説明

抗TNF−α抗体およびその用途

本開示は、腫瘍壊死因子アルファ(「TNF−α」)に対する抗体、ならびにそのような抗体の用途、例えば、TNF−αの活性および/または過剰産生に関連した疾患を治療するための用途に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1.関連出願への相互参照
本出願は、2009年4月16日に出願された米国仮出願番号61/170,053の利益を請求するものであり、その内容はすべて参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
2.配列リストへの参照
同時に提出される配列リストは参照により本明細書に組み入れられる。
【0003】
3.発明の分野
本発明は、抗TNF−α抗体、抗TNF−α抗体を含む医薬組成物、およびそのような抗体の治療用途に関する。
【背景技術】
【0004】
4.背景
腫瘍壊死因子アルファ(TNF−α)は、免疫系の細胞により放出され該細胞と相互作用する炎症性サイトカインである。TNF−αは、慢性関節リウマチ、クローン病、潰瘍性大腸炎および多発性硬化症のような慢性疾患を含む幾つかのヒト疾患においてアップレギュレーションされることが示されている。例えば、TNF−αのレベルの上昇は慢性関節リウマチ患者の滑液において見られ、慢性関節リウマチの特徴である病的炎症および関節破壊の両方において重要な役割を果たしている。
【0005】
ヒトTNF−αは17kDaのタンパク質であり、その活性形態はホモ三量体として存在する(Pennicaら,1984,Nature 312:724−729;Davisら,1987,Biochemistry 26:1322−1326;Jonesら,1989,Nature 338:225−228)。TNF−αは、ほとんどの細胞型上で同時発現される構造的には関連しているが機能的には異なる2つの細胞表面受容体であるp55およびp75との相互作用により、その生物学的効果を発現する(Loetscherら,1990,Cell 61:351−9;Smithら,1990,Science 248(4958):1019−23)。p55はp55R、p55TNFR、CD120a、TNFR I;TNFR 1およびTNFRSFIaとしても公知である。p75はp75R、p75TNFR、CD120b、TNFR II、TNFR 2およびTNFRSFIbとしても公知である。また、どちらの受容体も、TNF−αに結合しうる可溶性分子としてタンパク質分解的に放出される。
【0006】
疾患、特に慢性関節リウマチの治療方法としてのTNF−α活性の抑制は、抗体および可溶性受容体のようなインヒビターを使用する多種多様な手段により達成されている。具体例には、ヒト免疫グロブリンのFc部分に連結された2つのp75可溶性TNF受容体ドメインを含む組換え融合タンパク質である、ENBREL(登録商標)としてImmunex Corporationにより販売されているエタネルセプト(etanercept)が含まれる。REMICADE(登録商標)としてCentocor Corporationにより販売されているインフリキシマブ(Infliximab)は、マウス抗TNF−α可変ドメインとヒトIgG定常ドメインとを有するキメラ抗体である。他のインヒビターには、天然TNF−αと三量体を形成し受容体結合を妨げる操作されたTNF−α分子が含まれる(Steedら,2003,Science 301:1895−1898;WO 03/033720;WO 01/64889)。TNF−α活性を抑制するこれらの現在の方法は、p55およびp75受容体の両方へのTNF−αの結合を遮断する(例えば、Mease,2005,Expert Opin.Biol.Therapy 5(11):1491−1504を参照されたい)。HUMIRA(登録商標)としてAbbott Laboratoriesにより販売されているアダリムマブ(Adalimumab)は、組換え完全ヒト抗TNF−α抗体である(TussirotおよびWendling,2004,Expert Opin.Pharmacother.5:581−594)。アダリムマブはTNF−αに特異的に結合し、p55およびp75細胞表面TNF−α受容体とのその相互作用を遮断する。アダリムマブはまた、補体依存性細胞傷害性(「CDC」)および抗体依存性細胞媒介細胞傷害性(「ADCC」)によりインビトロで表面TNF−α発現細胞を細胞溶解する。アダリムマブはリンホトキシン(TNF−β)には結合せず、また、それを不活性化しない。アダリムマブはまた、白血球遊走を引き起こす接着分子のレベルの変化を含む、TNFにより誘導または調節される生物学的応答をモジュレーションする(ELAM−1、VCAM−1およびICAM−1では1〜2×10−10MのIC50でそれが生じる。)。
【0007】
アダリムマブは、ヒト抗体であるにもかかわらず、ヒトに投与された場合に免疫応答を惹起しうる。そのような免疫応答は、循環からの、抗体またはその断片の免疫複合体性排除を引き起こし、反復投与を、治療に不適当なものにし、それにより、患者にとっての治療利益を低下させ、該抗体の再投与を制限しうる。
【0008】
したがって、例えば、低い投与量で投与されうる、アダリムマブより高い親和性を有する変異体、またはアダリムマブと比較して低下した免疫原性を有する変異体を作製することにより、これらの問題の1以上を克服する改良された抗TNF−α抗体またはその断片を得ることが必要とされている。
【0009】
本出願の第4節または他のいずれかの節におけるいずれの参考文献の引用または特定も、そのような参考文献が本開示の先行技術として利用可能であると自認するものと解釈されてはならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第03/033720号
【特許文献2】国際公開第01/64889号
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Pennicaら,1984,Nature 312:724−729
【非特許文献2】Davisら,1987,Biochemistry 26:1322−1326
【非特許文献3】Jonesら,1989,Nature 338:225−228
【非特許文献4】Loetscherら,1990,Cell 61:351−9
【非特許文献5】Smithら,1990,Science 248(4958):1019−23
【非特許文献6】Steedら,2003,Science 301:1895−1898
【非特許文献7】Mease,2005,Expert Opin.Biol.Therapy 5(11):1491−1504
【非特許文献8】TussirotおよびWendling,2004,Expert Opin.Pharmacother.5:581−594
【発明の概要】
【0012】
5.概要
本開示は、抗TNF−α抗体D2E7と比較して改善された、TNF−αへの結合、および/またはD2E7と比較して低下した免疫原性を有する、抗TNF−α抗体D2E7の変異体に関する。D2E7は、本明細書において(アミノ末端からカルボキシ末端の順に)CDR−H1(配列番号5)、CDR−H2(配列番号6)およびCDR−H3(配列番号7)と称される3つの重鎖CDR、ならびに本明細書において(アミノ末端からカルボキシ末端の順に)CDR−L1(配列番号8)、CDR−L2(配列番号))およびCDR−L3(配列番号10)と称される3つの軽鎖CDRを有する。本開示の抗TNF−α抗体および抗TNF−α結合性断片は、一般に、D2E7と比較して少なくとも1つのCDRにおいて少なくとも1つのアミノ酸置換を有する。
【0013】
ある態様においては、少なくとも1つのアミノ酸置換または置換の組合せは表11、表12および/または表25から選択される。他の突然変異(置換、欠失または挿入を含む)は表13−25のいずれかから選択されうる。
【0014】
ある態様においては、本開示は、抗TNF−α抗体D2E7と比較して改善された、TNF−αへの結合特性、例えば、改善された親和性を有する、抗TNF−α抗体D2E7の変異体に関する。特定の実施形態においては、本開示の抗体は、TNF−αに対する、D2E7より大きな親和性、例えば、BIAcoreにより測定された場合の、改善されたK、および/または競合ELISAにより測定された場合の、改善された親和性を有する。
【0015】
ある態様においては、該抗TNF−α抗体および抗TNF−α結合性断片は、CDR−L2(配列番号9)におけるS3K、CDR−L2(配列番号9)におけるS3R、CDR−L2(配列番号9)におけるS3N、CDR−L2(配列番号9)におけるT4H、CDR−L2(配列番号9)におけるT4Q、CDR−L2(配列番号9)におけるT4V、CDR−L2(配列番号9)におけるT4F、CDR−L2(配列番号9)におけるT4W、CDR−L2(配列番号9)におけるT4Y、CDR−L2(配列番号9)におけるL5R、CDR−L2(配列番号9)におけるL5K、CDR−L2(配列番号9)におけるQ6K、CDR−L2(配列番号9)におけるQ6R、CDR−H1(配列番号5)におけるD1G、CDR−H1(配列番号5)におけるY2H、CDR−H1(配列番号5)におけるA3G、およびCDR−H2(配列番号6)におけるT3Nから選択される少なくとも1つの置換を含む。改善された親和性変異体抗TNF−α抗体および抗TNF−α結合性断片内に組込まれうる追加的な突然変異は、脱免疫化(deimmunize)置換、例えば、表11に記載されているもの、およびTNF−αに抗TNF−α抗体および抗TNF−α結合性断片が結合する能力を破壊しない他の突然変異、例えば置換、例えば、表13から24に記載されている公知突然変異または表25に記載されている突然変異でありうる。
【0016】
ある態様においては、該抗TNF−α抗体および抗TNF−α結合性断片は、CDR−L2におけるT4F、CDR−L2におけるT4W、CDR−L2におけるT4Y、CDR−L2におけるL5R、CDR−L2におけるQ6R、CDR−H1におけるY2H、CDR−H1におけるA3G、およびCDR−H2におけるT3Nから選択される少なくとも1つの置換を含む。そのような抗TNF−α抗体および抗TNF−α結合性断片内に組込まれうる追加的な突然変異または突然変異の組合せは表11および13から25の1以上から選択されうる。
【0017】
ある他の態様においては、該抗TNF−α抗体および抗TNF−α結合性断片は、CDR−L2におけるT4F、CDR−L2におけるT4W、CDR−L2におけるT4Y、CDR−L2におけるL5R、CDR−L2におけるQ6R、CDR−H1におけるY2H、CDR−H1におけるA3G、およびCDR−H2におけるT3Nから選択される少なくとも1つの置換を含む。そのような抗TNF−α抗体および抗TNF−α結合性断片内に組込まれうる追加的な突然変異または突然変異の組合せは表11および13から18の1以上から選択されうる。
【0018】
さらに他の態様においては、該抗TNF−α抗体および抗TNF−α結合性断片はCDR−L1における置換G5S+A11SまたはG5S+A11Gを含む。そのような抗TNF−α抗体および抗TNF−α結合性断片内に組込まれうる追加的な突然変異または突然変異の組合せは表11から25の1以上から選択されうる。
【0019】
ある態様においては、該抗TNF−α抗体および抗TNF−α結合性断片は、表11、12および25から選択される少なくとも1つの置換と組合されたCDR−L2におけるS3N、CDR−L2におけるT4V、CDR−L2におけるQ6K、およびCDR−H1におけるD1Gから選択される置換を含む。そのような抗TNF−α抗体および抗TNF−α結合性断片内に組込まれうる追加的な突然変異または突然変異の組合せは表11から24の1以上から選択されうる。
【0020】
ある態様においては、該抗TNF−α抗体および抗TNF−α結合性断片は、CDR−L2におけるS3K、CDR−L2におけるS3R、CDR−L2におけるT4H、CDR−L2におけるT4Q、CDR−L2におけるT4F、CDR−L2におけるT4W、CDR−L2におけるT4Y、CDR−L2におけるL5R、CDR−L2におけるL5K、CDR−L2におけるQ6R、CDR−H1におけるY2H、CDR−H1におけるA3G、およびCDR−H2におけるT3Nから選択される少なくとも1つの置換と組合されたCDR−L2におけるS3N、CDR−L2におけるT4V、CDR−L2におけるQ6K、およびCDR−H1におけるD1Gから選択される置換を含む。
【0021】
ある態様においては、該抗TNF−α抗体および抗TNF−α結合性断片は、CDR−L2におけるS3K、T4H、L5RおよびQ6R;S3K、T4Q、L5RおよびQ6K;S3K、T4YおよびL5K;S3KおよびT4Y;S3N、T4V、L5RおよびQ6K;S3N、T4W、L5RおよびQ6R;S3R、T4FおよびL5R;S3R、T4F、L5RおよびQ6R;S3R、T4HおよびQ6K;S3R、T4W、L5KおよびQ6R;T4H、L5KおよびQ6K;T4H、L5KおよびQ6R;T4W、L5RおよびQ6R;ならびにT4YおよびL5Rの少なくとも1つから選択される置換の組合せを含み、ここで、6個のCDRは全体で、抗体D2E7のCDR配列と比較して17個までのアミノ酸置換を有する。該抗TNF−α抗体または抗TNF−α結合性断片は、場合によっては、表11から24の1以上から選択されうる1以上の追加的な突然変異または突然変異の組合せを含む。
【0022】
ある態様においては、該抗TNF−α抗体および抗TNF−α結合性断片はCDR−L2におけるS3K、S3R、S3N、T4F、T4W、T4Y、T4H、T4Q、T4V、L5R、L5K、Q6RおよびQ6Kを含む。そのような抗TNF−α抗体および抗TNF−α結合性断片内に組込まれうる追加的な突然変異または突然変異の組合せは表11から24の1以上から選択されうる。
【0023】
他の態様においては、本開示は、抗TNF−α抗体D2E7と比較して低下した免疫原性を有する、抗TNF−α抗体D2E7の変異体に関する。ある態様においては、該TNF−α抗体および抗TNF−α結合性断片は、R7Q;A11S;R7Q+A11S;N8T;N8T+A11S;I6T;A11G;I6T+A11G;Q4G;Q4G+A11S;Q4G+A11G;Q4H;Q4H+A11S;Q4R;Q4R+A11S;G5S;G5S+A11S;N8S+A11S;I6T+A11S;およびN8T+A11Gから選択される、CDR−L1(配列番号8)における少なくとも1つの置換または置換の組合せを含む。低下した抗原性を有するそのような抗TNF−α抗体および抗TNF−α結合性断片内に組込まれうる追加的な突然変異は、TNF−αに対する結合特性を改善する置換、例えば、表12および/または表25に記載されているもの、ならびにTNF−αに該抗TNF−α抗体および抗TNF−α結合性断片が結合する能力を破壊しない他の突然変異(例えば、置換)、例えば、表13から25に記載されている公知突然変異(これらに限定されるものではない)を含む。
【0024】
ある態様においては、本開示の抗TNF−α抗体および抗TNF−α結合性断片は、D2E7のVHおよびVL配列に対して80%から99%の配列同一性を有するVHおよびVL配列を有し、D2E7と比較して少なくとも1つのCDRにおける少なくとも1つのアミノ酸置換を含む。特定の実施形態においては、D2E7のVHおよびVL配列と比較した場合の重鎖および軽鎖に関する配列同一性(%)は、それぞれ独立して、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%または少なくとも95%の配列同一性から選択される。
【0025】
ある態様においては、本開示の抗TNF−α抗体および抗TNF−α結合性断片は、D2E7のCDRと比較して、それらのCDRに17個までのアミノ酸置換を有する。その標的結合能を維持している17個のアミノ酸置換を有する変異抗体はBostromら,2009,Science 323:1610−14に従い作製されうる。本開示の抗TNF−α抗体および抗TNF−α結合性断片はまた、抗体D2E7のCDR配列と比較して、それらのCDRに16個まで、15個まで、14個まで、13個まで、12個まで、11個まで、10個まで、9個まで、8個まで、7個まで、6個まで、5個まで、または4個までのアミノ酸置換を有しうる。
【0026】
特定の実施形態においては、本開示の抗TNF−α抗体または抗TNF−α結合性断片は、独立して、
・D2E7の対応CDRと比較して、1個まで、または2個まで、または3個までのCDR−H1置換;
・D2E7の対応CDRと比較して、1個まで、2個まで、3個まで、4個まで、5個まで、または6個までのCDR−H2置換;
・D2E7の対応CDRと比較して、1個まで、2個まで、3個まで、4個まで、または5個までのCDR−H3置換;
・D2E7の対応CDRと比較して、1個まで、2個まで、3個まで、または4個までのCDR−L1置換;
・D2E7の対応CDRと比較して、1個まで、2個まで、3個まで、または4個までのCDR−L2置換;および
・D2E7の対応CDRと比較して、1個まで、2個まで、3個まで、または4個までのCDR−L3置換を有する。
【0027】
本開示は更に、D2E7と比較して増加した、TNF−αに対する親和性、および/またはD2E7と比較して低下した免疫原性を有する、修飾された抗TNF−α抗体および抗TNF−α結合性断片を含む医薬組成物を提供する。
【0028】
ある態様においては、本開示の抗TNF−α抗体または抗TNF−α結合性断片は二重特異性抗体、または二重特異性抗体のTNF−α結合性断片でありうる。該二重特異性抗体はTNF−αおよび別の炎症性サイトカイン(例えば、リンホトキシン、インターフェロン−γまたはインターロイキン−1)に特異的でありうる。
【0029】
本開示の抗TNF−α抗体または抗TNF−α結合性断片をコードするヌクレオチド配列を含む核酸を本発明において提供し、同様に、核酸を含むベクターを提供する。また、抗TNF−α抗体または抗TNF−α結合性断片をコードするヌクレオチド配列を含むベクターで形質転換された原核宿主細胞および真核宿主細胞、ならびに該核酸配列を発現するように操作された真核(例えば、哺乳類)宿主細胞を、本発明において提供する。宿主細胞を培養することによる抗TNF−α抗体および抗TNF−α結合性断片の製造方法も提供する。
【0030】
本開示の抗TNF−α抗体または抗TNF−α結合性断片は、免疫障害、例えば全身性エリテマトーデス、慢性関節リウマチ、チロイドーシス(thyroidosis)、移植片対宿主病、強皮症、糖尿病、グレーブス病、サルコイドーシス、慢性炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎またはクローン病の治療に有用である。
【0031】
特許出願においては一般的なとおり、文脈に明らかに矛盾しない限り、単数形の表現は1以上の対象物を表すことに注目されるべきである。本出願においては、特許出願において一般的なとおり、「または」なる語は、選言的な「または」あるいは連言的な「および」を意味するものとして用いられる。
【0032】
本明細書に記載されている全ての刊行物を参照により本明細書に組み入れることとする。本明細書に含まれている文書、法令、資料、装置、物品などのいずれの考察も、専ら、本開示の背景的状況を提供することを目的としたものである。これらの事物の全てが先行技術の基礎を構成すること、また、それが本出願の優先日の前にどこかに存在しておりそれらが本開示の関連分野における一般的知識であったことを自認するものと解釈されるべきではない。
【0033】
本開示の特徴および利点は、その実施形態の以下の詳細な説明から更に明らかとなろう。
【0034】
6.表および図面の簡単な説明
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】表1は、免疫原性に関して試験された、それぞれD2E7 VHペプチドおよびD2E7 VLペプチドを示す。
【図2】表2は、D2E7における、特定されたCD4+ T細胞エピトープ領域を示す。CDR領域が下線で示されている。
【図3】表3はHLAクラスII相関、およびD2E7VL領域ペプチドエピトープに対する応答の相対危険度を示す。
【図4】表4はD2E7 VL CDR1エピトープ変異体の配列を示す。合計99個のドナーを試験した。応答の数、応答の割合(%)および平均刺激指数が、試験された各ペプチドに関して示されている。
【図5】表5は、D2E7の免疫原性を低下させるための、CDR−L1における候補突然変異を示す。表5におけるアミノ酸の番号づけはD2E7軽鎖の場合における位置に対応している。
【図6】表6は、D2E7と比較して有意に低下した結合をもたらさないCDR−L1における置換に関するBIAcoreおよびELISAの結果を示す。表6におけるアミノ酸の番号づけはD2E7軽鎖の場合における位置に対応している。結合のK(BIAcoreにより測定された場合)およびIC50(ELISAにより測定された場合)における改善は「WTx」により示されている。CV%は合計値尺度に対する割合(%)としての標準偏差を意味する。
【図7−1】表7は、D2E7エピトープに対する全ての単一および二重突然変異に関するT細胞アッセイの結果を示す。ペプチド1は親ペプチドである。該親ペプチドに対する修飾は太字で示されている。
【図7−2】表7は、D2E7エピトープに対する全ての単一および二重突然変異に関するT細胞アッセイの結果を示す。ペプチド1は親ペプチドである。該親ペプチドに対する修飾は太字で示されている。
【図8】表8は、専らT細胞アッセイ結果に基づく好ましいエピトープペプチド変異体を示す。表8におけるアミノ酸の番号づけはD2E7軽鎖の場合における位置に対応している。
【図9】表9は、好ましい変異体エピトープペプチドを含有するように構築された抗体の抗増殖生物活性を示す。親物質は未修飾D2E7抗体である。表9におけるアミノ酸の番号づけはD2E7軽鎖の場合における位置に対応している。
【図10】表10は、BIAcoreにより分析された場合の、TNF−αに対するD2E7および該D2E7変異体の結合速度論を示す。表10におけるアミノ酸の番号づけはD2E7軽鎖の場合における位置に対応している。
【図11】表11は、免疫原性を低下させるためにD2E7関連抗体内に組込まれうるCDR−L1置換または置換の組合せを示す。
【図12】表12は、D2E7と比較して改善されたK(BIAcoreにより分析された場合)、親和性(ELISAにより分析された場合)またはそれらの両方をもたらす、CDR−L1以外のCDRアミノ酸置換を示す。表12におけるアミノ酸の番号づけはD2E7軽鎖および重鎖の場合における位置に対応している。結合のK(BIAcoreにより測定された場合)およびIC50(ELISAにより測定された場合)における改善は「WTx」により示されている。CV%は合計値尺度に対する割合(%)としての標準偏差を意味し、「ND」は「不実施」を意味する。
【図13】表13は、本開示の抗体内に組込まれうる、CDR−H1における既知突然変異を示す。
【図14】表14は、本開示の抗体内に組込まれうる、CDR−H2における既知突然変異を示す。単一の枠内の2個のアミノ酸の含有は、該CDRへの付加または挿入を含むCDR変異体を示す。枠の陰影は、陰影付きのアミノ酸残基を欠くCDR変異体を示す。
【図15】表15は、本開示の抗体内に組込まれうる、CDR−H3における既知突然変異を示す。
【図16】表16は、本開示の抗体内に組込まれうる、CDR−L1における既知突然変異を示す。単一の枠内の2個のアミノ酸の含有は、該CDRへの付加または挿入を含むCDR変異体を示す。
【図17】表17は、本開示の抗体内に組込まれうる、CDR−L2における既知突然変異を示す。単一の枠内の2個のアミノ酸の含有は、該CDRへの示されている付加的なN末端アミノ酸を含むCDR変異体を示す。
【図18−1】表18は、本開示の抗体内に組込まれうる、CDR−L3における既知突然変異を示す。単一の枠内の2個のアミノ酸の含有は、該CDRへの示されている付加的なN末端アミノ酸を含むCDR変異体を示す。
【図18−2】表18は、本開示の抗体内に組込まれうる、CDR−L3における既知突然変異を示す。単一の枠内の2個のアミノ酸の含有は、該CDRへの示されている付加的なN末端アミノ酸を含むCDR変異体を示す。
【図19】表19は、本開示の抗体内に組込まれうる、CDR−H1における他の既知突然変異を示す。
