説明

抵抗式熱検出器にバイアスをかけて読み取るための電子回路

【課題】画素のSN比を改良するために読み取り回路によりもたらされるノイズを低減する。
【解決手段】少なくとも1つの抵抗式熱検出器(102)にバイアスをかけて読み取るための電子回路(100)であって、抵抗式熱検出器の電気抵抗に変動があると、抵抗式熱検出器に一定値のバイアス電流を流すことによって抵抗式熱検出器にバイアスをかけることができるバイアス手段と、抵抗式熱検出器(102)の端子で電圧を電流に変換することができ、抵抗式熱検出器の端子の一つにゲートが電気的に接続させる少なくとも1つのMOS型トランジスタ(106)を備える変換手段と、変換手段のMOS型トランジスタのソースに電気的に接続されるベースクリップ電圧生成手段とを備える電子回路を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度測定、及び、例えば、赤外線撮像等の撮像の技術分野に関する。より具体的には、抵抗式熱検出器を用いた未冷却の(non-cooled)赤外線撮像に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ボロメータ(bolometers)等の抵抗式熱検出器を用いる赤外線撮像素子は、赤外線検出器として用いられる抵抗式熱検出器を各々有し、かつ、電気抵抗の変化を介して温度の変化に反応する画素マトリックスを備える。撮像素子はまた、検出器によって供給された信号、すなわち、電気的抵抗の変化の取得、処理及び評価を実行する電気的読み取り回路を備える。
【0003】
図1に示されるように、本実施例において、上記の撮像素子の画素10の構造は、ボロメータ12と、関連する読み取り回路とを備える。
【0004】
ボロメータ12は、バイアス電圧Vdtが印加される第1端子と、ボロメータ12に電圧バイアスをかけることができる、NMOSトランジスタ14のソースに電気的に接続される第2端子とを備える。NMOSトランジスタ14のドレインは、温度測定がボロメータ12によって実行されると、閉じられるスイッチ16に電気的に接続される。
【0005】
ベースクリップ回路18は、画素マトリックスの画素の各カラムの先端に配置される。各回路18は、供給電圧Vddが印加される第1の端子と、PMOSトランジスタ22のソースに電気的に接続される第2の端子とを有する熱式ボロメータ20を備える。バイアス電圧Gebは、PMOSトランジスタ22のゲートに印加される。電圧Vdtを、ボロメータ12のバイアスを調節するために、電圧Gebと組み合わせて使用することができる。PMOSトランジスタ22のドレインは、カラム中の画素全てに共通で、かつ、回路18がベースクリップ電流Iebを出力するバス24に電気的に接続される。画素10は、スイッチ16によってバス24に電気的に接続される。最終的に、バス24は、(回路18と反対の)カラムベースで、カラム中の画素によって出力される測定電流を処理するための回路26に電気的に接続される。
【0006】
この構造において、ボロメータ12の電圧バイアスは、NMOSトランジスタ14によって達成される。ボロメータ12に印加されるバイアス電圧は、注入トランジスタ又はバイアストランジスタと呼ばれる、NMOSトランジスタ14のゲートに印加される電圧Gdtによって制御される。ボロメータ12の電圧バイアスは、ボロメータ12を通過する平均電流Iboloを決定することを可能にする。注入トランジスタ14の動作点において注入トランジスタ14が飽和限界で機能できるように、電圧Gdtは選択される。
【0007】
ボロメータ12が測定された温度変化にさらされると、この変化により電気的抵抗の変化をもたらす。ボロメータ12が電圧をバイアスされることを考慮すると、次に、この電気的抵抗の変化が、ボロメータ12を通過する電流の変化をもたらす。従って、有用な情報、すなわち、測定された温度変化は、電流の変動に含まれ、電圧バイアスによって決定される平均値Iboloに集中する。従って、ボロメータ電流、すなわち、ボロメータを通過する電流は、ボロメータ12によって測定される温度変化で表したものであり、ボロメータと関連する読み取り回路によって処理される数値となる。
【0008】
回路18は、ボロメータ電流のベースクリップを可能にする。これは、ボロメータ12によって供給される電流が温度変動量を表す信号に小さな変動がある、高いコモンモードを有するからである。従って、ベースクリップ回路18は、有用な部分だけを維持するために、ボロメータ電流のコモンモードを除去するのに使用される。スイッチ16を閉じることによって、注入トランジスタ14のドレインは、バス24及び回路18に電気的に接続される。回路18によって出力されたベースクリップ電流Iebは、ボロメータ12によって出力された電流に加算され、そして、ボロメータ12によって供給される電流のコモンモードを除去し(このコモンモードの除去はベースクリップ動作(base clipping operation)に相当する)、従って、コモンベースで、処理回路26に出力され、ボロメータ12によって行われる温度変化の測定に唯一対応するベースクリップ電流を得ることができるようになる。
【0009】
次に、処理回路26は、回路26の積分サブ回路を介して、ベースクリップ電流の積分を行う。次に、この積分の結果は、ボロメータによって供給される情報を含む電圧の形で提供される。次に、この電圧はバスに送られ、画素のマトリックス中のセンサ(ボロメータ)全てと関係する電圧全てを順次回復する。次に、「画素値(pixel values)」のこのシーケンスは、撮像素子の画素マトリックスによって取得される画像を再構成して表示するために、ビデオ増幅器に送られる。
【0010】
