説明

抗CD28ヒト化抗体

本発明は、ヒトリンパ球受容体CD28を指向するヒト化抗体に関する。一価の形態で用いられるとき、これら抗体はアンタゴニストであり、すなわち、CD28/B7相互作用を、CD28を活性化することなくブロックできる。これら抗体は、特に受容体CD28を介するT細胞活性化をブロックするための治療剤として用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CD28に結合するヒト化抗体、その一価フラグメント及び特にT細胞活性化の調節に関連するそれらの治療用途に関する。
【背景技術】
【0002】
T細胞の異常な活性化は、多くの自己免疫疾患の発生病理に、また生長するように移植された臓器に対して免疫反応を引き起こす移植拒絶現象にも関わっている。
Tリンパ球の活性化を調節する最も重要な系のひとつは、分子系B7/CD28/CTLA4である。この系は、例えば、移植拒絶の機序に本質的な役割を果たしている(Woodwardら、Transplantation, 66, 14-20, 1998)。APCによって担持される分子B7.1 (CD80)及びB7.2 (CD86)は、Tリンパ球の受容体CD28及び受容体CTLA4を活性化できる。CD28の活性化は、細胞を刺激する陽性シグナルをTリンパ球に送る;他方、CTLA4の活性化は、無反応(アネルギー)をもたらす陰性シグナルを送る(FALLARINOら、J. Exp. Med., 188, 205-210, 1998)。
【0003】
休止Tリンパ球は、大量のCD28を発現し、CTLA4をほとんど発現しない。APCとTリンパ球とに最初の認識接触があるときには、細胞を活性化するCD28/B7相互作用が好まれる。CTLA4の膜発現増加によってB7に対するCTLA4の親和性がCD28の親和性の5〜10倍高くなり、B7/CD28相互作用がB7/CTLA4相互作用に有利にシフトするのは、活性化の開始から僅か数時間後である。
【0004】
調節Tリンパ球は、調節Tリンパ球の抑制活性をそれぞれ妨害するか又は許容する大量のCD28及びCTLA4を発現する。高レベルのB7を発現するAPCの存在下に、CD28/B7相互作用は、調節Tリンパ球の抑制活性を妨害する(Sansomら、Trends Immunol. 24, 314-319, 2003)。
【0005】
CD28によりT細胞に与えられるアゴニストシグナルの選択的阻害は、CD28/B7相互作用の特異的なブロッキングを介してCTLA4/B7対からなるアンタゴニスト系をインタクトなまま残し、Tリンパ球の活性化を妨害すること及び調節Tリンパ球による免疫抑制を促進することを可能にするであろう。CD28/B7相互作用のこのような特異的なブロッキングは、CD28を指向する幾つかの抗体を用いて得ることができる。
【0006】
これら抗体は、天然の二価の形態で用いられるときに、それらのCD28への結合がこの受容体の二量体化及び活性化を引き起こすので、一価の形態で(例えば、Fab又はscFvフラグメントとして)用いられることとなる。Fabフラグメントは各々が軽鎖及び最初の半分の重鎖を含む;scFvフラグメントは、可撓性リンカーを介して互いに連結されることによって(CLACKSONら、Nature, 352, 624-628, 1991)、単鎖タンパク質を形成している、親抗体の重鎖及び軽鎖の可変部分からなる。
【0007】
このような抗体の一つは、ハイブリドーマ細胞系CNCM I-2582により産生され、PCT出願WO 02/051871に開示される抗体CD28.3である。この抗体は、scFvフラグメントのような一価の形態で用いられるときに、受容体CD28を活性化することなく、受容体CD28をインビトロでブロックでき(PCT WO 02/051871; VANHOVEら、Blood, 102, 564-70, 2003)、インビボにおけるその効果もマウス及び霊長類における臓器移植モデルにおいて示されている(POIRIERら、World Transplant Congress, Sydney, Australia. August 16-21, 2008; POIRIERら、Sci Trans Med, 2:17, p17ra10, 2010)。
【0008】
マウス源に由来する全てのモノクローナル抗体の欠点は、ヒト被験者に投与されるときのそれらの免疫原性である。それらは、特に繰り返しの投与が要求されるときに、より低い治療効果をもたらす抗マウス免疫応答を誘発する。
この欠点は、原理上、ヒト化抗体の使用により回避できる。ヒト化の目的は、相補性決定領域(CDR)の配列が由来するマウスモノクローナル抗体に類似する抗原結合特性を有し、ヒトにおいて免疫原性がかなり低い組換え抗体を得ることである。
CDRは、抗原に直接接触する抗体の可変ドメインの部分であり、抗原結合特異性を決定する;可変ドメイン中のCDRの間に位置するフレームワーク領域(FR)は、抗原に直接接触しないが、可変ドメインの全体の構造を維持するための足場として働く。
【0009】
抗体のヒト化に関する幾つかのアプローチが報告されている。最も広く用いられているものは、マウス抗体のCDRを適当なヒトFRに移植することを含む「CDRグラフティング(CDR grafting)」に基づいている。しかしながら、多くの抗体において、幾つかのFR残基は、それらがCDRのコンホメーション、したがってCDRの抗原結合特性、特に結合親和性に影響を与えるので、抗原結合に重要である。結合親和性の喪失は、天然の二価抗体よりも抗原に対して低い親和性を一般的に示す一価の形態で用いられることを意図する抗体の場合において、特に不利益である。よって、ほとんどの場合において、十分な結合親和性を得るために、望ましくない免疫原性を同時に復活させるリスクを伴って、ヒトFR中にマウス抗体由来の1つ又は幾つかのフレームワーク残基を再び導入することがさらに必要となる。
【0010】
