説明

折り畳み椅子

【課題】取扱いの安全性に優れ、且つ折り畳み状態を適切に維持することができる折り畳み椅子を提供する。
【解決手段】折り畳み椅子は、一方のフレーム部材42の水平部21に設けられる凸部又は凹部と、座部13とは別体に形成されて該座部13の裏面に設けられ、折り畳み時に前記フレーム部材42の水平部21の凸部又は凹部が嵌合する凹部又は凸部が形成されたロック部材32とからなるロック機構34を有している。折り畳み椅子の折り畳み状態は、かかるロック機構34により維持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば高齢者や身体障害者が浴室内でシャワーを浴びる場合等に使用される折り畳み椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、浴室は狭いため、浴室内で使用される椅子として、不使用時に折り畳んでコンパクトにすることのできる折り畳み椅子が良く用いられている。特許文献1には、そのような折り畳み椅子が開示されている。
【0003】
この従来のものは、座部の後部側を把持して持ち上げることにより、前後両脚の下端部が相互に接近するように回動されて、椅子が折り畳まれる。これによると、座部の把持位置が椅子の重心近くにあるために、椅子の自重を利用して片手で簡単に折り畳むことができる。また、この折り畳み状態を維持するために、次のようなロック機構を備えている。即ち、かかるロック機構は、スリット溝を有し、座部の裏面に設けられる一対のリンク取付座と、上部側面に突起を有し、リンク取付座に回動自在に軸支されるリンクとからなり、リンクの突起をリンク取付座のスリット溝に嵌合させて、折り畳み状態が維持される。
【0004】
また、椅子の折り畳み状態を維持するためのロック機構としては、例えば特許文献2に示すようなものもある。これは、前脚体と後脚体の下端部に夫々設けられ、互いに嵌着可能なストッパーからなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−295736号公報
【特許文献2】実公昭61−27478号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1の折り畳み椅子に於ける座部は、リンク取付部を含めてブロー成形により一体成形されているが、座部は略平板状に薄肉形成されるものであるために、リンク取付部に寸法誤差が生じ易かった。このため、ロック機構の製作にばらつきが生じ、椅子の折り畳み状態を良好に維持できなくなる可能性があった。
【0007】
また、特許文献2に係る折り畳み椅子は、ストッパー部材が外部に露出されているために、通常の使用時に人体と接触する虞を多分に有しており、人体を傷付けるという難点があった。特に、この種の折り畳み椅子は、主として高齢者や身体障害者が浴室内でシャワーを浴びる場合等に使用されるものであるために、高い安全性が要求されている。
【0008】
それ故に、本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、取扱いの安全性に優れ、且つ折り畳み状態を適切に維持することができる折り畳み椅子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る折り畳み椅子は、前脚部と該前脚部の上端から後方に延びる水平部とを有する左右一対の第1フレーム部材と、後脚部と前記後脚部の上端から前方に延びる水平部とを有し、前記第1フレーム部材に対して水平軸周りに回転自在に連結された左右一対の第2フレーム部材と、前記第1フレーム部材又は前記第2フレーム部材のうちの何れか一方のフレーム部材に対して水平軸周りに回転自在に連結され、前記第1フレーム部材の水平部と前記第2フレーム部材の水平部とに支持される座部と、前記第1フレーム部材又は前記第2フレーム部材のうちの何れか他方のフレーム部材から左右方向に延びるリンクバーと、一端が前記リンクバーに対して水平軸周りに回転自在に連結され、他端が前記座部の裏面に対して水平軸周りに回動自在に連結され、前記一方のフレーム部材に対する前記座部の回転と、前記第1フレーム部材と前記第2フレーム部材との間の相対的な回転とを連動させるリンクと、を備えた折り畳み椅子であって、前記一方のフレーム部材の水平部に設けられる凸部又は凹部と、前記座部とは別体に形成されて該座部の裏面に設けられ、折り畳み時に前記水平部の凸部又は凹部が嵌合する凹部又は凸部が形成されたロック部材とからなるロック機構を有するものである。
