説明

折り畳みパックシート配列体及びパックシート包装体

【課題】使用に際して摘みやすくしたパックシートを提供すること。
【解決手段】パックシートを収納するに際し、折り畳みパックシートの端部の摘み部を、隣接する別の折り畳みパックシートの中に挿入してなる折り畳みパックシート配列体とすることにより、該摘み部を摘んでパックシートを1つずつ取り出すことができ、かつ次に取り出すパックシートの摘み部が立ち上がって摘みやすくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、美容液・化粧水等の化粧成分を含浸させたパックシートを包装体から取出しやすいようにした折り畳みパックシート配列体と、その折り畳みパックシート配列体をトレーに収納しさらに包装してなるパックシート包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
パックシートは、美容液・化粧水等の化粧成分を含浸させたシートを専ら目元、目尻、鼻部、口元のようなポイント部や、顔の下半部、上半部、あるいは顔全体に密着状態となるように貼り付けることで、顔の一部や顔全体の美容効果を得るものであり、顔の一部をケアするためのパックシートの包装体は、以下に示す特許文献が知られている。
【0003】
従来の顔の一部を覆うためのパックシートは、パック用化粧液の吸収含浸後においては、パックシート相互の間で、そして、パックシートとその包装容器や包装袋との間で付着が生じ易いために、一枚ずつの取出が困難であった。さらに、パックシートそれ自体の密着性のために二つ折り状態での収納は不可能なことであるという問題を解決するために、パック化粧液を吸収含浸せしめた非可撓性シート両面に、丸味を呈した二つ折り屈曲部形成用可撓性合成樹脂フィルムを積層せしめ、当該屈曲部を上部にして容器に収納して取出性を向上する二つ折り収納用パックシート体が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
そして、上記問題を解決するために複数枚の不織布の積層体が折り畳まれてなる基材に、化粧水が不織布基材の質量に対して4〜11倍含浸され、該積層体を折り畳んだ折り目を外側にしてポリプロピレン製の容器に配列収納し、該折り目部を摘んで取り出すことにした化粧水シート積層包装体が提案されている。上記化粧水シートは化粧水含浸シートとしてパッティングに使用した後、該化粧水含浸シートを構成する複数枚の不織布を剥離して、部分的パックに使用することができ、使用性に優れるものである(特許文献2参照)。
【0005】
次に、顔全体のパックシートの背景技術を述べる。顔全体のパックシートは不織布、紙等の吸水性の高いシート体を素材とし、これに化粧液を含浸させたものである。パックシートを顔に当てたときに、顔面に対するパックシートの密着性を良くするために、パックシートの目、鼻に対応する部分に切り込みを形成すると共に、外周部分に周方向に所定の間隔をおいて複数本の切り込みを放射状に形成し、更に口に対応する部分に開口が形成されたものが用いられている。そしてそのパックシートを包装袋に1枚のパックシートを折り畳んで収納するパックシート包装体を形成する、又は、包装袋とパックシートを一緒に折り畳んでパックシート包装体を形成する以下に示す特許文献が知られている。
【0006】
包装袋に1枚のパックシートを折り畳んで収納するパックシート包装体を形成する折り畳み構造として、使用時の展開性を意図したフェイスパックマスク(パックシートに相当)が知られている。従来のパックシートの折り畳み構造は、3枚重ねで逆Z字状に折り畳まれた状態で包装袋に収納されており、使用時に包装袋から取り出してフェイスパックマスクに備えられた摘みを左右方向に引っ張って横方向に展開するとき、その引っ張りに対する抵抗が強く、強く引っ張り過ぎると、目、鼻、口などの開口域、切り込み部などから簡単に破れることもあって、展開操作が非常に困難である。上記フェイスパックマスクの折り畳み構造としては、フェイスパックマスクの左領域が、縦の折り曲げ線で、中央領域の左半分の上面に内折りをした後に外折りをして折り畳み、右領域が、縦の折り曲げ線で、中央領域の右半分の上面に内折りをした後に外折りをして折り畳み、外折りの左端部と右端部を内折りの外縁部よりも左右方向にそれぞれ突出させると共に、この折り畳み後に、横の折り曲げ線で、2つ重ねて折り畳む構造を備えることで、上記問題を解決したフェイスパックマスクの折り畳み構造が提案されている。前記フェイスパックマスクは、その外周縁よりも突出した左右端部が摘みとして形成されており、その左右端部を左右方向に軽く引っ張るだけで、展開操作を容易に行えることが説明されている(特許文献3参照)。