【図20】表20は、本開示の抗体内に組込まれうる、CDR−H2における他の既知突然変異を示す。
【図21】表21は、本開示の抗体内に組込まれうる、CDR−H3における他の既知突然変異を示す。
【図22】表22は、本開示の抗体内に組込まれうる、CDR−L1における他の既知突然変異を示す。
【図23】表23は、本開示の抗体内に組込まれうる、CDR−L2における他の既知突然変異を示す。
【図24】表24は、本開示の抗体内に組込まれうる、CDR−L3における他の既知突然変異を示す。
【図25】表25は、D2E7と比較して改善されたK(BIAcoreにより分析された場合)、親和性(ELISAにより測定された場合)またはそれらの両方をもたらす、CDR−L2における点突然変異の組合せを示す。該点突然変異は、単独で又は組合されて、本開示の抗体内に組込まれうる。
【図26】図1Aは、下線付き太字で示されたCDR領域を含有するD2E7重鎖および軽鎖のアミノ酸配列を示す。
【図27】図1BはD2E7のCDR配列および対応配列識別記号を示す。
【図28】図1Cは重鎖CDRの番号付けと重鎖カバト(Kabat)番号付けとの対応表を示す。
【図29】図1Dは軽鎖CDRの番号付けと軽鎖カバト(Kabat)番号付けとの対応表を示す。
【図30】図1Eは、米国特許第6,090,382号に公開されているD2E7の重鎖および軽鎖可変領域のヌクレオチド配列(それぞれ配列番号1および配列番号3)を示す。
【図31】図2はD2E7 VLペプチドの応答率(%)(下図)および平均刺激指数(上図)を示す。
【図32】図3はD2E7 VHペプチドの平均刺激指数(上図)および応答率(%)(下図)を示す。ペプチド番号27は、1つのドナーにおいて、異常な刺激指数を有し、より濃い陰影で示されている。
【図33】図4はD2E7 VL CDR1エピトープペプチド変異体を示す。白抜きの記号は該データセット内の未修飾親ペプチドの複数の再試験を示す。黒塗りの記号は特有のペプチドアラニンスキャン変異体を表す。最も低下した応答を誘発する変異体が示されている。
【図34】図5はD2E7 VL CDR1エピトープペプチド変異体を示す。白抜きの記号は該データセット内の未修飾親ペプチドの複数の再試験を示す。黒塗りの記号は特有のペプチド変異体を表す。最も低下した応答を誘発する変異体が円で示されている。この図は表7からのデータをグラフ表示したものである。
【図35】図6はD2E7変異抗体の競合ELISAの結果を示す。ELISAプレートをTNF−αでコートした。ビオチン化D2E7を単一濃度で全てのウェルに含有させ、該変異抗体を滴定した。各抗体に関してIC50値を計算した。該実験を3回行った。Y軸は該親抗体の結合に対する割合(%)としての平均結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
7.詳細な説明
7.1 抗TNF−α抗体
本開示は抗TNF−α抗体を提供する。特に示さない限り、「抗体」(Ab)なる語は、特定の抗原に特異的に結合し該抗原に対して免疫学的に反応性である免疫グロブリン分子を意味し、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、遺伝的な操作などにより修飾された形態の抗体、例えばキメラ抗体、ヒト化抗体、ヘテロコンジュゲート抗体(例えば、二重特異性抗体、ジアボディ(diabody)、トリアボディ(triabody)およびテトラボディ(tetrabody))ならびに抗体の抗原結合性断片、例えばFab’、F(ab’)、Fab、Fv、rIgGおよびscFv断片(これらに限定されるものではない)を含む。さらに、特に示さない限り、「モノクローナル抗体」(mAb)は、タンパク質に特異的に結合しうる完全分子および抗体断片(例えば、FabおよびF(ab’)断片)を含むと意図される。FabおよびF(ab’)断片は完全抗体のFc断片を欠き、動物または植物の循環からより迅速に消失し、完全抗体より非特異的な組織結合を引き起こしうる(Wahlら,1983,J.Nucl.Med.24:316)。
【0037】
「scFv」なる語は、通常抗体からの重鎖および軽鎖の可変ドメインが連結されて1本の鎖を形成している、一本鎖Fv抗体を意味する。
【0038】
「VH」なる語は、Fv、scFvまたはFabの重鎖を含む、抗体の免疫グロブリン重鎖の可変領域を意味する。「VL」なる語は、Fv、scFv、dsFvまたはFabの軽鎖を含む、免疫グロブリン軽鎖の可変領域を意味する。抗体(Ab)および免疫グロブリン(Ig)は、同じ構造特性を有する糖タンパク質である。抗体は特定の標的に対する結合特異性を示すが、免疫グロブリンは、抗体と、標的特異性を欠く他の抗体様分子との両方を含む。天然抗体および免疫グロブリンは、通常、2つの同一軽(L)鎖と2つの同一重(L)鎖とから構成される約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。各重鎖はアミノ末端に可変ドメイン(VH)を有し、そしてそれに続いて幾つかの定常ドメインを有する。各軽鎖はアミノ末端(VL)に可変ドメインを有し、カルボキシ末端に定常ドメインを有する。
【0039】
本開示の抗TNF−α抗体はヒトTNF−αに結合し、細胞におけるTNF−α受容体活性を抑制する。いずれか1つの理論に束縛されるものではないが、該抗体は低親和性TNF−α受容体(p75)および高親和性TNF−α受容体(p55)の両方へのTNF−αの結合を低下させる、と本発明者らは考えている。
【0040】
本開示の抗TNF−α抗体は、抗体D2E7(アダリムマブ(Adalimumab)またはHUMIRA(登録商標)としても公知である。)のCDRに配列において関連している相補性決定領域(CDR)を含有する。
【0041】
CDRは軽鎖および重鎖可変ドメインの両方における超可変領域としても公知である。可変ドメインの、より高度に保存された部分は、フレームワーク(FR)と称される。当技術分野で公知のとおり、抗体の超可変領域を定めるアミノ酸位置/境界は、当技術分野で公知の種々の定義および状況に応じて様々となりうる。可変ドメイン内の幾つかの位置は混成的な超可変位置とみなされうる。なぜなら、これらの位置は、ある1つの基準に基づけば超可変領域内に存在するとみなされうるが、異なる基準に基づけば超可変領域以外に存在するとみなされうるからである。また、これらの位置の1以上は拡張(extended)超可変領域内に見出されうる。本開示は、これらの混成的超可変位置における修飾を含む抗体を提供する。天然重鎖および軽鎖の可変ドメインはそれぞれ、βシート構造を連結する(そして場合によっては該βシートの一部を形成する。)ループを形成する3つのCDRにより連結されたβシート配置を主にとることにより、4つのFR領域を含む。各鎖内のCDRは、FR1−CDR1−FR2−CDR2−FR3−CDR3−FR4の順序で、FR領域により、接近して連結されており、他方の鎖からのCDRと共に、抗体の標的結合部位の形成に関与する(Kabatら,Sequences of Proteins of Immunological Interest(National Institute of Health,Bethesda,Md.1987)を参照されたい)。本明細書中で用いる、免疫グロブリンアミノ酸残基の番号付けは、特に示さない限り、Kabatらの免疫グロブリンアミノ酸残基の番号付け体系に従って行われる。
【0042】
D2E7の重鎖および軽鎖可変領域の配列は、それぞれ配列番号2および配列番号4により表され、それぞれ配列番号1および配列番号3によりコードされる。重鎖および軽鎖可変領域の配列は図1Aにも示されている。D2E7のCDRの配列およびそれらの対応識別記号は図1Bに示されている。D2E7(米国特許第6,090,382号に公開されているもの)の重鎖および軽鎖可変領域は図1Cに示されている。配列番号2または配列番号4をコードするいずれのヌクレオチド配列も本開示の組成物および方法において使用されうる。
【0043】
本開示は更に、D2E7のCDR配列に関連したCDR配列を含む抗TNF−α抗体断片を提供する。「抗体断片」なる語は、完全長抗体の一部分、一般には標的結合または可変領域を意味する。抗体断片の具体例には、Fab、Fab’、F(ab’)2およびFv断片が含まれる。「Fv」断片は、完全な標的認識および結合部位を含有する最小抗体断片である。この領域は、非共有結合により固く結合した、1つの重鎖可変ドメインと1つの軽鎖可変ドメインとの二量体(VH−VL二量体)からなる。各可変ドメインの、3つのCDRが相互作用して、VH−VL二量体の表面上の標的結合部位を定めるのは、この配置においてである。しばしば、6つのCDRが標的結合特異性を該抗体に付与する。しかし、いくつかの場合には、単一可変ドメイン(または標的に特異的な3つのCDRのみを含むFvの半分)でさえも、標的を認識しそれに結合する能力を有しうる。「一本鎖Fv」または「scFv」抗体断片は単一のポリペプチド鎖内に抗体のVHおよびVLドメインを含む。一般に、Fvポリペプチドは更に、標的結合のための所望の構造をscFvが形成するのを可能にする、VHおよびVLドメイン間のポリペプチドリンカーを含む。「単一ドメイン抗体」は、TNF−αに対する十分な親和性を示す単一のVHまたはVLドメインから構成される。特定の実施形態においては、単一ドメイン抗体はラクダ科動物抗体である(例えば、Riechmann,1999,Journal of Immunological Methods 231:25−38を参照されたい)。
【0044】
Fab断片は軽鎖の定常ドメインと重鎖の第1定常ドメイン(CH)とを含有する。Fab’断片は、抗体ヒンジ領域からの1以上のシステインを含む数個の残基が重鎖CHドメインのカルボキシル末端に付加されている点で、Fab断片とは異なる。F(ab’)断片は、F(ab’)ペプシン消化産物のヒンジシステインにおけるジスルフィド結合の切断により製造される。抗体断片の付加的化学カップリングは当業者に公知である。
【0045】
ある実施形態においては、本開示の抗TNF−α抗体はモノクローナル抗体である。本明細書中で用いる「モノクローナル抗体」なる語は、ハイブリドーマ技術により製造された抗体に限定されない。「モノクローナル抗体」は、任意の真核生物、原核生物またはファージクローンを含む単クローンに由来する抗体を意味し、それが製造された方法には無関係である。本開示に関して有用なモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ、組換え、およびファージディスプレイ技術、またはそれらの組合せの使用を含む、当技術分野で公知の多種多様な技術を用いて製造されうる。本開示の抗TNF−α抗体には、キメラ抗体、霊長類化抗体、ヒト化抗体またはヒト抗体が含まれる。
【0046】
本開示の抗TNF−α抗体はキメラ抗体でありうる。本明細書中で用いる「キメラ」抗体なる語は、例えばラットまたはマウス抗体のような非ヒト免疫グロブリンに由来する可変配列と、典型的にはヒト免疫グロブリン鋳型から選択されるヒト免疫グロブリン定常領域とを有する抗体を意味する。キメラ抗体の製造方法は当技術分野で公知である。例えば、Morrison,1985,Science 229(4719):1202−7;Oiら,1986,BioTechniques 4:214−221;Gilliesら,1985,J.Immunol.Methods 125:191−202;米国特許第5,807,715号、第4,816,567号および第4,816397号(それらの全体を参照により組み入れることとする。)を参照されたい。
【0047】
本開示の抗TNF−α抗体はヒト化されうる。非ヒト(例えば、マウス)抗体の「ヒト化」形態は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含有するキメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖またはそれらの断片(例えば、Fv、Fab、Fab’、F(ab’)または抗体の他の標的結合性サブドメイン)である。一般に、該ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含み、ここで、CDR領域の全て又は実質的に全ては非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、FR領域の全て又は実質的に全てはヒト免疫グロブリン配列のものに対応する。該ヒト化抗体は、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部分(典型的には、ヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のもの)を含みうる。抗体のヒト化の方法は当技術分野で公知である。例えば、Riechmannら,1988,Nature 332:323−7;米国特許第5,530,101号、第5,585,089号、第5,693,761号、第5,693,762号および第6,180,370号(Queenらに対するもの);EP239400;PCT公開WO 91/09967;米国特許第5,225,539号;EP592106;EP519596;Padlan,1991,Mol.Immunol,28:489−498;Studnickaら,1994,Prot.Eng.7:805−814;Roguskaら,1994,Proc.Natl.Acad.Sci.91:969−973;ならびに米国特許第5,565,332号(それらの全ての全体を参照により本明細書に組み入れることとする。)を参照されたい。
【0048】
本開示の抗TNF−α抗体はヒト抗体でありうる。ヒト患者の治療には完全「ヒト」抗TNF−α抗体が望ましいであろう。本明細書中で用いる「ヒト抗体」には、ヒト免疫グロブリンのアミノ酸配列を有する抗体が含まれ、ヒト免疫グロブリンライブラリーから、または1以上のヒト免疫グロブリンに関してトランスジェニックである、内因性免疫グロブリンを発現しない動物から単離された抗体が含まれる。ヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン配列由来の抗体ライブラリーを使用するファージディスプレイ法を含む当技術分野で公知の種々の方法により製造されうる。米国特許第4,444,887号および第4,716,111号;ならびにPCT公開WO 98/46645;WO 98/50433;WO 98/24893;WO 98/16654;WO 96/34096;WO 96/33735;およびWO 91/10741(それらのそれぞれの全体を参照により本明細書に組み入れることとする。)を参照されたい。また、ヒト抗体は、機能性内因性免疫グロブリンを発現し得ないがヒト免疫グロブリン遺伝子を発現しうるトランスジェニックマウスを使用して製造されうる。例えば、PCT公開WO 98/24893;WO 92/01047;WO 96/34096;WO 96/33735;米国特許第5,413,923号、第5,625,126号、第5,633,425号、第5,569,825号、第5,661,016号、第5,545,806号、第5,814,318号、第5,885,793号、第5,916,771号および第5,939,598号(それらの全体を参照により本明細書に組み入れることとする。)を参照されたい。また、Medarex(Princeton,NJ)、Astellas Pharma(Deerield,IL)、Amgen(Thousand Oaks,CA)およびRegeneron(Tarrytown,NY)のような企業が、前記と同様の技術を用いる選択された抗原に対するヒト抗体の提供に関わっているであろう。選択されたエピトープを認識する完全ヒト抗体は、「誘導選択(guided selection)」と称される技術を用いて製造されうる。このアプローチにおいては、同一エピトープを認識する完全ヒト抗体の選択を誘導するために、選択された非ヒトモノクローナル抗体、例えばマウス抗体を使用する(Jespersら,1988,Biotechnology 12:899−903)。
【0049】
本開示の抗TNF−α抗体は霊長類化されうる。「霊長類化抗体」なる語は、サル可変領域とヒト定常領域とを含む抗体を意味する。霊長類化抗体の製造方法は当技術分野において公知である。例えば、米国特許第5,658,570号、第5,681,722号および第5,693,780号(それらの全体を参照により本明細書に組み入れることとする。)を参照されたい。
【0050】
本開示の抗TNF−α抗体は二重特異性抗体でありうる。二重特異性抗体は、少なくとも2つの異なる抗原に対する結合特異性を有するモノクローナル(しばしば、ヒトまたはヒト化)抗体である。本開示においては、該結合特異性の1つはTNF−αに対するものであることが可能であり、もう1つは、任意の他の抗原、例えば細胞表面タンパク質、受容体、受容体サブユニット、組織特異的抗原、ウイルス由来タンパク質、ウイルスコード化エンベロープタンパク質、細菌由来タンパク質または細菌表面タンパク質などに対するものでありうる。
【0051】
本開示の抗TNF−α抗体には、誘導体化抗体が含まれる。限定的なものではないが、例えば、誘導体化抗体は、典型的には、グリコシル化、アセチル化、PEG化(pegylation)、リン酸化、アミド化、公知の保護/遮蔽基による誘導体化、タンパク質分解切断、細胞リガンドまたは他のタンパク質への連結(抗体コンジュゲートの考察は第7.6節を参照されたい)などにより修飾される。多数の化学修飾はいずれも、特異的化学切断、アセチル化、ホルミル化、ツニカマイシンの代謝合成など(これらに限定されるものではない)を含む公知技術により行われうる。また、例えばambrx技術(例えば、Wolfson,2006,Chem.Biol.13(10):1011−2を参照されたい)を用いて、該誘導体に1以上の非天然アミノ酸を含有させることが可能である。
【0052】
本開示の更にもう1つの実施形態においては、該抗TNF−α抗体またはその断片は、対応する野生型配列と比較して少なくとも1つの定常領域媒介生物学的エフェクター機能を改変するように修飾された配列を有する抗体または抗体断片でありうる。例えば、いくつかの場合には、本開示の抗TNF−α抗体は、未修飾抗体と比較して少なくとも1つの定常領域媒介生物学的エフェクター機能を低下させるように、例えばFc受容体(FcγR)への結合を低下させるように修飾されうる。FcγR結合は、FcγR相互作用に必要な特定の領域において抗体の免疫グロブリン定常領域セグメントを突然変異させることにより低下されうる(例えば、CanfieldおよびMorrison,1991,J.Exp.Med.173:1483−1491;ならびにLundら,1991,J.Immunol.147:2657−2662を参照されたい)。該抗体のFcγR結合能における低下は、FcγR相互作用に依存する他のエフェクター機能、例えばオプソニン作用、食作用および抗原依存性細胞傷害(「ADCC」)をも低下させうる。
【0053】
本開示の他の実施形態においては、抗TNF−α抗体またはその断片は、未修飾抗体と比較して少なくとも1つの定常領域媒介生物学的エフェクター機能を獲得または改善するように、例えばFcγR相互作用を増強するように修飾されうる(例えば、US 2006/0134709を参照されたい)。例えば、本開示の抗TNF−α抗体は、対応する野生型定常領域より大きな親和性でFcγRIIA、FcγRIIBおよび/またはFcγRIIIAに結合する定常領域を有しうる。
【0054】
したがって、本開示の抗体は、オプソニン作用、食作用またはADCCの増強または低下をもたらす生物活性における改変を有しうる。そのような改変は当技術分野で公知である。例えば、ADCC活性を低下させる抗体における修飾は米国特許第5,834,597号に記載されている。典型的なADCC低下性変異体は、残基236が欠失しており残基234、235および237(EU番号付けを使用)がアラニンで置換されている「突然変異3」(米国特許第5,834,597号の図4に示されている。)に相当する。
【0055】
いくつかの実施形態においては、本開示の抗TNF−α抗体は低レベルのフコースを有するか又はフコースを欠く。フコースを欠く抗体は、特に低用量の抗体において、ADCC活性の増強に相関されている。Shieldsら,2002,J.Biol.Chem.277:26733−26740;Shinkawaら,2003,J.Biol.Chem.278:3466−73を参照されたい。フコース低含有抗体の製造方法は、ラット骨髄腫YB2/0細胞(ATCC CRL 1662)内での増殖を含む。YB2/0細胞は低レベルのFUT8 mRNAを発現し、これは、ポリペプチドのフコシル化に必要な酵素であるα−1,6−フコシルトランスフェラーゼをコードしている。
【0056】
さらにもう1つの態様においては、該抗TNF−α抗体またはその断片は、胎児Fc受容体FcRnへのそれらの結合親和性を増強または軽減するように修飾された抗体または抗体断片であることが可能であり、そのような修飾は、例えば、FcRn相互作用に関与する特定の領域において免疫グロブリン定常領域セグメントを突然変異させることにより行われうる(例えば、WO 2005/123780を参照されたい)。特定の実施形態においては、重鎖定常領域のアミノ酸残基250、314および428の少なくとも1つが単独またはそれらの任意の組合せで、例えば、250および428位、または250および314位、または314および428位、または250、314および428位(250および428位がより特異的な組合せである。)において置換されるように、IgGクラスの抗TNF−α抗体が突然変異している。250位に関しては、該置換アミノ酸残基は、トレオニン以外の任意のアミノ酸残基、例えばアラニン、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、フェニルアラニン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、リシン、ロイシン、メチオニン、アスパラギン、プロリン、グルタミン、アルギニン、セリン、バリン、トリプトファンまたはチロシン(これらに限定されるものではない)でありうる。314位に関しては、該置換アミノ酸残基は、ロイシン以外の任意のアミノ酸残基、例えばアラニン、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、フェニルアラニン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、リシン、メチオニン、アスパラギン、プロリン、グルタミン、アルギニン、セリン、トレオニン、バリン、トリプトファンまたはチロシン(これらに限定されるものではない)でありうる。428位に関しては、該置換アミノ酸残基は、メチオニン以外の任意のアミノ酸残基、例えばアラニン、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、フェニルアラニン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、リシン、アスパラギン、プロリン、グルタミン、アルギニン、セリン、トレオニン、バリン、トリプトファンまたはチロシン(これらに限定されるものではない)でありうる。適当なアミノ酸置換の具体的な組合せは米国特許第7,217,797号の表1に特定されており、その表の全体を参照により本明細書に組み入れることとする。そのような突然変異はFcRnへの抗体の結合を増強し、これは該抗体の分解を防ぎ、その半減期を増加させる。
【0057】
さらに他の態様においては、抗TNF−α抗体は、JungおよびPluckthun,1997,Protein Engineering 10:9,959−966;Yazakiら,2004,Protein Eng.Des Sel.17(5):481−9.Epub 2004 Aug 17;および米国特許出願第2007/0280931号に記載されているとおり、その超可変領域の1以上に挿入された1以上のアミノ酸を有する。
【0058】
7.2 核酸および発現系
本開示は、本開示の抗TNF−α抗体をコードする核酸分子および宿主細胞を含む。
【0059】
