリアボディーの場合、ヒト化CD20 MAbのVKポリペプチドにリンカーは介さず連結されたヒト化CD20 MAbのVHポリペプチドを含んでなる三つの鎖が利用される。各々の鎖はhCD20トリアボディーの1/3を形成する。
【0090】
本明細書に記載の二重特異性ダイアボディーは最終的に、後に続く診断薬または治療薬の特異的送達のために、CD20陽性腫瘍をプレターゲッティングするために使用する。これらのダイアボディーは標的抗原に選択的に結合し、親和性を高め、所望の位置における滞留時間を延長する。さらに、抗原と結合していないダイアボディーは体内から迅速に排泄され、正常組織の曝露は最小限に抑えられる。クリアランス速度を増すための二重特異性抗体の点突然変異は、Qu et al.の米国仮出願第60/361,037号公報(Atty Docket No. 18733/1037)に見出され得る。これは引用することによりその全開示内を本明細書の一部とする。親和性を高めるための二重特異性ダイアボディーは米国出願第10/270,071号公報(Rossi et al.)、同第10/270,073号公報(Rossi et al.)および同第10/328,190号公報(Rossi et al.)に開示され、これらは引用することによりその全開示内を本明細書の一部とする。診断薬および治療薬には、放射性同位元素をはじめとして、薬物、毒素、サイトカイン、ホルモン、増殖因子、複合体、放射性核種および金属などがある。例えば、ガドリニウム金属が、核磁気共鳴映像法(MRI)に用いられる。放射性核種の例としては、225Ac、18F、68Ga、67Ga、90Y、86Y、111In、131I、125I、123I、99mTc、94mTc、186Re、188Re、177Lu、62Cu、64Cu、67Cu、212Bi、213Bi、32P、11C、13N、15O、76Br、および211Atなどが挙げられる。特にエネルギー範囲が60〜4,000keVの他の放射性核種も診断薬および治療薬として利用可能である。
【0091】
さらに最近では、二重特異性を持つ四価タンデムダイアボディー(tandabと呼ばれる)も報告されている(Cochlovius et al., Cancer Research(2000) 60:4336-4341)。この二重特異性tandabは二つの同一ポリペプチドの二量体であり、それぞれが二つの異なる抗体の四つの可変ドメインを含み(VH1、VL1、VH2、VL2)、これは自己会合に際してそれぞれの二つの異なる特異性のための二つの可能性のある結合部位の形成を容易にする方向に連結されている。
【0092】
7.結合多価および多重特異性抗CD20抗体
本発明の他の態様によれば、結合多価抗CD20抗体が提供される。第一または第二のポリペプチドのNまたはC末端に、さらなるアミノ酸残基を加えることができる。このさらなるアミノ酸残基は、ペプチドタグ、シグナルペプチド、サイトカイン、酵素(例えば、プロドラッグ活性化酵素)、ホルモン、シュードモナス外毒素のようなペプチド毒素、ペプチド薬、細胞傷害性タンパク質または他の機能性タンパク質を含むことができる。本明細書で使用されているように機能性タンパク質とは生物学的機能を有するタンパク質である。
【0093】
ある一つの態様によれば、薬物、毒素、放射性化合物、酵素、ホルモン、細胞傷害性タンパク質、キレート剤、サイトカインおよび他の機能性薬を、多価標的結合タンパク質に結合させてよく、好ましくはこの多価標的結合タンパク質のアミノ酸残基の側鎖、例えばアミン、カルボキシル、フェニル、チオールまたはヒドロキシル基に共有結合を介して結合させることができる。
【0094】
例えば、ジイソシアネート、ジイソチオシアネート、ビス(ヒドロキシスクシンイミド)エステル、カルボジイミド、マレイミド−ヒドロキシスクシンイミドエステル、グルタルアルデヒドなどの種々の慣用されるリンカーをこの目的のために用いてよい。多価タンパク質への薬物の結合は、このタンパク質のその標的に対する結合特異性または親和性にあまり影響しないことが好ましい。本明細書で用いられているように、機能性薬物とは生物学的機能を有する薬物である。好ましい機能性薬物は細胞傷害剤である。
【0095】
さらに他の態様によれば、二重特異性抗体によって指示される治療薬またはプロドラッグポリマーのin vivo標的への送達は、放射性核種の二重特異性抗体送達と組み合わせることが可能なので、化学療法と免疫療法とを組み合わせることができる。各々の治療法では標的化可能な複合体と複合体形成させて同時に投与することができ、また核種は第一の標的化可能な複合体の一部として投与し、薬物は後の工程にて第二の標的化可能な複合体の一部として投与することができる。
【0096】
他の態様によれば、細胞傷害剤は高分子担持体と結合させ、次いでその高分子担体を多価標的結合タンパク質と結合させてよい。この方法に関しては、Ryser et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 75:3867-3870, 1978, 米国特許第4,699,784号公報および同第4,046,722号公報を参照されたい。これらは引用することによりその全開示内容を本明細書の一部とする。複合体とすることは多価結合タンパク質の結合特異性または親和性に大きく影響しないことが好ましい。
【0097】
8.ヒト化、キメラおよびヒト抗体の治療および診断への使用
本明細書に記載の本発明のヒト化、キメラおよびヒトモノクローナル抗体、すなわち抗CD20 MAbおよび他のMAbは、治療法および診断法における使用に好適である。従って、本発明は、本発明によるヒト化、キメラおよびヒト抗体の裸の抗体としての単独投与、または多様な療法として、投与計画に従って一時的に、治療薬と結合させずに投与することを含んでなる。裸の抗CD20 MAbは、1以上の他の裸の抗体すなわちCD4、CD5、CD8、CD14、CD15、CD19、CD21、CD22、CD23、CD25、CD33、CD37、CD38、CD40、CD40L、CD46、CD52、CD54、CD74、CD80、CD126、B7、MUC1、Ia、HM1. 24およびHLA−DR、テネイシン、 VEGF、PlGF、癌遺伝子、癌遺伝子産物、またはそれらの組み合わせのような特定の抗原に対するMAb、1以上の抗CD20の免疫複合体、または治療薬(薬物、毒素、免疫調節剤、ホルモン、治療用放射性核種など)を結合させた上記に列挙された抗原に対する抗体、MAbともに同時にまたは連続して、または規定の投与処方に従って投与される1以上の治療薬(薬物、毒素、免疫調節剤、ホルモン、治療用放射性核種など)で補完することによりその有効性を増大させることができる。好ましいB細胞抗原には、ヒトCD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD46、CD52、CD74、CD80およびCD5抗原と同等なものが含まれる。好ましいT細胞抗原には、ヒトCD4、CD8およびCD25(IL-2レセプター)抗原と同等なものが含まれる。HLA−DR抗原同等物はB細胞およびT細胞の異常双方の治療に使用できる。特に好ましいB細胞抗原はヒトCD19、CD22、CD21、CD23、CD74、CD80およびHLA-DR抗原と同等なものである。特に好ましいT細胞抗原は、ヒトCD4、CD8およびCD25抗原と同等なものである。CD46は癌細胞表面上の抗原で、補体依存性溶解(CDC)を阻害する。
【0098】
さらに、本発明はB細胞リンパ腫および他の疾患または異常における診断および治療のための免疫複合体の投与を意図する。本明細書に記載のように、免疫複合体は、抗体成分および診断薬もしくは治療薬を担持するペプチドをはじめとする、治療薬または診断薬を含んでなる分子である。免疫複合体は、抗体成分の免疫反応性を保持しており、すなわち抗体部分の複合体形成前と複合体形成後の同起源抗原に対する結合能力はほぼ同等か、わずかに低下している。
【0099】
多種多様な診断薬および治療薬が、本発明の抗体と有利にも結合できる。本明細書に列挙された治療薬は、前記のように裸の抗体とは別々に投与しても有用である。例えば治療薬には、ビンカアルカロイド、アントラサイクリン、エピトフィロトキシン、タキサン、抗代謝剤、アルキル化剤、抗キナーゼ剤、抗生物質、Cox−2阻害剤、抗有糸分裂剤、抗脈管形成剤およびアポトーシス剤、特にドキソルビシン、メトトレキサート、タキソール、CPT−11、カンプトテカン、およびこれらまたは他の種類の抗癌剤由来の薬物などの化学療法薬が含まれる。免疫複合体および抗体融合タンパク質の調製に有用な他の癌化学療法薬には、ナイトロジェンマスタード、アルキルスルホネート、ニトロソウレア、トリアゼン、葉酸類似体、COX−2阻害剤、ピリミジン類似体、プリン類似体、プラチナ錯体、ホルモンなどがある。好適な化学療法薬はREMINGTON'S PHARMACEUTICAL SCIENCES,19th Ed.(Mack Publishing Co. 1995), and in GOODMAN AND GILMAN'S THE PHARMACOLOGICAL BASIS OF THERAPEUTICS, 7th Ed. (MacMillan Publishing Co. 1985)およびこれらの出版物の改訂版に記載されている。実験薬のような他の好適な化学療法薬は、当業者に公知である。
【0100】
これに加えて、DTPA、DOTA、TETAまたはNOTAのようなキレート剤または好適なペプチドに、蛍光分子のような検出可能な標識または、重金属もしくは放射性核種のような細胞傷害剤を結合させ得る。例えば、治療上有用な免疫複合体は、光活性薬または抗体成分に対する色素を結合させることにより得られる。蛍光色素のような蛍光組成物、および他の色素原、またはポルフィリンのような色素は、可視光線に感受性であり、好適な光線を病巣に向けることにより病巣の検出および治療に使用されてきた。治療においては、これは光照射、光療法または光線力学療法と呼ばれている。(Jori et al. (eds.), PHOTODYNAMIC THERAPY OF TUMORS AND OTHER DISEASES(Libreria Progetto 1985); van den Bergh, Chem. Britain 22:430(1986))さらに、光療法を行うためにはモノクローナル抗体を光活性化色素と結合させる。Mew et al., J.Immunol. 130:1473(1983);idem., Cancer Res. 45:4380(1985);Oseroff et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83:8744(1986); idem.,Photochem. Photobiol. 46:83(1987); Hasanet al., Prog. Clin. Biol. Res.288:471(1989); Tatsuta et al., Lasers Surg. Med.9:422(1989); Pelegrin et al., Cancer 67:2529(1991)を参照されたい。しかし、これらの初期の研究には、特に抗体フラグメントまたはサブフラグメントを伴った内視鏡的治療の適用は含まれていない。従って本発明は、光活性薬または色素を含んでなる免疫複合体の使用を含んでなる。
【0101】
放射性および非放射性薬の診断薬としての使用もまた、本発明に包含される。好適な非放射性診断薬は、核磁気共鳴映像法、コンピューター断層撮影法または超音波診断法に好適な造影剤である。核磁気共鳴用造影剤には、本発明の抗体と共に用いられる場合には、例えば、2−ベンジル−DTPAならびにそのモノメチルおよびシクロヘキシル類似体を含む金属キレート剤と、錯体を形成したマンガン、鉄およびガドリニウムのような非放射性金属が含まれる。米国出願番号第09/921,290号公報(filed on October 10,2001)を参照されたい。これは引用することによりその全開示内容を本明細書の一部とする。
【0102】
さらに、放射性標識抗体または免疫複合体は、画像診断に有用なγ線を放射する放射性同位元素または陽電子放射体を含んでよい。、特にエネルギー範囲が60〜4,000keVの好適な放射性同位元素には、131I、123I、124I、86Y、62Cu、64Cu、111In、67Ga、68Ga、99mTc、94mTc、18F、11C、13N、15Oおよび75Brなどが含まれる。例えば、米国特許出願「Labeling Targeting Agents with Gallium-68」Inventors G. L.Griffiths and W. J. McBride(米国仮出願第60/342,104号)には、18F、68Gaおよび94mTcなどのような造影を目的とする陽電子放射体が開示されており、これは引用することによりその全開示内容を本明細書の一部とする。特に有用な治療用放射性核種には、限定されるものではないが、32P、33P、47Sc、64Cu、67Ga、90Y、111Ag、111In、125I、131I、142Pr、153Sm、161Tb、166Dy、166Ho、177Lu、186Re、188Re、189Re、212Pb、212Bi、213Bi、211At、223Raおよび225Acが含まれる。特に有用な診断/検出放射性核種には、限定されるものではないが、18F、52Fe、62Cu、64Cu、67Ga、68Ga、86Y、89Zr、94mTc、94Tc、99mTc、111In、123I、124I、125I、131I、154−158Gd、32P、90Y、186Re、および175Luが含まれる。
【0103】
シュードモナス外毒素のような毒素も複合体を形成し、本発明の抗CD20抗体の抗体融合タンパク質の治療薬部分を形成してよい。かかる複合体または他の融合タンパク質の調製に適切に使用された他の毒素には、リシンをはじめとして、アブリン、リボヌクレアーゼ(RNアーゼ)、DNアーゼ I、ブドウ球菌内毒素−A、アメリカヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質、ゲロニン、ジフテリア毒、シュードモナス外毒素、およびシュードモナス内毒素が含まれる。例えば、Pastan et al., Cell 47:641(1986), and Goldenberg,CA-A Cancer Journal for Clinicians 44:43(1994)を参照されたい。本発明にて使用するために好適なさらなる毒素は当業者に公知であり、米国特許第6,077,499号公報に開示されており、これは引用することによりその全開示内容を本明細書の一部とする。
【0104】
サイトカインのような免疫調節剤もまた、抗体融合タンパク質の治療薬部分に結合させ、または抗体融合タンパク質の治療薬部分を形成してよく、または本発明のヒト化抗CD20抗体とともに投与してよい。本発明に好適なサイトカインには、限定されるものではないが、後述のようにインターフェロンおよびインターロイキンが含まれる。
【0105】
米国出願番号第5,734,033号公報(Reed)に記載され、引用することによりその全開示内容を本明細書の一部とするbcl−2発現を阻害しているアンチセンス分子のオリゴヌクレオチドもまた抗体融合タンパク質の治療薬部分に結合させてよく、または抗体融合タンパク質の治療薬部分を形成してよく、または本発明のヒト化抗CD20抗体とともに投与してよい。
【0106】
9.免疫複合体の調製
本発明によるいずれの抗体または抗体融合タンパク質も、1以上の治療薬または診断薬と結合し得る。一般に、一種の治療薬または診断薬がそれぞれの抗体または抗体フラグメントに結合しているが、二種以上の治療薬または診断薬が同じ抗体または抗体フラグメントに結合できる。本発明による抗体融合タンパク質は2以上の抗体またはそのフラグメントを含んでなり、この融合タンパク質を構成するそれぞれの抗体は治療薬または診断薬を含み得る。その上、1以上の抗体融合タンパク質の抗体は、二種以上の治療薬または診断薬を結合することができる。さらに、この治療薬は同じである必要はなく、異なった治療薬であってもよい。例えば、同じ融合タンパク質に薬物および放射性同位元素を結合させることができる。特に、IgGは131Iにて放射性標識し、薬物に結合させることができる。この131Iは、IgGのチロシンに取り込まれ、薬物はIgGリジンのイプシロン(epsilon)アミノ基に結合し得る。治療薬および診断薬も、還元SH基および炭化水素側鎖に結合できる。
【0107】
病気の組織の治療に好適な放射性核種は実質的にベータ粒子放出により崩壊し、限定されるものではないが、32P、33P、47Sc、59Fe、64Cu、67Cu、75Se、77As、89Sr、90Y、99Mo、105Rh、109Pd、111Ag、125I、131I、142Pr、143Pr、149Pm、153Sm、161Tb、166Ho、169Er、177Lu、186Re、188Re、189Re、194Ir、198Au、199Au、211Pb、212Pbおよび213Biが含まれる。有用なベータ粒子放出核種の最大崩壊エネルギーは、好ましくは20〜5,000keVであり、より好ましくは100〜4,000keV、および最も好ましくは500〜2,500keVである。また、オージェ放出粒子を伴い実質的に崩壊する放射性核種も好ましい。例えば、58Co、67Ga、80mBr、99mTc、103mRh、109Pt、111In、119Sb、125I、161Ho、189mOs、および192Irである。有用なオージェ粒子放出核種の崩壊エネルギーは、好ましくは1,000keVより小さく、より好ましくは100keVより小さく、および最も好ましくは70keVより小さい。また、アルファ粒子を生じながら実質的に崩壊する放射性核種も好ましい。かかる放射性核種には、限定されるものではないが、152Dy、211At、212Bi、223Ra、219Rn、215Po、211Bi、225Ac、221Fr、217At、213Biおよび255Fmが含まれる。有用なアルファ粒子放射核種の崩壊エネルギーは、好ましくは2,000〜10,000keVであり、より好ましくは3,000〜8,000keVであり、および最も好ましくは4,000〜7,000keVである。
【0108】
ガンマ線検出を利用する、診断薬として有用な放射性核種には、限定されるものではないが、51Cr、57Co、58Co、59Fe、67Cu、67Ga、75Se、97Ru、99mTc、111In、114mIn、123I、125I、131I、169Yb、197Hg、および201TIが含まれる。有用なγ線放出放射性核種の崩壊エネルギーは、好ましくは20〜2,000keV、より好ましくは60〜600keV、および最も好ましくは100〜300keVである。
陽電子放射断層撮影に有用な放射性核種には、限定されるものではないが、18F、51Mn、52mMn、52Fe、55Co、62Cu、64Cu、68Ga、72As、75Br、76Br、82mRb、83Sr、86Y、89Zr、94mTc、110In、120I、および124Iが含まれる。有用な陽電子放出放射性核種の総崩壊エネルギーは、好ましくは2,000keVより小さく、より好ましくは1,000keVを下回り、および最も好ましくは700keVより小さい。
【0109】
本発明の二重特異性抗体はプレターゲッティング法において有用であり、二種の治療薬または二種の診断薬を被検体に送達する好ましい方法を提供する。 米国出願番号第09/382,186号公報および同第09/337,756号公報は、二重特異性抗体を用いるプレターゲッティング法を開示しており、その方法は二重特異性抗体を125Iで標識して被検体に送達し、次に99mTcで標識した二価のペプチドを送達するものであり、これらは引用することにその全開示内容を本明細書の一部とする。また、プレターゲッティング法については米国出願番号第09/823,746号公報(Hansen et al.)および同第10/150,654号公報(Goldenberg et al.)、ならびに米国仮出願「"Methods and Compositions for Administration of Therapeutic and Diagnostic Agents, Atty Docket 第018733/1103号公報(McBride et al., filed January 31, 2003)に記載されており、これらは総て引用することにより本明細書の一部とする。送達の結果、125Iおよび99mTcに関して腫瘍/正常組織比は良好であり、従って二つの診断用放射性同位元素の有用性を示している。抗体および抗体融合タンパク質を標識するために公知の治療薬または診断薬の任意の組み合わせが使用できる。MAb複合体の抗体成分の結合特異性、治療薬または診断薬の有効性および抗体のFc部分のエフェクター活性は、複合体の標準的な試験により判定できる。
【0110】
本発明は、B細胞リンパ腫、白血病または自己免疫疾患を患う患者の細胞をプレターゲッティングするための方法であって、
(i)その細胞に特異的に結合する少なくとも一つのアームおよび標的化可能な複合体に特異的に結合する少なくとも一つの他のアームを有する、多重特異性の抗体融合タンパク質またはそのフラグメントを投与すること;(ii)所望により、患者に除去用組成物を投与し、その組成物により抗原に結合していない抗体融合タンパク質またはそのフラグメントを循環中から取り除くこと;および、(iii)その患者に、標準化可能な複合体(該複合体は、この抗体融合タンパク質またはそのフラグメントの少なくとも一つの他のアームにより認識され得る少なくとも一つのエピトープを含んでなるかまたは、担持担体部分を含んでなり、かつ少なくとも一種の第一の治療薬または診断薬と結合しているものである)標的化可能な複合体を投与することを含んでなる方法を提供する。本発明による抗体融合タンパク質は、多重特異性抗体でなくてはならない。好ましい態様によれば、この抗体は二重特異性抗体であり、ダイアボディーであることができる。第一の治療薬は放射性標識、免疫調節剤、ホルモン、光活性治療薬、細胞傷害剤、オリゴヌクレオチドおよびそれらの組み合わせからなる群から選択され、第一の診断薬は少なくとも一種の放射性標識、光活性診断薬または非放射性標識である。この抗体融合タンパク質またはそのフラグメントはまた、少なくとも一種の放射性標識、免疫調節剤、ホルモン、光活性治療薬、細胞傷害剤、オリゴヌクレオチドおよびそれらの組み合わせのような第二の治療薬と結合してよく、または少なくとも一種の放射性標識、光活性診断薬または非放射性標識のような第二の診断薬と結合してもよい。ある一つの態様によれば、第一および第二の治療薬または診断薬は同じである。
【0111】
治療薬または診断薬は、ジスルフィド結合形成を介して還元された抗体成分のヒンジ領域に結合し得る。あるいは、かかるペプチドはN−スクシニル3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)のようなヘテロ二官能性架橋剤を用いて抗体成分に結合させ得る。Yu et al., Int. J. Cancer 56 : 244(1994)を参照されたい。かかる結合に関する一般的な技術は当技術分野で十分公知である。例えばWong, CHEMISTRY OF PROTEIN CONJUGATION AND CROSS-LINKING (CRC Press 1991); Upeslaciset al.,"Modification of Antibody by Chemical Methods, "in MONOCLONAL ANTIBODIES: PRINCIPLES AND APPLICATIONS, Birch et al.(eds), pages 187-230(Wiley-Liss, Inc. 1995); Price, "Production and Characterization of Synthetic Peptide-Derived Antibodies, "in MONOCLONAL ANTIBODIES:PRODUCTION, ENGINEERING AND CLINICAL APPLICATION, Ritter et al.(eds.), pages 60-84(Cambridge University Press 1995)を参照されたい。あるいは、治療薬または診断薬は抗体のFc領域の炭化水素部分を介して結合することができる。この炭化水素基は、チオール基に結合している同じペプチドの添加を増大させるために使用でき、または炭化水素部分は異なるペプチドに結合するために使用し得る。
【0112】
抗体の炭化水素部分を介して抗体成分にペプチドを結合させる方法は当業者に十分公知である。例えば、Shih et al., Int.J. Cancer 41:832(1988); Shih et al.,Int. J. Cancer 46:1101(1990); and Shih et al., 米国特許5,057,313号公報を参照されたい。これらは総て引用することよりその全開示内容を本明細書の一部とする。一般的な方法にあっては、酸化された炭化水素部分を有する抗体成分と、少なくとも一つの遊離アミン官能基を有しかつ複数のペプチドを添加した担体ポリマーとを反応させることが含まれる。この反応により最初のシッフ塩基(イミン)結合が生じ、これは第二級アミンへの還元により安定化され最終複合体を形成し得る。
【0113】
抗体が免疫複合体の抗体成分として用いられる場合、Fc領域は存在せず、これは抗体フラグメントである。しかし、炭化水素部分を完全な長さの抗体または抗体フラグメントのL鎖可変領域中へ導入することが可能である。例えば、, Leung et al., J ; Immunol. 154:5919(1995); Hansen et al.,米国特許第5,443,953号公報(1995), Leung et al., 米国特許第6,254,868号公報を参照されたい。これらは総て引用することにより本明細書の一部とする。この操作された炭化水素部分は、治療薬または診断薬を結合させるために用いられる。
【0114】
10.医薬上許容される賦形剤
被検体に送達されるヒト化、キメラおよびヒト抗CD20 MAbは、MAb単独、免疫複合体、融合タンパク質から構成されるか、または1以上の医薬上許容される好適な賦形剤、1以上の付加的成分またはこれらのある組み合わせを含むことができる。
【0115】
本発明による免疫複合体または裸の抗体は、医薬上有用な組成物を調製するための公知の方法に従って調剤され、この免疫複合体または裸の抗体は混合物中で医薬上好適な賦形剤と結合する。滅菌リン酸緩衝生理食塩水は医薬上好適な賦形剤の一つの例である。他の好適な賦形剤は当業者に十分公知である。例えばAnsel et al., PHARMACEUTICAL DOSAGE FORMS AND DRUG DELIVERY SYSTEMS, 5th Edition (Lea & Febiger 1990), and Gennaro(ed.), REMINGTON'S PHARMACEUTICAL SCIENCES, 18th Edition(Mack Publishing Company 1990)およびそれらの改訂版を参照されたい。
【0116】
本発明による免疫複合体または裸の抗体は、例えばボーラス注射または持続点滴による静脈内投与のために処方できる。好ましくは、本発明による抗体は約4時間以内で、より好ましくは約3時間以内の時間で持続点滴される。例えば、最初の25〜50mgは30分以内、好ましくは15分以内に、そして残りは以後の2〜3時間にわたり点滴する。注射製剤は、例えばアンプルのような単位投与形、または保存剤を加えた複数回投与用容器にて与え得る。この組成物は油性または水性ビヒクル中の懸濁液、溶液またはエマルションの形態をとり、懸濁剤、安定化剤および/または分散剤のような処方剤を含むことができる。あるいは、その活性成分は例えば滅菌パイロジェンフリー水のような好適なビヒクルに用時溶解するための粉末形態であることができる。
【0117】
追加の調剤方法は、治療もしくは診断用複合体または裸の抗体の作用時間を制御するために用いられる。徐放性製剤は、免疫複合体または裸の抗体と複合体形成または吸収するためにポリマーを使用して調製できる。例えば、ポリ(エチレン−コ−酢酸ビニル)マトリックスおよびステアリン酸ダイマーおよびセバシン酸のポリ無水コポリマーマトリックスが含まれる。Sherwood et al., Bio/Technology 10:1446(1992)を参照されたい。かかるマトリックスからの免疫複合体または抗体の放出速度は、免疫複合体または抗体の分子量、マトリックス中の免疫複合体、抗体の量、および分散した粒子のサイズに依存する。Saltzman et al., Biophys. J. 55:163(1989); Sherwood et al.,前掲。他の固形投与形は、Ansel et al., PHARMACEUTICAL DOSAGE FORMS AND DRUG DELIVERY SYSTEMS,5th Edition(Lea & Febiger 1990), and Gennaro(ed.), REMINGTON'S PHARMACEUTICAL SCIENCES, 18th Edition(Mack Publishing Company 1990)およびその改定版に記載されている。
また、免疫複合体、抗体融合タンパク質、または裸の抗体は、哺乳類に皮下投与または他の非経口経路でも投与できる。さらに、投与は持続点滴でも単回または複数回ボーラス注射であってもよい。好ましくは、本発明の抗体は約4時間以内、より好ましくは約3時間以内にわたって点滴される。最初はゆっくりと点滴するのが好ましい。例えば、25〜50mgの用量を15〜30分間で点滴し、その残りの用量を2〜3時間までにわたって点滴する。一般に、ヒトに投与された免疫複合体、融合タンパク質または裸の抗体の用量は、患者の年齢、体重、身長、性別、一般的な病状および以前の病歴といった因子により変化する。通常、単回静脈内点滴として約1mg/kg〜20mg/kgの範囲の用量の免疫複合体、抗体融合タンパク質または裸の抗体をレシピエントに与えるのが望ましいが、状況によってはより高い、またはより低い用量も投与してよい。従って、70kgの患者のための1〜20mg/kgは、たとえば用量は70〜1,400mg、または1.7mの患者にとっての用量は41〜824mg/m2である。この用量は必要に応じで繰り返してよく、例えば、1週間に1回の投与を4〜10週間、好ましくは1週間に1回の投与を8週間、そしてより好ましくは、1週間に1回の投与を4週間繰り返してもよい。また、1週間おきの投与を数ヶ月というふうに、頻度を減らして投与してもよい。より具体的には、裸の抗CD20のような本発明の抗体は、1用量として2または3週間おきの投与を繰り返して合計少なくとも3用量を投与してよい。また、好ましくは本発明の抗体は1週間に1回投与を4〜8週間行ってもよい。言い換えると、用量をおよそ200〜300mg/m2よりも低くした場合(これは1.7mの患者では340mg/用量、または70kgの患者では4.9mg/kg)、1週間に1回投与を4〜8週間行ってよい。あるいは、例えば、用量が300〜500mg/ m2の場合、2または3週間おきに2〜3ヶ月と投与回数を減らしてもよい(すなわち、1.7mの患者では510〜850mg、または70kgの患者では7.3〜12mg/kg)。投与量および日程を適切に調節して、所望により他の投与間隔で投与日程を繰り返すことが可能であり、また種々の非経口経路により投与してよい。
【0118】
治療目的のために、治療上有効な量の免疫複合体、融合タンパク質または裸の抗体を哺乳類に投与する。ヒトではない動物被検体もまた含まれるが、本発明のための好適な被検体は通常、ヒトである。投与された量が生理的に有効である場合に、「治療上有効な量の」抗体調製物が投与されたという。薬物は、その存在がレシピエント哺乳類の生理機能に検出可能な変化をもたらした場合に、生理学的に有効である。特に、本発明の抗体調製物はその存在が抗腫瘍反応を誘発するかまたは自己免疫疾患の徴候および症状を緩和した場合に、生理的に有効である。生理的に有効な作用はまた、レシピエント哺乳類に体液性および/または細胞性免疫応答を引き起こす。
【0119】
11.治療方法
本発明はB細胞疾患およびその他の疾病の治療のための基本組成物としての本発明による裸の抗CD20抗体の使用を含む。特に本明細書に記載の組成物は、種々の自己免疫性ならびに無痛性B細胞リンパ腫、悪性型B細胞リンパ腫、慢性リンパ性白血病、急性リンパ性白血病、およびワルデンシュトレームマクログロブリン血症の治療に特に有用である。例えば、ヒト化抗CD20抗体成分および免疫複合体を用いて無痛性および悪性非ホジキンリンパ腫の双方を治療することができる。
【0120】
治療用組成物としては、少なくとも一つのヒト化、キメラまたはヒトモノクローナル抗CD20抗体を、単独で含むかまたは他のヒト化、キメラ、またはヒト抗体、治療薬もしくは免疫調節剤と組み合わせて含む。特に完全なヒト抗体との組み合わせ療法も意図され、これらは上記に示される方法によって製造される。
【0121】
また、裸のあるいは同じもしくは異なるエピトープまたは抗原と結合させた抗体を、本発明による1以上の抗体と組み合わせてもよい。例えば、ヒト化、キメラまたはヒト裸抗CD20抗体を他の裸のヒト化、裸のキメラまたは裸のヒト抗CD20と組みあわせてもよく、ヒト化、キメラまたはヒト裸抗CD20抗体を抗CD20免疫複合体と組みあわせてもよく、裸の抗CD20抗体を抗CD22放射性複合体と組みあわせてもよく、あるいは、抗CD22裸抗体を同位元素、1以上の化学治療薬、サイトカイン、毒素またはそれらの組み合わせと結合させたヒト化、キメラまたはヒト抗CD20抗体と組みあわせてもよい。ヒト化、キメラまたはヒトCD20抗体と毒素もしくは免疫調節剤との融合タンパク質、あるいは少なくとも二つの異なるB細胞抗体(例えば、CD20とCD22 MAb)の融合タンパク質も本発明において使用できる。上記にて既に挙げたようなB細胞疾患に関連する少なくとも二つの異なる抗原を標的とする多くの異なる抗体の組み合わせが、裸の抗体として、または一部は裸で一部は治療薬もしくは免疫調節剤と結合したものとして、あるいは細胞傷害剤などの他の治療薬または放射線療法と組み合わせて構築することができる。
【0122】
本明細書において「免疫調節剤」としては、サイトカイン、幹細胞増殖因子、腫瘍壊死因子(TNF)などのリンホトキシン、ならびにインターロイキン(例えば、インターロイキン−1(IL−1)、IL−2、IL−3、IL−6、IL−10、IL−12、IL−21およびIL−18)、コロニー刺激因子(例えば、顆粒球−コロニー刺激因子(G−CSF)および顆粒球マクロファージ−コロニー刺激因子(GM−CSF))、インターフェロン(例えば、インターフェロン−α、−βおよび−γ)、「S1因子」と呼ばれる幹細胞増殖因子、エリスロポエチンおよびトロンボポエチンなどの造血因子が挙げられる。好適な免疫調節剤部分としては、IL−2、IL−6、IL−10、IL−12、IL−18、L−21、インターフェロン−γ、TNF−αなどが挙げられる。あるいは、被検体に裸の抗CD20抗体を投与してもよく、別にサイトカインを投与することもでき、これは裸の抗CD20抗体の投与前、同時または投与後に投与することができる。上記に述べたように、抗CD20抗体はまた、免疫調節剤と結合させてもよい。この免疫調節剤はまた、異なる抗原と結合する1以上の抗体からなるハイブリッド抗体と結合させてもよい。
【0123】
本発明による多様な療法はさらに、裸の抗体、融合タンパク質または免疫複合体の形態での抗CD22、抗CD19、抗CD21、抗CD74、抗CD80、抗CD23、抗CD46またはHLA−DR(不変鎖を含む)抗体の投与によって補われた、裸の抗CD20抗体による免疫療法も含む。裸の抗CD20抗体またはそのフラグメントに特定のB細胞にて発現するMUC1抗原に対する裸の抗体を補ってもよい。これらの抗体としては、これらの抗原決定基上の少なくとも一つのエピトープを認識するポリクローナル、モノクローナル、キメラ、ヒトまたはヒト化抗体を含む。抗CD19および抗CD22抗体は当業者に公知である。例えば、引用することによりそれらの全開示内容を本明細書の一部とする、Ghetie et al., Cancer Res. 48:2610 (1988); Hekman et al., Cancer Immunol. Immunother. 32:364 (1991); Longo, Curr. Opin. Oncol. 8:353 (1996)、ならびに米国特許第5,798,554号および同第6,187,287号を参照されたい。
【0124】
多様な療法の別の態様によれば、被検体に裸の抗CD20抗体および/または免疫複合体を、標準的な癌の化学療法と組み合わせて投与する。例えば、「CVB」(1.5g/m2シクロホスファミド、200〜400mg/m2エトポシド、および150〜200mg/m2カルムスチン)は、非ホジキンリンパ腫を治療するのに用いられる投与計画である。Patti et al., Eur. J. Haematol. 51:18 (1993)を参照されたい。その他の好適な組み合わせ化学療法計画も当業者に周知である。例えば、Freedman et al., "Non-Hodgkin's Lymphomas," in CANCER MEDICINE, VOLUME 2, 3rd Edition, Holland et al. (eds. ), pages 2028-2068 (Lea & Febiger 1993)を参照されたい。記載したように、中悪性度非ホジキンリンパ腫(NHL)の治療のための第一世代化学療法計画としては、C−MOPP(シクロホスファミド、ビンクリスチン、プロカルバジンおよびプレドニソン)およびCHOP(シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチンおよびプレドニソン)が挙げられる。有用な第二世代の化学療法計画としては、m−BACOD(メトトレキサート、ブレオマイシン、ドキソルビシン、シクロホスファミド、ビンクリスチン、デキサメタゾンおよびロイコボリン)があり、好適な第三世代の計画としては、MACOP−B(メトトレキサート、ドキソルビシン、シクロホスファミド、ビンクリスチン、プレドニソン、ブレオマイシンおよびロイコボリン)がある。さらなる有用な薬物としては、フェニルブチレートおよびブロスタチン−1がある。好ましい多様療法によれば、化学療法薬とサイトカインの双方を本発明による抗体、免疫複合体または融合タンパク質と同時に投与する。サイトカイン、化学療法薬および抗体または免疫複合体はいずれの順序で投与してもよく、一緒に投与してもよい。
【0125】
ある好ましい態様によれば、NHLまたは自己免疫疾患にあっては、連続4週間毎週200〜400mg/m2の用量にてヒト化抗CD20抗体を1週1回、4回点滴し(2〜6時間かけて静脈投与)、必要があれば次の月/年にわたって繰り返す。好ましくはヒト化抗CD20抗体は1週間ごと、または3週間毎に1度、4〜8回にて、200〜300mg/m2の用量で投与する。また好ましくは、NHLは、上記のように4週間の点滴にて、または上記より頻度は少ないが同じ日に、抗CD20モノクローナル抗体の点滴前、点滴中または点滴後に1時間にわたる静脈点滴として投与される360mg/m2の用量のエプラツズムAb(抗CD22ヒト化抗体)と組み合わせて治療される。あるいは、組み合わせ療法に用いる抗体は、週ごとに交互に、1週おきにそれぞれ一連の全点滴が4〜8またはそれ以上の投与数となるように交互に一連の点滴を行ってもよい。その後、これらの投与計画を、患者の臨床状態および各治療計画に対する応答に応じて、3〜6ヶ月おきといった種々の間隔で繰り返すことができる。一層好ましくは、NHLは、イットリウム−90(Y−90の総用量は数週間または数ヶ月という期間における1回以上の注入として5〜35mCi/m2である)などの治療用同位元素により放射性標識したCD22 MAbの2回以上の注入と組み合わせて、上記抗CD20抗体の1週1回を4回またはそれより少ない頻度の点滴により治療される。米国出願番号第09/590,284号(Goldenberg et al.)は抗CD22抗体を用いた自己免疫疾患の免疫療法を開示しており、引用することによりその全開示内容を本明細書の一部とする。
【0126】
さらに、本発明の治療組成物は異なる非ブロッキングCD20エピトープに向けられた裸のモノクローナル抗CD20抗体の混合物またはハイブリッド分子を含むことができる。よって、本発明は、少なくとも二つのCD20エピトープと結合するモノクローナル抗CD20抗体の混合物を含んでなる治療組成物を提供する。さらに、本明細書に記載の治療組成物はCDR配列の異なる抗CD20抗体の混合物を含むことができる。
【0127】
裸の抗CD20抗体はB細胞リンパ腫および自己免疫疾患の治療のための基本治療組成物であるが、このような抗体療法の効力は、この裸の抗体に、IFNα、IFNβおよびIFNγをはじめとするインターフェロン;IL−1、IL−2、IL−6、IL−12、IL−15、IL−18、IL−21をはじめとするインターロイキン;G−CSFおよびGM−CSFをはじめとするサイトカインのような免疫調節剤などの添加剤を補うことにより増強することができる。よって、CD20抗体は、混合物として(個別に、または所定の用量計画によって投与される)または抗CD20抗体との複合体もしくは融合タンパク質として抗体およびサイトカインと組み合わせることができるだけでなく、薬物との組み合わせとしても投与することができる。例えば抗CD20抗体は4一薬化学療法計画としてのCHOPと組み合わせてもよい。さらに、裸の抗CD20抗体は、NHL療法用の薬物組み合わせとして裸の抗CD22抗体およびCHOPまたはフルダラビンと組み合わせることができる。抗CD22抗体を用いたB細胞悪性腫瘍の免疫療法は米国特許第6,183,744号公報(Goldenberg et al.)および米国出願番号第09/307,816号公報(Goldenberg et al.)に記載されており、これらは引用することによりその全開示内容を本明細書の一部とする。これらの補助的治療組成物は抗CD20抗体の投与前、投与と同時または投与後に投与することができる。
【0128】
