説明

折り畳みボックス構造

【課題】折り畳み容易な、折り畳みボックス構造を提供する。
【解決手段】平行四辺形シート1とヒンジ2からなるミウラ折りのモジュールを縦に一列結合した部分と、その滑り鏡映に対応する部分とを背中あわせで、側縁で接合して折り畳みボックス構造の基幹構造とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、折り畳みボックス構造に関するものである。さらに詳細には、第一に、折り畳みの操作が簡単で折り畳んだ状態がコンパクトであること、第二に、展開時にの適度の剛性をもつ、折り畳みボックス構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
折畳みボックス構造はあらゆる分野で利用されている。大は仮設建築から、小は商品パッケージ、日用品まで、多様な形態、構造が知られている。従って、いまさら、新規な折り畳みボックス構造を求めることなどは、あり得ないと思われている。
【0003】
しかし、最近の折り紙の数学の進歩による知識を援用すれば、新規で且つ利用性の広い折り畳みボックス構造を見出すことは充分に可能である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、長いボックスの折り畳みボックス構造で、長手の方向にコンパクトに折り畳め、折り畳み操作が容易であり、展開時に適度の剛性をもち、かつ製造方法が容易である、折り畳みボックス構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は(図1の説明図参照)、請求項1に示されるように、X−Y座標系において、X軸方向の二つの平行線上にそれぞれの底辺をもち、内角θの等しく、一つの斜辺を共有する隣接の二つの平行四辺形をp、qとし、p、qの一つの底辺を鏡mとする鏡映で、それぞれ二つの平行四辺形r、sを形成し、4個の平行四辺形p、q、r、sからなるモジュールMを構成し、該モジュールMをY軸方向に少なくとも一つ以上隙間なく併進してモジュール群Aを形成し、前記モジュール群AのY軸方向の滑り鏡gについての滑り鏡映をモジュール群Bとし、前記モジュール群Aとモジュール群Bを、仮想の二次元体として、それらの背面をあわせ、対応する側縁eを結合し、平行四辺形の辺を稜としてボックス形状(C)を形成し、該ボックス形状(C)を、平行四辺形の面をシート、稜をヒンジとして実体のボックス構造とし、該ボックス構造端部に閉じる構造を加えたことを特徴とする折り畳みボックス構造により前記課題を解決するものである。
【0006】
なお、前記、併進、鏡映、滑り鏡映は、対称変換群に使われる操作である。また、四個の平行四辺形で形成されるモジュールMは、ミウラ折りと呼ばれる展開構造物の基本要素である。
【0007】
また、本発明は請求項2に示されるように、請求項1において、自由度を拘束する機構として拘束部材を装着し、前記課題を解決するものである。
【0008】
また、本発明は請求項3に示されるように、ボックス形状端部に、展開自由度の拘束を兼ねた閉じる構造を加えることにより、前記課題を解決するものである。
【0009】
また、本発明は請求項4、5に示されるように、簡単な工程で、折り畳みボックス構造の基幹部分を製造する方法により、前記課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の効果は、要約すると以下の四つに分類される。その詳細は実施例について後述する。
【0011】
本発明の第一の効果は、その特有の折り畳み特性にある。これは特に、長い筒状のボックスについて、顕著である。一般に、長い筒状のボックスでは、畳まれたときにその長さが残る性質がある。つまり最大の寸法が、畳むことで小さくならないのである。本発明のボックス構造は、その拘束を解除することによって、崩れ落ちるように長手方向に畳みこまれる。従って、畳まれたものはコンパクトであり、その最大寸法を小さくできる。
【0012】