本開示の抗TNF−α抗体は宿主細胞内での免疫グロブリン軽鎖および重鎖遺伝子の組換え発現により製造されうる。抗体を組換え発現させるためには、抗体の免疫グロブリン軽鎖および重鎖をコードするDNA断片を含有する1以上の組換え発現ベクターで宿主細胞をトランスフェクトして、該軽鎖および重鎖を該宿主細胞内で発現させ、場合によっては、該宿主細胞を培養している培地内にそれらを分泌させ、該培地から該抗体を回収することが可能である。抗体重鎖および軽鎖遺伝子を得、これらの遺伝子を組換え発現ベクター内に組込み、該ベクターを宿主細胞内に導入するためには、例えばMolecular Cloning;A Laboratory Manual,Second Edition(Sambrook,FritschおよびManiatis(編),Cold Spring Harbor,N.Y.,1989)、Current Protocols in Molecular Biology(Ausubel,F.M.ら編,Greene Publishing Associates,1989)ならびに米国特許第4,816,397号に記載されているような標準的な組換えDNA法を用いる。
【0060】
1つの実施形態においては、該抗TNF−α抗体は、1以上のCDRにおける変化を除き、D2E7に類似している(以下、「D2E7関連」配列を有すると称される。)。もう1つの実施形態においては、該抗TNF−α抗体は、1以上のフレームワーク領域における変化を除き、D2E7に類似している。さらにもう1つの実施形態においては、該抗TNF−α抗体は、1以上のCDRにおける及び1以上のフレームワーク領域における変化を除き、D2E7に類似している。そのような抗TNF−α抗体をコードする核酸を得るためには、まず、軽鎖および重鎖可変領域をコードするDNA断片を得る。これらのDNAは、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いて、軽鎖および重鎖可変配列をコードする生殖系列DNAまたはcDNAの増幅および修飾により得られうる。ヒト重鎖および軽鎖可変領域遺伝子の生殖系列DNA配列は当技術分野において公知である(例えば、“VBASE”ヒト生殖系列配列データベース(human germline sequence database)を参照されたい;また、Kabat,E.A.ら,1991,Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,U.S.Department of Health and Human Services,NIH Publication No.91−3242;Tomlinsonら,1992,J.Mol.Biol.22T:116−198;およびCoxら,1994,Eur.J.Immunol.24:827−836(それらのそれぞれの内容を参照により本明細書に組み入れることとする。)を参照されたい)。D2E7の重鎖または軽鎖可変領域をコードするDNA断片(その配列は図1Cに示されている。)は合成可能であり、通常の突然変異誘発技術を用いる、本明細書に記載の変異体を作製するための突然変異誘発のための鋳型として使用可能であり、あるいは、該変異体をコードするDNA断片を直接的に合成することが可能である。
【0061】
D2E7またはD2E7関連VHおよびVLセグメントをコードするDNA断片が得られたら、これらのDNA断片を更に、標準的な組換えDNA技術により操作して、例えば、可変領域遺伝子を完全長抗体鎖遺伝子、Fab断片遺伝子またはscFv遺伝子に変換することが可能である。これらの操作において、VLまたはVHをコードするDNA断片を、別のタンパク質、例えば抗体定常領域または可動性(flexible)リンカーをコードする別のDNA断片に機能的に連結する。この文脈で用いる「機能的に連結」なる語は、それらの2つのDNA断片によりコードされるアミノ酸配列がインフレームのままとなるように、それらの2つのDNA断片が連結されていることを意味すると意図される。
【0062】
VHをコードするDNAを、重鎖定常領域(CH、CH、CHおよび場合によってはCH)をコードする別のDNA分子に機能的に連結することにより、VH領域をコードする単離されたDNAを完全長重鎖遺伝子に変換することが可能である。ヒト重鎖定常領域遺伝子の配列は当技術分野において公知であり(例えば、Kabat,E.A.ら,1991,Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,U.S.Department of Health and Human Services,NIH Publication No.91−3242)、これらの領域を含むDNA断片は標準的なPCR増幅により得られうる。該重鎖定常領域はIgG、IgG、IgG、IgG、IgA、IgE、IgMまたはIgD定常領域でありうるが、ある実施形態においては、IgGまたはIgG定常領域である。Fab断片重鎖遺伝子の場合、VHをコードするDNAは、重鎖CH定常領域のみをコードする別のDNA分子に機能的に連結されうる。
【0063】
VLをコードするDNAを、軽鎖定常領域(CL)をコードする別のDNA分子に機能的に連結することにより、VL領域をコードする単離されたDNAを完全長軽鎖遺伝子(およびFab軽鎖遺伝子)に変換することが可能である。ヒト軽鎖定常領域遺伝子の配列は当技術分野において公知であり(例えば、Kabat,E.A.ら,1991,Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition(U.S.Department of Health and Human Services,NIH Publication No.91−3242))、これらの領域を含むDNA断片は標準的なPCR増幅により得られうる。該軽鎖定常領域はカッパまたはラムダ定常領域でありうるが、ある実施形態においてはカッパ定常領域である。scFv遺伝子を作製するためには、VHおよびVLをコードするDNA断片を、例えばアミノ酸配列(Gly〜Ser)をコードする可動性(flexible)リンカーをコードする別の断片に機能的に連結して、該可動性リンカーにより連結されたVLおよびVH領域が連続的一本鎖タンパク質として発現されうるようにする(例えば、Birdら,1988,Science 242:423−426;Hustonら,1988,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879−5883;McCaffertyら,1990,Nature 348:552−554を参照されたい)。
【0064】
本開示の抗TNF−α抗体を発現させるためには、前記のとおりに得られた部分的または完全長軽鎖および重鎖をコードするDNAを、該遺伝子が転写および翻訳制御配列に機能的に連結されるように、発現ベクター内に挿入する。この文脈においては「機能的に連結」なる語は、抗体遺伝子がベクター内に連結されて、該ベクター内の転写および翻訳制御配列が、該抗体遺伝子の転写および翻訳を調節するそれらの意図される機能を果たすことを意味すると意図される。該発現ベクターおよび発現制御配列は、使用される発現宿主細胞に和合性となるように選択される。抗体軽鎖遺伝子および抗体重鎖遺伝子は別々のベクター内に挿入されることが可能であり、あるいはより典型的には、両方の遺伝子は同一発現ベクター内に挿入される。
【0065】
該抗体遺伝子は該発現ベクター内に標準的な方法(例えば、抗体遺伝子断片およびベクター上の相補的制限部位の連結、または制限部位が存在しない場合には平滑末端連結)により挿入される。D2E7またはD2E7関連軽鎖または重鎖配列の挿入の前に、該発現ベクターは抗体定常領域配列を既に含有していることが可能である。例えば、D2E7またはD2E7関連VHおよびVL配列を完全長抗体遺伝子に変換するための1つのアプローチは、それぞれ重鎖定常および軽鎖定常領域を既にコードしている発現ベクター内にそれらを挿入して、VHセグメントを該ベクター内のCHセグメントに機能的に連結し、VLセグメントを該ベクター内のCLセグメントに機能的に連結することである。それに加えて又はその代わりに、該組換え発現ベクターは、宿主細胞からの該抗体鎖の分泌を促進するシグナルペプチドをコードしていることが可能である。該抗体鎖遺伝子は、シグナルペプチドが該抗体鎖遺伝子のアミノ末端にインフレームで連結されるように、該ベクター内にクローニングされうる。シグナルペプチドは免疫グロブリンシグナルペプチドまたは異種シグナルペプチド(すなわち、非免疫グロブリンタンパク質由来のシグナルペプチド)でありうる。
【0066】
該抗体鎖遺伝子に加えて、本開示の組換え発現ベクターは、宿主細胞内での該抗体鎖遺伝子の発現を制御する調節配列を含有する。「調節配列」なる語は、プロモーター、エンハンサー、および該抗体鎖遺伝子の転写または翻訳を制御する他の発現制御要素(例えば、ポリアデニル化シグナル)を含むと意図される。そのような調節配列は、例えばGoeddel,Gene Expression Technology:Methods in Enzymology 185(Academic Press,San Diego,CA,1990)に記載されている。調節配列の選択を含む該発現ベクターの設計は、形質転換すべき宿主細胞の選択、所望のタンパク質の発現レベルなどのような要因に左右されうる、と当業者に理解されるであろう。哺乳類宿主細胞発現のための適当な調節配列には、哺乳類細胞における高レベルのタンパク質発現を導くウイルス要素、例えば、サイトメガロウイルス(CMV)由来のプロモーターおよび/またはエンハンサー(例えば、CMVプロモーター/エンハンサー)、シミアンウイルス40(SV40)由来のプロモーターおよび/またはエンハンサー(例えば、SV40プロモーター/エンハンサー)、アデノウイルス由来のプロモーターおよび/またはエンハンサー(例えば、アデノウイルス主要後期プロモーター(AdMLP))およびポリオーマ由来のプロモーターおよび/またはエンハンサーが含まれる。ウイルス調節要素およびその配列の更に詳細な説明は、例えば、Stinskiによる米国特許第5,168,062号、Bellらによる米国特許第4,510,245号およびSchaffnerらによる米国特許第4,968,615号を参照されたい。
【0067】
抗体鎖遺伝子および調節配列に加えて、本開示の組換え発現ベクターは、追加的配列、例えば、宿主細胞内での該ベクターの複製を調節する配列(例えば、複製起点)および選択可能マーカー遺伝子を含有しうる。選択可能マーカー遺伝子は、該ベクターが導入された宿主細胞の選択を促進する(例えば、全てAxelらによる米国特許第4,399,216号、第4,634,665号および第5,179,017号を参照されたい)。例えば、典型的には、選択可能マーカー遺伝子は、薬物、例えばG418、ピューロマイシン、ブラスチシジン、ヒグロマイシンまたはメトトレキセートに対する耐性を、該ベクターが導入された宿主細胞に付与する。適当な選択可能マーカー遺伝子には、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)遺伝子(メトトレキセート選択/増幅を伴うDHFR宿主細胞における使用のためのもの)およびneo遺伝子(G418選択のためのもの)が含まれる。軽鎖および重鎖の発現のためには、重鎖および軽鎖をコードする発現ベクターを標準的な技術により宿主細胞内にトランスフェクトする。「トランスフェクション」なる語の種々の形態は、原核または真核宿主細胞内への外因性DNAの導入のために一般に用いられる多種多様な技術、例えばエレクトロポレーション、リポフェクション、リン酸カルシウム沈殿、DEAE−デキストラントランスフェクションなどを含むと意図される。
【0068】
本開示の抗体を原核または真核宿主細胞内で発現させることが可能である。ある実施形態においては、適切にフォールディングされ免疫学的に活性な抗体の最適分泌のために、抗体の発現を真核細胞、例えば哺乳類宿主細胞内で行う。本開示の組換え抗体を発現させるための典型的な哺乳類宿主細胞には、チャイニーズハムスター卵巣(CHO細胞)(例えば、KaufmanおよびSharp,1982,Mol.Biol.159:601−621に記載されているDHFR選択可能マーカーと共に使用される、UrlaubおよびChasin,1980,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216−4220に記載されているDHFR CHO細胞を含む)、NS0骨髄腫細胞、COS細胞、293細胞およびSP2/0細胞が含まれる。抗体遺伝子をコードする組換え発現ベクターを哺乳類宿主細胞内に導入する場合、該抗体は、該宿主細胞内での該抗体の発現または該宿主細胞が培養されている培地内への該抗体の分泌を可能にするのに十分な時間にわたって該宿主細胞を培養することにより製造される。抗体は、標準的なタンパク質精製方法を用いて培地から回収されうる。宿主細胞は、完全抗体の一部分、例えばFab断片またはscFv分子を製造するためにも使用されうる。前記方法の変法は本開示の範囲内であると理解される。例えば、本開示の抗TNF−α抗体の軽鎖または重鎖の一方(両方ではない)をコードするDNAで宿主細胞をトランスフェクトすることが望ましいであろう。
【0069】
組換えDNA技術は、TNF−αへの結合に必要でない軽鎖および重鎖の一方または両方をコードするDNAの一部または全部を除去するためにも使用されうる。そのようなトランケート化DNA分子から発現される分子も本開示の抗体に含まれる。
【0070】
また、標準的な化学的架橋法により本開示の抗体を二次抗体に架橋することにより、一方の重鎖および一方の軽鎖が本開示の抗体であり、他方の重鎖および軽鎖がTNF−α以外の抗原に特異的である二官能性抗体が製造されうる。二官能性抗体をコードするように操作された核酸を発現させることによっても、二官能性抗体が製造されうる。
【0071】
ある実施形態においては、軽鎖および/または重鎖CDR内のアミノ酸残基を突然変異させることにより、二重特異性抗体、すなわち、同一結合部位を使用してTNF−αおよび無関係な抗原に結合する抗体が製造されうる。種々の実施形態においては、TNF−αおよび別の抗原、例えば別の炎症性サイトカイン(例えば、リンホトキシン、インターフェロン−γまたはインターロイキン−1)に結合する二重特異性抗体は、抗原結合部位の周辺部のアミノ酸残基を突然変異させることにより製造される(例えば、Bostromら,2009,Science 323:1610−1614を参照されたい)。二重官能性抗体は、二重特異性抗体をコードするように操作された核酸を発現させることにより製造されうる。
【0072】
本開示の抗体TNF−α抗体の組換え発現のために、本開示の2つの発現ベクター(第1ベクターは重鎖由来ポリペプチドをコードし、第2ベクターは軽鎖由来ポリペプチドをコードする。)で宿主細胞をコトランスフェクトすることが可能である。典型的には、それらの2つのベクターはそれぞれ、別々の選択可能マーカーを含有する。あるいは、重鎖ポリペプチドおよび軽鎖ポリペプチドの両方をコードする単一のベクターが使用されうる。
【0073】
D2E7の1以上の部分をコードする、またはD2E7のCDR配列に関連したCDR配列を有する抗TNF−α抗体の1以上の部分をコードする核酸を作製したら、更なる改変または突然変異を該コード化配列内に導入して、例えば、種々のCDR配列を有する抗体、Fc受容体に対する親和性が減少した抗体、または種々のサブクラスの抗体をコードする核酸を作製することが可能である。
【0074】
本開示の抗TNF−α抗体は化学合成(例えば、Solid Phase Peptide Synthesis,2nd ed.,1984 The Pierce Chemical Co.,Rockford,Ill.に記載されている方法)によっても製造されうる。変異抗体は、無細胞形態を使用することによっても製造されうる(例えば、Chuら,Biochemia No.2,2001(Roche Molecular Biologicals)を参照されたい)。
【0075】
本開示の抗TNF−α抗体が組換え発現により製造されたら、それは、免疫グロブリン分子の精製のための当業者に公知のいずれかの方法により、例えば、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換、親和性、特に、プロテインAまたはプロテインG選択後のTNF−αに対する親和性、およびサイズカラムクロマトグラフィー)、遠心分離、溶解度差、またはタンパク質の精製のためのいずれかの他の標準的な技術により精製されうる。さらに、本開示の抗TNF−α抗体またはその断片は、精製を促進するための、本明細書に記載されている又は当技術分野で公知の異種ポリペプチド配列に融合されうる。
【0076】
抗TNF−α抗体は、単離されたら、所望により、例えば高速液体クロマトグラフィー(例えば、Fisher,Laboratory Techniques In Biochemistry And Molecular Biology(WorkおよびBurdon編,Elsevier,1980)を参照されたい)により、またはSuperdex(商標)75カラム(Pharmacia Biotech AB,Uppsala,Sweden)上のゲル濾過クロマトグラフィーにより、更に精製されうる。
【0077】
7.3 抗TNF−α抗体の生物活性
ある実施形態においては、本開示の抗TNF−α抗体は、例えばTNF−αへの結合に関するD2E7との競合またはTNF−α活性の中和のような或る生物活性を有する。
【0078】
したがって、ある実施形態においては、本開示の抗TNF−α抗体はTNF−αへの結合に関してD2E7と競合する。TNF−αへの結合に関して競合する能力は、競合アッセイを用いて試験されうる。競合アッセイの一例においては、TNF−αを、固体表面、例えばマイクロウェルプレート上に、該プレートをTNF−αの溶液(例えば、PBS中、1μg/mLの濃度、4℃で一晩)と接触させることにより付着させる。該プレートを洗浄し(例えば、PBS中の0.1% Tween 20)、ブロッキングする(例えば、Superblock(Thermo Scientific,Rockford,IL)中)。亜飽和量のビオチン化D2E7(80ng/mL)と未標識D2E7(「参照」抗体)または競合抗TNF−α抗体(「試験」抗体)[ELISAバッファー(例えば、PBS中の1% BSAおよび0.1% Tween 20)中で系列希釈(例えば、2.8μg/mL、8.3μg/mLまたは25μg/mLの濃度)されたもの]の混合物をウェルに加え、プレートを、穏やかに振とうしながら1時間温置する。該プレートを洗浄し、ELISAバッファー中で希釈された1μg/mL HRP結合ストレプトアビジンを各ウェルに加え、該プレートを1時間温置した。プレートを洗浄し、結合抗体を基質(例えば、TMB,Biofx Laboratories Inc.,Owings Mills,MD)の添加により検出した。該反応を停止バッファー(例えば、Bio FX Stop Reagents,Biofx Laboratories Inc.,Owings Mills,MD)の添加により停止させ、マイクロプレートリーダー(例えば、VERSAmax,Molecular Devices,Sunnyvale,CA)を使用して吸光度を650nmで測定した。本開示の抗TNF−α抗体とD2E7との競合を試験するために、この競合アッセイの変法も使用されうる。例えば、ある態様においては、該抗TNF−α抗体を参照抗体として使用し、D2E7を試験抗体として使用する。また、可溶性TNF−αの代わりに、培養内で細胞表面(例えば哺乳類細胞、例えば293S)上で発現される膜結合性TNF−αを使用することが可能である。あるいは、可溶性D2E7および試験抗体の代わりに、培養内で細胞表面(例えば哺乳類細胞、例えば293c18)上で発現されるものを使用することも可能である。一般に、約10から10個のトランスフェクタント、例えば約10個のトランスフェクタントを使用する。競合アッセイのための他の形態が当技術分野で公知であり、使用可能である。
【0079】
種々の実施形態においては、本開示の抗TNF−α抗体は、該抗TNF−α抗体が0.08μg/mL、0.4μg/mL、2μg/mL、10μg/mL、50μg/mL、100μg/mLの濃度またはいずれかの前記値の間の範囲の濃度(例えば、2μg/mLから10μg/mLの範囲の濃度)で使用された場合、標識D2E7の結合を少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%またはいずれかの前記値の間の範囲の百分率だけ低下させる(例えば、本開示の抗TNF−α抗体は標識D2E7の結合を50%から70%低下させる。)。
【0080】
他の実施形態においては、D2E7は、D2E7が0.4μg/mL、2μg/mL、10μg/mL、50μg/mL、250μg/mLの濃度またはいずれかの前記値の間の範囲の濃度(例えば、2μg/mLから10μg/mLの範囲の濃度)で使用された場合、本開示の標識抗TNF−α抗体の結合を少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%またはいずれかの前記値の間の範囲の百分率だけ低下させる(例えば、D2E7は本開示の標識された抗TNF−α抗体の結合を50%から70%低下させる。)。
【0081】
他の態様においては、本開示の抗TNF−α抗体は、例えば細胞傷害性、有糸分裂誘発、サイトカイン誘導および接着分子の誘導のようなインビトロアッセイの範囲においてTNF−α活性を抑制する。あるいは、本開示の抗TNF−α抗体の活性は、例えば逆シグナリングの誘導能、サイトカイン誘導、接着分子の誘導、CDCおよびADCCのように、細胞上で天然で又は組換え的に発現された膜結合性TNF−αを使用するインビトロアッセイにより測定されうる。TNF−αに感受性である細胞(例えば、L929)を使用して可溶性TNF−α細胞傷害性の抑制を測定する典型的なTNF−α中和アッセイを以下に記載する。本開示の抗TNF−α抗体の活性を評価するために、他のTNF−α細胞傷害性アッセイも使用されうる。
【0082】
したがって、典型的な実施形態においては、抗TNF−α細胞傷害性アッセイは、3×10個のマウスL929細胞を平底96ウェルマイクロタイタープレートの個々のウェル内にプレーティングすることを含む。該細胞を加湿5% CO 恒温槽内で37℃で一晩温置する。翌日、該抗TNF−α抗体の系列希釈物(例えば、0.712μg/mL、0.949μg/mL、1.27μg/mL、1.69μg/mL、2.25μg/mLまたは3μg/mL)を25μLの無血清培地内で調製し、細胞に加える(例えば、150μLの培養内の最終濃度は119ng/mL、158ng/mL、211ng/mL、282ng/mL、375ng/mLまたは500ng/mLである。)。37℃、5% COにおける2時間の温置の後、TNF−αを40ng/mL(例えば、240ng/mLの25μL)の最終濃度で加え、該細胞を37℃、5% COで更に48時間温置した。生存度アッセイ(例えば、CellTiter−Blue,Promega,Madison,WI)を用いて、該ウェルを、対照プレート(これは、ある実施形態においては、抗TNF−α抗体と共に温置されずに、例えば、イソタイプ対照抗体と共に温置され、TNF−αで処理され、他の実施形態においては、D2E7で処理された)と比較して細胞傷害性に関して評価する。TNF−α中和アッセイのための他の形態は当技術分野において公知であり、使用可能である。
【0083】
種々の実施形態においては、本開示の抗TNF−α抗体は、該抗TNF−α抗体が2ng/mL、5ng/mL、10ng/mL、20ng/mL、0.1μg/mL、0.2μg/mL、1μg/mL、2μg/mL、5μg/mL、10μg/mL、20μg/mLの濃度またはいずれかの前記値の間の範囲の濃度(例えば、1μg/mLから5μg/mLの範囲の濃度)で使用された場合、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%またはいずれかの前記値の間の範囲の百分率だけTNF−αを中和する(例えば、本開示の抗TNF−α抗体はTNF−α活性を50%から70%中和する。)。いくつかの実施形態においては、本開示の抗TNF−α抗体は、TNF−αの中和において、D2E7の少なくとも80%有効、少なくとも90%有効、少なくとも100%有効、少なくとも110%有効、少なくとも125%有効または少なくとも150%有効であり、110%まで有効、125%まで有効、150%まで有効または200%まで有効であり、あるいは前記値のいずれかのペアの間のいずれかの範囲まで有効(例えば、TNF−αの中和においてD2E7の80%から125%有効またはD2E7の125%から200%有効)である。
