説明

抗EGFR抗体の凍結乾燥製剤

本発明は、1つの実施形態において、抗EGFR抗体、好ましくはセツキシマブと、ラクトビオン酸と、緩衝剤と、好ましくはヒスチジンとを含む安定な凍結乾燥製剤を提供する。1つの好ましい実施形態において、本発明は、ERBITUX(登録商標)を約50mg/mLから約140mg/mL、ラクトビオン酸を約0.125%、pH約6.0でのヒスチジン緩衝剤を約25mM、Tween80を約0.005%、およびグリシンを約1.875%含む安定な凍結乾燥製剤を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願に対する相互参照]
本出願は、2006年6月14日付けで出願した米国仮特許出願連続第60/813,958号(本内容は参照により本明細書に組み込まれる)による優先権の恩典を主張するものである。
【0002】
[発明の分野]
本発明は、上皮増殖因子受容体(EGFR)抗体に結合する抗体の安定化に有用な製剤および方法に関する。より詳細には、本発明は、抗EGFR抗体、特にセツキシマブがヒスチジン緩衝液中にラクトビオン酸とともに含まれる製剤に関する。
【背景技術】
【0003】
抗体の臨床的潜在能力を実現するには、それらの生物学的活性を貯蔵中および投与中に維持する必要がある。化学的および物理的両方の不安定性が生物学的活性の低下の原因になり得る。抗体は水および温度の変動が原因で凝集、酸化、アミド分解または加水分解を起こす可能性がある。抗体の生物学的活性を維持する1つの方法は、抗体製剤を凍結乾燥で安定化させる方法である。特に有用な凍結乾燥製剤は膨潤(reconstitute)させた時に高い抗体濃度をもたらす。抗EGFR抗体の安定な凍結乾燥製剤が求められている。
【発明の概要】
【0004】
従って、本発明は、抗EGFR抗体を約50mg/mLから約140mg/mLの範囲のタンパク質濃度で含みかつラクトビオン酸および緩衝剤を含む凍結乾燥に適した安定な水性製剤を提供する。前記抗EGFR抗体は好ましくはセツキシマブである。前記ラクトビオン酸を約0.1%から約0.5%の濃度、より好ましくは約0.125%から約0.25%の濃度で存在させる。
【0005】
本製剤を好ましくはpHが約6.0になるように緩衝させ、緩衝剤を好ましくは約25mMの濃度で存在させ、その緩衝剤は好ましくはヒスチジン緩衝剤である。
【0006】
本安定な水性製剤に更にマンニトール、グリシンおよびこれらの組み合わせからなる群より選択した安定剤ばかりでなく、界面活性剤も含む。そのような界面活性剤は好ましくはポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンのブロック共重合体および/またはこれらの組み合わせである。
【0007】
本発明は、また、上述した本発明の安定な水性製剤を凍結乾燥させること調製された凍結乾燥抗EGFR製剤も提供する。
【0008】
本発明は、更に、抗EGFR抗体を安定化させる方法も提供し、本方法は、上述した本発明の安定な水性製剤を用いて前記抗体の処方を実施することを含む。
【0009】
加えて、本発明は、哺乳動物、例えばヒトなどを治療する方法も提供し、この方法は、治療を必要としている哺乳動物に、上述したような凍結乾燥製剤を戻して治療的に有効な量で投与することを含む。
【課題を解決するための手段】
【0010】
要約として、本発明は、抗EGFR抗体、好ましくはセツキシマブ、ラクトビオン酸および緩衝剤、好ましくはヒスチジンを含む安定な凍結乾燥製剤を提供する。好ましい実施形態では、前記タンパク質の濃度を約50mg/mLから約140mg/mLにする。本製剤に、前記ラクトビオン酸に加えて、1種以上の安定剤、例えばマンニトールおよびグリシンなどを含有させることも可能である。本製剤に、また、界面活性剤、例えばTween80(登録商標)(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート)またはPluronic F−68(登録商標)(ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンのブロック共重合体)などを含有させることも可能である。1つの好ましい実施形態において、本発明は、ERBITUX(登録商標)を約50mg/mLから約140mg/mL、ラクトビオン酸を約0.125%、ヒスチジン緩衝剤をpHが約6.0で約25mM、Tween80を約0.005%およびグリシンを約1.875%含む安定な凍結乾燥製剤を提供する。
【0011】
本発明は、また、抗体を安定化させる方法も提供し、この方法は、抗EGFR抗体、好ましくはセツキシマブ、ラクトビオン酸および緩衝剤、好ましくはヒスチジンを含む水性製剤の凍結乾燥を実施することを含む。
【0012】
本発明はまた治療方法も提供し、この方法は、治療を必要としている哺乳動物、例えばヒトなどに製剤を復元して投与することを含む。セツキシマブを用いた治療の場合に投与する量は、当業者に公知の量に相応する量である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】Tween80(登録商標)の存在下、および非存在下でのセツキシマブの濁度を時間の関数として示す。
【図2】様々な製剤条件のセツキシマブ溶液を50℃で72時間インキュベーションした後の濁度を示す。
【図3】様々な製剤条件のセツキシマブを50℃で72時間インキュベーションした時の材料損失パーセントを示す。