本発明の第二の効果は、その適度な剛性にある。折り畳み構造は、折り畳みのプロセスでは、ほとんど抵抗がないことが理想である。しかしいったん展開した状態では、何等かの拘束機構により、必要な剛性をたもたなければならない。一般には長い筒状のボックス構造では、中間の部分に充分な拘束を与えることは難しいが、本発明の折り畳みボックス構造ではそうはならない。その理由は二つある。一つは、折り目による補強効果であり、他の一つは、通称ミウラ折りと呼ばれる展開要素が組み込まれたことによる、メカニズムによる。その詳細は実施例1につき説明する。
【0013】
本発明の第三の効果は、その製造法が特殊な工程を含まず、既存の一般的な設備で製造することができることにある。
【0014】
本発明の第四の効果は、比較的軟質のシートによる折り畳みボックス構造に利用できる。一般に、袋というものは、その口は一直線に合わされている。本発明の構造では、畳まれたときに、袋の口が部分的に開かれた状態となる(図2(b))。従って、その部分をつまみやすい。次いで引っ張ることにより、これは展開構造物だから、自動的に展開が始まり、そして開くというプロセスが行われる。
【発明を実施するための最良の形態】
【実施例1】
【0015】
実施例1として、蓋つきの折り畳みボックス構造について説明する。図3(a)(b)は、折り畳みボックス構造の構成要素を示す。その基本は、図1、2の説明図における幾何学的形状を基に実体化したものである。簡単のため、説明図に用いた記号を、実体の場合でも援用する。図3(a)、(b)はそれぞれ、モジュラー群A、Bに蓋3と糊代4をつけたものである。形状のパラメータは、基本となる平行四辺形の形とサイズ、その繰り返しの数であり、これらの数値により多様な形態が実現できる。
【0016】
図4(a)(b)にそれぞれ伸展時、畳みこみ時の折り畳みボックス構造の斜視図を示す。なお本明細書では、図中シートの厚さは省略する。図4(b)は、畳みこみ時の斜視図であり、平面図ではないことに注意を要する。図で、Cは折り畳みボックス構造であり、3はその自由度の拘束機構を兼ねた蓋である。
【0017】
以上から、製造法について、本発明の折り畳みボックス構造の特徴は、主な二つの要素を結合することであり、その加工が平坦な状態で行えることが明らかである。それはこの構造が両極の平面折り畳みをもつ性質を利用するのである。従って、本発明の折り畳みボックス構造は、一般的な設備で製造することができる。これが本発明の第三の効果である。
【0018】
折り畳みの様子は、図4に見るように、縦長の多面体形状のボックスが、縦の方向に平らに畳みこまれる。実質的に平である。畳みこみに要する力は、折り目・ヒンジによるが、ほとんど無きにひとしい。その様子は、外形から予測できないほどである。これらの事実により、前記第一の効果が実証される。
【0019】
図5は、本発明の折り畳みボックス構造(a)と、これと外形の略等しい普通の四角柱ボックス構造(b)を対比したものである。この際、端部は拘束されているとする。折り畳みボックスの場合は、その中間に三つの折り曲がり部分が周を回って形成されている。このような構造は、折板構造といわれて、折れ曲がりの部分にあたかも仮想補強材ができたように剛性が高められる。換言すれば、竹の節のように働くのである。これが第二の効果の一つである。
【0020】
本発明の第二の効果のもう一つは、本発明が、通称ミウラ折りと呼ばれる特殊な要素だけの組み合わせで出来ており、そのメカニズムが、展開後の剛性を付与することが明らかになった。図6は、端部が拘束された折り畳みボックス構造の説明図(斜視図)を示す。このボックス構造に、図に示すような偶力Fが加えられたとする。普通の考えでは、ジグザグで曲がっているから、その方向の外力が加われば、少なからぬ変形を起こすように思える。実はそれは間違いなのである。
【0021】
このボックス構造は、モジュールAとBが背中合わせで結合されている。言いかえると、二つのミウラ折りの列が背中あわせで結合されている。ミウラ折りの展開特性により、モジュールB側に縦の方向に潰す力が働くと、横の方向も同期して縮まる(変位−d)。一方モジュールA側に縦に伸ばす力が働くと、横の方向は伸びる(変位+d)。従ってモジュールAとBの結合部分で、互いに反対の方向に動こうとする。その働く力は逆で等しい。従って、このような偶力に対して、変形は完全に抑制されると解釈される。