【0084】
ある実施形態においては、本開示の抗TNF−α抗体はTNF−αに対する高い結合親和性を有する。特定の実施形態においては、本開示の抗TNF−α抗体は特定の会合速度定数(konまたはk値)、解離速度定数(koffまたはk値)、親和性定数(K値)、解離定数(K値)および/またはIC50値を有する。ある態様においては、そのような値は以下の実施形態から選択される。
【0085】
7.4 抗TNF−α抗体の動力学的特性
特定の実施形態においては、本開示の抗TNF−α抗体は、少なくとも10−1−1、少なくとも5×10−1−1、少なくとも10−1−1、少なくとも5×10−1−1、少なくとも10−1−1、少なくとも5×10−1−1、少なくとも10−1−1のkonまたは前記値のいずれかのペアの間のいずれかの範囲のkon(例えば、5×10から5×10−1−1または10から10−1−1)で、TNF−αに結合する。
【0086】
もう1つの実施形態においては、本開示の抗TNF−α抗体は、5×10−1−1以下、10−1−1以下、5×10−2−1以下、10−2−1以下、5×10−3−1以下、10−3−1以下、5×10−4−1以下、10−4−1以下、5×10−5−1以下、10−5−1以下、5×10−6−1以下、10−6−1以下、5×10−6−1以下、10−6−1以下、5×10−7−1以下、10−7−1以下、5×10−8−1以下、10−8−1以下、5×10−9−1以下、10−9−1以下、5×10−10−1以下、10−10−1以下のkoff速度または前記値のいずれかのペアの間のいずれかの範囲のkoff(例えば、5×10−4から10−6−1、または5×10−5から5×10−8−1)で、TNF−αに結合する。
【0087】
もう1つの実施形態においては、本開示の抗TNF−α抗体は、少なくとも1011 nM−1、少なくとも5×1011 nM−1、少なくとも1012 nM−1、少なくとも5×1012 nM−1、少なくとも1013 nM−1、少なくとも5×1013 nM−1、少なくとも1014 nM−1、少なくとも5×1014 nM−1、少なくとも1015 nM−1、少なくとも5×1015 nM−1、少なくとも1016 nM−1、少なくとも5×1016 nM−1、少なくとも1017 nM−1、少なくとも5×1017 nM−1、少なくとも1018 nM−1、少なくとも5×1018 nM−1、少なくとも1019 nM−1、少なくとも5×1019 nM−1、少なくとも1020 nM−1、少なくとも5×1020 nM−1、少なくとも1021 nM−1、少なくとも5×1021 nM−1、少なくとも1022 nM−1、少なくとも5×1022 nM−1、少なくとも1023 nM−1、少なくとも5×1023 nM−1、少なくとも1024 nM−1、少なくとも5×1024 nM−1のK(kon/koff)または前記値のいずれかのペアの間のいずれかの範囲のK(例えば、5×1014から1022 nM−1または1011から5×1018 nM−1)で、TNF−αに結合する。
【0088】
他の実施形態においては、本開示の抗TNF−α抗体は、5×10 nM以下、10 nM以下、5×10 nM以下、10 nM以下、5×10 nM以下、10 nM以下、5×10 nM以下、10 nM以下、5×10 nM以下、10 nM以下、5×10 nM以下、100nM以下、90nM以下、80nM以下、70nM以下、60nM以下、50nM以下、20nM以下、15nM以下、10nM以下、5nM以下、3.8nM以下、2nM以下、1.5nM以下、1nM以下、5×10−1 nM以下、10−1 nM以下、5×10−2 nM以下、10−2 nM以下、5×10−3 nM以下、10−3 nM以下、5×10−4 nM以下、10−4 nM以下、5×10−5 nM以下、10−5 nM以下、5×10−6 nM以下、10−6 nM以下のK(koff/kon)または前記値のいずれかのペアの間のいずれかの範囲のK(例えば、5×10から50nMまたは15nMから5×10−3 nM)で、TNF−αに結合する。
【0089】
ある特定の実施形態においては、本開示のTNF−α抗体は、約0.1nMから約1nM、または約0.1nMから約2nM、または約0.1nMから約3nM、または約0.1nMから約4nM、または約0.1nMから約5nM、または約0.1nMから約6nM、または約0.1nMから約7nM、または約0.1nMから約8nM、または約0.1nMから約9nM、または約0.1nMから約10nM、または約0.01nMから約0.1nM、または約0.01nMから約1nM、または約0.01nMから約2nM、または約0.01nMから約3nM、または約0.01nMから約4nM、または約0.01nMから約5nM、または約0.01nMから約6nM、または約0.01nMから約7nM、または約0.01nMから約8nM、または約0.01nMから約9nM、または約0.6nMから約1.1nM、または約0.7nMから約1.2nM、または約0.5nMから約5nMのK(koff/kon)で、TNF−αに結合する。他の特定の実施形態においては、抗TNF−α抗体は、約5nM、約3.5nM、約1.5nM、約1nM、約0.5nM、約0.1nM、約0.05nMまたは約0.01nMのK(koff/kon)で、TNF−αに結合する。特定の実施形態においては、K(koff/kon)値は、当技術分野でよく知られているか又は本明細書に記載されているアッセイ、例えばELISA、等温滴定熱量測定(isothermal titration calorimetry;ITC)、BIAcoreまたは蛍光偏光アッセイにより決定される。
【0090】
いくつかの実施形態においては、本開示の抗TNF−α抗体はTNF−αに結合し、5×10 nM未満、10 nM未満、5×10 nM未満、10 nM未満、5×10 nM未満、10 nM未満、5×10 nM未満、10 nM未満、5×10 nM未満、10 nM未満、5×10 nM未満、100nM未満、90nM未満、80nM未満、70nM未満、60nM未満、50nM未満、40nM未満、30nM未満、25nM未満、20nM未満、15nM未満、12nM未満、10nM未満、5nM未満、1nM未満、5×10−1 nM未満、10−1 nM未満、5×10−2 nM未満、10−2 nM未満、5×10−3 nM未満、10−3 nM未満、5×10−4 nM未満もしくは10−4 nM未満のIC50値または前記値のいずれかのペアの間のいずれかの範囲のIC50値(例えば、5×10から50nMまたは15nMから5×10−3 nM)で、p55、p75またはそれらの両方へのTNF−αの結合を抑制する。IC50は、当技術分野でよく知られているか又は本明細書に記載されている方法、例えばELISAにより測定されうる。
【0091】
他の実施形態においては、本開示の抗TNF−α抗体はTNF−αに結合し、5×10 nM未満、10 nM未満、5×10 nM未満、10 nM未満、5×10 nM未満、10 nM未満、5×10 nM未満、10 nM未満、5×10 nM未満、10 nM未満、5×10 nM未満、100nM未満、90nM未満、80nM未満、70nM未満、60nM未満、50nM未満、40nM未満、30nM未満、25nM未満、20nM未満、15nM未満、12nM未満、10nM未満、5nM未満、1nM未満、5×10−1 nM未満、10−1 nM未満、5×10−2 nM未満、10−2 nM未満、5×10−3 nM未満、10−3 nM未満、5×10−4 nM未満もしくは10−4 nM未満のIC50値または前記値のいずれかのペアの間のいずれかの範囲のIC50値(例えば、5×10から50nMまたは15nMから5×10−3 nM)で、TNF−αを中和する。抗TNF−α抗体のIC50を測定するために用いられうる典型的な中和アッセイは後記第7.5節に記載されている。
【0092】
ある特定の実施形態においては、抗TNF−α抗体はTNF−αに結合し、約1nMから約10nM、約1nMから約15nM、約1nMから約20nM、約1nMから約25nM、約1nMから約30nM、約1nMから約40nM、約1nMから約50nM、約10nMから約10nM、約10nMから約10nM、約10nMから約10nM、約10nMから約10nM、約10nMから約10nM、または約10nMから約10nMのIC50値で、p55、p75またはそれらの両方へのTNF−αの結合を抑制し、あるいはTNF−α中和アッセイにおけるTNF−α活性を抑制する。
【0093】
ある特定の実施形態においては、抗TNF−α抗体はTNF−αに結合し、約5nMから約10nM、約5nMから約15nM、約10nMから約15nM、約10nMから約20nM、約10nMから約30nM、約10nMから約40nM、約10nMから約50nM、約1nMから約100nM、約10nMから約100nM、約20nMから約100nM、約30nMから約100nM、約40nMから約100nM、約50nMから約100nM、約15nMから約25nM、または約15nMから約20nMのIC50値で、p55、p75またはそれらの両方へのTNF−αの結合を抑制し、あるいはTNF−α中和アッセイにおけるTNF−α活性を抑制する。
【0094】
前記実施形態の或る態様においては、該IC50は、0.001μM、0.005μM、0.01μM、0.05μM、0.1μM、0.5μM、1μM、10μM、20μM、30μM、40μM、50μM、60μM、70μM、80μM、90μM、100μM、200μM、300μM、400μM、500μM、600μM、700μM、800μM、900μM、1000μMの濃度または前記値のいずれかのペアの間のいずれかの範囲の濃度(例えば、0.01から50μM、または10μMから100μM)のTNF−αの存在下で測定される。
【0095】
ある実施形態においては、本開示の抗体の動力学的特性は、比較アッセイにおいて、D2E7抗体に匹敵するか、またはD2E7抗体に比べて改善されている。例えば、ある実施形態においては、本開示の抗TNF−α抗体は、D2E7のkonの0.2×(倍)〜5×の範囲のkon速度、例えば、D2E7のkonの0.2×のkon、D2E7のkonの0.3×のkon、D2E7のkonの0.4×のkon、D2E7のkonの0.5×のkon、D2E7のkonの0.6×のkon、D2E7のkonの0.7×のkon、D2E7のkonの0.8×のkon、D2E7のkonの0.9×のkon、D2E7のkonの1×のkon、D2E7のkonの1.1×のkon、D2E7のkonの1.2×のkon、D2E7のkonの1.3×のkon、D2E7のkonの1.4×のkon、D2E7のkonの1.5×のkon、D2E7のkonの1.75×のkon、D2E7のkonの2×のkon、D2E7のkonの2.25×のkon、D2E7のkonの2.5×のkon、D2E7のkonの2.75×のkon、D2E7のkonの3×のkon、D2E7のkonの3.5×のkon、D2E7のkonの4×のkon、D2E7のkonの4.5×のkon、D2E7のkonの5×のkon、または前記値のいずれかのペアの間の範囲のkon、例えば、D2E7のkonの0.7×〜1.5×のkon、D2E7のkonの0.9×〜1.3×のkon、D2E7のkonの0.8×〜2×のkon、D2E7のkonの0.9×〜3×のkonなどで、TNF−αに結合する。
【0096】
いくつかの実施形態においては、本開示の抗TNF−α抗体は、D2E7のkoffの0.2×(倍)〜5×の範囲のkoff速度、例えば、D2E7のkoffの0.2×のkoff、D2E7のkoffの0.3×のkoff、D2E7のkoffの0.4×のkoff、D2E7のkoffの0.5×のkoff、D2E7のkoffの0.6×のkoff、D2E7のkoffの0.7×のkoff、D2E7のkoffの0.8×のkoff、D2E7のkoffの0.9×のkoff、D2E7のkoffの1×のkoff、D2E7のkoffの1.1×のkoff、D2E7のkoffの1.2×のkoff、D2E7のkoffの1.3×のkoff、D2E7のkoffの1.4×のkoff、D2E7のkoffの1.5×のkoff、D2E7のkoffの1.75×のkoff、D2E7のkoffの2×のkoff、D2E7のkoffの2.25×のkoff、D2E7のkoffの2.5×のkoff、D2E7のkoffの2.75×のkoff、D2E7のkoffの3×のkoff、D2E7のkoffの3.5×のkoff、D2E7のkoffの4×のkoff、D2E7のkoffの4.5×のkoff、D2E7のkoffの5×のkoff、または前記値のいずれかのペアの間の範囲のkoff、例えば、D2E7のkoffの0.7×〜1.5×のkoff、D2E7のkoffの0.9×〜1.3×のkoff、D2E7のkoffの0.8×〜2×のkoff、D2E7のkoffの0.9×〜3×のkoffなどで、TNF−αに結合する。
【0097】
他の実施形態においては、本開示の抗TNF−α抗体は、D2E7のKの0.04×から25×の範囲のK(kon/koff)、例えば、D2E7のKの0.04×のK、D2E7のKの0.1×のK、D2E7のKの0.25×のK、D2E7のKの0.5×のK、D2E7のKの0.6×のK、D2E7のKの0.7×のK、D2E7のKの0.8×のK、D2E7のKの0.9×のK、D2E7のKの1×のK、D2E7のKの1.1×のK、D2E7のKの1.25×のK、D2E7のKの1.5×のK、D2E7のKの1.75×のK、D2E7のKの2×のK、D2E7のKの2.5×のK、D2E7のKの3×のK、D2E7のKの4×のK、D2E7のKの4×%のK、D2E7のKの5×のK、D2E7のKの7.5×のK、D2E7のKの10×のK、D2E7のKの12.5×のK、D2E7のKの15×のK、D2E7のKの20×のK、D2E7のKの25×のK、または前記値のいずれかのペアの間の範囲のK、例えば、D2E7のKの0.7×〜1.25×のK、D2E7のKの0.9×〜1.5×のK、D2E7のKの0.9×〜2×のK、D2E7のKの0.8×〜1.75×のK、D2E7のKの0.9×〜5×のK、あるいは本明細書に開示されているkonおよびkoff速度から計算されうるいずれかの値または範囲で、TNF−αに結合する。
【0098】
他の実施形態においては、本開示の抗TNF−α抗体は、D2E7のKの0.04×〜25×の範囲のK(koff/kon)、例えば、D2E7のKの0.04×のK、D2E7のKの0.1×のK、D2E7のKの0.25×のK、D2E7のKの0.5×のK、D2E7のKの0.6×のK、D2E7のKの0.7×のK、D2E7のKの0.8×のK、D2E7のKの0.9×のK、D2E7のKの1×のK、D2E7のKの1.1×のK、D2E7のKの1.25×のK、D2E7のKの1.5×のK、D2E7のKの1.75×のK、D2E7のKの2×のK、D2E7のKの2.5×のK、D2E7のKの3×のK、D2E7のKの4×のK、D2E7のKの4×%のK、D2E7のKの5×のK、D2E7のKの7.5×のK、D2E7のKの10×のK、D2E7のKの12.5×のK、D2E7のKの15×のK、D2E7のKの20×のK、D2E7のKの25×のK、または前記値のいずれかのペアの間の範囲のK、例えば、D2E7のKの0.7×〜1.25×のK、D2E7のKの0.9×〜1.5×のK、D2E7のKの0.9×〜2×のK、D2E7のKの0.8×〜1.75×のK、D2E7のKの0.9×〜5×のK、あるいは本明細書に開示されているkonおよびkoff速度から計算されうるいずれかの値または範囲で、TNF−αに結合する。
【0099】
いくつかの実施形態においては、本開示の抗TNF−α抗体はTNF−αに結合し、D2E7のIC50の50%から200%のIC50値、例えば、D2E7のIC50の50%のIC50、D2E7のIC50の60%のIC50、D2E7のIC50の70%のIC50、D2E7のIC50の75%のIC50、D2E7のIC50の80%のIC50、D2E7のIC50の90%のIC50、D2E7のIC50の95%のIC50、D2E7のIC50の100%のIC50、D2E7のIC50の110%のIC50、D2E7のIC50の120%のIC50、D2E7のIC50の125%のIC50、D2E7のIC50の130%のIC50、D2E7のIC50の140%のIC50、D2E7のIC50の150%のIC50、D2E7のIC50の160%のIC50、D2E7のIC50の170%のIC50、D2E7のIC50の175%のIC50、D2E7のIC50の180%のIC50、D2E7のIC50の190%のIC50、D2E7のIC50の200%のIC50、または前記値のいずれかのペアの間のいずれかの範囲、例えば、D2E7のIC50の75%〜125%のIC50、D2E7のIC50の90%〜130%のIC50、D2E7のIC50の95%〜125%のIC50、D2E7のIC50の90%〜110%のIC50、D2E7のIC50の90%〜180%のIC50、またはD2E7のIC50の80%〜175%のIC50で、p55、p75またはそれらの両方へのTNF−αの結合を抑制する。他の実施形態においては、単一CDR置換は、D2E7と比較した場合のIC50における前記相違をもたらすことが可能であり、一方、本開示の抗TNF−α抗体は、そのような置換、およびD2E7と比較した場合の16個までの追加的置換を含みうる。
【0100】
他の実施形態においては、本開示の抗TNF−α抗体はTNF−αに結合し、D2E7のIC50の50%から200%のIC50値、例えば、D2E7のIC50の50%のIC50、D2E7のIC50の60%のIC50、D2E7のIC50の70%のIC50、D2E7のIC50の75%のIC50、D2E7のIC50の80%のIC50、D2E7のIC50の90%のIC50、D2E7のIC50の95%のIC50、D2E7のIC50の100%のIC50、D2E7のIC50の110%のIC50、D2E7のIC50の120%のIC50、D2E7のIC50の125%のIC50、D2E7のIC50の130%のIC50、D2E7のIC50の140%のIC50、D2E7のIC50の150%のIC50、D2E7のIC50の160%のIC50、D2E7のIC50の170%のIC50、D2E7のIC50の175%のIC50、D2E7のIC50の180%のIC50、D2E7のIC50の190%のIC50、D2E7のIC50の200%のIC50、または前記値のいずれかのペアの間のいずれかの範囲、例えば、D2E7のIC50の75%〜125%のIC50、D2E7のIC50の90%〜130%のIC50、D2E7のIC50の95%〜125%のIC50、D2E7のIC50の90%〜110%のIC50、D2E7のIC50の90%〜180%のIC50、またはD2E7のIC50の80%〜175%のIC50で、TNF−αを中和する。他の実施形態においては、単一CDR置換は、D2E7と比較した場合のIC50における前記相違をもたらすことが可能であり、一方、本開示の抗TNF−α抗体は、そのような置換、およびD2E7と比較した場合の16個までの追加的置換を含みうる。
【0101】
7.5 抗TNF−α抗体の免疫原性の低下
ある態様においては、本開示は、D2E7と比較して低下した免疫原性を有する抗TNF−α抗体を提供する。本開示はまた、D2E7のCDRと比較してCDRにおける複数のアミノ酸置換(ここで、少なくとも1つの置換が、D2E7と比較して該抗体の免疫原性を低下させる。)を有する抗TNF−α抗体を提供する。ある実施形態においては、免疫原性の低下は、1以上のT細胞エピトープの消失または軽減をもたらす1以上のアミノ酸置換から生じる。
【0102】
ある態様においては、低下した免疫原性を有する本開示の抗TNF−α抗体は、D2E7に匹敵する又はD2E7と比較して改善された生物活性(例えば、TNF−αに対する親和性またはTNF−α活性の中和)を有する。そのような特性は、例えば、前記第7.3節に記載されている方法により試験されうる。
【0103】
ある実施形態においては、本開示のTNF−α抗体の免疫原性はD2E7抗体と比較して低下している。そのような抗体は一般に、配列番号81および/または配列番号82および/または配列番号83に対応する領域において、重鎖および/または軽鎖可変領域と比較した場合の変異配列を有する。該抗体は一般に、配列番号81、配列番号82および配列番号83に対応する1個、2個または全3個の配列における1個、2個または3個のアミノ酸置換を有するが、1個、2個または全3個の領域における4個または5個までの置換が本発明において想定される。
【0104】
D2E7と比べて低い免疫原性を抗体を与える典型的なCDR−L1置換を表11に挙げる。本開示の抗体は、表11に挙げられている置換のいずれか又は該置換の組合せ、および場合によっては、1以上の追加的な置換、例えば、表12〜25のいずれかにおけるCDR突然変異の単独体または組合せを含みうる。
【0105】
本開示において用いる「低下した免疫原性(免疫原性の低下)」なる語は、配列番号81、配列番号82または配列番号83と比較した場合の変異配列が、それぞれ配列番号81、配列番号82または配列番号83のペプチドと比較して低下した、末梢血単核細胞における増殖応答を惹起することを示す。該増殖応答を評価するために用いられうる典型的な増殖アッセイを後記第8節に記載する。増殖応答の低下は応答の割合(%)、刺激指数またはそれらの両方として表されうる。
【0106】
他の実施形態においては、配列番号81、配列番号82または配列番号83の配列を有するペプチドと比較して、該変異配列は、少なくとも25%少ない応答、少なくとも30%少ない応答、少なくとも35%少ない応答、少なくとも40%少ない応答、少なくとも45%少ない応答、少なくとも50%少ない応答、少なくとも60%少ない応答、少なくとも65%少ない応答、少なくとも70%少ない応答、少なくとも75%少ない応答、少なくとも80%少ない応答、少なくとも85%少ない応答、少なくとも90%少ない応答、少なくとも95%少ない応答、少なくとも100%少ない応答、または前記値のいずれかの間の範囲の応答の減少、例えば、25%〜75%少ない応答、50%〜90%少ない応答、60%〜100%少ない応答、70%〜90%少ない応答などを与える。
【0107】
他の実施形態においては、該変異配列は、それぞれ配列番号81、配列番号82または配列番号83のペプチドにより惹起される刺激指数より少なくとも5%低い、少なくとも10%低い、少なくとも15%低い、少なくとも20%低い、少なくとも25%低い、少なくとも30%低い、少なくとも35%低い、または少なくとも40%低い刺激指数を与え、あるいは、配列番号81、配列番号82または配列番号83のペプチドと比較して前記値のいずれかの間の範囲だけ低下した、例えば、5%〜20%低い、10%〜30%低い、25%〜35%低い、30%〜40%低いなどの刺激指数を与える。
【0108】
D2E7と比較して低下した免疫原性を有する抗TNF−α抗体の典型的な実施形態は、表11に記載されているCDR置換または置換の組合せの1以上を含む。
【0109】
7.6 抗体コンジュゲート
本開示の抗TNF−α抗体には、例えば、該抗体へのいずれかのタイプの分子の共有結合により修飾されており、該共有結合がTNF−αへの結合を妨げないように修飾された抗体コンジュゲートが含まれる。
【0110】
ある態様においては、本開示の抗TNF−α抗体はエフェクター部分または標識にコンジュゲート化されうる。本明細書中で用いる「エフェクター部分」なる語は、例えば抗腫瘍性物質、薬物、毒素、生物学的に活性なタンパク質、例えば酵素、他の抗体または抗体断片、合成または天然重合体、核酸(例えば、DNAおよびRNA)、放射性核種、特に放射性ヨウ素、放射性同位体、キレート化金属、ナノ粒子およびレポーター基、例えば蛍光化合物、またはNMRもしくはESR分光法により検出されうる化合物を含む。
【0111】
