説明

折りたたみ式静的コーン貫入試験装置

【課題】人力による持ち運びが容易で搬入用の車両が進入できない場所にも搬入可能であり、更には測定精度が低下しない折りたたみ式静的コーン貫入試験装置の提供。
【解決手段】先端がコーン状に尖ったコーンロッド10を地中に貫入して地盤の固さを計測する静的コーン貫入試験装置1において、コーンロッド10を電動後部取付部5に取り付けた携帯式の電動工具で上下動させるギヤボックス4を備えた貫入試験機本体2と、背面部材13の左右両側に一対の回動自在な側面部材(14,15)を備え、一定の角度を保持した背面部材13と一対の側面部材(14,15)の上部に、着脱自在な天板12を固定した折り畳み自在の載荷枠3を備え、地盤の計測時には、貫入試験機本体2を天板12によって載荷枠3に取り付けて地盤に設置し、運搬時には、載荷枠3を折り畳むように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、ロッドの先端に設けた円錐形状のコーンを地中に貫入した際の貫入抵抗を測定することによって地盤を調査するための装置であって、持ち運びが容易で測定精度の高い、折りたたみ式静的コーン貫入試験装置に関する技術である。
【背景技術】
【0002】
静的コーン貫入試験は、先端に円錐形状のコーンを設けたコーンロッドを毎秒1〜2cm程度の一定速度で静的に地中に押し込み、コーンに発生する貫入抵抗から地盤の固さを測定する地盤調査のための試験である。従来の静的コーン貫入試験装置には、下記特許文献1の装置があり、アンカーで地表に固定した基台に取り付けた専用の貫入機によってコーンを貫入していた。
【0003】
一方、地盤調査をより簡便に行う試験には、下記非特許文献1のインターネットホームページに示すポータブルコーン貫入試験装置がある。この試験装置は、高さ1m程度の小型の装置であって、圧入ハンドルによって装置上方から体重をかけ、人力でコーンロッドを毎秒1cm程度で静的に貫入することによって地盤の固さを測定する。
【0004】
【特許文献1】特開2001―241030号公報
【非特許文献1】http://www.tokyosoil.co.jp/pdf/b-03.pdf
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の静的コーン貫入試験装置では、専用の貫入機、その周辺機器及び地表に固定する基台等が必要であって、試験装置を全体として大がかりなものとしていた。従って、試験装置自体が大きなものである場合や試験装置全体の総重量が重くなった場合には、運搬に自動車等の車両を使用しなければならなかったため、人力での持ち運びが容易とは言えなかった。
【0006】
しかし、地盤調査は、土砂崩落災害現場や山奥等、運搬用の車両を調査現場まで進入させることが困難な場所でも行われるため、その際には、試験装置を人力で調査現場に搬入する必要がある。従って、人力による持ち運びが困難である貫入試験装置は、車両や運搬器具が進入できない現場の地盤調査において大きなネックとなるため、運搬の容易な試験装置が求められている。
【0007】
一方、非特許文献1のポータブルコーン貫入試験装置は、装置の規模が小さくサイズ的にコンパクトであるため、人力による持ち運びが容易であり、車両や「よる運搬が困難な現場へ持ち込んで地盤調査を行うことが可能である。しかし、このポータブルコーン貫入試験装置は、試験者が装置上方から体重をかけることによってコーンを貫入するため、貫入機を使用した場合よりも貫入力が弱く、固い地盤を調査できないという問題がある。また、人力で貫入した場合には、コーンを一定の貫入速度で押し込むことが難しく、更には装置が固定されていないために貫入方向がブレるおそれもある。従って、ポータブルコーン貫入試験装置は、測定精度が落ちるおそれがある点で問題がある。
【0008】
本願発明は、上記問題を解決するものであり、人力による持ち運びが容易であるため、運搬用の車両が進入出来ないような場所にも搬入して地盤の計測を行うことが可能であり、測定精度低下のおそれもない折りたたみ式静的コーン貫入試験装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の折りたたみ式静的コーン貫入試験装置は、先端がコーン状に尖ったコーンロッドを地中に貫入し、貫入抵抗の計測値から地盤の固さを計測する静的コーン貫入試験装置において、携帯式の電動工具を着脱する電動工具取付部と、前記取付部に取り付けた電動工具の駆動に応じて前記コーンロッドを上下動させるギヤボックスを備えた貫入試験機本体と、背面部材の左右両側に一対の回動自在な側面部材を備え、一定の角度を保持した前記背面部材と一対の側面部材の上部に、着脱自在な天板を固定することによって完成する折り畳み自在の載荷枠を備え、前記貫入試験機本体が、前記天板によって載荷枠に着脱されるようにした。