抗体のヒト化に関する別のアプローチは、「脱免疫化(de-immunization)」と呼ばれ、「外来(foreign)」として認識され、したがってヒトにおいて潜在的に免疫原性のB細胞及びT細胞のエピトープを抗体のFR領域の範囲内で同定すること及び前記エピトープを適当なアミノ酸置換により除去することを含む。このアプローチは、しかしながら、抗原結合に重要なFR残基が欠失されるというリスクも伴っている。さらに、幾つかの免疫原性エピトープはCDR中に存在することがあり、それらを除去しようとすることは、抗原結合親和性だけでなく、抗体の抗原結合特異性をも破壊してしまうという非常に大きなリスクを伴う。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、抗体のヒト化における大きな課題は、どのアミノ酸残基が抗原結合特性を保持するのに重要であるか決定することである。FR領域中の置換についてより適当な部位を予測するために様々な方法が提案されている。それらはヒト化の第1の工程において幾らかの助力となり得る一般的な原理を提供するが、最終的な結果は、抗体ごとに大きく変化する。よって、ある所定の抗体について、どの置換が望ましい結果を提供するか前もって知ることは非常に困難である。FR中の置換だけでなくCDR中の置換までもがヒトにおける免疫原性を満足に減少させるために必要となる場合には、最終的な結果は、完全に予測不可能となる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、低い免疫原性を有し、重鎖のCDR2中に非保存的なK→Q置換を含むアミノ酸置換を幾つか有しているが親マウスのCD28.3のCD28結合特性を保持するヒト化CD28.3(ここで、以下hCD28.3という)を製造することに成功している。一価の形態で用いられるとき、本発明のhCD28.3もまた、親マウスCD28.3のCD28結合特性を保持する。
【発明の詳細な説明】
【0013】
本発明は、
a)−以下の配列により定義される第1の可変ドメイン(ここで、「重鎖可変ドメイン」とも定義される):
【化1】

(ここで、前記可変ドメインは、任意にN末端にQ残基をさらに含んでいてもよい);
−以下の配列により定義される第2の可変ドメイン(ここで、「軽鎖可変ドメイン」とも定義される):
【化2】

(ここで、X=C、A又はN):
からなるCD28結合部位を有する抗体
b)−配列番号1の可変ドメインのCDRを有する第1の可変ドメイン;
−配列番号2の可変ドメインのCDRを有する第2の可変ドメイン:
からなるCD28結合部位を有する抗体
から選択されることを特徴とする抗CD28抗体を提供する。
【0014】
ここで、用語「抗CD28抗体」とは、ヒトCD28に特異的に結合可能な(軽鎖及び重鎖の可変ドメインからなる)少なくとも1つの抗原結合部位を有する任意の抗原結合タンパク質をいう。抗CD28抗体は、2つのCD28結合部位を有する二価の形態にある抗体(例えば、天然のイムノグロブリン分子又はF(ab)'2フラグメント)、並びに1つのCD28結合部位を有する一価の形態にある抗体(例えば、Fab、Fab'、Fv及びscFvフラグメント)を包含する。多くの場合、一価の形態にある抗体が好ましい。
【0015】
抗CD28抗体は、特に1又はそれより多い非相同ポリペプチドと結合したCD28結合部位を含む組換え抗体を含む。
例として、本発明の抗体は、配列番号1の可変ドメインのC末端に融合したヒトイムノグロブリンの定常ドメインCH1、及び配列番号2の可変ドメインのC末端に融合したヒトイムノグロブリンの定常ドメインCLを含む組換えFab又はFab'フラグメントであり得る。このような組換えFabフラグメントの例は、配列番号4のアミノ酸21〜251の配列を有する重鎖及び配列番号6のアミノ酸21〜234の配列を有する軽鎖を有するFabフラグメントである。
【0016】
また、本発明のhCD28.3抗体は、上記に定義される配列番号1及び配列番号2の可変ドメインの他に、1又はそれより多い以下の構成要素を含み得る:
−ヒト定常領域(Fc)。この定常領域は、IgM、IgG、IgD、IgA及びIgEを含む任意のクラスのイムノグロブリン、並びにIgG1、IgG2、IgG3及びIgG4を含む任意のアイソタイプからの定常ドメインから選択され得る。好ましい定常領域は、IgGの定常ドメインから選択され、特にIgG4である。
−例えばPCT WO 02/051871に開示されるような、一価の形態でインビボ投与されるときに血漿中での半減期を延長することを可能にするタンパク質;PCT/IB/2010/000196に開示されるように、ある好ましい実施態様においては、前記タンパク質は、IgG分子のCH2-CH3ドメインである;前記実施態様によれば、本発明のhCD28.3一価抗体は:
−N末端からC末端までが、
*配列番号1の配列を有する領域A;
*ペプチドリンカー並びにIgGイムノグロブリンのCH2及びCH3ドメインからなる領域B;
から本質的になる第1のタンパク質の鎖:
−N末端からC末端までが、
*配列番号2の配列を有する領域A';
*第1のポリペプチドの領域Bと同一の領域B;
から本質的になる第2のタンパク質の鎖:
のヘテロ二量体である。
【0017】
好ましくは、ペプチドリンカーは、配列EPKSCDKTHTCPPCP (配列番号7)を有するヒトIgG1イムノグロブリンのヒンジ領域であり、CH2及びCH3ドメインは、IgG4サブクラスのイムノグロブリンのヒンジ領域である。当業者は、配列DKTHTCPPCP (配列番号8)を有する、ヒンジ領域の短縮型を用いることもできる。
【0018】
好ましい実施態様によれば、第1のタンパク質の鎖のポリペプチド配列は、配列番号10のアミノ酸21〜368の配列であり、第2のタンパク質の鎖のポリペプチド配列は、配列番号12のアミノ酸21〜355の配列である。別の好ましい実施態様によれば、第1のタンパク質の鎖のポリペプチド配列は、配列番号14のアミノ酸21〜373の配列であり、第2のタンパク質の鎖のポリペプチド配列は、配列番号16のアミノ酸21〜360の配列である。
【0019】
任意に、本発明のhCD28.3抗体は、1又はそれより多い以下の構成要素をさらに含み得る:
−薬理活性を有するタンパク質(例えばトキシン);
−1又はそれより多いタグポリペプチド。
【0020】
或いは、それらの血漿中での半減期を延長させるために、特にFabフラグメントの形態であるときに、本発明の抗体は、水溶性ポリマー、例えばポリエチレングリコールと結合(PEG化)し得る。PEG化は、治療用ポリペプチドの薬物動態特性を高めるための古典的手法であり、当該技術において公知の技術によって達成され得る。
【0021】
この点に関して、本発明者らは、天然のCD28.3の可変ドメインの96位の元のシステイン残基のアラニン又はアスパラギン残基による置換え(配列番号2(ここで、X=A又はN)の可変ドメインを含む軽鎖を有する抗体をもたらす)は、システイン96が抗体の軽鎖のCDR3に含まれるにも拘らず、その結合活性を実質的に改変することなく、(反応性のシステイン残基を標的化する)マレイミドで活性化されたポリエチレングリコールを用いる抗体のPEG化におけるより良好な効率を可能にする。可変ドメインの96位の元のシステイン残基の置換えの利点は、重鎖のC末端システイン残基上へのポリエチレングリコールの特異的な分枝に主にある。天然CD28.3の可変ドメインの96位の元のシステイン残基の置換えなしでは、マレイミドで活性化されたポリエチレングリコールは、当該システイン残基に結合し、Fab分子の結合活性を損傷し得る。