【図4】様々な製剤条件のセツキシマブを50℃で72時間インキュベーションした後の単量体パーセントを示す。
【図5】様々な製剤条件のセツキシマブを50℃で72時間インキュベーションした後の可溶凝集物パーセントを示す。
【図6】様々な製剤条件のセツキシマブを50℃で72時間インキュベーションした後の分解生成物パーセントを示す。
【図7】膨潤により復元した様々なセツキシマブ凍結乾燥品の様々なインキュベーション時間における濁度を示す。
【図8】膨潤により復元した様々なセツキシマブ凍結乾燥品の様々なインキュベーション時間における単量体パーセントを示す。
【図9】膨潤により復元した様々なMAbセツキシマブ凍結乾燥品の様々なインキュベーション時間における可溶凝集物パーセントを示す。
【図10】膨潤により復元した様々なセツキシマブ凍結乾燥品の様々なインキュベーション時間における分解生成物パーセントを示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、抗EGFR抗体、ラクトビオン酸および緩衝剤を含む安定な凍結乾燥製剤を提供する。本製剤に追加的成分、例えば安定剤、界面活性剤、還元剤、担体、防腐剤、アミノ酸およびキレート剤などを含ませることも可能である。本発明は、また、抗EGFR抗体の水性製剤を凍結乾燥することを含む安定化方法も提供する。このような製剤を凍結乾燥することで処理中および貯蔵中の抗EGFR抗体を安定化させることができ、その後、その製剤を復元して医薬的に投与することもできる。好ましくは、前記抗体が生産から投与まで本質的にその物理的および化学的安定性および完全性を維持するようにする。本発明に従い、安定性を向上させる様々な製剤構成要素が適切であり得、それには緩衝剤、pH、界面活性剤、糖、糖アルコール、糖誘導体およびアミノ酸が含まれる。
【0015】
本発明の製剤を凍結乾燥させる。凍結乾燥は、ある物質を最初に凍結させた後に溶媒の量を最初に昇華(主要な乾燥工程)そして次に脱離(二次的乾燥工程)によって生物学的活性も化学的反応ももはや起こらない値にまで減少させる安定化工程である。凍結乾燥製剤では、溶液に関連して起こる加水分解もアミド分解も酸化反応も回避され得るかあるいは反応速度が有意に低下し得る。凍結乾燥製剤ではまた輸送中に起こる短期の温度変化が原因で生じる損傷も回避され得る。また、本発明の製剤を当分野で公知の他の方法、例えば噴霧乾燥および気泡乾燥などで乾燥させることも可能である。特に明記しない限り、本発明の製剤をこれらの成分の濃度に関して記述する場合、凍結乾燥前の製剤に関して測定したものを記載する。
【0016】
本発明の製剤はラクトビオン酸を安定剤として含有する。このラクトビオン酸の濃度を好ましくは約0.1%から約0.5%、より好ましくは約0.125%から約0.25%、最も好ましくは約0.125%(重量/体積)にする。
【0017】
好ましい実施形態における凍結乾燥製剤は、復元した時に高い抗EGFR抗体の濃度をもたらす。好ましくは、凍結乾燥前の水性製剤中の抗体濃度を約10mg/mLから約140mg/mL、より好ましくは約50から約140mg/mL、最も好ましくは約50mg/mLにする。好ましい実施形態では、その安定な凍結乾燥製剤は、液体を用いて凍結乾燥前の製剤の抗体濃度よりも約1〜10倍高い濃度になるように戻される。例えば、1つの実施形態では、本凍結乾燥製剤を1mL以下のmilliQ水で戻して復元することで、抗体濃度が約50mg/mLから約200mg/mLの不溶性粒子フリーの製剤を得る。
【0018】
復元した凍結乾燥製剤の抗体安定性を当分野で公知の様々な分析技術を用いて測定することができる。そのような技術には、例えば、(i)主溶融温度(Tm)を測定する示差走査熱量計(DSC)を用いた熱安定性の測定、(ii)制御された撹拌を室温で行うことによる機械的安定性の測定、(iii)約−20℃、約4℃、室温(約23℃〜27℃)、約40℃および約50℃の温度における等温加速安定性のリアルタイム測定、(iv)約350nmでの吸光度を監視することによる溶液の濁度の測定、および(v)単量体、凝集物および分解生成物の量のSEC−HPLC(サイズ排除クロマトグラフィー−高性能液クロマトグラフィー)による測定などが含まれる。安定性の測定は、選択した温度において選択した時間にわたり実施されてもよい。好ましい実施形態における製剤は、60℃で少なくとも約96時間および室温で少なくとも1カ月間安定である。
【0019】
本発明の抗体は、モノクローナル抗体もしくはポリクローナル抗体または他の適切ないずれかの種類の抗体、例えば抗体のフラグメントまたは誘導体、一本鎖抗体(scFv)または抗体の合成類似物などであってもよいが、但しその抗体が有する結合特性が全抗体のそれと同じであるかあるいはその結合特性が全抗体のそれに匹敵することを条件とする。抗体のドメイン、領域およびフラグメントを本明細書で用いる場合、特に明記しないかあるいは本文から明らかでない限り、当分野で周知のように、それらを標準的定義と合致させる。例えばAbbas et al、Cellular and Molecular Immunology、W.B.Saunders Company、Philadelphia、PA(1991)を参照。
【0020】
