説明

折り紙補助具

【課題】幼児や高齢者や手指の動きにくい人が両手で、または上肢障害者が片手だけでも、折り紙をよりきれいに折って、楽しみながら、脳の発達や手指の機能回復を促したり集中力や想像力を養うようにするための折り紙補助具を提供する。
【解決手段】基板10に、薄くて丈夫なエッジ111を有する折り畳み板11を、間に挿入した折り紙が挿通可能に取り付け、折り紙の折り畳むべき位置をエッジに合わせて、片手でも折り畳めるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、折り紙を折る際の補助具に関する。
【背景技術】
【0002】
高齢化社会を迎え、高齢者や障害者のための介護施設や老人ホーム、デイサービス施設などが増加している。これらの施設ではリハビリテーションやレクレーションのために様々な運動や文化活動が採り入れられているが、折り紙教室は手先や脳の活性化、残存機能の維持のために非常に効果があるということで、最も多く採用されている活動のひとつである。それと、折り紙は幼稚園や小学校低学年などの幼児教育においても、脳の発達を促し、集中力、創造力を養う世界に通用する日本文化の教材として盛んに採り入れられている。
【0003】
折り紙の定番はなんといっても「折り鶴」であろう。折り紙の基本的な技術からかなり高度な技術までが必要とされる「折り鶴」を折ることができれば他の多くの種類の折り紙作品を折ることができるようになるからである。
高齢者のなかで折り紙が上手な人、そうでない人、いろいろであるが、脳卒中後遺症などによる片麻痺の人、リウマチなどで細かい指先の動きが困難な人たちはきれいに折ることができないため、折り紙教室に参加するのをためらっていたが、このような人たちが、片手だけでも、あるいは不自由な両手を使っても、(1)折り紙の角と角をそろえたまま折り畳んだり、(2)三角に折った袋状の部分を広げてつぶすように折ったり、(3)折り進むにつれて、鶴の尾部や首部などの幅が狭くて、きつい鋭角になってきても、キチッと真っ直ぐに折り畳むことができるようにして、折り紙をきれいに折って楽しめるようにするために、鶴だけでなく他の多くの種類の折り紙作品に応用のきく補助具、自助具が求められている。
【0004】
それで、折り紙補助具の従来技術として、折り紙に折り線を付けるための技術がいろいろ提案されている。(特許文献1参照。)。しかし、折り線を付けただけでは、折り線のとおりに、片手だけで折り畳む(折り畳むとは折り紙の折り畳もうとする位置で360度に折り曲げて、指で押圧しながら指を滑らせて塑性変形を起こさせること。)ことは困難であった。
【0005】
それと、紙をきれいに折りたたむ技術が提案されている。(特許文献2参照。)。しかし、この技術はA4などの紙を三つ折りにする技術であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−326421
【特許文献2】特開平10−129925
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような従来の構成が有していた問題点を解決しようとするものであり、前記のようなことを可能にする折り紙補助具を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、第1の課題解決手段は上記の目的を達成するために、基板と、この基板に取り付けたエッジ付きの折り畳み板の間に挿入した折り紙を、前記エッジに沿って任意の位置で折り畳むことが可能な折り紙補助具としたものである。
【0009】
そして、第2の課題解決手段は上記の目的を達成するために、前記基板面に、前記エッジと直角となる直線を表示したことを特徴とする請求項1記載の折り紙補助具としたものである。
【0010】
そして、第3の課題解決手段は上記の目的を達成するために、前記基板の側縁に紙当て枠を設けたことを特徴とする請求項1または請求項2記載の折り紙補助具としたものである。
【0011】
そして、第4の課題解決手段は上記の目的を達成するために、前記折り畳み板は透明材料より成ることを特徴とする請求項1,2または請求項3記載の折り紙補助具としたものである。
【0012】
そして、第5の課題解決手段は上記の目的を達成するために、前記エッジの所定の位置を基点として、前記折り畳み板に90度、45度、22.5度、11.25度となる角度線を表示したことを特徴とする請求項1,2,3または請求項4記載の折り紙補助具としたものである。
【0013】
そして、第6の課題解決手段は上記の目的を達成するために、前記紙当て枠の上面に袋折りを開くための先細棒を着脱自在に立設したことを特徴とする請求項3,4または請求項5記載の折り紙補助具としたものである。