【0007】
また、他の展開操作が容易に行えるフェイスマスクとして、フェイスマスクの耳周縁部に外方に突出した少なくとも2つの摘み部を形成したものが提案されている。上記フェイスマスクは、上記摘み部の近傍上部に水平方向に設けた折り畳み線で、フェイスマスクの上部を手前側に折り返し、フェイスマスクの横方向をほぼ3等分する折り畳み線で手前側に折り返した後に、裏側へ折り畳まれ3枚重ねとなるZ折り構造としたシート状物であり、そのシート状物の周縁部に外方に突出した摘み部を少なくとも2つ有し、該摘み部がほぼ対向する位置に設けられている。この両摘み部を左右方向に引っ張るだけで展開操作を容易に行えることが説明されている(特許文献4)。
【0008】
次に、包装袋とパックシートを一緒に折り畳んでパックシート包装体を形成する特許文献の例として、フェイスマスク(パックシートに相当)は、上記した展開操作が非常に困難な問題に対して、パック用シート(1)の内端部を包装フィルム(13)の内端側で包むと共に、前記パック用シート(1)とその外側の前記包装フィルム(13)とを複数箇所の折り線(14)(15)に沿って偏平状に折り畳み、前記パック用シート(1)に対して前記折り線(14)(15)方向の両側で前記包装フィルム(13)をシールし且つ前記包装フィルム(13)の外端側をその内側の前記包装フィルム(13)にシールして、前記包装フィルム(13)により前記包装袋(10)を形成することで解決したパック用シート包装体が提案されている(特許文献5参照)。
【0009】
そして、フェイスマスクを略直交する2方向の縦方向、横方向の折り目で複数回二つ折りを繰り返して適当な大きさにした後、その折り畳み状態のフェイスマスクを上下に複数枚積層して積層体を構成し、その積層体を保形容器又は包装袋により包装するフェイスマスク包装体が提案されている(特許文献6参照)。
【0010】
更に、ウエットシートのポップアップ式の積層包装体として、ウエットティッシュの積層包装体が良く知られているが、例えば、ウエットティッシュの包装体はそのサイズが小さく、またエタノール等の殺菌剤を含有する低粘度の含浸液が用いられているので、ウエットティッシュを上下シートの重なり部分を設けてポップアップ式に積層して、ポップアップされたウエットティッシュの端部を引き上げさえすればよくウエットティッシュを展開操作する際に問題が発生することはない(特許文献7、8参照)。
【0011】
また、ピロー包装体の中にトレーに折り畳まれたウエットシートを横向きに複数個配列収納し、該トレー底に設けた開口域より1つずつ取り出すようにした包装体が知られている(特許文献9参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】実公平02−38673号公報
【特許文献2】特開2008−150317号公報
【特許文献3】特開2006−42981号公報
【特許文献4】実用新案登録第3072027号公報
【特許文献5】特開2006−224974号公報
【特許文献6】特開2009−78828号公報
【特許文献7】特開平08−318977号公報
【特許文献8】特開2003−135305号公報
【特許文献9】特開2010−42846号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
特許文献1及び2に示したパックシートは、2つ折りにされた状態のその折り目部を指で摘んで引き上げることにより1つずつのパックシートを取り出すものであるが、パックシート自体は薄いので、それが折り畳まれている場合であってもその2つ折りの折り目部も薄い部分である場合があり、特に折り畳まれたパックシートが密に充填されている際には指による1つのパックシートの摘み易さが損なわれることが懸念される。
【0014】
特許文献3〜5に示した顔全体のパックシートは、1枚のパックシートを個別収納するものであって、複数枚のパックシートを積層して集積収納するパックシート包装体ではないために、1枚のパックシートを使用する度に1枚の包装袋を廃棄することとなり、現状では2倍の廃棄物を処理する必要が生じている。また、フェイスマスクの周縁部に外方に突出した2つの摘みが形成されていることで、左右方向に引っ張るだけで展開操作が容易に行えるとされているが、該摘みがフェイスマスクの縦方向のほぼ中央の位置に設けられているために、フェイスマスクの上顔の部位と下顔の部位が重なった状態で引っ付いたままで分離が困難な場合もある。
