説明

抗MadCAM抗体組成物

【課題】本発明は、キレート剤を含む抗MadCAM組成物と、対象の炎症性疾患を治療する方法に関する。
【解決手段】本発明に係る抗MadCAM組成部は、a)少なくとも1つのキレート剤と;b)配列ID番号2に示した重鎖アミノ酸配列と少なくとも90%が一致するアミノ酸配列;および配列ID番号4に示した軽鎖アミノ酸配列と少なくとも90%が一致するアミノ酸配列を含む少なくとも1つの抗体とを含み、ここで、上記抗体がヒトMadCAMに結合することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連する特許と特許出願の相互参照
本出願は、2005年3月8日に出願されたアメリカ合衆国仮特許出願シリアル番号第60/752,712号;2006年1月26日に出願されたアメリカ合衆国仮特許出願シリアル番号第60/762,456号;2005年3月8日に出願されたアメリカ合衆国仮特許出願シリアル番号第60/659,766号;2005年10月19日に出願されたアメリカ合衆国仮特許出願シリアル番号第60/728,165号の恩恵を主張する。なおこれらの仮特許出願はすべて、参考としてその全体がこの明細書に組み込まれているものとする。
【0002】
本発明は、抗体組成物と、抗体を安定させる方法と、抗MadCAM抗体を含む薬理学的に許容可能な組成物と、抗MadCAM抗体の不安定性を低下させる方法に関する。
【背景技術】
【0003】
粘膜アドレッシン細胞接着分子(MadCAM)は、細胞接着受容体の免疫グロブリン・スーパーファミリーのメンバーである。MadCAMは腸免疫の監視において生理学的な役割を果たしている一方で、慢性胃腸管炎という条件下での炎症性腸疾患において、リンパ球の過剰な血管外遊出を容易にしているように見える。α4β7+リンパ球がMadCAMに結合するのを阻止する抗体は、モデル動物においてリンパ球のリクルートや組織血管外遊出を減らし、炎症や疾患を軽減することがわかっている。
【0004】
MadCAMに結合してその活性を抑制する抗体が文献に報告されている。例えば国際特許出願PCT/US2005/000370には、MadCAMに対するいくつかのヒト・モノクローナル抗体が報告されている。その中には、抗体7.16.6の重鎖と軽鎖のアミノ酸配列を有する抗体が含まれる。抗体7.16.6を産生するハイブリドーマ細胞系は、2003年9月9日に、CAMR、ポートン・ダウン、ソールスベリー、ウィルトシャーSP4 0JGにあるヨーロッパ細胞培養物コレクション(ECACC), H.P.A.に寄託番号第03090909号として寄託された。
【0005】
このようなMadCAM抗体を投与する際の可能な1つの方法は、非経口投与である。抗MadCAM組成物は、あらゆるタンパク質組成物と同様、時間が経過すると組成物中で抗体が化学的・物理的に分解する心配がある。一般に、抗MadCAM抗体組成物は、予想される保管期間と使用条件のもとで化学的・物理的に受け入れられる安定性を示す必要がある。すなわち抗MadCAM抗体組成物は、十分な商品寿命を持っていて、生物活性を維持した状態である必要がある。本出願では、文献に開示されているこれまでの抗MadCAM抗体組成物と比べ、化学的および/または物理的な安定性が向上した新規な抗MadCAM抗体組成物を開示する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1つの特徴により、配列ID番号2に示した重鎖アミノ酸配列と少なくとも95%が一致するアミノ酸配列に加え、配列ID番号4に示した軽鎖アミノ酸配列と少なくとも95%が一致するアミノ酸配列をさらに含んでいて、ヒトMadCAMに結合する少なくとも1つの抗体と;キレート剤とが含まれる液体医薬組成物が提供される。
【0007】
本発明により、安定な液体医薬組成物を調製するため、少なくとも1つのモノクローナル抗MadCAM抗体を、その抗体の不安定性を減らす量の薬理学的に許容可能なキレート剤と混合する操作を含む方法であって、その組成物を約40℃の温度で約26週間の期間にわたって保管したとき、モノクローナル抗MadCAM抗体とキレート剤を含むこの安定な液体医薬組成物の凝集体クロマトグラムのピークの面積を、キレート剤を含まない点が異なる以外は同じ組成物を約40℃の温度で約26週間の期間にわたって保管したものの凝集体クロマトグラムのピークの面積と比べたときの減少が少なくとも約2%である方法が提供される。
【0008】
本発明により、液体医薬組成物中の少なくとも1つのモノクローナル抗MadCAM抗体を安定化させるため、少なくとも1つの抗体と薬理学的に許容可能なキレート剤とを含む液体組成物を形成する操作を含む方法であって、この組成物を約40℃の温度で約26週間の期間にわたって保管したとき、モノクローナル抗MadCAM抗体とキレート剤を含むこの安定な液体医薬組成物の凝集体クロマトグラムのピークの面積を、キレート剤を含まない点が異なる以外は同じ組成物を約40℃の温度で約26週間の期間にわたって保管したものの凝集体クロマトグラムのピークの面積と比べたときの減少が少なくとも約2%である方法が提供される。
【0009】
本発明により、対象の炎症性疾患を治療する方法であって、治療に有効な量のモノクローナル抗MadCAM抗体7.16.6と、薬理学的に許容可能なキレート剤とを含む液体医薬組成物をその対象に投与する操作を含む方法も提供される。
【0010】
本発明により、安定化した抗体の液体組成物を調製するためのキットであって、溶液にした少なくとも1つのモノクローナル抗MadCAM抗体7.16.6を収容した第1の容器と、薬理学的に許容可能なキレート剤を収容した第2の容器とを備えるキットが提供される。
【0011】
本発明により、少なくとも1つのモノクローナル抗MadCAM抗体7.16.6と薬理学的に許容可能なキレート剤の混合物を保持する容器を備える製造装置も提供される。
【0012】
本発明により、少なくとも1つのモノクローナル抗MadCAM抗体7.16.6と薬理学的に許容可能なキレート剤とを含む液体医薬組成物であって、抗体のモル濃度が約0.0006ミリモル〜約1.35ミリモルの範囲であり、キレート剤のモル濃度が約0.003ミリモル〜約50ミリモルの範囲であり、キレート剤に対する抗体のモル比が約0.00001〜約450の範囲である液体医薬組成物も提供される。
【0013】
本発明により、ヒトMadCAMと結合する少なくとも1つのヒト・モノクローナル抗MadCAM抗体と、キレート剤とを含む液体医薬組成物も提供される。
【0014】
本発明により、配列ID番号2に示した重鎖アミノ酸配列と少なくとも95%が一致するアミノ酸配列と、配列ID番号4に示した軽鎖アミノ酸配列と少なくとも95%が一致するアミノ酸配列とを含んでいて、ヒトMadCAMに結合する少なくとも1つの抗体と;薬理学的に許容可能な賦形剤とを含む液体医薬組成物であって、この組成物が少なくとも約10mg/mlの濃度の抗体を含んでいる液体医薬組成物も提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の方法と技術は、特に断わらない限り、一般に、従来技術でよく知られている方法に従って実施する。その方法と技術は、この明細書の全体を通じて引用したり取り上げたりするさまざまな一般的な文献や、より特殊な文献に記載されている。例えばSambrook他、『分子クローニング:実験室マニュアル』、第2版、コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー出版、コールド・スプリング・ハーバー、ニューヨーク州、1989年;Ausbel他、『分子生物学の最新プロトコル』、グリーン・パブリッシング・アソシエイツ、1992年;HarlowとLane、『抗体:実験室マニュアル』、コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー出版、コールド・スプリング・ハーバー、ニューヨーク州、1990年を参照のこと。酵素反応と精製技術は、従来技術において一般になされるように、あるいはこの明細書に記載したように、製造者の指示に従って実施する。この明細書に記載した分析化学、合成有機化学、医薬化学に関して用いる用語や実験室での手続きおよび技術はよく知られているものであり、従来技術で一般に使用されている。化学的合成、化学的分析、医薬の調製、製剤化、送達、対象の治療では、標準的な技術が利用される。
【0016】
定義:
読者にとって以下の詳細な説明が理解しやすくなるようにするため、以下のように定義する。
【0017】
この明細書では、抗MadCAM抗体と関連する場合の“組成物”という用語は、キレート剤を含む薬理学的に許容可能な賦形剤と組み合わせた抗体を意味する。例えば本発明の組成物は、抗MadCAM抗体を含む従来の組成物と比べて商品寿命および/または安定性が向上している。
【0018】
この明細書では、“抗体”という用語は、完全な1つの抗体、または特異的結合をするためにその完全な抗体と競合する抗原結合部を意味する。一般的な文献として、『基本免疫学』、第7章(Paul, W.編、第2版、レイヴン出版、ニューヨーク州、1989年)を参照のこと。抗原結合部は、組み換えDNA技術によって作り出すこと、または完全な抗体の酵素による開裂か化学的な開裂によって作り出すことができる。いくつかの実施態様では、抗原結合部として、Fabフラグメント、Fab'フラグメント、F(ab')2フラグメント、Fdフラグメント、Fvフラグメント、dAbフラグメント、相補性決定領域(CDR)フラグメント、一本鎖抗体(scFv)、キメラ抗体、二重特異性抗体や、抗体の少なくとも一部を含んでいて、その部分があることで特定の抗原が結合できるポリペプチドなどが挙げられる。成熟した軽鎖と重鎖の可変領域はどちらも、N末端からC末端の方向に、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4という領域を備えている。各領域へのアミノ酸の割り当ては、Kabatの定義(国立衛生研究所、ベセスダ、メリーランド州、1987年と1991年)、ChothiaとLesk、J. Mol. Biol.、第196巻、901-917ページ、1987年の定義、Chothia他、Nature、第342巻、878-883ページ、1989年の定義のいずれかに従う。
【0019】
この明細書では、数字で示す抗体は、同じ数字のハイブリドーマから得られたモノクローナル抗体と重鎖および軽鎖のアミノ酸配列が同じである。例えばモノクローナル抗体7.16.6は、重鎖および軽鎖のアミノ酸配列が、ハイブリドーマ7.16.6から得られたアミノ酸配列と同じである。したがって抗体7.16.6には、配列ID番号2と4に示した重鎖と軽鎖のアミノ酸配列を持つ抗体が含まれる。重鎖の末端にあるリシンが欠けた抗体も、抗体7.16.6に含まれる。なぜなら抗体を作っている間にある割合でそのリシンが失われるのは当然だからである。
【0020】
この明細書では、“ポリペプチド”という用語に天然または人工のタンパク質、タンパク質の断片、タンパク質配列のポリペプチド・アナログが含まれる。ポリペプチドは、モノマーでもポリマーでもよい。
【0021】
この明細書では、Fdフラグメントは、VHドメインとCH1ドメインからなる抗体フラグメントを意味する。Fvフラグメントは、1つの抗体の単一のアームのVLドメインとVHドメインからなり、dAbフラグメント(Ward他、Nature、第341巻、544-546ページ、1989年)は、VHドメインからなる。
【0022】
“またはその抗原結合部”という表現は、“抗体”とともに用いる場合には、アミノ末端および/またはカルボキシ末端が欠失しているか、残るアミノ酸配列が、天然の配列における対応する位置と一致しているポリペプチドを意味する。いくつかの実施態様では、フラグメントの長さは、アミノ酸が少なくとも5、6、8、10個のいずれかである。別の実施態様では、フラグメントの長さは、アミノ酸が少なくとも14個、少なくとも20個、少なくとも50個、少なくとも70個、80個、90個、100個、150個、200個のいずれかである。
【0023】
この明細書では、“モノクローナル抗体”という用語は、実質的に一様な抗体の集団から得られた抗体を意味する。すなわちその集団に含まれる個々の抗体は、わずかな量が存在している可能性のある自然発生の突然変異があったり、C末端のリシンが欠けていたりすることを除いては同じである。モノクローナル抗体は特異性が大きく、単一の抗原部位に向かう。さらに、それぞれのモノクローナル抗体は、一般にさまざまな抗体が含まれていて、さまざまな決定基(エピトープ)に向かう従来の(ポリクローナル)抗体調製物とは異なり、抗体上の単一の決定基に向かう。“モノクローナル”という修飾語は、抗体が、実質的に一様な抗体の集団から得られたものであるという特徴を示しており、何らかの特定の方法でその抗体を作る必要があると考えてはならないことを意味する。例えば本発明で用いるモノクローナル抗体は、Kohler他、Nature、第256巻、495ページ、1975年によって初めて記載されたハイブリドーマ法によって作ること、または組み換えDNA法(例えばアメリカ合衆国特許第4,816,567号を参照のこと)によって作ることができる。“モノクローナル抗体”は、例えばClackson他、Nature、第352巻、624-628ページ、1991年とMarks他、J. Mol. Biol.、第222巻、581-597ページ、1991年が記載している方法を利用してファージ抗体ライブラリから単離することもできる。
【0024】
この明細書では、“単離した抗体”または“精製した抗体”という表現は、出所または由来に応じて以下の4種類の抗体のうちの1つを意味する:(1)元々の状態で付随している天然の成分を伴っていない抗体、(2)同じ種からの他のタンパク質を含まない抗体、(3)異なる種からの細胞で発現する抗体、(4)自然界では発生しない抗体。したがって化学的に合成した抗体、または本来の出所である細胞とは別の細胞系内で合成された抗体は、自然の抗体に付随している成分から単離・精製されている。抗体は、従来技術において周知のタンパク質精製法を利用して単離・精製することにより、自然の状態で付随している成分を実質的に含まないようにすることもできる。単離/精製した抗体の具体例としては、MadCAMを用いてアフィニティ精製した抗MadCAM抗体、試験管内でハイブリドーマまたはそれ以外の細胞系が合成した抗MadCAM抗体、トランスジェニック・マウスに由来するヒト抗MadCAM抗体などがある。
【0025】
抗体は、サンプルの少なくとも約60〜75%が単一種の抗体であるときに“実質的に純粋な”、“実質的に一様な”、“実質的に精製された”状態である。抗体は、モノマーでもポリマーでもよい。実質的に純粋な抗体は、一般に、1つの抗体サンプルを約50%、60%、70%、80%、90%w/w含んでいるが、約95%含むことがより一般的であり、99%超が純粋であることが好ましい。抗体の純度または一様性は、従来技術でよく知られている多数の方法で知ることができる。例えば抗体サンプルのポリアクリルアミド・ゲル電気泳動を実施した後、従来技術でよく知られている染料を用いてそのゲルを染色して単一のポリペプチド・バンドを可視化する。目的によっては、HPLCや、精製に関して従来技術でよく知られている他の手段を用いてより高い分解能を実現することができる。
【0026】
この明細書では、“ヒト抗体”という用語に、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列に由来する可変領域と定常領域を有する抗体が含まれるものとする。本発明のヒト抗体には、例えばCDR(特にCDR3)の中に、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列によってコードされていないアミノ酸残基(例えば試験管内でランダムな突然変異誘発や部位指定突然変異誘発によって導入された突然変異、または生体内で体細胞の突然変異によって導入された突然変異)が含まれていてもよい。しかしこの明細書では、“ヒト抗体”という用語に、別の種の哺乳動物(例えばマウス)の生殖細胞系に由来するCDR配列がヒトのフレームワーク配列の上に移植された抗体は含まれないものとする。
【0027】
この明細書では、“組み換えヒト抗体”という用語に、組み換え技術によって調製、発現、創出、単離されたすべてのヒト抗体(例えば宿主細胞に組み換え発現ベクターをトランスフェクトして発現させた抗体(組み換えコンビナトリアル・ヒト抗体ライブラリから単離した抗体、ヒト免疫グロブリン遺伝子を導入したトランスジェニック動物(例えばマウス)から単離した抗体(例えばTaylor, L.D.他、1992年、Nucl. Acids Res.、第20巻、6287-6295ページを参照のこと)、ヒト免疫グロブリン遺伝子配列をスプライシングして他のDNA配列に組み込む操作を含む他の任意の手段によって調製、発現、創出、単離された抗体)が含まれるものとする。このような組み換えヒト抗体は、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列に由来する可変領域と定常領域を備えている。しかしいくつかの実施態様では、このような組み換えヒト抗体は試験管内で突然変異誘発(あるいはヒトIg配列を導入したトランスジェニック動物を用いる場合には、生体内で体細胞の突然変異誘発)を受けるため、組み換え抗体のVHドメインとVLドメインのアミノ酸配列は、ヒト生殖細胞系のVH配列とVL配列に由来し、そのような配列と関係してはいるものの、生体内のヒト抗体生殖細胞系レパートリーには自然状態では存在していない可能性がある。
【0028】
この明細書では、“ポリヌクレオチド”という用語は、ポリマーの形態になったヌクレオチドで長さが少なくとも10塩基のものを意味する。その場合のヌクレオチドは、リボヌクレオチドまたはデオキシヌクレオチドであるか、このどちらかのヌクレオチドが修飾された形態である。
【0029】
この明細書では、“単離したポリヌクレオチド”という表現は、ゲノムのポリヌクレオチド、cDNAのポリヌクレオチド、または合成したポリヌクレオチド、またはその何らかの組み合わせを意味する。“単離したポリヌクレオチド”は、その出所または由来に従って以下の3つの性質のうちの1つを備えている:(1)自然界でその“単離したポリヌクレオチド”とともに見いだされるポリヌクレオチドの全体または一部が付随していない、(2)自然界ではリンクしていないポリヌクレオチドと機能上リンクしている、(3)自然界ではより大きな配列の一部として生じることがない。
【0030】
この明細書では、“自然に発生するヌクレオチド”に、デオキシリボヌクレオチドが含まれる。この明細書では、“修飾されたヌクレオチド”という用語に、修飾された糖類または置換された糖類などを有するヌクレオチドが含まれる。この明細書では、“オリゴヌクレオチド結合”という用語に、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロセレノエート、ホスホロジセレノエート、ホスホロアニロチオエート、ホスホラニラデート、ホスホロアミデートなどのオリゴヌクレオチド結合が含まれる。例えばLaPlanche他、Nucl. Acids Res.、第14巻、9081ページ、1986年;Stec他、J. Am. Chem. Soc.、第106巻、6077ページ、1984年;Stein他、Nucl. Acids Res.、第16巻、3209ページ、1988年;Zon他、Anti-Cancer Drug Design、第6巻、539ページ、1991年;Zon他、『オリゴヌクレオチドとアナログ:実践的アプローチ』、87-108ページ(F. Eckstein編、オックスフォード大学出版、オックスフォード、イギリス国、1991年);アメリカ合衆国特許第5,151,510号;UhlmanとPeyman、Chemical Reviews、第90巻、543ページ、1990年を参照のこと。なおこれらの文献の開示内容は、参考としてこの明細書に組み込まれているものとする。望むのであれば、オリゴヌクレオチドに検出用のラベルも含めることができる。
【0031】
“機能上リンクした(作用可能な状態で連結された)”配列には、興味の対象である遺伝子と連続している発現制御配列と、トランスで作用して、すなわち離れた位置で作用して興味の対象である遺伝子を制御する発現制御配列の両方が含まれる。この明細書では、“発現制御配列”という用語は、その配列と連続しているコード配列の発現またはプロセシングに必要なポリヌクレオチド配列を意味する。発現制御配列に含まれるのは、適切な転写開始配列、転写終結配列、プロモータ配列、エンハンサー配列;効果的なRNAプロセシング・シグナル(例えばスプライシング・シグナルやポリアデニル化シグナル);細胞質mRNAを安定化させる配列;翻訳の効率を大きくする配列(すなわちコザック・コンセンサス配列);タンパク質の安定性を大きくする配列;望むのであれば、タンパク質の分泌を増大させる配列である。このような制御配列の性質は、宿主となる生物が何であるかによって異なる。原核生物では、このような制御配列として、一般に、プロモータ、リボソーム結合部位、転写終結配列などがあり、真核生物では、このような制御配列として、一般に、プロモータと転写終結配列がある。“制御配列”という用語には、発現とプロセシングに不可欠なすべてのエレメントが最低限含まれているものとする。この用語には、存在していることが好ましい追加のエレメント(例えばリーダー配列、融合パートナー配列)も含まれていてよい。
【0032】
この明細書では、“ベクター”という用語は、核酸分子であって、その核酸に連結している別の核酸を運ぶことのできるものを意味する。いくつかの実施態様では、ベクターはプラスミドである。すなわち内部に追加のDNAセグメントを連結させることのできる環状の二本鎖DNAループである。いくつかの実施態様では、ベクターは、ウイルス・ベクターであり、そのウイルスのゲノム中に追加のDNAセグメントを連結させることができる。いくつかの実施態様では、ベクターは、そのベクターが導入された宿主細胞の中で自律的に複製することができる(例えば細菌由来の複製起点を有する細菌ベクターや、エピソーム哺乳動物ベクター)。別の実施態様では、ベクター(例えば非エピソーム哺乳動物ベクター)は、宿主細胞の中に導入したときにその宿主細胞のゲノムと一体化させることができるため、宿主のゲノムとともに複製される。さらに、ある種のベクターは、そのベクターと機能上リンクしている遺伝子の発現を指示することができる。このようなベクターを、この明細書では、“組み換え発現ベクター”(または単に“発現ベクター”)と呼ぶ。
【0033】
この明細書では、“組み換え宿主”(または単に“宿主”)という用語は、組み換え発現ベクターが導入された細胞を意味する。“組み換え宿主細胞”および“宿主細胞”には、特定の対象の細胞だけでなく、その細胞の子孫も含まれると理解すべきである。続く世代には突然変異または環境の影響である種の変化が起こる可能性があるため、子孫は実際には親細胞とまったく同じではない可能性がある。しかしそのような子孫は、この明細書で用いる“宿主細胞”という用語の範囲にやはり含まれる。
【0034】
この明細書では、“特異的に結合できる”という表現は、抗体が、1μM以下の解離定数で抗原に結合する場合を意味する。この解離定数は1nM以下であることが好ましく、10pM以下であることが最も好ましい。
【0035】
この明細書では、“選択的にハイブリダイズする”という表現は、検出可能かつ特異的に結合することを意味する。本発明のポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ならびにその断片は、非特異的な核酸に対する検出可能な結合の量を最少にするハイブリダイゼーション条件と洗浄条件のもとで、核酸鎖に選択的に結合する。“非常に厳しい”条件を利用すると、従来技術で知られていてこの明細書に記載した選択的ハイブリダイゼーションの条件を実現することができる。“非常に厳しい”条件の一例は、ポリヌクレオチドを他のポリヌクレオチドとともにインキュベートするとき、ハイブリダイゼーション用緩衝液(6×SSPEまたはSSC、50%ホルムアミド、5×デンハルト液、0.5%SDS、100μg/mlの変性し断片化したサケ精子のDNAからなる)の中で、一方のポリヌクレオチドを膜などの固体表面に42℃にて12〜16時間にわたって固着させた後、洗浄用緩衝液(1×SSC、0.5%SDSからなる)を用いて55℃にて2回洗浄するというものである。Sambrook他、上記文献、9.50-9.55ページも参照のこと。
【0036】
核酸配列という文脈での“%配列一致”という用語は、第1の連続配列を第2の連続配列と最大限一致するように並べて比較したときに残基が一致する割合(%)を意味する。配列一致を比較する長さは、少なくとも約9個のヌクレオチドにすることができる。この長さは一般に少なくとも約18個、より一般には少なくとも約24個、典型的には少なくとも約28個、より典型的には少なくとも約32個、好ましくは少なくとも約36個、48個またはそれ以上である。ヌクレオチドの配列一致の測定に使用できる多数の異なったアルゴリズムが従来技術で知られている。例えばポリヌクレオチド配列は、FASTA、ギャップ、ベストフィットのいずれかを用いて比較することができる。これらは、ウィスコンシン・パッケージ・バージョン10.0(ジェネティックス・コンピュータ・グループ(GCG)、マディソン、ウィスコンシン州)に含まれているプログラムである。FASTA(その中には例えばFASTA2やFASTA3というプログラムが含まれている)により、質問配列と検索配列の間で最もよく重なる領域のアラインメントと%配列一致が提供される(Pearson、Methods Enzymol.、第183巻、63-98ページ、1990年;Pearson、Methods Mol. Biol.、第132巻、185-219ページ、2000年;Pearson、Methods Enzymol.、第266巻、227-258ページ、1996年;Pearson、J. Mol. Biol.、第276巻、71-84ページ、1998年;これら文献の内容は、この明細書に参考として組み込まれているものとする)。特に断わらない限り、個々のプログラムまたはアルゴリズムのデフォルト・パラメータを使用する。例えば核酸配列同士の%配列一致は、FASTAをデフォルト・パラメータ(ワード・サイズが6で、スコアリング・マトリックス因子に関してはNOPAM因子)で用いることによって、またはGCGバージョン6.1の中にあるギャップをデフォルト・パラメータで用いることによって、明らかにすることができる(これらのプログラムはこの明細書に参考として組み込まれているものとする)。
【0037】
“ポリヌクレオチド”配列または“核酸”配列に言及するとき、特に断わらない限り、その相補体もその中に含まれる。したがって特定の配列を有する核酸に言及するとき、それと相補的な配列を持つ相補的な鎖もその中に含まれるものと理解すべきである。
【0038】
核酸またはその断片について述べるとき、“実質的な類似”または“実質的な配列類似”という表現は、ヌクレオチドの挿入または欠失を適切に含めた状態で別の核酸(またはその相補的な鎖)と最適なアラインメントを実現したとき、よく知られている任意の配列一致アルゴリズム(例えば上記のFASTA、BLAST、ギャップなど)を用いて測定してヌクレオチドの配列一致が、ヌクレオチド塩基の少なくとも約85%であることを意味する。配列の一致は、少なくとも約90%であることが好ましく、少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%であることがより好ましい。
【0039】
“実質的な一致”、“パーセント一致”、“%一致”という用語は、ポリペプチドに適用したときには、例えばギャップやベストフィットといったプログラムをギャップの重みに関してそのプログラムに提供されているデフォルト値で用いて2つのペプチド配列で最適なアラインメントを実現した場合に、配列の一致が少なくとも70%、75%、80%であることを意味する。配列の一致は、少なくとも90%または95%であることが好ましく、少なくとも96%、97%、98%、99%であることがより好ましい。いくつかの実施態様では、一致しない残基位置は、保存されたアミノ酸置換の違いになっている。“保存されたアミノ酸置換”は、あるアミノ酸残基が、化学的性質(例えば電荷や疎水性)の似た側鎖基Rを有する別のアミノ酸残基で置換されている置換である。一般に、保存されたアミノ酸置換は、タンパク質の機能を実質的に変えない。2つ以上のアミノ酸配列の違いが保存された置換の違いである場合には、置換の保存的性質を補正するために%配列一致を上方に調節するとよい。このような調節法は当業者には周知である。例えばPearson、Methods Mol. Biol.、第243巻、307-331ページ、1994年を参照のこと。化学的性質が似た側鎖を持つ一群のアミノ酸の具体例としては、1)脂肪族側鎖:グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン;2)脂肪族-ヒドロキシル側鎖:セリン、トレオニン;3)アミド含有側鎖:アスパラギン、グルタミン;4)芳香族側鎖:フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン;5)塩基性側鎖:リシン、アルギニン、ヒスチジン;6)酸性側鎖:アスパラギン酸、グルタミン酸;7)イオウ含有側鎖:システイン、メチオニンがある。保存されたアミノ酸置換基は、バリン-ロイシン-イソロイシン、フェニルアラニン-チロシン、リシン-アルギニン、アラニン-バリン、グルタミン酸-アスパラギン酸、アスパラギン-グルタミンである。
【0040】
ポリペプチドの配列一致は、一般に配列分析ソフトウエアを用いて調べる。タンパク質分析ソフトウエアは、さまざまな置換、欠失、他の修飾(例えば保存されたアミノ酸置換)に割り当てられた類似度の指標を用いて配列同士をマッチさせる。例えばGCGには“ギャップ”や“ベストフィット”といったプログラムが含まれていて、それをそのプログラムで指定されているデフォルト・パラメータで用いることで、互いに密接な関係のあるポリペプチド(例えば異なる生物種からの互いに相同なポリペプチド)の間の、または野生型タンパク質とその突然変異の間の配列相同性または配列一致を明らかにする。例えばGCGバージョン6.1を参照のこと。ポリペプチド配列は、FASTAをデフォルト・パラメータまたは推奨されているパラメータの値にして用いて互いに比較することもできる。GCGバージョン6.1(ウィスコンシン大学、ウィスコンシン州)を参照のこと。FASTA(例えばFASTA2やFASTA3)により、質問配列と検索配列の間で最もよく重なる領域のアラインメントと%配列一致が提供される(Pearson、Methods Enzymol.、第183巻、63-98ページ、1990年;Pearson、Methods Mol. Biol.、第132巻、185-219ページ、2000年)。さまざまな生物からの多数の配列を含むデータベースと本発明の配列を比較する上で好ましい別のアルゴリズムは、BLASTというコンピュータ・プログラム(中でもblastpまたはtblastn)であり、それをそのプログラムに提供されているデフォルト・パラメータで用いる。例えばAltschul他、J. Mol. Biol.、第215巻、403-410ページ、1990年;Altschul他、Nucleic Acids Res.、第25巻、3389-3402ページ、1997年を参照のこと。相同性を比較するためのポリペプチド配列の長さは、一般にアミノ酸残基が約16個である。アミノ酸残基の数は、一般には少なくとも約20個であり、より一般には少なくとも約24個であり、典型的には少なくとも約28個であり、より好ましくは約35個以上である。異なる多数の生物からの配列を含むデータベースを検索するとき、アミノ酸配列を比較することが好ましい。
【0041】
“治療に有効な量”は、必要な投与量と期間に関し、望む治療効果(例えば炎症性疾患の治療または予防)を実現するのに有効な量を意味する。投与量は、緩和しようとする疾患の程度によって異なることに注意されたい。さらに、個々の対象に関し、具体的な投薬計画は、個々人の必要性と、組成物の投与を管理または監督している人の専門家としての判断に従って時間とともに調節する必要があること、また、この明細書に記載した投与量の範囲は例示に過ぎず、本発明の組成物の範囲または利用を制限する意図はないことを理解すべきである。同様に、治療に有効な量の抗体または抗体部は、個々人の疾患の状態、年齢、性別、体重や、その抗体または抗体部がその個人に望む応答を誘導する能力、その抗体組成物の望ましい投与経路といった因子によって異なる可能性がある。治療に有効な量は、その抗体または抗体部の何らかの毒性効果または有害な効果が、治療に有効な効果を超えない量でもある。
【0042】
この明細書では、“サッカリド”という用語は、多価アルコールの誘導体である一群の分子を意味する。
【0043】
この明細書では、治療を目的とした“対象”という用語にあらゆる対象が含まれるが、その対象は、炎症性疾患の治療を必要としている対象であることが好ましい。予防を目的としている場合には、対象はあらゆる対象であるが、炎症性疾患が進展するリスクのある対象、または炎症性疾患になる傾向のある対象であることが好ましい。“対象”という用語には、さまざまな生物(例えば原核生物と真核生物)が含まれるものとする。対象の具体例は、哺乳動物(例えばヒト、イヌ、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ネコ、マウス、ウサギ、ラット、非ヒト・トランスジェニック動物)である。本発明の特別な実施態様では、対象はヒトである。
【0044】
この明細書では、“治療”という用語は、治療と予防的処置の両方を意味する。予防的処置の目的は、標的とする病的状態または疾患を予防すること(減らすこと)、または標的とする病的状態または疾患の進行を遅らせることである。治療を必要としている人には、すでに疾患を抱えている人と、疾患になる傾向を持っている人または疾患を予防すべき人が含まれる。
【0045】
本発明またはその好ましい実施態様の要素を紹介するとき、冠詞である“1つの”や“その”は、その要素が1つ以上あることを意味するものとする。“含んでいる”、“含む”、“含有する”、“含有している”、“有する”といった用語は包括的であり、その用語には、列挙した以外の追加要素が存在しうることを意味するものとする。
【0046】
抗MadCAM抗体:
本発明により、この明細書に記載した所定の抗MadCAM抗体の安定性を、溶液中でその抗MadCAM抗体を薬理学的に許容可能なキレート剤(例えばエチレンジアミン四酢酸(“EDTA”)と混合することによって向上させうることが見いだされた。
【0047】
理論に囚われるつもりはないが、本発明の組成物中にキレート剤が存在していると抗MadCAM抗体の凝集、断片化、酸化、凍結/解凍不安定性、変色、脱アミド化のうちの1つ以上の発生が少なくなるため、抗体ポリペプチドの安定性向上に役立つと考えられる。本発明には、これまでに知られている抗MadCAM抗体組成物と比べて化学的および/または物理的安定性が向上した抗MadCAM抗体組成物が含まれる。
【0048】
したがって本発明の1つの特徴によると、薬理学的に許容可能なキレート剤(例えばEDTA)と、少なくとも1つのモノクローナル抗MadCAM抗体またはその抗原結合部とを含む液体医薬組成物が提供される。さらに別の特徴として、キレート剤を含むこの抗MadCAM抗体液体組成物は、追加の薬理学的に許容可能な賦形剤(例えば緩衝液、張性剤、界面活性剤、ならびにこれらの混合物の中から選択した1つ以上の賦形剤)を含むことができる。
【0049】
本発明により、抗MadCAM抗体を含む新規な組成物が提供される。この明細書では、“抗MadCAM抗体”という用語は、あらゆる動物に存在する可能性のあるMadCAMポリペプチドまたはあらゆる動物から単離することのできるMadCAMポリペプチドの任意の部分と結合することのできるあらゆる抗体、またはその任意の一部を意味する。いくつかの実施態様では、MadCAMポリペプチドは、ヒトMadCAMポリペプチドである。
【0050】
本発明で用いるのに適した抗MadCAM抗体は、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体の中から選択することができる。1つの特徴によると、モノクローナル抗MadCAM抗体として、マウスのキメラ・ヒト化抗体またはヒト抗体が可能である。さらに別の実施態様では、モノクローナル抗MadCAM抗体は、ヒト・モノクローナル抗MadCAM抗体である。
【0051】
いくつかの実施態様では、本発明で用いるのに適した抗MadCAM抗体として、2005年7月28日に公開された国際特許出願PCT/US2005/000370に記載されている抗MadCAM抗体と、その調製方法が挙げられる。別の実施態様では、本発明で用いるのに適した抗MadCAM抗体として、国際特許出願PCT/US2005/000370に記載されている抗体7.16.6の重鎖と軽鎖のアミノ酸配列を有する抗MadCAM抗体が挙げられる。
【0052】
さらに、このような抗MadCAM抗体は、重鎖の定常領域にあるアミノ酸配列の違いに基づいて選択することができる。例えば抗MadCAM抗体は、“γ”タイプの重鎖を持つIgGクラスから選択することができる。抗MadCAM抗体のクラスおよびサブクラスは、従来技術で知られている任意の方法で明らかにすることができる。一般に、ある抗体のクラスとサブクラスは、抗体の特定のクラスおよびサブクラスに対して特異的な抗体を用いて明らかにすることができる。そのような抗体は市販されている。クラスとサブクラスは、ELISAやウエスタン・ブロット、または他の方法で明らかにすることができる。あるいはクラスとサブクラスは、抗体の重鎖および/または軽鎖の定常領域の全体または一部をシークエンシングし、得られたアミノ酸配列を免疫グロブリンのさまざまなクラスとサブクラスについてすでに知られているアミノ酸配列と比較することによって明らかにすることができる。
【0053】
抗MadCAM抗体としては、IgG分子、IgM分子、IgE分子、IgA分子、IgD分子が可能である。さらに別の実施態様では、抗MadCAM抗体はIgGであり、サブクラスのIgG1、IgG2、IgG3、IgG4である。しかしMadCAM発現細胞を殺すのは一般に望ましくないことがわかるであろう。そうではなく、一般に望ましいのは、MadCAMが対応するリガンドと結合するのを単に阻止することで、T細胞の下方調節を緩和することである。抗体が細胞を殺す主要なメカニズムの1つは、補体の固定とCDCへの参加を通じて殺すというものである。抗体の定常領域は、抗体が補体を固定してCDCに参加する能力に関して重要な役割を果たしている。したがって一般に、補体を固定する能力があるかないかに応じて抗体のアイソタイプを選択する。本発明の場合には、一般に、上記のように、細胞を殺す抗体を用いることは好ましくない。抗体には、補体の固定とCDCへの参加が可能なアイソタイプが多数ある。それは例えば、マウスのIgM、マウスのIgG2a、マウスのIgG2b、マウスのIgG3、ヒトIgM、ヒトIgG1、ヒトIgG3などである。逆に、補体の固定とCDCへの参加ができない好ましいアイソタイプは、ヒトIgG2、ヒトIgG4などである。それぞれのIgG抗体は、重鎖配列が違っている以外に、ジスルフィド結合の数とヒンジ領域の長さがサブクラスの間で異なっている。例えばIgG2サブクラスは、他のサブクラスとはいくつかの点で明確に異なっている。サブクラスIgG2とIgG4は、ヒンジ領域にジスルフィド結合が4つあることが知られているのに対し、IgG1はジスルフィド結合が2つであり、IgG3はジスルフィド結合が11個である。IgG2抗体に関する別の違いとしては、胎盤を通過する能力が低下していることや、リンパ球Fc受容体に結合できないことなどが挙げられる。したがっていくつかの実施態様では、抗MadCAM抗体は、サブクラスIgG2またはIgG4である。別の好ましい一実施態様では、抗MadCAM抗体はサブクラスIgG2である。
【0054】
いくつかの実施態様では、抗体は一本鎖抗体(scFv)であり、VLドメインとVHドメインが合成リンカーを通じて対になって一価の分子を形成しているため、2つのドメインが単一のタンパク質鎖となることができる。(Bird他、Science、第242巻、423-426ページ、1988年;Huston他、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、第85巻、5879-5883ページ、1988年。)いくつかの実施態様では、抗体は二重特異性抗体である。すなわち抗体は2価の抗体であり、VHドメインとVLドメインが単一のポリペプチド鎖上に発現するが、同じ鎖上で2つのドメインを対にするには短かすぎるリンカーが用いられているため、その2つのドメインは別の鎖の相補的なドメインと対にならざるをえず、2つの抗原結合部位が生じる。(例えばHolliger P.他、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、第90巻、6444-6448ページ、1993年;Poljak R.J.他、Structure、第2巻、1121-1123ページ、1994年を参照のこと。)いくつかの実施態様では、本発明の抗体からの1つ以上のCDRを共有結合または非共有結合で1つの分子の中に組み込み、その分子をMadCAMに特異的に結合する免疫接着体にすることができる。このような実施態様では、CDRはより大きなポリペプチド鎖の一部として組み込まれるか、別のポリペプチド鎖と共有結合するか、非共有結合によって組み込まれる。
【0055】
別の一実施態様では、抗MadCAM抗体は、MadCAMに対して他のどのポリペプチドに対するよりも少なくとも100倍以上大きな選択性(特異性)を有する。いくつかの実施態様では、抗MadCAM抗体は、MadCAM以外のどのタンパク質に対しても検出できるほどは特異的に結合しない。MadCAMに対する抗MadCAM抗体の選択性は、この明細書の記載に従い、従来技術でよく知られている方法を利用して調べることができる。例えばウエスタン・ブロット、FACS、ELISA、RIAを利用して選択性を調べることができる。例えばいくつかの実施態様では、モノクローナル抗MadCAM抗体は、MadCAMに特異的に結合することができる。
【0056】
いくつかの実施態様では、本発明による抗MadCAM抗体の重鎖のC末端にリシンが存在していない。本発明のいろいろな実施態様では、抗MadCAM抗体の重鎖と軽鎖は、場合によってはシグナル配列を含んでいてもよい。
【0057】
表2に、モノクローナル抗MadCAM抗体7.16.6に関し、重鎖と軽鎖をコードしている核酸の配列識別子(配列ID番号)と、対応する予想アミノ酸配列がリストにしてある。シグナル・ポリペプチドをコードしているDNA配列を配列識別子(配列ID番号)の中に示してあるが、この抗体は、一般にシグナル・ポリペプチドを含まない。なぜならシグナル・ポリペプチドは、一般に翻訳後修飾の間に除去されるからである。本発明のいろいろな実施態様では、抗MadCAM抗体の重鎖と軽鎖の一方または両方がシグナル配列(またはその一部)を含んでいる。本発明の別の実施態様では、抗MadCAM抗体の重鎖も軽鎖もシグナル配列を含んでいない。
【0058】
【表1】