上記にて述べたように、本発明による抗体はB細胞リンパ腫および白血病、ならびにその他のB細胞の疾病または疾患を治療するために使用できる。例えば、抗CD20抗体は、急性特発性血小板減少性紫斑病および慢性特発性血小板減少性紫斑病などの免疫媒介性血小板減少症、皮膚筋炎、シェーグレン症候群、多発性硬化症、シドナム舞踏病、重症筋無力症、全身性紅斑性狼瘡、狼瘡腎炎、リウマチ熱、多腺性症候群、水疱性類天瘡、真性糖尿病、ヘノッホ−シェーンライン紫斑病、溶血性連鎖球菌感染後腎炎、結節性紅斑らい、高安動脈炎、アジソン病、慢性関節リウマチ、類肉腫症、潰瘍性大腸炎、多形性紅斑、IgA腎症、結節性多発性動脈炎、強直性脊椎炎、グッドパスチャー症候群、閉塞性血栓血管炎、原発性胆汁性肝硬変、橋本甲状腺炎、甲状腺中毒症、強皮症、慢性活動性肝炎、多発性筋炎/皮膚筋炎、多発性軟骨炎、尋常性天疱瘡、ウェジナー肉芽腫、膜性腎症、筋萎縮性側索硬化症、脊髄ろう、巨細胞動脈炎/多筋痛、悪性貧血、急速進行性糸球体腎炎、および繊維性肺胞炎といった第III種自己免疫疾患をはじめとするB細胞関連免疫疾患の治療に使用できる。
【0129】
抗CD20抗体はまた、CD20抗原を発現する細胞においてアポトーシスを誘導し得る。この誘導の証拠は文献によって支持されている。例えば、架橋したCD20 MAbのIgG1−Fcと反応性のあるFc受容体を有するリンパ系細胞を用いてアポトーシスが誘導できたことが実証されている。Shan et al., Cancer Immunol. Immunother. 48 (12):673-683 (2000)を参照されたい。さらに、キメラCD20 MAbの集合体、すなわちホモポリマーがアポトーシスを誘導したことも報告されている。Ghetie et al., Blood 97(5):1392-1398 (2000)およびGhetie et al., Proc. Natl. Acad. Sci USA 94(14):7509-7514 (1997)を参照されたい。
【0130】
B細胞のCD20表面抗原に特異的な抗体を哺乳類被験体に注射することができ、これは次に正常B細胞と悪性B細胞の両のCD20細胞表面抗原と結合する。哺乳類被験体としてはヒトおよびイヌやネコなどのペットをはじめとする家庭内動物が挙げられる。本発明による抗CD20 MAb、すなわちヒト化、キメラ、ヒト、イヌ化およびネコ化、さらにはマウス抗CD20 MAbは、CD20抗原に対して特異的交差反応性のある非ヒト哺乳類被検体を治療するのに使用できる。下記実施例10および11を参照されたい。
【0131】
ヒトにおいて免疫原性のあるマウスMAbは通常、非ヒト哺乳類被検体では免疫原性が低い。CD20表面抗原に結合している抗CD20抗体は腫瘍性B細胞の破壊と枯渇をもたらす。正常なB細胞も悪性B細胞もCD20抗原を発現することから、抗CD20抗体はB細胞の死滅をもたらしてしまう。しかし、正常なB細胞だけが再分布し、悪性B細胞は根絶されるか、あるいは著しく少なくなる。さらに、腫瘍を破壊する可能性を有する化学薬剤または放射性標識を抗CD20抗体に結合させて、この薬剤を腫瘍性B細胞を特異的に標的とするようにすることもできる。
【0132】
12.発現ベクター
ヒト化、キメラまたはヒト抗CD20 MAbをコードするDNA配列は、核酸の増幅をもたらす種々の既知の宿主ベクター中へ組換え操作することができる。これらのベクターは公知の方法を用い、核酸が送達される細胞内で核酸の転写、翻訳またはその双方を命令するために必要なエレメントを含むよう設計することができる。既知の方法論を用い、適当な転写/翻訳制御シグナルと作動可能に連結されたタンパク質コード配列を有する発現構築物を作製することができる。これらの方法としてはin vitro組換えDNA技術および合成技術を含む。例えば、Sambrook et al., 1989, MOLECULAR CLONING: A LABORATORY MANUAL, Cold Spring Harbor Laboratory (New York); Ausubel et al., 1997, CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY, John Wiley & Sons (New York)を参照されたい。また、本発明は、ベクターと会合していないポリヌクレオチドの送達も提供する。
【0133】
本発明における使用に好適なベクターはウイルス系であっても非ウイルス系であってもよい。ウイルスベクターの特定の例としては、アデノウイルス、AAV、単純ヘルペスウイルス、レンチウイルス、およびレトロウイルスベクターが挙げられる。非ウイルス系ベクターの例としては、プラスミドがある。好ましい態様によればでは、ベクターはプラスミドである。
【0134】
本明細書に記載の発現ベクターは、宿主細胞で発現される遺伝子を含むポリヌクレオチドである。典型的には、遺伝子発現は構成的または融合型プロモーター、組織特異的調節エレメント、およびエンハンサーをはじめとする、ある特定の調節エレメントの制御下に置かれる。このような遺伝子はそれら調節エレメントに「作動可能に連結される」と言われる。
【0135】
好ましくは本発明による発現ベクターは、H鎖およびL鎖可変および定常領域を含むヒト化、キメラまたはヒト抗CD20をコードするDNA配列を含んでなる。しかし、一方がH鎖可変および定常領域を含み、他方がL鎖可変および定常領域を含むといったように二つの発現ベクターを用いてもよい。この発現ベクターはさらにプロモーターを含むことが一層好ましい。任意の強力なプロモーターを使用できるので、分泌シグナルペプチドをコードするDNA配列、ヒトIgG1H鎖定常領域をコードするゲノム配列、Igエンハンサーエレメント、および選択マーカーをコードする少なくとも一つのDNA配列を含むことができる。
【0136】
また、本明細書では、ヒト化抗CD20 MAbを発現させる方法を提供し、その方法は、(i)ヒト化、キメラまたはヒト抗CD20 MAbをコードするDNA配列を含んでなる少なくとも一つの発現ベクターをインターナライズすること、(ii)少なくとも一つの該インターナライズベクターによって哺乳類細胞をトランスフェクトすること、(iii)マーカー遺伝子を発現するトランスフェクト細胞を選択すること、および(iv)それらのトラスフェクト細胞からヒト化抗CD20 MAbを分泌する細胞を同定することを含んでなる。
【0137】
13.抗CD20抗体の作製方法
一般に、抗CD20 MAbのVκ(可変L鎖)およびVH(可変H鎖)配列はRT−PCR、5’−RACEおよびcDNAライブラリースクリーニングなどの種々の分子クローニング手順によって得ることができる。特に、抗CD20 MAbのV遺伝子はマウスまたはキメラ抗CD20 MAbを発現する細胞からPCR増幅によりクローニングし、配列決定することができる。それらの忠実性を確認するため、クローニングしたVLおよびVH遺伝子を、引用することにより本明細書の一部とするOrlandi et al., (Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 86: 3833 (1989))が記載しているように、キメラAbとして細胞培養にて発現させることができる。このV遺伝子配列に基づき、次にヒト化抗CD20 MAbを、引用することにより本明細書の一部とするLeung et al. (Mol. Immunol., 32:1413 (1995))が記載しているように設計および構築することができる。cDNAは一般的な分子クローニング技術(Sambrook et al., Molecular Cloning, A laboratory manual,2nd Ed (1989))により、いずれかの公知のハイブリドーマ系統またはマウスまたはキメラ抗CD20 MAbを産生するトランスフェクション細胞系統から調製してもよい。MAbのVκ配列はプライマーVK1BACKおよびVK1FOR(Orlandi et al., 1989)または引用することにより本明細書の一部とするLeung et al. (BioTechniques, 15:286 (1993))が記載している伸張プライマーセットを用いて増幅してもよく、一方、VH配列はプライマー対VH1BACK/VH1FOR(Orlandi et al., 1989, 前掲)または引用することにより本明細書の一部とするLeung et al. (Hybridoma, 13:469 (1994))が記載しているマウスIgGの定常領域へアニーリングするプライマーを用いて増幅することができる。10μLの第一鎖cDNA産物、10μLの10X PCRバッファー[500mM KCl、100mM Tris−HCl(pH8.3)、15mM MgCl2、および0.01%(w
/v)ゼラチン](Perkin Elmer Cetus, Norwalk, CT)、250μMの各dNTP、200nMのプライマー、および5単位のTaq DNAポリメラーゼ(Perkin Elmer Cetus)を含有するPCR反応混合物に対して30サイクルのPCRを行うことができる。各PCRサイクルは好ましくは94℃で1分間の変性、50℃で1.5分間のアニーリングおよび72℃で1.5分間の重合からなる。増幅されたVκおよびVHフラグメントは2%アガロース(BioRad, Richmond, CA)上で精製することができる。同様に、Leung et al. (Mol. Immunol., 32:1413 (1995))が記載しているようなヒト化V遺伝子は長いオリゴヌクレオチド鋳型合成とPCR増幅の組み合わせにより構築することができる。ヒト化V遺伝子を構築する際に用いる自動RNA/DNAシンセサイザー(Applied Biosystems, foster City, CA)でのオリゴAおよびオリゴBの合成のための方法については実施例3を参照のこと。
【0138】
VκのPCR産物は、Igプロモーター、シグナルペプチド配列、およびVκPCR産物のフレーム内連結を容易にする便宜な制限部位を含む、pBR327に基づく足場ベクターVKpBR中にサブクローニングすることができる。VHのPCR産物はpBluescriptに基づくVHpBSなどの同様の足場ベクター中へサブクローニングすることができる。各PCR産物を含む個々のクローンは、例えば引用することにより本明細書の一部とするSanger et al. (Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 74:5463 (1977))の方法により配列決定してもよい。
【0139】
本明細書に記載のDNA配列は、天然に存在するものであれ誘導されたものであれ、総てのその対立遺伝子、突然変異体および変異体を含むといえる。
【0140】
VκおよびVHを含む発現カセットをプロモーターおよびシグナル配列とともに、HindIII−BamHI断片として二重制限消化により、それぞれVKpBRおよびVHpBSから切り出すことができる。次に、VκおよびVH発現カセットをそれぞれpKhおよびpG1gなどの適当な発現ベクターの連結することができる(Leung et al., Hybridoma, 13:469 (1994))。これらの発現ベクターは適当な細胞、例えば骨髄腫Sp2/0−Ag14(ATCC, VA)へ同時トランスフェクトし、コロニーをハイグロマイシン耐性に関して選択し、上清液を例えば、下記のように、ELISAによりキメラまたはヒト化抗CD20 MAbの産生に関してモニタリングすることができる。あるいは、VκおよびVH発現カセットを改変足場ベクターVKpBR2およびVHpBS2中に組み立て、それぞれXbaI/BamHIおよびXhoI/BamHI断片として切り出し、Gilles et al. (J. Immunol. Methods 125:191 (1989)が記載しているように(また、Sp2/0−Ag14細胞での発現に関してはLosman et al.,Cancer, 80:2660 (1997)にも示されている)pdHL2などの単一の発現ベクター中へサブクローニングすることができる。本発明において有用なその他のベクターとしては、Barnes et al., Cytotechnology 32:109-123 (2000)が記載しているようなGSベクターがあり、これはNS0細胞系統およびCHO細胞で好ましく発現される。他の適当な哺乳類発現系がWerner et al., Arzneim.-Forsch./Drug Res.48(II), Nr. 8,870-880 (1998)に記載されている。
【0141】
同時トランスフェクションおよびELISAによる抗体分泌クローンのアッセイは次のようにして行うことができる。引用することにより本明細書の一部とするCo et al., J Immunol., 148:1149 (1992)に従うエレクトロポレーション(BioRad, Richmond, CA)による5×106個のSP2/0骨髄腫細胞のトランスフェクションには、約10μgのVKpKh(L鎖発現ベクター)および20μgのVHpG1g(H鎖発現ベクター)を用いることができる。トランスフェクション後、細胞を37℃、5%CO2下、96ウェルマイクロタイタープレートにて完全HSFM培地(Life Technologies, Inc., Grand Island, NY)中で増殖させればよい。選択プロセスは2日後、ハイグロマイシン選択培地(Calbiochem, San Diego, CA)を最終濃度500単位/mlハイグロマイシンで加えて開始することができる。コロニーは通常エレクトポレーション後2〜3週間で出現する。次に、これらの培養物をさらなる分析のために拡張することができる。
【0142】
キメラまたはヒト化H鎖の分泌に関して陽性のトランスフェクトーマのクローンはELISAアッセイにより同定することができる。要するに、トランスフェクトーマ培養物からの上清サンプル(〜100μL)を、ヤギ抗ヒト(GAH)−IgG、F(ab’)2フラグメント特異的抗体(Jackson ImmunoResearch, West Grove, PA)をプレコートしたELISAマイクロタイタープレートに3反復で添加する。プレートを室温にて1時間インキュベートする。洗浄バッファー(0.05%ポリソルベート20を含有するPBS)で3回洗浄することにより結合していないタンパク質を除去する。ホースラディッシュ・ペルオキシダーゼ(HRP)結合GAH−IgG、Fcフラグメント特異的抗体(Jackson ImmunoResearch)をウェルに加える(100μLの抗体原液希釈物×104に、非結合抗体を最終濃度1.0μg/mLまで添加)。1時間インキュベートした後、プレートを通常3回洗浄する。反応溶液[PBS100μL中、167μgのオルトフェニレンジアミン(OPD)(Sigma, St. Louis, MO)、0.025%過酸化水素を含有]をウェルに加える。暗所にて30分間、発色させる。各ウェルに50μLの4N HCl溶液を加えることで反応を停止させた後、自動ELISAリーダー(Bio-Tek instruments, Winooski, VT)で490nmにて吸光度を測定する。次に、無関係なキメラ抗体標品(Scotgen, Ltd., Edinburg, Scotlandから入手可能)に対して結合キメラ抗体を測定する。
【0143】
抗体は細胞培養培地から次のようにして単離することができる。トランスフェクトーマ培養物を血清フリー培地に適用する。キメラ抗体の生産のためには、HSFMを用い細胞を回転瓶中500mlの培養物として細胞を増殖させる。培養物を遠心分子し、上清を0.2μメンブランで濾過する。濾過した培地をAタンパク質カラム(1×3cm)に流速1ml/分で通す。次にこの樹脂を約10倍カラム量のPBSで洗浄し、10mMEDTAを含有する0.1Mグリシンバッファー(pH3.5)を用いて、Aタンパク質結合抗体をカラムから溶出させる。1.0mL画分を、10μLの3M Tris(pH8.6)の入った試験管に回収し、280/260nmの吸光度からタンパク質濃度を求める。ピーク画分をプールし、PBSの対して透析し、例えばCentricon 30(Amicon, Beverly, MA)を用いて抗体を濃縮する。抗体濃度は上記のようにELISAにより測定し、その濃度をPBSを用いて約1mg/mLに調整する。保存のためにはサンプルにアジ化ナトリウム0.01%(w/v)を加えると便宜である。
【0144】
下記は抗CD20抗体を調製するために用いたプライマーのヌクレオチド配列である。
【0145】
【化1】
【0146】
以下、本発明を実施例によりさらに説明するが、これらの実施例は単に例示のために示されるものである。本発明はこれらの実施例に限定されず、本明細書に示される技術から明らかな総ての改変を含む。
【実施例】
【0147】
実施例1.ヒト化抗CD20抗体の構築
抗CD20抗体A20のVHおよびVκ遺伝子を、それぞれOrlandi et al.,(Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 86:3833 (1989))に記載のプライマー対VH1BACK/VH1FORおよびVK1BACK/VK1FORを用いてRT−PCRにより得た。複数の独立したクローンを配列決定してPCR反応から生じた可能性のあるエラーを除いた。最終PCR産物としてのクローニングされたマウスVHおよびVκ配列をそれぞれA20Vk(図1A)およびA20VH(図1B)と呼んだ。キメラA20(cA20)抗体を構築し、Sp2/0細胞で発現させた。cA20のVκおよびVH配列は図2に示されている。このcA20抗体はRaji細胞に結合し、ハイブリドーマ細胞培養上清から精製された放射性標識A20と競合する(図3)。この結果からクローニングされたV遺伝子の忠実性が確認された。
【0148】
ヒト化抗hCD20(hA20)抗体をコードする一つのL鎖可変領域配列と二つのH鎖可変領域配列を設計および構築した。VκについてはヒトREIフレームワーク配列を用い(図1A)、VHについてはEUとNEWMフレームワーク配列の組み合わせを用いた(図1B)。最初のヒト抗体フレームワークと比べたとき、CDR領域の外側の各鎖にいくつかのアミノ酸変異がある。hA20のH鎖、hA20VH1はEUフレームワークから9つの変異を含み、一方、hA20VH2は3つの変異を含んでいる(図4A)。ヒト抗体フレームワークからのアミノ酸変異が多いので、hA20VH2がhA20VH1よりも好ましい。hA20のL鎖、hA20VκはREIフレームワークから7つのアミノ酸変異を含む(図4B)。
【0149】
実施例2.hA20抗体の構築方法
各可変鎖をそれぞれ「A」および「B」と呼ばれる5’−ハーフおよび3’−ハーフの2つの部分として構築した。各ハーフは、Taqポリメラーゼを用い、2つの短いフランキングプライマーを有する一本鎖合成オリゴヌクレオチド鋳型のPCR増幅により作製した。増幅した断片をまず、Invitrogen (Carlsbad, CA)から得たpCR4 TAクローニングベクター中へクローニングし、DNA配列決定を行った。これらの鋳型およびプライマー対は次の通りである。
鋳型 プライマー
VKA VkA−Backward/VkA−Forward
VKB VkB−Backward/VkB−Forward
VH1A VHA−Backward/VH1A−Forward
VH1B VH1B−Backward/VHB−Forward
VH2A VHA−Backward/VH2A−Forward
VH2B VH2B−Backward/VHB−Forward
【0150】
L鎖
ヒト化Vκ配列の全長DNAを構築するため、オリゴhA20VKA(120mer)およびhA20VKB(130mer)を自動RNA/DNAシンセサイザー(Applied Biosystems)にて合成した。hA20VKAおよびBはhA20 Vκのそれぞれnt26〜145および166〜195に相当する(図5A参照)。オリゴhA20VKAおよびBは濃水酸化アンモニウムで処理することにより支持体から切断し、脱保護した。サンプルを真空処理した後、100μLの水に再懸濁させ、ChormaSpin−100カラム(Clontech, Palo Alto, CA)にて遠心分離することにより不完全なオリゴマー(100mer未満)を除去した。合成副生成物を除去するためにChromaSpin−30を用いたこと以外は、総てのフランキングプライマーを同様に精製した。1μLのChromaSpinカラムで精製したhA20VKAを、10μLの10×PCRバッファー[500mM KCl、100mM Tris−HCl(pH8.3)、15mM MgCl2、および0.01%(w/v)ゼラチン](Perkin Elmer Cetus, Norwalk, CT)、250μMの各dNTP、200nMのVkA−BackwardおよびVkA−Forwar、および5単位のTaq DNAポリメラーゼ(Perkin Elmer Cetus)を含有する反応用量100μLにてPCR増幅した。この反応混合物に対して、94℃で1分間の変性、50℃で1.5分間のアニーリングおよび72℃で1.5分間の重合からなる30サイクルのPCR反応を行った。hA20VKBは同様の条件下、プライマー対VkB−BackwardおよびVkB−ForwardによりPCR増幅した。増幅したVKAおよびVKAフラグメントを2%アガロース(BioRad, Richmond, CA)上で精製した。DNA連結反応による連結を容易にするため、各フラグメントの末端に固有の制限部位を設計した。増幅されたVKAフラグメントは5’末端にPvuII制限部位CAGCTGを、3’末端には,BstBI制限部位TTCGAAを含んでいた。増幅されたVKBフラグメントは5’末端にBstBI制限部位を、3’末端にはBglII制限部位AGATCTを含んでいた。
【0151】
全長Vκ鎖の構築は各フラグメントを適当な5’および3’酵素で制限酵素消化し、あらかじめPvuIIおよびBelIで消化した(BclI消化末端はBglII消化末端と適合する)VKpBR2ベクターへ連結することにより達成した。得られた連結産物はPvuIIに連結されたフラグメントAと、BelI部位に連結されたフラグメントBを含み、このフラグメントAとBはBstBI部位でともに連結していた(図5A)。VKpBR2はVKpBR(Leung et al., Hybridoma, 13:469 (1994))の改変型足場ベクターであり、XbaI制限部位が転写開始コドンの14塩基上流に導入されている。DNA配列決定よる正確なオープンリーディングフレームが確認されたところで、VKpBR2から完全な鎖をXbaI〜BamHI断片として取り出し、pdHL2発現ベクターへ連結した。Vκ配列だけを含むベクターをhA20VκpdHL2と呼んだ。pdHL2はIgHエンハンサーおよびMT1プロモーターの制御下にヒトIgG1C1、C2、C3およびヒンジ領域(図7A)、そしてヒトカッパ鎖Ck(図7B)の両者の発現カセット、ならびにトランスフェクト物の選択およびトランス遺伝子の同時増幅のためのマーカーとしての、弱いSV40プロモーターによって制御されるマウスdhfr遺伝子を含んでいる(Gillies et al., J Immunol. Methods 125:191(1989); Losman et al., Cancer 80:2660 (1997))。pdHL2のVκおよびVHセグメントを置換することにより種々のキメラまたはヒト化Abを発現させることができる。
【0152】
H鎖
hA20VH1の構築のため、それぞれnt23〜143および179〜329に相当するオリゴVH1A(121mer)およびVH1B(151mer)(図5B参照)を上記のように合成した。同様に、hA20VH2については、オリゴVH2AおよびVH2Bを調製した。これらのオリゴを、実施例2に挙げたような個々のプライマー対によりPCR増幅した。Vκに対して行ったものと同じ構築処理を両タイプのVHについても行い、以下の改良を施した:フラグメントAの5’末端制限部位はPstI(CTGCAG)とし、フラグメトBの3’末端制限部位はBstEII(GGTCACC)とした。共通のNciI部位(CCCGG)によるVHpBS2ベクターへの連結の際にこれらのフラグメントを連結して全長VH配列(図5Bおよび5C)を得て、DNA配列決定により確認した。VHpBS2はVHpBS(Leung et al., Hybridoma, 13:469 (1994))の改変型足場ベクターであり、翻訳開始コドンの16塩基上流にXhoI制限部位が導入されている。構築されたVH遺伝子を、Vκ配列を含む発現ベクターhA20VKpdHL2へ、XhoI−BamHI制限断片としてサブクローニングした。pdHL2のH鎖領域はBamHI制限部位を欠いていることから、この連結反応には、pdHL2ベクターに存在する可変鎖のBamHI部位とHindIII部位との間を架橋するためにHNBリンカーを用いることを必要とした。得られた発現ベクターはhA20−1pdHL2およびhA20−2pdHL2と呼んだ。
HNBリンカー 5’−AGCTTGCGGCCGC−3’
3’−ACGCCGGCGCTAG−5’
【0153】
実施例3.トランスフェクションおよびhA20抗体の発現
hA20のための発現ベクター約30μgをSalIにて消化して線状化し、エレクトロポレーションによりSp2/0−Ag14細胞へトランスフェクトした(450Vおよび25μF)。トランスフェクト細胞を96ウェルプレートで2日間平板培養した後、培地中にMTXを最終濃度0.025μMを加えることにより薬剤耐性に関して選択した。2〜3週間にてMTX耐性コロニーが出現した。選択に生き残ったコロニーからの上清をELISAアッセイによりヒトAb選択に関してスクリーニングした。すなわち、100μL上清を、GAH−IgG、F(ab’)2フラグメント特異的Abをプレコートマイクロタイタープレートのウェルに加え、室温で1時間インキュベートした。洗浄バッファー(0.05%ポリソルベート20を含有するPBS)にて3回洗浄し、結合していないタンパク質を除去した。HRP結合GAH−IgG、Fcフラグメント特異的Abをウェルに加えた。1時間インキュベートした後、プレートを3回洗浄した。結合したHRP結合Abは、4mM OPDおよび0.04%H2O2を含有する基質溶液を添加した後、490nmで読みとることによって明らかにした。陽性細胞クローンを拡張し、細胞培養上清から、Aタンパク質カラムでのアフィニティークロマトグラフィーによりhA20−1とhA20−2を精製した。
【0154】
実施例4.抗CD20抗体の結合活性
親のcA20および抗CD20 Ab c2B8に対するhA20の免疫反応性を評価するため、競合細胞結合アッセイ行った。一定量の125I標識マウスA20またはc2B8(100,000cpm,〜10μCi/μg)を、4℃にて1〜2時間、種々の濃度(0.2〜700nM)のhA20−1、−2、マウスA20、cA20またはc2B8の存在下でRaji細胞とともにインキュベートした。細胞をPBS中で洗浄することで結合していないAbを除去した。洗浄後、細胞に会合した放射活性を測定した。図6にて示したように、両ヒト化A20 mAb、すなわちhA20−1およびhA20−2は、Raji細胞に対する125I−A20または125I−c2B8の結合と競合する場合、A20、マウス抗CD20 MAb、cA20、およびc2B8、キメラ抗CD20 MAbに匹敵する結合活性を示した。
【0155】
Raji細胞へ放射性標識MAbを直接結合させ、スケッチャードプロット分析を行うことにより、3.9nMのC2B8と比較し、cA20およびhA20に関してそれぞれ2.9および4.2nmにて解離定数を測定した。in vitro架橋実験では、抗体との複合体に対するヤギ抗ヒトIgG、Fcフラグメント特異的抗体はcA20およびhA20間でC2B8同様のRaji NHL細胞の死滅を示した。
【0156】
実施例5.再発性中度非ホジキンリンパ腫患者の治療
ある中度非ホジキンリンパ腫患者は、CHOP×6で4ヶ月間完全緩解を示し、再度のCHOP×6で進行を示し、D−MOPP×2で3ヶ月間安定疾患を示し、さらに末梢幹細胞移植を伴ったCVBで5ヶ月間部分的緩解を示すといった過去の強い化学療法で上手く行かなかった。この患者には頸部リンパ節にコンピューター断層写真および触診で測定可能な再発リンパ腫を有していた。
【0157】
この患者に0日、14日、28日および42日に450mgのヒト化CD20モノクローナル抗体A20を3時間以内で点滴したところ、点滴中および点滴直後に重大な副作用は見られなかった。8週後、頸部リンパ節の肥大を触診したところ、約50%の測定可能な退縮を示した。治療後20週で追跡測定を行ったところ、コンピューター断層写真法により確認しても頸部にも他のいずれの部位にも疾病の痕跡はないことが示された。新たな疾患はどこにも認められないことから、この患者は完全緩解状態にあるとみなされた。10〜12週ごとの追跡調査でも、治療後少なくとも10ヶ月は完全緩解が確認された。
【0158】
実施例6.慢性特発性血小板減少性紫斑病患者の治療
慢性特発性血小板減少性紫斑病を有する45歳の女性はプレドニソン、γグロブリン、および高用量デキサメタゾンで処置されたが、病状が進行した。この患者は脾臓摘出を受けたが、病状を安定化できなかった。この患者の血小板数は30,000/μLより少なくなり、敗血頻度が増えた。次に、この患者にヒト化CD20 A20 MAb、第一週目には500mg静脈投与し、以降は毎週1回250mgの用量を、計4回注射した。最後のA20投与の1週間後、血小板数の顕著な増加が見られ、150,000/mLまでになり、敗血現象がなくなった。最後の抗体注入後5ヶ月で疾病は緩解状態となった。
【0159】
実施例7.進行性慢性関節リウマチ患者の治療
指関節、手首および肘に重度の進行性慢性関節リウマチ患者を有する70歳の女性は、メトトレキサート治療が上手く行かず、Enbrel療法を施してもわずかな軽減しか見られなかった。次にこの患者を毎週300mgのA20ヒト化CD20 MAbにて4週間、静脈投与した。3ヶ月後、疾病の活動指標に40%の改善が見られ、これが5ヶ月間持続した。この患者に再び同じ用量および頻度でA20処置を行った。患者の改善は続き、2回目のA20 MAb処置後6ヶ月で60%の改善が見られた。ヒト抗A20抗体はA20処置中、または処置後は全く見られなかった。血液から正常なB細胞が枯渇していたが、感染合併症またはその他の薬物関連の重大な毒性は見られなかった。
【0160】
実施例8.重症性筋無力症患者の治療
65歳の男性は重症性筋無力症の通常のあらゆる治療が上手く行かず、神経科集中治療施設に入っていた。患者は血漿交換により安定化し、抗アセチルコリン受容体抗体の力価を引き下げるため免疫グロブリンを静脈投与した。患者は寝たきりで、次に、A20ヒト化CD20 MAbを1週間に1回、10週間静脈投与した。最後のA20投与の1週間後、血中B細胞が検出されず、抗アセチルコリン抗体の力価に著しい低下が見られた。最後のA20 MAb投与後4週間で患者は動けるようになり、退院した。
【0161】
実施例9.リンパ節および骨髄に高悪性度非ホジキンB細胞リンパ腫を有するイヌの治療
65ポンド、7歳の雄ゴールデンレトリーバーが広汎性大細胞高悪性度リンパ腫と診断された。このイヌにビンクリスチン、シクロホスファミド、プレドニソロン、およびドキソルビシンによる組み合わせ化学療法を施したところ、応答は良好であった。しかし、このイヌはその後、進行性リンパ節障害を有すると診断され、この後7ヶ月で骨髄の広範なリンパ腫浸潤、頸部、胸部、腹部、骨盤の広範なリンパ腺症および脾臓腫大症を有することがわかった。
【0162】
このイヌに1F5キメラモノクローナル抗体による処置を施した。イヌに120mgの1F5抗体を静脈注入し、この処置を最初の治療後4週間、毎週繰り返した。最後の1F5投与後4ヶ月にて、この罹患動物のコンピューター断層スキャンではリンパ腫の痕跡はないことが示され、疾病のあらゆる徴候も症状も見られなかった。
【0163】
実施例10.再発性中度非ホジキンリンパ腫を有するイヌの治療
78ポンド、9歳の中度非ホジキンリンパ腫を有するジャーマンシェパード犬に化学療法を施し、最初5ヶ月間は完全緩解に至り、その後もう一回化学療法行ったところ、6ヶ月間病状は安定していた。その後、このイヌは胸部と頸部リンパ節に再発性のリンパ腫が見られ、双方ともそれぞれコンピューター断層写真および触診によって診断できるものであった。
【0164】
この罹患動物に、毎週各100mgの用量のA20ヒト化CD20抗体の注入と組み合わせて、2週間毎週にてL243(HLA−DR)モノクローナル抗体の90Y標識免疫複合体を50mg抗体タンパク質中8mCiの線量で注入した。3週間後、頸部リンパ節の肥大を触診したところ測定可能な低下を示し、一方、胸部のコンピューター断層スキャンを繰り返し行ったところ著しい腫瘍の退縮が示された。処置後10週目に追跡測定を行ったところ、頸部または胸部の疾病の痕跡は約60%低下していることが示された。新たな疾患はどこにも認められないことから、この罹患動物は部分的緩解状態にあるとみなされた。10〜12週ごとの追跡調査でも、治療後少なくとも7ヶ月は部分緩解が確認された。
【0165】
実施例11.再発性リンパ腫を有するネコの治療
10ポンド、12歳のドメスティックショートヘアーは一つの顎下リンパ節の肥大を有していた。切除後、6ヶ月で病巣の再発が見られた。この病巣を再び切除したが、6ヶ月後にまた再発した。次に、このネコに4週間毎週にて、抗CD20 B1モノクローナル抗体の131標識免疫複合体を45mg抗体タンパク質中15mCiの線量にて処置した。3ヶ月後、この処置を繰り返した。最後の処置後3ヶ月で検査したところ、著しい低下を触診することができた。疾病の再発は1年を超えて見られなかった。
【0166】
実施例12.培養またはSCIDマウスに異種移植されたヒトNHL細胞におけるキメラおよびヒト化抗CD20 MAbの評価
キメラ(cA20)およびヒト化(hA20)CD20抗体の特性をNHL細胞系統において評価した。これらの結果としては、cA20およびhA20がリツキシマブと同様に挙動し、Raji、Ramos、RL、DaudiおよびSu−DHL−6細胞の99%を超えるものが染色され、約5%のリンパ球(推定B細胞%)と反応した。総てのB細胞系統において、Mabにより特異的増殖阻害が見られたが、阻害のレベルは細胞系統間で異なり、Su−DHLが最も感受性が高かった。架橋していない状態では、マウス抗CD20、cA20、hA20およびリツキシマブは総て77〜90%の間の阻害を示した。架橋状態では、増殖阻害は94〜98%の範囲であった。リツキシマブ、cA20、およびhA20はまた、架橋二次モノクローナル抗体の存在下で、Raji細胞においてアポトーシスを誘導する能力が同等であった。
【0167】
また、SCIDマウスに、第0日に2.5×106個のRaji細胞を静脈注射した。マウス、キメラおよびヒト化抗CD20抗体、ならびにcA20 F(ab’)2フラグメントの注射は、1日目に完全抗体100 g/注射、またはF(ab’)2フラグメント67 g/注射で始め、2週間は週に5回、3週間は週に2回とした。ある試験では、対照マウスは腫瘍接種後15日(50%生存期間)で播種性疾患にて死に至ったが、cA20処置マウスの50%生存期間は38日、hA20処置マウスでは22.5日、およびマウス抗CD20処置マウスでは21日に延長された(ログランク分析により総て統計学的に有意であった(p>0.005))。別の研究では、CNS麻痺を示す対照マウスは腫瘍接種後16.5日(50%生存期間)で播種性疾患にて死に至ったが、cA20処置マウスの50%生存期間は105日、hA20処置マウスでは70日、およびリツキシマブ処置マウスでは98日に延長された(ログランク分析により総て統計学的に有意であった(p>0.0001)、図11))。
【0168】
実施例13.競合的細胞表面結合アッセイ
Aタンパク質カラムにてアフィニティークロマトグラフィーにより精製したヒト化抗CD20 Ab(cA20、hA20およびc1F5)のAg結合特異性およびアフィニティー研究を、マウス2B8とリツキシマブ(IDEC Pharmaceuticals Corp., San Diego, CA)との細胞表面競合結合アッセイにより評価した(図8)。すなわち、一定量(100,000cpm〜10iCi/ig)の125I標識(A)m2B8または(B)リツキシマブを、4℃にて1〜2時間、種々の濃度(0.2〜700nM)の競合Ab(cA20、hA20、m2B8、c1F5またはリツキシマブ)の存在下でRaji細胞とともにインキュベートした。細胞をPBSで洗浄することで結合していないAbを除去した。洗浄後、細胞と会合した放射活性を測定した。図8(A)はcA20(四角)、hA20−1(三角)、およびhA20−1(丸)の結合活性をm2B8(ひし形)の結合活性を比較したものであり、図8(B)はcA20(四角)、c1F5(三角)およびリツキシマブ(ひし形)の結合活性を比較したものである。
【0169】
別の試験では、hA20の結合活性をその他の抗CD20 Ab、リツキシマブおよびマウスB1と、細胞表面競合結合アッセイにより比較したものである(図9)。すなわち、一定量(100,000cpm〜10iCi/ig)の125I標識リツキシマブを、4℃で1〜2時間、種々の濃度(0.2〜700nM)の競合Ab、hA20(三角)、mB1(逆三角)またはリツキシマブ(四角)の存在下でRaji細胞とともにインキュベートした。細胞をPBSで洗浄することにより結合していないAbを除去した。洗浄後、細胞と会合した放射活性を測定した。これら3つのAbのIC50値はそれぞれ6.8、34および5と算出された。
【0170】
実施例14.培養リンパ腫細胞に対する架橋hA20およびその他のCD20 Abの細胞傷害作用
CD20抗体複合体を得るため、架橋剤(抗ヒトIgG、Fcフラグメント特異的抗体)の存在下、種々のCD20 AbにてRaji細胞を処理した(図10)。最終濃度5ig/mLのhA20、cA20、リツキシマブまたは陽性対照AbであるhLL1を、20ig/mLの架橋剤(赤)を伴って、または架橋剤を伴わずに(オレンジ)、または抗マウスIgG、Fcフラグメント特異的抗体(青)を伴って、Raji細胞とともに48時間インキュベートした。全細胞集団および生存細胞集団を、(A)トリパンブルー染色と細胞の計数、または(B)MTTアッセイ(B)により測定した。このデータにより、Raji NHL細胞の生存に対するhA20およびリツキシマブの同等の作用が示され、この細胞傷害作用は抗体の特異的架橋に依存することを示した。
【0171】
実施例15.hA20およびhLL2によるin vivo療法
Raji細胞を2.5×106細胞/100μL/マウスにて60個体のSCIDマウスに静脈投与した(図12)。1〜11日目にMAbを腹腔内投与し、その後、週に2回、約3週間MAb注射を行った。試験が終わるまで、毎日動物の体重を測定した。これらの動物の後脚の麻痺を毎日調べた。麻痺が起こっていた場合、動物を犠牲にし、播種性腫瘍瘤の視診のため剖検を行った(特に、肺、腎臓および卵巣)。対照ヒト化IgGl AbであるhMN−14(抗CEA抗体)で処置した対照マウスはCNS麻痺を示す播種性疾患で死に至った。50%生存期間は腫瘍静脈接種後13日であった。hA20で処置した群の50%生存期間は約25日に延長された。この値はhA20の約2倍の生存期間の延長に相当する。hLL2単独で処置した群は対照マウスと同等の50%生存期間を示したが、hA20およびhLL2の組み合わせ処置はマウスの50%生存期間を約30日に引き延ばした。
【図面の簡単な説明】
【0172】
【図1】マウス抗CD20を産生するハイブリドーマ細胞株からRT−PCRによりクローニングされたV遺伝子配列を示し、A20抗体の可変L鎖(図1A)およびH鎖(図1B)の推定アミノ酸配列をそれぞれA20VkおよびA20VHとして示している。下線矢印は、クローニングに使用したPCRプライマー配列を示す。Kabatのナンバリング法により定義される推定CDR領域配列が太字および下線で示されている。アミノ酸配列は、一文字コードとして相当するヌクレオチド配列の下に示されている。このKabatのナンバリング法は、アミノ酸残基に用いられる。一つの文字によりナンバリングされるアミノ酸残基は、Kabatに従って挿入残基を表し、前の残基の番号と同じ番号を持っている。例えば、図1Bの残基82、82A、82Bおよび82Cは、それぞれ82A、BおよびCとして示される。
【図2】可変L鎖Vkおよび可変H鎖VH、cA20配列、キメラ抗CD20抗体を示す。CDR領域の配列が太字および下線で示されている。アミノ酸残基およびヌクレオチドは順次ナンバリングされ、同じナンバリングシステムがヒト化V配列に用いられている。L鎖可変領域を図2Aに、そしてH鎖可変領域を図2Bに示している。ナンバリングシステムは図1と同様である。cA20の構築に用いられた制限部位には下線が施されている。
【図3】125I標識A20に対する細胞表面競合結合アッセイにおけるキメラA20(cA20)およびマウスA20(A20)の結合親和性の比較を示す。マウスA20(黒ひし形)と同様に、cA20の濃度が増加すると放射性標識A20のRaji細胞への結合が阻害される(黒丸で示す)。
【図4】ヒト抗体およびキメラならびにヒト化抗CD20抗体の可変H鎖(VH)と可変L鎖(Vk)のアミノ酸配列の比較である。図4Aはヒト抗体、EUおよびNEWM(FR4のみ)、キメラ抗体(cA20VH)および二つのヒト化抗体(hA20VH1およびhA20VH2)の可変H鎖(VH)のアミノ酸配列の比較であり、図4Bはヒト抗体(REIVk)、キメラ抗体(cA20Vk)、およびヒト化抗体(hA20Vk)の可変L鎖(Vk)のアミノ酸配列の比較である。点は、A20中の残基がヒト抗体中の相当する残基と同一であることを示す。CDRは四角で囲んだ領域である。アミノ酸残基のナンバリングにはKabatのナンバリング法を用いた。
【図5】hA20のL鎖V遺伝子(hA20Vk)(図5A)のヌクレオチド配列、および、hA20VH1(図5B)およびhA20VH2(図5C)のH鎖V遺伝子のヌクレオチド配列、ならびにVKpBR2(図5A)およびVHpBS2(図5Bおよび5C)ステージングベクターの隣接フランキング配列をそれぞれ示す。非翻訳ヌクレオチド配列は小文字で示してある。サブクローニングに用いた制限部位には下線を施して示している。分泌シグナルペプチド配列は二重下線を施して示している。VkおよびVHアミノ酸残基のナンバリングは図2と同様に行った。
