説明

折板屋根、折板屋根材及びタイトフレーム

【課題】折板屋根材の破損や取付強度の低下を防止することができる折板屋根を提供することを目的とする。
【解決手段】折板屋根材AをタイトフレームBにより保持して形成される折板屋根に関する。折板屋根材Aは谷部1の両側に斜め上方に突出する山部半体2、2を有すると共に山部半体2、2の傾斜部3の上部と下部に被係止部4、5を有する。タイトフレームBは断面逆U字状の固定突部6の上部と下部に係止部7、8を有する。固定突部6に山部半体2を被覆すると共に係止部7、8に被係止部4、5を係止する。折板屋根材AとタイトフレームBとを上下の被係止部4、5と係止部7、8により複数の箇所で係止して連結する。一部の係止部分に負圧荷重が集中することがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家屋や工場などの屋根を構成する折板屋根及びこの折板屋根を形成する際に用いられる折板屋根材並びにタイトフレームに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、屋根下地にタイトフレームを取り付けると共にこのタイトフレームに折板屋根材を取り付けて保持させることによって、折板屋根を形成することが行われているが、タイトフレームに折板屋根材を取り付けるにあたって、タイトフレームに形成した係止部と折板屋根材に形成した被係止部とを係止するようにしたものが提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【特許文献1】特公平7−47873号公報
【特許文献2】特許2863888号公報
【特許文献3】特開2001−132176号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記のような係止するタイプの折板屋根は、係止部分に負圧荷重が集中して折板屋根材に破損が生じるおそれがあり、また、負圧荷重や施工の不具合などで係止が外れた場合に折板屋根材の取付強度が低下するおそれがあった。
【0004】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、折板屋根材の破損や取付強度の低下を防止することができる折板屋根、及びこれに用いられる折板屋根材とタイトフレームとを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の請求項1に係る折板屋根は、折板屋根材AをタイトフレームBにより保持して形成される折板屋根であって、折板屋根材Aは谷部1の両側に斜め上方に突出する山部半体2、2を有すると共に山部半体2、2の傾斜部3の上部と下部に被係止部4、5を有し、タイトフレームBは断面逆U字状の固定突部6の上部と下部に係止部7、8を有し、固定突部6に山部半体2を被覆すると共に係止部7、8に被係止部4、5を係止して成ることを特徴とするものである。
【0006】
本発明の請求項2に係る折板屋根は、請求項1において、固定突部6の上方で二つの折板屋根材A、Aの山部半体2、2の側端部を隣接させて山部半体2、2同士をはぜ締めにより接合して成ることを特徴とするものである。
【0007】
本発明の請求項3に係る折板屋根材Aは、谷部1の両側に斜め上方に向いて突出する山部半体2、2を形成し、タイトフレームBの断面逆U字状の固定突部6に設けた係止部7、8に係止するための被係止部4、5を山部半体2の傾斜部3の上下部に設けて成ることを特徴とするものである。
【0008】
本発明の請求項4に係るタイトフレームBは、断面逆U字状の固定突部6の上部と下部に、折板屋根材Aの山部半体2の傾斜部3に設けた被係止部4、5を係止するための係止部7、8を設けて成ることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明では、折板屋根材AとタイトフレームBとを上下の被係止部4、5と係止部7、8により複数の箇所で係止して連結するので、一部の係止部分に負圧荷重が集中することがなく、負圧荷重を上下に分散させて折板屋根材Aに破損が生じないようにすることができるものであり、また、一部の係止が負圧荷重や施工の不具合などで外れた場合でも他の部分の係止により折板屋根材AとタイトフレームBの連結を確保することができ、折板屋根材Aの取付強度が低下しないようにすることができるものである。
【0010】
請求項2の発明では、はぜ締めにより山部半体2の傾斜部3を固定突部6に近づけることができ、被係止部4、5と係止部7、8の係止を外れにくくすることができるものである。
【0011】