また、本発明者らは、重鎖のC末端システインの後のジアラニン伸長の付加もまたより良好なPEG化効率をもたらすことを見出した。
【0022】
また、本発明は、
a)配列番号1のCDRを有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、特に配列番号1のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
b)配列番号2のCDRを有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、特に配列番号2のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
c)上記に定義される本発明のhCD28.3抗体をコードするポリヌクレオチド:
から選択されるポリヌクレオチドも包含する。
【0023】
本発明のポリヌクレオチドは、総じて、付加的な配列も含む:例えば、それらは、有利には、タンパク質の鎖の分泌を可能にするリーダー配列又はシグナルペプチドをコードする配列を含み得る。
【0024】
また、本発明は、本発明のポリヌクレオチドを、選択される宿主細胞中で活性である転写及び翻訳制御因子と共に含む組換えベクター、特に発現ベクターも包含する。本発明による発現ベクターを構築するために用いられ得るベクターは、それ自体公知であり、特に用いられることを意図する宿主細胞に応じて選択される。
【0025】
また、本発明は、本発明のポリヌクレオチドを用いてトランスフォームされた宿主細胞も包含する。好ましくは、宿主細胞は、本発明のhCD28.3抗体の重鎖をコードする配列を含むポリヌクレオチド及び本発明のhCD28.3抗体の軽鎖をコードする配列を含むポリヌクレオチドを用いてトランスフォームされており、前記抗体を発現する。前記ポリヌクレオチドは、同一の発現ベクター中に又は2つの別個の発現ベクター中に挿入され得る。
【0026】
本発明に関連して用いられ得る宿主細胞は、原核又は真核細胞であり得る。用いられ得る真核細胞のうち、特に植物細胞、酵母からの細胞、例えばサッカロミセス(Saccharomyces)、昆虫細胞、例えばドロソフィラ(Drosophila)又はスポドプテラ(Spodoptera)細胞、及び哺乳動物細胞、例えばHeLa、CHO、3T3、C127、BHK、COS等の細胞が挙げられる。
【0027】
本発明の発現ベクターの構築及び宿主細胞のトランスフォーメーションは、分子生物学の慣用技術によって行われ得る。
【0028】
さらに、本発明の別の対象は、本発明のhCD28.3抗体の製造方法である。前記方法は、本発明のhCD28.3抗体の重鎖をコードする配列を含むポリヌクレオチド及び本発明のhCD28.3抗体の軽鎖をコードする配列を含むポリヌクレオチドを用いてトランスフォームされた宿主細胞を培養し、培養物から前記抗体を回収することを含む。
【0029】
抗体が宿主細胞により分泌されるのであれば、該抗体は、培養培地から直接回収され得る;そうでなければ、細胞溶解が事前に行われる。抗体は、したがって、培養培地から又は細胞溶解物から、それ自体当業者に公知の慣用手順、例えば分別沈殿(fractionated precipitation)、特に硫酸アンモニウムを用いる沈殿、電気泳動、ゲル濾過、アフィニティクロマトグラフィ等によって精製され得る。
【0030】
本発明のhCD28.3抗体は、医薬品を得るために用いられ得る。これら医薬品もまた、本発明の対象の一部である。
また、本発明は、本発明のhCD28.3抗体を、医薬的に許容され得る賦形剤と共に含む治療用組成物も含む。
【0031】
好ましくは、組成物は、0.5〜20 mg/Kg、有利には5〜10 mg/Kgの用量の本発明のhCD28.3抗体の投与を可能にするために製剤化された非経口投与用組成物である。組成物の注入経路は、好ましくは皮下又は静脈内であり得る。
【0032】
例えば、本発明のhCD28.3抗体は、受容体CD28に関連するT細胞活性化現象を選択的にブロックする免疫抑制性の医薬品を得るために用いることができる。CD28の選択的ブロッキングにより作用するこのような免疫抑制性の医薬品は、特に移植拒絶、移植片対宿主病、Tリンパ球媒介性自己免疫疾患、例えばI型糖尿病、リウマチ性関節炎又は多発性硬化症、アレルギー現象に関与するIV型過敏を含む全てのTリンパ球依存性の病的状態に、並びに特に病原性物質への感染症(特にらい病、結核、リーシュマニア症、リステリア症等)の後の慢性炎症性疾患に用途がある。
【0033】
本発明は、本発明によるhCD28.3抗体の製造及び特性の非限定的な実施例について言及する以下に続く更なる記載からより明確に理解されるであろう。
本発明の発現ベクターの構築及び宿主細胞のトランスフォーメンションは、分子生物学の標準的技術により行なうことができる。
本発明のhCD28.3抗体は、該抗体をコードする核酸配列を含む発現ベクターを含む宿主細胞を、その発現に適した条件下で培養し、宿主細胞培養物から前記抗体を回収することにより得ることができる。
【0034】
本発明は、本発明のhCD28.3抗体の特性を説明する実施例について言及する以下の更なる記載によって更に説明される。しかしながら、これら実施例は本発明を説明する目的でのみ与えられるものであり、本発明の如何なる限定も構成しないことが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】Signal-VH-hCH1構築物のヌクレオチド及びアミノ酸配列。太字:リーダー配列;下線付:親CD28.3抗体のCDRの位置。イタリック体:ヒトCH1領域;ハイライト及び二重下線付:CD28.3抗体のVH領域中にされた置換。
【図2】Signal-VL-hCκ構築物のヌクレオチド及びアミノ酸配列。太字:リーダー配列;下線付:親CD28.3抗体のCDRの位置。イタリック体:ヒトcκ領域;ハイライト及び二重下線付:CD28.3抗体のVL領域中にされた置換。
【図3】A)結合ELISA(Binding ELISA)における漸増濃度のFR104、hCD28.3 Fab又はCD28.3 Fabの405 nmでの光学密度;B)比較値AC50の決定を可能にする回帰曲線の算出。
