折り畳み型携帯電話機
【課題】開状態でも閉状態でも良好なアンテナ特性を実現することができる折り畳み型携帯電話機の提供。
【解決手段】上部筐体1と下部筐体2とヒンジ部3とヒンジ部3近傍に配置したアンテナ4とを少なくとも備える折り畳み型携帯電話機において、ホールICなどを用いて筐体の開閉状態を検出する開閉検出手段と、下部回路基板6に接続される上下接続切替回路9と、上部回路基板5と上下接続切替回路9とを接続する上下筐体接続金具8とを設け、上下接続切替回路9では、開閉検出手段からの開閉状態信号に基づいてPINダイオードなどをON/OFFさせることによってインピーダンスを変化させる。これにより、携帯電話機の開閉状態に応じて適切なインピーダンスに切り替えることができるため、開状態でも閉状態でも良好なアンテナ特性を実現することができる。
【解決手段】上部筐体1と下部筐体2とヒンジ部3とヒンジ部3近傍に配置したアンテナ4とを少なくとも備える折り畳み型携帯電話機において、ホールICなどを用いて筐体の開閉状態を検出する開閉検出手段と、下部回路基板6に接続される上下接続切替回路9と、上部回路基板5と上下接続切替回路9とを接続する上下筐体接続金具8とを設け、上下接続切替回路9では、開閉検出手段からの開閉状態信号に基づいてPINダイオードなどをON/OFFさせることによってインピーダンスを変化させる。これにより、携帯電話機の開閉状態に応じて適切なインピーダンスに切り替えることができるため、開状態でも閉状態でも良好なアンテナ特性を実現することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、折り畳み型携帯電話機に関し、特に、ヒンジ部近傍にアンテナが配置される折り畳み型携帯電話機のアンテナ特性に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の携帯電話機は、単純な折り畳みだけではなく、上部筐体が横回転するような構造や、自由に回転できる構造を持ったものなど、多種多様な携帯電話機が登場している。このような構造の携帯電話機では、デザインや実装の都合により、アンテナは下部筐体に配置されることが多い。下部筐体にアンテナを配置した一般的な折り畳み型携帯電話機の一例を図11に示す。
【0003】
図11に示す従来の折り畳み型携帯電話機は、上部筐体1と、下部筐体2と、ヒンジ部3と、アンテナ4とで構成されている。上部筐体1には上部回路基板5や表示部10などが、下部筐体2には下部回路基板6や電池11などが収納されている。また、アンテナ4への給電は、下部回路基板6に実装された無線部とアンテナ4とが給電金具を介して接続することで行っている。
【0004】
図11に示す従来の折り畳み型携帯電話機のアンテナ特性を確保する方法として、例えば、特開2002−27066号公報のような方法がある。この公報では、上部筐体1と下部筐体2の両方のケースを、例えば、モールドのような絶縁物で構成する、もしくは、上部筐体1のケースはダイキャストのような金属で、下部筐体2のケースはモールドのような絶縁物で構成している。また、上部回路基板5と下部回路基板6とを接続する上下回路接続部7は、ヒンジ部3で1回巻かれた状態で配置し、上下回路接続部7にインダクタンスを持たせ、上部筐体1側と下部筐体2側の間に流れる高周波電流の量を減少させるように構成している。
【0005】
このように、ヒンジ部3近傍にアンテナ4を配置した折り畳み型携帯電話機において、開いているときのアンテナ特性を確保するためには、上部筐体1側と下部筐体2側との間を電気的に切り離すように構成する必要がある。
【0006】
【特許文献1】特開2002−27066号公報(第8〜13頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図12は、上部筐体と下部筐体間の接続インピーダンスを変化させたときの、950MHzにおける接続インピーダンスと放射効率の関係を示している。
【0008】
本特性は、図11に示す折り畳み型携帯電話機において、上下回路接続部7の代わりに、上部回路基板5と下部回路基板7との間にコイルまたはコンデンサを配置し、この定数を変化させることで上部筐体1側と下部筐体2側との間の接続インピーダンスを変化させている。図13に実験に用いた携帯電話機の構成図を示す。なお、図13に示す折り畳み型携帯電話機は、上部筐体1のケースをダイキャストで構成し、下部筐体2のケースをモールドで構成している。
【0009】
図12の放射効率に着目すると、携帯電話機が開いているときは、インピーダンスが+60jからOPEN近傍のときが良く、閉じているときは、インピーダンスが−100jから+60j近傍のときが良いことがわかる。このように、良好なアンテナ特性を実現するためには、開いているときのインピーダンスと閉じているときのインピーダンスを別々に設定する必要があるが、従来の折り畳み型携帯電話機には、開閉状態に応じて上部筐体側と下部筐体側との間のインピーダンスを切り替えることができなかったため、開いているとき又は閉じているときのいずれかの状態では良好なアンテナ特性を実現することができないという問題があった。
【0010】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、その主たる目的は、開いているときでも閉じているときでも良好なアンテナ特性を実現することができる折り畳み型携帯電話機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明の折り畳み型携帯電話機は、上部筐体と、下部筐体と、前記上部筐体と前記下部筐体とを開閉可能に接続するヒンジ部と、前記上部筐体又は前記下部筐体の一方の前記ヒンジ部近傍に配置されるアンテナとを少なくとも備える折り畳み型携帯電話機において、前記上部筐体と前記下部筐体との開閉状態を検出して開閉状態信号を送出する開閉検出手段と、前記上部筐体側の構成部品又は前記下部筐体側の構成部品の一方に接続される切替手段と、前記上部筐体側の構成部品又は前記下部筐体側の構成部品の他方と前記切替手段とを接続する接続手段とを備え、前記切替手段では、前記開閉状態信号に基づいて、前記上部筐体の構成部品と前記下部筐体の構成部品との間のインピーダンスを切り替えるものである。
【0012】
本発明においては、前記切替手段では、前記上部筐体と前記下部筐体とが閉状態の時は前記インピーダンスを第1の値に設定し、前記上部筐体と前記下部筐体とが開状態の時は前記インピーダンスを前記第1の値よりも大きい第2の値に設定する構成とすることができる。
【0013】