しかしながら、前述の画素10の構造は、満足する性能、特にSN比(signal to noise ratio)に関する性能が得られない。これは、撮像素子によって取得された信号(赤外線)が、ボロメータ自身及び読み取り回路のために必然的な劣化(ノイズ)を受けるからであり、最後に得られる信号に関し、SN比の低下をもたらす。ボロメータが低い平均抵抗を有するとき、この障害が大きくなる。この場合、読み取り電子機器によって起こる劣化は、ボロメータ自身によって起こる劣化よりも大きくなる。従って、この場合、電子機器の読み取り回路は、画素の性能を制限する。
【0011】
実際に、ボロメータの平均抵抗の劣化により、以下の注入トランジスタ14の注入効率の低下が起きる。
【数1】

ここで、gmは注入トランジスタ14の相互コンダクタンスであり、Rboloはボロメータ12の抵抗である。
【0012】
この低下は、ボロメータ12によって提供される測定電流の、注入トランジスタ14による伝達不良をもたらす。
【0013】
さらに、Rboloが減少する場合、次いで、ボロメータInoise_boloにより起こる電流ノイズもまた減少する。
【0014】
しかしながら、Inoise_bolo2 = I1/f2 + Ithermal2である。Rboloが減少するとき、1/fノイズは熱ノイズが増加するよりもさらに減少する。従って、ボロメータ12はノイズが少なくなる。
【0015】
さらに、iboloが増加する場合、次いで、注入トランジスタ14によって起きる電流ノイズが増加する。トランジスタのノイズは、2つの要素、熱ノイズ(ホワイト・ノイズ)及び1/fノイズからなる。次の数量、1/Rbolo,Ids,W/L及びW.Lにより表現される。ここで、Idsはトランジスタのドレイン−ソース電流であり、Wはトランジスタの幅であり、Lはトランジスタのゲート長である。
【0016】
従って、注入トランジスタ14はノイズを大きくする。
【0017】
結局、読み取り回路のノイズは、ボロメータのノイズに対して優位になる。その結果として、画素のSN比は減少し、撮像素子の解像度があまり良好ではなく、取り込まれた画像の画質が低下する。
【0018】
従って、これを解決するために、ボロメータの読み取り回路の電子機器の性能を向上することが要求される。従って、画素のsn比を改良するために読み取り回路によりもたらされるノイズを低減することを主な目的とする。
【0019】
MOSトランジスタのノイズを低減するために提案された解決策は本質的に、SOI技術の使用及び/又はトランジスタのサイズに基づく作用から構成される。これは、トランジスタのサイズを大きくすることによって、ノイズが小さくなるからである。従って、前記性質により、トランジスタの幅W及びゲート長Lを大きくする。
【0020】
しかしながら、前記要素の寸法の作用は、扱い難いこと、特に撮像分野において扱い難いことが分かっている。これは、撮像素子が画素のマトリックスから構成されている、すなわち、画素に配置された要素全てが画素のサイズによって制約される寸法を有するためである。しかし、数個の画素に共通の、いくつかの要素(図1の実施例における回路18及び回路26)は、ベースで及び/又はカラム(column)及び/又は行(row)の先端で、すなわち、もはやサイズを制限しない画素の外部に配置されることもできる。しかしながら、この点は、ノイズを低減することが要求され、ボロメータ近くに配置される要素には適用しない。これらの要素は画素の中に置かれ、従って、寸法の取り扱いが制限される。
【0021】
扱い難いけれども、ある程度これらのトランジスタの寸法を大きくして、ノイズを低減することができる。しかしながら、要素のサイズが1つの画素のサイズを超えるとき、2つの隣接する画素の間のコンポーネントの共有を実行することによって、画素の全体的構造を修正することが必要になる。しかしながら、画素間の要素のそのような共有は、撮像素子の使用の制約を伴う。例えば、いくつかの行では同時取得が行われる、画素マトリックスをスキャンする方法であり、かつ、それ故に各画素がマトリックスの他の画素と共有しない、画素自身の読み取り電子機器を有することを要求する、「巻き上げシャッター(rolling shutter)」モードを、もはや使用することができない。
【発明の概要】
【0022】
本発明の目的は、少なくとも1つの抵抗式熱検出器、例えばボロメータ等にバイアスをかけて読み取り、撮像デバイスの新規な画素構造を形成し、画素の電子要素、特にトランジスタのサイズを大きくすることなくとらえられた信号のSN比を向上させる、新規な電子回路を提供することである。
【0023】
本目的のために、少なくとも1つの抵抗式熱検出器(例えば、ボロメータ)にバイアスをかけて読み取るための電子回路であって、抵抗式熱検出器の電気抵抗に変動があると、抵抗式熱検出器に実質的に一定値のバイアス電流を流すことによって抵抗式熱検出器を分極させることができるバイアス手段と、抵抗式熱検出器の端子で電圧を電流に変換することができる変換手段とを備える電子回路を提供する。
【0024】
具体的には、少なくとも1つの抵抗式熱検出器にバイアスをかけて読み取るための電子回路であって、
前記抵抗式熱検出器の電気抵抗に変動があると、前記抵抗式熱検出器に実質的に一定値のバイアス電流を流すことによって前記抵抗式熱検出器にバイアスをかけることができるバイアス手段と、
前記抵抗式熱検出器の端子で電圧を電流に変換することができ、前記抵抗式熱検出器の端子の一つにゲートが電気的に接続させる少なくとも1つのMOS型トランジスタ(第2のトランジスタと呼ぶ)を備える変換手段と、
前記変換手段のMOS型トランジスタのソースに電気的に接続されるベースクリップ電圧生成手段とを備える電子回路である。
【0025】
このようなバイアス印加読み取り電子回路は、任意のタイプの抵抗式熱検出器、例えば、ボロメータ、マイクロボロメータ、又は温度により変化可能な他の抵抗器を使用し得る。
【0026】
