説明

抗GD2抗体並びにそれに関連する方法及び使用

【解決手段】ガングリオシドGD2に特異的に結合する抗体を本明細書中に開示する。上記抗体をコードするヌクレオチド、上記抗体を発現する細胞、上記抗体の使用方法、ガングリオシドGD2と関連する疾患治療のための上記抗体の使用方法も開示する。また、組織培養培地サプリメントを記載し、そのサプリメントの使用方法も記載する。アルブミン-ガングリオシド抱合体とそのような抱合体の対応する製造方法を記載する。また、抗体の精製又は単離方法も記載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願の相互参照>
本願は、2008年6月30日に出願された米国特許仮出願第61/077,041号明細書及び、2008年9月15日に出願された米国特許仮出願第61/097,034号明細書の利益を主張し、それら両出願は参照により本明細書中に引用される。
【0002】
本発明は、一般的に免疫療法剤の分野に関する。より具体的には、本発明は、ガングリオシドに結合するモノクローナル抗体、及びそのような抗体を用いて、そのような治療が必要な被験体を治療する方法に関する。診断および治療目的のために当該記載の抗体を使用する方法も提供する。また、当該記載の抗体を発現する細胞を培養することに関する組織培養培地組成物および方法、それと同様に、当該記載の抗体を精製又は単離する方法も提供する。
【背景技術】
【0003】
癌(がん)は、米国における第二位の死亡原因である。米国国立衛生研究所(NIH)所管の国立癌研究所(NCI)によると、2008年には、500,000人を超える個人が癌により死亡し、140万人を超える個人が癌と診断されるであろうと見積もっている。癌の治療方法を開発する及び癌の予防方法の一般的理解を高めるグローバルな研究努力があり、イギリス、アメリカ、その他諸国は、癌関連の研究を最優先のものにさせている。例えば、NIHは、2008年度のがん関連研究のための資金に50億ドル超を計上したが、それは、他の重篤な疾患(例、HIV、心臓疾患)のために提供される資金量のほぼ二倍であった。
【0004】
100種類より多くの互いに異なる癌がある。幅広い種々の癌があるにも関わらず、ほとんど全ての癌関連の死亡は、数種類の共通する癌(例、肺癌、大腸癌、乳癌)により引き起こされる。NCIは、これら3つの形態の癌が、2008年に25万人より多くの死亡を引き起こすだろうと推定している。前述した癌ほど致命的ではないが、皮膚がんは、米国で新規に癌と診断される全てのものの約半数を占め、最も一般的な種類の癌となっている。種々の種類の皮膚がんの内、メラノーマは、最もまれで且つ最も致命的である。米国がん協会の推定によれば、メラノーマは米国で診断された皮膚がんの全てのものの内たった4%を占めるに過ぎないが、それは、皮膚がん関連の死亡の全てのものの内79%を引き起こす。
【0005】
成功するがん治療は、早期診断と治療にしばしば起因する。がん診断の強力な手法は、がんと関連することが知られている腫瘍マーカーを検出することである。腫瘍マーカーは、物質、しばしばタンパク質であり、がんに応答して体内の腫瘍細胞、又は他の細胞によって産生される。腫瘍マーカーは、血液、尿、腫瘍細胞の表面、又は、他の非癌細胞及び組織上(中)に見いだすことが可能である。ガングリオシドは、多数の腫瘍と関連するマーカーの一種として同定されてきた(Hakomori, 99 Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 10718 (2002))。
【0006】
ガングリオシドは、少なくとも一つの糖連結シアル酸を有するスフィンゴ糖脂質である。この化合物は細胞膜の構成成分であり、種々の生物学的機能(例、細胞増殖、細胞分化、細胞情報伝達、微生物毒素の受容体としての機能)に中心的役割を果たすと考えられている(Jacques, et al., 4 Org. Biomol. Chem., 142 (2006))。40を超える互いに異なるガングリオシドが同定されたが、それらの中のある種のサブセット(GM3、GM2、GD3、GD2)を、腫瘍細胞は共通して過剰発現している(Id)。さらに、ガングリオシドは、ヒトにおいて免疫原性が高いことが報告されている。高い免疫原性と腫瘍細胞による過剰発現との組み合わせにより、ガングリオシドは、がん治療のための有望な標的となっている。
【0007】
ガングリオシド特異的モノクローナル抗体が開発され、いくつかの場合、ヒトにおける効力が検証されてきた(Azuma et al., 13 Clin. Cancer Res., 2745 (2007); Irie, et al., 53 Cancer Immunol. Immunother. 110 (2004); Irie and Morton, 83 Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 8694 (1986))。ヒトGD2特異的抗体に関する最も初期の報告の一つは、Cahanらによるものである(79 Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 7629 (1982))。免疫療法試験によると、メラノーマワクチンをワクチン接種した患者に関し、より高い生存率が、IgGよりむしろガングリオシド特異的IgMと相関することが示されてきた (Jones et al., 66 J. Natl. Cancer Inst. 249 (1981))。この知見と一致して、ガングリオシドGD2及びGD3に対するIgM抗体に関連するヒトでの試験は、メラノーマに対する可能な治療としてそのような抗体を使用することに有望な結果を提供してきた(Irie, et al., 53 Cancer Immunol. Immunother. 110; Irie and Morton, 83 Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 8694 (1986))。
【0008】
IgMは、ヒト抗体の5つのアイソタイプの内の一つであり、その他は、IgG、IgA、IgE、IgDである。IgMは、通常、液性免疫応答において生産される最初の抗体である。なぜなら、IgMの重鎖定常部遺伝子の配置により、それはアイソタイプスイッチングなしに生産可能だからである(Charles A. Janeway, et al. Immunobiology 9-12 (5th ed. 2001))。IgMは遺伝子成熟が起こる前にしばしば産生されるので、このクラスの抗体アイソタイプは通常、他のアイソタイプよりも所定の抗原に対する親和性がより低い(Id)。IgMは重合体(ポリマー)を形成することで低い親和性を相補し、その抗体分子の結合活性を増加させる(Id)。重合IgMは通常、J鎖(抗体重合を促進する約15kDの分子)と結合した五量体を形成する。しかし、J鎖の非存在下で五量体又は六量体として重合することもできる(Id. at 4-19)。いくつかの例では、IgMの重合状態は、病原体の存在下、補体経路を高効率に活性化することを可能にする。例えば、もし、J鎖含有五量体IgMが、抗原に結合した際に構造変化を起こさなければ、それは補体の活性化に通常効果的ではない(Id. at 9-17)。一方、J鎖不含有IgM又は六量体IgMは、五量体IgMよりも100倍にまで良く補体を活性化することが示されてきた(Weirsma et al., 160 J. Immunol. 5979 (1998)。
【0009】
がんはグローバルな健康問題である。この疾患の種々の形態を治療することに進展が見られるものの、改良された治療法が必要とされる。免疫治療は、がん治療のための大きな可能性を秘めていると考えられている。がん細胞により発現される抗原に特異的なIgM抗体は、効果的ながん治療法であると証明される可能性がある。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0010】
ガングリオシドGD2に特異的に結合する単離抗体及び抗原結合断片を本明細書中に記載する。いくつかの実施形態では、前記抗体又は抗原結合断片は、IgMである。いくつかの実施形態では、前記抗体又は抗原結合断片は五量体若しくは六量体である。前記抗体又は抗原結合断片は、ヒト、ヒト化、若しくはキメラのものである場合があるが、前記抗体又は抗原結合断片は好ましくはヒトのものである。前記抗体又は抗原結合断片は、配列番号40と実質的に同一若しくは同一のアミノ酸配列を有する重鎖と配列番号42と同一若しくは同一のアミノ酸配列を有する軽鎖とを含んでもよい。いくつかの実施形態では、抗体又は抗原結合断片は、配列番号10と実質的に同一若しくは同一の重鎖CDR1アミノ酸配列を含んでもよい。いくつかの実施形態では、抗体又は抗原結合断片は、配列番号11と実質的に同一若しくは同一の重鎖CDR2アミノ酸配列を含んでもよい。いくつかの実施形態では、抗体又は抗原結合断片は、配列番号12と実質的に同一若しくは同一の重鎖CDR3アミノ酸配列を含んでもよい。いくつかの実施形態では、抗体又は抗原結合断片は、配列番号26と実質的に同一若しくは同一の軽鎖CDR1アミノ酸配列を含んでもよい。いくつかの実施形態では、抗体又は抗原結合断片は、配列番号27と実質的に同一若しくは同一の軽鎖CDR2アミノ酸配列を含んでもよい。いくつかの実施形態では、抗体又は抗原結合断片は、配列番号28と実質的に同一若しくは同一の軽鎖CDR3アミノ酸配列を含んでもよい。前記抗体又は抗原結合断片は、配列番号10と実質的に同一若しくは同一のCDR1アミノ酸配列と、配列番号11と実質的に同一若しくは同一のCDR2アミノ酸配列と、配列番号12と実質的に同一若しくは同一のCDR3アミノ酸配列とを有する重鎖を含んでもよい。前記抗体又は抗原結合断片は、配列番号26と実質的に同一若しくは同一のCDR1アミノ酸配列と、配列番号27と実質的に同一若しくは同一のCDR2アミノ酸配列と、配列番号28と実質的に同一若しくは同一のCDR3アミノ酸配列とを有する軽鎖を含んでもよい。前記抗体又は抗原結合断片は、配列番号10と実質的に同一若しくは同一のCDR1アミノ酸配列と、配列番号11と実質的に同一若しくは同一のCDR2アミノ酸配列と、配列番号12と実質的に同一若しくは同一のCDR3アミノ酸配列とを有する重鎖を含んでもよく、前記抗体又は抗原結合断片は、配列番号26と実質的に同一若しくは同一のCDR1アミノ酸配列と、配列番号27と実質的に同一若しくは同一のCDR2アミノ酸配列と、配列番号28と実質的に同一若しくは同一のCDR3アミノ酸配列とを有する軽鎖を有していてもよい。
【0011】
前記抗体又は抗原結合断片は、配列番号13と実質的に同一若しくは同一の重鎖FWR1アミノ酸配列を含んでもよい。いくつかの実施形態では、前記抗体又は抗原結合断片は、配列番号14と実質的に同一若しくは同一の重鎖FWR2アミノ酸配列を含んでもよい。いくつかの実施形態では、前記抗体又は抗原結合断片は、配列番号15と実質的に同一若しくは同一の重鎖FWR3アミノ酸配列を含んでもよい。いくつかの実施形態では、前記抗体又は抗原結合断片は、配列番号29と実質的に同一若しくは同一の軽鎖FWR1アミノ酸配列を含んでもよい。いくつかの実施形態では、前記抗体又は抗原結合断片は、配列番号30と実質的に同一若しくは同一の軽鎖FWR2アミノ酸配列を含んでもよい。いくつかの実施形態では、前記抗体又は抗原結合断片は、配列番号31と実質的に同一若しくは同一の軽鎖FWR3アミノ酸配列を含んでもよい。いくつかの実施形態では、前記抗体又は抗原結合断片は、配列番号13と実質的に同一若しくは同一のFWR1アミノ酸配列と、配列番号14と実質的に同一若しくは同一のFWR2アミノ酸配列と、配列番号15と実質的に同一若しくは同一のFWR3アミノ酸配列とを有する重鎖を含んでもよい。いくつかの実施形態では、前記抗体又は抗原結合断片は、配列番号29と実質的に同一若しくは同一のFWR1アミノ酸配列と、配列番号30と実質的に同一若しくは同一のFWR2アミノ酸配列と、配列番号31と実質的に同一若しくは同一のFWR3アミノ酸配列とを有する軽鎖を含んでもよい。いくつかの実施形態では、前記抗体又は抗原結合断片は重鎖と軽鎖を含んでいてもよく、前記重鎖は、配列番号13と実質的に同一若しくは同一のFWR1アミノ酸配列と、配列番号14と実質的に同一若しくは同一のFWR2アミノ酸配列と、配列番号15と実質的に同一若しくは同一のFWR3アミノ酸配列とを含んでもよく、前記軽鎖は、配列番号29と実質的に同一若しくは同一のFWR1アミノ酸配列と、配列番号30と実質的に同一若しくは同一のFWR2アミノ酸配列と、配列番号31と実質的に同一若しくは同一のFWR3アミノ酸配列とを含んでもよい。
【0012】
いくつかの実施形態では、前記抗体又は抗原結合断片は、配列番号10と実質的に同一若しくは同一のCDR1アミノ酸配列と、配列番号11と実質的に同一若しくは同一のCDR2アミノ酸配列と、配列番号12と実質的に同一若しくは同一のCDR3アミノ酸配列と、配列番号13と実質的に同一若しくは同一のFWR1アミノ酸配列と、配列番号14と実質的に同一若しくは同一のFWR2アミノ酸配列と、配列番号15と実質的に同一若しくは同一のFWR3アミノ酸配列とを有する重鎖を含んでもよい。いくつかの実施形態では、前記抗体又は抗原結合断片は、配列番号26と実質的に同一若しくは同一のCDR1アミノ酸配列と、配列番号27と実質的に同一若しくは同一のCDR2アミノ酸配列と、配列番号28と実質的に同一若しくは同一のCDR3アミノ酸配列と、配列番号29と実質的に同一若しくは同一のFWR1アミノ酸配列と、配列番号30と実質的に同一若しくは同一のFWR2アミノ酸配列と、配列番号31と実質的に同一若しくは同一のFWR3アミノ酸配列とを有する軽鎖を含んでもよい。いくつかの実施形態では、前記抗体又は抗原結合断片は重鎖と軽鎖を含んでいてもよく、前記重鎖は、配列番号10と実質的に同一若しくは同一のCDR1アミノ酸配列と、配列番号11と実質的に同一若しくは同一のCDR2アミノ酸配列と、配列番号12と実質的に同一若しくは同一のCDR3アミノ酸配列と、配列番号13と実質的に同一若しくは同一のFWR1アミノ酸配列と、配列番号14と実質的に同一若しくは同一のFWR2アミノ酸配列と、配列番号15と実質的に同一若しくは同一のFWR3アミノ酸配列とを有し、前記軽鎖は、配列番号26と実質的に同一若しくは同一のCDR1アミノ酸配列と、配列番号27と実質的に同一若しくは同一のCDR2アミノ酸配列と、配列番号28と実質的に同一若しくは同一のCDR3アミノ酸配列と、配列番号29と実質的に同一若しくは同一のFWR1アミノ酸配列と、配列番号30と実質的に同一若しくは同一のFWR2アミノ酸配列と、配列番号31と実質的に同一若しくは同一のFWR3アミノ酸配列とを有する。CDR及びFWRの抗原結合配置は、CDR足場材料として抗体様タンパク質を用いて設計することも可能である。そのように設計された抗原結合タンパク質は、本開示の範囲にある。
【0013】
記載される抗体又は抗原結合断片は、配列番号40と実質的に同一若しくは同一のアミノ酸を有する重鎖を含んでもよい。いくつかの実施形態では、配列番号39と実質的に同一又は同一のポリヌクレオチドは、重鎖アミノ酸配列をコードする場合がある。記載される抗体又は抗原結合断片は、配列番号42と実質的に同一若しくは同一のアミノ酸を有する軽鎖を含んでもよい。いくつかの実施形態では、配列番号41と実質的に同一又は同一のポリヌクレオチドは、軽鎖アミノ酸配列をコードする場合がある。記載される抗体又は抗原結合断片は、重鎖と軽鎖とを含んでもよく、前記重鎖は、配列番号40と実質的に同一若しくは同一のアミノ酸配列を有し、前記軽鎖は、配列番号42と実質的に同一若しくは同一のアミノ酸配列を有する。
【0014】
いくつかの実施形態では、前記抗体を、アメリカ培養細胞系統保存機関(10801 University Blvd., Manassas, Virginia 20110-2209)に2008年7月16日に寄託され、アクセッション番号PTA-9376を割り当てられた抗体生産細胞により生産する。いくつかの実施形態では、前記抗体又はその抗原結合断片は、前記寄託抗体生産細胞により生産される抗体の有する結合親和性で、GD2に対するものを有する。いくつかの実施形態では、開示される抗体又はその抗原結合断片は、前記寄託抗体生産細胞により生産される抗体の有する重鎖CDR及び軽鎖CDRを含む。いくつかの実施形態では、前記抗体又はその抗原結合断片は、前記寄託抗体生産細胞により生産される抗体の有する重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、前記抗体又はその抗原結合断片は、前記寄託抗体生産細胞により生産される抗体と同一若しくはそれより大きいレベルの補体依存性細胞障害活性を呈する。また、前記寄託細胞により生産される抗体とGD2への結合が競合する抗体又はその抗原結合断片は、本明細書中に記載される抗体の範囲に含まれると考えられる。例えば、抗体は、その抗体が競合する抗体の非存在下で結合する抗原部位へ、他の抗体が結合するのを阻害若しくは妨げる場合、前記抗体は、別の抗体又はその抗原結合断片と競合する可能性がある。
【0015】
GD2に特異的に結合する抗体又は抗原結合断片をコードするポリヌクレオチドも開示する。いくつかの実施形態では、前記ポリヌクレオチド(例、配列番号2)は、配列番号10と実質的に同一若しくは同一の重鎖CDR1配列を有する抗体又はその抗原結合断片をコードする。いくつかの実施形態では、前記ポリヌクレオチド(例、配列番号3)は、配列番号11と実質的に同一若しくは同一の重鎖CDR2を有する抗体又はその抗原結合断片をコードする。いくつかの実施形態では、前記ポリヌクレオチド(例、配列番号4)は、配列番号12と実質的に同一若しくは同一の重鎖CDR3を有する抗体又はその抗原結合断片をコードする。いくつかの実施形態では、前記ポリヌクレオチド(例、配列番号18)は、配列番号26と実質的に同一若しくは同一の軽鎖CDR1を有する抗体又はその抗原結合断片をコードする。いくつかの実施形態では、前記ポリヌクレオチド(例、配列番号19)は、配列番号27と実質的に同一若しくは同一の軽鎖CDR2を有する抗体又はその抗原結合断片をコードする。いくつかの実施形態では、前記ポリヌクレオチド(例、配列番号20)は、配列番号28と実質的に同一若しくは同一の軽鎖CDR3を有する抗体又はその抗原結合断片をコードする。前記ポリヌクレオチドは、配列番号10(例、配列番号2)と実質的に同一若しくは同一のCDR1と、配列番号11(例、配列番号3)と実質的に同一若しくは同一のCDR2と、配列番号12(例、配列番号4)と実質的に同一若しくは同一のCDR3とを有する重鎖を有する抗体又はその抗原結合断片をコードしてもよい。前記ポリヌクレオチドは、配列番号26(例、配列番号18)と実質的に同一若しくは同一の軽鎖CDR1と、配列番号27(例、配列番号19)と実質的に同一若しくは同一のCDR2と、配列番号28(例、配列番号20)と実質的に同一若しくは同一のCDR3とを有する抗体又はその抗原結合断片をコードしてもよい。前記ポリヌクレオチドは、配列番号10(例、配列番号2)と実質的に同一若しくは同一の重鎖CDR1と、配列番号11(例、配列番号3)と実質的に同一若しくは同一のCDR2と、配列番号12(例、配列番号4)と実質的に同一若しくは同一のCDR3と、配列番号26(例、配列番号18)と実質的に同一若しくは同一の軽鎖CDR1と、配列番号27(例、配列番号19)と実質的に同一若しくは同一のCDR2と、配列番号28(例、配列番号20)と実質的に同一若しくは同一のCDR3とを有する抗体又はその抗原結合断片をコードしてもよい。CDRの抗原結合配置は、CDR足場材料として抗体様タンパク質を用いて設計することも可能である。そのように設計された抗原結合タンパク質は、本開示の範囲にある。
【0016】
いくつかの実施形態では、前記ポリヌクレオチド(例、配列番号5)は、配列番号13と実質的に同一若しくは同一の重鎖FWR1を有する抗体又はその抗原結合断片をコードする。いくつかの実施形態では、前記ポリヌクレオチド(例、配列番号6)は、配列番号14と実質的に同一若しくは同一の重鎖FWR2を有する抗体又はその抗原結合断片をコードする。いくつかの実施形態では、前記ポリヌクレオチド(例、配列番号7)は、配列番号15と実質的に同一若しくは同一の重鎖FWR3を有する抗体又はその抗原結合断片をコードする。いくつかの実施形態では、前記ポリヌクレオチド(例、配列番号21)は、配列番号29と実質的に同一若しくは同一の軽鎖FWR1を有する抗体又はその抗原結合断片をコードする。いくつかの実施形態では、前記ポリヌクレオチド(例、配列番号22)は、配列番号30と実質的に同一若しくは同一の軽鎖FWR2を有する抗体又はその抗原結合断片をコードする。いくつかの実施形態では、前記ポリヌクレオチド(例、配列番号23)は、配列番号31と実質的に同一若しくは同一の軽鎖FWR3を有する抗体又はその抗原結合断片をコードする。いくつかの実施形態では、前記ポリヌクレオチドは、配列番号13(例、配列番号5)と実質的に同一若しくは同一の重鎖FWR1と、配列番号14(例、配列番号6)と実質的に同一若しくは同一のFWR2と、配列番号15(例、配列番号7)と実質的に同一若しくは同一のFWR3とを有する抗体又はその抗原結合断片をコードしてもよい。いくつかの実施形態では、前記ポリヌクレオチドは、配列番号29(例、配列番号21)と実質的に同一若しくは同一の軽鎖FWR1と、配列番号30(例、配列番号22)と実質的に同一若しくは同一のFWR2と、配列番号31(例、配列番号23)と実質的に同一若しくは同一のFWR3とを有する抗体又はその抗原結合断片をコードしてもよい。いくつかの実施形態では、前記ポリヌクレオチドは、重鎖と軽鎖とを有する抗体又はその抗原結合断片をコードし、重鎖FWR1が配列番号13(例、配列番号5)と実質的に同一若しくは同一であり、重鎖FWR2が配列番号14(例、配列番号6)と実質的に同一若しくは同一であり、重鎖FWR3が配列番号15(例、配列番号7)と実質的に同一若しくは同一であり、軽鎖FWR1が配列番号29(例、配列番号21)と実質的に同一若しくは同一であり、軽鎖FWR2が配列番号30(例、配列番号22)と実質的に同一若しくは同一であり、軽鎖FWR3が配列番号31(例、配列番号23)と実質的に同一若しくは同一である。
【0017】
いくつかの実施形態では、前記ポリヌクレオチドは、配列番号10(例、配列番号2)と実質的に同一若しくは同一の重鎖CDR1と、配列番号11(例、配列番号3)と実質的に同一若しくは同一の重鎖CDR2と、配列番号12(例、配列番号4)と実質的に同一若しくは同一の重鎖CDR3と、配列番号13(例、配列番号5)と実質的に同一若しくは同一の重鎖FWR1と、配列番号14(例、配列番号6)と実質的に同一若しくは同一の重鎖FWR2と、配列番号15(例、配列番号7)と実質的に同一若しくは同一の重鎖FWR3とを、有する抗体又はその抗原結合断片をコードする。いくつかの実施形態では、前記ポリヌクレオチドは、配列番号26(例、配列番号18)と実質的に同一若しくは同一の軽鎖CDR1と、配列番号27(例、配列番号19)と実質的に同一若しくは同一の軽鎖CDR2と、配列番号28(例、配列番号20)と実質的に同一若しくは同一の軽鎖CDR3と、配列番号29(例、配列番号21)と実質的に同一若しくは同一の軽鎖FWR1と、配列番号30(例、配列番号22)と実質的に同一若しくは同一の軽鎖FWR2と、配列番号31(例、配列番号23)と実質的に同一若しくは同一の軽鎖FWR3とを、有する抗体又はその抗原結合断片をコードする。
【0018】
いくつかの実施形態では、前記ポリペプチドは、重鎖と軽鎖を有する抗体又はその抗原結合断片をコードし、前記ポリペプチドは、配列番号10(例、配列番号2)と実質的に同一若しくは同一の重鎖CDR1と、配列番号11(例、配列番号3)と実質的に同一若しくは同一の重鎖CDR2と、配列番号12(例、配列番号4)と実質的に同一若しくは同一の重鎖CDR3と、配列番号13(例、配列番号5)と実質的に同一若しくは同一の重鎖FWR1と、配列番号14(例、配列番号6)と実質的に同一若しくは同一の重鎖FWR2と、配列番号15(例、配列番号7)と実質的に同一若しくは同一の重鎖FWR3とをコードし、並びに、配列番号26(例、配列番号18)と実質的に同一若しくは同一の軽鎖CDR1と、配列番号27(例、配列番号19)と実質的に同一若しくは同一の軽鎖CDR2と、配列番号28(例、配列番号20)と実質的に同一若しくは同一の軽鎖CDR3と、配列番号29(例、配列番号21)と実質的に同一若しくは同一の軽鎖FWR1と、配列番号30(例、配列番号22)と実質的に同一若しくは同一の軽鎖FWR2と、配列番号31(例、配列番号23)と実質的に同一若しくは同一の軽鎖FWR3とをコードする。改変抗原結合タンパク質をコードするポリヌクレオチドも本開示の範囲にある。
【0019】
前記抗体及び抗原結合断片をコードするポリヌクレオチドを含むベクターを提供し、GD2に特異的に結合する前記抗体又は抗原結合断片を発現する細胞も提供する。
【0020】
GD2関連疾患を、そのような治療が必要な被験体において治療又は予防する方法を本明細書中に記載する。いくつかの実施形態では、前記GD2関連疾患はがんである。いくつかの実施形態では、前記GD2関連疾患はメラノーマである。本方法は、GD2に特異的に結合する抗体又は抗原結合断片を、GD2関連疾患を治療若しくは予防するのに効果がある量で、被験体に投与することを含む。いくつかの実施形態では、本方法は、抗体若しくはその抗原結合断片と製薬上許容できる担体とを含む医薬組成物を投与することを含む。いくつかの観点では、前記抗体又はその抗原結合断片は、IgM抗体若しくは抗原結合断片である。いくつかの実施形態では、被験体においてGD2関連疾患を治療又は予防する記載の方法は、本明細書中に記載されるGD2特異的抗体との結合に関して競合する抗体若しくは抗原結合断片を用いて実施することも可能である。
【0021】
in vivo又はin vitroでGD2発現細胞を検出する方法を、本明細書中に記載する。本方法は、本明細書中に記載される抗体又はその抗原結合断片であって、GD2に特異的に結合するものを被験体に投与して、被験体においてその検出若しくは局在を可能にすることを含んでもよい。いくつかの実施形態では、記載の抗体又は抗原結合断片を、検出可能に標識してもよい。そのような検出可能標識は、蛍光標識、放射線標識、ビオチン等を含んでもよい。また、いくつかの実施形態では、GD2特異的抗体又は抗原結合断片は標識されず、代わりに、検出可能に標識される二次抗体により検出される。いくつかの実施形態では、記載される検出方法は、本明細書中に記載されるGD2特異的抗体及び抗原結合断片との結合に関して競合する抗体若しくは抗原結合断片を用いて実施することも可能である。
【0022】
