説明

抵抗測定方法、および部品検査プロセス

【課題】シート状や布状や膜状の測定対象物の電気抵抗の測定を正確かつ安定に行なうことができる抵抗測定方法およびその抵抗測定方法が適用された検査部品プロセスを提供する。
【解決手段】第1のステップで、導電板、例えば表面に膜が形成された亜鉛めっき鋼板1a,1bを2枚用意して、これら2枚の亜鉛めっき鋼板1a,1bで伸縮可能な導電性材料10を挟むとともに、2つの亜鉛めっき鋼板1a,1bの間隔を規制するスペーサ11を挟み、導電性材料10の少なくとも片側には、測定対象物、例えば導電性の布を挟みこむ。次の第2のステップで、測定対象物を介在させて導電性材料10を挟んだ状態の2つの亜鉛めっき鋼板1a,1bの間の電気抵抗を測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に膜が形成された測定対象物の電気抵抗を測定する抵抗測定方法およびその抵抗測定方法が適用された部品検査プロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、パーソナルコンピュータの筐体やそのパーソナルコンピュータを収容するラック等の原材料としては、所定の強度が得られるとともに調達がし易く低廉な金属性の板材が用いられることが多い。
【0003】
図1は、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置を収容するラックの外観を示す図である。
【0004】
図1に示すラック3の箱体部30やドア部31に金属性の板材が用いられている。こうしてラック3の箱体部30やドア部31に金属性の板材が用いられると、その金属性の板材がシールド部材としても働いてラック3内部のパーソナルコンピュータから外部への不要輻射が抑制される。
【0005】
このようなラック3には、ドアの支軸部とドアとの間などに隙間が生じることが多く、そのような隙間が生じると、パーソナルコンピュータから不要輻射があったときにその隙間から外部へと輻射が漏れてしまうので、その隙間には、シート状の導電性ゴムや導電性の布等からなる不要輻射防止部材32が挿入され、より良いシールド効果が得られる様な工夫が凝らされている。つまり、このような不要輻射防止部材32もシールド部材として働くこととなる。
【0006】
最近のパーソナルコンピュータにおいては、動作速度を定めるクロックの周波数が高くなって高周波での不要輻射が増える傾向にあるため、パーソナルコンピュータの筐体や図1に示すラックの箱体部30やドア部31に金属性の板材(又は廉価になれば電気伝導性を持つ有機材料の板材の使用も有り得る)を用いる様にしてシールド機能を高めている。
【0007】
ところで、上記した様にパーソナルコンピュータの筐体やラック等にシールド機能を持たせるとなると、筐体やラックを製作するのに必要な原材料となる金属性の板材や導電性の布などのシールド性能の評価をしておく必要がある。
【0008】
金属性の板材のシールド性能を評価するにあたっては、一般的には、JIS−C−2550の規格に法った抵抗測定方法で金属性の板材の電気抵抗を測定し、測定した電気抵抗が小さければ小さいほどより高いシールド性能を持つ板材であると評価している。ただし、パーソナルコンピュータの筐体やラックの製作に用いられる板材としては、上記した様に調達し易い金属性の板材である汎用の亜鉛めっき鋼板等が用いられ、その亜鉛めっき鋼板等には製造メーカごとにそれぞれ異なる表面処理(防錆処理等)が施されており、さらに同じ製造メーカであっても表面処理の状態が異なる場合もあるので、上記評価を行なう際には、その表面処理を含めた電気抵抗を測定して表面処理込みの特性を評価しなければならない。
【0009】
しかし、JIS−C−2550の規格に法った抵抗測定方法で金属性の板材の電気抵抗を測定すると、板材の表面に形成されている膜が鋭利なプローブによって突き破られてしまって中の鋼板の電気抵抗が測定され、表面処理の異なる鋼板の電気抵抗がほぼ同じ値で測定されてしまう。
【0010】