【図4】hVHCD28.3-短縮型ヒンジγ1-hγ4CH2CH3構築物のヌクレオチド及びアミノ酸配列。太字:リーダー配列。下線付:CDR。二重下線付:ヒンジ領域。点線下線付:ヒトIgG4のCH2-CH3ドメイン。
【図5】hVLCD28.3-短縮型ヒンジγ1-hγ4CH2CH3構築物のヌクレオチド及びアミノ酸配列。太字:リーダー配列。下線付:CDR。二重下線付:ヒンジ領域。点線下線付:ヒトIgG4のCH2-CH3ドメイン。
【図6】hVHCD28.3-完全ヒンジγ1-hγ4CH2CH3構築物のヌクレオチド及びアミノ酸配列。太字:リーダー配列。下線付:CDR。二重下線付:ヒンジ領域。点線下線付:ヒトIgG1のCH2-CH3ドメイン。
【図7】hVLCD28.3-完全ヒンジγ1-hγ4CH2CH3構築物のヌクレオチド及びアミノ酸配列。太字:リーダー配列。下線付:CDR。二重下線付:ヒンジ領域。点線下線付:ヒトIgG1のCH2-CH3ドメイン。
【図8】hVH/VL CD28.3一価抗体の抗CD28結合特性。COS細胞を、(各々が)2μgのpSignal-hVH-short hingeγ1-hγ4CH2-CH3及びpSignal-hVL-short hingeγ1-hγ4CH2-CH3を用いてコトランスフェクトしたか、又は(各々が)2μgのpSignal-hVH-full hingeγ1-hγ4CH2-CH3及びpSignal-hVL-full hingeγ1-hγ4CH2-CH3を用いてコトランスフェクトした。6日後、上清を回収し、第1のサンドイッチELISAを用いて一価抗体を定量した。また、固定化されたCD28標的分子に対する結合ELISAを用いて上清を評価し、結合した一価の抗CD28抗体をペルオキシダーゼで標識した抗ヒトFc抗体を用いて明らかにした。A:示された分子を用いて、それらの濃度に応じて得られた光学密度。B:回帰曲線及びED50(50%有効量)(このアッセイにおいて50%の結合活性に達するのに必要とされる濃度)の算出式を有する表。
【図9】hVH/VL CD28.3一価抗体は、活性化されたT細胞によるIL-2分泌を阻害する。Jurkat T細胞を、SEEスーパー抗原及びRaji抗原提示細胞で48時間、示された濃度の精製されたhVH/VL-短縮型ヒンジγ1-hγ4CH2-CH3一価抗体の存在下で刺激した。上清を回収し、IL-2をELISAで測定した。
【図10】ヒト化CD28.3抗体からのC96-FabのPEG化後の非還元条件下でのSPセファロースHPクロマトグラフィ(左)及びSDS-PAGE(右)。レーン1:マーカー;レーン2:ロード;レーン3:ピーク1;レーン4:ピーク2;レーン5:ピーク3。
【図11】C96変異を有するか又は有しない組換えhCD28.3 FabのCD28に対する結合特性。グラフは、Fab濃度(X軸)に対する結合特性(Y軸)を示す。
【図12】ヒト化CD28.3抗体からのC96A-FabのPEG化後の非還元条件下でのSPセファロースHPクロマトグラフィ(左)及びSDS-PAGE(右)。レーン1:MWマーカー;レーン2:PEG化されたタンパク質のプレクロマトグラフィ;レーン3:開始物質の41%に相当するモノPEG化されたFabを含むピーク1。
【図13】重鎖中にCAA C末端配列を有するヒト化CD28.3抗体からのC96A-FabのPEG化後の非還元条件下でのSPセファロースHPクロマトグラフィ(左)及びSDS-PAGE(右)。レーン1:MWマーカー;レーン2:PEG化されたタンパク質のプレクロマトグラフィ;レーン3:ピーク。
【実施例】
【0036】
実施例1:hCD28.3一価抗体(Fabフラグメント)の構築及び真核発現(eukaryotic expression)
重鎖:
ヒトCH1領域をコードする配列(NCBIアクセッション番号 AAF03881)及び天然のマウスCD28.3抗体の重鎖のリーダーペプチドをコードする配列と融合している、hCD28.3のVH領域をコードする配列(配列番号1)を化学的に合成し、増幅のために、クローニングベクターpGA18 (Geneart)に導入した。次いで、配列をKpnI/BamHI制限酵素を用いて消化により切り出し、プラスミドpcDNA3.1-hygro (Invitrogen)のKpnI/BamHIサイトにサブクローニングした。陽性クローンを増幅し、トランスフェクション工程のために、Midiprep-endotoxin free (Macherey-Nagel)により精製した。
【0037】
得られたプラスミドをpSignal-VH-hCH1と呼ぶ。それは、CD28.3の重鎖のリーダーペプチドをコードする配列とヒトCH1領域をコードする配列(NCBIアクセッション番号 AAF03881)との間にhCD28.3のVH領域をコードする配列を含む構築物を含む。この構築物のヌクレオチド及びアミノ酸配列を図1に示す。また、それらは、同封される配列表において、配列番号3及び配列番号4と表される。
【0038】
軽鎖:
ヒトcκ領域をコードする配列(NCBIアクセッション番号 BAC01725)及び天然のマウスCD28.3抗体の軽鎖のリーダーペプチドをコードする配列と融合している、hCD28.3のVL領域をコードする配列(配列番号2)を化学的に合成し、増幅のために、クローニングベクターpGA18 (Geneart)に導入した。次いで、配列をKpnI/BamHI制限酵素を用いて消化により切り出し、プラスミドpcDNA3.A-hygro (Invitrogen)のKpnI/BamHIサイトにサブクローニングした。陽性クローンを増幅し、トランスフェクション工程のために、Midiprep-endotoxin free (Macherey-Nagel)により精製した。
【0039】
得られたプラスミドをpSignal-VL-hCκと呼ぶ。それは、CD28.3の軽鎖のシグナルペプチドをコードする配列とヒトcκ領域をコードする配列(NCBIアクセッション番号 BAC01725)との間にhCD28.3のVL領域をコードする配列を含む構築物を含む。この構築物のヌクレオチド及びアミノ酸配列を図2に示す。また、それらは、同封される配列表において、配列番号5及び配列番号6と表される。
【0040】
真核発現
COS細胞を、(各々が)2μgのpSignal-VL-hCH1及びpSignal-VH-hCH1で、Fugeneリポフェクションキット(Roche Diagnostics, Basel, Switzerland)を用いて、製造業者の説明書に従ってコトランスフェクトした。培養物を3日間37℃で維持し、3分の1に分け、更に3日間の培養を再開し、その後細胞上清を回収した。
