説明

抗CD33抗体、及びそれを用いた急性骨髄性白血病の治療方法

本発明は、CD33と結合する抗体に関するものである。より詳細には、本発明は、抗CD33抗体、前記抗体のフラグメント及びホモログ、前記抗体のヒト化及び表面再構築化型、前記抗体の機能的等価物及び改良型、免疫複合体、及び前記抗体を含む組成物、ならびに、診断、研究及び治療への適用におけるそれらの使用に関するものである。本発明はまた、該抗体をコードするポリヌクレオチド、ポリヌクレオチドを含むベクター、該ポリヌクレオチドを用いて形質転換された宿主細胞、及び抗体の産生方法に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[01] 本出願は、2002年11月7日に出願された仮出願番号60/424,332の利益を請求し、その開示を、本明細書において参照によって援用する。
【0002】
発明の属する技術分野
[02] 本発明は、CD33に結合する抗体に関するものである。より詳細には、本発明は、抗CD33抗体、前記抗体のフラグメント及びホモログ、前記抗体のヒト化型及び表面再構築化型、前記抗体の機能的等価物及び改良型、免疫複合体、及び前記抗体を含む組成物、ならびに、診断、研究及び治療への応用にそれらを用いることに関するものである。
【0003】
[03] 別の側面において、本発明は、該抗体をコードするポリヌクレオチド、該ポリヌクレオチドを含むベクター、該ポリヌクレオチドで形質転換された宿主細胞、及び該抗体の産生方法に関するものである。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
[04] 白血球の分化抗原CD33は、ミエリンに関連する糖タンパク質及びCD22を含むシアロアドヘシンファミリーのメンバー、ならびにシアロアドヘシン自体と配列相同性を有する、364アミノ酸の膜貫通型糖タンパク質である(S.Peiper,2002年、Leucocyte Typing VII,White Cell Differentiation,Antigens,Proceedings of the Seventh International Workshop and Conference,オックスフォード大学プレス、777ページ)。
【0005】
[05] CD33の発現は、造血区画に非常に特異的であるようにみえ、骨髄前駆細胞よる強い発現を伴う(S.Peiper,2002年)。これは、成熟及び分化すると発現は低減するが、CFU−GEMM、CFU−GM、CFU−G及びBFU−Eなどの骨髄前駆細胞、単球/マクロファージ、前骨髄球及び骨髄球などの顆粒球前駆体、ならびに、発現レベルは低いが、成熟顆粒球によって、発現される(S.Peiper,2002年)。
【0006】
[06] 対照的に、in vitroにて「芽球コロニー」を生じさせる多能性造血幹細胞(Leary,A.G.ら、1987年、Blood 69:953)及び造血性長期髄培養物を誘導する多能性造血幹細胞(Andrews R.G.ら、1989年、J.Exp.Med.169:1721;Sutherland,H.J.ら、1989年、Blood 74:1563)は、CD33の発現を欠くようにみえる。
【0007】
[07] CD33の具体的な機能は不明であるが、そのシアロアドヘシンとの相同性は、レクチンファミリーの糖結合特性における役割を示唆し、役割は後に確認された(S.Peiper,2002年)。
【0008】
[08] 重要なことには、抗CD33モノクローナル抗体は、クローン原性の急性骨髄性白血病(AML)細胞が、ヒト症例の80%超においてCD33を発現することを示した(LaRussa,V.F.ら、1992年、Exp.Hematol.20:442−448)。
【0009】
[09] CD33を選択的に発現することから、AML細胞の選択的ターゲティングに、細胞毒性薬物を、CD33を特異的に認識しそして結合するモノクローナル抗体と組み合わせた免疫複合体を用いることが提案されている。このような治療には、幹細胞及び初期造血前駆体を影響を受けないままにすることが期待される。抗CD33抗体を利用する免疫複合体には、AML細胞に非常に致死的であるが(Roy,D.C.ら、1991年、Blood 77:2404;Lambert,J.M.ら、1991年、Biochemistry 30:3234)正常な造血及び造血再形成を支持する幹細胞は残す(LaRussa,V.F.ら、1992年、Exp.Hematol.20:442−448)ことが示されている、抗CD33−リシン免疫複合体が含まれる。
【0010】
[10] 免疫複合体を用いた追加の試験は、静脈内投与した場合に、放射性標識抗CD33抗体の末梢血及び髄の中の白血病芽細胞に対する迅速なターゲティングを示した(Scheinberg,D.A.ら、1991年、J.Clin.Oncol.9:478−490;Schwartz,M.A.ら、1993年、J.Clin.Oncol.11:294−303)。標的細胞による抗体の迅速なインターナリゼーションは、in vitro試験においても認められた(Tanimot,Mら、1989年、Leukemia 3:339−348;Divgi,C.R.ら、1989年、Cancer Res.Suppl.Vol.30:404a)。強力な抗腫瘍抗生物質であるカリケアマイシンと結合したヒト化抗CD33抗体(ゲムツズマブ・オゾガマイシン)の前臨床試験における評価は、HL−60細胞培養物、マウスにおけるHL−60腫瘍異種移植片、及びAML患者由来の髄試料において、白血病細胞の特異的な死滅を示した(Hamann,P.R.ら、2002年、Bioconjugate Chem.13:47−58)。
【0011】
[11] これら前臨床試験の正の結果に基づき、ゲムツズマブ・オゾガマイシンを、第I及びII相臨床試験において評価した。第I相試験において、認められた主な毒性は、骨髄前駆細胞上にCD33が発現することによる骨髄抑制であった(Sievers,E.L.ら、1999年、Blood 93:3678−3684;Sievers E.L.ら、2001年、J.Clin.Oncol.19:3244−3254)。9mg/mの用量を4時間かけて静脈内注射し14日後に反復した第II相試験は、30%の奏功率をもたらした。ゲムツズマブ・オゾガマイシンの販売承認は、2000年5月に食品医薬品局(FDA)によって認められ、その適応は、60歳かまたはそれより高齢であってそして細胞毒性化学療法の候補であると思われない、CD33陽性AMLを伴う初回再発患者の治療に対するものであった。市販後報告は、重大な毒性、特に静脈閉塞病(VOD)の潜在性を示唆し、添付文書の改訂及び患者のサーベイランスプログラムの開始をもたらした。この毒性の多くは、前臨床モデルにおいて肝毒性を引き起こすことが示された薬物成分カリケアマイシンに関連する可能性があり、それゆえCD33を標的とすることの直接的な結果でない可能性がある。
【0012】
[12] 先に論じた結果は、抗CD33抗体及び細胞毒性薬物を含む免疫複合体が、AMLの治療において用いられることに成功する可能性があることを示唆するが、一方で、安全かつ効果的な免疫複合体の要求がある。本発明は、これら及びその他の重要な結果を対象とする。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0013】
発明の概要
[13] したがって、特異的にCD33に結合しそしてAMLの治療に用いられる可能性のある抗体を提供することが、本発明の目的である。
[14] それゆえに、第一の態様において、CD33への結合能を有する抗体またはそのエピトープ結合フラグメントが提供される。
【0014】
[15] 第二の態様において、ネズミ抗体My9−6が提供され、その軽鎖及び重鎖可変領域双方のアミノ酸配列、軽鎖及び重鎖可変領域の遺伝子のcDNA配列、そのCDR(相補性決定領域)の同定、その表面アミノ酸の同定、及び、組換え型でそれを発現する手段に関して、本明細書において完全に特徴付けられる。
【0015】
[16] 第三の態様において、My9−6抗体またはそのエピトープ結合フラグメントの表面露出残基を、より厳密に公知のヒト抗体表面に類似するように、軽鎖及び重鎖双方において置換した、ヒト化または表面再構築化型My9−6抗体が提供される。このようなヒト化抗体は、ネズミMy9−6と比較して、治療または診断剤としての有用性が増加する可能性がある。抗体My9−6のヒト化型もまた、軽鎖及び重鎖可変領域双方のそれぞれのアミノ酸配列、軽鎖及び重鎖可変領域の遺伝子のDNA配列、CDRの同定、その表面アミノ酸の同定、及び、組換え型でそれらを発現する手段の開示に関して、本明細書において完全に特徴付けられる。
【0016】
[17] さらなる態様において、配列番号1〜6:
SYYIH(配列番号1)、
VIYPGNDDISYNQKFXG(配列番号2)、ここでXはKまたはQである、
EVRLRYFDV(配列番号3)、
KSSQSVFFSSSQKNYLA(配列番号4)、
WASTRES(配列番号5)、
HQYLSSRT(配列番号6)、
からなる群より選択されるアミノ酸配列を有する少なくとも1つの相補性決定領域を含み、そしてCD33への結合能を有する、抗体またはそのエピトープ結合フラグメントが提供される。
【0017】
[18] さらなる態様において、少なくとも1つの重鎖可変領域及び少なくとも1つの軽鎖可変領域を含む、抗体またはそのエピトープ結合フラグメントが提供され、ここで前記重鎖可変領域は、配列番号1〜3:
SYYIH(配列番号1)、
VIYPGNDDISYNQKFXG(配列番号2)、ここでXはKまたはQである、
EVRLRYFDV(配列番号3)、
によってそれぞれ表されるアミノ酸配列を有する3つの相補性決定領域を含み、そして、前記軽鎖可変領域は、配列番号4〜6:
KSSQSVFFSSSQKNYLA(配列番号4)、
WASTRES(配列番号5)、
HQYLSSRT(配列番号6)、
によってそれぞれ表されるアミノ酸配列を有する3つの相補性決定領域を含む。
【0018】
[19] さらなる態様において、配列番号7:
QVQLQQPGAEVVKPGASVKMSCKASGYTFTSYYIHWIKQTPGQGLEWVGVIYPGNDDISYNQKFKGKATLTADKSSTTAYMQLSSLTSEDSAVYYCAREVRLRYFDVWGAGTTVTVSS、
によって表されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を、さらに好ましくは配列番号7と95%の配列同一性を、最も好ましくは配列番号7と100%の配列同一性を共有するアミノ酸配列を有する、重鎖可変領域を有する抗体が提供される。
【0019】
[20] 同様に、配列番号8:
NIMLTQSPSSLAVSAGEKVTMSCKSSQSVFFSSSQKNYLAWYQQIPGQSPKLLIYWASTRESGVPDRFTGSGSGTDFTLTISSVQSEDLAIYYCHQYLSSRTFGGGTKLEIKR、
によって表されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を、さらに好ましくは配列番号8と95%の配列同一性を、最も好ましくは配列番号8と100%の配列同一性を共有するアミノ酸配列を有する、軽鎖可変領域を有する抗体が提供される。
【0020】
[21] さらなる態様において、配列番号9:
QVQLQQPGAEVVKPGASVKMSCKASGYTFTSYYIHWIKQTPGQGLEWVGVIYPGNDDISYNQKFQGKATLTADKSSTTAYMQLSSLTSEDSAVYYCAREVRLRYFDVWGQGTTVTVSS、
によって表されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を、さらに好ましくは配列番号9と95%の配列同一性を、最も好ましくは配列番号9と100%の配列同一性を共有するアミノ酸配列を有する、ヒト化または表面再構築化された重鎖可変領域を有する抗体が提供される。
【0021】
[22] 同様に、配列番号10:
EIVLTQSPGSLAVSPGERVTMSCKSSQSVFFSSSQKNYLAWYQQIPGQSPRLLIYWASTRESGVPDRFTGSGSGTDFTLTISSVQPEDLAIYYCHQYLSSRTFGQGTKLEIKR、
によって表されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を、さらに好ましくは配列番号10と95%の配列同一性を、最も好ましくは配列番号10と100%の配列同一性を共有するアミノ酸配列を有する、ヒト化または表面再構築化された軽鎖可変領域を有する抗体が提供される。
【0022】
[23] さらなる態様において、本発明は、直接的に、または切断可能であるかもしくは切断可能でないリンカーを介して、本発明の抗体またはそのエピトープ結合フラグメントに共有結合した、薬物またはプロドラッグを含む免疫複合体を提供する。好ましい態様において、薬物またはプロドラッグは、メイタンシノイド、タキソイド、CC−1065、CC−1065アナログ、ドラスタチン及びドラスタチンアナログなどの細胞毒性薬物またはプロドラッグである。
【0023】
[24] さらなる態様において、本発明は、本発明の抗体またはそのエピトープ結合フラグメント、ならびに、薬物またはプロドラッグを含む、組成物を提供する。
[25] さらなる態様において、本発明は、1またはそれより多くの医薬的に許容可能な薬剤の存在下で、本発明の抗体、そのエピトープ結合フラグメントまたは免疫複合体を、単独で、あるいは薬物もしくはプロドラッグまたは他の治療剤と組み合わせて含む、医薬組成物を含む。
【0024】
[26] さらなる態様において、本発明は、研究または診断への適用のために標識した抗体またはそのエピトープ結合フラグメントを提供する。好ましい態様において、標識は、ビオチン標識、酵素標識、放射性標識、フルオロフォア、クロモフォア、造影剤または金属イオンである。
【0025】
[27] さらなる態様において、本発明は、本発明の抗体、そのエピトープ結合フラグメントまたは免疫複合体を、単独で、あるいは薬物もしくはプロドラッグまたは他の治療剤と組み合わせ、さらには、単独で、あるいは1またはそれより多くの医薬的に許容可能な薬剤の存在下で用いることを介して、CD33を発現している細胞の増殖を阻害する方法を提供する。
【0026】
[28] さらなる態様において、本発明は、CD33を発現する疾患を有する個体の治療方法を提供し、該方法は、本発明の抗体、そのエピトープ結合フラグメントまたは免疫複合体を、単独で、あるいは別の薬物もしくはプロドラッグまたは別の治療剤と組み合わせ、さらには、単独で、あるいは1またはそれより多くの医薬的に許容可能な薬剤の存在下で投与することを含む。疾患は、例えば、骨髄異形成症候群(MDS)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)及び前骨髄球性白血病(PML)、あるいはCD33を発現することが未だ判定されていない他疾患の、1またはそれより多くであってもよい。
【0027】
[29] 治療方法は、単独で、あるいは薬物もしくはプロドラッグまたは他の治療剤と組み合わせ、さらには、単独で、あるいは1またはそれより多くの医薬的に許容可能な薬剤の存在下において、本発明の抗体、抗体フラグメント及び免疫複合体をin vivo、ex vivo及びin vitroにて適用することを含む。
【0028】
[30] さらなる態様において、生体試料が骨髄性癌細胞を含有するかどうかを判定する方法が提供され、該方法では、生体試料を本発明の標識した抗体またはそのエピトープ結合フラグメントなどの診断試薬と接触させ、そして試料内の試薬の分布を検出する。この方法を、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)及び前骨髄球性白血病(PML)などの癌を診断するのに用いてもよい。
【0029】
[31] さらなる態様において、改良された特性を有する、本発明の抗体またはそのエピトープ結合フラグメントが提供される。例えば、CD33への親和性が改良された抗体またはそのエピトープ結合フラグメントを、動物免疫化、ハイブリドーマ形成、及び特異的性質を備えた抗体の選択という標準的な技術によって、作製してもよい。
【0030】
[32] 改良された抗体を、例えば、オリゴヌクレオチドを介した部位特異的突然変異誘発、カセット突然変異誘発、変異性(error−prone)PCR、DNAシャフリング及び大腸菌(E.coli)突然変異誘発株の使用を介して、本発明の抗体またはそのエピトープ結合フラグメントを親和性成熟させることによって、作製してもよい。
【0031】
[33] さらなる態様において、本発明は、本発明の抗体またはそのエピトープ結合フラグメントをコードするポリヌクレオチド、ポリヌクレオチドを含む組換えベクター、組換えベクターで形質転換された宿主細胞、及び、前記抗体及びそのエピトープ結合フラグメントを前記宿主細胞を培養することによって産生する方法を、提供する。
【0032】
[34] 最終の態様において、本発明は、本発明の抗体及びそのエピトープ結合フラグメントを用いて、CD33を生体物質から得る方法を提供する。
【0033】
発明の詳細な説明
[62] 本発明は、新規ネズミ抗CD33抗体及びこの抗体のヒト化型を提供する。さらに、CD33を特異的に認識しそして結合するネズミ抗CD33抗体またはそのヒト化型のCDRを1またはそれより多く含む抗体を、提供する。
【0034】
[63] ネズミMy9−6抗体
[64] 本発明のネズミ抗CD33抗体を、本明細書では「My9−6]、「ネズミMy9−6」及び「muMy9−6」と様々に表し、軽鎖及び重鎖可変領域の双方の推定生殖系列アミノ酸配列(図10)、軽鎖及び重鎖可変領域の双方のアミノ酸配列(図8A及びB)、CDRの同定(図9)、表面アミノ酸の同定(図13A及びB)、及びそれを組換え型で発現する手段に関して、完全に特徴付ける。
【0035】
[65] My9−6抗体をさらに機能的に特徴付け、そして、CD33陽性のU−937細胞表面のCD33と高い親和性で結合することを示した(図1)。125I−標識My9−6は、U−937細胞に結合し、そして、非標識My9−6及びすでに特徴付けられた抗CD33抗体My9(バイオジェネックス、カタログ番号267M)と、細胞外で競合する。
【0036】
[66] 「可変領域」の語を、本明細書では、抗体間で配列が異なりそして特定の抗体それぞれのその抗原に対する結合性及び特異性に協調する、抗体重鎖及び軽鎖の特定部分を記載するのに用いる。可変性は、通常は、抗体可変領域全体にわたって均等に分布しない。これは、軽鎖及び重鎖可変領域の双方における、相補性決定領域(CDR)または超可変領域と称される可変領域の3つのセグメント内に、典型的には集中する。より高度に保存された可変領域の一部分は、フレームワーク領域と称される。重鎖及び軽鎖の可変領域は、大部分がβ−シートの立体配置を取る4つのフレームワーク領域を含み、各フレームワーク領域は、β−シート構造と連結するループを形成しそして時にはβ−シート構造の一部を形成する、3つのCDRと連結する。各鎖のCDRは、フレームワーク領域によって非常に近接して保持され、そして、もう一方の鎖由来のCDRとともに、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(E.A.Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest,第5版、1991年、米国国立衛生研究所(NIH))。
