説明

抜柱機用クランプリング及びこれを利用する電柱抜柱方法

【課題】埋設電柱等の抜柱に際して、チェーン等を用いることなく滑りが生じなく確実に抜柱でき、津波被害や液状化被害により深く埋設されてしまった電柱等に対しても、抜柱可能な抜柱機用クランプリング及びこれを利用する抜柱方法を提供する。
【解決手段】抜柱すべき電柱の所定高さの電柱外径に内接可能な内径をを有し、中央から径方向に二分割可能な中空円筒のケーブルドラム形状の抜柱機用クランプリングであって、分割されたクランプリング部材1の電柱に接する内接面の略中央には、それぞれ上方に広がるテーパ状の切り込みからなる凹部を有し、かつ、前記ケーブルドラム形状の下部鍔部材9の略中央には、油圧シリンダのシリンダヘッドに設けられるヘッド突起が挿入勘合される孔が設けられた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電柱等の埋設柱を引き抜く抜柱機抜柱機用クランプリング及びこれを利用する電柱抜柱方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基端部が地中に埋設され、先頂部に電話線・電力線等が架設される電柱等は、例えば、全長8〜17m程度の長さの電柱を1.3〜2.7m(電柱長の1/6)程度を地中に埋設して、先頂部に電話線・電力線等が架設される。このような電柱を設置する際には、地面に所定径・所定長の穴を掘り、基端部を当該穴に埋設して使用される。1.3〜2.7m程度を地下に埋設するのは、地震や水害等で地表が動いても架設する電話線等をしっかりと張設を確保するためであるが、新しい電柱架設等で不要となったり、耐用年数を超えて古くなったりする電柱に対しては抜柱し交換の必要が生じる。
抜柱機は、このような電柱交換の際に使用される埋設電柱を引き抜くためのものである。
【0003】
この種の抜柱機としては、例えば、特開2008−44719号公報に開示のものが知られている。
特開2008−44719号公報の開示は、発明名称「抜柱装置」に係り、「手動式の牽引機を用いることなく、しかも、搬入作業に係る労力も低減できて、抜柱作業を効率よく短時間に行うことができるようになる抜柱装置を提供すること」を目的として(同公報明細書段落番号0006参照)、例えば、「地面に立設された柱(1)の下部に周面に沿って捲回される紐状体(2)と、柱(1)の周囲の地面に配置される油圧シリンダ(3)とを備え、上記紐状体(2)は、昇降させようとする油圧シリンダ(3)のシリンダ本体(4)又はピストンロッド(5)に両端部が係着され且つ柱(1)を締め付け可能であり、上記油圧シリンダ(3)は、作業現場に搬入される作業車(10)に搭載されている油圧ユニット(11)によって駆動される」構成とすることにより(同公報特許請求の範囲請求項1の記載参照)、「(1)従来のように、手動式の牽引機を用いる必要もない。(2)別途油圧ユニットを作業現場に搬入させる必要もない。(3)したがって、手間を掛けることなく柱を引き抜くことができるため、作業効率を大幅に改善できる。」等の効果を奏するものである(同公報明細書段落番号0021参照)。
【0004】
図7は、特開2008−44719号公報に図1として開示される同公報に開示の発明の一実施形態に係る抜柱装置を示すものであり、シリンダ本体を昇降させて抜柱作業を行う装置の図である。図7において、符号101は、柱、102は、チェーン(紐状体)、102aは、フック、103は、油圧シリンダ、104は、シリンダ本体、105は、ピストンロッド、105aは、支持台、106は、係止リング、110は、作業車、111は、油圧ユニット、130は、直立保持部材である(なお、符号は、先行技術であることを明らかにするために、本願出願人において、3桁に変更して説明した。)
【0005】