この新規な電子回路は、検出器で測定された温度変動を検出器の端子で電圧の変動に変換することができるように、直流によって検出器にバイアスをかけることを行う。次に、これらの電圧変動は、例えば、「共通ソース(common source)」として接続されたMOSトランジスタの相互コンダクタンスを使用する変換手段によって、電流に変換される。従って、従来技術の読み取り電子回路において見られるように、電流は測定される温度変動の画像である数値を維持する。しかしながら、本発明において、この電流は2段階の変換工程、すなわち、抵抗の変動が電圧変動に変換され、次いで、電流変動に変換される変換工程で得られる。
【0027】
このバイアス印加読み取り電子回路は、検出器のバイアス手段の制約や測定手段の制約と切り離すことができるように、検出器の測定と完全に独立な検出器のバイアス電流を使用する。従って、このバイアス印加読み取り電子回路は、測定手段にとって従来技術の回路の電流よりも少ないノイズで非常に低い電流を測定手段において使用しながら、SN比の観点から検出器が最適に機能するために必要な強度のバイアス電流を検出器に供給することができるようになる。
【0028】
さらに、このバイアス印加読み取り電子回路は、読み取られる値のコモンモードの、新規なタイプのベースクリップに適用される。測定電流の平均値は、もはや検出器によって与えられないが、単に測定手段によって与えられる。従って、電流ベースクリップは、例えば、測定手段のMOSトランジスタの端子の一つの電圧を単に制御することによって部分的に行われる。従って、カラム先端に配置された従来技術のベースクリップ構造(図1に示された回路18)に頼る必要はない。
【0029】
この新規なバイアス印加読み取り電子回路の構造は、抵抗式熱検出器の情報を読み取り、信号のベースクリップを実行することができるようになり、そして、画素の構造全体を複雑にすることなく、電子要素のリサイズを要求することなく、そして、画素のグローバルマトリックス構造の修正を要求することなく、検出器の読み取り回路のノイズを低減するという利点を有する。
【0030】
この新規なバイアス印加読み取り電子回路はまた、検出器の電流、又はボロメータの電流の測定を損なうことなく、検出器の最適な機能を提供する特性(検出器を通過する電流、及び検出器の端子の電圧)を維持し、撮像素子のグローバルマトリックス構造に疑問を投げかけることなく、画素の電子素子ノイズを低減できるようになる。
【0031】
従って、従来技術の回路で検出器のノイズに関して顕著であった電子素子のノイズが、相対的に低減される。測定されるSN比は、改良され、得られた画像の質及び解像度を向上させる。
【0032】
この回路はまた、従来技術の回路と比較して非線形性を低減する。
【0033】
従来技術の回路と比較すると、新規なバイアス印加読み取り電子回路は、追加される装置を備えない。例えば、バイアス手段と読み取り手段とを形成することができるMOSトランジスタの数は、従来技術のバイアス印加読み取り回路の場合と同じである。
【0034】
さらに、このバイアス印加読み取り電子回路の構造は、画素間の電子要素を共有する必要がない。従って、このような電子回路を備える画素素子は、画素間の電子要素を共有する場合に実行することができない、「ロール・シャッター(rolling shutter)」モードに従った画素のマトリックスをスキャンすることができる。
【0035】
バイアス手段は、ソース又はドレインが抵抗式熱検出器の端子の一つに電気的に接続される、MOS型の第1のトランジスタを少なくとも1つ備えてもよい。
【0036】
変換手段は、ゲートが抵抗式熱検出器の端子の少なくとも一つに電気的に接続され得る、MOS型の第2のトランジスタを少なくとも1つ備えてもよい。従って、検出器の端子で電圧を、第2のMOS型トランジスタの相互インダクタンスを介して、測定電流に変換することができる。さらに、回路の測定部分にMOSトランジスタを使用することにより、この部分のフローティング電圧(飽和状態でのMOSトランジスタのドレイン電圧)から得られ、電圧の観点から互いに画素を分離し、従って、マトリックスの他の画素を読み取る間、画素に支障をきたすのを避けるようになる。従って、高出力インピーダンスを維持する画素の利点は、増幅器の固有のノイズの除去を強化することによって、振幅の寄与と同様、画素のノイズが低減されるので、維持される。従って、全SN比は向上する。
【0037】
本発明の回路はまた、得られる読み取り電流に関して、バイアス電流と独立にできるようにする。そして、低い測定電流を有し、従って、回路のSN比を向上させることができるようにする。
【0038】
第1のMOS型トランジスタはNMOSトランジスタで、かつ、第2のMOS型トランジスタはPMOSトランジスタであってもよい。変形例では、第1のMOS型トランジスタはPMOSトランジスタで、かつ、第2のMOS型トランジスタはNMOSトランジスタであってもよい。
【0039】
他の変形例では、第1及び第2のMOS型トランジスタは、PMOS又はNMOSの、同じタイプのトランジスタであってもよい。
【0040】
電子回路はまた、第2のMOS型トランジスタのソースに電気的に接続されるベースクリップ電圧生成手段を備えてもよい。
【0041】
電子回路はまた、第2のMOS型トランジスタに電気的に接続し、第2のMOS型トランジスタと変換手段によって出力される電流が送られる出力端子との間の電流を規定し遮断することができる少なくとも1つのスイッチを備えてもよい。
【0042】
本発明はまた、各画素が少なくとも1つの抵抗式熱検出器を有し、上述の少なくとも1つの抵抗式熱検出器のための、複数のバイアス印加読み取り電子回路をも有する、画素のマトリックスを備える撮像素子に関する。
【0043】
各バイアス印加読み取り電子回路は、前記バイアス印加読み取り回路によってバイアスがかけられ読み取られる抵抗式熱検出器を備える一つの画素に関連づけられてもよい。バイアス印加読み取り回路のバイアス手段及び変換手段を、前記画素に配置することができる。
【0044】
