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抗VRSA剤
説明

抗VRSA剤

【課題】 高い抗VRSA作用を有し、かつ人体への副作用の低い薬剤を提供すること。
【解決手段】 一般式:
[XY12−y40−z(Op− (I)、
[XY18−y62−z(Op− (II)、
[{XY12−y40−z−3(Op− (III)、
[{XY12−y40−z−2(Op− (IV)又は
[{XY12−y40−z−3(Op− (V)
で表されるヘテロポリ酸イオンの塩及びβ−ラクタム系抗生物質を有効成分とする抗VRSA剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、VRSA(vancomycin resistant Staphylococcus aureus:バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌)に対する優れた増殖抑制活性を有し、低毒性でかつβ−ラクタム系抗生物質との併用による相乗効果が見られる、新規なタングステン含有へテロポリ酸塩及び当該抗生物質を含む抗VRSA剤に関する。
【背景技術】
【0002】
黄色ブドウ球菌は、グラム陽性球菌に属し、化膿性疾患の主な原因菌である。ペニシリンとこれに続くペニシリンGの実用化によって感染症は一時克服されたが、ペニシリン分散酵素ペニシリナーゼを産生する耐性ブドウ球菌が出現した。1950年代に、テトラサイクリン、クロラムフェニコール等の新抗生物質が登場したが、数年のうちに多剤耐性菌が現われた。その後、1960年代に入り、ペニシリナーゼに安定なメチシリン、オキサシリン等の狭域半合成ペニシリンを経て、1970年代に第一世代セフェム系剤が開発され、優れた抗菌力が示された。しかしながら、数年後には新型のブドウ球菌であるMRSA(メシチリン耐性黄色ブドウ球菌)が出現した。1980年代には、ブドウ球菌に対して抗菌力の弱い第三世代セフェム系剤が細菌治療に広く使用されるに従い、MRSAの耐性力は一段と向上し、出現頻度が増大している。MRSAは病院で産生するため、院内感染が急激に発現する例が多く、抵抗力が著しく低下した患者や未熟児、免疫不全患者体の体内で増殖して重篤な感染症を引き起こす。
【0003】
MRSAは多剤耐性菌であるため、前記の抗生物質を使用しても特に深部感染では治癒が困難な場合が多い。また、患者の体力を考慮して投与量を制限すると、いずれの菌株においても耐性が生じて治癒の機会を逸すると言われている。そこで、MRSA感染症に対して有効な抗生物質の作用を亢進し、少量の抗生物質の投与でも十分な治療効果を挙げ得る併用薬剤が提案されている(例えば特許文献1、2参照)。すなわち、いわゆるケギン型又は欠損ケギン型のヘテロポリタングステン酸イオンと従来の抗生物質との併用である。当該併用薬剤は、前記抗生物質を単独で使用した場合に比べて、極めて高いMRSA増殖抑制効果を示す。これは、当該ヘテロポリタングステン酸イオンが、細胞壁を構成するグリコペプチドに作用するペニシリン結合蛋白質(PBP2’)の産生を抑制するためであると考えられている(例えば特許文献2参照)。
【0004】
その後、グリコペプチド系のバンコマイシンが、テイコプラニンやアルベカシンと共にMRSA治療の究極の薬剤として開発されたが、近年、バンコマイシン耐性のMRSA(VRSA)が出現した。このVRSAの耐性メカニズムは、VRSAが、バンコマイシン分子が容易に通過できないような分厚い細胞壁を合成することである考えられている。抗VRSA剤としては、無機化合物である銀イオン担持体(特許文献3)、グリコペプチド誘導体(特許文献4)、ヒノキチオールを含む抗菌剤(特許文献5)等が知られている。
【特許文献1】特開平8−73362号公報
【特許文献2】特開2004−339015号公報
【特許文献3】特開2004−244363号公報
【特許文献4】特開2001−163898号公報
【特許文献5】特開2001−131061号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、現在、VRSAに対して有効な薬剤は知られておらず、院内感染が世界的に深刻化している現状を踏まえると、早急に対策を講ずる必要性がある。この問題を解決するためには、新しい抗菌剤の開発は勿論のこと、現在臨床で使用されている抗生物質の抗菌作用を回復させる化合物の開発も重要である。
