説明

折板屋根緑化システム

【課題】折板屋根の耐久性を向上することが可能であるとともに、植物および室内に対する熱的環境を改善することも可能であり、さらに排水性能にも優れる折板屋根緑化システムを提供する。
【解決手段】山部Pの稜線方向が斜めになるように傾斜させて設置した折板屋根1の当該山部間に掛け渡して折板屋根の山部の稜線方向と交差する方向に設置固定された複数の支持材3と、これら支持材上に、深溝4aおよび浅溝4bを折板屋根の山部の稜線方向に沿わせて折板屋根を覆って設置され、当該折板屋根の谷部Vとの間に適宜な空間Sを隔てて緑化基盤5を支持する波板状の支持基板4とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、折板屋根の耐久性を向上することが可能であるとともに、植物および室内に対する熱的環境を改善することも可能であり、さらに排水性能にも優れる折板屋根緑化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
折板屋根上を緑化する提案としては、例えば特許文献1〜3が知られている。特許文献1は、ほぼ有底V字形状の谷形状部と、谷形状部の幅方向両上端から外方に向かって形成された半山形状部と、半山形状部の外端に形成された連結部を有する屋根板材と、排水部と、栽培部とからなり、複数の屋根板材が連結部を介して連結されて屋根が構成され、それぞれの谷形状部には排水部が設置され、排水部上に栽培部が設置されてなる「緑化屋根」を開示している。
【0003】
特許文献2は、山形部が所定間隔で連続する折板屋根と、山形部の頂部箇所に設けられる支持具と、支持具にて山形部に固定される溝板とからなり、折板屋根の山形部の長手方向と溝板の長手方向とがほぼ直交するようにして、山形部の頂部に複数の溝板が並設され、溝板には植栽マット材が敷設されてなる「緑化屋根」を開示している。
【0004】
特許文献3は、山形部が所定間隔をおいて連続形成され、山形部が長手方向に沿って勾配を有することがある折板屋根と、溝板支持部の幅方向両側に取付脚部が形成され、折板屋根の山形部頂部箇所に装着する支持具と、底面部の幅方向両側に立上り側部が形成されてなる溝板と、溝板を溝板支持部上に固定する固定部材とからなり、山形部に固定された複数の支持具間に溝板が山形部の長手方向に直交するようにして配置され、かつ固定部材にて固定され、それぞれの溝板には栽培部が敷設されてなる「緑化屋根」を開示している。
【特許文献1】特開2003−278331号公報
【特許文献2】特開2003−184238号公報
【特許文献3】特開2003−321906号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1にあっては、折板屋根自体の谷形状部を利用して排水部と栽培部とを設置しているため、折板屋根が栽培部に滞留しまた排水部から排出されていく水分に晒されて、発錆するなど、早期に劣化してしまうという課題があった。また折板屋根が日射などに晒されて熱くなると、その熱によって栽培部が加熱されて、植物の根が枯れ死してしまうとともに、折板屋根で覆われた室内の熱環境に悪影響を及ぼすという課題もあった。また、特許文献2および3はいずれにあっても、勾配が設定されることのある山形部に対し、これと直交させて、植栽マット材や栽培部が敷設される溝板を配置しているため、溝板内の植栽マット材や栽培部に滞留する水分を重力の作用などによって容易かつ円滑に排水することができず、これにより根腐れなどが発生しやすいという課題があった。
【0006】
本発明は上記従来の課題に鑑みて創案されたものであって、折板屋根の耐久性を向上することが可能であるとともに、植物および室内に対する熱的環境を改善することも可能であり、さらに排水性能にも優れる折板屋根緑化システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明にかかる折板屋根緑化システムは、山部の稜線方向が斜めになるように傾斜させて設置した折板屋根の当該山部間に掛け渡して上記折板屋根の山部の稜線方向と交差する方向に設置固定された複数の支持材と、これら支持材上に、溝部を上記折板屋根の山部の稜線方向に沿わせて該折板屋根を覆って設置され、当該折板屋根の谷部との間に適宜な空間を隔てて緑化基盤を支持する波板状の支持基板とを備えたことを特徴とする。