特開2008−44719号公報に開示の「抜柱装置」は、埋設された電柱等の地表付近にチェーン(紐状体)102等を用いるものであり、実際の抜柱作業においては、前記チェーン(紐状体)102と電柱表面とで滑りが生じやすく、また、このため通常の地表下2m程度の埋設電柱に対しては、抜柱可能であるが、昨今の大震災における津波被害や液状化被害によって通常の埋設長さ以上に深く埋まってしまった電柱等に対して、抜柱できないという問題を生じていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−44719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の問題点に鑑み、埋設電柱等の抜柱に際して、チェーン等を用いることなく滑りが生じなく確実に抜柱でき、津波被害や液状化被害により深く埋設されてしまった電柱等に対しても、抜柱可能な抜柱機用クランプリング及びこれを利用する抜柱方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願請求項1に係る発明は、抜柱すべき電柱の所定高さの電柱外径に内接可能な内径をを有し、中央から径方向に二分割可能な中空円筒のケーブルドラム形状の抜柱機用クランプリングであって、分割されたクランプリング部材の電柱に接する内接面の略中央には、それぞれ上方に広がるテーパ状の切り込みからなる凹部を有し、かつ、前記ケーブルドラム形状の下部鍔部材の略中央には、油圧シリンダのシリンダヘッドに設けられるヘッド突起が挿入勘合される孔が設けられたことを特徴とする。
また、本願請求項2に係る発明は、前記請求項1に係る抜柱機用クランプリングにおいて、前記分割されたクランプリング部材の電柱に接する内接面の略中央にそれぞれ設けられる上方に広がるテーパ状の切り込みからなる凹部には、当該凹部に接する面が平面状で、抜柱すべき電柱に接する面が円筒内面を有する断面楔形状のクサビアタッチメントが挿入されることを特徴とする。
さらに、本願請求項3に係る発明は、前記請求項1に記載の抜柱機用クランプリングにおいて、前記ヘッド突起には、前記ヘッド突起が挿入勘合された前記下部鍔部材上方で当該ヘッド突起の抜け落ちを防ぐロッカーピン孔が開口されたことを特徴とする。
そして、本願請求項4に係る発明は、前記請求項1に記載の抜柱機用クランプリングを用いた抜柱方法であって、抜柱すべき電柱近傍両側に油圧シリンダを配置し、該油圧シリンダのシリンダヘッド上のヘッド突起を前記下部鍔部材の略中央に孔けられた孔にそれぞれ挿入嵌合し、さらに、電柱に接する内接面の略中央には、それぞれ上方に広がるテーパ状の切り込みからなる凹部に前記請求項2に記載のクサビアタッチメントを挿入し、しかる後、油圧シリンダを操作して、埋設電柱を引き抜くことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電柱等の抜柱作業に際し、電柱表面で滑りが生じなく、また、通常の地表下2m程度の埋設電柱に対して、津波被害や液状化被害等によって通常の深さ以上に深く埋設されてしまった電柱等を確実に抜柱できる。
特に、本発明に係る抜柱機用クランプリング、クサビアタッチメント及び改良したシリンダヘッドの市販の油圧シリンダを用いることにより、きわめて容易に深く埋設された電柱を抜柱することができる。
【0010】
また、電柱の両端から均等に抜柱の力を加えることができるので、抜柱作業を安全に行うことができ、さらには、抜くのに困難なより深く埋まってしまった電柱や高い摩擦力でしっかりと、かつ、容易に引き抜くことができる。
また、本発明に係る抜柱機用クランプリングは、二つに分解できるので、分解された結果、体積重量が軽減され、運搬や保管に容易となり、軽車両等に搭載して現場に搬入し、抜柱作業を行うことができるので作業性が改善される等の効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明に係る一実施例である抜柱機用クランプリング1の実施例1の分解斜視図、
【図2】図2は、前記分割された一方のクランプリング1aの概略斜視図、
【図3】図3(a)(b)(c)は、本実施例1に係る抜柱機用クランプリング1と抜柱すべき電柱との間に介在させるクサビアタッチメント27a、27bの概略を示す図、
【図4】図4は、本実施例1に係る抜柱機用クランプリング1を持ち上げる油圧シリンダ31a、31b及びそのシリンダヘッド32a、32bの概略を示す図、
