説明

抗SARSウイルス剤

【課題】優れた抗SARSウイルス活性を有する改変体ポリペプチド、ならびに該改変体又はその薬学的に許容される塩を有効成分とするSARS発症予防剤又は抗SARSウイルス剤を提供する。
【解決手段】SARSウイルスのHR2ペプチドのアミノ酸配列を予想し、X-Glu-Glu-X-X-Lys-Lysスキャンを用いて天然型に比べ優れた抗SARSウイルス活性を示すポリペプチドを構築した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗SARSウイルス剤として使用され得る改変体ポリペプチドに関する。
【背景技術】
【0002】
2003年、アジアの国々において重症呼吸器症候群(SARS;Severe Acute Respiratory Syndrome)が大流行した(例えば、非特許文献1)。しかしながら、SARSの原因であるコロナウイルス(SARS関連コロナウイルス;以下、「SARSウイルス」という。)は、新種のウイルスであり、このウイルスに対する有効な治療薬は未だ見付かっていない。
【0003】
SARSウイルスは、自身の細胞膜と標的細胞の細胞膜を融合することによって標的細胞に感染する。この膜融合の際、SARSウイルスは、Type I型膜融合促進タンパク質(fusion protein)に分類されるSpike-protein(以下S-タンパク質)を利用すると推定されている。
【0004】
S-タンパク質には、α−へリックス性の高い2つの領域が存在する(N末側からHR1, HR2と呼ばれることが多い)。まず、S-タンパク質のN末側が標的細胞膜にアンカリングされ、次いで3つのHR1が相互作用し、3-helix bundleを形成する。この3本鎖α-helical coiled-coilに対して、さらに3つのHR2が外側から取り囲むように逆並行型に結合し、6-helix bundleが形成される。その結果、SARSウイルスと標的細胞膜が近接し、膜融合が成立する。
【0005】
従って、SARSウイルスと標的細胞の膜融合を阻害することで、SARSウイルスの感染を阻害できると考えられる。
【0006】
現在、いくつかの研究グループが、SARSウイルスのS-タンパク質HR2由来ペプチドを作製しているが、その抗SARSウイルス活性は抗ウイルス剤としては充分ではない(いずれもμMレベルの活性)ことが文献上明らかである(例えば非特許文献2及び3)。
【非特許文献1】感染症学雑誌 第77巻 第5号 第303〜309頁
【非特許文献2】Liu, S.; Xiao, G.; Chen, Y.; He, Y.; Niu, J.; Escalante, C. R.; Xiong, H.; Farmar, J.; Debnath, A. K.; Tien, P.; and Jiang, S. Lancet 2004, 363, 938-947.
【非特許文献3】Bosch, B. J.; Martina, B. E. E.; van der Zee, R.; Lepault, J.; Hajiema, B. J. Versluis, C.; Heck, A. J. R.; de Groot, R.; Osterhaus, A. D. M. E.; and Rottier, P. J. M. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 2004, 101, 8455-8460
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、天然型に比べて優れた抗SARSコロナウイルス活性を有する改変体、ならびに該改変体又はその薬学的に許容される塩を有効成分とするSARS発症予防剤又は抗SARSウイルス剤を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、SARSウイルスのHR2ペプチドとしてSR9ペプチド(1151-1185)、SR10ペプチド(1070-1099)、SR11ペプチド(1080-1107)、SR12ペプチド(1109-1124)及びSR13ペプチド(1165-1200)を予想した(括弧内の数字は、Sタンパク質における各ペプチドの位置を表す)。その後、本発明者らは、α−へリックス構造を形成しやすいとされているheptad repeat配列部分(7残基の繰り返し構造)の検索を行った結果、SR9(35残基)ペプチド及びSR13(36残基)ペプチドに多いことを見出した。また、SR13に関しては、SR9に比べC末側に伸張しているが、伸張した部分はTrp, Tyrなどの芳香族アミノ酸が豊富に存在しており、この部分で膜と相互作用しやすい可能性が高いと考えられた。さらに、SR9ペプチド及びSR13ペプチドについて抗SARSウイルス活性を確認したところ、これらのペプチドが抗SARSウイルス活性を有することがわかった。SR9ペプチド及びSR13ペプチドのHR2ペプチドにおける位置関係は、図1に示す通りである。
【0009】
