説明

抵抗器及びコンデンサ形成のための多層構造体

本発明は、抵抗器及びコンデンサを形成するために有用なものである多層構造体に関する。また、本発明の多層構造体は、印刷回路板、又は、その他の微細な電子デバイスを製造するためにも有用なものである。本発明の多層構造体は、第1の導電層と、第1の熱硬化ポリマー層と、熱抵抗フィルム層と、第2の熱硬化ポリマー層と、第2の導電層に電気めっきされたニッケル−リン電気抵抗材料層とが、順次付けられた層からなる構造を備えるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷回路板、微細電子デバイスなどの上にコンデンサ及び抵抗器を形成するために有用な多層構造体に関する。多層構造体は、第1の導電層と、第1の熱硬化ポリマー層と、熱抵抗フィルム層と、第2の熱硬化ポリマー層と、第2の導電層に電気めっきされたニッケル−リン電気抵抗材料層とが順次付けられた層からなる。
【背景技術】
【0002】
中央処理ユニット(CPU)の回路設計が、動作速度の高速化を達成しようとするにつれ、集積回路の性能が、より重要になる。これら集積された回路を搭載する印刷回路板の回路設計も非常に重要である。
【0003】
コンデンサ及び抵抗器は、印刷回路板及び他の微細電子デバイス上の一般的な要素である。コンデンサは、そのようなデバイスの動作電源を安定させるために使用される。コンデンサは、回路内に容量(キャパシタンス)を導入するために使用されるデバイスであり、主に、電気エネルギを格納し、直流電流の流れを遮断し、又は交流電流の流れを許容するように機能する。それらは、銅箔などの2つの導電金属層間に挟まれた誘電材料を含む。一般に、誘電材料は、接着層を介して、積層、又は蒸着によって導電金属層に結合される。
【0004】
従来は、印刷回路板の表面上に配置されるコンデンサが一般的であった。しかしながら、最近では、コンデンサは薄いものとなり、多層回路板層内で両側が銅クラッドの積層体から形成されることにより、優れた特性となっている。これらの選択肢から、回路板の表面積を、他の目的のために最大化するように、埋め込まれたコンデンサを有する印刷回路板を形成することが好ましい。信号伝達速度の高速化を達成するために、印刷回路板製造者は、一般にそのような多層構成内に印刷回路板を形成する。コンデンサの容量は、主に、コンデンサ層の形状、サイズ、及び誘電材料の誘電率に依存する。この分野では、様々なタイプの誘電材料が知られている。例えば、誘電材料は、空気などの気体、真空、液体、固体、又はそれらの組合せであり得る。各材料は、それ自体の特定の特性を有する。
【0005】
従来、印刷回路板に使用するためのコンデンサの性能は、それら誘電材料の最小厚みの制限等の要因により限界があったため、コンデンサの可撓性及び達成可能な容量が低減され、金属箔の結合を強化し難く、誘電率が低く、誘電強度が不十分となる。
【0006】
高い誘電率及び非常に薄い誘電材料の層を有する回路板のためのコンデンサを形成することで、コンデンサの容量及び可撓性を増大することが望ましい。コンデンサの性能を最適化するためには、使用する誘電材料が、良好な材料特性を有し、優れた接着性、高い誘電強度、及び良好な可撓性を示すことが重要である。しかしながら、非常に薄い誘電層では、一般的に、微細なボイドや、その他の構造的な欠陥が形成することや、異質な材料を含有することが、しばしば問題となる。これらは、電気短絡を導く。例えば、特許文献1及び特許文献2には、誘電材料の単一のシートが、2つの導電箔(ホイル)とともに積層されたコンデンサを形成する方法が記載されている。このタイプの誘電層は、ボイドの形成や異質な材料の含有を、非常に生じやすいため、検出や改善に時間がかかる。
【0007】
特許文献3は、一対の導電箔と、一対の薄い誘電層と、その各箔(ホイル)の表面に1つの誘電層を有する構造に関する。2つの導電箔は、ともに、誘電層が熱抵抗フィルム層を中間に介して互いに付けられるように接着される。このコンデンサは、従来技術のコンデンサ及び印刷回路板に対し、著しく性能が改善されたものである。薄い誘電層によれば、より容量が高く、より熱伝導率が大きく、より可撓性の大きなコンデンサとできる。中間熱抵抗フィルム層は、導電ホイル間の電気短絡の形成を妨げる。
【0008】
【特許文献1】米国特許第5155655号明細書
【特許文献2】米国特許第5161086号明細書
【特許文献3】米国特許第6693793号明細書
【特許文献4】米国特許第5679230号明細書
【特許文献5】米国特許第5439541号明細書
