説明

抵抗体ペースト用ガラス組成物及びこれを用いた抵抗体ペースト、抵抗体、電子部品

【課題】 例えば10kΩ/□以上の高い抵抗値を有し、TCR特性及びSTOL特性の両立を図ることができ、さらには熱的な安定性にも優れる抵抗体を実現する。
【解決手段】 ガラス組成物、導電性材料及び任意成分としての添加物を含有し、これらが有機ビヒクルと混合されてなる抵抗体ペーストである。ガラス組成物は、3価のイオン半径が0.70Å〜1.00Åである元素を含有する。3価のイオン半径が0.70Å〜1.00Åである元素は、例えばSc、In、Er、Gd、Dyである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な抵抗体ペースト用ガラス組成物に関し、さらにはこれを用いて形成される抵抗体ペースト、抵抗体、電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば抵抗体ペーストは、一般に、抵抗値の調節及び結合性を与えるためのガラス組成物と、導電性材料と、有機ビヒクルとを主たる成分として構成されており、これを基板上に印刷した後、焼成することによって、厚さ5〜20μm程度の厚膜抵抗体が形成される。そして、この種の抵抗体ペースト(厚膜抵抗体)においては、通常、導電性材料として酸化ルテニウム(RuO)や鉛ルテニウム酸化物等が用いられ、ガラスとして酸化鉛(PbO)系ガラス等が用いられている。
【0003】
近年、環境問題が盛んに議論されてきており、鉛等の有害物質の電子部品からの排除が進められている。前記抵抗体ペーストや厚膜抵抗体も例外ではなく、鉛フリーとするための研究が行われている。
【0004】
抵抗体ペーストの鉛フリー化における課題の一つとして、特に高抵抗(10kΩ/□以上)の抵抗体ペーストにおいて、温度特性(TCR)と耐電圧特性(STOL)の両立が挙げられる。例えば、従来の鉛系抵抗体ペーストにおいて用いられてきた金属酸化物を添加することによるTCRの調節を、そのまま鉛フリーの組成に応用した場合、電圧印加による抵抗値の変動が鉛系組成と比較して大きく起こるため、結果としてTCRとSTOLの両立を実現することは困難である。
【0005】
このような事情から、鉛を含まないガラス組成物、鉛を含まない導電性材料、及び有機ビヒクルを主成分とする抵抗体ペーストにおいて、添加物としてCaTiO若しくはNiOを添加し、温度特性(TCR)と耐電圧特性(STOL)とを両立する試みがなされている(例えば、特許文献1等を参照)。
【0006】
特許文献1には、抵抗体ペーストに例えばCaTiOを0vol%超、13vol%以下、若しくはNiOを0vol%超、12vol%以下含有させることが好ましく、さらにはCuO、ZnO、MgO等の添加物を同時に添加させることが好ましい旨の記述があり、それにより、高い抵抗値を有しながらも、抵抗値の温度特性(TCR)および耐電圧特性(STOL)が小さい抵抗体を得ることに適した鉛(Pb)フリーの抵抗体ペーストを提供することが可能であるとされている。
【特許文献1】特開2003−197405号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特に10kΩレベルの高抵抗領域において、従来のPb系抵抗体ペーストと比べると、Pbフリー系抵抗体ペーストのSTOL特性は同等レベルではなく、さらに特性の改善を図る必要がある。
【0008】
また、特許文献1記載の発明のように、添加物を多量に含有させることでTCR特性を調整した抵抗体ペーストを用いて形成された抵抗体では、少なからずSTOL特性が低下する傾向にある。したがって、添加物を添加しない状態、すなわちガラス組成物及び導電性材料からなる組成の抵抗体ペーストを用いて形成された抵抗体の段階で、STOL特性をさらに向上させる必要がある。
【0009】
さらに、抵抗体が実際の電子部品等に用いられる場合、基板上に形成された抵抗体は、ガラス膜等からなる絶縁保護膜によって被覆される。通常の絶縁保護膜形成工程においては熱処理が必要であるが、従来の抵抗体は熱的な安定性に乏しく、熱処理によって抵抗体の抵抗値が変動するという問題がある。
【0010】
そこで本発明はこのような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、例えば10kΩ/□以上の高い抵抗値を有し、温度特性(TCR)及び耐電圧特性(STOL)の両立を図ることができ、さらには熱的な安定性にも優れる抵抗体を実現することが可能な抵抗体ペースト用ガラス組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、前記抵抗体ペースト用ガラス組成物を使用することで、高抵抗値を有し、温度特性(TCR)及び耐電圧特性(STOL)に優れ、さらには熱的な安定性にも優れる抵抗体ペースト、及びこの抵抗体ペーストを用いて作製された抵抗体、さらにはこの抵抗体を有する電子部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、前述の課題を解決するために長期に亘り研究を重ねた結果、多量の添加物を必要とせずに温度特性(TCR特性)及び耐電圧特性(STOL特性)を両立するためには、抵抗体ペーストに含まれるガラス組成物として、3価のイオン半径が0.70Å〜1.00Åである元素を含有するガラス組成物を用いることが有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明に係る抵抗体ペースト用ガラス組成物は、3価のイオン半径が0.70Å〜1.00Åである元素を含有することを特徴とする。また、本発明に係る抵抗体ペーストは、ガラス組成物及び導電性材料を含有し、これらが有機ビヒクルと混合されてなる抵抗体ペーストであって、前記ガラス組成物が、3価のイオン半径が0.70Å〜1.00Åである元素を含有することを特徴とする。さらに、本発明に係る抵抗体は、ガラス組成として3価のイオン半径が0.70Å〜1.00Åである元素を含有することを特徴とする。さらにまた、本発明に係る電子部品は、前記抵抗体を有することを特徴とする。
【0013】
3価のイオン半径が0.70Å〜1.00Åである元素を含有するガラス組成物は、従来の組成のガラス組成物と比較してTCR特性及びSTOL特性が良好であり、したがって、係るガラス組成物を抵抗体ペーストのガラス組成物として用いることで、例えば10kΩの高抵抗を有する抵抗体において、TCR特性及びSTOL特性が両立される。また、ガラス組成物を含む抵抗体に熱的な安定性を持たせるためには、ガラス組成物の性質の改良が重要である。3価のイオン半径が0.70Å〜1.00Åである元素をガラス組成物として含有する抵抗体ペーストを用いて形成された抵抗体は、従来のガラス組成物を用いた抵抗体に比べて熱的な安定性に優れる。
【0014】
なお、ガラス組成物においては、各酸化物はそのままの形で含有されるわけではなく、例えば複合酸化物の形態となっているものと推測される。しかしながら、本明細書においては、ガラス組成物における組成の表記は、通例にしたがい、各酸化物に換算したときの値として表記する。例えば、3価のイオン半径が0.70Å〜1.00Åである元素がScである場合、本発明に係る抵抗体ペースト用ガラス組成物は、厳密に言えばScをScの形態のままで含有するわけではなく、したがって、「Scを0.1モル%〜15モル%含有する」とは、ガラス組成物を構成する酸化物がScをScに換算して0.1モル%〜15モル%含有するという意味である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の抵抗体ペースト用ガラス組成物は、抵抗体ペーストや抵抗体に適用した場合、高抵抗値を実現し、且つTCR特性及びSTOL特性を両立し、さらには熱的な安定性を向上することができる。したがって、本発明によれば、高抵抗値を有し、温度特性(TCR)及び耐電圧特性(STOL)に優れ、例えば製造過程で熱処理を施された場合であっても抵抗値の変動の少ない抵抗体ペースト、抵抗体、電子部品を提供することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係る抵抗体ペースト用ガラス組成物及びこれを用いた抵抗体ペースト、抵抗体、電子部品について説明する。
【0017】
本発明の抵抗体ペースト用ガラス組成物は、実質的にPbを含まない、いわゆるPbフリーのガラス組成物であり、3価のイオン半径が0.70Å〜1.00Åである元素を含有することを大きな特徴とするものである。抵抗体ペースト用ガラス組成物は、3価のイオン半径が0.70Å〜1.00Åである元素の中でも、Sc、In、Er、Gd及びDyから選ばれる少なくとも1種を含有することが好ましい。本明細書中でのイオン半径とは、Shannonのイオン半径のことである。前記各元素のイオン半径を以下に示す。
Sc3+:0.745Å
In3+:0.8Å
Er3+:0.89Å
Dy3+:0.912Å
Gd3+:0.938Å
【0018】
本発明の抵抗体ペースト用ガラス組成物は、前記の通り、環境保全上の観点等から、鉛を実質的に含まない鉛フリーのガラス組成物であるが、本発明において、「鉛を実質的に含まない」とは、不純物レベルとは言えない量を越える鉛を含まないことを意味し、不純物レベルの量(例えば、ガラス組成物中の含有量が0.05質量%以下程度)であれば含有されていてもよい趣旨である。鉛は、不可避不純物として極微量程度に含有されることがある。
【0019】
抵抗体ペーストは、ガラス組成物、導電性材料、及び必要に応じて添加物を含み、これらが有機ビヒクルと混合されることにより調製される。ここで、ガラス組成物は、前述の通り、実質的に鉛を含まず、3価のイオン半径が0.70Å〜1.00Åである元素を含有する。ガラス組成物は、抵抗体とされたとき、抵抗体中で導電性材料及び添加物を基板と結着させる役割を持つ。
【0020】
なお、抵抗体ペーストにInを添加する例としては、特開2001−236825号公報に記載される技術が知られている。この特許文献に記載される発明では、鉛系のガラスを用いた抵抗体ペーストに、Inを添加物として添加することで、TCRの改善を図るようにしている。また、抵抗体ペーストにDyを添加する例としては、特開平11−3902に記載される技術が知られている。この特許文献に記載される発明では、鉛系のガラスを用いた抵抗体ペーストに、Dyを添加物として添加することで、TCR及び抵抗値ばらつきの改善を図るようにしている。しかしながら、本発明者らが検討した結果、鉛フリーのガラス組成物を用いた場合、InやDyを添加物として添加しても、ほとんどその効果が無いことが確認された。本発明では、ガラス組成としてIn、Dy等を加えることが重要であり、この点で前記特許文献に記載される技術とは一線を画するものである。
【0021】
また、Gdを含有する抵抗体については特開平8−69714号公報に開示されているが、ここでのGdは接触抵抗Rc及び接触抵抗変化CRVの改善を目的としており、本発明のTCR及びSTOLの両立とは課題が異なっている。また、前記公報に記載の技術ではGdを添加剤として抵抗体中に添加しており、鉛フリーのガラス組成物を用いた場合、前述のようにほとんどその効果は見込めない。さらに、前記公報は鉛含有ガラスを用いた鉛系抵抗体を主な対象としており、鉛フリー系を主とする本発明とは対象とする抵抗体も異なるものである。
【0022】
抵抗体ペースト用ガラス組成物における前記3価のイオン半径が0.70Å〜1.00Åである元素の含有量には、元素毎に最適範囲が存在する。例えば、抵抗体ペースト用ガラス組成物が前記元素としてScを含有する場合、ガラス組成物中のScの含有量は、Scに換算して、0.1モル%〜15モル%の範囲内とすることが好ましい。また、ガラス組成物中のInの含有量は、Inに換算して、0.1モル%〜10モル%の範囲内とすることが好ましい。また、ガラス組成物中のErの含有量は、Erに換算して、0.1モル%〜10モル%の範囲内とすることが好ましい。また、ガラス組成物中のGdの含有量は、Gdに換算して、0.2モル%〜8モル%の範囲内とすることが好ましい。また、ガラス組成物中のDyの含有量は、Dyに換算して、0.2モル%〜8モル%の範囲内とすることが好ましい。ガラス組成物中の3価のイオン半径が0.70Å〜1.00Åである元素の含有量が上記範囲を下回ったり、逆に含有量が上記範囲を上回ると、TCR、STOLのいずれもが大きくなり、これら特性が劣化するおそれがある。
【0023】
ガラス組成物は、前記3価のイオン半径が0.70Å〜1.00Åである元素の他に、原料として、修飾酸化物成分、網目形成酸化物成分等を混合して用いる。主たる修飾酸化物成分としては、アルカリ土類酸化物、具体的にはCaO、SrO、BaOから選ばれる少なくとも1種を挙げることができる。また、網目形成酸化物成分としては、B及びSiOを挙げることができる。また、前記主たる修飾酸化物成分の他、その他の修飾酸化物成分として、ZrO、Alのうちの少なくとも1種が含まれていることが好ましい。
【0024】
