説明

折り畳み可能な眼科用および耳鼻咽喉科用のデバイス材料

【課題】折り畳み可能な眼科用および耳鼻咽喉科用のデバイス材料を提供すること。
【解決手段】少なくとも150%の伸張を有する、軟らかく、高い屈折率の、アクリル材料が開示される。これらの材料は、眼内レンズ材料として特に有用であり、単一の主要なデバイス形成材料モノマーとして、アリールアクリル疎水性モノマーを含む。眼内レンズ材料としてのこれらの使用に加えて、本材料はまた、他の眼科用デバイスまたは耳鼻咽喉科用デバイス、例えば、コンタクトレンズ、人工角膜、角膜インレーまたは角膜リング;耳科用換気チューブおよび鼻用インプラントなどにおける使用に適切である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、アクリルデバイス材料に関する。特に本発明は、柔らかくて高屈折率の、特に眼内レンズ(「IOL」)材料としての使用に適しているアクリルデバイス材料に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
小切開白内障手術における最近の進歩で、柔らかくて折り畳み可能な、人工レンズの使用に適している材料の開発に大きな関心が寄せられている。一般的に、これらの材料は次の3つのうちの1つに分類される:ヒドロゲル、シリコーンおよびアクリル。
【0003】
一般的に、ヒドロゲル材料は、比較的低い屈折率を有し、所定の屈折力を達成するためには、より厚いレンズオプティック(lens optic)を必要とするので、ヒドロゲル材料が他の材料よりも望ましくないものとなる。シリコーン材料は、一般にヒドロゲルよりも高い屈折率を有するが、しかし畳まれた状態で目の中に置かれた後に、爆発的に展開する傾向がある。爆発的に展開することは、角膜内皮への強力な打撃および/または天然の水晶体包の破裂を与え得る。アクリル材料は、典型的に高屈折率を有し、そしてシリコーン材料よりさらにゆっくり、または制御可能に展開するので、望ましい。
【0004】
特許文献1に、高屈折率の、IOL材料としての使用に適しているアクリル材料が開示されている。これらのアクリル材料は主要な成分として、2つのアリールアクリルモノマーを含む。それらはまた架橋成分を含む。これらのアクリル材料から作られたIOLは小切開を通しての挿入のために巻かれるか、折り畳まれ得る。
【0005】
特許文献2にはまた、柔らかいアクリルILO材料が開示されている。これらの材料は主要な成分として、それらのそれぞれのホモポリマーの特性により規定される2つのアクリルモノマーを含む。一番目のモノマーは、そのホモポリマーが少なくとも約1.50の屈折率を有するものとして規定される。二番目のモノマーは、そのホモポリマーが約22℃未満のガラス転移温度を有するものとして規定される。これらのIOL材料はまた、架橋成分を含む。さらに、これらの材料は必要に応じて、親水性モノマーから誘導される初めの3つの成分とは異なる4番目の成分を含み得る。好ましくは、これらの材料は、約15重量%未満の総量の親水性成分を有する。
特許文献3には、少なくとも90重量%の総量の2つのみの主要なレンズ−形成モノマーを含む折り畳み可能な眼科用レンズ材料が開示されている。1つのレンズ形成モノマーはアリールアクリル疎水性モノマーである。もう1つのレンズ形成モノマーは親水性モノマーである。レンズ材料はまた、架橋モノマーを含み、そして必要に応じてUV吸収剤、重合開始剤、反応性UV吸収剤および反応性青色光吸収剤を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5,290,892号明細書
【特許文献2】米国特許第5,331,073号明細書
【特許文献3】米国特許第5,693,095号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の要旨)
特にIOLとしての使用に適しているが、しかしまた他の眼科用または耳鼻咽喉科用のデバイス(例えば、コンタクトレンズ、人工角膜(keratoprosthese)、角膜リング(corneal ring)あるいは角膜インレー(corneal inlay)、耳科用換気チューブおよび鼻用インプラント)としても有用である、改良された柔らかく折り畳み可能なアクリル材料が、ここで見出された。これらの材料は、1つの主要なレンズ形成成分のみを含む:アリールアクリル疎水性モノマー。本発明の材料は少なくとも約80重量%のこの主要なモノマー成分を含む。この材料の残りは、架橋モノマー、ならびに必要に応じてUV光吸収化合物および青色光吸収化合物からなる群から選択される1個以上の追加成分を含む。