従って、本発明は、高い抗VRSA作用を有し、かつ人体への副作用の少ない薬剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、斯かる実状に鑑み、鋭意研究を行った結果、特定のヘテロポリ酸イオンの塩と現在臨床で用いられているβ−ラクタム系抗生物質とを併用することにより、その相乗効果によってVRSA増殖を効果的に抑制できることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明は、一般式:
[XY12−y40−z(Op− (I)、
[XY18−y62−z(Op− (II)、
[{XY12−y40−z−3(Op− (III)、
[{XY12−y40−z−2(Op− (IV)又は
[{XY12−y40−z−3(Op− (V)
[式中、Xは周期律表IIIB族、IVB族、VB族及びVIB族原子から選ばれる原子を示し;Yは周期律表のIVA族、VA族、VIA族、VIIA族、VIIIA族、IB族及びIIB族原子から選ばれる原子を示し;Wはタングステン原子を示し、W6+又はW5+であり;yは0〜6の整数を示し;zはyとは無関係に選ばれる0〜4の整数であり;そして、pは、酸素原子を−2の電荷、(O)を−2の電荷、X、Y、Wをそれぞれの陽イオンについてのプラス電荷とした場合の、陰イオンを構成する原子全てについて積算して得られる陰イオン値であり、0〜30の整数である。]
で表されるヘテロポリ酸イオンの塩及びβ−ラクタム系抗生物質を有効成分とする抗VRSA剤を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の抗VRSA剤により、VRSA増殖が効果的に抑制された。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
一般式(I)〜(V)で表されるヘテロポリ酸イオンは、バナジウム(V5+、V4+)、ニオブ(Nb5+)、モリブテン(Mo5+、Mo6+)、タングステン(W5+、W6+)、タンタル(Ta5+)等の遷移金属イオンに酸化物イオン(O2-)が通常4〜6配位してできる四面体、四角錐、八面体等の多面体を基本単位として、これが稜又は頂点を介して多数縮合してできた多核錯体であり、金属原子の種類、結合様式の相違により、多種多様の構造を示す。かかるポリ酸イオンの特徴として、(1)水及び極性溶媒に対し高い溶解度を示し、多くの配位水を有する場合が多い、(2)分子サイズ、構造、イオン電荷量、金属を分子レベルで制御することが容易である、(3)金属の一部を非常に多くの異種金属で置換することが可能である、(4)中性分子、イオンをゲストとするカプセル分子を形成しやすい、などの点が挙げられる。一般式(I)で表されるヘテロポリ酸イオンはいわゆるケギン型(Keggin-type)と言われるものであり、(II)で表されるヘテロポリ酸イオンはいわゆるドーソン型(Dawson-type)と言われるものである。
【0010】
一般式(I)及び(II)で表されるヘテロポリ酸イオンの塩は、例えば、P. J. Domaille and W. H. Knoth, Inorg. Chem., 22, 818 (1983) 等に記載の方法で製造することができる。当該ヘテロポリ酸イオンの塩としては、いずれの一般式においても、XがAl3+、B3+、Ga3+、Ga5+、C4+、Si4+、Ge4+、N5+、P3+、P5+、As5+、Sb3+、Sb5+、Bi3+、Bi5+、S6+、Se6+、Te6+、Sn4+、Pb4+、In3+及びTl3+から選ばれる原子であり、かつYがTi4+、V5+、V4+、Nb5+、Fe+、Fe2+、Ni2+、Cu2+、Co2+及びCo3+から選ばれる原子であるものが好ましい。
【0011】
ヘテロポリ酸イオンの塩を形成するアルカリイオンとしては、ナトリウム、カリウム、セシウム等のアルカリ金属イオン;カルシウム、ストロンチウム、リチウム、バリウム等のアルカリ土類金属イオン;メチルアンモニウム、エチルアンモニウム、ジメチルアンモニウム等のアルキルアンモニウムイオン;アニリニウム等の芳香族アンモニウムイオン;水素化金属イオンが挙げられる。当該ヘテロポリ酸塩は、50分子以内の結晶水を有していてもよい。一般式(I)〜(V)で表されるヘテロポリ酸イオンの塩は、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0012】
本発明で用いられるヘテロポリ酸イオンの塩の具体例としては、[PrNH]H[PTi1038(O]、K[P1862]、K[PTi1040]、K[SiMo1240]、K12[(VO)AsW33]、[PrNH][PTi1140]、[PrNH][PTi1040]、K[SiVW1140]、K[PVW1140]、K[BVW1140]が挙げられる。これらのうちで、K[P1862]、K[PTi1040]、K[SiMo1240]が好ましい。