【0010】
(作用)本願の折りたたみ式静的コーン貫入試験装置は、試験装置の運搬時に貫入試験機本体を取り付けた天板を両側面部材と背面部材の上部から取り外し、両側面部材を折り畳むことによって、載荷枠をコンパクトに折り畳んだ状態で運搬することができる。一方、地盤の測定時には、載荷枠の両側面部材を背面部材に対して回動させて開き、その状態で両側側面部材と背面部材の上部に貫入試験機本体を取り付けた天板を固定することにより、本願の静的コーン貫入試験装置が完成する。貫入試験機本体は、組みたてた載荷枠を介して地盤に設置するため、コーンの貫入方向が一定化し、携帯式の電動工具を取り付けてコーンを貫入するため、コーンの貫入速度が一定化し、コーンの貫入方向と貫入速度のブレが減少する。また、本願試験装置は、電動工具により硬い地盤にコーンを貫入することが出来る。
【0011】
また、請求項2は、請求項1記載の折りたたみ式静的コーン貫入試験装置における、前記一対の側面部材は、それぞれの下端に回動自在に取り付けられ、前記側面部材に対して一定の角度を保持した状態で固定できる折り畳み式の底面部材を備えている。
【0012】
(作用)本願の静的コーン貫入試験装置は、折りたたみ式の側面部材に更に設けられた折りたたみ式の底面部材を各側面部材に対して回動させて開き、開いた状態で固定することにより、地盤に対する載荷枠の設置面積が増加し、前記貫入試験装置を更に安定した状態で地盤に設置出来るため、コーンの貫入方向と貫入速度のブレが更に軽減して測定精度が一層高くなる。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の折りたたみ式静的コーン貫入試験装置によれば、装置の運搬時に載荷枠がコンパクトに折り畳めることや貫入機として軽量で着脱可能な携帯式の電動工具を使用することから、試験装置を人力で容易に持ち運ぶことが出来る。即ち運搬用の車両が進入できないため、従来の静的コーン貫入試験装置が搬入出来ない地形においても地盤の測定を行うことが出来る。地盤の測定精度は、コーンの貫入方向と貫入速度がブレ無いため、従来のポータブルコーン貫入試験装置よりも測定精度が高くなる。また、電動工具のトルク次第で手動でコーンを貫入出来ないような固い地盤の測定が可能になる。
【0014】
請求項2の折りたたみ式静的コーン貫入試験装置によれば、持ち運びの容易性を損なうことなく地盤の測定精度を更に向上させることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、本発明の好適な実施形態を、以下の実施例に基づいて説明する。
【0016】
図1〜図5は、本発明の実施例を示すもので、図1は、本実施例の折りたたみ式静的コーン貫入試験装置の全体を表す斜視図、図2は、本実施例に係る載荷枠の枠体を表す斜視図、図3〜図5は、枠体の折り畳み手順を説明するための斜視図であって、図3は、左右梁を取り除いた枠体の斜視図、図4は、左右底面部材折りたたんだ枠体の斜視図、図5は、左右側面部材を折り畳んだ斜視図である。
【0017】
まず図1を中心に本実施例の全体構成を説明する。本実施例の折りたたみ式静的コーン貫入試験装置1は、貫入試験機本体2とこれを計測する地盤に固定する載荷枠3から構成される。
【0018】
貫入試験機本体2は、ギヤボックス4,台形ねじ部材(図示せず)、ジョイント(7、8)、ロードセル収納部9、コーンロッド10、台形ねじ部材のカバー11から構成されている。また、載荷枠3は、貫入試験機本体2を取り付ける天板12と、背面部材13,左側面部材14、右側面部材15、左梁(16、18)、右梁(17,19)、左底面部材20及び右底面部材21から構成される枠体22によって構成される。
【0019】
まず、図1により貫入試験機本体2を説明する。ギヤボックス4は、天板12に対してねじ4aにより4カ所でネジ止めされており、細筒状の電動工具のチャックを取り付けるチャック取付部5aを先端に設けた電動工具取付部5を水平方向に突出させている。電動工具取付部5のチャック取付部5aは、市販の携帯型電動ドリル、電動ドライバなどのチャックを取り付けることが可能な外径に形成する。
【0020】