【図5】図5は、抜柱する電柱の両端に市販の油圧シリンダを設置し、同油圧シリンダの上部に前記シリンダヘッド32を配置し、その上に本実施例1に係る抜柱機用クランプリング部材1a、1bを接合してジャッキアップの準備ができた状態を示す図、
【図6】図6は、同油圧シリンダで本実施例1に係る抜柱機用クランプリング部材1a、1bのジャッキアップ、ジャッキダウンして、抜柱作業の概要を示す図、
【図7】図7は、特開2008−44719号公報に図1として開示の同公報開示の発明の一実施形態に係る抜柱装置を示し、シリンダ本体を昇降させて抜柱作業を行う装置の図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係る抜柱機用クランプリングを実施するための形態として一実施例を図面に基づき詳細に説明する。
【実施例1】
【0013】
図1は、本発明に係る一実施例である抜柱機用クランプリング1の実施例1の分解斜視図であり、図1に示すように、本実施例1に係る抜柱機用クランプリング1は、中空円筒のケーブルドラム形状であって、中央から径方向に二分割可能に形成され、分割された一方のクランプリング部材1a、同他方クランプリング部材1bからなる。すなわち、本実施例1に係る抜柱機用クランプリング1は、図1に示されるように、上下の鍔状の円盤の間に形成される中空円筒のケーブルドラム状の外形を有し、中央から径方向に二分割可能な一対の同一形状のクランプリング部材1a、1bから形成される。
【0014】
図1において、符号101は、前述の従来例を示した図7に表示したと同様の抜柱対象の電柱であり、図7と同一の符号で示した。そして、符号1は、本実施例1に係る抜柱機用クランプリング、1a、1bは、同クランプリング1を中央から径方向に二分割した一方のクランプリング部材1a及び同他方クランプリング部材1b、符号2a、2bは、前記それぞれのクランプリング部材1a、1bの電柱側中央に設けられる後述のクサビアタッチメント取り付け凹部であり、3a、3b、3c、3dは、リング取っ手、4a、4b・・・・4g、4hは、両クランプ取り付けねじ込み孔、5a、5bは、後述する油圧シリンダのシリンダヘッド突起契合孔、6a、6b、6c、6dは、取り付けネジ及びナット、7a、7bは、内径部材、8a、8bは、上部鍔部材、9a、9bは、下部鍔部材、10a、10b、10c、10dは、接合部、27a、27bは、前述のクサビアタッチメント、28a、28bは、クサビアタッチメント取っ手、29a、29bは、位置調整ハンマー凸部、20a、20bは、電柱接触面、31a、31bは、油圧シリンダ、32a、32bは、同シリンダヘッド、33a、33bは、同ヘッド突起、34a、34bは、ロッカーピン孔、35a、35bは、ロッカーピン、36a、36bは、オイル挿出入孔、37a、37bはロッド、38a、38bは、ヘッド嵌合部である。
【0015】
(本実施例1に係る抜柱機用クランプリング1を使用する抜柱電柱)
上述してきたように、そもそも本実施例1に係る抜柱機用クランプリング1は、地中に深く埋設されてしまった電柱を容易に引き抜くための抜柱機に使用するものである。すなわち、抜柱に際して、立設されている電柱の所定の高さ位置に本実施例1に係る抜柱機用クランプリング1を配置し、当該クランプリング1をジャッキアップ・ジャッキダウン作業を行い、立設されている電柱を容易に引き抜くためのものである。
【0016】
このため対象となる電柱は、例えば、NTT(日本電信電話会社)規格の電柱では、全長8〜17mで、下端外径247〜447mmで、1/75のテーパのものである(「1/75テーパ」とは、長さ方向75cmに対して1cm細くなる傾斜であることを意味する。)。そして、このNTT規格の電柱は、通常1.3〜2.7m程度を地中に埋設して立設されることが求められており、本実施例1に係る抜柱機用クランプリング1の内径は、立設される電柱等の外径に接する内径を有することを想定している。
【0017】
(クランプリング1の構造)