そこで、この問題を解消するために特許文献1では導電性ゴムを用いることで表面の膜を壊さずに電気抵抗を測定する技術が提案されている。この特許文献1で用いられている導電性ゴムは、金属とほぼ同じ特性を示す導電性材料であって、図1に示す様に箱体とドアとの間の隙間を埋めて不要輻射を防止する材料として用いられたり、特許文献2の様に基板上のランドパターンとリードレス部品の端子との接続を容易にするための部材として用いられたりしている。この特許文献1の技術を用いると、各製造メーカが製造した板材それぞれの性能評価を行なうことも、同一の製造メーカが製造した複数の板材それぞれの性能評価を行なうこともできるので、筐体やラックを製造するのに適した板材の選定を的確に行なうことができる。
【特許文献1】特開昭57−154069号公報
【特許文献2】特開昭56−79262号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述した特許文献1の技術を用いると板材の抵抗値を測定することができるが、導電性ゴムや導電性の布などというような変形しやすい材料の抵抗値の測定や評価には適用が困難である。ゴムや布などの場合は、測定に際して形状を安定させることが難しいので安定した測定値を得ること自体が難しく、正確で安定した抵抗値測定が可能な技術が求められている。また、調達された板材には、筐体やラックに組まれる前後で塗料が塗布される場合があり、このような塗料が塗布されて形成される膜などについても、筐体などにおけるシールド特性に影響を与えるので、ゴムや布などと同様に、正確で安定した抵抗値測定が可能な技術が求められている。
【0012】
本発明は上記事情に鑑み、シート状や布状や膜状の測定対象物の電気抵抗の測定を正確かつ安定に行うことができる抵抗測定方法およびその抵抗測定方法が適用された検査部品プロセスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成する本発明の抵抗測定方法は、
2つの導電板で伸縮可能な導電性材料を挟み、それら2つの導電板の少なくとも一方と該導電性材料との間には測定対象物を介在させる第1ステップと、
上記導電性材料を、上記測定対象物が介在して挟んだ状態の2つの導電板の間の電気抵抗を測定する第2ステップとを有することを特徴とする。
【0014】
本発明の抵抗測定方法によれば、上記2つの導電板の両側から圧力を加えて中央の導電性材料を圧縮させ中央の導電性材料を測定対象物に密に接触させた状態にしてから、第2のステップで2つの導電板の間の電気抵抗が測定される。そうすると、測定対象物がシート状や布状や膜状のものであっても、伸縮可能な導電性材料(例えば、導電性ゴム、スポンジに導電性の布を巻いた材料、導電性のバネ等。以下、伸縮可能な導電性材料と呼称する。)が測定対象物を導電板に押し付けた状態で安定し、さらに、プローブと導電板との間の接触抵抗をほぼ0の状態にして測定対象物の抵抗を正確に測定することが可能となる。すなわち、上記本発明の抵抗測定方法を使って測定対象物の電気抵抗を測定すると、測定対象物がシート状や布状や膜状のものであっても、測定対象物の電気抵抗値が正確かつ安定に測定される。
【0015】
ここで、上記本発明の抵抗測定方法を用いることによって測定対象物の電気抵抗を正確に測定することができる様になると、例えば複数の製造メーカそれぞれが製造した測定対象物ごとに電気抵抗を測定したそれぞれの結果を比較することによって製造メーカの評価を行なうことができる。また、同一の製造メーカが製造した多数の測定対象物それぞれの電気抵抗を測定したそれぞれの結果を比較することによって多数の測定対象物それぞれについての評価を行なうこともできる。
【0016】
ここで、上記第1ステップが、上記2つの導電板で上記導電性材料を挟むとともに、それら2つの導電板の間隔を規制するスペーサも挟むステップであるとなお良い。
【0017】
中央に導電性材料を挟んで2つの導電板の両側から圧力が加えられ導電性材料が圧縮されると、圧縮圧の変動によっては導電性材料の抵抗値が多少なりとも変化する恐れがある。そこで上記スペーサによって2つの導電板の間隔が規制されると、導電性材料の圧縮が一定に保たれるので測定精度がより高まる。
【0018】
また、上記本発明の抵抗測定方法においては、
上記2つの導電板で上記導電性材料を、上記第1ステップと同様の状態に、但し上記測定対象物は介在させずに挟む第3ステップと、