IgM抗体若しくはその抗原結合断片を製造及び(精製又は単離)する方法を、本明細書中に記載する。本方法は、抗体若しくは抗原結合断片を生産するのに適した条件下で宿主細胞を培養し、その細胞培養物から前記抗体若しくは抗原結合断片を回収し、並びに、前記回収された抗体若しくは抗原結合断片を精製又は単離することを含む。IgM抗体若しくは抗原結合断片を精製又は単離する方法をも特徴とし、任意ではあるが、界面活性剤で前記抗体若しくは抗原結合断片を洗浄し、前記抗体若しくは抗原結合断片を含む溶液をアフィニティークロマトグラフィーカラムに添加し、前記アフィニティークロマトグラフィーカラムからの溶出物を陽イオン交換クロマトグラフィーカラムに添加し、前記陽イオン交換クロマトグラフィーカラムからの溶出物をハイドロキシアパタイトクロマトグラフィーカラムに添加し、前記ハイドロキシアパタイトクロマトグラフィーカラムから溶出物を回収することを含む。
【0023】
他の方法には、細胞培養培地に、(アミノ酸、糖類、及びビタミン類を含む)組成物を補充することにより、培養真核細胞の生存率を向上させることを含む。いくつかの実施形態では、前記組成物には、グルコース、グルタミン酸、アスパラギン酸、セリン、ヒスチジン、スレオニン、アルギニン、チロシン、システイン、バリン、メチオニン、トリプトファン、フェニルアラニン(phenyalanine)、イソロイシン、ロイシン、リジン、プロリン、ニコチン酸アミド、ピリドキシンHCl、葉酸、ビタミンB-12、リボフラビン、及びチアミンHClを含んでもよい。タンパク質を生産するように改変された細胞によりタンパク質生産を向上させる方法も、本明細書中に記載する。一観点では、これらの方法は、細胞の増殖培地に吉草酸(valeric acid)を補充することを含む。
【0024】
アルブミン(例、ウシ血清アルブミン(BSA))とガングリオシドとのタンパク質抱合体、並びにそのようなタンパク質抱合体を製造する方法を、本明細書中に記載する。一実施形態では、抱合されるガングリオシドは、GD2である場合がある。一実施形態では、抱合されるガングリオシドは、GM2である場合がある。一実施形態では、抱合されるガングリオシドは、GM3である場合がある。一実施形態では、還元アミノ化によって、ガングリオシドの炭水化物部分の還元末端にアルブミンを抱合する。一実施形態では、前記還元アミノ化は、シアノ水素化ホウ素ナトリウムによって触媒される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】エプスタイン・バー(Epstein-Barr)ウイルスで形質転換されたヒトリンパ芽球プール(HLP)の上清に存在する抗体の可変抗原特異性で、ELISA法によって測定されたものを示す図である。
【図1A】前記HLPの細胞播種2回目(8.1x濃縮)又は4回目(14.2x濃縮)からの濃縮細胞培養上清がGD2に特異的なIgM抗体を含むことを実証する図である。
【図1B】前記HLPからの細胞培養上清が 、ガングリオシドGD1a、GD2、GM2、及び GM3に結合するIgM抗体を含むことを実証する図である。
【0026】
【図2】GD2発現1205LUメラノーマ細胞上の前記HLP細胞培養物により生産されるIgM抗体の有する結合レベルであって、蛍光標識細胞分取(FACS)により解析されたものを示す図である。
【図2A】GD2特異的一次抗体の非存在下での結合を示すもので、ネガティブコントロールとして働くことを示す図である。
【図2B−2C】それぞれ、8.1x又は14.2xに濃縮された細胞培養上清から得られたHLP由来のIgMの結合を示す図である。
【図2D】マウスハイブリドーマHB-8568(商標)(ATCC #HB 8568)により生産されたGD2特異的マウスIgM抗体の結合を示すもので、ポジティブコントロールとして働くものを示す図である。
【0027】
【図3】前記HLP由来ハイブリドーマから作製されたハイブリドーマクローンからの使用済培地を用いた抗原特異的ELISAを示す図である。
【図3A】ガングリオシド(GD2、GD1a、GM2、GM3)に対するハイブリドーマ(3B2、5D7、10B4)の培地に含まれるIgM抗体の結合特性を示す図である。
【図3B】ガングリオシド(GD2、GD1a、GM2、GM3)に対する1470ハイブリドーマサブクローンの培地中に含まれるIgM抗体の結合特性を示す図である。
【0028】
【図4】GD2発現1205LUメラノーマ細胞上でのハイブリドーマ(3B2及び1470)細胞培養物により生産されたIgM抗体の結合レベルを示すもので、FACSにより解析されたものを示す図である。
【図4A】GD2特異的一次抗体の非存在下での結合の欠如を示すもので、ネガティブコントロールとして働くことを示す図である。
【図4B】HB-8568細胞により生産されたGD2特異的マウスIgM抗体の結合を示すもので、ポジティブコントロールとして働くものを示す図である。
【図4C−4D】ハイブリドーマ細胞(3B2と1470)により生産されたIgMの結合を示す図である。
【0029】
【図5】ハイブリドーマ3B2組織培養上清から得られたIgM又はGD2非特異的ヒトIgM(nhIgM)を介した補体依存性細胞障害(CDC)による細胞死を示す図である。
【0030】
【図6】AB527抗体の重鎖及び軽鎖セグメントのクローニングを模式的に示した図である。
【0031】
【図7】AB527発現ベクターを模式的に示した図である。
【0032】
【図8】ガングリオシド(GD2、GM2、GD3)に対するAB527の結合活性を示したもので、表面プラズモン共鳴により測定したものを示す図である。
【0033】
【図9】GD2に結合される抗体の濃度を異ならせて、表面プラズモン共鳴で測定したAB527結合平衡のグラフである。
【0034】
【図10】薄層クロマトグラフィーで分離された種々のガングリオシドの染色パターンを示す図である。オルシノール染色は非特異的ガングリオシド染色を示し、AB527染色との比較のための基礎を提供する。
【0035】
【図11】細胞表面にGD2を発現するヒトメラノーマ細胞株(細胞株:M14、M0023、M101、M18、M10-Vac、PM0496)若しくはGD2発現を欠如するヒトメラノーマ細胞株(GD2ネガティブ株:M21、M238、IMCD0023、MG1055)へのAB527結合のフローサイトメトリ(欄IとII)並びに比較のための光学顕微鏡画像及び免疫蛍光顕微鏡画像(欄IIとIV)を示す図である。
【0036】
【図12】EL4細胞に対するAB527の結合を特徴付ける飽和結合曲線及び対応するスキャッチャードプロットのグラフ表示である。
【0037】
【図13】GD2陽性(M14)及びGD2陰性(MG1055、RPMI7951、JS0592)メラノーマ細胞株のAB527染色を示す図である。免疫組織化学解析をビオチン化AB527(図13A )又はビオチン化GD2非特異的コントロールIgM(図13B)を用いて行った。
【0038】
【図14】M14腫瘍切片は、ビオチン化hIgM(図14A)とは免疫反応性ではないが、ビオチン化AB527(図14B)とは免疫反応性を示すことを示す図である。
【0039】
【図15】ハイブリドーマAB527-HYB-3B2-3C9から得られたIgM若しくはAB527 IgMのいずれかを介するGD2陽性又はGD2陰性細胞の補体依存性細胞障害(CDC)の比較を示す図である。
【0040】
【図16】GD2を発現するヒト腫瘍細胞(M14)若しくはGD2を発現しないヒト腫瘍細胞(1205LU)のいずれかに関して、補体の存在下又は非存在下でのAB527媒介CDCのグラフ表示である。
【0041】
【図17】非特異的ヒトIgM、AB527、非特異的hIgG、及びIgG1定常領域を有するアイソタイプ変換AB527に対するCDC活性の相対値を示す図である。
【0042】
【図18】J鎖(JC)を有する若しくはJ鎖を有しないAB527抗体に対するCDC活性の相対値を示す図である。
【0043】
【図19】プロテインAアフィニティークロマトグラフィーカラムに添加された界面活性剤処理条件培養上清(CCS)(導入物(Load))及び3MのMgCl2で溶出された後のプールされた画分から回収された物質(溶出物(Elute))の還元SDS-PAGEゲルを示す図である。矢印は、IgM重鎖(約70kD)及び軽鎖(約25kD)を示す。
【0044】
【図20】種々の量のMacroCap(商標)SP陽イオン交換樹脂によって捕獲されたAB527の還元SDS-PAGEゲルを示す図である。矢印は、IgM重鎖(約70kD)及び軽鎖(約25kD)を示す。
【0045】
【図21】種々の容量のAB527中間体をMacroCap SP陽イオン交換樹脂に添加した後に回収されたフロースルー(図21A)又は溶出物(図21B)における、種々の形態のAB527IgMの相対量を示す図である。
【0046】
【図22】サイズ排除HPLCでのクロマトグラムを示し、前記MacroCap SPカラムからのフロースルー(図22A)及び溶出物(図22B)に存在する物質のサイズ分布を確認する図である。
【0047】
【図23】GD2-BSA抱合体へのAB527 結合のグラフ表示である。
【0048】
【図24】GD2-BSA抱合体、GM2-BSA抱合体、及びGM3-BSA抱合体へのAB527結合を比較するグラフ表示である。
【0049】
【図25】培養培地サプリメント(CMS)の実施形態の添加を有する培地(培養培地サプリメント(CMS))、及びCMSの実施形態の添加のない培地(CD CHOコントロール)中で培養されたAB527発現細胞の経時的な生細胞密度の比較を示す図である。
【0050】
【図26】CMS野実施形態の添加を有する培地(CMS)、及びCMSの実施形態の添加のない培地(CD CHOコントロール)中で培養されたAB527発現細胞の経時的な生細胞の相対的パーセンテージを示す図である。
【0051】
【図27】CMSの実施形態の添加を有する培地(CMS)、及びCMSの実施形態の添加のない培地(CD CHOコントロール)中で培養されたAB527発現細胞の経時的な積算生細胞密度(IVC)を示す図である。
【0052】
【図28】CMSの実施形態の添加を有する培地(CMS)、及びCMSの実施形態の添加のない培地(CD CHOコントロール)中で培養されたAB527発現細胞の培養14日後の総抗体生産を示す図である。
【発明の詳細な説明】
【0053】
本記載の観点に関係する種々の用語を本明細書及び特許請求の範囲を通して使用する。特に記載がない場合、そのような用語は、当該技術分野における通常の意味を付与される。他の特に規定される用語を、本明細書中に提供される定義と矛盾しないような様式で解釈されたい。
【0054】
本明細書及び添付される特許請求の範囲において使用される場合、単数形の「a」、「an」、及び「the」は、その内容が明らかにそうでないと指示しない限り、複数の指示対象を含む。従って、例えば「細胞(a cell)」と言及する場合、二以上の細胞の組み合わせ等を含む。
【0055】
測定可能な値(例、量、一時的な期間等)に言及する際、本明細書中に用いられる「約」という用語は、特定の値から±20%までのばらつきを含むように意味し、そのようなばらつきは開示される方法を実施するのに適している。特にそうでないと指示されない限り、本明細書及び特許請求の範囲に用いられる(成分、特性(例、分子量)並びに反応条件等の)量を表すすべての数量は、用語「約」により全ての例において修飾されるように理解される。従って、それに反するように指示がない場合は、以下の明細書と添付される特許請求の範囲に記載される数的パラメーターは、本発明により得られるよう求められる所望の特性に依存して変化する場合がある近似である。最低限でも、特許請求の範囲の範疇に均等論の教義を適用するのを限定しようとする試みとしてではないが、各々の数的パラメーターは、報告される有意な桁数を考慮し、通常の四捨五入の技術を適用して、少なくとも解釈すべきである。
【0056】
本発明の広い範囲を定める数値範囲および数的パラメーターは近似であるにもかかわらず、具体的な実施例に記載される数値は、できる限り正確に報告される。しかしながら、任意の数値は、それぞれの試験測定中に見いだされる標準偏差に必要的に起因するある種の誤差を本質的に含んでいる。
【0057】
本明細書中に使用される、「細胞障害性」薬剤若しくは「細胞増殖抑制」剤の用語は、細胞の生物学的プロセスを阻害する薬剤、又は細胞の生存率若しくは増殖能を抑制する薬剤を指す。細胞障害性薬剤若しくは細胞増殖抑制剤は、種々の方法で機能する場合があり、例えば、限定するわけではないが、DNA損傷を誘導し、細胞周期停止を誘導し、DNA合成を阻害し、転写を阻害し、翻訳若しくはタンパク質合成を阻害し、細胞分裂を阻害し、又はアポトーシスを誘導する。本明細書中で用いられる、「化学療法剤」という用語は、腫瘍細胞を選択的に死滅させ、その増殖を阻害し、その転移を阻害する又は迅速に増殖する細胞の細胞周期を中断させる、細胞障害性薬剤、細胞増殖抑制剤、及び抗腫瘍剤のことを言う。化学療法剤には、限定はされないが、合成化合物、天然および組換細菌毒素、天然および組換真菌毒素、天然および組換植物毒素、核分裂性核種、及び放射性核種を含む。化学療法剤の具体例には、限定はされないが、ヤマゴボウ(pokeweed)抗ウイルスタンパク質、アブリン(abrin)、リシン(ricin)及びその各A鎖、モモージン(momordin)、サポリン(saporin)、ブリオジン(bryodin)1、ボーガニン(bouganin)、ジェロニン(gelonin)、ジフテリア毒素、シュードモナス外毒素、志賀毒素、カリケアマイシン(calicheamicin)、メイタンシノイド(maytansinoid)、鉛-212、ビスマス-212、アスタチン-211、ヨウ素-131、スカンジウム- 47、レニウム-186、レニウム-188、イットリウム-90、ヨウ素-123、ヨウ素-124、ヨウ素-125、臭素-77、インジウム-111、ホウ素-10、アクチニド(actinide)、アルトレタミン(altretamine)、アクチノマイシンD、プリカマイシン(plicamycin)、ピューロマイシン、グラミシジンD、ドキソルビシン、コルヒチン、サイトカラシンB、シクロホスファミド、エメチン(emetine)、メイタンシン(maytansine)、アムサクリン(amsacrine)、シスプラスチン(cisplastin)、エトポシド、エトポシド・オルソキノン(orthoquinone)、テニポシド(teniposide)、ダウノルビシン(daunorubicin)、ゲムシタビン(gemcitabine)、ドキソルビシン、ミトキサントラオン(mitoxantraone)、ビサンスレン(bisanthrene)、ブレオマイシン、メトトレキサート(methotrexate)、ビンデシン(vindesine)、アドリアマイシン、ビンクリスチン(vincristine)、ビンブラスチン(vinblastine)、BCNU、タキソール、タルセバ(tarceva)、アバスチン、マイトマイシン、5-フルオロウラシル、シクロホスファミド、及びある種のサイトカイン(例、TNF-α及びTNF-β)を含む。
【0058】
「単離される」は、自然状態から「ヒトの手により」変化させされることを意味する。分子若しくは組成物が自然に存在するとすると、もしそれが元の環境から変化した場合若しくは除去された場合、又はその両者である場合に、それは「単離された」とする。例えば、生存している植物若しくは動物に自然に存在するポリヌクレオチド又はポリぺプチドは「単離されて」いないが、その自然状態において共存する物質から分離された同一のポリヌクレオチド又はポリペプチドは、(本明細書中に使用される用語である)「単離されて」いる。
【0059】
「ポリヌクレオチド」(同義的に「核酸分子」又は「核酸」と称される)は、任意のポリリボヌクレオチド若しくはポリデオキシリボヌクレオチドを指し、それは非修飾RNA若しくはDNA、又は修飾RNA若しくはDNAである可能性がある。「ポリヌクレオチド」には、限定はされないが、一本鎖及び二本鎖DNA、一本鎖と二本鎖領域の混合物であるDNA、一本鎖及び二本鎖RNA、一本鎖と二本鎖領域の混合物であるRNA、並びに、一本鎖若しくは(より典型的には)二本鎖又は一本鎖と二本鎖領域の混合物である可能性があるDNA及びRNAを含む複合分子を含む。さらに、「ポリヌクレオチド」は、RNA若しくはDNA、又はRNAとDNAとの両者を含む三本鎖領域を指す。用語ポリヌクレオチドは、安定性若しくは他の理由のため修飾された主鎖を有する一又は複数の修飾塩基及びDNA若しくはRNAを含有するDNA又はRNAをも含む。"修飾"塩基には、例えば、トリチル化塩基および非典型塩基(例、イノシン)を含む。種々の修飾をDNA及びRNAに施すことが可能である。つまり、「ポリヌクレオチド」は、自然界に通常見いだされるポリヌクレオチドの化学的、酵素学的、若しくは代謝的な修飾形態、並びに、ウイルスと細胞に特徴的なDNA及びRNAの化学的形態を含む。「ポリヌクレオチド」は、また、しばしばオリゴヌクレオチドと称される比較的短い核酸鎖をも含む。
【0060】
核酸配列若しくはアミノ酸配列に関して「実質的に同一」とは、二以上の配列間で少なくとも65%の同一性を意味する。好ましくは、前記用語は、二以上の配列間で少なくとも70%の同一性、より好ましくは少なくとも75%の同一性、より好ましくは少なくとも80%の同一性、より好ましくは少なくとも85%の同一性、より好ましくは少なくとも90%の同一性、より好ましくは少なくとも91%の同一性、より好ましくは少なくとも92%の同一性、より好ましくは少なくとも93%の同一性、より好ましくは少なくとも94%の同一性、より好ましくは少なくとも95%の同一性、より好ましくは少なくとも96%の同一性、より好ましくは少なくとも97%の同一性、より好ましくは少なくとも98%の同一性、より好ましくは少なくとも99%若しくはそれより大きい同一性を指す。そのような同一性は、mBLASTアルゴリズムを用いて決定される場合がある(Altschul et al.(1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87: 2264-8; Karlin and Altschul (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 5873-7)。
【0061】
「ベクター」は、レプリコン(例、プラスミド、ファージ、コスミド、ウイルス)であり、その中には、別の核酸セグメントが、そのセグメントの複製若しくは発現を生じるように作動可能に挿入される場合がある。
【0062】
用語「作動可能に連結」若しくは「作動可能に挿入」とは、コード配列の発現を可能にするために、コード配列の発現に必要な調節配列を、核酸分子中でコード配列に比べて適切な位置に配置することを意味する。例として、プロモーターが、コード配列の転写若しくは発現を制御することができる場合、前記プロモーターは前記コード配列と作動可能に連結される。コード配列は、センス若しくはアンチセンスの方向で、プロモーター又は調節配列に作動可能に連結される場合がある。用語「作動可能に連結」は、発現ベクター中の他の転写制御要素(例、エンハンサー)の配置にもときどき適用される。
【0063】
外来若しくは異種の核酸(例、DNA)を細胞中に導入した場合、前記細胞は、「形質転換」された。形質転換DNAを、細胞のゲノム中に(共有結合で)組み込んでも、又は組み込まなくてもよい。例えば、原核生物、酵母、及び哺乳類細胞において、前記形質転換DNAは、エピソーム要素(例、プラスミド)として維持可能である。真核細胞に関しては、安定形質転換細胞、又は「安定細胞」は、真核細胞が形質転換DNAを含む娘細胞の集団から構成される細胞株若しくはクローンを樹立する能力により示される。「クローン」とは、有糸分裂によって単一細胞又は共通の祖先から派生した細胞の集団である。「細胞株」は、多世代に渡りin vitroで安定増殖することができる初代細胞のクローンである。本明細書中に提供されるいくつかの実施例では、細胞にDNAをトランスフェクトすることにより細胞を形質転換する。
【0064】
「ポリペプチド」は、ペプチド結合若しくは改変ペプチド結合(すなわち、ペプチド同配体)により互いに連結される二以上のアミノ酸を含む任意のペプチド又はタンパク質を指す。「ポリペプチド」は、短鎖(ペプチド、オリゴペプチド、オリゴマーと通常称される)と長鎖(プロテインと一般的に称される)との両者を指す。ポリペプチドは、遺伝子によりコードされる20種類のアミノ酸以外のアミノ酸を含んでもよい。「ポリペプチド」は、自然のプロセス(例、翻訳後のプロセス)又は当該技術分野で周知の化学修飾技術のいずれかにより修飾されるアミノ酸配列を含む。そのような修飾は、基本書、モノグラフ、及び研究論文に詳しく記載されている。修飾は、ポリペプチド(ペプチド主鎖、アミノ酸側鎖、及びアミノ末端若しくはカルボキシル末端を含む)のいかなる場所に起こってもよい。同じ型の修飾が、所定のポリペプチド中のいくつかの部位に同程度若しくは種々の程度に存在してもよい。また、所定のポリペプチドは、多数の型の修飾を含んでよい。ポリペプチドは、ユビキチン化の結果として分岐する場合があり、分岐を有する若しくは有しないで環状である場合もある。環状、分岐および分岐環状ポリペプチドは、自然な翻訳後プロセスに起因する可能性があるが、又は合成方法によって作製可能である。修飾には、アセチル化、アシル化、ADP-リボシル化、アミド化、フラビンの共有結合、ヘム部分の共有結合、ヌクレオチド若しくはヌクレオチド誘導体の共有結合、脂質若しくは脂質誘導体の共有結合、ホスファチジルイノシトール(phosphotidylinositol)の共有結合、架橋、環化、ジスルフィド結合形成、脱メチル化、共有架橋の形成、シスチンの形成、ピログルタミン酸の形成、ホルミル化、γ-カルボキシル化、グリコシル化、GPIアンカー形成、水酸化、ヨウ素化、メチル化、ミリストイル化、酸化、タンパク質分解処理、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セレノイル化、硫酸化、トランスファーRNAを介したタンパク質へのアミノ酸付加(例、アルジニル化(arginylation)、並びにユビキチン化を含む(例えば、「タンパク質-構造と分子特性」(Proteins - Structure and Molecular Properties)、第2版、T. E. Creighton, W. H. Freeman and Company, New York, 1993;Wold, F.、「翻訳後タンパク質修飾:展望と将来性」(Posttranslational Protein Modifications: Perspectives and Prospects)、1〜12ページ 「タンパク質の翻訳後共有結合修飾」(Posttranslational Covalent Modification of Proteins)、 B. C. Johnson, Ed., Academic Press, New York, 1983;Seifter et al.、 「タンパク質修飾及び非タンパク質補因子の解析」(Analysis for Protein Modifications and Nonprotein Cofactors)、 Meth Enzymol (1990) 182: 626-646; Rattan et al.、「タンパク質合成:翻訳後修飾と老化」( Protein Synthesis: Posttranslational Modifications and Aging)、 Ann NY Acad Sci (1992) 663: 48-62を参照されたい)。
【0065】
「生体分子」には、タンパク質、ポリペプチド、核酸、脂質、単糖、多糖、並びに、それらすべての断片、その類似体、その相同体、その抱合体、及びその誘導体を含む。
【0066】
用語「発現する」及び「生産する」は、本明細書中では同義的に使用され、遺伝子産物の生合成を指す。これらの用語は、RNAへの遺伝子の転写を包含する。これらの用語はまた、一又は複数のポリペプチドへのRNAの翻訳を包含し、さらに、すべての天然に存在する転写後及び翻訳後修飾を包含する。抗体やその抗原結合断片の発現若しくは生産は、細胞の細胞質内にあるか、あるいは細胞外環境(例、細胞培養物の増殖培地)へと出てもよい。
【0067】
用語「治療する」若しくは「治療」とは、怪我、病理、若しくは病状の減少又は回復における任意の成功あるいは成功の兆候を指し、任意の客観的若しくは主観的パラメーター(例、寛解、緩解、症状の減縮若しくは(怪我、病理、病状を患者にとってより許容できるものにすること)、変性率若しくは減退率を緩やかにさせること、変性の最後の時をより衰弱しないようにすること、被験体の肉体的若しくは精神的福祉を改善すること、又は生存期間を延長させること)を含む。客観的若しくは主観的パラメーター(身体診察、神経学的検査、または精神科の評価の結果を含む)によって、治療を評価してもよい。
【0068】
「有効量」及び「治療有効量」は、本明細書中で互換的に用いられ、本明細書中に記載される抗体、抗原結合断片、若しくは抗体組成物の量であって、特定の生物学的結果若しくは治療成績(例、限定はされないが、本明細書中に開示、記載、例示される生物学的結果又は治療成績)を達成するのに有効な量を指す。前記抗体若しくはその抗原結合断片の治療有効量は、因子(例、個人の疾患状態、年齢、性別、及び体重)並びに個人において所望の応答を呈するための前記抗体若しくはその抗原結合断片の能力によって異なる場合がある。そのような結果には、限定はされないが、当該技術分野において適した任意の手段によって測定されるがん治療を含む場合がある。
【0069】
「製薬上許容できる」とは、薬理学/毒性学的観点から患者に許容される、並びに組成物、製剤、安定性、患者受容性、及び生物学的利用能の物理的/化学的観点から、製造医薬化学者に許容される特性及び物質を指す。
【0070】
「製薬上許容できる担体」とは、有効成分の生物学的活性の効力と干渉しない媒体、及びそれが投与される宿主に毒性がない媒体を指す。
【0071】
「抗体」とは、特に他に特定しない限り、全てのアイソタイプの免疫グロブリン(IgG、IgA、IgE、IgM、IgD、及びIgY)を指し、その各々のアイソタイプの種々の単量体及び多量体の型を含む。
【0072】
抗原結合断片は、特定の抗原に対する結合親和性を呈する可能性のある任意のタンパク質性構造である。いくつかの抗原結合断片は、元の抗体分子の抗原結合特異性を保持する完全抗体の部分から構成されている。例えば、抗原結合断片は、少なくとも一つの可変領域(重鎖又は軽鎖可変領域のいずれか)又は、特定の抗原に結合することが知られる抗体の一又は複数のCDRを含んでもよい。適切な抗原結合断片の例には、限定はされないが、二重特異性抗体(diabodies)、一本鎖分子、(Fab、F(ab')2、Fc、Fabc、Fv)分子、一本鎖(Sc)抗体、個々の抗体軽鎖、個々の抗体重鎖、(抗体鎖若しくはCDR)と(他の蛋白質、タンパク質足場材料、若しくは分子)とのキメラ融合体、重鎖モノマー若しくはダイマー、軽鎖モノマー若しくはダイマー、並びに一つの重鎖と一つの軽鎖とから構成される二量体等を含む。全ての抗体のアイソタイプを使用して、抗原結合断片を生成してもよい。また、抗原結合断片は、目的の所定の抗原に対する親和性を付与する配向で、ポリペプチドセグメントをうまく取り込むことが可能な、非抗体性のタンパク質性フレームワーク(例、タンパク質足場材料)を含んでもよい。抗原結合断片は、組換的に作製可能であり、完全抗体を酵素的若しくは化学的切断することにより作製可能である。語句「抗体又は(若しくは)その抗原結合断片」は、前記語句中に言及される抗体の一又は複数のアミノ酸セグメントを所定の抗原結合断片が取り込むことを指すように用いられる場合がある。