本実施例1に係る抜柱機用クランプリング1は、概略斜視図1に示されるものであるが、中空円筒のケーブルドラム形状で中央から径方向に二分割可能であり、分割された一方のクランプリング部材1aは、他方のクランプリング部材1bと同一形状である。このため、説明を簡易にするため、便宜上、以降の説明においては、一組のクランプリング部材1a、1bに係るもののうち、分割された一方のクランプリング部材1aを例にして、その詳細を図2を用いて説明し、重複した説明を避けることとする。
【0018】
すなわち、図2の説明においては、ときとして、図1において用いたアルファベット符号a、bを除いた単なる数字符号を用いて部材を表示する場合もあるが、実際は、一組のうちの一方を表示するものであり、これら同じ数字符号で示す部材は同じ部材である(例えば、図1では、中央から径方向に二分割可能なクランプリング部材1a、1bとして表示したが、図2では、これを単にクランプリング1のごとく表示する)。
【0019】
このため、図2において、本実施例1に係る抜柱機用クランプリング部材1aの詳細を説明し、他方のクランプリング部材1bの説明は省略しているが、これをもって他方のクランプ部材1bを用いないとする趣旨ではなく、分割された一方のクランプリング部材1aと他方のクランプリング部材1bとは使用においては一体として用いられるものである。なお、図2は、前記分割された一方のクランプリング1aの概略斜視図である。
【0020】
図1及び図2から明らかなように、本実施例1に係る抜柱機用クランプリング部材1aは、上記の内径の所定高さの中空円筒のケーブルドラム形状で、高さ方向におよそ150mmの内径部材7aを有し、その内径部材7aの両端位置におよそ100mm程度突出する2枚の円盤状(図2では半円状)の鍔部材8a、9aからなる。そして、前記内径部材7aの略中央位置には、上述してきたように、上方に広がるテーパ状の切り込みからなる前記クサビアタッチメント取り付け凹部2aを有し、さらに、分割される二つの前記クランプリング部材1a、1bを接合するための接合部10a、10bを有する。
【0021】
前記クサビアタッチメント取り付け凹部2aは、本実施例1に係る抜柱機用クランプリング部材1aでは、上端の切り込みが下端の切り込みより大きい上方に広がるテーパ状の切り込みであって、背面が平面状に形成される。
また、前記接合部10a、10bには、分割される二つの前記クランプリング部材1a、1bを接合するための前記クランプ取り付けねじ込み孔4a、4b、4c、4dが設けられ、両クランプリング部材1a、1bを抜柱する電柱の周囲に配置し、両クランプリング部材1a、1bの接合部10a、10bを対応する接合部に重ね合わせ、当該クランプ取り付けねじ込み孔4a、4b、4c、4dに前記取り付けネジ及びナット6a、6b、6c、6dで接合する。
【0022】
なお、前記下部鍔部材9aの中央部には、前記油圧シリンダ31aのシリンダヘッド32aに設けられる前記ヘッド突起33aが挿入契合される前記シリンダヘッド突起契合孔6aが設けられている(図2には図示外)。
また、本実施例1に係る抜柱機用クランプリング部材1aの前記上部鍔部材8aの両端近傍には、クランプリング部材1a、1bの持ち運び及び電柱への取付作業の便宜のため、前記リング取っ手3a、3bが設けられる。また、本実施例1に係る抜柱機用クランプリング部材1a、1bの材質は、10mm厚のSS400相当が用いられるが、材質としてはこれに限る趣旨ではなく、強度が保てれば他の材質の使用も可能である。
【0023】
(クサビアタッチメントの構造)
次に、これまで説明してきたように、本実施例1に係る抜柱機用クランプリング1に使用する前記クサビアタッチメント27a、27bについて図面に基づいて説明する。
【0024】
図3(a)(b)(c)は、本実施例1に係る抜柱機用クランプリング1と抜柱すべき電柱との間に介在させる断面楔形状のクサビアタッチメント27a、27bの概略を示す図であり、抜柱する電柱の径に応じて、幅広のクサビアタッチメント大(図3(a))、幅中のクサビアタッチメント中(図3(b))、幅狭のクサビアタッチメント小(図3(c))として表示し、図1に示したクサビアタッチメント27a、27bと同一のものである。したがって、図3においても、図1及び図2で示した同一の部材は同一の符号で示す。
【0025】