上記導電性材料を、上記測定対象物が介在せずに挟んだ状態の2つの導電板の間の電気抵抗を測定する第4ステップとを、上記第1ステップおよび上記第2ステップの前あるいは後に有するとなお良い。
【0019】
このような第3ステップと第4ステップでは、上記第1ステップおよび上記第2ステップで得られる、測定対象物込みの抵抗値に対し、測定対象物が含まれない基準の抵抗値が得られ、これらの抵抗値の差を求めることで、測定対象物単独の抵抗値が正確に求められることとなる。
【0020】
また、上記導電性材料の電気抵抗値が既知であった方が良い。
【0021】
伸縮可能な導電性材料は従来から実績があり、ある程度は一定の電気抵抗値を示すので、測定結果が得られた後にその伸縮可能な導電性材料の電気抵抗値を差し引くことで、測定対象物の電気抵抗が正確に測定される。
【0022】
なお、上記導電板は、亜鉛めっき鋼板、ステンレス鋼板、鋼板、銅板、合金材料、アルミニウム、樹脂のいずれであっても良く、表面に膜が形成されたものであっても良い。
【0023】
また、上記スペーサが、非圧縮状態における上記導電性材料の厚さよりも薄いスペーサであると良く、そのスペーサが絶縁体であった方が良い。
【0024】
そうすると、非圧縮状態における導電性材料の厚さよりも薄い、絶縁体のスペーサによって2つの導電板の間隔が規制され、安定的にある程度圧縮された状態で再現性の良い測定が行なわれる。
【0025】
また、上記目的を達成する本発明の部品検査プロセスは、検査対象物の電気抵抗を測定し測定した結果に基づいてその検査対象物の良否を判定する部品検査プロセスにおいて、
2つの導電板で伸縮可能な導電性材料を挟み、それら2つの導電板の少なくとも一方と導電性材料との間には上記検査対象物を介在させる第1ステップと、
上記導電性材料を、上記検査対象物が介在して挟んだ状態の2つの導電板の間の電気抵抗を測定する第2ステップとを有することを特徴とする。
【0026】
上記本発明の部品検査プロセスには、上記本発明の抵抗測定方法が適用されているので、例えば導電性の布などを上記検査対象物として電気抵抗を測定することで導電性の布によるシールド性能の良し悪しを正確に判別することができる。
【0027】
なお、本発明にいう部品検査プロセスについては、ここではその基本形態のみを示すのにとどめるが、これは単に重複を避けるためであり、本発明にいう部品検査プロセスには、上記の基本形態のみではなく、前述した抵抗測定方法の各形態に対応する各種の形態が含まれる。
【発明の効果】
【0028】
以上説明したように、本発明によれば、シート状や布状や膜状の測定対象物の電気抵抗の測定を正確かつ安定に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0030】
図2は、図1に示すラックの箱体部とドア部との隙間などに挿入される不要輻射防止部材の抵抗を測定する抵抗測定方法を説明する説明図である。図2(a)には、抵抗測定方法の第1のステップが示されており、図2(b)には、抵抗測定方法の第2のステップが示されている。なお不要輻射防止部材としては、上述したように導電性ゴムや導電性の布など種々のものが考えられるが、図2の例の不要輻射防止部材は、ラックに貼り付けるための粘着剤が付いた導電性の布(以下単に導電性布と称する)であるとする。
【0031】
図2には、本発明の抵抗測定方法の第1の実施形態を用いて、各製造メーカで製造された導電性布の電気抵抗値を測定することにより各製造メーカの導電性布それぞれのシールド性能を評価する場合の例が掲げられている。
【0032】
まず、図2を参照して、本発明が応用された抵抗測定方法の第1の実施形態に用いられる構成要素例を説明する。
【0033】
本実施形態の抵抗測定方法で測定を行なうのに用いられる構成要素としては、図2に示す様にA社、B社、…の導電性布2a,2b…が用意されている。また、2枚で対をなす導電板の例として亜鉛めっき鋼板1a,1bが用意され、それら2枚の亜鉛めっき鋼板1a,1bで挟まれる伸縮可能な導電性材料10も用意されている。この伸縮可能な導電性材料10の幅と長さは、導電性布2a,2bの幅と長さよりも小さい。さらに、非圧縮状態における伸縮可能な導電性材料10の厚さよりも薄いスペーサ11が用意されている。このスペーサ11は中空部を備える矩形状の枠であって絶縁体で製作されている。このスペーサ11の両脇に2本の導電性材料10が並べられて配設され、一対の亜鉛めっき鋼板1a,1bのうちの一方の亜鉛めっき鋼板1bの内面(導電性材料10側の面)に、亜鉛めっき鋼板1bと導電性材料10とで挟まれる位置に、A社、B社、…の導電性布2a,2b…のうちのいずれかが粘着剤で貼り付けられる。その後、その伸縮可能な導電性材料10が、一対の亜鉛めっき鋼板1a,1bで挟み込まれ、伸縮可能な導電性材料10がスペーサ11の厚みになるまで圧縮された後電気抵抗の測定が行なわれる。
