説明

抵抗ペーストおよび多層配線板

【課題】 本発明は、はんだ耐熱試験、煮沸試験等による抵抗変化率が小さく信頼性に優れた抵抗ペーストを提供することである。
また、本発明の目的は、はんだ耐熱試験、煮沸試験等による抵抗変化率が小さく、信頼性に優れた抵抗体を提供することである
【解決手段】 環状オレフィン系樹脂中に、導電性粒子を分散させてなる抵抗ペーストにより達成される。前記導電性粒子は、炭素材料粉末および/または金属粉末が好ましい。前記導電性粒子は、5nm以上25μm以下の粒径を有するものが好まし。前記抵抗ペーストは、さらに無機フィラーを含むものである。前記環状オレフィン系樹脂は、ノルボルネン系樹脂を含むものである。前記ノルボルネン系樹脂は、側鎖に重合可能な官能基を有するノルボルネン系モノマーの付加重合体であることが好ましい。また、前記抵抗ペーストで構成される抵抗体を内蔵した多層配線板である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抵抗ペーストおよび多層配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の小型化や回路の高速化に対応するため、従来、電子基板に搭載されていた抵抗体は、高性能化され、電子基板に内蔵される構造となってきている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
従来、プリント配線板に抵抗体を形成する方法としては、銀、銅およびカーボンなどの導電性粉末を用い、それに、熱硬化性樹脂および溶剤を加えてペースト状に混合した抵抗ペーストを、塗布又は印刷する方法が、一般的に知られている。
【0004】
さらに、従来の抵抗ペーストは、一般的に、特定の構造および平均分子量等を有するエポキシ樹脂およびフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂、導電粉、有機溶剤および添加剤等を混合し混練して製造している。(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
【特許文献1】特開平7−335403号公報
【特許文献2】特開平5−175004号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特定の構造および平均分子量等を有するエポキシ樹脂およびフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂を含む抵抗ペーストは、印刷形成後の加熱硬化において、例えば、通常行われる150〜250℃の温度で30〜60分間程度の硬化時間では、硬化促進剤を使用しても熱硬化性樹脂の未反応基が残存してしまい、そのため、配線板のはんだ耐熱試験、煮沸試験等の試験工程により、抵抗変化率の値が大きく変化するという欠点が生じる。この対策として、酸性又はアルカリ性の強い硬化促進剤の使用及びその量の増量と、硬化温度を高くして硬化時間を長くするという方法があるが、この方法でも十分な効果が得られるものではなかった。
【0007】
本発明は、はんだ耐熱試験、煮沸試験等による抵抗変化率の値の変化が小さく、信頼性に優れた抵抗ペーストを提供することである。
また、本発明は、はんだ耐熱試験、煮沸試験等による抵抗変化率の値の変化が小さく、信頼性に優れた抵抗体を提供することである。
また、電気特性の安定性および信頼性が良好な多層配線板を提供できる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的は、下記(1)〜(14)記載の本発明により達成される。
(1) 環状オレフィン系樹脂中に、導電性粒子を分散させてなる抵抗ペースト。
(2) 前記導電性粒子は、炭素材料粉末および/または金属粉末である第(1)項に記載の抵抗ペースト。
(3) 前記導電性粒子は、カーボンブラックである第(1)項または第(2)項に記載の抵抗ペースト。
(4) 前記導電性粒子は、5nm以上25μm以下の粒径を有するものである第(1)項乃至第(3)項のいずれかに記載の抵抗ペースト。
(5) 前記抵抗ペーストは、さらに無機フィラーを含むものである第(1)項乃至第(4)項のいずれかに記載の抵抗ペースト。
(6) 前記無機フィラーは、シリカフィラーである第(5)項に記載の抵抗ペースト。
(7) 前記無機フィラーは、5nm以上25μm以下の粒径を有するものである第(5)項または第(6)項に記載の抵抗ペースト。
(8) 前記環状オレフィン系樹脂は、ノルボルネン系樹脂を含むものである第(1)項乃至第(7)項のいずれかに記載の抵抗ペースト。
(9) 前記ノルボルネン系樹脂は、側鎖に重合可能な官能基を有するノルボルネン系モノマーの付加重合体である第(8)項に記載の抵抗ペースト。
(10) 前記ノルボルネン系樹脂は、下記一般式(1)で表される繰返し単位を有するものである第(8)項または第(9)項に記載の抵抗ペースト。
【0009】
【化1】

(式(1)中のXは、それぞれ独立して−CH2−、−CH2CH2−または−O−を示す。R1〜R4は、それぞれ独立して水素、または、ヒドロキシル基、カルボキシル基、エステル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、シリル基、エポキシ基およびこれらの官能基を含む有機基から選ばれた1種以上の基を示し、少なくとも1つは官能基または該官能基を含む有機基を示す。nは0〜5の整数を示し、その繰り返しは異なっていても良い。)
【0010】
(11) 前記ノルボルネン系樹脂は、側鎖に重合可能な官能基を有するノルボルネン系モノマーと、下記一般式(2)で表されるモノマーを含むノルボルネン系モノマーの付加共重合体である第(8)項乃至第(10)項のいずれかに記載の抵抗ペースト。
【0011】
【化2】

(式(2)中のXは、それぞれ独立して−CH2−、−CH2CH2−または−O−を示す。R1〜R4は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1〜12の直鎖もしくは分岐したアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ビニル基、アリル基、アラルキル基、環状脂肪族基またはアリール基から選ばれた1種以上の置換基を示す。nは0〜5の整数を示し、その繰り返しは異なっていても良い。)