【0059】
いくつかの実施態様では、核酸分子は、モノクローナル抗体7.16.6(配列ID番号4)のVLアミノ酸配列をコードしているヌクレオチド配列、またはその一部を含んでいる。いくつかの実施態様では、その部分は、少なくともCDR3領域を含んでいる。いくつかの実施態様では、核酸がこの抗体の軽鎖CDRのアミノ酸配列をコードしている。いくつかの実施態様では、上記部分は、CDR1〜CDR3を含む連続した部分である。
【0060】
さらに別の実施態様では、核酸分子は、抗体7.16.6のVLアミノ酸配列、すなわち配列ID番号4のアミノ酸配列と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、100%一致するVLアミノ酸配列をコードしている。本発明の核酸分子は、例えば上記のような非常に厳しい条件下で、配列ID番号4の軽鎖アミノ酸配列をコードしている核酸配列とハイブリダイズする核酸を含んでいる。
【0061】
さらに別の実施態様では、核酸分子は、7.16.6のVHアミノ酸配列(配列ID番号2)の少なくとも一部をコードしているヌクレオチド配列、またはその配列に保存されたアミノ酸突然変異が含まれた配列、および/またはその配列に合計で3個以下の保存されていないアミノ酸置換がある配列の少なくとも一部をコードしているヌクレオチド配列を含んでいる。いろいろな実施態様では、この配列は、1つ以上のCDR領域(好ましくはCDR3領域)、3つあるCDR領域のすべて、CDR1〜CDR3を含む連続した部分、VHドメイン全体のいずれかをコードしている。
【0062】
いくつかの実施態様では、核酸分子は、配列ID番号2のVHアミノ酸配列と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、100%一致するVHアミノ酸配列をコードしている。本発明の核酸分子は、例えば上記のような非常に厳しい条件下で、配列ID番号2の重鎖アミノ酸配列をコードしている核酸配列とハイブリダイズする核酸を含んでいる。
【0063】
本発明の別の特徴により、MadCAMと結合する精製された少なくとも1つのヒト抗体を含む液体医薬組成物であって、その抗体が、配列ID番号2と少なくとも95%一致する重鎖アミノ酸配列と、配列ID番号4と少なくとも95%一致する軽鎖アミノ酸配列とを含む液体医薬組成物が提供される。別の特徴によると、この抗体は、配列ID番号2と少なくとも99%一致する重鎖アミノ酸配列と、配列ID番号4と少なくとも99%一致する軽鎖アミノ酸配列とを含んでいる。さらに別の特徴によると、この抗体は、配列ID番号2の可変領域を含む重鎖アミノ酸配列と、配列ID番号4の可変領域を含む軽鎖アミノ酸配列とを含んでいる。さらに別の特徴によると、この抗体は、配列ID番号2を含む重鎖アミノ酸配列と、配列ID番号4を含む軽鎖アミノ酸配列とを含んでいる。
【0064】
本発明の一実施態様では、抗MadCAM抗体は、ヒトMadCAM上のコンホメーション・エピトープと特異的に結合する。
【0065】
モノクローナル抗MadCAM抗体組成物の調製:
抗MadCAM抗体は、一般に、対象に非経口投与するために医薬組成物として製剤化される。一実施態様では、この医薬組成物は液体医薬組成物である。別の一実施態様では、この医薬組成物は液体組成物である。
【0066】
本発明の別の一実施態様は、少なくとも1つの抗MadCAM抗体と、薬理学的に許容可能なキレート剤とを含む液体医薬組成物に関する。本発明の別の一実施態様は、少なくとも1つの抗MadCAM抗体と、EDTAとを含む液体医薬組成物に関する。本発明の別の一実施態様は、少なくとも1つの抗MadCAM抗体と、薬理学的に許容可能なキレート剤と、薬理学的に許容可能な緩衝液とを含む液体医薬組成物に関する。本発明の別の一実施態様は、少なくとも1つの抗MadCAM抗体と、薬理学的に許容可能なキレート剤と、ヒスチジンとを含む液体医薬組成物に関する。本発明の別の一実施態様は、抗MadCAM抗体と、EDTAと、ヒスチジンとを含む液体医薬組成物に関する。本発明の別の一実施態様は、抗MadCAM抗体と、DTPAと、ヒスチジンとを含む液体医薬組成物に関する。
【0067】
本発明の別の一実施態様は、抗MadCAM抗体と、薬理学的に許容可能なキレート剤と、薬理学的に許容可能な張性剤とを含む液体医薬組成物に関する。本発明の別の一実施態様は、抗MadCAM抗体と、薬理学的に許容可能なキレート剤と、トレハロースとを含む液体医薬組成物に関する。本発明の別の一実施態様は、抗MadCAM抗体と、EDTAと、トレハロースとを含む液体医薬組成物に関する。本発明の別の一実施態様は、抗MadCAM抗体と、DTPAと、トレハロースとを含む液体医薬組成物に関する。
【0068】
本発明の別の一実施態様は、抗MadCAM抗体と、薬理学的に許容可能なキレート剤と、薬理学的に許容可能な界面活性剤とを含む液体医薬組成物に関する。本発明の別の一実施態様は、抗MadCAM抗体と、EDTAと、薬理学的に許容可能な界面活性剤とを含む液体医薬組成物に関する。本発明の別の一実施態様は、抗MadCAM抗体と、DTPAと、薬理学的に許容可能な界面活性剤とを含む液体医薬組成物に関する。本発明の別の一実施態様は、抗MadCAM抗体と、EDTAおよびDTPAの中から選択した薬理学的に許容可能なキレート剤と、ポリソルベート80とを含む液体医薬組成物に関する。
【0069】
本発明の別の一実施態様は、抗MadCAM抗体と、薬理学的に許容可能な緩衝液と、薬理学的に許容可能な界面活性剤とを含む液体医薬組成物に関する。本発明の別の一実施態様は、抗MadCAM抗体と、ヒスチジンと、薬理学的に許容可能な界面活性剤とを含む液体医薬組成物に関する。本発明の別の一実施態様は、抗MadCAM抗体と、ヒスチジンと、ポリソルベート80とを含む液体医薬組成物に関する。
【0070】
本発明の別の一実施態様は、抗MadCAM抗体と、薬理学的に許容可能なキレート剤と、薬理学的に許容可能な緩衝液と、薬理学的に許容可能な界面活性剤とを含む液体医薬組成物に関する。
【0071】
本発明の別の一実施態様は、抗MadCAM抗体と、薬理学的に許容可能なキレート剤と、薬理学的に許容可能な緩衝液と、薬理学的に許容可能な張性剤とを含む液体医薬組成物に関する。
【0072】
本発明の別の一実施態様は、抗MadCAM抗体と、薬理学的に許容可能なキレート剤と、薬理学的に許容可能な緩衝液と、薬理学的に許容可能な界面活性剤と、薬理学的に許容可能な張性剤とを含む液体医薬組成物に関する。
【0073】
本発明の別の一実施態様は、抗MadCAM抗体と、ヒスチジンとを含む液体医薬組成物に関する。
【0074】
“医薬組成物”という用語は、活性成分の生物活性が効果をもたらしうるような形態の調製物を意味する。“薬理学的に許容可能な賦形剤”(ビヒクル、添加剤)は、使用する活性成分の有効量が対象に与えられるようにするためにその対象に投与しても問題のない(すなわち安全な)賦形剤である。この明細書では、“賦形剤”または“基剤”という用語は、不活性な物質を意味し、通常は薬の希釈剤、ビヒクル、保存剤、結合剤、安定剤として使用される。この明細書では、“希釈剤”という用語は、薬理学的に許容可能な(ヒトに投与しても安全で毒性のない)溶媒を意味し、この明細書に記載した液体組成物の調製に役立つ。希釈剤の具体例としては、殺菌水や注射用の静菌水(BWFI)などが挙げられる。
【0075】
液体医薬組成物中に存在している抗MadCAM抗体としては、この明細書にすでに記載したものが可能である。一実施態様では、液体医薬組成物は、配列ID番号4に示したVLアミノ酸配列と90%、95%、99%一致するVLアミノ酸配列に加え、配列ID番号2に示したVHアミノ酸配列と90%、95%、99%一致するVHアミノ酸配列をさらに含む抗MadCAM抗体を含んでいる。別の一実施態様では、液体医薬組成物は、抗MadCAM抗体としてモノクローナル抗MadCAM抗体7.16.6を含んでいる。
【0076】
本発明の液体医薬組成物に含まれる抗MadCAM抗体の濃度は、一般に、1ミリリットルにつき少なくとも約0.1ミリグラム(0.1mg/ml)以上、少なくとも約1.0mg/ml以上、少なくとも約10mg/ml以上、少なくとも約50mg/ml以上、少なくとも約75mg/ml以上、少なくとも約100mg/ml以上、少なくとも約200mg/ml以上のいずれかである。いくつかの実施態様では、抗MadCAM抗体の濃度は、一般に、約1mg/ml〜約200mg/ml、約2mg/ml〜約100mg/ml、約5mg/ml〜約90mg/ml、約10mg/ml〜約80mg/ml、約50mg/ml〜約90mg/ml、約60mg/ml〜約80mg/ml、約65mg/ml〜約85mg/ml、約75mg/mlのいずれかである。一実施態様では、液体医薬組成物に含まれる抗MadCAM抗体の濃度は、約50mg/ml〜約100mg/mlである。
【0077】
この明細書では、“キレート剤”という用語は、一般に、金属イオンと少なくとも1つの結合(例えば共有結合、イオン結合など)を形成することのできる賦形剤を意味する。キレート剤は、一般に、選択された液体組成物で安定剤として使用され、不安定化を促進する可能性のある種と錯体を形成することのできる多価リガンドである。キレート剤として作用することのできる化合物は、電子が豊富な官能基を持つことがしばしばある。電子が豊富な適切な官能基としては、カルボン酸基、ヒドロキシ基、アミノ基などがある。これらの基がアミノポリカルボン酸、ヒドロキシポリカルボン酸、ヒドロキシアミノカルボン酸などの中に配置されると、金属と結合できる部分が生まれる。
【0078】
抗体の安定性の増大は、主として、キレート剤が金属イオンと結合を形成する能力によっているが、本発明をキレート剤に限定するつもりはない。したがって本発明を、キレート剤が本発明の組成物を安定化させる特定のメカニズムに限定するつもりはなく、この明細書でキレート剤と呼ぶ賦形剤は、金属イオンと結合を形成するというキレート剤の能力とはまったく無関係なメカニズムを通じて抗体の安定性を増大させる性質を実現してもよい。
【0079】
本発明で用いるのに適したキレート剤としては、アミノポリカルボン酸、ヒドロキシアミノカルボン酸、N置換されたグリシン、2-(2-アミノ-2-オキソクチル)アミノエタンスルホン酸(BES)、デフェロキサミン(DEF)、クエン酸、ナイアシンアミド、デスオキシコール酸塩などが挙げられる。適切なアミノポリカルボン酸の具体例としては、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸5(DTPA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、N-2-アセトアミド-2-イミノ二酢酸(ADA)、ビス(アミノエチル)グリコールエーテル、N,N,N',N'-四酢酸(EGTA)、トランス-ジアミノシクロヘキサン四酢酸(DCTA)、グルタミン酸、アスパラギン酸などがある。適切なヒドロキシアミノカルボン酸の具体例としては、N-ヒドロキシエチルイミノ二酢酸(HIMDA)、N,N-ビス-ヒドロキシエチルグリシン(ビシン)、N-(トリスヒドロキシメチルメチル)10グリシン(トリシン)などがある。N置換された適切なグリシンの一例はグリシルグリシンである。適切なデスオキシコール酸塩の一例は、デスオキシコール酸ナトリウムである。
【0080】
本発明で使用するキレート剤は、可能な場所では、その化合物の遊離酸または遊離塩基の形態(この明細書では、“EDTA”または“エデテート”と呼び、どちらも同じ意味で用いる)、または対応する塩の形態(例えば対応する酸添加塩または塩基添加塩で、具体的には二ナトリウムエデテートなど)で存在することができる。適切な酸添加塩としては、例えばアルカリ金属塩(例えばナトリウム塩またはカリウム塩)、アルカリ土類金属塩(例えばカルシウム塩)などがあり、塩は、他の弱結合金属イオンを用いて調製することができる。従来技術で知られているように、塩の性質と中和すべき電荷の数は、存在するカルボキシル基の数と、安定化用キレート剤を供給するpHに応じて異なる。従来技術で知られているように、キレート剤は、標的となる特定のイオンと結合する強度がさまざまである。さらに具体的に説明すると、EDTAの適切な塩としては、二カリウムエデテート、二ナトリウムエデテート、エデテートカルシウム二ナトリウム、ナトリウムエデテート、三ナトリウムエデテート、カリウムエデテートなどがあり、デフェロキサミン(DEF)の適切な塩は、デフェロキサミンメシラート(DFM)である。
【0081】
本発明で用いるキレート剤は、その化合物の無水物、溶媒和物、水和物として、または対応する塩として存在することができる。キレート剤が溶媒和物または水和物の形態である場合には、さまざまな溶媒和または水和の状態で存在することができる(例えば無水物、水和物、二水和物、三水和物の形態)。さらに具体的に説明すると、EDTAの適切な水和物は、EDTA二ナトリウム二水和物であり、クエン酸の適切な形態としては、無水クエン酸、クエン酸一水和物、クエン酸三ナトリウム二水和物などがある。
【0082】
本発明の抗体組成物で用いるのに適したキレート剤としては、溶液中の金属イオンと結合して、利用可能なO2とその金属イオンが反応できなくするものも挙げられる。すると、自由に抗体と反応してその抗体を分解するヒドロキシル基の生成が最少になる、あるいは阻止される。他のキレート剤(例えばDFM)は、還元された酸素種の形成を減らすこと、および/または酸性種の形成(例えば脱アミド化)を減らすこと、および/または抗体の断片化を減らすことができる。さらに別の実施態様では、キレート剤は、この明細書に記載した組成物の中で抗体が凝集するのを減らすこと、または阻止することができる。このようなキレート剤は、キレート剤による保護なしに製剤化した抗体の分解を減らすこと、または阻止することができる。
【0083】
キレート剤の濃度について述べるとき、表記した濃度はキレート剤の遊離酸形態または遊離塩基形態のモル濃度を表わす。例えば所定の液体医薬組成物中のキレート剤の濃度は、一般に、約0.3マイクロモル〜約50ミリモル、約3.0マイクロモル〜約10.0ミリモル、約30マイクロモル〜約5.0ミリモル、約0.1ミリモル〜約1ミリモルの範囲である。特別な実施態様では、液体医薬組成物中のキレート剤の濃度は、約3マイクロモル、約13マイクロモル、約27マイクロモル、約0.27ミリモル、約1ミリモル、約2.7ミリモルのいずれかである。一実施態様では、キレート剤の濃度は、約0.27ミリモルである。特に断わらない限り、この明細書に記載した濃度は、周囲条件(すなわち25℃かつ大気圧)での濃度である。
【0084】
一実施態様では、キレート剤の選択を、EDTA、DTPA、DFM、およびこれらの混合物の中から行なう。別の一実施態様では、キレート剤はDFMである。別の一実施態様では、キレート剤はEDTAである。別の一実施態様では、キレート剤はDTPAである。別の一実施態様では、液体医薬組成物は、EDTAを約0.3マイクロモル〜約50ミリモルの量含んでおり、いくつかの実施態様では、EDTAを約0.1ミリモル〜約1.0ミリモルの量含んでいる。別の一実施態様では、液体医薬組成物は、EDTAを約0.27ミリモルの量含んでいる。
【0085】
すでに指摘したように、本発明の液体医薬組成物は、場合によってはキレート剤に加えてさらに薬理学的に許容可能な緩衝液を含むことができる。この明細書では、“緩衝液”という用語は、液体抗体組成物がpHの変化に抵抗できるようにするために添加する組成物を意味する。いくつかの実施態様では、緩衝液を添加することで、その緩衝液の酸-塩基共役体成分の作用によって液体抗体組成物がpHの変化に抵抗することができる。
【0086】
適切な緩衝液の具体例としては、酢酸塩(例えば酢酸ナトリウム)、コハク酸塩(コハク酸ナトリウム)、グルコン酸塩、クエン酸塩、他の有機酸の緩衝液(例えばアミノ酸(ヒスチジンなど)、酢酸、リン酸、リン酸塩、アスコルビン酸塩、酒石酸、マレイン酸、グリシン、乳酸塩、乳酸、アスコルビン酸、イミダゾール、カルボン酸、炭酸水素塩、コハク酸、安息香酸ナトリウムと安息香酸塩、グルコン酸塩、エデテート(EDTA)、酢酸塩、マレイン酸塩、トリス、ならびにこれらの混合物)がある。
【0087】
一実施態様では、緩衝液はヒスチジンである。本発明の液体医薬組成物の調製に用いる出発材料としてのヒスチジンは、さまざまな形態で存在することができる。ヒスチジンは、例えば鏡像異性体の形態(例えばL-鏡像異性体またはD-鏡像異性体)、ラセミ形態、遊離酸または遊離塩基の形態、塩の形態(例えばモノヒドロクロリド、ジヒドロクロリド、ヒドロブロミド、硫酸塩、酢酸塩)、溶媒和物の形態、水和物の形態(例えば一水和物)、無水物の形態が可能である。液体医薬組成物の調製に用いるヒスチジン塩基および/またはヒスチジン塩の純度は、一般に、少なくとも約98%、少なくとも約99%、少なくとも約99.5%のいずれかにすることができる。この明細書では、ヒスチジンの文脈における“純度”という用語は、従来技術で理解されているヒスチジンの化学的純度を意味する。例えば『メルク・インデックス』、第13版、O'Neil他編(メルク社、2001年)の記述を参照のこと。
【0088】
緩衝液の濃度について言及するとき、表記した濃度は緩衝液の遊離酸形態または遊離塩基形態のモル濃度を表わす。例えば所定の液体医薬組成物中の緩衝液の濃度は、一般に、約0.1ミリモル(mM)〜約100mMである。一実施態様では、緩衝液の濃度は、約1mM〜約50mMである。別の一実施態様では、緩衝液の濃度は、約5mM〜約20mMである。さまざまな実施態様では、緩衝液の濃度は、約1mM、約5mM、約10mM、約15mM、約20mM、約25mM、約30mM、約35mM、約40mM、約45mM、約50mM、約55mM、約60mM、約65mM、約70mM、約75mM、約80mM、約85mM、約90mM、約95mM、約100mMのいずれかである。一実施態様では、医薬組成物中のヒスチジンの濃度は、約10mMである。一実施態様では、医薬組成物は、約10mMのL-ヒスチジン(塩基の形態)を含んでいる。
【0089】
一般に、緩衝液は、液体医薬組成物中のpHを許容できるレベルに維持するのに用いる(pHのレベルは抗体の安定性に影響を与える可能性がある)。液体医薬組成物は、一般に、緩衝液を用いてpHを約4〜約8、約4.5〜約7、約5.2〜約5.8の範囲に維持する。ここに挙げたpHの範囲の中間の範囲も本発明の一部であると考える。上限および/または下限として例えばここに挙げた他の任意の組み合わせを用いた範囲も、本発明に含まれるものとする。一実施態様では、緩衝液を用いて液体医薬組成物のpHを約5.5に維持する。
【0090】
すでに指摘したように、本発明の液体医薬組成物は、場合によってはキレート剤に加えて薬理学的に許容可能な張性剤をさらに含むことができる。この明細書では、“張性剤”という用語は、液体医薬組成物の浸透圧を調節することのできる賦形剤を意味する。いくつかの実施態様では、張性剤は、液体医薬組成物の浸透圧を等張に調節し、抗体組成物が対象の身体組織の細胞と生物学的に適合した状態にする。さらに別の実施態様では、“張性剤”は、この明細書に記載したすべての抗MadCAM抗体の安定性の向上に寄与することができる。“等張”組成物は、浸透圧がヒトの血液と実質的に同じ組成物である。等張組成物は、一般に、浸透圧が約250〜350mOsmである。“低張”という用語は、浸透圧がヒトの血液よりも小さい組成物を記述するのに用い、それに対応して“高張”という用語は、浸透圧がヒトの血液よりも大きい組成物を記述するのに用いる。等張性は、例えば蒸気圧また氷点タイプの浸透圧計を用いて測定することができる。
【0091】
本発明の液体医薬組成物の調製に用いる張性剤は、さまざまな形態で存在することができる。張性剤は、例えば鏡像異性体の形態(例えばL-鏡像異性体またはD-鏡像異性体)、またはラセミ形態;異性体(例えばαまたはβで、その中にαα、ββ、αβ、βαが含まれる);遊離酸または遊離塩基の形態;水和物の形態(例えば一水和物);無水物の形態にすることが可能である。
【0092】
一実施態様では、張性剤はサッカリドである。サッカリドは、一般に炭水化物と呼ばれていて、異なる量の糖単位を含むことができる(例えば単糖、二糖、多糖)。本発明で張性剤として用いるのに適したサッカリドとしては、フルクトース、グルコース、マンノース、ソルボース、キシロース、ラクトース、マルトース、スクロース、デキストラン、プルラン、デキストリン、シクロデキストリン、可溶性デンプン、ヒドロキシエチルデンプン、水溶性グルカン、ならびにこれらの混合物からなるグループの中から選択したサッカリドが挙げられる。一実施態様では、張性剤はスクロースである。
【0093】
別の一実施態様では、張性剤はポリオールである。この明細書では、“ポリオール”という用語は、多数のヒドロキシル基を有する賦形剤を意味し、例えば糖質(還元糖、非還元糖)、糖アルコール、糖酸などがある。一実施態様では、ポリオールは分子量が約600kD未満である(例えば約120〜約400kDの範囲)。“還元糖”は、金属イオンを還元したり、タンパク質中のリシンその他のアミノ基と共有結合的反応をしたりできるヘミアセタール基を含む糖を意味する。“非還元糖”は、還元糖のこのような性質を持たない糖を意味する。本発明で張性剤として用いるのに適したポリオールとしては、マンニトール、トレハロース、ソルビトール、エリトリトール、イソマルト、ラクチトール、マルチトール、キシリトール、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、イノシトール、ならびにこれらの混合物からなるグループの中から選択したポリオールが挙げられる。一実施態様では、張性剤は、スクロース、トレハロース、ソルボース、メレジトース、ラフィノース、ならびにこれらの混合物からなるグループの中から選択した非還元糖である。別の一実施態様では、張性剤は、トレハロース、スクロース、ならびにこれらの混合物からなるグループの中から選択した非還元糖である。別の一実施態様では、張性剤はマンニトールである。別の一実施態様では、張性剤はD-マンニトールである。別の一実施態様では、張性剤はトレハロースである。別の一実施態様では、張性剤はαα-トレハロース二水和物である。別の一実施態様では、張性剤は塩(例えば塩化ナトリウム)である。
【0094】
張性剤が液体医薬組成物の中に存在している場合の濃度は、約1.0ミリモル〜約600ミリモル、約10ミリモル〜約400ミリモル、約100ミリモル〜約300ミリモルの範囲が可能である。一実施態様では、張性剤の濃度は、約200ミリモル〜約250ミリモルの範囲である。別の一実施態様では、液体医薬組成物中の張性剤の濃度は、約222ミリモル、約238ミリモル、約247ミリモルのいずれかである。
【0095】
さらに別の一実施態様では、張性剤はマンニトールであり、液体医薬組成物の中に247ミリモルの濃度で存在している。別の一実施態様では、張性剤はトレハロースであり、液体医薬組成物の中に222ミリモルの濃度で存在している。別の一実施態様では、張性剤はトレハロースであり、液体医薬組成物の中に238ミリモルの濃度で存在している。
【0096】