請求項3の発明では、折板屋根材AとタイトフレームBとを上下の被係止部4、5と係止部7、8により複数の箇所で係止して連結し、折板屋根材AをタイトフレームBにより保持して折板屋根を形成することによって、一部の係止部分に負圧荷重が集中することがなく、負圧荷重を上下に分散させて折板屋根材Aに破損が生じないようにすることができるものであり、また、一部の係止が負圧荷重や施工の不具合などで外れた場合でも他の部分の係止により折板屋根材AとタイトフレームBの連結を確保することができ、折板屋根材Aの取付強度が低下しないようにすることができるものである。しかも、折板屋根材Aの断面二次モーメントを大きくすることができ、応力に対する変形防止などの断面性能を高くしたり面剛性の向上によりバックリング音の発生を防止したりすることができるものである。
【0012】
請求項4の発明では、折板屋根材AとタイトフレームBとを上下の被係止部4、5と係止部7、8により複数の箇所で係止して連結し、折板屋根材AをタイトフレームBにより保持して折板屋根を形成することによって、一部の係止部分に負圧荷重が集中することがなく、負圧荷重を上下に分散させて折板屋根材Aに破損が生じないようにすることができるものであり、また、一部の係止が負圧荷重や施工の不具合などで外れた場合でも他の部分の係止により折板屋根材AとタイトフレームBの連結を確保することができ、折板屋根材Aの取付強度が低下しないようにすることができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0014】
本発明の折板屋根は、折板屋根材AをタイトフレームBにより保持して形成されるものである。
【0015】
図2に示すように、本発明の折板屋根材Aは塗装鋼板や亜鉛めっき鋼板などの金属板を折り曲げ加工して形成されるものであって、屋根の傾斜方向(流れ方向)に長尺に形成されるものである。また、折板屋根材Aは断面略U字状に形成されており、谷部1と、その両方の側端部から斜め上方に向かって突出する山部半体2、2とを備えて形成されている。谷部1には一対の段部1a、1aが折り曲げ加工により折板屋根材Aの長手方向の略全長にわたって形成されている。
【0016】
一方の山部半体2aは、谷部1の一方の側端から外側方(谷部1と反対側)の斜め上方に向かって突出する傾斜部3と、この傾斜部3の上端から外側方(谷部1と反対側)に向かって略水平に突出する頂部23と、この頂部23の端部から上方に向かって突出する断面略逆U字状の嵌合部24とから構成されている。
【0017】
他方の山部半体2bは、谷部1の一方の側端から外側方(谷部1と反対側)の斜め上方に向かって突出する傾斜部3と、この傾斜部3の上端から外側方(谷部1と反対側)に向かって略水平に突出する頂部23と、この頂部23の端部から上方に向かって突出する断面略倒L字状の被嵌合部25とから構成されている。
【0018】
そして、山部半体2a、2bの傾斜部3には被係止部4、5が設けられている。被係止部4、5は傾斜部3の一部を段状に折り曲げてその裏面側に突出するように形成されている。また、一方の被係止部4は傾斜部3の上下方向の中央部よりも上側に形成することができ、他方の被係止部5は傾斜部3の上下方向の中央部よりも下側に形成することができる。また、被係止部4、5は折板屋根材Aの長尺方向の全長にわたって形成することができる。
【0019】
図3に示すように、本発明のタイトフレームBは矩形状(帯状)の鋼板などの金属板を折り曲げ加工して形成されるものであって、断面逆U字状の固定突部6と、固定突部6の両方の下端に外側(側方)に向かって突出する固定部16、16とを備えて形成されている。本発明のタイトフレームBは、固定部16を介して複数の固定突部6、6…を側方に連ねて形成してもよいし、一つの固定突部6とその両側に設けた二つの固定部16、16とで一つのタイトフレームBを形成してもよい。
【0020】
固定突部6は略水平板状の頂部18と、頂部18の両側端から外側方(頂部18と反対側)の斜め下方に向かって突出する脚部32、32とを備えて形成されている。また、各脚部32には係止部7、8が形成されている。係止部7、8は脚部32の表面に突出して形成されるものであって、例えば、脚部32の一部を切り起こし加工することにより係止部7、8を形成することができる。また、一方の係止部7は脚部32の上下方向の中央部よりも上側に形成することができ、他方の係止部8は脚部32の上下方向の中央部よりも下側に形成することができる。
【0021】