hCD28.3一価抗体の活性は、以下の実施例2に記載されるようにして、ELISAにより直接上清中において評価する。
【0041】
実施例2:ELISAによるhCD28.3 Fabフラグメント結合活性の検出
hCD28.3 Fabフラグメントの結合特性を、Cos細胞を(ヒト化されていない) CD28.3 Fabをコードするプラスミドでトランスフェクションした後に得られた結合特性と、2つのELISAアッセイを用いて比較した。
【0042】
*第1に(サンドイッチELISA)、トランスフェクトされたCOS細胞の培地上清中のhCD28.3及びCD28.3 Fabフラグメントの濃度を、サンドイッチELISAを用いて測定した。簡潔には、上清中に含まれる抗CD28 Fabをまず(天然のCD28.3の重鎖及び軽鎖可変ドメインを含む単鎖Fvを用いてウサギを免疫した後に得られ、CD28.3 Fab-セファロースへの免疫吸着により精製された)CD28.3の重鎖及び軽鎖可変ドメインに特異的なウサギポリクローナル抗体により捕捉する。捕捉したタンパク質を、次いで、ヒトIgGのκ鎖を指向するマウスモノクローナル抗体、続いてペルオキシダーゼで標識したヤギポリクローナル抗マウス抗体を用いて明らかにする。結合した抗体は、TMB基質を用いて比色法により明らかにし、405 nmで読み出した。
【0043】
種々の上清希釈度に対応するODを、次いで、トランスフォームされたCHO細胞の培地上清からクロマトグラフィの標準的技術を用いて精製され、BCA(ビシンコニン酸)アッセイで定量した既知量のCD28.3 Fab(FR104と呼ばれる)を用いて得られた標準曲線と比較する。FR104は、天然の(ヒト化されていない)、CD28.3抗体のVH及びVL領域を含む。したがって、細胞上清中に存在するFabタンパク質の量を評価することができる。
【0044】
*第2に(結合ELISA)、CD28.3 Fabと比較したhCD28.3 Fabフラグメントの結合活性を分析するために、カーボネートバッファー 0.05M pH 9.2中の2μg/mlのヒトCD28/Fcキメラ(R&D Systems, Abingdon, United Kingdom)を用いて、マイクロタイタープレート(Nunc Immunoplates)のウェル(50μL/ウェル)を一晩4℃でコーティングした。これらの固定化されたCD28標的分子は、抗CD28活性を有する免疫反応性分子だけに結合する。
次いで、ウェルを200μLのPBS-0.05% Tweenを用いて連続的に3回洗浄し、100μLのPBS Tween 0.1% BSA 1%を用いて2時間37℃で飽和させた。
【0045】
次いで、200μLのPBS-0.05% Tweenを用いて3回洗浄後、既知濃度のCD28.3又はhCD28.3 Fabフラグメントを含む上清を、PBS-0.1% Tween中に種々の希釈度で加え(50μL/ウェル)、2時間37℃でインキュベートした。200μLのPBS-0.05% Tweenを用いて3回洗浄後、ヒトIgGのκ鎖を指向するマウスモノクローナル抗体(希釈度 1/10000)を加え(1時間、37℃)、ペルオキシダーゼ結合ヤギ抗マウス抗体(希釈度 1/2000)を加え、TMB基質を用いて比色法により明らかにし、405 nmで読み出した。
【0046】
次いで、結果を、結合ELISAを用いて測定した吸光(Y軸)として、サンドイッチELISAを用いて測定したFab濃度(X軸)に対してプロットする。結合アッセイにおいて最大の光学密度(OD)の50%に達するために必要とされる抗CD28 Fabの濃度として、線形領域における曲線の傾きを算出した後、AC50(抗体濃度50)を決定する。
【0047】
結果を図3及び表Iに示す。
図3Aは、結合ELISAにおける漸増濃度のFR104、hCD28.3 Fab又はCD28.3 Fabの405 nmでの光学密度を示す。
図3Bは、比較値AC50の決定を可能にする回帰曲線の算出結果を示す。
下記の表Iに、標準FR104、並びにFabフラグメントVH-野生型+VL-野生型及びFab hCD28.3についてのOD50、等式及びAC50を纏める。
【0048】
【表1】

【0049】
これらの結果は、FabフラグメントVH-野生型+VL-野生型(CD28.3 Fab)及びhCD28.3 Fabについて同様の濃度でCD28に対する結合活性の50%に達し得ることを示す。標準についての濃度は、おそらくそれがアッセイ前に精製されるためにわずかに低い。よって、hCD28.3は、CD28の野生型VH及びVL配列のCD28結合特性を保持する。
【0050】
実施例3:短縮型γ1ヒンジ及びγ4 CH2-CH3ドメインを有するhCD28.3一価抗体(Fv-Fcフラグメント)の構築及び真核発現
重鎖:
ヒトIgG1のヒンジ領域の一部をコードする配列(配列番号8)、ヒトIgG4のCH2-CH3ドメイン(NCBIアクセッション番号 BC025985の配列のヌクレオチド787〜1440)とC末端側で融合し、天然のマウスCD28.3抗体の重鎖のリーダーペプチドをコードする配列をN末端の位置に有する、hCD28.3のVH領域をコードする配列(配列番号1)を化学的に合成し、増幅のために、クローニングベクターpMA (Geneart)に導入した。次いで、配列をNheI/EcoRI制限酵素を用いて消化により切り出し、プラスミドpCIneo (Promega)のNheI/EcoRIサイトにサブクローニングした。E.コリ細胞のトランスフォーメーション後、陽性クローンを増幅し、抽出したプラスミドをMidiprep-endotoxin freeカラム(Macherey-Nagel)により精製した。
【0051】
得られたプラスミドをpSignal-hVH-shorthingeγ1-hγ4CH2-CH3と呼ぶ。それは、CD28.3の重鎖のシグナルペプチドをコードする配列とヒトγ1ヒンジ領域の一部をコードする配列及びヒトγ4CH2-CH3ドメインの配列との間にhCD28.3のVH領域をコードする配列を含む構築物を含む。この構築物のヌクレオチド及びアミノ酸配列を図4に示す。また、それらは、同封される配列表において、配列番号9及び配列番号10と表される。
【0052】
軽鎖:
ヒトIgG1のヒンジ領域の一部をコードする配列(配列番号8)、ヒトIgG4のCH2-CH3ドメイン(NCBIアクセッション番号 BC025985の配列のヌクレオチド787〜1440)と融合し、天然のマウスCD28.3抗体の重鎖のリーダーペプチドをコードする配列をN末端の位置に有する、hCD28.3のVL領域をコードする配列(配列番号2)を化学的に合成し、増幅のために、クローニングベクターpMA (Geneart)に導入した。次いで、配列をNheI/EcoRI制限酵素を用いて消化により切り出し、プラスミドpCINeo (Promega)のNheI/EcoRIサイトにサブクローニングした。E.コリ細胞のトランスフォーメーション後、陽性クローンを増幅し、抽出したプラスミドをMidiprep-endotoxin freeカラム(Macherey-Nagel)により精製した。
【0053】
得られたプラスミドをpSignal-hVL-shorthingeγ1-hγ4CH2-CH3と呼ぶ。それは、CD28.3の軽鎖のシグナルペプチドをコードする配列とヒトγ1領域の一部をコードする配列及びヒトγ4 CH2-CH3ドメインの配列との間にhCD28.3のVL領域をコードする配列を含む構築物を含む。この構築物のヌクレオチド及びアミノ酸配列を図5に示す。また、それらは、同封される配列表において、配列番号11及び配列番号12と表される。
【0054】
真核発現
COS細胞を、(各々が)1μgのpSignal-hVL-shorthingeγ1-hγ4CH2-CH3及びpSignal-hVH-shorthingeγ1-hγ4CH2-CH3で、Lipofectamineリポフェクションキット(Invitrogen)を用いて、製造業者の説明書に従ってコトランスフェクトした。培養物を3日間37℃で維持し、その後細胞上清を回収した。一価抗体の活性は、以下の実施例5に記載されるようにして、ELISAにより直接上清中において評価した。
【0055】
実施例4:完全長γ1ヒンジ及びγ4 CH2-CH3ドメインを有するhCD28.3一価抗体(Fv-Fcフラグメント)の構築及び真核発現
重鎖:
ヒトIgG1の完全長ヒンジ領域をコードする配列(配列番号7)、ヒトIgG4のCH2-CH3ドメイン(NCBIアクセッション番号 BC025985の配列のヌクレオチド787〜1440)とC末端側で融合し、天然のマウスCD28.3抗体の重鎖のリーダーペプチドをコードする配列をN末端の位置に有する、hCD28.3のVH領域をコードする配列(配列番号1)を化学的に合成し、増幅のために、クローニングベクターpMA (Geneart)に導入した。次いで、配列をNheI/EcoRI制限酵素を用いて消化により切り出し、プラスミドpCIneo (Promega)のNheI/EcoRIサイトにサブクローニングした。E.コリ細胞のトランスフォーメーション後、陽性クローンを増幅し、抽出したプラスミドをMidiprep-endotoxin freeカラム(Macherey-Nagel)により精製した。
【0056】
得られたプラスミドをpSignal-hVH-fullhingeγ1-hγ4CH2-CH3と呼ぶ。それは、CD28.3の重鎖のシグナルペプチドをコードする配列とヒトγ1ヒンジ領域及びヒトγ4 CH2-CH3ドメインをコードする配列との間にhCD28.3のVH領域をコードする配列を含む構築物を含む。この構築物のヌクレオチド及びアミノ酸配列を図6に示す。また、それらは、同封される配列表において、配列番号13及び配列番号14と表される。
【0057】
軽鎖:
ヒトIgG1の完全長ヒンジ領域をコードする配列(配列番号7)、ヒトIgG4のCH2-CH3ドメイン(NCBIアクセッション番号 BC025985の配列のヌクレオチド787〜1440)と融合し、天然のマウスCD28.3抗体の重鎖のリーダーペプチドをコードする配列をN末端の位置に有する、hCD28.3のVL領域をコードする配列(配列番号2)を化学的に合成し、増幅のために、クローニングベクターpMA (Geneart)に導入した。次いで、配列をNheI/EcoRI制限酵素を用いて消化により切り出し、プラスミドpCIneo (Promega)のNheI/EcoRIサイトにサブクローニングした。E.コリ細胞のトランスフォーメーション後、陽性クローンを増幅し、抽出したプラスミドをMidiprep-endotoxin freeカラム(Macherey-Nagel)により精製した。
【0058】
得られたプラスミドをpSignal-hVL-fullhingeγ1-hγ4CH2-CH3と呼ぶ。それは、CD28.3の軽鎖のシグナルペプチドをコードする配列とヒトγ1の完全長ヒンジ領域をコードする配列及びヒトγ4-CH2-CH3ドメインの配列との間にhCD28.3のVL領域をコードする配列を含む構築物を含む。この構築物のヌクレオチド及びアミノ酸配列を図7に示す。また、それらは、同封される配列表において、配列番号15及び配列番号16と表される。
【0059】
真核発現
COS細胞を、(各々が)1μgのpSignal-hVH-fullhingeγ1-hγ4CH2-CH3及びpSignal-hVL-fullhingeγ1-hγ4CH2-CH3で、Lipofectamineリポフェクションキット(Invitrogen)を用いて、製造業者の説明書に従ってコトランスフェクトした。培養物を3日間37℃で維持し、その後細胞上清を回収した。
hCD28.3一価抗体の活性は、以下の実施例5に記載されるようにして、ELISAにより直接上清中において評価した。
【0060】
実施例5:ELISAによるhCD28.3-完全長γ1ヒンジ-γ4CH2-CH3ドメイン及びhCD28.3-短縮型γ1ヒンジ-γ4CH2-CH3ドメイン一価抗体の結合活性の評価
トランスフェクトされたCOS細胞により産生されたhCD28.3一価抗体であるhCD28.3-完全γ1ヒンジ-γ4CH2-CH3ドメイン及びhCD28.3-短縮型γ1ヒンジ-γ4CH2-CH3ドメインの結合特性を、2つのELISAアッセイを用いて分析した。
【0061】
*第1に(サンドイッチELISA)、トランスフェクトされたCOS細胞の培地上清中のhCD28.3一価抗体の濃度を、サンドイッチELISAを用いて測定した。簡潔には、上清中に含まれる一価抗体をまずヒトIgGを指向するヤギポリクローナル抗体により捕捉する。捕捉したタンパク質を、次いでビオチン化されたFc特異的ヤギポリクローナル抗ヒトIgG抗体、続いてペルオキシダーゼ結合ストレプトアビジンを用いて明らかにする。結合した抗体は、TMB基質を用いて比色法により明らかにし、405 nmで読み出した。
【0062】
種々の上清希釈度に対応するODを、次いで、トランスフォームされたCHO細胞の培地上清からクロマトグラフィの標準的技術を用いて精製され、BCA(ビシンコニン酸)アッセイで定量した既知量のhCD28.3一価抗体を用いて得られた標準曲線と比較する。