また、ガラス組成物は、第3の修飾酸化物成分として任意の金属酸化物を含んでもよい。金属酸化物としては、例えばMgO、TiO、SnO、KO、NaO、LiO、CuO、NiO、ZnO、CoO、MnO、Fe、Cr、Y、V等が挙げられ、ZnO、CuO、NiO、CoO、MnO、Cr、V、MgO、LiO、NaO及びKOから選ばれる少なくとも1種が含まれることが好ましい。
【0025】
ガラス組成物における各成分の含有量について説明すると、3価のイオン半径が0.70Å〜1.00Åである元素がSc又はInの場合、主たる修飾酸化物成分は、ガラス組成物中に13モル%〜45モル%含有されることが好ましい。3価のイオン半径が0.70Å〜1.00Åである元素がEr、Gd又はDyの場合、主たる修飾酸化物成分は、ガラス組成物中に12モル%〜44モル%含有されることが好ましい。主たる修飾酸化物成分の含有量が前記範囲を下回る場合、導電性材料との反応性が低下し、TCR特性、STOL特性を劣化させるおそれがある。逆に、主たる修飾酸化物成分の含有量が前記範囲を越える場合、抵抗体を形成した時に、過剰な金属酸化物の析出が起こり、特性を劣化させるおそれがある。
【0026】
網目形成酸化物成分は、ガラス組成物中に36モル%〜79モル%含有されることが好ましい。網目形成酸化物成分の含有量が少ない場合、ガラス組成物の軟化点が高くなるため、所定の焼成温度にて抵抗体を形成した場合、抵抗体の焼結が不十分となり、信頼性を著しく低下させるおそれがある。逆に、網目形成酸化物成分の含有量が多すぎる場合、ガラス組成物の耐水性が低下するため、抵抗体としたときの信頼性を著しく低下させるおそれがある。
【0027】
その他の修飾酸化物成分は、ガラス組成物中に2モル%〜11モル%含有されることが好ましい。その他の修飾酸化物成分の含有量が前記範囲を下回る場合、ガラス組成物の耐水性が低下するため、抵抗体としたときの信頼性を著しく低下させるおそれがある。逆に、その他の修飾酸化物成分の含有量が前記範囲を越える場合、抵抗体を形成した時に、過剰な金属酸化物の析出が起こり、特性を劣化させるおそれがある。
【0028】
また、第3の修飾酸化物成分のガラス組成物中における含有量は、0〜22モル%であることが好ましい。第3の修飾酸化物成分の含有量が前記範囲を越えると、添加酸化物の種類によっても異なるが、特性を劣化させる原因となる。
【0029】
抵抗体ペースト中のガラス組成物の含有量にも最適範囲が存在する。ガラス組成物が3価のイオン半径が0.70Å〜1.00Åである元素としてScを含有する場合、ガラス組成物、導電性材料、及び添加物の合計質量を100質量%とした場合に、ガラス組成物を52.1質量%〜86.3質量%とするのが好ましい。また、ガラス組成物がInを含有する場合、ガラス組成物を50.16質量%〜88.2質量%とするのが好ましい。また、ガラス組成物がErを含有する場合、ガラス組成物を40質量%〜90質量%とするのが好ましく、44質量%〜88質量%とするのがより好ましい。また、ガラス組成物がGdを含有する場合、ガラス組成物を40質量%〜90質量%とするのが好ましく、46質量%〜89質量%とするのがより好ましい。また、ガラス組成物がDyを含有する場合、ガラス組成物を35質量%〜93質量%とするのが好ましく、42質量%〜90質量%とするのがより好ましい。抵抗体ペーストにおけるガラス組成物の含有量が前記範囲を下回る場合、導電性材料、添加物の結着が不十分となり、信頼性が著しく低下するおそれがある。逆に、ガラス組成物の含有量が前記範囲を越えて多すぎると、抵抗値が高くなり過ぎてしまい、抵抗体ペーストとしての使用に適さなくなるおそれがある。
【0030】
導電性材料は、絶縁体であるガラス中に分散されることで、構造物である抵抗体に導電性を付与する役割を持つ。導電性材料は、特に限定されないが、環境保全上、やはり鉛を実質的に含まない導電性材料を用いることが好ましい。具体的な鉛を実質的に含まない導電性材料としては、ルテニウム酸化物の他、Ag−Pd合金、Ag−Pt合金、TaN、WC、LaB、MoSiO、TaSiO、及び金属(Ag、Au、Pt、Cu、Ni、W、Moなど)が挙げられる。これらの物質は、それぞれ単独で使用しても良いし、2種類以上組み合わせても良い。この中でも、ルテニウム酸化物が好ましい。ルテニウム酸化物としては、酸化ルテニウム(RuO、RuO等)の他、ルテニウム系パイロクロア(BiRu、TlRu等)やルテニウム複合酸化物(SrRuO、BaRuO、CaRuO、LaRuO等)なども含まれる。中でもRuO、SrRuO、BaRuO、CaRuO、BiRuが好ましい。
【0031】
抵抗体ペースト中の導電性材料の含有量には最適範囲が存在し、その範囲は、ガラス組成物によって異なる。ガラス組成物が3価のイオン半径が0.70Å〜1.00Åである元素としてScを含有する場合、導電性材料、ガラス組成物、添加物の合計の質量を100質量%とした時に、導電性材料の含有量は、7質量%〜55質量%とするのが好ましく、9.8質量%〜46.0質量%とするのがより好ましい。ガラス組成物がInを含有する場合、導電性材料、ガラス組成物、添加物の合計の質量を100質量%とした時に、導電性材料の含有量は、9.4質量%〜46.5質量%とするのが好ましい。ガラス組成物がErを含有する場合、導電性材料、ガラス組成物、添加物の合計の質量を100質量%とした時に、7質量%〜60質量%とするのが好ましく、10質量%〜56質量%とするのがより好ましい。ガラス組成物がGdを含有する場合、導電性材料、ガラス組成物、添加物の合計の質量を100質量%とした時に、導電性材料の含有量は、7質量%〜60質量%とするのが好ましく、10質量%〜54質量%とするのがより好ましい。ガラス組成物がDyを含有する場合、導電性材料、ガラス組成物、添加物の合計の質量を100質量%とした時に、導電性材料の含有量は、5質量%〜60質量%とするのが好ましく、8質量%〜58質量%とするのがより好ましい。導電性材料の含有量が少ない場合、抵抗値が高くなりすぎてしまい、抵抗体ペーストとしての使用に適さなくなるおそれがある。逆に、導電性材料の含有量が前記範囲を越えると、ガラス組成物による導電性材料の結着が不十分になり、信頼性が低下するおそれがある。
【0032】
抵抗体ペーストには、前述のガラス組成物、導電性材料の他、特性の調整等を目的として、添加物が含まれていてもよい。ガラス組成物が3価のイオン半径が0.70Å〜1.00Åである元素としてScを含有する場合、抵抗体ペーストにおける添加物の含有量は、ガラス組成物、導電性材料、及び添加物の合計質量を100質量%としたときに、0〜27.2質量%とするのが好ましい。また、ガラス組成物が3価のイオン半径が0.70Å〜1.00Åである元素としてInを含有する場合、抵抗体ペーストにおける添加物の含有量は、ガラス組成物、導電性材料、及び添加物の合計質量を100質量%としたときに、0〜27.1質量%とするのが好ましい。また、ガラス組成物が3価のイオン半径が0.70Å〜1.00Åである元素としてEr、Gd又はDyを含有する場合、抵抗体ペーストにおける添加物の含有量は、ガラス組成物、導電性材料、及び添加物の合計質量を100質量%としたときに、0〜28質量%とするのが好ましい。添加物の含有量が少ない場合、十分な特性の調整が困難となるおそれがある。逆に、添加物の含有量が多すぎる場合、導電性材料、添加物の結着が不十分となり、信頼性が著しく低下するおそれがある。
【0033】
添加物としては、任意の金属酸化物を用いることができる。具体的には、MgO、TiO、SnO、ZnO、CoO、CuO、NiO、MnO、Mn、Fe、Cr、Y、V、CaTiO、SrTiO、BaTiO等が挙げられる。中でも、TCR調整剤として効果の高い酸化物であるCuO、NiO、MgOや、CaTiO、SrTiO、BaTiO等が添加物として好ましい
【0034】
CuOを添加物として使用する場合、抵抗体ペーストにおけるCuOの含有量は、ガラス組成物、導電性材料、及び添加物の合計質量を100質量%とした場合に、1.0質量%〜8.1質量%とするのが好ましい。より好ましくは、1.6質量%〜6.2質量%である。CuOの含有量が少ない場合、TCR調整効果が不十分となり、抵抗体のTCR特性が劣化するおそれがある。逆に、CuOの含有量が多すぎる場合、STOL特性が劣化するおそれがある。
【0035】
また、NiOを添加物として使用する場合、抵抗体ペーストにおけるNiOの含有量は、ガラス組成物、導電性材料、及び添加物の合計質量を100質量%とした場合に、3.2質量%〜21.5質量%とするのが好ましい。NiOの含有量が少ない場合、TCR調整効果が不十分となり、抵抗体のTCR特性が劣化するおそれがある。逆に、NiOの含有量が多すぎる場合、STOL特性が劣化するおそれがある。
【0036】
MgOを添加物として使用する場合、抵抗体ペーストにおけるMgOの含有量は、ガラス組成物、導電性材料、及び添加物の合計質量を100質量%とした場合に、0.1質量%〜3.9質量%とするのが好ましい。MgOの含有量が少ない場合、TCR調整効果が不十分となり、抵抗体のTCR特性が劣化するおそれがある。逆に、MgOの含有量が多すぎる場合、STOL特性が劣化するおそれがある。
【0037】
有機ビヒクルは、ガラス組成物、導電性材料と添加物とを混練しペースト化させる役割を有し、この種の抵抗体ペーストに用いられるものがいずれも使用可能である。有機ビヒクルは、バインダを有機溶剤中に溶解することによって調製されるものである。バインダとしては、特に限定されず、例えば、エチルセルロース、ポリビニルブチラール等、各種バインダから適宜選択すればよい。有機溶剤も限定されず、テルピネオール、ブチルカルビトール、アセトン、トルエン等、各種有機溶剤から適宜選択すればよい。さらに、抵抗体ペーストの物性を調節するために、分散剤等の各種添加剤を加えてもよい。
【0038】
前記有機ビヒクルの配合比率であるが、ガラス組成物、導電性材料、及び添加物を合計した合計質量(W1)と、有機ビヒクルの質量(W2)の比率(W2/W1)が、0.25〜4(W2:W1=1:0.25〜1:4)であることが好ましい。より好ましくは、前記比率(W2/W1)が0.5〜2である。前記比率を外れると、抵抗体を例えば基板上に形成するのに適した粘度の抵抗体ペーストを得ることができなくなるおそれがある。
【0039】
抵抗体を形成するには、前述の成分を含む抵抗体ペーストを例えば基板上にスクリーン印刷等の手法で印刷(塗布)し、850℃程度の温度で焼成すればよい。基板としては、Al基板やBaTiO基板の誘電体基板や、低温焼成セラミック基板、AlN基板等を用いることができる。基板形態としては、単層基板、複合基板、多層基板のいずれであってもよい。多層基板の場合、抵抗体は、表面に形成してもよいし、内部に形成してもよい。
【0040】
抵抗体ペーストに含まれるガラス組成物が3価のイオン半径が0.70Å〜1.00Åである元素を含有する場合、得られる厚膜抵抗体は3価のイオン半径が0.70Å〜1.00Åである元素を含有することになる。3価のイオン半径が0.70Å〜1.00Åである元素がScである場合、本発明の抵抗体におけるScの含有量は、0.1質量%〜15質量%である。また、3価のイオン半径が0.70Å〜1.00Åである元素がInである場合、本発明の抵抗体におけるInの含有量は、0.2質量%〜20質量%である。また、3価のイオン半径が0.70Å〜1.00Åである元素がErである場合、本発明の抵抗体におけるErの含有量は、0.1質量%〜30質量%である。また、3価のイオン半径が0.70Å〜1.00Åである元素がGdである場合、本発明の抵抗体におけるGdの含有量は、0.5質量%〜25質量%である。また、3価のイオン半径が0.70Å〜1.00Åである元素がDyである場合、本発明の抵抗体におけるDyの含有量は、0.7質量%〜24質量%である。
【0041】
抵抗体の形成に際しては、通常、基板に電極となる導電パターンを形成するが、この導電パターンは、例えば、AgやPt、Pd等を含むAg系合金等の良導電材料を含む導電ペーストを印刷することにより形成することができる。また、形成した抵抗体の表面に、ガラス膜等の保護膜を形成してもよい。
【0042】
本発明の抵抗体を適用可能な電子部品としては特に限定されないが、例えば単層または多層の回路基板、チップ抵抗器等の抵抗器、アイソレータ素子、C−R複合素子、モジュール素子の他、積層チップコンデンサ等のコンデンサやインダクタ等が挙げられ、コンデンサやインダクタ等の電極部分にも適用することができる。
【実施例】
【0043】
(実験1)
実験1では、3価のイオン半径が0.70Å〜1.00Åである元素として、Scを含有する場合について検討を行った。
【0044】
<Sc含有ガラス組成物の作製>
Sc、B、SiO、CaCO、SrCO、BaCO、ZrO、Al等を所定量秤量し、ボールミルにて混合した後、乾燥した。得られた粉末を5℃/分の速度で1300℃まで昇温し、その温度に1時間保持した後、水中に投入することによって急冷し、ガラス化した。得られたガラス化物をボールミルで粉砕し、ガラス組成物粉末を得た。作製したガラス組成物の組成を表1に示す。なお、表1中、A群は主たる修飾酸化物成分、B群は網目形成酸化物成分、C群はその他の修飾酸化物成分、D群は第3の修飾酸化物成分、E群はScである。表中E群の単位はモル%である。
【0045】
【表1】

