折板屋根材用吊子
【課題】折板屋根材にかかる大きな負圧による変形を防止し、折板屋根材の取付強度を高め、且つ施工しやすくて屋根の外観が損なわれないようにすることができる折板屋根材用吊子を提供する。
【解決手段】屋根下地に固定される固定部1と、固定部1から上方に突出する立設部2と、立設部2から側方に突出する係止部3と、係止部3から下方に突出する爪部4とを備える。補強リブ5が立設部2と係止部3との交差部に内方に向かって突設される。補強リブ5により立設部2に対する係止部3の変形を少なくすることができる。補強リブ5が爪部4には形成されていないため、ハゼ締めの際に爪部4を容易に折り曲げることができる。ハゼ締め後の折板屋根材と補強リブ5とが接触しないようにすることができる。
【解決手段】屋根下地に固定される固定部1と、固定部1から上方に突出する立設部2と、立設部2から側方に突出する係止部3と、係止部3から下方に突出する爪部4とを備える。補強リブ5が立設部2と係止部3との交差部に内方に向かって突設される。補強リブ5により立設部2に対する係止部3の変形を少なくすることができる。補強リブ5が爪部4には形成されていないため、ハゼ締めの際に爪部4を容易に折り曲げることができる。ハゼ締め後の折板屋根材と補強リブ5とが接触しないようにすることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、折板屋根材をタイトフレームなどに連結するために用いられる吊子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、折板屋根材用吊子A(以下、吊子Aと略することがある)を用いて折板屋根材を施工することが行われているが、その強度を向上させるために補強リブを設けたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。図11に示す吊子Aは、略平板状の固定部1と、固定部1から略垂直上方に突出する立設部2と、立設部2の上端から固定部1と反対側に略垂直に突出する係止部3と、係止部3の先端から斜め下方に突出する爪部4とを備えて形成されている。また、吊子Aには、立設部2の固定部1側の表面と、係止部3の上面と、爪部4の立設部2と反対側の表面とにわたって補強リブ5がプレス加工や絞り加工などにより形成されている。この補強リブ5は立設部2や係止部3の曲げ強度などの強度を高めるものであり、折板屋根材にかかる大きな負圧に対抗して立設部2や係止部3の変形を防止し、折板屋根材の取付強度を高めることができるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−328727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記のような従来の吊子Aでは、爪部4が補強リブ5で補強されているために、ハゼ締めする際に爪部4が折り曲げにくくなって、施工しにくいという問題があった。また、補強リブ5がハゼ締めにより接続された折板屋根材の裏面に圧接するために、折板屋根材と爪部4や係止部3や立設部2との間に補強リブ5の厚み分の隙間が生じることがあり、この隙間が水の浸入路となって水密性が低下するおそれがあった。さらに、補強リブ5の圧接痕が折板屋根材の表面に発生して屋根の外観が損なわれることがあった。
【0005】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、施工しやすく、水密性を維持することができ、屋根の外観が損なわれないようにすることができる折板屋根材用吊子を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に係る折板屋根材用吊子Aは、屋根下地8に固定される固定部1と、固定部1から上方に突出する立設部2と、立設部2から側方に突出する係止部3と、係止部3から下方に突出する爪部4とを備え、補強リブ5が立設部2と係止部3との交差部に内方に向けて突設されて成ることを特徴とするものである。
【0007】
本発明の請求項2に係る折板屋根材用吊子Aは、請求項1において、固定部1と立設部2との交差部に補強リブ6が形成されて成ることを特徴とするものである。
【0008】