すでに指摘したように、本発明の液体医薬組成物は、場合によってはキレート剤に加えて薬理学的に許容可能な界面活性剤をさらに含むことができる。この明細書では、“界面活性剤”という用語は、液体医薬組成物の表面張力を変化させることのできる賦形剤を意味する。いくつかの実施態様では、界面活性剤が液体医薬組成物の表面張力を小さくする。さらに別の実施態様では、“界面活性剤”は、この明細書に記載したあらゆる抗MadCAM抗体の安定性向上に寄与することができる。例えば界面活性剤は、製剤化された抗体の凝集を減らすこと、および/または組成物の中に形成される粒子を最少にすること、および/または吸着を減らすことができる。界面活性剤は、凍結/解凍サイクルの間および後の抗体の安定性を向上させることもできる。
【0097】
適切な界面活性剤としては、ポリソルベート界面活性剤、ポロキサマー18、トリトン界面活性剤(例えばトリトンX-100(登録商標))、ポリソルベート界面活性剤(例えばトゥイーン20(登録商標)、トゥイーン80(登録商標))、ドデシル硫酸ナトリウム、ラウレル硫酸ナトリウム、オクチルグリコシドナトリウム、ラウリル-スルホベタイン、ミリスチル-スルホベタイン、リノレイル-スルホベタイン、ステアリル-スルホベタイン、ラウリル-サルコシン、ミリスチル-サルコシン、リノレイル-サルコシン、ステアリル-サルコシン、リノレイル-ベタイン、ミリスチル-ベタイン、セチル-ベタイン、ラウロアミドプロピル-ベタイン、コカミドプロピル-ベタイン、リノールアミドプロピル-ベタイン、ミリスタミドプロピル-ベタイン、パルミドプロピル-ベタイン、イソステアラミドプロピル-ベタイン、ミリスタミドプロピル-ジメチルアミン、パルミドプロピル-ジメチルアミン、イソステアラミドプロピル-ジメチルアミン、ココイルメチルタウリンナトリウム、オレイルメチルタウリン二ナトリウム、ジヒドロキシプロピルPEG5リノールアンモニウムクロリド、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ならびにこれらの混合物が挙げられる。
【0098】
一実施態様では、界面活性剤は、ポリソルベート20、ポリソルベート21、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート61、ポリソルベート65、ポリソルベート80、ポリソルベート81、ポリソルベート85、ならびにこれらの混合物からなるグループの中から選択した少なくとも1つの賦形剤を含むポリソルベート系界面活性剤である。別の一実施態様では、液体医薬組成物がポリソルベート80を含んでいる。
【0099】
界面活性剤が液体医薬組成物の中に存在している場合の濃度は、約0.005ミリモル〜約10ミリモル、約0.007ミリモル〜約5.0ミリモル、約0.01ミリモル〜約1.0ミリモルの範囲が可能である。別の一実施態様では、界面活性剤の濃度は、約0.05ミリモル〜約1.0ミリモルである。別の一実施態様では、液体医薬組成物がポリソルベート80を約0.30ミリモル含んでいる。
【0100】
本発明の一実施態様には、配列ID番号2に示した重鎖アミノ酸配列と少なくとも95%が一致するアミノ酸配列に加え、配列ID番号4に示した軽鎖アミノ酸配列と少なくとも95%が一致するアミノ酸配列をさらに含んでいて、ヒトMadCAMと結合する少なくとも1つの抗体と;キレート剤とを含む液体医薬組成物が含まれる。
【0101】
本発明の一実施態様には、配列ID番号2に示した重鎖アミノ酸配列と少なくとも95%が一致するアミノ酸配列に加え、配列ID番号4に示した軽鎖アミノ酸配列と少なくとも95%が一致するアミノ酸配列をさらに含んでいて、ヒトMadCAMと結合する少なくとも1つの抗体と;キレート剤とを含む液体医薬組成物であって、その組成物に塩素イオンと酢酸イオンの一方または両方が実質的に含まれない組成物が含まれる。
【0102】
本発明の一実施態様には、ヒトMadCAMと結合する少なくとも1つのヒト・モノクローナル抗MadCAM抗体と;キレート剤とを含む液体医薬組成物が含まれる。
【0103】
本発明の一実施態様には、ヒトMadCAMと結合する少なくとも1つのヒト・モノクローナル抗MadCAM抗体と;キレート剤とを含む液体医薬組成物であって、その組成物に塩素イオンと酢酸イオンの一方または両方が実質的に含まれない組成物が含まれる。
【0104】
本発明の一実施態様には、配列ID番号2に示した重鎖アミノ酸配列と少なくとも95%が一致するアミノ酸配列に加え、配列ID番号4に示した軽鎖アミノ酸配列と少なくとも95%が一致するアミノ酸配列をさらに含んでいて、ヒトMadCAMと結合する少なくとも1つの抗体と;薬理学的に許容可能な賦形剤とを含む組成物であって、その組成物が抗体を少なくとも約50mg/ml、少なくとも約60mg/ml、少なくとも約70mg/ml、少なくとも約80mg/ml、少なくとも約90mg/ml、少なくとも約100mg/mlいずれかの濃度で含んでいる組成物が含まれる。
【0105】
本発明の一実施態様には、配列ID番号2に示した重鎖アミノ酸配列と少なくとも95%が一致するアミノ酸配列に加え、配列ID番号4に示した軽鎖アミノ酸配列と少なくとも95%が一致するアミノ酸配列をさらに含んでいて、ヒトMadCAMと結合する少なくとも1つの抗体と;薬理学的に許容可能な賦形剤とを含む組成物であって、その組成物が抗体を約10mg/ml〜約200mg/mlの範囲の濃度で含んでいる組成物が含まれる。
【0106】
本発明の一実施態様には、配列ID番号2に示した重鎖アミノ酸配列と少なくとも95%が一致するアミノ酸配列に加え、配列ID番号4に示した軽鎖アミノ酸配列と少なくとも95%が一致するアミノ酸配列をさらに含んでいて、ヒトMadCAMと結合する少なくとも1つの抗体と;薬理学的に許容可能な賦形剤とを含む組成物であって、その組成物が抗体を約15mg/ml〜約200mg/mlの範囲の濃度で含んでいる組成物が含まれる。
【0107】
本発明の一実施態様には、配列ID番号2に示した重鎖アミノ酸配列と少なくとも95%が一致するアミノ酸配列に加え、配列ID番号4に示した軽鎖アミノ酸配列と少なくとも95%が一致するアミノ酸配列をさらに含んでいて、ヒトMadCAMと結合する少なくとも1つの抗体と;薬理学的に許容可能な賦形剤とを含む組成物であって、その組成物が抗体を約20mg/ml〜約200mg/mlの範囲の濃度で含んでいる組成物が含まれる。
【0108】
本発明の一実施態様には、配列ID番号2に示した重鎖アミノ酸配列と少なくとも95%が一致するアミノ酸配列に加え、配列ID番号4に示した軽鎖アミノ酸配列と少なくとも95%が一致するアミノ酸配列をさらに含んでいて、ヒトMadCAMと結合する少なくとも1つの抗体と;薬理学的に許容可能な賦形剤とを含む組成物であって、その組成物が抗体を約50mg/ml〜約200mg/mlの範囲の濃度で含んでいる組成物が含まれる。
【0109】
本発明の一実施態様には、配列ID番号2に示した重鎖アミノ酸配列と少なくとも95%が一致するアミノ酸配列に加え、配列ID番号4に示した軽鎖アミノ酸配列と少なくとも95%が一致するアミノ酸配列をさらに含んでいて、ヒトMadCAMと結合する少なくとも1つの抗体と;薬理学的に許容可能な賦形剤とを含む組成物であって、その組成物が抗体を約100mg/ml〜約200mg/mlの範囲の濃度で含んでいる組成物が含まれる。
【0110】
本発明の一実施態様には、配列ID番号2に示した重鎖アミノ酸配列と少なくとも95%が一致するアミノ酸配列に加え、配列ID番号4に示した軽鎖アミノ酸配列と少なくとも95%が一致するアミノ酸配列をさらに含んでいて、ヒトMadCAMと結合する少なくとも1つの抗体と;薬理学的に許容可能な賦形剤とを含む組成物であって、その組成物が抗体を約65mg/ml〜約85mg/mlの範囲の濃度で含んでいる組成物が含まれる。
【0111】
本発明の一実施態様には、配列ID番号2に示した重鎖アミノ酸配列と少なくとも95%が一致するアミノ酸配列に加え、配列ID番号4に示した軽鎖アミノ酸配列と少なくとも95%が一致するアミノ酸配列をさらに含んでいて、ヒトMadCAMと結合する少なくとも1つの抗体と;薬理学的に許容可能な賦形剤とを含む組成物であって、その組成物が抗体を約75mg/mlの濃度で含んでいる組成物が含まれる。
【0112】
一実施態様では、液体医薬組成物は、約0.01mg/ml〜約200mg/mlのモノクローナル抗MadCAM抗体7.16.6と、約0.3マイクロモル〜約50ミリモルのキレート剤とを含んでいる。
【0113】
別の実施態様では、液体医薬組成物は、約0.1mg/ml〜約100mg/mlのモノクローナル抗MadCAM抗体7.16.6と、約30マイクロモル〜約5.0ミリモルのキレート剤とを含んでいる。
【0114】
別の実施態様では、液体医薬組成物は、約0.1mg/ml〜約100mg/mlのモノクローナル抗MadCAM抗体7.16.6と、約0.27ミリモルのキレート剤とを含んでいる。
【0115】
別の実施態様では、液体医薬組成物は、約0.1mg/ml〜約100mg/mlのモノクローナル抗MadCAM抗体7.16.6と、約0.3マイクロモル〜約50ミリモルのEDTAとを含んでいる。
【0116】
別の実施態様では、液体医薬組成物は、約0.1mg/ml〜約100mg/mlのモノクローナル抗MadCAM抗体7.16.6と、約30マイクロモル〜約10.0ミリモルのEDTAとを含んでいる。
【0117】
別の実施態様では、液体医薬組成物は、約0.1mg/ml〜約100mg/mlのモノクローナル抗MadCAM抗体7.16.6と、約0.1ミリモル〜約1.0ミリモルのEDTAとを含んでいる。
【0118】
別の実施態様では、液体医薬組成物は、約0.1mg/ml〜約100mg/mlのモノクローナル抗MadCAM抗体7.16.6と、約0.27ミリモルのEDTAとを含んでいる。
【0119】
別の実施態様では、液体医薬組成物は、約0.1mg/ml〜約100mg/mlのモノクローナル抗MadCAM抗体7.16.6と、約30マイクロモル〜約5.0ミリモルのDTPAとを含んでいる。
【0120】
別の実施態様では、液体医薬組成物は、約0.1mg/ml〜約100mg/mlのモノクローナル抗MadCAM抗体7.16.6と、約30マイクロモル〜約5.0ミリモルのデフェロキサミンとを含んでいる。
【0121】
一実施態様では、液体医薬組成物は、約0.01mg/ml〜約200mg/mlのモノクローナル抗MadCAM抗体7.16.6と、約1mM〜約100mMのヒスチジンとを含んでいる。
【0122】
別の一実施態様では、液体医薬組成物は、約0.1mg/ml〜約200mg/mlのモノクローナル抗MadCAM抗体7.16.6と、約30マイクロモル〜約5.0ミリモルのキレート剤と、約1mM〜約100mMのヒスチジンとを含んでいる。
【0123】
別の一実施態様では、液体医薬組成物は、約0.1mg/ml〜約200mg/mlのモノクローナル抗MadCAM抗体7.16.6と、約30マイクロモル〜約5.0ミリモルのキレート剤と、約10ミリモル〜約400ミリモルのトレハロースとを含んでいる。
【0124】
別の一実施態様では、液体医薬組成物は、約0.1mg/ml〜約200mg/mlのモノクローナル抗MadCAM抗体7.16.6と、約30マイクロモル〜約5.0ミリモルのキレート剤と、約10ミリモル〜約400ミリモルのトレハロースと、約1mM〜約100mMのヒスチジンとを含んでいる。
【0125】
別の一実施態様では、液体医薬組成物は、約0.1mg/ml〜約200mg/mlのモノクローナル抗MadCAM抗体7.16.6と、約30マイクロモル〜約5.0ミリモルのキレート剤と、約10ミリモル〜約400ミリモルのトレハロースと、約1mM〜約100mMのヒスチジンと、約0.005ミリモル〜約10ミリモルのポリソルベート80とを含んでいる。
【0126】
別の一実施態様では、液体医薬組成物は、約0.1mg/ml〜約200mg/mlのモノクローナル抗MadCAM抗体7.16.6と、約30マイクロモル〜約5.0ミリモルのEDTAと、約10ミリモル〜約400ミリモルの張性剤と、約1mM〜約100mMの緩衝液と、約0.005ミリモル〜約10ミリモルの界面活性剤とを含んでいる。
【0127】
別の一実施態様では、液体医薬組成物は、約0.1mg/ml〜約200mg/mlのモノクローナル抗MadCAM抗体7.16.6と、約30マイクロモル〜約5.0ミリモルのEDTAと、約10ミリモル〜約400ミリモルの張性剤と、約1mM〜約100mMのヒスチジンと、約0.005ミリモル〜約10ミリモルの界面活性剤とを含んでいる。
【0128】
別の一実施態様では、液体医薬組成物は、約0.1mg/ml〜約200mg/mlのモノクローナル抗MadCAM抗体7.16.6と、約30マイクロモル〜約5.0ミリモルのEDTAと、約10ミリモル〜約400ミリモルのトレハロースと、約1mM〜約100mMのヒスチジンと、約0.005ミリモル〜約10ミリモルの界面活性剤とを含んでいる。
【0129】
本発明のいくつかの特徴によると、液体抗MadCAM抗体組成物は、約10mg/ml〜約200mg/mlのモノクローナル抗MadCAM抗体7.16.6と、約1mM〜約100mMのヒスチジンと、約0.005ミリモル〜約10ミリモルのポリソルベート80と、約30マイクロモル〜約5.0ミリモルのEDTAと、約10ミリモル〜約400ミリモルのトレハロースとを含んでいる。
【0130】
本発明の別の特徴によると、液体抗MadCAM抗体組成物は、約50mg/ml〜約100mg/mlのモノクローナル抗MadCAM抗体7.16.6と、約5mM〜約30mMのヒスチジンと、約0.01ミリモル〜約1.0ミリモルのポリソルベート80と、約30マイクロモル〜約5.0ミリモルのEDTAと、約100ミリモル〜約300ミリモルのトレハロースとを含んでいる。
【0131】
本発明の別の特徴によると、液体抗MadCAM抗体組成物は、約65mg/ml〜約85mg/mlのモノクローナル抗MadCAM抗体7.16.6と、約5mM〜約15mMのヒスチジンと、約0.05ミリモル〜約0.5ミリモルのポリソルベート80と、約0.1ミリモル〜約1ミリモルのEDTAと、約200ミリモル〜約250ミリモルのトレハロースとを含んでいる。
【0132】
本発明の別の特徴によると、液体抗MadCAM抗体組成物は、約75mg/mlのモノクローナル抗MadCAM抗体7.16.6と、約20mMのヒスチジンと、約0.3ミリモルのポリソルベート80と、約0.27ミリモルのEDTAと、約238ミリモルのトレハロースとを含んでいる。
【0133】
本発明の別の実施態様は、抗MadCAM抗体と、薬理学的に許容可能なキレート剤とを含む安定な液体医薬組成物であって、抗体のモル濃度が約0.0006ミリモル〜約1.35ミリモルの範囲であり、キレート剤のモル濃度が約0.003ミリモル〜約50ミリモルの範囲であり、キレート剤に対する抗体のモル比が約0.00001〜約450、約0.0001〜約100、約0.005〜約50、約0.001〜約10、約0.01〜約5、約0.1〜約3、約1.9のいずれかである液体医薬組成物に関する。
【0134】
本発明の別の実施態様は、抗MadCAM抗体7.16.6と、薬理学的に許容可能なキレート剤とを含む安定な液体医薬組成物であって、抗体のモル濃度が約0.0006ミリモル〜約1.35ミリモルの範囲であり、キレート剤のモル濃度が約0.003ミリモル〜約50ミリモルの範囲であり、キレート剤に対する抗体のモル比が約0.00001〜約450、約0.0001〜約100、約0.005〜約50、約0.001〜約10、約0.01〜約5、約0.1〜約3、約1.9のいずれかである液体医薬組成物に関する。
【0135】
本発明の別の実施態様は、抗MadCAM抗体7.16.6と、薬理学的に許容可能なキレート剤と、ヒスチジンとを含む安定な液体医薬組成物であって、抗体のモル濃度が約0.0006ミリモル〜約1.35ミリモルの範囲であり、キレート剤のモル濃度が約0.003ミリモル〜約50ミリモルの範囲であり、ヒスチジンのモル濃度が約1ミリモル〜約100ミリモルの範囲であり、キレート剤に対する抗体のモル比が約0.00001〜約450、約0.0001〜約100、約0.005〜約50、約0.001〜約10、約0.01〜約5、約0.1〜約1、約0.5のいずれかである液体医薬組成物に関する。
【0136】
本発明の別の実施態様は、抗MadCAM抗体7.16.6と、薬理学的に許容可能なキレート剤と、ヒスチジンとを含む安定な液体医薬組成物であって、抗体のモル濃度が約0.0006ミリモル〜約1.35ミリモルの範囲であり、キレート剤のモル濃度が約0.003ミリモル〜約50ミリモルの範囲であり、ヒスチジンのモル濃度が約5ミリモル〜約30ミリモルの範囲であり、キレート剤に対する抗体のモル比が約0.0001〜約100、約0.005〜約50、約0.001〜約10、約0.01〜約5、約0.1〜約3、約1.9のいずれかである液体医薬組成物に関する。
【0137】
本発明の別の実施態様は、抗MadCAM抗体7.16.6と、薬理学的に許容可能なキレート剤と、ヒスチジンとを含む安定な液体医薬組成物であって、抗体のモル濃度が約0.0006ミリモル〜約1.35ミリモルの範囲であり、キレート剤のモル濃度が約0.003ミリモル〜約50ミリモルの範囲であり、ヒスチジンのモル濃度が約5ミリモル〜約20ミリモルの範囲であり、キレート剤に対する抗体のモル比が約0.005〜約50、約0.001〜約10、約0.01〜約5、約0.1〜約3、約1.9のいずれかである液体医薬組成物に関する。
【0138】
本発明の別の実施態様は、抗MadCAM抗体7.16.6と、薬理学的に許容可能なキレート剤と、ヒスチジンとを含む安定な液体医薬組成物であって、抗体のモル濃度が約0.0006ミリモル〜約1.35ミリモルの範囲であり、キレート剤のモル濃度が約0.003ミリモル〜約50ミリモルの範囲であり、ヒスチジンのモル濃度が約5ミリモル〜約20ミリモルの範囲であり、キレート剤に対する抗体のモル比が約0.001〜約10、約0.01〜約5、約0.1〜約3、約1.9のいずれかである液体医薬組成物に関する。
【0139】
本発明の別の実施態様は、抗MadCAM抗体7.16.6と、薬理学的に許容可能なキレート剤と、ヒスチジンとを含む安定な液体医薬組成物であって、抗体のモル濃度が約0.0006ミリモル〜約1.35ミリモルの範囲であり、キレート剤のモル濃度が約0.003ミリモル〜約50ミリモルの範囲であり、ヒスチジンのモル濃度が約20ミリモルであり、キレート剤に対する抗体のモル比が約0.001〜約10、約0.01〜約5、約0.1〜約3、約1.9のいずれかである液体医薬組成物に関する。
【0140】
抗MadCAM抗体と抗体産生細胞系の製造方法:
本発明の抗体は、トランスジェニック・マウスを用いて調製することができる。このトランスジェニック・マウスは、挿入したヒト抗体産生ゲノムの重要な部分を含んでいるが、内部でマウスの抗体は産生しないようにされている。そのためこのようなマウスは、ヒトの免疫グロブリン分子と抗体を産生することができる一方で、マウスの免疫グロブリン分子と抗体は産生しない。そのための技術に関して以下に説明する。
【0141】
免疫化したときに内在性免疫グロブリンの産生なしにヒト抗体の完全なレパートリーを産生することのできるトランスジェニック動物(例えばマウス)を作り出すことができる。しかしトランスジェニック・マウスの製造とそのマウスから得られる抗体の一実施態様は、特に国際特許出願PCT/US2005/000370に開示されている。このような技術を利用すると、MadCAMと結合する抗体と、その抗体を産生するハイブリドーマを調製することができる。
【0142】
ヒト抗体にすると、マウスまたはラットの可変領域および/または定常領域を持つ抗体に付随するいくつかの問題が回避される。マウスまたはラットに由来するタンパク質が存在していると、抗体が迅速に排出されたり、そのような抗体を投与された対象にその抗体に対する免疫応答が発生したりする可能性がある。
【0143】
例えばキメラの生殖細胞系突然変異マウスに抗体重鎖結合領域(JH)遺伝子がホモで欠失していると、内在性抗体の産生が完全に阻止されることが報告されている。ヒト生殖細胞系免疫グロブリン遺伝子アレイをこのような生殖細胞系突然変異マウスに移すと、抗原(例えばMadCAM)のチャレンジを受けたときにヒト抗体が産生されるであろう。例えばJakobovits他、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、第90巻、2551ページ、1993年;Jakobovits他、Nature、第362巻、255-258ページ、1993年;Bruggermann他、Year in Immuno.、第7巻、33ページ、1993年;Duchosal他、Nature、第355巻、258ページ、1992年を参照のこと。ヒト抗体としては、ファージ提示ライブラリからのものも可能である(Hoogenboom他、J. Mol. Biol.、第227巻、381ページ、1991年;Marks他、J. Mol. Biol.、第222巻、581-597ページ、1991年;Vaughan他、Nature Biotech、第14巻、309ページ、1996年)。
【0144】
いくつかの実施態様では、ヒト抗MadCAM抗体は、非ヒト・トランスジェニック動物(例えばゼノマウス(登録商標))を免疫化することによって産生させることができる。このマウスのゲノムにはヒト免疫グロブリン遺伝子が含まれているため、この組み換えマウスはヒト抗体を産生する。ゼノマウス(登録商標)は遺伝子操作したマウス株であり、ヒト免疫グロブリンの重鎖と軽鎖の遺伝子座の大きな断片を含んでいるため、マウスの抗体は産生しない。ゼノマウス(登録商標)は、全ヒト抗体の成人様ヒト・レパートリーを産生し、抗原特異的ヒト抗体を発生させる。いくつかの実施態様では、ゼノマウス(登録商標)は、ヒトの重鎖遺伝子座とκ軽鎖遺伝子座の生殖細胞系コンフィギュレーション酵母人工染色体(YAC)フラグメントであって塩基サイズが1メガのものを導入することにより、ヒト抗体V遺伝子レパートリーの約80%を備えている。別の実施態様では、ゼノマウス(登録商標)はさらに、λ軽鎖の遺伝子座のほぼすべてを含んでいる。例えばGreen他、Nature Genetics、第7巻、13-21ページ、1994年;アメリカ合衆国特許第5,916,771号、第5,939,598号、第5,985,615号、第5,998,209号、第6,075,181号、第6,091,001号、第6,114,598号、第6,130,364号、第6,162,963号、第6,150,584号を参照のこと。WO 91/10741、WO 94/02602、WO 96/34096、WO 96/33735、WO 98/16654、WO 98/24893、WO 98/50433、WO 99/45031、WO 99/53049、WO 00/09560、WO 00/037504も参照のこと。
【0145】