【0073】
「抗体組成物」は、少なくとも一つの製薬上許容できる担体、化学療法剤、又は診断薬部分(例、111In-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-N,N',N'',N'''-四酢酸(111In-DOTA))と結合される抗体又はその結合断片を指す。
【0074】
「特異的結合」とは、他の生体分子に結合する親和性よりも、高い親和性で特定の生体分子に結合する、抗体若しくは抗原結合断片の能力を指す。
【0075】
本明細書中に記載される実施形態は、特定の方法、試薬、化合物、組成物または生物学的システムに限定されず、もちろん、変化することができる。さらに、本明細書中で用いられる用語は、特定の抗体または抗原結合断片だけを記述する目的であり、限定しようとする意図はない。
【0076】
<GD-2特異的抗体>ガングリオシドGD2に特異的に結合する単離抗体若しくは抗原結合断片を本明細書中に記載する。一実施形態では、前記抗体若しくはその抗原結合断片はモノクローナル抗体又は抗原結合断片である。しかしながら、他の実施形態には、GD2特異的ポリクローナル抗体及びGD2に対する特異性を保持している抗体の誘導体若しくは断片を含む。抗体分子の一般的構造には、(重鎖と軽鎖を含む)抗原結合ドメイン及び(補体結合を含む種々の機能を司さどる)Fcドメインを含む。いくつかの実施形態では、前記抗体又は抗原結合断片は、補体依存性細胞障害を媒介する。
【0077】
5つのクラスの免疫グロブリンがあり、Fc領域中の重鎖の一次構造が免疫グロブリンのクラスを決定する。具体的には、アルファ、デルタ、イプシロン、ガンマ、及びミュー鎖は、IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMアイソタイプ、それぞれに対応する。記載の抗体または抗原結合断片は、すべてのアイソタイプと四本鎖免疫グロブリン構造体の合成多量体を含む。また、記載の抗体または抗原結合断片は、ニワトリや七面鳥血清およびニワトリや七面鳥卵黄に一般的に見られるIgYアイソタイプをも含む。抗体又は抗原結合断片は、非共有結合的に、特異的に、及び可逆的に抗原と結合する。
【0078】
開示された主題の抗体又は抗原結合断片は、任意の種に由来することができる。例えば、前記抗体又は抗原結合断片は、マウス、ラット、ヤギ、ウマ、ブタ、ウシ、ニワトリ、ウサギ、ロバ、及びヒト等であっても良い。ヒトの治療に使用するために、非ヒト由来の抗体又は抗原結合断片は、ヒト患者に投与される際、より抗原性が低くなるように、遺伝的若しくは構造的に改変可能である。
【0079】
いくつかの実施形態では、前記抗体又は抗原結合断片はキメラである。本明細書中で使用される場合、用語「キメラ」抗体若しくは抗原結合断片は、非ヒト哺乳動物、齧歯類、若しくは爬虫類の抗体アミノ酸配列に由来する少なくとも一つの可変ドメインの少なくともいくつかの部分を有する抗体又はその抗原結合断片で、一方、前記抗体若しくはその抗原結合断片の残りの部分はヒトに由来するものを意味する。例えば、キメラ抗体は、ヒトFcを有するマウス抗原結合ドメイン、又は他のそのような構造ドメインを含んでもよい。
【0080】
いくつかの実施形態では、前記抗体はヒト化抗体である。ヒト化抗体は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小限配列を含む、キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖又はその断片(例、Fv、Fab、Fab'、F(ab')2または抗体の他の抗原結合部分配列)であってもよい。大部分は、ヒト化抗体は、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)の内、レシピエントの相補性決定領域(CDR)残基が、所望の特異性、親和性、及び容量を有する非ヒト(例、マウス、ラット、若しくはウサギ)(ドナー抗体)のCDR由来の残基に置換されるものである。いくつかの例では、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FWR)残基は、対応する非ヒト残基によって置換される。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも、移入されたCDR若しくはフレームワーク配列にも見られない残基を含んでもよい。これらの修飾は、抗体性能をさらに洗練し及び最適化させる。一般的には、ヒト化抗体は、少なくとも一つ、通常は二つの可変ドメインを実質的にすべて含み、そこでは、非ヒト免疫グロブリンのものに対応するすべての若しくは実質的にすべてのCDR領域、並びにすべての若しくは実質的にすべてのFWR領域がヒト免疫グロブリン配列のものであるだろう。また、ヒト化抗体は、典型的にはヒト免疫グロブリンのものである、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部を最適には含むであろう。さらに詳細は、Jones et al., 321 Nature 522-5 (1986); Reichmann et al., 332 Nature 323-9 (1988); and Presta, 2 Curr. Op. Struct. Biol. 593-6 (1992)を参照されたい。
【0081】
いくつかの場合では、記載される抗体は、ヒト抗体又はその抗原結合断片である。本明細書中で使用される場合、用語「ヒト抗体」は、抗体がヒト由来のみであるか、その可変及び定常ドメイン配列がヒト配列である抗体であるかのいずれかであることを意味する。前記用語は、ヒト遺伝子に由来する(すなわち、利用する)配列を有する抗体を包含するが、抗体は改変されて、例えば、可能性のある免疫原性を低下させ、親和性を向上させ、望まない折り畳みを引き起こす可能性のあるシステインを排除等する。前記用語は、ヒト細胞に非典型的な糖鎖修飾を付与する可能性のある、非ヒト細胞において組換的に生産される抗体を含む。
【0082】
本明細書中に記載される抗体又は抗原結合断片を、例えば、治療若しくは診断応用のために、標識するか、又はさもなくば、種々の化学部分若しくは生体分子部分に抱合することができる。前記部分は、細胞障害性のもの(例、細菌(バクテリア)毒素、ウイルス毒素、放射性同位体等)であってもよい。前記部分は、検出可能な標識(例、蛍光標識、放射線標識、ビオチン等(例、111In-DOTA、111In-ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、または放射性核種(例、限定はされないが、鉛-212、ビスマス-212、アスタチン-211、ヨウ素-131、スカンジウム-47、レニウム-186、レニウム-188、イットリウム-90、ヨウ素-123、ヨウ素-124、ヨウ素-125、臭素-77、インジウム-111、及び核分裂性核種(例、ホウ素-10若しくはアクチニド)))であってもよい。
【0083】
いくつかの実施形態では、前記抗体又は抗原結合断片を、一又は複数の化学療法剤(例、限定はされないが、放射性核種、毒素、細胞障害性薬剤、細胞増殖抑制剤)と抱合する。他の実施形態では、前記抗体または抗原結断片を、一又は複数の化学療法剤と組み合わせて使用する。本明細書中に記載される抗体又は抗原結合断片を、単独であるいは生体分子若しくは化学療法剤(例、細胞傷害性薬剤または細胞増殖抑制剤)と共に(例、共投与又は抱合して)使用可能である。いくつかの実施形態では、前記化学療法剤は、放射性核種(例、限定はされないが、鉛-212、ビスマス-212、アスタチン-211、ヨウ素-131、スカンジウム-47、レニウム-186、レニウム-188、イットリウム-90、ヨウ素-123、ヨウ素-124、ヨウ素-125、臭素-77、インジウム-111、及び核分裂性核種(例、ホウ素-10若しくはアクチニド))である。他の実施形態では、前記化学療法剤は、毒素若しくは細胞障害性薬物、ヤマゴボウ(pokeweed)抗ウイルスタンパク質、アブリン、リシン(ricin)及びその各A鎖、モモージン(momordin)、サポリン(saporin)、ブリオジン(bryodin)1、ボーガニン(bouganin)、ジェロニン(gelonin)、ジフテリア毒素、シュードモナス外毒素、志賀毒素、カリケアマイシン(calicheamicin)、メイタンシノイド(maytansinoid)、アルトレタミン(altretamine)、アクチノマイシンD、プリカマイシン(plicamycin)、ピューロマイシン、グラミシジンD、ドキソルビシン、コルヒチン、サイトカラシンB、シクロホスファミド、エメチン(emetine)、メイタンシン(maytansine)、アムサクリン(amsacrine)、シスプラスチン(cisplastin)、エトポシド、エトポシド・オルソキノン(orthoquinone)、テニポシド(teniposide)、ダウノルビシン(daunorubicin)、ゲムシタビン(gemcitabine)、ドキソルビシン、ミトキサントラオン(mitoxantraone)、ビサンスレン(bisanthrene)、ブレオマイシン、メトトレキサート(methotrexate)、ビンデシン(vindesine)、アドリアマイシン、ビンクリスチン(vincristine)、ビンブラスチン(vinblastine)、BCNU、タキサン(taxane)(例、タキソール(商標))、タルセバ(tarceva)、アバスチン、マイトマイシン、5-フルオロウラシル、シクロホスファミド、及びある種のサイトカイン(例、TNF-α及びTNF-β)等である。そのような薬剤への抗体又は抗原結合断片の抱合方法は、文献において既知である。
【0084】
抗体特異性は主として6つのCDR領域(特にH鎖CDR3)で決定される(Kala et al., 132 J. Biochem. 535-41 (2002); Morea et al., 275 J. Mol. Biol. 269-94 (1998); and, Chothia et al., 196 J. Mol. Biol. 901-17 (1987))。しかしながら、抗体フレームワーク領域は、抗原―抗体相互作用に役割を担っていて (Panka et al., 85 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 3080-4 (1988))、特にCDRループの立体構造に影響を及ぼす(Foote et al., 224 J. Mol. Biol. 487-99 (1992))。従って、記載される抗体又は抗原結合断片は、GD2に特異性を付与するH鎖若しくはL鎖のCDR領域又はFWR領域の任意の組み合わせを含んでもよい。日常的に当該技術分野で行われているドメインシャフリング実験(Jirholt et al., 215 Gene 471-6 (1998); Soderlind et al., 18 Nature Biotechnology 852-6 (2000))を実施して、本明細書中に記載、例示される明細に従って、GD2に特異的に結合する抗体を作製することができる。そのようなドメインシャフリング実験によって生成される抗体又は抗原結合断片は、本明細書中に記載される抗体又は抗原結合断片の範囲に入っている。さらに、抗体様タンパク質を設計してCDR足場として機能させる(Nicaise et al., 13 Protein Sci. 1882 (2004))ように、CDRを配置して所定の抗原に結合させることもできる。そのような抗原結合タンパク質は、本明細書中に記載される抗体の範囲に入っている。
【0085】
本明細書中に記載される抗体又は抗原結合断片は、種々の形態を生じることができるが、表1に示される一又は複数の抗体セグメントを含むだろう。
(表1)記載される抗体及びその抗原結合断片の抗体セグメント("Lc"は軽鎖を表し、"Hc"は重鎖を表す。)

【0086】
いくつかの実施形態では、抗体又は抗原結合断片は、配列番号10と実質的に同一若しくは同一の重鎖CDR1アミノ酸配列を含んでもよい。いくつかの実施形態では、抗体又は抗原結合断片は、配列番号11と実質的に同一若しくは同一の重鎖CDR2アミノ酸配列を含んでもよい。いくつかの実施形態では、抗体又は抗原結合断片は、配列番号12と実質的に同一若しくは同一の重鎖CDR3アミノ酸配列を含んでもよい。いくつかの実施形態では、抗体又は抗原結合断片は、配列番号26と実質的に同一若しくは同一の軽鎖CDR1アミノ酸配列を含んでもよい。いくつかの実施形態では、抗体又は抗原結合断片は、配列番号27と実質的に同一若しくは同一の軽鎖CDR2アミノ酸配列を含んでもよい。いくつかの実施形態では、抗体又は抗原結合断片は、配列番号28と実質的に同一若しくは同一の軽鎖CDR3アミノ酸配列を含んでもよい。いくつかの実施形態では、抗体又は抗原結合断片は、配列番号10と実質的に同一若しくは同一の重鎖CDR1アミノ酸配列と、配列番号11と実質的に同一若しくは同一のCDR2アミノ酸配列と、配列番号12と実質的に同一若しくは同一のCDR3アミノ酸配列とを含んでもよい。いくつかの実施形態では、抗体又は抗原結合断片は、配列番号26と実質的に同一若しくは同一の軽鎖CDR1アミノ酸配列と、配列番号27と実質的に同一若しくは同一のCDR2アミノ酸配列と、配列番号28と実質的に同一若しくは同一のCDR3アミノ酸配列とを含んでもよい。いくつかの実施形態では、抗体又は抗原結合断片は、重鎖と軽鎖を含んでいてもよく、前記重鎖は、配列番号10と実質的に同一若しくは同一のCDR1アミノ酸配列と、配列番号11と実質的に同一若しくは同一のCDR2アミノ酸配列と、配列番号12と実質的に同一若しくは同一のCDR3アミノ酸配列とを有する重鎖を有してもよく、並びに、前記軽鎖は、配列番号26と実質的に同一若しくは同一のCDR1アミノ酸配列と、配列番号27と実質的に同一若しくは同一のCDR2アミノ酸配列と、配列番号28と実質的に同一若しくは同一のCDR3アミノ酸配列とを有する。CDRの抗原結合配置は、CDR足場材料として抗体様タンパク質を用いて設計することも可能である。そのように設計された抗原結合タンパク質は、本開示の範囲にある。
【0087】
いくつかの実施形態では、抗体又は抗原結合断片は、配列番号13と実質的に同一若しくは同一の重鎖FWR1アミノ酸配列を含んでもよい。いくつかの実施形態では、抗体又は抗原結合断片は、配列番号14と実質的に同一若しくは同一の重鎖FWR2アミノ酸配列を含んでもよい。いくつかの実施形態では、抗体又は抗原結合断片は、配列番号15と実質的に同一若しくは同一の重鎖FWR3アミノ酸配列を含んでもよい。いくつかの実施形態では、抗体又は抗原結合断片は、配列番号29と実質的に同一若しくは同一の軽鎖FWR1アミノ酸配列を含んでもよい。いくつかの実施形態では、抗体又は抗原結合断片は、配列番号30と実質的に同一若しくは同一の軽鎖FWR2アミノ酸配列を含んでもよい。いくつかの実施形態では、抗体又は抗原結合断片は、配列番号31と実質的に同一若しくは同一の軽鎖FWR3アミノ酸配列を含んでもよい。いくつかの実施形態では、抗体又は抗原結合断片は、配列番号13と実質的に同一若しくは同一のFWR1アミノ酸配列と、配列番号14と実質的に同一若しくは同一のFWR2アミノ酸配列と、配列番号15と実質的に同一若しくは同一のFWR3アミノ酸配列とを有する重鎖を含んでもよい。いくつかの実施形態では、抗体又は抗原結合断片は、配列番号29と実質的に同一若しくは同一のFWR1アミノ酸配列と、配列番号30と実質的に同一若しくは同一のFWR2アミノ酸配列と、配列番号31と実質的に同一若しくは同一のFWR3アミノ酸配列とを有する軽鎖を含んでもよい。いくつかの実施形態では、抗体又は抗原結合断片は重鎖と軽鎖を含んでいてもよく、前記重鎖は、配列番号13と実質的に同一若しくは同一のFWR1アミノ酸配列と、配列番号14と実質的に同一若しくは同一のFWR2アミノ酸配列と、配列番号15と実質的に同一若しくは同一のFWR3アミノ酸配列とを含んでもよく、並びに、前記軽鎖は、配列番号29と実質的に同一若しくは同一のFWR1アミノ酸配列と、配列番号30と実質的に同一若しくは同一のFWR2アミノ酸配列と、配列番号31と実質的に同一若しくは同一のFWR3アミノ酸配列とを含んでもよい。
【0088】
いくつかの実施形態では、抗体又は抗原結合断片は、配列番号10と実質的に同一若しくは同一のCDR1アミノ酸配列と、配列番号11と実質的に同一若しくは同一のCDR2アミノ酸配列と、配列番号12と実質的に同一若しくは同一のCDR3アミノ酸配列と、配列番号13と実質的に同一若しくは同一のFWR1アミノ酸配列と、配列番号14と実質的に同一若しくは同一のFWR2アミノ酸配列と、配列番号15と実質的に同一若しくは同一のFWR3アミノ酸配列とを有する重鎖を含んでもよい。いくつかの実施形態では、前記抗体又は抗原結合断片は、配列番号26と実質的に同一若しくは同一のCDR1アミノ酸配列と、配列番号27と実質的に同一若しくは同一のCDR2アミノ酸配列と、配列番号28と実質的に同一若しくは同一のCDR3アミノ酸配列と、配列番号29と実質的に同一若しくは同一のFWR1アミノ酸配列と、配列番号30と実質的に同一若しくは同一のFWR2アミノ酸配列と、配列番号31と実質的に同一若しくは同一のFWR3アミノ酸配列とを有する軽鎖を含んでもよい。いくつかの実施形態では、前記抗体又は抗原結合断片は重鎖と軽鎖を含んでいてもよく、前記重鎖は、配列番号10と実質的に同一若しくは同一のCDR1アミノ酸配列と、配列番号11と実質的に同一若しくは同一のCDR2アミノ酸配列と、配列番号12と実質的に同一若しくは同一のCDR3アミノ酸配列と、配列番号13と実質的に同一若しくは同一のFWR1アミノ酸配列と、配列番号14と実質的に同一若しくは同一のFWR2アミノ酸配列と、配列番号15と実質的に同一若しくは同一のFWR3アミノ酸配列とを含み、並びに、前記軽鎖は、配列番号26と実質的に同一若しくは同一のCDR1アミノ酸配列と、配列番号27と実質的に同一若しくは同一のCDR2アミノ酸配列と、配列番号28と実質的に同一若しくは同一のCDR3アミノ酸配列と、配列番号29と実質的に同一若しくは同一のFWR1アミノ酸配列と、配列番号30と実質的に同一若しくは同一のFWR2アミノ酸配列と、配列番号31と実質的に同一若しくは同一のFWR3アミノ酸配列とを含む。CDR及びFWRの抗原結合配置は、CDR足場材料として抗体様タンパク質を用いて設計することも可能である。そのように設計された抗原結合タンパク質は、本開示の範囲にある。
【0089】
いくつかの実施形態では、本明細書中に記載される抗体又は抗原結合断片は、配列番号40と実質的に同一若しくは同一のアミノ酸配列を含む重鎖を有する。いくつかの実施形態では、本明細書中に記載される抗体又は抗原結合断片は、配列番号42と実質的に同一若しくは同一のアミノ酸配列を含む軽鎖を有する。記載される抗体又は抗原結合断片は、重鎖と軽鎖とを有してもよく、前記重鎖は、配列番号40と実質的に同一若しくは同一のアミノ酸配列を含み、並びに、前記軽鎖は、配列番号42と実質的に同一若しくは同一のアミノ酸配列を含む。
【0090】
GD2に特異的に結合する抗体又は抗原結合断片をコードするポリヌクレオチドも記載する。いくつかの実施形態では、前記ポリヌクレオチド(例、配列番号2)は、配列番号10と実質的に同一若しくは同一の重鎖CDR1配列を有する抗体又はその抗原結合断片をコードする。いくつかの実施形態では、前記ポリヌクレオチド(例、配列番号3)は、配列番号11と実質的に同一若しくは同一の重鎖CDR2を有する抗体又はその抗原結合断片をコードする。いくつかの実施形態では、前記ポリヌクレオチド(例、配列番号4)は、配列番号12と実質的に同一若しくは同一の重鎖CDR3を有する抗体又はその抗原結合断片をコードする。いくつかの実施形態では、前記ポリヌクレオチド(例、配列番号18)は、配列番号26と実質的に同一若しくは同一の軽鎖CDR1を有する抗体又はその抗原結合断片をコードする。いくつかの実施形態では、前記ポリヌクレオチド(例、配列番号19)は、配列番号27と実質的に同一若しくは同一の軽鎖CDR2を有する抗体又はその抗原結合断片をコードする。いくつかの実施形態では、前記ポリヌクレオチド(例、配列番号20)は、配列番号28と実質的に同一若しくは同一の軽鎖CDR3を有する抗体又はその抗原結合断片をコードする。前記ポリヌクレオチドは、配列番号10(例、配列番号2)と実質的に同一若しくは同一のCDR1と、配列番号11(例、配列番号3)と実質的に同一若しくは同一のCDR2と、配列番号12(例、配列番号4)と実質的に同一若しくは同一のCDR3とを有する重鎖を有する抗体又はその抗原結合断片をコードしてもよい。前記ポリヌクレオチドは、配列番号26(例、配列番号18)と実質的に同一若しくは同一の軽鎖CDR1と、配列番号27(例、配列番号19)と実質的に同一若しくは同一のCDR2と、配列番号28(例、配列番号20)と実質的に同一若しくは同一のCDR3とを有する抗体又はその抗原結合断片をコードしてもよい。前記ポリヌクレオチドは、配列番号10(例、配列番号2)と実質的に同一若しくは同一の重鎖CDR1と、配列番号11(例、配列番号3)と実質的に同一若しくは同一のCDR2と、配列番号12(例、配列番号4)と実質的に同一若しくは同一のCDR3と、配列番号26(例、配列番号18)と実質的に同一若しくは同一の軽鎖CDR1と、配列番号27(例、配列番号19)と実質的に同一若しくは同一のCDR2と、配列番号28(例、配列番号20)と実質的に同一若しくは同一のCDR3とを有する抗体又はその抗原結合断片をコードしてもよい。
【0091】
いくつかの実施形態では、前記ポリヌクレオチド(例、配列番号5)は、配列番号13と実質的に同一若しくは同一の重鎖FWR1を有する抗体又はその抗原結合断片をコードする。いくつかの実施形態では、前記ポリヌクレオチド(例、配列番号6)は、配列番号14と実質的に同一若しくは同一の重鎖FWR2を有する抗体又はその抗原結合断片をコードする。いくつかの実施形態では、前記ポリヌクレオチド(例、配列番号7)は、配列番号15と実質的に同一若しくは同一の重鎖FWR3を有する抗体又はその抗原結合断片をコードする。いくつかの実施形態では、前記ポリヌクレオチド(例、配列番号21)は、配列番号29と実質的に同一若しくは同一の軽鎖FWR1を有する抗体又はその抗原結合断片をコードする。いくつかの実施形態では、前記ポリヌクレオチド(例、配列番号22)は、配列番号30と実質的に同一若しくは同一の軽鎖FWR2を有する抗体又はその抗原結合断片をコードする。いくつかの実施形態では、前記ポリヌクレオチド(例、配列番号23)は、配列番号31と実質的に同一若しくは同一の軽鎖FWR3を有する抗体又はその抗原結合断片をコードする。いくつかの実施形態では、前記ポリヌクレオチドは、配列番号13(例、配列番号5)と実質的に同一若しくは同一の重鎖FWR1と、配列番号14(例、配列番号6)と実質的に同一若しくは同一のFWR2と、配列番号15(例、配列番号7)と実質的に同一若しくは同一のFWR3とを有する抗体又はその抗原結合断片をコードしてもよい。いくつかの実施形態では、前記ポリヌクレオチドは、配列番号29(例、配列番号21)と実質的に同一若しくは同一の軽鎖FWR1と、配列番号30(例、配列番号22)と実質的に同一若しくは同一のFWR2と、配列番号31(例、配列番号23)と実質的に同一若しくは同一のFWR3とを有する抗体又はその抗原結合断片をコードしてもよい。いくつかの実施形態では、前記ポリヌクレオチドは、重鎖と軽鎖とを有する抗体又はその抗原結合断片をコードし、重鎖FWR1が配列番号13(例、配列番号5)と実質的に同一若しくは同一であり、重鎖FWR2が配列番号14(例、配列番号6)と実質的に同一若しくは同一であり、重鎖FWR3が配列番号15(例、配列番号7)と実質的に同一若しくは同一であり、軽鎖FWR1が配列番号29(例、配列番号21)と実質的に同一若しくは同一であり、軽鎖FWR2が配列番号30(例、配列番号22)と実質的に同一若しくは同一であり、軽鎖FWR3が配列番号31(例、配列番号23)と実質的に同一若しくは同一である。
【0092】
いくつかの実施形態では、前記ポリヌクレオチドは、配列番号10(例、配列番号2)と実質的に同一若しくは同一の重鎖CDR1と、配列番号11(例、配列番号3)と実質的に同一若しくは同一の重鎖CDR2と、配列番号12(例、配列番号4)と実質的に同一若しくは同一の重鎖CDR3と、配列番号13(例、配列番号5)と実質的に同一若しくは同一の重鎖FWR1と、配列番号14(例、配列番号6)と実質的に同一若しくは同一の重鎖FWR2と、配列番号15(例、配列番号7)と実質的に同一若しくは同一の重鎖FWR3とを、有する抗体又はその抗原結合断片をコードする。いくつかの実施形態では、前記ポリヌクレオチドは、配列番号26(例、配列番号18)と実質的に同一若しくは同一の軽鎖CDR1と、配列番号27(例、配列番号19)と実質的に同一若しくは同一の軽鎖CDR2と、配列番号28(例、配列番号20)と実質的に同一若しくは同一の軽鎖CDR3と、配列番号29(例、配列番号21)と実質的に同一若しくは同一の軽鎖FWR1と、配列番号30(例、配列番号22)と実質的に同一若しくは同一の軽鎖FWR2と、配列番号31(例、配列番号23)と実質的に同一若しくは同一の軽鎖FWR3とを、有する抗体又はその抗原結合断片をコードする。
【0093】
いくつかの実施形態では、前記ポリペプチドは、重鎖と軽鎖を有する抗体又はその抗原結合断片をコードし、前記ポリペプチドは、配列番号10(例、配列番号2)と実質的に同一若しくは同一の重鎖CDR1と、配列番号11(例、配列番号3)と実質的に同一若しくは同一の重鎖CDR2と、配列番号12(例、配列番号4)と実質的に同一若しくは同一の重鎖CDR3と、配列番号13(例、配列番号5)と実質的に同一若しくは同一の重鎖FWR1と、配列番号14(例、配列番号6)と実質的に同一若しくは同一の重鎖FWR2と、配列番号15(例、配列番号7)と実質的に同一若しくは同一の重鎖FWR3とをコードし、並びに、配列番号26(例、配列番号18)と実質的に同一若しくは同一の軽鎖CDR1と、配列番号27(例、配列番号19)と実質的に同一若しくは同一の軽鎖CDR2と、配列番号28(例、配列番号20)と実質的に同一若しくは同一の軽鎖CDR3と、配列番号29(例、配列番号21)と実質的に同一若しくは同一の軽鎖FWR1と、配列番号30(例、配列番号22)と実質的に同一若しくは同一の軽鎖FWR2と、配列番号31(例、配列番号23)と実質的に同一若しくは同一の軽鎖FWR3とをコードする。
【0094】
設計された抗原結合タンパク質をコードするポリヌクレオチドも、本開示の範囲に入っている。
【0095】