変形例では、各バイアス印加読み取り電子回路は、バイアス印加読み取り回路によってバイアスがかけられて読み取られる抵抗式熱検出器をそれぞれが備えるいくつかの画素に関連付けられ、画素の一つの抵抗式熱検出器の端子で電圧を電流に変換することができ、前記画素の一つに配置可能ないくつかの変換手段を備えることができてもよい。そして、各バイアス印加読み取り回路のバイアス手段が、前記いくつかの画素に共通し、前記画素の抵抗式熱検出器の電気抵抗に変動があると、前記画素の抵抗式熱検出器に実質的に一定値のバイアス電流を流すことによって前記画素の抵抗式熱検出器にバイアスをかけることができてもよい。
【0045】
この変形例では、各バイアス印加読み取り電子回路のバイアス手段は前記画素の外部に配置されてもよい。
【0046】
さらに、前記画素の各々はまた、前記画素の抵抗式熱検出器と前記画素のバイアス手段との間で、実質的に一定値のバイアス電流の流れを規定し遮断することができる、少なくとも1つのスイッチを備えてもよい。
【0047】
各バイアス印加読み取り電子回路のバイアス手段はまた、前記バイアス電流の値を変更することができる少なくとも1つの熱式抵抗式熱検出器を備えてもよい。
【0048】
抵抗式熱検出器は赤外線を測定できてもよい。
【0049】
抵抗式熱検出器はボロメータであってもよい。
【0050】
最後に、本発明はまた、少なくとも1つの抵抗式熱検出器によって温度を測定する方法であって、
抵抗式熱検出器の電気抵抗に変動があると、抵抗式熱検出器に実質的に一定値のバイアス電流を流すことによって抵抗式熱検出器にバイアスをかける工程と、
測定される温度にさらされる抵抗式熱検出器の端子で電圧を読み取る工程と、
抵抗式熱検出器の端子で読み取られた電圧を、測定温度に対応する電流に変換する工程とを少なくとも備える方法に関する。
【0051】
変換する工程は、ゲートが抵抗式熱検出器の端子の一つに電気的に接続されたMOS型トランジスタによって行われてもよい。ベースクリップ電圧がMOS型トランジスタのソースに印加されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】従来技術のボロメータを有する赤外線撮像素子のマトリックスの画素と、関連する読み取り回路との構造を示す図。
【図2】本発明の第1の実施形態の、撮像素子の画素の抵抗式熱検出器用バイアス印加読み取り電子回路を示す図。
【図3】本発明の抵抗式熱検出器用バイアス印加読み取り電子回路によって、抵抗式熱検出器の端子で、電圧変動を電流の変動に変換することを図示した図。
【図4】本発明の抵抗式熱検出器用バイアス印加読み取り電子回路を備える画素内で行われる様々な変換動作を図示した図。
【図5】本発明の第1の実施形態の変形例の撮像素子の画素の抵抗式熱検出器のバイアス印加読み取り電子回路を示す図。
【図6】本発明の第2の実施形態の撮像素子の画素の抵抗式熱検出器のバイアス印加読み取り電子回路を示す図。
【図7】本発明の第2の実施形態の異なる変形例の撮像素子の画素の抵抗式熱検出器のバイアス印加読み取り電子回路を示す図。
【図8】本発明の第2の実施形態の異なる変形例の撮像素子の画素の抵抗式熱検出器のバイアス印加読み取り電子回路を示す図。
【図9】本発明の第2の実施形態の異なる変形例の撮像素子の画素の抵抗式熱検出器のバイアス印加読み取り電子回路を示す図。
【図10】本発明の、画素のマトリックスと、抵抗式熱検出器のバイアス印加読み取り電子回路とを備える撮像素子を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0053】
本発明は、添付図面を参照して、単に指示的、かつ、非制限的に与えられた例示的実施形態の記載を読むことによって、より理解される。
【0054】
添付図面を通じて理解を容易にするために、以下に記載される異なる図面の同一、類似又は同等な部分は、同じ参照符号が付けられる。
【0055】
図面に示される異なる部分は、図面をより読み易くするために、必ずしも均等なスケールにより示されるものではない。
【0056】
異なる可能性は(変形及び実施形態)、互いに排他するものではないとして理解されなければならず、互いに組合せることもできる。
【0057】
明細書に記載された異なる例示的な実施形態は、ボロメータ型の抵抗式熱検出器を備える。しかしながら、これらの実施形態はまた、ボロメータ以外の、例えば、温度のより変化する抵抗等の、いかなる形式の抵抗式熱検出器にも適用できる。
【0058】
まず第1に、図2を参照すると、図2は、第1の実施形態の、赤外線撮像素子の画素101のボロメータ102にバイアスをかけ、読み取るための電子回路100を示す。
【0059】
明細書において、電子回路100の要素はすべて、電子回路100がバイアスをかけられ、読み取ることを目的とするボロメータ102を備える画素101内に、作られる。ボロメータ102は、電子回路100の一部である、電圧Vdtが印加される第1の端子と、PMOS型の第1のMOSトランジスタ104のドレインに電気的に接続する第2の端子とを備える。供給電圧Vddは第1のMOSトランジスタ104のソースに印加される。
【0060】
電子回路100はまた、第1のトランジスタ104、すなわち、NMOSトランジスタと反対のタイプの第2のMOSトランジスタ106を備える。電圧Vebは、第2のMOSトランジスタ106のソースに印加される。第2のMOSトランジスタ106のゲートは、第1のMOSトランジスタ104のドレインに電気的に接続される。最終的に、第2のMOSトランジスタ106のドレインはスイッチ108によってバス110に電気的に接続される。
【0061】
赤外線撮像素子のマトリックスは、図示しない、画素101と類似の他の画素、すなわち、ボロメータ102と類似のボロメータと、電子回路100と類似のバイアス印加読み取り電子回路(electronic biasing and reading circuit)とを有する画素を備える。画素101と同じカラムに配置された画素はまた、このカラムの画素によって出力される測定信号すべてがバス110によって処理回路112に出力されるように、バス110に電気的に接続される。
【0062】