【0046】
<導電性材料、添加物>
導電性材料として、RuO、SrRuO、BaRuO、CaRuO、BiRuを用意した。添加物として、CuO、NiO、MgO、ZnO、CaTiO、BaTiO、SrTiOを用意した。
【0047】
<有機ビヒクルの作製>
バインダとしてエチルセルロース、有機溶剤としてテルピネオールを用い、有機溶剤を加熱撹拌しながらバインダを溶かして、有機ビヒクルを作製した。
【0048】
<抵抗体ペーストの作製>
前述の導電性材料の粉末と、ガラス組成物粉末、添加物、及び有機ビヒクルを各組成となるように秤量し、3本ロールミルで混練し、抵抗体ペーストを得た。なお、導電性材料粉末、ガラス組成物粉末及び添加物粉末の合計質量と有機ビヒクルの質量の比は、得られた抵抗体ペーストがスクリーン印刷に適した粘度となるように、質量比で1:0.25〜1:4の範囲で調合し、抵抗体ペーストを作製した。
【0049】
<抵抗体の作製>
96%のアルミナ基板上に、Ag−Pt導体ペーストを所定形状にスクリーン印刷して乾燥させた。Ag−Pt導体ペーストにおけるAgの割合は95質量%、Ptの割合は5質量%とした。このアルミナ基板をベルト炉に入れ、投入から排出まで1時間のパターンで焼き付けを行った。この時の焼き付け温度は850℃、その温度での保持時間は10分間とした。
【0050】
このようにして導体が形成されたアルミナ基板上に、先に作製した抵抗体ペーストをスクリーン印刷法にて所定の形状(1mm×1mmの方形状)のパターンで塗布し、乾燥した。その後、導体焼き付けと同じ条件で抵抗体ペーストを焼き付け、厚膜抵抗体を得た。
【0051】
<抵抗体の特性評価>
(1)抵抗値
Agilent Technologies 社製の製品番号 34401Aにより測定。試料数24個の平均値を求めた。
【0052】
(2)TCR
室温25℃を基準として、−55℃及び125℃へ温度を変えた時の抵抗値変化率を求めた。試料数10個の平均値である。−55℃、25℃、125℃の抵抗値をR-55、R25、R125(Ω/□)とおくと、TCR(ppm/℃)=[(R-55-R25)/R25/80]×1000000、あるいは、TCR(ppm/℃)=[(R125-R25)/R25/100]×1000000である。数値の大きい方をTCR値とした。
【0053】
(3)STOL(短時間過負荷)特性
厚膜抵抗体に試験電圧を5秒間印加し、その前後における抵抗値の変化率を求めた。試料数10個の平均値である。試験電圧=2.5×定格電圧であり、定格電圧=√(R/8)、Rは抵抗値(Ω/□)である。計算した試験電圧が200Vを越える抵抗値を持つ抵抗体については、試験電圧を200Vにて行った。
【0054】
(4)オーバーグレーズ(O.G.)形成時の抵抗値変動
抵抗体の保護を目的として、抵抗体を覆うようにガラスグレーズをスクリーン印刷で塗布し、乾燥後、空気中、560℃で10分間焼成し、抵抗体上にオーバーグレーズを形成する。オーバーグレーズ形成時には500℃以上の熱が加わることから、オーバーグレーズ形成前後で抵抗体の抵抗値が変動する。この変動量が大きい場合、設計値に対する制御が困難になることから、オーバーグレーズ形成前後での抵抗値変動が小さいことが好ましい。オーバーグレーズ形成前後での抵抗値変動をΔO.G.(%)とし、評価を行った。
【0055】
<ガラス組成物の成分に関する検討>
ガラス組成物の成分を変えた試料1−1〜試料1−22を作製し、抵抗体の特性(抵抗値、TCR、STOL及びΔO.G.)を評価した。抵抗体ペーストの組成及び抵抗体の特性の評価結果を表2に示す。なお、以下の各表においても同様であるが、本発明で規定する範囲を外れる試料(比較例に相当する。)には、*印を付してある。
【0056】
【表2】