いくつかの実施態様では、ヒト免疫グロブリン遺伝子を含む非ヒト動物は、ヒト免疫グロブリン“ミニ遺伝子”を有する動物である。ミニ遺伝子の方法では、外来性Ig遺伝子座からの個々の遺伝子が含まれることによってそのIg遺伝子座が模倣される。したがって1つ以上のVH遺伝子、1つ以上のDH遺伝子、1つ以上のJH遺伝子、μ定常領域、第2の定常領域(γ定常領域であることが好ましい)が構造体の中に形成され、それが動物に挿入される。この方法は、特に、アメリカ合衆国特許第5,545,807号、第5,545,806号、第5,569,825号、第5,625,126号、第5,633,425号、第5,661,016号、第5,770,429号、第5,789,650号、第5,814,318号、第5,591,669号、第5,612,205号、第5,721,367号、第5,789,215号、第5,643,763号に記載されている。
【0146】
したがっていくつかの実施態様では、ヒト抗体は、ゲノム中にヒト免疫グロブリンの重鎖と軽鎖の遺伝子座を含む非ヒト動物をMadCAM抗原を用いて免疫化することによって産生させることができる。
【0147】
いくつかの実施態様では、MadCAM抗原は、単離したMadCAMおよび/または精製したMadCAMである。好ましい一実施態様では、MadCAM抗原はヒトMadCAMである。いくつかの実施態様では、MadCAM抗原は、MadCAMの断片である。いくつかの実施態様では、MadCAMの断片は、MadCAMの少なくとも1つのエピトープを含んでいる。別の実施態様では、MadCAM抗原は、MadCAMまたはその免疫原性断片を表面に発現または過剰発現させる細胞である。さらに別の実施態様では、MadCAM抗原はMadCAM融合タンパク質である。MadCAMは、公知の方法を利用して天然の供給源から精製することができる。さらに、組み換えMadCAMタンパク質が市販されている。
【0148】
好ましい一実施態様では、非ヒト動物は、ゼノマウス(登録商標)(アブジェニックス社、フレモント、カリフォルニア州)である。使用できる別の非ヒト動物は、マダレックス社(プリンストン、ニュージャージー州)が作ったトランスジェニック・マウスである。
【0149】
動物の免疫化は、従来技術で知られている任意の方法で行なうことができる。例えばHarlowとLane、『抗体:実験室マニュアル』、ニューヨーク州、コールド・スプリング・ハーバー出版、1990年を参照のこと。非ヒト動物(例えばマウス、ラット、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウシ、ウマ)を免疫化する方法は従来技術でよく知られている。例えばHarlowとLane、上記文献と、アメリカ合衆国特許第5,994,619号を参照のこと。好ましい一実施態様では、MadCAM抗原をアジュバントとともに投与して免疫応答を促進する。アジュバントの具体例としては、完全フロイント・アジュバント、不完全フロイント・アジュバント、RIBI(ムラミル・ジペプチド)、ISCOM(免疫促進複合体)などがある。このようなアジュバントは、ポリペプチドが局所的留置物の中に封鎖されることによって急速に分散されないようにすること、またはマクロファージや免疫系の他の成分にとっての走化性因子を宿主が分泌するのを促進する物質を含むことができる。ポリペプチドを投与するとき、免疫化のスケジュールとして、そのポリペプチドを数週間の期間に2回以上投与することができる。
【0150】
動物をMadCAM抗原で免疫化した後、抗体および/または抗体産生細胞をその動物から得ることができる。いくつかの実施態様では、動物を出血させるか安楽死させることによって抗MadCAM抗体を含む血清が得られる。この血清は、動物から得られたそのままの状態で用いることができ、その血清から免疫グロブリン分画を得ること、またはその血清から抗MadCAM抗体を精製することができる。
【0151】
いくつかの実施態様では、免疫化した動物から単離した細胞をもとにして抗体を産生する不死化細胞系が調製される。動物を免疫化した後に安楽死させ、リンパ節および/または脾臓B細胞を不死化する。細胞を不死化する方法としては、その細胞にがん遺伝子をトランスフェクトする方法、その細胞にがんウイルスを感染させる方法、不死化した細胞を選択できる条件下で細胞を培養する方法、発がん化合物または突然変異誘発化合物に曝露する方法、その細胞を不死化した細胞(例えば骨髄腫細胞)と融合させる方法、がん抑制遺伝子を不活性化させる方法などがある。例えばHarlowとLane、上記文献を参照のこと。好ましい一実施態様では、免疫化した動物は、ヒト免疫グロブリン遺伝子を発現する非ヒト動物であり、脾臓B細胞をその非ヒト動物と同じ種からの骨髄腫細胞と融合させる。より好ましい一実施態様では、免疫化した動物はゼノマウス(登録商標)であり、骨髄腫細胞系は非分泌性マウス骨髄腫である。骨髄腫細胞との融合体を用いる場合には、その骨髄腫細胞は免疫グロブリン・ポリペプチドを分泌しないことが好ましい(非分泌性細胞系)。不死化した細胞は、MadCAM、その一部、MadCAM発現細胞のいずれかを用いてスクリーニングする。好ましい一実施態様では、固相酵素免疫検定法(ELISA)またはラジオイムノアッセイを利用して最初のスクリーニングを行なう。ELISAスクリーニングの一例は、WO 00/37504に記載されている。
【0152】
望ましい性質(例えば盛んな増殖、多い抗体産生や、以下に詳しく説明する抗体の望ましい性質)を持つ抗MadCAM抗体産生細胞(例えばハイブリドーマ)を選択し、クローニングし、さらにスクリーニングする。ハイブリドーマは、同一遺伝子型の動物や免疫系のない動物(例えばヌード・マウス)の生体内で増殖させること、または試験管内の細胞培養物の中で増殖させることができる。ハイブリドーマを選択し、クローニングし、増殖させる方法は、当業者には周知である。
【0153】
本発明の抗体は、ハイブリドーマ細胞系以外の細胞系の中で組み換え発現させることができる。特定の抗体に関するcDNAまたはゲノム・クローンをコードしている核酸配列を利用し、哺乳動物または非哺乳動物の適切な宿主細胞を形質転換することができる。
【0154】
本発明には、抗MadCAM抗体をコードしている核酸分子も含まれる。いくつかの実施態様では、抗MadCAM抗体の重鎖と軽鎖を異なる核酸分子がコードしている。別の実施態様では、同一の核酸分子が抗MadCAM抗体の重鎖と軽鎖をコードしている。一実施態様では、その核酸が本発明の抗MadCAM抗体をコードしている。
【0155】
抗MadCAM抗体の重鎖または軽鎖の全体をコードしている核酸分子、またはその一部は、そのような抗体を産生する任意の供給源から単離することができる。さまざまな実施態様では、核酸分子は、抗MadCAMで免疫化した動物から単離したB細胞から単離するか、抗MadCAM抗体を発現するB細胞に由来する不死化した細胞から単離する。抗体をコードしているmRNAを単離する方法は、従来技術でよく知られている。例えばSambrook他、『分子クローニング』、第3版、第3巻、1989年を参照のこと。そのmRNAを用いてcDNAを作り、抗体遺伝子のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)またはcDNAクローニングを行なうことができる。好ましい一実施態様では、融合パートナーの1つとして非ヒト・トランスジェニック動物からのヒト免疫グロブリン産生細胞を持つハイブリドーマから、核酸分子を単離する。さらに好ましい一実施態様では、ヒト免疫グロブリン産生細胞をゼノマウス(登録商標)から単離する。別の一実施態様では、ヒト免疫グロブリン産生細胞は、上記のように非ヒト非マウス・トランスジェニック動物からのものである。別の一実施態様では、非ヒト非トランスジェニック動物から核酸を単離する。非ヒト動物から単離した核酸分子は、例えばヒト化抗体に使用することができる。
【0156】
いくつかの実施態様では、本発明の抗MadCAM抗体の重鎖をコードしている核酸は、任意の供給源からの重鎖定常領域をコードしているヌクレオチド配列とインフレームで結合した、本発明のVHドメインをコードしているヌクレオチド配列を含むことができる。同様に、本発明の抗MadCAM抗体の軽鎖をコードしている核酸分子は、任意の供給源からの軽鎖定常領域をコードしているヌクレオチド配列とインフレームで結合した、本発明のVLドメインをコードしているヌクレオチド配列を含むことができる。
【0157】
本発明のさらに別の特徴によると、重鎖(VH)と軽鎖(VL)の可変領域をコードしている核酸分子が完全長抗体遺伝子に“変換される”。一実施態様では、VHドメインまたはVLドメインをコードしている核酸分子を、重鎖定常領域(CH)または軽鎖定常領域(CL)をそれぞれすでにコードしている発現ベクターの中に挿入することによって完全長抗体遺伝子に変換する。そのとき、VHセグメントがそのベクターの内部でCHセグメントと機能上リンクし、VLセグメントがそのベクターの内部でCLセグメントと機能上リンクするようにする。別の一実施態様では、分子生物学の標準的な方法を利用し、VHドメインおよび/またはVLドメインをコードしている核酸分子を、CHドメインおよび/またはCLドメインをコードしている核酸分子とリンクさせる(例えば連結する)ことによって完全長抗体遺伝子に変換する。ヒトの重鎖と軽鎖の免疫グロブリン定常領域遺伝子の核酸配列は従来技術において公知である。例えばKabat他、『免疫学的に興味のあるタンパク質の配列』、第5版、NIH出版、第91-3242号、1991年を参照のこと。次に、完全長の重鎖および/または軽鎖をコードしている核酸分子を、その核酸分子を導入した細胞から発現させ、抗MadCAM抗体を単離することができる。
【0158】
本発明により、本発明の抗MadCAM抗体の重鎖またはその抗原結合部をコードしている核酸分子を含むベクターも提供される。本発明により、このような抗体の軽鎖またはその抗原結合部をコードしている核酸分子を含むベクターも提供される。本発明によりさらに、融合タンパク質、修飾された抗体、抗体フラグメントをコードしている核酸分子を含むベクターと、このような核酸のプローブが提供される。
【0159】
いくつかの実施態様では、上記のようにして得た、軽鎖と重鎖の一部または全体をコードしているDNAを発現ベクターに導入し、遺伝子を必要な発現制御配列(例えば転写制御配列、翻訳制御配列)と機能上リンクさせることにより、本発明の抗MadCAM抗体またはその抗原結合部を発現させる。発現ベクターとしては、プラスミド、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、植物のウイルス(例えばカリフラワー・モザイク・ウイルス、タバコ・モザイク・ウイルス)、コスミド、YAC、EBV由来のエピソームなどがある。抗体遺伝子をベクターと連結し、そのベクター内の転写制御配列と翻訳制御配列が、抗体遺伝子の転写と翻訳の調節に関して予想した機能を果たすようにする。発現ベクターと発現制御配列は、使用する発現宿主細胞と相性のよいものを選択する。抗体の軽鎖遺伝子と重鎖遺伝子は、別々のベクターに挿入することができる。好ましい一実施態様では、両方の遺伝子を同じベクターに挿入する。抗体遺伝子は、標準的な方法(例えば抗体遺伝子の断片上の相補的制限部位とベクターの連結、または制御部位が存在していない場合には平滑末端の連結)によって発現ベクターの中に挿入する。
【0160】
便利なベクターは、機能が完全なヒトCH免疫グロブリン配列またはヒトCL免疫グロブリン配列をコードしており、しかも上記のように適切な制限部位を設けてあってVH配列またはVL配列を挿入して発現させるのが容易になっているベクターである。このようなベクターでは、通常は、挿入されたJ領域にあるスプライス・ドナー部位と、ヒトCドメインの前にあるスプライス・アクセプタ部位との間でスプライシングが起こり、ヒトCHエキソンの内部に生じるスプライス領域でもスプライシングが起こる。ポリアデニル化と転写の終結は、コード領域の下流にある元の染色体部位で起こる。組み換え発現ベクターも、宿主細胞から抗体鎖の分泌を容易にするシグナル・ペプチドをコードすることができる。抗体鎖遺伝子をクローニングしてベクターに入れ、シグナル・ペプチドを免疫グロブリン鎖のアミノ末端とインフレームで連結させることができる。このシグナル・ペプチドとしては、免疫グロブリン・シグナル・ペプチドまたは異種シグナル・ペプチド(すなわち免疫グロブリンではないタンパク質からのシグナル・ペプチド)が可能である。
【0161】
本発明の組み換え発現ベクターは、抗体鎖遺伝子に加え、宿主細胞の中で抗体鎖遺伝子の発現を制御する調節配列を備えている。当業者であれば、発現ベクターの設計(調節配列の選択も含む)は、形質転換する宿主細胞の選択、望むタンパク質の発現レベルなどの因子に依存して異なる可能性があることがわかるであろう。哺乳動物宿主細胞で発現させるための好ましい調節配列としては、哺乳動物の細胞でタンパク質を多く発現させるウイルス・エレメント(例えばレトロウイルスに由来するプロモータおよび/またはエンハンサー(例えばレトロウイルスのLTR)、サイトメガロウイルス(CMV)由来のプロモータおよび/またはエンハンサー(CMVプロモータ/エンハンサーなど)、シミアンウイルス40(SV40)由来のプロモータおよび/またはエンハンサー(SV40プロモータ/エンハンサーなど)、アデノウイルス由来のプロモータおよび/またはエンハンサー(例えばアデノウイルス主要後期プロモータ(AdMLP)、ポリオーマ由来のプロモータおよび/またはエンハンサー)や、哺乳動物の強力なプロモータ(例えば元の免疫グロブリン・プロモータ、アクチン・プロモータ)などがある。ウイルス調節エレメントとその配列に関するさらに詳しい説明は、例えばアメリカ合衆国特許第5,168,062号、第4,510,245号、第4,968,615号を参照のこと。植物で抗体を発現させる方法(プロモータとベクターに関する説明も含む)や植物の形質転換は、従来技術で知られている。例えばアメリカ合衆国特許第6,517,529号を参照のこと(その内容は、参考としてこの明細書に組み込まれているものとする)。細菌または真菌の細胞(例えば酵母の細胞)でポリペプチドを発現させる方法も、従来技術でよく知られている。
【0162】
本発明の組み換え発現ベクターは、抗体鎖遺伝子と調節配列に加え、宿主細胞においてベクターの複製を調節する配列(例えば複製起点)や選択マーカー遺伝子といった追加の配列を含むことができる。選択マーカー遺伝子により、ベクターを導入した宿主細胞の選択が容易になる(例えばアメリカ合衆国特許第4,399,216号、第4,634,665号、第5,179,017号を参照のこと)。例えば選択マーカー遺伝子は、ベクターを導入した宿主細胞に薬(例えばG418、ハイグロマイシン、メトトレキセート)に対する抵抗力を与える。好ましい選択マーカー遺伝子としては、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)遺伝子(dhfr宿主細胞においてメトトレキセートで選択/増幅するのに用いる)、ネオマイシン抵抗遺伝子(G418選択用)、グルタミン酸シンターゼ遺伝子などがある。
【0163】
抗MadCAM抗体をコードしている核酸分子と、その核酸分子を含むベクターとを用い、適切な哺乳動物、植物、細菌、酵母の宿主細胞を形質転換することができる。本発明の抗体は、興味の対象である免疫グロブリンの重鎖と軽鎖の配列に関するトランスジェニック哺乳動物またはトランスジェニック植物を作り、その動物または植物に回収できる形態で抗体を産生させることによって得られる。
【0164】
形質転換は、ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入する(例えばポリヌクレオチドをウイルス(またはウイルス・ベクター)の中に包み込み、そのウイルス(またはベクター)を用いて宿主細胞を形質転換する)公知の任意の方法、または従来技術で知られているトランスフェクション法で実現することができる(例えばアメリカ合衆国特許第4,399,216号、第4,912,040号、第4,740,461号、第4,959,455号に具体例がある)。どの形質転換法を利用するかは、形質転換する宿主が何であるかによって異なる。異種ポリヌクレオチドを哺乳動物の細胞に導入する方法は従来技術でよく知られており、具体例としてはデキストランを媒介としたトランスフェクション法、リン酸カルシウム沈降法、ポリブレンを媒介としたトランスフェクション法、プロトプラスト融合法、電気穿孔法、粒子打ち込み法、リポソームへのポリヌクレオチドの封入法、ペプチド共役体法、デンドリマー法、核に直接DNAを微量注入する方法などがある。
【0165】
発現のための宿主として利用できる哺乳動物細胞系は従来技術でよく知られており、具体例としてはアメリカ基準培養物コレクション(ATCC)から入手できる不死化した多数の細胞系がある。それは例えば、チャイニーズ・ハムスター卵巣(CHO)細胞、NS0細胞、ヒーラ細胞、ベビー・ハムスター腎臓(BHK)細胞、サル腎臓細胞(COS)、ヒト肝細胞がん細胞(例えばHep G2)や、数多い他の細胞系である。非哺乳動物細胞(例えば細菌、酵母、昆虫、植物)も、組み換え抗体を発現させるのに使用できる。非ヒト・グリコシル化によって免疫原性機能、および/または薬物動態機能、および/またはエフェクター機能が変化しないようにするため、抗体のCH2ドメインに部位指定突然変異を誘発してグリコシル化を排除することが好ましい。発現法は、どの系で発現レベルが最も高く、どの系が構成的MadCAM結合特性を持った抗体を産生するかを調べて選択する。
【0166】
さらに、産生細胞系による本発明の抗体(またはその抗体からの他の部分)の発現は、多数の方法で増大させることができる。例えばグルタミンシンターゼとDHFR遺伝子を発現させる系は、所定の条件下で発現を増大させる一般的な方法である。高発現細胞クローンは、従来からある方法(例えば希釈クローニング法や微小液滴法)を利用して同定することができる。グルタミンシンターゼ系の全体または一部は、ヨーロッパ特許第0 216 846号、第0 256 055号、第0 323 997号と、ヨーロッパ特許出願第89303964.4号に記載されている。
【0167】
トランスジェニック哺乳動物における産生に関して述べると、ヤギ、ウシ、または他の哺乳動物のミルクの中に抗体を作らせてそのミルクから抗体を回収することができる。例えばアメリカ合衆国特許第5,827,690号、第5,756,687号、第5,750,172号、第5,741,957号を参照のこと。
【0168】
上記の細胞系で発現した抗MadCAM抗体は、関連する細胞材料から精製および/または回収することができる。抗体は、細胞全体、細胞ライセート、一部を精製した形態、実質的に純粋な形態の中に存在している可能性がある。標準的な方法(例えばアルカリ/SDS処理、カラム・クロマトグラフィや、従来技術でよく知られている他の方法)で精製し、他の細胞成分または他の汚染物質(例えば他の細胞の核酸またはタンパク質)を除去する。Ausbel, F.他編、『分子生物学の最新プロトコル』、グリーン・パブリッシング&ワイリー・インターサイエンス社、ニューヨーク、1987年を参照のこと。
【0169】
本発明では、いろいろな細胞系またはトランスジェニック動物で発現した本発明の抗MadCAM抗体は、互いに異なるグリコシル化パターンを持つ可能性がある。しかしこの明細書に記載した核酸やアミノ酸によってコードされているすべての抗MadCAM抗体は、そのグリコシル化パターン、修飾、欠失とは無関係に本発明の一部をなすと考える。
【0170】
この明細書では、“グリコシル化”という用語は、抗体に共有結合する炭化水素単位のパターンを意味する。この明細書に記載した抗MadCAM抗体が特定のグリコシル化パターンを持つと言う場合、それは、言及した抗MadCAM抗体の大部分がその特定のグリコシル化パターンを持つことを意味する。別の特徴として、この明細書に記載した抗MadCAM抗体が特定のグリコシル化パターンを持つと言う場合、それは、言及した抗MadCAM抗体の50%、75%、90%、95%、99%以上、または100%がその特定のグリコシル化パターンを持つことを意味する。
【0171】
本発明の抗MadCAM抗体には、グリコシル化パターンの異なるものも含まれる(例えば適切なアミノ酸残基の欠失、挿入、置換による、グリコシル化部位の挿入や任意のグリコシル化部位の欠失)。本発明の目的のためには、抗MadCAM抗体はグリコシル化されていてもされていなくてもよい。抗MadCAM抗体がグリコシル化されている場合には、可能な任意のグリコシル化パターンを取ることができる。さらに、1つの抗体の各重鎖が同じグリコシル化パターンを持っていてもよいし、2つの重鎖が異なるグリコシル化パターンを持っていてもよい。
【0172】
投与経路と投与量:
本発明の組成物は溶液にすることができる(例えば注射用や輸液用の溶液)。好ましい形態は、予定する投与形態と何を治療するかに応じて異なる。典型的な好ましい組成物は、注射用または輸液用の溶液の形態(例えばヒトの受動免疫に用いるのと同様の組成物)になっている。好ましい投与形態は、殺菌注射液または油性懸濁液の形態での非経口投与(例えば静脈内投与、皮下投与、皮内投与、腹腔内投与、筋肉内投与、胸骨内投与)または輸液である。当業者であればわかるように、投与経路および/または形態は、どのような結果を望むかに応じて異なることになろう。好ましい一実施態様では、抗体を静脈内に輸液または注射して投与する。別の好ましい一実施態様では、抗体を筋肉内、皮下、皮内に注射する。
【0173】
治療用組成物は、一般に、製造条件下と保管条件下で無菌かつ安定である。
【0174】
組成物は、溶液、マイクロエマルジョン、分散液、リポソームとして製剤化できる。殺菌注射溶液は、必要量の抗MadCAM抗体を、必要な場合には殺菌(例えば濾過殺菌)した後の上記の1つ以上の成分とともに適切な希釈剤の中に組み込むことによって調製できる。一般に、分散液は、活性化合物を、基本的な分散媒体と、上記の成分の中から選択した必要な他の成分とを含む殺菌ビヒクルの中に組み込んで調製する。このような懸濁液は、適切な湿潤剤や懸濁剤、または他の許容可能な基剤を従来技術で知られている方法で適切に分散させて製剤にすることができる。殺菌注射製剤は、毒性のない非経口の許容可能な希釈液または溶媒を用いた殺菌注射溶液、殺菌注射懸濁液(例えば1,3-ブタンジオールを用いた溶液)にすることができる。使用できる許容可能なビヒクルや溶媒としては、水、リンゲル液、等張塩化ナトリウム溶液などがある。さらに、溶媒または懸濁媒体として、殺菌不揮発性油が一般に用いられている。この目的では、不活性な不揮発性油(例えば合成したモノグリセリドやジグリセリド)を使用することができる。さらに、n-3ポリ不飽和脂肪酸も注射液の調製に用いることができる。
【0175】
殺菌注射溶液を調製するための殺菌粉末の場合には、好ましい調製方法は、真空乾燥、凍結乾燥であり、その方法により、あらかじめ殺菌濾過した溶液から、活性成分と、望ましい他の任意の成分とからなる粉末が得られる。溶液の適切な流動性は、例えばレシチンなどのコーティングを用いることによって維持すること、必要とされる粒子サイズを確保することによって維持すること(分散液の場合)、界面活性剤を用いることによって維持することができる。
【0176】