全抗体を切断することで抗体フラグメントを生じさせることができる。また、抗体フラグメントをコードするDNAを発現させることで抗体フラグメントを生じさせることも可能である。抗体のフラグメントはLamoyi et al.がJ.Immunol.Methods、56:235−243(1983)に記述した方法およびParhamがJ.Immunol.131:2895−2902(1983)に記述した方法を用いて調製可能である。そのようなフラグメントはFabフラグメントまたはF(ab’)フラグメントの片方もしくは両方を含有していてもよい。そのようなフラグメントはまた一本鎖フラグメント可変領域抗体、即ちscFv、二量体または他の抗体フラグメントを含有していてもよい。そのような抗体フラグメントは、好ましくは、全抗体の6個の相補性決定領域の全てを含有するが、そのような領域の全てより少ない数を含有するフラグメント、例えばCDRを3、4または5個含有するフラグメントなどもまた機能的であり得る。また、その抗体フラグメントを担体分子と接合させることも可能である。いくつかの適切な担体分子には、キーホールリンペットヘモシアニンおよびウシ血清アルブミンが含まれる。コンジュゲーションは当分野で公知の方法を用いて実施可能である。
【0021】
本発明の抗体には、また、直接的変異、親和性熟成方法、ファージ提示法または鎖シャッフリング法で結合特性を向上させた抗体も含まれる。CDRに変異を起こさせた後に所望特性を有する抗原結合部位を選別することで親和性および特異性を変化させるかあるいは向上させることができる(例えばYang et al、J.Mol.Bio.、254:392−403(1995)を参照)。CDRは、様々な方法により変異を生じる。1つの方法は、同一の抗原結合部位中の特定の位置において、20種類のアミノ酸全てが存在するように個々の残基または残基の組み合わせをランダム化させる方法である。別法として、変異性PCR方法を用いてある範囲のCDR残基に渡って変異を誘発させる(例えばHawkins et al、J.Mol.Bio.、226:889−896(1992)を参照)。重鎖および軽鎖の可変領域遺伝子を含有するファージ提示ベクターを大腸菌の突然変異誘発株の中で増殖させる(例えばLow et al、J.Mol.Bio.、250:359−368(1996)を参照)。そのような突然変異誘発方法は当業者に公知の多くの方法の中の一例である。
【0022】
本発明の抗体はまた二重特異性および/または多価であってもよい。二重特異性および/または多価抗体フラグメントを生じさせるのに適した様々な化学的および組換え方法が開発された。概説に関してはHolligerおよびWinter、Curr.Opin.Biotechnol.4:446−449(1993);Carter et al、J.Hematotherapy 4:463−470(1995);Plueckthun and Pack、Immunotechnology 3、83−105(1997)を参照のこと。柔軟なリンカー、ロイシンジッパーモチーフ、C−ヘテロ二量化およびscFv分子の結合で2個のscFv分子を融合させて二価の単一特異的二量体および関連した構造物を生じさせることにより二重特異性および/または二価を達成した。例えばp53、ストレプトアビジンおよびヘリックス−ターン−ヘリックスモチーフなどを用いてscFvまたはFabフラグメントのカルボキシ末端もしくはアミノ末端への多量化配列の付加を起こさせることで多価を達成した。例えば(scFv1)−ヒンジ−ヘリックス−ターン−ヘリックス−(scFv2)の形態のscFv融合タンパク質のヘリックス−ターン−ヘリックスモチーフによる二量化などを用いて、2種類の標的抗原の各々に対する2個のscFv結合部位を有する四価の二重特異的ミニ抗体を生じさせる。また、3個の機能的抗原部位を与えることでも向上した結合力を得ることができた。例えばVとVドメインをつなげる短縮リンカーを有するscFv分子を結合させることによって三量体を生じさせる(Kortt et al、Protein Eng.10:423−433(1997)。
【0023】
異なる2種類のIgG分子を化学的に架橋結合させるかあるいは同じ細胞に由来する2種類の抗体を共発現させることで、ほぼ完全なIgG定常ドメイン構造を有する点でIgG抗体に類似しているIgG型の二重特異性抗体の産生を達成した。トランスフェクト細胞内で共発現するIgGの重鎖と軽鎖の異なる2種類の組の間の好ましくない対合を克服する目的で開発された1つの方策は、類似した抗体重鎖の間のホモ二量体化を低下させる目的で2本の重鎖のC3ドメインを修飾する方策である。Merchant et al、Nat.Biotechnology 16:677−681(1998)。このような方法では、二重特異性抗体の結合部位の各々に同じ軽鎖を用いることによって軽鎖の誤対合を排除できる。
【0024】