【0037】
[67] 「定常」領域は、抗体の抗原との結合には直接的に関与しないが、しかし、抗体の抗体依存性細胞毒性への関与などの様々なエフェクター機能を示す。
【0038】
[68] ヒト化My9−6抗体
[69] My9−6のヒト化型を、本明細書では「huMy9−6」及び「ヒト化My9−6」と様々に表し、これもまた調製した。
【0039】
[70] ヒト化の目的は、ネズミ抗体などの異種抗体の免疫原性を、抗体の抗原結合親和性及び特異性を完全に維持しながら、ヒトへ導入する目的で低減させることである。
[71] ヒト化抗体を、表面再構築化及びCDRグラフトなどのいくつかの技術を用いて作出してもよい。本明細書では、表面再構築化の技術は、標的宿主の公知の抗体の表面に類似するように抗体可変領域の非CDR表面を変えるために、分子モデリング、統計解析及び変異誘発の組み合わせを用いる。
【0040】
[72] 抗体の表面再構築化の戦略及び方法、ならびに異宿主内で抗体の免疫原性を低減させる他の方法は、米国特許第5,639,641(Pedersenら)に開示されており、本明細書ではそのすべてを参照によって援用する。簡潔に言えば、好ましい方法において、(1)抗体の重鎖及び軽鎖可変領域プールの位置アラインメントを、一連の重鎖及び軽鎖可変領域フレームワークの表面に曝露する位置を与えるように行い、ここで、すべての可変領域に対するアラインメント位置は少なくとも約98%同一である;(2)一連の重鎖及び軽鎖可変領域フレームワークの表面に露出するアミノ酸残基を、げっ歯類抗体(またはそのフラグメント)について定め;(3)一連のげっ歯類の表面に露出するアミノ酸残基と極めて同一である、一連の重鎖及び軽鎖可変領域フレームワークの表面に露出するアミノ酸残基を同定し;(4)工程(2)において定義した、一連の重鎖及び軽鎖可変領域フレームワークの表面に露出するアミノ酸残基を、げっ歯類抗体の相補性決定領域の任意の残基の任意の原子から5Å以内にある、これらのアミノ酸残基を除いて、工程(3)において定義した、一連の重鎖及び軽鎖可変領域フレームワークの表面に露出するアミノ酸残基で置換し;そして、(5)結合特異性を有するヒト化げっ歯類抗体を作出する。
【0041】
[73] 抗体を、種々の他の技術を用いてヒト化することが可能であり、該技術には、CDRグラフト(EP 0 239 400;WO 91/09967;米国特許第5,530,101;及び5,585,089)、ベニアリングまたは表面再構築化(EP 0 592 106;EP 0 519 596;Padlan E.A.,1991年、Molecular Immunology 28(4/5):489−498;Studnicka G.M.ら、1994年、Protein Engineering 7(6):805−814;Roguska M.A.ら、1994年、PNAS 91:969−973)、及び鎖シャフリング(米国特許第5,565,332)が含まれる。ヒト抗体を、ファージ・ディスプレイ法を含む、当該技術分野において公知の種々の方法によって作製することが可能である。米国特許第4,444,887、4,716,111、5,545,806及び5,814,318;及び、国際特許出願公開番号WO 98/46645、WO 98/50433、WO 98/24893、WO 98/16654、WO 96/34096、WO 96/33735、及びWO 91/10741もまた、参照されたい(前記参考文献は、そのすべてを参照によって援用する)。
【0042】
[74] 本明細書においてさらに記載されるように、My9−6のCDRをモデリングによって同定し、そしてその分子構造を予測した。次いで、ヒト化My9−6抗体を作製し、そして完全に特徴付けた。いくつかのhuMy9−6抗体の軽鎖及び重鎖のアミノ酸配列を、図16A及び16Bに示す。ネズミ及びヒト化My9−6抗体の結合値の比較を、図17に提供する。抗体の結合曲線を、図18に示す。
【0043】
[75] My9−6抗体のエピトープ結合フラグメント
[76] ネズミMy9−6抗体及びヒト化My9−6抗体のエピトープ結合フラグメントについて、本明細書では、ネズミMy9−6抗体及びそのヒト化型とは別々に論じるが、本発明の「抗体(単数形)」または「抗体(複数形)」の語は、完全長のmuMy9−6及びhuMy9−6抗体の双方ならびにこれらの抗体のエピトープ結合フラグメントを含んでもよいことが、理解される。
【0044】
[77] 本明細書では、「抗体フラグメント」は、一般に「エピトープ結合フラグメント」と称される、CD33への結合能を保持する抗体の任意の一部分を含む。抗体フラグメントの例には、好ましくは、非限定的に、Fab、Fab’及びF(ab’)、Fd、一本鎖Fvs(scFv)、一本鎖抗体、ジスルフィドで連結されたFvs(sdFv)、及びVまたはVドメインのいずれかを含むフラグメントが含まれる。一本鎖抗体を含む、エピトープ結合フラグメントは、可変領域(単数形もしくは複数形)を、単独で、あるいは以下:ヒンジ領域、C1、C2及びC3ドメインの全体または一部分と組み合わせて含んでもよい。
【0045】
[78] このようなフラグメントは、片方もしくは両方のFabフラグメントまたはF(ab’)フラグメントを含有してもよい。3、4または5つのCDRなど、このような領域をすべてよりも少なく含有するフラグメントもまた機能的ではあるが、好ましくは、抗体フラグメントは、抗体全体のすべての6つのCDRを含有する。さらには、機能的等価物は、以下の免疫グロブリンクラス:IgG、IgM、IgA、IgDまたはIgE、及びそのサブクラスのいずれか一つのメンバーであってもよいか、あるいは組み合わせてもよい。
【0046】
[79] Fab及びF(ab’)フラグメントを、パパイン(Fabフラグメント)またはペプシン(F(ab’)フラグメント)などの酵素を用いて、タンパク質分解性切断によって作出してもよい。
【0047】
[80] 一本鎖FV(scFv)フラグメントは、抗体軽鎖可変領域(V)の少なくとも1つのフラグメントと連結した、抗体重鎖可変領域(V)の少なくとも1つのフラグメントを含有する、エピトープ結合フラグメントである。リンカーは、それらが一本鎖抗体フラグメントの由来する抗体全体の標的分子結合特異性を維持するように連結すると、(V)または(V)領域の適切な三次元の折り畳み構造が生じることを確実にするように選択された、短くフレキシブルなペプチドであってもよい。(V)または(V)配列のカルボキシル末端を、相補的な(V)または(V)配列のアミノ酸末端と、リンカーで共有結合させてもよい。一本鎖抗体フラグメントを、分子クローニング、抗体ファージディスプレイライブラリーまたは当業者に周知の同様な技術によって、作製してもよい。これらのタンパク質を、例えば、真核細胞、または細菌を含む原核細胞において産生してもよい。
【0048】
[81] 本発明のエピトープ結合フラグメントもまた、当該技術分野において公知の種々のファージディスプレイ法を用いて作製してよい。ファージディスプレイ法において、機能的な抗体ドメインを、それらをコードするポリヌクレオチド配列を保有するファージ粒子の表面に提示する。特に、このようなファージを、レパートリーまたはコンビナトリアル抗体ライブラリ(例えば、ヒトまたはネズミ)から発現させたエピトープ結合ドメインを提示するのに利用することが可能である。目的の抗原と結合するエピトープ結合ドメインを発現しているファージを、抗原を用いて、例えば、標識CD33、または固体表面もしくはビーズに結合もしくは捕捉されたCD33を用いて、選択または同定することが可能である。これらの方法において用いるファージは、典型的には、ファージ遺伝子IIIまたは遺伝子VIIIタンパク質のいずれかと組換え技術により融合させた、Fab、Fvまたはジスルフィドで安定化したFv抗体ドメインとともにファージから発現する、fd及びM13結合ドメインを含む、繊維状ファージである。
【0049】
[82] 本発明のエピトープ結合フラグメントを作製するのに用いることが可能なファージディスプレイ法の例には、Brinkmanら、1995年、J.Immunol.Methods 182:41−50;Amesら、1995年、J.Immunol.Methods 184:177−186;Kettleboroughら、1994年、Eur.J.Immunol.24:952−958;Persicら、1997年、Gene 187:9−18;Burtonら、1994年、Advances in Immunology 57:191−280;PCT出願第PCT/GB91/01134;PCT公開WO 90/02809;WO 91/10737;WO 92/01047;WO 92/18619;WO 93/11236;WO 95/15982;WO 95/20401;及び、米国特許第5,698,426;5,223,409;5,403,484;5,580,717;5,427,908;5,750,753;5,821,047;5,571,698;5,427,908;5,516,637;5,780,225;5,658,727;5,733,743及び5,969,108において開示されたものが含まれ;そのそれぞれは、本明細書においてそのすべてを参照によって援用する。
【0050】
[83] ファージを選択した後、フラグメントをコードするファージの領域を単離し、そしてエピトープ結合フラグメントを、例えば以下に詳細に記載するような組換えDNA技術を用いて、哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞、酵母及び細菌を含む、選択した宿主における発現を介して作製するのに用いることが可能である。例えば、Fab、Fab’及びF(ab’)フラグメントを組換え技術により作出する技術もまた、PCT公開WO 92/22324;Mullinaxら、1992年、BioTechniques 12(6):864−869;Sawaiら、1995年、AJRI 34:26−34;及び、Betterら、1988年、Science 240:1041−1043において開示されたものなどの、当該技術分野において公知の方法を用いて使用することが可能であり;前記参考文献は、そのすべてを参照によって援用する。一本鎖Fvおよび抗体を産生するために用いることができる技術の例には、米国特許第4,946,778および5,258,498;Hustonら、1991年、Methods in Enzymology 203:46−88;Shuら、1993年、PNAS 90:7995−7999;Skerraら、1988年、Science 240:1038−1040;に記載のものが含まれる。
【0051】
[84] 機能的等価物
[85] My9−6抗体及びヒト化My9−6抗体の機能的等価物もまた、本発明の範囲内に含まれる。「機能的等価物」の語には、例えば各機能的等価物がそのCD33への結合能によって定義される、相同配列を有する抗体、キメラ抗体、修飾抗体及び人工抗体が含まれる。当業者は、「抗体フラグメント」と称される分子群及び「機能的等価物」と称される群に重複があることを、理解するであろう。
【0052】
[86] 相同配列を有する抗体とは、本発明のネズミMy9−6及びヒト化My9−6抗体のアミノ酸配列と配列同一性または相同性を有するアミノ酸配列を有する、これらの抗体である。好ましくは、同一性は、本発明のネズミMy9−6及びヒト化My9−6抗体の可変領域のアミノ酸配列とである。本明細書においてアミノ酸配列に適用されるような「配列同一性」及び「配列相同性」を、例えばPearson及びLipman、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85,2444−2448(1988年)にしたがったFASTA検索法によって決定されるように、別のアミノ酸配列と、少なくとも約90%、91%、92%、93%または94%の配列同一性を、さらに好ましくは少なくとも約95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有する配列として、定義する。
【0053】
[87] 本明細書では、キメラ抗体とは、抗体の異なる一部分が異なる動物種に由来する抗体である。例えば、ヒト免疫グロブリン定常領域と組にして、ネズミモノクローナル抗体由来の可変領域を有する抗体である。キメラ抗体を作出する方法は、当該分野において公知である。例えば、Morrison,1985年、Science 229:1202;Oiら、1986年、BioTechniques 4:214;Gilliesら、1989年、J.Immunol.Methods 125:191−202;米国特許第5,807,715;4,816,567;及び、4,816,397を参照されたく、そのすべてを本明細書では参照によって援用する。
【0054】
[88] 人工抗体には、scFvフラグメント、二重特異性抗体、三重特異性抗体、四重特異性抗体及びmruが含まれ(Winter,G.及びMilstein,C.、1991年、Nature 349:293−299;Hudson,P.J.,1999年、Current Opinion in Immunology 11:548−557による総説を参照されたい)、そのそれぞれは抗原結合能を有する。一本鎖Fvフラグメント(scFv)において、抗体のV及びVドメインは、フレキシブルペプチドによって連結される。典型的には、このリンカーペプチドは、約15アミノ酸残基長である。リンカーが例えば5アミノ酸と、それよりもかなり小さいならば、二価のscFv二量体である二重特異性抗体が形成される。リンカーが、3アミノ酸残基よりも少なく低減されるならば、三重特異性抗体または四重特異性抗体と称される三量体及び四量体構造が形成される。抗体の最小結合単位はCDRであり、典型的には、単独で用いることが可能な、十分な特異的認識及び結合性を有する重鎖のCDR2である。このようなフラグメントは、分子認識単位またはmruと称される。いくつかのこのようなmruを、短いリンカーペプチドで連結して合わせることが可能であり、したがって、1つのmruよりも高度な結合力を有する人工の結合タンパク質が形成される。
【0055】
[89] 本出願の機能的等価物には、例えば任意の種類の分子と抗体との共有結合によって修飾される抗体などの、修飾抗体も含まれる。例えば、修飾抗体には、例えばグリコシル化、アセチル化、ペグ化、リン酸化、アミド化、公知の保護基/封鎖基による誘導体化、タンパク質分解性切断、細胞のリガンドまたは他のタンパク質との連結などによって修飾されている抗体が含まれる。共有結合は、抗体が抗イデオタイプ反応を起こすことを妨げない。これらの修飾は、公知の技術によって実行されてもよく、非限定的に、特異的な化学的切断、アセチル化、ホルミル化、ツニカマイシンの代謝合成などを含む。加えて、修飾抗体は、1またはそれより多くの非古典的アミノ酸を含有してもよい。
【0056】
[90] 機能的等価物を、異なる鎖上の異なるCDRを異なるフレームワーク内で交換することによって、作出してもよい。したがって、例えば、異なる分類の抗体は、所与の一連のCDRについて、異なる重鎖を置換することによって可能であり、それによって、例えばIgG1〜4、IgM、IgA1〜2、IgD、IgE抗体種類及びアイソタイプを作出してもよい。同様に、本発明の範囲内の人工抗体を、所与の一連のCDRを完全合成したフレームワーク内に組込むことによって、作出してもよい。
【0057】
[91] 機能的等価物を、当該技術分野において公知の多種多様な方法を用いて、特定の一連のCDRに隣接する可変及び/または定常領域配列内で変異、欠失及び/または挿入を行うことによって、容易に作出してもよい。
【0058】
[92] 本発明の抗体フラグメント及び機能的等価物は、ネズミMy9−6抗体と比較した場合に、検出可能な程度のCD33との結合性を有するこれらの分子を包含する。検出可能な程度の結合性には、ネズミMy9−6抗体のCD33への結合能の、少なくとも10〜100%の範囲内のすべての値、好ましくは少なくとも50%、60%または70%、より好ましくは少なくとも75%、80%、85%、90%、95%または99%が含まれる。
【0059】
[93] 改良抗体
[94] CDRは、エピトープ認識及び抗体結合に最も重要である。しかしながら、抗体がその同族のエピトープを認識しそして結合する能力を妨げずに、CDRを含む残基を変えてもよい。例えば、エピトープ認識には影響を与えないが、エピトープに対する抗体の結合親和性を増加させる変化を行ってもよい。
【0060】
[95] このように、特異的にCD33を認識しそして結合し、好ましくは親和性の増加を伴った、ネズミ及びヒト化抗体双方の改良型もまた、本発明の範囲に含まれる。
[96] いくつかの試験によって、抗体の配列中の種々の位置に1またはそれより多くのアミノ酸の変更を導入する影響が、第一抗体配列の知見ならびに結合性及び発現レベルなどのその特性に基づき、調査された(Yang,W.P.ら、1995年、J.Mol.Biol.,254,392−403;Rader,C.ら、1998年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,95,8910−8915;Vaughan,T.J.ら、1998年、Nature Biotechnology,16,535−539)。
【0061】
[97] これらの試験では、オリゴヌクレオチドを介した部位特異的突然変異誘発、カセット突然変異誘発、変異性PCR、DNAシャフリングまたは大腸菌(E.coli)突然変異誘発株などの方法を用いて、CDR1、CDR2、CDR3またはフレームワーク領域において重鎖及び軽鎖遺伝子配列を変えることによって、第一の抗体の等価物が作製された(Vaughan,T.J.ら、1998年、Nature Biotechnology,16,535−539;Adey,N.B.ら、1996年、第16章、277〜291ページ、「Phage Display of Peptides and Proteins」中、Kay,B.K.ら編集、アカデミック・プレス)。第一の抗体の配列を変えるこれらの方法は、結果として第二の抗体の親和性の改良をもたらした(Gram,H.ら、1992年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89,3576−3580;Boder,E.T.ら、2000年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,97,10701−10705;Davies,J.及びRiechmann,L.、1996年、Immunotechnology,2,169−179;Thompson,J.ら、1996年、J.Mol.Biol.,256,77−88;Short,M.K.ら、2002年、J.Biol.Chem.,277,16365−16370;Furukawa K.ら、2001年、J.Biol.Chem.,276,27622−27628)。