上記に加え、下記の[化3]〜[化5]を用いたスキャンによってSR9ペプチド及びSR13ペプチドの改変体を化学合成法によって作製したところ、天然型のSR9ペプチド又はSR13ペプチドに比べ、優れた抗SARSウイルス活性を示すことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明において下記[化3]〜[化5]を用いたスキャンとは、本発明者らが独自に開発した膜融合阻害ペプチドのデザインコンセプトを指す(以下、X-Glu-Glu-X-X-Lys-Lysスキャンと呼ぶ)。以下、このデザインコンセプトについて説明する。
【0011】
抗SARS活性を有するペプチドは、その基本構造として、7アミノ酸からなるユニットの繰り返しから構成されると便宜上考えることができる。これらのペプチドがα−へリックス構造を形成すると考えた場合、アミノ酸の位置をa, b, c, d, e, f, g potitionと置くことができる(式(II)参照)。X-Glu-Glu-X-X-Lys-Lysは、基本的に上述の7アミノ酸に相当するものである。
【0012】
本発明者らは、抗SARS活性を有するペプチドは、そのX残基をHR1領域との相互作用に利用していると考え、例えばN末側から仮に、(A-B-C-D-E-F-G)n (n = 3〜6)とした場合、A残基をa positionとするフレームの読み方、A残基をd positionとするフレームの読み方、A残基をe positionに置くフレームの読み方の3種類の読み方が、活性体を与えるフレームの読み方であろうと予測した(下記[化3]〜[化5]参照)。
【0013】
X-Glu-Glu-X-X-Lys-Lysスキャンとはどのフレームでの読み方が正しいかを合成化学的に検証する方法論である。すなわち、A残基−a positionではA, D, E残基をX残基と想定することとなる([化3]に相当)。またA残基−d positionではA, E, B残基をX残基と想定することとなる([化4]に相当)。またA残基−e positionではA, D, G残基をX残基と想定することとなる([化5]に相当)。
【0014】
本発明者らは、前提としてA, D, E残基のX残基としての組み合わせが活性発現に重要ではないかと考えた。X-Glu-Glu-X-X-Lys-Lysスキャンによれば、A残基がa positionの場合([化3]参照)、A-D-EがHR1領域との相互作用に必要な面として選択されてくる。A残基がd positionの場合([化4]参照)ではA-E-BがHR1領域との相互作用に必要な面として選択される。またA残基がe positionの場合([化5]参照)ではA-D-GがHR1領域との相互作用に必要な面として選択されてくる。
【0015】
従って、X-Glu-Glu-X-X-Lys-Lysスキャンを簡単に定義するとα−へリックス同士の相互作用に必要な面を形成しているアミノ酸残基を合成化学的に抽出してくる方法論と定義できる。
【0016】
本発明は、以下の改変体ならびに該改変体又はその薬学的に許容される塩を有効成分とする抗SARSウイルス剤を提供するものである。
項1.下記式(I)
【0017】
【化1】

【0018】
(式中nは、3〜6の正の整数である)
に表されるα−へリックス構造をとり、下記式(II)のSARSコロナウイルス スパイク(S)タンパク質を構成するHR2ペプチドの図において、
【0019】
【化2】

【0020】
(i)(b)及び(c)の全てのアミノ酸を酸性アミノ酸にし、且つ(f)及び(g)の全てのアミノ酸を塩基性アミノ酸にした第1改変体、
(ii)(f)及び(g)の全てのアミノ酸を酸性アミノ酸にし、且つ(c)及び(d)の全てのアミノ酸を塩基性アミノ酸とする第2改変体、
(iii)(e)及び(f)の全てのアミノ酸を酸性アミノ酸とし、且つ(b)及び(c)の全てのアミノ酸を塩基性アミノ酸にした第3改変体、
のいずれかからなる改変体。
項2.項1に記載の改変体又はその薬学的に許容される塩を有効成分として、薬学的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤を含有する抗SARSコロナウイルス剤。
項3.項1に記載の改変体又はその薬学的に許容される塩を有効成分として、薬学的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤を含有するSARS発症予防剤又はSARS治療剤。
【0021】
[改変体]
本発明の改変体は、下記式(I)
【0022】
【化1】

【0023】
(式中nは、3〜6の正の整数である)
に表されるα−へリックス構造をとり、上記式(II)のコロナウイルス スパイク(S)タンパク質を構成するHR2ペプチドの改変体(下記(i)〜(iii)に示される)によって構成される。
(i)第1改変体:(b)及び(c)の全てのアミノ酸を酸性アミノ酸にし、且つ(f)及び(g)の全てのアミノ酸を塩基性アミノ酸とする。すなわち、第1改変体は以下の構造を有する。
