説明

抵抗器及びコンデンサ用の多層構造体の製造方法

本発明は、印刷回路板及び微細電子デバイスの製造に使用可能な、コンデンサ及び抵抗器の形成に有効な多層構造体の製造方法に関する。本発明によれば、1つ又は複数の熱硬化ポリマー層を熱抵抗フィルム層に直接付け、特に、熱抵抗フィルム表面のうち、電気抵抗材料層を備えた導電層を付ける側に直接付ける。導電層より、むしろ熱抵抗フィルムへ接着剤を付けることは、製造プロセス、特に導電層上に電気抵抗材料層を形成するプロセスを合理化する。また、この結果、多層構造体の精度及び均一性が、より良好なものとなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンデンサ、抵抗器、印刷回路板、微細電子デバイスなどの形成に関する。特に、薄膜抵抗器導体材料などの準備に使用する多層構造体の製造プロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
中央処理ユニット(CPU)の回路設計が、動作速度の高速化を達成しようとするにつれ、集積回路の性能が、より重要になる。これら集積された回路を搭載する印刷回路板の回路設計も非常に重要である。
【0003】
コンデンサ及び抵抗器は、印刷回路板及び他の微細電子デバイス上の一般的な要素である。コンデンサは、そのようなデバイスの動作電源を安定させるために使用される。コンデンサは、回路内に容量(キャパシタンス)を導入するために使用されるデバイスであり、電気エネルギを格納し、直流電流の流れを遮断し、又は交流電流の流れを許容するように主に機能する。それらは、銅箔(ホイル)などの2つの導電金属層間に挟まれた誘電材料を含む。一般に、誘電材料は、接着層を介して、積層によって、又は蒸着によって導電金属層に結合される。
【0004】
従来は、印刷回路板の表面上に配置されるコンデンサが一般的であった。しかしながら、最近では、コンデンサは薄いものとなり、多層回路板層内に両側が銅クラッドの積層体を形成することにより、優れた特性を示すものとなっている。これらの選択肢から、他の目的のために回路板の表面積を最大化するために、埋め込まれたコンデンサを有する印刷回路板を形成することが好ましい。信号伝達速度の高速化を達成するために、印刷回路板製造者は、一般にそのような多層構成内に印刷回路板を形成する。コンデンサの容量は、主に、コンデンサ層の形状及びサイズ、ならびに誘電材料の誘電率に依存する。この分野では、様々なタイプの誘電材料が知られている。例えば、誘電材料は、空気などの気体、真空、液体、固体、又はそれらの組合せであり得る。各材料は、それ自体の特定の特性を有する。
【0005】
従来、印刷回路板に使用するためのコンデンサの性能は、それら誘電材料の最小厚みの制限等の要因により限界があったため、コンデンサの可撓性及び達成可能な容量が低く、金属箔の結合を強化し難く、誘電率が低く、誘電強度が不十分であった。
【0006】
高い誘電率及び非常に薄い誘電材料の層を有する回路板のためのコンデンサを形成するため、コンデンサの容量及び可撓性を増大することが望ましい。コンデンサの性能を最適化するためには、使用する誘電材料が、良好な材料特性を有し、優れた接着性、高い誘電強度、及び良好な可撓性を示すことが重要である。しかしながら、非常に薄い誘電層では、一般的に、微細なボイドや、その他の構造的な欠陥を生じることや、異質な材料が含まれることが、しばしば問題となる。これらは、電気短絡を導くためである。例えば、特許文献1及び特許文献2には、誘電材料の単一のシートを、2つの導電箔(ホイル)とともに積層したコンデンサを形成する方法が記載されている。このタイプの誘電層は、ボイドの形成や異質な材料の含有が、非常に生じやすいため、検出や改善に時間がかかる。
【0007】
特許文献3は、一対の導電箔と、一対の薄い誘電層と、その各箔(ホイル)の表面に1つの誘電層を有する構造に関する。2つの導電箔は、ともに、誘電層が熱抵抗フィルム層を中間に介して互いに付けられるように接着される。このコンデンサは、従来技術のコンデンサ及び印刷回路板に対し、著しく性能が改善されたものである。薄い誘電層によれば、より容量が高く、より熱伝導率が大きく、より可撓性の大きなコンデンサとできる。中間熱抵抗フィルム層は、導電ホイル間の電気短絡の形成を妨げる。
【0008】