一例においては、抗TNF−α抗体は、与えられた生物学的応答を修飾するために、エフェクター部分、例えば細胞毒性分子、放射性核種または薬物部分にコンジュゲート化されうる。該エフェクター部分は、タンパク質またはポリペプチド、例えば、毒素(例えば、アブリン、リシンA、シュードモナス(Pseudomonas)外毒素またはジフテリア(Diphtheria)毒素)、シグナリング分子(例えば、α−インターフェロン、β−インターフェロン、神経成長因子、血小板由来増殖因子または組織プラスミノーゲンアクチベーター)、血栓性物質または抗血管新生物質(例えば、アンジオスタチンまたはエンドスタチン)または生体応答調節物質、例えば、サイトカインまたは増殖因子(例えば、インターロイキン−1(IL−1)、インターロイキン−2(IL−2)、インターロイキン−6(IL−6)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)または神経成長因子(NGF))(これらに限定されるものではない)でありうる。
【0112】
もう1つの例においては、該エフェクター部分は細胞毒素または細胞毒性物質でありうる。細胞毒素および細胞毒性物質の具体例には、タキソール(taxol)、シトカラシン(cytochalasin)B、グラミシジン(gramicidin)D、臭化エチジウム、エメチン(emetine)、マイトマイシン(mitomycin)、エトポシド(etoposide)、テノポシド(tenoposide)、ビンクリスチン(vincristine)、ビンブラスチン(vinblastine)、コルヒシン(colchicin)、ドキソルビシン(doxorubicin)、ダウノラビシン(daunorabicin)、ジヒドロキシアントラシンジオン(dihydroxy anthracin dione)、ミトザントロン(mitoxantrone)、ミトラマイシン(mithramycin)、アクチノマイシン(actinomycin)D、1−デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン(procaine)、テトラカイン(tetracaine)、リドカイン(lidocaine)、プロプラノロール(propranolol)およびピューロマイシン(puromycin)ならびにそれらの類似体またはホモログが含まれる。
【0113】
エフェクター部分には、限定的なものではないが、代謝拮抗物質(例えば、メトトレキセート(methotrexate)、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、シタラビン(cytarabine)、5−フルオロウラシル デカルバジン(decarbazine))、アルキル化物質(例えば、メクロルエタミン(mechlorethamine)、チオエパ クロラムブシル(thioepa chlorambucil)、メルファラン(melphalan)、カルムスチン(carmustine)(BSNU)およびロムスチン(lomustine)(CCNU)、シクロトスファミド(cyclothosphamide)、ブスルファン(busulfan)、ジブロモマンニトール(dibromomannitol)、ストレプトゾトシン(streptozotocin)、マイトマイシン(mitomycin)C5およびcis−ジクロロジアミン白金(II)(DDP)シスプラチン)、アントラサイクリン(例えば、ダウノルブシン(daunorubicin)(旧名:ダウノマイシン)およびドキソルビシン(doxorubicin))、抗生物質(例えば、ダクチノマイシン(dactinomycin)(旧名:アクチノマイシン)、ブレオマイシン(bleomycin)、マイトラマイシン(mithramycin)、アントラマイシン(anthramycin)(AMC)、カリケアマイシン(calicheamicin)またはデュオカルマイシン(duocarmycin)、および抗有糸分裂物質(例えば、ビンクリスチン(vincristine)およびビンブラスチン(vinblastine))も含まれる。
【0114】
他のエフェクター部分には、放射性核種、例えば、111Inおよび90Y、Lu177、ビスマス213、カリフォルニウム252、イリジウム192およびタングステン188/レニウム188(これらに限定されるものではない)、ならびに薬物、例えば、アルキルホスホコリン、トポイソメラーゼIインヒビター、タキソイドおよびスラミン(suramin)(これらに限定されるものではない)が含まれうる。
【0115】
そのようなエフェクター部分を抗体にコンジュゲート化するための技術が当技術分野においてよく知られている(例えば、Hellstromら,Controlled Drug Delivery,2nd Ed.,pp.623−53(Robinsonら編,1987));Thorpeら,1982,Immunol.Rev.62:119−58およびDubowchikら,1999,Pharmacology and Therapeutics 83:67−123を参照されたい)。
【0116】
一例においては、該抗体またはその断片は、共有結合(例えば、ペプチド結合)により、抗体のN末端、C末端または内部を介して、別のタンパク質(またはその一部分;例えば、該タンパク質の少なくとも10、20または50アミノ酸部分)のアミノ酸配列に融合される。該抗体またはその断片は、もう一方のタンパク質に、該抗体の定常ドメインのN末端において連結されうる。そのような融合体を作製するためには、例えば、WO 86/01533およびEP0392745に記載されているとおり、組換えDNA法が用いられうる。もう1つの例においては、該エフェクター分子はインビボにおける半減期を増加させ、および/または免疫系の上皮障壁を越える抗体の運搬を促進しうる。このタイプの適当なエフェクター分子の具体例には、重合体、アルブミン、アルブミン結合性タンパク質またはアルブミン結合性化合物、例えばWO 2005/117984に記載されているものが含まれる。
【0117】
ある態様においては、抗TNF−α抗体は小分子毒素にコンジュゲート化される。ある典型的な実施形態においては、本開示の抗TNF−α抗体はドラスタチン(dolastatin)またはドラスタチンペプチド性類似体もしくは誘導体、例えばオーリスタチン(auristatin)(米国特許第5,635,483号および第5,780,588号)にコンジュゲート化される。該ドラスタチンまたはオーリスタチン薬物部分は、該抗体に、そのN(アミノ)末端、C(カルボキシル)末端または内部を介して結合されうる(WO 02/088172)。典型的なオーリスタチン実施形態は、米国特許第7,498,298号(その全体を参照により本明細書に組み入れることとする。)(例えば、リンカー、およびリンカーにコンジュゲート化されるMMAEおよびMMAFのようなモノメチルバリン化合物の製造方法を開示している。)に開示されているとおり、N末端連結モノメチルオーリスタチン薬物部分DEおよびDFを含む。
【0118】
他の典型的な実施形態においては、小分子毒素には、カリケアミシン(calicheamicin)、メイタンシン(maytansine)(米国特許第5,208,020号)、トリコテン(trichothene)およびCC1065が含まれるが、これらに限定されるものではない。本開示の1つの実施形態においては、該抗体は1以上のメイタンシン分子(例えば、抗体分子1個当たり約1〜約10個のメイタンシン分子)にコンジュゲート化される。メイタンシンは、例えば、May−SS−Meに変換されることが可能であり、これはMay−SH3に還元され、抗体との反応に付されて(Chariら,1992,Cancer Research 52:127−131)、メイタンシノイド−抗体またはメイタンシノイド−Fc融合コンジュゲートを与えうる。同様に使用されうるカリケアミシンの構造類似体には、γ,γ,γ N−アセチル−γ、PSAGおよびθ(Hinmanら,1993,Cancer Research 53:3336−3342;Lodeら,1998,Cancer Research 58:2925−2928;米国特許第5,714,586号;米国特許第5,712,374号;米国特許第5,264,586号;米国特許第5,773,001号)が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0119】
本開示の抗体は標的化運搬のためにリポソームにもコンジュゲート化されうる(例えば、Parkら,1997,Adv.Pharmacol.40:399−435;Marty & Schwendener,2004,Methods in Molecular Medicine 109:389−401を参照されたい)。
【0120】
一例においては、本開示の抗体はポリ(エチレングリコール)(PEG)部分に結合されうる。1つの特定の例においては、該抗体は抗体断片であり、該PEG部分は、該抗体断片内に位置するいずれかの利用可能なアミノ酸側鎖または末端アミノ酸官能基、例えば、いずれかの遊離アミノ、イミノ、チオール、ヒドロキシルまたはカルボキシル基を介して結合されうる。そのようなアミノ酸は該抗体断片内に天然に存在することが可能であり、あるいは組換えDNA法を用いて該断片内に操作処理されうる。例えば、米国特許第5,219,996号を参照されたい。2以上のPEG分子を結合させるために複数の部位が使用されうる。PEG部分は、該抗体断片内に位置する少なくとも1つのシステイン残基のチオール基を介して共有結合されうる。結合点としてチオール基が利用される場合、適当に活性化されたエフェクター部分(例えば、チオール選択的誘導体、例えば、マレイミドおよびシステイン誘導体)が使用されうる。
【0121】
特定の例においては、抗TNF−α抗体コンジュゲートは、PEG化された[すなわち、例えばEP0948544に開示されている方法により、PEG(ポリ(エチレングリコール))が共有結合している]修飾Fab’断片である。Poly(ethyleneglycol)Chemistry,Biotechnical and Biomedical Applications,(J.Milton Harris(編),Plenum Press,New York,1992);Poly(ethyleneglycol)Chemistry and Biological Applications,(J.Milton Harris and S.Zalipsky,編,American Chemical Society,Washington D.C,1997);およびBioconjugation Protein Coupling Techniques for the Biomedical Sciences,(M.AslamおよびA.Dent編,Grove Publishers,New York,1998);およびChapman,2002,Advanced Drug Delivery Reviews 54:531−545も参照されたい。PEGはヒンジ領域内のシステインに結合されうる。一例においては、PEG修飾Fab’断片は、修飾ヒンジ領域内の単一のチオール基に共有結合したマレイミド基を有する。リシン残基は該マレイミド基に共有結合されることが可能であり、該リシン残基上のアミン基のそれぞれに、約20,000Daの分子量を有するメトキシポリ(エチレングリコール)重合体が結合されうる。したがって、該Fab’断片に結合されるPEGの全分子量は約40,000Daでありうる。
【0122】
本明細書中で用いる「標識」なる語は、本開示の抗TNF−α抗体に直接的または間接的にコンジュゲート化されうる検出可能な化合物または組成物を意味する。該標識自体が検出可能であることが可能であり(例えば、放射性同位体標識または蛍光標識)、あるいは酵素標識の場合には、検出可能な基質化合物または組成物の化学変化を触媒しうる。有用な蛍光部分には、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアナート、ローダミン、5−ジメチルアミン−1−ナフタレンスルホニルクロリド、フィコエリトリンなどが含まれるが、これらに限定されるものではない。有用な酵素標識には、アルカリホスファターゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼなどが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0123】
とりわけ診断目的に有用な追加的な抗TNF−α抗体コンジュゲートを以下の第7.7節に記載する。
【0124】
7.7 抗TNF−α抗体の診断用途
本開示の抗TNF−α抗体[例えばビオチン化、ホースラディッシュペルオキシダーゼまたはいずれかの他の検出可能部分(第7.6節に記載されているものを含む)により修飾された抗体を含む]は診断目的に有利に使用されうる。
【0125】
特に、該抗TNF−α抗体は、例えば、インビトロおよびインビボ診断方法を含む、TNF−αの精製または検出(これらに限定されるものではない)に使用されうる。例えば、該抗体は、生物学的サンプル中のTNF−αのレベルを定性的および定量的に測定するためのイムノアッセイにおいて有用である。例えば、Harlowら,Antibodies:A Laboratory Manual,Second Edition(Cold Spring Harbor Laboratory Press,1988)(その全体を参照により本明細書に組み入れることとする。)を参照されたい。1つの実施形態においては、本開示の抗TNF−α抗体は、血清中のTNF−αのレベルを検出および定量するために使用されうる。
【0126】
本開示は更に、診断用物質にコンジュゲート化された抗体またはその断片を含む。該抗体は、例えば、特定の細胞、組織または血清における、関心のある標的の発現を検出するために診断用に使用されることが可能であり、あるいは例えば、与えられた治療計画の効力を決定するための臨床試験法の一部として、免疫応答の発生もしくは進行をモニターするために診断用に使用されうる。検出は、該抗体を検出可能物質に結合させることにより促進されうる。検出可能物質の具体例には、種々の酵素、補欠分子族、蛍光物質、発光物質、生物発光物質、放射性物質、種々の陽電子放出トモグラフィーを使用する陽電子放出金属、および非放射性常磁性金属イオンが含まれる。該検出可能物質は、当技術分野で公知の技術を用いて、該抗体(またはその断片)に直接的に又は中間体(例えば、当技術分野で公知のリンカー)を介して間接的に結合またはコンジュゲート化されうる。酵素標識の具体例には、ルシフェラーゼ(例えば、ホタルルシフェラーゼおよび細菌ルシフェラーゼ;米国特許第4,737,456号)、ルシフェリン、2,3−ジヒドロフタラジンジオン、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、ウレアーゼ、ペルオキシダーゼ、例えばホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRPO)、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、アセチルコリンエステラーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、糖オキシダーゼ(例えば、グルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼおよびグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ)、複素環オキシダーゼ(例えば、ウリカーゼおよびキサンチンオキシダーゼ)、ラクトペルオキシダーゼ、ミクロペルオキシダーゼなどが含まれる。適当な補欠分子族複合体の具体例には、ストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンが含まれ、適当な蛍光物質の具体例には、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアナート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロリドまたはフィコエリトリンが含まれ、発光物質の一例には、ルミノールが含まれ、生物発光物質の具体例には、ルシフェラーゼ、ルシフェリンおよびエクオリンが含まれ、適当な放射性物質の具体例には、125I、131I、111Inまたは99Tcが含まれる。
【0127】
本開示は、本開示の1以上の抗TNF−α抗体(場合によっては、これは検出可能部分にコンジュゲート化されている。)を使用して生物学的サンプル(個体の細胞、組織または体液)を接触させ、該サンプルがTNF−α発現に関して陽性であるか否か、または該サンプルが、対照サンプルと比較して変化(例えば、減少または増加)した発現を示すかどうかを検出することを含む、TNF−αの発現の検出を提供する。
【0128】
本方法を用いて診断されうる疾患には、本明細書に記載されている疾患が含まれるが、これらに限定されるものではない。ある実施形態においては、該組織または体液は末梢血、末梢血白血球、生検組織、例えば肺または皮膚生検および組織である。
【0129】
7.8 抗TNF−α抗体を使用する治療方法
7.8.1 臨床的有用性
本開示のTNF−α抗体は、種々の免疫および自己免疫病理の障害または症状ならびに炎症疾患の治療に有用である。本開示の抗TNF−α抗体で治療されうるTNF−α関連病理および疾患には以下のものが含まれるが、それらに限定されるものではない。
【0130】
・急性および慢性免疫および自己免疫病理、例えば全身性エリテマトーデス、慢性関節リウマチ、チロイドーシス(thyroidosis)、移植片対宿主病、強皮症、糖尿病、グレーブス病など;
・急性または慢性細菌感染、急性および慢性寄生生物および/または細菌、ウイルスまたは真菌感染症、例えばエイズ(悪液質、自己免疫障害、エイズ痴呆症候群および感染症のような続発症を含む)から生じる敗血症症候群、悪液質、循環虚脱およびショック(これらに限定されるものではない)を含む感染症;
・炎症疾患、例えば、慢性炎症病理および血管炎症病理、例えば、サルコイドーシス、慢性炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎およびなどのクローン病、および播種性血管内凝固、アテローム性動脈硬化症および川崎病(これらに限定されるものではない)のような血管炎症病理;
・神経変性疾患、限定的なものではないが例えば、脱髄疾患、例えば、多発性硬化症および急性横断性脊髄炎;錐体外路および小脳障害、例えば、皮質脊髄系の病変;大脳基底核の障害または小脳障害;多動性運動障害、例えば、ハンチントン舞踏病および老人性舞踏病、薬剤誘発性運動障害、例えば、CNS、ドーパミン受容体を遮断する薬物により誘発されるもの;運動減少運動障害、例えば、パーキンソン病;進行性核上性麻痺、小脳および脊髄小脳障害、例えば、小脳の非構造的(astructural)病変;脊髄小脳変性(脊髄性運動失調症、フリードライヒ失調症、小脳皮質変性、多系統変性症(Mencel,Dejerine−Thomas,Shi−DragerおよびMachado−Joseph);ならびに全身性障害(レフサム病、無βリポタンパク血症、運動失調、毛細血管拡張およびミトコンドリア多系統障害);脱髄核障害、例えば多発性硬化症、急性横断性脊髄炎;運動単位の障害、例えば、神経原性筋萎縮(前角細胞変性、例えば、筋萎縮性側索硬化症、乳児脊髄性筋萎縮および若年性脊髄性筋萎縮);アルツハイマー病;中年期におけるダウン症候群;びまん性レビー小体病;レヴィー小体型老年痴呆、ウェルニッケコルサコフ症候群;慢性アルコール依存症;クロイツフェルトヤコブ病;亜急性硬化性全脳炎;ハラーホルデン−スパッツ病、拳闘家痴呆、またはそれらのいずれかの下位概念;
・TNF−α分泌性腫瘍を含む悪性疾患、またはTNF−αが関わる他の悪性疾患、例えば、白血病(急性、慢性骨髄性、慢性リンパ性および/または骨髄異形成症候群);リンパ腫(ホジキンおよび非ホジキンリンパ腫)、例えば、悪性リンパ腫(バーキットリンパ腫または菌状息肉腫);ならびに
・アルコール誘発性肝炎。
【0131】
ある特定の実施形態においては、本開示の抗体は、以下の1以上を治療するために使用される:
・成人における中等度ないし重度の慢性関節リウマチ(RA)、
・4歳以上の小児における中等度ないし重度の多関節若年性特発性関節炎(JIA)、
・成人における乾癬性関節炎(PSA)、
・成人における強直性脊椎炎(AS)、
・通常の治療に十分に応答していない成人における中等度ないし重度のクローン病(CD)、
・中等度ないし重度の慢性尋常性乾癬(Ps)。
【0132】
したがって、本開示は、本開示の抗TNF−α抗体を患者に投与することを含む、治療を要する患者における前記疾患のいずれかの治療方法を提供する。場合によっては、該糖よは、例えば1日後、2日後、3日後、5日後、1週間後、2週間後、3週間後、1ヵ月後、5週間後、6週間後、7週間後、8週間後、2ヵ月後または3ヵ月後に反復される。該反復投与は、同じ用量または異なる用量で行われうる。該投与は、1回、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回またはそれ以上反復されうる。例えば、ある投与計画に従い、患者は、長期間、例えば6ヶ月、1年またはそれ以上にわたり、抗TNF−α療法を受ける。患者に投与される抗TNF−α抗体の量は、ある実施形態においては、治療的有効量である。本明細書中で用いる、TNF−α抗体の「治療的有効」量は、1回量として、または治療計画の経過にわたって、例えば1週間、2週間、3週間、1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、1年またはそれ以上にわたって投与されうる。典型的な治療計画は後記第7.11節に記載されている。
【0133】
本開示においては、疾患の治療は、いずれかの臨床段階または徴候におけるいずれかの形態の該疾患を有すると既に診断されている患者の治療、該疾患の症状もしくは徴候の発生もしくは進展もしくは激化もしくは悪化の遅延、ならびに/または該疾患の予防および/もしくは該疾患の重症度の軽減を含む。
【0134】
本開示の抗TNF−α抗体が投与される「対象」または「患者」は、好ましくは哺乳動物、例えば非霊長類(例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ネコ、イヌ、ラットなど)または霊長類(例えば、サルまたはヒト)である。ある実施形態においては、該対象または患者はヒトである。ある態様においては、該ヒトは小児患者である。他の態様においては、該ヒトは成人患者である。
【0135】
7.9 医薬組成物および投与経路
本開示の抗TNF−α抗体、および場合によっては1以上の追加的治療用物質、例えば後記第7.10節に記載されている併用治療用物質を含む組成物を本発明において提供する。該組成物は、通常、医薬上許容される担体を通常は含む無菌医薬組成物の一部分として供給される。この組成物は、(それを患者に投与する所望の方法に応じた)いずれかの適当な形態でありうる。
【0136】
本開示の抗TNF−α抗体は、例えば経口、経皮、皮下、鼻腔内、静脈内、筋肉内、眼内、局所、鞘内および脳室内のような種々の経路により患者に投与されうる。いずれかの与えられた場合における最も適した投与経路は、個々の抗体、対象ならびに疾患の性質および重症度ならびに該対象の全身状態に左右されるであろう。
【0137】
本明細書に記載されている適応症の治療のためには、本開示の抗TNF−α抗体の有効量は、治療される状態、投与経路ならびに対象の年齢、体重および状態に応じて、単一(例えば、ボーラス)投与、複数回の投与または連続投与当たり約0.001から約75mg/kgの範囲、あるいは単一(例えば、ボーラス)投与、複数回の投与または連続投与当たり0.01〜500μg/mLの血清濃度を与える範囲、あるいはその中のいずれかの有効な範囲または値でありうる。ある実施形態においては、各用量は、約0.5μgから約50μg/kg体重、例えば、約3μgから約30μg/kg体重の範囲でありうる。該抗体は水溶液として製剤化されることが可能であり、皮下注射により投与されうる。
【0138】
医薬組成物は、用量当たりに本開示の抗TNF−α抗体の所定量を含有する単位投与形として、簡便に提供されうる。そのような単位は、例えば、5mgから5g、例えば、10mgから1g、または20から50mg(これらに限定されるものではない)を含有しうる。該開示において用いられる医薬上許容される担体は、例えば、治療すべき状態または投与経路に基づいて、多種多様な形態をとりうる。
【0139】
