説明

抗HIV活性を有する複素環化合物

【課題】新しい作用機序を有し、副作用が少ない、優れた抗HIV活性を有する化合物の提供。
【解決手段】一般式


「式中、Rは、ハロゲン原子、アミノ基またはC1−6アルキル基などを;RおよびRは、同一または異なって、C1−2アルキル基を;R、R、RおよびRは、同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子またはアミノ基などを;Zは、CHまたはNを;Aは、メチレン基または結合手を示す。」で表される複素環化合物またはその塩。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗HIV活性を有する複素環化合物またはその塩に関する。
【背景技術】
【0002】
レトロウイルスであるヒト免疫不全ウイルス(HIV)は、免疫細胞に感染し、後天性免疫不全症候群(エイズ)を引き起こす。現在、HIV感染者数は、全世界で数千万人に達している。特に、アジアおよびアフリカ地域での近年の感染拡大は、重大な問題とされている。
HIVは、ウイルス特有の酵素(プロテアーゼ、逆転写酵素およびインテグラーゼなど)がコードされたRNA遺伝子を殻内に有し、免疫応答細胞表層に存在するCD4およびケモカインレセプターを介して標的細胞に侵入する。HIVは、脱殻後、細胞質内にRNAおよびインテグラーゼなどの複合体を放出し、自己の有する逆転写酵素を用いてその遺伝情報を二本鎖のプロウイルスDNAへと逆転写する。さらに、HIV特有のインテグラーゼにより、プロウイルスDNAを標的細胞のDNA内に組み込む。このようにして、標的細胞に組み込まれたプロウイルスDNAは、RNA鎖に転写され、TatおよびRevといったウイルスの制御性遺伝子産物により、効率的にウイルス蛋白を産生する。ウイルス蛋白は、別に形成されたウイルスRNAと組み合わされて宿主細胞の膜表面から出芽する。細胞外に遊出したウイルスは、免疫応答細胞(CD4陽性T細胞およびマクロファージなど)に感染・増殖を繰り返し、結果として宿主に免疫不全症を引き起こす。
これまで、ウイルス特有の酵素を標的とした抗HIV剤が開発されている。たとえば、核酸系逆転写酵素阻害剤であるジドブジン、ジダノシン、ラミブジン、アバカビルおよびテノフォビルなど;非核酸系逆転写酵素阻害剤であるエファビレンツおよびネビラピンなど;プロテアーゼ阻害剤であるロピナビル、ホスホアンプレナビル、アタザナビルおよびダルナビルなど;インテグラーセ阻害剤であるラルテグラビル;ならびに侵入阻害剤であるマラビロックなどが市販されている。
エイズ治療においては、これらの薬剤を併用する多剤併用療法が用いられている。たとえば、非核酸系逆転写酵素阻害剤1剤および核酸系逆転写酵素阻害剤2剤の組み合わせ、および、プロテアーゼ阻害剤1剤および核酸系逆転写酵素阻害剤2剤の組み合わせ、などが推奨されている(非特許文献1)。
しかしながら、HIVは、容易に耐性化する。一旦、耐性化したウイルスは、同系統の薬剤に対して、感受性が低下する(非特許文献2)。さらに、併用療法に用いられる薬剤の数が限られており、必ずしも満足できる効果が得られていない。
また、現在使用されている薬剤の副作用として、たとえば、核酸系逆転写酵素阻害剤による乳酸アシドーシス、プロテアーゼ阻害剤による脂質代謝異常および糖尿病などの合併症が報告されている(非特許文献3、4)。
一方、抗ウイルス活性を有するナフチリドンまたはキノロン化合物が知られている(特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3713291号
【特許文献2】特許第3754467号
【非特許文献1】化学療法の領域、2009年、第25巻、p26−33
【非特許文献2】化学療法の領域、2004年、第20巻、p58−68
【非特許文献3】化学療法の領域、2009年、第25巻、p40−53
【非特許文献4】化学療法の領域、2009年、第25巻、p54−61
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
新しい作用機序を有し、体内動態に優れ、副作用が少ない、優れた抗HIV活性を有する化合物が、強く望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記問題を解決すべく、鋭意研究を重ねた結果、一般式[1]