【0057】
表2から、ガラス組成物中にScを含有する試料1−2〜試料1−7は、Scを含有しない試料1−1と比較して、TCR特性及びSTOL特性の両方において優れた値を示し、ΔO.G.値も小さいことがわかる。また、試料1−2〜試料1−7の結果から、ガラス組成物におけるScの含有量は、0.1モル%〜15モル%の範囲において良好な結果を示すことがわかる。
【0058】
また、表2から、ガラス組成物の主たる修飾酸化物の種類を変えた場合(試料1−8〜試料1−13)、その他の修飾酸化物成分の種類を変えた場合(試料1−14〜試料1−17)、及び第3の修飾酸化物成分を含有する場合(試料1−18〜試料1−25)のいずれにおいても、Scを含有する試料と含有しない試料との比較から、ガラス組成物中にScを含有させることで、TCR特性及びSTOL特性の両方を向上させることができることがわかる。
【0059】
<導電性材料に関する検討>
導電性材料の種類を変えて試料1−26〜試料1−33を作製し、抵抗体の特性を評価した。抵抗体ペーストの組成及び抵抗体の特性の評価結果を表3に示す。
【0060】
【表3】

【0061】
表3から、導電性材料としてSrRuOを用いた場合(試料1−26及び試料1−27)、BaRuOを用いた場合(試料1−28及び試料1−29)、BiRuを用いた場合(試料1−30及び試料1−31)、RuO2を用いた場合(試料1−32及び試料1−33)のいずれにおいても、Scを含有する試料と含有しない試料との比較から、ガラス組成物中にScを含有させることで、TCR特性及びSTOL特性の両方を向上させることができることがわかる。
【0062】
<添加物に関する検討>
抵抗体ペーストにCuO、NiO、MgO、ZnO、CaTiO、BaTiO、SrTiOといった添加物を添加して、試料1−33〜試料1−47を作製し、抵抗体の特性を評価した。抵抗体ペーストの組成及び抵抗体の特性の評価結果を表4に示す。
【0063】
【表4】

