説明

折り畳み式箱体

【課題】折り畳み式の箱体を展開し、内部の空間に土砂など重量材を充填して、ある目的物を形成した場合に、箱体の内面が上記重量材から大きい内圧を与えられるとしても、目的物を所望形状に形成できるようにする。
【解決手段】折り畳み式箱体は、ある水平な一方向Xに延び、一方向Xへの直交方向Yで互いに対面する一対の側壁6,6と、両側壁6,6の間の空間7に位置すると共に直交方向Yに延びて空間7を一方向Xで複数の区画空間7aに仕切る仕切壁8と、直交方向Yにおける仕切壁8の各端縁部を各側壁6にそれぞれ枢支させる第1ヒンジ9とを備える。各仕切壁8が、直交方向Yに列設される複数の仕切壁要素12と、直交方向Yで隣り合う両仕切壁要素12,12の互いの対向端縁部を枢支する第2ヒンジ13とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不使用時には折り畳んでコンパクトな形状にでき、使用時にはその内部の空間が拡大するよう展開できるというものであり、例えば、この空間に土砂など重量材を充填すれば、洪水時などの水の塞き止め、河川等の護岸工事、および道路の法面工事等に多目的に適用できる折り畳み式箱体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記折り畳み式箱体には、従来、下記特許文献1,2に示されるものがある。これら各公報のものによれば、折り畳み式箱体は、ある水平な一方向に延び、この一方向への直交方向で互いに対面する一対の側壁と、これら両側壁の間の空間に位置すると共に上記直交方向に延びて上記空間を上記一方向で複数の区画空間に仕切る仕切壁と、上記直交方向における上記仕切壁の各端縁部を上記各側壁にそれぞれ枢支させるヒンジとを備えている。
【0003】
上記各側壁は、それぞれ上記一方向に列設される複数の側壁要素と、上記一方向で隣り合う一対の側壁要素の互いの対向端縁部同士を枢支する他のヒンジとを備えている。また、上記一方向で隣り合う上記一対の側壁要素と他の一対の側壁要素との互いの対向端縁部は前記ヒンジによって互いに枢支されている。
【0004】
そして、上記箱体の不使用時には、上記各ヒンジをそれぞれ中心として上記各側壁要素同士を相対回動させると共にこれら各側壁要素と仕切壁とを相対回動させてやれば、上記箱体を上記一方向で蛇腹状に収縮させつつ上記各側壁要素と仕切壁とを折り畳むことができる。これにより、上記箱体をコンパクトな形状に折り畳むことができるようになっている。
【0005】
一方、上記箱体の使用時には、この箱体を、その内部の空間が拡大するよう上記一方向に伸長させて展開させる。そして、この空間に土砂など重量材を充填してやれば種々の目的物に形成できる。具体的には、この目的物は、河川等の護岸工事、および道路の法面工事等に多目的に適用できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2010−508452号公報
【特許文献2】特開2000−314118号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記したように、箱体の使用時に、その内部の空間に土砂など重量材を充填して何らかの目的物を形成したとする。この場合、上記箱体の各側壁要素の内面には上記重量材から大きい内圧が与えられる。すると、この内圧に因り、前記他のヒンジを中心として上記一対の側壁要素の互いの対向端縁部が相対回動しつつ、これら対向端縁部が上記直交方向で箱体の外側方に向かって突出しがちとなる。つまり、上記側壁は上記重量材からの内圧に因り無意図的に上記一方向に向かってジグザグ形状になることから、上記目的物を所望形状にすることは容易でないという問題点がある。
【0008】
しかも、上記他のヒンジには、上記重量材からの内圧により大きな引張力が与えられて応力集中が生じがちとなる。
【0009】
ここで、上記各側壁要素は、上記一方向に等間隔に配置される複数本の縦向き線材と、上下方向に等間隔に配置されて上記各縦向き線材に溶接される複数本の横向き線材とを有していることから、この構成に基づき、上記他のヒンジの強度向上のため、仮の構成として、次のようにすることが考えられる。
【0010】