【0013】
本発明で用いられるβ−ラクタム系抗生物質は、当業者に公知の物質であれば特に限定されない。β−ラクタム系抗生物質としては、ペニシリン系又はセフェム系抗生物質が好ましく、ペニリシン系抗生物質がより好ましい。ペニシリン系抗生物質としては、例えばアンピシリン、メチシリン、オキサシリン、ペニシリンG、ピペラシリン、セファゾリン、セフォチアム、セフメタゾール、フロモキセフ・ナトリウム、イミペネム等が挙げられ、オキサシリンが好ましい。
【0014】
後記実施例に示すように、一般式(I)〜(V)で表されるヘテロポリ酸イオンの塩は、公知のβ−ラクタム系抗生物質と併用することにより、抗VRSA作用を相乗的に亢進することができるが、本発明のVRSA剤における当該ヘテロポリ酸イオンの塩の含有量は、一般的に、β−ラクタム系抗生物質の含有量に対し、モル比で500:1〜0.01:1であり、特に200:1〜0.05:1が好ましい。すなわち、当該ヘテロポリ酸イオンの塩は、併用する抗生物質が極少量であっても、高いVRSA増殖抑制効果を挙げることができる。
【0015】
本発明のVRSA剤は、予防又は治療目的に応じて各種の投与形態を採用することができる。当該形態としては、例えば、経口剤、注射剤、坐剤、軟膏剤、貼付剤等が挙げられ、これらの製剤は、各々当業者に公知慣用の製剤方法により製造できる。
【0016】
経口用固形製剤を調製する場合は、一般式(I)〜(V)で表されるヘテロポリ酸イオンの塩に賦形剤、必要に応じて結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、矯味・矯臭剤等の添加剤を加えた後、常法により錠剤、被覆錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤等を製造することができる。そのような添加剤としては、当該分野で一般的に使用されるものであればよい。
【0017】
例えば、賦形剤としては、乳糖、白糖、塩化ナトリウム、ブドウ糖、デンプン、炭酸カルシウム、カオリン、微結晶セルロース、珪酸等が挙げられる。結合剤としては、水、エタノール、プロパノール、単シロップ、ブドウ糖液、デンプン液、ゼラチン液、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルスターチ、メチルセルロース、エチルセルロース、シェラック、リン酸カルシウム、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。崩壊剤としては、乾燥デンプン、アルギン酸ナトリウム、カンテン末、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリド、乳糖等が挙げられる。滑沢剤としては、精製タルク、ステアリン酸塩、ホウ砂、ポリエチレングリコール等が挙げられる。着色剤としては、酸化チタン、酸化鉄等を、矯味・矯臭剤としては白糖、橙皮、クエン酸、酒石酸等が挙げられる。
【0018】
経口用液体製剤を調製する場合は、本発明のヘテロポリ酸イオンの塩に矯味剤、緩衝剤、安定化剤、矯臭剤等を添加し、常法により内服液剤、シロップ剤、エリキシル剤等を製造することができる。矯味・矯臭剤としては、上記に挙げたものを用いることができる。緩衝剤としては、クエン酸ナトリウム等、安定剤としては、トラガント、アラビアゴム、ゼラチン等が挙げられる。
【0019】
注射剤を調製する場合は、本発明のヘテロポリ酸イオンの塩にpH調節剤、緩衝剤、安定化剤、等張化剤、局所麻酔剤等を添加し、常法により皮下、筋肉内又は静脈内用注射剤を製造することができる。この場合のpH調節剤及び緩衝剤としては、それぞれ、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、リン酸ナトリウム等が挙げられる。安定化剤としては、ピロ亜硫酸ナトリウム、EDTA、チオグリコール酸、チオ乳酸等が挙げられる。局所麻酔剤としては、塩酸プロカイン、塩酸リドカイン等が挙げられる。等張化剤としては、塩化ナトリウム、ブドウ糖等が挙げられる。
【0020】
坐剤を調製する場合は、本発明のヘテロポリ酸イオンの塩に当業者において公知の製剤用担体、例えば、ポリエチレングリコール、ラノリン、カカオ脂、脂肪酸トリグリセリド等を、必要に応じてツイーン(登録商標)等の界面活性剤などを加えた後、常法により製造することができる。
【0021】