【0024】
【化3】

【0025】
○:HR1との相互作用に必須のアミノ酸残基(X残基)を表す
●:酸性アミノ酸を表す
□:塩基性アミノ酸を表す
(ii)第2改変体:(f)及び(g)の全てのアミノ酸を酸性アミノ酸にし、且つ(c)及び(d)の全てのアミノ酸を塩基性アミノ酸とする。すなわち、第2改変体は以下の構造を有する。
【0026】
【化4】

【0027】
○:HR1との相互作用に必須のアミノ酸残基(X残基)を表す
●:酸性アミノ酸を表す
□:塩基性アミノ酸を表す
(iii)第3改変体:(e)及び(f)の全てのアミノ酸を酸性アミノ酸とし、且つ(b)及び(c)の全てのアミノ酸を塩基性アミノ酸とする。すなわち、第3改変体は以下の構造を有する。
【0028】
【化5】

【0029】
○:HR1との相互作用に必須のアミノ酸残基(X残基)を表す
●:酸性アミノ酸を表す
□:塩基性アミノ酸を表す
上記(i)、(ii)及び(iii)において、塩基性アミノ酸としては、好ましくはリジン、アルギニン、オルニチン又はヒスチジンであり、より好ましくはリジン、アルギニン又はオルニチンであり、更に好ましくはリジンである。また、酸性アミノ酸としては、好ましくはグルタミン酸、アスパラギン酸又はシステイン酸であり、より好ましくはグルタミン酸である。
【0030】
上記酸性アミノ酸及び塩基性アミノ酸の組み合わせの中でも、グルタミン酸−リジンの組み合わせがより好ましい。
【0031】
また、SARSウイルスのHR2ペプチドと予想されるSR9ペプチドのアミノ酸配列に基づいて本発明の改変体を作製した場合、式(II)中(a)〜(g)の位置における好ましいアミノ酸の例としては、以下に示す通りである。
(a)の位置のアミノ酸:Ile、Val、Ile、Ala、Leu
(b)の位置のアミノ酸:Ser、Val、Asp、Lys、Ile
(c)の位置のアミノ酸:Gly、Asn、Arg、Asn、Asp
(d)の位置のアミノ酸:Ile、Ile、Leu、Leu、Leu
(e)の位置のアミノ酸:Asn、Gln、Asn、Asn、Gln
(f)の位置のアミノ酸:Ala、Lys、Glu、Glu、Glu
(g)の位置のアミノ酸:Ser、Glu、Val、Ser、Leu
SR13ペプチドのアミノ酸配列に基づいて本発明の改変体を作製した場合には、式(II)中(a)〜(g)の位置における好ましいアミノ酸の例としては、以下に示す通りである。
(a)の位置のアミノ酸:Ile、Ala、Leu、Gly、Lys、Leu
(b)の位置のアミノ酸:Asp、Lys、Ile、Lys、Trp
(c)の位置のアミノ酸:Arg、Asn、Asp、Tyr、Pro
(d)の位置のアミノ酸:Leu、Leu、Leu、Glu、Trp
(e)の位置のアミノ酸:Asn、Asn、Glu、Gln、Tyr
(f)の位置のアミノ酸:Glu、Glu、Glu、Tyr、Val
(g)の位置のアミノ酸:Val、Ser、Leu、Ile、Trp
SR13ペプチドにおいては、標的細胞の細胞膜との相互作用のため1186番目のアミノ酸残基以降の領域にTrp残基が多く存在することが好ましい。また、一般に、芳香族アミノ酸は細胞膜に結合しやすい性質があることから、SR13ペプチドのアミノ酸配列では、基本的に、アミノ酸残基番号1191以降の10アミノ酸残基については改変を加えていない。これはこの領域にTrpが3つ及びTyrが2つと、10残基中5残基が芳香族アミノ酸であるという顕著な特徴を有するためである。このような芳香族クラスター(-Tyr-Ile-Lys-Trp-Pro-Trp-Tyr-Val-Trp-Leu-)は、そのままにしておいた方が、膜との相互作用の観点から有利であると考えられる。
【0032】
上記SR9ペプチド及びSR13ペプチドのアミノ酸は、α−へリックス構造を形成し、抗ウイルス活性を有するポリペプチドが得られるのであれば、同じ性質を有するアミノ酸と置換することができる。例えば、疎水性脂肪族アミノ酸であるIleの場合、Ala、Val、Leu、Met等と置換することができる。
【0033】
なお、プロリンは、使用によりα−へリックス構造を破壊する可能性がある場合には使用しないほうが良いが、N末端又はC末端に位置してα−へリックス構造を破壊する可能性がない場合には使用しても良い。
【0034】
また、本発明の改変体は、上記式(I)に示されるa→b→c→d→e→f→gのアミノ酸の繰り返し配列を3〜6個、好ましくは5個含むものである。
【0035】
必要に応じ、α−へリックス構造の形成を促進するため、式(I)に示される繰り返し配列に加え、N末端又はC末端に1〜15個程度の任意のアミノ酸を付加してもよい。任意のアミノ酸としては、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、トリプトファン、フェニルアラニン、チロシン、セリン、スレオニン、システイン、システイン酸、メチオニン、アスパラギン、グルタミン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、アルギニン、ヒスチジン、プロリン、オルニチン、サルコシン、β−アラニン、ノルロイシン、ナフチルアラニン等が例示できる。これらのアミノ酸は、保護基を有していてもよい。