【0014】
そして、第7の課題解決手段は上記の目的を達成するために、前記折り畳み板のエッジの端部を少し反り上げて、基板と折り畳み板の間への折り紙挿入口としたことを特徴とする請求項1,2,3,4,5または請求項6記載の折り紙補助具としたものである。
【0015】
そして、第8の課題解決手段は上記の目的を達成するために、前記基板の裏面に弾性防滑材を取り付けたことを特徴とする請求項1,2,3,4,5,6または請求項7記載の折り紙補助具としたものである。
【発明の効果】
【0016】
上記解決手段による効果は次のとおりである。
【0017】
本発明の折り紙補助具を用いて折り鶴を折る際に、最初に正方形の折り紙を半分に折って二等辺三角形とするのであるが、
第一の方法は折り畳み板と基板の間に折り紙の上側の角から挿入して、折り畳み板の上方に覗いたこの角に、手前の下側の角を合わせてから親指と人差し指でしっかりと摘まみ、上方に引き上げておいて中指でこの角を折り紙が動かないように基板に押さえつけておいて、親指の横腹で手前の丸まっている部分を、薄くて丈夫なプラスチックシートなどよりなる折り畳み板の下側縁である直線状のエッジまで引き上げて、エッジに沿って押圧しながら数度滑らすと、片手でも山折りでキチッと二等辺三角形に折り畳むことが可能となる。
【0018】
エッジが厚すぎる場合には、一度折り畳んだものをエッジの下方にずらして、基板の上でもう一度折り畳み部を指で押圧しながら滑らすと、折り畳み部のエッジの厚さ分の隙間がなくなって紙と紙が密着し折り畳むことができないことはない。(エッジが厚すぎる場合には側縁に向いて薄くなる、紙が切断されない程度の、ナイフ状エッジとしてもよい。)
基板の裏面に発泡ゴムシートなどよりなる弾性防滑材を取り付けておくと、指で押圧しながら滑らせても机の上に置いた基板が滑らないため、他方の手で基板を押さえておかなくとも、片手だけでキチッと折り畳むことが可能になるものである。
【0019】
第二の方法は折り畳み板の下に折り紙の上側の角から挿通して、折り畳み板の下側縁の直線状のエッジに折り紙の左右の角を合わせておいて、折り畳み板の上から折り紙を押さえつけながら、親指で手前側の折り紙を折り上げてそのまま折り畳み板に向けて押さえつけて、折り紙が動かぬように押さえつける指を中指や薬指に代えておいて、親指の横腹で折り畳み板のエッジに沿って折り曲げられた折り紙の折れ目を押さえながら横方向に何度か滑らせると、片手でも三か所の角をキチッと合わせた二等辺三角形に折り畳むことが可能になるものである。
【0020】
また、第三の方法として、片手で持った正方形の折り紙の一辺を基板面上を滑らしながら紙当て枠に押し当てて、他方の辺を持ち上げながら紙当て枠に押し当てて、下の折り紙の角に上の角を合わせてから中指や薬指で押さえておいて、親指の横腹で手前の丸まっている部分を押さえながら滑らしても、片手だけで山折りでキチッと二等辺三角形に折り畳むことが可能になる。
【0021】
次に、前記に記載したようないずれかの方法で二等辺三角形になったものの山折り部の方から折り畳み板のエッジを少し反り上げた挿入口より挿入すると、折り畳み板のエッジを他方の手で持ち上げることなく、片手だけで挿入可能となるものである。
そして、折り畳み板の上方に出ている二等辺三角形の折り紙の45度の頂点に手前の頂点を重ね合わせたまま、上方に引き上げて、折り畳み板のエッジでこれを山折りすると、片手で簡単に半分の大きさの二つの(背中あわせの)二等辺三角形を折ることが可能になるものである。
【0022】
そして、この二つの二等辺三角形の一方の袋の開口部を、紙当て枠に立設した先細棒に挿入して手前に引っ張ると、この先細棒が他方の手の指の役割をはたして、片手使用だけでも袋を開くことが可能になるものである。(基板などの自重の方が袋を開くに要する力よりも重いからである。また、基板の裏に弾性防滑材が張り付けてあるため、挿入した紙を横に引っ張っても基板が動かないからである。)そして、紙当て枠に正方形に開いた部分を当てて、人差し指で押さえながら滑らせると二つの正方形につぶし折りが可能になるものである。
【0023】
それから、エッジの端部の挿入口からこれを挿入して、角度線のエッジ上の起点に次に折るべき角を合わせて、折り畳み板に記入された22.5度の直線に、透明シートから透けて見える対角折れ目線を一致させて、折り畳み板の上からしっかりと人差し指や薬指や小指で、下に敷いた折り紙を押さえておいて、親指の腹で押さえながらエッジに沿って滑らせると、片手でも、きっちりと22.5度に折り畳むことが可能になるものである。
同様に、残りの三か所も22.5度に折り畳むことができる。
