説明

抗VEGF抗体とその使用

本発明は血管内皮増殖因子(「VEGF」)に対する抗体と、例えばVEGFの活性及び/又は過剰産生に関連する疾患を治療するための前記抗体の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1.関連出願のクロスリファレンス及び配列表
本願は35U.S.C.§119(e)に基づき、2009年6月17日付けで出願された米国仮出願第60/218,005号の優先権を主張し、その開示内容全体を本願に組込む。
【0002】
本願はEFS−Web経由で提出された配列表を含み、全体を本願に組込む。2010年6月15日付けで作成された前記ASCIIコピーはファイル名381493PC.txt、サイズ141,482バイトである。
【0003】
2.発明の分野
本発明は抗VEGF抗体、抗VEGF抗体を含有する医薬組成物及び前記抗体の治療用途に関する。
【背景技術】
【0004】
3.背景
血管新生は腫瘍増殖、増殖網膜症、加齢黄斑変性、関節リウマチ(RA)及び乾癬を含む各種病態に関与しているため、魅力的な治療ターゲットであることが明らかになっている(Folkman et al.,1992,J.Biol.Chem.267:10931−10934)。特定の分子血管新生因子が最初に注目されたのは、移植した腫瘍により強い血管新生応答が誘導されることが認められたためであった。現在では、血管新生が大半の原発腫瘍の増殖とその後の転移に不可欠であることは周知である。最初の報告後、トランスフォーミング増殖因子(TGF)−α、TGF−β、肝細胞増殖因子(HGF)、腫瘍壊死因子−α、アンギオゲニン、インターロイキン(IL)−8及び血管内皮増殖因子(VEGF、別称VEGFAないし血管透過性因子(VPF))を含む多数の分子が血管新生の正の調節に関連付けられている(Ferrara et al.,2003,Nature Medicine 9:669−676)。
【0005】
VEGF蛋白質は正常な胚形成期の脈管形成(胚循環系の新規形成)と異常な血管新生(既存脈管構造からの血管の増殖)の両面に関与する重要なシグナル伝達蛋白質である(Ferrara et al.,1996,Nature 380:439−442;Dvorak et al.,1995,Am.J.Pathol.146:1029−1039)。VEGFは固形腫瘍及び血液悪性疾患、眼内血管新生症候群、炎症及び脳浮腫、並びに女性生殖管疾患に関係がある(Ferrara et al.,2003,Nature Medicine 9:669−676)。VEGF mRNAは肺、乳房、胃腸管、腎臓、膵臓及び卵巣の腫瘍を含む多数のヒト腫瘍で過剰発現される(Berkman et al.,1993,J.Clin.Invest.91:153−159)。房水及び硝子体液におけるVEGFの増加は各種網膜症に関連付けられている(Aiello et al.,1994,N.Engl.J.Med.331:1480−1487)。高齢者の失明の主因である加齢黄斑変性(AMD)は血管新生と血管漏出に起因する。AMD患者では脈絡膜血管新生膜にVEGFの局在が認められている(Lopez et al.,1996,Invest.Ophtalmo.Vis.Sci.37:855−868)。
【0006】
VEGF遺伝子ファミリーは原型メンバーであるVEGFAに加え、VEGFB、VEGFC、VEGFD及び胎盤増殖因子(PLGF)を含む。ヒトVEGFA遺伝子は7個のイントロンにより分断された8個のエクソンとして構成される。VEGFにはVEGF121、VEGF145、VEGF162、VEGF165、VEGF165b、VEGF183、VEGF189及びVEGF206を含む少なくとも6種類の異なるアイソフォームが存在し、ここで下付き文字はシグナル開裂後に残存するアミノ酸数を表す。天然VEGFは45kDaホモダイマーヘパリン結合糖蛋白質である(Ferrara et al.,2003,Nature Medicine 9:669−676)。VEGF(具体的にはVEGFA)は2種の近縁受容体チロシンキナーゼであるVEGFR−1(別称Flt−1)とVEGFR−2(別称Flk−1ないしキナーゼドメイン領域(KDR)ないしCD309)とに結合する。各受容体は7個の細胞外領域と1個の膜貫通領域をもつ。VEGFはニューロピリンNRP1(別称血管内皮細胞増殖因子165受容体(VEGF165R)又はCD304)及びNRP2(別称血管内皮細胞増殖因子165受容体2(VEGF165R2))とも結合する。
【0007】
血管新生調節におけるその中心的な役割により、VEGFは治療介入の魅力的なターゲットとなる。実際に、VEGF又はその受容体シグナル伝達系の阻害を目的とする各種治療ストラテジーが新生物疾患の治療用に目下開発中である。抗VEGF抗体であるベバシズマブはrhuMAb VEGF又はAvastin(登録商標)とも呼ばれ、Genentechにより創製・販売されている組換えヒト化抗VEGFモノクローナル抗体である(Presta et al.,1997,Cancer Res.57:4593−4599)。ベバシズマブを作製するために、マウス抗VEGFモノクローナル抗体A.4.6.1の相補性決定領域(CDR)をヒトフレームワーク及びIgG定常領域に移植した。次にCDR外の他の突然変異を分子に導入して結合を改善し、アミノ酸配列の〜93%がヒトIgGに由来し、配列の〜7%がマウス抗体A.4.6.1に由来する抗体を得た。ベバシズマブは分子量約149,000ダルトンであり、グリコシル化されている。
【0008】
ラニビズマブはベバシズマブに由来する親和性成熟Fabフラグメントである。ラニビズマブはVEGFに対する親和性が高く、寸法が小さいため、網膜に浸透し易く、従って、AMDに関連する眼内血管新生を治療し易い(Lien and Lowman,In:Chernajovsky,2008,Therapeutic Antibodies.Handbook of Experimental Pharmacology 181,Springer−Verlag,Berlin Heidelberg 131−150)。ラニビズマブはGenentechにより開発され、商品名Lucentis(登録商標)で販売されている。
【0009】
Avastin(登録商標)を含むレジメンで癌患者を治療すると、高血圧、尿蛋白、血栓イベント、出血及び心臓中毒を含む副作用を生じる可能性がある(Blowers & Hall,2009,Br.J.Nurs.18(6):351−6,358)。また、ヒト化抗体であるにも拘わらず、ベバシズマブはヒトに投与した場合に免疫応答を誘発する可能性がある。このような免疫応答の結果、免疫複合体により抗体又はフラグメントが循環から排出され、反復投与が治療に不適切になるため、患者への治療効果が弱まり、抗体の再投与が制限されかねない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Folkman et al.,1992,J.Biol.Chem.267:10931−10934
【非特許文献2】Ferrara et al.,2003,Nature Medicine 9:669−676
【非特許文献3】Ferrara et al.,1996,Nature 380:439−442
【非特許文献4】Dvorak et al.,1995,Am.J.Pathol.146:1029−1039
【非特許文献5】Berkman et al.,1993,J.Clin.Invest.91:153−159
【非特許文献6】Aiello et al.,1994,N.Engl.J.Med.331:1480−1487
【非特許文献7】Lopez et al.,1996,Invest.Ophtalmo.Vis.Sci.37:855−868
【非特許文献8】Presta et al.,1997,Cancer Res.57:4593−4599
【非特許文献9】Lien and Lowman,In:Chernajovsky,2008,Therapeutic Antibodies.Handbook of Experimental Pharmacology 181,Springer−Verlag,Berlin Heidelberg 131−150
【非特許文献10】Blowers & Hall,2009,Br.J.Nurs.18(6):351−6,358
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、例えばベバシズマブよりも親和性が高く、少ない用量で投与することができる変異体、又はベバシズマブに比較して免疫原性及び他の副作用の弱い変異体を作製することにより、これらの問題の1つ以上を解決する改良型抗VEGF抗体又はフラグメントを提供することが必要である。
【0012】
セクション3又は本願の他のセクションで資料を引用又は記載する場合にはこのような資料が本発明の先行技術として利用可能であることを認めるものとして解釈すべきでない。
【課題を解決するための手段】
【0013】
4.概要
本発明はベバシズマブ又はラニビズマブに比較して免疫原性を低下及び/又はVEGFに対する親和性を改善した抗VEGF抗体ベバシズマブの変異体に関する。ベバシズマブは(アミノ末端からカルボキシ末端に向かって)本願でCDR−H1、CDR−H2及びCDR−H3と呼ぶ3個の重鎖CDRと、(アミノ末端からカルボキシ末端に向かって)本願でCDR−L1、CDR−L2及びCDR−L3と呼ぶ3個の軽鎖CDRをもつ。ベバシズマブCDRの配列を図1A及び1Bに示し、その番号付けを表1(重鎖CDR)と表2(軽鎖CDR)に示す。ベバシズマブの親和性成熟により近縁抗体であるラニビズマブを作製した。ラニビズマブはCDR−L1、CDR−L2、CDR−L3及びCDR−H2配列がベバシズマブと同一であるが、そのCDR−H1及びCDR−H3配列はベバシズマブの配列と相違する。ラニビズマブの重鎖及び軽鎖配列を図1Cに示し、CDRを図1Dに示す。
【0014】
本発明の抗体は一般にベバシズマブ及びラニビズマブに比較して少なくとも1個の重鎖CDRに少なくとも1カ所のアミノ酸置換をもつ。
【0015】
所定態様において、抗VEGF抗体はベバシズマブ又はラニビズマブに比較してCDR−H1におけるN31F、CDR−H2におけるK64S、CDR−H2におけるK64Q、CDR−H2におけるY53F、CDR−H3におけるH97E、CDR−H3におけるH97D、CDR−H3におけるH97P、CDR−H3におけるY98F、CDR−H3におけるY99E、CDR−H3におけるY99D、CDR−H3におけるS100aG、及びCDR−L2におけるT51Aから選択される少なくとも1カ所の置換を含む。他の態様において、抗VEGF抗体は表8及び9から選択される少なくとも1カ所の置換を含む。親和性を改善した変異体抗体に導入することができる他の突然変異としては、表6に記載するもの等の候補脱免疫化置換と、限定されないが、表10及び11に記載する突然変異等の抗体のVEGF結合能を失わせない他の突然変異(例えば置換)、又は表12−1〜12−9及び13に記載する突然変異等の公知突然変異が挙げられる。導入することができる更に他の突然変異としては、限定されないが、表14〜16に記載する突然変異が挙げられる。
【0016】
特定実施形態において、本発明の抗VEGF抗体は表7から選択される置換組合せ、及び場合により1種以上の他の突然変異(例えば表6に記載するもの等の候補脱免疫化置換と、限定されないが、表10及び11に記載する突然変異等の抗体のVEGF結合能を失わせない他の突然変異(例えば置換)、又は表12−1〜12−9及び13に記載する突然変異等の公知突然変異)を含む。本発明の抗VEGF抗体に導入することができる更に他の突然変異としては、限定されないが、表14〜16に記載する突然変異が挙げられる。
【0017】
他の実施形態において、本発明の抗VEGF抗体は以下のCDR置換:K64S(CDR−H2)、K64Q(CDR−H2)、Y53FとK64Q(CDR−H2)、H97EとY98F(CDR−H3)、又はT51A(CDR−L2)の1種以上を含む。抗VEGF抗体は更に、場合により表6、7、8、9、10、11、12−1〜12−9又は13〜16の1以上から選択される1種以上の他の突然変異又は突然変異の組合せを含むことができる。
【0018】
他のCDR置換としては、N31F(CDR−H1)、H97E(CDR−H3)、H97D(CDR−H3)、H97P(CDR−H3)、Y99E(CDR−H3)、Y99D(CDR−H3)、S100aG(CDR−H3)(但し、CDR−H3における3位は場合によりチロシン以外のものである)、T28P、N31F、N31G及びN31M(CDR−H1)、H97A、H97Q、H97S、H97T、S100aD、S100aE及びS100Av(CDR−H3)、T30W、T30R又はT30Q(CDR−H1)、Y53F、T58F、A61G、A61K、A61R、A61H、A61Y、K64G、K64E、R65L、R65T、R65A、R65E及びR65D(CDR−H2)、並びにY98F及びY100eF(CDR−H3)が挙げられる。CDRは場合により表6、7、8、9、10、11、12−1〜12−9及び13の1以上から選択される1種以上の他の突然変異又は突然変異の組合せを含む。
【0019】
更に他の置換としては、(a)CDR−H1におけるN31Fと、CDR−H3におけるH97Dと、CDR−H3におけるY99Dと、CDR−H3におけるS100aG;(b)CDR−H1におけるN31Fと、CDR−H3におけるH97Pと、CDR−H3におけるY99Dと、CDR−H3におけるS100aG;(c)CDR−H1におけるN31Fと、CDR−H3におけるH97Pと、CDR−H3におけるY99E;(d)CDR−H1におけるN31Fと、CDR−H3におけるH97Eと、CDR−H3におけるY99E;(e)CDR−H1におけるN31Fと、CDR−H3におけるH97Dと、CDR−H3におけるY99E;(f)CDR−H1におけるN31Fと、CDR−H3におけるH97Eと、CDR−H3におけるY99Dと、CDR−H3におけるS100aG;(g)CDR−H1におけるN31Fと、CDR−H3におけるY99Dと、CDR−H3におけるS100aG;(h)CDR−H1におけるN31Fと、CDR−H3におけるH97Pと、CDR−H3におけるY99D;(i)CDR−H1におけるN31Fと、CDR−H3におけるH97Dと、CDR−H3におけるS100aG;(j)CDR−H1におけるN31Fと、CDR−H3におけるS100aG;又は(k)CDR−H1におけるN31Fと、CDR−H3におけるH97Pと、CDR−H3におけるS100aGから選択される置換組合せを含む重鎖CDR置換が挙げられる。場合により他の置換としては、表6、7、8、9、10、11、12−1〜12−9及び13の1以上から選択される1種以上の他の突然変異又は突然変異の組合せが挙げられる。
【0020】
更に他の重鎖置換としては、CDR−H2におけるA61F、CDR−H2におけるA61E、CDR−H2におけるA61D、CDR−H2におけるD62L、CDR−H2におけるD62G、CDR−H2におけるD62Q、CDR−H2におけるD62T、CDR−H2におけるD62K、CDR−H2におけるD62R、CDR−H2におけるD62E、CDR−H2におけるD62H、CDR−H2におけるK64S、CDR−H2におけるK64V、CDR−H2におけるK64Q、CDR−H2におけるR65V、CDR−H2におけるR65F、CDR−H2におけるR65H、CDR−H2におけるR65N、CDR−H2におけるR65S、CDR−H2におけるR65Q、CDR−H2におけるR65K、CDR−H2におけるR65I、及びCDR−H3におけるY98Hから選択される少なくとも1カ所の置換が挙げられる。場合により、表7、8、9、10、11、12−1〜12−9及び13の1以上から選択される1種以上の他の突然変異又は突然変異の組合せも挙げられる。
【0021】
所定態様において、本発明の抗体はベバシズマブ又はラニビズマブのVH及びVL配列に対して少なくとも80%の配列一致度(所定実施形態では、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%又は少なくとも99%の配列一致度)をもつVH及びVL配列をもち、ベバシズマブ又はラニビズマブに比較して少なくとも1個のCDRに少なくとも1カ所のアミノ酸置換を含む。他の態様において、本発明の抗体はベバシズマブ又はラニビズマブのVH及びVL配列に対して少なくとも80%の配列一致度(所定実施形態では、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%又は少なくとも99%の配列一致度)をもつVH及びVL配列をもち、ベバシズマブ又はラニビズマブに比較して少なくとも1個のフレームワーク領域に少なくとも1カ所のアミノ酸置換を含む。特定実施形態において、ベバシズマブ又はラニビズマブのVH及びVL配列に対する重鎖及び軽鎖の配列一致度百分率は独立して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%の配列一致度、又は少なくとも99%の配列一致度から選択される。所定態様において、本発明の抗体はベバシズマブ又はラニビズマブのVH及び/又はVL配列に対して少なくとも95%、少なくとも98%又は少なくとも99%の配列一致度をもつVH及び/又はVL配列をもつ。
【0022】
所定態様において、本発明の抗体はベバシズマブ又はラニビズマブに比較してそのCDRに17カ所までのアミノ酸置換をもつ。17カ所のアミノ酸置換をもち、その標的結合能を維持する変異体抗体がBostrom et al.,2009,Science 323:1610−14により作製されている。
【0023】
特定実施形態において、本発明の抗VEGF抗体は独立して
−ベバシズマブ又はラニビズマブの対応するCDRに比較して1カ所まで、2カ所まで、3カ所まで、4カ所まで、5カ所まで、6カ所まで、7カ所まで、8カ所まで、9カ所まで又は10カ所までのCDR−H1置換;
−ベバシズマブ又はラニビズマブの対応するCDRに比較して1カ所まで、2カ所まで、3カ所まで、4カ所まで、5カ所まで、6カ所まで、7カ所まで、8カ所まで、9カ所まで、10カ所まで、11カ所まで、12カ所まで、13カ所まで、14カ所まで、15カ所まで、16カ所まで又は17カ所までのCDR−H2置換;
−ベバシズマブ又はラニビズマブの対応するCDRに比較して1カ所まで、2カ所まで、3カ所まで、4カ所まで、5カ所まで、6カ所まで、7カ所まで、8カ所まで、9カ所まで、10カ所まで、11カ所まで、12カ所まで、13カ所まで又は14カ所までのCDR−H3置換;
−ベバシズマブ又はラニビズマブの対応するCDRに比較して1カ所まで、2カ所まで、3カ所まで、4カ所まで、5カ所まで、6カ所まで、7カ所まで、8カ所まで、9カ所まで、10カ所まで又は11カ所までのCDR−L1置換;
−ベバシズマブ又はラニビズマブの対応するCDRに比較して1カ所まで、2カ所まで、3カ所まで、4カ所まで、5カ所まで、6カ所まで又は7カ所までのCDR−L2置換;及び
−ベバシズマブ又はラニビズマブの対応するCDRに比較して1カ所まで、2カ所まで、3カ所まで、4カ所まで、5カ所まで、6カ所まで、7カ所まで、8カ所まで又は9カ所までのCDR−L3置換
をもつ。
【0024】
本発明は更に修飾抗VEGF抗体を含有する医薬組成物を提供する。所定態様において、医薬組成物はベバシズマブ又はラニビズマブに比較してVEGFに対する親和性が増加及び/又は免疫原性が低下している。
【0025】
本発明は本発明の抗VEGF抗体をコードするヌクレオチド配列を含む核酸と、前記核酸を含むベクターを提供する。更に、本発明は抗VEGF抗体をコードするヌクレオチド配列を含むベクターで形質転換された原核及び真核宿主細胞と、前記ヌクレオチド配列を発現するように遺伝子組換えされた真核(例えば哺乳動物)宿主細胞も提供する。宿主細胞を培養することにより抗VEGF抗体を作製する方法も提供する。
【0026】
本発明の抗VEGF抗体は癌(例えば結腸癌、直腸癌、非小細胞肺癌及び乳癌)、網膜疾患(例えば加齢黄斑変性(「AMD」))及び免疫疾患(例えば関節リウマチ)の治療に有用である。
【0027】
所定態様において、本発明の抗VEGF抗体はベバシズマブ又はラニビズマブに比較して少ない用量、例えば少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%又は少なくとも90%少ない用量で使用することができる。
【0028】
当然のことながら、特許出願の通例通り、本願では内容からそうでないことが明白である場合を除き、単数形の不定冠詞と定冠詞は1以上という意味で使用する。更に、特許出願の通例通り、本願では「又は」なる用語は離接接続詞「又は」又は接続詞「及び」の意味で使用する。
【0029】
本明細書で言及する全刊行物を本願に組込む。本明細書で文献、行為、材料、装置、論文等について記載している場合には常に本発明の背景を提示することのみを目的とする。これらの如何なる内容も従来技術の根拠になると認めるものではなく、あるいは本願の優先日以前に何処かに存在していた本発明に関連する分野における通常の一般知識であると認めるものでもない。
【0030】
本発明の特徴と利点はその実施形態に関する以下の詳細な説明から更に理解されよう。
【0031】
5.表及び図面の簡単な説明
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】表1はベバシズマブの重鎖CDRにおけるアミノ酸の番号付けを示す。CDR1〜3を夫々配列番号3〜5として開示する。
【図2】表2はベバシズマブの軽鎖CDRにおけるアミノ酸の番号付けを示す。CDR1〜3を夫々配列番号6〜8として開示する。
【図3】表3は免疫原性について試験したベバシズマブVLペプチドを示す。
【図4】表4は免疫原性について試験したベバシズマブVHペプチドを示す。
【図5】表5はベバシズマブにおいて同定されたCD4T細胞エピトープ領域を示す。CDR領域を下線で示す。
【図6】表6はベバシズマブの免疫原性を低下させるためのCDR−H2及びCDR−H3における候補突然変異を示す。表6におけるアミノ酸の番号付けはベバシズマブ重鎖におけるカバット番号付けに対応する。
【図7】表7は表面プラズモン共鳴法により分析したK改善をもたらすベバシズマブにおける重鎖CDRアミノ酸置換を示す。Δkonはkonの改善倍率(突然変異体/WT)を意味する。Δkoffはkoffの改善倍率(WT/突然変異体)を意味する。ΔKは野生型に比較した突然変異体におけるKの改善を意味する。表7におけるアミノ酸の番号付けはベバシズマブ重鎖におけるカバット番号付けに対応する。
【図8】表8はVEGFに対する親和性を増加させることが予備結合試験により判明したベバシズマブ重鎖CDRにおける突然変異を示す(データは示さず)。表8におけるアミノ酸の番号付けはベバシズマブ重鎖におけるカバット番号付けに対応する。
【図9】表9はVEGFに対する親和性を増加させることが予備試験により判明したベバシズマブ重鎖CDRにおける突然変異を示す(データは示さず)。表9におけるアミノ酸の番号付けはベバシズマブ重鎖におけるカバット番号付けに対応する。
【図10】表10は結合に影響を与えずに本発明の抗体に導入することができるベバシズマブ重鎖CDRにおける突然変異を示す。表10におけるアミノ酸の番号付けはベバシズマブ重鎖におけるカバット番号付けに対応する。
【図11】表11は結合に影響を与えずに本発明の抗体に導入することができるベバシズマブ軽鎖CDRにおける突然変異を示す。表11におけるアミノ酸の番号付けはベバシズマブ軽鎖におけるカバット番号付けに対応する。
【図12−1】表12−1〜12−9は本発明の抗体に導入することができるベバシズマブ重鎖CDRにおける公知突然変異を示す。表12−1〜12−9の各行は別個の公知変異体を示す。各変異体について、公知CDR配列を網かけで示す。表12−1〜12−9に示す各変異体の配列番号を夫々表20−1〜20−9に示す。CDR−H1の列にはCDR−H1の部分配列を示す。CDR−H1の最後のアスパラギンは示さない。この部分配列は配列番号411に対応する。この部分配列についてCDR−H1における公知突然変異を示すが、当然のことながら、全長CDRについてもこれらの突然変異が存在する。