また、ギヤボックス4の上面には、背面部材13の高さとほぼ同等の長さに形成され、初期位置(最上位位置)においてそのねじ山をカバー11によって覆った台形ねじ部材(図示せず)が、上方に向けて突出すると共に天板12の下面に向けて貫通している。電動工具取付部5は、ギヤボックス4内部の図示しないウォームギヤ機構を介して前記台形ねじ部材に接続され、ウォームギヤ機構は、取付部5aに取り付けた電動工具の回動運動を台形ねじ部材の往復直線運動に変換し、台形ねじ部材が、ギヤボックス4の上下面及び載荷枠の天板12を貫通した状態で上下動する。尚、前記台形ねじ部材の長さと背面部材の高さは、人力による持ち運びを考慮して、人が背負い易いように約60cmから1m程度の長さに形成することが望ましいと考えられる。
【0021】
また、上下動する台形ねじ部材(図示せず)の下端には、ジョイント7を取り付け、更にジョイント7を介して内部にロードセル機構を収納するロードセル収納部9を取り付け、ロードセル収納部9の下端には、ジョイント8を介して先端に尖った形状のコーン10aを設けたコーンロッド10を取り付ける。コーンロッド10の長さは、台形ねじ部材が初期位置(最上位位置)に有る状態でジョイント8にコーンロッド10を接続した際に、コーン10aの先端が、背面部材13の底面より微少距離高い位置にくる長さに形成する。コーンロッド10は、運搬時にコンパクトなサイズに分割出来るように構成すれば、人力による持ち運びが一層容易になる。
【0022】
ロードセル収納部9は、以下図示しないが、ひずみゲージを含む内部のロードセル機構が、外部に向けて引き延ばされたケーブルによって、貫入試験装置1の外部に設置した地盤のひずみの計測装置と接続される。図示しない計測装置は、CPU、電源、AD変換機等を含み、前記ひずみゲージにより地盤のひずみを電気信号として検出することにより、地盤の固さを計測する。
【0023】
貫入試験機本体2を取り付けた天板12は、図2に示す組み立てた状態の枠体22の上部に形成した4カ所の雌ねじ穴(14a,14b,15a,15b)に対し、雄ねじ12aによってねじ止めされる。
【0024】
次に載荷枠3について説明する。枠体22は、図2に示すとおり左右側面部材(14,15)が、背面部材13の左右両端において上下一対ずつ設けられた回動軸(13a〜13d)に取り付けられることで、背面部材13に向けて折り畳み自在に構成されており、更に、左右底面部材(20,21)が、左右側面部材(14,15)の下部において設けられた二対の回動軸(14c,14d,15c,15d)に取り付けられることにより、左右側面部材(14,15)に向けて折り畳み自在に構成されている。
【0025】
また、左右底面部材(20,21)の自由端側(回動軸の反対側)の両側面、左右側面部材(14,15)の自由端側の中央側面及び背面部材13の中央後面には、それぞれ雌ねじ孔(20a,20b,21a,21b,14e,15e,13e、13f)が形成され、左梁(16、18)及び右梁(17,19)が、雄ねじ23により8カ所でネジ止めされる。
【0026】
枠体22は、左右側面部材(14,15)を背面部材13に対して直角をなすように回動させ、左右底面部材(20,21)を左右側面部材(14,15)に対してそれぞれ一定の角度(本実施例では90度)をなすように回動させた状態で、左右梁(16〜19)を前後に一対ずつ取り付けることによって各部材が固定される。本実施例の折りたたみ式静的コーン貫入試験装置1は、貫入試験機本体2を取り付けた天板12が、組み立てた枠体22の上部にねじ止め固定されることによって完成する。尚、試験装置1を地盤に設置する際には、コーンロッド10が地面に対して垂直になるように試験装置1を地盤上に配置し、コーン10aの埋設時における装置1の転倒を防止するため、アンカー等によって枠体22を地面に固定することが望ましい。
【0027】
次に、本実施例の静的コーン貫入試験装置1の動作について説明する。コーンロッド10は、電動工具取付部5に取り付けた図示しない携帯式電動工具を正回転させることで台形ねじ部材によって下降し、先端のコーン10aが地中に貫入される。また、電動工具を逆回転させるとコーンロッド10が上昇して地中から引き抜かれる。コーン10aを地中に貫入した際の貫入抵抗は、ロードセル収納部9の内部のロードセル機構によって電気抵抗として検知され、前記ロードセル機構に接続された図示しない計測装置によって地盤のひずみとして計測することにより、地盤の固さや性質等を計測することが出来る。
【0028】