【0012】
(12) 前記抵抗ペーストは、0.1Pa・s以上100Pa・s以下の粘度を有するものである第(1)項乃至第(11)項のいずれかに記載の抵抗ペースト。
(13) 前記抵抗ペーストは、10mΩ/□〜10MΩ/□の面積抵抗を有するものである第(1)項乃至第(12)項のいずれかに記載の抵抗ペースト。
(14) 第(1)項乃至第(13)項のいずれかに記載の抵抗ペーストで構成される抵抗体を内蔵した多層配線板。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、はんだ耐熱試験、煮沸試験等による抵抗変化率の値の変化が小さく信頼性に優れた抵抗ペーストを提供することができる。
また、本発明は、はんだ耐熱試験、煮沸試験等による抵抗変化率の値の変化が小さく、信頼性に優れた抵抗体を提供することができる
また、本発明は、前記抵抗体を内蔵することにより、多層配線板の製造工程における熱履歴による抵抗変化を小さくできることから初期設定どおりの抵抗体を有する電気特性の安定性および信頼性が良好な多層配線板を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、環状オレフィン系樹脂中に、導電性粒子を分散させてなる抵抗ペーストである。本発明において、バインダー樹脂として、環状オレフィン系樹脂を用いることにより、耐熱性・吸湿性・信頼性に優れた抵抗ペーストを得ることができる。
【0015】
本発明に用いる環状オレフィン樹脂としては、例えば、シクロヘキセン、シクロオクテン等の単環体、ノルボルネン、ノルボルナジエン、ジシクロペンタジエン、ジヒドロジシクロペンタジエン、テトラシクロドデセン、トリシクロペンタジエン、ジヒドロトリシクロペンタジエン、テトラシクロペンタジエン、ジヒドロテトラシクロペンタジエン等の多環体、これらのモノマーに官能基が結合した置換体などの環状オレフィンモノマーの重合体を挙げることができる。
【0016】
このような環状オレフィンモノマーの重合体には、例えば、環状オレフィンモノマーの(共)重合体、環状オレフィンモノマ−とα−オレフィン類等の共重合可能な他のモノマ−との共重合体、およびこれらの共重合体の水素添加物等が挙げられる。これらの公知の重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体等が挙げられる。これら環状オレフィン系樹脂は、公知の重合法により製造することが可能であり、その重合方法には付加重合法と開環重合法とが挙げられる。前記環状オレフィン系樹脂の中でも、一般に、ノルボルネン系樹脂は、その主鎖骨格が脂環構造であるため低吸湿性を有する。
【0017】
環状オレフィン系樹脂の付加重合体としては、例えば、(1)ノルボルネン系モノマーを付加(共)重合して得られるノルボルネン型モノマーの付加(共)重合体、(2)ノルボルネン系モノマーとエチレンやα−オレフィン類との付加共重合体、(3)ノルボルネン系モノマーと非共役ジエン、および必要に応じて他のモノマーとの付加共重合体が挙げられる。これらの樹脂は公知のすべての重合方法で得ることができる。このうち、ノルボルネン系モノマーを重合(特に、付加(共)重合)することによって得られたポリマーが好ましいが、本発明はなんらこれに限定されるものではない。
【0018】
このような環状オレフィン系樹脂の付加重合体は、金属触媒による配位重合またはラジカル重合によって得られる。このうち、配位重合においては、モノマーを、遷移金属触媒存在下、溶液中で重合することによってポリマーが得られる(NiCOLE R. GROVE et al. Journal of Polymer Science:part B,Polymer Physics, Vol.37, 3003−3010(1999))。
配位重合に用いる金属触媒として代表的なニッケルと白金触媒は、PCT WO 9733198とPCT WO 00/20472に述べられている。配位重合用金属触媒の例としては、(トルエン)ビス(パーフルオロフェニル)ニッケル、(メシレン)ビス(パーフルオロフェニル)ニッケル、(ベンゼン)ビス(パーフルオロフェニル)ニッケル、ビス(テトラヒドロ)ビス(パーフルオロフェニル)ニッケル、ビス(エチルアセテート)ビス(パーフルオロフェニル)ニッケル、ビス(ジオキサン)ビス(パーフルオロフェニル)ニッケル等の公知の金属触媒が挙げられる。
【0019】
また、ラジカル重合技術については、Encyclopedia of Polymer Science, John Wiley & Sons,13,708(1998)に述べられている。
一般的にはラジカル重合はラジカル開始剤の存在下、温度を50℃〜150℃に上げ、モノマーを溶液中で反応させる。ラジカル開始剤としてはアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウリル、アゾビスイソカプトロニトリル、アゾビスイソレロニトリル、t−ブチル過酸化水素等である。
【0020】
環状オレフィン系樹脂の開環重合体としては、例えば、(4)ノルボルネン系モノマーの開環(共)重合体、および必要に応じて該(共)重合体を水素添加した樹脂、(5)ノルボルネン系モノマーとエチレンやα−オレフィン類との開環共重合体、および必要に応じて該(共)重合体を水素添加した樹脂、(6)ノルボルネン系モノマーと非共役ジエン、または他のモノマーとの開環共重合体、および必要に応じて該(共)重合体を水素添加した樹脂が挙げられる。これらの樹脂は公知のすべての重合方法で得ることができる。
【0021】
このような環状オレフィン系樹脂の開環重合体は、公知の開環重合法により、チタンやタングステン化合物を触媒として、少なくとも一種以上のノルボルネン系モノマ−を開環(共)重合して開環(共)重合体を製造し、次いで、必要に応じて、通常の水素添加方法により、前記開環(共)重合体中の炭素−炭素二重結合を水素添加して、熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂を製造することによって得られる。
【0022】
前記付加重合および開環重合に用いる重合溶媒としては、炭化水素や芳香族溶媒が挙げられる。炭化水素溶媒の例としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンやシクロヘキサンなどであるがこれに限定されない。芳香族溶媒の例としては、ベンゼン、トルエン、キシレンやメシチレンなどであるがこれに限定されない。ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチルアセテート、エステル、ラクトン、ケトンやアミドも使用できる。これら溶剤を単独や混合しても重合溶媒として使用できる。