【0062】
[98] 抗体の1またはそれより多くのアミノ酸残基を変更するという同様な方向性のストラテジーによって、本明細書に記載される抗体配列を、CD33に対する改良された親和性を含む、改良された機能を伴う抗CD33抗体を開発するのに用いることが可能である。
【0063】
[99] 改良抗体には、動物の免疫化、ハイブリドーマ形成及び特異的な特徴を有する抗体の選択という標準的な技術によって作製される、改良された特徴を有するこれらの抗体もまた含まれる。
【0064】
[100] 免疫複合体
[101] 本発明はまた、薬物またはプロドラッグと連結させた、本明細書において開示されるような抗体、抗体フラグメント、機能的等価物、改良抗体及びそのアナログを含む、免疫複合体も対象とする。好ましい薬物またはプロドラッグは細胞毒性剤であり、そして例えば、メイタンシノイド類及びメイタンシノイドアナログ、タキソイド類、CC−1065及びCC−1065アナログ、ドラスタチン及びドラスタチンアナログが含まれる。
【0065】
[102] 該免疫複合体を、in vitro方法によって作製してもよい。薬物またはプロドラッグを抗体と連結させるために、連結基が用いられる。適当な連結基は、当該技術分野において周知であり、そして、ジスルフィド基、チオエーテル基、酸に不安定な基、光に不安定な基、ペプチダーゼに不安定な基及びエステラーゼに不安定な基が含まれる。好ましい連結基は、ジスルフィド基及びチオエーテル基である。例えば、複合体を、ジスルフィド交換反応を用いるか、または抗体と薬剤もしくはプロドラッグとの間にチオエーテル結合を形成することによって、構築することが可能である。
【0066】
[103] メイタンシノイド類及びメイタンシノイドアナログは、好ましい細胞毒性剤に含まれる。適切なメイタンシノイド類の例には、メイタンシノール及びメイタンシノールアナログが含まれる。適切なメイタンシノイド類は、米国特許第4,424,219;4,256,746;4,294,757;4,307,016;4,313,946;4,315,929;4,331,598;4,361,650;4,362,663;4,364,866;4,450,254;4,322,348;4,371,533;6,333,410;5,475,092;5,585,499及び5,846,545に開示されている。
【0067】
[104] メイタンシノイド類に関して、連結基は、反応性化学基を含んでもよい。好ましい態様において、反応性化学基は、ジスルフィド結合によって連結した部分を介してメイタンシノイドと共有結合することが可能である。
【0068】
[105] 特に好ましい反応性化学基は、N−スクシンイミジルエステル類及びN−スルホスクシンイミジルエステル類である。
[106] 反応性化学基を含有する連結基を含む、特に好ましいメイタンシノイド類は、連結部分がジスルフィド結合を含有し、そして化学反応基がN−スクシンイミジルまたはN−スルホスクシンイミジルエステルを含む、メイタンシノールのC−3エステル類及びそのアナログである。
【0069】
[107] メイタンシノイド類における多くの位は、連結部分と化学的に連結するための位として働くことが可能である。例えば、ヒドロキシル基を有するC−3位、ヒドロキシメチルで修飾されたC−14位、ヒドロキシで修飾されたC−15位及びヒドロキシ基を有するC−20位は、いずれも有用であることが期待される。しかしながら、C−3位が好ましく、そしてメイタンシノールのC−3位が特に好ましい。
【0070】
[108] 他の化学結合には、酸に不安定な結合、光に不安定な結合、ペプチダーゼに不安定な結合及びエステラーゼに不安定な結合が含まれる。本明細書において援用する、米国特許第5,208,020の開示は、このような結合を有するメイタンシノイド類の産生について教示している。
【0071】
[109] 以下に詳細に記載するように、免疫複合体My9−6−DM1は、チオールを含有するメイタンシノイド(DM1)を利用する。DM1は、以下の構造式(1)によって表される:
【0072】
【化1】

【0073】
[110] タキサン類もまた、好ましい細胞毒性剤である。本発明において用いるのに適したタキサン類は、米国特許第6,372,738及び6,340,701に開示されている。本発明のタキサン類と細胞結合剤との複合体を、現在公知の、または後に開発される任意の技術を用いて、形成することが可能である。複合体形成の多数の方法が、USP 5,416,064及びUSP 5,475,092において教示される。
【0074】
[111] CC−1065及びそのアナログもまた、本発明において用いるのに好ましい細胞毒性薬物である。CC−1065及びそのアナログは、米国特許第6,372,738;6,340,701;5,846,545;及び、5,585,499において開示されている。CC−1065は、ストレプトマイセス・ゼレンシス(Streptomyces zelensis)の培養液から単離された、強力な抗腫瘍抗生物質である。CC−1065は、ドキソルビシン、メトトレキサート及びビンクリスチンなどの一般的に用いられている抗癌剤よりも、in vitroで約1000倍強力である(B.K.Bhuyanら、Cancer Res.,42,3532−3537(1982年))。
【0075】
[112] メトトレキサート、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、メルファラン、マイトマイシンC、クロラムブシル、カリケアマイシン、ドラスタチン及びドラスタチンアナログなどの薬物もまた、本発明の複合体を作製するのに適している。薬物分子はまた、血清アルブミンなどの中間キャリア分子を介して抗体分子と連結することが可能である。
【0076】
[113] CD33を発現する細胞の増殖阻害
[114] CD33を発現する細胞の増殖を阻害する方法もまた、本発明に含まれる。これらの方法は、本発明の抗体または免疫複合体、ならびに、1またはそれより多くの追加の治療剤と結合した本発明の抗体または免疫複合体を利用する。適切な治療剤には、CD33を発現する細胞の増殖を直接的または間接的に阻害するものが含まれる。
【0077】
[115] 本明細書では、「阻害する」及び「阻害している」の語は、細胞死を含む、細胞増殖における任意の阻害効果を含むことが理解されるべきである。阻害効果には、一時的な効果、持続的な効果、及び恒久的な効果が含まれる。
【0078】
[116] 治療への適用
[117] 本発明はまた、本発明の抗体及び免疫複合体の治療への適用を含み、ここで、抗体または免疫複合体を、医薬的に許容可能な剤形で個体に投与してもよい。これらは、ボーラスまたは時間をかけた持続注入によって静脈内に、筋肉内、皮下、動脈内、滑液嚢内、くも膜下腔内、経口、局所または吸入経路で、投与することが可能である。これらは、局所ならびに全身性の治療効果を及ぼすために、腫瘍内、腫瘍周囲、病巣内または病巣周囲経路でも投与してよい。
【0079】
[118] 医薬的に許容可能な剤形には、一般的には、キャリア、希釈剤及び賦形剤などの医薬的に許容可能な剤が含まれるであろう。これらの剤は周知であり、そして最も適切な剤を、当業者が、臨床状況を根拠に決定することが可能である。適当なキャリア、希釈剤及び/または賦形剤の例には:(1)約1mg/ml〜25mg/mlのヒト血清アルブミンを含有する、ダルベッコリン酸緩衝生理食塩液、pH 〜7.4、(2)0.9%生理食塩液(0.9%w/v NaCl)、及び、(3)5%(w/v)ブドウ糖が含まれる。
【0080】
[119] 他の治療への適用においては、本発明の抗体または免疫複合体を、1またはそれより多くの追加の治療剤と同時投与する。治療剤は、宿主に対して最小のダメージでありながら、癌細胞を殺すかまたはその増殖を制限しようとするこれらの剤である。このように、こういった剤は、癌細胞の特性(例えば、代謝、血管新生または細胞表面での抗原提示)における健常宿主細胞との任意の違いを活用してもよい。腫瘍形態学における違いは、介入する可能性のある部位である。例えば、治療剤は、固形腫瘍内部の血管新生を遅らせ、その結果としてその増殖速度を遅くするのに有用な、抗VEGF抗体などの抗体であることが可能である。
【0081】
[120] 適切な治療剤には、非限定的に、細胞毒性剤または細胞増殖抑制剤が含まれる。タキソールは、細胞毒性剤でもある、好ましい治療剤である。他の治療剤には、非限定的に、グラニセトロンHCLなどの補助剤、酢酸ロイプロリドなどのアンドロゲン阻害剤、ドキソルビシンなどの抗生物質、タモキシフェンなど抗エストロゲン、インターフェロンα−2aなどの代謝拮抗剤、rasファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤などの酵素阻害剤、アルデスロイキンなどの免疫調節物質、及びメルファランHClなどのナイトロジェンマスタード誘導体等が含まれる。
【0082】
[121] 抗体は、凍結乾燥された状態でなく水溶性剤形にて存在する場合に、この範囲外の幅広いバリエーションは許容されるが、典型的には約0.1mg/ml〜100mg/mlの濃度で処方されるであろう。疾患の治療に関しては、抗体または複合体の適切な用量は、先に定義したような治療される疾患の種類、疾患の重症度及び経過、抗体を予防または治療のいずれの目的で投与するか、以前の治療経過、患者の既往歴及び抗体への応答、及び主治医の判断によって決まるであろう。抗体を、一度または一連の治療にわたって、患者に適切に投与する。
【0083】
[122] 疾患の種類及び重症度に応じて、抗体約0.015〜15mg/kg患者体重が、例えば、1またはそれより多くの別々の投与であっても、持続注入であっても、患者へ投与する最初の候補用量である。数日またはそれより長期にわたる反復投与については、状態に応じて、所望の疾患症状の抑制が起こるまで治療を繰り返す。しかしながら、他の投与計画が、有用である可能性もあり、そして除外されない。
【0084】
[123] 本発明の治療への応用には、疾患を有する個体の治療方法が含まれる。本発明の方法にて治療される疾患は、CD33発現によって特徴付けられるものである。このような疾患には、骨髄異形成症候群(MDS)、ならびに急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)及び前骨髄球性白血病(PML)などの癌が含まれる。当業者は、本発明の方法を、未だ記載されていないがしかしCD33の発現によって特徴付けられる、他疾患を治療するのにも用いてよいことを、理解するであろう。
【0085】
[124] 本発明の治療への適用を、in vitro及びex vivoで実行することも可能である。
[125] In vitroでの使用例には、骨髄系細胞などのCD33陽性細胞が混入した細胞集団を精製することが含まれる。該方法は、細胞毒性My9−6免疫複合体の存在下で細胞集団を培養し、次いで死滅したCD33陽性細胞を除去することを含む。非臨床in vitroでの使用における条件は、周知である(例えば、Uckunら、1986年、J Exp.Med.163,347−368;Uckunら、1985年、J.Immunol.134,3504−3515;Ramakrishnanら、1985年、J.Immunol.3616−3622を参照されたい)。
【0086】
[126] 臨床ex vivoでの使用例には、異常または悪性の骨髄系細胞を死滅させるために、同じ患者にそれらを注入するのに先立って、自家骨髄の処理をすることが含まれる(Roy D.C.ら、1995年、J.Clin.Immunol.15,51−57)。
【0087】
[127] 診断及び研究への応用
[128] 本明細書において論じる抗体の治療への使用に加えて、本発明の抗体を、多くの公知の診断及び研究への適用において使用することが可能である。本発明の抗体を、in vitro及びin vivo双方での診断法に含まれる、例えばCD33の精製、検出及びターゲティングに用いてもよい。例えば、抗体を、生体試料中の細胞によって発現されるCD33レベルを定性的及び定量的に測定するためのイムノアッセイに用いてもよい。例えば、Harlowら、Antibodies:A Laboratory Manual(コールドスプリングハーバー研究所プレス、第二版、1988年)を参照されたく、本明細書ではそのすべてを参照によって援用する。
【0088】
[129] 本発明の抗体を、例えば、競合的結合アッセイ、直接的及び間接的サンドイッチアッセイ、及び免疫沈降アッセイにおいて用いてもよい(Zola,Monoclonal Antibodies:A Manual of Techniques,147〜158ページ(CRCプレスInc.、1987年))。
【0089】
[130] 本発明の抗体はまた、in vivo画像診断にも有用であり、ここで、放射線不透過剤または放射性同位体などの検出が可能な部分で標識した抗体を、個体に、好ましくは血流中に投与し、そして宿主中の標識抗体の存在及び位置をアッセイする。この画像診断技術は、悪性腫瘍の病期分類及び治療に有用である。抗体は、核磁気共鳴、放射線医学または当該技術分野において公知の他の検出手段のいずれによっても、宿主中において検出が可能な任意の部分で標識してもよい。
【0090】
[131] 標識は、直接的あるいは間接的に検出が可能なシグナルを作り出すことが可能な、検出が可能な任意の部分であることが可能である。例えば、標識は、ビオチン標識、酵素標識(例えば、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ及びセイヨウワサビペルオキシダーゼ)、放射性標識(例えば、H、14C、32P、35S及び125I)、蛍光または化学発光化合物などのフルオロフォア(例えば、フルオレセイン・イソチオシアネート、ローダミン)、造影剤(例えば、Tc−m99及びインジウム(111In))及び金属イオン(例えば、ガリウム及びユーロピウム)であってもよい。
【0091】
[132] 当該技術分野において公知の、抗体を標識と結合させる任意の方法を使用してもよく、Hunterら、1962年、Nature 144:945;Davidら、1974年、Biochemistry 13:1014;Painら、1981年、J.Immunol.Meth.40:219;Nygren,J.,1982年、Histochem.and Cytochem.30:407によって記載されたこれらの方法が含まれる。
【0092】
[133] 本発明の抗体はまた、親和性精製剤としても有用である。この過程では、抗体を、セファデックス樹脂またはろ紙などの適当な担体上に、当該技術分野において周知の方法を用いて固定化する。このように、CD33を、生体試料から単離及び精製してもよい。
【0093】
[134] ポリヌクレオチド、ベクター、宿主細胞、及び抗体の作製方法
[135] 本発明は、本発明の抗体またはそのエピトープ結合フラグメントをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを、さらに提供する。
【0094】
[136] 本発明はまた、CD33と結合が可能なポリペプチドをコードし、そしてストリンジェントなハイブリダイゼーションの条件下で本発明の抗体をコードするポリヌクレオチドとハイブリダイズする、ポリヌクレオチドも包含し、ここで、前記ストリンジェントなハイブリダイゼーションの条件は、以下:6xSSC、0.5%SDS、5xDenhardt’s溶液及び100μg/ml熱変性サケ精子DNA中で、60℃にて2時間のプレハイブリダーゼーション;60℃にて18時間のハイブリダイゼーション;4xSSC、0.5%SDS、0.1%ピロリン酸ナトリウム中で60℃にて30分間の2回洗浄、及び、2xSSC、0.1%SDS中で60℃にて30分間の2回洗浄、を含む。
【0095】
[137] 当該技術分野において公知の任意の方法によって、ポリヌクレオチドを得て、そしてポリヌクレオチドのヌクレオチド配列を決定してもよい。例えば、抗体のヌクレオチド配列が公知であるならば、抗体をコードするポリヌクレオチドを、化学合成オリゴヌクレオチドから構築してもよく(例えば、Kutmeierら、1994年、BioTechniques 17:242において記載されるように)、これは、簡潔に言えば、抗体をコードする配列の一部分を含有する重複したオリゴヌクレオチドの合成、これらのオリゴヌクレオチドのアニーリング及び連結、次いで連結したオリゴヌクレオチドのPCRによる増幅を伴う。
【0096】
[138] 抗体のコード配列ならびに適切な転写及び翻訳制御シグナルを含有する組換えベクターの構築方法は、当該技術分野において周知である。これらの方法には、例えば、in vitro組換えDNA技術、合成技術及びin vivo遺伝子組換えが含まれる。このように、本発明は、本発明の抗体分子、またはその重鎖もしくは軽鎖、または重鎖もしくは軽鎖可変ドメイン、または任意のこれらのエピトープ結合フラグメントをコードする、プロモーターに機能可能なように連結されたヌクレオチド配列を含む、複製可能なベクターを提供する。
【0097】
[139] 組換えベクターを慣用の技術によって宿主細胞へ移行させ、次いでトランスフェクトされた細胞を慣用の技術によって培養し、本発明の抗体を産生する。このように、本発明は、本発明の抗体またはそのエピトープ結合フラグメントをコードする、異種プロモーターに機能可能なように連結されたポリヌクレオチドを含有する、宿主細胞を含む。好ましい態様において、免疫グロブリン分子全体を発現させるために、重鎖及び軽鎖の双方をコードするベクターを、宿主細胞中で同時発現させてもよい。
【0098】
[140] 多様な宿主−発現ベクター系を、本発明の抗体分子を発現させるのに利用してもよい。このような宿主−発現系とは、それによって目的のコード配列を産生し、続いて精製してもよい媒体を表すが、しかし、適切なヌクレオチドのコード配列を用いて形質転換またはトランスフェクトされた場合は、本発明の抗体分子をin situにて発現してもよい細胞もまた表す。これらには、限定されるわけではないが、抗体のコード配列を含有する組換えバクテリオファージDNA、プラスミドDNAまたはコスミドDNA発現ベクターを用いて形質転換された細菌(例えば、大腸菌、枯草菌(B.subtilis))などの微生物体;抗体のコード配列を含有する組換え酵母発現ベクターを用いて形質転換された酵母(例えば、サッカロマイセス(Saccharomyces)、ピキア(Pichia));抗体のコード配列を含有する組換えウイルス発現ベクター(例えば、バキュロウイルス)を用いて感染させた昆虫細胞系;抗体のコード配列を含有する組換えウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワーモザイクウイルス、CaMV;タバコモザイクウイルス、TMV)を用いて感染させた植物細胞系、または、抗体のコード配列を含有する組換えプラスミド発現ベクター(例えば、Tiプラスミド)を用いて形質転換された植物細胞系;あるいは、哺乳動物細胞ゲノム由来のプロモーター(例えば、メタロチオネインプロモーター)または哺乳動物ウイルス由来のプロモーター(例えば、アデノウイルス後期プロモーター;ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター)を含有する、組換え発現コンストラクトを保有する哺乳動物細胞系(例えば、COS、CHO、BHK、293、3T3細胞)が含まれる。