ある場合には、抗原特異性以外の機能的または構造的側面を維持することが望まれる。例えば、大部分の二重特異性抗体では、Fc領域の重鎖定常ドメインの存在および機能を必要とする補体媒介細胞毒性(CMC)および抗体依存性細胞媒介細胞毒性(ADCC)の両方が失われている。Coloma and Morrisonは、scFvを完全な重鎖のC末端に融合させることで、Fcドメインを有する同種集団の二価のBsAb分子を作り出した。抗体軽鎖を有する融合体を共発現させると結果として一方の末端部が1つの抗原と結合しかつもう一方の末端部が2番目の抗原と結合する二価二重特異性分子の均質集団が得られた(Coloma and Morrison、Nat.Biotechnology 15、159−163(1997))。しかしながら、このような分子は、補体を活性化させる能力が低く、CMCに影響を与える能力を持たなかった。その上、C3ドメインが高親和性のFc受容体(FcγR1)と結合する時の親和性も低かった。Zhu et al.のPCT/US01/16924に、(1)二重特異性で二価であり、(2)抗原結合部位の選択に関する制約がなくて実質的に均質であり、(3)Fc定常ドメインを含みかつ関連した機能を維持し、かつ(4)更なる処理無しに哺乳動物または他の細胞内で産生可能である四量体Ig様タンパク質を生じさせる目的でIg可変ドメインを1本鎖Fvsに置き換えることが記述された。同様な方法を用いて、二重特異性で一価のFab様タンパク質もしくはポリペプチドを生じさせることも可能である。
【0025】
本発明の抗体は好ましくはモノクローナル抗体である。本発明の抗体は、ある種、例えばマウスなどの抗体の可変領域と、異なる種(例えばヒトなど)の抗体の定常領域とを有するキメラ抗体であってもよい。別法として、本発明の抗体は、ある種、例えばマウスなどに由来する抗体の超可変もしくは相補性決定領域(CDR)と、ヒト抗体のフレームワーク可変領域および定常領域とを有するヒト化抗体であってもよい。また、別法として、本発明の抗体は、ヒト抗体の定常領域と可変領域の両方を有するヒト抗体であってもよい。
【0026】
本明細書で用いる場合の「抗体」および「抗体フラグメント」には、EGF受容体に対する特異性を維持している修飾体が含まれる。そのように修飾体には、これらに限定するものでないが、エフェクタ分子、例えば化学療法薬(例えばシスプラチン、タキソール、ドキソルビシン)または細胞毒素(例えばタンパク質またはタンパク質以外の有機化学療法薬)などとのコンジュゲートが含まれる。抗体を検出可能なレポーター部分とコンジュゲートさせて修飾することも可能である。また、結合以外の特性、例えば半減期などに影響を与える修飾(例えばPEG化)を受けた抗体も含まれる。
【0027】
本発明の抗体もしくはこのフラグメントの相当物には、また、全長抗EGFR抗体が有する可変もしくは超可変領域のアミノ酸配列と実質的に同じアミノ酸配列を有するポリペプチドも含まれる。本明細書では、実質的に同じアミノ酸配列は、Pearson and Lipman(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85、2444−8(1988))に従うFASTA検索方法により決定した時に別のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも約80%、より好ましくは少なくとも約90%の相同性を示す配列であるとして定義する。
【0028】
好ましい実施形態における抗EGFR抗体はEGFRと結合することでリガンド(例えばEGFまたはTNF−aなど)とEGFRとの結合を阻止する。そのような阻止の結果として腫瘍の増殖が抑制されるが、そのような抑制には、EGFR活性化の影響を妨害することによって腫瘍浸潤、転移、細胞修復および血管新生を抑制することが含まれる。従って、好ましい抗EGFR抗体はセツキシマブである。セツキシマブはキメラ抗体(ERBITUX(登録商標)として商標登録され、C225としても公知である)であり、この分子量は約152kDaで等電点は約8.0である。セツキシマブはEGFRと結合することでリガンドの結合を阻止する。加えて、あるいは別法として、セツキシマブは受容体−抗体複合体の内在化を促進し得ることで、受容体がリガンドまたは他のいずれかの機構によって更なる刺激を受けないようにし得る。セツキシマブの更なる特徴が米国出願第08/973,065号(Goldstein et al.)および09/635,974(Teufel);WO 99/60023(Waksal et al.)およびWO 00/69459(Waksal)に開示されている(これらは全て引用することによって本明細書に組み入れられる)。
【0029】
セツキシマブのキメラ重鎖および軽鎖のアミノ酸配列をそれぞれ配列番号2および4で示す。キメラ抗体鎖をコードするヌクレオチド配列をそれぞれ配列番号1および3で示す。本発明の1つの実施形態では、抗体重鎖および軽鎖を、切断可能な輸送および分泌シグナル配列とともに宿主細胞内に発現させる。セツキシマブの重鎖および軽鎖のアミノ末端シグナルペプチドのアミノ酸配列のそれぞれを配列番号6および8で示す。コード化ヌクレオチド配列を配列番号5および7で示す。
【0030】
別の実施形態における抗EGFR抗体は、EGFRに特異的な完全にヒトのモノクローナル抗体、例えばパニツムマブ(以前はABX−EGF;Abgenix,Inc.)などである。ABX−EGFはEGFRと高い特異性で結合することで、EGFRとこのリガンドであるEGFおよびTNF−αの両方との結合を阻止する。ABX−EGFの配列および特徴は米国特許第6,235,883号の第28欄の第62行から第29欄の第36行および図29−34に開示されている(これは引用することによって本明細書に組み入れられる)。またYang et al、Critical Rev.Oncol./Hematol.38(1):7−23、2001(これもまた参照により本明細書に組み込まれる)も参照のこと。
【0031】