本発明の請求項3に係る折板屋根材用吊子Aは、請求項1又は2において、折板屋根材9を係止するための係止突起7が立設部2に形成されて成ることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明では、補強リブ5により立設部2に対する係止部3の変形を少なくすることができ、折板屋根材9の取付強度を高めることができるものである。また、補強リブ5が爪部4には形成されていないため、ハゼ締めの際に爪部4を容易に折り曲げることができ、施工が行いやすくなるものである。さらに、補強リブ5は立設部2と係止部3との交差部に内方に向けて突設されるため、ハゼ締め後の折板屋根材9と補強リブ5とが接触しないようにすることができ、折板屋根材9と爪部4や係止部3や立設部2との間に補強リブ5による隙間が生じないようにすることができ、ハゼ締め部分の水密性を維持することができるものであり、しかも、折板屋根材9の表面に補強リブ5による圧接痕が生じなくて屋根の外観が損なわれないようにすることができるものである。
【0010】
請求項2の発明では、補強リブ6により固定部1に対する立設部2の変形を少なくすることができ、折板屋根材9の取付強度を高めることができるものである。
【0011】
請求項3の発明では、折板屋根材9を係止突起7に係止することができ、折板屋根材9の取付強度を高めることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態の一例を示す斜視図である。
【図2】同上の(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【図3】タイトフレームの一例を示す正面図である。
【図4】同上の施工工程を示し、(a)〜(d)は概略図である。
【図5】同上の折板屋根材の一例を示す斜視図である。
【図6】同上の施工途中を示し、(a)〜(c)は一部の断面図である。
【図7】同上の折板屋根材の施工状態を示す断面図である。
【図8】同上の他の実施の形態の一例を示す斜視図である。
【図9】同上の(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【図10】(a)は同上の施工状態を示す一部の断面図、(b)は係止突起の他例を示す断面図、(c)は係止突起のさらに他例を示す断面図である。
【図11】従来例を示し、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態を説明する。
【0014】
本発明の折板屋根材用吊子Aは、曲げ加工やプレス加工等により鉄板や鋼板などの金属板を加工して形成することができる。この場合、金属板の厚みは0.8〜3mm程度のものを用いることができるが、これに限定されるものではない。また、金属板としては塗装鋼板やめっき鋼板などを用いても良い。
【0015】
図1、2に示すように、吊子Aは、固定部1と立設部2と係止部3及び爪部4を一体的に備えて形成されている。固定部1は略平板状に形成されると共に平面視で略台形状に形成されている。また、固定部1の略中央部には上下面に貫通する取付孔20が設けられている。立設部2は略平板状に形成されており、固定部1の一側端部(長辺側の側端部)から上方に向かって略垂直に突出するように屈曲して形成されている。立設部2は固定部1の一側端部の略全長にわたって形成されている。係止部3は略平板状に形成されており、立設部2の上端部から固定部1と反対側の側方に向かって略垂直に突出するように屈曲して形成されている。係止部3は立設部2の上端部の略全長にわたって形成されている。爪部4は略平板状に形成されており、係止部3の先端部から立設部2側の斜め下方に向かって突出するように屈曲して形成されている。爪部4は係止部3の先端部の略全長にわたって形成されている。
【0016】
本発明の吊子Aには補強リブ5が形成されている。この補強リブ5は立設部2に対する係止部3の変形を防止するためのものであり、立設部2と係止部3との交差部(コーナー部)に内方に向けて三角リブに形成されて突設されている。すなわち、補強リブ5は立設部2と係止部3との交差部の内角側(角度の小さい方の角)に形成されるものであって、立設部2の係止部3側の表面と係止部3の下面との間にわたって突設されている。従って、補強リブ5は係止部3の上面や立設部2の固定部1側の表面には突出しないように形成されている。また、補強リブ5は爪部4には達しないように形成されている。補強リブ5は係止部3の長手方向に沿って略等間隔で複数の箇所に形成されている。また、本発明の吊子Aには上記とは別の補強リブ6が形成されている。この補強リブ6は固定部1に対する立設部2の変形を防止するためのものであり、固定部1と立設部2の交差部の内方に向けて突設された三角リブとして形成されている。すなわち、補強リブ6は固定部1と立設部2の交差部の内角側に形成されるものであって、固定部1の上面と立設部2の固定部1側の表面との間にわたって突設されている。従って、補強リブ6は固定片1の下面や立設部2の爪部4側の表面には突出しないように形成されている。補強リブ6は立設部2の長手方向に沿って略等間隔で複数の箇所に形成されている。尚、補強リブ5、6の形状は三角リブに限定されるものではなく、その他の任意の形状に形成することができる。