【0099】
[141] 特に組換え抗体分子全体を発現させるためには、好ましくは大腸菌などの細菌細胞、及びより好ましくは真核細胞を、組換え抗体分子の発現に用いる。例えば、ヒトサイトメガロウイルス由来の主な中間初期遺伝子プロモーターエレメント(intermediate early gene promoter element)などのベクターと連動した、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)などの哺乳動物細胞は、抗体に対する効果的な発現系である(Foeckingら、1986年、Gene 45:101;Cockettら、1990年、Bio/Technology 8:2)。
【0100】
[142] 長期にわたって組換えタンパク質を高収率に産生するには、安定した発現が好ましい。例えば、抗体分子を安定に発現する細胞株を、操作してもよい。ウイルスの複製起点を含有する発現ベクターを用いずに、宿主細胞を、適切な発現制御エレメント(例えば、プロモーター、エンハンサー、配列、転写ターミネーター、ポリアデニル化部位など)及び選択マーカーによって制御されたDNAを用いて形質転換することが可能である。外来DNAの導入後に、操作した細胞を、強化培地中で1〜2日間増殖させてもよく、次いで、選択培地へと切り替える。組換えプラスミド中の選択マーカーは、選択に対する耐性を与え、そして、細胞がその染色体内にプラスミドを安定に組込み、そして、増殖して、今度はクローンニング及び細胞株へと発展させることが可能な巣(foci)を形成することを可能にする。この方法を、有利には、抗体分子を発現する細胞株を操作するのに用いてもよい。このような操作された細胞株は、直接または間接的に抗体分子と相互作用する化合物をスクリーニング及び評価する場合に、特に有用である。
【0101】
[143] 本発明の抗体分子を組換え技術によって発現させた後、例えば、クロマトグラフィ(例えば、イオン交換、特にプロテインAの後、特異抗原に対する親和性による親和性、及びサイジングカラムクロマトグラフィ)、遠心分離、溶解度の差、またはタンパク質精製のための他の任意の標準的な技術などの、当該技術分野において公知の任意の免疫グロブリン分子精製法によってこれを精製してもよい。
【実施例】
【0102】
[144] (実施例)
[145] これより、本発明を以下の実施例に関して記載するが、該実施例は一例に過ぎず、そして本発明を限定することを意図しない。
【0103】
[146] 実施例1. ネズミMy9−6抗体
[147] この最初の実施例において、本発明のネズミMy9−6抗体の完全な一次アミノ酸構造及びcDNA配列を、その結合特性及び組換え型でそれを発現させる手段とともに、開示する。したがって、免疫学の当業者が、必要以上の実験をすることなく前記抗体を作製することが可能なように、本発明の抗体及びその作製についての十分かつ完全な開示が提供される。
【0104】
[148] 1.1. My9−6抗体の作製、産生及び特徴付け
[149] CD33抗原を用いて形質転換された3T3ネズミ線維芽細胞株を、免疫化に用いた。
[150] 5ヶ月齢のBALB/c雌マウスを、形質転換された3T3ネズミ線維芽細胞株(0.2mL PBS中に懸濁した、2.5x10細胞)で、第0日に腹腔内投与により免疫化した。動物を、0.2mLの細胞懸濁液で以下のように追加免疫した:第13日に5x10細胞;第21日に5x10細胞。第24日に、マウスを屠殺し、そしてその脾臓を取り出した。
【0105】
[151] 脾臓を、2つの凍らせたスライドガラス間で粉砕し、単一の細胞懸濁液を得て、ペニシリン及びストレプトマイシン(SFM)を含有する無血清RPMI培地で洗浄した。脾臓細胞ペレットを、赤血球を溶解させるために氷上で10分間、0.83%(w/v)塩化アンモニウム水溶液10mL中に再懸濁し、次いで、無血清培地(SFM)で洗浄した。脾臓細胞(1.6x10)を、非分泌型マウス骨髄腫細胞株P3X63Ag8.653(ATCC、ロックビル、メリーランド州;カタログ番号CRL1580)由来の骨髄腫細胞(5.4x10)とともにチューブ中にプールし、そして無血清RPMI−1640培地(SFM)で洗浄した。上清を除去し、そして細胞ペレットを2x10細胞/mLとなるよう希釈した。細胞を、15mg/mLコンカナバリンAでコーティングした組織培養プレート上に、2x10細胞/プレートにて播いた。プレートを、37℃にて1時間インキュベートした。上清を、穏やかにプレートから除去した。1mLのポリエチレングリコール溶液(40%PEG w/v)を、一滴ずつ緩徐に加えた。プレートを回旋させ、そして30秒間インキュベートした。PEGを除去し、そして捨てた。プレートを、5mLのSFMを緩徐に加え、次いで捨てることによって、二度洗浄した。最終洗浄後に、5mLの5%胎児ウシ血清(FBS)添加SFMを加えた。プレートを37℃にて一晩インキュベートした。インキュベート後に、細胞を、細胞スクレーパーを用いてプレートからこすり落とし、そしてプールした。プレートをすすぎ、そして細胞とともにプールした。細胞を遠心分離によって沈澱させ、そして5%FBS、ペニシリン−ストレプトマイシン及びヒポキサンチン/アミノプテリン/チミジン(HAT)添加RPMI−1640増殖培地中に再懸濁した。細胞を、マクロファージ支持細胞層を含有する96ウェル平底組織培養プレートに、2x10細胞/ウェルにて播いた。免疫化及びハイブリドーマ作出に用いた一般的条件は、J.Langone及びH.Vunakis(編集、Methods in Enzymology,第121巻、「Immunochemical Techniques,Part I」;1986年;アカデミックプレス、フロリダ州)及びE.Harlow及びD.Lane(「Antibodies:A Laboratory Manual」;1988年;コールドスプリングハーバー研究所プレス、ニューヨーク州)によって記載されたとおりである。他の免疫化及びハイブリドーマ作出技術を、当業者に周知のように用いることも可能である。
【0106】
[152] ハイブリドーマクローンから得た培養上清を、CD33抗原をトランスフェクトされた細胞及びヒト組織球性リンパ腫細胞株U−937(ATCC CRL−1953.2)への結合、ならびにマウス線維芽細胞株への結合の欠如について、スクリーニングした。これらのクローンを、増やしそしてサブクローニングした。サブクローンの培養上清を、前述の結合アッセイによってさらにスクリーニングした。この手順により、サブクローン3E7−H2−3D8(My9−6)を選択し、そして以下に記載するように重鎖及び軽鎖遺伝子をクローニングしそして配列決定した。
【0107】
[153] CD33抗原への特異的結合についてのハイブリドーマ上清のスクリーニングを、この抗原を発現する細胞株及びこの抗原に対して陰性の細胞株において、ELISAを用いて行った。細胞を組織培養フラスコから別々に回収し、10%FBS含有増殖培地中に懸濁し、遠心分離によって沈澱させ、そしてPBSで洗浄した。洗浄した細胞(約1〜3x10細胞/mL 100μL)を、フィトヘマグルチニン(20μg/mL PHA 100μL)でコーティングしたイムロン−2HBプレートのウェルに加え、遠心分離し、そして10分間、PHAでコーティングしたウェルに接着させた。細胞の付いたプレートを軽く叩いてPBSを除去し、次いで37℃にて一晩乾燥させた。ウェルを、5mg/mL BSAを含むPBS溶液で37℃にて1時間ブロッキングし、そしてPBSでやさしく洗浄した。次いで、ハイブリドーマクローンから得た上清のアリコット(100μL;ブロッキングバッファー中に薄めた)を、CD33抗原発現細胞及びCD33を発現していない細胞を含有するウェルに加え、そして外界温度にて1時間インキュベートした。ウェルをPBSで洗浄し、ヤギ抗マウスIgG抗体−セイヨウワサビペルオキシダーゼ複合体(100μL;ブロッキングバッファー中)とともに1時間インキュベートし、続いて洗浄し、次いで結合をABTS/H基質を用いて検出した。CD33抗原を過剰発現している細胞とともにインキュベートした場合に3E7ハイブリドーマサブクローンから得られた典型的な上清は、CD33抗原に陰性の細胞とともにインキュベートした場合に得られた0.10吸光度単位の値とは対照的に、0.50吸光度単位のシグナルをもたらした。
【0108】
[154] ハイブリドーマを、BALB/cマウスの腹水中で増殖させた。凍結ハイブリドーマ細胞のバイアルを解凍し、そして細胞を組織培養フラスコ中で増やし、腹水での産生に必要な細胞数を得た。初回抗原刺激を受けたBALB/cマウス(10〜14日前に、プリスタン0.5mLをマウスに腹腔内注射しておいた)に、リン酸緩衝生理食塩液(PBS)0.5mL中の1x10細胞を腹腔内注射した。細胞を注射後第12〜18日に、腹水をマウス腹腔からシリンジで回収した。プールした腹水を1000rpmにて5分間遠心分離し、次いで上清を、12,000rpmにて30分間の遠心分離にかけた。抗体を、清澄な上清から以下のように精製した:工程1:硫安沈澱。氷上の上清を二倍量の冷PBSで希釈し、撹拌し、次いで一倍量の冷飽和(100%)硫安溶液で緩徐に処理した。沈澱物を遠心分離によって回収したとき、溶液は、約5時間氷上に立てたままであった
。ペレットを少量のPBS中に溶解し、そしてその結果生じた溶液を、プロテインAを用いた親和性精製工程のため、バッファー中に透析した。工程2:セファロース−プロテインAでの親和性精製。ネズミMy9−6のアイソタイプは、κ軽鎖を有するIgG1である。したがって、親和性カラムを、3M NaCl、pH8.0を含有する0.1MトリスHClバッファー中で平衡化した。同じバッファーの抗体溶液をカラムに通し、カラムを平衡化バッファーでよく洗浄し、次いで0.15M NaClを含有する0.1M酢酸で溶出した。画分を、280nmにてUV吸光度を測定することによってアッセイした。抗体を含有する画分を混ぜ合わせ、1Mトリスで中和し、次いで、使用及び保管のためPBS中に透析した。
【0109】
[155] 最初に、精製抗体を、トランスフェクトされたマウス3T3線維芽細胞株及びヒトU−937細胞株などのCD33発現細胞との結合、ならびに、ハイブリドーマ上清のスクリーニングについて先に記載したような、抗原に陰性の細胞株との結合の欠如について、特徴付けた。
【0110】
[156] CD33抗原へのその結合特異性をさらに確かめるために、標識muMy9−6と商業的に入手可能な抗CD33抗体My9との間で、競合的結合実験を行った。結合実験を、Goldmacherら(1989年、J.Cell.Physiol.141,222−234)によって記載された方法を用いて行った。ネズミMy9−6抗体を、ヨードジェン(Iodo−gen)技術(Fraker,P.J.及びSpeck,J.C.,1978年、Biochem.Biophys.Res.Commun.80,849−857)を用いて、125Iで放射性標識した。125I−標識muMy9−6の一定量(3x10−9M)を、非標識muMy9−6または非標識My9のいずれかである非放射性標識抗体の濃度増加を伴ったものと混合し、そして、混合物を、4℃にて30分間、細胞(一試料につき1x10細胞)とともにインキュベートした。これらのインキュベーションを、2.5%ヒト血清を添加した、懸濁培養用に改変された最小必須培地(SMEM)からなるバッファー60μl中で行った。次いで、細胞を、1.009g/mlの密度のシリコーン油(アルドリッチ)及びパラフィン油(ベイカー)の混合物を介した遠心分離によって、非結合物質を含有する培地から分離した。次いで、細胞ペレットを、油の界面にて遠心分離用チューブを切ることによって取り出し、そしてガンマ計数器(LKBのモデルRIAgamma 1274)にて細胞に付随した放射活性を測定するのに用いた。測定した細胞に付随した放射活性を、非標識競合抗体の濃度に対してブロットした。結果を、図1に示す:My9及びMy9−6の双方の抗体は、非常に類似した競合結合曲線を与えた。このことは、My9及びMy9−6が同じ抗原に結合し、そしてさらに、双方の抗体が非常に類似した結合力を有することを実証する。My9は公開されそして認容された抗CD33標準品であることから、My9−6は抗CD33抗体であると結論づけられた。My9抗体は、バイオジェネックス(サンラモン、カリフォルニア州 94583;カタログ番号AM267−5M)から商業的に入手可能である。
【0111】
[157] 1.2. My9−6抗体の重鎖及び軽鎖遺伝子のクローニング
[158] 全RNAを、My9−6ハイブリドーマ細胞でコンフルエントなT175フラスコから、Molecular Protocols(NB1455−p173)において記載されるように、精製した。RNA完全性を、1%MOPSゲル上で確認し、そして濃度をUV分光光度法によって測定した。RT反応を、ギブコ・スーパースクリプトIIキット、及びオリゴdTまたはランダム六量体プライマーのいずれかを用いて、4〜5μgのトータルRNAで行った。
【0112】
[159] PCR反応を、Coら(1992年、J.Immunol.148(4):1149−54)において記載されたRACE法を用いること、及びWangら(2000年、J.Immunol.Methods.233:167−177)において記載された縮重プライマーを用いることの双方によって、行った。RACE PCRは、第一鎖cDNAの3’末端にポリdGテールを加える中間工程を必要とした。RT反応物を、Qianeasy(キアゲン)カラムで精製し、そして50μlの1xNEBバッファー4中に溶出した。dGテーリング反応は、1xNEBバッファー4中、0.25mM CoCl、1mM dGTP、および5ユニットのターミナルトランスフェラーゼ(NEB)とともにある溶出物で行った。混合物を、37℃にて30分間インキュベートし、次いで反応混合物の1/5(10μl)を、鋳型DNAとして働くようにPCR反応混合物に直接加えた。
【0113】
[160] RACE及び縮重PCR反応は、プライマー及び鋳型の違いを除き同一であった。前述のように、末端トランスフェラーゼ反応混合物を、RACE PCRの鋳型に対して直接用い、一方で、RT反応混合物を、縮重PCR反応に対して直接用いた。双方の反応セットにおいて、同じ3’軽鎖プライマーHindKL:
TATAGAGCTCAAGCTTGGATGGTGGGAAGATGGATACAGTTGGTGC(配列番号11)
及び、3’重鎖プライマーBGl2IgG1:
GGAAGATCTATAGACAGATGGGGGTGTCGTTTTGGC(配列番号12)
を用いた。
【0114】
[161] RACE PCRでは、1つのポリdC 5’プライマーであるEcoPolydC:TATATCTAGAATTCCCCCCCCCCCCCCCCC(配列番号13)を、重鎖及び軽鎖の双方について用いたが、一方、縮重5’末端PCRプライマーは、軽鎖については、Sac1MK:GGGAGCTCGAYATTGTGMTSACMCARWCTMCA(配列番号14)、ならびに重鎖については、EcoR1MH1:CTTCCGGAATTCSARGTNMAGCTGSAGSAGTC(配列番号15)及びEcoR1MH2:CTTCCGGAATTCSARGTNMAGCTGSAGSAGTCWGG(配列番号16)の等量混合物であった(混合塩基:H=A+T+C、S=G+C、Y=C+T、K=G+T、M=A+C、R=A+G、W=A+T、V=A+C+G、N=A+T+G+C)。
【0115】
[162] PCR反応を、Wangら(2000年、J.Immunol.Methods.233:167−177)から改作したプログラム:1)94℃にて3分間;2)94℃にて15秒間;3)45℃にて1分間;4)72℃にて2分間;5)工程2に戻って29回サイクルを行い;6)72℃にて10分間の最終伸長工程で終了する、を用いて、MJリサーチの温度サイクラーで行った。PCRプライマーによって作り出されたPCR産物を、制限酵素を用いてpBluescript II SK+(ストラタジーン)中にクローニングした。重鎖及び軽鎖のクローンを、ラーク・テクノロジーズまたはSeqwrightのシークエンシングサービスによって、配列決定した。
【0116】
[163] RACE PCRは、My9−6軽鎖については決して成功しなかった。したがって、5’末端cDNA配列を確認するために、追加の縮重PCR及びクローニングを行った。縮重PCRクローンから決定されたMy9−6軽鎖のcDNA配列を、NCBIのブラストサーチウェブサイト(ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)に入力し、そして、シグナル配列を有する、提示された上位5つのネズミ抗体配列を、保存した。縮重PCRプライマーを、コードホップ(Codehop)ウェブソフトウエア(blocks.fhcrc.org/codehop.html)を用いて、これらのシグナルペプチドから設計した。EcoRI制限酵素認識部位を、コードホップ縮重プライマーの3つ(図2)に加え、そしてこれらを、前述のようなRT−PCR反応において用いた。
【0117】
[164] 1.3. 重鎖及び軽鎖試料の調製及び配列決定
[165] muMy9−6抗体の重鎖及び軽鎖を、還元条件下でSDS−PAGEによって分離した。還元及び変性させた抗体を、12%トリス−グリシンゲル(ノベックス、サンディエゴ、カリフォルニア州)上で電気泳動した。電気泳動後に、ゲルを、CAPS/MeOHバッファーを用いてイモビロンpsq膜上にブロッティングした。転写後に、膜をポンソーSで染色した。軽鎖及び重鎖に相当するバンドを、タンパク質の配列決定のために切り取った。
【0118】
[166] 抗体の軽鎖を、自動エドマン分解化学反応によって、ABI 494 Prociseシークエンサーで膜から直接的に配列決定した。
[167] 重鎖のN−末端を遮断し、そして、タンパク質を、in situにて、Gharahdaghiら(1996年)にしたがいトリプシンで消化した。次いで、消化混合物を、MALDI−TOF質量分析法によって、Kratos Kompact SEQ装置で解析した。選択されたペプチドは、その配列を決定するためにMS/MSにかけた。
【0119】
[168] 実施例2. 表面再構築化による抗体可変領域のヒト化
[169] 治療剤または診断剤に適したヒト化型を提供するための、My9−6抗体の表面再構築化を、米国特許第5,639,641に開示された原理及び方法にしたがい、そして以下のように、一般的には進める。
【0120】
[170] 2.1. 表面の予測