別の実施形態における抗EGFR抗体は、EGFRに特異的なヒト化モノクローナル抗体、例えばマツズマブ(以前はEMD72000;Merck KGaA)などである。マツズマブはEGFRと高い特異性で結合することでリガンドの結合を抑制する。マツズマブの配列および特徴は米国特許第5,558,864号の第19欄の第43行から第20欄の第67行に開示されている(これは参照により本明細書に組み込まれる)。またKettleborough et al、Prot.Eng.、4(7):773−83、1991も参照のこと。ニモツズマブ(TheraCIM h−R3;YM BioSciences,Inc.)がヒト化抗体の別の例である。ニモツズマブの配列および特徴は米国特許第5,891,996号の第10欄の第54行から第13欄の第6行に開示されている。またMateo et al、Immunotechnology、3:71−81、1997も参照のこと。
【0032】
本発明に従い、本製剤のpHを維持する目的で緩衝剤を用いてもよい。そのような緩衝剤は外的変化に起因するpHの変動を最小限にする。本発明の製剤に1種以上の緩衝剤を含有させることで本製剤のpHを適切なpH、好ましくは約5.5から約6.5、最も好ましくは約6.0にする。典型的な緩衝剤には、これらに限定するものでないが、一般に有機の緩衝剤、例えばヒスチジン、リンゴ酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩および酢酸塩などが含まれる。そのような緩衝剤は好ましくはヒスチジンである。この緩衝剤の濃度を好ましくは約5mMから約50mM、より好ましくは約10mMから約25mM、最も好ましくは約25mMにする。特に好ましい緩衝剤は約25mMのヒスチジンであり、このpHは約6.0である。
【0033】
本発明の製剤に1種以上の界面活性剤を含有させてもよい。抗体の溶液は空気と水の界面に高い表面張力を有する。そのような表面張力が低くなるように、抗体はその空気−水界面で凝集を起こす傾向がある。界面活性剤は、そのような空気と水の界面で起こる抗体凝集を最小限にすることで、その抗体が溶液中で示す生物学的活性を維持するに役立つ。例えば、0.01%のTween80(登録商標)添加すると、抗体が溶液中で起こす凝集の度合が低下し得る。本製剤に凍結乾燥させる時、界面活性剤は、本製剤を復元した時に粒子が生じる度合を低くし得る。本発明の凍結乾燥製剤では、界面活性剤を凍結乾燥前の製剤、凍結乾燥製剤および復元した製剤の中の1種以上に添加してもよいが、好ましくは凍結乾燥前の製剤に添加する。例えば、凍結乾燥前の抗体溶液にTween80(登録商標)を0.005%添加してもよい。界面活性剤には、これらに限定するものでないが、Tween20(登録商標)(ポリオキシエチレン−20−ソルビタンモノラウレート)、Tween80(登録商標)、Pluronic F−68(登録商標)および胆汁塩が含まれる。Tween80(登録商標)およびPluronic F−68が好ましい。そのような界面活性剤の濃度を好ましくは約0.001%から約0.01%、より好ましくは約0.005%から約0.01%、最も好ましくは約0.005%(重量/体積)にする。最も好ましくは、そのような界面活性剤を約0.005%のTween80(登録商標)にする。
【0034】
本発明の製剤にラクトビオン酸に加えて1種以上の安定剤を含有させることも可能である。安定剤は、抗体の凝集および劣化を防止するのに役立つ。適切な安定剤には、これらに限定するものでないが、多価糖、糖アルコール、糖誘導体およびアミノ酸が含まれる。好ましい安定剤には、これらに限定するものでないが、グリシン、トレハロース、マンニトールおよびスクロースが含まれる。好ましい実施形態における追加的安定剤はグリシンまたはグリシンとマンニトールの両方である。追加的安定剤の各々の濃度を好ましくは約0.1%から約2%、より好ましくは約1%から約2%、最も好ましくは約2%にする。特に好ましい追加的安定剤は1.875%のグリシンである。
【0035】
抗体溶液の安定化に役立たせる目的で安定剤および界面活性剤を単独または互いの組み合わせで用いてもよい。1つの好ましい実施形態において、本発明は、ERBITUX(登録商標)を約50mg/mLから約140mg/mL、ラクトビオン酸を約0.125%、pHが約6.0になるようにヒスチジン緩衝剤を約25mM、Tween80(登録商標)を約0.005%およびグリシンを約1.875%含む安定な凍結乾燥製剤を提供する。
【0036】
凍結乾燥工程によって、タンパク質またはポリペプチドを変性させる可能性のある様々な応力が生じる可能性がある。そのような応力には、温度低下、氷結晶生成、イオン濃度上昇、pH変化、相分離、水和殻の除去および濃度変化が含まれる。凍結および/または乾燥工程の応力に敏感な抗体の場合、1種以上の抗低温および/または抗凍結剤を添加することでそれを安定化させることができる。抗低温または抗凍結剤は、スクロースまたはトレハロースなどの糖、グルタミン酸モノナトリウムまたはヒスチジンなどのアミノ酸、ベタインなどのメチルアミン、硫酸マグネシウムなどの離液性塩、三価もしくはそれ以上の糖アルコール、例えばグリセリン、エリスリトール、グリセロール、アラビトール、キシリトール、ソルビトールおよびマンニトールなどのポリオール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、Pluronicsおよびこれらの組み合わせなどであり得る。好ましい抗凍結剤の例には、これらに限定するものでないが、上記のように安定剤および界面活性剤が含まれる。
【0037】