「式中、Rは、ハロゲン原子、保護されていてもよいアミノ基または置換されていてもよいC1−6アルキル基を;RおよびRは、同一または異なって、C1−2アルキル基を;R、R、RおよびRは、同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子または保護されていてもよいアミノ基を;Zは、CHまたはNを;Aは、メチレン基または結合手を示す。」で表される複素環化合物またはその塩が、優れた抗HIV活性を有し、抗HIV剤として有用であることを見出し、本発明を完成した。
【発明の効果】
【0006】
本発明の複素環化合物またはその塩は、体内動態に優れ、副作用が少ない、優れた抗HIV活性を有し、抗HIV剤として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において、特にことわらない限り、各用語は、次の意味を有する。
ハロゲン原子とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を意味する。
1−2アルキル基とは、メチル基またはエチル基を意味する。
1−6アルキル基とは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチルおよびヘキシル基などの直鎖状または分枝鎖状のC1−6アルキル基を意味する。
アルC1−6アルキル基とは、ベンジル、ジフェニルメチル、トリチル、フェネチルおよびナフチルメチルなどのアルC1−6アルキル基を意味する。
1−6アルコキシ基とは、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ、ペンチルオキシおよびヘキシルオキシなどの直鎖状または分枝鎖状のC1−6アルキルオキシ基を意味する。
1−6アルコキシC1−6アルキル基とは、メトキシメチルおよび1−エトキシエチルなどのC1−6アルキルオキシC1−6アルキル基を意味する。
【0008】
2−12アルカノイル基とは、アセチル、プロピオニル、バレリル、イソバレリルおよびピバロイルなどの直鎖状または分枝鎖状のC2−12アルカノイル基を意味する。
アロイル基とは、ベンゾイルまたはナフトイル基を意味する。
複素環式カルボニル基とは、ニコチノイル、テノイル、ピロリジノカルボニルまたはフロイル基を意味する。
(α−置換)アミノアセチル基とは、アミノ酸(グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、システイン、メチオニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン、アルギニン、リジン、ヒスチジン、ヒドロキシリジン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、プロリンおよびヒドロキシプロリンなどのアミノ酸が挙げられる。)から誘導されるN末端が保護されていてもよい(α−置換)アミノアセチル基を意味する。
アシル基とは、ホルミル基、スクシニル基、グルタリル基、マレオイル基、フタロイル基、C2−12アルカノイル基、アロイル基、複素環式カルボニル基または(α−置換)アミノアセチル基を意味する。
【0009】
1−6アルコキシカルボニル基とは、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、tert−ブトキシカルボニルおよび1,1−ジメチルプロポキシカルボニルなどの直鎖状または分枝鎖状のC1−6アルキルオキシカルボニル基を意味する。
アルC1−6アルコキシカルボニル基とは、ベンジルオキシカルボニルおよびフェネチルオキシカルボニルなどのアルC1−6アルキルオキシカルボニル基を意味する。
アリールオキシカルボニル基とは、フェニルオキシカルボニルまたはナフチルオキシカルボニル基を意味する。
【0010】
1−6アルキルスルホニル基とは、メチルスルホニル、エチルスルホニルおよびプロピルスルホニルなどのC1−6アルキルスルホニル基を意味する。
アリールスルホニル基とは、ベンゼンスルホニル、p−トルエンスルホニルまたはナフタレンスルホニル基を意味する。
1−6アルキルスルホニルオキシ基とは、メチルスルホニルオキシおよびエチルスルホニルオキシなどのC1−6アルキルスルホニルオキシ基を意味する。
アリールスルホニルオキシ基とは、ベンゼンスルホニルオキシまたはp−トルエンスルホニルオキシ基を意味する。
【0011】
含ホウ素複素環式基とは、1,3,2−ジオキサボレタン−2−イル、1,3,2−ジオキサボロラン−2−イルおよび1,3,6,2−ジオキサアザボロカン−2−イルなどの該環を形成する異項原子としてホウ素原子を含む単環の含ホウ素複素環式基を意味する。
シリル基とは、トリメチルシリル、トリエチルシリルまたはトリブチルシリル基を意味する。
脱離基としては、ハロゲン原子、C1−6アルキルスルホニルオキシ基およびアリールスルホニルオキシ基が挙げられる。
【0012】
アミノ保護基としては、通常のアミノ基の保護基として使用し得るすべての基を含み、たとえば、W.グリーン(W.Greene)ら、プロテクティブ・グループス・イン・オーガニック・シンセシス(Protective Groups in Organic Synthesis)第4版、第696〜926頁、2007年、ジョン・ウィリイ・アンド・サンズ社(John Wiley & Sons,INC.)に記載されている基が挙げられる。具体的には、アルC1−6アルキル基、C1−6アルコキシC1−6アルキル基、アシル基、C1−6アルコキシカルボニル基、アルC1−6アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、C1−6アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基およびシリル基などが挙げられる。上記の基は、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、C1−6アルキル基およびC1−6アルコキシ基から選ばれる1つ以上の基で置換されていてもよい。
【0013】
ハロゲン化炭化水素類とは、塩化メチレン、クロロホルムまたはジクロロエタンを意味する。
エーテル類とは、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、アニソール、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルまたはジエチレングリコールジエチルエーテルを意味する。
アルコール類とは、メタノール、エタノール、プロパノール、2−プロパノール、ブタノールまたは2−メチル−2−プロパノールを意味する。
エステル類とは、酢酸メチル、酢酸エチルまたは酢酸ブチルを意味する。
アミド類とは、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドまたは1−メチル−2−ピロリドンを意味する。
芳香族炭化水素類とは、ベンゼン、トルエンまたはキシレンを意味する。
【0014】
一般式[1]の化合物の塩としては、通常知られているアミノ基などの塩基性基を挙げることができる。
塩基性基における塩としては、たとえば、塩酸、臭化水素酸、硝酸および硫酸などの鉱酸との塩;ぎ酸、酢酸、クエン酸、シュウ酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、リンゴ酸、酒石酸、アスパラギン酸、トリクロロ酢酸およびトリフルオロ酢酸などの有機カルボン酸との塩;ならびにメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、メシチレンスルホン酸およびナフタレンスルホン酸などのスルホン酸との塩が挙げられる。
さらに、上記、塩の中で一般式[1]の化合物の好ましい塩としては、薬理学的に許容される塩が挙げられる。
【0015】
のC1−6アルキル基は、ハロゲン原子およびヒドロキシル基から選ばれる1つ以上の基で置換されていてもよい。
【0016】
本発明の一般式[1]の化合物において、好ましい化合物としては、以下の化合物が挙げられる。
が、ハロゲン原子、保護されていてもよいアミノ基またはメチル基である化合物が好ましく、ハロゲン原子またはメチル基である化合物がより好ましく、メチル基である化合物がさらに好ましい。
が、メチル基である化合物が好ましい。
が、メチル基である化合物が好ましい。
が、ハロゲン原子である化合物が好ましく、フッ素原子である化合物がより好ましい。
が、水素原子またはハロゲン原子である化合物が好ましく、水素原子またはフッ素原子である化合物がより好ましい。
が、ハロゲン原子である化合物が好ましく、フッ素原子である化合物がより好ましい。
が、保護されていてもよいアミノ基である化合物が好ましく、アミノ基である化合物がより好ましい。
Aが、結合手である化合物が好ましい。
【0017】
一般式[1]の化合物またはその塩において、異性体(たとえば、光学異性体、幾何異性体および互変異性体など)が存在する場合、本発明は、それらの異性体を包含し、溶媒和物、水和物および種々の形状の結晶を包含するものである。
【0018】
次に、本発明化合物の製造法について説明する。
本発明化合物は、自体公知の方法を組み合わせることにより製造されるが、たとえば、次に示す製造法にしたがって製造することができる。
【0019】
[製造法1]