[171] 構造が解明されている抗体セットの可変領域残基の溶媒露出度を、ネズミMy9−6抗体可変領域の表面残基を予測するのに用いた。127の独特の抗体構造ファイルのセット(図3)について、アミノ酸の溶媒露出度を、MCソフトウエアパッケージ(Pedersenら、1994年、J.Mol.Biol.235(3):959−973)を用いて計算した。この127の構造のセットに由来する、最も類似した10の軽鎖及び重鎖アミノ酸配列を、NCBIウェブサイト(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)の配列整列化ソフトウエアを用いて決定した。これらの10の抗体可変領域の各可変領域残基についての平均溶媒露出度を、エクセル集計表を用いて計算し、そして30%よりも大きな平均露出度を伴う位置を、表面残基とみなした。25%〜35%の平均露出度を伴う位置を、両側に隣接する2つの同一な残基を有するこれらの構造のみについて、個々の残基の露出度を計算することによって、さらにみなした。
【0121】
[172] 2.2. 分子モデリング
[173] ネズミMy9−6の可変領域の分子モデルを、オックスフォード・モレキュラー・ソフトウエアパッケージAbMを用いて作製した。抗体フレームワークを、最も類似したアミノ酸配列を有する抗体(軽鎖については1sbs、及び重鎖については1bbj)についての構造ファイルから構築し、そして非正準のCDRを、重複のない解明されている構造を含有するC−a構造データベースを検索することによって、構築した。モデルを、グラクソ・スミス・クライン・スイス−Pdbビューアーを用いて視覚化し、そしてCDRから5Å以内に位置する残基を決定した。
【0122】
[174] 2.3. ヒト抗体の選択
[175] ネズミMy9−6可変領域の表面位置を、Kabatデータベース(Johnson及びWu、2001年、Nucleic Acids Res.29(1):205−6)中のヒト抗体の配列において対応する位置と比較した。抗体データベース管理ソフトウエアSR(Searle,1998年)を用いて、天然の重鎖及び軽鎖ヒト抗体対に由来する表面残基を抽出及び整列化した。CDRから5Å以内に入る位置を特別に考慮して、最も同一性の表面残基を有するヒト抗体可変領域の表面を、ネズミMy9−6抗体可変領域の表面残基を置換するのに選んだ。
【0123】
[176] 2.4. PCR突然変異誘発によるヒト化抗体遺伝子の構築
[177] PCR突然変異誘発を、ネズミMy9−6可変領域のcDNAクローンについて行い、まず5’末端配列をペプチド配列と一致するように変え、次いで表面再構築化ヒトMy9−6遺伝子を構築した。プライマーセットを、最初の縮重PCRクローンにおいて元々配列決定されなかったネズミ残基(軽鎖位置N1、M3、L4及びS7、ならびに重鎖位置Q3及びP7)を作出するように、設計した。
【0124】
[178] ヒト化のプライマーセットを、huMy9−6のすべての型に必要とされる6アミノ酸の変更を行うように設計し、そして追加のプライマーを、4つの5Å残基を選択的に変えるように設計した(図4)。PCR反応を、以下のプログラムを用いてMJリサーチの温度サイクラーで行った:1)94℃にて1分間;2)94℃にて15秒間;3)55℃にて1分間;4)72℃にて1分間;5)工程2に戻って29回サイクルを行い;6)72℃にて4分間の最終伸長工程で終了する。PCR産物を、それらに対応する制限酵素で消化し、pBluescriptクローニングベクター中にクローニングした。クローンを配列決定してアミノ酸の変化を確認した。
【0125】
[179] 2.5. ヒト化抗体の発現ベクター
[180] 軽鎖及び重鎖対の配列を、一つの哺乳動物発現ベクター中にクローニングした。ヒト可変配列に対するPCRプライマーは、ヒトシグナル配列をpBluescriptIIクローニングベクター中に加えることを可能にする制限酵素認識部位を作出した。次いで、軽鎖または重鎖の可変配列それぞれを、EcoRI及びBsiWIまたはHindIII及びApaIを有する哺乳動物発現プラスミド中にクローニングすることが可能であった(図5)。軽鎖可変配列を、ヒトIgKappa定常領域上にインフレームでクローニングし、そして重鎖可変配列を、ヒトIgGamma1定常領域配列中にクローニングした。最終的な発現プラスミドでは、ヒトCMVプロモーターが、軽鎖及び重鎖双方のcDNA配列の発現を駆動する。
【0126】
[181] 2.6. ヒト化抗体の一時的な発現
[182] 293T細胞を、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM、バイオウィッタカー、12−614F)、10%熱不活化胎児ウシ血清(ハイクローン、SH30071.03)、4mM L−グルタミン(バイオウィッタカー、17−604E)及び1%ペニシリン/ストレプトマイシン混合物(バイオウィッタカー、17−603E)中で、6%CO下で、37℃インキュベーターにて培養した。細胞を、週に3回、1:10希釈で分割し、サブコンフルエントな集団を維持した。トランスフェクションの24時間前に、細胞をトリプシン(バイオウィッタカー、17−161E)処理し;生細胞を、トリパンブルー排除法で計数し、そして10cmの組織培養処理プレート(コーニング、430167)上に2x10細胞/プレートの密度で播いた。トランスフェクションの直前に、細胞をリン酸緩衝生理食塩液(バイオウィッタカーの10xPBS、17−517Qから薄めたPBS)で穏やかに洗浄し、そして細胞を、1%超低IgG血清(ギブコBRL、16250−078)を含むハイブリドーマSFM(インビトロジェン、12045−076)7mLで覆った。
【0127】
[183] 一過性トランスフェクション法を、標準的なキアゲン・ポリフェクトプロトコールから改作した。1枚の10cmプレートにトランスフェクトするのに、8μgのCsClグレードDNAを、ハイブリドーマSFM 300μL及びポリフェクトトランスフェクション試薬80μL(キアゲン、301107)と混合した。トランスフェクション混合物を、低速度で約5秒間ボルテックスし、そして外界温度にて5分間インキュベートした。インキュベーション後に、1mLのハイブリドーマSFM、1%超低IgG血清をトランスフェクション混合物に加え、そしてピペット操作を上下に約5回行うことによって混合した。次いで、トランスフェクション混合物を、細胞を覆っているハイブリドーマSFM 7mLに加え、そして、均等な分布を保証するために、プレートを穏やかに回旋させた。トランスフェクション反応物を、組織培養インキュベーターにて、一晩、一般的には16時間インキュベートした。次いで、トランスフェクション培地を注意深く細胞から取り除き、そして20mLのハイブリドーマSFM、1%超低IgG血清と取り替えた。次いで、トランスフェクトされた細胞をインキュベーターに72時間戻した後に、上清を回収し、そして抗体産生をELSAで定量した。回収した上清は、精製するまで4℃にて保管した。
【0128】
[184] 2.7. ヒト化抗体の精製
[185] 上清を、1/10量の1Mトリス/HClバッファー、pH8.0を加えることによって、プロテインA親和性クロマトグラフィ用に調製した。pHを調整した上清を、0.22μmフィルター膜を通してろ過し、そして、結合バッファー(PBS、pH7.3)で平衡化したプロテインAセファロースカラム(ハイトラップ・プロテインA HP、1mL、アマシャム・バイオサイエンスイズ)に添加した。Q−セファロースプレカラム(10mL)を、DNAなどの細胞物質からの混入を低減するために、試料添加中にプロテインAカラムの上流に連結した。試料添加後に、プレカラムを除去し、そして、洗浄及び溶出を行うために、プロテインAカラムの方向を逆にした。カラムを、280nmにて吸光度のない安定なベースラインを得るまで、結合バッファーで洗浄した。抗体を、0.15M NaCl、pH2.8を含有する0.1M酢酸バッファーで、0.5mL/分の流速を用いて溶出した。およそ0.25mLの画分を集め、そして1/10量の1Mトリス/HCl、pH8.0を加えることによって中和した。ピークの画分を、PBS、pH7.3に対して一晩透析した。抗体量を、280nmにおける吸光度を測定することによって定量し、そして抗体濃度を、E2800.1%=1.4と想定して計算した。吸光スペクトル分析及びSDS−PAGEを、抗体画分について、その純度を確認するために行った。
【0129】
[186] 実施例3. ヒト化抗体の試験
[187] 3.1. 結合解析用細胞の増殖
[188] HL−60細胞を、米国菌培養収集所(American Type Culture Collection)から得た(ATCC# CCL−240)。これを、5%CO雰囲気の37℃ウォータージャケット付きインキュベーター(ナプコ・サイエンティフィックCo.、チュアリタン、オレゴン州)中に維持した。細胞を、10%胎児ウシ血清(ハイクローン、ローガン、ユタ州)に加えて50μg/mLの硫酸ゲンタマイシン(ライフテクノロジーズ、グランドアイランド、ニューヨーク州)を含有する、L−グルタミン添加RPMI培地(バイオウィッタカー、ウォーカーズビル、メリーランド州)中で増殖させた。
【0130】
[189] 3.2. HL−60細胞における直接的結合アッセイ
[190] HL−60細胞をT75フラスコ(NUNCLONTM、カタログ番号153732)から回収し、そして、4℃にて、約300xgで5分間、オムニフュージRT卓上遠心分離機(ヘレウス・セパレーションズ、ドイツ)中で遠心分離した。細胞を、3x10細胞/mLの密度で、2%(v/v)ヤギ血清(シグマケミカルCo.、セントルイス、ミズーリ州)を含むL−グルタミン添加MEMアルファ培地(ライフテクノロジーズ、グランドアイランド、ニューヨーク州)からなるFACSバッファー中に再懸濁した。マルチチャンネルピペッターを用いて、3x10細胞を、ファルコン96ウェル丸底プレート(カタログ番号3077)のウェルに加え、次いで氷上に置いた。ファルコン96ウェルフレキシブルアッセイプレート(カタログ番号353911)を用いて、11の各試験品または対照品の2倍段階希釈物を、FACSバッファーで、開始濃度2x10−8Mから、二つ組で作製した。次に、試験品又は対象品のいずれかを細胞に混合した。対照ウェルには、FACSバッファーのみを入れた。プレートを氷上で1時間インキュベートし、次いで、冷却遠心分離機中で、300xgにて5分間遠心分離した。試薬を、10%漂白剤を含有する廃棄用ビーカー上で速やかに逆さまにすることによって、プレートのウェルから取り除いた。細胞を、穏やかにボルテックスすることによって再懸濁し、冷FACSバッファーで一度洗浄し、遠心分離し、次いで、穏やかにボルテックスしながら再懸濁した。FITC標識ヤギ抗ヒトIgG(ジャクソン・イムノリサーチ・ラボラトリーズ、ウエストグローブ、ペンシルバニア州、カタログ番号109−096−003)及びFITC標識ヤギ抗マウスIgG(ジャクソン・イムノリサーチ・ラボラトリーズ、ウエストグローブ、ペンシルバニア州、カタログ番号109−095−088)をFACSバッファー中に1:100希釈し、そして100μlをアッセイプレートの適切なウェルに加えた。次いで、プレートをさらに1時間、氷上で遮光してインキュベートした。結合していない二次抗体を、上記と同じ方法で、ウェルから洗浄した。細胞を、穏やかにボルテックスすることによって再懸濁し、次いで120μl/ウェルの1%ホルムアルデヒドを含むリン酸緩衝食塩液(PBS、10mMリン酸カルシウム、150mM塩化ナトリウム、pH7.2)を加えることによって固定化した。次いで、アッセイプレートを、自動96ウェルサンプリング装置とインターフェースで接続したFACScanフローサイトメーター(ベクトン・ディッキンソン、マウンテンビュー、カリフォルニア州)において、解析した。
【0131】
[191] 3.3 形質膜の調製
[192] 形質膜を、Vaterら(1995年)に記載された手順にしたがって調製した。簡潔に言えば、HL−60細胞を、10%胎児ウシ血清及び50μg/mLの硫酸ゲンタマイシンを含有する、L−グルタミン添加RPMI中で、1x10細胞/mLの密度となるまで増殖させた。全部で1x10細胞を得たときに、細胞を回収し、オムニフュージRT遠心分離機で約300xgにて回転させ、ハンクス平衡塩溶液(ライフテクノロジーズ、カタログ番号14175−095)で洗浄し、そして1本の50mLコニカル遠心分離用チューブ中に合わせた。次いで、ペレットを、細胞の溶解及び均質化を促進するため、−80℃にて少なくとも24時間凍結した。形質膜を調製するために、ペレットを37℃にて速やかに解凍し、次いで氷上に保管し;その後のすべての工程を、4℃にて行った。HL−60細胞ペレットを、1mM EDTA、0.25Mショ糖及び1mMフッ化フェニルメチルスルホニル(PMSF)を含有する、8mLの10mMトリス−HClバッファー、pH7.0中に再懸濁した。次いで、細胞ペレットを、細胞を破壊する(ぴったりはまるホウケイ酸ガラス乳棒で20打)ために、15mLダウンス組織グラインダー(ウィートン、ミリビル、ニュージャージー州)に移した。ホモジネートを、SS−34ローター(ウィルミントン、デラウェア州)を用いて、ソーバルRC−5B冷却超高速遠心分離機で、6000rpmにて10分間遠心分離し、そして上清を注意深くペレットから除いた。ペレットを、8mLのバッファーでもう一度洗浄し、そして前述のように処理した。混ぜ合わせた上清を、10mMトリス−HCl、1mM PMSF、1mM EDTA、pH7.0の37%ショ糖クッションバッファー1mL上に層状に重ね、そしてさらに、SW55tiローター(ベックマン・インスツルメンツ、パロアルト、カリフォルニア州)を用いて、予め冷却しておいたベックマンL8−M超遠心分離機で、33,000rpmにて70分間処理した。ショ糖クッションのすぐ上にあるオパールのような光彩を放つ膜の層を、各チューブから取り除き、そして4倍量の10mMトリス−HCl、1mM EDTA、1mM PMSF、pH7.0で希釈した。次いで、この溶液を、超遠心分離機で、18,000rpmにてさらに30分間遠心分離した。上清を注意深く抜き取り、そして結果として得られたペレットを、10mMトリス−HCl、1mM EDTA、1mM PMSF、pH7.0中に再懸濁した。HL−60膜調製物を、1.5mL無菌スクリューキャップエッペンドルフチューブに等分して入れ、液体窒素中で凍らせ、次いで−80℃にて、使用のために保管した。最終調製物の総タンパク質濃度を、ピアスTM BCAアッセイ(ピアス・ケミカルカンパニー、ロックフォード、イリノイ州、カタログ番号23235)を用いて測定した。
【0132】
[193] 3.4. HL−60膜における直接的結合アッセイ
[194] 前述のように調製したHL−60膜を、脱イオン水中の開始濃度10μg/mLにて、イムロン2 96ウェルアッセイプレート(ダイネックス・ラボラトリーズ、チャンティリー、バージニア州)のポリスチレン表面上で、ラボコンコの吸引デシケーター(ラボコンコ,Corp、カンサスシティ、ミズーリ州)を用いて、外界温度にて一晩乾燥させた。次いで、ELISAプレートを、1%ウシ血清アルブミン画分V(シグマ−アルドリッチ,Inc.、セントルイス、ミズーリ州、カタログ番号A−3294)、0.05%Tween−20(シグマ−アルドリッチ・Inc.、セントルイス、ミズーリ州、カタログ番号P−2287)溶液を含むトリス緩衝生理食塩液(50mMトリス−HCl、150mM塩化ナトリウム、pH7.5、TBS)で、300μL/ウェルにて、37℃で1時間ブロッキングした。このブロッキング工程の後に、プレートからブロッキングバッファーを流し出し、そしてペーパータオル上に水分を吸い取った。試験または対照試薬の、2つの3倍段階希釈物を、ブロッキンバッファー中で3.13x10−9Mから開始して5.29x10−14Mに漸減させて、フレキシブル96ウェルアッセイプレートに四つ組で作製した。陰性対照ウェルは、ブロッキングバッファーのみを含有した。50μLの各希釈物を、膜でコーティングしたアッセイプレートの指定したウェルに移し、次いでこのプレートを4℃にて一晩インキュベートした。次いで、ウェルの中身を吸引して10%(v/v)漂白剤を含有する廃棄用フラスコに入れ、そしてプレートを、0.1%(v/v)Tween−20(洗浄バッファー)を含有するTBSで3回洗浄し、そしてペーパータオル上に水分を吸い取った。結合している抗My9−6抗体量を、適切なウェルにおいて、ブロッキングバッファー中で1:1000希釈したヤギ抗マウスIgG−HRPまたはロバ抗ヒトIgG−HRPを用いて検出した。これらの二次抗体を、アッセイプレートで、遮光、室温にて1時間インキュベートした。前述同様に、プレートを洗浄しそして水分を吸い取った。プレートを、TMB(バイオFXラボラトリーズ、ランダルズタウン、メリーランド州、カタログ番号TMBW−0100−01)を用いて発色し、次いで停止溶液(バイオFXラボラトリーズ、ランダルズタウン、メリーランド州、カタログ番号STPR−0100−01)で反応を止めた。アッセイプレートを、タイターテック(登録商標)マルチスキャンプラスMK IIプレートリーダー(ハンツビル、アラバマ州)を用いて、A450nmにて読み取った。
【0133】
[195] 3.5. HL−60膜における競合的結合アッセイ
[196] 前述のように調製したHL−60膜を、脱イオン水中の開始濃度10μg/mLにて、イムロン2 96ウェルアッセイプレート(ダイネックス・ラボラトリーズ、チャンティリー、バージニア州)のポリスチレン表面上で、ラボコンコの吸引デシケーター(ラボコンコ,Corp、カンサスシティ、ミズーリ州)を用いて、室温にて一晩乾燥させた。次いで、ELISAプレートを、1%ウシ血清アルブミン画分V(シグマ−アルドリッチ,Inc.、セントルイス、ミズーリ州、カタログ番号A−3294)、0.05%Tween−20(シグマ−アルドリッチ・Inc.、セントルイス、ミズーリ州、カタログ番号P−2287)溶液を含むトリス緩衝生理食塩液(50mMトリス−HCl、150mM塩化ナトリウム、pH7.5、TBS)で、300μL/ウェルにて、37℃で1時間ブロッキングした。このブロッキング工程の後に、プレートからブロッキングバッファーを流し出し、そしてペーパータオル上に水分を吸い取った。試験または対照試薬の、2つの2倍段階希釈物を、ブロッキンバッファー中で1.25x10−8Mから開始して2.44x10−11M(2x最終濃度が必要)に漸減させて、フレキシブル96ウェルアッセイプレートに四つ組で作製した。次いで、これらの非標識競合試薬を、等量の2.5x10−10Mビオチン化ネズミ抗My9−6(イムノジェン,Inc.、ケンブリッジ、マサチューセッツ州)と混合した;陽性対照は競合試薬を含有せず、一方、陰性対照はブロッキングバッファーのみを含有した。これらの混合物50μlを、膜でコーティングしたアッセイプレートの指定したウェルに移し、次いでそのプレートを4℃にて一晩インキュベートした。次いで、ウェルの中身を吸引して10%(v/v)漂白剤を含有する廃棄用フラスコに入れ、そしてプレートを、0.1%(v/v)Tween−20を含有するTBS(洗浄バッファー)で3回洗浄した。プレートは、ペーパータオル上で水分を吸い取り、そして、結合しているビオチン化ネズミ抗My9−6量を、ブロッキングバッファー中で1:5,000希釈した100μL/ウェルのストレプトアビジン−アルカリホスファターゼ(ジャクソン・イムノリサーチ・ラボラトリーズ、ウエストグローブ、ペンシルバニア州、カタログ番号016−050−084)を用いて検出した。室温及び遮光で1時間インキュベートした後に、結合していない二次抗体試薬をウェルから洗浄し、そしてTMB(バイオFXラボラトリーズ、ランダルズタウン、メリーランド州、カタログ番号TMBW−0100−01)を用いて発色し、停止溶液(バイオFXラボラトリーズ、ランダルズタウン、メリーランド州、カタログ番号STPR−0100−01)で反応を止めた。アッセイプレートを、タイターテック(登録商標)マルチスキャンプラスMK IIプレートリーダー(ハンツビル、アラバマ州)を用いて、A450nmにて読み取った。