【実施例2】
【0022】
これは、第一実施例とは逆に、折り畳み特性に特化して、その展開時の剛性の高さは問わない、比較的軟質のシートによる折り畳みボックス構造である。本実施例では、折り畳み袋と読み替えることにする。袋の最も一般的な形態は、二枚の長方形のシートの三つの縁を接合し、残された縁を袋口とするものである。通常、その袋口は二枚のシートが直線で合わされている。
【0023】
本発明を袋に適用すると、図2(b)に見るように、菱形の開口部Lが、折り畳まれた状態で存在する。注目すべき点は、畳まれたときに、袋の口が部分的に開かれた状態であることにある。本発明の袋は、第一に袋の口があいているから、その部分をつまみやすい。第二に引っ張ることにより、展開構造物の性質があるから、全体が自動的に展開を開始し、袋を開くという作業が一貫してほぼ自動的におこなわれるのである。このような機能が要求されるのは、袋を開けて内部に物体を挿入するという操作に、敏速性・確実性・容易性が要求される作業である。
【0024】
本発明の折り畳みボックス構造の端部の拘束の方法は、多様なバリエーションがありうる。
【0025】
本明細書でシートとあるのは、平面的素材一般を指すもので、紙、プラスチック・シート、平板、サンドイッチ版、複合構造、ラチス等を含むものである。また折り目またはヒンジにしても、あらゆる実施形態が存在するのは、言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】折り畳みボックスの形状・構成要素(説明図、平面図)
【図2】(a)折り畳みボックスの形状・展開(説明図、斜視図) (b)折り畳みボックスの形状・収納(説明図、斜視図)
【図3】折り畳みボックス構造・構成要素(平面図)
【図4】(a)折り畳みボックス構造・展開時(斜視図) (b)折り畳みボックス構造・収納時(斜視図)
【図5】(a)折り畳みボックス構造・仮想補強材の効果(斜視図) (b)四角形ボックス構造(斜視図)
【図6】ミウラ折りによる補強効果(説明図、斜視図)
【符号の説明】
【0027】
1 平行四辺形シート
2 折り目またはヒンジ
3 蓋
4 糊代またはプラグ
5 拘束材
6 仮想補強材
A モジュール群
B モジュール群
C ボックス形状または実体化のボックス構造
F 外力
L 開口部
M モジュール(ミウラ折りの要素)
X,Y 直交座標系
d 変位
e 側縁
g 滑り鏡映の鏡線
m 鏡映の鏡線
p 平行四辺形
q 平行四辺形
r 平行四辺形
s 平行四辺形
θ 平行四辺形の内角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(X−Y)座標系において、(X)軸方向の二つの平行線上にそれぞれの底辺をもち、内角(θ)の等しく、一つの斜辺を共有する隣接の二つの平行四辺形を(p)、(q)とし、(p)、(q)の一つの底辺を鏡(m)とする鏡映で、それぞれ二つの平行四辺形(r)、(s)を形成し、4個の平行四辺形(p)、(q)、(r)、(s)からなるモジュールMを構成し、該モジュール(M)を(Y)軸方向に少なくとも一つ以上隙間なく併進してモジュール群(A)を形成し、前記モジュール群(A)の(Y)軸方向の滑り鏡(g)についての滑り鏡映をモジュール群(B)とし、前記モジュール群(A)とモジュール群(B)を、仮想の二次元体として、それらの背面をあわせ、対応する側縁(e)を結合し、平行四辺形の辺を稜としてボックス形状(C)を形成し、該ボックス形状(C)を、平行四辺形の面をシート、稜をヒンジとして実体のボックス構造とし、該ボックス構造端部に閉じる構造を加えたことを特徴とする折り畳みボックス構造。
【請求項2】