【特許文献6】米国特許第5707782号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
容量性及び抵抗性要素の両方を有する多層構造体を形成することが望ましい。本発明は、抵抗器及びコンデンサ形成のため、そのような性能を有する多層構造体を提供する。本発明は、容量が大きく、より熱伝導性が大きく、より可撓性が大きく、一方で、抵抗器としての要素も組み込んだ構造を提供する。多層構造は、第1の導電層と、第1の熱硬化ポリマー層と、熱抵抗フィルム層と、第2の熱硬化ポリマー層と、第2の導電層に電気めっきされたニッケル−リン電気抵抗材料層とが順次付けられた層からなる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、抵抗器及びコンデンサを形成するのに適する多層構造体であって、第1の導電層と、第1の熱硬化ポリマー層と、熱抵抗フィルム層と、第2の熱硬化ポリマー層と、第2の導電層に電気めっきされたニッケル−リン電気抵抗材料層とからなる層が順次付けられた多層構造体を提供する。
【0011】
本発明は、コンデンサも提供し、コンデンサは、第1の導電層と、第1の熱硬化ポリマー層と、熱抵抗フィルム層と、第2の熱硬化ポリマー層と、第2の導電層に電気めっきされたニッケル−リン電気抵抗材料層とが順次付けられた層を備える。
【0012】
本発明は、多層構造体を形成する方法として、第1の導電層の表面に第1の熱硬化ポリマー層を付け、第2の導電層の表面上にニッケル−リン電気抵抗材料層を電気めっきし、電気抵抗材料層の表面に第2の熱硬化ポリマー層を付けた後、熱抵抗フィルム層の対向する表面に第1及び第2の熱硬化ポリマー層を付ける方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、抵抗器、コンデンサなどの形成に適した多層構造体に関する。図1に示されるように、多層構造体1は、第1の導電層2と、第1の熱硬化ポリマー層4と、熱抵抗フィルム層6と、第2の熱硬化ポリマー層8と、第2の導電層12に電気めっきされたニッケル−リン電気抵抗材料層10とが順次付けられた層を備える。第1の熱硬化ポリマー層4及び第2の熱硬化ポリマー層8は、同じ材料であっても異なる材料であっても良く、第1の導電層2及び第2の導電層12は、同じ材料であっても異なる材料であっても良い。
【0014】
図2に示される好ましい他の実施形態において、多層構造体1は、第1の導電層2に電気めっきされた追加のニッケル−リン電気抵抗材料層14をさらに備え、追加のニッケル−リン電気抵抗材料層14は、第1の熱硬化ポリマー層4と第1の導電層2との間に付けられる。よって、複数の層は、図2に示されるように、第1の導電層2、第1の導電層2に電気めっきされた追加のニッケル−リン電気抵抗材料層14、第1の熱硬化ポリマー層4、熱抵抗フィルム層6、第2の熱硬化ポリマー層8、第2の導電層12に電気めっきされたニッケル−リン電気抵抗材料層10のような順に付けられる。
【0015】
本発明の目的において、付けることとは、ある層に次の層を取り付ける任意の方法を意味し、同時又は順次に、被覆、積層、スパッタリング、蒸着(vapor depositing)、電気めっき(electro deposition)、めっき、若しくは蒸発(evaporating)を非排他的に含む。
【0016】
第1の導電層2及び第2の導電層12は、導電層又はフィルムなどの形態であることが好ましい。それぞれ箔(ホイル)の形態であることが最も好ましい実施形態である。各導電層は、同一の金属を含むか、又は異なる金属を含むことができる。本発明の目的に適する導電金属は、所望の適用に応じて変えることができる。導電層2、12は、銅、亜鉛、真鍮、クロム、ニッケル、錫、アルミニウム、ステンレス鋼、鉄、金、銀、チタン、白金、及びそれらの組合せ及び合金からなるグループから選択された材料を含むことが好ましい。導電層は、銅を含むことが最も好ましい。導電層は、厚み約0.5μm〜約200μmであることが好ましく、約9μm〜約70μmの厚みを有することがより好ましい。本発明のコンデンサで使用される導電材料は、光沢のある側面又はつや消しの側面を有するように製造できる。そのような導電材料の例は、参照によって本明細書に組み込まれる特許文献4に開示されている。
【0017】