【0134】
[197] 3.6. ネズミMy9−6抗体可変領域のクローンニング
[198] ネズミMy9−6抗体可変領域を、前述のRT−PCR法によってクローニングした。いくつかの個々の軽鎖及び重鎖クローンを、ポリメラーゼによって生じる起こりうる配列エラーを同定しそして回避するために、配列決定した。軽鎖については1つの配列のみを得たが、しかし、重鎖のRT−PCRクローンからは、2つの別な配列が得られた。
【0135】
[199] ネズミMy9−6軽鎖可変領域の実際の配列を確かめるために、ペプチド配列を、エドマン分解、マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)及びタンデム質量分析(MS−MS)によって解析した。My9−6軽鎖のアミノ末端における22残基を、エドマン分解によって配列決定し、そして図6Aに与える。縮重RT−PCRクローンに由来する最初のcDNA配列は、縮重プライマーによって生成したと思われる4つの残基を除き、一致した。エドマン分解によって決定したペプチド配列は、後に、5’末端シグナルペプチド配列中の縮重プライマーによって生成したRT−PCRクローンによって、確認された。トリプシン消化フラグメントをMS−MS分析することにより、軽鎖CDR1及び2の配列もまた確認された(図6B)。総合すると、これらのペプチド解析は、RT−PCRにより生成したcDNAクローンに由来する、予測されるネズミMy9−6軽鎖アミノ酸配列を確認する。
【0136】
[200] 重鎖配列に一般的であるように、muMy9−6重鎖アミノ末端は、ピログルタミン残基によって遮断され、それゆえN末端エドマン分解によって配列決定することができなかった。代わりに、内部配列データを、トリプシン消化及び、マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)による分析及びタンデム質量分析(MS−MS)によって作成した。1788Daフラグメントを、cDNAクローン2の一部分と同一の予測された配列を用いて同定した(図7)。この配列は、cDNAクローン2のCDR3に由来する5残基を含み、それゆえ、muMy9−6重鎖について確実な同定を行うのに理想的なペプチドである。縮重RT−PCRクローン2から元々得られた配列のみを産生する多重RACE PCRクローンによっても、このペプチド配列が確認された。
【0137】
[201] 種々のcDNAクローン及びペプチド配列解析から得た蓄積データは、図8に示される最終的なネズミMy9−6軽鎖及び重鎖配列を提供した。Kabat及びAbM定義を用いて、3つの軽鎖及び重鎖CDRを同定した(図8及び9)。NCBI IgBlastデータベースの検索により、muMy9−6抗体軽鎖可変領域は、マウスIgV? 8−27生殖系列遺伝子に由来する可能性が最も高く、一方、重鎖可変領域は、IgVh V102生殖系列遺伝子に由来する可能性が最も高いことが、示唆される(図10)。
【0138】
[202] 3.7. My9−6抗体の可変領域表面残基の決定
[203] Pedersenら(1994年、J.Mol.Biol.235:959−973)及びRoguskaら(1996年、Protein Eng.9:895−904)によって記載された抗体の表面再構築化技術は、ネズミ抗体可変配列の表面残基を予測することにより始まる。表面残基を、水分子に接近可能なその総表面積の少なくとも30%を有するアミノ酸として定義する。muMy9−6の表面残基を見いだすのに解明された構造がないため、127の抗体構造のファイルセットの中で最も相同的な配列を有する10の抗体を、整列化した(図11A及びB)。各Kabat位置の溶媒露出度を、これらの整列化した配列について平均し、そして各残基の相対的露出度の分布を図12に示す。
【0139】
[204] いくつかの表面位置は、25%〜35%の平均露出度であった。これらを、両側に隣接する2つの同一な残基を有する抗体のみを平均することによって、より詳細に調べた(図13A及びB)。muMy9−6重鎖の25の予測された表面残基は、追加の解析後にも変わらなかったが、しかし、軽鎖におけるKabat位置15及び70は、さらなる考察を必要とした。軽鎖の位置15におけるアラニンは、すべての10の構造において34.4%の平均露出度であったが、しかし1つの構造1mcpのみが、muMy9−6におけるものと同一の隣接残基を有した。この構造において、Ala15は、ほんの18.2%の相対的露出度であった。この1つの構造において、Ala15は、位置15の平均的な残基よりも極めて露出度が低かったため、隣接残基に1つだけ違いを有する3つの構造(1ap2、1frg、1hil)についても、まとめて平均した。これら3つの構造の平均露出度は、この場合も33.3%であり、Ala15を、予測される表面残基とした。最終的には、表面再構築化された抗B4、C242、及び表面再構築化の特許自体が、軽鎖位置15は表面残基であると予測した。総合すると、保存的なアプローチとは、muMy9−6軽鎖の位置15が表面残基であると仮定することである。
【0140】
[205] muMy9−6軽鎖の位置70もまた、それが表面残基であるとの保存的な予測を最終的にもたらす、特別な考慮を必要とする。軽鎖に対する表面を予測する最初の作業を、5つの最も相同的な軽鎖構造のみに由来するMCデータを用いて行い、そしてこの群において、Asp70が予測された表面残基であった。その後、追加の5つの最も相同的な構造を用いて、位置70は、図13Aに示すように、29.1%の平均露出度であることが見いだされた。加えて、10のうち9の構造は同一の隣接残基を有し、そしてこのセットの平均は29.2%の露出度であった。この残基は、30%カットオフ点に非常に近いようであり、そして表面再構築化の特許は、位置70を表面位置と称するため、露出度のデータをさらに精査した。構造1lveの位置70は、22.5%の相対的露出度であり、これは二番目に低い相対的露出度である27.5%よりも5%少ない。1lveは8番目に最も相同的な構造であり、そしてそれが低い外れ値であったことから、1lveを除いた同一の隣接残基を有する8の構造について平均を取り、そしてこのセットは30.1%の平均露出度であった。最初のmuMy9−6軽鎖の解析及び表面再構築化の特許が軽鎖の位置70を表面位置と称することと併せて、このことは、muMy9−6軽鎖のAsp70が表面残基であるとの保存的な予測をもたらした。
【0141】
[206] 3.8. どの残基がCDRから5Å以内に入るかを決定するための分子モデリング
[207] AbMソフトウエアパッケージを用いて作成した分子モデルを、どのmuMy9−6表面残基がCDRから5Å以内に入るかを決定するために解析した。抗体の表面を再構築化するには、CDRの外側のすべての表面残基を、そのヒト対応物に替えなければならないが、しかしCDR5Å以内に入る残基もまた、抗原の結合及び特異性に寄与する可能性がある。したがって、これらの5Å残基は、ヒト化の過程全般を通じて、同定されそして考慮されなければならない。表面再構築化に用いられるCDRの定義は、重鎖CDR2にはAbMの定義を、そして残りの5つのCDRにはKabatの定義を組み合わせる(図9)。ネズミモデルを、スイス・ビューアー・ソフトフエアを用いて解析し、そして図14は、軽鎖または重鎖配列のいずれかにおける任意のCDR残基から5Å以内である残基を示す。
【0142】
[208] 3.9. 最も相同的なヒト表面の選択
[209] muMy9−6の表面を再構築化するためのヒト抗体表面の候補を、SRソフトウエアを用いて、Kabat抗体配列データベースから得た。このソフトウエアは、抗体データベースから、特定の残基の位置のみを検索するインターフェースを提供する。天然の対を保つため、軽鎖及び重鎖双方の表面残基をまとめて比較した。Kabatデータベースから得た最も相同的なヒト表面を、配列同一性の順位にしたがって整列化した。SR Kabatデータベースソフトウエアによって整列化させた上位5つの表面を、図15に与える。次いで、どのヒト表面がCDRから5Å以内で最少の変更を必要とするであろうかを同定するために、表面を比較した。抗C型肝炎ウイルス抗体LC3bPB(Ivanovski M.ら、1998年、Blood 91(7):2433−42)は、最少数の残基変更(総計10)を必要とし、そしてこれらの残基のうち4つのみが、CDRから5Å以内に入った。muMy9−6の全長可変領域配列もまた、SRを用いたKabatヒト抗体データベースに対して整列化させ、そしてLC3bPBを、14番目に最も類似したヒト可変領域配列として同定した(データは示さず)。LC3bPB抗体は、最も相同的な表面を提供し、そして最少数の5Å残基の変更を必要とするため、これが、muMy9−6を表面再構築化するための最良の候補である。
【0143】
[210] 3.10. ヒト化My9−6抗体のための、My9−6遺伝子の構築
[211] 10の表面残基の変更を、huMy9−6のために、前述のようなPCR突然変異誘発技術を用いて行った。LC3bPBの表面残基のうち6つが、CDRから5Åよりも長く離れていたため、これらの残基を、ヒト化My9−6のすべての型においてマウスからヒトへ変更した(図16A及びB)。CDRから5Å以内に入る4つの表面残基である、Kabatの軽鎖の位置1、3及び45ならびに重鎖の位置64を、My9−6の16のヒト化型を作製するために、ヒトへ変更するか、あるいはマウスと同じく保持した。これらのうち最もヒトに近いのは、すべての10のヒト表面残基を有することから、1.0型である。最大の結合親和性を確実にする点で最も保存的な型は、CDRから5Å以内の4つのマウス表面残基を保持する1.1型である。ヒト化My9−6抗体遺伝子のそれぞれを、一過性でそして安定なトランスフェクションを行うため、抗体発現プラスミド(図5)中にクローニングした。
【0144】
[212] 3.11. 結合データ
[213] 表面再構築化によるヒト化の主要な長所は、非表面のネズミフレームワーク残基を保持することによって、ヒト化My9−6が、親和性を変化させずにCD33と結合し続けるはずであることである。しかしながら、CDRから5Å以内に入る4つの表面残基は、抗原結合に寄与する可能性があり、それゆえに、これらの残基の変更は、結合に負の効果をもたらす恐れがある。この懸念に対処するために、ヒト化My9−6の16の型は、4つの5Å残基位置のそれぞれにおいて、ヒトまたはネズミのいずれかの残基のすべての組み合わせを含む。これらは、すべてのCDRでない表面位置にヒト残基を有する、最良または最もヒトに近い1.0型から、4つの5Å表面位置のそれぞれにネズミ残基を保持し、それゆえに野生型の結合性を保持するはずである、最も保存的な1.1型へ及ぶ。My9−6ヒト化型の結合親和性をネズミMy9−6と比較することによって、野生型の結合性を保持する最もヒトに近い型を、表面再構築化されたヒト化My9−6として選択することが可能である。
【0145】
[214] ネズミMy9−6のヒト化型及びmuMy9−6を用いた直接的及び競合的結合実験を、CD33を発現しているヒト白血病細胞株HL−60上で行った。最も保存的な型(V1.1)に加えて、3つの最もヒトに近いバージョン(V1.0、V1.3、V1.6)についても、HL−60膜または全細胞のいずれかで試験した。図17は、各条件に対するKD値を与え、そして図18は、muMy9−6に対するhuMy9−6 V1.0についての結合曲線の例を示す。最もヒトに近い1.0型を含むヒト化My9−6の型について計算したKD値は、ネズミMy9−6のKD値の実験誤差の範囲内に入る。競合的結合の結果はまた、huMy9−6抗体が、CD33への結合についてmuMy9−6自体と十分同等に競合することが可能であることも実証する。これらのデータが、HL−60膜及び全細胞において、完全ヒト化My9−6 V1.0に対する野生型に近い結合親和性を実証したため、1.0型が最適なヒト化My9−6抗体であることから、追加の型について試験する必要はなかった。
【0146】
[215] ネズミMy9−6抗体を、結合活性を失うことなく完全にヒト化した。これらの表面残基のうちの4つがCDRから5Å以内にあったにもかかわらず、マウスからヒトへの表面残基のいずれの変更も、結合親和性の減少をもたらさなかった。CDRから5Å以内の残基は、これらのCDRの構造に影響を与える可能性のある、潜在的に重大なファン・デル・ワールス接触を作るものと考えられる。
【0147】
[216] My9−6をヒト化した結果は、表面再構築化された抗体数が増えるにつれて、実際の結合データに基づいた徹底的な残基位置の解析が、単にCDRから5Å以内にある任意の残基に目を向けるよりも、疑わしい残基を標的とする効果的な方法となる可能性があることを示唆する。
【0148】
[217] ヒト化My9−6 V1.0(huMy9−6)は、本明細書に記載された手順を用いてヒト化された4番目の抗体である。ネズミ抗体の可変領域のフレームワークを表面再構築化することによるヒト化は、CDRグラフトを含むヒト化の標準的な方法における改良技術として開発されたが、結合活性を維持するのに、広範な開発及び再操作を必要とする可能性もある。このことは、完全にヒト表面を有する十分に活性の抗体を作り出すのに10のみの表面残基の変更を伴った、表面再構築化されたhuMy9−6抗体とは、対照をなす。
【0149】
[218] 実施例4. My9−6−DM1免疫複合体
[219] メイタンシノイド薬物であるDM1と結合させたMy9−6抗体を用いて、マウスにおいてヒト腫瘍異種移植片を用いた前臨床有効性試験を行った。
【0150】
[220] 以下に論じるように、My9−6−DM1は、修飾されていない抗体のCD33に対する特異性及び結合親和性を維持し、そして、in vitroにおいてCD33陽性腫瘍細胞に対して強力な抗原特異的細胞毒性を示した。確立された皮下HL−60腫瘍異種移植片を有するSCIDマウスをMy9−6−DM1で治療した結果、毒性を示さずそして最大耐用量を十分に下回る用量(20mg結合抗体/kg/日、静脈内投与x5日間)にて、完全に腫瘍が根絶された。対照的に、My9−6抗体のみでの治療は、ビヒクル対照と比較して、HL−60腫瘍の増殖に効果がなかった。同様な治療有効性は、皮下THP−1異種移植片を有するマウスの治療において、My9−6−DM1で認められた。
【0151】
[221] 4.1. 試薬
[222] 抗体は、上述のヒトCD33に対するネズミモノクローナルMy9−6抗体であった。
[223] 抗体修飾剤は、N−スクシンイミジル4−(2−ピリジルジチオ)ペンタノエート(SPP)であった:
【0152】
【化2】

【0153】
[224] 細胞毒性薬物は、微生物の発酵産物であるアンサマイトシンP3から合成されるメイタンシンアナログであるDM1であった。DM1は、チューブリン重合の強力な阻害剤である。
【0154】
【化3】

【0155】
[225] 4.2. My9−6−DM1の調製
My9−6−DM1を、抗体一分子につき3〜5のピリジルジチオ基を導入するためにMy9−6抗体をSPPで修飾することによって、作製した。DM1のチオール置換基と抗体の活性ジスルフィド官能基との間でジスルフィド交換を行うことによって、DM1を含有する抗体複合体が提供された。
【0156】
【化4】

【0157】
[227] 4.3. フローサイトメトリーによる、抗体及び抗体複合体の結合性の解析
[228] HL−60を、様々な濃度のMy9−6抗体またはMy9−6−DM1とインキュベートした。次いで、細胞を洗浄し、そしてFITC標識抗ネズミIgG二次抗体とインキュベートした。追加の洗浄を行った後に、細胞を2%ホルムアルデヒドで固定化し、そして細胞に付随した蛍光を、BD FACScanフローサイトメーターを用いて定量した。My9−6−DM1は、修飾されていない抗体と同程度のCD33との特異的結合性を維持する(図19)。
【0158】
[229] 4.4. In vitro細胞毒性アッセイ
[230] My9−6−DM1の細胞毒性を、CD33を発現しているTHP−1細胞及びCD33陰性細胞株であるNamalwaを用いて測定した。細胞を、96ウェルプレート中の複合体を含有する培地に播き、そしてコロニーが形成されるまで(2〜3週間)37℃にてインキュベートした。次いで、コロニーを計数し、そして生存した画分を、演算におけるポアソン分布を用いて判定した。
【0159】
[231] 4.5. In vivoマウス腫瘍異種移植試験
[232] 皮下腫瘍モデル − HL−60ヒト前骨髄球性白血病細胞(0.1mL中に5x10細胞)を、雌SCIDマウスの右側腹部に皮下接種した。マウスを、腫瘍の大きさが100mm(大きな腫瘍モデルでは、400mm)に達したときに、側部尾静脈に静脈内注射することによって治療した。腫瘍の大きさ及びマウス体重を、週に2回測定した。生存モデル − HL−60細胞(0.1mL中に5x10細胞)を、雌SCIDマウスの側部尾静脈に静脈内注射した。腫瘍細胞を注射後第11日に、治療を開始した。マウスを、瀕死、腫瘍量または死亡について毎日確認した。体重を、週に2回測定した。
【0160】
[233] 4.6. My9−6−DM1のin vitro特異性及び有効性
[234] CD33発現細胞(THP−1)に対するMy9−6−DM1の細胞毒性を、治療後に増殖することが可能なコロニー数を定量することによって殺細胞活性を測定する、クローン形成法を用いて、CD33陰性細胞株(Namalwa)と比較して試験した。My9−6−DM1は、in vitroにおいて、CD33陽性ヒト腫瘍細胞に対して強力な殺細胞活性を示す(図20)。CD33陰性細胞に対して有意な毒性は認められず、CD−33依存性の細胞毒性が、抗CD33抗体であるMy9−6による特異的なターゲティングに起因することが、示唆された。
【0161】
[235] 4.7. マウスにおけるヒト腫瘍異種移植片に対するMy9−6−DM1の有効性