「式中、R1aは、保護されていてもよいアミノ基または置換されていてもよいC1−6アルキル基を;Lは、脱離基を;RおよびRは、同一または異なってヒドロキシル基、置換されていてもよいC1−6アルコキシ基または結合するホウ素原子と一緒になって置換されていてもよい含ホウ素複素環式基を;R、R、R、R、R、R、ZおよびAは、前記と同様の意味を有する。」
【0020】
一般式[3]の化合物として、たとえば、3,5−ジメチルイソオキサゾール−4−ボロン酸および3,5−ジメチル−4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)イソオキサゾールなどが知られている。
また、一般式[3]の化合物は、たとえば、テトラヘドロン(Tetrahedron)、第58巻、第3323〜3328頁(2002年)に記載された方法に準じ、対応するハロゲノ体から製造することができる。
【0021】
一般式[1a]の化合物は、塩基の存在下または不存在下、パラジウム触媒の存在下、リガンドの存在下または不存在下、一般式[2a]の化合物を一般式[3]の化合物と反応させることにより製造することができる。
【0022】
この反応で使用される溶媒としては、反応に影響を及ぼさないものであれば特に限定されないが、たとえば、ハロゲン化炭化水素類、エーテル類、アルコール類、芳香族炭化水素類、アセトニトリルおよび水が挙げられ、これらの溶媒は混合して使用してもよい。
好ましい溶媒としては、アルコール類、芳香族炭化水素類および水の混合溶媒ならびにエーテル類が挙げられ、エタノール、トルエンおよび水の混合溶媒ならびにジオキサンが好ましい。
溶媒の使用量は、特に限定されないが、好ましくは、一般式[2a]の化合物に対して、1〜100倍量(v/w)、より好ましくは、10〜30倍量(v/w)である。
【0023】
この反応に使用されるパラジウム触媒としては、たとえば、パラジウム−炭素およびパラジウム黒などの金属パラジウム;塩化パラジウムなどの無機パラジウム塩;酢酸パラジウムなどの有機パラジウム塩;テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)クロリド、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセンパラジウム(II)クロリドおよびトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)などの有機パラジウム錯体;ならびにポリマー担持ビス(アセタート)トリフェニルホスフィンパラジウム(II)およびポリマー担持ジ(アセタート)ジシクロヘキシルフェニルホスフィンパラジウム(II)などのポリマー固定化有機パラジウム錯体が挙げられ、これらは組み合わせて使用してもよい。
パラジウム触媒の使用量は、一般式[2a]の化合物に対して0.00001〜1倍モル、好ましくは0.01〜0.2倍モルであればよい。
【0024】
この反応において所望により用いられるリガンドとしては、たとえば、トリメチルホスフィンおよびトリ−tert−ブチルホスフィンなどのトリアルキルホスフィン類;トリシクロヘキシルホスフィンなどのトリシクロアルキルホスフィン類;トリフェニルホスフィンおよびトリトリルホスフィンなどのトリアリールホスフィン類;トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイトおよびトリブチルホスファイトなどのトリアルキルホスファイト類;トリシクロヘキシルホスファイトなどのトリシクロアルキルホスファイト類;トリフェニルホスファイトなどのトリアリールホスファイト類;1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)イミダゾリウムクロリドなどのイミダゾリウム塩;アセチルアセトンおよびオクタフルオロアセチルアセトンなどのジケトン類;トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミンおよびトリブチルアミンなどのアミン類;1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン;2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル;2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’,6’−ジメトキシビフェニル;2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’,4’,6’−トリイソプロピルビフェニル;2−(ジ−tert−ブチルホスフィノ)−2’,4’,6’−トリイソプロピルビフェニル;ならびに2−(ジ−tert−ブチルホスフィノ)ビフェニルが挙げられ、これらは組み合わせて使用してもよい。
リガンドの使用量は、一般式[2a]の化合物に対して0.00001〜1倍モル、好ましくは0.02〜0.5倍モルであればよい。
【0025】
この反応において所望により用いられる塩基としては、たとえば、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウムおよびリン酸三カリウムなどの無機塩基ならびにトリエチルアミンおよびジイソプロピルエチルアミンなどの有機塩基が挙げられる。
塩基の使用量は、一般式[2a]の化合物に対して1〜50倍モル、好ましくは、2〜10倍モルであればよい。
【0026】
一般式[3]の化合物の使用量は、一般式[2a]の化合物に対して、1〜50倍モル、好ましくは、1〜2倍モルであればよい。
この反応は、通常、不活性気体(たとえば、窒素および/またはアルゴン)雰囲気下、0〜160℃、好ましくは、20〜120℃で、1分間〜96時間実施すればよい。
【0027】
[製造法2]

「式中、Lは、脱離基を;R、R、R、R、R、R、ZおよびAは、前記と同様の意味を有する。」
【0028】
(2−1)
一般式[5]の化合物は、たとえば、国際公開第2006/95159号パンフレットに記載の方法またはそれに準じて、一般式[4]の化合物をフッ素化反応に付すことにより製造することができる。
【0029】
この反応で使用される溶媒としては、反応に影響を及ぼさないものであれば特に限定されないが、たとえば、ハロゲン化炭化水素類、エーテル類、アミド類、芳香族炭化水素類、アセトニトリルおよび水が挙げられ、これらの溶媒は混合して使用してもよい。
好ましい溶媒としては、ハロゲン化炭化水素類およびアセトニトリルが挙げられ、塩化メチレンおよびアセトニトリルの混合溶媒が好ましい。
溶媒の使用量は、特に限定されないが、好ましくは、一般式[4]の化合物に対して、1〜200倍量(v/w)、より好ましくは、10〜50倍量(v/w)である。
【0030】
この反応に用いられるフッ素化剤としては、たとえば、2,6−ジクロロ−1−フルオロピリジニウムトリフルオロメタンスルホナート、N−フルオロベンゼンスルホンイミド、N−クロロメチル−N’−フルオロトリエチレンジアミンビス(テトラフルオロボラート)、1−フルオロピリジニウムトリフルオロメタンスルホナートおよび1−フルオロ−2,4,6−トリメチルピリジニウムトリフルオロメタンスルホナートが挙げられ、N−クロロメチル−N’−フルオロトリエチレンジアミンビス(テトラフルオロボラート)およびN−フルオロベンゼンスルホンイミドが好ましい。
フッ素化剤の使用量は、一般式[4]の化合物に対して1〜50倍モル、好ましくは1〜5倍モルであればよい。
この反応は、通常、0〜150℃、好ましくは、20〜60℃で、10分間〜24時間実施すればよい。
【0031】
(2−2)
一般式[1b]の化合物は、一般式[5]の化合物を塩基の存在下または不存在下、閉環反応に付すことにより製造することができる。
この反応で使用される溶媒としては、反応に影響を及ぼさないものであれば特に限定されないが、たとえば、エーテル類、アミド類およびジメチルスルホキシドが挙げられ、これらの溶媒は混合して使用してもよい。
好ましい溶媒としては、アミド類およびジメチルスルホキシドが挙げられ、N,N−ジメチルホルムアミドおよびジメチルスルホキシドが好ましい。
溶媒の使用量は、特に限定されないが、好ましくは、一般式[5]の化合物に対して1〜1000倍量(v/w)、より好ましくは、10〜100倍量(v/w)である。
【0032】
この反応において所望により用いられる塩基としては、たとえば、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、カリウムtert−ブトキシドおよび水素化ナトリウムが挙げられる。
塩基の使用量は、一般式[5]の化合物に対して、1〜5倍モルであればよい。
この反応は、通常、0〜140℃、好ましくは、40〜120℃で30分間〜24時間実施すればよい。
【0033】
次に、本発明化合物の製造の原料である一般式[2]の化合物および一般式[4]の化合物の製造法について説明する。
【0034】
[製造法A]