【0064】
表4から、前述のガラス組成物及び導電性材料に加えて、抵抗体ペーストにCuO等の添加物を添加した場合であっても、Scを含有する試料と含有しない試料との比較から、ガラス組成物中にScを含有する抵抗体ペーストでは、Scを含有しないガラス組成物を用いる抵抗体ペーストに比べてTCR特性及びSTOL特性の両方で良好な結果が得られることがわかる。
【0065】
(実験2)
実験2では、3価のイオン半径が0.70Å〜1.00Åである元素としてInを含有する場合について、試料2−1〜試料2−44の厚膜抵抗体を作製して検討を行った。なお、以下の実験では、導電性材料、添加物、有機ビヒクルの作製、抵抗体ペーストの作製、抵抗体の作製及び抵抗体の特性評価については、実験1と同様であるため、説明を省略する。
【0066】
<In含有ガラス組成物の作製>
In、B、SiO、CaCO、SrCO、BaCO、ZrO、Al等を所定量秤量し、ボールミルにて混合した後、乾燥した。得られた粉末を5℃/分の速度で1300℃まで昇温し、その温度に1時間保持した後、水中に投入することによって急冷し、ガラス化した。得られたガラス化物をボールミルで粉砕し、ガラス組成物粉末を得た。作製したガラス組成物の組成を表5に示す。なお、表5中、A群は主たる修飾酸化物成分、B群は網目形成酸化物成分、C群はその他の修飾酸化物成分、D群は第3の修飾酸化物成分、E群はInである。表中E群の単位はモル%である。
【0067】
【表5】

【0068】
<ガラス組成物の成分に関する検討>
ガラス組成物の成分を変えた試料2−1〜試料2−22を作製し、抵抗体の特性(抵抗値、TCR、STOL及びΔO.G.)を評価した。抵抗体ペーストの組成及び抵抗体の特性の評価結果を表6に示す。
【0069】
【表6】

【0070】
表6から、ガラス組成物中にInを含有する試料2−2〜試料2−4は、Inを含有しない試料2−1と比較して、TCR特性及びSTOL特性の両方において優れた値を示し、且つ熱処理後の抵抗値変動も小さいことがわかる。また、試料2−2〜試料2−4の結果から、ガラス組成物におけるInの含有量は、0.1モル%〜10モル%の範囲において良好な結果を示すことがわかる。
【0071】
また、表6から、ガラス組成物の主たる修飾酸化物の種類を変えた場合(試料2−5〜試料2−10)、その他の修飾酸化物成分の種類を変えた場合(試料2−11〜試料2−14)、及び第3の修飾酸化物成分をさらに含有する場合(試料2−15〜試料2−22)のいずれにおいても、Inを含有する試料と含有しない試料との比較から、Inを含有する抵抗体ペーストを用いることで、TCR特性、STOL特性及び熱安定のいずれにも優れる抵抗体を得られることがわかる。
【0072】
<導電性材料に関する検討>
導電性材料の種類を変えて試料2−23〜試料2−30を作製し、抵抗体の特性を評価した。抵抗体ペーストの組成及び抵抗体の特性の評価結果を表7に示す。
【0073】
【表7】

【0074】
表3から、導電性材料としてSrRuOを用いた場合(試料2−23及び試料2−24)、BaRuOを用いた場合(試料2−25及び試料2−26)、BiRuを用いた場合(試料2−27及び試料2−28)、RuOを用いた場合(試料2−29及び試料2−30)のいずれにおいても、Inを含有する試料と含有しない試料との比較から、ガラス組成物中にInを含有させることで、TCR特性、STOL特性及び熱安定を向上させられることがわかる。
【0075】
<添加物に関する検討>
抵抗体ペーストにCuO、NiO、MgO、ZnO、CaTiO、BaTiO、SrTiOといった添加物を添加して、試料2−31〜試料2−44を作製し、抵抗体の特性を評価した。抵抗体ペーストの組成及び抵抗体の特性の評価結果を表8に示す。
【0076】
【表8】

【0077】
表8から、前述のガラス組成物及び導電性材料に加えて、抵抗体ペーストにCuO等の添加物を添加した場合であっても、Inを含有する試料と含有しない試料との比較から、ガラス組成物中にInを含有する抵抗体ペーストでは、Inを含有しないガラス組成物を用いる抵抗体ペーストに比べてTCR特性及びSTOL特性の双方において、良好な結果が得られることがわかる。
【0078】
(実験3)
実験3では、3価のイオン半径が0.70Å〜1.00Åである元素としてErを含有する場合について、試料3−1〜試料3−44の厚膜抵抗体を作製して検討を行った。
【0079】
<Er含有ガラス組成物の作製>
Er、B、SiO、CaCO、SrCO、BaCO、ZrO、Al等を所定量秤量し、ボールミルにて混合した後、乾燥した。得られた粉末を5℃/分の速度で1300℃まで昇温し、その温度に1時間保持した後、水中に投入することによって急冷し、ガラス化した。得られたガラス化物をボールミルで粉砕し、ガラス組成物粉末を得た。作製したガラス組成物の組成を表9に示す。なお、表9中、A群は主たる修飾酸化物成分、B群は網目形成酸化物成分、C群はその他の修飾酸化物成分、D群は第3の修飾酸化物成分、E群はErである。表中E群の単位はモル%である。
【0080】
【表9】

【0081】
<ガラス組成物の成分に関する検討>
ガラス組成物の成分を変えた試料3−1〜試料3−22を作製し、抵抗体の特性(抵抗値、TCR、STOL及びΔO.G.)を評価した。抵抗体ペーストの組成及び抵抗体の特性の評価結果を表10に示す。
【0082】
【表10】

【0083】
表10から、ガラス組成物中にErを含有する試料3−2〜試料3−4は、Erを含有しない試料3−1と比較して、TCR特性及びSTOL特性の両方において優れた値を示し、且つ熱処理後の抵抗値変動も小さいことがわかる。また、試料3−2〜試料3−4の結果から、ガラス組成物におけるErの含有量は、0.1モル%〜10モル%の範囲において良好な結果を示すことがわかる。
【0084】
また、表10から、ガラス組成物の主たる修飾酸化物の種類を変えた場合(試料3−5〜試料3−10)、その他の修飾酸化物成分の種類を変えた場合(試料3−11〜試料3−14)、及び第3の修飾酸化物成分をさらに含有する場合(試料3−15〜試料3−22)のいずれにおいても、Erを含有する試料と含有しない試料との比較から、Erを含有する抵抗体ペーストを用いることで、TCR特性、STOL特性及び熱安定のいずれにも優れる抵抗体を得られることがわかる。
【0085】
<導電性材料に関する検討>
導電性材料の種類を変えて試料3−23〜試料3−30を作製し、抵抗体の特性を評価した。抵抗体ペーストの組成及び抵抗体の特性の評価結果を表11に示す。
【0086】
【表11】

【0087】
表11から、導電性材料としてSrRuOを用いた場合(試料3−23及び試料3−24)、BaRuOを用いた場合(試料3−25及び試料3−26)、BiRuを用いた場合(試料3−27及び試料3−28)、RuO2を用いた場合(試料3−29及び試料3−30)のいずれにおいても、Erを含有する試料と含有しない試料との比較から、ガラス組成物中にErを含有させることで、TCR特性、STOL特性及び熱安定を向上させられることがわかる。
【0088】
<添加物に関する検討>
抵抗体ペーストにCuO、NiO、MgO、ZnO、CaTiO、BaTiO、SrTiOといった添加物を添加して、試料3−31〜試料3−38を作製し、抵抗体の特性を評価した。抵抗体ペーストの組成及び抵抗体の特性の評価結果を表12に示す。
【0089】
【表12】

【0090】
表12から、前述のガラス組成物及び導電性材料に加えて、抵抗体ペーストにCuO等の添加物を添加した場合であっても、Erを含有する試料と含有しない試料との比較から、ガラス組成物中にErを含有する抵抗体ペーストでは、Erを含有しないガラス組成物を用いる抵抗体ペーストに比べてTCR特性及びSTOL特性の両方で良好な結果が得られることがわかる。
【0091】
(実験4)
実験4では、3価のイオン半径が0.70Å〜1.00Åである元素としてGdを含有する場合について、試料4−1〜試料4−44の厚膜抵抗体を作製して検討を行った。
【0092】
<Gd含有ガラス組成物の作製>
Gd、B、SiO、CaCO、SrCO、BaCO、ZrO、Al等を所定量秤量し、ボールミルにて混合した後、乾燥した。得られた粉末を5℃/分の速度で1300℃まで昇温し、その温度に1時間保持した後、水中に投入することによって急冷し、ガラス化した。得られたガラス化物をボールミルで粉砕し、ガラス組成物粉末を得た。作製したガラス組成物の組成を表13に示す。なお、表13中、A群は主たる修飾酸化物成分、B群は網目形成酸化物成分、C群はその他の修飾酸化物成分、D群は第3の修飾酸化物成分、E群はGdである。表中E群の単位はモル%である。
【0093】
【表13】