そして、特許文献6〜8に示したパックシート包装体及びウエットシートのポップアップ式の積層包装体は、特許文献3〜5に示した顔全体のパックシートと異なり、複数枚積層して積層体を構成しているので、内容物を使い切るまでは包装袋を廃棄する必要はないが、多数枚のウエットシートを縦ないし上下方向に多数枚重ねて配列収納されるので、個々のウエットシートに含浸される液状化粧料の含浸量が下方に近いものは含浸量が多く、上方に近い部分のものは含浸量が不足するという問題があり、多数枚のウエットシートに均一に含浸液を効率的に高含浸させることは難しかった。
例えば特許文献8に示したパックシート包装体は、上下方向に多数枚重ねたウエットシートを上方向に引き上げることにより取り出すのであり、取り出されたウエットシートの端部の薄い部分が、すぐ下の別のウエットシートの端部を引っかけるようにすることによって、該すぐ下の別のウエットシートの端部を取出口に向けるようにするものであるが、そのウエットシートの端部が薄いと、該すぐ下のウエットシートの端部に対して、これを引っかけるために十分な力を加えることができない可能性がある。
また特許文献9に記載された包装体は、折り畳まれたウエットシートが立てられた状態で包装されるが、摘み部を設けて折り畳み時にその摘み部を出すようにするものではない。
【0015】
それ故に、本発明の課題は、パックシートを廃棄物となる包装袋に個別に収納せずに積層せしめた状態で一つの容器に集積状態で収納することができ、かつ使用時には配列された状態であっても摘み部を摘むことによりパックシートを一枚ずつ分離して取り出す操作を容易に行うことができる折り畳みパックシート配列体及びその折り畳みパックシート配列体を包装してなるパックシート包装体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の課題を解決するために以下の手段を採用する。
1.折り畳みパックシートの端部の摘み部を、隣接する別の折り畳みパックシートの中に挿入してなる折り畳みパックシート配列体。
2.折り畳みパックシートの端部の摘み部先端が、着色されてなることを特徴とする1に記載のパックシート配列体。
3.折り畳みパックシートは含浸液が含浸されたウエットシートであることを特徴とする1又は2に記載のパックシート配列体。
4.折り畳みパックシートの端部の摘み部がパックシート取出口に面するよう、1〜3のいずれかに記載のパックシート配列体をパックシートが立てられた状態で複数個トレー内部に配列収納してなり、このトレーを包装体により包装してなるパックシート包装体。
5.トレーが底の略中央に開口域が形成されたものであり、包装体が平面部にパックシート取出口が設けられたものであり、該トレーの開口域は該包装体のパックシート取出口に面していることを特徴とする4に記載のパックシート包装体。
6.トレー底の開口域自体は、余剰の含浸液の液溜めのための突状堤によって形成されていることを特徴とする5に記載のパックシート包装体。
7.立てられた状態で複数個トレー内部に配列収納してなるパックシートと該突状堤との間隙に液不透過性シートを介在させていることを特徴とする6に記載のパックシート包装体。
8.折り畳みパックシートは、包装体のパックシート取出口に設けられた開閉蓋の開閉によって、トレー底の開口域から包装体のパックシート取出口を通して個々に取出し可能となっている4〜7のいずれかに記載のパックシート包装体。
9.トレー内において、折り畳みパックシートをトレー中央部に向けて付勢する部材を設けてなることを特徴とする4〜8のいずれかに記載のパックシート包装体。
10.付勢する部材が、別の折り曲げられた樹脂シートや円筒形樹脂部材及び/又はトレー中央部から最も遠いトレー壁面に隣接する壁面に切り込みを入れ、この切り込みをトレー中央部から最も遠いトレー壁面に向けて折り曲げることにより形成されたものであることを特徴とする9に記載のパックシート包装体。
【発明の効果】
【0017】
本発明の折り畳みパックシート配列体及びパックシート包装体によれば、複数個の折り畳みパックシートのなかでも、次に摘み上げる1つの折り畳みパックシートの上部のみに常に摘み部が表面に存在するので、使用時において迷うことなく次に取り出すパックシートを確認できる。そして容易に指でその摘み部を摘み、そのパックシートを引き上げることにより、薄いパックシートでも1つずつ分離して容易に取り出すことが可能となる。そして、取り出すと同時に次に取り出される順番の折り畳みパックシートの上部には新たな摘み部が現れるので、同様に次のパックシートの取出も容易となる。