【図6】二つのヒト化A20抗体(hA20−1およびhA20−2)の結合活性と、A20、cA20およびキメラ抗CD20 MAb、c2B8の結合活性を比較する細胞表面競合結合アッセイの結果を示す。図6AはhA20−1(黒三角)およびhA20−2(黒丸)およびマウス抗CD20抗体、A20(黒四角)がRaji細胞への125I−A20の結合についてほぼ等しく競合していることを示す。図6BはhA20−1(黒丸)、cA20(黒四角)およびc2B8(黒ひし形)がRaji細胞への125I−c2B8の結合についてほぼ等しく競合していることを示す。
【図7】ヒトIgG1(CH-ヒンジ)の定常領域(図7A)、およびヒトカッパ鎖(Ck)の定常領域(図7B)を示す。
【図8】競合細胞表面結合アッセイを示す。ヒト化抗CD20Abs (Aタンパク質カラムを用いるアフィニティークロマトグラフィーにより精製されたcA20、hA20およびc1F5)のAg−結合特異性および親和性試験を、マウス2B8およびリツキシマブ(IDEC Pharmaceuticals Corp. , San Diego, CA)を用いる細胞表面競合結合アッセイにより行った。図8(A)は、cA20(四角)、hA20−1(三角)およびhA20−1(丸)の結合活性と、m2B8(ひし形)のそれとを比較したものであり、図8(B)はcA20(四角)、c1F5(三角)およびリツキシマブ(ひし形)の結合活性を比較したものである。
【図9】hA20の結合活性を、リツキシマブおよびマウスB1を含む他の抗CD20Abと細胞表面競合結合アッセイにより比較した試験である。一定量(100,000cpm、〜10iCi/ig)の125I標識リツキシマブを、種々の濃度の(0.2〜700nM)の競合Ab、hA20(三角)、mB1(逆三角)またはリツキシマブ(四角)の存在下、4℃にてRaji細胞と1〜2時間インキュベートした。
【図10】架橋結合したhA20および他のCD20Abの、培養リンパ腫細胞に対する細胞傷害作用を示す。総細胞数および生存細胞数は、(A)トリパンブルー染色および細胞計数または(B)MTTアッセイにより測定した。
【図11】種々の抗CD20および他のAbを用いるin vivo治療試験のグラフである。SCIDマウスにRaji細胞を静脈内注射し、播種性疾患であるRajiリンパ腫モデルを作製した。
【図12】hA20およびhLL2を用いるin vivo治療試験のグラフである。SCIDマウスにRaji細胞を静脈内注射し、播種性疾患であるRajiリンパ腫モデルを作製した。
【図1A】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【発明の背景】
【0001】
1.発明の分野
本発明は、ヒト化、キメラおよびヒト抗CD20抗体、特にヒト化、キメラおよびヒト抗CD20抗体のモノクローナル抗体(mAb)の治療用および診断用複合体、ならびにヒト化、キメラおよびヒト抗CD20抗体を用いてB細胞リンパ腫、白血病および種々の自己免疫疾患を治療する方法に関する。本発明は、少なくとも二つの抗CD20 mAbもしくはそのフラグメント、または少なくとも一つの抗CD20 MAbもしくはそのフラグメント、および抗CD20 MAbもしくはそのフラグメント以外に少なくとも一つの第二のMAbもしくはそのフラグメントを含んでなる、抗体融合タンパク質またはそのフラグメントに関する。このヒト化、キメラおよびヒト抗CD20 mAb、そのフラグメント、その抗体融合タンパク質またはそのフラグメントは、治療用複合体として単独で投与してもよく、または治療用免疫複合体、他の裸の抗体、もしくは治療薬と組み合わせて投与してもよく、または診断用複合体として投与してもよい。本発明は、ヒト化、キメラおよびヒト抗CD20 抗体をコードするDNA配列、抗体融合タンパク質、前記DNA配列を含んでなるベクターおよび宿主細胞、ならびにヒト化、キメラおよびヒト抗CD20抗体を製造する方法に関する。
【0002】
2.背景技術
脊椎動物の免疫機構は、異種抗原を正確に認識し、特異的に結合し、そしてかかる異種抗原を排除/破壊するために進化した多数の器官および細胞型からなる。とりわけリンパ球は免疫機構にとって重要である。リンパ球は二つの大きなサブ集団、T細胞およびB細胞に分類される。相互依存的であるにもかかわらず、T細胞は細胞性免疫、B細胞は抗体産生(体液性免疫)に大きな役割を果たしている。
【0003】
ヒトにおいては、各々のB細胞が膨大な数の抗体分子を産生できる。このような抗体産生は、異種抗原が中和された時点で通常は停止する(または実質的に減少する)。しかし時折、特定のB細胞の増殖が衰えずに継続され、B細胞リンパ腫として知られる癌を引き起こす。非ホジキンリンパ腫のB細胞サブタイプのようなB細胞リンパ腫は、癌死亡率に大いに寄与している。種々の形態の治療法に対するB細胞悪性腫瘍の反応は複雑である。例えば、非ホジキンリンパ腫の適当な臨床病期分類が可能な場合、領域放射線治療により満足のいく治療を行うことができる。それにもかかわらず、約半数の患者がこの疾患により死亡する(Devesa et al., J. Nat'l Cancer Inst. 79:701(1987))。
【0004】
慢性リンパ性白血病の大多数は、B細胞系統である(Freedman,Hematol. Oncol. Clin. North Am. 4:405(1990))。この種類のB細胞悪性腫瘍は西欧社会において最も一般的な白血病である(Goodman et al., Leukemia and Lymphoma 22:1(1996))。慢性リンパ性白血病の自然な生長はいくつかの曲面に分類される。発症早期においては、慢性リンパ性白血病は無痛性の疾患であり、寿命の長い、小さな成熟した機能不全の悪性B細胞の蓄積を特徴とする。最終的に、悪性B細胞の倍増時間が短くなり、次第に患者に症状が出現する。治療により症状が軽減されるものの、患者の全体的な生存率にはあまり影響しない。慢性リンパ性白血病の後期では、顕著な貧血および/または血小板減少症が特徴的である。この時点での平均生存期間は2年未満である(Foon et al., Annals Int. Medicine 113:525(1990))。慢性リンパ性白血病は細胞増殖率が低いために、細胞傷害剤治療に対し耐性を示す。
【0005】
化学療法および放射線療法をはじめとするB細胞悪性腫瘍を治療する従来の手法は、有害な副作用のためにその有用性に制限があった。放射性核種、毒素、または他の治療薬を導くためにモノクローナル抗体を使用することにより、かかる薬物が選択的に腫瘍部位に送達され、正常組織に対する毒性を制限できる可能性が与えられる。また、これらのB細胞悪性腫瘍上のB細胞抗原が、B細胞上のCD19、CD20、CD21、CD23およびCD22のようなマーカーに対する非結合型B細胞抗体を用いる治療法において最適な標的となる。HLA−DRおよび他の抗原も、他の細胞型上にも発現されるが、正常および悪性B細胞の標的として働き得る。さらに、ある種のMUC1、MUC2、MUC3およびMUC4抗原、好ましくはMUC1もまた、CD20および他のB細胞マーカーを発現するB細胞腫瘍をはじめとする種々の造血器悪性腫瘍において発現される。テネイシン、血管内皮増殖因子(VEGF)、および胎盤増殖因子(PlGF)をはじめとする腫瘍の血管上皮に関連する他の抗原標的、ならびに腫瘍産物のようなB細胞悪性腫瘍に関連する他の種類の抗原も、本発明において使用される相補性抗体のための好適な標的である。
【0006】
B細胞は、分化および同定のためのマーカーとして利用できる細胞表面タンパク質を含んでなる。このようなヒトB細胞マーカーの一つとしては、CD20と呼ばれるヒトBリンパ球−制限分化抗原Bp35がある。CD20は前駆B細胞発達初期に発現され、形質細胞分化時まで残存する。CD20は正常B細胞およびその異常な増殖がB細胞リンパ腫を引き起こし得る悪性B細胞の双方で発現される。CD20抗原に対する抗体はB細胞リンパ腫の治療のために研究されてきた。例えば、「IDEC−C2B8」と呼ばれるキメラ抗CD20抗体は、非結合抗体として500mg/注射を超える用量で反復注射された場合、B細胞リンパ腫に対して活性を有する(Maloney et al., Blood 84:2457(1994); Longo, Curr. Opin.Oncol.8:353(1996))。この投与計画で治療された、低悪性度の無痛型非ホジキン病患者の約50%が反応を示す。治療に対する反応はまた、131I標識B1抗CD20マウスモノクローナル抗体を600mg/注射を超える用量にて反復投与しても得られる。Kaminski et al., N. Engl. J Med 329:459(1993); Press et al., N. Engl. J:Med. 329:1219(1993); Press et al., Lancet 346:336(1995)。しかし、これらの抗体は非結合型として投与されても、放射性標識型として投与されても、より一般的で致死率の高い中悪性度または高悪性度のB細胞リンパ腫患者では、他覚的かつ持続的な反応を示す割合は高くない。従って、長期間持続する治療反応を達成する、B細胞悪性腫瘍の免疫療法を開発する必要がある。
【0007】
さらに、CD20表面抗原を標的とする試験が行われ、この試験では抗CD20マウスモノクローナル抗体である、IF5を用い、これをB細胞リンパ腫患者に持続的に静脈へ注入した。報告によれば、循環している腫瘍細胞を枯渇させるためには非常に高濃度の(2gを超える)IF5が必要であり、その結果は「一時的なもの」であったと記載された(Press et al.,"Monoclonal Antibody IF5(Anti-CD20) Serotherapy of HumanB-Cell Lymphomas." Blood 69/2:584-591 (1987))。しかし、このアプローチの問題点は、非ヒトモノクローナル抗体(例えばマウスモノクローナル抗体)は通常、ヒトエフェクター機能を欠いている、すなわちそれらは補体依存性溶解を媒介できず、また抗体依存性細胞傷害もしくはFcレセプター媒介食作用を介してヒト標的細胞を溶解できないことである。さらに、非ヒトモノクローナル抗体はヒト宿主により異種タンパク質として認識され、このためかかる異種抗体の反復注射は免疫応答を誘導し、有害な過敏症反応を引き起こす。これはしばしば、マウスに基づくモノクローナル抗体に関しては、ヒト抗マウス抗体(HAMA)反応と呼ばれる。
【0008】
キメラ抗体はマウス抗体のような強いHAMA反応を惹起しないので、キメラ抗体を使用するのがより好ましい。キメラ抗体は、2以上の異なる種由来の部分を含んでなる抗体である。例えば、Liu, A. Y. et al, "Production of a Mouse-Human Chimeric Monoclonal Antibody to CD20 with Potent Fc-Dependent Biologic Activity" J Immun. 139/10:3521-3526(1987)は、CD20抗原に対するマウス/ヒトキメラ抗体について記載している。また、PCT第WO88/04936号公開公報も参照されたい。しかし、B細胞の異常の治療にかかるキメラ抗体を使用する際のその活性、有用性または実用性に関する情報は、その参考文献には示されていない。in vitro機能アッセイ(例えば、補体依存性溶解(CDC);抗体依存性細胞傷害(ADCC)など)よっては本来、in vivoにおいてのキメラ抗体が特定の抗原を発現する標的細胞を破壊または枯渇させる能力を予測し得るものではない。例えば、Robinson, R. D. et al.,"Chimeric mouse-human anti-carcinoma antibody that mediate different anti-tumor cell biological activities," Hum. Antibod. Hybridomas 2:84-93(1991)(検出できないADCC活性を有するキメラマウス−ヒト抗体)を参照されたい。従って、キメラ抗体の治療有効性はin vivo実験、好ましくは関心の対象である種における特定の治療法に関する実験によってのみ、正確に評価し得る。
【0009】
B細胞異常の治療におけるマウスモノクローナル抗体の有効性を改善した一つのアプローチとしては、標識または薬物が腫瘍部位に局在化されるように抗体に放射性標識または化学療法薬を結合させることがある。例えば、前記のIF5抗体および他のB細胞抗体を131Iにて標識し、2人の患者における生物学的分布を評価した報告がある。Eary, J. F. et al.,"Imaging and Treatment of B-Cell Lymphoma"J. Nuc. Med. 31/8:1257-1268(1990)を参照されたい。また、Press,O. W.et al., "Treatment of Refractory Non-Hodgkin's Lymphoma with Radiolabeled MB-1(Anti-CD37)Antibody" J. Clin. Onc. 7/8:1027-1038(1989)(131I標識IF5にて治療した1人の患者が部分的反応を示した);Goldenberg, D.M.et al.,"Targeting, Dosimetry and Radioimmunotherapy of B-Cell Lymphomas with 131I-Labeled LL2 Monoclonal Antibody"J. Clin. Oncol. 9/4:548-564 (1991)(複数回注射を受けた8人中3人の患者がこのCD22マウス抗体に対するHAMA反応を示したと報告されている);Appelbaum, F.R. "Radiolabeled Monoclonal Antibodies in the Treatment of Non-Hodgkin's Lymphoma" Hem./Oncol. Clinics of N.A. 5/5:1013-1025 (1991)(総説);Press, O. W. et al.,"Radiolabeled-Antibody Therapy of B-Cell Lymphoma with Autologous Bone Marrow Support."New England Journal of Medicine 329/17: 1219-12223 (1993)(131I標識抗CD20抗体1F5およびB1);およびKaminski, M. G. et al"Radioimmunotherapy of B-Cell Lymphoma with [131I]Anti-B1(Anti-CD20) Antibody".NEJM 329/7:459(1993)(131I標識抗CD20抗体B1;以後「Kaminski」という);PCT出願第WO92/07466号公開公報(ドキソルビシンまたはマイトマイシンのような化学療法薬に結合させた抗体)も参照されたい。しかし、多くのリンパ腫の患者は前もって積極的な細胞毒性化学療法を受けていたため免疫が抑制されており、これにより積極的に前治療されていない患者よりもHAMA反応率が低かったという事実にもかかわらず、これらのアプローチはマウス抗体使用に関連する障害を排除したわけではない。
【0010】
自己免疫疾患はB細胞の異常に関連する種類の疾患である。その例としては、急性特発性血小板減少性紫斑病および慢性特発性血小板減少性紫斑病などの免疫媒介性血小板減少症をはじめとして、重症筋無力症、狼瘡腎炎、紅斑性狼瘡、ならびに関節リウマチなどがある。最も一般的な治療法はコルチコステロイドおよび細胞傷害剤によるものであり、これは非常に強い毒性を発揮する可能性がある。これらの薬物はまた、免疫システム全体を抑制し、重篤な感染症を引き起こし、骨髄、肝臓および腎臓に対し副作用がある。III型自己免疫疾患の治療に用いられる他の治療法は、これまでT細胞およびマクロファージに向けられてきた。自己免疫疾患、特にIII型自己免疫疾患のより効果的な治療法が必要とされている。
【0011】
B細胞の異常およびその治療法に関する多くの問題を解決するために、本発明は、本発明によるCD20抗原に結合する同じ相補性決定領域(CDR)を有するヒト化、キメラおよびヒト抗CD20モノクローナル抗体を提供するものであり、この抗体は、ヒトおよび他の哺乳類におけるB細胞リンパ腫、白血病および自己免疫疾患の治療のために、マウス抗体使用に関連する副作用を生ずることなく、単独で、治療薬との結合して、または他の治療様式と組み合わせて使用される。
【発明の概要】
【0012】
従って、本発明は、CD20と呼ばれるヒトB細胞マーカーに結合する、ヒト化、キメラおよびヒト抗CD20抗体であって、B細胞悪性腫瘍および自己免疫疾患などのB細胞異常の治療または診断に有用なものを提供する。
さらに本発明は、ヒトまたは家畜などの哺乳類被検体を治療する方法であって、1以上のヒト化、キメラおよびヒトCD20抗体を、単独で、抗体融合タンパク質として、治療用複合体として単独で、または抗体融合タンパク質の一部として、または他の抗体、他の治療薬もしくは免疫調節剤と組み合わせてまたはこれらと共に複合療法として、または少なくとも一つの治療薬、治療用放射性核種もしくは免疫調節剤と結合させた免疫複合体として用いる方法を提供する。これらのヒト化、キメラおよびヒトCD20抗体はまた、診断用造影剤として単独で、他の診断用造影剤と組み合わせて、および/または治療用途とあわせて使用し得る。
【0013】
さらに本発明は、抗CD 20mAbまたはそのフラグメントであって、CD20に特異的な1以上のマウスまたはキメラ抗CD20 MAb由来の、特異的マウスCDRまたはマウスCDRの組み合わせを含んでなるものに関する。これらのmAbはヒト化、キメラまたはヒト抗CD20mAbであることができる。
【0014】
本発明はまた、抗体融合タンパク質であって、少なくとも二つの抗CD20 mAbもしくはそのフラグメントを含んでなるもの、または抗CD20mAbもしくはそのフラグメントを含んでなる第一のMAbおよび第二のMAbを含んでなるものを提供する。
【0015】
さらに本発明は、抗CD20 mAbもしくはそのフラグメントを有する治療用または診断用複合体、または少なくとも一つの治療薬もしくは少なくとも一つの診断薬に結合している抗CD20 mAbもしくは他のmAbもしくはそのフラグメントを有する抗体融合タンパク質に関する。本発明には、同じまたは異なるタイプの多様な治療薬を有する抗体融合タンパク質が包含される。
【0016】
さらに本発明は、抗CD20 mAbもしくはそのフラグメント、またはその抗体融合タンパク質もしくはそのフラグメントを治療に用いる方法であって、これらを、1以上の治療薬を有する治療用免疫複合体の抗体成分として単独かまたは互いに組み合わせて用いるか、またはそれぞれ1以上の治療薬と組み合わせてもしくは1以上の治療薬を有する免疫複合体と組み合わせて用いる方法を提供する。
【0017】
さらに本発明は、抗CD20 mAbもしくはそのフラグメント、またはその抗体融合タンパク質もしくはそのフラグメントを、1以上の診断薬と結合している診断薬として用いる方法を提供する。
【0018】
さらに本発明は、本発明による抗体融合タンパク質またはそのフラグメントを用いて、B細胞リンパ腫、白血病または自己免疫疾患の患者の細胞をプレターゲッティングする方法を提供する。
【発明の具体的説明】
【0019】
1.概説
前記のように、結合していないかまたは治療用放射性核種で標識された抗CD20抗体は、中悪性度または高悪性度型のB細胞リンパ腫患者に他覚的で持続的な反応を高い割合で引き起こすことができなかった。本発明は、ヒトおよび家畜といった哺乳類被検体の治療に有用なヒト化、キメラおよびヒト抗CD20抗体ならびにその抗体融合タンパク質であって、単独で、複合体として、または他の裸の抗体および抗体治療用複合体を含む他の治療薬と組み合わせて投与されるものを提供する。
【0020】
本発明による抗CD20 mAbは、特定のマウスCDRまたは1匹以上のマウス由来のマウスCDRの組み合わせ、またはCD20抗原に特異的なキメラ抗CD20 MAbを含む。本発明による抗CD20 mAbは、ヒト化、キメラまたはヒトmAbであり、それらはマウス抗CD20 MAbのCDRのアミノ酸を包含し、マウス抗CD20 MAbのB細胞、B細胞リンパ腫および白血病細胞標的特性を実質的に保持している。この抗CD20 MAbのL鎖可変領域のCDRは、アミノ酸RASSSVSYIH、RASSSLSFMHまたはRASSSVSYMHを含むCDR1;アミノ酸ATSNLASを含むCDR2;およびアミノ酸QQWTSNPPT、HQWSSNPLTまたはQQSFSNPPTを含むCDR3を含んでなり;かつ抗CD20 MAbのH鎖可変領域のCDRは、アミノ酸SYNMHを含むCDR1;アミノ酸AIYPGNGDTSYNQKFKGを含むCDR2、およびアミノ酸STYYGGDWYFDV、STYYGGDWYFNV、SHYGSNYVDYFDVまたはVVYYSNSYWYFDVを含むCDR3を含んでなる。
【0021】
一つの態様によれば、このヒト化およびキメラMAbまたはそのフラグメントは、STYYGGDWYFNVを含むH鎖可変領域のCDR3を含まない。より好ましくは、L鎖可変領域のCDR3がHQWSSNPLTを含みかつH鎖可変領域のCDR3がSHYGSNYVDYFDVを含む時、L鎖可変領域のCDR1がRASSSLSFMHを含まない。他の態様によれば、L鎖可変領域のCDR1がRASSSLSFMHを含みかつH鎖可変領域のCDR3がSHYGSNYVDYFDVを含む時、L鎖可変領域のCDR3がHQWSSNPLTを含まない。さらに他の態様によれば、L鎖可変領域のCDR1がRASSSLSFMHを含みかつL鎖可変領域のCDR3がHQWSSNPLTを含む時、H鎖可変領域のCDR3がSHYGSNYVDYFDVを含まない。他の態様によれば、L鎖可変領域のCDR3がQQSFSNPPTを含みかつH鎖可変領域のCDR3がVVYYSNSYWYFDVを含む時、L鎖可変領域のCDR1がRASSSVSYMHを含まない。
【0022】
さらに他の態様によれば、L鎖可変領域のCDR1がRASSSVSYMHを含みかつH鎖可変領域のCDR3がVVYYSNSYWYFDVを含む時、抗CD20モノクローナル抗体(MAb)またはそのフラグメントはアミノ酸QQSFSNPPTを有するL鎖可変領域のCDR3を含まない。さらに、L鎖可変領域のCDR1がRASSSVSYMHを含みかつL鎖可変領域のCDR3がQQSFSNPPTを含む時、抗CD20 MAbはアミノ酸VVYYSNSYWYFDVを有するH鎖可変領域のCDR3を含まない。
【0023】
好ましい態様によれば、ヒト化抗CD20(hCD20)モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントは、少なくとも一つのマウス抗CD20 MAb可変領域の相補性決定領域(CDR)および少なくとも一つのヒトMAb可変領域のフレームワーク領域(FR)を含んでなり、ここでヒト化抗CD20MAbまたはそのフラグメントが上記マウス抗CD20 MAbのB細胞、B細胞リンパ腫細胞および白血病細胞に対する標的特性を実質的に保持する。このヒト化抗体の可変領域はL鎖可変領域、H鎖可変領域またはL鎖およびH鎖可変領域の両方を含んでいてもよい。ヒト化抗体またはそのフラグメントはさらに、少なくとも一つのヒト抗体のL鎖およびH鎖定常領域を含んでいてもよい。
【0024】
本発明によるヒト化抗CD20 MAb またはそのフラグメントは、マウス抗CD20 MAbのCDRならびにヒト抗体のL鎖およびH鎖の可変領域のフレームワーク領域(FR)を含んでなり、親マウス抗CD20 MAbのB細胞、B細胞リンパ腫細胞および白血病細胞に対する標的特性を実質的に保持し、かつマウス抗CD20 MAbのL鎖可変領域のCDRが、アミノ酸RASSSVSYIHを含むCDR1、アミノ酸ATSNLASを含むCDR2、およびアミノ酸QQWTSNPPTを含むCDR3を含んでなり、ならびにマウス抗CD20 MAbのH鎖可変領域のCDRが、アミノ酸SYNMHを含むCDR1、アミノ酸AIYPGNGDTSYNQKFKGを含むCDR2、およびアミノ酸STYYGGDWYFDVを含むCDR3を含んでなる。しかし、このヒト化抗CD20 MAbまたはそのフラグメントは、抗体のL鎖およびH鎖可変領域のFR中にマウスMAbの相当するFR由来の少なくとも一つのアミノ酸をさらに含んでいてもよい。このヒト化MAbは、さらにヒト抗体のL鎖およびH鎖定常領域を含んでいてもよい。具体的には、このヒト化抗CD20MAbまたはそのフラグメントは、hA20VH1またはhA20VH2と表される図4AのマウスH鎖可変領域の少なくとも一つのアミノ酸残基1、5、27、30、38、48、67、68、70、95、115および116を含み、またhA20Vkと表される図4BのマウスL鎖可変領域の少なくとも一つのアミノ酸残基4、21、35、38、45、46、59、99、104および106を含む。CD20抗原への適当な結合を維持するため、または結合を強化するために必要ならば、1以上のマウスアミノ酸配列をヒトLおよびH可変鎖のFR領域中に維持できる。より好ましくは、本発明によるヒト化抗CD20 MAbまたはそのフラグメントは、図4BのhA20Vkおよび図4AのhA2VH1を含んでなる。最も好ましくは、本発明によるヒト化抗CD20 MAbまたはそのフラグメントは、図4BのhA20Vkおよび図4AのhA2VH2を含んでなる。この後者の配列はVH2鎖のFR中にVH1鎖よりも多くのヒトアミノ酸配列を含んでいるため、よりヒト化されている。
【0025】
本発明の好ましいキメラ抗CD20(cCD20)MAbまたはそのフラグメントは、マウス抗CD20 MAbのCDRおよびマウス抗CD20 MAbのL鎖およびH鎖可変領域のFR領域(すなわち、親マウスMAbのFv)およびヒト抗体のL鎖およびH鎖定常領域を含んでなり、ここでこのキメラ抗CD20 MAbまたはそのフラグメントがマウス抗CD20 MAbのB細胞、B細胞リンパ腫および白血病細胞に対する標的特性を実質的に保持し、キメラ抗CD20 MAbのL鎖可変領域のCDRが、アミノ酸RASSSVSYIH、RASSSLSFMHまたはRASSSVSYMHを含むCDR1;アミノ酸ATSNLASを含むCDR2;およびアミノ酸QQWTSNPPT、HQWSSNPLTまたはQQSFSNPPTを含むCDR3を含んでなり;かつキメラ抗CD20 MAbのH鎖可変領域のCDRが、アミノ酸SYNMHを含むCDR1;アミノ酸AIYPGNGDTSYNQKFKGを含むCDR2、およびアミノ酸STYYGGDWYFDV、STYYGGDWYFNV、SHYGSNYVDYFDVまたはVVYYSNSYWYFDVを含むCDR3を含んでなり、ただし、
(a)L鎖可変領域のCDR1がアミノ酸RASSSVSYIHを含み、L鎖可変領域のCDR2がアミノ酸ATSNLASを含み、L鎖可変領域のCDR3がアミノ酸QQWTSNPPTを含み、H鎖可変領域のCDR1がアミノ酸SYNMHを含み、かつL鎖可変領域のCDR2がアミノ酸AIYPGNGDTSYNQKFKGを含む時、H鎖可変領域のCDR3がSTYYGGDWYFNVを含まず;
(b)L鎖可変領域のCDR1がアミノ酸RASSSLSFMHを含み、L鎖可変領域のCDR2がアミノ酸ATSNLASを含み、L鎖可変領域のCDR3がアミノ酸HQWSSNPLTを含み、H鎖可変領域のCDR1がアミノ酸SYNMHを含み、かつL鎖可変領域のCDR2がアミノ酸AIYPGNGDTSYNQKFKGを含む時、H鎖可変領域のCDR3がSHYGSNYVDYFDVを含まず; かつ、
(c)L鎖可変領域のCDR1が、アミノ酸RASSSVSYMHを含み、L鎖可変領域CDR2がアミノ酸ATSNLASを含み、L鎖可変領域のCDR3 がアミノ酸QQSFSNPPTを含み、H鎖可変領域のCDR1がアミノ酸SYNMHを含み、かつL鎖可変領域のCDR2がアミノ酸AIYPGNGDTSYNQKFKGを含む時、H鎖可変領域のCDR3がVVYYSNSYWYFDVを含まない。
【0026】
より好ましくは、キメラ抗CD20 MAbまたはそのフラグメントは、マウス抗CD20 MAbの相補性決定領域(CDR)と、マウス抗CD20 MAbのL鎖およびH鎖可変領域のフレームワーク領域(FR)と、ヒト抗体のL鎖およびH鎖定常領域とを含んでなり、ここで、このキメラ抗CD20 MAbまたはそのフラグメントがマウス抗CD20 MAbのB細胞、B細胞リンパ腫および白血病細胞に対する標的特性を実質的に保持し、キメラ抗CD20 MAbのL鎖可変領域のCDRが図4Bおよび4AにそれぞれcA20VkおよびcA20VHと表されたCDRを含んでなる。最も好ましくは、キメラ抗CD20 MAb またはそのフラグメントは、図4Bおよび4AにそれぞれcA20VkおよびcA20VHと表されたマウス抗CD20 MAbのL鎖およびH鎖可変領域を含んでなる。
【0027】
本発明はまた、ヒト抗体のL鎖およびH鎖可変および定常領域を含むヒト抗CD20 MAbまたはそのフラグメントを包含し、ここで、このヒトCD20 MAbはB細胞、B細胞リンパ腫、および白血病細胞に対するマウス抗CD20 MAbの標的特性ならびに細胞結合特性を実質的に保持し、ヒト抗CD20 MAbのL鎖可変領域のCDRが上記キメラおよびヒト化抗CD20 mAbならびに図4Aおよび図4Bに示されたものと同じCDRを含んでなる。
【0028】
本発明はまた、上記のように、少なくとも二つの抗CD20 mAbまたはそのフラグメントを含んでなる抗体融合タンパク質またはそのフラグメントも包含することが意図されている。本発明による抗体融合タンパク質またはそのフラグメントはまた、上記の少なくとも一つの第一の抗CD20 MAbまたはそのフラグメント、および上記の抗CD20 MAbまたはフラグメント以外の少なくとも一つの第二のMAbまたはそのフラグメントを包含することが意図される。より好ましくは、この第二のMAbはCD4、CD5、CD8、CD14、CD15、CD19、CD21、CD22、CD23、CD25、CD33、CD37、CD38、CD40、CD40L、CD46、CD52、CD54、CD74、CD80、CD126、B7、MUC1、MUC2、MUC3、MUC4、Ia、HM1. 24、HLA−DR、テネイシン、VEGF、PlGF、癌遺伝子、癌遺伝子産物、またはそれらの組み合わせとの反応性を有し、そして本明細書に記載の抗CD20 MAbとは異なる抗CD20 MAbとさえも反応性があるMAbである。本発明による抗体融合タンパク質は、種々の抗原に対する特異性を提供するために1つのCD20 MAbおよび1以上の第二のmAbから構成されてよく、以下により詳細を記載する。
【0029】
B細胞リンパ腫、白血病および自己免疫疾患をはじめとするB細胞異常の治療のための優れた治療薬を得るためにCDRの突然変異および可変領域のCDRおよび他の配列の操作を行った結果、ヒト化、キメラおよびヒト抗CD20抗体は、エピトープとの結合親和性が高く、抗腫瘍および抗B細胞活性を有している。抗体の結合特異性、親和性または結合活性の修飾については公知であり、WO98/44001号公報にて親和力成熟として記載されており、さらにこの出願は修飾法について要約してあり、これは引用することによりその全開示内容を本明細書の一部とする。
【0030】
また、エフェクター機能を改良する目的で、例えば、アンタゴニストの抗原依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)および/または補体依存性細胞傷害(CDC)を促進する目的で本発明による抗体を修飾することも望ましい。1以上のアミノ酸置換またはFc領域へのシステインの導入を行ってよく、それにより内在化能力が高まり、補体媒介性殺細胞作用およびADCCが増大する。Caron et al., J. Ex.Med. 176:1191-1195(1991)and Shopes,B. J ImmunoL 148:2918-2022(1992)を参照されたい。この文献引用することによりその全開示内容を本明細書の一部とする。補体溶解性およびADCC能力双方が促進された、二重Fc領域を有する抗体融合タンパク質を作製してもよい。
【0031】
本発明はまた、DNA配列であって、
(a)本明細書に記載の抗CD20 MAbまたはそのフラグメント;
(b)少なくとも二つの抗CD20 mAbまたはそのフラグメントを含んでなる抗体融合タンパク質またはそのフラグメント;
(c)本明細書に記載の抗CD20 MAbまたはそのフラグメントを含む少なくとも一つの第一のMAbまたはそのフラグメント、および抗CD20 MAbまたはそのフラグメント以外の少なくとも一つの第二のMAbまたはそのフラグメントを含んでなる、抗体融合タンパク質またはそのフラグメント; および
(d)抗CD20 MAbまたはそのフラグメントを含む少なくとも一つの第一のMAbまたはそのフラグメント、および少なくとも一つの第二のMAbまたはそのフラグメントを含んでなり、この第二のMAbが、CD4、CD5、CD8、CD14、CD15、CD19、CD21、CD22、CD23、CD25、CD33、CD37、CD38、CD40、CD40L、CD46、CD52、CD54、CD74、CD80、CD126、B7、MUC1、MUC2、MUC3、MUC4、Ia、HM1. 24、HLA−DR、テネイシン、VEGF、PlGF、癌遺伝子、癌遺伝子産物、またはそれらの組み合わせと反応性のあるMAbである、抗体融合タンパク質またはそのフラグメント;
からなる群から選択されるMAbまたはそのフラグメントをコードするものも提供する。
【0032】
本発明はまた、上記DNA配列を含んでなる発現ベクターも包含する。ベクターがヒト化、キメラおよびヒト抗CD20 mAbまたはその抗体融合タンパク質もしくはそのフラグメントを調製することに使用される場合、これらのベクターはヒト免疫グロブリンのL鎖およびH鎖定常領域およびヒンジ領域を含む。これらのベクターはさらに、必要ならば、選択された宿主細胞中でmAbを発現するプロモーター、免疫グロブリンエンハンサーおよびシグナルまたはリーダー配列を含む。本発明による特に有用なベクターは、pdHL2またはGSであり、特にgigsのようなキメラ、ヒト化またはヒト抗体を発現するため用いられる場合は、このベクターはIgG1のH鎖およびL鎖定常領域およびヒンジ領域をコードする。より好ましくは、L鎖およびH鎖定常領域ならびにヒンジ領域は、ヒトEUミエローマ免疫グロブリン由来であり、所望によりアロタイプ位置の少なくとも一つのアミノ酸が、異なるIgG1アロタイプに見出されるアミノ酸に変えられており、所望によりEU番号システムに基づくEUのH鎖のアミノ酸253はアラニンで置換されていてもよい。Edelman et al., Proc. Natl. Acad. Sci USA63:78-85(1969)を参照されたい。この文献は引用することによりその全開示内容を本明細書の一部とする。
【0033】
宿主細胞であって本発明による抗CD20 mAbもしくはそのフラグメント、または抗体融合タンパク質もしくはそのフラグメントをコードするDNA配列を含んでなるもの、または宿主細胞であってこれらのDNA配列を含むベクターを含んでなるものが本発明に包含される。特に有用な宿主細胞は、哺乳類細胞であり、より具体的には、骨髄腫細胞のようなリンパ球細胞であり、以下により詳細を記載する。
【0034】
本発明にはまた、抗CD20 MAbもしくはそのフラグメントまたは抗体融合タンパク質もしくはそのフラグメントを発現させる方法であって、(a)抗CD20 mAbもしくはそのフラグメント、または抗体融合タンパク質もしくはそのフラグメントをコードするDNA配列を用いて哺乳類細胞をトランスフェクトし、かつ(b)このDNA配列を用いてトランスフェクトされた、抗CD20もしくはそのフラグメントまたは抗体融合タンパク質もしくはそのフラグメント分泌する細胞を培養することを含んでなる方法、も包含される。mAbを発現する宿主細胞およびマーカーを容易に選別できる選択マーカー付きのベクターを含む公知の技術を用いてもよい。
【0035】
本発明は特に、Bリンパ腫細胞および白血病細胞を標的とする診断用または治療用複合体であって、Bリンパ腫または白血病細胞に結合する本発明による抗CD20 MAbもしくはそのフラグメントまたは抗体融合タンパク質もしくはそのフラグメントを含み、少なくとも一つの診断薬または少なくとも一つの治療薬と結合している抗体成分を含んでなるものを包含する。
【0036】
この診断用複合体は、抗CD20 MAbもしくはそのフラグメントまたは抗体融合タンパク質もしくはそのフラグメントを含む抗体成分を含んでなり、この診断薬は少なくとも一つの光活性診断薬を含んでなり、より好ましくはその標識が60〜4,000keVの範囲のエネルギーを有する放射性標識または非放射性標識であるものである。この放射性標識は、好ましくはガンマ、ベータおよび陽電子放射性同位元素であり、125I、131I、123I、124I、86Y、186Re、188Re、62Cu、64Cu、111In、67Ga、68Ga、99mTc、94mTc、18F、11C、13N、15Oおよび76Brおよびその組み合わせからなる群から選択される。
【0037】
また、本発明による診断用複合体には、例えばマンガン、鉄またはガドリニウムなどの造影剤のような診断薬を用いる。
【0038】
本発明による治療用複合体は抗体融合タンパク質またはそのフラグメントを含む抗体成分を含んでなり、それぞれの上記mAbまたはそのフラグメントは、少なくとも一つの治療薬と結合している。好ましい治療用複合体は、放射性標識、免疫調節剤、ホルモン、光活性治療薬、薬物または毒素であってよい細胞傷害剤、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。本発明において有用な薬物は、抗有糸分裂剤、抗キナーゼ剤、アルキル化剤、代謝拮抗剤、抗生物質、アルカロイド剤、抗脈管形成剤、アポトーシス剤、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される薬学的特性を有するものである。より具体的には、これらの薬物は、ナイトロジェンマスタード、エチレンイミン誘導体、スルホン酸アルキル、ニトロソウレア、トリアゼン、葉酸類似体、COX−2阻害剤、ピリミジン類似体、プリン類似体、抗生物質、酵素、エピポドフィロトキシン、プラチナ錯体、ビンカアルカロイド、置換尿素、メチルヒドラジン誘導体、副腎皮質抑制剤、アンタゴニスト、エンドスタチン、タキソール、カンプトセシン、アントラサイクリン、タキサンおよびそれらの類似体、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。本発明に包含される毒素は、リシン、アブリン、アルファトキシン、サポリン、リボヌクレアーゼ(RNアーゼ)(例えばオンコナーゼ)、DNアーゼ I、ブドウ球菌内毒素A、アメリカヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質、ゲロニン、ジフテリア毒、シュードモナス(Pseudomonas)外毒素、およびシュードモナス内毒素からなる群から選択される。
【0039】
本発明による有用な治療用複合体は、サイトカイン、幹細胞増殖因子、リンホトキシン、造血因子、コロニー刺激因子(CSF)、インターフェロン(IFN)、エリスロポエチン、トロンボポエチン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される免疫調節剤である。特に有用であるのは、腫瘍壊死因子(TNF)のようなリンホトキシン、インターロイキン(IL)のような造血因子、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)または顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)のようなコロニー刺激因子、インターフェロン−α、−βまたは−γのようなインターフェロン、「S1因子」と呼ばれる幹細胞増殖因子である。より具体的には、本発明において、IL−1、IL−2、IL−3、IL−6、IL−10、IL−12、IL−18、IL−21、インターフェロン−γ、TNF−αまたはそれらの組み合わせのような免疫調節剤が有用である。
【0040】
特に有用な治療用複合体は、60〜700keVの範囲のエネルギーを有する1以上の放射性標識を含んでなる。かかる放射性標識は、225Ac、67Ga、90Y、111In、131I、125I、186Re、188Re、177Lu、32P、64Cu、67Cu、212Bi、213Bi、211Atおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される。他の有用な治療用複合体は、色素原または色素のような光活性治療薬である。
【0041】
他の有用な治療用複合体には、好ましくはB細胞悪性腫瘍の癌遺伝子、bcl−2のような癌遺伝子産物に向けられる、オリゴヌクレオチド、特にアンチセンスオリゴヌクレオチドが含まれる。
【0042】
本発明は特に、ヒト、家畜またはイヌ、ネコのようなコンパニオンペットといった哺乳類のような被検体におけるB細胞リンパ腫または白血病細胞疾患または自己免疫疾患を治療する方法であって、医薬上許容されるビヒクル中に処方された治療上有効な量の本発明による抗CD20 MAbまたはそのフラグメントを被検体に投与することを含んでなる方法を包含する。この治療法は治療薬が結合していない「裸の抗体」を利用する。「裸の抗CD20抗体」の被検体への追加投与として、治療上有効な量のもう一つの「裸の抗体」であって、標的細胞の表面上の他の抗原に結合するか反応し、またはMAbのFc部分においてエフェクター機能のような他の機能を有し、治療用でありかつ本明細書に記載のものを同時または逐次に投与することができる。好ましい追加のmAbは、医薬上許容されるビヒクル中に処方された少なくとも一つのヒト化、キメラ、ヒトまたはマウス(ヒトではない動物の場合)MAbであって、CD4、CD5、CD8、CD14、CD15、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD25、CD33、CD37、CD38、CD40、CD40L、CD46、CD52、CD54、CD74、CD80、CD126、B7、MUC1、Ia、HM1. 24およびHLA−DR、テネイシン、 VEGF、PlGF、癌遺伝子、癌遺伝子産物、またはそれらの組み合わせと反応性のあるMAbからなる群から選択されるものである。
【0043】