【0034】
こうして各社の導電性布の電気抵抗が次々に測定され、製造メーカごとの導電性布のシールド性能の評価が行なわれる。
【0035】
ここで抵抗測定方法を説明する。
【0036】
図2(a)にある様に、第1ステップで2つの亜鉛めっき鋼板1a,1bで伸縮可能な導電性材料10を挟むとともに、2枚の亜鉛めっき鋼板1a,1bの間隔を規制するスペーサ11を挟み、それら2枚の亜鉛めっき鋼板1a,1bの一方と導電性材料10との間には、導電性布(例えばA社の導電性布2a)を挟む。伸縮可能な導電性材料10は、図2(a)に示す枠型のスペーサ11の両脇に配置されるが、導電性材料10とスペーサ11との合計の寸法は亜鉛めっき鋼板1a,1bの寸法に収まる寸法寸法であるので、2枚の亜鉛めっき鋼板1a,1bでスペーサ11とともに伸縮可能な導電性材料10を挟むことができる。また、導電性布2aの寸法は伸縮可能な導電性材料10の寸法よりも大きく、導電性材料10の2枚の亜鉛めっき鋼板1a,1bで挟まれた両側のうち、導電性布2aが介在している側では、導電性材料10と亜鉛めっき鋼板1bとは接触していない。
【0037】
そして第2のステップで、図2(b)に示す様に2枚の亜鉛めっき鋼板1a,1bを両方の表面側から加圧して伸縮可能な導電性材料10をスペーサ11と同じ高さになるまで圧縮した後に2つの亜鉛めっき鋼板各々の表面にプローブを当てて電気抵抗を測定する。
【0038】
この抵抗測定方法を使って測定するとスペーサ11で2枚の亜鉛めっき鋼板1a,1bの間隔を一定に保つことで伸縮可能な導電性材料10の圧縮状態を常に同じ状態に保つことができる。また、上述したように2枚の亜鉛めっき鋼板1a,1bは、両方の表面側から加圧されているため、亜鉛めっき鋼板1aと伸縮可能な導電性材料10、伸縮可能な導電性材料10と導電性布2aは圧力で密に接触しており、導電性布2aともう一つの亜鉛めっき鋼板1bは粘着剤で密着している。このため、接触状態の変化や導電性布2aの変形も生じにくい。従って、各社とも同じ測定条件の下で抵抗を正確に測定することができる。
【0039】
図3は、図2に示す導電性布2aと伸縮可能な導電性材料10と2枚の亜鉛めっき鋼板1a,1bとを切断した切断面を見た断面図である。
【0040】
図2の抵抗測定方法では、亜鉛めっき鋼板1a,1bの製造メーカが防錆膜等の表面処理を施しているということを考慮して測定精度をより一層上げるために、図3に示す様に表面側の膜1a2,1b2を削ってプローブをあてて、伸縮可能な導電性材料10側の面に形成されている膜1a1,1b1を含めた電気抵抗の測定が行なわれる。
【0041】
この様に2枚の亜鉛めっき鋼板1a,1bの、プローブをあてる側に形成されている膜1a2,1b2を削ってプローブをあててプローブの接触抵抗を下げると、亜鉛めっき鋼板1a,1bの電気抵抗が微小な値であっても亜鉛めっき鋼板1a,1bの伸縮可能な導電性材料10側の面に形成された膜を含めた電気抵抗を精度良く測定することができる。
【0042】
ここで、測定対象物2aの抵抗の評価方法を図4を参照して説明する。
【0043】
図4は、図2、図3で説明した抵抗測定方法で測定される測定対象物が有する抵抗成分を説明する図である。なお、伸縮可能な導電性材料10については、予め測定により伸縮可能な導電性材料の抵抗値R10が測定され既知であるとする。また、亜鉛めっき鋼板の鋼板部は金属であるのでほぼ抵抗値0を示すものとする。
【0044】