第1のMOSトランジスタ104は、ボロメータ102のバイアス電流のための手段を形成し、そして、ボロメータ102を通過する実質的に一定の値の平均バイアス電流Ioを有する。その状況での温度変動はボロメータ102の抵抗Roの変動と、従って、ボロメータ102の端子で電圧Voの変動とをもたらす。
【0063】
ボロメータ102と第1のmosトランジスタ104のドレインとの間の交点での電位に対応する電圧Vbolo(Vbolo - Vo + Vdtとともに)が、第2のMOSトランジスタ106のゲートで読み取られる。そして、この電圧Vboloは、第2のMOSトランジスタ106の相互コンダクタンスによって電流Imeasureに変換される。測定電流が読み取られると、すなわち、測定電流が画素101によって測定された信号を読み取ろうとすると、スイッチ108は閉鎖位置に切り替えられることが意図される。
【0064】
第2のMOSトランジスタ106のソースに印加される電圧Vebは、第2のMOSトランジスタ106が飽和限界になるように、制御され、決定される。これは、第2のMOSトランジスタ106の飽和領域(saturation regime)により、第2のMOSトランジスタ106のドレインをフローティング電圧に維持しながら、第2のMOSトランジスタ106が電流の変動に対応できるからである。(センサの測定が行われ、次いでスイッチ108によって終了すると、このMOSトランジスタのドレインは、画素101によって出力される測定電流を処理する回路112に接続され、そして、例えば、電流処理回路112の一部を形成する積分器として接続される増幅器の負側入力端子に接続される。この増幅器は回路の負側入力端子で電圧を決定する。)しかしながら、非常に小さなコモンモードを得るために可能な限り低い電流だけを供給し、次いで、測定されたシーン温度(scene temperature)の変動に対応する小さな電流の変動だけを維持しながら、第2のMOSトランジスタ106に対して、飽和状態であることが要求される。これが、第2のMOSトランジスタ106を飽和限界になるように、電圧Vebが制御され、かつ決定される理由である。
【0065】
従って、ボロメータ102によって測定された温度変化を表し、かつ、第2のMOSトランジスタ106の電流Idsに対応する測定電流Imeasureは、以下の通りである。
【数2】

ここで、Coxは第2のMOSトランジスタ106表面のユニットごとのゲート酸化物の静電容量;Wは 第2のMOSトランジスタ106のチャネル幅;μは第2のMOSトランジスタ106のキャリアの移動度;Lは第2のMOSトランジスタ106のチャネル長;Vgsは第2のMOSトランジスタ106のゲート−ソース電圧;Vtは第2のMOSトランジスタ106の閾値電圧である。
【0066】
しかしながら、Vgs = Vbolo - Vebである。
【0067】
さらに、Vbolo = Io x Roである。
【0068】
従って、以下のように与えられる。
【数3】

【0069】
そして、ボロメータ102がシーン温度の変動にさらされると、これにより電気抵抗Roの変動が起き、そして、測定電流Imeasureの変動をもたらす。
【0070】
図3に示される曲線50は、Vboloの値の関数としての電流Imeasureの値の関係に対応し、すなわち、数式(2)を図示したものである。曲線52は、オームの法則によって得られる、Vboloの値の関数としてのバイアス電流Io = Iboloの値の関係をあらわしたものである。そして、図3に示すように、第2のMOSトランジスタ106の動作点に対して、ボロメータ102による温度変動の測定により、動作点のまわりで電圧Vboloの変動54がもたらされる。次いで、この変動54は、第2のMOSトランジスタ106によって電流Imeasureの変動56に変換される。電圧Vboloと測定電流Imeasureとの間の関係は、線形ではなく、2次式(数式(2))である。
【0071】
また、この関係により、第2のMOSトランジスタ106の相互インダクタンス
【数4】

を介して、VboloからImeasureへの変換によって説明することができる。この場合、数式(2)はまた、以下のように記載することができる。
【数5】

【0072】
前述した従来技術の画素10に関して、測定電流の変化とシーン温度との間の関係は逆になる。これは、画素101において、シーン温度が増加すると、ボロメータの抵抗Roが減少し、次いで、電圧Vboloの低下を起こし(第1のMOSトランジスタ104によってボロメータ102のバイアス電流が一定電流Ioをもたらす)、それ自身が第2のMOSトランジスタ106を介して電流Imeasureの変動を含み、そして、シーン温度が減少すると逆になるからである。従って、意図的に逆に挿入された場合を除き、画素101と類似する画素のマトリックスを備える赤外線撮像素子によって取得される画像において、クールゾーン(cool zone)は薄灰色レベル(light grey level)で表され、ホットゾーン(hot zone)は濃灰色レベル(dark grey level)で表される。
【0073】
さらに、画素10の前記構造に反して、ボロメータ102にバイアスをかけて読み取るための電子回路100の構造は、ボロメータ102の熱さ(heating)θとシーン温度Tscとの間の関係の非線形性を弱める。
【0074】
図4は、ボロメータ102によってとらえられる赤外線から、電子回路100の出力で得られる測定電流Imeasureの範囲まで、画素101内で行われる様々な変換動作を図示する。
【0075】
測定されたシーン温度Tscの変動は、曲線60によって表される。シーンが黒体(black body)に吸収されてもよいことを考えれば、この温度変化60に対応する熱線62は、黒体に対する熱さδθと温度Tscとの間の関係を表し、Tscのべき乗である曲線64によって得られる。図4において、熱さδθの値と温度Tscとの間の関係64は、熱線62の信号に見られる凹状の湾曲を、温度変動信号60に与えるということが分かる。
【0076】