回路要素を製造するための従来の方法は、層の連続する順に、構成要素を付けるものである。しかし、いくつかの欠点は、構造のうち、所定の層を連続して付けることにより生じる。例えば、ある材料は、他の材料上に所望の精度及び均一性となるように付け又は形成することができない。さらに、ある材料は、その上に形成し又は付けなければならない他の材料を支持(サポート)するのに十分な強度とはなりにくい。さらに、電気めっきなどのある材料及びプロセスでは、製造コストに関し、連続する順で所定の層を付けることが望ましくない。
【0009】
【特許文献1】米国特許第5155655号明細書
【特許文献2】米国特許第5161086号明細書
【特許文献3】米国特許第6693793号明細書
【特許文献4】米国特許第5679230号明細書
【特許文献5】米国特許第5439541号明細書
【特許文献6】米国特許第5707782号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
容量性及び抵抗性要素の両方を有する多層構造体を形成する方法、及び従来の処理ステップに関連する問題も解消する方法を提供することが望ましい。本発明は、抵抗器及びコンデンサ形成のためのそのような多層構造を形成するための方法を提供する。本発明は、容量が大きく、より熱伝導性が大きく、より可撓性が大きく、一方で、抵抗器としての要素も組み込んだ構造の製造方法を提供する。本発明の方法により、構成及び会合(アセンブリ)の間に、構成要素層の精度及び均一性も良好なものとする。この方法は、さらに、多層構造体の製造コストを最大限に有効化する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、多層構造体を形成する方法であって、第1の導電層の表面に第1の熱硬化ポリマー層を付けることと、熱抵抗フィルムの第1の表面に第2の熱硬化ポリマー層を付けることと、第2の熱硬化ポリマー層の表面に形成する電気抵抗材料層を備えた第2の導電層を提供することと、第2の熱硬化ポリマーに電気抵抗材料層を付けることと、熱抵抗フィルム層の第2の表面に第1の熱硬化ポリマーを付けることとを含む方法に関する。
【0012】
本発明は、多層構造体を形成する方法も提供し、熱抵抗フィルムの第1の表面に第1の熱硬化ポリマー層を付けるステップと、熱抵抗フィルムの第2の表面に第2の熱硬化ポリマー層を付けるステップと、第1の熱硬化ポリマーに第1の導電層を付けるステップと、第2の熱硬化ポリマー層の表面に形成する電気抵抗材料層を備えた第2の導電層を提供するステップと、第2の熱硬化ポリマーに電気抵抗材料層を付けるステップとを含む方法に関する。
【0013】
本発明は、さらに多層構造体を形成する方法を提供し、熱抵抗フィルムの第1の表面に第1の熱硬化ポリマー層を付けるステップと、熱抵抗フィルムの第2の表面に第2の熱硬化ポリマー層を付けるステップと、第1の熱硬化ポリマー層の表面に形成する第1の電気抵抗材料層を備えた第1の導電層を提供するステップと、第2の熱硬化ポリマー層の表面に形成する第2の電気抵抗材料層を備えた第2の導電層を提供するステップと、第1の熱硬化ポリマー層に第1の電気抵抗材料層を付けるステップと、第2の熱硬化ポリマー層に第2の電気抵抗材料層を付けるステップとを含む方法に関する。
【0014】
本発明は、またさらにコンデンサを形成する方法を提供し、第1の導電層の表面に第1の熱硬化ポリマー層を付けるステップと、熱抵抗フィルムの第1の表面に第2の熱硬化ポリマー層を付けるステップと、第2の熱硬化ポリマーの表面に形成する電気抵抗材料層を備えた第2の導電層を提供するステップと、第2の熱硬化ポリマーに電気抵抗材料層を付けるステップと、熱抵抗フィルム層の第2の表面に第1の熱硬化ポリマーを付けるステップとを含む方法に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明は、抵抗器、コンデンサなどの形成に適した多層構造体を形成する方法に関する。本発明のプロセスの第1の実施形態が、図1に示される。このプロセスでは、多層構造体は、第1の導電層2の表面に第1の熱硬化ポリマー層4を付け、第2の熱硬化ポリマー層8を熱抵抗フィルム層6の第1の表面に付け、第2の熱硬化ポリマー層の表面に形成する電気抵抗材料層10を備えた第2の導電層12を提供し、電気抵抗材料層10を第2の熱硬化ポリマー8に付け、第1の熱硬化ポリマー4を熱抵抗フィルム層6の第2の表面に付けることによって形成される。
【0016】
図2に示される本発明のプロセスの代替実施形態では、第1の熱硬化ポリマー層4を熱抵抗フィルム層6の第1の表面に付け、第2の熱硬化ポリマー層8を熱抵抗フィルム層6の第2の表面に付ける。次に、第1の導電層2を、第1の熱硬化ポリマー4に付ける。次に、第2の熱硬化ポリマーの表面に形成する電気抵抗材料層10を備えた第2の導電層12を提供する。そして、電気抵抗材料層10を、第2の熱硬化ポリマー8に付ける。