折り畳みパックシート配列体を収納したトレーを包装してなるパックシート包装体の、トレー底の開口域に面したパックシートを取り出す際にも、同様に1つのパックシートの摘み部を摘んで取り出すことを行うことができる。
また、パックシートを個別包装せず、ウェットのパックシートとした場合でも折り畳みパックシートは立てられて収納されるので、1つずつ使用する毎に廃棄物を発生させることがなく、またパックシート間の含浸液の含浸量にばらつきが発生しない。
さらに、トレー内にこのパックシート配列体を開口域付近に向けて付勢する手段を有する場合には、トレー内の折り畳まれたパックシート配列体は使用中においても常に開口域付近に存在するので、次にパックシートを取り出す際にも、開口域から内部の奥に指を差し込んでパックシートを探る必要がない。
なお、今までの縦入れパックシートでは、パックシートを取り出す際に隣接するパックシートに指が触れて微生物により汚染する可能性があったが、本発明の折り畳みパックシート配列体にすると取り出す際にパックシートの摘み部を1枚ずつ持って取り出すことができるため、微生物汚染のリスクが極めて低くなるという効果も奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】パックシートの折り畳み工程。
【図2】折り畳まれたパックシートを組み合わせて折り畳みパックシート配列体とする工程。
【図3】トレー斜視図
【図4】液不透過性シートを載置したトレー斜視図
【図5】トレー内のパックシートに液剤を供給する図
【図6】付勢手段を設けたトレー断面図
【図7】付勢手段を設けたトレーを用いた包装体入りのパックシート
【図8】パックシートを付勢する部材
【図9】パックシートを付勢する部材を設けたトレーを用いた包装体入りのパックシート
【発明を実施するための形態】
【0019】
(パックシート)
パックシートは繊維素材のシートからなり、その素材としては織布、不織布、ガーゼ、コットン、レーヨン等でも良く、あるいはコットン、パルプ又はレーヨンから選ばれる1種又は2種以上のセルロース繊維を70重量%以上含有する繊維シートでも良く、液状化粧料の含浸性、保持性及び良好な肌触りを考えると、親水性の高い繊維素材が好ましい。なかでも該セルロース繊維を85重量%以上とすることがより好ましい。このような繊維素材は、従来から知られているウエットシートやフェイスマスクシート等のウエットシート製品に広く使用されており、本発明においても、同様の繊維素材を使用目的に応じて選択し使用すれば良い。
なお、目付は20g/m〜100g/mのものが好ましく、液含浸時の1枚の厚みは200〜1200μmとすれば良い。
【0020】
パックシートの形状や構造は任意の長方形、正方形、楕円形等のものでも良いが、顔面の一部又は全部を被覆する形状に成形されたものであって、好ましくは、全顔形状のフェイスマスク、そして一部を覆う形状としては、上半分を覆う形状、あるいは下半分を覆う形状のものでもよい。なお、目、口、鼻にあたる部分の形状や、フィット性を高めるためのスリット線の位置や方向等は任意のものを使用できる。また、顔面以外の肘、膝、踝、首等の部位を対象に使用できるような形状のものでも良い。
【0021】
(パックシート配列体)
パックシートに形成する摘み部に関して、例えば、顔全体を覆う場合の全顔パックシートの場合には、全顔形状に形成された基材シートの額、即ち、上端部の両端にその上端部先端より上方に摘み部を突出して設ける。前記上端部先端は額の中央の最も高い部位を意味している。その摘み部の大きさは任意でよいが、小さいと摘み部としての機能を十分に発揮しないばかりか、隣接する折り畳みパックシート内に挿入することが困難になり、逆に大きすぎても隣接する折り畳みパックシート内に全てを挿入することが困難となる。また、使用時において摘み部を明確に表示するために、摘み部を着色しても良い。
全顔パックシート以外の形状のパックシートの場合であっても、折り畳んだ状態の折り畳みパックシートの端部に摘み部を突出させ、その摘み部が隣接する折り畳みパックシートの中に挿入され得るようにすることが必要である。
それには、摘み部が折り畳まれたパックシートの角や辺である端部に位置するように、パックシートを折り畳むことが必要である。
【0022】