いくつかの実施形態において、記載されるポリヌクレオチド(及び、それがコードするペプチド)は、リーダー配列を含む。当該技術分野で既知の任意のリーダー配列が使用可能である。前記リーダー配列には、限定はされないが、制限酵素部位又は翻訳開始部位を含んでもよい。いくつかの実施形態では、前記リーダー配列は、核酸配列(ATGGGATGGAGCTGTATCATCCTCTTCTTGGTAGCAACAGCTACAGGTGTACACAGC (配列番号:43))を有する。いくつかの実施形態では、前記リーダー配列は、アミノ酸配列(MGWSCIILFLVATATGVHS(配列番号:44))をコードする。
【0096】
重鎖と軽鎖及びそれらをコードする遺伝子の中に存在する可能性のある自然な配列多様性のため、それらのユニークな結合特性(例、特異性、親和性)にほとんど若しくはまったく影響せずに、本明細書中に記載される抗体又は抗原結合断片のアミノ酸配列あるいはそれらをコードする遺伝子中のある程度の多様性が見いだされることが期待されるだろう。そのような期待は、遺伝コードの縮重及び保存アミノ酸配列多様性の進化的成功に一部起因し、それらは、コードされるタンパク質の性質をはっきりと分かるようには変更しない。従って、いくつかの実施形態は、本明細書中の抗体若しくは抗原結合断片に 90%、95%、96%、97%、98%、又は99%の相同性を有する抗体又は抗原結合断片を含む。他の実施形態は、本明細書中に記載される抗体若しくは抗原結合断片と有意な相同性を共有しないフレームワーク領域、足場領域、又は他の非結合領域を有するが、本明細書中に記載されるそのような配列と90%、95%、96%、97%、98%、又は99%の相同性のある一つ若しくは複数のCDR又は他の配列であって、結合を付与するのに必要なものをまさに取り込む、GD-2特異的抗体あるいは抗原結合断片を含む。
【0097】
本明細書中に記載される抗体又は抗原結合断片は、単一若しくは複数のアミノ酸置換、欠失、付加を有する変異体であって、記載される抗体若しくは抗原結合断片の生物学的特性(例、結合親和性、免疫エフェクター活性)を保持するものを含む。当業者であれば、単一若しくは複数のアミノ酸置換、欠失、又は付加を有する変異体を作製することができる。これらの変異体には、(a)1つ若しくは複数のアミノ酸残基を、保存又は非保存アミノ酸で置換する変異体、(b)1つ若しくは複数のアミノ酸を、ポリペプチドに追加、又は削除する変異体、(c)一つ若しくは複数のアミノ酸が置換基を含む変異体、(d)前記ポリペプチドが別のペプチド又はポリペプチド(例、前記ポリペプチドに有用な特性を付与する可能性のある、融合パートナー、タンパク質タグ、又は他の化学部分(例、抗体に対するエピトープ、ポリヒスチジン配列、ビオチン部分等))と融合する変異体を含んでもよい。本明細書中に記載される抗体又は抗原結合断片は、ある種からのアミノ酸残基を、保存若しくは非保存位置のいずれかで、別の種におけるそれに対応する残基に対して置換する変異体を含んでもよい。他の実施形態では、非保存位置でのアミノ酸残基を保存残基若しくは非保存残基で置換する。これらの変異体を得る技術(例、遺伝的(例、抑制、欠失、変異等)、化学的、及び酵素学的技術)は、当該技術分野において通常の技能を有する者に既知である。
【0098】
本明細書中に記載される抗体又は抗原結合断片は、いくつかの抗体アイソタイプ(例、IgM、IgD、IgG、IgA、及びIgE)を一つにまとめてもよい。抗体又はその抗原結合断片の特異性は、CDRの有するアミノ酸配列及び配置により大部分は決定される。従って、一つのアイソタイプのCDRは、抗原特異性を変化させずに別のアイソタイプに移行可能である。また、ハイブリドーマを、抗原特異性を変化させずに、一つの抗体アイソタイプを生産するのを、別のものにスイッチ(アイソタイプスイッチ)させる技術が確立されてきた。従って、そのような抗体アイソタイプは、記載される抗体又は抗原結合断片の範囲に入っている。
【0099】
抗体のアイソタイプを変化させることは、種々のエフェクター機能(抗体定常領域により付与されるもの)と抗原特異性とを組み合わせるのに有用である場合がある。例えば、IgGは、単量体の形態で生産され、補体を活性化するのに有効であり、体内の血漿及び細胞内区画に通常見いだされる。IgAは、単量体及びJ鎖結合二量体として生産される。二量体は上皮細胞の壁を越えて輸送される可能性があるため、IgAは身体の管腔スペースと母乳に最も一般的に見いだされる。IgAと同様、IgMも多量体を形成することができ、J鎖と結合している場合は五量体を形成する傾向があり、J鎖と結合していない場合は五量体及び六量体を形成する傾向がある。これらの高度に多量体の抗体は、親和性を低下させることなく、結合活性を増加させることによって、全体としての抗原結合能力を高めるのに役立つ。IgM多量体の両者は、補体を効率的に活性化することができ、補体依存性細胞障害(CDC)を生じることができる。
【0100】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される抗体又は抗原結合断片は、多量体のIgM抗体又は抗原結合断片である。いくつかの実施形態では、前記抗体又は抗原結合断片は、J鎖と結合している五量体IgM抗体又は抗原結合断片である。他の実施形態では、前記抗体又は抗原結合断片は、J鎖と結合していない六量体IgM抗体又は抗原結合断片である。いくつかの実施形態では、前記抗体又は抗原結合断片は、J鎖と結合していない五量体IgM抗体又は抗原結合断片である。いくつかの実施形態では、前記抗体又は抗原結合断片は、J鎖と結合している六量体IgM抗体又は抗原結合断片である。
【0101】
本明細書中に記載される抗体又は抗原結合断片は、 GD2に対する結合親和性(M(モーラー))で、1 x 10-2未満の解離定数(KD)を含むものを有する。いくつかの実施形態で、KDは1 x 10-3未満である。いくつかの実施形態で、KDは1 x 10-4未満である。いくつかの実施形態で、KDは1 x 10-5未満である。さらに他の実施形態では、KDは1 x 10-6、2 x 10-6、3 x 10-6、4 x 10-6、5 x 10-6、6 x 10-6、7 x 10-6、8 x 10-6、又は9 x 10-6未満である。さらに他の実施形態では、KDは1 x 10-7、2 x 10-7、3 x 10-7、4 x 10-7、5 x 10-7、6 x 10-7、7 x 10-7、8 x 10-7、又は9 x 10-7未満である。さらに他の実施形態では、KDは1 x 10-8、2 x 10-8、3 x 10-8、4 x 10-8、5 x 10-8、6 x 10-8、7 x 10-8、8 x 10-8、又は9 x 10-8未満である。さらに他の実施形態では、KDは1 x 10-9、2 x 10-9、3 x 10-9、4 x 10-9、5 x 10-9、6 x 10-9、7 x 10-9、8 x 10-9、又は9 x 10-9未満である。さらに他の実施形態では、KDは1 x 10-10、2 x 10-10、3 x 10-10、4 x 10-10、5 x 10-10、6 x 10-10、7 x 10-10、8 x 10-10、又は9 x 10-10未満である。さらに他の実施形態では、KDは1 x 10-11、2 x 10-11、3 x 10-11、4 x 10-11、5 x 10-11、6 x 10-11、7 x 10-11、8 x 10-11、又は9 x 10-11未満である。いくつかの実施形態で、KDは1 x 10-12未満である。いくつかの実施形態で、KDは1 x 10-13未満である。いくつかの実施形態で、KDは1 x 10-14未満である。さらに他の実施形態で、KDは1 x 10-15未満である。好ましい実施形態では、KDは4.5 x 10-9以下である。
【0102】
いくつかの実施形態では、本明細書中に記載される抗体又は抗原結合断片は、GD1a、GM2、若しくはGM3のそれぞれとは対照的に、GD2に対する特異的結合親和性を有している。いくつかの実施形態では、GD2に対するKDは、GD1a、GM2,若しくはGM3のそれぞれのKDと、少なくとも3倍、好ましくは10倍異なる。
【0103】
本明細書中に記載される抗体又は抗原結合断片は、共有結合により抗体若しくはその抗原結合断片がそのエピトープへ結合するのを妨げないように、抗体又はその抗原結合断片へ任意の種類の分子を共有結合することにより修飾可能である。適切な修飾の例としては、限定はされないが、グリコシル化、アセチル化、PEG化、リン酸化、及びアミド化等を含む。いくつかの実施形態では、前記抗体又は抗原結合断片は、既知の保護/ブロッキング基、タンパク質分解での切断、並びに細胞性リガンド若しくは他のタンパク質への連結等により、それ自体の誘導体化が可能である。前記抗体又は抗原結合断片は、抗体若しくはその抗原結合断片の活性又は安定性を向上する翻訳後修飾部分を有していてもよい。これらの部分には、硫黄、メチル、炭水化物、リンだけでなく、一般的に免疫グロブリン分子上にある他の化学基を含む。またさらに、前記抗体又は抗原結合断片は、一又は複数の非典型的アミノ酸を含んでもよい。
【0104】
本明細書中に記載される抗体又は抗原結合断片を、毒性若しくは非毒性部分で標識し、あるいは抱合することができる。毒性部分には、例えば、細菌(バクテリア)毒素、ウイルス毒素、植物毒素、真菌毒素、及び放射性同位体等を含む。抗体又は抗原結合断片を、生物学的アッセイ中で使用するために標識(例、放射性同位体標識、蛍光標識)して、前記抗体若しくは抗原結合断片の検出を補助することができる。抗体又は抗原結合断片は、 診断若しくは治療目的で、適用例(例、放射免疫療法(Garmestani et al., 28 Nucl. Med. Biol. 409 (2001))、画像処理技術及び放射免疫誘導手術、又は特異的抗体/抗原複合体のin vivoイメージング若しくは検出を可能にする標識)のために、放射線を直接所望の部位に送達する放射性同位体で標識又は抱合することもできる。抗体又は抗原結合断片を、毒素と抱合して、免疫毒素(Kreitman, R.J., 31 Adv. Drug Del. Rev. 53 (1998))を提供することもできる。
【0105】
少なくとも一つの記載の抗体若しくはその抗原結合断片と製薬上許容できる担体とを含む組成物を本明細書中に記載する。そのような組成物は、例えば、本明細書中に記載及び例示されるもののような、患者に投与してがんを治療するのに有用である。前記組成物を、当該技術分野において既知及び適した種々の製剤(本明細書中に記載及び例示されるものを含む)のいずれかとして処方してもよい。いくつかの実施形態において、前記組成物は、水性製剤である。水溶液は、前記抗体若しくは抗原結合断片を水又は適した生理的緩衝液中に混合して調製可能であり、任意ではあるが、必要に応じ適切な着色剤、香料、防腐剤、並びに安定化剤及び増粘剤等を追加する。水性懸濁液は、前記抗体若しくは抗原結合断片を、水又は生理的緩衝液に、粘性物質(例、天然または合成ゴム、樹脂、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、及びその他周知の懸濁化剤)と共に分散することで製造可能である。
【0106】
液体製剤、並びに、使用直前に液体製剤へと転換することを意図する固形製剤をも含む。このような液体には、溶液、懸濁液、シロップ、スラリー、及びエマルジョンを含む。液体製剤は、製薬上許容できる添加剤(例、懸濁剤(例、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体または水素化食用脂肪若しくは油)、乳化剤(例、レシチンまたはアカシア)、非水性媒体(例、アーモンド油、油性エステル、または分別植物油)、及び防腐剤(例、メチル若しくはプロピル-p-ヒドロキシベンゾエートまたはソルビン酸))と共に通常の手段で調製可能である。これらの製剤は、活性薬剤に加えて、着色剤、香料、安定剤、緩衝剤、人工および天然甘味料、分散剤、増粘剤、及び可溶化剤等を含んでもよい。組成物は、使用する前に、適した媒体(例、滅菌水、生理緩衝液、生理食塩水、又はアルコール)で構成するために粉末または凍結乾燥形態であってもよい。
【0107】
前記組成物は、被験体に注射するために処方可能である。注射に関しては、記載の組成物は、水溶液(例、水やアルコール)中、又は生理的適合性緩衝液(例、ハンクス溶液、リンゲル溶液、生理食塩水緩衝液)中に処方可能である。前記溶液は、一又は複数の処方剤(例、懸濁剤、安定剤、分散剤)を含んでもよい。注射製剤はまた、例えば、使用前に適した媒体(例、滅菌水、生理食塩水、アルコール)で構成することにより、使用直前に注射に適する液体製剤へと転換することを意図する固形製剤として調製可能でもある。
【0108】
前記組成物は、徐放性媒体またはデポ製剤中に処方可能である。このような長期持続性製剤を、(例、皮下、筋中に)移植、又は筋肉内注射によって投与してもよい。従って、例えば、前記組成物を、適した重合体若しくは疎水性物質(例、許容される油中のエマルジョンとして)又はイオン交換樹脂と共に処方し、あるいは、難溶性誘導体(例、難溶性塩)として処方することができる。リポソームおよびエマルジョンは、疎水性薬物の担体として使用するのに適した輸送媒体の周知例である。
【0109】
in vivo又はin vitroのいずれかで、記載の抗体若しくは抗原結合断片を使用してGD-2発現細胞を検出する方法を、本明細書中に記載する。いくつかの実施形態では、検出可能な標識(例、蛍光標識、放射線標識、ビオチン、酵素等(例、111In-DOTA、111In-DTPA、または放射性核種(例、限定はされないが、鉛-212、ビスマス-212、アスタチン-211、ヨウ素-131、スカンジウム-47、レニウム-186、レニウム-188、イットリウム-90、ヨウ素-123、ヨウ素-124、ヨウ素-125、臭素-77、インジウム-111)及び核分裂性核種(例、ホウ素-10若しくはアクチニド)))に抱合される開示の抗体又は抗原結合断片を利用する。例えば、検出可能に標識された抗体又は抗原結合断片を被験体に投与して、前記被験体中でGD2を発現する細胞を検出及び細胞に局在させることができる。そのような方法を用いて、被験体の他の細胞若しくは組織に比べてGD2を高発現する細胞又は組織を検出することもできるだろう。また、GD-2発現細胞を検出する開示の方法の一実施形態では、 検出可能に標識された抗体若しくは抗原結合フラグメントで本明細書中に記載されるものを使用して、被験体から得られる細胞(例、血液サンプルや組織生検から得られる細胞)当たりのGD2発現を検出又は定量することができる。
【0110】
また、記載の抗体又は抗原結合断片を使ってGD-2発現細胞を検出する記載の方法を、標識されていないGD2特異的抗体を使用して実施してもよい。例えば、一実施形態では、まず、本明細書中に記載されるGD2特異的抗体若しくは抗原結合断片を被験体に投与して、その後、最初に投与されたGD2特異的抗体若しくは抗原結合断片に結合することができる検出可能に標識された二次抗体を投与することにより、前記被験体中でGD2発現細胞を検出することができる。同様の方法論を用いて、in vitroでGD2発現細胞を検出することができるだろう。
【0111】
また、そのような治療若しくは予防が必要な被験体において、疾患を治療又は予防する方法を本明細書中に記載する。いくつかの観点では、前記方法には、GD2関連疾患(例、がん(例、メラノーマ))の治療と予防が必要な被験体を同定することを含むことができる。他の実施形態には、診断目的(例、画像処理技術若しくは特異的抗体/抗原複合体の検出)で、放射線を直接所望の部位に送達する放射性同位体を標識又は抱合する抗体あるいはその抗原結合断片を含む。一実施形態では、本方法は、GD2特異的抗体又は抗原結合断片(例、GD2特異的組換ヒトIgM抗体)を、疾患を治療若しくは予防するのに効果がある量で、被験体に投与することを含む。一観点では、本方法は、組成物(例、本明細書中に記載及び例示されるもの)を、疾患を治療若しくは予防するのに効果的な量で、被験体に投与することを含み、前記組成物は、製薬上許容できる担体と少なくとも一つのGD2に特異的に結合する抗体若しくはその抗原結合断片を含む。一実施形態では、本方法は、少なくとも一つのGD2に特異的に結合する抗体又は抗原結合断片(例、本明細書中に記載及び例示される抗体若しくは抗原結合断片)を、疾患を治療若しくは予防するのに効果的な量で、被験体に投与することを含む。一実施形態では、本方法は、本明細書中に例示される毒性若しくは非毒性部分を標識又は抱合する、少なくとも一つのGD2特異的抗体あるいはその抗原結合断片を、被験体に投与することを含む。
【0112】
本明細書中に記載される抗体又は抗原結合断片を、任意の許容される投与形態(例、カプセル、錠剤、水性懸濁液、溶液等)で経口投与してもよい。前記抗体または抗原結合断片を、非経口(例、限定はされないが、皮下、静脈内、筋肉内、関節内、滑膜内、胸骨内、鼻腔内、局所、髄腔内、肝内、病巣内、及び頭蓋内注射または点滴)で投与してもよい。また、前記抗体又は抗原結合断片は、例えば注射により静脈内又は腹腔内的でもあるだろう。
【0113】
被験体は、任意の動物でもよいが、好ましくは、哺乳動物(例、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギ、ネコ、イヌ、サル、ロバ、ウシ、ウマ、及びブタ等)である。最も好ましくは、前記哺乳動物はヒトである。いくつかの実施形態では、少なくとも一つの抗GD2抗体若しくはその抗原結合断片を、被験体の体重1kg当たり、抗体又は抗原結合断片0.01μgから500mgの用量範囲で毎日、被験体に投与してもよい。被験体に投与される用量を、一日当たりに投与される少なくとも一つの抗GD2抗体若しくはその抗原結合断片の総量に関して測定することも可能である。いくつかの実施形態では、被験体に、一日当たり、少なくとも一つの抗GD2抗体又はその抗原結合断片を5から5000ミリグラム投与する。いくつかの実施形態では、被験体に、一日当たり、少なくとも一つの抗GD2抗体又はその抗原結合断片を10ミリグラムまで投与する。いくつかの実施形態では、被験体に、一日当たり、少なくとも一つの抗GD2抗体又はその抗原結合断片を100ミリグラムまで投与する。いくつかの実施形態では、被験体に、一日当たり、少なくとも一つの抗GD2抗体又はその抗原結合断片を250ミリグラムまで投与する。いくつかの実施形態では、被験体に、一日当たり、少なくとも一つの抗GD2抗体又はその抗原結合断片を500ミリグラムまで投与する。いくつかの実施形態では、被験体に、一日当たり、少なくとも一つの抗GD2抗体又はその抗原結合断片を750ミリグラムまで投与する。いくつかの実施形態では、被験体に、一日当たり、少なくとも一つの抗GD2抗体又はその抗原結合断片を1000ミリグラムまで投与する。いくつかの実施形態では、被験体に、一日当たり、少なくとも一つの抗GD2抗体又はその抗原結合断片を1500ミリグラムまで投与する。いくつかの実施形態では、被験体に、一日当たり、少なくとも一つの抗GD2抗体又はその抗原結合断片を2000ミリグラムまで投与する。いくつかの実施形態では、被験体に、一日当たり、少なくとも一つの抗GD2抗体又はその抗原結合断片を2500ミリグラムまで投与する。いくつかの実施形態では、被験体に、一日当たり、少なくとも一つの抗GD2抗体又はその抗原結合断片を3000ミリグラムまで投与する。いくつかの実施形態では、被験体に、一日当たり、少なくとも一つの抗GD2抗体又はその抗原結合断片を3500ミリグラムまで投与する。いくつかの実施形態では、被験体に、一日当たり、少なくとも一つの抗GD2抗体又はその抗原結合断片を4000ミリグラムまで投与する。いくつかの実施形態では、被験体に、一日当たり、少なくとも一つの抗GD2抗体又はその抗原結合断片を4500ミリグラムまで投与する。いくつかの実施形態では、被験体に、一日当たり、少なくとも一つの抗GD2抗体又はその抗原結合断片を5000ミリグラムまで投与する。いくつかの実施形態では、抗体若しくはその抗原結合断片を毎週又は隔週で被験体に投与する。
【0114】
少なくとも一つの抗GD2抗体若しくは抗原結合断片の最適用量未満のより少ない用量で治療を開始して、その後、その状況下で最適な作用が達成されるまで、治療過程に渡り用量を増加させてもよい。指示があれば、一日当たりの総用量は、分割可能であり、一日を通して複数回にして投与可能である。
【0115】
GD2関連疾患の有効な治療において、当業者であれば、治療される被験体に十分な投与計画と投与量を推奨できる。投薬を、必要とされる限り、一日当たり、一回から四回以上行ってもよい。組成物を徐放送達媒体中に処方する場合、投薬をより少ない回数で行ってもよい。また、前記投与計画は、被験体の必要に応ずる場合がある活性薬剤濃度に依存して異なってもよい。
【0116】
また、本明細書中に記載のポリヌクレオチドを含むベクターも提供する。前記ベクターは、発現ベクターであってもよい。従って、目的のポリペプチドをコードする配列を含む組換発現ベクターを提供する。前記発現ベクターは、一又は複数の付加配列(例、限定はされないが、調節配列(例、プロモーター、エンハンサー)、選択マーカー、およびポリアデニル化シグナル)を含んでもよい。幅広い種々の宿主細胞を形質転換するベクターは周知であり、限定はされないが、プラスミド、ファージミド、コスミド、バキュロウイルス、バックミド(bacmids)、バクテリア人工染色体(BACs)、酵母人工染色体(YACs)だけでなく、他の細菌ベクター、酵母ベクター、及びウイルスベクターも含む。
【0117】
本記載の範囲にある組換発現ベクターには、適する調節要素に作動可能に連結可能な少なくとも一つの組換タンパク質をコードする核酸断片で、合成、ゲノム、又はcDNA由来のものを含む。そのような調節要素には、転写プロモーター、適するmRNAのリボソーム結合部位をコードする配列、並びに転写及び翻訳の終結を制御する配列を含んでもよい。発現ベクター(特に哺乳動物の発現ベクター)は、一又は複数の非転写要素(例、複製起点、発現される遺伝子に連結される適するプロモーター及びエンハンサー、他の5'若しくは3'に近接して付加される非転写配列、5'若しくは3'非翻訳配列(例、必須リボソーム結合部位)、ポリアデニル化部位、スプライス供与部位及び受容部位、または転写終結配列)も含んでよい。また、宿主において複製する能力を付与する複製起点を組み込んでもよい。
【0118】
脊椎動物細胞を形質転換するのに使用される発現ベクター中の転写及び翻訳制御配列には、ウイルス起源のものを提供してもよい。例示的なベクターを、岡山とBerg(3 Mol. Cell. Biol. 280 (1983))に記載されたように作製することができる。
【0119】
いくつかの実施形態では、前記抗体又は抗原結合断片をコードする配列を、強力な構成的プロモーター(例、以下の遺伝子(例、ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)、アデノシンデアミナーゼ、ピルビン酸キナーゼ、ベータアクチン、ヒトミオシン、ヒトヘモグロビン、ヒト筋肉クレアチン等)のプロモーター)の制御下に配置する。また、多くのウイルスプロモーターは、真核細胞中で構成的に機能し、記載の実施形態での使用に適している。このようなウイルスプロモーターには、限定はされないが、サイトメガロウイルス(CMV)前初期プロモーター、SV40の初期および後期プロモーター、マウス乳腺腫瘍ウイルス(MMTV)プロモーター、末端反復配列(LTR)(例、マロニー白血病ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、エプスタイン・バーウイルス(EBV)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)、および他のレトロウイルス)、並びに単純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼプロモーターを含む。一実施形態では、前記抗体またはその抗原結合断片をコードする配列を、誘導プロモーター(例、メタロチオネインプロモーター、テトラサイクリン誘導性プロモーター、ドキシサイクリン誘導性プロモーター、一又は複数のインターフェロン刺激応答要素(ISRE)を含む(例、プロテインキナーゼR 2',5' -オリゴアデニル酸合成酵素、Mx遺伝子、ADAR1等)プロモーター)の制御下に配置する。
【0120】
本明細書中に記載されるベクターは、一又は複数の配列内リボソーム進入部位(IRES)を含んでもよい。IRES配列を融合ベクターに含めることは、いくつかのタンパク質の発現を向上させるのに利益がある。いくつかの実施形態では、前述の核酸配列いずれかの上流若しくは下流にある可能性がある一又は複数のポリアデニル化部位(例、SV40)を、ベクターシステムは含むであろう。ベクター構成成分を、直近に連結するか、若しくは、遺伝子産物を発現するのに最適な間隔を提供する様式で(ORF間に「スペーサー」ヌクレオチドを導入することにより)配置して、あるいは別のやり方で置いてもよい。また、調節要素(例、IRESモチーフ)を配置して発現のための最適な間隔を提供することができる。
【0121】
前記ベクターは、当該技術分野で周知の選択マーカーを含んでもよい。選択マーカーは、ポジティブとネガティブ選択マーカーを含み、例えば、抗生物質耐性遺伝子(例、ネオマイシン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子、カナマイシン耐性遺伝子、テトラサイクリン耐性遺伝子、ペニシリン耐性遺伝子)、グルタミン酸合成遺伝子、HSV-TK、ガンシクロビル選択のためのHSV-TK誘導体、又は6-メチルプリン選択のための細菌プリンヌクレオシドホスホリラーゼ遺伝子を含む(Gadi et al., 7 Gene Ther. 1738-1743 (2000))。選択マーカー若しくはクローニング部位をコードする核酸配列は、目的のポリペプチドをコードする核酸配列若しくはクローニング部位の上流又は下流にあってもよい。
【0122】
本明細書中に記載されるベクターを使用して、種々の細胞を、記載の抗体又は抗原結合断片をコードする遺伝子で形質転換することができる。例えば、前記ベクターを使用して、抗体又は抗原結合断片生産細胞を作製してもよい。従って、別の観点は、GD2に特異的に結合する抗体若しくは抗原結合断片(例、本明細書中に記載及び例示される抗体若しくは抗原結合断片)をコードする核酸配列を含むベクターで形質転換された宿主細胞を特徴とする。
【0123】
無数の技術が、外来遺伝子を細胞に導入する技術分野で知られ、その技術を用いて、本明細書中に記載及び例示される種々の実施形態に係る記載の方法を実施する目的で、組換細胞を作製してもよい。使用される技術は、異種の遺伝子配列が子孫細胞に遺伝可能および発現可能なように、前記異種の遺伝子配列を宿主細胞に安定的に移入するために提供されるべきで、従って、受容細胞の必要な発生及び生理的機能を破壊しない。使用可能な技術には、限定はされないが、染色体移入(例、細胞融合、染色体媒介遺伝子導入、微小細胞媒介遺伝子導入)、物理的方法(例、トランスフェクション、スフェロプラスト融合、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、リポソーム担体)、及びウイルスベクター移入(例、組換DNAウイルス、組換RNAウイルス)等を含む(Cline, 29 Pharmac. Ther. 69-92 (1985)に記載)。リン酸カルシウム沈殿およびポリエチレングリコール(PEG)が誘導するバクテリアプロトプラストと哺乳類細胞との融合を使用して、細胞を形質転換することもできる。