そして、本発明の折板屋根を形成するあたっては、次のようにして施工することができる。まず、複数個のタイトフレームB、B…を建物の母屋などの屋根下地の上に固定する。このとき、タイトフレームBの固定部16を屋根下地の上に載せ、固定部16を溶接などにより屋根下地に接合することによって、タイトフレームBを屋根下地に固定することができる。タイトフレームBは屋根下地の長手方向に並べて複数個取り付けることができ、これにより、屋根下地の長手方向(屋根の傾斜方向と直交する方向)のほぼ全長にわたってタイトフレームBを並設することができる。また、この場合、固定突部6の頂部18の幅方向が屋根下地の長手方向と一致している。尚、複数個の固定突部6、6…が連なって一つのタイトフレームBが形成されている場合は、必要な個数に足りれば、一つのタイトフレームBのみを屋根下地に取り付ければよい。
【0022】
次に、屋根の傾斜方向に並設された複数本の屋根下地の上に一枚の折板屋根材Aを架設する。このとき、屋根下地に取り付けたタイトフレームBに折板屋根材Aを上側から被せるように配置し、屋根下地に取り付けた上記タイトフレームBの隣り合う固定突部6、6の間に上記折板屋根材Aの谷部1を位置させて屋根下地又は上記タイトフレームBの固定部16の上に載置する。また、上記折板屋根材Aの一方の山部半体2aとこれに近接する一方の固定突部6とを連結すると共に上記折板屋根材Aの他方の山部半体2bとこれに近接する他方の固定突部6とを連結する。この場合、脚部32に設けた上側の被係止部4を固定突部6に設けた上側の係止部7の先端(下端)に係止すると共に脚部32に設けた下側の被係止部5を固定突部6に設けた下側の係止部8の先端(下端)に係止する。このようにして折板屋根材Aの両側の山部半体2a、2bをタイトフレームBに係止して保持する。また、上記折板屋根材Aの被嵌合部25を設けた方の山部半体2bの頂部23は固定突部6の頂部18の上側に配置する。
【0023】
次に、上記とは別の他の折板屋根材Aを屋根の傾斜方向に並設された複数本の屋根下地の上に架設する。ここで、新たに架設する折板屋根材Aは上記既設の折板屋根材Aに隣接して配置するものであり、これにより、上記の固定突部6、6のうちの一方を挟んで折板屋根材A、Aが隣り合う状態となる。また、新たに架設する折板屋根材Aは、上記と同様に、屋根下地に取り付けたタイトフレームBに上側から被せるように配置し、屋根下地に取り付けたタイトフレームBの隣り合う固定突部6、6の間に谷部1を位置させると共に係止部7、8への被係止部4、5の係止により両側の山部半体2a、2bをタイトフレームBに係止して保持する。また、新たに架設する折板屋根材Aの既設の折板屋根材Aに近い方の山部半体2aの嵌合部24を、既設の折板屋根材Aの上記山部半体2bの被嵌合部25に上側から嵌め込む。これにより、新たに架設する折板屋根材Aの嵌合部24の内側に既設の折板屋根材Aの被嵌合部25を位置させ、この後、新たに架設した折板屋根材Aの嵌合部24を折り曲げて既設の折板屋根材Aの被嵌合部25の下側に係止させる。このようにして隣接する折板屋根材A、Aの山部半体2a、2b同士をはぜ締め(馳締め)により接合することによって、隣接する山部半体2a、2bとを接続して山部22を形成する。また、上記のはぜ締めにより、山部半体2a、2bが固定突部6の方に近づくように若干傾くために、被係止部4、5が係止部7、8にさらに深く確実に係止されることになる。そして、このようにして複数枚の折板屋根材A、A…を順次接続しながら敷設していくことにより、山部22と谷部1とが交互に連続して連なった本発明の折板屋根を形成することができる。
【0024】
本発明の折板屋根では、折板屋根材Aの一つの山部半体2とタイトフレームBの一つの脚部32とを複数(二つ)の被係止部4、5と係止部7、8により係止し、かつ複数(二つ)の被係止部4、5と係止部7、8を上下にバランス良く配置しているので、下側の係止部8と被係止部5との係止部分ロにより、折板屋根材Aの谷部1の部分(図4中のXの範囲)に係る負圧荷重を分担させることができ、上側の係止部7と被係止部4との係止部分イにより、折板屋根材Aの山部22の部分(図4中のYの範囲)にかかる負圧荷重を分担させることができる。従って、図5(a)に示すように、折板屋根材Aの一つの山部半体2とタイトフレームBの一つの脚部32とを、下側の一つの被係止部5と係止部8により係止する場合では、その一つの係止部分に全ての負圧荷重を負担させているのに対して、本発明では複数の係止部分で負圧荷重を分担させて一部の係止部分に負圧荷重を集中させないようにすることができ、負圧荷重を上下に分散させて折板屋根材Aに破損が生じないようにすることができるものである。
【0025】