導電層2、12の片側又は両側には、結合強化処理を施すことができる。層の片側又は両側は、マイクロエッチングによって、粗らされた銅堆積物を形成するように電気分解処理すること、及び/又は表面上又は表面内を金属又は金属合金のマイクロノジュールの堆積物で電気分解処理すること等により、任意に粗らすことができる。そのようなものは、ニッケル、クロム、クロム酸塩、亜鉛、及びシランカップリング剤、又はそれらの組合せによる処理を含む。ノジュールは、導電層として同一又は異なる金属を含むことができる。ノジュールは、好ましくは銅又は銅合金であり、ポリマーフィルムへの接着を強化する。そのようなノジュールは、参照によって本明細書に組み込まれる特許文献4に記載される技術によって与えられる。第1の導電層及び第2の導電層の少なくとも1つは、片側又は両側に結合強化処理を施すことが、実施形態として好ましい。
【0018】
導電層の表面微細構造は、プロフィロメーター(Cincinnati、OhioのMahr Feinpruef Corporationから市販で入手可能なPerhometerモデルM4P又はS5P等)によって測定できる。山及び谷の表面グレイン構造のトポグラフィ測定は、工業標準IPC−TM−650セクション2.2.17(2115 Sanders Road、Northbrook、I11.60062のthe Institute for Interconnecting and Packaging Circuits)により行った。粗さパラメータを生成する山及び谷を有する表面構造とするため、表面処理が実行され、算術平均粗さ(Ra)は、約0.2μm〜約1μm、ISO 64287−1(Rz)表面粗さによる凹凸の十点高さは、約0.5μm〜約7μm、約0.5μm〜約5μmがより好ましく、約0.5μm〜3μmが最も好ましい。
【0019】
第1の熱硬化ポリマー層4及び第2の熱硬化ポリマー層8は、それぞれ、エポキシ、エポキシ化合物、若しくは、エポキシ、メラミン、不飽和ポリエステル、ウレタン、アルキド樹脂、ビスマレイミドトリアジン、ポリイミド、エステル、アリル化ポリフェニレンエーテル(又はアリルポリフェニレンエーテル)、又はそれらを組合せた重合材料を含むことができる。熱硬化ポリマー層4、8は、典型的に乾式の固体形態であり、任意の上記化合物を約100%含むことができ、又はこれら化合物の混合物を含むことができ、又は他の添加剤を含むことができる。他の許容可能な材料として、特許文献5及び特許文献6に記載される芳香族熱硬化コポリエステル等が含まれる。これらの材料の中で、最も好ましい誘電体は、約100℃〜約250℃、好ましくは約150℃〜約200℃のガラス転移温度(Tg)を有するエポキシである。
【0020】
熱硬化ポリマー層4、8は、任意にフィラー材料を含むこともできる。排他的ではなく好ましいフィラーは、粉末強誘電体材料、チタン酸バリウム(BaTiO)、窒化ボロン、酸化アルミニウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウムストロンチウム、その他のセラミックスフィラー、並びにそれらの組合せを含む。フィラーを含む場合は、熱硬化ポリマー層の体積中で、約5%〜約80%が好ましく、より好ましくは約10%〜約50%である。第1の熱硬化ポリマー層4、熱抵抗フィルム層6、及び第2の熱硬化ポリマー層8の少なくとも1つは、約10より高い誘電率を有する粉末フィラーを含むことが好ましい。加えて、いずれか一方又は両方の熱硬化ポリマー層4、8は、色を与え、誘電不透明性を変更し、又はコントラストに影響を与えるために、染料又は顔料を含むことができる。
【0021】
好ましい一実施形態において、熱硬化ポリマー層4、8は、ポリマーの厚みを制御し、均一にするため、導電層又は熱抵抗フィルム層に液体ポリマー溶液として加えられる。溶液は、典型的に、粘度が約50センチポイズ〜約35000センチポイズであり、100センチポイズ〜27000センチポイズであることが好ましい。ポリマー溶液は、1つ以上の溶媒を含み、約10〜80%、好ましくは15〜60重量%のポリマーを含む。有用な溶媒は、アセトン、メチルエチルケトン、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルフォルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、及びその混合物を含む。最も好ましい単一の溶媒は、メチルエチルケトンである。
【0022】