抜柱の対象となる電柱については、さまざまな外径寸法があり、また、テーパーがあるため、地表からの位置によっては、外径が異なることは前述したとおりである。そこで、いざ電柱に本実施例1に係る抜柱機用クランプリング1を取り付ける際には、多様な径に対応できることが望ましく、このため、図3(a)(b)(c)に示すように、本実施例1に係る抜柱機用クランプリング1に使用するクサビアタッチメント27a、27bとして、「大」、「中」、「小」の3種類のクサビアタッチメント27a、27bを用意し、使用する電柱の径に適合する適宜のクサビアタッチメント27a、27bを使用できるようにした。
【0026】
これら「大」、「中」、「小」のクサビアタッチメント27a、27bは、その基本構成は同じであるが、抜柱される電柱101との接触面積に違いがあり、図1に示した前記クサビアタッチメント取り付け凹部2aの最大幅に合致するものを「大」、それ以下のものを「中」、そして、取り付け最小幅のものを「小」としている。当該「中」、「小」の幅については、抜柱する電柱の外径との関係で適宜決定すればよいものである。
【0027】
図3(a)(b)(c)に示すように、このクサビアタッチメント27aは、前記電柱に接する面は、円筒内面であり、前記クサビアタッチメント取り付け凹部2aに接する嵌合面26a、26bは平面状の面であり、当該嵌合面26a、26bの上部が前記上部鍔部材8aの上端から埋没しないように肩突起25a、25bを有する。
【0028】
なお、本実施例1に係る抜柱機用クランプリング1に用いられる前記クサビアタッチメント27a、27bにおいては、抜柱する電柱に接する前記接触面20a、20bは、図3(a)に引き出し図で示すように、引き抜き方向に対して滑り止め効果を発揮させる断面鋸刃状の切り欠き構造を有する面としたが、これは、このような切り欠き構造面に限るものではなく、電柱との間の滑りが起こらないようにするための、例えば、間挿パッキン材、同塗装面、メッキ面等であっても良く、または、電柱表面との関係では、何らの処理をすることのない無垢の素材面であっても良いものである。
【0029】
図3(a)(b)(c)における符号28a、28bは、前記クサビアタッチメント取っ手、29a、29bは、位置調整ハンマー凸部であり、クサビアタッチメント取っ手28a、28bは、当該クサビアタッチメント27a、27bの持ち運び及び電柱に取り付け作業のためのものであり、前記位置調整ハンマー凸部29a、29bは、当該当該クサビアタッチメント27a、27bを前記クサビアタッチメント取り付け凹部2a、2bに勘合させ、電柱との間に取り付ける際に、斜めに挿入されたりして嵌合の途中で位置を調整しなければならないような事態が生じた場合に、当該凸部29a、29bを図示外ハンマーでの殴打するためのものであり、ハンマーでの殴打に耐えうる材質及び形状からなる凸部形状であり、適宜、当該凸部29a、29bを斜め上からまたは横から殴打して当該当該クサビアタッチメント27a、27bを正常な嵌合位置への修正を可能とするものである。
【0030】
なお、前記クサビアタッチメント取っ手28a、28bは、本実施例1に係る抜柱機用クランプリング部材1aのクサビアタッチメント27a、27bでは、前記肩突起25a、25bの周縁に設けられ、当該クサビアタッチメント27a、27bの材質は、SS400相当からなり、これは持ち運びの便宜、クサビアタッチメント27a、27bに係る力を考慮して適宜の強度を有するものを使用すればよい。
【0031】
(油圧シリンダヘッドについて)
本実施例1に係る抜柱機用クランプリング1は、抜柱すべき電柱に当該クランプリング1を取り付け、その下に市販の油圧シリンダ31a、31bを配置し、当該油圧シリンダ31a、31bを上昇させ当該クランプリング1を押し上げることにより、埋設された電柱101を地中から引き抜くというものである。
【0032】
図4は、本実施例1に係る抜柱機用クランプリング1を持ち上げる油圧シリンダ31a、31b及びそのシリンダヘッド32a、32bの概略を示す図であり、図4に示すように、市販の油圧シリンダ31a、31bの押し出しロッド37端を雄ねじ構造(図示外)とし、前記シリンダヘッド32a、32bの下端が当該ロッド37aの雄ねじ構造に螺合する雌ねじ構造(図示外)のヘッド嵌合部38aを有する。