【0023】
本発明における環状オレフィン系樹脂の分子量は、開始剤とモノマーの比を変えたり、重合時間を変えたりすることにより制御することができる。上記の配位重合が用いられる場合、米国特許No.6,136,499に開示されるように、分子量を連鎖移動触媒の使用により制御することができる。この発明においては、エチレン、プロピレン、1−ヘキサン、1−デセンや4−メチル−1−ペンテン、などα−オレフィンが分子量制御するのに適当である。
【0024】
前記環状オレフィン系樹脂は、側鎖に重合可能な官能基を有しているものを用いることができる。また、前記重合可能な官能基は、これらの官能基を含む有機基であっても良く、例えば、前記官能基と、アルキル基、エーテル基およびエステル基などの基で構成される基が挙げられる。これにより、前記誘電体ペーストから樹脂層を形成した場合に基材との密着性や耐熱性などの特性を向上することができる。
前記官能基としては、例えば、ヒドロキシル基、カルボキシル基、エステル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、シリル基、エポキシ基(グリシジルエーテル基)等が挙げられる。前記側鎖に重合可能な官能基を有している環状オレフィン系樹脂は、下記に記載の側鎖に重合可能な官能基を有する環状オレフィンモノマーの重合体、またはそれと他の環状オレフィンモノマーとの共重合体であっても良い。
【0025】
前記側鎖に重合可能な官能基を有する環状オレフィンモノマーとしては、具体的に、5−ノルボルネン−2−メタノール、酢酸5−ノルボルネン−2−メチルエステル、プロピオン酸5−ノルボルネン−2−メチルエステル、酪酸5−ノルボルネン−2−メチルエステル、吉草酸5−ノルボルネン−2−メチルエステル、カプロン酸5−ノルボルネン−2−メチルエステル、カプリル酸5−ノルボルネン−2−メチルエステル、カプリン酸5−ノルボルネン−2−メチルエステル、ラウリン酸5−ノルボルネン−2−メチルエステル、ステアリン酸5−ノルボルネン−2−メチルエステル、オレイン酸5−ノルボルネン−2−メチルエステル、リノレン酸5−ノルボルネン−2−メチルエステル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸、5−ノルボルネン−2−カルボン酸メチルエステル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸エチルエステル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸t−ブチルエステル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸i−ブチルエステル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸トリメチルシリルエステル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸トリエチルシリルエステル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸イソボニルエステル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸2−ヒドロキシエチルエステル、5−ノルボルネン−2−メチル−2−カルボン酸メチルエステル、ケイ皮酸5−ノルボルネン−2−メチルエステル、5−ノルボルネン−2−メチルエチルカルボネ−ト、5−ノルボルネン−2−メチルn−ブチルカルボネ−ト、5−ノルボルネン−2−メチルt−ブチルカルボネ−ト、5−メトキシ−2−ノルボルネン、(メタ)アクリル酸5−ノルボルネン−2−メチルエステル、(メタ)アクリル酸5−ノルボルネン−2−エチルエステル、(メタ)アクリル酸5−ノルボルネン−2−n−ブチルエステル、(メタ)アクリル酸5−ノルボルネン−2−n−プロピルエステル、(メタ)アクリル酸5−ノルボルネン−2−i−ブチルエステル、(メタ)アクリル酸5−ノルボルネン−2−i−プロピルエステル、(メタ)アクリル酸5−ノルボルネン−2−ヘキシルエステル、(メタ)アクリル酸5−ノルボルネン−2−オクチルエステル、(メタ)アクリル酸5−ノルボルネン−2−デシルエステル、5−トリメトキシシリル−2−ノルボルネン、5−トリエトキシシリル−2−ノルボルネン、5−(2−トリメトキシシリルエチル)−2−ノルボルネン、5−(2−トリエトキシシリルエチル)−2−ノルボルネン、5−(3−トリメトキシプロピル)−2−ノルボルネン、5−(4−トリメトキシブチル)−2−ノルボルネン、5−トリメチルシリルメチルエーテル−2−ノルボルネン、5−メチルグリシジルエーテル−2−ノルボルネンなどが挙げられる。これらの環状オレフィンモノマーを重合した付加重合体、およびこれらの環状オレフィンモノマーと他の環状オレフィンモノマーとの付加共重合体が最も好ましい。これにより、より耐熱性に優れることができる。
【0026】
前記重合可能な官能基の置換量は、特に限定されないが、前記環状オレフィン系樹脂全体の3〜70モル%が好ましく、特に5〜40モル%が好ましい。置換量が前記範囲内であると、特に誘電率に優れる。また、このような側鎖に重合可能な官能基を有する環状オレフィン系樹脂は、例えば、1)前記環状オレフィン系樹脂に重合開始可能な官能基を有する化合物を変性反応により導入することによって、2)重合開始可能な官能基を有する単量体を重合することによって、3)重合開始可能な官能基を有する単量体を共重合体成分として他の成分と共重合することによって、または4)エステル基等の重合可能な官能基を有する単量体を共重合成分として共重合した後、エステル基を加水分解することによって得ることができる。
【0027】
さらに、環状オレフィンモノマーと共重合可能な不飽和モノマーとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセンおよび1−エイコセン等の炭素数2〜20のエチレン又はα−オレフィン、1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエンおよび1,7−オクタジエン等の非共役ジエン等が挙げられる。