熱硬化ポリマー層は、固体シートの形態で導電層2、12又は熱抵抗フィルム層6に加えられることもできる。そのような実施形態において、熱抵抗フィルム層の対向する表面に第1及び第2の熱硬化ポリマー層を付けることは、積層によって行われる。積層は、約150〜310℃の温度で、より好ましくは約160〜200℃の温度で、プレスにより行われる。積層は、約30〜120分間、好ましくは約40〜80分間行われる。プレスは、少なくとも水銀の70cm(28インチ)の真空下で行うことが好ましく、約3.5kgf/cm(50psi)〜約28kgf/cm(400psi)、好ましくは約4.9kgf/cm(70psi)〜約14kgf/cm(200psi)の圧力に維持される。
【0023】
熱硬化ポリマー層4、8は、約2〜200μmの厚みを有することが好ましく、約2〜100μmの厚みを有することがより好ましい。熱硬化ポリマー層は、少なくとも約19685ボルト/mm(500ボルト/mil)厚みの誘電強度を有することが好ましい。
【0024】
熱抵抗フィルム層6は、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリビニルカルバゾール、ポリフェニレン硫化物、芳香族ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドポリイミド、ポリエーテルニトリル、ポリエーテルエーテルケトン、又はそれらの組合せからなることが好ましい。熱抵抗フィルム層6は、厚みが約12.5μm以下であることが好ましい。第1の熱硬化ポリマー層4と、熱抵抗フィルム層6と、第2の熱硬化ポリマー層8とを組み合わせた厚みは、約25μm以下である。熱抵抗フィルム層6は、ISO 306によって決定する場合に、約150℃以上のVICAT軟化点を有する。熱抵抗フィルム層6は、ヤング率が約300kgf/mm以上であり、引っ張り強度が約20kgf/mm以上であり、伸びが約5%以上であって、第1の熱硬化ポリマー層4及び第2の熱硬化ポリマー層8を積層する温度よりも、高い軟化温度を有することが好ましくい。第1の熱硬化ポリマー層4、熱抵抗フィルム層6、及び第2の熱硬化ポリマー層8の、各誘電率は、約2.5以上である。熱抵抗フィルム層6の誘電破壊電圧は、少なくとも約50ボルトが好ましく、少なくとも約250ボルトがより好ましく、少なくとも約500ボルトが最も好ましい。
【0025】
多層構造体を形成するために層を付ける前に、熱抵抗フィルム層6は、プラズマ処理、コロナ処理、化学処理、又はそれらの組合せを含む結合強化処理することができる。
【0026】
ニッケル−リン電気抵抗材料層10は、第2の導電層に、従来の電気めっきプロセスによって電気めっきされることが好ましい。典型的に、電解溶液内に基板を配置し、基板上の導電領域と液体内の対向電極との間に電位差を加えることによって行われる電気めっきは、従来技術において良く知られている技術である。化学プロセスの結果により、基板上に材料の層が形成される。
【0027】
抵抗フィルムの堆積に使用される電気めっき浴は、典型的に、室温より著しく高い温度、すなわち100°F(38℃)を超える温度で用いられる。実際、抵抗合金フィルムを堆積するために以前に使用されたほとんどの浴は、150°F(65℃)から約212°F(100℃)の温度で用いられる。公知のプロセスにおいて、導電層上に堆積される電着電気抵抗層は、めっき効率に応じた厚みとなり、めっき効率は温度に応じる。
【0028】
適切な電気めっき浴の例は、次亜リン酸塩イオン、特に次亜リン酸ニッケル(Ni(HPO)から形成された次亜リン酸塩イオンの水溶液を含む。次亜リン酸ニッケルは、炭酸ニッケル(NiCO)と次亜リン酸(HPO)との反応により容易に準備できる。すなわち、導電層上のニッケル−リンの電気抵抗層の電着に適した次亜リン酸ニッケルは、水の量を調整して約1/2molの炭酸ニッケル及び1molの次亜リン酸の水溶液とし、1リットル当たり約0.67molの濃度に水で希釈したときに、完全に溶解する結晶反応生成物を生成するように準備できる。反応は、以下の式によると考えられるが、本発明を制限することは意図しない。
【0029】
NiCO+2HPO→Ni(HPO+CO+H
【0030】
次亜リン酸ニッケルから形成される次亜リン酸イオンを含む他の電気めっき浴は、塩化ニッケル(NiCl)及び次亜リン酸ナトリウム(NaHPO)の反応によって得られる。反応式は、以下のようであると仮定される。
【0031】
NiCl+2NaHPO→Ni(HPO+2NaCl
【0032】