【0017】
本発明のような吊子Aを用いて折板屋根材9を施工するにあたっては、次のようにして行う。まず、吊子Aをタイトフレームなどの屋根下地8に取り付ける。図3に示すように、タイトフレームは従来より折板屋根材の施工の際に用いられているものであって、鋼製などの金属製で厚さ2〜5mm程度の帯材を折り曲げ加工等することによって、複数の支持山部22と谷部23とが交互に繰り返すように形成されるものである。支持山部22は頂部22aと頂部22aの両端部から外側方の斜め下方に向かって傾斜する脚部22bとで構成されており、頂部22aの略半分は凹部24として形成されていると共に脚部22bの表面にはリブ25が突設されている。また、凹部24の底面にはボルトなどの吊子固定具26が設けられている。
【0018】
次に、折板屋根材9を屋根下地8に上側から被せて配置する。折板屋根材9は、図5に示すように、この折板屋根材9は塗装鋼板や亜鉛めっき鋼板などの金属板を折り曲げ加工して形成されるものであって、屋根の傾斜方向(流れ方向)に長尺に形成されるものである。また、折板屋根材9は断面略U字状に形成されており、平板状の谷部50と、その両側から斜め上方に向かって突出する山部半体51、51とを備えて形成されている。一方の山部半体51の上部は、谷部50と反対側に向かって突出する頂部片52と、頂部片52の端部に形成された断面略逆U字状の嵌合部53とで構成されている。嵌合部53は頂部片52の端部から上方に向かって突出する支持片53aと、支持片53aの上端から略垂直に横方向に突出する挟持片53bと、挟持片53bの先端から下方に向かって突出する屈曲片53cとから構成されている。また、他方の山部半体51の上部は、谷部50と反対側に向かって突出する頂部片52と、頂部片52の端部から形成された断面略逆L字状の被嵌合部54とから構成されている。被嵌合部54は頂部片52の端部から上方に向かって突出する支え片54aと、支え片54aの上端から略垂直に横方向に突出する被挟持片54bとで構成されている。そして、図4(a)に示すように、折板屋根材9を屋根の傾斜方向と直交する方向で隣り合う支持山部22、22の間に位置させるようにして、屋根下地8に上側から折板屋根材9を被せて配置する。
【0019】
次に、図4(b)に示すように、屋根下地8に吊子Aを取り付ける。このとき、図6(a)に示すように、屋根下地8に配置した上記折板屋根材9の被嵌合部54の被挟持片54bに吊子Aの係止部3と爪部4の間を差し込む。また、屋根下地8の凹部24の底面に吊子Aの固定部1を載置し、取付孔20に吊子固定具26を下側から差し込み、この後、図4(c)に示すように、吊子固定具26にナット等の締結具27を締め付けることによって、吊子Aを屋根下地8に取り付けると共にこの吊子Aで折板屋根材9を屋根下地8に係止して取り付ける。
【0020】
次に、図4(d)に示すように、屋根下地8に配置した上記折板屋根材9に隣接させて他の折板屋根材9を屋根下地8に上側から被せて配置する。このとき、図6(b)に示すように、新たに配置する折板屋根材9の嵌合部53を既設の折板屋根材9の被嵌合部54に上側から嵌め込む。これにより、上記吊子Aが新たに配置した折板屋根材9で覆われることになる。この後、嵌め合わされた嵌合部53と被嵌合部54とを嵌合した後にハゼ締めすることにより、隣接する折板屋根材9、9の山部半体51、51同士を連結し、隣接する折板屋根材9、9を接続することができる。また、図7に示すように、連結された山部半体51、51からなる山部55と谷部50とが交互に繰り返した折板屋根となる。ここで、ハゼ締めはシーマーなどのハゼ締め機を用いて、図6(c)に示すように、嵌合部53の屈曲片53cを上方に向かって折り曲げることにより、屈曲片53bと挟持片53cとの間に被挟持片54bを挟持するようにして行うものである。
【0021】