図3に示す様に一方の膜が突き破られてプローブがあてられ測定が行なわれると、亜鉛めっき鋼板の抵抗値R1aと、その亜鉛めっき鋼板1aの、伸縮可能な導電性材料10側の膜の抵抗値R1a1と、伸縮可能な導電性材料の抵抗値R10と、測定対象物である導電性布の抵抗値R2aと、もう一つの亜鉛めっき鋼板1bの、伸縮可能な導電性材料10側の膜の抵抗値R1b1と、亜鉛めっき鋼板1bの抵抗値R1bが加算された直列抵抗値Rsが測定される。なお、図2に示すように、測定対象物である導電性布は、亜鉛めっき鋼板上の2カ所に配置されているが、伸縮可能な導電性材料の抵抗値R10や導電性布の抵抗値R2aは、そのような配置における全面積分の値である。
【0045】
この直列抵抗値Rsが測定されたらその直列抵抗値Rsから伸縮可能な導電性材料のR10が差し引かれて、導電性布2aと2枚の亜鉛めっき鋼板1a,1bの膜とを含めた抵抗値が算出される。
【0046】
測定対象の導電性布として各社の導電性布が用いられる場合でも、2枚の亜鉛めっき鋼板1a,1bの膜の抵抗値R1a1,R1b1は変わらないので、
A社、B社…それぞれの導電性布が用いられてそれぞれ測定されて上記抵抗値がそれぞれ算出されたら、それらの抵抗値それぞれが比較され導電性布のシールド性能の評価が行なわれる。ここで、各社の抵抗値の比較が行なわれて、例えばB社の電気抵抗が最も小さいと評価されたらB社の導電性布が筐体やラックの隙間に挿入される不要輻射防止部材として選定される。
【0047】
この様にして電気抵抗を測定回ごとに同じ条件の下で正確に測定すると、比較に際して好適な測定結果が得られて厳正かつ公平な評価が行なわれる。以上説明した様に、例えば布状の測定対象物の電気抵抗の測定を正確に行なうことができる抵抗測定方法が実現する。
【0048】
なお、上記実施形態では、測定対象物と伸縮可能な導電性材料を挟むための導電板の例として、表面に膜が形成された亜鉛めっき鋼板が掲げられているが、本発明における導電板は、表面に膜が形成されていないものであっても良いし、電気伝導性の有機材料などであっても良い。
【0049】
また、上記実施形態では、好ましいスペーサとして絶縁体のスペーサが例示されているが、本発明にいうスペーサは、十分に高い抵抗値を有していれば絶縁体でなくてもよい。
【0050】
ここで、上記実施形態で選定した製造メーカで導電性布が製造され部品として導電性布が供給されてきたときには、必ずしもメーカ選定時の電気抵抗を持つ導電性布が供給されてくるとは限らない。
【0051】
メーカ選定時の電気抵抗を呈する導電性布をラックや筐体の製作に持ち入れば間違いなく所定のシールド性能が発揮されるが、製造メーカで製造された導電性布には品質にばらつきがあり何枚もの導電性布すべてが同じ電気抵抗を呈するとは限らない。
【0052】
そこで、部品として導電性布を受け入れるときに上述したメーカ選定時の電気抵抗を検査基準として受け入れの可否を決定する様にしておくとなお良い。
【0053】
図5は、部品検査プロセスに本発明の抵抗測定方法を適用した場合の例を説明する図である。図5には、図2に示す第1の実施形態の抵抗測定方法がそのまま部品検査プロセスに適用された例が示されている。
【0054】
図5(a)には、選定した製造メーカであるB社から納入された導電性布2a,2b…が多数枚あることが示されている。その多数枚の導電性布2a,2b…の中から測定対象物が抜き取られて順次図2で説明した抵抗測定方法で電気抵抗の測定が行なわれ所定の値以下であるかどうかが判定される。
【0055】
図5に示す部品検査プロセスに適用された抵抗測定方法で測定された電気抵抗値が所定の値以下であった場合に限り、受入検査に合格したとして測定対象物である導電性布が受け入れられラックや筐体の隙間などに挿入される不要輻射防止部材として現場に搬入される。
【0056】
こうして本発明の抵抗測定方法が部品を受け入れるときの部品検査プロセスに適用されると、シールド性能を発揮する電気抵抗を持つ測定対象物(ここの例では導電性布)のみが抜き取られ所定のシールド性能が発揮されるラックや筐体が製造される。
【0057】
ところで、上記実施形態では、測定に用いられる伸縮可能な導電性材料や亜鉛めっき鋼板はいつも共通であるものとして説明したが、これらの導電性材料や亜鉛めっき鋼板は、時間を経ると抵抗値に変化が生じる可能性がある。特に亜鉛めっき鋼板の防錆膜等などは、多くの測定対象物が順次に貼り付けられ剥がされることを繰り返すと減っていく可能性が高い。かといって、防錆膜等など施していない亜鉛めっき鋼板を用いると錆などによって表面の抵抗が変化する可能性が高い。