反応によって、生成する副生成物が二酸化炭素及び水であるため、炭酸ニッケル及び次亜リン酸との反応により次亜リン酸ニッケルが生成する電気めっき浴を用いることが好ましい場合がある。塩化ニッケル及び次亜リン酸ナトリウムから次亜リン酸ニッケルが形成される電気めっき浴では、しばしば塩化ナトリウムの副生成物が生成するため、長時間の連続プロセスにおいて高濃度となりすぎないように、取り除かれなければならないからである。次亜リン酸ニッケルから形成される次亜リン酸イオンを含む電気めっき浴は、約20〜50℃の温度で用いることができる。室温(20℃〜25℃)で浴を用いることが望ましいことがある。そのような浴は、効果的に温度不感受性である。
【0033】
好ましい一実施形態において、形成された電気抵抗材料層は、リンの含有量が約50重量%以下であり、他の好ましい実施形態では、約30重量%以下であり、他の実施形態では、約30〜50重量%である。本発明のさらなる実施形態は、ニッケルイオン源と、HPOと、HPOとの水溶液からなり、実質的に硫黄及び塩素を含まないめっき浴中で、第2の導電層を電気めっきすることを含む。
【0034】
回路板材料の電気抵抗層の抵抗値は、電気抵抗層の厚み、及び材料の抵抗率に応じることが、当技術によって知られている。電気抵抗層の厚みが減少するにつれ、前記層の抵抗値は増大する。電気抵抗材料層10の抵抗値は、約5〜500Ω/□(ohms/square)であることが好ましく、約10〜300Ω/□がより好ましく、約25〜250Ω/□であると最も好ましい。ニッケル−リン電気抵抗材料層の厚みは、約0.02〜0.2μmが好ましく、約0.03〜1μmがより好ましく、約0.04〜0.4μmが最も好ましい。
【0035】
追加の好ましい実施形態において、電気抵抗材料層の表面(top)の少なくとも約10原子層(atomic layers)は、硫黄を含まない。他の好ましい実施形態において、電気抵抗材料層の表面は、実質的にピット(pit)がない。
【0036】
任意の追加のニッケル−リン電気抵抗材料層14は、ニッケル−リン電気抵抗材料層10と同一であるか又は異なることができる。好ましくは、これら2つの層10、14は、実質的に同一である。
【0037】
本発明の多層構造体は、第1の導電層と、第1の熱硬化ポリマー層と、熱抵抗フィルム層と、第2の熱硬化ポリマー層と、第2の導電層とが順次付けられた層を備える。順次付けることとは、示された順番で層が存在することを意味し、任意の特定の層間に他の中間層を備えることができる。例えば、好ましい実施形態において、多層構造体は、第1の導電層に電気めっきされた追加のニッケル−リン電気抵抗材料層をさらに備え、追加のニッケル−リン電気抵抗材料層は、第1の熱硬化ポリマー層と第1の導電層との間に付けられる。
【0038】
本発明の追加の実施形態(図示せず)において、多層構造体はさらに、電気抵抗材料層10と第2の導電層12との間に接着されたバリア層を備え、バリア層は、約0.1μm未満の厚みを有し、電気抵抗材料層とは異なる組成であり、かつ電気抵抗材料層10をアルカリアンモニア銅エッチング剤による侵食から保護することができる。バリア層の厚みは、約0.1μm未満であることが好ましく、約50Å〜約0.1μmであるとより好ましく、約150〜600Åが最も好ましい。好ましい実施形態において、バリア層は、従来技術を用いて蒸着される。バリア層は、良好なエッチング剤選択性を有する無機材料であり得る。バリア層として使用される材料は、下にある電気抵抗層の抵抗率及び他の機能特性の均一性に対し、実質的に有害な影響を有さないことも重要である。バリア層は、好ましくは、Ni−Sn、Co−Sn、Cd−Sn、Cd−Ni、Ni−Cr、Ni−Au、Ni−Pd、Ni−Zn、Sn−Pb、Sn−Zn、Ni、Sn、及びそれらの組合せからなるグループから選択された材料を含む。好ましいバリア層は、Ni−Snを含む。
【0039】
本発明の多層構造体は、抵抗器又はコンデンサの形成に用いることが好ましい。そのような構造体は、印刷回路板、電子デバイスなどの形成に使用できる。
【0040】
本発明の好ましい実施形態において、本発明によるコンデンサの好ましい容量は、少なくとも約100pF/cmであり、より好ましくは約100〜4000pF/cmである。本発明のコンデンサは、様々な印刷回路の応用に使用できる。例えば、電気接続及び第2の導電層に対する他の電気接続を、第1の導電層上に設けることができる。コンデンサは、印刷回路板若しくは他の電子デバイスに接続し、又は組み込むことができ、あるいは、電子デバイスは、コンデンサを備える印刷回路板を備えることができる。それらは、リジッド若しくはフレキシブル、又はリジッド/フレキシブルな電子回路、印刷回路板、又はチップパッケージなどの他の微細電子デバイスに結合し、又は埋め込むことができる。一般に、それらは、一方又は両方の導電材料層上に第1の回路パターンを作るために使用される。第2の回路パターンは、蒸着、スパッタリング、蒸発、その他の手段によって、導電箔の形態でいずれかのポリマー表面に加えることができる。さらに、対向する回路層を電気的に接続するためにコンデンサ内にビア(vias)を生成する必要があり得る。