また、本発明においては、前記切替手段は、コンデンサとPINダイオードとを含み、前記開閉状態信号に基づいて前記PINダイオードをON/OFF制御することにより、前記コンデンサを用いて前記インピーダンスを変化させる構成とすることもできる。
【0014】
また、本発明においては、前記切替手段は、共振回路とPINダイオードとを含み、前記開閉状態信号に基づいて前記PINダイオードをON/OFF制御することにより、前記共振回路を用いて前記インピーダンスを変化させる構成とすることもできる。
【0015】
また、本発明においては、前記開閉検出手段は、前記上部筐体又は前記下部筐体の一方に配置されるホールICと、前記上部筐体又は前記下部筐体の他方の前記ホールICに対向する位置に配置されるマグネットとで構成することができる。
【0016】
このように、本発明は、携帯電話機の開閉状態に応じて適切なインピーダンスに設定することができるため、開いているときでも閉じているときでも良好なアンテナ特性を実現することができる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明の折り畳み型携帯電話機によれば、開いているとき及び閉じているときのどちらにおいても、良好なアンテナ特性を確保することができる。
【0018】
その理由は、折り畳み型携帯電話機に、磁気的又は機械的に筐体の開閉状態を検出する開閉検出手段と、該開閉検出手段からの開閉状態信号に基づいてインピーダンスを変更する上下接続切替回路とを備えているため、折り畳み型携帯電話機の開閉状態に応じて、上部筐体側と下部筐体側との間のインピーダンスを切り替えることができるからである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明は、その好ましい一実施の形態において、上部筐体と、下部筐体と、ヒンジ部と、上部筐体又は下部筐体のヒンジ部近傍に配置したアンテナとを少なくとも備える折り畳み型携帯電話機において、ホールICなどを用いた磁気的方法やボタン式スイッチなどを用いた機械的方法で筐体の開閉状態を検出する開閉検出手段と、上部筐体側の構成部品又は下部筐体側の構成部品の一方に接続される上下接続切替回路と、上部筐体側の構成部品又は下部筐体側の構成部品の他方と上下接続切替回路とを接続する上下筐体接続金具とを備え、上下接続切替回路では、開閉検出手段からの開閉状態信号に基づいてPINダイオードをON/OFFさせるなどによって上部筐体側の構成部品と下部筐体側の構成部品との間のインピーダンスを切り替える制御を行う。このような構成により、携帯電話機の開閉状態に応じて適切なインピーダンスに設定することができるため、開いているときでも閉じているときでも良好なアンテナ特性を実現することができる。
【実施例1】
【0020】
上記した本発明の実施の形態についてさらに詳細に説明すべく、本発明の第1の実施例に係る折り畳み型携帯電話機について、図1乃至図6を参照して説明する。図1は、本発明の第1の実施例に係る折り畳み型携帯電話機の構成を模式的に示す斜視図であり、図2及び図3は、開閉検出手段の具体的構成を示す側面図である。また、図4は、上下接続切替回路の動作を模式的に示す図、図5は、上下接続切替回路の具体的構成を示す回路図であり、図6は、上部筐体側の構成部品と下部筐体側の構成部品との間のインピーダンス特性を示すスミス図である。
【0021】
図1に示すように、本実施例の折り畳み型携帯電話機は、上部筐体1と、下部筐体2と、ヒンジ部3と、下部筐体ヒンジ部近傍に配置したアンテナ4と、開閉検出手段(図2及び図3に示す。)と、上下筐体接続金具8と、上下接続切替回路9とで構成されている。なお、本実施の形態の折り畳み型携帯電話機は、上部筐体1のケースをダイキャストで構成し、下部筐体2のケースをモールドで構成している。また、上部回路基板5と下部回路基板6を接続する上下回路接続部7を、ヒンジ部3で1回巻かれた状態で配置することによりインダクタンスを持たせ、上部筐体1と下部筐体2間に流れる高周波電流の量を減少させ、電気的に切り離すように構成されている。
【0022】
上部筐体1には、上部回路基板5や表示部10などが収納され、下部筐体2には下部回路基板6や電池11などが収納されている。上下筐体接続金具8は、一方が上部回路基板5と、他方が上下接続切替回路9と接続するように構成されており、上下接続切替回路9は、上下筐体接続金具8と下部回路基板6との間に配置されている。また、上部筐体1のケースと上部回路基板5は接続して構成され、アンテナ4への給電は、下部回路基板6に実装された無線部とアンテナ4を給電金具を介して接続することで行っている。
【0023】
なお、図1の構成は例示であり、各々の筐体の材料や構造、筐体内部の構成部品やその配置、ヒンジ部3の構造などは特に限定されない。また、図1では、上下筐体接続金具8は、上下接続切替回路9を介して上部回路基板5と下部回路基板6とを接続しているが、上下接続切替回路9を介して上部筐体1側の少なくとも1つの構成部品(上部筐体1自体又はその内部に収納される部品)と下部筐体2側の少なくとも1つの構成部品(下部筐体2自体又はその内部に収納される部品)とを接続する構成であればよい。
【0024】
図2及び図3は、開閉検出手段の動作について示す図である。図2の開閉検出手段は、磁気量を電圧に変換して出力するホールIC12とマグネット13などからなる磁気スイッチで構成されている。図2(a)は上部筐体1と下部筐体2とが閉じた状態を示しており、ホールIC12とマグネット13が接近している。したがって、ホールIC12は閉じていることを示す開閉検出信号(ここではHigh信号)を出力する。また、図2(b)は上部筐体1と下部筐体2とが開いている状態を示しており、ホールIC12とマグネット13が離れている。したがって、ホールIC12は開いていることを示す開閉検出信号(ここではLow信号)を出力する。
【0025】
また、図3の開閉検出手段は、突起15とボタン式スイッチ14などからなる機械的なスイッチで構成されている。図3(a)は上部筐体1と下部筐体2とが閉じているときを示しており、突起15がボタン式スイッチ14を押すことによってスイッチがONし、ボタン式スイッチ14は閉じていることを示す開閉検出信号(ここではHigh信号)を出力する。また、図3(b)は上部筐体1と下部筐体2とが開いているときを示しており、突起15がボタン式スイッチ14を押さないことによりスイッチがOFFし、ボタン式スイッチ14は開いていることを示す開閉検出信号(ここではLow信号)を出力する。このような開閉検出手段を用いることで、携帯電話機の開閉状態を検出することができる。
【0026】