【0008】
前記支持基板の縁部には、排水部材が設けられていることを特徴とする。
【0009】
前記緑化基盤は、前記支持基板に固定された断熱性透水層の上に、植物が植栽される植栽層が形成されて構成されることを特徴とする。
【0010】
前記植栽層が土壌であることを特徴とする。
【0011】
前記支持基板には、前記折板屋根の山部の稜線方向と交差する方向に沿って前記土壌の移動を規制する堰部材が設けられることを特徴とする。
【0012】
前記支持基板の溝部と前記緑化基盤との間に灌水用配管が設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明にかかる折板屋根緑化システムにあっては、折板屋根の耐久性を向上することができるとともに、植物および室内に対する熱的環境を改善することもでき、さらに優れた排水性能を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明にかかる折板屋根緑化システムの好適な一実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。本実施形態にかかる折板屋根緑化システムは基本的には、図1〜図5に示すように、山部Pの稜線方向Dが斜めになるように傾斜させて設置された折板屋根1の当該山部Pの適宜位置に設置される複数の取付具2と、これら取付具2間に掛け渡して折板屋根1の山部Pの稜線方向Dと交差する方向に設置固定された複数の支持材3と、これら支持材3上に、溝部である深溝4aおよび浅溝4bを折板屋根1の山部Pの稜線方向Dに沿わせて折板屋根1を覆って設置され、当該折板屋根1の谷部Vとの間に適宜な空間Sを隔てて緑化基盤5を支持する波板状の支持基板4とを備えて構成される。
【0015】
また、支持基板4の縁部には、樋などの排水部材6が設けられる。緑化基盤5は、ファスナー7を介して支持基板4に固定され、かつ上面から下面に向かって連続した多数の排水経路を有する断熱性透水層8の上に、植物9が植栽される植栽層10が形成されて構成される。植栽層10は、植物9が育成するのに必要な適度の保水性と、根腐れを生じないような適度の排水性を有する材料で形成すればよく、一般の土壌の他に、ピートモス等の苔類の堆積物や間伐材のチップを固めた人工材料等が用いられる。支持基板4には、折板屋根1の山部Pの稜線方向Dと交差する方向に沿って土壌の移動を規制する堰部材11が設けられる。支持基板4の深溝4aと緑化基盤5との間に灌水用配管12が設けられる。
【0016】
折板屋根1はよく知られているように、山部Pと谷部Vとが連続されて波板形態で形成される。具体的には、おおよそU字形状の複数の屋根片13を敷き並べて、隣接する屋根片13同士を山部P位置で互いに嵌合もしくははぜ締めすることで形成される。図示例にあっては、折板屋根1は平面外形輪郭が矩形状に形成されている。通常、折板屋根1は、山部Pの稜線方向Dが斜めになるように、山部Pの稜線方向Dに沿う幅方向一端縁を上縁部1aとし他端縁を下縁部1bとして、傾斜させて設置される(図2および図5参照)。本実施形態にかかる折板屋根緑化システムは、折板屋根1が既設であるか、新設であるかを問わず適用することができる。
【0017】
折板屋根1が備える多数の山部Pのうち、適宜な山部P、そしてまた当該山部Pの適宜位置には、取付具2が設置される。取付具2の設置位置は、折板屋根1上に設置される緑化基盤5等の荷重分布を斟酌しつつ、支持材3の配置を考慮して種々様々に決定される。取付具2は、本実施形態にあっては図2に示すように、折板屋根1の屋根面に、傾斜方向へ向かって千鳥状の配置で、上部に3つ、中央部に2つ、下部に3つ設置されている。緑化基盤5の重量が大きい場合には碁盤の目状に、上部に3つ、中央部に3つ、下部に3つ設置することも考えられる。
【0018】