注射組成物を長期にわたって吸収させるには、組成物の中に吸収を遅らせる薬剤(例えばモノステアリン酸塩やゼラチン)を含めたり、組成物を吸収が長期にわたる形態の製剤(例えばデポ製剤、リポソーム、ポリマーマイクロスフェア、ポリマーゲル、インプラント)にしたりする。
【0177】
この明細書に記載した抗体の他の投与法としては、薬を対象の皮膚内に直接放出する皮膚パッチなどがある。このようなパッチは、本発明の抗体を、場合によっては緩衝化溶液の中に含むこと、接着剤の中に溶解および/または分散された状態で含むこと、ポリマーの中に分散された状態で含むことができる。
【0178】
この明細書に記載した抗体のさらに別の投与法としては、目のための眼科用液滴がある。
【0179】
抗体は1回投与することができるが、より好ましいのは複数回の投与である。例えば抗体は、1日に1回から6ヶ月またはそれ以上の期間に1回投与することができる。投与はスケジュールに従ってなされ、例えば1日に3回、1日に2回、1日に1回、2日に1回、3日に1回、週に1回、2週間に1回、1ヶ月に1回、2ヶ月に1回、3ヶ月に1回、6ヶ月に1回投与することができる。
【0180】
抗体は、ミニポンプを通じて連続的に投与することもできる。抗体は、1回、または少なくとも2回、または少なくとも疾患の治療、緩和、治癒が実現するまでの期間にわたって投与するとよい。抗体は、一般に上記の医薬組成物の一部として投与することになろう。
【0181】
本発明の組成物は、本発明の抗体または抗原結合部を治療に有効な量または予防に有効な量含むことができる。この組成物を調製するとき、組成物の中に存在している抗MadCAM抗体の治療に有効な量は、例えば望む投与量と投与法、治療する疾患の性質と程度、対象の年齢と体格を考慮して決定することができる。
【0182】
対象に投与する本発明の医薬組成物の投与量の範囲を例示すると、約0.01mg/kg〜約200mg/kg(対象の体重1キログラム(kg)につき投与する抗MadCAM抗体のミリグラム(mg)数で表示する)、約0.1mg/kg〜約100mg/kg、約1.0mg/kg〜約50mg/kg、約5.0mg/kg〜約20mg/kg、約15mg/kgのいずれかである。本発明に関しては、対象がヒトの場合の平均体重は約70kgである。
【0183】
この明細書に記載したあらゆる濃度の中間の範囲、例えば約6〜94mg/kgも本発明の一部をなすものとする。例えば上限および/または下限として上記の任意の値の組み合わせを用いた範囲も、本発明に含まれるものとする。
【0184】
投与計画は、対象に時間をかけて何回かに分けて投与することによって望ましい最適な反応(例えば治療反応、予防反応)が得られるように調節すること、または、治療、状況の制約に応じて投与量を徐々に減らしたり増やしたりすることができる。投与が容易になるようにするため、そして投与量が一定となるようにするため、非経口組成物は単位用量の形態にすることが特に望ましい。
【0185】
この明細書では、単位用量の形態とは、治療する対象となる哺乳動物にとっての単位用量として適切な、物理的に分離した単位のことを意味する。各単位には、望む治療効果を生じさせるよう計算した所定量の活性化化合物と、必要な医薬用基剤とが含まれている。本発明による単位用量の形態の仕様は、(a)抗MadCAM抗体またはその一部の独自の特性と、実現すべき特定の治療効果または予防効果、ならびに(b)個人の感受性に対処するためにそのような抗体を化合物にする際の従来技術に固有の制約によって決まる。
【0186】
本発明の液体組成物は、単位用量の形態にすることができる。例えばバイアルに入れた単位用量は、さまざまな濃度の抗MadCAM抗体を1〜1000ミリリットル(ml)含むことができる。別の実施態様では、バイアルに入れた単位用量は、さまざまな濃度の抗MadCAM抗体を約1ml、2ml、3ml、4ml、5ml、6ml、7ml、8ml、9ml、10ml、15ml、20ml、30ml、40ml、50ml、100ml含むことができる。必要な場合には各バイアルに殺菌希釈剤を添加し、調製物を望みの濃度に調節することができる。
【0187】
安定性の評価:
本発明には、この明細書に記載した抗MadCAM抗体と、薬理学的に許容可能なキレート剤とを含む安定な医薬組成物が含まれる。安定な組成物は、例えば製品の外観および安定性を維持すること、あるいは製品の外観および安定性の変化(例えば物理的・化学的に分解して生物活性が低下する可能性)に対する抵抗力があることが望ましい。タンパク質の安定性を測定するためのさまざまな分析法や指標が文献に報告されており、そのような多数の方法や指標が、Vincent Lee編、『ペプチドとタンパク質のドラッグ・デリバリー』(マルセル・デッカー社、ニューヨーク、ニューヨーク州、1991年)、247-301ページと、Jones, A.、Drug Delivery Rev.、第10巻、29-90ページ、1993年にまとめられている。一般に、本発明の液体組成物は、低温である期間保管したときの安定性、および/または1回以上の凍結/解凍サイクルを経たときの安定性が向上している。
【0188】
一実施態様では、組成物は、約2℃〜約8℃の温度で少なくとも12ヶ月間、好ましくは少なくとも約18ヶ月間、より好ましくは少なくとも約24ヶ月間にわたって保管したとき、キレート剤が含まれていないこと以外は同じ組成物を同じ条件下で同じ期間保管したものよりも安定である。
【0189】
別の一実施態様では、組成物は、約25℃〜約30℃の温度で少なくとも3ヶ月間、好ましくは少なくとも約6ヶ月間、より好ましくは少なくとも約12ヶ月間にわたって保管したとき、キレート剤が含まれていないこと以外は同じ組成物を同じ条件下で同じ期間保管したものよりも安定である。
【0190】
別の一実施態様では、組成物は、約40℃の温度で少なくとも1ヶ月間、好ましくは少なくとも約2ヶ月間、より好ましくは少なくとも約3ヶ月間にわたって保管したとき、キレート剤が含まれていないこと以外は同じ組成物を同じ条件下で同じ期間保管したものよりも安定である。
【0191】
この明細書では、“凍結/解凍サイクル”という用語は、凍結保管した後に液体抗体サンプルを利用するため、サンプルを0℃以下にして凍結させた後、十分な時間、そのサンプルが液体状態を回復する温度にし、再び凍結温度(好ましくは0℃以下)に戻すという方法を意味する。この明細書では、“凍結保管”という用語は、以前は液体だった抗体サンプルを0℃以下、好ましくは-20℃以下の温度で凍結させてその状態を維持することを意味する。
【0192】
一実施態様では、本発明の組成物は、少なくとも1回の凍結/解凍サイクル、好ましくは少なくとも2回の凍結/解凍サイクル、より好ましくは少なくとも3回の凍結/解凍サイクル、さらに好ましくは少なくとも4回の凍結/解凍サイクル、より一層好ましくは少なくとも5回の凍結/解凍サイクル、それ以上に好ましくは少なくとも6回の凍結/解凍サイクルを経たとき、キレート剤が含まれていないこと以外は同じ組成物を同じ凍結/解凍条件にしたものよりも安定である。
【0193】
別の一実施態様では、組成物は、以下に示す条件のうちの2つ以上を満たす。
(a)組成物は、約2℃〜約8℃の温度で少なくとも12ヶ月間、好ましくは少なくとも約18ヶ月間、より好ましくは少なくとも約24ヶ月間にわたって保管したとき、キレート剤が含まれていないこと以外は同じ組成物を同じ条件下で同じ期間保管したものよりも安定である;
(b)組成物は、約25℃〜約30℃の温度で少なくとも3ヶ月間、好ましくは少なくとも約6ヶ月間、より好ましくは少なくとも約12ヶ月間にわたって保管したとき、キレート剤が含まれていないこと以外は同じ組成物を同じ条件下で同じ期間保管したものよりも安定である;
(c)組成物は、約40℃の温度で少なくとも1ヶ月間、好ましくは少なくとも約2ヶ月間、より好ましくは少なくとも約3ヶ月間にわたって保管したとき、キレート剤が含まれていないこと以外は同じ組成物を同じ条件下で同じ期間保管したものよりも安定である;
(d)組成物は、少なくとも1回の凍結/解凍サイクル、好ましくは少なくとも2回の凍結/解凍サイクル、より好ましくは少なくとも3回の凍結/解凍サイクル、さらに好ましくは少なくとも4回の凍結/解凍サイクル、より一層好ましくは少なくとも5回の凍結/解凍サイクル、それ以上に好ましくは少なくとも6回の凍結/解凍サイクルを経たとき、キレート剤が含まれていないこと以外は同じ組成物を同じ凍結/解凍条件にしたものよりも安定である。
【0194】
別の一実施態様では、組成物は、すぐ上に示した条件のうちの3つ以上を満たす。
【0195】
本発明の目的のためには、例えば抗体の凝集、および/または抗体の断片化、および/または組成物の変色を組成物の安定化の指標として用いることができる。一般に、本発明の液体医薬組成物は、上記の保管条件または凍結/解凍条件のうちの1つ以上の状態にしたとき、キレート剤が含まれていないこと以外は同じ組成物を同じ条件にしたものよりも、抗体の凝集、抗体の断片化、組成物の変色のうちの少なくとも1つがより少ない。
【0196】
液体医薬組成物の中でのタンパク質の凝集は、従来技術で知られているさまざまな方法で測定することができる。その方法として、タンパク質を分子量に基づいて分離するゲル濾過クロマトグラフィなどがある。“ゲル”は、水とポリマー(例えばアガロースや重合したアクリルアミド)のマトリックスである。本発明には、ゲル濾過HPLC(高性能液体クロマトグラフィ)の利用法も含まれる。凝集を測定するための公知の別の方法として、陽イオン交換クロマトグラフィがある。この方法は、陰イオン・カラムを用いたイオン交換クロマトグラフィという一般的な液体クロマトグラフィ法である。本発明で交換される陽イオンは、タンパク質分子からのものである。多価のタンパク質凝集体は抗原結合タンパク質のモノマーの純電荷の何倍かの電荷を持っている可能性があるため、凝集体がより強く保持されることでモノマー分子から分離することができる。好ましい陽イオン交換体は、ポリアスパラギン酸カラムである。するとモノマー・タンパク質は凝集体から容易に識別することができる。しかし当業者であれば、タンパク質の2つの形態を分離できるのであれば、本発明の凝集アッセイが特定のタイプのクロマトグラフィ用カラムに限定されないことが理解できよう。
【0197】
液体医薬組成物に含まれるタンパク質の断片は、従来技術で知られているさまざまな方法で測定することができる。そのような方法として、例えば、サイズ排除クロマトグラフィ、紫外検出(例えば214ナノメートルでの検出)、SDS-PAGE、マトリックス支援レーザー脱着イオン化/飛行時間質量分析(MALDI/TOF MS)などがある。タンパク質が断片化して電荷が変化したこと(それは例えば脱アミド化の結果として起こる)は、例えばイオン交換クロマトグラフィまたは等電点電気泳動(IEF)によって調べることができる。
【0198】
組成物の変色は、一般に、組成物そのものを目で観察することによってわかる。キレート剤を含む本発明の液体医薬組成物は、一般に、キレート剤が含まれていないこと以外は同じ組成物と比べ、組成物の変色(例えばピンク色または黄色になること)が減っている、および/または組成物の透明度(例えば濁度、および/または曇り具合、および/または粒子の形成)が維持されている。本発明では、“変色”という用語は、色の変化(例えば無色透明からピンク色または黄色へ)と透明度の変化(例えば無色透明から、濁り、および/または曇り、および/または粒子ありへ)の両方を意味する。組成物の変色は、一般に、別の方法でも調べることができる。例えば214ナノメートルでの紫外検出によって、および/または他の波長(可視光/近紫外の範囲)での検出、および/またはキレート剤を含む組成物と含まない組成物を標準カラー・スケールと見比べることによって調べられる。PhEr5.0、2005年モノグラフ2.2.2を参照のこと。
【0199】
一実施態様では、以下に示す状態のうちの少なくとも1つ以上の状態にした後に抗体の凝集を調べる。
(a)組成物を、約2℃〜約8℃の温度で少なくとも12ヶ月間、好ましくは少なくとも約18ヶ月間、より好ましくは少なくとも約24ヶ月間にわたって保管する;
(b)組成物を、約25℃〜約30℃の温度で少なくとも3ヶ月間、好ましくは少なくとも約6ヶ月間、より好ましくは少なくとも約12ヶ月間にわたって保管する;
(c)組成物を、約40℃の温度で少なくとも1ヶ月間、好ましくは少なくとも約2ヶ月間、より好ましくは少なくとも約3ヶ月間にわたって保管する;
(d)組成物に、少なくとも1回の凍結/解凍サイクル、好ましくは少なくとも2回の凍結/解凍サイクル、より好ましくは少なくとも3回の凍結/解凍サイクル、さらに好ましくは少なくとも4回の凍結/解凍サイクル、より一層好ましくは少なくとも5回の凍結/解凍サイクル、それ以上に好ましくは少なくとも6回の凍結/解凍サイクルを経験させる。次に、凝集した抗体をクロマトグラフィでモノマーから分離し(例えばHPLCを利用する)、得られたクロマトグラムから凝集の程度を明らかにする。本発明の安定な液体医薬組成物でのクロマトグラム上の凝集体のピークの面積は、一般に、クロマトグラム上の全ピーク面積の約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、約1.5%未満である。凝集を測定するこの方法の特別な一例では、組成物を40℃で24週間にわたって保管した後、SE-HPLCを利用したクロマトグラフィにより分離を行ない、214ナノメートルでの紫外検出を実施する。
【0200】
一般に、本発明の安定な液体医薬組成物でのクロマトグラム上の凝集体のピーク面積と、キレート剤を含まない以外は同じ組成物を同じ条件下にしたものでのクロマトグラムの凝集体のピーク面積の差は、少なくとも約2%、少なくとも約3%、少なくとも約4%、少なくとも約4.5%のいずれかである。
【0201】
別の一実施態様では、組成物を以下に示す状態のうちの1つ以上の状態にした後に抗体の断片化を調べる。
(a)組成物を、約2℃〜約8℃の温度で少なくとも約12ヶ月間、好ましくは少なくとも約18ヶ月間、より好ましくは少なくとも約24ヶ月間にわたって保管する;
(b)組成物を、約25℃〜約30℃の温度で少なくとも約3ヶ月間、好ましくは少なくとも約6ヶ月間、より好ましくは少なくとも約12ヶ月間にわたって保管する;
(c)組成物を、約40℃の温度で少なくとも約1ヶ月間、好ましくは少なくとも約2ヶ月間、より好ましくは少なくとも約3ヶ月間にわたって保管する;
(d)組成物に、少なくとも1回の凍結/解凍サイクル、好ましくは少なくとも2回の凍結/解凍サイクル、より好ましくは少なくとも3回の凍結/解凍サイクル、さらに好ましくは少なくとも4回の凍結/解凍サイクル、より一層好ましくは少なくとも5回の凍結/解凍サイクル、それ以上に好ましくは少なくとも6回の凍結/解凍サイクルを経験させる。次に、抗体フラグメントを電気泳動によって組成物から分離し(例えばSDS-PAGE)、得られた電気泳動パターンまたはゲル・パターンから断片化の程度を明らかにする。本発明の安定な液体医薬組成物でのSDS-PAGEゲル上の断片のバンドの体積は、一般に、ゲル上のバンドの全体積の約9%未満、約8%未満、約7%未満、約6%未満、約5%未満、約4.5%未満のいずれかである。断片化を測定するこの方法の特別な一例では、組成物を40℃で24週間にわたって保管した後に還元SDS-PAGE(rSDS-PAGE)を利用して分析し、モレキュラー・ダイナミクス・パーソナル・PDQC-90写真濃度計またはバイオ-ラドGS800イメージング写真濃度計で走査することによってバンドの体積を明らかにする。
【0202】
一般に、本発明の安定な液体医薬組成物での断片バンドの体積と、キレート剤を含まない以外は同じ組成物を同じ条件にしたものの断片バンドの体積の差は、少なくとも約2%、少なくとも約3%、少なくとも約4%、少なくとも約5%のいずれかである。
【0203】
予防法/治療法:
この明細書に記載したどのタイプの抗体を治療に用いてもよい。好ましい一実施態様では、抗MadCAM抗体はヒト抗体である。別の好ましい一実施態様では、MadCAMはヒトのものであり、対象はヒト患者である。好ましいさらに別の一実施態様では、抗MadCAM抗体はヒトIgG2抗体である。あるいは対象は、抗MadCAM抗体が交差反応するMadCAMタンパク質を発現する哺乳動物にすることができる。獣医学のため、またはヒト疾患のモデル動物にするため、抗体は、その抗体が交差反応するMadCAMを発現する非ヒト哺乳動物(例えば霊長類)に投与するとよい。このようなモデル動物は、本発明による抗体の治療効果を評価するのに役立つ。
【0204】
本発明により、対象における炎症性疾患の治療法であって、対象に、抗MadCAM抗体と;キレート剤のみ、またはキレート剤と他の賦形剤(例えば緩衝液、張性剤、界面活性剤、これらの混合物)の組み合わせを含む液体医薬組成物を投与する操作を含む方法が提供される。さらに別の実施態様では、上記の対象は、炎症性疾患の予防または治療を必要としている対象である。
【0205】
本発明の別の一実施態様では、対象の炎症状態を治療する方法であって、その対象に、抗MadCAM抗体7.16.6と;キレート剤のみ、またはキレート剤と他の賦形剤(例えば緩衝液、張性剤、界面活性剤、これらの混合物の中から選択する)の組み合わせを含む薬理学的に許容可能な賦形剤とを含む液体医薬組成物を投与する操作を含む方法が提供される。
【0206】
本発明のさまざまな実施態様では、炎症性疾患として、胃腸管の炎症性疾患(例えばクローン病、潰瘍性大腸炎、憩室性疾患、胃炎、肝臓疾患、原発性胆管硬化症、硬化性胆管炎)などがある。炎症性疾患としては、腹部疾患(例えば腹膜炎、虫垂炎、胆管疾患)、急性横断性脊髄炎、アレルギー性皮膚炎(例えばアレルギー性の皮膚、アレルギー性湿疹、皮膚アトピー、アトピー性湿疹、アトピー性皮膚炎、皮膚炎、炎症性湿疹、炎症性皮膚炎、ノミ皮膚、粟粒皮膚炎、粟粒湿疹、イエダニ皮膚)、強直性脊椎炎(ライター症候群)、喘息、気道炎、アテローム性硬化症、動脈硬化症、胆道閉鎖症、膀胱炎、乳がん、心臓血管炎(例えば脈管炎、リウマチ性爪郭梗塞、脚潰瘍、多発性筋炎、慢性血管炎、心膜炎、慢性閉塞性肺疾患)、慢性膵炎、神経周膜炎、大腸炎(例えばアメーバ性大腸炎、感染性大腸炎、細菌性大腸炎、クローン大腸炎、虚血性大腸炎、潰瘍性大腸炎、特発性直腸結腸炎、炎症性腸疾患、偽膜大腸炎)、コラーゲン血管疾患(関節リウマチ、SLE、進行性全身性硬化症、混合結合組織病、糖尿病)、クローン病(限局性腸炎、肉芽腫性回腸炎、回結腸炎、消化器系炎)、脱髄疾患(例えば脊髄炎、多発性硬化症、播種性硬化症、急性播種性脳脊髄炎、静脈周囲脱髄、ビタミンB12不足、ギヤン-バレー症候群、MS随伴レトロウイルス)、皮膚筋炎、憩室炎、滲出性下痢、胃炎、肉芽腫性肝炎、肉芽腫炎、胆嚢炎、インスリン依存性糖尿病、肝炎疾患(例えば肝臓線繊症、原発性胆汁性肝硬変、肝炎、硬化性胆管炎)、肺炎(特発性肺線維症、肺の好酸球性肉芽腫、肺組織球増殖症X、細気管支周囲炎、急性気管支炎)、性病性リンパ肉芽腫、悪性黒色腫、口/歯の疾患(例えば歯肉炎、歯周疾患)、粘膜炎、筋骨格系炎(筋炎)、非アルコール性脂肪肝炎(非アルコール性脂肪肝疾患)、目と眼窩の炎症(例えばブドウ膜炎、視神経炎、末梢リウマチ様潰瘍、末梢角膜炎)、変形性関節症、骨髄炎、咽頭炎、多発性関節炎、直腸炎、乾癬、放射線傷害、サルコイドーシス、鎌状細胞ニューロパシー、表在性血栓静脈炎、全身性炎症応答症候群、甲状腺炎、全身性エリテマトーデス、移植片対宿主病、急性火傷、ベーチェット症候群、シェーグレン症候群などもある。
【0207】
より好ましい一実施態様では、抗MadCAM抗体を大腸炎の対象に投与する。
【0208】
製造装置:
本発明の別の一実施態様では、製造装置が提供される。この製造装置は、キレート剤のみ、またはキレート剤と薬理学的に許容可能な他の賦形剤の組み合わせを含む組成物の中に本発明の少なくとも1つのモノクローナル抗MadCAM抗体が含まれた液体医薬組成物を収容する容器を備えている。適切な容器としては、例えば瓶、バイアル、袋、注射器などがある。容器は、いろいろな材料(ガラスやプラスチック)で作ることができる。容器の一例は、3〜20ccの使い捨てガラス製バイアルである。あるいは複数用量の組成物の場合には、容器を3〜100ccのガラス製バイアルにするとよい。容器には組成物が収容され、その容器の表面に貼り付けるかその容器に添付したラベルに使用法を記載することができる。製造装置はさらに、商品の観点、使用者の観点から望ましい他の材料(例えば他の緩衝液、希釈剤、フィルタ、針、注射器、使用法を記載したパッケージ添付物、禁忌、起こりうる副作用)も備えることができる。
【0209】
本発明により、モノクローナル抗MadCAM抗体7.16.6の溶液を収容した第1の容器と、抗体を安定化させるための十分な量のキレート剤を単独で、またはそのキレート剤を他の賦形剤と組み合わせて収容した第2の容器とを備える、安定化した抗体の液体組成物を調製するためのキットも提供される。
【0210】
以下の実施例において本発明の実施態様を説明する。本発明の請求項の範囲に含まれる他の実施態様は、当業者にとっては、この明細書に開示した本発明の詳細な説明または実施法から明らかであろう。詳細な説明および実施例は単なる例示であり、本発明の範囲と精神は添付の請求項に記載されている。実施例では、特に断わらない限り、%の数値はすべて重量%である。当業者であれば、実施例に記載した重量および/または重量と体積の比を、この明細書に記載した成分について知られている分子量を用いてモルおよび/またはモル濃度に変換することができよう。この明細書に具体的に示した重量(例えばグラム)は、記載した(例えば緩衝液、抗体組成物などの)体積についての値である。当業者であれば、組成物の体積を別の値にしたいときには重量を比例によって変えられることがわかるであろう。
【実施例】
【0211】
実施例1:
抗MadCAM抗体産生ハイブリドーマの作製
本発明の抗体をこの実施例に従って調製した。PCT/US2005/000370を参照のこと。
【0212】
一次免疫原調製物:
ゼノマウス(登録商標)を免疫化するため、2つの免疫原を調製した。すなわち(i)MadCAM-IgG1 Fc融合タンパク質と、(ii)MadCAMが安定にトランスフェクトされた細胞から調製した細胞膜である。
【0213】
(i)MadCAM-IgG1 Fc融合タンパク質
発現ベクターの構成:
MadCAMの成熟した細胞外免疫グロブリン様ドメインをコードしているEcoRI/BgIII cDNAフラグメントをpINCYインサイト・クローン(3279276)から切り出してクローニングし、pIG1ベクターのEcoRI/BgHI部位に入れ(『発生における細胞相互作用:実践的アプローチ』、Hartley, D.A.編(オックスフォード大学出版、オックスフォード、1993年)のSimmons, D.L.による93-127ページ)、インフレームIgG1 Fc融合体を作った。得られた挿入体をEcoRI/NotIを用いて切り出し、クローニングしてpCDNA3.1+(インヴィトロジェン社)に入れた。このベクターに入れたMadCAM-IgG1 Fc cDNAの配列を確認した。MadCAM-IgG1 Fc融合タンパク質のアミノ酸配列を以下に示す。
【0214】
【化1】