「式中、R1bは、保護されているアミノ基、ニトロ基または置換されていてもよいC1−6アルキル基を;R、R、R、R、Z、A、LおよびLは、前記と同様の意味を有する。」
【0035】
(A−1)
一般式[7]の化合物は、たとえば、コレクション・オブ・チェコスロバク・ケミカル・コミュニケイションズ(Collection of Czechoslovak Chemical Communications)、第69巻、第822〜832頁(2004年)に記載の方法に準じて、酸無水物の存在下または不存在下、一般式[6]の化合物にN,N−ジメチルホルムアミドジメチルアセタールを反応させることにより製造することができる。
この反応で使用される溶媒としては、反応に影響を及ぼさないものであれば、特に限定されないが、たとえば、ハロゲン化炭化水素類、エーテル類、アミド類および芳香族炭化水素類が挙げられ、これらの溶媒は混合して使用してもよい。
好ましい溶媒としては、アミド類が挙げられ、N,N−ジメチルホルムアミドが好ましい。
溶媒の使用量は、特に限定されないが、好ましくは、一般式[6]の化合物に対して1〜100倍量(v/w)、より好ましくは、1〜10倍量(v/w)である。
N,N−ジメチルホルムアミドジメチルアセタールを溶媒として用いてもよい。
N,N−ジメチルホルムアミドジメチルアセタールの使用量は、一般式[6]の化合物に対して1〜100倍量(v/w)、より好ましくは、1〜10倍量(v/w)である。
【0036】
この反応において所望により用いられる酸無水物としては、たとえば、無水酢酸が挙げられる。
酸無水物の使用量は一般式[6]の化合物に対して1〜100倍量(v/w)、より好ましくは、1〜10倍量(v/w)である。
Zが窒素原子の場合、酸無水物を用いることが好ましい。
この反応は、通常、0〜150℃、好ましくは、40〜110℃で30分間〜24時間実施すればよい。
【0037】
(A−2)
一般式[9]の化合物は、たとえば、コレクション・オブ・チェコスロバク・ケミカル・コミュニケイションズ(Collection of Czechoslovak Chemical Communications)、第69巻、第822〜832頁(2004年)に記載の方法に準じて、一般式[7]の化合物に、一般式[8]の化合物を反応させることにより製造することができる。
この反応で使用される溶媒としては、反応に影響を及ぼさないものであれば特に限定されないが、たとえば、ハロゲン化炭化水素類、エーテル類、アルコール類、エステル類、芳香族炭化水素類ならびにぎ酸および酢酸などの有機酸が挙げられ、これらの溶媒は混合して使用してもよい。
好ましい溶媒としては、エステル類および有機酸が挙げられ、酢酸エチルおよび酢酸が好ましい。
溶媒の使用量は、特に限定されないが、好ましくは、一般式[7]の化合物に対して1〜1000倍量(v/w)、より好ましくは、1〜50倍量(v/w)である。
この反応は、通常、0〜110℃、好ましくは、20〜80℃で30分間〜24時間実施すればよい。
【0038】
(A−3)
一般式[2b]の化合物はたとえば、コレクション・オブ・チェコスロバク・ケミカル・コミュニケイションズ(Collection of Czechoslovak Chemical Communications)、第69巻、第822〜832頁(2004年)に記載の方法に準じて、一般式[9]の化合物を塩基の存在下または不存在下、閉環反応に付すことにより製造することができる。
この反応で使用される溶媒としては、反応に影響を及ぼさないものであれば特に限定されないが、たとえば、エーテル類、アミド類およびジメチルスルホキシドが挙げられ、これらの溶媒は混合して使用してもよい。
好ましい溶媒としては、アミド類およびジメチルスルホキシドが挙げられ、N,N−ジメチルホルムアミドおよびジメチルスルホキシドが好ましい。
溶媒の使用量は、特に限定されないが、好ましくは、一般式[9]の化合物に対して1〜1000倍量(v/w)、より好ましくは、5〜50倍量(v/w)である。
この反応において所望により用いられる塩基としては、たとえば、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、カリウムtert−ブトキシドおよび水素化ナトリウムが挙げられる。
塩基の使用量は、一般式[9]の化合物に対して、1〜5倍モルであればよい。
この反応は、通常、0〜140℃、好ましくは、40〜120℃で30分間〜24時間実施すればよい。
【0039】
[製造法B]