上記の裸の抗CD20抗体単独療法または他の裸のmAbと組み合わせる治療法の両方とも、医薬上許容されるビヒクル中に処方された治療上有効な量の少なくとも一つの治療薬を同時または逐次にさらに追加投与できる。本明細書に記載のように、この治療薬は医薬上許容されるビヒクル中に処方された細胞傷害剤、放射性標識、免疫調節剤、ホルモン、酵素、オリゴヌクレオチド、光活性治療薬またはそれらの組み合わせを含むことができる。
【0044】
他の治療法によれば、上記の裸の抗CD20抗体単独療法または他の裸のmAbと組み合わせる治療法の両方とも、医薬上許容されるビヒクル中に処方された治療上有効な量の少なくとも一つの本明細書に記載の治療用複合体を、同時または逐次にさらに追加投与することができる。この治療用複合体の抗体成分は、少なくとも一つのヒト化、キメラ、ヒトまたはマウス(ヒトではない被検体のための)MAbを含んでなり、このMAbはCD4、CD5、CD8、CD14、CD15、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD25、CD33、CD37、CD38、CD40、CD40L、CD46、CD52、CD54、CD74、CD80、CD126、B7、MUC1、MUC2、MUC3、MUC4、Ia、HM1. 24およびHLA−DR、テネイシン、VEGF、PlGF、癌遺伝子、癌遺伝子産物、またはそれらの組み合わせと反応性のあるMAbからなる群から選択されるものであり、医薬上許容されるビヒクル中に処方されるものである。本明細書に記載のように、この治療薬は医薬上許容されるビヒクル中に処方された細胞傷害剤、放射性標識、免疫調節剤、ホルモン、光活性治療薬またはそれらの組み合わせを含んむことができる。
【0045】
本明細書に記載のように、本発明は特に、被検体のB細胞リンパ腫、白血病または自己免疫疾患を治療する方法であって、被検体に医薬上許容されるビヒクル中に処方された治療上有効な量の抗体融合タンパク質またはそのフラグメントを投与することを含んでなり、ここで、この抗体融合タンパク質またはそのフラグメントが、本発明による少なくとも二種の抗CD20 mAbもしくはそのフラグメントを含んでなるか、または本発明による少なくとも一種の抗CD20 MAbもしくはそのフラグメントおよび少なくとも一種のさらなるMAb(このMAbは好ましくはCD4、CD5、CD8、CD14、CD15、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD25、CD33、CD37、CD38、CD40、CD40L、CD46、CD52、CD54、CD74、CD80、CD126、B7、MUC1、MUC2、MUC3、MUC4、Ia、HM1. 24およびHLA−DR、テネイシン、VEGF、PlGF、癌遺伝子、癌遺伝子産物、またはそれらの組み合わせと反応性のあるmAbからなる群から選択される)を含んでなる、方法を包含する。
【0046】
この治療法はさらに、医薬上許容されるビヒクル中に処方された治療上有効な量の少なくとも一種の治療薬を、被検体に同時または逐次に追加投与することが可能であり、この治療薬は好ましくは医薬上許容されるビヒクル中に処方された細胞傷害剤、放射性標識、免疫調節剤、ホルモン、光活性治療薬またはそれらの組み合わせである。
【0047】
さらに、この抗体融合タンパク質は、医薬上許容されるビヒクル中に処方された治療上有効な量の少なくとも一種の治療薬に結合している少なくとも一種のMAbを含んでなる治療用複合体として、被検体に対して同時または逐次に投与することが可能であり、この複合体のMAb成分は好ましくは、CD4、CD5、CD8、CD14、CD15、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD25、CD33、CD37、CD38、CD40、CD40L、CD46、CD52、CD54、CD74、CD80、CD126、B7、MUC1、MUC2、MUC3、MUC4、Ia、HM1. 24およびHLA−DR、テネイシン、VEGF、PlGF、癌遺伝子、癌遺伝子産物、またはそれらの組み合わせと反応性のあるMAbからなる群から選択される少なくとも一種のヒト化、キメラ、ヒトまたはマウス(ヒトではない被検体のための)MAbを含んでなる。この抗体融合タンパク質それ自体が治療薬と結合することが可能であり、従って1以上の治療薬を抗体成分に結合させるためのビヒクルを提供し、これらの治療薬は種々の列挙された異なる薬物の組み合わせ、または二つの異なる治療用放射性標識のような同じ薬物の組み合わせも可能である。また、本発明は、被検体のB細胞リンパ腫または白血病を診断する方法であって、ヒトおよび家畜およびイヌ、ネコ、ウサギ、モルモットなどのコンパニオンペットを含む哺乳類のような被検体に、抗CD20 MAbもしくはそのフラグメント、またはリンパ腫もしくは白血病細胞に結合する本発明による抗体融合タンパク質もしくはそのフラグメントを含んでなる診断用複合体を投与することを含んでなり、抗CD20 MAbもしくはそのフラグメント、または抗体融合タンパク質もしくはそのフラグメントは、医薬上許容されるビヒクル中に処方された少なくとも一種の診断薬と結合している方法を包含している。有用な診断薬は本明細書に記載されている。
【0048】
2.定義
以下の説明において、多数の専門用語が使用されており、以下、本発明を理解を容易にするために定義を示す。
【0049】
本明細書において「抗体」とは、完全な長さの(すなわち、天然または正常免疫グロブリン遺伝子フラグメント組換えプロセスにより形成される)免疫グロブリン分子(例えばIgG抗体)、または抗体フラグメントのような、免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分(すなわち、特異的結合)である。
【0050】
「抗体フラグメント」とは、F(ab')2、F(ab)2、Fab’、 Fab、Fv、scFvなどのような抗体の部分をいう。構造に関係なく、抗体フラグメントは完全な抗体により認識される同じ抗原と結合する。例えば、抗CD20モノクローナル抗体フラグメントは、CD20のエピトープと結合する。「抗体フラグメント」という語もまた、特定の抗原に結合して複合体を形成することにより抗体のようにふるまういずれの合成または遺伝子組換えタンパク質も含む。例えば、抗体フラグメントには、H鎖およびL鎖の可変領域からなる「Fv」フラグメントのような可変領域からなる単離フラグメント、L鎖およびH鎖可変領域がペプチドリンカー(「scFvタンパク質」)により接続されている組換え単鎖ポリペプチド分子、および超過変領域に類似(mimic)したアミノ酸残基からなる最小認識ユニットが含まれる。
【0051】
「裸の抗体」は一般的に治療薬と結合していない完全な抗体である。これは抗体分子のFc部分が補体結合およびADCC(抗体依存性細胞傷害)のような免疫機構を始動させ、細胞溶解を引き起こすエフェクター機能を示すためである。しかし、治療機能のためにはアポトーシスのような他のメカニズムを始動させるFc部分は必要ないであろう。裸の抗体には、ポリクローナルおよびモノクローナル抗体の双方ならびにキメラ、ヒト化またはヒト抗体のようなある種の組換え抗体が含まれる。
【0052】
「キメラ抗体」は、一つの種、好ましくは齧歯類の抗体由来の抗体の相補性決定領域(CDR)を含む可変ドメインと、ヒト抗体の定常領域由来の抗体分子の定常ドメインを含む組換えタンパク質である。獣医学領域への適用のためには、このキメラ抗体の定常ドメインは、ネコまたはイヌのような他の種由来のものであってよい。
【0053】
「ヒト化抗体」は、一つの種、例えば齧歯類抗体由来の抗体のCDRが齧歯類抗体のHおよびL可変鎖からヒトHおよびL可変ドメインに移された組換えタンパク質である。抗体分子の定常ドメインは、ヒト抗体の定常ドメイン由来である。
【0054】
「ヒト抗体」は、抗原惹起に応答して特定のヒト抗体を産生するために「操作された」トランスジェニックマウスから得られる抗体である。この技術では、ヒトH鎖およびL鎖遺伝子座のエレメントが、内在性H鎖およびL鎖遺伝子座が標的化破壊されている胚幹細胞株由来のマウス系統に導入される。このトランスジェニックマウスはヒト抗原に特異的なヒト抗体を合成することができ、このマウスをヒト抗体分泌ハイブリドーマを作製するために使用し得る。トランスジェニックマウスからヒト抗体を得るための方法は、Green et al., Nature Genet. 7:13(1994), Lonberg et al., Nature 368:856(1994), and Taylor et al.,Int. Immun. 6:579(1994)に記載されている。完全ヒト抗体はまた、遺伝子または染色体トランスフェクション法ならびにファージディスプレイ技術により構築でき、これらはすべて当技術分野において公知である。例えば、非免疫ドナー由来の免疫グロブリン可変ドメイン遺伝子レパートリーからのin vitroにおけるヒト抗体およびそのフラグメントの産生に関してはMcCafferty et al., Nature 348:552-553(1990)を参照されたい。この技術では、抗体可変ドメイン遺伝子がフレーム内で糸状バクテリオファージの主要または微量コートタンパク質遺伝子へクローニングされ、機能的抗体フラグメントとしてファージ粒子表面上に提示される。この糸状粒子はファージゲノムの単鎖DNAコピーを含み、抗体の機能特性に基づく選択も結果としてそれらの特性を示す抗体をコードする遺伝子の選択となる。このように、ファージはB細胞のいくつかの特性を模倣する。ファージディスプレイはさまざまな形式で行うことが可能であり、総説に関しては例えばJohnson and Chiswell, Current Opinion in Structural Biology 3:5564-571(1993)を参照されたい。
【0055】
ヒト抗体はまた、in vitro活性化B細胞においても産生することができる。米国特許第5,567,610号公報および同第5,229,275号公報を参照されたい。これらの文献は引用することによりその全開示内容を本明細書の一部とする。
【0056】
「治療薬」は、個別に、同時にまたは逐次に、抗体部分とともにまたは抗体部分(すなわち抗体、または抗体フラグメント、またはサブフラグメント)と結合させて投与され、疾病の治療に有用な分子または原子である。治療薬の例としては、抗体をはじめとして、抗体フラグメント、薬物、毒素、ヌクレアーゼ、ホルモン、免疫調節剤、キレート剤、ホウ素化合物、光活性薬または色素および放射性同位元素などがある。
【0057】
「診断薬」は、抗体部分(すなわち抗体、または抗体フラグメント、またはサブフラグメント)と結合させて投与され、その抗原を含む細胞を局在化することにより疾病の診断に有用である分子または原子である。有用な診断薬としては、限定されるものではないが、放射性同位元素、色素(ビオチン−ストレプトアビジン複合体)、造影剤、蛍光化合物または核磁気共鳴映像法(MRI)のための促進剤(例えば、常磁性イオン)などがある。米国特許第6,331,175号公報はMRI技術およびMRI促進剤に結合させた抗体の調製について記載しており、これらは引用することによりその全開示内容を本明細書の一部とする。好ましくは、この診断薬は放射性同位元素、核磁気共鳴影像法にて使用する促進剤、および蛍光化合物からなる群から選択される。抗体成分に放射性金属または常磁性イオンを装填するためには、イオンを結合させるための多様なキレート基を付着させた長い尾部を有する試薬と反応させる必要があろう。かかる尾部は、ポリリシン、多糖、またはキレート基に結合できるペンダント基を有する他の誘導体化または誘導体化可能な鎖であることが可能であり、例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、ポルフィリン、ポリアミン、クラウンエーテル、ビス−チオセミカルバゾン、ポリミキシン、およびこの目的のために有用なことが公知の基などが挙げられる。キレート剤は標準的な化学手法を用いてペプチド抗原に結合させる。キレート剤は通常、免疫反応性の損失が最小で、凝集および/または内部架橋結合が最小となる分子との結合を形成し得る基により抗体に連結される。キレート剤を抗体に結合させるその他のより一般的でない方法および試薬は、Hawthorneの米国特許第4,824,659号公報に記載されており、これは「抗体複合体」という表題で1989年4月25日に発行され、引用することによりその開示内容を本明細書の一部とする。特に有用な金属−キレートの組み合わせには125I、131I、123I、124I、62Cu、64Cu、18F、111In、67Ga、68Ga、99mTc、94mTc、11C、13N、15Oおよび76Brのような一般エネルギー範囲60〜400keVの診断用同位元素と共に用いられる2−ベンジルDTPAならびにそのモノメチルおよびシクロヘキシル類似体が含まれ、ラジオイメージングに用いられる。同じキレート剤がマンガン、鉄およびガドリニウムのような非放射性金属と錯体を形成した場合は、本発明による抗体と共に使用するとMRIにおいて有用である。NOTA、DOTA、およびTETAのような大環状のキレート剤は種々の金属および放射性金属と利用することができ、最も具体的にはそれぞれガリウム、イットリウム、および銅などの放射性核種が用いられる。かかる金属−キレート錯体は、環のサイズを目的の金属にあわせて調整することにより非常に安定となり得る。大環状ポリエーテルのような他のリング型キレート剤は、RAITのための223Raのような、安定に結合する核種を対照とするものであり、本発明に包含される。
【0058】
「免疫複合体」は、抗体成分と治療薬または診断薬との複合体である。この診断薬は、放射性または非放射性標識、造影剤(核磁気共鳴映像法、コンピューター断層撮影法または超音波診断法のためのもの)を含んでなり、この放射性標識はガンマ−、ベータ−、アルファ−、オージェ電子、または陽電子放射性同位元素であることができる。
【0059】
「発現ベクター」は、宿主細胞中に発現された遺伝子を含んでなるDNA分子である。通常、遺伝子発現は構成または誘導プロモーターをはじめとして、組織特異的制御エレメントおよびエンハンサーなどの、ある種の制御エレメントの調節下にある。かかる遺伝子は制御エレメントに「作動可能なように連結されている」といわれる。
【0060】
「組換え宿主」は、クローニングベクターまたは発現ベクターのどちらかを含む任意の原核または真核細胞であることができる。この語はまた、それらの原核または真核細胞、ならびに宿主細胞または宿主細胞の細胞の染色体またはゲノム中にクローン化された遺伝子を含むように遺伝子組換えされたトランスジェニック動物の細胞も含む。好適な哺乳類宿主細胞には、SP2/0細胞およびNS0細胞のような骨髄腫細胞、ならびにチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ハイブリドーマ細胞株および抗体発現に有用な他の哺乳類宿主細胞を含む。
また、mAbおよび他の融合タンパク質の発現に特に有用なものはWO 0063403 A2号公報に開示されたヒト細胞株PER.C6であり、従来の哺乳類細胞株CHO、COS、 Vero、 HeLa、 BHKおよびSP2に比べて2〜200倍の組換えタンパク質を産生する。修飾された免疫機構を有する特別なトランスジェニック動物は完全なヒト抗体を作製するために特に有用である。
【0061】
本明細書に記載のように、「抗体融合タンパク質」という語は、同じまたは異なる特異性の2以上の同じまたは異なる単鎖抗体もしくは抗体フラグメントのセグメントが連結されている、組換えにより作製された抗原結合分子を意味する。融合タンパク質の原子価は、この融合タンパク質が単一抗原またはエピトープに対する結合アーム(arm)または結合部位をいくつ有しているか(すなわち、一価、二価、三価または多価であること)を示す。抗体融合タンパク質が多価であるということは、抗原への結合において多様な相互作用を利用できることを意味し、従って抗原に結合する結合力が高まる。特異性は、抗体融合タンパク質がいくつの抗原またはエピトープに結合できるかどうか;すなわち、一重特異性、二重特異性、三重特異性、多重特異性を示す。これらの定義により、例えばIgGのような天然の抗体は、結合アームを2本持つために二価であるといえるが、この抗体は一つのエピトープに結合するために一重特異性である。一重特異性、多価融合タンパク質は、エピトープに対する1以上の結合部位を有するが、ただ一つのエピトープとしか結合せず、例えば二つの結合部位を持つダイアボディーは同じ抗原と反応性がある。融合タンパク質は単一抗体成分、異なる抗体成分の多価もしくは多重特異性の組み合わせ、または同じ抗体成分の複数のコピーを含むことができる。この融合タンパク質はさらに抗体または抗体フラグメントおよび治療薬を含むことができる。かかる融合タンパク質に好適な治療薬の例は、免疫調節剤(「抗体-免疫調節剤融合タンパク質」)および毒素(「抗体-毒素融合タンパク質」)である。好ましい一つの毒素は、リボヌクレアーゼ(RNアーゼ)であり、好ましくは組換えRNアーゼである。
【0062】
「多重特異性抗体」は、同時に少なくとも二つの異なる構造の標的、例えば二つの異なる抗原、同じ抗原上の二つの異なるエピトープ、またはハプテンおよび/または抗原、もしくはエピトープに結合できる抗体である。一つの特異性は、B細胞、T細胞、骨髄性細胞、形質細胞および肥満細胞抗原またはエピトープに対してであろう。もう一つの特異性は、B細胞上のCD20、CD19、CD21、CD23、CD46、CD80、HLA−DR、CD74、MUC1およびCD22のような、同じ細胞型上の異なる抗原であることが可能である。多重特異性、多価抗体は1以上の結合部位を有する構築体であり、その結合部位は異なる特異性を有する。例えばダイアボディー(diabody)では、一つの結合部位は一つの抗原と反応し、もう一方は他の抗原と反応する。
【0063】
「二重特異性抗体」は、同時に二つの異なる構造の標的に結合できる抗体である。二重特異性抗体(bsAb)および二重特異性抗体フラグメント(bsFab)は、例えば、B細胞、T細胞、骨髄性細胞、形質細胞および肥満細胞抗原またはエピトープに特異的に結合する少なくとも一つのアーム、および治療薬または診断薬を担持する標的化可能な複合体に特異的に結合する少なくとも一つの他のアームを有する。分子工学技術を用いて種々の二重特異性融合タンパク質を作製することができる。一つの形態においては、二重特異性融合タンパク質は一価であり、例えば一つの抗原に対する一つの結合部位を有するscFvおよび第二の抗原に対する一つの結合部位を有するFabフラグメントからなる。もう一つの形態においては、この二重特異性融合タンパク質は二価であり、例えば一つの抗原に対する一つの結合部位を有するIgGおよび第二の抗原に対する二つの結合部位を有する二つのscFvからなる。
【0064】
「イヌ化またはネコ化抗体」は、モノクローナル抗体の齧歯類(または他の種)の相補性決定領域が、齧歯類(または他の種)免疫グロブリンのH鎖およびL鎖可変領域から、それぞれイヌまたはネコの免疫グロブリン可変ドメイン中に移されている組換えタンパク質である。
【0065】
「家畜」は、ウマ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ラマ、アルパカおよびブタのような大動物、ならびにコンパニオン動物を含む。好ましい実施形態においては、家畜はウマである。
【0066】
「コンパニオン動物」は、ペットとして飼われる動物を含む。これらは原則としてイヌおよびネコであるが、モルモット、ハムスター、ラットおよびフェレットのような小齧歯類、またサルのような類人霊長類も含まれる。好ましい実施形態において、コンパニオン動物とはイヌまたはネコである。
【0067】
3.キメラ、ヒト化およびヒト抗体をはじめとするモノクローナル抗体の調製
モノクローナル抗体(MAb)は特定の抗原に対する抗体の均質な集団であり、その抗体はただ一種の抗原結合部位を含んでなり、抗原決定基上のただ一つのエピトープに結合する。特定の抗原に対する齧歯類モノクローナル抗体は、当業者に公知の方法により得ることができる。例えば、Kohler and Milstein, Nature256:495(1975), and Coligan et al.(eds.), CURRENT PROTOCOLS IN IMMUNOLOGY, VOL. 1, pages 2.5. 1- 2.6. 7(John Wiley & Sons 1991)[以下「Coligan」]を参照されたい。簡単にいえば、マウスに抗原を含む組成物を注射し、血清サンプルを採取して抗体産生を確認し、脾臓を切除してBリンパ球を採取し、そのBリンパ球と骨髄腫細胞を融合させてハイブリドーマを作製してクローニングし、抗原に対する抗体を産生する陽性クローンを選択し、抗原に対する抗体を産生するクローンを培養して、その抗体をハイブリドーマ培養液から単離することによりモノクローナル抗体を得ることができる。
【0068】
MAbは、ハイブリドーマ培養液から種々の十分確立された技術により単離、精製できる。かかる単離技術には、Aタンパク質セファロースを用いるアフィニティークロマトグラフィーをはじめとして、サイズ排除クロマトグラフィーおよびイオン交換クロマトグラフィーなどがある。例えば、Coligan at pages 2.7. 1-2.7. 12 and pages 2.9. 1-2.9. 3.を参照されたい。また、Baines et al.,"Purification of Immunogloburin G (IgG),"in METHODS IN MOLECULAR BIOLOGY, VOL. 10, pages 79-104(The Humana Press, Inc. 1992)も参照されたい。
【0069】
免疫原に対する最初の抗体価上昇後に、その抗体の配列を決定し、次いで組換え技術により作製することができる。マウス抗体および抗体フラグメントのヒト化およびキメラ化は当業者に十分公知である。例えば、ヒト化モノクローナル抗体は、マウス免疫グロブリンのHおよびL可変鎖由来のマウス相補性決定領域をヒト可変ドメインに移し、次いでフレームワーク領域中のヒト残基をマウスの対応部分と置換することにより作製する。ヒト化モノクローナル抗体由来の抗体成分を使用することによってマウス定常領域の免疫原性に伴う問題を防ぐ。
【0070】
マウス免疫グロブリン可変ドメインのクローニングのための一般的な技術は、例えばOrlandi et al., Proc.Nat7 Acad. Sci. USA 86:3833(1989)に記載されており、これは引用することによりその全開示内容を本明細書の一部とする。キメラ抗体構築のための技術は当業者に十分公知である。例えば、Leung et al., Hybridoma 13:469 (1994)は、LL2モノクローナル抗体、抗CD22抗体のVKおよびVHドメインをコードするDNA配列をそれぞれのヒトκおよびIgG1定常領域ドメインと組み合わせてLL2キメラを作製した方法が記載されている。この文献はまた、LL2のL鎖およびH鎖可変領域のヌクレオチド配列、VKおよびVHをそれぞれ提供する。ヒト化MAbを産生する技術は、例えばJones et al., Nature321:522(1986),Riechmann et al., Nature 332:323(1988), Verhoeyen et al., Science 239:1534(1988), Carter et al., Proc.Nat'l Acad. Sci. USA 89:4285 (1992), Sandhu, Crit. Rev. Biotech. 12:437(1992), and Singer et al.,J Immun. 150:2844(1993)に記載されており、これらはそれぞれ引用することによりその全開示内容を本明細書の一部とする。
【0071】
キメラ抗体は、齧歯類抗体のような一種の動物由来のCDRを含む可変ドメインを含む組換えタンパク質であり、抗体分子の残りの部分、すなわち定常領域はヒト抗体由来である。従って、キメラモノクローナル抗体はまた、キメラMAbの可変ドメイン中のマウスFR配列を、1以上の異なるヒトFRと置換することによりヒト化し得る。具体的には、マウスCDRをマウス免疫グロブリンのHおよびL可変鎖からヒト抗体の相当する可変ドメインに移動させる。マウスCDRをヒトFRに単に移動させるだけでは、しばしば抗体親和性の低下または損失さえ起こるために、マウス抗体の元の親和性を回復させるためにはさらなる修飾が必要であろう。これは、そのエピトープに対する良好な結合親和性を有する抗体を得るために、FR領域の1以上のいくつかのヒト残基をマウスの相当部分と置換することにより達成し得る。例えば、Tempest et al., Biotechnology 9:266(1991)and Verhoeyen et al., Science 239:1534(1988)を参照されたい。さらに、ヒト化、キメラおよびヒトMAbの特定のエピトープに対する親和性は、CDRの突然変異誘発により高めることができ、その結果、より低用量の抗体が突然変異前の高用量の低親和性MAbと同等の有効性を示し得る。例えば、W00029584A1号公報を参照されたい。
【0072】
本発明の抗体を作製するもう一つの方法は、トランスジェニック家畜のミルク中での産生である。例えば、Colman, A., Biochem. Soc. Symp., 63:141-147,1998 ; 米国特許第5,827,690号公報を参照されたい。双方とも引用することによりその全開示内容を本明細書の一部とする。対をなす免疫グロブリンH鎖およびL鎖をコードするDNAセグメントをそれぞれ含む二つのDNA構築体を調製した。このDNAセグメントを、哺乳類上皮細胞中で優先的に発現されるプロモーター配列を含む発現ベクターへクローニングする。実施例は、限定されるものではないが、ウサギ、ウシおよびヒツジのカゼイン遺伝子、ウシα−ラクトグロブリン遺伝子、ヒツジβ−ラクトグロブリン遺伝子、およびマウスホエー酸タンパク質遺伝子由来のプロモーターを含む。好ましくは、挿入されたフラグメントの3’部位に哺乳類特異的遺伝子由来の同族のゲノム配列が隣接する。これによりポリアデニル化部位および転写安定化配列が備わる。この発現カセットを受精した哺乳類の卵子の前核に同時注入し、次いでレシピエント雌の子宮に着床させて妊娠させた。出産後、トランス遺伝子の存在についてサザン分析でその子孫をスクリーニングした。抗体が存在するためには、H鎖およびL鎖遺伝子双方が同時に同じ細胞中で発現されなければならない。トランスジェニック雌動物から得たミルクを当技術分野で公知の標準的免疫学的方法により、該抗体または抗体フラグメントの存在と機能性を分析した。この抗体は当技術分野で公知の標準的方法により、ミルクから精製できる。
【0073】
ヒト化、キメラまたはヒト抗CD20抗体とともに組み合わせる療法のための、本発明の完全なヒト抗体、すなわちヒト抗CD20 MAb、または抗CD22、抗CD19、抗CD23、または抗CD21MAbのような他のヒト抗体は、トランスジェニック非ヒト動物から得ることができる。例えば、Mendez et al., Nature Genetics, 15:146-156(1997); 米国特許第5,633,425号公報を参照されたい。これらは引用することによりその全開示内容を本明細書の一部とする。例えばヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン遺伝子座を有するトランスジェニックマウスから回収できる。このマウス体液性免疫機構は、内在性免疫グロブリン遺伝子を不活性化して、ヒト免疫グロブリン遺伝子座を導入することによりヒト化されている。このヒト免疫グロブリン遺伝子座は非常に複雑で、合わせてヒトゲノムのほぼ0.2%を占める多数の不連続セグメントを含んでなる。トランスジェニックマウスの適切な抗体レパートリー産生を確実にするために、ヒトH鎖およびL鎖遺伝子座の大部分をマウスゲノム中に導入しなくてはならない。これは、生殖細胞系構成における、ヒトH鎖またはL鎖免疫グロブリン遺伝子座を含む酵母人工染色体(YAC)の形成から始まる段階的なプロセスで達成される。それぞれの挿入体はほぼ1Mbのサイズなので、YAC構築体は免疫グロブリン遺伝子座の重複フラグメントの相同的組換えを必要とする。YAC含有酵母スフェロプラストとマウス胚幹細胞を融合させて、一つはH鎖遺伝子座、もう一つはL鎖遺伝子座を含む二つのYACを、別々にマウスに導入する。次いで、胚幹細胞クローンをマウス胚盤胞に微量注入する。その結果得られたキメラ雄動物における生殖細胞系統を介するYAC伝達能力に関してスクリーニングし、マウス抗体産生を欠損しているマウスを繁殖させた。二種のトランスジェニック系統のマウスを繁殖させ、一種はヒトH鎖の遺伝子座を含み、もう一種はヒトL鎖遺伝子座を含み、免疫に反応してヒト抗体を産生する子孫をつくる。
【0074】
二重特異性mAbを産生するさらなる最新の方法は、付加的なシスチン残基を有し、より一般的な免疫グロブリンアイソタイプよりもより強く架橋結合している人工的組換えMAbを含む。例えば、FitzGerald et al., Protein Eng. 10(10):1221-1225,1997を参照されたい。もう一つのアプローチは、2以上の異なる単鎖抗体または必要とされる二重特異性を有する抗体フラグメントセグメントを連結する組換え融合タンパク質の設計である。例えば、Coloma et al., Nature Biotech. 15:159-163,1997を参照されたい。分子工学技術を用いて様々な二重特異性融合タンパク質を作製できる。一つの形態においては、二重特異性融合タンパク質は一価であり、例えば一つの抗原に対する一つの結合部位を有するscFvと第二の抗原に対する一つの結合部位を有するFabフラグメントからなる。もう一つの形態においては、二重特異性融合タンパク質は二価であり、例えば、一つの抗原に対し二つの結合部位を有するIgGと、第二の抗原に対する二つの結合部位を有するscFvからなる。
【0075】
2以上の異なる単鎖抗体または抗体フラグメントを連結している二重特異性融合タンパク質も、同様の方法で作製する。組換え法は種々の融合タンパク質を作製するために用いることができる。例えば、ヒト化モノクローナル抗CD20抗体由来のFabフラグメントおよびマウス抗diDTPA由来のscFvを含んでなる融合タンパク質を作製することができる。
【0076】
GGGSのような柔軟なリンカーは、scFvを抗CD20抗体のH鎖定常領域に結合させる。あるいは、scFvはもう一つのヒト化抗体のL鎖定常領域に結合し得る。H鎖FdのscFvとのフレーム内結合のために必要な適当なリンカー配列は、PCR反応を介してVLおよびVKドメインに導入される。次いでscFvをコードするDNAフラグメントをCH1ドメインをコードするDNA配列を含むステージングベクターに連結する。これにより得られたscFv−CH1構築体を切り取って、抗CD20抗体のVH領域をコードするDNA配列を含むベクター中に連結する。得られたベクターは、二重特異性融合タンパク質発現のための哺乳類細胞のような適当な宿主細胞をトランスフェクトするために使用し得る。
【0077】
4.抗体フラグメントの産生
特定のエピトープを認識する抗体フラグメントは、公知の技術により作製し得る。抗体フラグメントは、F(ab')2、Fab'、Fab、Fv、sFvなどの抗体の抗原結合部位である。他の抗体フラグメントには、限定されるものではないが、抗体分子のペプシン消化により作製できるF(Ab)'2フラグメント、およびF(ab')2フラグメントのジスルフィド結合を還元することにより作製できるFab'フラグメントが含まれる。あるいは、所望の特異性を有するモノクローナルFab’フラグメントの迅速で容易な同定を可能にするFab’発現ライブラリーを構築できる(Huse et al., 1989, Science, 246:1274-1281)。本発明は抗体および抗体フラグメントを包含する。
【0078】
単鎖Fv分子(scFv)は、VLドメインおよびVHドメインを含んでなる。このVLおよびVHドメインは組み合わさって標的結合部位を形成している。これらの二つのドメインはペプチドリンカー(L)によりさらに共有結合している。scFv分子は、VLドメインがscFv分子のN末端部である場合、VL−L−VH、またはVHドメインがscFv分子のN末端部である場合、VH−L−VLと表される。scFv分子の作製法、および好適なペプチドリンカーの設計法は、米国特許第4,704,692号公報、同第4,946,778号公報, R. Raag and M. Whitlow,"Single Chain Fvs."FASEB Vol 9:73-80(1995)and R. E. Bird and B. W. Walker,"Single Chain Antibody Variable Regions,"TIBTECH, Vol 9:132-137(1991)を参照されたい。これらは引用することによりその全開示内を本明細書の一部とする。
【0079】
抗体フラグメントは、完全な長さの抗体のタンパク質加水分解、または大腸菌(E.coli)における発現、もしくはフラグメントをコードするDNAの他の宿主中での発現により調製してよい。抗体フラグメントは、常法により完全な長さの抗体をペプシンまたはパパインを用いて消化することにより得られる。例えば、抗体フラグメントは抗体をペプシンで酵素的切断して、F(ab’)2と表される5Sフラグメントを与えることにより作製し得る。このフラグメントはチオール還元剤、所望によりジスルフィド結合の切断により生じるスルフヒドリル基の保護基を用いてさらに切断可能で、3.5SFab’一価フラグメントが得られる。あるいは、パパインを用いる酵素的切断により二つの一価Fabフラグメントと一つのFcフラグメントが直接的に生じる。これらの方法は、例えば、Goldenbergの米国特許第4,036,945号公報および同第4,331,647号公報に記載されており、そこに含まれる参考文献、その特許は引用することによりその全開示内を本明細書の一部とする。また、Nisonoff et al., Arch Biochem. Biophys. 89:230(1960); Porter, Biochem. J 73:119(1959), Edelman et al., in METHODS IN ENZYMOLOGY VOL. 1, page 422(Academic Press 1967), and Coligan at pages 2.8. 1-2.8. 10 and 2.10.-2. 10.4.も参照されたい。
【0080】
抗体フラグメントのもう一つの形態は、単一相補性決定領域(CDR)をコードするペプチドである。CDRは抗体の可変領域のセグメントであり、抗体が結合するエピトープに対し相補的な構造であり、残りの可変領域よりもさらに変化に富んでいる。従って、CDRはしばしば超過変領域と呼ばれる。可変領域は三つのCDRを含んでなる。CDRペプチドは、問題の抗体のCDRをコードする遺伝子を構築することにより得られる。かかる遺伝子は、例えば抗体産生細胞のRNAから可変領域を合成するためのポリメラーゼ連鎖反応を用いて調製される。例えば、Larrick et al., Methods:A Companion to Methods in Enzymology 2:106(1991);Courtenay-Luck,"Genetic Manipulation of Monoclonal Antibodies, "in MONOCLONAL ANTIBODIES:PRODUCTION, ENGINEERING AND CLINICAL APPLICATION, Ritter et al.(eds.), pages 166-179 (Cambridge University Press 1995); and Ward et al.,"Genetic Manipulation and Expression of Antibodies, "in MONOCLONAL ANTIBODIES:PRINCIPLES AND APPLICATIONS, Birch et al., (eds.), pages 137-185 (Wiley-Liss, Inc. 1995)を参照されたい。
【0081】
H鎖を分離して一価L−H鎖フラグメントを形成し、さらにフラグメントを切断するような抗体を切断する他の方法、フラグメントが無傷の抗体により認識される抗原に結合する限りは、他の酵素学的、化学的または遺伝子技術も用いてよい。
【0082】
5.多重特異的および多価抗体
組み合わせ療法で使用するための本明細書に記載の抗CD20抗体、ならびに異なる特異性を有する他の抗体はまた、多重特異的抗体(CD20エピトープまたは抗原に対する少なくとも一つの結合部位、およびもう一つのCD20上のエピトープまたはもう一つの抗原に対する少なくとも一つの結合部位を含んでなる)、ならびに多価抗体(同じエピトープまたは抗原に対する複数の結合部位を含んでなる)としても作製し得る。多価の標的結合タンパク質は、米国出願番号第09/911,610号公報(Leung et al.)に記載されており、これは引用することによりその全開示内を本明細書の一部とする。
【0083】
本発明は、標的細胞マーカーに特異的に結合する少なくとも一つの結合領域、および標的化可能な複合体に特異的に結合する少なくとも一つの他の結合領域を有する、二重特異的抗体または抗体フラグメントを提供する。標的化可能な複合体は、二重特異性抗体または抗体フラグメントの少なくとも一つの結合領域により認識される少なくとも一つのエピトープを含んでなるか担持する、担体部分を含んでなる。
【0084】
前記のような二重特異性抗体および抗体フラグメントを作製するために、様々な組換え法を使用できる。
【0085】
本発明では、抗CD20多価抗体もまた意図されている。この多価標的結合タンパク質は、第一および第二のポリペプチドの結合により構築される。第一のポリペプチドは、好ましくは免疫グロブリンL鎖可変領域ドメインである第一の免疫グロブリン様ドメインに共有結合した第一の単鎖Fv分子を含んでなる。第二のポリペプチドは、好ましくは免疫グロブリンH鎖可変領域ドメインである第二の免疫グロブリン様ドメインに共有結合した第二の単鎖Fv分子を含んでなる。それぞれ第一および第二の単鎖Fv分子は標的結合部位を形成し、第一および第二の免疫グロブリン様ドメインは結合して第三の標的結合部位を形成する。
【0086】
VL−L−VH立体配置の単鎖Fv分子(ただしLはリンカー)は、もう一つのVH−L−VL立体配置の単鎖Fv分子と結合し、二価の二量体を形成し得る。この場合、第一のscFvのVLドメインおよび第二のscFv分子のVHドメインは結合して一つの標的結合部位を形成し、一方、第一のscFvのVHドメインおよび第二のscFvのVLドメインは結合してもう一方の標的結合部位を形成する。
【0087】
本発明の他の態様によれば、非共有結合して三つの結合部位を形成し、その内の二つが一つの標的に対し親和性を持ち、第三の結合部位は作製可能で診断薬および/または治療薬のための担体に結合しているハプテンに親和性を持つ、二つの異種ポリペプチド鎖を含んでなるCD20二重特異性、三価の標的化タンパク質である。好ましくは、その結合タンパク質は二つのCD20結合部位および一つのCD22結合部位を有する。この二重特異性、三価の標的化薬は二つの異なるscFvを有し、第一のscFvは短いリンカーにより他の抗体のVLドメインに連結された一つの抗体由来の二つのVHドメインを含み、第二のscFvは短いリンカーにより他の抗体のVHドメインに連結された第一の抗体由来の二つのVLドメインを含む。VHおよびVLドメインから多価、多重特異的薬剤を作製するこれらの方法によれば、多価および多重特異的ないずれの薬物でも1つのVH鎖および1つのVL鎖の非共有結合により作製し得るという方法により、宿主微生物中にてDNAプラスミドから合成された個々の鎖が完全なVHドメイン(VH鎖)または完全なVLドメイン(VL鎖)から構成されることになる。例えば、三価の三重特異性薬物の形成では、VH鎖は三つのVHドメインのアミノ酸配列からなり、それぞれのドメインは異なる特異性の抗体由来であり、種々の長さのペプチドリンカーにより連結され、またVL鎖は相補性VLドメインからなり、VH鎖に使用されたものと類似のペプチドリンカーにより連結される。抗体のVHおよびVLドメインは逆平行に結合しているため、本発明の好ましい方法では、VL鎖のVLドメインはVH鎖のVHドメインとは逆の順序で配置されている。
【0088】
6.ダイアボディー、トリアボディー(triabody)およびテトラボディー(tetrabody)
本発明による抗CD20抗体はまた、ダイアボディー(diabody)とも呼ばれる、機能性二重特異性単鎖抗体(bscAb)の調製に使用することができ、組換え法により哺乳類細胞中にて作製できる。例えば、引用することにより本明細書の一部とされる、Mack et al., Proc. Natl. Acad. Sci., 92:7021-7025,1995を参照されたい。例えば、bscAbは組換え法によりグリシン−セリンリンカーを介して二つの単鎖Fvフラグメントを結合させて作製する。問題の二つの抗体のVL鎖(VL)およびVH鎖(VH)ドメインは、標準的PCR法により単離される。次にそれぞれのハイブリドーマから得られたcDNAのVLおよびVHは、二つの工程の融合PCRにおいて結合されて単鎖フラグメントを形成する。第一のPCR工程では(Gly4−Ser1)3リンカーを導入し、第二の工程ではVLおよびVL単位複製配列を結合させる。次いでそれぞれの単鎖分子を細菌発現ベクターへクローニングする。増幅後に単鎖分子の一つを切り出して問題の第二の単鎖分子を含む他のベクターへサブクローニングする。その結果得られたbscAbフラグメントを真核細胞発現ベクターへサブクローニングする。機能性タンパク質の発現は、そのベクターをチャイニーズハムスター卵巣細胞へトランスフェクトすることにより行われる。二重特異性融合タンパク質は同様の方法にて調製される。二重特異性単鎖抗体および二重特異性融合タンパク質は本発明の範囲内に含まれる。
【0089】