【0024】
折り進んでいき、22.5度の部分を半分の11.25度に折り畳んで、折り鶴の見栄えのポイントである首部と尾部を折る前段階になるが、不器用な人や片手使用の人が最も不得意とする幅の狭い部分を鋭角に真っ直ぐにキチッと折り畳む技術は、本発明の折り紙補助具を使用したら、比較的に簡単に折ることが可能になるものである。
【0025】
すなわち、折り畳み板の11.25度の線の下に挿入した折り紙の中心線を合わせて、中指や薬指の爪側で折り畳み板の上から押さえておいて、親指の腹で下側の折り紙を持ち上げて折り畳み板に沿って親指の横腹で押さえながら何度か滑らせると、キチッと11.25度に折り畳むことが可能になるものである。(幅の狭い紙を縦長に折り畳む時、指先で幅狭部をつまむのが困難なため折り畳みにくいが、直線定規などのエッジを使用すると簡単にきれいに折り畳むことができるが、本発明はこれの応用例である。)
【0026】
そして、本発明の折り紙補助具をそこここに使用しながら折り鶴を完成することができるものである。
そして、厚い折り紙の教本を市販の読書台に立てかけておけば、めくったページが閉じることもなく、これを見ながら、片手の人でも本発明の折り紙補助具を用いたら、多くの種類の折り紙をキチッと完成することが可能になるものである。
片手でも折ることが可能になる本発明の折り紙補助具を使用すれば、高齢者や幼児や多少不器用な人でも、両手を使って従来よりもきれいにキチッと折り紙作品を完成することが可能になるものである。

【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施例を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施例を示す斜視図である。
【図3】本発明の実施例を示す平面図である。
【図4】本発明の実施例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施例を図1〜図4に基づいて説明する。
【0029】
市販品の折り紙は通常正方形で、大が15センチ角、中が11.5センチ角、小が7.5センチ角程度の色紙である。それで、本願では、15センチ角の折り紙を使用するものと仮定して説明する。
【0030】
図1に示す実施例は20〜24センチ角程度の正方形の基板10の側縁に紙当て枠102を取り付けて、紙当て枠102の上面に垂直の立設孔104と斜めの孔105が設けてある。これらの孔に長さ10センチ程度の先細棒103または、三角形断面の三角棒106を着脱自在に嵌めてある。これらの上に向いた棒は不使用時には、危険であるしじゃまにもなるので、紙当て枠102の内側に設けた収納孔107に嵌めて納めておくと、持ち運びの際にじゃまにならず、手提げ袋などにも収納し易い。先細棒103は前述のように他方の手の指先の役目をするものである。(他方の手指が不自由な人のためのものである)。先細棒103は、15センチ角の折り紙20をまず半分の三角に折って、これをまた三角に折って、この三角の袋部分を奥まで広げるようにするために、長さは実際は7.5センチであるが、余裕を見て10センチ程度としておくと好適である。
【0031】
又、斜めに立設した三角棒106は広げた部分などに折り線を付ける場合に利用されるものである。折り紙20に折り線を付けようとする位置に、三角棒106の鋭角の部分を当てて指の腹で押さえながら滑らしたら、折り線を付けることが可能となる。基板10の裏面の四隅に弾力性防滑材104が張り付けてあるため、斜めの力で押さえつけた際に、もう一方の手で押さえなくても、基板10が動きにくいからである。
【0032】
図1に示すように、略長方形の透明シートよりなる折り畳み板11が四角形の基板10の対角に粘着テープ12などで取り付けてあり、下側縁のエッジ111の端部を少し曲げてそり上げてあり、これが挿入口112となる。折り紙20をエッジ111の下に挿入する際に基板10との間に隙間がほとんどないため片手だけではこの隙間からは挿入困難であるが、エッジ111を他方の爪先で持ち上げることなく、この挿入口112から折り紙20を片手だけで、簡単にエッジ111の下部に挿入することが可能となるものである。
そして、折り畳み板11のエッジ111と直角になるように、基板面10に直線101が書き込まれている。これは、例えば鶴の羽部21を立ち上げたりする際に利用して、下側に挿入した折り紙20の中心25とこの直線101を合わせておいて、直角に折り上げることを可能にするものである。他の種類の折り紙を折る際でも、従来は目分量で直角に折り上げていたのが、直線101に中心を合わせてキチッと直角に折ることが可能となり、しばしば有用となるものである。