【図12−2】表12−1〜12−9は本発明の抗体に導入することができるベバシズマブ重鎖CDRにおける公知突然変異を示す。表12−1〜12−9の各行は別個の公知変異体を示す。各変異体について、公知CDR配列を網かけで示す。表12−1〜12−9に示す各変異体の配列番号を夫々表20−1〜20−9に示す。CDR−H1の列にはCDR−H1の部分配列を示す。CDR−H1の最後のアスパラギンは示さない。この部分配列は配列番号411に対応する。この部分配列についてCDR−H1における公知突然変異を示すが、当然のことながら、全長CDRについてもこれらの突然変異が存在する。
【図12−3】表12−1〜12−9は本発明の抗体に導入することができるベバシズマブ重鎖CDRにおける公知突然変異を示す。表12−1〜12−9の各行は別個の公知変異体を示す。各変異体について、公知CDR配列を網かけで示す。表12−1〜12−9に示す各変異体の配列番号を夫々表20−1〜20−9に示す。CDR−H1の列にはCDR−H1の部分配列を示す。CDR−H1の最後のアスパラギンは示さない。この部分配列は配列番号411に対応する。この部分配列についてCDR−H1における公知突然変異を示すが、当然のことながら、全長CDRについてもこれらの突然変異が存在する。
【図12−4】表12−1〜12−9は本発明の抗体に導入することができるベバシズマブ重鎖CDRにおける公知突然変異を示す。表12−1〜12−9の各行は別個の公知変異体を示す。各変異体について、公知CDR配列を網かけで示す。表12−1〜12−9に示す各変異体の配列番号を夫々表20−1〜20−9に示す。CDR−H1の列にはCDR−H1の部分配列を示す。CDR−H1の最後のアスパラギンは示さない。この部分配列は配列番号411に対応する。この部分配列についてCDR−H1における公知突然変異を示すが、当然のことながら、全長CDRについてもこれらの突然変異が存在する。
【図12−5】表12−1〜12−9は本発明の抗体に導入することができるベバシズマブ重鎖CDRにおける公知突然変異を示す。表12−1〜12−9の各行は別個の公知変異体を示す。各変異体について、公知CDR配列を網かけで示す。表12−1〜12−9に示す各変異体の配列番号を夫々表20−1〜20−9に示す。CDR−H1の列にはCDR−H1の部分配列を示す。CDR−H1の最後のアスパラギンは示さない。この部分配列は配列番号411に対応する。この部分配列についてCDR−H1における公知突然変異を示すが、当然のことながら、全長CDRについてもこれらの突然変異が存在する。
【図12−6】表12−1〜12−9は本発明の抗体に導入することができるベバシズマブ重鎖CDRにおける公知突然変異を示す。表12−1〜12−9の各行は別個の公知変異体を示す。各変異体について、公知CDR配列を網かけで示す。表12−1〜12−9に示す各変異体の配列番号を夫々表20−1〜20−9に示す。CDR−H1の列にはCDR−H1の部分配列を示す。CDR−H1の最後のアスパラギンは示さない。この部分配列は配列番号411に対応する。この部分配列についてCDR−H1における公知突然変異を示すが、当然のことながら、全長CDRについてもこれらの突然変異が存在する。
【図12−7】表12−1〜12−9は本発明の抗体に導入することができるベバシズマブ重鎖CDRにおける公知突然変異を示す。表12−1〜12−9の各行は別個の公知変異体を示す。各変異体について、公知CDR配列を網かけで示す。表12−1〜12−9に示す各変異体の配列番号を夫々表20−1〜20−9に示す。CDR−H1の列にはCDR−H1の部分配列を示す。CDR−H1の最後のアスパラギンは示さない。この部分配列は配列番号411に対応する。この部分配列についてCDR−H1における公知突然変異を示すが、当然のことながら、全長CDRについてもこれらの突然変異が存在する。
【図12−8】表12−1〜12−9は本発明の抗体に導入することができるベバシズマブ重鎖CDRにおける公知突然変異を示す。表12−1〜12−9の各行は別個の公知変異体を示す。各変異体について、公知CDR配列を網かけで示す。表12−1〜12−9に示す各変異体の配列番号を夫々表20−1〜20−9に示す。CDR−H1の列にはCDR−H1の部分配列を示す。CDR−H1の最後のアスパラギンは示さない。この部分配列は配列番号411に対応する。この部分配列についてCDR−H1における公知突然変異を示すが、当然のことながら、全長CDRについてもこれらの突然変異が存在する。
【図12−9】表12−1〜12−9は本発明の抗体に導入することができるベバシズマブ重鎖CDRにおける公知突然変異を示す。表12−1〜12−9の各行は別個の公知変異体を示す。各変異体について、公知CDR配列を網かけで示す。表12−1〜12−9に示す各変異体の配列番号を夫々表20−1〜20−9に示す。CDR−H1の列にはCDR−H1の部分配列を示す。CDR−H1の最後のアスパラギンは示さない。この部分配列は配列番号411に対応する。この部分配列についてCDR−H1における公知突然変異を示すが、当然のことながら、全長CDRについてもこれらの突然変異が存在する。
【図13】表13は本発明の抗体に導入することができるベバシズマブ軽鎖CDRにおける公知突然変異を示す。表13の各行は別個の公知変異体を示す。各変異体について、公知CDR配列を網かけで示す。表13に示す各変異体の配列番号を表20−10に示す。
【図14−1】表14は免疫原性について試験したベバシズマブCDR2 VHペプチドを示し、配列番号62から不変の残基は空欄により示す。CD4+T細胞アッセイ結果も示す。
【図14−2】表14は免疫原性について試験したベバシズマブCDR2 VHペプチドを示し、配列番号62から不変の残基は空欄により示す。CD4+T細胞アッセイ結果も示す。
【図15】表15は免疫原性について試験したベバシズマブCDR3 VHペプチドを示し、配列番号74から不変の残基は空欄により示す。CD4+T細胞アッセイ結果も示す。
【図16】表16は免疫原性について試験したベバシズマブCDR2 VLペプチドを示し、配列番号25から不変の残基は空欄により示す。CD4+T細胞アッセイ結果も示す。
【図17】表17はベバシズマブにおける3個のCD4+T細胞エピトープの選択されたエピトープ変異を示す。
【図18】表18は単一可変領域突然変異体とその付随する平均蛍光強度(MFI)スコアを示す。
【図19】表19は組合せ可変領域突然変異体とその付随するEC50を示す。
【図20−1】表20−1〜20−10は夫々表12−1〜12−9及び表13に一覧を示したベバシズマブ変異体のCDRに対応する配列番号が分かっている場合にはその配列番号を示す。N/AはCDR配列が不明であることを示す。
【図20−2】表20−1〜20−10は夫々表12−1〜12−9及び表13に一覧を示したベバシズマブ変異体のCDRに対応する配列番号が分かっている場合にはその配列番号を示す。N/AはCDR配列が不明であることを示す。
【図20−3】表20−1〜20−10は夫々表12−1〜12−9及び表13に一覧を示したベバシズマブ変異体のCDRに対応する配列番号が分かっている場合にはその配列番号を示す。N/AはCDR配列が不明であることを示す。
【図20−4】表20−1〜20−10は夫々表12−1〜12−9及び表13に一覧を示したベバシズマブ変異体のCDRに対応する配列番号が分かっている場合にはその配列番号を示す。N/AはCDR配列が不明であることを示す。
【図20−5】表20−1〜20−10は夫々表12−1〜12−9及び表13に一覧を示したベバシズマブ変異体のCDRに対応する配列番号が分かっている場合にはその配列番号を示す。N/AはCDR配列が不明であることを示す。
【図20−6】表20−1〜20−10は夫々表12−1〜12−9及び表13に一覧を示したベバシズマブ変異体のCDRに対応する配列番号が分かっている場合にはその配列番号を示す。N/AはCDR配列が不明であることを示す。
【図20−7】表20−1〜20−10は夫々表12−1〜12−9及び表13に一覧を示したベバシズマブ変異体のCDRに対応する配列番号が分かっている場合にはその配列番号を示す。N/AはCDR配列が不明であることを示す。
【図20−8】表20−1〜20−10は夫々表12−1〜12−9及び表13に一覧を示したベバシズマブ変異体のCDRに対応する配列番号が分かっている場合にはその配列番号を示す。N/AはCDR配列が不明であることを示す。
【図20−9】表20−1〜20−10は夫々表12−1〜12−9及び表13に一覧を示したベバシズマブ変異体のCDRに対応する配列番号が分かっている場合にはその配列番号を示す。N/AはCDR配列が不明であることを示す。
【図20−10】表20−1〜20−10は夫々表12−1〜12−9及び表13に一覧を示したベバシズマブ変異体のCDRに対応する配列番号が分かっている場合にはその配列番号を示す。N/AはCDR配列が不明であることを示す。
【図21A】図1Aは夫々ベバシズマブ重鎖及び軽鎖可変領域のアミノ酸配列である配列番号1及び配列番号2を示し、CDR領域を太字下線で示す。
【図21B】図1BはベバシズマブのCDR配列と対応する配列番号を示す。
【図21C】図1Cは夫々ラニビズマブ重鎖及び軽鎖のアミノ酸配列である配列番号9及び配列番号10を示し、CDR領域を太字下線で示す。
【図21D】図1DはラニビズマブのCDR配列と対応する配列番号を示す。
【図22】図2A〜2BはベバシズマブVLペプチド応答を示す。図2Aは刺激指数2.95以上で各VLペプチドに応答したドナーの百分率を示す。N=ドナー99人。図2Bはペプチド毎に全99人のドナーの平均刺激指数±標準誤差を示す。
【図23】図3A〜3BはベバシズマブVHペプチド応答を示す。図3Aは刺激指数2.95以上で各VHペプチドに応答したドナーの百分率を示す。N=ドナー99人。図3Bはペプチド毎に全99人のドナーの平均刺激指数±標準誤差を示す。
【図24A】図4A〜4Cは突然変異体ベバシズマブエピトープペプチドに対するCD4+T細胞応答を示す。未変異親エピトープ配列に対する平均応答を白記号で示す。大きい丸は表17に示す選択変異を表す。図4AはVH CDR2ペプチドに対応する。
【図24B】図4A〜4Cは突然変異体ベバシズマブエピトープペプチドに対するCD4+T細胞応答を示す。未変異親エピトープ配列に対する平均応答を白記号で示す。大きい丸は表17に示す選択変異を表す。図4BはVH CDR3ペプチドに対応する。
【図24C】図4A〜4Cは突然変異体ベバシズマブエピトープペプチドに対するCD4+T細胞応答を示す。未変異親エピトープ配列に対する平均応答を白記号で示す。大きい丸は表17に示す選択変異を表す。図4CはVL CDR2ペプチドに対応する。
【発明を実施するための形態】
【0033】
6.詳細な説明
6.1 抗VEGF抗体
本発明は抗VEGF抗体を提供する。特に指定しない限り、「抗体」(Ab)なる用語は特定抗原と特異的に結合するか又は前記抗原に対して免疫反応性の免疫グロブリン分子を意味し、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、遺伝子組換え抗体及び他の改変型抗体を包含し、前記改変型抗体としては、限定されないが、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヘテロコンジュゲート抗体(例えば二重特異性抗体、ダイアボディ、トライアボディ及びテトラボディ)及び抗体の抗原結合フラグメント(例えばFab’、F(ab’)、Fab、Fv、rIgG及びscFvフラグメント)が挙げられる。更に、特に指定しない限り、「モノクローナル抗体」(mAb)なる用語はインタクト分子に加え、蛋白質と特異的に結合することが可能な抗体フラグメント(例えばFab及びF(ab’)フラグメント)も包含するものとする。Fab及びF(ab’)フラグメントはインタクト抗体のFcフラグメントを含まず、動物の循環からより迅速に排出され、インタクト抗体よりも非特異的組織結合が少ないと思われる(Wahl et al.,1983,J.Nucl.Med.24:316)。
【0034】
「scFv」なる用語は従来の抗体の重鎖と軽鎖の可変領域を連結して1本鎖を形成した1本鎖Fv抗体を意味する。
【0035】
「VH」とは抗体の免疫グロブリン重鎖の可変領域を意味し、Fv、scFv又はFabの重鎖を含む。「VL」とは免疫グロブリン軽鎖の可変領域を意味し、Fv、scFv、dsFv又はFabの軽鎖を含む。抗体(Ab)と免疫グロブリン(Ig)は同一の構造特徴をもつ糖蛋白質である。抗体は特定標的に対して結合特異性を示すが、免疫グロブリンは抗体と標的特異性をもたない他の抗体様分子の両方を包含する。天然抗体及び免疫グロブリンは通常では、2本の同一の軽(L)鎖と2本の同一の重(H)鎖からなる約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖蛋白質である。各重鎖はアミノ末端に可変領域(VH)をもち、それに続いて多数の定常領域が存在する。各軽鎖はアミノ末端に可変領域(VL)をもち、カルボキシ末端に定常領域をもつ。
【0036】
本発明の抗VEGF抗体はヒトVEGFと結合し、細胞におけるVEGF受容体活性を阻害する。
【0037】
本発明の抗VEGF抗体は抗体ベバシズマブ(別称Avastin(登録商標))及び/又はラニビズマブ(別称Lucentis(登録商標))の相補性決定領域(CDR)と配列において近縁のCDRを含む。
【0038】
CDRは軽鎖及び重鎖可変領域の両者で超可変領域とも呼ばれる。可変領域のより高度に保存された部分をフレームワーク(FR)と言う。当分野で公知の通り、抗体の超可変領域を規定するアミノ酸位置/境界は状況と当分野で公知の各種定義により異なる場合がある。可変領域内の所定の位置は、ある基準群下では超可変領域の内側にあるとみなすことができるが、別の基準群下では超可変領域の外側にあるとみなすことができるので、ハイブリッド超可変位置とみなすことができる。これらの位置の1個以上が拡張超可変領域に存在する場合もある。本発明はこれらのハイブリッド超可変位置に変異を含む抗体を提供する。天然重鎖及び軽鎖の可変領域は各々主にβシート構造をとる4個のFR領域を3個のCDRでつなぎ、βシート構造をつなぎ、場合によってはその一部となるループを形成する。各鎖におけるCDRはFR1−CDR1−FR2−CDR2−FR3−CDR3−FR4の順でFR領域により極近接してつなぎ合わされ、他の鎖からのCDRと共に、抗体の標的結合部位の形成に寄与する(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest(National Institute of Health,Bethesda,Md.1987参照))。特に指定しない限り、本願で使用する免疫グロブリンアミノ酸残基の番号付けはKabatらの免疫グロブリンアミノ酸残基番号付けシステムに従う。
【0039】
ベバシズマブの重鎖及び軽鎖可変領域の配列を夫々配列番号1及び配列番号2により示す。図1Aにも重鎖及び軽鎖可変領域の配列を示す。ベバシズマブのCDRの配列とその対応する配列番号を図1Bに示す。本発明の組成物と方法では配列番号1又は配列番号2をコードする任意ヌクレオチド配列を使用することができる。
【0040】
ラニビズマブの重鎖及び軽鎖の配列を夫々配列番号9及び配列番号10により示す。図1Cにも重鎖及び軽鎖の配列を示す。ラニビズマブのCDRの配列とその対応する配列番号を図1Dに示す。本発明の組成物と方法では配列番号9又は配列番号10をコードする任意ヌクレオチド配列を使用することができる。
【0041】
本発明は更にベバシズマブ及びラニビズマブのCDR配列に近縁のCDR配列を含む抗VEGF抗体フラグメントも提供する。「抗体フラグメント」なる用語は全長抗体の一部を意味し、一般には標的結合領域ないし可変領域を意味する。抗体フラグメントの例としては、Fab、Fab’、F(ab’)及びFvフラグメントが挙げられる。「Fv」フラグメントは完全な標的認識結合部位を含む最小抗体フラグメントである。この領域は1個の重鎖可変領域と1個の軽鎖可変領域を非共有的に緊密に結合した二量体(VH−VL二量体)から構成される。この構成において各可変領域の3個のCDRは相互作用し、VH−VL二量体の表面に標的結合部位を規定する。多くの場合には、6個のCDRが抗体に対する標的結合特異性を付与する。しかし、場合によっては、1個の可変領域(又は標的に特異的な3個のCDRのみからなるFvの半分)でも標的を認識し、結合することができる。「1本鎖Fv」ないし「scFv」抗体フラグメントは1本のポリペプチド鎖に抗体のVH領域とVL領域を含む。一般に、Fvポリペプチドは更にscFvが標的結合に望ましい構造を形成できるようにVH領域とVL領域の間にポリペプチドリンカーを含む。「単一ドメイン抗体」は標的に対して十分な親和性を示す単一のVH又はVLドメインから構成される。1特定実施形態において、単一ドメイン抗体はラクダ抗体である(例えばRiechmann,1999,Journal of Immunological Methods 231:25−38参照)。
【0042】
Fabフラグメントは軽鎖の定常領域と重鎖の第1の定常領域(CH)を含む。Fab’フラグメントは抗体ヒンジ領域に由来する1個以上のシステインを含む少数の残基が重鎖CH領域のカルボキシル末端に付加されている点がFabフラグメントと相違する。F(ab’)フラグメントはF(ab’)ペプシン消化産物のヒンジシステインにおけるジスルフィド結合の開裂により生成される。抗体フラグメントのその他の化学的カップリングも当業者に公知である。
【0043】
所定実施形態において、本発明の抗VEGF抗体はモノクローナル抗体である。本願で使用する「モノクローナル抗体」なる用語はハイブリドーマ法により作製される抗体に限定されない。「モノクローナル抗体」なる用語は任意真核、原核又はファージクローンを含むシングルクローンに由来する抗体を意味し、抗体の作製方法を意味するものではない。本発明に関して有用なモノクローナル抗体はハイブリドーマ法、組換え法及びファージディスプレイ法、又はその組み合わせの使用を含む当分野で公知の多様な技術を使用して作製することができる。本発明の抗VEGF抗体はキメラ抗体、霊長類化抗体、ヒト化抗体又はヒト抗体を包含する。
【0044】
本発明の抗VEGF抗体はキメラ抗体とすることができる。本願で使用する「キメラ」なる用語はラット又はマウス抗体等の非ヒト免疫グロブリンに由来する可変配列と、一般にはヒト免疫グロブリン鋳型から選択されるヒト免疫グロブリン定常領域をもつ抗体を意味する。キメラ抗体の作製方法は当分野で公知である。例えばその開示内容全体を本願に組込むMorrison,1985,Science 229(4719):1202−7;Oi et al.,1986,BioTechniques 4:214−221;Gillies et al.,1985,J.Immunol.Methods 125:191−202;米国特許第5,807,715号;4,816,567号;及び4,816397号参照。
【0045】
本発明の抗VEGF抗体はヒト化抗体とすることができる。「ヒト化」型の非ヒト(例えばマウス)抗体は非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含むキメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖又はそのフラグメント(例えば抗体のFv,Fab,Fab’,F(ab’)又は他の標的結合サブドメイン)である。一般に、ヒト化抗体はCDR領域の全部又は実質的に全部が非ヒト免疫グロブリンのCDR領域に対応し、FR領域の全部又は実質的に全部がヒト免疫グロブリン配列のFR領域である少なくとも1個、一般には2個の可変領域の実質的に全部を含む。ヒト化抗体は更に免疫グロブリン定常領域(Fc)、一般にはヒト免疫グロブリンコンセンサス配列の免疫グロブリン定常領域の少なくとも一部を含むことができる。抗体ヒト化方法は当分野で公知である。例えばいずれもその開示内容全体を本願に組込むRiechmann et al.,1988,Nature 332:323−7;Queenらの米国特許第5,530,101号;5,585,089号;5,693,761号;5,693,762号;及び6,180,370号;EP239400;PCT公開WO91/09967;米国特許第5,225,539号;EP592106;EP519596;Padlan,1991,Mol.Immunol,28:489−498;Studnicka et al.,1994,Prot.Eng.7:805−814;Roguska et al.,1994,Proc.Natl.Acad.Sci.91:969−973;並びに米国特許第5,565,332号参照。
【0046】
本発明の抗VEGF抗体はヒト抗体とすることができる。ヒト患者の治療処置には完全「ヒト」抗VEGF抗体が望ましいと思われる。本願で使用する「ヒト抗体」とは、ヒト免疫グロブリンのアミノ酸配列をもつ抗体と、ヒト免疫グロブリンライブラリーから単離された抗体又は1種以上のヒト免疫グロブリンについてトランスジェニックであり、内在性免疫グロブリンを発現しない動物から単離された抗体を包含する。ヒト抗体はヒト免疫グロブリン配列に由来する抗体ライブラリーを使用してファージディスプレイ法を含む当分野で公知の各種方法により作製することができる。各々その開示内容全体を本願に組込む米国特許第4,444,887号及び4,716,111号;並びにPCT公開WO98/46645;WO98/50433;WO98/24893;WO98/16654;WO96/34096;WO96/33735;及びWO91/10741参照。機能的内在性免疫グロブリンを発現することができないが、ヒト免疫グロブリン遺伝子を発現することができるトランスジェニックマウスを使用してヒト抗体を作製することもできる。例えばその開示内容全体を本願に組込むPCT公開WO98/24893;WO92/01047;WO96/34096;WO96/33735;米国特許第5,413,923号;5,625,126号;5,633,425号;5,569,825号;5,661,016号;5,545,806号;5,814,318号;5,885,793号;5,916,771号;及び5,939,598号参照。更に、Medarex(Princeton,NJ)、Astellas Pharma(Deerfield,IL)、Amgen(Thousand Oaks,CA)及びRegeneron(Tarrytown,NY)等の企業に委託し、上記と同様の技術を使用して選択抗原に対するヒト抗体を提供してもらうことができる。選択されたエピトープを認識する完全ヒト抗体は「誘導選択」と呼ばれる技術を使用して作製することができる。このアプローチでは、選択された非ヒトモノクローナル抗体(例えばマウス抗体)を使用し、同一エピトープを認識する完全ヒト抗体の選択を誘導する(Jespers et al.,1988,Biotechnology 12:899−903)。
【0047】
本発明の抗VEGF抗体は霊長類化抗体とすることができる。「霊長類化抗体」なる用語はサル可変領域とヒト定常領域を含む抗体を意味する。霊長類化抗体の作製方法は当分野で公知である。例えばその開示内容全体を本願に組込む米国特許第5,658,570号;5,681,722号;及び5,693,780号参照。
【0048】
本発明の抗VEGF抗体は二重特異性抗体とすることができる。二重特異性抗体は少なくとも2種類の異なる抗原に対して結合特異性をもつモノクローナル抗体であり、多くの場合にはヒト又はヒト化抗体である。本発明では、結合特異性の一方をVEGFに対する特異性とすることができ、他方を他の任意抗原、例えば細胞表面蛋白質、受容体、受容体サブユニット、組織特異抗原、ウイルス由来蛋白質、ウイルスにコードされるエンベロープ蛋白質、細菌由来蛋白質又は細菌表面蛋白質等に対する特異性とすることができる。1特定実施形態において、本発明の抗体はVEGFとCD3の両方に対する結合特異性をもつ二重特異性抗体である。
【0049】
本発明の抗VEGF抗体は誘導体化抗体を含む。例えば、限定されないが、誘導体化抗体は一般にグルコシル化、アセチル化、ペグ化、リン酸化、アミド化、公知保護基/ブロッキング基による誘導体化、蛋白分解、細胞リガンド又は他の蛋白質との結合(抗体コンジュゲートについては、セクション6.6参照)等により修飾されている。限定されないが、特異的化学開裂、アセチル化、ホルミル化、ツニカマイシンの代謝合成等の公知技術により多数の化学修飾の任意のものを実施することができる。更に、例えばambrx技術を使用して1種以上の非天然アミノ酸を誘導体に導入することもできる(例えばWolfson,2006,Chem.Biol.13(10):1011−2参照)。
【0050】