【0028】
次に、ノルボルネン系樹脂の付加(共)重合体について説明する。
前記側鎖に重合可能な官能基を有しているノルボルネン系樹脂は、具体的には下記式(1)で表される繰り返し単位を有していることが好ましい。
【0029】
【化1】

【0030】
式(1)中のXは、それぞれ独立して−CH2−、−CH2CH2−または−O−を示す。R1〜R4は、それぞれ独立して水素、または、ヒドロキシル基、カルボキシル基、エステル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、シリル基、エポキシ基およびこれらの官能基を含む有機基から選ばれた1種以上の基を示し、少なくとも1つは官能基または該官能基を含む有機基を示す。nは0〜5の整数を示し、その繰り返しは異なっていても良い。上記官能基を含む有機基としては、前記官能基と、アルキル基、エーテル基、エステル基などの基で構成される基が挙げられる。
【0031】
また、前記側鎖に重合可能な官能基を有しているノルボルネン系樹脂は、さらに、側鎖に重合可能な官能基を有するノルボルネン型モノマーと、下記式(2)で表されるモノマーとの付加共重合体であることが好ましい。これにより、密着性と電気特性とのバランスが特に優れる樹脂層を得ることができる。
【0032】
【化2】

【0033】
式(2)中のXは、それぞれ独立して−CH2−、−CH2CH2−または−O−を示す。R1〜R4は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜12の直鎖もしくは分岐したアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ビニル基、アリル基、アラルキル基、環状脂肪族基またはアリール基から選ばれた1種以上の置換基を示す。nは0〜5の整数を示し、その繰り返しは異なっていても良い。
前記アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基およびドデシル基等が挙げられ、アルケニル基の具体例としては、ビニル基、アリル基、ブチニル基およびシクロヘキセニル基等が挙げられ、アルキニル基の具体例としては、エチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基、1−ブチニル基および2−ブチニル基等が挙げられ、前記環状脂肪族基の具体例としては、シクロヘキシル基、シクロペンチル基およびメチルシクロヘキシル基等が挙げられ、アリール基の具体例としては、フェニル基、ナフチル基およびアントラセニル基等が挙げられ、アラルキル基の具体例としてはベンジル基およびフェネチル基等が挙げられるが、本発明は何らこれらに限定されない。
【0034】
前記環状オレフィン系樹脂の重量平均分子量は、特に限定されないが、1,000〜1,000,000が好ましく、特に5,000〜500,000が好ましく、最も10,000〜250,000が好ましい。重量平均分子量(Mw)が前記範囲内であると、耐熱性、成形物表面の平滑性等の特性がバランスに優れる。
前記重量平均分子量は、例えば、シクロヘキサン又はトルエンを有機溶剤とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)で測定されるポリスチレン換算で評価することができる。
【0035】
前記環状オレフィン系樹脂の分子量分布[重量平均分子量:Mwと、数平均分子量:Mnとの比(Mw/Mn)]は、特に限定されないが、5以下が好ましく、特に4以下が好ましく、特に1〜3が好ましい。分子量分布が前記範囲内であると、電気特性に特に優れる。
前記分子量分布を測定する方法としては、例えば、シクロヘキサンまたはトルエンを有機溶剤とするGPCで測定することができる。
また、上記方法で、重量平均分子量や分子量分布が測定できない環状オレフィン系樹脂の場合には、通常の溶融加工法により、樹脂層を形成し得る程度の溶融粘度や重合度を有するものを使用することができる。前記環状オレフィン系樹脂のガラス転移温度は、使用目的に応じて適宜選択できるが、通常50℃以上、好ましくは70℃以上、より好ましくは100℃以上、さらに好ましくは125℃以上である。
【0036】
前記一般式(1)で表される構造を有するノルボルネン系樹脂において、置換基R1、R2、R3、およびR4は、目的に応じて、その置換基の種類と該置換基を有する繰り返し単位の割合を調整することにより、特性を好ましいものとすることができ、特に上記付加共重合体とすると好ましいものを得ることができる。例えば、前記一般式(1)を用いて説明すると、Xは−CH2−とし、R1〜R3は水素とし、nは0の場合、R4として、例えば、前記アルキル基を導入した繰返し単位を有する場合、可とう性に優れるポリノルボルネン樹脂フィルムを得ることができるので好ましい。また、これらの置換基として、トリメトキシシリル基、またはトリエトキシシリル基などのシリル基を導入した繰返し単位を有する場合、銅などの金属との密着性が向上するので好ましい。ただし、トリエトキシシリル基、トリメトキシシリル基の割合が多い場合、ポリノルボルネン樹脂の誘電正接が大きくなることがあるため、トリエトキシシリル基および/またはトリメトキシシリル基を有するノルボルネンの繰り返し単位は、一般式(1)で表されるノルボルネン1分子において、5〜80mol%の範囲にすることが好ましい。さらに好ましくは5〜50mol%である。
【0037】
中でも、特に、可とう性、密着性および誘電特性が良好な樹脂フィルムを得る上で、上記付加重合体において、n−ブチル基を有するノルボルネン90mol%とトリエトシキシシリル基を有するノルボルネン10mol%からなるポリノルボルネン、未置換(置換基が水素原子)ノルボルネン90mol%とトリエトシシリル基を有するノルボルネン10mol%からなるポリノルボルネン、および未置換ノルボルネン75mol%とn−ヘキシル基を有するノルボルネン25mol%からなるポリノルボルネンが好ましい。
【0038】
また、前記側鎖にトリエトキシシリル基、トリメトキシシリル基の替わりにエポキシ基を有するノルボルネン5〜95モル%、好ましくは、20〜80モル%、さらに好ましくは30〜70%の割合で使用する場合、基材との密着性を向上することができる。