即ち、上記一方向で隣り合う一対の側壁要素の各横向き線材の対向端部をそれぞれ屈曲させて環形状部にする。一方、上記他のヒンジが、上記一方向に並設される一対の縦向き棒材と、これら両縦向き棒材に遊嵌状に外嵌されるコイル状(もしくは環状)線材とを備えるようにする。そして、上記各縦向き棒材に上記各横向き線材の環形状部を外嵌させ、かつ、これら各縦向き棒材と、各横向き線材の環形状部とを溶接する。このようにすれば、上記他のヒンジは、ヒンジとしての構成が成立し、かつ、その強度を十分に向上させることができる。
【0011】
しかしながら、上記他のヒンジを上記した仮の構成のようにした場合、この他のヒンジの構成は複雑であることから、その分、上記箱体の構成が複雑になると共に、その形成作業が煩雑かつ高価になると考えられて、好ましくない。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記のような事情に注目してなされたもので、本発明の目的は、折り畳み式の箱体を展開し、その内部の空間に土砂など重量材を充填して、ある目的物を形成した場合に、箱体の内面が上記重量材から大きい内圧を与えられるとしても、目的物を所望形状に形成できるようにすることである。
【0013】
また、本発明の他の目的は、上記箱体の構成を簡単にできるようにすると共に、その形成作業が容易かつ安価にできるようにすることである。
【0014】
請求項1の発明は、ある水平な一方向Xに延び、この一方向Xへの直交方向Yで互いに対面する一対の側壁6,6と、これら両側壁6,6の間の空間7に位置すると共に上記直交方向Yに延びて上記空間7を上記一方向Xで複数の区画空間7aに仕切る仕切壁8と、上記直交方向Yにおける上記仕切壁8の各端縁部を上記各側壁6にそれぞれ枢支させる第1ヒンジ9とを備えた折り畳み式箱体において、
上記各仕切壁8が、上記直交方向Yに列設される複数の仕切壁要素12と、上記直交方向Yで隣り合う上記両仕切壁要素12,12の互いの対向端縁部を枢支する第2ヒンジ13とを備えたことを特徴とする折り畳み式箱体である。
【0015】
請求項2の発明は、上記側壁6と仕切壁8の各仕切壁要素12とをそれぞれ金網16で形成し、これら側壁6と仕切壁8とを上記各区画空間7a側から覆う膜体21を設けたことを特徴とする請求項1に記載の折り畳み式箱体である。
【0016】
請求項3の発明は、上記各仕切壁8(A)(B)のうち、上記一方向Xでの中途部の仕切壁8(B)における上記直交方向Yでの中途部に対し対面する上記膜体21の部分に開口22を形成したことを特徴とする請求項2に記載の折り畳み式箱体である。
【0017】
請求項4の発明は、上記一方向Xに向かって延びる補強バー25を上記側壁6に取り付けたことを特徴とする請求項1から3のうちいずれか1つに記載の折り畳み式箱体である。
【0018】
なお、この項において、上記各用語に付記した符号や図面番号は、本発明の技術的範囲を後述の「実施例」の項や図面の内容に限定解釈するものではない。
【発明の効果】
【0019】
本発明による効果は、次の如くである。
【0020】
請求項1の発明は、ある水平な一方向に延び、この一方向への直交方向で互いに対面する一対の側壁と、これら両側壁の間の空間に位置すると共に上記直交方向に延びて上記空間を上記一方向で複数の区画空間に仕切る仕切壁と、上記直交方向における上記仕切壁の各端縁部を上記各側壁にそれぞれ枢支させる第1ヒンジとを備えた折り畳み式箱体において、
上記各仕切壁が、上記直交方向に列設される複数の仕切壁要素と、上記直交方向で隣り合う上記両仕切壁要素の互いの対向端縁部を枢支する第2ヒンジとを備えている。
【0021】
このため、上記箱体の不使用時や搬送時などには、この箱体の各第1ヒンジを中心として上記各側壁に対し上記各仕切壁のそれぞれ仕切壁要素を相対回動させると共に、上記第2ヒンジを中心として上記各仕切壁のそれぞれ仕切壁要素同士を相対回動させてやれば、上記両側壁を直交方向で互いに接近させつつ上記各側壁と上記各仕切壁要素とを上記直交方向で折り畳むことができる。これにより、上記箱体をコンパクトな形状に折り畳むことができる。
【0022】
一方、上記箱体の内部の空間である各区画空間が拡大するよう箱体を展開させ、上記各区画空間に土砂など重量材を充填して堤防や土留め用などの目的物を形成したとする。この場合、上記箱体の各側壁は、その内面に上記重量材から大きい内圧が与えられて変形するおそれが生じる。
【0023】