【0058】
そこで、測定対象物を除いた他の要素の抵抗値を以下説明するように測定しておくことが好ましい。
【0059】
図6は、本発明の第2の実施形態を説明する図である。
【0060】
この第2の実施形態でも、図2(a)に示す第1ステップと図2(b)に示す第2ステップはそのまま実行され、さらに、図6(a)に示す第3ステップと図6(b)に示す第4ステップも実行される。
【0061】
図6(a)に示す第3ステップでは、図2(a)に示す第1ステップで用いられた2つの亜鉛めっき鋼板1a,1bと、伸縮可能な導電性材料10と、スペーサ11とがそのまま用いられ、2つの亜鉛めっき鋼板1a,1bで伸縮可能な導電性材料10を挟むとともに、2枚の亜鉛めっき鋼板1a,1bの間隔を規制するスペーサ11を挟む。
【0062】
そして、図6(b)に示す第4ステップでは、2枚の亜鉛めっき鋼板1a,1bを両方の表面側から加圧して伸縮可能な導電性材料10をスペーサ11と同じ高さになるまで圧縮した後に2つの亜鉛めっき鋼板各々の表面にプローブを当てて電気抵抗を測定する。
【0063】
このような測定によって得られた抵抗値を、図2に示す測定によって得られた抵抗値から差し引くことで、測定対象物のみの抵抗値を正確に得ることができ、上述したメーカ選定や部品の評価も精度の高いものとなる。
【0064】
なお、この図6に示した第3ステップおよび第4ステップは、第1ステップおよび第2ステップの前に実行しても良いし、後に実行しても良い。また、亜鉛めっき鋼板などの抵抗値変化が無視できる程度に短い経過時間内であれば、複数の測定対象物における第1ステップおよび第2ステップの実行に対して1回だけ第3ステップおよび第4ステップを実行するのであっても良い。
【0065】
以下、上記実施形態とは第1ステップが異なる他の実施形態について説明する。
【0066】
図7は、本発明の第3の実施形態を説明する図である。
【0067】
この第3の実施形態では、2枚の亜鉛めっき鋼板1a,1bの両方に測定対象物である導電性布2aが貼り付けられる。そして、第1の実施形態と同様に、2つの亜鉛めっき鋼板1a,1bで伸縮可能な導電性材料10を挟むとともに、2枚の亜鉛めっき鋼板1a,1bの間隔を規制するスペーサ11を挟む。このとき、導電性材料10の両側に導電性布2aが介在することとなる。従って、この第3の実施形態では、第2ステップにおける測定で得られる抵抗値は、導電性布の2枚分の抵抗値を含んだ値となるが、上記第1の実施形態と同様に、正確かつ安定な抵抗値測定が実現する。
【0068】
図8は、本発明の第4の実施形態を説明する図である。
【0069】
この第4の実施形態では、筐体やラックの原材料として納入された板材に対して、筐体やラックの製造現場で表面を塗装するような場合を前提としており、その塗装によってできる膜の抵抗値を測定する。塗装対象の板材とは独立に、塗装膜自体の抵抗値を測定し、塗装膜自体の評価を行いたいというような要望を満たす実施形態である。
【0070】
上述した各実施形態で亜鉛めっき鋼板に測定対象物を貼り付けたのに対し、この第4の実施形態では、亜鉛めっき鋼板1bに塗料2’を刷毛やスプレーで塗布する。そして、その塗料2’を乾燥させることで測定対象物の塗装膜2”を作る。このように塗装膜2”が設けられた亜鉛めっき鋼板1bを用いて、上述した各実施形態と同様に抵抗値を測定することによって、塗装膜2”の抵抗値を正確かつ安定に測定することができる。なお、この第4実施形態では、亜鉛めっき鋼板1bを損傷させずに塗装膜2”を除去するのが難しい場合もあるので、図6に示した第3ステップおよび第4ステップを、亜鉛めっき鋼板1bに塗料2’を塗布する前に実行しておくことが望ましい。
【0071】
図9は、本発明の第5の実施形態を説明する図である。
【0072】
この第5の実施形態は、測定対象物として、十分に広い面積のものが入手される場合の実施形態である。
【0073】
この第5の実施形態では、スペーサ11として、亜鉛めっき鋼板1a,1bの寸法と同等な外形寸法を有するスペーサ11が用いられ、伸縮可能な導電性材料10は、このスペーサ11の枠の中に配置される。また、測定対象物(ここの例では導電性布2a)は、伸縮可能な導電性材料10の寸法よりも大きな寸法のものが用意されて亜鉛めっき鋼板1bに貼り付けられる。そして、2つの亜鉛めっき鋼板1a,1bで伸縮可能な導電性材料10を挟むとともにスペーサ11を挟み、導電性材料10と亜鉛めっき鋼板1bとの間には導電性布2aを挟む。