「式中、R、R、R、R、R、R、R、R、Z、A、LおよびLは、前記と同様の意味を有する。」
【0040】
(B−1)
一般式[11]の化合物は、酸無水物の存在下または不存在下、一般式[10]の化合物にN,N−ジメチルホルムアミドジメチルアセタールを反応させることにより製造することができる。
この反応は、製造法A−1に準じて行えばよい。
【0041】
(B−2)
一般式[12]の化合物は、塩基の存在下または不存在下、パラジウム触媒の存在下、リガンドの存在下または不存在下、一般式[11]の化合物を一般式[3]の化合物と反応させることにより製造することができる。
【0042】
この反応は、製造法1に準じて行えばよい。
【0043】
(B−3)
一般式[4]の化合物は、一般式[12]の化合物に、一般式[8]の化合物を反応させることにより製造することができる。
この反応は、製造法A−2に準じて行えばよい。
【0044】
上記した製造法で使用される化合物において、異性体(たとえば、光学異性体、幾何異性体および互変異性体など)が存在する場合、これらの異性体も使用することができる。また、溶媒和物、水和物および種々の形状の結晶が存在する場合、これらの溶媒和物、水和物および種々の形状の結晶も使用することができる。
上記した製造法で使用される化合物において、アミノ基を有している化合物は、予め通常の保護基で保護しておき、反応後、自体公知の方法でこれらの保護基を脱離することができる。
アミノ基の保護および脱保護は、たとえば、W.グリーン(W. Greene)ら、プロテクティブ・グループス・イン・オーガニック・シンセシス(Protective Groups in Organic Synthesis)第4版、第696〜926頁、ジョン・ウィリイ・アンド・サンズ社(John Wiley & Sons,INC.)に記載の方法によって行うことができる。
【0045】
上記した製造法で得られた化合物は、たとえば、縮合、付加、酸化、還元、転位、置換、ハロゲン化、脱水もしくは加水分解などの自体公知の反応に付すことによって、または、それらの反応を適宜組み合わせることによって、他の化合物に誘導することができる。
【0046】
本発明化合物を医薬として用いる場合、通常、製剤化に使用される賦形剤、担体および希釈剤などの製剤補助剤を適宜混合してもよい。これらは常法にしたがって、錠剤、カプセル剤、散剤、シロップ剤、顆粒剤、丸剤、懸濁剤、乳剤、液剤、粉体製剤、坐剤、点眼剤、点鼻剤、点耳剤、貼付剤、軟膏剤または注射剤などの形態で経口または非経口で投与することができる。また投与方法、投与量および投与回数は、患者の年齢、体重および症状に応じて適宜選択することができる。通常、成人に対しては、経口または非経口(たとえば、注射、点滴および直腸部位への投与など)投与により、1日、0.01〜1000mg/kgを1回から数回に分割して投与すればよい。
【0047】
次に、本発明の代表的化合物の有用性を以下の試験例で説明する。
【0048】
試験例1 抗HIV活性
ジャーナル オブ クリニカル マイクロバイオロジー、2007年、第45巻、第477〜487頁を参考にして行った。
ヒトTリンパ球由来HPB-M(a)にHIV-1 LTRで発現を制御したルシフェラーゼ遺伝子ならびにCCR5遺伝子等を導入したMaRBLE細胞を用いて、抗HIV活性を評価した。
10%FCS(牛胎児血清)ならびにペニシリン/ストレプトマイシン含有RPMI1640にMaRBLE細胞を懸濁し、HIV-1(JRCSF)を感染させた後、96ウエルプレートに播種(1×105細胞/ウエル)した。対照群として、同数の非感染細胞を播種した。
本プレートを37℃、5%CO2条件下、2時間インキュベーションした後、各ウエルに新鮮培地または適宜希釈した試験化合物を含む培地を加えた。
さらに、37℃、5%CO2下、7日間培養した後、デュアルグロールシフェラーゼアッセイシステム(プロメガ社製)(Dual-Glo Luciferase assay system:Promega)を用いて、細胞内のルシフェラーゼ活性を測定した。
ウイルス増殖率は、以下の式で求めた。
【0049】
ウイルス増殖率(%)=(A/B)×100
A=(化合物添加ウエルのファイアーフライルシフェラーゼ活性)−(非感染細胞ファイアーフライルシフェラーゼ活性)
B=(化合物非添加ウエルのファイアーフライルシフェラーゼ活性)−(非感染細胞ファイアーフライルシフェラーゼ活性)
【0050】
化合物のIC50は、各濃度のウイルス増殖率をカーブフィッティングソフトウェアXLfit 4 の4パラメーターロジステックモデル(parameter Logistic Model)を用いて算出した。
結果を表1に示す。
【0051】
【表1】

本発明化合物は、優れた抗HIV活性を示した。
【0052】
試験例2 マウスの体内動態試験(経口投与)
試験化合物として、実施例3および5の化合物を用いた。
0.5%メチルセルロースに懸濁した試験化合物(2.5mg/mL)を雄性ICR系マウス(6週齢、1群3匹)に10mL/kg経口投与した。投与から12時間後、マウスの血液を採取し、血清中の試験化合物の濃度をHPLCにて測定した。
その結果、実施例3および5の化合物の血清中の濃度は、いずれも1.0μg/mL以上であり、良好な体内動態を示した。
【0053】
試験例3 マウスの経口単回投与毒性試験
試験化合物として、実施例3の化合物を用いた。
0.5%メチルセルロースに懸濁した試験化合物を雄性ICR系マウス(6週齢、1群1匹)に10mL/kg経口投与した。
投与終了の翌日にマウスの状態を観察した。
その結果、実施例3の化合物は、500mg/kgの投与量で良好な安全性を示した。
【0054】
試験例4 マウスのin vivo小核試験
試験化合物として、実施例3の化合物を用いた。
0.5%メチルセルロースに懸濁した試験化合物を雄性ICR系マウス(8週齢、1群3匹)に24時間間隔で2回経口投与した。なお、対照群には0.5%メチルセルロースを同様に経口投与した。
マウスが全例生存した最高投与量群で、最終投与から24時間後、エーテル麻酔下でマウスを放血死させ、片側の大腿骨を採取した。採取した大腿骨の近位端を切断した後、ディスポーザブル注射筒を用いて牛胎児血清で骨髄細胞を遠沈管へ洗い出し、遠心分離(1000 rpm,5分,HITACHI 05PR-22)後に上清の一部を捨て、骨髄細胞懸濁液を得た。この懸濁液をスライドグラスに塗抹し、乾燥後、メタノール固定して標本を作製した。
標本観察は、アクリジンオレンジ染色によって行った。
蛍光顕微鏡下、個体当たり1000個以上の多染性赤血球(Polychromatic erythrocyte: PCE)について小核の有無を観察し、小核を有する多染性赤血球(Micronucleated polychromatic erythrocytes: MNPCE)の出現頻度(小核出現頻度,Frequency of MNPCE)を次式を用いて算出した。なお、小核出現頻度が0.5%を越える標本は陽性と判定した。
【0055】
小核出現頻度(%)=(MNPCE数/観察したPCE数)×100
【0056】
実施例3の化合物は、陰性であった。
【実施例】
【0057】
次に、本発明を参考例および実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
溶離液における混合比は、容量比である。特に記載のない場合、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにおける担体は、関東化学株式会社、シリカゲル60N(球状、中性、63−210μm)である。
各実施例において各略号は、以下の意味を有する。
Boc:tert−ブトキシカルボニル、
DMF:N,N−ジメチルホルムアミド、
DMFDA:N,N−ジメチルホルムアミドジメチルアセタール、
DMSO:ジメチルスルホキシド、
Et:エチル、
Me:メチル、
S−Phos:2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’,6’−ジメトキシビフェニル、
DMSO−d:重ジメチルスルホキシド
【0058】
参考例1