なお、図2及び図3では開閉検出手段として磁気的又は機械的に動作するスイッチを示したが、携帯電話機の開閉状態を検出可能な他の手段(例えば、光学的に検出するスイッチなど)を用いることもできる。また、この開閉検出手段は本実施例の制御のために設けてもよいが、折り畳み型携帯電話機には、通常、開閉状態に応じて表示部10のバックライトのON/OFFを制御するための開閉検出手段を備えているため、この開閉検出手段を本実施例の制御に利用してもよい。
【0027】
図4は、上部筐体1側と下部筐体2側との間のインピーダンス切り替えの様子を示したブロック図である。図中のインピーダンスAは、開いているときに最適なインピーダンスに、インピーダンスBは、閉じているときに最適なインピーダンスにそれぞれ調整されている。スイッチの切り替えは、開閉検出手段からの開閉検出信号により実施している。具体的には、開いているとき、スイッチはインピーダンスAと接続し、閉じているとき、スイッチはインピーダンスBと接続するように構成されており、上部筐体1側の構成部品と下部筐体2側の構成部品との間のインピーダンスはそれぞれの状態で、最適なインピーダンスが実現できる。本発明では、上記インピーダンスの切り替えは、上下接続切替回路9を用いて行っている。以下に、上下接続切替回路9の具体例な説明を行う。
【0028】
図5は、上下接続切替回路9の具体的な構成を示す回路図である。本実施例の上下接続切替回路9は、PINダイオードのONとOFFにより、上部筐体1側の構成部品と下部筐体2側の構成部品との間のインピーダンスを切り替えている。上下接続切替回路9の動作は次の通りである。携帯電話機を開いているときは、開閉検出手段からLowの開閉検出信号が出力されるためPINダイオードはOFFし、非導通状態となる。一方、閉じているときは、開閉検出手段からHighの開閉検出信号が出力されるためPINダイオードはONし、導通状態となる。
【0029】
図6は、第1の実施例における上部筐体1側の構成部品と下部筐体2側の構成部品との間のインピーダンス特性を示したスミス図であり、図6(a)は開いているときを、図6(b)に閉じているときを示している。なお、スミス図上には、実線で800MHzから1000MHzまでのインピーダンスを、点で950MHzのインピーダンスを示している。図6(a)を参照すると、PINダイオードがOFFしているとき、すなわち、開いているとき、950MHzのインピーダンス(図の黒丸)はOPEN近傍に位置していることがわかる。また、図6(b)を参照すると、PINダイオードがONしているとき、すなわち、閉じているとき、950MHzのインピーダンス(図の黒四角)はSHORT近傍に位置していることがわかる。このインピーダンス時のアンテナ特性は、図12より、開いているとき閉じているとき共に良好であることがわかる。
【0030】
このようにPINダイオードのON、OFFを切り替えることで、開いているときと、閉じているときで、上部筐体1側の構成部品と下部筐体2側の構成部品との間のインピーダンスを変化させることができる。これにより、開いているときと閉じているとき、それぞれの状態で良好なアンテナ特性を得ることができる。
【実施例2】
【0031】
次に、本発明の第2の実施例に係る折り畳み型携帯電話機について、図7及び図8を参照して説明する。図7は、上下接続切替回路の具体的構成を示す回路図であり、図8は、上部筐体側の構成部品と下部筐体側の構成部品との間のインピーダンス特性を示すスミス図である。
【0032】
本実施例の上下接続切替回路9は、直列共振回路を用いて構成していることを特徴としている。直列共振回路を用いる利点は、直列共振回路の共振周波数を変化させることで、閉じているときのインピーダンスを任意に変更ができる点にある。なお、上下接続切替回路9以外の携帯電話機の構成については、第1の実施例と同様の構成となっている。
【0033】
本回路構成における上下接続切替回路9の動作は次の通りである。携帯電話機を開いているときは、開閉検出手段からLowの開閉検出信号が出力されるためPINダイオードはOFFし、非導通状態となる。このとき、上下接続切替回路9の直列共振回路は動作しない。一方、閉じているときは、開閉検出手段からHighの開閉検出信号が出力されるためPINダイオードはONし、導通状態となる。このとき、上下接続切替回路9はコイルとコンデンサによる直列共振回路として動作する。
【0034】
図8は、第2の実施例における上部筐体1側の構成部品と下部筐体2側の構成部品との間のインピーダンス特性を示したスミス図あり、図8(a)は開いているときを、図8(b)は閉じているときを示している。なお、スミス図上には、実線で800MHzから1000MHzまでのインピーダンスを、点で950MHzのインピーダンスを示している。図8(a)を参照すると、PINダイオードがOFFしているとき、すなわち、開いているときの950MHzのインピーダンス(図の黒丸)はOPEN近傍に位置していることがわかる。また、図8(b)を参照すると、PINダイオードがONしているとき、すなわち、閉じているときの950MHzのインピーダンス(図の黒四角)は−20j近傍に位置していることがわかる。このインピーダンス時のアンテナ特性は、図12より、開いているとき閉じているとき共に良好であることがわかる。
【0035】
このように、上下接続切替回路9として直列共振回路を用いても上部筐体1側の構成部品と下部筐体2側の構成部品との間のインピーダンスを変化させることができ、開いているときと閉じているとき、それぞれの状態で良好なアンテナ特性を得ることができる。
【実施例3】
【0036】
次に、本発明の第3の実施例に係る折り畳み型携帯電話機について、図9及び図10を参照して説明する。図9は、上下接続切替回路の具体的構成を示す回路図であり、図10は、上部筐体側の構成部品と下部筐体側の構成部品との間のインピーダンス特性を示すスミス図である。
【0037】
本実施例の上下接続切替回路9は、並列共振回路を用いて構成していることを特徴としている。並列共振回路を用いる利点は、並列共振回路の共振周波数を変化させることで、開いているときのインピーダンスを任意に変更ができる点にある。なお、上下接続切替回路9以外の携帯電話機の構成については、第1の実施例と同様の構成となっている。
【0038】