【0039】
本発明の抵抗ペーストに用いる導電性粒子としては、例えば、アセチレンブラック、ファーネスブラック、サーマルブラックおよびケッチェンブラック等のカーボンブラックや、天然黒鉛および人造黒鉛などの黒鉛類、などの炭素材料粉末、銀粉および銅紛などの金属粉末などが挙げられる。
これらの中でも、カーボンブラックが好ましい。これにより、抵抗変化率の低い抵抗体を得ることができる。
前記導電性粒子の粒径としては、5nm以上25μm以下であることが好ましく、特に30nm以上5μm以下が好ましい。粒径が前記範囲内であると、樹脂中の分散性が良好であり、また、抵抗ペーストの印刷性が向上する。
【0040】
前記導電性粒子の含有量は、作製する抵抗体の抵抗値によって調整することができるが、例えば、本発明抵抗ペーストに含まれる樹脂固形成分100重量部に対して、0.1〜50重量部が好ましく、さらに好ましくは2〜10重量部の範囲である。本発明抵抗ペーストは面積抵抗を10mΩ/□〜100MΩ/□まで調整することができる。
【0041】
本発明に用いる無機フィラーとしては、例えば、炭酸カルシウム、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、マイカ、炭酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、アエロジル、球状シリカ、溶融シリカ、破砕シリカ、ヒュームドシリカ、硫酸バリウム、ガラス短繊維やホウ酸アルミニウムや炭化ケイ素等の各種ウィスカ等があり、単独または2種以上を併用することができる。好ましい無機フィラーは、アエロジル等のシリカフィラーがあげられる。
【0042】
前記無機フィラーの粒径としては、5nm以上25μm以下が好ましく、更に好ましくは30nm〜5μmである。粒径が5nm未満の場合は、増粘効果が大きくなり抵抗ペーストの粘度を制御することが困難になることがあり、25μm以上の場合は印刷後の抵抗の表面平滑性が損なわれることがある。
【0043】
無機フィラーの含有量は、本発明抵抗ペーストに含まれる樹脂固形成分100重量部に対して2〜60重量部が好ましく、さらに好ましくは10〜40重量部の範囲である。前記含有量は、抵抗体の形状保持や抵抗体製造における抵抗ペーストの印刷性を向上する上で、前記下限値以上が好ましく、抵抗体と金属などの密着性を向上する上で、前記上限値以下が好ましい。
【0044】
本発明の抵抗ペーストにおいて、上記以外の成分として、架橋剤、カップリング剤、希釈剤、難燃剤等を含んでいてもよい。
上記架橋剤としては、ビスアジド、パーオキサイド、脂肪族ポリアミン、脂環族ポリアミン、芳香族ポリアミン、酸無水物、ジカルボン酸、多価フェノールおよびポリアミド等が挙げられ、例えば、4,4’−ビスアジドベンザル(4−メチル)シクロヘキサンノン、4,4’−ジアジドカルコン、2,6−ビス(4’−アジドベンザル)シクロヘキサノン、2,6−ビス(4’−アジドベンザル)−4−メチル−シクロヘキサノン、4,4’−ジアジドジフェニルスルホン、4,4’−ジアジドジフェニルメタンおよび2,2’−ジアジドスチルベンなどのビスアジド;α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイドおよび2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキサイド)ヘキシン−3などのパーオキサイド;ヘキサメチレンジアミン、トリエチレンテトラミンおよびジエチレントリアミン、テトラエチレンペンタミンなどの脂肪族ポリアミン;ジアミノシクロヘキサン、3(4),8(9)−ビス(アミノメチル)トリシクロ〔5,2,1,02,6〕デカン、1,3−(ジアミノメチル)シクロヘキサン、メンセンジアミン、イソホロンジアミン、N−アミノエチルピペラジン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタンおよびビス(4−アミノシクロヘキシル)メタンなどの脂環族ポリアミン;4,4’−ジアミノジフェニルエ−テル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、α,α’−ビス(4−アミノフェニル)−1,3−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(4−アミノフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォンおよびメタフェニレンジアミン等の芳香族ポリアミン類;無水フタル酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、ナジック酸無水物、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物、無水マレイン酸変性ポリプロピレンおよび無水マレイン酸変性環状オレフィン系樹脂等の酸無水物類;フマル酸、フタル酸、マレイン酸、トリメリット酸およびハイミック酸等のジカルボン酸類;フェノ−ルノボラック樹脂およびクレゾ−ルノボラック樹脂等の多価フェノ−ル類;ナイロン−6、ナイロン−66、ナイロン−610、ナイロン−11、ナイロン−612、ナイロン−12、ナイロン−46、メトキシメチル化ポリアミド、ポリヘキサメチレンジアミンテレフタルアミドおよびポリヘキサメチレンイソフタルアミド等のポリアミド類;等が挙げられる。これらは、一種でも二種以上の混合物として使用しても良い。均一に分散させやすく好ましい。
また、必要に応じて硬化助剤を配合して、架橋反応の効率を高めることも可能である。前記架橋剤の配合量は、とくに制限はないが、架橋反応を効率良く反応させ、かつ、得られる架橋物の電気特性や、耐水性および耐湿性などの物性面から、環状オレフィン系樹脂100重量部に対して0.1〜50重量部が好ましく、より好ましくは1〜10重量部の範囲である。
【0045】