【0124】
本明細書中に記載される抗体又は抗原結合断片の発現で使用するのに適した細胞は、好ましくは真核細胞であり、より好ましくは(植物、齧歯類、ヒト由来の)細胞であり、限定はされないが、例えば、NS0、CHO、perC.6、Tk-ts13、BHK、HEK293細胞、COS-7、T98G、CV-1/EBNA、L細胞、C127、3T3、HeLa、NS1、SP2/0ミエローマ細胞、およびBHK細胞株等である。また、抗体の発現は、ハイブリドーマ細胞を用いて達成することができる。ハイブリドーマの製造方法は、当該技術分野でよく確立されている。
【0125】
本明細書中に記載の発現ベクターで形質転換された細胞を、本明細書中に記載される抗体若しくは抗原結合断片の組換発現に関して、選択又はスクリーニングしてもよい。組換ポジティブな細胞を増やして、所望の表現形(例、高レベル発現、向上した増殖特性、又は、例えば、タンパク質修飾若しくは改変翻訳後修飾に起因する所望の生化学的性質を有するタンパク質を生じる能力)を呈するサブクローンに関してスクリーニングする。これらの表現形は、所定のサブクローンの固有特性、又は突然変異に起因する場合がある。突然変異は、化学物質、紫外線波長の光、放射線、ウイルス、挿入変異原性物質、DNAミスマッチ修復の阻害、又はそのような方法の組み合わせを使用して効果を奏することができる。
【0126】
所望のタンパク質を発現する細胞が一度同定されると、それを増やして選択する。形質転換細胞を、多くの手法で選択することができる。例えば、細胞を目的のポリペプチドの発現に関して選択してもよい。選択マーカー(例、蛍光タンパク質の生産)を含むベクターで形質転換された細胞を、前記選択マーカーの発現に関してポジティブに選択してもよい。他の実施形態では、薬剤耐性遺伝子を有するベクターを含む細胞を、選択的状態下で増植する能力に関して、ポジティブに選択してもよい。
【0127】
<キット>患者においてがん細胞の増殖を阻害又は減少させるためのキットを提供する。また、in vitro又はin vivoでの異形成細胞の存在を同定するためのキットも提供する。
【0128】
本明細書中に記載のキットは、本明細書中で記載される抗体、その抗原結合断片若しくは抗体組成物と、(患者のがん細胞の増殖を阻害若しくは減少させる方法中で、又は例えば生物サンプル中の異形成細胞の存在を同定する方法中での)そのキットの使用のための説明書とを含んでもよい。前記キットは、少なくとも一つの化学療法剤又は細胞障害性試薬を含んでもよい。前記キットは、抗葉酸化合物を含んでもよい。前記キットは、少なくとも一つの診断試薬を含んでもよい。診断試薬の例とは、検出可能な標識(例、限定はされないが、放射性剤、蛍光剤または発色剤(例、111In-DOTA))である。前記検出可能な標識は、酵素を含んでもよい。前記キットは、説明書と抗体又は抗体組成物の投与手段(例、注射)とを含むことができる。
【0129】
<BSA-ガングリオシド抱合体の使用と製造方法>アルブミンーガングリオシド抱合体及び、そのような抱合体の生産方法を、本明細書中に記載する。目的の抗体又は抗原結合断片が所定の抗原に結合するのを媒介することに効果的かどうかを決定するためには、抗体結合の特性を明らかにしなければならない。抗体結合の特性を明らかにする無数のやり方(例、ドットブロット、ウェスタンブロット、免疫沈降法、ELISA法、FACS分析/フローサイトメトリー、及び結合した抗体の免疫蛍光検出)がある。種々のアッセイが抗体結合を試験するのに利用可能であるが、使用する特定のアッセイを、抗体の目的を心に留めて理解することで選択しなければならない。例えば、抗体又はその抗原結合断片が、臨床現場で使用される場合、目的の抗原をin vivoで見いだされる可能性が最も高い形態で提示するアッセイによって特徴を明らかにすべきである。この例では、細胞表面タンパク質の場合、フローサイトメトリーが有用なアッセイである可能性がある。なぜなら、抗体若しくはその抗原結合断片の相互作用を自然な抗原の状態で評価することができるからだ。
【0130】
抗原特異的結合タンパク質をコードするベクターを含む細胞を同定する一つの方法は、目的抗原を利用する酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)を使用することである。ELISAを実施するのに用いられる二つの主なアプローチ(間接ELISA、サンドウィッチELISA)がある。間接ELISAを実施するためには、目的抗原をマイクロタイタープレートの表面に吸着若しくは固定して、その後、目的の抗体若しくはその抗原結合断片を前記マイクロタイタープレートに加えて抗原を検出する。一方、サンドウィッチELISAは、特徴解析される抗体に加えて、目的抗原に特異的であることが既知の抗体を利用する。前記既知抗体を、マイクロタイタープレートをコートするのに用いて、目的抗原がそのマイクロタイタープレートに加えられた場合、前記抗原に結合又は捕獲する。一度目的抗原が捕獲されると、目的の抗体又はその抗原結合断片がマイクロタイタープレートに加えられて、前記抗原への結合特性を評価する。いずれの場合も、結合した抗体又はその抗原結合断片を、目的の抗体若しくはその抗原結合断片に特異的な酵素抱合二次抗体により、通常検出する。
【0131】
ガングリオシド特異的抗体又は抗原結合断片の特徴を明らかにするのに有用なELISAは、そのような抗体若しくは抗原結合断片の潜在的な応用を決定するのに有用であろう。ELISA抗原としてのガングリオシドの使用は、しかしながら、遊離ガングリオシドが免疫原性に乏しいという事実により複雑なものである(Jacques et al., 4 Org. Biomol. Chem. 142-154 (2006))。
【0132】
<ガングリオシド抱合体>抱合されたガングリオシドの抗原特性を保持するだけではなく、ガングリオシドの安定性を増加させ、ELISAマイクロタイタープレートへのより良い接着を可能にするガングリオシド-アルブミン抱合体を本明細書中に開示する。ガングリオシドを、シアノ水素化ホウ素ナトリウムの存在下で、アルブミンの第一級アミンによるガングリオシドの還元的アミノ化を介してアルブミンに抱合する。ガングリオシドの炭水化物部分の還元末端(複数可)にシッフ塩基を形成することを介し、その後シアノ水素化ホウ素ナトリウムで還元することにより、抱合は進行する。従って、本明細書中に記載のいくつかの実施形態には、ガングリオシドの炭水化物部分の還元末端(複数可)を介して担体タンパク質に抱合されるガングリオシドを含む。いくつかの実施形態では、担体タンパク質がBSAである、担体タンパク質に抱合されるガングリオシドを含む。いくつかの実施形態では、前記ガングリオシドはGD2である。いくつかの実施形態では、前記ガングリオシドはGM3である。いくつかの実施形態では、前記ガングリオシドはGM2である。別の実施形態では、GD2をBSAに抱合する。いくつかの実施形態では、ガングリオシドの還元的アミノ化を、シアノ水素化ホウ素ナトリウムによって触媒する。
【0133】
いくつかの実施形態では、ガングリオシド-アルブミン抱合体はガングリオシドの抗原性を保持していて、ガングリオシド特異的モノクローナル抗体又はその抗原結合断片は前記抱合体に結合することができる。いくつかの実施形態では、GD2-BSA抱合体はGD2の抗原性を保持していて、GD2特異的モノクローナル抗体又はその抗原結合断片は前記抱合体に結合することができる。いくつかの実施形態では、GM2-BSA抱合体はGM2の抗原性を保持していて、GM2特異的モノクローナル抗体又はその抗原結合断片は前記抱合体に結合することができる。いくつかの実施形態では、GM3-BSA抱合体はGM3の抗原性を保持していて、GM3特異的モノクローナル抗体又はその抗原結合断片は前記抱合体に結合することができる。
【0134】
本明細書中に記載のアルブミン-ガングリオシド抱合体をELISAで使用して、特定のガングリオシドに対する抗体又はその抗原結合断片の特異性の特徴を解析してもよい。一つの観点では、記載のアルブミン-ガングリオシド抱合体は、非抱合ガングリオシドに比べてELISAプレートへ前記抱合ガングリオシドを吸着する能力を向上させる。一旦吸着されると、前記抱合体を直接ELISA法におけるガングリオシド抗原として使用し、ガングリオシド特異的抗体又は抗原結合断片の結合様式の特徴を解析してもよい。一実施形態では、アルブミン-ガングリオシド抱合体は、BSA-GD2抱合体である場合がある。一実施形態では、アルブミン-ガングリオシド抱合体は、BSA-GM2抱合体である場合がある。一実施形態では、アルブミン-ガングリオシド抱合体は、BSA-GM3抱合体である場合がある。他のそのようなガングリオシドを本記載の方法を用いてBSAに抱合して、その後、本明細書中に記載の目的のために使用してもよい。そのような抱合体とその使用は、本開示の範囲に入っている。
【0135】
タンパク質抱合体の実施形態には、以下のものを含む。
【0136】
実施形態A1は、アルブミンとガングリオシドとを含むタンパク質抱合体を提供する。
【0137】
実施形態A2は、前記アルブミンがウシ血清アルブミンである、実施形態A1の抱合体を提供する。
【0138】
実施形態A3は、前記ガングリオシドの炭水化物部分の還元末端を介して、前記ガングリオシドをアルブミンに抱合する、実施形態A1の抱合体を提供する。
【0139】
実施形態A4は、前記アルブミンがウシ血清アルブミンである、実施形態A3の抱合体を提供する。
【0140】
実施形態A5は、前記ガングリオシドがGD2である、実施形態A3の抱合体を提供する。
【0141】
実施形態A6は、前記抱合体がGD2特異的抗体と免疫反応する、実施形態A1の抱合体を提供する。
【0142】
実施形態A7は、前記ガングリオシドがGM2である、実施形態A1の抱合体を提供する。
【0143】
実施形態A8は、前記抱合体がGM2特異的抗体と免疫反応する、実施形態A7の抱合体を提供する。
【0144】
実施形態A9は、前記ガングリオシドがGM3である、実施形態A1の抱合体を提供する。
【0145】
実施形態A10は、前記抱合体がGM3特異的抗体と免疫反応する、実施形態A9の抱合体を提供する。
【0146】
実施形態A11は、ガングリオシドをアルブミンに抱合する方法を提供し、前記方法は、前記ガングリオシドの炭水化物部分の還元末端を還元的アミノ化することを含む。
【0147】
実施形態A12は、前記アルブミンがウシ血清アルブミンである、実施形態A11の方法を提供する。
【0148】
実施形態A13は、前記還元的アミノ化がシアノ水素化ホウ素ナトリウムによって触媒される、実施形態A11の方法を提供する。
【0149】
実施形態A14は、前記ガングリオシドがGD2である、実施形態A13の方法を提供する。
【0150】
実施形態A15は、前記ガングリオシドがGM2である、実施形態A13の方法を提供する。
【0151】
実施形態A16は、前記ガングリオシドがGM3である、実施形態A13の方法を提供する。
【0152】
<細胞培養組成物と方法>真核細胞を培養する組成物と方法を本明細書中に記載する。前記細胞はいかなる種類の真核細胞であってもよいが、一実施形態では、哺乳類由来のものが好ましい。いくつかの実施形態では、前記細胞はチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である。いくつかの実施形態では、前記真核細胞は、遺伝的に改変されて、IgM抗体又は抗原結合断片を生産する。前記真核細胞は、臨床単離体、外来DNA若しくはRNAで形質転換されたもの、不死化されたもの、ウイルス感染したもの、又は他の一般的に知られた生物学的若しくは化学的手段で改変されたものであってもよい。前記真核細胞を単層若しくは浮遊培養で増殖してもよく、それは、細胞培養インキュベーター、バイオリアクター、振盪フラスコ、若しくは他の同様な組織培養装置中で実行してもよい。また、前記真核細胞を、32℃以上50℃以下の温度、2%と8%との間のCO2、及び振盪して若しくは振盪しないで培養することができる。一実施形態では、前記細胞を37℃、5%CO2、120rpmで振盪しながら培養することができる。前記真核細胞を、本明細書中に開示の組成物及び方法と組み合わせて、組織培養培地(例、GIBCO-CD-CHO完全培地(1L GIBCO-CD-CHO培地 + 25μM MSX)又は同様な完全培地)中で培養することができる。前記培養真核細胞を、改変して外来タンパク質を生産してもよく、本明細書中に記載の組成物及び方法で、必ずしも必要ではないが、それを向上させることができる。
【0153】
真核細胞培養培地での使用に適する組成物を本明細書中に開示する。組成物には、限定されていないが、培養真核細胞の増殖特性に影響を及ぼす可能性のある、種々の必須アミノ酸及び非必須アミノ酸(例、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン)、糖(例、グルコース、フルクトース、マンノース、ガラクトース)、ビタミン(例、葉酸、ビタミンB-12、ビタミンD、リボフラビン)を含む。実施形態B1では、前記組成物には、グルコース、グルタミン酸、アスパラギン酸、セリン、ヒスチジン、スレオニン、アルギニン、チロシン、システイン、バリン、メチオニン、トリプトファン、フェニルアラニン(phenyalanine)、イソロイシン、ロイシン、リジン、プロリン、ニコチン酸アミド、ピリドキシンHCl、葉酸、ビタミンB-12、リボフラビン、及びチアミンHClを含む。
【0154】
実施形態B2では、前記組成物には、実施形態B1の細胞培養物を含み、そこでは、グルコースの濃度が50g/L、グルタミン酸の濃度は2.5から3.75g/L、アスパラギン酸の濃度は1.5から2.0g/L、セリンの濃度は0.3から0.5g/L、ヒスチジンの濃度は1.1から1.5g/L、スレオニンの濃度は2.0から3.0g/L、アルギニンの濃度は1.0から1.5g/L、チロシンの濃度は1.8から2.2g/L、システインの濃度は0.9から1.1g/L、バリンの濃度は1.0から3.0g/L、メチオニンの濃度は0.8から1.2g/L、トリプトファンの濃度は0.5から0.8g/L、フェニルアラニン(phenyalanine)の濃度は1.3から1.7g/L、イソロイシンの濃度は0.8から2.4g/L、ロイシンの濃度は1.5から4.5g/L、リジンの濃度は3.5から5.0g/L、プロリンの濃度は0.5から0.7g/L、ニコチン酸アミドの濃度は30から40mg/L、ピリドキシンHClの濃度は200から250mg/L、葉酸の濃度は100から130mg/L、ビタミンB-12の濃度は20から40mg/L、リボフラビンの濃度は20から40mg/L、及びチアミンHClの濃度は100から150mg/Lである。
【0155】
また、前節に記載の組成物を使用して真核細胞の生存率を向上可能な真核細胞を培養する方法も、本明細書中に開示する。例えば、前記組成物を培養CHO細胞に添加してもよいし、培養IgM生産真核細胞(例、CHO細胞)に添加してもよい。前記組成物を使用して、増殖培地を真核細胞へ添加する前若しくは後に、培地サプリメントとして、増殖培地に前記組成物を加えることにより、真核組織培養細胞の生存率を向上させることができる。また、増殖培地構成成分を前記組成物に加えて、前記組成物を含有する増殖培地を製造してもよい。
【0156】
実施形態B3は、真核細胞を培養する方法を提供し、その方法は細胞に初代組織培養培地を添加し、その後、前記初代組織培養培地に細胞培養組成物(グルコース、グルタミン酸、アスパラギン酸、セリン、ヒスチジン、スレオニン、アルギニン、チロシン、システイン、バリン、メチオニン、トリプトファン、フェニルアラニン(phenyalanine)、イソロイシン、ロイシン、リジン、プロリン、ニコチン酸アミド、ピリドキシンHCl、葉酸、ビタミンB-12、リボフラビン、及びチアミンHClを含む)を補充することを含む。
【0157】
実施形態B4は、前記初代組織培養培地へ添加される前記細胞培養組成物の容量が、前記初代組織培養培地の容量の1.0%から20%の間である、実施形態B3の方法を提供する。
【0158】
実施形態B5は、前記初代組織培養培地の添加後3日以前に、前記細胞培養組成物を、前記初代組織培養培地に加えない、実施形態B3の方法を提供する。
【0159】
実施形態B6は、前記真核細胞が形質転換されて、一又は複数のタンパク質を生産してきた、実施形態B3の方法を提供する。
【0160】
実施形態B7は、前記一又は複数のタンパク質が、抗体又はその抗原結合断片である、実施形態B6の方法を提供する。
【0161】
実施形態B8は、前記抗体がIgMである、実施形態B7の方法を提供する。
【0162】
実施形態B9は、前記細胞培養組成物を連続した日に前記初代組織培養培地に加える、実施形態B3の方法を提供する。
【0163】
別の実施形態では、前記組成物を使用して、組換タンパク質を生産するように遺伝的に改変された真核細胞により生産されるタンパク質量を増加させることができる。例えば、前記組成物を、組換ヒト抗体又はその抗原結合断片を発現するように設計された培養細胞(例、IgMを発現するよう改変された細胞、及びより具体的には、IgMを発現するように改変されたCHO細胞)へ加えてもよい。前記組成物を使用して、増殖培地を真核細胞へ添加する前若しくは後に、培地サプリメントとして、増殖培地に前記組成物を加えることにより、組換タンパク質発現を向上させることができる。また、増殖培地構成成分を前記組成物に加えて、前記組成物を含有する増殖培地を製造してもよい。
【0164】
前記組成物を、増殖培地として、又は増殖培地のためのサプリメントとして使用してもよい。培養培地を組織培養容器に加える前若しくは後に、サプリメントとして、前記組成物を前記細胞培養培地に加えてもよい。本明細書中に記載の組成物を用いて、1.5%から2.5%の総濃度にまで真核細胞培養培地に補充してもよい。同一の濃度を用いて、すでに前記組成物を含有している細胞培養培地を製造してもよい。
【0165】
吉草酸(valeric acid)を細胞培養培地に添加することにより、組換タンパク質を生産するよう遺伝的に改変された真核細胞により生産されるタンパク質量を増加させる方法も特徴である。例えば、組換ヒト抗体又は抗原結合断片を発現するよう設計された培養CHO、ハイブリドーマ、NS0細胞用の培地に、吉草酸を加えてもよい。一実施形態では、吉草酸を、0.1mMから10mMまでの最終濃度で細胞培養培地に加えることができる。一実施形態では、吉草酸を、細胞の増殖期の特定のポイントで添加することができる(例えば、細胞保存体を起こした後、又は細胞培養物を播種した後の特定な日に培養培地に、吉草酸を添加することができる)。
【0166】
実施形態B10は、細胞によるタンパク質生産を向上させる方法を提供し、その方法は、細胞の増殖培地に吉草酸を補充することを含む。
【0167】
実施形態B11は、前記細胞が抗体生産細胞である、実施形態B10の方法を提供する。
【0168】
実施形態B12は、前記増殖培地を補充して0.1mMから10mMの吉草酸濃度を有する、実施形態B10の方法を提供する。
【0169】
<抗体の単離又は精製>本明細書中に記載の抗体又は抗原結合断片を、前記抗体若しくは抗原結合断片のより精製された形態又は単離された形態を実現するように回収される細胞増殖培地のかなりの部分から分離することができる。抗体若しくは抗原結合断片(例、ヒトIgM抗体若しくは抗原結合断片)を、溶液(例、条件培養上清(CCS))から精製又は単離するための方法を、本明細書中に記載する。抗体又は抗原結合断片を含む溶液の純度を増やすことは、多数のやり方(例、限定されるわけではないが、透析、分子ふるいクロマトグラフィー、遠心分離、イオン交換クロマトグラフィー、勾配遠心、サイズ排除フィルターを用いたろ過、アフィニティークロマトグラフィー、免疫クロマトグラフィー、及び高速液体クロマトグラフィー)で達成することができる。また、アフィニティー精製手法を介して抗体若しくはその抗原結合断片純度を上昇させるように使用可能なアフィニティー標識(例、ポリヒスチジン)を含むように、記載の抗体又は抗原結合断片を(遺伝的あるいは化学的に)改変してもよい。
【0170】
従って、いくつかの実施形態は、アフィニティークロマトグラフィーで溶液から分離される抗体又はその抗原結合断片を含む。いくつかの実施形態は、抗体若しくはその抗原結合断片に対する親和性がプロテインAを媒介する、アフィニティークロマトグラフィーで溶液から実質的に分離される抗体又はその抗原結合断片を含む。いくつかの実施形態は、イオン交換クロマトグラフィーで溶液から実質的に分離される抗体又はその抗原結合断片を含む。いくつかの実施形態は、陽イオン交換クロマトグラフィーカラムがアクリルアミド-デキストラン共重合体樹脂を含む、陽イオン交換クロマトグラフィーで溶液から実質的に分離される抗体又はその抗原結合断片を含む。いくつかの実施形態は、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーで溶液から実質的に分離される抗体又はその抗原結合断片を含む。いくつかの実施形態は、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーカラムがセラミックリン酸カルシウム樹脂を取り込む、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーで溶液から実質的に分離される抗体又はその抗原結合断片を含む。
【0171】
得られる抗体若しくはその抗原結合断片に対する要求条件が、その抗体若しくは抗原結合断片が将来使用されるだろう応用例に依存して異なる場合があるので、記載の抗体若しくは抗原結合断片を精製又は単離することができるプロセスは、異なる場合がある。例えば、医薬組成物に使用される抗体又は抗原結合断片は、厳格な精製を要求されるだろうが、一方、in vitro診断試験で使用される抗体又は抗原結合断片は、より低い程度に精製可能である。従って、いくつかの実施形態は、抗体または抗原結合断片含有サンプルをプロテインAマトリックスと接触させることを含む。いくつかの実施形態は、抗体または抗原結合断片含有サンプルをイオン交換マトリックスと接触させることを含む。一実施形態では、前記イオン交換マトリックスは陽イオン交換クロマトグラフィーマトリックスであってもよい。より好ましい実施形態では、前記陽イオン交換クロマトグラフィーマトリックスは、アクリルアミド-デキストラン共重合体樹脂を含むことができる。いくつかの実施形態は、抗体または抗原結合断片含有サンプルをヒドロキシアパタイトマトリックスと接触させることを含む。一実施形態では、前記ヒドロキシアパタイトは、リン酸カルシウム樹脂を含むことができる。
【0172】
連続的アフィニティークロマトグラフィーは、単離または精製タンパク質を生成するプロセスである。前記プロセスは、2回以上の互いに異なるアフィニティークロマトグラフィー技術を利用して、目的の精製又は単離タンパク質を製造することができる(Friedrichs and Grose, 49 J. Virol. 992 (1984))。従って、いくつかの実施形態では、マトリックスへの抗体若しくは抗原結合断片の結合を促進する条件下で、抗体若しくは抗原結合断片含有サンプルは、プロテインAマトリックスと接触可能である。前記マトリックスを洗浄して非結合タンパク質を除去することができる。プロテインAマトリックスに結合した物質を溶出することができる。溶出した物質は、マトリックスへの抗体若しくは抗原結合断片の結合を促進する条件下で、陽イオン交換クロマトグラフィーマトリックスと接触可能である。前記マトリックスを洗浄して非結合タンパク質を除去することができる。前記陽イオン交換クロマトグラフィーに結合した物質を溶出することができる。溶出した物質は、マトリックスへの抗体若しくは抗原結合断片の結合を促進する条件下で、ヒドロキシアパタイト樹脂と接触可能である。前記マトリックスを洗浄して非結合タンパク質を除去することができる。そして、結合した物質を溶出することができる。また、このプロセスの種々の時点に、オプションの工程を加えて、抗体又はその抗原結合部位のより厳密な精製を可能とすることができる。例えば、前記抗体若しくは抗原結合断片含有溶液に、界面活性剤(例、Triton(登録商標)-X 100、又はTween(登録商標)80)を補充し、微生物(例、バクテリア、ウイルス、及び寄生虫)を不活化することができる。
【0173】
親和性を基礎とするタンパク質クロマトグラフィーは、多段階のプロセスであり、一般的には、クロマトグラフィーカラムを平衡化し、サンプル溶液をカラムのマトリックスと接触させ、前記カラム中の非結合物質を洗い流し、及び所望の物質を溶出させることに関連する。この一般的プロセスを、必要であれば、様々な条件下で、一又は複数回繰り返して、サンプルの純度を増加させてもよい。いくつかの実施形態では、プロテインAマトリックスを用いて精製されようとするサンプルと接触させることができる。一実施形態では、プロテインAマトリックスは、直径1000から5000オングストロームの範囲の細孔を有する、多孔質のものとすることができる。別の実施形態では、プロテインAマトリックスは、平均直径3000オングストロームの細孔を有する。
【0174】
いくつかの実施形態では、アフィニティーマトリックスを洗浄して使用前に平衡化する。例えば、前記アフィニティーマトリックスを精製水で洗浄して任意の汚染物質を除去することができる。いくつかの実施形態では、前記アフィニティーマトリックスを3から10カラム容量の精製水で洗浄してもよい。別の実施形態では、前記アフィニティーマトリックスを5カラム容量の精製水で洗浄してもよい。いくつかの実施形態では、前記アフィニティーマトリックスを少なくとも一つの酸性緩衝液で洗浄することができる。例えば、前記アフィニティーマトリックスを1から5カラム容量の20mM HCl(pH 1.5)で洗浄してもよい。別の実施形態では、前記アフィニティーマトリックスを3カラム容量の20mM HCl(pH 1.5)で洗浄する。
【0175】
また、前記アフィニティーマトリックスを少なくとも一つの追加の緩衝液(例、6Mグアニジン・HCl)で洗浄することができる。サンプルと前記アフィニティーマトリックスを接触させる前に、前記マトリックスを、弱塩基性または中性pHの緩衝液で平衡化することができる。一実施形態では、前記アフィニティーマトリックスを2から8カラム容量の緩衝液(pH 7.5)で平衡化してもよい。別の実施形態では、前記アフィニティーマトリックスを、5カラム容量の10mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH 7.5) (200mM NaCl、0.01% Tween-80を含有する)で平衡化してもよい。本明細書中に記載のリン酸ナトリウム緩衝液は、リン酸一ナトリウムとリン酸二ナトリウムとの混合物から調製することができる。適切な比率で混合されると、これらの溶液は、pH 4からpH 10の範囲のリン酸緩衝液を生成することができる。