【0036】
本発明の改変体において使用されるアミノ酸は、L体(Lアミノ酸)が好ましいが、D体を用いても良い。D体を用いる場合には、全ての光学活性アミノ酸をD体にすることが好ましい。
【0037】
更には、本発明の改変体におけるペプチド結合(-NH-CO- -N=C(OH)-)を、それと生物学的に等価な結合、例えば、アルケン(-CH=CH-)又はフルオロアルケン(-CF=CH-)とすることも可能である。
【0038】
本発明の天然型の配列(SR9、SR13)及び好ましい具体例として以下のようなアミノ酸 配列を例示できる。
(1)SR9(配列番号1):
Ac-Ile-Ser-Gly-Ile-Asn-Ala-Ser-Val-Val-Asn-Ile-Gln-Lys-Glu-Ile-Asp-Arg-Leu-Asn-Glu-Val -Ala-Lys-Asn-Leu-Asn-Glu-Ser-Leu-Ile-Asp-Leu-Gln-Glu-Leu-NH2
(2)SR9EK1(配列番号2):
Ac-Ile-Glu-Glu-Ile-Asn-Lys-Lys-Val-Glu-Glu-Ile-Gln-Lys-Lys-Ile-Glu-Glu-Leu-Asn-Lys-Lys -Ala-Glu-Glu-Leu-Asn-Lys-Lys-Leu-Glu-Glu-Leu-Gln-Lys-Lys-NH2
(3)SR9EK2(配列番号3):
Ac-Leu-Glu-Glu-Ile-Ser-Lys-Lys-Asn-Glu-Glu-Val-Val-Lys-Lys-Gln-Glu-Glu-Ile-Asp-Lys-Lys-Asn-Glu-Glu-Ala-Lys-Lys-Lys-Asn-Glu-Glu-Leu-Ile-Lys-Lys-Gln-Glu-Glu-Gly-Lys-Lys-Lys-NH2
(4)SR9EK3(配列番号4):
Ac-Ile-Lys-Lys-Ile-Glu-Glu-Ser-Val-Lys-Lys-Ile-Glu-Glu-Glu-Ile-Lys-Lys-Leu-Glu-Glu-Val -Ala-Lys-Lys-Leu-Glu-Glu-Ser-Leu-Lys-Lys-Leu-Glu-Glu-Leu-Gly-Lys-Lys-NH2
(5)SR13(配列番号5):
Ac-Ile-Asp-Arg-Leu-Asn-Glu-Val-Ala-Lys-Asn-Leu-Asn-Glu-Ser-Leu-Ile-Asp-Leu-Gln-Glu-Leu-Gly-Lys-Tyr-Glu-Gln-Tyr-Ile-Lys-Trp-Pro-Trp-Tyr-Val-Trp-Leu-NH2
(6)SR13EK1(配列番号6):
Ac-Ile-Glu-Glu-Leu-Asn-Lys-Lys-Ala-Glu-Glu-Leu-Asn-Lys-Lys-Leu-Glu-Glu-Leu-Gln-Lys-Lys-Gly-Lys-Tyr-Glu-Gln-Tyr-Ile-Lys-Trp-Pro-Trp-Tyr-Val-Trp-Leu-NH2
(7)SR13EK2(配列番号7):
Ac-Ile-Asp-Arg-Leu-Asn-Glu-Glu-Ala-Lys-Lys-Lys-Asn-Glu-Glu-Leu-Ile-Lys-Lys-Gln-Glu-Glu-Gly-Lys-Lys-Lys-Gln-Tyr-Ile-Lys-Trp-Pro-Trp-Tyr-Val-Trp-Leu-NH2
(8)SR13EK3(配列番号8):
Ac-Ile-Asp-Arg-Leu-Glu-Glu-Val-Ala-Lys-Lys-Leu-Glu-Glu-Ser-Leu-Lys-Lys-Leu-Glu-Glu-Leu-Gly-Lys-Lys-Glu-Gln-Tyr-Ile-Lys-Trp-Pro-Trp-Tyr-Val-Trp-Leu-NH2
本発明の限定的解釈を望むものではないが、本発明者らは次のように考える。すなわち、本発明の改変体は、1個又は2個のHR2ペプチドと3量体を形成し、SARSウイルスと標的細胞の膜融合を阻害する。これにより、SARSウイルスの感染を阻止し得ると考えられる。
【0039】
本発明の改変体は、公知のポリペプチド合成法、特に液相合成法あるいは固相合成法によって製造することができる。また、本発明の改変体をコードするDNAを遺伝子組換え技術により宿主細胞に導入し、発現させる方法によっても合成することができる。
【0040】
例えば、固相合成法では、最もC末端に対応するアミノ酸のアミノ基を9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)基などのウレタン型保護基で保護したN-保護アミノ酸のカルボキシル基を、アミノ基を有する不溶性樹脂に結合させた後、アミノ基の保護基を除去し、N末端方向に順次保護アミノ酸を縮合させ、次いで不溶性樹脂およびアミノ酸の保護基を脱保護させて、本発明の改変体を得ることができる。