本発明に用いるカップリング剤としては、1分子中に、アルコキシシリル基と、アルキル基、エポキシ基、ビニル基およびフェニル基等の有機官能基と、を有するシラン化合物全般が挙げられ、例えば、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシランおよびブチルトリエトキシシランなどのアルキル基を有するシラン;、フェニルトリエトキシシラン、ベンジルトリエトキシシランおよびフェネチルトリエトキシシランなどのフェニル基を有するシラン;、ブテニルトリエトキシシラン、プロペニルトリエトキシシランおよびビニルトリメトキシシラン等のビニル基を有するシラン;、γ−(メタクリロキシプロピル)トリメトキシシラン等のメタクリル基を有するシラン;、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシランおよびγ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等のアミノ基を有するシラン;、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランおよびβ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ基を有するシラン;、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト基を有するシラン;等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。又、これらは単独でも混合して用いても良い。
【0046】
本発明に用いる希釈剤としては、例えば、メチルエチルケトンおよびシクロヘキサノンなどのケトン類;、トルエンおよびキシレンなどの芳香族炭化水素類;、メタノール、イソプロパノールおよびシクロヘキサノールなどのアルコール類;、シクロヘキサンおよびメチルシクロヘキサンなどの脂環式炭化水素;、石油エーテルおよび石油ナフサなどの石油系溶剤;、セロソルブおよびブチルセロソルブなどのセロソルブ類;、カルビトール、メチルカルビトールおよびブチルカルビトールなどのカルビトール類;、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテートおよびブチルカルビトールアセテートなどの酢酸エステル類;などを挙げることができる。
これらの中でも、カルビトール類、酢酸エステル類の中から選ばれる1種以上が好ましい。これにより、抵抗ペーストの印刷性・硬化物の表面平滑性を向上することができる。
【0047】
本発明の抵抗ペーストの製造方法としては、例えば、導電性粒子以外の上記各種成分および適当な量の希釈剤を混合容器に入れ、均一なワニスになるまで、十分にかき混ぜて、次いで、導電性粒子を加えて、これを混合し樹脂組成物とし、該樹脂組成物を、高圧衝突式分散方式、ロールミル方式、高速回転分散方式、ビーズミル方式、高速せん断分散方式、および自転公転式分散方式などの分散方式を用いて、分散させる方法が挙げられるが、これら方法に限定されない。
【0048】
ここで得られる抵抗ペーストは、粘度が0.1Pa・sから100Pa・sであることが好ましく、これにより、抵抗体の製造において、種々印刷方法を適用することができる。本発明における粘度としては、E型粘度計で測定する、通常のズリ粘度で測定することができる。
【0049】
また、本発明の抵抗ペーストは、10mΩ/□〜100MΩ/□の面積抵抗を有するものであることが好ましい。
上記抵抗値の測定方法としては、プレシジョンインピーダンスアナライザ(アジレントテクノロジー製)を用いて抵抗値を測定し、本発明の抵抗ペーストで構成される抵抗素子の厚み・アスペクト比より面積抵抗を換算した。
【0050】
本発明の抵抗体は、例えば、基板に形成された下部銅電極上に、上記で得た抵抗体ペーストを、印刷法や塗布法などの方法により、基板に形成された下部銅電極上に、所望の厚みに抵抗体層を形成し、これを加熱して硬化させて製造することができる。
また、前記抵抗体の両端に導体層(導体電極)を形成することにより抵抗体素子とすることができる。前記抵抗体素子において、例えば、両側の導体層には、銀ペーストなどの導電性ペーストを印刷形成したものや、金および銅などの金属を蒸着形成することも考えられる。また、銅などのの金属をメッキにより形成することも可能である。
【0051】
前記抵抗体層の形成方法としては、スクリーン印刷およびステンシル印刷などによる印刷方法や、ディスペンサー、スピンコート、インクジェットおよびスプレーなどによる塗布方法や、アプリケータ、バーコータ、ナイフコータ、カーテンコータ、ダイコータおよびグラビアコータなどによる製膜方法をとることができるが、これらに限定されない。
抵抗体層の厚みとしては、多層配線板の用途に合わせ使用される電圧に耐えうるような厚み、またピンホールが形成されないような厚みを確保できれば問題ない。また、抵抗体を硬化させるときの温度は、抵抗体樹脂系の硬化温度および多層配線板の耐熱性を考慮して設定することが可能で、本発明の樹脂系の場合150℃〜300℃が好ましく、160℃〜220℃がより好ましい。
【0052】
上記で得た本発明の抵抗体について、抵抗ペーストよりなる層中のフィラーの分散性については、層の断面を、走査型電子顕微鏡や透過型電子顕微鏡の測定で得られた画像を処理することにより、それぞれの体積比およびフィラー間の距離を定量化することが可能である。
【0053】
次に、本発明の抵抗体を内蔵した多層配線板の製造方法について説明する。図1は、本発明の実施形態である多層配線板の製造方法の一例を説明するための図で、図1(e)は得られる多層配線板の構造を示す断面図である。
まず、コア基板として、FR−4の両面金属箔(銅箔)付き絶縁基板103に、ドリル機で開孔して開孔部102を設けた後、無電解めっきにより、開孔部102にめっきを行い、前記絶縁基板の両面の金属箔間の導通を図り、次いで、前記金属箔をエッチングすることにより導体回路層101を形成して、配線形成両面基板109を得る(図1(a))。導体回路層101の材質としては、この製造方法に適するものであれば、どのようなものでも良いが、導体回路の形成においてエッチングや剥離などの方法により除去可能であることが好ましく、前記エッチングにおいては、これに使用される薬液などに耐性を有するものが好ましい。そのような導体回路層101の材質としては、例えば、銅、銅合金、42合金およびニッケル等が挙げられる。特に、銅箔、銅板および銅合金板は、電解めっき品や圧延品を選択できるだけでなく、様々な厚みのものを容易に入手できるため、導体回路層101として使用するのに好ましい。
【0054】
次に、抵抗体の電極として上記絶縁基板103上の任意の位置に、銀ペーストを印刷し電極104を形成する(図1(a))。電極の形成方法としては、スクリーン印刷およびステンシル印刷などによる印刷方法や、ディスペンサー、インクジェットおよびスプレーなどによる塗布方法などが挙げられる。