本発明は、また、製剤を膨潤させ復元して投与することを含む治療方法も提供する。本発明の凍結乾燥製剤を、例えば1mLのmilliQ水などで戻すことにより復元した製剤を調製する。水で戻す時間は、好ましくは1分以内である。抗体の濃度に関して上述したように、特別な実施形態では、本安定な凍結乾燥製剤を液体で戻すことにより高濃度の液を調製でき、その抗体濃度は凍結乾燥前の製剤に入っている抗体の濃度より約10倍高い。復元した製剤の濃度が高いと投与に柔軟性が生じる。例えば、復元した製剤を希釈して静脈内に投与してもよいし、より高濃度のものを注射によって投与することも可能である。本発明の高濃度の製剤を希釈することで、個々の被験体および/または個々の投与経路の注文に合わせた濃度にすることができる。従って、本発明は、治療を必要としている哺乳動物、特にヒトに抗EGFR抗体を治療的に有効な量で投与することを含む治療方法を提供する。本明細書で用いる場合の用語「投与」は、本発明の抗体を哺乳動物に求める結果の達成を可能にするいずれかの方法で送達することを意味する。それらは例えば静脈内または筋肉内などに投与可能である。1つの実施形態では、復元した高濃度の製剤を注射により投与する。
【0038】
治療的に有効な量は、本発明の抗体を哺乳動物に投与した時に所望の治療効果、例えばEGFR活性の中和、腫瘍増殖の抑制または癌以外の過剰増殖性疾患の治療などをもたらすに有効な量を意味する。上述したように抗体の投与を他の抗体または通常の治療薬のいずれか、例えば抗腫瘍薬などの投与と組み合わせることも可能である。
【0039】
以下の非限定的な実施例を用いて本発明を更に説明する。引用文献はいずれも参照により本明細書に組み込まれ、それにはSambrook J、Fritsch EF、Maniatis T、Molecular Cloning:A Laboratory Manual.Plainview、NY:Cold Spring Harbor Laboratory Press;1989が含まれる。
【実施例1】
【0040】
<凝集試験>
セツキシマブの最終的凍結乾燥における安定性を検討した。リン酸塩緩衝食塩水(PBS)によるセツキシマブ溶液(5mg/mL)および0.01%のTween80(登録商標)含有するPBSによるセツキシマブ溶液(5mg/mL)を調製した。各溶液(3mL)を4℃において60rpmで震盪した。溶液の濁度の測定を540nmにおいて実施した。その結果を図1に、各溶液が示した濁度を時間と対比させてプロットしたグラフとして示す。Tween80(登録商標)の非存在下では濁度が経時的に高くなった。Tween80(登録商標)(0.01%)の存在下では濁度は変化しないままであった。このように、0.01%のTween80(登録商標)存在させると空気−水界面で起こるセツキシマブの凝集が最小限になった。
【実施例2】
【0041】
<リアルタイム溶液安定性>
セツキシマブが溶液中で示したリアルタイムの安定性の測定を、緩衝剤および賦形剤を変えて実施した。以下の緩衝剤(25mM)の各々を用いて、pHが6.0の様々なセツキシマブ溶液(2mg/mL)を調製した。
(i)リンゴ酸塩、
(ii)ヒスチジン、
(iii)酒石酸塩、
(iv)コハク酸塩、および
(v)酢酸塩。
【0042】
各緩衝剤に下記の賦形剤を用いた溶液を調製した。
(i)0.01%Tween80(登録商標)、
(ii)0.01%Tween80(登録商標)と0.25%ラクトビオン酸、
(iii)0.01%Tween80(登録商標)と0.25%ラクトビオン酸と2%グリシン、
(iv)0.01%Tween80(登録商標)と2%スクロース、
(v)0.01%Tween80(登録商標)と2%スクロースと2%グリシン、
(vi)0.01%Tween80(登録商標)と2%トレハロース、
(vii)0.01%Tween80(登録商標)と2%トレハロースと2%グリシン。
【0043】
上記様々な溶液を50℃で72時間インキュベートした。
【0044】
濁度を540nmにおいて測定した。図2に、様々な製剤条件下でインキュベーションを50℃で72時間実施した後の濁度を示す。溶液の濁度はヒスチジン緩衝液中が最も低くそして酒石酸塩緩衝液中が最も高かった。0.01%Tween80(登録商標)と、2%の糖(スクロースまたはトレハロース)と、2%グリシンを組み合わせた賦形剤を用いると、あらゆる緩衝液中の濁度が低下した。0.25%ラクトビオン酸を単独で用いてもあまり効果がなかったが、それを2%グリシンとともに用いると、あらゆる緩衝液中の溶液濁度が低下した。
【0045】
SEC−HPLC分析を用いて単量体、凝集物および分解生成物の含有量分率を測定した。初期サンプルとインキュベーションを50℃で72時間実施した後のサンプルとの間の総ピーク面積の差を計算することにより材料損失パーセントを推定した。図3に、様々な製剤条件下でインキュベーションを50℃で72時間実施した後の材料損失パーセントを示す。材料損失パーセントは酒石酸塩緩衝液中が最も高く、ヒスチジン緩衝液中が最も低かった。
【0046】
図4に、様々な製剤条件下でインキュベーションを50℃で72時間実施した後のセツキシマブ単量体のパーセントを示す。単量体のパーセントは酒石酸塩緩衝液中が最も低く、ヒスチジン緩衝液中が最も高かった。pHが6.0になるように25mMヒスチジン、2%糖(トレハロースまたはスクロース)、0.25%ラクトビオン酸、2%グリシン、および0.01%Tween80(登録商標)含有させた製剤が示した単量体パーセントが最も高かった。