1−(2,6−ジクロロピリジン−3−イル)プロパン−1−オン0.65gのDMFDA6mLおよび無水酢酸1mL溶液を、窒素雰囲気下、1時間20分間加熱還流した。反応混合物を冷却後、酢酸エチルおよび水を加えた。有機層を分取し、飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧下で溶媒を留去した。得られた残留物をジイソプロピルエーテルに懸濁させ、固体を濾取し、褐色固体の(E)−1−(2,6−ジクロロピリジン−3−イル)−3−ジメチルアミノ−2−メチル−2−プロペン−1−オン0.33gを得た。
1H-NMR(DMSO-d6)値:
2.01(s,3H),3.06(s,6H),6.73(brs,1H),7.54(d,J=7.8Hz,1H),7.70(d, J=7.8Hz,1H).
【0059】
参考例2

(E)−1−(2,6−ジクロロピリジン−3−イル)−3−ジメチルアミノ−2−メチル−2−プロペン−1−オン500mgの酢酸2mL溶液にtert−ブチル=5−アミノ−2,4−ジフルオロフェニルカルバマート518mgを加え、60〜70℃で2時間加熱攪拌した。反応混合物を冷却後、酢酸エチルおよび飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えた。有機層を分取し、飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧下で溶媒を留去した。得られた残留物のDMF10mL溶液に炭酸カリウム800mgを加え、90℃で40分間加熱攪拌した。反応混合物を冷却後、酢酸エチルおよび水を加えた。有機層を分取し、飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧下で溶媒を留去した。得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[溶離液;ヘキサン:酢酸エチル=1:1]で精製し、酢酸エチルおよびジイソプロピルエーテルの混合溶媒に懸濁させ、固体を濾取し、白色固体の1−(5−tert−ブトキシカルボニルアミノ−2,4−ジフルオロフェニル)−7−クロロ−3−メチル−1,4−ジヒドロ−4−オキソ−1,8−ナフチリジン620mgを得た。
1H-NMR(DMSO-d6)δ値:1.46(s,9H),2.01(d,J=1.0Hz,3H),7.52(d,J=8.3Hz,1H),7.65(dd,J=10.2,10.2Hz,1H),7.92(dd,J=7.9,7.9Hz,1H),8.16(d,J=1.0Hz,1H),8.57(d,J=8.3Hz,1H),9.32(brs,1H).
【0060】
参考例3

カリウムtert−ブトキシド1.52gのDMSO10mL懸濁液に、水冷下、ニトロメタン0.74mLおよび4−ブロモ−2−フルオロ安息香酸フェニル2.00gのDMSO10mL溶液を滴下し、室温で40分間攪拌した。反応混合液を尿素0.41gの水50mL溶液に加えた後、6mol/L塩酸および酢酸エチルを加えた。有機層を分取し、水および飽和塩化ナトリウム水溶液で順次洗浄後、硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下で溶媒を留去した。得られた残留物をジイソプロピルエーテルに懸濁させ、固体を濾取し、白色固体の1−(4−ブロモ−2−フルオロフェニル)−2−ニトロエタン−1−オン1.36gを得た。
1H-NMR(DMSO-d6)δ値:
6.28(d,J=2.9Hz,2H),7.65(dd,J=8.4,1.8Hz,1H),7.86(dd,J=10.9,1.8Hz,1H),7.87(dd,J=8.4,8.3Hz,1H).
【0061】
参考例4

1−(4−ブロモ−2−フルオロフェニル)−2−ニトロエタン−1−オン1.30gの酢酸エチル6.5mL懸濁液に、氷冷下、無水酢酸0.94mLおよびDMFDA1.32mLを加え、室温で1時間20分間攪拌した。減圧下で溶媒を留去し、得られた残留物の酢酸エチル6.5mL溶液にtert−ブチル=5−アミノ−2,4−ジフルオロフェニルカルバマート1.33gを加え、室温で3時間30分間攪拌後、さらに3時間加熱還流した。減圧下で溶媒を留去し、得られた残留物のDMSO6.5mL溶液に炭酸カリウム1.37gを加え、80℃で2時間加熱攪拌した。反応混合物に水および酢酸エチルを加えた。有機層を分取し、水および飽和塩化ナトリウム水溶液で順次洗浄後、硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下で溶媒を留去した。得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[溶離液;ヘキサン:酢酸エチル=3:1→2:1]で精製し、ジイソプロピルエーテルに懸濁させ、固体を濾取し、淡褐色固体の7−ブロモ−1−(5−tert−ブトキシカルボニルアミノ−2,4−ジフルオロフェニル)−3−ニトロ−1,4−ジヒドロ−4−オキソキノリン0.47gを得た。
1H-NMR(DMSO-d6)δ値:
1.46(s,9H),7.28(brs,1H),7.76(dd,J=9.8,9.8Hz,1H),7.79(dd,J=8.6,1.6Hz,1H),8.16-8.23(m,1H), 8.29(d,J=8.6Hz,1H),9.35(s,1H),9.45(brs,1H).
【0062】
参考例5

7−ブロモ−1−(5−tert−ブトキシカルボニルアミノ−2,4−ジフルオロフェニル)−3−ニトロ−1,4−ジヒドロ−4−オキソキノリン0.45g、鉄粉0.25gおよび塩化アンモニウム0.03gのエタノール9mL懸濁液に水4.5mLを加え、1時間20分間加熱還流した。反応混合物にクロロホルムおよび水を加え、不溶物を除去した。有機層を分取し、水で洗浄後、減圧下で溶媒を留去した。得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[溶離液;クロロホルム:アセトン=10:1→3:1]で精製し、ジイソプロピルエーテルに懸濁させ、固体を濾取し、淡褐色固体の3−アミノ−7−ブロモ−1−(5−tert−ブトキシカルボニルアミノ−2,4−ジフルオロフェニル)−1,4−ジヒドロ−4−オキソキノリン0.37gを得た。
1H-NMR(DMSO-d6)δ値:
1.45(s,9H),4.67(s,2H),7.05(s,1H),7.43(d,J=8.8Hz,1H),7.46(s,1H),7.72(dd,J=10.1,10.1Hz,1H),7.96(dd,J=8.1,8.1Hz,1H),8.16(d,J=8.8Hz,1H),9.39(brs,1H).
【0063】
参考例6