【0010】
このように構成された椅子を折り畳むと、一方のフレーム部材の水平部が座部に対して回転し、座部に設けられたロック部材の凹部又は凸部に前記フレーム部材の水平部に設けられた凸部又は凹部が嵌合する。このようにして、折り畳み椅子の折り畳み状態がロック機構により維持される。かかるロック機構のロック部材は、座部とは別体に形成されているために、精度良くロック部材を製作することが可能となる。これにより、良好なロック状態を長期に渡って維持することができる。
【0011】
また、ロック機構は座部の裏面側に配置されるものであるために、人体に直接接触するようなことはなく、使用上の安全性を十分に確保できると共に、外観体裁を損なうようなこともない。
【0012】
更に、前記ロック機構は、前記水平部の先端部を構成する連結材に設けられた凸部と、かかる凸部が嵌合する凹部が中央に形成されたロック部材とから構成してもよい。
【0013】
この場合は、椅子の折り畳み時に於いて、連結材の凸部がロック部時の凹部に嵌合し、その折り畳み状態が維持される。
【0014】
また、折り畳み操作時に、前記連結材の凸部が接触する凸状部が前記ロック部材の凹部の側方に連設され、且つ前記凸状部は前記凹部側程上方に傾斜する略円弧状に形成されるようにしても構わない。
【0015】
これによると、折り畳み操作時には、連結材の凸部がロック部材の凸状部に接触しながら、一方のフレーム部材が折り畳まれることになるが、凸状部は略円弧状に形成されているために、一連の折り畳み操作を無理なく行うことが可能であり、連結材の凸部をロック部材の凹部に容易に嵌合させることができる。また、凸状部は凹部側程上方に傾斜しているために、ロック機構によるロック状態が不用意に解除されることもない。
【0016】
更に、前記連結材の凸部及び前記ロック部材は、プラスチック製であってもよい。
【0017】
これによれば、プラスチックが有する可撓性を利用して、連結材の凸部とロック部材の凹部とによるロック操作を容易に行えるばかりではなく、折り畳み椅子の軽量化を促進することができる。
【0018】
その他、本発明に係るロック機構は全体の構成が非常に簡易であるために、その製作が容易に且つ安価に行えるという利点もある。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、取扱いの安全性に優れ、且つ折り畳み状態を適切に維持することが可能な折り畳み椅子を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態を示す折り畳み椅子の正面図である。
【図2】同背面図である。
【図3】同平面図である。
【図4】同裏面図である。
【図5】同側面図である。
【図6】同断面図である。
【図7】連結材の一実施形態を示し、(a)は側面図で、(b)は断面図である。
【図8】折り畳み状態を維持するためのロック機構を示す正面図である。
【図9】ロック部材の一実施形態を示し、(a)は正面図で、(b)は側面図で、(c)は(a)のX−X線断面図である。
【図10】折り畳み状態にある折り畳み椅子の正面図である。
【図11】同断面図である。
【図12】リンク取付座の斜視図である。
【図13】リンク部分の斜視図である。
【図14】リンクの正面図である。
【図15】リンクの側面図である。
【図16】(a)〜(c)は、折り畳み椅子の折り畳み時の操作を示す断面図である。
【図17】第2フレーム部材の回転状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明に係る折り畳み椅子の一実施形態について図面に従って説明する。本実施形態に係る折り畳み椅子10は、図1〜図6に示すように、左右一対の第1フレーム部材41と、左右一対の第2フレーム部材42と、これら第1フレーム部材41及び第2フレーム部材42によって下方から支持される座部13と、背もたれ14と、肘掛け15とを備えている。
【0022】
図5に示すように、第1フレーム部材41は、前脚部11と、前脚部11の上端から後方へ延びる水平部16とを備えている。左右の水平部16の後端には、平面視逆U字状の背もたれ枠17が設けられている(図2参照)。本実施形態では、左右の第1フレーム部材41、41と背もたれ枠17とは一体化されており、後述の滑り止めキャップ11E及び下部パイプ11Bを除いて、1本のアルミニウム製パイプによって形成されている。
【0023】