【0017】
図3に示される、さらなる実施形態では、第1の熱硬化ポリマー層4を、熱抵抗フィルム層6の第1の表面に付け、第2の熱硬化ポリマー層8を、熱抵抗フィルム6の第2の表面に付ける。次に、第1の熱硬化ポリマー層の表面に形成する第1の電気抵抗材料層10を備えた第1の導電層2を提供する。第2の熱硬化ポリマー層の表面に形成する第2の電気抵抗材料層14を備えた第2の導電層12も提供する。そして、第1の電気抵抗材料層10を、第1の熱硬化ポリマー層4に、第2の電気抵抗材料層14を、第2の熱硬化ポリマー層8に付ける。
【0018】
本発明の目的において、付けることとは、ある層に次の層を取り付ける任意の方法を意味し、被覆、積層、スパッタリング、蒸着(vapor depositing)、電気めっき(electro deposition)、めっき、若しくは蒸発(evaporating)を非排他的に含む。
【0019】
多層構造体の複数の層を付ける順番は、本発明の重要な特徴である。第1及び第2の熱硬化ポリマー層は、熱抵抗フィルムと多層構造体の他の層との間の接着剤として作用する。1つ又は複数の接着剤ポリマー層を、熱抵抗フィルムに直接付けることが本発明の重要な特徴であり、熱抵抗フィルムの表面のうち、電気抵抗材料層を備える導電層を付ける側に直接付けることは、特に重要である。導電層よりむしろ熱抵抗フィルム上に接着剤を付けることにより、製造プロセス、特に導電層上に電気抵抗材料層を形成するプロセスが合理化できる。また、これにより多層構造体の精度及び均一性は、より良好なものとなる。
【0020】
第1の導電層2及び第2の導電層12は、導電層又はフィルム等の形態とすることが好ましい。最も好ましい実施形態は、それぞれ、箔(ホイル)の形態とすることである。各導電層は、同一の金属、又は異なる金属を含むことができる。本発明における導電金属としては、所望の目的に応じて異なるものを利用できる。導電層2、12は、銅、亜鉛、真鍮、クロム、ニッケル、錫、アルミニウム、ステンレス鋼、鉄、金、銀、チタン、白金、及びそれらの組合せ及び合金からなるグループから選択された材料を含むことが好ましい。導電層は、銅を含むことが最も好ましい。導電層の厚みは、約0.5〜200μmが好ましく、約9〜70μmがより好ましい。本発明のコンデンサで使用される導電材料は、光沢のある側面又はつや消しの側面を有するように製造することができる。そのような導電材料の例は、参照によって本明細書に組み込まれる特許文献4に開示されている。
【0021】
導電層2、12は、片側又は両側に、結合強化処理を施すことができる。層の片側又は両側は、マイクロエッチングにり、銅堆積物を形成して粗れた状態となるように、電気分解処理し、及び/又は表面又は表面内に金属又は金属合金のマイクロノジュールの堆積物で電気分解処理すること等により、任意に粗れた状態とすることができる。そのような処理には、ニッケル、クロム、クロム酸塩、亜鉛、及びシランカップリング剤、又はそれらの組合せによる処理を含む。ノジュールは、導電層として同一又は異なる金属を含むことができる。ノジュールは、好ましくは銅又は銅合金であり、ポリマーフィルムへの接着を強化することができる。そのようなノジュールは、参照によって本明細書に組み込まれる特許文献4に記載される技術に示されている。好ましい実施形態において、第1の導電層及び第2の導電層の少なくともいずれかは、片側又は両側に、結合強化処理を施したものである。
【0022】
導電層の表面微細構造は、プロフィロメーター(Cincinnati、OhioのMahr Feinpruef Corporationから市販に入手可能なPerhometerモデルM4P又はS5P等)によって測定することができる。山及び谷の表面グレイン構造のトポグラフィ測定は、工業標準IPC−TM−650セクション2.2.17(2115 Sanders Road、Northbrook、I11.60062のthe Institute for Interconnecting and Packaging Circuits)により行った。表面処理は、粗さパラメータを生成する山及び谷を有する表面構造を作るために実行し、算術平均粗さ(Ra)は、約0.2〜約1μm、ISO 64287−1(Rz)表面粗さによる凹凸の十点高さは、約0.5〜7μmが好ましく、約0.5〜約5μmがより好ましく、約0.5〜3μmが最も好ましい。
【0023】