【0094】
<ガラス組成物の成分に関する検討>
ガラス組成物の成分を変えた試料4−1〜試料4−22を作製し、抵抗体の特性(抵抗値、TCR、STOL及びΔO.G.)を評価した。抵抗体ペーストの組成及び抵抗体の特性の評価結果を表14に示す。
【0095】
【表14】

【0096】
表14から、ガラス組成物中にGdを含有する試料4−2〜試料4−4は、Gdを含有しない試料4−1と比較して、TCR特性及びSTOL特性の両方において優れた値を示し、且つ熱処理後の抵抗値変動も小さいことがわかる。また、試料4−2〜試料4−4の結果から、ガラス組成物におけるGdの含有量は、0.2モル%〜8モル%の範囲において良好な結果を示すことがわかる。
【0097】
また、表14から、ガラス組成物の主たる修飾酸化物の種類を変えた場合(試料4−5〜試料4−10)、その他の修飾酸化物成分の種類を変えた場合(試料4−11〜試料4−14)、及び第3の修飾酸化物成分をさらに含有する場合(試料4−15〜試料4−22)のいずれにおいても、Gdを含有する試料と含有しない試料との比較から、Gdを含有する抵抗体ペーストを用いることで、TCR特性、STOL特性及び熱安定のいずれにも優れる抵抗体を得られることがわかる。
【0098】
<導電性材料に関する検討>
導電性材料の種類を変えて試料4−23〜試料4−30を作製し、抵抗体の特性を評価した。抵抗体ペーストの組成及び抵抗体の特性の評価結果を表15に示す。
【0099】
【表15】

【0100】
表15から、導電性材料としてSrRuOを用いた場合(試料4−23及び試料4−24)、BaRuOを用いた場合(試料4−25及び試料4−26)、BiRuを用いた場合(試料4−27及び試料4−28)、RuOを用いた場合(試料4−29及び試料4−30)のいずれにおいても、Gdを含有する試料と含有しない試料との比較から、ガラス組成物中にGdを含有させることで、TCR特性、STOL特性及び熱安定を向上させられることがわかる。
【0101】
<添加物に関する検討>
抵抗体ペーストにCuO、NiO、MgO、ZnO、CaTiO、BaTiO、SrTiOといった添加物を添加して、試料4−31〜試料4−44を作製し、抵抗体の特性を評価した。抵抗体ペーストの組成及び抵抗体の特性の評価結果を表16に示す。
【0102】
【表16】

【0103】
表16から、前述のガラス組成物及び導電性材料に加えて、抵抗体ペーストにCuO等の添加物を添加した場合であっても、Gdを含有する試料と含有しない試料との比較から、ガラス組成物中にGdを含有する抵抗体ペーストでは、Gdを含有しないガラス組成物を用いる抵抗体ペーストに比べてTCR特性及びSTOL特性の両方で良好な結果を得られることがわかる。
【0104】
(実験5)
実験5では、3価のイオン半径が0.70Å〜1.00Åである元素としてDyを含有する場合について、試料5−1〜試料5−42の厚膜抵抗体を作製して検討を行った。
【0105】
<Dy含有ガラス組成物の作製>
Dy、B、SiO、CaCO、SrCO、BaCO、ZrO、Al等を所定量秤量し、ボールミルにて混合した後、乾燥した。得られた粉末を5℃/分の速度で1300℃まで昇温し、その温度に1時間保持した後、水中に投入することによって急冷し、ガラス化した。得られたガラス化物をボールミルで粉砕し、ガラス組成物粉末を得た。作製したガラス組成物の組成を表17に示す。なお、表17中、A群は主たる修飾酸化物成分、B群は網目形成酸化物成分、C群はその他の修飾酸化物成分、D群は第3の修飾酸化物成分、E群はDyである。表中E群の単位はモル%である。
【0106】
【表17】

【0107】
<ガラス組成物の成分に関する検討>
ガラス組成物の成分を変えた試料5−1〜試料5−22を作製し、抵抗体の特性(抵抗値、TCR、STOL及びΔO.G.)を評価した。抵抗体ペーストの組成及び抵抗体の特性の評価結果を表18に示す。
【0108】
【表18】

【0109】
表18から、ガラス組成物中にDyを含有する試料5−2〜試料5−4は、Dyを含有しない試料5−1と比較して、TCR特性及びSTOL特性の両方において優れた値を示し、且つ熱処理後の抵抗値変動も小さいことがわかる。また、試料5−2〜試料5−4の結果から、ガラス組成物におけるDyの含有量は、0.2モル%〜8モル%の範囲において良好な結果を示すことがわかる。
【0110】
また、表18から、ガラス組成物の主たる修飾酸化物の種類を変えた場合(試料5−5〜試料5−10)、その他の修飾酸化物成分の種類を変えた場合(試料5−11〜試料5−14)、及び第3の修飾酸化物成分をさらに含有する場合(試料5−15〜試料5−22)のいずれにおいても、Dyを含有する試料と含有しない試料との比較から、Dyを含有する抵抗体ペーストを用いることで、TCR特性、STOL特性及び熱安定のいずれにも優れる抵抗体を得られることがわかる。
【0111】
<導電性材料に関する検討>
導電性材料の種類を変えて試料5−23〜試料5−30を作製し、抵抗体の特性を評価した。抵抗体ペーストの組成及び抵抗体の特性の評価結果を表19に示す。
【0112】
【表19】

【0113】
表19から、導電性材料としてSrRuOを用いた場合(試料5−23及び試料5−24)、BaRuOを用いた場合(試料5−25及び試料5−26)、BiRuを用いた場合(試料5−27及び試料5−28)、RuO2を用いた場合(試料5−29及び試料5−30)のいずれにおいても、Dyを含有する試料と含有しない試料との比較から、ガラス組成物中にDyを含有させることで、TCR特性、STOL特性及び熱安定を向上させられることがわかる。
【0114】
<添加物に関する検討>
抵抗体ペーストにCuO、NiO、MgO、ZnO、CaTiO、BaTiO、SrTiOといった添加物を添加して、試料5−31〜試料5−42を作製し、抵抗体の特性を評価した。抵抗体ペーストの組成及び抵抗体の特性の評価結果を表20に示す。
【0115】
【表20】