図5に示すように、前脚部11は、下部パイプ11Bと、下部パイプ11Bに挿入された上部パイプ11Aとを有している。上部パイプ11Aには、半径方向外向きに突出する挿通ピン11Dが設けられている。挿通ピン11Dは、上部パイプ11Aの内部から外側に付勢されている。下部パイプ11Bには、複数の止め孔11Cが形成されており、これら複数の止め孔11Cの何れかに挿通ピン11Dが挿入される。折り畳み椅子10では、これら挿通ピン11D及び止め孔11Cによって、下部パイプ11Bに対する上部パイプ11Aの挿入量が調整自在となっており、これにより、前脚部11は長さ調整が可能となっている。即ち、挿通ピン11Dを上部パイプ11A内に押し込みつつ、上部パイプ11Aに対して下部パイプ11Bをスライドさせ、挿通ピン11Dが係合される止め孔11Cを適宜変更することにより、前脚部11の長さを調整することができる。更に、下部パイプ11Bの下端には、ゴム製の滑り止めキャップ11Eが取り付けられている。この滑り止めキャップ11Eにより、前脚部11が床上で滑ることが抑制される。
【0024】
図4に示すように、左右の第1フレーム部材41の水平部16の前側部分には、左右方向に延びる前側支持バー19が架け渡されている。図1に示すように、左側の前脚部11の上側部分と前側支持バー19の左側部分とには、L字状のリンクバー18が架け渡されている。詳しくは、左側のリンクバー18の左端は、左側の前脚部11の上側部分に接合され、左側のリンクバー18の上端は、前側支持バー19の中間位置よりも左側の部分に接合されている。同様に、右側の前脚部11の上側部分と前側支持バー19の右側部分とにも、L字状のリンクバー18が架け渡されている。
【0025】
図6に示すように、第2フレーム部材42は、後脚部12と、後脚部12の上端から前方に延びる水平部21とを備えている。本実施形態では、左右の後脚部12及び水平部21は、それぞれ一体化されており、1本のアルミニウム製パイプによって形成されている。図4及び図7に示すように、水平部21は先端が閉塞された略円筒状の連結材31を有しており、連結材31はプラスチック製である。但し、その具体的な材質はこれに限定されるものではない。連結材31の先端部側側面には、図7に示すように、取付孔31Aが貫通形成されると共に、基端部側面には固定孔31Bが貫通形成されている。また、取付孔31Aと固定孔31Bとの略中間に位置する側面には凸部31Cが突設されている。図4に示すように、左右の水平部21の後側部分には、左右方向に延びる後側支持バー22が架け渡されている。また、図4及び図6に示すように、前記左右の水平部16の後端部分には、左右方向に延びるロックバー20が架け渡されている。
【0026】
図4及び図8に示すように、座部13の裏面に於ける左右の両端部分には、天板13Bと、対向する一対の側板13Cとからなる断面略コの字状の回動座13Aが取り付けられている。回動座13Aの側板13C間には、第2フレーム部材42の連結材31が支軸33を介して回転自在に取り付けられている。また、回動座13Aの内側の側板13Cには、図9に示すようなプラスチック製のロック部材32が円孔32Cに挿通された前記支軸33により固定されている。即ち、ロック部材32は回動座13Aを介して座部13に固定される。ロック部材32の下部側前面には、前記第2フレーム部材42の凸部31Cを嵌合させるべく中央に形成された凹部32Aと、その両側に形成される凸状部32Bとを備えている。凹部32Aの内側面は、図9(c)に示すように、略直角に立ち上げ形成されており、これに連設された前記凸状部32Bは凹部32A側程上方に傾斜する略円弧状に形成されている。本実施形態に係るロック機構34は、ロック部材32と前記連結材31に形成した凸部31Cとからなっている。第1フレーム部材41の水平部16の中途部分と、第2フレーム部材42の水平部21の中途部分とは、回転軸23によって水平軸周りに回転自在に連結されている。
【0027】
図5に示すように、後脚部12も前脚部11と同様、長さ調整が自在となっている。後脚部12も、下部パイプ12Bと、下部パイプ12Bに挿入された上部パイプ12Aとを有している。上部パイプ12Aには、半径方向外向きに突出する挿通ピン12Dが設けられ、挿通ピン12Dは、上部パイプ12Aの内部から外側に付勢されている。下部パイプ12Bには、複数の止め孔12Cが形成されている。これら挿通ピン12D及び止め孔12Cによって、下部パイプ12Bに対する上部パイプ12Aの挿入量が調整自在となっており、これにより、後脚部12は長さ調整が可能となっている。また、下部パイプ12Bの下端には、ゴム製の滑り止めキャップ12Eが取り付けられている。この滑り止めキャップ12Eにより、後脚部12が床上で滑ることが抑制される。