【0041】
コンデンサが形成されたら、公知のエッチング技術を使用して、導電材料層に回路パターンを作ることが可能である。エッチングにおいて、転写可能なレジスト、ドライフィルム、又は液体材料の層は、導電ホイル層に加えられる。レジスト上に被せられるネガティブフォトパターンを用いて、フォトレジストは、所望の回路パターンを形成するUV放射などの化学線放射に晒される。映写(imaged)されたコンデンサは、次に、意図せずに露光されなかった部分の化学物質を選択的に取り除く現像のために、フィルムを露出する。回路像を有するコンデンサは、次に露出された導電層を取り除くために知られている化学エッチング剤浴に接触させ、最終的に所望の導電パターンが形成されたコンデンサを残す。また、各導電材料層は、任意に、コンデンサ全体を通る孔を形成して、導電金属を充填することにより、電気接続させることができる。積層ステップは、最小150℃で行われることが好ましい。
【0042】
本発明は、従来技術のコンデンサ及び印刷回路板に対し、著しく性能の改善された多層構造体を提供する。また、より均一性が良好であり、より容量が大きく、より熱伝達性が大きく、より可撓性が大きなものであって、一方では、抵抗器要素も組み込んだ構造体を提供する。
【0043】
以下の非限定実施例は、本発明を例示する作用をする。
【実施例1】
【0044】
3μmの表面粗さを有し、かつニッケル−リンの層が電気めっきされた35μm厚みの電気めっきされた(ED、electrodeposited)銅箔を提供する。ニッケル−リン層の厚み及び組成により、25Ω/□の電気抵抗層となる。厚み6μmのエポキシ樹脂の層は、12μmのポリアミドフィルムの片面に加えられる。他の35μmのED銅箔上に、エポキシ樹脂の層が、6μmの厚みで加えられる。2つの被覆された箔(ホイル)は、12μmのポリアミドフィルムのシートとともに、抵抗層が、2つの箔間であってフィルムの樹脂被覆側に接触するように積層される。積層は、1時間、350°F(176.7℃)で250psi(17.58kgf/cm)の流体圧圧力で行われる。圧力室は、25mmHgの真空下とした。積層後、組み合わせられた生成物は、可能性がある短絡を調べるために500ボルトで高電位試験した。パターンは、アルカリエッチング剤を用いて、工業標準技術を使用して銅表面にエッチングした。この化学物質は、抵抗(Ni−P)層を侵食することなく銅をエッチングする。第2の現像プロセスは、抵抗器パターンを形成するため、フォトレジストを真空積層し、露光及び現像することにより行われる。フォトレジストは、抵抗器パターンを画定するNi−P層上に残る。バックグラウンドのNi−Pは、酸エッチング剤(塩化第二銅又は硫酸銅など)を使用して取り除かれる。フォトレジストは剥離され、回路は、自動光学検査及び又は電子試験(高電位試験を含む)を使用して検査される。回路形成された生成物は、再積層するための銅を準備するプロセスがなされる。このプロセスは、黒色酸化物又は代替物である。回路形成された生成物は、多層回路板に積層され、工業標準技術を使用して完成される。
【実施例2】
【0045】
ポリアミドフィルムの両側に、銅層及び電気抵抗層を加えたことにより、両側に抵抗層を備える生成物となったことを除き、実施例1を繰り返した。
【実施例3】
【0046】
1オンス(30.98g)銅箔のロールを、所定寸法の箔(ホイル)サンプルに切り出した。ある所定量の箔サンプルを、ニッケル−リン電気抵抗材料により電気めっきし、他の所定量の箔サンプルには、そのような電気めっきを行わなかった。
【0047】
電気めっきする箔サンプルに関しては、バッチプロセスで、一定のめっきセルを使用した。浴組成を均一に維持するため、再循環ポンプにより、めっきセル中を穏やかに攪拌した。用いられるカソードは、つや消し側にめっきされる電着された1オンス(30.98g)銅箔である。箔の光沢側又はドラム側は、ゴムで被覆されたバッキング固定物によって覆われる。カソードサイズは、11.5インチ(29.21cm)×14.25インチ(36.19cm)である。アノードは、カソードに対するアノードの比が1.3:1である白金クラッドコロンビウムである。めっきセル内を通過する前に、銅箔は、1分間にわたり塩酸水溶液(等しい容積)に浸漬される。銅箔は、次に、めっきセルを通過する前に30秒間、ベンゾトリアゾールの水溶液を含む活性溶液に通過される。