本発明の更に別の実施形態において、抗VEGF抗体又はそのフラグメントは対応する野生型配列に対して少なくとも1種の定常領域介在性生物学的エフェクター機能を変更するように配列を改変した抗体又は抗体フラグメントとすることができる。
【0051】
例えば、所定実施形態では、非改変抗体に対して少なくとも1種の定常領域介在性生物学的エフェクター機能を低下させるように、例えばFc受容体(FcγR)との結合性を低下させるように、本発明の抗VEGF抗体を改変することができる。FcγR相互作用に必要な特定領域で抗体の免疫グロブリン定常領域セグメントを突然変異させることによりFcγR結合性を低下させることができる(例えばCanfield and Morrison,1991,J.Exp.Med.173:1483−1491;及びLund et al.,1991,J.Immunol.147:2657−2662参照))。抗体のFcγR結合能を低下させると、オプソニン化、食作用及び抗原依存性細胞傷害作用(「ADCC」)等のFcγR相互作用に依存する他のエフェクター機能も低下させることができる。
【0052】
他の実施形態では、非改変抗体に対して少なくとも1種の定常領域介在性生物学的エフェクター機能を獲得又は改善するように、例えばFcγR相互作用を強化するように、本発明の抗VEGF抗体を改変することができる(例えばUS2006/0134709参照)。例えば、本発明の抗VEGF抗体は対応する野生型定常領域よりも高い親和性でFcγRIIA、FcγRIIB及び/又はFcγRIIIAと結合する定常領域をもつことができる。
【0053】
従って、本発明の抗体はオプソニン化、食作用又はADCCの亢進又は低下を生じるように生物学的活性を改変することができる。このような改変は当分野で公知である。例えば、ADCC活性を低下させる抗体の改変は米国特許第5,834,597号に記載されている。典型的なADCC低下変異体は米国特許第5,834,597号の図4に示される「突然変異体3」に対応し、残基236を欠失させ、残基234、235及び237(EU番号付けを使用)をアラニンで置換したものである。
【0054】
所定実施形態において、本発明の抗VEGF抗体はフコース濃度が低いか又はフコースを含まない。フコースを含まない抗体は特に抗体用量が低い場合にADCC活性の増加に相関されている。Shields et al.,2002,J.Biol.Chem.277:26733−26740;Shinkawa et al.,2003,J.Biol.Chem.278:3466−73参照。フコース不含抗体の作製方法としては、ラット骨髄腫YB2/0細胞(ATCC CRL 1662)で増殖させる方法が挙げられる。YB2/0細胞はポリペプチドのフコシル化に必要な酵素であるα−1,6−フコシルトランスフェラーゼをコードするFUT8 mRNAの発現レベルが低い。
【0055】
更に別の態様において、抗VEGF抗体又はそのフラグメントは例えば胎児性Fc受容体であるFcRn相互作用に関与する特定領域で免疫グロブリン定常領域セグメントを突然変異させることによりFcRnに対するその結合親和性を増加又は低下させるように改変した抗体又は抗体フラグメントとすることができる。(例えばWO2005/123780参照)。特定実施形態では、重鎖定常領域のアミノ酸残基250、314及び428のうちの少なくとも1個を単独又は任意組み合わせ(例えば250位と428位、又は250位と314位、又は314位と428位、又は250位と314位と428位、特に250位と428位の組み合わせ)で置換するように、IgGクラスの抗VEGF抗体を突然変異させる。250位では、置換するアミノ酸残基はスレオニン以外の任意アミノ酸残基とすることができ、限定されないが、アラニン、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、フェニルアラニン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、リジン、ロイシン、メチオニン、アスパラギン、プロリン、グルタミン、アルギニン、セリン、バリン、トリプトファン又はチロシンが挙げられる。314位では、置換するアミノ酸残基はロイシン以外の任意アミノ酸残基とすることができ、限定されないが、アラニン、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、フェニルアラニン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、リジン、メチオニン、アスパラギン、プロリン、グルタミン、アルギニン、セリン、スレオニン、バリン、トリプトファン又はチロシンが挙げられる。428位では、置換するアミノ酸残基はメチオニン以外の任意アミノ酸残基とすることができ、限定されないが、アラニン、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、フェニルアラニン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、リジン、ロイシン、アスパラギン、プロリン、グルタミン、アルギニン、セリン、スレオニン、バリン、トリプトファン又はチロシンが挙げられる。適切なアミノ酸置換の特定の組み合わせは米国特許第7,217,797号の表1に記載されており、同表の開示内容全体を本願に組込む。このような突然変異はFcRnに対する抗体の結合性を増加し、抗体を分解から保護し、その半減期を延長する。
【0056】
更に他の態様において、抗VEGF抗体は例えばJung and Pluckthun,1997,Protein Engineering 10(9):959−966;Yazaki et al.,2004,Protein Eng Des.Sel.17(5):481−9.Epub 2004 Aug 17;及びUS 2007/0280931に記載されているように、その超可変領域の1個以上に1個以上のアミノ酸が挿入されている。
【0057】
各種実施形態において、抗VEGF抗体又はそのフラグメントは異種宿主における発現を増加するように改変された抗体又は抗体フラグメントとすることができる。所定実施形態において、抗VEGF抗体又はそのフラグメントは異種宿主細胞における発現及び/又は異種宿主細胞からの分泌を増加するように改変された抗体又は抗体フラグメントとすることができる。所定実施形態において、抗VEGF抗体又はそのフラグメントは大腸菌等の細菌における発現を増加するように改変されている。他の実施形態において、抗VEGF抗体又はそのフラグメントは酵母における発現を増加するように改変されている(Kieke et al.,1999,Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 96:5651−5656)。更に他の実施形態において、抗VEGF抗体又はそのフラグメントは昆虫細胞における発現を増加するように改変されている。他の実施形態において、抗VEGF抗体又はそのフラグメントはCHO細胞等の哺乳動物細胞における発現を増加するように改変されている。
【0058】
所定実施形態において、抗VEGF抗体又はそのフラグメントは産生中の抗体の安定性を増加するように改変された抗体又は抗体フラグメントとすることができる。所定実施形態において、抗体又はそのフラグメントはアスパラギンやグルタミン等の非酵素脱アミド化し易い1種以上のアミノ酸を脱アミド化しにくいアミノ酸で置換するように改変することができる(Huang et al.,2005,Anal.Chem.77:1432−1439)。他の実施形態において、抗体又はそのフラグメントはメチオニン、システイン又はトリプトファン等の酸化し易い1種以上のアミノ酸を酸化しにくいアミノ酸で置換するように改変することができる。更に他の実施形態において、抗体又はそのフラグメントはアスパラギンやグルタミン酸等の環化し易い1種以上のアミノ酸を環化しにくいアミノ酸で置換するように改変することができる。
【0059】
6.2 核酸分子及び発現系
本発明は本発明の抗VEGF抗体をコードする核酸分子及び宿主細胞を包含する。
【0060】
本発明の抗VEGF抗体は宿主細胞で免疫グロブリン軽鎖及び重鎖遺伝子を組換え発現させることにより作製することができる。抗体を組換え発現させるためには、抗体の免疫グロブリン軽鎖及び重鎖をコードするDNAフラグメントを組込んだ1個以上の組換え発現ベクターを宿主細胞にトランスフェクトし、軽鎖及び重鎖を宿主細胞で発現させ、場合により宿主細胞を培養する培地に分泌させ、培地から抗体を回収することができる。抗体重鎖及び軽鎖遺伝子を獲得し、これらの遺伝子を組換え発現ベクターに組込み、ベクターを宿主細胞に導入するためには、Molecular Cloning;A Laboratory Manual,Second Edition(Sambrook,Fritsch and Maniatis(eds),Cold Spring Harbor,N.Y.,1989)、Current Protocols in Molecular Biology(Ausubel,F.M.et al.,eds.,Greene Publishing Associates,1989)及び米国特許第4,816,397号に記載されている方法等の標準組換えDNA法を使用する。
【0061】
1実施形態において、抗VEGF抗体は1個以上のCDRにおける変異を除き、ベバシズマブ又はラニビズマブと同様である。別の実施形態において、抗VEGF抗体は1個以上のフレームワーク領域における変異を除き、ベバシズマブ又はラニビズマブと同様である。更に別の実施形態において、抗VEGF抗体は1個以上のCDRと1個以上のフレームワーク領域における変異を除き、ベバシズマブ又はラニビズマブと同様である。このような抗体を本願では「ベバシズマブ近縁」又は「ラニビズマブ近縁」配列と総称し、単に本発明の抗VEGF抗体と言う場合もある。抗VEGF抗体をコードする核酸を作製するためには、先ず軽鎖及び重鎖可変領域をコードするDNAフラグメントを得る。これらのDNAは、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用して軽鎖及び重鎖可変領域配列をコードする生殖系列DNA又はcDNAの増幅と改変により得ることができる。ヒト重鎖及び軽鎖可変領域遺伝子の生殖系列DNA配列は当分野で公知である(例えば「VBASE」ヒト生殖系列配列データベース参照;更に各々その開示内容を特に本願に組込むKabat,E.A.et al.,1991,Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,U.S.Department of Health and Human Services,NIH Publication No.91−3242;Tomlinson et al.,1992,J.Mol.Biol.22T:116−198;及びCox et al.,1994,Eur.J.Immunol.24:827−836も参照)。ベバシズマブ又はラニビズマブの重鎖又は軽鎖可変領域をコードするDNAフラグメントを合成し、突然変異誘発用鋳型として使用し、常法の突然変異誘発技術を使用して本願に記載するような変異体を作製することもできるし、あるいは、前記変異体をコードするDNAフラグメントを直接合成することもできる。
【0062】
抗VEGF VH及びVLセグメントをコードするDNAフラグメントが得られたら、例えば可変領域遺伝子を全長抗体鎖遺伝子、Fabフラグメント遺伝子又はscFv遺伝子に変換するように、これらのDNAフラグメントを標準組換えDNA技術により更に操作することができる。これらの操作では、VL又はVHをコードするDNAフラグメントを、抗体定常領域又はフレキシブルリンカー等の別の蛋白質をコードする別のDNAフラグメントと機能的に連結する。この文脈で使用する「機能的に連結」なる用語は、2つのDNAフラグメントによりコードされるアミノ酸配列がインフレームに維持されるように2つのDNAフラグメントを結合することを意味する。
【0063】
VHをコードする単離されたDNAを、重鎖定常領域(CH、CH、CH及び場合によりCH)をコードする別のDNA分子と機能的に連結することにより、VH領域をコードする単離DNAを全長重鎖遺伝子に変換することができる。ヒト重鎖定常領域遺伝子の配列は当分野で公知であり(例えばKabat,E.A.et al.,1991,Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,U.S.Department of Health and Human Services,NIH Publication No.91−3242参照)、これらの領域を含むDNAフラグメントは標準PCR増幅法により得ることができる。重鎖定常領域はIgG、IgG、IgG、IgG、IgA、IgE、IgM又はIgD定常領域とすることができるが、所定実施形態ではIgG又はIgG定常領域である。Fabフラグメント重鎖遺伝子では、VHをコードするDNAを、重鎖CH定常領域のみをコードする別のDNA分子と機能的に連結することができる。
【0064】
VLをコードする単離されたDNAを、軽鎖定常領域CLをコードする別のDNA分子と機能的に連結することにより、VL領域をコードする単離DNAを全長軽鎖遺伝子(及びFab軽鎖遺伝子)に変換することができる。ヒト軽鎖定常領域遺伝子の配列は当分野で公知であり(例えばKabat,E.A.et al.,1991,Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition(U.S.Department of Health and Human Services,NIH Publication No.91−3242)参照)、これらの領域を含むDNAフラグメントは標準PCR増幅法により得ることができる。軽鎖定常領域はκ又はλ定常領域とすることができるが、所定実施形態ではκ定常領域である。scFv遺伝子を作製するためには、VL領域とVH領域をフレキシブルリンカーでつないでVH配列とVL配列を連続する1本鎖蛋白質として発現させることができるように、VHをコードするDNAフラグメントとVLをコードするDNAフラグメントを、フレキシブルリンカーをコードする別のフラグメント、例えばアミノ酸配列(Gly−Ser)をコードする別のフラグメントと機能的に連結する(例えばBird et al.,1988,Science 242:423−426;Huston et al.,1988,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879−5883;McCafferty et al.,1990,Nature 348:552−554参照)。
【0065】
本発明の抗VEGF抗体を発現させるためには、遺伝子を転写制御配列及び翻訳制御配列と機能的に連結するように、上記のように得られた部分的又は全長軽鎖及び重鎖をコードするDNAを発現ベクターに挿入する。この文脈で「機能的に連結」なる用語は、ベクター内の転写制御配列及び翻訳制御配列が抗体遺伝子の転写及び翻訳を制御するというその所期機能を発揮するように、抗体遺伝子をベクターにライゲーションすることを意味する。発現ベクターと発現制御配列は使用する発現宿主細胞と適合するように選択する。抗体軽鎖遺伝子と抗体重鎖遺伝子を別々のベクターに挿入することもできるが、より一般には、両方の遺伝子を同一の発現ベクターに挿入する。
【0066】
標準方法(例えば抗体遺伝子フラグメントとベクター上の相補的制限部位のライゲーション、又は制限部位が存在しない場合には平滑末端ライゲーション)により抗体遺伝子を発現ベクターに挿入する。本発明の抗VEGF抗体の軽鎖又は重鎖配列を挿入する前に、発現ベクターに予め抗体定常領域配列を組込むことができる。例えば、抗VEGF VH及びVL配列を全長抗体遺伝子に変換する1つのアプローチは、VHセグメントをベクター内のCHセグメントと機能的に連結し、VLセグメントをベクター内のCLセグメントと機能的に連結するように、夫々重鎖定常領域と軽鎖定常領域を予めコードする発現ベクターに挿入する方法である。上記の追加又は代用として、組換え発現ベクターは宿主細胞からの抗体鎖の分泌を助長するシグナルペプチドをコードすることができる。シグナルペプチドを抗体鎖遺伝子のアミノ末端とインフレームで連結するように、抗体鎖遺伝子をベクターにクローニングすることができる。シグナルペプチドは免疫グロブリンシグナルペプチドでも異種シグナルペプチド(即ち非免疫グロブリン蛋白質に由来するシグナルペプチド)でもよい。
【0067】
抗体鎖遺伝子に加え、本発明の組換え発現ベクターは宿主細胞における抗体鎖遺伝子の発現を制御する調節配列を含む。「調節配列」なる用語はプロモーター、エンハンサー及び抗体鎖遺伝子の転写又は翻訳を制御する他の発現制御エレメント(例えばポリアデニル化シグナル)を包含するものとする。このような調節配列は例えば、Goeddel,Gene Expression Technology:Methods in Enzymology 185(Academic Press,San Diego,CA,1990)に記載されている。当業者に自明の通り、調節配列の選択を含めて発現ベクターの設計は、形質転換させる宿主細胞の選択、所望される蛋白質発現レベル等の因子に依存し得る。哺乳動物宿主細胞発現に適切な調節配列としては、哺乳動物細胞における高レベルの蛋白質発現を誘導するウイルスエレメントが挙げられ、例えばサイトメガロウイルス(CMV)(例えばCMVプロモーター/エンハンサー)、サルウイルス40(SV40)(例えばSV40プロモーター/エンハンサー)、アデノウイルス(例えばアデノウイルス主要後期プロモーター(AdMLP))及びポリオーマに由来するプロモーター及び/又はエンハンサーが挙げられる。ウイルス調節エレメントとその配列の詳細な説明については、例えばStinskiの米国特許第5,168,062号、Bellらの米国特許第4,510,245号及びSchaffnerらの米国特許第4,968,615号参照。
【0068】
抗体鎖遺伝子と調節配列に加え、本発明の組換え発現ベクターには、宿主細胞におけるベクターの複製を調節する配列(例えば複製起点)や選択マーカー遺伝子等の他の配列を組込むことができる。選択マーカー遺伝子はベクターを導入された宿主細胞の選択を容易にする(例えばいずれもAxelらの米国特許第4,399,216号、4,634,665号及び5,179,017号参照)。例えば、一般に選択マーカー遺伝子はベクターを導入された宿主細胞にG418、ピューロマイシン、ブラスチシジン、ハイグロマイシン又はメトトレキサート等の薬剤に対する耐性を付与する。適切な選択マーカー遺伝子としては、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)遺伝子(DHFR宿主細胞におけるメトトレキサート選択/増幅用)とneo遺伝子(G418選択用)が挙げられる。軽鎖と重鎖を発現させるために、重鎖と軽鎖をコードする発現ベクターを標準技術により宿主細胞にトランスフェクトする。「トランスフェクション」なる用語の各種語形は外来DNAを原核又は真核宿主細胞に導入するために一般に使用されている多様な技術(例えばエレクトロポレーション、リポフェクション、リン酸カルシウム沈殿法、DEAE−デキストラントランスフェクション等)を包含するものとする。
【0069】
本発明の抗体は原核又は真核宿主細胞のどちらでも発現させることが可能である。所定実施形態では、正しく折り畳まれた免疫的に活性な抗体を最適に分泌させるために、真核細胞、例えば哺乳動物宿主細胞で抗体の発現を実施する。本発明の組換え抗体を発現させるための典型的な哺乳動物宿主細胞としては、チャイニーズハムスター卵巣(CHO細胞)(Urlaub and Chasin,(1980)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216−4220に記載されているDHFRCHO細胞と、例えばKaufman and Sharp,1982,Mol.Biol.159:601−621に記載されているようなDHFR選択マーカーの併用を含む)、NS0ミエローマ細胞、COS細胞293細胞及びSP2/0細胞が挙げられる。抗体遺伝子をコードする組換え発現ベクターを哺乳動物宿主細胞に導入する場合には、宿主細胞における抗体の発現又は宿主細胞を増殖させる培地への抗体の分泌を可能にするために十分な時間にわたって宿主細胞を培養することにより抗体を産生させる。標準蛋白質精製法を使用して培地から抗体を回収することができる。FabフラグメントやscFv分子等のインタクト抗体の部分を作製するために宿主細胞を使用することもできる。当然のことながら、上記手順の変形も本発明の範囲に含まれる。例えば、本発明の抗VEGF抗体の軽鎖又は重鎖のいずれか(両方ではない)をコードするDNAを宿主細胞にトランスフェクトすることが望ましい場合もある。
【0070】
VEGFとの結合に不要な軽鎖及び重鎖のいずれか又は両方をコードするDNAの一部又は全部を除去するために組換えDNA技術を使用してもよい。このような短縮型DNA分子から発現される分子も本発明の抗体に含まれる。
【0071】
更に、標準化学架橋法により本発明の抗体を第2の抗体と架橋させることにより、一方の重鎖と一方の軽鎖が本発明の抗体であり、他方の重鎖と軽鎖がVEGF以外の抗原に特異的である2機能性抗体を作製することもできる。2価抗体をコードするように組換えた核酸を発現させることにより2機能性抗体を作製することもできる。
【0072】
所定実施形態では、軽鎖及び/又は重鎖CDRにおけるアミノ酸残基を突然変異させることにより、二重特異性抗体、即ち同一結合部位を使用してVEGFと非近縁抗原とに結合する抗体を作製することができる。各種実施形態では、抗原結合部位の周辺のアミノ酸残基を突然変異させることにより、HER2とVEGF等の2種類の抗原と結合する二重特異性抗体を作製することができる(Bostrom et al.,2009,Science 323:1610−1614)。二重特異性抗体をコードするように組換えた核酸を発現させることにより2機能性抗体を作製することもできる。
【0073】
本発明の抗VEGF抗体を組換え発現させるためには、重鎖由来ポリペプチドをコードする第1のベクターと、軽鎖由来ポリペプチドをコードする第2のベクターの2個の本発明の発現ベクターを宿主細胞にコトランスフェクトすればよい。一般には、2個のベクターは各々別々の選択マーカーを含む。あるいは、重鎖ポリペプチドと軽鎖ポリペプチドの両方をコードする1個のベクターを使用してもよい。
【0074】
抗VEGF抗体の1以上の部分をコードする核酸を作製後、例えば異なるCDR配列をもつ抗体、Fc受容体に対する親和性の低い抗体、又は異なるサブクラスの抗体をコードする核酸を作製するように、コーディング配列に別の改変又は突然変異を導入することができる。
【0075】
化学合成により(例えばSolid Phase Peptide Synthesis,2nd ed.,1984 The Pierce Chemical Co.,Rockford,Ill.に記載されている方法により)本発明の抗VEGF抗体を作製することもできる。無細胞プラットフォームを使用して変異体抗体を作製することもできる(例えばChu et al.,2001,Biochemia No.2(Roche Molecular Biologicals)参照)。
【0076】
組換え発現により本発明の抗VEGF抗体を作製後、免疫グロブリン分子の精製方法として当分野で公知の任意方法、例えばクロマトグラフィー(例えばイオン交換、親和性、特にプロテインA又はプロテインG選択後のVEGFに対する親和性及びサイズ排除カラムクロマトグラフィー)、遠心、溶解度差又は他の任意標準蛋白質精製法により精製することができる。更に、精製を助長することが本願に記載されているか又は他の資料から当分野で知られている異種ポリペプチド配列と本発明の抗VEGF抗体又はそのフラグメントを融合することもできる。
【0077】
単離後、所望により、例えば高性能液体クロマトグラフィー(例えばFisher,Laboratory Techniques In Biochemistry And Molecular Biology(Work and Burdon,eds.,Elsevier,1980)参照)又はSuperdex(登録商標)75カラム(Pharmacia Biotech AB,Uppsala,Sweden)でゲル濾過クロマトグラフィーにより抗VEGF抗体を更に精製することができる。
【0078】
6.3 抗VEGF抗体の生物学的活性