本発明は、例えば以下の項目を提供する。
(項目1) ポリマーの眼科用または耳鼻咽喉科用のデバイス材料であって、該材料が、少なくとも150%の伸張を有し、単一デバイス形成モノマーおよび架橋モノマーを含み、ここで、該単一デバイス形成モノマーが、少なくとも約80重量%の量で存在し、そして以下の式のアリールアクリル疎水性モノマーであり:
【化1】


ここで:
Aは、H、CH3、CH2CH3、またはCH2OHであり;
Bは、(CH2mまたは[O(CH22nであり;
Cは、(CH2wであり;
mは、2〜6であり;
nは、1〜10であり;
Yは、存在しないか、O、S、またはNRであり、但し、YがO、S、またはNRである場合、Bは(CH2mであり;
Rは、H、CH3、Cn2n+1(n=1〜10)、iso−OCH37,C65、またはCH265であり;
wは、0〜6であり、但し、m+wは8以下であり;そして
Dは、H、C1〜C4アルキル、C1〜C4アルコキシ、C65、CH265またはハロゲンである、
材料。
(項目2) 項目1に記載のポリマーの眼科用または耳鼻咽喉科用のデバイス材料であって、ここで、AがCH3であり、がB(CH2mであり、mが2〜5であり、Yが存在しないかまたはOであり、wが0〜1であり、そしてDがHである、材料。
(項目3) 項目2に記載のポリマーの眼科用または耳鼻咽喉科用のデバイス材料であって、ここで、前記アリールアクリル疎水性モノマーが、4−フェニルブチルメタクリレート;5−フェニルペンチルメタクリレート;2−ベンジルオキシエチルメタクリレート;および3−ベンジルオキシプロピルメタクリレートからなる群から選択される、材料。
(項目4) 項目1に記載のポリマーの眼科用または耳鼻咽喉科用のデバイス材料であって、該材料が、反応性UV吸収剤および反応性青色光吸収剤からなる群から選択される1以上の成分をさらに含む、材料。
(項目5) 項目1に記載のポリマーの眼科用または耳鼻咽喉科用のデバイス材料であって、ここで、該材料が、眼科用デバイス材料であり、そして少なくとも1.50の屈折率を有する、材料。
(項目6) 項目1に記載のポリマーの眼科用または耳鼻咽喉科用のデバイス材料であって、ここで、該材料が、約+25℃未満のTgを有する、材料。
(項目7) 項目6に記載のポリマーの眼科用または耳鼻咽喉科用のデバイス材料であって、ここで、該材料が、約+15℃未満のTgを有する、材料。
(項目8) 項目1に記載のポリマーの眼科用または耳鼻咽喉科用のデバイス材料であって、ここで、該材料が、少なくとも200%の伸張を有する、材料。
(項目9) 項目8に記載のポリマーの眼科用または耳鼻咽喉科用のデバイス材料であって、ここで、前記コポリマーが、少なくとも300%の伸張を有する、材料。
(項目10) 項目1に記載のポリマーの眼科用または耳鼻咽喉科用のデバイス材料であって、ここで、該デバイスが、コンタクトレンズ;人工角膜;角膜インレーまたは角膜リング;耳科用換気チューブ;および鼻用インプラントからなる群から選択される、材料。
(項目11) 項目1に記載のポリマーの眼科用または耳鼻咽喉科用のデバイス材料であって、ここで、前記架橋成分が、エチレン、グリコールジメタクリレート;ジエチレングリコールジメタクリレート;アリルメタクリレート;1,3−プロパンジオールジメタクリレート;2,3−プロパンジオールジメタクリレート;1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート;1,4−ブタンジオールジメタクリレート;CH2=C(CH3)C(=O)O−(CH2CH2O)n−C(=O)C(CH3)=CH2(ここで、n=1〜50);CH2=C(CH3)C(=O)O(CH2tOC(=O)C(CH3)=CH2(ここで、t=3〜20);およびこれらの対応するアクリレートからなる群から選択される1以上の架橋剤を含み、但し、該デバイス材料が、2以上の架橋剤を含む場合、該架橋剤のいずれもが、CH2=C(CH3)C(=O)O−(CH2CH2O)n−C(=O)C(CH3)=CH2(ここで、n=2〜50)でない、材料。