【0041】
前記のアミノ基を有する不溶性樹脂としては、特に限定されないが、Fmoc-NH-SAL樹脂(4-(2',4'-ジメトキシフェニル-Fmoc-アミノエチル)フェノキシリンカー樹脂)が好ましく、開裂によって直接目的物を与えることができる。
【0042】
本発明の改変体の合成には、保護基を有するアミノ酸(保護アミノ酸)を使用することができる。保護アミノ酸としては、官能基を公知の方法により公知の保護基で保護することにより得ることができるし、市販の保護アミノ酸を使用することもできる。保護基としては公知のものが使用でき、例えば、上記に例示したものを使用できる。
【0043】
保護アミノ酸を調製する場合には、例えば、DIPCDI(ジイソプロピルカルボジイミド)-HOBt(1-ヒドロキシベンゾトリアゾール)法等のような公知の方法を用いることができる。本縮合反応は公知の溶媒中で行うことができ、例えば、ジメチルホルムアミド等の有機溶媒が例示される。アミノ基の保護基の脱離試薬としては限定されず、ピペリジン/ジメチルホルムアミド等の公知の試薬によって、Fmoc基等の保護基を切断することができる。
【0044】
また、合成の各段階における縮合反応の進行の程度は、例えばニンヒドリン反応法のような公知の方法によって確認することができる。
【0045】
上記のようにして、所望のアミノ酸配列を有する保護ポリペプチドを得ることができる。
【0046】
不溶性樹脂としてFmoc-NH-SAL樹脂を用いた場合、TMSBr(トリメチルシリルブロミド)やTFA(トリフルオロ酢酸)等で処理することにより、樹脂及び保護基を同時に脱離させることができる。
【0047】
このようにして得られた本発明の改変体は、例えば、抽出、再結晶、各種クロマトグラフィー(ゲルろ過、イオン交換、分配、吸着)、電気泳動、向流分配等、公知の手段により単離精製することができ、逆相高速液体クロマトグラフィーによる方法が好ましい。
【0048】
[SARS発症予防剤/抗SARSウイルス剤]
本発明は、上記の方法によって得られる改変体又はその薬学的に許容される塩を有効成分として、薬学的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤を含有するSARS発症予防剤又は抗SARSウイルス剤を提供する。
【0049】
本発明の改変体及び/又は複合体には、その医薬的に許容される塩も包含される。かかる塩には、当業者に周知の方法により調製される、例えばナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、マグネシウムなどの無毒性アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等が包含される。更に上記塩には、本発明改変体と適当な有機酸乃至無機酸との反応による無毒性酸付加塩も包含される。酸付加塩としては、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、酢酸塩、吉草酸塩、ラウリン酸塩、乳酸塩、リン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩(トシレート)、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、グリコール酸塩、ベンゼンスルホン酸塩及びメタンスルホン酸塩などを例示できる。
【0050】
本発明のSARS発症予防剤又はSARS治療剤には、より詳しくは、上記改変体及び/又は複合体の薬理学的有効量を活性成分とし、これを適当な医薬担体乃至希釈剤と共に含む医薬組成物乃至医薬製剤が含まれる。
【0051】
上記医薬組成物(医薬製剤)に利用できる医薬担体としては、製剤の使用形態に応じて通常使用される、充填剤、増量剤、結合剤、付湿剤、崩壊剤、表面活性剤、滑沢剤などの希釈剤或は賦形剤などを例示でき、これらは得られる製剤の投与単位形態に応じて適宜選択使用される。該製剤形態としては各種のものが治療目的に応じて選択でき、その代表的なものとしては錠剤、丸剤、散剤、液剤、懸濁剤、カプセル剤、坐剤、注射剤(液剤、懸濁剤など)、噴霧剤、エアゾール剤、吸入剤、徐放性ミクロカプセル剤などを例示できる。
【0052】
特に好ましい本発明の医薬製剤は、通常の蛋白製剤などに使用され得る各種の成分、例えば安定化剤、殺菌剤、緩衝剤、等張化剤、キレート剤、pH調整剤、界面活性剤、リン脂質などを適宜使用して調製される。
【0053】
上記安定化剤としては、例えばヒト血清アルブミンや通常のL−アミノ酸、糖類、セルロース誘導体などを例示でき、これらは単独で又は界面活性剤などと組合せて使用できる。特にこの組合せによれば、有効成分の安定性をより向上させ得る場合がある。
【0054】
上記L−アミノ酸としては、特に限定はなく例えばグリシン、システィン、グルタミン酸などのいずれでもよい。
【0055】