第1及び第2の熱硬化ポリマー層は、熱抵抗フィルムと多層構造体の他の層との間の接着剤として作用する。第1の熱硬化ポリマー層4及び第2の熱硬化ポリマー層8は、それぞれ、エポキシ、エポキシ化合物、若しくは、エポキシ、メラミン、不飽和ポリエステル、ウレタン、アルキド樹脂、ビスマレイミドトリアジン、ポリイミド、エステル、アリル化ポリフェニレンエーテル(又はアリルポリフェニレンエーテル)、又はそれらを組合せた重合材料を含むことができる。熱硬化ポリマー層4、8は、典型的に乾式の固体形態であり、任意の上記化合物を約100%含むことができ、又はこれら化合物の混合物を含むことができ、又は他の添加剤を含むことができる。他の許容可能な材料としては、特許文献5及び特許文献6に記載される芳香族熱硬化コポリエステル等が含まれる。これらの材料の中で、最も好ましい誘電体は、約100〜250℃、好ましくは約150〜200℃のガラス転移温度(Tg)を有するエポキシである。
【0024】
熱硬化ポリマー層4、8は、任意にフィラー材料を含むこともできる。排他的ではなく、フィラーは、粉末強誘電体材料、チタン酸バリウム(BaTiO)、窒化ボロン、酸化アルミニウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウムストロンチウム、及び他のセラミックスフィラー、並びにそれらの組合せを含むことが好ましい。フィラーを含む場合には、層の容積に対する含有量で約5〜80%が好ましく、約10〜50%がより好ましい。第1の熱硬化ポリマー層4、熱抵抗フィルム層6、及び第2の熱硬化ポリマー層8の少なくともいずれかは、誘電率が約10より高い粉末フィラーを含むことが好ましい。加えて、いずれか又は両方の熱硬化ポリマー層4、8を呈色して誘電不透明性を変更し、又はコントラストに影響を与えるために、染料又は顔料を含ませることができる。
【0025】
好ましい一実施形態において、熱硬化ポリマー層4、8は、ポリマーの厚みを制御し、均一にするために、液体ポリマー溶液として、導電層又は熱抵抗フィルム層に加えられる。典型的に、溶液の粘度は、約50〜35000センチポイズであり、100〜27000センチポイズであると好ましい。ポリマー溶液は、1種以上の溶媒を含み、ポリマー含有量が約10〜80%であり、15〜60重量%であると好ましい。溶媒は、アセトン、メチルエチルケトン、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルフォルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、及びその混合物が有用である。最も好ましい単一の溶媒は、メチルエチルケトンである。
【0026】
熱硬化ポリマー層は、固体シートの形態で、導電層2、12又は熱抵抗フィルム層6に加えることもできる。そのような実施形態において、熱抵抗フィルム層の対向する表面に第1及び第2の熱硬化ポリマー層を付けることは、積層によって行われる。積層は、約150〜310℃の温度でプレスすることが好ましく、約160〜200℃であるとより好ましい。積層時間は、約30〜120分間行い、約40〜80分間行うと好ましい。プレスは、少なくとも水銀70cm(28インチ)の真空下で行うことが好ましく、約3.5kgf/cm(50psi)〜約28kgf/cm(400psi)、好ましくは約4.9kgf/cm(70psi)〜約14kgf/cm(200psi)の圧力に維持される。
【0027】
熱硬化ポリマー層4、8の厚みは、約2〜200μmであると好ましく、約2〜100μmであるとより好ましい。熱硬化ポリマー層は、少なくとも約19685ボルト/mm(500ボルト/mil)厚みの誘電強度を有することが好ましい。
【0028】
熱抵抗フィルム層6は、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリビニルカルバゾール、ポリフェニレン硫化物、芳香族ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドポリイミド、ポリエーテルニトリル、ポリエーテルエーテルケトン、又はそれらの組合せを含むことが好ましい。熱抵抗フィルム層6の厚みは、約12.5μm以下であると好ましい。第1の熱硬化ポリマー層4と、熱抵抗フィルム層6と、第2の熱硬化ポリマー層8とを組み合わせた厚みは、約25μm以下である。熱抵抗フィルム層6は、ISO 306によるVICAT軟化点で、約150℃以上である。熱抵抗フィルム層6は、ヤング率が約300kgf/mm以上であり、引っ張り強度が約20kgf/mm以上で、伸びが約5%以上であって、第1の熱硬化ポリマー層4及び第2の熱硬化ポリマー層8の積層温度よりも、高い軟化温度を有することが好ましい。第1の熱硬化ポリマー層4、熱抵抗フィルム層6、及び第2の熱硬化ポリマー層8の、各誘電率は、約2.5以上である。熱抵抗フィルム層6の誘電破壊電圧は、少なくとも約50ボルトであると好ましく、少なくとも約250ボルトであるとより好ましく、少なくとも約500ボルトであると最も好ましい。