【0033】
また、当該ヘッド嵌合部38aの上には前記シリンダヘッド32aが形成され、当該シリンダヘッド32a上には前記ロッカーピン孔34aが開口するヘッド突起33aが配置される。当該ロッカーピン孔34aは、前記シリンダヘッド32aの上面から前記下部鍔部材9aの厚みより若干上位置に開口され、前記下部鍔部材9aが前記シリンダヘッド32a上に裁置され、前記ヘッド突起33aが、前記下部鍔部材9aの中央部に設けられた前記シリンダヘッド突起契合孔6aに下から挿入契合され、前記シリンダヘッド32a上で、当該ヘッド突起33aに設けられた前記ロッカーピン孔34aに前記ロッカーピン35aが挿通されて当該下部鍔部材9aを固定する。
【0034】
本実施例1に係る抜柱機用クランプリング部材1aに使用する前記シリンダヘッド32aは、市販の油圧シリンダ31a、31bに対して、その押し出しロッド37端を雄ねじ構造(図示外)とし、前記シリンダヘッド32a、32bの下端が当該ロッド37aの雄ねじ構造に螺合する雌ねじ構造(図示外)のヘッド嵌合部38aとしたが、これは、ネジ構造に限るものではなく、円柱のロッドに上から押し被せて固定するシリンダヘッドでも良く、また、ロッド自体に変更を加えて、前記ロッカーピン孔34aが開口するヘッド突起33aを備えるシリンダヘッド32aとしても良いものである。
【0035】
また、当該シリンダヘッド32a、32bの上面は、本実施例1に係る抜柱機用クランプリング1に使用するシリンダヘッド32a、32bは平面としたが、これは平面ではなく若干のR面状にして前記油圧シリンダ31が設置される地面の傾きや前記クランプリング1の傾きがあっても容易に挿入でき設置可能に形成しても良いものである。
なお、図4において、符号31は、市販の油圧シリンダ、32は、同シリンダヘッド、33は、同ヘッド突起、34は、ロッカーピン孔、36は、オイル挿出入孔、37は、ロッド、38は、ヘッド嵌合部である。
【0036】
(ロッカーピン構造)
本実施例1に係る抜柱機用クランプリング1において使用するロッカーピン35は、本実施例1に係る抜柱機用クランプリング部材1aの前記下部鍔部材9と前記シリンダヘット32とを固定するための係止ピンであり、前記下部鍔部材9を前記シリンダヘッド32上に裁置すると共に、前記ヘッド突起33aを前記下部鍔部材9aの中央部の前記シリンダヘッド突起契合孔6に下から挿入契合され、その後に、当該ヘッド突起33に設けられた前記ロッカーピン孔34に当該ロッカーピン35を挿通して前記クランプリング1を油圧シリンダに固定するものである。
【0037】
形状等は係止ピン構造であれば、形状如何を問わないが、本実施例1に係る抜柱機用クランプリング1において使用するロッカーピン35は、図2に示すように、丸棒のピン40と当該丸棒のピン40を引き抜く際の引き抜き取っ手41がホルダー状に係止される形状のものとした。
なお、本実施例1に係る抜柱機用クランプリング1に使用する前記ロッカーピン35の引き抜き取っ手41を図1、図2に示すように、長方形状の引き抜き取っ手41としたが、これは所定大きさのリング状の引き抜き取っ手形状とし、当該ロッカーピン35を前記ロッカーピン孔34に挿通した後は、当該リング状の引き抜き取っ手を折り返して前記ヘッド突起33に上から被せることが可能な構造にして当該ロッカーピン35の抜け防止として機能させても良いものである。
【0038】
(使用方法:作業手順)
次に、本実施例1に係る抜柱機用クランプリング1を使用して地中に埋設された電柱の抜柱方法について説明する。
図5は、抜柱する電柱の両端に市販の油圧シリンダを設置し、同油圧シリンダの上部に前記シリンダヘッド32を配置し、その上に本実施例1に係る抜柱機用クランプリング部材1a、1bを接合してジャッキアップの準備ができた状態を示す図であり、図6は、同油圧シリンダで本実施例1に係る抜柱機用クランプリング部材1a、1bのジャッキアップ、ジャッキダウンして、抜柱作業の概要を示す図である。
【0039】
