説明

折り畳み式梯子

【目的】 この発明は、ステップの踏み幅及び足掛け有効幅を大きく取って作業の安全性を向上させることである。
【構成】 この発明による折り畳み式梯子は、エレベータの昇降通路Aの壁面8と梯子の支柱6との間に延設された脚部9の中間部に形成し且つ前記壁面8に対する前記支柱6の間隔を変化させる折れ部9cと、前記壁面8に対して固定すると共に、前記折れ部9cを折り曲げて前記支柱6を前記壁面8に近付けたときに前記支柱6との協働により前記エレベータの運転回路21をオフ状態とし、前記折れ部9cを伸ばして前記支柱6を前記壁面8から離すときに前記エレベータの運転回路21をオフ状態にする安全スイッチ20とを備えた構成である。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、折り畳み式梯子に関し、特に、エレベータのかご壁と昇降通路の壁面との隙間に固定し、ステップの踏み幅及び足掛け有効幅を大きく取って作業の安全性を向上させることに関するものである
【0002】
【従来の技術】図6及び図7は従来のピット点検用梯子を示す正面図及び断面図である。図6,7において、Aはエレベータを通過させるために建築物内に形成した昇降通路、1は機器を保守点検をするために保守員が出入りする出入口(通常、エレベータの最下停止階の乗場がこれに相当する)、1aは出入口1の床面、2は昇降通路Aの最下に位置するピット床面、3はピット床面2に設けられた緩衝器、4はエレベータの昇降速度を調節するための調節機(図示せず)に連結された調節機ロープ、5はこの調節機ロープ4を巻回するための綱車、6は出入口1の床面1aから保守点検員の足が届く範囲とピット床面2との間で垂直方向に延設された一対の支柱、7はこれら支柱6間に平行に延設されたステップ、8は昇降通路Aの壁面、9は壁面8に対して支柱6を固定するための脚部、Lはステップ7の踏み幅、Mは壁面8とステップ7とによって形成された足掛け有効幅である。
【0003】ここで、従来のピット点検用梯子は以上のように構成され、その利用にあたって、保守員は、出入口1の床面1aから最上段のステップ7に足を掛け、ステップ7を踏みながらピット床面2まで降りて、緩衝器3等の点検を行う。そして、点検終了後に、ステップ7を踏みながら梯子を上ってゆき、出入口1から外へ出る。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】従来のピット点検用梯子は、以上のように構成されていたため、次のような課題が存在していた。すなわち、エレベータのかご壁と昇降通路の壁面との隙間はその構造上非常に狭いものとなっている。従って、昇降通路に従来のような固定式の梯子を設置する場合、ステップの踏み幅L及び足掛け有効幅Mを大きくすることが難しく一般に小さくなっていたため、保守員が昇降時に足を滑らせて転落するといった重大な問題点があった。
【0005】この発明は、以上のような課題を解決するためになされたもので、特に、ステップの踏み幅及び足掛け有効幅を大きく取って作業の安全性を向上させるようにした折り畳み式梯子を得ることを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】この発明に係る請求項1における折り畳み式梯子は、一対の支柱と、前記支柱間に平行に延設されたステップと、エレベータの昇降通路の壁面と前記支柱との間に延設された脚部とを備えた構成よりなる折り畳み式梯子において、前記脚部の中間部に形成し且つ前記壁面に対する前記支柱の間隔を変化させる折れ部と、前記壁面に対して固定すると共に、前記折れ部を折り曲げて前記支柱を前記壁面に近付けたときに前記支柱との協働により前記エレベータの運転回路をオフ状態とし、前記折れ部を伸ばして前記支柱を前記壁面から離すときに前記エレベータの運転回路をオフ状態にするように構成した安全スイッチとを備えたものである。
【0007】
【作用】この発明に係る請求項1における折り畳み式梯子においては、脚部の中間部に形成した折れ部を折り曲げることにより、支柱を昇降通路の壁面に近付けることができ、前記折れ部をほぼ一直線に伸ばすことにより、支柱を昇降通路の壁面から離すことができ、足掛け有効幅を大きく取ることができる。そして、壁面に対して支柱を出し入れする場合、支柱の移動に同期した安全スイッチにより、エレベータの運転回路をオン状態又はオフ状態にすることができる。
【0008】
【実施例】以下、この発明による折り畳み式梯子の実施例を図について説明する。なお、従来例と同一又は同等部分については、同一符号を付す。
【0009】実施例1.図1はこの発明の第1の実施例による折り畳み式梯子を引き出した状態を示す斜視図、図2は折り畳み式梯子を収納した状態を示す斜視図である。図1,2において6は一対の支柱、7は支柱間に平行に延設されたステップ、9は支柱6と昇降通路Aの壁面8との間に延設された脚部、10はピット床面2に固定し昇降通路Aの長手方向に延びるガイドレール、11はこのガイドレール10に溶接等で固定され略水平方向に延びる取付用ブラケットである。
【0010】前記脚部9は、水平方向において一対をなし上下2段で構成されていると共に、支柱6にピン13を介して枢着した第1脚片9aと、ブラケット11に溶接された支持部14にピン15を介して枢着した第2脚片9bとを備えている。そして、前記第1脚片9aと第2脚片9bとはピン12によって折曲げ自在に構成され、結果的に、脚部9の中間部に折れ部9cが形成されることになる。また、前記第1脚片9aには、ピン12を中心にした第2脚片9bの回動量を規制する規制片16が一体的に設けられている。この規制片16は第1脚片9aの頂面に形成され、脚部9の山折りを可能にしている。