しかし、上記発明によれば、上記各側壁には前記従来の技術のようなヒンジは設けられておらず、これら各側壁はそれぞれ一体的な剛性体とされている。このため、上記各側壁の一部が上記重量材からの内圧に因り上記直交方向で箱体の外側方に向かって突出するよう変形する、ということは防止される。よって、上記目的物を所望形状に形成できる。
【0024】
更に、上記したように、各側壁はそれぞれ一体的な剛性体とされているため、前記従来の技術にて説明のような他のヒンジは設けられておらず、まして、この他のヒンジを、その強度向上のために従来の技術にて説明のような複雑な構成の仮の構成の如きにする必要もない。
【0025】
よって、上記各側壁の構成は簡単なもので足りることから、その分、上記箱体の構成は簡単となり、また、これに伴い、箱体の形成作業は容易かつ安価に達成でき、これは、実用上、極めて有益である。
【0026】
請求項2の発明は、上記側壁と仕切壁の各仕切壁要素とをそれぞれ金網で形成し、これら側壁と仕切壁とを上記各区画空間側から覆う膜体を設けている。
【0027】
このため、上記箱体における側壁と各仕切壁要素とを金網で形成した分、これらを板材で形成することに比べ、箱体を軽量にできてその取り扱いが容易にできる。よって、上記箱体を展開し、その各区画空間に重量材を充填して目的物を形成する、という作業はより容易にできる。
【0028】
そして、上記したように箱体の各区画空間に重量材を充填して目的物を形成したとき、重量材が上記金網の網目を通って箱体の外部に洩出することは上記膜体により防止される。よって、上記したように箱体は軽量にできるものでありながら、この箱体を用いて形成した目的物は長期にわたり所望形状に維持可能とされる。
【0029】
請求項3の発明は、上記各仕切壁のうち、上記一方向での中途部の仕切壁における上記直交方向での中途部に対し対面する上記膜体の部分に開口を形成している。
【0030】
このため、上記箱体の各区画空間に重量材を充填したとき、この重量材は、一方向で隣り合う両区画空間の境界部である上記開口と、この開口と対面する上記仕切壁の金網の網目部分とにも充填される。よって、上記箱体の内部の空間には全体的に重量材が充填されることとなって、これら箱体と重量材とにより形成された目的物の性質を上記一方向の各部で互いにより均一にできる。この結果、この目的物を例えば堤防や土留め用に利用した場合には、上記両区画空間の境界部を含むこの目的物の上記一方向での各部分において水が上記直交方向に向かって無用に透過することはそれぞれ防止され、つまり、この目的物による堤防や土留めなどとしての性能を高品質なものにできる。
【0031】
また、上記したように、開口は一方向で隣り合う両区画空間の境界部における膜体の上記直交方向での中途部に形成される。このため、上記目的物を堤防や土留め用などとして利用する際に、上記両区画空間の境界部を通しこれら各区画空間内から目的物の外部に重量材が流出することは、上記両区画空間の境界部における膜体の上記直交方向での各端部によって防止され、この点でも目的物の性能を高品質なものにすることができる。
【0032】
請求項4の発明は、上記一方向に向かって延びる補強バーを上記側壁に取り付けている。
【0033】
このため、上記側壁は上記補強バーにより補強されて、その一体的な剛性がより向上する。よって、上記箱体の各区画空間に重量材が充填されて目的物が形成された場合に、上記側壁の一部が上記重量材からの内圧に因り上記直交方向で箱体の外側方に向かって突出するよう変形する、ということは、より確実に防止される。このため、上記目的物を所望形状に形成することが、より確実に達成される。
【0034】
また、前記したように箱体をコンパクトな形状となるよう折り畳んだり、上記各区画空間が拡大するよう箱体を展開させたりする場合、上記側壁は一体的な剛性体であってその形状は変化しない。このため、上記したように側壁の補強用としてこの側壁に補強バーを取り付けたとしても、上記箱体の折り畳みや展開時に上記補強バーが邪魔になることは防止される。よって、前記したように補強バーにより側壁を補強して目的物を所望形状に形成することがより確実に達成されるものでありながら、この箱体の折り畳みや展開は容易かつ円滑にできるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】箱体の使用時の斜視図である。
【図2】側面図である。