取付具2は具体的には、座部14a、座部14aの両端から同じ方向に突出された一対の脚部14bおよびこれら一対の脚部14bの先端から互いに向かい合うように内側に折り曲げられた一対の爪部14cとから断面ほぼC字形状に形成されたグリップ14と、一対の脚部14b間に掛け渡して螺着され、締め込まれることでこれら脚部14b同士の間隔を狭める締め込みネジ15とから構成される。この取付具2は、折板屋根1の嵌合箇所を挟んで形成される一対の平坦部16上に一対の爪部14cを載せ、かつこれら爪部14cを当該平坦部16に連続する一対の嵌め込み溝17にそれぞれ嵌め込んだ状態で、締め込みネジ15を締め込んで脚部14bの間隔を狭めることにより、平坦部16上に載せられた爪部14cの嵌め込み溝17への嵌め込み状態が保持されて、折板屋根1の山部Pに固定される。
【0019】
取付具2の座部14a上には、少なくとも2つの取付具2間に掛け渡して支持材3が設置される。これら支持材3は、折板屋根1の山部Pの稜線方向Dと交差する方向、例えば直交する方向(図示例にあっては、折板屋根1の長さ方向)に設置される。従って、支持材3の向きは、稜線方向Dに対し直交する方向以外であってもよい。本実施形態にあっては図2に示すように、支持材3は、折板屋根1の長さ方向全長にわたる長さで長尺に形成され、上記3−2−3で配置された取付具2の設置位置に、稜線方向Dと直交させて3本設けられている。
【0020】
支持材3は、もちろん緑化基盤5の大きさに合わせて、折板屋根1の長さよりも短く形成してもよく、またその本数を加減しても良い。支持材3として本実施形態にあっては、軽量かつ良好な取り扱い性を考慮して、C形チャンネル材が採用されている。このC形チャンネル材でなる支持材3は、図示しない留め具にて取付具2に対し固定される。もちろん必要剛性等を考慮して、アングル材や中空角形パイプなどのチャンネル材以外の支持材3を用いるようにしても良い。取付具2は、これら支持材3に合わせて、適宜な形態のものが用いられる。
【0021】
これら支持材3の上には、少なくとも2本の支持材2間に掛け渡して支持基板4が設置され、これにより支持基板4の下側には、折板屋根1の谷部Vとの間に適宜な空間Sが形成される。この空間Sは、折板屋根1の幅方向に下縁部1bから上縁部1aにわたって一連に、かつ長さ方向に多数形成される。支持基板4は、その平面外形寸法の範囲で折板屋根1を覆って設置されるもので、折板屋根1全面を覆う場合に限らず、部分的に覆う場合も含まれる。この支持基板4は、平坦部4cを介して深溝4aと浅溝4bとが交互に隣接するように波板状に形成されている。そのため、通常の平板よりも断面性能が高いので、薄くすることができ、軽量化を図ることができる。この支持板4の深溝4a部分が支持材3上に当接されて設置される。特にこの支持基板4は、これら深溝4aおよび浅溝4bがともに、折板屋根1の山部Pの稜線方向Dに沿うように、換言すれば折板屋根1の傾斜方向に沿うように配置される。この支持基板4は耐蝕性の素材で形成することが好ましく、適宜位置で支持材3に対し耐蝕性のビス18などにより接合される。
【0022】
また、この支持基板4にはその周端縁、特に図3に示すように、折板屋根1の下縁部1b側の下端縁4dに位置させて、樋などの排水部材6が設けられる。排水部材6は、この下端縁4d側を挟んで折板屋根1の山部Pの稜線に沿う両側の側端縁4eにも設けるようにしてもよい。この排水部材6は、支持基板4の下端縁4dや側端縁4eに接合しても、あるいは図示例のように、支持基板4の下端縁4dや側端縁4eに臨ませる配置で折板屋根1の下縁部1bや側縁部に接合しても良い。後述する支持基板4と折板屋根1との間の良好な通気性を考慮すれば、排水部材6は折板屋根1に取り付けることが好ましい。その場合においても、図3に示すように、支持基板4の下端縁4dを折板屋根1の下縁部1bより突出させるとともに、排水部材6を折板屋根1の下縁部1bに設ければ、折板屋根1全面を支持基板4上の植栽層10で覆い隠すことができて美観的にも優れた緑化屋根を形成できるだけでなく、支持基板4からの排水と折板屋根1からの排水を単一の排水部材6で兼用して排水できるので、省力化した構成とすることができる。