【0176】
アフィニティーマトリックスに接触させて精製又は単離されようとするサンプルは、大きな粒子状物質が実質的にないようにすべきである。そのような粒子状物質を、種々のやり方(例、遠心分離、濾過)で除去してもよい。別の実施形態では、本明細書中に記載の条件培養上清(CCS)は、アフィニティーマトリックスと接触させる前に大きな粒子状物質が実質的にないようにされる。また別の実施形態では、前記CCSを濾過して、粒子状物質を除去する。適切な細孔サイズを有するフィルター(例、平均直径1μmの細孔を有するフィルター、平均直径0.75μmの細孔を有するフィルター、平均直径0.5μmの細孔を有するフィルター、平均直径0.22μmの細孔を有するフィルター、又は平均直径0.1μmの細孔を有するフィルター)を使用することができる。
【0177】
アフィニティーマトリックスと精製若しくは単離されようとするサンプルを含有する溶液とを接触させる前に、前記溶液を界面活性剤で処理して、少なくとも一つの微生物汚染菌(例、バクテリア、ウイルス、及び寄生虫)を不活化することができる。一実施形態では、前記CCSに界面活性剤を補充して少なくとも一つの微生物汚染菌を不活化する。一実施形態では、前記界面活性剤は、Triton-X100である。精製又は単離されようとするサンプルを含有する溶液に加えられる界面活性剤の濃度は、特定の精製スキームの必要性を満たすために変化してもよい。一実施形態では、精製又は単離されようとするサンプルを含有する溶液は、10%の界面活性剤を有することができる。別の実施形態では、精製又は単離されようとするサンプルを含有する溶液は、7%の界面活性剤を有することができる。一実施形態では、精製又は単離されようとするサンプルを含有する溶液は、5%の界面活性剤を有することができる。一実施形態では、精製又は単離されようとするサンプルを含有する溶液は、3%の界面活性剤を有することができる。一実施形態では、精製又は単離されようとするサンプルを含有する溶液は、2%の界面活性剤を有することができる。一実施形態では、精製又は単離されようとするサンプルを含有する溶液は、1%の界面活性剤を有することができる。一実施形態では、精製又は単離されるサンプルを含有する溶液は、0.5%の界面活性剤を有することができる。一実施形態では、精製又は単離されようとするサンプルを含有する溶液は、0.1%の界面活性剤を有することができる。
【0178】
一度アフィニティーマトリックスに添加されると、例えば、サンプルの処理又は結合を促進するように、サンプルを所望の流速で処理することができる。任意の流速を用いることができるが、一般的な流速は1と200cm/hとの間である。いくつかの実施形態では、前記サンプルの流速は1cm/hであってもよい。他の実施形態では、前記サンプルの流速は10cm/hであってもよい。一実施形態では、前記サンプルの流速は25cm/hであってもよい。一実施形態では、前記サンプルの流速は50cm/hであってもよい。別の実施形態では、前記サンプルの流速は76cm/hであってもよい。別の実施形態では、前記サンプルの流速は100cm/hであってもよい。いくつかの実施形態では、前記サンプルの流速は125cm/hであってもよい。別の実施形態では、前記サンプルの流速は150cm/hであってもよい。一実施形態では、前記サンプルの流速は175cm/hであってもよい。一実施形態では、前記サンプルの流速は200cm/hであってもよい。
【0179】
アフィニティーマトリックスをサンプル物質と接触させた後に、非結合サンプル物質を、緩衝液で洗浄することによって除去することができる。一実施形態では、前記アフィニティーマトリックスを、酸性pHを有する緩衝液で洗浄してもよい。一実施形態では、前記アフィニティーマトリックスを、中性pHを有する緩衝液で洗浄してもよい。一実施形態では、前記アフィニティーマトリックスを、塩基性pHを有する緩衝液で洗浄してもよい。別の実施形態では、前記アフィニティーマトリックスを、5から15カラム容量の10mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH 7.5)(200 mM NaCl、0.01% Tween-80を含む)で洗浄してもよい。
【0180】
洗浄によってアフィニティーマトリックスから非結合タンパク質を除去した後、前記アフィニティーマトリックスに結合したタンパク質を、溶出緩衝液でそのアフィニティーマトリックスを洗うことで溶出することができる。溶出緩衝液が、目的タンパク質(例、ヒトIgM抗体)とマトリックスとの間の相互作用を阻害するが、目的タンパク質を変性しない又はさもなくばその状態を劣化させないことを確認して、前記溶出液を慎重に選択するべきである。一実施形態では、前記アフィニティーマトリックスを、酸性pHを有する緩衝液で洗って、目的タンパク質を溶出することができる。一実施形態では、前記アフィニティーマトリックスを、中性pHを有する緩衝液で洗って、目的タンパク質を溶出することができる。一実施形態では、前記アフィニティーマトリックスを、塩基性pHを有する緩衝液で洗って、目的タンパク質を溶出することができる。いくつかの実施形態は、クロマトグラフィーカラムに結合した物質を溶出するための緩衝液で、リン酸ナトリウムと塩化マグネシウムとを有する緩衝液を含み、10カラム容量までのこの緩衝液を用いて前記カラムから結合物質を溶出する。いくつかの実施形態では、5と10mMとの間のリン酸ナトリウム及び1と5Mとの間の塩化マグネシウムを有する緩衝液を、アフィニティーマトリックスに結合した物質を溶出するために用いることができる。別の実施形態は、アフィニティーマトリックスに結合した物質を溶出するために、3カラム容量の(5mMリン酸ナトリウムと3M塩化マグネシウムとを含む)緩衝液を含む。いくつかの実施形態では、3M MgCl2 (pH6.8)を補充した5mMリン酸ナトリウウ緩衝液を用いて、プロテインAマトリックスから、IgMを溶出することができる。
【0181】
イオン交換クロマトグラフィーを用いて、タンパク質(例、IgM抗体若しくは抗原結合断片)を精製又は単離する方法を、本明細書中に開示する。タンパク質のイオン交換クロマトグラフィーは、多段階プロセスで、一般的に、クロマトグラフィーカラムを平衡化し、サンプル溶液をカラムのマトリックスと接触させ、前記カラム中の非結合タンパク質を洗い流し、及び所望の物質を溶出することに関連する。この一般的プロセスを、必要であれば、様々な条件下で、一又は複数回繰り返して、サンプルの純度を増加させてもよい。いくつかの実施形態では、陽イオン交換クロマトグラフィーマトリックスは、アクリルアミド-デキストラン共重合体樹脂であってもよい。一実施形態では、前記陽イオン交換クロマトグラフィーマトリックスは、MacroCap(商標)-SP樹脂であってもよい。
【0182】
いくつかの実施形態では、イオン交換マトリックスを、使用前に洗浄及び平衡化する。例えば、前記イオン交換マトリックスを精製水で洗浄して任意の汚染物質を除去することができる。一実施形態では、前記イオン交換マトリックスを1から10カラム容量の精製水で洗浄してもよい。一実施形態では、前記イオン交換マトリックスを2カラム容量の精製水で洗浄してもよい。いくつかの実施形態では、前記イオン交換マトリックスを少なくとも一つの緩衝液で洗浄することができる。例えば、前記イオン交換マトリックスを1から5カラム容量の緩衝液(0.5M NaOHを有する)で洗浄してもよい。別の実施形態では、前記イオン交換マトリックスを3カラム容量の緩衝液(0.5M NaOHを有する)で洗浄する。いくつかの実施形態では、前記イオン交換マトリックスを3カラム容量の緩衝液(2M NaClを有する)で洗浄する。サンプルと前記イオン交換マトリックスを接触させる前に、前記マトリックスを、酸性、塩基性、又は中性pHの緩衝液で平衡化することができる。一実施形態では、前記イオン交換マトリックスを2から8カラム容量の緩衝液(pH 6.8)で平衡化してもよい。一実施形態では、前記イオン交換マトリックスを、5カラム容量の10mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH 6.8)(75mM NaCl、0.01% Tween-80を含有する)で平衡化してもよい。
【0183】
イオン交換マトリックスに接触させて精製又は単離されようとするサンプルは、大きな粒子状物質が実質的にないようにすべきである。そのような粒子状物質を、種々のやり方(例、遠心分離、濾過)で除去してもよい。いくつかの実施形態では、本明細書中に記載の条件培養上清(CCS)は、イオン交換マトリックスと接触させる前に大きな粒子状物質が実質的にないようにされる。別の実施形態では、前記CCSを濾過して、粒子状物質を除去する。任意の細孔サイズを有するフィルター(例、平均直径1μmの細孔を有するフィルター、平均直径0.75μmの細孔を有するフィルター、平均直径0.5μmの細孔を有するフィルター、平均直径0.22μmの細孔を有するフィルター、又は平均直径0.1μmの細孔を有するフィルター)を使用することができる。
【0184】
イオン交換マトリックスと精製されようとするサンプルを含有する溶液とを接触させる前に、前記溶液を界面活性剤で処理して、少なくとも一つの微生物汚染菌(例、バクテリア、ウイルス、及び寄生虫)を不活化し、又は目的タンパク質を可溶状態に維持するのを補助することができる。いくつかの実施形態では、サンプルに界面活性剤を補充して、少なくとも一つの微生物汚染菌を不活化するか、又は目的タンパク質を可溶状態に維持するのを補助することができる。一実施形態では、前記界面活性剤は、Triton-X100である。一実施形態では、前記界面活性剤は、Triton-80である。精製又は単離されようとするサンプルを含有する溶液に加えられる界面活性剤の濃度は、特定の精製スキームの必要性を満たすために変化してもよい。一実施形態では、精製又は単離されようとするサンプルを含有する溶液は、10%の界面活性剤を有することができる。一実施形態では、精製又は単離されようとするサンプルを含有する溶液は、7%の界面活性剤を有することができる。一実施形態では、精製又は単離されようとするサンプルを含有する溶液は、5%の界面活性剤を有することができる。一実施形態では、精製又は単離されようとするサンプルを含有する溶液は、3%の界面活性剤を有することができる。一実施形態では、精製又は単離されようとするサンプルを含有する溶液は、2%の界面活性剤を有することができる。一実施形態では、精製又は単離されようとするサンプルを含有する溶液は、1%の界面活性剤を有することができる。一実施形態では、精製又は単離されようとするサンプルを含有する溶液は、0.5%の界面活性剤を有することができる。一実施形態では、精製又は単離されようとするサンプルを含有する溶液は、0.1%の界面活性剤を有することができる。
【0185】
一度イオン交換マトリックスに添加されると、例えば、サンプルの処理又は結合を促進するように、サンプルを所望の流速で処理することができる。任意の流速を用いることができるが、一般的な流速は1と200cm/hとの間である。一実施形態では、前記サンプルの流速は1cm/hであってもよい。一実施形態では、前記サンプルの流速は10cm/hであってもよい。一実施形態では、前記サンプルの流速は25cm/hであってもよい。一実施形態では、前記サンプルの流速は50cm/hであってもよい。一実施形態では、前記サンプルの流速は76cm/hであってもよい。一実施形態では、前記サンプルの流速は100cm/hであってもよい。一実施形態では、前記サンプルの流速は125cm/hであってもよい。一実施形態では、前記サンプルの流速は150cm/hであってもよい。一実施形態では、前記サンプルの流速は175cm/hであってもよい。別の実施形態では、前記サンプルの流速は200cm/hであってもよい。
【0186】
イオン交換マトリックスをサンプル物質と接触させた後に、非結合サンプル物質を、緩衝液で洗浄することによって除去することができる。一実施形態では、前記イオン交換マトリックスを、酸性pHを有する緩衝液で洗浄してもよい。一実施形態では、前記イオン交換マトリックスを、中性pHを有する緩衝液で洗浄してもよい。一実施形態では、前記イオン交換マトリックスを、塩基性pHを有する緩衝液で洗浄してもよい。一実施形態では、前記イオン交換マトリックスを、5から15カラム容量の緩衝液(pH 6.8)(10mMリン酸ナトリウム、75 mM NaCl、0.01% Tween-80を含む)で洗浄してもよい。
【0187】
洗浄によってイオン交換マトリックスから非結合タンパク質を除去した後、前記イオン交換マトリックスに結合したタンパク質を、溶出緩衝液でそのイオン交換マトリックスを洗うことで溶出することができる。溶出緩衝液が、目的タンパク質(例、ヒトIgM抗体)とマトリックスとの間の相互作用を阻害するが、目的タンパク質を変性しない又はさもなくばその状態を劣化させないことを確認して、前記溶出液を慎重に選択するべきである。一実施形態では、前記イオン交換マトリックスを、酸性pHを有する緩衝液で洗って、目的タンパク質を溶出することができる。一実施形態では、前記イオン交換マトリックスを、中性pHを有する緩衝液で洗って、目的タンパク質を溶出することができる。一実施形態では、前記イオン交換マトリックスを、塩基性pHを有する緩衝液で洗って、目的タンパク質を溶出することができる。いくつかの実施形態は、クロマトグラフィーカラムに結合した物質を溶出するための緩衝液で、リン酸ナトリウムと塩化ナトリウムとを有する緩衝液を含み、10カラム容量までのこの緩衝液を用いて前記カラムから結合物質を溶出する。いくつかの実施形態では、5と10mMとの間のリン酸ナトリウム及び150と500Mとの間の塩化ナトリウムを有する緩衝液を、イオン交換マトリックスに結合した物質を溶出するために用いることができる。別の実施形態は、イオン交換マトリックスに結合した物質を溶出するために、4カラム容量の10mMリン酸ナトリウム緩衝液(200mM NaClを含む)を含む。いくつかの実施形態では、10mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH. 6.8)(200mM NaClと0.01% Tween-80を含む)を使って、MacroCap-SPマトリックスから、IgMを溶出することができる。
【0188】
ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーを用いて、タンパク質(例、IgM抗体若しくは抗原結合断片)を精製又は単離する方法を、本明細書中に開示する。タンパク質のヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーは、多段階プロセスで、一般的に、クロマトグラフィーカラムを平衡化し、サンプル溶液をカラムのマトリックスと接触させ、前記カラム中の非結合タンパク質を洗い流し、及び所望の物質を溶出することに関連する。この一般的プロセスを、必要であれば、様々な条件下で、一又は複数回繰り返して、サンプルの純度を増加させてもよい。いくつかの実施形態では、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーマトリックスは、リン酸カルシウムマトリックスであってもよい。一実施形態では、前記ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーマトリックスは、CHT(登録商標)IIセラミックヒドロキシアパタイト(80μmのビーズサイズ)であってもよい。
【0189】
いくつかの実施形態において、ヒドロキシアパタイトマトリックスは、使用前に水和される。一実施形態では、前記ヒドロキシアパタイトマトリックスを、所望のカラムベッド体積の各mL当たり0.54gの乾燥マトリックスを用いて、200mMのリン酸カリウム(pH 9.0)を有する溶液で水和する。サンプルと前記ヒドロキシアパタイトマトリックスとを接触させる前に、前記マトリックスを、酸性、塩基性、又は中性pHの緩衝液で平衡化することができる。一実施形態では、前記ヒドロキシアパタイトマトリックスを2から8カラム容量の緩衝液(pH 6.8)で平衡化してもよい。別の実施形態では、前記ヒドロキシアパタイトマトリックスを、5カラム容量の緩衝液(pH 6.8)(10mMリン酸ナトリウム、100mM NaCl、0.01% Tween-80を含む)で平衡化してもよい。
【0190】
ヒドロキシアパタイトマトリックスに接触させて精製又は単離されようとするサンプルは、大きな粒子状物質が実質的にないようにすべきである。そのような粒子状物質を、種々のやり方(例、遠心分離、濾過)で除去してもよい。いくつかの実施形態では、条件培養上清(CCS)は、ヒドロキシアパタイトマトリックスと接触を有する前に大きな粒子状物質が実質的にないようにされる。一実施形態では、前記CCSを濾過して、粒子状物質を除去する。任意の細孔サイズを有するフィルター(例、平均直径1μmの細孔を有するフィルター、平均直径0.75μmの細孔を有するフィルター、平均直径0.5μmの細孔を有するフィルター、平均直径0.22μmの細孔を有するフィルター、又は平均直径0.1μmの細孔を有するフィルター)を使用することができる。
【0191】
ヒドロキシアパタイトマトリックスと精製されようとするサンプルを含有する溶液とを接触させる前に、前記溶液を界面活性剤で処理して、少なくとも一つの微生物汚染菌(例、バクテリア、ウイルス、及び寄生虫)を不活化し、又は目的タンパク質を可溶状態に維持するのを補助することができる。いくつかの実施形態では、サンプルに界面活性剤を補充して、少なくとも一つの微生物汚染菌を不活化するか、又は目的タンパク質を可溶状態に維持するのを補助することができる。一実施形態では、前記界面活性剤は、Triton-X100である。一実施形態では、前記界面活性剤は、Triton-80である。精製又は単離されようとするサンプルを含有する溶液に加えられる界面活性剤の濃度は、特定の精製スキームの必要性を満たすために変化してもよい。一実施形態では、精製又は単離されようとするサンプルを含有する溶液は、10%の界面活性剤を有することができる。一実施形態では、精製又は単離されようとするサンプルを含有する溶液は、7%の界面活性剤を有することができる。一実施形態では、精製又は単離されようとするサンプルを含有する溶液は、5%の界面活性剤を有することができる。一実施形態では、精製又は単離されようとするサンプルを含有する溶液は、3%の界面活性剤を有することができる。一実施形態では、精製又は単離されようとするサンプルを含有する溶液は、2%の界面活性剤を有することができる。一実施形態では、精製又は単離されようとするサンプルを含有する溶液は、1%の界面活性剤を有することができる。一実施形態では、精製又は単離されようとするサンプルを含有する溶液は、0.5%の界面活性剤を有することができる。一実施形態では、精製又は単離されようとするサンプルを含有する溶液は、0.1%の界面活性剤を有することができる。
【0192】
一度ヒドロキシアパタイトマトリックスに添加されると、例えば、サンプルの処理又は結合を促進するように、サンプルを所望の流速で処理することができる。任意の流速を用いることができるが、一般的な流速は1と200cm/hとの間である。一実施形態では、前記サンプルの流速は1cm/hであってもよい。一実施形態では、前記サンプルの流速は10cm/hであってもよい。一実施形態では、前記サンプルの流速は25cm/hであってもよい。一実施形態では、前記サンプルの流速は50cm/hであってもよい。一実施形態では、前記サンプルの流速は76cm/hであってもよい。一実施形態では、前記サンプルの流速は100cm/hであってもよい。一実施形態では、前記サンプルの流速は125cm/hであってもよい。一実施形態では、前記サンプルの流速は150cm/hであってもよい。一実施形態では、前記サンプルの流速は175cm/hであってもよい。一実施形態では、前記サンプルの流速は200cm/hであってもよい。
【0193】
ヒドロキシアパタイトマトリックスをサンプル物質と接触させた後に、非結合サンプル物質を、緩衝液で洗浄することによって除去することができる。一実施形態では、前記ヒドロキシアパタイトマトリックスを、酸性pHを有する緩衝液で洗浄してもよい。一実施形態では、前記ヒドロキシアパタイトマトリックスを、中性pHを有する緩衝液で洗浄してもよい。一実施形態では、前記ヒドロキシアパタイトマトリックスを、塩基性pHを有する緩衝液で洗浄してもよい。一実施形態では、前記ヒドロキシアパタイトマトリックスを、5から15カラム容量の緩衝液(pH 6.8)(10mMリン酸ナトリウム、100mM NaCl、0.01% Tween-80を含む)で洗浄してもよい。
【0194】
洗浄によってヒドロキシアパタイトマトリックスから非結合タンパク質を除去した後、前記ヒドロキシアパタイトマトリックスに結合したタンパク質を、溶出緩衝液でそのヒドロキシアパタイトマトリックスを洗うことで溶出することができる。溶出緩衝液が、目的タンパク質(例、ヒトIgM抗体)とマトリックスとの間の相互作用を阻害するが、目的タンパク質を変性しない又はさもなくばその状態を劣化させないことを確認して、前記溶出液を慎重に選択するべきである。一実施形態では、前記ヒドロキシアパタイトマトリックスを、酸性pHを有する緩衝液で洗って、目的タンパク質を溶出することができる。一実施形態では、前記ヒドロキシアパタイトマトリックスを、中性pHを有する緩衝液で洗って、目的タンパク質を溶出することができる。一実施形態では、前記ヒドロキシアパタイトマトリックスを、塩基性pHを有する緩衝液で洗って、目的タンパク質を溶出することができる。いくつかの実施形態は、ヒドロキシアパタイトカラムに結合した物質を溶出するための緩衝液で、リン酸ナトリウムと塩化ナトリウムとを有する緩衝液を含み、10カラム容量までのこの緩衝液を用いて前記カラムから結合物質を溶出する。いくつかの実施形態では、150と500mMとの間のリン酸ナトリウム及び50と200Mとの間の塩化ナトリウムを有する緩衝液を、ヒドロキシアパタイトマトリックスに結合した物質を溶出するために用いることができる。一実施形態では、4カラム容量の緩衝液(175mMリン酸ナトリウム緩衝液(100mM NaClを含む)を含む)を使用して、ヒドロキシアパタイトマトリックスに結合した物質を溶出することができる。別の実施形態では、緩衝液(pH. 6.8)(175mMリン酸ナトリウム、100mM NaCl、及び0.01% Tween-80を含む)を使って、CHT IIセラミックヒドロキシアパタイトマトリックスから、IgMを溶出することができる。
【0195】
様々な組成の緩衝液(使用される塩、塩濃度、使用される界面活性剤、界面活性剤濃度、及びpH等に関して)を使用して、本明細書中に記載の方法を実質的に実行することができる。従って、そのようなバリエーションは、提示される開示の範囲に入っていると考えられ、排除又は限定することを意図していない。
【0196】
実施形態C1は、タンパク質を精製または単離する方法を提供し、前記方法は、前記タンパク質を含む溶液をアフィニティークロマトグラフィーカラムに添加し、前記アフィニティークロマトグラフィーカラムからの溶出物を陽イオン交換クロマトグラフィーカラムに添加し、前記陽イオン交換クロマトグラフィーカラムからの溶出物をヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーカラムに添加し、前記ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーカラムから溶出物を得ることを含む。
【0197】
実施形態C2は、前記アフィニティークロマトグラフィーカラムが、プロテインAでコートされた少なくとも一つの基材を含む、実施形態C1の方法を提供する。
【0198】
実施形態C3は、プロテインAでコートされた少なくとも一つの前記基材が多孔質である、実施形態C2の方法を提供する。
【0199】
実施形態C4は、前記多孔質基材が3000オングストロームの細孔を含む、実施形態C3の方法を提供する。
【0200】
実施形態C5は、プロテインAでコートされた少なくとも一つの前記基材がタンパク質に結合する、実施形態C1の方法を提供する。
【0201】
実施形態C6は、プロテインAでコートされた少なくとも一つの基材に結合する前記タンパク質が、塩化マグネシウムを含む溶液で溶出される、実施形態C5の方法を提供する。
【0202】
実施形態C7は、前記塩化マグネシウムを含む溶液が1Mから5Mの塩化マグネシウムの溶液である、実施形態C6の方法を提供する。
【0203】
実施形態C8は、前記塩化マグネシウムを含む溶液が3M塩化マグネシウムの溶液である、実施形態C6の方法を提供する。
【0204】
実施形態C9は、プロテインAでコートされた少なくとも一つの基材に結合する前記タンパク質が、抗体である、実施形態C5の方法を提供する。
【0205】
実施形態C10は、前記抗体がIgMである、実施形態C9の方法を提供する。
【0206】
実施形態C11は、前記陽イオン交換クロマトグラフィーカラムがアクリルアミド-デキストラン共重合体樹脂である、実施家形態C1の方法を提供する。
【0207】
実施形態C12は、前記アクリルアミド-デキストラン共重合体樹脂がタンパク質に結合する、実施形態C11の方法を提供する。
【0208】
実施形態C13は、前記アクリルアミド-デキストラン共重合体樹脂に結合する前記タンパク質が、溶液(10mMリン酸ナトリウム、200mM塩化ナトリウム、0.01%ポリソルベート80を含む)で溶出される、実施形態C12の方法を提供する。
【0209】
実施形態C14は、前記アクリルアミド-デキストラン共重合体樹脂に結合する前記タンパク質が抗体である、実施形態C13の方法を提供する。
【0210】
実施形態C15は、前記抗体がIgMである、実施形態C14 の方法を提供する。
【0211】
実施形態C16は、前記ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーカラムがリン酸カルシウム樹脂を含む、実施形態C1の方法を提供する。
【0212】
実施形態C17は、前記リン酸カルシウム樹脂がタンパク質に結合する、実施形態C16の方法を提供する。
【0213】
実施形態C18は、前記リン酸カルシウム樹脂に結合する前記タンパク質が、溶液(175mMリン酸ナトリウム、100mM塩化ナトリウム、0.01%ポリソルベート80を含む)で溶出される、実施形態C17の方法を提供する。
【0214】
実施形態C19は、前記リン酸カルシウム樹脂に結合する前記タンパク質が抗体である、実施形態C18の方法を提供する。
【0215】
実施形態C20は、前記抗体がIgMである、実施形態C19の方法を提供する。
【0216】