エチル=3−(4−ブロモ−2−フルオロフェニル)−3−オキソプロピオナート20.0gの1,4−ジオキサン100mL溶液に6mol/L塩酸100mLを加え、3時間20分間加熱還流した。反応混合物に酢酸エチルを加え、有機層を分取し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧下で溶媒を留去した。得られた残留物にDMFDA40mLを加え、2時間30分間加熱還流した。反応混合物を減圧下で溶媒を留去後、酢酸エチルおよび水を加えた。有機層を分取し、飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧下で溶媒を留去した。得られた残留物をジイソプロピルエーテルに懸濁させ、固体を濾取し、黄色固体の(E)−1−(4−ブロモ−2−フルオロフェニル)−3−ジメチルアミノ−2−プロペン−1−オン12.7gを得た。
1H-NMR(CDCl3)δ値:
2.91(s,3H),3.15(s,3H),5.59(dd,J=12.4,1.7Hz,1H),7.26(dd,J=10.0,1.7Hz,1H),7.33(dd,J=8.1,1.7Hz,1H),7.68(dd,J=8.1,7.9Hz,1H),7.76(brs,1H).
【0064】
参考例7

(E)−1−(4−ブロモ−2−フルオロフェニル)−3−ジメチルアミノ−2−プロペン−1−オン10.0g、3,5−ジメチル−4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)イソオキサゾール9.84g、炭酸水素ナトリウム9.26g、トリフェニルホスフィン4.82gおよび酢酸パラジウム0.41gのトルエン100mL、エタノール80mLおよび水50mLの懸濁液を、窒素雰囲気下、2時間45分間加熱還流した。反応混合物に酢酸エチルおよび水を加え、有機層を分取し、水および飽和塩化ナトリウム水溶液で順次洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧下で溶媒を留去した。得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[溶離液;クロロホルム:アセトン=1:0→10:1]で精製し、酢酸エチルおよびジイソプロピルエーテルの混合溶媒に懸濁させ、固体を濾取し、薄黄色固体の(E)−1−[4−(3,5−ジメチルイソオキサゾール−4−イル)−2−フルオロフェニル]−3−ジメチルアミノ−2−プロペン−1−オン9.03gを得た。
1H-NMR(CDCl3)δ値:
2.30(s,3H),2.44(s,3H),2.93(s,3H),3.17(s,3H),5.67(dd,J=12.4,2.0Hz,1H),6.98(dd,J=11.3,1.6Hz,1H),7.09(dd,J=7.8,1.6Hz,1H),7.80-7.88(m,1H),7.86(dd,J=7.8,7.6Hz,1H).
【0065】
参考例8

(E)−1−[4−(3,5−ジメチルイソオキサゾール−4−イル)−2−フルオロフェニル]−3−ジメチルアミノ−2−プロペン−1−オン2.00gおよびtert−ブチル=5−アミノ−2,4−ジフルオロフェニルカルバマート2.12gの酢酸20mL溶液を50〜70℃で4時間加熱攪拌した。反応混合物に酢酸エチル、水およびクロロホルムを加え、有機層を分取し、水および飽和塩化ナトリウム水溶液で順次洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧下で溶媒を留去した。得られた残留物をクロロホルム、酢酸エチルおよびジイソプロピルエーテルの混合溶媒に懸濁させ、固体を濾取し、黄色固体のtert−ブチル=(2,4−ジフルオロ−5−(3−(4−(3,5−ジメチルイソオキサゾール−4−イル)−2−フルオロフェニル)−3−オキソ−1−プロペニル)アミノ)フェニルカルバマート2.66gを得た。
1H-NMR(CDCl3)δ値:
1.54(s,9H),2.32(s,3H),2.46(s,3H),6.11(dd,J=7.8,2.2Hz,1H),6.68(brs,1H),6.96(dd,J=10.2,10.2Hz,1H),7.02(dd,J=11.7,1.6Hz,1H),7.14(dd,J=8.0,1.6Hz,1H),7.51(dd,J=12.2,7.8Hz,1H),7.97(dd,J=8.0,7.9Hz,1H),8.12-8.22(m,1H),12.13(d,J=12.4Hz,1H).
【0066】
実施例1

3−アミノ−7−ブロモ−1−(5−tert−ブトキシカルボニルアミノ−2,4−ジフルオロフェニル)−1,4−ジヒドロ−4−オキソキノリン0.35g、3,5−ジメチル−4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)イソオキサゾール0.20g、炭酸水素ナトリウム0.19g、S−Phos30mgおよび酢酸パラジウム8mgのトルエン3.5mL、エタノール2.8mLおよび水1.8mLの懸濁液を、窒素雰囲気下、2時間加熱還流した。反応混合物に酢酸エチルおよび水を加え、有機層を分取し、水および飽和塩化ナトリウム水溶液で順次洗浄後、硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下で溶媒を留去した。得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[溶離液;クロロホルム:アセトン=10:1→3:1]で精製し、ジイソプロピルエーテルに懸濁させ、固体を濾取し、淡黄色固体の3−アミノ−1−(5−tert−ブトキシカルボニルアミノ−2,4−ジフルオロフェニル)−7−(3,5−ジメチルイソオキサゾール−4−イル)−1,4−ジヒドロ−4−オキソキノリン0.34gを得た。
1H-NMR(DMSO-d6)δ値:
1.44(s,9H),2.15(s,3H),2.34(s,3H),4.63(s,2H),6.85(s,1H),7.33(d,J=8.4Hz,1H),7.53(s,1H),7.70(dd,J=10.1,10.1Hz,1H),8.00(dd,J=7.8,7.8Hz,1H),8.31(d,J=8.4Hz,1H),9.39(brs,1H).
【0067】
実施例2

3−アミノ−1−(5−tert−ブトキシカルボニルアミノ−2,4−ジフルオロフェニル)−7−(3,5−ジメチルイソオキサゾール−4−イル)−1,4−ジヒドロ−4−オキソキノリン0.08gの1,4−ジオキサン0.80mL懸濁液に2mol/L塩酸0.80mLを加え、1時間加熱還流した。反応混合物に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液および酢酸エチルを加えた。有機層を分取し、飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄後、硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下で溶媒を留去した。得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[溶離液;クロロホルム:エタノール=20:1→10:1]で精製し、酢酸エチルに懸濁させ、固体を濾取し、淡緑色固体の3−アミノ−1−(5−アミノ−2,4−ジフルオロフェニル)−7−(3,5−ジメチルイソオキサゾール−4−イル)−1,4−ジヒドロ−4−オキソキノリン0.04gを得た。
1H-NMR(DMSO-d6)δ値:
2.15(s,3H),2.34(s,3H),4.62(brs,2H),5.43(s,2H),6.83(s,1H),6.92(dd,J=8.4,8.3Hz,1H),7.30(d,J=8.4Hz,1H),7.42(dd,J=10.5,10.5Hz,1H),7.50(s,1H),8.28(d,J=8.4Hz,1H).
【0068】
実施例3