上記糖としても特に限定はなく、例えばグルコース、マンノース、ガラクトース、果糖などの単糖類、マンニトール、イノシトール、キシリトールなどの糖アルコール、ショ糖、マルトース、乳糖などの二糖類、デキストラン、ヒドロキシプロピルスターチ、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸などの多糖類など及びそれらの誘導体などを使用できる。
【0056】
界面活性剤としても特に限定はなく、イオン性及び非イオン性界面活性剤のいずれも使用でき、例えばポリオキシエチレングリコールソルビタンアルキルエステル系、ポリオキシエチレンアルキルエ−テル系、ソルビタンモノアシルエステル系、脂肪酸グリセリド系などを使用できる。
【0057】
セルロース誘導体としても特に限定はなく、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどを使用できる。
【0058】
上記糖類の添加量は、有効成分1μg当り約0.0001mg程度以上、好ましくは約0.01〜10mg程度の範囲とするのが適当である。界面活性剤の添加量は、有効成分1μg当り約0.00001mg程度以上、好ましくは約0.0001〜0.01mg程度の範囲とするのが適当である。ヒト血清アルブミンの添加量は、有効成分1μg当り約0.0001mg程度以上、好ましくは約0.001〜0.1mg程度の範囲とするのが適当である。アミノ酸は、有効成分1μg当り約0.001〜10mg程度とするのが適当である。また、セルロース誘導体の添加量は、有効成分1μg当り約0.00001mg程度以上、好ましくは約0.001〜0.1mg程度の範囲とするのが適当である。
【0059】
本発明医薬製剤中に含まれる有効成分の量は、広範囲から適宜選択されるが、通常約0.00001〜70重量%、好ましくは0.0001〜5重量%程度の範囲とするのが適当である。
【0060】
また本発明医の薬製剤中には、各種添加剤、例えば緩衝剤、等張化剤、キレート剤などをも添加することができる。ここで緩衝剤としては、リン酸、酢酸、クエン酸、ε−アミノカプロン酸、グルタミン酸及び/又はそれらに対応する塩(例えばそれらのナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩などのアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩)などを例示できる。等張化剤としては、例えば塩化ナトリウム、塩化カリウム、糖類、グリセリンなどを例示できる。またキレート剤としては、例えばエデト酸ナトリウム、クエン酸などを例示できる。
【0061】
本発明の医薬製剤は、溶液製剤として使用できる他に、これを凍結乾燥化し保存し得る状態にした後、用時水、生埋的食塩水などを含む緩衝液などで溶解して適当な濃度に調製した後に使用することも可能である。
【0062】
また、本発明の医薬製剤は、錠剤、丸剤、散剤、粉末剤、顆粒剤、カプセル剤などの固体投与形態や、溶液、懸濁剤、乳剤、シロップ、エリキシルなどの液剤投与形態に調製されてもよい。これらは更に投与経路に応じて経口剤、非経口剤、経鼻剤、経膣剤、坐剤、舌下剤、軟膏剤などに分類され、それぞれ通常の方法に従い、調合、成形乃至調製することができる。
【0063】
例えば、錠剤の形態に成形するに際しては、上記製剤担体として乳糖、白糖、塩化ナトリウム、ブドウ糖、尿素、デンプン、炭酸カルシウム、カオリン、結晶セルロース、ケイ酸、リン酸カリウムなどの賦形剤、水、エタノール、プロパノール、単シロップ、ブドウ糖液、デンプン液、ゼラチン溶液、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドンなどの結合剤、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、乾燥デンプン、アルギン酸ナトリウム、カンテン末、ラミナラン末、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウムなどの崩壊剤、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリドなどの界面活性剤、白糖、ステアリン、カカオバター、水素添加油などの崩壊抑制剤、第4級アンモニウム塩基、ラウリル硫酸ナトリウムなどの吸収促進剤、グリセリン、デンプンなどの保湿剤、デンプン、乳糖、カオリン、ベントナイト、コロイド状ケイ酸などの吸着剤、精製タルク、ステアリン酸塩、ホウ酸末、ポリエチレングリコールなどの滑沢剤などを使用できる。
【0064】
更に錠剤は必要に応じ通常の剤皮を施した錠剤、例えば糖衣錠、ゼラチン被包錠、腸溶被錠、フィルムコーティング錠或は二重錠乃至多層錠とすることができる。
【0065】
丸剤の形態に成形するに際しては、製剤担体として例えばブドウ糖、乳糖、デンプン、カカオ脂、硬化植物油、カオリン、タルクなどの賦形剤、アラビアゴム末、トラガント末、ゼラチン、エタノールなどの結合剤、ラミナラン、カンテンなどの崩壊剤などを使用できる。
【0066】