本回路構成における上下接続切替回路の動作は次の通りである。携帯電話機を開いているときは、開閉検出手段からLowの開閉検出信号が出力される。この信号はNOT素子を通過することでHighの信号となる。PINダイオードにはHighの信号が入力されるためPINダイオードはONし、導通状態となる。これにより、上下接続切替回路9はコイルとコンデンサによる並列共振回路として動作する。一方、閉じているときは、開閉検出手段からHighの開閉検出信号が出力される。この信号はNOT素子を通過することでLowの信号となる。PINダイオードにはLowの信号が入力されるためPINダイオードはOFFし、非導通状態となる。このとき、上下接続切替回路9の並列共振回路は動作せず、コンデンサのみが下部回路基板6と接続される。
【0039】
図10は、第3の実施例における上部筐体1側の構成部品と下部筐体2側の構成部品との間のインピーダンス特性を示したスミス図であり、図10(a)は開いているときを、図10(b)は閉じているときを示している。なお、スミス図上には、実線で800MHzから1000MHzまでのインピーダンスを、点で950MHzのインピーダンスを示している。図10(a)を参照すると、PINダイオードがONしているとき、すなわち、開いているときの950MHzのインピーダンス(図の黒丸)は+130j近傍に位置していることがわかる。また、図10(b)を参照すると、PINダイオードがOFFしているとき、すなわち、閉じているときの950MHzのインピーダンス(図の黒四角)は−20j近傍に位置していることがわかる。このインピーダンス時のアンテナ特性は、図12より、開いているとき閉じているとき共に最適であることがわかる。
【0040】
このように、上下接続切替回路9に並列共振回路を用いても、上部筐体1側の構成部品と下部筐体2側の構成部品との間のインピーダンスを変化させることができ、開いているときと閉じているとき、それぞれの状態で良好なアンテナ特性を得ることができる。また、並列共振回路による切り替えでは、閉じている時にPINダイオードがOFFしているので、第1及び第2の実施例と比較して、待ち受け電流を削減する効果も持ち合わせている。
【0041】
なお、上記各実施例では、開閉検出手段からの開閉検出信号に基づいてPINダイオードをON/OFFすることによってインピーダンスを変化させたが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、開閉検出手段からの開閉検出信号に基づいて、開状態のときにインピーダンスを大きく、閉状態のときにインピーダンスを小さくする制御が可能な構成であればよく、例えば、上下接続切替回路9に開閉検出信号と周波数信号を組み合わせることで、使用周波数に応じて、上部筐体と下部筐体間のインピーダンスを変化させることも可能である。
【0042】
また、上記各実施例では、下部筐体2にアンテナ4を備える構成について記載したが、ヒンジ部3近傍の上部筐体1側にアンテナ4を備える携帯電話機においても、同様に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は携帯電話機に限らず、開閉可能な一対の筐体とアンテナとを備える携帯端末やゲーム機などに対しても適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の第1の実施例に係る折り畳み型携帯無線機の構成を模式的に示す斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施例に係る折り畳み型携帯電話機の開閉検出手段(磁気的スイッチ)の構成例を示す側面図である。
【図3】本発明の第1の実施例に係る折り畳み型携帯電話機の開閉検出手段(機械的スイッチ)の構成例を示す側面図である。
【図4】本発明の第1の実施例に係る折り畳み型携帯電話機のインピーダンス切り替え動作を模式的に示すブロック図である。
【図5】本発明の第1の実施例に係る折り畳み型携帯電話機の上下接続切替回路の構成例を示す回路図である。
【図6】本発明の第1の実施例に係る折り畳み型携帯電話機の上部筐体と下部筐体間のインピーダンスを示すスミス図である。
【図7】本発明の第2の実施例に係る折り畳み型携帯電話機の上下接続切替回路の構成例を示す回路図である。
【図8】本発明の第2の実施例に係る折り畳み型携帯電話機の上部筐体と下部筐体間のインピーダンスを示すスミス図である。
【図9】本発明の第3の実施例に係る折り畳み型携帯電話機の上下接続切替回路の構成例を示す回路図である。
【図10】本発明の第3の実施例に係る折り畳み型携帯電話機の上部筐体と下部筐体間のインピーダンスを示すスミス図である。
【図11】従来の折り畳み型携帯電話機の構成を模式的に示す斜視図である。
【図12】折り畳み型携帯電話機の上部筐体と下部筐体間のインピーダンスと放射効率の関係を示す図(グラフ)である。
【図13】実験に用いた折り畳み型携帯電話機の構成を示す側面図である。
【符号の説明】
【0045】
1 上部筐体
2 下部筐体
3 ヒンジ部
4 アンテナ
5 上部回路基板
6 下部回路基板
7 上下回路接続部
8 上下筐体接続金具
9 上下接続切替回路
10 表示部
11 電池
12 ホールIC
13 マグネット
14 ボタン式スイッチ
15 突起
16 上下基板接続部
【技術分野】
【0001】
本発明は、折り畳み型携帯電話機に関し、特に、ヒンジ部近傍にアンテナが配置される折り畳み型携帯電話機のアンテナ特性に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の携帯電話機は、単純な折り畳みだけではなく、上部筐体が横回転するような構造や、自由に回転できる構造を持ったものなど、多種多様な携帯電話機が登場している。このような構造の携帯電話機では、デザインや実装の都合により、アンテナは下部筐体に配置されることが多い。下部筐体にアンテナを配置した一般的な折り畳み型携帯電話機の一例を図11に示す。
【0003】
図11に示す従来の折り畳み型携帯電話機は、上部筐体1と、下部筐体2と、ヒンジ部3と、アンテナ4とで構成されている。上部筐体1には上部回路基板5や表示部10などが、下部筐体2には下部回路基板6や電池11などが収納されている。また、アンテナ4への給電は、下部回路基板6に実装された無線部とアンテナ4とが給電金具を介して接続することで行っている。
【0004】
図11に示す従来の折り畳み型携帯電話機のアンテナ特性を確保する方法として、例えば、特開2002−27066号公報のような方法がある。この公報では、上部筐体1と下部筐体2の両方のケースを、例えば、モールドのような絶縁物で構成する、もしくは、上部筐体1のケースはダイキャストのような金属で、下部筐体2のケースはモールドのような絶縁物で構成している。また、上部回路基板5と下部回路基板6とを接続する上下回路接続部7は、ヒンジ部3で1回巻かれた状態で配置し、上下回路接続部7にインダクタンスを持たせ、上部筐体1側と下部筐体2側の間に流れる高周波電流の量を減少させるように構成している。