【図3】平面図である。
【図4】図3のIV部拡大詳細図である。
【図5】箱体を折り畳んだ平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明の折り畳み式箱体に関し折り畳み式の箱体を展開し、その内部の空間に土砂など重量材を充填して、ある目的物を形成した場合に、箱体の内面が上記重量材から大きい内圧を与えられるとしても、目的物を所望形状に形成できるようにする、という目的を実現するため、本発明を実施するための形態は、次の如くである。
【0037】
即ち、折り畳み式箱体は、ある水平な一方向に延び、この一方向への直交方向で互いに対面する一対の側壁と、これら両側壁の間の空間に位置すると共に上記直交方向に延びて上記空間を上記一方向で複数の区画空間に仕切る仕切壁と、上記直交方向における上記仕切壁の各端縁部を上記各側壁にそれぞれ枢支させる第1ヒンジとを備える。上記各仕切壁は、上記直交方向に列設される複数の仕切壁要素と、上記直交方向で隣り合う上記両仕切壁要素の互いの対向端縁部を枢支する第2ヒンジとを備える。
【実施例】
【0038】
本発明をより詳細に説明するために、その実施例を添付の図に従って説明する。
【0039】
図1〜4において、図中符号1は折り畳み式の箱体である。この箱体1は、地面G上に設置した状態でその内部に土砂など重量材2を充填してやることにより、堤防、土留め、盛土用など種々の目的物3の形成を可能にさせるものである。
【0040】
上記箱体1は、ある水平な一方向Xに延び、この一方向Xへの水平な直交方向Yで互いに対面する一対の側壁6,6と、これら両側壁6,6の間の空間7に位置すると共に上記直交方向Yに延びて上記空間7を上記一方向Xで複数(3つ)の区画空間7aに仕切る複数(4枚)の仕切壁8と、上記直交方向Yにおける上記仕切壁8の各端縁部を上記各側壁6にそれぞれ枢支させる第1ヒンジ9とを備えている。
【0041】
上記各側壁6と、各仕切壁8とはそれぞれが互いに平行に延びると共に、それぞれが互いに同形同大とされ、上記各仕切壁8は上記一方向Xで等間隔に配置されている。このため、上記各区画空間7aは互いに同形同大とされている。
【0042】
また、上記各仕切壁8は、上記直交方向Yに列設される複数(一対)の仕切壁要素12,12と、上記直交方向Yで隣り合う上記両仕切壁要素12,12の互いの対向端縁部同士を枢支する第2ヒンジ13とを備えている。
【0043】
上記各側壁6は、箱体1の側面視(図2)で、上記一方向Xに長い長方形状とされ、具体的には高さ×長さが1m×3mとされている。上記各仕切壁8は、箱体1の正面視で、上記側壁6と高さが同じである正方形状とされている。このため、上記箱体1は全体として上記一方向Xに長い直方体形状をなしている。また、上記各仕切壁要素12は、互いに同形同大とされ、箱体1の正面視で、上下方向に長い長方形状とされている。
【0044】
上記側壁6と仕切壁8の各仕切壁要素12とはそれぞれ金網16で形成されている。この金網16は、上記一方向Xに等間隔(75mm間隔)に配置される複数本の縦向き線材17と、上下方向に等間隔(75mm間隔)に配置される複数本の横向き線材18とを有している。これら各縦向き線材17と横向き線材18とは直径が4mmで溶融亜鉛メッキされたもので、溶接などにより互いに強固に結合され、正方形状の網目を有している。
【0045】
上記第1、第2ヒンジ9,13は、隣り合う金網16,16の互いの対向端縁部を形成する一対の縦向き線材17,17に金属製線材をコイル形状となるよう巻き付けて形成したものである。なお、上記第1、第2ヒンジ9,13は、上下方向に複数設けられる円環形状のものであってもよく、市販品を用いてもよい。
【0046】
上記各側壁6と各仕切壁8とをそれぞれ上記各区画空間7a側から覆う膜体21が設けられる。これら各膜体21は上記各区画空間7a毎にそれぞれ一体的に形成され、上記各側壁6と各仕切壁8とに連結されて支持されている。上記各膜体21は、上記各区画空間7aに重量材2を充填して、ある目的物3を形成した場合に、これら重量材2が上記金網16の網目を通って箱体1の外部に洩出することを防止するものである。上記膜体21は、通水性を有する天然繊維、合成繊維等による不織布である。なお、上記膜体21は、天然繊維、合成繊維等による織物や、この織物の両面のうち、少なくとも一方の面に施される塩化ビニル(PVC)、ポリウレタン(PU)、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)等などの合成樹脂からなるコーティング材とを備えたものも利用可能であり、遮水性もしくは通水性のシート材で形成してもよい。