(X−Y)座標系において、(X)軸方向の二つの平行線上にそれぞれの底辺をもち、内角(θ)の等しく、一つの斜辺を共有する隣接の二つの平行四辺形を(p)、(q)とし、(p)、(q)の一つの底辺を鏡(m)とする鏡映で、それぞれ二つの平行四辺形(r)、(s)を形成し、4個の平行四辺形(p)、(q)、(r)、(s)からなるモジュールMを構成し、該モジュール(M)を(Y)軸方向に少なくとも一つ以上隙間なく併進してモジュール群(A)を形成し、前記モジュール群(A)の(Y)軸方向の滑り鏡(g)についての滑り鏡映をモジュール群(B)とし、前記モジュール群(A)とモジュール群(B)を、仮想の二次元体として、それらの背面をあわせ、対応する側縁(e)を結合し、平行四辺形の辺を稜としてボックス形状(C)を形成し、該ボックス形状(C)を、平行四辺形の面をシート、稜をヒンジとして実体のボックス構造とし、展開自由度の拘束部材を加えたことを特徴とする折り畳みボックス構造。
【請求項3】
(X−Y)座標系において、(X)軸方向の二つの平行線上にそれぞれの底辺をもち、内角(θ)の等しく、一つの斜辺を共有する隣接の二つの平行四辺形を(p)、(q)とし、(p)、(q)の一つの底辺を鏡(m)とする鏡映で、それぞれ二つの平行四辺形(r)、(s)を形成し、4個の平行四辺形(p)、(q)、(r)、(s)からなるモジュールMを構成し、該モジュール(M)を(Y)軸方向に少なくとも一つ以上隙間なく併進してモジュール群(A)を形成し、前記モジュール群(A)の(Y)軸方向の滑り鏡(g)についての滑り鏡映をモジュール群(B)とし、前記モジュール群(A)とモジュール群(B)を、仮想の二次元体として、それらの背面をあわせ、対応する側縁(e)を結合し、平行四辺形の辺を稜としてボックス形状(C)を形成し、該ボックス形状(C)を、平行四辺形の面をシート、稜をヒンジとして実体のボックス構造とし、展開自由度の拘束を兼ねた閉じる構造を加えたことを特徴とする折り畳みボックス構造。
【請求項4】
(X−Y)座標系において、(X)軸方向の二つの平行線上にそれぞれの底辺をもち、内角(θ)の等しく、一つの斜辺を共有する隣接の二つの平行四辺形を(p)、(q)とし、(p)、(q)の一つの底辺を鏡(m)とする鏡映で、それぞれ二つの平行四辺形(r)、(s)を形成し、4個の平行四辺形(p)、(q)、(r)、(s)からなるモジュールMを構成し、該モジュール(M)を(Y)軸方向に少なくとも一つ以上隙間なく併進してモジュール群(A)を形成し、前記モジュール群(A)の(Y)軸方向の滑り鏡(g)についての滑り鏡映をモジュール群(B)とし、前記モジュール群(A)とモジュール群(B)を、仮想の二次元体とし、これら(A)、(B)を。平行四辺形の面はシート、辺はヒンジとして実体とし、これらの背面をあわせ、対応する両縁(e)を結合することを特徴とする、折り畳みボックス構造の基幹部分の製造法。
【請求項5】
(X−Y)座標系において、(X)軸方向の二つの平行線上にそれぞれの底辺をもち、内角(θ)の等しく、一つの斜辺を共有する隣接の二つの平行四辺形を(p)、(q)とし、(p)、(q)の一つの底辺を鏡(m)とする鏡映で、それぞれ二つの平行四辺形(r)、(s)を形成し、4個の平行四辺形(p)、(q)、(r)、(s)からなるモジュールMを構成し、該モジュール(M)を(Y)軸方向に少なくとも一つ以上隙間なく併進してモジュール群(A)を形成し、前記モジュール群(A)の(Y)軸方向の滑り鏡(g)についての滑り鏡映をモジュール群(B)とし、前記モジュール群(A)とモジュール群(B)を、仮想の二次元体として、それらの背面をあわせ、対応する側縁(e)を結合し、平行四辺形の辺を稜としてボックス形状(C)を形成し、該ボックス形状(C)を、塑性材料により一体成型することを特徴とする折り畳みボックス構造の基幹部分の製造法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−116566(P2012−116566A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−283700(P2010−283700)
【出願日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(591048139)
【出願人】(507077293)
【Fターム(参考)】