カプセル剤は、常法に従い通常本発明の有効成分を上記で例示した各種の製剤担体と混合して硬質ゼラチンカプセル、軟質カプセルなどに充填して調整される。
【0067】
経口投与用液体投与形態は、慣用される不活性希釈剤、例えば水、を含む医薬的に許容される溶液、エマルジョン、懸濁液、シロップ、エリキシルなどを包含し、更に湿潤剤、乳剤、懸濁剤などの助剤を含ませることができ、これらは常法に従い調製される。
【0068】
非経口投与用の液体投与投与形態、例えば滅菌水性乃至非水性溶液、エマルジョン、懸濁液などへの調製に際しては、希釈剤として例えば水、エチルアルコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル及びオリーブ油などの植物油などを使用でき、また注入可能な有機エステル類、例えばオレイン酸エチルなどを配合できる。これらには更に通常の溶解補助剤、緩衝剤、湿潤剤、乳化剤、懸濁剤、保存剤、分散剤などを添加することもできる。 滅菌は、例えばバクテリア保留フィルターを通過させる濾過操作、殺菌剤の配合、照射処理及び加熱処理などにより実施できる。また、これらは使用直前に滅菌水や適当な滅菌可能媒体に溶解することのできる滅菌固体組成物形態に調製することもできる。
【0069】
坐剤や膣投与用製剤の形態に成形するに際しては、製剤担体として、例えばポリエチレングリコール、カカオ脂、高級アルコール、高級アルコールのエステル類、ゼラチン及び半合成グリセライドなどを使用できる。
【0070】
噴霧剤、エアゾール剤、吸入剤、経鼻又は舌下投与用組成物は、周知の標準賦形剤を用いて、常法に従い調製することができる。
【0071】
尚、本発明の医薬製剤中には、必要に応じて着色剤、保存剤、香料、風味剤、甘味剤などや他の医薬品などを含有させることもできる。
【0072】
上記医薬製剤の投与方法は、特に制限がなく、各種製剤形態、患者の年齢、性別その他の条件、疾患の程度などに応じて決定される。例えば錠剤、丸剤、液剤、懸濁剤、乳剤、顆粒剤及びカプセル剤は経口投与され、注射剤は単独で又はブドウ糖やアミノ酸などの通常の補液と混合して静脈内投与され、更に必要に応じ単独で筋肉内、皮内、皮下もしくは腹腔内投与され、坐剤は直腸内投与され、経膣剤は膣内投与され、経鼻剤は鼻腔内投与され、舌下剤は口腔内投与される。
【0073】
上記医薬製剤の投与量は、特に限定されず、所望の治療効果、投与法、治療期間、患者の年齢、性別その他の条件などに応じて広範囲より適宜選択されるが、一般的には、通常成人に対して有効成分量が、1日体重1kg当り、約0.01 μg〜100 mg程度、好ましくは約0.1 mg〜10 mg程度とするのがよく、該製剤は1日に1回又は数回に分けて投与することができる。
【0074】
本発明のSARS発症予防剤又は抗SARSウイルス剤は、SARSウイルスのHR2ペプチドのアミノ酸配列を予想して得られたポリペプチドの改変体であることから、特に、SARSウイルスによって引き起こされる感染症に有効である。 また、コロナウイルス全体を通じ、SARSコロナウイルスHR2ペプチドのアミノ酸配列の保存性は高いと考えられるため、SARSウイルス以外のコロナウイルスに対しても、本発明の抗SARSウイルス剤を適用することができる。
【0075】
従って、SARS発症予防剤又は本発明の抗SARSウイルス剤は、SARS以外にも鼻風邪(鼻汁、鼻閉、くしゃみ等)等のコロナウイルスの感染によって引き起こされる疾患に広く適用され得る。
【0076】
さらに、本発明の改変体を得るため利用したX-Glu-Glu-X-X-Lys-Lysスキャンを使用すれば、突然変異によって急速に感染が拡大するウイルスに対しても、比較的迅速に抗ウイルス剤を作製することができる。このような場合にも、SARSウイルスに対して抗ウイルス活性を有する改変体を得る方法と同様に、まず、ウイルス遺伝子の解読を行い、次に膜融合に関するアミノ酸領域を確定する。その後、このペプチド領域の配列に対してX-Glu-Glu-X-X-Lys-Lysスキャンを施したペプチドの合成を行い、抗ウイルス活性を評価することで抗ウイルス剤を得ることができる。
【発明の効果】
【0077】
本発明によれば、極めて高い抗SARSウイルス活性を有する改変体並びに該改変体を有効成分とする抗SARSウイルス剤及びSARS治療剤を提供することができる。
【0078】
また、本発明の改変体を得るため利用したX-Glu-Glu-X-X-Lys-Lysスキャンを使用し、突然変異によって急速に感染が拡大するウイルスに対しても、迅速に対応することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0079】
以下、実施例を挙げて詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【実施例1】
【0080】
[MTTアッセイ]