実施形態C21は、タンパク質を精製又は単離する方法を提供し、前記方法は、a.前記タンパク質を含む溶液をプロテインAでコートされた少なくとも一つの基材を含むアフィニティークロマトグラフィーカラムに添加し、3M塩化マグネシウムを含む溶液で、プロテインAでコートされた少なくとも一つの前記基材に結合した任意のタンパク質を溶出し、b.前記アフィニティークロマトグラフィーカラムからの前記溶出物を、アクリルアミド-デキストラン共重合体樹脂を含む陽イオン交換クロマトグラフィーカラムに添加し、そして、溶液(10mMリン酸ナトリウム、200mM塩化ナトリウム、0.01%ポリソルベート80を含む)で、前記アクリルアミド-デキストラン共重合体樹脂に結合した任意のタンパク質を溶出し、c.前記陽イオン交換クロマトグラフィーカラムからの前記溶出物を、リン酸カルシウム樹脂を含むヒドロキシアパタイトに添加し、そして、溶液(175mMリン酸ナトリウム、100mM塩化ナトリウム、0.01%ポリソルベート80を含む)で、前記リン酸カルシウムに結合した任意のタンパク質を溶出することを含む。
【0217】
以下の実施例を、本明細書中に記載の実施形態をより詳細に記載するために提供する。それらは、本実施形態を説明することを意図し、限定する意図はない。
【実施例】
【0218】
<実施例1><CV-3由来IgMのGD-2特異性>エプスタイン・バーウイルスで形質転換されたヒトリンパ芽球細胞のプール(HLP)(Cahan, et al.)を、GD2特異的IgM抗体を生産する能力に関して試験した。前記細胞をRPMI完全培地(10%熱不活化FBS、1% L-Glu、1%抗生物質(シグマ(Sigma)))中で培養した。使用済み増殖培地を、2から4回目の継代時に回収し、IgM濃度及びGD2との反応性に関してアッセイを行った。2〜5 x 105 cells/mLの培養物を3日間増殖させた後、前記HLPは、6〜8μg/mLのIgM(ELISAで定量)を生産した。
【0219】
前記HLPにより生産されたIgMがGD2に特異的かどうかを決定するため、それぞれの培養物の使用済み培地をELISAで解析した。手短に説明すると、25ngのGD2、GD1a、GM2、又はGM3を含有する200μlのエタノールを蒸発させることにより、ガングリオシドをELISAプレートにコートした。プレートをその後ブロックし、IgM含有細胞培養培地又はヒトIgMの結合を、通常のELISA手法により評価した。前記HLPからの使用済み培地(8.1倍若しくは14.2倍に濃縮されたもの)は、GD2反応性IgMを含んでいた(図1A)。しかしながら、その抗体は、ガングリオシドGD1a、GM2、及びGM3をも認識した(図1B)。これらのデータは、前記HLPにより生産されたIgMが多反応性であることを示す。
【0220】
FACS解析を行って、前記HLPにより生産されたIgMがメラノーマ細胞の表面に発現されたGD2に結合できるかどうか測定した。手短には、1205LU(表面にGD2を発現するヒトメラノーマ細胞株)を、HLP培養物由来の使用済み培地とインキュベートし、洗浄し、その後FITC-ヤギ-抗ヒトIgの二次抗体(Jackson Laboratories)で標識した。図2に示されるように、前記HLPの前初期継代物(継代2回目)からの培養培地のみが細胞表面のGD2を認識することができるIgMを生産した(図2B)。しかしながら、この反応性は、数週間、前記HLPをサブカルチャーした後に急速に失われた(図2C)。これらの結果は、特異的にGD2と反応するIgMを生産する細胞は、前記HLPの中でゆっくりと増殖するものであり、且つ抗体非生産の若しくは非特異的な抗体生産細胞が急速に過剰増殖するか、あるいは、このIgMの生産は安定的ではないということを示唆する。マウス抗GD2 IgM抗体であるMAb-126(ATCC# HB8568(商標))をポジティブコントロールとして使用し、強いGD2特異的結合を実証した(図2D)。
【0221】
<実施例2><HLP由来のハイブリドーマは、GD2陽性細胞へのCDC活性を媒介するGD-2特異的IgMを生産する>EBV不含ハイブリドーマ株でGD2特異的IgMを生産する株を作製するために、前記HLPの初期継代由来の細胞を、融合パートナーA6(ATCC CRL-8192)若しくはK6H6/B5(ATCC CRL-1823)と融合して、ハイブリドーマを形成させた。前記HLP中のGD2特異的サブクローンが見かけ上低い存在比率であるので、80,000クローンをGD2特異的ELISAでスクリーニングした。これらのハイブリドーマ株からの約5〜10%の抗体調製物が、GD2陽性反応性を示した。しかしながら、ガングリオシドのパネル(GD1、GM2、及びGM3)を用いて特異性に関してスクリーニングされた場合、90%を超えるGD2陽性クローンが複数のガングリオシドに対して反応性を示した(図3A、クローン5D7及び10B4)。さらに、多反応性抗体の大部分が、非関連コントロールタンパク質のパネルに交差反応した(データは示されない)。これらの結果は、GD2特異的IgMを生産するリンパ芽球細胞は、前記HLPの中で稀であるということを示唆する。
【0222】
サブクローニングとスクリーニング努力により、GD2特異的IgM生産ハイブリドーマ細胞株の単離ができた。2種類のGD2特異的ハイブリドーマ株(3B2および1470)を単離した。両細胞株の培養物を0.3〜0.4e6 cells/mlの播種密度で播種し、3から4日ごとに分割し、使用済み培地中で3〜8μg/mLのIgMを得た。ガングリオシド特異的ELISAは、GD2だけに陽性反応性を示し、3種類のコントロールガングリオシド(GD1a、GM2、及びGM3)に反応性を示さなかった。このことは、これらの細胞がGD2特異的抗体を生産することを示唆する。また、FACS解析は、3B2及び1470抗体を用いて1205LUヒトメラノーマ細胞を陽性染色することを示した。そのことは、これらの抗体が細胞表面上のGD2を認識できることを示唆する(図4)。クローン3B2及び1470の分子解析を実行し、クローン起源を決定した。軽鎖特異的ELISAは、両クローンがκ軽鎖を含むIgMを分泌することを示した(データは示されない)。これらの細胞のcDNAの配列解析は、同一の重鎖および軽鎖配列であることを明らかにした。そのことは、その二つのクローンが同一のHLPリンパ芽球クローン由来であったことを示唆する(データは示されない)。
【0223】
3B2培養物からの部分精製抗体を用いて、この抗体がGD2発現メラノーマ細胞株における補体依存性細胞障害(CDC)を媒介する能力を評価した。この活性は、抗体が抗原に結合した際に抗体が確保する立体構造に大きく依存する(Janeway et al., Immunobiology, 9-12 (5th ed.、2001)。標的メラノーマ細胞株(GD2陽性細胞株(LF0023及びM14)並びにGD2陰性細胞株(PM0496及びJS0592))を、RPMI1640(10% FBS、2mM L-グルタミン、非必須アミノ酸、及び6μM HEPESを補充したもの)中で培養し、使用前にトリプシンを用いて回収した。標的細胞を、20%ヒト血清の存在下で、3B2 IgM含有上清とインキュベートした。37℃で1時間インキュベートした後、生細胞をCell Titer Glo(登録商標)試薬(プロメガ社、Madison、WI)を用いて同定した。死滅パーセントを非処理細胞に対する処理細胞からのシグナル比率として測定した。図5のデータは、3B2クローンにより生産されたIgMが、ある種のGD2陽性メラノーマ細胞株への強力なCDC反応を呈することができることを示唆する。
【0224】
分子解析を行って、クローン3B2及び1470がEBVに感染したかどうかを決定した。6種類のPCRプライマーペア((EBNA2-1141f(配列番号:45)とEBNA2-1440r(配列番号:46); EBV2001f(配列番号:47)とEBV2622r(配列番号:48); EBV1901F(配列番号番号:49)とEBV2822R(配列番号:50); EBV169461f(配列番号:51)とEBV170100r(配列番号:52); EBV169480f(配列番号:53)とEBV170080r(配列番号:54); EBV8491F(配列番号:55)とEBV9020r(配列番号:56))を設計して、EBVゲノムの存在及び完全性を確認した。前記プライマーペアの一つはEBNA-2のオープンリーディングフレームを増幅した。二種類の重なり合うセットは、各々EBVゲノムの5'末端及び3'末端を増幅した。そして、一つのペアは、複製起点を増幅した。初期には、3B2と1470の両クローンは、ゲノムPCRにより実証されるようにEBV陽性であった(データは示されない)。しかしながら、ウエル一つ当たり一細胞未満に蒔く限界希釈によりサブクローニングをさらに行うことにより、EBVゲノムを含有しない3B2及び1470株のサブクローンを作製した。そのことは、EBV特異的PCR解析により決定された(データは示されない)。
【0225】
EBV陰性3B2サブクローン(AB527-HYB-3B2-EBVnull)を、2008年7月16日にアメリカ培養細胞系統保存機関(10801 University Blvd., Manassas, Virginia 20110-2209)に寄託し、アクセッション番号PTA-9376が割り当てられた。AB527-HYB-3B2-EBVnullサブクローンを、元のハイブリドーマがヒト若しくはマウスJ鎖を生産する可能性があったので、二巡目のサブクローニングに供して、ただ一つの型の免疫グロブリンJ鎖を生産するクローンを同定した。ただ一つの型のJ鎖を有するクローン若しくはJ鎖欠損クローンを同定するために、ヒトJ鎖に特異的なプライマー(hu-285F(配列番号:57)とhu-418R(配列番号:58))、またはマウスJ鎖特異的プライマー(m-230F(配列番号:59)とm-370R(配列番号:60))を用いて、RT-PCRを実行した。3B2サブクローン(AB527-HYB-3B2-3C9)は、EBV欠損、ヒトJ鎖欠損、マウスJ鎖陽性であり、静置培養でモノクローナルなGD2特異的IgMを約30mg/L分泌することを、その結果は示した。
【0226】
<実施例3><GD2特異的IgMを発現する形質転換細胞株の作製>AB527-HYB-3B2-3C9(EBV欠損、ヒトJ鎖欠損、マウスJ鎖陽性ハイブリドーマ)から単離されたトータルRNAをcDNAへ逆転写し、IgM重鎖(配列番号:33と35に対応するプライマーを用いて)及び軽鎖(配列番号:36と38に対応するプライマーを用いて)のPCR増幅の鋳型として使用した。AB527-HYB-3B2-3C9から増幅した重鎖塩基配列は、配列番号:40のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードし、 AB527-HYB-3B2-3C9から増幅した軽鎖塩基配列は、配列番号:42のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする。二巡目のPCR増幅を行い、ヒトリーダー配列を付加し、それに伴い、pEE6.4(重鎖)とpEE14.4(軽鎖)(両ベクターは、ロンザ・バイオロジックス(Lonza Biologics)グルタミン合成酵素発現システム(GSシステム)の一部として供給される)へ単位複製配列をクローニングするのを促進する目的で、5'及び3'制限酵素認識部位を導入した。前記IgM重鎖の二巡目のPCR増幅を、配列番号:34と35に対応するプライマーを用いて実行し、一方、前記軽鎖増幅には、配列番号:37と38に対応するプライマーを用いた。
【0227】
PCR増幅した軽鎖cDNAをHindIIIとEcoRIで消化し、同様に切断したpEE14.4に連結した。一方、重鎖cDNAをHindIIIとMfeIで消化し、HindIIIとEcoRI(MfeIとEcoRIは両用できる「粘着性」末端を残す)で消化したpEE6.4へ連結した。前記重鎖及び軽鎖の塩基配列の確認後、重鎖発現カセットを、NotI/PvuI断片としてのpEE14.4-AB527-LCへ導入し、最終的な発現ベクター(pEE14.4-AB527-LC-HC(p0311))を構築した(図6)。pEE14.4は、GS阻害剤(Lメチオニンスルホキシイミン(MSX))の存在下で安定発現株の選択を可能にする、グルタミン合成酵素ミニジーンを含む10kbのベクターである。このベクター中の前記cDNA挿入物の転写は、ヒトCMV前初期プロモーターにより制御され、前記cDNA挿入物の上流にイントロン1を含むhCMV MIE 5'非翻訳領域があり、前記cDNA挿入物の下流には転写物の効率的なポリアデニル化を可能にするSV40ポリアデニル化シグナルがある(図7)。
【0228】
CHO細胞を、直線化した二種遺伝子ベクターp0311を用いて、エレクトロポレーションでトランスフェクトし、GD2特異的組換IgMの発現を可能にした。トランスフェクション後に、透析したウシ胎児血清(dFBS)とグルタミン合成酵素サプリメントとを含有する非選択培地を使用して96穴プレートに、前記細胞を播種した。次の日に、選択培地(dFBS、グルタミン合成酵素サプリメント、及びMSX(最終濃度10μM)を含有する)を各々のウエルに加え、前記発現ベクターを含む細胞の選択を可能にした。単一のトランスフェクトされた細胞から生じたと認識されるコロニーのみを追跡した。
【0229】
トランスフェクタント(形質移入体)を、ヒトIgMの存在に関して、ELISAによりスクリーニングした。コロニーを血清含有選択培地で増やし、生き残ったコロニーを定量的二次アッセイで検討し、最も生産性の高いコロニーを同定した。最も生産性の高いトランスフェクタントを、化学的に組成定義されたIS-CHO-CD(商標)培地(Irvine Scientific, Santa Ana, CA)に順応させ、10μM MSXを含有する培地中で、平底96穴プレート(80個のプレート)に2,500細胞/ウエル(cells/well)で播種した。薬剤耐性コロニーをELISAにより、IgM生産に関して解析した。IgM生産陽性のコロニーをスケールアップし、引き続く二次的(6穴)及び三次的(20mL振盪フラスコ)アッセイでの抗体生産性に関して解析した。このことにより、IgM生産CHO-K1SV形質転換体クローン(127C8)を同定した。127C8クローンは、J鎖を発現せず、従って、この細胞株により生産される組換AB527 IgMは、J鎖欠損である。AB527の重鎖及び軽鎖のアミノ酸配列を、それぞれ配列番号:40及び42に示す。
【0230】
<実施例4><AB527はin vitroでGD2に特異的に結合する>いくつかの実験を行い、組換AB527が、in vitroで精製GD2に結合できるかどうかを決定した。最初に、表面プラズモン共鳴実験を実行し、組換AB527がGD2に結合するかどうか測定するだけでなく、それがGM2若しくはGD3に対する親和性を呈するかどうかについても測定した(図8)。実験を以下のように行った。GD2 (BioDesign)、GD3 (HyTest)、及びGM2 (USBiological)0.3mg/mLの各40μlの溶液(HBS-E)(30%エタノールを含有する(10mM HEPES、150mM NaCl、3mM EDTA ))を、BIAcore 3000装置を用いて、CM5チップの各フローセル2、3、及び4上に、5μl/分の流速で注入した。各ガングリオシドの固定後、安定したベースラインを達成するまで、20μlの10mM NaOHを5回繰り返して注入した。次に、HBS-E緩衝液中の200nM組換AB527の80μlを、20μl/分の流速で、四つ全てのフローセル(フローセル1は参照フローセルとして使用)上に注入した。組換AB527の解離を6分間追跡した。チップ表面を、50μlの10mM NaOHで再生した。
【0231】
Ab527の結合動力学をより良く特性解析するために、さらなる表面プラズモン共鳴実験を、AB527の系列希釈とBIAcore CM5チップに固定したGD2とを用いて実行した。手短には、800nMを起点とするAB527の二倍希釈系列を、HBS-E緩衝液中、20μL/分の流速で、上記のGD2含有CM5チップ上に注入した。チップ表面を各々のサイクル間に、50μlの10mM NaOHで再生した。各々の濃度における平衡化結合(Req)を、各々の濃度に関してBIA評価ソフトで試験して決定し、濃度に対するReqのプロットをその後行った。得られたデータを、GraphPad Prizm(登録商標)ソフトを用いて非直線定常状態結合モデルに当てはめた。ReqをAB527濃度の関数としてプロットする場合、定常状態KD又は最大結合の半数が得られるAB527濃度を決定することができる(図9)。GD2へのAB527結合の場合、定常状態KD値は、4.5x10-9 Mである。
【0232】
また、組換AB527の特異性を薄層クロマトグラフィー(TLC)で分離された種々のガングリオシドを免疫染色することにより試験した。次のガングリオシドを免疫TLC分析で使用した:GMミックス(Matreya、エタノール中にGM1、GM2及びGM3を0.5mg/mLで含む)、GDミックス(Matreya、エタノール中にGD1a、GD1b、及びGD3を0.5mg/mLで含む) 、GM4(Matreya、エタノール中に1mg/mLを含む)、GD2(BioDesign、エタノール中に1mg/mLを含む)、並びにGM3(USBiological、エタノール中に1mg/mLを含む)。総量2μlの各々のガングリオシドを5x10cmTLCプレート (EMD Chemicals, Inc.)上に滴下し、比率(58:37:8 = CHCl3:MeOH:0.1M CaCl2)を有する溶液中で展開した。TLCプレートを1.36N H2SO4中の0.1%オルシノールでスプレーし、及び100℃で加熱することにより、全てのガングリオシドに関して染色した。免疫TLC解析の場合、展開したプレートをまずH2O中の0.1%ポリイソブチルメタクリル酸で処理して、その後乾燥した。前記プレートを1xリン酸緩衝食塩水(PBS)中の1%BSAで1時間その後ブロックした。その後、ブロックされたプレートを、1%BSAを含有する1xPBS中の2μg/mLのAB527と4℃一晩インキュベートした。前記プレートを引き続いて1xPBSで洗浄し、その後1%BSAを含むPBS中に1:4000倍希釈された西洋わさびペルオキシダーゼ抱合ヤギ抗ヒトIgG/IgMとインキュベートした。プレートを洗浄し、結合した抗体を、0.3 mg/mLの4-クロ-1-ナフトール及び0.03% H2O2中でそのプレートをインキュベートすることにより検出した。比較染色結果を図10に示す。
【0233】
<実施例5><AB527はGD2発現細胞を標識する>GD2発現メラノーマ細胞株を特異的に標識するAB527の能力を評価した。GD2陽性株(M14、M0023、M101、M18、M10-Vac、およびPM0496)と、GD2陰性株(M21、M238、IMCD0023、MG1055)を、(10%FBS、2mMのL-グルタミン、非必須アミノ酸、及び6μM HEPESを補充した)RPMI1640で別々に培養し、トリプシンを用いて回収した。トリプシン処理細胞を、10μg/mLのコントロールIgM(ヒトIgM、Pierce カタログ# 31146)(欄I)又は10μg/mLのAB527(欄II)のいずれかと氷上で1時間インキュベートした。1xPBSで3回洗浄後、細胞を10μg/mLのFITC標識ヤギ抗ヒトIg(H+L)抗体(Southern Biotech, Birmingham, AL) を用いて、氷上で1時間インキュベートして、その後フローサイトメトリー(各々欄I及び欄II)あるいは光学顕微鏡解析及び免疫蛍光顕微鏡解析(各々欄III及び欄IV)を行った。図11に示されるように、AB527標識細胞は、その表面にGD2を発現する(欄II)。一方、検討した細胞株は、一つとして、非GD2特異的ヒトIgMでの染色を示さなかった(欄I)。免疫蛍光試験は、フローサイトメトリーのデータと直接的な相関を示し(欄IV)、光学顕微鏡画像を、また、比較目的で示した(欄III)。
【0234】
細胞ベースのELISAを実施して、GD2発現細胞株(M14、LLC-MK2、EL4細胞)及びCHO-K1細胞(ネガティブコントロール)へのAB527の結合を評価し、そのデータを対応するスキャッチャード解析を行うために提供した。図12は、EL4細胞に対する例示的なスキャッチャードデータセットを提供する。M14及びLLC-MK2へのAB527の結合は、ほぼ同一であると測定された(各々0.13±0.02 nM及び0.15±0.04 nM)。EL4への結合は幾分低かった(0.93±0.16 nM)。この差は、M14及びLLC-MK2に比べEL4細胞上に観察されるGD2の発現が非常に低いことに起因する可能性がある(データは示されない)。これらの実験に関しては、M14、LLC-MK2、EL4、及びCHO-K1細胞を、アメリカ培養細胞系統保存機関(ATCC, Manassas, VA)から得た。M14、EL4、及びCHO-K1細胞を、10%ウシ胎児血清を添加したRPMI中で培養した。LLC-MK2細胞を、1%ウマ血清添加した培地199中で培養した。細胞を、1xPBSに懸濁し、黒色U底マイクロタイタープレート (Grenierカタログ番号665209)に2.5x106細胞/ウエルで加え、その後、室温5分間1500rpmでペレット化した。上清を捨て、細胞を、2%BSAを含有するPBS中で、20μg/mLを起点とする1:2系列希釈されたAB527を含む溶液に再懸濁した。細胞を室温で1時間、抗体とインキュベートした。2%BSAと0.05% Tween-20とを含有する200μLのPBSで、細胞を3回洗浄し、5分間、1500rpmで遠心分離して洗浄工程間に細胞を回収した。その後、1μg/mLの西洋わさびペルオキシダーゼ抱合ヤギ抗ヒトIgG/IgM(Jackson Immunoresearch)と2%BSAとを含有するPBS溶液中で、細胞を室温1時間インキュベートした。細胞を上記のように洗浄した。結合したAB527を、SpectraMax(登録商標)M5マルチモードプレートリーダー(Molecular Devices)中で、(励起/発光波長が325nm/420nmの)QuantaBlu(商標)蛍光基質(Pierce)を使用して検出した。生データをSoftMax Pro(登録商標)(ver.5.2)でプロットし、4パラメーターモデルに当てはめた。データ解析をGraphPad Prizm(登録商標)ソフト(ver.4.03)で実行した。非特異的バックグラウンド(CHO-K1細胞への結合)をまず引き算し、その後、データをスキャッチャード解析により解析した。
【0235】
免疫組織化学(IHC)実験を行い、GD2を発現しないメラノーマ細胞に、AB527が交差反応性を示すかどうか測定した。精製AB527と非特異的ヒトIgM(Pierce、カタログ番号31146)とを、付属の説明書に従って、リン酸緩衝食塩水中で、50:1の分子比のビオチン化試薬(EZ-Link(商標)スルホ-NHS-LC-ビオチン、Pierce、カタログ番号21335)で、NHSエステル結合化学を用いてビオチン化し、様々なGD2陽性(M14)細胞株又はGD2陰性(MG1055、RPMI7951、JS0592)細胞株を染色するために用いた。手短には、各メラノーマ細胞株を、部屋に仕切られたスライド上に播種し、(10% FBS、2 mM L-グルタミン、非必須アミノ酸、及び6μM HEPESを添加した)RPMI1640中で一晩培養した。細胞を1xPBSで一度洗浄し、ホルマリン固定した。固定細胞を、1μg/mLのビオチン化AB527若しくはビオチン化非特異的ヒトIgM(ネガティブコントロール)と一晩インキュベートし、標識細胞をBioGenex Super Sensitive(商標)結合標識IHC検出システムを使用して検出した。図13Aに示されるように、AB527は、GD2陽性細胞に特異的に結合し、GD2陰性細胞とは最小限の交差反応性を有していた。一方、非特異的アイソタイプコントロール抗体はどちらの細胞型も染色しない(図13B)。
【0236】
また、AB527の結合特性を腫瘍組織サンプル及び正常組織サンプルを用いて評価した。AB527及び非特異的正常ヒトIgM(hIgM)を、Covance Research製品でビオチン化し、Charles River LaboratoriesにおいてIHC試験に使用した。ヒトメラノーマがん細胞(M14)を、ヌードラットに移植し異種間腫瘍を確立した。それを、その後、IHC方法開発のためのGD2ポジティブコントロール組織として使用した。直接的アビジン-ビオチン-ペルオキシダーゼ複合体(ABC)手法を用いた予備的研究では、ビオチン化AB527を用いてM14腫瘍切片の陽性染色を得た(図14(b))が、ビオチン化hIgM(図14(a))では得られなかった。期待されたように、正常ヒト脾臓の凍結切片中のリンパ球はどちらの抗体でも染色されなかった。前記抗体の滴定後に、GLPヒト組織交差反応性試験のために選択されるビオチン化AB527及びビオチン化hIgMの染色濃度を、3及び15μg/mLに設定した。この方法を用いて、35個の正常ヒト組織(一組織当たり、3個のサンプル/ドナー)中のAB527結合を測定するように試験を行った。期待されたように、高親和性の膜染色(より低い濃度のAB527(3μg/mL)での細胞膜陽性染色)が、M14腫瘍切片で検出することができた。表2に示すように、高親和性膜染色が、食道上皮細胞(3個のサンプル中2つ)、輸卵管(3個のサンプル中1つ)、輸尿管(3個のサンプル中1つ)、胎盤の脱落膜細胞(3個のサンプル中3つ)、及び胸腺の細網細胞(3個のサンプル中2つ)でのみ見いだされた。全ての他の組織は、高親和性膜染色を示さなかった(表2)。
(表2)正常ヒト組織におけるAB527免疫組織化学

【0237】
<実施例6><AB527は、GD2を発現する細胞の補体依存性細胞障害を促進する>AB527がCDCを媒介するかどうかを決定するため、図11に上記のメラノーマ細胞株を、AB527-HYB-3B2-3C9クローン由来の部分精製抗体若しくはAB527とインキュベートした。標的細胞を(10% FBS、2mM L-グルタミン、非必須アミノ酸、及び6μM HEPESを補充した)RPMI1640中で培養し、使用前にトリプシンを用いて回収した。標的細胞を、20%ヒト血清の存在下、10μg/mLのAB527若しくはAB527-HYB-3B2-3C9クローンIgMと、インキュベートした。37℃で1時間インキュベート後、生細胞をCell Titer Glo(登録商標)試薬(プロメガ社、 Madison、WI)で同定した。死滅パーセントを非処理細胞に対する処理細胞からのシグナル比率として測定した。図15のデータは、両抗体がある種のメラノーマ細胞株において強力なCDC反応を呈することができることを示し、AB527は一貫してより大きなCDCの程度を引き起こす。この実施例中に記載のAB527を用いた実験結果を表3に要約する。
(表3)AB527処理ヒトメラノーマ細胞株のFACS解析、免疫蛍光顕微鏡解析、及びCDC解析の比較

【0238】