【0029】
熱抵抗フィルム層6は、多層構造体を形成するための層を付ける前に、プラズマ処理、コロナ処理、化学処理、又はそれらの組合せを含む結合強化処理することができる。
【0030】
電気抵抗材料層10は、ニッケル、クロム、ニクロム、白金、パラジウム、ニッケル−リン、チタン、イリジウム、ルテリウム、シリカ、及びそれらの組合せからなるグループから選択された材料を含むことが好ましい。本発明の好ましい実施形態において、電気抵抗材料層は、ニッケル−リンを含む。
【0031】
電気抵抗材料層10は、第2の導電層上に、従来の電気めっきプロセスを使用して電気めっきすることが好ましい。典型的に、液体電解溶液内に基板を配置し、かつ基板上の導電領域と液体内の対向電極との間に電位差を加えることによって行う電気めっきは、従来技術として良く知られている。化学プロセスの結果として、基板上へ材料の層が形成される。
【0032】
抵抗フィルムの堆積に使用する電気めっき浴は、典型的に、室温より著しく高い温度、すなわち100°F(38℃)を超える温度で用いられる。実際、抵抗合金フィルムを堆積するために使用されてきたほとんどの浴は、150°F(65℃)〜約212°F(100℃)の温度で用いられている。めっきプロセスにおいて、導電層上に堆積される電着電気抵抗層の厚みは、めっき効率に応じることが知られており、めっき効率は温度に応じる。
【0033】
適切な電気めっき浴の例は、次亜リン酸塩イオン、特に次亜リン酸ニッケル(Ni(HPO)から形成された次亜リン酸塩イオンの水溶液を含む。次亜リン酸ニッケルは、炭酸ニッケル(NiCO)と次亜リン酸(HPO)との反応によって容易に準備できる。すなわち、導電層上のニッケル−リンの電気抵抗層の電着に適した次亜リン酸ニッケルは、水の量を調整して、約1/2molの炭酸ニッケル及び1molの次亜リン酸の水溶液とし、1リットル当たり約0.67molの濃度となるよう水で希釈すると完全に溶解する結晶反応生成物を生成するように準備する。反応は以下の式によると考えられるが、これにより本発明を制限することは意図していない。
【0034】
NiCO+2HPO→Ni(HPO+CO+H
【0035】
次亜リン酸ニッケルにより形成される次亜リン酸イオンを含む、他の電気めっき浴は、塩化ニッケル(NiCl)及び次亜リン酸ナトリウム(NaHPO)の反応によって調製できる。反応式は、以下であると仮定される。
【0036】
NiCl+2NaHPO→Ni(HPO+2NaCl
【0037】
反応によって、生成する副生成物が二酸化炭素及び水であるため、炭酸ニッケル及び次亜リン酸から次亜リン酸ニッケルを形成する電気めっき浴を用いることが好ましい場合がある。塩化ニッケル及び次亜リン酸ナトリウムから次亜リン酸ニッケルを形成する電気めっき浴では、しばしば塩化ナトリウムの副生成物が生成するため、長時間の連続プロセスにおいて高濃度となりすぎないように、取り除かれなければならないからである。次亜リン酸ニッケルから形成される次亜リン酸イオンを含む電気めっき浴は、約20〜50℃の温度で用いることができる。室温(20℃〜25℃)で浴を用いることが望ましい場合がある。そのような浴は、効果的に温度不感受性である。
【0038】
好ましい一実施形態において、形成された電気抵抗材料層は、リンの含有量が約50重量%以下である。他の好ましい実施形態では、30重量%以下であり、他の実施形態では、約30重量%〜50重量%である。本発明のさらなる実施形態は、ニッケルイオン源と、HPOと、HPOとの水溶液からなり、実質的に硫黄及び塩素を含まないめっき浴中で、第2の導電層を電気めっきすることを含む。
【0039】
回路板材料における電気抵抗層の抵抗値は、電気抵抗層の厚みと、使用する材料の抵抗率に応じることが、当技術によって知られている。電気抵抗層の厚みが減少するにつれ、前記層の抵抗値が増大する。
【0040】
電気抵抗材料層10の抵抗値は、約0.5〜10000Ω/□(ohms/square)が好ましく、約5〜500Ω/□がより好ましく、約25〜250Ω/□が最も好ましい。電気抵抗材料層の厚みは、約0.02〜0.2μmが好ましく、約0.03〜1μmがより好ましく、約0.04〜0.4μmが最も好ましい。