例えば、ヒト化、キメラ、またはヒト抗CD20モノクローナル抗体を、抗原特異的ダイアボディー、トリアボディー、およびテトラボディーを作製するために使用し得る。この単一特異的ダイアボディー、トリアボディー、およびテトラボディーは選択的に標的抗原に結合し、分子上の結合部位数が増加すると標的細胞に対する親和性が高まり、所望の位置における滞留時間が長くなることが観察される。ダイアボディーに関しては、5つのアミノ酸残基リンカーによりヒト化CD20 MAbのVKポリペプチドに連結されたヒト化CD20 MAbのVHポリペプチドを含んでなる二つの鎖が利用される。各々の鎖はヒト化CD20ダイアボディーの1/2を形成する。トリアボディーの場合、ヒト化CD20 MAbのVKポリペプチドにリンカーは介さず連結されたヒト化CD20 MAbのVHポリペプチドを含んでなる三つの鎖が利用される。各々の鎖はhCD20トリアボディーの1/3を形成する。
【0090】
本明細書に記載の二重特異性ダイアボディーは最終的に、後に続く診断薬または治療薬の特異的送達のために、CD20陽性腫瘍をプレターゲッティングするために使用する。これらのダイアボディーは標的抗原に選択的に結合し、親和性を高め、所望の位置における滞留時間を延長する。さらに、抗原と結合していないダイアボディーは体内から迅速に排泄され、正常組織の曝露は最小限に抑えられる。クリアランス速度を増すための二重特異性抗体の点突然変異は、Qu et al.の米国仮出願第60/361,037号公報(Atty Docket No. 18733/1037)に見出され得る。これは引用することによりその全開示内を本明細書の一部とする。親和性を高めるための二重特異性ダイアボディーは米国出願第10/270,071号公報(Rossi et al.)、同第10/270,073号公報(Rossi et al.)および同第10/328,190号公報(Rossi et al.)に開示され、これらは引用することによりその全開示内を本明細書の一部とする。診断薬および治療薬には、放射性同位元素をはじめとして、薬物、毒素、サイトカイン、ホルモン、増殖因子、複合体、放射性核種および金属などがある。例えば、ガドリニウム金属が、核磁気共鳴映像法(MRI)に用いられる。放射性核種の例としては、225Ac、18F、68Ga、67Ga、90Y、86Y、111In、131I、125I、123I、99mTc、94mTc、186Re、188Re、177Lu、62Cu、64Cu、67Cu、212Bi、213Bi、32P、11C、13N、15O、76Br、および211Atなどが挙げられる。特にエネルギー範囲が60〜4,000keVの他の放射性核種も診断薬および治療薬として利用可能である。
【0091】
さらに最近では、二重特異性を持つ四価タンデムダイアボディー(tandabと呼ばれる)も報告されている(Cochlovius et al., Cancer Research(2000) 60:4336-4341)。この二重特異性tandabは二つの同一ポリペプチドの二量体であり、それぞれが二つの異なる抗体の四つの可変ドメインを含み(VH1、VL1、VH2、VL2)、これは自己会合に際してそれぞれの二つの異なる特異性のための二つの可能性のある結合部位の形成を容易にする方向に連結されている。
【0092】
7.結合多価および多重特異性抗CD20抗体
本発明の他の態様によれば、結合多価抗CD20抗体が提供される。第一または第二のポリペプチドのNまたはC末端に、さらなるアミノ酸残基を加えることができる。このさらなるアミノ酸残基は、ペプチドタグ、シグナルペプチド、サイトカイン、酵素(例えば、プロドラッグ活性化酵素)、ホルモン、シュードモナス外毒素のようなペプチド毒素、ペプチド薬、細胞傷害性タンパク質または他の機能性タンパク質を含むことができる。本明細書で使用されているように機能性タンパク質とは生物学的機能を有するタンパク質である。
【0093】
ある一つの態様によれば、薬物、毒素、放射性化合物、酵素、ホルモン、細胞傷害性タンパク質、キレート剤、サイトカインおよび他の機能性薬を、多価標的結合タンパク質に結合させてよく、好ましくはこの多価標的結合タンパク質のアミノ酸残基の側鎖、例えばアミン、カルボキシル、フェニル、チオールまたはヒドロキシル基に共有結合を介して結合させることができる。
【0094】
例えば、ジイソシアネート、ジイソチオシアネート、ビス(ヒドロキシスクシンイミド)エステル、カルボジイミド、マレイミド−ヒドロキシスクシンイミドエステル、グルタルアルデヒドなどの種々の慣用されるリンカーをこの目的のために用いてよい。多価タンパク質への薬物の結合は、このタンパク質のその標的に対する結合特異性または親和性にあまり影響しないことが好ましい。本明細書で用いられているように、機能性薬物とは生物学的機能を有する薬物である。好ましい機能性薬物は細胞傷害剤である。
【0095】
さらに他の態様によれば、二重特異性抗体によって指示される治療薬またはプロドラッグポリマーのin vivo標的への送達は、放射性核種の二重特異性抗体送達と組み合わせることが可能なので、化学療法と免疫療法とを組み合わせることができる。各々の治療法では標的化可能な複合体と複合体形成させて同時に投与することができ、また核種は第一の標的化可能な複合体の一部として投与し、薬物は後の工程にて第二の標的化可能な複合体の一部として投与することができる。
【0096】
他の態様によれば、細胞傷害剤は高分子担持体と結合させ、次いでその高分子担体を多価標的結合タンパク質と結合させてよい。この方法に関しては、Ryser et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 75:3867-3870, 1978, 米国特許第4,699,784号公報および同第4,046,722号公報を参照されたい。これらは引用することによりその全開示内容を本明細書の一部とする。複合体とすることは多価結合タンパク質の結合特異性または親和性に大きく影響しないことが好ましい。
【0097】
8.ヒト化、キメラおよびヒト抗体の治療および診断への使用
本明細書に記載の本発明のヒト化、キメラおよびヒトモノクローナル抗体、すなわち抗CD20 MAbおよび他のMAbは、治療法および診断法における使用に好適である。従って、本発明は、本発明によるヒト化、キメラおよびヒト抗体の裸の抗体としての単独投与、または多様な療法として、投与計画に従って一時的に、治療薬と結合させずに投与することを含んでなる。裸の抗CD20 MAbは、1以上の他の裸の抗体すなわちCD4、CD5、CD8、CD14、CD15、CD19、CD21、CD22、CD23、CD25、CD33、CD37、CD38、CD40、CD40L、CD46、CD52、CD54、CD74、CD80、CD126、B7、MUC1、Ia、HM1. 24およびHLA−DR、テネイシン、 VEGF、PlGF、癌遺伝子、癌遺伝子産物、またはそれらの組み合わせのような特定の抗原に対するMAb、1以上の抗CD20の免疫複合体、または治療薬(薬物、毒素、免疫調節剤、ホルモン、治療用放射性核種など)を結合させた上記に列挙された抗原に対する抗体、MAbともに同時にまたは連続して、または規定の投与処方に従って投与される1以上の治療薬(薬物、毒素、免疫調節剤、ホルモン、治療用放射性核種など)で補完することによりその有効性を増大させることができる。好ましいB細胞抗原には、ヒトCD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD46、CD52、CD74、CD80およびCD5抗原と同等なものが含まれる。好ましいT細胞抗原には、ヒトCD4、CD8およびCD25(IL-2レセプター)抗原と同等なものが含まれる。HLA−DR抗原同等物はB細胞およびT細胞の異常双方の治療に使用できる。特に好ましいB細胞抗原はヒトCD19、CD22、CD21、CD23、CD74、CD80およびHLA-DR抗原と同等なものである。特に好ましいT細胞抗原は、ヒトCD4、CD8およびCD25抗原と同等なものである。CD46は癌細胞表面上の抗原で、補体依存性溶解(CDC)を阻害する。
【0098】
さらに、本発明はB細胞リンパ腫および他の疾患または異常における診断および治療のための免疫複合体の投与を意図する。本明細書に記載のように、免疫複合体は、抗体成分および診断薬もしくは治療薬を担持するペプチドをはじめとする、治療薬または診断薬を含んでなる分子である。免疫複合体は、抗体成分の免疫反応性を保持しており、すなわち抗体部分の複合体形成前と複合体形成後の同起源抗原に対する結合能力はほぼ同等か、わずかに低下している。
【0099】
多種多様な診断薬および治療薬が、本発明の抗体と有利にも結合できる。本明細書に列挙された治療薬は、前記のように裸の抗体とは別々に投与しても有用である。例えば治療薬には、ビンカアルカロイド、アントラサイクリン、エピトフィロトキシン、タキサン、抗代謝剤、アルキル化剤、抗キナーゼ剤、抗生物質、Cox−2阻害剤、抗有糸分裂剤、抗脈管形成剤およびアポトーシス剤、特にドキソルビシン、メトトレキサート、タキソール、CPT−11、カンプトテカン、およびこれらまたは他の種類の抗癌剤由来の薬物などの化学療法薬が含まれる。免疫複合体および抗体融合タンパク質の調製に有用な他の癌化学療法薬には、ナイトロジェンマスタード、アルキルスルホネート、ニトロソウレア、トリアゼン、葉酸類似体、COX−2阻害剤、ピリミジン類似体、プリン類似体、プラチナ錯体、ホルモンなどがある。好適な化学療法薬はREMINGTON'S PHARMACEUTICAL SCIENCES,19th Ed.(Mack Publishing Co. 1995), and in GOODMAN AND GILMAN'S THE PHARMACOLOGICAL BASIS OF THERAPEUTICS, 7th Ed. (MacMillan Publishing Co. 1985)およびこれらの出版物の改訂版に記載されている。実験薬のような他の好適な化学療法薬は、当業者に公知である。
【0100】
これに加えて、DTPA、DOTA、TETAまたはNOTAのようなキレート剤または好適なペプチドに、蛍光分子のような検出可能な標識または、重金属もしくは放射性核種のような細胞傷害剤を結合させ得る。例えば、治療上有用な免疫複合体は、光活性薬または抗体成分に対する色素を結合させることにより得られる。蛍光色素のような蛍光組成物、および他の色素原、またはポルフィリンのような色素は、可視光線に感受性であり、好適な光線を病巣に向けることにより病巣の検出および治療に使用されてきた。治療においては、これは光照射、光療法または光線力学療法と呼ばれている。(Jori et al. (eds.), PHOTODYNAMIC THERAPY OF TUMORS AND OTHER DISEASES(Libreria Progetto 1985); van den Bergh, Chem. Britain 22:430(1986))さらに、光療法を行うためにはモノクローナル抗体を光活性化色素と結合させる。Mew et al., J.Immunol. 130:1473(1983);idem., Cancer Res. 45:4380(1985);Oseroff et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83:8744(1986); idem.,Photochem. Photobiol. 46:83(1987); Hasanet al., Prog. Clin. Biol. Res.288:471(1989); Tatsuta et al., Lasers Surg. Med.9:422(1989); Pelegrin et al., Cancer 67:2529(1991)を参照されたい。しかし、これらの初期の研究には、特に抗体フラグメントまたはサブフラグメントを伴った内視鏡的治療の適用は含まれていない。従って本発明は、光活性薬または色素を含んでなる免疫複合体の使用を含んでなる。
【0101】
放射性および非放射性薬の診断薬としての使用もまた、本発明に包含される。好適な非放射性診断薬は、核磁気共鳴映像法、コンピューター断層撮影法または超音波診断法に好適な造影剤である。核磁気共鳴用造影剤には、本発明の抗体と共に用いられる場合には、例えば、2−ベンジル−DTPAならびにそのモノメチルおよびシクロヘキシル類似体を含む金属キレート剤と、錯体を形成したマンガン、鉄およびガドリニウムのような非放射性金属が含まれる。米国出願番号第09/921,290号公報(filed on October 10,2001)を参照されたい。これは引用することによりその全開示内容を本明細書の一部とする。
【0102】
さらに、放射性標識抗体または免疫複合体は、画像診断に有用なγ線を放射する放射性同位元素または陽電子放射体を含んでよい。、特にエネルギー範囲が60〜4,000keVの好適な放射性同位元素には、131I、123I、124I、86Y、62Cu、64Cu、111In、67Ga、68Ga、99mTc、94mTc、18F、11C、13N、15Oおよび75Brなどが含まれる。例えば、米国特許出願「Labeling Targeting Agents with Gallium-68」Inventors G. L.Griffiths and W. J. McBride(米国仮出願第60/342,104号)には、18F、68Gaおよび94mTcなどのような造影を目的とする陽電子放射体が開示されており、これは引用することによりその全開示内容を本明細書の一部とする。特に有用な治療用放射性核種には、限定されるものではないが、32P、33P、47Sc、64Cu、67Ga、90Y、111Ag、111In、125I、131I、142Pr、153Sm、161Tb、166Dy、166Ho、177Lu、186Re、188Re、189Re、212Pb、212Bi、213Bi、211At、223Raおよび225Acが含まれる。特に有用な診断/検出放射性核種には、限定されるものではないが、18F、52Fe、62Cu、64Cu、67Ga、68Ga、86Y、89Zr、94mTc、94Tc、99mTc、111In、123I、124I、125I、131I、154−158Gd、32P、90Y、186Re、および175Luが含まれる。
【0103】
シュードモナス外毒素のような毒素も複合体を形成し、本発明の抗CD20抗体の抗体融合タンパク質の治療薬部分を形成してよい。かかる複合体または他の融合タンパク質の調製に適切に使用された他の毒素には、リシンをはじめとして、アブリン、リボヌクレアーゼ(RNアーゼ)、DNアーゼ I、ブドウ球菌内毒素−A、アメリカヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質、ゲロニン、ジフテリア毒、シュードモナス外毒素、およびシュードモナス内毒素が含まれる。例えば、Pastan et al., Cell 47:641(1986), and Goldenberg,CA-A Cancer Journal for Clinicians 44:43(1994)を参照されたい。本発明にて使用するために好適なさらなる毒素は当業者に公知であり、米国特許第6,077,499号公報に開示されており、これは引用することによりその全開示内容を本明細書の一部とする。
【0104】
サイトカインのような免疫調節剤もまた、抗体融合タンパク質の治療薬部分に結合させ、または抗体融合タンパク質の治療薬部分を形成してよく、または本発明のヒト化抗CD20抗体とともに投与してよい。本発明に好適なサイトカインには、限定されるものではないが、後述のようにインターフェロンおよびインターロイキンが含まれる。
【0105】
米国出願番号第5,734,033号公報(Reed)に記載され、引用することによりその全開示内容を本明細書の一部とするbcl−2発現を阻害しているアンチセンス分子のオリゴヌクレオチドもまた抗体融合タンパク質の治療薬部分に結合させてよく、または抗体融合タンパク質の治療薬部分を形成してよく、または本発明のヒト化抗CD20抗体とともに投与してよい。
【0106】
9.免疫複合体の調製
本発明によるいずれの抗体または抗体融合タンパク質も、1以上の治療薬または診断薬と結合し得る。一般に、一種の治療薬または診断薬がそれぞれの抗体または抗体フラグメントに結合しているが、二種以上の治療薬または診断薬が同じ抗体または抗体フラグメントに結合できる。本発明による抗体融合タンパク質は2以上の抗体またはそのフラグメントを含んでなり、この融合タンパク質を構成するそれぞれの抗体は治療薬または診断薬を含み得る。その上、1以上の抗体融合タンパク質の抗体は、二種以上の治療薬または診断薬を結合することができる。さらに、この治療薬は同じである必要はなく、異なった治療薬であってもよい。例えば、同じ融合タンパク質に薬物および放射性同位元素を結合させることができる。特に、IgGは131Iにて放射性標識し、薬物に結合させることができる。この131Iは、IgGのチロシンに取り込まれ、薬物はIgGリジンのイプシロン(epsilon)アミノ基に結合し得る。治療薬および診断薬も、還元SH基および炭化水素側鎖に結合できる。
【0107】
病気の組織の治療に好適な放射性核種は実質的にベータ粒子放出により崩壊し、限定されるものではないが、32P、33P、47Sc、59Fe、64Cu、67Cu、75Se、77As、89Sr、90Y、99Mo、105Rh、109Pd、111Ag、125I、131I、142Pr、143Pr、149Pm、153Sm、161Tb、166Ho、169Er、177Lu、186Re、188Re、189Re、194Ir、198Au、199Au、211Pb、212Pbおよび213Biが含まれる。有用なベータ粒子放出核種の最大崩壊エネルギーは、好ましくは20〜5,000keVであり、より好ましくは100〜4,000keV、および最も好ましくは500〜2,500keVである。また、オージェ放出粒子を伴い実質的に崩壊する放射性核種も好ましい。例えば、58Co、67Ga、80mBr、99mTc、103mRh、109Pt、111In、119Sb、125I、161Ho、189mOs、および192Irである。有用なオージェ粒子放出核種の崩壊エネルギーは、好ましくは1,000keVより小さく、より好ましくは100keVより小さく、および最も好ましくは70keVより小さい。また、アルファ粒子を生じながら実質的に崩壊する放射性核種も好ましい。かかる放射性核種には、限定されるものではないが、152Dy、211At、212Bi、223Ra、219Rn、215Po、211Bi、225Ac、221Fr、217At、213Biおよび255Fmが含まれる。有用なアルファ粒子放射核種の崩壊エネルギーは、好ましくは2,000〜10,000keVであり、より好ましくは3,000〜8,000keVであり、および最も好ましくは4,000〜7,000keVである。
【0108】
ガンマ線検出を利用する、診断薬として有用な放射性核種には、限定されるものではないが、51Cr、57Co、58Co、59Fe、67Cu、67Ga、75Se、97Ru、99mTc、111In、114mIn、123I、125I、131I、169Yb、197Hg、および201TIが含まれる。有用なγ線放出放射性核種の崩壊エネルギーは、好ましくは20〜2,000keV、より好ましくは60〜600keV、および最も好ましくは100〜300keVである。
陽電子放射断層撮影に有用な放射性核種には、限定されるものではないが、18F、51Mn、52mMn、52Fe、55Co、62Cu、64Cu、68Ga、72As、75Br、76Br、82mRb、83Sr、86Y、89Zr、94mTc、110In、120I、および124Iが含まれる。有用な陽電子放出放射性核種の総崩壊エネルギーは、好ましくは2,000keVより小さく、より好ましくは1,000keVを下回り、および最も好ましくは700keVより小さい。
【0109】
本発明の二重特異性抗体はプレターゲッティング法において有用であり、二種の治療薬または二種の診断薬を被検体に送達する好ましい方法を提供する。 米国出願番号第09/382,186号公報および同第09/337,756号公報は、二重特異性抗体を用いるプレターゲッティング法を開示しており、その方法は二重特異性抗体を125Iで標識して被検体に送達し、次に99mTcで標識した二価のペプチドを送達するものであり、これらは引用することにその全開示内容を本明細書の一部とする。また、プレターゲッティング法については米国出願番号第09/823,746号公報(Hansen et al.)および同第10/150,654号公報(Goldenberg et al.)、ならびに米国仮出願「"Methods and Compositions for Administration of Therapeutic and Diagnostic Agents, Atty Docket 第018733/1103号公報(McBride et al., filed January 31, 2003)に記載されており、これらは総て引用することにより本明細書の一部とする。送達の結果、125Iおよび99mTcに関して腫瘍/正常組織比は良好であり、従って二つの診断用放射性同位元素の有用性を示している。抗体および抗体融合タンパク質を標識するために公知の治療薬または診断薬の任意の組み合わせが使用できる。MAb複合体の抗体成分の結合特異性、治療薬または診断薬の有効性および抗体のFc部分のエフェクター活性は、複合体の標準的な試験により判定できる。
【0110】
本発明は、B細胞リンパ腫、白血病または自己免疫疾患を患う患者の細胞をプレターゲッティングするための方法であって、
(i)その細胞に特異的に結合する少なくとも一つのアームおよび標的化可能な複合体に特異的に結合する少なくとも一つの他のアームを有する、多重特異性の抗体融合タンパク質またはそのフラグメントを投与すること;(ii)所望により、患者に除去用組成物を投与し、その組成物により抗原に結合していない抗体融合タンパク質またはそのフラグメントを循環中から取り除くこと;および、(iii)その患者に、標準化可能な複合体(該複合体は、この抗体融合タンパク質またはそのフラグメントの少なくとも一つの他のアームにより認識され得る少なくとも一つのエピトープを含んでなるかまたは、担持担体部分を含んでなり、かつ少なくとも一種の第一の治療薬または診断薬と結合しているものである)標的化可能な複合体を投与することを含んでなる方法を提供する。本発明による抗体融合タンパク質は、多重特異性抗体でなくてはならない。好ましい態様によれば、この抗体は二重特異性抗体であり、ダイアボディーであることができる。第一の治療薬は放射性標識、免疫調節剤、ホルモン、光活性治療薬、細胞傷害剤、オリゴヌクレオチドおよびそれらの組み合わせからなる群から選択され、第一の診断薬は少なくとも一種の放射性標識、光活性診断薬または非放射性標識である。この抗体融合タンパク質またはそのフラグメントはまた、少なくとも一種の放射性標識、免疫調節剤、ホルモン、光活性治療薬、細胞傷害剤、オリゴヌクレオチドおよびそれらの組み合わせのような第二の治療薬と結合してよく、または少なくとも一種の放射性標識、光活性診断薬または非放射性標識のような第二の診断薬と結合してもよい。ある一つの態様によれば、第一および第二の治療薬または診断薬は同じである。
【0111】
治療薬または診断薬は、ジスルフィド結合形成を介して還元された抗体成分のヒンジ領域に結合し得る。あるいは、かかるペプチドはN−スクシニル3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)のようなヘテロ二官能性架橋剤を用いて抗体成分に結合させ得る。Yu et al., Int. J. Cancer 56 : 244(1994)を参照されたい。かかる結合に関する一般的な技術は当技術分野で十分公知である。例えばWong, CHEMISTRY OF PROTEIN CONJUGATION AND CROSS-LINKING (CRC Press 1991); Upeslaciset al.,"Modification of Antibody by Chemical Methods, "in MONOCLONAL ANTIBODIES: PRINCIPLES AND APPLICATIONS, Birch et al.(eds), pages 187-230(Wiley-Liss, Inc. 1995); Price, "Production and Characterization of Synthetic Peptide-Derived Antibodies, "in MONOCLONAL ANTIBODIES:PRODUCTION, ENGINEERING AND CLINICAL APPLICATION, Ritter et al.(eds.), pages 60-84(Cambridge University Press 1995)を参照されたい。あるいは、治療薬または診断薬は抗体のFc領域の炭化水素部分を介して結合することができる。この炭化水素基は、チオール基に結合している同じペプチドの添加を増大させるために使用でき、または炭化水素部分は異なるペプチドに結合するために使用し得る。
【0112】
抗体の炭化水素部分を介して抗体成分にペプチドを結合させる方法は当業者に十分公知である。例えば、Shih et al., Int.J. Cancer 41:832(1988); Shih et al.,Int. J. Cancer 46:1101(1990); and Shih et al., 米国特許5,057,313号公報を参照されたい。これらは総て引用することよりその全開示内容を本明細書の一部とする。一般的な方法にあっては、酸化された炭化水素部分を有する抗体成分と、少なくとも一つの遊離アミン官能基を有しかつ複数のペプチドを添加した担体ポリマーとを反応させることが含まれる。この反応により最初のシッフ塩基(イミン)結合が生じ、これは第二級アミンへの還元により安定化され最終複合体を形成し得る。
【0113】
抗体が免疫複合体の抗体成分として用いられる場合、Fc領域は存在せず、これは抗体フラグメントである。しかし、炭化水素部分を完全な長さの抗体または抗体フラグメントのL鎖可変領域中へ導入することが可能である。例えば、, Leung et al., J ; Immunol. 154:5919(1995); Hansen et al.,米国特許第5,443,953号公報(1995), Leung et al., 米国特許第6,254,868号公報を参照されたい。これらは総て引用することにより本明細書の一部とする。この操作された炭化水素部分は、治療薬または診断薬を結合させるために用いられる。
【0114】
10.医薬上許容される賦形剤
被検体に送達されるヒト化、キメラおよびヒト抗CD20 MAbは、MAb単独、免疫複合体、融合タンパク質から構成されるか、または1以上の医薬上許容される好適な賦形剤、1以上の付加的成分またはこれらのある組み合わせを含むことができる。
【0115】
本発明による免疫複合体または裸の抗体は、医薬上有用な組成物を調製するための公知の方法に従って調剤され、この免疫複合体または裸の抗体は混合物中で医薬上好適な賦形剤と結合する。滅菌リン酸緩衝生理食塩水は医薬上好適な賦形剤の一つの例である。他の好適な賦形剤は当業者に十分公知である。例えばAnsel et al., PHARMACEUTICAL DOSAGE FORMS AND DRUG DELIVERY SYSTEMS, 5th Edition (Lea & Febiger 1990), and Gennaro(ed.), REMINGTON'S PHARMACEUTICAL SCIENCES, 18th Edition(Mack Publishing Company 1990)およびそれらの改訂版を参照されたい。
【0116】
本発明による免疫複合体または裸の抗体は、例えばボーラス注射または持続点滴による静脈内投与のために処方できる。好ましくは、本発明による抗体は約4時間以内で、より好ましくは約3時間以内の時間で持続点滴される。例えば、最初の25〜50mgは30分以内、好ましくは15分以内に、そして残りは以後の2〜3時間にわたり点滴する。注射製剤は、例えばアンプルのような単位投与形、または保存剤を加えた複数回投与用容器にて与え得る。この組成物は油性または水性ビヒクル中の懸濁液、溶液またはエマルションの形態をとり、懸濁剤、安定化剤および/または分散剤のような処方剤を含むことができる。あるいは、その活性成分は例えば滅菌パイロジェンフリー水のような好適なビヒクルに用時溶解するための粉末形態であることができる。
【0117】
追加の調剤方法は、治療もしくは診断用複合体または裸の抗体の作用時間を制御するために用いられる。徐放性製剤は、免疫複合体または裸の抗体と複合体形成または吸収するためにポリマーを使用して調製できる。例えば、ポリ(エチレン−コ−酢酸ビニル)マトリックスおよびステアリン酸ダイマーおよびセバシン酸のポリ無水コポリマーマトリックスが含まれる。Sherwood et al., Bio/Technology 10:1446(1992)を参照されたい。かかるマトリックスからの免疫複合体または抗体の放出速度は、免疫複合体または抗体の分子量、マトリックス中の免疫複合体、抗体の量、および分散した粒子のサイズに依存する。Saltzman et al., Biophys. J. 55:163(1989); Sherwood et al.,前掲。他の固形投与形は、Ansel et al., PHARMACEUTICAL DOSAGE FORMS AND DRUG DELIVERY SYSTEMS,5th Edition(Lea & Febiger 1990), and Gennaro(ed.), REMINGTON'S PHARMACEUTICAL SCIENCES, 18th Edition(Mack Publishing Company 1990)およびその改定版に記載されている。
また、免疫複合体、抗体融合タンパク質、または裸の抗体は、哺乳類に皮下投与または他の非経口経路でも投与できる。さらに、投与は持続点滴でも単回または複数回ボーラス注射であってもよい。好ましくは、本発明の抗体は約4時間以内、より好ましくは約3時間以内にわたって点滴される。最初はゆっくりと点滴するのが好ましい。例えば、25〜50mgの用量を15〜30分間で点滴し、その残りの用量を2〜3時間までにわたって点滴する。一般に、ヒトに投与された免疫複合体、融合タンパク質または裸の抗体の用量は、患者の年齢、体重、身長、性別、一般的な病状および以前の病歴といった因子により変化する。通常、単回静脈内点滴として約1mg/kg〜20mg/kgの範囲の用量の免疫複合体、抗体融合タンパク質または裸の抗体をレシピエントに与えるのが望ましいが、状況によってはより高い、またはより低い用量も投与してよい。従って、70kgの患者のための1〜20mg/kgは、たとえば用量は70〜1,400mg、または1.7mの患者にとっての用量は41〜824mg/m2である。この用量は必要に応じで繰り返してよく、例えば、1週間に1回の投与を4〜10週間、好ましくは1週間に1回の投与を8週間、そしてより好ましくは、1週間に1回の投与を4週間繰り返してもよい。また、1週間おきの投与を数ヶ月というふうに、頻度を減らして投与してもよい。より具体的には、裸の抗CD20のような本発明の抗体は、1用量として2または3週間おきの投与を繰り返して合計少なくとも3用量を投与してよい。また、好ましくは本発明の抗体は1週間に1回投与を4〜8週間行ってもよい。言い換えると、用量をおよそ200〜300mg/m2よりも低くした場合(これは1.7mの患者では340mg/用量、または70kgの患者では4.9mg/kg)、1週間に1回投与を4〜8週間行ってよい。あるいは、例えば、用量が300〜500mg/ m2の場合、2または3週間おきに2〜3ヶ月と投与回数を減らしてもよい(すなわち、1.7mの患者では510〜850mg、または70kgの患者では7.3〜12mg/kg)。投与量および日程を適切に調節して、所望により他の投与間隔で投与日程を繰り返すことが可能であり、また種々の非経口経路により投与してよい。
【0118】
治療目的のために、治療上有効な量の免疫複合体、融合タンパク質または裸の抗体を哺乳類に投与する。ヒトではない動物被検体もまた含まれるが、本発明のための好適な被検体は通常、ヒトである。投与された量が生理的に有効である場合に、「治療上有効な量の」抗体調製物が投与されたという。薬物は、その存在がレシピエント哺乳類の生理機能に検出可能な変化をもたらした場合に、生理学的に有効である。特に、本発明の抗体調製物はその存在が抗腫瘍反応を誘発するかまたは自己免疫疾患の徴候および症状を緩和した場合に、生理的に有効である。生理的に有効な作用はまた、レシピエント哺乳類に体液性および/または細胞性免疫応答を引き起こす。
【0119】
11.治療方法
本発明はB細胞疾患およびその他の疾病の治療のための基本組成物としての本発明による裸の抗CD20抗体の使用を含む。特に本明細書に記載の組成物は、種々の自己免疫性ならびに無痛性B細胞リンパ腫、悪性型B細胞リンパ腫、慢性リンパ性白血病、急性リンパ性白血病、およびワルデンシュトレームマクログロブリン血症の治療に特に有用である。例えば、ヒト化抗CD20抗体成分および免疫複合体を用いて無痛性および悪性非ホジキンリンパ腫の双方を治療することができる。
【0120】
治療用組成物としては、少なくとも一つのヒト化、キメラまたはヒトモノクローナル抗CD20抗体を、単独で含むかまたは他のヒト化、キメラ、またはヒト抗体、治療薬もしくは免疫調節剤と組み合わせて含む。特に完全なヒト抗体との組み合わせ療法も意図され、これらは上記に示される方法によって製造される。
【0121】
また、裸のあるいは同じもしくは異なるエピトープまたは抗原と結合させた抗体を、本発明による1以上の抗体と組み合わせてもよい。例えば、ヒト化、キメラまたはヒト裸抗CD20抗体を他の裸のヒト化、裸のキメラまたは裸のヒト抗CD20と組みあわせてもよく、ヒト化、キメラまたはヒト裸抗CD20抗体を抗CD20免疫複合体と組みあわせてもよく、裸の抗CD20抗体を抗CD22放射性複合体と組みあわせてもよく、あるいは、抗CD22裸抗体を同位元素、1以上の化学治療薬、サイトカイン、毒素またはそれらの組み合わせと結合させたヒト化、キメラまたはヒト抗CD20抗体と組みあわせてもよい。ヒト化、キメラまたはヒトCD20抗体と毒素もしくは免疫調節剤との融合タンパク質、あるいは少なくとも二つの異なるB細胞抗体(例えば、CD20とCD22 MAb)の融合タンパク質も本発明において使用できる。上記にて既に挙げたようなB細胞疾患に関連する少なくとも二つの異なる抗原を標的とする多くの異なる抗体の組み合わせが、裸の抗体として、または一部は裸で一部は治療薬もしくは免疫調節剤と結合したものとして、あるいは細胞傷害剤などの他の治療薬または放射線療法と組み合わせて構築することができる。
【0122】
本明細書において「免疫調節剤」としては、サイトカイン、幹細胞増殖因子、腫瘍壊死因子(TNF)などのリンホトキシン、ならびにインターロイキン(例えば、インターロイキン−1(IL−1)、IL−2、IL−3、IL−6、IL−10、IL−12、IL−21およびIL−18)、コロニー刺激因子(例えば、顆粒球−コロニー刺激因子(G−CSF)および顆粒球マクロファージ−コロニー刺激因子(GM−CSF))、インターフェロン(例えば、インターフェロン−α、−βおよび−γ)、「S1因子」と呼ばれる幹細胞増殖因子、エリスロポエチンおよびトロンボポエチンなどの造血因子が挙げられる。好適な免疫調節剤部分としては、IL−2、IL−6、IL−10、IL−12、IL−18、L−21、インターフェロン−γ、TNF−αなどが挙げられる。あるいは、被検体に裸の抗CD20抗体を投与してもよく、別にサイトカインを投与することもでき、これは裸の抗CD20抗体の投与前、同時または投与後に投与することができる。上記に述べたように、抗CD20抗体はまた、免疫調節剤と結合させてもよい。この免疫調節剤はまた、異なる抗原と結合する1以上の抗体からなるハイブリッド抗体と結合させてもよい。
【0123】
本発明による多様な療法はさらに、裸の抗体、融合タンパク質または免疫複合体の形態での抗CD22、抗CD19、抗CD21、抗CD74、抗CD80、抗CD23、抗CD46またはHLA−DR(不変鎖を含む)抗体の投与によって補われた、裸の抗CD20抗体による免疫療法も含む。裸の抗CD20抗体またはそのフラグメントに特定のB細胞にて発現するMUC1抗原に対する裸の抗体を補ってもよい。これらの抗体としては、これらの抗原決定基上の少なくとも一つのエピトープを認識するポリクローナル、モノクローナル、キメラ、ヒトまたはヒト化抗体を含む。抗CD19および抗CD22抗体は当業者に公知である。例えば、引用することによりそれらの全開示内容を本明細書の一部とする、Ghetie et al., Cancer Res. 48:2610 (1988); Hekman et al., Cancer Immunol. Immunother. 32:364 (1991); Longo, Curr. Opin. Oncol. 8:353 (1996)、ならびに米国特許第5,798,554号および同第6,187,287号を参照されたい。
【0124】
多様な療法の別の態様によれば、被検体に裸の抗CD20抗体および/または免疫複合体を、標準的な癌の化学療法と組み合わせて投与する。例えば、「CVB」(1.5g/m2シクロホスファミド、200〜400mg/m2エトポシド、および150〜200mg/m2カルムスチン)は、非ホジキンリンパ腫を治療するのに用いられる投与計画である。Patti et al., Eur. J. Haematol. 51:18 (1993)を参照されたい。その他の好適な組み合わせ化学療法計画も当業者に周知である。例えば、Freedman et al., "Non-Hodgkin's Lymphomas," in CANCER MEDICINE, VOLUME 2, 3rd Edition, Holland et al. (eds. ), pages 2028-2068 (Lea & Febiger 1993)を参照されたい。記載したように、中悪性度非ホジキンリンパ腫(NHL)の治療のための第一世代化学療法計画としては、C−MOPP(シクロホスファミド、ビンクリスチン、プロカルバジンおよびプレドニソン)およびCHOP(シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチンおよびプレドニソン)が挙げられる。有用な第二世代の化学療法計画としては、m−BACOD(メトトレキサート、ブレオマイシン、ドキソルビシン、シクロホスファミド、ビンクリスチン、デキサメタゾンおよびロイコボリン)があり、好適な第三世代の計画としては、MACOP−B(メトトレキサート、ドキソルビシン、シクロホスファミド、ビンクリスチン、プレドニソン、ブレオマイシンおよびロイコボリン)がある。さらなる有用な薬物としては、フェニルブチレートおよびブロスタチン−1がある。好ましい多様療法によれば、化学療法薬とサイトカインの双方を本発明による抗体、免疫複合体または融合タンパク質と同時に投与する。サイトカイン、化学療法薬および抗体または免疫複合体はいずれの順序で投与してもよく、一緒に投与してもよい。
【0125】
ある好ましい態様によれば、NHLまたは自己免疫疾患にあっては、連続4週間毎週200〜400mg/m2の用量にてヒト化抗CD20抗体を1週1回、4回点滴し(2〜6時間かけて静脈投与)、必要があれば次の月/年にわたって繰り返す。好ましくはヒト化抗CD20抗体は1週間ごと、または3週間毎に1度、4〜8回にて、200〜300mg/m2の用量で投与する。また好ましくは、NHLは、上記のように4週間の点滴にて、または上記より頻度は少ないが同じ日に、抗CD20モノクローナル抗体の点滴前、点滴中または点滴後に1時間にわたる静脈点滴として投与される360mg/m2の用量のエプラツズムAb(抗CD22ヒト化抗体)と組み合わせて治療される。あるいは、組み合わせ療法に用いる抗体は、週ごとに交互に、1週おきにそれぞれ一連の全点滴が4〜8またはそれ以上の投与数となるように交互に一連の点滴を行ってもよい。その後、これらの投与計画を、患者の臨床状態および各治療計画に対する応答に応じて、3〜6ヶ月おきといった種々の間隔で繰り返すことができる。一層好ましくは、NHLは、イットリウム−90(Y−90の総用量は数週間または数ヶ月という期間における1回以上の注入として5〜35mCi/m2である)などの治療用同位元素により放射性標識したCD22 MAbの2回以上の注入と組み合わせて、上記抗CD20抗体の1週1回を4回またはそれより少ない頻度の点滴により治療される。米国出願番号第09/590,284号(Goldenberg et al.)は抗CD22抗体を用いた自己免疫疾患の免疫療法を開示しており、引用することによりその全開示内容を本明細書の一部とする。
【0126】
さらに、本発明の治療組成物は異なる非ブロッキングCD20エピトープに向けられた裸のモノクローナル抗CD20抗体の混合物またはハイブリッド分子を含むことができる。よって、本発明は、少なくとも二つのCD20エピトープと結合するモノクローナル抗CD20抗体の混合物を含んでなる治療組成物を提供する。さらに、本明細書に記載の治療組成物はCDR配列の異なる抗CD20抗体の混合物を含むことができる。
【0127】
裸の抗CD20抗体はB細胞リンパ腫および自己免疫疾患の治療のための基本治療組成物であるが、このような抗体療法の効力は、この裸の抗体に、IFNα、IFNβおよびIFNγをはじめとするインターフェロン;IL−1、IL−2、IL−6、IL−12、IL−15、IL−18、IL−21をはじめとするインターロイキン;G−CSFおよびGM−CSFをはじめとするサイトカインのような免疫調節剤などの添加剤を補うことにより増強することができる。よって、CD20抗体は、混合物として(個別に、または所定の用量計画によって投与される)または抗CD20抗体との複合体もしくは融合タンパク質として抗体およびサイトカインと組み合わせることができるだけでなく、薬物との組み合わせとしても投与することができる。例えば抗CD20抗体は4一薬化学療法計画としてのCHOPと組み合わせてもよい。さらに、裸の抗CD20抗体は、NHL療法用の薬物組み合わせとして裸の抗CD22抗体およびCHOPまたはフルダラビンと組み合わせることができる。抗CD22抗体を用いたB細胞悪性腫瘍の免疫療法は米国特許第6,183,744号公報(Goldenberg et al.)および米国出願番号第09/307,816号公報(Goldenberg et al.)に記載されており、これらは引用することによりその全開示内容を本明細書の一部とする。これらの補助的治療組成物は抗CD20抗体の投与前、投与と同時または投与後に投与することができる。