受け入れられる赤外線フラックス(infrared flux)の関数として、ボロメータ102の抵抗Roの値を考慮すると、曲線66は、ボロメータ102の抵抗Roとボロメータ102によって受け入れられる熱さδθとの間の関係を示す。この曲線66は、熱さの逆数の指数関数に比例する。ボロメータ102は、熱吸収体として、すなわち、負係数の熱抵抗として、熱的に機能する。赤外線フラックス62に対応して得られたRoの変動は、曲線68によって表される。図4において、ボロメータ102の抵抗Roと、ボロメータ102によって受け入れられる熱さδθとの間の関係66は、凸状の湾曲を、赤外線フラックス62の変動信号に与え、熱さδθの値と温度Tscとの間の関係64によって与えられる凹状の湾曲を弱めるということが分かる。
【0077】
Roの変動は直接、電圧Vboloの変動と、従って、また第2のMOSトランジスタ106の端子で電圧Vgsの変動とに比例する。そして、曲線68はまた、一定の倍率内で、第2のMOSトランジスタ106のゲートとソースの間の電圧Vgsの変動を表す。
【0078】
変化において、2つのMOSトランジスタは、同じタイプでもよい。そして、関係64によって与えられる凹状の湾曲が強調される。
【0079】
曲線70は、ボロメータ102の抵抗Roと、画素101によって出力される電流Imeasureの値との間の関係を表す。この曲線70は、係数Vgs2に比例する。ここで、Vgsは、第2のMOSトランジスタ106のゲート−ソース電圧に対応する。Roの変動68に対応して得られるImeasureの変動は、曲線72によって表される。図4において、ボロメータ102の抵抗Roと、電流Imeasureとの間の関係70は、凸状の湾曲を電圧Vgsに対する変動信号に与えるということが分かる。従って、得られたImeasureに対する変動信号の湾曲72は、測定されたシーン温度に対する初期信号60の湾曲に近づく。
【0080】
電子回路100の構造は、第1のMOSトランジスタ104のおかげで、ボロメータ102に必要な平均電流Ioを供給することを可能にする。さらに、ボロメータ102に電圧を電流に転換するために用いられる第2のMOSトランジスタは、ノイズを弱めるには十分に弱く、ボロメータ102によって供給される有用な情報を表す変動を含むには十分に強い、第2のMOSトランジスタを通過するドレイン−ソース電流Idsを有する。
【0081】
第2のMOSトランジスタ106のソースに印加される電圧Vebは測定電流Imeasureが無駄なコモンモードを有さないように選択され、従って、有益な電流の変動のみがバス110上に送られることを考慮すると、この電圧Vebは、ボロメータ102の電圧ベースクリップを行う。従って、このような電子回路100は、ノイズを低減し、従来技術の画素10中のカラム先端に配置されたベースクリップ構造18を置き換えることができるようになる。
【0082】
図5を参照すると、図5は、第1の実施形態の変形例の赤外線撮像素子の画素201のボロメータ102にバイアスをかけて読み取るための電子回路200を示す。
【0083】
上述した電子回路100と比較すると、ボロメータ102のバイアス電流は、NMOS型の第1のMOSトランジスタ204によって供給される。さらに、第1のMOSトランジスタ104が、供給電圧Vddに電気的に接続されたソースと、ボロメータ102の端子に電気的に接続されたドレインとを有する(ボロメータ102の他の端子は電位Vdtに電気的に接続する)電子回路100とは異なり、第1のMOSトランジスタ204は、アースに電気的に接続されるソースと、ボロメータ102の端子に電気的に接続されるドレインとを有する。ボロメータ102の他の端子は、電位Vdtに電気的に接続される。電位Vdt自身は供給電圧Vddに接続する
【0084】
電子回路200はまた、ボロメータ102の電圧を電流に変換するのに役立つPMOS型の第2のMOSトランジスタ206を備える。電子回路100と同様、電圧Vebは第2のMOSトランジスタ206のソースに印加される。この電圧Vebはまた、供給電圧Vddに接続される。電子回路100と同様、第2のMOSトランジスタ206のドレインは、測定電流Imeasureをバス110に出力できるように、スイッチ108に電気的に接続される。
【0085】
バイアス印加読み取り電子回路200の動作原理は、電子回路100の動作原理と同じである。
【0086】
電子回路100及び200の変形で、バイアスをかけて変換するMOSトランジスタが、NMOS又はPMOSで、同じタイプであっても可能である。PMOS型トランジスタに対しては、このような電子回路は、上述の回路100に対応するであろうが、回路のNMOSトランジスタ106がPMOSトランジスタ206によって置き換えられる。第2のPMOSトランジスタ206のソースに印加される電圧Vebはまた、図5に示されるように、供給電圧Vddに接続される。NMOS型トランジスタに対しては、このような電子回路は、上述の電子回路200に対応するであろうが、回路のPMOSトランジスタ206が、図2のようにソースに印加される電圧Vebを有するNMOSトランジスタ106によって置換される。
【0087】
第2の実施形態の赤外線撮像素子の画素301のボロメータ102にバイアスをかけて測定するための他の電子回路300を、図6に記載する。
【0088】
上述のバイアス印加読み取り電子回路100及び200と異なり、電子回路300のエレメントが、画素301内にすべて配置されるものではない。電子回路300において、これは、ボロメータ102のバイアス電流が、画素のマトリックスのカラム先端に配置された、PMOS型の第1のMOSトランジスタ304によって供給されるからである。電子回路100同様に、第1のMOSトランジスタ304のソースは、供給電圧Vddに電気的に接続する。第1のMOSトランジスタ304は、ここでは、画素301と同じカラムに配置された画素のボロメータすべてにバイアス電流をかける。従って、第1のMOSトランジスタ304のドレインは、バス307に電気的に接続する。また、スイッチによって、画素301と同じカラムに配置された画素のボロメータ各々をバス307に電気的に接続する。図6の例では、ボロメータ102はスイッチ305によってバス307に電気的に接続される。ボロメータ102はまた、第2の端子で、電位Vdtに電気的に接続され、画素301と同じカラムに配置された画素すべてに共通する。