【0047】
上記の場合、箱体1が備える複数(4枚)の仕切壁8(A)(B)のうち、上記一方向Xでの端部に位置する2枚の各仕切壁8(A)については、それぞれその各区画空間7a側の面が全体的に上記膜体21で覆われている。
【0048】
一方、上記した複数の仕切壁8(A)(B)のうち、上記一方向Xでの中途部に位置する複数(2枚)の各仕切壁8(B)については、それぞれ上記直交方向Yでの中途部に対し対面する上記膜体21の部分に、上下方向の全体にわたり開口22が形成されている。そして、上記一方向Xで互いに隣り合う区画空間7a,7a同士は、上記開口22とこの開口22に対面する上記仕切壁8の部分とを通し互いに連通させられている。
【0049】
各図中二点鎖線で示すように、上記一方向Xに向かって直線的に延び、上記各側壁6に取り付けられてこれら各側壁6を補強する補強バー25が設けられる。
【0050】
上記補強バー25は、上下方向で複数本設けられ、それぞれ金属製線材などにより上記側壁6に強固に取り付けられている。上記補強バー25は断面円形の金属製棒材で形成されるが、断面は矩形や多角形であってもよく、型鋼材で形成してもよい。
【0051】
図5において、上記構成の箱体1の不使用時や搬送時などには、この箱体1の各第1ヒンジ9を中心として上記各側壁6に対し上記各仕切壁8のそれぞれ仕切壁要素12を相対回動させると共に、上記第2ヒンジ13を中心として上記各仕切壁8のそれぞれ仕切壁要素12,12同士を相対回動させてやれば、上記両側壁6,6を直交方向Yで互いに接近させつつ上記各側壁6と上記各仕切壁要素12とを上記直交方向Yで折り畳むことができる。これにより、上記箱体1をコンパクトな形状に折り畳むことができる。
【0052】
上記したように箱体1を折り畳む場合、上記各側壁6は一体的な剛性体として一定形状に保たれる一方、上記各仕切壁8は一対の仕切壁要素12,12が第2ヒンジ13を中心として相対回動して折り畳まれる。
【0053】
ここで、上記箱体1を図5のように折り畳んだとき、折り畳まれた一対の仕切壁要素12,12と、これに上記一方向Xで隣り合う他の一対の仕切壁要素12,12とが互いに干渉し合わないように、それぞれ折り畳まれた一対の仕切壁要素12,12の上記一方向Xでの長さが定められる。そして、この場合、上記折り畳まれた一対の仕切壁要素12,12の一方向Xでの長さの最大値は、上記一方向Xでの各仕切壁8のピッチ寸法(1m)に近い値にできる。
【0054】
そして、上記のように、折り畳まれた一対の仕切壁要素12,12の上記一方向Xでの長さを上記最大値としてやれば、展開したときの箱体1における上記仕切壁8の上記直交方向Yでの寸法を上記一方向Xでの各仕切壁8のピッチ寸法(1m)のほぼ2倍の寸法(2m)にまで大きくすることができる。よって、上記構成の箱体1によれば、その折り畳みが支障なくできると共に展開時の容量を大きくでき、このため、この箱体1により形成された目的物3の安定性を向上させることができる。
【0055】
図1〜4において、上記箱体1の使用時には、この箱体1を、その各区画空間7aが拡大するよう上記一対の側壁6,6同士を直交方向Yで離間させて展開させる。そして、上記各区画空間7aに土砂など重量材2を充填してやれば、堤防、土留め、盛土用などの種々の目的物3に形成できる。具体的には、この目的物3は、洪水などの水28の塞き止め、河川等の護岸工事、および道路の法面工事等に多目的に適用できる。
【0056】
上記構成によれば、上記各仕切壁8が、上記直交方向Yに列設される複数の仕切壁要素12と、上記直交方向Yで隣り合う上記両仕切壁要素12,12の互いの対向端縁部を枢支する第2ヒンジ13とを備えている。
【0057】
ここで、上記箱体1の内部の空間7である各区画空間7aが拡大するよう箱体1を展開させ、上記各区画空間7aに土砂など重量材2を充填して堤防や土留め用などの目的物3を形成したとする。この場合、上記箱体1の各側壁6は、その内面に上記重量材2から大きい内圧が与えられて変形するおそれがある。
【0058】