【0047】
図5に、様々な製剤条件下でインキュベーションを50℃で72時間実施した後のセツキシマブの可溶凝集物のパーセントを示す。可溶凝集物のパーセントは酒石酸塩緩衝液中が最も高く、リンゴ酸塩緩衝液中が最も低かった。
【0048】
図6に、様々な製剤条件下でインキュベーションを50℃で72時間実施した後のセツキシマブの分解生成物のパーセントを示す。分解生成物のパーセントは酒石酸塩緩衝液中のそれが5%に及んだ以外はあらゆる緩衝液については1%未満であった。
【実施例3】
【0049】
<凍結乾燥工程>
下記の賦形剤を添加して、pH6.0のヒスチジン緩衝液(25mM)によるセツキシマブ溶液(50mg/mL)を調製した。
(i)2%グリシンと0.005%Tween80(登録商標)、
(ii)2%トレハロースと0.005%Tween80(登録商標)、
(iii)2%マンニトールと0.005%Tween80(登録商標)、
(iv)1.875%グリシンと0.125%ラクトビオン酸と0.005%Tween80(登録商標)、
(v)2%スクロースと0.005%Tween80(登録商標)、
(vi)1%グリシンと1%トレハロースと0.005%Tween80(登録商標)、
(vii)1%グリシンと1%スクロースと0.005%Tween80(登録商標)、
(viii)1%グリシンと1%マンニトールと0.005%Tween80(登録商標)。
【0050】
1ミリリットルの各溶液を凍結乾燥させた後、それを1mL以下のmilliQ水を用いて戻すことで50mg/mL以上から200mg/mLに及ぶ最終濃度を達成した。各サンプルを水で戻す時間は1分未満であり、その水で戻した溶液は粒子を含有していなかった。
【0051】
凍結乾燥溶液が示す長期の安定性を試験する目的で、各凍結乾燥製剤のサンプルを60℃で4日間インキュベートし、別のサンプルを60℃で11日間インキュベートした。初期の凍結乾燥サンプルはインキュベートしなかった。初期の凍結乾燥サンプルおよびインキュベートしたサンプルを1mLのmilliQ水で戻した。あらゆるサンプルに関して、水で戻す時間は1分未満であり、その溶液は透明であった。
【0052】
濁度を350nmで測定した。図7に、初期段階、インキュベーションを60℃で4日間実施した後、インキュベーションを60℃で11日間実施した後における復元したセツキシマブ凍結乾燥品の濁度を示す。あらゆる初期サンプルが示した濁度は同程度であった。あらゆる製剤に関して、インキュベーション時間に伴って濁度が高くなった。復元した後の溶液の濁度の変化が最も低かった製剤は、pH6.0、25mMヒスチジン、1.875%グリシン、0.125%ラクトビオン酸、0.005%Tween80(登録商標)の製剤であった。
【0053】
SEC−HPLC分析を用いて単量体、凝集物および分解生成物の含有量分率を測定した。このSEC−HPLC分析は、各サンプルに不溶凝集物が存在しないことを示唆していた。
【0054】
図8に、膨潤により復元したセツキシマブの凍結乾燥品が、初期段階、インキュベーションを60℃で4日間実施した後、およびインキュベーションを60℃で11日間実施した後に示した単量体パーセントを示す。最初はあらゆる製剤が示した単量体パーセントは同様であった。製剤の全てに関してインキュベーション時間に伴って単量体のパーセントが高くなった。単量体パーセンテージの損失が最も低かった製剤は、25mMヒスチジン、2%グリシン、0.005%Tween80(登録商標)を含有したpH6.0の製剤および25mMヒスチジン、2%スクロース、0.005%Tween80(登録商標)を含有したpH6.0の製剤であった。
【0055】
図9に、膨潤により復元したセツキシマブの凍結乾燥品が、初期段階、インキュベーションを60℃で4日間実施した後、およびインキュベーションを60℃で11日間実施した後に示した可溶凝集物パーセントの変化を示す。最初はあらゆる製剤が示した凝集物パーセントは同程度であった。製剤の全てに関してインキュベーション時間に伴って凝集物のパーセントが高くなった。25mMヒスチジン、1.875%グリシン、0.125%ラクトビオン酸、0.005%Tween80(登録商標)を含有したpH6.0の製剤が4日間のインキュベーション後および11日間のインキュベーション後の両方で示した凝集物パーセントが最も低かった。凝集物のパーセントが最も高かった製剤は、25mMヒスチジン、2%グリシン、0.005%Tween80(登録商標)を含有したpH6.0の製剤および25mMヒスチジン、2%スクロース、0.005%Tween80(登録商標)を含有したpH6.0の製剤であった。
【0056】
図10に、膨潤により復元したセツキシマブの凍結乾燥品が、初期段階、インキュベーションを60℃で4日間実施した後、およびインキュベーションを60℃で11日間実施した後に示した分解生成物パーセントを示す。インキュベーション前の分解生成物のパーセントは初期サンプルの中で、25mMヒスチジン、2%マンニトール、0.005%Tween80(登録商標)を含有した製剤が最も低かった。25mMヒスチジン、2%スクロース、0.005%Tween80(登録商標)を含有したpH6.0の製剤を除いて、他の製剤全てに関して、インキュベーションを60℃で4日間および11日間行った後の分解生成物は同様であった。25mMヒスチジン、2%スクロース、0.005%Tween80(登録商標)を含有したpH6.0の製剤が示した分解生成物パーセントはわずかに高かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗EGFR抗体と、ラクトビオン酸と、緩衝剤とを含む凍結乾燥製剤。