【0041】
追加の好ましい実施形態において、電気抵抗材料層の少なくとも表面(top)の約10原子層(atomic layers)は、硫黄を含まない。他の好ましい実施形態において、電気抵抗材料層の表面は、実質的にピット(pit)がない。
【0042】
任意の追加の電気抵抗材料層14は、電気抵抗材料層10と同一であるか又は異なることができる。これら2つの層10、14は、実質的に同一であると好ましい。
【0043】
本発明の追加の実施形態(図示せず)において、バリア層は、前記電気抵抗材料層10と前記第2の導電層12との間に接着され、約0.1μm未満の厚みを有し、電気抵抗材料層とは異なる組成であって、電気抵抗材料層10をアルカリアンモニア銅エッチング剤による侵食から保護することができる。バリア層の厚みは、約0.1μm未満であると好ましく、約50Å〜約0.1μmであるとより好ましく、約150〜600Åであると最も好ましい。好ましい実施形態において、バリア層は、従来の技術を使用して蒸着される。バリア層は、良好なエッチング剤選択性を有する無機材料とすることができる。バリア層として使用される材料は、下にある電気抵抗層の抵抗率及び他の機能特性の均一性に対し、実質的に有害な影響を有さないことも重要である。バリア層は、好ましくは、Ni−Sn、Co−Sn、Cd−Sn、Cd−Ni、Ni−Cr、Ni−Au、Ni−Pd、Ni−Zn、Sn−Pb、Sn−Zn、Ni、Sn、及びそれらの組合せからなるグループから選択された材料を含む。好ましいバリア層は、Ni−Snを含む。
【0044】
本方法により形成される多層構造体は、抵抗器又はコンデンサの形成に使用すると好ましい。そのような構造体は、印刷回路板、電子デバイスなどの形成に使用できる。
【0045】
本発明の好ましい実施形態において、本発明により形成されるコンデンサの容量は、少なくとも約100pF/cmが好ましく、約100〜4000pF/cmであるとより好ましい。本発明により形成されるコンデンサは、様々な印刷回路応用に使用できる。例えば、電気接続及び第2の導電層に対する他の電気接続を、第1の導電層上に設けることができる。コンデンサは、印刷回路板又は他の電子デバイスに接続し又は組み込むことができ、又は電子デバイスを、コンデンサを有する印刷回路板に備えることができる。それらは、リジッド若しくはフレキシブル、又はリジッド/フレキシブルな電子回路、印刷回路板、又はチップパッケージなどの他の微細電子デバイスに結合し、又は埋め込むことができる。一般に、それらは、一方又は両方の導電材料層上に第1の回路パターンを作るために使用される。第2の回路パターンは、蒸着、スパッタリング、蒸発、その他の手段によって、導電箔の形態でいずれかのポリマー表面に加えることができる。さらに、対向する回路層を電気的に接続するためにコンデンサ内にビア(vias)を生成する必要があり得る。
【0046】
コンデンサが形成されたら、公知のエッチング技術を使用して、導電材料層に回路パターンを作ることが可能である。エッチングにおいて、転写可能なレジスト、ドライフィルム、又は液体材料の層は、導電ホイル層に加えられる。レジスト上に被せられるネガティブフォトパターンを用いて、フォトレジストは、所望の回路パターンを形成するUV放射などの化学線放射に晒される。映写(imaged)されたコンデンサは、次に、意図せずに露光されなかった部分の化学物質を選択的に取り除く現像のために、フィルムを露出する。回路像を有するコンデンサは、次に露出された導電層を取り除くために知られている化学エッチング剤浴に接触させ、最終的に所望の導電パターンが形成されたコンデンサを残す。また、各導電材料層は、任意に、コンデンサ全体を通る孔を形成して、導電金属を充填することにより、電気接続させることができる。積層ステップは、最小150℃で行われることが好ましい。
【0047】
本発明は、組立て(アセンブリ)の間に、多層構造体の精度及び均一性を著しく改善する多層構造体の製造方法を提供する。これにより、従来技術のコンデンサ及び印刷回路板の性能を改善することとなり、一方では、製造コストを最大限に有効化する。
【0048】
以下の非限定実施例は、本発明を例示する作用をする。
【実施例1】
【0049】