所定実施形態において、本発明の抗VEGF抗体はVEGFとの結合についてベバシズマブ又はラニビズマブと競合したり、VEGF活性を中和する等の所定の生物学的活性をもつ。
【0079】
従って、所定実施形態において、本発明の抗VEGF抗体はVEGFとの結合についてベバシズマブ又はラニビズマブと競合する。VEGFとの結合について競合する能力は競合アッセイを使用して試験することができる。競合アッセイの1例では、(例えばPBS中1μg/mLの濃度で4℃にて一晩)VEGF溶液とマイクロウェルプレートを接触させることにより、固体表面(例えばマイクロウェルプレート)にVEGFを付着させる。プレートを(例えばPBS中0.1% Tween 20)で洗浄し、(例えばSuperblock,Thermo Scientific,Rockford,ILで)ブロックする。飽和未満の量のビオチン化ベバシズマブ(80ng/mL)又は等量のビオチン化ラニビズマブと非標識ベバシズマブ(又は場合によりラニビズマブ)(「参照」抗体)又は競合する抗VEGF抗体(「試験」抗体)抗体の混合物をELISA緩衝液(例えばPBS中1% BSA及び0.1% Tween 20)で(例えば2.8μg/mL、8.3μg/mL又は25μg/mLの濃度に)系列希釈してウェルに加え、プレートを温和に振盪しながら1時間温置する。プレートを洗浄し、ELISA緩衝液で希釈した1μg/mL HRP共役ストレプトアビジンを各ウェルに加え、プレートを1時間温置する。プレートを洗浄し、結合した抗体を基質(例えばTMB,Biofx Laboratories Inc.,Owings Mills,MD)の添加により検出した。停止用緩衝液(例えばBio FX Stop Reagents,Biofx Laboratories Inc.,Owings Mills,MD)の添加により反応を終了し、マイクロプレートリーダー(例えばVERSAmax,Molecular Devices,Sunnyvale,CA)を使用して650nmで吸光度を測定する。この競合アッセイの変形を使用して本発明の抗VEGF抗体とベバシズマブ又はラニビズマブの競合を試験することもできる。例えば、所定態様では、抗VEGF抗体を参照抗体として使用し、ベバシズマブ又はラニビズマブを試験抗体として使用する。更に、可溶性VEGFの代わりに、培養細胞(例えば哺乳動物細胞)の表面で発現される膜結合型VEGFを使用することもできる。競合アッセイの他のフォーマットも当分野で公知であり、利用することができる。
【0080】
各種実施形態では、本発明の抗VEGF抗体を0.08μg/mL、0.4μg/mL、2μg/mL、10μg/mL、50μg/mL、100μg/mLの濃度又は上記数値のいずれかを両端とする範囲の濃度(例えば2μg/mL〜10μg/mLの範囲の濃度)で使用する場合に、抗VEGF抗体は標識ベバシズマブ又はラニビズマブの結合を少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%又は上記数値のいずれかを両端とする範囲の百分率だけ低下させる(例えば本発明の抗VEGF抗体は標識ベバシズマブ又はラニビズマブの結合を50%〜70%低下させる)。
【0081】
他の実施形態では、ベバシズマブ又はラニビズマブを0.4μg/mL、2μg/mL、10μg/mL、50μg/mL、250μg/mLの濃度又は上記数値のいずれかを両端とする範囲の濃度(例えば2μg/mL〜10μg/mLの範囲の濃度)で使用する場合に、ベバシズマブ又はラニビズマブは本発明の標識抗VEGF抗体の結合を少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%又は上記数値のいずれかを両端とする範囲の百分率だけ低下させる(例えばベバシズマブ又はラニビズマブは本発明の標識抗VEGF抗体の結合を50%〜70%低下させる)。
【0082】
他の態様において、本発明の抗VEGF抗体は細胞増殖や細胞遊走等のインビトロアッセイの範囲でVEGF活性を阻害(又は中和)する。例えば、1実施形態において、アッセイされるVEGF活性は内皮細胞(「EC」)増殖の誘導である(例えば、Qin et al.,2006,J.Biol.Chem.281:32550−32558のプロトコル参照)。別の実施形態において、アッセイされるVEGF活性はEC遊走の誘導である(例えばLiang et al.,2007,Nat.Protoc.2:329−333に記載されているインビトロスクラッチアッセイプロトコル参照)。1特定実施形態では、VEGFにより刺激される増殖及び細胞遊走と不死化ウシ網膜内皮細胞でVEGF165により誘導されるタイトジャンクション蛋白質の脱局在化を阻止する能力について抗VEGF抗体を試験する(Deissler et al.,2008,British Journal of Ophthalmology 92:839−843)。更に別の実施形態では、レポーターアッセイを使用してVEGF活性の中和をアッセイする(例えばYohno et al.,2003,Biological & Pharmaceutical Bulletin 26(4):417−20及び米国特許第6,787,323号参照)。
【0083】
VEGF中和アッセイの他のフォーマットも当分野で公知であり、利用することができる。
【0084】
各種実施形態では、本発明の抗VEGF抗体を2ng/mL、5ng/mL、10ng/mL、20ng/mL、0.1μg/mL、0.2μg/mL、1μg/mL、2μg/mL、5μg/mL、10μg/mL、20μg/mLの濃度、又は上記数値のいずれかを両端とする範囲の濃度(例えば1μg/mL〜5μg/mLの範囲の濃度)で使用する場合に、抗VEGF抗体はVEGFを少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は上記数値のいずれかを両端とする範囲の百分率だけ中和する(例えば本発明の抗VEGF抗体はVEGF活性を50%〜70%中和する)。
【0085】
所定実施形態において、本発明の抗VEGF抗体はVEGFの中和に関してベバシズマブもしくはラニビズマブの少なくとも0.7倍有効、0.8倍有効、少なくとも0.9倍有効、少なくとも1倍有効、少なくとも1.1倍有効、少なくとも1.25倍有効、少なくとも1.5倍有効、少なくとも2倍有効、少なくとも5倍有効、少なくとも10倍有効、少なくとも20倍有効、少なくとも50倍有効、少なくとも100倍有効、少なくとも200倍有効、少なくとも500倍有効、少なくとも1000倍有効であり、又はVEGFの中和の中和に関してベバシズマブもしくはラニビズマブに比較して上記数値の任意組合せを両端とする範囲の効力をもつ(例えばVEGFの中和に関してベバシズマブもしくはラニビズマブの0.9倍〜5倍有効又はベバシズマブもしくはラニビズマブの2倍〜50倍有効である)。
【0086】
6.4 抗VEGF抗体の反応速度特性
所定実施形態において、本発明の抗VEGF抗体はVEGFに対する高い結合親和性をもつ。特定実施形態において、本発明の抗VEGF抗体は特定の会合速度定数(konないしk値)、解離速度定数(koffないしk値)、親和性定数(K値)、解離定数(K値)及び/又はIC50値をもつ。各種実施形態において、抗VEGF抗体とVEGF受容体の相互作用の結合定数は、例えばKarlsson et al.,1991,J.Immunol.Methods 145:229−240に開示されている方法に従い、表面プラズモン共鳴法を使用して測定することができる。所定態様において、このような数値は下記実施形態から選択される。
【0087】
1特定実施形態において、本発明の抗VEGF抗体は少なくとも10−1−1、少なくとも5×10−1−1、少なくとも10−1−1、少なくとも5×10−1−1、少なくとも10−1−1、少なくとも5×10−1−1、少なくとも10−1−1、少なくとも5×10−1−1、少なくとも10−1−1、少なくとも5×10−1−1、少なくとも10−1−1のkon又は上記数値の任意組合せを両端とする任意範囲のkon(例えば5×10〜5×10−1−1、又は10〜10−1−1)でVEGFと結合する。
【0088】
別の実施形態において、本発明の抗VEGF抗体は10−3−1以下、5×10−4−1以下、10−4−1以下、5×10−5−1以下、10−5−1以下、5×10−6−1以下、10−6−1以下、5×10−7−1以下、10−7−1以下、5×10−8−1以下、10−8−1以下のkoff速度、又は上記数値の任意組合せを両端とする任意範囲のkoff速度(例えば5×10−4〜10−6−1、又は10−3〜5×10−5−1)でVEGFと結合する。
【0089】
別の実施形態において、本発明の抗VEGF抗体は少なくとも少なくとも10−1、少なくとも5×10−1、少なくとも1010−1、少なくとも5×1010−1、1011−1、少なくとも5×1011−1、少なくとも1012−1、少なくとも5×1012−1、少なくとも1013−1、少なくとも5×1013−1、少なくとも1014−1、少なくとも5×1014−1、少なくとも1015−1のK(kon/koff)、又は上記数値の任意組合せを両端とする任意範囲のK(例えば5×10−1〜1011−1、又は1011−1〜5×1014−1)でVEGFと結合する。
【0090】
他の実施形態において、本発明の抗VEGF抗体は10−8M以下、5×10−9M以下、10−9M以下、5×10−10M以下、10−10M以下、5×10−11M以下、10−11M以下、5×10−12M以下、10−12M以下、5×10−13M以下、10−13M以下、5×10−14M以下、10−14M以下、5×10−15M以下、10−15M以下のK(koff/kon)、又は上記数値の任意組合せを両端とする任意範囲のK(例えば5×10−9〜5×10−12M、又は5×10−11M〜5×10−13M)でVEGFと結合する。
【0091】
特定実施形態において、K(koff/kon)値は当分野で周知であるか又は本願に記載するアッセイ、例えばELISA、等温滴定熱量測定(ITC)、蛍光偏光アッセイ又は他の任意バイオセンサー(例えばBIAcore)により測定される。
【0092】
所定実施形態において、本発明の抗VEGF抗体はVEGFと結合し、5×10nM未満、10nM未満、5×10nM未満、10nM未満、5×10nM未満、10nM未満、5×10nM未満、10nM未満、5×10nM未満、10nM未満、5×10nM未満、100nM未満、90nM未満、80nM未満、70nM未満、65nM未満、60nM未満、50nM未満、40nM未満、30nM未満、25nM未満、20nM未満、15nM未満、12nM未満、10nM未満、5nM未満、1nM未満、5×10−1nM未満、10−1nM未満、5×10−2nM未満、10−2nM未満、5×10−3nM未満、10−3nM未満、5×10−4nM未満もしくは10−4nM未満のIC50値、又は上記数値の任意組合せを両端とする任意範囲のIC50(例えば5×10〜50nM、又は15nM〜5×10−3nM)でVEGF受容体(Flt−1又はFlk−1)に対するVEGFの結合を阻害する。IC50は当分野で周知の方法又は本願に記載する方法(例えばELISA)に従って測定することができる。
【0093】
他の実施形態において、本発明の抗VEGF抗体はVEGFと結合し、バイオアッセイ(例えばEC増殖又は遊走)において5×10nM未満、10nM未満、5×10nM未満、10nM未満、5×10nM未満、10nM未満、5×10nM未満、10nM未満、5×10nM未満、10nM未満、5×10nM未満、100nM未満、90nM未満、80nM未満、70nM未満、65nM未満、60nM未満、50nM未満、40nM未満、30nM未満、25nM未満、20nM未満、15nM未満、12nM未満、10nM未満、5nM未満、1nM未満、5×10−1nM未満、10−1nM未満、5×10−2nM未満、10−2nM未満、5×10−3nM未満、10−3nM未満、5×10−4nM未満もしくは10−4nM未満のIC50値、又は上記数値の任意組合せを両端とする任意範囲のIC50(例えば5×10〜50nM、又は15nM〜5×10−3nM)でVEGF活性を中和する。抗VEGF抗体のIC50を測定するために使用することができる典型的な中和アッセイを下記セクション6.3に記載する。
【0094】
所定実施形態において、抗VEGF抗体はVEGFと結合し、VEGF中和アッセイにおいて約1pm〜約1μMのIC50値でFlt−1、Flk−1もしくは両者に対するVEGFの結合を阻害するか又はVEGF活性を阻害する。特定実施形態において、抗VEGF抗体はVEGFと結合し、VEGF中和アッセイにおいて10pM〜100nM、100pM〜10nM、200pM〜5nM、300pM〜4nM、500pM〜3nM、750pM〜2nM、1nM〜20nM、500pM〜40nM、50pM〜50nM、250pM〜100nM及び100nM〜1μMのIC50値、又は上記数値の任意組合せを両端とする任意範囲のIC50(例えば10pM〜50nM、又は750pM〜2nM)でFlt−1、Flk−1もしくは両者に対するVEGFの結合を阻害するか又はVEGF活性を阻害する。
【0095】
上記実施形態の所定態様において、IC50は0.001μM、0.005μM、0.01μM、0.05μM、0.1μM、0.5μM、1μM、10μM、20μM、30μM、40μM、50μM、60μM、70μM、80μM、90μM、100μM、200μM、300μM、400μM、500μM、600μM、700μM、800μM、900μM、1000μM又は上記数値の任意組合せを両端とする任意範囲(例えば0.01〜50μM、又は10μM〜100μM)の濃度のVEGFの存在下で測定される。
【0096】
所定実施形態において、本発明の抗体の反応速度特性は同等アッセイにおいてベバシズマブ又はラニビズマブと比較して同等であるか、又は改善されている。例えば、所定実施形態において、本発明の抗VEGF抗体はベバシズマブ又はラニビズマブのkonの約0.5倍〜1000倍の範囲のkon速度、例えばベバシズマブ又はラニビズマブのkonの0.5倍のkon、ベバシズマブ又はラニビズマブのkonの0.75倍のkon、ベバシズマブ又はラニビズマブのkonの0.9倍のkon、ベバシズマブ又はラニビズマブのkonの1倍のkon、ベバシズマブ又はラニビズマブのkonの1.1倍のkon、ベバシズマブ又はラニビズマブのkonの1.2倍のkon、ベバシズマブ又はラニビズマブのkonの1.3倍のkon、ベバシズマブ又はラニビズマブのkonの1.4倍のkon、ベバシズマブ又はラニビズマブのkonの1.5倍のkon、ベバシズマブ又はラニビズマブのkonの1.75倍のkon、ベバシズマブ又はラニビズマブのkonの2倍のkon、ベバシズマブ又はラニビズマブのkonの2.25倍のkon、ベバシズマブ又はラニビズマブのkonの2.5倍のkon、ベバシズマブ又はラニビズマブのkonの3倍のkon、ベバシズマブ又はラニビズマブのkonの4倍のkon、ベバシズマブ又はラニビズマブのkonの5倍のkon、ベバシズマブ又はラニビズマブのkonの7.5倍のkon、ベバシズマブ又はラニビズマブのkonの10倍のkon、ベバシズマブ又はラニビズマブのkonの15倍のkon、ベバシズマブ又はラニビズマブのkonの20倍のkon、ベバシズマブ又はラニビズマブのkonの50倍のkon、ベバシズマブ又はラニビズマブのkonの75倍のkon、ベバシズマブ又はラニビズマブのkonの100倍のkon、ベバシズマブ又はラニビズマブのkonの150倍のkon、ベバシズマブ又はラニビズマブのkonの200倍のkon、ベバシズマブ又はラニビズマブのkonの200倍のkon、あるいは上記数値の任意組合せを両端とする範囲のkon、例えばベバシズマブ又はラニビズマブのkonの2倍〜75倍のkon、ベバシズマブ又はラニビズマブのkonの5倍〜100倍のkon、ベバシズマブ又はラニビズマブのkonの0.5倍〜1000倍のkon、ベバシズマブ又はラニビズマブのkonの0.75倍〜200倍のkon等でVEGFと結合する。
【0097】
所定実施形態において、本発明の抗VEGF抗体はベバシズマブ又はラニビズマブのkoffの0.001倍〜3倍の範囲のkoff速度、例えばベバシズマブ又はラニビズマブのkoffの0.002倍のkoff、ベバシズマブ又はラニビズマブのkoffの0.005倍のkoff、ベバシズマブ又はラニビズマブのkoffの0.0075倍のkoff、ベバシズマブ又はラニビズマブのkoffの0.01倍のkoff、ベバシズマブ又はラニビズマブのkoffの0.025倍のkoff、ベバシズマブ又はラニビズマブのkoffの0.05倍のkoff、ベバシズマブ又はラニビズマブのkoffの0.075倍のkoff、ベバシズマブ又はラニビズマブのkoffの0.1倍のkoff、ベバシズマブ又はラニビズマブのkoffの0.25倍のkoff、ベバシズマブ又はラニビズマブのkoffの0.5倍のkoff、ベバシズマブ又はラニビズマブのkoffの0.75倍のkoff、ベバシズマブ又はラニビズマブのkoffの0.9倍のkoff、ベバシズマブ又はラニビズマブのkoffの1倍のkoff、ベバシズマブ又はラニビズマブのkoffの1.1倍のkoff、ベバシズマブ又はラニビズマブのkoffの1.25倍のkoff、ベバシズマブ又はラニビズマブのkoffの1.5倍のkoff、ベバシズマブ又はラニビズマブのkoffの1.75倍のkoff、ベバシズマブ又はラニビズマブのkoffの4倍のkoff、ベバシズマブ又はラニビズマブのkoffの3倍のkoff、ベバシズマブ又はラニビズマブのkoffの2倍のkoff、ベバシズマブ又はラニビズマブのkoffの3倍のkoff、あるいは上記数値の任意組合せを両端とする範囲のkoff、例えばベバシズマブ又はラニビズマブのkoffの0.01倍〜1.1倍のkoff、ベバシズマブ又はラニビズマブのkoffの0.05倍〜1.25倍のkoff、ベバシズマブ又はラニビズマブのkoffの0.1倍〜0.9倍のkoff等でVEGFと結合する。
【0098】
他の実施形態において、本発明の抗VEGF抗体はベバシズマブ又はラニビズマブのKの0.25倍〜1000倍の範囲のK(kon/koff)、例えばベバシズマブ又はラニビズマブのKの0.5倍のK、ベバシズマブ又はラニビズマブのKの0.75倍のK、ベバシズマブ又はラニビズマブのKの1倍のK、ベバシズマブ又はラニビズマブのKの2倍のK、ベバシズマブ又はラニビズマブのKの4倍のK、ベバシズマブ又はラニビズマブのKの10倍のK、ベバシズマブ又はラニビズマブのKの15倍のK、ベバシズマブ又はラニビズマブのKの20倍のK、ベバシズマブ又はラニビズマブのKの30倍のK、ベバシズマブ又はラニビズマブのKの40倍のK、ベバシズマブ又はラニビズマブのKの50倍のK、ベバシズマブ又はラニビズマブのKの100倍のK、ベバシズマブ又はラニビズマブのKの250倍のK、ベバシズマブ又はラニビズマブのKの500倍のK、ベバシズマブ又はラニビズマブのKの750倍のK、ベバシズマブ又はラニビズマブのKの1000倍のKあるいは上記数値の任意組合せを両端とする範囲のK、例えばベバシズマブ又はラニビズマブのKの0.75倍〜10 5倍のK、ベバシズマブ又はラニビズマブのKの1倍〜100倍のK、ベバシズマブ又はラニビズマブのKの10倍〜20倍のK、ベバシズマブ又はラニビズマブのKの4倍〜50倍のK、ベバシズマブ又はラニビズマブのKの2倍〜20倍のK、あるいは本願に開示するkon速度とkoff速度から計算することができる任意数値又は範囲のKでVEGFと結合する。
【0099】
他の実施形態において、本発明の抗VEGF抗体はベバシズマブ又はラニビズマブのK(koff/kon)の0.001倍〜10倍の範囲のK、例えばベバシズマブ又はラニビズマブのKの0.001倍のK、ベバシズマブ又はラニビズマブのKの0.005倍のK、ベバシズマブ又はラニビズマブのKの0.01倍のK、ベバシズマブ又はラニビズマブのKの0.05倍のK、ベバシズマブ又はラニビズマブのKの0.075倍のK、ベバシズマブ又はラニビズマブのKの0.1倍のK、ベバシズマブ又はラニビズマブのKの0.2倍のK、ベバシズマブ又はラニビズマブのKの0.3倍のK、ベバシズマブ又はラニビズマブのKの0.4倍のK、ベバシズマブ又はラニビズマブのKの0.5倍のK、ベバシズマブ又はラニビズマブのKの0.6倍のK、ベバシズマブ又はラニビズマブのKの0.7倍のK、ベバシズマブ又はラニビズマブのKの0.8倍のK、ベバシズマブ又はラニビズマブのKの0.9倍のK、ベバシズマブ又はラニビズマブのKの1倍のK、ベバシズマブ又はラニビズマブのKの1.5倍のK、ベバシズマブ又はラニビズマブのKの2倍のK、ベバシズマブ又はラニビズマブのKの4倍のK、ベバシズマブ又はラニビズマブのKの7.5倍のK、ベバシズマブ又はラニビズマブのKの10倍のKあるいは上記数値の任意組合せを両端とする範囲のK、例えばベバシズマブ又はラニビズマブのKの0.01倍〜2倍のK、ベバシズマブ又はラニビズマブのKの0.1倍〜1.5倍のK、ベバシズマブ又はラニビズマブのKの0.7倍〜4倍のK、ベバシズマブ又はラニビズマブの0.2倍〜2倍のK、あるいは本願に開示するkon速度とkoff速度から計算することができる任意数値又は範囲のKでVEGFと結合する。
【0100】
所定実施形態において、本発明の抗VEGF抗体はVEGFと結合し、ベバシズマブ又はラニビズマブのIC50の0.001倍〜10倍の範囲のIC50値、例えばベバシズマブ又はラニビズマブのIC50の0.001倍のIC50、ベバシズマブ又はラニビズマブのIC50の0.005倍のIC50、ベバシズマブ又はラニビズマブのIC50の0.01倍のIC50、ベバシズマブ又はラニビズマブのIC50の0.05倍のIC50、ベバシズマブ又はラニビズマブのIC50の0.075倍のIC50、ベバシズマブ又はラニビズマブのIC50の0.1倍のIC50、ベバシズマブ又はラニビズマブのIC50の0.2倍のIC50、ベバシズマブ又はラニビズマブのIC50の0.3倍のIC50、ベバシズマブ又はラニビズマブのIC50の0.4倍のIC50、ベバシズマブ又はラニビズマブのIC50の0.5倍のIC50、ベバシズマブ又はラニビズマブのIC50の0.6倍のIC50、ベバシズマブ又はラニビズマブのIC50の0.7倍のIC50、ベバシズマブ又はラニビズマブのIC50の0.8倍のIC50、ベバシズマブ又はラニビズマブのIC50の0.9倍のIC50、Iベバシズマブ又はラニビズマブのIC50の1倍のIC50、ベバシズマブ又はラニビズマブのIC50の1.5倍のIC50、ベバシズマブ又はラニビズマブのIC50の2倍のIC50、ベバシズマブ又はラニビズマブのIC50の4倍のIC50、ベバシズマブ又はラニビズマブのIC50の7.5倍のIC50、ベバシズマブ又はラニビズマブのIC50の10倍のIC50、あるいは上記数値の任意組合せを両端とする範囲のIC50、例えばベバシズマブ又はラニビズマブのIC50の0.01倍〜2倍のIC50、ベバシズマブ又はラニビズマブのIC50の0.1倍〜1.5倍のIC50、ベバシズマブ又はラニビズマブのIC50の0.7倍〜4倍のIC50、ベバシズマブ又はラニビズマブのIC50の0.2倍〜2倍のIC50でFlt−1、Flk−1もしくは両者に対するVEGFの結合を阻害するか又はVEGFの活性を中和する。所定実施形態では、単一CDR置換によりベバシズマブ又はラニビズマブに比較してIC50の上記差を生じることができるが、本発明の抗VEGF抗体はこのような置換に加え、ベバシズマブ又はラニビズマブに比較して16カ所までの他のCDR置換を含むことができる。
【0101】
6.5 抗VEGF抗体の免疫原性低下
所定態様において、本発明はベバシズマブ又はラニビズマブに比較して免疫原性の低下した抗VEGF抗体を提供する。本発明はベバシズマブのCDRに比較してそのCDR及び/又はフレームワーク領域に単一又は複数のアミノ酸置換をもち、少なくとも1カ所の置換がベバシズマブ又はラニビズマブに比較して抗体の免疫原性を低下させる抗VEGF抗体を提供する。所定実施形態において、免疫原性低下は1個以上のT細胞エピトープを消失又は減少させる1カ所以上のアミノ酸置換に起因する。
【0102】
所定態様において、免疫原性の低下した本発明の抗VEGF抗体はベバシズマブ又はラニビズマブに比較して生物学的活性、例えばVEGFに対する親和性又はVEGF活性の中和が同等であるか又は改善されている。このような特性は例えば上記セクション6.3に記載した方法により試験することができる。
【0103】