【0063】
*第2に(結合ELISA)、hCD28.3一価抗体の結合活性を分析するために、カーボネートバッファー 0.05M pH 9.2中の2μg/mlのヒトCD28/Fcキメラ(R&D Systems, Abingdon, United Kingdom)を用いて、マイクロタイタープレート(Nunc Immunoplates)のウェル(50μL/ウェル)を一晩4℃でコーティングした。これらの固定化されたCD28標的分子は、抗CD28活性を有する免疫反応性分子だけに結合する。
次いで、ウェルを200μLのPBS-0.05% Tweenを用いて連続的に3回洗浄し、100μLのPBS Tween 0.1% BSA 1%を用いて2時間37℃で飽和させた。
【0064】
次いで、200μLのPBS-0.05% Tweenを用いて3回洗浄後、既知濃度の分析される一価抗体を含む上清を、PBS-0.1% Tween中に種々の希釈度で加え(50μL/ウェル)、2時間37℃でインキュベートした。200μLのPBS-0.05% Tweenを用いて3回洗浄後、(天然のCD28.3の重鎖及び軽鎖可変ドメインを含む単鎖Fvを用いるウサギの免疫後に得られ、CD28.3 Fab-セファロースに対する免疫吸着により精製された)CD28.3の重鎖及び軽鎖可変ドメインに特異的なウサギポリクローナル抗血清を加えた(希釈度 1/500;1時間、37℃)。これに続いて、ペルオキシダーゼ結合ロバ抗ウサギ抗体(希釈度 1/2000)、続いてTMB基質を用いる比色法により明らかにし、405 nmで読み出した。
【0065】
次いで、結果を、結合ELISAを用いて測定した吸収(Y軸)として、サンドイッチELISAを用いて測定した一価抗体濃度(X軸)に対してプロットする。結合アッセイにおいて最大の光学密度(OD)の50%に達するために必要とされる一価抗体の濃度として、線形領域における曲線の傾きを算出した後、AC50(抗体濃度50)を決定する。
【0066】
図8は、結合ELISAにおいて、hCD28.3-完全IgG1ヒンジ-IgG4CH2-CH3ドメイン一価抗体の結合活性をhCD28.3-短縮型IgG1ヒンジ-IgG4CH2-CH3ドメイン一価抗体の結合活性と比較している(図8A)。
図8Bに、一価抗体についての等式、回帰係数(regression factor)及びAC50を纏める。
【0067】
これらの結果は、CD28に対する結合活性の50%がhCD28.3-完全γ1ヒンジ-γ4CH2-CH3ドメイン又はhCD28.3-短縮型γ1ヒンジ-γ4CH2-CH3ドメインの一価抗体に類似する濃度に達し得ることを示す。
【0068】
実施例6:hCD28.3一価抗体はT細胞活性化を妨害する
hCD28.3一価抗体がCD28依存的T細胞活性化をブロックすることを確かめるために、Raji B細胞系により提示されるSEEスーパー抗原でヒトT細胞(Jurkat細胞)を刺激した。エンドトキシンであるSEEは、クラスII陽性B細胞リンパ芽球様Raji系に提示されるとき、Vβ8を発現するT細胞Jurkat系を活性化してIL-2を分泌する(Hermanら、1990, J. Exp. Med. 172:709)。Jurkat細胞が高レベルのCD28を発現し、Raji細胞がCD80/86を発現するので、この反応は部分的にCD28依存的である。このアッセイにおいて、ELISA (ELISA MaxTM Set Deluxe Human IL-2 Kit; Biolegend #431805)により、48時間後、漸増濃度のhVH/VL CD28.3-短縮型γ1ヒンジ-γ4CH2-CH3ドメインの存在下にインターロイキン-2の合成を測定した。
結果を図9に示す。それらは、hCD28.3一価抗体が用量依存的様式でT細胞によるIL-2合成を減少させることを明らかにする。
【0069】
実施例7:PEG化されたhCD28.3一価抗体の製造
実施例1に記載されるようにして製造されたhCD28.3 Fabフラグメントを、還元及びPEG化の標準的な条件を用いて、マレイミドで活性化された40 KDaのPEGでPEG化した。
【0070】
簡潔には、Fab抗体フラグメントを1mg/mLに濃縮し、次いで20 mMリン酸ナトリウム、2mM EDTA、pH 7.0に対してダイアフィルトレーションした。次いで、Fab'抗体フラグメントを、塩化システアミンをモル当量比=30:1で室温にて加えることにより還元した。5時間後、溶液を脱塩カラムにアプライした。ポリエチレングリコール(PEG) (Sunbright GL2 400MA, NOF Corporation)を20 mM ホスフェート、2mM EDTA, pH 7.0中に溶解し、9%(w/w)の溶液を得た。脱塩したFab溶液及びPEGをモル当量比=1:1.5で混合し、周囲温度にて3時間インキュベートした。PEG化の後に、Fab-pegを、クロマトグラフィによりSPセファロースHP媒体を用いて精製した。標的タンパク質を0〜1M NaClの塩勾配で溶出した。溶出したピークをSDS-Pageにより分析した。ピーク1はモノPEG化された物質を、ピーク2はPEG化されていない物質を、ピーク3はポリPEG化された物質を表した。
【0071】
結果を図10に示す。
これらの結果は、CD28.3 mAbからのFabタンパク質の大部分が、わずか約5%のモノPEG化されたFab収率をもたらす乱されたPEG化プロフィールを表すことを示す(ピーク1)。
【0072】
CD28.3 mAbは、鎖内又は鎖間ジスルフィドブリッジに携わらないシステイン残基(C96)を可変ドメイン軽鎖の96位に含む。フリーなシステインは、ジスルフィドブリッジに携わるシステイン残基よりも高い反応性を有し、したがって、優先的にマレイミドで活性化されたPEGの標的となる。したがって、第2の望まれないPEG化がこの残基で起こる蓋然性が高い。
【0073】
この問題を解決するため、本発明者らは、VL-C96変異の研究を行い、C96残基を別のアミノ酸により抗体の結合特性を改変することなく置換することが可能かどうか判定した。
【0074】
軽鎖中に改変されていないC96を有するか、又はC96からのA、G、S、V、T、N若しくはR変異を有するヒト化抗CD28.3 Fabをコードするプラスミドを構築し、実施例1に開示されるようにして、リポフェクションによりCos細胞にトランスフェクトした。細胞上清をまずサンドイッチELISAにより分析し、実施例2に開示されるようにして、Fabの全濃度を測定した。次いで、上清をELISAにより分析し、実施例2に開示されるようにして、固定化された組換えCD28に対する結合活性を測定した。