図5及び図6において、1は、本実施例1に係る抜柱機用クランプリング、27は、前記クサビアタッチメント、31は、市販の油圧シリンダ、35は、ロッカーピン、50は、複動式油圧ポンプ、51は、油圧ホース、52は、電柱懸垂保持具である。
【0040】
作業手順は次の通りである。
(1)図5に示されるように、抜粋する電柱は、地上部分で適宜の長さに切断し、その上部を図示外クレーンに懸垂保持された前記懸垂保持具52で支えておく(ステップ1)。
(2)そして、適宜の長さに切断された抜柱する電柱の両端に前記シリンダヘッド32a、32bが配置された市販の油圧シリンダを設置し、その上から、分割可能な本実施例1に係る抜柱機用クランプリング部材1a、1bを前記取り付けネジ及びナット6a、6b、6c、6dでしっかりと接合して、電柱切断部から挿通する(ステップ2)。
(3)挿通後、電柱に挿通された本実施例1に係る抜柱機用クランプリング部材1a、1bの前記シリンダヘッド突起契合孔6a、6bに下から前記ヘッド突起33を挿入契合し、前記シリンダヘッド32上に裁置し、前記ロッカーピン孔34aに前記ロッカーピン35aを通して前記下部鍔部材9を固定する(ステップ3)。
【0041】
(4)次に、前記クサビアタッチメント27a、27bを前記クサビアタッチメント取り付け凹部2a、2bに勘合させ、ガタ付きや緩みなどがないかどうか調整する(ステップ4)。
(5)このような準備ができたら、2台の前記油圧シリンダ31と前記複動式油圧ポンプ50の間を前記油圧ホース51で接合し、前記油圧ポンプ50を操作して2台の前記油圧シリンダ31を同時にジャッキアップする(ステップ5)。
(6)油圧シリンダ31が上昇すると共に、抜柱するべき電柱は本実施例1に係る抜柱機用クランプリング1と共に抜け出て、前記油圧シリンダ31が最大限に上昇し、油圧シリンダのストロークがいっぱいになったら、前記油圧ポンプ50を操作し、今度は、ジャッキダウンの操作に入る(ステップ6)。
【0042】
(7)前記油圧シリンダ31がジャッキダウン操作に入ると、油圧シリンダ31のシリンダヘッド32は下降するが、本実施例1に係る抜柱機用クランプリング1は、電柱の係止位置に留まっているため、前記取り付けネジ及びナット6a、6b、6c、6dを緩め、本実施例1に係る抜柱機用クランプリング部材1a、1bの接合を緩める(ステップ7)。
(8)接合が緩み、前記ロッカーピン35を引き抜くと、本実施例1に係る抜柱機用クランプリング部材1a、1bは、前記シリンダヘッド32の位置まで下降することができ、前記シリンダヘッド突起契合孔6a、6bに前記ヘッド突起33を挿入契合し、前記シリンダヘッド32上に再び本実施例1に係る抜柱機用クランプリング部材1a、1bを裁置し、前記ロッカーピン孔34aに前記ロッカーピン35aを通して前記下部鍔部材9を再び固定する(ステップ8)。
(9)前記図示外クレーンで容易に引き抜くことができるようになるまで、前記ステップ4〜ステップ8を繰り返す(ステップ9)。
【0043】
なお、本実施例1に係る抜柱機用クランプリング1においては、市販の油圧シリンダ31として、10トンクラスをジャッキアップする能力のものを2台使用するようにしたが、これは10トンクラス油圧シリンダに限定されるものでないことは当然である。より以上の能力の油圧シリンダを用いることにより、抜柱摩擦の大きい、たとえば、JRグループの規格電柱の抜柱にも応用できることとなる。また、本実施例1に係る抜柱機用クランプリング1においては、複動式油圧ポンプ50を使用したが、これは、車載の専用油圧ポンプを使用しても良いことも当然である。
【0044】
このように本実施例1に係る抜柱機用クランプリング1とクサビアタッチメント27及び改良したシリンダヘッド32を有する市販の油圧シリンダを用いることにより、埋設された電柱を容易に抜柱することができる。また、電柱の両端から均等に抜柱の力を加えることができるので、抜柱作業を安全に行うことができ、さらには、抜くのに困難なより深く埋まってしまった電柱や高い摩擦力でしっかりと埋設されている電柱に対しても容易に引き抜くことができる。
【0045】