ベロE6細胞を96穴プレートにまき、SR9,SR9EK1、SR9EK2又はSR9EK3をそれぞれ添加した後、SARSウイルス(MOI=0.01)を感染させた。 72時間培養した後、0.5mg/mlの3-(4,5-dimethylthiazol-2-yl)-2, 5-diphenyl tetrazolium bromide(MTT)を添加し、4時間インキュベーションを行った。ホルマザン結晶を100μlの0.04N HCl-イソプロピルアルコール(acid isopropanol)に溶解し、570 nmにおける吸光度を測定した(基準波長=655 nm)。MTTアッセイの結果を表1に示す。
【0081】
【表1】

【実施例2】
【0082】
[RT-PCR]
ベロE6細胞を96穴プレートにまき、SR9,SR9EK1、SR9EK2又はSR9EK3をそれぞれ添加した後、SARSウイルス(MOI=0.01)を感染させた。 その後、60時間培養し、ISOGEN(ニッポン・ジーン製)を用い、使用説明書に従って上清中のSARSウイルスRNAを精製した。SARSウイルスORF-1 RNAの定量のため、配列番号9及び10に示されるプライマーならびに配列番号11に示されるプローブを用いてreal time RT-PCRを行った。real time RT-PCRの結果を表2に示す。
【0083】
【表2】

【0084】
MTTアッセイ及びreal time RT-PCRを用いてベロ細胞の生存によって本発明の化合物の効果を確認し、EC50(ウイルス感染による細胞変性効果をコントロール値の50%抑制するのに必要な化合物の濃度)、EC90(ウイルス感染による細胞変性効果をコントロール値の90%抑制するのに必要な化合物の濃度)を求めた。結果を表3に示す。
【0085】
【表3】

【0086】
SREK3は、SR9(天然型SR9)に比べわずかに高い活性を示すのみである。しかしながら、SARSウイルス以外の他のコロナウイルスに対しては、高い抗ウイルス活性を有する可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】SR9及びSR13ペプチドのHR2ペプチドにおける位置関係を示す。SR9ペプチドとSR13ペプチドは相互にオーバーラップしている(太字部分)。
【配列表フリーテキスト】
【0088】
配列番号1は、SR9のアミノ酸配列である。
配列番号2は、SR9EK1のアミノ酸配列である。
配列番号3は、SR9EK2のアミノ酸配列である。
配列番号4は、SR9EK3のアミノ酸配列である。
配列番号5は、SR13のアミノ酸配列である。
配列番号6は、SR13EK1のアミノ酸配列である。
配列番号7は、SR13EK2のアミノ酸配列である。
配列番号8は、SR13EK3のアミノ酸配列である。
配列番号9は、SARSウイルスORF-1フォーワードプライマーである。
配列番号10は、SARSウイルスORF-1リバースプライマーである。
配列番号11は、real time RT-PCRで使用したDNAプローブである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)
【化1】

(式中nは、3〜6の正の整数である)
に表されるα−へリックス構造をとり、下記式(II)のSARSコロナウイルス スパイク(S)タンパク質を構成するHR2ペプチドの図において、
【化2】

(i)(b)及び(c)の全てのアミノ酸を酸性アミノ酸にし、且つ(f)及び(g)の全てのアミノ酸を塩基性アミノ酸にした第1改変体、
(ii)(f)及び(g)の全てのアミノ酸を酸性アミノ酸にし、且つ(c)及び(d)の全てのアミノ酸を塩基性アミノ酸とする第2改変体、
(iii)(e)及び(f)の全てのアミノ酸を酸性アミノ酸とし、且つ(b)及び(c)の全てのアミノ酸を塩基性アミノ酸にした第3改変体、
のいずれかからなる改変体。
【請求項2】
請求項1に記載の改変体又はその薬学的に許容される塩を有効成分として、薬学的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤を含有する抗SARSコロナウイルス剤。
【請求項3】
請求項1に記載の改変体又はその薬学的に許容される塩を有効成分として、薬学的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤を含有するSARS発症予防剤又はSARS治療剤。






【図1】
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【公開番号】特開2007−326781(P2007−326781A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−255819(P2004−255819)
【出願日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【出願人】(504132272)国立大学法人京都大学 (1,269)
【出願人】(504179255)国立大学法人 東京医科歯科大学 (228)
【Fターム(参考)】