(項目12) 項目1に記載のポリマーの眼科用または耳鼻咽喉科用のデバイス材料であって、ここで、前記単一デバイス形成モノマーが、少なくとも約85重量%の量で存在する、材料。
(項目13) 項目1に記載のポリマーの眼科用または耳鼻咽喉科用のデバイス材料であって、ここで、前記架橋モノマーが、約0.01〜15重量%の量で存在する、材料。
(項目14) 項目1に記載のポリマーの眼科用または耳鼻咽喉科用のデバイス材料であって、ここで、前記アリールアクリル疎水性モノマーが、4−フェニルブチルメタクリレート;5−フェニルペンチルメタクリレート;2−ベンジルオキシエチルメタクリレート;および3−ベンジルオキシプロピルメタクリレートからなる群から選択され;そして、前記架橋モノマーが、CH2=C(CH3)C(=O)O−(CH2CH2O)n−C(=O)C(CH3)=CH2であり、ここで、nは、該架橋モノマーの数平均分子量が約1000であるようなものである、材料。
(項目15) 項目1に記載のポリマーのデバイス材料を含む、眼内レンズオプティック。
(項目16) 項目14に記載のポリマーのデバイス材料を含む、眼内レンズオプティック。
【0008】
他の要素の中で、本発明は、折り畳み可能なILO材料としての使用に適切なアクリルコポリマーが、1つの主要なアリールアクリル疎水性モノマーのみを用いて合成され得、2つ以上の主要なデバイス形成モノマーを含むコポリマーを硬化することに関連する、物理/化学の異質性のような困難を軽減または除外する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(発明の詳細な説明)
本発明の眼科用または耳鼻咽喉科用デバイス材料は、1つのみの主要なデバイス形成モノマーを含む。便宜上、デバイス形成モノマーは、特にIOLについて、レンズ形成モノマーと言及され得る。しかし、本発明の材料はまた、他の眼科用または耳鼻咽喉科用デバイス(例えば、コンタクトレンズ、人工角膜、角膜インレーまたは角膜リング、耳科用換気チューブおよび鼻用インプラント)としての使用にも適している。
【0010】
本発明の材料のなかで単一のレンズ形成モノマーとしての使用に適しているアリールアクリル疎水性モノマーは、以下の式を有する:
【0011】
【化2】

ここで:AはH、CH3、CH2CH3またはCH2OHであり;
Bは(CH2mまたは[O(CH22nであり;
Cは(CH2wであり;
mは2〜6であり;
nは1〜10であり;
Yは、なし、O、SまたはNRであり、ただし、YがO、SまたはNRである場合、Bが(CH2mであり;
RはH、CH3、Cn2n+1(n=1〜10)、iso−OC37、C65、またはCH265であり;
wは0〜6であるが、ただし、m+w≦8であり;そして
DはH、C1〜C4アルキル、C1〜C4アルコキシ、C65、CH265またはハロゲンである。
【0012】
本発明の材料に用いられる好ましいアリールアクリル疎水性モノマーは、AがCH3であり、Bが(CH2mであり、mは2〜5であり、YはなしまたはOであり、wは0〜1であり、そしてDはHであるものである。最も好ましくは、4−フェニルブチルメタクリレート、5−フェニルペンチルメタクリレート、2−ベンジルオキシエチルメタクリレート、および3−ベンジルオキシプロピルメタクリレートである。
【0013】
公知の方法によって、構造Iのモノマーが作製され得る。例えば、所望のモノマーの共役アルコール(conjugate alcohol)は、反応容器中で、メチルメタクリレート、テトラブチルチタネート(触媒)、および4−ベンジルオキシフェノールのような重合抑制剤と合わされ得る。次いで、反応容器は反応を促進し、そして反応を完全に進めるために反応副生物を留去するために加熱され得る。代替の合成スキームは共役アルコールにメタクリル酸を添加する工程およびカルボジイミドで触媒化する工程あるいは塩化メタクリロイルおよびピリジンまたはトリエチルアミンのような塩基と共役アルコールを混合する工程を含む。
【0014】
本発明の材料は、全量が少なくとも約80重量%、好ましくは少なくとも約85重量%あるいはそれ以上の主要なレンズ形成モノマーを含む。
【0015】