[236] In vitroにおけるMy9−6−DM1の有効性を、ヒトHL−60腫瘍細胞異種移植片を有するSCIDマウスを用いて測定した。HL−60細胞を皮下注射し、そして腫瘍を平均100mmの大きさに増殖させた。My9−6−DM1複合体を、図21に示した用量にて、1日1回5日間静脈内に送達した。用量は、複合体中のmg抗体として表し、抗体1mgにつきDM1およそ15μgのDM1用量に相当する。腫瘍体積を、治療有効性の指標として測定し、そしてマウス体重を、治療による毒性の指標とするためにモニターした。My9−6−DM1は、ほとんど毒性を引き起こさない用量にて、ヒトHL−60細胞異種移植片を有するマウスの長期治癒を誘導する(図21)。試験されたもっとも高い2用量(19及び26mg/kg)において、腫瘍の完全な退縮が、10%より少ない最大体重減少とともに認められた(図21A及びB)。試験された最低用量(13mg/kg)においてでさえ、5例中2例のマウスは完全な治癒を示したが、一方、他の3例のマウスは、およそ20日間遅れての腫瘍の増殖を伴う、腫瘍の緩解を示した。同様な結果は、THP−1白血病細胞株を用いた場合にも認められ、該細胞株において、My9−6−DM1はヒトTHP−1腫瘍異種移植片を有するマウスの長期治癒を誘導した(データは示さず)。
【0162】
[237] これらの結果は、My9−6抗体のみでの治療によって得られたものとは著しっく対照的である。抗体のみでは、50mg/kgにおいてでさえ腫瘍細胞の増殖に効果がない(図21C)。
【0163】
[238] My9−6−DM1の活性を、承認された抗CD33抗体−カリケアマイシン複合体であるゲムツズマブ・オゾガマイシンと比較した。ゲムツズマブ・オゾガマイシンを、3用量について4日毎に投与した。予備実験では、ゲムツズマブ・オゾガマイシンは、公表されたヌードマウスにおけるMTD(0.3mg/kg)では、SCIDマウスに対して毒性が強すぎることが実証された(データは示さず)。有意な毒性は、この実験において、100及び200μg/kgの用量でも認められた(図21F)。ゲムツズマブ・オゾガマイシンは、最大耐用量(100μg/kg)にて、このモデルにおいてごく中程度の腫瘍の緩解及び増殖遅延(約25日)を示した(図21E)。
【0164】
[239] 別の実験において、My9−6−DM1複合体の抗腫瘍活性を、非結合型の親薬物であるメイタンシンの活性と比較した。HL−60腫瘍異種移植片を有するマウスを、複合体 23mg抗体/kgまたは350μg DM1/kg;非結合型薬物 350μg/kg;または非結合型抗体 23mg/kgにて、1日1回5日間治療した。メイタンシンのみで治療された6例中3例のマウスは、治療後第2日に死亡し、この薬物レベルが非常に毒性であることが示された。しかしながら、この薬物は、残りの3例のマウスにおいて、腫瘍の増殖に有意な影響を示し、およそ10日の増殖遅延を伴った(図22)。
【0165】
[240] My9−6抗体のみでは、腫瘍の増殖に影響を及ぼさなかったが、My9−6−DM1複合体は、腫瘍の完全な緩解をもたらした。複合体での治療がマウス体重へ及ぼす影響(12%減少)は、前回の実験よりもわずかに大きく、そして、複合体の合成におけるバッチ間の差異を反映する可能性がある。複合体で治療された6例中2例のマウスにおいて、腫瘍の再増殖が、第70日より認められた。これらの動物は、初回の治療と同一の、My9−6−DM1による二度目の治療を受けた。二度目の治療は、結果として、「再発」腫瘍の完全な緩解を、有害毒性を認めることなくもたらし、腫瘍の再増殖が複合体耐性細胞の増殖に起因するものではないことが示唆された。
【0166】
[241] この異種移植モデルにおけるMy9−6−DM1の高い有効性は、複合体が、大きなHL−60腫瘍に対してさえも効果的である可能性があることを示唆した。腫瘍を、治療開始に先立って、腫瘍体積>400mmに増殖させた。加えて、My9−6−DM1活性の標準的な化学療法薬物との比較を行った。My9−6−DM1は、SCIDマウスにおいて大きな腫瘍の完全な緩解をもたらした(図23A及びB)。この場合も、再発腫瘍(マウス6例中2例)は、My9−6−DM1での二度目の治療に感受性であった。標準的な化学療法剤(Ara−C及びイダルビシン)は、腫瘍の増殖にほとんど効果がなかった。より高用量の薬物用量は、マウスに対して極めて毒性であった(示さず)。
【0167】
[242] 4.8. HL−60細胞マウス生存モデルにおけるMy9−6−DM1の有効性
[243] 腫瘍異種移植モデルにおけるMy9−6−DM1の有効性は顕著であるが、一方で、HL−60細胞を直接マウス尾静脈に注射するマウス生存モデルにおいて、複合体の活性を調べることも重要である。このモデルでは、対照マウスは細胞注射後第30〜50日に死亡する。細胞注射後第11日にMy9−6−DM1で治療を開始されたマウスは、生存性の劇的な増加を示し、第70日において8例中7例のマウスが生存した(図24A)。メイタンシンのみでも、8例中2例のマウスが治療開始後まもなく死亡し、薬物毒性が示唆されたものの、このモデルにおいてマウスの生存性に有意な影響を示した。皮下異種移植モデルと比較した場合の、このモデルにおけるメイタンシンの相対的な有効性は、この場合において、HL−60腫瘍が、薬物作用に対してより感受性である可能性があることを示唆する。治療開始がさらに遅れると、標的薬物と非標的薬物との間により著しい差異が実証される可能性がある。しかしながら、このモデルにおいてでさえ、標準的な化学療法は、有意な生存性の増大を提供しなかった(図24B)。最も高用量の併用用量は、有意に明らかな薬物毒性を示した。My9−6抗体のみ及びゲムツズマブ・オゾガマイシンの双方は、中程度の生存性増加を示した。
【0168】
[244] 寄託の陳述
[245] ネズミMy9−6抗体を作るハイブリドーマを、2002年11月7日に、American Type Culture Collection,PO Box 1549,Manassas,VA 20108に、ブダペスト条約の条項にしたがって寄託し、そして寄託番号PTA−4786を割り当てられた。
【0169】
[246] 特定の特許及び印刷刊行物を、本開示において参照し、その教示は、そのすべてのそれぞれを、本明細書においてそれぞれ参照によって援用する。
[247] 本発明を詳細かつその特定の態様に関して記載したが、種々の変更及び修正を、その精神及び範囲から逸脱することなくこれに対して行うことが可能であることは、当業者にとって明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0170】
【図1】[35] 図1は、競合結合実験の結果を示す。125I−標識My9−6抗体(3x10−9M)のCD33陽性U−937細胞への結合を、濃度を増加させたMy9あるいはMy9−6抗体の存在下で、アッセイした。
【図2】[36] 図2は、軽鎖シグナル配列に対するMy9−6縮重プライマーを示す。
【図3】[37] 図3は、muMy9−6可変領域の表面を予測するのに用いたブルックヘブンのデータベースに由来する、127の抗体構造のファイル名を示す。
【図4】[38] 図4は、16のMy9−6の表面再構築化型ならびにキメラMy9−6抗体を構築するのに用いたPCRプライマーを示す。
【図5】[39] 図5は、ヒト化抗体を構築しそして発現するのに用いたプラスミドを示す。(A):軽鎖クローニングプラスミド。(B):重鎖クローニングプラスミド。(C):哺乳動物抗体発現プラスミド。
【図6】[40] 図6Aは、RT−PCRにより生成したmuMy9−6軽鎖のcDNAクローンに由来するアミノ酸配列と比較した、エドマン配列決定の結果を示す。
【0171】
[41] 図6Bは、CDR1及びCDR2配列をそれぞれ含有する、1319Da及び1122DaのペプチドフラグメントのMS−MS配列解析による結果を示す。CDR配列は、太字で表す。
【図7】[42] 図7は、1788DaペプチドのMS−MS配列解析による結果、及び2つのcDNAクローンに由来する対応した配列を示す。
【図8−A】[43] 図8Aは、ネズミMy9−6抗体の軽鎖可変領域のcDNA配列及び推定アミノ酸配列を示す。3つのCDRを下線で示す。
【図8−B】[44] 図8Bは、ネズミMy9−6抗体の重鎖可変領域のcDNA配列及び推定アミノ酸配列を示す。3つのCDRを下線で示す。
【図9】[45] 図9は、Kabatの定義によって決定された軽鎖及び重鎖CDRを示す。
【図10】[46] 図10は、8−27及びV102遺伝子の生殖系列配列とともに整列化させた、ネズミMy9−6抗体の軽鎖及び重鎖アミノ酸配列を示す。点(.)は、配列が同一であることを示す。
【図11−A】[47] 図11A及びBは、ブルックヘブンのデータベースに解明されているファイルを有する、muMy9−6配列に最も相同的な10の軽鎖(A)及び重鎖(B)抗体配列を示す。配列を、最も相同的なものから最も相同的でないものへの順番で整列化した。
【図11−B】[47] 図11A及びBは、ブルックヘブンのデータベースに解明されているファイルを有する、muMy9−6配列に最も相同的な10の軽鎖(A)及び重鎖(B)抗体配列を示す。配列を、最も相同的なものから最も相同的でないものへの順番で整列化した。
【図12】[48] 図12A及びBは、muMy9−6抗体軽鎖(A)及び重鎖(B)の各Kabat位置の平均露出度を示す。10の最も相同的な軽鎖及び重鎖配列の各Kabat位置の相対的な溶媒露出度を、平均しそしてx軸上に表す。
【図13−A】[49] 図13Aは、MCソフトウエアを用いて計算した、10の最も相同的な軽鎖構造の残基の溶媒露出度を示し、そして、エクセルを用いて作表した各Kabat位置の平均を示す。この表は、25%よりも大きな平均溶媒露出度である、CDRでない位置のデータを示す。表面残基を、30%よりも大きな平均溶媒露出度である残基として定義する。25%〜35%の平均露出度である位置を、その位置及び両側に隣接する2つの位置にて同一の残基を有する構造のみの平均露出度を計算することによって、さらに解析した。NAは、同一の隣接する位置が利用可能でないことを指す。位置15及び70は、最終列に与えられた最終的な表面予測に到達するのに、さらに計算を要した。
【図13−B】[50] 図13Bは、MCソフトウエアを用いて計算した、10の最も相同的な重鎖構造の残基の溶媒露出度を示し、そして、エクセルを用いて作表した各Kabat位置の平均を示す。この表は、25%よりも大きな平均溶媒露出度である、CDRでない位置のデータを示す。表面残基を、30%よりも大きな平均溶媒露出度である残基として定義する。25%〜35%の平均露出度である位置を、その位置及び両側に隣接する2つの位置にて同一の残基を有する構造のみの平均露出度を計算することによって、さらに解析した。NAは、同一の隣接する位置が利用可能でないことを指す。
【図14】[51] 図14は、CDR残基から5Å以内に入るMy9−6フレームワークの表面残基を示す。
【図15】[52] 図15は、Kabatデータベースから抽出した上位5つのヒト配列を示す。整列化を、SR(Pedersen,1993年)によって行った。CDRから5Å以内に入るmuMy9−6の残基を、下線で示す。
【図16−A】[53] 図16A及びBは、16のヒト化My9−6軽鎖可変領域配列(A)及び16のヒト化重鎖可変領域配列(B)を、マウスMy9−6と整列化させたものを示す。点(.)は、ヒト化型1.0と配列が同一であることを表す。ネズミとヒトのMy9−6で異なる表面残基を、下線で示す。
【図16−B】[53] 図16A及びBは、16のヒト化My9−6軽鎖可変領域配列(A)及び16のヒト化重鎖可変領域配列(B)を、マウスMy9−6と整列化させたものを示す。点(.)は、ヒト化型1.0と配列が同一であることを表す。ネズミとヒトのMy9−6で異なる表面残基を、下線で示す。
【図17】[54] 図17は、HL−60膜及びHL−60全細胞における直接的結合アッセイならびにHL−60膜における競合的結合アッセイによって計算された、My9−6のK値を示す。N=2である*を除き、N=3。
【図18】[55] 図18は、huMy9−6 V1.0に対する結合曲線を示す。(A):HL−60膜における直接的結合。(B):HL−60全細胞における直接的結合。(C):HL−60膜における競合的結合。
【図19】[56] 図19は、HL−60細胞におけるMy9−6−DM1及びMy9−6抗体の結合性を比較したものを示す。
【図20】[57] 図20は、CD33発現ヒト腫瘍細胞に対するMy9−6−DM1のin vitro細胞毒性を示す。
【図21】[58] 図21は、HL−60異種移植片を有するSCIDマウスにおける、My9−6−DM1の有効性実験の結果を示す。HL−60腫瘍の増殖における、My9−6−DM1(A)及び修飾されていないMy9−6抗体(C)の効果を、評価した。マウス体重を、毒性の指標としてモニターした(B、D)。
【図22】[59] 図22は、HL−60異種移植片を有するSCIDマウスにおいて、My9−6−DM1の有効性を非結合型の薬物であるメイタンシンと比較したものを示す(A)。マウス体重を、毒性の指標としてモニターした(B)。2例の治療マウスにおいて再発した腫瘍を、My9−6−DM1の第二クールで治療した。
【図23】[60] 図23A及びBは、大きなHL−60異種移植片を有するSCIDマウスにおいて、My9−6−DM1の抗腫瘍有効性を標準的な化学療法と比較したものを示す(A)。マウス体重を、毒性の指標としてモニターした(B)。2例の治療マウスにおいて再発した腫瘍を、My9−6−DM1の第二クールで再治療した。
【図24】[61] 図24A及びBは、HL−60生存モデルにおいて、My9−6−DM1の抗腫瘍有効性をゲムツズマブ・オゾガマイシン及び標準的な化学療法と比較したものを示す。HL−60細胞を、SCIDマウスに静脈内注射した。示した治療を、細胞注射後第11日に開始した。治療は、ゲムツズマブ・オゾガマイシン(1日4回x3)を除き、1日1回x5の静脈内投与であった。
【配列表】



































【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1〜6:
SYYIH(配列番号1)、
VIYPGNDDISYNQKFXG(配列番号2)、ここでXはKまたはQである、
EVRLRYFDV(配列番号3)、
KSSQSVFFSSSQKNYLA(配列番号4)、
WASTRES(配列番号5)、
HQYLSSRT(配列番号6)、
からなる群より選択されたアミノ酸配列を有する、少なくとも1つの相補性決定領域を含み、そしてCD33への結合能を有する、単離された抗体またはそのエピトープ結合フラグメント。
【請求項2】
少なくとも1つの重鎖可変領域及び少なくとも1つの軽鎖可変領域を含み、前記重鎖可変領域が、配列番号1〜3:
SYYIH(配列番号1)、
VIYPGNDDISYNQKFXG(配列番号2)、ここでXはKまたはQである、
EVRLRYFDV(配列番号3)、
によってそれぞれ表されるアミノ酸配列を有する3つの相補性決定領域を含み、そして前記軽鎖可変領域が、配列番号4〜6:
KSSQSVFFSSSQKNYLA(配列番号4)、
WASTRES(配列番号5)、
HQYLSSRT(配列番号6)、
によってそれぞれ表されるアミノ酸配列を有する3つの相補性決定領域を含む、抗体またはそのエピトープ結合フラグメント。
【請求項3】
前記重鎖可変領域が、配列番号7:
QVQLQQPGAEVVKPGASVKMSCKASGYTFTSYYIHWIKQTPGQGLEWVGVIYPGNDDISYNQKFKGKATLTADKSSTTAYMQLSSLTSEDSAVYYCAREVRLRYFDVWGAGTTVTVSS
によって表されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、請求項2に記載の抗体またはそのエピトープ結合フラグメント。
【請求項4】
前記重鎖可変領域が、配列番号7:
QVQLQQPGAEVVKPGASVKMSCKASGYTFTSYYIHWIKQTPGQGLEWVGVIYPGNDDISYNQKFKGKATLTADKSSTTAYMQLSSLTSEDSAVYYCAREVRLRYFDVWGAGTTVTVSS
によって表されるアミノ酸配列と少なくとも95%の配列同一性を有する、請求項2に記載の抗体またはそのエピトープ結合フラグメント。
【請求項5】
前記重鎖可変領域が、配列番号7:
QVQLQQPGAEVVKPGASVKMSCKASGYTFTSYYIHWIKQTPGQGLEWVGVIYPGNDDISYNQKFKGKATLTADKSSTTAYMQLSSLTSEDSAVYYCAREVRLRYFDVWGAGTTVTVSS
によって表されるアミノ酸配列を有する、請求項2に記載の抗体またはそのエピトープ結合フラグメント。
【請求項6】
前記軽鎖可変領域が、配列番号8:
NIMLTQSPSSLAVSAGEKVTMSCKSSQSVFFSSSQKNYLAWYQQIPGQSPKLLIYWASTRESGVPDRFTGSGSGTDFTLTISSVQSEDLAIYYCHQYLSSRTFGGGTKLEIKR
によって表されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、請求項2に記載の抗体またはそのエピトープ結合フラグメント。
【請求項7】
前記軽鎖可変領域が、配列番号8:
NIMLTQSPSSLAVSAGEKVTMSCKSSQSVFFSSSQKNYLAWYQQIPGQSPKLLIYWASTRESGVPDRFTGSGSGTDFTLTISSVQSEDLAIYYCHQYLSSRTFGGGTKLEIKR
によって表されるアミノ酸配列と少なくとも95%の配列同一性を有する、請求項2に記載の抗体またはそのエピトープ結合フラグメント。
【請求項8】
前記軽鎖可変領域が、配列番号8:
NIMLTQSPSSLAVSAGEKVTMSCKSSQSVFFSSSQKNYLAWYQQIPGQSPKLLIYWASTRESGVPDRFTGSGSGTDFTLTISSVQSEDLAIYYCHQYLSSRTFGGGTKLEIKR
によって表されるアミノ酸配列を有する、請求項2に記載の抗体またはそのエピトープ結合フラグメント。
【請求項9】
前記重鎖可変領域が、配列番号9:
QVQLQQPGAEVVKPGASVKMSCKASGYTFTSYYIHWIKQTPGQGLEWVGVIYPGNDDISYNQKFQGKATLTADKSSTTAYMQLSSLTSEDSAVYYCAREVRLRYFDVWGQGTTVTVSS
によって表されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、請求項2に記載の抗体またはそのエピトープ結合フラグメント。
【請求項10】
前記重鎖可変領域が、配列番号9:
QVQLQQPGAEVVKPGASVKMSCKASGYTFTSYYIHWIKQTPGQGLEWVGVIYPGNDDISYNQKFQGKATLTADKSSTTAYMQLSSLTSEDSAVYYCAREVRLRYFDVWGQGTTVTVSS
によって表されるアミノ酸配列と少なくとも95%の配列同一性を有する、請求項2に記載の抗体またはそのエピトープ結合フラグメント。
【請求項11】
前記重鎖可変領域が、配列番号9:
QVQLQQPGAEVVKPGASVKMSCKASGYTFTSYYIHWIKQTPGQGLEWVGVIYPGNDDISYNQKFQGKATLTADKSSTTAYMQLSSLTSEDSAVYYCAREVRLRYFDVWGQGTTVTVSS
によって表されるアミノ酸配列を有する、請求項2に記載の抗体またはそのエピトープ結合フラグメント。
【請求項12】
