説明

折板連結具

【課題】上下の折板を強固に連結することができる折板連結具を提供する。
【解決手段】二重折板屋根の折板1、2の間に配置され、これらの折板1、2を連結するための連結具Aであって、下折板1の山部1aを跨いで配置される一対の脚部片11と、脚部片11の下端部に形成されて下折板1の山部1aの側部に形成された係止部1bに係止される係止脚部3bと、一対の脚部片11、11の間に架設される連結部材7とを備える。連結部材7により脚部片11、11の間隔が拡張するのを防止することができる。係止部1bからの係止脚部3bの係止を外れにくくすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対向配置した複数枚の折板を連結するために用いる連結具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、二枚の折板を上下に対向配置することにより屋根等を形成することが行われているが、上下の折板を連結するにあたって折板連結具(緊結具)が用いられている。図7(a)に示す折板連結具A’では、左右一対のピース70、70を軸71で回動自在に枢着し、各ピース70の下部に凹部72を設けると共に凹部72の下側に噛み合わせ部73を設け、一方のピース70の上面を吊子固定天面74として形成するものである(特許文献1参照)。そして、この折板連結具A’で上下の折板を連結するにあたっては、図7(b)に示すように、軸71を中心としてピース70、70を回動させることによって、ピース70、70の下部を互いに近接させながら、下側に配設された複数の折板75、75…の接合部分であるハゼ締め部76を凹部72内に収めると共に噛み合わせ部73でハゼ締め部76の下部を挟持する。このようにして下側の折板75のハゼ締め部76に折板連結具A’を取り付ける。次に、吊子固定天面74に吊り子77を取り付ける。次に、複数の上側の折板78、78…を配設すると共に隣り合う折板78、78をハゼ締め部79で接合する。このとき、吊り子77をハゼ締め部79で挟持するようにするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3850693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記の従来例では、ハゼ締め部76、79の一箇所のみを折板連結具A’及び吊り子77で連結しているので、上下の折板75、78を強固に連結することができないという問題があった。
【0005】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、上下の折板を強固に連結することができる折板連結具を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に係る折板連結具Aは、二重折板屋根の折板1、2の間に配置され、これらの折板1、2を連結するための連結具Aであって、下折板1の山部1aを跨いで配置される一対の脚部片11と、脚部片11の下端部に形成されて下折板1の山部1aの側部に形成された係止部1bに係止される係止脚部3bと、一対の脚部片11、11の間に架設される連結部材7とを備えて成ることを特徴とするものである。
【0007】
本発明の請求項2に係る折板連結具Aは、請求項1において、連結部材7と係止脚部3bとの間に補強部材8を架設して成ることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明では、連結部材7により脚部片11、11の間隔が拡張するのを防止することができ、係止部1bからの係止脚部3bの係止を外れにくくすることができ、山部1aに対する脚部片11の取付強度を大きくして上下の折板1、2を強固に連結することができるものである。
【0009】
請求項2の発明では、補強部材8により係止脚部3b、3bの間隔が拡張するのを防止することができ、係止部1bからの係止脚部3bの係止をさらに外れにくくすることができ、山部1aに対する脚部片11の取付強度を向上させて上下の折板1、2をさらに強固に連結することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態の一例を示す概略図である。
【図2】同上のフレーム部材を示す斜視図である。
【図3】折板の一例を示す斜視図である。
【図4】タイトフレームの一例を示す斜視図である。
【図5】下折板の一例を示す断面図である。
【図6】本発明の施工工程を示す概略図である