本発明のコポリマー材料は架橋している。本発明のコポリマーに用いられる共重合可能な架橋剤は、1つ以上の不飽和基を有する任意の末端エチレン不飽和化合物であり得る。適切な架橋剤には、例えば、以下が挙げられる:エチレングリコールジメタクリレート;ジエチレングリコールジメタクリレート;アリルメタクリレート;1,3−プロパンジオールジメタクリレート;2,3−プロパンジオールジメタクリレート;1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート;1,4−ブタンジオールジメタクリレート;CH2=C(CH3)C(=O)O−(CH2CH2O)n−C(=O)C(CH3)=CH2(ここでnは1〜50);およびCH2=C(CH3)C(=O)O(CH2tO−C(=O)C(CH3)=CH2(ここでtは3〜20);ならびにそれらの対応するアクリレート。最も好ましい架橋モノマーは、CH2=C(CH3)C(=O)O−(CH2CH2O)n−C(=O)C(CH3)=CH2(ここでnは、数平均分子量が約400、約600あるいは最も好ましくは約1000であるようなものである)である。
【0016】
選択された架橋剤は、硬化問題を最小化するために、構造Iの選択されたモノマーに溶解性であるべきである。nが1〜50の範囲の上限に近づく場合、CH2=C(CH3)C(=O)O−(CH2CH2O)n−C(=O)C(CH3)=CH2架橋剤は、熱あるいは超音波の援助によって、構造Iのあるモノマーに所望レベルで可溶であり得る。
【0017】
一般に、1つのみの架橋モノマーが本発明のデバイス材料に存在する。しかし、幾つかの場合に架橋モノマーの組み合せが所望され得る。2種類以上の架橋剤の組み合せが用いられる場合、架橋剤はいずれも、CH2=C(CH3)C(=O)O−(CH2CH2O)n−C(=O)C(CH3)=CH2(ここでnは2〜50である)ではあり得ない。
【0018】
一般に、架橋成分の総量は、少なくとも0.1重量%であり、そして残留成分の正体および濃度ならびに所望の物理的特性に基づいて、約20重量%までの範囲であり得る。架橋成分のより好ましい濃度範囲は、0.1〜15重量%である。
【0019】
アリールアクリル疎水性レンズ形成モノマーおよび架橋成分に加えて、本発明のレンズ材料はまた、約10重量%までの総量の、反応性UV光吸収剤および/または青色光吸収剤のような、他の目的に役立つ追加成分を含み得る。
【0020】
好ましい反応性UV吸収剤は、2−(2’−ヒドロキシ−3’−メタリル−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾールであり、o−Methallyl Tinuvin P(「oMTP」)として、Polysciences,Inc.(Warrington,Pennsylvania)から市販される。UV吸収剤は、典型的に、約0.1〜5%(重量)の量で存在する。
【0021】
適切な反応性青色光吸収化合物は、米国特許第5,470,932号に記載されるものであり、その全ての内容は本明細書において参考として援用される。青色光吸収剤は、典型的に約0.01〜0.5%(重量)の量で存在する。
【0022】
適切な重合開始剤には熱開始剤および光開始剤が挙げられる。好ましい熱開始剤には、t−ブチル(ペルオキシ−2−エチル)ヘキサノエートおよびジ−(tert−ブチルシクロへキシル)ペルオキシジカーボネート(Akzo Chemicals Inc.,Chicago,IllinoisからPerkadox(登録商標)16として市販されている)のようなペルオキシフリーラジカル開始剤が挙げられる。特に、レンズ材料が青色光吸収発色団を含んでいない場合には、好ましい光開始剤には、青色光開始剤の2,4,6−トリメチル−ベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(BASF Corporation(Charlotte,North Carolina)からLucirin(登録商標)TPOとして市販されている)のようなベンゾイルホスフィンオキシド光開始剤が挙げられる。開始剤は、典型的に約5%(重量)もしくはそれより少ない量で存在する。
【0023】
上記の主なレンズ形成モノマーの正体(identity)および量、ならびに任意の追加成分の正体および量は、完成した眼用レンズの所望の特性によって決定される。好ましくは、本発明のアクリルレンズ材料が、下記の特性を有するように、成分およびその割合が選択される:本発明の材料を、5mmもしくはそれより小さい切開を通して挿入されるIOLにおける使用に特に適切にする特性。