軟膏剤を調製する場合は、本発明のヘテロポリ酸イオンの塩に通常使用される基剤、安定剤、湿潤剤、保存剤等を必要に応じて配合でき、常法により混合、製剤化される。基剤としては、流動パラフィン、白色ワセリン、サラシミツロウ、オクチルドデシルアルコール、パラフィン等が挙げられる。保存剤としては、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル等が挙げられる。
【0022】
貼付剤を調製する場合は、支持体に前記軟膏、クリーム、ゲル、ペースト等を常法により塗布すればよい。支持体としては、綿、スフ、化学繊維からなる織布、不織布、軟質塩化ビニル、ポリエチレン、ポリウレタン等のフィルム又は発泡体シートが好ましい。
【0023】
上記の各投与単位形態中に配合されるべき本発明のヘテロポリ酸イオンの塩は、患者の症状、その剤形等により一定ではないが、一般に投与単位形態あたり、経口剤では約1〜1000mg、注射剤では約0.1〜500mg、坐剤では約5〜1000mgとするのが望ましい。また、上記投与形態を有する薬剤の1日あたりの投与量は、患者の症状、体重、年齢、性別等によって異なるが、通常成人1日当たり約0.1〜5000mg、好ましくは1〜1000mgとすればよく、これを1日1回又は2〜4回程度に分けて投与するのが好ましい。
【実施例】
【0024】
次に実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
【0025】
<材料>
(1)ヘテロポリ酸イオン塩の合成
(i)K[PTi1040]・6HO(以下「PTiW10」と称する)及びK[P1862]・14HO(以下、「P18」と称する)を文献(例えば、P. J. Domaille and W. H. Knoth, Inorg. Chem., 22, 818 (1983))記載の方法に準じて製造した。
(ii)K[SiMo1240]・3HO(以下「SiMo12」と称する)は、濃H[SiMo1240](関東化学社製)水溶液にKClを加え、再結晶によって調製した。
(iii)K23[(GeTi37]・39HO(以下「GeTi12」と称する)は、文献(G. Herve and A. Teze, Inorg. Chem., 16, 2115 (1976))記載の方法により合成したNa8.51.5[GeW34]・20HO(A)により合成した。すなわち、(A)30gを100mlの水に溶解し、TiCl 2.4mlを加え、1時間室温で攪拌した後、30分間リフラックスした。室温まで冷却後、KCl 15gを加え、粗結晶を得た。再結晶は水から行った。
(iv)K[(GeTi37]・16HOは、上記(A)45gを150mlの水に溶解し、TiCl 4mlを加え、30分間リフラックスした。室温まで冷却後、濾過し、濾液にKCl 15gを加え、粗結晶を得た。再結晶は水から行った。
(v)K9.52.5[(GeTi1038]・29HOは、上記(A)30gを100mlの水に溶解し、TiCl 2mlを加え、上記に準じて合成した。
(vi)これらの結晶の同定は、単結晶X線構造解析、赤外吸収スペクトル、元素分析及びサイクリックボルタモグラムにより行った。
(2)オキサシリン及びバンコマイシンは、それぞれ、和光純薬工業社及びシグマ・アルドリッチ社より購入した。
(3)菌株
VRSA株(Mu3及びMu50)はAmerican Type Culture Collection(Manassas,VA)より入手した。実験に用いた全ての菌株は10%グリセリン含有ミューラーヒントン(MH)培養液(Becton Dickson, Sparks, MD, USA)中で、使用直前まで−80℃で冷凍保存した。表1に、菌株のオキサシリン及びバンコマイシンに対する最小阻止濃度(MIC)(μg/ml)を示す。
【0026】
【表1】

【0027】
実施例1 ヘテロポリ酸イオン塩のMIC値及びMBC値の決定
MIC値及びMBC値は、National Committee for Clinical Laboratory Standards(NCCLS)のガイドラインに従い、MH培養液を用いる微培養液希釈法を用いて決定した。すなわち、菌株の5μL(10コロニー形成単位(cfu)/ml)を、2倍希釈濃度で50〜25600μMの範囲でヘテロポリ酸イオン塩(PTiW10、P18及びSiMo12)を含むMH培養液(95μL)に添加した。菌懸濁液を振とうすることなく、37℃で24時間インキュベートした。インキュベート後、菌増殖が認められないヘテロポリ酸イオン塩の濃度を「MIC値」をとした。また、MBC値を測定するために、菌増殖のないインキュベート懸濁液のアリコート(20μL)をMHアガープレート上に供給し、次いで37℃で24時間インキュベートした。コロニーがインキュベーション後のプレート上で観察されない最小ヘテロポリ酸イオン塩の濃度を最小殺菌濃度(「MBC値」)(μM)とした。結果を表2及び表3の一部に示す。