【0023】
支持基板4上には、上述したように当該支持基板4により、折板屋根1の谷部Vとの間に適宜な空間Sを隔てて、緑化基盤5が支持される。緑化基盤5は、図示しないけれども、発泡させるなどの手法で網目のように多数の排水経路が形成された、例えばポリスチレンからなる軽量な断熱性透水層8と、断熱性透水層8の上に形成され、植物9が植栽される植栽層10とから構成される。排水経路は、発泡などの手段によらず、多数の細穴を穿孔するなどの方法で形成してもよい。
【0024】
断熱性透水層8は、植栽層10に過剰に水が溢れて、植物9の根の浮き上がりや土壌の流出などが生じないように、また、植栽層10に余剰な水が滞留して、根腐れが生じないように、これらの過剰水や余剰水を支持基板4の深溝4aに速やかに排水し、植栽層10に常に、植物9を育成するのに必要な適度の水分を維持すべく植栽層10の排水を調整するものであって、植栽層10からの排水を支持基板4に向けて通過させる多数の排水経路を有するものであればよく、例えば、多孔質の材料や海綿状の材料で形成してもよい。また、植栽層10からの肥料を含む排水が流通されることから、耐蝕性や耐候性を有する材料、例えば無機質材料や合成樹脂材料で形成してもよい。さらに、軽量で断熱性能を有することも望ましいことから、これを兼ね備えた発泡性の合成樹脂材料で形成することが好ましい。
【0025】
断熱性透水層8は、合成樹脂製など耐蝕性を有する適宜なファスナー7によって支持基板4に対し固定される。植栽層10は本実施形態にあっては、断熱性透水層8上に土壌を盛り土することによって形成される。そしてこの盛り土された土壌に、植物9が植えられる。そして当該緑化基盤5を支持する支持基板4の浅溝4bおよび深溝4aは、植栽層10および断熱性透水層8の排水経路から流出される水分を、折板屋根1の傾斜を利用して自然排水する排水路として機能される。
【0026】
支持基板4には、断熱性透水層8上の土壌が飛散したり、折板屋根1の傾きに従って移動し崩落するのを規制するために、折板屋根1の山部Pの稜線方向D、すなわち折板屋根1の傾斜方向と交差する方向、本実施形態にあっては図2に示すように折板屋根1の長さ方向に沿って堰部材11が固設される。図示例にあっては堰部材11は支持材3位置に対応させて、折板屋根1の幅方向に互いに間隔を隔てて3本設けられている。堰部材11の設置数は、土壌の量や折板屋根1の傾斜角度に応じて、適宜に設定すればよい。
【0027】
この堰部材11は、支持基板4から植栽層10よりも上方へ突出される高さを有する長尺な板材で形成される。植栽層10から突出された突出部分11aについては、崩落して移動しようする土壌を受け止めるために、傾斜方向上方へ向けて折り曲げて形成することも可能である。堰部材11は、植栽層10や排水経路を有する断熱性透水層8に貫入して設けられることから、耐蝕性を有する合成樹脂材もしくは金属材で形成することが好ましい。本実施形態にあっては、堰部材11により土壌の飛散・崩落を防止するようにしているが、植物9の根が伸張して土壌を包み込み、さらには断熱性透水層8の排水経路などへ進入するようになることで、これによっても土壌の飛散や崩落を防止することが可能となる。
【0028】
また、緑化基盤5の断熱性透水層8の下面とその直下の支持基板4の深溝4aとの間には、これらに挟み込んでかつ深溝4aの長さ方向に沿って、断熱性透水層8の排水経路による毛細管現象を利用して、必要に応じて給水するための灌水用配管12が設けられる。灌水用配管12からの給水圧を高く設定する場合には、断熱性透水層8に比較的大きな給水穴を穿設するようにしても良い。この灌水用配管12も、耐蝕性を有する合成樹脂材や金属材で形成することが好ましい。さらに、緑化基盤5の植栽層10上には、周縁に位置させて、植栽層10への給水を行いかつこれにより土壌の飛散を防止する灌水用チューブ19が設けられるとともに、適宜位置に位置させて、灌水用のスプリンクラー20が設けられる。
【0029】