1−(5−tert−ブトキシカルボニルアミノ−2,4−ジフルオロフェニル)−7−クロロ−3−メチル−1,4−ジヒドロ−4−オキソ−1,8−ナフチリジン0.68g、3,5−ジメチルイソオキサゾール−4−ボロン酸0.28g、トリエチルアミン1.1 mLおよびS−Phos0.13gの1,4−ジオキサン6.8mL溶液に、窒素雰囲気下、酢酸パラジウム36mgを加え、3時間30分間加熱還流した。反応混合物に酢酸エチルを加え、水および飽和塩化ナトリウム水溶液で順次洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧下で溶媒を留去した。得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[溶離液;クロロホルム:アセトン=10:1]で精製した。得られた黄白色固体0.62gに1,4−ジオキサン15mLおよび6mol/L塩酸5mLを加え、1時間10分間加熱還流した。反応混合物に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液および酢酸エチルを加えた。有機層を分取し、飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧下で溶媒を留去した。得られた残留物をジエチルエーテルおよび酢酸エチルの混合溶媒に懸濁させ、固体を濾取し、黄白色固体の1−(5−アミノ−2,4−ジフルオロフェニル)−7−(3,5−ジメチルイソオキサゾール−4−イル)−3−メチル−1,4−ジヒドロ−4−オキソ−1,8−ナフチリジン0.45gを得た。
1H-NMR(DMSO-d6)δ値:
2.02(s,3H),2.17(s,3H),2.46(s,3H),5.32(brs,2H),6.92(dd,J=8.4,8.3Hz,1H),7.36(dd,J=10.5,10.5Hz,1H),7.64(d,J=8.3Hz,1H),8.16(s,1H),8.60(d,J=8.3Hz,1H)
【0069】
実施例4

tert−ブチル=(2,4−ジフルオロ−5−(3−(4−(3,5−ジメチルイソオキサゾール−4−イル)−2−フルオロフェニル)−3−オキソ−1−プロペニル)アミノ)フェニルカルバマート3.00gの塩化メチレン62mL溶液に、N−クロロメチル−N’−フルオロトリエチレンジアミンビス(テトラフルオロボラート)2.83gおよびアセトニトリル62mLを加え、窒素雰囲気下、40℃で35分間攪拌した。反応混合物を減圧下で溶媒を留去し、酢酸エチルおよび水を加えた。有機層を分取し、飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧下で溶媒を留去した。得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[溶離液;ヘキサン:酢酸エチル=9:1→2:1]で精製した。得られた化合物1.92gのDMF20mL溶液に炭酸カリウム0.68gを加え、60〜70℃で1時間07分間加熱攪拌した。反応混合物に水および酢酸エチルを加え、有機層を分取し、水および飽和塩化ナトリウム水溶液で順次洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧下で溶媒を留去した。得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[溶離液;ヘキサン:酢酸エチル=4:1→1:1]で精製し、酢酸エチルおよびジイソプロピルエーテルの混合溶媒に懸濁させ、固体を濾取し、淡褐色粉末の1−(5−tert−ブトキシカルボニルアミノ−2,4−ジフルオロフェニル)−7−(3,5−ジメチルイソオキサゾール−4−イル)−3−フルオロ−1,4−ジヒドロ−4−オキソキノリン0.64gを得た。
1H-NMR(DMSO-d6)δ値:
1.44(s,9H),2.15(s,3H),2.35(s,3H),6.98(brs,1H),7.51(dd,J=8.4,1.5,1H),7.73(dd,J=10.1,10.1Hz,1H),8.04-8.15(m,1H),8.39(d,J=8.4Hz,1H),8.69(d,J=8.3Hz,1H),9.41(brs,1H)
【0070】
実施例5

1−(5−tert−ブトキシカルボニルアミノ−2,4−ジフルオロフェニル)−7−(3,5−ジメチルイソオキサゾール−4−イル)−3−フルオロ−1,4−ジヒドロ−4−オキソキノリン0.62gの1,4−ジオキサン6.2mLおよび3mol/L塩酸6.2mL溶液を2時間加熱還流した。反応混合物に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液および酢酸エチルを加えた。有機層を分取し、飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧下で溶媒を留去した。得られた残留物を酢酸エチルおよびジイソプロピルエーテルの混合溶媒に懸濁させ、固体を濾取し、淡褐色固体の1−(5−アミノ−2,4−ジフルオロフェニル)−7−(3,5−ジメチルイソオキサゾール−4−イル)−3−フルオロ−1,4−ジヒドロ−4−オキソキノリン0.41gを得た。
1H-NMR(DMSO-d6)δ値:
2.16(s,3H),2.36(s,3H),5.48(s,2H),6.95-7.03(m,2H),7.47(dd,J=10.4,10.4Hz,1H),7.50(dd,J=8.3,1.5Hz,1H),8.37(d,J=8.3Hz,1H),8.67(d,J=8.3Hz,1H)
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明の複素環化合物またはその塩は、優れた抗HIV活性を有し、抗HIV剤として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式
【化1】

「式中、Rは、ハロゲン原子、保護されていてもよいアミノ基または置換されていてもよいC1−6アルキル基を;RおよびRは、同一または異なって、C1−2アルキル基を;R、R、RおよびRは、同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子または保護されていてもよいアミノ基を;Zは、CHまたはNを;Aは、メチレン基または結合手を示す。」で表される複素環化合物またはその塩。
【請求項2】
Aが、結合手である請求項1に記載の複素環化合物またはその塩。
【請求項3】
が、メチル基;Rが、メチル基である請求項1または2に記載の複素環化合物またはその塩。
【請求項4】
が、ハロゲン原子、保護されていてもよいアミノ基またはメチル基である請求項1〜3のいずれか一項に記載の複素環化合物またはその塩。
【請求項5】
が、メチル基である請求項1〜3のいずれか一項に記載の複素環化合物またはその塩。
【請求項6】
が、ハロゲン原子;Rが、水素原子またはハロゲン原子;Rが、ハロゲン原子;Rが、保護されていてもよいアミノ基である請求項1〜5のいずれか一項に記載の複素環化合物またはその塩。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の複素環化合物またはその塩を含有する抗HIV剤。

【公開番号】特開2011−168584(P2011−168584A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−10148(P2011−10148)
【出願日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(000003698)富山化学工業株式会社 (37)
【Fターム(参考)】