【0028】
座部13は、その表面が座面として使用されるものである。図4に示すように、座部13の裏面の左右前端部には、リンク取付座45がそれぞれ設けられている。座部13の裏面に於ける前後方向の中間部よりも前側の部分には、左右一対の前側支持座13Dが設けられている。また、座部13の裏面に於ける前後方向の中間部よりも後側には、左右一対の後側支持座13Eが設けられている。折り畳み椅子10を展開した状態(着座可能な状態)では、前側支持座13Dは第1フレーム部材41の前側支持バー19上に支持され、後側支持座13Eは第2フレーム部材42の後側支持バー22上に支持される。それにより、座部13は、前側支持座13D及び前側支持バー19を介して左右の第1フレーム部材41に安定して支持されると共に、後側支持座13E及び後側支持バー22を介して左右の第2フレーム部材42に安定して支持される。尚、座部13の材料は特に限定されないが、本実施形態では、座部13はプラスチックのブロー成形品である。
【0029】
図2に示すように、背もたれ14は、背もたれ枠17の上部に取り付けられている。背もたれ14には、把持孔14Aが形成されている。利用者は、この把持孔14Aに指を挿入して背もたれ14を把持することによって、折り畳み椅子10を片手で持ち上げたり、移動させることが可能となっている。背もたれ14の材料は何ら限定されないが、本実施形態では、背もたれ14はプラスチックのブロー成形品である。
【0030】
図1及び図5に示すように、肘掛け15は、背もたれ枠17の左右両側にそれぞれ取り付けられている。肘掛け15は、背もたれ枠17に固定されていてもよく、また、背もたれ枠17に対して回転自在に取り付けられていてもよい。肘掛け15を背もたれ枠17に回転自在に取り付けた場合、折り畳み椅子10に使用者が座る際に、肘掛け15を上方に跳ね上げておくことによって、肘掛け15が着座動作の邪魔にならないようにすることができる。また、折り畳み椅子10を折り畳む際に、予め肘掛け15を上方に跳ね上げておくことによって、肘掛け15が折り畳み動作の邪魔にならないようにすることができる。
【0031】
図12は、座部13の裏面に設けられたリンク取付座45の斜視図である。図12に示すように、リンク取付座45の左右両側部分には、略円筒状の軸受部45Bが形成されている。軸受部45Bの内側には、円孔45Aが形成されている。本実施形態では、リンク取付座45はプラスチック製である。但し、リンク取付座45をプラスチック以外の材料で形成することも勿論可能である。
【0032】
図13に示すように、リンク取付座45とリンクバー18との間には、リンク24が架け渡されている。リンク24は、第2フレーム部材42に対する座部13の回転と、第2フレーム部材42に対する第1フレーム部材41の回転とを連動させるものである(図11参照)。
【0033】
図14はリンク24の正面図、図15はリンク24の側面図である。図14及び図15に示すように、リンク24の基端部24Aは半円筒状に形成されており、基端部24Aの内側には、リンク軸46(図13参照)を挿通させる円孔24Bが形成されている。尚、リンク軸46は、リンク24の基端部24Aを水平軸周りに回転自在に支持する軸であり、リンク取付座45の軸受部45Bに支持される。
【0034】
図14に示すように、リンク24の先端側には、リンクバー係止部24Cと、リンクバー保持部24Dとが設けられている。リンクバー係止部24C及びリンクバー保持部24Dのそれぞれは、先端側を切り欠いたような略円筒状に形成されている。リンクバー係止部24Cの内側には、リンクバー18の外径に略等しい内径を有する略円孔24C1が形成され、リンクバー保持部24Dの内側には、リンクバー18の外径に略等しい内径を有する略円孔24D1が形成されている。但し、上述の通り、リンクバー係止部24C及びリンクバー保持部24Dの先端側は切り欠かれたような形状に形成されているので、これらの略円孔24C1、24D1は連続している。リンク24の先端部は、先端側に向かって開放された形状に形成されている。
【0035】
本実施形態では、リンク24はプラスチック製である。但し、リンク24をプラスチック以外の材料で形成することも可能である。リンク24の横断面形状は、上下対称且つ左右対称の形状に形成されている。これにより、リンク24は、引張応力にも強く、圧縮応力にも強くなっている。また、リンク24の内部には、リブ24Fが設けられており、このリブ24Fによっても強度の向上が図られている。但し、リンク24の具体的形状は特に限定されず、上下対称でなくてもよく、左右対称でなくてもよい。また、リブ24Fは必ずしも必要ではない。