【請求項2】
前記抗EGFR抗体がセツキシマブである、請求項1に記載の凍結乾燥製剤。
【請求項3】
前記緩衝剤がヒスチジンである、請求項1に記載の凍結乾燥製剤。
【請求項4】
凍結乾燥に適した水性製剤であって、抗EGFR抗体と、ラクトビオン酸と、緩衝剤とを含む水性製剤。
【請求項5】
前記抗EGFR抗体が約10mg/mLから約140mg/mLの濃度で存在する、請求項4に記載の水性製剤。
【請求項6】
前記抗EGFR抗体が約50mg/mLから約140mg/mLの濃度で存在する、請求項5に記載の水性製剤。
【請求項7】
前記抗EGFR抗体が約50mg/mLの濃度で存在する、請求項5に記載の水性製剤。
【請求項8】
前記ラクトビオン酸が約0.1%から約0.5%の濃度で存在する、請求項4に記載の水性製剤。
【請求項9】
前記ラクトビオン酸が約0.125%から約0.25%の濃度で存在する、請求項8に記載の水性製剤。
【請求項10】
前記ラクトビオン酸が約0.125%の濃度で存在する、請求項8に記載の水性製剤。
【請求項11】
前記緩衝剤が、ヒスチジン、リンゴ酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、酢酸塩およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項4に記載の水性製剤。
【請求項12】
前記緩衝剤が約5.5から約6.5のpHを有する、請求項4に記載の水性製剤。
【請求項13】
前記緩衝剤が約6.0のpHを有する、請求項12に記載の水性製剤。
【請求項14】
前記緩衝剤が約5mMから約50mMの濃度で存在する、請求項4に記載の水性製剤。
【請求項15】
前記緩衝剤が約10mMから約25mMの濃度で存在する、請求項14に記載の水性製剤。
【請求項16】
前記緩衝剤が約25mMの濃度で存在する、請求項14に記載の水性製剤。
【請求項17】
多価糖、糖アルコール、糖誘導体、アミノ酸、離液性塩およびこれらの組み合わせからなる群より選択される安定剤を更に含む、請求項4に記載の水性製剤。
【請求項18】
前記安定剤が、マンニトール、グリシンおよびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項17記載の水性製剤。
【請求項19】
界面活性剤を更に含む、請求項4に記載の水性製剤。
【請求項20】
前記界面活性剤が、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンのブロック共重合体、胆汁塩およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項19に記載の水性製剤。
【請求項21】
前記界面活性剤が、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエートである、請求項19に記載の水性製剤。
【請求項22】
前記界面活性剤が約0.001%から約0.01%の濃度で存在する、請求項19に記載の水性製剤。
【請求項23】
前記界面活性剤が約0.005%から約0.01%の濃度で存在する、請求項22に記載の水性製剤。
【請求項24】
前記界面活性剤が約0.005%の濃度で存在する、請求項22に記載の水性製剤。
【請求項25】
前記抗EGFR抗体が約50mg/mLの濃度で存在し、前記ラクトビオン酸が約0.125%の濃度で存在しかつ前記ヒスチジンが約25mMの濃度で存在する、請求項4に記載の水性製剤。
【請求項26】
ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエートを約0.005%の濃度で更に含む、請求項25に記載の水性製剤。
【請求項27】
請求項4に記載の水性製剤から作られる凍結乾燥製剤。
【請求項28】
抗体を安定化させる方法であって、抗EGFR抗体と、ラクトビオン酸と、緩衝剤とを含む水性製剤を凍結乾燥することを含む方法。
【請求項29】
前記緩衝剤がヒスチジンである、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
哺乳動物を治療する方法であって、復元された請求項1に記載の凍結乾燥製剤を、それを必要とする哺乳動物に対して治療的に有効な量投与するステップを含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2009−540015(P2009−540015A)
【公表日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−515628(P2009−515628)
【出願日】平成19年6月13日(2007.6.13)
【国際出願番号】PCT/US2007/071119
【国際公開番号】WO2007/147001
【国際公開日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(508188662)イムクローン・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー (23)
【氏名又は名称原語表記】Imclone LLC
【Fターム(参考)】