【0215】
組み換えタンパク質の発現/精製:
MadCAM-IgG1 Fc融合タンパク質のcDNAを含むpCDNA3.1+ベクターをCHO-DHFR細胞にトランスフェクトし、600μg/mlのG418と100ng/mlのメトトレキセートを含むイスコフ培地の中でMadCAM-IgG1 Fc融合タンパク質を発現している安定なクローンを選択した。タンパク質を発現させるため、中空ファイバー・バイオリアクターの中に、10%低IgGウシ胎仔血清(ギブコ社)と、いろいろな非必須アミノ酸(ギブコ社)と、2mMのグルタミン(ギブコ社)と、ピルビン酸ナトリウム(ギブコ社)と、100μg/mlのG418と、100ng/mlのメトトレキセートとを含むイスコフ培地を入れてその中に安定に発現しているMadCAM-IgG1 Fc CHO細胞を植え、このバイオリアクターを用いて培地の濃縮された上清を作り出した。回収した上清からMadCAM-IgG1 Fc融合タンパク質をアフィニティ・クロマトグラフィによって精製した。簡単に説明すると、上清をハイトラップ・プロテインGセファロース(5ml、ファルマシア社)カラムに入れ(2ml/分)、25mMのトリス(pH8)と150mMのNaCl(カラム5容積分)で洗浄し、100mMのグリシン(pH2.5)で溶離し(1ml/分)、1Mのトリス(pH8)を用いて分画を直ちに中和してpHを7.5にした。MadCAM-IgG1 Fc融合タンパク質を含む分画をSDS-PAGEによって同定し、1つにまとめてプールし、セファクリルS100カラム(ファルマシア社)に入れ、35mMのビストリス(pH6.5)と150mMのNaClを用いてあらかじめ平衡させた。0.35ml/分の速度でゲル濾過し、ほぼ3×5mlの分画の中にMadCAM-IgG1 Fc融合タンパク質のピークを回収した。サンプルをプールし、リソースQ(6ml、ファルマシア社)カラムに入れ、35mMのビストリス(pH6.5)の中であらかじめ平衡させた。カラムをカラム5容積分の35mMビストリス(pH6.5)と150mMのNaCl(6ml/分)で洗浄し、35mMのビストリス(pH6.5)と400mMのNaClを用いてMadCAM-IgG1 Fc融合タンパク質を4〜6mlの分画の中に溶離させた。この段階でタンパク質の純度は90%であり、SDS-PAGEによるとそのタンパク質は約68kDの位置に単一のバンドとして移動した。免疫原として用いるため、また続くアッセイで使用するため、この材料の緩衝液を交換して25mMのヘペス(pH7.5)、1mMのEDTA、1mMのDTT、100mMのNaCl、50%グリセロールの中に入れ、アリコートとして-80℃で保管した。
【0216】
(ii)MadCAMを安定に発現する細胞膜
公開されているMadCAM配列(Shyjan, A.M.、J. Immunol.、第156巻、2851-2857ページ、1996年)のヌクレオチド645〜1222を含むSacI/NotIフラグメントを大腸cDNAライブラリからPCRで増幅し、クローニングしてpIND-Hygroベクター(インヴィトロジェン社)のSacI/NotI部位に入れた。追加5'コード配列を含むSacIフラグメントをサブクローニングしてpCDNA3.1 MadCAM-IgG1 Fcからのこの構造体の中に入れ、完全長MadCAM cDNAを生成させた。次にMadCAM cDNAを含むKpnI/NotIフラグメントをクローニングしてpEF5FRTV5GWCATベクター(インヴィトロジェン社)の対応する部位に入れ、CATコード配列と置き換えた。このcDNA挿入体の配列を確認してトランスフェクションを行ない、製造者の指示に従ってFlpリコンビナーゼ技術によってFlpn NIH 3T3細胞(インヴィトロジェン社)の中で安定して発現する単一のクローンを作った。安定に発現しているクローンの選択を、そのクローンがα4β7+JYヒトBリンパ芽球細胞系(Chan, B.M.他、J. Biol. Chem.、第267巻、8366-8370ページ、1992年)の結合をサポートする能力を基準にして行なった。その概略を以下に説明する。MadCAMを発現するCHO細胞の安定なクローンを、Flpln CHO細胞(インヴィトロジェン社)を用いて同様にして調製した。
【0217】
2mMのL-グルタミンと、10%ドナー子ウシ血清(ギブコ社)と、200μg/mlのハイグロマイシンB(インヴィトロジェン社)とを含むダルベッコ改変イーグル培地(ギブコ社)の中でMadCAMを発現するFlpn NIH 3T3細胞を増殖させた後、回転瓶の中で培養した。2mMのL-グルタミンと、10%ドナー子ウシ血清(ギブコ社)と、350μg/mlのハイグロマイシンB(インヴィトロジェン社)とを含むハムF12/ダルベッコ改変イーグル培地(ギブコ社)の中でMadCAMを発現するFlpn NIH 3T3細胞を増殖させた後、回転瓶の中で培養した。酵素を用いない細胞解離溶液(シグマ社)と、引っ掻きと、リン酸緩衝化生理食塩水の中での遠心分離による洗浄を利用して細胞を回収した。25mMのビストリス(pH8)と、10mMのMgCl2と、0.015%(w/v)のアプロチニンと、100U/mlのバシトラシンの中で2回ポリトロン均一化を行なった後、遠心分離により、細胞ペレットから細胞膜を調製した。最終的に得られたペレットを同じ緩衝液に再び懸濁させ、5×108個の細胞に相当するアリコートを肉厚のエッペンドルフに入れて100,000×gを超える値で回転させ、ゼノマウスの免疫化に用いる細胞膜ペレットを得た。上清をデカントし、必要になるときまで膜をエッペンドルフの中で-80℃にて保管した。細胞膜でのタンパク質の発現は、SDS-PAGEと、MadCAMのN末端([C]-KPLQVEPPEP)に対するウサギ抗ペプチド抗体を用いたウエスタン・ブロットによって確認した。
【0218】
免疫化とハイブリドーマの作製:
精製した組み換えMadCAM-IgG1 Fc融合タンパク質(マウス1頭につき1回に10μg)か、安定に発現しているMadCAM-CHO細胞またはNIH 3T3細胞(マウス1頭につき1回に10×106個の細胞)から調製した細胞膜
用い、年齢が8〜10週のゼノマウス(登録商標)の腹腔または後肢に免疫化を行なった。この量の投与を3〜8週間の期間にわたって5〜7回繰り返した。融合の4日前、マウスに対し、ヒトMadCAMの細胞外ドメインを含むPBSの最終回の注射を行なった。免疫化したマウスからの脾臓とリンパ節のリンパ球を、非分泌性骨髄腫P3-X63-Ag8.653細胞系と融合させ、以前に報告されているようにしてHAT選択した(GalfreとMilstein、Methods Enzymol.、第73巻、3-46ページ、1981年)。MadCAM特異的ヒトIgG2κを分泌する一群のハイブリドーマを回収し、サブクローニングした。
【0219】
抗MadCAM抗体を産生する以下のハイブリドーマを2003年9月9日にヨーロッパ細胞培養物コレクション(ECACC), H.P.A.(CAMR、ポートン・ダウン、ソールスベリー、ウィルトシャーSP4 0JG)に寄託した:ハイブリドーマ7.16.6、寄託番号03090909。
【0220】
実施例2
抗体組成物
以下の実施例では以下の組成物に言及する。
【0221】
【表2】