【0048】
リットル当たり0.5molの次亜リン酸ニッケルを含むめっき浴が形成される。めっき浴は、40molの次亜リン酸(等しい量の水で希釈された9.3M/Lで8.6リットルの50%HPO)と、20molの炭酸ニッケル(2508gの基本的な炭酸ニッケルNiCO 2Ni(OH) 4HO、モル質量376.24)とを反応させ、次に、40リットルで反応生成物を希釈することによって作られる。室温に冷却された後のめっき浴の温度は23℃であり、電流は10Aであり、めっき浴の滞留時間は30秒間である。
【0049】
次に、電気めっきされた箔サンプル及び電気めっきされていない箔サンプルには、それぞれ、エポキシ樹脂の層が付けられる。液体エポキシ樹脂は、ステンレス鋼混合バット内にて、固形分30%、粘度が約500センチポイズになるよう、MEKで調整される。ドクターブレードは、15μm厚の濡れたフィルムを生成するように調整され、結果として約5μm厚の、乾燥したポリマーフィルムである可撓性複合物が生じる。連続する液体ヘッド高さ及びせき止められる(dammed)材料の量は、一定の可撓性複合フィルム厚みとし、気泡が含有しないフィルムとするため、ドクターブレードの上流側で制御される。
【0050】
溶媒を蒸発させ、エポキシ樹脂をオーブン内で硬化させた。被覆された箔が第1にオーブン内に入る、初期温度の低下を、予測しておくべきである。オーブン内の温度が安定したら、箔サンプルを取り、その重量をエポキシ樹脂密度によってフィルム厚みに変換し、箔の基本重量と被覆された重量を比較すれば、フィルムの厚みを検査できる。分与されるエポキシ樹脂の速度及び又はホイル上のドクターブレード高さは、この測定に基づいて調整される。このプロセスは、所望のフィルム厚みが、第1及び第2の銅箔層上に第1及び第2の熱硬化ポリマー層が生成されるまで、繰り返される。
【0051】
コンデンサは、厚みが4μm、ヤング率が1500kg/mm、引っ張り強度が40kg/mm、25℃での伸びが約20%である芳香族ポリアミドからなる中間熱抵抗シートに、エポキシ被覆された箔の2つの片を積層することによって形成される。被覆された銅箔の1つは、ニッケル−リン電気抵抗材料層で電気めっきされる。積層は、60分間、165℃にて、10kgf/cm(150psi)の流体プレスで行われる。プレスは、水銀の71cm(28インチ)の真空下で行う。コンデンサは、銅にパターンを与えるため、ある寸法に切断されて処理される。得られたコンデンサは、視覚により検査され、次に500ボルトで短絡させて電気的に検査される。得られたコンデンサ層は、少なくとも300pF/cmの容量と、少なくとも7.87×10ボルト/mm(2000ボルト/mil)の誘電破壊電圧を有していた。
【実施例4】
【0052】
熱抵抗シートに積層される銅箔の両側が、ニッケル−リン電気抵抗材料層で電気めっきされることを除いて、実施例3を繰り返した。
【0053】
本発明は、好ましい実施形態を参照して特に示されかつ記載されたが、様々な変化及び修正が、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく行われることができることは、当業者によって容易に理解される。請求項は、開示される実施形態、上述されたそれら代替物、及びすべてのそれらの等価物を包含すると解釈されることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明による多層構造体の概略を示す図であり、第1の導電層と、第1の熱硬化ポリマー層と、熱抵抗フィルム層と、第2の熱硬化ポリマー層と、第2の導電層に電気めっきされたニッケル−リン電気抵抗材料層とが順次付けられた層からなる。
【図2】図1による多層構造体の概略を示す図であり、追加のニッケル−リン電気抵抗材料層は、追加のニッケル−リン電気抵抗材料層が第1の熱硬化ポリマー層と第1の導電層との間に付けられるように、第1の導電層に電気めっきされる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抵抗器及びコンデンサの形成に適した多層構造体であって、
第1の導電層と、第1の熱硬化ポリマー層と、熱抵抗フィルム層と、第2の熱硬化ポリマー層と、第2の導電層に電気めっきされたニッケル−リン電気抵抗材料層とからなる層が順次付けられた多層構造体。
【請求項2】