【0036】
図16(a)は、折り畳み椅子10の座部13の後端部を拡大した断面図である。座部13の後縁に於ける左右方向の中央部には、下側が窪んだ凹部が形成されており、この凹部の内部に把手25が設けられている。把手25の下方には、操作ハンドル26が設けられている。
【0037】
操作ハンドル26は、左右一対の係合爪27と、左右の係合爪27の先端部間(前端部間)に架け渡された断面横L字状の連結棒28と、後端部間に架け渡された丸棒状の掴みバー29とからなっている。操作ハンドル26に於ける各係合爪27の外側面の先端部には、軸30が設けられている。操作ハンドル26は、軸30が座部13の後縁部下部に枢着されることにより、掴みバー29が把手25に接近又は離間するように軸30を中心に上下方向へ回動できるように取り付けられている。また、掴みバー29は、把手25と平行に配置され、座部13の後縁よりも後方に突出しないように配置されている。
【0038】
係合爪27の後端部上面と、座部13の後縁部裏面の凹部の天面との間には、ばね31が設けられている。ばね31は、掴みバー29が把手25から離れる方向(下方向)に操作ハンドル26を常時付勢している。そして、ばね31に付勢された操作ハンドル26は、係合爪27をロックバー20に係合させている。
【0039】
次に、折り畳み椅子10の折り畳み方法について説明する。
【0040】
折り畳み椅子10の折り畳みは、座部13の後縁を掴んで持ち上げることによって行われる。座部13の後縁を持ち上げると、座部13の表面が前側となるように、回動座13Aを中心として座部13が後ろ上がりに回転する。すると、前脚部11がリンク24を介して座部13から後方斜め下向きの力を受け、第1フレーム部材41が回転軸23を中心として第2フレーム部材42に対して回転する。その結果、前脚部11と後脚部12とが接近し、折り畳み椅子10は折り畳まれる。
【0041】
図16(b)及び(c)は、折り畳み時に於ける座部13の後縁部を拡大した断面図である。掴みバー29は把手25と平行に配置されているため、折り畳み時に於いて、把手25と掴みバー29とを握り込むようにして掴むことができる(図16(b)参照)。その結果、把手25を握り込むという自然な動作でありながら、手のひら全体で力を加えて掴みバー29を動かすことができる。従って、握力の小さい者、例えば高齢者等であっても、掴みバー29の操作を楽に行うことができる。
【0042】
上述のように、把手25と共に掴みバー29を掴めば、掴みバー29の移動に伴い、ばね31の付勢力に抗して操作ハンドル26の全体が軸30を中心に回転し、係合爪27とロックバー20との係合が解除される。このとき、左右の係合爪27は、連結棒28と掴みバー29とで繋がれているため、掴みバー29を動かすことにより、左右の係合爪27が連動して動き、ロックバー20に対するそれぞれの係合又は解除の動作を一度で確実に行うことができる。
【0043】
そして、係合爪27とロックバー20との係合が解除された後、使用者は、把手25を握り込んだまま、座部13の後縁を掴んで持ち上げる(図16(c)参照)。すると、リンク24により、座部13に連動して前脚部11が後脚部12に接近し、折り畳み椅子10が折り畳まれる。
【0044】
上記折り畳み動作は、座部13の後縁部を片手で掴んで持ち上げるだけで実行することができ、両手を使う必要がない。即ち、座部13の後縁部を掴んで持ち上げると、第1フレーム部材41及び第2フレーム部材42は、それぞれの自重によって、前脚部11及び後脚部12が接近するように回転する。
【0045】
図17に示すように、折り畳み椅子10の折り畳み操作時には、第2フレーム部材42の連結材31が支軸33を中心として回転する。そして、所定の折り畳み位置になると、図8に示すように、連結材31の凸部31Cがロック部材32の凹部32Aに嵌合し、折り畳み状態が維持されることになる。この場合に於いて、連結材31の凸部31Cはロック部材32の凸状部32Bに接触しつつ回転することになるが、連結材31及びロック部材32はプラスチック製からなるために、その可撓性を利用することできると共に、前記凸状部32Bは略円弧状に形成されているために、無理なく連結材31を回転させることが可能であり、その凸部31Cをロック部材32の凹部32Aに容易に嵌合させることができる。一方、ロック部材32の凸状部32Bは凹部32A側程上方に傾斜すると共に、凹部32Aの内側面は略直角に立ち上げ形成されているために、連結材31の凸部31Cが不用意に凹部32Aから離脱することはなく、折り畳み状態が適切に維持される。尚、所定の折り畳み状態とは、図10及び図11に示すような状態であり、前脚部11と後脚部12とがある程度大きく離れた状態である。