二つ折り又はZ折り、或いはそれ以上に折り畳まれたパックシートは、パックシートを取り出す方向を上方とすると、二つ折りの場合には折り曲げ部が下方に向くようにし、かつ摘み部を上方に向けて延ばすように配置される。そして該摘み部は隣接する片側の折り畳みパックシートの折り曲げ部の反対側の、上方に向けられている開いたパックシートの端部の間に挿入される。そしてさらに隣の折り畳みパックシートに摘み部を挿入することを順に繰り返し配置してなるものを折り畳みパックシート配列体とする。
また、Z折りの場合においても摘み部は上方に向けて延ばすように配置され、二つ折りの場合と同様に、1方向に隣接している折り畳みパックシートの端部の間に挿入し、これを2つ折りの場合と同様に繰り返して折り畳みパックシート配列体とする。
なお、1つのパックシート配列体を構成するパックシートの数は任意で良い。
【0023】
本発明でパックシートに含浸する含浸液は、従来から知られているウエットシートやフェイスマスクシート等のウエットシート製品に広く使用されている液状化粧料や薬液等を使用すれば良い。そして、例えば、保湿性や肌触り等の観点から水溶性高分子を配合することが好ましく、加えて、美白成分や血行促進成分等を選択して配合すれば良い。
また、含浸液の粘度は1〜5000mPa・sのものが好ましく、粘度が高くなり過ぎると繊維素材シートに高含浸させることはできなくなる。
さらに、繊維素材シートには、含浸液を5〜9倍(含浸率500〜900%)となるように含浸させることが好ましい。
【0024】
本発明のパックシート配列体には、トレーへの収納と、含浸液をパックシートに含浸させる工程を任意に前後して行う。含浸させたパックシート配列体は該トレーごと袋状物により包装されるが、この場合、袋状物がピロー包装用袋からなる場合には、ピロー包装の合掌面が天面側になるようにトレーを包装してピロー包装体等を形成せしめ、さらに形成されたピロー包装体等の天面・地面を反転して含浸液をパックシート中に十分に行きわたらせることによって、効率的に液状化粧料又は薬液等の液を含浸させることができる。もちろんピロー包装を行わない場合には、天面・地面を反転する等の操作は不要である。
【0025】
(トレー)
本発明において折り畳みパックシート配列体を複数個配列収納するトレーは硬質の樹脂から成型されてなり、そのトレー内部の大きさは、複数の折り畳みパックシートからなる折り畳みパックシート配列体を収納できる大きさであればよい。また、トレー底の略中央部に開口域が形成されていてもいなくても良いが、開口域を形成して、該トレーを反転させて、その開口域から折り畳みパックシートの摘み部を摘んで取り出すようにしても良い。
該開口域を形成しない場合には、底と壁部からなるいわゆるトレー自体の形状をそのまま利用し、トレーの開口部から折り畳みパックシートを1つずつ取り出すようにしても良い。
さらに、トレー内に配置されたパックシートを取り出すにつれて、トレー内に空間が生じることになるが、開口域付近のパックシートは消費しても、開口域より離れた位置にある折り畳みパックシートが該空間に倒れることにより、開口域に指を入れて摘み部を摘むことが困難になる可能性がある。このため、生じた空間を埋めるように、残りのパックシートを開口域側へ移動させるために付勢する部材を設けることが好ましい。
【0026】
その部材としては折り畳まれた樹脂シートを採用し、これを予め開口域から最も遠いトレー内の箇所に設置しておき、残りのパックシートが少なくなるにつれ、折り畳み部の復元力を利用して付勢を継続させることにより、パックシートを常に開口域付近に立てて配置させることができる。或いはその折り畳まれた樹脂シートに代えて、円筒形樹脂部材を利用して予めトレー内に円筒形樹脂部材を潰すようにしてパックシートと共に配置し、残りのパックシートが少なくなるにつれて潰されていた円筒形樹脂部材の復元力を利用してパックシートを開口域に向けて付勢することもできる。
【0027】
さらに、トレー底に開口域を形成させる際に、開口域に相当する部分を完全に切断・除去するのではなく、例えば、トレーの中央部から遠く、上記の個々の折り畳まれた樹脂シート等と平行な壁面にそった開口域の辺を切断せずに残しておき、その他の辺を切断することもできる。このようにして得たトレーの切り込み片をトレー内部に折り曲げると共に、該壁面と接触する切り込み片を該壁面に沿うように折り曲げる。このような構造によればパックシートを使用するにつれて、この2箇所の折り曲げ部が折り曲げる前に復元しようとする復元力を活用して、残りのパックシートをトレーの中央部に寄せて取出しやすくすることもできる。この例ではトレー底の切り込み片を活用したが、トレーの側面に切り込み片を設け、これを同様に折り曲げることによりパックシートを付勢することも可能である。