そして、ハゼ締めの際の屈曲片53bの折り曲げに伴って、爪部4も上方に向かって折り曲げられることになるが、本発明の吊子Aでは爪部4や爪部4から係止部3にわたって補強リブ5が形成されていないために、爪部4の折り曲げを容易に行うことができ、施工が行いやすくなるものである。また、補強リブ5は立設部2と係止部3との交差部に内方に向かって突設されるため、施工後の折板屋根材9と補強リブ5とが接触しないようにすることができ、従って、折板屋根材9と爪部4や係止部3との間に補強リブ5に起因する隙間が生じないようにすることができ、水密性の低下を防止することができると共に、折板屋根材9に補強リブ5の圧接痕(凹みやキズつきなど)が生じないようにすることができる。また、補強リブ5により立設部2に対する係止部3の変形を少なくすることができると共に補強リブ6により固定部1に対する立設部2の変形を少なくすることができ、折板屋根材9の取付強度を高めることができるものである。
【0022】
図8、9に他の実施の形態を示す。この吊子Aでは立設部2の側面10に係止突起7を形成したものであって、その他の構成は図1のものと同様である。この係止突起7は立設部2の長手方向と略平行に並んで複数個形成されている。また、係止突起7は立設部2の両方の側面10に突出しており、例えば、プレス加工により形成することができる。
【0023】
この吊子Aも上記と同様にしてハゼ締めにより隣接する折板屋根材9、9を接続しながら屋根下地8に取り付けるものであるが、さらに、図10(a)に示すように、折板屋根材9の支持片53aと支え片54aの一部を段状に曲げ加工することによって、係合部11を形成し、この係合部11を上記係止突起7の下面に係止することによって、折板屋根材9を吊子Aに強固に取り付けることができるものである。
【0024】
尚、係止突起7は立設部2の片方の側面10にのみ形成しても良く、この場合、図10(b)に示すように、立設部2の外面(固定部1側の側面10)に係止突起7を形成するのが好ましい。また、係止突起7の形状は特に限定されることなく、例えば、図10(c)に示すように、断面略三角形に形成することもできる。
【符号の説明】
【0025】
1 固定部
2 立設部
3 係止部
4 爪部
5 補強リブ
6 補強リブ
7 係止突起
8 屋根下地
9 折板屋根材
【技術分野】
【0001】
本発明は、折板屋根材をタイトフレームなどに連結するために用いられる吊子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、折板屋根材用吊子A(以下、吊子Aと略することがある)を用いて折板屋根材を施工することが行われているが、その強度を向上させるために補強リブを設けたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。図11に示す吊子Aは、略平板状の固定部1と、固定部1から略垂直上方に突出する立設部2と、立設部2の上端から固定部1と反対側に略垂直に突出する係止部3と、係止部3の先端から斜め下方に突出する爪部4とを備えて形成されている。また、吊子Aには、立設部2の固定部1側の表面と、係止部3の上面と、爪部4の立設部2と反対側の表面とにわたって補強リブ5がプレス加工や絞り加工などにより形成されている。この補強リブ5は立設部2や係止部3の曲げ強度などの強度を高めるものであり、折板屋根材にかかる大きな負圧に対抗して立設部2や係止部3の変形を防止し、折板屋根材の取付強度を高めることができるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−328727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記のような従来の吊子Aでは、爪部4が補強リブ5で補強されているために、ハゼ締めする際に爪部4が折り曲げにくくなって、施工しにくいという問題があった。また、補強リブ5がハゼ締めにより接続された折板屋根材の裏面に圧接するために、折板屋根材と爪部4や係止部3や立設部2との間に補強リブ5の厚み分の隙間が生じることがあり、この隙間が水の浸入路となって水密性が低下するおそれがあった。さらに、補強リブ5の圧接痕が折板屋根材の表面に発生して屋根の外観が損なわれることがあった。
【0005】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、施工しやすく、水密性を維持することができ、屋根の外観が損なわれないようにすることができる折板屋根材用吊子を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に係る折板屋根材用吊子Aは、屋根下地8に固定される固定部1と、固定部1から上方に突出する立設部2と、立設部2から側方に突出する係止部3と、係止部3から下方に突出する爪部4とを備え、補強リブ5が立設部2と係止部3との交差部に内方に向けて突設されて成ることを特徴とするものである。