しかし、上記構成によれば、上記各側壁6には前記従来の技術のようなヒンジは設けられておらず、これら各側壁6はそれぞれ一体的な剛性体とされている。このため、上記各側壁6の一部が上記重量材2からの内圧に因り上記直交方向Yで箱体1の外側方に向かって突出するよう変形する、ということは防止される。よって、上記目的物3を所望形状に形成できる。
【0059】
更に、上記したように、各側壁6はそれぞれ一体的な剛性体とされているため、前記従来の技術にて説明のような他のヒンジは設けられておらず、まして、この他のヒンジを、その強度向上のために従来の技術にて説明のような複雑な構成の仮の構成の如きにする必要もない。
【0060】
よって、上記各側壁6の構成は簡単なもので足りることから、その分、上記箱体1の構成は簡単となり、また、これに伴い、箱体1の形成作業は容易かつ安価に達成でき、これは、実用上、極めて有益である。
【0061】
また、前記したように、側壁6と仕切壁8の各仕切壁要素12とをそれぞれ金網16で形成し、これら側壁6と仕切壁8とを上記各区画空間7a側から覆う膜体21を設けている。
【0062】
このため、上記箱体1における側壁6と各仕切壁要素12とを金網16で形成した分、これらを板材で形成することに比べて、箱体1を軽量にできてその取り扱いが容易にできる。よって、上記箱体1を展開し、その各区画空間7aに重量材2を充填して目的物3を形成する、という作業はより容易にできる。
【0063】
そして、上記したように箱体1の各区画空間7aに重量材2を充填して目的物3を形成したとき、重量材2が上記金網16の網目を通って箱体1の外部に洩出することは上記膜体21により防止される。よって、上記したように箱体1は軽量にできるものでありながら、この箱体1を用いて形成した目的物3は長期にわたり所望形状に維持可能とされる。
【0064】
また、前記したように、各仕切壁8のうち、上記一方向Xでの中途部の仕切壁8(B)における上記直交方向Yでの中途部に対し対面する上記膜体21の部分に開口22を形成している。
【0065】
このため、上記箱体1の各区画空間7aに重量材2を充填したとき、この重量材2は、一方向Xで隣り合う両区画空間7a,7aの境界部である上記開口22と、この開口22と対面する上記仕切壁8の金網16の網目部分とにも充填される。よって、上記箱体1の内部の空間7には全体的に重量材2が充填されることとなって、これら箱体1と重量材2とにより形成された目的物3の性質を上記一方向Xの各部で互いにより均一にできる。この結果、この目的物3を例えば堤防や土留め用に利用した場合には、上記両区画空間7a,7aの境界部を含むこの目的物3の上記一方向Xでの各部分において水28が上記直交方向Yに向かって無用に透過することはそれぞれ防止され、つまり、この目的物3による堤防や土留め用などとしての性能を高品質なものにできる。
【0066】
また、上記したように、開口22は一方向Xで隣り合う両区画空間7a,7aの境界部における膜体21の上記直交方向Yでの中途部に形成される。このため、上記目的物3を堤防や土留め用などとして利用する際に、上記両区画空間7a,7aの境界部を通しこれら各区画空間7a内から目的物3の外部に重量材2が流出することは、上記両区画空間7a,7aの境界部における膜体21の上記直交方向Yでの各端部によって防止され、この点でも目的物3の性能を高品質なものにすることができる。
【0067】
なお、上記一方向Xで複数の目的物3を密に列設してこれを維持する場合(図1、図2中、各二点鎖線)には、上記一方向Xで隣り合う両目的物3,3の境界部における各膜体21の部分に上記したように開口22を形成してもよい。このようにすれば、前記したようにある一つの目的物3において一方向Xで隣り合う両区画空間7a,7aの境界部を含むこの目的物3の上記一方向Xでの各部の性質をより均一にできたり、この目的物3の各区画空間7a内から外部への重量材2の流出を防止できたりする作用効果と同様のものが、上記のように列設されて隣り合う両目的物3,3にも得ることができる。
【0068】
また、前記したように、一方向Xに向かって延びる補強バー25を上記側壁6に取り付けている。
【0069】
このため、上記側壁6は上記補強バー25により補強されて、その一体的な剛性がより向上する。よって、上記箱体1の各区画空間7aに重量材2が充填されて目的物3が形成された場合に、上記側壁6の一部が上記重量材2からの内圧に因り上記直交方向Yで箱体1の外側方に向かって突出するよう変形する、ということは、より確実に防止される。このため、上記目的物3を所望形状に形成することが、より確実に達成される。