【0011】前記昇降通路Aの壁面8には、安全スイッチ20がブラケット21を介して固定されている。この安全スイッチ20は、支柱6の一側面(壁面8に対向する側面)6aと対峙するように突設した棒状のスイッチ部20aを備えている。このスイッチ部20aは、スイッチ本体20bに対して出入自在をなし、スイッチ部20aが押し込まれたときにはエレベータの運転回路21をオン状態にし、スイッチ部20aがばね等により押し出されたときはエレベータの運転回路21をオフ状態にするスイッチ機構である(図5参照)。なお、スイッチ本体20bには、エレベータの運転回路21まで延びる配線収容管20cの一端が固定されている。
【0012】前記ブラケット21には、梯子を折り畳んだときに梯子を壁面8に対してしっかり固定するための梯子収容装置22が固設されている。この梯子収容装置22は、ブラケット21に固設された本体22aに対して回動自在に構成した鍵形の掛け止片22bを備えている。この掛け止片22bの先端には、梯子を折り畳んだ際に最上段のステップ7と係合させるためのフック部22cが形成されている。
【0013】次に、この発明による折り畳み式梯子の動作を説明する。先ず、エレベータを止めてピットを保守点検する場合、出入口1から保守員が手をのばし、図2R>2,3に示された状態の梯子の最上段のステップ7からフック部22cを外す。その結果、支柱6は、その自重により下方へ落下し、ピン12を中心に折れ部9cが伸びながら壁面8から離れる。そして、支柱6がスイッチ部20aから離れることにより、スイッチ部20aがB方向に移動して安全スイッチ20が入る。すなわち、図5R>5に示すように、安全スイッチ20の接点20d間が離れ、運転回路21がオフ状態になる。なお、梯子は、支柱6の底面がピット床面2に当接した時点で固定され、図4に示すように、折れ部9cが完全に伸びた状態で、足掛け有効幅Mを大きくとることができる。
【0014】この状態のとき、安全スイッチ20により、運転回路21が自動的に遮断され、保守員の安全は確保されているので、保守員はステップ7に足を掛けながらピット床面2まで降りる。そして、作業が終了した後に梯子を伝って出入口1まで上る。その後、支柱6を壁面8に向けて押付け、最終的に梯子が図3の状態になったときに、最上段のステップ7にフック部22cを引っ掛けて、梯子を壁面8に固定する。この時、支柱6の側面6aによりスイッチ部20aは矢印C方向に押圧され、安全スイッチ20は切れる。すなわち、図5に示すように、安全スイッチ20の各接点20d間が導通して運転回路21をオン状態にする。なお、他の安全装置に接続された運転リレー23がオン状態のときに限って、エレベータの運転が可能になる。
【0015】この発明は前述した実施例に限定されるものではなく、脚部9に設けた支持部14を取付用ブラケット11に固定することなく、直接、昇降通路Aの壁面8に固定してもよい。また、安全スイッチ20をブラケット21に固定することなく、直接、壁面8に固定してもよいことは言うまでもないことである。
【0016】
【発明の効果】この発明による請求項1の折り畳み式梯子は、エレベータの昇降通路の壁面に対して支柱を固定するための脚部の中間部に折れ部を形成しているため、通常のエレベータ作動時には折れ部を折り曲げて、梯子をかご壁と昇降通路の壁面との間の狭い空間に収容しておき、保守点検時には折れ部を伸ばすことで足掛け有効幅を大きくすることができる。また、梯子の折り畳み構造上、ステップの幅を大きく形成することもできるので、保守員が昇降時に足を滑らせて転落するといった問題が極めて少なく、昇降時の安全性を大幅に向上させることができる。また、昇降通路の壁面に対して固定した安全スイッチと梯子の支柱との協働により、折れ部を折り曲げて支柱を昇降通路の壁面に近付けたときにエレベータの運転回路をオフ状態とし、前記折れ部を伸ばして支柱を昇降通路の壁面から離すときにエレベータの運転回路をオフ状態にしているので、梯子の折り畳みに際して移動する支柱を有効に利用することができ、保守員の作業中、すなわち梯子の使用中に、エレベータの運転回路が作動することがなく、保守員の安全性を確実なものにすることができるといった優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の折り畳み式梯子を引き出した状態を示す斜視図である。
【図2】この発明の折り畳み式梯子を収容した状態を示す斜視図である。
【図3】収容した折り畳み式梯子と安全スイッチとの関係を示す側面図である。
【図4】引き出した折り畳み式梯子と安全スイッチとの関係を示す側面図である。
【図5】エレベータの安全回路を示す図である。
【図6】従来の梯子を示す正面図である。
【図7】従来の梯子を示す断面図である。
【符号の説明】
A 昇降通路
6 支柱
7 ステップ
8 壁面
9 脚部
9c 折れ部
20 安全スイッチ
21 運転回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】 一対の支柱と、前記支柱間に平行に延設されたステップと、エレベータの昇降通路の壁面と前記支柱との間に延設された脚部とを備えた構成よりなる折り畳み式梯子において、前記脚部の中間部に形成し且つ前記壁面に対する前記支柱の間隔を変化させる折れ部と、前記壁面に対して固定すると共に、前記折れ部を折り曲げて前記支柱を前記壁面に近付けたときに前記支柱との協働により前記エレベータの運転回路をオフ状態とし、前記折れ部を伸ばして前記支柱を前記壁面から離すときに前記エレベータの運転回路をオフ状態にするように構成した安全スイッチとを備えたことを特徴とする折り畳み式梯子。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【図3】
image rotate


【図4】
image rotate


【図5】
image rotate


【図7】
image rotate


【図6】
image rotate