また、必要に応じて予めトレー底の開口域に含浸液不透過性シートをかぶせ、使用にあたってはこのシートを取り除き、最初のパックシートを取り出すこともできる。
【0028】
(包装体)
折り畳みパックシート配列体を収納したトレーを包装してなる包装体の袋は、ピロー包装用のもので良く、その他にもブロー成形により得られた円筒形状のシートから得た袋でも良いし、公知の各種の構造の袋状物でも良く、材料も樹脂シートや樹脂積層シート、樹脂と金属の積層シート等の任意の材料でよいが、パックシートに含浸される含浸液を透過せず、含浸液により変質しないものでなければならない。
また、包装体としては、上記の袋に代えて硬質の容器を採用することも可能である。
【0029】
例えばピロー包装を採用する場合には、パックシート取出し時に、パックシートのピロー包装体の天面・地面が逆転するようにする。すなわち、本発明のパックシートのピロー包装体は、個々に折り畳まれたパックシート配列体を収納したトレーを逆ピロー包装したパックシートピロー包装体であるが、ピロー包装体合掌面の反対面の平面部に設けられたパックシートの取出口は、トレー底の略中央に設けられたパックシート取出しのための開口域に対応する位置にあるから、パックシートの取出し時には、天面側の該取出口から、同じく天面側に位置するトレー底の開口域を介してパックシートを取出すことができる。このような場合には、強度のあるトレー底がウエットシートの取出口が設けられた平面部に位置することになるので、開閉蓋の開閉や製品の積層によるトレーの変形や破損が生じないという利点がある。
【0030】
また、折り畳んだパックシートを配列収納したトレーを含浸液による含浸処理後にピロー包装する場合、正ピロー包装と逆ピロー包装のいずれかの採用が考えられる。正ピロー包装を採用した場合、トレー底に開口域を設ける必要はないが、トレーのテーパー状に広がった上部が、ピロー包装体合掌面の反対面のウエットシートの取出口が設けられた平面部に位置することになるので、取出口に設けられた開閉蓋の開閉や製品の積層により、場合によりトレーの変形や破損が生じる可能性がある。
さらに、ピロー包装ではなく円筒状の袋内にトレーを入れて包装する場合に、その袋は合掌部を有さないので、トレーの底からではなく上部から取り出す際においては、上記正ピロー包装体と同様の問題を内在している。しかしながら、トレーの底に設けた開口域から取り出すようにすると、上記の逆ピロー包装体と同様に、強度のあるトレー底がウエットシートの取出口が設けられた平面部に位置することになるので、開閉蓋の開閉や製品の積層によるトレーの変形や破損が生じないという利点がある。
さらに、硬質の容器とした場合には、トレーから取り出す箇所に対応して、パックシートの取出口を設けることになる。
【0031】
本発明の折り畳みパックシート配列体を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、顔面の全部を被覆する形状に成形されたパックシートを例に、これを折り畳む工程を示す。
図1(a)はパックシート1の全体図であり、任意にスリット2が設けられている。そして額の横の上部には摘み部3を形成してなり、パックシート全体に山折り線4と谷折り線5が縦及び横方向に形成されている。もちろんパックシート1に予め山折り線4や谷折り線5を目視可能に設けてもよいが、明確に線を引くのではなく山折りと谷折りを行う予定を示した仮想の線でもよい。
そして、図1(b)に示すように2箇所の摘み部3を谷折り及び山折りし、図1(c)に示すようにパックシート1の縦方向に形成した山折り線4を折りながら、同じくパックシート1に縦方向に形成した谷折り線5も折り、Z状に折り曲げるようにする。Z状に折られたパックシート1は図1(d)に示される。続いて、図1(e)に示されるように、Z状に折られたパックシート1を谷折りにより2つ折りを行う。さらに、図1(f)に示すように山折りして折り畳みパックシートとする。最後に図1(g)に示すようにパックシートから出ている摘み部を重ねて折り曲げて、個別のパックシートの折り曲げを終了する。
もちろん、パックシート1をこの順序で折り曲げなくても良いし、山折り線と谷折り線をどのように設けるかも折り畳まれたパックシートから摘み部が出るようにされる範囲で変更することができる。また、パックシートの形や大きさによっても、図1で示す順で折り曲げることができない場合があり、このような場合においても摘み部が最後に出るようにする限りにおいて任意に折り畳み方法を変更できる。