【0024】
このレンズ材料は、好ましくは、乾燥した状態において、589nm(Na光源)でのAbbe屈折計による測定では少なくとも約1.50の屈折率を有する。所定の光学直径(optic diameter)において、1.50より小さな屈折率を有する材料によって作られたオプティクスは、より大きな屈折率を有する材料から作られた同じ度のオプティクスよりも必然的に厚い。そのように、約1.50より小さな屈折率を有する材料から作られたIOLオプティクスは、一般的に、IOLの移植に比較的大きな切開を必要とする。
【0025】
材料の折り畳みおよび展開(unfolding)の特徴に影響を与える、レンズ材料のガラス転移温度(「Tg」)は、好ましくは約25℃未満、そしてより好ましくは約15℃未満である。Tgは10℃/分の示差走査熱量計によって測定され、そして熱流束曲線の転移の中間点として決定される。
【0026】
このレンズ材料は、少なくとも150%、好ましくは少なくとも200%、そして最も好ましくは少なくとも300%の伸長(elongation)を有する。この特性は、一般的にレンズを折り畳んだときに、このレンズが砕けたり、裂けたり割れたりしないことを示す。ポリマーサンプルの伸長は、全長20mm、グリップ領域の長さが4.88mm、全体の幅が2.49mm、狭い部分の幅が0.833mm、フィレット(fillet)半径が8.83mm、および厚さが0.9mmのダンベル型(dumbbell shaped)引張りテストの試験片で決定される。サンプルのテストは、標準的な実験室の状態である23±2℃および50±5%の相対湿度で、引張りテスターを用いて行われる。グリップの距離は14mmに設定され、クロスヘッドの速度は500mm/分に設定され、サンプルは破損するまで引張られる。その伸長(ひずみ)は、本来のグリップの距離に対する破損時の変位の割合として報告される。その率(module)は、選択されたひずみにおける応力ひずみ曲線の瞬間の傾きとして計算される。最初の面積が一定であると仮定して、応力は、サンプルについて最大負荷、代表的にはサンプルが破損した時の負荷で計算される。この応力は、下記の実施例における「引張り強さ」として記録される。
【0027】
本発明の材料で構成されたIOLは、比較的小さな切開を通して適合し得る小さな断面積へと巻かれるかもしくは折り畳まれ得る任意の設計であり得る。例えば、このIOLはワンピース(one piece)もしくはマルチピース(multipiece)設計として公知のものであり得、そしてオプティック(optic)成分およびハプティック(haptic)成分を含む。オプティックとはレンズとして役立つ部分である。ハプティックは、オプティックに結合され、そして眼中のその適切な位置にオプティックを保持する。オプティックおよびハプティック(単数または複数)は同じ、もしくは異なる材料であり得る。マルチピースレンズは、オプティックとハプティック(単数または複数)は別々に作られており、ハプティックはオプティックに結合されているためにそう言われる。単ピースレンズにおいては、オプティックとハプティックスはワンピース材料から形成される。その後、材料に依存して、ハプティックスは、IOLを製作するためにその材料から切断もしくは旋盤(lathed)される。
【0028】
本発明は以下の実施例によってさらに例示され、これらの実施例は例示的であり、限定しないことが意図される。
【0029】
(実施例1:4−フェニルブチルメタクリレートの合成)
【0030】
【化3】

テフロン(登録商標)コートされた磁気攪拌子が入った三口丸底フラスコに、120mL(1.09mol)のメチルメタクリレート(2)、5.35g(0.015mol)のチタンテトラブトキシド(Ti(OC494)、60mL(0.39mol)の4−フェニル−1−ブタノール(1)、および14.6g(0.073mol)の4−ベンジルオキシフェノール(4−BOP)を連続的に充填した。添加漏斗、温度計、および温度計を取りつけたショートパス蒸留器の頭部およびレシーバーフラスコをフラスコの口に取りつけた。このフラスコをオイルバス中に設置し、蒸留が始まるまで温度を上げた。添加漏斗にメチルメタクリレート(2)を入れ、蒸留物と同じ速度で滴下した。反応混合物を4時間加熱し、次いで室温まで冷却した。その粗生成物を減圧蒸留し、62.8g(0.29mol、74%)の4−フェニルブチルメタクリレート(3)を無色透明な液体として単離した。