第1の導電層に電気めっきされた追加のニッケル−リン電気抵抗材料層をさらに備え、追加のニッケル−リン電気抵抗材料層は、第1の熱硬化ポリマー層と第1の導電層との間に付けられる請求項1に記載の多層構造体。
【請求項3】
電気抵抗材料層は、抵抗値が5Ω/□〜500Ω/□である請求項1に記載の多層構造体。
【請求項4】
第1の導電層及び前記第2の導電層は、それぞれ、銅、亜鉛、真鍮、クロム、ニッケル、スズ、アルミニウム、ステンレス鋼、鉄、金、銀、チタン、白金、及びそれらの組合せからなるグループから選択された材料を含む請求項1に記載の多層構造体。
【請求項5】
第1の導電層及び第2の導電層は、銅を含む請求項1に記載の多層構造体。
【請求項6】
第1の導電層及び第2の導電層は、表面粗さRzが0.5μm〜7μmである銅箔を含む請求項1に記載の多層構造体。
【請求項7】
第1の導電層と第2の導電層の少なくともいずれかは、片側又は両側が結合強化処理されたものである請求項1に記載の多層構造体。
【請求項8】
第1の導電層と第2の導電層の少なくともいずれかは、金属ノジュール、ニッケル、クロム、クロム酸塩、亜鉛、シランカップリング剤、又はそれらの組合せにより結合強化処理されたものである請求項1に記載の多層構造体。
【請求項9】
第1の熱硬化ポリマー層及び第2の熱硬化ポリマー層の一方又は両方は、エポキシ、メラミン、不飽和ポリエステル、ウレタン、アルキド樹脂、ビスマレイミドトリアジン、ポリイミド、エステル、アリル化ポリフェニレンエーテル、又はそれらの組合せを含む請求項1に記載の多層構造体。
【請求項10】
熱抵抗フィルム層は、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリビニルカルバゾール、ポリフェニレン硫化物、芳香族ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドポリイミド、ポリエーテルニトリル、ポリエーテルエーテルケトン、又はそれらの組合せを含む請求項1に記載の多層構造体。
【請求項11】
電気抵抗材料層は、リンの含有量が30重量%以下である請求項1に記載の多層構造体。
【請求項12】
電気抵抗材料層の表面の少なくとも10原子層は、硫黄を含まない請求項1に記載の多層構造体。
【請求項13】
電気抵抗材料層と第2の導電層との間に付着したバリア層をさらに含み、バリア層は、層の厚みが0.1μm未満であり、電気抵抗材料層とは異なる組成であり、電気抵抗材料層をアルカリアンモニア銅エッチング剤による侵食から保護することができる請求項1に記載の多層構造体。
【請求項14】
第1の導電層と、第1の熱硬化ポリマー層と、熱抵抗フィルム層と、第2の熱硬化ポリマー層と、第2の導電層に電気めっきされたニッケル−リン電気抵抗材料層とからなる層が順次付けられたコンデンサ。
【請求項15】
第1の導電層に電気めっきされた追加のニッケル−リン電気抵抗材料層をさらに備え、追加のニッケル−リン電気抵抗材料層は、第1の熱硬化ポリマー層と第1の導電層との間に付けられる請求項14に記載のコンデンサ。
【請求項16】
請求項14に記載のコンデンサを備える印刷回路板。
【請求項17】
請求項16に記載の印刷回路板を備える電子デバイス。
【請求項18】
請求項14に記載のコンデンサを備える電子デバイス。
【請求項19】
多層構造体を形成する方法であって、
第1の導電層の表面に第1の熱硬化ポリマー層を付け、第2の導電層の表面にニッケル−リン電気抵抗材料層を電気めっきし、電気抵抗材料層の表面に第2の熱硬化ポリマー層を付けた後、熱抵抗フィルム層の対向する表面に前記第1及び第2の熱硬化ポリマー層を付ける方法。
【請求項20】
熱抵抗フィルム層の対向する表面に、積層により第1及び第2の熱硬化ポリマー層を付ける請求項19に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−536292(P2008−536292A)
【公表日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−556279(P2007−556279)
【出願日】平成18年2月15日(2006.2.15)
【国際出願番号】PCT/US2006/005423
【国際公開番号】WO2006/091462
【国際公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(501330466)オークミツイ,インク., (4)
【出願人】(507273781)オメガ テクノロジーズ,インク., (1)
【Fターム(参考)】