【0222】
【表3】

【0223】
【表4】

【0224】
【表5】

【0225】
【表6】

【0226】
実施例3
異なるいくつかの緩衝液が抗MadCAM抗体7.16.6の凝集に及ぼす効果を調べる実験を行なった。
緩衝液の調製:
まず最初に、ある量の緩衝用の化学物質を水に溶かすことによって緩衝液を調製した(標的の約90%)。次に十分な量の酸溶液または塩基溶液を添加することによって各緩衝液のpHを5.5にした。pHを調節した後、水をさらに添加して緩衝液の最終濃度を20mMにした。緩衝液の濃度を20mMにしたのは、選択したpH5.5でpHが十分に安定するようにするためである。次に、緩衝液を殺菌濾過し(ポアのサイズ0.22ミクロン)、殺菌済みの容器に入れ、あとで使用した。
【0227】
抗体組成物の調製:
以下のようにして抗体組成物を調製した。バルクの抗体溶液を20mMの酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)+140mMの塩化ナトリウムを含む10.5mg/mlの溶液として得た。分子量カットオフ膜(例えば30kD)を用いて4500×gで遠心分離することにより、このバルク溶液の緩衝液を交換して組成物溶液にした。約8容積分を交換し、濃度が約10mg/mlの抗体溶液を調製した。抗体の濃度は、紫外-可視光分光(UV-Vis)法により、280nmでの消衰係数が1.56(mg/ml)-1cm-1という値を利用して決定した。次にすべての成分が含まれた組成物を0.22ミクロンの膜フィルタで濾過して殺菌した。次に濾過された組成物を洗浄し、蒸気滅菌したバイアルに充填し、大協精工777-1フルロテック(登録商標)でコーティングした栓をし、クリンプ・シールし、安定チェンバーの中に入れた。
【0228】
特別に3通りの液体組成物を調製した。すなわち、抗MadCAM抗体7.16.6と酢酸塩緩衝液とを含む組成物、抗MadCAM抗体7.16.6とEDTA緩衝液とを含む組成物、抗MadCAM抗体7.16.6と、酢酸塩、クエン酸塩、リン酸塩の組み合わせとを含む組成物である。次にこれらの組成物を40℃で6週間にわたって保管し、凝集を測定した。
【0229】
【表7】