【0074】
このような第5の実施形態では、伸縮可能な導電性材料10の面積が広いため、抵抗値測定の安定性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】パーソナルコンピュータ等の情報処理装置を収容するラックの外観を示す図である。
【図2】図1に示すラックの箱体部とドア部との隙間などに挿入される不要輻射防止部材の抵抗を測定する抵抗測定方法を説明する説明図である。
【図3】図2に示す導電性布2aと伸縮可能な導電性材料10と2枚の亜鉛めっき鋼板1a,1bとを切断した切断面を見た断面図である。
【図4】図2、図3で説明した抵抗測定方法で測定される測定対象物が有する抵抗成分を説明する図である。
【図5】部品検査プロセスに本発明の抵抗測定方法を適用した場合の例を説明する図である。
【図6】本発明の第2の実施形態を説明する図である。
【図7】本発明の第3の実施形態を説明する図である。
【図8】本発明の第4の実施形態を説明する図である。
【図9】本発明の第5の実施形態を説明する図である。
【符号の説明】
【0076】
1a 1b 亜鉛めっき鋼板
1a1 1a2 1b1 1b2 膜
2a 2b 導電性布
2’ 塗料
2” 塗装膜
10 伸縮可能な導電性材料
11 スペーサ
12 抵抗測定器
3 ラック
30 箱体部
31 ドア部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの導電板で伸縮可能な導電性材料を挟み、該2つの導電板の少なくとも一方と該導電性材料との間には測定対象物を介在させる第1ステップと、
前記導電性材料を、前記測定対象物が介在して挟んだ状態の2つの導電板の間の電気抵抗を測定する第2ステップとを有することを特徴とする抵抗測定方法。
【請求項2】
前記第1ステップが、前記2つの導電板で前記導電性材料を挟むとともに、該2つの導電板の間隔を規制するスペーサも挟むステップであることを特徴とする請求項1記載の抵抗測定方法。
【請求項3】
前記2つの導電板で前記導電性材料を、前記第1ステップと同様の状態に、但し前記測定対象物は介在させずに挟む第3ステップと、
前記導電性材料を、前記測定対象物が介在せずに挟んだ状態の2つの導電板の間の電気抵抗を測定する第4ステップとを、前記第1ステップおよび前記第2ステップの前あるいは後に有することを特徴とする請求項1または2記載の抵抗測定方法。
【請求項4】
前記導電性材料の電気抵抗値が既知であることを特徴とする請求項1から3のうちいずれか1項記載の抵抗測定方法。
【請求項5】
前記導電板が、亜鉛めっき鋼板、ステンレス鋼板、鋼板、銅板、合金材料、アルミニウム、樹脂のいずれかであることを特徴とする請求項1から4のうちいずれか1項記載の抵抗測定方法。
【請求項6】
前記スペーサが、非圧縮状態における前記導電性材料の厚さよりも薄いスペーサであることを特徴とする請求項2記載の抵抗測定方法。
【請求項7】
前記スペーサが絶縁体であることを特徴とする請求項2または6記載の抵抗測定方法。
【請求項8】
検査対象物の電気抵抗を測定し測定した結果に基づいて該検査対象物の良否を判定する部品検査プロセスにおいて、
2つの導電板で伸縮可能な導電性材料を挟み、該2つの導電板の少なくとも一方と該導電性材料との間には前記検査対象物を介在させる第1ステップと、
前記導電性材料を、前記検査対象物が介在して挟んだ状態の2つの導電板の間の電気抵抗を測定する第2ステップとを有することを特徴とする部品検査プロセス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−36568(P2009−36568A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−199465(P2007−199465)
【出願日】平成19年7月31日(2007.7.31)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】