【0005】
このように、ヒンジ部3近傍にアンテナ4を配置した折り畳み型携帯電話機において、開いているときのアンテナ特性を確保するためには、上部筐体1側と下部筐体2側との間を電気的に切り離すように構成する必要がある。
【0006】
【特許文献1】特開2002−27066号公報(第8〜13頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図12は、上部筐体と下部筐体間の接続インピーダンスを変化させたときの、950MHzにおける接続インピーダンスと放射効率の関係を示している。
【0008】
本特性は、図11に示す折り畳み型携帯電話機において、上下回路接続部7の代わりに、上部回路基板5と下部回路基板7との間にコイルまたはコンデンサを配置し、この定数を変化させることで上部筐体1側と下部筐体2側との間の接続インピーダンスを変化させている。図13に実験に用いた携帯電話機の構成図を示す。なお、図13に示す折り畳み型携帯電話機は、上部筐体1のケースをダイキャストで構成し、下部筐体2のケースをモールドで構成している。
【0009】
図12の放射効率に着目すると、携帯電話機が開いているときは、インピーダンスが+60jからOPEN近傍のときが良く、閉じているときは、インピーダンスが−100jから+60j近傍のときが良いことがわかる。このように、良好なアンテナ特性を実現するためには、開いているときのインピーダンスと閉じているときのインピーダンスを別々に設定する必要があるが、従来の折り畳み型携帯電話機には、開閉状態に応じて上部筐体側と下部筐体側との間のインピーダンスを切り替えることができなかったため、開いているとき又は閉じているときのいずれかの状態では良好なアンテナ特性を実現することができないという問題があった。
【0010】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、その主たる目的は、開いているときでも閉じているときでも良好なアンテナ特性を実現することができる折り畳み型携帯電話機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明の折り畳み型携帯電話機は、上部筐体と、下部筐体と、前記上部筐体と前記下部筐体とを開閉可能に接続するヒンジ部と、前記上部筐体又は前記下部筐体の一方の前記ヒンジ部近傍に配置されるアンテナとを少なくとも備える折り畳み型携帯電話機において、前記上部筐体と前記下部筐体との開閉状態を検出して開閉状態信号を送出する開閉検出手段と、前記上部筐体側の構成部品又は前記下部筐体側の構成部品の一方に接続される切替手段と、前記上部筐体側の構成部品又は前記下部筐体側の構成部品の他方と前記切替手段とを接続する接続手段とを備え、前記切替手段では、前記開閉状態信号に基づいて、前記上部筐体の構成部品と前記下部筐体の構成部品との間のインピーダンスを切り替えるものである。
【0012】
本発明においては、前記切替手段では、前記上部筐体と前記下部筐体とが閉状態の時は前記インピーダンスを第1の値に設定し、前記上部筐体と前記下部筐体とが開状態の時は前記インピーダンスを前記第1の値よりも大きい第2の値に設定する構成とすることができる。
【0013】
また、本発明においては、前記切替手段は、コンデンサとPINダイオードとを含み、前記開閉状態信号に基づいて前記PINダイオードをON/OFF制御することにより、前記コンデンサを用いて前記インピーダンスを変化させる構成とすることもできる。
【0014】
また、本発明においては、前記切替手段は、共振回路とPINダイオードとを含み、前記開閉状態信号に基づいて前記PINダイオードをON/OFF制御することにより、前記共振回路を用いて前記インピーダンスを変化させる構成とすることもできる。
【0015】
また、本発明においては、前記開閉検出手段は、前記上部筐体又は前記下部筐体の一方に配置されるホールICと、前記上部筐体又は前記下部筐体の他方の前記ホールICに対向する位置に配置されるマグネットとで構成することができる。
【0016】
このように、本発明は、携帯電話機の開閉状態に応じて適切なインピーダンスに設定することができるため、開いているときでも閉じているときでも良好なアンテナ特性を実現することができる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明の折り畳み型携帯電話機によれば、開いているとき及び閉じているときのどちらにおいても、良好なアンテナ特性を確保することができる。
【0018】
その理由は、折り畳み型携帯電話機に、磁気的又は機械的に筐体の開閉状態を検出する開閉検出手段と、該開閉検出手段からの開閉状態信号に基づいてインピーダンスを変更する上下接続切替回路とを備えているため、折り畳み型携帯電話機の開閉状態に応じて、上部筐体側と下部筐体側との間のインピーダンスを切り替えることができるからである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明は、その好ましい一実施の形態において、上部筐体と、下部筐体と、ヒンジ部と、上部筐体又は下部筐体のヒンジ部近傍に配置したアンテナとを少なくとも備える折り畳み型携帯電話機において、ホールICなどを用いた磁気的方法やボタン式スイッチなどを用いた機械的方法で筐体の開閉状態を検出する開閉検出手段と、上部筐体側の構成部品又は下部筐体側の構成部品の一方に接続される上下接続切替回路と、上部筐体側の構成部品又は下部筐体側の構成部品の他方と上下接続切替回路とを接続する上下筐体接続金具とを備え、上下接続切替回路では、開閉検出手段からの開閉状態信号に基づいてPINダイオードをON/OFFさせるなどによって上部筐体側の構成部品と下部筐体側の構成部品との間のインピーダンスを切り替える制御を行う。このような構成により、携帯電話機の開閉状態に応じて適切なインピーダンスに設定することができるため、開いているときでも閉じているときでも良好なアンテナ特性を実現することができる。
【実施例1】
【0020】
上記した本発明の実施の形態についてさらに詳細に説明すべく、本発明の第1の実施例に係る折り畳み型携帯電話機について、図1乃至図6を参照して説明する。図1は、本発明の第1の実施例に係る折り畳み型携帯電話機の構成を模式的に示す斜視図であり、図2及び図3は、開閉検出手段の具体的構成を示す側面図である。また、図4は、上下接続切替回路の動作を模式的に示す図、図5は、上下接続切替回路の具体的構成を示す回路図であり、図6は、上部筐体側の構成部品と下部筐体側の構成部品との間のインピーダンス特性を示すスミス図である。