【0070】
また、前記したように箱体1をコンパクトな形状となるよう折り畳んだり、上記各区画空間7aが拡大するよう箱体1を展開させたりする場合、上記側壁6は一体的な剛性体であってその形状は変化しない。このため、上記したように側壁6の補強用としてこの側壁6に補強バー25を取り付けたとしても、上記箱体1の折り畳みや展開時に上記補強バー25が邪魔になることは防止される。よって、前記したように補強バー25により側壁6を補強して目的物3を所望形状に形成することがより確実に達成されるものでありながら、この箱体1の折り畳みや展開は容易かつ円滑にできるという利点がある。
【0071】
一方、前記膜体21は、植物31の生長を可能とする植生基盤機能をなし、目的物3の外側面が緑化可能とされている。具体的には、上記膜体21はメッシュ形状やへちま(スポンジ)形状とされ、植生に必要な肥料や根茎の保持が可能とされている。
【0072】
上記の場合、上記目的物3の上面、つまり、充填された重量材2の上面にも、上記と同性質の膜体21を設けて、目的物3の上面も緑化可能にしてもよい。また、上記各側壁6と膜体21との間の少なくとも一部、もしくは全部に保水性材料を設けることが好ましく、また、上記水28を吸水して上記目的物3への供給を可能とする水ホースを上記目的物3に設置してもよい。
【0073】
なお、以上は図示の例によるが、側壁6や仕切壁8の各仕切壁要素12は遮水性の金属製や樹脂製の板材で形成してもよく、これら板材を多孔性として通水性のものとしてもよい。また、上記仕切壁8が有する仕切壁要素12は3枚以上であってもよい。また、上記区画空間7aは4つ以上であってもよい。また、上記膜体21は、上記空間7や各区画空間7aの下端開口を閉じるよう設けてもよい。
【0074】
また、上記膜体21の外面に絵画、図形、模様を描いたり印刷したりしてもよく、このようにすれば、周囲環境との調和がとれ、また、目的物3周辺の通行人等への印象をよくすることができる。
【符号の説明】
【0075】
1 箱体
2 重量材
3 目的物
6 側壁
7 空間
7a 区画空間
8 仕切壁
9 第1ヒンジ
12 仕切壁要素
13 第2ヒンジ
16 金網
17 縦向き線材
18 横向き線材
21 膜体
22 開口
25 補強バー
28 水
31 植物
X 一方向
Y 直交方向
G 地面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ある水平な一方向に延び、この一方向への直交方向で互いに対面する一対の側壁と、これら両側壁の間の空間に位置すると共に上記直交方向に延びて上記空間を上記一方向で複数の区画空間に仕切る仕切壁と、上記直交方向における上記仕切壁の各端縁部を上記各側壁にそれぞれ枢支させる第1ヒンジとを備えた折り畳み式箱体において、
上記各仕切壁が、上記直交方向に列設される複数の仕切壁要素と、上記直交方向で隣り合う上記両仕切壁要素の互いの対向端縁部を枢支する第2ヒンジとを備えたことを特徴とする折り畳み式箱体。
【請求項2】
上記側壁と仕切壁の各仕切壁要素とをそれぞれ金網で形成し、これら側壁と仕切壁とを上記各区画空間側から覆う膜体を設けたことを特徴とする請求項1に記載の折り畳み式箱体。
【請求項3】
上記各仕切壁のうち、上記一方向での中途部の仕切壁における上記直交方向での中途部に対し対面する上記膜体の部分に開口を形成したことを特徴とする請求項2に記載の折り畳み式箱体。
【請求項4】
上記一方向に向かって延びる補強バーを上記側壁に取り付けたことを特徴とする請求項1から3のうちいずれか1つに記載の折り畳み式箱体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−87424(P2013−87424A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−225996(P2011−225996)
【出願日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【出願人】(000204192)太陽工業株式会社 (174)
【Fターム(参考)】