【0046】
図11に示すように、第1フレーム部材41の水平部16と第2フレーム部材42の水平部21とが回転自在に連結されているため、折り畳み状態に於ける折り畳み椅子10では、前脚部11の下端部(キャップ11E)と後脚部12の下端部(キャップ12E)とが、間を開けて前後方向に並ぶように配置される。このため、本実施形態の折り畳み椅子10では、折り畳んだ状態に於いて、前脚部11及び後脚部12を床面に載置することによって自立させることができる。そして、上述のように、ロック機構34により自立した状態でロックすることができる。
【0047】
また、ロック機構34のロック部材32は、座部13とは別体に形成されているために、精度良くロック部材32を製作することが可能になる。これにより、良好なロック状態を長期に渡って確実に維持することができる。
【0048】
更に、ロック機構34は座部13の裏面側に配置されるものであるために、人体に直接接触するようなことはなく、使用上の安全性を十分に確保されると共に、外観体裁を損なうようなこともない。
【0049】
また、本実施形態に係るロック機構34は全体の構成が非常に簡易であるために、その製作も容易に且つ安価に行えるという実用的な利点もある。
【0050】
折り畳んだ状態の折り畳み椅子10は、座部13の把手25を掴んで持ち運びすることができる。つまり、折り畳んだ状態の折り畳み椅子10にあっては、背もたれ14を持つ場合に比べ、座部13の把手25から前脚部11或いは後脚部12の下端までの長さが短いため、前脚部11或いは後脚部12が床に着きづらい。従って、力のない者、例えば高齢者等であっても、前脚部11或いは後脚部12が床に着かないように持ち上げ易いので、前脚部11或いは後脚部12を床に引きずりながら持ち運びしなくてもすむ。
【0051】
持ち上げた折り畳み椅子10を床に置く際には、場合によっては、わずかながら折り畳み椅子10に衝撃が加わる。しかし、本実施形態の折り畳み椅子10は、ロック機構34によって折り畳み状態にロックされるので、そのような衝撃が加わったとしても、折り畳み状態から自然に展開することはない。
【0052】
折り畳み椅子10を折り畳んだ状態から展開する場合には、上述の折り畳み動作と逆の動作を行えばよい。尚、前脚部11及び後脚部12の何れか一方の下端部を床に押し当てた状態で、座部13の後縁部を握ったまま下方に押し下げると、ロック機構34によるロック状態が解除されると共に、リンク24によって前脚部11と後脚部12とが離れ、座部13は水平な状態となる。
【0053】
ところで、例えば、上記折り畳み状態のまま折り畳み椅子10を横に倒し、前脚部11又は後脚部12に上方から大きな力を加えると、第1フレーム部材41及び第2フレーム部材42は、前脚部11及び後脚部12がより接近する方向に回転する。その結果、リンクバー18はリンク取付座45からより遠ざかる方向に移動しようとし、リンク24には、比較的大きな引張応力が加えられることになる。しかし、本実施形態では、リンク24のリンクバー係止部24Cの先端側が開放されているので、前脚部11及び後脚部12がより接近する方向に回転すると、リンクバー18はリンクバー係止孔24C1から先端側に移動し、リンクバー係止部24Cから外れる。従って、リンク24に過大な引張応力が加わることはなく、リンク24の破損は防止される。
【0054】
また、リンク24のリンクバー係止部24Cの先端側には、リンクバー保持部24Dが設けられている。そのため、リンクバー18は、リンクバー係止部24Cから外れたとしても、リンクバー保持部24D内に留まり、リンク24自体から外れることがない。
【0055】
リンクバー保持部24D内に保持されたリンクバー18をリンクバー係止部24C内に復帰させる動作は、折り畳み椅子10を折り畳んだ状態から展開状態(使用状態)にしてから行われる。即ち、リンクバー18がリンクバー保持部24D内に保持された状態であっても、リンク24の基端側はリンク取付座45に対して回転自在であり、リンク24の先端側はリンクバー18に対して回転自在である。そのため、リンク24は座部13及び前脚部11に対して回転自在である。従って、通常の展開動作と同様にして、折り畳み椅子10を折り畳み状態から展開することができる。