【0128】
上記にて述べたように、本発明による抗体はB細胞リンパ腫および白血病、ならびにその他のB細胞の疾病または疾患を治療するために使用できる。例えば、抗CD20抗体は、急性特発性血小板減少性紫斑病および慢性特発性血小板減少性紫斑病などの免疫媒介性血小板減少症、皮膚筋炎、シェーグレン症候群、多発性硬化症、シドナム舞踏病、重症筋無力症、全身性紅斑性狼瘡、狼瘡腎炎、リウマチ熱、多腺性症候群、水疱性類天瘡、真性糖尿病、ヘノッホ−シェーンライン紫斑病、溶血性連鎖球菌感染後腎炎、結節性紅斑らい、高安動脈炎、アジソン病、慢性関節リウマチ、類肉腫症、潰瘍性大腸炎、多形性紅斑、IgA腎症、結節性多発性動脈炎、強直性脊椎炎、グッドパスチャー症候群、閉塞性血栓血管炎、原発性胆汁性肝硬変、橋本甲状腺炎、甲状腺中毒症、強皮症、慢性活動性肝炎、多発性筋炎/皮膚筋炎、多発性軟骨炎、尋常性天疱瘡、ウェジナー肉芽腫、膜性腎症、筋萎縮性側索硬化症、脊髄ろう、巨細胞動脈炎/多筋痛、悪性貧血、急速進行性糸球体腎炎、および繊維性肺胞炎といった第III種自己免疫疾患をはじめとするB細胞関連免疫疾患の治療に使用できる。
【0129】
抗CD20抗体はまた、CD20抗原を発現する細胞においてアポトーシスを誘導し得る。この誘導の証拠は文献によって支持されている。例えば、架橋したCD20 MAbのIgG1−Fcと反応性のあるFc受容体を有するリンパ系細胞を用いてアポトーシスが誘導できたことが実証されている。Shan et al., Cancer Immunol. Immunother. 48 (12):673-683 (2000)を参照されたい。さらに、キメラCD20 MAbの集合体、すなわちホモポリマーがアポトーシスを誘導したことも報告されている。Ghetie et al., Blood 97(5):1392-1398 (2000)およびGhetie et al., Proc. Natl. Acad. Sci USA 94(14):7509-7514 (1997)を参照されたい。
【0130】
B細胞のCD20表面抗原に特異的な抗体を哺乳類被験体に注射することができ、これは次に正常B細胞と悪性B細胞の両のCD20細胞表面抗原と結合する。哺乳類被験体としてはヒトおよびイヌやネコなどのペットをはじめとする家庭内動物が挙げられる。本発明による抗CD20 MAb、すなわちヒト化、キメラ、ヒト、イヌ化およびネコ化、さらにはマウス抗CD20 MAbは、CD20抗原に対して特異的交差反応性のある非ヒト哺乳類被検体を治療するのに使用できる。下記実施例10および11を参照されたい。
【0131】
ヒトにおいて免疫原性のあるマウスMAbは通常、非ヒト哺乳類被検体では免疫原性が低い。CD20表面抗原に結合している抗CD20抗体は腫瘍性B細胞の破壊と枯渇をもたらす。正常なB細胞も悪性B細胞もCD20抗原を発現することから、抗CD20抗体はB細胞の死滅をもたらしてしまう。しかし、正常なB細胞だけが再分布し、悪性B細胞は根絶されるか、あるいは著しく少なくなる。さらに、腫瘍を破壊する可能性を有する化学薬剤または放射性標識を抗CD20抗体に結合させて、この薬剤を腫瘍性B細胞を特異的に標的とするようにすることもできる。
【0132】
12.発現ベクター
ヒト化、キメラまたはヒト抗CD20 MAbをコードするDNA配列は、核酸の増幅をもたらす種々の既知の宿主ベクター中へ組換え操作することができる。これらのベクターは公知の方法を用い、核酸が送達される細胞内で核酸の転写、翻訳またはその双方を命令するために必要なエレメントを含むよう設計することができる。既知の方法論を用い、適当な転写/翻訳制御シグナルと作動可能に連結されたタンパク質コード配列を有する発現構築物を作製することができる。これらの方法としてはin vitro組換えDNA技術および合成技術を含む。例えば、Sambrook et al., 1989, MOLECULAR CLONING: A LABORATORY MANUAL, Cold Spring Harbor Laboratory (New York); Ausubel et al., 1997, CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY, John Wiley & Sons (New York)を参照されたい。また、本発明は、ベクターと会合していないポリヌクレオチドの送達も提供する。
【0133】
本発明における使用に好適なベクターはウイルス系であっても非ウイルス系であってもよい。ウイルスベクターの特定の例としては、アデノウイルス、AAV、単純ヘルペスウイルス、レンチウイルス、およびレトロウイルスベクターが挙げられる。非ウイルス系ベクターの例としては、プラスミドがある。好ましい態様によればでは、ベクターはプラスミドである。
【0134】
本明細書に記載の発現ベクターは、宿主細胞で発現される遺伝子を含むポリヌクレオチドである。典型的には、遺伝子発現は構成的または融合型プロモーター、組織特異的調節エレメント、およびエンハンサーをはじめとする、ある特定の調節エレメントの制御下に置かれる。このような遺伝子はそれら調節エレメントに「作動可能に連結される」と言われる。
【0135】
好ましくは本発明による発現ベクターは、H鎖およびL鎖可変および定常領域を含むヒト化、キメラまたはヒト抗CD20をコードするDNA配列を含んでなる。しかし、一方がH鎖可変および定常領域を含み、他方がL鎖可変および定常領域を含むといったように二つの発現ベクターを用いてもよい。この発現ベクターはさらにプロモーターを含むことが一層好ましい。任意の強力なプロモーターを使用できるので、分泌シグナルペプチドをコードするDNA配列、ヒトIgG1H鎖定常領域をコードするゲノム配列、Igエンハンサーエレメント、および選択マーカーをコードする少なくとも一つのDNA配列を含むことができる。
【0136】
また、本明細書では、ヒト化抗CD20 MAbを発現させる方法を提供し、その方法は、(i)ヒト化、キメラまたはヒト抗CD20 MAbをコードするDNA配列を含んでなる少なくとも一つの発現ベクターをインターナライズすること、(ii)少なくとも一つの該インターナライズベクターによって哺乳類細胞をトランスフェクトすること、(iii)マーカー遺伝子を発現するトランスフェクト細胞を選択すること、および(iv)それらのトラスフェクト細胞からヒト化抗CD20 MAbを分泌する細胞を同定することを含んでなる。
【0137】
13.抗CD20抗体の作製方法
一般に、抗CD20 MAbのVκ(可変L鎖)およびVH(可変H鎖)配列はRT−PCR、5’−RACEおよびcDNAライブラリースクリーニングなどの種々の分子クローニング手順によって得ることができる。特に、抗CD20 MAbのV遺伝子はマウスまたはキメラ抗CD20 MAbを発現する細胞からPCR増幅によりクローニングし、配列決定することができる。それらの忠実性を確認するため、クローニングしたVLおよびVH遺伝子を、引用することにより本明細書の一部とするOrlandi et al., (Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 86: 3833 (1989))が記載しているように、キメラAbとして細胞培養にて発現させることができる。このV遺伝子配列に基づき、次にヒト化抗CD20 MAbを、引用することにより本明細書の一部とするLeung et al. (Mol. Immunol., 32:1413 (1995))が記載しているように設計および構築することができる。cDNAは一般的な分子クローニング技術(Sambrook et al., Molecular Cloning, A laboratory manual,2nd Ed (1989))により、いずれかの公知のハイブリドーマ系統またはマウスまたはキメラ抗CD20 MAbを産生するトランスフェクション細胞系統から調製してもよい。MAbのVκ配列はプライマーVK1BACKおよびVK1FOR(Orlandi et al., 1989)または引用することにより本明細書の一部とするLeung et al. (BioTechniques, 15:286 (1993))が記載している伸張プライマーセットを用いて増幅してもよく、一方、VH配列はプライマー対VH1BACK/VH1FOR(Orlandi et al., 1989, 前掲)または引用することにより本明細書の一部とするLeung et al. (Hybridoma, 13:469 (1994))が記載しているマウスIgGの定常領域へアニーリングするプライマーを用いて増幅することができる。10μLの第一鎖cDNA産物、10μLの10X PCRバッファー[500mM KCl、100mM Tris−HCl(pH8.3)、15mM MgCl2、および0.01%(w
/v)ゼラチン](Perkin Elmer Cetus, Norwalk, CT)、250μMの各dNTP、200nMのプライマー、および5単位のTaq DNAポリメラーゼ(Perkin Elmer Cetus)を含有するPCR反応混合物に対して30サイクルのPCRを行うことができる。各PCRサイクルは好ましくは94℃で1分間の変性、50℃で1.5分間のアニーリングおよび72℃で1.5分間の重合からなる。増幅されたVκおよびVHフラグメントは2%アガロース(BioRad, Richmond, CA)上で精製することができる。同様に、Leung et al. (Mol. Immunol., 32:1413 (1995))が記載しているようなヒト化V遺伝子は長いオリゴヌクレオチド鋳型合成とPCR増幅の組み合わせにより構築することができる。ヒト化V遺伝子を構築する際に用いる自動RNA/DNAシンセサイザー(Applied Biosystems, foster City, CA)でのオリゴAおよびオリゴBの合成のための方法については実施例3を参照のこと。
【0138】
VκのPCR産物は、Igプロモーター、シグナルペプチド配列、およびVκPCR産物のフレーム内連結を容易にする便宜な制限部位を含む、pBR327に基づく足場ベクターVKpBR中にサブクローニングすることができる。VHのPCR産物はpBluescriptに基づくVHpBSなどの同様の足場ベクター中へサブクローニングすることができる。各PCR産物を含む個々のクローンは、例えば引用することにより本明細書の一部とするSanger et al. (Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 74:5463 (1977))の方法により配列決定してもよい。
【0139】
本明細書に記載のDNA配列は、天然に存在するものであれ誘導されたものであれ、総てのその対立遺伝子、突然変異体および変異体を含むといえる。
【0140】
VκおよびVHを含む発現カセットをプロモーターおよびシグナル配列とともに、HindIII−BamHI断片として二重制限消化により、それぞれVKpBRおよびVHpBSから切り出すことができる。次に、VκおよびVH発現カセットをそれぞれpKhおよびpG1gなどの適当な発現ベクターの連結することができる(Leung et al., Hybridoma, 13:469 (1994))。これらの発現ベクターは適当な細胞、例えば骨髄腫Sp2/0−Ag14(ATCC, VA)へ同時トランスフェクトし、コロニーをハイグロマイシン耐性に関して選択し、上清液を例えば、下記のように、ELISAによりキメラまたはヒト化抗CD20 MAbの産生に関してモニタリングすることができる。あるいは、VκおよびVH発現カセットを改変足場ベクターVKpBR2およびVHpBS2中に組み立て、それぞれXbaI/BamHIおよびXhoI/BamHI断片として切り出し、Gilles et al. (J. Immunol. Methods 125:191 (1989)が記載しているように(また、Sp2/0−Ag14細胞での発現に関してはLosman et al.,Cancer, 80:2660 (1997)にも示されている)pdHL2などの単一の発現ベクター中へサブクローニングすることができる。本発明において有用なその他のベクターとしては、Barnes et al., Cytotechnology 32:109-123 (2000)が記載しているようなGSベクターがあり、これはNS0細胞系統およびCHO細胞で好ましく発現される。他の適当な哺乳類発現系がWerner et al., Arzneim.-Forsch./Drug Res.48(II), Nr. 8,870-880 (1998)に記載されている。
【0141】
同時トランスフェクションおよびELISAによる抗体分泌クローンのアッセイは次のようにして行うことができる。引用することにより本明細書の一部とするCo et al., J Immunol., 148:1149 (1992)に従うエレクトロポレーション(BioRad, Richmond, CA)による5×106個のSP2/0骨髄腫細胞のトランスフェクションには、約10μgのVKpKh(L鎖発現ベクター)および20μgのVHpG1g(H鎖発現ベクター)を用いることができる。トランスフェクション後、細胞を37℃、5%CO2下、96ウェルマイクロタイタープレートにて完全HSFM培地(Life Technologies, Inc., Grand Island, NY)中で増殖させればよい。選択プロセスは2日後、ハイグロマイシン選択培地(Calbiochem, San Diego, CA)を最終濃度500単位/mlハイグロマイシンで加えて開始することができる。コロニーは通常エレクトポレーション後2〜3週間で出現する。次に、これらの培養物をさらなる分析のために拡張することができる。
【0142】
キメラまたはヒト化H鎖の分泌に関して陽性のトランスフェクトーマのクローンはELISAアッセイにより同定することができる。要するに、トランスフェクトーマ培養物からの上清サンプル(〜100μL)を、ヤギ抗ヒト(GAH)−IgG、F(ab’)2フラグメント特異的抗体(Jackson ImmunoResearch, West Grove, PA)をプレコートしたELISAマイクロタイタープレートに3反復で添加する。プレートを室温にて1時間インキュベートする。洗浄バッファー(0.05%ポリソルベート20を含有するPBS)で3回洗浄することにより結合していないタンパク質を除去する。ホースラディッシュ・ペルオキシダーゼ(HRP)結合GAH−IgG、Fcフラグメント特異的抗体(Jackson ImmunoResearch)をウェルに加える(100μLの抗体原液希釈物×104に、非結合抗体を最終濃度1.0μg/mLまで添加)。1時間インキュベートした後、プレートを通常3回洗浄する。反応溶液[PBS100μL中、167μgのオルトフェニレンジアミン(OPD)(Sigma, St. Louis, MO)、0.025%過酸化水素を含有]をウェルに加える。暗所にて30分間、発色させる。各ウェルに50μLの4N HCl溶液を加えることで反応を停止させた後、自動ELISAリーダー(Bio-Tek instruments, Winooski, VT)で490nmにて吸光度を測定する。次に、無関係なキメラ抗体標品(Scotgen, Ltd., Edinburg, Scotlandから入手可能)に対して結合キメラ抗体を測定する。
【0143】
抗体は細胞培養培地から次のようにして単離することができる。トランスフェクトーマ培養物を血清フリー培地に適用する。キメラ抗体の生産のためには、HSFMを用い細胞を回転瓶中500mlの培養物として細胞を増殖させる。培養物を遠心分子し、上清を0.2μメンブランで濾過する。濾過した培地をAタンパク質カラム(1×3cm)に流速1ml/分で通す。次にこの樹脂を約10倍カラム量のPBSで洗浄し、10mMEDTAを含有する0.1Mグリシンバッファー(pH3.5)を用いて、Aタンパク質結合抗体をカラムから溶出させる。1.0mL画分を、10μLの3M Tris(pH8.6)の入った試験管に回収し、280/260nmの吸光度からタンパク質濃度を求める。ピーク画分をプールし、PBSの対して透析し、例えばCentricon 30(Amicon, Beverly, MA)を用いて抗体を濃縮する。抗体濃度は上記のようにELISAにより測定し、その濃度をPBSを用いて約1mg/mLに調整する。保存のためにはサンプルにアジ化ナトリウム0.01%(w/v)を加えると便宜である。
【0144】
下記は抗CD20抗体を調製するために用いたプライマーのヌクレオチド配列である。
【0145】
【化1】
【0146】
以下、本発明を実施例によりさらに説明するが、これらの実施例は単に例示のために示されるものである。本発明はこれらの実施例に限定されず、本明細書に示される技術から明らかな総ての改変を含む。
【実施例】
【0147】
実施例1.ヒト化抗CD20抗体の構築
抗CD20抗体A20のVHおよびVκ遺伝子を、それぞれOrlandi et al.,(Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 86:3833 (1989))に記載のプライマー対VH1BACK/VH1FORおよびVK1BACK/VK1FORを用いてRT−PCRにより得た。複数の独立したクローンを配列決定してPCR反応から生じた可能性のあるエラーを除いた。最終PCR産物としてのクローニングされたマウスVHおよびVκ配列をそれぞれA20Vk(図1A)およびA20VH(図1B)と呼んだ。キメラA20(cA20)抗体を構築し、Sp2/0細胞で発現させた。cA20のVκおよびVH配列は図2に示されている。このcA20抗体はRaji細胞に結合し、ハイブリドーマ細胞培養上清から精製された放射性標識A20と競合する(図3)。この結果からクローニングされたV遺伝子の忠実性が確認された。
【0148】
ヒト化抗hCD20(hA20)抗体をコードする一つのL鎖可変領域配列と二つのH鎖可変領域配列を設計および構築した。VκについてはヒトREIフレームワーク配列を用い(図1A)、VHについてはEUとNEWMフレームワーク配列の組み合わせを用いた(図1B)。最初のヒト抗体フレームワークと比べたとき、CDR領域の外側の各鎖にいくつかのアミノ酸変異がある。hA20のH鎖、hA20VH1はEUフレームワークから9つの変異を含み、一方、hA20VH2は3つの変異を含んでいる(図4A)。ヒト抗体フレームワークからのアミノ酸変異が多いので、hA20VH2がhA20VH1よりも好ましい。hA20のL鎖、hA20VκはREIフレームワークから7つのアミノ酸変異を含む(図4B)。
【0149】
実施例2.hA20抗体の構築方法
各可変鎖をそれぞれ「A」および「B」と呼ばれる5’−ハーフおよび3’−ハーフの2つの部分として構築した。各ハーフは、Taqポリメラーゼを用い、2つの短いフランキングプライマーを有する一本鎖合成オリゴヌクレオチド鋳型のPCR増幅により作製した。増幅した断片をまず、Invitrogen (Carlsbad, CA)から得たpCR4 TAクローニングベクター中へクローニングし、DNA配列決定を行った。これらの鋳型およびプライマー対は次の通りである。
鋳型 プライマー
VKA VkA−Backward/VkA−Forward
VKB VkB−Backward/VkB−Forward
VH1A VHA−Backward/VH1A−Forward
VH1B VH1B−Backward/VHB−Forward
VH2A VHA−Backward/VH2A−Forward
VH2B VH2B−Backward/VHB−Forward
【0150】
L鎖
ヒト化Vκ配列の全長DNAを構築するため、オリゴhA20VKA(120mer)およびhA20VKB(130mer)を自動RNA/DNAシンセサイザー(Applied Biosystems)にて合成した。hA20VKAおよびBはhA20 Vκのそれぞれnt26〜145および166〜195に相当する(図5A参照)。オリゴhA20VKAおよびBは濃水酸化アンモニウムで処理することにより支持体から切断し、脱保護した。サンプルを真空処理した後、100μLの水に再懸濁させ、ChormaSpin−100カラム(Clontech, Palo Alto, CA)にて遠心分離することにより不完全なオリゴマー(100mer未満)を除去した。合成副生成物を除去するためにChromaSpin−30を用いたこと以外は、総てのフランキングプライマーを同様に精製した。1μLのChromaSpinカラムで精製したhA20VKAを、10μLの10×PCRバッファー[500mM KCl、100mM Tris−HCl(pH8.3)、15mM MgCl2、および0.01%(w/v)ゼラチン](Perkin Elmer Cetus, Norwalk, CT)、250μMの各dNTP、200nMのVkA−BackwardおよびVkA−Forwar、および5単位のTaq DNAポリメラーゼ(Perkin Elmer Cetus)を含有する反応用量100μLにてPCR増幅した。この反応混合物に対して、94℃で1分間の変性、50℃で1.5分間のアニーリングおよび72℃で1.5分間の重合からなる30サイクルのPCR反応を行った。hA20VKBは同様の条件下、プライマー対VkB−BackwardおよびVkB−ForwardによりPCR増幅した。増幅したVKAおよびVKAフラグメントを2%アガロース(BioRad, Richmond, CA)上で精製した。DNA連結反応による連結を容易にするため、各フラグメントの末端に固有の制限部位を設計した。増幅されたVKAフラグメントは5’末端にPvuII制限部位CAGCTGを、3’末端には,BstBI制限部位TTCGAAを含んでいた。増幅されたVKBフラグメントは5’末端にBstBI制限部位を、3’末端にはBglII制限部位AGATCTを含んでいた。
【0151】
全長Vκ鎖の構築は各フラグメントを適当な5’および3’酵素で制限酵素消化し、あらかじめPvuIIおよびBelIで消化した(BclI消化末端はBglII消化末端と適合する)VKpBR2ベクターへ連結することにより達成した。得られた連結産物はPvuIIに連結されたフラグメントAと、BelI部位に連結されたフラグメントBを含み、このフラグメントAとBはBstBI部位でともに連結していた(図5A)。VKpBR2はVKpBR(Leung et al., Hybridoma, 13:469 (1994))の改変型足場ベクターであり、XbaI制限部位が転写開始コドンの14塩基上流に導入されている。DNA配列決定よる正確なオープンリーディングフレームが確認されたところで、VKpBR2から完全な鎖をXbaI〜BamHI断片として取り出し、pdHL2発現ベクターへ連結した。Vκ配列だけを含むベクターをhA20VκpdHL2と呼んだ。pdHL2はIgHエンハンサーおよびMT1プロモーターの制御下にヒトIgG1C1、C2、C3およびヒンジ領域(図7A)、そしてヒトカッパ鎖Ck(図7B)の両者の発現カセット、ならびにトランスフェクト物の選択およびトランス遺伝子の同時増幅のためのマーカーとしての、弱いSV40プロモーターによって制御されるマウスdhfr遺伝子を含んでいる(Gillies et al., J Immunol. Methods 125:191(1989); Losman et al., Cancer 80:2660 (1997))。pdHL2のVκおよびVHセグメントを置換することにより種々のキメラまたはヒト化Abを発現させることができる。
【0152】
H鎖
hA20VH1の構築のため、それぞれnt23〜143および179〜329に相当するオリゴVH1A(121mer)およびVH1B(151mer)(図5B参照)を上記のように合成した。同様に、hA20VH2については、オリゴVH2AおよびVH2Bを調製した。これらのオリゴを、実施例2に挙げたような個々のプライマー対によりPCR増幅した。Vκに対して行ったものと同じ構築処理を両タイプのVHについても行い、以下の改良を施した:フラグメントAの5’末端制限部位はPstI(CTGCAG)とし、フラグメトBの3’末端制限部位はBstEII(GGTCACC)とした。共通のNciI部位(CCCGG)によるVHpBS2ベクターへの連結の際にこれらのフラグメントを連結して全長VH配列(図5Bおよび5C)を得て、DNA配列決定により確認した。VHpBS2はVHpBS(Leung et al., Hybridoma, 13:469 (1994))の改変型足場ベクターであり、翻訳開始コドンの16塩基上流にXhoI制限部位が導入されている。構築されたVH遺伝子を、Vκ配列を含む発現ベクターhA20VKpdHL2へ、XhoI−BamHI制限断片としてサブクローニングした。pdHL2のH鎖領域はBamHI制限部位を欠いていることから、この連結反応には、pdHL2ベクターに存在する可変鎖のBamHI部位とHindIII部位との間を架橋するためにHNBリンカーを用いることを必要とした。得られた発現ベクターはhA20−1pdHL2およびhA20−2pdHL2と呼んだ。
HNBリンカー 5’−AGCTTGCGGCCGC−3’
3’−ACGCCGGCGCTAG−5’
【0153】
実施例3.トランスフェクションおよびhA20抗体の発現
hA20のための発現ベクター約30μgをSalIにて消化して線状化し、エレクトロポレーションによりSp2/0−Ag14細胞へトランスフェクトした(450Vおよび25μF)。トランスフェクト細胞を96ウェルプレートで2日間平板培養した後、培地中にMTXを最終濃度0.025μMを加えることにより薬剤耐性に関して選択した。2〜3週間にてMTX耐性コロニーが出現した。選択に生き残ったコロニーからの上清をELISAアッセイによりヒトAb選択に関してスクリーニングした。すなわち、100μL上清を、GAH−IgG、F(ab’)2フラグメント特異的Abをプレコートマイクロタイタープレートのウェルに加え、室温で1時間インキュベートした。洗浄バッファー(0.05%ポリソルベート20を含有するPBS)にて3回洗浄し、結合していないタンパク質を除去した。HRP結合GAH−IgG、Fcフラグメント特異的Abをウェルに加えた。1時間インキュベートした後、プレートを3回洗浄した。結合したHRP結合Abは、4mM OPDおよび0.04%H2O2を含有する基質溶液を添加した後、490nmで読みとることによって明らかにした。陽性細胞クローンを拡張し、細胞培養上清から、Aタンパク質カラムでのアフィニティークロマトグラフィーによりhA20−1とhA20−2を精製した。
【0154】
実施例4.抗CD20抗体の結合活性
親のcA20および抗CD20 Ab c2B8に対するhA20の免疫反応性を評価するため、競合細胞結合アッセイ行った。一定量の125I標識マウスA20またはc2B8(100,000cpm,〜10μCi/μg)を、4℃にて1〜2時間、種々の濃度(0.2〜700nM)のhA20−1、−2、マウスA20、cA20またはc2B8の存在下でRaji細胞とともにインキュベートした。細胞をPBS中で洗浄することで結合していないAbを除去した。洗浄後、細胞に会合した放射活性を測定した。図6にて示したように、両ヒト化A20 mAb、すなわちhA20−1およびhA20−2は、Raji細胞に対する125I−A20または125I−c2B8の結合と競合する場合、A20、マウス抗CD20 MAb、cA20、およびc2B8、キメラ抗CD20 MAbに匹敵する結合活性を示した。
【0155】
Raji細胞へ放射性標識MAbを直接結合させ、スケッチャードプロット分析を行うことにより、3.9nMのC2B8と比較し、cA20およびhA20に関してそれぞれ2.9および4.2nmにて解離定数を測定した。in vitro架橋実験では、抗体との複合体に対するヤギ抗ヒトIgG、Fcフラグメント特異的抗体はcA20およびhA20間でC2B8同様のRaji NHL細胞の死滅を示した。
【0156】
実施例5.再発性中度非ホジキンリンパ腫患者の治療
ある中度非ホジキンリンパ腫患者は、CHOP×6で4ヶ月間完全緩解を示し、再度のCHOP×6で進行を示し、D−MOPP×2で3ヶ月間安定疾患を示し、さらに末梢幹細胞移植を伴ったCVBで5ヶ月間部分的緩解を示すといった過去の強い化学療法で上手く行かなかった。この患者には頸部リンパ節にコンピューター断層写真および触診で測定可能な再発リンパ腫を有していた。
【0157】
この患者に0日、14日、28日および42日に450mgのヒト化CD20モノクローナル抗体A20を3時間以内で点滴したところ、点滴中および点滴直後に重大な副作用は見られなかった。8週後、頸部リンパ節の肥大を触診したところ、約50%の測定可能な退縮を示した。治療後20週で追跡測定を行ったところ、コンピューター断層写真法により確認しても頸部にも他のいずれの部位にも疾病の痕跡はないことが示された。新たな疾患はどこにも認められないことから、この患者は完全緩解状態にあるとみなされた。10〜12週ごとの追跡調査でも、治療後少なくとも10ヶ月は完全緩解が確認された。
【0158】
実施例6.慢性特発性血小板減少性紫斑病患者の治療
慢性特発性血小板減少性紫斑病を有する45歳の女性はプレドニソン、γグロブリン、および高用量デキサメタゾンで処置されたが、病状が進行した。この患者は脾臓摘出を受けたが、病状を安定化できなかった。この患者の血小板数は30,000/μLより少なくなり、敗血頻度が増えた。次に、この患者にヒト化CD20 A20 MAb、第一週目には500mg静脈投与し、以降は毎週1回250mgの用量を、計4回注射した。最後のA20投与の1週間後、血小板数の顕著な増加が見られ、150,000/mLまでになり、敗血現象がなくなった。最後の抗体注入後5ヶ月で疾病は緩解状態となった。
【0159】
実施例7.進行性慢性関節リウマチ患者の治療
指関節、手首および肘に重度の進行性慢性関節リウマチ患者を有する70歳の女性は、メトトレキサート治療が上手く行かず、Enbrel療法を施してもわずかな軽減しか見られなかった。次にこの患者を毎週300mgのA20ヒト化CD20 MAbにて4週間、静脈投与した。3ヶ月後、疾病の活動指標に40%の改善が見られ、これが5ヶ月間持続した。この患者に再び同じ用量および頻度でA20処置を行った。患者の改善は続き、2回目のA20 MAb処置後6ヶ月で60%の改善が見られた。ヒト抗A20抗体はA20処置中、または処置後は全く見られなかった。血液から正常なB細胞が枯渇していたが、感染合併症またはその他の薬物関連の重大な毒性は見られなかった。
【0160】
実施例8.重症性筋無力症患者の治療
65歳の男性は重症性筋無力症の通常のあらゆる治療が上手く行かず、神経科集中治療施設に入っていた。患者は血漿交換により安定化し、抗アセチルコリン受容体抗体の力価を引き下げるため免疫グロブリンを静脈投与した。患者は寝たきりで、次に、A20ヒト化CD20 MAbを1週間に1回、10週間静脈投与した。最後のA20投与の1週間後、血中B細胞が検出されず、抗アセチルコリン抗体の力価に著しい低下が見られた。最後のA20 MAb投与後4週間で患者は動けるようになり、退院した。
【0161】
実施例9.リンパ節および骨髄に高悪性度非ホジキンB細胞リンパ腫を有するイヌの治療
65ポンド、7歳の雄ゴールデンレトリーバーが広汎性大細胞高悪性度リンパ腫と診断された。このイヌにビンクリスチン、シクロホスファミド、プレドニソロン、およびドキソルビシンによる組み合わせ化学療法を施したところ、応答は良好であった。しかし、このイヌはその後、進行性リンパ節障害を有すると診断され、この後7ヶ月で骨髄の広範なリンパ腫浸潤、頸部、胸部、腹部、骨盤の広範なリンパ腺症および脾臓腫大症を有することがわかった。
【0162】
このイヌに1F5キメラモノクローナル抗体による処置を施した。イヌに120mgの1F5抗体を静脈注入し、この処置を最初の治療後4週間、毎週繰り返した。最後の1F5投与後4ヶ月にて、この罹患動物のコンピューター断層スキャンではリンパ腫の痕跡はないことが示され、疾病のあらゆる徴候も症状も見られなかった。
【0163】
実施例10.再発性中度非ホジキンリンパ腫を有するイヌの治療
78ポンド、9歳の中度非ホジキンリンパ腫を有するジャーマンシェパード犬に化学療法を施し、最初5ヶ月間は完全緩解に至り、その後もう一回化学療法行ったところ、6ヶ月間病状は安定していた。その後、このイヌは胸部と頸部リンパ節に再発性のリンパ腫が見られ、双方ともそれぞれコンピューター断層写真および触診によって診断できるものであった。
【0164】
この罹患動物に、毎週各100mgの用量のA20ヒト化CD20抗体の注入と組み合わせて、2週間毎週にてL243(HLA−DR)モノクローナル抗体の90Y標識免疫複合体を50mg抗体タンパク質中8mCiの線量で注入した。3週間後、頸部リンパ節の肥大を触診したところ測定可能な低下を示し、一方、胸部のコンピューター断層スキャンを繰り返し行ったところ著しい腫瘍の退縮が示された。処置後10週目に追跡測定を行ったところ、頸部または胸部の疾病の痕跡は約60%低下していることが示された。新たな疾患はどこにも認められないことから、この罹患動物は部分的緩解状態にあるとみなされた。10〜12週ごとの追跡調査でも、治療後少なくとも7ヶ月は部分緩解が確認された。
【0165】
実施例11.再発性リンパ腫を有するネコの治療
10ポンド、12歳のドメスティックショートヘアーは一つの顎下リンパ節の肥大を有していた。切除後、6ヶ月で病巣の再発が見られた。この病巣を再び切除したが、6ヶ月後にまた再発した。次に、このネコに4週間毎週にて、抗CD20 B1モノクローナル抗体の131標識免疫複合体を45mg抗体タンパク質中15mCiの線量にて処置した。3ヶ月後、この処置を繰り返した。最後の処置後3ヶ月で検査したところ、著しい低下を触診することができた。疾病の再発は1年を超えて見られなかった。
【0166】
実施例12.培養またはSCIDマウスに異種移植されたヒトNHL細胞におけるキメラおよびヒト化抗CD20 MAbの評価
キメラ(cA20)およびヒト化(hA20)CD20抗体の特性をNHL細胞系統において評価した。これらの結果としては、cA20およびhA20がリツキシマブと同様に挙動し、Raji、Ramos、RL、DaudiおよびSu−DHL−6細胞の99%を超えるものが染色され、約5%のリンパ球(推定B細胞%)と反応した。総てのB細胞系統において、Mabにより特異的増殖阻害が見られたが、阻害のレベルは細胞系統間で異なり、Su−DHLが最も感受性が高かった。架橋していない状態では、マウス抗CD20、cA20、hA20およびリツキシマブは総て77〜90%の間の阻害を示した。架橋状態では、増殖阻害は94〜98%の範囲であった。リツキシマブ、cA20、およびhA20はまた、架橋二次モノクローナル抗体の存在下で、Raji細胞においてアポトーシスを誘導する能力が同等であった。
【0167】
また、SCIDマウスに、第0日に2.5×106個のRaji細胞を静脈注射した。マウス、キメラおよびヒト化抗CD20抗体、ならびにcA20 F(ab’)2フラグメントの注射は、1日目に完全抗体100 g/注射、またはF(ab’)2フラグメント67 g/注射で始め、2週間は週に5回、3週間は週に2回とした。ある試験では、対照マウスは腫瘍接種後15日(50%生存期間)で播種性疾患にて死に至ったが、cA20処置マウスの50%生存期間は38日、hA20処置マウスでは22.5日、およびマウス抗CD20処置マウスでは21日に延長された(ログランク分析により総て統計学的に有意であった(p>0.005))。別の研究では、CNS麻痺を示す対照マウスは腫瘍接種後16.5日(50%生存期間)で播種性疾患にて死に至ったが、cA20処置マウスの50%生存期間は105日、hA20処置マウスでは70日、およびリツキシマブ処置マウスでは98日に延長された(ログランク分析により総て統計学的に有意であった(p>0.0001)、図11))。
【0168】
実施例13.競合的細胞表面結合アッセイ
Aタンパク質カラムにてアフィニティークロマトグラフィーにより精製したヒト化抗CD20 Ab(cA20、hA20およびc1F5)のAg結合特異性およびアフィニティー研究を、マウス2B8とリツキシマブ(IDEC Pharmaceuticals Corp., San Diego, CA)との細胞表面競合結合アッセイにより評価した(図8)。すなわち、一定量(100,000cpm〜10iCi/ig)の125I標識(A)m2B8または(B)リツキシマブを、4℃にて1〜2時間、種々の濃度(0.2〜700nM)の競合Ab(cA20、hA20、m2B8、c1F5またはリツキシマブ)の存在下でRaji細胞とともにインキュベートした。細胞をPBSで洗浄することで結合していないAbを除去した。洗浄後、細胞と会合した放射活性を測定した。図8(A)はcA20(四角)、hA20−1(三角)、およびhA20−1(丸)の結合活性をm2B8(ひし形)の結合活性を比較したものであり、図8(B)はcA20(四角)、c1F5(三角)およびリツキシマブ(ひし形)の結合活性を比較したものである。
【0169】
別の試験では、hA20の結合活性をその他の抗CD20 Ab、リツキシマブおよびマウスB1と、細胞表面競合結合アッセイにより比較したものである(図9)。すなわち、一定量(100,000cpm〜10iCi/ig)の125I標識リツキシマブを、4℃で1〜2時間、種々の濃度(0.2〜700nM)の競合Ab、hA20(三角)、mB1(逆三角)またはリツキシマブ(四角)の存在下でRaji細胞とともにインキュベートした。細胞をPBSで洗浄することにより結合していないAbを除去した。洗浄後、細胞と会合した放射活性を測定した。これら3つのAbのIC50値はそれぞれ6.8、34および5と算出された。
【0170】
実施例14.培養リンパ腫細胞に対する架橋hA20およびその他のCD20 Abの細胞傷害作用
CD20抗体複合体を得るため、架橋剤(抗ヒトIgG、Fcフラグメント特異的抗体)の存在下、種々のCD20 AbにてRaji細胞を処理した(図10)。最終濃度5ig/mLのhA20、cA20、リツキシマブまたは陽性対照AbであるhLL1を、20ig/mLの架橋剤(赤)を伴って、または架橋剤を伴わずに(オレンジ)、または抗マウスIgG、Fcフラグメント特異的抗体(青)を伴って、Raji細胞とともに48時間インキュベートした。全細胞集団および生存細胞集団を、(A)トリパンブルー染色と細胞の計数、または(B)MTTアッセイ(B)により測定した。このデータにより、Raji NHL細胞の生存に対するhA20およびリツキシマブの同等の作用が示され、この細胞傷害作用は抗体の特異的架橋に依存することを示した。
【0171】
実施例15.hA20およびhLL2によるin vivo療法
Raji細胞を2.5×106細胞/100μL/マウスにて60個体のSCIDマウスに静脈投与した(図12)。1〜11日目にMAbを腹腔内投与し、その後、週に2回、約3週間MAb注射を行った。試験が終わるまで、毎日動物の体重を測定した。これらの動物の後脚の麻痺を毎日調べた。麻痺が起こっていた場合、動物を犠牲にし、播種性腫瘍瘤の視診のため剖検を行った(特に、肺、腎臓および卵巣)。対照ヒト化IgGl AbであるhMN−14(抗CEA抗体)で処置した対照マウスはCNS麻痺を示す播種性疾患で死に至った。50%生存期間は腫瘍静脈接種後13日であった。hA20で処置した群の50%生存期間は約25日に延長された。この値はhA20の約2倍の生存期間の延長に相当する。hLL2単独で処置した群は対照マウスと同等の50%生存期間を示したが、hA20およびhLL2の組み合わせ処置はマウスの50%生存期間を約30日に引き延ばした。
【図面の簡単な説明】
【0172】
【図1】マウス抗CD20を産生するハイブリドーマ細胞株からRT−PCRによりクローニングされたV遺伝子配列を示し、A20抗体の可変L鎖(図1A)およびH鎖(図1B)の推定アミノ酸配列をそれぞれA20VkおよびA20VHとして示している。下線矢印は、クローニングに使用したPCRプライマー配列を示す。Kabatのナンバリング法により定義される推定CDR領域配列が太字および下線で示されている。アミノ酸配列は、一文字コードとして相当するヌクレオチド配列の下に示されている。このKabatのナンバリング法は、アミノ酸残基に用いられる。一つの文字によりナンバリングされるアミノ酸残基は、Kabatに従って挿入残基を表し、前の残基の番号と同じ番号を持っている。例えば、図1Bの残基82、82A、82Bおよび82Cは、それぞれ82A、BおよびCとして示される。
【図2】可変L鎖Vkおよび可変H鎖VH、cA20配列、キメラ抗CD20抗体を示す。CDR領域の配列が太字および下線で示されている。アミノ酸残基およびヌクレオチドは順次ナンバリングされ、同じナンバリングシステムがヒト化V配列に用いられている。L鎖可変領域を図2Aに、そしてH鎖可変領域を図2Bに示している。ナンバリングシステムは図1と同様である。cA20の構築に用いられた制限部位には下線が施されている。
【図3】125I標識A20に対する細胞表面競合結合アッセイにおけるキメラA20(cA20)およびマウスA20(A20)の結合親和性の比較を示す。マウスA20(黒ひし形)と同様に、cA20の濃度が増加すると放射性標識A20のRaji細胞への結合が阻害される(黒丸で示す)。
【図4】ヒト抗体およびキメラならびにヒト化抗CD20抗体の可変H鎖(VH)と可変L鎖(Vk)のアミノ酸配列の比較である。図4Aはヒト抗体、EUおよびNEWM(FR4のみ)、キメラ抗体(cA20VH)および二つのヒト化抗体(hA20VH1およびhA20VH2)の可変H鎖(VH)のアミノ酸配列の比較であり、図4Bはヒト抗体(REIVk)、キメラ抗体(cA20Vk)、およびヒト化抗体(hA20Vk)の可変L鎖(Vk)のアミノ酸配列の比較である。点は、A20中の残基がヒト抗体中の相当する残基と同一であることを示す。CDRは四角で囲んだ領域である。アミノ酸残基のナンバリングにはKabatのナンバリング法を用いた。
【図5】hA20のL鎖V遺伝子(hA20Vk)(図5A)のヌクレオチド配列、および、hA20VH1(図5B)およびhA20VH2(図5C)のH鎖V遺伝子のヌクレオチド配列、ならびにVKpBR2(図5A)およびVHpBS2(図5Bおよび5C)ステージングベクターの隣接フランキング配列をそれぞれ示す。非翻訳ヌクレオチド配列は小文字で示してある。サブクローニングに用いた制限部位には下線を施して示している。分泌シグナルペプチド配列は二重下線を施して示している。VkおよびVHアミノ酸残基のナンバリングは図2と同様に行った。