さらに作業を行って、補体の存在下で、GD2発現細胞のみのCDCを、AB527が促進することを示した。図16に示すように、1205LU細胞(GD2を発現しないヒト腫瘍細胞)とは対照的に、GD2発現細胞(例、M14細胞)と補体との存在下のみで、AB527媒介CDC活性は、検知可能なレベルに生じた。
【0239】
IgG1アイソタイプにスイッチしたAB527がCDCを誘導するin vitro能力を評価するために、AB527の可変領域DNAのHindIII/BamHI断片を、IgG1定常領域を含むpEE6.4ベクターであって、HindIII/BamHIで消化されたものに、フレームを合わせてクローンした。AB527軽鎖を共発現することによりIgG1バージョンのAB527を生産した。図17に示すように、この抗体がM14細胞のCDCを媒介する能力を、AB527のIgMバージョンと、1〜100μg/mLで比較した。
【0240】
また、試験を行って、J鎖がAB527媒介CDCに役割を担う可能性について評価した。J鎖を有するAB527 IgM分子を生産するために、J鎖をコードするプラスミドp0362をCHOK1-SV細胞にトランスフェクトし、J鎖発現安定クローン株を作製した。前記AB527発現プラスミドを、その後この株に導入し、AB527及びJ鎖を発現するクローンを作製した。5.F2-JC、5.F8-JC、及び6.C3-JCと名付けた三つのクローンを単離した。並行して前記抗体を精製し、J鎖不含バージョンのAB527に対して相対的なCDC活性を比較した。用量反応曲線を、図18に示す。AB527、5.F2-JC、5.F8-JC、及び 6.C3-JCに対する計算された90%有効用量(ED90)は、それぞれ1.21、4.35、2.52、及び6.81μg/mLであった。J鎖を含むIgM(5.F2-JC、5.F8-C、及び6.C3-JC )は、J鎖無しのAB527に比べて、CDCを媒介するのがより効果的でないように見えた。
【0241】
<実施例7><プロテインAアフィニティークロマトグラフィーによる条件培養上清からのIgM捕獲>カラムをCPG3000A-プロテインA樹脂(ミリポア)で充填した。1mLの樹脂が76cm/hの流速では、約8mgのIgMに結合するという理解の下、IgMを捕獲するのに使用する樹脂の容量を推定した(表4)。カラムを所望量の樹脂で一旦負荷すると、それをFPLC装置に接続して、5カラム容量の精製水、3カラム容量の20mM HCl (pH 1.5)(緩衝液A2)、3カラム容量の6Mグアニジン-HCl(緩衝液A3)で、洗浄した。サンプルを負荷する前に、前記カラムを、5カラム容量の(200mM NaCl及び0.01% Tween-80を含む)10mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH 7.5)(緩衝液A1)で平衡化した。
【0242】
条件培養上清(CCS)を、0.22μmの膜フィルターを通して濾過することにより除濁した。界面活性剤を濾過したCCSに加え、1% TritonX-100と0.1% TNBPを含む溶液にし、2時間より長く4℃でインキュベートした。界面活性剤処理CCSを、平衡化したCPG3000AプロテインAカラムに添加し、76cm/hの流速で処理した。10カラム容量の緩衝液A1で非結合タンパク質を洗い流した後、3M MgCl2(pH 6.8)を添加した5mMリン酸ナトリウム緩衝液(緩衝液B)を使用して前記カラムからIgMを溶出した。3カラム容量の緩衝液A2と3カラム容量の緩衝液A3を添加することにより、前記カラムから残存結合タンパク質を除去した。純度を評価するために、プロテインAカラムに添加された界面活性剤処理CCS(導入物)と溶出後のプールされた画分から回収されたAB527(溶出物)を比較する還元SDS-PAGEゲルを実行した(図19、矢印は、IgM μ鎖(〜70kD)及び軽鎖(〜25kD)を指す)。プロテインAアフィニティークロマトグラフィーは、インプットIgMの90%以上の回収率を可能にし、それは汚染物質が実質的にないものであった。
(表4)CPG3000AプロテインA樹脂によるIgMの動的結合容量。種々の容量のAB527含有CCSを、様々な直線流速で10x25mm CPG3000Aカラムを通して流した。カラムに負荷されたAB527の濃度及びフロースルー中に存在するAB527の濃度を、HPLCシステムに装着されたプロテインAカラム(POROS A、Applied Biosystems)で測定される既知のIgM標準に対する標準曲線のものと比較して、その相対的濃度を決定することにより測定した。負荷された抗体量に対する各フロースルー中のAB527の比率を、各々の注入に対して計算し、5%及び10%のIgM貫流でのカラムの動的結合容量を決定した。

1DBCを1.0 cm x 2.5 cmのベッド (2mlベッド体積)で測定した。
【0243】
<実施例8><陽イオン交換クロマトグラフィーによる、条件培養上清汚染物質からのIgMの分離>汚染物質を除去するため、緩衝液Bに懸濁されたIgMを、調製/スケールTFF1カートリッジ(ミリポア)と10倍容量の緩衝液(10mMリン酸ナトリウム、75mM NaClを含む)とを用いて透析濾過することにより濃縮した。入口圧力を20PSI未満に保ち、流量を約60mL/分で透過させて、約200mL/分の流速で、透析濾過を実行した。10% TritonX-100の溶液を、透析濾過したサンプルに加えて、最終濃度1%のTritonX-100を得た。そして、前記サンプルを1時間室温でインキュベートし、0.2μmの膜を通して濾過した。
【0244】
陽イオン交換カラムを、MacroCap(商標)SP樹脂(GE Healthcare)を用いて充填した。1mLの樹脂が76cm/hの流速では、約9mgのIgMに結合するという理解の下、IgMを捕獲するのに使用する樹脂の容量を推定した(図20)。カラムを所望量の樹脂で一旦負荷すると、それをFPLC装置に接続して、2カラム容量の精製水、3カラム容量の0.5M NaOH (緩衝液A6)、3カラム容量の2M NaClで、洗浄した。サンプルを負荷する前に、前記カラムを、5カラム容量の(10mMリン酸ナトリウム、75mM NaCl及び0.01% Tween-80を含む)緩衝液(pH 6.8)(緩衝液A4)で平衡化した。
【0245】
透析濾過したサンプルを、前記カラムに添加し、76cm/hの流速で処理した。5カラム容量の緩衝液A4で非結合タンパク質を洗い流した後、4カラム容量の(200mM NaCl、0.01% Tween-80を含む)10mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH 6.8)(緩衝液C)を使用して前記カラムからIgMを溶出した。図13A及びBに示すように、3カラム容量の緩衝液A6と3カラム容量の2M NaClを添加することにより、前記カラムから残存結合タンパク質を除去した。フロースルー物質は、IgM三量体及び二量体の混合物を大部分含んでいた(図21A)。しかしながら、溶出された物質は、ほとんど全て五量体IgMであった。陽イオン交換クロマトグラフィーは、汚染物質と不完全に組み立てられたIgMとが実質的にない五量体IgMを95%以上の収率で提供する(図22)。
【0246】
<実施例9><ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーによる条件培養上清からのIgM分離>ヒドロキシアパタイトカラムをCHT(登録商標)IIセラミックヒドロキシアパタイト(80μmのビーズサイズ)(Bio-Rad Laboratories、番号157-8100)を使用して調製した。1mLの樹脂が76cm/hの流速では、約20mgのIgMに結合し、この流速ではカラムのフロースルー中にIgMが5%未満のロスであるという理解の下、IgMを捕獲するのに使用する樹脂の容量を推定した。所望のカラムベッド体積の各mL当たり0.54gの乾燥マトリックスを用いて、そのマトリックスを200mMリン酸カリウム(pH 9.0)で水和することにより、カラムを充填した。水和したマトリックスをカラムに加え、樹脂を5カラム容量の(10mMリン酸ナトリウム、100mM NaCl及び0.01% Tween-80を含む)緩衝液(pH 6.8)(緩衝液A8)で平衡化する前に、マトリックスが定着できるようにした。
【0247】
汚染物質を減少させるため、(10mMリン酸ナトリウム、200mM NaCl及び0.01% Tween-80(pH 6.8))に懸濁させたIgMを、等量の0.01% Tween-80で希釈し、平衡化したカラムに加えた。IgM懸濁物を流速76cm/hでカラムを通して処理した。前記カラムを10カラム容量の緩衝液A8で洗浄し、非結合物質を除去した。結合したIgMを4カラム容量の(100 mM NaCl及び 0.01% Tween-80を含む)175 mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH 6.8)で溶出した(データは示されない)。溶出後に、残存する結合タンパク質を、(100mM NaClを含む)500mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH 6.8)でカラムから除去した。得られたIgM溶液には、汚染物質が実質的に無かった。プロテインAアフィニティークロマトグラフィー及び陽イオン交換クロマトグラフィーに引き続いて、ヒドロキシアパタイトマトリックスから溶出された、本明細書中に記載の溶液は、除濁された細胞培養上清に比較して99%超の純度であった。
【0248】
<実施例10><ガングリオシド-BSA抱合体の作製>GD2-BSA抱合体を生産して、免疫アッセイによりGD2特異的抗体の特異性を検討するために、効果的なGD2抗原を提供した。また、GM2-BSA及びGM3-BSA抱合体を生産して、GD2-BSA結合特異性のコントロールとして機能させた。弱還元剤としてシアノ水素化ホウ素ナトリウムを利用して、BSA上に存在するアミンによるガングリオシドの部位特異的還元的アミノ化によって、共有結合抱合体を調製した。BSA中に存在するリジン残基側鎖上の末端εアミノ基に、結合が主として起こると考えられる。
【0249】
前記抱合体を調製するために、0.05Mの炭酸-重炭酸緩衝液(pH 9.6)に溶解された2mg/mlのBSA溶液400μlを、無水エタノールに溶解された1mg/mlのGD2(Biodesign International、 #A86168H)溶液、GM2(Axxora、#ALX-302-005-M001)溶液、若しくはGM3(Axxora、#ALX-302-003-M002)溶液500μlと;0.05Mの炭酸-重炭酸緩衝液(pH 9.6)2070μlと;及び10mMの水酸化ナトリウム含有5Mシアノ水素化ホウ素ナトリウム溶液30μlとを組み合わせた。反応混合物を25℃で2時間インキュベートし、その後1Mエタノールアミン(pH 8.0)1200μlを加え、その後さらに15分間25℃でインキュベートした。反応溶液を透析チューブ(Pierce Biotechnology、# 68100)中に配置し、50mM炭酸-重炭酸溶液(pH 9.6)1L中で、2〜8℃、6〜18時間、2回透析した。
【0250】
<実施例11><AB527はBSA抱合GD2に結合する>GD2-BSA抱合体の抗原性をELISAで評価した。ELISAコーティング緩衝液を100mLの超純水中に炭酸/重炭酸カプセル(シグマ)一つを溶解することにより調製した。GD2-BSA抱合体を、ELISAコーティング緩衝液に2μg/mlの濃度に希釈し、96穴ELISAプレート(Greiner Bio-One、カタログ番号655081)のウエルに加えた。プレートをシールして、2〜8℃で16〜24時間インキュベートした。インキュベート後に、前記コーティング緩衝液をウエルから除去し、0.3mL/ウエルのELISAブロッキング溶液(2.5% BSA(w/v)及び0.05% Tween-20を添加したPBS)を加えた。AB527抗体を加える前に、プレートを21〜25℃で2時間、マイクロプレート振盪機で振盪しながらインキュベートした。AB527の二倍希釈系列(2μg/mlを最初の作業濃度とする)を、ブロッキングされたELISAプレートに加え、21〜25℃で1時間、マイクロプレート振盪機で振盪しながらインキュベートした。プレートを、0.3mL/ウエルのELISA洗浄緩衝液で、Dynex Ultrawash(商標)プレート洗浄機上で3回洗浄した。結合したAB527を、ELISAブロッキング緩衝液に1:10,000倍希釈した、HRP抱合ヤギ抗ヒトIgG+IgM(H+L)を用いて検出した。前記HRP抱合体を除去して、ウエルを0.3mL/ウエルのELISA洗浄緩衝液で3回洗浄した。SureBlue(商標)TMB基質(50μl/ウエル)を洗浄したウエルに加えて、プレートを21〜25℃で15分間インキュベートし、その後、AB527結合を光吸光度(450nm)により評価した(図23)。450nmでの非特異的吸光度は、AB527非存在下で0.065であると決定した。
【0251】
GD2-BSA抱合体とは対照的に、AB527は、他のガングリオシド-BSA抱合体を認識しなかった。ガングリオシドGM2及びGM3を、GD2用に記載した方法により、BSAに抱合した。そして、その両者をELISAにより、AB527結合を示す能力に関して評価した。図24に示すように、AB527はGD2-BSA抱合体のみ認識した。GM2特異的抗体は、GM2-BSA抱合体を検出できたが、適切なGM3特異的抗体を入手して、GM3-BSA抱合体の抗原性質を評価することはできなかった(データは示されない)。
【0252】
<実施例12><GIBCO-CD CHO完全培地で増殖されるAB527発現細胞へのCMSの効果>細胞増殖と抗体生産における培養培地サプリメント(CMS)の効果を測定するために、細胞を起こして、20mLのGIBCO-CD CHO完全培地中、振盪フラスコ内で培養した。全ての培養物を、125mL振盪フラスコ中、37℃、5%CO2、120rpmでインキュベートした。播種密度は、95%超の生存率で、3.5x105 cells/mLであった。細胞を14日間、CD-CHO培地又は2%(vol/vol)CMSを3〜7日に添加したCD-CHO培地のいずれかで培養した。7日目にCMSを加えた後には、初期培養物容量の合計10%に、CMSを補充した。生細胞密度(図25)、生存率パーセント(図26)、積算生細胞密度(IVC)(図27)を、 0、3、5、7、10、13、及び14日目にCEDEX自動細胞カウンターを用いて測定した。プロテインAのHPLCにより、14日目の各グループの培養細胞に関して、抗体生産を測定した(図28)。
【0253】
図25に示すように、3日目から7日目に2%CMSを提供された培養細胞は、7日目に12.8 x 106 cells/mL の最大生細胞密度を達成した。CMSなしのコントロール細胞培養物は、7日目に10.7 x 106 cells/mLの最大細胞密度に到達した。CMSの使用は、限定培地成分(例、グルコース、アミノ酸、ビタミン)を補充し、培養物がより高い細胞密度に到達するのを補助する。両方の細胞培養条件で、細胞は良好な生存率(>90%)を7日目まで維持したが、3日目から7日目にCMSを提供された培養細胞は、コントロールの培養物に比べて、7日目以降により良好な生存率を示した。いくつかの重要な栄養素が7日目以降コントロール培養物中で枯渇し、一方、CMSはこれらの重要な栄養素を加え戻して、細胞がより良好な生存率を維持するのを補助することも可能である。
【0254】
14日目に、抗体生産の合計を、各々の培養物について評価した。CMSと共に培養された細胞は、7240mg/Lの最大抗体力価に到達し、それは、コントロール培養物(3036mg/L)について観察されるものよりもずっと高かった(図28)。より高い抗体力価は、前記栄養素の添加後のより高い特異的抗体生産率の結果である可能性がある。各々の増殖条件に関する細胞増殖及び抗体生産プロフィールの検討により、CMSを提供された培養物が、抗体生産の140%増加を達成したことを実証した。倍加時間は、両方の培養物に関し同じであったが、CMSは培養物がIVCに50%の改善と特異的抗体生産率に50%追加の増加とを達成することに役立った。IVCにおける50%の改善は、CMSを有する培養物中で達成されるより高い最大細胞密度に起因した。最終抗体力価は、複数のIVC特異的生産率と同一であるので、IVCと特異的抗体生産率との両者が、CMSを有する細胞培養物中での抗体生産の140%増加に寄与したと示唆された。表5は、AB527発現細胞におけるCMSの効果を要約する。

(表5)AB527発現細胞の細胞増殖と抗体生産へのCMSの効果のサマリー

【0255】
<実施例13><GIBCO-CD CHO完全培地中で増殖されるAB527発現細胞への吉草酸の効果>細胞増殖への吉草酸の効果を測定するために、AB527発現細胞を、吉草酸を 0 mM、1 mM、2 mM、4 mM、又は8 mMの濃度に補充したGIBCO-CD-CHO完全培地中で培養した。細胞を14日間培養して、生細胞密度、生存率パーセント、積算生細胞密度を、0、3、5、7、10、13、及び14日目にCEDEX自動細胞カウンターを使用して測定した。プロテインAのHPLCによって、14日目に培養細胞の各グループについて、抗体生産を測定した。
【0256】
吉草酸なしで培養した細胞は、7日目に10.8 x 106 cells/mLの最大細胞密度を達成したが、吉草酸と共に培養した細胞は、吉草酸の濃度が増加するにつれて、ずっとゆっくりと増殖した。例えば、8mMの吉草酸中で培養した細胞は、7日目に5.4 x 106 cells/mLの最大細胞密度に達し、それは、すべての培養物の中で最も最大細胞密度が低かった。細胞生存率試験は、吉草酸と共に培養した細胞が7日目前に、より生存率が低いことを実証し、8mM吉草酸中で培養された細胞に関して、最も低い生存率(67.4%)が7日目に観察された。これらの結果は、より高い濃度の吉草酸が細胞増繁殖を阻害したことを示す。7日目以降、コントロール培養物の生存率は、急降下したが、このことは、重要な栄養素の消費におそらく起因した。なぜなら、この細胞培養物は、吉草酸中で培養されたものよりもずっと高い細胞密度を有していたからである。
【0257】
予期せぬことだが、吉草酸は抗体生産に正の効果を有していた。吉草酸の存在下で培養された全ての細胞は、8mMの最も高い濃度を除いて、14日目にコントロールの培養物よりも高い抗体力価を有していた。1mMの吉草酸中で培養された細胞は、14日目に最も高い抗体力価(4137mg/L)を生産し、それはコントロールの培養物のもの(3036mg/L)よりも36%高いものであった(表6)。
【0258】
吉草酸は細胞増殖を阻害したけれども、8mMの最も高い濃度の場合を除いて、生細胞密度の積算に有意な負の効果を実証することは無かった。14日目のIVC値は、他の四つの培養条件と極めて似たものであった。細胞の増繁殖への吉草酸による阻害は、栄養素のゆっくりとした消費を導き、従って、コントロール培養物が直面した後期栄養素欠乏培地を回避した可能性がある。
【0259】
まとめると、細胞培養物は、吉草酸の存在下で、より良好な抗体生産を達成することができる。52から58mg/109細胞/日の範囲の特異的抗体生産率が、吉草酸を有する培養物中で観察され(表6)、それは、コントロール培養物に観察された値(44mg/109細胞/日)よりもずっと高いものであった。従って、1mMの吉草酸中で培養された細胞により達成される最も高い抗体生産は、特異的抗体生産の増加に主に起因した。
(表6)AB527発現細胞の細胞増殖と抗体生産への吉草酸の効果の要約


【特許請求の範囲】
【請求項1】
重鎖CDR3が配列番号:12のアミノ酸配列を含む、ヒトGD2へ特異的に結合する単離抗体又はその抗原結合断片。
【請求項2】
重鎖CDR1が配列番号:10のアミノ酸配列を含み、重鎖CDR2が配列番号:11のアミノ酸配列を含み、軽鎖CDR1が配列番号:26のアミノ酸配列を含み、軽鎖CDR2が配列番号:27のアミノ酸配列を含み 、及び軽鎖CDR3が配列番号:28のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項3】
前記抗体がヒト抗体である、請求項1に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項4】
重鎖可変領域が配列番号:16のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項5】
軽鎖可変領域が配列番号:32のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項6】
重鎖が配列番号:40のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項7】
軽鎖が配列番号:42のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項8】
前記抗体又はその抗原結合断片がIgMアイソタイプのものである、請求項1に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項9】
前記抗体又はその抗原結合断片が重合体である、請求項8に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項10】
前記抗体又はその抗原結合断片の重合体状態が五量体である、請求項9に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項11】
前記五量体の抗体又はその抗原結合断片がJ鎖を取り込まない、請求項10に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項12】
補体依存性細胞障害を媒介する、請求項1に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項13】
請求項1に記載の抗体又は抗原結合断片をコードするポリヌクレオチド。
【請求項14】
配列番号:4を含む、請求項13に記載のポリヌクレオチド。
【請求項15】
配列番号:2、 配列番号:3、 配列番号:18、 配列番号:19、及び 配列番号:20の核酸配列を含む、請求項14に記載のポリヌクレオチド。
【請求項16】
配列番号:8の核酸配列を含む、請求項14のポリヌクレオチド。
【請求項17】
配列番号:24の核酸配列を含む、請求項14のポリヌクレオチド。
【請求項18】
配列番号:39の核酸配列を含む、請求項14のポリヌクレオチド。
【請求項19】
配列番号:41の核酸配列を含む、請求項14のポリヌクレオチド。
【請求項20】
請求項1に記載の抗体又は抗原結合断片と製薬上許容できる担体とを含む組成物。
【請求項21】
請求項14に記載のポリヌクレオチド配列を含むベクター。
【請求項22】
請求項21に記載のベクターを含む細胞。
【請求項23】
前記細胞がバクテリア細胞である、請求項22に記載の細胞。
【請求項24】
前記細胞が真核細胞である、請求項22の細胞。
【請求項25】
前記真核細胞がチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である、請求項24に記載の真核細胞。
【請求項26】
請求項1に記載の抗体又はその抗原結合断片を発現する細胞。
【請求項27】
請求項11に記載の抗体又はその抗原結合断片を発現する細胞。
【請求項28】
前記細胞がハイブリドーマである、請求項26に記載の細胞。
【請求項29】
前記細胞が形質転換体である、請求項27に記載の細胞。
【請求項30】
被験体のGD2関連疾患を治療又は予防する方法において、前記被験体にGD2に特異的に結合する抗体若しくはその抗原結合断片を、前記疾患を治療又は予防するのに有効量投与することを含む方法。
【請求項31】
前記GD2関連疾患ががんである、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記GD2関連疾患がメラノーマである、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記被験体が哺乳動物である、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
前記哺乳動物がヒトである、請求項30に記載の方法。
【請求項35】
抗体又は抗原結合断片を製造する方法において、前記抗体若しくは抗原結合断片を生産するのに適した条件下で請求項26に記載の宿主細胞を培養し、前記細胞の培養物から前記抗体又はその抗原結合断片を回収することを含む方法。
【請求項36】
抗体又は抗原結合断片を製造する方法において、前記抗体若しくは抗原結合断片を生産するのに適した条件下で請求項27に記載の宿主細胞を培養し、前記細胞の培養物から前記抗体又はその抗原結合断片を回収することを含む方法。
【請求項37】
抗体若しくはその抗原結合断片がJ鎖を取り込まない、AB527-HYB-3B2-3C9細胞により生産される前記抗体又はその抗原結合断片。
【請求項38】
被験体中、GD2発現細胞を検出する方法において、前記被験体に請求項1に記載の抗体又は抗原結合断片を投与し、GD2を発現する細胞を検出することを含む方法。
【請求項39】
前記抗体又その抗原結合断片が検出可能に標識される、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記検出可能な標識がヨウ素-131である、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
GD2に対する定常状態解離定数(KD)が4.5x10-9モーラーであることを、前記抗体又は抗原結合断片が示す、請求項2に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項42】
ATCCアクセッション番号:PTA-9376を有する細胞により生産される抗体の重鎖CDR及び軽鎖CDRを含む、抗体又はその抗原結合断片。
【請求項43】
ATCCアクセッション番号:PTA-9376を有する細胞により生産される抗体の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む、抗体又はその抗原結合断片。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公表番号】特表2011−526785(P2011−526785A)
【公表日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−516790(P2011−516790)
【出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【国際出願番号】PCT/US2009/049139
【国際公開番号】WO2010/002822
【国際公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(503166643)モーフオテク・インコーポレーテツド (4)
【Fターム(参考)】