以上の構成を備える本実施形態にかかる折板屋根緑化システムの作用について説明すると、既設もしくは新設を問わず、折板屋根1上に当該緑化システムを設置するに際しては、グリップ14を締め込みネジ15で取り付けて取付具2を山部Pに複数個設置し、次いで、取付具2間に掛け渡して支持材3を設置し、次いで、支持材3上にビス18などで支持基板4を設置する。この際、適宜な深溝4aにこれに沿って灌水用配管12を装着する。その後、支持基板4上に緑化基盤5を構成する断熱性透水層8を載せ、この断熱性透水層8を支持基板4に対してファスナー7などで固定する。この際、支持基板4に固定して堰部材11も取り付ける。その後さらに、断熱性透水層8の上に、植栽層10として土壌を盛り土する。またこの植栽層10の上には、必要に応じて、灌水用チューブ19やスプリンクラー20を設備する。
【0030】
このようにして折板屋根1を利用して設置される緑化システムにあっては、植栽層10の下側に断熱性透水層8を設けたので、降雨による過剰な水は断熱性透水層8を通じて支持基板4の深溝4aに速やかに排水され、植栽層10に過剰水が溢れて、植物9の根の浮き上がりや土壌の流出などが生じることを防止できるとともに、植栽層10に余剰水が滞留して、根腐れが生じることもなく、また必要に応じて、灌水用チューブ19やスプリンクラー20から水を補給することによって、植栽層10には常に、植物9を育成するのに必要な適度の水分を保水することができる。
【0031】
さらに、植栽層10に滞留しまたこれより排出される排水を、支持基板4の深溝4aおよび浅溝4bで受けて排水することができ、排水を折板屋根1で受けることがないので、当該折板屋根1の耐久性を向上することができる。また、折板屋根1は上述したように、屋根片13を互いに嵌合したりはぜ締めすることで構成されることから、折板屋根1で排水を受けるようにすると当該嵌合部分等の水仕舞いの問題もあるが、このような問題も解決することができる。特に、山部Pの稜線方向Dが斜めになるように傾斜させて設置される折板屋根1に対し、支持基板4を、深溝4aおよび浅溝4bが当該山部Pの稜線方向Dに沿うように設置したので、これら深溝4aおよび浅溝4bは支持基板4の下端縁4dに向かって傾斜されることとなり、容易かつ円滑に排水することができ、これにより緑化基盤5に過度に水分が滞留されることで発生する根腐れなどを防止することができる。
【0032】
また、図5に示すように、緑化基盤5を支持基板4で支持するようにし、この支持基板4と折板屋根1の谷部Vとの間に、折板屋根1の下縁部1bから上縁部1aに向かって一連に連通する多数の空間Sを形成するようにしたので、この空間Sを利用して通気させることができ、折板屋根1が日射などに晒されて加熱されても、また緑化基盤5が相当の熱量を吸収しても、空間Sによる断熱作用に通気作用が相俟ってこれにより熱を奪い、緑化基盤5側および折板屋根1側の温度上昇を抑えることができて、植物9の根が枯れ死することを防止できるとともに、折板屋根1で覆われた室内の熱環境も快適に維持することができる。
【0033】
また、緑化基盤5を、植栽層10の下に断熱性透水層8を設置して構成したので、この断熱性透水層8が有する断熱性能によっても、植栽層10に吸収された熱が折板屋根1側、ひいては室内に放熱されることを阻止でき、これによっても室内の熱的環境を良好に維持することができる。さらに、植栽層10を土壌としたので、十分に灌水を実施することができ、これによる植栽層10の土壌面および植物9の葉面からの蒸散作用によって生じる気化熱で温度を降下させることができて、室内に対する断熱効果を向上できるとともに、ヒートアイランド現象も効果的に抑制することができる。
【0034】