【図7】(a)は従来例を示す斜視図、(b)は使用状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態を説明する。
【0012】
本発明の折板連結具Aは、図2に示すように、フレーム部材3と連結部材7と補強部材8とを備えて形成されている。フレーム部材3、連結部材7及び一対の補強部材8、8は鉄板や鋼板、亜鉛めっき鋼板、塗装板、ガルバリウム鋼板などの矩形状(帯状)の金属板を折り曲げ加工するなどして形成されるものである。この金属板の厚みは1.6mm程度で、1.0〜3.0mmとすることができるが、これに限定されるものではない。
【0013】
フレーム部材3は断面逆U字状の本体部3aと、本体部3aの両方の下端に設けた係止脚部3b、3bとを備えて形成されている。本体部3aは略水平板状の頂面部10と、頂面部10の両側端から外側方(頂面部10と反対側)の斜め下方に向かって突出する脚片部11、11とを備えて形成されている。各脚片部11には複数(二つ)の被係止部5が形成されている。被係止部5は脚片部11の表面に突出して形成されるものであって、例えば、脚片部11の一部を切り起こし加工することにより被係止部5を形成することができる。また、一方の被係止部5は脚片部11の上下方向の中央部よりも上側に形成することができ、他方の被係止部5は脚片部11の上下方向の中央部よりも下側に形成することができる。また、被係止部5の外面には補強のためのリブ部5aが突設されている。係止脚部3bは脚片部11の下端から下方に向かって突出して形成されるものであり、係止脚部3bの下部には内側(頂面部10側)に向かって突出する断面略く字状の係着部12が形成されている。
【0014】
連結部材7及び補強部材8は矩形板状に形成されるものである。連結部材7は対向する一対の脚片部11、11の間に架設されるものであり、連結部材7の端部は上下の被係止部5、5の間において脚片部11の前面又は後面に折り曲げて形成された延出片11aにかしめ等により連結されている。また、補強部材8は連結部材7と係止脚部3bとの間に架設されるものであり、一方の補強部材8は連結部材7の略中央部から一方の係止脚部3bの上部まで斜め下方に向かって突出し、他方の補強部材8は連結部材7の略中央部から他方の係止脚部3bの上部まで斜め下方に向かって突出している。連結部材7と補強部材8の連結及び係止脚部3bと補強部材8の連結はかしめ等により行うことができるが、係止脚部3bの前面又は後面に折り曲げて形成された突出片13に補強部材8を連結することができる。
【0015】
そして、本発明の折板連結具Aを用いて二重折板屋根を形成するにあたっては、次のようにして行う。まず、複数の折板40、40…を屋根下地に取り付けて下折板1を形成する。折板40は図3に示すように、塗装鋼板や亜鉛めっき鋼板などの金属板を折り曲げ加工して形成されるものであって、屋根の傾斜方向(流れ方向)に長尺に形成されるものである。また、折板40は断面略U字状に形成されており、谷部41と、その両方の側端部から斜め上方に向かって突出する山部半体42a、42bとを備えて形成されている。谷部41には一対の段部41a、41aが折り曲げ加工により折板40の長手方向の略全長にわたって形成されている。
【0016】
一方の山部半体42aは、谷部41の一方の側端から外側方(谷部41と反対側)の斜め上方に向かって突出する傾斜部43と、この傾斜部43の上端から外側方(谷部41と反対側)に向かって略水平に突出する頂部23(1c)と、この頂部23の端部から上方に向かって突出する断面略逆U字状の嵌合部24とから構成されている。他方の山部半体42bは、谷部41の一方の側端から外側方(谷部41と反対側)の斜め上方に向かって突出する傾斜部43と、この傾斜部43の上端から外側方(谷部41と反対側)に向かって略水平に突出する頂部23(1c)と、この頂部23の端部から上方に向かって突出する断面略倒L字状の被嵌合部25とから構成されている。
【0017】
そして、山部半体42a、42bの傾斜部43には係止部44、45が設けられている。係止部44、45は傾斜部43の一部を段状に折り曲げてその裏面側に突出するように形成されている。また、一方の係止部44は傾斜部43の上下方向の中央部よりも上側に形成することができ、他方の係止部45は傾斜部43の上下方向の中央部よりも下側に形成することができる。また、係止部44、45は折板40の長尺方向の全長にわたって形成することができる。
【0018】