【0028】
【表2】

【0029】
実施例2 ヘテロポリ酸イオン塩とオキサシリンとの併用によるVRSA増殖抑制の相乗効果
VRSA株(Mu3及びMu50)(10cfu/ml)を、上記濃度でヘテロポリ酸イオン塩を含むMHアガー培養液上に綿棒で供給した。オキサシリン接種ディスク(オキサシリン 1μg/ディスク,日水製薬社製)をMHアガー培養液上に置いた後、37℃で24時間インキュベートした。オキサシリンに対する菌株の感受性は、製造者のガイドラインに従って、ディスク中の発育阻止円を観察することによって測定した。結果を表3及び図1に示す。図1には、それぞれ、50μM(図1(a))、100μM(図1(b))及び500μM(図1(c))のPTi10で処理したMu50接種オキサシリンディスクの発育阻止円を示す。発育阻止円が直径で13mm以上であれば(図1(c))、菌株はオキサシリン感受性と判断した。一方、全く発育阻止円がディスク中に存在しなければ(図1(a))、ホモ抵抗性株、発育阻止円がいくつかのコロニーを含んでいる場合には(図1(b))、ヘテロ抵抗性株と判断した。
【0030】
【表3】

【0031】
図1及び表3から明らかなように、Mu50株では、MIC値未満の濃度のヘテロポリ酸イオン塩をオキサシリンと併用すると、全てのヘテロポリ酸イオン塩について発育阻止円が認められ、またMu3株では、MIC値未満の濃度のSiMo12をオキサシリンと併用した場合に発育阻止円が認められた。従って、本発明の抗VRSA剤は特にMu50株の増殖を効果的に抑制できることが判明した。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】図1は、(a)50、(b)100及び(c)500μMの濃度のPTi10で処理したMu50接種オキサシリンディスク周囲の発育阻止円を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式:
[XY12−y40−z(Op− (I)、
[XY18−y62−z(Op− (II)、
[{XY12−y40−z−3(Op− (III)、
[{XY12−y40−z−2(Op− (IV)又は
[{XY12−y40−z−3(Op− (V)
[式中、Xは周期律表IIIB族、IVB族、VB族及びVIB族原子から選ばれる原子を示し;Yは周期律表のIVA族、VA族、VIA族、VIIA族、VIIIA族、IB族及びIIB族原子から選ばれる原子を示し;Wはタングステン原子を示し、W6+又はW5+であり;yは0〜6の整数を示し;zはyとは無関係に選ばれる0〜4の整数であり;そして、pは、酸素原子を−2の電荷、(O)を−2の電荷、X、Y、Wをそれぞれの陽イオンについてのプラス電荷とした場合の、陰イオンを構成する原子全てについて積算して得られる陰イオン値であり、0〜30の整数である。]
で表されるヘテロポリ酸イオンの塩及びβ−ラクタム系抗生物質を有効成分とする抗VRSA剤。
【請求項2】
前記Xが、Al3+、B3+、Ga3+、Ga5+、C4+、Si4+、Ge4+、N5+、P3+、P5+、As5+、Sb3+、Sb5+、Bi3+、Bi5+、S6+、Se6+、Te6+、Sn4+、Pb4+、In3+及びTl3+から選ばれ、かつYがTi4+、V5+、V4+、Nb5+、Fe3+、Fe2+、Ni2+、Cu2+、Co2+及びCo3+から選ばれる、請求項1記載の抗VRSA剤。
【請求項3】
前記ヘテロポリ酸イオンの塩が、K[P1862]、K[PTi1040]及びK[SiMo1240]から選ばれる、請求項1又は2記載の抗VRSA剤。
【請求項4】
前記β−ラクタム系抗生物質がペニシリン系抗生物質である、請求項1〜3のいずれか1項記載の抗VRSA剤。
【請求項5】
前記ペニシリン系抗生物質がオキサシリンである、請求項4記載の抗VRSA剤。
【請求項6】
前記へテロポリ酸イオンの塩と前記β−ラクタム系抗生物質とのモル比が500:1〜0.01:1である、請求項1〜5のいずれか1項記載の抗VRSA剤。

【図1】
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【公開番号】特開2006−273837(P2006−273837A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−205986(P2005−205986)
【出願日】平成17年7月14日(2005.7.14)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【Fターム(参考)】