表面粗さが3μmであり、ニッケル−リン層が電気めっきされた厚み35μmの電気めっきされた(ED、electrodeposited)銅ホイルを用いた。前記ニッケル−リン層の厚み及び組成とした結果、25Ω/□の電気抵抗層となった。エポキシ樹脂の層は、厚み6μmの箔に加えられた。他の35μmのED銅箔上に、厚み6μmのエポキシ樹脂層を加えた。2つの被覆された箔は、2つの樹脂表面間が12μmのポリアミドフィルムのシートとなるように積層した。積層は、1時間、350°F(176.7℃)で250psi(17.58kgf/cm)の流体圧圧力で行った。圧力室は、25mmHgの真空下とした。積層後、組み合わせられた生成物は、可能性がある短絡を調べるために500ボルトで高電位試験した。パターンは、アルカリエッチング剤を用いて、工業標準技術を使用して銅表面にエッチングした。この化学物質は、抵抗(Ni−P)層を侵食することなく銅をエッチングする。第2の現像プロセスは、抵抗器パターンを形成するため、フォトレジストを真空積層し、露光及び現像することにより行われる。フォトレジストは、抵抗器パターンを画定するNi−P層上に残る。バックグラウンドのNi−Pは、酸エッチング剤(塩化第二銅又は硫酸銅など)を使用して取り除いた。フォトレジストを剥離し、回路は、自動光学検査及び又は電子試験(高電位試験を含む)を使用して検査した。回路形成された生成物は、再積層するための銅を準備するプロセスがなされる。このプロセスは、黒色酸化物又は代替物である。回路形成された生成物は、多層回路板に積層され、工業標準技術を使用して完成される。
【実施例2】
【0050】
1000Ω/□の抵抗層とし、エポキシ樹脂の厚みを4μm、ポリアミドフィルムの厚みを4μmとしたことを除き、実施例1を繰り返した。
【実施例3】
【0051】
ポリアミドフィルムの両側に、それぞれ抵抗層を有する銅箔を加え、両側抵抗器生成物としたことを除き、実施例1を繰り返した。層の抵抗値は、一方側が25Ω/□、両側で1000Ω/□等のように、同一又は異なるようにすることができる。
【0052】
本発明は、好ましい実施形態を参照して特に示されかつ記載されたが、様々な変化及び修正が、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく行われることができることは、当業者によって容易に理解される。請求項は、開示される実施形態、上述されたそれら代替物、及びすべてのそれらの等価物を包含すると解釈されることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】多層構造体に1つの電気抵抗材料層を含む、本発明のプロセスの第1の実施形態の概略を示す図である。
【図2】多層構造体に1つの電気抵抗材料層を含む、本発明のプロセスの追加の実施形態の概略を示す図である。
【図3】第1の熱硬化ポリマー層と第1の導電層との間に追加の電気抵抗材料層を付けた、図2の本発明のプロセスの追加の実施形態の概略を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層構造体を形成する方法であって、
第1の導電層の表面に第1の熱硬化ポリマー層を付けることと、
熱抵抗フィルム層の第1の表面に第2の熱硬化ポリマー層を付けることと、
第2の熱硬化ポリマー層の表面に形成する電気抵抗材料層を備えた第2の導電層を提供することと、
第2の熱硬化ポリマーに電気抵抗材料層を付けることと、
熱抵抗フィルム層の第2の表面に第1の熱硬化ポリマーを付けることとを含む方法。
【請求項2】
熱抵抗フィルム層の対向する表面に、積層によって、第1の熱硬化ポリマー層又は第2の熱硬化ポリマー層の少なくともいずれかを付ける請求項1に記載の方法。
【請求項3】
電気抵抗材料層の抵抗値は、0.5Ω/□〜10000Ω/□である請求項1に記載の方法。
【請求項4】
第1の導電層及び第2の導電層は、それぞれ、銅、亜鉛、真鍮、クロム、ニッケル、アルミニウム、ステンレス鋼、鉄、金、銀、チタン、白金、及びそれらの組合せからなるグループから選択された材料を含む請求項1に記載の方法。
【請求項5】
第1の導電層及び第2の導電層は、銅を含む請求項1に記載の方法。
【請求項6】
第1の導電層及び第2の導電層は、表面粗さRzが0.5μm〜5μmである銅箔を含む請求項1に記載の方法。
【請求項7】
第1の導電層及び第2の導電層の少なくともいずれかの片側又は両側に、結合強化処理を行う請求項1に記載の方法。
【請求項8】
第1の導電層及び第2の導電層の少なくともいずれかに、金属ノジュール、ニッケル、クロム、クロム酸塩、亜鉛、シランカップリング剤、又はそれらの組合せによる処理を含む結合強化処理を行う請求項1に記載の方法。
【請求項9】