上記のような折板40を母屋等の屋根下地に取り付けるにあたっては、タイトフレームBを用いる。図4に示すように、タイトフレームBは矩形状(帯状)の鋼板などの金属板を折り曲げ加工して形成されるものであって、断面逆U字状の固定突部46と、固定突部46の両方の下端に外側(側方)に向かって突出する固定部49、49とを備えて形成されている。固定突部46は略水平板状の頂部50と、頂部50の両側端から外側方(頂部50と反対側)の斜め下方に向かって突出する脚部32、32とを備えて形成されている。また、各脚部32には係合部47、48が形成されている。係合部47、48は脚部32の表面に突出して形成されるものであって、例えば、脚部32の一部を切り起こし加工することにより係合部47、48を形成することができる。また、一方の係合部47は脚部32の上下方向の中央部よりも上側に形成することができ、他方の係合部48は脚部32の上下方向の中央部よりも下側に形成することができる。
【0019】
そして、下折板1を形成するあたっては、次のようにして施工することができる。まず、複数個のタイトフレームB、B…を建物の屋根下地の上に固定する。このとき、タイトフレームBの固定部49を屋根下地の上に載せ、固定部49を溶接などにより屋根下地に接合することによって、タイトフレームBを屋根下地に固定することができる。タイトフレームBは屋根下地の長手方向に並べて複数個取り付けることができ、これにより、屋根下地の長手方向(屋根の傾斜方向と直交する方向)のほぼ全長にわたってタイトフレームBを並設することができる。また、この場合、固定突部46の頂部50の幅方向が屋根下地の長手方向と一致している。
【0020】
次に、屋根の傾斜方向に並設された複数本の屋根下地の上に一枚の折板40を架設する。このとき、屋根下地に取り付けたタイトフレームBに折板40を上側から被せるように配置し、屋根下地に取り付けた上記タイトフレームBの隣り合う固定突部46、46の間に上記折板40の谷部41を位置させて屋根下地又は上記タイトフレームBの固定部49の上に載置する。また、上記折板40の一方の山部半体42aとこれに近接する一方の固定突部46とを連結すると共に上記折板40の他方の山部半体42bとこれに近接する他方の固定突部46とを連結する。この場合、傾斜部43に設けた上側の係止部44を固定突部46に設けた上側の係合部47の先端(下端)に係止すると共に、傾斜部43に設けた下側の係止部45を固定突部46に設けた下側の係合部48の先端(下端)に係止する。このようにして折板40の両側の山部半体42a、42bをタイトフレームBに係止して保持する。また、上記折板40の被嵌合部25を設けた方の山部半体42bの頂部23は固定突部46の頂部50の上側に配置する。
【0021】
次に、上記とは別の他の折板40を屋根の傾斜方向に並設された複数本の屋根下地の上に架設する。ここで、新たに架設する折板40は上記既設の折板40に隣接して配置するものであり、これにより、上記の固定突部46、46のうちの一方を挟んで折板40、40が隣り合う状態となる。また、新たに架設する折板40は、上記と同様に、屋根下地に取り付けたタイトフレームBに上側から被せるように配置し、屋根下地に取り付けたタイトフレームBの隣り合う固定突部46、46の間に谷部1を位置させると共に係合部47、48への係止部44、45の係止により両側の山部半体42a、42bをタイトフレームBに係止して保持する。また、新たに架設する折板40の既設の折板40に近い方の山部半体42aの嵌合部24を、既設の折板40の上記山部半体42bの被嵌合部25に上側から嵌め込む。これにより、新たに架設する折板40の嵌合部24の内側に既設の折板40の被嵌合部25を位置させ、この後、新たに架設した折板40の嵌合部24を折り曲げて既設の折板40の被嵌合部25の下側に係止させる。このようにして隣接する折板40、40の山部半体42a、42b同士をハゼ締め(馳締め)によりハゼ締め部6を形成して接合することによって、隣接する山部半体42a、42bとを接続して山部1aを形成する。また、上記のハゼ締めにより、山部半体42a、42bが固定突部46の方に近づくように若干傾くために、係止部44、45が係合部47、48にさらに深く確実に係止されることになる。そして、このようにして複数枚の折板40、40…を順次接続しながら敷設していくことにより、図5に示すような、山部1aと谷部41とが交互に連続して連なった下折板1を形成することができる。
【0022】