【0007】
本発明の請求項2に係る折板屋根材用吊子Aは、請求項1において、固定部1と立設部2との交差部に補強リブ6が形成されて成ることを特徴とするものである。
【0008】
本発明の請求項3に係る折板屋根材用吊子Aは、請求項1又は2において、折板屋根材9を係止するための係止突起7が立設部2に形成されて成ることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明では、補強リブ5により立設部2に対する係止部3の変形を少なくすることができ、折板屋根材9の取付強度を高めることができるものである。また、補強リブ5が爪部4には形成されていないため、ハゼ締めの際に爪部4を容易に折り曲げることができ、施工が行いやすくなるものである。さらに、補強リブ5は立設部2と係止部3との交差部に内方に向けて突設されるため、ハゼ締め後の折板屋根材9と補強リブ5とが接触しないようにすることができ、折板屋根材9と爪部4や係止部3や立設部2との間に補強リブ5による隙間が生じないようにすることができ、ハゼ締め部分の水密性を維持することができるものであり、しかも、折板屋根材9の表面に補強リブ5による圧接痕が生じなくて屋根の外観が損なわれないようにすることができるものである。
【0010】
請求項2の発明では、補強リブ6により固定部1に対する立設部2の変形を少なくすることができ、折板屋根材9の取付強度を高めることができるものである。
【0011】
請求項3の発明では、折板屋根材9を係止突起7に係止することができ、折板屋根材9の取付強度を高めることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態の一例を示す斜視図である。
【図2】同上の(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【図3】タイトフレームの一例を示す正面図である。
【図4】同上の施工工程を示し、(a)〜(d)は概略図である。
【図5】同上の折板屋根材の一例を示す斜視図である。
【図6】同上の施工途中を示し、(a)〜(c)は一部の断面図である。
【図7】同上の折板屋根材の施工状態を示す断面図である。
【図8】同上の他の実施の形態の一例を示す斜視図である。
【図9】同上の(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【図10】(a)は同上の施工状態を示す一部の断面図、(b)は係止突起の他例を示す断面図、(c)は係止突起のさらに他例を示す断面図である。
【図11】従来例を示し、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態を説明する。
【0014】
本発明の折板屋根材用吊子Aは、曲げ加工やプレス加工等により鉄板や鋼板などの金属板を加工して形成することができる。この場合、金属板の厚みは0.8〜3mm程度のものを用いることができるが、これに限定されるものではない。また、金属板としては塗装鋼板やめっき鋼板などを用いても良い。
【0015】
図1、2に示すように、吊子Aは、固定部1と立設部2と係止部3及び爪部4を一体的に備えて形成されている。固定部1は略平板状に形成されると共に平面視で略台形状に形成されている。また、固定部1の略中央部には上下面に貫通する取付孔20が設けられている。立設部2は略平板状に形成されており、固定部1の一側端部(長辺側の側端部)から上方に向かって略垂直に突出するように屈曲して形成されている。立設部2は固定部1の一側端部の略全長にわたって形成されている。係止部3は略平板状に形成されており、立設部2の上端部から固定部1と反対側の側方に向かって略垂直に突出するように屈曲して形成されている。係止部3は立設部2の上端部の略全長にわたって形成されている。爪部4は略平板状に形成されており、係止部3の先端部から立設部2側の斜め下方に向かって突出するように屈曲して形成されている。爪部4は係止部3の先端部の略全長にわたって形成されている。
【0016】