【0021】
図1に示すように、本実施例の折り畳み型携帯電話機は、上部筐体1と、下部筐体2と、ヒンジ部3と、下部筐体ヒンジ部近傍に配置したアンテナ4と、開閉検出手段(図2及び図3に示す。)と、上下筐体接続金具8と、上下接続切替回路9とで構成されている。なお、本実施の形態の折り畳み型携帯電話機は、上部筐体1のケースをダイキャストで構成し、下部筐体2のケースをモールドで構成している。また、上部回路基板5と下部回路基板6を接続する上下回路接続部7を、ヒンジ部3で1回巻かれた状態で配置することによりインダクタンスを持たせ、上部筐体1と下部筐体2間に流れる高周波電流の量を減少させ、電気的に切り離すように構成されている。
【0022】
上部筐体1には、上部回路基板5や表示部10などが収納され、下部筐体2には下部回路基板6や電池11などが収納されている。上下筐体接続金具8は、一方が上部回路基板5と、他方が上下接続切替回路9と接続するように構成されており、上下接続切替回路9は、上下筐体接続金具8と下部回路基板6との間に配置されている。また、上部筐体1のケースと上部回路基板5は接続して構成され、アンテナ4への給電は、下部回路基板6に実装された無線部とアンテナ4を給電金具を介して接続することで行っている。
【0023】
なお、図1の構成は例示であり、各々の筐体の材料や構造、筐体内部の構成部品やその配置、ヒンジ部3の構造などは特に限定されない。また、図1では、上下筐体接続金具8は、上下接続切替回路9を介して上部回路基板5と下部回路基板6とを接続しているが、上下接続切替回路9を介して上部筐体1側の少なくとも1つの構成部品(上部筐体1自体又はその内部に収納される部品)と下部筐体2側の少なくとも1つの構成部品(下部筐体2自体又はその内部に収納される部品)とを接続する構成であればよい。
【0024】
図2及び図3は、開閉検出手段の動作について示す図である。図2の開閉検出手段は、磁気量を電圧に変換して出力するホールIC12とマグネット13などからなる磁気スイッチで構成されている。図2(a)は上部筐体1と下部筐体2とが閉じた状態を示しており、ホールIC12とマグネット13が接近している。したがって、ホールIC12は閉じていることを示す開閉検出信号(ここではHigh信号)を出力する。また、図2(b)は上部筐体1と下部筐体2とが開いている状態を示しており、ホールIC12とマグネット13が離れている。したがって、ホールIC12は開いていることを示す開閉検出信号(ここではLow信号)を出力する。
【0025】
また、図3の開閉検出手段は、突起15とボタン式スイッチ14などからなる機械的なスイッチで構成されている。図3(a)は上部筐体1と下部筐体2とが閉じているときを示しており、突起15がボタン式スイッチ14を押すことによってスイッチがONし、ボタン式スイッチ14は閉じていることを示す開閉検出信号(ここではHigh信号)を出力する。また、図3(b)は上部筐体1と下部筐体2とが開いているときを示しており、突起15がボタン式スイッチ14を押さないことによりスイッチがOFFし、ボタン式スイッチ14は開いていることを示す開閉検出信号(ここではLow信号)を出力する。このような開閉検出手段を用いることで、携帯電話機の開閉状態を検出することができる。
【0026】
なお、図2及び図3では開閉検出手段として磁気的又は機械的に動作するスイッチを示したが、携帯電話機の開閉状態を検出可能な他の手段(例えば、光学的に検出するスイッチなど)を用いることもできる。また、この開閉検出手段は本実施例の制御のために設けてもよいが、折り畳み型携帯電話機には、通常、開閉状態に応じて表示部10のバックライトのON/OFFを制御するための開閉検出手段を備えているため、この開閉検出手段を本実施例の制御に利用してもよい。
【0027】
図4は、上部筐体1側と下部筐体2側との間のインピーダンス切り替えの様子を示したブロック図である。図中のインピーダンスAは、開いているときに最適なインピーダンスに、インピーダンスBは、閉じているときに最適なインピーダンスにそれぞれ調整されている。スイッチの切り替えは、開閉検出手段からの開閉検出信号により実施している。具体的には、開いているとき、スイッチはインピーダンスAと接続し、閉じているとき、スイッチはインピーダンスBと接続するように構成されており、上部筐体1側の構成部品と下部筐体2側の構成部品との間のインピーダンスはそれぞれの状態で、最適なインピーダンスが実現できる。本発明では、上記インピーダンスの切り替えは、上下接続切替回路9を用いて行っている。以下に、上下接続切替回路9の具体例な説明を行う。
【0028】
図5は、上下接続切替回路9の具体的な構成を示す回路図である。本実施例の上下接続切替回路9は、PINダイオードのONとOFFにより、上部筐体1側の構成部品と下部筐体2側の構成部品との間のインピーダンスを切り替えている。上下接続切替回路9の動作は次の通りである。携帯電話機を開いているときは、開閉検出手段からLowの開閉検出信号が出力されるためPINダイオードはOFFし、非導通状態となる。一方、閉じているときは、開閉検出手段からHighの開閉検出信号が出力されるためPINダイオードはONし、導通状態となる。
【0029】
図6は、第1の実施例における上部筐体1側の構成部品と下部筐体2側の構成部品との間のインピーダンス特性を示したスミス図であり、図6(a)は開いているときを、図6(b)に閉じているときを示している。なお、スミス図上には、実線で800MHzから1000MHzまでのインピーダンスを、点で950MHzのインピーダンスを示している。図6(a)を参照すると、PINダイオードがOFFしているとき、すなわち、開いているとき、950MHzのインピーダンス(図の黒丸)はOPEN近傍に位置していることがわかる。また、図6(b)を参照すると、PINダイオードがONしているとき、すなわち、閉じているとき、950MHzのインピーダンス(図の黒四角)はSHORT近傍に位置していることがわかる。このインピーダンス時のアンテナ特性は、図12より、開いているとき閉じているとき共に良好であることがわかる。
【0030】
このようにPINダイオードのON、OFFを切り替えることで、開いているときと、閉じているときで、上部筐体1側の構成部品と下部筐体2側の構成部品との間のインピーダンスを変化させることができる。これにより、開いているときと閉じているとき、それぞれの状態で良好なアンテナ特性を得ることができる。
【実施例2】
【0031】
次に、本発明の第2の実施例に係る折り畳み型携帯電話機について、図7及び図8を参照して説明する。図7は、上下接続切替回路の具体的構成を示す回路図であり、図8は、上部筐体側の構成部品と下部筐体側の構成部品との間のインピーダンス特性を示すスミス図である。