【0075】
結果を図11に示す。これらの結果は、分析された全ての他の置換とは異なって、C96A置換が十分に活性な抗体をもたらしたこと及びC96N置換が活性の穏やかな減少だけをもたらしたことを示す。
【0076】
C96A FabフラグメントのバリアントをPEG化し、上記のクロマトグラフィで精製した。PEG化されたタンパク質のプレクロマトグラフィ及び溶出ピークは、SDS-Pageにより分析した。結果を図12に示す。ピーク1は、モノPEG化された物質を表す。
これらの結果は、C96A Fabフラグメントが41%に達する効率でPEG化され得ることを示す(図12)。
【0077】
重鎖のCAA C末端の利点
フリーなシステインのすぐ近くの分子環境は、システインのマレイミド-PEG化しやすさを改変し、したがって、PEG化反応率を改変する可能性がある。C末端側システインについて1つの可能な選択肢は、重鎖の最後のアミノ酸となることである。別の選択肢は、最後のシステインの後のC末端側の位置に「スタッフアミノ酸」を付加することである。したがって、重鎖の最後のアミノ酸である最後のC末端システインを有するヒト化CD28.3 MabのC96Aバリアント(Cバリアント)からのFab'分子のPEG化効率(データは図12に示す)を、最後のC末端システインの後に2つのアラニンを有する類似の分子(CAAバリアント)と比較した。本発明者らのデータは、CAAバリアントが20%高い効率でPEG化され得ることを明確かつ再現可能に証明した(図13)。実際、C96A-Cバリアントについて41%だったPEG化率は、C96A-CAAバリアントについては52%に達した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)−以下の配列により定義される第1の可変ドメイン(ここで、「重鎖可変ドメイン」とも定義される):
【化1】

(ここで、前記可変ドメインは、任意にN末端にQ残基をさらに含んでいてもよい);
−以下の配列により定義される第2の可変ドメイン(ここで、「軽鎖可変ドメイン」とも定義される):
【化2】

(ここで、X=C、A又はN):
からなるCD28結合部位を有する抗体
b)−配列番号1の可変ドメインのCDRを有する第1の可変ドメイン;
−配列番号2の可変ドメインのCDRを有する第2の可変ドメイン:
からなるCD28結合部位を有する抗体
から選択されることを特徴とする抗CD28抗体。
【請求項2】
一価抗体である請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
−配列番号4のアミノ酸21〜251の配列を有する第1のタンパク質の鎖
−配列番号6のアミノ酸21〜234の配列を有する第2のタンパク質の鎖
のヘテロ二量体である請求項2に記載の一価抗体。
【請求項4】
−N末端からC末端までが、
*請求項1に記載の抗体の重鎖可変ドメインである領域A;
*ペプチドリンカー並びにIgGイムノグロブリンのCH2及びCH3ドメインからなる領域B;
から本質的になる第1のタンパク質の鎖:
−N末端からC末端までが、
*請求項1に記載の抗体の軽鎖可変ドメインである領域A';
*第1のポリペプチドの領域Bと同一の領域B;
から本質的になる第2のタンパク質の鎖:
のヘテロ二量体である請求項2に記載の一価抗体。
【請求項5】
ペプチドリンカーが、
−EPKSCDKTHTCPPCP(配列番号3)の配列を有するヒトIgG1イムノグロブリンのヒンジ領域;
−DKTHTCPPCP(配列番号4)の配列を有するヒトIgG1イムノグロブリンのヒンジ領域:
から選択される請求項4に記載の一価抗体。
【請求項6】
CH2及びCH3ドメインが、IgG4サブクラスのイムノグロブリンのものである請求項4又は5に記載の一価抗体。
【請求項7】
−第1のタンパク質の鎖のポリペプチド配列が配列番号10のアミノ酸21〜368の配列であり、第2のタンパク質の鎖のポリペプチド配列が配列番号12のアミノ酸21〜355の配列である一価抗体;
−第1のタンパク質の鎖のポリペプチド配列が配列番号14のアミノ酸21〜373の配列であり、第2のタンパク質の鎖のポリペプチド配列が配列番号16のアミノ酸21〜360の配列である一価抗体:
から選択される請求項6に記載の一価抗体。
【請求項8】
第2のタンパク質の鎖が、Xがアラニン又はアスパラギン残基を表す配列番号2の可変ドメインを含む請求項3に記載の一価抗体。
【請求項9】
a)配列番号1のCDRを有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
b)配列番号2のCDRを有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
c)請求項1〜8のいずれか1項に記載の抗体をコードするポリヌクレオチド:
から選択されるポリヌクレオチド。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の抗体を含む治療用組成物。
【請求項11】
移植拒絶、慢性同種異系移植血管症、移植片対宿主病、Tリンパ球媒介性自己免疫疾患、高血圧、アレルギー現象及び慢性炎症性疾患からなる群より選択される病的状態を治療するための請求項1〜8のいずれか1項に記載の抗体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図11】
image rotate

【図3】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公表番号】特表2013−519389(P2013−519389A)
【公表日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−553431(P2012−553431)
【出願日】平成23年2月16日(2011.2.16)
【国際出願番号】PCT/IB2011/050646
【国際公開番号】WO2011/101791
【国際公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(511170892)
【氏名又は名称原語表記】EFFIMUNE
【住所又は居所原語表記】Faculte de Medecine, 1 rue Gaston Veil, F−44035 Nantes Cedex, FRANCE
【出願人】(591100596)アンスティチュ ナショナル ドゥ ラ サンテ エ ドゥ ラ ルシェルシュ メディカル (59)
【Fターム(参考)】