前記軽鎖可変領域が、配列番号10:
EIVLTQSPGSLAVSPGERVTMSCKSSQSVFFSSSQKNYLAWYQQIPGQSPRLLIYWASTRESGVPDRFTGSGSGTDFTLTISSVQPEDLAIYYCHQYLSSRTFGQGTKLEIKR
によって表されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、請求項2に記載の抗体またはそのエピトープ結合フラグメント。
【請求項13】
前記軽鎖可変領域が、配列番号10:
EIVLTQSPGSLAVSPGERVTMSCKSSQSVFFSSSQKNYLAWYQQIPGQSPRLLIYWASTRESGVPDRFTGSGSGTDFTLTISSVQPEDLAIYYCHQYLSSRTFGQGTKLEIKR
によって表されるアミノ酸配列と少なくとも95%の配列同一性を有する、請求項2に記載の抗体またはそのエピトープ結合フラグメント。
【請求項14】
前記軽鎖可変領域が、配列番号10:
EIVLTQSPGSLAVSPGERVTMSCKSSQSVFFSSSQKNYLAWYQQIPGQSPRLLIYWASTRESGVPDRFTGSGSGTDFTLTISSVQPEDLAIYYCHQYLSSRTFGQGTKLEIKR
によって表されるアミノ酸配列を有する、請求項2に記載の抗体またはそのエピトープ結合フラグメント。
【請求項15】
CD33と特異的に結合する、精製抗体またはそのエピトープ結合フラグメントであって、前記抗体またはエピトープ結合フラグメントの重鎖可変領域の一部分が、配列番号7:
QVQLQQPGAEVVKPGASVKMSCKASGYTFTSYYIHWIKQTPGQGLEWVGVIYPGNDDISYNQKFKGKATLTADKSSTTAYMQLSSLTSEDSAVYYCAREVRLRYFDVWGAGTTVTVSS
によって表されるアミノ酸配列を有し、そして前記抗体またはエピトープ結合フラグメントの軽鎖可変領域の一部分が、配列番号8:
NIMLTQSPSSLAVSAGEKVTMSCKSSQSVFFSSSQKNYLAWYQQIPGQSPKLLIYWASTRESGVPDRFTGSGSGTDFTLTISSVQSEDLAIYYCHQYLSSRTFGGGTKLEIKR
によって表されるアミノ酸配列を有する、前記精製抗体またはそのエピトープ結合フラグメント。
【請求項16】
CD33と特異的に結合する、ヒト化もしくは表面再構築化された抗体またはそのエピトープ結合フラグメントであって、前記抗体またはエピトープ結合フラグメントの重鎖可変領域の一部分が、配列番号9:
QVQLQQPGAEVVKPGASVKMSCKASGYTFTSYYIHWIKQTPGQGLEWVGVIYPGNDDISYNQKFQGKATLTADKSSTTAYMQLSSLTSEDSAVYYCAREVRLRYFDVWGQGTTVTVSS
によって表されるアミノ酸配列を有し、そして前記抗体またはエピトープ結合フラグメントの軽鎖可変領域の一部分が、配列番号10:
EIVLTQSPGSLAVSPGERVTMSCKSSQSVFFSSSQKNYLAWYQQIPGQSPRLLIYWASTRESGVPDRFTGSGSGTDFTLTISSVQPEDLAIYYCHQYLSSRTFGQGTKLEIKR
によって表されるアミノ酸配列を有する、前記ヒト化もしくは表面再構築化された抗体またはそのエピトープ結合フラグメント。
【請求項17】
薬物またはプロドラッグに連結した、請求項1に記載の抗体またはそのエピトープ結合フラグメントを含む、免疫複合体。
【請求項18】
薬物またはプロドラッグに連結した、請求項2に記載の抗体またはそのエピトープ結合フラグメントを含む、免疫複合体。
【請求項19】
前記薬物またはプロドラッグが、メイタンシノイド、タキソイド、CC−1065、CC−1065アナログ、ドラスタチン、ドラスタチンアナログ、メトトレキサート、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、メルファラン、マイトマイシンC、クロラムブシル、カリケアマイシン、及びその誘導体からなる群より選択される、請求項17に記載の免疫複合体。
【請求項20】
前記薬物またはプロドラッグが、メイタンシノイド、タキソイド、CC−1065、CC−1065アナログ、ドラスタチン、ドラスタチンアナログ、メトトレキサート、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、メルファラン、マイトマイシンC、クロラムブシル、カリケアマイシン、及びその誘導体からなる群より選択される、請求項18に記載の免疫複合体。
【請求項21】
請求項1に記載の抗体またはそのエピトープ結合フラグメント、及び、薬物またはプロドラッグを含む、組成物。
【請求項22】
請求項2に記載の抗体またはそのエピトープ結合フラグメント、及び、薬物またはプロドラッグを含む、組成物。
【請求項23】
請求項1に記載の抗体またはそのエピトープ結合フラグメント、及び医薬的に許容可能な剤を含む、医薬組成物。
【請求項24】
請求項2に記載の抗体またはそのエピトープ結合フラグメント、及び医薬的に許容可能な剤を含む、医薬組成物。
【請求項25】
請求項17に記載の免疫複合体及び医薬的に許容可能な剤を含む、医薬組成物。
【請求項26】
請求項18に記載の免疫複合体及び医薬的に許容可能な剤を含む、医薬組成物。
【請求項27】
請求項21に記載の組成物及び医薬的に許容可能な剤を含む、医薬組成物。
【請求項28】
請求項22に記載の組成物及び医薬的に許容可能な剤を含む、医薬組成物。
【請求項29】
前記抗体または抗体フラグメントが標識された、請求項1に記載の抗体を含む診断試薬。
【請求項30】
前記抗体または抗体フラグメントが標識された、請求項2に記載の抗体を含む診断試薬。
【請求項31】
前記標識が、ビオチン標識、酵素標識、放射性標識、フルオロフォア、クロモフォア、造影剤及び金属イオンからなる群より選択される、請求項29に記載の診断試薬。
【請求項32】
前記標識が、ビオチン標識、酵素標識、放射性標識、フルオロフォア、クロモフォア、造影剤及び金属イオンからなる群より選択される、請求項30に記載の診断試薬。
【請求項33】
CD33を発現する細胞の増殖を阻害する方法であって、前記細胞を請求項1または2に記載の抗体またはそのエピトープ結合フラグメントと接触させることを含む、前記方法。
【請求項34】
CD33を発現する細胞の増殖を阻害する方法であって、前記細胞を請求項17または18に記載の免疫複合体と接触させることを含む、前記方法。
【請求項35】
CD33を発現する細胞の増殖を阻害する方法であって、前記細胞を請求項21または22に記載の組成物と接触させることを含む、前記方法。
【請求項36】
CD33を発現する細胞の増殖を阻害する方法であって、前記細胞を請求項23〜28から選択される医薬組成物と接触させることを含む、前記方法。
【請求項37】
CD33を発現している疾患を有する個体を治療する方法であって、前記個体に請求項1または2に記載の抗体またはエピトープ結合フラグメントの有効量を投与することを含む、前記方法。
【請求項38】
CD33を発現している疾患を有する個体を治療する方法であって、前記個体に請求項17または18に記載の免疫複合体の有効量を投与することを含む、前記方法。
【請求項39】
CD33を発現している疾患を有する個体を治療する方法であって、前記個体に請求項21または22に記載の組成物の有効量を投与することを含む、前記方法。
【請求項40】
CD33を発現している疾患を有する個体を治療する方法であって、前記個体に請求項23または24の医薬組成物の有効量を投与することを含む、前記方法。
【請求項41】
CD33を発現している疾患を有する個体を治療する方法であって、前記個体に請求項25または26に記載の医薬組成物の有効量を投与することを含む、前記方法。
【請求項42】
CD33を発現している疾患を有する個体を治療する方法であって、前記個体に請求項27または28に記載の医薬組成物の有効量を投与することを含む、前記方法。
【請求項43】
CD33を発現している疾患を有する個体を治療する方法であって、前記個体の1またはそれより多くの細胞を、請求項1または2に記載の抗体またはそのエピトープ結合フラグメントの有効量とex vivoで接触させることを含む、前記方法。
【請求項44】
CD33を発現している疾患を有する個体を治療する方法であって、前記個体の1またはそれより多くの細胞を、請求項17または18に記載の免疫複合体の有効量とex vivoで接触させることを含む、前記方法。
【請求項45】
CD33を発現している疾患を有する個体を治療する方法であって、前記個体の1またはそれより多くの細胞を、請求項21または22に記載の組成物の有効量とex vivoで接触させることを含む、前記方法。
【請求項46】
CD33を発現している疾患を有する個体を治療する方法であって、前記個体の1またはそれより多くの細胞を、請求項23〜28から選択される医薬組成物の有効量とex vivoで接触させることを含む、前記方法。
【請求項47】
前記疾患が、骨髄異形成症候群(MDS)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)及び前骨髄球性白血病(PML)からなる群より選択される疾患である、請求項37に記載の治療方法。
【請求項48】
前記疾患が、骨髄異形成症候群(MDS)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)及び前骨髄球性白血病(PML)からなる群より選択される疾患である、請求項38に記載の治療方法。
【請求項49】
前記疾患が、骨髄異形成症候群(MDS)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)及び前骨髄球性白血病(PML)からなる群より選択される疾患である、請求項39に記載の治療方法。
【請求項50】
前記疾患が、骨髄異形成症候群(MDS)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)及び前骨髄球性白血病(PML)からなる群より選択される疾患である、請求項40に記載の治療方法。
【請求項51】
前記疾患が、骨髄異形成症候群(MDS)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)及び前骨髄球性白血病(PML)からなる群より選択される疾患である、請求項41に記載の治療方法。
【請求項52】
前記疾患が、骨髄異形成症候群(MDS)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)及び前骨髄球性白血病(PML)からなる群より選択される疾患である、請求項42に記載の治療方法。
【請求項53】
前記疾患が、骨髄異形成症候群(MDS)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)及び前骨髄球性白血病(PML)からなる群より選択される疾患である、請求項43に記載の治療方法。
【請求項54】
前記疾患が、骨髄異形成症候群(MDS)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)及び前骨髄球性白血病(PML)からなる群より選択される疾患である、請求項44に記載の治療方法。
【請求項55】
前記疾患が、骨髄異形成症候群(MDS)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)及び前骨髄球性白血病(PML)からなる群より選択される疾患である、請求項45に記載の治療方法。
【請求項56】
前記疾患が、骨髄異形成症候群(MDS)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)及び前骨髄球性白血病(PML)からなる群より選択される疾患である、請求項46に記載の治療方法。
【請求項57】
生体試料が骨髄性癌細胞を含有するかどうかを判定する方法であって、以下:
(a)前記生体試料を請求項29または30に記載の診断試薬と接触させること;
及び、
(b)前記試薬の前記試料内での分布を検出すること;
を含む、前記方法。
【請求項58】
前記癌が、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)及び前骨髄球性白血病(PML)からなる群より選択される癌である、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
CD33と特異的に結合する改良抗体またはそのエピトープ結合フラグメントであって、以下:
(a)配列番号7及び配列番号8の少なくとも1つを含む、抗体またはそのエピトープ結合フラグメントをコードするDNAを、提供すること;
(b)前記DNAによってコードされる前記抗体またはそのエピトープ結合フラグメントのアミノ酸配列を変えるように、前記DNAに少なくとも1つのヌクレオチド変異、欠失、挿入または付加を導入すること;
(c)前記抗体またはエピトープ結合フラグメントを発現させること;
(d)前記の発現させた抗体またはエピトープ結合フラグメントを前記改良のためにスクリーニングし、それによって改良抗体またはエピトープ結合フラグメントを調製すること;
によって調製された、前記改良抗体または抗体フラグメント。
【請求項60】
CD33と特異的に結合する改良抗体またはそのエピトープ結合フラグメントであって、以下:
(a)配列番号9及び配列番号10の少なくとも1つを含む、抗体またはそのエピトープ結合フラグメントをコードするDNAを、提供すること;
(b)前記DNAによってコードされる前記抗体またはそのエピトープ結合フラグメントのアミノ酸配列を変えるように、前記DNAに少なくとも1つのヌクレオチド変異、欠失、挿入または付加を導入すること;
(c)前記抗体またはエピトープ結合フラグメントを発現させること;
(d)前記の発現させた抗体またはエピトープ結合フラグメントを前記改良のためにスクリーニングし、それによって改良抗体またはエピトープ結合フラグメントを調製すること;
によって調製された、前記改良抗体または抗体フラグメント。
【請求項61】
前記改良がCD33に対する親和性の増加である、請求項59または60に記載の改良抗体または抗体フラグメント。
【請求項62】
前記の少なくとも1つのヌクレオチド変異、欠失、挿入または付加が、オリゴヌクレオチドを介した部位特異的突然変異誘発、カセット突然変異誘発、変異性(error−prone)PCR、DNAシャフリング及び大腸菌(E.coli)突然変異誘発株の使用からなる群より選択される方法によってなされる、請求項59または60に記載の改良抗体または抗体フラグメント。
【請求項63】
請求項1または2に記載の抗体またはそのエピトープ結合フラグメントをコードする、単離されたポリヌクレオチド。
【請求項64】
請求項1または2に記載の抗体またはそのエピトープ結合フラグメントの軽鎖または重鎖をコードする、単離されたポリヌクレオチド。
【請求項65】
請求項63に記載のポリヌクレオチドを含む、組換えベクター。
【請求項66】
請求項64に記載のポリヌクレオチドを含む、組換えベクター。
【請求項67】
請求項65に記載の組換えベクターで形質転換された、宿主細胞。
【請求項68】
請求項66に記載の組換えベクターで形質転換された、宿主細胞。
【請求項69】
CD33への結合能を有する抗体またはそのエピトープ結合フラグメントを産生する方法であって、(a)請求項67で請求されるような宿主細胞を、前記宿主細胞が抗体またはエピトープ結合フラグメントを発現するような条件下で培養すること;及び、(b)このように発現された抗体またはエピトープ結合フラグメントを回収すること;を含む、前記方法。
【請求項70】
CD33への結合能を有する抗体またはそのエピトープ結合フラグメントを産生する方法であって、(a)請求項68で請求されるような宿主細胞を、前記宿主細胞が抗体またはエピトープ結合フラグメントを発現するような条件下で培養すること;及び、(b)このように発現された抗体またはエピトープ結合フラグメントを回収すること;を含む、前記方法。
【請求項71】
生体材料からCD33を得る方法であって、以下:
(a)生体材料を、請求項1または2に記載の抗体またはそのエピトープ結合フラグメントと接触させること;
(b)請求項1または2に記載の抗体またはエピトープ結合フラグメントが、前記生体材料中のCD33に結合することを可能にすること;及び、
(c)CD33に結合した抗体またはエピトープ結合フラグメントを、生体材料から単離し、それによって生体材料からCD33を得ること;
を含む前記方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8−A】
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【図8−B】
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【図9】
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【図10】
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【図11−A】
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【図11−B】
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【図12】
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【図13−A】
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【図13−B】
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【図14】
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【図15】
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【図16−A】
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【図16−B】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公表番号】特表2006−505277(P2006−505277A)
【公表日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−551530(P2004−551530)
【出願日】平成15年11月5日(2003.11.5)
【国際出願番号】PCT/US2003/032737
【国際公開番号】WO2004/043344
【国際公開日】平成16年5月27日(2004.5.27)
【出願人】(504039155)イミュノジェン・インコーポレーテッド (36)
【Fターム(参考)】