所定実施形態において、本発明の抗VEGF抗体の免疫原性はベバシズマブ又はラニビズマブ抗体に比較して低下している。このような抗体は一般に配列番号25、配列番号62及び/又は配列番号74に対応する領域に重鎖及び/又は軽鎖可変領域に対する変異配列をもつ。前記抗体は一般に配列番号25、配列番号62及び配列番号74に対応する1、2又は全3種の配列に1、2又は3カ所のアミノ酸置換をもつが、本願では1、2又は全3領域における4カ所又は5カ所までの置換が想定される。
【0104】
本願で使用する「免疫原性の低下」した変異体とは、配列番号25、配列番号62及び/又は配列番号74に対応する領域に夫々配列番号25、配列番号62又は配列番号74のペプチドに比較して低い増殖応答を末梢血単核細胞に誘発する変異配列をもつ抗VEGF抗体を意味する。増殖応答を評価するために使用することができる代表的な増殖アッセイについては下記セクション7に記載する。増殖応答の低下は応答率百分率、刺激指数又は両者により表すことができる。
【0105】
他の実施形態では、配列番号25、配列番号62又は配列番号74の配列をもつペプチドに比較して、変異配列は少なくとも25%の応答率低下、少なくとも30%の応答率低下、少なくとも35%の応答率低下、少なくとも40%の応答率低下、少なくとも45%の応答率低下、少なくとも50%の応答率低下、少なくとも60%の応答率低下、少なくとも65%の応答率低下、少なくとも70%の応答率低下、少なくとも75%の応答率低下、少なくとも80%の応答率低下、少なくとも85%の応答率低下、少なくとも90%の応答率低下、少なくとも95%の応答率低下、100%の応答率低下、又は上記数値のいずれかを両端とする範囲の応答率低下、例えば25%〜75%の応答率低下、50%〜90%の応答率低下、60%〜100%の応答率低下、70%〜90%の応答率低下等をもたらす。
【0106】
他の実施形態において、変異配列は夫々配列番号25、配列番号62又は配列番号74のペプチドにより誘発される刺激指数に対して刺激指数を少なくとも5%低下、少なくとも10%低下、少なくとも15%低下、少なくとも20%低下、少なくとも25%低下、少なくとも30%低下、少なくとも35%低下又は少なくとも40%低下させるか、あるいは配列番号25、配列番号62又は配列番号74のペプチドに比較して上記数値のいずれかを両端とする範囲の刺激指数の低下、例えば5%〜20%低下、10%〜30%低下、25%〜35%低下、30%〜40%低下等をもたらす。
【0107】
ベバシズマブ又はラニビズマブに比較して免疫原性の低下した候補抗VEGF抗体の典型的実施形態は表6に示すCDR置換又は置換組合せの1種以上を含む。場合により、ベバシズマブ又はラニビズマブに比較して免疫原性の低下した抗VEGF抗体は単独又は組合せとしての表7〜13のいずれかにおけるCDR突然変異等の1カ所以上の他の置換を含む。
【0108】
ベバシズマブ又はラニビズマブに比較して免疫原性の低下した候補抗VEGF抗体の更に他の典型的実施形態は表14〜16に示すCDR置換又は置換組合せの1種以上を含む。ベバシズマブ又はラニビズマブに比較して免疫原性の低下した抗VEGF抗体の所定の好ましい実施形態を表19に示す。
【0109】
6.6 抗体コンジュゲート
本発明の抗VEGF抗体は例えばVEGFとの結合を妨げないように任意型の分子を抗体と共有結合することにより修飾された抗体コンジュゲートを含む。
【0110】
所定態様では、本発明の抗VEGF抗体をエフェクター部分又はラベルと共役することができる。本願で使用する「エフェクター部分」なる用語は例えば抗腫瘍剤、薬剤、毒素、生体活性蛋白質(例えば酵素、他の抗体又は抗体フラグメント)、合成又は天然ポリマー、核酸(例えばDNA及びRNA)、放射性核種、特に放射性ヨウ化物、放射性同位体、キレート金属、ナノ粒子及びレポーター基(例えば蛍光化合物又はNMRもしくはESR分光法により検出可能な化合物)を包含する。
【0111】
1例では、所定の生体応答を改変するように、細胞傷害性物質、放射性核種又は薬剤部分等のエフェクター部分と抗VEGF抗体を共役することができる。エフェクター部分は蛋白質又はポリペプチドとすることができ、限定するものではないが、例えば毒素(例えばアブリン、リシンA、シュードモナス外毒素又はジフテリア毒素)、シグナル伝達分子(例えばα−インターフェロン、β−インターフェロン、神経成長因子、血小板由来成長因子又は組織プラスミノーゲンアクチベーター)、抗血栓剤もしくは抗血管新生剤(例えばアンギオスタチン又はエンドスタチン)又はサイトカインもしくは成長因子等の生体応答調節剤(例えばインターロイキン−1(IL−1)、インターロイキン−2(IL−2)、インターロイキン−6(IL−6)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)又は神経成長因子(NGF))が挙げられる。
【0112】
別の例において、エフェクター部分は細胞毒素又は細胞傷害性物質とすることができる。細胞毒素及び細胞傷害性物質の例としては、タキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1−デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール及びピューロマイシンとそのアナログ又はホモログが挙げられる。
【0113】
エフェクター部分としては、限定されないが、更に代謝拮抗剤(例えばメトトレキサート、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、シタラビン、5−フルオロウラシルデカルバジン)、アルキル化剤(例えばメクロレタミン、チオエパクロラムブシル、メルファラン、カルムスチン(BSNU)及びロムスチン(CCNU)、シクロソスファミド、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンC5並びにシス−ジクロロジアミン白金(II)(DDP)(シスプラチン))、アントラサイクリン(例えばダウノルビシン(旧名ダウノマイシン)及びドキソルビシン)、抗生物質(例えばダクチノマイシン(旧名アクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシン、アントラマイシン(AMC)、カリケアマイシン又はデュオカルマイシン)、及び有糸分裂阻害剤(例えばビンクリスチン及びビンブラスチン)も挙げられる。
【0114】
他のエフェクター部分としては、限定されないが、111In及び90Y、Lu177、ビスマス213、カリホルニウム252、イリジウム192並びにタングステン188/レニウム188等の放射性核種と、限定されないが、アルキルホスホコリン、トポイソメラーゼI阻害剤、タキソイド及びスラミン等の薬剤が挙げられる。
【0115】
このようなエフェクター部分を抗体に共役するための技術は当分野で周知である(例えばHellstrom et al.,Controlled Drug Delivery,2nd Ed.,pp.623−53(Robinson et al.,eds.,1987));Thorpe et al.,1982,Immunol.Rev.62:119−58及びDubowchik et al.,1999,Pharmacology and Therapeutics 83:67−123参照)。
【0116】
1例では、抗体のN末端又はC末端又は内部で抗VEGF抗体又はそのフラグメントを共有結合(例えばペプチド結合)により別の蛋白質(又はその部分;好ましくは前記蛋白質の少なくとも10、20又は50アミノ酸部分)のアミノ酸配列と融合する。抗体又はそのフラグメントを抗体の定常領域のN末端で他の蛋白質と結合することができる。このような融合体を作製するためには、例えばWO86/01533及びEP0392745に記載されているように、組換えDNA法を使用することができる。別の例において、エフェクター分子は半減期をインビボで延長することができ、及び/又は上皮バリアを通して抗体を免疫系に送達し易くすることができる。この種の適切なエフェクター分子の例としては、ポリマー、アルブミン、アルブミン結合蛋白質又はWO2005/117984に記載されているもの等のアルブミン結合化合物が挙げられる。
【0117】
所定態様では、抗VEGF抗体を小分子毒素と共役する。所定の典型的な実施形態では、本発明の抗VEGF抗体をドラスタチンないしドロスタチンペプチドアナログ又は誘導体(例えばアウリスタチン(米国特許第5,635,483号及び5,780,588号))と共役する。ドラスタチン又はアウリスタチン薬剤部分はそのN(アミノ)末端、C(カルボキシル)末端又は内部で抗体と結合することができる(WO02/088172)。典型的なアウリスタチン実施形態としては、その開示内容全体を本願に組込む米国特許第7,498,298号(例えばリンカーと共役したMMAE及びMMAF等のモノメチルバリン化合物を製造するリンカーと方法を開示している)に開示されているような、N末端に結合したモノメチルアウリスタチン薬剤部分DE及びDFが挙げられる。
【0118】
他の典型的実施形態において、小分子毒素としては、限定されないが、カリケアマイシン、メイタンシン(米国特許第5,208,020号)、トリコテセン及びCC1065が挙げられる。本発明の1実施形態では、抗体を1個以上のメイタンシン分子(例えば抗体分子1個当たり約1から約10個のメイタンシン分子)と共役する。メイタンシンを例えばMay−SS−Meに変換し、May−SH3に還元して抗体と反応させる(Chari et al.,1992,Cancer Research 52:127−131)と、メイタンシノイド−抗体又はメイタンシノイド−Fc融合コンジュゲートを作製することができる。同様に使用することができるカリケアマイシンの構造アナログとしては、限定されないが、γ、γ、N−アセチル−γ、PSAG及びθが挙げられる(Hinman et al.,1993,Cancer Research 53:3336−3342;Lode et al.,1998,Cancer Research 58:2925−2928;米国特許第5,714,586号;米国特許第5,712,374号;米国特許第5,264,586号;米国特許第5,773,001号)。
【0119】
本発明の抗体を標的送達のためにリポソームと共役することもできる(例えばPark et al.,1997,Adv.Pharmacol.40:399−435;Marty & Schwendener,2004,Methods in Molecular Medicine 109:389−401参照)。
【0120】
1例では、本発明の抗体をポリ(エチレングリコール)(PEG)部分と結合することができる。1特定例では、抗体は抗体フラグメントであり、利用可能な任意アミノ酸側鎖又は抗体フラグメントに位置する末端アミノ酸官能基(例えば任意遊離アミノ基、イミノ基、チオール基、ヒドロキシル基又はカルボキシル基)を介してPEG部分を結合することができる。このようなアミノ酸は抗体フラグメントに天然に存在するものでもよいし、組換えDNA法を使用してフラグメントに組込んでもよい。例えば、米国特許第5,219,996号参照。複数部位を使用して2個以上のPEG分子を結合してもよい。抗体フラグメントに位置する少なくとも1個のシステイン残基のチオール基を介してPEG部分を共有結合することができる。結合点としてチオール基を使用する場合には、適切に活性化したエフェクター部分(例えばマレイミドやシステイン誘導体等のチオール選択的誘導体)を使用することができる。
【0121】
1特定例において、抗VEGF抗体コンジュゲートは例えばEP0948544に開示の方法に従ってペグ化、即ちPEG(ポリ(エチレングリコール))を共有結合した修飾Fab’フラグメントである。Poly(ethyleneglycol)Chemistry,Biotechnical and Biomedical Applications,(J.Milton Harris(ed.),Plenum Press,New York,1992);Poly(ethyleneglycol)Chemistry and Biological Applications,(J.Milton Harris and S.Zalipsky,eds.,American Chemical Society,Washington D.C,1997);Bioconjugation Protein Coupling Techniques for the Biomedical Sciences,(M.Aslam and A.Dent,eds.,Grove Publishers,New York,1998);及びChapman,2002,Advanced Drug Delivery Reviews 54:531−545も参照。PEGはヒンジ領域のシステインに結合することができる。1例において、PEG修飾Fab’フラグメントは修飾ヒンジ領域の1個のチオール基にマレイミド基を共有結合している。リジン残基をマレイミド基に共有結合することができ、リジン残基上のアミン基の各々に分子量約20,000Daのメトキシポリ(エチレングリコール)ポリマーを結合することができる。従って、Fab’フラグメントに結合されるPEGの総分子量は約40,000Daとすることができる。
【0122】
本願で「ラベル」なる用語を使用する場合には、本発明の抗VEGF抗体と直接又は間接的に共役することができる検出可能な化合物又は組成物を意味する。ラベルはそれ自体検出可能(例えば放射性同位体ラベル又は蛍光ラベル)でもよいし、酵素ラベルの場合には、検出可能な基質化合物又は組成物の化学的改変を触媒することができる。有用な蛍光部分としては、限定されないが、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、5−ジエチルアミン−1−ナフタレンスルホニルクロリド、フィコエリスリン等が挙げられる。有用な酵素ラベルとしては、限定されないが、アルカリホスファターゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ等が挙げられる。
【0123】
特に診断目的に有用な他の抗VEGF抗体コンジュゲートについては、下記セクション6.7に記載する。
【0124】
6.7 抗VEGF抗体の診断用途
例えばビオチン化、西洋ワサビペルオキシダーゼ又は他の任意の検出可能な部分(セクション6.6に記載したものを含む)により修飾された抗体を含めて本発明の抗VEGF抗体は診断目的に有利に使用することができる。
【0125】
特に、抗VEGF抗体は例えば、限定されないが、インビトロ及びインビボ両者の診断法を含めてVEGFを精製又は検出するために使用することができる。例えば、前記抗体は生体試料中のVEGFの濃度を定性的及び定量的に測定するためのイムノアッセイで利用される。例えばその開示内容全体を本願に組込むHarlow et al.,Antibodies:A Laboratory Manual,Second Edition(Cold Spring Harbor Laboratory Press,1988)参照。
【0126】
本発明は更に診断剤と共役した抗体又はそのフラグメントを包含する。例えば、特定細胞、組織もしくは血清における該当標的の発現を検出するため、又は例えば所定治療レジメンの効力を判定するための臨床試験手順の一部として免疫応答の発生もしくは進行をモニターするために、抗体を診断用に使用することができる。抗体を検出可能な物質と結合することにより検出を容易にすることができる。検出可能な物質の例としては、各種酵素、補欠分子族、蛍光物質、発光物質、生物発光物質、放射性物質、各種ポジトロン断層法を使用するポジトロン放出金属、及び非放射性常磁性金属イオンが挙げられる。検出可能な物質は当分野で公知の技術を使用して抗体(又はそのフラグメント)に直接又は媒介物(例えば当分野で公知のリンカー)を介して間接的に結合又は共役することができる。酵素ラベルの例としては、ルシフェラーゼ(例えばホタルルシフェラーゼ及び細菌ルシフェラーゼ;米国特許第4,737,456号)、ルシフェリン、2,3−ジヒドロフタラジンジオン、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、ウレアーゼ、ペルオキシダーゼ(例えば西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRPO))、アルカリホスファターゼ、β−カラクトシダーゼ、アセチルコリンステラーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、糖オキシダーゼ(例えばグルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ及びグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ)、複素環オキシダーゼ(例えばウリカーゼ及びキサンチンオキシダーゼ)、ラクトペルオキシダーゼ、マイクロペルオキシダーゼ等が挙げられる。適切な補欠分子族複合体の例としては、ストレプトアビジン/ビオチン及びアビジン/ビオチンが挙げられ、適切な蛍光物質の例としては、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、塩化ダンシル又はフィコエリスリンが挙げられ、発光物質の1例としてはルミノールが挙げられ、生物発光物質の例としては、ルシフェラーゼ、ルシフェリン及びエクオリンが挙げられ、適切な放射性物質の例としては、125I、131I、111In又は99Tcが挙げられる。
【0127】
本発明は、(場合により検出可能な部分と共役した)本発明の1種以上の抗VEGF抗体を使用して生体試料(個体の細胞、組織又は体液)を接触させる段階と、試料がVEGF発現に陽性であるか否か、又は試料の発現が対照試料に比較して変化(例えば増減)しているか否かを検出する段階を含むVEGFの発現の検出方法を提供する。
【0128】
本発明の方法を使用して診断することができる疾患としては、限定されないが、本願に記載する疾患が挙げられる。所定実施形態において、組織又は体液は末梢血、末梢血白血球、生検(例えば肺又は皮膚生検)、及び組織である。
【0129】
6.8 抗VEGF抗体を使用する治療方法
6.8.1 臨床効果
本発明の抗VEGF抗体は病的血管新生を特徴とする各種新生物又は非新生物病態を治療するために使用することができる。
【0130】
本発明の抗体は癌と良性腫瘍を含めて血管新生が腫瘍増殖に重要な役割を果たす腫瘍の治療で有用である。本願で治療する癌の例としては、限定されないが、癌腫、リンパ腫、芽腫、肉腫及び白血病が挙げられる。このような癌のより具体的な例としては、扁平上皮癌、肺癌(小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺腺癌及び肺扁平上皮癌を含む)、腹膜癌、肝細胞癌、胃癌(胃腸癌を含む)、膵臓癌、膠芽腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、ヘパトーマ、乳癌、結腸癌、結腸・直腸癌、子宮体癌又は子宮癌、唾液腺癌、腎臓癌、肝臓癌、前立腺癌、外陰癌、甲状腺癌、肝癌及び各種頭頸部癌が挙げられ、更にB細胞リンパ腫(低悪性度/濾胞性非ホジキンリンパ腫(NHL)、小リンパ球性(SL)NHL、中悪性度/濾胞性NHL、中悪性度びまん性NHL、高悪性度免疫芽球性NHL、高悪性度リンパ芽球性NHL、高悪性度小型非分割細胞NHL、巨大腫瘤病変NHL、マントル細胞リンパ腫、エイズ関連リンパ腫及びワルデンシュトレームマクログロブリン血症を含む)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、有毛細胞性白血病、慢性骨髄芽球性白血病及び移植後リンパ増殖性疾患(PTLD)が挙げられ、更に母斑症に関連する異常血管増殖、浮腫(例えば脳腫瘍に関連するもの)及びメイグス症候群が挙げられる。より具体的には、本発明の抗体により治療可能な癌としては、乳癌、結腸・直腸癌、直腸癌、非小細胞肺癌、非ホジキンリンパ腫(NHL)、腎細胞癌、前立腺癌、肝臓癌、膵臓癌、軟組織肉腫、カポジ肉腫、カルチノイド癌、頭頸部癌、メラノーマ、卵巣癌、中皮腫及び多発性骨髄腫が挙げられる。所定実施形態において、本発明の抗VEGF抗体はヒト患者における結腸・直腸癌を治療するために使用される。
【0131】
本発明は腫瘍増殖を維持するための栄養を提供するために必要な腫瘍血管の発生の阻害を目的とする癌治療ストラテジーである抗血管新生治療を包含する。血管新生は原発腫瘍増殖と転移の両方に関与しているため、本発明により提供される抗血管新生治療は原発部位における新生物増殖を抑制すると共に、二次部位への腫瘍の転移を予防することが可能である。
【0132】
本発明の抗体で治療可能な非新生物病態としては、網膜疾患(例えば加齢黄斑変性)と免疫及び炎症性疾患(例えば関節リウマチ、乾癬、アテローム性動脈硬化症、糖尿病性及び他の増殖網膜症(未熟児網膜症を含む)、水晶体後線維増殖症、血管新生緑内障、加齢黄斑変性、甲状腺過形成(グレーブス病を含む)、角膜及び他の組織移植、慢性炎症、肺炎症、ネフローゼ症候群、子癇前症、腹水、心膜液貯留(例えば心膜炎に関連するもの)及び胸水貯留)が挙げられる。
【0133】
従って、本発明は上記疾患のいずれかの治療を必要とする患者における前記疾患の治療方法であって、前記患者に本発明の抗VEGF抗体を投与する段階を含む方法を提供する。場合により、例えば1日後、2日後、3日後、5日後、1週間後、2週間後、3週間後、1カ月後、5週間後、6週間後、7週間後、8週間後、2カ月後又は3カ月後に前記投与を反復する。反復投与は同一用量でも異なる用量でもよい。1回、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回又はそれ以上投与を反復することができる。例えば、所定投与レジメンに従い、患者に長期間、例えば6カ月間、1年間又はそれ以上、抗VEGF治療を実施する。患者に投与する抗VEGF抗体の量は所定実施形態では治療有効量である。本願で使用する「治療有効」量のVEGF抗体を単回又は治療レジメンの期間、例えば1週間、2週間、3週間、1カ月、3カ月、6カ月、1年間又はそれ以上にわたって投与することができる。代表的な治療レジメンについては、下記セクション6.11に記載する。
【0134】
本発明によると、疾患の治療は任意臨床ステージもしくは発現期にある任意形態の疾患をもつと既に診断されている患者の治療;疾患の症状もしくは徴候の発症もしくは進行もしくは増悪もしくは悪化の遅延;並びに/又は疾患の予防及び/もしくは重篤度軽減を包含する。
【0135】
本発明の抗VEGF抗体を投与する「対象」又は「患者」は非霊長類(例えばウシ、ブタ、ウマ、ネコ、イヌ、ラット等)又は霊長類(例えばサル又はヒト)等の哺乳動物が好ましい。所定実施形態において、対象又は患者はヒトである。所定態様において、ヒトは小児患者である。他の態様において、ヒトは成人患者である。
【0136】
6.9 医薬組成物及び投与経路
本発明は本発明の抗VEGF抗体及び、場合により下記セクション6.10に記載する併用療法剤等の1種以上の他の治療剤を含有する組成物を提供する。前記組成物は通常では、一般に医薬的に許容可能な担体を含有する滅菌医薬組成物の一部として提供される。この組成物は(患者に投与する所望方法に応じて)任意の適切な形態とすることができる。
【0137】
本発明の抗VEGF抗体は経口、経皮、皮下、鼻腔内、静脈内、筋肉内、眼内、局所、髄腔内及び脳室内等の各種経路で患者に投与することができる。任意の所定場合に最適な投与経路は特定抗体、対象、疾患の種類と重篤度及び対象の健康状態により異なる。
【0138】
網膜疾患以外の適応症の治療には、本発明の抗VEGF抗体の有効用量は単回(例えばボーラス)投与、複数回投与又は連続投与により約0.1から約75mg/kgとすることができ、あるいは単回(例えばボーラス)投与、複数回投与又は連続投与により0.01〜5000μg/mLの血清濃度に達するような量とすることができ、あるいは治療する病態、投与経路並びに対象の年齢、体重及び健康状態に応じて本願に記載する任意有効範囲又は数値とすることができる。所定実施形態において、例えば癌の治療には、各用量は体重1kg当たり約0.1mgから約50mg、例えば体重1kg当たり約3mgから約25mgの範囲とすることができる。抗体を水溶液として製剤化し、皮下注射により投与することができる。
【0139】
網膜疾患(例えば加齢黄斑変性(AMD)の治療には、注入後の眼球の抗VEGF抗体の房水濃度が1〜50μg/mLとなるような用量が適切である。AMDの治療には、各用量を0.1mg〜約1mg、例えば約0.25から約0.5mgとすることができる。抗体を水溶液として製剤化し、硝子体内注射により投与することができる。