【0032】
このようにして折り畳まれたパックシートは、図2に示すようにして折り畳みパックシート配列体とすることができる。図2(a)は図1にて折り畳まれたパックシートを2つ平行に配置し、一方の折り畳まれたパックシート6の摘み部3を少し元に戻して立たせた図であり、続く図2(b)はこれらのパックシート6及び7を接触させるようにし、パックシート6の摘み部3を、パックシート7の2つ折りを閉じる前の開口した状態の開口域に矢印の方向に挿入する工程を示し、続いて最後に図2(c)に示すようにパックシート6及び7を両側から押さえてそれぞれの2つ折り部分を圧縮することによりパックシート6の摘み部がパックシート7の中に挿入された形態とする。
そして本発明における折り畳みパックシート配列体は、このパックシート6と7のような操作を順に行うことにより所望とする数からなるパックシートからなるものとして得ることができる。
【0033】
得られた折り畳みパックシート配列体は図3に示すトレー12に収納される。トレー12は側壁8と底9を有し、底9には突状堤10により区画された開口域11が形成されている。また図4には、同様のトレー12において、開口域11内部には液不透過性シート13が載置されており、その液不透過性シート13によりパックシートに染みこんでいる化粧液等、あるいは図5に記載したように、トレー12にパックシートが収納された後に、そのパックシートに化粧料等14の液体を含浸させることも可能である。
【0034】
さらに、トレー12としては使用につれて残量が減少するパックシート1をトレー12の底9に設けた開口域11を形成する際に、その開口域11に対応する底9の開口域11の切り取りを完全に行わずに、例えば、図3のA−A線を通る垂直な面で切断された切断面である図6に示すように、開口域11を形成するための縁のうち、トレー12の底9の短辺に沿った縁を残して、他の開口域11を形成する縁を切断する。そしてその切断片を180°の角度でトレー12内部に矢印の方向へ折り曲げ、さらにトレーの壁に沿うようにして折り曲げる。
この結果、折り曲げられた切断片が折り曲げられた部分を復元する力を利用して、トレー12内部に配置された折り畳みパックシートをトレー12の中央部、つまりトレー12の底9に設けた開口域11に向けて押す力を発生する付勢手段15となる。
また、同じく図6には、トレー12の底9を同様にして切断して得た切断片が90°程度の角度でトレー12の内部に矢印の方向へ折り曲げられてなり、この切断片がその折り曲げられた箇所をまっすぐに復元しようとする復元力により、内部に配置された折り畳みパックシートを使用するにつれて徐々に開口域11に向けて押圧する付勢手段16となる。
【0035】
図7には、これらの付勢手段15及び16を使用する態様を示す。
この図ではトレーが合掌面19を有する包装袋20に収納されていると共に、その平面部の蓋体21はトレー12の底9の開口域11に対応した箇所に設けられている。そして包装されたトレーはトレー上面を上にして移送・保管するが、使用時において反転されて開口域11が上面に位置するようにすると共に、トレー中に滞留する液を再度パックシート全体に含浸させるようにする。
使用者が包装袋に設けた蓋体21を開けて、トレー12の開口域11に指を伸ばして、収納されている折り畳みパックシート配列体のうちの最も開口域中央に位置する折り畳みパックシートの摘み部3を摘んでこれを引き出す。
このような操作により摘み出した折り畳みパックシートがあった空間を埋めて、折り畳みパックシートをトレー12の開口域11及び蓋体21の中央部に位置するように、上記付勢手段15や16が折り畳みパックシートを押圧することができる。その結果、トレー12の開口域11の中央部に向けて、折り畳みパックシートが付勢手段15及び16により付勢されるので、使用者は常に開口域11中央部付近のパックシートの摘み部3を摘むことができ、使用性に優れたものとなる。
トレー内部の折り畳みパックシートを押圧する部材としては、上記のようにトレー12の底9の部材を利用してなる付勢手段15及び16の他に、トレー12内部に折り畳みパックシートを押圧するための別の部材を設けても良い。
【0036】
具体的には、図8(a)に示すように1枚の樹脂シートに切り込みを入れて折り曲げてなるバネ状の部材17でもよく、図8(b)に示すように、樹脂シートからなる円筒形の部材18でもよい。これら部材17及び18は圧縮されることにより復元力を有する。