【0089】
電子回路100と同様、電子回路300は、NMOS型の第2のMOSトランジスタ106を備える。カラムの画素すべてに対して共通の電圧Vebはまた、第2のMOSトランジスタ106のソースに印加される。第2のMOSトランジスタのゲートは、スイッチ305とボロメータ102との間の電気的接続に電気的に接続される。最終的に、第2のMOSトランジスタ106のドレインは、スイッチ108によってバス110に電気的に接続される。電子回路100と同じような方法で、電子回路300の第2のMOSトランジスタ106は、電圧Vboloを読み取り、相互コンダクタンスを介して電圧Vboloを電流Imeasureに変換できるようになる。測定電流Imeasureが読み取られると、スイッチ108は閉鎖位置に切り替えられる。
【0090】
間違いのない時点で間違いのないボロメータにバイアスをかけるために、スイッチ305が画素に加えられることを除き、電子回路300の機能(ボロメータ102の電流にバイアスをかけることと、ボロメータ102の電圧を電流に変換すること)は、電子回路100の機能と同じである。
【0091】
電子回路100及び200と比較すると、第2の実施形態の電子回路300は、画素内に1つのトランジスタ(第2のMOSトランジスタ106)のみを要求する構造を有する点で有利である。
【0092】
図7を参照すると、図7は、第2の実施形態の変形例の赤外線撮像素子の画素401のボロメータ102にバイアスをかけて読み取るための電子回路400を示す。
【0093】
上述の電子回路300と比較すると、ボロメータ102のバイアス電流は、第1のMOSトランジスタ304と同様、画素カラム先端に配置されるNMOS型の第1のMOSトランジスタ404によって供給される。さらに、第1のMOSトランジスタ304が、供給電圧Vddに電気的に接続されるソースと、スイッチ305及びバス307によってボロメータ102(ボロメータ102の他の端子は電位Vdtに接続される)に電気的に接続されるドレインとを有する電子回路300と異なり、第1のMOSトランジスタ404はアースに電気的に接続されるソースと、スイッチ305及びバス307によってボロメータ102に電気的に接続するドレインとを有する。ボロメータの他の端子は、電位Vdtに電気的に接続され、電位Vdt自身は供給電圧Vddに電気的に接続される。
【0094】
電子回路200と同様、電子回路400は、ボロメータ102の電圧を電流に変換するのに役立つPMOS型の第2のMOSトランジスタ206を備える。電子回路200と同様、電圧Vebは第2のMOSトランジスタ206のソースに印加される。この電圧Vebはまた、供給電圧Vddに接続される。最終的に、電子回路200と同様、第2のMOSトランジスタ206のドレインは、測定電流Imeasureをバス110に出力できるように、スイッチ108に電気的に接続される。
【0095】
バイアス印加読み取り電子回路400の動作原理は、電子回路300の動作原理と同じである。
【0096】
図8に示した他の実施形態の変形例では、電子回路300が第1のMOSトランジスタ304のソースと供給電圧Vddとの間に置かれた熱式ボロメータ(thermalised bolometer)310を備えられるように、ボロメータ102にバイアスをかけて読み取るための電子回路300を実装できる。
【0097】
これは、上述の電子回路100〜400では、ボロメータ102にバイアスをかける手段が単独で電流源を備え、電圧/電流変換を行う第2のMOSトランジスタ106又は206の平均ゲート電圧が常に一定であるということになるからである。ベースクリップ電圧Vebはまた一定であることを考慮すると、一定の平均電圧Vgsと、その結果、一定の平均測定電流Imeasureとになる。このことは、電圧ベースクリップが決定されて、動作温度を考慮しないということを意味する。温度が上昇すると、ボロメータ102が加熱されて、ボロメータ102の平均抵抗値が減少し、そして、ボロメータ102を通過するコモンモードの電流を増加する。
【0098】
従って、この熱現象に合わせるために、図8に示されるように、熱式ボロメータ310を使用することができる。このボロメータ310は電子回路300の電流バイアス手段につながれる。従って、ボロメータ102の平均バイアス電流が、その温度上昇に追従する。結果として、第2の転換MOSトランジスタ106の電圧Vgsと、従って出力される平均測定電流Imeasureとはまた、この熱さに従う。
【0099】
図9に示されるように、このような熱式ボロメータ310はまた、電子回路400に加えられることも可能であり、そして、第1のMOSトランジスタ404とアースとの間に、電子回路400の電流バイアス手段につながれる。
【0100】
PMOSトランジスタは一般的にNMOSトランジスタよりもノイズが少なく、測定された電圧/電流変換を行う第2のPMOSトランジスタを備える、上述のボロメータにバイアスをかけて読み取る電子回路200及び400を、赤外線撮像素子に、実装するのに有利である。
【0101】
図10に、撮像素子1000、例えば、赤外線カメラが、部分的に示される。この撮像素子1000は、画素1004のマトリックス1002を備える。画素1004の各々は、上述の画素101、201、301、401の一つに対応し得る。各画素1004は、ボロメータと、例えば上述の回路100と類似のバイアス印加読み取り電子回路とを備える。同じカラムの画素におけるバイアス印加読み取り電子回路は、測定信号を処理し、画素1004によって取得される画像を回復することができるようにするために、バス1006によって、回路1008に電気的に接続される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの抵抗式熱検出器にバイアスをかけて読み取るための電子回路であって、