本発明の吊子Aには補強リブ5が形成されている。この補強リブ5は立設部2に対する係止部3の変形を防止するためのものであり、立設部2と係止部3との交差部(コーナー部)に内方に向けて三角リブに形成されて突設されている。すなわち、補強リブ5は立設部2と係止部3との交差部の内角側(角度の小さい方の角)に形成されるものであって、立設部2の係止部3側の表面と係止部3の下面との間にわたって突設されている。従って、補強リブ5は係止部3の上面や立設部2の固定部1側の表面には突出しないように形成されている。また、補強リブ5は爪部4には達しないように形成されている。補強リブ5は係止部3の長手方向に沿って略等間隔で複数の箇所に形成されている。また、本発明の吊子Aには上記とは別の補強リブ6が形成されている。この補強リブ6は固定部1に対する立設部2の変形を防止するためのものであり、固定部1と立設部2の交差部の内方に向けて突設された三角リブとして形成されている。すなわち、補強リブ6は固定部1と立設部2の交差部の内角側に形成されるものであって、固定部1の上面と立設部2の固定部1側の表面との間にわたって突設されている。従って、補強リブ6は固定片1の下面や立設部2の爪部4側の表面には突出しないように形成されている。補強リブ6は立設部2の長手方向に沿って略等間隔で複数の箇所に形成されている。尚、補強リブ5、6の形状は三角リブに限定されるものではなく、その他の任意の形状に形成することができる。
【0017】
本発明のような吊子Aを用いて折板屋根材9を施工するにあたっては、次のようにして行う。まず、吊子Aをタイトフレームなどの屋根下地8に取り付ける。図3に示すように、タイトフレームは従来より折板屋根材の施工の際に用いられているものであって、鋼製などの金属製で厚さ2〜5mm程度の帯材を折り曲げ加工等することによって、複数の支持山部22と谷部23とが交互に繰り返すように形成されるものである。支持山部22は頂部22aと頂部22aの両端部から外側方の斜め下方に向かって傾斜する脚部22bとで構成されており、頂部22aの略半分は凹部24として形成されていると共に脚部22bの表面にはリブ25が突設されている。また、凹部24の底面にはボルトなどの吊子固定具26が設けられている。
【0018】
次に、折板屋根材9を屋根下地8に上側から被せて配置する。折板屋根材9は、図5に示すように、この折板屋根材9は塗装鋼板や亜鉛めっき鋼板などの金属板を折り曲げ加工して形成されるものであって、屋根の傾斜方向(流れ方向)に長尺に形成されるものである。また、折板屋根材9は断面略U字状に形成されており、平板状の谷部50と、その両側から斜め上方に向かって突出する山部半体51、51とを備えて形成されている。一方の山部半体51の上部は、谷部50と反対側に向かって突出する頂部片52と、頂部片52の端部に形成された断面略逆U字状の嵌合部53とで構成されている。嵌合部53は頂部片52の端部から上方に向かって突出する支持片53aと、支持片53aの上端から略垂直に横方向に突出する挟持片53bと、挟持片53bの先端から下方に向かって突出する屈曲片53cとから構成されている。また、他方の山部半体51の上部は、谷部50と反対側に向かって突出する頂部片52と、頂部片52の端部から形成された断面略逆L字状の被嵌合部54とから構成されている。被嵌合部54は頂部片52の端部から上方に向かって突出する支え片54aと、支え片54aの上端から略垂直に横方向に突出する被挟持片54bとで構成されている。そして、図4(a)に示すように、折板屋根材9を屋根の傾斜方向と直交する方向で隣り合う支持山部22、22の間に位置させるようにして、屋根下地8に上側から折板屋根材9を被せて配置する。
【0019】
次に、図4(b)に示すように、屋根下地8に吊子Aを取り付ける。このとき、図6(a)に示すように、屋根下地8に配置した上記折板屋根材9の被嵌合部54の被挟持片54bに吊子Aの係止部3と爪部4の間を差し込む。また、屋根下地8の凹部24の底面に吊子Aの固定部1を載置し、取付孔20に吊子固定具26を下側から差し込み、この後、図4(c)に示すように、吊子固定具26にナット等の締結具27を締め付けることによって、吊子Aを屋根下地8に取り付けると共にこの吊子Aで折板屋根材9を屋根下地8に係止して取り付ける。
【0020】
次に、図4(d)に示すように、屋根下地8に配置した上記折板屋根材9に隣接させて他の折板屋根材9を屋根下地8に上側から被せて配置する。このとき、図6(b)に示すように、新たに配置する折板屋根材9の嵌合部53を既設の折板屋根材9の被嵌合部54に上側から嵌め込む。これにより、上記吊子Aが新たに配置した折板屋根材9で覆われることになる。この後、嵌め合わされた嵌合部53と被嵌合部54とを嵌合した後にハゼ締めすることにより、隣接する折板屋根材9、9の山部半体51、51同士を連結し、隣接する折板屋根材9、9を接続することができる。また、図7に示すように、連結された山部半体51、51からなる山部55と谷部50とが交互に繰り返した折板屋根となる。ここで、ハゼ締めはシーマーなどのハゼ締め機を用いて、図6(c)に示すように、嵌合部53の屈曲片53cを上方に向かって折り曲げることにより、屈曲片53bと挟持片53cとの間に被挟持片54bを挟持するようにして行うものである。