【図6】二つのヒト化A20抗体(hA20−1およびhA20−2)の結合活性と、A20、cA20およびキメラ抗CD20 MAb、c2B8の結合活性を比較する細胞表面競合結合アッセイの結果を示す。図6AはhA20−1(黒三角)およびhA20−2(黒丸)およびマウス抗CD20抗体、A20(黒四角)がRaji細胞への125I−A20の結合についてほぼ等しく競合していることを示す。図6BはhA20−1(黒丸)、cA20(黒四角)およびc2B8(黒ひし形)がRaji細胞への125I−c2B8の結合についてほぼ等しく競合していることを示す。
【図7】ヒトIgG1(CH-ヒンジ)の定常領域(図7A)、およびヒトカッパ鎖(Ck)の定常領域(図7B)を示す。
【図8】競合細胞表面結合アッセイを示す。ヒト化抗CD20Abs (Aタンパク質カラムを用いるアフィニティークロマトグラフィーにより精製されたcA20、hA20およびc1F5)のAg−結合特異性および親和性試験を、マウス2B8およびリツキシマブ(IDEC Pharmaceuticals Corp. , San Diego, CA)を用いる細胞表面競合結合アッセイにより行った。図8(A)は、cA20(四角)、hA20−1(三角)およびhA20−1(丸)の結合活性と、m2B8(ひし形)のそれとを比較したものであり、図8(B)はcA20(四角)、c1F5(三角)およびリツキシマブ(ひし形)の結合活性を比較したものである。
【図9】hA20の結合活性を、リツキシマブおよびマウスB1を含む他の抗CD20Abと細胞表面競合結合アッセイにより比較した試験である。一定量(100,000cpm、〜10iCi/ig)の125I標識リツキシマブを、種々の濃度の(0.2〜700nM)の競合Ab、hA20(三角)、mB1(逆三角)またはリツキシマブ(四角)の存在下、4℃にてRaji細胞と1〜2時間インキュベートした。
【図10】架橋結合したhA20および他のCD20Abの、培養リンパ腫細胞に対する細胞傷害作用を示す。総細胞数および生存細胞数は、(A)トリパンブルー染色および細胞計数または(B)MTTアッセイにより測定した。
【図11】種々の抗CD20および他のAbを用いるin vivo治療試験のグラフである。SCIDマウスにRaji細胞を静脈内注射し、播種性疾患であるRajiリンパ腫モデルを作製した。
【図12】hA20およびhLL2を用いるin vivo治療試験のグラフである。SCIDマウスにRaji細胞を静脈内注射し、播種性疾患であるRajiリンパ腫モデルを作製した。
【図1A】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト化抗CD20(hCD20)モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントであって、少なくとも一つのマウス抗CD20MAb可変領域の相補性決定領域(CDR)および少なくとも一つのヒトMAb可変領域のフレームワーク領域(FR)を含んでなり、かつ該マウス抗CD20MAbのB細胞、B細胞リンパ腫、および白血病細胞に対する標的特性を実質的に保持している、ヒト化抗CD20モノクローナル抗体またはそのフラグメント。
【請求項2】
前記可変領域がL鎖可変領域を含んでなる、請求項1に記載のヒト化抗体またはそのフラグメント。
【請求項3】
前記可変領域がH鎖可変領域を含んでなる、請求項1に記載のヒト化抗体またはそのフラグメント。
【請求項4】
前記可変領域がL鎖およびH鎖の可変領域を含んでなる、請求項1に記載のヒト化抗体またはそのフラグメント。
【請求項5】
少なくとも一つのヒト抗体のL鎖およびH鎖の定常領域をさらに含んでなる、請求項4に記載のヒト化抗体またはそのフラグメント。
【請求項6】
前記L鎖可変領域が、RASSSVSYIH、RASSSLSFMHおよびRASSSVSYMHからなる群から選択されるアミノ酸配列を含むCDR1;アミノ酸配列ATSNLASを含むCDR2;ならびにQQWTSNPPT、HQWSSNPLTおよびQQSFSNPPTからなる群から選択されるアミノ酸配列を含むCDR3を含んでなる、請求項2に記載のヒト化抗体またはそのフラグメント。
【請求項7】
前記H鎖可変領域が、アミノ酸配列SYNMHを含むCDR1;アミノ酸配列AIYPGNGDTSYNQKFKGを含むCDR2、ならびにSTYYGGDWYFDV、STYYGGDWYFNV、SHYGSNYVDYFDVおよびVVYYSNSYWYFDVからなる群から選択されるアミノ酸配列を含むCDR3を含んでなる、請求項3に記載のヒト化抗体またはそのフラグメント。
【請求項8】
前記L鎖可変領域が、RASSSVSYIH、RASSSLSFMHおよびRASSSVSYMHからなる群から選択されるアミノ酸配列を含むCDR1;アミノ酸配列ATSNLASを含むCDR2;ならびにQQWTSNPPT、HQWSSNPLTおよびQQSFSNPPTからなる群から選択されるアミノ酸配列を含むCDR3を含んでなり;かつ前記H鎖可変領域が、アミノ酸配列SYNMHを含むCDR1;アミノ酸配列AIYPGNGDTSYNQKFKGを含むCDR2、ならびにSTYYGGDWYFDV、STYYGGDWYFNV、SHYGSNYVDYFDVおよびVVYYSNSYWYFDVからなる群から選択されるアミノ酸配列を含むCDR3を含んでなる、請求項4に記載のヒト化抗体またはそのフラグメント。
【請求項9】
ヒト抗体のL鎖およびH鎖の定常領域のFRをさらに含んでなる、請求項8に記載のヒト化抗体またはそのフラグメント。
【請求項10】
前記H鎖可変領域のCDR3がSTYYGGDWYFNVを含まない、請求項8に記載のヒト化抗体またはそのフラグメント。
【請求項11】
前記L鎖可変領域のCDR3がHQWSSNPLTを含み、かつ前記H鎖可変領域のCDR3がSHYGSNYVDYFDVを含む場合、前記L鎖可変領域のCDR1がRASSSLSFMHを含まない、請求項8に記載のヒト化抗体またはそのフラグメント。
【請求項12】
前記L鎖可変領域のCDR1がRASSSLSFMHを含み、かつ前記H鎖可変領域のCDR3がSHYGSNYVDYFDVを含む場合、前記L鎖可変領域のCDR3がHQWSSNPLTを含まない、請求項8に記載のヒト化抗体またはそのフラグメント。
【請求項13】
前記L鎖可変領域のCDR1がRASSSLSFMHを含み、かつ前記L鎖可変領域のCDR3がHQWSSNPLTを含む場合、前記H鎖可変領域のCDR3がSHYGSNYVDYFDV を含まない、請求項8に記載のヒト化抗体またはそのフラグメント。
【請求項14】
前記L鎖可変領域のCDR3がQQSFSNPPTを含み、かつ前記H鎖可変領域のCDR3がVVYYSNSYWYFDVを含む場合、前記L鎖可変領域のCDR1がRASSSVSYMHを含まない、請求項8に記載のヒト化抗体またはそのフラグメント。
【請求項15】
前記L鎖可変領域のCDR1がRASSSVSYMHを含み、かつ前記H鎖可変領域のCDR3がVVYYSNSYWYFDVを含む場合、前記L鎖可変領域のCDR3がQQSFSNPPTを含まない、請求項8に記載のヒト化抗体またはそのフラグメント。
【請求項16】
前記L鎖可変領域のCDR1がRASSSVSYMHを含み、かつ前記L鎖可変領域のCDR3がQQSFSNPPTを含む場合、前記H鎖可変領域のCDR3がVVYYSNSYWYFDVを含まない、請求項8に記載のヒト化抗体またはそのフラグメント。
【請求項17】
少なくとも一つのマウス抗CD20 MAbの相補性決定領域(CDR)およびヒト抗体のL鎖およびH鎖可変領域のフレームワーク領域(FR)を含んでなるヒト化抗CD20(hCD20)モノクローナル抗体(MAb)またはそのフラグメントであって、前記マウス抗CD20 MAbのB細胞、B細胞リンパ腫細胞、および白血病細胞に対する標的特性を実質的に保持し、かつ前記マウス抗CD20 MAbのL鎖可変領域のCDRが、アミノ酸配列RASSSVSYIHを含むCDR1、アミノ酸配列ATSNLASを含むCDR2、およびアミノ酸配列QQWTSNPPTを含むCDR3を含んでなり、かつ前記マウス抗CD20 MAbのH鎖可変領域のCDRが、アミノ酸配列SYNMHを含むCDR1、アミノ酸配列AIYPGNGDTSYNQKFKGを含むCDR2、およびアミノ酸配列STYYGGDWYFDVを含むCDR3を含んでなる、ヒト化抗体CD20 MAbまたはそのフラグメント。
【請求項18】
前記ヒト化抗体のL鎖およびH鎖可変領域のFRが、前記マウスMAbの相当するFRから置換された少なくとも一つのアミノ酸を含んでなる、請求項1に記載のヒト化抗体またはそのフラグメント。
【請求項19】
前記マウスMAb由来のアミノ酸が、図4AのhA20VH1 またはhA20VH2アミノ酸配列のマウスH鎖可変領域のアミノ酸残基1、5、27、30、38、48、67、68、70、95、115および116からなる群から選択される少なくとも一つのアミノ酸であるものである、請求項18に記載のヒト化抗体またはそのフラグメント。
【請求項20】
前記マウスアミノ酸が、図4BのhA20Vk配列のマウスL鎖可変領域のアミノ酸残基4、21、35、38、45、46、59、99、104および106からなる群から選択される少なくとも一つのアミノ酸である、請求項19に記載のヒト化抗体またはそのフラグメント。
【請求項21】
前記マウスアミノ酸が、図4BのhA20Vk配列のマウスL鎖可変領域のアミノ酸残基4、21、35、38、45、46、59、99、104および106からなる群から選択される少なくとも一つのアミノ酸である、請求項18に記載のヒト化抗体またはそのフラグメント。
【請求項22】
図4BのhA20Vkおよび図4AのhA2VH1を含んでなる、ヒト化抗体またはそのフラグメント。
【請求項23】
図4BのhA20Vkおよび図4AのhA2VH2を含んでなる、ヒト化抗体またはそのフラグメント。
【請求項24】
前記フラグメントがF(ab')2、Fab'、Fab、FvおよびsFvからなる群から選択される、請求項1に記載のヒト化MAbおよびそのフラグメント。
【請求項25】
少なくとも一つのマウス抗CD20 MAb可変領域の相補性決定領域(CDR)および少なくとも一つのマウス抗CD20 MAb可変領域のフレームワーク領域(FR)を含んでなり、前記マウス抗CD20 MAbのB細胞、B細胞リンパ腫、および白血病細胞に対する標的特性を実質的に保持するキメラ抗CD20(cCD20)モノクローナル抗体(MAb)またはそのフラグメントであって、ここで、前記キメラ抗CD20 MAbのL鎖可変領域のCDRが、RASSSVSYIH、RASSSLSFMHおよびRASSSVSYMHからなる群から選択されるアミノ酸配列を含むCDR1;アミノ酸配列ATSNLASを含むCDR2;およびQQWTSNPPT、HQWSSNPLTおよびQQSFSNPPTからなる群から選択されるアミノ酸配列を含むCDR3を含んでなり;かつ前記キメラ抗CD20 MAbのH鎖可変領域のCDRが、アミノ酸配列SYNMHを含むCDR1;アミノ酸配列AIYPGNGDTSYNQKFKGを含むCDR2、およびSTYYGGDWYFDV、STYYGGDWYFNV、SHYGSNYVDYFDVおよびVVYYSNSYWYFDVからなる群から選択されるアミノ酸配列を含むCDR3を含んでなり、ただし、
(a)前記L鎖可変領域のCDR1がアミノ酸RASSSVSYIHを含み、L鎖可変領域のCDR2がアミノ酸ATSNLASを含み、前記L鎖可変領域のCDR3がアミノ酸QQWTSNPPTを含み、前記H鎖可変領域のCDR1がアミノ酸SYNMHを含み、かつL鎖可変領域のCDR2がアミノ酸AIYPGNGDTSYNQKFKGを含む場合、前記H鎖可変領域のCDR3がSTYYGGDWYFNVを含まず;
(b)前記L鎖可変領域のCDR1がアミノ酸RASSSLSFMHを含み、前記L鎖可変領域のCDR2がアミノ酸ATSNLASを含み、L鎖可変領域のCDR3がアミノ酸HQWSSNPLTを含み、前記H鎖可変領域のCDR1がアミノ酸SYNMHを含み、かつ前記L鎖可変領域のCDR2がアミノ酸AIYPGNGDTSYNQKFKGを含む場合、前記H鎖可変領域のCDR3がSHYGSNYVDYFDVを含まず; かつ、
(c)前記L鎖可変領域のCDR1がアミノ酸RASSSVSYMHを含み、前記L鎖可変領域CDR2がアミノ酸ATSNLASを含み、前記L鎖可変領域のCDR3 がアミノ酸QQSFSNPPTを含み、前記H鎖可変領域のCDR1がアミノ酸SYNMHを含み、かつ前記L鎖可変領域のCDR2がアミノ酸AIYPGNGDTSYNQKFKGを含む場合、前記H鎖可変領域のCDR3がVVYYSNSYWYFDVを含まない、キメラ抗CD20 MAbまたはそのフラグメント。
【請求項26】
少なくとも一つのヒト抗体のL鎖およびH鎖定常領域をさらに含んでなる、請求項25のキメラ抗体またはそのフラグメント。
【請求項27】
マウス抗CD20MAb可変領域の相補性決定領域(CDR)を含んでなり、該マウス抗CD20 MAbのB細胞、B細胞リンパ腫、および白血病細胞に対する標的特性を実質的に保持するキメラ抗CD20(cCD20)モノクローナル抗体(MAb)またはそのフラグメントであって、該キメラ抗CD20 MAbのL鎖可変領域のCDRが、アミノ酸配列RASSSVSYIHを含むCDR1、アミノ酸配列ATSNLASを含むCDR2、およびアミノ酸配列QQWTSNPPTを含むCDR3を含んでなり、かつ、前記キメラ抗CD20 MAbのH鎖可変領域のCDRが、アミノ酸配列SYNMHを含むCDR1、アミノ酸配列AIYPGNGDTSYNQKFKGを含むCDR2、およびアミノ酸配列STYYGGDWYFDVを含むCDR3を含んでなる、キメラ抗CD20モノクローナル抗体またはそのフラグメント。
【請求項28】
少なくとも一つのヒト抗体のL鎖およびH鎖定常領域をさらに含んでなる、請求項27に記載のキメラ抗体またはそのフラグメント。
【請求項29】
マウス抗CD20 MAbのL鎖およびH鎖可変領域を含んでなり、該マウス抗CD20 MAbのB細胞、B細胞リンパ腫、および白血病細胞に対する標的特性および細胞結合特性を実質的に保持するキメラ抗CD20(cCD20)モノクローナル抗体 (MAb)またはそのフラグメントであって、前記cCD20が図4BにてcA20Vkと示されるL鎖可変領域と図4AにてcA20VHと示されるH鎖可変領域とを含んでなる、キメラ抗CD20モノクローナル抗体またはそのフラグメント。
【請求項30】
ヒト抗体のL鎖およびH鎖可変領域を含んでなるヒト抗CD20(huCD20)モノクローナル抗体(MAb)またはそのフラグメントであって、該huCD20 MAbはマウス抗CD20 MAbのB細胞、B細胞リンパ腫、および白血病細胞に対する標的特性および細胞結合特性を実質的に保持し、前記ヒト抗CD20 MAbのL鎖可変領域のCDRが、RASSSVSYIH、RASSSLSFMHおよびRASSSVSYMHからなる群から選択されるアミノ酸配列を含むCDR1;アミノ酸配列ATSNLASを含むCDR2;およびQQWTSNPPT、HQWSSNPLTおよびQQSFSNPPTからなる群から選択されるアミノ酸配列を含むCDR3を含んでなり、かつ前記ヒト抗CD20 MAbのH鎖可変領域のCDRが、アミノ酸配列SYNMHを含むCDR1;アミノ酸配列AIYPGNGDTSYNQKFKGを含むCDR2、およびSTYYGGDWYFDV、STYYGGDWYFNV、SHYGSNYVDYFDVおよびVVYYSNSYWYFDVからなる群から選択されるアミノ酸配列を含むCDR3を含んでなる)。
【請求項31】
少なくとも一つのヒト抗体のL鎖およびH鎖定常領域をさらに含んでなる、請求項30に記載のキメラ抗体またはそのフラグメント。
【請求項32】
少なくとも二つのmAbまたはそのフラグメントを含んでなり、該mAbが請求項1〜31のいずれか一項に記載の抗CD20 mAbから選択されるものである、抗体融合タンパク質またはそのフラグメント。
【請求項33】
請求項1〜31のいずれか一項に記載の少なくとも一つの第一の抗CD20 MAbまたはそのフラグメント、および請求項1〜31のいずれか一項に記載の抗CD20 MAbまたはそのフラグメント以外の少なくとも一つの第二のMAbまたはそのフラグメントを含んでなる、抗体融合タンパク質またはそのフラグメント。
【請求項34】
前記第二のMAbが、CD4、CD5、CD8、CD14、CD15、CD19、CD21、CD22、CD23、CD25、CD33、CD37、CD38、CD40、CD40L、CD46、CD52、CD54、CD74、CD80、CD126、B7、MUC1、Ia、HM1. 24、HLA−DR、テネイシン、 VEGF、PlGF、癌遺伝子、癌遺伝子産物、およびそれらの組み合わせと反応性のあるMAbからなる群から選択されるものである、請求項33に記載の抗体融合タンパク質またはそのフラグメント。
【請求項35】
(a)請求項1〜31のいずれか一項に記載の抗CD20 MAbまたはそのフラグメント;
(b)少なくとも二つの前記抗CD20 MAbまたはそのフラグメントを含んでなる抗体融合タンパク質またはそのフラグメント;
(c)請求項1〜31のいずれか一項に記載の抗CD20 MAbまたはそのフラグメントを含む少なくとも一つの第一のMAbまたはそのフラグメント、および請求項1〜31のいずれか一項に記載の抗CD20 MAbまたはそのフラグメント以外の少なくとも一つの第二のMAbまたはそのフラグメントを含んでなる、抗体融合タンパク質またはそのフラグメント;および
(d)請求項1〜31のいずれか一項に記載の抗CD20 MAbまたはそのフラグメントを含む少なくとも一つの第一のMAbまたはそのフラグメント、および請求項1〜31のいずれか一項に記載の抗CD20 MAbまたはそのフラグメント以外の少なくとも一つの第二のMAbまたはそのフラグメントを含んでなり、該第二のMAbが、CD4、CD5、CD8、CD14、CD15、CD19、CD21、CD22、CD23、CD25、CD33、CD37、CD38、CD40、CD40L、CD46、CD52、CD54、CD74、CD80、CD126、B7、MUC1、Ia、HM1. 24、HLA−DR、テネイシン、 VEGF、PlGF、癌遺伝子、癌遺伝子産物、またはそれらの組み合わせ、およびそれらの組み合わせと反応性のあるmAbからなる群から選択されるものである、抗体融合タンパク質またはそのフラグメント
からなる群から選択されるMAbまたはそのフラグメントをコードする核酸を含んでなる、DNA配列。
【請求項36】
請求項35に記載のDNA配列を含んでなる、発現ベクター。
【請求項37】
ベクターがpdHL2またはGSである、請求項36に記載の発現ベクター。
【請求項38】
pdHL2またはGSベクターが、キメラ、ヒト化またはヒトIgGを発現させるために用いられる場合に、H鎖およびL鎖定常領域ならびにIgG1のヒンジ領域をコードするものである、請求項37に記載の発現ベクター。
【請求項39】
前記H鎖定常領域およびヒンジ領域が図7Aに示されるものであり、かつ前記L鎖定常領域が図7Bに示されるものであり、所望によりアロタイプ部位の少なくとも一つのアミノ酸が異なるIgG1アロタイプにおいて見出されるものに変換され、かつ所望によりEUのH鎖のアミノ酸253がアラニンにより置換される、請求項38に記載の発現ベクター。
【請求項40】
請求項35に記載のDNA配列を含んでなる、宿主細胞。
【請求項41】
前記細胞が哺乳類細胞である、請求項40に記載の宿主細胞。
【請求項42】
前記哺乳類細胞がリンパ球細胞である、請求項41に記載の宿主細胞。
【請求項43】
前記リンパ球細胞が骨髄腫細胞である、請求項42に記載の宿主細胞。
【請求項44】
請求項38に記載の発現ベクターを含んでなる、宿主細胞。
【請求項45】
前記細胞が哺乳類細胞である、請求項44に記載の宿主細胞。
【請求項46】
前記哺乳類細胞がリンパ球細胞である、請求項45に記載の宿主細胞。
【請求項47】
前記リンパ球細胞が骨髄腫細胞である、請求項46に記載の宿主細胞。
【請求項48】
請求項39に記載のDNA配列を含んでなる、宿主細胞。
【請求項49】
前記細胞が哺乳類細胞である、請求項48に記載の宿主細胞。
【請求項50】
前記哺乳類細胞がリンパ球細胞である、請求項49に記載の宿主細胞。
【請求項51】
前記リンパ球細胞が骨髄腫細胞である、請求項50に記載の宿主細胞。
【請求項52】
抗CD20 MAbもしくはそのフラグメント、または抗体融合タンパク質もしくはそのフラグメントを発現させる方法であって、
(a)哺乳類細胞を請求項35に記載のDNA配列にてトランスフェクトすること;および
(b)前記抗CD20 MAbもしくはそのフラグメント、または抗体融合タンパク質もしくはそのフラグメントを分泌する前記細胞を培養すること
を含んでなる、方法。
【請求項53】
抗CD20 MAbもしくはそのフラグメント、または抗体融合タンパク質もしくはそのフラグメントを発現させるための方法であって、
(a)哺乳類細胞を請求項38に記載のDNA配列にてトランスフェクトすること;および
(b)前記抗CD20 MAbもしくはそのフラグメント、または抗体融合タンパク質もしくはそのフラグメントを分泌する前記細胞を培養すること
を含んでなる、方法。
【請求項54】
抗CD20 MAbもしくはそのフラグメント、または抗体融合タンパク質もしくはそのフラグメントを発現させるための方法であって、
(a)哺乳類細胞を請求項39に記載のDNA配列にてトランスフェクトすること;および
(b)前記抗CD20 MAbもしくはそのフラグメント、または抗体融合タンパク質もしくはそのフラグメントを分泌する前記細胞を培養すること
を含んでなる、方法。
【請求項55】
Bリンパ腫および白血病細胞を標的とする診断用または治療用複合体であって、抗体成分を含んでなり、該抗体成分が、請求項1〜34のいずれか一項に記載の抗CD20 MAbもしくはそのフラグメント、または抗体融合タンパク質もしくはそのフラグメントを含んでなり、前記細胞に結合するものであり、かつ前記抗体成分が少なくとも一つの診断薬または少なくとも一つの治療薬に結合されている、複合体。
【請求項56】
前記診断薬が少なくとも一種の光活性診断薬を含んでなる、請求項55に記載の診断用複合体。
【請求項57】
前記診断薬が60〜4,000keVの範囲のエネルギーを有する放射性標識である、請求項56に記載の診断用複合体。
【請求項58】
前記放射性標識がガンマ、ベータ、または陽電子放射性同位元素である、請求項57に記載の診断用複合体。
【請求項59】
前記放射性標識が、125I、131I、123I、124I、86Y、186Re、188Re、62Cu、64Cu、111In、67Ga、68Ga、99mTc、94mTc、18F、11C、13N、15Oおよび76Brからなる群から選択される、請求項58に記載の診断用複合体。
【請求項60】
前記診断薬が造影剤である、請求項55に記載の診断用複合体。
【請求項61】
前記造影剤がマンガン、鉄またはガドリニウムを含んでなる金属である、請求項60に記載の診断用複合体。
【請求項62】
前記抗体成分が抗体融合タンパク質またはそのフラグメントであって、前記MAbまたはそのフラグメントがそれぞれ少なくとも一つの治療薬に結合している、請求項55に記載の治療用複合体。
【請求項63】
前記治療薬が、放射性標識、免疫調節剤、ホルモン、光活性治療薬、細胞傷害剤、オリゴヌクレオチドおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項55または62に記載の治療用複合体。
【請求項64】
前記細胞傷害剤が薬物または毒素である、請求項63に記載の治療用複合体。
【請求項65】
前記オリゴヌクレオチドがアンチセンスオリゴヌクレオチドである、請求項63に記載の治療用複合体。
【請求項66】
前記薬物が、抗有糸分裂剤、アルキル化剤、代謝拮抗剤、抗脈管形成剤、アポトーシス剤、アルカロイド剤、抗キナーゼ剤、および抗生物質、タキサンならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される薬学的特性を有する、請求項64に記載の治療用複合体。
【請求項67】
前記薬物が、ナイトロジェンマスタード、エチレンイミン誘導体、スルホン酸アルキル、ニトロソウレア、トリアゼン、葉酸類似体、アントラサイクリン、タキサン、COX−2阻害剤、ピリミジン類似体、プリン類似体、抗生物質、酵素、エピポドフィロトキシン、プラチナ錯体、ビンカアルカロイド、置換尿素、メチルヒドラジン誘導体、副腎皮質抑制剤、アンタゴニスト、エンドスタチン、タキソール、カンプトセシン、ドキソルビシン、およびそれらの類似体、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項64に記載の治療用複合体。
【請求項68】
前記毒素が、リシン、アブリン、アルファトキシン、サポリン、リボヌクレアーゼ(RNアーゼ)、DNアーゼ I、ブドウ球菌内毒素−A、アメリカヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質、ゲロニン、ジフテリア毒、シュードモナス外毒素、およびシュードモナス内毒素からなる群から選択される、請求項64に記載の治療用複合体。
【請求項69】
前記免疫調節剤が、サイトカイン、幹細胞増殖因子、リンホトキシン、造血因子、コロニー刺激因子(CSF)、インターフェロン(IFN)、幹細胞増殖因子、エリスロポエチン、トロンボポエチン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項63に記載の治療用複合体。
【請求項70】
前記リンホトキシンが腫瘍壊死因子(TNF)であり、前記造血因子がインターロイキン(IL)であり、前記コロニー刺激因子が顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)または顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)であり、前記インターフェロンがインターフェロン−α、−βまたは−γであり、前記幹細胞増殖因子が「S1因子」と呼ばれるものである、請求項69に記載の治療用複合体。
【請求項71】
前記免疫調節剤がIL−1、IL−2、IL−3、IL−6、IL−10、IL−12、IL−18、IL−21、インターフェロン−γ、TNF−αまたはそれらの組み合わせを含んでなる、請求項69に記載の治療用複合体。
【請求項72】
前記放射性標識が60〜700keVの範囲のエネルギーを有する、請求項63に記載の治療用複合体。
【請求項73】
前記放射性標識が、225Ac、67Ga、90Y、86Y、111In、131I、125I、186Re、188Re、177Lu、64Cu、67Cu、212Bi、213Bi、211At、32Pおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項72に記載の治療用複合体。
【請求項74】
前記光活性治療薬が色素原または色素である、請求項63に記載の治療用複合体。
【請求項75】
被検体のB細胞リンパ腫、白血病、または自己免疫疾患を治療する方法であって、医薬上許容されるビヒクル中に処方された治療上有効な量の、請求項1〜20のいずれか一項に記載の抗CD20 MAbまたはそのフラグメントを前記被検体に投与することを含んでなる、方法。
【請求項76】
医薬上許容されるビヒクル中に処方された治療上有効な量の、CD4、CD5、CD8、CD14、CD15、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD25、CD33、CD37、CD38、CD40、CD40L、CD46、CD52、CD54、CD74、CD80、CD126、B7、MUC1、Ia、HM1. 24、HLA−DR、テネイシン、VEGF、PlGF、癌遺伝子、癌遺伝子産物、およびそれらの組み合わせと反応性のあるMAbからなる群から選択される少なくとも一種のヒト化、キメラ、ヒトまたはマウスMAbを、前記被検体に同時または逐次に投与することをさらに含んでなる、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
医薬上許容されるビヒクル中に処方された治療上有効な量の少なくとも一種の治療薬を、前記被検体に同時または逐次に投与することをさらに含んでなる、請求項75に記載の方法。
【請求項78】
前記治療薬が、医薬上許容されるビヒクル中に処方された傷害剤、放射性標識、免疫調節剤、ホルモン、酵素、オリゴヌクレオチド、光活性治療薬、またはそれらの組み合わせを含んでなる、請求項77に記載の方法。
【請求項79】
前記オリゴヌクレオチドがアンチセンスオリゴヌクレオチドである、請求項78に記載の方法。
【請求項80】
医薬上許容されるビヒクル中に処方された治療上有効な量の少なくとも一種の治療薬を、前記被検体に同時または逐次に投与することをさらに含んでなる、請求項76に記載の方法。
【請求項81】
前記治療薬が、医薬上許容されるビヒクル中に処方された細胞傷害剤薬、放射性標識、免疫調節剤、ホルモン、光活性治療薬、オリゴヌクレオチドまたはそれらの組み合わせを含んでなる、請求項80に記載の方法。
【請求項82】
前記オリゴヌクレオチドがアンチセンスオリゴヌクレオチドである、請求項81に記載の方法。
【請求項83】
医薬上許容されるビヒクル中に処方された治療上有効な量の、少なくとも一種の治療薬に結合している少なくとも一つのMabを含んでなる治療用複合体を前記被検体に同時または逐次に投与することをさらに含んでなる方法であって、ここで、前記MabはCD4、CD5、CD8、CD14、CD15、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD25、CD33、CD37、CD38、CD40、CD40L、CD46、CD52、CD54、CD74、CD80、CD126、B7、MUC1、Ia、HM1. 24、HLA−DR、テネイシン、VEGF、PlGF、癌遺伝子、癌遺伝子産物、およびそれらの組み合わせと反応性のあるMAbからなる群から選択される少なくとも一種のヒト化、キメラ、ヒトまたはマウスMAbを含んでなる、請求項75に記載の方法。
【請求項84】
前記治療薬が、医薬上許容されるビヒクル中に処方された細胞傷害剤、放射性標識、免疫調節剤、ホルモン、酵素、オリゴヌクレオチド、光活性治療薬またはそれらの組み合わせを含んでなる、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
前記オリゴヌクレオチドがアンチセンスオリゴヌクレオチドである、請求項84に記載の方法。
【請求項86】
医薬上許容されるビヒクル中に処方された治療上有効な量の、少なくとも一種の治療薬に結合している少なくとも一種のMabを含んでなる治療用複合体を、前記被検体に同時または逐次に投与することをさらに含んでなる方法であって、ここで前記MabはCD4、CD5、CD8、CD14、CD15、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD25、CD33、CD37、CD38、CD40、CD40L、CD46、CD52、CD54、CD74、CD80、CD126、B7、MUC1、Ia、HM1. 24、HLA−DR、テネイシン、VEGF、PlGF、癌遺伝子、癌遺伝子産物、およびそれらの組み合わせと反応性のあるMAbからなる群から選択される少なくとも一種のヒト化、キメラ、ヒトまたはマウスMAbを含んでなる、請求項76に記載の方法。
【請求項87】
前記治療薬が、医薬上許容されるビヒクル中に処方された細胞傷害剤、放射性標識、免疫調節剤、ホルモン、酵素、オリゴヌクレオチド、光活性治療薬またはそれらの組み合わせを含んでなる、請求項86に記載の方法。
【請求項88】
前記オリゴヌクレオチドがアンチセンスオリゴヌクレオチドである、請求項86に記載の方法。
【請求項89】
被検体のB細胞リンパ腫、白血病、または自己免疫疾患を治療する方法であって、医薬上許容されるビヒクル中に処方された治療上有効な量の、少なくとも二種のMAbまたはそのフラグメントを含む抗体融合タンパク質またはそのフラグメントを前記被検体に投与することを含んでなる方法であって、ここで、前記MAbが、請求項1〜31のいずれか一項に記載のMAbから選択されるか、または請求項1〜31のいずれか一項に記載の少なくとも一種のMAbまたはそのフラグメントと、CD4、CD5、CD8、CD14、CD15、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD25、CD33、CD37、CD38、CD40、CD40L、CD46、CD52、CD54、CD74、CD80、CD126、B7、MUC1、Ia、HM1. 24、HLA−DR、テネイシン、VEGF、PlGF、癌遺伝子、癌遺伝子産物、およびそれらの組み合わせと反応性のあるmAbからなる群から選択される少なくとも一種のMAbとを含んでなる、方法。
【請求項90】
医薬上許容されるビヒクル中に処方された治療上有効な量の少なくとも一種の治療薬を、前記被検体に同時または逐次に投与することをさらに含んでなる、請求項89に記載の方法。
【請求項91】
医薬上許容されるビヒクル中に処方された、細胞傷害剤、放射性標識、免疫調節剤、ホルモン、光活性治療薬、オリゴヌクレオチドまたはそれらの組み合わせをさらに含んでなる、請求項90に記載の方法。
【請求項92】
前記オリゴヌクレオチドがアンチセンスオリゴヌクレオチドである、請求項91に記載の方法。
【請求項93】
医薬上許容されるビヒクル中に処方された治療上有効な量の少なくとも一種の治療薬に結合している少なくとも一種のMAbを含んでなる治療用複合体を、前記被検体に同時または逐次に投与することをさらに含んでなる方法であって、ここで、前記MAbが、CD4、CD5、CD8、CD14、CD15、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD25、CD33、CD37、CD38、CD40、CD40L、CD46、CD52、CD54、CD74、CD80、CD126、B7、MUC1、Ia、HM1. 24、HLA−DR、テネイシン、VEGF、PlGF、癌遺伝子、癌遺伝子産物、およびそれらの組み合わせと反応性のあるMAbからなる群から選択される少なくとも一種のヒト化、キメラ、ヒトまたはマウスMAbを含んでなる、請求項77に記載の方法。
【請求項94】
前記治療薬が、医薬上許容されるビヒクル中に処方された細胞傷害剤、放射性標識、免疫調節剤、ホルモン、酵素、オリゴヌクレオチド、光活性治療薬またはそれらの組み合わせを含んでなる、請求項93に記載の方法。
【請求項95】
前記オリゴヌクレオチドがアンチセンスオリゴヌクレオチドである、請求項94に記載の方法。
【請求項96】
被検体のB細胞リンパ腫、白血病、または自己免疫疾患を治療する方法であって、前記被検体に医薬上許容されるビヒクル中に処方された治療上有効な量の、前記細胞に結合する請求項1〜34のいずれか一項に記載の抗CD20 MAbもしくはそのフラグメント、または抗体融合タンパク質もしくはそのフラグメントを含んでなる治療用複合体を投与することを含んでなり、前記抗CD20 MAbもしくはそのフラグメント、または抗体融合タンパク質もしくはそのフラグメントが少なくとも一種の治療薬に結合している、方法。
【請求項97】
前記治療薬が、医薬上許容されるビヒクル中に処方された細胞傷害剤、放射性標識、免疫調節剤、ホルモン、酵素、オリゴヌクレオチド、光活性治療薬またはそれらの組み合わせを含んでなる、請求項96に記載の方法。
【請求項98】
前記細胞傷害剤が薬物または毒素である、請求項78、81、84、87、91、94または97のいずれか一項に記載の方法。
【請求項99】
前記薬物が抗有糸分裂剤、アルキル化剤、抗生物質、代謝拮抗剤、抗脈管形成剤、アポトーシス剤、抗キナーゼ剤、およびアルカロイド剤、タキサンおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される薬学的特性を有する、請求項98に記載の方法。
【請求項100】
前記薬物が、ナイトロジェンマスタード、エチレンイミン誘導体、スルホン酸アルキル、ニトロソウレア、トリアゼン、葉酸類似体、COX−2阻害剤、ピリミジン類似体、プリン類似体、抗生物質、酵素、エピポドフィロトキシン、プラチナ錯体、ビンカアルカロイド、置換尿素、メチルヒドラジン誘導体、副腎皮質抑制剤、アンタゴニスト、エンドスタチン、タキソール、カンプトセシン、アントラサイクリン、およびそれらの類似体, およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項98に記載の方法。
【請求項101】
前記毒素が、リシン、アブリン、アルファトキシン、サポリン、リボヌクレアーゼ(RNアーゼ)、DNアーゼ I、ブドウ球菌内毒素−A、アメリカヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質、ゲロニン、ジフテリア毒、シュードモナス外毒素、およびシュードモナス内毒素からなる群から選択される、請求項98に記載の方法。
【請求項102】
前記免疫調節剤が、サイトカイン、幹細胞増殖因子、リンホトキシン、造血因子、コロニー刺激因子(CSF)、インターフェロン(IFN)、幹細胞増殖因子、エリスロポエチン、トロンボポエチン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項78、81、84、87、91、94または97のいずれか一項に記載の方法。
【請求項103】
前記リンホトキシンが腫瘍壊死因子(TNF)であり、前記造血因子がインターロイキン(IL)であり、前記コロニー刺激因子が顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)または顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)であり、前記インターフェロンがインターフェロン−α、−βまたは−γであり、前記幹細胞増殖因子が「S1因子」と表されるものである、請求項102に記載の方法。
【請求項104】
前記免疫調節剤がIL−1、IL−2、IL−3、IL−6、IL−10、IL−12、IL−18、IL−21、インターフェロン−γ、TNF−αまたはそれらの組み合わせを含んでなる、請求項102に記載の方法。
【請求項105】
前記放射性標識が60〜4,000keVの範囲のエネルギーを有する、請求項78、81、84、87、91、94または97のいずれか一項に記載の方法。
【請求項106】
前記放射性標識が、225Ac、67Ga、90Y、111In、131I、125I、186Re、188Re、177Lu、64Cu、67Cu、212Bi、213Bi、211At、32Pおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項105に記載の方法。
【請求項107】
前記光活性治療薬が色素原または色素である、請求項80、83、86、89、93、96または98のいずれか一項に記載の方法。
【請求項108】
前記被検体が哺乳類である、請求項75〜107のいずれか一項に記載の方法。
【請求項109】
前記哺乳類がヒト、イヌまたはネコである、請求項108に記載の方法。
【請求項110】
被検体のB細胞リンパ腫、白血病、または自己免疫疾患を診断する方法であって、該被検体に、該細胞と結合する請求項1〜34のいずれか一項に記載の抗CD20 MAbもしくはそのフラグメントまたは抗体融合タンパク質もしくはそのフラグメントを含んでなる診断用複合体を投与することを含んでなり、ここで、前記抗CD20 MAbもしくはそのフラグメントまたは抗体融合タンパク質もしくはそのフラグメントは医薬上許容されるビヒクル中に処方された少なくとも一種の診断薬に結合している、方法。
【請求項111】
前記診断薬が放射性標識、光活性診断薬、または非放射性標識の少なくとも一種を含んでなる、請求項110に記載の方法。
【請求項112】
前記放射性標識がγ、β、または陽電子放射性同位元素からなる群から選択される、請求項111に記載の方法。
【請求項113】
前記放射性標識が60〜700keVの範囲のエネルギーを有する、請求項112に記載の方法。
【請求項114】
前記放射性標識が、125I、131I、123I、86Y、186Re、188Re、62Cu、64Cu、67Cu、111In、67Ga、68Ga、99mTc、94mTc、18F、11C、13N、15Oおよび76Brからなる群から選択される、請求項112に記載の方法。
【請求項115】
前記非放射性標識が造影剤または非放射性金属である、請求項111に記載の方法。
【請求項116】
前記放射性標識が常磁性イオンである、請求項115に記載の方法。
【請求項117】
前記非放射性標識がガドリニウム、マンガンまたは鉄である、請求項111に記載の方法。
【請求項118】
B細胞リンパ腫、白血病、または自己免疫疾患を患う患者の細胞をプレターゲッティングする方法であって、
(i)前記細胞に特異的に結合する少なくとも一つのアーム(arm)および標的化可能な複合体に特異的に結合する少なくとも一つの他のアームを有する請求項31〜33のいずれか一項に記載の抗体融合タンパク質またはそのフラグメントを投与すること;
(ii)所望により、前記患者に除去用組成物を投与し、該組成物により抗原に結合していない抗体融合タンパク質またはその抗体フラグメントを循環中から取り除くこと;および、
(iii)標的化可能な複合体であって、担体部分(前記抗体融合タンパク質またはそのフラグメントの少なくとも一つの他のアームにより認識され得る少なくとも一つのエピトープを含んでなるかまたは担持するものである)を含んでなり、かつ少なくとも一種の第一の治療薬または診断薬と結合している複合体を、前記患者に投与すること
を含んでなる、方法。
【請求項119】
前記抗体融合タンパク質またはそのフラグメントが二重特異性抗体またはそのフラグメントである、請求項118に記載の方法。
【請求項120】
前記二重特異性抗体がダイアボディー(diabody)である、請求項119に記載の方法。
【請求項121】
前記第一の治療薬が、放射性標識、免疫調節剤、ホルモン、光活性治療薬、細胞傷害剤、オリゴヌクレオチドおよびそれらの組み合わせからなる群から選択され、前記第一の診断薬が少なくとも一種の放射性標識、光活性診断薬または非放射性標識である、請求項118〜120に記載の方法。