尚、本実施例の静的コーン貫入試験装置1は、コーンロッド10をジョイント8との接続位置近くまで埋設した後、埋設したコーンロッド10から一旦ジョイント8を切り離し、電動工具を逆回転させて上昇させ、ジョイント8とコーンロッド10との間に生じた隙間に中継ぎ棒(図示せず)を継ぎ足して再び電動工具を正回転させることにより、継ぎ足した中継ぎ棒の長さの分だけコーン10aをより更に深い位置へ貫入して地盤の計測をすることが出来る。
【0029】
図1から図5により、本実施例の静的コーン貫入試験装置1を折りたたむ方法について説明する。まず、貫入試験機本体2を分解する。コーンロッド10を取り付けた台形ねじ部材は、電動工具により、ねじ部分が全てカバー11内に収納されるように最上位まで上げ、携帯式電動工具を取付部5aから取り外す。その後、4カ所のねじ12aを取り外し、貫入試験機本体2が取り付けられた天板12を枠体22から取り外す。貫入試験機本体2は、コーンロッド10をジョイント8から取り外すか、ロードセル収納部からコーンロッド10にかけてジョイント7から取り外して全長を短くし、必要に応じてギヤボックス4を天板12から取り外す。コーンロッド10は、分割可能に形成してあれば分割する。このことで、貫入試験機本体2がコンパクトになる。
【0030】
次に、天板12を除く載荷枠3の枠体22を折り畳む。まず、図2における8カ所の雄ねじ23を緩め、左右梁(16〜19)を取り外すことにより、左右底面部材(20,21)と左右側面部材(14,15)を回動可能な状態にする(図3を参照)。そして、左右底面部材(20,21)を上方に向けて回動軸(14c,14d,15c,15d)周りに折り畳むことによって図4に示す状態とし、その状態のまま、左右側面部材(14,15)を回動軸(13a〜13d)周りに折り畳むことによって図5に示す状態とする。枠体22は、コンパクトな平板状となって持ち運びがしやすくなる。尚、枠体22を折り畳んだ際の横幅(背面部材13の幅)は、人が背負うことを考慮した場合、例えば人の肩幅程度(30〜50cm程度)とすることが望ましいと考えられる。
【0031】
本実施例の折りたたみ式静的コーン貫入試験装置は、以上の点から載荷枠3により貫入試験機本体2が地盤に確実に設置され、コーンロッド10が、地盤に対して垂直に貫入されると共に、図示しない携帯式電動工具により一定の早さで貫入されることにより計測精度が低下することなく保持されている。また、持ち運びの際には、携帯式電動工具、貫入試験機本体2及び載荷枠3に分離でき、更に、貫入試験機本体2をコンパクトに分割し、載荷枠3をコンパクトに折り畳むことが出来るため、人力による運搬が容易になっている。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本実施例の折りたたみ式静的コーン貫入試験装置の全体を表す斜視図である。
【図2】本実施例に係る載荷枠の枠体を表す斜視図である。
【図3】左右梁を取り除いた枠体の斜視図である。
【図4】左右底面部材を折りたたんだ枠体の斜視図である。
【図5】左右側面部材を折り畳んだ斜視図である。
【符号の説明】
【0033】
1 折りたたみ式静的コーン貫入試験装置
2 貫入試験機本体
3 載荷枠
4 ギヤボックス
5 電動工具取付部
12 天板
13 背面部材
14 左側面部材
15 右側面部材
20 左底面部材
21 右底面部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端がコーン状に尖ったコーンロッドを地中に貫入し、貫入抵抗の計測値から地盤の固さを計測する静的コーン貫入試験装置において、
携帯式の電動工具を着脱する電動工具取付部と、前記取付部に取り付けた電動工具の駆動に応じて前記コーンロッドを上下動させるギヤボックスを備えた貫入試験機本体と、
背面部材の左右両側に一対の回動自在な側面部材を備え、一定の角度を保持した前記背面部材と一対の側面部材の上部に、着脱自在な天板を固定することによって完成する折り畳み自在の載荷枠を備え、
前記貫入試験機本体が、前記天板によって載荷枠に着脱されることを特徴とする折りたたみ式静的コーン貫入試験装置。
【請求項2】
前記一対の側面部材は、それぞれの下端に回動自在に取り付けられ、前記側面部材に対して一定の角度を保持した状態で固定できる折り畳み式の底面部材を備えたことを特徴とする請求項1記載の折りたたみ式静的コーン貫入試験装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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