本開示の抗TNF−α抗体の治療用製剤は、所望の純度を有する該抗体を、当技術分野において典型的に使用される随意的な(すなわち、所望により使用されうる。)医薬上許容される担体、賦形剤または安定剤(それらの全ては本明細書においては「担体」と称される。)、すなわち、緩衝剤、安定化剤、保存剤、等張化剤、ノニオン界面活性剤、抗酸化剤および他の種々の添加物と混合することにより、凍結乾燥製剤または水溶液として貯蔵用に製造されうる。Remington’s Pharmaceutical Sciences,16th edition(Osol編,1980)を参照されたい。そのような添加物は、使用される投与量および濃度において被投与者にとって無毒性でなければならない。
【0140】
緩衝剤は、生理的条件に近い範囲にpHを維持するのを助ける。それは約2mM〜約50mMの範囲の濃度で存在しうる。本開示で使用される適当な緩衝剤には、有機および無機の両方の酸ならびにそれらの塩、例えば、クエン酸バッファー(例えば、クエン酸一ナトリウム−クエン酸二ナトリウム混合物、クエン酸−クエン酸三ナトリウム混合物、クエン酸−クエン酸一ナトリウム混合物など)、コハク酸バッファー(例えば、コハク酸−コハク酸一ナトリウム混合物、コハク酸−水酸化ナトリウム混合物、コハク酸−コハク酸二ナトリウム混合物など)、酒石酸バッファー(例えば、酒石酸−酒石酸ナトリウム混合物、酒石酸−酒石酸カリウム混合物、酒石酸−水酸化ナトリウム混合物など)、フマル酸バッファー(例えば、フマル酸−フマル酸一ナトリウム混合物、フマル酸−二ナトリウム混合物、フマル酸一ナトリウム−フマル酸二ナトリウム混合物など)、グルコン酸バッファー(例えば、グルコン酸−グリコン酸ナトリウム混合物、グルコン酸−水酸化ナトリウム混合物、グルコン酸−グリウコン酸カリウム混合物など)、シュウ酸バッファー(例えば、シュウ酸−シュウ酸ナトリウム混合物、シュウ酸−水酸化ナトリウム混合物、シュウ酸−シュウ酸カリウム混合物など)、乳酸バッファー(例えば、乳酸−乳酸ナトリウム混合物、乳酸−水酸化ナトリウム混合物、乳酸−乳酸カリウム混合物など)、および酢酸バッファー(例えば、酢酸−酢酸ナトリウム混合物、酢酸−水酸化ナトリウム混合物など)が含まれる。また、リン酸バッファー、ヒスチジンバッファーおよびトリメチルアミン塩、例えばTrisが使用されうる。
【0141】
微生物の成長を阻害するために保存剤が添加可能であり、保存剤は、0.2%〜1%(w/v)の範囲の量で加えられうる。本開示において使用される適当な保存剤には、フェノール、ベンジルアルコール、メタ−クレゾール、メチルパラベン、プロピルパラベン、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、ベンザルコニウムハリド(例えば、クロリド、ブロミドおよびヨージド)、ヘキサメトニウムクロリド、およびアルキルパラベン、例えばメチルまたはプロピルパラベン、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、および3−ペンタノールが含まれる。時には「安定剤」として公知である等張化剤が、本開示の液体組成物の等張性を確保するために添加可能であり、該等張化剤には、多価糖アルコール、例えば、三価以上の糖アルコール、例えば、グリセリン、エリトリトール、アラビトール、キシリトール、ソルビトールおよびマンニトールが含まれる。安定剤は、増量剤から、該治療用物質を可溶化し又は変性もしくは容器壁への付着を防ぐのを助ける添加剤までの、機能における範囲にわたる、賦形剤の広い範疇を意味する。典型的な安定剤は、多価糖アルコール(前記に列挙されているもの);アミノ酸、例えばアルギニン、リシン、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アラニン、オルニチン、L−ロイシン、2−フェニルアラニン、グルタミン酸、トレオニンなど、有機糖または糖アルコール、例えば、ラクトース、トレハロース、スタキオース、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、リビトール、ミオイノシトール、ガラクチトール、グリセロールなど、例えば、シクリトール、例えば、イノシトール;ポリエチレングリコール、アミノ酸重合体;硫黄含有還元剤、例えば、尿素、グルタチオン、チオクト酸、チオグリコール酸ナトリウム、チオグリセロール、α−モノチオグリセロールおよびチオ硫酸ナトリウム;低分子量ポリペプチド(例えば、10残基以下のペプチド);タンパク質、例えば、ヒト血清アルブミン、ウシ血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリン;親水性重合体、例えば、ポリビニルピロリドン 単糖類、例えば、キシロース、マンノース、フルクトース、グルコース;二糖類、例えば、ラクトース、マルトース、スクロース、および三糖類、例えば、ラフィノース;ならびに多糖類、例えばデキストランでありうる。安定剤は、活性タンパク質の重量に対して0.1から10,000重量部の範囲で存在しうる。
【0142】
該治療用物質を可溶化するのを助け、該治療用タンパク質の攪拌誘発性凝集を防ぐために、ノニオン界面活性剤または表面活性剤(「湿潤剤」としても公知である。)が添加可能であり、これはまた、該タンパク質の変性を引き起こすことなくストレス化せん断表面に該製剤が付されることを可能にする。適当なノニオン界面活性剤には、ポリソルベート(20、80など)、ポリオキサマー(184、188など)、プルロニックポリオール、ポリオキシエチレンソルビタンモノエーテル(TWEEN(登録商標)−20、TWEEN(登録商標)−80など)が含まれる。ノニオン界面活性剤は、約0.05mg/mLから約1.0mg/mL、例えば、約0.07mg/mLから約0.2mg/mLの範囲で存在しうる。
【0143】
他の種々の賦形剤には、増量剤(例えば、デンプン)、キレート化剤(例えば、EDTA)、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、メチオニン、ビタミンE)および共存溶媒が含まれる。本開示の抗TNF−α抗体に適した更に詳細な製剤は、米国特許出願第2004/0033228 A1(その内容の全体を参照により本明細書に組み入れることとする。)に開示されている。
【0144】
本発明における製剤は、本開示の抗TNF−α抗体に加えて、併用(組合せ)療法物質をも含有しうる。適当な併用療法物質の具体例は後記第7.10に記載されている。
【0145】
皮下投与のための投与スケジュールは、疾患のタイプ、疾患の重症度および該抗TNF−α抗体に対する患者の感受性を含む幾つかの臨床的要因に応じて、6ヶ月に1回、5ヶ月に1回、4ヶ月に1回、3ヶ月に1回、2ヶ月に1回、1ヶ月に1回から、隔週、毎週または毎日まで、様々となりうる。
【0146】
本開示の抗TNF−α抗体の投与量は、個々の抗体、自己免疫または炎症疾患のタイプ、対象ならびに該疾患の性質および重症度、該対象の身体状態、治療計画(例えば、併用治療用物質が使用されるかどうか)、ならびに選択される投与経路によって異なり、適当な投与量は当業者により容易に決定されうる。
【0147】
ヒトおよび動物における自己免疫または炎症疾患の治療および/または予防には、いずれかの適当な投与経路、例えば注射、および抗体に基づく臨床製品のための当技術分野で公知の他の投与経路を用いて、抗TNF−α抗体を含む医薬組成物が、治療的または予防的有効量(例えば、自己免疫もしくは炎症疾患の抑制および/または自己免疫もしくは炎症疾患症状の軽減をもたらす投与量)で患者(例えば、ヒト対象)に投与されうる。
【0148】
本開示の抗TNF−α抗体の個々の投与の最適な量および間隔は、治療される状態の性質および程度、投与の形態、経路および部位、ならびに治療される個々の対象の年齢および状態により決定され、使用すべき適当な投与量は最終的には医師により決定される、と当業者により認識されるであろう。この投与は適当な頻度で反復されうる。副作用が生じたら、通常の臨床的慣例に従い、投与の量および/または頻度を改変し又は減少させることが可能である。
【0149】
7.10 併用療法
本開示の抗TNF−α抗体が使用されうる併用法を以下に記載する。本開示の併用法は、少なくとも2つの物質を患者に投与することを含み、それらのうちの第1の物質は本開示の抗TNF−α抗体であり、追加的な物質は併用療法物質である。該抗TNF−α抗体および該併用療法物質は同時、連続的または別々に投与されうる。
【0150】
本開示の併用療法はより大きな相加効果をもたらして、該抗TNF−α抗体および併用療法物質のいずれもが単独で治療的に有効な量で投与されない場合であっても治療利益を与えうる。
【0151】
本方法においては、本開示の抗TNF−α抗体および該併用療法物質は、同時または連続的に、共同的に投与されうる。本明細書中で用いる、本開示の抗TNF−α抗体および該併用療法物質が、連続的に投与されると称されるのは、それらが、同一日に、例えば、患者の同一訪問中に、患者に投与される場合である。連続的投与は1、2、3、4、5、6、7または8時間間隔で行われうる。一方、本開示の抗TNF−α抗体および該併用療法物質が別々に投与されると称されるのは、それらが、異なる日に患者に投与される場合であり、例えば、本開示の抗TNF−α抗体および該併用療法物質は1日、2日または3日、1週間、2週間または1ヶ月間隔で投与されうる。本開示の方法においては、本開示の抗TNF−α抗体の投与は該併用療法物質の投与の前または後に行われうる。
【0152】
非限定的な一例としては、本開示の抗TNF−α抗体および併用療法物質は或る期間にわたって共同的に投与され、ついで第2の期間においては、本開示の抗TNF−α抗体および該併用療法物質の投与が交互に行われうる。
【0153】
本開示の抗TNF−α抗体および併用療法物質を投与する潜在的な相乗効果のため、そのような物質は、それらの物質の一方または両方が単独で投与される場合には治療的に有効ではない量で投与されうる。
【0154】
ある態様においては、該併用療法物質は抗リウマチ薬、抗炎症物質、化学療法物質、放射線治療、免疫抑制物質または細胞毒性薬である。
【0155】
抗リウマチ薬には、オーラノフィン(auranofin)、アザチオプリン(azathioprine)、クロロキン(chloroquine)、D−ペニシラミン(penicillamine)、金ナトリウムチオマラートヒドロキシクロロキン、ミオクリシン(Myocrisin)およびスルファサルジンメトトレキセート(sulfasalzine methotrexate)が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0156】
抗炎症物質には、デキサメタゾン(dexamethasone)、ペンタザ(pentasa)、メサラジン(mesalazine)、アサコール(asacol)、リン酸コデイン(codeine phosphate)、ベノリラート(benorylate)、フェンブフェン(fenbufen)、ナプロシン(naprosyn)、ジクロフェナック(diclofenac)、エトドラック(etodolac)およびインドメタシン(indomethacin)、アスピリン(aspirin)およびイブプロフェン(ibuprofen)が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0157】
化学療法物質には、放射性分子、毒素(細胞毒または細胞毒性物質とも称される。)(これは、細胞の生存能に有害である任意の物質を含む)、物質、および化学療法化合物を含有するリポソームまたは他の小胞が含まれるが、これらに限定されるものではない。適当な化学療法物質の具体例には以下のものが含まれるが、それらに限定されるものではない:1−デヒドロテストステロン、5−フルオロウラシルデカルバジン、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、アクチノマイシン(actinomycin)D、アドリアマイシン(adriamycin)、アルデスロイキン(aldesleukin)、アルキル化剤、アロプリノール(allopurinol)ナトリウム、アルトレタミン(altretamine)、アミホスチン(amifostine)、アナストロゾール(anastrozole)、アントラマイシン(anthramycin)(AMC)、抗有糸分裂物質、シスジクロロジアミン白金(II)(DDP)シスプラチン)、ジアミノジクロロ白金、アントラサイクリン、抗生物質、代謝拮抗物質、アスパラギナーゼ、BCG生(小胞内)、リン酸ベタメタゾンナトリウムおよび酢酸ベタメタゾン、ビカルタミド(bicalutamide)、硫酸ブレオマイシン、ブスルファン(busulfan)、ロイコウオリン(leucouorin)カルシウム、カリケアマイシン(calicheamicin)、カペシタビン(capecitabine)、カルボプラチン(carboplatin)、ロムスチン(lomustine)(CCNU)、カルムスチン(carmustine)(BSNU)、クロラムブシル(Chlorambucil)、シスプラチン(Cisplatin)、クラドリビン(Cladribine)、コルヒシン(Colchicin)、コンジュゲート化エストロゲン、シクロホスファミド(Cyclophosphamide)、シクロトスファミド(Cyclothosphamide)、シタラビン(Cytarabine)、シタラビン、サイトカラシン(cytochalasin)B、サイトキサン(Cytoxan)、デカルバジン(Dacarbazine)、ダクチノマイシン(Dactinomycin)、ダクチノマイシン(旧名:アクチノマイシン)、ダウニルビシン(daunirubicin)HCL、クエン酸ダウノルビシン、デニリューキン・ジフチトックス(denileukin diftitox)、デクスラゾキサン(Dexrazoxane)、ジブロモマンニトール、ジヒドロキシアントラシンジオン、デセタキセル(Docetaxel)、メシル酸ドラセトロン(dolasetron mesylate)、ドキソルビシン(doxorubicin)HCL、ドロナビノール(dronabinol)、大腸菌(E.coli)L−アスパラギナーゼ、エオロシキシマブ(eolociximab)、エメチン(emetine)、エポクチン(epoetin)−α、エルウィニア(Erwinia)L−アスパラギナーゼ、エステル化エストロゲン、エストラジオール、エストラムスチン(estramustine)リン酸ナトリウム、臭化エチジウム、エチニルエストラジオール、エチドロナート(etidronate)、エトポシドシトロロルム因子(etoposide citrororum factor)、リン酸エトポシド、フィルグラスチム(filgrastim)、フロクスウリジン(floxuridine)、フルコナゾール(fluconazole)、リン酸フルダラビン(fludarabine)、フルオロウラシル、フルタミド(flutamide)、フォリン酸、ジェムシタビン(gemcitabine)HCL、グルココルチコイド、酢酸ゴセレリン(goserelin)、グラミシジン(gramicidin)D、グラニセトロン(granisetron)HCL、ヒドロキシ尿素、イダルビシン(idarubicin)HCL、イフォスファミド(ifosfamide)、インターフェロンαα−2b、イリノテカン(irinotecan)HCL、レトロゾール(letrozole)、ロイコボリン(leucovorin)カルシウム、酢酸ロイプロリド(leuprolide)、レバミゾール(levamisole)HCL、リドカイン(lidocaine)、ロムスチン(lomustine)、メイタンシノイド(maytansinoid)、メクロルエタミン(mechlorethamine)HCL、酢酸メドロキシプロゲステロン(medroxyprogesterone)、酢酸メゲストロール(megestrol)、メルファラン(melphalan)HCL、メルカプチプリン(mercaptipurine)、メスナ(mesna)、メトトレキセート(methotrexate)、メチルテストステロン、ミトラマイシン(mithramycin)、マイトマイシン(mitomycin)C、ミトタン(mitotane)、ミトザントロン(mitoxantrone)、ニルタミド(nilutamide)、酢酸オクトレオチド(octreotide)、オンダセトロン(ondansetron)HCL、パクリタキセル(paclitaxel)、パミドロナート(pamidronate)二ナトリウム、ペントスタチン(pentostatin)、ピロカルピン(pilocarpine)HCL、プリマイシン(plimycin)、カルムスチン(carmustine)インプラントを伴うポリフェプロサン(polifeprosan)20、プルフィマー(porfimer)ナトリウム、プロカイン(procaine)、プロカルバジン(procarbazine)HCL、プロプラノロール(propranolol)、リツキシマブ(rituximab)、サルグラモスチム(sargramostim)、ストレプトゾトシン(streptozotocin)、タモキシフェン(tamoxifen)、タキソール(taxol)、テニポシド(teniposide)、テノポシド(tenoposide)、テストラクトン(testolactone)、テトラカイン(tetracaine)、チオエパ(thioepa) クロラムブシル(chlorambucil)、チオグアニン(thioguanine)、チオテパ(thiotepa)、トポテカン(topotecan)HCL、クエン酸トレミフェン(toremifene)、トラスツズマブ(trastuzumab)、トレチノイン(tretinoin)、バルルビシン(valrubicin)、硫酸ビンブラスチン(vinblastine)、硫酸ビンクリスチン(vincristine)および酒石酸ビノレルビン(vinorelbine)。
【0158】
本開示の更に他の態様においては、該併用療法物質は本開示の抗TNF−α抗体以外のTNF−αアンタゴニストである。そのようなTNF−αアンタゴニストの具体例には以下のものが含まれるが、それらに限定されるものではない:可溶性TNF−α受容体;エタネルセプト(etanercept)(ENBREL(商標);Immunex)またはその断片、誘導体もしくは類似体;インフリキシマブ(infliximab)(REMICADE(登録商標);Centacor)またはその誘導体、類似体もしくは抗原結合性断片;IL−10(これは、インターフェロン−γ活性化マクロファージによりTNF−α産生を遮断することが知られている。)(Oswaldら,1992,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:8676−8680)、TNFR−IgG(Ashkenaziら,1991,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:10535−10539);マウス製品TBP−I(Serono/Yeda);ワクチンCytoTAb(Protherics);アンチセンス分子104838(ISIS);ペプチドRDP−58(SangStat);サリドマイド(Celgene);CDC−801(Celgene);DPC−333(Dupont);VX−745(Vertex);AGIX−4207(AtheroGenics);ITF−2357(Italfarmaco);NPI−13021−31(Nereus);SCIO−469(Scios);TACE標的物(Immunix/AHP);CLX−120500(Calyx);チアゾロピリム(Thiazolopyrim)(Dynavax);オーラノフィン(auranofin)(Ridaura)(SmithKline Beecham Pharmaceuticals);キナクリン(quinacrine)(メパクリンジクロロヒドラート);テニダップ(tenidap)(Enablex);メラニン(Melanin)(Large Scale Biological);およびUriachによる抗p38 MAPK物質。
【0159】
抗TNF−α抗体との併用に有用な他の第2療法物質、およびそのような第2療法物質との併用療法が有用な個々の適応症は、WO 2004/004633(その全体を参照により本明細書に組み入れることとする。)に開示されている。
【0160】
7.11 治療計画
本開示は、本開示の抗TNF−α抗体の投与を含む治療計画(治療レジメン)を提供する。該治療計画は、患者の年齢、体重および病態によって異なるであろう。該治療計画は2週間ないし無期限に継続されうる。特定の実施形態においては、該治療計画は2週間から6ヶ月、3ヶ月から5年間、6ヶ月から1または2年間、8ヶ月から18ヶ月間などの期間にわたって継続される。該治療計画は非可変用量計画または多可変用量計画、例えば、WO 2005/110452(その全体を参照により本明細書に組み入れることとする。)に記載されているものでありうる。
【0161】
後記の典型的投与計画に関しては、該抗TNF−α抗体は、皮下投与のために、無菌の保存剤非含有溶液として投与されうる。
【0162】
ある実施形態においては、該薬物産物は、1mLの予め充填されたガラスシリンジが封入された1回使用のための予め充填されたペン(pen)として、あるいは1回量の1mLの予め充填されたガラスシリンジとして供給される。成人患者の場合、ある実施形態においては、該シリンジは、本開示の抗TNF−α抗体を含む0.8mLの医薬上許容される溶液を運搬する。特定の実施形態においては、該抗体に加えて、該溶液は、4.93mgの塩化ナトリウム、0.69mgの一塩基性リン酸ナトリウム二水和物、1.22mgの二塩基性リン酸ナトリウム二水和物、0.24mgのクエン酸ナトリウム、1.04mgのクエン酸一水和物、9.6mgのマンニトール、0.8mgのポリソルベート80および注射用水(USP)を含有し、必要に応じて、pHを調節するために水酸化ナトリウムが添加される。小児患者の場合、ある実施形態においては、該シリンジは、本開示の抗TNF−α抗体を含む0.4mLの医薬上許容される溶液を運搬する。特定の実施形態においては、該抗体に加えて、該溶液は、2.47mgの塩化ナトリウム、0.34mgの一塩基性リン酸ナトリウム二水和物、0.61mgの二塩基性リン酸ナトリウム二水和物、0.12mgのクエン酸ナトリウム、0.52mgのクエン酸一水和物、4.8mgのマンニトール、0.4mgのポリソルベート80および注射用水(USP)を含有し、必要に応じて、pHを調節するために水酸化ナトリウムが添加される。
【0163】
慢性関節リウマチ、乾癬性関節炎および強直性脊椎炎の治療の場合、本開示の抗TNF−α抗体は10から50mg(例えば、10mg、15mg、20mg、25mg、30mg、35mg、40mg、45mgまたは50mg)の用量で隔週で投与されうる。メトトレキセート、グルココルチコイド、サリシラート、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、鎮痛薬または他の疾患緩和(disease−modifying)抗リウマチ薬(DMARD)の投与が、本開示の抗TNF−α抗体での治療中に継続されうる。慢性関節リウマチにおいては、メトトレキセートを同時服用していない患者のなかには、隔週から毎週へと投与頻度を増加させることにより追加的な利益を得る者もあるかもしれない。
【0164】
若年性特発性関節炎の治療の場合、本開示の抗TNF−α抗体は、患者の体重に応じた用量で投与される。ある非限定的な実施形態においては、体重15kg(33 lb)から30kg(66 lb)以下の小児患者に対する用量は、隔週で投与される5〜25mg(例えば、5mg、7.5mg、10mg、12.5mg、15mg、20mgまたは25mg)の範囲である。ある非限定的な実施形態においては、体重30kg(66 lb)を超える小児患者に対する用量は、隔週で投与される10から50mg(例えば、10mg、15mg、20mg、25mg、30mg、35mg、40mg、45mgまたは50mg)の範囲である。メトトレキセート、グルココルチコイド、サリシラート、NSAIDまたは鎮痛薬の投与が、該抗TNF−α抗体での治療中に継続されうる。
【0165】