【0031】
(実施例2:3−ベンジルオキシプロピルメタクリレートの合成)
【0032】
【化4】

テフロン(登録商標)コートされた磁気攪拌子が入った三口丸底フラスコに、95mL(0.884mol)のメチルメタクリレート(2)、4.22g(0.012mol)のチタンテトラブトキシド(Ti(OC494)、50mL(0.316mol)の3−ベンジルオキシ−1−プロパノール(1)、および14.6g(0.073mol)の4−ベンジルオキシフェノール(4−BOP)を連続的に充填した。添加漏斗、温度計、および温度計を取りつけたショートパス蒸留器の頭部およびレシーバーフラスコをフラスコの口に取り付けた。このフラスコをオイルバス中に設置し、蒸留が始まるまで温度を上げた。添加漏斗にメチルメタクリレート(2)を入れ、蒸留物と同じ速度で滴下した。その反応混合物を4時間加熱し、次いで室温まで冷却した。その粗生成物を減圧蒸留し、36.5g(0.156mol、49%)の3−ベンジルオキシプロピルメタクリレート(3)を無色透明の液体として単離した。
【0033】
以下の表1〜4に示した実施例3〜29は本発明の材料を例示する。実施例3〜29のそれぞれの処方物を以下のように調製する。表1〜4に列挙されている処方物成分を合わせた後、各々の処方物は攪拌によって混合され、次いで25×12×1mmのポリプロピレンのスラブ鋳型に注がれる。スラブを作るために、スラブ鋳型の底の部分の空洞に処方物が限度いっぱいまで充填され、次いで上部がシールとして厳密に配置される。鋳型は、不活性窒素下もしくは標準的な実験室大気下のどちらかで充填され得る。硬化の間に鋳型のジオメトリ(mold geometry)を保つために、鋳型にバネクランプが使われる。このクランプで固定された鋳型を強制空気オーブンの中に設置し、70〜80℃に加熱し、70〜80℃で1時間維持した後、約100〜110℃に加熱され、約100〜110℃で2時間維持することにより硬化する。重合期間の終了時、鋳型が開けられ、硬化した眼内レンズもしくは高分子スラブが取り外され、架橋網目構造に結合していない物質を全て取り除くためにアセトン中で抽出される。
【0034】
表1〜4に示されている硬化した物質の物理的特性データを評価した(上記で言及された方法に基づく)。他に指示がない限り、下記に示される全ての成分の量は重量%によって列挙される。以下の略称は表1〜4において使用される:
PEMA:2−フェニルエチルメタクリレート
PPrMA:3−フェニルプロピルメタクリレート
PBMA:4−フェニルブチルメタクリレート
BEEMA:ベンジルオキシエトキシエチルメタクリレート
BEMA:2−ベンジルオキシエチルメタクリレート
BPMA:3−ベンジルオキシプロピルメタクリレート
PPMA:5−フェニルペンチルメタクリレート
BBMA:4−ベンジルオキシブチルメタクリレート
PEO 1000:ポリエチレングリコール 1000 ジメタクリレート
PEO 600:ポリエチレングリコール 600 ジメタクリレート
PEO 400:ポリエチレングリコール 400 ジメタクリレート
EGDMA:エチレングリコールジメタクリレート
t−BPO:t−ブチル(ペルオキシ−2−エチル)ヘキサノエート
BPO:ベンゾイルペルオキシド。
【0035】
【表1】

【0036】
【表2】

【0037】
【表3】

【0038】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。

【公開番号】特開2011−161261(P2011−161261A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−112886(P2011−112886)
【出願日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【分割の表示】特願2001−522299(P2001−522299)の分割
【原出願日】平成12年8月23日(2000.8.23)
【出願人】(399054697)アルコン,インコーポレイテッド (102)
【Fターム(参考)】