【0021】
そして、ハゼ締めの際の屈曲片53bの折り曲げに伴って、爪部4も上方に向かって折り曲げられることになるが、本発明の吊子Aでは爪部4や爪部4から係止部3にわたって補強リブ5が形成されていないために、爪部4の折り曲げを容易に行うことができ、施工が行いやすくなるものである。また、補強リブ5は立設部2と係止部3との交差部に内方に向かって突設されるため、施工後の折板屋根材9と補強リブ5とが接触しないようにすることができ、従って、折板屋根材9と爪部4や係止部3との間に補強リブ5に起因する隙間が生じないようにすることができ、水密性の低下を防止することができると共に、折板屋根材9に補強リブ5の圧接痕(凹みやキズつきなど)が生じないようにすることができる。また、補強リブ5により立設部2に対する係止部3の変形を少なくすることができると共に補強リブ6により固定部1に対する立設部2の変形を少なくすることができ、折板屋根材9の取付強度を高めることができるものである。
【0022】
図8、9に他の実施の形態を示す。この吊子Aでは立設部2の側面10に係止突起7を形成したものであって、その他の構成は図1のものと同様である。この係止突起7は立設部2の長手方向と略平行に並んで複数個形成されている。また、係止突起7は立設部2の両方の側面10に突出しており、例えば、プレス加工により形成することができる。
【0023】
この吊子Aも上記と同様にしてハゼ締めにより隣接する折板屋根材9、9を接続しながら屋根下地8に取り付けるものであるが、さらに、図10(a)に示すように、折板屋根材9の支持片53aと支え片54aの一部を段状に曲げ加工することによって、係合部11を形成し、この係合部11を上記係止突起7の下面に係止することによって、折板屋根材9を吊子Aに強固に取り付けることができるものである。
【0024】
尚、係止突起7は立設部2の片方の側面10にのみ形成しても良く、この場合、図10(b)に示すように、立設部2の外面(固定部1側の側面10)に係止突起7を形成するのが好ましい。また、係止突起7の形状は特に限定されることなく、例えば、図10(c)に示すように、断面略三角形に形成することもできる。
【符号の説明】
【0025】
1 固定部
2 立設部
3 係止部
4 爪部
5 補強リブ
6 補強リブ
7 係止突起
8 屋根下地
9 折板屋根材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋根下地に固定される固定部と、固定部から上方に突出する立設部と、立設部から側方に突出する係止部と、係止部から下方に突出する爪部とを備え、補強リブが立設部と係止部との交差部に内方に向けて突設されて成ることを特徴とする折板屋根材用吊子。
【請求項2】
固定部と立設部との交差部に補強リブが形成されて成ることを特徴とする請求項1に記載の折板屋根材用吊子。
【請求項3】
折板屋根材を係止するための係止突起が立設部に形成されて成ることを特徴とする請求項1又は2に記載の折板屋根材用吊子。
【請求項1】
屋根下地に固定される固定部と、固定部から上方に突出する立設部と、立設部から側方に突出する係止部と、係止部から下方に突出する爪部とを備え、補強リブが立設部と係止部との交差部に内方に向けて突設されて成ることを特徴とする折板屋根材用吊子。
【請求項2】
固定部と立設部との交差部に補強リブが形成されて成ることを特徴とする請求項1に記載の折板屋根材用吊子。
【請求項3】
折板屋根材を係止するための係止突起が立設部に形成されて成ることを特徴とする請求項1又は2に記載の折板屋根材用吊子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−74723(P2011−74723A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−229862(P2009−229862)
【出願日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【出願人】(000207436)日鉄住金鋼板株式会社 (178)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【出願人】(000207436)日鉄住金鋼板株式会社 (178)
【Fターム(参考)】
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