上記のようにして下折板1を配設した後、図6に示すように、本発明の折板連結具Aを取り付ける。折板連結具Aを取り付けるにあたっては、フレーム部材3を下折板1の山部1aに上方から近づけて山部1aの両側方に脚片部11、11を配置し、この後、フレーム部材3をハンマー等で叩き込むことによって、フレーム部材3を山部1aに強制的に嵌め込むと共に係止脚部3bの係着部12を山部1aの側部に形成された係止部1b(下側の係止部45のこと)の下面に係止する。このように山部1aを一対の脚片部11、11で挟んで跨ぐようにしてフレーム部材3を取り付けることができる。一つの山部1aに対して複数個のフレーム部材3を山部1aの長手方向に並べて配設することができ、この場合、タイトフレームBの間隔と同じ間隔でフレーム部材3を取り付けることができる。また、山部1aの長手方向と直交する方向に隣り合うフレーム部材3、3が並んで配設されることになる。このようにして下折板1の山部1aに複数個の折板連結具Aを取り付けることができる。尚、折板連結具Aは下折板1の全ての山部1aに取り付けてもよいし、必要に応じて、一部の山部1aのみに取り付けてもよい。また、下折板1のハゼ締め部6の上方に連結部材7と補強部材8の連結部分が位置する。
【0023】
上記のようにして折板連結具Aを配設した後、複数の折板40を取り付けて上折板2を形成する。まず、下折板1の上方に一枚の折板40を配置する。このとき、下折板1に取り付けたフレーム部材3に折板40を上側から被せるように配置し、隣り合うフレーム部材3、3の間に折板40の谷部41を位置させる。また、上記折板40の一方の山部半体42aとこれに近接するフレーム部材3とを連結すると共に上記折板40の他方の山部半体42bとこれに近接する他のフレーム部材3とを連結する。この場合、傾斜部43に設けた上側の係止部44(2b)をフレーム部材3に設けた上側の被係止部5の先端(下端)に係止すると共に、傾斜部43に設けた下側の係止部45(2b)をフレーム部材3に設けた下側の被係止部5の先端(下端)に係止する。このようにして折板40の両側の山部半体42a、42bをフレーム部材3、3に係止して保持する。
【0024】
次に、上記とは別の他の折板40を下折板1の上方に配置する。ここで、新たに配置する折板40は上記既設の折板40に隣接して配置するものであり、これにより、折板連結具Aを挟んで折板40、40が隣り合う状態となる。また、新たに架設する折板40は、上記と同様に、下折板1に取り付けた折板連結具Aに上側から被せるように配置し、隣り合うフレーム部材3、3の間に折板40の谷部41を位置させると共に被係止部5、5への係止部44、45の係止により両側の山部半体42a、42bをフレーム部材3に係止して保持する。また、新たに配置する折板40の既設の折板40に近い方の山部半体42aの嵌合部24を、既設の折板40の上記山部半体42bの被嵌合部25に上側から嵌め込む。これにより、新たに架設する折板40の嵌合部24の内側に既設の折板40の被嵌合部25を位置させ、この後、新たに架設した折板40の嵌合部24を折り曲げて既設の折板40の被嵌合部25の下側に係止させる。このようにして隣接する折板40、40の山部半体42a、42b同士をハゼ締め(馳締め)によりハゼ締め部6を形成して接合することによって、隣接する山部半体42a、42bとを接続して山部2aを形成する。また、上記のハゼ締めにより、山部半体42a、42bがフレーム部材3の方に近づくように若干傾くために、係止部44、45が被係止部5、5にさらに深く確実に係止されることになる。そして、このようにして複数枚の折板40、40…を順次接続しながら敷設していくことにより、図1に示すように、山部2aと谷部41とが交互に連続して連なった上折板2を形成することができる。このようにして、上下に対向配置された下折板1と上折板2からなる二重折板屋根を形成し、下折板1と上折板2の間に配置された折板連結具Aで下折板1と上折板2とを連結することができる。尚、下折板1と上折板2との間の空間にロックウールなどの断熱材を充填して断熱性を高めることができる。
【符号の説明】
【0025】
A 折板連結具
1 下折板
1a 山部
1b 係止部
3b 係止脚部
7 連結部材
8 補強部材
11 脚部片


【特許請求の範囲】
【請求項1】
二重折板屋根の折板の間に配置され、これらの折板を連結するための連結具であって、下折板の山部を跨いで配置される一対の脚部片と、脚部片の下端部に形成されて下折板の山部の側部に形成された係止部に係止される係止脚部と、一対の脚部片の間に架設される連結部材とを備えて成ることを特徴とする折板連結具。
【請求項2】
連結部材と係止脚部との間に補強部材を架設して成ることを特徴とする請求項1に記載の折板連結具。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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