折板屋根1に対し、山部Pの適宜位置に設置可能な取付具2と、取付具2の配置に従って掛け渡す支持材3とで支持基板4を支持するようにしたので、緑化基盤5の荷重分に応じてこれら取付具2の配置や個数を調整することによって、支持材3の配置や本数を調節することが可能であり、緑化基盤5を折板屋根1上に適切に搭載して支持することができる。また、取付具2、C形チャンネル材でなる支持材3、波板状の支持基板4および断熱性透水層8により全体構成を軽量化でき、優れた取り扱い性で施工することができる。他方、支持基板4の下端縁4dや側端縁4eに排水部材6を設けたので、緑化基盤5からの排水で折板屋根1周辺が汚損されることを防止しつつ、支持基板4から効率よく排水することができる。さらに、支持基板4の下端縁4dを折板屋根1の下縁部1bより突出させて、排水部材6を折板屋根1の下縁部1bに設ければ、折板屋根1全面を支持基板4上の植栽層10で覆い隠すことができて美観的にも優れた緑化屋根を形成できるだけでなく、支持基板4からの排水と折板屋根1からの排水を単一の排水部材6で兼用して排水できるので、省力化した構成を確保することができる。
【0035】
また、堰部材11を設けたことにより、土壌分の飛散や崩落を防止できて植栽層10を、強固に固形化されたあるいは袋詰めされた土壌を用いることなく、盛り土した土壌や柔らかめに固形化された土壌により形成することができるとともに、また地震時の水平力に対しても植栽層10の位置ずれを押さえて、折板屋根1上に保持することができる。また土壌分の飛散防止等については、土壌に根付いた植物9自体の根によっても確保することができる。また、灌水用配管12を、支持基板4の深溝4aを利用して緑化基盤5下に設けるようにしたので、緑化基盤内に灌水用配管を設置した場合にメンテナンスが困難であるのに対し、本実施形態にあっては灌水用配管12を深溝4aから引き出すことができて、容易に灌水用配管12の保守や交換を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明にかかる折板屋根緑化システムの好適な一実施形態を示す要部拡大正面断面図である。
【図2】図1に示す折板屋根緑化システムの概略平面図である。
【図3】図1の折板屋根緑化システムに設けられる排水部材周辺を示す要部概略側面図である。
【図4】図1の折板屋根緑化システムに設けられる堰部材周辺を示す要部概略側断面図である。
【図5】図1の折板屋根緑化システムによって得られる熱環境を説明するための、図2中A−A線概略断面図である。
【符号の説明】
【0037】
1 折板屋根
2 取付具
3 支持材
4 支持基板
4a 深溝
4b 浅溝
5 緑化基盤
6 排水部材
7 ファスナー
8 断熱性透水層
9 植物
10 植栽層
11 堰部材
12 灌水用配管
D 山部の稜線方向
P 折板屋根の山部
S 空間
V 折板屋根の谷部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
山部の稜線方向が斜めになるように傾斜させて設置した折板屋根の当該山部間に掛け渡して上記折板屋根の山部の稜線方向と交差する方向に設置固定された複数の支持材と、これら支持材上に、溝部を上記折板屋根の山部の稜線方向に沿わせて該折板屋根を覆って設置され、当該折板屋根の谷部との間に適宜な空間を隔てて緑化基盤を支持する波板状の支持基板とを備えたことを特徴とする折板屋根緑化システム。
【請求項2】
前記支持基板の縁部には、排水部材が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の折板屋根緑化システム。
【請求項3】
前記緑化基盤は、前記支持基板に固定された断熱性透水層の上に、植物が植栽される植栽層が形成されて構成されることを特徴とする請求項1または2に記載の折板屋根緑化システム。
【請求項4】
前記植栽層が土壌であることを特徴とする請求項3に記載の折板屋根緑化システム。
【請求項5】
前記支持基板には、前記折板屋根の山部の稜線方向と交差する方向に沿って前記土壌の移動を規制する堰部材が設けられることを特徴とする請求項4に記載の折板屋根緑化システム。
【請求項6】
前記支持基板の溝部と前記緑化基盤との間に灌水用配管が設けられることを特徴とする請求項1〜5いずれかの項に記載の折板屋根緑化システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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