【請求項122】
前記抗体融合タンパク質またはそのフラグメントが第二の治療薬または第二の診断薬と結合している、請求項118〜121に記載の方法。
【請求項123】
前記第二の治療薬が放射性標識、免疫調節剤、ホルモン、光活性治療薬、細胞傷害剤、オリゴヌクレオチドおよびそれらの組み合わせからなる群から選択され、前記第二の診断薬が少なくとも一種の放射性標識、光活性診断薬または非放射性標識である、請求項122に記載の方法。
【請求項124】
該第一および第二の治療薬または診断薬が同じものである、請求項122または123に記載の方法。
【請求項1】
ヒト化抗CD20(hCD20)モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントであって、少なくとも一つのマウス抗CD20MAb可変領域の相補性決定領域(CDR)および少なくとも一つのヒトMAb可変領域のフレームワーク領域(FR)を含んでなり、かつ該マウス抗CD20MAbのB細胞、B細胞リンパ腫、および白血病細胞に対する標的特性を実質的に保持している、ヒト化抗CD20モノクローナル抗体またはそのフラグメント。
【請求項2】
前記可変領域がL鎖可変領域を含んでなる、請求項1に記載のヒト化抗体またはそのフラグメント。
【請求項3】
前記可変領域がH鎖可変領域を含んでなる、請求項1に記載のヒト化抗体またはそのフラグメント。
【請求項4】
前記可変領域がL鎖およびH鎖の可変領域を含んでなる、請求項1に記載のヒト化抗体またはそのフラグメント。
【請求項5】
少なくとも一つのヒト抗体のL鎖およびH鎖の定常領域をさらに含んでなる、請求項4に記載のヒト化抗体またはそのフラグメント。
【請求項6】
前記L鎖可変領域が、RASSSVSYIH、RASSSLSFMHおよびRASSSVSYMHからなる群から選択されるアミノ酸配列を含むCDR1;アミノ酸配列ATSNLASを含むCDR2;ならびにQQWTSNPPT、HQWSSNPLTおよびQQSFSNPPTからなる群から選択されるアミノ酸配列を含むCDR3を含んでなる、請求項2に記載のヒト化抗体またはそのフラグメント。
【請求項7】
前記H鎖可変領域が、アミノ酸配列SYNMHを含むCDR1;アミノ酸配列AIYPGNGDTSYNQKFKGを含むCDR2、ならびにSTYYGGDWYFDV、STYYGGDWYFNV、SHYGSNYVDYFDVおよびVVYYSNSYWYFDVからなる群から選択されるアミノ酸配列を含むCDR3を含んでなる、請求項3に記載のヒト化抗体またはそのフラグメント。
【請求項8】
前記L鎖可変領域が、RASSSVSYIH、RASSSLSFMHおよびRASSSVSYMHからなる群から選択されるアミノ酸配列を含むCDR1;アミノ酸配列ATSNLASを含むCDR2;ならびにQQWTSNPPT、HQWSSNPLTおよびQQSFSNPPTからなる群から選択されるアミノ酸配列を含むCDR3を含んでなり;かつ前記H鎖可変領域が、アミノ酸配列SYNMHを含むCDR1;アミノ酸配列AIYPGNGDTSYNQKFKGを含むCDR2、ならびにSTYYGGDWYFDV、STYYGGDWYFNV、SHYGSNYVDYFDVおよびVVYYSNSYWYFDVからなる群から選択されるアミノ酸配列を含むCDR3を含んでなる、請求項4に記載のヒト化抗体またはそのフラグメント。
【請求項9】
ヒト抗体のL鎖およびH鎖の定常領域のFRをさらに含んでなる、請求項8に記載のヒト化抗体またはそのフラグメント。
【請求項10】
前記H鎖可変領域のCDR3がSTYYGGDWYFNVを含まない、請求項8に記載のヒト化抗体またはそのフラグメント。
【請求項11】
前記L鎖可変領域のCDR3がHQWSSNPLTを含み、かつ前記H鎖可変領域のCDR3がSHYGSNYVDYFDVを含む場合、前記L鎖可変領域のCDR1がRASSSLSFMHを含まない、請求項8に記載のヒト化抗体またはそのフラグメント。
【請求項12】
前記L鎖可変領域のCDR1がRASSSLSFMHを含み、かつ前記H鎖可変領域のCDR3がSHYGSNYVDYFDVを含む場合、前記L鎖可変領域のCDR3がHQWSSNPLTを含まない、請求項8に記載のヒト化抗体またはそのフラグメント。
【請求項13】
前記L鎖可変領域のCDR1がRASSSLSFMHを含み、かつ前記L鎖可変領域のCDR3がHQWSSNPLTを含む場合、前記H鎖可変領域のCDR3がSHYGSNYVDYFDV を含まない、請求項8に記載のヒト化抗体またはそのフラグメント。
【請求項14】
前記L鎖可変領域のCDR3がQQSFSNPPTを含み、かつ前記H鎖可変領域のCDR3がVVYYSNSYWYFDVを含む場合、前記L鎖可変領域のCDR1がRASSSVSYMHを含まない、請求項8に記載のヒト化抗体またはそのフラグメント。
【請求項15】
前記L鎖可変領域のCDR1がRASSSVSYMHを含み、かつ前記H鎖可変領域のCDR3がVVYYSNSYWYFDVを含む場合、前記L鎖可変領域のCDR3がQQSFSNPPTを含まない、請求項8に記載のヒト化抗体またはそのフラグメント。
【請求項16】
前記L鎖可変領域のCDR1がRASSSVSYMHを含み、かつ前記L鎖可変領域のCDR3がQQSFSNPPTを含む場合、前記H鎖可変領域のCDR3がVVYYSNSYWYFDVを含まない、請求項8に記載のヒト化抗体またはそのフラグメント。
【請求項17】
少なくとも一つのマウス抗CD20 MAbの相補性決定領域(CDR)およびヒト抗体のL鎖およびH鎖可変領域のフレームワーク領域(FR)を含んでなるヒト化抗CD20(hCD20)モノクローナル抗体(MAb)またはそのフラグメントであって、前記マウス抗CD20 MAbのB細胞、B細胞リンパ腫細胞、および白血病細胞に対する標的特性を実質的に保持し、かつ前記マウス抗CD20 MAbのL鎖可変領域のCDRが、アミノ酸配列RASSSVSYIHを含むCDR1、アミノ酸配列ATSNLASを含むCDR2、およびアミノ酸配列QQWTSNPPTを含むCDR3を含んでなり、かつ前記マウス抗CD20 MAbのH鎖可変領域のCDRが、アミノ酸配列SYNMHを含むCDR1、アミノ酸配列AIYPGNGDTSYNQKFKGを含むCDR2、およびアミノ酸配列STYYGGDWYFDVを含むCDR3を含んでなる、ヒト化抗体CD20 MAbまたはそのフラグメント。
【請求項18】
前記ヒト化抗体のL鎖およびH鎖可変領域のFRが、前記マウスMAbの相当するFRから置換された少なくとも一つのアミノ酸を含んでなる、請求項1に記載のヒト化抗体またはそのフラグメント。
【請求項19】
前記マウスMAb由来のアミノ酸が、図4AのhA20VH1 またはhA20VH2アミノ酸配列のマウスH鎖可変領域のアミノ酸残基1、5、27、30、38、48、67、68、70、95、115および116からなる群から選択される少なくとも一つのアミノ酸であるものである、請求項18に記載のヒト化抗体またはそのフラグメント。
【請求項20】
前記マウスアミノ酸が、図4BのhA20Vk配列のマウスL鎖可変領域のアミノ酸残基4、21、35、38、45、46、59、99、104および106からなる群から選択される少なくとも一つのアミノ酸である、請求項19に記載のヒト化抗体またはそのフラグメント。
【請求項21】
前記マウスアミノ酸が、図4BのhA20Vk配列のマウスL鎖可変領域のアミノ酸残基4、21、35、38、45、46、59、99、104および106からなる群から選択される少なくとも一つのアミノ酸である、請求項18に記載のヒト化抗体またはそのフラグメント。
【請求項22】
図4BのhA20Vkおよび図4AのhA2VH1を含んでなる、ヒト化抗体またはそのフラグメント。
【請求項23】
図4BのhA20Vkおよび図4AのhA2VH2を含んでなる、ヒト化抗体またはそのフラグメント。
【請求項24】
前記フラグメントがF(ab')2、Fab'、Fab、FvおよびsFvからなる群から選択される、請求項1に記載のヒト化MAbおよびそのフラグメント。
【請求項25】
少なくとも一つのマウス抗CD20 MAb可変領域の相補性決定領域(CDR)および少なくとも一つのマウス抗CD20 MAb可変領域のフレームワーク領域(FR)を含んでなり、前記マウス抗CD20 MAbのB細胞、B細胞リンパ腫、および白血病細胞に対する標的特性を実質的に保持するキメラ抗CD20(cCD20)モノクローナル抗体(MAb)またはそのフラグメントであって、ここで、前記キメラ抗CD20 MAbのL鎖可変領域のCDRが、RASSSVSYIH、RASSSLSFMHおよびRASSSVSYMHからなる群から選択されるアミノ酸配列を含むCDR1;アミノ酸配列ATSNLASを含むCDR2;およびQQWTSNPPT、HQWSSNPLTおよびQQSFSNPPTからなる群から選択されるアミノ酸配列を含むCDR3を含んでなり;かつ前記キメラ抗CD20 MAbのH鎖可変領域のCDRが、アミノ酸配列SYNMHを含むCDR1;アミノ酸配列AIYPGNGDTSYNQKFKGを含むCDR2、およびSTYYGGDWYFDV、STYYGGDWYFNV、SHYGSNYVDYFDVおよびVVYYSNSYWYFDVからなる群から選択されるアミノ酸配列を含むCDR3を含んでなり、ただし、
(a)前記L鎖可変領域のCDR1がアミノ酸RASSSVSYIHを含み、L鎖可変領域のCDR2がアミノ酸ATSNLASを含み、前記L鎖可変領域のCDR3がアミノ酸QQWTSNPPTを含み、前記H鎖可変領域のCDR1がアミノ酸SYNMHを含み、かつL鎖可変領域のCDR2がアミノ酸AIYPGNGDTSYNQKFKGを含む場合、前記H鎖可変領域のCDR3がSTYYGGDWYFNVを含まず;
(b)前記L鎖可変領域のCDR1がアミノ酸RASSSLSFMHを含み、前記L鎖可変領域のCDR2がアミノ酸ATSNLASを含み、L鎖可変領域のCDR3がアミノ酸HQWSSNPLTを含み、前記H鎖可変領域のCDR1がアミノ酸SYNMHを含み、かつ前記L鎖可変領域のCDR2がアミノ酸AIYPGNGDTSYNQKFKGを含む場合、前記H鎖可変領域のCDR3がSHYGSNYVDYFDVを含まず; かつ、
(c)前記L鎖可変領域のCDR1がアミノ酸RASSSVSYMHを含み、前記L鎖可変領域CDR2がアミノ酸ATSNLASを含み、前記L鎖可変領域のCDR3 がアミノ酸QQSFSNPPTを含み、前記H鎖可変領域のCDR1がアミノ酸SYNMHを含み、かつ前記L鎖可変領域のCDR2がアミノ酸AIYPGNGDTSYNQKFKGを含む場合、前記H鎖可変領域のCDR3がVVYYSNSYWYFDVを含まない、キメラ抗CD20 MAbまたはそのフラグメント。
【請求項26】
少なくとも一つのヒト抗体のL鎖およびH鎖定常領域をさらに含んでなる、請求項25のキメラ抗体またはそのフラグメント。
【請求項27】
マウス抗CD20MAb可変領域の相補性決定領域(CDR)を含んでなり、該マウス抗CD20 MAbのB細胞、B細胞リンパ腫、および白血病細胞に対する標的特性を実質的に保持するキメラ抗CD20(cCD20)モノクローナル抗体(MAb)またはそのフラグメントであって、該キメラ抗CD20 MAbのL鎖可変領域のCDRが、アミノ酸配列RASSSVSYIHを含むCDR1、アミノ酸配列ATSNLASを含むCDR2、およびアミノ酸配列QQWTSNPPTを含むCDR3を含んでなり、かつ、前記キメラ抗CD20 MAbのH鎖可変領域のCDRが、アミノ酸配列SYNMHを含むCDR1、アミノ酸配列AIYPGNGDTSYNQKFKGを含むCDR2、およびアミノ酸配列STYYGGDWYFDVを含むCDR3を含んでなる、キメラ抗CD20モノクローナル抗体またはそのフラグメント。
【請求項28】
少なくとも一つのヒト抗体のL鎖およびH鎖定常領域をさらに含んでなる、請求項27に記載のキメラ抗体またはそのフラグメント。
【請求項29】
マウス抗CD20 MAbのL鎖およびH鎖可変領域を含んでなり、該マウス抗CD20 MAbのB細胞、B細胞リンパ腫、および白血病細胞に対する標的特性および細胞結合特性を実質的に保持するキメラ抗CD20(cCD20)モノクローナル抗体 (MAb)またはそのフラグメントであって、前記cCD20が図4BにてcA20Vkと示されるL鎖可変領域と図4AにてcA20VHと示されるH鎖可変領域とを含んでなる、キメラ抗CD20モノクローナル抗体またはそのフラグメント。
【請求項30】
ヒト抗体のL鎖およびH鎖可変領域を含んでなるヒト抗CD20(huCD20)モノクローナル抗体(MAb)またはそのフラグメントであって、該huCD20 MAbはマウス抗CD20 MAbのB細胞、B細胞リンパ腫、および白血病細胞に対する標的特性および細胞結合特性を実質的に保持し、前記ヒト抗CD20 MAbのL鎖可変領域のCDRが、RASSSVSYIH、RASSSLSFMHおよびRASSSVSYMHからなる群から選択されるアミノ酸配列を含むCDR1;アミノ酸配列ATSNLASを含むCDR2;およびQQWTSNPPT、HQWSSNPLTおよびQQSFSNPPTからなる群から選択されるアミノ酸配列を含むCDR3を含んでなり、かつ前記ヒト抗CD20 MAbのH鎖可変領域のCDRが、アミノ酸配列SYNMHを含むCDR1;アミノ酸配列AIYPGNGDTSYNQKFKGを含むCDR2、およびSTYYGGDWYFDV、STYYGGDWYFNV、SHYGSNYVDYFDVおよびVVYYSNSYWYFDVからなる群から選択されるアミノ酸配列を含むCDR3を含んでなる)。
【請求項31】
少なくとも一つのヒト抗体のL鎖およびH鎖定常領域をさらに含んでなる、請求項30に記載のキメラ抗体またはそのフラグメント。
【請求項32】
少なくとも二つのmAbまたはそのフラグメントを含んでなり、該mAbが請求項1〜31のいずれか一項に記載の抗CD20 mAbから選択されるものである、抗体融合タンパク質またはそのフラグメント。
【請求項33】
請求項1〜31のいずれか一項に記載の少なくとも一つの第一の抗CD20 MAbまたはそのフラグメント、および請求項1〜31のいずれか一項に記載の抗CD20 MAbまたはそのフラグメント以外の少なくとも一つの第二のMAbまたはそのフラグメントを含んでなる、抗体融合タンパク質またはそのフラグメント。
【請求項34】
前記第二のMAbが、CD4、CD5、CD8、CD14、CD15、CD19、CD21、CD22、CD23、CD25、CD33、CD37、CD38、CD40、CD40L、CD46、CD52、CD54、CD74、CD80、CD126、B7、MUC1、Ia、HM1. 24、HLA−DR、テネイシン、 VEGF、PlGF、癌遺伝子、癌遺伝子産物、およびそれらの組み合わせと反応性のあるMAbからなる群から選択されるものである、請求項33に記載の抗体融合タンパク質またはそのフラグメント。
【請求項35】
(a)請求項1〜31のいずれか一項に記載の抗CD20 MAbまたはそのフラグメント;
(b)少なくとも二つの前記抗CD20 MAbまたはそのフラグメントを含んでなる抗体融合タンパク質またはそのフラグメント;
(c)請求項1〜31のいずれか一項に記載の抗CD20 MAbまたはそのフラグメントを含む少なくとも一つの第一のMAbまたはそのフラグメント、および請求項1〜31のいずれか一項に記載の抗CD20 MAbまたはそのフラグメント以外の少なくとも一つの第二のMAbまたはそのフラグメントを含んでなる、抗体融合タンパク質またはそのフラグメント;および
(d)請求項1〜31のいずれか一項に記載の抗CD20 MAbまたはそのフラグメントを含む少なくとも一つの第一のMAbまたはそのフラグメント、および請求項1〜31のいずれか一項に記載の抗CD20 MAbまたはそのフラグメント以外の少なくとも一つの第二のMAbまたはそのフラグメントを含んでなり、該第二のMAbが、CD4、CD5、CD8、CD14、CD15、CD19、CD21、CD22、CD23、CD25、CD33、CD37、CD38、CD40、CD40L、CD46、CD52、CD54、CD74、CD80、CD126、B7、MUC1、Ia、HM1. 24、HLA−DR、テネイシン、 VEGF、PlGF、癌遺伝子、癌遺伝子産物、またはそれらの組み合わせ、およびそれらの組み合わせと反応性のあるmAbからなる群から選択されるものである、抗体融合タンパク質またはそのフラグメント
からなる群から選択されるMAbまたはそのフラグメントをコードする核酸を含んでなる、DNA配列。
【請求項36】
請求項35に記載のDNA配列を含んでなる、発現ベクター。
【請求項37】
ベクターがpdHL2またはGSである、請求項36に記載の発現ベクター。
【請求項38】
pdHL2またはGSベクターが、キメラ、ヒト化またはヒトIgGを発現させるために用いられる場合に、H鎖およびL鎖定常領域ならびにIgG1のヒンジ領域をコードするものである、請求項37に記載の発現ベクター。
【請求項39】
前記H鎖定常領域およびヒンジ領域が図7Aに示されるものであり、かつ前記L鎖定常領域が図7Bに示されるものであり、所望によりアロタイプ部位の少なくとも一つのアミノ酸が異なるIgG1アロタイプにおいて見出されるものに変換され、かつ所望によりEUのH鎖のアミノ酸253がアラニンにより置換される、請求項38に記載の発現ベクター。
【請求項40】
請求項35に記載のDNA配列を含んでなる、宿主細胞。
【請求項41】
前記細胞が哺乳類細胞である、請求項40に記載の宿主細胞。
【請求項42】
前記哺乳類細胞がリンパ球細胞である、請求項41に記載の宿主細胞。
【請求項43】
前記リンパ球細胞が骨髄腫細胞である、請求項42に記載の宿主細胞。
【請求項44】
請求項38に記載の発現ベクターを含んでなる、宿主細胞。
【請求項45】
前記細胞が哺乳類細胞である、請求項44に記載の宿主細胞。
【請求項46】
前記哺乳類細胞がリンパ球細胞である、請求項45に記載の宿主細胞。
【請求項47】
前記リンパ球細胞が骨髄腫細胞である、請求項46に記載の宿主細胞。
【請求項48】
請求項39に記載のDNA配列を含んでなる、宿主細胞。
【請求項49】
前記細胞が哺乳類細胞である、請求項48に記載の宿主細胞。
【請求項50】
前記哺乳類細胞がリンパ球細胞である、請求項49に記載の宿主細胞。
【請求項51】
前記リンパ球細胞が骨髄腫細胞である、請求項50に記載の宿主細胞。
【請求項52】
抗CD20 MAbもしくはそのフラグメント、または抗体融合タンパク質もしくはそのフラグメントを発現させる方法であって、
(a)哺乳類細胞を請求項35に記載のDNA配列にてトランスフェクトすること;および
(b)前記抗CD20 MAbもしくはそのフラグメント、または抗体融合タンパク質もしくはそのフラグメントを分泌する前記細胞を培養すること
を含んでなる、方法。
【請求項53】
抗CD20 MAbもしくはそのフラグメント、または抗体融合タンパク質もしくはそのフラグメントを発現させるための方法であって、
(a)哺乳類細胞を請求項38に記載のDNA配列にてトランスフェクトすること;および
(b)前記抗CD20 MAbもしくはそのフラグメント、または抗体融合タンパク質もしくはそのフラグメントを分泌する前記細胞を培養すること
を含んでなる、方法。
【請求項54】
抗CD20 MAbもしくはそのフラグメント、または抗体融合タンパク質もしくはそのフラグメントを発現させるための方法であって、
(a)哺乳類細胞を請求項39に記載のDNA配列にてトランスフェクトすること;および
(b)前記抗CD20 MAbもしくはそのフラグメント、または抗体融合タンパク質もしくはそのフラグメントを分泌する前記細胞を培養すること
を含んでなる、方法。
【請求項55】
Bリンパ腫および白血病細胞を標的とする診断用または治療用複合体であって、抗体成分を含んでなり、該抗体成分が、請求項1〜34のいずれか一項に記載の抗CD20 MAbもしくはそのフラグメント、または抗体融合タンパク質もしくはそのフラグメントを含んでなり、前記細胞に結合するものであり、かつ前記抗体成分が少なくとも一つの診断薬または少なくとも一つの治療薬に結合されている、複合体。
【請求項56】
前記診断薬が少なくとも一種の光活性診断薬を含んでなる、請求項55に記載の診断用複合体。
【請求項57】
前記診断薬が60〜4,000keVの範囲のエネルギーを有する放射性標識である、請求項56に記載の診断用複合体。
【請求項58】
前記放射性標識がガンマ、ベータ、または陽電子放射性同位元素である、請求項57に記載の診断用複合体。
【請求項59】
前記放射性標識が、125I、131I、123I、124I、86Y、186Re、188Re、62Cu、64Cu、111In、67Ga、68Ga、99mTc、94mTc、18F、11C、13N、15Oおよび76Brからなる群から選択される、請求項58に記載の診断用複合体。
【請求項60】
前記診断薬が造影剤である、請求項55に記載の診断用複合体。
【請求項61】
前記造影剤がマンガン、鉄またはガドリニウムを含んでなる金属である、請求項60に記載の診断用複合体。
【請求項62】
前記抗体成分が抗体融合タンパク質またはそのフラグメントであって、前記MAbまたはそのフラグメントがそれぞれ少なくとも一つの治療薬に結合している、請求項55に記載の治療用複合体。
【請求項63】
前記治療薬が、放射性標識、免疫調節剤、ホルモン、光活性治療薬、細胞傷害剤、オリゴヌクレオチドおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項55または62に記載の治療用複合体。
【請求項64】
前記細胞傷害剤が薬物または毒素である、請求項63に記載の治療用複合体。
【請求項65】
前記オリゴヌクレオチドがアンチセンスオリゴヌクレオチドである、請求項63に記載の治療用複合体。
【請求項66】
前記薬物が、抗有糸分裂剤、アルキル化剤、代謝拮抗剤、抗脈管形成剤、アポトーシス剤、アルカロイド剤、抗キナーゼ剤、および抗生物質、タキサンならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される薬学的特性を有する、請求項64に記載の治療用複合体。
【請求項67】
前記薬物が、ナイトロジェンマスタード、エチレンイミン誘導体、スルホン酸アルキル、ニトロソウレア、トリアゼン、葉酸類似体、アントラサイクリン、タキサン、COX−2阻害剤、ピリミジン類似体、プリン類似体、抗生物質、酵素、エピポドフィロトキシン、プラチナ錯体、ビンカアルカロイド、置換尿素、メチルヒドラジン誘導体、副腎皮質抑制剤、アンタゴニスト、エンドスタチン、タキソール、カンプトセシン、ドキソルビシン、およびそれらの類似体、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項64に記載の治療用複合体。
【請求項68】
前記毒素が、リシン、アブリン、アルファトキシン、サポリン、リボヌクレアーゼ(RNアーゼ)、DNアーゼ I、ブドウ球菌内毒素−A、アメリカヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質、ゲロニン、ジフテリア毒、シュードモナス外毒素、およびシュードモナス内毒素からなる群から選択される、請求項64に記載の治療用複合体。
【請求項69】
前記免疫調節剤が、サイトカイン、幹細胞増殖因子、リンホトキシン、造血因子、コロニー刺激因子(CSF)、インターフェロン(IFN)、幹細胞増殖因子、エリスロポエチン、トロンボポエチン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項63に記載の治療用複合体。
【請求項70】
前記リンホトキシンが腫瘍壊死因子(TNF)であり、前記造血因子がインターロイキン(IL)であり、前記コロニー刺激因子が顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)または顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)であり、前記インターフェロンがインターフェロン−α、−βまたは−γであり、前記幹細胞増殖因子が「S1因子」と呼ばれるものである、請求項69に記載の治療用複合体。
【請求項71】
前記免疫調節剤がIL−1、IL−2、IL−3、IL−6、IL−10、IL−12、IL−18、IL−21、インターフェロン−γ、TNF−αまたはそれらの組み合わせを含んでなる、請求項69に記載の治療用複合体。
【請求項72】
前記放射性標識が60〜700keVの範囲のエネルギーを有する、請求項63に記載の治療用複合体。
【請求項73】
前記放射性標識が、225Ac、67Ga、90Y、86Y、111In、131I、125I、186Re、188Re、177Lu、64Cu、67Cu、212Bi、213Bi、211At、32Pおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項72に記載の治療用複合体。
【請求項74】
前記光活性治療薬が色素原または色素である、請求項63に記載の治療用複合体。
【請求項75】
被検体のB細胞リンパ腫、白血病、または自己免疫疾患を治療する方法であって、医薬上許容されるビヒクル中に処方された治療上有効な量の、請求項1〜20のいずれか一項に記載の抗CD20 MAbまたはそのフラグメントを前記被検体に投与することを含んでなる、方法。
【請求項76】
医薬上許容されるビヒクル中に処方された治療上有効な量の、CD4、CD5、CD8、CD14、CD15、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD25、CD33、CD37、CD38、CD40、CD40L、CD46、CD52、CD54、CD74、CD80、CD126、B7、MUC1、Ia、HM1. 24、HLA−DR、テネイシン、VEGF、PlGF、癌遺伝子、癌遺伝子産物、およびそれらの組み合わせと反応性のあるMAbからなる群から選択される少なくとも一種のヒト化、キメラ、ヒトまたはマウスMAbを、前記被検体に同時または逐次に投与することをさらに含んでなる、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
医薬上許容されるビヒクル中に処方された治療上有効な量の少なくとも一種の治療薬を、前記被検体に同時または逐次に投与することをさらに含んでなる、請求項75に記載の方法。
【請求項78】
前記治療薬が、医薬上許容されるビヒクル中に処方された傷害剤、放射性標識、免疫調節剤、ホルモン、酵素、オリゴヌクレオチド、光活性治療薬、またはそれらの組み合わせを含んでなる、請求項77に記載の方法。
【請求項79】
前記オリゴヌクレオチドがアンチセンスオリゴヌクレオチドである、請求項78に記載の方法。
【請求項80】
医薬上許容されるビヒクル中に処方された治療上有効な量の少なくとも一種の治療薬を、前記被検体に同時または逐次に投与することをさらに含んでなる、請求項76に記載の方法。
【請求項81】
前記治療薬が、医薬上許容されるビヒクル中に処方された細胞傷害剤薬、放射性標識、免疫調節剤、ホルモン、光活性治療薬、オリゴヌクレオチドまたはそれらの組み合わせを含んでなる、請求項80に記載の方法。
【請求項82】
前記オリゴヌクレオチドがアンチセンスオリゴヌクレオチドである、請求項81に記載の方法。
【請求項83】
医薬上許容されるビヒクル中に処方された治療上有効な量の、少なくとも一種の治療薬に結合している少なくとも一つのMabを含んでなる治療用複合体を前記被検体に同時または逐次に投与することをさらに含んでなる方法であって、ここで、前記MabはCD4、CD5、CD8、CD14、CD15、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD25、CD33、CD37、CD38、CD40、CD40L、CD46、CD52、CD54、CD74、CD80、CD126、B7、MUC1、Ia、HM1. 24、HLA−DR、テネイシン、VEGF、PlGF、癌遺伝子、癌遺伝子産物、およびそれらの組み合わせと反応性のあるMAbからなる群から選択される少なくとも一種のヒト化、キメラ、ヒトまたはマウスMAbを含んでなる、請求項75に記載の方法。
【請求項84】
前記治療薬が、医薬上許容されるビヒクル中に処方された細胞傷害剤、放射性標識、免疫調節剤、ホルモン、酵素、オリゴヌクレオチド、光活性治療薬またはそれらの組み合わせを含んでなる、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
前記オリゴヌクレオチドがアンチセンスオリゴヌクレオチドである、請求項84に記載の方法。
【請求項86】
医薬上許容されるビヒクル中に処方された治療上有効な量の、少なくとも一種の治療薬に結合している少なくとも一種のMabを含んでなる治療用複合体を、前記被検体に同時または逐次に投与することをさらに含んでなる方法であって、ここで前記MabはCD4、CD5、CD8、CD14、CD15、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD25、CD33、CD37、CD38、CD40、CD40L、CD46、CD52、CD54、CD74、CD80、CD126、B7、MUC1、Ia、HM1. 24、HLA−DR、テネイシン、VEGF、PlGF、癌遺伝子、癌遺伝子産物、およびそれらの組み合わせと反応性のあるMAbからなる群から選択される少なくとも一種のヒト化、キメラ、ヒトまたはマウスMAbを含んでなる、請求項76に記載の方法。
【請求項87】
前記治療薬が、医薬上許容されるビヒクル中に処方された細胞傷害剤、放射性標識、免疫調節剤、ホルモン、酵素、オリゴヌクレオチド、光活性治療薬またはそれらの組み合わせを含んでなる、請求項86に記載の方法。
【請求項88】
前記オリゴヌクレオチドがアンチセンスオリゴヌクレオチドである、請求項86に記載の方法。
【請求項89】
被検体のB細胞リンパ腫、白血病、または自己免疫疾患を治療する方法であって、医薬上許容されるビヒクル中に処方された治療上有効な量の、少なくとも二種のMAbまたはそのフラグメントを含む抗体融合タンパク質またはそのフラグメントを前記被検体に投与することを含んでなる方法であって、ここで、前記MAbが、請求項1〜31のいずれか一項に記載のMAbから選択されるか、または請求項1〜31のいずれか一項に記載の少なくとも一種のMAbまたはそのフラグメントと、CD4、CD5、CD8、CD14、CD15、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD25、CD33、CD37、CD38、CD40、CD40L、CD46、CD52、CD54、CD74、CD80、CD126、B7、MUC1、Ia、HM1. 24、HLA−DR、テネイシン、VEGF、PlGF、癌遺伝子、癌遺伝子産物、およびそれらの組み合わせと反応性のあるmAbからなる群から選択される少なくとも一種のMAbとを含んでなる、方法。
【請求項90】
医薬上許容されるビヒクル中に処方された治療上有効な量の少なくとも一種の治療薬を、前記被検体に同時または逐次に投与することをさらに含んでなる、請求項89に記載の方法。
【請求項91】
医薬上許容されるビヒクル中に処方された、細胞傷害剤、放射性標識、免疫調節剤、ホルモン、光活性治療薬、オリゴヌクレオチドまたはそれらの組み合わせをさらに含んでなる、請求項90に記載の方法。
【請求項92】
前記オリゴヌクレオチドがアンチセンスオリゴヌクレオチドである、請求項91に記載の方法。
【請求項93】
医薬上許容されるビヒクル中に処方された治療上有効な量の少なくとも一種の治療薬に結合している少なくとも一種のMAbを含んでなる治療用複合体を、前記被検体に同時または逐次に投与することをさらに含んでなる方法であって、ここで、前記MAbが、CD4、CD5、CD8、CD14、CD15、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD25、CD33、CD37、CD38、CD40、CD40L、CD46、CD52、CD54、CD74、CD80、CD126、B7、MUC1、Ia、HM1. 24、HLA−DR、テネイシン、VEGF、PlGF、癌遺伝子、癌遺伝子産物、およびそれらの組み合わせと反応性のあるMAbからなる群から選択される少なくとも一種のヒト化、キメラ、ヒトまたはマウスMAbを含んでなる、請求項77に記載の方法。
【請求項94】
前記治療薬が、医薬上許容されるビヒクル中に処方された細胞傷害剤、放射性標識、免疫調節剤、ホルモン、酵素、オリゴヌクレオチド、光活性治療薬またはそれらの組み合わせを含んでなる、請求項93に記載の方法。
【請求項95】
前記オリゴヌクレオチドがアンチセンスオリゴヌクレオチドである、請求項94に記載の方法。
【請求項96】
被検体のB細胞リンパ腫、白血病、または自己免疫疾患を治療する方法であって、前記被検体に医薬上許容されるビヒクル中に処方された治療上有効な量の、前記細胞に結合する請求項1〜34のいずれか一項に記載の抗CD20 MAbもしくはそのフラグメント、または抗体融合タンパク質もしくはそのフラグメントを含んでなる治療用複合体を投与することを含んでなり、前記抗CD20 MAbもしくはそのフラグメント、または抗体融合タンパク質もしくはそのフラグメントが少なくとも一種の治療薬に結合している、方法。
【請求項97】
前記治療薬が、医薬上許容されるビヒクル中に処方された細胞傷害剤、放射性標識、免疫調節剤、ホルモン、酵素、オリゴヌクレオチド、光活性治療薬またはそれらの組み合わせを含んでなる、請求項96に記載の方法。
【請求項98】
前記細胞傷害剤が薬物または毒素である、請求項78、81、84、87、91、94または97のいずれか一項に記載の方法。
【請求項99】
前記薬物が抗有糸分裂剤、アルキル化剤、抗生物質、代謝拮抗剤、抗脈管形成剤、アポトーシス剤、抗キナーゼ剤、およびアルカロイド剤、タキサンおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される薬学的特性を有する、請求項98に記載の方法。
【請求項100】
前記薬物が、ナイトロジェンマスタード、エチレンイミン誘導体、スルホン酸アルキル、ニトロソウレア、トリアゼン、葉酸類似体、COX−2阻害剤、ピリミジン類似体、プリン類似体、抗生物質、酵素、エピポドフィロトキシン、プラチナ錯体、ビンカアルカロイド、置換尿素、メチルヒドラジン誘導体、副腎皮質抑制剤、アンタゴニスト、エンドスタチン、タキソール、カンプトセシン、アントラサイクリン、およびそれらの類似体, およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項98に記載の方法。
【請求項101】
前記毒素が、リシン、アブリン、アルファトキシン、サポリン、リボヌクレアーゼ(RNアーゼ)、DNアーゼ I、ブドウ球菌内毒素−A、アメリカヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質、ゲロニン、ジフテリア毒、シュードモナス外毒素、およびシュードモナス内毒素からなる群から選択される、請求項98に記載の方法。
【請求項102】
前記免疫調節剤が、サイトカイン、幹細胞増殖因子、リンホトキシン、造血因子、コロニー刺激因子(CSF)、インターフェロン(IFN)、幹細胞増殖因子、エリスロポエチン、トロンボポエチン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項78、81、84、87、91、94または97のいずれか一項に記載の方法。
【請求項103】
前記リンホトキシンが腫瘍壊死因子(TNF)であり、前記造血因子がインターロイキン(IL)であり、前記コロニー刺激因子が顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)または顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)であり、前記インターフェロンがインターフェロン−α、−βまたは−γであり、前記幹細胞増殖因子が「S1因子」と表されるものである、請求項102に記載の方法。
【請求項104】
前記免疫調節剤がIL−1、IL−2、IL−3、IL−6、IL−10、IL−12、IL−18、IL−21、インターフェロン−γ、TNF−αまたはそれらの組み合わせを含んでなる、請求項102に記載の方法。
【請求項105】
前記放射性標識が60〜4,000keVの範囲のエネルギーを有する、請求項78、81、84、87、91、94または97のいずれか一項に記載の方法。
【請求項106】
前記放射性標識が、225Ac、67Ga、90Y、111In、131I、125I、186Re、188Re、177Lu、64Cu、67Cu、212Bi、213Bi、211At、32Pおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項105に記載の方法。
【請求項107】
前記光活性治療薬が色素原または色素である、請求項80、83、86、89、93、96または98のいずれか一項に記載の方法。
【請求項108】
前記被検体が哺乳類である、請求項75〜107のいずれか一項に記載の方法。
【請求項109】
前記哺乳類がヒト、イヌまたはネコである、請求項108に記載の方法。
【請求項110】
被検体のB細胞リンパ腫、白血病、または自己免疫疾患を診断する方法であって、該被検体に、該細胞と結合する請求項1〜34のいずれか一項に記載の抗CD20 MAbもしくはそのフラグメントまたは抗体融合タンパク質もしくはそのフラグメントを含んでなる診断用複合体を投与することを含んでなり、ここで、前記抗CD20 MAbもしくはそのフラグメントまたは抗体融合タンパク質もしくはそのフラグメントは医薬上許容されるビヒクル中に処方された少なくとも一種の診断薬に結合している、方法。
【請求項111】
前記診断薬が放射性標識、光活性診断薬、または非放射性標識の少なくとも一種を含んでなる、請求項110に記載の方法。
【請求項112】
前記放射性標識がγ、β、または陽電子放射性同位元素からなる群から選択される、請求項111に記載の方法。
【請求項113】
前記放射性標識が60〜700keVの範囲のエネルギーを有する、請求項112に記載の方法。
【請求項114】
前記放射性標識が、125I、131I、123I、86Y、186Re、188Re、62Cu、64Cu、67Cu、111In、67Ga、68Ga、99mTc、94mTc、18F、11C、13N、15Oおよび76Brからなる群から選択される、請求項112に記載の方法。
【請求項115】
前記非放射性標識が造影剤または非放射性金属である、請求項111に記載の方法。
【請求項116】
前記放射性標識が常磁性イオンである、請求項115に記載の方法。
【請求項117】
前記非放射性標識がガドリニウム、マンガンまたは鉄である、請求項111に記載の方法。
【請求項118】
B細胞リンパ腫、白血病、または自己免疫疾患を患う患者の細胞をプレターゲッティングする方法であって、
(i)前記細胞に特異的に結合する少なくとも一つのアーム(arm)および標的化可能な複合体に特異的に結合する少なくとも一つの他のアームを有する請求項31〜33のいずれか一項に記載の抗体融合タンパク質またはそのフラグメントを投与すること;
(ii)所望により、前記患者に除去用組成物を投与し、該組成物により抗原に結合していない抗体融合タンパク質またはその抗体フラグメントを循環中から取り除くこと;および、
(iii)標的化可能な複合体であって、担体部分(前記抗体融合タンパク質またはそのフラグメントの少なくとも一つの他のアームにより認識され得る少なくとも一つのエピトープを含んでなるかまたは担持するものである)を含んでなり、かつ少なくとも一種の第一の治療薬または診断薬と結合している複合体を、前記患者に投与すること
を含んでなる、方法。
【請求項119】
前記抗体融合タンパク質またはそのフラグメントが二重特異性抗体またはそのフラグメントである、請求項118に記載の方法。
【請求項120】
前記二重特異性抗体がダイアボディー(diabody)である、請求項119に記載の方法。
【請求項121】
前記第一の治療薬が、放射性標識、免疫調節剤、ホルモン、光活性治療薬、細胞傷害剤、オリゴヌクレオチドおよびそれらの組み合わせからなる群から選択され、前記第一の診断薬が少なくとも一種の放射性標識、光活性診断薬または非放射性標識である、請求項118〜120に記載の方法。
【請求項122】
前記抗体融合タンパク質またはそのフラグメントが第二の治療薬または第二の診断薬と結合している、請求項118〜121に記載の方法。
【請求項123】
前記第二の治療薬が放射性標識、免疫調節剤、ホルモン、光活性治療薬、細胞傷害剤、オリゴヌクレオチドおよびそれらの組み合わせからなる群から選択され、前記第二の診断薬が少なくとも一種の放射性標識、光活性診断薬または非放射性標識である、請求項122に記載の方法。
【請求項124】
該第一および第二の治療薬または診断薬が同じものである、請求項122または123に記載の方法。
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2006−500904(P2006−500904A)
【公表日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−567947(P2003−567947)
【出願日】平成15年2月14日(2003.2.14)
【国際出願番号】PCT/GB2003/000665
【国際公開番号】WO2003/068821
【国際公開日】平成15年8月21日(2003.8.21)
【出願人】(504149971)イミューノメディクス、インコーポレイテッド (48)
【氏名又は名称原語表記】IMMUNOMEDICS, INC.
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成15年2月14日(2003.2.14)
【国際出願番号】PCT/GB2003/000665
【国際公開番号】WO2003/068821
【国際公開日】平成15年8月21日(2003.8.21)
【出願人】(504149971)イミューノメディクス、インコーポレイテッド (48)
【氏名又は名称原語表記】IMMUNOMEDICS, INC.
【Fターム(参考)】
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