【0116】
表20から、前述のガラス組成物及び導電性材料に加えて、抵抗体ペーストにCuO等の添加物を添加した場合であっても、Dyを含有する試料と含有しない試料との比較から、ガラス組成物中にDyを含有する抵抗体ペーストでは、Dyを含有しないガラス組成物を用いる抵抗体ペーストに比べてTCR特性及びSTOL特性の両方で良好な結果を得られることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に鉛を含まず、3価のイオン半径が0.70Å〜1.00Åである元素を含有することを特徴とする抵抗体ペースト用ガラス組成物。
【請求項2】
前記元素がScであることを特徴とする請求項1記載の抵抗体ペースト用ガラス組成物。
【請求項3】
前記ScをScに換算して0.1モル%〜15モル%含有することを特徴とする請求項2記載の抵抗体ペースト用ガラス組成物。
【請求項4】
主たる修飾酸化物成分としてCaO、SrO及びBaOから選ばれる少なくとも1種と、
網目形成酸化物成分としてB及びSiOから選ばれる少なくとも1種と、
その他の修飾酸化物成分としてZrO及びAlから選ばれる少なくとも1種と、
第3の修飾酸化物成分として任意の金属酸化物を含むことを特徴とする請求項2記載の抵抗体ペースト用ガラス組成物。
【請求項5】
前記ガラス組成物における前記主たる修飾酸化物成分の含有量が13モル%〜45モル%、前記網目形成酸化物成分の含有量が36モル%〜79モル%、前記その他の修飾酸化物成分の含有量が2モル%〜11モル%、前記第3の修飾酸化物成分の含有量が0〜22モル%、Scの含有量が0.1モル%〜15モル%であることを特徴とする請求項4記載の抵抗体ペースト用ガラス組成物。
【請求項6】
前記第3の修飾酸化物成分としての金属酸化物が、ZnO、CuO、NiO、CoO、MnO、Cr、V、MgO、LiO、NaO及びKOから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項4記載の抵抗体ペースト用ガラス組成物。
【請求項7】
前記元素がInであることを特徴とする請求項1記載の抵抗体ペースト用ガラス組成物。
【請求項8】
前記InをInに換算して0.1モル%〜10モル%含有することを特徴とする請求項7記載の抵抗体ペースト用ガラス組成物。
【請求項9】
主たる修飾酸化物成分としてCaO、SrO及びBaOから選ばれる少なくとも1種と、
網目形成酸化物成分としてB及びSiOから選ばれる少なくとも1種と、
その他の修飾酸化物成分としてZrO及びAlから選ばれる少なくとも1種と、
第3の修飾酸化物成分として任意の金属酸化物を含むことを特徴とする請求項7記載の抵抗体ペースト用ガラス組成物。
【請求項10】
前記ガラス組成物における前記主たる修飾酸化物成分の含有量が13モル%〜45モル%、前記網目形成酸化物成分の含有量が36モル%〜79モル%、前記その他の修飾酸化物成分の含有量が2モル%〜11モル%、前記第3の修飾酸化物成分の含有量が0〜22モル%、Inの含有量が0.1モル%〜10モル%であることを特徴とする請求項9記載の抵抗体ペースト用ガラス組成物。
【請求項11】
前記第3の修飾酸化物成分としての金属酸化物が、ZnO、CuO、NiO、CoO、MnO、Cr、V、MgO、LiO、NaO及びKOから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項9記載の抵抗体ペースト用ガラス組成物。
【請求項12】
前記元素がErであることを特徴とする請求項1記載の抵抗体ペースト用ガラス組成物。
【請求項13】
前記ErをErに換算して0.1モル%〜10モル%含有することを特徴とする請求項12記載の抵抗体ペースト用ガラス組成物。
【請求項14】
主たる修飾酸化物成分としてCaO、SrO及びBaOから選ばれる少なくとも1種と、
網目形成酸化物成分としてB及びSiOから選ばれる少なくとも1種と、
その他の修飾酸化物成分としてZrO及びAlから選ばれる少なくとも1種と、
第3の修飾酸化物成分として任意の金属酸化物を含むことを特徴とする請求項12記載の抵抗体ペースト用ガラス組成物。
【請求項15】
前記ガラス組成物における前記主たる修飾酸化物成分の含有量が12モル%〜44モル%、前記網目形成酸化物成分の含有量が36モル%〜79モル%、前記その他の修飾酸化物成分の含有量が2モル%〜11モル%、前記第3の修飾酸化物成分の含有量が0〜22モル%、Erの含有量が0.1モル%〜10モル%であることを特徴とする請求項14記載の抵抗体ペースト用ガラス組成物。
【請求項16】
前記第3の修飾酸化物成分としての金属酸化物が、ZnO、CuO、NiO、CoO、MnO、Cr、V、MgO、LiO、NaO及びKOから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項14記載の抵抗体ペースト用ガラス組成物。
【請求項17】
前記元素がGdであることを特徴とする請求項1記載の抵抗体ペースト用ガラス組成物。
【請求項18】
前記GdをGdに換算して0.2モル%〜8モル%含有することを特徴とする請求項17記載の抵抗体ペースト用ガラス組成物。
【請求項19】
主たる修飾酸化物成分としてCaO、SrO及びBaOから選ばれる少なくとも1種と、
網目形成酸化物成分としてB及びSiOから選ばれる少なくとも1種と、
その他の修飾酸化物成分としてZrO及びAlから選ばれる少なくとも1種と、
第3の修飾酸化物成分として任意の金属酸化物を含むことを特徴とする請求項17記載の抵抗体ペースト用ガラス組成物。
【請求項20】
前記ガラス組成物における前記主たる修飾酸化物成分の含有量が12モル%〜44モル%、前記網目形成酸化物成分の含有量が36モル%〜79モル%、前記その他の修飾酸化物成分の含有量が2モル%〜11モル%、前記第3の修飾酸化物成分の含有量が0〜22モル%、Gdの含有量が0.2モル%〜8モル%であることを特徴とする請求項19記載の抵抗体ペースト用ガラス組成物。
【請求項21】
前記第3の修飾酸化物成分としての金属酸化物が、ZnO、CuO、NiO、CoO、MnO、Cr、V、MgO、LiO、NaO及びKOから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項19記載の抵抗体ペースト用ガラス組成物。
【請求項22】
前記元素がDyであることを特徴とする請求項1記載の抵抗体ペースト用ガラス組成物。
【請求項23】
前記DyをDyに換算して0.2モル%〜8モル%含有することを特徴とする請求項22記載の抵抗体ペースト用ガラス組成物。
【請求項24】
主たる修飾酸化物成分としてCaO、SrO及びBaOから選ばれる少なくとも1種と、
網目形成酸化物成分としてB及びSiOから選ばれる少なくとも1種と、
その他の修飾酸化物成分としてZrO及びAlから選ばれる少なくとも1種と、
第3の修飾酸化物成分として任意の金属酸化物を含むことを特徴とする請求項22記載の抵抗体ペースト用ガラス組成物。
【請求項25】
前記ガラス組成物における前記主たる修飾酸化物成分の含有量が12モル%〜44モル%、前記網目形成酸化物成分の含有量が36モル%〜79モル%、前記その他の修飾酸化物成分の含有量が2モル%〜11モル%、前記第3の修飾酸化物成分の含有量が0〜22モル%、Dyの含有量が0.2モル%〜8モル%であることを特徴とする請求項24記載の抵抗体ペースト用ガラス組成物。
【請求項26】
前記第3の修飾酸化物成分としての金属酸化物が、ZnO、CuO、NiO、CoO、MnO、Cr、V、MgO、LiO、NaO及びKOから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項24記載の抵抗体ペースト用ガラス組成物。
【請求項27】
ガラス組成物及び導電性材料を含有し、これらが有機ビヒクルと混合されてなる抵抗体ペーストであって、
前記ガラス組成物は、実質的に鉛を含まず、3価のイオン半径が0.70Å〜1.00Åである元素を含有することを特徴とする抵抗体ペースト。
【請求項28】
前記元素がScであることを特徴とする請求項27記載の抵抗体ペースト。
【請求項29】
前記ガラス組成物が前記ScをScに換算して0.1モル%〜15モル%含有することを特徴とする請求項28記載の抵抗体ペースト。
【請求項30】
前記ガラス組成物が、主たる修飾酸化物成分としてCaO、SrO及びBaOから選ばれる少なくとも1種と、
網目形成酸化物成分としてB及びSiOから選ばれる少なくとも1種と、
その他の修飾酸化物成分としてZrO及びAlから選ばれる少なくとも1種と、
第3の修飾酸化物成分として任意の金属酸化物を含むことを特徴とする請求項28記載の抵抗体ペースト。
【請求項31】
前記ガラス組成物における前記主たる修飾酸化物成分の含有量が13モル%〜45モル%、前記網目形成酸化物成分の含有量が36モル%〜79モル%、前記その他の修飾酸化物成分の含有量が2モル%〜11モル%、前記第3の修飾酸化物成分の含有量が0〜22モル%、Scの含有量が0.1モル%〜15モル%であることを特徴とする請求項30記載の抵抗体ペースト。
【請求項32】
前記第3の修飾酸化物成分としての金属酸化物が、ZnO、CuO、NiO、CoO、MnO、Cr、V、MgO、LiO、NaO及びKOから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項30記載の抵抗体ペースト。
【請求項33】
前記ガラス組成物、導電性材料、及び添加物を合計した合計質量を100%とした場合に、前記ガラス組成物の割合が52.1%〜86.3%、前記導電性材料の割合が9.8%〜46.0%、前記添加物の割合が0〜27.2%であることを特徴とする請求項28記載の抵抗体ペースト。