前記抵抗式熱検出器の電気抵抗に変動があると、前記抵抗式熱検出器に一定値のバイアス電流を流すことによって前記抵抗式熱検出器にバイアスをかけることができるバイアス手段と、
前記抵抗式熱検出器の端子で電圧を電流に変換することができ、前記抵抗式熱検出器の端子の一つにゲートが電気的に接続させる少なくとも1つのMOS型トランジスタを備える変換手段と、
前記変換手段のMOS型トランジスタのソースに電気的に接続されるベースクリップ電圧生成手段とを備える電子回路。
【請求項2】
請求項1記載の電子回路であって、
前記バイアス手段は、ソース又はドレインが前記抵抗式熱検出器の端子の一つに電気的に接続される少なくとも1つの第1のMOS型トランジスタを備え、
前記変換手段の前記MOS型トランジスタが、第2のMOS型トランジスタであることを特徴とする電子回路。
【請求項3】
請求項2記載の電子回路であって、
前記第1のMOS型トランジスタがNMOSトランジスタで、前記第2のMOS型トランジスタがPMOSトランジスタであり、又は、前記第1のMOS型トランジスタがPMOSトランジスタで、前記第2のMOS型トランジスタがNMOSトランジスタであることを特徴とする電子回路。
【請求項4】
請求項2記載の電子回路であって、
前記第1のMOS型トランジスタ及び前記第2のMOS型トランジスタが、PMOS又はNMOSの、同じタイプのトランジスタであることを特徴とする電子回路。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれか一項に記載の電子回路であって、
前記第2のMOS型トランジスタに電気的に接続され、かつ、前記第2のMOS型トランジスタと、前記変換手段によって出力された電流が送られる出力端子との間で電流の流れを規定し遮断することができる少なくとも1つのスイッチを備えることを特徴とする電子回路。
【請求項6】
少なくとも1つの抵抗式熱検出器を有する画素のマトリックスと、
請求項1〜5のいずれか1項に記載の、少なくとも1つの抵抗式熱検出器にバイアスをかけて読み取るための複数の電子回路とを備える電子撮像素子。
【請求項7】
請求項6記載の電子撮像素子であって、
前記電子回路が、前記電子回路によってバイアスがかけられて読み取られる抵抗式熱検出器と、1つの前記画素に配置された前記電子回路の前記バイアス手段及び前記変換手段とを備える前記画素と関連付けられることを特徴とする電子撮像素子。
【請求項8】
請求項6記載の電子撮像素子であって、
前記電子回路は、前記電子回路によってバイアスがかけられて読み取られる抵抗式熱検出器をそれぞれが備える数個の画素に関連付けられ、各々が前記画素の一つの前記抵抗式熱検出器の端子で電圧を電流に変換することができ、前記数個の画素のうちの1つに配置される数個の変換手段を備え、
前記画素の前記抵抗式熱検出器の電気抵抗に変動があると、前記電子回路の前記バイアス手段が、前記数個の画素に共通であり、前記画素の前記抵抗式熱検出器に一定値のバイアス電流を流すことによって前記画素の前記抵抗式熱検出器にバイアスをかけることができることを特徴とする電子撮像素子。
【請求項9】
請求項8記載の電子撮像素子であって、
前記電子回路の前記バイアス手段が前記画素の外部に配置されることを特徴とする電子撮像素子。
【請求項10】
請求項8又は9記載の電子撮像素子であって、
前記画素の各々はまた、前記画素の前記抵抗式熱検出器と前記画素の前記バイアス手段との間で、一定値のバイアス電流の流れを規定し遮断することができる、少なくとも1つのスイッチを備えることを特徴とする電子撮像素子。
【請求項11】
請求項7〜10のいずれか一項に記載の電子撮像素子であって、
前記電子回路の前記バイアス手段はまた、前記バイアス電流の値を変更することができる少なくとも1つの熱式抵抗式熱検出器を備えることを特徴とする電子撮像素子。
【請求項12】
請求項6〜11のいずれか一項に記載の電子撮像素子であって、
前記抵抗式熱検出器が赤外線を測定できることを特徴とする電子撮像素子。
【請求項13】
請求項6〜12のいずれか一項に記載の電子撮像素子であって、
前記抵抗式熱検出器がボロメータであることを特徴とする電子撮像素子。
【請求項14】
抵抗式熱検出器によって温度を測定する方法であって、
前記抵抗式熱検出器の電気抵抗に変動があると、前記抵抗式熱検出器に一定値のバイアス電流を流すことによって前記抵抗式熱検出器にバイアスをかける工程と、
測定される温度にさらされる前記抵抗式熱検出器の端子で電圧を読み取る工程と、
ベースクリップ電圧がソースに印加され、ゲートが前記抵抗式熱検出器の端子の一つに電気的に接続されたMOS型トランジスタによって前記抵抗式熱検出器の端子で読み取られた電圧を、測定温度に対応する電流に変換する工程とを少なくとも備える方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−118078(P2012−118078A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−260890(P2011−260890)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(510225292)コミサリア ア レネルジー アトミック エ オ ゼネルジー アルテルナティブ (97)
【氏名又は名称原語表記】COMMISSARIAT A L’ENERGIE ATOMIQUE ET AUX ENERGIES ALTERNATIVES
【住所又は居所原語表記】Batiment Le Ponant D,25 rue Leblanc,F−75015 Paris, FRANCE
【Fターム(参考)】