【0033】
それと、図2に示す実施例は、四角形の基板10に記入した直線101に、エッジ部111が直角になるように折り畳み板11が粘着テープ12などで取り付けてあるが、図1、図2どちらも請求項1に含まれるものである。(基板101の形状は四角形でなくても、三角形や台形や他の形状であっても差し支えないし、折り畳み板も長方形でなく台形や三角形などでも差支えない。)
【0034】
図3に示すように、折り畳み板11のエッジ部111を起点として90度、45度、22.5度、11.25度の角度線113が記入されているが、これは折り鶴を折る際に通常は、折り畳んだ折り紙の左右の側縁を左右の指でつまんで側縁を合わせて鋭角に折り畳むのであるが、片手でも折り畳み易くするためのものである。特に幅が狭くて両手でも困難な22.5度を半分の11.25度に折り畳まなくてはならない尾部23や首部22を片手で折る際に利用されるものである。
この角度線113は折り鶴だけでなく、鋭角部の多いカエルやツバメやサルなどを折る場合に多用されるものである。
【0035】
それと、図4に示すように、弾性防滑材104が基板10の裏面の隅々に取り付けてあるが、基板10や紙当て枠102が木製の場合に、乾燥によりねじれたりすると上から押さえた際にガタ付きがでてくるので、これを防止するためと、片手で、基板10や折り畳み板11の上で折り紙20を折る際に、指30で押さえながら滑らした場合に、机の上の基板も滑って動かないようにするためと、斜めに立設した鋭角棒106に力を加えても滑って動かないようにするために、設けてある。また、図4に示す折り畳み板のエッジ部111は図面では厚いように見えるが、実際は薄くて丈夫な透明プラスチック製であり、下側に挿入した折り紙をエッジ部111で押さえて反転させて、片手でも360度に折り畳むことが容易になるものである。どうしても強度上などの理由で厚くなる場合には先端に向けて薄くなるナイフ状のエッジとしても良い。折り畳み板11はエッジ部111がはっきりと見えるように透明着色プラスチックシートとする方が好適である。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の折り紙補助具1は、基板10や紙当て枠102など主要な部分を木製、紙製またはプラスチック製などとするが、木製の方が丈夫で柔軟性もあって立設孔104に先細棒103を差し込んだり抜いたりし易く、自然に抜け落ちにくいので、都合が良いであろう。高齢化時代を迎え年金暮らしの高齢者が増加するため、在宅や各種高齢者施設において手指や脳のリハビリや認知症予防などに使用されるであろう。また、幼児施設においても教育器具として利用されるなど、大きな需要が見込まれるものである。また、中学校などで工作の課題としてこの折り紙補助具を制作し、簡単な特許技術を学びながら、作品を老人ホームなどに寄付したら、社会貢献にもなり、一石三鳥の効果を得ることができるであろう。
【符号の説明】
【0037】
10 基板
101 直線
102 紙当て枠

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、この基板に取り付けたエッジ付きの折り畳み板の間に挿入した折り紙を、前記エッジに沿って任意の位置で折り畳むことが可能な折り紙補助具。
【請求項2】
前記基板面に、前記エッジと直角となる直線を表示したことを特徴とする請求項1記載の折り紙補助具。
【請求項3】
前記基板の側縁に紙当て枠を立設したことを特徴とする請求項1または請求項2記載の折り紙補助具。
【請求項4】
前記折り畳み板は透明材料より成ることを特徴とする請求項1,2または請求項3記載の折り紙補助具。
【請求項5】
前記エッジの所定の位置を基点として、前記折り畳み板に90度、45度、22.5度、11.25度となる角度線を表示したことを特徴とする請求項1,2,3または請求項4記載の折り紙補助具。
【請求項6】
前記紙当て枠の上面に袋折りを開くための先細棒を着脱自在に立設したことを特徴とする請求項3,4または請求項5記載の折り紙補助具。
【請求項7】
前記折り畳み板のエッジの端部を少し反り上げて、基板と折り畳み板の間への折り紙挿入口としたことを特徴とする請求項1,2,3,4,5または請求項6記載の折り紙補助具。
【請求項8】
前記基板の裏面に弾性防滑材を取り付けたことを特徴とする請求項1,2,3,4,5,6または請求項7記載の折り紙補助具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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