クローン病の治療の場合、本開示の抗TNF−α抗体は、ある非限定的な実施形態においては、初期には(第1日において、または第1日と第2日との間で分割して)40〜280mg(例えば、40mg、80mg、100mg、120mg、140mg、160mg、180mg、200mg、240mgまたは280mg)の用量で投与され、ついで2週間後(第15日)に該初期用量の約40%から60%(例えば、50%)の用量で投与されうる。2週間後(第29日)に、該初期用量の20%から30%(例えば、25%)の維持量が隔週で投与される。アミノサリシラート、コルチコステロイドおよび/または免疫調節物質(例えば、6−メルカプトプリンおよびアザチオプリン)の投与が、該抗TNF−α抗体での治療中に継続されうる。
【0166】
プラーク(plaque)乾癬の治療の場合、本開示の抗TNF−α抗体は、ある非限定的な実施形態においては、初期には40〜160mg(例えば、40mg、80mg、100mg、120mg、140mgまたは160mg)の用量で投与され、ついで、該初期投与の1週間後から、該初期用量の半分の用量で隔週で投与されうる。
【0167】
7.12 診断キットおよび医薬キット
本開示の抗TNF−α抗体(抗体コンジュゲートを含む)を含有する医薬キットが本開示に含まれる。該医薬キットは、本開示の抗TNF−α抗体(例えば、凍結乾燥形態または水溶液として)と以下のものの1以上とを含むパッケージである:
・併用療法物質、例えば、前記第7.10節に記載されているもの;
・該抗TNF−α抗体を投与するための装置、例えばペン(pen)、針および/またはシリンジ;ならびに
・該抗体が凍結乾燥形態である場合に該抗体を再懸濁させるための医薬等級の水またはバッファー。
【0168】
ある態様においては、該抗TNF−α抗体の各単位用量は別々にパッケージングされ、キットは1以上の単位用量(例えば、2単位用量、3単位用量、4単位用量、5単位用量、8単位用量、10単位用量またはそれ以上)を含有しうる。特定の実施形態においては、そのような1以上の単位用量はそれぞれ、シリンジまたはペン内に収容される。
【0169】
本開示の抗TNF−α抗体(抗体コンジュゲートを含む)を含有する診断キットも本発明に含まれる。該診断キットは、本開示の抗TNF−α抗体(例えば、凍結乾燥形態または水溶液として)と、診断アッセイを行うのに有用な1以上の試薬とを含むパッケージである。該抗TNF−α抗体が酵素で標識されている場合、該キットは、該酵素に必要な基質および補因子(例えば、検出可能な発色団または発蛍光団を与える基質前駆体)を含む。また、他の添加物、例えば、安定剤、バッファー(例えば、ブロックバッファーまたは細胞溶解バッファー)などが含まれうる。ある実施形態においては、診断キットに含まれる抗TNF−α抗体は固体表面上に固定化され、あるいは、該抗体が固定化されうる固体表面(例えば、スライド)が該キットに含まれる。そのような種々の試薬の相対量は、該アッセイの感度を実質的に最適化する該試薬の溶液中の濃度を与えるように多種多様となりうる。特定の実施形態においては、該抗体および1以上の試薬は、適当な濃度を有する試薬溶液を溶解時に与える賦形剤を含む乾燥粉末、通常は凍結乾燥粉末として(個別に又は組合されて)提供されうる。
【実施例】
【0170】
8.実施例1:D2E7の脱免疫化変異体の特定
8.1 材料および方法
8.1.1 ペプチド
Mimotopes(Adelaide,Australia)による多ピン(multi−pin)形態を使用して、ペプチドを合成した。D2E7軽鎖および重鎖V領域の配列を、合計69ペプチドに関して、12アミノ酸だけ重複する15マーペプチド(図1および表1)として合成した。ペプチドを凍結乾燥させ、DMSO(Sigma−Aldrich)に約1〜2mg/mLで再懸濁させた。ストックペプチドを−20℃で凍結状態で維持した。
【0171】
8.1.2 ヒト末梢血単核細胞
地域の献血者(ドナー)のバフィコート製品をStanford Blood Center(Palo Alto,CA)から購入した。バフィコート物質を、カルシウムもマグネシウムも含有しないDPBSで1:1(v:v)で希釈した。50mL 円錐遠心分離チューブ(SarstedまたはCostar)内で、希釈バフィコート物質(25〜35mL)の下層に12.5mLのFicollPaque−PLUS(GE Healthcare)を加えた。該サンプルを900gで室温で30分間遠心分離した。末梢血単核細胞(PBMC)を該境界から集めた。DPBSを加えて最終体積を50mLとし、該細胞を350gで5分間遠心分離した。ペレット化細胞をDPBSに再懸濁させ、計数した。
【0172】
8.1.3 樹状細胞
樹状細胞の単離のために、T75培養フラスコ(Costar)内の合計体積30mLのAIM V培地(Invitrogen)に10個の新鮮に単離されたPBMCを播いた。90% ウシ胎児血清(FCS)、10% DMSO中、過剰のPBMCを5×10 細胞/mlで−80℃で凍結した。T75フラスコを5% CO中、37℃で2時間温置した。非付着細胞を除去し、付着単層をDPBSで洗浄した。樹状細胞を単球から分化させるために、800単位/mLのGM−CSF(R and D Systems)と500単位/mLのIL−4(R and D Systems)とを含有する30mLのAIM V培地を加えた。フラスコを5日間温置した。第5日に、IL−1α(Endrogen)およびTNF−α(Endrogen)を50pg/mLおよび0.2ng/mlまで加えた。フラスコを更に2日間温置した。第7日に、0.5から1.0mgのマイトマイシンC(Sigma−Aldrich)を含有する3mLの100mM EDTAの添加(10mM EDTAおよび16.5から33μg/mL マイトマイシンCの最終濃度)により、樹状細胞を集めた。あるいは、固定のために、樹状細胞に4,000ラドを照射した。フラスコを5% CO中、37℃で更に1日間温置した。樹状細胞を集め、AIM V培地で2〜3回洗浄した。
【0173】
8.1.4 細胞培養
第7日に、予め凍結された自己PBMCを37℃の水浴内で急速解凍した。細胞を直ちにDPBSまたはAIM V培地内に希釈し、350gで5分間遠心分離した。磁気ビーズ(Easy−Sep CD4+キット,Stem Cell Technologies)を使用するネガティブ選択によりCD4+細胞を富化した。自己CD4+ T細胞および樹状細胞を、96ウェル丸底プレート(Costar 9077)のウェル当たり2×10個の樹状細胞当たり2×10個のCD4+ T細胞の比率で共培養した。ペプチドを約5μg/mLで加えた。対照ウェルはDMSO(Sigma)ビヒクルのみを0.25% v:vで含有していた。陽性対照ウェルはDMSOを0.25%で、破傷風トキソイド(List BiologicalsまたはCalBioChem)を1μg/mLで含有していた。培養物を5日間温置した。第5日に、0.25μCi/ウェルのトリチウム化チミジン(AmershamまたはGE Healthcare)を加えた。第6日に、Packard Filtermate Cellハーベスターを使用して、培養物をフィルターマットに集めた。Wallac MicroBeta 1450シンチレーションカウンター(Perkin Elmer)を使用して、シンチレーション計数を行った。
【0174】
8.1.5 データ分析
6〜12重複実験の個々の結果を平均することにより、平均バックグラウンドCPM値を計算した。4つの陽性対照ウェルのCPM値を平均した。各ペプチドに関して、重複実験または三重重複実験に付されたウェルを平均した。該陽性対照および該ペプチドウェルに関する刺激指数値を、該平均実験CPM値を該平均対照値で割り算することにより算出した。データセットに含まれるためには、該破傷風トキソイド陽性対照ウェルにおいて3.0より大きな刺激指数が要求された。2.95以上の刺激指数を与えるペプチドに関する応答に注目した。81名のドナーの一群からの末梢血サンプルを使用して、ペプチドを試験した。全てのペプチドに対する応答をまとめた。試験した各ペプチドに関して、2.95以上の刺激指数で応答したドナー集団の割合(%)を計算した。また、全ドナーに関する平均刺激指数を計算した。
【0175】
8.1.6 HLA遺伝子型分析
商業的に入手可能なDynal RELI型決定キット(Invitrogen,UK)を使用して、各ドナーに関してHLA DRB1およびHLA DQB1対立遺伝子を決定した。低ストリンジェンシーSSOの結果が記載されている。カイ2乗分析(1自由度)を用いて、いずれかの与えられたペプチドに対する応答性に関してHLA相関(アソーシエーション)を決定した。応答者および非応答者集団の両方に対立遺伝子が存在する場合には、相対危険度値が記載されている。
【0176】
8.1.7 D2E7変異抗体の競合ELISA
PBS中で1μg/mLの濃度のTNF−αの溶液とマイクロウェルプレートを4℃で一晩接触させることにより、TNF−αを該マイクロウェルプレート上に付着させた。該プレートをPBS中の0.1% Tween20中で洗浄し、Superblock(Thermo Scientific,Rockford,IL)中でブロッキングした。亜飽和量のビオチン化D2E7(80ng/mL)と未標識D2E7(「参照」抗体)または競合性抗TNF−α抗体(「試験」抗体)(2.8μg/mL、8.3μg/mLまたは25μg/mLの濃度の系列希釈物)との、ELISAバッファー(例えば、PBS中の1% BSAおよび0.1% Tween 20)中の混合物をウェルに加え、プレートを、穏やかに振とうしながら1時間温置した。該プレートを洗浄し、ELISAバッファー中で希釈された1μg/L HRP結合ストレプトアビジンを各ウェルに加え、該プレートを1時間温置した。プレートを洗浄し、結合抗体をTMB(Biofx Laboratories Inc.,Owings Mills,MD)の添加により検出した。停止バッファー(例えば、Bio FX Stop Reagents,Biofx Laboratories Inc.,Owings Mills,MD)の添加により該反応を停止し、マイクロプレートリーダー(例えば、VERSAmax,Molecular Devices,Sunnyvale,CA)を使用して吸光度を650nmで測定した。各抗体に関してIC50値を計算した。該実験は3回行い、親抗体結合結果に対する割合(%)として平均結果が示されている。
【0177】
8.1.8 バイオアッセイ
3×10個のマウスL929細胞を平底96ウェルマイクロタイタープレートの個々のウェル内にプレーティングした。該細胞を加湿5% CO恒温槽内で37℃で一晩温置した。翌日、該抗体TNF−α抗体の系列希釈物(例えば、0.712μg/mL、0.949μg/mL、1.27μg/mL、1.69μg/mL、2.25μg/mLまたは3μg/mL)を25μLの無血清培地内で調製し、(150μLの培養内の最終濃度が119ng/mL、158ng/mL、211ng/mL、282ng/mL、375ng/mLまたは500ng/mLとなるように)細胞に加えた。5% CO中、37℃で2時間の温置の後、25μLの240ng/mL 溶液のTNF−αを加えて最終濃度を40ng/mLとし、該細胞を5% CO中、37℃で48時間、更に温置した。TNF−αで処理されたがイソタイプ対照抗体または親抗体(D2E7)と共に温置された対照プレートと比較して、CellTiter−Blue生存度アッセイ(Promega,Madison,WI)を用いて該細胞を細胞傷害性に関して評価した。IC50値を決定し、親D2E7結果に対する割合(%)として表した。
【0178】
8.1.9 BIAcoreによるD2E7変異体の動力学的分析
BIAcore 2000および3000表面プラズモン共鳴系(BIAcore,GE Healthcare,Piscataway,NJ)を使用することにより、抗TNF−α抗体の結合親和性を測定した。標準的なBIAcoreアミンカップリング試薬(N−エチル−N’−ジメチルアミノ−プロピルカルボジイミド,EDC;N−ヒドロキシスクシンイミド,NHS;およびエタノールアミンHCl,pH8.5)を使用して、まず、ポリクローナルヤギ抗ヒトFc抗体(Jackson Immunoresearch)をバイオセンサー表面に固定化し、ついで、5μL/分の低い流量での平行表面上の抗TNF−α抗体(D2E7およびD2E7変異体)の捕捉を行った。25〜60RUの低いRmaxが得られるように、RLを低く維持した。陰性対照として使用する参照表面上では該抗体の捕捉は行われなかった。ついでTNF−αを80μL/分の流量で3分間にわたって全ての流動セル内に注入して結合をモニターし、ついでHBS−Pランニングバッファー(10mM HEPES,150mM 塩化ナトリウム,0.005% P−20,pH7.4)の30分間の流動により解離相をモニターした。各サイクルにおいて、0nMから128の範囲の6つの異なるTNF濃度および4倍の増加量でTNF−α(R&D systems,Minneapolis,MN)を該表面上に注入した。各サイクルの終了時に2つの短いパルスにおいて100μL/分の流量で1.5% HPOで該表面を再生させた。
【0179】
BIA評価プログラムを使用して、種々の濃度のTNF−αから集めたセンサーグラムデータの全体的分析から各TNF−αおよび抗体ペアの結合動力学を計算した。参照表面およびバッファーのみの対照(0nMのTNF−α)からのバックグラウンド応答を除外するために、各分析において二重参照を適用した。1:1ラングミュア結合を質量転移モデルと共に用いて該センサーグラムの会合および解離相を同時にフィットさせることにより、各結合ペアの解離定数(K)、会合速度定数(kon)および解離速度定数(koff)を得た。
【0180】
8.2 結果
8.2.1 D2E7 VHおよびVL領域におけるCD4+ T細胞エピトープの特定
CD4+ T細胞エピトープペプチドを、81名のドナーの集団における該ペプチドに対する応答率の分析により特定した。D2E7重鎖および軽鎖を示す試験した全てのペプチドに関する平均応答率および標準偏差を計算した。平均バックグラウンド応答+3標準偏差と同じ又はそれより大きな応答率を潜在的CD4+ T細胞エピトープとみなした。D2E7軽鎖V領域に関しては、32個のペプチドを試験し(図2)、これは5.09+3.53%の平均バックグラウンド応答率を示した。バックグラウンドを超える3標準偏差は15.68%と決定された。8位における1個のペプチドが、D2E7軽鎖ペプチドデータセットにおいて、17.28%の応答率で、このレベルの応答を示した(図2)。また、11位におけるペプチドは12.35%の非常に高い応答率を示した。D2E7重鎖V領域に関しては、37個のペプチドを試験した(図3)。平均バックグラウンド応答率は2.64+2.04%であった。バックグラウンドを超える3標準偏差は8.78%であった。D2E7重鎖データセット内の1個のペプチド(番号20)が8.64%の応答率を示した(図3)。
【0181】
該データセット内の全てのペプチドに関して平均刺激指数を計算した。軽鎖ペプチド番号8は1.97+0.08s.e.m.の高い平均刺激指数を示した。番号11におけるペプチドは1.63+0.32s.e.m.の平均刺激指数を与えた。軽鎖データセットにおけるペプチド番号27は1.83の平均SIを示した。これは、このペプチドに対する29の異常に高い刺激指数を有する単一ドナーによるものである。重鎖ペプチド番号20は1.34+0.05s.e.m.の平均刺激指数値を示した。これらの値の全ては、それらの2つのデータセットにおける全てのペプチドに関して、平均刺激指数より有意に高い(全68個の重鎖および軽鎖ペプチドに関して1.02+0.02)。
【0182】
これらのデータは、D2E7内に2つの主要CD4+ T細胞エピトープ領域が存在することを示している(表2)。VH領域においては、エピトープは、フレームワーク2とCDR2との結合部を含むペプチド20位において見出される。表2においては、CDR由来アミノ酸が下線で示されている。軽鎖においては、2以上のCD4+ T細胞エピトープを含有しうる大きな領域はペプチド番号8および番号11を含む。これらのペプチドは軽鎖のフレームワーク1、CDR1およびフレームワーク2の部分に広がる。
【0183】
8.2.2 VLエピトープペプチドに対する応答によるHLA相関
該ペプチドデータセットにおける全81名のドナーのHLAクラスII遺伝子型を、低ストリンジェンシーSSOのPCRに基づく方法を用いて決定した。特定のHLA対立遺伝子の存在とそれらの2つのVLペプチドに対する応答との間の相関(アソーシエーション)をカイ2乗分析により決定した。フィッシャーP値および相対危険度を全てのHLA型および両方のペプチドに関して決定した(表3)。HLA DRまたはDQ型とVLペプチド番号8(T22−Y36)に対する応答との間に有意な相関性は存在しなかった。この結果は、該ペプチドが、広範に無差別な様態でHLAクラスII分子に結合しうることを示唆している。VLペプチド番号11(N31−K45)に対するCD4+ T細胞増殖応答はHLA−DQ2の存在と厳密に相関していた(p=0.003;相対危険度=7.7)。HLA−DR3はHLA−DQ2に対して連鎖不平衡であるため、このペプチドに対する応答とHLA−DR3との間の相関は存在するが、統計的有意性に達しなかった(p=0.10;相対危険度3.3)。HLA−DQ2に加えて、HLA−DR12とN31−K45に対する応答との間の相関が見出された(p=0.03;相対危険度5.2)。全応答者が少なすぎたため、VHペプチド番号20に対するHLA応答は試験されなかった。それらの2つのVLペプチドに対する応答は異なるものであったため、それらは別々のペプチドエピトープに相当すると結論づけられうる。したがって、D2E7 VHおよびVL領域は3つの顕著なペプチドエピトープ領域を含有する。
【0184】
8.2.3 免疫原性低下変異体の特定
アラニンスキャン修飾: D2E7軽鎖の21アミノ酸の配列はT22−Y36およびN31−K45にエピトープを含む。選択した21アミノ酸の配列はC23−K45であった。アラニン修飾を各アミノ酸において施した(表4)。99名のドナーの集団を該変異ペプチドで試験した(図4)。親物質としての21マーを該ペプチド集団において4回作製した。これらの4個の重複体は、該アッセイの再現性に関する対照として使用される。平均親ペプチド応答は、30%のCV%で8.3%であった。したがって、5.8%未満の平均割合を有する変異ペプチドは、低下した応答率を有するとみなすことが可能であった。最も低下した変異体はC23A(2.02%)およびP40A(3.03%;図4を参照されたい)であった。23位のシステインは非変異体であり、したがって、タンパク質全体における修飾のための良好な候補ではない。また、プロリン残基の特有の性質のため、この残基の修飾が機能性変異抗体を与えるとは考えにくい。第3の候補はY32A(4.04%)であろう。また、5.05%の平均応答率を与えた幾つかの変異体が存在する。これらの変化も有効かもしれないが、低下した免疫原性および機能活性の両方に関して全タンパク質分子として試験される必要があろう。
【0185】
D2E7 VHエピトープペプチドの配列に基づくアラニン修飾ペプチドの集団も試験した(データ非表示)。重複試験における親未修飾ペプチドの応答率は非常に低かった。したがって、このペプチドは更なる研究に付されなかった。
【0186】
抗原結合研究: D2E7抗体のCDR−L1領域を包括的突然変異分析に付した。該突然変異分析と共に行った抗原結合研究に基づき、TNF−αへの該抗体の親和性を有意には低下させない、CDR−L1領域内の一組の候補アミノ酸置換が特定された(表5)。該候補CDR−L1置換を含有する幾つかの変異抗体を、BIAcoreおよびELISAを用いて分析した(表6)。抗体分子全体の親和性を保有する一方でアミノ酸配列を改変する特性を有するCDR−L1領域内のアミノ酸修飾を含有するペプチドを作製した(表7)。単一アミノ酸修飾体または二重修飾体として、該修飾エピトープペプチドを試験した。該二重修飾体は32位にグルタミンまたはグリシンを、あるいは34位にセリンまたはグリシンを含有していた。親21マーペプチドの2回の合成を含めて、合計79個のペプチドを試験した。合計102人のドナーを該変異ペプチドで試験し、結果を図5に示す。該親ペプチドの平均応答率は10.3+2.1%であった。応答率が該親物質からの3標準偏差未満となるためには、該応答率は4%未満となろう。該親ペプチドに関する平均刺激指数は1.49+0.15であった。刺激指数が該親応答の3標準偏差未満に達するためには、それは1.03以下となろう。
【0187】
Y32GおよびY32Q突然変異の、後続の親和性測定は、このアミノ酸修飾が抗原結合に負の影響を及ぼすことを示した。したがって、この修飾を含有する全てのペプチドを該分析から除外した。合計10個のペプチドを更なる研究のために選択した。全ての選択されたペプチドは4%未満の応答率を示した。しかし、該ペプチドはいずれも、該平均親応答の3標準偏差未満の刺激指数を示さなかった(表8)。
【0188】
8.2.4 修飾D2E7変異抗体の親和性および生物活性試験
10個のD2E7 VL領域構築物を未修飾VH領域と共にヒトIgG含有プラスミド内にクローニングし、一過性トランスフェクションにより293T/17細胞系において発現させ、抗体をプロテインAまたはプロテインG親和性により精製した。精製された抗体を競合ELISAアッセイにおいてTNF−α結合に関して試験した。全10個の変異体がTNF−α結合に関して未修飾D2E7と競合した。しかし、Q27R+A34S変異体のほぼ等しい親和性からN31S+A34S変異体の親和性における10倍低下までの範囲の親和性が示された(図6)。
【0189】
TNF−α毒性バイオアッセイを行った。L292細胞を96ウェルプレート内に播き、一定濃度のTNF−αを該培地に加えた。該変異抗体を該培地内に滴定した。各変異体に関してEC50値を決定した(表9)。同様に、変異体Q27R+A34Sは、親D2E7抗体とほぼ等しいEC50値を示した。
【0190】
最後に、TNF−αに対する該抗体の親和性をBIAcore分析により決定した(表10)。試験した10個の変異体のうち、Q27H+A34S、Q27R+A34SおよびG28S+A34S変異体は全て、D2E7に類似した会合および解離速度を示した。該変異体の最終親和性値は130pMの範囲内であり、一方、D2E7は、これらの実験において114pMの測定親和性を示した。
【0191】
9.実施例2:TNF−αに対する親和性の増加を示すD2E7の変異体の特定
D2E7と比較して増加した、TNF−αに対する親和性を示す突然変異体を特定するために、D2E7抗体を包括的突然変異分析に付した。TNF−αに対する候補突然変異体の、増加した親和性を、D2E7と比較したそれらの特性を証明するために、ELISAおよびBIAcoreにより分析した。
【0192】
9.1 材料および方法
9.1.1 競合ELISA
第8.1.7節に記載されているとおりに競合ELISAアッセイを行った。ELISAを2回重複して行い、IC50における平均改善倍数をWT/xとして示した。
【0193】
9.1.2 BIAcore
第8.1.9節に記載されているとおりにBIAcoreアッセイを行った。
【0194】
9.2 結果
D2E7と比較した場合のKの改善(BIAcoreによる測定において)、ELISAにおける競合能の改善またはそれらの両方を示したD2E7のCDR変異体を表12および25に示す。
【0195】
10.特定の実施形態、参考文献の引用
本出願において引用されている全ての刊行物、特許、特許出願および他の文書の全体を、各個の刊行物、特許、特許出願または他の文書があらゆる目的で参照により本明細書に組み入れられると個々に示されている場合と同等に、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み入れることとする。
【0196】