【0056】
折り畳み椅子10を展開した後は、座部13に上方から力を与える。例えば、座部13を上方から手で押したり、或いは、腰掛けることによって座部13に体重を加えてもよい。その結果、座部13は上方から押され、リンク取付座45を介してリンク24にも上方から力が加えられる。すると、リンク24がリンクバー18上を滑り、リンクバー18がリンクバー保持部24Dからリンクバー係止部24Cに移動する。その結果、折り畳み椅子10は、リンクバー18がリンクバー係止部24C内に位置する正規の状態に復帰する。
【0057】
尚、上記実施形態に於ける第2フレーム42の水平部21は、連結材31を有しているが、かかる連結材31は省略しても構わない。この場合、凸部31Cは例えばアルミニウム製パイプからなる水平部21に形成される。
【0058】
また、水平部21には凸部31Cに代えて、凹部を設けるようにしてもよい。この場合、ロック部材32には凹部32Aに代えて、前記水平部21の凹部に嵌合可能な凸部が設けられ、これら各部材によりロック機構34が構成される。
【0059】
更に、ロック機構34を構成する連結材31の凸部31Cやロック部材32の材質は、上記実施形態の如きプラスチック製に何ら限定されるものではなく、適宜変更が可能であることは言う迄もない。
【0060】
また、上記実施形態に於いては、第2フレーム部材42を座部13に回転自在に連結したが、これに代えて第1フレーム部材41を座部13に回転自在に連結するようにしてもよい。この場合、第2フレーム部材42にはリンクバー18が左右方向に延びるように設けられることになる。
【0061】
その他、座部13、リンクバー18、リンク24、ロック部材32、第1及び第2フレーム部材41、42の形状等の具体的な構成も、全て本発明の意図する範囲内に於いて任意に設計変更自在である。
【符号の説明】
【0062】
10 折り畳み椅子
11 前脚部
12 後脚部
13 座部
16 第1フレーム部材の水平部
18 リンクバー
21 第2フレーム部材の水平部
24 リンク
31 連結材
31C 凸部
32 ロック部材
32A 凹部
34 ロック機構
41 第1フレーム部材
42 第2フレーム部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前脚部と該前脚部の上端から後方に延びる水平部とを有する左右一対の第1フレーム部材と、
後脚部と前記後脚部の上端から前方に延びる水平部とを有し、前記第1フレーム部材に対して水平軸周りに回転自在に連結された左右一対の第2フレーム部材と、
前記第1フレーム部材又は前記第2フレーム部材のうちの何れか一方のフレーム部材に対して水平軸周りに回転自在に連結され、前記第1フレーム部材の水平部と前記第2フレーム部材の水平部とに支持される座部と、
前記第1フレーム部材又は前記第2フレーム部材のうちの何れか他方のフレーム部材から左右方向に延びるリンクバーと、
一端が前記リンクバーに対して水平軸周りに回転自在に連結され、他端が前記座部の裏面に対して水平軸周りに回動自在に連結され、前記一方のフレーム部材に対する前記座部の回転と、前記第1フレーム部材と前記第2フレーム部材との間の相対的な回転とを連動させるリンクと、を備えた折り畳み椅子であって、
前記一方のフレーム部材の水平部に設けられる凸部又は凹部と、
前記座部とは別体に形成されて該座部の裏面に設けられ、折り畳み時に前記水平部の凸部又は凹部が嵌合する凹部又は凸部が形成されたロック部材とからなるロック機構を有していることを特徴とする折り畳み椅子。
【請求項2】
前記ロック機構は、前記水平部の先端部を構成する連結材に設けられた凸部と、前記凸部が嵌合する凹部が中央に形成されたロック部材とからなる請求項1記載の折り畳み椅子。
【請求項3】
折り畳み操作時に、前記連結材の凸部が接触する凸状部が前記ロック部材の凹部の側方に連設され、且つ前記凸状部は前記凹部側程上方に傾斜する略円弧状に形成されている請求項2記載の折り畳み椅子。
【請求項4】
前記連結材の凸部及び前記ロック部材は、プラスチック製である請求項2又は3記載の折り畳み椅子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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