【0140】
医薬組成物は1用量当たり所定量の本発明の抗VEGF抗体を含有する単位用量形態とすると好適である。このような単位は限定されないが、例えば0.1mgから5g、例えば1mgから1g又は10から50mgを含有することができる。本発明で使用する医薬的に許容可能な担体は例えば治療する病態や投与経路に応じて多様な形態をとることができる。
【0141】
本発明の抗VEGF抗体の治療用製剤は所望純度の抗体を場合により当分野で一般に利用されている医薬的に許容可能な担体、賦形剤又は安定剤(本願では「担体」と総称する)、即ち緩衝剤、安定剤、防腐剤、等張化剤、非イオン性界面活性剤、酸化防止剤及び他の各種添加剤と混合することにより、凍結乾燥製剤又は水溶液として保存できるように製造することができる。Remington’s Pharmaceutical Sciences,16th edition(Osol,ed.1980)参照。このような添加剤は使用する用量及び濃度でレシピエントに非毒性でなければならない。
【0142】
緩衝剤はpHを生理的条件に近い範囲に維持するのに役立つ。緩衝剤は約2mMから約50mMの範囲の濃度で加えることができる。本発明で使用するのに適切な緩衝剤としては、クエン緩衝液(例えばクエン酸一ナトリウム−クエン酸二ナトリウム混液、クエン酸−クエン酸三ナトリウム混液、クエン酸−クエン酸一ナトリウム混液等)、コハク酸緩衝液(例えばコハク酸−コハク酸一ナトリウム混液、コハク酸−水酸化ナトリウム混液、コハク酸−コハク酸二ナトリウム混液等)、酒石酸緩衝液(例えば酒石酸−酒石酸ナトリウム混液、酒石酸−酒石酸カリウム混液、酒石酸−水酸化ナトリウム混液等)、フマル酸緩衝液(例えばフマル酸−フマル酸一ナトリウム混液、フマル酸−フマル酸二ナトリウム混液、フマル酸一ナトリウム−フマル酸二ナトリウム混液等)、グルコン酸緩衝液(例えばグルコン酸−グルコン酸ナトリウム混液、グルコン酸−水酸化ナトリウム混液、グルコン酸−グルコン酸カリウム混液等)、蓚酸緩衝液(例えば蓚酸−蓚酸ナトリウム混液、蓚酸−水酸化ナトリウム混液、蓚酸−蓚酸カリウム混液等)、乳酸緩衝液(例えば乳酸−乳酸ナトリウム混液、乳酸−水酸化ナトリウム混液、乳酸−乳酸カリウム混液等)及び酢酸緩衝液(例えば酢酸−酢酸ナトリウム混液、酢酸−水酸化ナトリウム混液等)等の有機及び無機酸とその塩が挙げられる。更に、リン酸緩衝液、ヒスチジン緩衝液及びトリメチルアミン塩(例えばTris)も使用することができる。
【0143】
微生物増殖を遅らせるために防腐剤を添加することができ、0.2%〜1%(w/v)の範囲の量で添加することができる。本発明で使用するのに適切な防腐剤としては、フェノール、ベンジルアルコール、メタクレゾール、メチルパラベン、プロピルパラベン、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、ハロゲン化ベンザルコニウム(例えば塩化ベンザルコニウム、臭化ベンザルコニウム及びヨウ化ベンザルコニウム)、塩化ヘキサメトニウム、アルキルパラベン(例えばメチルパラベン又はプロピルパラベン)、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール及び3−ペンタノールが挙げられる。等張化剤は「安定剤」と言う場合もあり、本発明の液体組成物の等張性を確保するために添加することができ、多価糖アルコール類、例えば三価以上の糖アルコール類(例えばグリセリン、エリスリトール、アラビトール、キシリトール、ソルビトール及びマンニトール)が挙げられる。安定剤とは増量剤から治療剤を可溶化する添加剤又は変性もしくは容器壁への付着を防止するのに役立つ添加剤に至るまでの機能に対応し得る広い分類の賦形剤を意味する。典型的な安定剤としては、多価糖アルコール類(上記のもの)、アミノ酸類(例えばアルギニン、リジン、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アラニン、オルニチン、L−ロイシン、2−フェニルアラニン、グルタミン酸、スレオニン等)、有機糖類又は糖アルコール類(例えばラクトース、トレハロース、スタキオース、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、リビトール、ミオイノシトール、ガラクチトール、グリセロール等が挙げられ、イノシトール等のシクリトール類も含む)、ポリエチレングリコール、アミノ酸ポリマー、硫黄含有還元剤(例えば尿素、グルタチオン、チオクト酸、チオグリコール酸ナトリウム、チオグリセロール、α−モノチオグリセロール及びチオ硫酸ナトリウム)、低分子量ポリペプチド(例えば10残基以下のペプチド)、蛋白質(例えばヒト血清アルブミン、ウシ血清アルブミン、ゼラチン又は免疫グロブリン)、親水性ポリマー(例えばポリビニルピロリドン)、単糖類(例えばキシロース、マンノース、フルクトース、グルコース)、二糖類(例えばラクトース、マルトース、スクロース)及び三糖類(例えばラフィノース)、並びに多糖類(例えばデキストラン)が挙げられる。安定剤は活性蛋白質1重量部当たり0.1から10,000重量部の範囲で加えることができる。
【0144】
治療剤を溶解し易くすると共に、治療用蛋白質を撹拌による凝集から保護し、更に蛋白質の変性を生じずに製剤を表面剪断応力に暴露できるようにするために、非イオン性界面活性剤ないしデタージェント(別称「湿潤剤」)を添加することができる。適切な非イオン性界面活性剤としては、ポリソルベート類(20,80等)、ポロキサマー類(184,188等)、プルロニックポリオール類、ポリオキシエチレンソルビタンモノエーテル類(TWEEN(登録商標)−20,TWEEN(登録商標)−80等)が挙げられる。非イオン性界面活性剤は約0.05mg/mlから約1.0mg/mlの範囲、例えば約0.07mg/mlから約0.2mg/mlの範囲で加えることができる。
【0145】
その他の賦形剤としては、増量剤(例えば澱粉)、キレート剤(例えばEDTA)、酸化防止剤(例えばアスコルビン酸、メチオニン、ビタミンE)、及び補助溶媒が挙げられる。
【0146】
本願の製剤は更に本発明の抗VEGF抗体以外に併用療法剤も含有することができる。適切な併用療法剤の例は下記セクション6.10に挙げる。
【0147】
皮下投与用の投与スケジュールは疾患の種類、疾患の重篤度及び抗VEGF抗体に対する患者の感受性を含む多数の臨床因子に応じて6カ月に1回から毎日までとすることができる。
【0148】
本発明の抗VEGF抗体の投与用量は特定抗体、疾患の種類(例えば癌、炎症性等)、対象、疾患の重篤度、対象の健康状態、治療レジメン(例えば併用療法剤の使用の有無)、及び選択する投与経路に従って異なり、適切な用量は当業者が容易に決定することができる。
【0149】
当業者に自明の通り、本発明の抗VEGF抗体の最適量と投与間隔は治療する病態の種類と程度、投与形態、投与経路、投与部位、及び治療する特定対象の年齢と健康状態により決定され、適切な使用量は最終的に医師が決定する。この投与を適切な回数反復することができる。副作用が生じる場合には、通常の臨床診療に従って投与量及び/又は頻度を変更又は低減することができる。
【0150】
6.10 併用療法
以下、本発明の抗VEGF抗体を利用することができる併用法について記載する。併用法は少なくとも2種類の薬剤を患者に投与し、第1の薬剤を本発明の抗VEGF抗体とし、第2の薬剤を併用療法剤とする。抗VEGF抗体と併用療法剤は同時、順次又は別々に投与することができる。
【0151】
本発明の併用療法は相加効果を上回る効果が得られ、治療有効量の抗VEGF抗体又は併用療法剤を単独で投与した場合には得られない治療効果が得られる。
【0152】
本発明の方法では、本発明の抗VEGF抗体と併用療法剤を同時又は順次併用投与することができる。本願で使用する表現では、本発明の抗VEGF抗体と併用療法剤を同日、例えば1回の患者来院中に患者に投与する場合に順次投与すると言う。順次投与は1時間置き、2時間置き、3時間置き、4時間置き、5時間置き、6時間置き、7時間置き又は8時間置きに実施することができる。他方、本発明の抗VEGF抗体と併用療法剤を別の日に患者に投与する場合に別々に投与すると言い、例えば、本発明の抗VEGF抗体と併用療法剤を1日置き、2日置き、3日置き、1週間置き、2週間置き又は1カ月置きに投与することができる。本発明の方法では、本発明の抗VEGF抗体を投与する前に併用療法剤を投与してもよいし、後に投与してもよい。
【0153】
非限定的な1例として、本発明の抗VEGF抗体と併用療法剤を一定期間併用投与した後に、第2の期間に本発明の抗VEGF抗体と併用療法剤を交互に投与することができる。
【0154】
本発明の抗VEGF抗体と併用療法剤を投与する潜在的相乗効果により、一方又は両方を単独で投与した場合には治療有効量とならない量でこれらの薬剤を投与することができる。
【0155】
所定態様において、併用療法剤は抗血管新生剤、抗リウマチ薬、抗炎症剤、化学療法剤、放射線療法剤、免疫抑制剤又は細胞毒性薬である。
【0156】
各種疾患を治療するために使用する場合には、同一又は同様の疾患に適した他の治療剤と本発明の抗VEGF抗体を併用できると考えられる。癌を治療するために使用する場合には、外科処置、放射線療法、化学療法又はその組合せ等の従来の癌治療法と本発明の抗体を併用することができる。
【0157】
所定の他の態様において、本発明の抗体との併用腫瘍治療に有用な他の治療剤としては、EGFR、ErbB2(別称Her2)、ErbB3、ErbB4又はTNF−α等の腫瘍増殖に関与する他の因子のアンタゴニスト(例えば抗体)が挙げられる。
【0158】
場合により、癌及び乳癌の治療には、1種以上のサイトカインも患者に投与することが有益な場合がある。好ましい実施形態では、VEGF抗体を増殖抑制剤と併用投与する。
【0159】
増殖抑制剤に適切な用量は現在使用されている用量であり、増殖抑制剤と抗VEGF抗体の併用作用(相乗効果)により用量を減らすことができる。
【0160】
癌、免疫疾患及び網膜疾患の治療には、抗炎症剤を本発明の抗VEGF抗体と適切に併用することができる。抗炎症剤としては、限定されないが、アセトアミノフェン、ジフェンヒドラミン、メペリジン、デキサメタゾン、ペンタサ、メサラジン、アサコール、リン酸コデイン、ベノリラート、フェンブフェン、ナプロシン、ジクロフェナク、エトドラク及びインドメタシン、アスピリン及びイブプロフェンが挙げられる。
【0161】
癌の治療には、化学療法剤を本発明の抗VEGF抗体と適切に併用することができる。化学療法剤としては、限定されないが、放射性分子、毒素(細胞毒素又は細胞傷害性物質とも言い、細胞の生存に有害な任意物質を含む)、及び化学療法用化合物を内包させたリポソーム又は他の小胞が挙げられる。適切な化学療法剤の例としては、限定されないが、1−デヒドロテストステロン、5−フルオロウラシルデカルバジン、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、アクチノマイシンD、アドリアマイシン、アルデスロイキン、抗α5β1インテグリン抗体、アルキル化剤、アロプリノールナトリウム、アルトレタミン、アミフォスチン、アナストロゾール、アントラマイシン(AMC)、有糸分裂阻害剤、シス−ジクロロジアミン白金(II)(DDP)(シスプラチン)、ジアミノジクロロ白金、アントラサイクリン、抗生物質、代謝拮抗剤、アスパラギナーゼ、BCG生菌(膀胱内)、リン酸ベタメタゾンナトリウム及び酢酸ベタメタゾン、ビカルタミド、硫酸ブレオマイシン、ブスルファン、ロイコボリンカルシウム、カリケアマイシン、カペシタビン、カルボプラチン、ロムスチン(CCNU)、カルムスチン(BSNU)、クロラムブシル、シスプラチン、クラドリビン、コルヒチン、共役エストロゲン、シクロホスファミド、シクロソスファミド、シタラビン、シタラビン、サイトカラシンB、サイトキサン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダクチノマイシン(旧名アクチノマイシン)、ダウノルビシンHCL、クエン酸ダウノルビシン、デニロイキンディフティトックス、デクスラゾキサン、ジブロモマンニトール、ジヒドロキシアントラシンジオン、ドセタキセル、メシル酸ドラセトロン、ドキソルビシンHCL、ドロナビノール、大腸菌L−アスパラギナーゼ、ボロシキシマブ、エメチン、エポエチン−α、エルビニアL−アスパラギナーゼ、エステル化エストロゲン、エストラジオール、リン酸エストラムスチンナトリウム、臭化エチジウム、エチニルエストラジオール、エチドロネート、エトポシドシトロボラム因子、リン酸エトポシド、フィルグラスチム、フロクスウリジン、フルコナゾール、リン酸フルダラビン、フルオロウラシル、フルタミド、フォリン酸、ゲムシタビンHCL、グルココルチコイド、酢酸ゴセレリン、グラミシジンD、グラニセトロンHCL、ヒドロキシ尿素、イダルビシンHCL、イホスファミド、インターフェロンα−2b、イリノテカンHCL、レトロゾール、ロイコボリンカルシウム、酢酸ロイプロリド、レバミソールHCL、リドカイン、ロムスチン、メイタンシノイド、メクロレタミンHCL、酢酸メドロキシプロゲステロン、酢酸メゲストロール、メルファランHCL、メルカプトプリン、メスナ、メトトレキサート、メチルテストステロン、ミトラマイシン、マイトマイシンC、ミトタン、ミトキサントロン、ニルタミド、酢酸オクトレオチド、オンダンセトロンHCL、パクリタキセル、パミドロン酸二ナトリウム、ペントスタチン、ピロカルピンHCL、プリマイシン、ポリフェプロザン20カルムスチンインプラント、ポルフィマーナトリウム、プロカイン、プロカルバジンHCL、プロプラノロール、リツキシマブ、サルグラモスチム、ストレプトゾトシン、タモキシフェン、タキソール、テニポシド、テノポシド、テストラクトン、テトラカイン、チオエパクロラムブシル、チオグアニン、チオテパ、トポテカンHCL、クエン酸トレミフェン、トラスツズマブ、トレチノイン、バルルビシン、硫酸ビンブラスチン、硫酸ビンクリスチン及び酒石酸ビノレルビンが挙げられる。
【0162】
Carmeliet and Jain,2000,Nature 407:249−257に挙げられているもの等の任意抗血管新生剤を本発明の抗VEGF抗体と併用することができる。所定実施形態において、抗血管新生剤は別のVEGFアンタゴニスト又はVEGF受容体アンタゴニスト(例えばVEGF変異体、可溶性VEGF受容体フラグメント、VEGF又はVEGFRを阻害することが可能なアプタマー、中和性抗VEGFR抗体、VEGFRチロシンキナーゼの低分子量阻害剤及びその任意組合せ)である。上記の代用又は追加として、2種以上の抗VEGF抗体を患者に併用投与してもよい。
【0163】
所定実施形態では、本発明の抗VEGF抗体とホルモン療法を併用することができる。所定実施形態において、ホルモン療法はエストロゲン及び/又はプロゲステロンが癌細胞増殖を促進するのを抑制する1種以上の薬剤を含み、例えば選択的エストロゲン受容体モジュレーター(例えばタモキシフェン)、アロマターゼ阻害剤(例えばアナストロゾール(Arimidex(登録商標))又はレトロゾール(Femara))、アロマターゼ不活化剤(例えばエキセメスタン(Aromasin(登録商標)))又はエストロゲン産生抑制剤(例えばゴセレリン(Zoladex))が挙げられる。他の実施形態において、ホルモン療法は卵巣からのホルモンの産生を抑制する1種以上の薬剤である。
【0164】
所定態様では、小分子蛋白質チロシンキナーゼ(PTK)阻害剤と抗VEGF抗体を併用することができる。所定実施形態において、PTK阻害剤はVEGF受容体チロシンキナーゼに対して特異的である。他の実施形態において、PTK阻害剤はチロシンキナーゼのVEGF受容体ファミリーの2種以上(例えばVEGFR−1、VEGFR−2)と結合する。他の実施形態において、本発明の組成物と方法で有用な蛋白質チロシンキナーゼ阻害剤としては、受容体チロシンキナーゼのVEGFファミリーと選択的に結合せず、HER2、HER3、HER4、PDGFR及び/又はRaf等の他の蛋白質ファミリーのチロシンキナーゼドメインとも結合するPTK阻害剤が挙げられる。
【0165】
所定実施形態において、チロシンキナーゼは受容体チロシンキナーゼであり、即ち細胞外リガンド結合ドメインをもち、1種以上のリガンドの結合により活性化される大きい蛋白質の細胞内ドメインである。所定実施形態において、蛋白質チロシンキナーゼは非受容体チロシンキナーゼである。本発明の方法で使用されるPTK阻害剤としては、限定されないが、ゲフィニチブ(ZD−1839,Iressa(登録商標))、エルロチニブ(OSI−1774,Tarceva(登録商標))、カネルチニブ(CI−1033)、バンデタニブ(ZD6474,Zactima(登録商標))、チルホスチンAG−825(CAS 149092−50−2)、ラパチニブ(GW−572016)、ソラフェニブ(BAY43−9006)、AG−494(CAS 133550−35−3)、RG−13022(CAS 149286−90−8)、RG−14620(CAS 136831−49−7)、BIBW 2992(Tovok)、チルホスチン9(CAS 136831−49−7)、チルホスチン23(CAS 118409−57−7)、チルホスチン25(CAS 118409−58−8)、チルホスチン46(CAS 122520−85−8)、チルホスチン47(CAS 122520−86−9)、チルホスチン53(CAS 122520−90−5)、ブテイン(1−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−3−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−2−プロペン−1−オン;2’,3,4,4’−テトラヒドロキシカルコン;CAS 487−52−5)、クルクミン((E,E)−1,7−ビス(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1,6−ヘプタジエン−3,5−ジオン;CAS 458−37−7)、N4−(1−ベンジル−1H−インダゾール−5−イル)−N6,N6−ジメチルピリド−[3,4−d]−ピリミジン−4,6−ジアミン(202272−68−2)、AG−1478、AG−879、シクロプロパンカルボン酸−(3−(6−(3−トリフルオロメチルフェニルアミノ)ピリミジン−4−イルアミノ)フェニル)アミド(CAS 879127−07−8)、N8−(3−クロロ−4−フルオロフェニル)−N2−(1−メチルピペリジン−4−イル)ピリミド[5,4−d]ピリミジン−2,8−ジアミン、2HCl(CAS 196612−93−8)、4−(4−ベンジルオキシアニリノ)−6,7−ジメトキシキナゾリン(CAS 179248−61−4)、N−(4−((3−クロロ−4−フルオロフェニル)アミノ)ピリド[3,4−d]ピリミジン−6−イル)2−ブチンアミド(CAS 881001−19−0)、EKB−569、HKI−272及びHKI−357が挙られる。
【0166】
1特定実施形態では、本発明の抗VEGF抗体を静脈内5−フルオロウラシル系化学療法と併用する。この併用は特に結腸又は直腸の転移性癌患者の第一又は第二選択治療に適している。
【0167】
別の特定実施形態では、本発明の抗VEGF抗体をカルボプラチン及びパクリタキセルと併用する。この併用は特に切除不能な局所進行再発性又は転移性非扁平上皮型非小細胞肺癌患者の第一選択治療に適している。
【0168】
更に別の特定実施形態では、本発明の抗VEGF抗体をパクリタキセルと併用する。この併用は特に転移性HER2陰性乳癌の化学療法を受けていない患者の治療に適している。
【0169】
網膜疾患の治療には、抗血小板由来成長因子(PDGF)ペグ化アプタマーであるE10030、補体カスケードのC5成分を標的とするペグ化アプタマーであるARC1905、及びα5β1インテグリン膜貫通受容体を標的とするモノクローナル抗体であるボロシキシマブ、Visudyne(登録商標)による光線力学療法(PDT)、又はアプタマー(ペガプタニブナトリウム)であるMacugen(登録商標)と本発明の抗VEGF抗体を併用することができる。
【0170】
6.11 治療レジメン
本発明は本発明の抗VEGF抗体の投与を含む治療レジメンを提供する。治療レジメンは患者の年齢、体重及び病態により異なる。治療レジメンは2週間から無期限まで継続することができる。特定実施形態において、治療レジメンは2週間〜6カ月間、3カ月間〜5年間、6カ月間〜1年間又は2年間、8カ月間〜18カ月間等の期間継続する。治療レジメンは非可変用量レジメンでもよいし、複数可変用量レジメンでもよい。
【0171】
下記典型的投与レジメンでは、抗VEGF抗体を皮下投与用滅菌防腐剤フリー溶液として投与することができる。
【0172】
転移性結腸・直腸癌の治療には、本発明の抗VEGF抗体をボーラス−IFL(イリノテカン、5−フルオロウラシル及びロイコボリンレジメン)と併用して0.5〜15mg/kgの用量で2週間置きに静脈内投与する。特定実施形態において、用量はボーラス−IFLと併用して2週間置きに1〜4mg/kg、2〜6mg/kg、0.5〜3mg/kg、1〜10mg/kg、3〜4.8mg/kg又は1〜4.5mg/kgとする。
【0173】
転移性結腸・直腸癌の治療の別の実施形態では、本発明の抗VEGF抗体をFOLFOX4(オキサリプラチン、ロイコボリン及びフルオロウラシルレジメン)と併用して1〜30mg/kgの用量で2週間置きに静脈内投与する。特定実施形態において、用量はFOLFOX4と併用して2週間置きに2〜9mg/kg、3〜12mg/kg、1〜7.5mg/kg、2〜20mg/kg、6〜9.75mg/kg又は4〜9.5mg/kgとする。
【0174】
非扁平上皮型非小細胞肺癌の治療には、本発明の抗VEGF抗体をカルボプラチン/パクリタキセルと併用して2〜40mg/kgの用量で3週間置きに静脈内投与する。特定実施形態において、用量はカルボプラチン/パクリタキセルと併用して3週間置きに5〜14mg/kg、4〜20mg/kg、10〜17.5mg/kg、7〜14mg/kg、10〜30mg/kg又は3〜30mg/kgとする。
【0175】
転移性乳癌の治療には、本発明の抗VEGF抗体をパクリタキセルと併用して0.5〜20mg/kgの用量で2週間置きに静脈内投与する。特定実施形態において、用量はパクリタキセルと併用して2週間置きに1〜4mg/kg、2〜6mg/kg、0.5〜3mg/kg、1〜10mg/kg、3〜4.8mg/kg又は1〜4.5mg/kgとする。
【0176】
転移性乳癌の治療には、本発明の抗VEGF抗体を単独療法として0.5〜20mg/kgの用量で2週間置きに静脈内投与する。特定実施形態において、用量は単独療法として2週間置きに1〜4mg/kg、2〜6mg/kg、0.5〜3mg/kg、1〜10mg/kg、3〜4.8mg/kg又は1〜4.5mg/kgとする。
【0177】
加齢黄斑変性(AMD)の治療には、本発明の抗VEGF抗体を0.1〜1mgの用量で1カ月(約28日)に一度硝子体内注射により投与する。特定実施形態において、用量は1カ月(約28日)に一度硝子体内注射により0.1〜0.4mg、0.2〜0.6mg、0.1〜0.25mg、0.25〜0.5mg、0.25〜0.75mg又は0.3〜0.45mgとする。1特定実施形態において、本発明の抗VEGF抗体で治療する患者はウェット型AMD患者である。別の特定実施形態において、患者はドライ型AMD患者である。
【0178】
6.12 診断及び医薬キット
本発明は本発明の抗VEGF抗体(抗体コンジュゲートを含む)を含む医薬キットを包含する。医薬キットは、(例えば凍結乾燥形態又は水溶液としての)本発明の抗VEGF抗体と、
−例えば上記セクション6.10に記載したような併用療法剤;
−抗VEGF抗体の投与装置、例えばペン、注射針及び/又はシリンジ;並びに
−抗体が凍結乾燥形態の場合には抗体を再懸濁するための医薬グレード水又は緩衝液
の1種以上を含むパッケージである。
【0179】
所定態様では、抗VEGF抗体の各単位用量を別々に個装し、キットに1単位用量以上(例えば2単位用量、3単位用量、4単位用量、5単位用量、8単位用量、10単位用量、又はそれ以上)を含むことができる。1特定実施形態では、1単位用量以上を各々シリンジ又はペンに収容する。
【0180】