【0055】
次に、電極104上に、上記抵抗ペーストを印刷し、抵抗体105を形成する(図1(b))。抵抗体の形成方法としては、スクリーン・ステンシルなどの印刷方法や、ディスペンサー・インクジェット・スプレー塗布方法などが挙げられる。
【0056】
次に、導体回路層101上に、絶縁層用樹脂組成物を用いて、絶縁層106を形成する(図1(c))。絶縁層106を形成する方法としては、塗布法やフィルム積層法などが挙げられ、前記塗布法としては、例えば、カーテンコータ、バーコータ、コンマコータ、ナイフコータ、グラビアコータ、ダイコータ、スピンコータ、印刷機、真空印刷機およびディスペンサーなどの装置を用いて、絶縁層用樹脂組成物を、絶縁層を形成する面に塗布して、塗膜を形成し、該塗膜を、乾燥機、窒素乾燥機および真空乾燥機などを用いて、乾燥・硬化して、絶縁層を形成する方法が挙げられる。前記フィルム積層方法としては、絶縁層用樹脂組成物を用いて、ポリエステルフィルムなどの基材の上に、上記同様にして塗膜を形成し、これを、乾燥して支持基材付きフィルム(絶縁膜)を作製し、これを、絶縁層を形成する面に、真空プレス、常圧ラミネーター、真空ラミネータ−およびベクレル式積層装置等を用いて、フィルムを積層して、絶縁層を形成する方法が挙げられ、また、ポリエステルフィルムなどの樹脂基材に替えて、金属基材の上に、上記同様にして絶縁膜を形成し、金属層付きフィルム(絶縁膜)を作製し、これを積層して、絶縁層を形成する方法などが挙げられる。前記金属層付きフィルムにおいては、該金属層を導体回路として加工することができる。
前記絶縁層用樹脂組成物としては、配線板の絶縁層に用いられものでよく、例えば、上記環状オレフィン系樹脂、ポリイミド樹脂およびエポキシ樹脂などの絶縁樹脂を含むものが挙げられ、要求される特性に応じて適宜選択されるが、例えば、耐熱性および誘電率などの特性を要求される場合、上記ノルボルネン系樹脂の付加(共)重合体が好ましい。
上記絶縁層を加熱硬化する温度としては、150℃〜300℃の範囲が好ましい。特に、150℃〜250℃が好ましい。また、絶縁層を複数層設ける場合は、一層目の絶縁層を加熱して、半硬化させ、該絶縁層上に、一層ないし複数の絶縁層を形成し、半硬化の絶縁層を実用上問題ない程度に、再度加熱硬化させることにより、絶縁層間および絶縁層と導体回路間の密着力を向上させることができる。この場合の半硬化の温度は、150℃〜250℃が好ましく、150℃〜200℃がより好ましい。
また、前記絶縁層を形成後に、絶縁層の表面にプラズマ処理を施すことで、絶縁層間および絶縁層と導体回路間の密着力を向上させることができる。プラズマ処理のガスとして、酸素、アルゴン、フッ素、フッ化炭素および窒素などのガスを、一種もしくは複数種混合して用いることができる。また、プラズマ処理は複数回実施しても良い。
【0057】
次に、絶縁層106に、レーザーを照射して、ビアホール107を形成する(図1(d))。前記レーザーとしては、エキシマレーザー、UVレーザーおよび炭酸ガスレーザーなどが使用でき、前記レーザーによるビアホールの開孔においては、絶縁層の材質が感光性・非感光性に関係なく、微細なビアホールを容易に形成することができるので、微細加工が必要とされる場合に、特に好ましい。また、ビアホール107の形成方法としては、上記レーザーを照射する方法以外に、レーザーおよびプラズマなどによるドライエッチング、ケミカルエッチング等を用いることができる。また、絶縁層106を感光性の樹脂により作製した場合には、絶縁層106を選択的に感光し、現像することでビアホール107を形成することもできる。
【0058】
次に、第二の導体回路層108を形成する(図1(e))。第二の導体回路層108の形成方法としては、公知の方法であるセミアディティブ法などで形成することができる。これらの方法により、多層配線板を製造することができる。
【0059】
(実施例)
以下、本発明を実施例および比較例に基づき詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものでは無い。
【実施例1】
【0060】
[樹脂組成物の作製]
室温で導電性カーボンブラック1g(平均粒径30nm)と球状シリカフィラー5g(平均粒径5μm)をポリノルボルネン20g(プロメラス社製、アバトレル(ブチルノルボルネン90mol%とトリエトキシシランノルボルネン10mol%の共重合体))とジエチレングリコールモノメチルエーテル20gの混合溶液に投入し、遊星回転式混練装置によりプレ攪拌を行った。攪拌終了後、3本ロールミルにて十分に混練を行い、目的とする抵抗ペーストを得た。
【0061】
[抵抗体評価用基板の作製]
図2の(a),(b)に示す図は、それぞれ(a)測定端子・電極形成基板、(b)抵抗体付き評価基板である。
FR−4両面銅張り積層板(ELC4765、住友ベークライト株式会社製)に、感光性レジストフィルム(AUS308、太陽インク製造株式会社製)をラミネートし、測定のための端子および電極を形成したマスクをかけ、露光機により露光した。
露光後現像し、余分なレジストを取り除いた。その後、エッチングを行い、銅を取り除き、更にレジストを取り除くことにより、測定のための銅の端子201および長さ5mm・幅2.5mm抵抗体用の電極202、4mm・幅2.0mm抵抗体用の電極203、3mm・幅1.5mm抵抗体用の電極204を形成した基板(図2(a))を得た。
【0062】
上記で得た抵抗ペーストを、スクリーン印刷機で、上記基板の電極と一致するように印刷し、180℃で3時間加熱することにより、樹脂を硬化し、抵抗体層の片側に導電体層がある抵抗体205付き基板(図2(b))を得た。このとき、面積抵抗を、後から算出できるように、抵抗体の厚みを厚み計で測定した。本実施例の場合、厚みは30μmであった。
このようにして、抵抗体評価用基板を作製した。
【実施例2】
【0063】
導電性粒子として、粒径が24μmの黒鉛粒子を用いた以外は、実施例1と同様にした。
【実施例3】
【0064】
導電性粒子として、粒径が13nmの導電性カーボンブラックを用いた以外は、実施例1と同様にした。
【実施例4】
【0065】
無機フィラーとして、平均粒径が9μmであるシリカフィラーを使用した以外は、実施例1と同様にした。
【実施例5】
【0066】