【0032】
本実施例の上下接続切替回路9は、直列共振回路を用いて構成していることを特徴としている。直列共振回路を用いる利点は、直列共振回路の共振周波数を変化させることで、閉じているときのインピーダンスを任意に変更ができる点にある。なお、上下接続切替回路9以外の携帯電話機の構成については、第1の実施例と同様の構成となっている。
【0033】
本回路構成における上下接続切替回路9の動作は次の通りである。携帯電話機を開いているときは、開閉検出手段からLowの開閉検出信号が出力されるためPINダイオードはOFFし、非導通状態となる。このとき、上下接続切替回路9の直列共振回路は動作しない。一方、閉じているときは、開閉検出手段からHighの開閉検出信号が出力されるためPINダイオードはONし、導通状態となる。このとき、上下接続切替回路9はコイルとコンデンサによる直列共振回路として動作する。
【0034】
図8は、第2の実施例における上部筐体1側の構成部品と下部筐体2側の構成部品との間のインピーダンス特性を示したスミス図あり、図8(a)は開いているときを、図8(b)は閉じているときを示している。なお、スミス図上には、実線で800MHzから1000MHzまでのインピーダンスを、点で950MHzのインピーダンスを示している。図8(a)を参照すると、PINダイオードがOFFしているとき、すなわち、開いているときの950MHzのインピーダンス(図の黒丸)はOPEN近傍に位置していることがわかる。また、図8(b)を参照すると、PINダイオードがONしているとき、すなわち、閉じているときの950MHzのインピーダンス(図の黒四角)は−20j近傍に位置していることがわかる。このインピーダンス時のアンテナ特性は、図12より、開いているとき閉じているとき共に良好であることがわかる。
【0035】
このように、上下接続切替回路9として直列共振回路を用いても上部筐体1側の構成部品と下部筐体2側の構成部品との間のインピーダンスを変化させることができ、開いているときと閉じているとき、それぞれの状態で良好なアンテナ特性を得ることができる。
【実施例3】
【0036】
次に、本発明の第3の実施例に係る折り畳み型携帯電話機について、図9及び図10を参照して説明する。図9は、上下接続切替回路の具体的構成を示す回路図であり、図10は、上部筐体側の構成部品と下部筐体側の構成部品との間のインピーダンス特性を示すスミス図である。
【0037】
本実施例の上下接続切替回路9は、並列共振回路を用いて構成していることを特徴としている。並列共振回路を用いる利点は、並列共振回路の共振周波数を変化させることで、開いているときのインピーダンスを任意に変更ができる点にある。なお、上下接続切替回路9以外の携帯電話機の構成については、第1の実施例と同様の構成となっている。
【0038】
本回路構成における上下接続切替回路の動作は次の通りである。携帯電話機を開いているときは、開閉検出手段からLowの開閉検出信号が出力される。この信号はNOT素子を通過することでHighの信号となる。PINダイオードにはHighの信号が入力されるためPINダイオードはONし、導通状態となる。これにより、上下接続切替回路9はコイルとコンデンサによる並列共振回路として動作する。一方、閉じているときは、開閉検出手段からHighの開閉検出信号が出力される。この信号はNOT素子を通過することでLowの信号となる。PINダイオードにはLowの信号が入力されるためPINダイオードはOFFし、非導通状態となる。このとき、上下接続切替回路9の並列共振回路は動作せず、コンデンサのみが下部回路基板6と接続される。
【0039】
図10は、第3の実施例における上部筐体1側の構成部品と下部筐体2側の構成部品との間のインピーダンス特性を示したスミス図であり、図10(a)は開いているときを、図10(b)は閉じているときを示している。なお、スミス図上には、実線で800MHzから1000MHzまでのインピーダンスを、点で950MHzのインピーダンスを示している。図10(a)を参照すると、PINダイオードがONしているとき、すなわち、開いているときの950MHzのインピーダンス(図の黒丸)は+130j近傍に位置していることがわかる。また、図10(b)を参照すると、PINダイオードがOFFしているとき、すなわち、閉じているときの950MHzのインピーダンス(図の黒四角)は−20j近傍に位置していることがわかる。このインピーダンス時のアンテナ特性は、図12より、開いているとき閉じているとき共に最適であることがわかる。
【0040】
このように、上下接続切替回路9に並列共振回路を用いても、上部筐体1側の構成部品と下部筐体2側の構成部品との間のインピーダンスを変化させることができ、開いているときと閉じているとき、それぞれの状態で良好なアンテナ特性を得ることができる。また、並列共振回路による切り替えでは、閉じている時にPINダイオードがOFFしているので、第1及び第2の実施例と比較して、待ち受け電流を削減する効果も持ち合わせている。
【0041】
なお、上記各実施例では、開閉検出手段からの開閉検出信号に基づいてPINダイオードをON/OFFすることによってインピーダンスを変化させたが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、開閉検出手段からの開閉検出信号に基づいて、開状態のときにインピーダンスを大きく、閉状態のときにインピーダンスを小さくする制御が可能な構成であればよく、例えば、上下接続切替回路9に開閉検出信号と周波数信号を組み合わせることで、使用周波数に応じて、上部筐体と下部筐体間のインピーダンスを変化させることも可能である。
【0042】
また、上記各実施例では、下部筐体2にアンテナ4を備える構成について記載したが、ヒンジ部3近傍の上部筐体1側にアンテナ4を備える携帯電話機においても、同様に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は携帯電話機に限らず、開閉可能な一対の筐体とアンテナとを備える携帯端末やゲーム機などに対しても適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の第1の実施例に係る折り畳み型携帯無線機の構成を模式的に示す斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施例に係る折り畳み型携帯電話機の開閉検出手段(磁気的スイッチ)の構成例を示す側面図である。