本発明は本発明の抗VEGF抗体((抗体コンジュゲートを含む)を含む診断キットも包含する。診断キットは、(例えば凍結乾燥形態又は水溶液としての)本発明の抗VEGF抗体と、診断アッセイを実施するために有用な1種以上の試薬を含むパッケージである。抗VEGF抗体を酵素で標識する場合には、キットは酵素により必要とされる基質及び補因子(例えば検出可能な発色団又は蛍光団を提供する基質前駆体)を含むことができる。更に、安定剤、緩衝液(例えばブロック緩衝液又は溶解緩衝液)等の他の添加剤も加えることができる。所定実施形態では、診断キットに含まれる抗VEGF抗体を固相表面に固相化するか、又は抗体を固相化することが可能な固相表面(例えばスライド)をキットに含む。各種試薬の相対量はアッセイの感度を実質的に最適化するような溶液中の試薬の濃度が得られるように大幅に変動させることができる。1特定実施形態では、賦形剤を添加した通常は凍結乾燥状態の乾燥粉末として抗体と1種以上の試薬を(別梱又は同梱で)提供し、溶解後に適切な濃度の試薬溶液が得られるようにすることができる。
【実施例】
【0181】
7.実施例1:ベバシズマブのT細胞エピトープの同定
7.1 材料及び方法
7.1.1 ペプチド
ペプチドはMimotopes(Adelaide,Australia)によるマルチペンフォーマットを使用して合成した。12個のアミノ酸がオーバーラップする15量体ペプチドとしてベバシズマブ軽鎖及び重鎖V領域の配列(表3及び4)を合成し、合計69種のペプチドを得た。ペプチドを凍結乾燥し、DMSO(Sigma−Aldrich)で約1〜2mg/mLに再懸濁した。ストックペプチドを−20℃で凍結保存した。
【0182】
7.1.2 ヒト末梢血単核細胞
院外ドナーバフィーコート製品をStanford Blood Center,Palo Alto,CAから購入した。カルシウム又はマグネシウムを含有しないDPBSでバフィーコート材料を1:1 v:vに希釈した。希釈したバフィーコート材料(25〜35ml)を50ml円錐形遠心管(Sarsted又はCostar)に入れ、FicollPaque−PLUS(GE Healthcare)12.5mlを重層した。試料を900gで30分間室温にて遠心した。末梢血単核細胞(PBMC)を界面から採取した。DPBSを加えて最終容量を50mlとし、細胞を350gで5分間遠心した。ペレット化した細胞をDPBSに再懸濁し、計数した。
【0183】
7.1.3 樹状細胞
樹状細胞を単離するために、新たに単離したPBMC10個を総容量30mlのAIM V培地(Invitrogen)に加え、T75培養フラスコ(Costar)に播種した。過剰のPBMCを90%胎仔ウシ血清(FCS),10% DMSO中、細胞5×10個/mLの密度で−80℃に凍結した。T75フラスコを37℃で5% CO下に2時間温置した。非接着細胞を除去し、接着性単層をDPBSで洗浄した。樹状細胞を単球から区別するために、GM−CSF(R and D Systems)800単位/mLとIL−4(R and D Systems)500単位/mLを含有するAIM V培地30mlを加えた。フラスコを5日間温置した。5日目にIL−1α(Endogen)とTNFα(Endogen)を50pg/mL及び0.2ng/mLまで加えた。フラスコを更に2日間温置した。7日目に、最終濃度10mM EDTA及び16.5〜33μg/mLマイトマイシンCとなるようにマイトマイシンC(Sigma−Aldrich)0.5〜1.0mgを含有する100mM EDTA 3mlを加えることにより樹状細胞を採取した。フラスコを更に1時間37℃で5% CO下に温置した。樹状細胞を採取し、AIM V培地で2〜3回洗浄した。
【0184】
7.1.4 細胞培養
7日目に、予め凍結しておいた自家PBMCを37℃水浴で素早く解凍した。細胞をすぐにDPBS又はAIM V培地で希釈し、350gで5分間遠心した。磁気ビーズ(Easy−Sep CD4kit,Stem Cell Technologies)を使用する陰性選択によりCD4細胞を増菌した。96ウェル丸底プレート(Costar 9077)でウェル当たり樹状細胞2×10個に対してCD4T細胞2×10個の割合で自家CD4T細胞と樹状細胞を同時培養した。ペプチド約5μg/mLを加えた。対照ウェルにはDMSO(Sigma)ビヒクル単独を0.25% v:vで加えた。陽性対照ウェルには0.25% DMSOと1μg/mL破傷風トキソイド(List Biologicals又はCalBioChem)を加えた。培養液を5日間温置した。5日目にウェル当たり0.25μCiのトリチウム化チミジン(Amersham又はGE Healthcare)を加えた。Packard Filtermate Cellハーベスターを使用して培養液を6日目にフィルターマットに採取した。Wallac MicroBeta 1450シンチレーションカウンター(Perkin Elmer)を使用してシンチレーション計数を実施した。
【0185】
7.1.5 データ解析
6〜12回の反復試験からの個々の結果を平均することにより、平均バックグラウンドCPM値を計算した。4個の陽性対照ウェルのCPM値を平均した。ペプチド毎に2又は3個のウェルを平均した。平均実験CPM値を平均対照値で割ることにより、陽性対照とペプチドウェルの刺激指数値を計算した。データセットに加えるためには、破傷風トキソイド陽性対照ウェルで3.0を上回る刺激指数が必要であった。刺激指数が2.95以上となる全ペプチドについて応答を記録した。99人のドナー群からの末梢血液試料を使用してペプチドを試験した。全ペプチドに対する応答を集計した。試験したペプチド毎に、2.95以上の刺激指数で応答したドナー群の百分率を計算した。更に、全ドナーの平均刺激指数も計算した。
【0186】
7.2 結果
7.2.1
ベバシズマブVH及びVL領域におけるCD4T細胞エピトープの同定
99人のドナー群内でペプチドに対する応答率百分率の解析によりCD4T細胞エピトープペプチドを同定した。ベバシズマブ重鎖及び軽鎖V領域に相当する全試験ペプチドについて平均応答百分率と標準偏差を計算した。平均バックグラウンド応答+(3×標準偏差)以上の応答率を潜在的CD4T細胞エピトープとみなした。ベバシズマブ軽鎖V領域について、32種のペプチド(表3)を試験した結果、2.1±2.7%の平均バックグラウンド応答百分率が得られた。バックグラウンド+(3×標準偏差)は10.2%であることが分かった。13番目の1種のペプチド(Q40−T54)がベバシズマブ軽鎖ペプチドデータセットでこのレベルの応答を示し、応答率は15.2%であった(図2A)。ベバシズマブ重鎖V領域について、37種のペプチドを試験した(表4)。平均バックグラウンド応答百分率は2.8±3.1%であった。バックグラウンド+(3×標準偏差)は12.1%であった。ベバシズマブ重鎖データセット内の1種のペプチド#18(N52−R56)が16.2%の応答百分率に達した(図3A)。第2のペプチドは重鎖データセットにおける30番目のペプチドで9.1%の応答率に達し、刺激指数増加によるエピトープとみなした(下記参照)。
【0187】
データセット内の全ペプチドについて平均刺激指数を計算した。軽鎖ペプチド13は1.82±0.24 s.e.m.という高い平均刺激指数値であった(図2B)。重鎖ペプチド#18は2.16±0.35 s.e.m.の平均刺激指数であった(図3B)。30番目のペプチドは平均刺激指数増加と平均を上回る応答率により、1.45±0.18 s.e.m.の平均刺激指数となった(図3B)。この抗体V領域のCD4T細胞エピトープ含有量を測定する場合には30番目のペプチドを使用した。これらの全刺激指数値は2個のデータセットにおける全ペプチドの平均刺激指数よりも有意に高かった(全69種の重鎖及び軽鎖ペプチドで1.14±0.07)。
【0188】
これらのデータによると、ベバシズマブV領域には3個のCD4+T細胞エピトープ領域が存在する(表5)。VL領域では、フレームワーク2とCDR2に由来する2個のアミノ酸を含むエピトープが13番目のペプチドで検出された。この配列はヒト化中に配列に挿入されたマウス復帰突然変異(V46)を含む。表5では、CDRに由来するアミノ酸を下線で示す。重鎖では、2個のエピトープペプチド領域が同定された。18番目の強いほうのエピトープは全CDR2を含む。第2のエピトープペプチド領域はフレームワーク3及びCDR3アミノ酸の両方を含む。
【0189】
7.2.2 ベバシズマブ変異体抗体の免疫原性低下変異体
ベバシズマブを突然変異解析した(下記実施例2参照)。突然変異解析と共に実施した抗原結合試験に基づき、VEGFに対する抗体の親和性を有意に低下させないCDR−H2及びCDR−H3領域内の1組の候補アミノ酸置換を同定した(表6)。これらのアミノ酸置換を単独及び組合せて試験し、野生型抗体に比較して免疫原性の低下したベバシズマブの変異体を同定した。
【0190】
8.実施例2:VEGFに対する親和性の増加したベバシズマブの変異体の同定
ベバシズマブ抗体を網羅的に突然変異解析し、ベバシズマブに比較してVEGFに対する親和性の増加した突然変異体を同定した。ベバシズマブに比較したVEGFに対する候補高親和性突然変異体の親和性増加をBIAcoreにより解析し、その結合特徴を確認した。
【0191】
8.1 材料及び方法
8.1.1 BIAcore
ヒトIgGを含むプラスミドに15種の変異体ベバシズマブVH領域構築物を非改変VL領域と共にクローニングし、一過的トランスフェクションにより293T/17細胞株で発現させ、抗体をプロテインA又はプロテインG親和性により精製した。BIAcore 2000及び3000表面プラズモン共鳴システム(BIAcore,GE Healthcare,Piscataway,NJ)を使用することによりVEGF(R&D systems,Minneapolis,MN)に対する抗体の親和性を測定した。先ず、標準BIAcoreアミンカップリング試薬(N−エチル−N’−ジメチルアミノプロピルカルボジイミド,EDC;N−ヒドロキシスミシンイミド,NHS;及びエタノールアミンHCl,pH8.5)を使用してポリクローナルヤギ抗ヒトFc抗体(Jackson Immunoresearch)をバイオセンサー表面に固相化した後、抗VEGF抗体(ベバシズマブ及びベバシズマブ変異体)を5μL/minの低流速で平行表面に捕捉した。VEGFの二量体性質によるアビディティを最小化するようにRLを低く維持した。参照表面では抗体の捕捉を実施せず、陰性対照とした。次に、VEGFを全フローセルに流速50μL/minで2分間注入して会合をモニターした後、HBS−Pランニング緩衝液(10mM HEPES,150mM塩化ナトリウム,0.005% P−20,pH 7.4)を25分間流し、解離相をモニターした。各サイクルで0nMから512nMまで4倍刻みで増加した6種類の異なるVEGF濃度のVEGFを表面に注入した。各サイクルの終わりに1.5% HPOを流速100μL/minで2回素早く吹き付けて表面を再生させた。結合データを1:1ラングミュアモデルにフィットさせ、BIAevaluateソフトウェアから結合定数を抽出した。各解析で二重参照を適用し、参照表面と緩衝液単独対照からのバックグラウンド応答を排除した。全結合反応速度データを少なくとも3回の別々の測定で解析した。
【0192】
8.2 結果
結果を絶対数と野生型に対する改善倍率として示す。一覧に加えたほぼ全変異体はベバシズマブ又は野生型と比較した場合に会合速度(kon)と解離(koff)速度が改善した(表7)。変異体の最終親和性値は0.1nM範囲内であり、配列番号82に対応する変異体では0.08nMという低値に達した。これらの値はこれらの実験で測定した親和性が1.9nMであったベバシズマブとは対照的である。
【0193】
表8及び9は予備結合試験でVEGFに対する親和性がベバシズマブよりも高い他の重鎖変異体を示す(データは示さず)。表10は予備試験でVEGFに対する親和性がベバシズマブと同等である重鎖変異体を示す(データは示さず)。表11は予備試験でVEGFに対する親和性がベバシズマブと同等である軽鎖変異体を示す(データは示さず)。
【0194】
9.実施例3:脱免疫化変異体ペプチドの選択
ベバシズマブの免疫原性領域に対応する変異体ペプチド(実施例1参照)を作製した(表14〜16)。実施例2に記載した網羅的突然変異解析に基づいて変異体ペプチドを選択し、VEGFに対するベバシズマブの結合親和性を実質的に低下させないCDR変異を同定した。
【0195】
合計77種のペプチドを合成し、親15量体ペプチドの各々の2回ずつの合成を含む抗原結合試験に基づいて試験した。セクション7.1に記載した方法を利用して親及び変異体ペプチドで合計93人のドナーを試験し、結果を図4A〜4Cに示す。特に、図4A〜4Cは突然変異体ベバシズマブエピトープペプチドに対するCD4+T細胞応答を示す。未変異親エピトープ配列に対する平均応答を白記号で示す。大きい丸は表17に示す選択変異を表す(下記参照)。図4AはVH CDR2ペプチドに対応し、図4BはVH CDR3ペプチドに対応し、図4CはVL CDR2ペプチドに対応する。選択したペプチドの免疫原性を表17に示す。
【0196】
重鎖可変領域CDR2ペプチドでは、この試験で親ペプチドに対する平均応答百分率は5.38%及び6.45%であった。3種の突然変異体ペプチドが親ペプチドに比較して総応答率と平均刺激指数の低下を示した。
【0197】
この試験で重鎖可変領域CDR3エピトープペプチドの親ペプチド応答率は7.53%及び6.45%であった。親ペプチドに比較して総応答の低下を示す1種の突然変異体ペプチド配列が確認された。
【0198】
最後に、この試験における軽鎖可変領域CDR2ペプチド親応答率は25.8%及び15%であった。親ペプチドに比較して総免疫原性の低下を示す1種の突然変異体ペプチドが同定された。
【0199】
脱免疫化突然変異がベバシズマブに比較してVEGFに対する親和性を維持したことを実証するために、フローサイトメトリーを使用し、(単独又は二重アミノ酸変異体及びベバシズマブとしての)改変エピトープペプチドに突然変異を導入する変異体抗体の結合特性を比較した。数種の脱免疫化突然変異はベバシズマブに比較してVEGFに対する親和性が同等以上であった。
【0200】
1試験では、一過的にトランスフェクトした293c18細胞で表面結合型のベバシズマブ変異体を発現するものを3nMのAlexa647共役rHuVEGF(Invitrogen Cat #PHG0143)と希釈倍率400倍のヤギ抗ヒトκRPE(Southern Biotech Cat#2063−09)で染色した。DakoCytomation CyAn ADPフローサイトメーターを使用してフローサイトメトリーによりデータを収集し、Treestar’s FloJo解析プログラムを使用して解析した。この試験で測定した平均蛍光強度(MFI)を表18に示す。
【0201】
別の試験では、VEGFと結合するベバシズマブと変異体抗体のEC50を測定した。VEGFを5μMから0.01μMまで2倍系列希釈しながら上記のようにベバシズマブとその変異体をAlexas647共役rHuVEGFと共に使用して抗体力価検定プロットを作成した。EC50値を表19に示す。
【0202】
10.特定実施形態、資料引用
本願に引用する全刊行物、特許、特許出願及び他の文献は個々の刊行物、特許、特許出願又は他の文献を全目的で本願に組込むと個々に記載すると同程度までその開示内容全体を全目的で本願に組込む。各種特定実施形態を例証及び記載したが、当然のことながら、発明の趣旨と範囲内で種々の変更を行うことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号3(CDR−H1)、配列番号4(CDR−H2)、配列番号5(CDR−H3)、配列番号6(CDR−L1)、配列番号7(CDR−L2)及び配列番号8(CDR−L3)に対応するアミノ酸配列をもつCDRを含む抗VEGF抗体又は抗体の抗VEGF結合フラグメントであって、CDR−H2がK64S置換、及び場合により表6、7、8、9、10、11、12−1〜12−9又は13〜16の1以上から選択される1種以上の他の突然変異又は突然変異の組合せを含み、6個のCDRが抗体ベバシズマブ又は抗体ラニビズマブのCDR配列に比較して合計17カ所までのアミノ酸置換をもつ前記抗VEGF抗体又は抗体の抗VEGF結合フラグメント。
【請求項2】
配列番号3(CDR−H1)、配列番号4(CDR−H2)、配列番号5(CDR−H3)、配列番号6(CDR−L1)、配列番号7(CDR−L2)及び配列番号8(CDR−L3)に対応するアミノ酸配列をもつCDRを含む抗VEGF抗体又は抗体の抗VEGF結合フラグメントであって、CDR−H2がK64Q置換、及び場合により表6、7、8、9、10、11、12−1〜12−9又は13〜16の1以上から選択される1種以上の他の突然変異又は突然変異の組合せを含み、6個のCDRが抗体ベバシズマブ又は抗体ラニビズマブのCDR配列に比較して合計17カ所までのアミノ酸置換をもつ前記抗VEGF抗体又は抗体の抗VEGF結合フラグメント。
【請求項3】
配列番号3(CDR−H1)、配列番号4(CDR−H2)、配列番号5(CDR−H3)、配列番号6(CDR−L1)、配列番号7(CDR−L2)及び配列番号8(CDR−L3)に対応するアミノ酸配列をもつCDRを含む抗VEGF抗体又は抗体の抗VEGF結合フラグメントであって、CDR−H2がY53F及びK64Q置換、及び場合により表6、7、8、9、10、11、12−1〜12−9又は13〜16の1以上から選択される1種以上の他の突然変異又は突然変異の組合せを含み、6個のCDRが抗体ベバシズマブ又は抗体ラニビズマブのCDR配列に比較して合計17カ所までのアミノ酸置換をもつ前記抗VEGF抗体又は抗体の抗VEGF結合フラグメント。
【請求項4】
配列番号3(CDR−H1)、配列番号4(CDR−H2)、配列番号5(CDR−H3)、配列番号6(CDR−L1)、配列番号7(CDR−L2)及び配列番号8(CDR−L3)に対応するアミノ酸配列をもつCDRを含む抗VEGF抗体又は抗体の抗VEGF結合フラグメントであって、CDR−H3がH97E及びY98F置換、及び場合により表6、7、8、9、10、11、12−1〜12−9又は13〜16の1以上から選択される1種以上の他の突然変異又は突然変異の組合せを含み、6個のCDRが抗体ベバシズマブ又は抗体ラニビズマブのCDR配列に比較して合計17カ所までのアミノ酸置換をもつ前記抗VEGF抗体又は抗体の抗VEGF結合フラグメント。
【請求項5】
配列番号3(CDR−H1)、配列番号4(CDR−H2)、配列番号5(CDR−H3)、配列番号6(CDR−L1)、配列番号7(CDR−L2)及び配列番号8(CDR−L3)に対応するアミノ酸配列をもつCDRを含む抗VEGF抗体又は抗体の抗VEGF結合フラグメントであって、CDR−L2がT51A置換、及び場合により表6、7、8、9、10、11、12−1〜12−9又は13〜16の1以上から選択される1種以上の他の突然変異又は突然変異の組合せを含み、6個のCDRが抗体ベバシズマブ又は抗体ラニビズマブのCDR配列に比較して合計17カ所までのアミノ酸置換をもち、並びに前記VEGF抗体におけるCDR−L2が表13に記載のCDR−L2配列から構成されない前記抗VEGF抗体又は抗体の抗VEGF結合フラグメント。
【請求項6】
配列番号3(CDR−H1)、配列番号4(CDR−H2)、配列番号5(CDR−H3)、配列番号6(CDR−L1)、配列番号7(CDR−L2)及び配列番号8(CDR−L3)に対応するアミノ酸配列をもつ6個の相補性決定領域(「CDR」)を含む抗VEGF抗体又は抗体の抗VEGF結合フラグメントであって、前記CDR−H1がN31F置換、及び場合により表6、7、8、9、10、11、12−1〜12−9及び13の1以上から選択される1種以上の他の突然変異又は突然変異の組合せを含み、6個のCDRが抗体ベバシズマブ又は抗体ラニビズマブのCDR配列に比較して合計17カ所までのアミノ酸置換をもち、並びに前記VEGF抗体におけるCDR−H1が表12−1〜12−9に記載のCDR−H1配列から構成されない前記抗VEGF抗体又は抗体の抗VEGF結合フラグメント。
【請求項7】
配列番号3(CDR−H1)、配列番号4(CDR−H2)、配列番号5(CDR−H3)、配列番号6(CDR−L1)、配列番号7(CDR−L2)及び配列番号8(CDR−L3)に対応するアミノ酸配列をもつ6個のCDRを含む抗VEGF抗体又は抗体の抗VEGF結合フラグメントであって、前記CDR−H3がH97E置換、及び場合により表6、7、8、9、10、11、12−1〜12−9及び13の1以上から選択される1種以上の他の突然変異又は突然変異の組合せを含み、6個のCDRが抗体ベバシズマブ又は抗体ラニビズマブのCDR配列に比較して合計17カ所までのアミノ酸置換をもち、並びに前記VEGF抗体におけるCDR−H3が表12−1〜12−9に記載のCDR−H3配列から構成されない前記抗VEGF抗体又は抗体の抗VEGF結合フラグメント。
【請求項8】
配列番号3(CDR−H1)、配列番号4(CDR−H2)、配列番号5(CDR−H3)、配列番号6(CDR−L1)、配列番号7(CDR−L2)及び配列番号8(CDR−L3)に対応するアミノ酸配列をもつ6個のCDRを含む抗VEGF抗体又は抗体の抗VEGF結合フラグメントであって、前記CDR−H3がH97D置換、及び場合により表6、7、8、9、10、11、12−1〜12−9及び13の1以上から選択される1種以上の他の突然変異又は突然変異の組合せを含み、6個のCDRが抗体ベバシズマブ又は抗体ラニビズマブのCDR配列に比較して合計17カ所までのアミノ酸置換をもち、並びに前記VEGF抗体におけるCDR−H3が表12−1〜12−9に記載のCDR−H3配列から構成されない前記抗VEGF抗体又は抗体の抗VEGF結合フラグメント。
【請求項9】
配列番号3(CDR−H1)、配列番号4(CDR−H2)、配列番号5(CDR−H3)、配列番号6(CDR−L1)、配列番号7(CDR−L2)及び配列番号8(CDR−L3)に対応するアミノ酸配列をもつ6個のCDRを含む抗VEGF抗体又は抗体の抗VEGF結合フラグメントであって、前記CDR−H3がH97P置換、及び場合により表6、7、8、9、10、11、12−1〜12−9及び13の1以上から選択される1種以上の他の突然変異又は突然変異の組合せを含み、6個のCDRが抗体ベバシズマブ又は抗体ラニビズマブのCDR配列に比較して合計17カ所までのアミノ酸置換をもち、並びに前記VEGF抗体におけるCDR−H3が表12−1〜12−9に記載のCDR−H3配列から構成されない前記抗VEGF抗体又は抗体の抗VEGF結合フラグメント。
【請求項10】
配列番号3(CDR−H1)、配列番号4(CDR−H2)、配列番号5(CDR−H3)、配列番号6(CDR−L1)、配列番号7(CDR−L2)及び配列番号8(CDR−L3)に対応するアミノ酸配列をもつ6個のCDRを含む抗VEGF抗体又は抗体の抗VEGF結合フラグメントであって、前記CDR−H3がY99E置換、及び場合により表6、7、8、9、10、11、12−1〜12−9及び13の1以上から選択される1種以上の他の突然変異又は突然変異の組合せを含み、6個のCDRが抗体ベバシズマブ又は抗体ラニビズマブのCDR配列に比較して合計17カ所までのアミノ酸置換をもち、並びに前記VEGF抗体におけるCDR−H3が表12−1〜12−9に記載のCDR−H3配列から構成されない前記抗VEGF抗体又は抗体の抗VEGF結合フラグメント。
【請求項11】
配列番号3(CDR−H1)、配列番号4(CDR−H2)、配列番号5(CDR−H3)、配列番号6(CDR−L1)、配列番号7(CDR−L2)及び配列番号8(CDR−L3)に対応するアミノ酸配列をもつ6個のCDRを含む抗VEGF抗体又は抗体の抗VEGF結合フラグメントであって、前記CDR−H3がY99D、及び場合により表6、7、8、9、10、11、12−1〜12−9及び13の1以上から選択される1種以上の他の突然変異又は突然変異の組合せを含み、6個のCDRが抗体ベバシズマブ又は抗体ラニビズマブのCDR配列に比較して合計17カ所までのアミノ酸置換をもち、並びに前記VEGF抗体におけるCDR−H3が表12−1〜12−9に記載のCDR−H3配列から構成されない前記抗VEGF抗体又は抗体の抗VEGF結合フラグメント。
【請求項12】