第1の熱硬化ポリマー層及び第2の熱硬化ポリマー層の一方又は両方は、エポキシ、メラミン、不飽和ポリエステル、ウレタン、アルキド樹脂、ビスマレイミドトリアジン、ポリイミド、エステル、アリル化ポリフェニレンエーテル、又はそれらの組合せを含む請求項1に記載の方法。
【請求項10】
熱抵抗フィルム層は、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリビニルカルバゾール、ポリフェニレン硫化物、芳香族ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドポリイミド、ポリエーテルニトリル、ポリエーテルエーテルケトン、又はそれらの組合せを含む請求項1に記載の方法。
【請求項11】
電気抵抗材料層は、ニッケル、クロム、ニクロム、白金、パラジウム、ニッケル−リン、チタン、イリジウム、ルテリウム、シリカ、及びそれらの組合せからなるグループから選択される請求項1に記載の方法。
【請求項12】
電気抵抗材料層は、ニッケル−リンを含む請求項1に記載の方法。
【請求項13】
電気抵抗材料層は、リンの含有量が30重量%以下である請求項12に記載の方法。
【請求項14】
電気抵抗材料層は、電気めっきにより形成される請求項1に記載の方法。
【請求項15】
ニッケルイオン源、HPO、HPOの水溶液を含み、硫酸塩及び塩化物を含まないめっき浴中で、第2の導電層を電気めっきする請求項11に記載の方法。
【請求項16】
電気抵抗材料層の表面の少なくとも10原子層は、硫黄を含まない請求項1に記載の方法。
【請求項17】
電気抵抗材料層の表面は、400倍の大きさで観察したとき、ピットがなく連続的である請求項1に記載の多層構造体。
【請求項18】
電気抵抗材料層と第2の導電層との間にバリア層をさらに含み、バリア層は、厚みが0.1μm未満であり、電気抵抗材料層とは異なる組成であり、電気抵抗材料層をアルカリアンモニア銅エッチング剤による侵食から保護することができる請求項1に記載の方法。
【請求項19】
多層構造体を形成する方法であって、
熱抵抗フィルムの第1の表面に第1の熱硬化ポリマー層を付けるステップと、
熱抵抗フィルムの第2の表面に第2の熱硬化ポリマー層を付けるステップと、
第1の熱硬化ポリマーに第1の導電層を付けるステップと、
第2の熱硬化ポリマー層の表面に形成する電気抵抗材料層を備えた第2の導電層を提供するステップと、
第2の熱硬化ポリマーに電気抵抗材料層を付けるステップとを含む方法。
【請求項20】
多層構造体を形成する方法であって、
熱抵抗フィルム層の第1の表面に第1の熱硬化ポリマー層を付けるステップと、
熱抵抗フィルム層の第2の表面に第2の熱硬化ポリマー層を付けるステップと、
第1の熱硬化ポリマー層の表面に形成する第1の電気抵抗材料層を備えた第1の導電層を提供するステップと、
第2の熱硬化ポリマー層の表面に形成する第2の電気抵抗材料層を備えた第2の導電層を提供するステップと、
第1の熱硬化ポリマー層に第1の電気抵抗材料層を付けるステップと、
第2の熱硬化ポリマー層に第2の電気抵抗材料層を付けるステップとを含む方法。
【請求項21】
コンデンサを形成する方法であって、
第1の導電層の表面に第1の熱硬化ポリマー層を付けるステップと、
熱抵抗フィルム層の第1の表面に第2の熱硬化ポリマー層を付けるステップと、
第2の熱硬化ポリマー層の表面に形成する電気抵抗材料層を備えた第2の導電層を提供するステップと、
第2の熱硬化ポリマーに電気抵抗材料層を付けるステップと、
熱抵抗フィルム層の第2の表面に第1の熱硬化ポリマーを付けるステップとを含む方法。
【請求項22】
請求項1に従って製造される多層構造体。
【請求項23】
請求項19に従って製造される多層構造体。
【請求項24】
請求項20に従って製造される多層構造体。
【請求項25】
請求項21のプロセスに従って製造されるコンデンサ。
【請求項26】
請求項1のプロセスに従って製造される多層構造体を備える電子デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−532270(P2008−532270A)
【公表日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−556280(P2007−556280)
【出願日】平成18年2月15日(2006.2.15)
【国際出願番号】PCT/US2006/005424
【国際公開番号】WO2006/091463
【国際公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(501330466)オークミツイ,インク., (4)
【Fターム(参考)】