【0230】
凝集の分析:
抗体組成物を40℃で保管した。6週間目の時点でサイズ排除クロマトグラフィ(SEC)を利用して各組成物の凝集を分析した。サイズ排除クロマトグラフィは、TSKゲルG3000SWXL-G2000SWXLカラムと、0.2Mのリン酸ナトリウム(pH7)移動相を利用して流速0.7ml/分で実施し、214nmでUV検出した。各組成物のクロマトグラムについてピークよりも下の面積を積分することによって凝集のレベルを計算し、高分子量種のピークよりも下にある面積の積分値を全ピーク面積に対するパーセントとして表現した。表3に示してあるように、緩衝液がEDTAである組成物で凝集レベルが最も低く、凝集の相対的増加が最も少なかった。
【0231】
実施例4
緩衝液の濃度と他の賦形剤の存在/不在が抗MadCAM抗体7.16.6の断片化に及ぼす効果を調べる実験を行なった。
【0232】
表4に示した組成物を実施例2に記載した方法で調製し、実施例3に示した方法で評価した。
【0233】
【表8】

【0234】
表4に示したように、液体組成物にEDTAが存在していると、EDTAを含まない組成物よりもLMMの形成が少ない。
【0235】
実施例5
液体抗MadCAM抗体組成物の中に含まれるEDTAが凝集と断片化に及ぼす効果を調べる実験を行なった。
緩衝液を実施例3に記載した方法で調製した。抗体組成物を以下のようにして調製した。バルクの抗体溶液を、20mMの酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)を含む9.6mg/mlの溶液として得た。分子量カットオフ膜(例えば30kD)を用いて5000×gで遠心分離することにより、このバルク溶液の緩衝液を交換して組成物溶液にした。約8容積分を交換し、タンパク質の濃度が約8mg/mlまたは約30mg/mlの抗体溶液を調製した。抗体の濃度は、紫外-可視光分光(UV-Vis)法により、280nmでの消衰係数が1.56(mg/ml)-1cm-1という値を利用して決定した。ポリソルベート80(PS80)を適切な緩衝液を用いて希釈し溶解させることによってPS80の濃縮溶液(一般に20mg/ml)を調製した。次にこのPS80濃縮溶液を抗体溶液に添加し、最終組成物を得た。次にすべての成分が含まれた組成物を0.22ミクロンの膜フィルタで濾過して殺菌した。次に濾過された組成物を洗浄し、蒸気滅菌したバイアルに充填し、大協精工777-1フルロテック(登録商標)でコーティングした栓をし、クリンプ・シールし、安定チェンバーの中に入れた。
【0236】
表5に示した組成物を40℃で26週間にわたって保管し、実施例3に記載したSEC法で評価した。
【0237】
【表9】

【0238】
表6に示した組成物を25℃で26週間にわたって保管し、実施例3に記載したSEC法で評価した。
【0239】
【表10】

【0240】
この実施例は、液体組成物にEDTAが存在していると凝集がより少なく、LMM種の形成がより少ないことを示している。
【0241】
実施例6
酢酸塩緩衝液とヒスチジン緩衝液が抗MadCAM抗体7.16.6の凝集と断片化に及ぼす効果を調べる実験を行なった。表7と表8に示した組成物は、実施例5に記載した方法で調製した。表7の組成物を40℃で26週間にわたって保管し、実施例3に記載したSEC法で分析した。
【0242】
【表11】

【0243】
【表12】

【0244】
表8に示した組成物を25℃で52週間にわたって保管し、実施例3に記載したSEC法で評価した。
【0245】
【表13】

【0246】
この実施例は、緩衝液としてヒスチジンをも用いた組成物では同じpHの酢酸塩を用いた組成物よりも凝集の形成が少ないことを示している。
【0247】
実施例7
抗体の濃度がさまざまである組成物の中で抗MadCAM抗体7.16.6が凝集する傾向を調べる実験を行なった。この実験では、表9の組成物を実施例5に記載した方法で調製した。表9の組成物を5℃、25℃、40℃で26週間にわたって保管した後、実施例3に記載したSEC法で分析した。
【0248】
【表14】

【0249】
表9に示してあるように、凝集する傾向は抗体の濃度が大きくなるほど大きくなる。しかし26週間保管した後に関して表9に示した組成物の安定化効果は、高濃度の組成物での凝集が比較的少ないことを示す加速条件(25℃と40℃での保管)でのデータによって裏付けられる。
【0250】
実施例8
さまざまなレベルのEDTAが含まれた組成物中で抗MadCAM抗体7.16.6が凝集する傾向を調べる実験を行なった。組成物は実施例5に記載したようにして調製したが、抗体の最終濃度を80±10mg/mlに調節した点が異なっている。表10の組成物を5℃または25℃で26週間にわたって保管した後、上記のようにSECで分析した。
【0251】
【表15】

【0252】
この表からわかるように、EDTAが0.05mg/mlと0.10mg/mlだと0.02mg/mlの場合よりも改善が見られ、それぞれの場合にEDTAの存在下での凝集は、5℃で26週間にわたって保管した後に少ない。
【0253】
実施例9
さまざまなレベルのポリソルベート80を含む抗MadCAM抗体7.16.6の組成物の安定性を調べる実験を行なった。組成物は上記のようにして調製したが、抗体の最終濃度は80±10mg/mlに調節した。表11の組成物を25℃または40℃で26週間にわたって保管した後、上記のようにSECで分析した。
【0254】
【表16】

【0255】
表12の組成物を300rpmで室温にて24時間にわたって軌道上を揺するといいう振盪ストレスを与えた。組成物は上記のようにして調製したが、抗体の最終濃度は85±10mg/mlに調節した。
【0256】
【表17】

【0257】
上記の保管安定性の実験は、ポリソルベート80が増えると溶ける凝集のレベルがわずかに上昇することを示しているが、振盪ストレスの実験は、ポリソルベート80のレベルが0.4mg/mlだと振盪ストレスから十分に保護されることを示している。
【0258】
実施例10
さまざまな緩衝液を含む組成物中で抗MadCAM抗体7.16.6が凝集する傾向を調べる実験を行なった。組成物を上記のようにして調製し、抗体の最終濃度を80±10mg/mlに調節した。表13の組成物を25℃または40℃で26週間にわたって保管した。
【0259】
【表18】

【0260】
凝集のレベルは、緩衝液がヒスチジンである組成物で最低であった。
【0261】
実施例11
さまざまな糖とポリオールを含む組成物中で抗MadCAM抗体7.16.6が凝集する傾向を調べる実験を行なった。組成物を上記のようにして調製し、抗体の最終濃度を80±10mg/mlに調節した。表14の組成物を40℃で26週間にわたって保管した。
【0262】
【表19】

【0263】
凝集のレベルは、トレハロースを含む組成物で最低であった。
【0264】
実施例12
さまざまな界面活性剤とPEGを含む組成物中で抗MadCAM抗体7.16.6が凝集する傾向を調べる実験を行なった。組成物を上記のようにして調製し、抗体の最終濃度を80±10mg/mlに調節した。抗体組成物中の界面活性剤またはPEGの最終濃度は、界面活性剤とPEGの濃縮貯蔵溶液から適量を添加することによって実現した。表15の組成物を40℃で26週間にわたって保管した。
【0265】
【表20】

【0266】
PS80を含む組成物とポロキサマー407を含む組成物は、他の界面活性剤や親水性物質を含む組成物よりも性能がわずかに優れていた。
【0267】
実施例13
トレハロースまたはスクロースを含む組成物中のメチオニン256の酸化を調べる実験を行なった。組成物を上記のようにして調製し、抗体の最終濃度を80±10mg/mlに調節した。表16の組成物を5℃または40℃で26週間にわたって保管した。リシル・エンドプロテイナーゼという酵素を用いてタンパク質を消化させ、得られたペプチド断片を逆相HPLCで分離して214nmの吸光度を測定することによってメチオニンの酸化を調べた。メチオニンまたはその酸化形態を含むペプチド断片をモニターした。酸化の割合(%)を、親メチオニンのピークの面積に対する酸化メチオニンのピーク面積として計算した。
【0268】
【表21】

【0269】
トレハロースを含む組成物は、スクロースを含む組成物と比べてメチオニンが酸化する傾向が小さい。
【0270】
実施例14
抗体の濃度が大きい組成物の化学的安定性を調べる実験を行なった。表17と表18の組成物を上記のようにして調製し、抗体の最終濃度を80±10mg/mlに調節した。表17の組成物を5℃で26週間にわたって保管した。化学的安定性をiCEで調べた。pIマーカー、メチルセルロース、ファーマライトと、タンパク質との混合物を調製し、タンパク質の最終濃度を約0.22μg/μlにして測定を行なった。フォーカス時間6分、3000ボルトで電気泳動を実施し、280nmで吸光度を調べた。帯電したさまざまな種の相対的な割合を、ピークよりも下のそれぞれの面積から決定した。
【0271】
【表22】

【0272】
表17の組成物は、主要な種と、全酸性種または全塩基性種とに有意な変化がないため、化学的な安定性が優れている。
【0273】
表18の組成物を5℃で26週間にわたって保管し、還元SDS-PAGEで調べることによって純度を明らかにした。SDS-PAGEを、NuPAGE 4〜12%ビス-トリス・ゲルとコロイド状の青い染料(クーマシー・ブルー)を用いて実施した。還元されたゲルに関しては、NuPAGE還元剤を用いて還元した。還元されたゲルの純度は、純度(%)=重鎖(%)+軽鎖(%)によって推定した。
【0274】
【表23】

【0275】
表18の組成物は、5℃で26週間にわたって保管した後に純度の有意な変化がない。これは、化学的な安定性が優れていることを示している。
【0276】
実施例15
凍結-解凍ストレスに対する高濃度組成物の性能を調べる実験を行なった。
表19の組成物を上記のようにして調製し、抗体の最終濃度を50±10mg/mlに調節した。表19の組成物に対して-70℃/5℃または-20℃/5℃という凍結-解凍サイクルを3回経験させた。この実験は、2mlのガラス製バイアルに組成物を1ml入れて実施した。SE HPLC測定を実施した。その条件は、0.2Mのリン酸ナトリウム(pH7)移動相とTSKゲルG3000SWXLカラムを利用して流速0.7ml/分で実施し、214nmでUV検出するというものである。抗体モノマーよりも前に溶離した抗体関連のピークを合計することにより、凝集体の量を明らかにした。
【0277】
【表24】

【0278】
表19の組成物は、-70℃/5℃と-20℃/5℃のどちらの凍結-解凍サイクルを3回経験した後も凝集体が増加しない。
【0279】
表20の組成物を上記のようにして調製し、抗体の最終濃度を75±15mg/mlに調節した。表20の組成物に対して-20℃/5℃の凍結/解凍サイクルを4回経験させた。この凍結-解凍実験は、10mlのガラス製バイアルに組成物を10ml入れて実施した。SEC測定をこの実施例の冒頭に示したようにして実施した。
【0280】
【表25】

【0281】
表20の組成物は、-20℃/5℃という凍結/解凍サイクルを4回経験した後に凝集体が増加しない。
【0282】
実施例16
凍結保管している間の高濃度組成物の安定性を調べる実験を行なった。表21の組成物を上記のようにして調製し、抗体の最終濃度を約75mg/mlに調節した。表21の組成物を-20℃で13週間にわたって保管し、実施例15に記載したようにして凝集を評価した。
【0283】
【表26】

【0284】
高濃度組成物(抗体が75mg/ml含まれている)は、-20℃で13週間にわたって保管した後に凝集が増加しない。
【0285】
実施例17
高濃度組成物の粘性率を調べる実験を行なった。表22の組成物を上記のようにして調製し、抗体の最終濃度を約75mg/mlに調節した。流量計のプレートの上に載せた組成物に対して平均剪断速度300/秒で粘性率を測定した。
【0286】
【表27】

【0287】
この組成物は皮下投与に適した粘性率である。
【0288】
【化2】

【0289】
【化3】

【0290】
【化4】

【図面の簡単な説明】
【0291】
【図1】mAbの濃度が異なるさまざまなテスト組成物を40℃で26週間まで保管したときにそのテスト組成物に含まれる凝集体の割合(%)をサイズ排除クロマトグラフィ(SEC)によって調べた結果を示すグラフである。
【図2】EDTAの濃度が異なるさまざまなテスト組成物を40℃で26週間まで保管したときにそのテスト組成物に含まれる凝集体の割合(%)をSECによって調べた結果を示すグラフである。
【図3】PS80の濃度が異なるさまざまなテスト組成物を40℃で26週間まで保管したときにそのテスト組成物に含まれる凝集体の割合(%)をSECによって調べた結果を示すグラフである。
【図4】緩衝液の種類が異なるさまざまなテスト組成物を40℃で26週間まで保管したときにそのテスト組成物に含まれる凝集体の割合(%)をSECによって調べた結果を示すグラフである。
【図5】安定剤/張性の種類が異なるさまざまなテスト組成物を40℃で26週間まで保管したときにそのテスト組成物に含まれる凝集体の割合(%)をSECによって調べた結果を示すグラフである。
【図6】界面活性剤の種類が異なるさまざまなテスト組成物を40℃で26週間まで保管したときにそのテスト組成物に含まれる凝集体の割合(%)をSECによって調べた結果を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)少なくとも1つのキレート剤と;
b)配列ID番号2に示した重鎖アミノ酸配列と少なくとも90%が一致するアミノ酸配列;および
配列ID番号4に示した軽鎖アミノ酸配列と少なくとも90%が一致するアミノ酸配列を含む少なくとも1つの抗体とを含み、
ここで、上記抗体がヒトMadCAMに結合することを特徴とする組成物。
【請求項2】
前記組成物が液体組成物であり、上記抗体がヒトIgG2抗体であってシグナル配列を含まない、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記抗体が、配列ID番号2と配列が少なくとも99%一致する重鎖アミノ酸配列と;配列ID番号4と配列が少なくとも99%一致する軽鎖アミノ酸配列とを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記抗体が、配列ID番号2を含む重鎖アミノ酸配列と、配列ID番号4を含む軽鎖アミノ酸配列とを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
少なくとも1つのキレート剤としてEDTAを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
緩衝液をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
少なくとも1つのキレート剤としてEDTAを含み、さらにヒスチジンを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
緩衝液と界面活性剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
緩衝液と、界面活性剤と、張性剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
少なくとも1つのキレート剤としてEDTAを含み、さらに緩衝液と、界面活性剤と、張性剤とを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
少なくとも1つのキレート剤としてEDTAを含み、さらにヒスチジンと、界面活性剤と、張性剤とを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
少なくとも1つのキレート剤としてEDTAを含み、さらにヒスチジンと、ポリソルベート80と、張性剤とを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
少なくとも1つのキレート剤としてEDTAを含み、さらにヒスチジンと、ポリソルベート80と、トレハロースとを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
約1mg/ml〜約200mg/mlの抗体と;
約0.01ミリモル〜約5.0ミリモルのキレート剤と;
約1mM〜約100mMのヒスチジンとを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
約1mg/ml〜約200mg/mlの抗体と;
約0.01ミリモル〜約5.0ミリモルのEDTAと;
約1mM〜約100mMのヒスチジンとを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
約1mg/ml〜約200mg/mlの抗体と;
約0.01ミリモル〜約5.0ミリモルのキレート剤と;
約1mM〜約100mMの緩衝液と;
約0.005ミリモル〜約10ミリモルの界面活性剤と;
約100ミリモル〜約400ミリモルの張性剤とを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
約1mg/ml〜約200mg/mlの抗体と;
約0.01ミリモル〜約5.0ミリモルのEDTAと;
約1mM〜約100mMのヒスチジンと;
約0.005ミリモル〜約10ミリモルのポリソルベート80と;
約100ミリモル〜約400ミリモルの張性剤とを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
約1mg/ml〜約200mg/mlの抗体と;
約0.01ミリモル〜約5.0ミリモルのEDTAと;
約1mM〜約100mMのヒスチジンと;
約0.005ミリモル〜約10ミリモルのポリソルベート80と;
約100ミリモル〜約400ミリモルのトレハロースとを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項19】
約0.1mg/ml〜約100mg/mlの抗体と;
約0.001ミリモル〜約1.0ミリモルのEDTAと;
約1mM〜約50mMのヒスチジンと;
約0.01mg/ml〜約10mg/mlのポリソルベート80と;
約10mg/ml〜約100mg/mlのトレハロースとを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項20】
少なくとも1つのモノクローナル抗MadCAM抗体と、キレート剤とを含む組成物であって、この組成物が、少なくとも約26週間の期間にわたって約40℃の温度で維持したときに安定であるのに十分な量のキレート剤を含む組成物。
【請求項21】
少なくとも1つのモノクローナル抗MadCAM抗体と、薬理学的に許容可能なキレート剤とを含む液体医薬組成物であって、抗体のモル濃度の範囲が約0.0006ミリモル〜約1.35ミリモルであり、キレート剤のモル濃度の範囲が約0.003ミリモル〜約50ミリモルであり、キレート剤に対する抗体のモル比の範囲が約0.00001〜約450である液体医薬組成物。
【請求項22】
配列ID番号2に示した重鎖アミノ酸配列と少なくとも95%が一致するアミノ酸配列に加え、配列ID番号4に示した軽鎖アミノ酸配列と少なくとも95%が一致するアミノ酸配列をさらに含んでいて、ヒトMadCAMと結合する少なくとも1つの抗体と;
薬理学的に許容可能な賦形剤とを含み、ここで、抗体の濃度が少なくとも約50mg/mlである液体医薬組成物。
【請求項23】
配列ID番号2の重鎖アミノ酸配列と、配列ID番号4の軽鎖アミノ酸配列とを有する少なくとも1つの抗MadCAM抗体を、溶液中で少なくとも1つのキレート剤と混合する操作を含む、液体医薬組成物の製造方法。
【請求項24】
対象における炎症性疾患の治療方法であって、その対象に、
a)治療に有効な量の少なくとも1つの抗MadCAM抗体と;
b)薬理学的に許容可能なキレート剤とを含む液体医薬組成物を投与することを含む前記方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−249084(P2006−249084A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−56818(P2006−56818)
【出願日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【出願人】(504396379)ファルマシア・アンド・アップジョン・カンパニー・エルエルシー (130)
【Fターム(参考)】