そして図9の左側には図8(a)で示されるバネ状の部材17をトレー内壁面に接触かつ圧縮して設置し、開口域よりの空間に折り畳みパックシート配列体を配置した例を示し、また図9の右側には図8(b)に示す円筒形の部材18をトレー内壁面に接触かつ圧縮して設置し、開口域よりの空間に折り畳みパックシート配列体を配置した例を示す。パックシートを使用するにつれて、使用されたパックシートが存在した空間を埋めるように、これらの部材17及び18が有していた圧縮力が徐々に解放されることにより,残りの折り畳みパックシートがトレー中央の開口域付近に常に存在することになる。そして、使用者は常に開口域11中央部付近のパックシートの摘み部3を摘むことができ、使用性に優れたものとなる。
【0037】
このためには、図9に示すように、トレー12の開口域11から最も遠い箇所であって、トレー12の内壁面と折り畳みパックシートとの間にバネ状の部材17や円筒形の部材18を位置させるように配置する。
【0038】
上記の図に基づく説明は、折り畳みパックシート配列体を収納したトレーを包装し、該トレー底に設けた開口域から各パックシートを取り出し使用する例の説明であるが、トレー底の開口域を介して取り出す形式でなくても、折り畳みパックシート配列体を収納したトレーの上面からパックシートを順に摘み出すようにすることも可能である。
【符号の説明】
【0039】
1 パックシート
2 スリット
3 摘み部
4 山折り線
5 谷折り線
6 パックシート
7 パックシート
8 側壁
9 底
10 突状堤
11 開口域
12 トレー
13 液不透過性シート
14 化粧料等
15 付勢手段
16 付勢手段
17 バネ状の部材
18 円筒形の部材
19 合掌面
20 包装袋
21 蓋体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
折り畳みパックシートの端部の摘み部を、隣接する別の折り畳みパックシートの中に挿入してなる折り畳みパックシート配列体。
【請求項2】
折り畳みパックシートの端部の摘み部先端が、着色されてなることを特徴とする請求項1に記載のパックシート配列体。
【請求項3】
折り畳みパックシートは含浸液が含浸されたウエットシートであることを特徴とする請求項1又は2に記載のパックシート配列体。
【請求項4】
折り畳みパックシートの端部の摘み部がパックシート取出口に面するよう、請求項1〜3のいずれかに記載のパックシート配列体をパックシートが立てられた状態で複数個トレー内部に配列収納してなり、このトレーを包装体により包装してなるパックシート包装体。
【請求項5】
トレーが底の略中央に開口域が形成されたものであり、包装体が平面部にパックシート取出口が設けられたものであり、該トレーの開口域は該包装体のパックシート取出口に面していることを特徴とする請求項4に記載のパックシート包装体。
【請求項6】
トレー底の開口域自体は、余剰の含浸液の液溜めのための突状堤によって形成されていることを特徴とする請求項5に記載のパックシート包装体。
【請求項7】
立てられた状態で複数個トレー内部に配列収納してなるパックシートと該突状堤との間隙に液不透過性シートを介在させていることを特徴とする請求項6に記載のパックシート包装体。
【請求項8】
折り畳みパックシートは、包装体のパックシート取出口に設けられた開閉蓋の開閉によって、トレー底の開口域から包装体のパックシート取出口を通して個々に取出し可能となっている請求項4〜7のいずれかに記載のパックシート包装体。
【請求項9】
トレー内において、折り畳みパックシートをトレー中央部に向けて付勢する部材を設けてなることを特徴とする請求項4〜8のいずれかに記載のパックシート包装体。
【請求項10】
付勢する部材が、別の折り曲げられた樹脂シートや円筒形樹脂部材及び/又はトレー中央部から最も遠いトレー壁面に隣接する壁面に切り込みを入れ、この切り込みをトレー中央部から最も遠いトレー壁面に向けて折り曲げることにより形成されたものであることを特徴とする請求項9に記載のパックシート包装体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−157613(P2012−157613A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−20580(P2011−20580)
【出願日】平成23年2月2日(2011.2.2)
【出願人】(591254958)株式会社タイキ (35)