また、図5(a)に示すように、折板屋根材Aの一つの山部半体2とタイトフレームBの一つの脚部32とを、下側の一つの被係止部5と係止部8により係止する場合では、山部22と脚部32との間に隙間Sが生じやすく、折板屋根材Aが水平方向に移動して所定の位置からズレる場合があるが、本発明では、図5(b)に示すように、上側の被係止部4と係止部7により係止するので、山部22と脚部32との間に隙間が生じにくくなり、折板屋根材Aが水平方向に移動して所定の位置からズレるのを防止することができ、固定突部6の左右両側の複数の係止部分にバランス良く荷重を作用させて折板屋根材Aに荷重集中による破損が生じないようにすることができるものである。
【0026】
また、本発明では、折板屋根材AとタイトフレームBとの係止部分が複数あるので、一箇所の係止が何らかの原因(風荷重、施工の不具合等)で外れても他の係止部分により、折板屋根材Aの取付強度を確保することができるものである。
【0027】
また、本発明の折板屋根材Aでは、曲げ加工により被係止部4、5を形成するので、板要素幅厚比(板幅/板厚の比率)による無効幅の低減を図ることができる。すなわち、面内圧縮力や剪断力を受ける平板要素は幅厚比の制限を受けることが知られているが、その制限を極力低減(=無効幅の低減)するために、明確な支持縁(=曲げ加工部)を設けることで断面性能を向上させることができる。例えば、図6(a)に示すように、谷部1に段部1aを有さず、且つ山部半体2に被係止部4、5を有さない断面形状で断面二次モーメント310cm/mの折板屋根材Aにおいて、図6(b)に示すように、谷部1に段部1aを有し、山部半体2の傾斜部3に被係止部4、5を上下二箇所に形成すると、断面二次モーメントが370cm/mと向上する。また、図6(a)のものに比べて、図6(b)のものは谷部1や山部半体2に無効幅の部分Nを減少させることができる。さらに、折板屋根材Aでは日射等の外的要因による熱伸縮により、傾斜部3に内部応力が集中してバックリング音(面が反転することで発生する音)が発生する現象が知られているが、本発明では板要素幅厚比の無効幅を低減することで面剛性を増し、バックリング音を低減させる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の折板屋根の実施の形態の一例を示す一部の断面図である。
【図2】同上の折板屋根材の実施の形態の一例を示す斜視図である。
【図3】同上のタイトフレームの実施の形態の一例を示す一部の斜視図である。
【図4】同上の折板屋根の一部を示す断面図である。
【図5】(a)は本発明の比較例を示す一部の断面図、(b)は本発明の実施例を示す一部の断面図である。
【図6】(a)は本発明の他の比較例を示す一部の断面図、(b)は本発明の他の実施例を示す一部の断面図である。
【符号の説明】
【0029】
1 谷部
2 山部半体
3 傾斜部
4 被係止部
5 被係止部
6 固定突部
7 係止部
8 係止部
A 折板屋根材
B タイトフレーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
折板屋根材をタイトフレームにより保持して形成される折板屋根であって、折板屋根材は谷部の両側に斜め上方に突出する山部半体を有すると共に山部半体の傾斜部の上部と下部に被係止部を有し、タイトフレームは断面逆U字状の固定突部の上部と下部に係止部を有し、固定突部に山部半体を被覆すると共に係止部に被係止部を係止して成ることを特徴とする折板屋根。
【請求項2】
固定突部の上方で二つの折板屋根材の山部半体の側端部を隣接させて山部半体同士をはぜ締めにより接合して成ることを特徴とする請求項1に記載の折板屋根。
【請求項3】
谷部の両側に斜め上方に突出する山部半体を形成し、タイトフレームの断面逆U字状の固定突部に設けた係止部に係止するための被係止部を山部半体の傾斜部の上部と下部に設けて成ることを特徴とする折板屋根材。
【請求項4】
断面逆U字状の固定突部の上部と下部に、折板屋根材の山部半体の傾斜部に設けた被係止部を係止するための係止部を設けて成ることを特徴とするタイトフレーム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−174250(P2009−174250A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−16374(P2008−16374)
【出願日】平成20年1月28日(2008.1.28)
【出願人】(000207436)日鉄住金鋼板株式会社 (178)
【Fターム(参考)】