種々の特定の実施形態を例示し説明してきたが、本発明の精神および範囲から逸脱することなく種々の変更が施されうると理解されるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号5(CDR−H1)、配列番号6(CDR−H2)、配列番号7(CDR−H3)、配列番号8(CDR−L1)、配列番号9(CDR−L2)および配列番号10(CDR−H3)に対応するアミノ酸配列を有する6個の相補性決定領域(「CDR」)を含む抗TNF−α抗体または抗体の抗TNF−α結合性断片であって、該CDR配列が抗体D2E7のCDR配列であり、該CDRが、CDR−L2におけるS3K、CDR−L2におけるS3R、CDR−L2におけるT4H、CDR−L2におけるT4Q、CDR−L2におけるT4F、CDR−L2におけるT4W、CDR−L2におけるT4Y、CDR−L2におけるL5R、CDR−L2におけるL5K、CDR−L2におけるQ6R、CDR−H1におけるY2H、CDR−H1におけるA3G、およびCDR−H2におけるT3Nから選択される少なくとも1つの置換、ならびに場合によっては、表11および13から25の1以上から選択される1以上の追加的な突然変異または突然変異の組合せを含み、前記の6個のCDRが全体で、抗体D2E7のCDR配列と比較して17個までのアミノ酸置換を有する、抗TNF−α抗体または抗体の抗TNF−α結合性断片。
【請求項2】
配列番号5(CDR−H1)、配列番号6(CDR−H2)、配列番号7(CDR−H3)、配列番号8(CDR−L1)、配列番号9(CDR−L2)および配列番号10(CDR−H3)に対応するアミノ酸配列を有する6個のCDRを含む抗TNF−α抗体または抗体の抗TNF−α結合性断片であって、該CDR配列が抗体D2E7のCDR配列であり、該CDRが、CDR−L2におけるT4F、CDR−L2におけるT4W、CDR−L2におけるT4Y、CDR−L2におけるL5R、CDR−L2におけるL5K、CDR−L2におけるQ6R、CDR−H1におけるY2H、CDR−H1におけるA3G、およびCDR−H2におけるT3Nから選択される少なくとも1つの置換、ならびに場合によっては、表11および13から25の1以上から選択される1以上の追加的な突然変異または突然変異の組合せを含み、前記の6個のCDRが全体で、抗体D2E7のCDR配列と比較して17個までのアミノ酸置換を有する、抗TNF−α抗体または抗体の抗TNF−α結合性断片。
【請求項3】
配列番号5(CDR−H1)、配列番号6(CDR−H2)、配列番号7(CDR−H3)、配列番号8(CDR−L1)、配列番号9(CDR−L2)および配列番号10(CDR−H3)に対応するアミノ酸配列を有する6個のCDRを含む抗TNF−α抗体または抗体の抗TNF−α結合性断片であって、該CDR配列が抗体D2E7のCDR配列であり、該CDRが、CDR−L2におけるT4F、CDR−L2におけるT4W、CDR−L2におけるT4Y、CDR−L2におけるL5R、CDR−L2におけるL5K、CDR−L2におけるQ6R、CDR−H1におけるY2H、CDR−H1におけるA3G、およびCDR−H2におけるT3Nから選択される少なくとも1つの置換、ならびに場合によっては、表11および13から18の1以上から選択される1以上の追加的な突然変異または突然変異の組合せを含み、前記の6個のCDRが全体で、抗体D2E7のCDR配列と比較して17個までのアミノ酸置換を有する、抗TNF−α抗体または抗体の抗TNF−α結合性断片。
【請求項4】
6個のCDRが全体で、抗体D2E7のCDR配列と比較して、16個まで、15個まで、14個まで、13個まで、12個まで、11個まで、10個まで、9個まで、8個まで、7個まで、または6個までのアミノ酸置換を有する、請求項1から3のいずれかの抗TNF−α抗体または抗TNF−α結合性断片。
【請求項5】
いずれかの個々のCDRが、抗体D2E7の対応CDR配列と比較して3個以下のアミノ酸置換を有する、請求項1から4のいずれかの抗TNF−α抗体または抗TNF−α結合性断片。
【請求項6】
いずれかの個々のCDRが、抗体D2E7の対応CDR配列と比較して2個以下のアミノ酸置換を有する、請求項1から5のいずれかの抗TNF−α抗体または抗TNF−α結合性断片。
【請求項7】
D2E7のCDR−L2と比較してCDR−L2における置換S3Kを有する、請求項1から6のいずれかの抗TNF−α抗体または抗TNF−α結合性断片。
【請求項8】
D2E7のCDR−L2と比較してCDR−L2における置換S3Rを有する、請求項1から7のいずれかの抗TNF−α抗体または抗TNF−α結合性断片。
【請求項9】
D2E7のCDR−L2と比較してCDR−L2における置換T4Hを有する、請求項1から8のいずれかの抗TNF−α抗体または抗TNF−α結合性断片。
【請求項10】
D2E7のCDR−L2と比較してCDR−L2における置換T4Qを有する、請求項1から9のいずれかの抗TNF−α抗体または抗TNF−α結合性断片。
【請求項11】
D2E7のCDR−L2と比較してCDR−L2における置換T4Fを有する、請求項1から10のいずれかの抗TNF−α抗体または抗TNF−α結合性断片。
【請求項12】
D2E7のCDR−L2と比較してCDR−L2における置換T4Wを有する、請求項1から11のいずれかの抗TNF−α抗体または抗TNF−α結合性断片。
【請求項13】
D2E7のCDR−L2と比較してCDR−L2における置換T4Yを有する、請求項1から12のいずれかの抗TNF−α抗体または抗TNF−α結合性断片。
【請求項14】
D2E7のCDR−L2と比較してCDR−L2における置換L5Rを有する、請求項1から13のいずれかの抗TNF−α抗体または抗TNF−α結合性断片。
【請求項15】
D2E7のCDR−L2と比較してCDR−L2における置換L5Kを有する、請求項1から14のいずれかの抗TNF−α抗体または抗TNF−α結合性断片。
【請求項16】
D2E7のCDR−L2と比較してCDR−L2における置換Q6Rを有する、請求項1から15のいずれかの抗TNF−α抗体または抗TNF−α結合性断片。
【請求項17】
D2E7のCDR−H1と比較してCDR−H1における置換D1Gを有する、請求項1から16のいずれかの抗TNF−α抗体または抗TNF−α結合性断片。
【請求項18】
D2E7のCDR−H1と比較してCDR−H1における置換Y2Hを有する、請求項1から17のいずれかの抗TNF−α抗体または抗TNF−α結合性断片。
【請求項19】
D2E7のCDR−H1と比較してCDR−H1における置換A3Gを有する、請求項1から18のいずれかの抗TNF−α抗体または抗TNF−α結合性断片。
【請求項20】
D2E7のCDR−H2と比較してCDR−H2における置換T3Nを有する、請求項1から19のいずれかの抗TNF−α抗体または抗TNF−α結合性断片。
【請求項21】
それぞれモノクローナル抗体またはモノクローナル抗体の抗TNF−α結合性断片である、請求項1から20のいずれかの抗TNF−α抗体または抗TNF−α結合性断片。
【請求項22】
それぞれヒト抗体もしくはヒト化抗体、またはヒト抗体もしくはヒト化抗体の抗TNF−α結合性断片である、請求項1から21のいずれかの抗TNF−α抗体または抗TNF−α結合性断片。
【請求項23】
IgGである、請求項1から22のいずれかの抗TNF−α抗体または抗TNF−α結合性断片。
【請求項24】
IgGである、請求項23の抗TNF−α抗体または抗TNF−α結合性断片。
【請求項25】
ADCC活性を増強する、Fc領域内の1以上の突然変異を含む、請求項1から24のいずれかの抗TNF−α抗体または抗TNF−α結合性断片。
【請求項26】
フコシル化されていない、請求項1から25のいずれかの抗TNF−α抗体または抗TNF−α結合性断片。
【請求項27】
FcγRへの結合を増強する、Fc領域内の1以上の突然変異を含む、請求項1から26のいずれかの抗TNF−α抗体または抗TNF−α結合性断片。
【請求項28】
ADCC活性を低下させる、Fc領域内の1以上の突然変異を含む、請求項1から27のいずれかの抗TNF−α抗体または抗TNF−α結合性断片。
【請求項29】
前記の1以上の突然変異以外に、配列番号2に対応するV配列および配列番号4に対応するV配列を有する、請求項1から28のいずれかの抗TNF−α抗体または抗TNF−α結合性断片。
【請求項30】
配列番号2に対応するV配列および配列番号4に対応するV配列を有する抗体の親和性より1.1から4倍大きな親和性を有する、請求項1から29のいずれかの抗TNF−α抗体または抗TNF−α結合性断片。
【請求項31】
配列番号2に対応するV配列および配列番号4に対応するV配列を有する抗体の親和性より1.5から3倍大きな親和性を有する、請求項30の抗TNF−α抗体または抗TNF−α結合性断片。
【請求項32】
該親和性が、競合ELISAの、またはBIAcoreにより分析されるKの、またはそれらの両方の尺度である、請求項30または請求項31の抗TNF−α抗体または抗TNF−α結合性断片。
【請求項33】
精製されている、請求項1から32のいずれかの抗TNF−α抗体または抗TNF−α結合性断片。
【請求項34】
少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも98%の均一性まで精製されている、請求項33の抗TNF−α抗体または抗TNF−α結合性断片。
【請求項35】
配列番号5(CDR−H1)、配列番号6(CDR−H2)、配列番号7(CDR−H3)、配列番号8(CDR−L1)、配列番号9(CDR−L2)および配列番号10(CDR−H3)に対応するアミノ酸配列を有する6個のCDRを含む抗TNF−α抗体または抗体の抗TNF−α結合性断片であって、該CDR配列が抗体D2E7のCDR配列であり、該CDRが、CDR−L1におけるR7Q;A11S;R7Q+A11S;N8T;N8T+A11S;I6T;A11G;I6T+A11G;Q4G;Q4G+A11S;Q4G+A11G;Q4H;Q4H+A11S;Q4R;Q4R+A11S;G5S;G5S+A11S;N8S+A11S;I6T+A11S;N8T+A11Gから選択される置換または置換の組合せ、ならびに場合によっては、表12から25の1以上から選択される1以上の追加的な突然変異または突然変異の組合せを含み、前記の6個のCDRが全体で、抗体D2E7のCDR配列と比較して17個までのアミノ酸置換を有する、抗TNF−α抗体または抗体の抗TNF−α結合性断片。
【請求項36】
配列番号5(CDR−H1)、配列番号6(CDR−H2)、配列番号7(CDR−H3)、配列番号8(CDR−L1)、配列番号9(CDR−L2)および配列番号10(CDR−H3)に対応するアミノ酸配列を有する6個のCDRを含む抗TNF−α抗体または抗体の抗TNF−α結合性断片であって、該CDR配列が抗体D2E7のCDR配列であり、該CDRが、CDR−L1におけるR7Q;A11S;R7Q+A11S;N8T;N8T+A11S;I6T;A11G;I6T+A11G;Q4G;Q4G+A11S;Q4G+A11G;Q4H;Q4H+A11S;Q4R;Q4R+A11S;G5S;G5S+A11S;N8S+A11S;I6T+A11S;N8T+A11Gから選択される置換または置換の組合せ、ならびに場合によっては、表12から18の1以上から選択される1以上の追加的な突然変異または突然変異の組合せを含み、前記の6個のCDRが全体で、抗体D2E7のCDR配列と比較して17個までのアミノ酸置換を有する、抗TNF−α抗体または抗体の抗TNF−α結合性断片。
【請求項37】
前記の6個のCDRが全体で、抗体D2E7のCDR配列と比較して、16個まで、15個まで、14個まで、13個まで、12個まで、11個まで、10個まで、9個まで、8個まで、7個まで、または6個までのアミノ酸置換を有する、請求項35または36の抗TNF−α抗体または抗TNF−α結合性断片。
【請求項38】
いずれかの個々のCDRが、抗体D2E7の対応CDR配列と比較して3個以下のアミノ酸置換を有する、請求項35または請求項36の抗TNF−α抗体または抗TNF−α結合性断片。
【請求項39】
いずれかの個々のCDRが、抗体D2E7の対応CDR配列と比較して2個以下のアミノ酸置換を有する、請求項35または請求項36の抗TNF−α抗体または抗TNF−α結合性断片。
【請求項40】
CDR−L1が、D2E7のCDRL1と比較して置換Q4R+A11Sを有する、請求項35から39のいずれか一項の抗TNF−α抗体または抗TNF−α結合性断片。
【請求項41】
CDR−L1が、D2E7のCDRL1と比較して置換Q4G+A11Gを有する、請求項35から39のいずれか一項の抗TNF−α抗体または抗TNF−α結合性断片。
【請求項42】
CDR−L1が、D2E7のCDRL1と比較して置換Q4H+A11Sを有する、請求項35から39のいずれか一項の抗TNF−α抗体または抗TNF−α結合性断片。
【請求項43】
CDR−L1が、D2E7のCDRL1と比較して置換G5S+A11Sを有する、請求項35から39のいずれか一項の抗TNF−α抗体または抗TNF−α結合性断片。
【請求項44】
それぞれモノクローナル抗体またはモノクローナル抗体の抗TNF−α結合性断片である、請求項35から43のいずれか一項の抗TNF−α抗体または抗TNF−α結合性断片。
【請求項45】
それぞれヒト抗体もしくはヒト化抗体、またはヒト抗体もしくはヒト化抗体の抗TNF−α結合性断片である、請求項35から44のいずれか一項の抗TNF−α抗体または抗TNF−α結合性断片。
【請求項46】
IgGである、請求項35から45のいずれか一項の抗TNF−α抗体または抗TNF−α結合性断片。
【請求項47】
IgGである、請求項46の抗TNF−α抗体または抗TNF−α結合性断片。
【請求項48】
ADCC活性を増強する、Fc領域内の1以上の突然変異を含む、請求項35から47のいずれか一項の抗TNF−α抗体または抗TNF−α結合性断片。
【請求項49】
フコシル化されていない、請求項35から48のいずれか一項の抗TNF−α抗体または抗TNF−α結合性断片。
【請求項50】
FcγRへの結合を増強する、Fc領域内の1以上の突然変異を含む、請求項35から49のいずれか一項の抗TNF−α抗体または抗TNF−α結合性断片。
【請求項51】
ADCC活性を低下させる、Fc領域内の1以上の突然変異を含む、請求項35から50のいずれか一項の抗TNF−α抗体または抗TNF−α結合性断片。
【請求項52】
前記の1以上の突然変異以外に、配列番号2に対応するV配列および配列番号4に対応するV配列を有する、請求項35から51のいずれか一項の抗TNF−α抗体または抗TNF−α結合性断片。
【請求項53】
配列番号2に対応するV配列および配列番号4に対応するV配列を有する抗体の親和性の0.75から1.5倍の、TNF−αに対する親和性を有する、請求項35から52のいずれか一項の抗TNF−α抗体または抗TNF−α結合性断片。
【請求項54】
配列番号2に対応するV配列および配列番号4に対応するV配列を有する抗体の親和性の1.1から3倍の、TNF−αに対する親和性を有する、請求項35から53のいずれか一項の抗TNF−α抗体または抗TNF−α結合性断片。
【請求項55】
親和性が、競合ELISAの、またはBIAcoreにより分析されるKの、またはそれらの両方の尺度である、請求項53または請求項54の抗TNF−α抗体または抗TNF−α結合性断片。
【請求項56】
精製されている、請求項35から55のいずれか一項の抗TNF−α抗体または抗TNF−α結合性断片。
【請求項57】
少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも98%の均一性まで精製されている、請求項56の抗TNF−α抗体または抗TNF−α結合性断片。
【請求項58】
配列番号5(CDR−H1)、配列番号6(CDR−H2)、配列番号7(CDR−H3)、配列番号8(CDR−L1)、配列番号9(CDR−L2)および配列番号10(CDR−H3)に対応するアミノ酸配列を有する6個のCDRを含む抗TNF−α抗体または抗体の抗TNF−α結合性断片であって、該CDR配列が抗体D2E7のCDR配列であり、該CDRが、CDR−L1におけるG5S+A11S、および場合によっては、表11から25の1以上から選択される1以上の追加的な突然変異または突然変異の組合せを含み、前記の6個のCDRが全体で、抗体D2E7のCDR配列と比較して17個までのアミノ酸置換を有する、抗TNF−α抗体または抗体の抗TNF−α結合性断片。
【請求項59】
配列番号5(CDR−H1)、配列番号6(CDR−H2)、配列番号7(CDR−H3)、配列番号8(CDR−L1)、配列番号9(CDR−L2)および配列番号10(CDR−H3)に対応するアミノ酸配列を有する6個のCDRを含む抗TNF−α抗体または抗体の抗TNF−α結合性断片であって、該CDR配列が抗体D2E7のCDR配列であり、該CDRが、CDR−L1におけるG5S+A11G、および場合によっては、表11から25の1以上から選択される1以上の追加的な突然変異または突然変異の組合せを含み、前記の6個のCDRが全体で、抗体D2E7のCDR配列と比較して17個までのアミノ酸置換を有する、抗TNF−α抗体または抗体の抗TNF−α結合性断片。
【請求項60】
配列番号5(CDR−H1)、配列番号6(CDR−H2)、配列番号7(CDR−H3)、配列番号8(CDR−L1)、配列番号9(CDR−L2)および配列番号10(CDR−H3)に対応するアミノ酸配列を有する6個のCDRを含む抗TNF−α抗体または抗体の抗TNF−α結合性断片であって、該CDR配列が抗体D2E7のCDR配列であり、該CDRが、CDR−L2におけるS2N、CDR−L2におけるT4V、CDR−L2におけるQ6K、およびCDR−H1におけるD1Gから選択される少なくとも1つの置換、ならびに表11、12および25から選択される少なくとも1つの置換または置換の組合せ、ならびに場合によっては、表11から25の1以上から選択される1以上の追加的な突然変異または突然変異の組合せを含み、前記の6個のCDRが全体で、抗体D2E7のCDR配列と比較して17個までのアミノ酸置換を有する、抗TNF−α抗体または抗体の抗TNF−α結合性断片。
【請求項61】
該CDRが、CDR−L2におけるS3N、CDR−L2におけるT4V、CDR−L2におけるQ6K、およびCDR−H1におけるD1Gから選択される少なくとも1つの置換、ならびにCDR−L2におけるS3K、CDR−L2におけるS3R、CDR−L2におけるT4H、CDR−L2におけるT4Q、CDR−L2におけるT4F、CDR−L2におけるT4W、CDR−L2におけるT4Y、CDR−L2におけるL5R、CDR−L2におけるL5K、CDR−L2におけるQ6R、CDR−H1におけるY2H、CDR−H1におけるA3G、およびCDR−H2におけるT3Nから選択される少なくとも1つの置換を含み、前記の6個のCDRが全体で、抗体D2E7のCDR配列と比較して17個までのアミノ酸置換を有する、請求項60の抗TNF−α抗体または抗体の抗TNF−α結合性断片。
【請求項62】
配列番号5(CDR−H1)、配列番号6(CDR−H2)、配列番号7(CDR−H3)、配列番号8(CDR−L1)、配列番号9(CDR−L2)および配列番号10(CDR−H3)に対応するアミノ酸配列を有する6個の相補性決定領域(「CDR」)を含む抗TNF−α抗体または抗体の抗TNF−α結合性断片であって、該CDR配列が抗体D2E7のCDR配列であり、該CDR−L2 CDRが、
a.S3K、T4H、L5RおよびQ6R;
b.S3K、T4Q、L5RおよびQ6K;
c.S3K、T4YおよびL5K;
d.S3KおよびT4Y;
e.S3N、T4V、L5RおよびQ6K;
f.S3N、T4W、L5RおよびQ6R;
g.S3R、T4FおよびL5R;
h.S3R、T4F、L5RおよびQ6R;
i.S3R、T4HおよびQ6K;
j.S3R、T4W、L5KおよびQ6R;
k.T4H、L5KおよびQ6K;
l.T4H、L5KおよびQ6R;
m.T4W、L5RおよびQ6R;ならびに
n.T4YおよびL5R
から選択される置換の組合せの少なくとも1つを含み、
場合によっては、該抗TNF−α抗体または抗TNF−α結合性断片は、表11から24の1以上から選択される1以上の追加的な突然変異または突然変異の組合せを含み、前記の6個のCDRが全体で、抗体D2E7のCDR配列と比較して17個までのアミノ酸置換を有する、抗TNF−α抗体または抗体の抗TNF−α結合性断片。
【請求項63】
6個のCDRが全体で、抗体D2E7のCDR配列と比較して、16個まで、15個まで、14個まで、13個まで、12個まで、11個まで、10個まで、9個まで、8個まで、7個まで、または6個までのアミノ酸置換を有する、請求項58から62のいずれか一項の抗TNF−α抗体または抗TNF−α結合性断片。
【請求項64】
いずれかの個々のCDRが、抗体D2E7の対応CDR配列と比較して3個以下のアミノ酸置換を有する、請求項58から63のいずれか一項の抗TNF−α抗体または抗TNF−α結合性断片。
【請求項65】
いずれかの個々のCDRが、抗体D2E7の対応CDR配列と比較して2個以下のアミノ酸置換を有する、請求項58から64のいずれか一項の抗TNF−α抗体または抗TNF−α結合性断片。
【請求項66】
それぞれヒト抗体もしくはヒト化抗体、またはヒト抗体もしくはヒト化抗体の抗TNF−α結合性断片である、請求項58から65のいずれか一項の抗TNF−α抗体または抗TNF−α結合性断片。
【請求項67】
前記の1以上の突然変異以外に、配列番号2に対応するV配列および配列番号4に対応するV配列を有する、請求項58から66のいずれか一項の抗TNF−α抗体または抗TNF−α結合性断片。
【請求項68】
二重特異性抗体または二重特異性抗体のTNF−α結合性断片である、請求項1から67のいずれかの抗TNF−α抗体または抗TNF−α結合性断片。
【請求項69】
該二重特異性抗体がTNF−αおよび別の炎症性サイトカインに特異的である、請求項68の抗TNF−α抗体または抗TNF−α結合性断片。
【請求項70】
該炎症性サイトカインがリンホトキシン、インターフェロン−γまたはインターロイキン−1である、請求項69の抗TNF−α抗体または抗TNF−α結合性断片。
【請求項71】
請求項1から70のいずれか記載の抗TNF−α抗体または抗TNF−α結合性断片と医薬上許容される担体とを含む医薬組成物。
【請求項72】
請求項1から71のいずれかの抗TNF−α抗体または抗TNF−α結合性断片をコードするヌクレオチド配列を含む核酸。
【請求項73】
請求項72の核酸を含むベクター。
【請求項74】
請求項73記載のベクターで形質転換された原核宿主細胞。
【請求項75】
請求項73記載のベクターで形質転換された真核宿主細胞。
【請求項76】
請求項72のヌクレオチド配列を発現するように操作された真核宿主細胞。
【請求項77】
哺乳類宿主細胞である、請求項76の真核宿主細胞。
【請求項78】
(a)請求項76または請求項77の真核宿主細胞を培養し、(b)抗TNF−α抗体または抗TNF−α結合性断片を回収することを含む、抗TNF−α抗体または抗TNF−α結合性断片の製造方法。
【請求項79】
請求項1から70のいずれか一項記載の抗TNF−α抗体もしくは抗TNF−α結合性断片または請求項71記載の医薬組成物の治療的有効量を、免疫障害の治療を要するヒト患者に投与することを含む、免疫障害の治療方法。
【請求項80】
該免疫障害が全身性エリテマトーデス、慢性関節リウマチ、チロイドーシス(thyroidosis)、移植片対宿主病、強皮症、糖尿病、グレーブス病、サルコイドーシス、慢性炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎またはクローン病である、請求項79の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7−1】
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【図7−2】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18−1】
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【図18−2】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【公表番号】特表2012−524071(P2012−524071A)
【公表日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−505960(P2012−505960)
【出願日】平成22年4月16日(2010.4.16)
【国際出願番号】PCT/US2010/031406
【国際公開番号】WO2010/121140
【国際公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(509189086)アボット バイオセラピューティクス コーポレイション (11)
【Fターム(参考)】