無機フィラーとして、平均粒径が0.5μmであるシリカフィラーを使用した以外は、実施例1と同様にした。
【0067】
(比較例1)
導電性粒子として、粒径が27μmのグラファイトを用いた以外は、実施例1と同様にした。
【0068】
(比較例2)
導電性粒子として、粒径が3nmの導電性カーボンブラックを用いた以外は、実施例1と同様にした。
【0069】
(比較例3)
無機フィラーとして、平均粒径が30μmであるシリカフィラーを使用した以外は、実施例1と同様にした。
【0070】
(比較例4)
平均粒径が3nmであるシリカフィラーを使用した以外は、実施例1と同様にした。
【0071】
(比較例5)
環状オレフィン樹脂の替わりにビスフェノールF型液状エポキシ樹脂を用い、硬化促進剤として2−フェニル4−メチルイミダゾールをエポキシ樹脂に対して5wt%添加した以外は、実施例1と同様にした。
【0072】
各実施例および比較例で得られた抵抗体について、以下の評価を行った。評価項目を内容と共に示す。得られた結果を表1に示す。
[はんだ耐熱性]
上記で作製した抵抗体評価用基板を、260℃に加熱したはんだ浴槽に5秒間浸漬した。この操作を5サイクル行った後、抵抗変化率を測定した。なお、プレシジョンLCRメーター 4284A(ヒューレット・パッカード社製)により面積抵抗値を測定し、抵抗変化率を算出した。
[煮沸試験]
上記で作製した抵抗体評価用基板を、100℃に沸騰した沸騰水に2時間浸漬、ついで室温放置22時間を1サイクルとし、これを5サイクル行った。その後、抵抗変化率を測定した。
[ホットオイル試験]
上記で作製した抵抗体評価用基板を、260℃に加熱したオイル槽に10秒間浸漬、ついで20℃の水槽に10秒間浸漬を1サイクルとし、これを100サイクル行った。その後、抵抗変化率を測定した。
【0073】
【表1】

【0074】
表1に示すように実施例1〜5において、本発明抵抗体ははんだ耐熱試験、煮沸試験等による抵抗変化率が小さく、信頼性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の多層配線板とその製造方法を説明するための断面図である。
【図2】本発明の抵抗体評価用の基板を銅配線側から見た図である。
【符号の説明】
【0076】
101 導体回路層
102 開孔部
103 絶縁基板
104 抵抗体電極
105 抵抗体
106 絶縁層
107 ビアホール
108 第二の導体回路層
109 配線形成両面基板
201 測定端子
202 長さ5mm・幅2.5mm抵抗体用電極
203 長さ4mm・幅2.0mm抵抗体用電極
204 長さ3mm・幅1.5mm抵抗体用電極
205 抵抗体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状オレフィン系樹脂中に、導電性粒子を分散させてなる抵抗ペースト。
【請求項2】
前記導電性粒子は、炭素材料粉末および/または金属粉末である請求項1に記載の抵抗ペースト。
【請求項3】
前記導電性粒子は、カーボンブラックである請求項1または2に記載の抵抗ペースト。
【請求項4】
前記導電性粒子は、5nm以上25μm以下の粒径を有するものである請求項1乃至3のいずれかに記載の抵抗ペースト。
【請求項5】
前記抵抗ペーストは、さらに無機フィラーを含むものである請求項1乃至4のいずれかに記載の抵抗ペースト。
【請求項6】
前記無機フィラーは、シリカフィラーである請求項5に記載の抵抗ペースト。
【請求項7】
前記無機フィラーは、5nm以上25μm以下の粒径を有するものである請求項5または6に記載の抵抗ペースト。
【請求項8】
前記環状オレフィン系樹脂は、ノルボルネン系樹脂を含むものである請求項1乃至7のいずれかに記載の抵抗ペースト。
【請求項9】
前記ノルボルネン系樹脂は、側鎖に重合可能な官能基を有するノルボルネン系モノマーの付加重合体である請求項8に記載の抵抗ペースト。
【請求項10】
前記ノルボルネン系樹脂は、下記一般式(1)で表される繰返し単位を有するものである、請求項8または9に記載の抵抗ペースト。
【化1】

(式(1)中のXは、それぞれ独立して−CH2−、−CH2CH2−または−O−を示す。R1〜R4は、それぞれ独立して水素、または、ヒドロキシル基、カルボキシル基、エステル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、シリル基、エポキシ基およびこれらの官能基を含む有機基から選ばれた1種以上の基を示し、少なくとも1つは官能基または該官能基を含む有機基を示す。nは0〜5の整数を示し、その繰り返しは異なっていても良い。)
【請求項11】
前記ノルボルネン系樹脂は、側鎖に重合可能な官能基を有するノルボルネン系モノマーと、下記一般式(2)で表されるモノマーを含むノルボルネン系モノマーの付加共重合体である請求項8乃至10のいずれかに記載の抵抗ペースト。
【化2】

(式(2)中のXは、それぞれ独立して−CH2−、−CH2CH2−または−O−を示す。R1〜R4は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1〜12の直鎖もしくは分岐したアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ビニル基、アリル基、アラルキル基、環状脂肪族基またはアリール基から選ばれた1種以上の置換基を示す。nは0〜5の整数を示し、その繰り返しは異なっていても良い。)
【請求項12】
前記抵抗ペーストは、0.1Pa・s以上100Pa・s以下の粘度を有するものである請求項1乃至11のいずれかに記載の抵抗ペースト。
【請求項13】
前記抵抗ペーストは、10mΩ/□〜10MΩ/□の面積抵抗を有するものである請求項1乃至12のいずれかに記載の抵抗ペースト。
【請求項14】
請求項1乃至13のいずれかに記載の抵抗ペーストで構成される抵抗体を内蔵した多層配線板。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−164755(P2006−164755A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−354674(P2004−354674)
【出願日】平成16年12月7日(2004.12.7)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】