【図3】本発明の第1の実施例に係る折り畳み型携帯電話機の開閉検出手段(機械的スイッチ)の構成例を示す側面図である。
【図4】本発明の第1の実施例に係る折り畳み型携帯電話機のインピーダンス切り替え動作を模式的に示すブロック図である。
【図5】本発明の第1の実施例に係る折り畳み型携帯電話機の上下接続切替回路の構成例を示す回路図である。
【図6】本発明の第1の実施例に係る折り畳み型携帯電話機の上部筐体と下部筐体間のインピーダンスを示すスミス図である。
【図7】本発明の第2の実施例に係る折り畳み型携帯電話機の上下接続切替回路の構成例を示す回路図である。
【図8】本発明の第2の実施例に係る折り畳み型携帯電話機の上部筐体と下部筐体間のインピーダンスを示すスミス図である。
【図9】本発明の第3の実施例に係る折り畳み型携帯電話機の上下接続切替回路の構成例を示す回路図である。
【図10】本発明の第3の実施例に係る折り畳み型携帯電話機の上部筐体と下部筐体間のインピーダンスを示すスミス図である。
【図11】従来の折り畳み型携帯電話機の構成を模式的に示す斜視図である。
【図12】折り畳み型携帯電話機の上部筐体と下部筐体間のインピーダンスと放射効率の関係を示す図(グラフ)である。
【図13】実験に用いた折り畳み型携帯電話機の構成を示す側面図である。
【符号の説明】
【0045】
1 上部筐体
2 下部筐体
3 ヒンジ部
4 アンテナ
5 上部回路基板
6 下部回路基板
7 上下回路接続部
8 上下筐体接続金具
9 上下接続切替回路
10 表示部
11 電池
12 ホールIC
13 マグネット
14 ボタン式スイッチ
15 突起
16 上下基板接続部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部筐体と、下部筐体と、前記上部筐体と前記下部筐体とを開閉可能に接続するヒンジ部と、前記上部筐体又は前記下部筐体の一方の前記ヒンジ部近傍に配置されるアンテナとを少なくとも備える折り畳み型携帯電話機において、
前記上部筐体と前記下部筐体との開閉状態を検出して開閉状態信号を送出する開閉検出手段と、前記上部筐体側の構成部品又は前記下部筐体側の構成部品の一方に接続される切替手段と、前記上部筐体側の構成部品又は前記下部筐体側の構成部品の他方と前記切替手段とを接続する接続手段とを備え、
前記切替手段では、前記開閉状態信号に基づいて、前記上部筐体の構成部品と前記下部筐体の構成部品との間のインピーダンスを切り替えることを特徴とする折り畳み型携帯電話機。
【請求項2】
前記切替手段では、前記上部筐体と前記下部筐体とが閉状態の時は前記インピーダンスを第1の値に設定し、前記上部筐体と前記下部筐体とが開状態の時は前記インピーダンスを前記第1の値よりも大きい第2の値に設定することを特徴とする請求項1記載の折り畳み型携帯電話機。
【請求項3】
前記切替手段は、コンデンサとPINダイオードとを含み、前記開閉状態信号に基づいて前記PINダイオードをON/OFF制御することにより、前記コンデンサを用いて前記インピーダンスを変化させることを特徴とする請求項2記載の折り畳み型携帯電話機。
【請求項4】
前記切替手段は、共振回路とPINダイオードとを含み、前記開閉状態信号に基づいて前記PINダイオードをON/OFF制御することにより、前記共振回路を用いて前記インピーダンスを変化させることを特徴とする請求項2記載の折り畳み型携帯電話機。
【請求項5】
前記開閉検出手段は、前記上部筐体又は前記下部筐体の一方に配置されるホールICと、前記上部筐体又は前記下部筐体の他方の前記ホールICに対向する位置に配置されるマグネットとで構成されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一に記載の折り畳み型携帯電話機。
【請求項1】
上部筐体と、下部筐体と、前記上部筐体と前記下部筐体とを開閉可能に接続するヒンジ部と、前記上部筐体又は前記下部筐体の一方の前記ヒンジ部近傍に配置されるアンテナとを少なくとも備える折り畳み型携帯電話機において、
前記上部筐体と前記下部筐体との開閉状態を検出して開閉状態信号を送出する開閉検出手段と、前記上部筐体側の構成部品又は前記下部筐体側の構成部品の一方に接続される切替手段と、前記上部筐体側の構成部品又は前記下部筐体側の構成部品の他方と前記切替手段とを接続する接続手段とを備え、
前記切替手段では、前記開閉状態信号に基づいて、前記上部筐体の構成部品と前記下部筐体の構成部品との間のインピーダンスを切り替えることを特徴とする折り畳み型携帯電話機。
【請求項2】
前記切替手段では、前記上部筐体と前記下部筐体とが閉状態の時は前記インピーダンスを第1の値に設定し、前記上部筐体と前記下部筐体とが開状態の時は前記インピーダンスを前記第1の値よりも大きい第2の値に設定することを特徴とする請求項1記載の折り畳み型携帯電話機。
【請求項3】
前記切替手段は、コンデンサとPINダイオードとを含み、前記開閉状態信号に基づいて前記PINダイオードをON/OFF制御することにより、前記コンデンサを用いて前記インピーダンスを変化させることを特徴とする請求項2記載の折り畳み型携帯電話機。
【請求項4】
前記切替手段は、共振回路とPINダイオードとを含み、前記開閉状態信号に基づいて前記PINダイオードをON/OFF制御することにより、前記共振回路を用いて前記インピーダンスを変化させることを特徴とする請求項2記載の折り畳み型携帯電話機。
【請求項5】
前記開閉検出手段は、前記上部筐体又は前記下部筐体の一方に配置されるホールICと、前記上部筐体又は前記下部筐体の他方の前記ホールICに対向する位置に配置されるマグネットとで構成されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一に記載の折り畳み型携帯電話機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2006−295621(P2006−295621A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−114730(P2005−114730)
【出願日】平成17年4月12日(2005.4.12)
【出願人】(390010179)埼玉日本電気株式会社 (1,228)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年4月12日(2005.4.12)
【出願人】(390010179)埼玉日本電気株式会社 (1,228)
【Fターム(参考)】
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