配列番号3(CDR−H1)、配列番号4(CDR−H2)、配列番号5(CDR−H3)、配列番号6(CDR−L1)、配列番号7(CDR−L2)及び配列番号8(CDR−L3)に対応するアミノ酸配列をもつ6個のCDRを含む抗VEGF抗体又は抗体の抗VEGF結合フラグメントであって、前記CDR−H3がS100aG置換、及び場合により表6、7、8、9、10、11、12−1〜12−9及び13の1以上から選択される1種以上の他の突然変異又は突然変異の組合せを含み、6個のCDRが抗体ベバシズマブ又は抗体ラニビズマブのCDR配列に比較して合計17カ所までのアミノ酸置換をもち、並びに前記VEGF抗体におけるCDR−H3が表12−1〜12−9に記載のCDR−H3配列から構成されない前記抗VEGF抗体又は抗体の抗VEGF結合フラグメント。
【請求項13】
配列番号3(CDR−H1)、配列番号4(CDR−H2)、配列番号5(CDR−H3)、配列番号6(CDR−L1)、配列番号7(CDR−L2)及び配列番号8(CDR−L3)に対応するアミノ酸配列をもつCDRを含む抗VEGF抗体又は抗体の抗VEGF結合フラグメントであって、前記CDR−H3がS100aG置換、及び場合により表6、7、8、9、10、11、12−1〜12−9及び13の1以上から選択される1種以上の他の突然変異又は突然変異の組合せを含み、6個のCDRが抗体ベバシズマブ又は抗体ラニビズマブのCDR配列に比較して合計17カ所までのアミノ酸置換をもち、並びに前記VEGF抗体のCDR−H3における3位がチロシン以外のものである前記抗VEGF抗体又は抗体の抗VEGF結合フラグメント。
【請求項14】
配列番号3(CDR−H1)、配列番号4(CDR−H2)、配列番号5(CDR−H3)、配列番号6(CDR−L1)、配列番号7(CDR−L2)及び配列番号8(CDR−L3)に対応するアミノ酸配列をもつCDRを含む抗VEGF抗体又は抗体の抗VEGF結合フラグメントであって、CDR−H1がT28P、N31F、N31G及びN31Mから選択される少なくとも1カ所の置換、及び場合により表6、7、8、9、10、11、12−1〜12−9及び13の1以上から選択される1種以上の他の突然変異又は突然変異の組合せを含み、6個のCDRが抗体ベバシズマブ又は抗体ラニビズマブのCDR配列に比較して合計17カ所までのアミノ酸置換をもち、並びに前記VEGF抗体におけるCDR−H1が表12−1〜12−9に記載のCDR−H1配列から構成されない前記抗VEGF抗体又は抗体の抗VEGF結合フラグメント。
【請求項15】
配列番号3(CDR−H1)、配列番号4(CDR−H2)、配列番号5(CDR−H3)、配列番号6(CDR−L1)、配列番号7(CDR−L2)及び配列番号8(CDR−L3)に対応するアミノ酸配列をもつCDRを含む抗VEGF抗体又は抗体の抗VEGF結合フラグメントであって、CDR−H3がH97A、H97Q、H97S、H97T、S100aD、S100aE及びS100aVから選択される少なくとも1カ所の置換、及び場合により表6、7、8、9、10、11、12−1〜12−9及び13の1以上から選択される1種以上の他の突然変異又は突然変異の組合せを含み、6個のCDRが抗体ベバシズマブ又は抗体ラニビズマブのCDR配列に比較して合計17カ所までのアミノ酸置換をもち、並びに前記VEGF抗体におけるCDR−H3が表12−1〜12−9に記載のCDR−H3配列から構成されない前記抗VEGF抗体又は抗体の抗VEGF結合フラグメント。
【請求項16】
配列番号3(CDR−H1)、配列番号4(CDR−H2)、配列番号5(CDR−H3)、配列番号6(CDR−L1)、配列番号7(CDR−L2)及び配列番号8(CDR−L3)に対応するアミノ酸配列をもつCDRを含む抗VEGF抗体又は抗体の抗VEGF結合フラグメントであって、CDR−H1がT30W、T30R又はT30Q置換、及び場合により表6、7、8、9、10、11、12−1〜12−9及び13の1以上から選択される1種以上の他の突然変異又は突然変異の組合せを含み、6個のCDRが抗体ベバシズマブ又は抗体ラニビズマブのCDR配列に比較して合計17カ所までのアミノ酸置換をもち、並びに前記VEGF抗体におけるCDR−H1が表12−1〜12−9に記載のCDR−H1配列から構成されない前記抗VEGF抗体又は抗体の抗VEGF結合フラグメント。
【請求項17】
配列番号3(CDR−H1)、配列番号4(CDR−H2)、配列番号5(CDR−H3)、配列番号6(CDR−L1)、配列番号7(CDR−L2)及び配列番号8(CDR−L3)に対応するアミノ酸配列をもつCDRを含む抗VEGF抗体又は抗体の抗VEGF結合フラグメントであって、CDR−H2がY53F、T58F、A61G、A61K、A61R、A61H、A61Y、K64G、K64E、R65L、R65T、R65A、R65E及びR65Dから選択される少なくとも1カ所の置換、及び場合により表6、7、8、9、10、11、12−1〜12−9及び13の1以上から選択される1種以上の他の突然変異又は突然変異の組合せを含み、6個のCDRが抗体ベバシズマブ又は抗体ラニビズマブのCDR配列に比較して合計17カ所までのアミノ酸置換をもち、並びに前記VEGF抗体におけるCDR−H2が表12−1〜12−9に記載のCDR−H2配列から構成されない前記抗VEGF抗体又は抗体の抗VEGF結合フラグメント。
【請求項18】
配列番号3(CDR−H1)、配列番号4(CDR−H2)、配列番号5(CDR−H3)、配列番号6(CDR−L1)、配列番号7(CDR−L2)及び配列番号8(CDR−L3)に対応するアミノ酸配列をもつCDRを含む抗VEGF抗体又は抗体の抗VEGF結合フラグメントであって、CDR−H3がY98F及びY100eFから選択される少なくとも1カ所の置換、及び場合により表6、7、8、9、10、11、12−1〜12−9及び13の1以上から選択される1種以上の他の突然変異又は突然変異の組合せを含み、6個のCDRが抗体ベバシズマブ又は抗体ラニビズマブのCDR配列に比較して合計17カ所までのアミノ酸置換をもち、並びに前記VEGF抗体におけるCDR−H3が表12−1〜12−9に記載のCDR−H3配列から構成されない前記抗VEGF抗体又は抗体の抗VEGF結合フラグメント。
【請求項19】
配列番号3(CDR−H1)、配列番号4(CDR−H2)、配列番号5(CDR−H3)、配列番号6(CDR−L1)、配列番号7(CDR−L2)及び配列番号8(CDR−L3)に対応するアミノ酸配列をもつCDRを含む抗VEGF抗体又は抗体の抗VEGF結合フラグメントであって、重鎖CDRが、
(a)CDR−H1におけるN31Fと、CDR−H3におけるH97Dと、CDR−H3におけるY99Dと、CDR−H3におけるS100aG;
(b)CDR−H1におけるN31Fと、CDR−H3におけるH97Pと、CDR−H3におけるY99Dと、CDR−H3におけるS100aG;
(c)CDR−H1におけるN31Fと、CDR−H3におけるH97Pと、CDR−H3におけるY99E;
(d)CDR−H1におけるN31Fと、CDR−H3におけるH97Eと、CDR−H3におけるY99E;
(e)CDR−H1におけるN31Fと、CDR−H3におけるH97Dと、CDR−H3におけるY99E;
(f)CDR−H1におけるN31Fと、CDR−H3におけるH97Eと、CDR−H3におけるY99Dと、CDR−H3におけるS100aG;
(g)CDR−H1におけるN31Fと、CDR−H3におけるY99Dと、CDR−H3におけるS100aG;
(h)CDR−H1におけるN31Fと、CDR−H3におけるH97Pと、CDR−H3におけるY99D;
(i)CDR−H1におけるN31Fと、CDR−H3におけるH97Dと、CDR−H3におけるS100aG;
(j)CDR−H1におけるN31Fと、CDR−H3におけるS100aG;
(k)CDR−H1におけるN31Fと、CDR−H3におけるH97Pと、CDR−H3におけるS100aG
から選択される置換組合せを含み;
前記抗体又は結合フラグメントが場合により表6、7、8、9、10、11、12−1〜12−9及び13の1以上から選択される1種以上の他の突然変異又は突然変異の組合せを含み、6個のCDRが抗体ベバシズマブ又は抗体ラニビズマブのCDR配列に比較して合計17カ所までのアミノ酸置換をもつ前記抗VEGF抗体又は抗体の抗VEGF結合フラグメント。
【請求項20】
(a)から(k)から選択される置換組合せ以外に、重鎖CDRが抗体ベバシズマブの重鎖CDR配列又は抗体ラニビズマブの重鎖CDR配列に比較して他の突然変異を含まない請求項19の抗VEGF抗体又は抗VEGF結合フラグメント。
【請求項21】
6個のCDRが抗体ベバシズマブ又は抗体ラニビズマブのCDR配列に比較して合計16カ所まで、15カ所まで、14カ所まで、13カ所まで、12カ所まで、11カ所まで、10カ所まで、9カ所まで、8カ所まで、7カ所まで、6カ所まで、5カ所まで又は4カ所までのアミノ酸置換をもつ請求項1から19のいずれか一項の抗VEGF抗体又は抗VEGF結合フラグメント。
【請求項22】
任意の個別のCDRが抗体ベバシズマブ又は抗体ラニビズマブの対応するCDR配列に比較して3カ所以下のアミノ酸置換をもつ請求項1から21のいずれか一項の抗VEGF抗体又は抗VEGF結合フラグメント。
【請求項23】
任意の個別のCDRが抗体ベバシズマブ又は抗体ラニビズマブの対応するCDR配列に比較して2カ所以下のアミノ酸置換をもつ請求項1から21のいずれか一項の抗VEGF抗体又は抗VEGF結合フラグメントの抗VEGF抗体又は抗VEGF結合フラグメント。
【請求項24】
夫々モノクローナル抗体又はモノクローナル抗体の抗VEGF結合フラグメントである請求項1から23のいずれか一項の抗VEGF抗体又は抗VEGF結合フラグメント。
【請求項25】
夫々ヒトもしくはヒト化抗体、又はヒトもしくはヒト化抗体の抗VEGF結合フラグメントである請求項1から24のいずれか一項の抗VEGF抗体又は抗VEGF結合フラグメント。
【請求項26】
IgGである請求項1から25のいずれか一項の抗VEGF抗体又は抗VEGF結合フラグメント。
【請求項27】
IgGである請求項26の抗VEGF抗体又は抗VEGF結合フラグメント。
【請求項28】
IgGである請求項26の抗VEGF抗体又は抗VEGF結合フラグメント。
【請求項29】
ADCC活性を増加する1種以上の突然変異をFc領域に含む請求項1から28のいずれか一項の抗VEGF抗体又は抗VEGF結合フラグメント。
【請求項30】
フコシル化されていない請求項1から29のいずれか一項の抗VEGF抗体又は抗VEGF結合フラグメント。
【請求項31】
FcγRとの結合性を増加する1種以上の突然変異をFc領域に含む請求項1から30のいずれか一項の抗VEGF抗体又は抗VEGF結合フラグメント。
【請求項32】
FcRnとの結合性を増加する1種以上の突然変異をFc領域に含む請求項1から30のいずれか一項の抗VEGF抗体又は抗VEGF結合フラグメント。
【請求項33】
ADCC活性を低下させる1種以上の突然変異をFc領域に含む請求項1から27のいずれか一項の抗VEGF抗体又は抗VEGF結合フラグメント。
【請求項34】
前記1種以上の突然変異以外に、配列番号1に対応するV配列及び配列番号2に対応するV配列をもつ請求項1から34のいずれか一項の抗VEGF抗体又は抗VEGF結合フラグメント。
【請求項35】
前記1種以上の突然変異以外に、配列番号9に対応する重鎖配列及び配列番号10に対応する軽鎖配列をもつ請求項1から34のいずれか一項の抗VEGF抗体又は抗VEGF結合フラグメント。
【請求項36】
配列番号1に対応するV配列及び配列番号2に対応するV配列をもつ抗体の親和性の1.5から50倍の親和性をもつ請求項1から34のいずれか一項の抗VEGF抗体又は抗VEGF結合フラグメント。
【請求項37】
配列番号9に対応する重鎖配列及び配列番号10に対応する軽鎖配列をもつ抗体の親和性の1.5から50倍の親和性をもつ請求項1から34のいずれか一項の抗VEGF抗体又は抗VEGF結合フラグメント。
【請求項38】
配列番号1に対応するV配列及び配列番号2に対応するV配列をもつ抗体の親和性の2から30倍の親和性をもつ請求項36の抗VEGF抗体又は抗VEGF結合フラグメント。
【請求項39】
配列番号9に対応する重鎖配列及び配列番号10に対応する軽鎖配列をもつ抗体の親和性の2から30倍の親和性をもつ請求項37の抗VEGF抗体又は抗VEGF結合フラグメント。
【請求項40】
親和性がバイオセンサーにより分析されるKの測定である請求項36から39のいずれか一項の抗VEGF抗体又は抗VEGF結合フラグメント。
【請求項41】
精製されている請求項1から40のいずれか一項の抗VEGF抗体又は抗VEGF結合フラグメント。
【請求項42】
少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%又は少なくとも98%の均一性まで精製されている請求項41の抗VEGF抗体又は抗VEGF結合フラグメント。
【請求項43】
配列番号3(CDR−H1)、配列番号4(CDR−H2)、配列番号5(CDR−H3)、配列番号6(CDR−L1)、配列番号7(CDR−L2)及び配列番号8(CDR−L3)に対応するアミノ酸配列をもつ6個の相補性決定領域(「CDR」)を含む抗VEGF抗体又は抗体の抗VEGF結合フラグメントであって、重鎖がCDR−H2におけるA61F、CDR−H2におけるA61E、CDR−H2におけるA61D、CDR−H2におけるD62L、CDR−H2におけるD62G、CDR−H2におけるD62Q、CDR−H2におけるD62T、CDR−H2におけるD62K、CDR−H2におけるD62R、CDR−H2におけるD62E、CDR−H2におけるD62H、CDR−H2におけるK64S、CDR−H2におけるK64V、CDR−H2におけるK64Q、CDR−H2におけるR65V、CDR−H2におけるR65F、CDR−H2におけるR65H、CDR−H2におけるR65N、CDR−H2におけるR65S、CDR−H2におけるR65Q、CDR−H2におけるR65K、CDR−H2におけるR65I、及びCDR−H3におけるY98Hから選択される少なくとも1カ所の置換、及び場合により表7、8、9、10、11、12−1〜12−9及び13の1以上から選択される1種以上の他の突然変異又は突然変異の組合せを含み、6個のCDRが抗体ベバシズマブ又は抗体ラニビズマブのCDR配列に比較して合計17カ所までのアミノ酸置換をもつ前記抗VEGF抗体又は抗体の抗VEGF結合フラグメント。
【請求項44】
6個のCDRが抗体ベバシズマブ又は抗体ラニビズマブのCDR配列に比較して合計16カ所まで、15カ所まで、14カ所まで、13カ所まで、12カ所まで、11カ所まで、10カ所まで、9カ所まで、8カ所まで、7カ所まで、6カ所まで、5カ所まで又は4カ所までのアミノ酸置換をもつ請求項43の抗VEGF抗体又は抗VEGF結合フラグメント。
【請求項45】
任意の個別のCDRが抗体ベバシズマブの対応するCDR配列に比較して3カ所以下のアミノ酸置換をもつ請求項43又は44の抗VEGF抗体又は抗VEGF結合フラグメント。
【請求項46】
任意の個別のCDRが抗体ベバシズマブの対応するCDR配列に比較して2カ所以下のアミノ酸置換をもつ請求項43又は44の抗VEGF抗体又は抗VEGF結合フラグメント。
【請求項47】
夫々モノクローナル抗体又はモノクローナル抗体の抗VEGF結合フラグメントである請求項43から46のいずれか一項の抗VEGF抗体又は抗VEGF結合フラグメント。
【請求項48】
夫々ヒトもしくはヒト化抗体、又はヒトもしくはヒト化抗体の抗VEGF結合フラグメントである請求項43から47のいずれか一項の抗VEGF抗体又は抗VEGF結合フラグメント。
【請求項49】
IgGである請求項43から48のいずれか一項の抗VEGF抗体又は抗VEGF結合フラグメント。
【請求項50】
IgGである請求項49の抗VEGF抗体又は抗VEGF結合フラグメント。
【請求項51】
IgGである請求項49の抗VEGF抗体又は抗VEGF結合フラグメント。
【請求項52】
ADCC活性を増加する1種以上の突然変異をFc領域に含む請求項43から51のいずれか一項の抗VEGF抗体又は抗VEGF結合フラグメント。
【請求項53】
フコシル化されていない請求項43から52のいずれか一項の抗VEGF抗体又は抗VEGF結合フラグメント。
【請求項54】
FcγRとの結合性を増加する1種以上の突然変異をFc領域に含む請求項43から53のいずれか一項の抗VEGF抗体又は抗VEGF結合フラグメント。
【請求項55】
FcRnとの結合性を増加する1種以上の突然変異をFc領域に含む請求項43から53のいずれか一項の抗VEGF抗体又は抗VEGF結合フラグメント。
【請求項56】
ADCC活性を低下させる1種以上の突然変異をFc領域に含む請求項43から50のいずれか一項の抗VEGF抗体又は抗VEGF結合フラグメント。
【請求項57】
前記1種以上の突然変異以外に、配列番号1に対応するV配列及び配列番号2に対応するV配列をもつ請求項43から56のいずれか一項の抗VEGF抗体又は抗VEGF結合フラグメント。
【請求項58】
精製されている請求項43から57のいずれか一項の抗VEGF抗体又は抗VEGF結合フラグメント。
【請求項59】
少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%又は少なくとも98%の均一性まで精製されている請求項58の抗VEGF抗体又は抗VEGF結合フラグメント。
【請求項60】
請求項1から59のいずれか一項に記載の抗VEGF抗体又は抗VEGF結合フラグメントを含む抗体−薬剤コンジュゲート。
【請求項61】
請求項1から59のいずれか一項に記載の抗VEGF抗体もしくは抗VEGF結合フラグメント又は請求項60の抗体−薬剤コンジュゲート、及び医薬的に許容可能な担体を含有する医薬組成物。
【請求項62】
請求項1から36及び43から57のいずれか一項の抗VEGF抗体又は抗VEGF結合フラグメントをコードするヌクレオチド配列を含む核酸。
【請求項63】
請求項62の核酸を含むベクター。
【請求項64】
請求項63に記載のベクターで形質転換された原核宿主細胞。
【請求項65】
請求項63に記載のベクターで形質転換された真核宿主細胞。
【請求項66】
請求項62のヌクレオチド配列を発現するように遺伝子組換えされた真核宿主細胞。
【請求項67】
哺乳動物宿主細胞である請求項66の真核宿主細胞。
【請求項68】
(a)請求項66又は67の宿主核宿主細胞を培養すること、及び(b)抗VEGF抗体又は抗VEGF結合フラグメント抗体を回収することを含む抗VEGF抗体又は抗VEGF結合フラグメントの作製方法。
【請求項69】
癌の治療を必要とするヒト患者に治療有効量の請求項1から59のいずれか一項に記載の抗VEGF抗体もしくは抗VEGF結合フラグメント、請求項60の抗体−薬剤コンジュゲート又は請求項61に記載の医薬組成物を投与することを含む癌の治療方法。
【請求項70】
癌が転移性結腸癌、転移性直腸癌、非扁平上皮型非小細胞肺癌又は転移性HER2陰性乳癌である請求項69の方法。
【請求項71】
癌が切除不能、局所進行、再発性又は転移性の非扁平上皮型非小細胞肺癌である請求項70の方法。
【請求項72】
加齢黄斑変性の治療を必要とするヒト患者に治療有効量の請求項1から59のいずれか一項に記載の抗VEGF抗体もしくは抗VEGF結合フラグメント、請求項60の抗体−薬剤コンジュゲート又は請求項61に記載の医薬組成物を投与する段階を含む加齢黄斑変性の治療方法。
【請求項73】
免疫疾患の治療を必要とするヒト患者に治療有効量の請求項1から59のいずれか一項に記載の抗VEGF抗体もしくは抗VEGF結合フラグメント、請求項60の抗体−薬剤コンジュゲート又は請求項61に記載の医薬組成物を投与する段階を含む免疫疾患の治療方法。
【請求項74】
免疫疾患が関節リウマチ又はグレーブス病である請求項73の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12−1】
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【図12−2】
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【図12−3】
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【図12−4】
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【図12−5】
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【図12−6】
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【図12−7】
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【図12−8】
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【図12−9】
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【図13】
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【図14−1】
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【図14−2】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20−1】
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【図20−2】
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【図20−3】
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【図20−4】
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【図20−5】
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【図20−6】
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【図20−7】
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【図20−8】
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【図20−9】
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【図20−10】
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【図21A】
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【図21B】
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【図21C】
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【図21D】
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【図22】
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【図23】
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【図24A】
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【図24B】
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【図24C】
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【公表番号】特表2012−530496(P2012−530496A)
【公表日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−516307(P2012−516307)
【出願日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際出願番号】PCT/US2010/039029
【国際公開番号】WO2010/148223
【国際公開日】平成22年12月23日(2010.12.23)
【出願人】(509189086)アボット バイオセラピューティクス コーポレイション (11)
【Fターム(参考)】