【請求項34】
前記元素がInであることを特徴とする請求項27記載の抵抗体ペースト。
【請求項35】
前記ガラス組成物が前記InをInに換算して0.1モル%〜10モル%含有することを特徴とする請求項34記載の抵抗体ペースト。
【請求項36】
前記ガラス組成物が、主たる修飾酸化物成分としてCaO、SrO及びBaOから選ばれる少なくとも1種と、
網目形成酸化物成分としてB及びSiOから選ばれる少なくとも1種と、
その他の修飾酸化物成分としてZrO及びAlから選ばれる少なくとも1種と、
第3の修飾酸化物成分として任意の金属酸化物を含むことを特徴とする請求項34記載の抵抗体ペースト。
【請求項37】
前記ガラス組成物における前記主たる修飾酸化物成分の含有量が13モル%〜45モル%、前記網目形成酸化物成分の含有量が36モル%〜79モル%、前記その他の修飾酸化物成分の含有量が2モル%〜11モル%、前記第3の修飾酸化物成分の含有量が0〜22モル%、前記Inの含有量が0.1モル%〜15モル%であることを特徴とする請求項36記載の抵抗体ペースト。
【請求項38】
前記第3の修飾酸化物成分としての金属酸化物が、ZnO、CuO、NiO、CoO、MnO、Cr、V、MgO、LiO、NaO及びKOから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項36記載の抵抗体ペースト。
【請求項39】
前記ガラス組成物、導電性材料、及び添加物を合計した合計質量を100%とした場合に、前記ガラス組成物の割合が50.16%〜88.2%、前記導電性材料の割合が9.4%〜46.5%、前記添加物の割合が0〜27.1%であることを特徴とする請求項34記載の抵抗体ペースト。
【請求項40】
前記元素がErであることを特徴とする請求項27記載の抵抗体ペースト。
【請求項41】
前記ガラス組成物が前記ErをErに換算して0.1モル%〜10モル%含有することを特徴とする請求項40記載の抵抗体ペースト。
【請求項42】
前記ガラス組成物が、主たる修飾酸化物成分としてCaO、SrO及びBaOから選ばれる少なくとも1種と、
網目形成酸化物成分としてB及びSiOから選ばれる少なくとも1種と、
その他の修飾酸化物成分としてZrO及びAlから選ばれる少なくとも1種と、
第3の修飾酸化物成分として任意の金属酸化物を含むことを特徴とする請求項40記載の抵抗体ペースト。
【請求項43】
前記ガラス組成物における前記主たる修飾酸化物成分の含有量が12モル%〜44モル%、前記網目形成酸化物成分の含有量が36モル%〜79モル%、前記その他の修飾酸化物成分の含有量が2モル%〜11モル%、前記第3の修飾酸化物成分の含有量が0〜22モル%、Erの含有量が0.1モル%〜10モル%であることを特徴とする請求項42記載の抵抗体ペースト。
【請求項44】
前記第3の修飾酸化物成分としての金属酸化物が、ZnO、CuO、NiO、CoO、MnO、Cr、V、MgO、LiO、NaO及びKOから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項42記載の抵抗体ペースト。
【請求項45】
前記ガラス組成物、導電性材料、及び添加物を合計した合計質量を100%とした場合に、前記ガラス組成物の割合が44%〜88%、前記導電性材料の割合が10%〜56%、前記添加物の割合が0〜28%であることを特徴とする請求項40記載の抵抗体ペースト。
【請求項46】
前記元素がGdであることを特徴とする請求項27記載の抵抗体ペースト。
【請求項47】
前記ガラス組成物が前記GdをGdに換算して0.2モル%〜8モル%含有することを特徴とする請求項46記載の抵抗体ペースト。
【請求項48】
前記ガラス組成物が、主たる修飾酸化物成分としてCaO、SrO及びBaOから選ばれる少なくとも1種と、
網目形成酸化物成分としてB及びSiOから選ばれる少なくとも1種と、
その他の修飾酸化物成分としてZrO及びAlから選ばれる少なくとも1種と、
第3の修飾酸化物成分として任意の金属酸化物を含むことを特徴とする請求項46記載の抵抗体ペースト。
【請求項49】
前記ガラス組成物における前記主たる修飾酸化物成分の含有量が12モル%〜44モル%、前記網目形成酸化物成分の含有量が36モル%〜79モル%、前記その他の修飾酸化物成分の含有量が2モル%〜11モル%、前記第3の修飾酸化物成分の含有量が0〜22モル%、Gdの含有量が0.2モル%〜8モル%であることを特徴とする請求項48記載の抵抗体ペースト。
【請求項50】
前記第3の修飾酸化物成分としての金属酸化物が、ZnO、CuO、NiO、CoO、MnO、Cr、V、MgO、LiO、NaO及びKOから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項48記載の抵抗体ペースト。
【請求項51】
前記ガラス組成物、導電性材料、及び添加物を合計した合計質量を100%とした場合に、前記ガラス組成物の割合が46%〜89%、前記導電性材料の割合が10%〜54%、前記添加物の割合が0〜28%であることを特徴とする請求項46記載の抵抗体ペースト。
【請求項52】
前記元素がDyであることを特徴とする請求項27記載の抵抗体ペースト。
【請求項53】
前記ガラス組成物が前記DyをDyに換算して0.2モル%〜8モル%含有することを特徴とする請求項52記載の抵抗体ペースト。
【請求項54】
前記ガラス組成物が、主たる修飾酸化物成分としてCaO、SrO及びBaOから選ばれる少なくとも1種と、
網目形成酸化物成分としてB及びSiOから選ばれる少なくとも1種と、
その他の修飾酸化物成分としてZrO及びAlから選ばれる少なくとも1種と、
第3の修飾酸化物成分として任意の金属酸化物を含むことを特徴とする請求項52記載の抵抗体ペースト。
【請求項55】
前記ガラス組成物における前記主たる修飾酸化物成分の含有量が12モル%〜44モル%、前記網目形成酸化物成分の含有量が36モル%〜79モル%、前記その他の修飾酸化物成分の含有量が2モル%〜11モル%、前記第3の修飾酸化物成分の含有量が0〜22モル%、Dyの含有量が0.2モル%〜8モル%であることを特徴とする請求項54記載の抵抗体ペースト。
【請求項56】
前記第3の修飾酸化物成分としての金属酸化物が、ZnO、CuO、NiO、CoO、MnO、Cr、V、MgO、LiO、NaO及びKOから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項54記載の抵抗体ペースト。
【請求項57】
前記ガラス組成物、導電性材料、及び添加物を合計した合計質量を100%とした場合に、前記ガラス組成物の割合が42%〜90%、前記導電性材料の割合が8%〜58%、前記添加物の割合が0〜28%であることを特徴とする請求項52記載の抵抗体ペースト。
【請求項58】
前記導電性材料がRuO及びルテニウム複合酸化物から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項27記載の抵抗体ペースト。
【請求項59】
前記導電性材料がRuO、CaRuO、SrRuO、BaRuO及びBiRuから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項58記載の抵抗体ペースト。
【請求項60】
添加物を含有し、
前記添加物がCuO、NiO、MgO、CaTiO、BaTiO及びSrTiOから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項27記載の抵抗体ペースト。
【請求項61】
前記ガラス組成物、導電性材料、及び添加物を合計した合計質量と、前記有機ビヒクルの質量との比率が、1:0.25〜1:4であることを特徴とする請求項27記載の抵抗体ペースト。
【請求項62】
実質的に鉛を含まず、ガラス組成として3価のイオン半径が0.70Å〜1.00Åである元素を含有することを特徴とする抵抗体。
【請求項63】
前記元素がScであることを特徴とする請求項62記載の抵抗体。
【請求項64】
前記Scの含有量が0.1質量%〜15質量%であることを特徴とする請求項63記載の抵抗体。
【請求項65】
前記元素がInであることを特徴とする請求項62記載の抵抗体。
【請求項66】
前記Inの含有量が0.2質量%〜20質量%であることを特徴とする請求項65記載の抵抗体。
【請求項67】
前記元素がErであることを特徴とする請求項62記載の抵抗体。
【請求項68】
前記Erの含有量が0.1質量%〜30質量%であることを特徴とする請求項67記載の抵抗体。
【請求項69】
前記元素がGdであることを特徴とする請求項62記載の抵抗体。
【請求項70】
前記Gdの含有量が0.5質量%〜25質量%であることを特徴とする請求項69記載の抵抗体。
【請求項71】
前記元素がDyであることを特徴とする請求項62記載の抵抗体。
【請求項72】
前記Dyの含有量が0.7質量%〜24質量%であることを特徴とする請求項71記載の抵抗体。
【請求項73】
請求項27〜61のいずれか1項記載の抵抗体ペーストを用いて形成されたことを特徴とする抵抗体。
【請求項74】
請求項62〜73のいずれか1項記載の抵抗体を有することを特徴とする電子部品。

【公開番号】特開2006−108611(P2006−108611A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−8412(P2005−8412)
【出願日】平成17年1月14日(2005.1.14)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】