また、本実施例1に係る抜柱機用クランプリング1は、二つに分解できるので、分解された製品は体積重量が軽減され、運搬や保管に容易となる。特に、抜きにくい電柱を抜柱する際にも軽車両に搭載して現場に行き作業をすることができるので作業性が改善される等の効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、埋設され抜けにくい電柱の抜柱に利用される。
【符号の説明】
【0047】
1、1a、1b 抜柱機用クランプリング、抜柱機用クランプリング部材
2、2a、2b クサビアタッチメント取り付け凹部
3、3a、3b、3c、3d リング取っ手
4、4a、4b・・・・4g、4h クランプ取り付けねじ込み孔
5、5a、5b シリンダヘッド突起契合孔
6、6a、6b、6c、6d 取り付けネジ及びナット
7、7a、7b 内径部材
8、8a、8b 上部鍔部材
9、9a、9b 下部鍔部材
10、10a、10b、10c、10d 接合部
20、20a、20b 電柱接触面
25、25a、25b 肩突起
26、26a、26b 嵌合面
27、27a、27b クサビアタッチメント
28、28a、28b クサビアタッチメント取っ手
29、29a、29b 位置調整ハンマー凸部
31、31a、31b 油圧シリンダ
32、32a、32b シリンダヘッド
33、33a、33b ヘッド突起
34、34a、34b ロッカーピン孔
35、35a、35b ロッカーピン
36、36a、36b オイル挿出入孔
37、37a、37b ロッド
38、38a、38b ヘッド嵌合部
40 ピン
41 引き抜き取っ手
50 複動式油圧ポンプ
51 油圧ホース
52 懸垂保持具
101 電柱
102 チェーン(紐状体)
102a フック
103 油圧シリンダ
104 シリンダ本体
105 ピストンロッド
105a 支持台
106 係止リング
110 作業車
111 油圧ユニット
130 直立保持部材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
抜柱すべき電柱の所定高さの電柱外径に内接可能な内径をを有し、中央から径方向に二分割可能な中空円筒のケーブルドラム形状の抜柱機用クランプリングであって、
分割されたクランプリング部材の電柱に接する内接面の略中央には、それぞれ上方に広がるテーパ状の切り込みからなる凹部を有し、かつ、前記ケーブルドラム形状の下部鍔部材の略中央には、油圧シリンダのシリンダヘッドに設けられるヘッド突起が挿入勘合される孔が設けられたことを特徴とする抜柱機用クランプリング。
【請求項2】
前記分割されたクランプリング部材の電柱に接する内接面の略中央にそれぞれ設けられる上方に広がるテーパ状の切り込みからなる凹部には、当該凹部に接する面が平面状で、抜柱すべき電柱に接する面が円筒内面を有する断面楔形状のクサビアタッチメントが挿入されることを特徴とする請求項1に記載の抜柱機用クランプリング。
【請求項3】
前記ヘッド突起には、前記ヘッド突起が挿入勘合された前記下部鍔部材上方で当該ヘッド突起の抜け落ちを防ぐロッカーピン孔が開口されたことを特徴とする請求項1に記載の抜柱機用クランプリング。
【請求項4】
前記請求項1に記載の抜柱機用クランプリングを用いた抜柱方法であって、抜柱すべき電柱近傍両側に油圧シリンダを配置し、該油圧シリンダのシリンダヘッド上のヘッド突起を前記下部鍔部材の略中央に孔けられた孔にそれぞれ挿入嵌合し、さらに、電柱に接する内接面の略中央には、それぞれ上方に広がるテーパ状の切り込みからなる凹部に前記請求項2に記載のクサビアタッチメントを挿入し、しかる後、油圧シリンダを操作して、埋設電柱を引き抜く電柱抜柱方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−104171(P2013−104171A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−246590(P2011−246590)
【出願日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【出願人】(591177015)和興エンジニアリング株式会社 (6)
【出願人】(504415223)株式会社ツール・ディポ (3)
【Fターム(参考)】